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【第三話】 ‐三年二組教室‐ 三花「おはよ〜!」 とし美「三花、ハロッ!」 三花「えっ?」 とし美「……嫌な予感はしてたよ」 エリ「おっはよー!」 三花「おおエリ、オハロ〜!」 とし美「いやいやいやー……」 * * * 三花「今日はバレー部のキャッチフレーズを作ろうよ」 とし美「挨拶はさっさと捨てていたのに?」 三花「……遥か昔より桜高バレー部は続いてきた」 とし美「えっ?」 三花「それは一人でも多くの部員を集めようと努力した、私たちの先輩の功績だ」 とし美「……まあその通りだね」 三花「つまり私たちも守らなくてはいけない。このバレー部を……!」 とし美「それで?」 三花「バレー部のキャッチフレーズを作ろうよ!」 とし美「挨拶の時もそうだけど、よくそんな発想になるよね」 エリ「ちっちっちっ。とし美はわかってないよ。 印象に残るキャッチフレーズは、非常に重要なんだよ」 三花「例えば囲碁部だよね〜」 エリ「うん、囲碁部のキャッチフレーズは深いよ」 エリ「“囲碁とは、宇宙である”……!」 三花「か〜っこいい〜!」 とし美「……ま、まあ、印象深いキャッチフレーズで、 新しい部員を引き付けるっていうのは、アリかもしれないね」 三花「でしょ? 流石とし美、理解が早いんだから〜!」 とし美「でもそれ、新歓祭の前に考えるべきだったね」 三花「あっ」 * * * 三花「うーん……」 とし美(思った以上にショックを受けてしまっている……) 三花「惜しいことをしてしまったよ……」 とし美「えっと、キャッチフレーズのことだよね?」 三花「これじゃ私、部長失格だね」 とし美「なにもそこまで深刻に受け止めなくても」 三花「とし美は優しいね……。でも、これは私の責任なんだよ」 エリ「三花、一体なにをするつもりなの……?」 三花「私、最低でも今の二年生以上の一年生を集めたい。 そのための案を、これから必死に考えることにするよ」 三花「どれだけ私の時間が削られようとも!」 エリ「そんなに本気なんだね……」 とし美「……三花、ちょっと待って。 部員を集めたいという気持ち、それは私も同じよ」 とし美「三花が必死になるなら、私も必死になる。 だって、私も同じことを成し遂げたいと思ってるからね」 エリ「うん、私も。出来る限り、三花を手伝うよ」 三花「そんな、二人に付き合わせるのは悪いよ……」 とし美「三人集まればなんとやらって言うでしょ」 とし美「エリ程度の頭脳でも、頭数には含まれるはずだしね」 エリ「……んっ?」 とし美「どうしたのエリ?」 エリ「いや、なんだか……釈然としないというか……」 エリ「……まあいっか。私も協力するよ、三花」 三花「二人とも、本当にありがと!」 * * * とし美「よし。それじゃ具体的な目標から立てようか」 とし美「今の二年生の数は七人。 つまり三花の理想を目指すなら、最低で八人を集めないとね」 エリ「八人かあ……」 とし美「そこで、まず第一の案だけど……」 唯「三花ちゃーん!」 三花「んっ、どうしたの、唯ちゃん?」 唯「お届け物だよ〜」 三花「お届け物? 誰から?」 唯「教室の前にいた子たち。一年生だったよ〜」 とし美「へえ、一年生が?」 唯「うん! 教室に入るのに緊張してそうだったから、 私が代わりに受け取ってあげたんだ〜」 とし美「えーと、入部届けね……」 とし美「……ん? “入部届け”?」 唯「良いなあ、こんなに後輩が入ってきてくれて! 一気に八人だよ、“八人”! 」 三花「えっ」 とし美「……」 エリ「軽音部はまだ一人も入ってきてないの?」 唯「うん。でも、今の五人だけでも、 十分なんじゃないかなあとも思ってたりして〜」 エリ「そっかー。そういう考え方も、あるかもね」 唯「それでも去年よりパワーアップするからね!」 エリ「よーし、期待してるよ、軽音部!」 唯「バレー部も、期待してるからね!」 * * * エリ「ふう、一先ず部員が集まって安心だね」 三花「……」 とし美「……」 エリ「あれ、二人ともどうしたの?」 三花「……この気合のやり場を、どうしたものかと思ってね〜」 とし美「うん、なんというかね。タイミングがね」 エリ「んー……それなら、部活で発散すればいいんじゃない?」 三花「部活……」 とし美「部活、ね……」 ‐体育館‐ まき「……」 後輩A「あの、まき先輩」 まき「なにー?」 三花「うりゃああああ!!」 とし美「そりゃああああ!!」 三花・とし美「おんどりゃああああ!!」 後輩A「あの二人には何があったんですか」 まき「さあ……」 まき「でも、一つだけわかることは」 まき「二人はもう、私たちの手に負えないってことだよ」 後輩A「ああ、それならわかります……」 第三話「桜高バレー部の気合」‐完‐ 4
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【第二話】 ‐三年二組教室‐ アカネ「ふう……」 三花「ハロ〜!」 アカネ「ああ三花、おはよう」 三花「ノンノン。ハローって言われたらハローって返さなくちゃ!」 アカネ「なにその理屈……」 三花「いくよ? リピート、アフタ、ミー!」 三花「ハロ〜!」 アカネ「……は、はろ〜」 三花「イエース、グッド! ベリーグーッド!」 アカネ「本当に何がやりたいの」 三花「全く、アカネはわかってないなあ。 多種多様の挨拶に対応出来てこそ、今を生きる現代人だよ?」 アカネ「そんなスキル、現代の女子高生に求められてるとは思えないんだけど」 まき「おはよー」 三花「あっ、まき、はろ〜!」 まき「三花ちゃん、はろ〜」 三花「……ねっ?」 アカネ「さも自分が正しいみたいな顔しないでよ」 まき「ねっ?」 アカネ「まきもよくわかってないのに乗ってこないの」 * * * 三花「というわけで、バレー部の新しい挨拶を作ろうと思うの」 アカネ「ゴメン、どこに作る理由があった?」 三花「私たちはもう三年生、つまり部全体を引っ張っていく立場でしょ。 それなら、引っ張っていくための合言葉を一つぐらい開発した方がいいかなって」 アカネ「それで挨拶に行き着けるのは流石と言っておくわ……」 三花「そこで、なにか質問のある人はいるかな?」 まき「はい!」 三花「まき、どうぞ!」 まき「その挨拶は本当に必要ですか?」 アカネ「早速核心に触れてるね」 三花「うん、必要だよ〜」 三花「何故なら私たちはバレー部」 三花「どんなくだらないことにも、 必死に立ち向かう人たちの集まりなんだから!」 アカネ「そんな集まりだったの!?」 まき「なるほど……」 アカネ「そして納得しちゃうの!?」 * * * 三花「よし、まず朝の挨拶を決めよっか!」 アカネ「最低でも三つの挨拶を作る気なんだね……。 頭痛くなってきた……」 アカネ「……いや、というかだよ。 もはや私が話し合いに参加しなくても、大丈夫だよね?」 まき「えぇっ!?」 アカネ「そんなに驚くことなの!?」 まき「同じバレー部とは思えないよノリだよ……」 アカネ「ああ、やっぱり私達はノリの良さで集まってることになってたんだね」 三花「大丈夫だよ、まき。 こう見えて最終的にはノリノリになるのが、アカネだから」 まき「そうだねー」 アカネ「えっ、私って、そんなキャラだった?」 三花「自覚無いんだね、それでこそアカネ!」 アカネ「あー、はいはい。 そうやってテキトー言って、私のこと乗せようって魂胆でしょ?」 アカネ「私だって、そんな単純な策に嵌まるわけ……」 * * * アカネ「……やっぱり、朝の挨拶は爽やかさが大事だと思うよ」←ノってきた まき(アカネちゃん……) 三花「じゃあ例えばこんな感じかな?」 三花「ハロッす!」 アカネ「何それ?」 三花「ハローと、爽やかな後輩の挨拶“おはようっす”の組み合わせだよ〜」 アカネ「男の子っぽいかな」 まき「女子校なのに?」 三花「でも、この前、柔道部の一年生がこの挨拶使ってたよ?」 まき「女子高生なのに?」 アカネ「それは流石に失礼だよね」 まき「まあ爽やかさを求めるなら、あれだよ。 暑い夏すらを感じさせない、そんな涼やかさが必要だと思うよ!」 三花「暑さを感じさせない……つまり寒いことを言うの?」 アカネ「行く度寒い言葉をぶつけられる部活、なんか嫌だな……」 * * * 三花「審議の結果、朝の挨拶はこれでいくことにしました」 三花「……“ハロッ”!」 まき「はろっ!」 まき「おー、確かにたったの二文字の挨拶なら、 忙しい朝でも簡単に出来るかもしれないね」 まき「しかも爽やかさも忘れずに盛り込めてるよー」 三花「でしょ? ハロッ!」 まき「はろっ!」 「ガチャッ」 とし美「二人とも、おはよー」 三花・まき「ハロッ!」 とし美「え、えっと……」 とし美「……はろー?」 三花・まき「ノンノンノン」 とし美「……どういうこと?」 アカネ「私に聞かないで」 * * * とし美「なるほどね、部を引っ張っていくための合言葉を」 三花「うん、そうだよ〜」 とし美「……それで三花、新しい練習メニューは考えてあるの?」 三花「へっ?」 アカネ「こら部長」 とし美「挨拶より、そっちを優先してほしいな」 とし美「出来れば二年生用のメニューは二年生と一緒に考えてさ。 来年三年生の子たちに、ノウハウを教えておきたいでしょ?」 三花「……もうとし美が部長で良いような気がしてきた」 まき「ああ、三花ちゃんが私より小さくなってるよー……」 アカネ「いや、それはないよ」 とし美「ないね」 三花「ないない」 まき「みんなして何が言いたいの!?」 * * * とし美「私たちは五月後半に、インターハイ予選を控えてるんだからね。 あまり時間は残されていないよ」 三花「先に顧問と相談した方がよさげだね。 部活が本格的に始まる前に、いくらか話はしておくよ」 とし美「ん、お願いね。 新入生のメニューはこっちである程度決めても大丈夫?」 三花「良いよ良いよ〜、どんどんやっちゃって〜」 とし美「りょーかい」 まき「……」 アカネ「どうしたの、まき。急に黙り込んじゃって」 まき「インターハイで、三年生は引退なんだよね」 アカネ「そうだね」 まき「最後まで勝ち上がったとしても、夏でおしまい。 本当、思ったより時間が残ってないんだなって思うと……」 アカネ「まき……」 まき「私の身長も限界なのかな……」 アカネ「えっ」 まき「高校生活でどれだけ伸びるのか、期待してたのに……」 アカネ「……」 アカネ「あのさ、まきにはとっても言い難いことなんだけど」 アカネ「女子の成長期って、十六歳ぐらいまでよ」 まき「……えっ?」 * * * エリ「おはよー!」 アカネ「おはよう、エリ」 まき「……」 エリ「まき? どうしたの?」 まき「エリちゃん、私はもう駄目だよ……」 エリ「なにが?」 まき「私のバレー生活は、これまでってことだよ……」 エリ「えっ!?」 まき「これ以上の成長が無いんじゃ、バレーを続ける意味もないよ!」 アカネ(身長伸ばすためにバレーやってたの!?) エリ「まき、そんなこと言わないで」 まき「でも!」 エリ「聞いて」 エリ「私たちは二年間、ここまで一緒に頑張ってきた。 だからさ、まきの色々なことも沢山わかるんだ」 まき「一体、私のなにがわかるの……?」 エリ「それはね……」 エリ「その小さな身体に秘められた、大きな可能性だよ」 まき「……」 エリ「……」 アカネ「……」 エリ「……あれっ?」 まき「エリちゃんの馬鹿ーーー!!」 エリ「えぇっ!?」 アカネ(あーあ……) 第二話「桜高バレー部の小人」‐完‐ バレー部三年生の簡易的な紹介 ■瀧エリ 猪突猛進、元気で活発なサイドテールの女の子。 コーラと仏像が好き。 作中の台詞は、 「ラッキーだね、山中先生が担任で。美人だし優しそうだし」(一話、教室にてアカネと) 「待て待て待て〜」(十九話、野島ちかとふざけあって) など。学園祭の劇ではキャピュレット家の見張り役。 ■佐藤アカネ 普段は冷静沈着、だけど流されやすいお下げの女の子。 エリにつられてコーラが好き。 作中の台詞は、 「私は美容師になりたいから、美容師の専門学校にした」(八話、唯に進路を聞かれて) 「衣装担当はさわ子先生だよね?」(十九話、劇の大道具制作中にて) など。 ■佐伯三花 明るく、活動的なツインテールの女の子。 フレンドリーで人懐っこい。 作中の台詞は、 「うん、でもロミオが澪ちゃんだもん」(十八話、劇の役決めにて) 「私、ハワイ初めてだよ〜」(映画、卒業旅行の話し合いにて) など。学園祭の劇ではパリス役。 ■和嶋まき 童顔と小柄な身体つきに似合う、おっとりとしたお団子頭の女の子。 作中の台詞はなし。 ■中西とし美 おおらかで温和な性格で、ボブカットの女の子。 作中の台詞はなし。 軽音部紹介ビデオの中の台詞は 三花「軽音部も良いけど、バレー部もよろしく〜!」 ↓ エリ「よろしくー!」 ↓ 三花「いくよ〜!」 ↓ 三花「そーれ、アカネ!」 ↓ アカネ「エリー!」 ↓ エリ「はいっ!」 まきととし美は端で見守っています 3
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ノイタミナ 2.43 清陰高校男子バレー部 @フジ 固定スポンサー Sony Music ANIPLEX 2021年1月7日深夜 ♯01(新・25 40~26 10) 0’30”…Sony Music、ANIPLEX、セブンネットショッピング 2021年1月14日深夜 ♯022021年1月21日深夜 ♯032021年1月28日深夜 ♯042021年2月4日深夜 ♯052021年2月11日深夜 ♯062021年2月18日深夜 ♯07 0’30”…Sony Music、ANIPLEX、SILVER SNOW 2021年2月25日深夜 ♯082021年3月11日深夜 ♯102021年3月18日深夜 ♯11 0’30”…Sony Music、ANIPLEX、BANDAI 2021年3月25日深夜 ♯12(終) 0’30”…Sony Music、ANIPLEX、COSMO
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【第二十二話】 ‐三年二組教室‐ エリ「アカネ、青春とはなんだと思う?」 アカネ「どうしたの唐突に」 エリ「私はこう結論付けたよ。 青春とは、どんなこと相手でも笑って楽しく過ごせる、そんな瞬間なんだとね!」 アカネ「あ、こんなところに英単語帳が」 エリ「あー聞こえないー」 アカネ「どんなこと相手でも楽しく過ごすんじゃなかったの?」 エリ「青春に英語なんていらないんだ!」 アカネ「学生にはいるでしょ」 エリ「……ワー、ニホンゴムズカシネー」 アカネ「ついに母国語も不自由になったか……」 * * * エリ「それはさておき」 エリ「アカネはこの景色を見て、なにも思わないの?」 アカネ「まあ確かに綺麗な雪景色ではあるけど……?」 エリ「ところでアカネ、私たちはいま青春を生きてるよね」 アカネ「……なんとなく言わんとすることはわかった」 エリ「さっすがアカネ! じゃあさっさと外に出るよ!」 アカネ「やだ」 エリ「ええっ!?」 アカネ「なんで驚かれなくちゃいけないの」 エリ「だって、話はわかったって……」 アカネ「それとこれとは話が別。なんでわざわざこのクソ寒い外に出なくちゃいけないのよ」 エリ「で、でも……」 アカネ「でもじゃない。私にだって、選択する権利はあるんだから」 エリ「あの三人を外に待たせちゃってるし」 アカネ「鬼か」 エリ「相手役の五人も外だし」 アカネ「鬼か!」 ‐校庭‐ まき「鬼! 悪魔! 雪!」 エリ「だからごめんって〜」 とし美「最後のは罵倒なの?」 アカネ「ところでエリが相手役を用意してるって聞いたけど」 三花「あ、それならほらっ!」 唯「ムギちゃんはあったかいね〜」 紬「唯ちゃんがくっついてくれるおかげで、私もあったか〜い」 律「それに比べ澪は、心も体も冷たいよなー?」 澪「なんで心もなんだ!」 梓「なんで私も……。寒っ」 三花「いやー、探せば相手を務めてくれる人もいるもんだねー」 アカネ「ほんと、どこにでも苦労する側の人はいるもんだね」 梓(どうしてだろう、あの先輩から深い同情の念を感じる) * * * 律「範囲はこの学校の敷地全体! 当てられたら退場の、単純なサバイバルだ!」 エリ「おっけー!」 ?「なになに、面白そうなことやってんじゃん」 律「お、夏香も参加するか?」 夏香「だってさ。どうする風子?」 風子「うん、面白そうだし私も参加したい! でもどうせなら、和ちゃんとお母さんも呼ぼうよ」 律「じゃ、それで七対七だな」 まき「……すごい今更だけど、お母さんって英子ちゃんだよね?」 とし美「まあ、確認したくなっちゃうよね」 * * * エリ「じゃあバレー部五人と夏香、風子チーム対」 律「軽音部と英子、和チーム……」 エリ・律「始めっ!」 和「……えっ、なに雪合戦させるために私呼ばれたの?」 澪「なんて今更なんだ、和……」 唯「和ちゃん、英子ちゃん、一緒に頑張ろうね!」 英子「ええ。まずは雪玉のストックを作っておきましょう」 律(……こ、これは!) 紬(まるで……) 梓(母親が子供に、おむすびを握っている図……!?) 澪「……ママ」 律「ん?」 澪「な、なんでもない! なんでもないから!」 * * * 夏香「向こうはおむすびのプロがいるからね……。 雪玉の供給には困らないはずだよ」 エリ「そうだね……」 アカネ「……そうなの?」 三花「それなら供給元から倒せばいいんじゃないかな〜」 風子「そんな単純にはいかないと思うよ」 風子「向こうには和ちゃんという、とんでもない参謀がいるからね……」 まき「警戒するに越したことはないねー」 とし美「そもそも、供給元と接触できるかが問題なんじゃない。 恐らく七人が固まって行動してはいないと思うし」 アカネ「分け方で考えられるのは三人と四人か、二人二人三人かだけど……」 とし美「で、相手が分かれているというなら、 私たちもそのどちらかを選択した方が良いと思うけど、どうする?」 アカネ「二人二人三人にしよう。先手必勝、索敵重視の作戦で」 エリ「それじゃ私とアカネ、夏香と風子ちゃん、 まきと三花ととし美で分かれよう」 夏香「うん。……いやしかし、なるほどー」 エリ「なに?」 夏香「さり気なくアカネちゃんと二人きりになるなんて、 やっぱりエリちゃんはアカネちゃん大好きなんだなーって」 エリ「い、いやいや! そういうことじゃないから!」 三花「鋭い指摘、良いね!」 まき「この二人はバレー部公認なんだよー」 アカネ「バレー部である私は公認してないんだけど……」 まき「もー、照れちゃってー」 アカネ「照れてないし」 風子「え、まさか二人はできてるの?」 アカネ「ちょ、え……はっ!?」 とし美「あー、それなら早く二人きりにしてあげないとね」 アカネ「ちょっととし美も、何言ってんの!?」 三花「んじゃ、さっき言ったチームで散開!」 アカネ「ねえ違うからね、みんなー!?」 アカネ「……」 アカネ(……行っちゃった) エリ「……」 アカネ(ちょっと気まずい……) エリ「……ま、まあ気にすることはないよね」 アカネ「う、うん……まあ、そうね」 エリ「……」 エリ「……でも、アカネと二人でいたい気持ちがあったのは、間違いじゃないんだ」 アカネ「えっ?」 エリ「言われてた通りなんだよねー、あはは。狙ってやったチーム分けというか」 アカネ「エリ……」 エリ「あのさ、別に最後の冗談をマジにしたいとかそういうんじゃなくてさ。 えーと、なんていうんだろ……」 アカネ「……」 アカネ「……青春?」 エリ「そう青春!」 エリ「一番、最後までずっと青春したい相手が多分というか絶対、アカネなんだよ」 アカネ「……普通は恋人じゃない、そういうのって」 エリ「嫌味か!!」 アカネ「ま、私も人のこと言えないけど。いいよ、エリ」 アカネ「多分私もエリと一緒で、ずっとずっと楽しんでいられるだろうし」 エリ「じゃあ私たち、両想いか」 アカネ「両想いだね。本当に付き合っちゃう?」 エリ「またまたー」 アカネ「ふふっ」 エリ「へへっ。なんかアカネとなら、ちゅーぐらいなら出来ちゃいそう」 アカネ「えー、なにそれ」 エリ「もう私、いい男の人が見つからなかったら、アカネに嫁入りするよ」 アカネ「私が婿なの?」 エリ「ううん、アカネも嫁!」 アカネ「そう来たか。でもね、私もいつ運命の人と出会うかわからないよ?」 エリ「その時はその時。私だって、アカネより早く見つけるかもしれないよ?」 アカネ「それはないかなー」 エリ「ひど!」 アカネ「ま、お互い幸せになれるよう、せいぜい努力しないとね」 エリ「……うんうん。ともかく今は、雪合戦に努力だ!」 * * * 夏香「さっきは思い切ったね」 風子「面白いことになるかなと思ったけど、なったから良かった」 唯「面白いことってなに〜?」 風子「エリちゃんとアカネちゃんがね……」 夏香「風子、それは敵だ」 風子「えっ?」 唯「えっ?」 夏香「……唯ちゃん、私たちはバレー部チームだよ?」 唯「はっ! しまった!」 風子「本当だ、唯ちゃんは敵だよ!」 夏香(この子ら本当に大丈夫なのかな……) 風子「えいっ」 唯「ぎゃあ!」 夏香(そして唯ちゃん、言っちゃ悪いけど……の、ノロマすぎる!) 風子「ふう。危ないところだったね」 夏香「本当ヒヤヒヤさせられたよ」 風子「……あれ。でも唯ちゃん、単独行動なの?」 夏香「んっ? そういえば、どうして……」 夏香「って、まさか!?」 唯「うう……後は任せたよ……!」 風子「きゃっ!」 夏香「風子!」 夏香(後ろから雪玉!? くっ、唯ちゃんは囮だったってことなの?) 夏香「でも相手のいる方向さえわかってしまえば……」 ?「甘いわね」 夏香「なっ!?」 夏香(また後ろから雪玉……!?) 夏香「ぎゃふん!」 和「……実際にぎゃふんと言った人は初めて見たわ」 夏香「そ、そんな……三人だったなんて……。不覚っ」 夏香(でもそれなら、他のチームに割いている人数は……) 和「……」 夏香(少な) 和「他に割いている人数が、少ないと思った?」 夏香「えっ?」 「ぷるるるる……」 和「ちょうど来たみたいね……なるほど。了解、と」 夏香(メール……?) 和「……夏香。初めに言っておくわね」 和「“私はチームを七つに分けたわ”」 夏香「なっ!?」 和「だから他に割いている人数は、ここと同じ。ただ一人よ」 夏香「で、でもここには三人……!」 和「……本当にそうかしら?」 風子「夏香ちゃん。ここで倒れたままの唯ちゃんはともかく、 私に雪玉を当てたはずの三人目の姿が見えないよ」 夏香(どうして唯ちゃんは倒れたままなんだろう……) 夏香(でも待てよ。三人目の姿が見えない、ということは移動したってこと。 だとすれば、一体どこに?) 夏香「はっ! そうか!」 和「気付いたみたいね。 そう、既に三人目は次なる標的に向かっているわ」 夏香「七人それぞれが連絡を取り合って、 見つけた敵に向かうってスタイルを取っているんだね!?」 唯「せいかーい!」 風子「あっ、復活した」 唯「でもね、和ちゃんの考えた作戦はそれだけじゃないんだよ〜」 和「あんたは当たったんだから、余計なこと言わなくていいの」 唯「和ちゃんが雪よりも冷たい!」 夏香「和がルールを破るような作戦を考えるとは思わない……。 だとすればルールに則ったもののはず……」 風子「……」 夏香(“範囲はこの学校の敷地全体! 当てられたら退場の、単純なサバイバルだ!”) 夏香(……これが唯一、りっちゃんの言ってたルール) 風子「わかったよ、夏香ちゃん。和ちゃんの第二の作戦が」 夏香「本当? 私も、察しはついたよ」 和「聞かせてもらおうかしら」 風子「こんなのズルイと思われるかもしれない。 でも敷地内が範囲だとすれば、決してルール違反じゃない」 夏香「恐らく殆どの指示を出している人物は一人だ。 そして、その一人の居場所は……」 風子・夏香「校舎の中だ!!」 唯「ななななななんのことかなー?」 和「……」 風子(唯ちゃんがいて助かった) 和「……でも、それがわかったところで、なにになるのかしら。 私たちの情報伝達力、索敵能力はあなたたちを凌駕する」 和「あなたたち二人が気付いたとしても、 それを仲間に伝えることが、果たして出来るかしら?」 唯(和ちゃんがすごく悪者だよ。そして何故か似合ってるよ) 風子「和ちゃん。その連絡手段が自分たちだけの特権だと、勘違いしていない?」 和「あなたの携帯ね。当然、どちらか一人は携帯を持っていても、 おかしくないと予想は出来たわ」 和「でも、どちらにしても、もう手遅れよ。 こうしている間にも、最低で一人はあなたのチームから脱落しているわ」 風子「……もしさっきのメールから間髪を入れず、だったらね」 和「まさか……風子!?」 風子「そのまさかだよ、和ちゃん。 和ちゃんが携帯を取り出し、メールを確認した段階で……」 風子「私はバレー部五人全員にメールを送っていた!」 夏香「ええっ!?」 夏香(長い間喋らないと思っていたら……!) 風子「もちろん今の作戦を全部伝えられたわけじゃないよ。 でも、断片的な情報は全部詰め込んだし、“逃げろ”というメッセージも加えた」 和「……」 風子「あとはバレー部次第。 だけど、もしこのトリックを誰かが推理したとすれば……」 「ぷるるるる……」 和「ま、まさか……!」 風子「……後は任せたよ、バレー部!」 夏香「えっと……」 夏香(……私たち、所詮ただの雪合戦やってるだけのはずなんだけどねー……?) ‐三年二組教室‐ 澪「うぅ……冷たい……」 アカネ「風子ちゃんからのメールを見て、まさかと思ったけど」 エリ「校舎の三階に潜伏して、私たちを監視していたとはね」 アカネ「発見後は連絡して、そこに誰か複数人を向かわせる、と」 エリ「三花たち、大丈夫かな」 アカネ「さっきのメールを見て、逃げる判断をしていてくれればいいんだけど……」 澪「……」 アカネ「三人のところには四人を向かわせてるはずね。 それがこの作戦の良いところだから」 エリ「というと?」 アカネ「相手の人数より確実に多く、人数を割けるということ」 エリ「ああ、そっか。それで相手を圧倒するんだ」 アカネ「でも、見て。四人と戦っているのは、まきととし美の二人だ」 エリ「三花は逃げることができたんだ!」 アカネ「そして反対側の窓から見えるのは……」 エリ「……単独行動している和ちゃん!」 澪「っ!?」 アカネ「いくよ、エリ。遅れないでね」 エリ「当然!」 エリ「……あっ、澪ちゃんは当たった人たちが集まる場所があるから、校舎から出てね」 澪「せ、せっかく寒さを逃れられたと思ったのにー……」 アカネ「ご愁傷さま。でもね、私たちも本気なんだよ」 ‐校庭‐ 律「澪がやられた!?」 梓「作戦が破られたってことですか!?」 律「そうらしいな……。こうなれば、ここでこの二人を逃がすわけにはいかない!」 とし美「ふふ、バレー部の鍛えられたこの脚に……」 まき「ティータイム部が追いつけると思うー?」 律「ぐっ、悔しいが言い返せない!」 梓「本当返す言葉もありません……」 紬「ダメよ二人とも、相手の思惑通りになったら!」 英子「でも確かにあの二人、なかなか雪玉が当たらないわね……」 律「バレーで鍛えられたってのは確からしいな! だけど、私たちだって真剣なんだ!」 梓「……待ってください。作戦が破られたということは……」 梓「一番危ないのは和先輩ということじゃないでしょうか!」 律「なっ!?」 英子「これであの二人が牽制程度の攻撃しかせず、 逃げることに専念していた理由がわかったわ」 英子「あの二人はなんらかの連絡を受けて、時間稼ぎが最善だと判断したのね」 紬「バレー部チームの残り人数は五人。 ここにいるのは二人だから、三人が和ちゃんを狙っていることになるわ」 律「さすがに三対一じゃ、分が悪すぎる……!」 まき「いくら逃げることに徹しているといっても、 今の私たちは四対二だから逃げ切れているだけ」 まき「それが三対一だったら、もう諦めるしかないと思うよー」 とし美(もし見つけられたのがエリとアカネの二人だったら、 四人も人が送られてくることはなかった……) とし美(風は、私たちに吹いている!) 律「作戦変更だ! どちらか片方を狙うぞ!」 まき「とし美ちゃん。行って」 とし美「自分が犠牲になるってこと?」 まき「ううん。だって私、瞬発力には自信あるからねー」 とし美「……そっか。じゃ、任せたよ私たちの絶対リベロ、まき!」 紬「あ、とし美ちゃんが!」 英子「でも今は一人に狙いを絞るのが得策……」 律「……覚悟はいいか?」 まき「ふふん。どっからでもかかってきなよー」 まき(……これで五分五分になれる、ね) * * * 和「くっ」 エリ「よっし、当てたー!」 三花「ま、三人対一人ならこんなもんだよね〜」 とし美「あれ、もうこっちは終わった?」 三花「とし美! 無事だったんだ!」 アカネ「まきは?」 とし美「……」 アカネ「……そう」 和「なるほど。これでお互い、四人ずつ残ったということね」 三花「五分五分ってことじゃん!」 ?「そういうわけだ」 エリ「……りっちゃん」 律「よう」 紬「……」 梓「……」 英子「……」 エリ「へえ。全員集合してるんだ」 アカネ「かつての作戦はどこへやらって感じね」 律「今更、策の講じ合いなんて無意味なことはしないな」 律「残ってるのは己の拳と、そこに掴まれた雪玉だけだろ?」 三花「ふふっ、上等じゃん。仲間たちの無念、晴らさせてもらうよ!」 律「それはこっちのセリフだ。なあ、みんな!」 紬・梓・英子「おおー!」 三花「気合十分。こっちも行くよ!」 エリ・アカネ・とし美「おおー!!」 律「いざ、尋常に……」 エリ「……始めっ!」 「私たちの戦いはこれからだ!!」 ・ ・ ・ ‐音楽準備室‐ 唯「うーん、澪ちゃんが淹れてくれたお茶も美味しいね!」 澪「そ、そうか?」 まき「うん! この寒さもふっとんじゃうよー」 風子「でもいいの? 私たちまでご馳走になっちゃって」 唯「昨日の敵は今日の友だからね〜」 風子「そっか、それならお言葉に甘えて」 夏香「いやー、昨日の雪合戦は白熱したねー」 澪「私も、校舎から見張ってただけだったけど、楽しかったよ」 澪「……楽しかった、んだけど」 まき「うん……」 澪「……まさか早く退場した人以外のみんなが風邪をひくなんて」 まき「うちのノリノリ馬鹿たちが、ご迷惑をおかけしました……」 澪「いえいえ、こちらこそ……」 第二十二話「桜高バレー部の宿敵」‐完‐ 26
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 INDEX ※主演:桜が丘高校バレー部 無名 ◆4xyA15XiqQ 2013/04/19 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14921/1366356949/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 久々に読みに来た。やっぱ無名さんすげえ。 最近pixivでの更新がゆっくりなのちょっと悲しい。 -- (名無しさん) 2016-08-30 23 38 13 仲良し!可愛い! -- (名無しさん) 2016-08-28 16 15 43 群像劇としては秀作。 -- (名無しさん) 2016-08-11 21 48 23 話し方やたわいない話の内容がかわいい! -- (名無しさん) 2016-03-15 22 01 13 個人的には三花、まき、アカネが好きです。 これだけの大作を破綻なく終わらせたのは見事! -- (名無しさん) 2015-11-23 22 24 48 モブSS見てモブ多すぎとか…意味不明 -- (名無しさん) 2015-11-09 12 03 19 モブ多すぎ、長すぎ。 力量は認めるが、やっぱ主要メンバーで。 -- (名無しさん) 2015-11-04 21 34 36 モブキャラをわずかなプロフィールと想像だけで書けるのは確かに凄いな。 これだけの構成力を活かして本キャラで大作を書いてほしい。 -- (名無しさん) 2015-04-29 23 02 04 これは大作だ! -- (名無しさん) 2014-06-01 02 08 40 けいおん愛に溢れてるね。 読み終わるのは大変だけど、読んで報われるという感じ -- (名無しさん) 2014-04-23 02 24 20
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新川高校バレー部OB・OG会HPへようこそ ■ みなさんこんにちは!!! この度管理人としてこのHPを立ち上げることになりました12回生OBのshigeruです。なにぶんこういったことは初めてですので、見苦しいところがあっても多めに見てやって下さい。 このHPは新川高校バレー部OB・OG会のみなさんに気軽に交流してもらうためにありますので、どんどん掲示板に書き込んだり、友達に教えてあげて下さいね! ちなみに、このHPは、メンバーであれば自由に編集することができます。そのため、「俺の方が上手く作れる!」「私ならこうするな」などといったことがあれば、是非連絡して下さい。メンバー用IDを送ります。(と言うか、誰か手伝ってくれえ~っていう状態です) これから少しづつ勉強していき、みなさんに楽しんでもらえるように頑張っていきたいと思っているので、気長に待っていて下さい。 ■ OB・OG会の写真を募集しています!! 今までのOB・OG会でみなさんが撮った写真を募集しています。残念ながらOB・OG会に参加できなかった方たちに、このHPを見ることで少しでも楽しさや雰囲気が伝わればいいな、と思っています。みなさん、ぜひ協力して下さい!!このHPに提供してもいい写真があれば、メールで連絡して下さい。 ■ リンク先募集中!! OB・OGの方の中で、ご自分のHPを持っていたり、友人のHPを紹介したい方がいるなら、ぜひ連絡して下さい。もちろん、OB・OG会以外の方のリンクも大歓迎です。 このホームページはリンクフリーですが、リンクの報告をして頂けるとありがたいです。 ■何かあれば、気軽にメールで連絡して下さいね。 shigeruにメールする since2005.8.25
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新川高校バレー部OB・OG会HPへようこそ みなさんこんにちは、この度管理人としてこのHPを立ち上げることになりました12回生OBのshigeruです。なにぶんこういったことは初めてですので、見苦しいところがあっても多めに見てやって下さい。 このHPは新川高校バレー部OB・OG会のみなさんに気軽に交流してもらうためにありますので、どんどん掲示板に書き込んだり、友達に教えてあげて下さいね! ちなみに、このHPは、メンバーであれば自由に編集することができます。そのため、「俺の方が上手く作れる!」「私ならこうするな」などといったことがあれば、是非連絡して下さい。メンバー用IDを送ります。(と言うか、誰か手伝ってくれえ~っていう状態です) これから少しづつ勉強していき、みなさんに楽しんでもらえるように頑張っていきたいと思っているので、気長に待っていて下さい。 ■ OB・OG会の写真を募集しています!! 今までのOB・OG会でみなさんが撮った写真を募集しています。残念ながらOB・OG会に参加できなかった方たちに、このHPを見ることで少しでも楽しさや雰囲気が伝わればいいな、と思っています。みなさん、ぜひ協力して下さい!!このHPに提供してもいい写真があれば、メールで連絡して下さい。 ■ リンク募集中!! OB・OGの方で、ご自分のHPがあり、リンクをしてもかまわないと言う方がいましたら、ぜひご連絡下さい。もちろん、OB・OG会のメンバーでない方からのリンクも大歓迎です。 何かあれば、気軽にメールで連絡して下さいね。 shigeruにメールする since2005.8.25
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【第十二話】 ‐外‐ エリ「祭りだー!」 三花「いえーい!」 とし美「すっごい人だかりだね」 アカネ「この子らがこれだけ騒いでいてくれれば、はぐれることはないだろうけど」 まき「……」 アカネ「まき、どうしたの?」 まき「あ、アカネちゃん……あれを見て」 アカネ「あれ? 射的の景品?」 まき「あのぬいぐるみ、すっごい可愛い!」 とし美「うん、可愛いね」 とし美「だけど射的で大きいぬいぐるみって、 なかなか取れるものじゃないよ?」 まき「そうなんだよねー……」 エリ「……話は聞いたよ、まき」 まき「えっ?」 三花「私たちが力を合わせて、あれを取ってあげるよ!」 まき「本当!?」 エリ「任せなさい!」 アカネ(ああいうのって、絶対落ちないような仕掛けがあるって、 聞いたことあるけれど……) アカネ(……まあ、黙っておこう) * * * エリ「あれっ?」 律「んっ?」 三花「あ、軽音部じゃ〜ん!」 唯「そっちはバレー部!」 エリ「ここで会ったが百年目……」 律「長年の恨み、晴らさせておくべきか……」 アカネ「なに馬鹿なこと」 澪「言ってんだ……」 律「いやあ、つい嬉しくなっちゃってよ。 なんだ、みんなは三年生全員で祭りに来たってわけか?」 三花「うん、そんな感じ〜。りっちゃんたちも?」 唯「うん、軽音部全員でね!」 梓「あの先輩、この方たちは……?」 紬「同じクラスで、バレー部の子たちよ。 今、りっちゃんとコントを繰り広げたのが、瀧エリちゃん」 梓「はあ……」 エリ「なんかすっごい呆れられてる!?」 アカネ「哀れね……」 紬「今、梓ちゃんと同じぐらい呆れてるのが、佐藤アカネちゃん」 梓「……カッコいい方ですね。澪先輩みたいに、しっかりしてそうです」 アカネ「えっ、そんな、カッコいいなんて……」 とし美「照れちゃった?」 アカネ「言わないでよ……」 紬「あのボブカットの子は、中西とし美ちゃんよ」 とし美「この子が後輩の梓ちゃんなんだね?」 紬「ええ」 三花「本当可愛いね〜! 唯ちゃんが周囲に自慢してるわけだよ〜!」 梓「ちょっと唯先輩!?」 唯「口が勝手に喋っちゃうんだよね〜」 紬「この子は佐伯三花ちゃん。バレー部の部長よ」 梓「部長……。なるほど、こういう方が本当の部長なんですね!」 律「梓、何故私をちらっと見てから納得した」 紬「最後に梓ちゃんと同じぐらい小さい子が、和嶋まきちゃん」 まき「ムギちゃんいきなりなんて紹介してくれてるのかな!?」 梓「私と、同じぐらい……」 梓「あの、失礼ですが身長は?」 まき「えっと、百六十……」 アカネ「すぐバレる嘘はよくないよ、まき」 まき「正直すぎる言葉もよくないと思うよー」 まき「……百五十二センチだよ。本当に」 梓「そうですか……」 まき「うん」 梓「……」 まき「……」 梓「……それではっ」 まき「あっ、ちょっと待って! なんで逃げるの!」 梓「急用を思い出しました!」 まき「せめて身長を! 身長を教えてよ! ねえー!」 律(あれは負けたな、梓……) とし美(お気の毒に……) * * * エリ「それで、りっちゃんたちは射的でなにを取ってたの?」 律「いや、なにも取れなかった。 あのぬいぐるみを狙ってたんだけどなー」 アカネ「あっ、それって」 律「ん? アカネたちも狙ってたの?」 アカネ「うん、まあ。まきが欲しがったんだけどね」 律「あれはやめた方がいいぞ。 私たちも四人がかりで挑んだんだけど、全然落ちやしない」 唯「あれは裏でなにか仕掛けがあるに違いないよ!」 まき「なんて夢のない話……」 とし美「……店主さんがこっち睨んできてるんだけど」 まき「現実って怖い!」 * * * まき「というわけで、綿あめを買ってきたよ!」 三花「綿あめの原価って知ってる?」 まき「やめて!」 アカネ「そういうの知ると、一気に祭りって楽しめなくなるんだよね」 とし美「じゃあ知らなければいいってこと?」 三花「馬鹿になればいいってことだね」 まき「ねえエリちゃん、どうすれば祭りを精一杯楽しめるかな?」 エリ「どうしてこのタイミングで私に聞くのかな?」 * * * 律「そんじゃ、私らはあっち行くから」 エリ「じゃあねー!」 唯「また学校でね〜!」 三花「……いやあ、まさか軽音部と会うとはね〜」 アカネ「探してみれば、意外ともっといるかもね」 まき「じゃあまずは、たこ焼き屋に行ってみよー?」 とし美「まきが行きたいんでしょ?」 まき「違うよ! 私は、たこ焼き屋に誰かいると思っただけだよ!」 まき「……ついでにたこ焼きも買うけど」 アカネ「ふふっ、それなら行こうか、たこ焼き屋」 * * * 三花・まき「たこ焼き美味しい!」 三花「食感がたまらないね〜」 まき「たこ焼き機が欲しくなっちゃうねー。 次第に全然使わなくなっていくのがオチだけど」 エリ「はい、二人ともたこ焼き食べたね!」 三花「食べたけど?」 エリ「今たこ焼き食べた二人は、 関西弁しか使っちゃいけないゲームに強制参加だ!」 まき「えー」 アカネ(また面倒なことを……) エリ「ほらほら、自分を西の地に飛ばしてごらん!」 三花「……」 三花「...Takoyaki tastes very good!」 エリ「えっ」 まき「I agree with you!」 エリ「なぜ英語!?」 とし美「西洋まで飛んじゃったんだね」 エリ「ぐ……。こうなったらとし美、たこ焼きを食らえ!」 とし美「うえっ!? ……はふっ、はふっ!」 とし美「……んんっ! もう、いきなり口に突っ込まないでよ!」 エリ「さあとし美、たこ焼きを食べたね? 食べたね?」 とし美「いや、だって私、関西弁わからな……」 エリ「さあさあ」 とし美「えー……」 エリ「……」 とし美「……Je ne sais pas」 エリ「えっ」 とし美「Je ne sais pas」 エリ「えっと、じゅぬ……?」 とし美「……Je sais pas」 エリ「えっ!?」 とし美「Je sais pas!」 エリ「じゅ、じゅせぱ……?」 とし美「……Sais pas!」 エリ「しぇぱ!?」 とし美「Sais pas! Sais pas!」 エリ「あ……」 エリ「I m fine thank you, And you?」 とし美「なに言ってんの」 エリ「こっちのセリフだよ!!」 * * * エリ「はあ……なんだか無駄に疲れたよ……」 アカネ「エリの絡みの方が疲れるよ」 エリ「全く、誰が西洋に飛べって言ったんだよ!」 アカネ「どれも関西を越えていったのは確かに想定外だったね」 エリ「しかも、とし美にいたっては宇宙語だよ!」 アカネ「あれはフランス語だ馬鹿者」 * * * 三花「金魚すくいやろうよ〜」 エリ「よしっ、それなら全員で勝負だ!」 まき「生き物を勝負事に使うなんて、人間は残酷だなー」 まき「とか思ってないよ?」 アカネ「ならどうして口に出したの」 とし美「あそこにいる金魚たちって、既に相当弱ってるって聞くけどね。 私たちが掬おうが掬うまいが、微々たる差だよ」 アカネ「勝負の前から精神面で大ダメージで攻撃しないでよ……」 とし美「でも、そこの子たちは全然大丈夫みたいだよ」 エリ「そ、そうだ! べべべ別にその程度で同様しないしぃ〜?」 三花「だだだだよねえ〜?」 アカネ「めっちゃ効果的ですけど!?」 * * * 三花「時間は無制限。各自のポイが全部破れた時点で、終了ね」 まき「いいよー」 三花「それじゃあ、よーい……」 アカネ「……」 とし美「……」 エリ「……」 三花「始めっ!」 エリ「破れた!」 アカネ「早!?」 とし美「よし、四匹目!」 アカネ「早!?」 三花「なんか飽きたー」 アカネ「早!?」 まき「アカネちゃんのツッコミも素早いねー」 * * * 三花「結果、十三匹を掬ったとし美の勝ち〜!」 とし美「本当はもっといけたんだけどね」 アカネ「とし美にそんな才能があったなんて、 思ってもみなかったよ」 まき「うんうん」 三花「さて、ビリの人にはなにしてもらおっかな?」 エリ「えー、なにそれ聞いてないよー!」 まき「唐突なルール追加はよくあることだよ」 アカネ「特にエリの周りではね」 エリ「うっ、確かにそうだけど……」 エリ「……じゃあわかった。これから打ち上げ花火だよね?」 まき「うん」 エリ「なら、私しか知らない、とっておきの穴場を教えてあげる。これでどう?」 とし美「人混みから抜けて、花火を見られるなら願ってもない話だね」 とし美「エリ、案内してくれる?」 エリ「よし、任せて! こっちだよ!」 * * * エリ「ここの施設は夜、営業していないんだけど、 実は裏にちょっとした穴があって、そこから入れるんだ」 エリ「さらに外に取り付けられてる階段を上っていけば……」 エリ「屋上に到着!」 まき「おぉー!」 アカネ「凄い……人もいないし、高さも十分。なんの問題も無しね」 とし美「唯一、法的には問題ありだけどね」 三花「そんな水を差すようなこと言っちゃ、駄目だよ〜」 エリ「気にいってもらえた?」 まき「うん! やっぱり高い所はエリちゃんの管轄だね!」 エリ「それどういう意味だ!」 アカネ「エリはエリってことだね」 とし美「うんうん、そういうこと。……あっ、始まったよ!」 まき「たーまやー! かーぎやー!」 まき「って叫んでみたはいいけど、これってどういう意味なの?」 三花「花火業者の名前だって聞いたことあるよ〜」 エリ「あっ、今の色合い! なんかバレーボールに似てた!」 アカネ「綺麗……」 * * * 三花「……ん〜、すごかったね〜!」 エリ「また来年も来たいね!」 アカネ「みんな違う大学に行くのに?」 エリ「大学違うからって、集まれないわけじゃないでしょ?」 まき「うん。私、来年もこのメンバーで夏を過ごしてみたいなー」 とし美「良いこと言うね」 エリ「そっか、まきは寂しいのか〜!」 まき「そ、そういうわけじゃないんだけど……」 まき「……たまにメールとかくれたら、嬉しいかな」 三花「うん、わかったよ、まき」 三花「四年に一回はメールするよ!」 まき「大学生の間に一回だけしかくれないの!?」 エリ「安心して。足りない分は、私が出してあげるよ!」 エリ「チェンメを装って」 まき「その無駄な努力いらないよ! 削除対象だよ!」 とし美「まき、わかった。私が出してあげる」 とし美「毎日千文字以上のメールを」 まき「重いよ! 重たすぎるよ!」 まき「こ、ここまで来たらアカネちゃんが最後の良心……」 アカネ「えっ?」 まき「アカネちゃんはそれなりの頻度で、普通の形式で、 気軽なメールを送ってくれるよね!?」 アカネ「うーん、そうだね……」 アカネ「私の実験台になってくれるというなら」 まき「せめてカットモデルと言おうよ」 第十二話「桜高バレー部の花火」‐完‐ 16
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‐外‐ エリ(私たちバレー部三年生の、最後の試合が終わってから数週間) エリ(初めは部活のない生活に戸惑っていた) エリ(けれど、徐々に受験生の生活へはシフトできてきている) エリ(そんなわけで、特に大きな事故もなく、 今まで平穏な毎日を過ごしてきたわけだったけど……) エリ「なぜ自転車壊れたああああ!!」 【第十一話】 エリ(なになになに!? この遅刻するかしないかの瀬戸際で、 壊れてることが発覚する絶妙なタイミング!!) エリ(これじゃ遅刻確定じゃん!) エリ(……いや待て、諦めるな。まだ万策つきたわけではない。 私には、二年半のバレーで鍛え抜かれた足があるじゃないか!) エリ(ほら、目の前に続く道だって水浸し……) エリ「雨でぬれてて、まともに走れねえええ!!」 エリ(うわああ、よりによって今日は雨だよ! 見事例年並みの梅雨だよ、くそう!) エリ(いやよく考えたら、まだ自転車ならギリギリの時間を、 走って間に合う道理なんて元々ないじゃないか! 私にどうしろっていうんだ!) エリ(こうなれば、答えは一つ……) エリ(家族の自転車を借りる!) エリ(……って) エリ「家族全員自転車通勤だよ!!」 エリ(なんでなんだ! なんで一家揃って自転車通勤なんだ!) エリ(……まあ、家族全員が健康でなにより) エリ(じゃなくて! そうだけど、そうじゃなくて!) エリ(こうなったら壊れた自転車を自力で直すか? 多少の遅刻は覚悟の上、でも最悪の事態を免れるなら……) エリ(よし、それなら壊れた原因を探ろう! その原因から辿れば、きっと私にも直すことはできるはずだよ!) エリ(えーと、多分壊れたきっかけになったのは……) エリ(……確か昨日、差してた傘が手から落ちて、タイヤにからまって……) エリ「原因私じゃんかよ!!」 エリ(なんてこったー! こりゃ完全に原因私だわー!) エリ(あれ? ってことはだよ?) エリ「私、傘も壊しちゃってるよおおお!!」 エリ(アホか! 昨日の私はド級のアホなのか!) エリ(しかしまあ、原因が私にあるってことは、直すべきは私自身ってことか。 むう、考えさせるねえ……) エリ(って、そんな哲学者気分に浸っている場合じゃない) エリ(私が浸るのは、水溜りだけで十分ってね。おっ、これは良い感じだ) エリ(って、そうじゃないそうじゃない) エリ(あー、駄目だ考えがまとまらない。時間も迫ってて、焦ってるんだなあ私) エリ(一先ず深呼吸、っと……) エリ「……」 エリ(雨が降っていて、自転車も傘も壊れている。 電車通学というのも家からじゃ選択しづらい) エリ(ということはバスか? 傘はさすがに一本ぐらい余ってるだろうし、バス停まで走って、それで……) エリ(あー、結局遅刻かー。そうだよね、初めからわかってたよ) エリ(まあ、今日の一時間目は大したことない教科のはずだし、 きっと遅刻したところで、さしてダメージは大きく……) エリ(……あっ) エリ「……」 エリ「…………」 「…………」 エリ「今日期末テストじゃんかよおおおォォォォーーー!!」 ‐三年二組教室‐ まき「ねえアカネちゃん、エリちゃんは?」 アカネ「さあ……寝坊でもしたんじゃない?」 まき「あー、それはありえるねー」 アカネ「あっ、メールだ。……しかもエリから」 まき「狙ったようなタイミングだね」 エリ『運命に 暗雲かげり 遅刻かな』 アカネ「……」 まき「……五・七・五?」 アカネ「そうだね。うん、そうだけど」 ‐外‐ アカネ『三点』 エリ「容赦なさすぎだよ!」 エリ(って、なんでアカネに私の句を採点させてんだ! 違うよ、今の私の気持ちをアカネに伝えたかっただけなんだよ!) エリ(……いや、ていうか……) エリ「元よりそんなことしてる暇ないよ!!」 エリ(ああ、私はなにをしているんだー……。 こんなことしている間にも時間は刻一刻と過ぎているというのにー……) エリ(……もうわかったよ。バスで行きますよ。 遅刻前提だけど、バスで行けばいいんですよ!) エリ(さて、そうと決まれば出発! 鞄も持った、筆記用具も持った、残っていた傘も持った) エリ(……あれ?) エリ「財布は!?」 エリ(うそうそ!? どうして財布ないの!?) エリ(はっ! まさか昨日、傘を自転車に絡ませた際に……) エリ(派手に転んじゃって……) エリ(そのはずみで、ポケットに入れてた財布がシュート……) エリ「これは有り得る……」 エリ(詰んだ。これは詰んだといっても、間違いない) エリ(ははは……この時期のテストをばっくれるとは。 あの桜高にも、とんだ不良少女がいたもんだね) 「prrrr...」 エリ(んっ? 電話?) エリ(……アカネ?) エリ「はい」 アカネ『いいから、早く来なさい』 「ぶつっ」 エリ「……はい?」 エリ(えっ? それだけで、本当に電話切っちゃった?) エリ(……いや) エリ(なんというか、怖いぐらい、 アカネには見透かされてたってことか……) エリ(こりゃ参ったね) エリ(……仕方ない。二時間目からでも参加しますか!) ‐三年二組教室‐ まき「大分短い電話だったねー」 アカネ「えっ? ああ……」 アカネ「エリのことだから、雨を前にして馬鹿なこと考えてるんだろうと思って。 だったら短い言葉でけしかけた方がいいでしょ?」 まき「さっすがアカネちゃん!」 アカネ「それに、二時間目のテストは古文。 エリの得意教科をみすみす見逃すのは、惜しいしね」 まき「一時間目には間に合わない前提なんだね」 アカネ「多分だけど、エリはまだ家にいるからね。 どう頑張っても間に合わないよ」 まき「その根拠は?」 アカネ「馬鹿は進歩をしない」 まき「辛辣だねー」 三花「なになに〜、二人ともなんの話〜?」 まき「馬鹿とは一体なんなのかを、議論しているんだよ」 三花「んーと、それってつまりさ」 三花「エリについて議論してるってこと?」 アカネ「……流石に同情せざるを得ないよ、エリ……」 まき「残念エリちゃん……」 第十一話「桜高バレー部の梅雨」‐完‐ 15
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‐風呂‐ エリ「う〜ん、生き返るぅ〜!」 アカネ「……わざと言ってるの?」 まき「きっとこれが自然体なんだよー」 とし美「自然と親父キャラを定着させてるってわけね」 エリ「別に親父じゃなくても“生き返る”って言わない?」 三花「エリはわかってないよ」 三花「例えばまきが」 まき「生き返るよ〜」 三花「って言っても親父じゃないけど」 三花「エリが」 まき「生き返るよ〜」 三花「って言うと親父になるんだよ」 三花「わかった?」 エリ「まるでわからないよ!?」 ‐バレー部班の部屋‐ まき「さっぱりしたねー」 アカネ「そうだね」 アカネ「……」 まき「アカネちゃん?」 アカネ「いや、髪下ろしたまきって珍しいなあって」 まき「だからって凝視しないでよー、恥ずかしいよー」 三花「うん、少しだけ大人びたように見えるね〜」 まき「そうかな?」 アカネ「うん」 アカネ「まるで高校生みたい」 まき「元々そうだよ!」 三花「まき、嘘は良くないよ〜」 三花「いつもは中学生でしょ?」 まき「私たち同級生のはずなんだけどなー」 アカネ「この見た目なら、あの子(後輩B)に年下扱い受けないかもしれないね」 まき「あっ」 アカネ「ん?」 まき「それは盲点だったよ、アカネちゃん!」 アカネ「えっ」 まき「早速試してみよー!」 三花「ちょっと待ってね」 三花「エリ、とし美! 写真撮ろ!」 * * * 三花「タイマーセット完了〜」 とし美「まきの珍しい姿を収められるね」 まき「なんか恥ずかしいよ」 エリ「んー、まきの髪下ろした姿も珍しいけどさ」 エリ「三花の髪下ろしたのも珍しくない?」 アカネ「あ、確かに」 三花「私はそんなに印象変わってないよ〜」 とし美「いや結構変わってない?」 エリ「うん」 エリ「まきが中学生から高校生になったとしたら」 まき「だから私たち同級生だよね?」 エリ「三花は高校生から大学生になったみたいな」 三花「なんか照れちゃうな〜」 まき「髪下ろすと印象変わる人って多いよねー」 まき「とし美ちゃんも大人びてる、というより印象が大きく変わってるし」 とし美「そう?」 まき「アカネちゃんは、少し大人っぽくなった……かな?」 アカネ「少し?」 三花「普段から大人っぽいから、アカネはそこまで変わってないんだよ〜」 まき「エリちゃんは全然変わらないよね!」 エリ「なんだか私だけ馬鹿にされてる気がする」 アカネ「……それにしても、シャッター下りないね」 三花「みんなの髪は下りてるのにね〜」 とし美「上手いこと言ってないで」 とし美「……ってこれ、ビデオじゃない」 三花「あれ、ホントだ」 三花「……保存っと」 とし美「するんかい」 三花「一応ね〜」 * * * 三花「無事写真は撮れたことだし……添付して、送信!」 アカネ「後輩たちに送信したの?」 三花「そうだよ〜」 三花「そして、まきがあの髪型でも年下扱いされるか、 あの子の返信の内容でチェックするよ」 まき「ふふ、期待大だね」 アカネ(正直そうでもない気がする……) アカネ(……言い出しっぺは私だけど) 三花「おっ、返信きたよ」 【ちょっと京都のホテルの予約取ってきます】 まき「うわあ」 まき「悪化しちゃったね」 アカネ「やっぱり」 まき「えっ」 三花「やっぱりね〜」 まき「……やっぱりレベルの実験だったんだねー」 * * * アカネ「それじゃ、電気消すよー」 まき「……アカネちゃん、消灯時間ってなんのためにあるんだろうね」 アカネ「寝るため?」 まき「違うよ」 アカネ「違くないよ!?」 三花「違うんだよ、アカネ」 三花「この時間帯はお互いノーガードの談議が出来る、 消灯後フリータイムなんだよ」 まき「おー、放課後ティータイムと被せてるんだね。上手い!」 アカネ「いや上手い云々じゃなくて、消灯時間なら寝ないと……」 とし美「アカネ」 アカネ「とし美?」 とし美「もう諦めよう」 アカネ「早くもとし美が陥落したー!」 エリ「先生たちの動きは扉に一番近い私が、この自慢の耳で探るよ」 三花「頼んだよ、エリ!」 アカネ「耳が自慢とか初めて聞いたんスけど……」 まき「アカネちゃん」 アカネ「ん?」 まき「諦めって肝心だよね」 アカネ「……頭が痛い」 * * * 三花「一つ目のお題、それは恋愛!」 まき「修学旅行では定番の話題だね!」 三花「なお、ここでする話は他言無用だよ。絶対外に漏らさないこと!」 三花「……というわけで、なにか話がある人〜」 エリ「さーて、誰の話を聞けるのかな!」 アカネ「……残念、私はなにも話せることが無いよ」 まき「同じくー」 とし美「私も残念ながら」 エリ「私もなんだよね」 三花「えっ、私もなにも……」 「…………」 まき「……三花ちゃん」 三花「ん?」 まき「私たちって、寂しいね」 三花「それは言わないでっ!」 * * * 三花「一つ目のお題からコケてしまったのは、 きっと、私たちの通う学校が女子高だからだよ!」 三花「……うん、そうなんだよ」 まき「頑張って自分を納得させようとしているのが見え見えだね」 とし美「……でも私、岡田さんが彼氏いるって話を聞いたことあるよ」 アカネ「あっ、それ私も聞いたことある」 エリ「それ、本当?」 アカネ「うん」 「…………」 とし美「……ホントごめん」 まき「いいんだよ、私たち、仲間だから……」 エリ「大学生になったら、大学生になったら……」 * * * 三花「それにしても大学生か〜……」 とし美「どうしたの三花」 三花「高校三年生特有の、ちょっとした感慨だよ?」 とし美「いや余計わからないんだけど」 アカネ「つまり言い表せない思いってこと?」 三花「お〜、良く分かったね〜」 アカネ「自分で言うか」 三花「だって今週末から始まるインハイが、私たちバレー部三年の最後の試合じゃん?」 アカネ「うん」 三花「私たちはそこに一つのゴールを置いているけど、 実際は受験、その後に新しい学校での四年間があるわけだよ」 三花「しかもその四年間を過ごすのは、大学。 今までの学校とは規模もシステムも大きく違うわけで」 三花「そこに放り出される自分が、みんなは想像できる?」 とし美「一つのゴールを迎えた直後の自分……ってとこね。 確かに想像することは難しいけど、三花。一つだけ訂正させて」 三花「んっ?」 とし美「私たちは、誰かに放り出されるんじゃない。 自分から立ち向かっていくんだよ」 とし美「その自覚を持たないと」 三花「お〜……」 アカネ「言うね」 エリ「とし美、さっすがー!」 とし美「……うわ、なんか恥ずかしくなってきたあああ……!」 * * * とし美「……こほん」 とし美「まあつまり、私たちがインハイで勝つことを自主的に目指しているように、 大学も自主的な行動をしていけばいいんじゃないってことね」 アカネ「そうね。聞いた話だと、受動的だと大学は楽しめないみたいだし」 エリ「その点は私、自信あるけどね!」 アカネ「エリの不安要素は学習面だけだもんね」 エリ「うっ。図星だけど」 とし美「エリって高い所が好きなイメージがあるんだけど、 結局どのぐらい馬鹿なんだっけ?」 エリ「こら、せめてオブラートに包みきってから喋れ」 アカネ「エリは大体中の下ぐらいだったっけ」 エリ「ん、まあその程度。 出来れば中堅私立を安全圏に収めるぐらいに、成績を上げたいよ」 三花「私も、出来れば上を目指したいけどね〜。 なにせ、敵は全国にいるからさ〜」 とし美「怖い怖い」 アカネ「本当、全て自主的に動かないと、 スタート地点にすら立てないよね、大学は」 * * * エリ「というか、今私が一番不安なのはインハイ予選だよ」 エリ「火曜から木曜まで修学旅行、それから二日挟んで、 日曜から予選開始って……」 とし美「改めて聞くと、凄いハードスケジュールね」 アカネ「こればっかりは、この時期に修学旅行を実施する学校を恨むよ。 間の二日が勝負かな……」 エリ「ま、普段から練習してきた私たちだし、二日間あれば余裕だね!」 エリ「……よ、余裕だよね?」 アカネ「大丈夫、エリならちゃんと試合に臨めるよ」 エリ「アカネー……」 アカネ「自分で言っておいて、なに言ってるんだか。 エリの普段の努力は私が知ってるから、問題ないって」 とし美「そうそう。多少勉強に支障が出ても、エリは部活に全力投球してきたでしょ?」 アカネ「全く、いつもは根拠もなく自信たっぷりなんだから、 根拠がある時ぐらい自信を出しなさいよ」 とし美「うん、それ確かに言えてる」 エリ「くっそー……二人してバカにしながらも、しっかり励ましてくるなんてー……」 エリ「嬉しいぞ、バカ野郎どもー!」 アカネ「はいはい」 とし美「……そういえば、さっきからまきの声を聞かないんだけど」 三花「あっ、それやっと気付いた?」 まき「すぅー……」 とし美「……寝てるね」 三花「うん、ちょっと前からね」 エリ「全く、可愛い寝顔でさっさと寝ちゃってさ」 とし美「あの子がまきを可愛がりたくなる理由、なんとなくわかっちゃうね」 アカネ「初日からはしゃいじゃって、疲れちゃったのかな?」 三花「うん、そうみたいだね。だから静かに、ね」 三花「成長ホルモンは寝ているときに分泌されるんだから」 エリ・アカネ・とし美「なるほど」 まき「む、むぅー……」 第六話「桜高バレー部の旅路の一」‐完‐ 8