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六周年オルニト観光イベントページです オルニトにありそうな観光スポットを並べてみよう投票(最下段の枠にどんどん追加して下さい) 行ってみたい行かせてみたいありそうスタンプ押せそう…なんでもokです 投票数が来訪者数とかパーセントとか押したスタンプの順位とか…色々素材に転用できれば幸い 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 ハーピーの宿 5 (8%) 2 空に流れる滝の島 4 (6%) 3 空戦士の練武場跡 4 (6%) 4 乗用鳥園 3 (5%) 5 堅牢かつ頑強なる樹上の空の檻 3 (5%) 6 墜ちた迷宮 3 (5%) 7 大ゲートの近くの町 3 (5%) 8 山頂の串屋台 3 (5%) 9 微睡みの館 3 (5%) 10 森の蜥蜴牧場 3 (5%) 11 浮遊島大図書館 3 (5%) 12 浮遊島神殿(政務中枢機関) 3 (5%) 13 神殿直轄浮遊島劇場 3 (5%) 14 鳥タク大ロータリー 3 (5%) 15 入り乱れる突風の回廊 2 (3%) 16 劇場併設樹上大レストラン【ミタンカ】 2 (3%) 17 大鳥巣の浮遊島 2 (3%) 18 巨大鳥の化石岩壁 2 (3%) 19 民営浮遊島劇場 2 (3%) 20 縦横無尽樹の森 2 (3%) 21 風任せ農場 2 (3%) 22 黄の店 2 (3%) その他 投票総数 62 【六周年企画ページTOPに戻る】
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後世の歴史家達は語る ─ 国の繁栄を知りたければオルニトを見よ 国の衰退を避けたければオルニトを見よ ─ 今までの歴史、異世界の国々の中でもオルニトにはそれらが詰まっている、と 地球で言う西暦にて百、二百年を過ぎた辺りより苛烈を極めたマセ・バズーク侵攻は、 想定を遥かに越えた蟲人の反抗により全面撤退で終わった。 その結果、オルニトは大空を埋める軍隊の凡そ半数以上を失ったが 何よりもその後に始まる“島牽き”の巨人達が一人、また一人と何処へとも去っていった事が オルニト衰退の大きな要因となった。 ─ その歴史の内 空に浮遊する大小様々な島を、それらに繋ぎたる“大鎖”を巨人が牽く事で 拠点ごと侵攻するという他には類を見ない驚天動地の事象。 歌鳥が華々しく絶唱すれば、その加護を受けたる空の軍勢が精霊と共に舞い降りて国を浚う。 しかし、何者にも防ぐことの出来ぬものと思われていた侵攻は 同じく空を統べる翅、強大な力を前にしても恐怖を微塵とも生まぬ虚心、無限とも思える軍勢 マセ・バズークには通じなかったのだ。 “神の意思”として神殿より発せられる勅により、兵はその身を捨てて戦ったが 最後まで甲殻の壁を破り国へ抜ける事は叶わず、 倒れこそはしなかったものの、巨人達も手痛い傷を負った。 国境を越えてオルニトへ戻るまで続いた追撃の蟲嵐に最も恐れ戦いたのは、 堅く護られた神殿の奥にいた神官達である。 すぐさま再度の侵攻が協議されるも、反対の意見は消える事がなく 実、再度のマセ・バズークへの本格的な侵攻は起こらなかった。 “神の意思を違えてしまった” 己達の支配欲のために神を利用し、挙句それが失敗に終わったという事実。 しかし、そのオルニト支配体制を揺るがす事実よりも大きな衝撃が神官達の目の前で起こる。 “大鎖”を大地に捨て、巨人達が何処かへ消え去ってしまったのだ。 当時に編纂された数少ない文献からは、 オルニトの身勝手により巨人が受けた傷を悲しみ、彼らに謝罪した神官の意を汲んで再び戦に利用されぬ様、国を離れた 神託を受けし翼乙女達が巨人を歌で導き、世界各地へ散らばって行った 暗黒の東方より迫る脅威を討つべく山脈を越えて征った 幾つかの説が発見されているが、巨人と意思の疎通が出来たと確固たる証明の在る者が存在しない以上、 どれもが国にとって都合の良い解釈のできるものであり、信憑性が高いとは言えない。 しかし、巨人達がオルニトから去ったのは事実であり、 それにより拠点ごと侵攻するというオルニト必勝の戦略が実行不可になり “侵攻支配大国オルニト”が瓦解したという事が支配層の心を打ち崩した。 ─ 支配の揺らぎ マセ・バズーク侵攻失敗から巨人の消失と続いた大事変は、民の持つ“神への信仰”を直撃する。 当時の治安報告書の中にも 神はいないと叫ぶ者が多発せり これからは神託に左右される事なく富国に努めるべき 浮遊群島だけではなく地上の開拓を進め、民による国作りを進めなくては という声や意見が多数記されており、神官達による神の威光による支配大系が大いに揺らぎ始めたのを見て取れる。 実際、この時期は転換期になり得た可能性は高く、空から地上へ移り住んだ民も数多く出ている。 “なり得た”と前述したのは、ならなかったという歴史事実によるもので なぜなり得なかったのかという理由は明確である。 “依然、神託は続き、神の歌は止まず” 神による現象が巨人の消失と合わせて止まっていれば、恐らくオルニトは民によって作られ、民が支配する国になっていただろう。 神が在るのであれば我らもまた在り。 神官達の拠り所ははっきりと残っていたのである。 しかし、それがあっても確実にそれまでのオルニトと比べ国力は衰退していく事になる。 ─ オルニトたれ これまでと同じ様に国を支配するには? 神はまだオルニトに力を落としている。 民の心を掴み続けるには? 神託とその実行による築き上げたオルニトの維持。 神の意思による侵攻と勝利を続ければ良い。 神殿で安寧と繁栄を貪っていた神官達の考えは余りにも安直だった。 そしてここから先、今までより苛烈な戦と状況が民を待っているのである。 拠点である浮遊島の移動が出来ず、飛行遠征により拡大した前線の先に侵攻しなければならなくなった。 大きな損失の出た軍隊の建て直しと強化。 浮遊劇場からの支援を受けずとも戦い抜く事の出来る兵。 侵攻に随伴が可能な援護部隊。 それらは全て“神託”による神の意として推し進められた。 神と国の尖兵として戦ってきた兵達にはまだ神の威は強く、誰もが国を護ろうと必死になった。 神の歌降りる国オルニト、それを維持しようと躍起になった結果、 民が支えし国オルニトへと変貌させていく事になる。 ─ 新たなる民の信仰 兵は戦った。 戦い続けた。 外へ、外から襲(く)る軍勢と、内で蜂起する者達と。 この頃には既にオルニトの誇る空挺戦力の戦い方は以前のそれとは大きく変わっていた。 上空からの初撃強襲は変わらずだが、空の拠点、補給地を失った事で 地上、中空を主軸にした飛翔戦術と中~近距離戦闘に特化していた。 古くから繋がりのある風精霊にはそれまでの大気事象操作による攻撃ではなく、 飛行継続への補佐や中距離からの投擲武装への加護付与を任せる様になった。 弱った大国を狙う他国他勢力からの防衛も含め、 戦いの場は地上へ、民の目により近い場所へと移っていくのである。 それは今まで戦果しか報(し)らされて来なかった民に戦の実感と恐怖、 そして何よりも国を民を護り戦う兵の姿を知らしめた。 理解出来ぬ不可思議な力の加護などでは無く、同じ鳥人が戦い血を流し戦う。 民はオルニトの軍へ多大な信頼と羨望を寄せ、力ある者やこれから力を得ていくであろう者達の入隊を促した。 戦いは止める事はできない しかし戦いは神から軍へと民の心を移して行く 支配層である神官の間で吹き上がる葛藤と打開出来ぬ現状は、 これより更に歪んだ形でオルニトを衰退させて行く事になる。 他愛の無い民書に擬装されたある神官の独白なる書にはこう記されている もしあの時、我ら神官が神を遠き場所の偶像として置き、 民一体となり心と体の結びつきによる国作りへと変わっていたならば 血を、数多くの他国の血、国のために身を費やす者達の血を流す事は 消えずとも、少なくすることは出来ただろう 私は私の声の小ささと心の弱さを後悔して已まない と。 後世の歴史家達がこの頃のオルニトを表すによく用いる一つの物語がある。 神と国のために戦い続ける一人の猛者。 その純真な想いは彼をどこまでも純化し、英雄にまで到らしめる。 しかしオルニトの変移の中で彼は地上を知り民を知り、そして一つの命を拾う。 そこから変わり行く彼の心はより一層、民を惹き付ける事になる。 戦い 英雄 支配 神官 民 心 かつて口にすることも禁じられた、それは事実であったとも言われる物語。 “神よ、願い届くのならば” オルニトをその歴史から見てみる 内容はあくまで仮説なので、スレなどで煮詰めていきたい所存 国から去っていく巨人を追いかけた者とかいそうな気がするけどその者たちも帰ってこなかったのかも -- (tosy) 2012-10-15 13 38 15 巨人がその気になれば強引に進んでいけそうだけどマセバズークを蹂躙しなかったのは性格は穏やかだったから? -- (としあき) 2012-10-21 16 06 39 東の大陸にオルニトがあったらとんでもない戦乱が巻き起こっていたに違いない。マセバズーク恐るべし -- (としあき) 2012-10-30 22 58 01 オルニトはなんともややこしい国のようで復権も難しそうだ。それよりも過去に大国オルニトを退けさせたマセ・バズークの凄さが伺える -- (名無しさん) 2013-02-16 18 23 17 神が不可思議極まりないオルニトが安定して大きくなっていくことは最初から叶わぬことだったのかも知れないですね。行動だけ見れば戦を悲しんだ巨人は去っていったということに帰結しそうですが真相は別にあるのかもと思わせるのがオルニトです。しかし敗退からの衰退は起こってよかったのかも知れません。オルニトが交流へと進むために -- (名無しさん) 2015-03-08 18 01 09 名前 コメント すべてのコメントを見る
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オルニトのゲートに行こう 地球では何かと旅費がかかるので、ならば異世界を経由してそこからゲートをくぐりナスカに行こうという計画。 淡路ゲートからミズハミシマへ。フェリーの着いた先の港町で持ってきた小物をバザー気分で売って支度金を追加する。 異世界の海に浮かぶ島国ミズハミシマなだけに各地への船便は常に発着しており船のクラスも様々だ。 オルニトへの直行便は結構な船賃なのでスラヴィアを中継する中距離船を選び乗船する。 乗客の二割が人間であることに異世界も広く認知されたんだなと実感した。 スラヴィア北端の港町に到着したのは夜中であったが、篝火が燃え盛る港は骸骨達がせわしなく働いている。 聞けばこの港町はスラヴィアでも強大な力を持つ“最古の貴族”の一角である髑髏王の所領だという。 スラヴィア御自慢の冥骨船は夜の間に海を進み目的地まで到着するという高速艇であるが出航は夕刻であったため今回は乗れず仕舞い。 オルニト港経由の新天地行きの船が安かったので選んだ。客貨半々の大型船で水精霊と通じた術士が複数乗船しているようで想像以上の船足であった。 スラヴィアを中心にて東西南北と異世界の海を分けるとすれば東の南の海域は龍神やその他大きな力の影響や支配が薄く、海の生物の様子も混沌度合いが強いという。 夜昼問わずに船と並走するように巨大な魚類やらが現れるのが圧巻である。 そんな巨大な海の生物も飛来する巨大な飛行生物とは一進一退の攻防を繰り広げて忙しそうである。食うか食われるかを横目に目的地を目指す。 朝陽をバックに大きな鳥、いや翼の生えた猫が群れを成して飛んでいる。船員曰く「風精霊と一緒に大陸を渡っているんだ」とのこと。 そしてオルニトの港町に到着した。 鳥人やハーピーが沢山というイメージだったのだが意外と種族盛沢山である。 異世界の東側の大陸はまだまだ商業ルートが出来上がっていないとのことで多種多様な人が新大陸やドニー・ドニーを起点として活動しているという。 豆類が中心のオルニト食堂で腹ごしらえを済まし、いざゲートへと向かう。 大陸の西側の海岸から大陸の中心へと向かう訳だが、ここで一つ思案どころ。陸路か空路かどちらを選ぶのかというものである。 流石鳥人の国オルニト、空を飛ぶ動物がずらりとならん…ではおらずぽつりぽつりと広場の柵につながれ休んでいる。 「そりゃあんた客を乗せて飛んでったら戻ってくるまでいないの当たり前だよ」 広場の掃除をしているペリカン顔の鳥人がカポカポと嘴を鳴らして笑って言う。 四翼を持つ胴長の烏は大きな荷物でも運べ速度もある。ということで結構な額である。 はるばるクスルベルグからやってきたという獅子胴鷲頭のグリフォンはどんな危険な生物にも負けないという触れ込みであるがこれから行くのは危険地帯ではない。 百足に複数枚の翼が生えた飛昆虫は既に多くの客を乗せており正に飛び立つ寸前である。行き先はマセ・バズークということだった。 残っている数が少ないせいか消去法で全体が三角形のまるでステルス戦闘機みたいな鳥に乗ることになる。 「ウチは一人二人しか乗せれないからすぐ発つよ」 乗用車くらいの大きさの三角鳥の手綱を握るのは子供大の燕人。ゴーグルとマスクを装着し綱をしならせるとぶわっと空に飛びあがる。 垂直離陸もなんのそので瞬く間に10、20、30mと上空に。 「これくらいの高さならどこの縄張りでもないから安全なのさ。比較的に」 しっかりと両翼を羽ばたかせて緩やかな上下と山なりの軌道を結構な速度で飛行する。ひょっとすると車より速いかもと、鞍から手を放すのもままならず姿勢を保つのに精一杯。 空へと伸びる高い太い大樹の東に位置する村には小一時間で到着する。 途中上空で耳元に色んな声が飛び込んで来たのだが応対することが出来なかったのが少し残念である。 港町よりは規模の小さな林に囲まれた村は結構な賑わいである。大ゲートから一番近い村だからであろうか、ここも色んな種族が見受けられる。 「ゲートに行くなら鳥人タクシーが良いよ。林と森を抜ける道もあるけど色んな鳥が出てくるからちょっと危ないよ」 時代劇でよく見る籠が並ぶ広場の手前で親切なハーピーに説明を受ける。顔に「大ゲートに行きます」とでも書いて見えるのかというくらいの絶妙なタイミングであった。 「鳥が飛ぶと他の鳥が襲ってくることが多いけど鳥人だと少ないんだよ。もし飛んできても皆強いから大丈夫だよ」 籠広場の受付で違うハーピーに説明された。 色鉛筆をひっくり返したような色んな羽色の色んな鳥人が籠を挟んでツーマンセルで休憩している。言われてみれば誰もが屈強な戦士に見えてきた。 村からは先ほど見た西にある大きな樹へと飛んでいく。そこから再度、大ゲートのある山へと飛ぶのだという。 「一度に飛ぶにはちょいと辛い距離だからな」「自分だけで飛ぶなら行けるんだぞ」 まるで烏天狗に挟まれた気分で籠に乗り込みしっかり綱を握る。籠なのでうっかり手を離せば真っ逆さまである。 意外と揺れない素晴らしいコンビネーション飛行。遠くにオルニト名物の浮遊島を見かけながら澄み渡る青空を鳥人タクシーは飛んでいく。 特に襲われることもなく大樹の枝葉の上に到着するのだが、地上から100m以上ある高さに鳥肌になる。 地上からは飛んでやってくるしかないと言われる樹上は板を敷き詰められた枝の上に駅前発着場のように鳥人タクシーが客を待っている。 「あそこにいるのに声をかければ山まで乗せてもらえるぞ」 そう言うと烏天狗は村へと向かう客を待つと言って別の枝葉に飛んでいった。 「では出発します」「綱を離さないように」 ふさふさの羽並みの青と白の鳩人が丁寧に籠を持ち上げ出発する。 平らな山頂から天高く伸び立つ光の柱。ついにオルニトゲートが迫る。 ふと前方、ゲートの光の向こうに大きな鳥のぼんやりとした姿を見る。 驚いて瞬きをした次の瞬間にはいなくなっていた。 「?何か見えましたか?」「周囲に特に危険な飛びモノの影はないですね」 無事着陸。表現するなら甲子園球場のグラウンドというかそれくらいの広さの本当に平らな山頂である。 中心には大ゲートが光り、それを囲む様に色んな屋台が点在している。良い匂いが漂ってくるではないか。 簡素な縄と杭で周囲を囲んでいるのだが想像していたような監視所や監視人などはいないフリー通行の様相である。 ここまで来るとオルニトを離れるのが少し心残りになってきたが、休暇は限りあるので早速ナスカへと、大ゲートへと入る。 風が吹いたような、錯覚なのかどうなのかしかし気づけばそこは既に地球であった。 ナスカ地上絵の一部に発生している大ゲートから久しぶりの空気を吸うとはっと気づく。 今立っている大鳥の地上絵とゲートの向こうに見えた鳥の影が似ていたということに。 そんな馬鹿なという気持ちと、ひょっとしたら地上絵とは…という気持ちと一緒にナスカ観光も趣深いものになったのである。 ミズハミシマからオルニトに行ってゲートをくぐってみました案 人間一人で異世界を国から国へ旅できる状況って大きな要素だと思うよ。治安が良くなって女一人でも旅ができた江戸時代みたいな -- (名無しさん) 2017-04-18 22 33 21 異世界だから危険がデンジャラスとかいうのは間違った先入観や -- (名無しさん) 2017-04-18 23 24 38 安い運賃の移動手段は国営とかそんなんかな -- (名無しさん) 2017-04-22 05 49 57 空がメイン移動路になると地上の整備がゆるくなるのかな?とも思ったり -- (名無しさん) 2017-05-04 05 41 38 行こうと思って実際に旅ができるというのがよい。ナスカの地上絵もかつてオルニトから飛んできた巨大生物の姿だったのかも -- (名無しさん) 2017-05-06 05 41 43 名前 コメント すべてのコメントを見る
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空に曇りは欠片もなく、どこまでも明るく、しかし地は大きな影がいくつも落とされていた。 それはオルニト特有の奇跡、浮遊島群のためである。 浮遊島は地に鎖によって繋がれ、まるで風船のように見えた。 重々しさと軽妙さが合一したこの風景は、 滑稽なような神々しいような、なんともいえない感想をもたらしてくれる。 この大質量がふわふわとしているのは、現代科学の信者としては飲み込みがたく、 何度か住人たる鳥人に質問するに至った。が、 しかし返答はいつも"島が浮かぶのは当然のことだろ?"というようなものばかり。 彼らにとっては、雲が空に浮かぶことや星が宙に浮かぶことと同じく、 島が浮くのも不可思議なことではないようだ。 そういえば俺も、雲や星について真剣に疑問を持ったことなどなかったな。 もう現代科学の信者は廃業しようか、少なくともこの世界では。 さて、バックパッカーはその浮遊島の上にいた。 外縁部にいるわけではないので、実感は沸かない。 強いて言えば、山が一切見えないことくらいだろうか。 町を見渡すと目に付くのは、色とりどりの塔たちだ。 それら鮮やかな塔のまわりを、くるくると螺旋を描き、飛び昇っていく鳥人の姿も印象的である。 どうやら塔のまわりには常に上昇気流があるらしく、飛翔を助けているようだった。 町もまた鮮やかであった。 町の壁は煌びやかに飾られ、それだけでなく、 歌が、踊りが、香りが、料理が、というように視覚だけ出なく様々に鮮やかだ。 塔はともかく、町の鮮やかさは常のものではない。 今日は帰還祭の真っ最中であるのだ。 「こりゃすごいなー」 鳥人の踊りに、合唱に、俺は魅入っていた。 本能だけでなされるものでさえあれほどに美しいのだ。 技法と理が混じったなら、なおさらであることは言うまでもない。 ガイドブックもなく、ただ人の流れに身をまかせるうちに、ここの広場についたことは幸運であった。 他に行くべきところもわからず、なんとなく見ていたのだが、 それなりに充実していたと思えた。 ふと、腹の音がなる。ああ、空腹だ。どこかで昼飯をとろう。 そう思い、俺は席を立った。 「よう、兄さん。ああ、待ってくれ。あんたのことだよ、そこの異界人の兄さん!」 見知らぬ町で声をかけられるとは思わず、反応が少し遅れた。 声の主は、いかめしい、猛禽の鳥人であった。 なにかまずいことをしてしまったかと、身構えたが、杞憂であったようだ。 鳥人はやたら友好的な声色で話しかけてくる。 「兄さんの腹の音は聞こえたよ。ああ、随分と空腹のご様子だ。 どうだ? 一ついい店を紹介してやんぜ」 その申し出は渡りに船だった。 風の精に頼まないと入れないようなところも多く、 ぶらつきながら適当に探すことは難しそうであったから。 「じゃあ、頼もうか」 「毎度! で、あんたは何が食える? 何が食いたい? 肉か木の実か、それとも両方か」 「両方かな」 「ほう、雑食なんだな。ああ、がっつり食いたいのは分かってるぜ。 いい店を知っている。ファードバンドっつう飯屋だ。 飯も歌も上々さ。イーウェイの紹介っつたらサービスしてくれるぜ。 さあ、道はこいつについていってくれ」 鳥人がヒューイと鳴くと、どこからか蛍火が現れた。 おそらく光の精だ。 鳥人が、いつものように頼むと言うと、 光精は、わかったと返し、俺のそばに寄る。 多分、これが先導してくれるのだろう。 「ありがとう。空腹のまま彷徨わずにすんだよ」 礼を言うと、鳥人はこちらに足を差し出してきた。 はて、なんの風習だろうか? きっと、握手みたいなものだろうかな。 そう思い足をを握る。 鳥人は、うひょうと叫んだ。 「ん? すまない、何か間違えたみたいだな。 こっちの風習には、うとくいんだ」 「………はあ。そうかそうか。 これはな案内料を求めてるんだよ」 「そうか。いくらぐらいなんだ?」 「いくらって、普通だよ」 「すまない、相場が良くわからん」 チップってどのくらいなんだろうか? 無謀ながら、日本を出たのはこれが初めてのことだ。 さっぱり見当がつかない。 「……銀一枚だ」 なるほど、と銀五枚をを財布から取り出すと、 鳥人は器用に足で掴み、首にぶら下げた袋へ入れた。 「兄さん!最後に教えとくぜ! こういうときは大銅一枚で十分だ!子供だったら銅一枚でいいかもな! 余剰はこの情報料としてもらってく!ありがとう!儲けさせてもらったぜ!」 鳥人はさういい残し、ばっさばっさと飛び立っていった。 「……はあ。ま、勉強になったからいいか」 すぎたことは仕方がない。 光の精に案内を頼み、飯屋へと急ごう。 帰還祭であり、人込みは凄まじい。 小さい蛍火など見失ってしまうのではないかと危惧したが、いらぬ心配であった。 案内をする段となると、光の精は輝いた。 人込みを透過して、視覚だけでなく五感をぴかぴかと刺激して、 これは見失いそうにない。 ほかの人が一切気にしてないところを見ると、 俺だけに焦点があてられてるらしい。 なんとも便利なものである。 はたして無事に目当ての店へと到着した。 ああ、あの鳥人の言うとおり、食事も音楽も素晴らしいものであった。 今日の昼食は、果実を肉で包み焼いたものだった。 どちらも初めて見るものだが、濃厚でとても美味かった。 ただし、米がないのが残念ではあった。 オルニトは他の国にはないモノが多いしもっと観光に力を入れれば賑やかになりそうなんやな -- (名無しさん) 2013-01-18 22 06 59 授業料を取られましたが不思議と嫌味さを感じないやり取りでした。料理もおいしそうでしたが貨幣価値を円にするとどれくらいになるのかも気になりました -- (名無しさん) 2013-05-06 18 45 47 分かりやすいけど初めての国で初めてのやりとりというのがよくでてるー。人のいいガイドとめぐり合うのも旅の運だね -- (名無しさん) 2014-02-06 23 29 54 異世界交流真っ只中で旅行者は美味しいお客だなー。親切も売り上げのためと思えば納得 -- (名無しさん) 2017-03-08 12 32 48 名前 コメント すべてのコメントを見る -
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ヨハナミシュコヴァーゼジルニッツ(ヨハナ・ミシュコヴァー・ゼ・ジルニッツ) ポーランドのザーガン公の系譜に登場する人物。 関連: ヴェンツェルオイゼビウスフォンロプコヴィッツ (ヴェンツェル・オイゼビウス・フォン・ロプコヴィッツ、夫)
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後世の歴史家達は語る ─ 純然なる闘争の遺伝子は、戦闘の繰り返しにより培われる オルニトにその遺伝子が無ければ、あの大陸の歴史は全く違う道を歩んでいただろう ─ 攻めては攻め、攻められては攻め返す 国の在り方から当然の様に起こるその闘争は、オルニトを戦闘国家として彩った、と 卵が先か鶏が先か、それは誰にも分からない。 現にオルニトのある大陸に、人の生活が始まりし頃からそれは隣に在ったという。 風の精霊 異世界各国の歴史を広げて見ても、オルニトほど風の精霊が定着、存在する国は他には無い。 まるでそれは離れられぬ様に呪縛をかけられているかのようにも思えるが、 国の栄枯衰退とは関係なく、歳月を重ねる毎に大陸の風の精霊はその数を増やしている。 また、嵐神ハピカトルの住まう地であるせいか、大陸の風には何とも言えない不思議な魅力があるらしいと 精霊を通じて歴史を調査する人間の歴史研究家が発表した。 ─ 空を飛べるということ ある大延国の高名な躍字家が庭で好物の饅頭を堪能していた。 そこへ一羽の鳥が降り立ち、躍字家が和んでいる隙に饅頭を一つ掴んで飛び去ってしまう。 「口惜しい哉、我に翼があればと思う。 げに空のなんと遠いことか」 躍字に通じ使いこなす者でも、一度空へ飛び去ってしまったものはどうしようもない。 翼がなければどうしようもない。 という一言である。 ただの小鳥ですら空を飛ぶ事で力ある者を翻弄する。 もしそれが小鳥ではなく屈強な戦士であればどうなるか? 戦意を持ち、隊列を組み、武器を構え降下してくる。 速度と重量を上乗せする強力な一撃の後に飛び去る戦士を空でどうにかしようにも、 風の精霊は彼らに付き従っている。 持って生まれた“空を飛ぶ身体”と、生活の中で常に隣合い繋がる“風の精霊”。 オルニトに生きる鳥人と言うだけで強力無比な戦士に成り得るのである。 ─ 風の精霊の加護 大ゲート解放からより盛んになる精霊研究から、風の精霊の特徴を読み解く。 その性格は自由にして奔放。 しかしそれでも尚、自由を求める。 故に彼らは風。 常に流動する大気、彼らを一つの事象で留めておくのは至難の業である。 型にはまりたいと言えばすぐに飽きたと言う。 景色を見て面白いと言ったかと思えば、すぐにつまらないと言う。 そんな彼らを愉しませる手段として効果的とされるのが、“歌”や“劇”である。 次々と変わる詞や場面、重なる旋律と言葉と演者達。 同じ歌や演目だとしても、精霊達はその流れと変化を堪能する。 決して物覚えが悪いので同じものを何度みても楽しめるという訳ではないようだ。 そして風の精霊が与える加護は、空を飛ぶ鳥人に更なる力を与える。 ひとつ羽ばたけば呼応する精霊が風を巻き起こし空へと運ぶ。 大きく翼を広げれば、その下に集まる精霊が空を滑らせる。 強くひと所へ向かって降下すれば、精霊が作る回廊がその速度を後押しする。 敵へ切っ先を向ければ、擦り合う風の刃が全方位より襲いかかる。 オルニトの戦史の中には、空の大劇場により紡がれた唱令により、 大量の風の精霊による一致事象行動による大気の壁が空より落下し、 高山より空を穿っていた相手の軍ごと山ひとつを押し潰し、荒野にしたとも書かれていた。 ─ 空の劇場 今も昔でも各方面から人気の高いのがオルニトの“空中劇場”についてである。 今でこそオルニト観光の目玉となり、訪れる誰もが楽しむものとなっているが、 過去、オルニトと相対する者達からは、空の劇場より響く歌や声は破滅の導く狂災以外の何者でもなかった。 劇場より発せられるもの全てが周辺一帯へ伝播し、兵達の精神などに働きかけ強化し、精霊の力を増幅し集合させる。 それは、風の精霊の意思伝達は速く広く、一声発しただけでも精霊に“伝えたい”という意思があれば それは瞬く間に十里百里を越えて広がり伝わっていくからである。 精霊の見たもの聞いたもの感じたものは精霊だけでなく兵にも伝わり、士気の鼓舞から運動能力の解放などを引き起こす。 演者が敵を貫けば、風の槍が敵を穿つ。 歌が攻めよと祝詞をあげれば、翼が大きく速く羽ばたく。 戦略上の最重要拠点でもある浮遊島の劇場は、戦場においても遊興に浸る神官の居場所でもあり、 その防衛には屈強なる精鋭達が就くのが慣わしでもあった。 歴史の中で次々と墜落していった浮遊島の中で、今でも空中劇場は幾つか残ってはいるものの、 オルニト最大の空中劇場とされた“広拡たる煌翼”は、浮遊群島の墜落でも口火を切って最初に墜ちたと記されている。 ─ 変化していく戦い 兵と歌と精霊。 巨人が去っていく前のオルニトの戦術はその三点に集約されていた。 しかし、巨人が去ってしまい、浮遊島ごと侵攻出来なくなってからは その戦術に大きな変化が起こる。 鳥人と翼人との連携体制の起こりである。 浮遊島からの援護が無くなった事で兵士だけが戦場へ向かう事が多くなり、 合わせて精霊の加護も明らかに減少していった。 そんな戦力減退を打開するべく考案された戦術が翼人の援護協力体制である。 何故鳥人ではなく翼人が?と思われる事がまず起こるが、当時それが試されなかったわけではない。 むしろ国の上層部は戦場に鳥人以外の兵が出る事に懸念を抱いていたくらいだった。 しかしどうしてもそうせざるを得ない状況だった。 鳥人は頭が悪い。 個人的、率直に言うとそうなのだが、余りにも失礼なので言い換えると 一極特化ならまだしも、戦闘と援護や補助など複数の行動を行うのが困難。 多様な戦術や援護などを一人で覚える事が出来なかった。 などなど、所謂不器用が過ぎるという致命的な理由があったと、当時の修練報告書などに多くが書かれている。 古くから鳥人の従者や使者、劇場などでの演者やその脇役など幅広く活躍していた翼人は その行動種に対する汎用性も高く、加えて鳥人と同じ飛行能力と身体的能力の高さから戦場での援護役に選ばれたのである。 その役回りは多彩で、 戦場にて主の追撃を行ったり不意の攻撃から護る者。 様々な武具などを携帯し、不足が出たり換装に合わせて主に渡す者。 随伴し歌う事で小規模な歌唱援護を発声させる者。 あえて戦場には出ずに、主などのために道具や武具などを整備生産する者。 などなど、多く存在していた。 意外にも主従の関係は徹底しており、そこから何か特別な感情などが芽生える事はほとんど無かった様で、 軍記などにもそういった話は全く出てこない。 不器用な種族であったのかも知れない。 しかし、この体制は兵達の意識の中に鳥人選民思想を弱めたり共生意識の増加を促す事になる。 今までとは違う、変化していく環境は、それに関わる者の全てを巻き込んで意識を変革を起こしていった。 オルニトの、鳥人の戦いを描く上で想像した空の軍隊の戦い 内容はあくまで仮説なので色んな意見を合わせたり検討していきたい やっぱりチートは慢心の元。どこかしらで世界のバランス取りが発生しちゃうもんなのだろうか -- (tosy) 2012-10-15 13 50 21 巨人に空飛ぶ兵に強力な支援と揃っていても無限の蟲軍団は破ることができなかったのかと思うと壮絶なオルニトとマセバズークの戦争が浮かんでくる -- (としあき) 2012-10-21 15 59 43 軍事大国オルニトを名実共に支えていた巨人が去っていった理由が気になる -- (としあき) 2012-10-30 22 51 16 強大な国と思ってても一つ二つ要素がなくなるだけで崩れてしまうものなのかと哀愁が漂う -- (名無しさん) 2013-02-16 18 30 17 鳥人とオルニトの強さが他の種族や国とのバランスを取るために頭が若干弱いというようになったのかなとも思えました。精霊の力は善悪を越えて純粋なものですね -- (名無しさん) 2015-03-15 18 07 13 名前 コメント すべてのコメントを見る
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至れり尽くせりの異世界大図書館!落し物と施設の保全が気になった -- (名無しさん) 2014-08-23 15 19 16 異世界の中の異世界と言った雰囲気。ここを舞台に短編連作読みたい -- (名無しさん) 2014-08-23 18 33 33 サクっと読めるがオルニトがぎゅっと詰まっている。オルニトならではな要素いっぱい -- (名無しさん) 2014-08-24 16 46 50 風と不思議の国だなー -- (名無しさん) 2014-08-29 22 20 17 異世界で図書館というと大延国よりもオルニトをあげてしまう。本とかじゃなくて知識でもなくて物事の埋蔵 -- (名無しさん) 2014-09-19 22 44 11
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─── 大ゲート祭開始数日前 森の蜥蜴牧場 収穫の範囲を超えたレベルまで増殖&強化された蜥蜴を間引くために牧場で蜥蜴狩りが行われる前の調査、樹上の枝に武士姿の狗人と軽装の鳥人が並ぶ。 「前方100…8メトル、上方10メトル。肉食蜥蜴の大きな群れを確認」 「何やら動いていると思ってはいたが、当たりであるな」 オルニトの森林地帯に設営された食用蜥蜴牧場。自然のありのままを尊重し伸び伸びと育てることで極上の云々と言えば聞こえが良いが、 要は特に何もせず放りっぱなしということである。 森で繁殖する草食と肉食の蜥蜴を狩り、シメて素材そのままで出荷したり牧場内の加工場で食肉加工などして各業者に卸したりとオルニトのみならず新天地などにも需要が増えてきている。 しかし牧場も楽に順風満帆と言う訳にも行かない。日々繁殖し自然の摂理を生きる蜥蜴達も現状に甘んじているのではなく、種の繁栄と存続の本能によって変化進化していくのである。 地を走る草食種はその膂力を更に強くし、体を覆う鱗は強固になり遂には地中を掘り進むべく突起形状に頭部を変化させていく。 木々の間を飛ぶ肉食種は滑空距離を伸ばすべく四肢に広がる被膜翼を肥大化させ、強襲する顎は屈強に牙は鋭利頑強に強化していく。 豊かな自然環境の中で増えれば増えるほど繁殖速度も増すため、牧場運営側が獲り切れない程の数に達してしまうのだ。 大体二、三年周期で。 「個体を見た感じはどうであろうか?」 「いやいやいや…これはちょっと凄いと不味いの合わせ技。前回大会で参加者を手こずらせた強個体が蜥蜴その一の様に群れてます」 「もっと以前に大会を開けば楽であっただろうに…」 「牧場主が大ゲート祭に合わせて開催すれば認知度も世界を駆け巡るように広まると言いまして」 溜め息をつきながらも腰に下げた幾つかの革袋から濃い赤の小実と炭石の粉を取り出し、身の丈に迫る長さの銃、かの種子島に似た無骨な鉄の銃口に詰め込み細い棒で押し込む。 「とりあえずあれより先に進み続けられたら牧場の外に出てしまうのは明らかであるな。一撃見舞って騒がしておく也」 「あれら全てが“生きた巣”。およそ首領がいるであろう中心部までは届くとは思いませんが、警戒心を起こし場に留めるのは上策」 「では…、一射頼もう」 狗人が何やら香ばしい藁の一本を火皿に近づけると、鉄蓋がぱかりと開き小さな火鼬が顔を出し藁を食んだ。 やがて鼻にさわる硬い香りが漂うと銃身の底に熱が籠っていく。 「風は南東から少し、狙いより銃口二つ上にずらし撃つのが良いかと」 「あい分かった」 一瞬の静寂。 そして空を破る発射音。 銃身の中で増大させた火の事象力が弾け、弾丸に見立てた赤い実が一直線に飛ぶ。 実には火鼬の尾先が纏い、蠢く蜥蜴巣の直前にて熱により実を膨張させ爆発させる。 イストモス北部の地の下で育ち、発芽の際に爆散して地上に飛び出すバカラ草の幼種。 尚、爆発は大きな音と衝撃波を発生させるために威嚇や撹乱に適している。 森の樹上が一気に騒ぎはじめ肉食蜥蜴がその獰猛な爪で幹や枝を掻き跳び滑空し巣の周囲に広がっていく。 しかし、当の二人は発射即既に退却しているのであった。 「御苦労!そうかそうか強く増えていたか!こりゃ今度の大会は盛り上がること間違いなしだな!」 急ごしらえに作られた仮設舎の中、牧場主の中年駝鳥人はくわっくわっと高らかに笑い飛ばす。 尚、元の舎は例年の倍以上に巨大化した草食蜥蜴の大移動の前に砕け散ったのだ。 「で、偵察してきた感触は?」 「草も肉も今まで見たことのない集団を形成していました。躰も強く進化していました。数も多いですね」 「動きを見る限りでは前回大会の倍の難しさになるのではなかろうか。下手をすれば群れを間引く前に参加者達が返り討ちになるのでは?」 牧場で扱いきれなくなった蜥蜴を減らすために開催される“蜥蜴狩り大会”。 大会の期間中は、強くなればなるほど美味になるという草食肉食蜥蜴が無料で狩り放題という大盤振る舞いっぷりに大会は回を重ねるごとに参加者が増えているのであった。 群れの主であるボスを狩った時点で大会は群れの弱体化と間引きの完了となり終了となる。 しかしそこに至るまでの道は楽ではなく、強く進化した個体や高まった知能による集団行動により返り討ちにされる参加者も少なくはない。 基本、牧場側は日に二回の行動不能者回収巡回くらいでしか援護はしないハードなサバイバルハンティングとなる。 「ほら見ろ!今回は海やゲートを越えての参加者も山盛りだぞ!前回肉食の王をきゅっと締め落とした新天地のオーガの酒場マスターをはじめ腕に自信のある料理人やら冒険者やらが大量にやってくる! 参加者が美味い蜥蜴を持ち帰る、それはどこの蜥蜴何だと評判を呼ぶ!大会大成功!」 「ふぅむ。大人数ならばどうにかなるか」 「しかし巡回要員は増やした方がいいのではないでしょうか。絶対的な強さが倍増した蜥蜴達相手では戦闘本職でなければ危うい事故も発生すると思います」 「よし分かった!大会までに増員できるようにギルドに打診しておこうじゃないか」 牧場主は増員要請の旨を書いた便りを伝書鷹に括り付けると空へと放つ。 そして始まる大ゲート祭。オルニトの蜥蜴牧場へと各々が色々な思いを胸に世界中から参加者が集まってくるのであった。 阿鼻叫喚の蜥蜴狩り大会本番へと続く 大会がもし失敗したらトカゲ大行進? -- (名無しさん) 2017-08-24 00 32 55 名前 コメント すべてのコメントを見る
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鳥人の画って少なかったんだ。ハピカトルはやっぱり積乱雲? -- (名無しさん) 2012-04-04 20 18 18 飛鳥人と鳥人の見た目ってかなり違うんだ -- (名無しさん) 2012-04-05 07 56 36 ハピカトルの擬人化とか想像できねぇ~ -- (名無しさん) 2012-04-12 22 31 36 実は最もよく分からない神様を筆頭に文化もよく分かっていない空の国オルニト。 でも鳥人やハーピーは大好きなのと特異な思想は魅力的である -- (名無しさん) 2012-05-04 22 06 03 威圧感と禍々しさがえらいことになってるのねブーンブーン -- (名無しさん) 2012-05-15 12 38 58 謎や見えない部分が多いからオルニト関連が未知数? -- (とっしー) 2012-05-29 10 10 52
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「まだ見たことのない世界ってのを一緒に見てみんか?」 大学の先輩からそう誘われたのが、この旅の発端だった。 先輩とは大学の研究室に所属していた頃、良く調査旅行にでかけては一緒に脇道に外れていった仲だ。 今は自称フリーライターをやっている。 アルバイトをしながら雑誌に記事を投稿したり、紀行文を自費出版してなんとか売文業で食べているという。 かくいう私は大学で生物学の一分野を専攻して学位を取ったものの、それを生かせる職場が見つからず短期の仕事や非常勤の仕事でなんとか食いつないでいる。 仕事自体には楽しさや遣り甲斐を感じることがあるものの、最近はそれを取り巻く人間関係に疲れ切り、やれ転職だの一人旅だのといったことばかり考えていた。 少し刺激があった方がいいかもしれない。 一度きりの人生、楽しいこと、珍しいことを経験しないともったいないかな。 ふとそう思っただけなのだが、仕事続きの日々で普段はそんなことを思わなくなっていた自分に少し驚き、そして苦笑した。 中学か高校の卒業アルバムには、将来の夢として「世界中を旅してまわりたい」などと書いていたのに。 私はその日のうちに近くのコンビニに駆け込んで貯金残高を確認した後、先輩によろしくお願いしますと電話した。 二週間後、私と先輩はオルニトという鳥人の国の地上部に降り立っていた。 オルニトと言えば浮遊大陸や群島が有名だが、先輩の目当てはその下、地上にあるらしい。 地上に降り立つ前に立ち寄った浮遊大陸の荘厳な神殿、祝詞とも聖歌とも違う歌そのものが祈りとなっている祈祷、空を軽やかに舞う鳥人有翼人、そして飛ぶのが不得手な鳥人達が疾駆し、汗水垂らして日々を過ごす地上…… そこまでは良かった。 その後が予想外だった。 いや、我々が訪れた先、オルニトという鳥人の世界は我々の知っている世界、通常ならこうなるであろうという予想を大きく裏切る世界だった。 だが、これはいいのだ。 予想を裏切ってくれる世界を期待して、わざわざ京都とか沖縄、あるいはニューヨークやバンコクではなくここに来たのだから。 問題となった予想外と言うのは先輩がいなくなったことだ。 いなくなっと言っても、死亡したり、事件に巻き込まれたとかそういうことではない。 先輩はハーピーとかハルピュイアと言うのだろうか。 人の頭部、胴体と鳥の翼を持った有翼人を一生懸命口説き、そのままそのハーピーに連れられてどこかに行ってしまったのだ。 そしてもう四日も経つ。 これからどうしよう…… そう考えながら、今日もまた宿泊している安ホテルの食堂に足を運び、もう見飽きたメニューを開く。 メニューの紙は普段我々が使用しているものより頑丈そうだ。 鳥人の鉤爪で破けてしまわないようにしてあるのだろうか。 メニューには、草食、肉食、魚食、雑食の旅人の料理が別々にのっている。 ただし、これらは鳥人用だ。ひょっとしたら私が気づいていないだけで人間により近い有翼種族のためのものも混ざっているのかもしれないが。 最後のページには取ってつけたように、真新しい紙で人間用のメニューがのっている。 もっとも、人間用のメニューはサンドイッチとかハンバーガーとか簡単なものしかなく、まだこの町にとって人間というものが珍しい存在であることをうかがわせる。 また鳥人用のメニューでいってみようかな…… 翻訳加護を頼りに慎重に虫が入っていないメニューを選ぶ。 以前適当にメニューを指差してオーダーしたら、皿に山盛りの芋虫が出てきたことがあったのだ。 その時は近くで大騒ぎをしていた鳥人の酔っ払いグループに全部お裾分けして金だけ置いて逃げ……戦略的撤退を行った。 「すいませーん!」 真っ白い羽毛の鳥人のウェイターが鳩みたいにぴょこぴょこと首を上下させながらこちらにやってくる。 「これください……これって虫入っていませんよね?」 「バッチ来いだ!」 鳥人のウェイターはそれだけ言って厨房にオーダーを伝えに行った。 なんだ、バッチ来いって? 気を利かせた言い方でもしてくれたのだろうか? たまに翻訳加護は頼りにならない……むしろ誤解になりそうで怖い時もある。 そして、今オーダーしたメニューが虫が入っていないのか、ばっちし入っているのか気になってしょうがない。 もう一度問いかけることも億劫なので、腹をくくりお冷を飲む。 この店ではお冷や飲み物はコップというよりもお椀のようなもので出される。 嘴のサイズが異なる様々な鳥人を相手にするためだろうか。 そんなことを考えながら、お椀から水をすすっているうちに料理が来た。 良かった、虫は乗っていない。 何やら肉厚の野菜をソテーしたようなものの上に、ぷりぷりした肉が乗っている。 まさか鳥肉なのか……鳥肉食うのか? しばし悶々とした後かぶりつく。 味も食感も鶏肉のようだが、なんだろう……少し違う気もする。 齧ってからふと写真を撮っていないことに気がつき、齧ったところを隠すようにして写真に撮る。 深く考えないで食べよう。 香辛料は使ってないのか淡泊な味だ。 塩は少し効いているように感じられる。 もっと味の濃いソースをかけたり、醤油で煮詰めたりしたらかなり美味しいだろうに。 我々の世界の鳥類や爬虫類のような、獲物を丸飲みする生物は味覚が発達していないと何かで聞いたが鳥人もそうなのだろうか。 そこら辺は食性や種族によって違うのだろうか。 もっとも、我々の世界の鳥類のことからこちらの世界のことを考えようとすることは間違いなのかもしれない。 深く考えないで、などと言っておきながらこの有様だ。 それくらい、この鳥人の異世界は私にとって興味深い。 外面的な部分のみならず、それを突き動かす内面的な部分についても。 ふと開けっ放しの窓が暗くなる。 ちらりと目をやると太陽が浮遊大陸の影に入る位置に入ったようだ。 あれもどうやって浮いているのだろう。 精霊の力がどうのこうのという噂は聞いたことがあるが、精霊の力とやらの因果をつなぐルールとは一体何なのか。 「なあ、あんちゃん」 もっともルールがあったとして我々に認識・把握できるものなのだろうか。 ぱらぱらと異世界のガイドやインターネット上での情報には目を通したことがあるが、精霊がどうやって生きているのか、いやそもそも…… 「おーい、あんちゃーん……なあってばっ!」 ふと誰かに呼ばれていることに気が付いた。 先輩の声ではない。 少しどきっとして振り返ると、そこにいたのはなんともまろやかな……ディズニーの映画に出てきそうな顔をした鳥人だった。 翼の先が白っぽい他は全身を黒っぽい羽毛が覆っており、脚はとても良く引き締まっている。 ダチョウだ! 見た感じそのような印象を受けた。 絶対にこの人(?)ダチョウだ! その上、首に巻いた赤いスカーフがナイスだった。 「あんちゃん、ニンゲンさんってやつかい? 旅行者かい?」 ダチョウらしき鳥人の嘴がなめらかに動き言葉を紡ぐ。 口調からしてどうも雄……いや、男性らしい。 「ええ、まあ……何か、用ですか?」 「あんちゃん、昨日もこの店で見かけたけど、こんな何も見どころのない田舎町に何か用なのかい? なんか、どっか案内してほしいところとかはないかい? 何日でも付き合うぜ?」 どうやらガイドの「営業」らしい 「ここから北に二日ほど行くとちょうど浮遊大陸から積もってる……ええと、まあ排泄物がそびえたつリン鉱石の山になってるとことかあって壮観だぜ? まあ、うん……なんて言うか排泄物だけど」 まるでそびえたつの糞のようだ。 なぜか俺の脳裏にはふとその言葉と特徴的な帽子が浮かんだ。 古い映画のセリフだっただろうか。 「最近はハーピーの集団営巣を見に来る人間さんってのも多いと聞くぜ? そういうのがお好きなら東に半日ほどかな、大規模な営巣地だと二日三日……俺はああいうのはあんまり得意じゃないけど、あんちゃんがお好きって言うなら手配するぜ?」 なんかこう卑猥な動きを翼で現す。 先輩が見に行きたかったのってそれだったのだろうか。 「なああんちゃん、なんか言ってくれよ。邪魔だって言うなら俺は引っ込むよ?」 私が無言だったのがいけなかったらしい。ダチョウさんに気を使わせてしまった。 「ああ……ごめんなさい、いきなりだちょ……鳥さんからお誘いがあるとは思ってもみなかったものですんで」 「俺の名はコヤック、見ての通り飛べない鳥人さ。あんちゃんは空を飛べる種族じゃないだろう? それなら、地上から見たオルニトってのもいいんじゃないかい? 俺が責任持って案内するよ」 地上から見た風景か。 それはいいかもしれないと思った。 皆、オルニトに来ると空からの風景を楽しみにする。 当然だ、普通我々には見られないものだからだ。 だが、逆に地上から地上動物らしく浮遊大陸を眺めてみるのも楽しいではないだろうか、新しい発見があるのではないだろうか。 私は前向きな調子で返答した。 「そうですか……何か、なかなか見れないものってありますか? せっかく来たのですから、ものすごい風景とか、こちらでしか見ることのできない大自然みたいなのを見てみたいなぁと、まあ漠然と思ってるのですが」 そろそろ先輩を待つことに飽きていた。 人間不思議なもので、さっきまでは先輩がいつ帰って来てくれるのかと不安に思っていたのに、自分がやってみたいこと、見てみたいものを考えていると、あの先輩ならきっと大丈夫そのうち生きて会えるでしょ、ぐらいに思えてくる。 「オルニトならではの風景、大自然ねぇ……」 コヤックと名乗ったダチョウ鳥人が考え込むしぐさをする。 その姿はどこかユーモラスだった。 「う~ん、墜落した浮遊島でも見に行くかい? あんま大きくないけど」 「墜落ですか!?」 思わず身を乗り出してしまった。 あれが落ちるって言うのか。 窓から空の浮遊大陸を見上げる。 太陽はまだ浮遊大陸の影に隠れていた。 「その墜落したってのはいつ、なんで落ちたんです?」 「あー……悪いが俺は知らねぇ。大昔に落ちたんじゃないかな……俺の婆さんが生まれた頃にはもう落ちてたらしいから」 彼らの寿命ってどれくらいなんだろう。確かダチョウは長生きして五十年くらいだっただろうか。 「ただし、ちょっと遠いぜ。ここからだと……う~ん……XXXに乗って四日……いや、六日ぐらいかかるかもな」 何に乗っていくのか、そこがうまく聞こえなかった。 コヤックの滑舌だろうか、それとも翻訳加護のグレーゾーンだったのだろうか。 「結構遠いんですね」 「普通は行かないような場所、なんていうか荒野を抜けたところにあるんだ。お通じが悪い」 多分、交通の便が悪いとかそんな意味だろう。 六日もかけて旅行する。いや、往復すると約二週間か。 わくわくすると同時に少し不安でもあった。 多くの観光客がいるところならそれなりに安全なのかなと思うが、鳥人もあまりいないような場所に行くらしい。 疫病、犯罪、飲食物……大丈夫だろうか。 コヤックは私の表情から私の不安を読み取ったのか、大丈夫だと繰り返した。 「まあ俺がついていれば大丈夫よ。人間さんを案内するのは初めてだけど、もう何回も行ってる場所だ」 翼で胸のあたりをドンと叩く。 こういう仕草は人間と彼らで共通なのだろうか。 「旅してる間の食いもん飲みもん寝床はちゃんと用意するぜ」 私は悩んだ。 帰ってこない先輩のこと。 所持金のこと。 安全性のこと。 だが脳裏にとあるイメージがくっついて離れなかった。 何もない荒野に島が一つ落ちて崩れていて、その向こうに日が沈んでいく光景…… なんて、なんてロマンチックなんだろう。 見てみたいと思った。 そんな風景を…… 「是非、連れて行ってください!」 私はコヤックの申し出を承諾し、その落ちた浮遊島を見に行くことにした。 「じゃあ、契約書っていうか書類何枚かお願いね。あんちゃん、お名前は?」 コヤックはサイドポーチからばさばさと丸められた紙の束を取り出す。 「名前ですか、羽鳥と言います」 私は漢字の意味をコヤックに教えた。 「いい名前じゃないか! まさにあんちゃんはこの国に来るべきして来たんだよ!」 「ありがとうございます。まあ、私は飛べませんがね?」 早速商談に入り、筆談も交えてガイド料などを相談した。 ガイド料はちょっとした国内旅行が数回はできそうな金額だった。 これが安いのか高いのか私には分からない。 だが値切って安全性に問題が生じたり、ガイドのコヤックの心証を害するようなまねはしたくなかった。 私が無事に帰って来れるかは彼にかかっているのだ。 「実はガイド料はもう少し安くしてもいい……その代わり欲しいものがあるんだ」 一通り話し込んだ頃、コヤックがそう切り出してきた。 「なんです?」 「カメラってやつを人間さんは持ってるって聞いた。それを一つ俺にくれないだろうか」 私は反射的にポケットに入ってるデジカメに触れた。 カメラのようなものは彼らの社会には存在しないのだろうか。 だが、これはあげるわけにはいかない。 最近は家電業界の競争のおかげで随分安く手に入るものだが、今持っているこのカメラにはこの旅の記録が入っている。 それに、パソコンがなければデジカメを持ってもコヤックにはあまり意味がないと思った。 そこで私は自分がチェキを持っていたことに気が付いた。 チェキとはいわば小さなポラロイドカメラである。 これなら乾電池とフィルムがある限りは、こちらの世界でも使うことができる。 海外旅行などであまり日本人がいないような場所に行くとき、これで相手を写真に撮ってあげるとコミュニケーションが円滑になると旅行本で読んだことがあり、今回の旅行のためにわざわざ用意したのだ。 私はチェキをコヤックに見せ、実際に写真を撮って使い方を示した。 コヤックはチェキをとても気に入ったようで、深い藍色の目を爛々と輝かせながら写真に写った自分の姿を見つめていた。 「これでいいかな?」 コヤックに聞いてみる。 「こいつは最高だ! まるで冬の朝の空気だよ!」 スラングみたいな表現、あるいはことわざだろうか。 いずれにせよ、コヤックがチェキを気に入ってくれたことは私にも理解できた。 翌朝、コヤックは約束の時間に一時間以上も遅れて現れた。 これが「鳥頭」のせいなのか、単にコヤックが時間にルーズなところがある性格なのかは分からなかった。 「ああ~待たせてしまって悪いことしたね! いや、道が混んでたもんだからさ!」 コヤックは誤魔化したいのか、天然なのか昨日以上に明るかった。 その背後には我々よりも二回りは大きいであろう二匹のラクダ…… おかしい…… ラクダは四本足のはずなのに目の前のラクダには二本しかない。 おまけに顔と脚を除いて全身は細かい灰色の羽毛に覆われており、両手の代わりに翼と申し訳程度に伸びた鉤爪がちょこんと見えている。 またダチョウかぁ。 そう思ったが見直してみるとシルエットやその顔つきはダチョウというよりなんだかトカゲ……いや、恐竜のようだ。 恐竜の中でも特に鳥に近いと言われるような種類、それに近い感じを受けた。 始祖鳥というよりは羽毛恐竜と言われるようなものだろうか。 鮮やかな黄色の嘴がなければ私はこの生物を恐竜と認識していただろう。 「なんですか、これは?」 まだ言い訳を続けるコヤックに背後の動物について尋ねてみる。 「影が薄い馳鳥だよ」 その翻訳はおかしいだろう。 くすんだ体毛の色合いのことを言いたいのだろうか。 無理に漢字で表現するとしたら、「灰馳鳥」とか「淡馳鳥」とかだろうか。 確かに羽毛は淡い灰色をしており、遠目には銀色に見えるが近くでみるとやや汚らしい印象を受けてしまう。 「こいつに乗って旅するんだ。荷物の運搬もこいつ頼みだよ」 なんだか砂漠をラクダで旅するみたいだな、そう思った。 ラクダで砂漠を旅するとか憧れるが、実際には鳥取砂丘に行ったときに乗ったことがあるくらいだ。 「私はてっきり空を飛んで行くのか、精霊の力を借りるのかと思っていました」 コヤックはなんだか申し訳なさそうに苦笑した。 「あんちゃん、こんな田舎町じゃ空路なんて生活必需品や浮遊大陸との定期便くらいしかないよ。そして精霊を利用するには……俺は目的地に到達するまでネタがもつ自信がないね」 個人で利用できる運送用の大型鳥みたいなものは限られる、ということなのだろうか。 考えてみれば自分はバックパッカーなのだ。 観光客のために交通網が整備されていない場所に遊びに行くのはむしろ本望と考えるべきだろう。 私は気を取り直して灰色の馳鳥に近づき、触ってみた。 羽毛は思っていたよりもずっと軽く柔らかい。 しかし、その脚は闘鶏の脚のように引き締まっており、これで蹴られたら骨が逝きそうだ。 鮮やかな黄色の嘴には切れ込みがあり、そこに轡を噛ませてある。 「なかなか立派だろう? あんちゃんのためにこの町で一番と二番の影の薄い馳鳥を借りてきたんだよ」 コヤックが誇らしげに胸元の羽毛を膨らませる。 「私はこいつに乗るの初めてなんですが大丈夫ですかね?」 彼は誇らしい態度を崩さずに私の問いかけに答えた。 「こいつらは元々小さな群れで行動する陸鳥でね、後から走るやつぁ先頭の動きを真似するようについてくるんだよ」 つまりはコヤックが先頭を行き、私の乗るやつがついていくってことだろうか。 「だから、あんちゃんが手綱を離して落っこちない限り大丈夫だよ」 不安がないわけではなかったが、とりあえずコヤックの言葉を信じ、まずは出発することにした。 コヤックはテキパキと毛布のようなものを畳んでクッションをこしらえ、それを鞍に乗せる。 「さあ、乗って!」 コヤックに促され、私はよじ登るようにして馳鳥の背中に乗った。 「出発するときはこの棒でケツを軽く叩いてやって……あんまり強く叩くと恨まれまれるよ!」 乗り心地は思ったよりもぐらぐらし、コヤックの話を聞いている間にも馬上ならぬ鳥上での姿勢をくずしてしまいそうになる。 「すぐ慣れるさ。さっきも言った通り、手綱だけは離さないでね」 そう言ってにっこりとほほ笑むと、コヤックは自分の馳鳥に軽々と飛び乗る。 ああ……なんて光景だろう。 ダチョウみたいな鳥人が大きなダチョウみたいな鳥に乗っている。 我々が巨人に運んでもらって移動しているようなものではないか。 こうして私の長い旅行が始まった。 馳鳥は思っていたよりもゆっくりと歩く。 だが、その歩幅が大きいため背中に乗っている私の体は結構揺れる。 うっかり居眠りでもしたら振り落とされてしまいそうだ。 「ここら辺は……が様々……外が荒地に……一面の……ない……えるのが……」 やや先を並走する馳鳥からコヤックが何かを話しかけてくる。 身振り手振りからして、この辺りの自然環境とかそういうことを話しているのだと思うのだが、いかんせん馳鳥の足音や周辺の木々が風に揺れる音でほとんど聞こえない。 今、我々が移動しているのは谷間の道だ。 道と行っても舗装してあるわけではなく、時折ある道標を頼りに踏み固められたむき出しの地面を移動している。 両側には緑で覆われた山が迫り、時折やけに大きな樹木が斑点状に密生している。 詳しく観察してみたいし、写真にも撮りたいが、今は馳鳥から落ちないようにコヤックに続くだけで精一杯であった。 もう町を出て二時間はこうして移動しただろうか。 太陽もすっかり高く上り、燦々と陽光を浴びせてくる。 空はどこまでも青く、その片隅に浮遊大陸とその周囲の群島が見える。 遠くの景色を眺めていると、くすくすと無邪気な声で笑いながら何か半透明なものがきらめきながら渦を巻くようにして、後方から横を通り過ぎていく。 一瞬遅れて、私の体を濃厚な緑の香りをまとった爽やかな風がつつむ。 大気の精霊だろうか、コヤックが通り過ぎていくものに何か声をかける。 今のも写真に撮りたかったな…… 私はカメラをポケットではなく、首から下げておけば良かったと思った。 そうすればきっとシャッターチャンスに即応できただろう。 さらに一時間ほど頑張って馳鳥にしがみついていると、前を行くコヤックの乗る馳鳥が停止し、コヤックはこちらに手振りで止まって降りるよう促してきた。 私がなんとか手綱を引くと、ぐっと馳鳥の首が持ち上がり、ゲエッゲエエッと泣きわめき歩みを止めた。 馳鳥の鳴き声を聞いたのはこれが初めてだったが、その声の汚さに少しびっくりした。 「ここの水は綺麗だ。少しこいつらに水を飲ませよう」 私はまるで気づいていなかったが、コヤックのいる方にはこんこんと湧く泉があった。 コヤックの動きを真似するようにして、手綱を近くの木に結びつけ、馳鳥に水を飲ませる。 その間に我々は昼食を摂る。 コヤックはがくがくに凹んだ金属製の小鍋を取り出して泉の水をすくい、そこにさらに何か穀物のようなものの粉末を入れて軽く練った。 次に木製のハーモニカのような楽器を取出し、口にくわえる。 嘴で壊さないようにするためか、ちょうどハーモニカの口を当てるような部分は頑丈そうな金属で嘴にぴったり合うよう補強されている。 そして、我々のように両手で楽器を支えたりはせず、嘴だけで楽器を保持しリズムカルで少し勇壮な感じのするメロディを繰り返し奏で始めた。 「!!」 何やら突き抜けるような音響とともに小鍋の下に軽やかに火が生じ、くるくると円を描く。 コヤックはハーモニカのようなものを演奏しながら、スプーンで手早く小鍋の中をかき回した。 「ありがとう、もういいぜ」 ある程度かき混ぜると楽器を嘴から降ろし、コヤックは誰かにそう言った。 「は~い」 今度はキーンとした声が響き、シュッと火が消える。 火の精霊を操っていたのだ。 「我々は歌が下手な種族でね……歌おうとすると、ちょうどこいつらみたいにガラガラした声しか出ない」 興味深そうに見る私の視線に気づいたコヤックがどこか自重気味にそう言いながら、肉厚の葉の上に出来立ての団子を二つ乗せて私の方に出してくれた。 「だから精霊の力を借りるのにヴヴァヴァヴヴァを使ってるんだ」 ヴヴァヴァヴヴァってなんだヴヴァヴァヴヴァって? その素っ頓狂な名称に思わず噴いてしまったが、これも翻訳加護のせいだろう。 恐らくはあの楽器の種類か固有名のことなのだろう。 「あのヴヴァヴァヴヴァの演奏の仕方で精霊にいろいろなことをお願いできるってことですか?」 「なんだいヴヴァヴァヴヴァって? この楽器のことか?」 言葉のキャッチボールがうまくいかなかった。 翻訳加護の相互変換がうまくいっていないのだろうか。 コヤックが話した言葉がヴヴァヴァヴヴァと変換されて私に聴こえただけで、私がヴヴァヴァヴヴァというとダメらしい。 困ったものである。 「火の精霊の力を借りる時は今みたいに力強い曲を、風の精霊ならもっと軽やかでリズミカルな曲、そんな風にして何パターンか演奏の仕方があるんだよ……あ、柔らかいうちに昼食食べちゃいな」 「ありがとう、いただきます」 つい習慣でぽんと手を合わせてから、団子を口に放り込み咀嚼する。 キビの仲間を団子状にしたものだろうか。 味は特にしないが小学生の頃飼育係として毎日のように嗅いだ鳥小屋の臭い、あの飼料の臭いをもう少し甘ったるくしたような香りがする。 「食べられるかい?」 「いや、私たちも食べますよ、こういうの」 コヤックは私の口に合うのか気にしてくれていたらしい。 安心したのか、ニコッと笑うと私の真似をしてぽんっと翼の先にある手を合わせる。 「いたがきます」 なんか違う。 そしてコヤックは咬まずに団子をぽんぽんと放り込んではあっという間に飲みこんでしまった。 「まだ先は長いことだし、ひとまず木陰で居眠りを」 言うが早いかコヤックは正座を崩したような座り方をし、その首を折りたたむようにして目を閉じた。 いつもああやって眠っているのだろうか? あまりしげしげと眺めても気まずいので私もごろんと横になり寝ることにした。 青空を高く何かが集団で飛んで行く。 あれは鳥人だろうか、鳥だろうか、それとも何か別のものだろうか。 ~コヤックとの旅 三日目の朝~ 昨日の昼過ぎに我々は谷間を抜けて岩場へと入った。 行けども行けども灰褐色の岩石で覆われた台地が広がり、点々と背丈の低い植物が生えているという単調な景色が続く。 はるか彼方進行方向にはぼんやりした山脈が、我々の背後には浮遊大陸が見える。 寝袋から出て、朝食にいつもの団子を食べ、歯を磨く。 コヤックは何やら繊維質な植物片で嘴の内側を磨き、その外側を木片のようなもので磨いている。 その木片には油脂が含まれているのか、磨いた後のコヤックの嘴はきらりと輝き、いかにもぱりっとした印象を与える。 「あんちゃん、ここから先は水の入手がちーと運頼みになる。今のうちそこの井戸で水筒いっぱいにしときな」 「井戸? 井戸があるんですか?」 ずっと人家のない道を移動してきたので井戸があるとは思わなかった。 「あれ? 昨夜飯作る時、そこの岩陰の井戸から水とったんだけど……見てなかった? ずっと昔はここらに小集落があったらしい。もうちょっと行くと建物の跡とかあるぜ」 「へぇ……」 私は井戸水で水筒をいっぱいにし、井戸を含めてあたりの風景を写真に収めてから出発した。 「よい……しょっと……ぐっ……」 だが、馳鳥に乗る時が一番テンションが下がる。 ずっと揺られるこの背中に乗っていたせいかお尻が痛くなって来たのだ。 痔にならないといいな…… しばらく行くと、小さな家くらいはあるような巨石が目立ってきた。 さらに進むと、尖塔のような特異な形をした巨石が林立しており、その合間を縫うようにして我々は進んでいく。 どんな地質学的作用、あるいは精霊の力が加わったらこんな地形が生まれるのだろうか? 時折、首を上へ向けると林立する石塔がいくつも空に伸び、私の視界を分断する。 時折石塔の間を駆け抜ける風がボーっと汽笛のような音を立てる。 「ほぉ~……」 溜息しか出なかった。 お尻の痛みを我慢し、必死にカメラのシャッターを切る。 ふと前を見るとコヤックの乗る馳鳥が止まっていた そしてコヤックは石塔の間を指さし、私にその方向を見るよう促している。 なんだろう? そう思って馳鳥に静かに前進させ、そっとコヤックの指し示す方向をうかがった。 ネズミだ。 ただし、人間の子供くらいの大きさがあるうえに、鼻の上あたりに大きな角を持っている。 漢字なら有角鼠とでも書けばよいのだろうか。 どうもその角を使って、荒野にへばりつくように生えている低木を掘り起こしてその根をかじっているらしい。 地上部よりも根っこの方が水分が豊富だとか柔らかくて食べやすいとかあるのだろうか。 だが、私をもっと驚かせたのはこの有角鼠の背後にいた。 ヒトデにしか見えないものが体の底面についた口で草を食んでいたからである。 私はコヤックにお願いして有角鼠がその場を立ち去るまで待ち、念のために軍手を二重にはめてそのヒトデを捕まえた。 真っ赤な体色に五放射相称の形状、五本の腕の先端は吸盤状に広がっており、これにより体を持ち上げた姿勢を取ることもできるようだ。 捕まえてみると、その五本の腕は思いのほか力強くぐいぐいと動く。 地球上ではあり得ない生物や生活様式などは私にとって非常に熱い、熱すぎる、風が語りかける。 「そいつは美味しくないよ! 毒がある!」 私がいつまでも熱心にヒトデを観察していることにしびれを切らしたのか、コヤックがそう言った。 これを食べようとしている、そう見えたのだろうか。 仕方なく、私はこの陸棲ヒトデをこういう時のために持ってきた空き瓶の一つに入れ、馳鳥に戻った。 詳しくは後で解剖してみようと思ったのだ。 「時間を取らせちゃって申し訳ない」 私はコヤックにそう謝りながらも、なんだかわくわくしてきた。 人間のまだ見ぬ世界の動植物を今目の当たりにしていることを再認識させられる。 まるで博物学が隆盛した探検家たちの時代のようだ。 世界各地に決死の探検を行い、誰も見たことのない生物や景色を追って標本を集める…… 彼らと同じことをひょっとしたら私もできるかもしれないのだ。 仕事でルーティンワークをするようになってから、眠っていることの多くなった私の知的好奇心が芽を伸ばし、枝葉を展開して久しぶりに光をたっぷりと浴びている。 お尻が痛いことも、どこかに行ってしまった先輩のことも忘れて私は今度はどんなものが見れるのか、また何かいないかと歩く馳鳥の上からあちこちへと丹念に視線を走らせた。 「止まって!」 私のそんなわくわくした気持ちに突き刺さったのはコヤックの鋭い一声だった。 慌てて手綱を引き、馳鳥を止める。 「ど、どうかし……」 「静かに! ……なんか変だ……」 コヤックは羽毛が逆立たせ、普段見せないような鋭い目で周囲を見渡していた。 その手には、いつの間にか短刀が握られている。 周囲は石塔が林立しており視界は良くない。 どこかに野盗でも潜んでいるのだろうか。 私の精神にはさっきまでの高揚感とは一転、冷たい緊張感が刺しこまれる。 コヤックはゆっくりついてくるようにと身振り手振りで伝えてきた。 私の手綱を握る手が汗で滑る。 「あんちゃん、左へっ!」 コヤックがこちらを振り向き、ひきつった表情で絶叫した瞬間だった。 腹に響く低い咆哮と共に石塔の影から大きな口が飛び出してきた。 「うわああっ!」 私は慌てて馳鳥を棒で叩き、左側へダッシュさせる。 飛び出して来た口は私のすぐ後ろでガツンと閉じられた。 大蛇っ!? 咄嗟のことで何が起きたのか分からない。 口をきっと閉じ、奥歯をかみしめる。 そして、走る速度を上げるために必死になって馳鳥を叩いた。 馳鳥も恐怖しているのか、普段は挙げない鳴き声を上げながらかつてない速度で石塔の間を走り抜ける。 再び背後であの低い咆哮がし、何かが空中へ舞い上がって追ってくる。 私は振り返って見た! それを! 明るい褐色の細身の胴体とそこから長く伸びる首、不釣り合いなくらい大きな蜥蜴のような頭部、そして羽ばたく翼…… 「ワイバーン!?」 思わず声に出してしまった。 ガイドブックで見たのとは色も細かな形状が違い、頭部はシュモクザメのようにT字型になってT字の左右の端に目が付いている。ワイバーンにも何種類かいるのだろう。 思っていたよりは小さいが、それでも象くらいの大きさはあり、人間の大きさなら咬まれただけで致命傷だろう。 再び咆哮を挙げながらワイバーンは私の背後に迫ったが、林立する石塔がその行動の妨げとなっているらしい。 私は全身の毛穴から汗を出しながら必死に馳鳥を叩いた。 懸命に馳鳥の手綱を握り、石塔の間をジグザグに走らせていく。 「あっ!」 汗で手が滑った。 私の手から逃げた手綱は馳鳥の動きに合わせて跳ね踊る。 落ちないように大慌てで馳鳥の背中に抱きつき、必死に手綱を掴もうとするが焦ってしまい掴むことができない。 「うわっ!」 馳鳥が急に方向転換し、振り落とされそうになる。 視界の隅に離れていくコヤックの馳鳥が入ったが、私は必死に馳鳥の背中に掴まっているだけで精一杯だった。 私は全力疾走する馳鳥の背中に必死の思いで抱きついていたが、しばらくしてなんとか姿勢を立て直し手綱を手中へと取り戻した。 馳鳥をなんとか停止させ、周囲の状況を確認する。 私はまだ林立する巨石の石塔群の中にいた。この辺りはずっとこの景色が続いている。 静かだった。 ワイバーンの羽ばたく音も咆哮も聞こえない。 聞こえるのはただ、自分の心臓の連打音だけだった。 ワイバーンはもういないみたいだ。 そう思った瞬間、脚が震えだした。 指先がどんどん冷たくなっていき、手も震えだす。 自分が死線をさまよったことを今になって脳が実感し、脅威が去った後で恐怖に襲われる。 私はからからに乾いた口内を舌でなめながら、自分が落ち着くのを待った。 周囲にワイバーンの気配はないが、コヤックの気配もない。 しばらくこの辺りを円状にぐるぐるとまわり、コヤックの姿を探す。 誰もいない。 「コヤーック! コヤーック! いませんか!?」 我慢できなくなり、コヤックを大声で呼んでみた。 だが返事はない。 はぐれたのだ。 いや、コヤックは無事だろうか……まさか…… 再び手が震えだす。 戻るか? ワイバーンは怖いが、離ればなれになった地点付近でコヤックが私を探してくれているかもしれない。 道に迷った時に大切なのは、面倒くさがらずに道が分かる場所まで戻ることだ。 今回のケースは少し違うが、それに通じるものはある。 震える手で手綱を引き、馳鳥を旋回させようとしてはたと思考が停止した。 どこまでも、どこまでも巨石の石塔が林立する景色…… 戻るも何も来た道が分からない。 おまけに私は馳鳥が疾走している間、その背中にしがみつくのがやっとで周囲の様子など見ていなかった。 今、私は初めての異世界、それも人間はおろか鳥人もあまり訪れない場所で孤立無援の状況にある。 「勘弁してくださいよ……」 心の中では落ち着かなければいけないとわかっていても思わず呟いてしまう。 私はひょっとしたらコヤックと合流できるのではないかという微かな望みのために、そして自分の心を落ち着けるためにそれから三時間、その場所から動くことができなかった。 日が傾き始めた。 私は馳鳥に草を食ませ、自分は地面に座り、どこかにコヤックの姿はないものかと辺りを見回していた。 どうしよう…… 数日前まで先輩に置いていかれて異世界の町で一人になっていた。 今度はコヤックと離れて異世界のどこともわからない場所で一人になっている。 出発前にコヤックからもらっていた地図を広げ、山脈の位置と彼方に見える浮遊大陸からおおよその現在位置を割り出そうとしてみたが、この作業をするにはこの石塔が林立する場所から出ないとダメだ。 視界が悪い。 しかし、この場所から出たら今度はワイバーンから逃げる場所がないのではないかという恐怖がべったりと私の脳に張り付く。 コヤックを探しに戻るにもやはりワイバーンが怖い。 私はしばらく悩んでいたが、妥協案としておそらくは進行方向と思しき方向にゆっくりと進み、周囲の地形を観察できる開けた場所を探すことにした。 いくら怖くても動かなければ今度は野垂れ死にという可能性が大きくなる。 そのまま進んでいくと林立していた巨石の石塔は次第に疎らになり、ついには開けた荒野に出た。 遠くに山脈の連なりが見え、ところどころに植物が生えている他は何もない。 本当に誰もいない場所に自分一人がいる。 この事実に私の心は恐怖した。 日本や海外で一人旅は何度かしたことがあるが、それはあくまで自分にとっては知らない場所でも他の人間がいる場所を旅しただけである 今、私は本当の意味で孤独なのだ。 ふと、何気なく空を見上げる。 夕焼け数歩手前、ちょうどそれくらいの空に筋状の雲が浮かんでいる。 そんな空の一角に、以前見た戯れるように渦を巻くきらめく存在の姿があった。 精霊だ。 ここでふと、私は自分が精霊の力に支配された世界にいることを思い出した。 「おーいっ! おーいっ!」 私は大気の精霊に手を振り、声を挙げ、懸命にこちらの存在に気づいてもらおうとした。 「なーにー?」 思っていたよりも低い声で返事があり、するすると空から零れ落ちるようにきらめく半透明のものが私の前に降りて来た。 その姿は揺らめいて絶えず形状と色彩を変化させている。 私は安堵と不安のないまぜになった気持ちで大気の精霊に尋ねた。 「コヤックを、コヤックを知りませんか?」 「コヤック?」 「ダチョウみたいな鳥人なんです。一緒に旅をしていたのですがはぐれてしまって……」 「ダチョウ?」 精霊は退屈したかのようにあくびをすると、ふわりと空中に舞い上がってしまった。 「悪いけど人探しなら他を当たって」 「待って、待ってください! では、どこかに町や村はありませんか?」 次第に精霊のきらめきが強いものになっていく。 「う~ん、確かあっちの方かな?」 ごうっと一陣の突風が吹き、思わず目をつぶる。 再び目を開いたときには、もう大気の精霊の姿はなかった。 さきほど起こった風の吹いた方向に町だか村だかがあるというのだろうか? そうだとしたら気精は風下、風上、一体どちらに行くよう指示したのだろう。 常識的に考えれば風下だろうか。 落ち着いて判断するために背嚢を降ろし、中から地図を取り出す。 コヤックと話し合いながら書きこんだメモを丹念に見ていく。 そうだ……万が一遭難したときのためにコヤックが何か言っていた。 現在地が分からなくなったら、太陽が沈む方向と三つ又の山頂を有する山が一直線になるように移動する そうすれば目的の落ちた浮遊島近くの鳥人集落に出る 集落の目印は高い見張り櫓 私の地図にはそうメモ書きがあった。 この内容を私に話している以上、コヤックは私とはぐれ、私を探しても見つからない場合、この目的地近くの集落に向かっている可能性は高いと考えていいのではないだろうか。 そう考えると少し気持ちを強く持つことができた。 目的がはっきりしたためだ。 幸い、私には馳鳥がいる。 食糧は半分ずつコヤックと私の馳鳥に分散して持たせていたため、しばらくは心配しなくても大丈夫のはずだ。 そして、今日までで出発して三日が過ぎた。 当初は六日程度の予定だったわけだから、最速であと三日も移動すれば目的地につけるのではないか。 大丈夫、今回だってきっと大丈夫だ。 悩んでたって何も解決しない。 一人でもこの集落に行こう。 そう決意してからの私の動きは速かった。 ワイバーンに追われた恐怖も少し和らいで来た。 この先道に迷った時のために今いる場所の写真を撮り、持っていたサインペンで近くの岩の幾つかに私とコヤック、そして二匹の馳鳥の落書きをし、矢印で私の進む方向を描いておく。 ひょっとしたらコヤックが見てくれるかもしれない。 私は荷物をまとめると勇んで馳鳥にまたがった。 「これからしばらくは君と二人っきりかもしれない……すまないけど、よろしく頼みますね」 馳鳥の首筋を優しく撫で、次に出発のために棒を振う。 その時、グォォッと何かが鳴った。 私の腹の音だった。 これは良い -- (名無しさん) 2013-03-25 02 15 40 ナイス旅 -- (名無しさん) 2013-03-25 12 47 34 1なのにこのボリューム!しかししょっぱなの食事が余りにも美味そうで全部受け入れるよ -- (としあき) 2013-03-27 00 27 02 開いて右バーのスライドカーソルの小ささにボリュームの大きさを覚悟した。つらつらとつづられる日記はまるで独白のようだけどオルニトを旅している感じはよくでてた -- (とっしー) 2013-03-29 23 44 02 オルニト料理食べたい!けっこうフレンドリーな鳥人が多いし空と精霊のいろどりの風景とかすごそう -- (とっしー) 2013-04-05 21 15 53 とても丁寧にオルニトと異世界旅行を表現していました。ほんわかとした珍しいものばかりの旅路から一転して一人進まざるを得ない状況になったにも関わらず腹の虫の音が異世界に順応して一歩前に進むのだというはじまりを感じました -- (名無しさん) 2016-05-22 19 05 43 やはり異世界で人間が旅行するにはガイドが必須だなぁ。うっかり変なものを食べちゃうだけでも危ない危ない。宿に泊まりながら近所を食べ歩くだけでも楽しそう -- (名無しさん) 2017-03-08 12 36 22 名前 コメント すべてのコメントを見る