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フジワラノミチマサ(藤原道雅) 平安時代中期の公卿・歌人。 チュウコサンジュウロッカセン(中古三十六歌仙)の一。 別名: サキョウノダイブミチマサ (左京大夫道雅)
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ヒロ 魔王ジャネスと人間の娘との間に生まれる。魔族でありながら人間の血を その身に宿すため、人としての心も持ち合わせる。 火炎の術が得意で爆炎の申し子の異名を持つ少女である。また姉から譲り受けた 死神の鎌『ゲートオブヘヴン』は切り裂いた者の魂をそのまま冥界へ送り届ける 武器である。だが現在は完全に使いこなせてはおらず冥界の門を開ける事も 今は出来ない 出典:スペクトラルフォースなど 【所持金】 不明 【所有アイテム】 無し 【スキル】 魔粧・煉獄:敵陣の広範囲を炎で焼き払う火炎の術 烈火・死霊斬:ゲートオブヘヴンによる空間断裂で生じたブラックホールに 敵を吸い込ませる技 魔界粧・轟炎:冥界の炎を呼び出し敵を焼き尽くす
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これはVIPにあるアナルスレやプリンスレのテンプレ例である。 新しくスレを立てる人は参考にするといいかもね? 注意)AA省略 【アナルスレ】 ・SS投下の際は空気を読んでくださぁぃ。byみくる ・長編は完結できるように、途中放棄した日にはあなたのアナルはいただきますよ!by ふんもっふ ・長編投下はわかりやすいようにトリップや文頭にアンカーを付けなさい!by ハルヒ ・…キャラクターの口調、及びそれぞれの呼称についてはまとめサイトを参照すること。by ユキ ・自分で投下した長編はなるべくWikiで自分で編集したほうがいいと思うぞ。by キョン ・落ちを予想するのはやめ・・うをっ チャック開いてるぞ!by wawawa ・荒らしさんにはスルーなのね。by 阪中 ・とりあえず気楽に投下するっにょろよ。by めがっさ ・1レスには最大30行、全角で2048文字、1行全角120文字まで入るのです。by ○ ・スレが立ってから3日で落ちるのは……既定事項だ。by P G DAT保管庫(停滞中) http //haruhiss.xxxxxxxx.jp/ 新DAT保管庫+SS推薦http //vipharuhi.s293.xrea.com/ 新まとめサイト http //www25.atwiki.jp/haruhi_vip/ DATうpろだ http //www.uploader.jp/home/harussdat/ 雑談所(避難所) http //yy42.60.kg/haruhizatudan/ 雑談所携帯用 http //same.ula.cc/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/ =====業務連絡=========== ・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ! ・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」に まとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。 まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド http //yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 http //same.ula.cc/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/携帯用 アナルスレ登場人物紹介 キョン【きよん】 本編の主人公 ハルヒに話かけたせいで奇想天外な世界に巻き込まれた人 ハルヒの機嫌を損なうと世界からいじめにあい、 古泉からはアナルバージンを奪われ、長門にビデオを録られ、 朝比奈に見せられるなど報われない人 涼宮ハルヒ【すずみやはるひ】 本作のメインヒロイン 気分で世界を変える能力がありキョンを度々危機に陥れる。 自己中心的なキャラが反感を買い、VIPでスレを立てられたのが始まり、 最近は古泉に押され出番が少なめ 長門有希【ながとゆき】 宇宙人、よく本を読んでいる このスレでは古泉の影響で腐女子になりつつある 覚醒すると古泉を粉々にする 朝比奈みくる【あさひなみくる】 サバよみ未来人 本編の萌えキャラ担当 ウホ臭が強いこのスレではほとんど出番がない 古泉一樹【こいずみいつき】 超能力者 キョンのアナルバージンを手にいれた人 策略家で変装がうまい 世界を801にするため手段を選ばない恐ろしい人間 鶴屋【つるや】 朝比奈さんの親友で髪がかなり長い 謎の女 最近はハルヒのアナルを狙っているとか 谷口【たにぐち】 ハルヒにフラレた馬鹿な男 キョンとよく一緒にいることが多い 古泉の影響でホモになりつつある いじめるときは容赦ない 他スレの影響でチャックキャラに 国木田【くにきだ】 ショタ要員 こいつもキョンとよくいる これまた古泉の影響でホモに 【プリンスレ】 長編投下の際の注意 ・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ? ・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ? ・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ ・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで ・キョン君、過度な性的描写はやめようね~、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ ・台詞や他者への呼称等、その人物に対する統一性は違和感が生じないように推敲が必須だね。もし不安であるのならば、まとめ等を参照すること。 ・1行には全角120文字、1レスには最大30行まで入るけど、全角で2048文字の制限があるから気をつけて欲しいのね。 ・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな ・次スレは970以降、臨機応変に対応してくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり~ ・スレが立ってから三日過ぎたスレッドは 1000まで行かなくても落ちる……これは僕にとっても既定事項だ ・自分で投下した長編はなるべく自分で編集してください、わかりましたか?んん…!もうっ! ・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら罰金だからねっ! DAT保管庫(停滞中) http //haruhiss.xxxxxxxx.jp/ 新DAT保管庫+SS推薦http //vipharuhi.s293.xrea.com/ 新まとめサイト http //www25.atwiki.jp/haruhi_vip/ DATうpろだ http //www.uploader.jp/home/harussdat/ 雑談所(避難所) http //yy42.60.kg/haruhizatudan/ 雑談所携帯用 http //same.ula.cc/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/ =====業務連絡=========== ・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ! ・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」にまとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。 まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド http //yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 http //same.ula.cc/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/ 携帯用 各キャラ同士の呼び方 各キャラごとの呼び方(改訂版) 前提:アニメ・小説両方の要素を取り入れたものとする。注)SS内での読み方、呼び方は含まない 話が進む中で定着した呼び方を書く 例)ハルヒは最初、長門のことを長門さんなどと呼ぶことがあったが、 その後は有希と定着したので、有希のみと表記する アニメ・小説で一度きり、または極めて少ない呼び方には名称の前に☆を付ける キョン ハルヒ みくる 古泉 長門 鶴屋さん キョン妹 キョン 「俺」 ハルヒ (☆涼宮) 朝比奈さん (☆朝比奈さん(大)) 古泉 長門 鶴屋さん ハルヒ キョン 「あたし」 みくるちゃん 古泉くん 有希 鶴屋さん 妹ちゃん (☆さん) みくる キョンくん 涼宮さん 「わたし」 「(あたし)」 古泉くん 長門さん 鶴屋さん 妹さん 古泉 あなた (?キョン君) 涼宮さん (☆涼宮ハルヒ) 朝比奈さん (☆朝比奈みくる) 「僕」 長門さん (☆長門有希) 鶴屋さん 妹さん 長門 あなた 涼宮ハルヒ 朝比奈みくる 古泉一樹 「わたし」 鶴屋さん キョンくん ハルにゃん みくる 一樹くん 古泉くん 長門ちゃん (☆長門っち) (?有希っ子) 「あたし」 「鶴にゃん」 妹ちゃん (君) キョン妹 キョンくん ハルにゃん みくるちゃん 古泉くん ☆有希(ちゃん) 「わたし」 サブキャラ・モブキャラは省いて書いたが、メインでも過不足があると思われるので、そこは補足してください。
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S・ハルトシュラー 「全霊を込めて創作しているのなら、優劣などつけられぬはずだ」 創作のエネルギーが集まって誕生した創造と発現の神。 “創発の魔王”の異名を持つが、その姿は女性である。 創作物にして創造主というその性質のため、自身の“設定”すら変えることができるという。 ちなみに現在の設定は── ハルトシュラー S. Hartschuller (1988~1990) 始めは、ただの言葉に過ぎなかった。 しかし──その言葉に命を吹き込んだ者たちがいた。 言葉は彼らの手によって力を得、形を成し、そして動き出した。 そして彼女は、彼らの望みを叶え、彼らの魔王となった。 謎の芸術家。 出身地や生没年代はおろか、性別すら不明で諸説ある。 小説、絵画、音楽、料理に至るまで様々な分野で膨大な量の作品を遺すが、 自分のことについては一切を明かさなかった。 後に「創作家は作品でのみ語るべき」という運動が起こり、 「ハルトシュラー主義」と呼ばれた。 が、そもそもハルトシュラー様自体の設定が「作曲家で魔王で幼女で享年2歳」などと、とうに破綻している。 人間としての顔は万能の芸術家だが、真の彼女は人間的な意味での創作だけでなく魔術や神の所業についても造詣が深い。 彼女の住まいである謎の洋館、「迷い家」の書斎には幾千もの禁書が眠っているという。 自身の設定すら変えられる為、様々な姿で現れるが、基本的に威厳のある少女として登場する。 感情を表に出す事はあまりないが、怒らせるとあまりの威圧に周りが凍りつくほど。 「家族」に対して何らかの想いを抱いているようだが…? 倉刀とは良好な師弟関係。未熟者として呆れる場面もあるが、彼の技量を認め成長に期待し見守っている。 美作とは暴走しがちな彼女に呆れつつも、倉刀と同じく師弟関係は良好。 柏木とは袂を分けた対立関係だが、お互いに技量を認め高く評価している。 「自身の設定すら変える事ができる」という設定上、その戦闘能力はもはやインチキと言うべきレベルである。 ただし「物語が成立しない強さなど創作者として無粋」と普段はその能力の大半を封印しており、 そのデタラメな力を行使する事はまず無い。 普段の戦闘では自身の生み出した各種拳法、武器では日本刀を使う事が多い。 『ゲートオブマヨヒガ』と呼ばれる召喚術も使い、各種武器や存在を召喚して戦う事も。 容姿は設定すら変えられる為様々だが、10歳前後の少女で ゴスロリファッション、長い髪にカチューシャをつけた姿が多い 髪の色は金髪または銀髪。目の色も赤・金・青・緑と絵師により様々。 彼女を題材としたイラストは創発でも数が多い
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vip成歩堂法律事務所 20xx年、VIP犯罪の増加に対応して、政府は新たな司法システム「VIP序番裁判」を導入した。 「VIP序番裁判」とは、弁護士と検事の直接対決で、わずか小一時間程度で判決を下す制度である。 たまたまスレを覗いた依頼人にかけられている疑惑を即興の《自演裁判》で議論し真相を追究する! 最後に傍聴していたビッパー達が依頼した被告人に下すのは"有罪"か"無罪"か…!?チラ裏裁判が始まる! -=ニェ=ィァ___ ≦d ・∀・) |ナルホド|__/ y lア_______|異議有りっ! ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ vip成歩堂法律事務所とは 2ちゃんねるのvipでナルホドくんが暇な時に立てるスレ。 強烈な自演スレとなっている。 最近疑われる様な事件を起こした暇なVIPPERがナルホドくんに弁護を依頼し法廷が開かれる。 裁判の特徴 とにかく即興で行われる自演裁判となるので7割程の確立でgdgdになる。 裁判の時間は小一時間を目安として行われる。 基本的に 弁護士「ナルホドくん」検事「ミツルギくん」裁判長「サイバンチョ」で進行する。 他のキャラを使用し裁判への突然乱入も大歓迎のようだ。 君もここからAAをGETして参加しよう! http //gyakutenvip.nengu.jp/ http //www.geocities.jp/gyakutenvip/ (※いつも逆裁キャラでの乱入、煽り感謝してます。そのお陰でより"逆転裁判"ぽく演出されてます!) ■ 事務所の留守番電話 ■ 「…発信音の後に適当になんでもコメントすればいいんじゃないかしら?(byチヒロ) …ピー」 チヒロさんのおっぱいはおっきい -- 2012-02-18 14 33 09 異議なし! -- 2012-02-23 11 03 30 まだー? -- 2012-02-23 15 02 35 コメント すべてのコメントを見る .
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「涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~」の続編です。 12月25日。今日が本当のクリスマスだ。 しかし、町は気の早いもので華やかな装飾は剥がされ始め、 次は正月へと向けて彩りを変えている。 学校も明日から冬休みに入る為、終業式という事で学校に来たのだが、 「う~…」 どうやら俺はサンタのトナカイ探しやらパーティーの後の一件で 雪の降る真冬に外をウロウロ歩き回ったせいで 少し風邪を引いてしまったらしい。 しんどい…咳が止まらない…休めば良かったかも。 しかし、熱っぽいのはそれだけが理由ではないだろう。 クリスマスが終わったというのに俺は未だに浮かれ気分が抜けない。 昨日の夜は結局、眠れずじまいだった。 一晩中、落ち着かなくてモソモソと動いていた。 とうとうやっちまった…俺はとうとうやっちまったのだ…あのハルヒに… いきなりあんな事やるなんてあの時の俺はどうかしちまってたのか!? いきなりハルヒに抱きついて、今でも思い出すと 恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうな台詞吐いて、 手を繋いで…やばい、また熱が出てきた。 その後、結局ハルヒを家に送り届けるまでの道で 2人共、照れと恥ずかしさでお互いまともに顔を見る事も 言葉を交わす事さえも出来なかった。 別れ際の「おやすみ」が精一杯だった。 俺はどんな顔してりゃ良いんだ? ハルヒはどんな顔して後ろの席に座るのだろうか? 緊張してきた…やっぱり今日は学校休めば良かったかも。 昨日の夜は全っ然、眠れなかったわ…。 どんな顔して学校行けば良いのよ? 普通に「おはよう」とか言って席に着けば良いかしら? でも、それだと何にもなかったみたいに受け流す冷たい嫌な女だわ… かと言って今更、可愛い子ぶりっ子なんて出来ないし!したくもないし! あぁ!!もう!!こんなの中学までで散々慣れてたはずなのに! なんでキョン如きにこの私がここまで悩まなされきゃいけないのよ! 雑用係のくせにいきなり団長様を抱き締めてくるとか反則よ! キャラ崩壊の危機だわ! とりあえず、今日は早めに学校行って絶対、キョンより先に席に着かなきゃ。 やっぱり何事も最初が肝心なのよ! イニシアチブは常に私が握っておかないと! 「あいつ…なんでもう教室にいるのよ!!」 早いわ!早過ぎるわよ!だってまだ7時半前よ! 全校生徒のほとんどがまだ来てないし、絶対に私が一番乗りだと思ってたのに! 教室に二人っきりなんて余っ計に気まずい空間じゃないのよ! 仕方が無いわ、とりあえず時間稼ぎに部室棟に…あっ…… 突然、教室の扉が開き、キョンと目が合った。目の前に立っている。 「おぅ…」 2人共、突然の事に驚いて固まっていたかと思うと咄嗟に視線を逸らした。 「あの、その、何だ……」 「……な、何よ?」 黙ってないで何か言いなさいよ! 「い、いや…お、おはよう…」 「おはよう…」 「…ちょっとトイレに行ってくる!」 キョンは廊下に出てトイレの方へと歩いて行った。 びっくりしたぁ~…何でいきなり出てくんのよ!?バカキョン!! びっくりしたぁ~…何で突然目の前に現れるんだよ!?ハルヒ!! でも、これで予想外とはいえ何とか挨拶は出来た。 これで少しは落ち着いて行ける!(はず…) 教室に戻るとハルヒはこちらに背を向けて窓の外の遠くの方を眺めている。 配置から考えるに俺の方から声を掛けないと行けない状況のようだ。 くそっ、やられた…せっかく朝に弱い俺が頑張って早くから学校に来て ポジションを先取してたのにトイレに行ったせいで攻守交代だ…。 席に座って待っているとキョンが戻ってきた。 やっぱりまだ恥ずかしくて顔を見る事が出来ない。 わざとらしいかなと思いつつ、頬杖をつきながら 窓の外の空から降ってくる雪を見ていた。 「今日は早いんだな」 あんたのせいよ! 「ま、まぁね…終業式だし、一年の最後くらいはきっちり締めたいじゃない!? あんたこそ、早いわね!」 「あぁ、そうだな…」 なんて可愛くない返事しか出来ないのよ!私! 2人しかいない朝の静かな教室に気まずい沈黙が流れる…… 突然、キョンが咳き込んだ。 「あんた、風邪引いてんの?」 「あぁ、ちょっとな」 「うつさないでよね、別に今日くらい家で寝ときなさいよ! どうなっても知らないわよ!」 違うわよ!私の馬鹿!そんな言い方無いでしょうが! 「いや、今日だけは何があってもちゃんと学校来たかったから」 え? 「いや、その…あの…昨日のあれ、な……」 そこまで言ってキョンは顔を逸らし、会話が途切れた。 「まさか、あんた、あんな事しといて冗談でしたとか言うつもり!?」 そんなのマジ、許さないわよ…。 「いや!違う!あれだ…それは何というか…逆だ…」 「逆?」 「昨日のあれな…あれ、本気だから。 それだけはメールや電話じゃなくて今日、ちゃんと直接会って言いたかったんだ。 そうしないとお前に怒られそうだからな」 「あ、ありがと…」 と、言うハルヒの俯きながら見せた、はにかんだ笑顔はすこぶる可愛く 熱に浮かれた頭と理性は吹っ飛びそうだった。 「なぁ、ハルヒ…」 「な、何?」 ハルヒは顔を上げ見開いた目をこちらへ向けている。 「今日、終業式出るか?」 「え?」 「いや、通知表も貰ったし、今日やる事って終業式くらいだろ? 学校サボって抜け出さないか?」 ハルヒが俺を無理矢理連れ出す事は何回もあったが、 俺からハルヒを引っ張り出すのは初めてのような気がする。 「サボってどうすんのよ?」 「なんか今日はハルヒと2人だけでいたい気分なんだ」 昨日の夜から何度もシミュレーションしてきたとは言え、 実際、口に出すと我ながらなんてキザな台詞だ… 「私は別に良いけど…でも、あんた風邪引いてるんでしょ!? こんな寒いのに外に出るなんて無茶したら…」 そういうハルヒの手と鞄を俺は有無を言わさず取り上げ、歩き出した。 「ちょっとキョン!どこ行くのよ!?」 そんなの決めちゃいない。 「今日は…デ、デートだ!!」 やっぱり今日の俺は相当、熱がある。暴走気味だ。 俺達は2人で何回、この坂道を行き来したのであろう? まだ生徒の数も片手で数えられるほどにしかいない坂道は雪で凍っていた。 足を滑らせないよう一歩ずつ踏みしめながら歩く。 ハルヒと2人で歩くなんて散々慣れていた事なのに今日はいつもと違う。 俺が前を歩き、ハルヒの手を引いている。 心臓が脈打ち、ただ一緒に歩いているだけで素直に嬉しい。 坂を下った所でハルヒが足を止めた。 「キョン!これからどうするのよ!?」 確かにここまで来ちまったが、さて、どうしよっかな? 「まだ何も決めてないが…」 そういうとハルヒは溜息をついて呆れたような顔をしている。 「あんた、本当に計画性のかけらも無いわね!」 お前にだけは言われたくない! ハルヒは鞄から昨日、俺があげた手袋を取り出し、はめていた。 「ほら!あんた、風邪引いてるんでしょうが!」 と、ハルヒは俺の鞄を無理矢理あさり、 昨日ハルヒから貰ったマフラーを取り出して俺の首を思いっきり締めてきた。 「く、苦しい、息が出来ないって!」 「いい気味よ!キョン如きが私に命令するなんて100万年早いの!だから罰よ!」 と、言うハルヒは俺に太陽のような笑顔を向けていた。 2人でこの道を横に並んで歩いていこう。 どっちが前でも後でもなく、2人並んで手を繋ぎ。 横を向けばあなたの顔が見える場所。 ここは他の誰にも譲りたくない指定席。 あなたの目が、鼻が、耳が、頬が、髪の毛が誰より近く見える場所――― ただ、雪の中を2人で手を繋いで歩いていた。 どこへ行くか、とか何をどうするかなんて目的がある訳じゃない。 ただ、俺はハルヒと一緒にいたかっただけ。誰にも邪魔されずに。 「ねぇ、キョン」 ハルヒはボーッとした顔で訊ねてきた。 「ん?なんだ?」 「あんたバスって乗った事ある?」 なんだそりゃ? 「そりゃあるに決まってんだろ」 「じゃあ、あのバスってどこまで行くか知ってる?」 ハルヒが指差す先には停留所に白いバスが止まっていた。 「さぁ?マニアじゃないから知らんな」 「じゃあ、乗ってみましょう!どこに向かうか探検よ!」 そんなハルヒの子供じみた思いつきはいつもの事だから驚きはしない。 むしろ、外は寒いからバスで移動するっていうのは悪い手じゃないな。 バスに乗ると朝にも関わらず誰も乗っていなかった。 人が集まる場所とは反対方向に走っているからだろう。 「空いてるな」 どこに座るかと考える間もなく、ハルヒは一番奥へとズンズン進んで行く。 「やっぱりバスは一番奥の席に限るわね!」 と、やたら嬉しそうな笑顔をしてドカッと座り込んだ。 「まぁ、奥は席が広いからな」 「あと、乗ってる人間全部が見渡せるのが良いのよね! この世の支配者~!って感じで!」 いや、それは意味が分からん…。 バスはゆっくりと音を立て雪の中を走り始めた。 揺れる度に隣に座るハルヒの細い肩がぶつかる。 バスが静かに動きを緩めて止まった。 停留所で誰かを乗せるようだ。 「さぁ、どんな面白い人が乗ってくるかしら?」 別に普通の利用客だと思うがな。 バスに乗ってきたのは老夫婦だった。ゆっくりと歩を進めている。 二人とも身体のどこかが悪いのだろうか? お互いがお互いを支え合うよう、補い合うようにこちらへと歩いてくる。 おじいさんの方が俺達に話し掛けてきた。 「おや?珍しい。この時間に人が乗ってるとはの」 「こちらどうぞ」 ハルヒは立ち上がって席を譲ろうとした。 「ありがとう。どう?一緒に座りましょうよ」 おばあさんは柔和な笑顔で俺達に促してきた。 「うちのばあさん、一番後ろの席が好きでな。 広いから夫婦で座っても誰か他の人とも一緒に座れるからって。 それが好きなんじゃよ」 俺達は席を詰め、おじいさんは優しく笑いながらおばあさんをそっと座らせた。 バスは再び、ゆっくりと走り始めた。 「君らのその制服、北高じゃろ?」 おじいさんは俺達に視線を向けている。 「はい」 礼儀正しいハルヒは久し振りに見た気がする。 おばあさんが笑いかけてきた。 「と言う事は終業式をサボって2人でデートね?」 「これ、ばあさん!」 見事にバレた…色々言われたら面倒だな。と考えた俺を見透かしたようだ。 「ふふ…大丈夫よ。私達も高校生の時にお互い授業や式を抜け出ししたものよ、 昔は見つかると大変だったけど」 おばあさんは昔を懐かしむように笑っている。 「このバスに乗っておるという事は港に行くんじゃな?」 港? 「終点じゃよ。最近は港にデートへ行くのが増えておるらしいからの。 よくある、そこで結ばれたら一生結ばれるだなんだの言う話じゃよ」 「私達の頃は何もなかったから2人でいるのに都合が良くて 港へ行ってたけど、時代は変わってるのね」 2人は笑っている。 「あそこで初めて結ばれた2人っちゅうのは恐らく儂らの事じゃよ」 「またその話ですか、おじいさん。いつも言ってるんですよ、この人」 恐らく、その噂や伝説を広めたのがこの2人なんだろう。 まぁ、生き証人が目の前にいる訳で嘘はついてないから文句も言えないが。 「喧嘩もいっぱいしたし、一生結ばれるなんてそんな可愛いものじゃないけど それはそれで悪くはない、楽しいものよ」 2人の幸せそうな笑顔を見ていると納得せざるを得ない。 「じゃあ、儂らはここで。席を譲ってくれてありがとう」 おじいさんは俺に意味ありげな視線を投げ掛けてきた。なんだ? 2人はバスを降りて行った。 「ああいう夫婦って良いよな…」 俺は何気なくぽつりと思った事を口に出しただけだったのだが… 「なっ、何言ってんのよ!?バッカじゃないの!?」 何故かハルヒは真っ赤になって怒り出した。 「でも、まぁ面白そうね!キョン!港に行きましょう!」 おいおい、まさかあんな伝説を信じた訳じゃないだろな? 「そういう伝説は見過ごせないわ!何かあるかもしれないじゃない! 不思議探索よ!ねっ!」 まぁ、時間を潰すには最適か、俺が引っ張り出した事もあるしな。 ハルヒがこんなにご機嫌になるなら断る理由も無い。 メールが来た。ハルヒと2人同時に終業式をサボったから また谷口あたりがからかいのメールでも寄越したんだろう。 無視だ、無視。 バスは静かに終点へ滑り込んで行った。 終業式も終わり、部室に足を運んでみると長門有紀の姿しか見えなかった。 「おや?長門さんだけですか?皆さんはどうされました?」 「朝比菜みくるは先程来室し、すぐに立ち去って行った。あとの2人は不明」 そうですか…彼と昨日サンタクロースに貰ったゲームをやりたいと 思っていたのですが、いないのでは仕方がありませんね。 「では、僕もここでしばらく時間でも潰しましょう」 港に着いて歩いてみると綺麗に舗装はされてあるが平日と言う事もあり、 誰も人がいないようだった。 きっと夜景が綺麗になる時間に人が集まって来るのだろう。 時折吹く強い潮風がハルヒの髪を巻き上げる。 「うぅ~…寒いわね!!」 何に対して怒ってるんだ? 雪が海に散りばめられる宝石のように落ちては消えていく。 「まぁ、景色としてはなかなかのものね!とりあえず合格にしといたげるわ!」 またハルヒは訳の分からない事を言っている。 寒さのせいで鼻水が出てきた…。 「汚いわね!!ほら、これ使いなさいよ!!」 ハルヒは鞄の中からポケットティッシュを出してきた。 「ありがと、これ貰って良いか?」 「好きにしなさい!!」 さっきから笑ったり怒ったり忙しい奴だ。 そういうハルヒを見てるのは面白いんだけどな。 「何、ニヤニヤしてんのよ!?気持ち悪いわね!!」 「ん~?いや、コロコロと表情が変わるから面白い奴だなぁ~と思って」 俺は今、意地悪な笑い顔になってるに違いない。 「う、うるさいわね!!」 ハハ…今度は真っ赤になって照れてる。本当に面白い、そして… 「…可愛いな」 お、今度は驚いて目を見開いている。 「バ、バ、バッカじゃないの!?あんた何!? さっきから私の事、馬鹿にしてんの!?あんまり調子に乗ってると…」 ―――!!! ハルヒのよく動く唇を塞いだ。 町の喧噪は消え、静かに降る雪も動きを止めた。 風の音だけが遠くで聴こえる。 時間が止まったかのようだった。 「……ちょっと調子に乗り過ぎたからまた罰金かな?」 「本当に調子に乗り過ぎよ…馬鹿…」 ハルヒは俺の手を握り締めたまま俯いている。 「もうちょっと雰囲気とかタイミングってもんがあるでしょうが… 本当にデリカシー無いわね、バカキョン…」 「ハハ…すまん。あと俺、風邪引いてるのすっかり忘れてた…ハルヒにうつるかもな」 ハルヒが抱きついてきた。 「もし風邪引いたら責任取りなさいよね…」 「そうだな、分かった。」 この笑顔をずっと守っていこう…俺はそう誓って 昨日よりも、もっと強くハルヒを抱き締めた。 「あと、ハルヒ……」 「……何よ?」 「お前の唇って柔らかくて暖かいな」 鞄で思いっきり殴られた。 新しく手に入れたボードゲームの説明書を読みながらゲームの研究をしていた。 彼にはかなり大きく負け越してしまってますからどうにかして 勝ちを積み重ねていかないと卒業までに逆転するのは難しそうです。 彼は僕の予想ではきっと人類史上、類い稀なるゲームの達人、 恐らく天才なのではないかと考えています。 まぁ、彼以外とはあまりゲームをやる事はないのですが…。 そういう意味では彼も涼宮さんに選ばれた特異なる人間の一人なのでしょうか? そんな事を考えていると携帯が鳴った。どうやらメールが来たようです。 機関から?閉鎖空間発生?彼らはどこへ行ったのでしょうか? また彼は凉宮さんに何かしでかしたのでしょうか? 「長門さん」 長門有紀は何かを察知しているのか、もうすでに僕の方へ視線を向けていた。 「もし彼らが来たら伝えておいて下さい。急なバイトが入ってしまいました、と」 「…了解した」 ハルヒは照れているのか俺の顔を全く見てくれない。 と言う俺も心臓が破裂しそうなのだが…。 気が付いたらお昼を過ぎていた。どおりで腹が減る訳だ。 どこかで昼飯でもと思ったが、終業式も終わってる時間だろうし、 途中で何か買って部室で食べようと言う事になった。 学校へ戻る為、バスが来るのを待つ停留所は寒い。 缶コーヒーを買って2人で手を暖め合った。 バスに乗るとハルヒはまた一番奥の席へとズンズン進んで行った。 よっぽど一番奥の席が好きなんだな…。 この時間帯は乗客もまばらで俺達の他には数人しか乗っていない。 ハルヒは俺の手の上に細く長い指を絡ませている。 車内は暖房が効いていて暖かい。 エンジンの心地良いリズムと揺れも相まってハルヒは眠気が襲ってきたのであろう。 俺の肩に頭を乗っけて眠りこけている。 子供のような寝顔だ。 かくいう俺も少し眠くなってきた…。 俺も少し居眠りしようかと考えた、その矢先だった。 大きな音と衝撃と共に目の前が雪化粧に包まれたように真っ白になった――― 大きな音と衝撃で目を覚ますとどっちが上か下か分からくなっていた。 キョンが私に覆い被さってきている。 「ちょっとキョン!いくら何でも調子に乗り過ぎよ! バスの中で私の寝込みを襲うなんて変態にもほどがあるわよ、エロキョン!」 キョンの体を突き飛ばそうとした。しかし、キョンからの返事はなかった。 「キョン……キョン?」 私の肩にキョンの腕がただ力なくぶらりと垂れ下がっていた。 ふと手に暖かい感触が残る。 血だった。 キョンが頭から血を流していた。 「嘘…いや…」 私はキョンにしがみついていた。 「嘘でしょ…冗談でしょ…やめてよ、キョン…ねぇ、キョン…」 自然と涙が込み上げてきた。人前でなんか泣いた事ないのに…。 「キョン!!!キョン!!!いやぁぁああ!!!!!!!!!!!」 私はありったけの大声で彼に向かって叫んだ――― 長門さんからのメールを見てズキンと胸に何かが刺さるような感触がして重くなった。 私が病院に向かうと彼らの家族、そして彼らのクラスメイトの何人かがいた。 キョン君の妹さんはキョン君の名前を呼びながら泣いている。 その中に長門さんと鶴家さんが静かに立っていた。 「みくる…」 鶴家さんは目を赤く腫らしていた。 事の詳細を訊ねると雪道でスリップした大型トレーラーが 彼らの乗っていたバスに突っ込み、バスが横転してしまったらしい。 その時にキョン君は頭をぶつけ、意識が無く現在、手術中だと言う事だ。 凉宮さんは精密検査を受けているらしい。 凉宮さんはキョン君が咄嗟に体を投げ出し、覆い被さったお陰で ほとんど無傷だったようだ。 精密検査を終えて出てきた凉宮さんはずっと 泣きながらキョン君の名前を叫んでいた。 凉宮さんの叫びが責められているようで胸に強く深く突き刺さる。 キョン君の手術は長引いた末に終わったようだ。 まだ意識は戻らず予断を許さない状態で集中治療室にいる。 私は…私には… 「ねぇ、キョンは…キョンはどうなったの?ねぇ、教えて!!」 私はひたすらに病院の廊下でそればかり叫んでいた。 それ以外に何も関心は無かった。 手術は終わったとは聞いた。でも、その後は誰も何も言わない。 キョンのご両親と医者がこちらへと歩いてきた。 お母さんの方が声を掛けてきた。 「あなたがハルヒさん?」 「はい、彼に……一目だけでも良いので彼に会わせて下さい!!」 キョンのご両親は医者の方へちらりと視線をやり、医者が頷いた。 「あなたも事故にあったのにこんな事頼むのもあれなんだけど 行ってあげてくれないかしら?」 キョンは眠っていた。 顔に傷も無いせいだろう、本当に眠っているようにしか見えなかった。 私は彼の手をそっと握った。 きっと私が無傷だったのはキョンが体を張って守ってくれたからだろう。 「ありがとう、キョン」 涙が溢れてきた――― その時だった。私の手をキョンの手がそっと包んできた。 キョンの目が静かに開く。 「キョン…キョン!!」 状況が掴めてないのかキョンは虚ろな目をしている。 「キョン!!」 こちらに視線を向けてきた。 「ハルヒ……」 私の涙がキョンの手に落ちた。 「ハルヒ、無事だったんだな……」 「…馬鹿。なんでこんな時まであんたは…人の心配する前に自分の心配しなさいよね」 私は無理して笑った。 「だ、団長命令よ…早く元気になりなさい… SOS団の活動はまだまだいっぱいあるんだから… それに…これからは…一緒に…2人で…」 私は声を出そうと思ったが、涙に遮られた。 「ハルヒ…」 「…何よ?」 「実は昨日の夜の…ドキドキであまり寝てないんだ……」 「…うん」 「だから、ちょっと寝かせくれないか…」 「…うん」 「…そんなに泣くなよ、笑ってるハルヒの方が俺は好きだぞ」 「…うん」 「おやすみ……ハルヒ…」 「おやすみ……キョン…」 2人は柔らかく、暖かく、そっと唇を重ねた……。 それは永遠よりも遥かに長い長い…一瞬の出来事だった―――― 私は…私には…止められなかった…。 分かっていても止める事は出来ないし、 止めてはいけない事だとも十分、承知していた…。 覚悟はしていた。でも…我慢出来ず、最後に一目だけでも会いたくて キョン君にメールをした…返事は来なかった…後悔だけが残る…。 自分の無力さに…そして皆で過ごした日々に…。 あれから三日後。 キョン君の葬儀を終えた私と長門さんは彼女の、凉宮さんの元へと向かった。 小泉君はあれ以来、姿を見せていない。 凉宮さんはキョン君の死が受け入れられず、まだ病院にいる。 治療室から運び出される時も彼の手を離すまいとしがみついていた。 凉宮さんの病室の前まで辿り着いたものの、なんと声を掛けようかなどと 入るのを躊躇っていると、声を掛けられた。 彼にいつもの笑顔はなく、暗く沈んだ顔をしている。 「小泉君……」 「先程、彼に会いに行ってきました。何というか…まだ実感が湧きませんね…」 「…私もです、小泉君はもう大丈夫なんですか…」 彼は寂しそうに首を横に振った。 「もはや世界は僕らの手の届かない状態になりつつあります。 大きく改変される事になるかもしれません。 機関の人間も様子を見守るしか出来なくなってしまいました…」 彼は彼なりにここ数日、大変だったのだろう。 キョン君や凉宮さんの事に思いを馳せつつ…。 「先程、彼のご両親からこれを預かってきました」 と、小泉君は封筒を取り出した。 「凉宮さんへの預かり物です。彼のノートに挟んであったようです」 僕ら3人で病室に入ると凉宮さんは重く暗く沈み、 ベッドの脇にある椅子に座って空を虚ろな目で眺めていた。 どうやら僕らの声は届かないらしい。 「これは彼から凉宮さんにあてた手紙のようです。ここに置いておきます」 窓際に封筒を置いて僕らは立ち去った。 凉宮さんに掛ける言葉も思い付かなかったからだ…。 凉宮さんの病室の前のベンチに座ると朝比菜みくるが静かに泣き出した。 「朝比菜さんは…」 誰もいない暗い病院の廊下に僕らの声が響き渡る。 「…この事実についてご存知だったんですか?」 朝比菜みくるは何も答えずにただ黙って頷いた。 「そうですか…だからクリスマスにサンタクロースが空を飛んでいる姿を 皆で見ようと提案なさったんですね…」 「…せめてこんな形になるとは言え、最後に皆で想い出を残したかったんです。 …私はこの出来事を見届ける為だけにこの時代に送られたと言っても 過言ではありません。それほど今回の事は未来においても重大な事なんです」 「…彼を助ける事は出来なかったんですか?」 言葉に出して酷い事を聞いてしまったと後悔した…。 助けられるものなら助けていただろう。その時、長門有紀が口を開いた。 「…これは彼の寿命。どういう形であれ、今年12月25日時点での彼の死は 確定していた。変更する事は不可能。例え、それは凉宮ハルヒの力をもってしても。 それはあなた達が一番よく理解しているはず」 これは長門有紀なりの僕らへの慰めの言葉なのだろう…。 「はい…今回の事は…未来では……き、規定……」 「朝比菜さん…」 僕は首を横に振り、彼女の言葉を遮った。 「少なくとも、僕らSOS団の人間にとって…… 彼の死は……決して、規定事項なんかじゃありません。決して……」 「……そう」 長門有紀は静かに頷いた。 12.24 ハルヒへ いきなり柄にも無く、手紙を書いてみようと思う。 何故なら、興奮して眠れないからだ! お前はどうなんだろうか?ハルヒ。 全く気にもせずに涎垂らしたアホ面で眠っているのだろうか? しかし自分自身でも不思議なんだ。 正直、お前に初めて出会った時は見た目はまぁ、悪くはないが、 頭の中身がぶっ飛んだおかしな女だとしか思っていなかった! 髪型も短くする前は時々、変だったしな。 それが新しく部活作るから手伝えってネクタイ引っ張られて階段の踊り場に 連れて行かれた時はカツアゲでもされてるような気分だった。 しかもSOS団なんて世の中の不思議を探す為とかいう妙な目的の元、 珍奇な集団を作って、俺は巻き込まれた感たっぷり。 でも、今は楽しい! 長門や朝比菜さん(まぁ、仕方が無いから小泉も入れといてやろう)、そしてハルヒ。 団長のお前がいてこそのSOS団だ。 お前がいるから楽しいし、面白いから俺もついつい部室に足を運んじまう。 最初は朝比菜さんと一緒にバニーガールの衣装で SOS団の勧誘ビラ配りしたり、(まぁ、あれはあれで悪くはなかったが…) コンピュータ研から無理矢理パソコン取り上げたり、 何の知識も無い俺にHPを立ち上げろと命令してきたり、 なんて無茶苦茶な奴なんだと呆れてばかりいた。 でも、考えたらハルヒと一緒にいる時はいつも笑える楽しい事ばかりだ。 皆で不思議探索をするのもなかなか見つからないが悪くはないし、 七夕に一緒に短冊作ったり 夏休みに孤島に合宿行ったり(夏休みは結局、ほとんどSOS団の皆で遊んでたし) 学園祭の為にSOS団の皆で映画作ったり(大喧嘩もしたが…) クリスマスには何故か鍋パーティーが恒例になったり、 雪山で遭難なんて事もあったな。 サンタが空を飛ぶなんていう不思議な事にもようやく巡り会えたし、 お前と過ごしているうちに俺のハルヒへの想いも少しずつ変わってきたんだろうな。 次は初詣か?俺の願い事はもう決まってるが教えないぞ。 人に教えたら願いが叶わないからな。 とにかく、これからももっと楽しいイベントが盛りだくさんだな! で、結局、俺は一体、ハルヒに何が伝えたいのかと言うとだな、 いきなり結論だが、昨日の夜、お前を抱き締めて言った事。 あれは本気だ。結構、緊張したがな。 そういや、ハルヒからのちゃんとした返事は貰ってないが、 何となく流れ的にOKだったのかな、と勝手に解釈しとくぞ。 だから、次のバレンタインチョコは義理じゃなくて本命でくれよな。 それともう一つ、ハルヒに頼み事があるんだ。 俺達、来年は受験生だろ? ハルヒがどこの大学に進むのか知らないけど、 きっと今の俺じゃ手も届かないような所だと思う。 だから頼む。俺に勉強を教えてくれ。 俺も頑張って1年でどうにかしてお前の成績に追いつくから。 だからハルヒ、一緒に同じ大学に行こう! そしてな、大学でまた俺達で新しいサークルを作ろう! その名も『SOS団』!!!! 悪くないアイデアだろ?問題は俺の成績なんだがな…。 これからまだまだたくさん楽しい事、笑える面白い事があるだろうし、 喧嘩をする事もきっとあるかもしれん。 だけど、これからもずっと宜しくな、ハルヒ!! SOS団・団員その一、兼雑用係のキョンより SOS団・団長様、そして世界で一番大切な恋人、ハルヒへ p.s.不思議探索の時の遅刻罰金制だけどな。 あれ、俺、一回も遅刻した事ないぞ。 皆、来るのが早過ぎるだけだ。あれだけは考え直してみてくれ。 枯れたと思っていた涙が溢れ出してきた…。 彼の深く、優しい想いが胸の中に流れ込んでくるようだった。 私も昨日の夜、眠れずに考えていた。 初詣のお願い事を…バレンタインにキョンにあげるチョコレートを…。 SOS団の皆でお花見行って…七夕には笹の葉飾って… 夏休みには合宿行って…海で泳いで… 学園祭では出し物やって… クリスマスには鍋パーティーやってプレゼント交換して… まだまだやりたい事がいっぱいあった…… なんでもっとあなたに優しく出来なかったのか… なんでもっとあなたの前で素直になれなかったのか… 後悔と寂しさの涙ばかりが頬を伝っていく…。 なんでもっとあなたと過ごす時間をかけがえの無いものだと大切に出来なかったのか… なんで…… ごめんね、キョン……そして、ありがとう、キョン…… 溢れる想いはもう言葉にならなくなった…… ただ、あなたと、もっと…ずっと…ずっと一緒にいたかった―――― The End 涼宮ハルヒの嫉妬へ続く
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その2 俺とハルヒの前に姿を現したのは佐々木だった ニッコリ微笑みながら、静かに歩いてきた おい佐々木 お前がこの閉鎖空間を作り出したのか? 「僕は閉鎖空間とは呼ばないがね。君がそう呼びたいのなら否定するつもりはない」 お前が作った閉鎖空間の中にどうやって自分が入れるんだ? 「はっはっはっ キョン、君は何でも自分を中心に考えてはだめだよ 僕もあれからいろいろ話を聞いて、それなりに勉強したんだ 君たちの事も、僕の事も、そして橘さんや藤原さん、周防さんの事もな 僕と涼宮さんがあそこから飛ばされたのにもきっと理由があると思う 涼宮さんをあの中に入れない方がいいのなら、それができるのはおそらく僕だけだろうからね」 俺は無意識にハルヒをかばうように立っていたが、俺の腕のすり抜けてハルヒがわめいた 「ちょっとあんた、これはいったい何よ? あんたの仕業だって言うの?」 「涼宮さん、私はあなたに何も恨みはないの でもね、あなたのただ一つの欠点は自分が何も分かってないという事なのよ キョンや他の人たちに守られているだけでは何も生み出せない 何も作り出せない ただ破壊するだけの空間なんて私には理解できない」 「何を言ってんのよあんた いいからあたしとキョンを有希の所に連れていきなさい、今すぐに!」 「そう願うならご自分で行けば?できるものならね」 「ちょっとキョン!説明しなさい!」 だから俺に話を振るなよハルヒ えーっとこんな時、古泉ならどう説明するだろう いや長門でもいいか ダメだ長門の話は電波話にしか聞こえないし朝比奈さんなら・・・禁則事項か 「じゃあ僕から説明しようか?キョン 涼宮さん、あなたは自分の力について何も理解していない 自覚していない所でさまざまな現象を発生させる」 「はぁ???」 「あなたはとても面白い人。才能もあるし、きれいだし でもね、あなたにその力は荷が重すぎる。だから私に白羽の矢が立った」 おい佐々木 それ以上言うな 「だってキョン その通りじゃないか だから君や仲間たちがひどい目に会ってきたんだろ 君だってそう思っているはずだ 涼宮さんが普通の女の子に戻ってくれたらって それで僕が選ばれたんだ 僕も正直迷惑を隠せない気持ちだけど、涼宮さんを見ているとやっぱりそう思うね」 佐々木、もう黙れ ハルヒにそれ以上わけの分からん事を吹き込むんじゃねえ 「涼宮さんには荷が重すぎるから その重い荷物を全て僕たちが引き受けようとしてるんだ 君にとっても悪い取引じゃないと思うのだが」 荷が重い?迷惑だ? いったい誰がそんな事を言ってるんだよ 誰もそんな事は一言も言ってねえぞ いい加減な事を言うんじゃねえよ ハルヒは俺たちのリーダーだ SOS団の団長だ そして俺たちは仲間なんだよ かけがえのない仲間なんだ 俺たちの仲間に傷一つつけてみろ 俺はお前を絶対に許さないぞ 「ほう、キョンがかい 君も変わったものだな ずっと平凡に人生を送りたいって 中学の頃からそうぼやいていたのに ただの思いつきで君たちを引っ張り回す変人が 君にとっての大事な仲間なのかい?」 佐々木 お前は何も知らない 高校に入ってからの俺を知らない SOS団で楽しく遊んでいる俺を知らない そしてお前は ハルヒの事を何も知っていない もうそれ以上言うな 俺がお前をブン殴らないうちに さっさと俺とハルヒを長門の部屋に送り込め 「それは僕にはできない相談だね マンションをシールドしているのは僕の力じゃない 行きたかったら自力で行く事だね そこまでは僕も止めはしないよ」 「キョン、何なのよこの女は 全然意味分からないわ さっきからいったい何言ってんのよあんたたち 私がバカだって言いたいの?」 ハルヒよく聞け お前の力で長門を助けに行こう お前ならそれができる 俺とお前を長門の所まで連れて行ってくれ 頼むハルヒ 「?????」 「ふふふ はたしてあなたにそれができるかしらね 破壊しかできないあなたに 人を助ける事ができるのかしら」 黙れ佐々木、あと5分だけ黙ってろ おいハルヒ この1年で何かに気付いたことはないのか? 「1年で?」 ああ SOS団を作ってからいろんな事があっただろ お前の知らない所で起こったことが多かったけどな お前にも薄々気付いた事ぐらいあるだろ 「え・・・?」 お前は長門が普通の女子だと思っているのか? 古泉はただの転校生だと思ってるのか? 朝比奈さんは・・・ちょっと分かりづらいけど、お前にだって何か気付いたことがあるだろ? 「キョン・・・」 思い出せハルヒ 俺たちの事だ SOS団全員で作ってきた歴史だ 楽しい事や、不思議な事がいっぱいあっただろ それは偶然起こった事だと思うのか? 宇宙人や未来人、超能力者が本当はいないと思ってるのか? 「・・・・・・」 ハルヒの瞳が不思議な輝きを放ってくる ここか? ここでいいのか古泉? 今ここで使ってもいいのか? 「キョン」 何だハルヒ? 「1つだけ教えて」 ああいいとも 「あんたの本当の名前は何?」 名前? 「そう、キョンの他にもあるでしょう? あんたの名前が」 あああるともハルヒ 俺の名前がもう一つな お前が中学生の時に聞いたはずの名前がな 「ある・・・のね・・・やっぱり」 ああそうだよ あの時に名乗った名前だ 「キョン・・・」 もうどうにでもなれと思った このくそったれな状況を脱するために 今ここで使うしかないと思った 言うぞ ついに ハルヒ 俺の名前は・・・・・・ ついにその時が来たのか 俺の持っている切り札 世界がとんでもなくややこしい事態になってしまった時のために 俺がずっと隠してきた切り札をついに使う時が来たのか 分断されているSOS団を救うために 今ここで使ってもいいよな古泉よ ハルヒ 俺の名前はな 「あんたの名前は」 一緒に言うぞ 「いいわよ」 グオオオオオオオオオオと激しい地鳴りが響いた 巻き起こった突風に俺とハルヒは吹き飛ばされそうになるが 必死で足を踏ん張って立った ハルヒの目を見つめたまま、ハルヒも俺を見つめたままで 俺は禁断の6文字を言おうとした 「・・・・・・」 「・・・・・・」 あれ? 何だ? 声が・・・ 出ない・・・・・・ 振り向くと佐々木はまだ立っていた 俺とハルヒのパントマイムを楽しそうに眺めていた すさまじい旋風は収まろうとしない あああとしか声が出ない俺もハルヒも、その風のうなりに飲み込まれそうになっていた 佐々木 声を出なくしちまいやがったのか? 「それは分からない さっき言った通りだよ もう少し時間を稼ぎたい だからこうやっている」 ハルヒ 何とかしてくれ もう分かってるだろ 声に出さなくても 俺の正体を 中学1年の時に東中の校庭にあの奇妙キテレツな地上絵を描いた時の事を あの時にお前を手伝った哀れな高校生を 「・・・・・・」 ハルヒも懸命に口をパクパクさせているが もちろん声は出ていない 俺の顔に恐怖が走る 今まで一度も見た事がなかったハルヒの表情 自己中心で傍若無人な爆弾女 このいつ発火するかも分からないとんでもない時限爆弾が なぜか自己消火しようとしていた ハルヒは今 明らかにおびえた表情をしている 今にも泣き出しそうになり 俺のシャツの袖を掴んでいる こんなハルヒは初めてだ あまりの急速な展開と自分の無力さにおびえているのか 鶴屋さんと森さんにかけられた言葉が再び蘇る ハルヒはこう見えても神経の細い女なんだ ハルヒはいつもみんなに気を使っているんだ この女を知る人間が聞いたら腹を抱えて笑うようなセリフだが 今目の前にいるハルヒは明らかにその通りだった どうするんだよ俺 考えろ、考えろ どうすればハルヒに思い出させることができるのか いやもうとっくに思い出してるはずだ 後は何をすればいい? 何をすればハルヒが怒れる獅子に変身できるんだ? ええい もうこうなればあれしかないのか? 1年前にハルヒに巻き込まれた閉鎖空間を思い出した 大人の朝比奈さんに言われた言葉 パソコンのか細い糸で長門に教わった言葉 もう一度あれをやればいいのか? 「キョン 君はそれでいいのか?」 後ろから佐々木の声が聞こえる 「君はそれで満足するのか? そんな目的のためだけに 自分を犠牲にするつもりなのか?」 犠牲? 犠牲だって? 俺は佐々木を振り返った 面白そうに眺める佐々木の目を 穴が開けとばかりに睨みつけた 佐々木は動じる事もなく話し続けた 「彼女のお守りをして これからもずっと振り回されて 危険が迫るたびにそうするのか? それじゃ君の気持はどうなるんだ? 一生そんな事を続けるつもりなのか?」 佐々木 やっぱりお前は何も分かっちゃいない 俺の事を何も理解していない 自分を犠牲にしてハルヒの面倒をみるって? バカ言ってんじゃねーよ お前は確かに頭のいいヤツだよ よく考えてると思うよ ハルヒの行動パターンも俺の事も よく研究したもんだよ けどな佐々木 お前が1つだけ見落とした事があるぞ 俺も成長してるって事だよ この1年で大きく変わったよ俺は 俺が変わったことはたくさんあるけどな その1つがこれだ 俺はいやいややってるんじゃない 自分がしたいからするんだよ 俺はハルヒと キスしたいからするんだ 口をパクパクさせてもがくハルヒにそっと顔を近づけた ギョッとした目で俺を見上げていたハルヒは 俺の行動を理解したのか そっと目を閉じた 俺は 自分の意志で ハルヒにキスをした 時間が止まった 吹きすさぶ風の音も聞こえなくなった 佐々木が何かを叫んでいたが その声すら耳に入らなくなった ハルヒの体から力が抜け そして・・・・・・ (同じ時間に、別の次元で) 新しい登場人物を見て 古泉と朝比奈さんは腰を抜かしそうに驚いていた 「ごめんなさーい こんなに早く来るつもりはなかったんですけどー あちらの皆さんがちょっとお急ぎだったみたいなんで そろそろ始めさせていただきまーす」 「あなたは・・・・・・?」 「はい先輩、その節はどうも」 「あわわわわ・・・」 「先輩にもお茶をご馳走になって、ありがとうございます 本当はちゃんとSOS団に入って たくさん冒険したかったんですけど・・・」 「ちょっとあんた、こないだの新入生じゃないの」 「はい!涼宮先輩! だけどちょっと待ってて下さいね、場所を変えますから」 その北高の新入生はニッコリ笑って 手にした小さな金属の棒を振った 幾何学模様の入った細い棒がキラリと輝き ハルヒと佐々木の姿がポンと消えた 「何をしたんですか?」 「ご心配なく、後でまた来られると思います でもまだ主役の登場には早いので 先にみんなで行くことにします」 「あなたはいったい?」 古泉の質問には答えず、新入生は再びオーパーツを振った 今度は空間がグニャリとねじれ、全員の姿が消えた 「く・・・・・・・」 ズキズキするこめかみをさすりながら古泉が起き上がった そして周囲の景色を見てギョッとした 周りは一面の宇宙空間で、真っ黒な地面がはるか先まで広がっていた 星空以外に何のディテールも見分けられない ただの真っ黒な平面だった そこには全員がいるようだった ピクリとも動かない長門の側には朝比奈さんが横たわり 少し距離を置いて橘京子、藤原、そして周防九曜がいた 全員が気を失っているのか、黒い地面に突っ伏していた 立っているのはただ1人、まだ名前も覚えていない新入生1人だった 素早く意識を取り戻した古泉が詰問した 「まずはあなたの事を聞かせてもらいましょうか」 「ふふふ先輩、さすがですね こんな時にも理性的です」 「質問に答えて下さい」 「ここは皆さんの地球とは別の世界です そしてご覧の通り、何もありません」 「別の惑星という事ですか?」 「別という表現がふさわしいのかは分かりません でも地球から宇宙船に乗ってもたどり着けない場所です」 古泉は長門をチラリと見た 長門ならもう少し詳しく解析してくれるかもしれないが 長門はまだ気を失ったままだった 「銀河系の1惑星ではないと?」 「たぶんそうです。どう説明したらいいのか分かりませんけど」 「まさか、異世界だとか」 「言葉の意味ではそれが一番近いですね とにかく、普通の手段では行き来する事はできません」 「僕たちをここに引き込んだ理由は?」 「それは皆さんが目を覚まされてからご説明します」 「長門さんと朝比奈さんの様子を見ても構いませんか?」 「もちろんです、早く起こしてあげて下さい」 古泉は素早く移動して朝比奈さんを揺り起こした 朝比奈さんはすぐに目を覚まし、置かれている状況を見て予想通りの悲鳴を上げた 「ひゃぁぁぁこっこここここどこなんですかぁーっ?」 「落ち着いて下さい朝比奈さん、僕にもまだ分かりません とにかく落ち着きましょう」 「ふわぁぁぁ」 「長門さんはどうですか?」 長門はずっと変わらない姿勢で眠っている 布団はもうなかったが、几帳面に制服姿だった その格好のままで寝ていたのか さすがに靴は履いていないが、靴下はちゃんと履いていた 古泉が揺り動かしても全く動かない その体はまだ熱く、呼吸も浅く小さかった 「長門さん・・・さっきと変わりませんね」 ようやく落ち着き始めた朝比奈さんがつぶやく 「涼宮さんもいなくなってしまいましたし、これは厄介です」 その頃には敵の集団も目を覚ましており、頭を振りながら起き上ってきた 周防九曜は起き上がるなり長門にひたと視線を向けている 何か呪詛でもしているように、人差し指を小さく振っている 古泉がさりげなく長門をかばうように立ち、新入生に目を向けた 「1人を除いて全員目を覚ましました」 「はい、それでは説明させていただきます ここは地球がある銀河系とはまた別の空間にある世界です 詳しい事は分かりません 異次元とか異世界とか、たぶんそういう世界だと思います そしてここは私の生まれた世界です」 「あなたの世界?」 「はいそうです ここには私1人しかいません そしてご覧の通り、ここは死に絶えた世界です 原因は分かりませんが、植物も生えず、何の生命もない世界です 生命どころか、それを誕生させるエネルギーすらない世界なのです 私はここで1人で生まれ、1人で暮らしてきました」 「ちょっと待って下さい 生命のない世界でどうしてあなたが生まれたんですか?」 「それは私にも分かりません ただ、生命をはぐくむエネルギーが枯渇したのは たぶんそんなに昔ではないと思うんです 私は最後の生き残りなんじゃないのかなって」 「それと僕たちが集められた事との関係は?」 「もう少し聞いて下さいね 私が生まれた時に、側にこの棒が転がっていたんです」 「そのオーパーツですか?」 「オーパーツって言うんですかこれ? 名前なんかつけたことなかったんですけど 一人ぼっちで生まれた私にこの棒がいろいろ教えてくれました 成長するのに必要なエネルギーも与えてくれました そして、別の世界には豊富なエネルギーがあるという事も教わりました 皆さんに集まってもらったのは、そのエネルギーを分けてもらいたいからなのです」 「分かりませんね」 「でしょうね先輩 だって私にも何も分かってないんですから この棒に指示されて 私は別世界への旅に出かけました そうするより他に方法はなかったのです ここにいつまでいても一人ぼっちだし そして長い旅の後に、あの地球に到達したんです」 「どうして地球に?」 「それも分かりません この棒の指示通りに進んでいくと地球に着いたのです ただ・・・地球に着くとこの棒は消えていて 私は何も覚えていませんでした 何の記憶もないままに、私はただこの棒を探しました この棒を探す事だけが記憶に残っていたのです」 「北高に入ったのはそれを見つけてから?それとも記憶が戻ったから?」 「棒を見つけたのはつい最近です 北高の近くにあることが分かったので、私は北高に入学しました いろいろ情報を操作するのは大変でしたけど、何とか合格して、腰を据えて探そうと思ったのです そしてSOS団の事を知りました とっても面白いグループだって聞いて、しかも部員を募集するって言うから さっそく入部希望しました 今さらこんなこと言うのも変ですけど、本当に入部したかったんです だけど・・・そちらの皆さんが動くのが早すぎて、遊んでられる状況じゃなくなってきたんで、それで申し訳ないんですけど、大きなお屋敷に忍び込んでこの棒を取り戻し、あのマンションに行ったってわけです」 「あっ・・・あのっ・・・キョンくんと離れちゃったのもあなたの操作ですか?」 「キョン先輩って、あの面白い方ですよね うふふふ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくって キョン先輩の事は私は知りません ここにおられないんであれって思ったんですけど」 「そろそろいいでしょう、ここに連れてきた目的を教えて下さい」 「それはそこの先輩次第です」 新入生が声をかけた瞬間、周防九曜がビクリと動いた 「・・・・・・ここは・・・楽しい空間・・・・・・心が・・・躍る・・・」 周防九曜はそうつぶやいて、長門に歩み寄った 「待って下さい、長門さんは意識不明です 彼女を回復する方法はありませんか?」 「・・・・・・あなたの・・・瞳も・・・きれいね・・・・・・」 周防九曜の指先がぼんやり光り、1本の光の矢が長門に向かって走った 古泉が素早く回り込んでその矢を叩き落とした 「ん・・・これは?」 古泉の体が赤く輝き始め、閉鎖空間にいるような球体に変化した 「ふえぇぇぇー、古泉くぅーん」 「ここでは僕の力が有効に使えるようですね」 赤い光球と化した古泉は、地面からフワリと浮かび上がった 「それでは説明になっていませんね周防さん 挨拶もなしでいきなり攻撃ですか?」 「・・・・・・ここで戦えば・・・この世界は生まれ変わる」 「それはどういう意味なのでしょうか?」 「ごめんなさい古泉先輩 つまり皆さんにここで戦ってもらい、そこで生じる膨大な生命エネルギーを少し分けていただきたいのです もちろんそれによって皆さんの戦いに影響はないと思います 私は余剰エネルギーをいただくだけですから」 「つまり、ここで僕たちを意味なく戦わせて生体エネルギーを放射させ、それをそのオーパーツが吸収してこの世界を再生するとでも?」 「ごめんなさい、私にちゃんと説明できる知識はないんです ただ、佐々木さんのチームが皆さんと戦うという話を聞いたので、それならぜひここを使って下さいと申し上げただけなんです」 「それでははっきり申し上げましょう 我々SOS団は戦いなど望みません こんな事をしても無駄です」 一瞬殺意を盛り上げた古泉だったが、すぐに冷静になり元の姿に戻った 「ケンカはダメですぅ!危ないですぅ それに・・・それに・・・涼宮さんもキョンくんもいないし 長門さんがこんな状況では戦えません」 「朝比奈さんのおっしゃる通りです 我々には戦う意志も戦力もありません あなたには申し訳ないのですが、こんな事を受けるわけにはいきませんね」 「・・・・・・うるさい・・・・・・口が多すぎる・・・」 周防九曜が再び攻撃を仕掛けた 人差し指から数本の小さな矢が飛び出し、長門に命中する寸前に古泉が叩き落とした 「待って下さい、戦うつもりはありません」 「こここ古泉くん、もはや話しても無駄、かもしれませんね」 「朝比奈さん?」 「古泉くんは長門さんを守って下さい 私も・・・・・・戦いますっ」 朝比奈さんの声に反応して、今まで黙っていた2人も前に出てきた 「ふっ、やっと俺の出番か」 そう言ったのは藤原だった 「わ、わ、わ、あんまり近づかないでくださぁい!」 「あんたにどれほどの事ができるのか、見せてもらうとするか」 「朝比奈さん!」 「おっと、あなたの相手はここにもいるのよ」 「橘京子・・・」 「キョンくんだけを別行動させたのは私たちの作戦よ 今ごろ彼は私たちの組織に捕らえられてるわ」 「何ですって?」 「涼宮さんは佐々木さんが抑えているはず まあ抑えるほどの事もないでしょうけどね 長門さんは周防さんが封印しているし、さあどう戦うつもりかしら?」 「ですから僕は戦いませ・・・」 橘京子の全身がぼんやり青く輝き始め、いくつかの光点に分かれて宙に浮いた 古泉も赤い光球に変わり、橘京子とにらみ合った 「ほら、早く攻撃してみろ」 「うわっ、こ、こ、こ、来ないで下さーい!」 「朝比奈さん!」 「・・・・・・・べらべらしゃべる男は・・・美しくない」 周防九曜の攻撃が古泉に集中し、危うくかわしたその横から小さく分裂した橘京子の光球が襲いかかる 藤原はめんどくさそうに朝比奈さんの目の前に立ちはだかっている おびえる朝比奈さんの姿がチカチカと点滅し、やがて空間から消滅した 「朝比奈さん!」 朝比奈さんはしばらく消えていたが、すぐにまた姿を現した 「あれ?」 「どうしましたか?」 「禁則が・・・・・・消えました」 「と言うと?」 「TPDDの使用制限が消えちゃいましたぁ・・・」 「それは、ここが異世界だからでしょう 未来からの干渉がなくなったのではないですか?それと、TPDDはまだ使えますか?」 「はい・・・ちゃんとスイッチは入っています」 「それはよかった。朝比奈さん、あなたのその力で僕たちを守って下さい」 「わ、わ、わ、分かりましたぁっ!」 朝比奈さんはこめかみに指を当てて、小声でボソボソとつぶやいた 周防九曜の攻撃が動かない長門を襲ってくる 古泉が急いで防御するが間に合わない 小さな数本の光の矢が長門に命中する寸前、長門の姿がパッと消え、数秒後にまた姿を現した 光の矢はその間に空間を空しく貫いただけだ 「こここ、これでいいんですか?」 「さすがは朝比奈さんです、素晴らしい作戦です」 「・・・・・・それは何?・・・・・・認められない・・・・・・」 周防九曜は今度は朝比奈さんに向けて矢を放つ 朝比奈さんの姿がパッと消えて、少し離れた場所にまた姿を現した 「すごい・・・TPDDにこんな使い方ができるなんて・・・」 「・・・・・・・気に入らない・・・・・・それは・・・美しくない・・・・・・」 周防九曜は狂ったように矢を発射させ続けた そのたびに古泉が防御に飛び回り、朝比奈さんは姿を消し続けた 「ふっ、面白くなってきたな」 藤原がやおら腰を上げると、手のひらを朝比奈さんに向けた 姿を消そうとしていた朝比奈さんがグラリとバランスを崩し、その胸に数本の矢が突き刺さろうとする その寸前に危うく古泉が飛び込んできた 「大丈夫ですか朝比奈さん?」 「ふえぇぇぇ、大丈夫ですぅ でもこれをずっと続けるんですか?」 「続けるしかないでしょう 長門さんが目覚めるまで、そして・・・・・・」 (またキョンの世界) 硬直するハルヒの唇に俺はキスをした ハルヒの体がぐったりと弛緩し、そしてガタガタと震え出した おいハルヒ 大丈夫か?どうしたんだ? 「ョン・・・・・・」 えっ? 「ジョン・・・・・・」 ああ 「ジョン・スミス」 ああ あれ? 声が出るぞ おいハルヒ!しっかりしろ! 「ジョン・・・・・・あんただったのね」 ああそうだ 俺がジョン・スミスだ 「やっと会えたんだ・・・ やっぱりあんただったのね」 気付いてたのか? 「ううん、何となくそんな気がしてただけ そうだったらいいのになって」 悪かったな こんなに報告が遅くなっちまって 「いいの・・・嬉しいから」 いいかハルヒ、よく聞け 俺は確かにジョン・スミスだ あの時東中に行って校庭にあの絵を描くのを手伝った それから背負ってたのは朝比奈さんだ 朝比奈さんが俺を3、いや4年前に連れてってくれたんだ 「みくるちゃんが?」 そうだ 朝比奈さんは未来から来た TPDDっていう装置を使って時間を自由に行き来できる ついでに言うとあの後『世界を救うためのどうたらこうたら』と言ったのも俺だ 「マジで?」 ああ まだあるぞ 実はあの時ちょっとした手違いがあって未来に帰れなくなった その時に俺たちを助けてくれたのが長門だ 「有希が?」 そうだ 長門の魔法みたいな力で3年間時間を止めてもらって 俺と朝比奈さんは現代に帰って来れたんだ 長門の不思議な力はお前も覚えがあるんじゃないか? あいつは宇宙人が作った俺たちとのコンタクト用インターフェイスだ 「コンタクト用?」 ああ ちょっと説明すると長くなるけどな この銀河系の真ん中で俺たちの事をずっと見ているような存在だ それから去年、お前と一緒に不思議な空間に閉じ込められた事があっただろ あの時に出てきた青い怪人だけどな あれが暴れ出すとこの世界がとんでもない事になっちまうから、退治するって言うか、あれを消すための組織がある 超能力者集団って言うのか、そのメンバーが古泉だ 「・・・・・・」 つまりだ 宇宙人も未来人も超能力者もみんなお前の側にいるってことだよ いつでもお前の側にいて、いつでも一緒に遊んでたじゃないか 呆然としていたハルヒの目がギラギラと輝いて来る もう少しだ 頑張れ俺! 俺はまたあいつらと一緒に遊びたいぞ 全員俺たちの大事な仲間だ だけどなハルヒ、俺が一番心配なのは お前の事だ お前がみんなの事を心配し過ぎてフラフラになってる所なんか見たくないんだよ お前はSOS団の団長だ いつも何でも好きな事をやればいい 後は俺たちがいくらでも後始末してやるから 「キョン・・・」 長門の事も古泉も朝比奈さんももちろん心配だけどな 今俺が見たいのは、お前の元気な姿なんだよ 俺が大好きな 涼宮ハルヒの突拍子もない姿なんだよ 頼む!ハルヒ! 長門を助けてくれ 朝比奈さんも古泉も 今ごろお前がいなくて不安なんだぞ さあ、早く行ってみんなを助けてやろうぜ 「キョン・・・」 目をらんらんと輝かせたハルヒの全身から不思議なオーラが広がりだし たちまちのうちに佐々木が作ったベージュの空間を吹き払った 「行くわよキョン」 ああいつでもいいぞハルヒ 「有希を助けにね!」 (同じ時間、別の世界で) 「古泉くぅーん・・・ちょっと厳しいですぅ」 「朝比奈さん、もう少し頑張りましょう! きっと涼宮さんが助けに来てくれるはずです」 「うぇーん、涼宮さーん・・・」 朝比奈さんは藤原の妨害を乗り越えながら古泉と長門を次々に時間移動で防御し、古泉は襲い来る周防九曜の矢から長門をガードしている そのすきをついて橘京子はひたすらゲリラ攻撃を続け、古泉一人では防げなくなってきていた 朝比奈さんが泣きながらハルヒの名を呼んだ瞬間に、長門の前にまばゆく白い光が輝いた 「あいやーっ!」 朝比奈さんが叫んで長門のもとに駆け寄ろうとしてつまずいて転んでしまうが その白い光の中から現れた人影を見て、朝比奈さんも古泉も驚きに目を丸くした 「うふっ、お久しぶり」 その人物は登場するが早いか、襲ってきた周防九曜の矢を握りつぶし、逆に周防めがけて撃ち返した 「あなたは・・・・・・」 「長門さんが危険だって聞いたから助けに来たの ごめんね遅くなっちゃって」 「朝倉さん・・・・・・」 「覚えててくれたのね、嬉しい!」 「・・・・・・お前は・・・・・・美しくない・・・・・・」 「あら、ご挨拶ね。せっかく1年ぶりに登場したっていうのに」 光の中から現れた朝倉涼子は、次々と襲い来る光の矢を素手で握りつぶしながら 分裂して攻撃してくる橘京子の赤い光をまるでハエでも叩いているかのように楽々と落としている 「朝倉さん、情報統合思念体に戻ったのではなかったのですか?」 「そうよ、向こうにいるのよ でも今のこの私はまたそれとは別の存在 私をここに呼んでくれたのはね、涼宮さんよ」 「涼宮さん?」 「そう、彼女ももうすぐここに来るわ もちろんキョンくんも一緒にね」 「本当ですか?」 「もう少しよ、今ごろはここへの抜け道を探しているはず。だからそれまで頑張るのよ」 「はい!」 古泉は久しぶりの笑顔を見せた かなりやつれた表情だが 朝倉涼子の登場と、ハルヒがもうそこまで来ているという情報に新たな力を得たように 朝比奈さんを助けて明るく輝き出した その光景を少し離れた所から見ている女子高生がいた 北高の制服を着た新入部員は、手に持ったオーパーツが輝きを増すのを嬉々として見つめていた 「うふふふふ やっぱりすごいエネルギーですね 地球を選んで正解だったかな? こんなにたくさんの異人種の戦いが見られるなんて」 (またもやキョンの世界) ついに覚醒した涼宮ハルヒ そのハルヒの目にもう涙はない キッとまっすぐ佐々木を睨みつけて 「もういいでしょうこれで 私は有希の所に行くから あんたも来るんでしょ? それとも何よ 部下を放っとくのがそっちのやり方なの?」 「いいえ。そうじゃないわ。私はあくまで時間稼ぎだから あなたがついに目覚めた以上は私もあちらに合流します では後ほど」 おい佐々木! 向こうでいったい何が起こってるんだよ 「それは自分の目で確かめてね」 チッ 佐々木のやつ、どうなっちまってるんだ まさかあいつらに言いくるめられて 本気で神様になろうなんて思ってるんじゃないだろうな ん?という事は 本気で戦うつもりなのか? 「ちょっとキョン」 あ?何だ 「これからどうやったらいいのよ?」 へ? 「あんたがジョン・スミスであたしに何かの力があるんでしょ? じゃあそれをどう使ったらいいのよ?」 ああそれか 何でもいいんだよ お前が心で思うだけでたいがいの事はかなうからな 映画撮った時の事を思い出せ 朝比奈さんの目からビームが飛び出したり、秋に桜が咲いたり あんまり思い出したくない過去だけどな、全部お前の力でやった事だ 「本当なの?」 ああそうですよ それがお前の力だ 「くっ・・・ 何でそれをもっと早く教えてくれなかったのよ!バカキョン! そんな楽しい事があるのなら、もっとやりたい事がいっぱいあったのに!」 だからお前には教えなかったんだよ お前が自覚して何か始めてしまったら、お釈迦様でもびっくりってもんだからな 「しないわよそんな事!ちゃんと地球の平和を祈ってるわよ!」 まあとにかく終わってから好きなだけ祈ってくれ まずは長門を助けるのが先だ とにかく長門の部屋に入るぞ 「だって、有希のマンションは消えてるじゃないの」 だからそれをお前が何とかするんだよ 「どうするって言うのよバカキョン!」 知らん。お前が考えろ そのバリヤーの向こうに長門の部屋があると思って押してみろ もしかしたらバリヤーがビリッと破れて そこには長門の寝室が 「あったわよキョン!早く入んなさい!」 って本当に押したんかい!マジかよこいつ ハルヒが両手をバリヤーにかけてメリメリと引き裂いたら そこに開いた空間から見慣れた長門の部屋につながっていた おいハルヒ 長門の部屋は7階のはずだぞ なんでこの1階から行けるんだよ 「あんたがそうしろって言ったからじゃないの!」 目を逆三角形に釣り上げるハルヒに引っ張られ、俺は開いた隙間から長門の部屋に侵入した ハルヒはズカズカと居間を通り抜け、和室の扉を開いた 「いないわよキョン!」 部屋の中央に布団が一組敷かれていたが長門の姿はない もちろん古泉と朝比奈さんもいない そして侵入してきた佐々木の仲間たちもいなかった 「どこに行ったのかしらね?」 さあどこだろう 次にハルヒに何をさせればいいのか 俺はもう一度居間に戻ってみた 北高の通学カバンがいくつか置かれていた おそらくハルヒ達のだろう あれ?そう言えば俺のカバンはどこに置いたっけか? きっと鶴屋さんの家に忘れてきたに違いない 「ちょっとキョン!」 ハルヒに呼ばれて部屋に入ると、ハルヒは1枚の大きな額の前に立っていた 「あんたこんなの見覚えある?」 その額には奇妙な絵が飾られていた 黒い画用紙の真ん中に、グラデーション模様のアメーバのような絵が1枚入っている 長門にこんな趣味があったのか? 「おっかしいわねー、さっき来た時はこんなのなかったような気がする」 おい 本当かハルヒ? 「はっきり覚えてないんだけど こんな気持ち悪い絵があったら絶対記憶してるはずよ」 という事はおいハルヒ 「何よ?」 いつぞやの事件を思い出せ 「事件?」 そうだ 去年の暮れの事件だ 雪山で遭難した時のあのお屋敷だ 「あっ!」 あれと同じだ もしかしたらこれは、長門が作ってくれた入口かもしれない あいつらがいるどこかにつながってるのかもしれないぞ 「そうね!思い出したわ!あのクイズみたいなのね」 そうだ どっかに方程式か何かのヒントが書いてないか? 2人でその額の周りを調べてみたが メッセージのようなものはなかった 長門の布団もひっくり返してみて、何か手紙でも出て来ないかと思ったのだが やはり何も出て来ない 和室を探索しているハルヒを置いて、俺は居間に戻った 何冊か置いてある本をパラパラとめくってみて栞などを探しているうちに ハルヒが大声を上げた 「キョン!キョン!あったわよ!」 急いで和室に戻ると、ハルヒは額の周囲を指差していた 「これよこれ!」 何だこれ? 黒い画用紙のような額の周囲の金属の縁には、小さな数字が無数に並んでいた 0から9までの数字がデタラメに書いてある 虫眼鏡が欲しくなるぐらいの細かい文字だった この数字の羅列に何か意味があるのか長門? しかしお前のヒントはいつもこんなのばっかりだよな オイラーの定理だとか何だとか 俺が数学苦手なのを分かってての事なのか? それとももしかするとこれもまた長門流のジョークなのか 細かい数字を読んでるだけで頭が痛くなってくる 「これはキョン用の問題ね」 何だよハルヒ お前まで俺をいじめるのかよ 「有希に感謝しなさいキョン!簡単な問題にしてくれてありがとうってね」 どこが簡単なんだよお前 俺にはまだ問題の意味すら理解できてないのに 「アホキョン!小学校で習ったでしょ! ゆとり教育でもこれぐらいは習ってるはずよ!」 俺はハルヒに首根っこを捕まえられて額の数字を口に出して読んだ 額には小さな菱形の模様が付けてあり、その一つ一つに数字が書いてある 286208998628034825342117067931415926535897932384626 43383279502884197169399375105820974944592307816406 数字はどんどん続いている 何だこれは ハルヒはニッコリ笑って俺を見ている 「この数字に見覚えあるでしょ?」 何かの乱数表か? 2つか3つ置きに飛ばして読んだらメッセージが浮かび上がるとか 「違うわよ!もっとちゃんと読みなさい!」 ハルヒ、もうダメだ こんな細かい数字をじっと見ていると眠くなってくる お前と算数クイズやってる場合じゃないんだから 「もう!バカねまったくあんたは あと10秒だけ時間をあげるから考えなさい」 うるさいハルヒ こんな数字で人間の一生が決まるわけないんだから 「有希の命がかかってるでしょう!」 それでも分からんものは分からん 俺は何とかの定理などはさっぱり理解できん それともこんなにたくさん数字が並んでいるのは円周率か何かか? 「ピンポーン!大正解っ!」 えっ 本当に正解なのか? 「そうよ、こんなの5秒で気付きなさいよキョンのくせに」 くせには余計だ それでこの円周率がどうしたっていうんだよ 「円周率の最初の数字は?」 3.14だから3だろ 「そう!普通数字はどっちから書く?」 どっからって左上からか? 「そういう事! この額の数字はバラバラだけど この314の所を左上に置き直すと・・・・・・」 ハルヒが額を回転させ、円周率の最初の314が左上に来るようにセットすると ブルンと音がして黒い画用紙が震えた 「ほらねキョン 頭は生きてるうちに使わないと毛が抜けちゃうのよ」 画用紙と思っていた黒い絵は、向きを変えた途端にプルプルと震え出し、まるで羊羹かコーヒーゼリーのような表面に変わっていた 「さあ行くわよキョン!」 ちょい待ちハルヒ! 行くってどこに行くんだ? 「決まってるじゃないの、ここに飛び込むのよ」 ちょ、ちょっと待て 確かにこの感じじゃ向こうに何かがありそうだけど 一応調べてみてからの方がいいんじゃないのか? 「そんな暇があるわけないでしょう! あんたがモタモタしてる間に有希に何かあったらどうすんのよっ! あたしは行くからね あんたは動物実験でも人体実験でも何でもやってから来なさい」 ハルヒは少し後ろに下がり、距離を計って助走しようとしている 待てハルヒさん 分かったよ俺も行きますから プルプルと震える額はかなり大きく、二人同時でも入れそうだった 俺とハルヒは部屋の反対側まで移動し、呼吸を合わせて助走した そして頭から飛び込んだ 「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 リンク名 その3に続く
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前 「チアキちゃん?」 2人は一斉にドアの方を向いた。ハルカに至っては驚きのあまりなのか、声すら出していない。 チアキは藤岡の声で我に帰ったものの、何て言えばいいかわからない。 「あ…。」 2人の視線を浴びてしまい、言いたいことを上手く言葉として表せない。 ハルカに藤岡を奪われた、いや、藤岡にハルカを奪われたとも言い換えることもできるのか。 とにかく、こうしてあってほしくない現実を突きつけられているのは確かである。 しかし、大好きな2人を憎めるわけがなく、ただ悲しみで涙が溢れていた。 「ハルカ姉さまぁ…、藤岡ぁ…。」 2人の名を呼んでも、より悲しみが増すばかり。それに比例して涙の量も増えていく。 藤岡は泣きじゃくるチアキをただ見ることしかできなかった。 「…ごめんね、チアキ。」 体を起こし、体に着いたものをティッシュで拭き取ると、ハルカがチアキに歩み寄ってきた。 チアキは逃げ出すことを考えるが、足が言うことを聞いてくれない。 「そんな、…謝らないでください。」 謝られると余計に惨めな思いになるから、止してほしかった。 しかし、ハルカは立ち止まることなくチアキに近づき、その体を引き寄せ、抱きしめた。 「!!」 抱きしめられても引き離す所か、ロクに抵抗する気も起きない。 チアキは例え裏切られたとしても、この姉のことが好きで、嫌いになれないのだ。 「うっ……、うっ…。」 抵抗することなく、抱きしめられたまま、ハルカの胸で泣き崩れるのだった。 「落ち着いた?」 チアキが泣き止むのを確認すると、ハルカは優しく声をかけた。 「…はい。」 その返答に偽りはなく、胸の中の蟠りが大分減っていた。 ハルカもそれがわかったのか、チアキを自分から離し、自分の部屋のドアを閉めた。 「カナ、起きちゃったかしら? でも、起きてここに来ないってことは大丈夫よね。」 今更である心配を焦ることなく口にし、ハルカは再びチアキの方に笑顔を向ける。 「さっきも言ったけど、ごめんね、チアキ。 私、最近自分のことばかりで、チアキのことをちゃんと見てあげられなかったわね。」 「いえ、そんな…。」 改めて謝られると妙にくすぐったくなり、照れくさくなる。 「私、チアキがこの部屋に入ってくるまで、全然気づかなかった。姉として恥ずかしいわ。」 そっとチアキの頭を撫で、ちらっと藤岡の方を見た。 「チアキも藤岡君のこと、好きだったのね?」 「「!!」」 チアキはハルカに気づかれたことに体を震わし、藤岡はチアキも自分に惚れていたことに驚愕した。 ハルカは驚愕している藤岡を見て、やっぱりと言うような表情で言い出した。 「藤岡君、私が言うのも何だけど、気づかなかったの?」 ハルカの時も言われるまでは気づかなかったぐらいだから、当然といえば当然なのかもしれない。 「…あ、いや、てっきりオレがハルカさんを取っちゃったからだと思いました。 チアキちゃん、ハルカさんのこと本当に慕ってますし…。」 「あっ、そっか。そうだったわね…、チアキは私のこと、大切にしてくれるものね…。 バカね、私。そんなこと、わかっていたはずなのに。」 藤岡に言われて、思い出したかのような顔をし、ハルカは少し悲しそうにしながら笑みを浮かべた。 「そんな! ハルカ姉さまはちゃんと私の気持ちに気づいてくれたじゃありませんか。 それでいいんです、十分です。」 ハルカも藤岡も自分のことを完全にわかっているわけではない。 しかし、2人がそれぞれ自分なりに自分をちゃんと考えてくれたことは嬉しく思った。 それに、藤岡が気づかなかったことをハルカが、ハルカが気づかなかったことを藤岡が気づいてくれたという お互いが気づかなかった点を補い合う形になったのが不思議と嬉しさに拍車をかけていた。 「ありがとう、チアキ。私も藤岡君もあなたから離れたりはしないわ。ずっと側にいる。」 「はい、ハルカ姉さま!」 ハルカは再びチアキを抱きしめ、チアキもまたハルカに応えるように抱きしめた。 藤岡はその様子を微笑みながら見守っていた。それで今回は無事解決となるはずだった。 「…藤岡、頼みがあるんだ。」 チアキはハルカから身を離すと、今度は藤岡の方を向いた。何やら1つの決意をしているように見える。 「何だい?」 「私にも、…その、ハルカ姉さまと同じ事をしてくれないか?」 「え!?」 チアキの頼みごとに思わず戸惑ってしまい、返答に困ってしまう。 困った顔をした藤岡を見て、チアキは上目遣いで悲しそうに見つめてきた。 「…ダメか?」 「そうは言っても…、オレにはハルカさんがいるし…。」 「私は、別にいいと思う。」 藤岡にとって、今日は本当に驚きの連続だ。しかし、おそらくこれ以上に驚くことはもうないだろう。 よりによって、ハルカがそんな二股行為を許すとは思いもしなかった。 しかも、その相手が小学生で、しかもハルカの妹であるチアキだから尚更だ。 藤岡が驚きで固まっていると、ハルカはそれがおかしかったのか、少し笑い出した。 「やっぱり驚くよね。確かに私もさっきまではそんな考え、思いもしなかった。 チアキには、そういうこと知るのも教育上まだ早いとも思っていたわ…。」 「ハルカ姉さま…。」 「でもね、さっきのチアキ見て考えたんだけど、教育上良くないとか倫理がどうとかって考えでチアキを 縛り付けるのも良くないって思ったの。それでチアキが納得なんてできるとは思えないから。」 言っていることは明らかに道徳に反しているが、ハルカなりにチアキのことを考えたのだろう。 藤岡もハルカの言うことには異論はない。 「…私の意見はここまで。藤岡君に強制はできないし、後は藤岡君がどうするかね。」 「藤岡…。」 チアキはまだ藤岡を不安そうに見つめている。ハルカはチアキを抱くことを了承し、チアキもそれを望んでいる。 この2人のことを考えれば、断る理由はなかった。 「……ごめん、チアキちゃん。…やっぱりオレにはできない。」 だが、藤岡の抵抗はそれでも拭えなかった。チアキはショックを受けながらも、疑問を投げかけた。 「どうしてだ?」 「…チアキちゃんを抱くと言うことは、ハルカさんと同じように見るということになるから。」 チアキは少しわけがわからないというような顔をしているが、藤岡はそのまま続けた。 「勿論チアキちゃんのことは好きだよ。だけど、それはハルカさんに対するものとは違うし、 オレにはチアキちゃんとハルカさんを同じように見るなんてことできないんだ。 それなのにチアキちゃんとそんなことするわけにもいかないよ。」 「…つまり、私を恋人として見ることはできないというわけか?」 チアキに言いたいことが伝わったとわかると、藤岡は無言で頷いた。 「藤岡、お前は少し勘違いをしているぞ。」 このチアキの一言を藤岡は意外に思った。意外そうにした藤岡の様子を見て、 チアキは少し笑い出した。先程のハルカを彷彿させる。 「本音を言えば、確かに私はお前の彼女に、この際愛人でもいいからなりたいと思ってるぞ。 ハルカ姉さまもそれを許してくれるだろうけど、ハルカ姉さまの彼氏とそんな関係にはなれるわけないだろ。 私はハルカ姉さまのことも大好きなんだからな。」 これはハルカにとっても予想外の台詞であるが、やはり後を引くものがあるのだろう。 「けど、それでも、こんな我侭を言ったのは、はっきり私の記憶として欲しいからなんだ。 私が、お前のことが大好きだったという証明できるものを。」 チアキは藤岡の目を見つめてきた。その瞳からは意思の強さを感じさせた。 「…何より、お前に感じてほしい。私が、お前が大好きなことを。だから、ダメか…?」 それでも、やはり拒絶に対する恐怖なのか、語尾の方の声が小さくなった。 そこまで言って中々引いてくれないチアキに、藤岡は根負けしてしまった。 「…わかったよ、チアキちゃん。けど、本当にオレでいいの?」 「今更何を言ってるんだよ、だから藤岡に頼んだんだろ?」 「そうだね。ただし、チアキちゃんとはこれが最初で最後だからね。」 チアキは藤岡の念押しに頷き、ハルカに断りを入れた。 「…すみません、ハルカ姉さま。本当はこんなこと許されるはずがないのに…。」 「いいのよ。逆の立場だったら、私もチアキと同じ事を考えたと思うから。」 ハルカの笑顔での了承を確認すると微笑みだし、藤岡の方に顔を向けた。 そして、藤岡に飛び込み、自分の唇を藤岡の唇に押し当てたのだった。 「…それから、どうすればいいんだ?」 唇を離した後、チアキが質問をしてきた。性知識に関しては全くの無知とも言えるので、当然の質問ではある。 「そうねぇ、藤岡君にはベッドに座ってもらった方がいいんじゃない? ほら、…その、まず藤岡君には大きくしてもらわなきゃいけないし……。」 次
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「ねぇ、キョン。ゲームで1upキノコとかあるじゃない。」 「ああ。」 「『1人増える』ってどんな感じなのかなぁ?」 「……。」 「増えるといってもドッペルゲンガーみたいに同時に存在してるわけじゃないじゃない? 自分が死ぬともう1回、って感じで自分が出てくるわけでしょ?それってどういう現象かなぁ?」 「……。古泉、パス。」 「え……、長門さんお願いします。」 「……あ「お茶のお水汲んできますね!」さひ……。」 「そもそも最初は『3人』で始まってるじゃない? 自分『3人』って何?」 「涼宮ハルヒが1人増えた。」 「なんですと!?!? いったい何食ったんだ!?」 「1upキノコ。1人増えたことによって今4人いる。」 「なんだよその1upキノコって、おい4人!?」 「ミスしても大丈夫。」 「『ミス』にも引っかかるし、『大丈夫』にも突っ込み所があるな。」 「ああん! もう! また穴に落ちたわ! あと100機は欲しいところね!」 「とりあえず1upキノコで自分が増えるのは納得したわ。」 「どうやったら納得できたんだよ。」 「自分の死体はどうなるの?」 「……。」 「敵のキノコにぶつかったくらいで死ぬのも納得いかないわね。」 「毒キノコなんだろ……。触ったくらいで死んでしまう猛毒の。」 「納得できないけどまあいいわ。それより自分の死体よ!」 「1upキノコが納得できて猛毒が納得できないのかよ! 死体? 古泉任せた。」 「長門さん、どうぞ。」 「……待ってわたしが水汲みに行く、いつもお茶を淹れてもらっているお礼。」 「いいえ! これはあたしの役目なんです!」 「……………………………………………………。」 「…………長門、そんなに俺を見つめるな。そうだな、死体が生き返ってスタート位置にワープするんだろ。」 「納得できないわ! ワープできるならとっとと敵のボスの所まで行きなさいよ!」 「知るか!」 「問題発生。」 「どうした? 死体が歩き出したか?」 「違う。待機中の3人の涼宮ハルヒが実体を得た。」 「な!? それは非常にまずいんじゃないのか!?」 「幸い3人とも意識はなく、閉鎖空間で寝ている。今頃古泉一樹が驚いていると思われる。」 「神人が暴れているのか。」 「涼宮ハルヒにとって死体と2人目以降の存在について納得のいく答えが見つかった。もう収まるはず。」 「あいつ以外誰も納得できない答だな。」 「んー、穴が死体で埋まって平坦になれば楽なのに~。」 「あいつら絶対おかしいわ。」 「ゲームだからな。おかしいのはお前だ。」 「だって垂直跳びで身長の3倍以上の高さを跳べるのよ!? 身長が170cmとして、えと510cm、5mの高さ跳べるのよ!? それだけじゃないわ! 5mどころか、うん100m以上の高さからちゃんと着地して、 何事もなかったかのように走りだせるのよ!」 「お前にぴったりのゲームがある。あとで貸してやる。」 「あ、ありがと。それはともかく、なんであんなに高さ関連に強いわけ!?」 「えーとだな、そう! ドクター中○が発明した靴があるだろ? あれだ。あれを履いているんだ。」 「あのジャンピングシューズ!? うそよ! ありえない! だってあたしあれ買ってみたけどジャンプどころか転んで捻挫しただけだったわ! とんでもない不良品よ!」 「買ったのかよ。……それはいつの話だ?」 「小学生のころ。」 「だからだ。今は改良されている。しかもプロが履いているからな。」 「!」 「情報の伝達に齟齬が生じるかもしれない。でも聞いて。 ドクター○松がノーベル物理学賞にノミネートされた。」 「オーケイ! アイシー! アンダスタン! わかった! 悪いがノミネートを削除してくれ。」 「大丈夫。すでに削除済み。」 「長門、愛してるよ。」 「もっと冷静な時に言って欲しい。」 「くぉらぁ! このクソ主人公!!! なんで膝の高さから落ちて死ぬのよ! 根性見せなさい!!」 「キョン、ゲーム機まで貸してくれてるのに言うのはなんだけど、なにあのゲーム!? あそこまでひ弱な主人公初めて見たわ! 」 「ああ、史上最弱の主人公として有名なゲームだ。」 「最弱過ぎ! スタートして1秒で死んだわ!」 「それを考えると100m落ちても無事な髭オヤジの方がいいだろ?」 「そうね。少なくとも現実世界の人間より弱い主人公よりマシだわ。 それより聞いて! さらに不思議なことがあるの!」 「……キノコを食べると大きくなることか? 花を食べると火の玉が出せるようになることか?」 「……それも不思議ね。170cmの人が2倍の身長に。340cm! ちょっとどういうこと!?」 「しまった。……おい長門!急いでどこへ行く!?」 「朝比奈みくるとお茶の水汲み。」 「そうか、手伝おう!」 「ちょっとキョン! キョン!! ……古泉くん、あなたならわかるわよね? どうしてキノコを食べると大きくなるのか。」 「そ、そうですね。キノコといった菌類や植物には解明が進んでいない部分が多くて 今でも新種発見や、新しい薬効成分が見つかったりするそうです。 大きくなったり火の玉が吐けるキノコや花が存在してもおかしくありません。」 「さすがは古泉くん! と、言いたい所だけどさすがに骨格は変わらないんじゃない?」 「いえ、大人を子供にする『APTX4869』という薬がありまして…」 「本当!?」 「よろしくお願いします。」 「わかった。wせdrftgyふじこlp」 「子供の古泉くんってかわいかったですね♪」 「……。」 「ふう。長門さん、ありがとうございます。まさか小学生になるとは……なぜか睨まれているんですが?」 「また穴……。あたし、もしかしてヘタクソ?」 「この前聞くのを忘れてたわ。ちょっとキョン! 聞いてる!?」 「ああ、当然だ。だから朝比奈さんも一緒に聞いてください。長門、お前もだ。」 「なんで鍵を閉めるんですか~~!?」 「何やってるの? で、キョン! 100mの高さから落ちて無事な主人公がなんで穴に落ちて死ぬのよ?」 「古泉。」 「長門さん。」 「……………。」 「え、えっと涼宮さんお願いします。」 「あたし!? んーと、あれ? キョン! あたしの質問よ!」 「正直わからん。古泉任せた。」 「長門さんお願いします。」 「あたし、長門さんならわかるんじゃないかなって思うんですけど。」 「え、有希わかるの!?」 「……………………………………………………………………………………………………らぴゅた。」 「! だからさすがに助からないのね!? さっすが有希!!」 「すまん長門! 俺たちが悪かった!」 「ごめんなさい! あたしが調子に乗ってました。ごめんなさい!」 「お願いしますよ長門さん。早く機嫌直してください。」 「なんでもおごってやるから早くこの落ちてきたロボットを何とかしてくれ!!!!」 「あと申し訳ないんですがあの天空の城も何とかして欲しいんですが……」 「ここは上空1万m、この穴に落ちたら命はない。……あぁ、ミスった! ダメ! 緊張するわ!」 「ねぇ、キョン……。人の命ってお金で買えるのかなぁ……。」 「なんだ、えらく深い話じゃないか。」 「今まであんまり意識してなかったけど、ちょっと気になってきて……。」 「そうだな、病院や薬が買えるとかで金持ちと貧乏人の寿命の差が出てきてる事を考えると、 金で命は買えると言えるかもしれん。」 「それって寿命を買ってるわけじゃない? そうじゃなくて命そのものってどうかな?」 「う~ん、クローン技術はある意味金で命を買ってると言えるかもしれんな。」 「その費用って金貨100枚くらい?」 「…………真剣に考えてた俺がバカだった。コイン100枚で1upって話じゃねぇか!!!」 「重要な話よ! あの巨大な金貨なら十分価値があるわ!」 「ハルヒよ、あれはデフォルメだ。実サイズだと画面2ドット分がせいぜいだ。わかるか?」 「ええ!? ちが……うの……?」 「なんでショック受けてんだよ。」 「あれだけ大きい金貨だと人間とか買えるのかな、と思ったんだけど……。クローンなんてもっと無理よね……。」 「えらく問題発言だぞ。それは。」 「金の価格が暴騰している。」 「そうきたか……。」 「昨日と比べ3倍の値段がついている。経済はもちろん、半導体機器製造にも影響が出るのは間違いない。 このままでは弱小国の破綻や戦争が勃発し世界が崩壊する可能性がある。」 「閉鎖空間じゃなくても世界を危機に陥れることができるのか……。」 「でも任せて。情報操作は得意。佐渡島の金脈を復活させた。あと石見銀山に金の鉱脈を追加した。 埋蔵量は現在地球上にある金の量の倍。」 「………。」 「…………ちが……うの……?」 「……違うな…。」 「うわwww無限増殖wwwキタコレwwwww」 『緊急事態。待機中の涼宮ハルヒが増え始めた。』 「……ハルヒめ、とうとう気づいたか!」 『このまま増えすぎると閉鎖空間を内側から破るかもしれない。 だからあなたに待機中の涼宮ハルヒの有機情報連結の解除の許可を求めたい。』 「俺に!?」 『あなたは彼女の鍵。早く、許可を。』 「えらく信頼されているな。だが『急いで! 許可を!』な、えっと長門?」 『早く! 時間がない!』 「落ち着け、大丈夫だ。倍々ゲームでなくて1人ずつ増えてるだろ?」 『……増えている事には変わりない。』 「今何人だ?」 『125人目、126人目、!! 全員消えた。』 「長門は知らないだろうが、裏ワザに『無限増殖』ってのがあるんだ。 だが『無限』といいつつもなんだかコンピューターの関係で 126人以上はマイナス扱いで死んだらゲームオーバーになるんだ。」 『恐らく2進数の補数によるマイナス表現と思われる。』 「さすがだな、長門。……まあいつでも相談してくれ。少しでも力になりたい。」 『感謝する。あなたに負担ばかりかけていて申し訳ない。……ひとつお願いがある。』 「なんだ?」 『涼宮ハルヒが遊んでいるゲームの内容が知りたい。詳しく教えて欲しい。』 「ああ、お安い御用だ。今度の土曜日に俺んちに来てくれ。同じのがあるぞ。」 『ぜひお邪魔したい。』 「タイムオーバーまで無限増殖。どれくらい増えたかしら♪ !!! なんでゲームオーバーなのよ!!! あんだけ1up、1upって言ってたじゃない!!」 「ねぇ、キョン……。生物って神秘よね。ちゃんと寿命があってそれまでに子孫を残す。 細胞分裂には限界があって、その限界を超えてしまった細胞はもう分裂しない。 でもそのルールから外れて細胞分裂するものは癌となってその生命体自体を殺すの。」 「………無限増殖しすぎてゲームオーバーになったんだな?」 「………なんでわかったのよ?」 「みんな一度は通る道だからな。どうせどっかのサイトみて試したんだろ? 注意書きなかったか?」 「あとで見た。もっとわかりやすく書くべきだわ。」 「でもやり方がわかったんだろ? カウントして増やせばいいじゃないか。」 「3時間やって成功したのは1回こっきりよ……。キョン! あんた出来るの?」 「ああ、百発百中じゃないがそれなりの成功率だと思うな。」 「教えなさい!」 「へっ?」 「やり方教えなさいよ! いいわ、今度の土曜日にあんたの家に行くわ。決定!!」 「なっ! 俺の都合は無視かよ!」 「なに? どうせ暇してるんでしょ? それとも何か都合が悪いことでもあるの?」 「い、いや…。そうだ朝比奈さん! ついでに俺んちに来ませんか? 長門、古泉、お前らもどうだ!?」 「了解。」 「あ、有希……」 「いいいですね。さすが団長、たまにはレクレーションでテレビゲームというのもいいアイディアだと思いますよ。」 「あの~あたしテレビゲームはよくわからないんですが……。」 「大丈夫ですよ! すぐ覚えれますよ。」 「ん~~~っんん、いいわ! キョンの家に朝9時集合よ!」 「9時!?」 「古泉、今日はなんで俺の味方してくれたんだ?」 「いえ、長門さんが本当に人を殺しそうな視線を送ってきたので……。」 「……すまん、長門。」 「……………………………………いい。」 「……すまん。」 「5分前に来たのに最後なんですね……。さすがにキョンくんも迷惑じゃないですか?」 「みくるちゃん、最後なのはまだ顔を洗ってるキョンよ。」 「おふたりが早く来すぎてドタバタしたせいだと伺っていますが?」 「そうよ有希、1時間前に来るのはご家族にも迷惑よ!」 「……着いたのは同時のはず。」 「そこでジャンプ! そう、ちょっとずらして。で、もう一回ジャンプ!」 「! 出来た! 出来たわ!! いい感じよキョン! もうコツは掴んだわ!!」 「う~ん、さすがに最終面は難しいわね。そろそろストックがなくなってきたわ。」 「おい、ハルヒ、「うっさい! いま話しかけんな!」…。」 「うそ、ゲームオーバー!? もう一回…。」 「おいハルヒ。ハルヒ~。ハルハル~~。」 「シャミがなついてるのはキョンくんと有希ちゃんだけなんだよー。ずるいよー。」 「ねこさんいいなぁ。いいなぁ。」 「長門さんの番ですよ。」 「うりゃーーーー!! よしスター出現!!」 「あがり。」 「また長門の勝ちだな。まさかトランプの裏表の特徴を全部記憶しているとか?」 「全部ではない。汚れや傷のあるものだけ。」 「まじかよ……。」 「では次はトランプ以外のゲームをやりましょうか?」 「うぉ!? どこにそのボードゲームを隠してたんだ!?」 「よっしゃー!! クリアー!!! やった!! やったわキョン! あれ?」 「あなたはずるい。わたしのプレイ時間がなくなった。」 「長門、あのゲームは面白いか?」 「ユニーク。20年以上の前のゲームにしてはハイクオリティ。」 「そうか。クリアできたか?」 「正規ルートはクリアした。だがまだ全部終わっていない。」 「全部?」 「マイナス面。」 「そ、そうか。」 「あー!! 何回やっても何回やってもエアーマンが倒せないわ!! キョンに電話しよ!」 スーパーハルヒ 完
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涼宮ハルヒの誤解 第一章 涼宮ハルヒの誤解 第二章 涼宮ハルヒの誤解 終章