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部室まで戻ったところで橘京子に、ここに超空間が発生していますと説明された。俺がそうかと適当に答えると橘京子は意外そうな顔をしたが、やがて黙ってドアノブに手をかけた。 感触を確かめるように少し回してから、後ろの俺を振り返る。 「では、少しの間目をつむっていて下さい。超空間に入ります」 俺が指示されたとおり目を閉じると、橘京子が俺の手を握った。ほのかな体温が伝わってくる。 その手に引かれて俺は一歩を踏み出した。痛くもかゆくもない。普通にドアを開ける効果音がして、そのまま部室に入っただけに思えたが――。 「これはこれは」 古泉の声で俺は目を開けた。握っていたはずの橘京子の手がいつの間にかなくなっていた。 俺が視線を自分の手から上昇させていくと、そこはただの部室でなかった。ああ、とか何とか声を洩らしたね。見たことのある光景だったからだ。 部屋の中のすべてが、クリーム色に染まっていたのだった。 どこもかしこも、窓の外さえも薄らぼんやりとしたクリーム色オンリーで、雲も太陽も青空も何一つ見えない。薄黄色の霧でもかかってるみたいだ。空気中の窒素に着色でもしたような錯覚を受ける。目眩がするほど懐かしい雰囲気がして、優しい空間だ。これは佐々木の閉鎖空間だと言われれば俺は何も迷いもなく信じ込んでしまうだろう。そのくらい、春に喫茶店で見た閉鎖空間と似ていた。 俺はそこにいる人間を見る。 いつものように足を組んでいる微笑みくん状態の古泉がパイプ椅子に座って俺を見ている。わずかに驚きの感情が含まれていなくもない。 「キョンくん……」 そして制服バージョンの朝比奈さん。口に手を当てて、ひどくびっくりなさった顔をしていらっしゃる。そうか、この二人もここにいたのか。そりゃ、オマケ以上に嬉しいサプライズだな。 そして――。 俺はそこにいるそいつの姿を頭から足までじっくりと見た。 「長門」 俺は吐息を洩らすようにその名を口にした。 窓辺の小さな人影。文庫本を手にしている万能宇宙人の女子。眼鏡をかけているわけでもなく、俺を見て驚いているわけでもなく、ましてやモップのような髪の毛を持ったバケモノでもない。それは、俺を一番安心させてくれる長門だった。 「何と言うべきか……。久しぶり、だな」 思えば先週の木曜以来会っていないから実に五日ぶりである。たった五日かもしれないが、俺には宇宙誕生くらい昔のことに思えるね。 「そう」 この耳に残らない機械的な声も懐かしいものである。長門は短く答えてから俺を凝視すると、また口を動かした。 「よかった」 よく意味の解らないようなことを言ってから黙り込む。古泉が横で愉快そうにしているのは気に食わんが、やっぱり本物の長門だ。 「長門、いきなりですまないが教えてくれ。いったい何が起こってるんだ。それにここはどこだ。いや、何なんだと訊くべきだな」 「ここは超空間」 長門はいたって簡潔に答え、 「この世界に存在する異時空間から情報を取り出して調合した。わたしたちは存在が消されているから肉体の維持は不可能だけれど、意識だけは別物。朝比奈みくる、古泉一樹も概念体としてこの空間に召喚した」 あー。 俺は朝比奈さんと古泉を見比べてどちらにしようかなを行い、古泉を選択して、 「古泉、解説してくれ。得意分野だろ」 長門の説明だけではさすがに解る気がしない。学問に長けた人間なら違うかもしれないが、あいにく俺の頭の成績は底辺あたりをさまよっているのでね。 古泉は、 「僕も長門さんから聞いた限りなのでうまく説明できるかどうか自信がありませんが」 と前置きし、 「まず大本から説明しなければならないでしょうね。なぜ僕たち宇宙人や未来人や超能力者がこの世界からいなくなってしまったのか。先週の土曜日、あなたと議論した問題ですよ。覚えていらっしゃいますか?」 どうやって忘れればいいんだろう。一字一句まで指定しなければ覚えてるぞ。 「上等です。どうやら、あの時僕がお話しした仮説は正しかったようですよ。もちろんあなたもとっくに感づいておられるでしょうが、周防九曜の仕業であるという仮説がね。おそらく何かの実験ではないかと僕は思っています。僕たちを世界から追放するために、ずいぶんと面倒なことをしていますから」 何だそりゃ。 「周防九曜は、涼宮さんの意識に侵入したんですよ。まったく畏れ多いことです」 意識に侵入する? えーっと、意味が解らん。何やらやばそうな雰囲気だけなら察することができたが。 今度は長門が言葉をつないだ。 「彼女は涼宮ハルヒの意識に多大な情報を送り込んで、彼女の脳回線を一時的にショートさせることに成功した。そのショートの瞬間に彼女の意識に潜り込み、とある絶対的なキーワードを涼宮ハルヒの無意識に埋め込んだ。わたしたちの不注意。周防九曜の存在を感知できなくなっていたから涼宮ハルヒに対する攻撃の防御が遅れた。結果として、涼宮ハルヒの無意識に書き込まれた絶対的キーワードは現在、彼女の持つ情報改変能力によって実行されている」 キーワード? 「周防九曜と称された存在が涼宮ハルヒの脳に直接埋め込んだもののこと。絶対的で、涼宮ハルヒは自意識によっても無意識によってもそのキーワードに逆らうことができない」 「それが先週の木曜日の夜でしたかね?」 古泉が訊いた。 「そう。正確には金曜日の、深夜一時十二分十八秒」 そういう役に立たなさそうな知識はいいからそのキーワードってのを教えてくれ。もしかすると、そのキーワードが今回のこれに関係があるんじゃないのだろうか。 「直接ですよ。原因そのものです」 「なに?」 「わたしや朝比奈みくる、古泉一樹が元の時空間から消去されたのはそのキーワードによる涼宮ハルヒの情報改変によるもの」 長門は俺の表情を観察するようにじっくり見て、無感動な声で言った。 「『抹消』。それが周防九曜が涼宮ハルヒに書き込んだキーワード」 抹消。 消してしまうこと。 確かそんな意味だったように記憶している。辞書を引いた覚えはないが、たぶんそんな意味だ。 キーワード。ハルヒの情報改変能力によって実行されている。抹消。 なぜか消えた長門、朝比奈さん、古泉。ハルヒの変態パワー。周防九曜によって書き込まれたキーワード『抹消』 俺は思わずああと声を漏らした。 頭の中にあったパーツとモヤモヤの数々がジグソーパズルのようにきれいに埋まっていくのを感じる。あるべきものはあるべき場所へ。不謹慎だが感服モノだね。 「要するに、周防九曜が涼宮さんの力を利用しているわけですね」 古泉が言った。 「涼宮さんの頭の中に入り込んで『抹消』という絶対的キーワードを与え、宇宙人や未来人、超能力者を次々と消すように仕向けたのです。存在を消すとは雲の上のような話ですけどね。恐ろしいことに涼宮さんの能力を持ってすれば可能になるんです」 「待てよ。それでハルヒは自分が催眠術的に操られていることに気づいてないのか? ずいぶんと派手なことをしてるのに」 「無意識的に、ですからね。そのキーワードが書き込まれたのは涼宮さんの無意識です。また同じく、存在の抹消が実行されるのも涼宮さんが無意識のうちになんですよ。……が、しかしです」 古泉はなんだか爽やかそうな苦笑を浮かべ、 「僕の知る限りですが、一つだけ表だったことがありました。先週の金曜日を覚えていますね。長門さんが消えた一日目です」 一日目というと、朝比奈さんとあちこち歩き回って川沿いのベンチやら長門のマンションに行ったりした日だ。成果はまったく得られなかったが。古泉はあの日、学校を休んでいた。 「あの日、大規模な閉鎖空間が発生したせいで僕は学校を休むのを余儀なくされました。あんなことは今までありえなかった。なぜこんなにも巨大な閉鎖空間が出現したのか謎でしたが、ようやく解りました。涼宮さんの精神が、周防九曜という異物の侵入に無意識のうちに抵抗したんでしょう。閉鎖空間もまた、涼宮さんの無意識を反映していますからね。ただし、閉鎖空間の発生はあれ一度きりでしたけど」 そう言われれば筋の通った理屈だと思うが、あのハルヒが九曜相手とはいえど敗北を喫するとはな。甚だ信じがたい話だ。 「それは僕も驚きましたよ。もしかすると周防九曜の力は涼宮さんの力を越えているのではないかとね。恐ろしい妄想ですが」 そんなことがありえるかよ。 「ありえるんですよ。周防九曜の力が絶大というよりは、涼宮さんの力が弱まっているという意味で、ですけど。最近はどんどん彼女の持つ情報改変能力が失われています。何が彼女をそうさせているのかは不明ですが」 「それは、彼女の欲望が満たされているということ」 不意に長門が言った。機械的な声だった。 「もともと涼宮ハルヒの情報改変能力は彼女が望むような形で使われている。それが宇宙人や未来人、超能力者の存在の意味。ただし彼女は最近、そういう望みのために情報改変能力を使っていない。わたしたちの力が薄れていることがその証拠」 古泉が微笑を消して俺に向いた。やけに真剣な眼差しだった。 「楽しみの対象が変化しているんです。宇宙人という謎的存在から、彼女は今、そういう存在である僕たちと遊ぶことのほうに楽しみを感じています。どうも、非日常は消えゆくものらしい」 ね、とわけの解らん同意を求めてくるが、それはいったい何だ。覚悟しとけという意味なのかね。 俺は不快な気分になって話を変えた。 「で、どうすればいいんだ。あっちの世界で、俺は何をすればいい。どうしたらお前らが戻ってくる?」 「わたしには解らない」 答えたのは長門だった。 「あなたの思うようにすればいい。その結果を、わたしたちは受け止める」 それで黙り込む。妙に突き放された気分になって残る二人を見てみると、朝比奈さんは物憂げな表情をしており、古泉はニヤニヤ笑いに戻っている。というか、さっきから朝比奈さんがまったく発言していないのだがどうかしたのだろうか。 俺が古泉を睨むと古泉は意味もなく肩をすくめた。 「あなたにお任せします。それしかないでしょう。僕たちは何もできないのですから」 「お前はこの空間から外には出られないのか?」 「言ったでしょう。僕たちは涼宮さんによって存在を消去されたんです。つまり、本来なら存在していないはずなんですよ。肉体も精神もね。元の世界に僕たちの痕跡がないのもそのせいです。最初から存在していなければ、それに関する事柄は生まれ得ませんから」 「じゃあお前は何なんだよ。お前は少なくともここにいて、俺と会話してるだろ。これは幽霊か何かか?」 「そんなものです」 マジかよ。 「長門さんの支配者さんが、僕たちを精神概念体としてこの空間にとどめてくれたんですよ。簡単に言えば魂だけみたいな状態ですね。感覚としては閉鎖空間で《神人》と戦っている姿の感覚に近いです」 それは古泉とその他もろもろの超能力者にしか解らんたとえだな。俺は赤玉にはなりたくないし、なる予定もない。 「じゃあ一般人の俺に魂が見えるこの空間は何なんだよ。何だっけ長門、実体のない概念だけの場所だったっけ?」 「そう。ここはわたしが緊急に地球上に作成した超空間。朝比奈みくる、古泉一樹の……避難所、のようなもの。安心していい。他に地球上で削除されたすべての存在は、情報統合思念体が情報を凍結して広域宇宙帯に保存してある」 他の未来人とか超能力者たちか。 「そう」 しかし、何でまたこの三人だけが地球上のSOS団部室にいるんだろうな。他の奴らはみんな宇宙空間でお休み中だってのに。 訊くと、長門はしばしの間、形而上学を幼稚園児に解るように教えろと命令されたような雰囲気をかもしだしていたが、 「そうしたほうがいいように思った」 確かかどうか解らない答えが出てしまったように言った。 さらに一ミリほど首をかしげると、 「よく解らない」 まあいいさ。 俺だって長門や朝比奈さんや古泉が近くにいてくれたほうが嬉しいしな。そんな妙な感情めいた何かを感じられればいいのだ。長門が人間に近づきつつあるのも、ハルヒのおかげ、またはせいなのかもしれない。いいか悪いかは別として。 「あの、キョンくん……」 沈黙の帳が降りようとしていたところで俺の耳が実にいじらしい声を察知した。朝比奈さんだった。今までずっと黙っていたのだ。朝比奈さんはうつむいていて、少しだけのぞく顔は、何か思い詰めたような表情をしている。どうしたんだろう。 「もし橘さんが消されちゃったらどうします?」 「はい?」 「もし橘さんが消されちゃったら、キョンくんはもうここに来れないじゃないですか。それじゃダメなんです」 まるで橘京子が消えるのを哀願しているような表情だ。そりゃまあ、そういうリスクはありますけどね。 朝比奈さんはまた下を向いて、こんなことしていいのかわからないけど、とか、大変なことになっちゃうけど、などもぞもぞと口ごもっていたが、やがて顔を上げた。 「TPDDを、空間移動デバイスにしてキョンくんにあげます」 真摯な顔だった。もしかすると初めて見た表情かもしれない。 TPDDをあげる? 俺に? 空間移動デバイスってのは何だ。 「長門さん、TPDDの性質を変えて空間移動デバイスにすることは可能ですよね?」 「できなくはない。本質的なプログラムは同じだから」 朝比奈さんの問いに長門が冷静に答える。何だ、空間移動デバイスって。説明してくれと古泉を見ても真面目な顔をしているだけで、どうやら教えてくれそうにはない。 「キョンくん、あたしたちが持っているTPDDというのは時間移動の手段だっていうのは知ってますよね。今いる時間平面を踏み台にしてジャンプして、過去にさかのぼったり未来に行ったりできるんです。そのジャンプする手段がTPDDなの」 朝比奈さんが必死に説明してくれる。禁則の塊なのではと思ったが、未来と繋がってない今や、禁則事項は全面解除されているという先週の木曜日の朝比奈さんの言葉を思い出した。 「実を言うとね、時間移動も空間移動も本質的には同じ理論の上で成り立ってるの。両方とも絶対的な概念ではなく相対的な概念だから。STC理論は言語を用いないから詳しくは言っても理解できないと思うけど、そういうものなんです」 「ほう、ではこの空間とこの空間の時間も元の時空間の平面のようなものからずれた位置にあるということなんですか?」 古泉、お前の気持ちは解るが黙ってろ。後でゆっくり聞かせてもらえ。後でな。 「それで、朝比奈さん。TPDDがどう関係してくるんですか?」 「はい。さっき言ったように、時間移動と空間移動が同じ理論の上で成り立っている以上、それを移動する手段も同一性があるということになってくるんです。つまり、TPDDを変形させればこの空間に出たり入ったりすることができる概念的なデバイスのようなものを作ることができるんです。だからあたしの持ってるTPDDを使って、そういう概念を長門さんに作ってもらおうと……」 朝比奈さんの思い詰めたような表情も解るね。 相当な葛藤があったに違いない。俺が未来人の諸事情を察するのもアレだが、TPDDがなければ未来に戻れないのだ。そしてそもそも未来と接続が絶たれている今や、TPDDを失った朝比奈さんは、未来人としての力をまったく持っていないことになる。TPDDの使用にはたくさんの人の許可が必要、と朝比奈さんは言っていた。それだけ重要なものを俺のためにくれるというのだ。本気ならば受け取らないわけにはいかないが、それでも困惑する。 「いいんですか?」 俺は問うた。 「そんなことをしたら大変なことになるでしょう。ただじゃ済みませんよ」 しかし朝比奈さんは首を横に振る。 「いいんです。時間移動できないのでは、TPDDは大した意味を持ちませんから」 それでも俺が何と言っていいものか考えていると、朝比奈さんは柔和に微笑んだ。 「言ったでしょ? 今のあたしは、未来とは独立した存在です。自分が思うこと、したいことをやります。責任を取るのは未来の自分であって今のあたしではありませんから。未来なんて関係ないんですよ?」 * 結局、朝比奈さんのTPDDは長門の言うところの超空間移動プログラムとなって俺が持つことになった。TPDDの亜種らしいが俺には理解できん。とりあえず、元の世界とこの部室の空間とを移動する手段だということを知ってればいい。 「何か実体のある物質を。できれば金属類が好ましい」 先ほど朝比奈さんの頭付近から何かをかすめ取るように手を動かしていた長門が、俺に向けて言った。小さな手のひらが俺に差し出されている。 「金属って、何に使うんだ?」 「超空間移動プログラムを書き込む。あなたの頭脳に概念を埋め込むわけにはいかないから」 長門は続けて、 「変形させても構わないもの」 さてそんな金属類に持ち合わせがあっただろうか。一円玉なら五枚ほど出せるが。 「それでいい」 俺がサイフから出した一円玉を長門の手に握らせてやると、長門は一円玉の上にすっと指を這わせた。 と、一円玉が無惨にもぐにゃりと変形して渦巻き状になった。三年前に長門のマンションで見たあの技だ。分子の結合情報がどうたら、とかってやつだろう。俺がその様子に目をとられていると、あっという間に渦巻きは形をなすようになり、一円玉ではない別の物になった。注射器でも短針銃でもないが。 「鍵……か?」 「そう」 手渡してもらったそれはずいぶんと軽かった。アルミ製だからか。ところでこいつはどこのドアを開けるためにあるんだ? 「この部室の扉。超空間移動プログラムが書き込まれているから、元の世界で扉の鍵穴に入れればこちらの空間に来れる」 それはまたやたらに希少価値の高い鍵だな。ママチャリの鍵と間違わないように工夫しておく必要があるだろう。 俺は長門、朝比奈さん、古泉に目を向けて、 「ありがとよ長門、それと朝比奈さん。俺にはちょっと手に余るアイテムな気もしますが……。そういや、この空間が九曜に潰される恐れはないのか?」 「ない。彼女には解析不能だし理解も不能なコードを設定したから」 橘京子も言ってたっけな。解析に時間がかかったって。 「あと古泉、長門から聞いてるかもしれんが元の世界にはお前の偽者がいるんだ。もちろん長門や朝比奈さんの偽者もだが」 あえて九曜とは言わず偽者とだけ言っておいた。 「知ってますよ。長門さんに教えてもらいましたから。とりあえず僕たちを置換したような存在らしいですが、真意は測りかねますね。なにしろ総括しているのが周防九曜ですから」 「ああ。お前はボードゲームの腕でも磨いてろ。どうもあっちの偽古泉はゲームが強いらしくてな、オセロは今のところ俺が全敗だそうだぜ」 「それはそれは、僕も精進しなければならないでしょう」 朝比奈さんについては……まあこの朝比奈さんのほうが可愛らしいし性格もいいだろうが。色気があるのも悪いことではないが、ちょっと恥じらってるくらいのほうが見栄えがするんですよ。いや俺の好みだけどさ。 「じゃあな。次にいつ来るのか知らないが、世界が元通りになるまでは絶対そこにいろよ」 三人に向かってそう言ってから俺は扉に手をかけた。やっぱりこっちのほうがいいね。世界が違おうが、大切なのはそこにいる役者だ。SOS団の正しい五人じゃなけりゃ、俺はすぐさま退団してやる。 * 橘京子は元の世界に戻ったときにはいなかった。そういえばなぜあいつが他の超能力者と一緒に消されていなかったか謎だが、そんなことは後でいくらでも考えればいい。 放課後、正直部室に足を運びたくなかった。九曜に対する畏怖の念があるのだ。かといってこのまま帰っても、あからさまに敵意があって警戒していると取られるかも知れないし、そもそも九曜にそんな地球上の概念で成り立っている敵意とか警戒とかいうものが通じるかどうかも知らんのだが、はてどうしたものか。 扉の前でいっそのことさっきもらった鍵を鍵穴に差し込んでやろうかなどと逡巡していると、ハルヒと鶴屋さんが揃ってやってきた。とりあえず思考中断。なんで鶴屋さんがいるんだろう。 「合宿のための買い出しに行くのよ」 そういえば昨日そのように宣言していたな。 「どうせだから鶴屋さんも一緒にと思ってね。合宿には鶴屋さんも行くわけだから」 「いやあ今日はすることもないし、ウチにいてもヒマなだけだしねっ。せっかくだからハルにゃんたちの買い物に付き合うっさ」 「と、いうわけよ」 ハルヒは極上の笑顔であり、俺に反論の余地はない。さすがに俺も九曜どもを連れて買い物に行かなければならないと言われると困るが。 「ほらキョン、なに立ち止まってるのよ。ちゃっちゃとドア開けなさい」 「……ああ」 無意識のうちに長門がくれた鍵に触れていた右手をポケットから出して、ドアノブを回した。いざとなりゃハルヒと一緒だ。大丈夫だろ。 「お待たせえー!」 ハルヒが大声を出して入っていく。鶴屋さんが俺を見て、一瞬怪訝な顔をしたようにも見えた。仕方がないので俺も続いて部室に入る。見ると、やはり長門のところに座っているのは九曜であり、朝比奈さんと古泉には奇妙な違和感がある。吐き気がするね。ハルヒは何を屈託もなく有希だとかみくるちゃんだとか言ってやがるんだ。ふざけやがって。 ハルヒに離れろと言いたくても言えない俺を見てか、偽古泉のヤツが俺を見てあざわらった。お前はどこの悪キャラだ。 「お帰りになったんじゃないんですか?」 俺は自分の顔が引きつるのを感じながら、 「ちょっと用があったんだよ。それだけだ」 「そうでしょうね。あなたの鞄はまだここにありますから」 ひょいと俺の鞄をつまみ上げてよこしてくる。それだけで通学鞄がひどく汚染された気がした。偽古泉は卑しく笑っている。こいつは解っててやっているのだ。 「じゃあ今度こそ帰るんですか?」 「別に」 俺は吐き捨てるように言って、壁に立てかけてあった新しいパイプ椅子を広げて腰を降ろす。 「キョンくん、お茶ですよ」 偽朝比奈さんがお茶を持ってきたので反射的に礼を言って口をつけようとしていたが、ギリギリで思いとどまった。中に青酸カリでも入ってたらたまったもんじゃない。ハルヒの手前湯飲みごと投げるのはどうかと思ったので、なるべく自然な動作で湯飲みを机に置く。無論飲む気はゼロだ。 「飲まないんですか?」 また偽古泉が笑ってやがる。やめてくれ。発狂しちまいそうだ。 俺はテーブルに突っ伏した。目眩がしてくる。パラレルワールドにただ一人取り残されちまったらきっとこんな思いなんだろう。異常なまでの違和感。 ハルヒが何か言っている。買い物がどうとかいった、ごく平凡な話だ。何も知らずに天下を取れるんだから、いいよなこいつは。それが幸福か不幸かどうかは知らないが、一日くらい代わってみたい気はするね。 俺は伏せた腕と机のわずかな隙間から周防九曜の姿を捉えて、たまらず立ち上がった。我慢できん。 「どきやがれ」 窓辺の特等席で、長門の本を広げているのは長門であって長門ではない。少なくとも俺にとってはこいつは危険因子以外の何者でもないのだ。 そよと風が吹いてサラサラという音がした。七夕の短冊が揺れている。そこに書いてあるのは団員の願いだが、それは断じて団員の願いなどではない。これがここにあるのは、“こいつら”がここにいるからだ。こんなもん、片っ端から破り捨ててやりたい。 「――――」 九曜は無言で俺を見つめている。本気で長門に成り変わろうとでもしてるのか。いい演技力だ。しかし俺は騙されん。 「そこはお前の席じゃねえ。長門の席だ」 九曜は真っ黒な瞳を俺に固定して動かさない。まるで言語を持たない機械に怒っているような感じだ。確信した。こいつは長門にはなれないね。ほら、どけって言ってんだろ。 「……ちょっと、キョン?」 ハルヒが重たげな視線を俺に投げてきた。悪いなハルヒ、ちょっと黙っててくれ。 「周防九曜、それがお前の名前だ。何でこんなことをした。目的は何――」 「あれれっ、キョンくんすごい汗じゃんっ」 俺の声は鶴屋さんに遮られた。ふとして額に触れてみる。初夏の暑さのせいではなく、俺の手にはべっとりと冷たい汗がついていた。 「具合が悪いんじゃないのかな? 夏カゼはタチが悪いのさ。今日は早く帰ったほうがいいんじゃいかいっ?」 俺は鶴屋さんを見る。厳しい表情をしていた。顔は笑っているが目に強い輝きがある。何かを察して配慮してくれてるのはありがたいのだが今の俺はそのまますごすごと引き下がるわけにはいかんのだ。こんな間違ったSOS団のまま記憶が完全にインプットされちまうようなことだけは許される事態ではない。 「大丈夫ですよ。カゼなら後で薬を飲みますし」 ぐぎぎ。 俺の腕の関節が立てた音だ。痛え。 何てこった。鶴屋さんが誰にも見えないように隠して俺の右腕をつかんでいる。ちょっと、それ以上やると骨が折れますけど。 「キョンくん、何があったのかは知らないけど今日は帰んな。そのほうがいいよっ。もし話があるなら聞いてあげるからっさ」 なんということだ。直感か? 鶴屋さんは本当に何も知らない人間なのかと疑いたくなるくらいだ。いや、というか常人でも解るんだろうな。九曜の持つ異常性とかが。 「何キョン、あんた風邪引いてたの? ふーん、バカはカゼ引かないんじゃなかったっけ?」 「ああ、どうもカゼらしい。ついでに言っとくが、そんな大昔の言い回しを張り合いに出すもんじゃないぜ。現に谷口だってカゼで休んだだろ。……あいや、あれはアホだったか」 などと言っている場合ではない。仕方がないが鶴屋さんの指示に従うしかないようだ。鶴屋さんが知ってるのか知らないのか、知ってたとしてどこまで知っているのか多少気にはなるが、今気にしていても仕方ない。どっちにしろ九曜側について俺たちを翻弄するような役目でないことは確かだ。 「キョンくん、下駄箱んとこまで送ってってあげるよっ」 鶴屋さんはそう言いながら俺の返事も聞かずに部室の外へと出ていく。断るまでもないか。 九曜と古泉、朝比奈さんは特にリアクションすることもなくただこっちを見てるばかりで、俺がいようがいまいがどうでもいいらしい。ハルヒは鶴屋さんと一緒に部室から出ていく俺を見て口をアヒルにしていたが、 「明日は来なさいよね!」 今日のところはこれで勘弁してやる的口調で俺を見送った。俺は迷った末に、とうとうハルヒに向けて言ってしまった。 「SOS団を忘れるなよ。ただの人間じゃない奴らの集まりってのが定義だぞ」 ハルヒは、はあ? とか言った。当然か。 部室棟の廊下を歩き階段に差し掛かったあたりで、俺はどうしても耐えきれなくなって訊いてみた。鶴屋さんはずっと黙っていたが、それは訊かれたら答えるという鶴屋式の構え方なんだろう。 「鶴屋さん、あなたいったいどこまで知ってるんですか?」 案の定鶴屋さんはおかしそうに首をかしげ、 「その質問は前にも受けたねー。いつだったっけ、二月ぐらいだったかな?」 朝比奈さん(みちる)を頼んだときでしょう。ずいぶんお世話になりましたから覚えてますよ。 「うん。でもね、あたしの答えはあんときと変わらないさっ。あれから別に誰かから教えてもらったとかいうこともないしね。なーんとなーく違うのかなーってのがはっきりしてきただけだよっ。今は、もしかしたらあたしの他にも気づいてる人がいたりいなかったりすんのかなーて思うけどね」 それはそら恐ろしい話だ。間違ってもハルヒに気づかれるわけにはいかん。 「でもねえキョンくん、やっぱり一人だけ浮いてるのはあたしじゃなくても何かあるなーって気づくと思うのさっ」 「誰のことっすかね。ハルヒか、それとも俺ですか?」 これではSOS団に裏があるのを認めたも同然だなとか思いながら訊く。鶴屋さんはなぜかたははと笑って、 「有希っこさ」 と言った。 ああ長門ね。そりゃ読書好きで無感動無口ときてるわけだから性格的には浮いてるのかもしれんが、あいつだって感情が薄いだけで表に出ないだけなんだと思うけどな……。 そこらへんまで考えたところで俺は鶴屋さんの言っている有希っこってのが長門のことではないと気づいた。ここでの長門というのは九曜のことだった。 「なんかね、あたしはコトの内側には入るつもりないんだけど、あの子見てるとときどきフラッと吸い寄せられそうになるんだよね。影響力が強いってか、そんな雰囲気があるのさ。あの子だけはみくるやハルにゃんや古泉くんやキョンくんとは違ってんだっ。はあー、不思議なんだなぁ」 鶴屋さんは感慨深げにため息を吐いてから俺に目を向け、 「キョンくんは何か知ってるのかい? 有希っこのことや、他の人のことも」 「さあ、どうでしょうね。知ってたとしても教えるわけにはいきませんけど」 「まあいいよっ」 もし厳しく言及されてたら答えていただろうかと思う俺をよそに、鶴屋さんは軽快に笑った。 「どっちにしろあたしが入れる輪じゃないしねっ。なーんもわからないけど、それだけは解るのさっ。あたしはたまに合宿なんか一緒に行かせてもらうだけで楽しいんだ! その奥に、何か深い設定があってもなくてもね!」 本気なのか冗談なのか俺には見当もつかない。それ以上は真相を口走ってしまうような気がして、言葉がつなげられなかった。 まもなく俺と鶴屋さんは下駄箱に到着した。その頃には話題も当たり障りないものとなっているわけだが、その話に身が入っているかと言えば否定せざるを得ない。 「じゃあね、キョンくんっ。もし帰り道で誰かさんに襲われる危険性があるんなら、あたしがガードマンになったげようか?」 その可能性は捨てきれなくもないが、そこまでしてもらうのは後ろめたい。 「大丈夫だと思いますよ。とにかく、今日は早く家に帰って寝てます。……それで、鶴屋さんはあいつらの買い物に付き合うんですか?」 「うん。何だろうとヒマなのは変わりないしね。ここで待ってることにするさっ」 気をつけてとかいう類の言葉をかけるべきだったのかもしれないが、さすがにそれははばかられ、代わりに「ハルヒによろしく言っといてください」と言った。鶴屋さんは俺の真意を読みとるようにじっくりと顔を眺めていたが、それもわずかな間のことで、けろりと笑って伝えとくよと返した。 俺はそのまま校門を出た。帰路だ。 * 家に帰るなり、俺は疲れを隠すことなくベッドに倒れ込んだ。勉強机の上には数学等の教科書が雑多に散らばっているが、とても手を出す気はしないね。こんな状況下で勉強しようと考えつくのは相当に頭がオシャカになってる人間だけだ。いや、勉強で現実逃避というのも珍しいがアリと言えばアリだけどな。俺はまだ現実を見つめるさ。もっともこれが現実だったらの話だが。 むしろこうやって意味のないことを考えていることすら現実逃避なのではなかろうか。九曜に対抗策がないというか何をしていいのやらさっぱりなのは事実だが、それはさておきどうにかなる努力を俺はしてきたのか? 橘京子、ハルヒ、九曜。異空間の部室にいた三人と、そこでもらった鍵。 パーツはある。しかしそれをどう組み合わせればいいのか解らないのだ。肝心なところが抜け落ちている。何か、キッカケのようなものがあれば、あるいは……。パーツを組み合わせて結果を出せる、何か。 クソ、また「何か」か。 結局具体的なことは何一つとして出てきやがらない。何があればこうなって、その結果こうなるという予測すら立たないのだ。橘京子やその組織に九曜に対抗できるだけの力があるとは思えないし、そもそも古泉と一緒に消えてなかっただけ僥倖と取らなければならないだろう。他に残された可能性としては佐々木とハルヒだが、佐々木にこんな厄介ごとを背負わせる気は毛頭ないし、背負わせたところでどう変わるものでもない。あいつはハルヒみたいな破滅的パワーを持っているわけではないからな。 しかし、そのハルヒならどうにかなるかもしれん。長門や喜緑さんのような情報統合思念体製のインターフェースがいない今、九曜のようなヤツに対抗できるのはハルヒだけだ。お得意の、情報改変能力ってやつでな。しかしハルヒはジョーカーだ。めくってみたところでどうにかなる保証はどこにもないし、もしかしたらジョーカーと思わせてトーフだったりするのかもしれん。だからやっぱり、ハルヒにしても他の可能性にしても大丈夫だという確信がない。 最後に頼れるのは、と思った。 最後に頼れるのはSOS団そのものである。それしかない。 ハルヒが本当のSOS団を覚えてくれていれば、もしかするかもしれないのだ。あの九曜がいるような団が偽物だと解れば、ハルヒは全力で反抗するに違いない。とんでもない力を使って、だ。 そのためにはハルヒに未知のものへの興味があることが必要不可欠なのだ。ただのお遊びサークルのSOS団なら、ハルヒが取り戻そうとはしない。今の偽物でも代役が務まって、充分だからだ。そうではなく、もしハルヒに宇宙人やその他もろもろへの未練があるのならば、ハルヒが団員としてかき集めてしまった長門たちをもう一度集合させるはずだ。ハルヒが一年の四月に集めたのは九曜ではなく、長門だったのだから。九曜では役不足である。 そうなることを願うしかない。 ハルヒがSOS団を覚えていて、かつ謎の存在に未練が残っていること。 はっきり言って可能性は低い。最近のハルヒの様子を見れば、あいつには合宿で仲間と遊ぶことしか眼中にないのが解る。それでも俺は信じるしかないのだ。まったく、いつもは長門たちが早くまともなプロフィールに戻ることを望んでいるというのに、何で今回に限って正反対のことを考えているんだろうね。 まもなく妹がシャミセンと共にふらりとやってきて晩飯の完成を告げた。どうもメシが味気なかったような気がするのは、本当に味付けが薄いからなのだろうか。どっちでもいいが。 その日、見事なまでに誰からも電話はなかった。佐々木からも橘京子からも、偽古泉からもな。こっちから電話するのも何だか面倒に思われて、風呂に入った後はベッドに伸びるばかりだった。何をやってんだ、俺は。
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みくる「お母さん…行ってきます」 みくる母「…頑張ってらっしゃい」 みくる「・・・・うん」 親子別れの場面とはいつ見ても感動的なものだ。 朝比奈さんのを抱きながら優しく髪を撫でる母親の姿に、俺は何処となく悲しみを感じた まあ気のせいかも知れないけどな 古泉「気のせいでは無いでしょう。夫に先立たれ、娘も旅に出てしまう。あの方は今悲しみに満ち溢れている事でしょう。僕では、術で苦しみを与える事は出来ても悲しみを癒す事は出来ません…終わらない戦いは、我々からあらゆる意味での優しさを奪っているのかもしれません…。悲しいことですね」 ああ、ホントにな… なぜ人は、本当の意味で平等に在れないのだろうか…怒りさえ感じるぜ。 古泉「全くもって同感です。ですが、其れが人の悲しさなのでしょう。そして、【人】そのものなのでしょうね・・・」 キョン「・・・だな」 =城下町外= みくる「待たせちゃってすみませんです。さあ行きましょう!」 ハルヒ「みくるちゃん・・・」 キョン「おい、ハルヒ」 ハルヒ「・・・ん。そうね!!出発よ!!!!」 山賊「おい兄弟!獲物を発見したぜ」 山賊2「どれどれ・・・ガキじゃねえか。それも金目のものを持ってそうな奴だ」 山賊3「親分!行きましょうぜ」 山賊「あたりめえだ。こりゃいいカモだぜ」 キョン「・・・見られてるな」 ハルヒ「・・・ええ」 古泉「へばり付くような視線ですね」 みくる「ふぇ!?どういうことですか?」 キョン「静かに!・・・おそらく山賊だな」 みくる「ふええ!?どうしてそんなことが分かるんですかあ!?怖いですう・・・」 ハルヒ「みぃ~くぅ~る~ちゃん?本当に静かにしないと怒るわよ?」 みくる「す、すみませんですぅ・・」 長門「・・・来た!」 山賊「とったあ!」 キィン! キョン「何がとったんだ?」 山賊「なにぃ!?くっ家来ども!」 ガキッ ドゴッ バキッ ハルヒ「それってたった今アタシに素手で瞬殺されたこのヘタレ共のこと?」 山賊「な、なんだと!?我が家来にして10人の猛者達を・・・」 ハルヒ「これが猛者って・・アンタねえ」 山賊「ぬ、ぬうう・・・」 ???「どうしたんだ?山賊の大頭ともあろう者が」 山賊「さ、早乙女さん!」 キョン「誰だ?」 早乙女兵庫「俺の名は早乙女兵庫。見ての通り浪人だ」 キョン「そうか、こいつはとりあえず持って帰ってくれ」 ドン 山賊「うっ」 早乙女兵庫「確かに受け取った。さて、物は相談だが金を置いていって貰えないかな?」 キョン「・・・なんですと?」 ハルヒ「アンタもこいつらみたいにボコボコにのされたいの?」 キィン! 突如、早乙女の剣がキョンに切り掛かる。 キョン「ぐっ…」(コイツ…) 早乙女兵庫「まさか。俺も生活が掛っているんでね。無理やりでも置いてって貰おうか」(今の一太刀を止めるとは・・・) キョン「仕方ない交戦だ。いくぜ早乙女兵庫!!」(こいつ・・・只者じゃない。一撃で行かないとこっちがやれらるぜ) 早乙女兵庫「いざっ!!」(決着は一撃にて・・・) キョン「おおおおおおお!!!炎の力よ!俺に全てを委ねてくれ!!!」 ハルヒ(あれはまさか・・・!?) キョン『奥義!!炎獄緋双斬!!』 早乙女兵庫『黎秋、雨鳥切り!!』 『≪キィン!!!≫』 早乙女兵庫(…ッ!!) キョン「まだまだ行くぜ!!うおおおお」 早乙女「・・・・・ぐ・・・・せいッ!」 キィン!キィン!キィン!! 早乙女「ぐ…うう…」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン」 キョン「これで止めだ!炎滅・・・」 [『陰陽道・呪縛』] ===ピシィッ=== キョン「ぐあっ!か、体が動かない…何をする古泉!?」 古泉「最初の一撃で既に勝負は付いています。これ以上は無意味でしょう」 キョン「なん、だと・・・?」 早乙女兵庫「・・・・・」ドサッ 山賊「早乙女さん!・・・なぜこの人を殺そうとまでする!?」 キョン「殺すだと・・・?俺はそんなつもりじゃ・・・」 古泉「貴方にしては冷静さを欠いていましたね。最初の一撃で早乙女兵庫は致命傷を負っていました」 みくる「本当に殺しちゃうのかと思いました・・・」 長門「・・・もっと冷静に」 キョン「……」 ハルヒ「アンタ…今必殺技使ったでしょ?確かに大した使い手だったけど、炎滅斬ぐらいの技で十分対抗できた筈よ」 キョン「そ、そうだな。少し可笑しかったみたいだ。は、ははは」 みくる「落ち着いてくださいキョンくん…今、この人の傷治しますから」 キョン「すみません朝比奈さん・・・お願いします」 早乙女兵庫「・・・・」 長門「起きた?」 早乙女兵庫「ここは?」 長門「道中。今日はここで野宿の予定」 早乙女兵庫「俺は一体何を・・・痛っ・・・」 長門「貴方は今まで気絶して眠っていた。傷の外傷の手当てと治療術による手当を行ったのは彼女」 みくる「大丈夫ですかぁ?」 早乙女兵庫「ああ、問題ない。世話をかけてすまなかった」 古泉「まだ行かれない方が良いのでは?傷も完全には直っていないようですし」 早乙女兵庫「そういう訳にもいかないのでな・・・」 『また別の奴から金を脅し取るようなことを繰り返すのか?』 早乙女兵庫「・・・・」 キョン「あんた浪人だな。失業中なんだろう?さっきは悪かった・・・もう少し休んでいけ」 早乙女兵庫「お主は素晴らしい腕を持っている」 キョン「そんなことは無いさ…まだまだ敵わない奴は沢山いる」 早乙女兵庫「謙遜なさるな。俺は大名の出す手配書を読み、色々な物の首を捉えてきた。お主は強い・・・ただ」 キョン「わかってるさ、ただ焦ってるんだ。早く腕を上げないとイケないからな」 早乙女兵庫「なにゆえ?それ程の強さを持ちながら、なにゆえ其れ以上を求める?」 キョン「倒したい奴がいるんだ・・・そいつは、とてつもなく巨大な男だ」 早乙女兵庫「…主は忍者だろう?」 キョン「そうだ」 早乙女兵庫「甲賀者とは違うな・・・もしや・・・伊賀か?」 キョン「なぜそう思う?」 早乙女兵庫「ということは、そうなんだな?」 キョン「う・・」 早乙女兵庫「・・・ふ、巨大な男というのが引っ掛かってな。俺がその言葉を聞いて思い浮かべる男と言えば・・・・織田信長だ」 キョン「!!」 早乙女兵庫「やはりか・・・信長の忍軍は執拗に伊賀を狙っていた。理由は分らんが…主はその残党ってところだろう」 キョン「ああ、その通りさ。殺された仲間の為にも、これから先の未来の為にも、俺はアイツを倒さなきゃいけないんだ」 早乙女兵庫「信長の起用する忍軍は驚異的な強さだと聞く。それこそ一介の下忍や武士では太刀打ち出来ない程の・・・」 キョン「俺は、その影の軍とやらの上忍と戦ったことがある・・・圧倒的すぎる強さだった」 早乙女兵庫「・・・そうか」 キョン「・・・今夜は月が綺麗だな」 早乙女兵庫「・・・ああ」 それから暫く、俺達二人は酒を飲みながら満月をずっと見つめていた 早乙女兵庫「ここから真っ直ぐ進んで行くと平泉と呼ばれる小さな町がある。その横にある洞窟は義経洞窟と呼ばれ、村民は皆誰も近づかない。だが洞窟の一番奥には、義経が生前を共にした名刀が眠っていると言われている…もし腕を磨きたいのなら修行がてら宝探しでもしてみればどうだ?」 早乙女は俺達に深く一礼すると北に向って歩いていった キョン「さて、どうする?その平泉とやらに行ってみるか?」 ハルヒ「いいんじゃないの?何より面白そうだし!!」 古泉「そうですね。義経の使っていた名刀…少しばかり僕も興味があります」 長門「別にいい・・」 みくる「ど、洞窟って暗くないんですかぁ!?怖そうですう・・・」 ハルヒ「ぜんっぜん平気よみくるちゃん!出てくる化け物もおっきなネズミとかおっきなムカデとかそんなんばっかよ!全然問題ないわ!!」 みくる「ふぇえええ?大きなネズミ・・・大きなムカデ・・・・ぶくぶく」 キョン「あ、朝比奈さんが気絶してるぞ!」 ハルヒ「えええ!?もうみくるちゃんしっかりしなさい!!」 長門「・・・・先が少しだけ不安」 古泉「・・・ですね」 涼宮ハルヒの忍劇6
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涼宮ハルヒの軌跡 プロローグ 涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(中編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(中編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 SOS団(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 SOS団(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 エピローグ -----下記のものは別の方がご厚意により作ってくれたものです----- 涼宮ハルヒの軌跡 動画(PC版) ※Divxコーデック必須
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涼宮ハルヒの微笑 プロローグ 涼宮ハルヒの微笑 第一章 涼宮ハルヒの微笑 第二章 涼宮ハルヒの微笑 第三章 涼宮ハルヒの微笑 第四章 涼宮ハルヒの微笑 第五章 涼宮ハルヒの微笑 第六章 涼宮ハルヒの微笑 第七章 涼宮ハルヒの微笑 エピローグ 涼宮ハルヒの微笑 イメージ映像 →YouTube版
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夜にハルヒと会話しSOS会話を発生させさえすれば、失敗しても、次へいける。
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「なんじゃ貴様はー!」 ブサイク男の闖入は、江田島の怒りにいっそう火をつけた。ちゃんと入り口があ るのにわざわざ窓から入ってくるなど、普通の客はまずやらない。 「貴様は客かー!」 絶対に違うと思うが、江田島は一応聞いてみた。 「押忍! 自分の名前は田沢であります!」 ぜんぜん質問の答えになっていない。江田島は田沢を客ではないと決めた。 「客じゃないのでさよーならー!」 「ゴバルスキー!」 田沢は江田島の張り手で、入り口のドアから外へぶっ飛んでいった。その田沢と 入れ違いに、別の男が入ってきた。 「塾長ー! 松尾でありますー!」 やはり汚い学ランを着て、クリームパンを3つ頭にくっつけたような髪型をして いる。とてもカッコ悪い。しかしこいつはちゃんと入り口から入ってきた。客かも しれない。 「貴様は客かー!」 「押忍! 自分は男塾の塾生であります!」 「いちばん奥の席にどーぞー!」 江田島は松尾の襟首をつかんでぶん投げた。松尾は店の奥まで飛んでいって、そ のまた奥の窓から外に落ちた。男塾という塾など、江田島は聞いたこともない。し かもそこの塾生だからなんだと言うのか。江田島にはさっぱり訳が分からない。 「塾長ー! ここが男塾ですかー!」 また別の学ランが出現した。江田島のイライラは募るばかりだ。 「うがー! 男塾ってなんじゃー!」 「塾長ー!」 「塾長ー!」 「塾長ー!」 「塾長ー! ズゴゴゴゴー!」 入り口から、窓から、天井から、次々と学ラン姿の男が沸いて出た。最後のズゴ ゴゴゴーは店の床を突き破って生えてきたのだが、あまりに頭が大きすぎて顔の上 半分しか見えない。田沢と松尾も戻ってきた。 「ふーん。これで全員?」 江田島はソファに横になって、コップ酒を呑みながら聞いた。意味不明の度が過 ぎて、かえって落ち着いてしまった。 「押忍! 全員であります!」 田沢が答えた。どうやら田沢がこの集団の代表らしい。 「あっそ。ところでワシ店長なんだけど、なんで塾長って言うの? あと男塾って なに?」 「押忍! あちょー!」 いっぺんに2つの質問をしたので、田沢の脳みその限界を超えた。替わりに床の デカい男が答えた。 「真の男を養成する男塾というのを作って、アンタがそこの塾長になる。オレ達は 塾生としてアンタについていく。そういう誓いを交わしたハズだが覚えてないか」 「あーん?」 まったく全然覚えていない。江田島はイカの燻製をかみちぎりながら、これまで の記憶をたどってみた。宇宙。地球。恐竜。北京原人。人間。江田島オギャア。ガ ハハハ。初恋。筋トレ。東大。戦争。野グソ。ノースウエスト。野グソ。。アカギ。 セワシカレーおいちいおいちい。 「塾長! そこであります!」 田沢は江田島のおでこを指さした。「。。」という文字が浮かんでいる。そうい えば野グソとアカギの間に「。」が2つあった。 「ほほー。ここか」 江田島はおでこをさすりながら、対局を見物していたギャラリーの一人を呼んだ。 「そこのお前、こっちゃこい」 「ボクすかー」 胸に7粒のトウモロコシをつけた男が歩いてきた。ケンシロウといって、普段は 居酒屋の店員をやっている。諸般の事情でゾンビになった。 「写せ」 「ほわたー!」 ケンシロウは右手の人差し指と中指を、江田島のおでこの「。」と「。」の間に 突っ込んだ。そして壁の方を向いて、両目のプロジェクターで江田島の記憶を再生 した。ゾンビなのでこういう事ができる。 「ガハハハハー!」 江田島が日本酒の瓶を持って笑っている。どこかのキャバレーらしい。江田島の 記憶なのに江田島が写っているのは、自分が大好きだからだ。 「お前ら全員ワシの家来じゃー!」 「江田島先生、バンザーイ!」 田沢や松尾ら、学ラン軍団もいる。江田島と一緒になって、浴びるように酒を呑 んで大騒ぎしている。頭のデカい大男も、やっぱり顔の上半分だけだして鼻から酒 を呑んでいる。 「ワシ、塾つくる! お前らみたいなバカをいっぱい集めて、戦争ゴッコとか殺し 合いとかして男の中の男にしてやる! 名づけて男塾じゃ!」 「男塾バンザーイ!」 「江田島塾長バンザーイ!」 みんなで輪になってバンザイをしているところに店長がやってきて、江田島に伝 票を渡した。江田島は伝票を見て、黙ってテーブルの上に置いた。 「まずはこのクソ店を血祭りじゃー!」 「イエス塾長ー!」 そこで映像は終わった。江田島はすべてを思い出した。 「おー。あの時の貴様らか」 「そうであります塾長!」 田沢は嬉しそうに言った。そしてアカギをギロリと睨みながら続けた。 「だからそこのクソガキがどんなに汚い麻雀を打とうと、塾長には負けてほしくな いんであります! 塾長が負けたら、自分は死ぬまで童貞を貫く覚悟であります!」 「そこなんだが、一つ確認したいことがある」 田沢の童貞は顔を見れば分かる。そうではなくて、さっきの映像の事だった。 「巻き戻せ」 「はいっすー」 ケンシロウは江田島のおでこに刺した指をグリグリした。江田島たちがバンザイ をしたところまで巻き戻った。 「アップにせい」 画面の端っこに写っていた男を真ん中に持ってきて拡大した。アカギだった。江 田島の後ろの席に座っている。 「再生せい」 「せいせいせいっす」 江田島がバンザイをした時に、江田島のゲンコツがアカギの後頭部に当たった。 弾みでアカギのビールがこぼれてズボンが濡れた。アカギは無表情で江田島を見て いる。ずっとずっと見ている。江田島はここで映像を止めた。 「アカギくん。聞きたいことがある」 「ククク……」 聞いた江田島は落ち着き払っている。聞かれたアカギも笑っている。 「アカギくんがワシを目の仇にするのは、この時の恨みか?」 「ククク……」 「はいならククク、いいえならチンピョロスポーンと答えなさい」 「ククク……」 「器が小さーい!」 江田島の怒りに再び火がついた。ソファから飛び上がって、一人クルクルチェン ジで雀卓に舞い戻った。 「あの場でワシに文句を言えばすむことを、その時はなーんも言えずに今になって みじめったらしく仕返しか! 貴様のようなヤツは男塾には絶対入れてやらん!」 「誘われたって入らん」 「開き直るなー!」 「あの場で文句を言ったら、お前は素直に謝ったか」 「言い訳するなー!」 アカギの戯言など、煮えたぎる江田島の耳には一切入らない。江田島はアカギの 顔よりも大きく口をひらいて叫んだ。 「貴様の腐った性根を叩き直してやるわい! そう!」 後ろの学ラン軍団を一度見て、またアカギに向き直った。 「男塾全員の力で!」 自分一人では闘わないらしい。東一局三本場、親はアカギ。7巡目、江田島ツモ。 「ツモ切りじゃー!」 「ロン」 八八八(11888)456888 アカギのロンだった。 「クルクルチェーンジ!」 江田島と田沢と松尾が飛んだ。つられて飛んだのはのび太とドラえもんとギャラ リーのKだった。 「うへー!」 Kとはキアヌ・リーブスの略である。ノースウエストにはのび太の知り合いが全 員集まっているので、当然キアヌもそこにいた。Kは松尾と入れ替わって、学ラン の群れの中に着地した。 「グッバイ!」 Kは学ランにバットで打たれて星くずになった。東一局四本場、親はまだアカギ。 「ロン」 四五六七八九22 (9999)←暗カン 東東東東←暗カン アカギ、江田島からロン。ドラは東と九筒だった。 「クルクルチェーンジ!」 江田島と田沢と松尾、そして変なマジシャンみたいな男が飛んだ。のび太とドラ えもんとのび太のパパとママが飛んだ。アカギがピクリと体を震わせた。 「三人で仲良く暮らそうー!」 パパとママも学ランに放り出されて空に消えた。パパは古びたダッチワイフを抱 えていた。このダッチワイフも三人の中に入っているらしい。 「ワシは負けんぞー!」 江田島はアカギに振り込み続けた。しかしそのたびにクルクルチェンジで危機を 脱した。点棒は他の卓から持ってきたので全然減っていない。アカギの額から一筋 の汗がしたたり落ちた。 東一局十五本場、親はずっとアカギ。ギャラリーは誰も残っておらず、卓の四人 と学ラン軍団だけになっていた。 「ロン……」 アカギ、江田島からロン。 一一 九九九九←暗カン (9999)←暗カン 1111←暗カン 9999←暗カン 「貴様ら、根性入れろー!」 「うおー!」 「スーパークルクルチェーンジ!」 江田島と学ラン軍団全員が飛んだ。のび太もドラえもんも、アカギも飛んだ! 「クククー!」 こらえにこらえていたクルクルチェンジだが、ついにつられた。アカギは着地し て、倒れそうになるのをかろうじてふんばって言った。 「順位を……教えろ……」 「そんなもんは死ぬほどどうでもいいわー!」 江田島は店の雀卓すべてを窓から投げ捨てて、すぐ後に大量の手榴弾を落とした。 こちらを振り向いた江田島の背後ですさまじい量の爆音と光があふれて、江田島の 姿は光に溶け込んで見えなくなった。勝負の女神が、江田島を選んだ瞬間だった。 「ククク……」 アカギはゆっくりと倒れた。のび太とドラえもんはなんかもうバカらしくなって 家に帰った。 「勝ったー!」 「塾長が勝ったー!」 学ラン軍団の勝利の凱歌と共に夜が明けた。江田島は紋付の羽織を脱いでアカギ にかけてやって、そして学ラン軍団に言った。 「ノースウエストは店じまいじゃ。今日からワシは、男塾の塾長になる!」 「おー!」 「ワシが男塾塾長、江田島平八であーる!」 「江田島塾長、バンザーイ!」 「いくぞ貴様ら! 邪鬼もいいか!」 「押忍」 ここまでクルクルチェンジに参加しなかった、頭のデカい大男が答えた。 「ファイナルクルクルチェーンジ!」 江田島塾長と男塾塾生は一斉に大空へ飛び立った。邪鬼もクルクルチェンジに参 加したので、ノースウエストのビルは床も壁もすべてが砕けて崩壊した。江田島た ちの行く手には空がある。太陽がある。果てなき大地がある。そして、汲めども尽 きぬ男たちの夢とロマンがある。
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キョン「なあハルヒ、お前将来の事とかちゃんと考えてるのか?」 ハルヒ「なによいきなり、あんたらしくない」 キョン「少しは現実的に考えろよ、元気なのはよろしいがそれだけじゃ生きていけんぞ」 ハルヒ「あたしはね、現実的とか普 キョン「そんな事を言ってられるのは中学生までだ」 ハルヒ「そ…それは…そうだ、古泉くんはどうなのよ」 古泉「僕も涼宮さんにはちょっと付き合いきれませんね、非常に残念ですが…」 キョン「ということだ、朝比奈さんも長門もここに来る事はないだろう」 ハルヒ「えっ…ちょっとどういうことなの!?説明しなさい!」 キョン「じゃあな、後は1人で頑張ってくれ」 古泉「それでは失礼します」 ハルヒ「待ちなさい!これは団長命令 バタン! ハルヒ「………なによみんなして…うぐっ…悔しい…」 ハルヒ「キョン大好きっ!うりうり~♪」 キョン「ハルにゃんもかわいい~♪」 古泉・みくる・長門「…」 そして… 古泉「皆さん、同盟を組みましょう、このままでは危険です」 みくる「ああ、いいぜ、だが恨みっこはなしだぜ」 長門「わかった…」 翌日 ハルヒ「みくるちゃ…熱っ!!」 みくる「ひゃ!お茶こぼしちゃいました~☆てれりこてれりこ(爆)」 古泉「あっと!すみません、足が引っかかりました」 ハルヒ「もう…なんなの…」 長門「…」バンッ! ハルヒ「痛…もういい、帰る!」 古泉・みくる・長門(…成功) キョン「あれ?ハルヒはいないのか?」 古泉「さっき帰りましたよ…それよりたまには僕と遊びませんか?」 キョン「そうだな…たまにはオセロでもやるか」 キョン「実は俺も昨日夢見たんだ」 ハルヒ「??どんな夢よ」 キョン「俺が見た夢はな、学校の敷居内にお前と二人で閉じ込められてな・・・最後にキスする夢だよ」 ハルヒ「それ!私も見た!!さっき言ったけど・・・実は悪夢じゃないんだ」 キョン「いや悪夢だろお前とキスする夢なんて、お前もう俺の夢に出てくんなよ気持ち悪いから」 ハルヒ「・・・・・・」 キョン「おいハルヒ、窓から飛び降りてくれ」 ハルヒ「は?何言ってんの?」 みくる「と、飛び降りた方がいいとおもいまぁ~しゅ☆」 長門「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる」 古泉「そうですね、僕も賛成します」 ハルヒ「ちょっと…みんなどうしたの?」 一同「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮…」 ハルヒ「ねえ、悪い冗談はやめてよ」 キョン「うるさい、飛べ!飛び降りろ!」 みくる「今すぐ飛び降りてくださ~い!!」 ハルヒ「ほ…本気なの?」 古泉「言っても無駄なようなので僕が突き落とします」 キョン「よし、俺も手伝うぞ」 ハルヒ「ちょ…やめて!本当に落ちちゃう!あ…危ない!ねえ!」 キョン「3、2、1…それっ!」 ハルヒ「あっ……… ドサッ 突然飛び降りた事になっていたハルヒが完治して学校に来ている あのことは忘れたのか久しぶりに部室にやってきた ハルヒ「やっほー!涼宮ハルヒ復活!!」 「…」 ハルヒ「団長が復活したのよ?もっと喜びなさい!」 キョン「ああ喜んでるよ…またおまえを痛めつけられるんだからな…」 キョン「なあみんな、嬉しいよな!?」 みくる「はい、また涼宮さんをいじめられるなんて…すごく嬉しいです!」 ハルヒ「え…?」 古泉「まだわからないんですか?」 古泉はハルヒの腹を殴った ハルヒ「ごはっ…げほ…」 古泉「おっと、声を出されては困りますね、口を塞がなくては」 ハルヒ「ん…んん!」 みくる「怖いんですか~♪それぇ!」 朝比奈さんはハルヒの首を絞めている ここでついにハルヒはあの時のことを思い出してしまったようだ そしてハルヒは失禁したのだ そこで俺達は手を止めた キョン「さてどうする?」 古泉「…そうですね、目を離していた時机に後頭部を強打…という事にしましょう」 キョン「それはいいな、じゃあ早速…」 そしてハルヒが気絶したと職員室に駆け込み、ハルヒは救急車で運ばれていった 翌日ハルヒは学校に来なかった またしばらく入院することになったか不登校なのか… しかし俺達は奴を引きづり出していじめるつもりだ ハルヒ「私ついていくよ~ど キョン「ついてくんな」 ハルヒ「目を見てこr キョン「見たくねーよ」 ハルヒ「私覚悟~しt キョン「キモイからさっさと消えろ」 ハルヒ「… …Gyao」 キョン「キメェwwwwwwww」 ハルヒ「私のプリン食べた?」 キョン「知らん」 ハルヒ「私のこんにゃくゼリー食べた?」 キョン「うざい」 ハルヒ「私のフルーチェ食べ」 キョン「死ね」 ハルヒ「・・・」 キョン「あ、朝比奈さ~んちょっとお茶行きませんか~?そうそう古泉と長門も誘って! ハルヒ?さぁあいつは今日は見てませんねそれはそうと行きましょうよさぁさぁ」 ハルヒ「あぁ・・・くやしい・・・・くやしいのに・・・(ビクンビクン」 岡部「時間がないから自己紹介は名前だけなー」 ハルヒ「涼宮ハルヒ ただの人間にはky」 岡部「はい次ー。」 キョン「なあハルヒ」 ハルヒ「何よ?」 キョン「おまえのポニーテール、やっぱ全然似合ってないな」 ハルヒ「!………ふぇえんっ、キョンなんて嫌い!大っキライ!!」 「おいハルヒ、目のした蚊に食われてるぞ」 「そうなのよ、痒くて痒くて堪んないのよ」 「ちょっと待ってろ、今薬塗ってやるから」 「ほら、目閉じろ・・・」 「へっ、変なことしないでよね/////」 「ほらっ、動くなよ」 「うん・・・・・」 「はい、塗りおわったぞ・・・・」 「ありがとう、キョ・・・・・・・目がっ!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「涼宮さんどうしたんですかぁ?。めがっさめがっさなんていっちゃってwキョンくんに薬塗ってもらえるなんて、羨ましいですぅ」 「・・・・・・・何塗ったの?」 「タイガーバーム」 ハルヒ「な……なんなのよぉ……!? なんでみんなそんなこと……わわ私、違うわよぉ……!!」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ガチャ みくる「あ、もうみんな来て……な、なにしてるんですか?」 バッ キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「……や……ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「……!?」 みくる「なな、なんなんですか……? やややや、ヤリマンってなんですかぁ……?」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「そ、それにさっきはみんな涼宮さんに言ってたじゃないですか……!!」 ハッ!! キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ちょちょっと!! なんで私のほうに……!? ちょっとみくるちゃん!!」 みくる「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ハッ!?」 ハルヒ「キョン!」 キョン「ん?どうしたハルヒ?」 ハルヒ「一度しか言わないからよく聞いてなさいよ。……キョンあたしと付き合いなさい! (やったわ!とうとう言ってやったわ////)」 キョン「はあ?何言ってんだお前は?」 ハルヒ「だ、だからあんたのことが好きだって言ってんのよ! (もうバカキョン!察しなさいよ////)] キョン「そういう意味でなくてだな。どうして俺がお前なんかと付き合わねばいかんのだ」 ハルヒ「え?」 キョン「大体だな俺はもう長門と付き合ってるんだ。お前と付きあえるわけが無いだろ」 ハルヒ「う…嘘」 長門「本当」 ハルヒ「有希!」 長門「彼と私は随分昔から恋人関係気づかなかったのはあなただけ」 ハルヒ「そ、そんな…」 長門「鈍すぎる。憐れ」 ハルヒ「有希!あんた…」 古泉「実は僕たちも付き合ってるんですよ」 ハルヒ「!?」 みくる「あのー涼宮さん本当に気づいてなかったんですか?」 キョン「気づいてたら毎日毎日俺たちを部室に集めるだなんて無粋なこと出来やしませんよ」 みくる「それもそうですね。でも、よかったです」 ハルヒ「な、何がよかったの?」 みくる「だってこれからは涼宮さんに気兼ねなく遊びに行けるじゃないですか」 ハルヒ「え…?」 古泉「そうですね。いや~よかった。まさか涼宮さんそれでも僕たちの邪魔をするだなんて言いませんよね?」 ハルヒ「え?あの、その、もちろんよ…」 長門「よかった。これからはいつでもあなたに甘えられる」 キョン「おいおい、長門。俺はいつだってよかったんだぜ」 古泉「さあ、自由になったことだしダブルデートといきませんか?実は知り合いがオープンしたばかりのレストランのディナー券が4枚あるんですよ」 キョン「お、ナイスだ古泉!長門、いや有希もそれでいいか!」 長門「(コクリ)」 みくる「わぁ~楽しみですぅ~」 古泉「では行きましょうか。あ、涼宮さんはお気になさらずにSOS団の活動に励んでください」 キョン「じゃあなハルヒ。お前もいつまでも馬鹿やってないで恋人でも見つけるんだな」 ハルヒ「待ってキョ バタン! ハルヒ「一体何なんだってのよ、もう………。グスン、また一人になっちゃった…」 長門「あなたには羞恥心が足りない…」 ハルヒ「…」 長門「聞いてるの…」 ハルヒ「申し訳ありません…善処します…」 長門「早朝、この部室でしている自慰行為の声も大き過ぎる」 ハルヒ「…今後注意します…」 長門「何より彼に対する好意が露骨…過剰…目障り…」バキ! ハルヒ「…」 長門「…この状態が続くようなら薬の投与を増やさなければならない…」 ハルヒ「…」 みくる「でもでも長門さん、これ以上増やしちゃうと致死量越えちゃいますよぉ?」 長門「構わない」 ハルヒ「…」 みくる「え~?でもお~このブス死んだら私達とキョン君との接点、無くなっちゃいません?」 長門「問題ない…彼は私の虜…もうこの女は用済み…」 ハルヒ「…」 長門「…ふひっ!ころす…ころス…殺す…死ね!死ね!死ね!」 ハルヒ「なんか甘いもの食べたいわね・・・・・・・・・!!!キョン!!ゼリー買ってきなさい!」 キョン「わかった、行ってくる」 ハルヒ「何よ、妙に聞き分けがいいじゃない」 キョン「・・・・・・」 キョン「ほら、買ってきたぞ」 「朝比奈さんには杏仁豆腐。長門、おまえにはムース。あと古泉、バナナプリンで我慢してくれ」 「あと、ハルヒは一口ゼリーだ」 ハルヒ「なかなか気が利くじゃない、そっれじゃあいっただっきまーす!」 ハルヒ「いっただっきまーす!」 パクッ ムシャムシャムシャ ハルヒ「蜂蜜の味かしら?なかなか美味しいわ」 「これなんて名前なの?」 キョン「カブト虫の餌」 ハルヒ「ねえキョン・・・・・夢のなかでしてくれたこと覚えてる?」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「ほら、ポニーテール好きだって言ってキ、キスしてくれたじゃない///」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「あっ、映画撮ったときさ、みくるちゃんが【キョン】「記憶にございません」 ハルヒ「じゃ、じゃあs【キョン】「記憶にございません」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|^ ヮ^ノリ キョンキョ~ン ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「なんだ…用なら後にしてくれないか」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|#゚Д゚ノリ キョンってば!聞きなさいよ!! ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「………」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|゚ ー゚ノリ キョン……ねぇ… ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「…もういい、出て行く」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l| T-Tリ キョン…うぅ… ヾ ノ ハ京ハ くOUUつ 「この中に、宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい。以上」 「…涼宮」 「何よ」 「鏡を見てみろ、宇宙人が映ってるぞ」 ハルヒ「みくるちゃん、お茶!」 みくる「はぁ~い、ただいま」 キョン「おいハルヒ…上級生に頼むならもう少し丁寧な物言いをしたらどうだ。すみません、朝比奈さん」 ハルヒ「あたしは団長だから一番偉いの。学年なんて関係ないわ」 みくる「お待たせしました、どうぞ…キョン君はこっち、涼宮さんはこっちです」 キョン「ありがとうございます。美味しいですよ」 ハルヒ「なにこれ、あたしのは水じゃないの?!」 キョン「えぇ?」 みくる「ふふ、生意気な下級生はカルキ臭い水道水でも飲んでろですぅ」
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山にこもって半年が過ぎた。なにも考える必要のない生活というのは大層ヒマでつまらないものだったけど、それにももう慣れたし、これはこれでいいものだと思えるようになってきた。 今日も朝起きて歯を磨き、朝食を食べて山に入り、チェーンソーに混合ガソリンをさして仕事に取り掛かった。 いつも通りの、平穏で静かな時間がながれる。 杉にチェーンソーの刃を食い込ませてしまい抜こうと躍起になっていると、遠くから人の藪をかきわける足音が聞こえてきた。隣の炭焼きの谷口さんだろうか。今日こっちへ来るって言ってたから、たぶん間違いないだろう。 あの人は年季がはいってるから、上手に刃を抜いてくれるかもしれない。 ハルヒ「谷口さん」 キョン「ハルヒ、こんなところにいたのかよ。探したぜ」 ハルヒ「キョン!? あなた、なんでここに?」 キョン「お前を連れ戻しにきたに決まってるだろ」 ハルヒ「……なんでよ。放っておいてよ」 キョン「2年前、お前がどうして蒸発したのか、その理由がわからない。会って1年ちょいの付き合いだったけどさ、事情くらい教えてくれてもいいんじゃないのか? それが知りたくて、追ってきたんだ」 ハルヒ「ば、ばかじゃないの? それだけのためにこんな山奥まできたって言うの?」 キョン「そうだ。俺はバカだからさ。どうしても諦められないんだ」 ハルヒ「もう放っておいてよ! 私が出てった理由なんてどうでもいいじゃない」 キョン「どうでもよくない。それに、理由を知りたいのは俺だけじゃない。みんなそうだ。古泉も朝比奈さんも長門も、この2年間どんな思いでお前を探してきたか分かってるのか?」 ハルヒ「知らないわよ! そんな勝手な、あんた達の理屈を私におしつけないでよ!」 キョン「放ったらかしかよ!? 俺たちのこと。俺のこと。俺はな、お前がいなくなってからようやく悟ったよ。俺、お前の言うとおり馬鹿だからさ。気づかなかったんだ。ただ漠然と感じてはいたんだけど、俺」 キョン「俺、お前のこと、好きなんだ」 私はまた逃げ出した。アイドリングするチェーンソーをその場に残し、山道を駆け上っていった。 好き? キョンが、私のことを? そんなことあるはずない。 ハルヒ「いい加減なこと言わないでよ! あんたが好きなのはみくるちゃんなんでしょ? 適当なこと言って私を騙そうったってそうはいかないわよ。もう騙されないんだから。私は」 キョン「騙してなんかいない! 確かに朝比奈さんのことは好きだけど、それはなんていうか、恋愛感情というよりも憧れというか、父性本能というか……よく分からんが、純然たる恋愛感情でないことだけは確かだ! 誓っていい!」 ハルヒ「………」 キョン「なあ、分かってくれよ」 ハルヒ「本当に、私のことが好きなの? 嘘じゃないの?」 キョン「ああ。嘘じゃない。もし嘘だったら、お前の商売道具で切り刻まれたっていい。本当だ」 ハルヒ「そう……なんだ」 ハルヒ「……本当いうとね、私も好きだったのよ。あんたのこと」 キョン「………ハルヒ…」 ハルヒ「でもね、見ちゃったのよ。あの日。2年前のいつだったか。校舎裏でたまたま、あんたとみくるちゃんが抱き合ってたの」 キョン「あれは……その、違うんだ。朝比奈さんが元の時代に帰るからってお別れに……いや、なんでもない。ともかく、あれは違うんだ。恋愛感情からの行動じゃない」 ハルヒ「ほんと?」 キョン「本当だ。俺が好きなのは、お前だけだ」 ハルヒ「嬉しいわ。あはは。私たち、実は両思いだったんだ…」 キョン「ハルヒ。……積もる話もいろいろあるだろうしさ。とりあえず帰ろうぜ。こんな山の中じゃ、ゆっくり話をする喫茶店もないしさ」 ハルヒ「……でも、ダメよ。帰って。もう二度と私の前に姿を現さないで。あなたが本当に私のことを愛してるんだったら」 キョン「何故だ!? お前は俺が朝比奈さんと抱き合ってるのを見て勘違いして、あ、いや、あれは俺が悪いんだが、とにかく誤解は解けたんだ。もう厭世する理由もないだろ?」 ハルヒ「……重いのよ。私には。2年前の私なら十分あなたの気持ちに応えられただろうけど、今の私には、そういう感情は重荷にしかならないの。苦しいのよ」 キョン「ハルヒ……」 山の中を逃げ回る私。それを追ってくるキョン。変な状況よね。心底そう思うわ。これがお花畑か麦畑ならロマンチックだったんだろうけど。 私はもう誰の期待にも応えたくない。辛いから。 追ってこないでよ。そうやって私に気をもたせて。どれだけ私が苦しんでるか分かってるの? あなたの期待に応えたいという自分と、あなたにもしも裏切られたらと無意識的に思ってしまう私の、狂おしいほどの葛藤がどれだけ辛いことか。 こんな苦しくて、胸が張り裂けそうなほどに悲しい思いをするくらいなら、いっそ…… ハルヒ「来ないで!」 キョン「待て、どうするつもりだ!?」 ハルヒ「どうするって、どうするかなんて見れば分かるでしょ。それ以上近づいたら、私はここから飛び降りるわ」 ああ、私ったら。まだこんなに。こんなに苦しむほど、 この人のことが好きだったんだな。 キョン「どうしろって言うんだよ!? もう、俺はお前と離れ離れになるなんてイヤだぜ」 ハルヒ「近くにいるよりも、互いに離れたまま良い思い出として胸にしまっておいた方がいいことも、あると思わない?」 キョン「お前にとっては迷惑でうっとうしい俺のわがままかしれないが、俺はそうは思わないな。勝手な言い草だとは分かっているが、今は言わせてくれ。俺、お前と一緒でないとつまらないんだ! この世のすべてが!」 そうか。 なんだ。どうして今まで気づかなかったんだろう。バカは私だ。 私と同じで、この人も苦しんでたんだ。私とは、まったく正反対の理由で。 もっと早く、気づいてあげたかったな。そうすれば、この人も私も、今頃は…… ハルヒ「ありがとう。キョン。泣けるほどうれしいよ」 キョン「ハルヒ……。俺も、お前の気持ちを考えずにここまで追いかけちまって、悪かった」 ハルヒ「いいよ。別に」 ハルヒ「そういえば昔は、SOS団やってた頃はさ、よくあんたに無理難題ふっかけてたわよね。私」 キョン「まあな。何で俺が、っていつも思ってたけど、今思えば楽しい毎日だったよ」 ハルヒ「無理難題のなつかしい思い出ついでに、最後にひとつ、わがまま言ってもいい?」 キョン「いいぜ。この際だ。最後にひとつと言わず、これからもずっと聞き続けてやるよ」 ハルヒ「ううん。ひとつでいいよ」 ハルヒ「ごめん。私のことは、忘れて。さようなら」 それだけ言って、私は崖の上から跳んだ。 風が耳元でうなり声をあげている。宙で体がのけぞった時に一瞬、キョンが何か叫んでいるのが目に入った。 なにも聞こえなかったけどね。でも、よかった。きこえなくて。 小学生時代から平凡な人生に辟易してきた私は、ずっと不思議でおもしろくて、楽しいことを探してきた。とうとう見つけられなかったけどね。 けど、なんか今、ちょっと楽しいな。浮遊感ってなんか不思議な感じ。 風にさらされて、私の体が半回転した。その時、私の耳に耳障りな風の音以外の声が聞こえた。 キョン「ハルヒッ!!」 ハルヒ「キョン!? 私を追って…? どうして、あんた……!」 キョン「気づいてやれなくて、すまなかった! 一言だけ、俺も言わせてもらおうと思って追ってきた!」 キョン「お前、さびしかったんだな」 伸ばした手を、キョンがつかんだ。 キョン「聞こえたか? 聞こえなかったかもしれないから、もう一回言うぜ。最後まで気づいてやれなくて、ごめん。やっぱお前の言うとおりだったわ。馬鹿だな、俺」 ハルヒ「死んじゃうわよ、あんた! なんで飛び降りたのよ! 飛び降りてまで言うセリフじゃないでしょ!?」 キョン「舌かみそうだぜ……。なんでって、そういう気分だったからさ。お前を放っといて、のうのうと帰れるかよ。お前の尻拭いをするのは、雑用係の俺の役目だろ? いつだって」 ハルヒ「キョン……」 キョンが私の肩を強く抱いた。 暖かい。 いやだ。絶対に。 この人を死なせたくない! 神様! 本当に神様がいるんだったら信じてもいい、お賽銭だっていくらでもあげるわ! だからこの人を助けてあげて! お願い! 一瞬なにが起こったのかわからなかった。木の葉のように錐揉みする私とキョンの体が突然、手を離した風船のように宙に浮き上がった。 ジェットコースターで急降下する時、体が風で上に持ち上げられるでしょ。あんな感じ。 キョン「上昇気流か!?」 ハルヒ「じょうしょう……きりゅう?」 呆然とする頭では理解できなかったけれど、下から猛烈な勢いで押し上げてくる空気の塊に流され、私とキョンはその上昇気流に空高く持ち上げられた。 もうどこが上でどの方向が下なのかも分からないくらい、私たちは風にもまれて奔流していた。 そして気づくと、2人して元いた崖の渕に転がっていた。 キョン「……くそ、痛ぇな。アザになってるぜ。助けてくれるんなら、もうちょっとソフトにお願いするよ、神様」 ハルヒ「………私たち……たすかったの?」 キョン「ああ、そうらしい。ここがあの世じゃなければな。まあ、お前と一緒なら俺はこの世でもあの世でも、どこでもいいけどな」 ハルヒ「そっか……」 頭の中が真っ白になって何も考えられなかった。キョンの言っている言葉も理解できていなかった。 でも、ただ一つだけ強く感じられたことがある。 空中でキョンに抱かれた時。あったかかったな。 ハルヒ「人間ってさ。死ぬ瞬間に、今までの人生を走馬灯のように見るっていうでしょ。あんた、見えた?」 キョン「ああ。見えたさ。はっきりな」 ハルヒ「どんなの?」 キョン「朝比奈さんがお茶ついでくれて、長門が本読んでて、古泉がトランプで一人負けしてる走馬灯」 ハルヒ「ふうん」 ハルヒ「ねえ」 キョン「ん?」 ハルヒ「帰ろうか」 古泉「それで帰ってきたんですか。いやはや。一大スペクタクルでしたね」 キョン「ああ。是非お前にも体験していただきたい貴重な出来事だったな。一度どうだ? 人生かわるぜ」 古泉「遠慮しておきましょう。僕は今の人生に満足している方なので。無理して変えようとは思いませんね」 キョン「残念だな。お前にもあの走馬灯を見てもらいたかったんだが」 古泉「昔の映像は自主制作映画だけで十分ですよ。それより、涼宮さんは?」 キョン「店にいる」 ハルヒ「いらっしゃいませ……なんだ、あんたか。よそ行きの声だして損したわ」 キョン「減るもんじゃないだろ」 長門「………いらっしゃい。水」 ハルヒ「で、どうしたの? まだ仕事終わるまで時間あるわよ。まさかカレー1杯で1時間もねばる気?」 キョン「いいじゃないか。1時間くらい。その間、デートコースを考えてるよ」 ハルヒ「分かったわよ。待ってなさい。あんたのために私がインド仕込みのスペシャルメニューを用意してきてあげるから」 キョン「それは楽しみだな。甘めに頼むよ」 ハルヒ「なに言ってるの。カレーは辛くてナンボよ。いい感じに辛くしてあげるから。覚悟しておきなさい!」 キョン「やれやれ……。って、このセリフ言うのも久しぶりだな」 ハルヒ「残さず食べなさいよ。残したら、死刑だから!」 ~完~
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『涼宮ハルヒのあの日』 朝からなんとなくいつものハルヒのパワーが感じられない。触らぬ神に祟りなし、急がば回れ、こんな日はとりあえずそっとしておくに限る。そんなわけで、掃除当番のハルヒには一声だけかけて、俺は先に部室に向かった。 ぽかぽかと暖かい小春日和、俺は朝比奈さんのお茶をありがたく頂きながら、いつもの場所でいつものように読書にふける長門の姿をなんとはなく見つめていた。やわらかい日差しの縁側で、息子の嫁が淹れてくれたお茶をすすりながら、読書中の孫娘の姿を、思わず目を細めて見つめる爺さんにでもなった気分だ。 そんな、のほほんとした気分に水を差すのは我らの団長様だ。 「うぃーす……」 と、ドアを開けて部室にやって来たが、やはり声に張りが無い。 よっこらせ、という感じで団長席についたハルヒに気づいた朝比奈さんが声をかけた。 「あれ、どうしたんですか、涼宮さん?」 「うーん、みくるちゃん、とりあえずお茶ちょうだい」 「はいはい」 お茶の用意を始めた朝比奈さんに向かって、ハルヒは続けた。 「朝からお腹が痛いのよ、きついわぁ……生理痛」 「ほえっ!?」 朝比奈さんはびっくりして目を白黒させて振り返るし、俺は思わず飲みかけたお茶を吹き出すところだった。あの長門でさえ本から顔を上げて瞳をくりくりさせているようだ。 「なんか、今度はひどいのよ、痛くて、痛くて」 と、ハルヒは右手でお腹をさすりながら、 「もうね、子宮取り出して、ごしごし手洗いして天日で干してね、で、元に戻せたら、どんだけ気持ちいいだろうなーってね……」 力なく微笑むハルヒ。 「干すなら天日でなく陰干しの方がいい」 そうだな、長門、確かに天日だと縮みそうだ、って、なんなんだ、その妙に生々しい会話は。 そんな話は女同士の時だけにしてくれよ。同級生の男子の前でするもんじゃない。朝比奈さんだって困っていらっしゃるじゃないか。 「ハルヒ、お前俺がここにいること気にしてないだろ」 「何言ってんのよ、こっちは、それどころじゃないのよ、お腹痛くて」 長門は、既にわれ関せず、とばかりに元の読書体勢に戻っていた。 「みくるちゃんは、生理痛ひどいことはないの?」 「あ、あ、いや、あの、私は……」 朝比奈さんは真っ赤になって俯いている。そりゃそうだ、これが普通の乙女の反応だ。 「キョン、あんた何とかしなさい」 「俺に何とかできるわけないだろ」 「もう、肝心な時に役に立たないんだから」 「……何とかする方法はある」 長門は本に目を落としたまま淡々と言葉を続けた。 「痛みの元となる生理をなくすには妊娠すればよい」 瞬間、部屋中の空気が固まった。長門、いま何と? 一呼吸おいて、ハルヒが空気を動かし始めた。 「ははは、それはいい考えだわ、さすがね有希!」 ハルヒは視線を長門から俺に向けると、ズバッと言い放った。 「キョン、あんた私を妊娠させなさい!」 うわっと、手にしていた湯飲みを落としてしまったではないか。 「ハ、ハルヒ、お前、な、何をいいだす……」 「なに、あたふたしてんのよ、ほら、みくるちゃん、ふきんふきん!」 ええい、机の上がお茶だらけではないか。きゃぁ大変! と声を上げながら朝比奈さんが、ふきんを持って俺の隣に飛び込んできた。 「じょーだんよ、冗談。まぁ、確かに妊娠したら生理はこないけど、あたしは、まだ、あんたの子供を身ごもるつもりはないわよ」 黄色のカチューシャを揺らしながら、ハルヒは、俺と朝比奈さんが机の上のお茶をふき取っている姿を満足げに眺めている。お前も手伝え。 「有希のジョークで馬鹿話したら、ちょっと痛みもまぎれたわ、ありがとね、有希」 長門が言うと冗談には聞こえないのだがな。でも、ひょっとすると長門流ジョークだったのか、もしかして? そんな長門は本から顔を上げようともしなかった。 「どうも、遅くなりました……おや、室内の空気の流れが変ですね。何かありましたか?」 古泉、タイミング悪いぞ。 その後は、いつものSOS団の活動だった。朝比奈さんが淹れてくれたお茶をいただきながら、ハルヒはネットサーフィン、長門は読書、俺と古泉は原点に帰ってオセロに興じている。 俺が3連勝したところで、ハルヒと朝比奈さんは湯飲みやらポットやらの洗い物をするために部室を出て行った。4戦目も終盤にさしかかっているが、やはり俺が優勢だ。 「そういえば、僕が来る前にどのような会話があったのですか?」 白のコマを置いた古泉が2つばかり俺の黒のコマをひっくり返しながら語りかけてきた。俺は、ダイジェストであの会話の内容を説明してやった。 「……ということさ」 「はは、さすがは涼宮さんですね」 いつものスマイルを振りまく古泉を横目に、俺は黒を隅に置いて白を4つばかりひっくり返しながら、 「ハルヒは、まだ子供は作らんそうだ」 と、説明を締めくくった。 「正確には、『あたしは、まだ、あんたの子供を身ごもるつもりはないわよ』と言った」 唐突に長門の声が届いて、俺と古泉は思わず声のした方向に振り返った。長門は、うつむいて本の方に集中したままのようだ。 「ほう、涼宮さんは『まだ、あなたの子供を……』とおっしゃいましたか」 古泉は自分の最後のコマを置いて黒をひとつ裏返した。 「なんだ、何が言いたい?」 「いえ、『まだ』というのは『いずれそのうちに』ということの現れですね」 「ふん、単なる言葉のアヤだろ」 最後の俺のコマを置く。2つを黒にして4連勝。 「そうかも知れませんし、潜在的な願望が吐露されてしまったのかも知れません。涼宮さんの力をもってすれば、知らないうちにあなたが父親になっている可能性も否定できませんよ」 そんな恐ろしいことは言うな、古泉。 「あははは、冗談ですよ。以前にもお話したように、涼宮さんは至って常識人です。いくらなんでもそんな無茶なマネはしないはずです」 「そうあって欲しいね、まったく」 俺は勝敗表に新たな勝星を書き加えながら、長門に声をかけた。 「なぁ、長門、あんまりハルヒに変なことを吹き込んでくれるなよ」 少し顔を上げて首肯する長門。 「……ひょっとしてハルヒの言うようにお前流のジョークだったのか?」 長門は、ほんのわずかに首を傾げて相変わらずの無表情で俺を見つめている。しかし、俺の脳裏には、いたずらっぽく微笑んでチロッと舌を出す長門の姿が浮んで消えていった。 Fin.
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涼宮ハルヒの感染 プロローグ? 涼宮ハルヒの感染 1.落下物? 涼宮ハルヒの感染 2.レトロウイルス? 涼宮ハルヒの感染 3.役割 涼宮ハルヒの感染 4.窮地 涼宮ハルヒの感染 5.選択 涼宮ハルヒの感染 6.《神人》 涼宮ハルヒの感染 7.回帰 涼宮ハルヒの感染 エピローグ