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凶~運命の使い魔~第一岩 凶~運命の使い魔~第二岩 凶~運命の使い魔~第三岩 凶~運命の使い魔~第五岩
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子供の使い魔② その後部屋に戻ると使い魔についてルイズがたっぷり熱演してくれた 使い魔の仕事は主に 主人の目となり耳となる 主人の望む物を探してくる 主人を敵から守る らしいけれどどうやら僕は雑用をすればいいらしい またどうやらアメリカやイギリス、イタリアなども無いそうだ 神父を倒したせいでここまで変わってしまったんだろうk・・・・・ 「!!! 月が二つありますよ!?」 「当たり前でしょ?あなた何言ってんの!」 「で・・・でもここは地球じゃ・・・」 「地球っていったいどこよ? そんな所聞いた事も無いわ」 もしかしてここって僕がいたのとは違う世界・・・・? 数分後、そこに居たのは満足そうな顔で寝ているルイズと 床で泣きながら寝ているエンポリオだった・・・・ 翌日、エンポリオはルイズより先に目を覚ました 洗濯物を持って廊下に出るとエンポリオは洗い場を知らないのに気がついた 「どうしよう・・・」 学園内を彷徨っていると赤髪の少女に声を掛けられた どこか小馬鹿にしたような目で見ているような気がする 「ぼく、どうしたの?」 「あ、すみません、洗い場はどこですか?」 「洗い場なら向こうよ、そんな年から使用人になるなんて大変ねぇ」 どうやらこの人は僕を使用人と勘違いしてるらしい、 それに正直子供扱いも止めて欲しい 普通使い魔は幻獣等らしいし、見た目も子供だから仕方がないかもしれないけど 「いえ、ぼくは使い魔らしいです」 「・・・・え? 使い魔?」 「はい」 「・・・・もしかして、ルイズの?」 「そうです」 「へ・・・平民を・・・」 見ると必死に笑いを堪えていた ちょっとイラっとした その後話しを聞くとルイズさんは魔法は使えるけど必ず失敗するメイジらしい それで渾名がゼロなんだとか その後洗い場に行き 洗う 洗う 洗う 途中シエスタという人にまで子供扱いされる なんだかボクと呼ばれるのは馬鹿にされてる気がした とにかく洗う 洗う 洗う 洗えど洗えど汚れが落ちないので エンポリオは考えるの(洗うの)を止めた・・・ 部屋に戻ると早速 「あんたどこにいってたの?私の使い魔なんだから、 私より早く目が覚めたのなら私が寝坊しないようちゃんと起こしなさい!」 「僕は洗濯物を洗いn「まず私を起こすの!」」 この人、人の皮を被ったエルメェス兄貴だ、 正直泣きたいよ、徐倫おねえちゃん・・・・ そう思いながらエンポリオは・・・・・泣いた
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サモン・サーヴァントの儀式の終わった日の夜、ルイズは眠ることが出来ずにいた。 目をつぶっても昼間に起きた出来事が頭の中を駆け巡る。気がついたら東の空から太陽が昇り始めている。 あの後使い魔が消えたことで最もショックを受けていたのは意外にもキュルケだった。 今まで見たことない素直さでルイズに謝ってきたのだ。正直どう反応すればいいか分からなかったので適当に流しておいたが。 ルイズが思いのほか冷静だったのは、自分の手元に召喚した奇妙な箱が残ってたからだ。 今はもう火は出てない。あの時の騒ぎで気づいたときにはもう消えていた。だが壊れたわけではないようだ。 たぶんこの箱から火を出せば再びあの使い魔は現れる。 そして再び私を襲うんだろう。向こうはこっちの事を主人と認識してないようだ。 「あ~もう。どうしよう」 思わずつぶやく。が、そういいながらも心の中ではひとつの覚悟を決めつつあった。 今まで誰よりも努力してきたつもりだが、それでも報われず魔法が成功したためしはない。 その自分が始めてほぼ成功したと言う事ができたのだ。後もう少し。 後はあの使い魔に私を主人と認めさせる。そしてどのメイジにも負けない信頼関係を作る…! (点火「する」。ではなく点火「した」なら使ってもいい!) ルイズの手の中で火が踊った。 また後ろに現れるのではないかと思って、あらかじめ背中に壁を付けておいた。 世の中には背中を見られたら死んでしまう奇病があるという話を意味もなく思い出す。 予定通りと言うべきかどうか、使い魔は今度は自分の前に現れた。 昼間と全く同じ格好の黒尽くめの亜人。そして。 「おまえ…『再点火』したな!」 第一声も全く同じ。 違うのはそれに立ち向かうようにして杖を握りしめるルイズ。 「ええ。『再点火』したわよ」 ドドドドドドドドドドドドドドド………… (やっぱり影だ……) さっきからその場をうろうろするだけの使い魔を見てルイズは確信する。 昼間の出会いのとき心に引っかかったいくつかの単語。 再点火、チャンス、選ばれるべき者、影。 キュルケはこの使い魔がルイズの影に触れた後で、ルイズが叫び始めたと言っていた。 今回はあらかじめ自分の影が壁に向かうようにロウソクを立てておく。 余計な影ができると困るのでカーテンは閉めておいた。 これらは自分の影を守る為の作戦だったのだが、別の事実も浮かび上がらせることになった。 (こいつ。さっきから影の部分しか歩いてない) 使い魔がさっきから歩いているのは、ロウソクの光によって出来た家具の影の部分だけだった。 ひとまず自分は安全地帯にいることを認識したルイズは、使い魔に話しかけてみる。 「あんた名前は?私の使い魔なんでしょ?」 使い魔は動きを止めこっちを見ると答えた。 「チャンスをやろう!お前には向かうべき二つの道がある!一つは生きて『選ばれるべき者』への道!」 (ど~しろっていうのよ) 全く会話にならない。こいつはもしかしてこれ以外の言葉を知らないのか?思わず嘆息してしまう。 ああ。サモン・サーヴァントはもうやり直しできないし、使い魔は話を聞かないし。つまりハサミ討ちの形になるな… …………だんだんむかっ腹がたってきたわ。なんで私だけ使い魔のためにいろいろ考えて寝不足にならないといけないの? 逆じゃあないのか?選ぶのは私で、寝不足になるのはこの使い魔のほうなんじゃないのか? ルイズは相変わらず演説を続ける使い魔に向かって足を踏み出した。 使い魔がルイズの影に触れたと思った瞬間、使い魔に肩を掴まれている状態になっている。 昼間の再現。だからルイズはあわてなかった。 「チャンスをや「うるさい!!!」」 また同じことをリピートしようとする使い魔に一喝する。 「意味わかんないこと言ってんじゃないの!アンタは私の使い魔なの!私がご主人さまなの!」 ルイズはその目をけっして使い魔から離さず睨み続ける。 使い魔の動きが止まる。そして。 「チャンスをやろう!お前には「だからもうそれは聞いた!!」」 使い魔の動きが再び止まる。 「チャン「うるさい!!!」」 両者の動きが再び止まった。相変わらず使い魔の感情を読み取ることはできない。 どれくらいその状態が続いたか分からない。ルイズにはそれこそ永遠のように感じた。だが睨みは効かせ続ける。 使い魔はしばらくするとルイズの肩からトンと押すように手を離した。 よろけて転びそうになる!と思ったのは一瞬で、気がつくと少し離れた場所に立っている。 (今のは『私の体』を掴んでたんじゃないのね) 息を落ち着かせながらそんなことを考える。 使い魔の方を見てみる。雰囲気が変わったとは思えないが、もう襲ってくる様子はないようだ。 「あんた名前は?」 答えは返ってこない。 またひとつ嘆息。 「じゃあもうここは譲歩して私から言うわ。ありがたく聞きなさい。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 反応はない。 「あんたを選んだ者よ」 やっぱり反応はない。 どうやってこの使い魔と信頼関係を作る?というよりコミュニケーションを取る?……ルイズは頭を抱えた。そのとき。 「ブラック・サバス」 「え?」 とりあえず名前は知ることができた。いやブラック・サバスが名前なのか本当は分からないのだが この際細かいことは考えないでおく。とりあえず一歩進んだ。ここから少しずつ進めればいい。努力には慣れてる。 この使い魔は何ができるのか。とりあえず簡単な命令からやってみようと思った。 「洗濯とか分かる?コレ」 ルイズは洗濯物が入ったカゴをブラック・サバスに渡す。 使い魔はそれを受け取ると…………なんの躊躇もなく食べた。 え……ルイズはその行動にしばらく絶句してしまう。なにをやったこの使い魔は!? 「何やってんの!すぐ出しなさい!このバカ犬!」 もう信頼関係なんて言葉は頭から飛んでいた。ブラック・サバスは我関せずといった雰囲気でルイズを見下ろしている。 「どうしたのルイズ?」 鍵がかかってたはずのドアが開き、廊下からキュルケが入ってくる。 と、その瞬間ブラック・サバスの姿が消え去った! 「あ!」 思わずルイズは声をあげる。あわててキュルケの横を抜け廊下に出て左右を見渡す。 わずかにだが廊下の端を影の線が伸びている。 もしあれが影上でしか動けなくてもこの上を伝って行けば相当移動できるだろう。 さらに時間が立って影の範囲が大きくなればほとんど学校中を移動できるのでは? 「ちょっとルイズどうしたのよ」 後ろを見るとキュルケが不思議そうにこちらを見ている。その足元には赤くてでかいトカゲが。おい尻尾燃えてるぞ。 「ああ、この子が私の使い魔のフレイムよ。あのさ~、えーと、あんたの使い魔は……やっぱ」 キュルケが珍しく言葉を濁すように話している。どうも自分がルイズの使い魔を殺したと勘違いしているようだ。 最近珍しいキュルケばっか見るな。なんてルイズは思いながらも 「使い魔に逃げられた」などと言うことも出来ずに、ただ廊下の先を見つめていた。 汚れたエプロンなどを洗濯するために水汲み場へ向かうメイドが一人。シエスタである。 今日もいい天気だ。というかよすぎる。 シエスタは少しでも日の光から離れるため校舎の日影の部分を歩いていた。 しかし水汲み場まで残り数メートルは日影がない。それに水汲み場自体は影になるところが無く、日に照らされている。 それでも太陽の光を反射してキラキラと光る水汲み場を見ると、涼しい気持ちになる。 水汲み場へ歩いていく。回りには誰もいなくて、付いてくるのは自分の影だけ。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜか洗濯かご。 見詰め合うこと数分。 「あの……何かようですか?」 根負けしたシエスタは、目の前の怪しさ爆発の存在に声をかけた。 15分後そこには2人並んで洗濯しているシエスタとブラック・サバスの姿が! 「私ここで使用人をやらさせてもらっています。シエスタと申します」 「…………」 「あ、この洗濯道具は自由に使っていただいてけっこうですよ」 「…………」 「そ、その格好暑くないですか?」 「…………」 「ウミネコだ。ありゃーカモメじゃねぇーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか知ってるか?」 「…………」 (…………空気が重い。エコーズACT3ってレベルじゃねーぞ!) 横からの妙なプレッシャーに思わず泣きそうになる。 黙々と洗濯をする隣の亜人に、なにか他に話題はないかと頭を回転させる。 「あなたはどなたの使い魔なんですか?」 ……やはり返事はない。もう黙ってさっさとしあげてしまおう。そう思ったとき 「ルイズ」 驚いて横を見るが、使い魔は相変わらず手は動したままこっちを見ようとはしない。 「ルイズ……ミス・ヴァリエールの使い魔なんですね?」 シエスタは会話が繋がったことに驚き、思わず声が大きくなる。 すると急に辺りが暗くなる。何事かと上を見ると巨大なドラゴンが空を通過していく。 「すごいですね。あれも使い魔なんでしょうか。わたし龍は初めて見ました」 ひとり興奮しながらも隣のサバスに話し続ける。 しかし、横を見ると使い魔はいなかった。洗濯物とカゴも消えていた。 To Be Continued 。。。。?
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「宇宙の果てのどこかを彷徨う私のシモベよ… 神聖で美しく、そして究極の使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに…答えなさいッ!!」 激しい爆発と共に呼び出されたそれは、その場にいた誰も想像しなかった物だった。 岩、まずはそう見えた。しかしそれには顔があった。 まるで人間が生きたまま石に変えられたようなおぞましいオブジェ、それには生きる物全てを畏怖させるような気配が感じられる。 普段ルイズを嘲笑している者達も今は声一つあげていない。 何故自分は震えているのだ?『ゼロ』が召喚した不気味な岩を見ているだけなのに。 生物的本能による恐怖、という解答に彼らがたどり着くことはついになかった。 一方のルイズもまた不可解な感情に苦しんでいた。自分の呼び出した使い魔、下僕となるべき存在、そのはずなのに。 何故体が震えて動かないのだろう。何故こんなに絶望的な気分になるのだろう。 何故この塊を見ていると、生きたままヘビに飲み込まれるカエルの心境を考えてしまうのだろう。 その答えを考える猶予はルイズには与えられなかった。 誰一人声の出せない状況下、足のすくんだルイズの目の前でそれがゆっくりと動き出したからだ。 太陽すらも克服した究極の生物がハルケギニアの大地に解放された瞬間だった。 ハルケギニア西方に長い歴史を持つ王国があった!歴史ある国家故の伝統としきたりに支配されたこの文化! その名をトリスティン王国! そしてその中に『魔法』の能力で王国を支配する貴族がいた! 『魔法』は彼らに伝わる奇跡!真の支配者の力をもたらす! しかし!ある時その王国は忽然と歴史から姿を消す!無数の吸血鬼を残して! なぜなのか!どこへ行ったのか!謎の全てはあの『使い魔』にあった! この物語は異世界から召喚されたゼロの『使い魔』にまつわる人々の 数奇な運命を追う冒険……にはならなかった!残念ながら! 究極の使い魔 完
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この世に『魔法』や『マジック』なるものが存在すると思います? 手品とかそういうのじゃあなくて、手を振りかざしたら炎が出るとか、そんな不思議な力のことです。 ファンタジーやメルヘンじゃあ あるまいし、そんなもの存在するわけがないと答える人が殆どだと思います。 あ、申し遅れました。 僕の名前は広瀬康一。今年4月に入ってから18歳になったばかりの高校3年生です。 まー、僕のプロフィールなんて覚えてくれなくても結構ですけどね。 肝心なのは、僕の名前でも歳でもなく、僕が持っている不思議な能力なんです。 『スタンド』という、超能力に似た能力で、僕が住んでいる杜王町には『スタンド』を持った人間が沢山住んでます。 この能力は、一般の人には見ることも感じることもできません。 だから、一般人相手には知らぬ間に傷をつけたり、物を盗んだりと、色々と好きほーだいできちゃったりします。 もっとも、僕は『スタンド』を悪用することはしませんけどね。 ところで、先ほど話したことですが、『魔法』の存在を信じますか? 僕は信じます。なぜなら、僕はそんな不思議な力が普通に使われてる世界に来てしまったからです。 いわゆる、『魔法の国』という所に。今考えれば、それほど在りえない話でもなかったんです。 なぜなら、僕も『魔法』に似た、『スタンド』という能力を持ってるのだから――。 ――ACTの使い魔―― 桜の花びらがシャワーのように降り注ぐ並木道。 桜だけでなく、タンポポやつくし、動物までもが浮かれるような春真っ只中の道を康一は歩んでいた。 いつも自分の周りに取り巻いてくる露伴や由花子の姿はなく、一人孤独に高校から自宅へと続く道を進んでいる。 家に戻ったらボケ犬の散歩や、山のように出された宿題を片付けなければならないため、その足取りはやや速い。 しかしこの後、康一が自宅に戻り、犬の散歩や宿題を片付けることはなかった。 自宅まで、後1km程という地点で、康一は『不思議な物体』を発見した。 体言するならば、キラキラと光る鏡のようなものと言ったところである。 幅1メートルぐらいの楕円形をしており、ほんの少しであるが宙に浮いている。 一般人ならば、これは一体なんだろうと思い、戸惑うところであるが康一は違った。 この鏡を発見した時に、康一が最初にとった行動は、自分のスタンドであるエコーズACT3を構えることだった。 道端に突如現れた、不自然な鏡のような物体。 こんな自然現象は見たことがないし、宙に浮いた物体なんて聞いたこともない。 ただ一つ、可能性があるとすれば、これがなんらかのスタンド能力であることだ。 スタンド能力であるならば、充分に注意して調べなくてはならない。 ましてや康一は、今まで新たなスタンド能力やスタンド使いには、嫌というほど危険な目に会わされている。 変な髪をしたキッチリ屋に矢をぶっ刺されたり、 姉を手篭めにしようとした変態バカ男に心の錠前を掛けられたり、 思い込みプッツン変人女に髪の毛で拉致されたり、 蜘蛛を平気で舐める変態漫画家に本にされたり、 手フェチの変態殺人鬼に殺されかけたり、 人のパンティーを勝手に取り出す変態少年に紙にされたり……。 大抵ロクな目に会っていないため、嫌でも警戒心は高まるものだ。 康一は、地面に落っこちていた石コロを拾って、鏡のような物体に投げてみた。 石ころは鏡の中に消えた。鏡の裏を見ても、何も落っこちていない。 次にエコーズACT2の尻尾の部分を恐る恐る鏡の中に入れてみた。 そのまま自分の元へエコーズACT2を戻しても、尻尾には何の変化もなかった。 この結果、この鏡のような物体は、どこか他の場所へ続いている『異次元への扉』のような物であると推測できた。 ここで康一は悩んだ。これからどうするべきか? 仗助や億泰などを呼んで、これが何なのか詳しく調べた方が安全であるが、目を離したスキに消えてしまったら元も子もない。 エコーズの尻尾を入れても何の変化もなかったことから、ちょっとくらいなら中に入って調べても大丈夫そうだった。 康一は、恐る恐る鏡の中に入り、中を調べようとする。 その瞬間、康一の体中に稲妻が走るような激しいショックが流れた。 ヤバイと思った時にはもう遅かった。後悔先に立たずとはまさにこのことである。 康一は、全身に痛みが走る感覚を覚え――そのまま気絶した。 「――で平民を呼び……する…」 「ちょ……間違った……」 大人数の人間の笑い声、女の人の話し声が康一の頭の中で響く。 浴びる程酒を飲んで、翌日、二日酔いで頭がズキズキするあの感覚の中で、康一は目を覚ました。 「ううっ……」 康一は頭を抑えながら、顔を上げて辺りを見回した。 黒いマントをつけた人間が、物珍しそうに康一のことを見ていた。 自分の目の前には、桃色がかったブロンドヘアーの女の子がいる。 透き通るような白い肌をしており、まるで人形のように美しかった。 「さすがはゼロのルイズだ!」 そう言って、爆笑の荒らしが沸き起こる。 そんな爆笑の渦の中、康一は何が起こってるのかわからず、ポカーンとしていた。 (ここはどこ? 外国? 異次元? スタンド攻撃? スタンドが作り出した幻? まさか夢ってことはないと思うけど……) 康一は、自分の頬っぺたを抓る。当然だが痛い。 夢ではないようだ。ということは、やはり何かのスタンド攻撃なのだろうか? 「ミスタ・コルベール!」 目の前に居た、ルイズという女の子が怒鳴った。 人垣の中から、変な中年男性が現れて、なにやら言い争っている。 その中年男性は、真っ黒なローブに大きな杖を持っており、まるでファンタジーに出てくる『魔法使い』のようだった。 中年とルイズの会話の内容は、康一には訳のわからない単語ばかりが飛び交っている。 『召喚』だとか、『使い魔』だとか、傍から見れば、頭がイカれてるんじゃあないかって会話である。 「平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」 再び、康一の周りで爆笑の渦が巻き起こる。 そんな爆笑を無視して、康一は一体何のスタンド攻撃なのかずっと考えていた。 しかし、スタンド攻撃だったとしても、こんな訳の分からないスタンド攻撃なんて聞いたことがない。 幻を見せるにしても、康一を攻撃する目的なら、もっと凄まじい幻を作るはずだし、 何かの空間を作るスタンドだったとしても、こんなに大人数の人間が、スタンド空間の中に存在するのは不自然だ。 ありえそうなのは、『相手をどこかに瞬間移動させる』スタンドだ。 それならば変な格好をしている、大勢の人間に囲まれているのも辻褄が合いそうだ。 「ねえ」 「……」 ルイズが康一に話しかけるが、反応はない。 「ちょっと、聞いてんの!?」 ビクっと体を反応させ、組んでいた腕を解き、康一はルイズの方へと向いた。 「あ……は、はい!」 「あんた、感謝しなさいよね。 貴族にこんなことをされるなんて、普通は一生ないんだから」 貴族? 貴族ということは、どこかの外国の国だろうか? しかし、さっきからこの人たちは日本語を喋っているみたいだし……。 そんな風に康一が思っていると、ルイズが康一の目の前で杖を振り、 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 と呪文らしき言葉を唱えた。 そして、ゆっくりと唇を近づけてくる。 「え!? あ、あのー、何をす……」 「いいからじっとしてなさい」 そう言って、ルイズは康一の頭を左手で掴む。 「ちょ、あの、僕には、いちおう恋人がいて――」 「ん……」 ズキューンという効果音が康一の頭の中に響く。 「な、なんて……ことを……」 ファーストキスではないが、康一は見知らぬ女性とキスをしてしまった。 もしこの光景を髪の毛を自在に操る彼女が見ていたら、どうなっていただろうか。 康一は、この場に由花子がいなかったことに、心のそこからホッとした。 しかし、ホッとしている場合ではないことにすぐに気が付く。 「い、いきなり何をするんだ! ぼ、僕には恋人がいて、もしこの光景を見られてたら――」 ルイズはそんな康一の言葉を無視するかのようにそっぽを向いた。 その態度は無いんじゃない? と思いながら、左手の甲をさする康一。 (……? 何で僕、『左手の甲』なんてさすってるんだ? それに妙に体が熱くなってきたような――) そう思った瞬間、康一の体が炎で燃やされたように厚くなった。 「う、うわあああああッ! 体が熱い!」 (何で急に体が!? スタンド攻撃? まさか目の前にいる、僕より歳が低そうなこんな少女が本体?) そんな康一を気にする様子も無く、ルイズは苛立った声で言った。 「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」 「使い魔のルーン? それがキミのスタンドの名前か? いくら女の子だからって、この攻撃をやめないと、こっちも攻撃するぞ!」 「は? スタンド? 何言ってるの?」 「くっ、エコーズACT3ッ!!」 康一は、エコーズACT3を呼び出して、ルイズにFREEZEの攻撃をしようとした。 しかし攻撃する前に、体中の熱が嘘のように消え、平静を取り戻せるようになっていた。 スタンド攻撃をやめたと思い、康一もFREEZEで攻撃するのをやめる。 「ハァハァ……。キミは一体何者なんだ! なぜ僕をここに呼び出した! 僕の体に何をしたんだ! ここは一体どこなんだッ!」 「ったく、色々とうるさい使い魔ね。 ここはトリスティンよ! ここはかの高名なトリスティン魔法学院!」 トリスティン? そんな地名、外国にあったかな? いや、その前に魔法学院? そんな学院なんてあるの? 手品の練習でもするのかな? そんな風に康一が思っていると、中年男性が人垣に向かって言った。 「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」 中年男性はきびすを返すと、宙に浮いた。 他の生徒も、一斉に宙に浮き、城のようない石造りの建物へ飛んでいった。 康一は、その光景をポカーンとした表情で見ていた。 そして、すぐに我に返り、 「と、飛んだ……! ねえ、ちょっと! あの人たち宙に浮いたよ!」 と、宙に浮いている人々を指差して言った。 「ルイズ、『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともに出来ないんだから、歩いて来いよ!」 そう言って宙に浮いてる間も、ルイズをバカにし笑いながら飛び去って行く。 ルイズはその光景を、歯軋りしながら睨み付けていた。 そして、最後に残された面々は、ルイズと康一だけになる。 ルイズは、ため息をつき、康一の方に振り向いて怒鳴った。 「あんた、なんなのよ!」 「こっちが聞きたいよ! キミは一体何者なんだ! さっきの人たち宙に浮いたけど、全員スタンド使いなの!?」 しかし、ルイズは全く何のことか分かっていない様子であった。 「そりゃ飛ぶわよ。メイジが飛ばなくてどうすんの。 それより、さっきからスタンドスタンドって、一体何のことよ?」 しらばっくれてるのか? いや、もしかしたら単にスタンドという言葉で呼んでないだけかもしれない。 そう思い、康一はエコーズACT2を出す。 「こういう能力のことだよ。 僕はスタンドって呼んでるんだけど」 しかし、ルイズは?マークを浮かべるだけで、首を傾げている。 目の前でACT2の拳を振り上げても、驚く様子も、構える様子もない。 演技をしてるようにも見えない。本当に見えてない様子だった。 「キミ……見えてないの?」 「はぁ? 召喚した時に頭でも打ったの?」 「……」 じゃあ、何故こんな所にいるのだろう? 彼女じゃないとしたら、一体誰が? そう思った康一だが、ルイズが言った『召喚』という言葉が引っかかった。 「あの、今『召喚』って言ったけど、それって何のこと?」 「私が呼び出したのよ。 さっき儀式をしたでしょ? あんたは私の使い魔になったっていうこと」 康一はさっきの鏡のことを思い出した。 あの鏡は、この子が行った『儀式』で現われた亜空間のようなもので、その中に入ったからこうして召喚されたのだろうか。 しかし、康一はこの現実をあまり認めたくはなかった。 いきなり道端に現われた変な鏡を通ったら、そこはファンタジーの世界でした。なんて話は聞いたことがない。 「ハ……ハハ……まさか……大体、使い魔って言ったけど、僕は人間だよ? 冗談きついなぁ~、もう……」 「私だってこんな冴えない生き物は嫌よ……。もっとカッコいいのがよかったのに。 ドラゴンとか。グリフォンとか。マンティコアとか。せめてワシとかフクロウとか、この際、犬でも」 犬以下と認定された康一は、少しだけ悲しくなった。 そして康一は察した。この子はおそらく召喚ってやつに失敗して、僕を呼び出してしまったんだと。 さっき周りの人間たちに大笑いされていたのは、人間である自分を呼び出したからだろうと。 「はぁ……そうですか……」 全てを察した康一は、深くため息をつき、ガックリと肩を落とした。 「ため息つきたいのはこっちよ! とにかく、私は今日からあんたのご主人様よ!」 そう言われて、康一は再び深いため息をついた。 大和撫子のような、大らかでやさしい女性に召喚されたならともかく、 由花子と同じくらい扱いにくそうな女性に召喚されたとなったら、これからどんな気苦労があるか分かったものではない。 「ちょっと、聞いてるの!? 私は二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。覚えておきなさい!」 「はぁ……えーと、ルイズさんですね……。 僕は広瀬康一って言います」 「変な名前。呼びにくいから 犬 って呼ぶことにするわ」 (犬は酷いよなぁ……。 はぁ~、何で僕、自分より年下っぽい女の子に敬語使ってるんだろ?) こうして康一は、ファンタジー世界へと呼び出された。 なお、これからもっと酷い苦悩に悩まされることになるが、この時の康一は全く気づいてなかった。 To Be Continued →
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ヴァニラはどこに消えたのか? ルイズが壁の穴の前で思案に暮れている時 彼はまさにその穴を通り抜け外にいたッ 自らのスタンド、クリームの口内に潜り込みこの世界から姿を消す スタンドが小さくなったとはいえその口内に広がる亜空間の容量はヴァニラにすら判らないほど広大ッ 彼が潜り込む等造作もなかった 時折外を確認し、物を削って移動の痕跡を残さぬよう注意し やがて人気のない洗い場にたどり着いた 「どうすればいいのだ・・・・・」 とりあえずルイズの部屋からは抜け出したものの、エジプトに戻る方法も行く当てもないヴァニラはこの世界において完全に孤独ッ そもそもこの弱ったスタンドでは戻ったところで何の役に立つというのか 小さくなったクリームの口内から少々苦労しながら体を出し、腰を下ろそうとするが 「きゃっ!」 突然背後から上がった悲鳴と、それに続く何かの落ちる音に弾かれた様に振り返る 「誰だッ!」 クリームを飛ばそうと身構えるがそこにいたのは洗濯物を満載した籠を持った――正確には持っていた、メイド服の少女ッ どうやら何もないところから出てきたヴァニラに驚いたらしい 「も、もうしわけありません・・・・あの、ミス・ヴァリエールの使い魔になられた方ですよね?」 少女は恐る恐る問いかける 「・・・・・・・・・・そうだ」 しかしヴァニラは目に見えて不機嫌になり、少女は更に恐縮してしまった 「も、もうしわけありませんッ!」 体が折れてしまうんじゃないかと心配になるほどに少女は何度も何度も頭を下げ、その態度に流石のヴァニラも居た堪れなくなる 「もういい、頭を上げろ」 本当に申し訳なさそうに頭を下げる少女に仕方ないといった様子で声をかける 「はい、申し訳ありません・・・・ええと」 ようやく顔を上げた少女は困ったようにヴァニラの顔を見上げる 「ヴァニラ・アイスだ」 「あ、もうしわけありません」 ヴァニラが名前を告げると慌てたように頭を下げ 「ヴァニラ様ですね。私はここで貴族の皆様のお世話をしているシエスタと申します」 と、恭しく名乗り返した シエスタの態度はここへ来て傲慢な貴族しか見ていなかったヴァニラにとってとても好ましく思えた 「それでシエスタ、お前はここで何をしていたんだ?」 「あ、私は洗濯を・・・・」 シエスタはそう答えると今頃思い出したのか、慌てて落としてしまった籠を拾い上げる 「・・・・・・」 ヴァニラは無言で零れ落ちた洗濯物を拾い、籠に入れた 「え、あの、ありがとうございます」 再び少女は恐縮しもう一度恭しく頭を下げるがその弾みで洗濯物が幾つか零れ落ちた ヴァニラがまた拾い上げようと身を屈めると 「見つけたわよヴァニラッ!」 肩で息をしながらルイズと、その後ろから見るからにキザそうな金髪の少年が洗い場に駆け込んできた 「ミス・ヴァリエール、君の使い魔はなかなか手が早いようだね」 「うるさいわねギーシュ、もう見つけたんだから帰ってもいいわよ!」 ギーシュと呼ばれた少年はルイズの言葉にむっとしたようだが、これ以上面倒ごとに関わる気はないのか何もいわず帰っていった 「・・・・・」 しかしヴァニラはギーシュの台詞に些かむっとした様子、何か言おうとしたが 「ちょっとヴァニラ、どういうつもり?使い魔が逃げ出したなんて聞いたこともないわッ!」 わめき散らすルイズに阻まれ、それは叶わなかった 「うるさい、それよりもルイズ」 ヴァニラは面倒くさそうにそれを遮る 「大体・・・・何よ?」 平民如きに呼び捨てにされたのはムカついたが一先ずストップ、自分より遥かに背の高い使い魔の顔を見上げる 「お前如きに仕えるのは本意ではないが、使い魔とやらになってやろう」 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃ッ! ヴァニラが自分から使い魔になると言い出したッ!! (ここで癇癪を起こしたところでDIO様の元へ帰れるわけじゃない。ならばあの小娘の元で帰る方法を模索した方がましというものだ) 今一度冷静になり、己の身の振りを考えた結果だった 「は・・・・?あ、当たり前でしょ!アンタは私の使い魔でもう契約の・・・そのしたんだから!!」 契約に伴った行為を思い出し赤面するルイズ、そもそもヴァニラの知らないことだが サモンサーヴァントの儀式には使い魔に口付けをしなければならない 幸いにも『お前如き』といわれたのは耳に入らなかったようだ (DIO様、いつの日か必ずお傍へ参ります。どうかその時までご健在であられて下さい) こうして、ヴァニラの使い魔としての生活が始まった To Be Continued...
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ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、塔の間にある。要は中庭だ。 建物の影になって日が差さず、普段人はいない。 あの平民はぶちのめしたいが、あまり大事にはしたくない……というギーシュの微妙な配慮(彼も一応貴族だ)がここを選んだのである。 だが、それは全く無駄に終わったと考えていいだろう。 広場は噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっている。 「決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げた。歓声が巻き起こる。 「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」 うおおおー! また歓声。 平民と貴族って、階級だと思ってたが、どうやら種族みてーだなあ。 すると目の前のモヤシ男は人間じゃねーのか? セッコは思った。 魔法=血統なのである意味間違ってはいない。 殺しちゃあダメとかルイズが言ってたな。 ということは「貴」族も死ぬって事だ。 なんとなくだが負ける気はしない。 決闘を前にしても特に何も感じなかった。不思議だ。 「では始めるか、僕はメイジだから魔法で戦うぞ。文句はあるまいね?」 ギーシュが薔薇の造花を振る。 花びらが舞って、女の銅像が現れた。動くのか? 「さっさとかかって来い、モヤシ男。」 まだ銅像の性能がわからねえ。こっちから行くのは危険だ。 「僕は[土]属性、青銅のギーシュだ!ちゃんと名前で呼べ平民!」 「青銅とギーシュ、どっちが本当の名前だぁ?」 「うるさい黙れ!行けワルキューレ!」 銅像が走ってやってくる。運動能力はそう高くねえらしい。 あまりヤバそうじゃねえし、まずはこれと戦ってみるか。 目の前まで来た銅像が殴りかかってきた。 腕を掴み地面に叩きつけるように投げる。意外と重い。 ん、突然軽く? ギーシュが何か叫んでいる。 「……この銅像欠陥品かぁ?」 「こ、こんな馬鹿な!」 ワルキューレの腕が、根元からもげた。 思ったとおりね、結構強いじゃない。 ルイズは自分の使い魔が無能ではないとわかって、少し嬉しくなった。 ――トリステイア魔法学院、学院長室―― ミスタ・コルベールは、泡を飛ばして、学院長老オスマンに説明していた。 ルイズが使い魔召喚で平民の男を呼び出したこと。その契約のルーン文字が気になったこと。 それを調べていたら…… 「始祖ブリミルの使い魔、[ガンダールヴ]に行き着いたというわけじゃね?」 「そうです!あのルーンは、伝説の使い魔[ガンダールヴ]のものと全く同じであります!」 「わかった、しかし慌てるんじゃあない。同じルーンを使う違う魔法だってあるじゃろうが。」 オスマン氏はあくまで冷静である。 「それもそうですな」 ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、秘書ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です、オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいて、大騒ぎになっています。」 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんわい、で、馬鹿は誰だね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あの、グラモンとこの馬鹿息子か。おおかた女の子の取り合いじゃろ、相手は誰じゃ?」 「生徒のメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔です。」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師たちは、決闘を止めるために[眠りの鐘]の使用許可を求めております」 オスマン氏の目が、鷹のように鋭く光る。 「アホか。たかが子供のけんかを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマン氏を促した。 「オールド・オスマン」 「うむ」 オスマン氏が杖を振ると、壁にかかった大鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。 ギーシュは焦っていた。一体目のワルキューレはセッコに腕と頭をもぎ取られて機能停止している。 あいつは間違いなく戦闘経験豊富だ。けれど、メイジたる自分が平民相手に全力を出して問題になったりしないか? グラモン家の恥になったらどうしよう? 「くらえっ!」 足を狙って石礫を放つ。が、普通にかわされてしまう。 「[土]魔法ってのは全部こんな鈍いのか。」 もう仕方がない。負けるよりは全力で叩き潰す方がはるかにマシだ。 ありったけの精神力を込めて薔薇の杖を振る。 「ワルキューレぇっっ!!!」 魔法って大した事ねえなあ、それとも「土」だから? 確か赤土とかいう先生は土は日用品 つってたっけ? だが、こいつが単に弱い可能性も捨てきれねえ。知らないものは警戒するに限る。 さて、ギーシュをぶん殴ってオレに土下座させるかぁ。 「うおあ、なんだ?」 気づくと、さっきの銅像が7匹も現れている。 しかも武器を持ってやがる。こいつはやべえ。 どうせ鈍いんだろうが、もし当たったら死にそうだ、逃げるか? それもムカつくなあー。 ……なんか武器があればいいんじゃねえか? なぜ、その発想が生まれたのかは判らない。 何故ならセッコは武器を使ったことが一度もないからだ。 そうだ、この広場には石が敷かれている。この石で殴ったらどうだろう? 石は多分銅より硬いんじゃねえか? 少し出っ張った石に触れると左手の模様が光りだした。 この手触り、昔から知っている気がする。 思い切り石を掴む。模様が更に輝き、力が溢れてくる気がする。 ふと横を見ると、さっき壊した銅像が転がっていた。 何でオレは目の前にある銅像ではなく、わざわざ埋まっている石を選んだんだ? 今は闘いの最中だ、そんなことを考える暇はねえ。 左手の輝きに身を任せてみることにする。 「ねえ、タバサ、あの使い魔って人間だと思う?」 キュルケは隣の青髪の少女に声をかけた。 彼女には珍しく、本から目を離して戦いを見ている。 「わからない」 「タバサでもわからないか。」 「あんな能力の亜人は聞いた事も読んだ事もない」 「じゃあやっぱり人間なのかしらね?」 「わからない」 「そう。」 「ちょ、おま、おまえ一体?メイジなのか?」 どう見ても目の前の男は杖など持ってない。 しかし これは……そんな馬鹿な…… ルイズの使い魔が、足元に埋まっていた石を。 いや、岩だ! そいつは、直径1メイル以上はあろうかという岩を。 片手で地面から引きずり出した! しかも、僕の目が正しければ、岩の表面が溶けた様に何か滴っている。 「うわ うわああああああ!ワルキューレ!あいつを、あいつをぶっ殺せ!」 「不思議なんだよぉ、左手から力が湧いてくる、オメーを潰せってなあ!」 僕の 僕のワルキューレが、あいつの持った岩に端から潰されていく…… しかも、まるで素手で殴るように動きが速い。 これは平民ではない、何か別のモノだ、認めたくない。 「潰れて死ね」 僕に向かって 岩が 飛んで しぬ 「ギーシュさま!!!」 突然横から飛んで来た水流が僕を弾き飛ばした。一体誰が僕を助けたんだ? 岩は背後の塔にめり込んで砕けた。 「モ、モンモランシー?」 「ギーシュ、やめて!もう怒ってないから、もうちょっとで死ぬところだったのよ!!」 「僕は……」 「それはもういいから、あの使い魔に謝って!あれはギーシュが悪いわ!」 あいつが近づいてくる。やっぱり僕を…… 「……」 「その……セッコ・・だったかな?」 「オレの勝ちでいいか?」 「あ、ああ、僕が……悪かった……」 「わかった。」 「僕を許してくれるか?」 「オメーを殺したらルイズが怒る。」 さっきの岩は僕を殺す気じゃなかったのか? と言いたくなったが、また怒らせそうだし止しとこう。それに実際もう怒っているようには見えない。 「一つだけ言わせてくれないか?」 「何だ。」 「僕は青銅のギーシュだ。オメー じゃない。」 「わかった。オレはセッコだ。」 「確かにさっきの僕は貴族らしくなかった。すまない、セッコ。」 「わかった。」 「僕は貴族ギー……」 「わかったつってるだろおおおお!もう怒ってねえから黙れえ!」 悔しいがこいつにはもう逆らえないな……平民の癖に。 でも、モンモランシーの怒りが静まったのもこいつのおかげかもしれない。 そう考えるとまだ良かったかな。 コトッ 「ギーシュさま、この指輪はなに?」 「それはケティに・・・ハッ!」 「ギーシュさま……」 訂正しなくてはならない。今日はやっぱり厄日だ。 「ふむ……」 オスマン氏とコルベールは、「遠見の鏡」で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。コルベールは震えながらオスマン氏の名前を呼んだ。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが……」 「うむ」 「ギーシュは一番レベルの低いドットメイジですが、それでもただの平民に遅れをとるとは思えません。 そしてあの動き!あんな平民見たことがない! やはり彼は[ガンダールヴ]!さっそく王室に報告しなければ!」 「なあ、コルベール君」 「なんでしょう、オールド・オスマン?」 「伝説のガンダールヴは、どんな特性の使い魔だったのかね?」 「主人の長い詠唱時間を守るため、時間稼ぎに特化した使い魔と聞きますが」 「うむ」 「あらゆる武器を達人のように使いこなしたそうです。」 「なあ、コルベール君。あの平民は武器を使っていたかね?」 「そういえば……」 「うむ」 「岩も武器といえばそう言えなくもないかもしれませんが」 「むしろ先住魔法の類かものう。」 「しかし、召喚時はディテクト・マジックに反応がありませんでした」 「まあ、しばらく様子を見てみるかの。無論クサレ王室には内密でな」 「そうですねえ……」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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愚者(ゼロ)の使い魔-1 愚者(ゼロ)の使い魔-2 愚者(ゼロ)の使い魔-3 愚者(ゼロ)の使い魔-4 愚者(ゼロ)の使い魔-5 愚者(ゼロ)の使い魔-6 愚者(ゼロ)の使い魔-7 愚者(ゼロ)の使い魔-8 愚者(ゼロ)の使い魔-9 愚者(ゼロ)の使い魔-10 愚者(ゼロ)の使い魔-11 愚者(ゼロ)の使い魔-12 愚者(ゼロ)の使い魔-13 愚者(ゼロ)の使い魔-14 愚者(ゼロ)の使い魔外伝 愚者(ゼロ)の使い魔-15 愚者(ゼロ)の使い魔-16 愚者(ゼロ)の使い魔-17 愚者(ゼロ)の使い魔-18 愚者(ゼロ)の使い魔-19 愚者(ゼロ)の使い魔-20
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「またあんた!?」 開けっ放しにしていたチェストを閉じようとして、そのチェストの中に仁王立ちしている存在に気づき叫ぶ。 驚きながらも、三度目の接触にフーケは即座に対応した。 すぐにUターンして窓を突き破り、外に飛び出す。 地面を転がりながらルーンを唱え、起き上がるころには宝物庫を破壊した時と同じ巨大ゴーレムが現れる。 間髪いれずゴーレムを動かし、小屋を叩き潰す。 『破壊の杖』も中にはあるが、そんなものよりも今はあれを仕留めるほうが先決だ。 超巨大ゴーレムの一発でもともとぼろかった小屋は、ほとんど全壊した。 だがおまけにもう一発。 ドォンという音ともに、砂煙が舞う。それが消える頃には小屋はすっかり消え去り、クレーターが生まれていた。 「やった……?」 緊張を込めつぶやく。変態は逃げる暇も与えられずに、小屋と一緒に潰れたはずだ。 だがフーケは全く手ごたえを感じていなかった。冷や汗が吹き出てくる。 (どこにいるんだい……たくッ急に現れたり急に消えたり……こっちの話を全く聞かないタイプね……嫌いよ) 360°前方向に感覚を向けながら、ニヤリと笑う。少しずつだが動悸も収まってきた。 冷静になれ。もう何度目か分からないその言葉を心の中で繰り返す。 冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に… 「フフッ」 思わず口の端を歪ませて笑う。 探す必要も無く、変態は立っていた。ゴーレムの股の間に。 ボッーと立ったまま、こちらを睨んでいる。 冷静に! 「つぶれな!」 派手な音を立ててゴーレムに亀裂が入っていく。変態が音に反応して上を向いたちょうどその時、ゴーレムが崩壊を始めた。 今度は確実に巻き込まれるところを見届ける。確実に潰れた。 さらにその上に大きな岩が覆いかぶさっていく。 さらにさらに崩すだけでなく、フーケは岩と岩の間の隙間を錬金で埋めていく。 しばらくするとあっという間に小高い丘が完成した。 ふたたび森に静けさが戻る。空気はピンと張り詰めたままだ。 フーケはさらに杖を構えながら、じっと待つ。 十秒……勝ったはずだ……十五秒……あれで死なないはずがないじゃないか……二十秒……(杖を握る手はさらに強くなる)……二十五秒……なんで…… ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………… やはりなんの前触れも無く、潰れたはずの変態は小高い丘の上に出現した。 まるで地面から生えてきたかのようだ。 月をバックにこちらを見下ろす様は、ある一つの単語を連想させる。 (悪魔……!) いつもなら鼻で笑うであろうそんな考えを肯定するかのように、目の前の存在は地獄の底から発するような唸り声を上げる。 「オオオ……アアアア!……うおおおおおおおおああああああああああああ!!」 それをフーケはまるで他人事のように聞いていた。体が麻痺したように動かない。思考が追いつかない。 冷静に…冷静に…冷静に…逃げなきゃ…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に……逃げなきゃ……逃げなきゃ逃げなきゃ 杖を握る手が目に見えて震え始めた。だがフーケ自身は全くそのことに気づかない。 「うあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ひっ」 へたりとその場に腰を落とす。 悪魔は尚もうめき声を上げながら、丘の上で暴れている。その体をポロポロ崩しながら。……崩しながら? フーケはそれに気づいたとき自分が泣いているせいだと思った。涙で視界が歪んでいるからだと。 彼女のわずかに残った冷静な部分が、彼女の細い指を自分の瞳に触れさせた。 濡れてない。自分は泣いてなんかない。 …………ブラック・サバスは本当に崩れ始めていたのだ。 崩壊するゴーレムの隙間を縫うようにして避け、錬金によって埋められる前に丘の上に這い出た。 そこまではよかった。 だが人工的に作られた丘の上には影を作るものは存在しなかったし、二つの月の光はブラック・サバスにとってはいささか暴力的だった。 元の世界にいたころの月光とは比べ物にならないそれは(といってもブラック・サバスが覚えてることなどほとんど無いが) ブラック・サバスを苦しめ、確実にダメージを与えていく。 ブラック・サバスは派手にこけた。足がもげたらしい。それでもガリガリと地面でクロール泳ぎをするように動き回る。 だが半径数メートル内に逃げ場所は無かった。…………いや「いた」。 ブラック・サバスは改めてフーケを見据える。腕だけのほふく前進でフーケの所まで近づいていく。 「アアアアアアアアアア…………!!」 「うわ」 こちらが近づいていることに気づいたのか、フーケも尻餅をついたまま後ずさりしていく。 距離がジワジワと縮まっていく……。 手を伸ばす…が………限界……うう…消える……。 「が…………ま…………」 最後まで残っていたブラック・サバスの仮面も、闇に溶けていくように消滅した。 はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………… 真夜中の森に、フーケの荒い呼吸音だけが一定の間隔で聞こえる。 力無くよろよろと立ち上がる。 変態のような悪魔……いや、悪魔のような変態?……は唐突に現れ、唐突に消えた。 もっとも今もどこかで息を潜めて、チャンスをうかがっているのかもしれないが。 だが、フーケの目の前で消えた時の様子は、今までに無い切羽詰ったものがあった。 「なんだったんだい……」 力無くうめいて、広場を見渡す。 小屋があったところにはクレーターができ、その横には小高い丘ができている。 これらは全て、あれを倒すためにしたことなのだが…… 奴はそれらを物ともしていなかった。 宝物庫前での攻防と同じだ。全くなすすべが無かった。 「なんなのよ」 再び愚痴る。それしか今はできそうに無い。 ドッと疲れが出てきた気がする。体が異様に重く感じた。 だが、すぐにでも移動しないといけない。 あれが変態か悪魔かは知らないが、魔法学院の「誰かの使い魔」なのは確かだろう。 だとしたら現在進行形で状況は悪化している。すぐにでもさらなる追っ手が来るかもしれない。 使い魔とその主は感覚を共有できるからだ。 すでに使い魔の主はフーケがロングビルであることも、この場所にいることも知ったかもしれない。 先刻までは学院のメイジ程度なら相手にしても余裕だと考えていたが、状況が変わった。 奇襲をかける側から、奇襲をかけられる側になってしまったのだ。 もう学院には戻れない。 フーケはさっさと『破壊の杖』を回収して逃げることを選択した。 「ミス・ロングビルともサヨナラね」 全壊している小屋跡を見て、『破壊の杖』も壊れていないことを祈りつつ、魔法で探索を始めた。 「おーい起きろー」 「…………むにゃ……あと5分……」 ルイズはまだ意識が夢の中にある状態でなんとか返事をした。 「そう言って起きれる奴はいねーんだよ!」 ……もう、うるさいわねサバス……いつの間にそんなにペラペラしゃべれるようになったのよ……うん? 「サバス!?」 ガバッと跳ね起きる。 が、いつもベットの横で立っているルイズの使い魔はいなかった。 「俺だって!相棒はまだ帰ってねーよ」 「そう……あー…いつの間にか寝ちゃってたんだ」 ルイズたちがフーケを逃した後、多くの教師や生徒達が集まり大騒ぎとなった。 目撃者であるルイズたちは、次の日学院長室で詳しい説明をすることになり、とりあえず各自部屋に戻る。 ルイズは途中で地面に刺さっていたデルフを回収し、部屋に戻るまでどっちが役に立たなかったかで口論になった。 部屋に戻るとルイズはまず『再点火』して、ブラック・サバスを呼んでみる。 ブラック・サバスは光に触れたり、影から出たり、ルイズの爆発に巻き込まれると消滅してしまう。 そんなときでも、慌てず『再点火』すればすぐに現れる。 だが、今回はブラック・サバスは出てこなかった。 つまり、今もどこかで「行動中」ということだ。 恐らく、ルイズの命令に従いフーケを追っているだろう。 (感覚の共有ができれば、何をしているのか分かるのに) それができないことに歯がゆい思いになる。 火を点けては消し、点けては消す。それでもブラック・サバスは現れない。 そうこうしているうちに、睡魔に負けて寝てしまっていたようだ。 「で、これから上の奴らに報告しに行くんだろ?その前に相棒呼んでみようぜ」 昨日のことを少しずつ思い出していたルイズを現実に戻すように、デルフが明るい声で提案する。 「そうね」 ルイズは言われるままに、ネックレスの『装置』に手をやる。 一度大きく深呼吸して、『再点火』する。 まだカーテンを開けてない薄暗い部屋が、いっきに明るくなった。 そして………… 「『再点火』したな!」 全く変わりない姿が出てきたことに、ホッとする反面、残念に思う部分もあった。 「おかえり。フーケは?」 「…………」 「フーケは?」 「…………」 「…………」 登場ポーズのまま固まるブラック・サバスの様子に、ルイズは予想が当たっていたと確信する。 「逃がしちゃったのね…………まぁ別にいいわ」 「ほー、おでれーた。もっと怒るかと思ってたけどな」 実際ルイズは怒っていなかった。 むしろ怒りの対象はブラック・サバスにでは無く、不甲斐ない自分に対してのほうが大きかった。 使い魔ばかりに働かせるわけにはいけない。 魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのだ。 この後、キュルケたちとオールド・オスマンに報告しに行く。 もしその時、フーケ捜索隊でも作られるなら、真っ先に自分が名乗りを上げようと考えていた。 「その…フーケを逃がしちゃったのは……私もだから…一晩中追いかけてたんでしょ?むしろ……ご苦労様」 すこし照れながら言うルイズ。静かに聞いているブラック・サバス。 「あ、でも!サバス!デルフを捨てたのは駄目よ!それとこれとは別。これは怒ってるんだからね」 「え」 ルイズの意外な言葉に反応したのは、デルフだった。 「せっかく私が買ってあげた剣を、すぐに捨てるんじゃないの!」 「あ、そういうこと」 「それ以外に何があるのよ」 ルイズはデルフを持ち上げながら、尋ねた。 「いや、俺の活躍とかを考えてくれたのかなーとか」 「そんなわけないでしょ。だいたいあんたは報告役なんだから、常に一緒にいなさい。ほら、サバス口開けて」 何気に酷いことを言うルイズの言われるとおり、ブラック・サバスは口を開けた。 「…………もう何か入ってる」 ルイズは口の中を覗きながら呟いた。 「何コレ?」 勝手に口の中からそれを引っ張り出してみる。 金属製の筒。いつも思うのだが、口の中にこんな長い物が入るのは、どういう仕組みだろう。 「変なもの拾っちゃ駄目だって言ってるでしょ」 意味は無いのだろうけど、一応注意しておく。 改めてデルフを突っ込もうとすると、デルフがその奇妙な筒に反応した。 「おでれーた。その分けわかんないのは武器だぜ」 「武器?なんで分かるの?」 「その筒をもう一回相棒に渡して、それからネックレスを見てみな」 言われるままに筒を口の中に入れ、ネックレスにした『装置』を見てみる。 「あ、ルーンが光ってる。どういうこと?」 「前にも言ったろ。相棒は使い手なんだよ。…………あれ?言ったっけ? とにかく、相棒は武器を持ったら……相棒の場合は口に入れたら、そうやってルーンが光んだよ つっても、普通は左手に出るんだけどな。俺を昔使ってた奴にも同じようなのがいた気がする」 「ふーん。よく分かんないけど……」 ルイズは使い手の説明よりも、筒が武器であることに興味がいっていた。 「じゃあ、これもしかしてマジック・アイテム?」 期待を込めて尋ねる。 ……もしかしたら……もしかしたらだけど……これがフーケの盗んだものじゃあ……!? 「それはねーな。魔力の無い相棒が武器として使えるってことは、いわゆる普通の武器ってことだ。 それを手にはめて殴ったりすんじゃねーの?」 あっさり否定される。 「何よ……もうちょっと夢見させてくれても………」 「何ブツブツ言ってんだ?そうだ相棒。これの使い方分かんだろ?見せてくれよ」 デルフは同じ武器として、筒のことを知りたいようだ。 言われたブラック・サバスはルイズの顔をじっと見ている。 (もしかして私の許可待ってんのかしら) だとしたら特に否定する理由も無いなと、軽い気持ちで考える。 「私も見てみたい。見せて」 ルイズのその一言でブラック・サバスは動きを見せる。 口の中から筒を三分の二ほど出して、なにやら色々いじっている。 その動きに全く迷いは無いようで、早かった。 「殴ったりするみたいじゃないみたいね」 嫌な予感がしつつ、手元のデルフに聞く。 「そ、そうだな」 「サバス、やっぱりや」 しゅぽっ。 そんな軽い音と共に、ブラック・サバスの口から…いや、筒の中から白煙が飛び出す。 それは部屋の窓を割りそのまま飛び出していった。 数秒後。爆音。閃光。衝撃。 そして静寂。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「おでれーた…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 To Be 。。 「…………サバスは…………」 「…………洗濯にいった…………」 To Be Continued 。。。。?
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ドドドドドドドドドドドドド………… ルイズが後ろを振り向くと奇妙な声の主は、クレーターが作るわずかにできた影の部分に立っていた。 少し離れた距離。ちょうどルイズの影の頭の部分が使い魔の足元に伸びている。 黒い帽子に、黒いマント、顔に奇妙な仮面を付けているためか妙な威圧感を放っている。 少しルイズの方が背が低いため見下ろされてしまっている。視線をルイズに合わせたままピクリとも動かない。 ルイズはルイズでヘビに睨まれたカエルのように動けずにいた。 (なにこいつ!?なんで後ろにいるの!?こっちみんな!) 混乱する頭を落ち着かせようと必死の努力。使い魔のルーンが出た奇妙な箱から火が出たと思ったらこいつが出てきた。 つまりどういうこと?…………もしかしてコレが私の使い魔? (素数よ!素数を数えて落ち着くのよ!1……2……3、5……これが使い魔というなら……やることはたったひとつ!『逃げる』!) ルイズは混乱している。 「おまえ…『再点火』したな!」 再びさっきと同じセリフをルイズに向かって言う。口の動き方から仮面ではなく本当の顔のようだ。 ルイズは、ハっとしたように聞き返す。 「『再点火』?なによそれ?えーと、ていうか、そうだあんた名前は?」 質問を質問で返してしまったが、相手の言ってることが分からないから仕方ない。 それにお互いの名前を知ることは、信頼関係を築くうえでまず最初にすべきことであろう。 使い魔は身体を傾けると下を向いた。視線の先にはルイズの影法師。 「チャンスをやろう……向かうべき『二つの道』を!」 質問を質問で返されたら無視ですか。そうですか。 再点火……チャンス……二つの道……何を言っているんだコイツ頭脳がマヌケか? こっちの混乱を無視するように使い魔は勝手にしゃべり続ける。 「チャンスには…『お前が向かうべき二つの道』がある」 「『お前』って、一応あんたと私は主人と使い魔の関係なんだから、その呼び方は許さないわよ」 ルイズが話をさえぎって釘を指すが 「ひとつは生きて『選ばれる者』への道」 はい、シカト。ていうかなによ、選ばれる者って。主人を選ぶ権利はこっちにあるぞってこと? そうルイズが言おうとしたとき、使い魔はルイズの影に向かって両腕を伸ばした。 するといつの間にかルイズは使い魔の目の前に移動し、そして両肩を掴まれている! 「きゃあ!」 「もうひとつは!さもなくば『死への道』……!」 「なに言ってんのよ!離しなさい!」 動いて必死に抵抗しようとするが……全く動くことができない。 痛みはないがルイズを掴む使い魔の腕からとんでもない力を感じる。 ルイズが使い魔を睨みつけると、ちょうど使い魔はその大きな口を開けた。 口の中は何もなかった。歯も舌も無い。ただの暗闇、暗黒空間、ガオン。 食べられる!ルイズがとっさに思ったのはそれだった。思わず目をつぶり、固まってしまう。 しかし、次に何も起きなかった。ルイズに合わせる様に使い魔もピクリとも動かなくなる。 恐る恐る目を開けてみると、口を開けたままの使い魔がそこにいた。 ルイズには不思議と使い魔が戸惑っているように感じた。 「『矢』が出てこない」 確かに使い魔がそう呟いた。 「矢?」 オウム返しのようにルイズが聞き返すがやはり返事は無かった。そのかわり後ろから聞こえてくるよく知った声の呪文。 キュルケの放った火の球がルイズの使い魔をぶっ飛ばす。 「何ボーっとしてんのよ」 キュルケが叫ぶ。その声に想像以上の安心感を持ったルイズだったが 「危ないじゃない!私にも当たったらどうすんのよ!」 この女に素直にお礼は言えない。というか今のは本当に危なかったろ。 「何言ってんの。これだけ離れてたら当てないわよ。あんたじゃないんだから」 簡単な挑発になりそうになるが、堪えて前を見てみるとキュルケの言うとおりだった。 ルイズは使い魔の立っていた場所から、ちょうど影ひとつ分離れていたのだ。 (さっきは確かに使い魔と目と鼻の先に立ってたはずなのに!) 疑問符を上げるルイズにキュルケが少し緊張感を持った声で説明する。 「あの使い魔がアンタの影を触ったと思ったら、アンタ急に動かなくなって叫び始めたのよ」 影……ルイズは改めて思い出す。そういえばあの使い魔が私の肩を掴む前に影を触ってたような…… もうこうなったら信頼関係もなにもない。とりあえずとっちめて何をしたか聞きだそう。 とっちめて………… 「まさか死んだってことはないわよね」 ルイズが思わずキュルケに尋ねる。 「まさか、足元を吹っ飛ばしただけよ。砂埃が消えたらすぐに見えるわ。感謝しなさいよ~ミ・ス・ヴァリエール?」 クッと思わず声を漏らしてしまう。くそう。せめてあの使い魔に言うこと聞かせてやる。 決意を胸に秘め、サモン・サーヴァントの時のように杖を強く握る。 (ねーちゃん!あしたっていまさ!) 2人の姉の横顔が空に浮かんで見えた気がする。 だが結局その決意は無駄に終わる。 砂埃が消えた時残っていたのは、新たに作られたクレーターだけだった。 To Be Continued 。。。。?