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バスタード!よりダイ・アモン伯爵を召喚 美的センスゼロの使い魔-1 美的センスゼロの使い魔-2
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「ヤミと帽子と本の旅人」のコゲが召喚される話 ゼロと帽子と本の使い魔01 ゼロと帽子と本の使い魔02
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【カードナンバー】:TSE-025 【名称】:変態の挑戦状 【属性】:変身 【コスト】:4 【変化値】:1 【テキスト】:【TS後効果】コスト2 次の相手のメインフェイズ開始時、自分のサポートゾーンの「浄化天使」一体が持つ自己TS効果が発動する。 【TS後効果】自分のサポートゾーンにある「浄化天使」すべてに、以下のテキストを追加する。 『【カウンター効果】コスト1 このターン、次にTS判定を行うエフェクトの変化値を1減少させる。』 【フレーバー】:「待ってたよ。これ以上TS被害を出したくなければ……僕と遊んでくれるかな?」 【イラストレーター】:あでぃ カードの説明、使用感 拡張フレーバー
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「The Elder Scrolls IV OBLIVION」(海外ゲーム)より、アルゴニアンと闇の一党を召喚 ゼロの使い魔-闇の七人-1 ゼロの使い魔-闇の七人-2
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Arzt Kochenの使い魔(アルツト コッヒェンノツカイマ) 目次 back→<魔女、使い魔に戻る> プロフィール Arzt Kochenの使い魔 プロフィール 商業作品 各作品の総括 Arzt Kochenの使い魔 各作品の総括 本編 アニメーション 関連作品(外伝、パロディを含む) ドラマCD コミック Arzt Kochenの使い魔 魔法少女かずみ☆マギカ 〜The innocent malice〜 小説 ゲーム ネット上での扱い(注意!人によっては不快な内容を含む恐れあり!) ネット上での扱いの総括 Arzt Kochenの使い魔:ネット上での扱いの総括 二次設定とネタ(あるいは叩き) Arzt Kochenの使い魔 二次設定とネタ(あるいは叩き) 各所での扱い Arzt Kochenの使い魔 2ちゃんねる、コピペブログでの扱い Arzt Kochenの使い魔 ニコニコ動画(ニコニコ大百科)での扱い Arzt Kochenの使い魔 Pixv(ピクシブ百科事典)での扱い back→<魔女、使い魔に戻る>
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前ページ次ページ滅殺の使い魔 朝、小鳥がさえずりだす頃。 休日である虚無の曜日であるが、豪鬼には、いや、格闘家には休日は存在しない。 日々これ鍛錬である。 そんな訳で、豪鬼は既に日が昇りきる前に修練を終え、一人瞑想に入っていた。 ルイズの部屋の扉の横で、ではあるが。 豪鬼が方目を開け、横に視線を向ける。 部屋の中から、ドタドタと言う音が近づいてくる。 勢いよく開かれた扉から現れたのは、既に着替えを終えたルイズであった。 「ゴウキ! 出掛けるわよ!」 「ぬぅ……、しばし待てぃ」 仮にも自分は『使い魔』であるから、付いて来いと言われれば付いて行く。 豪鬼は修羅と言えるほどの者だが、常識が無い訳ではなかった。 無視していただけなのだ。 豪鬼は瞑想を終わらせ立ち上がると、イライラと自分を見つめているルイズを見た。 「どこへ行くつもりだ」 「剣よ」 「……うぬは剣技をするのか」 「わたしじゃないわよ。 あんたに買ってあげるって言ってんの」 「……何?」 豪鬼は拳での闘いにおいては正に無敵に近いものがあったが、武器を使っての闘いの経験はほとんど無い。 槍や刀を持った相手と死合いをした事はあるが。 「拳こそ我が武。 故に得物はいらぬ」 ルイズはそんな豪鬼の声に一切耳を貸さず、豪鬼の手を取り、引っ張り始めた。 「いいから! わたしが持たせてあげるってんだから、ありがたく買ってもらいなさい!」 豪鬼はとりあえず諦め、抵抗せずにルイズに引っ張られることにした。 「ルイズ。 何処へ行く」 「剣っていったら町でしょ。 町へ行くの」 豪鬼は、ルイズに引かれながら考えていた。 剣技。 自分に立ちはだかった者達の中にもそれは存在した。 短刀、長刀、槍、銃。 これらの得物を持った者達を、豪鬼は拳一つで粉砕してきたのだ。 しかし、得物によって様々な恩恵が得られることもまた事実であり、その様な敵との戦いでは間合いで不利になる事も多々あった。 幸い、飛び道具には対抗する術を持ち合わせていたが、槍や刀などには一方的に不利な状況を作られる。 これを機に新たな闘い方を習得するのも悪くないか。 一人でそう考えていると、何時の間にか学院の門へとたどり着いていた。 ◆◇◆◇ タバサは、ルイズの部屋の前で息を呑んだ。 先日召喚されたあの男。 初めからただならぬ気配を感じていたもので、それはギーシュとの決闘騒ぎで確信へと変わった。 あの身のこなし、あれはこれ異常ないほどに洗練された『暗殺術』ではないか。 タバサはそう仮定していた。 時に流麗、時に豪胆、そして放たれる殺気。 もしも自分があの技術を会得できるのならば、自分は目的へと大きく近づく。 それが一つ。 そして、それよりも大きな理由が一つあった。 それらを胸に、一度深呼吸をしてから、部屋の扉をノックした。 あの使い魔が出てきたらどうする? いきなり「弟子にして下さい」か? 駄目だ、平常心を保っていられるか不安が残る。 それでは駄目だ。 では、「私と決闘して欲しい」か? それも駄目だ。 技術を盗む云々の前に倒されるだろう。 殺されるかもしれない。 事実、ギーシュとの決闘では、あの使い魔の動きが見えなかった。 ギーシュがドットだったから勝てた、だとか、本気でやってなかったからだ、とか言う者がいるが、そんなことはない。 本当に強いのだ、あの使い魔が。 トライアングルの自分とキュルケが同時にかかっても恐らく歯が立たないレベルであり、なおかつスクウェアでも勝てない筈だ。 そう悩んでいると、タバサはその隣の部屋の扉が開くのに気付いた。 中から現れたのはタバサの親友、キュルケであった。 「あらタバサ、どうしたの? あなた、ヴァリエールと仲良かった?」 タバサは小さく首を横に振る。 すると、何を思ったかキュルケがニヤニヤとタバサを見つめ、からかうように言った。 「なあに? あなたもゴウキ目当て? 渡さないわよ~?」 明らかにキュルケの考えていることと自分の考えている事は違うのだが、一応ゴウキ目当てなのは事実なので、否定も肯定もしなかった。 キュルケはタバサに近づき、扉の前へ来ると、躊躇無く鍵に『アン・ロック』の魔法をかけた。 「禁止事項」 「いいのよ。 恋の情熱は全てのルールに優越するの。 だから校則とかは無視よ無視」 扉が開くと、キュルケは悠然と中に入っていく。 しかし、その中にキュルケの望んだ結果は待っていなかった。 もぬけの殻だ。 目当ての豪鬼も、ルイズも居ない。 キュルケに続いて部屋に入っていたタバサが呟く。 「鞄が無い。 外出の可能性が高い」 鞄が無いということは、どこかに出掛けたのだろうか。 キュルケは窓から外を見回した。 見つけたものに、思わず驚きの声を上げる。 「え、ちょ、えぇ!?」 キュルケが目にしたものは、馬に乗るルイズ。 ……と、それと全く同じスピードで走る豪鬼の姿だった。 キュルケがそれを呆けたように見つめていると、タバサが窓を開け、口笛を吹いた。 それから、窓枠によじ登り、外に向かって飛び降りる。 タバサの突然の奇行に、しかしキュルケは動じず、あろう事か同じように外に身を投げのだった。 タバサは命じた。 「例の『あの方』」 ◆◇◆◇ 「あ、あんた、どんな体力してんのよ……」 ルイズがもう何度目かの驚きの声を上げる。 無理も無い、普通なら馬で移動する距離を、豪鬼は馬と同じ速度、いや、馬に『合わせて』走り切ったのだから。 むしろ、豪鬼にとって、馬で程度の距離は物足りないレベルだった程だ。 ルイズは、隣を歩く、息切れ所か汗一つとして掻いていない豪鬼を見た。 こいつは一体全体何なのか? もはやそんなことはどうでも良くなってきていた。 「はぁ……。 まぁいいわ、ここがブルドンネ街よ。 ここであんたの剣を買うわ」 「……うむ」 豪鬼は街を見まわす。 元居た世界の都会と比べて、随分と狭いものである。 しかし、道を歩く者達の目は、あの世界よりもいきいきとしている。 ただ、この広さでは、格闘大会は開かれないだろう。 そう思いながら、豪鬼はルイズについて行く。 しばらく歩くと、ルイズは更に路地裏へと入っていった。 大通りがあの狭さなのだから、路地裏は当然もっと狭く、汚く、暗い。 「もうっ! だから来たくないのよ!」 ルイズが忌々しそうに呟く。 豪鬼は別段それに構うこともせず、ただルイズについて行った。 少し歩くと、四辻に出た。 「えーっと、この辺の筈……」 辺りを見回すと、一枚の同の看板が目に入った。 豪鬼は気付かなかったが、確かにそれは武器屋の看板だったらしい。 ルイズと豪鬼は、それに向かって行った。 扉を開け、店に入る。 扉に付いた鈴が、カランカランと音をたて、来客を知らせる。 すると、中から長髪オールバックの男が出てきた。 男はルイズのマントに気付き、一瞬驚くと、今度は気障な笑みをこぼした。 「イヤー困った! 遂にこの世界でもワイの美形は知られてしもたようやな! せやけどお嬢ちゃん、ワイはもう心に決めた人がおるんや。 心が痛むけど、ここは一つ引き下がってもらえへんかなぁ?」 「……は?」 ルイズは呆気にとられる。 その間にも、男はふぅ、とか、はぁ、とか言っている。 なるほど、ギーシュと同じ系統の人間か。 そう思ったルイズは、男の言うことを聞き流し、用件だけ言うことにした。 「客よ」 「ん? なんや客かいな。 悪いけど、いくら積んでもワイの愛は買えへんで~?」 「使い魔が使うの。 あいつ」 ルイズは豪鬼を指差す。 豪鬼は店内を物色していた。 豪鬼を見た瞬間、男の目付きが変わる。 鋭い眼光が、豪鬼の体を観察する。 「チョイ待っとれや~」 男が店の奥へと消える。 少しすると、男が大きな両手剣を持って戻ってきた。 巨大な刀身に、派手な宝石等が散りばめられている。 「どないや! 店一番の業物やで! 嬢ちゃん貴族やろ、ほんならこのくらいはせめて欲しいやろなぁ」 豪鬼はいつの間にかルイズの隣に戻り、その大剣を見つめていた。 「ゴウキ、振ってみなさい」 ゴウキが無言でそれを手に取る。 「……!」 すると、突然豪鬼の左手のルーンが輝き始めたのだ。 豪鬼はそれを見つめる。 力が湧き上がる、この感触。 これは、今まで何度も経験した『殺意の波動』のそれとは僅かに違う。 体が軽い。 それは正に羽のようであった。 そして、何よりも違うのは―― 「ルイズ。 この剣は要らぬ」 そう、手に持った得物の事が、自然と頭の中に流れてくるのである。 豪鬼の頭は、瞬時にこの大剣の本質を見切った。 故に、この剣は要らない、と言ったのだ。 「ちょ、なんでよ! これが一番……」 「はは! やっぱりな! あんたには剣なんぞ似合わんわ!」 ルイズが豪鬼に不満をぶつけようとするが、それは男の大笑いによって掻き消された。 「嬢ちゃん、ワイが断言したる。 その剣はボッタや。 非美形や」 「あ、あんた、わたしからふんだくろうとしてたの!?」 食って掛かるルイズに、男は特に気にした様子も無く答える。 「ふんだくれるもんはふんだくるのが商人ちゅー奴やろ。 ……まぁええわ。 嬢ちゃん、謝罪としてあの山の中から好きなの持ってってええで。 ワイは心も美形やからな」 男が店内の一角を指差す。 そこには、乱雑に積まれた様々な武器の山があった。 ルイズが男の態度に怒りを通り越して呆れて山を見ていると、その中から突然声が聞こえた。 低い男声。 店長の物では無いようだ。 「ロバート! 俺はタダかよ!?」 「ん? なんや、デル公かいな」 「デル公?」 ロバートはその武器の山に近づくと、その中から一本剣を取り出した。 「こいつや。 知っとるやろ? 意思を持った魔剣、インテリジェンスソードや。 どこの馬鹿が始めたんやろなぁこんなの。 ワイへの嫌がらせちゃうか?」 「おうおうおう! そこのお前! ちょっとばかしいい体してるからよ、ちょっと俺を持ってみな」 「……ふむ」 豪鬼がロバートから剣を受け取ると、またルーンが輝き始めた。 豪鬼のルーンが、剣の判定を行う。 ……良い剣だ。 そう判断したところで、剣が小さく呟いた。 「おでれーた。 てめ『使い手』か」 「『使い手』……?」 「ふん、自分の実力も知らんのか。 まあいい。 てめ、俺を買え」 「……」 しばらくの沈黙。 豪鬼は、ルイズに向き直り、一言、こう言った。 「ルイズ。 これを買う」 当然ルイズは不満の声をあげる。 しかし、それを男が遮った。 「いや~! その剣、五月蝿くてかなわんかったんや。 せやから、タダで譲ったるわ」「豪鬼、それにしましょ」 ルイズは即答した。 小遣いだって無限ではないのだ。 もらえるなら貰おう。 大丈夫、豪鬼なら大丈夫。 ルイズはそう言い訳を念じた。 豪鬼達は剣を受け取り、武器屋を後にした。 前ページ次ページ滅殺の使い魔
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食堂はすでに閑散としていた。生徒たちの大半は教室を目指し、先ほどまでの喧騒もそれに伴い移動している。 「ご精が出るのう、お嬢さん」 トンペティに声をかけられたメイドは、 「ありがとうございます」 微笑み返し、少し頬を赤らめミキタカへも微笑みを投げかけた。ミキタカは静かに笑い返し、メイドの頬が一層濃い朱に染まる。 掃除中のメイドが離れていくのを目の端で追い、ミキタカは口を開いた。 「どうでした、老師」 「ふむ……」 手を開き、握り、また開き、握る。掌には幾本もの深い皺が刻まれ、それに倍する古い傷跡が走っていた。 「これは主の求めている答えではないかもしれんがの。ルイズ嬢は……なかなか面白い」 「面白い、とは?」 「うむ。パイプ、いいかね?」 「どうぞ」 深く吸い、吐く。鼻から、口から。 「ルイズ嬢から感じ取った生命エネルギーは男のものと女のもの、合わせて二種類。といっても一種類」 「それは興味深いですね」 「その通り」 紫煙をくゆらせ、より深く腰掛けなおした。 「強い絆。絶ち難き縁。恋や愛もあるが、それだけでは無かろう。ルイズ嬢の深い部分に食い込み、二つの生命エネルギーはもはや一つと呼ぶに相応しい。うらやましい話じゃ」 「多重人格のようなものですか?」 「違う。もっと根本の部分でつながっておる。双方がお互いを喜んで受け入れている。そうじゃの……自分の中にもう一人の使い魔がいる、とでも言えばいいか」 「使い魔ですか」 「陳腐な例えを使うとすれば『運命に逆らってでも離れたくなかった恋人たち』じゃな」 「なるほど。ルイズさんの内面にも何かしらの影響がありそうですね……」 顎に指を当て考える。鼻のピアスと耳のピアスを繋ぐ紐が指をくすぐり、こそばゆい。 「判断材料は増えましたが、これは色々な意味で複雑な問題です」 言葉とは裏腹に、口調ははずんでいた。トンペティも楽しそうに煙を吐いている。 「この問題は夜にでも考えるとして、今は実際的に動くとしましょう」 「別の男女のためかな?」 「義理が多いというのも大変です。正月に付き合いで子供とババ抜きする大人の気持ちです」 やはり、言葉と口調は裏腹だ。パイプを離そうとしないトンペティをそのままに、軽い足取りで厨房の入り口に向かった。 生徒達が食事をとった後でも料理人の仕事は終わらない。次の仕込み、洗い物、皆が皆休む暇なく動き続けていた。 「ちょっといいですか」 その場にいた全ての人間が手を止め、声の主を確認し、一人の例外もなく笑い、作業に戻った。 嘲りではない。声の主に対する「こいつは次に何をやってくれるんだ」という期待を覗かせている。 「マルトーさん。下のゴミ置き場に置いてあった大鍋をもらってもいいですか」 「なんだミキタカ、また何か面白いことでもしようってのか」 コック、メイドといった学院内で働く平民達はミキタカに好感を抱いていた。 貴族であっても偉ぶらず、他の貴族達を彼一流の諧謔で煙に巻く様は見ていて痛快だ。 支持者筆頭が押し出しの強いことで知られるコック長のマルトーであり、ミキタカの頼みであれば多少の無理をも通してくれた。 「いいえ。もう少し切実なことですよ」
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前ページ次ページ日本一の使い魔 「ケン!なにやってるの!?勝手に決闘の約束なんてして、平民のあんたが貴 族に勝てるわけないでしょ?前に貴族と平民の関係を教えたでしょ?聞いてな かったの!?」 「聞いてたさ。だが、俺が勝てないなんて一言も聞いちゃいないがね。」 「あんただって平民でしょ!下手したら死んじゃうのよ!謝れば許して貰える かも知れないから、謝っちゃいなさい!」 早川は指を立て横に振る。 「チッチッチッ、生憎と悪くもないのに下げる頭なんて持っちゃいませんが ね。」 早川はそう言うと近くにいた生徒にヴェストリの広場がどこにあるのか尋ねる。 「もう知らないんだから、、、」 『風』と『火』の塔の間の中間にあるヴェストリの広場。そこには噂を聞きつ けた生徒達で賑わっていた。学院という特性上あまり娯楽と言う物に乏しく、 退屈を持て余していた生徒達にとって今回の一件は暇つぶしには丁度良かった。 と言っても集まった生徒達の殆どが、ギーシュがどのように生意気な平民を痛 めつけるかを楽しみにしていた。 その殆どに当てはまらない生徒と言うのが、この二人で 「ねぇ、タバサ。止めなくていいのかしら?あなたが決闘なんて見に来ような んて、よく思ったわよね?」 「興味がある、、、」 「空を飛んでいた、、、」 「まぁいざとなったら、私達が助けてあげましょ。何か、ケンって憎めない所 あるのよねー。中々いい男だし。」 ギーシュを始め生徒達は生意気な使い魔の到着を待ち構えていた。 そこにギターの音色が、 「大層なご登場だね、平民君。待ちかねたよ。やはり君は人を馬鹿にするのが 上手らしいね。」 そう言うとギーシュは薔薇の花に見立てた杖を振る。そこには、錬金で出来た 墓石が現れた。 その様子に早川は素直に関心する。 「ほぉー、魔法ってのは便利なもんだね。」 しかし、関心こそすれ恐れる様子は無い。ギーシュは更に 「君の墓石だが味気ないから、これを供えてあげるよ。」 と錬金によって薔薇を一輪作り出し墓石に置く。 ニヤリと笑う早川。 「大した彫金の腕だな。だが、見た所日本じゃ二番目。」 と2本指を立てる。日本と聞きなれないが、自分より上がいると言いたい事は 解ったギーシュは、 「じゃあ、一番は誰だ!?」 「ヒュー♪チッチッチッチッチ。」 口笛を吹き、立てた2本指を5回左右に振り、微笑みながら親指で自分を指す。 「君が?じゃあやってみるがいいさ。」 「そうかい?じゃあナイフはお持ちで?」 ギーシュは錬金でナイフを作ると早川に渡す。ナイフを受け取ると、墓石の前 に立ち、数回ナイフを振るう。 すると墓石には、薔薇の園に赤子を抱いた女性の絵が見事に彫られていた。 「こいつは薔薇の聖母子って絵なんですがね、薔薇は女性であって所詮男は子 供。おいたが過ぎると棘で怪我しますよって洒落ですよ。」 そう言うと、絵の出来に関心する声とギーシュを笑う声が起こりだす。 「それと、こいつはお近づきの印ですよ。」 とナイフを渡すが、ナイフの先にはハートの形に切り取った布が刺さっている。 早川がパチンと指を鳴らすと、ギーシュのズボンがずり落ちる。下着のお尻の 部分がハートの形に切り取られている。 周囲に爆笑の渦が起き、ギーシュは自分がどんな状態なのかに気付く。 「君は、よっぽど痛い目を見ないと判らないらしいね。」 かろうじて冷静さを保ったギーシュは、薔薇の花を振ると花びらが一枚舞い落 ちる。 「僕はメイジだ。よって魔法で戦う。文句はないよね?」 すると花びらは甲冑を着た女戦士の人形へと姿を変える。その様を見ても早川 は、 「アー、ハン。」 と肩をすくめ両手を広げる。 「僕は、ギーシュ・ド・グラモン。青銅のギーシュさ。君への制裁はこのワル キューレが務めさせてもらうよ!」 ギーシュの声と共にワルキューレが猛然と殴りかかる。早川はサッと交わしな がら持っていたギターでワルキューレの頭を殴る。バランスを崩したワルキ ューレは派手な音を立て転げた。 自分の当てが外れたギーシュは更に薔薇の花を振ると、更に花びらが舞い、剣 や槍を持ったワルキューレが現れる。 一方、ここは学院の図書室。コルベールは一冊の本のとあるページを見て驚愕 した。そもそもコルベールは、早川の左手に現れた見慣れないルーンが気にな り授業の合間をぬって、どのようなルーンかを調べていた。本当ならば、儀式 の日に見た空を飛ぶ乗り物を調べたいのだが、 「大変ですぞ!これは学院長に知らせなければ。」 トリステイン魔法学院の学院長室は本塔の最上階に位置し、そこには年齢は100歳とも 300歳とも言われる、オールド・オスマンが重厚なつくりの机に肘を突いて暇を持て余していた。 「オールド・オスマン。あなたのお仕事はどうされたんです?書類のサインも 学院長の仕事じゃありません事?」 オスマンが秘書の席を見ると、書類の束を整理しながらミス・ロングビルが渋 い顔をしている。 「そんな渋い顔をしたら、せっかくの美人が台無しじゃて。それにわしは考え 事をしておったのじゃ。」 オスマンは席を立つと、思いつめたように窓の外を眺める。 「おっ、今日は黒か。」 とニヤけると、低いトーンの声がする。 「考え事ってスカートの中の事ですか?」 「わ、わかった、わかったから離してやってくれんか。」 オスマンは顔を伏せ悲しそうな顔で呟く、そしてロングビルの机の下から、小 さなハツカネズミがふわふわと宙に浮き、オスマンの肩まで届けられた。 オスマンが席につくと羽で出来たペンが重厚な机に突き刺さる。 「次は当てますよ。」 「はい、、、」 威厳なんてまったく感じられない。 コンコン、とノックの音が響く。 「コルベールです。学院長に相談があって参りました。」 「入りなさい。」 学院長室に入ったコルベールは一冊の本を見せ用件を話し出す。 その本の開かれたページを見て、 「これが、どうしたのかね?こんな古い本など見せよって。」 「学院長、これと同じルーンがある生徒が召喚した使い魔に、、、」 オスマンはロングビルに退室を促すと 「して、ある生徒と使い魔とは?」 「生徒とはミス・ヴァリエールで、使い魔とは人間、平民です。」 「まさかの、ガンダールヴと同じじゃとのお」 沈黙が部屋を包むが、すぐにその沈黙はノックの音により破られる。 「どなたじゃな?」 「ロングビルです。ヴェストリの広場で決闘騒ぎが起きています。騒ぎを気に する教師達からは『眠りの鐘』の使用許可を求める声が。」 「相手は誰じゃ?」 「ギーシュ・ド・グラモンとミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔です。」 「放っておきなさい。子供の喧嘩に秘宝を使うとは。ちょっと見てみるとする かの。」 そう言うと、マジックアイテム『遠見の鏡』を覗き込んだ。 覗き込んだ先には一体のゴーレムに羽交い絞めにされ、ボコボコにされている 使い魔がいた。それを止めようと主人であるルイズが涙を流し懇願している。 「ギーシュ!もう止めて!勝負は付いてるじゃないの!」 「そうかも知れないが、まだ君の使い魔から僕に対する侘びを聞いていないか ら勝負は終わってないのさ。ゼロのルイズ。」 「ボコボコじゃのう。」 「ボコボコですね。」 「眠りの鐘、使うかのう。」 「学院長!ミス・ヴァリエールの使い魔が!」 そこにいるはずの使い魔がいない。 覗き見ている先でも早川がいない事に気付いている。 広場の隅からエンジン音が鳴り響き 「フライトスイッチ、オーーーーーン!!」 奇怪な乗り物が空を飛ぶと、遠見の鏡から音が。 ベン、ベベンベベン♪ベン、ベベンベベン♪ タタタタータタ♪タタタタータタッターン♪ 遠見の鏡を覗き込むオスマンもコルベールもロングビルも状況が理解出来ない。 だが状況は刻々と進む。空を飛ぶ乗り物から赤に統一された上下のピタリとし た服、黒いブーツ、奇妙な赤い兜を被った人間が飛び出すと、火の塔のてっぺ んに着地し高らかに笑う。 「ハッハッハッハッハッ。」 「ズバッと参上!」遠見の鏡が左顔を映す。 「ズバッと解決!」右顔を映す。 「人呼んで、さすらいのヒーローーー!快傑ズバァァァーーット!!」 遠見の鏡が正面を捉えアップを映し前後にシェイクすると音楽が流れ出す。 もはや3人共理解不能だが、3人ともツッコんではいけないような気がした。 「タァーッ!」 掛け声と共に飛び立ちワルキューレの中心に着地すると手にしている鞭を数回振る う。7体のワルキューレはなます切りになり崩れ落ちる。 ズバットは呆然とするギーシュに向かい怒鳴る。 「己の欲望の赴くまま2人の女性を弄び、あまつさえその罪を善良なメイドに擦り付けるとは 言語道断!」 ギーシュは口をパクパクさせている。むしろ、この場にいる全員。学院長室の 3人とも現実について来れない。 ズバットは一片の容赦なくギーシュを殴り、蹴り、鞭で首を絞め投げ飛ばす。 投げ飛ばされズバットから離れる事が出来たギーシュは降参しようとする。 「ま、ま、まいっ」 「うるさい!」 問答無用にズバットは鞭でひっぱたくと空中高く飛び上がる。 「ズバァァーット・アタァーーーーーック!」 雄叫びを上げ高速ひねり前宙をしギーシュの顔面を蹴り飛ばす。 かなたに消えて行くギーシュ。 慌てて、生徒達がギーシュの元に駆け寄ると、 吹っ飛んだギーシュの胸には『Z』の文字をモチーフにした赤いマーク、 そして日本語で『この者、恐喝破廉恥犯人!』と書かれたカードが置かれていた。 生徒達が見回しても辺りにズバットの姿は無かった。 遠見の鏡からは 「ちびっ子の皆さん。ズバットの真似は絶対にしないで下さい。マネをするととても危険です」 と男の声が流れたのは言うまでも無い。 前ページ次ページ日本一の使い魔
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前ページ次ページゼロの使い魔BW 身体を揺さぶられて、目が覚めた。 目を開いたら、見慣れぬ格好の少年がこちらを見下ろしていて、思わず叫んだ。 「だ、誰よあんた!」 「……ツカイマだよ、ゴシュジンサマ」 「ああ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」 窓から朝の日差しがさんさんと降り注いでいる。ルイズは寝台の上でうーんと伸びをすると、椅子にかけてあった服を指して命じた。 「取ってくれる?」 使い魔の少年は無言で頷くと、服を取ってルイズに手渡した。 寝起きのけだるさのままネグリジェに手をかける。途端にくるりと背を向ける辺り、この使い魔にも一応年頃の少年らしい部分もあるらしい。 「後、下着も――そこのクローゼットの一番下に入ってるから、取って」 彼はクローゼットを開けると、ぎくしゃくとした動きで下着を取り出す。と、そこで完全に停止した。 なにを考えて止まったのかが分かって、ルイズは呆れた。別に、使い魔に見られたところでどうということもないのだが、彼は動きそうにもない。 「……投げてくれていいわよ」 飛んできた下着は、過たずルイズの手元に納まった。見えてるんじゃないかと思うようなコントロールである。むしろ見てるんじゃないかと思って使い魔に目をやるが、完璧に背を向けていた。 服を着させるところまでやらせようと思っていたが、やめた。無駄に時間がかかるのは分かりきっている。下手をすれば、朝食を食べそこなうことにすらなりかねない。 壁を向いて硬直している使い魔を横目に、ルイズはこれまでのように着替え始めた。 身支度を済ませたルイズたちが廊下へ出ると、ちょうど近くの扉が開くところだった。 中から出てきたのは、燃え上る炎のような赤い髪の女の子だ。 ルイズよりも背が高く、スタイルも良い。彫りの深い美貌に、突き出た胸元、健康的な褐色の肌、と街を歩けば十人が十人振り返るような容姿だった。 だが、その顔を見た途端、ルイズは不機嫌そうな顔になる。赤い髪の少女がにやりと笑った。 「おはよう、ルイズ」 「おはよう、キュルケ」 むっつりとした表情のまま、ルイズは挨拶を返す。 「あなたの使い魔って、それ?」 「そうよ」 寡黙に控えている少年を指さしての問いに、ルイズは短く答えた。 「あっはっは! 本当に人間なのね! さっすが、ゼロのルイズ」 「うっさいわね」 無愛想に返答するルイズを横目に、キュルケは少年を観察する。 「中々可愛らしい顔してるじゃない。あなた、お名前は?」 「なに色惚けたこと言ってんのよ。あと、名前を聞いても無駄よ。そいつ、記憶喪失だから」 「それは残念。……だけど、記憶喪失、ねぇ。それは元から? それとも、ルイズのせいかしら?」 その指摘に、目の前の勝気な少女が言葉に詰まったのを見て、キュルケは頷いた。 「なるほどねえ。――それじゃ、あたしも使い魔を紹介しようかしら。フレイムー」 キュルケが呼ぶと、背後の扉の中から赤い巨大なトカゲが現れた。大型の獣並みの体躯に、真紅の鱗。尻尾の先は燃え盛る炎となっていて、口からもチロチロと赤い火が洩れている。 「……リザード?」 熱気を物ともせずにそれに見入っていたルイズの使い魔が、ここで初めて声を上げた。 「りざーど? これは火トカゲよ」 「ヒトカゲ?」 首を傾げて言ったルイズの使い魔に、キュルケは微笑みかける。 「なんか発音がおかしい気がするけど、そうよー。火トカゲよー? しかも見て、この大きくて鮮やかな炎の尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんてつかないわ」 「そりゃよかったわね」 ルイズが無愛想に答えた。 「素敵でしょ? もう、あたしにぴったりよね」 「あんた、『火』属性だしね」 「そう。あたしは微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」 キュルケは得意げに、その男であれば視線を釘付けにされそうな胸を張った。 ルイズも負けじと胸を張るが、残念ながらボリュームの違いは明白だった。それでもキュルケを睨みつける辺り、かなりの負けず嫌いらしい。 「あんたみたいにむやみやたらと色気を振りまくほど、暇じゃないだけよ」 キュルケは余裕の笑みを浮かべて、その言葉を受け流す。そして颯爽とこの場を後にしようとして、使い魔のサラマンダーが居ないことに気づいた。 「あら? フレイムー?」 「わたしの使い魔も居ないわ。……まさか、あんたのサラマンダーに食べられちゃったんじゃ」 「失礼ね。あたしが命令しなきゃ、そんなことしないわ。……あ、居た」 ルイズとキュルケが言い争っていた場所から少し離れたところに、二人の使い魔は揃っていた。二人が喧嘩している間に、使い魔は使い魔で親睦を深めていたらしい。 少年は、慣れた手つきでサラマンダーを撫でてやっている。撫でられているほうも、妙に落ち着いた様子で彼の手のひらを受け入れていた。 キュルケが目を丸くする。 「あらま。確かに、誰彼構わず襲うような子じゃないけど、誰彼構わず懐く子でもないのに」 「あんたのことを見習ったんじゃないの?」 「どういう意味よそれ。……まあ良いわ。それじゃ、お先に失礼。行くわよフレイムー」 呼ばれて、サラマンダーが動き出す。図体に似合わないちょこちょことした足取りでキュルケの後を追うが、少し行った先で少年のほうを向くと、ぴこぴこと尻尾を振った。 少年も微笑んで、手を振って返す。 一連の流れを見ていたルイズが、少年の頬をつねりあげた。 「……いふぁい」 「いーい? あの女はフォン・ツェルプストー。わたしたちヴァリエール家にとっての、不倶戴天の敵なの。だから、ツェルプストーの使い魔なんかと仲良くしちゃダ、メ、よ?」 「ふぁい」 一音ごとに頬をねじり上げるようにして確認され、少年は涙目で答えた。 トリステイン魔法学院の食堂は、学園の敷地内で一番背の高い、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中にはやたらと長いテーブルが三つ並んでいて、それぞれに少年少女が座っている。 ルイズは、黒いマントをつけた生徒が並ぶ真ん中のテーブルへと向かった。 ここに使い魔を連れてくるのには非常に苦労した。なんせ他の使い魔を見るたびに、吸い寄せられるようにそっちに行こうとするのである。首輪と縄が必要かしら、とルイズは思った。 その使い魔は、豪華な食事が並べられたテーブルや、絢爛な食堂をきょろきょろと見回している。その顔に少なからぬ驚きを見て取って、ルイズは得意げに指を立てて言った。 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ。昨日も説明した通り、メイジのほとんどは貴族。だから、『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を受けるの。この食堂も、その一環ね」 「すごいね」 素直に驚きを示す使い魔に、椅子を引くように促す。本来なら「気が利かないわね」ぐらいは言ってやりたいところだが、記憶喪失では致し方ない。 椅子についてから、ルイズは考えた。この使い魔がもう少し反抗的であれば、床ででも食べさせるつもりであったが、今のところは特にそういった気配はない。 現在も自分が座るべき席ではないと理解しているためか、脇にじっと佇んだままである。 しばらく逡巡した後、ルイズは近くに居た使用人の一人を呼びとめた。 「ちょっと、そこのあなた」 「はい、なんでしょうか。ミス・ヴァリエール」 呼びとめられた黒髪のメイドに、脇の使い魔を指して見せる。 「こいつに、なにか食べさせてやって頂戴」 「分かりました。では、こちらにいらしてください」 「食べ終わったら戻ってくるように」 ルイズの言葉にやはり頷くと、使い魔は促されるままにメイドについて行った。 「もしかしてあなた、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 行きがてらにそう問われて、少年は頷いた。目下のところは、彼の唯一の身分である。 「知ってるの?」 「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって噂になっていますわ」 にっこりと笑って、黒髪のメイドは答えた。屈託のない、野の花のような笑顔だ。 「君もメイジ?」 「いいえ。私はあなたと同じ平民ですわ。貴族の方々をお世話するために、ここで御奉公させていただいているんです」 どうやら自分と同じような立場らしい。納得すると、彼は黙り込んでしまった。 記憶がないというのは、話題がないというのに等しい。訊きたいことは山ほどあったが、彼女は仕事中だったようだし、あまり時間を取らせるわけにもいかないだろう。 そんな考えからなる沈黙だったが、どうやらそれは少年を気難しく見せていたらしい。しばらくは静かだった黒髪のメイドが、いかにも恐る恐るといった様子で口を開いた。 「……えっと、私はシエスタです。あなたのお名前を訊いても良いですか?」 少年はそれに黙ったまま首を振る。しかし、不味いことでも訊いてしまったのだろうかと狼狽するシエスタを見て、言葉を続けた。 「名前は分からないんだ。記憶喪失だから」 「キオクソウシツ……って、あの、記憶がなくなっちゃうあれですか?」 頷くと、シエスタの視線が途端に同情的になった。少年を上から下まで眺めまわして、はう、とせつなげな溜息を洩らす。 「大変だったんですね……」 そうだったんだろうか。そうだった気もするが、今のところは大したことがない気もする。だが少年がなにか答える前に、彼女はいきなり彼の手をギュッと掴むと、引っ張り始めた。 「なるほど、そいつは大変だ」 コック長のマルトー親父は、シエスタの話(学園内で出回っている噂を少し盛った上で、記憶喪失であるという事実を付け加えたもの)を聞くとうんうんと頷いた。 「やっぱりそうですよね、マルトーさん!」 「記憶を失くした上に、あの高慢ちきな貴族どもの下働きだろ? しかも、こういう仕事を選んでやってる俺たちと違って、強制的にだって話じゃねえか。いやあ、災難だな、お前さん」 二人で完全に盛り上がってしまっている。展開について行けず途方に暮れそうになったところで、少年のお腹がぐう、と鳴った。 「おっと、悪かったな。シエスタ、賄いのシチューを持ってきてやれ。俺は戻らにゃならん」 「はい、わかりました!」 少年を厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥へと消えた。 マルトーもまた、背を向けて調理場へと向かう。が、ふと振り向くとニッと笑った。 「同じ平民のよしみだ、なにか困ったことがあったらいつでも相談してくれ」 「ありがとう。いざって時には頼りにさせてもらいます」 少年が礼を言うと、マルトーは「良いってことよ」と大笑いして去って行く。 入れ違うように、シエスタがシチューの入った皿を持って戻ってきた。目の前に置かれたそれをスプーンで掬って、口に運ぶ。思わず顔がほころんだ。 「おいしい」 「よかった。おかわりもありますから、ごゆっくり」 思った以上に空腹だったことに気づく。丸一日ばかり食べていないような、そんな感じだ。 夢中になって食べる少年を、シエスタはニコニコしながら見ている。 仕事中だったのに大丈夫なんだろうか、なんて思うが、食堂には彼女のようなメイドが沢山いたし、一人ぐらい抜けても問題ないのかもしれない。 「ごちそうさま。おいしかったよ」 「ふふ。ぜひ、マルトーさんにも言ってあげてください。喜びますから」 食べ終わって皿を返すと、シエスタは微笑んでそう言った。そして皿を片づけるために立ち上がりざま、そういえば、と彼の顔を見る。 「えっと、なにか分からなくて困ってることとかあります?」 「……それなら、洗濯物のことなんだけど」 なるほど、とシエスタが頷く。 「ああ、そうですよね。水汲み場とか分かりませんよね」 「それもあるんだけど、ここでのやり方もイマイチ分からないから、教えてもらえると助かる」 彼の常識は、洗濯物には洗濯機を使え、と言っている。使い方も分かる。しかし同時に、それがここにはないだろうということもなんとなく分かっている。 昨晩のルイズとの会話と、今日見て回った学内の様子から、自分の常識の欠落は記憶喪失から来るものではないことに、少年はうすうす感づいていた。 「洗濯のやり方なんて何処でも同じ気がしますけど、わかりました。今からご案内しても良いんですが、ミス・ヴァリエールに『戻ってくるように』って言われてましたよね」 確かに、「食べ終わったら戻ってくるように」と言っていた。 「それじゃ、お昼もまたこちらで取られるでしょうし、その際にでも」 「よろしくお願いします」 心からの感謝をこめてお辞儀をすると、シエスタはウインクして答える。 「マルトーさんも言ってましたけど、同じ平民のよしみ、です。いつでも頼ってくださいね」 魔法学院の教室は、石造りのやはり巨大な部屋だった。生徒が座る席は階段状に配置されており、その中央最下段に教師が立つ教壇がある。 二人が入ると、先に教室に来ていた生徒たちが一斉に振り向いた。そしてくすくすと笑い始める。 だが、ルイズにそれを気にしている余裕はなかった。今日は学年最初の授業ということで、大抵の生徒が使い魔を連れている。そんな場所に少年を放りこんだらどうなるか。 早くもふらふらと引き寄せられそうになった彼の襟元を、がっしと掴んで引きずりつつ、ルイズは席の一つへ向かった。本格的に、首輪と縄が必要かもしれない。 席の近くの床に少年を座らせる。机があって窮屈なのは気にならないらしいが、周囲の使い魔を見てそわそわしている。 ふと、少年が使い魔のうちの一体――浮かんだ巨大な目の玉を指さして言った。 「アンノーン?」 「違うわ。バグベアーよ」 「チョロネコ?」 「あれは単なる猫じゃない。チョロってなによ」 「アーボ?」 「あれは大ヘビ……一体、その名前は何処から出てきてるのよ」 ルイズが呆れたように言ったところで、教室の扉が開いて一人の魔法使いが入ってきた。 ふくよかな頬が優しげな雰囲気を漂わせている、中年の女性だ。紫色のローブに、帽子を被っている。 彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズは俯いた。 「おや? ミス・ヴァリエール、使い魔はどうしました?」 床に座った少年は、教壇からはちょうど死角になっていて、彼女からは見えないらしい。 シュヴルーズが問いかけると、ルイズの近くに座っていた少年が声を上げた。 「ゼロのルイズ! 召喚出来ずにその辺の平民連れてきたからって、恥ずかしがって隠すなよ!」 その言葉に、教室中がどっと笑いに包まれた。 ルイズは椅子を蹴って立ち上がった。長い髪を揺らし、可愛らしく澄んだ声で怒鳴る。 「違うわ。ちゃんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』に失敗したんだろう?」 ゲラゲラと教室中が笑う。 「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! 『かぜっぴき』のマリコルヌが私を侮辱したわ!」 「かぜっぴきだと? 俺は『風上』のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」 同じく椅子を蹴って立ち上がったマリコルヌに向けて、ルイズが追撃を放つ。 「あんたのガラガラ声は、まるで風邪でも引いてるみたいなのよ!」 次の瞬間、立ち上がった二人は揃って糸の切れた人形のようにすとんと席へ落ちた。 「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」 席に座ったルイズは、先ほどの剣幕が嘘のようにしゅんとしてうなだれている。 「お友達をゼロだのかぜっぴきだのと呼んではいけません。わかりましたか?」 「ミセス・シュヴルーズ。僕の『かぜっぴき』は中傷ですが、ルイズの『ゼロ』は事実です」 教室にくすくす笑いが広がった。 シュヴルーズは厳しい顔をすると、ぐるりと教室を見回し一つ杖を振った。するとどこから現れたものか、笑っていた生徒の口元に赤土の粘度が貼り付いた。 「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」 くすくす笑いがおさまった。 「それでは、授業を始めますよ」 少年は授業にはあまり興味がなかった。彼の注意はもっぱら他の使い魔に向けられていたが、属性の話が出た時は少しだけ耳をすませた。 現在は失われた『虚無』の魔法を含めて、魔法の属性は五種類あるらしい。彼の感覚からすると、五つの属性――タイプというのは、酷く少なく思えた。 もっとこう『はがね』だとか『エスパー』だとか『あく』だとかがあって良い気がする。もっとも、単に彼の感覚の方が細分化されている、というだけのことかもしれないが。 そんなことを考えたり、周囲の使い魔を観察していたりすると――。 「それでは、この『錬金』を誰かにやってもらいましょう。そうですね……ミス・ヴァリエール」 不意に指名されたルイズは、びくっと肩を跳ねさせると、シュヴルーズに問い返した。 「えっと、私……ですか?」 「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 そうやって教壇を指し示されても、ルイズは動かない。痺れを切らしたシュヴルーズが更に促そうとしたところで、キュルケが困った声で言った。 「先生」 「なんです?」 「やめといた方が良いと思いますけど……」 「どうしてですか?」 「危険です」 キュルケが言い切った。ほとんどの生徒もそれに頷く。 「危険? 一体、なにがですか」 「先生は、ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。ですが、彼女が努力家であるという事は聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、なにもできませんよ?」 「ルイズ。やめて」 キュルケが蒼白な顔で言う。しかし、ルイズは立ち上がった。 「やります」 言って、若干硬い動きで教壇へと向かう。通路に乗り出すようにして、少年はその背中を見送った。 教壇に上ったルイズに、シュヴルーズが隣に立って微笑みかけた。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」 ルイズはこくりと可愛らしく頷く。そして緊張した面持ちで小石を睨みつけると、神経を集中した。 同時に、少年は周囲の生徒たちが、彼と同じように机の影に隠れるのに気付いた。なんでだろうと思う間もなく、短いルーンと共に、ルイズが杖を振り下ろす。 瞬間、小石は机もろとも爆発した。 爆風をもろに受けて、ルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられた。悲鳴が上がる。 驚いた使い魔たちが暴れ始めた。 眠りを妨げられたキュルケのサラマンダーが火を吹き、尻尾をあぶられたマンティコアが窓を突き破って外へ逃げ、その穴から巨大な蛇が顔を出して誰かのカラスを飲みこんだ。 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。髪を乱したキュルケが、ルイズを指して叫んだ。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」 「ラッキーが! 俺のラッキーがヘビに食われた!」 黒板の前にシュヴルーズが倒れている。時々痙攣しているので、死んではいないようだ。 煤で真っ黒になったルイズが起き上がった。服装は悲惨極まりない。上も下もところどころ破れていて、隙間から下着が覗いている。 だが、ルイズは自身の惨状も教室の阿鼻叫喚も気にしない様子で、淡々とした声で言った。 「ちょっと失敗したみたいね」 当然、他の生徒から猛然と反撃を喰らう。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」 「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないか!」 爆風で吹き飛ばされた帽子を拾いつつ、少年は一人、すごい『だいばくはつ』だったなと頷いていた。 「おふっ……ミス・ロ……ング、ビル……やめて、やめ……お、おち、る……」 ルイズが教壇を吹き飛ばし、それの罰として掃除を命じられている頃。 この魔法学院の学園長であるオールド・オスマンは、秘書にいつもよりも酷いセクハラ行為――尻を両手でじっくり三十秒ほど捏ねまわすように揉んだ――に及び、いつもよりも苛烈な報復を受けていた。 首を絞められ、今にも気を失いそうなオールド・オスマンに対し、ミス・ロングビルは無表情でチョークスリーパーをかけ続けている。 そんなちょっとした命の危険は、突然の闖入者によって破られた。 「オールド・オスマン!」 荒っぽいノックに続いて、髪の薄い中年教師――コルベールが部屋に入ってくる。 その時には既に、オールド・オスマンもロングビルも自分の席へと戻っていた。早業である。もっとも、オスマン氏は酸欠気味で、頭をふらふらと揺らしていたが。 「なん、じゃね?」 「たた、大変です! ここ、これを見てください!」 ようやく脳に酸素が戻ってきたらしきオスマン氏は、コルベールの焦りに鼻を鳴らした。 「大変なことなどあるものか。全ては些事じゃ。……ふむ、これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。こんな古臭い文献など漁りおって。そんなものを持ちだしている暇があったら、たるんだ貴族たちから学費を上手く徴収する術でも考えたまえ。ミスタ……なんじゃっけ?」 「コルベールです! お忘れですか!」 「おうおう、そんな名前じゃったな。君はどうも早口でいかん。……で、この書物がどうしたのかね?」 「これも見てください!」 コルベールが取りだしたのは、少年の右手にあったルーンのスケッチであった。 それを見た瞬間、オールド・オスマンの表情が一気に引き締まり、目が鋭い光を放つ。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい」 ロングビルが席を立ち、部屋を出ていく。それを見届けると、オスマン氏は口を開いた。 「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」 ルイズが滅茶苦茶にした教室の掃除が終わったのは、昼休みの前だった。 罰として魔法を使うことが禁じられていたため、時間がかかったのである。といってもルイズはほとんど魔法が使えないから、余り変わらなかったが。 ミセス・シュヴルーズは二時間後に目を覚ましたが、その日一日錬金の授業を行わなかった。どうやらトラウマになってしまったらしい。 片づけを終えたルイズと少年は、食堂に向かった。昼食を取るためである。 道すがら、少年は先ほどの光景を思い返していた。何故か、『わるあがき』という言葉が浮かんで消える。 次にちょっと間抜けな顔をした大きな魚が出てきて、最後に巨大な龍が脳裏をよぎった。 その余りの脈絡のなさに、自然と苦笑が漏れる。それを見とがめたルイズが、少年を睨みつけた。 「……あんたも」 「?」 「あんたもわたしを馬鹿にしてるんでしょ!? 貴族だなんだと散々言っておいて、その実はなにも出来ない、『ゼロ』であるわたしを!」 そんな叫びは、少年のきょとんとした表情によって迎えられた。作ったものではない。心の底から、なにを言われているか分からない、と思っている顔だ。 それを見た瞬間、毒気も怒りも、全て雲散霧消してしまった。 沈黙したルイズを見て、少年はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。 「……使い手と『わざ』には相性がある」 「ふえ?」 「どれだけ強い力を持っていても、相性の悪い『わざ』は使えない。今のゴシュジンサマは、相性の良い『わざ』がない状態なんじゃないかと思う。だから、『わるあがき』しかできない。……けど、それでもあれだけの力があるんだから、適正のある『わざ』ならすごい威力になるんじゃないかな」 突然饒舌になった使い魔に、ルイズはしばらくぽかんとしていたが、それが彼の不器用な慰めだと気づくと、くすりと笑った。 それに、こいつの考え方は面白い。これまで失敗してきた『わざ』――魔法を使えるように努力するのではなく、相性の良い魔法を探す。 今までも色々な魔法を試してはきたが、もっと色々と、それこそ普通は思いもしないようなものまでやってみるのも悪くないかもしれない。 ただ、今は――。 「……『わるあがき』ってなによ」 「えっ? ええと、うんと……なんなんだろう」 「ご主人様にそういうこと言う使い魔は、お昼ご飯抜きにしちゃうわよ?」 慌てる少年にルイズはくすくすと笑うと、先ほどより明らかに軽い足取りで、食堂へと向かった。 前ページ次ページゼロの使い魔BW
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王女一行が校門前に到着し馬車からアンエリッタ姫が降りてくると、門の前に並んでいた生徒から歓声があがった。凄い人気である。 最も、ここにいる生徒はメイジであるにしてもあくまで子供である。親が良からぬ事を考えているにしてもここの生徒の世代ならいくらか洗脳が効くだろう。学校とは学びの場でありつつも、そういう場であることもある。 だが、それでも興味無さそうにしているのも何人かいた。キュルケやタバサといった留学生達、そして生徒ではないポルナレフである。 「あれが王女か。凄い人気みたいだが、実際はどうなんだろうな。」 「どういう意味?」 「あの笑顔が嘘臭いという事だ。何と言うか、人の顔を見て作られた表情という感じがする。」 「なんでそう思うの?」 「30年も生きてきたらそれぐらい分かるさ。」 ふーん、とキュルケが頷く。だが、ポルナレフは自分の思ったことが単なる杞憂であることを祈った。もし本当にそうなら、たとえ尊敬していないにしても、あまりにも不憫に思えたからだ。 そういう環境で育てられた人間はよっぽどの転機が無い限り堕落していく。そうやって堕落しきった人間は望んでもいないのに将来的に非難されるのだ。 (もっとも、異邦人の自分にはどうしようもないことだが、な。) そう思うと列の方に目をやった。ギーシュや一部の男子が熱狂的にアピールしていたり、女子は女子で王女の美貌を羨ましがっていたりした。 だが、自分の主人であるルイズはその中でポケッと頬を赤く染めながら皆とは違う方を見ていた。その視線を追うと隊長らしき一人の貴族を見ているのが分かった。 見事な羽帽子、そして髭。正にダンディにしてどことなく繊細な感じを持つ、絵に書いたような美丈夫である。 (…一目惚れか?歳は離れているみたいだが、青春しているな。) ポルナレフはルイズの様子を見てそう思った。 夜になって部屋に戻ってもルイズはまだポケーッとしていた。さすがに不安になってきた。 「ルイズ、一目惚れした気持ちは分かるがいい加減しっかりしたらどうだ?貴族ならまた出会う事もあるだろう?」 それでもまだポケーとしていた。今は駄目だが、いくらなんでも明日になったら戻っているだろう、と考えるとさっさと寝ようとしたその時、部屋のドアがノックされた。 不器用に初めに長く二回、次に短く三回… ルイズが動く気配がしないので仕方なくドアを開けた。 ドアの前にいたのは黒い頭巾を被り、黒いマントを身に纏った一人の女 バタン。 危ない危ない今の女は多分人違いだろう。きっと隣のキュルケに用があるに違いない。こんな時間にルイズに会いに来るほど酔狂な奴なんかいるまい。だいたい俺の周りに来る女は災厄を持ってくる。 「え、ちょっと今の誰!?」 小声でそう言うと先程と同じ調子でドアを叩いてきた。居留守を決め込んで無視した。 「ルイズ!?いるんでしょ?ルイズ・フランソワーズ!」 無視すること約15分。ルイズがその小さな声にようやきはっとしてドアに近付き開けると、外からさっき見た女が入って来た。いくらか怒っているらしく、ルーンを唱えると些か荒っぽい動作で杖を振った。 「……ディティクトマジック?」 ルイズが尋ねるとコクリと頷き、 「どこに目や耳があるかわかりませんもの。」 と言って頭巾を外した。頭巾の中から現れた顔は端正に整っていたが、その両眼はまるで猛禽類のように吊り上がりこっちを睨み付けていた。 目を除けば昼間見た気もするが、誰だったかな。 「ひ、姫殿下!」 あのルイズが床にひざまずいた。ああ、あの王女様か。あんな顔してたのにえらい変わりようだな。 「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ。」 王女様は感極まった表情をするとルイズを抱きしめた。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ…」 …やばいな…王女様、ルイズを抱きしめてるけど目が明らかに笑ってない。まだにこっちを睨んでる… ジョースターさん…また、あれをお借りします。 「二人は何故かは知らんが親しいようだな。二人だけで話し合いたいこともあるだろうし、邪魔者はしばらく外に出ていよう。」 と言って紳士らしさを装い部屋の中から逃げた。後ろから来る視線が痛いが気にしない。 部屋から出るとすぐにギーシュと遭遇した。 「夜中の女子寮で何やっているんだ?貴様は。」 「い、いやモンモランシーに会いに行こうと思ってさ…」 「ここはルイズの部屋だが…貴様、さては二股に飽き足らず…!」 「ち、違う!」 ギーシュが慌てて否定する。 「本当のことを言うとだね、彼女の部屋に黒いマントと頭巾の人が入ってきたろう?横顔をちらっと見たんだけど、姫殿下らしかったから気になって…」 ギーシュの言い訳が終わるのを待ってからギーシュと別れた。 15分も待ち続けるとはこいつ、無意識ではあるがストーカーだな。このことを種にしたらこいつもギトーのような金づるに出来そうだ。 懐かしいヴェストリの広場に来た。ベンチに腰掛けるが夜中なだけあって誰もいなかった。 「友達…か。」 ルイズと姫を見て十年以上前、エジプトへ旅した時に得た仲間達…真に心の内を伝え合うことの出来た、掛け替えの無い親友達を思い出した。 帰ってこないのが二人と一匹、そして連絡を絶たれたのが二人。 いまや自分も帰れない仲間に入った。 若き希望の為に命を賭し…そして戦いに費やした人生は戦いの中で終わった。だが、もう戦わなくてすむとなるとホッとした所があった。心の安らぐことがほとんどなかったからだろう。 (もう闘いはいらない…心落ち着くような平和な生活がしたい…) 肉体が戻った今、心からそう願っている。長年会えなかった友人達にも会いたい。だがその願いは… 空を見るとそこには輝く月が二つ。別世界にいるという何よりの証明。それを見て涙を流した。 ここは別世界なのだ。自分の故郷も無い、知り合いもいない、孤独な世界…もう帰れないかもしれないと思うとますます淋しくなった。 「ミスタ・ポルナレフ…。」 不意に声をかけられた。顔を上げると素晴らしいハゲ頭をしたコルベールがいた。 「隣に座らせていただいてもよろしいですかな?」 「…」 ポルナレフは無言で頷いた。よいしょ、とコルベールが隣に座った。親父二人、あまりにも不愉快な光景である。 「みっともない所を見られたな…」 ポルナレフが切り出した。 「いやいや、誰でも泣きたいときはありますし、泣きたい時は泣くべきですぞ。」 「…そうか?」「そうですぞ」 ポルナレフとコルベールは笑いあった。親父同士伝わるものがあるのだろう。 「しかしこんな夜更けにどうなされた?」 「月が綺麗だったから散歩したくなってな…」 ポルナレフは嘘をついた。ルイズの部屋に王女がお忍びで来ているからとは言えないからである。 「私もですな。」 コルベールが空を見上げた。先程のポルナレフと同様、物憂げな表情をしている。ポルナレフはそれを見てきっと思い出したく無い過去があるのだろう、と思った。だから、それには触れないように返事をすることにした。 「へえ、意外だな。貴方がそんなにロマンチストだなんて…」 「はは…私のような者でもたまには月を見て散歩したくなる日もあります。」 「そういうものかな?」「そういうものです。」 ははは、と二人はまた笑いあった。笑い終わった後、しばらく二人は何も喋らずに月を眺めていた。だが、二人の間には友情という絆が確かに芽生えていた。 「ただいま。」 ポルナレフはコルベールと別れてルイズの部屋に帰って来た。 「遅かったわね。」 ルイズが多少嬉々とした様子で迎える。 「姫様は帰ったのか?」 「ええ。」「…ルイズ、何があった?」 ルイズの機嫌がやけにいいのが気にかかり、ポルナレフが尋ねた。 「姫様からアルビオンの皇太子様の持つ手紙を返して貰ってこいと言われたの。姫様から直々だし、すごい名誉よ。だから明日、早朝からラ・ロシェールへ行くわよ。分かった?」 そう言うとルイズは明日が待ち切れなさそうに布団を被った。それと対称的にポルナレフがまた女難か、と嘆いたのは言うまでもない…。 To Be Continued...