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ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く
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注・続き物です。 洞窟に侵入してどれ程が経っただろうか。 群れの周辺の地理に詳しいまりさは、勿論の事この洞窟の事も知っており大体の作りも覚えていた。 ゆっくりの脳では普通そこまでの情報を記憶する事など出来ないのだが、 狩りの経験が豊富で群れを率いる責任感が強かったまりさはそういった普通のゆっくりには無いものを兼ね備えていた。 出来るならここをゆっくりの集会場か何かにしようと前々から考えていたのだ。 なので、れいむが居るであろう場所も大体の目星は付いていた。 出来るだけ敵のゆっくりに会わずにまりさはその場所へと向かう。 随分と進むと、最初に出会ったみょんと同じ様にゆっくりの見張りが居る。 れいむ種、しかも群れに昔から居た元同胞だ。 「ゆぅ…ゆぅ……」 どうやらうたた寝でもしているのか。 まりさの元にまで寝息が聞こえてくる。 出来るなら戦いたくなど無い。 まりさはそう考え、うとうとと頭を揺らすれいむに気付かれないように、ゆっくりとその脇を通過しようとする。 「そろーり、そろーり」 優秀なゆっくりであるまりさであるが、生物としての本能にも近い癖は抜け切らないのか。 こんな場面にも拘らず、自らの口で出さなくても言い音を出してすりすりと動き出す。 「そろーり、そろーり」 れいむの横から奥への通路へと差掛かろうとした時、突然れいむの「すや…すや……」という寝息が止まったかと思うと、 「ゆっ、そこにだれかいるの?」 と言う声が聞こえてきた。 まりさは心臓が飛び出すような感覚に陥り、その場で少し跳ね上がったりもしたが、 その洞窟の余りの暗さ故に、れいむはそれが元群れの長であったまりさだと気付いてはいないようだった。 「ゆゆ、じつはまりさは……はくれいむさまにたのまれて、このおくのれいむにようがあるんだよ」 「ゆぅ、そうなの。なんだかわからないけどたいへんね。ゆっくりがんばってね。」 「うん、ゆっくりがんばるよ。れいむもゆっくりしていってね」 「れいむはここでゆっくりするよ…すやすや……」 見張りである筈のれいむであるが、そこまで思考能力も高くないゆっくりな上、 寝起きであった事も合わさり全くまりさを疑う事も無く再び眠りに付く。 まりさの心中にはその場をやり切れた安心感と合わせて、そんな暢気なれいむに対して幾ばくかの怒りを感じていた。 自分があれだけ苦心して群れの皆を守ってきたと思ったのに、反乱を起こした者の部下としてこんなにゆっくりしているなんて。 妻であるれいむは敵に捕らわれ、どれ程酷い目に合わされているか。 そう思うと、眼の前のれいむをゆっくり出来なくさせてやりたい衝動に駆られた。 だが、このれいむにも家族は居るのであろう。 はくれいむの戦力に成す術も無くやられてしまった自分にも落ち度が有ったかも知れない。 まりさはそう思うことにして怒りを抑えて、先へと進む事にした。 更に暫く進むと其処には柵のようなものが掛かっており、まりさは其処にれいむが居ると確信した。 居ても経ってもいられなくなり、すぐさま駆け出す。 幸いな事に見張りなども無く、その柵の前まで辿り着くとまりさは中を覗き込む事が出来た。 人間の使う炎。 それをはくれいむは松明というものに移らせて扱う事が出来るらしい。 丁度、その柵の前にも一つ掲げられていたので、まりさは薄ぼんやりでは有るが中を確認することが出来た。 中にはれいむと思しき丸い球体が一つ存在している。 「ゆっ、そこにいるのはだれなの?まりさのいばしょならきくだけむだだよ、ゆっくりどこかにいってね」 「ちがうよれいむ。まりさだよ、ゆっくりたすけにきたんだよ」 「ゆっ、まり……さ!?」 そんなやり取りを交わした後、れいむはまりさの近くへと跳ね寄る。 まりさはれいむが正面を向かずに少し右斜めを向いて立っているのに若干の違和感を覚えたが、 松明の照らす明かりの中ではっきりとその顔を確認した後、顔に笑顔を浮かばせる。 すると次第に、嬉しい筈にも関わらずその目尻から涙が溢れ出す。 「ま……ま"り"ざぁぁぁぁぁ」 「でい"ぶぅぅぅぅ」 溢れ出る感情のまま大声で喜び合いたい二匹であったが、ここは未だ危険な場所であるのを理解して努めて小声でお互いの名前を呼び合った。 頬をすりすりとしようと更にれいむが近寄るが、二匹を隔てる柵に阻まれてそれは出来ない。 少し悲しそうな顔をしたれいむに、まりさは「だいじょうぶだよ」というと、外側からついたてになっている棒を外し、その柵の扉を開ける。 ゆっくりの作り出す牢屋だけに鍵などは無く、そういった手間が省けたのはこの二匹にとって幸いであろう。 「まりさぁ、まりさだ……たすけにきてくれたんだねぇ」 「あたりまえだよ、れいむ。あいするれいむを、まりさがみすてるはずないんだぜ」 そう言ってれいむがすりすりと頬擦りをし、まりさもそれに応える。 ふと、まりさは不思議な感触に顔をしかめる。 以前のれいむだったらもっともちもちして弾力のある肌をしていた筈なのに、この感触はざらざらとして湿気を感じさせない。 それに先ほどから、れいむの動きもどこかぎこちなかった。 まりさは数秒頬を合わせた後、薄暗い中でそのれいむの姿を眼を凝らして眺めてみる。 「ゆうぅ!!?」 音を立ててはいけないと思いつつも、まりさは思わず短い悲鳴をあげてしまう。 そのれいむの姿――以前は群れ一番と言っても過言でなかった美ゆっくりの姿は其処には無く。 髪は半分焼け縮れてボサボサとなり、頭に付いているリボンとにしても、もうほとんど原型を留めずに申し訳程度に頭の上に乗っているといった具合だ。 全身には暴行の後がはっきりと見て取れたし、今この時も頭の後ろには二、三本が痛々しく突き刺さったままだ。 何よりその顔の所々は焦げというのも遥かに超え、黒々と炭のようになっている部分がある。 特に右頬に至っては大部分が炭化し、れいむの笑顔もぎこちなく引き攣っている。 まりさが最初に顔を見せた時、れいむが正面を向かなかったのはこのせいだろう。 無意識の内に、夫であるまりさにその醜くなった部分を見せまいと振舞っていたのだ。 「ごめんね、まりさ…こんなになっちゃった……」 れいむの眼から、ポロリと大粒の涙が零れる。 「まりさ、れいむのこときらいになっちゃったよね?こんなゆっくりできないすがたになっちゃったんだもの」 そう呟くと、れいむは更に涙を零して眼を伏せる。 まりさが助けに来てくれたのは嬉しいが、もうこんな姿になってしまっては一緒にゆっくり出来ない。 そう考えると、れいむの心は哀しみで一杯になった。 すると、そんなれいむにまりさは静かに歩み寄ると、再びその頬に自らの頬をすり合わせる。 「そんなわけないぜ。まりさはれいむだからすきになったんだ。どんなすがたになってもそれはかわらないよ」 「でも、まりさ。まりさだったら、いくらでもれいむとはべつのゆっくりできることいっしょになれるよ?」 「れいむ……それいじょういったらまりさもおこるんだぜ。」 「ゆぅぅ…ぅ!?」 まりさに怒ると言われて少し怯えた表情をしたれいむは、一転して驚愕の表情に変わる。 自分の唇にまりさが唇を重ねてきたのだ。 れいむは一瞬焦ったが、直ぐにとろんとした顔へとなり、まりさにその身を委ねる。 数秒か数十秒か判らないが、れいむとまりさにとって至福の時間が暫く流れた。 時折、「んふっぅ」や「ゆふぅぁ」などという艶めかしい嬌声が聞こえるのは、お互いの舌を絡め合わせての「でぃぃぷちゅっちゅ」を行い、 すっきりとは別の、だがそれに近い快感を感じているからであろう。 先に後ろに引いたのはまりさの方であった。 二匹の間に唾液で出来た糸が出来る。 れいむは物足りないといった顔でまりさを見詰めたが、此処から脱出しなければいけないという状況を思い出し、それを口にする事は無かった。 「わかっただろ、れいむ。まりさはれいむとだけゆっくりしたいんだよ」 「……うん」 それ以上の言葉など要らなかった。 すぐにまりさは元来た道の説明をすると、身体を痛めているれいむに「だいじょうぶ?」と心配そうな顔をしながら寄り添って進もうとした。 するとれいむはまりさから離れ、 「れいむはだいじょうぶだよ。まりさのあしでまといになりたくないから、じぶんひとりであるくね」 と言い、笑顔を見せて前へと進み始めた。 その後頭部には未だに人間の手首ほどの太さの棒が突き刺さっていたが、それを抜こうとは考えなかった。 それを安易に抜いてしまえば、中の餡子が漏れ出て、直ぐに治療出来ない環境ではれいむが死んでしまうと考えたからだ。 まりさは前を行くれいむのその姿を見て、更にその身体の中から憎しみの炎が燃え上がってくるのを感じた。 脱出するのは想像していた以上に簡単であった。 途中の見張りはあの眠っていたれいむだけであったし、潜入直後に殺したみょんの死体も未だに片付けられていなかった。 あのはくれいむにしては無防備過ぎると感じたが、自分達がそうであるように向こうも完全なゆっくりで無いのだろうと考え先へと進んだ。 そのまままりさが入り込んできた穴まで進むと、二匹はすぐさまそこから脱出しようとした。 しかし―― 「どうしたのれいむ?ここから、ゆっくりでればおそとにでられるんだよ」 まりさに先に穴に入るよう言われたれいむであったが、穴に一度入ろうとして再び戻ってきたのである。 「もういちどがんばってみるね!!」 「からだがいたいだろうけど、ゆっくりいこうね」 そう言って、れいむを励ますまりさ。 それに対して笑顔で応え、再び前に進もうとしたれいむであったが、結果は同じであった。 「ゆあッ!!れいむのあたまのぼうさんがひっかかってまえにすすめないよぉ!!」 れいむが涙声でまりさに訴える。 頭に刺さった棒の一つ、頭から斜め上に生えるように伸びているそれが穴の入り口に引っ掛かって前へと進む事が出来ないのだ。 そんなれいむの状態に、まりさも顔をしかめて状況の打開策を考える。 「ねぇまりさ、まりさがれいむのあたまのぼうさんをぬきとってくれれば……」 「ゆっ!?だめだよれいむ、そんなことしたられいむのなかのあんこがもれてしんじゃうよ」 「ゆぅ、でも……」 脱出まであと少しというこんな所で足止めを喰ってしまうとは。 しかも、まりさの足手まといにならないと言ったにも関わらず、自らのせいで先に進めないという状況に陥り、 れいむの顔に影が差す。 暫く考えた後、まりさが覚悟を決めたように、 「こうなったら、しょうめんのどうくつのでぐちからだっしゅつするよ」 と言い出す。 それにはれいむもすぐに反対した。 この洞窟の奥であったからこそ警備が薄いのである。 正面から出て行っては到底逃げ切れるものではない。 自分だけが危険な目に会うだけならまだしも、助けに来てくれたまりさまで危険な目に会わせる事は出来ない。 「だったらどうすればいいのぉ!?」 「ごめんね、まりさ。せめてまりさだけでもここからおそとにでてね」 「どぼじでぞんなこというにょぉぉ!!れいむだけをおいてなんていけないよぅ!!」 れいむのその言葉に、まりさは顔をくしゃくしゃにして否定する。 互いが互いを気遣う為に、脱出への策は全くの平行線を辿るばかりであった。 そんなやり取りをしながら、時間だけが無情にも流れる。 二匹にも焦りの色は隠せない、そんな中。 「まりさ、おねがいがあるよ!!」 「おねがい?」 意を決したようにれいむがまりさに言う。 「れいむのあたまにあるぼうさんを、まりさがなかにおしこんでね!!」 「おし……こむ…!?」 れいむの思いも寄らぬ発言に、まりさは眼を丸くした。 有ろう事か、れいむの中に木の棒という異物を自分に押し込めというのだ。 それには流石のまりさも頭を左右に振って、「そんなことはできないよ!!」と涙声で拒絶するばかりであった。 「でも、それしかほうほうはないんだよ。ゆっくりりかいしてね!!」 「いやだよ、まりさはれいむにそんなことしたくないよ!!」 「まりさにしかできないんだよ!!」 「まりさはれいむをこれいじょうきずつけたくないよ!!れいむこそゆっくりりかいしてね!!」 「ゆぅ、このわからずや!!」 一向に進まぬ事に業を煮やしてか、れいむはまりさにドスンと体当たりをする。 だが、それは全く威力も無く、まりさはすこしよろけて後ろに下がるだけであった。 それでもまりさは突然のれいむの攻撃に非難の言葉を投げ掛けようと口を開こうとした。 「なにするんだよ、れい……む?」 まりさが正面を向くと、れいむはエグエグと泣き出していた。 「れいむだって……でいむだっていたいのはいやだよ。でも、まりざのあじでまどいになんでなりだぐないから……」 「ぞれにまりざのぞんななざげないずがだなんでみだぐないよ!!まりざはいづだっでがっごうよいまりざでいでほじいよ」 「れ、れいむ……」 れいむの涙ながらの訴えであった。 それに対し、まりさは少し眼を伏た後、キッと眼に力を入れれいむに近付き、 その後ろへと回り込む。 「わかったよ、れいむ。まりさがゆっくりなかへおしこむね!!」 「うん、わかってくれたんだね。ゆっくりおねがいね」 そう言って、れいむは来るであろう激痛を予想しながら、まりさに心配を掛けまいと明るい声で応えた。 まりさは「ゆーふー」と一回だけ深呼吸をすると、 れいむの中へ棒を真っ直ぐ差し込むべく一歩後ろへと下がり、空中へと飛び上がる。 そのまま前方へと飛び上がると、棒の頭をその足の下に捕らえ体重を込めて押し込んだ。 餡子の中に棒を差し入れる鈍い感触がまりさの足元へと伝わり、れいむの中へと少しだけ押し込まれて行く。 「ゆぎぃぃぃ!!!」 出来るだけ平常を保って我慢しようと思っていたれいむであったが、思わず呻き声が漏れる。 その後、棒を押し込み倒れ込むように地面へと落ちたまりさがすぐさまれいむへと駆け寄る。 れいむは激痛に身を悶えながら地面を転がっていた。 「ゆがっ、ゆぐぐぐぐぅ!!」 「ゆあぁぁ!!でいむ、でいぶぅ!!ごめんね、まりさがもっとゆっくりおしこめたらこんなにいたいおもいしなかったのに!!」 「ぎぎぎ、ゆ…ぅ……だいじょう、ぶだよ。でいぶ、ごんなのぜんぜんいだぐなんでないがら」 心配するまりさにれいむは、口から餡子が流れ出るのも構わずに笑顔を見せる。 そんな気丈なれいむの姿に、このれいむは本当に強くてゆっくり出来る最愛のゆっくりだと改めて確信し、 必ず守り抜いていこうと心に誓った。 「ゆ…ぐぅ、ま、まりざ……ここから、ゆっぐりおぞどにでようね」 「うん、ゆっくりでようね!!かぞくのもとにかえろうね!!」 よろよろと横穴に近寄るれいむにまりさは力強く応えた。 その横穴は普通でも大人のゆっくりであれば窮屈で身体を岩肌に擦り付け、 全身に切り傷が出来てしまう程の狭さである。 それを頭の棒を中に押し込んだからといって、相当な深手を負っているれいむには厳しいものがあった。 途中何度も岩肌に肌を擦り付ける痛みに耐えられずれいむの動きが止まり、 酷い時には「ゆぎっ!!ゆぐぅ!!」と呻きながらビクビクと痙攣し出すときもあった。 そんな時何度も、まりさは後ろから「がんばってね!!もうすこしだよ!!」や「うごきをとめないでね、れいむ!!まりさをおいてゆっくりしないでね!!」 と、後ろかられいむを励まし続けた。 まりさが進入した時より遥かに時間が掛かった。 そんな正にゆっくりとした脱出であったが、とうとう眼の前に外の月明かりであろう光が見え始めた。 「れいむ、もうすこしだよ!!もうすこしでおそとでゆっくりできるよ!!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっぐじぃぃぃ!!」 まりさの掛け声と共に、朦朧とした視界の中へと外の光が飛び込んでくる。 「ゆっぐりい”、まりざとゆっぐりずるよぉぉぉ!!」 「そうだよれいむ、まりさとゆっくりしようね!!」 死力を尽くして、れいむは身体を地面へと擦り付けながら前へと進む。 後ろを続くまりさの眼には、地面に広がる餡子の跡が眼に写る。 何処かの傷口が開いたのだろうか? それとも、苦しさの余り餡子を吐き出してしまっているのだろうか? それでも前へと進むれいむの姿に、まりさは流れ出る涙を抑える事が出来なかった。 その後更に10分ほどで、れいむは横穴を抜け外へと這い出る。 遅れてまりさが飛び出した時には、れいむは横穴の傍で身体を萎ませて休んでいた。 「ゆっ……れれ、れいむ、だいじょうぶ!?ゆっくりしてね!?」 眼を瞑って全く動かなくなったれいむの様子に、最悪の結末を浮かべてまりさは急いで駆け寄る。 「れいむ、でいぶぅ!!ゆっくりへんじしてね!!」 「……ゅぅ、だいじょうぶだよ、まりさ」 「ゆあぁ、よかったよれいむ!!おそとにでられたんだよ!!」 「ぅ…ん、ここですこしゆっくりしたら…おちびちゃんたちのところへ……」 「うん、うん!!みんなでゆっくりしようね!!れいむとまりさとおちびちゃんたちでゆっくりしようね!!」 そう呟いてれいむは眼を瞑った。 まりさは慌てて肌を寄せる――大丈夫、息をしている。 全くいびきもしない、まるで子供の様な深い眠りであった。 ここも未だ安全とは言い切れないが、れいむのこの状態では今の隠れ家まで移動するのは無理である。 幸い洞窟の裏手は群れの方角とは反対で、はくれいむの住処から実質山一つ分越えた辺りに位置する。 はくれいむの部下がこちらの方向に探しに来る可能性は限り無く低いだろう。 そう考え、今晩はここでゆっくりと身体を休めようとまりさはれいむにぴったりと身体を寄せた。 そうやってれいむの体温を感じておかないと、今にもれいむがいなくなってしまうような感覚に陥ってしまうからだ。 「れいむぅ……やっぱりれいむはあたたかいよ」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「ゆっくりおやすみ、あしたもゆっくりしようね」 翌朝、眼を覚ますとまりさのその隣にはれいむの姿は無かった。 又もや最悪の状況を想像し、まりさはれいむの名前を叫ぶ。 すると近くの茂みから、 「ゆっくりしていってね!!」 という声と共に、れいむが姿を現した。 「ゆっくりしていってね……じゃないよ!!れいむのすがたがみえないから、まりさはおどろいたんだよ!!」 「ごめんねごめんね。れいむはちかくのおはなさんをゆっくりとつみにいっていたんだよ!!」 そう言ってれいむは頬袋に溜めた色とりどりの花を吐き出す。 ただ量はかなり少なかった。 炭化して硬質化した右頬のせいで多くの量を詰め込む事など出来なかったのだろう。 「すごいよれいむ!!こんなにたくさんのおはなさんをあつめられるなんて、やっぱりれいむはてんさいだね!!」 「ゆっへん、それほどでもないよ!!」 そんな事はまりさは一切気にせず、れいむが精一杯集めてくれた食事を素直に喜んだ。 れいむの状態にしても昨日から比べれば相当良くなっている。 この調子なら今日中に皆の所まで帰る事が出来るだろう。 「じゃあ、れいむ。これをゆっくりたべたらみんなのところにかえろうか」 「うん、ゆっくりたべて、ゆっくりみんなのところにかえろうね」 そう言った後、二匹は食事を始めた。 れいむは捕囚暮らしであった事は元より、愛するゆっくりと共に食事出来る事で代わり映えしない植物でもれいむは何倍にも美味しく感じた。 それはまりさも同様であった。 二匹はその味と幸せを噛み締めながら同時に「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」と高らかな声をあげる。 そして食事後少しゆっくりした後、まりさとれいむは皆の待つ隠れ家へと進む事とした。 時間にして三時間程であろうか。 二匹は時折休憩を挟みながらも、それでもゆっくりしないで道中を急いだ。 「ゆっ、れいむ!!あとすこしだよ!!ゆっくりいこうね!!」 「いやだよ、まりさ!!きょうだけは、れいむはゆっくりしないでいそぐよ!!」 「ゆぅ、だったらまりさもまけてられないね!!」 二匹はそんな会話を楽しみながらピョンピョンと跳ね続ける。 もうここまで来れば追っ手が来る事は無いだろうとは思ったが、家族の事を思えば自然にその足は進むのだろう。 会話の内容にも、幾分か余裕が出てきた。 すると、そんな二匹の進む道の横にある茂みが急にガサガサと揺れ出す。 れいむはそれにビクリと身を怯ませて、すぐさままりさの後ろへと回り込む。 だが、まりさは怯える様子も無くれいむに語り掛けた。 「だいじょうぶだぜ。きっとなかまのみんながむかえにきてくれたんだ」 「ゆっ、そうなの?」 まりさのその言葉に、れいむの顔も安心の色が窺える。 二匹はそのまま、その茂みの方へと向き直ると「ゆっくりしていってね!!」と呼び掛けた。 予想通りにそこからは「ゆっくりしていってね!!」という声が返ってくる。 しかし――そこから現われたゆっくりは予想外の者達であった。 「ゆへへ、ことばどおりにゆっくりしてやるんだぜ!!」 「わかるよー♪みょんのかたきなんだねー♪ゆっくりなぶるよー♪」 この二匹は――。 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」 まりさの後ろでれいむが叫び声をあげる。 突然の事にまりさは驚いて後ろを振り向くと、其処にはこの世のものとは思えない恐怖に引き攣ったれいむの顔があった。 囚われの身になっていた間に受けた拷問の数々を、れいむの餡子にはしっかりと刻まれていたのだろう。 その刻まれた恐怖がフラッシュバックとなって頭を駆け巡る。 「ゆじいぃぃぃ!!いやだ、いやだよぉ!!」 「れいむ、れいむ!!おちついて!!」 それに合わせたように、ぞろぞろと他のゆっくり達も出てくる。 総勢で10は居るだろうか。 どちらにしても、こんな状況のれいむを庇って戦える筈も無い。 まりさの顔にはっきりと見て判る程に焦りの色が浮かぶ。 「こんなやつが、このまりささまよりつよいまりさなんだぜ?とてもそうはみえないんだぜ?」 口元を吊り上げ勝ち誇ったような笑みを浮かべて、はくれいむの部下であるまりさが呟く。 周りの部下達も「そうだねー」などと同意する。 「ゆあぁぁぁ、こわいよぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよ、れいむ!!れいむはまりさがまもるよ!!」 「まりざ、まりざぁ!!」 恐慌状態のれいむの前でまりさがプクーと頬を膨らませて相手を威嚇する。 これには敵のゆっくりも失笑を隠せない。 一対一ならまだしも、10対2。 いや、れいむのあの状態を考えれば10対2どころか10対1――足手まといと考えればそれ以上。 最早大勢は決しているのだ。 何を恐れる必要があるだろうか。 「やめでえぇぇぇぇぇ!!ごっぢごないでぇ!!」 れいむが声をあげるが、相手はそれに応える気配すら無い。 精一杯膨らむまりさを囲むように、はくれいむの部下達はにじり寄ると「ゆっくりしね!!」と叫んで一匹がまりさに飛び掛った。 このSSに感想を付ける
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おまけ 前 れいむの元から逃げ去った2匹の子れいむは、親れいむから逃げるために、方々に散って行った。 1匹は内風呂の中へ、もう1匹は最初に来た植え込みの中に飛び込んだ。 内風呂に入っていった子れいむは、運よく開いていたドアが目に止まり、その小さな部屋の中に飛び込んだ。 しかし、そのドアにはロープが掛けてあり、使用禁止と書かれてあったのだが、子れいむに文字が読める筈もない。 小部屋の隅でしばらく身を隠していると、親れいむの声が内風呂の中に響き渡った。 自分を追って来たと思った子れいむはガタガタ震えたが、どうやら親れいむは子れいむのほうに来る気はないらしく、向こうで壁に体当たりしている音が聞こえてきた。 その後、ドアの開く音と共に、れいむの悲鳴が子れいむの元まで届いてくる。 何をされているのかは知らないが、今まで聞いたこともないような親の絶叫に、子れいむはチビりながら、その声が止むのを待ち続けた。 やがて親れいむの悲鳴も止み、人間の足音が遠さかって行ったが、子れいむは恐怖に足がすくみ、その場から動くことが出来なかった。 そして、神経を減らし続けた結果、余りの疲れにいつの間にか子れいむはその場所で眠ってしまった。 「まったく!! 今日はゆっくりが多くて、散々だよ」 清掃のおばさんが、まりさ親子を崖下に捨て、露天風呂の掃除を終えて戻ってくると、子れいむの入った部屋の入口に掛けられたロープを取って、ドアを閉めた。 閉められたドアには、こう書かれたプレートが填められていた。 “サウナ室” 「ゆっ?」 子れいむは目を覚ました。 一瞬、自分がどこにいるのか分からなかったが、周りを見渡し、すぐに自分がここにいる理由を思い出した。 どのくらいたったのかは知らないが、小さな部屋の窓からのぞく空は、少し夕日掛かっている。 子れいむはまだ親れいむが怒っているのでは震えた。 悲鳴は聞いていたものの、現場を見たわけではないので、まさか親れいむが死んでいるとは夢にも思わなかった。 どうやって帰ろうか? 謝れば許してくれるだろうか? いろいろ考えたが、結局名案が浮かばなかった。 そんな折、子れいむは空腹感に襲われた。 まりさ達と違って、子れいむはお菓子を食べていないのだ。一度感じると、立ってもいられないくらいお腹が空いてくる。 もう帰ろう。お母さんもきっともう怒っていないだろう。 子れいむの餡子脳は、空腹に負けて、面倒事を考えるのを停止させた。 子れいむは、小さな部屋から出ようとした。 しかし、さっき入ってきた入口は、大きな木の板で塞がれていた。 子れいむは、自分が出口を間違えたのかなと、小部屋の中を行ったり来たりしたが、どこにも出られるような場所は無かった。 「ゆうう―――!!! なんで、でられないのおおぉぉぉ――――!!!」 部屋から出られなくて、泣き出す子れいむ。 しかし、ここで泣くことは、ある意味自殺行為に等しいことを、子れいむはまだ知らなかった。 一通り泣き叫んで、子れいむは誰か助けが来るのを待っていた。 窓から見える空は、もうすっかり真っ暗であり、この時期は夜になると、めっきり寒くなってくるのだ。 ゆっくりは寒いのが大の苦手である。 子れいむも、「寒いのはいやだよおおぉぉぉ―――!!!」とまた半ベソをかくも、そこで子れいむは異変に気がついた。 なぜか部屋が暖かいのである。 本来ならもう寒い時間だと言うのに、この暖かさときたらどうだ。まるで春の陽気のそれではないか!! 「ゆゆっ!! あったかくなってきたよ!!」 暖かくなってきて、喜ぶ子れいむ。 空腹なことも部屋から出られないことも一時忘れ、嬉しくなって部屋中を飛び跳ねている。 しかし、次第に状況が一変し出した。 熱さが下がらないのだ。 春の陽気は次第に夏の昼下がりになり、夏の次に秋が来ることはなく、その後もグングン気温が上昇していく。 「たいようさ―――ん!! もうやめでええぇぇぇぇ――――!!!」 子れいむは、余りの暑さに意識がもうろうとしだしてきた。 すでに沈んでいる太陽に文句を言い放つ。 しかし、太陽(笑)は、子れいむの言うことを無視して、どんどん気温を上昇させていく。 室温70度くらいの頃だろうか? 子れいむの座っている木の板が高温になり、同じ場所にじっとしていられなくなった。 「あじゅいおおおおぉぉぉぉ―――――!!! やめでえええぇぇぇぇぇぇ――――――!!!!」 あまりの熱さに、子れいむは飛び跳ね続けるしかなかった。 その間も、子れいむの体からどんどん水分が奪われていく。 泣いたり、チビったりしなければ、もう少しは水分ももったかもしれないが、既に子れいむの体の水分は限界まで搾り取られていた。 遂には、跳ねる力さえ出てこなくなった。 「なんで……れいむがこんな……めにあわ…なく……ちゃなら………ない…の?」 カサカサになった唇は最後にそう呟くと、子れいむは先に行った姉妹たちの元に旅立って行った。 2時間後、水分の無くなったカラカラの焼き饅頭が、温泉客に見つけられた。 植え込みの中に逃げ込んだ子れいむは、適当な方向に逃げて行った。 とにかく親れいむに捕まるまいと、場所も考えることなく精一杯逃げていく。 やがて、子れいむの体力が付き、これ以上歩けないというところで、子れいむは足を止めた。 「ゆひーゆひーゆひー……」 大きく肩で息を付く子れいむ。 後ろを振り返ると、親れいむの姿は見えないし、声も聞こえない。 逃げ切ったのだと、ようやく子れいむは、一息つくことにした。 子れいむはその場でしばらくジッとしていれば、その内親れいむの怒りも収まるだろうと考え、安全そうな草むらに身を隠して、疲れをいやすべく眠りについた。 子れいむが起きたのは、サウナに入った子れいむと、ちょうど同じくらいの時間だった。 すでに空は真っ暗で、うっすら寒い。 もう親れいむの怒りも静まった頃だろうと、子れいむは巣に帰ろうとした。 しかし、その時になって、ここがどこか全く分からないことに気がついた。 「ゆううぅぅ―――!! ここはどこおおおぉぉぉぉ―――――!!!?」 大声で叫んでも反応してくれるものは誰も居なく、子れいむは仕方なく、運良く来た道に戻れることを祈り、適当に歩き始めた。 しかし、そんなことで無事にたどり着けるほど、世の中は甘くない。 元々体力が少ない子ゆっくりで、しかも飯抜き山中歩行をしたおかげで、せっかく体を休めたというのに、すぐに子れいむの体力は限界に達した。 「……もう……あるけないよ……」 子れいむはその場にうずくまった。 すると、目の前の草影がカサカサと動き出した。 初め、親れいむが迎えに来てくれたのかと思ったが、出てきたのはカルガモの親子だった。 子れいむは落胆したが、すぐにあることが閃いた。 このカルガモ達なら、あの温泉の行き先を知っているに違いない!! あそこまで連れて行ってもらえば、後は巣の帰り方は分かっている。 「とりさん!! れいむをゆっくりおゆのところにつれていってね!!」 カルガモに向かって、跳ねて行くれいむ。 本当に危機意識の薄い饅頭である。 人間ならともかく、野生生物の前に饅頭が行くなど、空腹のライオンの前に自分から進んでいく草食動物に等しい。 結果は言うまでもないだろう。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁ―――――!!! なにずるのおおおぉぉぉ―――――!!! れいむはたべものじゃないよおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!」 親カルガモはれいむを咥えると、子カルガモの前にれいむを差し出した。 「やめでえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――!!!! いだいよおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!!」 子カルガモに、チクチクと啄ばまれ暴れ狂う子れいむ。 しかし、親カルガモの体長は60㎝近くもあり、子れいむとの力の差は歴然で、逃げだせるはずがない。 子カルガモは、子れいむをボロボロ溢しながら食べていくも、しっかり下に落ちた皮や餡子も、残さず食べていく。 食べ物を粗末にしないその精神は、飽食になれた外界の人間や、どこぞの饅頭一家にも見習わせたいくらいである。 やがて、子カルガモ達がもう食べられなくなると、半分ほど残った子れいむは、親カルガモに美味しく食べられた。 ここで、一家全員が死亡したこととなった。 結局、この一家の不幸はカルガモに始まって、カルガモに終わることとなったのである。 ~本当にfin~ カルガモの親子って可愛いよね!! なのに、ゆっくりが同じことやっても腹が立つだけなのはなぜだろうww ちなみに帽子の設定は、家族は帽子を被ってもなくても個体認識が出来るということで。 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ カルガモとゆっくり 前編 カルガモとゆっくり 後編 カルガモとゆっくり おまけ このSSに感想を付ける
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「ゆっ! ここはなかなかゆっくりできるところだね!!」 「かぜさんもはいってこないし、ぽかぽかさんだよ~!」 「ここならえっとうっ! もらくしょうだね! れいむ!!」 「ゆゆっ!! そうだねまりさ!! ここをれいむたちのゆっくりぷれいすにするよ!!!!」 冬の直前にれいむとまりさの番が見つけたのは、 積み上げた石で囲まれた穴だった。それは冷たい風をさえぎり、中の気温を上げる。 石は固まってるようで、れいむとまりさがぶつかってもびくともしなかった。 おまけに床は藁や枯れ草、枯れ木、落ち葉などが敷き詰められている。 少し暗いけど、出入り口をけっかいっ! で覆えばえっとうっ! には困らない。 「ゆゆ~ん!! さいっこうっ! のゆっくりぷれいすだよ!!!」 「れ、れいむ!! まりさはもう……もうっ!!!」 あたらしいおうちを手に入れた喜びのあまり、まりさは興奮し、 れいむとすっきりー! し始めた。れいむはまんざらでもなく受け入れる。 「んほっ!! んほぉぉっ!!! すっきりーっ!!」 「んほっ!! んほぉぉっ!!! すっきりーっ!!」 光悦の表情を浮かべるれいむとまりさ。 れいむの額からは蔦が伸び、そこに赤ゆっくりが1、2、3、4、5、6…… ……張り切りすぎたようだ。 「ゆゆ~んっ!! かわいいおちびちゃんだよっ!!!」 「ゆへへ!! まりさはさっそくえささんをとってくるんだぜ!!!」 ・ 「……? あれ?中に何かいるぞ」 「ほんとだ! ゆっくりじゃねーか!!」 まりさが最後の狩りに行ってる間、お昼のすーやすーやタイム中、 外から聞こえた声にれいむたちは目を覚ました。 「ゆ~っ!!!! だれだかしらないけど!!! かわいいれいむのすーぱーすーやすーやたいむをじゃまするなぁぁぁぁ!!!!」 「しょうじゃしょうじゃ!!!!! ぷきゅぅぅぅぅぅ!!!!」 「ぷきゅー!!」 目が覚めたれいむと、先立って生まれた2匹の子、赤れいむはにんげんを見るや否や ぷくーを始める。このれいむたちは人間の脅威を知らないらしい。 あるいは知っていたが、「こんなにゆっくりしたおうちうをもっているれいむたちに にんげんがかてるわけない!!!!」と思っているのか。 「まずいなぁ……おーい、はやくでてこい」 「おいおい、そんなやつら放っとけよ」 「ほっとけんよ。一応生きてんだろ、こいつらも」 中をのぞいていた青年は手招きしてれいむたちに外に先導する。 その後ろにいる青年は呆れた顔だ。 「ゆぅぅぅぅぅ!!! れいむのゆっくりぷれいすをうばうきだね!!!!!! くずなにんげんはゆっくりしないでしぬといいよ!!! でもそのまえにあまあまもってきてね!!!!! たっくさんでいいよ!!!!!!!」 「れいみゅわきゃっちゃよっ!!! にんげんしゃんは、れいみゅたちに『しっと』 しちぇるんでしょ!!? おおあわりぇあわりぇ!!!! ぎぇらぎぇらぎぇら!!!」 「ゆーんなんてかしこいおちびちゃんなんだろうね!!! さすがれいむのおちびちゃん!!!! そこにきづくなんてやっぱりてんさいだねぇぇぇぇ!!!!」 「おねーちゃんしゅぎょい!!! たいしたゆっきゅりじゃねぇぇぇ!!!」 「最後褒めてんのか、それ?」 出てくるどころか体をねじらせてすーりすーりぺーろぺーろし始めたれいむを見て、 青年たちは息をついた。 「無駄だな。こりゃ」 「だから言ったろ」 「自分で選んだんだ、しゃあねぇか」 青年はその場を後にした。 それすなわち、れいむのかちである!!!(れいむの脳内で) 「ゆっ!!! かったよ!!! かわいいれいむがにんげんにかったよ!!!!」 「しゃしゅがおきゃあしゃんだね!!! ゆっきゅりー!!!」 うれちーちーをしながら尊敬の目で母を見る子れいむ。 帰ってきたまりさのごちそう「らむねさん」を、そのことを肴にしながらたべ、 家族は深い眠りに就いた。 ・ 「ゆっ? なんだかさわがしいよ?」 れいむは目を覚ました。外が騒がしい。 けっかいっ! の隙間から外を見る。そこには何人もの人間がいた。 「ゆぷぷ……れいむにかてないからって、おおぜいひきつれてきたんだね。 そこまでしょうねがくさったにんげんははじめてだよ。おおあわれあわれ……」 れいむはわらう。追い払ってやってもいいが、眠気が強い。 「れいむがほんきになればくずにんげんなんてけちょんけちょんにできるけど、 めんどくさいからみのがしてあげるよ! かわいいれいむにゆっくりかんしゃしてねっ!!! そういうとベッドに戻ろうとして―――― ぼっ! 「ゆっ?」 何かが投げ入れられ、れいむはふりかえった。 視線の先ではけっかいっ! を突き破って、火のついた棒が床に落ちていた。 「ゆっ!!!! あついよ!!! れいむをゆっくりさせないめらめらさんは ゆっくりできないよ!!!!! ゆっくりしないでどっかにいってね!!!!!」 れいむは床に広がる落ち葉や枯れ木をもみ上げできれいに巻き上げ、 火に向かって投げ入れた。消そうと思ったのだろう。しかし 「どぉしてめらめらさんひろがるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!?」 火は空中で見事に引火し、それが地面に落ちて床に敷き詰めた落ち葉や 枯れ木に燃え移る。あっという間に出入り口は火の海になった。けっかいっ! などもう燃え尽きている。 「ゆっくり!! ゆっくりしていってね!!! ぺ~ろぺ~ゆぎゃぁぁぁ!!! あ゛づい゛ぃぃぃぃ!!!!!!」 火付きの床をぺ~ろぺ~ろで消そうとして、れいむの舌先が焼け落ちた。 それだけではなく、しゃがんだことで実ゆっくりに引火した。 「ゆがああああああああ!!!!! れいむのあがぢゃんがぁぁぁぁぁ!!!!!!」 言葉も発せぬまま炎に包まれる実ゆっくりたち。 れいむは火を消そうと振り回し、そして。 すぽーん! 「ゆっ!!?」 実ゆっくりは蔦ごと引っこ抜け、炎の中に消えた。 「あがぢゃあああああああああん!!!!!!!!!!!!! ゆぐっ!!!? ゆぐえっ!!!!!!」 れいむがあんこを吐きながらも叫ぶと、実ゆっくりが突っ込んだところから ぱぁんと返事が聞こえた。実ゆっくりと蔦の中の空気が熱で膨張して破裂した音だ。 「ゆはっ!!!! そうだぁぁぁ!!!! までぃざぁぁぁ!!!! おぎろぉぉぉぉ!!!!! れいむをだずげろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」 眠っていたまりさを思い出し、渾身の力で体当たりをかます。 しかし、まりさは起きない。子れいむも赤まりさも同様。ラムネのせいだ。 「ゆっ!!! てんじょうさんがあいてるよ!!!! でいぶだずがるよぼぉぉぉぉ!!!!」 ふと煙が上に逃げていくのに気づき、れいむは今までふさがっていた天井が ぽっかり空いていることに気づく。 炎が燃え移っても一向に起きないまりさと子れいむ赤れいむはすでに諦めた。 (まりさやおちびちゃんなんて、どうでもいいよ!!! でもれいむは世界でただいっぴきっ!!!! にんげんにもかてるとくべつなゆっくりなんだよ!!!) 言うや否やまりさを踏み台にし、飛び跳ねようと試みるれいむ。 熱で溶けやすくなっていたまりさの皮がはがれおちる。 さすがの激痛に、まりさは目を覚ました。 「ゆっ? なんなんだぜ……!? なんなんだぜぇぇぇぇ!!!!!? こればぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!?」 「ゆっ! いまごろきづくなんてどんかんなまりさだね!! そんなぐずまりさは れいむにふさわしくないよ!!!!! りこんのいしゃりょうさんにれいむだけたすけて まりさはさっさとしんでね!!!!!!!!」 「ど……うじでぞん……なご……どいぶ……の…………!!!!!!」 れいむはまりさを見下し、げらげら笑うととんだ。 その衝撃でまりさは潰れ、永遠にゆっくりした。子れいむ赤れいむはすでに火の球で 何やら暴れていた。 「よいしょっと!」 「ゆっ!!!!? なにしてるのぉぉぉぉぉ!!」 れいむがもうすぐ外に出ようとした時、大量の火付き棒がれいむに ――正確にいえば穴の中に――向かって落とされた。 れいむは落石事故にあったように棒に正面衝突し、火の海と化した “おうち”にたたき落とされた。 「ゆぎゃぁぁ!! なんでぇぇぇ!!!! めらめらさんはゆっくりできないぃぃぃぃ!!!!」 煙と火のせいで叫ぶこともままならない。それでもれいむは叫んだ。 「もう……や……だ……おう……ちか……え……りゅ!!」 れいむはそのまま燃え尽きた。 ・ 「うおーっさいこーっ!! れいむの断末魔でメシがうまうま!」 外の人間たちは自作の釜の上で作ったおもちを食べていた。 そのおもちは何もつけずとも不思議と甘く、一段とおいしかったそうな。おしまいおしまい。 ――――ハッピー・エンド! …………あれ? Q、描写薄いよなにやってんの!? A、息抜き ゆっくりを燃やして作るモチってすげー甘くてうまそう 今まで書いたモン anko1000 ゆ anko1298 ゆっくりにかけるかね
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「おねえちゃん、おやさいがおちてるよ!」 「きょうからここをれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 畑仕事がひと段落つき、干草に寝っ転がっていると近くからなんとも自分勝手な主張が聞こえてくる。 また出やがったな、害獣ゆっくり。幻想郷の作物を食い荒らす迷惑な生き物だ。俺は鍬を手に取り、ゆっくり共の背後に忍び寄った。 実は俺、虐待お兄さんである。だが、飲まず食わずでも平気な妖怪虐待お兄さんと違い、人間の俺は食べなければ餓死する。 しかたなく、オヤジから継いだ畑で農家をやっているのだ。 本当は加工場に勤めたかったんだが、志望動機に『ゆっくりをいじめることなら誰にも負けません』と書いたら 『加工場はゆっくりを虐待する場所ではありません。貴方は何か勘違いをしているようですね。』 と言われてしまった。なので、農作業の合間に畑に現れたゆっくりを潰すのがせめてもの息抜きなのだ。 荒い息を抑え、ゆっくりの背後の木の陰に隠れる。どっちから先に潰そうか…。よし、れいむの姉妹のようだし姉のほうから潰そう。 んで、妹が「お゛ね゛えぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」とか喚くところを蹴り飛ばしても良いし、畑に生き埋めってのもいい。 自力じゃ降りられない木の上に放置っていうのもいいな。 そんなことを考えていると、ふと思いついた。ゆっくりの中でも母性や家族愛が強いれいむ種。そんなヤツラの絆(笑)を引き裂くのはどんなに楽しいだろうか! 一瞬にして幾通りものパターンが頭の中でシミュレートされる。口端が釣り上がるのを押さえられない。ひゃあ!虐待だぁ! 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 ゆっくり姉妹に声をかける。 「ゆっ!おじさん、ここはれいむたちのおうちだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「おねえちゃん、にんげんだよ!にんげんにあったらすぐににげろっておかあさんもいってたよ!」 「だいじょうぶだよ!れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」 なんて美しい姉妹愛。ああ、空気を吸って身体を膨らませている姉れいむを叩き潰したら、妹れいむはどんな声で鳴いてくれるのか…!!! だが、ここで欲望に負けるわけにはいかない。目先の快楽に捕われては、真の虐待お兄さんとは言えないのさ。 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 「ゆゆ、ほんとう?」 俺は農具小屋に向かって歩き出す。饅頭どもは半信半疑についてくるが、小屋の扉を開けてやると 「ゆっくりできそうだよ!」 「きょうからここをれいむたちのおうちにするよ!」 と早速お家宣言だ。跳ね回るゆっくりたちに屑野菜を放ってやり、俺は小屋の扉を閉めた。 ここならゆっくりがぶつかったところで壊れるものなど無い。さあ、後はアイツを待つだけだ。 二日ほど経った。ゆっくり共は納屋に監禁したままだ。時折中を覗くと、二匹仲良く跳ね回って遊んでいる。エサは屑野菜や生ゴミを投げ込んでやっている。 実はこの農具小屋、まだ俺が虐待お兄さんだった頃にゆっくりを監禁する場所にしていた。 攫ってきたゆっくりが、いざ虐待の際に弱りきっていてはつまらないので、ゆっくり用の遊具を置いて元気でいられるようにしてあるのだ。 そして、畑のほうには待ち望んでいたアイツ。特別ゲストの登場だ。 「きょうからここをまりさのおうちにするんだぜ!!」 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 「ゆっ!おじさん、ここはまりさのおうちだぜ!!ゆっくりでていってね!!」 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 俺はまりさを小屋まで案内してやる。 「「ゆっくりしていってね!!」」 出迎えるのはれいむ姉妹だ。 「やあ、れいむ達!今日からまりさもここでゆっくりさせてあげてね!」 「ゆっ!!まりさがいるよ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ…ゆっくりしていくぜ!!」 準備完了。早速三匹は俺の作ったゆっくり用滑り台で遊んでいる。俺は小屋の戸を閉め、農作業に戻った。 その日の夜。寝る前に小屋に入り込むと、中では三匹が思い思いの場所で寝息を立てている。俺はまりさの頭を掴み、小刻みに振動を与えた。 「ゅ…?ゆぅうぅう…!」 途中で目を覚ますまりさ。しかしその目はトロンとしている。これでは体が火照って眠れまい。見ていると、まりさは手近なれいむに夜這いを掛け始めた。 「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆーっ!!!」 れいむのほうは身体は反応しているが、起きてはいないようだ。まりさが体を揺らすたび、泡立った粘液が二匹の身体を伝う。 「んほおおおおおおっ!!すっきりー!!」 やがて、まりさがすっきりする。夜這いを掛けられたれいむの方も、心なしか顔がすっきりー!の顔になっている。 しばらく待つと、れいむの頭から小さな目が出てきた。交合成功だ。さてまりさ、お前はもう用済みだ。死ぬ前にいい思いが出来てよかったな。 翌日、れいむ姉妹はまりさがいなくなっている事にショックを受けたようだが、それ以上に新たな命を授かったことが嬉しいようだ。 妹れいむの頭の上には蔓が伸び、八つほどの実が生っている。まだ爪の先ほどの大きさだが、いずれ拳大の大きさの赤れいむとなる。 その日はお祝いということで、いつもの屑野菜と一緒に餡子を投げ込んでやった。 ゆっくり一匹分、昨日迷い込んできたまりさの大きさと同じくらいの量の餡子だが、 「うっめ!めっちゃうっめ!」 「まじぱねえ!」 と意地汚く食べていた。 さらに三日ほど経った。小屋からは饅頭共の跳ね回る音は聞こえなくなり、代わりに 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~っくり~♪して~♪いってね~♪」 だの下手糞な歌が聞こえてくるようになった。 エサをやりにいくついでに様子を見ると、実の大きさもビー玉くらいになり、早いものは髪や目や口が形成され、時折ぷるぷる震えている。 れいむ達はそれを見ては顔をほころばせている。そろそろ頃合だな。 その日の夜、俺は再び小屋に忍び込んだ。みると、姉妹は寄り添って眠っている。妹れいむが姉れいむに寄りかかっている状態だ。 なるほど、妹が体勢を崩さないようにしているんだな。 月の明りを頼りに懐からキリを取り出し、先端をライターで炙る。そして、蔓から生えている一番大きな赤れいむに焼けた針を数回突き刺した。 「み゛ゅ゛っ!」 小さな目をカッと見開いて、赤れいむは生涯を閉じる。通常のゆっくりではこんなもので殺せないだろうが、体の小さな赤ゆっくりはそうもいかない。 おお、目と口から煙を噴き出していて笑える。その調子で合計七つの実を焼き殺した。残ったのはやっと目、口が出来始めた実が一つ。 これなら何が起きたか気付くまい。そのまま小屋を出、俺は眠りに就いた。 翌朝、農作業に使う鋤を取りに小屋に入ると、れいむ姉妹は白目を剥いて気絶していた。起きたら赤れいむがほぼ全滅していたのが相当ショックだったようだ。 とりあえず頬をひっぱたいて起こしてやる。 「おい、大丈夫かれいむ?」 「ゆっ…おに゛い゛ざん゛!!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛がしん゛じゃっだよ゛お゛お゛ぉ゛!!」 取り乱して涙やら涎やらを撒き散らしている。おお、きもいきもい。 「まあ落ち着けお前ら。まだ一匹残っているじゃないか。」 「ゆ゛っ゛!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛!!!!」 どうやら気付いたようだ。しかし七匹も死んだという事実はこたえているらしい。涙をボロボロと流して、 「どうじでごんな゛ごどに゛い゛い゛ぃ゛!!」 と叫んでいる。さて、ここからが俺の演技力の見せ所だ。まあ、ゆっくり相手なら誰だって騙せるんだろうが。 「これは栄養失調だな!妹れいむの栄養が足りなかったんだ、このままでは残りの赤ちゃんも死んでしまうぞ!」 「ゆ゛ーっ゛!?え゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛!!!?」 「ごめ゛ん゛ね゛え゛、おがあ゛ざんがえ゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛のぜいで、ごめ゛ん゛ね゛え゛ぇ゛!!!」 あっさり騙された。というかそんなもち肌で何が栄養失調だ。こいつらには屑野菜や生ゴミしか与えていないが、それでも雑草や虫よりは栄養価が高い。 お前らで栄養失調なら野生のゆっくりなんてみんな干からびてるっての。それは置いておいて、演技続行だ。 「残った赤れいむを救う方法は一つしかない。お前達、やれるか?」 「ゆ゛っ゛!!おね゛がいじまず、れ゛い゛む゛のあがぢゃんだずげでぐだざい゛!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛を゛だずげであげでえ゛え゛!!」 よし来た。俺は小刀を取り出し、姉れいむの頭頂部を突き刺して一捻りする。すぐに頭頂部には穴が開き、餡子を覗かせた。 「ゆ゛ーーっ゛!!!おね゛え゛ぢゃん゛にな゛に゛ずるの゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛っ゛!!!」 妹のほうが叫んでいる。一方姉のほうは白目を剥いて痙攣している。そう慌てるな妹よ、次はお前の番なんだから。 今度は妹れいむの蔓を掴み、根元付近を小刀で一周させたあと、少し力を込める。すると、蔓は根ごとすっぽ抜けた。もちろん妹れいむはショックで気絶している。 すぐさま姉れいむの傷口に根の部分を突っ込み、接合部に小麦粉を振りかけてやる。妹れいむの頭も小麦粉で塞ぐのは忘れない。 気付けにオレンジジュースを二匹にぶっ掛けてやれば作業終了だ。 妹れいむは目覚めるなり頭上の蔓がなくなっていることに気付き、 「れ゛い゛む゛のあがぢゃん゛ん゛ん゛!!」 と怒鳴っている。まあ落ち着け。落ち着いてお前の姉貴の頭を見てみろ。 「ゆっ?れいむのあかちゃんがおねえちゃんのあたまにいるよ!?」 「おにいさん、いもうとのあかちゃんになにしたの!ゆっくりせつめいしてね!!」 詰め寄るゆっくり共。うざい、潰したい。いや、我慢我慢。 「妹れいむは栄養失調だからな。健康な姉れいむだったら、赤ちゃんを死なせないで産んであげられるから、差し替えた。これで赤ちゃんは助かるぞ!」 「「ゆーっ!!!!おにいさんありがとう!!!!」」 まあ気にするな。赤ゆっくりを殺したのは俺なんだから。 翌日。他の赤ゆっくりを間引いた結果、残った一匹は栄養を独り占めして破格の成長を遂げた。 通常ならあと三日はかかるところを、すでに目、口、髪、リボンが形成され、 「ゆー、ゆー」 と声を上げることも出来る。生き残ったのはれいむ種だったか。 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」と喋れるようになるのもすぐだろう。明日には蔓から離れるかもしれない。 妹れいむは姉れいむの頭上を見上げ、 「ゆ~♪れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしてね!」 「はやくおかあさんといっしょにゆ~っくりしようね~♪」 と声をかける。一方、姉れいむのほうは微妙な表情を浮かべている。この表情…おそらく俺の企ては成功している。だが、確証が欲しかった。 「おーい、妹れいむ!もうすぐ赤ちゃんが生まれそうだから、お祝いにドアのところにお菓子を置いてあるよ!お姉ちゃんれいむにゆっくりとってあげてね!」 「ゆっ!?お菓子!?取ってくるよ!!」 妹れいむはドアのほうに駆け、散らばったクッキーを舌で掻き集めている。そのとき、俺は確かに無く耳にした。 姉れいむが頭上の蔓…蔓に実った赤れいむを見つめながら 「れいむがあかちゃんのおかあさんだよ…」 と、妹れいむに聞こえないよう呟くところを。 あああああああああ、ニヤニヤが止まらない!!姉れいむのほうは、たった一日蔓を頭に生やしただけで、母性を持ってしまったようだ。 もう、口の両端が目に届きそうなくらいに笑顔が止まらない。 その日、俺一度も休みを取ることなく、全力で農作業を進めた。明日は、あのれいむ姉妹に付き合ってやらなきゃいけないからな…! 翌朝、小屋に入ると赤れいむが生まれる寸前だった。 姉れいむの蔓の上で、トマトほどの大きさに育った赤れいむは身体をブランコのように揺らし、妹れいむはをそれを見て 「がんばってね!がんばってね!!」 と声をかけている。そして赤れいむが一際大きく揺れると蔓から頭がちぎれ、ぽてりと地面に落ち… 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」 鳴いた。妹れいむは感動のあまり目を潤めている。だが、次の瞬間。 「おかあしゃん!おなかしゅいた!!」 赤れいむは。姉れいむに向かって。「お母さん」と言ったのだ。戸惑いながらも、嬉しそうな顔をする姉れいむ。しかし妹れいむは黙っていられない。 「どお゛じでぞんな゛ごどい゛う゛のお゛お゛お゛!!れ゛いむ゛があがぢゃんの゛お゛があざんでしょ゛お゛お゛お゛お゛っ゛!!!」 姉れいむのほうも、悲しそうな顔をして赤れいむから目を逸らす。よく分かっていないのは赤れいむだ。 「ゅ?れいみゅのおかあしゃんはこっちだよ?」 言いながら姉れいむのほうに飛び寄る。妹れいむは半狂乱になって 「ちがうの゛お゛お゛お゛っ!!れ゛い゛む゛があがぢゃん゛の゛お゛があざん゛な゛ん゛だよ゛お゛お゛っ!!!」 と訴える。まあそうなるだろうな、赤れいむは物心ついたときには姉れいむの頭の上だったんだから。 こうなると、気になるのは姉れいむの反応だ。姉れいむは悲しそうな顔をして 「ゆう、あかちゃんのおかあさんは、あっちのれいむだよ。あっちのれいむをおかあさんってよんであげてね…。」 おお、母性愛よりも妹を気遣う家族愛が勝ったか。てっきり妹に向かって「このこはれいむのあかちゃんだよ!」ぐらい言うかと思ったが。 そんな姉の気遣いにも気付かず、妹れいむは赤れいむと姉れいむの間に割って入り、 「おねえちゃんはゆっくりむこうにいってね!!」 と威嚇する。あー、本当笑える、こいつ等。 それからも修羅場は続いた。赤れいむが滑り台の着地に失敗したとき、「おかあしゃーん!」と泣きながら見るのは妹れいむに気を使い、離れている姉れいむのほ うだ。 妹れいむが(俺の用意した)昼飯を持ってきた時も、姉れいむのほうを見て「おかあしゃんもいっちょにたべよ?」といった後、慌てて「ゆっきゅりまちがえちゃ った!」だと。 そのたびに姉れいむは悲しそうな、済まなそうな顔をし、妹れいむは「れいむがおかあさんだよ!!」声を荒げる。そんな光景が昼間中続いた。 夕方になった。赤れいむも学習能力が出てきたのか、ここ三時間ちかく姉れいむを「おかあしゃん」と呼んでいない。今は歌を歌っている最中だ。姉れいむは少し はなれたところでそれを聞いている。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆっくりしていってね~♪」 「しちぇいっちぇね~♪」 俺には不快な音波にしか聞こえないが、ゆっくり共にはそうでもないんだろう。目を閉じて聞き入っている。だがそのとき、赤れいむの悪い癖が起きた。 「ゆ~、おかあしゃんもいっちょにうたお?」 うっかり姉れいむに「お母さん」と呼びかけてしまったのだ。妹れいむの頬が膨れていく。アレはキレてる。相当キレてる。 「なんで!わからないの!れいむが!おかあさんだよ!!」 赤れいむのすぐ近くで地団太を踏むようにジャンプする。赤れいむのほうは本気で怒られて涙目だ。 「もういいよ!!そんなにおねえちゃんがすきなら、おねえちゃんのあかちゃんになればいいんだよ!!」 言いながら、妹れいむは赤れいむに体当たりした。人間で言えば思わず手が出てしまったというところか。 しかしゆっくりだと手が出てしまったでは済まない。その体格差には赤れいむは一メートルほどポヨポヨと跳ね、泣き出してしまう。 瞬間。 妹れいむは。 猛スピードで体当たりしてきた姉れいむに弾き飛ばされた。 一メートルなんてものではない。ノーバウンドで跳ね飛ばされた妹れいむは壁で跳ね返り、赤れいむから少し離れた場所でやっと起き上がる。 その赤れいむまでの距離を遮るように、姉れいむが立っていた。 「れいむのあかちゃんになにするの!!!いもうとでもゆるさないよ!!!!」 ここで母性愛が勝ったー!一瞬睨み合った後、お互いに飛び掛って喧嘩を始める姉妹。 いや、これは喧嘩なんてものではない。転げ周り、お互いの身体に食いつき、跳ね飛ばし、踏みつける。 まさに殺し合いだ。傍目からはネコの喧嘩に見えるが。 俺は赤れいむが巻き添えを食わないよう手の上に乗せてやった。赤れいむは涙を流しながらその光景を見つめている。 やがて、体格差を生かした姉れいむが妹れいむに噛み付いたままのしかかる。 姉れいむが妹れいむに「れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」って言ってたのは一週間前だっけ? とにかくこのままでは死んじまうな。俺は二匹を引っぺがした。 「おにいさんなにするの!!」 「じゃましないでね!!」 で、二匹揃って俺の手の上の赤ゆっくりに気付く。 「「れいむのあかちゃんをはなしてね!!!」」 お互いにその発言が気に入らなかったのか、すぐさま戦闘態勢に入る二匹。 「まあ、待て二匹とも。」 二匹は互いを警戒しあいながら俺のほうを見る。ああ、俺はこの一言を言いたかったんだ。この一言のために、今まで準備をしてきたんだ。 今までの準備が走馬灯のように頭をよぎる。ああ、やっと報われる。このために、潰したい饅頭を潰さずにがまんしてきたんだ。 ようし、言うぞ?言っちゃうぞ? 「そんなに自分の子供って言うなら、この赤れいむをお互いに引っ張って、勝ったほうが母親ってことにすりゃいいじゃん。」 言って、赤れいむを二匹の合間に放り投げる。二匹は一瞬間をおいた後。 「いぢゃい゛い゛い゛いっ!!!お゛があじゃん゛、い゛だいよお゛お゛お!!!!はなじでええ゛え゛え゛え!!!」 「あかひゃんがひたがってうよ!!!!ゆっくいはなふぇええええ!!!」 「そっちがはなへええええええ!!!!」 おお、醜い醜い。姉れいむは赤れいむの髪を、妹れいむは赤れいむの顎を噛み、それぞれの方向に引っ張る。 赤れいむのほうはかわいそうに、二倍近く伸びてしまって口から餡子を吹き出している。 「あかひゃんのあんこがでひゃってるよおおお!!!」 「おねえひゃんがはなへばあああ!!!?」 「おまえがはなふぇええええ!!!!」 一方赤れいむは、体の真ん中から裂け始めている。 「もっちょ…ゆっきゅり…しちゃか…」 でた、断末魔宣言だ。言い終わったと同時に、二匹は吹っ飛んだ。赤れいむが千切れた反動だ。 「ゆ、あかちゃん…は…?」 「れいむの…あか…ちゃん…」 …。 ……。 ………。 「「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」」 食うのかよ!!!しばらくたち、二匹とも口の中のものを咀嚼し終わった時点で、ようやく口の中に広がった甘味の原因に気付いたようだ。 「れいむの…あかちゃんが…いもうとに…」 「おねえちゃんが…れいむのあかちゃんをたべちゃった…」 「よくも…!!!」 「れいむのあかちゃんを…!!!」 「「ゆっくりしね!!!!!」」 再び始まる大乱闘。今度は止める理由も無い。俺は小屋の戸を閉め、家に戻った。あー、井戸水で冷やしておいた西瓜うめぇ。 完全に日は落ちた。小屋のほうからは物音一つ聞こえない。西瓜を食べ終わった俺は、小屋のドアを開けた。 みると、そこら中に散らばった餡子。小屋の真ん中では、千切れたリボンの近くで荒い息を吐く傷だらけのれいむが一匹。 辺りにはゆっくりの表皮や目玉が散らばっている。 コイツ、妹れいむか?姉れいむか?今までは体の大小で判断つけてたんだが、比較対象がなくなっちまってわからない。 れいむのほうは、俺のほうを見ようともせずにふーふー唸っている。さて、どうやって声をかけるかな。 「あーあ。死んじゃったな、二匹とも。」 びくっと震えるれいむ。しかし、その顔はこちらを向かない。 「俺にはよくわからないけどさ。」 言葉を続ける。れいむは動かない。 「あの赤れいむにとっては、どっちも本当のお母さんだったんじゃないかな。」 「ゆ………。」 ゆっくりと出口に這っていくれいむ。そして。 「おにいさん、いままでありがとう…れいむはここからでていくね…」 餡子を片付けた後、小屋の周りを一周してみたが、れいむの姿は無かった。 うん、昔はゆっくりを肉体的にいじめていたが、こういう精神攻めも案外面白いな。 次の獲物はどうやって虐めてくれようか…。よし、今夜は虐待お兄さん復活祭りだ!農家なんてどうでもいいぜ!っひゃあ、虐待だあ!! 数日後、一匹のれいむがドスまりさに討伐された。最近群れに迷い込んできたれいむは、にんっしんっ!しているゆっくりの蔓を片っ端から噛み千切ったのだとい う。 そのれいむは「あかちゃん…やっとあえるね…」と呟き、事切れたそうだ。 /**** 書くのに丸一日かかった。 本当はゆっくりが食虫植物に食われるのを書いていたんだ!でも、 行き詰る→新しいネタ思いつく→メモっておく→もう一度書き始める→行き詰る→新しいネタの続き思いつく→メモっておく→以下ループ。 by町長 /****今までに書いたもの fuku2120.txt 満員電車とゆっくり このSSに感想を付ける
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「おねえちゃん、おやさいがおちてるよ!」 「きょうからここをれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 畑仕事がひと段落つき、干草に寝っ転がっていると近くからなんとも自分勝手な主張が聞こえてくる。 また出やがったな、害獣ゆっくり。幻想郷の作物を食い荒らす迷惑な生き物だ。俺は鍬を手に取り、ゆっくり共の背後に忍び寄った。 実は俺、虐待お兄さんである。だが、飲まず食わずでも平気な妖怪虐待お兄さんと違い、人間の俺は食べなければ餓死する。 しかたなく、オヤジから継いだ畑で農家をやっているのだ。 本当は加工場に勤めたかったんだが、志望動機に『ゆっくりをいじめることなら誰にも負けません』と書いたら 『加工場はゆっくりを虐待する場所ではありません。貴方は何か勘違いをしているようですね。』 と言われてしまった。なので、農作業の合間に畑に現れたゆっくりを潰すのがせめてもの息抜きなのだ。 荒い息を抑え、ゆっくりの背後の木の陰に隠れる。どっちから先に潰そうか…。よし、れいむの姉妹のようだし姉のほうから潰そう。 んで、妹が「お゛ね゛えぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」とか喚くところを蹴り飛ばしても良いし、畑に生き埋めってのもいい。 自力じゃ降りられない木の上に放置っていうのもいいな。 そんなことを考えていると、ふと思いついた。ゆっくりの中でも母性や家族愛が強いれいむ種。そんなヤツラの絆(笑)を引き裂くのはどんなに楽しいだろうか! 一瞬にして幾通りものパターンが頭の中でシミュレートされる。口端が釣り上がるのを押さえられない。ひゃあ!虐待だぁ! 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 ゆっくり姉妹に声をかける。 「ゆっ!おじさん、ここはれいむたちのおうちだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「おねえちゃん、にんげんだよ!にんげんにあったらすぐににげろっておかあさんもいってたよ!」 「だいじょうぶだよ!れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」 なんて美しい姉妹愛。ああ、空気を吸って身体を膨らませている姉れいむを叩き潰したら、妹れいむはどんな声で鳴いてくれるのか…!!! だが、ここで欲望に負けるわけにはいかない。目先の快楽に捕われては、真の虐待お兄さんとは言えないのさ。 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 「ゆゆ、ほんとう?」 俺は農具小屋に向かって歩き出す。饅頭どもは半信半疑についてくるが、小屋の扉を開けてやると 「ゆっくりできそうだよ!」 「きょうからここをれいむたちのおうちにするよ!」 と早速お家宣言だ。跳ね回るゆっくりたちに屑野菜を放ってやり、俺は小屋の扉を閉めた。 ここならゆっくりがぶつかったところで壊れるものなど無い。さあ、後はアイツを待つだけだ。 二日ほど経った。ゆっくり共は納屋に監禁したままだ。時折中を覗くと、二匹仲良く跳ね回って遊んでいる。エサは屑野菜や生ゴミを投げ込んでやっている。 実はこの農具小屋、まだ俺が虐待お兄さんだった頃にゆっくりを監禁する場所にしていた。 攫ってきたゆっくりが、いざ虐待の際に弱りきっていてはつまらないので、ゆっくり用の遊具を置いて元気でいられるようにしてあるのだ。 そして、畑のほうには待ち望んでいたアイツ。特別ゲストの登場だ。 「きょうからここをまりさのおうちにするんだぜ!!」 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 「ゆっ!おじさん、ここはまりさのおうちだぜ!!ゆっくりでていってね!!」 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 俺はまりさを小屋まで案内してやる。 「「ゆっくりしていってね!!」」 出迎えるのはれいむ姉妹だ。 「やあ、れいむ達!今日からまりさもここでゆっくりさせてあげてね!」 「ゆっ!!まりさがいるよ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ…ゆっくりしていくぜ!!」 準備完了。早速三匹は俺の作ったゆっくり用滑り台で遊んでいる。俺は小屋の戸を閉め、農作業に戻った。 その日の夜。寝る前に小屋に入り込むと、中では三匹が思い思いの場所で寝息を立てている。俺はまりさの頭を掴み、小刻みに振動を与えた。 「ゅ…?ゆぅうぅう…!」 途中で目を覚ますまりさ。しかしその目はトロンとしている。これでは体が火照って眠れまい。見ていると、まりさは手近なれいむに夜這いを掛け始めた。 「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆーっ!!!」 れいむのほうは身体は反応しているが、起きてはいないようだ。まりさが体を揺らすたび、泡立った粘液が二匹の身体を伝う。 「んほおおおおおおっ!!すっきりー!!」 やがて、まりさがすっきりする。夜這いを掛けられたれいむの方も、心なしか顔がすっきりー!の顔になっている。 しばらく待つと、れいむの頭から小さな目が出てきた。交合成功だ。さてまりさ、お前はもう用済みだ。死ぬ前にいい思いが出来てよかったな。 翌日、れいむ姉妹はまりさがいなくなっている事にショックを受けたようだが、それ以上に新たな命を授かったことが嬉しいようだ。 妹れいむの頭の上には蔓が伸び、八つほどの実が生っている。まだ爪の先ほどの大きさだが、いずれ拳大の大きさの赤れいむとなる。 その日はお祝いということで、いつもの屑野菜と一緒に餡子を投げ込んでやった。 ゆっくり一匹分、昨日迷い込んできたまりさの大きさと同じくらいの量の餡子だが、 「うっめ!めっちゃうっめ!」 「まじぱねえ!」 と意地汚く食べていた。 さらに三日ほど経った。小屋からは饅頭共の跳ね回る音は聞こえなくなり、代わりに 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~っくり~♪して~♪いってね~♪」 だの下手糞な歌が聞こえてくるようになった。 エサをやりにいくついでに様子を見ると、実の大きさもビー玉くらいになり、早いものは髪や目や口が形成され、時折ぷるぷる震えている。 れいむ達はそれを見ては顔をほころばせている。そろそろ頃合だな。 その日の夜、俺は再び小屋に忍び込んだ。みると、姉妹は寄り添って眠っている。妹れいむが姉れいむに寄りかかっている状態だ。 なるほど、妹が体勢を崩さないようにしているんだな。 月の明りを頼りに懐からキリを取り出し、先端をライターで炙る。そして、蔓から生えている一番大きな赤れいむに焼けた針を数回突き刺した。 「み゛ゅ゛っ!」 小さな目をカッと見開いて、赤れいむは生涯を閉じる。通常のゆっくりではこんなもので殺せないだろうが、体の小さな赤ゆっくりはそうもいかない。 おお、目と口から煙を噴き出していて笑える。その調子で合計七つの実を焼き殺した。残ったのはやっと目、口が出来始めた実が一つ。 これなら何が起きたか気付くまい。そのまま小屋を出、俺は眠りに就いた。 翌朝、農作業に使う鋤を取りに小屋に入ると、れいむ姉妹は白目を剥いて気絶していた。起きたら赤れいむがほぼ全滅していたのが相当ショックだったようだ。 とりあえず頬をひっぱたいて起こしてやる。 「おい、大丈夫かれいむ?」 「ゆっ…おに゛い゛ざん゛!!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛がしん゛じゃっだよ゛お゛お゛ぉ゛!!」 取り乱して涙やら涎やらを撒き散らしている。おお、きもいきもい。 「まあ落ち着けお前ら。まだ一匹残っているじゃないか。」 「ゆ゛っ゛!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛!!!!」 どうやら気付いたようだ。しかし七匹も死んだという事実はこたえているらしい。涙をボロボロと流して、 「どうじでごんな゛ごどに゛い゛い゛ぃ゛!!」 と叫んでいる。さて、ここからが俺の演技力の見せ所だ。まあ、ゆっくり相手なら誰だって騙せるんだろうが。 「これは栄養失調だな!妹れいむの栄養が足りなかったんだ、このままでは残りの赤ちゃんも死んでしまうぞ!」 「ゆ゛ーっ゛!?え゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛!!!?」 「ごめ゛ん゛ね゛え゛、おがあ゛ざんがえ゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛のぜいで、ごめ゛ん゛ね゛え゛ぇ゛!!!」 あっさり騙された。というかそんなもち肌で何が栄養失調だ。こいつらには屑野菜や生ゴミしか与えていないが、それでも雑草や虫よりは栄養価が高い。 お前らで栄養失調なら野生のゆっくりなんてみんな干からびてるっての。それは置いておいて、演技続行だ。 「残った赤れいむを救う方法は一つしかない。お前達、やれるか?」 「ゆ゛っ゛!!おね゛がいじまず、れ゛い゛む゛のあがぢゃんだずげでぐだざい゛!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛を゛だずげであげでえ゛え゛!!」 よし来た。俺は小刀を取り出し、姉れいむの頭頂部を突き刺して一捻りする。すぐに頭頂部には穴が開き、餡子を覗かせた。 「ゆ゛ーーっ゛!!!おね゛え゛ぢゃん゛にな゛に゛ずるの゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛っ゛!!!」 妹のほうが叫んでいる。一方姉のほうは白目を剥いて痙攣している。そう慌てるな妹よ、次はお前の番なんだから。 今度は妹れいむの蔓を掴み、根元付近を小刀で一周させたあと、少し力を込める。すると、蔓は根ごとすっぽ抜けた。もちろん妹れいむはショックで気絶している。 すぐさま姉れいむの傷口に根の部分を突っ込み、接合部に小麦粉を振りかけてやる。妹れいむの頭も小麦粉で塞ぐのは忘れない。 気付けにオレンジジュースを二匹にぶっ掛けてやれば作業終了だ。 妹れいむは目覚めるなり頭上の蔓がなくなっていることに気付き、 「れ゛い゛む゛のあがぢゃん゛ん゛ん゛!!」 と怒鳴っている。まあ落ち着け。落ち着いてお前の姉貴の頭を見てみろ。 「ゆっ?れいむのあかちゃんがおねえちゃんのあたまにいるよ!?」 「おにいさん、いもうとのあかちゃんになにしたの!ゆっくりせつめいしてね!!」 詰め寄るゆっくり共。うざい、潰したい。いや、我慢我慢。 「妹れいむは栄養失調だからな。健康な姉れいむだったら、赤ちゃんを死なせないで産んであげられるから、差し替えた。これで赤ちゃんは助かるぞ!」 「「ゆーっ!!!!おにいさんありがとう!!!!」」 まあ気にするな。赤ゆっくりを殺したのは俺なんだから。 翌日。他の赤ゆっくりを間引いた結果、残った一匹は栄養を独り占めして破格の成長を遂げた。 通常ならあと三日はかかるところを、すでに目、口、髪、リボンが形成され、 「ゆー、ゆー」 と声を上げることも出来る。生き残ったのはれいむ種だったか。 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」と喋れるようになるのもすぐだろう。明日には蔓から離れるかもしれない。 妹れいむは姉れいむの頭上を見上げ、 「ゆ~♪れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしてね!」 「はやくおかあさんといっしょにゆ~っくりしようね~♪」 と声をかける。一方、姉れいむのほうは微妙な表情を浮かべている。この表情…おそらく俺の企ては成功している。だが、確証が欲しかった。 「おーい、妹れいむ!もうすぐ赤ちゃんが生まれそうだから、お祝いにドアのところにお菓子を置いてあるよ!お姉ちゃんれいむにゆっくりとってあげてね!」 「ゆっ!?お菓子!?取ってくるよ!!」 妹れいむはドアのほうに駆け、散らばったクッキーを舌で掻き集めている。そのとき、俺は確かに無く耳にした。 姉れいむが頭上の蔓…蔓に実った赤れいむを見つめながら 「れいむがあかちゃんのおかあさんだよ…」 と、妹れいむに聞こえないよう呟くところを。 あああああああああ、ニヤニヤが止まらない!!姉れいむのほうは、たった一日蔓を頭に生やしただけで、母性を持ってしまったようだ。 もう、口の両端が目に届きそうなくらいに笑顔が止まらない。 その日、俺一度も休みを取ることなく、全力で農作業を進めた。明日は、あのれいむ姉妹に付き合ってやらなきゃいけないからな…! 翌朝、小屋に入ると赤れいむが生まれる寸前だった。 姉れいむの蔓の上で、トマトほどの大きさに育った赤れいむは身体をブランコのように揺らし、妹れいむはをそれを見て 「がんばってね!がんばってね!!」 と声をかけている。そして赤れいむが一際大きく揺れると蔓から頭がちぎれ、ぽてりと地面に落ち… 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」 鳴いた。妹れいむは感動のあまり目を潤めている。だが、次の瞬間。 「おかあしゃん!おなかしゅいた!!」 赤れいむは。姉れいむに向かって。「お母さん」と言ったのだ。戸惑いながらも、嬉しそうな顔をする姉れいむ。しかし妹れいむは黙っていられない。 「どお゛じでぞんな゛ごどい゛う゛のお゛お゛お゛!!れ゛いむ゛があがぢゃんの゛お゛があざんでしょ゛お゛お゛お゛お゛っ゛!!!」 姉れいむのほうも、悲しそうな顔をして赤れいむから目を逸らす。よく分かっていないのは赤れいむだ。 「ゅ?れいみゅのおかあしゃんはこっちだよ?」 言いながら姉れいむのほうに飛び寄る。妹れいむは半狂乱になって 「ちがうの゛お゛お゛お゛っ!!れ゛い゛む゛があがぢゃん゛の゛お゛があざん゛な゛ん゛だよ゛お゛お゛っ!!!」 と訴える。まあそうなるだろうな、赤れいむは物心ついたときには姉れいむの頭の上だったんだから。 こうなると、気になるのは姉れいむの反応だ。姉れいむは悲しそうな顔をして 「ゆう、あかちゃんのおかあさんは、あっちのれいむだよ。あっちのれいむをおかあさんってよんであげてね…。」 おお、母性愛よりも妹を気遣う家族愛が勝ったか。てっきり妹に向かって「このこはれいむのあかちゃんだよ!」ぐらい言うかと思ったが。 そんな姉の気遣いにも気付かず、妹れいむは赤れいむと姉れいむの間に割って入り、 「おねえちゃんはゆっくりむこうにいってね!!」 と威嚇する。あー、本当笑える、こいつ等。 それからも修羅場は続いた。赤れいむが滑り台の着地に失敗したとき、「おかあしゃーん!」と泣きながら見るのは妹れいむに気を使い、離れている姉れいむのほ うだ。 妹れいむが(俺の用意した)昼飯を持ってきた時も、姉れいむのほうを見て「おかあしゃんもいっちょにたべよ?」といった後、慌てて「ゆっきゅりまちがえちゃ った!」だと。 そのたびに姉れいむは悲しそうな、済まなそうな顔をし、妹れいむは「れいむがおかあさんだよ!!」声を荒げる。そんな光景が昼間中続いた。 夕方になった。赤れいむも学習能力が出てきたのか、ここ三時間ちかく姉れいむを「おかあしゃん」と呼んでいない。今は歌を歌っている最中だ。姉れいむは少し はなれたところでそれを聞いている。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆっくりしていってね~♪」 「しちぇいっちぇね~♪」 俺には不快な音波にしか聞こえないが、ゆっくり共にはそうでもないんだろう。目を閉じて聞き入っている。だがそのとき、赤れいむの悪い癖が起きた。 「ゆ~、おかあしゃんもいっちょにうたお?」 うっかり姉れいむに「お母さん」と呼びかけてしまったのだ。妹れいむの頬が膨れていく。アレはキレてる。相当キレてる。 「なんで!わからないの!れいむが!おかあさんだよ!!」 赤れいむのすぐ近くで地団太を踏むようにジャンプする。赤れいむのほうは本気で怒られて涙目だ。 「もういいよ!!そんなにおねえちゃんがすきなら、おねえちゃんのあかちゃんになればいいんだよ!!」 言いながら、妹れいむは赤れいむに体当たりした。人間で言えば思わず手が出てしまったというところか。 しかしゆっくりだと手が出てしまったでは済まない。その体格差には赤れいむは一メートルほどポヨポヨと跳ね、泣き出してしまう。 瞬間。 妹れいむは。 猛スピードで体当たりしてきた姉れいむに弾き飛ばされた。 一メートルなんてものではない。ノーバウンドで跳ね飛ばされた妹れいむは壁で跳ね返り、赤れいむから少し離れた場所でやっと起き上がる。 その赤れいむまでの距離を遮るように、姉れいむが立っていた。 「れいむのあかちゃんになにするの!!!いもうとでもゆるさないよ!!!!」 ここで母性愛が勝ったー!一瞬睨み合った後、お互いに飛び掛って喧嘩を始める姉妹。 いや、これは喧嘩なんてものではない。転げ周り、お互いの身体に食いつき、跳ね飛ばし、踏みつける。 まさに殺し合いだ。傍目からはネコの喧嘩に見えるが。 俺は赤れいむが巻き添えを食わないよう手の上に乗せてやった。赤れいむは涙を流しながらその光景を見つめている。 やがて、体格差を生かした姉れいむが妹れいむに噛み付いたままのしかかる。 姉れいむが妹れいむに「れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」って言ってたのは一週間前だっけ? とにかくこのままでは死んじまうな。俺は二匹を引っぺがした。 「おにいさんなにするの!!」 「じゃましないでね!!」 で、二匹揃って俺の手の上の赤ゆっくりに気付く。 「「れいむのあかちゃんをはなしてね!!!」」 お互いにその発言が気に入らなかったのか、すぐさま戦闘態勢に入る二匹。 「まあ、待て二匹とも。」 二匹は互いを警戒しあいながら俺のほうを見る。ああ、俺はこの一言を言いたかったんだ。この一言のために、今まで準備をしてきたんだ。 今までの準備が走馬灯のように頭をよぎる。ああ、やっと報われる。このために、潰したい饅頭を潰さずにがまんしてきたんだ。 ようし、言うぞ?言っちゃうぞ? 「そんなに自分の子供って言うなら、この赤れいむをお互いに引っ張って、勝ったほうが母親ってことにすりゃいいじゃん。」 言って、赤れいむを二匹の合間に放り投げる。二匹は一瞬間をおいた後。 「いぢゃい゛い゛い゛いっ!!!お゛があじゃん゛、い゛だいよお゛お゛お!!!!はなじでええ゛え゛え゛え!!!」 「あかひゃんがひたがってうよ!!!!ゆっくいはなふぇええええ!!!」 「そっちがはなへええええええ!!!!」 おお、醜い醜い。姉れいむは赤れいむの髪を、妹れいむは赤れいむの顎を噛み、それぞれの方向に引っ張る。 赤れいむのほうはかわいそうに、二倍近く伸びてしまって口から餡子を吹き出している。 「あかひゃんのあんこがでひゃってるよおおお!!!」 「おねえひゃんがはなへばあああ!!!?」 「おまえがはなふぇええええ!!!!」 一方赤れいむは、体の真ん中から裂け始めている。 「もっちょ…ゆっきゅり…しちゃか…」 でた、断末魔宣言だ。言い終わったと同時に、二匹は吹っ飛んだ。赤れいむが千切れた反動だ。 「ゆ、あかちゃん…は…?」 「れいむの…あか…ちゃん…」 …。 ……。 ………。 「「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」」 食うのかよ!!!しばらくたち、二匹とも口の中のものを咀嚼し終わった時点で、ようやく口の中に広がった甘味の原因に気付いたようだ。 「れいむの…あかちゃんが…いもうとに…」 「おねえちゃんが…れいむのあかちゃんをたべちゃった…」 「よくも…!!!」 「れいむのあかちゃんを…!!!」 「「ゆっくりしね!!!!!」」 再び始まる大乱闘。今度は止める理由も無い。俺は小屋の戸を閉め、家に戻った。あー、井戸水で冷やしておいた西瓜うめぇ。 完全に日は落ちた。小屋のほうからは物音一つ聞こえない。西瓜を食べ終わった俺は、小屋のドアを開けた。 みると、そこら中に散らばった餡子。小屋の真ん中では、千切れたリボンの近くで荒い息を吐く傷だらけのれいむが一匹。 辺りにはゆっくりの表皮や目玉が散らばっている。 コイツ、妹れいむか?姉れいむか?今までは体の大小で判断つけてたんだが、比較対象がなくなっちまってわからない。 れいむのほうは、俺のほうを見ようともせずにふーふー唸っている。さて、どうやって声をかけるかな。 「あーあ。死んじゃったな、二匹とも。」 びくっと震えるれいむ。しかし、その顔はこちらを向かない。 「俺にはよくわからないけどさ。」 言葉を続ける。れいむは動かない。 「あの赤れいむにとっては、どっちも本当のお母さんだったんじゃないかな。」 「ゆ………。」 ゆっくりと出口に這っていくれいむ。そして。 「おにいさん、いままでありがとう…れいむはここからでていくね…」 餡子を片付けた後、小屋の周りを一周してみたが、れいむの姿は無かった。 うん、昔はゆっくりを肉体的にいじめていたが、こういう精神攻めも案外面白いな。 次の獲物はどうやって虐めてくれようか…。よし、今夜は虐待お兄さん復活祭りだ!農家なんてどうでもいいぜ!っひゃあ、虐待だあ!! 数日後、一匹のれいむがドスまりさに討伐された。最近群れに迷い込んできたれいむは、にんっしんっ!しているゆっくりの蔓を片っ端から噛み千切ったのだとい う。 そのれいむは「あかちゃん…やっとあえるね…」と呟き、事切れたそうだ。 /**** 書くのに丸一日かかった。 本当はゆっくりが食虫植物に食われるのを書いていたんだ!でも、 行き詰る→新しいネタ思いつく→メモっておく→もう一度書き始める→行き詰る→新しいネタの続き思いつく→メモっておく→以下ループ。 by町長 /****今までに書いたもの fuku2120.txt 満員電車とゆっくり このSSに感想を付ける
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おまけ 前 れいむの元から逃げ去った2匹の子れいむは、親れいむから逃げるために、方々に散って行った。 1匹は内風呂の中へ、もう1匹は最初に来た植え込みの中に飛び込んだ。 内風呂に入っていった子れいむは、運よく開いていたドアが目に止まり、その小さな部屋の中に飛び込んだ。 しかし、そのドアにはロープが掛けてあり、使用禁止と書かれてあったのだが、子れいむに文字が読める筈もない。 小部屋の隅でしばらく身を隠していると、親れいむの声が内風呂の中に響き渡った。 自分を追って来たと思った子れいむはガタガタ震えたが、どうやら親れいむは子れいむのほうに来る気はないらしく、向こうで壁に体当たりしている音が聞こえてきた。 その後、ドアの開く音と共に、れいむの悲鳴が子れいむの元まで届いてくる。 何をされているのかは知らないが、今まで聞いたこともないような親の絶叫に、子れいむはチビりながら、その声が止むのを待ち続けた。 やがて親れいむの悲鳴も止み、人間の足音が遠さかって行ったが、子れいむは恐怖に足がすくみ、その場から動くことが出来なかった。 そして、神経を減らし続けた結果、余りの疲れにいつの間にか子れいむはその場所で眠ってしまった。 「まったく!! 今日はゆっくりが多くて、散々だよ」 清掃のおばさんが、まりさ親子を崖下に捨て、露天風呂の掃除を終えて戻ってくると、子れいむの入った部屋の入口に掛けられたロープを取って、ドアを閉めた。 閉められたドアには、こう書かれたプレートが填められていた。 “サウナ室” 「ゆっ?」 子れいむは目を覚ました。 一瞬、自分がどこにいるのか分からなかったが、周りを見渡し、すぐに自分がここにいる理由を思い出した。 どのくらいたったのかは知らないが、小さな部屋の窓からのぞく空は、少し夕日掛かっている。 子れいむはまだ親れいむが怒っているのでは震えた。 悲鳴は聞いていたものの、現場を見たわけではないので、まさか親れいむが死んでいるとは夢にも思わなかった。 どうやって帰ろうか? 謝れば許してくれるだろうか? いろいろ考えたが、結局名案が浮かばなかった。 そんな折、子れいむは空腹感に襲われた。 まりさ達と違って、子れいむはお菓子を食べていないのだ。一度感じると、立ってもいられないくらいお腹が空いてくる。 もう帰ろう。お母さんもきっともう怒っていないだろう。 子れいむの餡子脳は、空腹に負けて、面倒事を考えるのを停止させた。 子れいむは、小さな部屋から出ようとした。 しかし、さっき入ってきた入口は、大きな木の板で塞がれていた。 子れいむは、自分が出口を間違えたのかなと、小部屋の中を行ったり来たりしたが、どこにも出られるような場所は無かった。 「ゆうう―――!!! なんで、でられないのおおぉぉぉ――――!!!」 部屋から出られなくて、泣き出す子れいむ。 しかし、ここで泣くことは、ある意味自殺行為に等しいことを、子れいむはまだ知らなかった。 一通り泣き叫んで、子れいむは誰か助けが来るのを待っていた。 窓から見える空は、もうすっかり真っ暗であり、この時期は夜になると、めっきり寒くなってくるのだ。 ゆっくりは寒いのが大の苦手である。 子れいむも、「寒いのはいやだよおおぉぉぉ―――!!!」とまた半ベソをかくも、そこで子れいむは異変に気がついた。 なぜか部屋が暖かいのである。 本来ならもう寒い時間だと言うのに、この暖かさときたらどうだ。まるで春の陽気のそれではないか!! 「ゆゆっ!! あったかくなってきたよ!!」 暖かくなってきて、喜ぶ子れいむ。 空腹なことも部屋から出られないことも一時忘れ、嬉しくなって部屋中を飛び跳ねている。 しかし、次第に状況が一変し出した。 熱さが下がらないのだ。 春の陽気は次第に夏の昼下がりになり、夏の次に秋が来ることはなく、その後もグングン気温が上昇していく。 「たいようさ―――ん!! もうやめでええぇぇぇぇ――――!!!」 子れいむは、余りの暑さに意識がもうろうとしだしてきた。 すでに沈んでいる太陽に文句を言い放つ。 しかし、太陽(笑)は、子れいむの言うことを無視して、どんどん気温を上昇させていく。 室温70度くらいの頃だろうか? 子れいむの座っている木の板が高温になり、同じ場所にじっとしていられなくなった。 「あじゅいおおおおぉぉぉぉ―――――!!! やめでえええぇぇぇぇぇぇ――――――!!!!」 あまりの熱さに、子れいむは飛び跳ね続けるしかなかった。 その間も、子れいむの体からどんどん水分が奪われていく。 泣いたり、チビったりしなければ、もう少しは水分ももったかもしれないが、既に子れいむの体の水分は限界まで搾り取られていた。 遂には、跳ねる力さえ出てこなくなった。 「なんで……れいむがこんな……めにあわ…なく……ちゃなら………ない…の?」 カサカサになった唇は最後にそう呟くと、子れいむは先に行った姉妹たちの元に旅立って行った。 2時間後、水分の無くなったカラカラの焼き饅頭が、温泉客に見つけられた。 植え込みの中に逃げ込んだ子れいむは、適当な方向に逃げて行った。 とにかく親れいむに捕まるまいと、場所も考えることなく精一杯逃げていく。 やがて、子れいむの体力が付き、これ以上歩けないというところで、子れいむは足を止めた。 「ゆひーゆひーゆひー……」 大きく肩で息を付く子れいむ。 後ろを振り返ると、親れいむの姿は見えないし、声も聞こえない。 逃げ切ったのだと、ようやく子れいむは、一息つくことにした。 子れいむはその場でしばらくジッとしていれば、その内親れいむの怒りも収まるだろうと考え、安全そうな草むらに身を隠して、疲れをいやすべく眠りについた。 子れいむが起きたのは、サウナに入った子れいむと、ちょうど同じくらいの時間だった。 すでに空は真っ暗で、うっすら寒い。 もう親れいむの怒りも静まった頃だろうと、子れいむは巣に帰ろうとした。 しかし、その時になって、ここがどこか全く分からないことに気がついた。 「ゆううぅぅ―――!! ここはどこおおおぉぉぉぉ―――――!!!?」 大声で叫んでも反応してくれるものは誰も居なく、子れいむは仕方なく、運良く来た道に戻れることを祈り、適当に歩き始めた。 しかし、そんなことで無事にたどり着けるほど、世の中は甘くない。 元々体力が少ない子ゆっくりで、しかも飯抜き山中歩行をしたおかげで、せっかく体を休めたというのに、すぐに子れいむの体力は限界に達した。 「……もう……あるけないよ……」 子れいむはその場にうずくまった。 すると、目の前の草影がカサカサと動き出した。 初め、親れいむが迎えに来てくれたのかと思ったが、出てきたのはカルガモの親子だった。 子れいむは落胆したが、すぐにあることが閃いた。 このカルガモ達なら、あの温泉の行き先を知っているに違いない!! あそこまで連れて行ってもらえば、後は巣の帰り方は分かっている。 「とりさん!! れいむをゆっくりおゆのところにつれていってね!!」 カルガモに向かって、跳ねて行くれいむ。 本当に危機意識の薄い饅頭である。 人間ならともかく、野生生物の前に饅頭が行くなど、空腹のライオンの前に自分から進んでいく草食動物に等しい。 結果は言うまでもないだろう。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁ―――――!!! なにずるのおおおぉぉぉ―――――!!! れいむはたべものじゃないよおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!」 親カルガモはれいむを咥えると、子カルガモの前にれいむを差し出した。 「やめでえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――!!!! いだいよおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!!」 子カルガモに、チクチクと啄ばまれ暴れ狂う子れいむ。 しかし、親カルガモの体長は60㎝近くもあり、子れいむとの力の差は歴然で、逃げだせるはずがない。 子カルガモは、子れいむをボロボロ溢しながら食べていくも、しっかり下に落ちた皮や餡子も、残さず食べていく。 食べ物を粗末にしないその精神は、飽食になれた外界の人間や、どこぞの饅頭一家にも見習わせたいくらいである。 やがて、子カルガモ達がもう食べられなくなると、半分ほど残った子れいむは、親カルガモに美味しく食べられた。 ここで、一家全員が死亡したこととなった。 結局、この一家の不幸はカルガモに始まって、カルガモに終わることとなったのである。 ~本当にfin~ カルガモの親子って可愛いよね!! なのに、ゆっくりが同じことやっても腹が立つだけなのはなぜだろうww ちなみに帽子の設定は、家族は帽子を被ってもなくても個体認識が出来るということで。 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ カルガモとゆっくり 前編 カルガモとゆっくり 後編 カルガモとゆっくり おまけ このSSに感想を付ける
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「消極的制裁行為」 ゆっくりたちが多く暮らしている、人里に隣接している草原。 ひらひらと宙を舞う蝶を追いかけて、ぴょんぴょん跳ねているのは一匹のゆっくりれいむだ。 れいむは綺麗なお花畑の花を踏み潰しながら、夢中で蝶を追いかけていく。 「ゆっゆっ!ちょうちょさんまってね!!」 ぴょんと大きくジャンプするれいむ。 口をあんぐりと開けて、蝶を飲み込もうとするが…紙一重のところで避けられてしまう。 「ゆぐぐぐぐ!!ひどいよちょうちょさん!!ゆっくりたべられてね!!!」 地団駄を踏むれいむ。しかし、蝶だってそう簡単に食べられてくれるわけがない。 れいむが追う蝶は、そのまま木の上のほうへ上っていった。 「ゆゆ!!まってねちょうちょさん!!」 枝の隙間をぬって飛んでいく蝶。 れいむはそれを目視すると、勢いをつけて大きくジャンプした…! 太い枝の上に飛び乗ったれいむ。その枝を伝って、蝶を追いかける…が。 一瞬の油断だった。焦ってしまったばかりに、れいむは足を踏み外してしまったのだ。 「ゆゆぅ!!おちちゃうよ!!」 このまま地面に激突すれば、無傷ではすまない。 直後襲うであろう激痛の恐怖に、れいむは強く目をつぶった。 がさがさ!!がささっ!!! しかし、れいむは地面に落下することはなかった。 れいむはゆっくりと目を開く。何故か、目に映るもの全てが逆さまだった。 そして、宙に浮いているような不思議な感覚。 れいむ自身には、何が起こったのかわからないだろう。 実は枝から落ちたときに、れいむの髪飾りが細い枝に引っかかったのだ。 その細い枝はそのままれいむの体重を支え、結果としてれいむを地面への落下から守った。 ぐい~ん! 枝の弾力で上のほうへ引き戻されるれいむ。 地面への落下を免れたれいむは…上下逆さまの状態で宙吊りになっていた。 当のれいむも、だんだん状況を理解していく。 自分が助かったとわかると、安心して「ゆっくりぃ~♪」と微笑んだ。 だが、本当の悲劇はここからだった。 十分ゆっくりしたので家に帰ろうと、枝から降りようとする。 そこで、初めてれいむは自分が置かれた状況を、正確に理解したのだった。 「ゆっ!ゆっ!」 宙吊りのままのれいむは、ゆっさゆっさと体を揺さぶる。しかし、枝から自分の身体が外れる気配はない。 髪飾りは、周囲の細い枝としっかり絡まっている…四肢を持たないゆっくりには解くことは出来なかった。 「ゆー!だれかたすけて!!ここじゃゆっくりできないよ!!」 最初は浮遊感を楽しんでいたれいむだが、自力での脱出が無理だと分かった途端助けを求め始める。 しかし…周りには人間はおろか、ゆっくりや他の野生生物もいない。 仮に見つけてもらったとしても、助けてもらえる保障はどこにもないのだ。 「ゆっくりしたけっかがこれだよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」 あれから3時間。 おでこに止まった蝶に「ゆっくりたべられてね!」と舌を伸ばすも届かず、あっさり逃げられた。 あるとき、人里のほうから子供たちがやってきた。誰も居ない寂しさから開放されて喜んだれいむ。 れいむはその喜びを表現しようと、歌を歌い始めた。 「ゆっゆっゆ~♪」 しかし、その歌を気持ち悪がられ「きもーい!」「しね!!」などと罵られる。 「ゆ!!れいむはきもちわるくないよ!!れいむはかわいいゆっくりだよ!!」 とれいむが口答えすると、子供たちは下から木の棒でつついたり、ぺちぺちと全身を叩いたりして れいむの反応を楽しんだ。その間もれいむを罵倒し続ける子供たち。 とうとうれいむは泣き出してしまった。 「ゆっ…ゆゆっ、ゆ゛っぐり゛いいいぃぃぃ!!!」 「うわ!!こいつ泣いてるぞ!!気持ちわりぃ!」「もう飽きたな。早く帰ろう!」 「皆でおやつ食べようぜ!お母さんがクッキー焼いてくれるって!」 宙吊りのれいむを放置して、子供たちは走り去っていく。 そして、事態は一向に進展しないまま、今に至る。 「ゆっくりー!!」と叫んでみても、誰も来ない。 それに、だんだんお腹がすいてきた。 きっと、さっきの子供たちは今頃おいしいおやつを食べているだろう。 そう思うと、れいむの空腹はさらに強くなってくる。 「ゆっくりぃ…」 お腹に力が入らず、声が出ない。 たまに体を揺さぶってみるが、やはり無駄だった。細い枝に引っかかった髪飾りは、びくともしない。 諦めて、宙にぶら下がったままうとうとし始める… そこへ、一人のお兄さんがやってきた。 「お、君はそこで何をやってるんだい?」 お兄さんは何かがいっぱい入った籠を背負っている。 話しかけられたれいむは、ゆっくりと質問に答えた。 「ゆ!ゆっくりひっかかっちゃったよ!!」 「そうか、だから逆さまにぶら下がってるんだね。…それ!」 ぴん!とれいむの体を指ではじくお兄さん。 ゆらゆらと振り子のように揺さぶられるれいむは、ぷんぷんと体を膨らませた。 「おにーさんひどいよ!!ゆっくりたすけてね!!」 「あはは、面白いなぁ♪…よし、今から下ろしてあげるから、ちょっと待っててね」 すると、お兄さんはれいむの髪飾りに絡まった細い枝を丁寧に解いて、れいむを地面に下ろしてくれた。 「ゆゆ!!ありがとう!!これでゆっくりできるよ!!」 「そうかい、じゃあ僕は帰るから、ゆっくりしていってね!」 れいむに背を向けて去っていくお兄さん。 彼が背負っている籠の中身がれいむの目に入ると、れいむは大声でお兄さんを呼び止めた。 「おにーさん!!それなあに!?」 「あ、これかい?これは“りんご”だよ。食べたことないの?」 「たべものなの!?れいむたべたいよ!!ゆっくりちょうだいね!!」 遠慮の欠片もないれいむ。お兄さんの目の前にやってきて、図々しく大きな口を開けた。 「うーん……それじゃあ、お兄さんの家に来てくれるかい?来てくれればりんごをあげるよ」 「ゆ!!いくよ!!おにーさんのおうちでゆっくりりんごをたべるよ!!」 「そうと決まったら早速出発だ!お兄さんの家はこっちだよ」 そうしてお兄さんとれいむは、人里離れたお兄さんの家へと向かった。 お兄さんが扉を開けると、れいむはすごい勢いでその中に飛び込んだ。 昼間から木の枝に宙吊りになっていたから、今まで何も食べてないのだ。 本能に忠実なため空腹には勝てない。部屋のど真ん中に鎮座したれいむは、大声で叫んだ。 「おなかすいたよ!!はやくりんごちょうだいね!!」 「はいはい、今出すからね」 お兄さんは籠の中からりんごを3つ取り出すと、れいむの目の前に置いた。 「むしゃむしゃ…しあわせ~♪」 お腹をすかせていたれいむは、あっという間に3つのりんごを食べつくしてしまった。 「りんごおいしいね!!でもこんなんじゃたりないよ!!もっとちょうだい!!」 「これ以上はダメだよ。残りは明日食べようね」 そう言って、りんごの入った籠を台所に持っていってしまうお兄さん。 れいむは不満そうな顔をしながらも、我慢することにした。 「さて、僕はちょっと用事があるから出かけるね。れいむはゆっくりお留守番しててね」 「ゆゆ!!わかったよ!!ゆっくりまってるね!!」 「じゃあ行ってきます…あ、そうそう、ひとつだけ約束して欲しいことがあるんだ」 お兄さんはれいむの目の前にしゃがみ込んで、神妙な声で語りかける。 ただならぬ雰囲気を感じたれいむは、「ゆ?」と首をかしげた。 「台所にはりんごが沢山あるんだけど…“ぜ っ た い に”食べたらダメだよ」 「ゆゆ!!」 「お兄さんとの約束、守れるかな?」 れいむはしばらく考え込んだあと…ぴょんと跳びはねながら満面の笑みで答えた。 「まもれるよ!!りんごはもうたべないよ!!あしたたべるんだもんね!!」 「そうそうよく分かったね、れいむは偉いね。じゃあ行ってきます。 お土産も買ってくるから楽しみにしててね!」 お兄さんはれいむに手を振りながら、笑顔で家から出て行った。 お兄さんが家から出て扉を閉じると…れいむは一目散に台所へ向かった。 もちろん先ほどの約束は覚えている。覚えているが、れいむはその約束を破るために台所に来たのだ。 台所に入ると、床の上にはりんごが沢山入った籠が置いてあった。 しかし、その籠はかなり大きいため、このままではりんごを食べることは出来ない。 そこでれいむは、ここから跳びはねて籠の中に入ればいい、と考えた。 「ゆゆ…ゆっくりとぶよ!……それっ!」 しかし、れいむが思い描いたとおりにはならなかった。れいむは自分の跳躍能力を過信していたのだ。 れいむの体は籠のふちに当たって、そのままぼよんと床落ちて2,3回弾んだ。 「ゆ!いたい!!いたいよ!!」 バウンドが止まると、れいむは体勢を整えて籠のほうに目をやる。 そこには… 「ゆゆ…やったね!!さくせんせいこうだよ!!」 先ほどの衝撃で倒れた籠が転がっていた。りんごは床の上に転がってしまっている。 予定とは違うが、結果オーライ。れいむは早速りんごを貪り始めた。 「むーしゃむーしゃ!!しあわせ~!!」 それは、れいむにとって最後の“しあわせ”だった。 時間も忘れて、りんごを食べ続けるれいむ。 ふと、遠くから扉を開く音が聞こえ、続けてお兄さんの声も聞こえてきた。 「ただいまー!」 「ゆ゛っ!?」 そこで、れいむは初めて我に返った。 周りには食いかけのりんごが撒き散らされている。 そして、倒れたまま転がっている籠。 れいむは今になって気づいたのだ…このままでは、約束を破ったことがバレてしまう、と。 「ゆっゆゆ!!」 慌ててその場を跳ね回るれいむだが、いまさらどうにかなるわけでもない。 台所にやってきたお兄さんに、決定的な犯行現場を目撃されてしまった。 目の前の惨状に、思わず声を上げてしまうお兄さん。 「これは…!」 「ゆゆっ……お、おにーさんのりんごおいしかったよ!!もっとたべさせてね!!」 こんなことを言いながら、精一杯媚びた笑顔を浮かべるれいむ。 一瞬お兄さんのこめかみに青筋が浮かんだが、れいむはそれを見ていなかった。 「…はぁ」 大きなため息をつくと、お兄さんはれいむの方へと歩み寄る。 何かされると思ったれいむは、強く目をつぶった。 「ゆゆ!!ゆっくりやめてね!!……ゆ?」 次にやってきたのは、痛みではなく浮遊感だった。 目を開けると、れいむはお兄さんに抱きかかえられており、そのまま最初の部屋に連れ戻された。 宙で手を放され、ぽよんと床に落ちるれいむ。 「ゆ?ゆるしてくれるの!?」 お兄さんを見上げて声をかけるが、お兄さんは無言で台所へ行ってしまった。 おそらくれいむが荒らした台所を片付けるためだろう。 とりあえず危機は去ったと思ったれいむは、その部屋でゆっくりし始める。 床の上をコロコロ転がったり、ベッドの上でぽんぽん弾んでみたり。 でも、お兄さんがいつまでたっても戻ってこないので、れいむは退屈になってきた。 ちょうどそのとき、れいむはあることを思い出して…お兄さんのいる台所へと向かった。 そこでは、れいむが食べ散らかしたりんごをお兄さんが片付けている最中だった。 「おにーさん!!おみやげはどこ!?れいむにゆっくりちょうだいね!!」 「……」 満面の笑みを浮かべるれいむに、沈黙するお兄さん。 お兄さんの顔はぴくりとも動かず、台所の片づけを続けている。 何か返答があるのだろうと待っていたれいむだが、いつまでたってもお兄さんは答えてくれない。 「おにーさん!!おみやげちょうだい!!れいむにちょうだい!!」 ぽんぽんお兄さんの目の前で跳ねて見せるが、お兄さんはまったく目もくれない。 邪魔そうにするそぶりすら見せない。 やがて台所を片付け終えると、お兄さんは先ほどの部屋に戻って本を読み始めた。 「れいむをむししないでね!!れいむにおみやげちょうだいね!!」 お兄さんの視界に入るように、喚き散らしながら上下に跳ねるれいむ。 それでもお兄さんはまったく反応しない。まるで、れいむが見えていないかのように… さすがのれいむも、何かが違うと感じ取ったのだろう。 形容できない怖さに身を震わせながらも、れいむは必死にお兄さんの目の前でジャンプする。 「おにーさん!!れいむはここにいるよ!!むししないでね!!」 が、返されるのは沈黙だけ。 お兄さんは本を読み終えると、それを本棚に戻してベッドにもぐりこんでしまった。 歯を食いしばって「ゆぎぎぎ…」と唸るれいむ。 もう何がなんだか分からないが。とにかく怒りと不安だけが蓄積されていく。 「おきてよ!!ねないで!!れいむといっしょにゆっくりしていってね!!」 お兄さんはまったく反応せずすやすやと眠っている。 れいむはお兄さんの体の上に乗ってどんどん跳ねるが、それでも目を覚まさない。 一体どうしたら自分の相手をしてくれるのか、れいむには全然わからなかった。 「ゆ゛っくりしてい゛ってね゛!!!!ゆ゛っくり゛してい゛ってね!!!!」 れいむの貧弱な語彙力では、もうそれしか言うことはなくなってしまっていた。 結局、れいむは疲れ果てて眠りにつくまでの10時間、ずっとお兄さんを起こすべく跳ね続けたのだった… 「……ゆ!?ゆっくりしていってね!!」 差し込む朝日のまぶしさで目を覚まし、いつもどおりの言葉と共に起き上がるれいむ。 周りの状況がいつもと違うので最初は戸惑ったが… ぐるぐる周囲を見回して、少しずつ自分が置かれた状況を理解する。 ここはお兄さんの部屋。そして自分はベッドの上にいる…という具合に。 目が覚めてくると、まず最初に視界に入ったのはお兄さんの姿だ。 お兄さんはテーブルに向かって何かをしている。 興味をそそられたれいむは、跳びはねてお兄さんの足元へと向かった。 「おにーさん!!なにしてるの!?れいむにゆっくりみせてね!!」 黙殺するお兄さん。 お兄さんは味噌汁を啜ったり、目玉焼きを口に運んだり…簡単に言えば、朝食をとっていた。 口に何か物を入れる動作を見て、すぐにそれが食べ物だと分かったれいむは… 「れいむもおなかすいたよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 …お兄さんは沈黙したまま食事を続ける。 れいむはお兄さんの脚に体当たりするが、お兄さんは何事もないように沈黙を守ったまま。 しばらくすると、食事を終えたお兄さんはお皿を抱えて台所に向かう。 「ゆ!!おなかすいたよ゛!!ごはんをもってきてね゛!!」 涙目になりながらお兄さんの前に立ちはだかるが、れいむに見向きもしないお兄さんはそのまま歩き続け… ぽーん!! 「ゆぎゅ!?」 れいむは軽く蹴飛ばされてコロコロ転がり、ゴミ箱にぶつかって止まった。 倒れたゴミ箱からばらばらとゴミがあふれ出し、れいむはその下敷きになってしまう。 「ゆぐっ!!ぐるじいよ!!おにーざんだずげで!!」 ちょうど台所から出てきたお兄さんは、散らばっているゴミを見ると不思議そうな顔をしてれいむのほうへ 歩み寄ってきた。 やっと自分を見てくれた…そう思ったれいむは、心から安心しきっていた。 ところが… 「はぁ…何もしてないのに、どうしてゴミ箱が倒れてるんだろう?」 「ゆ!!れいむがぶつかってたおしたんだよ!!ゆっくりここにいるよ!!」 「うーん…ここら辺は後で掃除しないといけないな」 やはりお兄さんは、れいむなど存在しない、という風に振舞っている。 ゴミを粗方片付け終えると、お兄さんはそのまま本棚の前でこれから読む本を選び始めた。 「ゆぐぐぐぐ!!どうじでむじずるの゛!?れいぶはごごにいるのにぃぃぃぃぃ!!!」 涙声で訴えるれいむ。しかし、その訴えもお兄さんには届いていないようだ。 お兄さんの読書タイム。 れいむは、椅子に座りテーブルに向かって読書するお兄さんの足元で、ずっと喚き続けた。 「おにーざん!!おながずいだよ!!ごはんもっでぎでね゛!!!」 「だいぐづだよ!!いっじょにゆっぐりじようよ゛!!!」 「おねがいだがらごっじむいでよ゛!!れいぶをぶじじないでえ゛え゛え゛ぇぇぇ!!!」 とうとう泣き始めるれいむ。それでも、お兄さんはまったく反応を示さない。 もっともっとお兄さんに呼びかけたかったが、空腹のせいで体に力が入らない。 れいむはそれでも声を張り上げながら、お兄さんの脚に自分の体を擦り付けることで気を引こうとした。 そのままお兄さんは読書を続け…4時間が経った。 「ゆ゛っ…ゆ゛っぐり゛じようよぅ…!」 声を張り上げようとしても空腹は限界に達しており、また喉もかれていたのであまり声が出ない。 どうしてお兄さんは自分にまったく見向きもしないのか。 自分はここにいるのに、どうしてお兄さんは自分がいないように振舞うのか。 れいむは必死に考えたが、すぐに餡子脳の限界に達してしまって考えるのを止めた。 れいむには、お兄さんがとる行動の意味も、自分が昨日約束を破ってしまったことも、まったく頭の中に なかったのだ。 そして12時。昼食の時間である。 お兄さんは電話の受話器を上げて、どこかに電話をかける。 「えーと、味噌ラーメンと…ギョウザ!…そうです、どっちも一人前で」 ラーメンの出前だった。しかし、れいむは昼食のメニューよりも『一人前』という言葉がショックだった。 「ふだりだよ゛!!れいむ゛もいるがら!!だべぼのはふだりぶんだよ゛!!!」 やはり、自分の存在を認識されていない。餡子脳でもそれがハッキリとわかった。 しばらくしてやってきた出前のおじさんから品を受け取り、代金を支払うお兄さん。 味噌ラーメンとギョウザ。確かに頼んだものが届いた、と確認する。 しかし、その目は…れいむの姿をまったく捉えていない。 「はふっ!…あーうまい!!」 ひとりで昼食をとり始めるお兄さん。 その間、れいむは足元でひたすら食べ物をねだり続けるが…答えは返ってこない。 「おながずいだよぅ…ゆっぐりでぎないよぅ…!」 朝昼と2食も食事を抜いているため、れいむは普段の元気を失っていた。 無理やり食べ物を横取りしようにも、テーブルはれいむが飛び移ることの出来ない高さだ。 そして、お兄さんに体当たりしても全然びくともしない。 万策尽きたれいむは… 「ゆ……おねがいだがらゆっぐりざぜでよぅ!!」 その言葉をお兄さんに無視されると、ずりずり這いずってベッドのほうへ向かった。 もうベッドの上に飛び移る体力もないれいむは、そのままうとうとし始めた… それから一週間。 れいむはことあるごとにお兄さんの気を引こうとしたが、その全ては完全に黙殺された。 お兄さんは食事を全てテーブルについて取るので、れいむは横取りすることも出来ないし、 おこぼれにあずかることも出来ない。 まともな食事にありつけないれいむにとって、唯一の食べ物… それは、時折どこからともなくやってくる蚊やハエ、そしてゴキブリだった。 「むーしゃ…むーしゃ…」 …全然“しあわせ”じゃない。 人間に例えれば雑草を茹でて食べるような行為を、れいむは続けるしかなかったのだ。 たまにお兄さんがしゃべる時といえば、それは電話の相手との会話だった。 最初は自分に話しかけてくれたと喜んで跳ねるのだが、すぐにそれがぬか喜びだと思い知らされた。 電話の相手と談笑するお兄さんに背を向けて、れいむはテーブルの下で「ゆっぐりぃ…」とため息をつく。 外に出たい、という願いも無視されるため、家の外に出ることもできない。 れいむの体の構造では、玄関の扉も窓も自力で開けることができないからだ。 「みんなでいっしょにゆっくりしようね!!」 「ゆゆー!!おかーさんおうたうたってー!!」 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆっゆゆ~♪」 「ゆっぐ…いっじょにゆっぐりじだいよぉ……!!」 窓の外で仲良くゆっくりしているゆっくり一家を見て、れいむは悔し涙を流した。 どんなに大声を上げても、外のゆっくり一家は振り向いてはくれなかった… 当然、お風呂にも入れてもらえない。 「すっきりしたいよー!!」とお兄さんの目の前で跳ねてみたこともあった。 しかし、お兄さんはそれに気づかずにれいむを蹴飛ばして、風呂場へ去っていってしまう。 れいむは壁にぶつかって…「ゆっ、ゆっぐ…」と涙を滲ませた。 ただ蹴られただけなら、こうはならない。 「けらないでね!!ゆっくりあやまってね!!」と謝罪を求めるぐらいのことはするだろう。 だが…このれいむは、ただ蹴られたのではない。自分の存在が、お兄さんに認められていないのだ。 お兄さんには自分が見えていない。自分が聞こえていない。お兄さんの中には、自分が…いない。 「れいむ゛はごごにいるのに゛!!どぼじでむじずるの゛!?」 どんなに泣き喚いても、お兄さんはこっちを向いてくれない。慰めてもくれない。 自分はここにいるよ。ずっと前からここにいるよ。だからこっちを向いて! そんな心からの叫びも、ことごとく受け流される。 「ゆっぐ……ゆっぐりぃ……ゆっぐりいいぃぃぃ…!!」 れいむを腐らせるのは、この上ない孤独。 腐っていくのは体ではない、心である。 自分と同じ姿をしたゆっくりの幻覚を見ては、それに話しかけようとするが… 「ゆっぐりじでいっで……あぁぁぁぁぁなんでいなぐなっぢゃうのおお゛お゛お゛!??」 何かの見間違いだったのだろう、それはすぐにかき消えてしまう。 かつてはただの食料でしかなかったハエやゴキブリに対しても… 「ゴキブリさん…いっしょにゆっくりしようね…!」 などと話しかけて、頬ずりまでしようとする始末。 ゴキブリがどこかに去っていくと、れいむは孤独によってさらに心をえぐられるのだった。 そしてさらに一週間がたって… れいむに、転機が訪れた。 「ゆっ……ゆっ…」 意味もなく、意味のない声を出し続けるれいむ。 精神的なダメージは限界に来ていた。 目はすでに輝きを失い、満足な食料を得られないために体中が乾ききっていた。 唯一潤っていると言えば、だらしなく開いた口から漏れている涎ぐらいだろう… お風呂に入れてもらっていないため、髪はボサボサで髪飾りも黄色く変色していた。 「ただいまー」 そこへ、仕事を終えて帰ってきたお兄さんが現れた。 いつもなら目の前のれいむの存在などまったく気にしないで、ベッドで休憩するのだが… 今日のお兄さんは、いつもとは様子が違った。 「…え、れいむ?」 「ゆっ!?」 テーブルの下に篭っていたれいむは、最初何が起こったのかわからなかった。 お兄さんが、二週間ぶりに自分の名前を口にした。 れいむは驚きと喜びのあまり、うまく声が出なかった。 でも…気のせいではない。お兄さんはじっとれいむの方を見ている。 お兄さんの目には、確かにれいむの姿が映っているのだ。 「れいむ…やっと帰ってきたのか!!今までどこに行ってたんだ!?」 そう言ってれいむを抱き上げ、強く強く抱きしめる。 れいむは苦しくてたまらなかったが、それよりもお兄さんが自分を見てくれたという喜びが勝った。 今なら…今だけなら、どんなに強く抱きしめられても、我慢できる。 とめどない涙で前が見えなくなっても、全然気にならなかった。 お兄さんがれいむを放すまで、れいむは抱きしめられたままゆっくりし続けた。 これでやっとゆっくりできる。もう一人ぼっちじゃない。 これからはお兄さんと思う存分ゆっくりできるんだ…! そして、れいむをベッドに置くとお兄さんはれいむを見下ろして問い始める。 「今までどこに行ってたんだ!!勝手に出て行ったらダメじゃないか!!」 「ゆっ!!れいむずっどごごにいだよ゛!でもおにーざんがむじじだんだよ゛!!」 「はぁ?どうしてそんな嘘をつくんだ!ずっとれいむを心配してたお兄さんの身にもなってみろ!!」 バン!!とテーブルを強く叩く音に、れいむは身震いした。 「で、でも゛!!ほんどだよ゛!!れいむはずっどゆっぐでぃおうぢにいだよ゛!!!」 「まだ言うか…そんな嘘をつくれいむとはゆっくりできないな」 「ゆ゛!?」 “れいむとはゆっくりできない” いやな予感がした。 よくわからないけど…よくわからないのに、れいむは震えていた。 何かが怖い。それが何なのか分からないけど、とにかく怖い。 「れいむがそういう嘘をつくのなら……お兄さんは『一人でゆっくりする』よ」 びくっ!! 何もされていないのに、れいむの体が痙攣した。 脳裏に思い浮かぶのは、お兄さんに無視され続けた二週間の出来事。 次の瞬間には、れいむは先ほどの態度と打って変わって、泣き叫びながら必死に謝罪し始めた。 「いやだあああああああおぁっぁぁぁ!!!ひどりでゆっぐりじないでええ゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇ!!! れいむもいっじょにゆっぐりざぜでよお゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「『一緒にゆっくりさせてください』…だろ?」 「いっじょにっ!!おねがいでずがら!!いっじょにゆっぐりざぜでぐだざい゛い゛い゛ぃぃぃ!!!」 「よし、そこまで言うならしょうがない。許してあげるよ!」 普段どおりの、優しいお兄さんだった。 それから。 お兄さんとれいむは、いつまでも一緒にゆっくりし続けた。 たまにれいむが何か文句を言うと、お兄さんは優しくこう問いかける。 『一人でゆっくりするかい?』 そう問いかけてやれば、れいむは必ず文句を言うのを止めた。 不味いご飯も我慢した。三日お風呂に入れてもらえなくても我慢した。 外に出してもらえなくても我慢した。遊んでもらえなくても我慢した。 砂を食べさせられても我慢した。熱湯を飲まされても我慢した。 目にわさびを塗られても我慢した。舌にからしを塗られても我慢した。 頭に穴を開けられて、餡子を少し吸われても我慢した。 かなづぢで体中を叩かれても我慢した。釘で貫かれても我慢した。 体の一部をちぎられても我慢した。自慢のリボンを取られても我慢した。 髪の毛を引きちぎられても我慢した。タバコの火を押し付けられても我慢した。 舌をちぎられても、目をえぐられても、とにかく我慢した。 ただただ、あの一言が怖かったから。 『一人でゆっくりするかい?』 その言葉が聞きたくないから、れいむは我慢し続けた。 お兄さんとれいむは、いつまでも一緒にゆっくりし続けた。 にっこり微笑むお兄さんに、原形をとどめない顔で微笑み返すれいむ。 お兄さんは…とてもとても、優しかった。 GOOD END あとがき いつもよりあっさり、それでいてマイルドに仕上がったと思います。 ごゆるりと… 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 − − − 1 日 目 − − − 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 − − − 7 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 − − − 1 0 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 − − − 1 2 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 − − − 1 7 日 目 − − − 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 − − − 2 0 日 目 − − − 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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『まりさ☆りざれくしょん!(後編)』 22KB 虐待 観察 日常模様 現代 細かい技術云々はスルーしてね たくさんでいいよっ 以下:余白 『まりさ☆りざれくしょん!(後編)』 三、 あれから、れいむとまともに顔を合わせることができなくなった。 「まりさが助かればそれでいい」。平然とそう言ってのけたれいむの真意が理解できないのだ。 れいむは判っていたのである。雨が降って、ありすとぱちゅりーが永遠にゆっくりしてしまう未来図を。はっきりと予見していたはずなのだ。 あの言葉から察するに、れいむはありすとぱちゅりーを見殺しにしたのだろう。 まりさにはれいむの事が分からない。 あんなに優しくて賢いれいむが、何故仲間を見殺しにするような選択肢を選んだのか。考えれば考えるほど何も分からなくなっていく。 まりさが閉じていた目をそっと開いた。 (れいむは、いったいどういうつもりなんだろう……) 神様のように感じていたれいむの存在が理解できなくなると、途端にそれが恐ろしい何かに変貌してしまったかのように感じた。 (ありすとぱちゅりーのことは、えいえんにゆっくりしてしまってもいいと……おもってたのかな) そう考えると何故だか冷たくて寂しくて悲しくなってしまう。れいむを優しいゆっくりだと思っているまりさにとって、それは余りにも残酷な展開だった。 最近では食料を探しに行くときも、おうちに帰ってきたときもれいむの姿を見かけない。 一度、おうちを訪ねてみようかと思ったこともあったがそれを実行に移すことができなかった。 まりさはれいむを怖がっていたのである。自分よりも力を持つ者が、真意も読めないままに近くにいればそれは畏怖の対象となるだろう。 「まりさ」 「……っ!」 また、これまでのように巣穴の外かられいむがまりさに声をかけた。 つい昨日までその声にどうしようもない喜びを感じていたはずなのに、今はそれが微塵も感じられない。 もちろんれいむの方にそんな気は毛頭無いのである。一方的にまりさが怯えているだけだ。 好きなはずのれいむの声がやたらと大きな重圧となって、まりさに重くのしかかった。 「まりさ。いるんでしょ?」 「いま、いくよ……」 ずりずりとあんよを這わせて巣穴の入口へと這うまりさ。そのあんよの進みは遅い。 葉っぱの扉を押し開けて外に出るといつもと変わらぬ無表情のれいむがそこにいた。ぼんやりとまりさを見つめている。 まりさは無意識に視線を逸らした。 「どうしたの、まりさ。れいむのことがきらいになっちゃったの?」 「そ、そんなことないよ……」 「ほんとうに?」 「ほ、ほんとうだよ……。でも……」 「でも、なんなの?」 「まりさ、れいむのかんがえていることがすこしもわからないよ。だから、れいむのことをおしえてね。れいむがなにをかんがえているのか、しりたいよ……」 「…………」 れいむが動きを止めた。 まりさはれいむの心を離さぬようにその虚ろな瞳を見据え続けている。 何も知らなかったのだ。まりさは何一つれいむのことについて知らない。ミステリアスとかそういう形容を超越して、何も解らないのである。 最初はそれを知りたいという気持ちが恋へと繋がった。だが今は違う。知らなければ怖いという感情のほうが先行しているのだ。 「ゆ?」 まりさの言葉を無視したまま、れいむが森の奥へと視線を向けた。まりさが顔を傾げてそちらの方を見る。 (……どうしたのかな……?) 「まりさ。いまから、れみりゃがくるよ」 「ゆ゛っ!?」 死の宣告に等しいことをさらりと言ってのけるれいむ。まりさが口を開けたままその動きを止めた。 れみりゃの活動時間は夜。今はどう考えても日中だ。まだ正午にすらなっていない。こんな時間に活動するれみりゃなどいるはずがないのだ。 困惑し混乱しかけるまりさの前にれいむが無言で立ちはだかった。 すると。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどぉ!!」 「ゆ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!! れみりゃだあ゛ぁ゛ぁ゛!??」 れいむの予告通りに飛来してくるれみりゃ。その数、三。 真っ昼間だというのに活発に動くれみりゃたちは既にまりさとれいむを標的に定めているようだ。一斉に急降下してくる。 まりさは思わず泣きながら顔を背けた。ぎゅっと目を閉じ、口を真一文字に結ぶ。それはささやかな死に対する抵抗。命を食いちぎられる痛みに対して唯一取れる防御策。 ぶるぶる震えて動かないまりさ。しかし、予想に反してその痛みはいつまでもまりさを襲うことはなかった。 恐る恐る目を開く。 そこにはまりさの目の前で固い木の枝を咥えたれいむがれみりゃの牙を受け止めている姿があった。 まりさが目を点にしてその様子を見つめる。がっぷり四つと言ったところか。れいむもれみりゃも微動だにしない。 「れい……むっ……!?」 「まりさ……なにをぼーっと、してるの……? ゆっくりしてないではやくにげてね……」 「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅ!??」 れいむと組み合っているれみりゃの後方からもう一匹れみりゃが突っ込んできた。体勢を変えて間一髪で回避するれいむ。みょんより強いというのも伊達ではないらしい。 更にもう一匹。それがまりさ目がけて飛んでくる。 れいむと目が合った。れみりゃ二匹を相手にしていれば、当然まりさへの援護は期待できない。 「う……うわぁぁぁぁぁ!!!!」 れみりゃの鋭い牙がまりさの頬をざっくりと切り裂く。刹那、痺れるような痛みが患部を襲い、そこから中身の餡子がぼとりと落ちる。 顔面蒼白になるまりさ。激痛と漏れ出した自分の中身を見て思わず絶句する。おそろしーしーを漏らしながらあんよを僅かながらも動かすことができなかった。 「ゆひ……ゆひぃ……」 滝のように涙を流して情けない声を漏らし、顔だけ後ろへ後ろへと行こうとしているようだがその場から動くことができない。 それを見たれみりゃが「うー☆」と楽しそうに笑い、まりさの餡子が少量付着した牙を見せて羽をぱたつかせている。 こうなってしまった通常種はもはやどうすることもできない。永遠にゆっくりしてしまうまで、捕食種の牙で引き裂かれ続けるだけだ。 それをまりさもれみりゃも理解しているのだろう。敗者の嘆きと勝者の笑みが両者の間で混じり溶け合う。 仮にまりさが他のゆっくりと比べて肝の据わっているゆっくりだったとしても、跳ねればどんどん中身が零れていく。皮が破れるということはゆっくりにとって致命傷なのだ。 れみりゃはわざとらしくまりさの周囲をぐるぐる飛び回っていた。 その残酷な笑みが、牙が、まりさの視界の中で出入りを繰り返している。 「ゆ゛ぐっ……!!」 「!! れ、い……む……」 れいむの声。それに対して向けられるまりさの消え入るような声。それらをれみりゃたちの「うー☆ うー☆」という歓声が掻き消していく。 しかし、そんな事に気を取られている暇はなかった。 れみりゃの牙がまりさの左目を捉えて、それを力任せに抉り出したのである。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁ゛あ゛!!!!!」 失われた左目。そこから口のラインにかけて引き千切られてしまったまりさ。まりさは気が狂ったように泣き叫んで地面をのた打ち回っていた。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー!」 「や゛べでぇ゛ぇ゛!!! ばでぃざのおべべをだべな゛い゛でぐだざい゛ぃ゛ぃ゛!!!」 まりさの視界には映し出されていないが、二対一を強いられていたれいむも顔の数カ所を食いちぎられていた。揉み上げも片方地面に転がっている。餡子も撒き散らされていた。 もともと暗くなりかけていたまりさの視界が更に闇に染められていく。 それでも、れいむはあれだけの傷を負いながらもいつもと変わらない表情をまりさに見せていた。 (……え……?) その極限状態の中で、初めてまりさはれいむに対する違和感に気が付いた。あるいは、気にしないようにしていた部分に対して何らかの確証を得たのか。 れいむのあの表情。ほとんど変化することのない表情や態度。まりさはそれをれいむの感情表現の方法が乏しいせいだと思い込んでいた。 自分よりも遥かに痛みに対して強い耐性を持っているのだろう。いったいどうすればそんな風に自分も強くなれるのだろうか。そう考えていた。 しかし、まりさもれいむもそうだが、今負っている傷は“痛みへの耐性”がどうのこうのと言えるような代物では到底ない。 まりさの餡子脳がようやくフル回転を始める。おかしい。どう考えてもおかしい。 そういう視点でこの場を改めて目視すると、あんな異常なダメージを全身に負いながら表情一つ変えないれいむに対して、れみりゃは“畏れ”を感じていないのだろうか。 相変わらず「うー☆」と言いながら機械的にれいむに対して牙を突き立てるのみである。 「まりさ。ごめんね」 不意にれいむが口を開いた。 まりさの展開していた思考が現実へと引き戻される。 いつのまにか、まりさを攻撃していたれみりゃもれいむの方へ加勢に入り、れいむは三匹がかりで牙による蹂躙を為す術なく受け続けていた。 れいむの右目が爆ぜる。リボンなどはとうの昔に破り捨てられ、綺麗だった黒い髪もれみりゃの涎と泥にまみれ見る影もない。 食い破られた顔からは致死量に近い餡子が漏れ出しており、それは既に一カ所や二カ所ではなくなっている。 片方の揉み上げと黒い髪の毛が残っていなければ、そこにれいむ種というゆっくりがいることに誰も気づかないだろう。 そんなボロボロの状態であるはずのれいむ。それなのに。 あの落ち着き払った表情は何だと言うのか。顔の半分近くを損壊させていながらも、まりさには確かに感じ取ることができた。あれはれいむの“いつもの表情”に他ならない。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃ゛!??」 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 まりさのお下げに噛みついた一匹のれみりゃがそれをブチブチと音を立てて引き千切る。左のこめかみ辺りを刃物で突き刺されたかのような激痛がまりさを襲った。 「い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」 右目と左目の在った場所から涙が流れる。 滲んだ視界の片隅ではれいむがれみりゃたちに食い散らかされている真っ最中だった。 時折れいむが痙攣を起こしているかのように顔全体を跳ね上げるのは、れみりゃの咀嚼によるせいだろう。れいむは既に完全に抵抗する手段を失っていた。 「まりさ」 「!!!」 れいむの声に対してまりさが目を見開く。 やたらとれいむの声がまりさまでしっかりと届いた。抑揚のない、感情が籠っているように感じない……“冷静”だと思っていたれいむの静かな声。 「まりさ。げーむおーばーだよ。ありすとぱちゅりーはたすけておくべきだったのかもしれないね。そうしたらふたりをつかってれみりゃからにげられたかも」 「……?!」 ゲームオーバー。確かにれいむはそう言った。 この期に及んでいったいれいむは何を言っているのだろう。そんなことよりもあんな状態で流暢に喋ることができる理由は一体何だというのか。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 同じ言葉を繰り返しながられいむの存在を少しずつ食らっていくれみりゃたち。 まりさはそれを薄れゆく意識の中でぼんやりと見つめていた。 「“また”、しっぱいしちゃったよ。“まえのとき”は“なかま”がおおすぎて、やられちゃったけど……やっぱりれいむひとりじゃきびしいね」 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 れみりゃの口がれいむの最後の一かけらをその中に収める。 れいむはまりさの視界から消えてしまう直前まで、残った左目でまりさのことを見続けていた。 「まりさ……“またね”」 最後の最後までれいむは淡々とした口調でまりさに別れを告げた。 まりさにはもう何が何だか分からない。れいむの事が分からない。何一つとして分からない。 翻るれみりゃの翼。迫りくる牙。貼り付けられたかのような笑顔。それらがまりさの視界全てを覆い尽くす。 (まりさ……えいえんにゆっくりしちゃうんだ……) 口を壊されたまりさはもはや喋ることすらできない。頬に、あんよに、額に、れみりゃたちが一斉に牙を立てる。 それなのに抵抗することもできない。激痛に叫び声を上げることも、身を捩じらせることも許されていなかった。ただ、食糧としての最期を迎えるのみ。 れみりゃたちは容赦なくまりさを食いちぎり、ばらばらに引き裂いていった。邪魔だと判断されたのか帽子はとっくに投げ捨てられている。 餡子が口から噴水のように吐き出された。まりさが“その時まで”は生きていたという証拠だろう。 あとは物言わぬ饅頭として、れみりゃたちにその全てを食らい尽くされた。 それがまりさの“今回の最期”だった。 四、 「あー、もうっ! なによこのクソゲー! ホント、初見殺しにも程があるわねっ!!!」 「基本的に姉ちゃんの操作が下手なだけだよ。今ぐらいのれみりゃだったら、一匹でもどうにかなるし……。攻略サイトでも読んでみたら?」 「うるさいうるさいっ!! 私は一周目は自分でクリアしないと気が済まないタチなんだっ!」 液晶テレビには真っ黒な画面と“GAME OVER”という白い文字が映し出されていた。そこに姉弟の表情も映りこんでいる。 弟は姉からコントローラーを奪い取ると、ボタンをカチャカチャと操作して次の画面へと進ませた。 「あははっ! でも、プレイ時間は前よりも一時間くらい増えてるよっ! でも総合評価はDランクだってさ」 「ぬぅ……。ちょっと私よりもゲームが上手いからって調子に乗ってんじゃないの……っ!?」 「事実を突きつけただけだよ」 昨今、ゲーム業界の発展には目を見張るものがある。 数年前は絶対に無理だとされていたことが、今は現実と成り得るほどに世界全体のプログラミング技術は向上し続けていた。 従来のゲーム……特にRPGというジャンルについては登場人物を操作し、そのキャラクターたちに起こる様々なイベントをプレイヤーが追体験してそれを楽しむものだった。 それが少しずつ変化してコントローラーを使わずに自らの動きで画面内のキャラクターを動かす体感型のゲームが発展していく。 これからも月日を重ねるごとにゲームというジャンルは進化を続けていくだろう。そんな進化の途中に生み出されたゲームがこれだった。 『Yukkuri Box 365』。 ネーミングはどう考えてもかつてPS3と並び称されていたゲーム機のパロディである。余談だが現在はPS5が発売されていた。 『Yukkuri Box 365』(以下:『YB365』)は大手ゲームメーカーが開発した、ソフト内蔵型の新しいハードだ。 ゲームの内容は至ってシンプルで、一匹のゆっくりが天寿を全うするまでプレイヤーがパートナー役となりそれを支え、様々なイベントをクリアしていくというもの。 プレイヤーはコントローラーを使って操作キャラである“パートナー”を動かしてゆっくりをフォローすることができる。 また、キーボードを使って話しかけたい言葉を入力すると、自動的に“ゆっくり口調”に変換されて“パートナー”とチャットのように会話をすることもできる。 この二つの機能を使って、ゆっくりを誘導したりピンチから助けたりしながら生存時間を競っていくというゲームなのだ。 CEROはZ指定であり十八歳未満は購入できない。理由はもちろん暴力的なシーンが盛りだくさんだからである。 無表情のれいむ。感情の乏しいれいむ。それは姉が“操作”していた“キャラクター”だったのだ。 そして、まりさは……。 「それにしても酷いゲームだよねぇ、これ。ゆっくりの命をなんだと思ってるのかしら」 「姉ちゃんが言っても全然説得力ないけどね。それに……ほら、ちゃんと生きてるよ。まだ、“コンティニュー”できるみたいだし」 「本当に“あのまりさ”もタフよね」 「すごく生意気な野良ゆっくりだったからね。僕もそれを狙ってあいつを連れてきたんだし」 「でもさ。その生意気な性格も今はほとんど無いよね。ゲームをやり始めた頃はもうちょっと生意気な口調だったような気がするけど」 「そりゃあ、何回も何回も死ぬのを経験してたら性格も大人しくなっていくだろうね。と言うよりも、もう精神的にギリギリなんじゃないかな……? 実は」 そんな会話をしながらチラリと横目で一点を見る姉弟。そこには『YB365』が置いてある。 箱型の機械の横部分に電源スイッチがある。反対側からは三本のコードが伸びており、それぞれコンセントと液晶テレビ、キーボードに繋がっていた。 そして、上部。そこからは四本のコードが伸びている。この四本のコードは構造がよく分からないが高精度の電極のようなものだ。 箱の中には街で捕まえてきた野良まりさがセットされており、四本のコードはその野良まりさに突き刺さっていた。 電極は画面に映し出されたまりさに、野良まりさの感情や行動を伝える役目を果たしている。 ゲーム中にまりさが受けた痛みや苦しみもまた、箱の中に閉じ込められた野良まりさにダイレクトに伝わるという仕組みだ。 もちろん、ゲーム中にまりさが死んでしまえば箱の中の野良まりさも、それをリアルに追体験してしまう。 しかしそれが原因で野良まりさが死んでしまうようなことはない。あくまでゲームの中の出来事はゲームの中だけのものである。 寿命は野良まりさ本体に依る。 つまり野良まりさが寿命で永遠にゆっくりしてしまうまでコンティニューを続ければ、ひたすらに野良まりさは“死”の追体験を繰り返す事になるのだ。 「ところでこのまりさ、何回死んだの?」 「え? ……ちょっと確認してみるよ。えーと……百五十四回」 「姉ちゃん、死なせすぎだよ。ゲーム下手糞にも程があるよ」 「いちいち一言多い!!」 「シナリオモードばっかりやってるからだよ。たまには観察モードでもやってさ……こいつのスペックを把握しないと」 「え? そんなことできんの?」 「説明書読みなよ」 『YB365』には二つのモードがあるのだ。 姉がやっていたのはシナリオモードである。全二十ステージで構成されており、ステージが進むほど難易度が上がっていく。ちなみに姉が撃沈したのは第一ステージのラストだ。 キノコ狩りも、ありすやぱちゅりーと体験した雨も、れみりゃの襲来もすべてゲーム中のイベントである。 それに対してもうひとつ用意されている観察モードは一切のイベントが起こらず、ひたすらにゆっくりが活動しているのを見ているだけというものだ。 代わりに天候・気温・季節などの調節をプレイヤーの手動で行うことができ、ゆっくりがどういう状況下でどういう行動を取るのかシミュレートすることができるのである。 それに基づいてシナリオモードの戦略を練ったり、行動パターンを把握してよりスムーズなゲーム展開ができるようにするのだ。 「姉ちゃん、冬が来たらイベントが始まる前にゆっくり死ぬよ多分。冬のときにどうすればいいか分かる? どんだけ活動時間短くなるか分かる?」 「わ、……分からない……」 「試しに僕がやってみるよ。観察モードだから、姉ちゃんも見ておけばいいよ」 「うぅ……」 そう言って観察モードを立ち上げる弟。 画面の中にはまりさが映し出されていた。先ほどの“死”から僅か十分弱で再び強制的に目覚めさせられたのである。 まりさは「ここがどこだかわらないよ」と言いながら不安そうに周囲をきょろきょろ見渡していた。それを見ていた姉がうっとりとした表情を浮かべる。 「やだ……なにこれかわいい」 「見てるだけの方が楽しいって言う人もいるくらいだからね……。でも……こんなこともできるんだよ」 弟がメニュー画面を開き、「気温」にカーソルを持っていく。その設定を二十四度から一気にマイナス三十度まで下げた。 すぐに画面の中のまりさに変化が訪れる。拡大すると歯をガチガチ鳴らして凍えているようだった。凍りついた涙が頬にへばりついている。 「ざ……ざぶい゛……よ゛……ゆ゛っぐり゛……でぎ、な゛……。……も゛っど……ゆ゛っぐ……ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 画面が暗転して「コンティニューしますか?」との文字が映し出された。一分経たないうちにまりさは“再び死んだ”のである。 姉はキョトンとした目でその様子を見つめていた。 弟がすぐにコンティニューを選んで観察モードを再開すると、また「ここはどこぉ……」などと言いながら周囲を見渡すまりさが画面に映された。 コンティニューされる段階で自分が何をやっていたのか強制的に忘れさせられるのである。しかし、記憶自体は本体の野良まりさが持っているのでおぼろげに引き継がれる。 百五十回ものゆっくりできない死の記憶は蓄積されていき、やがて本体の野良まりさの精神を壊すだろう。 言い換えればそれが『YB365』の寿命と言ってもいい。もっとも、別のゆっくりを捕まえてきて箱の中に入れればいくらでも替えがきくのではあるが。 画面内を不安そうに這い回るまりさの周囲に十五匹のれみりゃが配置された。弟がメニュー画面を使ってまりさの周囲にれみりゃを放ったのである。 まりさはしーしーをぶちまけてその場で固まってしまう。れみりゃたちは一斉にまりさへ飛びかかった。一瞬で餡子を飛び散らせて絶命するまりさ。 すぐに画面が暗転して「コンティニューしますか?」の文字が表示される。まりさは、また死んだのだ。 そこから更にもう一度コンティニュー。 「ゆっくりしていってね……?」と不安そうな声を出すまりさ。 今度は天候を台風に設定した。途端に暴風と雷雨が発生してそれがまりさを蹂躙する。 最初は必死になって逃げ回っていたのだが、帽子が風で吹き飛ばされるわ、それを追いかけて木の下から飛び出し雨に打たれて溶けて死ぬわで、またそのゆん生を終了した。 暗転。ゲームオーバー。コンティニュー。画面に表示されるまりさ。気温を五十度に設定。水分を失い、五分と経たないうちに干からびるまりさ。ゆん生の終了。 暗転。ゲームオーバー。コンティニュー。画面に表示されるまりさ。紆余曲折を経て、ゆん生の終了。 何度も何度も生き返る。ゲームの中に閉じ込められて、ひたすらに死ぬことだけを繰り返していく。 「観察モードはセーブできないから気をつけてね」 「え? じゃあどうやってずっと観察するの……?」 「これは練習、っていうかいろんなシチュエーションでゆっくりがどんな反応をするか見るためのものだからなぁ……。人によっては観察モードしかやらない人もいるけど」 「ずっと電源つけっぱなしなの?」 「うん。でもそれをすると箱の中のゆっくりがすぐに体力消費して死んじゃうからね……。個人的にはあんまりお薦めしないよ」 無意識にコンティニューをしてしまったのか、また草原の上にまりさが一匹ぽつんと映し出されていた。 弟は無言でメニュー画面を開き、「観察モードの終了」を選択する。 「ゆ゛ぶべぇ゛ッ??!!!」 画面内のまりさが爆発したかのように弾け飛んだ。直後、画面が暗転してタイトル画面へと戻る。 「え? わざわざ死ぬの?」 「仕様だよ。記憶が次のプレイに引き継がれないように、観察モード終了と同時に必ず死ぬんだ」 「へぇ……結構、考えてるのね……」 「でも、今のまりさは本当に無駄死にだったね。まぁ、実際にこいつが死んだわけじゃないんだけど」 そう言って『YB365』の箱をコンコンと叩く弟。 「久しぶりに“電池残量”確認してみる?」 「えー……でも、気持ち悪いし……」 「大丈夫だよ。専用の箱に閉じ込めてあるんだから」 『YB365』の電源を落とし、本体に手をかける。それから慣れた手つきで箱の表側の蓋を外した。 「うわ……」 本体の中にもう一つ箱がある。“ソフト”の役目を果たしている野良まりさだ。姉が思わず目を背けるのも無理はない。 真っ白になった金髪が抜け落ちて箱の底部に溜まっている。それを覆い隠すかのようにしーしーとうんうんがへばりついていた。 見開かれっぱなしの目玉は乾燥しているのが目視で分かるくらいにガサガサの状態になっている。干からびた頬の皮はところどころが剥がれてしまっていた。 半開きの口から垂れ下がるしわくちゃの梅干しのようになった舌。歯は一本も残っていない。帽子だけがあの日捕まえてきたときのままだ。 弟が本体の音量調節を最大まで引き上げると、微かに呻き声が聞こえてきた。 「お……ね、が……じば……。こ…………て……く……、だ……さ…………。ころ……じで……。こ……ろ……し……て……」 その瞳には何も映し出されていないだろう。姉弟の声も届いていないだろう。 何度も何度も死んだまりさは憔悴しきった様子で虚空に向けて声を絞り出す。それはいったい誰への願いだろうか。 うわ言のように「殺して」と繰り返すまりさを見て、弟はクスクス笑っていた。 「上級者はね……いや、ちょっと頭のおかしい人たちかな……」 「何よ……」 「最初の十回くらいしかできないプレイが一番楽しいんだってさ」 「どういうこと?」 「この蓋を開けた状態で、ヘッドフォンをつけて初回プレイをするんだ」 「それって……」 「そう。最初の“死”が一番苦しむ表情と叫び声が凄いんってだ。直前まで元気で生意気な口ばっかり利いてるゆっくりがいきなり絶叫するのは、堪らないらしいよ」 「私には理解できないわね……。私はシナリオモードがクリアできればそれでいいもん」 「ホント……。このゲーム、いったい誰が……誰の為に作ったんだろうね」 そう言いながらそっと『YB365』の箱の蓋を閉める弟。音量を消してしまえばこの中に野良まりさがいる事など当事者たちしか分からないだろう。 もう一度電源を入れる。幾つかの画面の切り替わりを経て、再びまりさが映し出された。 弟がクスクス笑いながら、メニュー画面を開いてまりさの満腹度というゲージを一気に下げていく。 するとまりさは「ゆっくり、おなかが……すいたよ……」と途端に憔悴してしまう。 画面を拡大すると顔面蒼白のまりさがはらはらと涙を流していた。それを見て思わず失笑する姉弟。 またゲージを元に戻してやるとぴょんぴょん草の上を跳ね始める。 箱の中の野良まりさが本当の意味で永遠にゆっくりしてしまうまで、野良まりさがゆっくりできる日は絶対に訪れないだろう。 このゲームは“命を弄ぶゲーム”だった。 『YB365』に収められたゆっくりは一生、この仮想空間から抜け出すことができない。 何度も何度も死んで、あるいは殺されて、遊ばれて。また何度も同じ場所に呼び出されて、それから死んで。ひたすらにそれを繰り返す。 この世界ではゆっくりは生き物として扱われていなかった。ゆっくりが“動くゴミ”と称されるようになって随分と長い時間が経っている。 街で見かけたゆっくりは全て例外なく殺すようになった世の中だ。今更、そんな価値の無い命がどう扱われようと誰もそれを咎めようとはしなかった。 この世界においてゆっくりとは人間たちの玩具でしかない。 それも壊してしまおうが失くしてしまおうが、掃いて捨てるほどそこらを這い回っているゆっくりたちだ。これ以上ない安い玩具だった。 『YB365』についても、インターネットでは“ゴミの有効利用”などの書き込みも多く、幅広い層に受け入れられているようだ。 今日も、この箱の中に入れられたゆっくりがゲームの中で死に、現実で死ぬような苦痛を味わいながら、またゲームの中で蘇る。 壊れない玩具が誰にも気づかれず泣き叫ぶ。 死ぬまで。 ずっと……それを繰り返すのだ。 La Fin