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登録日:2011/10/10(月) 22 30 58 更新日:2024/01/14 Sun 18 16 17NEW! 所要時間:約 2 分で読めます ▽タグ一覧 DT DT世界 ガスタ ガスタの希望 カムイ サイキック族 ショタ デュエルターミナル リバースモンスター 星2 短パン 遊戯王 遊戯王OCG 霊獣使いの長老 風属性 ガスタの希望 カムイ 星2/風属性/サイキック族/ATK200/DEF1000 リバース 自分のデッキから「ガスタ」と名のついたチューナー1体を特殊召喚する。 DT第12弾で登場したガスタの1枚で他の人型ガスタと同様、風属性のサイキック族である。 今のところガスタで唯一のリバースで自分のターンまで凌げれば即シンクロ召喚が出来るのが強み。 呼び出せるガスタチューナーのレベルには制限が無いので、条件に応じてレベル4レベル5のシンクロモンスターが出せる。 ガスタの中ではレベル4に「ダイガスタ・ファルコス」、レベル5で「ダイガスタ・ガルドス」が召喚可能。 他にモンスターがいればかなり幅広くシンクロ召喚が可能なのでガスタデッキには是非採用したい。 ただリバース故にリクルーターから呼び出すと効果が発動できないのが弱点…… 一応相棒のガスタ・ファルコの効果でセット出来るが発動条件が表側の状態で戦闘以外で破壊された時と、確実性に欠ける。 例)ファルコを表側で召喚、激流葬をセット ↓ 相手ターンで激流葬発動 ファルコの効果でカムイセット ↓ カムイのリバースを使ってシンクロ召喚! などだったら実用的か……? 有効に使いたいなら、リミット・リバース等も用意しておきたい。 例に漏れずカムイも乗っただけシンクロでガスタ・ファルコとでダイガスタ・ファルコスになるが、 ファルコスの能力(シンクロ召喚時全てのガスタの攻撃力600アップ)がたいして強くないので他のモンスターを召喚した方が望ましい。 まぁ普通の説明はここまでにして…… 画像を見てもらえばわかるがこのキャード かわいい かわいい もちろんショタ的な意味で。 ウィンダなどの紳士向けのイラストが多いガスタだが、遂にショタコンにまで及んだ…… 大歓迎なんだがな! ちなみによく見ると、朝寝坊でもしたのか左足にだけニーハイをはいている。 この短パンとニーハイの絶対領域(左足限定)で多くの紳士を満足させた! …………はず DT世界 ガスタの神官家に属する子供で、大戦のさなかに生まれた彼は次代の希望を導く名前を与えられたとの事。 ガスタ・ファルコは相棒であり、成長したファルコに彼が乗った状態がダイガスタ・ファルコス。 しかし理想郷を目指すヴァイロンとの戦いで、ヴァイロン・ディシグマと戦うことになる。 ヴァイロン・ディシグマに吸収されかけるも何とか逃げ延びるが、ガスタ・ファルコは犠牲となった。 最終的には大戦を生き抜き、リチュア・アバンスらと共に地上の復興に尽力することになる。 その後の動向は不明だったが、マスターガイド4によてば『ガスタの神裔 ピリカ』は カムイとリーズの子孫であるらしい。 ……ゑ? ちなみに彼女ピリカが手にしている杖は代々受け継がれていた逸品で、 先端の像はこの杖の所有者だったカムイが、大戦で失った相棒であるガスタ・ファルコを偲んで自ら彫ったとの事である。 戦乱を生き抜き、相棒や姉代わりのような存在との死別を経た彼は、その辣腕を以てガスタの里を再建した。 長い時の中で彼も老いていき、カムイではなく長老と呼ばれる様になる。 ガスタの生き残りと子孫、そして新たな仲間たちで構成された部族「霊獣使い」、その長たる《霊獣使いの長老》として。 そんな彼が再び戦地に立ち、喪った相棒と姉代わりと再会できるのは、もう少し後のお話。 追記・修正お願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] リーズとカムイが…、 -- 名無しさん (2014-03-27 17 24 13) というか、リーズはTF6で女の子カードばっかりのパックに何故か入らなかったんだよな。……つまり、リーズは男の娘でカムイキュンは女の子だったのか!?(錯乱) -- 名無しさん (2014-03-27 17 32 29) ↑何その倒錯カップルw そしてピリカの事考えると夜の営みが「ショタを襲う筋肉娘」にしか見えないw 合ってんだが間違ってんだかw -- 名無しさん (2014-03-27 18 21 35) ↑い、一応、あくまでもピリカが二人の子孫ってだけで、二人が結婚したかどうかはまだ未定だし…… -- 名無しさん (2014-03-27 18 23 20) まさかのおねショタ枠 -- 名無しさん (2014-03-31 17 58 38) いや、ショタに弄ばれる筋肉娘ってのもなかなか… -- 名無しさん (2014-03-31 18 17 57) 相棒に父親、姉まで失ったんだよな…しかも、ほぼ同時期に… -- 名無しさん (2014-07-20 15 12 52) 霊獣使いの長老 -- 名無しさん (2014-08-30 03 23 01) よく考えてみたら…長老がカムイならリーズが出ないことからカムイはリーズに先立たれた可能性もあるんだよな。仮に二人が結婚してたら…どんだけカムイ君は不幸なんですか -- 名無しさん (2015-02-20 16 42 39) 効果的にもリーズ姉さんには頭が上がらないんだろうな。リーズ時→強制交換で破壊される、スフィアード時→自爆特効に駆り出されて破壊される -- 名無しさん (2015-10-12 17 39 56) ファルコと再開できて良かったねおじいちゃん -- 名無しさん (2016-10-07 13 59 17) RATEの霊獣新規カード「霊獣の誓還」でファルコと再会。基本ハードなDT世界では珍しくほっこりするカードだった -- 名無しさん (2016-10-07 14 41 25) 名前 コメント
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地球防衛戦線ダイガスト 地球防衛戦線ダイガスト 第一話 地球防衛戦線ダイガスト 第二話 地球防衛戦線ダイガスト 第三話 地球防衛戦線ダイガスト 第四話前編・後編 地球防衛戦線ダイガスト 第五話 地球防衛戦線ダイガスト 第五話半 地球防衛戦線ダイガスト 第六話・後編 地球防衛戦線ダイガスト クリスマス小ネタ 地球防衛戦線ダイガスト 第七話 地球防衛戦線ダイガスト 第八話 地球防衛戦線ダイガスト 第九話 地球防衛戦線ダイガスト 第九話半 地球防衛戦線ダイガスト 第十話 地球防衛戦線ダイガスト 第十一話 地球防衛戦線ダイガスト 第十二話 地球防衛戦線ダイガスト 第十三話 ダ号防衛計画大綱 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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地球防衛戦線ダイガスト 第二話 この素晴らしき世界 三月に入って通常国会は一層の荒れ模様となっていた。 年明けに突如として表れ、世界各国で宣戦布告をおこなった銀河列強諸国。 彼らとの奇妙な戦争状態は、それ以上に奇妙な国体であった『平和国家日本』の屋台骨を、今も震撼させている。 帝政ツルギスタン、セラン諸惑星連合。 日本に宣戦布告した二つの星間国家との限定戦争は既に4回を数え、 その結果は自衛隊の多大な損害に加えて、北海道を帝政ツルギスタンに占領されるという事態にまで発展してる。 その上で、昨日の4戦目。 突如として総理の命令で派遣されたダイガストなるスーパーロボットにより、日本は初めての勝利を得た。 ――しかし、どうした訳かこれが新たな火種となった。 「総理、あなたは国民に隠してあのような兵器を作っていたと言うのですか!」 再び野党の首魁に転落した『鳩山田』前内閣総理大臣は、どこを向いているか解らないと定評のある目を 国場総理に向け、最前より的外れな質問を繰り返している。 最大野党 民権主体党――略して民主党――は一時マスコミの絶大な支持を得て与党をやっていたが、この鳩山田の隣人を無差別に愛せよという『YOU愛』政策により、 無差別外国人参政権とか無差別外国人子供手当てとか無差別外国人移住計画とか、ちょっとおかしな路線に舵を切りすぎて国民に総スカンを食らい、早々に野党に逆戻りをしていた。 だが行過ぎたリベラル主義を共有するマスコミの支持は相変わらずであり、今もマスコミ受けする政権叩きに余念がない。なにしろ、 「あのような凶悪な兵器を有すると言う事は、アジアの人々に60年前の侵略戦争の痛みを思いだせます。 早急にアジアの人々に謝罪し、平和的利用方法としてアジア各国との共有を図るべきです! 『YOU愛ロボット構想』です!!わたしはアジアの人々の命を守りたい!命を守りたい!命を守りたい!」 さすがに党員からも取り巻き以外からは拍手があがらない。 国場総理は『どこにでもいそうなおっさん』という寸評通りの外見で、場違いな野党党首の質問に疲れたのか、だるそうに息を吐いた。 政権与党に返り咲いた自立民主党――略して自民党――だったが、前政権が世界不況に無策であった分を取り返すため奔走する筈が、 何の因果か異星の侵略者という冗談のような問題を抱える羽目になっていた。 「あなたは列強諸国との『不平等』戦時協定を覚えていないのか?まぁ忘れているようだから教えて差し上げるが、 一、限定戦争は二週に一度。多数の国家と交戦中である場合、当事国家同士の話し合いで原則は履行される。 二、戦略兵器の使用は禁止。使用の際は戦争犯罪として彼らの法で裁かれる。 三、これは国家の命運をかけた正規戦である。当事国は如何なる軍事同盟の履行も許可されない。 ダイガストの共有は、これの三番に抵触するのでは?」 「なぜそんな不平等条約を勝手に結ぶのですか!?市民に対する裏切りだ!」 「いきなり北海道と太平洋に大使館と言い張る全長1キロ越えの宇宙船が降りて来て、 最初の宣言が戦線布告だった連中と、どうやって戦争意外の話し合いが可能と? それに対話の努力は今もって続いている」 「ならば直ぐにダイガストを出せば良かったでしょう」 「去年に事業仕分けとか言って関連費用を軒並みカットしたのは誰でしたかな? ロボットで世界一になる必要はあるんですか、でしたか? お陰で『大江戸先進科学研究所』でのダイガスト開発は遅延の一途だ」 「ですからEUのように彼らに国体として認めてもらえば良いのです! アジア共同体です!!私はアジアを守りたい!!」 「元総理の言うアジアとは、どこからどこまでで? 海岸部から焦土作戦を繰り返して後退を続ける中華人民共和国と、先日南北あわせて列強の手に落ちた分断国家ですか? もしも東南アジアも含めるのなら、関係諸国と、その交戦国の列強と、一体どれだけの国と調整をする必要があるのか、数えて言ってるのでしょうな? タイムリミットは?また3月ですかな?国民は在日米軍の撤退を、アナタがた民主党の沖縄基地移転問題での不手際だと認識していますよ」 「あれは米帝が自国防衛のために勝手に撤退したのです!後世の市民の皆さんはきっと判ってくれます! ゼロベースからです!異星人基地なき安保です! いや、そもそもわたしが聞きたいのは、ダイガストに関する情報公開が余りに少ないことです! これの理由を聞いているのです!ダイガストは非核三原則に抵触しているのか? ダイガストによって破壊活動が行われた場合の関係法整備は? 誰が、どのような資格と免許によって動かしているのか?」 そうだそうだ。取り巻き連中から同調の声があがる。 国場は眩暈を覚えた。こいつらは日本の存亡の危機を理解しているのか?自然、眉間の皺は深くなり、睨みつける様な顔になる。 「ダイガストは核動力ではありません。 ダイガストの協力による防衛活動によって生じた国民財産の破壊に関しては、まずは自衛隊の交戦規程と軍法から作成せねばならない。 ダイガストの操縦者達は然るべき訓練と資格を得た者が取り扱っている!」 あまりに馬鹿馬鹿しく、次第に国場の声のトーンが荒々しくなってくる。 「何よりダイガストに関する情報は原則非公開!国会中継もインターネットで配信されている。 ここでの答弁で、あたら銀河列強に利する情報を提供するわけにはゆかない!」 「横暴だ、ファシストめ!私は市民の権利を守るぞ!」 その権利自体が奪われかねない事態であるのだが、鳩山田のように政治活動が権力闘争のみという議員では、 政治というものを声を張り上げるためのツール以外には執れないのだろう。 名前を書いたら死んでくれるノートないかなぁ…先程から漫才のような議事録をせっせと作成している書記官は、ふと、そう思ったという。 「『皇国』の議会には道化師がいるのかね?」 見事なプラチナブロンドを後ろへ撫で付けたカイゼル髭の中年男性は、なんとも渋みのある声でそう評した。 そこは宮廷を思わせる煌びやかな広間だった。天井のシャンデリアも壁の燭台も光源はすべて電灯だが、意匠を凝らしたガラス細工はいかにも大時代的だ。 部屋の中央には縦に伸びた巨大な卓が一つ。卓には10名程の、これまた大時代的な騎兵将校のような制服を着用した男達が着席している。 そして彼等が苦笑やら嘲笑やらを交えて眺めているのが、壁面のモニターに映し出されている日本国の国会中継だった。 「かのロボットに関する質疑応答があると言うから見てみたが、収穫は無いようだな」 カイゼル髭の男、ハンス・グラーフ・ルドガーハウゼン大剣卿――いわゆる大将クラス――は元々期待などしていなかったのだろう、 形ばかりの溜め息をつき、視線を卓に着いた部下たちに向けた。 言うまでもなく、大時代的な格好をした集団とは日本国と交戦状態にある銀河列強、帝政ツルギスタンの将校達であり、 ルドガーハウゼンはその尖兵たる第三外征旅団の総指令官に他ならない。 卓の末席にはアフバルト・シュバウツァーの姿もあり、おそらくは高級将校のみが顔を連ねているのだろう。 居住まいを正したルドガーハウゼンは卓に肘をついて手の指を組むと、席次では中ほどに着席している男に声をかけた。 「それでは分析官の意見を伺おうか。あのダイガストというロボットに関して」 発言を促された分析官はテレビのリモコンほどの携帯端末を操作し、会議室のモニターを昨日の戦闘の映像に切り替える。 アフバルトだけが強く奥歯を噛み締めていた。 「結論から申し上げますと、かのダイガストなるロボットは、極めて攻撃能力にベクトルを偏らせたロボットであります。 その戦闘能力は先日の戦闘でも判明したとおり、対応を誤ればブレーディアンを凌駕します」 とたん、将校達がざわめく。分析官はかまわず続けた。 「まず最初にランツェタイプの儀仗兵を破砕した右腕部を射出する兵装ですが、直撃の瞬間に先端部に視認出来るほどのエネルギーフィールドが発生しています。 これは着弾点より内側に衝撃力が浸透する、いわば道の役割を果たしている攻性の力場です。 ゆえに、ランツェの内部を破壊した衝撃が、内部機構の破壊による爆発を伴い、着弾点の反対側にブラスト炎として噴出したのです。 この力場は後のブレーディアンとの格闘戦にも微量ながら確認されており、 ダイガストの拳に打擲(ちょうちゃく)以上の破壊力を与えていると推測します。 次にダイガストの腰部装甲を楔として射出した兵装ですが、機体と楔をつないでいた力場は、我々の艦艇の錨と同様のシステムだと思われます。 またダイガストの所持武装と思われる誘導弾、大砲、剣ですが、全て機体後方の空間を歪曲・圧縮し、格納している事が確認されました。 こちらもギャラクシー・ダイソン社の吸引力の弱まらない惑星改造掃除機等で用いられるシステムと酷似しています」 モニターでは調度ダイガストの腰裏あたりから、空間に波紋を描くようにしてミサイルの弾頭が顔を覗かせる動画が流れている。 「それはつまり…」 卓の末席の一人が、腕組みしをしながら口を開いた。 「列強のどこかと皇国がつるんでいると?」 忌憚無い意見を述べる場でもないだろうが、その男は不遜な物言いを気にした風もなしに続けた。 「もっと言うのなら、自分達の技術に敗れたわけかい、僕らは?」 ブラウンの髪を奇麗に撫で付け、口髭をたくわえた壮年の男は、なんとも呪わしい可能性を事も無げに言ってのけた。 黙っていれば伊達男だろうが、微かに愉快そうに細められた目や、端だけ器用に歪めた口、 なにより物怖じしない不遜な物言い、どれをとっても『イイ性格』をしているのが窺える。 ヘルマン・ファルケンハイム大刃士。不遜が軍服を着ていると渾名される、第三外征旅団の名物将校だった。 「大剣卿、これは由々しき事態ですな」 「ファルケンハイム、卿(けい)も愉しそうに話の腰を折らないでくれたまえ」 ルドガーハウゼンにぴしゃりと釘を刺されても、ヘルマンは肩をすくめておどけて見せるのみだった。 幕僚たちの中には露骨に顔をしかめるものもいたが、 なにしろヘルマン・ファルケンハイムは武名と浮名の両方をとどろかす伊達者で、GBCの人気投票にも名が挙がる有名人である。 全ての軍事行動が経済活動で括られる銀河列強においては、はっきり言って幕僚よりも影響力が強かった。 そして、誰しもがそんな軍隊を快く思っているわけでは無いという事実が、幕僚たちの表情から窺えた。 分析官は律儀にヘルマンがそれ以上口を開かないことを確認してからレポート用紙の次をめくる。 「…続けます。他にダイガストが用いた武装としては、戦闘機に搭載されている誘導弾に、巨大な大砲、 それに小口径――我々にとってですが――の電磁投射砲がありますが、どれも多少の改良はあれ、地球人の文明レヴェルを逸脱してはいません。 問題は最後の、ブレーディアンを斬り裂いた剣ですが…高確率で、ソルニウム製であるかと」 途端、これまで以上のざわめきが会議室に沸き立った。一様に恐れに近い感情が、各自の口から驚きの語句を伴って出ているようだった。 その動揺を遮り、ルドガーハウゼンは問うた。 「本当かね?」 「自ら発光する金属。発光の正体は分子間結合を崩壊させる波動。このような金属は我々の既知宇宙ではソルニウムの他にはありません」 「200年前の銀河帝国内の紛争で周辺宙域ごと消滅した惑星ソル… その原因である、惑星を構成した禁忌の物質ソルニウム…皇国人はどこで手に入れたのか、いや、その取り扱いを知っているのか?」 「今の時点ではなんとも」 分析官は首を横に振るう。 何しろデータが少ない。見たものを、見たままに答える他になかった。が、だからこそ分かった事もあった。 「以上の分析結果から、ダイガストは我々列強の技術を取り込んでいると思われます。 しかし光学兵器や粒子兵器の存在が確認できないことから、その技術水準はあくまで地球側がベースであり、おそらくは純粋物理力のみに偏らざるを得なかった… 現にシュバウツァー大刃士の攻撃は全てダイガストに何らかの損害を与えています。 ダイガストの拳を覆っていた力場を応用すれば、防御転用も出来た筈。 それが無いと言う事は、即ち、ダイガストは防御力に欠陥を抱えている、そう断言できます」 おお、と将校たちが賛嘆の声を上げる。その中でも最も声が大きかったのは、アフバルトやヘルマンと同じく、末席に座る中背で筋肉質の男だった。 なんと言うか、獣じみた印象の男だ。 大時代的なツルギスタンの将校団にあって、その容貌は明らかに異質だった。 顎鬚はモミアゲとつながり、両の眉毛も薄っすらと眉間で繋がっている。歪めた口元に見えるのは発達した犬歯。 そう、まるで映画の狼男が、月を見て変わってゆく途中のような。 ゲオルグ・バウアー刃士――いわゆる少尉~中尉と同等――は、勇猛というより獰猛な、第3外征旅団の斬り込み役だ。 彼とヘルマン、アフバルトの3人こそ、栄えある第3外征旅団の機甲部隊隊長。日本人にとっては忌むべき侵略者の現場指揮官達である。 「ならば『俺の獣達』が鎧袖一触に食い破ってくれよう」 ゲオルグが豪胆に言ってのけると、隣に座るヘルマンは片方の眉だけを器用に曲げ、冷ややかに呟く。 「聞いていなかったのかね、かのダイガストの攻撃力は強大であると。 卿の手勢では、みすみす向うの懐に飛び込むようなものだろう」 「ぬかせ。貴様の部隊こそ、あのヒョロヒョロ揃いでは荷が勝ちすぎるわ」 ふん、と荒い鼻息をつく。 どうも前線指揮官達は協調という言葉とは縁が遠いらしい。 確かに銀河列強のような限定戦争では個人技こそが華となり、異なる部隊間では協力する価値も薄くなる。 ダイガストの防御機能は脆弱。軽口が軽口を呼び、楽観論が会議の空気を支配していた。 アフバルトだけがダイガストと切り結んだ経験から難しい顔をしている。 いや、いま一人。ルドガーハウゼン大剣卿は沈思黙考し、場の空気に乗らない。 彼は考えていた。 『いかに脆弱な防御であろうと、外征旅団は儀仗兵に距離をとらせて、鉄の雨を降らすような戦を執れない。 視聴者がそれを許さないし、強い帝室を喧伝し続ける我が国も、たった一機のロボットにそこまでの作戦を容認しないだろう… 結局は正面きって殴りあわざるをえんのだ。絶対足る攻撃性能を持つ単騎… これほど限定戦争と相性の悪い相手はいない…狙って造られたのか?誰が?』 ルドガーハウゼンには会議室の空気が重苦しいものに感じられてならなかった。 四畳半ほどの部屋には4人掛けのシートが向かい合わせに二つ。 その間には空の大きな油缶が置かれ、室内で消費される大量の煙草の吸殻を飲み込んでいる。 他に何も無い事から、その部屋が専用であり、単能であることは確実だった。 つまりは喫煙室。他人に後ろ指差されながら、好き好んで自分の呼吸器を痛めつける行為を行う、神聖で犯されざる空間である。 そこで『わかば』をうまそうに吸いつつ、携帯電話で会話をしている初老の男は…なんというか、怪人物という表現が最も適切であろうか。 濃い黒髪とすっかりと色の抜けた白髪とがストライプになった頭髪を、首の後ろまで伸ばして講談の由緒正雪みたいに撫で鋤いている特徴的過ぎるヘアスタイル。 白衣を着用しているということは研究者なのだろうが、素足にゾウリ履きという何ともスマートでない格好。 顔に至っては四角四面で、白衣より作業服を着て現場を闊歩しているほうが似合いそうな風体だった。 「ほうほう、それで、いよいよか」 怪人物は親しげに電話の相手と会話していた。 電話口から聞こえる声は男の物で、日本国民なら最近のニュースでよく耳にする声だと思ったろう。その声は言葉少なであるが、厳かだった。 「ああ、決行だ」 「野党の了解は取っていなかったようだが…」 「あそこは前総理の基盤だからな、首を縦に振るわけがないさ。それに、野党の了解を待っていたら取り返しがつかなくなる。 民主党のおかげで官房機密費の自由度は減ったが、こんな時だ、使わせて貰った」 「野党連中には聞かせられん話だな」 「戦争だからな。やるからには『勝つ』さ。例え…」 そこで電話の向こうの男は言葉を区切る。電話口でも逡巡を感じ取れた。 「…例え、焼かれる国民が出たとしてもだ」 「戦後60年、ワシらが伝え損ねてしまった事だ…」 「もう目は背けられない。耳は塞げない。敵はそこにいるんだ。 しかし幸運じゃないか、え?誰憚る事無く言えるんだ、悪いのは異星人だ、なんて」 「そして人々の希望を一身に受ける正義のスーパーロボット。まるで子供の夢じゃないかね」 「君の研究費の明細は悪夢そのものだがね」 「はははは…その件についても頼むよ。ダイガストはまだまだ足りない物ばかりなんだ」 「期待はしないでくれよ。それじゃあ、な、『大ちゃん』」 「またな『国ちゃん』」 実に親しげに互いを呼び合うと電話は切れた。 怪人物はちびた『わかば』を缶に投げ捨て、喫煙室を出る。 開けた視界に飛び込んできたのは、なんとと言うか、案の定というか、巨体を横たえたダイガストの姿だった。 同時に金属の擦過音と人の怒鳴りあいで聴覚が飽和する。 天井の高い工場のような施設には多数の作業員が詰めていて、ダイガストの上を行き来しては装甲の張り替えやら、内部機構のチェックやらに従事していた。 と、怪人物が突然、大きなくしゃみをする。 「…むぅ、また誰かがワシの事を噂しとるな。 どうせ宇宙人連中だろうが、どんだけ雁首揃えたってこの地球が宇宙に誇る碩学、大江戸多聞(オオエドタモン)博士のダイガストに勝てるモンでないわ」 誰が聞いてもいないのに自己紹介をしつつ、怪人物こと大江戸先進科学研究所 所長兼主任研究員、大江戸多聞は『かか』と大笑した。 ちょうどその頃、北海道の大地に降り立った侵略者の宇宙船の中で、 ルドガーハウゼンが確かにダイガストに関して頭を痛めていたのだが、その事を大江戸博士が知る由もない。 それでも大江戸博士は、どこかで、誰かが、自分の天才を褒めちぎっていると思って疑わない。 しかし、ごく一般的な常識を持つ人にとって、大江戸博士とは号して以下の通りである。 天才と何とかの境界である紙一重を、またいで超えてしまった人、と。 次回予告 失落する北海道に国場総理が行った窮余の策とは… そして青森を掛けた限定攻勢に臨むダイガストは、陸上自衛隊に拒絶される。 官と民、軍人と文民。 敵を前にしても立場の壁は越えられないのか? 次回 地球防衛戦線ダイガスト『たずさえぬ手と手』 この国を好きではいけないのですか?
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中本尊司:モヤモヤ谷のつむじ風2 攻略 ※チェック・修正待ち 合計40枚+15枚 上級02枚 ガスタの賢者 ウィンダール ガスタの疾風 リーズ 下級19枚 ガスタ・イグル×2 ガスタ・ガルド×3 ガスタ・サンボルト ガスタの希望 カムイ ガスタの神官 ムスト ガスタの静寂 カーム×3 ガスタの巫女 ウィンダ×3 (D) ガスタ・ファルコ×2 霞の谷のファルコン×3 魔法11枚 ガスタの交信×2 サイクロン×2 スワローズ・ネスト×3 デザートストーム ハリケーン 霞の谷の神風×2 罠08枚 王宮の弾圧 ガスタのつむじ風 ガスタの祈り 御前試合 風霊術-「雅」×2 リミット・リバース×2 エクストラ15枚 旋風のボルテクス×2 ダイガスタ・イグルス×2 ダイガスタ・ガルドス×2 ダイガスタ・スフィアード×2 ダイガスタ・ファルコス×2 ミスト・ウォーム 霞の谷の雷神鬼×2 ダイガスタ・フェニクス×2
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登録日:2010/09/02(木) 10 22 04 更新日:2024/02/21 Wed 23 49 25NEW! 所要時間:約 27 分で読めます ▽タグ一覧 DT DT世界 DUEL TERMINAL ガスタ サイキック族 デュエルターミナル ポニテ ミストバレー湿地帯 リクルーター 乗っただけ 墓地利用 家族 猛毒の風被害者の会 遊戯王 遊戯王OCG 遊戯王OCGデッキテーマ項目 霊獣 風属性 鳥獣族 ミストバレー湿地帯。 氷結界とミスト・バレーの間に位置する大湿原。 肥沃な大地に恵まれたこの地を古来より信仰してきた一族、それがガスタである。 原住生物との共闘により、様々な外敵からこの地を護り抜いてきた彼らは、 今まさに起こらんとしているこの地上世界の異変を前に如何なる大地の声を耳にするのだろうか― ガスタとは遊戯王OCGに存在するテーマのひとつ。 DT10弾「インヴェルズの侵略!!」で登場したカード群である。 主体は『リクルート(デッキからの特殊召喚)』と『墓地利用』。 特定の条件で墓地に送られる事でリクルート効果を発動するモンスター、通称「リクルーター」が戦術の主軸となるのが特徴。 所属するモンスターの属性は全て風属性で統一されている。種族はバラバラだがサイキック族と鳥獣族が多い。 モンスター達は全員手裏剣ないし風車のような形をしたシンボルマークを身につけている。 また、一部のモンスターの瞳にもガスタのシンボルマークによく似た形が描かれているのが確認できる。 同じデュエルターミナル出身テーマであるリチュアとは敵対関係にある他、捕食者としてミストバレー湿地帯に進軍してきたインヴェルズとも対立している。 カード紹介 ☆モンスター☆ ●《ガスタ・イグル》 チューナー・効果モンスター 星1/風属性/鳥獣族/攻 200/守 400 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。 レベル1の鳥獣族チューナー。 戦闘で破壊されたらデッキからチューナー以外のレベル4以下のガスタを1体特殊召喚。 ガルドとウィンダと共に、【ガスタ】デッキを支えるメインリクルーターの1枚。 状況に応じてウィンダやカーム、ピリカたちを呼び出していこう。時には自爆特攻して、目当てのガスタを特殊召喚するのも手。 ●《ガスタ・ファルコ》 チューナー・効果モンスター 星2/風属性/鳥獣族/攻 600/守1400 フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘以外によって墓地へ送られた時、 デッキから「ガスタ」と名のついたモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚できる。 レベル2の鳥獣族チューナー。 表側表示の時に戦闘以外で墓地に送られるとガスタを1体裏守備でリクルート。 リクルートの選択肢は随一だが表側で存在がバレバレなのに態々相手が除去しにくる事はまず無いため、意図的に自ら破壊しない限り効果発動は難しい。 ガルド同様シンクロ召喚の素材などに使っても効果が発動しない(いわゆる「タイミングを逃す」)のも痛い。 ●《ガスタ・グリフ》 効果モンスター 星2/風属性/鳥獣族/攻 800/守 300 このカードが手札から墓地へ送られた場合、デッキから「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。 「ガスタ・グリフ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。 レベル2の鳥獣族。 手札から墓地に送られた場合、デッキからガスタを1体特殊召喚。特殊召喚先のレベルや攻撃力といった制限が一切なく、タイミングを逃す事もない。 利点だけ見れば優秀なカードであるが、ガスタ関連のカードで手札のこのカードを墓地に送る手段は後述の装備魔法の墓地効果のみという問題を抱えている。 その装備魔法すらなかった第10期以前よりはマシになったとはいえ、いずれにせよ活用には一考を要する。 ●《ガスタ・ガルド》 チューナー・効果モンスター 星3/風属性/鳥獣族/攻 500/守 500 このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキからレベル2以下の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。 レベル3の鳥獣族チューナー。 フィールドから墓地に送られた時にデッキからレベル2以下のガスタを1体特殊召喚。 戦闘と効果の両方の破壊に対応しているのが利点であり、さらにピリカの召喚からシンクロ・エクシーズ・リンク召喚の使い分けも可能。 優秀なメインリクルーターだが、コストに使うと「タイミングを逃す」ため効果が発動しない点には注意。 ●《ガスタ・コドル》 効果モンスター 星3/風属性/鳥獣族/攻1000/守 400 このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、 自分のデッキから守備力1500以下のサイキック族・風属性モンスター1体を特殊召喚する事ができる。 レベル3の鳥獣族。 相手モンスターを戦闘破壊する事で、デッキから守備力1500以下の風属性サイキック族を1体特殊召喚。 効果自体は強力なものの、自身の攻撃力が低いのもあり残念ながら採用率は低め。 余談だが、一般パックに初めて収録されたガスタは第7期パック「GENERATION FORCE」に収録されたこのカードだったりする。 ●《ガスタ・ヴェズル》 チューナー・効果モンスター 星3/風属性/鳥獣族/攻 600/守1000 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):このカードが手札に存在し、フィールドの表側表示の「ガスタ」モンスターが、戦闘で破壊された場合、または自分の墓地へ送られた場合に発動できる。 このカードを特殊召喚する。 (2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「ガスタ」モンスター1体を墓地へ送る。その後、手札から「ガスタ」モンスター1体を特殊召喚できる。 レベル3の鳥獣族チューナーにして、OCG第11期で追加された新規カードの1枚。 手札から自身や他のガスタを特殊召喚するという、ガスタでは珍しい積極的に使っていける能動的な展開効果が特徴。 ガスタ専用の終末やおろ埋とでもいうべき墓地送り効果もありがたく、効果発動に墓地のガスタが必要なガスタのシンクロやピリカなどのサポートとなる。 ヴェルズじゃねえ!ヴェズルだ! ●《ガスタ・スクイレル》 チューナー・効果モンスター 星2/風属性/雷族/攻 0/守1800 このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからレベル5以上の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。 レベル2の雷族チューナー。 カードの効果で破壊されたら自分のデッキからレベル5以上のガスタを1体特殊召喚する。 効果破壊にしか対応していないが、連鎖破壊やリミット・リバースとコンボが狙える。 攻撃力0のため、強制転移などで攻撃表示のこのカードを送り付けて攻撃すれば相手に大ダメージを与える事も可能。 ●《ガスタ・サンボルト》 効果モンスター 星4/風属性/雷族/攻1500/守1200 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、 そのバトルフェイズ終了時に自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター1体をゲームから除外して発動できる。 デッキから守備力1500以下のサイキック族・風属性モンスター1体を特殊召喚する。 レベル4の雷族。 戦闘で破壊されたバトルフェイズ終了時に、墓地のガスタを1体除外して守備力1500以下の風属性サイキック族を1体リクルート。 積極的に墓地を利用するガスタデッキで除外コストを要求されるのは少し痛いが、コストにするのはこのカード自身でもOK。 特殊召喚先のレベルや攻撃力の制限がなく、上記のステータスを満たしていればウェンなどのガスタ以外のサイキック族も特殊召喚できたりする。 ●《ガスタの巫女 ウィンダ》 効果モンスター 星2/風属性/サイキック族/攻1000/守 400 このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「ガスタ」と名のついたチューナー1体を特殊召喚できる。 レベル2のサイキック族。 相手によって戦闘破壊されると、チューナーのガスタを1体デッキから特殊召喚。 詳しくは項目参照。魔法・罠カードのイラストに描かれていたり他のテーマに関連カードがあったりと、何かと出番が多い。 ●《ガスタの希望 カムイ》 効果モンスター 星2/風属性/サイキック族/攻 200/守1000 リバース:デッキから「ガスタ」と名のついたチューナー1体を特殊召喚する。 レベル2のサイキック族。 リバースする事でチューナーのガスタを1体デッキから特殊召喚する。 詳しくは項目参照。ガスタで唯一のリバース効果モンスター。 ●《ガスタの神裔 ピリカ》 効果モンスター 星3/風属性/サイキック族/攻1000/守1500 このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地から風属性のチューナー1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。 この効果を発動したターン、自分は風属性以外のモンスターを特殊召喚できない。 「ガスタの神裔 ピリカ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。 レベル3のサイキック族。 召喚・特殊召喚に成功した時に風属性チューナー1体を墓地から特殊召喚する効果を持つ、【ガスタ】デッキのキーカードの1枚。 詳しくは項目参照。彼女はカムイとリーズの子孫という設定であり、後に霊獣使いの一員として再登場する。 ●《ガスタの静寂 カーム》 効果モンスター 星4/風属性/サイキック族/攻1700/守1100 1ターンに1度、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター2体をデッキに戻して発動できる。 デッキからカードを1枚ドローする。 レベル4のサイキック族。 墓地のガスタ2体をコストとしてデッキに戻し、その後カードを1枚ドローする。 詳しくは項目参照。ソリティアコンボデッキの主軸、スーレアという高レアリティ、きれいなお姉さんなイラスト……などの理由から登場当時は高額カードだった。 ●《ガスタの神官 ムスト》 効果モンスター 星4/風属性/サイキック族/攻1800/守 900 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。 自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を選択してデッキに戻し、 フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してその効果をエンドフェイズ時まで無効にする。 レベル4のサイキック族。 墓地のガスタを1体デッキに戻し、モンスター効果を無効化。下級ガスタで最高の攻撃力を持つイケメンおじさん。 ヴェルズ・オピオンなどの厄介な効果を持ったモンスターに対して有効な1枚。 このカードはカームと違いコストではなく効果処理でガスタをデッキに戻すため、ガスタのシンクロやエクシーズも回収できる。 ●《ガスタの疾風 リーズ》 効果モンスター 星5/風属性/サイキック族/攻1900/守1400 1ターンに1度、手札を1枚デッキの一番下に戻し、 相手フィールド上のモンスター1体と自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。 選択したモンスターのコントロールを入れ替える。 レベル5のサイキック族。 手札のカード1枚をデッキの下に戻し、相手モンスターと自分のガスタのコントロールを1体ずつ入れ替える。 詳しくは項目参照。ガスタ専用の強制転移を内蔵したツインテールな筋肉娘。 ●《ガスタの賢者 ウィンダール》 効果モンスター 星6/風属性/サイキック族/攻2000/守1000 このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、 自分の墓地からレベル3以下の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を選択し、表側守備表示で特殊召喚できる。 レベル6のサイキック族。 戦闘によってモンスターを破壊したら墓地からレベル3以下のガスタを1体守備表示で特殊召喚。 上級モンスターとしては攻撃力が低いので、アドバンス召喚よりもグリフなどの効果を駆使し特殊召喚で場に出したいところ。 ちなみに彼がこのガスタ一族の族長。メインデッキに入るガスタの中では最も攻撃力とレベルが高いのも頷ける。 ☆シンクロモンスター☆ ●《ダイガスタ・ファルコス》 シンクロ・効果モンスター 星4/風属性/サイキック族/攻1400/守1200 チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上 このカードがシンクロ召喚に成功した時、フィールド上の全ての「ガスタ」と名のついたモンスターの攻撃力は600ポイントアップする。 レベル4シンクロ。成長したファルコとファルコに騎乗したカムイ君。 シンクロ召喚成功時、自身を含むフィールド上のガスタ全員の攻撃力を600上げる。 アタッカーでありながら奈落に落ちなかったりと利点は無くはないが、採用率はイマイチか。 このカードを採用するなら、レベル4を活かしてエクシーズ召喚を狙ったりラプラムピリカで呼び出して一気呵成に攻め立てるような戦術を用意しておきたい。 ●《ダイガスタ・ガルドス》 シンクロ・効果モンスター 星5/風属性/サイキック族/攻2200/守 800 チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上 1ターンに1度、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター2体をデッキに戻して発動できる。 相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。 レベル5シンクロ。成長したガルドとガルドに騎乗したウィンダ。 1ターンに1度、墓地のガスタを2体デッキに戻した後で選択した表側表示の相手モンスター1体を破壊できる。 表側のモンスターしか破壊できないが、やはり除去は強い。 反面、ステータスは高くないため罠カード等でフォローしたい。 ●《ダイガスタ・スフィアード》 シンクロ・効果モンスター 星6/風属性/サイキック族/攻2000/守1300 チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上 このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたカード1枚を選択して手札に加える事ができる。 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。 また、このカードは戦闘では破壊されない。 レベル6シンクロ。ヴァイロンに力を与えられ、ヴァイロン・スフィアを装備したリーズ。 多くの効果を持つが、中でも戦闘ダメージを反射する特異な効果が光る。 詳しくは項目参照。その性能から【ガスタ】デッキのエースとして活躍する1枚。 ●《ダイガスタ・ラプラムピリカ》 シンクロ・効果モンスター 星6/風属性/サイキック族/攻1900/守2600 チューナー+チューナー以外の「ガスタ」モンスター1体以上 自分は「ダイガスタ・ラプラムピリカ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。 (1):このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。 「ガスタ」モンスターを手札及びデッキから1体ずつ効果を無効にして特殊召喚し、その2体のみを素材として「ガスタ」Sモンスター1体をS召喚する。 このターン、自分は風属性モンスターしか特殊召喚できない。 (2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの他の「ガスタ」Sモンスターは相手の効果の対象にならない。 レベル6シンクロにして、OCG第11期で追加された新規カードの1枚。成長した精霊獣ラムペンタに騎乗したピリカ。あれ? チューナーは? イラストやカード名、特殊召喚制限などピリカが属していたセフィラや霊獣を思い起こさせる要素が多い。 ガスタを使った連続シンクロでガスタのシンクロモンスターを展開でき、そのガスタシンクロに耐性を与える効果から攻めに向く。 ただし、連続シンクロの素材の1体は手札に持っておく必要があったり自身には耐性が付与されなかったりステータスが中途半端だったりと、意外と欠点も目立つ。 ●《ダイガスタ・イグルス》 シンクロ・効果モンスター 星7/風属性/サイキック族/攻2600/守1800 チューナー+チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上 1ターンに1度、自分のエンドフェイズ時に自分の墓地の風属性モンスター1体をゲームから除外して発動できる。 相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して破壊する。 レベル7シンクロ。成長したイグルとイグルに騎乗する我らが族長。 自分のターンのエンドフェイズに1度、自分の墓地の風属性モンスター1体を除外して相手の裏側表示のカードを1枚破壊できる。 除外コストは墓地利用の【ガスタ】デッキと相性が悪いが、サイキック族ガスタを除外しサイコパスに繋ぐといった使い方もある。 発動タイミングがエンドフェイズと遅いのは難点だが、除外するモンスターは風属性であれば種族やカード名を問わない。 ☆エクシーズモンスター☆ ●《ダイガスタ・フェニクス》 エクシーズ・効果モンスター ランク2/風属性/炎族/攻1500/守1100 レベル2モンスター×2 1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の風属性モンスター1体を選択して発動できる。 このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。 ランク2エクシーズ。ラヴァルのコアトルとオーバーレイしたファルコ……らしい。貴重な風属性・炎族の1体。 素材を1つ取り除き、風属性モンスター1体に2回攻撃の効果を付加できる。 詳しくは項目参照。オエー鳥とか言うな。 ●《ダイガスタ・エメラル》 エクシーズ・効果モンスター ランク4/風属性/岩石族/攻1800/守 800 レベル4モンスター×2 (1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。 ●自分の墓地のモンスター3体を対象として発動できる。そのモンスター3体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。 ●効果モンスター以外の自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。 ランク4エクシーズ。覚醒したジェムナイトのエメなんとかさん。通称「真のエメラル」。これまた貴重な風属性・岩石族の1体。 素材を1つ取り除き、「墓地のモンスター3枚を回収した後に1枚ドロー」か「効果を持たないモンスターの蘇生」のどちらかを行える。 詳しくは項目参照。墓地のモンスターに関する優秀な効果を持つが、後半の効果の対象にできるガスタが存在しない悲しみ。 ☆魔法カード☆ ●《ガスタの交信》 通常魔法 自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター2体と相手フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。 選択した墓地のモンスター2体をデッキに加えてシャッフルする。 その後、選択した相手のカード1枚を破壊する。 墓地のガスタを2体デッキに戻して相手のカードを1枚破壊する魔法カード。 ガスタサポートの中でも比較的強力な1枚といえるが、カームやガルドスと回収先の奪い合いにならないよう気を付けたい。 イラストのウィンダがかわいい。そしてかっこいい。 ●《ガスタの追風》 装備魔法 「ガスタ」モンスターにのみ装備可能。 このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):装備モンスターは相手の効果では破壊されない。 (2):装備モンスターのレベル・ランクによって以下の効果を発動できる。 ●4以下:装備モンスターとは種族が異なる「ガスタ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。 ●5以上:デッキからレベル1チューナー1体を特殊召喚する。 (3):墓地のこのカードを除外し、手札から風属性モンスター1体を捨てて発動できる。デッキから「ガスタ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。 有用な効果を3つも持った装備魔法。OCG第11期で追加された新規カードの1枚。 除去耐性付与もリクルートもサーチも説明不要の強さだが、特に(3)の効果によってテーマ内でグリフを活用できるようになったのは嬉しいところ。 イラストではリーズが追風に乗っている。瞳の色がスフィアードの赤色に近い赤紫色に変化しており、おそらくシンクロ召喚の瞬間を描いたのだろう。 ☆罠カード☆ ●《ガスタへの祈り》 通常罠 自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター2体を選択し、その2体をデッキに加えてシャッフルする。 その後、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。 墓地のガスタを2体デッキに戻して墓地のガスタを1体蘇生する罠カード。 蘇生カードとしては死者蘇生や戦線復帰といった汎用カードの方が優先されがち。 イラストではカームが祈っている。地味に彼女の服装が異なっており、腹部に布地が追加されている(カームはへそ出し)。 ●《ガスタのつむじ風》 通常罠 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。 自分の墓地の「ガスタ」と名のついたモンスター2体を選択してデッキに戻す。 その後、デッキから守備力1000以下の「ガスタ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。 自分の場にモンスターが居ない時に墓地のガスタを2体デッキに戻し、守備力1000以下のガスタを1体リクルートする罠カード。 効果自体は悪くないものの、リクルーターで場にモンスターを維持するガスタとの相性があまり良くないのが欠点。 イラストのウィンダがかわいい。イラスト人気が高い罠カードの1つ。詳細はウィンダの項目を参照。 ●《ガスタの風塵》 通常罠 このカードを発動したターン、自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスターの攻撃宣言時に相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。 発動ターン、相手はガスタの攻撃宣言時に魔法・罠・モンスター効果が発動できなくなる罠カード。 文字通り「攻撃宣言時」にしか効果を及ぼさない点がこのカードの評価を大きく下げている。ダメステいいっすか? イラストではウィンダールが風塵を起こしている。族長頑張ってます。 主なデッキ構成・戦術等 1.シンクロ召喚軸 状況に応じてチューナーor非チューナーのガスタをリクルートし、それらを素材にシンクロ召喚に繋げる。 【ガスタ】デッキの基本型。 2.グリフ軸 グリフを手札から墓地に送り、ガスタを特殊召喚するタイプ。相手の攻撃を待つ事無く能動的にリクルートする動きができる。 手札コストはもちろん、融合素材や儀式召喚のリリースなど多種多様なカードと組み合わせられるコンボ性の高さが売り。 3.上級モンスター軸 リクルート効果を活かして場を維持し、帝モンスターなどの上級モンスターをアドバンス召喚していく。 特に、同じ風属性である烈風帝ライザーとは相性が良い。 4.コントロール転移 リクルーターであるイグルやガルドなどを相手の場に送りつけてからリクルート効果を使わせ、アドバンテージをとっていく。 スフィアードやリーズの存在もあり、相手のモンスターを利用して勝負を決めに行く戦い方は得意。 5.メンタルマスター&カームワンキル 詳しくは、カームの項目を参照。 現在は構築不可。 その他相性の良いカード ●「SR」 遊戯王ARC-Vより登場した、ガスタと同じくシンクロ召喚を主体とした風属性テーマ。 能動的な特殊召喚や攻撃性能に長けたカードが多く、上手く組み合わせればデッキの展開力は大きく上昇する。 ガスタとは関係ない【SR】デッキにもよくピリカが出張戦力として採用されていたりと、お馴染みの組み合わせである。 ●「WW」 SRと同じく、ARC-Vより登場の風属性テーマ。 アイスベルの効果を利用すれば、壁となるリクルーターをセットしつつ下記のクリスタルウィングをシンクロ召喚できる。 ガスタのチューナーには存在しないレベルを持つグラスベルや能動的な特殊召喚効果を持った下記のスノウベルと、魅力的なチューナーたちの存在も見逃せない。 ●「音響戦士」 シンクロ召喚を主に、モンスター召喚の補佐を得意とした機械族の風属性モンスターたち。 【ガスタ】デッキとの混合デッキを組む際には、手札のグリフをコストに効果発動ができるギータスの存在が大きい。 また、ステータスを変化させる他の音響戦士たちと組み合わせれば、様々な種族・属性のシンクロモンスターを繰り出す事もできるようになる。 ●「壊獣」 その多くが相手フィールドに特殊召喚できる効果を持った、最上級モンスターたち。 高攻撃力のモンスターを送り付け、スフィアードらの自爆特攻が成功すればワンキルによってあっという間にゲームエンドを迎える事も。 ●「ドラグニティ」 ガスタと同じく、DTを初出とする風属性テーマ。 竜の渓谷やドラグニティナイト-ガジャルグ、嵐征竜-テンペストといったデッキのキーカードたちとグリフの相性が良い。 ●「炎王」 被破壊をトリガーとする炎属性テーマ。 炎王の孤島が鳥獣族ガスタやスクレイルのサポートとなり、フラクトールとテンキを共有させられ、歌氷麗月の特殊召喚先も広まる。 ●《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》&《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》 アニメARC-Vにて登場した風属性のシンクロモンスターたち。 クリアウィングの効果範囲にはスフィアードやガルドスも含まれるため、エースモンスターを守りながら戦う事ができる。 クリスタルウィングはシンクロ主体の【ガスタ】デッキなら召喚難度も低く、強力なフィニッシャーとなってくれる。 ●《WW-スノウ・ベル》 上記のWWに属するチューナーで、風属性のシンクロモンスター及びシンクロ召喚を補助する効果を持つ。 このカードを素材にスフィアードや上記のシンクロ・ドラゴンたちをシンクロ召喚できれば、強固な耐性を得る事ができる。 カムイやピリカの効果の発動直後なら、このカードの特殊召喚条件も難なく即座にクリアできる。 ●《風霊媒師ウィン》 風属性デッキをサポートする効果を得て再登場した風霊使いウィン。 手札の風属性モンスター1体と共に捨てる事で守備力1500以下の風属性1体をサーチする効果と、風属性モンスターの戦闘破壊時に自身を特殊召喚できる効果を持つ。 サーチ効果の強力さは説明不要だが、癖も無くグリフを能動的に捨てられる風属性モンスターという非常にありがたい1枚。 ●《ダーク・シムルグ》 闇属性と風属性をコストに特殊召喚され、相手のセット行為を禁じる効果を持った鳥獣族モンスター。 ガスタには存在しない闇属性も、他所のチューナーやシンクロ、リンクモンスターを採用すれば補えるため呼び出すのは苦ではない。 場に存在しているだけで相手にロックを仕掛けられるが、いざという時は高レベルのシンクロ召喚素材に使うのも手か。 ●《アルティメット・サイキッカー》 3つのメリット効果を持った、サイキック族の最上級融合モンスター。 シンクロモンスターを含め多くのガスタがサイキック族なので、ミラクルシンクロフュージョンを使えば簡単に融合召喚できる。 このカードを採用するなら、破壊以外の除去効果を持ったカードへの対抗手段があるとより心強い。 ●《王神鳥シムルグ》 主に鳥獣族に関する3つの効果を持った、シムルグのリンクモンスター。 エンドフェイズに発動できる効果で鳥獣族のガスタをリクルートでき、自身のリンク先にリクルートすればそれらを相手の効果から守る事もできる。 ●《強制転移》 お互いのプレイヤーが自身の場からモンスターを1体ずつ選び、それらのコントロールを入れ替える魔法カード。 ガスタデッキでは主にガルド、イグル、サンボルトを送りつけて能動的にリクルート効果を使う為に採用される。 このカードを扱える点が、同じリクルーターデッキである【竜星】デッキとの差別化となるポイントの1つ。 ●《チューナーズ・ハイ》 手札からモンスター1体を捨て、そのモンスターと同じ種族・属性でレベルが1つ高いチューナー1体をデッキから特殊召喚する魔法カード。 【ガスタ】デッキでは主にガルドを特殊召喚しつつ、グリフを捨ててグリフの効果発動を狙って採用される。 上記の流れは墓地と場の状況次第ではスフィアードに繋げてワンターンキルも視野に入る、爆発力の高いコンボになる。 ●《脆刃の剣》 装備モンスターの攻撃力を2000も上昇させる代わりに一定条件で自壊し、発動したプレイヤーにも戦闘ダメージが発生するという、2つのデメリットを持つ装備魔法。 一見するとデメリットの大きいカードだが、【ガスタ】デッキならこのカードのスペックを充分に発揮できる。 スフィアードに装備して直接攻撃するか相手モンスターに装備して立て続けに自爆特攻する事で相手に致命傷を与える事ができる必殺の1枚。 ●《緊急テレポート》 デッキまたは手札からレベル3以下のサイキック族を特殊召喚する速攻魔法。 対応するガスタは多くないもののピリカを特殊召喚できれば効果も発動できるため、採用価値は高い。 召喚権も使わず能動的にカードを展開できるので、基本的にはフル投入推奨。 ●《Ai打ち》 アニメVRAINSに登場した「Ai」カードの1枚。戦闘するモンスター同士を相打ちさせてバーンを発生させる効果と@イグニスターを戦闘破壊から守る効果を持つ。 イグルやガルドと相手モンスターを相打ちさせて能動的に効果を使ったり、スフィアードと併用してアニメのAiよろしく一方的にぶん殴る!事ができる。 後半の効果はガスタとは無関係だが、@イグニスターには汎用性の高い風属性シンクロのウィンドペガサスがいるので併用すれば使う機会が来るかもしれない。 ●《風霊術-『雅』》 貴重な風属性サポート効果を持つ罠カードで、場の風属性1体をリリースして相手の場のカード1枚をデッキの1番下へ吹き飛ばす。 ガスタは一部を除き除去に弱いため、相手の除去効果を誘ってチェーン発動しサクリファイス・エスケープできれば理想的。 手札から捨てられずに腐っているグリフをこのカードのコストに充てるといった荒業も可能。 ●《リミット・リバース》 墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を攻撃表示で蘇生する永続罠。ただし蘇生したカードが守備表示になると自壊してしまう。 だが自壊を逆用し、ガルドやファルコ、スクイレルの効果を能動的に発動させる事ができる。 もちろん効果のよく似たリビングデッドの呼び声などと同様に、蘇生したモンスターをシンクロ召喚の素材や各種リリースコストに使っても良い。 弱点 「除外」や「特殊召喚メタ」が挙げられる。 また、リクルート効果をピンポイントで潰してくる青眼の精霊龍やメロウガイスト等のカードも天敵といえる。 次元の裂け目やマクロコスモスを発動されるだけでリクルートが出来なくなり、墓地のガスタが必要なカーム等の効果も使えなくなってしまう。 現在ではM・HERO ダーク・ロウが闇属性の下級モンスターの入ったあらゆるデッキから登場し得るため、対策は必須。 連鎖除外でガルドやピリカをまとめて除外されても致命傷になる。 上でも触れているが、シンクロ召喚主体の構築の場合、オピオン擁する【ヴェルズ】デッキの相手が非常に苦しくなる。 さらに、虚無空間やクリスティア相手ではシンクロ召喚はもちろんの事効果によるリクルートまで行えなくなってしまう。 そして、風属性の特殊召喚封じと弱体化を行うメタカードである猛毒の風は、カームが苦められているイラスト通り相性最悪の1枚。 マイナーなカードのため対戦中に見かける事はあまりないだろうが、発動されたらサイクロンなどを使い最優先で除去したい。 風霊使いウィンとの関係について ご存じ霊使いの風属性担当である少女、風霊使いウィン。 ルール上はガスタとは無関係な彼女であるが、実はこのテーマと密接な関わりのあるカードである事が公式で説明されている。 実は彼女の正体はガスタ一族族長であるウィンダールの娘。つまり彼女はガスタの族長一族の出自であり、ウィンダとは姉妹の関係にあたる。 その事実が記されたDTマスターガイドによると、「家系に縛られるのを嫌って外の世界に旅立った」との事。 大人しそうな風貌をしながらとんだハリキリ☆ガールである。 ちなみにDTでガスタのカードと共にウィンをスキャンしても、ちゃんとガスタのデッキやアクションデュエルにおけるガスタ専用コンボが出現する。 そんな経緯から、あるいは単純にウィン姉妹への愛から、ウィンを入れた【ガスタ】という実にウィンウィンなデッキを組んだり組もうとした者は少なくない。 家出少女の里帰り、そして生き別れた姉妹の感動の再会である。 だがしかし、現在のカードプールでそのようなデッキを組もうとすると強い逆風が立ちはだかる。 それは、「有用な効果を持つ代わりに他属性の使用を制限する風属性サポート」と「より多くの属性を扱うほど強くなる霊使いサポート」の相性の悪さである。 ただウィンのカードを混ぜて使うだけならまだしも、「両者の利点・特徴を活かして活躍させる」デッキを組むとなるとハードルが一気に跳ね上がるのである。 一方で、蒼翠の風霊使いウィンと風霊媒師ウィンはどちらも風属性デッキで活用するカードであるため、むしろガスタたちとの相性は良好。 憑依覚醒-ラセンリュウもWWやウィン本人といった魔法使い族を採用すれば容易に特殊召喚でき、サーチ対象の風霊術も風属性デッキならではのカードである。 「ウィンとウィンダを共闘させる」目的のデッキを組みたいのなら、これらのカードを採用した方が無難だろう。 成長した彼女が以前の噛み合わせの悪さを克服し、かつての故郷で同族の仲間たちを支えながら共に戦う構図になるのは中々洒落ているのではなかろうか。 その他 デュエルターミナルのミニゲーム「ふわふわガスタ」のナレーションから、ウィンダとウィンダールは親子関係である事が明らかになっている。 敵対関係にあったリチュアとは後に和解しており、ピリカのイラストに描かれている髪留めはリチュアに属する親友から贈られたものである。 この髪留めは両種族にとって、「平和の証」ともいえる存在になっている。 このテーマの紹介文から、氷結界とミスト・バレーがミストバレー湿地帯によって地続きなことが判明した。 また、ミストバレー湿地帯も背景から察するに緑豊かな土地である事がうかがえる。 Vジャンプの企画で行われた最強カリスマ決闘者決定戦では、第5回目にて流星が【ガスタ】デッキを使用し、なんと優勝を果たす大健闘を見せる。 ……が、対戦前に女性口調でスフィアードのモノマネ(?)をしたり、対戦中はウィンダやカームに萌えたりと、終始気持ち悪い言動を繰り返していた。 その惨状に対戦相手や観戦していたカリスマ、そして視聴者達はドン引きしたという。 ストラク投票第二弾にて候補に挙げられていたが、結果は3位と惜しくも商品化にはならなかった。しかもALBA STRIKEや宝玉の伝説が優先して商品化されどうしてもガスタのストラク化を希望するプレイヤーも 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 風霊使いウィンがガスタの出身だった -- 名無しさん (2013-05-01 11 46 59) 新規カードのせいでスフィアードを連打するデッキになりそうだ -- 名無しさん (2013-12-21 22 24 30) ピリカさん強いです(*^^*) -- 名無しさん (2014-03-27 17 38 55) ピリカってカムイとリーズの子孫らしいな… -- 名無しさん (2014-03-27 18 22 38) ↑ショタを襲う筋肉娘か… 大好物です。 -- 名無しさん (2014-06-14 20 24 26) ミドラージュはガスタの関係者なのかな?もしかすると、本当にウィンダなのか? -- 名無しさん (2014-08-04 22 56 39) 霊獣使いウェン≒エルシャドール・ウェンディゴの例を見るに、ガチで改造されたウィンダの可能性が…… -- 名無しさん (2015-11-06 11 44 54) 絵が可愛いしリクルーターループで守ってから攻めるのも好きだ -- 名無しさん (2016-09-01 21 57 02) 今の環境でワンチャンあるのはコントロール転移軸かねぇ。スフィアードでのダメ押し付け特攻も決まると気持ちいいが、いかんせん新ルールが・・・ -- 名無しさん (2017-04-09 22 29 50) まだ新ルールにもんく言ってるのいるのか…… いやならやめればいいのに -- 名無しさん (2017-08-27 08 10 52) ↑投稿日付も読めないガキ -- 名無しさん (2017-10-11 23 00 29) ガスタ新規で満足するしかねぇ! 鳥さんの自爆特攻が更にしやすくなったなぁ。今までスフィアードとその他ガスタを並べるのが意外にめんどくさかったんだよね -- 名無しさん (2021-04-11 07 27 33) マスターデュエルでスフィアードに脆刃ワンパンされてここに行き着いた まあ面白いテーマではあるよね(震え声) -- 名無しさん (2022-02-01 10 14 29) 幾らまってもガスタのストラクがでねー、なんでや~! -- 名無しさん (2022-06-30 17 10 04) 何故かコメントが全て消されていたので復元 ガスタストラク希望 -- 名無しさん (2022-09-05 15 59 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第三話 たずさえぬ手と手 その日のGBCの限定攻勢中継は異様な緊張感の中で行われていた。 未開惑星である地球で、銀河列強有数の大国である帝政ツルギスタンが敗れた。 これは由々しき事態であり、この2週間というもの、GBCはダイガストの情報収集に躍起になっていたし、 列強の市民たちも辺境での椿事に興味津々であった。 しかしダイガストが所属するという『大江戸先進科学研究所』の情報封鎖のヴェールは厚く、 今もってその全貌は掴めない。…その方が視聴率的にも注目を集める、GBCはむしろ、そう開き直っていた。 例によってレポーターが日本とツルギスタンの参加兵力を読み上げてゆく。 「帝政ツルギスタンは前回と同じくランツェタイプの儀仗兵が5機に、 アフバルト・シュバウツァー大刃士が搭乗するブレーディアンという変わらぬ布陣です。 解説のリッケントロップさん、これはどういう事でしょうか?」 「汚名返上の機会では?ツルギスタンでは名誉も重んじられますし」 「なるほど。さて、問題の日本国ですが…やはり今回もダイガストの名前があります。 それと90式装甲戦闘車両、AH-1Sコブラ対戦車ヘリコプター。 それにしてもダイガスト、未だ謎のヴェールに包まれております」 「圧倒的な戦闘能力でしたが、未開惑星の科学技術とは思えません。先日の特番でも示唆されておりましたが、 やはり列強の植民地支配より逃れた亡命者による技術供与があったと考えるのが妥当でしょう。 GBCでは地球への亡命者が60年ほど前に存在したことを掴んでいます。 彼らの亡命先はアメリカ合衆国、エリア51という疎開地であり、また彼らの技術供与により、 アメリカ軍は限定戦争でも善戦をしています。かのダイガストも、同じような経緯ではないでしょうか?」 90式戦車の砲手席で私物のワンセグ携帯でGBCを見ていた若い二尉は、苦笑いを浮かべて自分の後方ちょっと上にある戦車長席を見上げた。 「聞きましたか戦車長、ロズウェル事件は本当だったそうですよ」 話を振られた東和樹三佐はどんな顔をしたものか判らず、力無い笑いを浮かべる。 「マスコミの言うことなんて、いちいち真に受けるな。 この調子じゃツングースカの爆発まで亡命者の仕業と言いかねんぞ」 「そういやロシアも何のかんのと上手いこと凌いでますよね。やっぱりツングースカには…」 「ロシアは国土の縦深が深いだけだ。独ソ戦の時と同じく、下がりながら戦っているだけだよ」 言いつつ東は部隊内に蔓延している楽観ムードに心の中で舌打ちする。 ダイガストの参陣が自衛官達から緊張感を奪っていた。2週間前の虚脱状態と比べるのは酷だが、しかし楽観は同じくらいに危険だった。 東は部隊を率いる隊長なのでまだしも、果たして彼と同じような危惧を抱いている隊員は、青森平野に布陣した陸上自衛隊の中にどれ程いるものか。 「しっかし…」砲手はGBCのテレビ番組に目を落としながら言った。「せっかくスーパーロボットなんてもんと 共闘するのに、打ち合わせも無くて良いんですかね?」 「ぶっつけ本番で人型兵器との共同作戦なんてとれるか。 符牒は? 通信帯は? 作戦は?何よりあっちは民間だぞ。アニメじゃないんだ、ホイホイ共闘できるかよ」 「アニメじゃない、ホントの事さー…でも現実は夢も浪漫も無いんですね」 「お前の現実は120㎜滑腔砲のトリガーだってことさ」 ちょうど話がひと段落つくところで、彼らの上に爆音が響き始めた。 何事かと東がコマンダーズキューポラから空を覗いてみると、彼の目に飛び込んできたのはスコップの先端のような、マンボウを横に寝かせたような、ともかく奇怪な大型航空機だった。 大型機は見る間に高度と速度を下げると、失速寸前で機首を上げつつ後部ハッチを開いて、あのダイガストに合体した『形だけは90式戦車』を放り出す。 ああ、ああやって馬鹿でかい戦車を持ってきていたのか。東は変なところに感心する。 失速寸前といっても巨人機は110ノット――時速、約200キロ――は出しているだろう、それで大地に放り出されるのだからあの巨大戦車は無事なのかと勘ぐってしまうが、着地の寸前に覆帯にロケットパンチ――ブラストマグナム――の時に発生した力場と同じ発光現象が確認できた。おそらく衝撃は本体とは別の部分が受け取ったのだろう。 「まったく、民間はやる事なす事、豪勢で羨ましいな」 東は呆けたように呟いた。 「まったく、金があるのならダイガストに飛行能力くらい付けらるもんを」 大江戸博士は不機嫌そうに呟いた。 手狭な部屋には壁面と一体化したディスプレイが配置され、その前には女性が席について、画面と繋がっているであろうパソコンのインターフェースをいじっている。艶やかな黒髪を長く伸ばした乙女…笠置透(カサギミナモ)嬢であった。 「『獅子王』、着陸しました。慣性制御フィールドは順調稼動。サスペンションに疲労は有りません」 透は部屋の中央、手狭な部屋を更に狭くしている台座の前に立つ白衣の怪人物に報告する。 怪人物などと対象の人格を否定するかのような表現ではあるが、何しろ白黒ストライプの頭髪を、講談の由比正雪みたいに伸ばしたおっさんである。怪人物としか言いようがない。 自称地球が宇宙に誇る碩学、大江戸多聞博士は、白衣に手を突っ込んだまま台座の上をつまらなそうに眺めては、何やらぶつくさと呟いている。部屋にいるのは、この二人だけだった。 「くだらん。つまらん。どいつもこいつも杓子定規に時間と場所を合わせてヨーイドンで戦争。 攻撃側が侵攻地域を指定、防御側が攻撃側の戦力発表に応じて防衛戦力を配置、攻撃側の戦力変更は不許可… なんだかんだと公平なルールとか言っとるワリに、防御側が守り切っても逆侵攻は禁じられている。 結局は攻めて来た側、列強諸国に利する不平等なルール。付き合うほうがバカバカしいわ」 作業台ほどの台座の上面は液晶になっていて、今日の限定攻勢に関する両国の諸元が表示されている。 その中には日本側の戦力表示である青い三角――古今東西、友軍とは青であり、敵軍とは赤である――の集団から徐々に遠ざかる大きな三角が映っている。 インフォメーションには大鳳(タイホウ)との表示。 つまりはこの部屋を含み、獅子王と呼ばれた巨大戦車を空輸してきて、東三佐を呆然とさせた、大型の輸送機のこと。 東三佐は豪勢と言っていたが、実際のところは米国製C-17輸送機を川崎重工が (※この物語はフィクションです。実際の団体とは云々かんぬん) 研究用として購入したのを、研究終了に伴い大江戸研究所で買受け、いわゆる魔改造を施したものである。 ちなみに、自衛隊の次期輸送機開発計画を受領したのは川崎重工である。 生まれ変わったC-17輸送機は大江戸研究所の『研究実証用飛行試験体・大鳳』という、海の物とも山の物とも付かない物体となったが、同研究所の研究員達はその外見から『雷鳥2号』という不可解な愛称で呼んでいた。 さてその大鳳のメインの通信設備の前で、軍艦のCIC(戦闘指揮中枢)も真っ青の情報処理設備を取り仕切っているのが、大江戸先進科学研究所のアルバイトである透だ。彼女はヘッドセットのマイクのスイッチを入れると、 「鷹くーん、土岐さんは到着したよ」 と、なんとも気の抜けた報告をいれる。 彼女の前のモニターに苦虫を噛み潰したような顔の幼馴染が現れたのは、まぁ当然の流れであった。 「俺の機体の通信符丁は『太刀風』だと言ったろうが!」 「えー、鷹くんは鷹くんだよ」 「取り決めなの!通信記録が残ってるの!後で聞く人がいるかも知れないのっ!!」 「ふぅんだ、わたしはただの大学生ですー。鷹くんみたいに自衛隊から出戻りになった訳じゃないもん。 小難しいことはわかりませーん」 当事者同士にしか判らない痛いところを突かれ、鷹介は言葉に詰まる。 「お、お前、まだ根に持ってるのか?」 「…太刀風、通信は記録されているのでは?」 「うぐぁ…」 透は直ぐに事務口調に戻ったもので、鷹介は変な唸り声を上げるしかなかった。 総じて透は抜けた口調から『頭が残念な子』に思われがちだが、彼女の後ろに陣取る『宇宙に冠たる変人』の愛弟子であるからして、生半な秀才では勤まらない。 おそらく脳味噌の変わりに高性能な餡子が入っているのだろう。彼女のことを昔から知る鷹介には、そう思えてならない。ただ気掛かりなのは、彼女は国文寄りの歴史を学んでいた筈なのだが、何故に大江戸博士の研究室の扉を叩いたのかだった。 超考古学。だいたい学会では閉会1時間前にピストン発表されるイカモノの類である。 どうしてこうなった。 鷹介は自分の身の上に微かな後悔を感じつつ、F-15もどきである『太刀風』を青森の上空に進出させた。 アフバルト・シュバウツァーは今回は警告無しに行動していた。 ダイガストは紛れもなくツルギスタンの覇道に立ち塞がる敵である。過去の武人達の逸話のように、鉾を交えていない時なら友人の様に振舞う、そんな真似は出来そうに無かった。 ブレーディアンを先頭に立たせ、儀仗兵を二列縦隊にして後に従わせる。 モニター上のダイガストは既にあの巨砲を腰だめに構え、戦闘準備を整えていた。例によって砲口は真円を描き、水平射で直撃を狙っている。 モニター上のインフォメーションが、攻勢開始までの時間をカウントダウンしていた。多数の棒線で構成された彼らの数字は、どの文明でも同じなのだろう、時間経過と共にどんどんシンプルに変わってゆく。 すなわち、1に、0に。 「鷹介、『46センチ ヤマト砲』の照準、完了だ」 頭上からの虎二郎の報告を聞きつつ、鷹介はそれぞれの手に握ったサイドスティックを柔らかく握り直す。 本来なら弾道軌道で――飛ばすだけなら――40000メーターを飛翔する筈の砲弾を、精々2000メーターで直射するのだから、照準なんて有って無きが如しだ。 地球人類史上最大の艦載砲が何ゆえダイガストの携行火器となっているのか、それはいずれ語られる時も来るだろう。それよりも今は1,4トンの金属塊を、何として音速の2倍で異星人の侵略軍にお見舞いするか、これに尽きた。 何しろ今回は陸自のコブラが周囲を旋回している。 彼らには彼らの役目が有るのだろうが、しかし砲の発射時に生じる衝撃波に巻き込んでしまったら、回転翼機など一溜まりも無く弾き飛ばしてしまう。 悪いことに、自衛隊との協調は執られていなかった。 それは面子とかの生臭い話より、むしろ東三佐が指摘したような、極めて現実的な不具合だった。 ダイガストの性能諸元は当然不明のままであり、通信帯も判らないので通話手段が無い。 そもそも陸上自衛隊には異星人との交戦ドクトリンが無い。…ある訳が無いのだが。原則論の無い状態で協力のみを現場に求めるのは酷だ。 自衛隊側の法整備の不備にも問題があった。 日本国自衛隊の軍法や交戦規定に値するものは、警察予備隊の時分から曖昧なままである。戦場で彼らを守り、律するのは、あくまで日本国憲法であり、罰するのは警察である。自衛隊法では義務と責任を行使する機会が不明瞭であり、その名誉を保障するには余りに心許無い。極端な話ここで戦死したとて、白木の箱に収めて国旗に包み、その死が無駄でないことを国民に周知してくれるのかも定かでない。 その上で、誰がこれ以上の面倒と責任を請け負うのか? 青森平野に集まった自衛隊員達が、ダイガストの巨体をまるで他人事のように見上げていたとて、誰が責める事が出来ようか? そして当事者達に意思の疎通が無かったとて、侵略者達の茶番劇は放送時間通りにやってくる。 まるでスポーツの試合開始のように、戦闘開始を告げるサイレンが青森の空に響きわったった。 東三佐は戦闘開始と同時にヘッドセットのマイクにむかって声を張り上げた。 「前進用意、前へ!」 そして逡巡の後、全車に私用通信である一言を付け加えた。 「プロの仕事を、アマチュアに見せてやれ!」 十数両――中隊規模――の臨時編成された90式戦車達が一斉に黒煙をあげて前進を開始する。射撃指揮装置はいかなる戦車の機動でも、120mm滑腔砲の筒先を侵略者たちに据え付け、微動だにしない。 頭上にコブラを伴って進撃する90式戦車の姿は勇壮であり、時と場所が違えば自衛隊の広報映像であると勘違いしそうになる。 彼らの向かう先に広がる驚天動地の光景が無ければ、だ。 迫り来る剣を逆さにしたような化け物と、その後ろに連なる、槍を構えた首の無い西洋鎧をディフォルメさせたような巨人たち。そして化物の行進に立ち塞がる、スーパーロボットととしか言い表せない何か。 ああ、ああいうのに乗ってないと、ここにいてはいけないんじゃあ… 少なくない何人かが、漠然とそう感じていた。 と、唐突に彼らを現実に引き戻す、凄まじい号砲が響き渡る。 ダイガストが抱えた巨砲を発砲したのだ。通常装薬量、実に360kgが瞬時に燃焼し、砲口からこの世に煉獄の光景が生み出されるや、1,4トンの砲弾が音の壁を突き破り吐き出される。発砲の衝撃は大気を揺らし、分厚い空気の波となって90式戦車を叩くや、コブラのパイロット達を慌てさせるほどの気流の乱れを作り出した。 自衛隊員達が驚愕するのと同じころ、アフバルトもまた46センチの洗礼を受けていた。 砲弾とは装甲に対し垂直に突き立つ時に最大の効果を発揮する。数千メーターを弧を描いて飛来し、哀れな標的の直上に降り注ぐのが理想的な砲撃である。が、帝政ツルギスタンとの限定戦争に関しては、砲戦距離という言葉が意味を成さない距離で戦闘が開始される。 結果、砲弾は戦車砲のように水平に飛来し、装甲に対して垂直に食い込んでゆく。弾道軌道を描かないため位置エネルギーによる加速が無く、破壊力は理論値よりも低くなるが、まぁ1,4トンをぶつけられてもビクともしない質量塊というのにブレーディアンは含まれない。 砲弾は修理とともに増設したはずの複合装甲が、形成炸薬効果を減衰する前に物理的にそれを破壊し、機体表面に存在する限定的な慣性制御の力場を瞬時に飽和させ、ツルギスタンが誇る特殊鋼の装甲を直接食い破り、その内部で弾殻が爆発するや、モンロー/ノイマン効果に従い高温高圧の金属粒子を機体内部へと押し込んでゆく。 瞬時に機体表面は爆発で引き千切られた増加装甲でささくれ立ち、右肩辺りに引き裂いた粘土の様な破孔が開いていた。 機体の損壊にアフバルトはしかし凄絶な笑みを見せ、破孔の向こうに後ろの光景が見える事に虎二郎は舌打ちする。 「破孔が思ったより広がらない…バリアか!?ダメージを局限されてるぞ!」 「第二射、いきます」 鷹介は効果を気にせずにトリガーボタンを親指で押し込む。 ツルギスタンの兵器にも人間が搭乗している。その上で砲火に身を晒しての、無策な突撃などする訳がない。彼らは政治将校に見張られた共産国の軍人と言うわけでもあるまい。ならば考える頭を持っている。その突撃には意味がある。 さし当たっては、このままなら済し崩しに六対一の乱戦に巻き込まれてしまうだろう。 視界を朱に染める発砲炎の中、鷹介はいまだ突撃を続けるツルギスタン軍に、尻の座りが悪くなるような不安を感じていた。 第二射も過たずブレーディアンを打ち据え、その装甲を食い破った。下半身にあたる剣の刃のような部分が石榴のように裂けて黒煙と破片が噴出する。 が、行軍速度は衰えない。 46センチ砲弾という規格外の巨弾の再装填には時間を要する。機動戦には甚だ不向きだ。鷹介は次弾装填の時間は無いと判断し、ダイガストに46センチ砲を投げ捨てさせる。 既に敵は指呼の距離に接近していた。 「鷹介!ミサイルならまだ間に合う!」 虎二郎が悲鳴じみた声をあげる。 鷹介としては取り合っている暇がない。とっさに昔の癖が出た。 「ユーハブ!(この場合の意訳:任せた)」 「あ、アイハブ!?」 よくもまぁ母国語でないのに土壇場で出てくるもんだと、虎二郎は妙なことに関心しながらコンソールパネルから火器管制に直接指示を送る。その間にもダイガストは拳を固めて踏み出していた。 僅かな助走距離からGを感じるほどの加速に移ると同時に、ダイガストの後方の空間に波紋のような揺らぎが現れ、そこから4発のミサイルが飛び出した。 「次元背嚢(はいのう)転張終了、99式誘導弾/改を4発発射、目標は先頭のブレーディアン、残弾ナシ」 「了解、格闘戦に入ります」 二人は淡々と受け答えを続けながら、増大した相対速度の中を一気にツルギスタンの軍勢へと突っ込んでゆく。 突進の力をそのままに、繰り出した右の拳ごと、矢のようになって突き込む。同時に99式誘導弾/改――空自の標準装備のバンカーバスター仕様――がブレーディアンに殺到した。 連続して黒煙を伴う爆発が起こり、止めにダイガストの拳が唸りを上げて飛んでくる。 『わざわざ突撃を受け止める必要なんて無い。こっちから鼻っ面に一撃くれて衝力を砕いてやる』 鷹介の思惑を知ってか、ここで初めてアフバルトが動いた。こちらも突撃の速力そのままに、剣となった腕を袈裟懸けに振りおろす。 ぶつかり合った両者の得物が金属の火花を上げて弾き飛ばされた。互いの上体が反発力で仰け反り、その動きが瞬時、止まる。 直後、アフバルトの宣言が外部スピーカーからほとばしった。 「勝ったぞ!」 その言葉を待っていたように、儀仗兵が全速力でダイガストの両脇を素通りする。 「し、しまったぁぁああぁあぁぁああぁあぁああぁぁああああぁあぁあぁ!!」 大江戸博士の絶叫がコンソールのモニターから轟く。その余りの驚きように虎二郎が目を白黒させるほどだった。 「は、博士?」 「奴等の狙いはダイガストの撃破じゃない!戦線の突破だ!! ツルギスタンとの戦時協定では敵戦線を2キロ越えれば、攻撃側の勝利とある!!」 聞いてないよ、とか使い古しのギャグを言いたくなるのをグッと堪え、鷹介は直ぐに左手の操縦桿のトリガーボタンを押し込む。 左腕がブラストマグナムとして発射され、遠ざかりつつあった儀仗兵の最後尾の一機の背をまともにブチ抜いた。 右腕のみと思っていた射出拳が左腕にも装備されていたことにアフバルトは少なからぬ驚きを覚えたが、その拳が左肘に帰還する前にブレーディアンの腕の刃で叩き落す。 「再装填なぞさせん!」 重々しい音をさせてダイガストの左腕が土にめり込む。不首尾に大江戸博士のヤジが飛んだ。 「早く拾わんか!!ヤマト砲を構えろ!雑魚を撃ち漏らすな!!何のために飛び道具を用意したと思っとる!!」 しかし鷹介は対峙したブレーディアンとの決闘にまんじりとも動けず、虎二郎も大立ち回りを控えたダイガストの出力調整に神経を尖らせている。 地球人類が手にした暴力の中で間違いなく過去最高であるダイガストを操るには、大人二人でも手一杯であった。…それでも大鳳からの通信のボリュームを下げたのは二人同時であったが。 張り詰める緊張の中、ダイガストの右足が土に深く沈みこむ。 出る、そう思わせた瞬間に鷹介はバーニアのスロットルをメカニカルロックまで押し込み、ダイガストの巨体を全速で飛び退らせた。 フェイントに、しかしアフバルトは引っかからない。すぐさま突っ込んで、ダイガストに追いすがる。いや、フェイントで有ろうと無かろうと関係ないのだ。 今日の彼の役目は、ダイガストの足止めに他ならなかった。 復仇と、任務のために、ただ雄々しく戦い続ければよい。これほど楽なことは無い。何しろ彼は勇猛果敢であれと薫陶行き届いた、ツルギスタンの模範的貴族仕官であるのだから。 ブレーディアンの両腕が竜巻のように絶え間なく襲い来る。 ダイガストは右腕一本で刃を打ち払い、いなし、徐々に後退してゆく。それは落着した左腕との距離が開いてゆくことも意味する。拳に展開したフィールドが斬撃の負荷に光の飛沫となって飛び散り、右腕の装甲が火花をあげた。 「土岐さん、30mmレールガン、預けた!」 「諒解!」 寸刻みに戦力を削がれてゆくなか、虎二郎の照準でダイガストの胸部から電磁パルスを伴う弾丸が射出される。しかし46センチ砲弾ですら止まらないブレーディアンの巨体には足止めにもならなかった。 手数が足りない。鷹介はこの闘いに没入せざるを得ない状況に陥っていた。 それは同時に彼らの後方で行われる戦いが、過酷なものになることを物語っていた。 一機減って四機となった儀仗兵ランツェは、それでも見事な動きで横隊に移行し、陸上自衛隊へと突進を開始した。 土煙を上げて迫りくる巨人の集団。殆どの隊員達が頼りにしていたであろうダイガストは、敵の主力に吸引されていた。東三佐の脳裏に過去二度の戦いの悪夢が蘇る。 彼らの頭上で風を巻いてAH-1コブラが進出した。 「目標、前方の『槍持ち』…発射よーい…発射」 相対距離の関係で直ぐに射点に達したコブラ達は、機体の左右に吊り下げたTOW(対戦車ミサイル)を次々と発射した。 多数の白煙を引いて有線式のミサイルが飛翔する。前回のダイガストのミサイルによる儀仗兵各坐の戦訓から、目標は脚部と定まっていた。 低空でホバリングしながらミサイルの照準を続けるコブラに、儀仗兵の胴体から赤色の可視光線が延びたのはこの時だった。横薙ぎに振るわれたのはレーザーであり、まるで据え物斬りの様にコブラが溶断されていった。 TOWは着弾まで照準を続けねばならない、誘導兵器としては些か旧式の部類だ。当てようとするなら、大きな回避行動はとれない。 誰もがその危険性を理解していた筈である。しかし、結局、義務は履行され、コブラの搭乗員達は次々に『英雄』に散華してゆく。 ほんの何発かが儀仗兵の膝頭に突入したが、黒煙の後に現れたのは先んじて砕けた増加装甲だった。 「『槍持ち』は足に装甲を付けている!装甲の破壊を確認したのは、1番と4番!繰り返す!!1番と4ば…」 通信がノイズに変わる。 最後のコブラが火達磨になると、力を失ったローターの回転に引きずられ、くるくる回りながら大地に還っていった。 くそっ! 東は心中で舌打ちすると、彼らが命に変えて伝えてきた事をヘッドセットのマイクへと叫んだ。 「一小隊は『槍持ち』1番に、二小隊は4番、三小隊は2番、ついで3番の装甲を狙え!!」 東が直接率いる4台の90式戦車は儀仗兵の進路に直角に侵入し、 「小隊、『槍持ち』1番、徹甲、班集中、撃(て)ッ!!」 俗に殺人ブレーキと呼ばれる90式戦車自慢の急停車を見せるや、直後に4台が殆ど同時に44口径120mm滑腔砲を発射する。体感的には音も振動もただの一度きり。そして発砲炎を引き裂いてAPFSDS(Armor Piercing Fin Stabilized Discarding Sabot)が飛び出した。 タングステン製の矢のようなこの徹甲弾は、儀仗兵の膝頭に触れるや、速度でもって自身の形状を変形させながら、装甲の奥深くへと穿孔してゆく。異星の科学技術で作られた脚部は地球人の第4世代戦車の正面装甲より厚く、タングステンの浸透体は次々に装甲の半ばで質量の全てを変形し尽くし、運動エネルギー弾としての役目を終えてゆく。 しかし、誰の放った弾か、その一発だけはTOWが作り出した装甲の歪みの、ほんの僅かな凹みに浸透し、最後の数ミリを残った運動エネルギーとともに間接部の機械部品へと解き放った。 突如として儀仗兵の一体が片膝を着き、大地の上に身を投げ出すように転がった。 各車から歓声があがる。 が、それも直ぐに爆発音に掻き消された。 奇跡はそこまでだった。彼ら以外の小隊は儀仗兵の脚部装甲を貫徹できず、あるいは命中弾を得られずに、反撃…いや、駆逐の憂き目にあっていた。 破壊する筈だったロボットの足でもって蹴たぐられれば、質量差から簡単に複合装甲はひしゃげ、あるいは裂ける。そこに偏光器から照射される赤色破壊光線がものの数秒降り注いだら、あとは弾薬庫の砲弾が自分達ごと車体を誘爆させる。爆発音の正体はそれだ。 東はもはやどれだけ残っているかも判らない戦車中隊に指示を飛ばす。 「全車、『槍持ち』4番に集中…」 彼は最後まで命令を口にする事が出来なかった。 凄まじい衝撃に車体が浮くような奇妙な感覚を味わい、彼の意識は途切れていた。 各坐したはずの儀仗兵が寝転びながらに振り回した槍が、車体を吹き飛ばしていたのだ。 ハンス・グラーフ・ルドガーハウゼン大剣卿は執務室の豪奢なデスクでGBCの戦闘中継を視聴していた。 殖民惑星から取り寄せた巨木――原住民が信仰の対称にしていたらしい――から切り出した一枚物のデスクの上では、中空へと実体のないモニターが映像を投影している。 リポーターはツルギスタンの日本の防衛陣地突破による勝利を伝えていた。また、火中のダイガストとブレーディアンの『引き分け』を名勝負と褒めちぎり、しきりにゲストの巨乳タレントが黄色い声をあげている。 アフバルト・シュバウツァー発案による戦線突破案。消極的に過ぎると一部の幕僚から非難があがったものだが、最終的に妥当としたのはルドガーハウゼンだった。 GBCも盛り上げるのに必死であり、作戦は概ね『速攻』として報じられている。 まずは汚名返上。 ルドガーハウゼンは椅子に深く背をもたれると、安堵に小さな溜息をついた。 いずれはダイガストを撃破せねばならない。が、勝ってなんぼの銀河列強。今回の件もツルギスタンやその他の銀河帝国文明圏の臣民・市民達は、演出された苦戦と捉えているに違いない。 対策はその間に立てねばならない。誰しもに、本当の苦戦と気付かれるまでに。 と、鬱々として愉しまないルドガーハウゼンの元を、緊張した面持ちの幕僚が訪ねてきた。彼は北海道支配に関する進捗データを入力した端末――まさに色付きの半透明下敷き――を手渡すと、落ち着かない様子で上官の閲覧する様子を見守っている。 「ん?」 はたしてルドガーハウゼンは膨大な数値が入力された表の中に、気になるものを発見する。 「通貨の交換率が芳しくないな。情報の周知は徹底したのかね?」 「はっ。ホッカイドウ住民にはツルギスタンへの編入と、それに伴う『エン』の価値の消失を説明しております。 放送は一日に朝、昼、晩と三度。既に一週間に渡って告知を続けています」 「…ふむ、ではそれ以外に不備があった?」 「各市役所に充分なスタッフを派遣し『エン』と『ツルギスマルク』の交換を行っています。 交換レートは未開惑星格付けに照らし合わせ、10:1で」 「交換比率が彼らに受け入れなかったのか?」 「いえ…無いのです」 幕僚は実に控えめに答えた。 「何が、かね?」 ルドガーハウゼンは悪い予感を覚えていた。 「『エン』が、です。我々の『ツルギスマルク』と交換するための種銭が。 銀行や証券会社にも調べに入りましたが…日本国総理大臣の命令により、取引が凍結、 あるいはニホン本土に引き上げられた後でした」 音高く席を立ち、ルドガーハウゼンは驚きに戦慄いた。幕僚は続けた。彼自身、その事を信じられないのだが、言うだけだから苦労は要らない。 「大手金融機関ほど徹底して通貨と証券が引き上げられています。ご報告した通貨交換の数値は、 つまりは民衆のポケットマネーです。 麻痺した市場にはなけなしの『ツルギスマルク』を握った民衆が溢れていますが、 通貨量が圧倒的に足らず市場経済が成り立ちません。 現地通貨との交換を基本とした植民地市場計画は…破綻します」 「すぐに経済スタッフに市場復興に必要な金額を試算させろ! 配給計画の終了は当分先送りに。それと、GBCには絶対にスッパ抜かれるな!!全宇宙の笑いものになるぞ!」 幕僚は復唱の後、敬礼をすると、慌ただしく司令官の執務室から出て行った。 残されたルドガーハウゼンは喉の奥から搾り出すような怨嗟の声をあげるのだった。 「おのれクニバミチアキィィィッ!!」 敵はダイガストだけでは無かった。 まさに、ルドガーハウゼンにとって、最強の敵とは。 頭の中で割れ鐘が響いているようだった。 不快な鈍痛に耐えながら東三佐は、ようやっとガンナーシートから引きずり出した砲手を地面に寝かせた。 操縦手席には何かがブチ当たり、血の泥濘と化していた。そこにいた操縦手の痕跡は、たった一つの色のみ。 「…東三佐」 血の気の失せた顔で砲手は口を開いた。顔にあるべき色は、こちらは腹部に大量に移っていた。 「負けっちまいましたねぇ…」 「喋るな。すぐに回収班が来る」 東は自分がどんな顔をしているか判らなかった。ただ、無性に目頭が熱かった。たぶん、しこたまヘルメット越しに頭をぶつけたからだ、そうに違いない。 砲手はチラリと頭上を見上げる。 地響きをさせてダイガストが歩いていた。時折しゃがみ込んで、ひっくり返った90式戦車を起こし、ひしゃげた車体を指で器用に戻して回っている。 「あ~あ、不甲斐無いとか思われてるかなぁ…」 「そんな事は無い!誰にも言わせない!!」 東は砲手の手を握り、焦点を失いつつある部下の瞳に語りかける。 「俺たちは『槍持ち』を1機各坐させたろ。戦えるんだ、まだ、俺たちは!」 それは自分に言い聞かせているようなものだった。 「敵1両撃破だぞっ!俺が考課表に書いておいてやるからな!昇進も早まるぞ!!だから寝るなっ!まだ寝るな!!」 砲手は何時の間にか事切れていた。その顔に浮かんだ力ない笑みは、成し遂げた事への満足だったのか、東への同情だったのか。 東は慟哭した。 暗い表情で絶望的な救出活動を続ける鷹介は、ふと、誰かの泣き声を聞いたような気がした。 蹂躙された戦車とヘリを見るに、肉体を失った誰かの声が聞こえてもおかしくない状況だった。 ダイガストの損害は軽微だ。研究所に戻り、大江戸博士に嫌味を言われて、腕の装甲板を取り替えれば、戦力を取り戻すだろう。 しかし限定攻勢の結果は日本の敗北。ことに、ここまで生き残ってきた将兵の損失が痛い。 装備はまた作れば良い。しかし経験は直ぐには準備できない。ミッドウェーの大敗で、独ソ戦の泥沼で、枢軸軍が数値化できない貴重な戦力を失っていったように。 もっと上手く立ち回れなかったのか。 それは鷹介と虎二郎の心の奥に凝る、遣り切れない何かだった。 同じ頃、回収艇で帰還するツルギスタン将兵の中、アフバルトも煮え切らない感情を抱いていた。 決定的な破局はないが、決定的な勝利もない。僅かな時間斬り結び、ルールに則って勝利を得る。 おかしな事は何も無い。これが銀河帝国に属した人々が、長年にわたる不毛な小競り合いの後に見出した、文明人に相応しい闘争の形なのだ。 それでは自分の中に渦巻くわだかまりは何なのか。 アフバルト・シュバウツァーは、その理由を追求するのを無理に止めた。 青森平野を夕日が照らす。 大地が吸った幾多の血潮を映したようなその色は、やがて来るであろう北海道と同じ混乱を予感させた。 兵の血の色か、民を焼く火の色か。 しかし、安易に流血を否定するのなら、より過酷な現実が突きつけられる事となる。 ただ家畜であるべし、と。 次回予告 ツルギスタンの進駐に混乱を極める青森で、 広域指定銀河暴力団『モンタルチーノ商会』が跳梁跋扈を始めた。 水に落ちた犬を棒で突くような下種に、鷹介とアフバルトは図らずも怒りを共有する。 次回、地球防衛戦線ダイガスト 第4話 『誰がために『金』は成る』 この国を好きではいけないのですか?
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第十話 颯爽!ヘルマン・ファルケンハイム アフバルト・シュバウツァー大刃士――地球における軍制では大尉程度――が士官用のサロンに入ると、唐突に壁のような濃密な花の香りに襲われた。何事かと探さなくても原因は見つかった。色とりどりの宇宙バラの花束が保塁の様に積まれた向こうに、もはや優雅とは到底言えぬ状況にもかかわらず、涼しい顔で喫茶するヘルマン・ファルケンハイム大刃士の顔が見えた。 他にも士官室には主計や補給の士官たちが運悪く居合わせており、強すぎる宇宙バラの香りに居心地悪そうにしていた。 兵站部門は現在の第三外征旅団の中で最も忙しい部署だった。皇国の正気を疑う経済焦土作戦のあおりを受け、今も占領地の市民へと配給が滞らぬように輸送の手配に忙殺されているのだ。それもモンタルチーノ商会などという犯罪者を遣ってまで。 常ならば戦場の華であるアフバルトたち戦闘部隊でるが、イマイチ振るわない今となると、兵站の士官たちにこそ気を配ってやらねばならないだろう。 「何の戯れ事か、ファルケンハイム大刃士!ここは卿の私室とは違うだろう」 「僕の部屋ももう一杯でね」 ファルケンハイムは馬の面に何とやらで、花の香りですっかり潰れているだろう半発酵茶を啜っている。 そういや通路にまで花輪が立ててあったな。アフバルトは士官居住区の惨状を思い出して頭痛を覚えた。全ては出撃が近いファルケンハイムの熱烈なファンからの贈り物だった。 このブラウンの髪をラフに撫でつけて時代的な口ひげをたくわえた優男は、どれ程の奇矯な行動があろうとも第三外征旅団きってのスタアである。天賦の操縦手腕と、敵にも権力にも恐れ気のない立ち居振る舞いは、移り気なお茶の間のご婦人方のハートを潤して止まない。新帝国であるツルギスタンの中核たらんと期待された貴族子弟による士官学校での高等教育は、この放蕩無頼の男の本質を見事にオブラートで包み隠し、その一挙手一投足に洗練さの中に隠された少年心のようなモノを見え隠れさせるに役立っていた。 まぁ、所謂あれである、ギャップ萌え。 とはいえヘルマン・ファルケンハイムだって、好き好んでこんなひねた大人になった訳ではない。 貴族という既得権益の血筋を絶やさぬ予備として、それも妾腹の子供としてこの世に生を受けたヘルマンは、腹違いの兄が成人して結婚し男児が産れるまでは、家督を継ぐ可能性も無く、婿養子にもなれずの無聊を運命付けられていた。貧乏貴族ゆえに売られるも同然でファルケンハイム侯の妾となった彼の母に与えられたのは屋敷の離れであり、この待遇がまたヘルマンの眼に人の世を斜めに見せた。 結果、彼の少年時代は似た境遇の貴族の二男、三男たちと徒党を組んで無頼を気取り、荒れに荒れる。 まぁ、所謂あれである、キレる少年達。 多少の暴力沙汰は各家とも体裁があるため、黙っていても揉み消してくれた。 そのまま順調にワルの道を転げ落ちていったのなら、いつかどこかで『お忍び中の天下の副皇帝』とか『自称貴族の三男坊』とか『婿養子の昼行灯だが夜は必殺な警邏』とかにブッスリと成敗されたのだろうが、幸運にもそうなる前に彼に人生の転機が訪れる。 ツルギスタン帝王スレイヤード・フォン・シュヴェルトべルグ・キーン・ツルギスタンが荒れる貴族の二男三男問題を憂い、来るべき帝国主義時代の軍人の中核を担わせる初級幹部のための士官学校を創設するや、問題児たちを問答無用で放り込んだのである。 軍隊というのは平等に関しては枚挙に暇がない。誰でも何らかの使い物になるまで『かわいがられる』。無聊を囲っていた悪たれも此処では特別扱いされなかったし、銀河帝国時代には惑星強襲梯団を担っていたツルギスタンにはその教育システムも備わっていた。 ここでヘルマンは喧嘩に明け暮れた放蕩時代に磨かれた思い切りの良さで、戦闘部隊の上級将校資格とブレーディアンへの搭乗資格を得るに至る。 戦場の花形の搭乗者となると世間の目もガラリと変わった。さすが武門の家の二男だけある、国と兄を盛り立てる何と忠義の者よ、と。 こうなると多少のヤンチャも喜んで家が揉み消してくれた。それに家に居場所の無い彼としては、実力を正当に評価してくれる軍隊は居心地が良かった。そんなこんなでヘルマンは士官学校を出て3年もしない内に立派な軍人――頭に不良が付くが――になっていた。 …やはり好き好んでひねくれたのかも知れない。 まぁそんなわけで第一機甲部隊のゲオルグ・バウアーよりも人生をエンジョイ・アンド・エキサイティン!している彼は、先日のGBCの人気番組『突撃!となりの最前線』でもって、自信満々でぶち上げたわけである。 『夷狄の機械人形は確かに大したパワーだね。しかし僕の快速打撃部隊を捉えられるかな?ここに宣言しよう、次の戦闘があの機械人形の命日になると。そして、勝利を栄光をキミに』 誰に?と聞くのも野暮な話で、程無くホッカイドウの第三外征旅団へと、我こそはと思う御婦人方から花束が届くようになった。中には本当に『関係』のある情婦も混じっている事だろう。 それで、この花束パニックである。 ゲオルグ・バウアーといい、ヘルマン・ファルケンハイムといい…アフバルトは一向に連帯感を抱けない同僚たちの素行を前に小さく溜息をついた。 「いいぜ、お前がダイガストを倒せるって言うのなら、まずそのふざけた妄想をぶち崩す」 大江戸博士は変な電波でも受信してしまったのか、大鳳の指揮室内で妙なポーズを取りながらひとりごちた。 4月下旬。そこは既に限定戦争開始15分前の岩手山中演習場上空であり、2週間前と同じように大鳳は失速手前の速度で獅子王を降下させ、ダイガストへと合体するシーケンスを見守っていた。 「ところで教授?」 透はオペレーターシートに体重をかけ、身を捻って後方の大江戸博士に声をかける。そうすると充分に自己主張したボディラインのメリハリが見えてしまうのだが、天然モノと精力を別の事に全力投球している中年とでは問題にならない。 「どうして帰りはダイガストを丸ごと拾って帰るのに、行きはわざわざ分離して運ぶんです?」 教え子の唐突な質問に博士はこの世の終わりのような顔になった。 「透くん!キミは浪漫というものが解らんのかね!?」 「夜景の綺麗な場所でとか、バラの花束と一緒にとか、そういうの素敵ですよね」 「スィーツ!そういうのは鷹介とやってくれ」 「!? 鷹くんとはただの幼馴染で、そういうのじゃありませんっ!」 「まぁこの際キミの依存症の度合いは置いておいて、だ…開始前に毎回合体するのは、お約束だからだ」 煮え切らない男女の心の機微を依存症と言い切られたことより、透はその後の一言の方が気にかかった。 「まさかダイガストが合体するのって…」 「もちろん意味はあるぞ!子供がよろこび、子供心を失わない大人からも支持が集まる。それに複雑な合体機構を維持する事で、内外に我々の技術が喧伝される」 「自分で意味の有る無しを強調している時点でオチが着いてるじゃないですか」 「キミは時々刃物の様に鋭くなるね…」 「ええ、教授の教え子ですから。工学でもエネルギー科学でもないですけど」 透は晴れやかな微笑みをみせた。 空の上がそうこうしている内に、下では合体したダイガストが戦闘開始地点に到達していた。 コクピットで虎二郎は半ばオフレコでもたらされた陸自からの事前情報を、現在の外部情報と刷り合わせて鷹介と自分のディスプレイに送る。 ダイガストの後方800mあたりに岩手駐屯地の第9戦車大隊の再編成分、20両あまりがひかえていた。前回の儀仗獣兵と乱戦を繰り広げた生き残りだ。生き残りといっても文字通りの意味でなく、戦車と戦車長、操縦手、砲手、装填手という、道具と人とのパッケージングが組みなおせたケース、という意味だった。 防衛省ではいよいよ銀河列強に対抗できる武器に目処が立ったらしいが、それが形になって岩手駐屯地に届くのは何時の事か。 現地の戦車兵達はこの1週間で戦車用の壕を掘り、その上に木材と土とで屋根を付けて簡易の掩体として、砲塔だけを地上に突き出し息を潜めている。 異星の索敵技術を前にそれがどれ程有効か、あるいは意味があるのかすら解らなかった。しかし最善は尽くしておきたかったし、そうでもして動いていなければ、やっていられなかった。 桜はようやく東北でも開花し、演習場からでも丘や平野の所々で薄紅の色を目視できる。年嵩の戦車長たちはこれで見納めかと、水鏡のような心境で桜の花の咲きほこる様に目を向けていた。 再編成組は若者が極端に少なかった。稼動可能な戦車に優先的にベテランが割り振られていたのだ。それは戦力の維持というよりは、もっと心情的なものが基になっていた。 同じ現場に居合わすにしても、大江戸博士たちと自衛官たちにはそれほどの認識――と現実――の違いがあった。 そして今日も運命のサイレンが鳴る。 「さぁ本日も始まりましたツルギスタンと日本の対戦、列強市民の皆様も興味深々でしょう。何しろついにツルギスタンの快男児、銀河の種馬、ヘルマン・ファルケンハイムが出てまいりました。ここでも手の早さを存分に見せつけ、新たな撃破数を稼ぐのでしょうか。解説のリッケントロップさん?」 「今回はファルケンハイム氏の発言で空気を読んだのか、ジエイタイも数を出してきていません。よほどダイガストに自信があるのか…ひょっとしたらツルギスタンのワンサイドゲームに――」 「おおっと!!」 レポーターが解説者の言葉を遮って色めきたつ。 映像は開始直後に土煙を上げて突進を開始した五機の儀仗兵とブレーディアンを捉えていた。陣形だろうか、儀仗兵が先陣を切り、一歩遅れてブレーディアンが追う形になっている。その全てがこれまでのどのツルギスタンの同形機よりも細身で、そして速かった。 五機の儀仗兵は細身の剣と小型の丸楯を装備したメッサーと呼ばれる高速仕様機だった。それぞれが斜めに走っては互いの位置を入れ替えながら、横隊そのものは形を崩さずに、一枚の壁となって高速で迫り来る。まるでアメフトの強豪チームのような一糸乱れぬフォーメーションだ。それも斜め移動は未来位置を予測させない程度で左右に切り替わるジグザグ移動のため、砲塔に自動追尾機能を持たない74式戦車では尚の事、狙いが付かない。 当然、あの旧式の大砲を構えたダイガストも命中弾など出せないはず。 「ところがぎっちょんっ!」 虎二郎が儀仗兵の操縦者たちの思考を呼んだかのように声をあげると、ダイガストがヤマト砲に仰角をかけて発射した。 巨人兵たちの奏でる鉄靴の行進曲が一際大きな号砲にかき消される。爆風が大気を掻き乱し、近場の桜が風に舞った。 空中を駆け上がる砲弾は当然の如くまだまだ運動エネルギーが有り余っており、放物線を描く前に儀仗兵の頭上を素通りする軌道だった。しかしダイガストの砲撃システムは発射後2秒で砲弾内部の信管を起動させる。 結果、儀仗兵の頭上手前で派手な炎の華が咲き、地上へと1.4トンもの鉄量が鋭い破片となって降り注いだ。重金属汚染とか気にしてしまう所だが、この際贅沢は言っていられない。 鋼鉄の雨は儀仗兵を散々に打ち据え、二機の脚部に深刻な損害を発生させた。もんどりうって転げるこの二機には当然のように74式戦車からの戦車砲がお礼参りの如く殺到する。ベテラン揃いだったので、こういう時には目端がきいていた。 撃破し切れるかは疑問だが、これで少なくとも二機は脱落し、残る三機も横隊を崩している。 華々しい効果に虎二郎が鼻を鳴らした。 「あれだけ大口叩いたんだ、過去の映像試料から対策を練るさ」 「敵機3、ミドルレンジに接近してるよ」 透の警告が鷹介の耳に届く。戦場の間近で管制を行う彼女に、鷹介は危険だから辞めて欲しいと思う反面、いつもと変わらない幼馴染の声に安心もおぼえていた。割り切れないものに無視を決め込み、前面モニターの敵機にピックアップされた簡易情報を読み取る。 「了解。ブレーディアンとの合流前に処理する」 過去のGBCの映像からツルギスタン第二機甲部隊は軽量快速の儀仗兵による幻惑と、直後のヘルマン・ファルケンハイムによるブレーディアンの突撃でもって速攻をかけるのが確認されていた。 ならば待ってやる必要も無い。ヤマト砲の信管を調整して、攻めっ気満々の鼻面に先制打撃をくれてやる。残った者には、 「ブラストマグナム、発射!」 ヤマト砲を放り投げたダイガストの両腕が白煙をひいて水平に発射された。それぞれが体勢を崩した儀仗兵メッサーを正面からぶち抜き、貫いた衝撃が機体後方で派手な爆音を響かせる。間違いなく機体中枢を粉砕された二機の儀仗兵が崩れ落ち、役目を果たした腕部が帰還の為の旋回を開始した。 残された最後の儀仗兵のパイロットはその瞬間を見逃さなかった。体勢を建て直し、どこかやられたのか不快な駆動音に変わった機体のスロットルを全開まで押し出す。 彼らには彼らの義務と名誉があった。もちろん国家や民族の存亡のようなシビアな物ではないが、それでも彼らが最善を尽くす理由としては充分だった。 軋みをあげる機体に鞭打ち、両腕を失った状態の機械人形の懐に飛び込む。突進の威力をそのままに、細身の剣をその胸部に向け―― 「ライアット・クローラー!射出!」 鷹介の声とともに、ダイガストの肩から金属光沢を放つ板が飛び出した。肩装甲の下から鎧武者の袖鎧のように垂れていた、獅子王の履帯だった。 形状記憶合金で構成された履帯は装甲下に引き込み、縮小させて仕舞い込んでいたのだが、これを元のサイズに戻してたわめて、板バネの要領で撃ち出す。先端の打突部は薄く、鋭く変形させ、標的に貫入する刃としての威力を高めている。 先日の鷹介の使い勝手の良い武装を、という要望に大江戸博士が――渋々――応えたものだ。 この両肩から1本づつ飛び出した近接戦闘用の射突槍は、反撃手段が無いと踏んでいた儀仗兵を真正面から貫き、加速していた相対速度分も含めて深々と食い込んだ。 形状記憶合金がしなりながら肩装甲に引き戻されると、ご丁寧に儀仗兵の破孔もまた抉り広げられる。この機も下半身に関する骨格が破壊されたのか、膝から崩れ落ちた。 ブラストマグナムも無事に再接続し、これでダイガストは戦力を取り戻す。対するツルギスタンは残すはブレーディアンが一機。さてどう出るか、虎二郎は瞬時思考を巡らしかけたが、透の悲鳴にも似た報告が全てを覆した。 「敵機、急接近!」 最後の儀仗兵が地に倒れ伏す、その後ろから細身のブレーディアンが一気に間合いを詰めてくる。 幾ら機械の目が戦場を見渡していても、メインモニターの情報を判断するのは人間の役目だった。敵はそこを解っていたのか、ともかく鷹介がダイガストの拳を固める頃には、ヘルマン・ファルケンハイムは撃尺の間合いに踏み込んでいた。 「反応が遅いぞ、皇国人!」 ファルケンハイムのブレーディアンが痛罵と共にレイピアのような腕で突き込んできた。 鷹介がダイガストの左腕の装甲を添えて受け流そうとすると、まるで刃が離れまいと装甲の上を滑るようにはしり、肩装甲に突き入る。 何が起きたのか察知する暇も無く、ブレーディアンの右腕は引き抜かれざまにダイガストの右腕の表面を撫で切って引き戻る。 間髪入れずにブレーディアンが半身から突き入ってきた。今度は鷹介は刃に触れず、斜め前に踏み出して避けながらブレーディアンと交錯する。得体の知れぬ違和感が接近戦を続ける事を拒んでいた。 振り返りざまにダイガストの索敵システムに照準を任せてトリガーボタンを押し込む。 30mmレールガンの火線が地を穿ちながら斜め上に跳ね上がり、ブレーディアンへとせまる。 ブレーディアンが横に半回転して射撃をかわすと、その位置に狙い澄ましてダイガストの肩装甲からライアット・クローラーが突き出された。しかしそれはレイピアのような腕部が二度閃くと、右へ左へと切り払われてしまう。 「イイ読みだ、しかしボクのヴィントシュトースを捉えるには…」 次の瞬間には声は間近から発生していた。 「圧倒的に遅い!」 短距離を跳躍するように懐に飛び込んだブレーディアン――ヴィントシュトースの切っ先がダイガストの胸部に突き立っていた。かと思うと刃を返して引き抜き、下がりざまに左腕の細剣でダイガストの腕を撫で切る。 速い。その名の如く、突風のような速度でヴィントシュトースはダイガストを切り刻んでいた。その細身の剣身のお陰で損害は未だ装甲で留まっていたが、 「何をボサっとしとるか、舐められとるぞ!?」 大江戸博士の叱責が鷹介たちに飛んだ。それは正鵠を射ていたようで、ヘルマン・ファルケンハイムは愛機を半身に構え、その剣先をくるくると回して余裕を見せている。 「闘牛といったかな?地球にも粋なスポーツがあるようだが、まさにそれの気分だ」 ファルケンハイムの軽口に鷹介は憮然としながらも、火器管制から最適の武装を選択する。 「その慢心が命取り、ってな」 ダイガストの腰アーマーがアンカーとして撃ち出される。エネルギーの帯を曳きながら、左右からヴィントストースを挟みこみ、絡めとる魂胆だった。 対してコクピットのファルケンハイムは口ひげの下で唇を愉しげにゆがめる。 「いいや、これは余裕というものだよ」 ヴィントシュトースが両手を広げてくるりと回ったかと思うと、あえなくエネルギー帯を切断されたアンカーが軌道を外れて宙を舞った。と、さらにそこから回転を加速させ、竜巻のようになってダイガストに肉薄する。 とっさに30mmレールガンが臨機射撃で飛んだが、一本足の剣である下半身を軸に上半身を左右に振るうと、『おきあがりこぼし』のような急激な軌跡でもって火線を潜り抜けてきた。体勢の変動とともに直下からすくい上げるような斬撃がとぶや、寸でのところでダイガストが仰け反ると、兜の前立てのような飾りの左半分が切断されていた。 鷹介は危険を感じて右拳で最短距離の寸打をはなちヴィントシュトースを突き放そうとしたが、ここでもファルケンハイムは風のようにダイガストの右脇に飛ぶと、逆にその右腕に斬りつけて更に背後に回りこもうとする。 「鷹介!使うぞ!」 虎二郎が答えも聞かずに後部座席から99式誘導弾改の発射キーを押しこんだ。 ダイガストの後方へと、不可視の次元背嚢から立て続けにミサイルが発射される。ファルケンハイムも予期せぬ反撃に追撃を諦めて距離をとった。 もちろんミサイルはロックオンなどしていない。ただ無理やり飛ばしただけであり、 「こういう使い方もあるさっ!」 虎二郎の指が猛烈なスピードでコンソールパネルを行き来し、ダイガストの視覚データとミサイルをリンクさせてブレーディアンへと終末誘導をかける。四方八方からミサイルが押しつぶすように飛び―― 「そういうのを無粋というのさっ!」 御丁寧に口調を合わせると、ファルケンハイムのブレーディアンの肩装甲下から偏光レンズが顔を覗かせるや、赤色の熱線が虚空を薙ぎ払う。 迎撃されたミサイルが一斉に炎の華を咲かせ、爆風が周囲の桜の花を派手に散らせた。 「ハッハーッ!皇国の花も中々見れるじゃないか!ま、ボクは紅蓮の炎を思わせる真紅の宇宙バラが好みだがね」 ヴィントシュトースの腕が黒煙を切り払い、その切っ先をダイガストに向ける。 「さぁ、まだあるだろう?ソルニウムの剣を抜きたまえ」 ソルニウム。何の事かと鷹介が首を傾げるより早く、通信機から大江戸博士の唸るような声が聞こえてきた。 「超金属ヒヒイロカネの列強での呼び名だろう。輝鋼剣のことを指してるに違いない。鷹介、挑発に乗るなよ。励起状態のヒヒイロカネを制御できるのは今の事象転換炉じゃあ1分だ。それを過ぎればヒヒイロカネは更に高い励起状態に移行して、自身のエネルギーを放出し尽くすまで分子結合を崩壊させる波動を放出し続ける。ここら一帯が不毛の荒野に変わるぞ。もう少し待つんだ、俺と透くんとであのスカシ男の行動を計算して、最適の行動予測を送ってやる」 どうだろうな。鷹介は素直に博士の言うことに従えなかった。 ファルケンハイムという男が本気を出しているとは思えなかった。あの軽口といい、ミサイルに囲まれるまで飛び道具も使わなかった事といい、まだ余力は残しているはずだ。 端的に云うのなら、もっと速くなるはず。鷹介の戦士としての勘働きが、そう警告を発していた。 ヴィントシュトースの速さは儀仗獣兵のような三次元的な速さではない。あくまでクロスレンジ――至近の攻防に関した捌きの鋭さだった。 ならば輝鋼剣も同じ土俵の得物として、使いようは有る筈。問題は博士が指摘するとおり、輝鋼剣が一太刀必殺である事を保障できる刻限。 74式戦車からの砲撃が続く中、ダイガストは背の次元背嚢から鞘に収まった直刀を、ゆっくりと取り出した。 それはファルケンハイムには躊躇うように見えた。現にダイガストは柄に手をかけたまま、あの金色の刀身を顕そうとしない。 「やはりソルニウムは手に余るかね」 少し白けた様に呟くと、ファルケンハイムは愛機を疾走させた。 敵はもはや万策尽きたのだろう。この銀河の辺境でも、速さが全てに勝る証明をしたのだ。 あとはあの機械人形の首を落とせば。 刹那、ファルケンハイムは背筋を凍らせるような感覚に思わず機を横滑りさせ、ダイガストの後方へと回り込んでいた。 自分の周囲に上がる土煙の中を、ダイガストは左腰に据えた輝鋼剣に手をかけた状態で、こちらに振り返る。僅かに腰を落とし、右足は前に。剣は抜かず、闘いの備えでも無いだろうに、ファルケンハイムはその姿に威圧感を覚えずにはおれなかった。 だが、その姿は何よりも戦闘的なものである。 それは居合いと呼ばれていた。 居合いというものには色々と誤解がつきまとう。 フィクションの剣士の腰間から立て続けに剣閃がほとばしるや、ごろつきが次々と切り倒される。それは動と静を内包した、講談としては最高のスパイスだろう。ところが実際の居合いとして、流祖の業を色濃く残すという流派などは、一度抜けば仕留めるまで鞘に収まらないと云われる苛烈な型が特徴である。講談のように鞘に抜き差しを繰り返すのは、なかなかお目にかからない。 また実際の居合いは傍目には緩慢な動作とも見られ、急場においては意味がないと軽んじられる始末である。昨今では何でも日本の真似をしたがる奇特な人々により、大陸の剣の技法を混ぜ合わせた全く別の紛い物が世界に発表されるなどして、『速さ』という概念が更に誤解されている。 では居合いの速さとは何なのか。 それは一挙動に集約された動作の密度である。一つの挙動の中で体軸を一本の線に乗せ、柄を一直線に突き出し、鞘を引き、刃を寝かせ、鞘を左半身の捌きで払い、肘から先を伸ばす。さすれば鯉口を切った太刀先は弧を描かず、一本の線として最短で標的の急所を切断する。 日本における刃物の使い様とは、如何にして切断部位の起点と終点とを一直線の最短で振るうかにある。そして居合いは、この道理の一つの答えである。 ならば幼少の鷹介に戯れに体捌きを伝えた近所の老人が、現代にそぐわぬ達人であったと仮定して、ロボットがその動きを再現できるのかと問えば、残念ながら都合良い答えは出てこない。それは直接的にはダイガストが人体の動きを再現できるロボットではない事が理由であり、武術的な側面で語るのならロボットに日本武術の要諦である筋と重心――動作の基点となる概念――が存在しない事が理由となる。 例えばモーションキャプチャーしたCGがどれだけ機敏に動こうとも、それは外面の動きをなぞっただけに過ぎず、人体の内面で行われている重心の変動は再現できていない。つまり現在のCG技術では人間の動きの機構を再現できてはいないのだ。 一方で重心移動に関しては我々の世界におけるホンダのASIMOが、倒れる方向に足を出すという身体操作の根源を再現しているので興味深い。 話を岩手山中演習場に戻そう。 それでは居合い腰で佇むダイガストは全くの張子の虎なのか、と云うとそうでは無いようで、ファルケンハイムは彼の知識にあるどの戦闘意欲とも掛け離れた今の夷狄の機械人形の姿に、しかし異様な警戒心を抱かずにはおれなかった。 だが、今の自分の状態を警戒とするには彼の美学が許さない。 不動とは彼の速さとは全く異なる概念だった。むしろ動かない事は彼にとっては戦闘の放棄であり、悪にも等しい。ファルケンハイムの戦闘倫理は動であり、動き続ける事が常にイニシアチブを握る手段であった。 一方の鷹介も気が気で無かった。輝鋼剣を取り出したことに腹を立てた大江戸博士からの通信を例によって小音にしぼり、それぞれの手の中の操縦悍を一際やわらかく握りなおす。 鞘の中の輝鋼剣――正確にはその主要構造材である特殊金属はアイドリング状態であり、この状態なら分子結合を破壊するという剣呑な量子力学上の現象は発生しない。 敵はこちらの意図に気付いているだろうか。遥か異星の剣士に、この付け焼刃的発想は通用するだろうか。だいだいダイガストはそのイメージを形に出来るのか。 鷹介は機体へと送るイメージを絞り込む。速く、ではない。無駄を削ぎ落とし、一拍の中に全ての動作を収めるように。 こんな事なら本格的な剣術でも習っておくべきだった。雑念を小さな吐息とともに吐き出すと、やがて鷹介の意識はダイガストの全高30メーター弱にまで放散してゆく。 いつしか74式戦車の砲声も止み、二つの巨大兵器は戦場の中央で止め絵のように対峙していた。立ち込めた砲煙が春の風に流され、演習場の隅の山桜を散らした。薄紅の吹雪が舞うや、互いの姿が花弁の裏に隠れる。 刹那、殺気としか言え無いものが花吹雪の中で膨れ上がった。 音もなく、巨大な物体が動いた後を知らせる突風だけが吹く。 気が付くと巨大兵器達は指呼の距離に接近し、動きを終えていた。ヴィントシュトースは振り下ろした右腕を伸ばしきり、ダイガストはその刃の下に片膝を着いていた。抜き打った輝鋼剣を振り抜いた姿勢で。 「輝鋼剣 抜刀桜花…なんてな」 鷹介は呟きつつ、金色の剣に一度血振りをさせると鞘に収めた。鯉口のメカニカルロックが冷たい音をさせて刀身を封印するや、ヴィントシュトースの上半身が胴と分かれて落下し、地響きを立てる。 虎二郎は後部座席で舌を巻いていた。彼は機体コンディションを常にモニタリングしていたから、何が起こったのかを理解していた。 鷹介の意図を実現させるため、胸部内グラヴィティ・スプラッシャーの重力子偏向機構がダイガスト内に重力を増加方向で発生させ、それを重心移動と同じように行動起点として移動させたのだ。そしてダイガストは機械ではなく、筋肉でもない、あたかも剣士の振るう剣のような突発的な動きを再現した。 勿論、そんな機能はダイガストには想定されていない。マン・マシン・インターフェースが機体に想定外の行動を執らせたのだ。 『俺たちはいったい何を造ったんだ?発達した科学は魔術と区別がつかないというが、制御できないメカニズムなどナンセンスじゃないか…』 輝鋼剣の使用終了に伴い、シート越しに感じる事象転換炉の振動が落ち着いてゆくのが感じ取れる。虎二郎は今はそれに何よりの安堵を感じていた。 「ああ、くそっ!」 ヘルマン・ファルケンハイムが悪態をつきながら、手動でコクピットハッチを開いて外に飛び出す。 「なんという事だ!こんなものは美しくなければ速くもな…い?」 そこは巨大兵器が全力で一合した際の風が吹き荒れ、吹き戻しと共に大量の薄紅の花弁が舞っていた。 そして舞い散る桜の中に佇立するダイガスト。 桜の花弁はやがて風に解け、青空の何処かへと消えてゆく。 ファルケンハイムは『そうか、この華はこうやって見るものか』と唐突に納得した。咲き誇り、散る様までも人の目に留まる。 しばし呆けたように桜吹雪に見惚れるファルケンハイムだったが、唐突に口髭を歪めると、『かか』と大笑をはじめる。 まったく笑うしかない。良い様にやられたものだった。スピードで翻弄するつもりが、全てを出し尽くす前にカウンターで破られたわけだ。 静から動、それもまた速さに違いない。何より、 「銀河の果てで良いものを見せてもらった。キミはまったく敬意を払うべき敵手だ…ダイガスト!」 ファルケンハイムの宣言は絶妙のカメラワークで撮影されていた。きっとこの一敗は能天気な視聴者には演出と思われるのだろう。お茶の間に愛されるというのも、列強のエースの無視できない要素であった。 「それに、この国の華にもな」 彼の呟きは小さく、笑みは淡く、演習場の上空に滞空するGBCの撮影ドローンでは捉える事ができなかった。 遅咲きの桜は北国に遅い春の訪れを告げてゆく。それは残念ながら列強との凍てついた関係の軟化を示すものではない。流血を剣戟の火花でもって温めるしか方法は無いのか。 今は答えられる者はいない。 つづく
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まだ朝もやが立ち込める山間の集落に地響きがしたかと思うと、破砕音をさせて次々と家屋が倒壊する。 すわ地震かと考えるに、耐震対策の行き届いた日本では余程の震度でないと、そこまでの被害はお目に掛かれない。 しかも倒壊した家屋は上から潰されていたり、あるいは明らかに横合いから押し倒されていた。もはやそれは揺れによる被害ではない。 なにより不思議なことに、地響きは時間と共に遠ざかってゆくのだ。 奇跡的にその集落から死傷者は出なかったようだ。何事かとまぶたをこすりこすり、瓦礫から這い出てきた人々は集落の惨状に息をのんだ。 そして朝もやの向こうに遠ざかってゆく影に、もう一度息をのむ。 ゆらゆらと三本の角を揺らし、巨大な影が山の間を這っている。 被災者の中にパジャマ姿の少年の姿があった。 よほど大事な宝なのだろう、倒壊した家から持ち出せた一枚のカードを握りしめ、山間の影を目をキラキラさせて追っている。 街の量販店のキッズコーナーにあるカードゲームから引き当てたレアカードの図案は、長い三本角がいかにも厳つい南半球産のカブトムシであった。 第五話 伏兵!大自然の驚異 侵略地上げ獣『ギャラクシー・コーカサス・オオカブト』登場 岩手と青森の県境の岩手側、二戸市(にのへし)でおこった異変が国場首相の耳に届いたのは、朝食の納豆に卵を投入する神聖な作業の最中であった。 いささか衝撃的な報告に手元は狂い、卵の中に殻の破片が飛び込んだ。 国場総理は渋面をつくりながら指先を白身の中に突っ込み、秘書官に再度の報告を促す。 「それで、もう一度言って貰えるかな?」 長年の付き合いになる首席秘書官は、振舞われた茶をすすってから、その一大事を口にする。 「本日未明、『岩手県』と『青森』の境を越えて巨大生物が出現。 時速20キロのゆっくりしたペースで南下中。進路上の民家、送電線、その他ライフラインが押し潰されています。 死傷者数は現在調査中。山間部ですので今のところ被害は小さい模様。現在は二戸市金田一温泉に迫りつつあります」 「山間部ねぇ…まさかダムは無いだろうな?」 国場は今日がハードになる事を見越し、卵の殻を摘出した納豆にからしとネギを多めに放り込んだ。わしわしと掻き混ぜ、雑穀まじりのご飯にかける。 「周辺にはありませんが…」秘書官は用意してきた地図を見て眉間に皺を寄せる。「このまま金田一温泉に向かわれると、東北新幹線を跨がれます。 壊さないような気遣いは期待できないでしょう」 総理はすぐには応えなかった。ぞるぞる、とでも言うのだろうか、上品でない音をさせて納豆ご飯を掻っ込んでいる。 それが奥方が念入りに出汁をとった味噌汁を啜る音に変わり、さして間をおかず嚥下し終えた盛大な一息にかわる。 「ぶはぁ…ごちそうさま」 言うが早いか、席を発つ。朝駆けをして来た主席書記官が首相公邸に到着してから15分。臨時で準備した朝飯を平らげ、総理は戦闘体制の全てを整えていた。 公邸を出ると、朝もやが僅かに足元に残っている。空は藍から蒼へと徐々に、しかし気付かぬくらいには早く、色を変えていた。 首相と秘書官は大股で専用車に向かう間も会話を続ける。 「新幹線の線路をやられるのは拙い。追い払えないか?」 「近隣の岩手駐屯地に機甲部隊があります」 「よろしい、災害派遣だ。緊急でな。県知事には要請を追認させろ」 「せっかくですから改正法の国民保護等派遣を出したらどうでしょうか? 武器の使用は国民の保護に必要な措置ですが、災害派遣で機甲部隊を出せば野党に何を言われるか…」 「わかった、そっちの線でやろう」 国場は黒のセダンの後席に体を押し込みながら、ふと思いついた事を、子供のような顔をして言ったものだった。 「…ところで巨大生物とは緑色をして二足歩行する『あれ』だよな」 「いえ、黒くて硬くて足が六本で角は生えたの『あれ』です。 爬虫類じゃありませんからね。放射能火炎やプラズマ火球を食らいたいんですか?」 「そうか」首相はどこか残念そうであった。「しかし出所はどこだ? 青森からとは言え、ツルギスタンではあるまいよ。 まさか我々の経済焦土作戦に対する、彼らの報復という訳でも無かろう?」 「偵察衛星は北海道で大規模な開発の兆候を捉えていません。ツルギスタンが更地を欲している可能性は低いですね」 「的を絞った物言いだな」 「更地を欲している輩がいるんですよ」 「それはつまり、巨大生物は何らかの組織による工作活動だと?」 「デベロッパー、ゼネコン、不動産屋、銀行、それにマフィア。 次の攻勢で切り取られそうな土地に、あらかじめ仕込みをする悪質な星間外資が確認されてます。 今回のケースはおそらく更地にして買収、ツルギスタンの手に渡った暁には、開発を一気に引き受ける魂胆かと」 「随分バイオレンスな計画経済だな。マオやポルポトでも、そこまで無知じゃなかったろう?」 「似た様なものだったと思いますが?衛星国家と植民地は非効率的なことでは同様ですよ」 「だからこそ信じ難いんだよ。 宇宙人ってやつも地球人と同レベルであって、スペースブラザーなんて存在しやしないなんてね」 「…内調、桜田門、市ヶ谷。それぞれが同じような報告を上げてきています。 日本国の脅威は宣戦布告してきた列強だけではないのです。 それと宇宙の隣人ですが…誰も、ロハじゃ助けてくれやしないんですよ」 「是非もない、か」 国場はへの字に曲げた口の端から溜息を漏らすと、背広の内ポケットに入れた携帯電話に手を伸ばすのだった。 頭頂部からサーベルのように反り返った角が伸びていた。 意外に小さい頭部が収まっている肩から背にかけての盛り上がった甲殻からは、更に左右から二本、大きく湾曲した角が伸びている。 三本の角を押し立てて木々を圧し折り歩く様などは、全身を覆う甲殻の磨き上げたような黒色とあいまい、黒金の城という言葉を想起させた。 まさしくコーカサス・オオカブトであった。サイズ以外は。 ギャラクシー・コーカサス・オオカブト等と言うふざけたネーミングも、連中の翻訳コミュニケーターが地球の近しい甲虫のデータを拾って作ったのだろう。 どこかに隠れているのか、はたまた高空から撮っているのか、 鷹介の前の四面ディスプレイの一つから流れているGBCのライブ映像で、しきりにレポーターがそう呼んでいた。 そこで映像は東北の山を舐める様に移動し、少しの行き過ぎと拡大でもって、山間の平地に佇立したダイガストを映し出す。 その後方の街ではパトライトが明滅しており、いまだ住民の避難が続いていることをパイロットに知らせてきた。 防衛ラインを上げたいところだが、そこから先は山になる。 木々を圧し折って阻止戦闘を始めるには、林野庁だか県庁だかが難色を示し、返答待ちにされていた。どうせ担当者は朝の登庁前だろう。 戦闘とは別の次元で絶望的気分を味わっている鷹介の後ろから、なんとも無邪気な声がかけられた。 「すごいな、でかいな。さすがギャラクシー・コーカサス・オオカブト、熱帯の惑星の王者だ」 虎二郎は朝も早よからテンションが高い。件の生物がギャラクシー・コーカサス・オオカブトだと看破したのも彼だった。博識とかそういうレベルでない。 鷹介はふと不思議に思い、問うてみると、 「amaz○nで取り寄せたんだよ、銀河最強甲虫DVD。 息子がたいそう気に入ってね、付き合って見てるうちに覚えてしまったのさ」 伏字じゃないでしょ、それ。 鷹介は商人たちの星を越えた逞しさに何とも微妙な気分になりながら、今一度、ダイガストの情報表示ディスプレイに目を落とした。 30mm Rail Gun : empty AIM-4/C : empty 460mm Cannon : empty 要は来週の限定戦争に向けて整備の真っ最中であり、実弾の一発も積んでいない、洒落にならない状態と言う事だ。 30mmレールガンは砲身の冷却上の問題から多砲身…ガトリング方式を採用したため機構が複雑化し、ブロックごと外されて整備している。 ミサイルは異星人の陸戦兵器用に弾頭の装甲貫徹力を強化したもの ――空対空ミサイルとは爆発して破片をばら撒くものであり、対装甲能力があるとは言い難い――だが、 これは空自に納入前に評価試験として『トリプル・ダイヤ』のロゴの企業から供与を受けている物であるからして、数に限りがあった。 ヤマト砲は砲身の命数が多く見積もって200発であり、一戦闘毎に入念な手入れをして延命処置をする必要があった。 頼りの輝鋼剣も大江戸博士が何やら調整があるとか言って持って来ていない。 背伸びして造ったロボットなんぞの稼働率は、そんなものだった。戦争は数だよ、とは好く言ったものである。 はて、湾岸戦争の戦訓で数は質を凌駕しないと判明したのでは、と思うところだが、ダイガストは質でもまだまだなのだろう。 であるなら、あとは猿と人の違いくらいしか武器はない。 数多の生物を食い尽くし、未だ生存する人類と同じ姿であること。しかも人類より強靭で巨大、頭脳は二人分。素晴らしい、まるで神代の巨人だ。 …馬鹿馬鹿しい。鷹介は小さな溜息をつくと、やくたくもない思考を打ち切った。 「おっ」 虎二郎の期待に満ちた声。 戦後から植林されてきた杉林をめしめしと折り、黒い三本角が山の稜線の向こうに現れた。 「目標をビジュアルID(目視確認)」鷹介はわりと躊躇わずにフットペダルを踏み込む。「これより接触し、目標の進路を変更させる」 ダイガストは立ち入り許可の未だ下りていない森林に足を踏み入れ、大股で山を登ってゆく。 国場首相の要請は自衛隊到着までの時間稼ぎと、巨大生物の戦力の暫減だった。 が、それ以上の注文として、民地への巨大生物の侵入の阻止が言い含められていた。 鷹介はモニター上で接近に伴ってどんどん巨大化するカブトムシに照準レティクルを合わせると、操縦桿の兵装セレクターボタンを親指で押し込む。 操縦桿の先は多数のボタンで膨れ上がり、グロテスクさすら覚えるデザインだが、 大雑把な操縦は銀河列強のビデオゲームから移植した脳波コントロール装置が仲介してくれる。ボタンを押すという行為は最終確認にすぎない。 鷹介の決定に従ってダイガストのコンピューターは選択した武装へと通電させる。 巨人が右腕を引き絞り、 「ダイガスト…エンゲージ(交戦)!」 鷹介の宣言の直後、白煙を曳いて射出された。 今回の唯一のまともな武装であるブラストマグナムは、握った拳の先端を僅かに光のリングで覆い、力場の存在を誇示していた。 衝撃を標的の内部へと集約するエネルギーフィールドは、しかし直撃の瞬間に ギャラクシー・コーカサス・オオカブトが角を振りたてた事により、ブラストマグナムごと上空へと跳ね上げられた。 くるくると回転する腕部が、陽光を反射して鈍く明滅する。 直進する力は90°に直行する別軸の力で容易く曲げられる。 昨日モンタルチーノ商会の若頭との乱闘で鷹介が見せた業の冴えを、知ってか知らずか、目の前の野生はしてのけた。 「開幕ロケットパンチってやつぁ、失敗フラグだな」 虎二郎が爽やかにロクでもない事を口走りつつ、コンソールパネルを数箇所叩く。 ダイガストの腰からアンカーが射出され、木々の上に落ちてスギ花粉を巻き上げている腕部に引っ掛けるや、巻き戻って右肘に再接続させた。 先日、ブレーディアンにブラストマグナムを叩き落された戦訓から、急遽アンカーの能力を拡張させたものだった。 ぶしつけな挨拶にギャラクシー・コーカサス・オオカブトはダイガストを敵と認識したようだ。 三本の角をかざし、残された僅かな距離を一気に詰めてきた。 全高はダイガストの胸ほどだが、全長や質量は明らかに向こうが勝っている。このままでは当たり負けするのは確実。 鷹介はバーニアのスロットルを押し込みながら操縦桿を横に倒す。 ダイガストが腰裏から噴射炎をあげ、横っ飛びに巨大カブトムシの突進をやり過ごした。 着地と同時に追いすがると、ギャラクシー・コーカサス・オオカブトも6本の足を総動員して回頭を始める。 そして、接敵。 ダイガストの拳が捉えたのは、振り返った巨大カブトムシの盛り上がった背中の甲殻だった。名状しがたい重々しい音が山間の大気を震わせた。 異星の巨大兵器にダメージを与える鋼の拳である。ケラチンとキチンで構成された甲殻ごときで止められるものではあるまい。 が、ここでも恐るべき野生が鷹介に牙を剥いた。 ギャラクシー・コーカサス・オオカブトは甲殻に多少の歪みこそ認められたが、怯むことなく至近に迫ったダイガストに角を振り立てたのである。 おそらくは巨大な甲殻を支える発達した筋肉が、衝撃の殆どを吸収してしまったのだろうと虎二郎は推察する。 それを操縦に集中する鷹介に伝える暇は無いが。 鷹介の意志を汲み、ダイガストは回避の代わりに半身になって三本の角の内側に踊りこんだ。 すぐに頭から生えた中央の角を右手で押さえ付け、左の脇に背から伸びる角の一本を抱え込む。 相撲でいうがっぷりと四つに組んだ状態。そのまま力比べが始まるかとGBC視聴者が期待した、まさにその時、 「なにっ!?」 鷹介はダイガストの両腕が火花を散らした事に驚愕した。腕部の表面温度が異常加熱し、モニターにアラート表示が点灯する。 突然のダメージに鷹介の操縦が乱れると、ギャラクシー・コーカサス・オオカブトはその隙に乗じて至近距離から体当たりを見舞った。 鋼の悲鳴が上がり、ダイガストの巨体が杉林に沈む。 さも嬉しそうなGBCのリポーターの声が、ダイガストの苦戦を伝えていた。 「ペンは剣よりも強し、ピーター・マクドナルドです!CMが明けましたが、ダイガスト、相変わらず苦戦しております。 銀河列強の進歩的民主主義の前に立ちはだかった蛮族の希望ですが、それ以上の野生の猛威を前に、なす術も無い模様です。 先程から防戦一方となり、超高周波を発する角が触れるたびに機体から火花があがっております!」 興奮気味のGBCのレポーターの中継に混じった種明かしに、ドン・モンタルチーノは海苔のように太い眉を器用に曲げて見せた。 「なんや、もうバラしちまったんかい」 高級リムジンの後部座席でふんぞり返る肥体の主は、ほんの携帯電話ほどの投影機が宙空に映し出した映像にご満悦の様子だった。 なにしろ裏社会じゃそれと知られたモンタルチーノ商会の巨大生物コレクションが、 銀河列強有数の陸軍国であるツルギスタンを相手に善戦する『夷狄(いてき)の機械人形』を翻弄するのであるから、オーナーとして鼻が高いったらない。 既に彼等のような荒事を生業にする者達には、ダイガストが『本物』であることが知れている。 しきりにGBCがツルギスタンの演出であるとの捏造キャンペーンを展開していたが、 掌を返した時用に、コメンテイターに辛口の批評家の仕込みも始まっている。 そして宇宙ヤクザは芸能界にも口が利く…情報は常に武器であった。 「しっかし、カブトムシは子供受けはエエんやが、更地に変える効率は悪いもんやな」 「宇宙ミミズの時は視聴者から苦情が出たと、マスコミ連中から散々文句を言われましたもので」 助手席から若頭が応える。 巨大宇宙ミミズが荒野の惑星を土壌改良してゆく様は、トレマーズも真っ青のパニック映像となった。 大地がのたうち、何匹ものミミズがそそり立って原生生物を捕食する様たるや、阿鼻叫喚の地獄絵図と呼ばずしてなんとしよう。 もっとも、今では当該惑星の土壌改良は完了し、惑星各地で農地転用が始まっている。『貴重な原生生物の殆どが食い尽くされ』はしたが、 住民達は作物を栽培出る肥沃な土地を手に入れた。その小さな惑星の表土は程無く数種類の商品作物で埋め尽くされることだろう。 それが善行なのか悪行なのか、誰も知らないし気にしない。 「しゃあないやろ」モンタルチーノは脳内で算盤をはじきながら当時を振り返った。「あの星はああでもしなけりゃ価値が出ぇへん、全土が不毛の荒野や。 産業が無きゃあ、精々が列強の演習場や。 列強の施設の周りばっかに住民が集まって、残飯漁って暮らすんやで?」 「自分の郷里も似たようなものでした」 「そやったな…銀河列強に任せとくと上から目線で保護しかせぇへん。住民の自立が無い。保護ばっかじゃあかんのや。 悲惨やで、自分たちは被害者で、保護してもらって当然とか勘違いし出したら、もう立ち直れへんて」 働かなくても最低限の保証はあるし、そもそも産業が無いから勤労意欲も無い。 虚ろな目をしたその日暮らしの人々は、給付金の支給日にばかり目をぎらつかせて施設に群がってくる。 やがてそんな住民を狙って風俗とギャンブルばかりの歓楽街が建ち始めれば、その星の経済は何も産み出さない輪で閉じられる。 銀河列強の辺境は、保護という名の暴力が支配していた。 「そんな星の住民にかぎって、保障だの労働争議だので働きもせん。話し合うのがホワイトカラーの証しとでも思っとんのや。 しかもストと暴力デモの違いも判らんときとる。 何も知らんと部族間で縄張り争いしとった頃の方がナンボかマシや。誰も気にせんし、誰の懐も痛まん」 そういった我ばかりが肥大化した社会的弱者や社会的幼児の群れから、 宇宙ヤクザのしのぎに使えるような人材を探すほど、既知宇宙は狭いわけではない。 ゆえに、モンタルチーノの発想は以下のとおりであった。 「活力や!欲望や!街から灯りを消したらあかん。不安に駆られた住民が信じるのは、結局は金や。 列強が配給を与えて住民から自立心と思考力を奪っとる脇で、ワシらは金と仕事と物をバラ撒く。 …ま、ワシらがようけ儲けるように上前はハネとるがね、それでも無くなる筈の生活を整えてやるんやから、感謝されてあたりまえやで」 中抜き上等の闇物流でも、戦闘の混乱で寸断されたラインを補ってくれるのであるから、現地の商売人に否やは無い。 領事が着任し、本格的な植民地経営が始まるころには、物流の首根っこはモンタルチーノ商会が握っているわけだ。 巨大生物に暴れさせて更地を大量生産し、そこを買い叩いておくのも論旨は同じだ。 銀河列強の開発計画だって大地主がいるなら、そっちに擦り寄ったほうが早い。 先程の惑星開発でも言った事であるが、それが良いか悪いかは誰も知ったこっちゃ無い。そういう時代だった。 然るに、この弱肉強食の宇宙に顕れたダイガストとは何者たりえるのか。 「蛮族の希望、進歩の敵、文明の否定者…ええで、まだまだ引っ掻き回してくんなはれ」 空間ディスプレイの映像を眺めるモンタルチーノの口ぶりは、どうにも巨大カブトムシよりもダイガストを応援しているようであった。 狂ったように振り立てられる角を受け流すたび、腕部装甲から派手な火花があがって装甲表面が歪んでゆく。 なんでもそれは高周波の仕業らしい。先程から通信機ごしに大江戸博士ががなりたてている。 「おそらく角が目に見えない振動をくりかえし、高周波を発生させとるんだ! 触れれば高周波溶接と同じ原理で振動が温度を上昇させる。距離をとれ!」 「距離をとっても武器が無いでしょうが!今は!!」 鷹介はダイガストの操縦で発熱しがちな頭で、思ったままをを口にした。 大江戸博士は口ごたえに口角泡を飛ばさん勢いで罵声を浴びせてきたが、またも鷹介と虎二郎は同時に通信機のボリュームを絞る。 そして突き出された黒光りする角を、腕の装甲を押し付けて火花と共にいなす。 そうしている限りは、両者の位置はあまり変わらない。おかげで山領の一部は超重量に踏み荒らされて禿山となっているが。 林野庁あたりの係りは今頃悲鳴を上げているかもしれない。 厄介なのは三本の角の全てが、触れれば火花をあげる高周波を発していることだった。 加えて、たまに大振りの隙に乗じて踏み込んでも、ダイガストの打撃は分厚すぎる筋肉の鎧に吸収されてしまう。 そして次の瞬間には、怒りに燃えるギャラクシー・コーカサス・オオカブトのぶちかましをくらい、転倒している。 「鷹介、回り込もう。正攻法じゃダメだ」 虎二郎もさすがに無邪気な反応はしなくなっていた。 ダイガストが腰裏のノズルから噴射炎をあげ、立ち上がりざまに甲虫の裏に回り込もうと機動する。 が、こちらを敵とみなす熱帯惑星の王者は、ぴたりと角を向けたまま、戦車の超信地旋回のようにその場で回頭して後ろを取らせない。 「クソッ、なんて化け物だ!」 虎二郎は息子が聞いたら悲しむような台詞で毒づいた。 ギャラクシー・コーカサス・オオカブトは6本の足を突っ張って重心を低く構え、万全の構えでダイガストを威嚇している。 呆れるほどの闘争心と基礎能力の高さ。 現にそれを見せ付けられる鷹介の心は、その選択を口にする時には、諦めとは別種の乾いたもので満たされていた。 「土岐さん、事象転換炉の出力を上げましょう」 「正気か?」 それが虎二郎の反応だった。 彼の前のディスプレイの鷹介のメンタルコンディションは、あくまで平静なパラメータを描いている。つまりその発言は諦めから出たものではない。 なるほど、博士が事象転換炉を預けるだけある。虎二郎は納得し、コンソールパネルから出力調整を呼び出す。 「鷹介、事象転換炉の出力を上げるということは、炉心の『キューブ』の消費が乗算に早まる事を意味している。 『キューブ』が費えた時は…」 「事象転換炉はダイガストを喰い始める…しかし今の出力と装備じゃ化け物カブトムシの甲殻を抜けない」 「あれは甲殻だけじゃなく、筋肉の柔軟性も含まれてると思う。ダメージは蓄積してる筈なんだ」 「一応聞きますけど、根拠は?」 「俺の故郷はひどい田舎でね、昆虫採集はよくやってた」 「サイズが違うでしょうが」 「そうだな、俺の知ってるやつよりもちょいと大きいが… 逆にあんな地球生物と変わらないボディバランスで大型化は出来ないと思うんだ。 たぶん、やつは俺たちが思っているよりも苦しい戦いをしているはず…根拠にならないか?」 「あのT72は砲も燃料も残り少ない筈だ、って言って対戦車兵器を持たない歩兵が納得すると思います?」 「おいおい、若者はもう少し希望的観測に則るもんじゃないのか …出力を『75パーセント』に上げて敵にぶち込む慣性制御力場の浸透力に期待するよりも、まだしも健全なテがあると言ったら?」 「アメリカ人じゃないので抱きついて頬にキスをするような真似はしませんが、まぁ、 『クリスマスまでに終わる戦争』を信じるくらいには希望を持つかと」 「俺も妻子以外は遠慮するなぁ…まぁいいや、鷹介、それじゃあ暫く機体制御も任せるぞ?」 言うや虎二郎は答えも聞かず、自らが呼び出した出力調整プログラムをいじり始める。 鷹介の手元の四枚の液晶ディスプレイは、虎二郎の手を離れた機体制御のパラメータで溢れかえった。 が、彼はそれらの諸元に目もくれず、前方のメインモニターにまとめられた戦闘に必要な最低限な情報のみに注視する。 そのかわりに主機関の出力を通常稼動の『5割』より、更に下げた。 一人で扱える代物でないなら、一人で何とかなる程度で動かしてやればいい。 あとは虎二郎の策を信じる。不思議とそこに疑問は無かった。 土岐虎二郎という男には、どういう訳か、そういう処があった。人を信じさせる、というよりは人を従わせる才能とでも言おうか。 しかし本当に難しいのはそれからだった。出力が減った分、ダイガストは容易く当たり負けをおこした。 もともとギャラクシー・コーカサス・オオカブトのほうが重量が上である。 踏ん張りが効かない分だけ、過剰な衝力はダイガストを重力との狭間で木の葉のように舞わせてくれた。 加減を知らない野生に装甲どころかフレームまでが不気味な軋みを上げ始める。 三度目の空中浮遊と着地を成功させたところで、即座に眼前にまで迫った超高周波振動角の突進に、 鷹介はとっさにフットペダルを踏み込んでダイガストを飛び退らせた。 流れに逆らわず、同方向に勢いを殺し…たら、盛大に宙を跳ねていた。 慣性と推進力とが術理を上回り、機体をカタパルトのように放り出したのだ。 これまでに無い浮遊感の後、あわててバーニアを吹かして山上に『着陸』する。 なお消しきれない慣性がダイガストを踏ん張らせたままの体制で後方へと押し流す。 木々を圧し折り、土煙を上げ、轟音とともに山嶺を滑ってゆく。 見る間に小さくなったギャラクシー・コーカサス・オオカブトが、すぐさま、そのサイズを元の大きさにもどして突っ込んでくる。 その数瞬の間にブラストマグナムを発射したい誘惑が幾度も襲ってきたが、 出力を絞った現状であの分厚い甲殻と筋肉を破れる訳も無く、何もしないという高度な我慢を強要された。 突進するギャラクシー・コーカサス・オオカブトの一挙手一投足に目を配ると、逆巻く風がまるで頬に当たるかのような錯覚を覚える。 まさに錯覚だ。それも性質の悪い。ここが海上で高度1000フィートなわけが無い。 自分が握っているのはダイガストの操縦桿だ、T4練習機じゃあない。割れたキャノピーから絶えず吹き込む寒風も無い。 ただ、なす術がないのは『あの時』と同じ。 諦めたら、それで全てが終わる。諦めれば、それで全てが終われる。 ああ、なんだって俺はこんな所にいるんだ?あいつら、今頃は戦闘機過程だろうな。 場違いな思い出は、じきに理不尽への――理不尽な?――怒りに置き換わる。虎二郎の手を離れ、 鷹介の前に表示されているダイガストのエネルギーゲイン表示が、機械信号の命令無しに徐々に上がってゆく。 が、二人はそこに気付く余裕が無い。 目の前に迫る巨体を鷹介は自らの閃きに任せて横っ飛びにかわす。 そして首尾よく紙一重でやり過ごし、側面に着地、無防備な横っ面にこれでもかと引き絞ったパンチを見舞った。 ギャラクシー・コーカサス・オオカブトの巨体が傾ぎ、六本の足が蹈鞴(たたら)を踏む。 確かな手応えに鷹介は追撃に出る。 その時には誰も知らないところでエネルギーゲインは正常値に戻っている。結果、超高周波振動角と拳がかち合い、 「くっ…」 重量に負けるダイガストの拳が跳ね飛ばされた。 「せめてあの角が無ければ…」 人、それをメスのカブトムシと呼ぶ。 まぁ、そんな軽口を叩いてられる状況ではない。何しろ打つ手が無い鷹介がジリジリと下がると、コクピットに警告のアラートが鳴り響いたのだ。 はっとなった鷹介が情報ディスプレイの戦術マップに目を落とすと、設定した山の裾野、つまり人里への出口が背後に迫っていた。 幾度も吹き飛ばされ、最終防衛ラインまで押し込まれていたのだ。 更に鷹介は目を疑う。山の裾野から続く平地に何両もの車両が停車していた。避難が間に合わなかったに違いない。 「透!」 鷹介は後方の空をゆっくりと旋回しているだろう『大鳳』の幼馴染を呼び出す。 「後ろの広場に車がたむろしてる!警察に避難誘導を頼んでくれ!!」 どういう訳か透はすぐには通信に出なかった。 ただ、開いた回線の向こうではしきりにデータリンクとか座標とかの単語が、彼女の口から別のどこかへと送られていた。 やがて彼女にしては珍しい、強い意志のこもった声が鷹介の耳に響いた。 「大丈夫だよ、鷹くん。間に合ったんだよ!」 山の裾野に集まった車両は、逃げ道を誤った住民ではなかった。 たむろしている様に見えたのは陸上自衛隊の93式近距離地対空誘導弾 ――大型の4WDの後方にミサイルのコンテナ二つとセンサー類を乗っけた車両――が布陣を終えた光景だった。 他にも兵員輸送車からは次々と隊員達が飛び出し、どこから調達したのか01式軽対戦車誘導弾 ――黒くて太いパイプのような外見の対戦車ミサイル発射機――を担いで巨大カブトムシに向けている。 陸自は74式戦車では間に合わないと判断、岩手駐屯地から高速道路を使って運べるだけの火力を送り込んだのだった。 皆、総理からの派遣指示が降りる頃には、異常を察知して準備を始めていた。もちろん、74式戦車も既に大隊の移動を始めている。 じわじわと近づくツルギスタンの脅威を前に、今や岩手駐屯地は最前線の一つとなっていた。 家族の後送命令も出ており、一朝有事という言葉はもはやに死語に過ぎない。 しかし、隊員達の表情には良い意味での緊張が漲っていた。 義務、矜持、使命感、郷土愛。何しろ敵は異星の巨大生物である。どれを振りかざしても文句を言われる筋合いは無い。 そして防人達を待っていたのは、上空を旋回している大型機――大鳳――からのデータリンクだった。 臨時でこの寄り合い所帯の指揮を押付けられた二佐は、ここまでの道程でGBCの番組もチェック済みだった。事、此処に至り、彼は決断する。 「火力を巨大カブトムシの頭部に集中し…ダイガストを援護する!」 4WDの後部コンテナから次々と白煙があがり、ミサイルが空に解き放たれるや、煙はすぐに無色に変わる。 なるべく飛翔をばれない様にするための最近のトレンドだ。 01式軽対戦車誘導弾もしかり。すぐに多数の光点のみが目に見える全てになった。 光点の列はふたつに別れ、ひとつは一直線に山間のギャラクシー・コーカサス・オオカブトに飛び、 今ひとつはより高く、山なりのダイブモードで直上からの命中を狙う。 センサーの赤外線反応から攻撃を察知した鷹介は、ダイガストの絞っていた出力を引き上げ、腰部アンカーの左側を射出させた。 アンカーはギャラクシー・コーカサス・オオカブトの脇をすり抜けると、推力偏向ノズルでもって後方を迂回、ダイガストの手に帰ってくる。 あとは間をつなぐ光帯の出力を調整してやれば、短くなった光帯が巨大カブトムシを締め上げる寸法だ。 もちろんギャラクシー・コーカサス・オオカブトは拘束を振りほどこうともがき回る。 が、鷹介もダイガストの微妙な出力調整をオートリアクションで上昇させるに任せ、黒光りする巨体を押さえ込んだ。 二つの光の列が山間に殺到し、大輪の炎の華と、僅かに遅れて凄まじい轟音が沸き立った。 直後、爆炎の中から黒光りする何かが飛び出すや、それはクルクルと回転しながら、山肌にちょうど空を指して突き立つ。 自衛隊員の中にガッツポーズを作るものが出た。炎がおさまったとき、それに大きな歓声が唱和する。 ギャラクシー・コーカサス・オオカブトの頭部の角が、中程から折れて欠落していた。 それに右後背から伸びる角も、多数のミサイルの直撃で穿孔され、ぐらついている。 振り下ろされるダイガストの拳が二本目の角を完全に叩き折るや、歓声は最高潮に達した。 が、熱帯惑星の王者はそれだけでは終わらなかった。 痛みにか、屈辱にか、それとも単純な怒りにか、これまでを上回る怪力を発揮すると、アンカーの光帯を引きちぎりダイガストに突進したのだ。 ダイガストはそれを真っ向から両手で受け止めた。土煙が上がり僅かに後退したところで、両者の力が均衡して挙動がピタリと止まる。 既に超高周波振動角は二本が脱落し、機体が高熱に苛まれる部分は少ない。 しかしそれは同時に上昇を続ける事象転換炉を放置した睨み合いに他ならない。 メインモニターの端でぐんぐんと上昇を続けるエネルギーゲインのバーが、緑色から警戒領域に入ったことを示す赤色に変わった。 それは嫌がおうにも鷹介の目に飛び込んでくる。 瞬時、鷹介は背後を振り返って虎二郎に問いかけたい誘惑に襲われる。だがそれは自分の役割を放棄する事に他ならない。 虎二郎は今でも全力で自分が受け持った役割をこなしている筈だ。 だから鷹介は神経を研ぎ澄まし操縦に集中する。 僅かでも野生の暴威を手足から大地へと逃がすため、無理に押し込まず、無駄な出力を機体にかけず、この均衡を一秒でも続かせる。 金属と甲殻がきしる音だけが山間に響く。 自衛隊員たちは各々のミサイルの次弾を再装填したが、ダイガストが近すぎて、 そして何より微動だにしない両雄の力比べに息を呑み、発射のタイミングを逸していた。 やがて鷹介の耳に事象転換炉の稼働率が危険域に入ったことを知らせる耳障りなアラートが聞こえてきた。 シートから悲鳴にも聞こえる振動が感じ取れる。いや、ひょっとしたら歓喜なのやも。 有り得ない妄想じみた感想を鷹介が抱いた、その時、 「待たせたな」 アラートの最中でも聞こえる、自信たっぷりの張りのある声。 「ちょうどダイガストも良い感じに温まっているようだし、このままいくぞ、鷹介!」 「応さ」 答える鷹介はしかし、いっかな、振り返りはしない。 担保の無い、されど、絶対的な機能としての信頼。 それが確かに存在する証明に、見る間に過剰な主機出力はバイパスを通って機体の胸部に流れ込む。 エネルギーゲインのバーは正常域に下がり、その代わりに兵装セレクターに新たなインフォメーションが点灯した。 Ready : Gravity splasher それが何かと考えるより早く虎二郎の指示が飛ぶ。 「照準とタイミングはこのまま、撃て、鷹介!グラビティ・スプラッシャー!!」 「発射っ!」 鷹介がトリガーボタンを押し込むと、ダイガストの胸部装甲から影で出来たヴェールのような帯が照射された。 微かに燐光のような輝きをまとった影は、相対するギャラクシー・コーカサス・オオカブトに音も無く吸い込まれた。 次の瞬間、びくん、とギャラクシー・コーカサス・オオカブトの巨体が震えたかと思うと、 その前面の甲殻がまるでハンマーで表と言わず裏と言わず、滅多打ちにしたかのような凹凸に変化していた。 熱帯の王者の目から光が消え、巨体が山間の中に崩れ落ちる。 やったか!? 思わずそう口にした自衛隊員が、周りの仲間から『フラグ立てんな』とヘルメットの上から引っ叩かれている。 ようやく鷹介は後部座席を振り返れた。その顔には意外な呆気無さに、困ったような色が浮かんでいる。 ダイガストのセンサー類は巨大昆虫の二酸化炭素排出量がゼロになったことを察知していた。つまりは、 「勝った…んですか?」 虎二郎は頷くと、親指を立てて見せる。 「グラビティ・スプラッシャー…太刀風の主翼が本来は持つ筈だった重力制御システムを、 未完成のままでは勿体無いので兵器転用したものだ。 ゲージ粒子の一つであるグラビトンにはたらきかけ、極小の重力波を発生させる。 重力波は消滅までの短時間の間に激しい重力変動を繰り返し、巻き込んだ対象を物理的に粉砕する。 理論上、この重力変動に対応しきる物質は存在しない」 虎二郎はぐっと拳を握り締め、力説に満足したようだった。 反対に鷹介はひどい脱力を覚えた。そんなレクチャーされた事も無い。 それも未完成の半端な機構が、自分の操縦する機に積み込まれていると言うのだ。 機能としての信頼?いや、きっと信じるものは救われるというレベルの間違いだろう。 鷹介は疲れた溜息をつきながら、ダイガストにだけは力強く、その右腕を突き上げさせた。 古今東西、それは成功を意味するジェスチャーであった。 自衛隊員達から歓声があがる。同じように右手を突き上げる者に混じり、背筋の通った見事な敬礼をする隊員もいた。 GBCのリポーターだけはさも面白くなさそうに、その光景を遠間にしながら中継の締めの台詞を口にしていた。 「これはいけません、ジエイタイの蛮勇に助けられ、ダイガストが勝利してしまいました。 自らの体を晒しての攻撃など、あってはならない人命の軽視です!このような蛮族の行いが許されてはいけません! 地球人類に早期の文明化を!剣はペンよりも強し、ピーター・マクドナルドでした」 この小さな共闘と勝利は、有志によってインターネットにあげられ、長く人々の目に留まる事になる。 必要なときに、自らの意思で。 GBCの押付けがましい配信者たちがその意味に気付くのは、だいぶ後になってからであった。 ちなみに某ニコ動でのコメントで最も多かったのは、話題の時節柄、「濡れる!」であったという。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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第八話 獣たちの宴 その星は地球と比べると恒星より遠く、肝心の恒星もまた年老いていた。結果、ここ10000年で星の地表は霜に覆われ、大地には氷が混じった。 獣は厚い毛皮と脂肪に覆われ、鳥は赤道付近のまだしも温暖な地域へと逃れた。 人はと言えば、大地の下に潜って細々と都市を築き、生態系の上の下ほどに群れ固まるに過ぎない。 やがて宇宙時代が――外から――到来すると、彼等は自分達が過酷な環境で培った強靭な肉体が売り物になることを発見した。傭兵である。 爾後、その星は帝政ツルギスタンに組み込まれるまで良質な兵を輩出し続け、同帝国においては獰猛な前線の戦士たちの代名詞となった。 ゲオルグ・バウアー刃士は、その恵まれぬ星の歴史の体現者であった。 彼が率いる第一機甲部隊は外征旅団の最先鋒と言えば聞こえは良いが、実態はブレーディアンも与えられぬ殖民惑星出身者達によって固められた蛮族扱いで、それなりの星に攻め入るならば損耗は避けられぬ、まさにツルギスタンの弾除けである。 彼はこのホッカイドウとか言う大地が嫌いだった。凍てつく様が故郷に似て、ひもじかった幼年期を思い起こすからだ。しかも3月になって寒気が弛んでゆくのを肌で感じ取ると、嫌悪は嫉妬に変わった。ここはあの穴倉の故郷と違って雪が溶け、緑の茂る季節があるというのだ。 嫌悪は抵抗を続ける皇国の兵にも向けられた。 泥に塗れて抵抗を続ける様は、かつて、あんな故郷を守るために足掻いた時分を思い出すからだ。 「長ぁ、肉が出来てますぜ」 ゲオルグは部下の、そして傭兵時代からの同郷どもの声で、暗い思索から帰還した。見れば格納庫の軒先に吊るした熊や鹿の塩漬けが良い塩梅に飴色になっている。 ゲオルグは濁声を張り上げた。 「よぅし、さっそく炙って味見しようじゃねぇか」 豪快な、事によっては野卑な笑いが唱和する。 格納庫のキャットウォークからそれを眺める上級仕官二人の目も、けして肯定的でなかった。 「ああ、嫌だ嫌だ」 ヘルマン・ファルケンハイム大刃士は眉毛を器用にハの字に歪めて見せる。 「いくら外征旅団の先鋒は植民地兵に任せてるとは言えね、ボクはつくづく、ああいう類のと仲良く出来ないなぁ…文化を感じないよ」 隣で聞いているアフバルト・シュバウツァーは『だったら卿(けい)の毎夜のすすきの通いは文化的なのか』とか言おうと思ったが、それこそ文化的でない気がして止めた。 それに地球へ派兵された第3外征旅団の中でゲオルグ達が浮いているのは確かな事実だ。軍服を着崩し、所かまわず糧食を食べ散らかして、出先で酔っては騒ぎを起こす。ツルギスタン併合から10年。まだまだ彼等は蛮族の因習が抜けていないのだろう。 「…星々を併呑するごとに、我々はこんな苦労を抱えてゆくのだろうか」 アフバルトの呟きにヘルマンは極めて陽性の強い笑みを浮かべ、少々年下の同僚と強引に肩を組んだ。 「いちいち気にする事でもあるまい。新たな御婦人との出会いの機会が増えると思えば良い」 「それで喜ぶのは卿だけだ」 「キミこそ、本国を離れて婚約者殿の目も無いのだ。もう少し羽を伸ばしたらどうだ?」 「卿という男は、ほんとうに…」 アフバルトは若い身空に不釣合いな、疲れたため息を洩らすのだった。 第一機甲部隊の連中はいよいよ干し肉に火を入れ始めたのか、獣脂の溶ける香ばしい匂いが格納庫に満ち始めた。整備士達は絡まれるのを嫌がり、迷惑そうに遠巻きにしている。 こんな隔絶した風景が俺たちの求める国の姿なのだろうか。アフバルトはもう一度、溜息ををつく。 ふと頭をよぎったのは、アオモリで出会ったカザミ ヨウスケと名乗った若者の顔だった。あの時交わした笑顔は、爽やかな記憶として彼の心に刻まれていた。 4月頭。ツルギスタンの限定攻勢が再開された。 岩手県を賭けた戦争行為の舞台は、内陸部の岩手山麓に広がる演習場と定まった。 かなり空気も弛んできたとはいえ演習場の荒野から見上げる岩手山は未だ冠雪している。岩手富士とも称えられる整った形状と雪化粧とが、東北の澄んだ青空に清冽に映えていた。単独峰に近いその堂々たる景観が山岳信仰の対象となったのも頷ける眺めだ。 開始時間を間近にして演習場に居並ぶ岩手駐屯地 第9戦車大隊の搭乗員達の顔は、晴天に反して重い。 それも逐次退役が進んでいる74式戦車でもって、現行の主力たる90式戦車が歯が立たなかった敵と対峙せねばならないのだから、無理からん話だった。 戦域外ぎりぎりに停車した73式小型トラック――三菱パジェロの自衛隊用――の助手席で、双眼鏡をかまえた東和樹三佐には、戦車搭乗員たちの無力感が痛いほど伝わってくる。再編成中の彼は観戦に徹し、実戦経験者としての見地を求められていた。 彼の他にも自衛隊の非装甲車両の姿が見える。おそらくは似たような立場か、他人事でなくなりつつある近隣の駐屯地からの『偵察隊』だろう。皆の目なり双眼鏡なりは50両ほどの74式戦車の列と、そこから離れたところに立つ巨人の背とを行き来していた。 大江戸先進科学研究所と自衛隊は、内閣を挟んでのなんとなくの共闘を続けている。 東としては青森での敗北から、あのロボットがアニメのような完全無欠のスーパーロボットでない事は理解していた。が、まだまだ物珍しい者もいるのだろう、暢気に写メを撮っているのまでいた。 状況はまったく楽観できないと言うのに。 さりとて陸自にしろ、今回も直接戦闘には不参加の空自にしろ、あのツルギスタンのロボットの装甲を打ち破れないのだから、ダイガストとかいう民間のモノに子供じみた期待を向けるしかない。 東が歯がゆさにしかめっ面をしている内にツルギスタンの侵攻兵力も姿を現す。 早くもGBCから放映権を買い始めた民放ラジオ局によると、ゲオルグ・バウアー刃士率いる第一機甲部隊とか言っているが、東にとっては北海道で嫌と言うほど味わった衝撃の記憶の相手といった方が早い。 いつもの首無し西洋鎧よりもスマートで、手足には特殊鋼の鉤爪が鈍く光っている。何より印象的なのは、胸の部分に刻まれた猛獣の顔の彫金(エングレイブ)だ。なんでも儀仗獣兵とか言うらしい。 あくまで儀仗と言い張るのは、連中にとって他星への侵攻などは軍事パレードに過ぎない、という意思表示なのだ。他にもガーズ(衛士)・ヴィルデスティーア(野生動物)シリーズという単語も聞こえるが、その辺は彼らの双方向翻訳機の効きがイマイチなのか、英語と独語が混じっていた。 「…最悪だ」 東は思わず声に出していた。 戦車が相手取るには、まだしもあの『槍持ち』の方がマシだった。 彼の危惧を嘲笑うかのように戦闘開始を告げるサイレンが響き渡る。 殷々と鳴り響く警告音は、まるであの獣どもの咆哮のようであった。 開幕と同時に儀仗獣兵は思い思いに突撃を開始した。 と、それぞれの膝が出し抜けに前に折れ曲がり、急激な姿勢の変更に機体が倒れないよう手をついて支える。地面を見下ろす形になった胸の獣の彫金が90度起き上がり、その姿勢でなら正しい位置に移動した。 つまりは四足獣だ。 儀仗獣兵とはその名の通り、獣の似姿であった。そして北海道で90式戦車に捕捉を許さなかった俊敏さをここでも存分に発揮し、四つ足で駆けるや見る間にダイガストの間近に迫る。 いの一番に飛び掛ってきたのは、豹のような頭をしていた。 鷹介は踏み出して相手が質量分の加速を得る前に大振りの右拳で迎撃する。 重々しい衝突音と、一歩遅れて甲高い金属音とが演習場の原野に鳴り響いた。 頭部をひしゃげさせた儀仗獣兵が、放物線を描いて吹き飛んでゆく。派手な土煙を上げると、アクチュエーターがおかしくなったのか、そいつは生物のように痙攣していた。 「儀仗兵より脆いか?」 虎二郎が今しがたの一撃が機体に与えた負荷を確認しながら呟く。 「その分すばしこい様だが…」 彼らの目の前で獣たちは早くもダイガストを囲み、警戒するようにその周りを走りはじている。 儀仗獣兵の外部スピーカーから濁声がほとばしっていた。 「この獲物は今までとは少し違うぞ!獣の闘いを思い出せ」 そいつは剣のような二本の牙がついた剣歯虎だった。機体も一回り大柄で、いかにも群れを統率するボスの威容を備えている。そのコクピットではゲオルグ・バウアー刃士が愛機と同じように犬歯を剥き出しに、獣の群れを統率していた。 人の知恵を持った獣は包囲の輪を徐々に狭め、前後、左右から同時に飛び掛り始めた。獣より性質の悪いならず者の戦法だ。 ダイガストは地を転がって爪牙から逃れると、腰裏のバーニアを吹かしながら立ち上がり、人間には不可能な低姿勢から復帰する。余勢もそのままに囲みを破ろうと走るが、獣の包囲網は柔軟に形を変えて等距離を保ち続けていた。 軍内で蛮兵と後ろ指さされようが、彼らの連携は最高だった。いや、蔑まされるこそ強固になるのだろう。 「牙!」 ゲオルグの咆哮じみた命令に従い、二機の儀仗獣兵が上下から挟み込む様に跳躍する。 獣の顎門が閉じられる如く。しかし口の中の獲物は黙って牙を待つ被捕食者でなく、こちらも跳躍して足元に迫る一機を飛び越えると、空中で擦れ違う一機の胴に横薙ぎの鉄拳を叩き込む。 「浅いか」 鷹介が小さく舌打ちした。 一瞬の交錯では決定的被害は与えられなかったのだろう、そいつはふらつきながらも包囲の輪に戻る。同時にゲオルグの次なる攻撃指示が、着地で足を止めたダイガストに向けられた。 「爪だ!!」 包囲の輪から三機が飛び出して一斉に袈裟懸けに飛び掛る。力で押し切ろうというのだろう。 「おいでませだ!」 しかし虎二郎も敵がまとまる時を待っていた。出力を調整して発生させた余剰分を開放し、 「グラヴィティ・スプラッシャー準備完了!」 「放射っ!!」 鷹介がトリガーボタンを押し込むと、ダイガストの胸部から黒いヴェールが展張して、獣のひとかたまりを絡めとった。発生は瞬きするほどの時間だったが、その瞬間の中には激甚な重力の波が集約している。重力波による出鱈目な重量変動は容易く構造材の剛性の限界を迎えさせた。 三機の儀仗獣兵はたちまち吹き飛ばさせると、手足を有り得ない方向に捻じ曲げられて機能を停止する。 手痛い反撃にゲオルグは攻勢を一時中断し、包囲する各機のスピードを速めて隙を窺う。まさに獣の群れが大型獣を包囲し、その体勢を崩して喉元への一撃を狙うかのような光景だった。 ゲオルグとて猪武者ではない。多少の困難を力づくで噛み千切ってみれば獰猛などと後ろ指さされているが、それこそ絶えず変化する戦場というモノを理解していない外野の言う事だ。 彼の芯は冷徹であり、力の原理をよく理解していた。 夷狄の機械人形は儀仗兵の個々の性能を凌駕している。いわんや、その局地戦型である儀仗獣兵でも同じだろう。しかし所詮単騎であり、二週間などと言う馬鹿げた戦争の枠組みを取っ払って、波状攻撃を繰り返して修理の暇を与えねば容易く押しつぶせるものを。 もちろんゲオルグは彼らを率いるルドガーハウゼン大剣卿が、自分達の戦争形態に沿ったかのようなダイガストの存在に頭を痛めている事など知らない。 ただ獣の群れの長の如く、目の前の獲物に食らい付くチャンスを狙うのみだ。 そして、その時は意外に早く訪れた。 今回のツルギスタンは戦線突破を狙っているわけでは無いようだ。安堵する東三佐だったが、不意にダイガストが奇異な動きを見せ始めた事に別の不安を抱いた。 踏み出しては『獣型』に阻まれ、その包囲の外側を注視しているようだ。 東もそちらへ双眼鏡を向け、絶句した。 5台のSUV…いわゆる一般購買層向けのオフロード車が戦場に乱入し、猛スピードで接近していた。 と、助手席の窓から身を乗り出した乱入者が、どこの国のモノにも見えないゴツイ銃を構え、あろうことか銃口から目も眩まん光線を発射した。 派手なレーザー光は他のSUVからも放射され、ダイガストを囲む獣型に次々と命中する。 といっても装甲表面を赤熱させ、多少なりともケロイドじみた歪みを発生させるに過ぎなかったのだが。 放射は何度か続いたが決定的な成果は上がらず、乱入者達は口々に罵りをあげているようだ。 大体のところを東は理解した。 市井の『はねっ返り』達が昨今、世界各地で跳梁を始めている宇宙やくざや星間違法商人から武器を買い込み、それで侵略者達にひと泡吹かせてやろうと乱入してきたのだろう。 そんなモノで勝てるなら東も身銭で購入する。 実際のところ乱入者達は星間商人の航宙戦闘機のレーザー機銃という触れ込みを真に受けて購入していたが、携行用に収束器を外して軽量化している事や、軍用機の内部電源に依存している事等を理解する見識はなかった。そして違法商人にもクーリングオフの気は更々無かった。 この乱入者達にGBCの中継者は俄然盛り上がる。 「ああ、何と言うことでしょう!?不可侵の戦場で地球人が蛮威を振りかざして暴れております!おお、ツルギスタンの第1機甲部隊が鎮圧に向かうようです。それでこそ宇宙の範たる銀河列強の軍人の姿です!違反者には制裁を!なお、刺激が強い映像になりますので、銀河放送法に従いましてお子様のおられるご家庭では全自動フィルター放送に切り替わります、どうぞご安心ください」 家庭状況までつぶさにマスコミに監視されている状況が安心なのかはさておき、儀仗獣兵の囲みの中から二機が躍り出ると、即座にSUVへと襲いかかる。 たちまち二台のSUVが爪に吹き飛ばされ、炎に包まれた。犠牲者の悲鳴は金属音と爆発音に掻き消される。 「なんて事をするっ!?」 鷹介が咆え、無理やり囲みを破ろうと突進した。 そこに生じた隙を、ゲオルグは見逃さなかった 「狩れッ!!」 総攻撃の合図に獣が一斉に牙を剥く。 「邪魔を、するなぁぁぁっ!」 群がる獣に怒りの咆哮をあげる鷹介。 脚部に噛み付いた儀仗獣兵を振りほどいて踏み砕き、飛びかかってきた奴を左腕の装甲に噛み付かせて、反対から飛びかかる奴にぶつけて諸共に吹き飛ばす。 ここで見計らった様に味方の下を潜り出てきた一際大きな剣歯虎が、低姿勢で体当たりをしてくる。大きく揺らいで足を止めたダイガストに、続けて前足で圧し掛かり、押しつぶそうと重量をかける。 爪が肩口に食い込み、コクピットに嫌な軋みを伝えてきた。 「民間人への攻撃をやめろ!!」 鷹介はドスの効いた声で目の前の剣歯虎に要求する。 「あぁん?」しかし返ってきたのは小馬鹿にしたような濁声だった。「武器を持った時点で民間人なわきゃ無ぇだろうが!そういうのは犯罪者って言うんだよ!!」 統一の服装を整え、所属を明らかにしたもの同士で行われるのが『戦争』の原則である。 そして交戦の資格が明らかで無いのに『戦争』に参加すれば、スパイや破壊活動をはじめとした様々な容疑をかけられ、最悪、その場で射殺されても文句を言えない立場になる。 こういった取り決めは地球においてもハーグ陸戦条約で結ばれていた…イスラム諸国や共産国等の第三世界は大抵批准していないが。 現代におけるムスリム民兵=テロリストという図式も、こうして出来上がっている。もっとも、彼らは近代的な国家感や政体を先進国と共有していないのだから、このあたりの齟齬が解消されるのはずっと先になるだろう。 ともかく戦争におけるルールとは、際限なく拡大する戦闘行為とその被害とを局限しようと結ばれたものであり、ついぞ限定戦争という形態を執るに至った銀河帝国文明圏では、より強力な拘束力を持ったものが結ばれるに至った。大概はハーグ陸戦条約でうたっている虐殺・略奪の禁止、非人道的兵器の使用禁止と似たり寄ったりだったが、交戦資格者の定義には特に注意が払われている。 たぶん自国の兵の傷病保証や遺族年金で頭を悩ますよりも、相手側にルールを徹底する方が早いという魂胆だろう。もちろんゲオルグにとって、そんなことは重要ではない。むしろ、 「それともお前は、仲間に銃を向けてきたやつを言葉で止められるのか!?応戦するなと仲間に言うのかっ!?ルールも守れ無ぇ蛮族には、ゲリラは犯罪ってぇ事を、教え込ませにゃいけ無ぇだろぉがっ!!」 剣歯虎の背中越しに再び爆発が起こる。引火したガソリンが黒煙を伴う紅蓮の炎を高々と立ち上らせた。 「それは、侵略者に言われる事じゃ無いっ!」 鷹介も負けじと声を張り上げる。民間軍事会社の訓練キャンプでも戦争行為のグレーゾーンに関する座学を受けていた。それが自分の生まれた国で実際に行われてみれば、悪い夢でなくとも頭に血は昇る。 戦争を始めるのは兵士ではなく、しかし現地で命を失うは兵士である。それがゲリラ化した現地民の過熱した抵抗であれだ。 もはや何が悪いのかすら判断がつかない。ゲオルグ・バウアーは抵抗活動を行い手酷く鎮圧された過去があり、鷹介は正規の軍人ではないのに抵抗の急先鋒となりつつある。 砕けた牙と研がれる牙、猟犬と狂犬、過去と現在。どちらが、どれであるのか。少なくとも両者はその知らない方が幸せな仕組みを知悉し、なお、定められた戦場で対峙するという、ある種似通った立場であった。 そして違いはといえば、目下、上から圧し掛かった余勢のある分、ゲオルグの儀仗獣兵は受け止めたダイガストに優越していた事。ダイガストの腰が折れ、徐々に膝が曲がってゆく。 「さぁ、ダイガスト、お前ももう狩られろ。そして俺たちの栄光の礎に変われ!」 ゲオルグの吠声と、腹に響くような発砲音が重なった。 SUVを追い立てる儀仗獣兵を次々と打ち据える物があった。異星の特殊鋼を貫けずとも、直撃による衝撃と、次々にあがる足元への着弾による土煙は、パイロットに追跡を断念させるに充分だった。 「なんだとっ!?」 ゲオルグが俄かに戸惑う。 それは74式戦車の躍進射撃だった。小隊毎に土煙を蹴立てて急発進と急停車、そして発砲を繰り返す。90式の120mm砲で貫けない敵に、74式の105mm砲が通じるのかと言えば絶望的だろう。 それでも戦場に乱入した民間人が避退する時間は稼げる。誰からともなく出た――出てしまった?――意見が総意となり、大隊が突き動かされていた。 戦場に混沌が解き放たれる。誰しもが何かに忠実であろうとした結果として。 ゲオルグの脳裏に凍った大地を守るために泥濘に塗れた記憶が過ぎり、すぐにマグマのように湧き上がってきた怒りに呑まれた。 「狩り尽くせ!どいつもこいつも、死に急ぐなら望みを叶えてやる!」 激昂に突き動かされるままに彼はダイガストを突き放し、74式戦車の群れに襲い掛かった。 案の定105mm砲ではツルギスタンの主力兵器を相手取るには力不足であった。 儀仗獣兵に確たる被害は無く、74式戦車は次々に蹂躙されていた。土埃と発砲音と鋼の悲鳴が轟々と渦巻く地獄の光景の中を、一台の73式小型トラックが駆け抜けてゆく。 「どうしてこうなった」 東和樹三佐は助手席からフロントガラス越しの光景を睨みつけ、自分に問いかけ続けていた。 ダイガストは優勢とは言わないまでも、獣型を相手に一歩も退かない立ち回りをしていたはずだ。こんな消耗するだけの乱戦に発展する必要が何処にある。 何より今の自分の行動はどうだ。命令も無いのに独断専行、これは国家財産の無断使用ではないか? そう葛藤しながらも、土煙の中に逃げ惑うSUVの影を認めた東三佐は、窓から身を乗り出して大きく手を振るった。 「こっちだ!外まで先導する!こっちに来い!!」 SUVの運転手も気付いたのだろう、こちらにハンドルを切ると、悪路に車体を上下させながら急接近してくる。すぐ後ろにはもう一台。確認した爆発の数と合せれば、たぶん無事なのはそれだけだ。 東は乱入者達を何とか救出できそうだと胸を撫で下ろす。 土埃のヴェールを裂いて獣型が飛び掛ってきたのは、まさにその時だった。 黒い影が陽光を遮り、急速に死が降りかかってくる。 ああ、くそ。東の脳裏に妻子の像がチラついた。 アドレナリンでも出ているのか、そこから先の光景はやけに緩慢な、しかし映像だけはクリアな無音劇のように感じられた。 狼の様に見える機械の獣が顎門を開き、上下に文字通り機械的に並んだ歯が赤熱を開始した。 運転手の一曹が流れるような動作でギアを変え、体にかかるGが増加する。 降り来る獣の影が接近とともに濃くなった。 横合いから、もうひとつ影が飛び出し、獣の影と重なって悪路を夜のように塗りつぶす。 金属同士がぶつかり合う悲鳴が東の頭上で響き、騒音と埃っぽさが彼を現実に引き戻す。 振り仰げばダイガストの背中が見えた。 「庇われたのか…」 彼の呟きに答える者はいない。 少なくとも獣型はダイガストに群がるので追撃の手を回す余裕を失っていた。そして矢面に立った民間のロボットは手に足に噛み付く獣型を地面に叩きつけ、あるいは新たに飛び掛る敵に直接ぶつけて、七面六臂の暴れ振りを披露している。 相手が機械の獣なら、こちらはまるで鋼の鬼だった。 鬼の心にあたるコクピットでは、二人の男達が足元の情報と、目の前の敵とに悪戦苦闘している。 「土岐さん、ゲリラ車両と自衛隊の4WDが離れてゆきます!」 「こっちも戦車が後退を始めたのを確認した!もう巻き込む心配は無いぞ、鷹介、ぶんまわせ!」 「応さ!」 「ただし、足の損害が蓄積している。こっちの構造の痛い所を突いて来ているぞ、さっきみたいな無茶な反撃は控えてくれ」 「かといって、こう3次元方向にすばしこいヤツはヤマト砲や輝鋼剣じゃ捉え切れませんよ」 「そっちは任せろ。乱戦中に透(みなも)くんに頼んでおいた構造解析の結果が届いた。あとは…」 虎二郎が策を授けている最中に、土煙を引き裂いて四方と、それに上方から儀仗獣兵が一斉に襲い掛かってくる。 ダイガストの両腰からアンカーが臨機射撃で撃ち出されたが、それはどれにも命中せずに空しく駆け上がっていった。と思いきや、ダイガストのカメラアイが強い輝きを発したかと思うと、アンカーと機体を繋ぐエネルギー帯を左右の手にそれぞれ引っ掴み、猛速で振り回し始めた。 発生した二つの円運動はたち込める土埃を即座に吹き飛ばし、ダイガストの頭上に青空を取り戻す。 振り回されるアンカーが同時に儀仗獣兵を跳ね飛ばしていた。 俊敏さと軽量化は不可分であり、対して形状記憶合金の尾翼をまとめたアンカーに鋭さは無いが、打撃武器として振り回すのなら、儀仗獣兵を打ちのめすのに必要充分な衝撃力を発生させる。 虎二郎の策とは、それだった。 さらに土煙が晴れる事によって、後退した74式戦車も儀仗獣兵に砲撃を集中できるようになった。ダイガストの攻撃で動きの鈍ったところに砲弾が集まるや、運悪く裂けた装甲近辺に飛び込んで擱座する儀仗獣兵も出始める。 いつの間にやらダイガストがアンカーを振り回して儀仗獣兵を追い散らし、74式戦車が砲撃を集中する即席の連携が出来上がっていた。 「畜生ぅ!」 ゲオルグは次々と報告される損害に奥歯も砕かん勢いで歯を食いしばり、喉の奥で唸るような怨嗟の声を上げた。 豆鉄砲を撃ってくるあの小生意気な鉄の棺桶に報復しようにも、彼らの儀仗獣兵に火器は無い。植民地出身者として日の浅い者が集まる第1機甲部隊にそこまでの信用は無く、とどのつまり儀仗獣兵に期待されている事とは、派手に暴れまわって、盛大にやられる賑やかし役だった。 そして此処でも泥に塗れた彼らを、これだから植民地兵は、などと貴族仕官どもが後ろ指をさす。 結局どこまで行っても泥の中なのだ。ゲオルグは呪わしい現実に目も眩みそうな怒りを覚えた。 その怒りは自然とモニターに映る蛮族の機械人形に向かう。 常温核融合すら確立していない文明が、宇宙から負け犬を掻き集めて造った、度し難い往生際の悪さの極み。 愛機を突撃させるゲオルグは、ついぞ自分を突き動かす感情が嫉妬であると気付かなかった。 儀仗獣兵の隊長機は一般機よりも一回り大きく、唸りをあげるアンカーにも当たり負けを起こさない。旋風の中を損害を無視して強引に突っ切り、ダイガストに肉薄すると、勢いを乗せた鍵爪を見舞う。 ダイガストはアンカーの光帯を切断し、寸でのところで手を空けて腕部装甲で受け止めた。多重構造の装甲に特殊鋼の爪が食い込み、敵機の重量が機体の動きを束縛した。 ゲオルグは更に圧し掛かりながら儀仗獣兵の高熱溶断器の牙で顔面に噛み付きかかる。 鷹介が今度は左腕の装甲に噛み付かせると、赤熱した巨大な犬歯がバターを切る様に食い込んできた。 「死にたがりの蛮族どもがっ!文明の光の前にひれ伏せ!」 ゲオルグの怒声は皮肉にも、かつて母星の防衛戦で自分に投げかけられたものと同じであった。彼は唐突に理解した。たぶん、あの時そう叫んだ兵士は、今の自分と同じ立場だったのだと。 不快な妄念が操縦を鈍らせたわけではない。ただ彼が対峙している者達は、諦めの悪さで彼の想像を超えていた。 ダイガストの左腕が出し抜けに噴射炎をあげ、噛み付いた牙ごと射出された。牙の引っかかりが外れて妙なベクトルが付いたロケットパンチはクルクルと宙を回転して落下する。それでも一瞬の衝撃は剣歯虎をのけぞらせ、体勢を崩すには充分だった。 ダイガストは右腕に爪を食い込ませたまま儀仗獣兵の首を引っ掴み、不安定になった足元を蹴り刈って、腕一本でもって強引な払い腰を仕掛けた。 剣歯虎を大地にたたきつけ、その首を掴んでいた指をすぐさま拳に固めて、 「ブラストマグナム!」 剣歯虎の体がビクンと跳ね上がる。 密着状態では右腕は射出されなかったが、金属のボディを貫いた衝撃は大地に深く浸透し、一拍をおいて大量の土埃が舞い上がった。 「文明の光とやらがそんなに高尚なら…」 虎二郎は動かなくなった儀仗獣兵を見るとは無しに見ながら、誰にとでもなく呟いた。 「武器を持って乗り込んでくるような真似はしないさ」 損害が拡大していたツルギスタン第一機甲部隊は、隊長機が討たれた事によって組織的抵抗能力を喪失したと判断され、司令部から撤退命令が下された。 テレビ画面にゲームセットとの文字が表示されるや、おどろおどろしく溶け出す。それがツルギスタン向けの演出である事は、さも残念そうなレポーターの声からも判断できた。 「ああ、なんという事でしょう。やはり植民地兵には荷が重かったのでしょうか、ツルギスタン第1機甲部隊が敗れてしまいました。それにしてもダイガスト、見苦しさすら覚える激闘でした」 上空を旋回する円盤型の飛行物体が中継機なのだろう、カメラは機能停止した儀仗獣兵を仲間達が引っ張って回収してゆく光景を捉えていた。それに、そこかしこで引っくり返っている74式戦車を救出してまわるダイガストの姿も。 撃破された74式戦車の数は20に届こうか。大隊の三割以上が失われているから、全滅という判定がされるのだろう。 この被害を出した乱戦の原因である民間人の乱入者たちは警務隊(日本における軍警察)にしょっ引かれていった。武器の購入先や 工作活動の嫌疑など、ハッキリさせねばならない事もあるが、じきに警察が身柄を引き取りにくると思われた。 10人ほどの民間人の暴走で、その20倍もの公人が危険に晒される。 鷹介は釈然としないものを感じていた。しかも自分も民間人の側なのだから、立場はさらに曖昧になる。救助作業が一段落する頃には悶々とした物は随分と膨れ上がっていた。 『ああ、いっそそんな事に悩む暇なんて無い位の、ひどい戦いになっちまえばいい』 瞬時抱いた幼稚な発想は、虎二郎の一声で霧消した。 「何か物騒な事を考えているだろ」 「判りますか」 「お互いのコンディションはモニタリングされてるだろ。情報表示ディスプレイの右下な。メンタルがえらく乱れている」 「そういや、そうでした」 「まだまだ起こるぞ、こんな事は」 鷹介は図星を指されて、鉛の玉でも飲み込んだような気分で沈黙する。 後方上段のシートに座る虎二郎からはその顔は確かめられないが、彼は作業中のダイガストが何か踏み潰さない様に、足元の情報に注意しながら続けた。 「列強だけじゃない、星間商人や星間犯罪組織が手ぐすね引いて混乱が広まるのを待っている。負けが込めば、自棄を起こすやつも増える。判断力を失った者は食いものにされるだけだ。そうさせないために、ダイガストは戦い続ける必要がある。この戦争はショー紛いのロボット同士の殴り合いだと、皆を誤魔化し続けるんだ」 「その間に長期不敗の備えを整える、でしょう。大江戸博士から耳にタコが出来るほど聞かされましたよ」 「少なくとも、その時までは自棄になるのも贅沢ってことさ」 「欲しがりません勝つまでは…いつから大江戸研は戦時中に戻ったんですか?」 「うちの研究所はずっと未来に生きているぞ」 「つまりずっと未来までこの調子、と。凄いな、人類の本質は変わらないことの証明をしてる」 「しかもその最先端に立ってるわけだ、俺達は…その辺で納得しておけよ。先端には先端なりの苦労があるんだぞ」 「…了解しときます」 ああ、やっぱりひどい戦いじゃないか。 鷹介はまるで仏像のような微笑をうかべた。 戦闘中に起こった椿事を受け、その日の内に国場総理より談話が発表された。内容は主に国民に隠忍自重を促すものだった。 戦場への乱入者たちは自衛隊基地での取り調べもそこそこの内に、やはり警察が出てきて本来の司法権を寄るところとして身柄を引き取っていった。しかし事は国家の一大事であるため、結局は岩手県警から公安の手に移る事になり、その辺りの関連法の未整備が浮き彫りになったのだが、即時の改善は期待できなかった。 公安警察内では新たな課を設立し『宇宙人の犯罪』に対応しようという動きも出たが、漫画のような職務内容にいまいち腰は重い。とりあえず倍力服と個人用多脚戦車のどちらが必要かという議論がされている時点で、設立は未来の事と思われた。 過去の戦争を基準にした、昨日の戦争のための準備をもって、今日明日の戦争を執り行う。 未来が――まして異星人の来寇など――見れない以上、この矛盾はどこまでも人類に付きまとうのだろう。 続く