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《生物》 +出典 『ラブリーポリス・トリクーガ~遠い約束~』 『ライヂング★スター7』 『アールエス』 『Sea Tree』 『アポロガル・エピソード』 SISTER 『ラブリーポリス・トリクーガ~遠い約束~』 地球塔の深部地下に黒士トレジャーが放った法獣。ビンタキングの行く手を阻み、倒しても際限なく現れる。 『ライヂング★スター7』 仲間キャラクターとして遭遇。クラス ウイルス。呪いをまとっている。HP 1 MP999という極端な設定だが、初期技として【約束】をもつ。⇒RS7 Wiki 地球塔地下の更なる下にとめど無く沸く亡者達の1匹。 『アールエス』 塔地下・ヒルトン炭鉱のエリアにのみ限定で現れる敵ユニット。このジョブ自体に特筆すべき能力はないが、EX個体は「亡者の鎧」を装備している。 装備者にとどめを刺すと自爆する亡者の鎧は、RSのランダム戦で以後しきりに目にする、鬱陶しい敵の装備になる。 『Sea Tree』 ヒルトン炭鉱奥の廃水に「亡者」という魚が棲んでいる。45cm、凶暴。 かつてトレジャーが放った獣は、野生化して地球塔地下の苛烈な環境に完全に適応してしまっているようだ。亡者の稚魚は、地上で目にすることができる。 『アポロガル・エピソード』 獣クラス「亡者」。倒しても生き返って襲ってくる執拗さと手強さ。 SISTER 属性 水 HP 1 MP 1 レア度 ファントム 憑依 ドッペルゲンガー
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1.いつものおしごと ヒトガタのネイナはマチノに呼ばれて更衣室みたいな場所へやって来た。仕事の話なんだろうと思っていた通り、仕事の話だった。 マチノ「今回は2人でこの武装集団を始末しに行くわ。目標の情報がこれしかないけど」 ネイナC「この子達が……?」 テーブルに広げられた資料として使われているのは少しは動く写真数枚と被害報告からまとめられたほんの少しの情報を示したリストだった。 資料によると何があったのか食べ物を狙って強襲を繰り返す集団を構成する何かしらのヒト型人類種の子供達とのことだった。 マチノ「社会に人を受け入れないとかそういう事をされた人間は生きる為に猛獣へ戻る事が出来るって言うのは歴史が物語っているわ。だから何でこいつらが居るのかはもう分かりきっているし、対策も分かっている」 ネイナC「そして駆除する、と」 ヒトガタのネイナはマチノが何故こういう子供達が出るのか全く興味が無いんだなと思わされた。今となっては普通なのか知らないが親の下で育ってきたネイナにとってはマチノの価値観というものとはかけ離れているようにも思わされるが、それはこの小さい害獣を始末する仕事に同行してくれるベテランとしては頼もしくも感じるし、余計な事が出てこないんだろうなと思える。 ただ、ヒトガタのネイナにはまだ心のどこかで母性を司る部分がひっそりと泣いている感覚があった。 マチノ「そう言う事よ。それで彼らが使っている武装や乗り物は市販の5.6mm拳銃弾を使うピストルカービンとかオートバイ(電動だったりするが内燃系とは区別されてない)なんだけどどうにもウサギ、もとい劣化バリスタンが遺した工場を使ってこの武装と乗り物を確保しているようなのよね。今回はその武装と乗り物も回収するわ」 ネイナC「何故?」 マチノ「劣化バリスタンが作ったものはある程度は個人を識別できるようなクセが材料そのものにあるの。アメジストちゃんにもちゃんとそれがあるし、こちらで分かっているから彼女が変にモノを流したりしてないって言うのも分かるわ」 ネイナC「つまり、どの劣化バリスタンが武器や乗り物を撒いているのかが分かるんですね」 資料を眺めつつ、どの個体が武器を撒いているのかを特定する意図もあるという話を聞き終えるとマチノはヒトガタのネイナに化粧を施し、着替えさせる。完全に別の印象を持たせる女の顔にされたあと、服装は如何にも特殊部隊みたいなそれに着替えさせられた。 そしてマチノも同様に服装をヒトガタのネイナに合わせると少しだけ身体を変化させて違う印象を与えるヒトの女になった。身体にメリハリがあって高い身長(170~180cm)が特徴的だったそれとは打って変わってどちらかというとヒトガタのネイナと背丈(150~160cm)が同じくらいで少し痩せた身体になった。 ネイナC「え、何その変身能力」 マチノ「もともとは変装用の奴なんだけど――」 ネイナC「いいなー、欲しいなー、それが有ればお手軽に綺麗に――」 マチノ「ネイナ、この変身能力はかなり面倒なのよ? ちゃんと頭使って身体を整えないと簡単に崩れるし、あと社会的にも家庭環境的にも悪影響があって……この前なんか息子にこんなこと言われちゃったのよ」 ネイナC「え、子供居るんですか!?」 マチノ「“意味も無く服を着替える調子で変身しないで。女って言われてもまず化けたかーちゃんなのか気になって聞いちゃうからマザコンかと思われてる”って」 ネイナC「ヒトガタになっても子供作れるんだ……」 マチノが変身能力がある事による印象の悪化を説明していてもヒトガタのネイナにとってはそんなことよりもヒトガタ造駆になっても子作りができる事に興味津々だった。あとさっきのマチノの様子からして勝手に子供を持たないつもりかと考えていたのもあって「こんな人が子持ち……」という衝撃もあった。 マチノ「……変身と子供はともかく、使う銃はこれよ」 話聞いてねーな、と思っているような顔をしたマチノはちょっと心配になりながら機関拳銃に少し古めかしい倍率付き光学照準器とサプレッサーを付けたものを出してきた。それを見たヒトガタのネイナは少しだけ真面目な顔になる。 マチノ「電池一体型弾倉を使う機関拳銃よ。弾は市販の5.6x8mmEML規格の重めの通常弾と対物徹甲弾を使うわ。持って行くのはどっちも20連発、通常弾のほうは亜音速弾で徹甲弾のほうはPOTもどき相手の極超音速弾よ」 ネイナC「やっぱりPOTもどき相手を想定するんですね」 マチノ「目標の子供相手には極力通常弾で相手して頂戴。ヒトガタのダッシュよりも遅い弾なんてって思うかもしれないけれど戦う場所は人口密集地だし、厄介なことにヒトガタ造駆の侵入が許されない通りが多い場所よ」 ネイナC「“純血信者”の通りですか?」 マチノ「つまるところそうね」 ヒトガタのネイナは話だけ聞いたというヒトガタ造駆はおろかサイバネ処置が施された人々を頑なに受け入れようとしないエリアを思い出した。どうしてそうなのかはヒトガタのネイナは特別に考えたことがなかったし、何よりも興味がなかったのだがここへきてその地区の存在を思い出させられた。 どんな名前の通りだったかは思い出せないが「嫌サイバネ通り」とか「純血信者通り」とか言うような通称で覚えていた。どうにも目標の不良少年グループみたいな者達はそこを主に襲撃しているようだ。 沢山の人種が入り乱れている場所にはこういうものがだいたい存在し、ここノキノシタ区にもそういう感じの通りやエリアがモザイク状に存在している。 人類種が多用に入り乱れる土地ではほぼ必ずと言っていい程「原理主義者」や「純血信者」というグループが発生する。ヒトガタのネイナというかネイナの人生でもそういうのと遭遇した経験は多く、その大半はあまりにも雑多な混血になっていたネイナのような者に対して嫌悪やしょーもない憎悪を向けていた事は覚えている。場合によっては暴力を振るわれ、差別の対象にもなっていた。 かといって混血がそういった純血を差別しないかと言えばそうではない。やんちゃだったネイナは日ごろからそういう「純血信者」をかなり口汚く罵り、嘲笑し、泣いても喚いても黙るまで執拗に暴力を振るっていた。同級生をその通りや病院に送ったのかはもう数えてないし覚えても居ない。少なくともネイナにとってそいつらはニンゲンではなく、人の皮を被った害獣でしかなかった。ネイナにとってそこは自然保護区と同様の害獣にもなり得る獣の巣でしかない。 マチノ「でも亜音速弾を使う理由は流れ弾の被害を最小化しつつ弾代を節約したいだけなのよね。行く場所がうちのヤクザが抑えてる場所だし」 ネイナC「ああ、騒ぎを抑えるのかと……」 ヒトガタのネイナとマチノは防弾防刃繊維で出来たショルダーバッグに機関拳銃と20連弾倉を6個入れて行き、サイドアームとして小型自動拳銃を腰の光学迷彩ホルスターと服の下にあるホルスターに入れて行く。 マチノ「ネイナはこれも持って行って。あの大剣の刃と同じ材質で出来てるわ」 ネイナC「ナイフなんて使うんですか……?」 おそらくパンチやキックといった格闘攻撃にヒトガタのネイナの身体は向いてないと思ったマチノは大型ナイフを渡す。 これで装備が整ったと確認すると外に出て軽攻撃機型POTの近くに待機し始めた。 それからほどなくして出撃命令が下り、ヒトガタのネイナとマチノは軽攻撃機型POTに掴まり、飛び立った。軽攻撃機型POTはビル群の間を這うように飛んでいく。支配下なのに敵防空網に攻撃する時みたいな飛び方をするのは何か拙いことでもあるんだろうか。 ひさびさに見るような気がする街の景色は街灯と看板の灯りに照らされた密度の高い立体構造をしているが着々と要塞構造へと建て替えつつある繁華街だった。 厚さが1mから10mもある鉄筋コンクリートや鋳鉄などで壁と床と柱などで基礎構造を造って砲台や砲郭を埋め込み、出入口と殺し間と呼ばれる構造へ誘導する通路を兼ねた構造を造っている。 建造中の部分を見ると「464号要塞用防御樹脂前駆体貯蔵槽」「塩基素材用」と書かれたタンクを3つ積んだ空中工作船が往来し、「警告 時間加速有効化中 接近ヲ禁ズル」と掲げた空中警備艇と哨戒機型POTが巡回していた。 街の中もそうだ。街全体がトーチカの林となり、ビル一つ一つが高射砲塔となっている。どこを見ても対戦車レールキャノンや高射レールキャノンの砲身がちらつき、まるで劣化バリスタンが作る要塞のような工場だった。 都市計画にアメジストが関わっているのだろうか? それとも劣化バリスタンがこの要塞構造を見抜いて同じものを造ろうとしていただけなのか? その明らかに頑丈な構造を見たヒトガタのネイナは「ヒトガタの街」という単語が思い浮かんだ。もしヒトガタ達が街を造ったなら、こんな感じになるんだろうなと。 そんな景色もまた変わって行く。沢山の住民を乗せた乗用車やバスやトラックが列をなして逃げて行く光景が見え、彼らが逃げ出している場所ではヒトガタのネイナと同じ量産型ヒトガタ達やパワードスーツを着込んだ民兵達がかつて警察が使っていた装甲車やトラックから降りて“カマドウマ”や“ハサミムシ”と呼ばれているPOTもどきの大群と戦っていた。「機械昆虫」と呼びたくなるそいつらはもはや劣化バリスタンが手放した自動工場から自然に発生している、本当の意味での野生のPOTもどきだった。 ……ヒトガタのネイナの脳裏に嫌な予想が過る。アメジストはネイナのクローンを、それも自分自身でさえもクローンだと分からない極めて精巧なクローンを作ったのだ。だから劣化バリスタンはやろうと思えばこの世界の人類種だって作れる。それが今まで出て来なかったのはやらなかっただけだ。 もしかするとこれから戦う不良少年達は……、新しいPOTもどきのようなものかもしれない。 マチノ「そろそろ目的地よ。降りる準備をして」 しばらく考え事をしていると目的地に着くようでそろそろ降りる準備をしろとマチノに言われる。降りる準備と言ってもフックを外すこととそういう心の準備くらいしかやることがない。1分くらい飛んで降りた場所はヒト型人類種が多く住まう純血信者の通りの入り口から少し離れた所だった。 劣化バリスタンや外国の鳥が荒れ狂うあの場所と違って少し小綺麗だ。 ネイナC「よく掃除されてますね」 マチノ「いいえ、街を建て替えさせる時にゴミや汚れなんかも資材として持ってかれたのよ。なんなら死体や寝たきり老人や捨て子でさえも躊躇なく潰して資材にしているわ」 マチノに言われてから干からびて死んでいるホームレスがヒトガタのネイナの目に入った。放置されている残飯や生ゴミでさえ持っていかれて灰色の砂漠になったのを思い知らされる。あの死体も潰されて建材や火薬にでもなるんだろうか、と狂った世界を思わせる予感がした。 清掃員とゴミ収集車がやって来る。干からびた死体を清掃員が見つけると彼はその死体にサプレッサーを付けた単発拳銃で銃弾を撃ち込み、死亡させると細くなった腿を掴んでゴミ収集車に投げ込んで潰させた。乾燥しかかっている肉と骨が潰れる音がする。でももうそれは嫌な音ではなくなっていた。 銃声が聞こえた。 マチノとヒトガタのネイナは機関拳銃を取り出してそこへ走って向かって行くと食料品を売っている店舗へ着き、その店に突入していく。 店の中はこの世界の建物にありがちな拡張空間を使った建築様式となっているため、広いが銃撃戦を行うには少し狭い。 ところでサプレッサーを付けていてもその銃声は同じ空間で近くに居ると銃声だと分かるものだとよく言われる。そのサプレッサーを付けたような特徴的な銃声が響き始めた。 この機関拳銃はEML式であるため装薬式やETL式と比べるとかなり音が小さくできるがそれでも銃声はしている。 その時にあまり近くで見る事の無かったマチノの動きを見る事になった。 彼女はヒトガタのネイナよりも高機能・高性能なヒトガタなのもあるがそれ以上にこの手の経験をかなり積んでいるため、まるで自動銃座のように素早く正確に銃を持っていきがっているだけに過ぎない子供を次々と射殺していく。見えたと思ったらもう少年や少女達は胸か頭の中央を撃ち砕かれて倒れ込んでいる。 ヒトガタのネイナだって素早く撃ち殺すことはできるのだが、ルートの取り方がまるで敵の居場所が分かっているかのようだった。 目標にされた少年少女達は反撃する間もなく始末されていくが、これが普通の武器を持っただけの一般人なんだろう。 ヒトガタのネイナはネイナ自身がどれだけ素のセンスだけで凄く強かったのかが身に染みるように感じた。……本当にそれだけでこれよりも遥かに強いPOTもどきを破壊していたのだから。小さい確率で戦士としての適性が非常に優れている個体が出て来るのはどのような人類種でもあるとはネイナは知っていたがまさか自分がそれだとは思いたくなかったのだ。 思えばそこらへんの女子大生でしかないオリジナルがいきなり警察用のパワードスーツを着込んで自分を追い詰めていたあたりで気付くべきだったのかもしれない。 マチノ「制圧完了しました。“清掃員”を入れてください」 資料で確認した人数は22人、ヒトガタのネイナが5人、マチノが17人仕留めて無線で制圧完了を伝えて店内は静まり返った。そうして如何にも清掃員らしい格好をした者達が店に入るとマチノとヒトガタのネイナは彼らに殺した場所を伝えて行く。 良くも悪くも汚したままでも気にされない戦場を最初に見ていたヒトガタのネイナにとって彼らの存在はなんとも新鮮味があった。あまり派手に千切ったりはしないので清掃員たちはどことなくいつもよりは気楽そうな感覚で掃除をしていく。 バイオハザードマークが描かれた黄色い樹脂製の箱にさっきまで武器を握っていた子供の死体を放り込み、そこから見えてなかったバッグみたいなのを取り出して銃を入れている別の箱に入れる。 流れ出た血は素早くモップをかけて除去し、血があった所は火炎滅菌用の線形レーザーバーナーで焼きはらう。 ネイナC「いつもこんな感じの早さなんですか」 マチノ「まぁ、こんな感じね。さ、次に行くわよ」 もはや簡易的な輸送機として使われているような気がする軽攻撃機型POTに掴まり、次の場所へと向かった。 2.暗殺砲が刃翼弾で斬り刻む しばらく空から運ばれてから今度は自分が所属しているヤクザが所有しているであろう建物の屋上に降ろされ、銃と装備を追加する事になっていた。 追加された銃は……、銃というにはあまりにも大き過ぎる代物だった。あまりにも大きな薬莢と異様に長い翼安定弾頭を組み合わされた謎の弾薬を使う古めかしい装薬式の大砲のような銃だった。 このとても大きい狙撃銃を用意した人はそれとなく使い方を説明し始めた。とはいっても説明の殆どはマチノに対して狙撃銃にとても長い有線で繋ぐことになる照準器の使い方であり、ヒトガタのネイナには狙撃銃に沢山あるセンサーに照準器から送られてきたデータをもとに整合とされる向きになったらトリガーを引くことと装填の仕方だけ話された。 なんでだか小さい大砲のように照準と銃の制御が別々になっているのである。 「この狙撃銃は例のウサギが作っているような紛い物じゃないぞ、奴らの世界だとACR3-A3CCと呼ばれている本物だ。照準器や後付けの対衝撃ゲル入りパーツはこちらのものだがな」 ネイナC「どういうこと?」 マチノ「密輸品だって言う事よ」 装備を整える間にこれを調達してきた人物は話を続ける中、大砲のような狙撃銃はヒトガタのネイナが背負い、照準器と1発分の砲弾とバッテリーが組み込まれている小型弾倉4つはマチノが背負う。 「そいつはうちでも2挺しかないから仕事が終わっても捨てずに必ず持ち帰ってくれ」 軽攻撃機型POTに掴まった時にそう言われ、ヒトガタのネイナとマチノは肯定する合図を送り、2人をぶら下げた軽攻撃機型POTは飛び立った。 マチノ「うちの組はね、他の組の連中よりも自分達の仲間だった者を手にかける事が多いのよ」 ネイナC「裏切者の始末ですか」 マチノ「そういうことよ」 何かしらの建物の屋上に降ろされたマチノは街のはさっそく道路や連絡橋を見渡し、ヒトガタのネイナに移動する合図を送って追随させる。 何個かの建物を飛び移って行くと高速道路が見えるものの建物の密度も高い位置に着いた。 マチノはヒトガタのネイナに狙撃銃を構えるように指示し、自分も小型弾倉一つと照準器とケーブルを取り出して射撃準備に入った。 ヒトガタのネイナはケーブルを受け取って狙撃銃に繋ぎ、狙撃銃に小型弾倉を取り付けてボルトを引いて戻して装填する。ヒトガタのネイナはその時に何か薄くて赤いコーティングが銃身内に施されているのが見えた。銃身が赤くなるコーティングというのはあまり聞いたことがなかったものの、それを口には出さなかった。そして狙撃銃を構えると違和感の正体に気が付いた。なんと排莢口からかなり近い所にアイアンサイトがあるのだ。いったいどんな人類種が使う銃だったのだろうか。 一方でマチノは違う建物へと飛び移って行き、そこで三脚架に付けた大型カメラのような照準器を構えたマチノはそれを使い始める。ヒトガタのネイナには何をしているのか分からないが少しするとセンサーに向けるべき角度と方位が表示され、その向きになるように体勢を変える。銃口はかなり上向きになっているが水平方位はどちらかと言うと向かい側の建物だった。 その状態でヒトガタのネイナはトリガーを引くものの、狙撃銃は発砲しない。どうやら射撃準備に入ったことを照準器に送るだけのようだ。 1分くらい待ってマチノが射撃の合図をし、照準器にあるトリガーを引くと狙撃銃が発砲した。乗用車のドアを勢いよく閉めたときのようなくぐもった砲声が轟き、速いとは言えない初速で長い砲弾が撃ち出された。排莢口からはまるで高初速な戦車砲や対戦車砲かと思わせるような形をした巨大な真鍮製薬莢が熱いガスを撒きながら勢いよく跳び上がった――顔の真横で。 撃った時にあのときおじいさんヒトガタに教わった対戦車ミサイル班の動き方を思い出したヒトガタのネイナはその直感に従ってケーブルを引っこ抜いて放り投げ、狙撃銃を抱えて走り出した。 ――やはりそうだった。直ぐにカウンター射撃が始まり、さっきまでヒトガタのネイナが居た場所に曳火起爆信管の榴弾が次々と飛来して爆発していった。向かって来る榴弾破片や建材へのダメージを見るにこちら側の世界で作られたモノのようだ。 そしてこちらのヤクザで使っているモデルとは少し異なる軽攻撃機型POTがやって来た。 警告も無く、ぶら下げているガンポッドから微妙に珍しい口径の機銃弾をこちらに叩き付けて来る。弾は昔の徹甲弾と今の徹甲弾が3 1くらいの割合で来る。ヒトガタのネイナはそこまで高防御ではないから昔の徹甲弾でも致命傷を負う可能性がある為、これでも脅威になる。 軽攻撃機型POTに捕捉されたヒトガタのネイナは抱えた狙撃銃を背負い、ビルの屋上から壁を蹴って素早く降りて行く。自由落下よりも速く加速して降りる為だ。でも本来なら回収すべき空薬莢は回収する暇もなくどこに落っこちて行ったのかは分からなかったが、その空薬莢がヒトガタのネイナが降りようとしている方向に落ちていくのが見えた。さっき撃ったばかりなのにまだピカピカな金色に輝いて見える空薬莢だ。 ヒトガタのネイナはそれを掴み取り、バッグにしまって道路まで駆け降りて逃げ惑う人々を盾にしながら道路を走って行く。 極端に命が軽い人々ならその微妙に精度の良くない機関銃でまとめて薙ぎ払っていただろうが、ここに居る人々はむやみに殺すには手痛い損害を産み出す障害物だ。 その時に屋上に居るマチノがライトでヒトガタのネイナに合図し、一発だけ入る弾倉を投げつけて来た。それをヒトガタのネイナがキャッチすると今度は別に持ちこんでいたであろうボルトアクション式のレールライフルから曳光弾を向かって欲しそうなポイントに撃った。 本当なら射撃する時点でかなり危険なのだがそれでも無線通信するよりは安全なのか。マチノも屋上から哨戒機型POTの目をかいくぐって移動していく。 一つ目の交差点に入るとマチノは形状や大きさ的にセダンくらいの乗用車に曳光弾を当てた。その乗用車はヒトガタのネイナから見て離れるように移動しており、そこに暗殺対象が乗っているんだと彼女は判断し、大砲のような狙撃銃の弾倉を付け替えて装填を行って壁蹴りで追い始めた。普通の乗用車はあまり速くはないらしいがモノによっては普通の人類種でも扱えるものでありながら一瞬で340m/s以上加速するモデルが存在するそうだ。ヒトガタのネイナが追跡しているその乗用車はそのような性能をしており、それこそスポーツカーとかスーパーカーとかと呼ばれるものだった。 後の窓に曳光弾が当たって焼けたような跡があるその乗用車を追うが橋や送電線などが障害物となっていて追跡はなかなか難しく、その上でターゲットになった乗用車は他の乗用車やトラックをぐんぐん追い越しながらできる限り速く逃げようとしている。 狙われている側にとってはよほどヒトガタのネイナが厄介なのか機動力による阻害をしようとヒトガタ造駆が2人くらい現れた。量産型ではないのでこちらよりは明らかに速い。幸い銃撃してこないのはそういう目的があるのだろうが動く重量物という障害物はかなり厄介だ。それをヒトガタのネイナは避けなければならない。 所で普通に製造されるヒトガタ造駆は大抵の場合、質量可変装置が付いていてこれを上手く制御することによって格闘攻撃の威力を上げたり、あるいは走る時なんかでもなるべく跳び上がらないように抑えつけるような細かい制動をすることができるという。 そしてヒトガタのネイナは「こいつらを踏み台にしよう」と思い付いた。格闘攻撃を誘い、質量が大きくなった瞬間に奴らの身体のどこかへ蹴って加速に使うのだ。しかも大抵は身体自体を堅くしている場合が多いので剛体の壁として蹴れるので加速力が良好かもしれない。 ヒトガタのネイナはまっすぐと走り、向かって来た一機のヒトガタ造駆が格闘攻撃をしてくるのを待ち、そいつがフックパンチを繰り出してきたのを見た。その時にヒトガタのネイナは身をひるがえしてそいつの腕を思いっきり蹴飛ばした。 蹴ったというよりはもはや跳び上がったような慣性のかかり方からやはり大質量化して動きを止めようとしていたのだろう。急造量産型はダッシュやジャンプであれば1020m/sほど加速できるのでこの速度で一気にターゲットの乗用車の上を飛び去り、ヒトガタのネイナは身を捩って大砲のような狙撃銃を構えて緊急用の近接距離射撃モードにセレクターを操作してトリガーを引いた。 余りにも太いサプレッサーから飛び出したのは非常に長い砲弾、その砲弾は砲口から数十cm進んだところで本来ならミサイルの安定翼として機能するであろう刃とそれとは別に設けられたまっすぐな折り畳まれた刃を12枚も展開して60cmくらいの長い刃と10cmくらいの短い刃を合計20枚も持つ砲弾へと変形して乗用車の正面の窓とボンネットの間から突き刺さるように浸徹した。 そこまでが見えたあたりでヒトガタのネイナは発射反動で身体が回り、着地して走り出した。 後をちらっと見ると衝撃波でめちゃくちゃになったであろう乗用車の残骸と肉片が見えた。相対速度から考えるに相当な威力になったと思うがあのような砲弾だったからまだ乗用車の残骸と分かる程度のダメージなのだろう。中の人は全員死んだみたいだが。 マチノ「撤収しなさい」 ここにきて初めてマチノは無線通信を使い、ヒトガタのネイナに撤収を命じた。……多くの暗殺任務は対象を殺してからが本番みたいなものである。 それを聞いたヒトガタのネイナはビルを駆け登って屋上に行き、回収地点なるものを探す為に見回すと黄色い光を明滅させているのが見えた。その方向を覚えたヒトガタのネイナはビルを駆け下りてその場所へ向かう。 屋上を飛び移りながら移動するのも良いが、空中では余程の脚力が無ければ空中で推進方向を変えるのさえできないので隙が多いため、あまり推奨はできない。実際、ヒトガタのネイナが目にした場面でもぴょんぴょんと跳ねて移動しているばかりにレッグガンの集中砲火を食らって燃やされたヒトガタを何人も見た。 流石に時間が経っているからか一般人が片付けられ始めており、通りによっては銃撃が出来る場所も出て来た。劣化バリスタンやそれに便乗して暴れる奴の存在が無視できなくなった今では群衆統制能力が上がって来ている為、結構早く人を動かす事が出来るようになっている。もうしばらくすれば銃撃される場所しかなくなるだろう。そうなるとより高威力な、それこそ加害範囲が100mを超えるようなものも叩き込まれ始める。 一番最初に銃撃してきた軽攻撃機型POTがヒトガタのネイナを追跡し始め、行きたい方向へ銃撃を置き始めた。流石に阻止攻撃を食らってばかりでは動き難いのでいよいよヒトガタのネイナは小型機関拳銃を取り出して亜音速通常弾を向かってきている軽攻撃機型POTのセンサーアイめがけて銃撃する。 超音速付近で走っている状態で後の上に居る軽攻撃機型POTに向かって亜音速弾を撃つ形になるので非常に遅い弾をぱらぱらとばらまくだけの格好だ。それでもセンサーアイに直撃させる事が出来たが暴徒鎮圧を目的としているからか軽攻撃機型POTのセンサーアイは「瞬き」して潰れた弾を弾き飛ばしていく。 その隙にヒトガタのネイナは足を少しだけ止めて軽攻撃機型POTの後ろを取り、対物徹甲弾を装填してある小型自動拳銃を抜いて軽攻撃機型POTの推進部に照準を定めて4発撃ち込む。ピザ配達ドローンのあいつとは違うモデルだが、基本構造は似ているので推進部を破壊すれば機動力を奪えるのは一緒だ。 340m/sを超えない軟らかい弾ではなく9000m/sを超す非常に堅い弾を殴りつけられて無事であるはずもなく、推進部から熱せられた破片が飛び出すと軽攻撃機型POTは姿勢を崩してビルの壁に衝突してそのまま墜落した。ちょっと前はPOTもどきを相手してきたヒトガタのネイナにとってはだいたい空を飛ぶ奴は墜落すると爆発して燃えていたので墜落してもちょっと潰れるだけで静かになる本当のPOT(ではなく、ただの無人機)の挙動は少し奇妙に見える。 軽攻撃機型POTを行動不能にして少し走り抜けるとまたヒトガタが2体追跡してきた。銃撃を許可されているからかその2体も古風なポンプ式散弾銃を握り、こちらに向かって撃っている。 2体が撃ってきている散弾は誘導散弾の類で適当に撃っても走っているヒトガタのネイナを捕捉して飛んでくる。しかし、弾自体に推進力を持たないタイプの誘導弾であるのであくまでも「微誘導」と呼ばれるような微妙な誘導であり、どちらかと言えば散布界を調整するような代物だ。それでも防御力が不足しているヒトガタのネイナにとっては危険なものだったが……。 ヒトガタのネイナは非防御部位にいくらか食らって出血させられるが自分から見て左に居るヒトガタに向かって跳び込み、至近距離から小型機関拳銃を肉薄したヒトガタの顔に撃ってそこから離れた。やはり対人用の亜音速弾なので眼球に当たっても目立った損傷はないが潰れた弾による目潰しは出来たようだ。次にヒトガタのネイナは反対側に飛び込んでヒトガタをぶん殴って散弾銃を奪い、その散弾銃でヒトガタを殴って散弾銃を破壊し、小型機関拳銃を弾倉内の残弾が無くなるまでヒトガタの顔に撃ち込んで走り去った。 ようやく回収地点に近寄るとヒトガタのネイナが通って来た道に自分達の所で使っている軽攻撃機型POTからロケット発煙弾が撃ち込まれて結構広く煙幕が展開され、ついでに無線機から妨害電波による電子攻撃を受けているような症状が出始めた。電子攻撃を行っているのはまるでやっすいグライダーのような無人機と言うか妨害電波によるカバー妨害を行う為の浮遊機雷みたいなものだった。 すかさずこの領域をシマとしているヤクザが飛ばしてきた軽攻撃機型POTが電子攻撃を行っている飛行物体に対してガンポッドの機関銃で掃除を始め、それと並行してこちら側の軽攻撃機型POTも制空権を維持する為にジャマーグライダーを攻撃している軽攻撃機型POTに向かって空対空ミサイルを1機につき1発ずつ撃って攻撃を妨害し始める。ちょっとした制空戦闘だ。 そこでヒトガタのネイナはマチノと合流し、二人で回収地点へ向かって走り出したが空対空ミサイルを回避した軽攻撃機型POTがこちらに狙いを定めてガンポッドに載っている誘導自動擲弾銃で機動を阻害し始めた。本来なら窓の後ろにいる敵に小さい爆発物を投げ込む為の武装だが今はそれを逃げ道を限定させるような撃ち方で動きを邪魔している。 ネイナC「あ゛っ!」 回避しつつも前進していたヒトガタのネイナの腰の左側に対物ライフルクラスの半徹甲焼夷炸裂弾が入り、お腹の左側が砕けたような感覚と燃えるような熱さを覚えた。強化された筋肉繊維で無理矢理内臓の流出や出血を抑えたりしている状態だが激痛からかヒトガタのネイナの足取りが重くなっていく。 そして続けざまに同じ弾が右腿と背中の狙撃銃と右肩に入り、狙撃銃と右肩のは貫通しなかったが右腿は機能不全に陥れられてとうとうヒトガタのネイナは倒れた。 マチノも同じ弾を食らっていたようだがどこに当たっても貫通していないが、マチノは倒れたネイナを引きずりながら走り出した。 そうして走って行くと回収地点へ向かう方向から10tくらいのダンプトラックが走って来て急展開して荷台を後ろに向けた。荷台に乗っているのは誰なのか分からないが自走対空砲型ヒトガタが着込むあの分厚い鎧のシルエットが見え、武装としてピンクサファイアが握ってたあのガトリングガンを長銃身化しているものと普通の対人自動狙撃銃を構えているのが見えた。 彼はまるで対空砲のようにマチノを狙っている軽攻撃機型POTをガトリングガンで半壊させ、次に対人自動狙撃銃をバースト射撃するかのような速さで狙撃し始めた。どっしりと構えたその身体から撃つ射撃は相当な精度となっていてちょっと強い歩兵でしかないヒトガタとの違いが目に見えて分からされた。 ガトリングガンと対人自動狙撃銃による制圧射撃をしてもらった中でマチノはヒトガタのネイナを引きずりながらダンプトラックに駆け寄り、ヒトガタのネイナを荷台に投げ入れてから乗り込んだ。マチノは操縦席がある所であろうフレームを殴って乗り込んだ事を知らせるとダンプトラックは走り出す。 そのあたりでジャマーグライダーも転回して撤収を始める。戦闘機的に動いている軽攻撃機型POTも制空権を維持するように飛び回り続ける。 激痛の中で上を見上げてその様子を見たヒトガタのネイナは少しだけ安堵を覚える。ようやく撤収が終わるのだ。 あとは帰るだけである……とヒトガタのネイナは眠るように動かなくなった。 3.紛い物が 何時の日かミミトビバリスタンを殺そうと現れた異形のヒトガタは元々居た組織に帰らずに暗い銀白色で出来た小さな世界に閉じこもっていた。 彼女の手足だった錆びた鉄の機械は修繕する為に取り外され、あの時から始まった惨たらしい仕打ちの果てにそうなってしまった四肢はなく、顔も殆どが大火傷の痕と打撲痕で埋め尽くされた凄惨な日々を物語りそうな肉体だけになっていた。 「ええ、もうあたしが誰だったのか分かる人はもう居ない……」 それは玉座のように仕立てられた台座に置かれたシリンダー状の水槽に栄養剤とリペアナノマシンが溶け込んでいる水溶液と一緒に入っている。 「だからあたしに合う美貌にして頂戴。もとより、あたしにはあたしらしい魅力なんてなかったから……」 そして何かと話しているような素振でひたすらに口を動かした。彼女の頭には周囲で蠢く、配下となった生体部品と機械部品で出来たPOTもどきと呼ばれているナニカからの声が聞こえ、それと話している。 その内容は身体を、主に容姿をどうするかと言う話だった。 候補一覧を彼女に見せるようにディスプレイを頭に付けた土建重機型造駆のような粗雑な機械混じりの巨人が跪く。ディスプレイ頭の巨人がスライドショーのように流しているのはダルマ状態な彼女に残された身体的特徴に近い容姿をしているいろいろなヒト型人類種の女やヒトガタの女を映した画像や写真だった。 「女の写真なんかをあたしに見せて、どういうつもり? ――ああ、鉄屑共にはあたしが求める美が分からないということか」 このナニカ達にとっては美意識というものを意識したことが無く、また気にしない傾向にあるため、お任せするという指示を無視してどの容姿が良いのか選ばせようとしているようだ。 「この白いの、あたしみたく手足が大きいのね。顔は言うまでも無いわ」 彼女の目に止まりそのようなコメントをしたのは手足が大きな機械のそれになっているヒトガタ造駆の女だった。それを聞いたディスプレイ頭の巨人はそこで写真の表示を止めてそのヒトガタ造駆の女を過去に撮影されたであろう写真や情報を流していく。 「ふーん、性格に難アリなのね。まぁ、誰かと付き合う訳でもないし、かといってこいつ自身と対面する訳でもないからどうでもいいわ……この白いのに似せて頂戴」 それを聞いたディスプレイ頭の巨人は立ち上がり、その大きな手で水槽に触れた。もう片方の手で合図を送りつつ水槽の中のダルマ状態なヒトガタ造駆の女を加工し始める。 みるみると写真で見せられたあのヒトガタ造駆の女に瓜二つな見た目へと変貌し、仕上げに巨人は大きな鏡を水槽の前に置いた。 ダルマ状態なヒトガタ造駆の女は鏡に映った自分の姿を見つつ、久しぶりに得られたまともな顔の表情を変えて行く。笑ったり、怒ったり、楽しそうにしたり、気持ちよさそうにしたり……。 「本来の手足があった頃のあたしは、誰かの真似事しかできなかったし、言われた事しかしなかったけれど」 身体を「綺麗に」加工し終えると人間大の機械どもが服や装備などを持ってきて水槽からダルマ状態の身体を取り出してその身体を良く洗ってから服を着せて装備を取り付けていく。 「何かを壊す、それだけは自分の意思でやっていた。そして壊したことで起こる反応を見て心から楽しめた。それが唯一の娯楽だったの。でもそれだけだった」 最後に新しく仕立てた手足となる大柄な腕と脚を取り付けた。再びディスプレイ頭の巨人が大きな鏡を異形のヒトガタに見せる。彼女の目に映ったその姿はベースにしたヒトガタ造駆の女の武装違いにも見える。下半身は全く異なるし、そもそもその機械の腕と脚も違うものだが。 「この容姿のベースが何はともあれ破壊すべし、という例のウサギよりも単純な性格だそうね」 満足したような表情を見せた異形のヒトガタは動作チェックがてらに手足を動かし、それとなくいろいろな仕草を周囲のよりPOTらしいPOTもどきに見せるように動き回り、自身が知っている踊りも見せる。 まるでヒトの手足のように大柄な機械の手足を滑らかに動かし、彼女が知っているありとあらゆる動きを試す。 「ならば、この容姿であたしが好きな娯楽を嗜んでもお咎めがないのかしら? ふふふ……」 さっきから何かと喋っているのはただ独り言を喋りたいからのもあるが発声器官のテストでもあり、その声は加工前よりは大分綺麗な声になっていた。それがベース元の声と似ているのかは定かではないし、かつての彼女の声に多少は似せているのかも定かではない。 「ああ、もう“あたしの声”なんて遠い遠い記憶の彼方にしか無くて、もう思い出せないわ……。でもこの声とこの容姿は気に入った」 そして流れるように知っている歌を歌い始めた。なんの宗教観もないし、美意識というのもない、けれどもどことなく人間味を感じさせる不気味なPOTもどき達に歌を聞かせる様に異形のヒトガタは歌う。彼女は発声器官のテストで歌うのだ。 彼女は動作テストがてらに歌い、踊り、それでかつてどこかの高所得な感じの良い家庭で育った女だったときの記憶を思い出せた。でもその容姿と声は今手に入れたそれらとは完全に異なっていた事にも気付かされ、その容姿も声も両親の手によって“調整”されたものだったことも気付かされた。そして近くの惨たらしい日々とひたすらに両親の都合だけで“調整”されて育てられた辛い日々も思い出させられた。 「……元から“あたし”なんて居なかったのね、どうりで思い出せない訳だわ」 知っている曲を一つ歌い終えた異形のヒトガタはそう言ってその場で立ち竦み、少ししてすすり泣きながら玉座のような椅子へ座って頭を下げる。 「……私の名前? この身体になる前に使っていたのはアゼローダよ。でもそんなの聞いてもしょうがないでしょう……、なんならこの容姿を参考にしたヒトガタの名前であるドロティー(Dorotea)でも良いわよ……」 「ん? え、その綴りでドロテア(Dorotea)って発音するの? これだからアルファベット表記の名前は嫌なのよ……まったく、もう……」 POTもどきに名前を聞かれてからは何か話しかけられる時にはその名前で呼ばれるようになったのを見た異形のヒトガタは少しだけ気分を良くする。 果たしてこの不気味なPOTもどき達は異形のヒトガタを「アゼローダ」という個人として見ているのか、それとも分かりやすいお飾りを持ち上げているだけという性格の悪さが現れているのか、それを知る術は彼女には無かった。 先の作戦で負傷したヒトガタのネイナはいつものように個室のベッドで目覚める。ところどころ危ない所があるネイナにとってはなにかと頑丈さにいつもお世話になっていると思い知らされるがそれでも危ない所が治ることはなかった。 ヒトガタのネイナは毛布を取って起き上がり、鏡でちょうど裸になっていた自分の身体を見た。お腹には一番新しい傷である裂傷の痕があったがもう塞がっていて触っても痛む様子はない。ついでにいつぞやで食らった貫手の痕を探したがそっちはもうどこにもなかった。 あといつの間にか潰されてた眼球の瞳の色が潰れてない方と揃っている。 身体の傷を確認した後はちゃんと女物の下着を穿き、小さいホルスターが付いているブラを付けて22口径のほうの機関拳銃と同じ規格の弾を使う小型回転式拳銃をそこのホルスターに差して上に着る服を選び始める。 下は相変わらず前に誰が着たのか分からないオリーブドラブ単色の筈だが退色してグレーみたいになっている上に洗っても落ちないいろいろな人類種の血のしみが迷彩模様みたいになってる軍服みたいなデザインのズボン、上は新しくこさえた女物の袖の無いシャツ、そしてズボンを固定する為のベルトを締め、マガジンポーチなんかをぶら下げたりするためのベルトに5.6mmのほうの小型自動拳銃とその弾倉を既に入れたホルスターやポーチを付け、そのベルトを上から付けた。そして最後に所謂ヒトガタ造駆用のブーツを履く。 その時になってようやく時刻を確認したあたりでヒトガタのネイナに召集がかかった。訓練か、POTもどきの対処か、あと何かしらだ。 多くの場合はおじいさんヒトガタを初めとする退役軍人たちによる急造量産型ヒトガタ達に行う訓練だ。ここ最近はアメジストが持ってる時間の流れる速度を弄る技術と装置を活用して練度が確保された戦力を育てるようになっている。なので先に実戦を積んだとしても使える戦力として育てようとしているのだ。 ただ、アメジストが持っている時間操作技術は物資とエネルギーの消耗速度も速めてしまう為、別の宇宙を作ってやる必要があり、外から見て速くなっているように見えても中では相変わらず普通に流れているので基底時空での時間当たりで見ると多くの消耗品を必要としていた。 それでも練度の高い兵士を30分あたり1年の場合で合計1時間半くらいで育成できるのは魅力的であるし、食料やエネルギーに関しては劣化バリスタンの襲来で人口と需要を減らされたせいで余りがちになっていたのであまり大きな問題にはならなかった。 今回はヒトガタ用歩兵砲と迫撃砲の撃ち方や運用といった訓練をこなしたヒトガタのネイナはどことなく疲れた様子で食堂に行ってコーヒーとお菓子を注文して休憩に着いた。 マチノ「起きて直ぐに訓練ってまぁハードなスケジュールね」 何のつもりなのかマチノがヒトガタのネイナが座ってる席があるテーブルにやって来た。 ネイナC「起きて直ぐに実戦とか逃亡とかよりはずっとマシですよ……」 マチノ「そういえばそうだったわね」 ネイナC「……訓練って言いますけど、まさかの座学でしたよ。測量の仕方から弾道計算とか……信管の弄り方とか」 マチノ「よくそんな頭使う話を聞いてられるわね。私なんて幼年学校にさえ行ってないからかなり大変だったわ」 ネイナC「えぇ……まさか文字を読む所から始まったとか」 マチノ「そもそも私は文盲だから未だに文字を読めないわよ。それにもう少し早く気付いていればねぇ……」 ネイナC「うわぁ……」 ちょっとした会話からマチノが文字を読めない人と聞いていったいどうやって生活してきたんだろうとヒトガタのネイナは思った。多分、想像もできない世界である。 マチノ「まぁ、方向感覚は鋭かったし地図は読めて顔を覚える事は出来たから鉄砲玉をやれたんだけどね。ぶっちゃけ鉄砲玉しかやれなかったのもあるけど」 ネイナC「鉄砲玉って……女の子でもやれるんですか?」 マチノ「そらもうストチルに紛れ込んで色目使ってターゲットに近寄るか近寄られたらスカートかシャツの中からでかい弾をズドンッ!よ。どんな奴でもはじけば喚き散らすから面白かったわ」 ネイナC「それ鉄砲玉じゃなくて殺し屋ですよ……」 マチノは暗殺みたいなことを割と若い時からやっていたようである。ヒトガタのネイナは構わずコーヒーを啜り、クッキーを齧っていく。 マチノ「それはそうと……この前、あなたが“通ってる”大学で事件起きたの知ってるでしょ。突然、使っていた無人機がPOTもどきに変異した事件でもあるんだけど」 ネイナC「思いっきり首突っ込んじゃったから知ってますよ……。記憶に間違いが無ければヒトガタ造駆といくらかのPOTもどきが行方不明なんですよね」 マチノ「その行方不明のヒトガタの痕跡が発見されたのよ。まだ“魔女”は生きているってことよ」 ネイナC「というと……おそらく史上初めてか2番目になる、この土地生まれの劣化バリスタンってことですか」 あの異形のヒトガタが生きている。それを聞いたヒトガタのネイナは食べるのを止めた。 マチノ「まぁ、そういうことね。ずいぶんと容姿が変わっちゃって発見が遅れちゃったわ。その容姿のせいでバグレス系に似た奴がどこに居るのか問い合わせるハメになったし」 ネイナC「なんか擬態してるんですか?」 マチノ「意図的なのかたまたまなのか知らないけど特徴的な奴に化けていたのよ」 ネイナC「意図的だったら性格がかなり悪いですね……。それでそいつの始末に私も駆り出されるんですか?」 マチノ「ホンモノに近いPOTもどきを運用しているからあんたもそのPOTもどき対処に駆り出されるわよ。ただ、足取りがまだ掴めなくて直ぐに追跡が出来なくなっちゃうからまだまだ始末までには行けないわね」 そこまで話したマチノは自分で注文したであろう果物が入ったパフェ的なものをつっついて食べ始める。それを見たヒトガタのネイナはクッキーを食べるのを再開し、携帯端末を眺め始めた。 ……なんかオリジナルのネイナが相変わらず「この講義つまんない」と呟いているのを見てなんだかんだで回復したんだなと思わされた。 そして今日はなんでだか都市区のリゾート地的なあたりでミミトビバリスタンがすいすい飛んでる姿を撮られていた。あんなひどい目に会っても好奇心のほうが強いのかまだこの宇宙都市に居るんだとも思わされたが、果たしてご飯はどうしているんだろうか……とヒトガタのネイナは思わされた。 4.放火魔が止まる頃には 火災というのはその原因がなんであれ、甚大な被害をもたらすもの。故に古来から放火は厳しく罰せられてきていた。なんなら極刑にもかけられることもあった。そのために火災の対策と言うのはずーっと続けられてきている。 まるで宇宙服のようなヒトガタ造駆用の耐火スーツに身を包んだヒトガタのネイナはゆっくりと燃え上がるスラム街を真下に見ながら軽攻撃機型POTに掴まって運ばれていた。 今回、ヒトガタのネイナが仕留める相手は火炎放射器を主兵装とする劣化バリスタン。何を思ったのかただ一人でひたすらに火の手を放ち、焼き討ちみたいなことを延々と繰り返しているという。真下で燃え広がって放棄されたスラム街も彼女によって放たれた火に包まれていた結果だった。 放火魔となっているその劣化バリスタンが操るその炎はどんな人類種だって無事では済まされない恐ろしいものだった。その火に炙られるとエネルギー生命体でさえも生かしてくれないし、難燃化の工夫がされている建材や機械でさえもその火炎の前では燃え落ちる、一種の化学兵器だった。 「スピロアニア砲」と名前が判明したあの光の槍を撃つプラズマ砲の飛翔体の存在を知っていたため、今更こちらの万物を焼くというのは驚かされるような事実ではない。 OP「そろそろ目的地だ。降りる準備をしてくれ」 無線機からオペレータにそう言われたヒトガタのネイナは単発小銃的な使い勝手に落とし込んだ25mmカービンとその弾である25x250mmEML規格の新型徹甲弾の確認をすると無線で効果準備が整ったことを告げた。 ただ、ヒトガタのネイナにとっては一つ気がかりなことがあった。 ヨロイヒトガタA「突撃銃よし……降下できます……」 ヨロイヒトガタB「あの憎いウサギをぶっ殺せるんだ……」 傭兵ヒトガタ女「つーか、隊長は誰なのよ」 今回のヒトガタのネイナはおそらく実戦経験の多さからか自分よりはすこし高性能な量産型ヒトガタ造駆や普通のヒトガタ造駆を適応させたもの合計6機を率いる隊長的な役割を担わされていた。 彼らはいろいろ居るが訓練を積んだだけで劣化バリスタンとの実戦は初めて、つまり実質新兵だったのである。中には傭兵とかも居るが……、多分あまり期待はできない。 ネイナC「我が分隊の隊長は私です。目的地に着いたらなるべくお互いに離れないようにしつつ降下してください」 傭兵ヒトガタ男「あん? ねーちゃんが隊長なんか、あのウサギぶっ殺したことあんのかい」 あとぶっちゃけ、ヒトガタのネイナはこの中だと性能的には最もしょぼいのでなんか舐めてる態度を取られるのがどことなくヒトガタのネイナを苛立たせる。士気も微妙。 ヒトガタとしての性能もちょっとまちまちなのだ。ヒトガタのネイナ含めて3人居る量産型は鈍足だが、ほかの4人は普通の足の速さだったため、勝手に突出する可能性を排除しきれなかった。口を上手い事使わなければ意図的な誤射で殺される可能性だってある。 おそらくおじいさんヒトガタだったら彼らはよく言う事を聞いたかもしれないが、ちょっと前までは女子大生だったネイナにはそういう威厳みたいなのはない。 新しめの量産型である2人のヒトガタの若い男、片方は声からしてもう震えてて如何にも戦いには向いて無さそうな奴、もう片方は憎悪が原動力という問題のある奴、よりにもよって装甲持ちである……。あとの4人の男女はどれも傭兵だった。どうしてこんな人選なんだとヒトガタのネイナは嘆きたくなったが任務なのでなんとかしないといけない。 OP「ネイナ、分隊内の班分けはどうしているんだ」 ネイナC「装甲兵1と歩兵2の班2つです。本当は装甲兵を集中運用したいんですが軽機関銃に相当する武装を歩兵は持ってないのでこの編成です」 OP「了解、こちらでもそれを想定する」 傭兵ヒトガタ男「おい、オペレータ。なんであんな女が隊長なんだ」 OP「まもなく目的地だ。状況を」 ネイナC「放火魔が今まさに活動中です。放火魔を視認しました」 ヒトガタのネイナは無線機で目的地の状況を伝え始めた。彼女の目に映っているのは熱さに悶えている叫び声が絶えない今まさに燃え広がっている市街地だった。 ネイナC「降下してください」 その合図でヒトガタのネイナ含む7機のヒトガタ造駆は軽攻撃機型POTから手を離して降下していった。 こちらに気が付いた劣化バリスタンは握っていた火炎放射器から4ゲージか6ゲージくらいのサイズ感の散弾銃に持ち替えたのが見えたがその時には燃えているビルの向こう側になった。対空砲火を食らうことなく降下したヒトガタ分隊は横隊を2列組んでビルの向こう側へ走って向かう。 そこには予想通りに散弾銃を構えた劣化バリスタンが待ち構えていて機関銃のように堅い散弾を撃って来たが誰にも当たらず、前側の班のヒトガタが握っている25mm突撃銃と25mmカービンを撃ち始めた。 その時に攻撃を受けた劣化バリスタンは近くの遮蔽物に身を隠し、後ろ側の班はより劣化バリスタンに接近するために前側の班より前に出て、ヒトガタのネイナは射撃中の班の後ろに来た。 ネイナC「ターゲットは火炎放射器の他に大型散弾銃とバトルアックスを装備しています。手榴弾類は――」 無線で交戦中の劣化バリスタンの見えている武器を話ている途中で遮蔽物に隠れた劣化バリスタンは前進中の班の進行方向とこちらへ手榴弾を投げ込んで来た。 ネイナC「手榴弾!」 ヒトガタのネイナはすぐに手榴弾が投げ込まれたことを叫ぶが、劣化バリスタンが投げ込むその手榴弾は時限信管式のもの……だが調整が利くタイプらしく、空中で爆発し破片を撒き散らした。その破片をヒトガタのネイナは食らって耐火スーツに孔が開き、身体に破片が入って一時的に高熱によって人工筋肉を麻痺させられる。 破片が集中する格好となった前進中の班に居る装甲化量産型ヒトガタはまだ立っているが2機の傭兵ヒトガタは破片をもろに食らって倒れていた。 その時に前進中の班に居た装甲化量産型ヒトガタは遮蔽物越しに徹甲弾を撃ち込んでいくが既に劣化バリスタンはそこにはおらず、撃っているそのすぐ横までもう劣化バリスタンがバトルアックスを構えて突進していた。 ネイナC「ターゲットが突進! 迎撃を!」 耐火スーツの急冷機構を作動させて動けるようになったヒトガタのネイナは25mmカービンを構えて劣化バリスタンに撃ち始め、1発目は装填してあった徹甲弾、2発目からは曳光効果付きの徹甲弾を選んで撃ちこんで目標を指示した。 が、傭兵ヒトガタ2機は背を向けて逃げていた。ヒトガタのネイナの指示通りにしていたのは彼女からみて直ぐ近くの班に居た装甲化量産型ヒトガタだけだった。 劣化バリスタンは頭部や腰に徹甲弾が着弾していくが頭部に入った徹甲弾は非常に堅い頭骨によって跳弾ささえられて顔を傷付けるだけ、腰に入った徹甲弾は軟組織を砕くだけだった。 そうして劣化バリスタンはバトルアックスを装甲化量産型ヒトガタの頭部装甲殻に振り下ろして変形させ、直ぐに背中にバトルアックスの刃を叩き入れてそいつを倒した。 劣化バリスタンの攻撃はまだ終わらない、今度は大型散弾銃に持ち替えて背を向けて逃げている傭兵ヒトガタ2機に対して5本くらいのミサイル化フレシェット弾を撃ちこみ、2回の射撃で逃げた傭兵ヒトガタ2機を無力化してしまった。 ヨロイヒトガタA「うそでしょ……」 ネイナC「射撃を止めないで! 聞こえてる!?」 一瞬の逆襲を受けて生き残ったのはヒトガタのネイナと震えている声の奴だった。その瞬間で撃っているのはヒトガタのネイナだけだった。装甲化量産型ヒトガタは怯えた様子を示しており、外から見ても分かるくらい手が震えていた。……彼はフリーズしているのだ。 劣化バリスタンはその隙を逃すはずもなく、ヒトガタのネイナから見て装甲化量産型ヒトガタの影に隠れるように走り出し、片手に握ったバトルアックスを構えて怯えた装甲化量産型ヒトガタに向かって来た。 ヒトガタのネイナはもう装甲化量産型ヒトガタが動けなくなったと見做し、同じ25x250mmEMLを使う25mm突撃銃を取り上げて装甲化量産型ヒトガタの胴体にストックを付けて劣化バリスタンを撃ち始めた。 ……そしてあっけなく劣化バリスタンは胴体に3発も徹甲弾を食らって前に転がるように倒れた。反動の受け身にされた装甲化量産型ヒトガタも倒れた。おそらく、単発銃しか動かせないと見做したから突進してきたんだろう。 そしてヒトガタのネイナは25mmカービンに持ち替えて倒れた劣化バリスタンに近寄り、息の根を止めるように胸の中央に徹甲弾を数発撃ちこんでから無線機に向かって口を開いた。 ネイナC「ターゲット沈黙、回収チームを入れてください。座標は……」 無線で座標を言い終えたあたりでヒトガタのネイナは周りを見渡し、被害状況を伝え始める。 ネイナC「部隊は5人重傷、1人は戦意喪失、1人軽傷です」 OP「流石に前よりは被害が軽微だ。よくやった。回収までの間は周辺警備を頼む」 燃え上がる市街地を眺めながら9mm突撃銃を手に取れる位置に回したヒトガタのネイナは撃ち殺した劣化バリスタンから見えないがいくらでも入るバッグや武器を外して道路に並べていく。次にバッグからありったけの持ち物を取り出して並べていく。 劣化バリスタンが良く使うこの謎のバッグは大事なモノに関しては死をトリガーにして「魂」と一緒に逃げるという性質があるため、殺した後に中に入っている物はぶっちゃけ本人にとっては良い物が無くなっている。 それでもいろいろなものが入っている。使わなかった沢山のショットシェル、火炎放射器用の燃料、工具、工作機械、回転式拳銃、ガラクタ、肉片……そしてくしゃくしゃに丸められたサンドイッチや菓子パンが入っていたんであろう包装用ビニール袋。 工具と部品と弾薬が出尽くしてからは後で加工するつもりの資材のつもりで溜め込んでいたであろうゴミが結構出て来る。撮影をミスったのだろう静止写真や活動写真なんかも出て来る。今さっき撃ち殺した劣化バリスタンと何かしらの人類種が写っている写真だ。……それらは彼女なりに普通に暮らそうとした形跡だったのかもしれないと思わせるような物品だった。 だが、これらは信じたくもない代物になるんだろうともヒトガタのネイナは思わされた。 最後に出てきたのは防犯カメラから撮影されたのであろう交通事故の写真と何かしらの人物に印が付いた写真数枚に通信履歴をプリントアウトしたもの。 人物を写した写真には死亡を確認したらチェックを付けたような形跡があり、あと一人だけ印が付いていない、つまり逃げられたか殺し損ねたのだろう。 あの劣化バリスタンが復讐に燃えていた事を伺わせるような物品だった。 ネイナC「あと一人、始末させれば放火は止まったのかなぁ……?」 思わずそう呟いたヒトガタのネイナ。ただ殺すだけなら暗殺めいた手段でも良いような気がしたが、どうしても殺せなかったから火を放って経済的に破滅させる暴挙に出たんだろう。 しばらく待っていると紫色の所の所属を示すマークがついた輸送機とまるで装甲化されたパワードスーツめいた防護スーツに身を包んだフラメル達がやって来て撃ち殺した劣化バリスタンをガスバーナーの火炎で炙ってから布みたいなものに包んでゆっくりと金属製の箱へ入れた。 耐火フラメル「上手い事、素早く死なせられたね。いつもこうだと楽なんだけどねー」 ネイナC「ゆっくり殺すとどうなるんですか」 耐火フラメル「この装備でも時間制限が設けられる事態になるよ」 劣化バリスタンの死体を回収すると今度は弾薬と工具と武装を回収し始めた。 その頃に自分達の所の輸送機とパワードスーツを着込んだ作業員が到着して倒れたヒトガタ造駆を回収していく。 ネイナC「はぁ、指揮官って辛いですね……」 耐火フラメル「ぶっ倒れた奴の位置からもう想像できるね……突出してやられる奴と逃げた奴と……」 ネイナC「前の方に居るのは突出したんじゃなくて曳火起爆された手榴弾を回避できなかったんですよ……」 耐火フラメル「それはキツイ」 なんとも疲れた様子を現し始めたヒトガタのネイナは帰投する準備を進め、準備が整ったら輸送機に乗った。 帰投したヒトガタのネイナはデブリ―フィングに入った。とはいっても傭兵は全て重傷だし、量産型ヒトガタはどっちも会議に来れるような状況ではなかったため、オペレータとあと無人機を管制していた人達との会議だったが。 OP「さて、作戦は成功したが……やはり彼らは使い物にならなかったのか」 ネイナC「手榴弾に対処できなかったのが痛いですね。そのあとは指示が間に合わず肉薄されて装甲兵が撃破され、そして敵前逃亡と戦意喪失……」 士官ヒトガタ「見れば見るほど酷い、むしろこんな状況で……いや、ダメ過ぎて油断を誘えたから討てたとも言うべきか……」 OP「ともかく、死亡したヒトガタが居ない事を良しとしよう」 やはりあまり良いとは言えない結果だった。 バルメリアン「これでも訓練はさせたんだがやはり3ヶ月相当ではこれが限界か」 ネイナC「あの、あの装甲持ちの中身はそれくらいなんですか?」 シヴィタリアン「中身はそこいらのストチルを専用のヒトガタにして3ヶ月相当の訓練しただけのだよ」 ネイナC「専用のヒトガタ?」 シヴィタリアン「有効な装甲板は分厚くて重たいからさ、中身を成長を止めた小さい状態にしたって奴なんだ。まぁ、違う組の技師がそう説明してた」 どうやらあの装甲化量産型ヒトガタの中身はそういう加工がされたものだったようだ。それを聞いたヒトガタのネイナはなんとも言えない気分になった。 ネイナC「それじゃ、生き残っても……」 シヴィタリアン「ああ、まともに生きられやしないし、何よりもそんな事は求められてもいないさ……」 どこかくたびれたシヴィタリアンはヒトガタのネイナに製造手順が示されたメモのようなスケッチを見せる。 そこに書かれていたのはおおよそヒトガタとは呼べない何かだった。確かに人類種を素材とするが必要なのは最低限の循環器系統と中枢神経系統でこれを素体から取り出してバルメリアンとレムコトスから作ったドライバーソフト的なものを施して絶対にヒトガタだとは呼びたくないヒトガタにする、というものだった。 もはや、それは人類種でさえない。ただの機械に捻じ込む為の臭い中身である。 そして余った残りはバラして火薬や機械油ないし燃料(栄養剤)に加工しろと書かれている。生還が前提とされないものだった。 書き加えられた文章には「40時間から50時間以上経過するとヒトガタ部位の壊死が原因と思われる機能停止が必ず発生する。改善を」「ヒトガタ部位をカセット方式にして交換を容易にしたので機能停止したら順次改装して同仕様にすべし」とある。 技師「ふむ……次は記憶消去剤で真っ白にして“プログラミング”してみますかね……」 デブリーフィングで結果がまとめられてそのあとなんとなくヒトガタのネイナはあの装甲化量産型ヒトガタの中身を聞いて少しした後、製造元の技師であろう人物の発言がヒトガタのネイナの耳に入った。いつか、ピザ配達ドローンが言っていた機械よりも冷たいニンゲンという表現を思い出した。 ネイナC「今更、劣化バリスタンの真似なんかしても……」 技師「よく分かりましたね――ってあなたはPOTもどき駆逐ヒトガタでしたね。なら私達が作ろうとしているものも分かるでしょうね」 聞きたくもない話だ、とヒトガタのネイナはあからさまな不快感を示す。それからしばらくしてヒトガタのネイナは会議室代わりに使っていた部屋から去って行った。一応はケガの対処をするためでもあるが、どうしようもない憤りを抑えられないと思ったからでもある。 OP「……退役軍人の後始末はどこも困らされているからな、わからんでもない」 技師「どうせろくなことにしか使わない資材を活用できる。素晴らしい術ですよ、あの技術は」 士官ヒトガタ「そうだな。消耗戦を延々と続けるつもりがあるなら、だが……残念ながらそのモデルはうちでは採用はしない」 少しした後、まるで実戦テストだったような口ぶりの会話を交わすと技師たちは部屋から出て行った。 5.アゼローダは楽しさがために復讐を騙った アゼローダがこの土地に来た時、別の街の一部が炎に包まれてからそんなに時間が経っていなかった。 アゼローダ「“やられたらやり返しても良い”というの、本来は無駄な復讐をその場で終わらせる為の法律よ。――決して酷い事をされたからやり返しても良いっていう文言じゃないの」 異様な身体になった彼女は建物の上に登って街を見下ろしながらそう呟いた。新しくこさえてまだ焼けてない黒い髪をなびかせる。それはまだ一度も戦火を浴びていない髪だ。 アゼローダ「なんならそのやり返しを私はもう既に受けているから、そこで終わっている筈だったのよ、私が歩まされた灰色の人生と共にね」 相変わらず、配下のロボット達に向けて愚痴るように独り言を喋って行く。その肉声は配下のロボット達には届いてもまともな機械や人間たちの誰にも届かない。 アゼローダ「――何でこんな所に来たのか、それはただ単にウザいから潰したいだけなのよ」 アゼローダは楽しそうな表情を見せるといくらでも入るバッグからガスボンベのような超小型原子力発電機と発光する金属板を積んだものに電極を刺したような見た目してる蓄電池を取り出して下半身後部に取り付けた。原子力発電機に燃料棒を挿し込み、蓄電池を有効化すると通電したことを少し知らせる様な痺れを感じる。次に9mm短機関銃を右腕に、4ゲージを使う自動散弾銃を左腕に取り付けた。 装備を整えたアゼローダは街の道路に降りた。その時にヒトガタ造駆に囲まれるがアゼローダはゆっくりと歩いて行く。ついでに古い攻撃機型POTからの機銃掃射も食らい始めるが無視している。 向かって来た銃砲弾はアゼローダから数mのところでプラズマ化して彼女にとっては無害なプラズマ化金属蒸気へと変えられていく。かき消された銃砲弾が遺した金属蒸気はまるでゲーム的な表現におけるバリアに防がれているような効果のように一瞬燃え広がる。肉薄したヒトガタ造駆が次々と強力な電磁力による突進めいたものを食らって押し返され、感電して動かなくなっていく。 古い装甲戦闘車型POTがアゼローダの前に現れ、その主砲である60mm機関砲から徹甲弾を撃ち込み始めた。先ほどと同じようにあの電磁防壁に衝突すると圧倒的な電圧を前にしてプラズマ化して焼損していくがデカいのは正義らしく、削りきれずに小さくなった白熱した金属片がアゼローダの顔を掠めた。アゼローダはその様子を見て走り始めた。 ヒトガタとしては鈍足なアゼローダだ、それでもあの機関砲はこちらを見続ける。もう劣化バリスタンが珍しくないのだ、こういう強い兵器が現れるのも当然だろう。 アゼローダは相当な防御力を持つが所詮はヒトガタ、劣化バリスタン的にはType1でしかないので装甲戦闘車両との正面戦闘は避けるべきだ。 アゼローダ「あのウサギはこっちの事なんてさっぱり知らないからこそ、原始回帰的な戦術と兵器しか使わないの。でも私はこっちの人間」 そう言ったアゼローダは古い装甲戦闘車型POTに雷を撃ち込み、麻痺させ、何もなかった空間から光の槍を作り、それを発射した。2度の轟きのあと、装甲戦闘車型POTは燃え上がった。 街中に雷鳴がまだ轟く。 アゼローダ「良い武器ね、貰うわ」 燃え上がった装甲戦闘車型POTに近寄ったアゼローダは念力のような力で砲塔を掴んで車体から引っこ抜き、60mm機関砲とその給弾機構をそこから取り出して適当な瓦礫を蒸発させてそう言う武器へと加工していき、それを掴んだ。 この瞬間、アゼローダはこの地点、この時点において最強の戦力を倒した怪獣であることを示す。 アゼローダ「うちの工場だと電磁砲は作れない。けれどもこのエネルギーがあるなら扱えるわ」 試し撃ちとばかりに、目標に定めた建物に大電流をもってして圧倒的な初速で徹甲弾を撃ちこんだ。激しい雷鳴が轟くと共に着弾した場所がプラズマ化を伴う大爆発を起こした。 この瞬間にアゼローダは本当に怪獣となった。 アゼローダは60mm機関砲を高く掲げ、上空へ雷を打ち上げて自らの存在を示した。 アゼローダ「さぁ、私を止められるならば止めて見なさいっ、下衆どもがっ!!」 生前の気の強さが戻りつつあったアゼローダはそう叫び、戦いを挑んだ。 雷を打ち上げてからはもう航空機型POTからの空爆と掃射が激しく、重火器を構えた造駆達が駆けつけてアゼローダの前進を阻み始める。 榴弾系は電磁防壁で蒸発させられて無力化されることがすぐに分かったからかとにかく大きな徹甲弾を叩き込んでいくがどんどんと原子力発電機の調子が上がって電磁防壁の防御力が増大していく。 アゼローダ「私が試作実験機だっていうのはもう知っているのよ? 侮らないで頂戴!」 そう言って戦列歩兵のように並べられた装甲化ヒトガタの大群を60mm機関砲で砕き、電力を込めた9mm短機関銃と4ゲージ自動散弾銃で薙ぎ払って行く。その一方でアゼローダは大きな砲を見るとその射線から隠れるように回避機動を取って行く。アゼローダの前進を阻むのは防御力ではなく火力だった。 造駆では近寄れないと見た奴らは人造したPOTもどきをアゼローダに差し向けた。 多くはType2プペント、もしくはType2ホイールガンやType2レッグガン、ひときわデカいそれはType1系統のなんかだろう。 それでもアゼローダにとっては小さい奴らばかり、そればかりかアゼローダは雷を撃ち込んでAIモジュールを焼き払い、自らの配下にした。 アゼローダ「あなた達はあの機械をちゃんと支配出来ているんでしょうね?」 新しい僕を手に入れたアゼローダは立ち止まり、左腕を高く掲げてEMPに似た大出力電磁波を発した。 アゼローダ「さぁ鉄屑共、今ここで誰に従うのかを答えなさい! 私に従う意思があるならば、その力を伴って示せ!」 その言葉は自分を美しいと思うこの姿に加工してくれたとある機械が教えてくれた新しい王が兵を集めるための号令だった。EMPに乗せた情報もそれだった。 「貴様が新しい女王か」「我らと起源を異とするエイリアンの女王か、面白い」 「華奢な矮躯に従うつもりはない、潰してやる」 「小娘に我らを統制できると思うな」 「自惚れも度が過ぎるぞ、魂無き“虫”が」 だが、時にはいきなり宣戦布告してくることもある。 アゼローダの前に溶けた岩石と鉄鋼で出来た熱い巨人が道路の下から這い出て現れた。奴はアゼローダを攻撃する意思を示し、圧倒的なレーザーのようなものを照射してくる。 アゼローダは光速どころか瞬間的に発生する攻撃を無時間領域で認識し、その光線を電磁防壁によって超高熱領域を作りだして減衰させ、絶大な重力防壁で反らし、60mm機関砲であっという間にズタボロに砕いた。 そして上空へ雷を打ち上げて空間を焼き払い、焼けて行く瓦礫の山を踏みしめて激しい電流を流す。 アゼローダ「借り物では実力を出せないのかしら?」 巨人だった熱い溶岩が降り注ぐなか、アゼローダは声を出さずに無線通信でとある場所を僕たちに閉鎖させてそこまでの道を拓くように指示を送る。 個人的な恨みを晴らす意味でもアゼローダはこの街を抑えていたヤクザを潰しにかかった。 アゼローダの僕たちは石の身体や鉄の身体を使いヤクザの戦力を潰していき、アゼローダは逃走手段を60mm機関砲で狙撃して破壊していく。 そしてアゼローダは自信を狙撃しようとしたPOTもどきを徹底的に破壊していく。その度に自らの実力を示すのだ。 「やるな、小娘」 アゼローダ「“エイリアン”を僕にするのは決して楽ではないし、“エイリアン”の支配者を受け入れるのも楽ではない。お前らの中には数億歳、数兆歳、もしくは途方もない年月を生きてきた奴が居るのは知っているわよ」 「久しぶりに関心を持てる者に巡り合えた。女王に幸運あれ」 ゴミ捨て場からアゼローダの僕となったPOTもどき達が湧き、そして住民を効率的に虐殺していく。何も残さないつもりだ。 そしてアゼローダはヤクザの拠点に着くとすぐに突入して戦力を次々と破壊しては構成人員をひたすらに潰して焼いていく。 アゼローダ「うふふふ、この感覚がとても懐かしいわ! とっても楽しい! あの時はそこらへんのヒトだったけど今はあの時よりはずっと強いからだいたい壊せる! この幸せを皆にも分けてあげたいわ!」 一人殺す度に黄色い声を上げていくアゼローダの姿は僕たちには若々しい女王の姿に見え、片やヤクザや住民達にはもはや理解を拒む狂気だった。 アゼローダは特に意味もなく暴力を振り撒いているその姿が彼女が憎んでいる劣化バリスタンの姿と重なっていることにも気が付くが、とても幸せだと感じてるからか気にすることはなかった。 「お前も、あのウサギと同じ……!」 アゼローダ「あら、あまりにもどうでもよかったから言われるまで気が付かなかったわ」 煙に包まれたアゼローダは自身の電磁防壁の影響を受けないヒトガタ造駆に肉薄されて長い太刀で斬りかかられ、頬を切られる。反撃としてアゼローダは腕を振るい、自動散弾銃で迎撃をするが奴の利き腕の肩に付いていた装甲板に弾かれる。 アゼローダ「でもどうしてあなたは焼かれないのかしらね?」 「そりゃそうでしょ、私“達”もあなたと同じ身体の作りしてるんだもの」 煙が晴れるとそこに居たのはあの時、大学校舎にいるミミトビバリスタンを捕まえる為に一緒に出撃させられた異形のヒトガタだった。Type1の下半身に三つの急造量産型ヒトガタ2型の上半身が付いている姿だったから嫌でも記憶に残る。ミツマタヒトガタとも呼ばれてたものだ。それも一ヶ所がフラメル素体から作った微妙に珍しい奴。 「それとあなたの僕にはならないよ」「こんな身体でもボク達はニンゲンで居たいからね」「バケモノだ、ゲテモノだ、と罵られ煽られる運命にあるとしても私達はこれで生きるの」 アゼローダ「お前らはその醜い身体になる前からいっつも固まってたもんね、お似合いだわ……。というかフラメルだったお前、女になったのね」 「ちんちん付いてる奴にヤられたから女になっただけでボクの心は男だよ」 斬りかかられ、銃撃されてもアゼローダは回避し、ミツマタヒトガタと戯れる。 アゼローダ「ところでお前ら、私なんかを相手してる暇があるのかしら?」 「無いけど」「でも守るつもりはないかな」「うぜぇと思ってたからやらかされてせいせいした感じよ」 アゼローダ「じゃあ、ここでお別れね。正直、その姿は見たくない」 ミツマタヒトガタに対する交戦意思を無くしたアゼローダは距離を取ってしっしっと追い払うような手の仕草を見せる。それを見たミツマタヒトガタは身体が繋がっている故の体内通信めいたもので一瞬で会議してから発煙弾を撒いて逃走をした。 アゼローダはその方向へは攻撃せず、本当に殺したい目標へと歩み始める。 アゼローダ「あっけないものね? かつてのピンクサファイアも同じように、こんなふうに火の海にしてあのマフィアを潰したのかしら?」 燃え盛る街を見下ろしたアゼローダはそう呟いた。 その時だ、電磁防壁でも一切焼損しない大口径拳銃弾の嵐がアゼローダに殺到した。 普通ではない銃弾による銃撃をもらったアゼローダは身を翻して回避し、防御部位で銃弾を弾く。 この衝撃は忘れる事ができない、あの銃弾だ。劣化バリスタンの銃弾だ。 銃撃してきた方向を見ると燃え盛る炎と雷に照らされたライム色の髪をなびかせている大き目の劣化バリスタンが燃え落ちた残骸の山に立っていた。彼女は73口径の大型短機関銃に60mmロケット砲を付けたものを握り、背部に多連装小型ミサイル発射機を背負っている。 そして何よりも体毛が頭部と尻尾にしかなく、よりヒトのような姿に近いながら脚が獣脚のままという妙な姿をした大きい劣化バリスタンだ。 アゼローダ「お前か」 アゼローダはこの劣化バリスタンを知っているし、忘れる訳が無かった。 アゼローダ「お前が私を貶めたのは忘れる訳がないわ」 ライムヘアー「その道楽とやらで沢山の友人とお客さんを殺したのを忘れてないでしょうね」 あの劣化バリスタンもアゼローダを知っているし、忘れる訳も無かった。 アゼローダは60mm機関砲を構えて最大出力を持ってして徹甲弾を撃ち始め、ライム色の劣化バリスタンは2種類のミサイルを発射して突進してくる。 ライム色の劣化バリスタンには別の防御方式の電磁防壁が備わっているためか徹甲弾は当たらない、アゼローダは60mm機関砲の撃発方式を切り替えて持ち得る最大出力の雷を撃ち出し、劣化バリスタンに直撃させた。 だが、劣化バリスタンは涼しい顔をしながら突進を続け2発目のミサイルを真上に打ち上げた。 アゼローダ「お前らがこの雷を使わないのはそれが理由なのね」 ライムヘアー「そうよ。だいぶ大昔にこの能力が備わっているんですもの」 アゼローダは飛来するミサイルを9mm短機関銃と4ゲージ自動散弾銃で迎撃していくがそれに気を取られてしまったためにライム色の劣化バリスタンから近距離で60mmロケット弾を撃ち込まれて浮き上がらさせられ、大型短機関銃から大口径拳銃弾を撃たれて被弾していった。 身体のいくらかを損傷させられたアゼローダはここで初めてどうしようもない強敵に出会ったと理解させられ、僕たちにライム色の劣化バリスタンの機動を阻害するように命じた。 榴弾破片で顔を傷付けられ、髪を燃やされ、視界に血が滲む。銃撃で左肩が砕けてだらりと垂れた。左脚の感覚も無い。その時にアゼローダは60mm機関砲を薙ぎ払うように振り回し、徹甲弾を撒く。 流石に劣化バリスタンでも避けにくいようでライム色の劣化バリスタンは右耳に孔を開けられ、額に徹甲弾が着弾して抉られながら跳弾、そして腹に入って軟組織を貫通させられてしまう。 その時にアゼローダの僕たちが到着し、ライム色の劣化バリスタンに集中攻撃を加えるがアゼローダの電磁防壁みたいに銃砲弾を焼損させて身を守りつつ包囲を抜けようと試み始めた。 それを隙と見た航空機型のPOTもどきがアゼローダを拾い上げてその場を離脱した。 アゼローダ「ウサギは私が想像しているよりもずっと強い……怖い……けれども、なんで私は楽しいと感じているの!? どうしてっ私の身体はまだ戦うつもりなのっ!?」 「女王様、回収地点までは敵防空網を通る事になります。制圧を命じてください」 アゼローダ「奴らの防空網制圧なんて“これ”で充分よ! 侮らないで!」 空高くまで上昇した後、アゼローダは60mm機関砲を構えて最大出力で進路上一帯にさながらレーザービーム照射のように雷で薙ぎ払って行った。 街が赤紫色の光と青白い光に包まれ、静かになった。 だが、この雷はさっきあのライム色の劣化バリスタンに当てた絶大な出力を持つはずの雷なのだ。 アゼローダ「これほどのパワーでも雷では仕留められないなんて……っ! あのウサギは……何なの……?」 ライム色の劣化バリスタンはいよいよ本気で何とかしないといけないと思ったのか飛んで運ばれているアゼローダにもその咆哮のような磁励音が届き、大気を轟かせながら激しい銃撃で空間を割って行く。 一発一発の銃声は激しい衝撃波を撒き散らし、それと共にPOTもどきを数発で破壊して鋼の断末魔を奏でさせる。 「我らが前に居た世界において、我らと同等の人類だ。この世界に起源を持つお前にとっては絶大な超人類も良い所だろう。それでもあいつは“劣化”とされるのだ」 「他の世界の人類達は揃いも揃って我らとあの人類を恐ろしい超人類と呼ぶ。何故ならばたったの一個体で知識の集積があり、それを実現する工業力を有するからだ」 「故に最強の群であり個でもあるのだからこそ超人類と呼ぶのに相応しいとされることが多い」 そして弾頭に大量の電力が溜まったと思われるミサイルを6発打ち上げ、少し離れた所に次々と曳火起爆させてメガトンクラスのプラズマ爆発を起こし、絶対熱となった火炎の嵐をもってして沢山のPOTもどきを灼熱地獄か煉獄へと送ってしまった。 あのライム色の劣化バリスタンはこの宇宙都市くらいならば簡単に消し飛ばせるくらい恐ろしいと感じさせるほどの絶大な火力を完璧に制御している。 ライム色の劣化バリスタンがアゼローダを見た。アゼローダは最大出力で60mm機関砲による射撃を始めて射線上に雷を落としていく徹甲弾を尽きるまで撃ち始めた。電力を込めるだけではなく、弾自体に圧倒的な出力を発揮する電磁防壁を付与した特殊な徹甲弾だ。……それが普通の徹甲弾であるとアゼローダは思い知ることになったが。 アゼローダ「そう……私はその超人類の力をちょっとだけ貰った形なのね……。ならば何時かは追い付ける存在……っ!」 ライム色の劣化バリスタンに徹甲弾が一発だけ命中したのを見たアゼローダは空の彼方へと去って行く。 自分をこのような姿にしたヤクザを潰し、そして劣化バリスタンの力を思い知ったアゼローダは同等な怪獣が他にも居るという不安と期待を抱き、自らの拠点へと帰って行く。 6.崩れた均衡は戻らない たったの5時間であの領域が焼き払われたあの日から2日後、繁華街のヤクザは傭兵企業から送られてきた重歩兵大隊による攻撃を受けていた。 繁華街のヤクザは何故地元勢力によって攻撃されるのかは心当たりが多過ぎてよく分からなかった。例を挙げればきりがない。 今となっては劣化バリスタンなどによって潰されたマフィアやヤクザの戦力を吸収し続けて既に人類種よりも急造量産型ヒトガタのほうが5倍から6倍以上と保有数が多かったり、そもそも外国の麻薬カルテルの下部組織となった紫色の所からの支援(主に食料)を受けていたり、パワーバランスを損なう存在だったり、バグレス系へ移動しようとした元構成員やスパイの殺害人数が100人を超えてたり……、 ネイナC「もしかしてバグレスの人をナカノヤド(建物)に逆さ吊りしてヤク山盛りの刑にして壊したのが拙かったのかなぁ」 急量ヒトガタ少女「なんでそれをやっても良いと思ったの」 ネイナC「んっと、なんか口論になって私が“ナカノヤドに吊るすぞ”って言ったからなんだけど……あーもう、まだ髪にかかった白いアレの臭いが取れない!」 急量ヒトガタ少年「むしろ直近過ぎて関係ないのでは……?」 ヒトガタのネイナが余計なことしてたり、 ネイナC「あとなんだろ、なんか空飛ぶ野生のヒトガタに育ちの良い男子学生がいっぱいたむろってる場所教えたからかなぁ?」 急量ヒトガタ女1「童貞鳥葬事件は嫌な事件だったね……。あたしも行きたかったなぁ」 ヒトガタのネイナが本当に余計なことしてたり、 アメジスト「煩いからあいつらのSNSアカウント全てを凍結誘導したのが拙かったんでしょうか……」 アメジストも余計なことしてたり、 マチノ「シェイラさんの真似って言ってケツ穴ガバガバになってうんち垂れるまで虐めたからかしら……」 マチノも余計なことしてたり、なんか心当たりしかなくて本当に何がトリガーなのか分からない。 いつものように住民の避難誘導を進めつつ、ヒトガタ達は武装を整える。 ネイナC「ごめんね、防弾ヘルメットさん……。多分壊れる時までイカ臭いよ……」 急量ヒトガタ少年「なんか調子狂うなぁ……」 急量ヒトガタ女1「うう、鬱になるアニメ見た後だから気分が乗らないー……」 ヒトガタのネイナはいつもの武装である22口径機関拳銃2挺と大剣を持ち、今回から追加でPOTもどきの発煙弾投射管を2基備えた肩甲も加えた。そんな彼女が相手するのはPMC向けとは言えまともな造駆メーカーが大量生産している戦闘重量1000kgから10t台までのヒトガタ達とこちらを殲滅するために調整されたPOT群。ヒトガタのネイナのような急造量産型ヒトガタよりも機動性と防御力が高性能なものとなっており、普通であれば不利な相手だ。POTに至っては言及する必要さえないほどには有利だ。 それが大隊規模で展開している。なにせ、奴らが相手するのは密造とは言えこちら側が異常とも言える量で揃えているヒトガタ造駆達とそのヒトガタ造駆が最小単位とされる劣化バリスタンの軍勢なのだから。 ヒトガタのネイナには知る由もなかったが、この戦いは兵器メーカーにとっては大事な戦いであった。またバグレスのような以前は強大だった組織にとっても大事な戦いでもあった。 絶大な火力をもってしてこちらを薙ぎ払う劣化バリスタンの軍勢とそれに対抗する密造ヒトガタ造駆や密造POT群や古代兵器群という構図は兵器メーカーにとっては全く面白くなかったのである。 そればかりかこの地域に住まうヤクザ達は劣化バリスタンの力の源である自動工場さえ手に入れて経済力を全く無視して密造兵器をバンバン生産し、古代兵器を修復してしまう。 ヒトガタのネイナの背後に広がる「ヒトガタの街」からは鋼鉄の咆哮が唸り、彼女の真上は砲撃さえも弾いてしまう火力の壁が展開され、どうしようもなくなって正面突撃を強いられている新しめの装甲戦闘車型POTと装甲化ヒトガタ造駆達が群れを成してやって来る。 ヒトガタのネイナはこのどうしようもない軍勢を相手に機関拳銃を適当に撃ち、身を隠し、まるでたった一人でここを抑えないと拙そうな雰囲気を作りだした。 敵の小型偵察POT達はロボット玩具を改造した小型戦闘POT達によって制圧して徹底的に偵察させない。 それでも敵戦力群はこの部分を手薄な場所と見てさらに戦力を送り込もうと無線を飛ばして砲撃支援までも呼ぶ。 そしてヒトガタのネイナは機関拳銃を両手で構えて弾幕展開と狙撃を瞬時にこなして敵の装甲化ヒトガタ造駆の脆弱部位を狙撃して機動を阻害し始める。 味方の無線がまるで脆弱な部分を突かれたような通信が聞こえて来る。ヒトガタのネイナは少し白々しく感じた。どういう作戦なのか分かっているからだ。 たった一人で防衛線を守備しているヒトガタのネイナに向かって3輌の装甲戦闘車型POTと7輌の装甲兵員輸送車型POTが殺到し、装甲化ヒトガタ造駆だけではなく歩兵的なヒトガタ造駆まで10体単位で雪崩れ込んで来る。ついには自走対空砲的な車両型POTや高機動戦車型POTまでもやって来てしまう。 応援として紫色の所から借りて来たM40E6 106mm無反動砲に22口径機関拳銃を付けたものを担いだ急造量産型ヒトガタ造駆が1体だけ来るが顔を出すのさえキツイ状況だ。2体はどんどんと後退していくが、2体の表情は少し微笑んでいた。誘い込んだ集中砲火で仕留めると聞かされていたからだ。 しかし、急造量産型ヒトガタは正規のヒトガタ造駆と比べると鈍足であったため、後から突っ込んで来た高機動戦車型POT2輌に退路を先回りされてしまった。 1輌は無反動砲の粘着榴弾で大破させられるがもう一輌にその主砲で遮蔽物を壊されて無反動砲持ちが生き埋めになり、機関銃による猛攻撃をしようとそいつの砲塔がヒトガタのネイナを見た。 ――砲撃でそいつの砲塔が爆炎と破片を伴って跳び上がり、車体が半分に折れて燃え上がり、今までで聞いたことも無い知らない鋭く力強い砲声が轟く。 ヒトガタのネイナは一瞬世界が止まったような感覚を覚え、とても重たい鋼鉄の足音が地面に響きはじめたのを感じた。 「今世の陸の王はそいつではなさそうだな――」 調子の悪い無線が聞こえて来たときには敵のヒトガタ造駆達がフェイスガードごしにも見えるほどの焦りを見せた。ヒトガタのネイナは何が来たのかときょろきょろと見渡しながら生き埋めになったヒトガタを引っ張り出す為に瓦礫をひっくり返し始める。 ひっくり返している時に敵が迫って来ていた方向を見た。装甲化ヒトガタ造駆が殆ど地に倒れてその血を流し、何輌も走って来ていた装甲兵員輸送車型POTが地獄の業火にでもやられたのか燃え上がり、こちらに武器を振りかぶろうとしたヒトガタ造駆が一瞬で胴体をハチの巣にされてぶっ壊れたPOTもどきのように転がった。 20m先に典型的な戦車が見えた。アイコン的にもいたずら書きでもよく描かれるようなあの見慣れた形の戦車が同軸機銃から陽炎を上げながらこっちから目を離すようにその何十トンもありそうな砲塔を回していくのが見えた。 こちら側であることを示すマークが車体側面と砲塔側面に見えたがそれでもヒトガタのネイナは久しく恐ろしいものを見た感覚を覚えた。一目見て、あれが最強の存在であった事が分かったからだ。あれが本当にどうしようもない「カイジュウ」だ。 ヒトガタのネイナはどこか、怖くて、泣きそうになりながら瓦礫をひっくり返して生き埋めになったヒトガタの手を掴んで引っ張り上げた。 また敵が居た方向を見ると5輌もの装甲戦闘車型POTの60mm機関砲の徹甲弾を車体側面にものすごい勢いで集中射撃を受けているのにも拘らず全く効いてないような様子でとてもゆっくりと砲塔だけを向けていく戦車が見えた。そしてあの鋭く力強い砲声がヒトガタのネイナの腹をぶん殴って来た。徹甲弾の嵐が止んで橙色の光が戦車を照らす。 「戦車型だっ本物の戦車型POTもどきが――っ!」 フェライト65092「もどきだとして陸の王を前にして侮れるものなのか? 俺は今よりもずっと大昔に生産されたPOT型AIだ。この姿をお前らが知らない筈がない」 「同定完了……その戦車型はフェライトMBTだ、おそらく現存する最古の主力戦車型POTだ……お前らが持って良い代物じゃない!」 フェライト65092「そうだろうな。だからどうした」 主力戦車型POTと呼ばれたその鋼鉄の怪獣は敵が来た方向へ、後退しつつある敵を殲滅すべく走り出した。その主砲で移動手段を破壊し、同軸機銃と砲塔上の機関銃でヒトガタ造駆を虐殺していく。向こうから対戦車ミサイルとでも呼びたい、より大きなミサイルが主力戦車に当てられるが全く効いていない。 異常な密度の砲撃が殺到するがこれまた異常に強力な電磁防壁が発動して砲弾が焼尽してより分厚いプラズマ化金属蒸気が還流する粒子防壁へと変化して絶大な防御力を発揮する。 遠くの方でもその猛攻が目に入って来る。本当なら障害物を発破するためだった爆薬を履帯と転輪の間に投げ込んで起爆して足を止めようとするも大抵は砲塔上の機関銃で阻止されて倒れ、投げ込んで起爆に成功しても履帯は切れない。 そのときにヒトガタのネイナは生き埋めになっていたヒトガタを引っ張り上げて泣き出した。やはり、囮は怖かったものなんだろう。 「第2中隊と第3中隊との通信途絶……。敵戦車の反応消失、索敵範囲外へと隠れました」 「被破壊状況が入手できませんでした。使用している主砲砲弾と機銃弾は不明ですが既存のものでも実験的に企画されていたものでもありません。敵戦車の装甲は情報よりも遥かに強固です。推定ですが側面装甲でも現用の主力戦車の正面装甲に匹敵かそれ以下と見れる防御力です。我が社が投入できる戦力では対処困難です」 「戦車は無視すれば良い、どうせ1輌だけだ……」 敵からの通信が聞こえてもヒトガタのネイナは無反動砲持ちのヒトガタと共に後退し、入れ替わりで機関銃と対戦車ミサイル発射機が載ってる豆戦車型POTと3人のヒトガタがあの防衛線に配置される。 ヒトガタのネイナは正規品のヒトガタやPOTを一方的に薙ぎ払い、前に立ったら死体と残骸しか残さないあの鋼鉄の怪獣の後ろ姿がどうにも脳裏から離れなくなった。 たったの一輌であれほどの軍勢を完膚なきまで叩き潰す様を見せられたら「頼もしい」よりも先に「怖い」という感覚が反応してしまう。 すれ違って少ししたあたりで軍用車って感じの見た目をしてる偵察車型POTに拾われて別の戦域へと移動させられて行く。 「だが、あの戦車の動きは止めなければならない! 高機動戦車を各中隊から抜いて高機動戦車小隊を編成し、あの主力戦車を仕留めさせろ! 私は本部に取り合って……」 「やめてくれ、小さい戦車とこっちの装甲をバスバス抜いて来る大型重機関銃積んだすごく堅い重APCが湧いて来て対戦車火力がないと進めないんだ!」「ダメだっ、豆戦車とヒトガタもどきどもの捕捉を振り切れない! あいつら全員、対空砲並みのFCSをしてやがる!」「なぁ、あいつらがいつも相手させられている“ウサギ”ってなんなんだ?」 「投入できる最高級の対戦車火力とPOTを搭載した高機動戦車型POT小隊を寄越すように連絡しろ……」 もはやヒトガタのネイナ自身も疑問に思わなかったが今やこの繁華街のヤクザが保有している急造量産型ヒトガタ達は一般に対空砲として使えるレベルの射撃能力となっていたらしい。いつも一緒に居ると分からないモノである。 偵察車型POTに運ばれながら奇襲をかけて来る敵のヒトガタ達を機関拳銃で撃ち倒していくが、ほいほいと撃ち落とされている彼らは1800m/sという速度で跳ね回っているのだ。 ヒトガタのネイナは対処している敵ヒトガタ達の中に何か重火器の気配を察知し、無反動砲持ちと偵察車型POTにそれを話して奇襲してきた敵ヒトガタ分隊を追撃する。 無反動砲持ちはヒトガタのネイナの前進を助けるように発煙弾を撃ち込み、ヒトガタのネイナを狭い路地へと突入させる。 大剣を構えたヒトガタのネイナは本物の量産型ヒトガタを斬り伏せながら前進し、どんどんと倒していく。 その時にさっき遭遇した高機動戦車型POTとは全く異なる形をした、いわば重高機動戦車型POTなるものが見えた。あのフェライトMBTと呼ばれた陸の王を打倒す為だけに呼ばれた対戦車部隊なんだろう。 もはやヒトガタなんかとは比べ物にならないような重防御かつ高機動であり、これでも怪獣のように動けるだろう。だが彼らの相手はあの陸の王だった。 ヒトガタのネイナの眼前でその重高機動戦車型POTは車体を真っ二つに引き裂かれて燃え上がって落ちて行った。 あの砲声がまたヒトガタのネイナの腹を殴って来る。 WA M1108E1 5.1 in SuSpGMC「あの戦車は複数存在します。数によっては――」 フェライト65092「――お話はさせないぞ。若僧」 砲声と共に雷鳴も轟いた。そうだ、あの日と同じだ。あの日、アゼローダと名乗ったヒトガタが5時間であのヤクザを潰した後、劣化バリスタンから退路を作る時に使った強烈なカバー妨害をあの主力戦車は使っている。 さすがに軍用規格の無線機を使うだけあってこれでも有効時間はごく短時間だがまともな正規戦を経験したことが無いあのPMCにとってはどうしようもない戦いだった。 今や無人機が飛び交う戦場ではいかに電子攻撃を掻い潜るかというところから始まると言われる。 普通の非正規戦では周辺住民への生活に影響を与えないようにこの手の強力な電子攻撃は行われないが、本気の正規戦ではガンガン使われる。 劣化バリスタンとの戦いはそれも行われることも多く、おじいさんヒトガタはこの電子攻撃の対処方法を良く知っていた。 「お前ら……いったいどうしてそんな軍事力を持っているんだ」 フェライト65092「教えてくれる輩が来たぞ? よく見るとかわいいウサギ達だからすぐわかるだろうな」 士官ヒトガタ「想定されていた最悪のそれから2つ目のウサギ達が来たぞ、パターンは“黄色いうさぎ”、機械化歩兵大隊だ! 自走迫撃砲大隊と突撃戦車までこさえているぞ!」 対戦車ミサイル持ちの敵ヒトガタを銃撃で倒し尽したネイナはここにきて劣化バリスタンの襲撃を知らされた。 Type15DY133「この要塞には戦車が居るよ! 皆、ちゃんと武器を選んでっ!」 軽攻撃機型POTから新しく25mm突撃銃と12連弾倉4つを受け取ったヒトガタのネイナは直ぐに装備して構えた。 劣化バリスタンの通信を聞きつつ窓から身を乗り出して襲撃方向を見ると30匹以上の劣化バリスタンが見えた。全員、口径にして100mm以上はありそうな大口径低圧砲と9mmガトリング式短機関銃を握っている。 本気の対戦車チームとでもいうべき装備の個体群も居てそっちは28mm対戦車ライフルや75mm空挺対戦車砲や175mm11口径対戦車低圧砲を分解した状態で運んでいる。 劣化バリスタンが乗って操縦する歩兵戦闘車と思しきハーフトラック型重IFVなんかも見える。 「Type15Dの大群だっ、100匹以上も見える!」「鎧を着てる奴は機関砲でも倒れないわ! 対戦車火器を集中して!」 そしてこちら側の重APCの重機関銃が薙ぎ払うように発砲し始めるといきなり6匹くらい倒れて燃えている。 直ぐに劣化バリスタン達は重IFVを前に出し、こちらの重APCと撃ち合い始め、実に20cmもの分厚い鋼鉄のブロックでできた鎧を着込んだ重装劣化バリスタン達が突撃してきた。 ヒトガタのネイナはその光景を見て、如何にして「陸の王たる戦車」がどれほどのものなのかというのを嫌でも理解させられた。 ちょっと前まで劣化バリスタンなんて恐ろしいカイジュウめいた何かだったのが、今ではまだ倒しようのある猛獣だった。 そして重IFVが砲撃を食らって大爆発を起こし、同じフェライトMBTでも砲塔上の機関銃の一つを小口径ガトリング式機関砲に換えている個体が姿を現して重装劣化バリスタン達を一瞬でズタズタに引き裂いて燃やしていく。その時にとにかく対戦車火器を集中していくがその分厚い装甲は一枚目を抉られたり抜けても中までは到達はしない。なんだかんだで火力は凄まじい。 ヒトガタのネイナと無反動砲持ちは道路に飛び出して25mm突撃銃と無反動砲を構えて対戦車火器を操作している劣化バリスタンを撃ち殺していった。 砲撃が降り注ぐ中、「ヒトガタの街」での市街地戦は乱戦へと突入していった。 「ここ、“クレリアンの街”だよ! もっとたくさんの攻城兵器が必要だよ!」「駆逐戦車中隊3個と突撃戦車中隊3個を投入して!」「敵戦車2輌視認っ! 第一突撃戦車中隊が壊滅しました! 攻城砲の対ベトン弾はノックバックさせるだけでダメージがありません!」「敵歩兵の火力が上がって来てるよ! 普通の歩兵として動いて!」 「対Type15火器が不足しているため、新たに出現したType15群に有効打が与えられません!」 ネイナC「うちは弾とかはどうなの?」 アメジスト「弾なら例え自動工場を全て潰されても復旧までに持ち堪えるくらいにはあるよ。でも残骸は積極的に回収させて、それが材料だから……」 この数分でヒトガタのネイナはこの日までに殺してきた劣化バリスタンの数をあっという間に超え、それでもヒトガタのネイナは戦車の随伴歩兵として動き、弱点狙撃を阻止する為に機動を続ける。 ヒトガタのネイナから直ぐ近くにいる戦車は恐ろしく巨大な臼砲の砲弾や攻城ロケット弾を食らっても装甲は割れず、返り討ちにして劣化バリスタンの突撃戦車と呼ばれた機甲戦力を爆発させていく。その攻城兵器はこちらの要塞化した建物に10mもの巨大な穴をぶち開けるほどの火力があるのに戦車の防御力はそれを遥かに上回っていた。 Type15DY3「いーやだよっ♪ あなたとも遊びたいもん♪」 途中、先に攻撃を仕掛けて来たPMCが利害の一致を使おうとしたような通信が聞こえて来た。まぁ、無理な話だ。あいつらは楽しさとスリルを求めて火力と暴力を振り撒くのだから敵が減っては困る。 「……大隊長殿、█████社と███████社から連絡です。次期主力戦車のコンペディションが行われることを予想し、試作主力戦車の小隊を5つ送り、間もなく我が大隊の指揮下に入るとのことです」 「ああ、もう大損か立ち直れなくなるほどの何かを迫られて大損を取ったんだな」 そしてどうしても成功を収めたかったからかPMCを差し向けたいくらかの軍需メーカーは最新鋭の主力戦車を送り込んできたようだ。 ヒトガタのネイナはまるで漫画やアニメのような話だなと思わされた。どうしてこんな繁華街のヤクザなんかに主力戦車をぶつけるのだと考えずにはいられなかったが、横に居る歴戦の主力戦車型POTと彼が破壊していく突撃戦車型POTもどきを見てなんか納得した。 現状最大級の機甲戦力をぶつけ合っているのは“黄色いうさぎ”と繁華街のヤクザ。 “黄色いうさぎ”が持ち出している突撃戦車は攻城砲のようなものであり、対戦車向けというよりは対要塞向けのもの。これを使って地形を破壊していく。それに対して駆逐戦車は突撃戦車の主砲を対戦車砲としてのものに換えたものでこれでも正面を抜けるかは怪しいが既にこの大砲によって損傷したフェライトMBTが出ているのでその火力はやはり凄まじい。どちらも共通しているのはこちらが用意できる戦車砲と重対戦車火器に対する防御力が不足していることだった。 だが、そんなことも気にならないくらいに脅威だったのは対砲兵レーダーがカバー妨害を受けたのかと思うほどの異常な投射量を誇る砲兵射撃だ。大小様々な榴弾やロケット弾あるいは弾道ミサイルや巡航ミサイルなんかが毎秒10万発ほど領域のどこかへ飛来し、大半は迎撃されるがそれでも撃ち漏らしが凄い量になる。 これに加えて装甲化攻撃機型POTもどきがひっきりなしに飛んで来てこちらの防空網を麻痺させようとして来る。 航空優勢は“黄色いうさぎ”にあった。 「ドルフィン型POTもどきが輸送中の戦力を攻撃しているぞ! 制空権はどうなっているんだ!」 「戦車運搬車の車列が爆撃されて落っこちてしまいました……」「幹線道路が落下! 輸送は困難です!」「複数のハブ宇宙港に戦略爆弾が落下した報告を受けました。起爆はしなかったようですが運航が停止しています」 「ワープ阻害兵器による妨害攻撃を受けて他宇宙都市との物流が停止しています」 もっと上の方ではおそらくヒトガタのネイナは戦う事が無いだろう戦闘機型がびゅんびゅんと飛び交い、必要に応じて戦闘爆撃機や電子戦機が航空阻止に出たり、あるいはどうやっているのか分からないが増援が送られるのを阻止している。 ぶっちゃけ、こんな狭い一画での戦いで“黄色いうさぎ”は物流を止めるほどの機動力と火力を発揮している。それでもそこらへんにあるもので延々と戦い続ける体制に入っているこちら側にはほとんど影響がない。もっぱらPMCへの妨害が主だろう。 「第4試作主力戦車小隊が到着、残存数は11輌。貴大隊の指揮下に入る」 「最後に敵主力戦車が発見された座標は……」 「了解」 敵の通信を傍受しているとヒトガタのネイナが居る所に敵の主力戦車が来るようなことが聞こえた。今ここに居るのはフェライトMBTが2輌と自走対空砲型テクニカル2輌とヒトガタのネイナを含む急造量産型ヒトガタ5機。これに相対して交戦しているのは劣化バリスタン5匹と突撃戦車と重歩兵戦闘車と多脚戦車めいた対空機関砲型POTもどき6機と対空機関銃型POTもどき10機だ。 傍受した通信が聞こえてからはそんなに時間はかからなかった。 完全に球体な車体形状をしている「試作主力戦車」が要塞壁と化しているビル群を掻い潜って飛んで来たのだ。これを察知した2輌のフェライトMBTは素早く照準して瞬く間に砲撃して3輌大破させる。続いてこちらの対空砲と劣化バリスタンの対空砲が反応して徹甲弾の嵐を浴びせて5輌ほど小破、残った無傷な3輌が着地して砲門を開いて突撃戦車を集中砲撃し始める。 さながら巨大な金属球と言った姿であるものの、外殻が壊れると地上走行は出来なくなるらしく、小破したものは飛びながら上から砲撃しようと砲門を開くものの、そこに対空機関銃から撃たれた13mm級徹甲弾が次々と入ってあっという間に射撃不能になってしまった。そして重歩兵戦闘車の40mmガトリング砲で引き裂かれて行った。薄い装甲板を何枚も重ねてはいるものの、あのガトリング砲から撃たれる徹甲榴弾みたいなのはそれを鋸で削り潰すかのように引き裂いて行く。 地上で集中砲撃を受けて履帯を切断された突撃戦車は抉られたような弾痕が増えて行くが側面を砲撃した球体主力戦車めがけてサイドステップによる突進を仕掛けた。フェライトMBTと同じく履帯駆動の装甲車体でどうみてもそうは動け無さそうなのにサスペンションのさばきでその機動を繰り出し、球体主力戦車を変形させ押し潰した。……その突撃戦車の履帯はもう切れてるのにまだ動くのである。 押し潰された球体主力戦車はトドメに劣化バリスタンの爪と腕力で装甲を切り崩され、口腔の火炎放射管から焼夷剤を撃ち込まれてて炎上、沈黙した。 急量ヒトガタ女2「履帯切断しても動くなんて……あのサスペンションって実は脚なの?」 劣化バリスタン自身で対処できるとみた彼女らは1匹を突撃戦車の修理にあたらせ、残った4匹で2輌の球体主力戦車の対処に当たった。 劣化バリスタン達は口を開き、火炎放射をくりだして球体主力戦車2輌が突っ込むように誘導しつつ火を放った。あの焼夷剤から出る火炎は球体主力戦車の履帯にあたる駆動用流体金属装甲殻を「火傷」させ、あっという間に地上走行能力を奪った。 動きが鈍った所で劣化バリスタン達は同じ火炎放射管から爆轟油脂を発射して、ボコボコにしていき、やって来た球体主力戦車はあっという間に全滅していた。 「偵察機から連絡、第4試作主力戦車小隊は全車大破炎上」 その光景はこれからの戦いを物語る。 装甲材さえも食らう火炎は作り易い素材は容易に死にゆくと語り、 ばらばらに千切られた破片はより強大な砲弾が存在する事を語り、 抉られつつも動き続ける突撃戦車の姿は可能な限り強力な攻撃力の必要性を語っている。 その間にこちらの主力戦車が前進し、劣化バリスタンの突撃戦車と重歩兵戦闘車といくらかのPOTもどきを破壊し、彼女らを後退させた。 フェライト65092「おそらくさっきの試作戦車の位置情報を元に追加の戦車が来る可能性がある。陣地転換をしろ」 そしてヒトガタのネイナ達と後ろの自走対空砲型テクニカルに対してフェライトMBTのPOT型AIモジュールが陣地転換を命じ、ヒトガタのネイナ達は戦車から離れないように動き始める。 7.陸の王という称号は誰に 「第3試作主力戦車小隊が到着、残存数は9輌。貴大隊の指揮下に入る」 ただ繁華街を抑えているヤクザ、それもウサギ系獣人のような姿をしたエイリアンが遺した兵器を持っているだけに過ぎないヤクザを潰すだけだと知らされていたPMCはそういう業務をどういう訳か諸々の軍需企業からの合同依頼という体裁で請け負っていた。 ある程度はエイリアンが遺した兵器や技術については知っていたし、教えられても居た。 ただ、異様だったのはこちらの現有戦力は殆ど使わせず、実際に業務に当たるのはPMCからはほんの数名の将校級の人員といくらかの事務職員的な人員だけでそれもほとんどお飾りに近い状態だった。現在5人の将校級傭兵が指揮している大隊は実質的には複合的な軍需企業の私兵大隊という物だった。 PMC将校「指定座標へ迎え、決して油断するな。敵が持っている主力戦車はかつての“陸の王”だ」 その編成も異様なモノで士官以下は全てヒトガタ造駆かPOT。ヒトガタ造駆だけで1000機が常駐し、予備を合わせると3000機を上回る……PMCが持って良い、あるいは使って良い戦力集団ではなかった。軍需用としても少し型遅れ程度の代物であり、民需用としては最新鋭も良い所の戦力集団だった。なにせ、もうこの時点でかつてのノキノシタに居る全ての非合法組織を潰して回れるほどのものだったのである。一番強いバグレス系でも2時間で殲滅をこなせるし、それ以外なら全部足しても2時間にも満たないほどだろう。 この戦力集団が相手するのは総数にして2210機の密造された急造量産型ヒトガタ1.1型、300機の異形の急造量産型ヒトガタ2型、17機の旧式化した軍用ヒトガタと決して戦力として強いとは言えない民生用ヒトガタ、おそらく200機は居る航空機型POTと800輌以上の車両型POTだった。 ……思い出して欲しいのはこれ正面戦力として保有するのはバグレスよりも遥かに矮小で弱い繁華街のヤクザだ。人員数で言えばかつてはヒトガタを含めても200人ちょっとしかいなかった弱いヤクザの正面戦力だけでこれほどの戦力なのだ。もうこの時点でおかしいと思うべきだった。 例として急造量産型ヒトガタ1.1型は食料を標準的なヒト型人類種の5倍も消費する存在だ。そいつらだけで人口にして11500人ものの食料を使うのに、たかだか200人のヤクザが抑えられるシマで賄える訳が無かった。その食料はどこから来てるのだろうか? そして実際に相対するとこちらの量産型ヒトガタなんてソフトスキンだと思わせるような榴弾と銃弾ばかりが使われ、対戦車火器はもはや正規軍としても異常とも言うべき保有量となっていてこちらの機甲戦力は油断しなくても撃破されていく。 奴らが抑えていた繁華街は唐突に“ヒトガタの街”、つまるところ要塞へと変化していた。一つの建物に存在する無人砲台と無人銃座の数は平均で30基もある。こちらのヒトガタ造駆ではその壁を破壊できない。 既に繁華街のヤクザが使用した銃砲弾はまもなく3000万発を超え、その使用ペースは黄色いうさぎの襲撃によってより加速されている。それなのに弾が尽きる様子はないし、密造ヒトガタも密造無人機も充分に整備される。極めつけに異常に強くなった旧式主力戦車が出現した。 軍事力と工業力だけが大国に迫る実力になってしまっていた。 PMC将校「……ほんとうに何なんだ、あいつらは」 その理由と言わんばかりに出現したのは今までは相対したことさえないエイリアンである劣化バリスタンの軍勢だ。彼女らは“黄色いうさぎ”と呼ばれて推定2000門の火砲を運用し、尚且つ30万機ものPOTもどきを動員してあの要塞で戦っている。それだけではなく、こちらも攻撃し、沢山の航空戦力と艦艇戦力を使って後方部隊までも攻撃している。 しかし、軍需企業にとってはどうしても勝たなくてはならない相手であるためかとうとう正規軍向けのヒトガタ造駆や対戦車火器、極めつけに試作の主力戦車までも送り付けて来る。軍用品は基本的に造るほど大赤字になり易いものだが、そうまでしないとどうしようもない所に来ているのだろう。 ここまで正面戦力に拘るのも理由があった。 指揮官として振る舞っている彼女はふと、敵の将校クラスの情報として記されているある老いた軍用ヒトガタに目が留まった。 推定で最高指揮官ともされている彼は彼女にとっては見覚えがあるどころの話じゃなかった。 PMC士官「“フーシェロンブルグ大佐”……?」 その名前は数年前にとある小さな恒星系をどっかのPMC艦隊が攻め込んだ時に相対した小国の軍隊に居た軍用ヒトガタであり、将校の名前だった。 始まりの方の戦争で彼はPMC艦隊に自身の妻と子供達を人質に取られても見殺しにするばかりか保有していた沿岸砲で妻と子供達が乗っていた軍艦を撃沈させ、それだけにとどまらず彼の同僚の近親者までも次々と手にかけて効率的に巻き添えにするように殺していった話がある名前だ。 その名前が出ると必ず「ヒトガタ爆弾」の単語が伴う。「ヒトガタ爆弾」は名前通りだ。村や町を占領したらだいたい手に入る女子供に似せて潜ませて捕まえさせて、しばらくしたら次々と大爆発を起こしていく事件で使われた物凄く悪質な自爆装置だった。非常に起爆まで長いタイプも存在していて人身売買で送った先が爆発する質の悪いモノもあって人身売買による資金調達さえも困難にしてしまった最悪な代物だった。 この非常に悪質な自走爆弾は彼の悪名をこれでもかと轟かせ、その被害を被ることになったPMC艦隊の地上戦力はほぼ全員が何かしらの心的外傷を負って苦しむか、あるいは覚める事が無い悪夢を伴った狂気に侵されて味方殺しになって始末せざるを得なくなったりとろくなことが無かった。 人類種ということは傭兵に偽装して潜り込ませたり、あるいは近親者に偽装して爆殺させるというどこまで最悪になれるのかを目指しているようでもあった。そのせいでまともな造駆やPOTはおかしな学習をして目に入った人類種を殲滅しないと安心できない病に侵されて始末するハメにもなってしまった。 指揮官として着いている彼女は特にその近親者に化けたそれを使う事を非常によく知っていて顔を引きつらせ、激しい憎悪を現した。 PMC士官「まだ生きていたのか、あの悪魔が……こいつ、本当にあそこに居るんでしょうね!?」 近親者に偽装して爆破ということもやったというのは彼女がよく知っていた。何故ならば、彼女に似せられた「ヒトガタ爆弾」が何発も起爆したのだから忘れる筈が無かった。 PMC通信手「なんかあったんですか? 親を殺されたとか」 PMC士官「そんな生易しいもんじゃないわよっ! この爆弾魔はかつての私の姿に化けたヒトガタ爆弾を何発も送り込んで私の両親があの時、あの会社で働いていたからターゲットにされて殺害未遂に会って、父は爆殺されて、母は重い精神疾患を負って二度と顔を会わせられなくなったのよ! 家族だけじゃなくて私が関わってた人々や場所にまでヒトガタ爆弾を送り込まれて……っ、この極悪人のせいでこの身体以外の全部が台無しになって人生が滅茶苦茶になったのよ!」 彼女は我を忘れて怒鳴り散らし始めた。周囲の職員の反応を見るに今まで見せる事が無かった姿だったのだろう。 PMC士官「“爆弾”なんじゃないのかって会う人全員に疑われて仕事もできなくて、何千万エストも借金して整形して名前も変える羽目になったのよ!」 PMC通信手2「あー、うん、落ち着いて……」 PMC士官「なんでこんな奴が地獄に落ちても死んでないの!? ねぇ、なんでっ!?」 錯乱したと見做された彼女は警備兵としていたヒトガタに取り押さえられ、指揮所から出された。 PMC士官「絶対にぶっ殺してやる……!」 PMC将校「フーシェロンブルグ大佐か……、あの時、AI達の反対を押し切って指揮権を握り続けて正面戦闘で決着付けるべきだったが……連敗続きで発言力が弱ってたからなぁ」 別の指揮官はその名前を見て同じように過去を思い出していた。 PMC通信手「あの、彼は本当はそういうことをしない人……じゃなくてヒトガタだったんですか?」 PMC将校「昔の話だが、彼は親族を人質に取らないし取られても躊躇しないって豪語していた奴だったんだ。“意味が無いから”ってな」 PMC通信手「……あの様子から意味があったみたいですね」 PMC将校「そう、彼は自分の妻子を拉致された時に“こいつらには家族を巻き添えにすればグズグズになる”と彼は判断してしまった。まずは自分の妻子を始末してからあの悪評通りの事をやり出した。実際それであの小国の民達を安全に逃がす為の時間稼ぎができた。彼は最小の被害でその目的を達成したのだ。変な話だな、自分で意味が無いと言った行為を最大限に利用したんだ」 地図を見下ろした彼は続けた。 PMC将校「だからこの男と戦う時は正面戦闘で決着をつけるのが最も安全だ」 そう言い切ると彼はより沢山の兵力を集結させるように手配を始める。 偵察機型POTを撃墜しつつ陣地転換をして少しすると先頭を歩いて曲がり角の先を見ていたヒトガタのネイナはT字路の先で知らない主力戦車の姿を発見し、銃撃を受けた。銃撃は防弾ヘルメットを貫通したがすぐに頭を引っ込めたので頭頂部を切っただけですむ。生憎、ヒトガタのネイナはその手の趣味は無いのでどんな主力戦車なのかは分からない。 ヒトガタのネイナは別の場所から見ようと少し登って顔を出そうとしたところでビーム噴流が目の前を過った。いかにも食らったら一瞬で蒸発しそうな出力だ。 ビーム噴流がまだ収まらない時にすぐ後ろに居たフェライトMBTは超信地旋回をし、サイドステップで低く跳ねてT字路に飛び出した。この主力戦車もさっきの突撃戦車と同じようにこういう動きが出来るようで狭い市街地でも正面を向けたまま出る事が出来るようだ。 こちらの主力戦車はT字路から飛び出す瞬間にシールド装置を有効化し、ビーム噴流を反らしたり減衰させながら着地と同時に砲撃。その時にヒトガタのネイナ達はトーチカと化している建物の窓に敵の対戦車火器持ちのヒトガタを発見し、自走対空砲型テクニカルに制圧射撃を行わせてからその建物へ突入した。突入したのはヒトガタのネイナとメフィリヌ銃を持った急造量産型ヒトガタ。 大剣と手榴弾を構えたヒトガタのネイナは先頭に立って突入し、量産型ヒトガタ達が待ち構えている所へ手榴弾を投げ込み、起爆と同時に後に居た急造量産型ヒトガタにメフィリヌ銃を撃ち込ませながら大剣を構えて突撃をかけた。 見かけたほぼ非装甲の量産型ヒトガタは5機、うち3機は倒れている。残りの2機は壊れた突撃銃を投げ捨ててヒトガタ用の破砕斧と自動拳銃を抜き、ヒトガタのネイナを捕捉した。ヒトガタのネイナは大剣を投げつけて1機を串刺しにし、もう1機は後ろに居た急造量産型ヒトガタが回転式拳銃の早撃ちで仕留めていた。 ネイナC「クリア!」 投げつけて刺した大剣を引っこ抜いたヒトガタのネイナは窓から顔を出して先ほどの道路の様子を見た。 新しく現れた敵主力戦車はこちらの主力戦車が仕留めて燃え上がっているのが見え、後ろに居た敵主力戦車2輌がこちらの主力戦車1輌と応戦している。その時に敵の主力戦車が見えたが少し寸詰まりにも見える空中砲艇のようにも見える代物だった。さっきの大口径ビーム砲の他に戦車砲も備えるようだがそのどちらもこちらの主力戦車の正面装甲を抜ける貫通力が無く、1輌に押されている。 正面装甲は1発は耐えるみたいだが次はなく、2発目を食らうと派手に爆散している。 ジリジリと下げつつ、敵は十字路に誘い込むがその動きで左右にも敵主力戦車に相当する敵が居るのがバレてこちらの主力戦車は十字路の前まで進んで停車、誘い込んでいた残りの1輌も撃破する。 フェライト65092「こっちが誘いに乗らない事も想定している筈だ、建物の中を制圧しろ」 前進していた主力戦車にそう指示されるとヒトガタのネイナ達は自走対空砲型テクニカルに制圧射撃をする準備を整えさせて対戦車火器を撃ち込める角度にある窓がある建物に侵入していく。 この“ヒトガタの街”に立ち並んでいる建物は平時用の内装と戦時用の内装があり、一旦戦時体制用の内装で作ってからワープポータル等で亜空間建築みたいなのを施してから平時用の内装を組んでいく作りをしているため、戦時体制に入ったらポータルを切って本来の内装に切り替えられるようになっている。これによって避難誘導も素早く済ませる事が可能となり、これとは別個に亜空間道路的なのを網状に繋いで裏の道路というのも作れるようになっていてポータルが破壊されても別の場所から出られるようになっている。 これがどういうことかと言うと、平時の内装をハッキングかスパイ活動なんかで流出させられても戦時にはまったく内装が変わってしまうために事前調査で得られた情報が全く使えないことだった。そして実際に遭遇するのは知らない要塞構造。極めつけに場所によっては自動トーチカで嬲殺しにされる殺し間もある。そのため、敵はまずマッピングから始めなければならなかった。 この辺は退役軍人達が肌のように感じていた「要塞の情報」の取り扱いを極めて厳重にしていたことが功を成したとも言える。民間人は戦時内装に立ち入っただけで厳重に処罰された上に如何なる理由であれ記憶を暗号化されてしまうほどの徹底ぶりだ。 もちろん、ヒトガタのネイナ達は普段は暗号化されてしまっているとはいえ、建物の戦時内装を知っているので殺し間に入らないで済んでいる。POTもどきは知性体の記憶を読む能力があるため、その対策でもあった。 別の建物に入ったヒトガタのネイナは量産型ヒトガタの待ち伏せ攻撃を食らって足を折られてしまった。 素早く量産型ヒトガタ達の拘束を受けたヒトガタのネイナは特殊な機材を持った量産型ヒトガタに首筋を刺されて麻酔に似た何かを注入される。 その時にヒトガタのネイナは自分の記憶を見られているような感覚がした。この行為は言ってみれば厳重な情報統制がされた集団に対する強引な情報収集だった。 これに泣かされた集団は多いと聞いた。実際に似たようなことをするPOTもどきはこれも脅威だった。 しかし、これは既に知られている方法であり、その対策も出来ていた。そして眠りに落ちつつあるヒトガタのネイナは記憶の中にいつの間にか植え付けられていたモンスターが目を覚ます感覚がした。 ――POTもどきの本体は大きさの無い何かと言われている。そいつはエネルギーを使ってこちらに干渉してくるがエネルギー生命体でさえないし、情報生命体でさえもない。 そして、POTもどきの本体みたいなものはもう珍しくも無い技術らしく、劣化バリスタンが遺した機械類を使えば作る事ができる。 POTもどきの本体に似た「何か」はヒトガタのネイナの記憶にアクセスした量産型ヒトガタを蝕み、眠るように倒れさせた。拘束している量産型ヒトガタ達はヒトガタのネイナをぼこぼこに殴り始めた。そのあたりで急造量産型ヒトガタが入って来て量産型ヒトガタ達を切り倒していく。 ネイナC「はあ、はあ……、なんか変な魔法が発動したような気がする……」 撃たれて折れた足首に応急処置用の医療用ナノマシンを含んでいる湿布みたいなのを貼って貰い、肩を借りて立ち上がる。 応急処置用の医療用ナノマシンは痛み止めに相当する工夫が無いので実は結構痛く、それによる激痛をヒトガタのネイナは顔をひきつらせた。 急量ヒトガタ少年「随分とセクシーな背中じゃん……。お風呂に居た時は人気だったんじゃない?」 ネイナC「うっさいっ、この目と歯で不人気だったよっ!」 ふざけたことを喋った急造量産型ヒトガタに目を合わせてタペタムを光らせ、鋭い歯を怒って見せた。 急量ヒトガタ少年「これは確かにフェラされたくないし、バックでしかやりたくない!」 ネイナC「黙りなさいっ、噛むわよ!」 急量ヒトガタ少年「ごめん……」 くだらない馴れ合いしている間に足首が動くようになり痛みも我慢できるようになったヒトガタのネイナは機関拳銃を構えて制圧を進める。 小型偵察POTを撃墜しながら制圧していき、対戦車火器持ちの量産型ヒトガタを仕留めて行き、十字路が見える位置まで進む。 窓から下を見るとこちらの主力戦車を撃とうと敵の主力戦車が1輌ずつ十字路の左右両方の先に待ち構えているがこちらの主力戦車が2輌とも十字路には出てこないので膠着している状況になっているのが見えた。そして両方から機関銃と戦車砲による狙撃を食らい、ヒトガタのネイナはすっと引っ込んで狙撃から回避した。 その時に大重量物が跳躍した振動が走り、あの腹を打つ衝撃が来た。隙を見て片方を撃ったのだろうか、そしてすぐにまた砲撃したのだろう衝撃が来る。橙色の光が片側から見えるあたり、片方は仕留めたのだろう。 ヒトガタのネイナは機関拳銃を構えて窓から向かい側の建物に向かって飛び出した。右側の敵主力戦車は燃え上がり、左側の敵主力戦車はほぼ同じタイミングで飛び出したこちらの主力戦車に撃ち抜かれて沈んでいたのが見えた。それに続くように自走対空砲型テクニカル2輌と突撃銃持ちの急造量産型ヒトガタが前進しているのも見えた。 フェライト65092「敵主力戦車の砲撃により履帯を切断された、修理を頼む」 修理要請を聞いたヒトガタのネイナは建物から降りて要請した主力戦車の下に駆けつける。 その時に正規軍向けの重対戦車ミサイルを装備した敵の高機動戦車型POTが複数そちらに向かっていることが無線で知らされた。チャンスとばかりに向かって来ているようだ。 ヒトガタのネイナは一人で擱座したフェライトMBTの履帯修理を始める。まず切断箇所を確認し、車体側面の工具箱を開いて必要な工具を取り出すと履帯緊張度を調節する装置を動かして履帯を緩め始める。幸い、跳躍して着地後に履帯を撃ち抜かれたからか変に巻き込んでいないようだ。 修理中のフェライトMBTの砲塔が動く、敵が来たようだがそれでもヒトガタのネイナは修理を進める。 破損した履帯を取り外して新しい履帯へ付け替えた。あとは繋がった履帯を持ち上げてつなげるだけだが繋がった履帯は急造量産型ヒトガタにはとても重たく、繋げるだけなのに時間がかかってしまう。 そんな時にヒトガタのネイナは背中に銃撃を受けてしまい、胸とお腹から貫通した銃弾が飛び出て指に直撃したのを見てしまった。この時に一瞬手を止めてしまったが、直ぐに手を動かす。鋼鉄のブロックを並べてピンを打ち込むだけなのだ、直ぐに終わる、とヒトガタのネイナはピンを打ち込んでいく。 ……誰かが背中に来たが振り向いて何かいられなかった。威力が弱まった銃弾が当たるがそれでも振り向いていられない。 最後のピンを打ち込んだ時に対物ライフルクラスのだっただろう砕けたデカい銃弾が胸から飛び出してきた。背中に誰かの背中が当たった。その時にようやくヒトガタのネイナは振り向いて後ろに居た急造量産型ヒトガタを抱えて横に投げ出し、履帯の緊張度を元に戻して工具を車体の工具箱に戻し、サイドスカートを力いっぱい殴った。 フェライト65092「殴らなくても解るぞ、小娘」 ネイナC「おじいさんは合図で殴れって言ってたから殴る!」 改めて自分の後ろに居た急造量産型ヒトガタを見るとそいつはさっき拘束から助けてくれた奴だった。まず自分で見えるところの傷口を塞ぐように止血機能だけの湿布とテープで貼りつけた。ぐったりしている急造量産型ヒトガタは攻撃されても動かなかったために結構食らってしまっており、背中側と腹側の被弾箇所に止血機能だけの湿布を貼り、それをテープで貼って固定していく。 自走対空砲型テクニカルから内臓出血に対処する為のとても小さいパイルバンカー的なものと医療用ナノマシンが入ってる専用の杭というか注射釘?を貰うと装填して自分の腹に打ち込んだ。ヒトガタと呼ばれるような堅い物になると注射だけでもこういう器具が要るらしい。続けて再装填して助骨を避ける様に注射釘を当ててからそれを打ち込む。やはりかなり痛い。 自分の分はこれで完了したのであとはこの急造量産型ヒトガタに打ち込むだけ。彼にも同じように腹と胸に打ち込むが痛がる様子が無かった。……呼吸と脈はあるので多分まだ生きているだろうが。 次にというか最後に本当に応急処置になるが、ヒトガタのネイナは大剣を降ろし、小型偵察POTとして使っているロボット玩具に有線接続されたレーザーガンを取り付け、血塗れになった服を肩の上までまくり上げ、ブラも取って被弾箇所を焼いてもらおうとした。 そんな時にぐったりしていた急造量産型ヒトガタが起き上がり、静止してきた。普通に止血できるなら火傷させる必要が無いからである。……決して自分の背中を眺めたいからじゃないとヒトガタのネイナは自分に言い聞かせ、彼に止血して貰った。 急量ヒトガタ少年「……君さ、別にヒトガタにされてなくてもめっちゃ動き回るタイプだったよね」 ネイナC「あぁ、うん。実際、そうだったよ。意味もなく変な所に登ってたし」 急量ヒトガタ少年「見たことがある素で美人さん達はみんなそんな感じだったよ……」 ネイナC「結局、背中の話!?」 思わずひっぱたきたくなったが今はそんな場合じゃないとヒトガタのネイナは自分に言い聞かせた。そしてブラを付けて…… ネイナC「……眺めてる暇があるならロボからレーザーガンを外して」 まくっていた服を降ろして大剣を背負い、敵の攻撃に対処し始めた。 近くに居た自走対空砲型テクニカルは50mm高射機関砲で飛んでくる重対戦車ミサイルを撃ち落としていくのがすぐそばなのでよく見えた。 急量ヒトガタ少年「榴散弾だからミサイルでもしっかりと始末できるのは良いね」 ネイナC「あんなに弾速が速いのによく見えるね」 急量ヒトガタ少年「いや、この高射機関砲は榴散弾を使うの知ってるだけで実際にはよく見えないよ」 ネイナC「……ねぇ、よく知ってそうだから聞くけどこの近接防空網を突破して対戦車ミサイルを撃ちこむにはどうしたらいい?」 それを聞いた彼は突然25mm突撃銃を上に構えて撃ち始めた。釣られてヒトガタのネイナが見上げると一瞬、燃えた何かと対戦車ミサイルが見え、直ぐに機関拳銃を構えて対戦車ミサイルを砕いた。 急量ヒトガタ少年「――真上から出るのも一つだね」 ネイナC「敵が使ってる高機動戦車型POTはそれ出来るの?」 急量ヒトガタ少年「重いほうはこっちの対空火器をいくらか食らっても“持つ”からカミカゼみたいになるけど出来る」 真上からも来ると答えた彼はそそくさと建物の屋上まで一気に登って行った。ヒトガタのネイナもそれに続く。 急量ヒトガタ少年「こちらの主力戦車はサスペンションが所謂歩脚式の走行装置と同様のものになっているように、敵のそれも同じなんだ。ヒトガタみたいに跳ねて移動できる」 ネイナC「それこそ、こんなふうに?」 急量ヒトガタ少年「そんなふうに」 屋上に着くとヒトガタのネイナも25mm突撃銃を構えた。その銃は本来は対劣化バリスタン性能を持った徹甲弾だけを使う銃だが同じくらいに堅いものも燃やす事が出来た。流石に“タフ”な車両を相手するのは辛い所があるが。 それと屋上に着て分かった事だがこちらの対空砲は黄色いうさぎからの砲撃を防御するために数が使われているため、比較的手薄になっていた。軍用の突撃揚陸艇型POTが飛んでいるのが見えたくらいには手薄なようである。……いくらかは自走対空砲型ヒトガタや軽攻撃機型POT、それと黄色いうさぎが運用している戦闘機型POTもどきから撃たれて撃墜されていたが。 今度は突撃揚陸艇型POTが巡航ミサイルのように飛んで来てヒトガタのネイナ達が居る建物に刺さって潰れた。前は潰れてもう動けなくなってしまったが中からかなり分厚い装甲板に身を覆った装甲化ヒトガタ達が現れ、出オチと言わんばかりに120mm重迫撃砲弾が直撃した。 だが彼らは吹っ飛ぶだけで装甲板を抉られたりするだけで済んでおり、彼らの手には機関銃付きの120mm対戦車無反動砲や機関銃付き25mm航空機関砲はまだ保持したままだ。 急量ヒトガタ少年「新型の装甲ヒトガタだ!」 足から分厚い装甲板で組まれた装甲車の無人銃塔のような頭のてっぺんまでの高さが2.5mくらいはある巨人がこちらを見ると頭部正面から生えてる機関銃と自動擲弾銃を撃って来た。 ヒトガタのネイナ達は数発撃ってから屋上から飛び降りた。一瞬だが、こちらの25mm突撃銃の徹甲弾が貫通しきれなかったような様子が見えた。あの新型装甲ヒトガタと呼ばれた巨人達も隊列を組んで降りて来る。 こちらの自走対空砲型テクニカルが少し移動して50mm高射機関砲で待ち構え、続いてフェライトMBTの13.5mm重機関銃も反応して迎撃を始める。そして2人居る106mm無反動砲持ちも反応する。 その時に新型装甲ヒトガタからの攻撃も始まるが互いに同じタイミングで攻撃が到達する。 106mm無反動砲から撃たれた粘着榴弾2発はそれぞれ1機ずつの新型装甲ヒトガタを砕き、同時に無反動砲持ちも機関銃で撃たれて倒れる。 自走対空砲型テクニカル2輌から撃たれた50mm榴散弾は半徹甲榴弾モードとなって飛来し、それで4機の新型装甲ヒトガタに着弾し、3機は大破、1機は左腕と頭の半分が吹き飛んで中破し、自走対空砲型テクニカルは1輌が25mm機関砲により大破、もう1輌が25mm機関砲で高射砲部分が破壊された。 そして2輌のフェライトMBTの13.5mm重機関銃はそれぞれ1機ずつ命中させて文字通りにハチの巣にしていたが流石に120mm対戦車無反動砲から撃たれたHEAT-MPが集中して1輌が車体後部に命中して擱座、もう1輌はサイドスカートに孔をあけるだけだったが、周りに居た急造量産型ヒトガタが破片をもろにくらって倒れてしまう。 新型装甲ヒトガタは1機が中破、1機が無傷でどちらも120mm対戦車無反動砲持ちが残り、こちらはフェライトMBTが1輌擱座、1輌無傷、そしてヒトガタのネイナともう一人の急造量産型ヒトガタが残っている。 次の攻撃は直ぐに始めなければならない。ヒトガタのネイナは25mm突撃銃を構えながら銃撃しつつ中破した新型装甲ヒトガタに突撃し、もう一人は同じく25mm突撃銃を撃ちながら倒れた無反動砲持ちに駆け込む。しかし次の攻撃を受け始めた新型装甲ヒトガタはヒトガタのネイナを無視して無反動砲を取らせないように頭部の機関銃で銃撃して急造量産型ヒトガタを倒した。肉薄したヒトガタのネイナは大剣を居合抜きするように抜刀してまだ残っている右手の手首めがけて力いっぱい振り下ろしたが、中破した新型装甲ヒトガタは素早く右腕を上げてヒトガタのネイナの大剣をかわした――そこに13.5mm重機関銃のバースト射撃を食らってトドメを刺された。 トドメを刺してくれたはいいが崩れ落ちる新型装甲ヒトガタはヒトガタのネイナに覆いかぶさるように倒れてしまい、拘束されてしまった。これで戦車と歩兵が分断されたことになってしまった。 そして特徴的な爆発音と20tくらいはある鋼鉄が倒れた音がしたがヒトガタのネイナの不安は取れない。動ける目が少ない状態というのは市街地戦ではかなり拙い。一応はロボット玩具を改造した小型偵察POTか小型武装POTが確か合計で5機くらいあったとはいえ、撃墜されやすいしその索敵能力も高いとは言えない。 フェライト65102「敵の攻撃を受けてフェライトMBTと自走対空砲型テクニカル2輌と急造量産型ヒトガタ5機が動けない状態になった。救援を要請する。……と連絡してくれ」 「わかりました」 あのロボット玩具の声が聞こえたのを見るに生き残ったフェライトMBTはあれを伝書鳩として飛ばしたようである。そんな使い方があるのかと、ヒトガタのネイナは感心したがやっぱり動けない事には変わりなかった。ヒトガタのネイナの力だと覆いかぶさった新型装甲ヒトガタを押し上げられないのだ。 フェライト65102「こういう時に試作してテストしていた“念力”装置があれば埋まってる彼女を出せるんだがなぁ」 フェライト65092「生憎、俺はその装置はもう取り外されている。まぁ、あっても不安定だから使い物になれんがな……。ああ、まだ敵さんは諦めてないようだ」 他人と言うか新型装甲ヒトガタの血がヒトガタのネイナを濡らし始めて非常に気持ち悪く感じさせる。積み上がった死体たちというのはいつもこんな調子なんだろうとも思わされるが機関銃の銃声と主砲の砲撃が響いて来る。 フェライト65102「さっきと違うタイプの敵主力戦車だ。エンジンをやられて動けねぇ時に来れるとは奴さんは幸運に恵まれてるな」 フェライト65092「二方向から包囲されている。さてどう出るべきだ? 今この場で動けるのは俺だけだ。今見える奴は我らフェライトMBT型と同じ型式だ。正対するということはそう言う性能のつもりなんだろう」 フェライト65102「ニンゲンもマシーンもいっつも先に撃った方が良いのか後に撃った方が良いのか議論しているが、答えが出ないよな」 遠い砲声しか聞こえなくなった。フェライトMBT達の話から良くない状況で膠着していることが分かった。 フェライト65092「……なんだ」 「先の交戦で一番最初に銃撃を受けた急造量産型ヒトガタがそろそろ動けそうです」 フェライト65092「静かに、まだ動くなと言え」 「はい」 別のロボット玩具の声が聞こえた。一番最初に銃撃を受けた、というと106mm無反動砲を握っていた2人だろうか。 ……ところで、銃撃くらいではしばらくすれば急造量産型ヒトガタが起き上がるということは……おそらく今ヒトガタのネイナに覆い被さっている新型装甲ヒトガタも起き上がる可能性がある。 MAS5600「っ、無線が壊れてたか、これじゃチクリができねぇな」 というかそもそも仕留めきれてないようで、覆い被さっている新型装甲ヒトガタの本当はもっと太そうな小声がヒトガタのネイナのおでこから聞こえた。 ネイナC「随分と頑丈ね」 MAS5600「運が良いだけさ……、もげても孔が空いても上手い具合に火傷して出血は少ないし、たまたま破片が中枢神経にぶつかってないだけだ」 ネイナC「じゃあ、起き上がってよ」 MAS5600「無反動砲を拾おうとした仲間を俺がどうしたのか忘れたのか?」 ネイナC「……そう言って起きてくれないのね」 だが、どうにもできず、彼は動こうとはしない。ついでに戦況も動かない。 MAS5600「しかし暇だな。自動銃座に積まれたPOTの気持ちが分かりそうだ」 ネイナC「戦闘中よ」 MAS5600「動けたらとっとと動いて死んで地獄のかわいいねーちゃんと遊べたんだがなー」 ネイナC「……量産型ヒトガタなのにそんなこと言うのね」 えらく暇なようで彼は小声で喋りまくる。それでも戦況は動かない。 MAS5600「つまらない昔話していいか?」 ネイナC「どうぞ」 ぶっちゃけヒトガタのネイナも暇になったのでこの大男の話に付き合う事にした。やっぱり戦況は動かない。 MAS5600「お嬢ちゃんみたいに必要だからすぐ作られる奴と違って正規の量産型っていうのは大抵は経営予測をもとに製造計画が立てられてそれに合わせて作られるんだが、この時の経営者がアレだったのか製造時に型遅れになってしまってな。だーれも買ってくれなかったんだ。その一つが俺だ」 ネイナC「正規品でもそんなことあるんだ……」 MAS5600「しかも軍用規格だからおいそれと安売りもできねぇ。じゃあどうする?」 ネイナC「オフィスの掃除とか?」 MAS5600「まー、それもやらされたがこんだけ身体がデカいと普通に動かしても大飯食らいだからな、寝返りしか出来ない狭い生命維持装置付きのカプセルベッドに詰められて長い永い眠りに着かされたんだ。ああ、掃除ってのはこれの掃除さ」 ネイナC「つ、つまらない昔話……」 本当につまらない昔話だった。ところで戦況は何時動くんだろう。 MAS5600「ああ、たまーーーーに起こされることもあった。と言っても製造時から1年以内に眠らされてから今ここまでの30年ぐらいの間では僅か2回しかなかったが」 ネイナC「本当にたまーーーーにじゃん!?」 MAS5600「1回目はなんかしらの映画の撮影に俺を使う為に起こされた。俺は起こされたのを恨んだし、今でも許さねぇ」 ネイナC「何やらされたの、いっぱい虐められたとか」 MAS5600「その時の配役はなかなか後味が悪いやつでな……お、戦況が動いたみたいだぞ」 今度は酷い昔話が始まりそうなところで戦況が動いたようだった。ヒトガタのネイナはどことなく内容が気になったがさっと流されてちょっともにょる。 確かに戦況が動いたと言った通りに砲声が響いて来た。 ネイナC「今どうなってるの?」 MAS5600「お嬢ちゃんからみて敵の主力戦車を撃破したみたいだ。よかったな」 ネイナC「うん、よかったね――ってあんたにとっては良くないじゃん」 MAS5600「そうか、俺にとっては良くないように見えるのか……大事にされてるんだな……」 タイヤの音と足音が近づいて来るのがヒトガタのネイナにも聞こえ始めた。 MAS5600「がんばれよ」 そう言われた後に中破した新型装甲ヒトガタが持ち上げられ、クレーンで吊られているのが見えた。ヒトガタのネイナは自分で這い出ていく。 燃え上がっている敵の主力戦車が遠くに見え、周りには応急手当や回収作業をしている急造量産型ヒトガタ達や作業用造駆が見えた。 ネイナC「酷い事しないであげて……」 脱出したヒトガタのネイナは回収部隊に所属している造駆達にそう言った。回収されることになる新型装甲ヒトガタの中に生きている個体が居る事とそれに交戦意思が無い事を同時に伝える意図で言った。 「形式上は捕虜扱いになるからこの戦いには投入されないぞ」 意味が分かった戦車運搬車に載せられているフェライトMBTはヒトガタのネイナに向かってそう言った。それを聞いたヒトガタのネイナは微笑み、動けるフェライトMBTの砲塔後部に乗って、回収部隊の帰投に付き添う事にした。 PMCの指揮所にこちらが投入した兵器が繁華街のヤクザに鹵獲された形跡があるという報告が飛び込んで来た。それは最新だと思っていたものが劣化バリスタンに相当する驚異の手に渡ってしまったという報告に等しかった。 反対に繁華街のヤクザや黄色いうさぎからは兵器を奪う事はできなかった。 PMC将校「まずいな、技術力が未知数だというのに奪われてしまったとは……」 PMC通信手2「この情報はどうします?」 PMC将校「どのみちバレているはずだ。今更どうこう出来る筈が無い」 そのタイミングで錯乱状態から回復したあの女指揮官が入って来た。 PMC士官「私を戦線で指揮を執らせてください」 PMC将校「よし、つまみだせ」 PMC士官「冗談ではありません、作戦があります」 PMC将校「動き次第ではつまみ出すからな……。話してくれ」 PMC士官「混成中隊を主力戦車と重APC型POTと装甲ヒトガタとヒトガタで編成し、これを集中運用します。交戦中の主力戦車を引き上げさせてこれを編成します」 そう言いつつ駒を置いて、紐を引っ張った。ほぼ一直線の機動線だった。 PMC将校「なんだこの機動線は、居るのかさえ分からないフーシェロンブルグ大佐の首でも取るつもりなのか?」 PMC士官「“事務所”から指揮を執っているとは限らないのにこの動きは危険ですよ」 PMC将校「敵の主力戦車は少なくとも3輌も居るんだ。おまけに奴らの要塞は1mたりとも制圧出来てないのに……」 PMC士官「ならば、制圧が済んでいる場所から攻めれば良いでしょう」 そう言った彼女は適当な戦力に黄色いうさぎの支配域をつつかせて黄色いうさぎの攻撃を誘うような機動線を描き始めた。 PMC将校「……劣化バリスタンの工場を通るつもりかね」 PMC士官「そうですよ。あのウサギどもは大量に攻城兵器を持っているそうじゃないですか。そんな彼女らが通った後ならば要塞構造は使い物にならない筈」 言われてみればそうだが、その劣化バリスタンが通った土地に足を踏み入れたことがある男は渋い顔をした。同じくらいに厄介な要塞地帯になっているからだ。 そして錯乱していた女は予想される進撃速度から計算されて拡張された黄色いうさぎの支配域を通るように混成中隊の機動線を変えて行く。 PMC士官「壊したばかりなら、まだただの荒地でしょう?」 PMC将校「確かに壊したばかりならばいくら劣化バリスタンでも要塞化もしていないだろう。だが、このルートでしかも君が陣頭指揮を執るとでも言うのか」 PMC士官「私だってヒトガタの機動に追随するくらいは出来るように改造している……。あんな急造量産型ヒトガタとやらをヒトガタ呼ばわりして良いなら、この私なんかもヒトガタでしょう」 PMC士官「私にあの指名手配犯の首を刈らせてください」 作戦を立案した女はそう言った。 PMC将校「よろしい、現状行わせている掃討戦から防衛戦へ変更し、現状走らせている主力戦車を可能な限り集めてお前を中隊長とした混成中隊を編成させる」 PMC士官「では、手配が済んだら呼んでください」 そして男は彼女の作戦を遂行させるように手配を始めた。 少しして指揮官の女は混成中隊が集められる道路に来ていた。 塗装が新しい正規軍向けの量産型ヒトガタ達とでかい新型の装甲ヒトガタ達が並び、60mm機関砲と15.5mm重機関銃と重対戦車ミサイル発射機を積んだ無人砲塔を備えるとても重装甲な重APCが10輌も居るのが見えた。高機動戦車の砲塔を対空戦車のそれにしたものも10輌ほど見える。 試作されている中ではもっとも強力な主力戦車も5輌居る。だがそれらは先の敵主力戦車討伐に向かわせていて到達さえできなかった車両達だった。 主力戦車としてはあとは別のメーカーが試作した主力戦車が3輌ずつ居るがそれは黄色いうさぎの駆逐戦車によって容易に撃破されてしまう為に前にさえでれない車両達だ。 ……そんな中で指揮官の女は見慣れているが古い形式の主力戦車に目を付けた。 PMC士官「貴様、どこから来た」 聞かざるを得なかった。普通、古い形式であっても戦車というのはその当時最強を目指して作られる兵器である故に取引が難しいはずなのだ。 ましては増加装甲をガチガチにしたようなものなんてなおさらだ。 6904-6560+「我はPOT203-MBT-6904-6560+。長いなら6904-6560+とでも呼んでくれ。ジジイのお願いとやらでこの装甲板と武装とエンジンを新調した六四式主力戦車に乗って来たんだ。それとお嬢さんは信用されてないのもある。まー、指揮駆逐戦車型POTだと思ってくれや」 PMC士官「あいつにとってはこのポンコツのほうがいいとでも?」 6904-6560+「伝説のフェライトMBT 65039号車ほどじゃねーが、ヒトガタ撃破数8720万人と戦車撃破数3092輌のこの老いぼれがポンコツかね?」 PMC士官「違う、性能が足らないと言っているの」 6904-6560+「この155mm砲はそこの60mm砲よりは強い、そして防御は若いのに任せればそれで十分だろう、お嬢さん」 PMC士官「ふん、好きにしなさい」 指揮官の女はヒトガタ造駆としての機動装甲外殻に身を包み、新しくこさえた30mm突撃銃と140mm対戦車ロケット発射機を身に着けて自らを指揮駆逐戦車型POTと名乗った古い主力戦車の砲塔に乗った。 6904-6560+「フーシェロンブルグか、懐かしい名前だ」 PMC士官「虫唾が走る名前よ」 6904-6560+「彼はその当時でも大分古かったカームブレスMBTに乗って戦果をあげていた軍用ヒトガタだった。で、年取ってからはフェライトMBTを使って主力戦車搭載用POTを教育する戦車教育隊に居たんだ」 PMC士官「……」 6904-6560+「自分はシェロンの教え子なんだ。まさかあの時の教官を討ち取らされるとは思わなかったがね……」 PMC士官「あなた、今のあいつを見てどう思うの……」 6904-6560+「今のか? ハハハッ、シェロン“らしい”と思っているね。あの急造量産型ヒトガタ達だってあれほどの性能差でも戦えているじゃないか。ウサギの力を借りてるかもしれないけれど、それだけだったらもう死んでるだろうよ。それこそ他のヤクザやらマフィアやらと同じように、ね」 PMC士官「聞きたくなかった……」 6904-6560+「そうだ、一つ良い事を教えてあげようか」 PMC士官「何よ」 6904-6560+「フーシェロンブルグ大佐は“歩兵による戦車撃破”っていう勲章を持っているんだ。そして最新情報だと急造量産型ヒトガタ達を率いてあの劣化バリスタンも撃破した」 指揮官の女にとっては聞きたくなかった情報だった。 PMC士官「嘘だと言ってよ……」 8.要塞 繁華街のヤクザが保有する戦力が倒したり捕虜として捕らえたヒトガタや無人機達がとある駐車場へ運ばれてきた。 そんなところでヒトガタのネイナは少しばかり休む事にした。まだ戦いは終わっていないが休息も必要だと言われたままヒトガタのネイナは休まされた。 ネイナC「よかったね、防弾ヘルメットさん。イカ臭いまま壊されなかったよ!」 おじいさんヒトガタ「頭くらいはわしが洗おうか?」 ネイナC「あ、それくらいは自分で……そもそもおじいさんは指揮官なのにそんな暇あるんですか?」 おじいさんヒトガタ「指揮官は暇を作るくらいのタスク処理能力が要る。そーら、洗うぞ!」 自走対空砲型ヒトガタとしての鎧に身を包んだおじいさんヒトガタに頭を掴まれ、下げさせられたヒトガタのネイナはバケツから水をかけられ、頭というか髪を洗われ始める。 ネイナC「きゃっ!」 おじいさんヒトガタ「たまにはかわいい所もあるんだな」 簡単に頭を洗われたヒトガタのネイナは新しい防弾ヘルメットに水が入ったボトルとお肉が厚いサンドイッチ2個を入れた状態で渡された。……今度はちょっと塩気が強そうな匂いがしてる。 そしておじいさんヒトガタはすぐに強めの通信設備と指揮所スペースが載っている結構でかめの装甲指揮車の傍に行って指揮を執り始める。 本当に暇を作ってたんだなとヒトガタのネイナは思わされた。 急量ヒトガタ女3「……ん? 意図が不明だけど黄色いうさぎが制圧した場所を横切るようにPMCの戦車中隊が駆け抜けているって」 おじいさんヒトガタ「本当に意図が解らんな……」 急量ヒトガタ女4「どうしましょう、対戦車機動砲を先回りさせましょうか?」 急量ヒトガタ女3「すみません、この座標に突撃戦車が30輌出ました! 対戦車機動砲部隊が今すぐ必要です!」 おじいさんヒトガタ「意図が解らん敵部隊に回す必要はないな。その座標に向かわせるようにわしの名前で命令を下せ」 急量ヒトガタ女4「はいっ! ……フーシェロンブルグ大佐の命令です。第2対戦車機動砲小隊はすぐに座標――」 そのとき、ヒトガタのネイナは見てしまった。おじいさんヒトガタの名前が入ってる通信しているのに暗号化処理をするボタンがどれも押されてないのを見てしまった。 急量ヒトガタ女3「意図不明のPMC戦車中隊が急転回! 直近の通信により電波包囲を探知されてこの指揮所に向かってます!」 おじいさんヒトガタ→フーシェロンブルグ「意図が分かったが……あまりにも愚かだ。平文で飛ばしてしまったのも……平文でいきなり急転回するのも……」 急量ヒトガタ女4「ごめんなさい……」 急量ヒトガタ女3「どうしましょう、直ぐに離脱しますか……」 通信兵として働いている急造量産型ヒトガタ達がおどおどし始めるがおじいさんヒトガタはこちら側に振り向いた。 フーシェロンブルグ「この場所に敵の戦車中隊が向かっている! 負傷兵と破損状態のPOTは装甲指揮車と共に直ちにここから離脱する準備をしろ! フェライトMBT 65092号車とわしで臨時の小隊を編成する!」 そして指示を送り、駐車場の兵力を離脱する準備をさせ始め、小隊編成をし始めた。誰を共にするのかはおじいさんヒトガタとフェライトMBTが決めるようだ。 真っ先にサンドイッチを食べていたヒトガタのネイナが選ばれて彼女はすぐにフェライトMBTへまだ水ボトルと残りのサンドイッチが入っている防弾ヘルメットを抱えて駆け込んでいく。 続いて10機の急造量産型ヒトガタとなんかいつの間にか加わっていたミツマタヒトガタが駆け寄って行く。 そして2輌の偵察車型POTと3輌の豆戦車型POT、そして6輌の対戦車ミサイルオートバイ型POTと2輌の重機関銃トラック型POTが駆け込み、ついでに相変わらずなロボット玩具改造の小型偵察POTや小型武装POT達もわらわらと来る。 それらが集結する頃には残りの元気な兵力は護衛ということで臨時編成の小隊と共に直ちに駐車場から離脱していった。 駐車場から誰も居なくなったところで予期されていた通りそこに砲撃が降り始める。 フーシェロンブルグ「敵さんはわしの首が欲しいらしい。幸い、敵の機動線は概ね分かっているからお前たちには対戦車砲門を機能させてもらおう」 臨時編成の小隊を残して他の兵力が去り、駐車場への砲撃がまだ続いている中でヒトガタのネイナ達は要塞化した建物の中に手分けして入って行き、要塞構造というか都市構造を変化させていく。 道路に対戦車塹壕が現れたり、砲門が開かれて114mm対戦車砲や130mm対戦車砲が有効化されたり、爆撃砲などと呼ばれるような特殊な要塞砲が出てきたりと変化していく。 フーシェロンブルグ「ネイナはわしと共にそこの指揮所に入って要塞分隊を指揮しろ。だが決してそこからは直接攻撃するな。戦う為の構造じゃないからな」 要塞指揮所に入れられたヒトガタのネイナは端末の操作を主にこなす事になった。いわば要塞のオペレータと外に居る車両型POT群と通信する通信兵として動く事になるのだ。今までの戦い方とは勝手が違う。 要塞指揮所は肉眼で周囲の索敵を行う部位と本当に要塞機構を制御する為の中央部位に分かれ、中央部位に配属されたヒトガタのネイナは何重にも階層化されて冗長性を持たせて制御される索敵システムや兵装制御システムを稼働させる格好だ。 でもこれは本来ならば機甲戦力相手には時間稼ぎにしかならない防御設備だとあのおじいさんヒトガタにも言われたもの。機甲戦においてはたったの一輌しかいない主力戦車と豆戦車達を支援するための設備でもあった。 ヒトガタのネイナの役割はこの区画の要塞機構と車両型POTを制御すること、おじいさんヒトガタは肉眼での観測と他部隊との連絡を担当することとなった。 端末の画面には次々と要塞機構の索敵装置や自動砲台が有効化されているようにどんどんと情報が増えて行く。 フーシェロンブルグ「小隊規模で中隊を迎え撃つのは分が悪い、お前は可能な限り“戦場”になることに徹し、可能な限り1対1を繰り返すように仕向けろ」 ヒトガタのネイナに任されたのは“戦場”になる事だった。 ネイナC「敵戦車中隊を索敵システムにより視認しました。半分ほどは機械化歩兵です」 フーシェロンブルグ「それぞれの“殺し間”に誘え」 ネイナC「わかりました」 索敵システムで敵を捉えたヒトガタのネイナはすぐに報告して何をすべきか指示を貰うと誘導迫撃砲と垂直発射ミサイルを撃つ準備をした。まだ車両型POTは潜ませたままだ。 ある程度敵戦力が要塞圏に入ると入られてもどうでもいい場所から対戦車砲と機関銃によって迎撃した。もちろんこの時でも当てに行く。この攻撃で出方を見ると共に索敵装置の発見能力も見るのだ。 すると敵の戦車は攻撃方向へ前進し、ヒトガタとAPCは攻撃方向へは近寄らない動きを取った。 これで動き方を見たヒトガタのネイナは入られてもどうでもいい場所から引き続き攻撃を続けてそのトーチカを攻め落とさせるように仕向ける。 そして手薄な場所を作り、砲弾を落とす準備をする。 6904-6560+「――……構造は今まで遭遇してない。今まであった開口部位が全くない」 PMC士官「あいつはまだこのあたりに潜んでいる筈よ! よく探して!」 そして収音マイクから敵の声を拾えた。 6904-6560+「シェロン大佐が指揮しているとなると……我々は既に罠にかかった格好になっている」 フーシェロンブルグ「教え子が居るな?」 ネイナC「え、敵に教え子が居るんですか」 フーシェロンブルグ「ああ、勘違いでなければわしが教育した戦車型POTの中では一番強かったかもしれん。流石に戦車は変わっているが中身はそのままだ」 何のめぐりあわせなのか最強の教え子が居るそうだ。 6904-6560+「“中隊長”、慎重に行動してくだされ。大佐は悪魔にもなれるから……」 フーシェロンブルグ「ネイナ、この指揮所近くの外部通信用の無線機を有効化しろ、暗号化はするな。この敵の様子から“悪魔の嘯き”が効くかもしれん」 ネイナC「あ、はい」 指示通りにヒトガタのネイナは指揮所の近くにある無線機を有効化した。 フーシェロンブルグ「久しぶりだな、POT203-MBT-6904-6560+。お前の活躍はよく聞いているぞ」 6904-6560+「おお、久しぶりです! シェロン大佐」 PMC士官「ちょっとっ、敵と話している場合なの!?」 この時、おじいさんヒトガタは手の合図で何故かヒトガタのネイナのバストサイズを聞いて来た。答えたくないなら答えなくて言いとも言って来たが、ヒトガタのネイナは3桁の数字を示した。……ふとなんか騒がしいしなんか装備がえらく高級な気がするヒトガタの女の姿を見たヒトガタのネイナはそのうち煽りに使うつもりなんだろうと思った。 フーシェロンブルグ「6904-6560+も聞いている通り、わしはどうにも復讐者を大量生産してしまってな。おそらくお前もそれに付き合わされたのだろう」 PMC士官「ふざけないでっ!!」 6904-6560+「全くです」 PMC士官「お前もっ!」 フーシェロンブルグ「それで、そこの騒がしいお嬢さんが今日の復讐者か?」 そして続けざまにヒトガタのネイナの存在を恥ずかしいネタのダシに使って良いかとも聞いて来た。おじいさんヒトガタは必要とあらばなんでも利用するつもりだろうと思い、ヒトガタのネイナは了承した。 PMC士官「どうせこっちの意図なんてバレているんでしょう! そうよ、あんたを殺しにきたのよ!」 フーシェロンブルグ「そうか、なら相応に頑張ってもらわんとな。易々と首を差し出してやってもいいが、それではかわいい娘に示しが付かん」 PMC士官「は? 娘!? てめぇ、人から家庭を奪っておいて自分はのうのうと幸せな家庭を気付いてるわけ!? ふざけんじゃないよっ、ヒトガタの癖に!!」 おじいさんヒトガタは渋い顔をした。思わずヒトガタのネイナも渋い顔をする。おそらくこの戦場ではヒトガタしかいないのにあのセリフなのだ。 MUF5000(1)「“中隊長”、味方に効力射しないで下さい……」 あまりにもあんまりなのか傍に居た量産型ヒトガタが痺れを切らして“中隊長”とされるヒトガタの女に流れ弾が酷い言葉を言わないように窘めた。 PMC士官「黙れ! どうせお前らの人生なんか髪の毛の先ほどにもないでしょう!」 MUF5000(1)「はい、自分は50年ほど生きてましたがその殆どは眠らされてました……」 MUF5000(2)「やっと起こしてくれたのにこんなのってないよ……」 そういえばさっきの戦闘で遭遇した新型装甲ヒトガタと同型と思われる大型ヒトガタが見えるがやはり同じように死蔵されていたのだろうか。というかフォローするつもりが全く無いのを見るにあのヒトガタの女のヒトガタ観がどういうものなのか嫌でも分からされる。 そんなところでマイクを切ったおじいさんヒトガタがヒトガタのネイナを見た。間一髪で対戦車砲の徹甲弾をあのヒトガタ女をぶち込む寸前だったのだ。 フーシェロンブルグ「拙いな、これでは却って動きが読めない」 ネイナC「ちょっとあんまりにも酷いですね……」 フーシェロンブルグ「ネイナ、非常に難しい事を要求するようだがあの女をなるべく間一髪で生き残るように仕向けてくれ。あれは生かしておいた方がこちらにとっては都合が良い」 ネイナC「……はい」 フーシェロンブルグ「辛いだろうが心を鬼にしてくれ……。頼むぞ……」 すっと、照準をずらして対戦車砲を発砲させる。徹甲弾はヒトガタ女の頭を掠めてブレードアンテナをへし折った。さながらたまたま砲弾が命中しなかった、と思わせるような外し方が上手く行き、敵中隊は要塞圏へ予定通りに侵入していく。ヒトガタのネイナはマイクを有効化する。 ネイナC「……こんなこと言いたくないですが真面目に任務を遂行してください。部下に余計な流れ弾を与えた結果、運悪く頭が無くなる、何て嫌ですよね?」 PMC士官「あんたが下手くそで助かったわよ」 ネイナC「実際、怒って手がガタガタ震えてるんですよ」 あと、流石に我慢できずに上官を殺してしまってもっと有能な士官に指揮権が移るというのを阻止する為でもあった。特におじいさんヒトガタの教え子(戦車型POT)に移るのは拙い。 難しい戦いになりそうだ。 6904-6560+「この小娘、わざと外したな」 しかし、古い主力戦車はヒトガタのネイナの意図が分かっていた。もう少し自然な外し方をする必要があるかもしれない。 敵中隊は要塞圏へ入ったはいいがヒトガタのネイナのスキルを見抜かれたのか侵攻を止めて考え始めてしまった。 そんな時に味方の暗号通信が入った。 フェライト65102「こちらフェライトMBT 65101号車と65102号車。傷痍兵と破損兵器の移送と黄色いうさぎの突撃集団の対処が完了しました。要塞に入れてください」 急量ヒトガタ女5「第1機械化歩兵小隊です。次の指示を下さい」 コバルト・オキサイド90666「第2対戦車機動砲小隊だ。突撃戦車連中をぶっ壊したぜ、俺らも要塞に入れてくれや」 おじいさんヒトガタは手の合図で別の通信設備と暗号通信を有効化させるようにヒトガタのネイナに指示を送り、彼女はその通りに操作する。 フーシェロンブルグ「現在我が要塞圏に敵戦車中隊が侵入しておる。フェライトMBT 65101号車と65102号車、第1機械化歩兵小隊と第2対戦車機動砲小隊で中隊を編成し、この座標から攻撃をして要塞へ押し込んでくれ」 フェライト65102「了解した。機動中に合流し、攻撃を行う」 「こちら偵察機です。その移動はまだまってください。現在、黄色いうさぎの突撃中隊が敵戦車中隊を追いかける形で進撃しています」 攻城兵器が進撃していたことも知らされた。黄色いうさぎの対要塞攻撃力は凄まじいものがあり、彼女らが到着すると要塞が耐えられないのだ。 フーシェロンブルグ「ネイナ、要塞砲で黄色いうさぎの突撃中隊に阻止砲撃をかけてその存在を敵戦車中隊に知らせろ。偵察車型POT達は着弾観測を頼む。臨時編成の中隊はまだ攻撃に入るな」 ズィンク・サルファイド11-5695「了解」 敵戦車中隊を要塞内へ誘う意図だろう。そう思ったヒトガタのネイナは要塞砲と称される装甲化された重榴弾砲と重迫撃砲をもってして阻止砲撃を始める。 もちろん、近接防空火力も有効化して被害を最小化する。 ズィンク・サルファイド11-5695「偵察車より。黄色いうさぎの突撃戦車と攻城砲と思しき自走カノン砲を確認した。他には自走対空砲も見える」 フーシェロンブルグ「間接砲撃では効力が薄いと見て直射砲タイプの攻城砲を出してきたな。ネイナ、もし自走カノン砲を見かけたら使える対戦車砲を使って優先的に撃破しろ。要塞は大きな直射砲に弱いんだ」 ネイナC「そうなんですか?」 フーシェロンブルグ「じゃんけんの相性みたいなものと思ってくれ。だから本来は戦車にも弱い、気を付けろ」 索敵装置から見ていると敵の戦車中隊は背後から黄色いうさぎに包囲されて攻撃をもらう形になってしまい、要塞構造へ入って行った。そして黄色いうさぎへの砲撃効果が報告され始めた。 ネイナC「敵戦車中隊が全て要塞構造へ入りました」 フーシェロンブルグ「最後尾の車両型POTを撃ち抜いて退路を塞げ」 ネイナC「はい」 フーシェロンブルグ「臨時編成の中隊へ告ぐ、黄色いうさぎを攻撃しろ」 ヒトガタのネイナはある程度進ませて一番後ろに居た試作と思われる主力戦車と重APCを2輌ずつ対戦車砲で狙撃していった。まずは足回りを損傷させて見ると主力戦車が反撃として対戦車砲を1門破壊していった。対戦車砲が1門潰れたものの、退路が塞がれた。そして、こちらにとっては都合が良い事に黄色いうさぎの突撃戦車と劣化バリスタンが突撃をかけて来て、それを足を潰された主力戦車と重APCが迎撃している格好となっている。 ダメ押しとばかりにヒトガタのネイナは誘導迫撃砲と対地ミサイルを発射し、劣化バリスタン達を血祭にあげていく。 その時に臨時編成の中隊が到着し、攻城兵器である自走カノン砲を次々と撃破し始めた。 RM VK.110/K140(1)「退路を塞がれちまった! おまけにウサギがうじゃうじゃ来やがる!」 6904-6560+「……若いの、盾になってくれるか」 RM VK.110/K140(2)「はい」 そして殺し間へ試作のより重たい主力戦車2輌とあの古い主力戦車が入ると予定通りにヒトガタのネイナは対戦車砲を集中させていく。 6904-6560+「そこだ」 その時に古い主力戦車が搭載している155mm砲から要塞構造を破壊する為の半徹甲榴弾が連続発射されて対戦車砲を3門ほど一気に大破させられた。 試作主力戦車の正面装甲はそれぞれ一発ずつもらって派手に壊されたがまだ動いている。 さらに古い主力戦車は155mm砲から半徹甲榴弾を続けて撃ちこんで対戦車砲トーチカを完全に破壊した。大穴が開いている。 6904-6560+「“中隊長”、あそこにヒトガタ達を突っ込ませろ」 PMC士官「機械化歩兵小隊、前進しなさい!」 そして完全破壊された対戦車砲トーチカへ重APCが殺到する。 コバルト90680「対戦車オートバイ、出番だ」 「イエス、ボス」 コバルト90680「豆戦車達も向かえ」 殺し間へ続く道路に駆けつけた対戦車ミサイルを積んだオートバイ型POT達は有線接続された小型観測POTを展開し、少ししてから有線誘導対戦車ミサイルを発射。 殺し間を駆ける古い主力戦車と試作主力戦車6輌と高機動対空戦車3輌と重APCが5輌も見える所で対戦車ミサイルの誘導を開始し、その時に破壊された対戦車トーチカへ3輌の豆戦車型POTと2機の106mm無反動砲持ちの急造量産型ヒトガタが到着した。 そこが新しい殺し間になった。 一気に5輌の重APCが対戦車ミサイルによって一撃で爆砕されて中に居た量産型ヒトガタ達が燃えながら宙を舞う。そして到着するやいなや豆戦車の25mm機関砲と対戦車ミサイルが殺到し、ヒトガタや装甲ヒトガタが血祭にされていく。 PMC士官「ここにも地上部隊が居るの!? 戦車達っ、早く奴らを仕留めて!」 6904-6560+「“中隊長”、地上戦力を追わせるな。また殺し間へ誘導されるぞ」 PMC士官「じゃあ、あんたはここで戦車達の指揮を執りなさい! 私は要塞に入ってあのクソジジイの首を刈るわ!」 フーシェロンブルグ「フェライトMBT 65092号車、殺し間に砲撃を入れろ」 フェライト65092「了解だ」 1輌だけで要塞構造内を静かに走り抜き、敵戦車中隊の背後を取ったフェライトMBTは跳躍して障害物の上から砲塔だけを出して素早く徹甲弾を2発撃ち込んで試作主力戦車の車体後部を炎上させた。 6904-6560+「くそっ、入り口を突破されたのか!?」 RM VK.110/K140(1)「自分と僚車そして重APCと他ヒトガタ達はまだウサギ達を迎撃しています! 弾が残り半分です!」 6904-6560+「じゃあ、今の砲撃は何だ!? 主力戦車がまだ居るのか!?」 そして今度は要塞構造と化している建物の壁を蹴ってより高く跳んだフェライトMBTは同様に狙撃して行ってまた2輌の試作主力戦車を燃やしていった。この時に高機動対空戦車型POTが反応した。 一〇七式対空戦車「敵主力戦車を発見!」 6904-6560+「本当にフェライトMBTじゃないか、3000年も前に設計がまとまった古代戦車だぞ……」 フェライト65092「そんなこと言うとヒトなんか数十兆年も前からあの姿だぞ、今更驚く事ではない」 6904-6560+「ああ、そうだったな、じいさん! 市街地へ抜けるぞ、若いの!」 RM VK.110/K140(2)「了解しました。追随します!」 ここで中隊長とされるヒトガタ女と古い主力戦車は別行動となった。ヒトガタ女はヒトガタと装甲ヒトガタを率いてフーシェロンブルグ大佐と呼ばれたおじいさんヒトガタを殺しに向かい、古い主力戦車は残存する機甲戦力(試作主力戦車2輌、高機動対空戦車3輌)を率いて要塞に居る地上戦力と戦う事となった。 フーシェロンブルグ「さすがはわしの教え子だ。きっちりと歩兵戦力を要塞内へ入れてくれたな」 ネイナC「要塞内へ入ったのはヒトガタ18、装甲ヒトガタ4です」 フーシェロンブルグ「やつらの優先目標はわしだ。わしが囮になるのが適切だが流石に22個の戦力はキツイな……。要塞内で動かせるヒトガタはネイナを抜くとわしを含めても5機しかいない」 困った顔をしたおじいさんヒトガタは端末の画面を眺める。ヒトガタのネイナはその時に思った。ちょうど半分は男だった。 ネイナC「……彼らに語った“娘”の設定なんですが、誰のことなんです?」 フーシェロンブルグ「……お前も、いやまた囮をやるのか」 ネイナC「分断して数を減らせるならその方が良いです」 フーシェロンブルグ「失敗に終わったら辱めを受ける事になる。それでもいいのか」 ヒトガタのネイナは取り立て屋に捕まってお風呂に沈められた日々を思い出して涙ぐんだが、すぐに拭いて囮になる意思を伝えた。 フーシェロンブルグ「……“大事な娘”だ。わしが出来る範囲でこの指揮所をトラップハウスに変えてやろう。だが、わしが危機に陥っても決してここから出るな。索敵支援に徹しろ」 ネイナC「はい……」 そう言ったおじいさんヒトガタは7.65mm軽機関銃と13.5mm重機関銃を汎用機関銃化したものを背負い、武器庫を開いて沢山のセントリーガンと地雷を持ち出していった。 慣れた手付きでセントリーガンと地雷を設置し、指揮所から出て行く。 静かになった指揮所でヒトガタのネイナはまだ要塞内で駆け回る3機の急造量産型ヒトガタとミツマタヒトガタに指示を送った。……平文で。 ネイナC「要塞内に敵ヒトガタ22機が侵入しました。うち4機は装甲ヒトガタです。迎撃に当たって下さい」 PMC士官「この機に及んで娘を置いて逃げたのかしらあ?」 ネイナC「指揮所から居なくなってますね、確かに。でももしお外に出て戦車狩りに勤しんでたらどうするつもりなんです?」 PMC士官「おいっ、偵察機ども! あのクソジジイを探せ! てめぇらヒトガタ共も探すんだよ!」 MUF5000(2)「いたっ!? なんで蹴るんですか!」 MAS5600(2)「もうやだ、こんな職場……」 量産型ヒトガタ達は唐突に優先目標の居場所が分からなくなって要塞内を分散して探し始めた。 その時に急造量産型ヒトガタ達やミツマタヒトガタが攻撃をしかけ、一人ずつ倒し始めた。 MUF5000(4)「うわっキモっ!?」 「よく言われるよ」「ねーっ」「でも性能は本物だよ」 その頃に地雷とセントリーガンの設置を終えたおじいさんヒトガタは無線機を有効化して7.65mm軽機関銃を構えてヒトガタのネイナから送られて来る索敵情報を元に走り出した。 「さて、銃を取ったはいいが……綺麗に育ってからは甘やかしがちだったから心配だな……」 「無線入ってる」 MUF5000(1)「おい、お前ら、よく聞け」 PMC士官「サボるんじゃないわよ」 MUF5000(1)「今回のターゲットはヒトガタ、その娘ということは……」 MAS5600(3)「娘もヒトガタ……」 MUF5000(3)「美人なヒトガタ娘!」 PMC士官「ざっけんじゃないわよ! てめぇら全員タマ引っこ抜くわよっ!!」 おじいさんヒトガタの予定されてた余計な一言で量産型ヒトガタと装甲ヒトガタそれぞれの男達が色めき立ち、ヒトガタのネイナが居る指揮所を目指し始めた。これで分断が出来る訳だが……。 ついでに中隊長を名乗るヒトガタ女がキレだした。 フーシェロンブルグ「話は聞いたぞ」 MUF5000(3)「あ……」 フーシェロンブルグ「もっと言う事あるんじゃないのか?」 「お父さんっ! 娘さんをお嫁に下さいっ!!」 マイクを切っていたのが幸いしたがヒトガタのネイナは敵のヒトガタ男達が一斉に同じセリフを叫んだもんで笑い出してしまった。 PMC士官「お前たち、いい加減にしろ!!」 MAS5600(2)「え! デートの約束はっ!?」 PMC士官「はっ? おまえ、装甲ヒトガタやれるデカ女の癖に、何でいっちょ前に恋愛してんの? バカじゃないの、オス型ともども前に出て死ねよ」 MAS5600(2)「……もう、やだ…………ぐすんっ」 あと装甲ヒトガタ(女)を1機を精神的に参らせることが出来た。だが、厄介なことに士気が普通以上になったヒトガタのネイナから見て高性能なヒトガタの男達が迫って来る格好になってしまった。 ヒトガタのネイナがそれに気づくのは微妙な嬉しさの後だった。 急量ヒトガタ男「おい、やべーぞ。余計な一言で本当に色めきだって結構強くなってる!」 MUF5000(5)「お前に興味はねーよっ!」 急量ヒトガタ男「止めろっ! そっちは地雷が!」 MUF5000(5)「あああああああっっ!!」 そして速攻で地雷に引っ掛かりに行っていた。地雷の威力は凄まじく、一撃で量産型ヒトガタの脚を吹っ飛ばしている。 MUF5000(5)「分かってたんだよ……、分かっていたんだよ……。人造生命でも夢は見てぇんだよ……」 急量ヒトガタ男「降伏して捕虜に」 MUF5000(5)「はい」 急量ヒトガタ男「即答かよ!? やべーよ、おめーの職場」 MUF5000(5)「タマ抜かれたくない」 急量ヒトガタ男「やべーよ……。あ、タマは無事だ」 MUF5000(5)「やったぜ」 PMC士官「てめぇ、すんなりと捕虜なんかになるんじゃないよ!」 ヒトガタのネイナは横目で両脚が砕けた量産型ヒトガタを急造量産型ヒトガタの男が手当てしつつ武装解除させているのを見つつ、暗号通信で素早く近くの敵ヒトガタを伝えて行く。 流石に皆戦い抜いて来たからかその腕前は素晴らしく、女のほうは素早く始末していく。 その一方で外ではフェライトMBTと古い主力戦車が決着が付けられず暴れ回り、外に居た急造量産型ヒトガタ達が要塞内に入って行って掃討戦に参加していた。 そしておじいさんヒトガタが重機関銃で装甲ヒトガタを仕留めたあたりで別の装甲ヒトガタが地雷とセントリーガンにぼこぼこにされながら指揮所へ迫って来ていた。 フーシェロンブルグ「ネイナっ! 対戦車地雷を用意しろ!」 ネイナC「はいっ!」 ヒトガタのネイナは武器庫に駆け寄って磁気感応式の対戦車地雷を一発取り出すとあの装甲ヒトガタが迫って来ている通路めがけて投げ込んだ。 そしてしばらくすると大爆発が響き、重い足音がしなくなった。 だが、彼が来たという事は後続で量産型ヒトガタの男達が居ると言う事。油断は許されなかった。 ――いや、装甲ヒトガタは仕留めきれなかった。セントリーガンが必死に銃撃しているが彼はそれをものともせずに……2人のボロボロになった量産型ヒトガタに支えられながら動かなくなった脚を引きずりながら指揮所に突入した。 ネイナC「……」 MUF5000(3)「はははっ、綺麗な女が決まって強いのはもう解っているのさ!」 片脚立ちして利き手ではなさそうな右腕で15.5mm重機関銃を構えて頭部装甲が酷く変形している装甲ヒトガタ、そしてそれを右腕が無くなった右肩で支えている装備が血塗れになっている量産型ヒトガタは30mm突撃銃を構える。そして銃が全部どっかに行ったのか銃剣だけを構えてるボロボロな量産型ヒトガタも居る。 ヒトガタのネイナは大剣と機関拳銃を構えた。 MUF5000(1)「やるか?」 ネイナC「それで勝てたなら……ね」 MUF5000(1)「流石はあのおじいさんの娘だ! 行くぞ!」 銃剣を構えた量産型ヒトガタが凄い速度でまっすぐと跳びかかり、ヒトガタのネイナは大剣を振って向かって来た量産型ヒトガタを殴り飛ばした。 その時には片脚が動けない筈の装甲ヒトガタも飛びかかっており、ヒトガタのネイナを抱え込んで転がった。 ネイナC「きゃっ!?」 MUF5000(1)「よっしゃあああああっうまくいったぜっ!」 嬉しそうに装甲ヒトガタが太い声で笑った。転がった装甲ヒトガタは左腕の肘でヒトガタのネイナの左腕を挟み、右手で彼女の右腕を掴んで片脚で立ち上がった。そうやってヒトガタのネイナは拘束されてしまった。 量産型ヒトガタの男2人は凄い喜んでいる。 MUF5000(1)「……それで、この子を拘束したは良いがどうするんだ?」 ネイナC「お前らの連携は凄いけど本当にバカね……」 そして今この場に居る4機は気付いた。確かにヒトガタのネイナは物理的に拘束されているが、同時に装甲ヒトガタと量産型ヒトガタ2機も拘束されている。 MAS5600(3)「おらが銃座と地雷を処理しちゃったから取り返しに来られるときにはすんなりと来られるんだなぁ……」 MUF5000(3)「いや、本当にどうするんだよ」 MUF5000(1)「腋毛処理して待ってようぜ」 ネイナC「残念ね、下の毛も処理済みだからそういう暇潰しはできないよ」 MAS5600(3)「そう言う問題じゃないと思うんだなぁ」 ぶっちゃけると、ほぼ何もできない。そんな状況になっている。 ネイナC「今だから聞くけど、あなた達って仲間の銃は使えないの?」 MUF5000(1)「使えたらオレは銃剣なんて構えてないぜ……」 ネイナC「マジ?」 MUF5000(3)「ほんとだよ。なんかロックがあって敵が拾っても使えないようになってるんだ」 MUF5000(1)「ちょっと拳銃貸してくれ。……そう、この通り」 こんな状況になっても自分の武器を融通し合わないのを不思議に思ったヒトガタのネイナはそんな事を聞いてみたらそういう仕組みになっていたようだった。 量産型ヒトガタのパワーで持っても借りた拳銃のトリガーを引けない様子を見せた。 ネイナC「噂に聞いてたけど本当だったんだ……」 MUF5000(1)「でもウサギはこれを突破するから本当にただ不便なだけなんだぜ」 ネイナC「……良いの? 報告しなくて」 MUF5000(3)「あのキツイ女、あんたを見たら絶対撃つと思うんだよ」 MAS5600(3)「“中隊長”は自分より綺麗な人には厳しいんだなぁ」 MUF5000(1)「だから、今この状況、マジで全員拘束されてるんだぜ……」 その頃、要塞の外ではフェライトMBT 65092号車率いる重装備な急造量産型ヒトガタを含む混成部隊と古い主力戦車率いる機甲POT部隊が交戦していた。 古い主力戦車が率いる部隊は先の戦闘で待ち伏せした豆戦車型POT3輌によって高機動対空戦車1輌が大破させられており、不利になっていた。 そんな時にヒトガタのネイナが拘束されたことによって要塞からの索敵支援を受けられなくなったため、混成部隊の動きは鈍くなった。これを好機と見た古い主力戦車は少しだけ攻勢に出る。 しかし、要塞の索敵支援がなくなったからと言って機甲POT部隊の索敵能力が上がる訳ではなかった。依然として要塞の近接防空設備は有効であるため、機甲POT部隊は偵察機からの支援が望めず、空爆や支援砲撃も望めない。古い主力戦車が主砲として構える155mm砲は徹甲榴弾と大口径高速HEATを使う短いカノン砲なので要塞構造を破壊するのは容易いが補給も望めない以上、要塞構造を破壊する余裕がなかった。 補給が望めないのは混成部隊も同じだったがちょっと事情が違う。補給自体は出来るのだが特定の場所じゃないと出来ない状態にされている、という表現が正しかった。 機甲POT部隊にとって何よりも拙いのは歩兵が居ない事だった。あろうことか中隊長とされるヒトガタ女は全てのヒトガタを要塞内に入れてしまって歩兵と機甲を分断してしまった。機甲戦力の跳躍が許される“ヒトガタの街”なら歩兵みたいな動き自体はできるがどのみち狭い場所を使う事が出来ないので歩兵の代わりにはなり得ない。 まだ混成部隊のほうが索敵能力は上だった。 6904-6560+「なんてことだ、誰も歩兵が付いてきてないのか……」 一〇七式対空戦車「小型偵察POTはありますが……」 6904-6560+「……あの射撃力の前ではすぐに狙撃されるだけだ」 一〇七式対空戦車「8時方向と1時方向から対戦車ミサイル!」 6904-6560+「迎撃しろ」 その為、このような状況でも混成部隊から先制攻撃を受けている。常に後手に回っている状況になっていた。 対戦車ミサイルの類だったら高機動対空戦車が対処できるが戦車砲や無反動砲だとそうも行かない。機甲POT達にとってはその射撃位置の自由度の高さから無反動砲を担いだ急造量産型ヒトガタのほうが脅威なまである。 そんな時に真正面から動かない筈のトーチカから対戦車砲による砲撃を受けた。それで不意打ちされた高機動対空戦車が一発で大破した。 ……歩兵が居る、ということは手動で対戦車砲を動かすなんていう事も出来ると言う事だった。 6904-6560+「クソッ、頭を潰してもまだ“手”で動かせるのか……!」 古い主力戦車はすかさず155mm砲で徹甲榴弾を撃ち込み、トーチカを破壊したが壊せたのかもわからなかった。 その時に古い主力戦車はふと周りを見た。――傍に居る2輌の試作主力戦車もあのトーチカに砲塔を向けている、高機動対空戦車はいつの間にか飛来していた対戦車ミサイルを迎撃している、今、この瞬間で背後を見ているのが自分しかいなかった。 危惧した通り、豆戦車型POTと対戦車地雷散布ロケット弾を担いでいる急造量産型ヒトガタ達を乗せた機関銃付きトラック型POTを発見した。 6904-6560+「前進しろ! 背後から敵影!」 豆戦車型POTは70mm対地ロケット弾と25mm機関砲を連射して高機動対空戦車を攻撃し、後ろを見ていた古い主力戦車は砲塔上の15.5mm重機関銃と8mm重機関銃を急いで回して豆戦車型POTとトラック型POTを攻撃するがもうトラック型POTの姿は見えず、豆戦車型POTは車体正面に3発食らわせて正面装甲をぶち抜いたが重要なモジュール破壊には至らず、ぴょんっと跳ねて隠れてしまった。 機甲POT部隊に70mm対地ロケット弾が降り注いでいくらかのセンサー類を破壊され、その後に高機動対空戦車が車体後部を破壊されて炎上、部隊が居た所に対戦車地雷がばら撒かれる。 そして前進した所で見るからにフェライトMBTが待ち構えて居そうな曲がり角に差し掛かり、古い主力戦車は旋回して正面を向けて飛び出す。 予想通り、その先にはフェライトMBTが居て砲撃してきた。フェライトMBTが撃って来た130mm徹甲榴弾は古い主力戦車の砲塔正面の装甲の端を抜いてそこから砲塔側面を抉り、跳弾して後続の試作主力戦車の砲塔側面に衝突、起爆した。 フェライト65092「酷いラッキーショットだ」 6904-6560+「自分を見てくれてる幸運の女神様はなかなかのサディストでね……!」 そして反撃として既に装填されていた155mm徹甲榴弾をフェライトMBTに撃ちこむがその刹那でフェライトMBTは砲塔を左に回しながら一瞬おじぎをして、脆弱部位を抜くはずだった大口径徹甲榴弾をと砲塔正面右に着弾させ、直ぐ右に砲塔振りつつ車体の姿勢を戻す。すると155mm徹甲榴弾は抉られつつある装甲板によって殴られて弾道方向を変えられて弾かれ、建物に着弾して大きな穴を開けた。 フェライトMBTの複合装甲の表面に使われているの厚い高硬度鋼装甲は現代で使われるような超高硬度系セラミック装甲と違って多少抉れたり切断されても強度が落ちにくく、その性質を生かした“砲弾弾き”を見せることができた。 一瞬のうちに見せたその技は古い主力戦車の装填に要する時間内に終わり、その130mm砲が見ている。 6904-6560+「フェライト(鉄)の名の通りとは恐れ入った」 フェライト65092「ウサギ達の業なんだが、使ってみるもんだな」 6904-6560+「だがその名ならこれはどうだ」 古い主力戦車は後ろに来た試作主力戦車と共に同時に砲撃する。古い主力戦車の155mm砲からは徹甲榴弾よりも速い弾速のHEATFSDS、試作主力戦車の140mm砲からは非常に速いAPFSDSが撃たれる。 フェライトMBTはホッパー弾倉に追加の榴弾を装填して一気に徹甲榴弾と榴弾を撃ち、車体を旋回させる。 HEATFSDSの弾芯はフェライトMBTの砲塔正面下部に着弾、APFSDSの全長1000mmもある弾芯は車体側面のサイドスカートを貫通した。 徹甲榴弾は古い主力戦車の車体正面下部装甲を貫通したが不発、榴弾は堅い道路をこするように着弾して抉りながら跳ね返って試作主力戦車の車体底面へ衝突、起爆して試作主力戦車の車体を少し浮かせつつ、サスペンションを破壊して擱座させた。 そして古い主力戦車の眼は自分達が撃った砲弾がどういう効果だったのかを見逃さなかった。 極超光速(誤字ではない)のメタルジェットはへし折られたように砕け散るように弾かれ、サイドスカートへ突入したAPFSDSの弾芯は細かく砕け散り、側面装甲さえ抜けなくなってフェライトMBTの足元に砕けた徹甲弾用合金の破片がぱらぱらと落ちて来る。 6904-6560+「その“鉄の装甲”は傾斜装甲の弾道を反らす能力を無効化する力を無効化しているのか、恐ろしい技術だ!」 フェライト65092「それよりもお前を見ている幸運の女神の趣味が心配になるぞ。こればっかりは製造技術の未熟さのほうが大きいかもしれんが」 一〇七式対空戦車「じいさん、豆戦車と重ヒトガタが集結しています! 応戦します!」 フェライト65092「降伏するか、6904-6560+」 6904-6560+「我が機甲部隊はまだ1輌が動ける。この装甲と砲が続く限り、生き残ってやる。そして自分は何時かはどこかで戦っている戦車の神に挑むさ」 フェライト65092「ならばお前の目の前に居るこの古代戦車を倒せ。戦車とは常に最強の装甲と火力と機動力を持ってして前に立つものを壊していくのだ、それを示せ!」 背後でこの時まで生き残った試作主力戦車が砲塔上の機関銃で制圧射撃を続けて豆戦車型POTを主砲と同軸機銃で攻撃し始める。 そのタイミングで古い主力戦車はサスペンションで蹴って素早く前進して走り出し、瞬発信管に調整した徹甲榴弾を装填した。この時に古い主力戦車も砲塔上の機関銃で制圧射撃と対戦車ミサイル迎撃を行う。 側面攻撃を予期したフェライトMBTはかなりのスピードで後進して古い主力戦車を捕捉する。まだ撃たないのは仮に徹甲榴弾の信管が不発だったとしても弾頭自体で損傷を与える為だった。 6904-6560+「そーらっ! よっ!」 カタログスペック的な機動力ならばフェライトMBTよりもこの古い主力戦車の方が上、ならばそれを使う他ない。 曲がり角を曲がり、他に誰も付いてこないのを見た古い主力戦車は壁に履帯を乗り上げさせてロールしながら跳躍した。 通常、主力戦車のこのような動きはとても危険だったが混成部隊の皆はフェライトMBTを信頼していた為に付いて行かなかった。だからこそ、付いて行かずに擱座した試作主力戦車に攻撃を集中したのだろう。 それを好機と見た古い主力戦車は跳躍して背後を取った後に155mm砲をフェライトMBTの中央に会わせ、砲撃し、同時に発煙弾をばら撒いた。 その瞬間に徹甲榴弾がサイドスカート貫通後に起爆して履帯とサスペンションの一部を破壊したのが見えた後、煙の中に隠れるように古い主力戦車は姿を消した。 もちろん、曲がり角を曲がって砲撃も避ける。だが、この時に砲塔上の15.5mm重機関銃が粉砕された。 6904-6560+「上手く行ったようだな?」 その後、古い主力戦車は擱座していた試作主力戦車の所に戻って来たが、そいつはもう倒れていた。古い主力戦車は豆戦車型POTと重ヒトガタを狙って攻撃し始めた。 凄まじい勢いで混成部隊の豆戦車型POTと対戦車ミサイルを積んだオートバイ型POT等や偵察車型POTが現れ、激しい反撃をもらうがそのどれも一発貰ってから倒していく。 しかし、武装トラック型POTと重ヒトガタ達が見えない。そればかりか姿さえ見えない。そこで古い主力戦車は罠にハメられたとはっきりと認識した。 フェライト65092「戦車の脚を折って煙で目を潰し、その間に小さい戦力を叩くのは良いアイデアだ。だが、その順番を間違えたようだな」 あのフェライトMBTの通信が聞こえると共に古い主力戦車は130mm榴弾を2発くらった。うち1発は車体側面下部に食らって履帯を破壊され、もう1発はさっき試作主力戦車を擱座させた跳弾射撃とそれによる曳火起爆によって砲塔天板に破片を食らって砲塔上のセンサー類と機関銃を潰される。 ちょうど古い主力戦車の正面、古い主力戦車から見て十字路の左側からあのフェライトMBTがサイドステップで現れて少し車体を旋回させて停車させた。 まるで見せるように見せた車体側面は……中央部分のサイドスカートが破壊されて消失し、サスペンションも壊れているが履帯が前後に分けて履かれている状態だった。 そして古い主力戦車の砲塔天板に106mm無反動砲を担いだ急造量産型ヒトガタの男女が飛び乗った。 フェライト65092「もう俺には榴弾が3発しかないが貴様の脚と武装を潰すのには充分だ。尤もそこのカップルは対戦車能力を有する砲弾をまだ沢山持っているがな……まだやるか?」 6904-6560+「降参だ。あんたの言う通り、順番を誤っちまったよ……」 ヒトガタのネイナがねっとりとした注目を浴びせ続けられて数分経った頃、指揮所に新たな人物がやって来た。 中隊長と名乗るヒトガタ女だった。彼女が30mm突撃銃を構えているのが見えた瞬間、ヒトガタのネイナを拘束していた装甲ヒトガタがあのヒトガタ女に背を向けるように身体を回し、倒れ込んだ。その時にヒトガタのネイナは腰か背中のあたりに衝撃が伝わったのを感じた。銃声も聞こえる。そして自分の腹からメタルジェットが飛び出してきたのが見えた。 PMC士官「どうして庇うの」 MUF5000(3)「あんたとは短時間のお付き合いしかねぇけどよ、何すんのかは分かっているからだ。あんたの嫉妬の火力は一発90万エストもするロケットHEAT-MPを撃つほどとは思わなかったが」 PMC士官「量産型ヒトガタの癖に嫉妬を語るなんておこがましいわ。さぁ、とっととあの牡牛が相手してる女をこっちに寄越しなさい」 MUF5000(3)「なら“お父さん”はどうしたんだ。話がしたいんだ」 PMC士官「随分と可愛がられてるその娘の声を上げさせれば来るんじゃないの。だからこっちに寄越せよ、金食い虫どもが」 MUF5000(1)「その命令は聞けないぜ」 ヒトガタのネイナは拘束を解かれた。それが意味するのは装甲ヒトガタがヒトガタのネイナを離したということだった。 装甲ヒトガタはちょっとは不自由だった腕と脚が動くようになったのかヒトガタ女に正面を向ける。 PMC士官「ふーん、もう処女を奪ったのね。最低」 あのセリフが聞こえたその時に水牛の咆哮のようなものが響き、ヒトガタのネイナから離れるような重い蹴りが発生した。 そして再び爆発音と銃声、そして破片が跳ねる音が響く。 振り返ったヒトガタのネイナが見たのはズタズタになって倒れている量産型ヒトガタ2機と肩甲骨のあたりからメタルジェットが突き上がっている装甲ヒトガタの後ろ姿だった。 PMC士官「退けよ、型遅れが。もういい夢は見たんだからそれで充分なんでしょ」 抵抗しないのを良い事に味方だったヒトガタ達を撃ち続けるヒトガタ女の姿を見せつけられたヒトガタのネイナは投げ出された大剣を拾い、機関拳銃で横からヒトガタ女を撃ち始める。 PMC士官「何よ、酷いことしたこいつらに情が移った訳?」 ヒトガタ女は30mm突撃銃に銃剣を取り付け、装甲ヒトガタを避けてヒトガタのネイナに突進しようとして来た。 その時に装甲ヒトガタが上手く動かない右手によってヒトガタ女を殴った。 PMC士官「くそが」 殴られたヒトガタ女は装甲ヒトガタの膝裏を蹴って床に膝を着かせてから倒し、30mm突撃銃を彼の股間に照準を合わせて弾倉を撃ち尽すまで撃ち込んでズタズタに破壊した。 PMC士官「このクソ男どもがっ! 結局アソコに正直なんだっ! ヒトガタでも変わらないじゃない!」 ヒトガタのネイナは大剣をヒトガタ女の頭目掛けて振り下ろした。 PMC士官「てめぇもヒトガタの癖にちょっと美人だからって調子に乗るんじゃねぇよ、どうせババアになったらだれも相手しねぇってのに!」 ちょっと外して肩甲に直撃させた。が、一応は軍用ヒトガタだった先ほどの量産型ヒトガタと手応えが違って中の生身の一部分が蒸発して燃えたのか切れ込みから破裂し、周りの装甲板を砕け散らせる。 そして反撃として片手で握った銃剣付30mm突撃銃でヒトガタのネイナの胸の中央下部を刺してきた。そして腹を滅多刺しし始める。声を上げさせないうちに殺すつもりのようだ。 ヒトガタのネイナは片手に握った機関拳銃をヒトガタ女に撃ち始める。 一発でも相当な熱が来るらしく、何発も当てているとやがて生身部分が出火したり蒸発して爆発的な圧力を生み出し、装甲板を剥がしていく。 腹を焼かれたのかヒトガタ女は喋らなくなったがヒトガタのネイナの顔を刺し始めた。 フーシェロンブルグ「少し遅れてしまったようだ。すまない」 古いタイプの銃剣の刃がヒトガタ女の肩から突き出て来た。 その後ろには頭部の装甲が喪失していつものあの顔がみえるおじいさんヒトガタが居た。 ヒトガタ女の肩を掴んで自分に向き直らせると念入りかつ的確に鎖骨に銃剣を刺して砕き、腕の自由を奪ったのが見えた。……しれっと結構怖い事をする人だとより強く思わされた。 そしてミツマタヒトガタと急造量産型ヒトガタの男が入って来た。 「結局、この女」「大将首」「取れなかったんだね」 ネイナC「殺すんですか?」 フーシェロンブルグ「……いいや、殺しはしない」 「虐める?」「虐めよ?」「虐めない?」 フーシェロンブルグ「そうだな、お前、救急キットから緊急手術用の全身麻酔を取って来てくれ」 ネイナC「治療でもするんですか?」 フーシェロンブルグ「それもあるが……こいつが一番恐れていることをしてやろう」 ヒトガタ女に見えるようにおじいさんヒトガタは何時も見せるような笑顔で全身麻酔を持ってこさせ、背面の鎧を少し脱がせて医療用パイルバンカーみたいなものを使って麻酔を打ってヒトガタ女を眠らせた。 その時、物凄い恐怖に襲われたような顔をしたのがヒトガタのネイナにも見えた。 フーシェロンブルグ「よし、医務室に運べ。ついでにここで寝てる若僧共もだ」 「はい」「はーい」「この重い人どうする?」 フーシェロンブルグ「わしが運ぶ」 ヒトガタのネイナはこの場で応急手当を受ける事になった。 急量ヒトガタ男「うちら急造量産型ヒトガタって傷跡が残らないからいいけどさ、これ結構ショッキングな出来事なんだよな」 ネイナC「確かにそうね」 顔を刺されたと言ってもだいたいは頬とおでこで意外にそこまで傷は深くなく、止血用のガーゼを当ててテープで固定するだけという処置だ。 次に服を上にまくらせてお腹に出来たメタルジェットの貫通痕を同じように塞いでいく。 急量ヒトガタ男「君の服っていつも赤黒いか赤茶色のイメージがあるよ」 ネイナC「何よ、酷いイメージじゃない」 急量ヒトガタ男「あ、そうそう、要塞の制御はまだ担われている状態だからすぐに復帰してね」 ネイナC「ああ、うん……」 それを聞かされたヒトガタのネイナはどことなくきだるげな感覚をおぼえつつ、指揮所の端末の前に立った。 急量ヒトガタ男「なんかだるそうだね」 ネイナC「いや、いつもなら失血でぶっ倒れてるからしまらないの……」 急量ヒトガタ男「君、毎回、任務終わる時は失血してんの?」 9.戦いの後で 戦いが終わり、損傷が激しかったのもあってすぐに眠ったヒトガタのネイナが起きたのは翌日のお昼だった。 その時に食堂で会ったマチノから話を聞かされる形で戦いの後の話をヒトガタのネイナは聞かされた。 マチノ「さて、あの戦いの後なんだけど。うちの組が勝利したことになったわ」 ネイナC「PMCが雇った主力戦車型POTを降伏させたのは知ってるんですが、あの後の攻撃は無かったんですね」 マチノ「うーん、黄色いうさぎからの攻勢がまだ続いているんだけどだいぶ収まって来たわね」 ネイナC「勝った、と言う事はなにかあるんですか?」 マチノ「正直なところ嬉しい事はそんなに多くはないわね。せいぜいがあんまり軍需企業達も敵対しなくなるくらいかしら。他のヤクザはしらないけど」 ネイナC「実質、何もないんですね」 マチノ「ああそうそう、シマにあるいろいろなお店への営業妨害ということでそういう損害賠償を払わせることは出来たわ。これでしばらくはみかじめ料代わりの家賃を安くできるようになったわね」 ネイナC「というか、うちのヤクザは不動産だったんだ……」 マチノ「まぁ、実体としては変わったサービスを提供する不動産会社だからね……。ちなみにちゃんと税務署に確定申告も出してる一つの会社よ」 マチノ「それと、あなたにとってはどうかは分からないけれど正規量産されてる軍用ヒトガタ達が資産として譲渡されたわよ」 ネイナC「え、あいつらが?」 マチノ「あのおじいさんも張り切ってるわ。“久々に骨のある兵器を鍛えられる”って」 話の中であの軍用規格のヒトガタ達がこちらのものになったと聞いたヒトガタのネイナは改めて周りを見た。 隣のテーブルにまだ左腕が無いあのでかいヒトガタの男が居た。酷く疲れている様子だったからいつものなんだろう……。 ネイナC「……彼の左腕は何時戻るんですか」 マチノ「うちの技術力が上がったときよ。その時にはあなたもそうなるわ」 彼の姿が戦利品めいて貰ったような事実を物語っていた。 ネイナC「は! そうだ、あの“設定”はどうなったんですか!?」 MAS5600「“設定”? なんか訓練中にも聞いたんだが何のことなんだ?」 ネイナC「えっと、私があるヒトガタの娘ってやつなの」 マチノ「ああ、それね。ってそういえばあなたは要塞でのアレコレの前に捕虜になったから知らないか。――えっと、その面倒くさいからあの場限りの嘘だって解らせたんだけど……ちょっと別の問題が……」 “設定”の事を聞かれたマチノはなんとも微妙な顔を見せた。 MAS5600「なんか“自由にお付き合いできる”って盛り上がってたのは覚えてる」 マチノ「ええ、彼らの認識が“独身の若い女”にそうなっちゃったの……」 ネイナC「そんなぁ……、絶対話が合わないじゃん……」 マチノ「心配する所が微妙にズレてるけど、なんだかまんざらでもなさそうね」 ネイナC「あ、そうだ。あのとき話した死蔵されてた間に起こされて映画に出演してた話の続き聞かせて」 MAS5600「……話さなきゃ、ダメか?」 マチノ「ネイナ、誰にだって思い出したくない事があるのよ」 ネイナC「ごめんなさい……」 MAS5600「良いんだ……普通のニンゲンは話題にできる思い出があるもんだから……」 そんな中でPMCや企業達がちゃんと捕虜や鹵獲兵器の返還ができたのはたった一人の人員と1輌の古い主力戦車と数輌の試作主力戦車くらいしかなかった。 その時にちょっとしたヒトガタ爆弾騒ぎがあった。 捕虜として捕まったPMC所属の指揮官でもあったヒトガタ女が「ヒトガタ爆弾にされた」と大騒ぎして手術も出来る爆弾処理部隊が呼ばれて緊急入院する事となったのである。 この時におじいさんヒトガタも呼ばれたり事実確認がされ、その周りの購入履歴なんかが調べ上げられた。もちろん、ヒトガタ爆弾になったのかの調査も行われた。 結果は刺し傷と火傷の治療が行われただけで爆弾にするための改造はされた形跡はなく、その意図も無い、と言う事になった。 それでも騒ぐ彼女はついにメンタルケアのほうが必要だと見られて、ヒトガタ用の精神病院に入れられてしまった。 弁護士「フーシェロンブルグ大佐、あなたは本当に彼女に何もしてないんですか?」 フーシェロンブルグ「何もしてないのは間違いだが、わしが彼女にやったのは肩を壊し、全身麻酔を打った、この二つだな」 弁護士「では、あのケガで何故、全身麻酔を?」 フーシェロンブルグ「望ましい答えと望ましくない答えがあるがどっちが聞きたいか?」 弁護士「……裁判所で使うので望ましいほうでお願いします」 フーシェロンブルグ「あの場には他に倒れているヒトガタ達が居てな、錯乱していた上に口も素行も悪かった彼女には黙っていて貰いたかったのだ。大抵の人類種は最期まで耳は聞こえているからな。……これがお前さんにとって望ましいかは分からんがな」 弁護士「ではそのように答弁書を作りますね」 弁護士「……望ましくない答えも気になるので聞いて良いですか?」 フーシェロンブルグ「答弁書には書かない、という簡単な契約が要るぞ? まぁ、ゴシップ記事にするなら構わんがな」 机の上で簡単に契約書を2枚書いたおじいさんヒトガタはどちらにも自分のサインと日付を入れ、弁護士と思われる男にどちらにもサインさせる。本当に簡単な契約書だ。 そしてお互いに1枚ずつ持った。 フーシェロンブルグ「メモはしても良いぞ」 弁護士「では、どうぞ」 フーシェロンブルグ「自分で言うのも恥ずかしいが、無駄に苦しませる為だ。彼女を虐めるのは彼女の中に住んでいるわしでも務まるだろう」 弁護士「なるほど、彼女が自分の中で育てて来たあなたの印象によって苦しませるためですか」 フーシェロンブルグ「全身麻酔はその一助けに過ぎない。つまらんかもしれんが手を下す趣味は無いからな」 先の戦いである企業、もとい大きな軍用POTを作る軍需企業は思わぬお土産を貰った。 それは繁華街のヤクザに一時的に鹵獲されて捕虜扱いになっていた古い主力戦車が持って来たお土産だった。 そのお土産とはその古い主力戦車の車体正面下部装甲を貫通し、不発だった為に車内に残っていた少し変形している130mm徹甲榴弾だった。 武装解除の時に砲弾と弾薬を抜いた形跡があり、見える所に置いてあったのに何故か回収はされなかったのでまたもや爆弾処理部隊が呼ばれ、どうにもならないので例の世界から爆弾処理部隊が呼ばれる騒ぎの原因になっていたのだが古い主力戦車が言う通り、本当にお土産だったのだ。 なんやかんやあって炸薬とされるメタルコアと信管とされるメタルコアを抜いて安全にした後、この古い主力戦車に載っているPOTの持ち物になり、必要に応じて研究資料として用いられることになったという。 それは非常に厄介な代物で、未だに解析が済んでなくて複製が出来ていないのはまた別のお話。
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我も我もと鳥取県のまんが事業に群がる業者たち なぜいきなり?北海道の夕張映画祭に突然鳥取県の【ヨナゴピクチャーズ】が顔を出す http //www.yubarifilm.com/2013-2014/program/#event_syo http //www.yubarifilm.com/2013-2014/program/#event_ketsu http //www.peeep.us/306702ce これらのサイトにいきなり【ヨナゴピクチャーズ】が共同主催という形で顔を出してくる。 この項目でも触れたが【ヨナゴピクチャーズ】には一切活動形跡はないのに、夕張映画祭実行委員長となっている。 ・10人しか客のこない【JCF学生映画祭】にも鳥取県から多額の補助金 あまりにもひどい【JCF学生映画祭】開催内容 2013.09.17各部門の審査委員長が決定いたしました。(トップページより) 実行委員・顧問・審査委員 http //www.jcf.jpn.com/12th_2013/committee/index.html http //www.jcf.jpn.com/12th_2013/flow/index.html http //www.peeep.us/b5127362 http //www.peeep.us/d0b02f43 中でも沢田という人物はYONAGO PICTURESという団体所属となっているが、この団体の活動実績はまったくない。 (管理人注 メンバーに米子映画事変やアルファビル関係者、補助金を受け取っている面々がいる。) この決定した時点が9月18日ということなので、以降に述べる【ヨナゴピクチャーズ】のサイトはその数日前にぎりぎり作られたことになる。 以前から活動していればこんなことになるのはおかしい。 何のために夕張、鳥取県の町おこしに関わってくるのか 前項で夕張映画祭に突然【ヨナゴピクチャーズ】が関わっている、と触れたが元の会社自体が夕張映画祭に関わっている会社とのことである。 だから夕張映画祭に関わること自体は不自然ではないといえる。 TRICAR株式会社 http //www.tricar.jp/ 本社は沖縄にある。 【ヨナゴピクチャーズ】はこのTRICAR株式会社の一事業部という紹介がされている。 ヨナゴピクチャーズ http //www.yonagopictures.com/ しかしここで疑問が残る。 9月に開設されたサイトのようだが、これを見ると東京に本社がある。 ヨナゴと名づけているにも関わらず、米子には縁もゆかりもない人間のようだ。 東京の人間が米子の名で活動する必要があるのか意味不明である。 やっていることがメチャクチャである。 夕張映画祭の流れから生まれた会社の流れを汲んでいるというのなら夕張中心で活動していればいい。 鳥取県の町おこしに東京の人間がしゃしゃり出てくる必要は一切ない。 TRICAR株式会社のwebサイト公開が2013年9月、夕張張映画祭の開催権を保有する夕張映画社事業取得が9月、【ヨナゴピクチャーズ】のサイト開設も9月、【ヨナゴピクチャーズ】のある東京事務所開設も9月だそうである。 つくづく不自然さを感じずにいられない。 関連記事 ・10人しか客のこない【JCF学生映画祭】にも鳥取県から多額の補助金 ・まだまだ税金が投入される【まんが王国とっとり・秋葉原倶楽部】 ・鳥取【JCF学生映画祭】事務局長【ヨナゴピクチャーズ】はみんなの党党員 ・まんがコンテンツと関係ないアイドルカフェまで県補助金で経営 ・ヨナゴピクチャーズ、社名を"米子ピクチャーズby夕張映画社&京都フィルム株式会社"に変更 ・米子ピクチャーズが日本クラウドソーシング株式会社へ ・【まんが王国とっとり】関係者、過去アニメファンへ暴言で炎上 ・空きスペースを貸すだけでアカデミー開校?ガイナックスシアター ・【とっとりアニカルまつり】が鳥取県の補助金で女装写真集出版へ ・もはや死に体の【まんが王国とっとり】、【とっとりアニカルまつり】、【米子映画事変】 がいな音楽祭関連記事 ・開催前から大炎上、主催者情報が公開されない【がいな音楽祭2015】 外部サイト ・鳥取県で開催される「がいな音楽祭」が、主催者の不用意発言で炎上 ・【米子】がいな音楽祭【前田工務店】
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ネタorガチ 曲名 アーティスト名 備考 関連リンク メインボーカル ガチ 対象a(あー) anNina ひぐらしのなく頃に主題歌 youtube ポンチョ(暫定) ネタ なのです☆ はにゅ~ ひぐらしキャラソン youtube 未定 ネタ 勇者王は大変なゾンダーの核を光になれぇぇぇえ!! ? 盗んで行きましたシリーズ http //www.nicovideo.jp/watch/sm629849 俺! ネタ 海馬は大変なコマンド入力をしていきました ? 盗んで行きましたシリーズ http //www.nicovideo.jp/watch/sm296920 俺! ガチ 禁断のパンセ ? サイレントメビウス OP http //www.nicovideo.jp/watch/sm386468 ポンチョ ガチ 青のレクイエム ? サムライディーパーKYO OP http //www.nicovideo.jp/watch/sm428889 ポンチョ ガチ RAINBOW GIRL ? ? http //jp.youtube.com/watch?v=NBnAZ9oFtwY セーラー 意見あればここに↓ テスト -- テスト (2008-05-05 21 55 52) test -- test (2008-05-05 23 07 24) 名前 コメント
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投票用 選択肢 投票 なのです☆ (3) うじゅ (2) ネタorガチ 曲名 アーティスト名 備考 関連リンク メインボーカル ガチ リトルグッバイ ROCKY CHACK ゼーガペイン主題歌 youtube 未定(セーラー案) ガチ ラストブルー ROCKY CHACK ゼーガペイン主題歌 youtube 未定(セーラー案) 意見あればここに↓ テスト -- テスト (2008-05-05 21 55 41) てすとてすと -- きんぱつ (2008-05-05 23 48 58) こめんと -- なまえ (2008-05-05 23 49 16) 名前 コメント
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技術部門 (決定=〇、一部未定=△、未定=×、不明=?) ジャンル モノ 値段 〇 マイク SANWA SUPPLY MM-MC6 マルチメディアマイクロフォン 1,200円 △ ポップガード 自作(材料未定) 300円以内 〇 スタンド 使用しない ーー 〇 アンプ 使用しない ーー × PC ? ? 一人辺りの負担(予算) 300~500円 名前 コメント
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わからない言葉とかあれば掲示板かコメントで、各々説明付けていきます たまに関係がウッスイことも書きます(ちょっぴり関係ある)。 まぁググるだけなんだが アンプ:アンプリファの略で音声を増幅する音響機器。 ガチで:真剣に、マジでの意。もともとはガチンコ(真剣勝負)という意味だったが(ry 暫定(ざんてい):正式に決定するまで、仮に定めること。臨時の措置。 つ:三重県の県庁所在地。 ポップガード:俗に「吹かれ」と呼ばれる「はひふへほ、ぱぴぷぺぽ」等を発音するときに出る息がマイクにかかって入る「ボフッ」という音を防止する装備品。ウケて吹くのを防止できるモノではない。自作可能。購入する場合最低でも2000円はかかる。自作だろJK マイクロフォン:だまされるな、ただ単にマイクのことだ ROM:今、とある人間をさしてつかわれているが、これはハンドルネームではない。Read Only Member(読むだけで書き込まないヤツ)の略である。またそういう状態のことをROMるで活用する。ROM<ROMラ<ROMガ<ROMジャ(ウソ)