約 953,207 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/669.html
…━━━━もうすぐクリスマスがやってくる…。 …街中が恋とプレゼントの話題で騒がしい。 ところで…「手編みのマフラーとかセーターとか…貰うと結構困るよね…」なんて言う輩を希に見掛ける昨今…… 実を言うと俺は、そういったプレゼントに僅かながらも、密かに憧れを抱いていたりするのだった━━━━━… 【凉宮ハルヒの編物@コーヒーふたつ】 吐息も凍る様な、寒空の朝… 俺は、相も変わらずいつもの公園でハルヒを待っていた。 つい先程まで、自転車を走らせる事により体温を気温と反比例させる事が出来ていた俺だが、公園に辿り着いてから暫くの間に指先は痺れる様な寒さを感じ始めていた。 (まったく…こんな日に限って待たせる…) 大体…ハルヒの奴はいつもそうだ。 来て欲しい時に来なくて、来て欲しくない時に限って現れる… 「まったく…俺に何か恨みでもあるのか…」 「ん?何か言ったかしら?」 「…………へ?……うおっ!?!」 気付かぬうちに側に居たハルヒに、俺は思わず驚きの声をあげる。 そして…その驚きの声を辛うじて挨拶に差し変えた。 「お…おおはよう!だな…」 「うん、おはよう。…何慌ててんのよ?…………まあ、良いわ。あのさ…これ、前のカゴに入れてって?」 「あ?ああ…」 ハルヒが差し出したのは、見覚えがあるデパートのロゴの入った紙製の手提げ袋だった。 その半開きになった口の中には、いくつかの青い毛糸と…編み針?…そして、編みかけの『何か』が見える…。 「ハルヒ?これ…」 「ああ、マフラー…もう少しで完成なのよ!だから、学校で仕上げちゃおうと思って…」 「ああ、そうか…」 気の無い返事をして見せたものの… 俺は今…… 猛烈に感動していたっ!! だって、そうだろ!? このハルヒに限って『手編み』など絶対に有り得ないと思っていたが、今まさに…その『手編み』のマフラーを制作中なのだ! しかも、この場合のプレゼントの相手は禍いなりにも『彼氏』であるこの俺だろう! この世に生を受けて十余年… 遂に俺の首に手編みのマフラーが巻かれようとしているっ! ところで…コレはクリスマスプレゼントなのか? だとしたら少し気が早い気もするが、セッカチなハルヒなら十分ありえる話だ…。 俺は逸る気持を押さえきれずに、自転車の後ろにハルヒを乗せると力一杯ペダルを踏み始めた。 「ち…ちょっとキョン!何、急いでんのよ?」 「ん?急いでなんかないさ!それより、いつもの販売機に寄るだろ…?」 「え?…まあ、寄るけど…」 「奢ってやるよ!」 「はあ?」 「だから、奢ってやるって!」 「…うん。…………(キョンが元気いっぱいだと、微妙な気分になるのは何故かしら)…」 「ん?何か言ったか?」 「べ…別に何も言ってないわよっ!」 やがて、いつもの販売機にハルヒを乗せて到着した俺は、自転車から降りる瞬間にハルヒに気付かれない様、そっとカゴの中の袋に目をやった。 先程の通りに半開きになった口から、編みかけのマフラーが見える。 俺は、思わずニヤケそうになるのを必死に堪えながら販売機に向かうと、コーヒーとカフェオレを買いカフェオレをハルヒに手渡した。 「ほら…飲めよ」 「あ、ありがと…」 「大変だったろ?」 「え?何がよ」 「編みモノ」 「…うん。まあね…」 「そうか…」 大変だったんだろうな……だが! だからこそ手編みは良いのだ! その『大変』な作業により編み込む想いの数々…これこそが手編みの醍醐味だ…! 俺はコーヒーを一気に飲み干すと、ハルヒを自転車に乗せ、再び全力でペダルを踏み始めた。 学校に着いて…授業が始まっても、俺の意識は黒板へと向く事は無かった。 (今、この時も…おそらくハルヒは俺の為に一生懸命にマフラーを編んでいる…) 考えただけで、顔の筋肉が弛緩む。 そして、振り返って様子を伺ってやりたくなる…が、今は止めておく。 楽しみは後回しにしたほうが喜びが大きいからな。 (さて、今のうちにマフラーを受け取った時に言う言葉でも考えておこうか…) 俺は、ハルヒがどんな顔をしてマフラーを俺に手渡すのか考えてみた。 そして…やっぱりハルヒの顔が少しだけ見たくなって、気付かれない様にそっと振り返えった。 伏し目がちに手元を見つめながら、忙しく編み針を動かすハルヒが見える… もうそれだけで俺は、胸の中にジンワリとこみあげて来るモノを感じていた。 様子から察するに、おそらく完成は放課後くらいだろうか…。 長い一日になりそうだ。 昼休みになっても、ハルヒの手は止まる事は無かった。 俺は何か労いの言葉でも…と考えながらも、(やっぱり、そういうのは後にとっておこう)と思い直して、ただ振り返ってハルヒを見つめるだけにする。 そんな俺の様子に気付いたハルヒが、手元と目線はそのままに俺に語りかけてきた。 「なあに、キョン…どうしたのよ…」 「えっ…ああ、いや…その…毛糸の色、良いな」 俺は上手い言葉が思い付かずに、適当に見つけた言葉を返した。 ハルヒは、そのまま話を続ける。 「そう。この毛糸を見付けた時ね?この色は絶対にアタシに似合うって思ったのよ。 丁度…良さそうなマフラーが売って無くて、がっかりしてた時だったから…すぐに自分で作る事を決めたわ!」 (何……と?) 「あら、キョン?どうしたの?固まっちゃって…」 「……………いや、何でも………無い」 …やっぱり…ハルヒはハルヒだった…。 俺は、今朝からの浮かれまくった自分を思いだし、激しく自己嫌悪に陥りながらも姿勢を元に正しながら冷静に考えてみる。 (そういえば、ハルヒの得意なセリフの一つに「無ければ自分で作ればいいのよっ!」ってのがあったな…) おそらく今回も…街へマフラーを買いに行ったものの、気に入ったものを見付けられずに結局自分で作る事を思い付いたんだろう。 (なんてことだ…まったく…俺ときたら…) やがて…授業が始まっても、俺の意識は黒板へと向く事は無かった。 今朝からの激しい期待感を失った事に因る倦怠感が全身を漂っている…。 ああ…長い一日になりそうだ…。 そして…放課後… 部室に行くと、既にそこには古泉と朝比奈さん…そして長門に…ハルヒも居た。 「あら…古泉君。素敵なマグカップですねぇ…」 朝比奈さんが、古泉の持ってきたと思われるマグカップを、何やら羨ましげに眺めている。 そして、毎度お馴染のニヤケ面で古泉がそれに応えている…。 (ふん、たいしたマグカップじゃ無いじゃないか…) 俺は意味もなく腹立たしくなり、二人の前を軽く挨拶をしてすり抜けると、ストーブの近くの椅子に腰を下ろした。 ハルヒは教室より引き続き、忙しく編み物に興じている。 そして俺の存在に気付くと、先程と同じく手元と視線はそのままに「見てなさい?もう少しで完成するわよっ」と得意気な口調で話しかけてきた。 俺は「ああ…そうか」とそっけない返事をしながら、ストーブに両手をかざす。 そんな俺とハルヒの様子に気が付いた古泉が、ハルヒの方に視線を送りながら「キョン君のですか?羨ましいですね?」とでも言わんばかりに俺に微笑みかけてきた。 俺は「違う違うっ」と手を鼻先で二三度振ると、古泉が「それは残念」と両掌を天井に向けるのを待って、ポケットから携帯を取り出して開いた。 とりあえず…授業中に来ていた分のメールを確認しようとディスプレイを見るが…なんだか面倒だ……そしてダルい…。 俺は何もしないまま、携帯を閉じると机に上体を伏せた。 ふと気が付くと、視界に本を読む長門が映る…。 (ああ…こいつは、こんなダルさとは生涯無縁なんだろうな…) やがて、俺は足元に当たるストーブの暖かな感触に眠気を覚え…そっと目を閉じた。 「…ョン…」 「ん…?」 「…キョン……」 「なん…だ…?」 「起きなさいよっ!バカキョンっ!」 ハルヒの怒鳴り声に慌てて体を起こすと、既に部室の中にはハルヒ以外に誰も居なくなっていた。 「あれ?みんなは…どうした?」 「とっくに帰ったわよ!……それより…ねえ、見て?遂に完成したわよ!素晴らしい出来栄えだと思わない?」 「ああ…まあな…」 「いっその事…もういくつか作って、アタシのブランドでも立ち上げてネットで売り捌いてやろうかしらっ?」 ハルヒは、出来上がったばかりのマフラーを俺に見せながら満面の笑みを浮かべていた。 (手編みは貰い損ねちまったが…まあ、いいか…) 俺は「良かったな」とハルヒに軽く微笑みかけると、立ち上がって帰り支度を始めた。 ハルヒは既に支度を終らせていた様子で、コートをはおり手袋も着けている。 そして…俺がコートを着終わるのを見計らって、出来上がったばかりのマフラーを首に巻き始めた。 (確かに…ハルヒに似合う色だ………あれっ?) ハルヒがマフラーを首に巻き始めたその時…俺は、ある事に気が着いた。 ハルヒの作り出したマフラーは………恐ろしく長い…! 戸惑う俺をよそに、ハルヒは手早くマフラーを巻くと、俺に余った長い部分を差し出した。 「…はい、キョン」 「ん?な、なんだっ?」 「アンタの分よ……」 そう言いながら、ハルヒの顔がみるみるうちに赤くなってゆく…… そして…とりあえず言う通りに、余った分を首に巻いた俺を見て「ふふっ、暖かい?」と照れた様に笑った。 「暖かいが……物凄く恥ずかしい……」 「ええっ?何よ!この場合『恥ずかしい』じゃなくて『嬉しい』じゃないのっ?」 俺達は暗くなり始めた部室棟の廊下を、二人三脚の様にぎこちなく歩く…。 しかし…全くハルヒの奴ときたら、とんでもない事を思い付くものだ。 こんなところを誰かに見られたらと思うと、恥ずかしくてしょうがない……… ただ…マフラーからハルヒの匂いがして、少し幸せだったりするが… 「こらっ!もっと嬉しそうにしなさいよっ!…えいっ!」 「ぐあっ!ひ…引っ張るなっ、首が締まるっ!」 「あははっ!面白~いっ!…えいっ!」 「ぐあっ!し…洒落にならん…」 「…えいっ!」 「グァ……」 「…いっ!」 「…ァ」 「……」 「…」 「」 「なあ、ハルヒ…」 「なあに?」 「ありがとう…な」 おしまい
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1590.html
【SS】俺と桐乃とコーヒーとおにぎりと 「んん~~! ふう。お、もうこんな時間か」 センター試験も程近くなってきた秋の終わりの夜のこと。 今日も今日とて勉強に明け暮れていた俺である。 夕飯を食べてから一息ついた後、受験生として机へと向かった俺だが、今日は随分集中できたら しい。もうじき日付が変わろうとしている時間になっていた。 「どうりで体が硬いわけだな。背中や首がゴキゴキいいやがるぜ」 ストレッチよろしく首を回したり背筋(せすじ)を伸ばす。 ついでに肩をぐるぐる回したりと一通り体をほぐしたところできゅるると腹が鳴った。 「・・・・・・コーヒーでも飲むか」 腹いっぱいになると眠くなるからと、少し少なめにした夕飯のツケが回ってきちまったようだ。 空きっ腹にコーヒーってのはあんまり良くないんだろうが、夜食なんて気の利いたもんはないしな。 勉強の進み具合は十分だし別に切り上げてもいいんだが、いい感じに集中できたし、誰かさんを 見習ってもうひと頑張りしようかね。 チラリと壁の向こうに視線を向けたその直後、コンコンというノックとほぼ同時にドアが開き、ひょっ こりと顔を覗かせる人物が。 見慣れた茶髪の丸い顔。愛らしい唇に整った顔立ち。深夜ということもあり、ほぼすっぴんだという のにその可愛さは以前保ったまま(むしろ個人的にはこっちのほうが可愛いんじゃないかと思うんだ が)の桐乃である。 「なんだ、起きてたんだ。起きてるなら返事ぐらいしてよ」 俺が起きているとわかると、桐乃はそのまま体を部屋へと滑り込ませそうのたまった。 返事も聞かずにドアを開けたのはお前だろうに。もし俺がマッパだったり、その格好でエロゲとかし たらどうするんだ。やらねえけど。 「んだよ、起きてちゃ悪いのか」 「勉強してたの?」 こっちの言うことは無視かよ。 しかしこんな些細なことに突っこんでも仕方がない。 世の中仕方ないで済ませていいことなんかないとはいえ、諦めが肝心という言葉もある。 桐乃と付き合っていくうえでは、後者が圧倒的に優先されるのである。 「・・・そうだよ。丁度キリがいいからな。ちょっとなんか飲もうと思ったところだ」 「ふ~ん・・・・・・コーヒー、飲む?」 「あん?」 「あ、たしも・・・・・・丁度そんな気分だったしさ。――あんたも飲むならついでにって。洗い物、何度も 出すの面倒でしょ」 まさかのお誘いである。 とはいえ、こちらとしてもそのお誘いはありがたい。 しかし桐乃の淹れたコーヒー、ね・・・。 「んじゃ、お言葉に甘えるか」 「じゃあ早くいこ。あんまりのんびりしてると体が冷えちゃうし。・・・・・・ふぁあ」 桐乃が俺の手を引いて部屋を出ようとしたその時、その口からあくびが漏れる。 よくよく桐乃の顔を見てみれば、目がどことなく眠そうに見えなくもない。 「お前本当は眠いんじゃねえの? コーヒーなんて飲んで眠れなくなってもしらねえぞ」 「そんなのあたしの勝手でしょ」 ふん、と鼻をならせて、そんなの知ったこっちゃないとズンズン階段を下りていく桐乃。 手を引かれてる俺もそれについて行くほかない。 リビングへ行く途中、何度もあくびをかみ殺してたようだが、こいつ本当に大丈夫か? 「じゃあコーヒーよろしく」 「って俺が淹れるのかよ!?」 てっきり桐乃が淹れてくれると思ってた期待を返せ! どれだけ不味かろうと全部飲み干す覚悟をしてたってのに、全部無駄になっちまったじゃねえか! 「なによ?」 「・・・ちょっと待ってろ。すぐ淹れる」 「早くしてよね」 「へいへい」 ソファにすわって太ももに手を挟みもぞもぞしながら桐乃が言う。 あんまり待たすのも悪いな。ちゃっちゃと淹れるか。 キッチンに入ると電源の入ったままのポットを手に取る。 最近は俺がコーヒーを夜に良く飲むのを知っているのか、お袋はコレだけは用意しておいてくれ る。それならついでに夜食も用意してくれりゃいいのに。 なんてことを思ってても始まらないか。桐乃から文句が飛んでくる前に用意しちまわないとな。 コーヒーの粉を探して視線をめぐらすとあるものが目に入った。 これ、もしかして・・・・・・ 「桐乃、コーヒーできた・・・ぞ?」 自分と桐乃、二人分のコーヒーを入れて戻った俺が見たのはソファに横になり、静かに寝息をた てる桐乃の姿だった。 「はぁ、ったく。だからしらねえぞっていったのによ」 どうやら待ちきれずに寝てしまったらしい。 あの数分で眠っちまうとは、一体どれだけ眠いのを我慢してのやら。バカなやつだ。 「・・・こうして寝てれば、素直に可愛いって思えるんだけどな」 普段も憎まれ口さえなければ、と思うがそれが桐乃というのも確かだ。 いきなりしおらしくなられても気味が悪いことこの上ないだろうな。 でも、もう少し素直になってくれてもいいと思うんだよな。 コーヒーを探して見つけた、キッチンに置かれた少し歪な形をしたおにぎり。 それが誰によって作られたかなんて、考えるまでもない。 「そのまま渡してくれりゃ、お礼も言えるってのによ」 お前が寝てたら、言っても聞こえねえじゃねえか。ま、それでも・・・・・・ 「ありがとうな、桐乃」 さらさらとした髪に包まれた頭を撫でる。いくら指を通しても絡まらない髪が手に気持ちいい。 そうしていると、桐乃が寒そうに体をよじらせる。 「っと、このままじゃまずいか。桐乃が風邪引いちまうな。つっても、どうしたもんか・・・」 数瞬考えて、すぐに結論をだす。 「よいせっ、と」 桐乃の背中と膝の裏に手を回して持ち上げた。所謂お姫様抱っこである。 しかしこいつ軽いな。本当にちゃんと食ってんだろうか。モデルってのはこうもみんな軽いものなん だろうか。 桐乃を起こさないように慎重に階段を上る。幸いドアはしっかりと閉まってなかったのか、半開きの ままだったので、それを足で開けることで事なきをえた。 部屋まで運んだ桐乃をベッドに寝かせ、布団をしっかりかぶせてやる。 「おやすみ、桐乃」 最後に頭をもうひと撫でだけして、部屋を後にする。 がんばれ、という声が聞こえた気がしたのは、多分気のせいだろう。 「さて、と」 コーヒーとおにぎりを持って自分の部屋へと戻った俺は、「いただきます」と早速おにぎりにかぶりつく。 「・・・・・・しょっぱい」 どうやら塩の配分を間違えたらしい。妙に塩見の強いおにぎりだったが、それでも腹はしっかり膨 れた。ついでになにやら胸の辺りも一杯だ。やる気も漲ってくる。コレなら大丈夫だろう。 「さて、もうひと頑張りしますかね」 このおにぎりを作ってくれたあいつのためにもな。 おにぎりの乗っていた皿を机の隅に寄せ、コーヒーをお供にして俺は再び参考書へと向かっていった。 翌日、夜食の件に関してお礼を言うと 「あっそ」 と、そっけなく顔を逸らされてしまったが、そのかすかに見える耳が真っ赤に染まっているのを俺は見逃さなかった。 その後、日を追うごとに夜食がだんだん(主に味の面で)グレードアップしてくことになり、俺がその 夜食を楽しみにするようになるのは余談である。 ―おわりー ----------
https://w.atwiki.jp/moonlight/pages/179.html
北部伐採地 推奨レベル129~138 ロザイム王国の主要な木材の生産地です。高品質の原木が多く生産される場所ですが、密猟者やモンスターに襲われて今ではわずかな人々が残っているだけとなりました。 主な場所 用途 NPC名/場所 座標 テレポート フィールド シラカバ湖 フィールド 狩人の丘 狩人 パープル E-F3 〇 狩人 ベクター E-F3 住民 ミカエル G-H7 〇 木こり ウッド B6左 〇 木こり ディック B6左 狩人 アッシュ C6右 狩人 メロウ C6左上 村の子供 リサ B6左 木こり ベア G6 生息するモンスター 画像 モンスター名 座標 備考 ウルフスパイダー 全エリア グラススパイダー 全エリア 暴れウルフスパイダー 全エリア 暴れグラススパイダー 全エリア 黄金ゴブリン 全エリア スライム 全エリア エルク 全エリア (図鑑未掲載) 密猟者戦士 密猟者盗賊 密猟者弓使い 密猟者魔導士 密猟者戦士2 密猟者盗賊2 密猟者弓使い2 密猟者魔導士2 荒くれ密猟者戦士 荒くれ密猟者盗賊 荒くれ密猟者弓使い 荒くれ密猟者魔導士 荒くれ密猟者戦士2 荒くれ密猟者盗賊2 荒くれ密猟者弓使い2 荒くれ密猟者魔導士2 ラフレシア 暴れラフレシア バーゲスト (夜間のみ) 暴れバーゲスト (夜間のみ) クレイグ フィールドボス ティラス フィールドレイドボス 主な入手アイテム 画像 入手名 煌めくバタリーの裁き 煌めくバタリーの権能 煌めくバタリーの慈悲 煌めくバタリーの一撃 煌めくバタリーの断罪 煌めくバタリーの懲罰 致命的なヘルメスの洞察力 致命的なヘルメスの慧眼 致命的なヘルメスの反撃 致命的なヘルメスの俊敏 致命的なヘルメスの悪夢 スピレンの煌めき 輝かしいスピレンの跳躍 煌めくバタリーの守護 煌めくバタリーの信仰 煌めくバタリーの正義 煌めくバタリーの誇り 煌めくバタリーの勇猛 煌めくバタリーの手 致命的なヘルメスの機知 致命的なヘルメスの知恵 致命的なヘルメスの誓い 輝かしいスピレンの栄光 輝かしいスピレンの祝福 輝かしいスピレンの約束 採取できるアイテム 画像 採取名 座標 原木 E3,D3-4,C4-5,D5,D6,D7,E7,F-G7,G6 木型 堅い原木 芝生 丈夫な原木 #ItemName_39614 D6,D7,E7,F-G7,G6 りんご カカオ E3,D3-4,C4-5,D5 コーヒー豆 オレンジ レモン 名前
https://w.atwiki.jp/coffeeselect/pages/2.html
メニュー インスタントコーヒーの選び方 おいしい作り方 総合評価 10点 ネスカフェ プレジデント 9点 ネスカフェ 香味焙煎 深入り 8点 ネスカフェ ゴールドブレンドカフェインレス ネスカフェ ゴールドブレンド 7点 6点 マキシム モカブレンド 5点 ネスカフェ エクセラ リンク アマゾン家電割引率ランキング おいしいインスタントコーヒー教えて!@2ch メーカーオフィシャル ネスカフェ AGF KEY COFFEE UCC [EDIT MENU]
https://w.atwiki.jp/ichirorpg51/pages/341.html
術技:ガーヒー! 概要 ムネリンの持ちネタにして最初から覚えている技。 ダメージを与えつつ敵全体を爆笑させる。 元ネタ 「Got Him」(*1)をネイティブ発音したのをさらに誇張した結果らしい。
https://w.atwiki.jp/meidaibungei/pages/146.html
2006年04月29日(土)23時18分-鴉羽黒 ◇(ショートサイズ・コーヒー) * 黒い水面に死神の顔が映っている。 少し考えてそれが自分の顔だと気づき、星名速水はため息をついた。 私鉄駅に隣接するコーヒーショップは立地の良さからか普段から繁盛しているのだが、今は平日の夕方、つまり学生の下校時刻というだけあって、客席は八割以上埋まっていた。 窓に面したカウンター席では一人身のサラリーマンがノートパソコンを開いている。中央にサンスベリアの並ぶ六人がけのテーブルは四つ置かれているが、それらはほとんど制服の群れに占領されていた。いずれも二、三人で構成されたグループで、なおかつ制服がばらばらだった。奥の多人数用テーブル席は四組あったが、二組が主婦の集団に埋められていた。星名の座っているのは、主婦らとひとつテーブルを置いて離れた、隅のテーブルだ。一人の星名がそんな席に座れるのは混み始める直前に来店できるからだ。もっとも、星名の所為で席につけなかったらしい女子高生グループから、あからさまな敵意の視線を向けられることも多い。 ここ数年で一挙に数を増やしたこのコーヒーショップ・チェーンを、星名はあまり評価していない。コーヒーは不味いし、サイドメニューは少ない量で高い。それでもバイト前の空き時間を必ずといっていいほどの率でこの店で済ますのは、ひとつには一般的な喫茶店よりは安くコーヒーが飲めるということと、コーヒーの味に関してはすでに諦観をもっているから、だった。どれだけ評判の喫茶店に行ったとして、星名を満足させる店はもう存在しないだろう、という諦観だ。それならば、どれだけ薄かろうがコーヒーの体裁が整っていれば構わないと、そう星名は割り切っている。 というわけで、何度目かの諦めを脳裏によぎらせてから、星名はショートサイズのコーヒーに口をつけた。 かつて、コーヒーなど飲んだことのなかった星名が、口をつける前から魅了されてしまったコーヒーがあった。星名のコーヒー好きがその一杯から始まったのは疑いようもないが、そのコーヒーを飲んだときの記憶は当時からなぜだか曖昧で、どこの喫茶店で飲んだのか、星名にはどうしても思い出せなかった。覚えているのはそのコーヒーの味と香りだけで、わかってるのはいまだにそれらを越えるコーヒーには出会えていないということだけだった。 それでも、長年飲み続けてしまった習慣からか、星名はコーヒーをやめるつもりはなかった。もっとも、家族をはじめ、たいていの人間はそのことを良く思っていない。なぜなら、一度コーヒーの飲みすぎで胃を悪くして、食べるより吐く量のほうが多い一週間をすごしたことがあるからだ。以来、自宅ではコーヒーが飲めない、というか飲ませてもらえない。自宅でコーヒーが飲める環境を得るためだけに、他県の大学を受験しようかとも思ったほどだ。まあ、さすがに馬鹿らしくてやめたが。 実を言えば、星名の胃は再び限界を超えようとしている。星名自身そのことわかっていたが、かといってコーヒーをやめるつもりはなかった。そもそも、星名の思うに、原因はコーヒーばかりではない。 (…ストレスで胃をやられるなんて、うだつのあがらないサラリーマンか、俺は…) 胸中で自嘲気味につぶやく。三年前、あれほど時間と神経と自分を削り、消費してまで得た結果が今の自分だと思うと、いまさらながら世の理不尽を嘆きたくなる。薬にも毒にもならない老人の長話を延々と書きとめ、最後に紙一枚にまとめて卒業資格を貯めて行く。道理も知らない子供に使い捨ての知識を与えて金を得て、それを使って自分はまた使い捨ての知識を得る。いつまでこんなことを続けなければいけないのか。 気楽なのは親だ。公立の高校を出て国立の大学へ入り、国家試験を通るために勉強する息子の姿を見て、充実して幸せな人生だと喜んでいる。阿呆か。…それは確かに、そう悪い人生ではないのだろうとは、星名も思っている。自分と同じ努力をしていても結果が異なってしまった人もいるだろうし、そもそも境遇から同じ土俵に立てない人もいるだろう。だが所詮、人の苦労はその人だけにしかわからない、だから星名の苦労も星名にしかわからない。自分の苦労が他人よりも大きいのだと自慢するつもりはないが、同じように他人から評価されるのはまっぴらごめんだ。たとえそれが、親であっても。 なのに、人も苦労も知らないで、唯一のストレス解消手段であるコーヒーを辞めろという。冗談じゃない。 もっとも、それが悪循環なのは星名自身わかっている。コーヒーを飲むことで胃に負担がかかり、そのこと自体がストレスを生み、その解決にコーヒーを求める。ただし、そこでコーヒーを回避したとして、そのことがまたストレスを増やすことは目に見えている。それに、星名はコーヒーを飲まないとどうにも作業能率があがらないのだ。 そうしてジレンマが生まれ、またストレスになる。なんというか、どうしようもない気がしてくる。 濁流のように流れる思考がずるずると底無し沼にはまっていく予感を感じて、星名はかぶりを振った。どうにか思考をとめる。見ると、星名のテーブルにいつの間にかサイドメニューのサンドイッチが置かれていた。いつの間に運ばれてきたのか、まるで覚えがない。 どうにも、こうしてコーヒーを飲んでいると悪いほうへ暗いほうへ考えが引きずられていく。コーヒーが悪いわけではなく、星名自身の性格の問題だ。それに、実家暮らしのせいで、自宅にいるときはなんだかんだで一人になれない。あるいは、一人になったとしても、勉強なり家事なり、やることがある。大学にいるときも、一人でいることは多いけれど、そこには常に仕事があり、そういうときは星名はそれに集中している。 だから、この店で一人でコーヒーを飲んでいる時間が唯一、星名は自由で、一人になる時間だった。益体もない考え事をしてしまうのはそのせいだろう。 店内にかけられた時計を見て、そろそろ頃合だろうと思い、星名は席を立った。と、そこで、星名はあることに気づいて手帳を開いた。その勘はあたっていて、手帳には今日のバイトの時間がいつもより一時間遅いことがメモされていた。ため息をつく。 コーヒーはすでに空になっているが、対照的にサンドイッチは手付かずだった。まあちょうど良かったのだろうと思い直し、星名はカウンターでもう一杯コーヒーを頼んだ。ほぼ毎日来ているので店員の顔も大体覚えてしまっているのだが、向こうのほうはどうなのだろう、ふと星名はそんなことを思う。週に五日は現れて、ショートサイズのコーヒー、それに時々チーズ・サンドを頼んで一時間近くなにをするでもなく居座っている、モノクロス-ツ姿の客。客観的に言って怪しい。だがまあ、正確には覚えていないが、曜日ごとに店員にも入れ替わりがあるし、客も多い時間だからそう覚えてはいないだろう。 二杯目のコーヒーに口をつけたとき、星名の胃が悲鳴を上げた。無視しても構わない程度のものだったが、これ以上悪化して、それがバレると面倒なことになると思い、星名は手付かずだったサンドイッチを申し訳程度にかじった。とあるアドバイスを思い出したから、でもある。 星名家には星名速水以外にコーヒーを飲む人間はいなかったが、親族に一人だけ、星名に理解のある人間がいた。彼は星名の従弟に当たり、星名の見るところでは、彼はいつも缶コーヒーを飲んでいる。星名より何歳か年下の高校生だったが、彼が親戚勢の中で唯一、気の置けない友人のような存在だった。 胃を悪くして以来身内の中ではコーヒーを飲んでいないことになっている星名だが、彼はあるとき、 「…量を飲むのは別に問題ないけどな、胃は空にしとかないほうがいいぞ」 と星名に言った。その内容がどうというよりは、コーヒーを飲み続けていることをなんなく見抜いていたことに星名は感心してしまった。いわく、そんなんわかるだろ普通、とのことだったが。 わかりそうでわからないその従弟の名前を思い出そうとして、星名は視線を宙に泳がせた。ふと、その視線がカウンターの奥の店員のそれとぶつかる。すぐに彼女は気まずそうに視線をずらした。 一瞬だったのではっきりとはわからなかったけれど、その視線はなんというか、敗者に向けられる哀れみのそれだった。被害妄想だなと、星名はまたひとつため息をつく。ため息をつくことで幸せが逃げるのなら、星名は年間1000以上は幸せを逃しているだろう。 知らず、星名はまた暗い考えに陥っていた。あの従弟も、自分の苦しみのほんの一握りしか知らない。家族ですら気づかないような苦しみを、はたして消せる日は来るのだろうか。認知されない苦しみは救われることはないだろう。結局のところ、自分で何とかするしかないのだ。もっとも、それができたら苦労しないし、そんなこと誰もがそう思っている。あるいは積極的にそれを知らせようとしない自分が悪いのかもしれない、しかし、自分が苦しいんだと叫ぶのは、それはもっと苦しい――見苦しいことのような気もする。あるいはプライドが高いのかもしれない。けれど、感情をありのままに表に出すことがいいことだとは、どうしても思えない。 二杯目のコーヒーがなくなる。 チーズ・サンドがどうにも喉を通らなくて、結局半分近く残してしまった。ここのところ、こういうことが多いような気がする。トレーを回収棚に運ぶその途中、さっきの店員をこっそり横目で覗いてみる。見慣れた店員の一人で、背中まである髪をフィッシュボーンに編んだ、カッターシャツの似合う女の子だ。もっとも星名はその髪型がフィッシュボーンという名であることは知らないから、複雑な髪型の子と覚えているのだが。 予想通りというべきか、彼女はもうこちらを見てはいなかった。まあ、当たり前だ。さっきのはやはり被害妄想だったのだと、星名は結論付けた。 のだけれど、店を出て数歩歩いたところで、星名を呼び止める声がかけられた。振り向くと、そこにさっきの店員がいて、星名は困惑する。 「あ、あの…これ、わ、忘れ物ですっ!」 そういって彼女が差し出したのは紙のカバーのされた文庫本だった。本など新書か参考書くらいしか読んだことのない星名に、当然心当たりなどあるはずもなく、困惑は増すばかり。 そんな星名に彼女は本を押し付けて、「では、またのご来店を、」と言って踵を返し、お待ちしていますと叫びながらすごいスピードで店に戻っていった。 後に残されたのは、呆気にとられて「いや、俺のじゃないし…」と呟く星名と、その手に渡された文庫本だけだった。 文庫本は、『紅茶日和』という、どうやら小説のようだった。星名にとっては読む気のしないタイトルだが、そんなことより、どうもこの文庫本はどこかの図書館の本らしかった。これってまずいんじゃないかと星名は思ったが、考えようによってはむしろ好都合だと気づいた。要は、持ち主を探すまでもなく、この図書館に返せばいいのだから。 もう一度本を確認しようとしたとき、頁の間から紙が一枚零れ落ちた。拾ってみると、それはさっきの店においてある紙ナプキンだった。 「…ん?」 みると、そこになにか文章が走り書きしてある。 『最近食欲ないみたいですが あまりムリせずに がんばってくださいね』 星名は我知らず、店のほうに視線を向けていた。 「…視野が狭いってことか、俺も」 一人で勝手に落ち込んで、見ず知らずの店員に心配されているとは、なんとも情けない話だ。 「………」 とりあえずまあがんばってみようか、星名はそんな風に思った。 バイト先へ向かう足取りは、いつもよしほんの少し軽い。 * ◇(シュークリーム・ティーセット) * 落し物を見つけたら、拾ってあげましょう。 持ち主が分かっているなら、届けてあげましょう。 そう、もし目の前で誰かが何かを落としたら、拾って追いかけていって、そうして手渡してあげましょう。 いつか誰かが教えてくれたこと。何となく、わたしはそれを思い出した。 …彼は、何度も落し物をしている。 溜息一つこぼせば、しあわせが一つ逃げていくという。 それが本当なら、彼はもう、両手で数え切れないほどの幸せを落としてしまっている。 それも、わずか一時間もしないうちに。ほとんど、毎日。 わたしはそれを知っている。目の前で、それを見ている。 でも、どうしたらその幸せを拾ってあげられるのか、その術をわたしは知らない。 どうしたら、いいのだろう。 放課後、紅坂美湖は寄り道もせずに最大速度でバイトに直行する。仕事時間に間に合うこと自体は真面目だろうけれど、高校生という身分を考慮に入れると、バイト自体あまり褒められたものではないのかもしれない。紅坂の通う御戸代北高校は特に進学校というわけでもないが、公立校の性質なのか、原則はバイト禁止だ。それでも紅坂が働けているのは、バイト先が高校のある地域から遠く離れているのと、店長が大らか、あるいはいい加減なおかげだろう。もっとも、紅坂のように校則に反して反してバイトをしている生徒は、そう少なくはないと推測されるが。 電車にして数駅分の距離を、紅坂は自転車で駆け抜けた。 スター・フォワード・カフェ。ここ数年で一挙に数を増やしたこのコーヒーショップ・チェーンを、紅坂はあまり気に入ってはいない。コーヒーの味は、よくわからない。単に、紅坂が紅茶党だからというだけの評価基準だ。もっとも紅茶が置いていないわけではない、ただし種類が少ない。ティー、それだけ。バリエーションはサイズのみ。ミルクティーにしたければコーヒーに入れるのと同じクリームを入れろとのことだし、レモンティーともなると、レモンを持参してくださいとしか言えない。紅茶といえばレモンティーな紅坂としては、ならいっそティーなんぞやめてしまえと思う。客としては絶対に入らない店だが、むしろだからこそ紅坂はバイト先にこのスタカを選んだ。万一気まずい辞め方をしても問題ないからだ。 店の奥にロッカー・ルームがある。裏口から店へ入った紅坂は、そこで手早く制服を着替えた。スタカの制服は白のカッター・シャツに黒のキュロット・スカートというシンプルなもので、そこだけは紅坂も気に入っていた。 曇り硝子の窓から夕暮れの光が差し込んでいる。冬の陽はどこか弱々しいが、夕陽になるとそれは特に顕著だ。灯りであるべき光が、明るさよりもむしろ暗さを目立たせている。端々に落ちる影がどうにも不気味で、紅坂はなんとなく勤労意欲をそがれてしまう。もう帰るべき時間だと、その影が訴えてきているような気がするのだ。 お金をもらっている身だと割り切って、紅坂はその訴えを振り切った。わざわざ自分で選んだことだし――それに、気になることもある。 ドアに備えられた姿見でもう一度自分の姿を見、ネクタイが曲がっていないことを確認して、紅坂は仕事を開始した。 学生の下校時刻ということもあり、客は多かった。もっとも、もう少し経つとさらに増えるのを紅坂は経験的に知っている。しばらくの間、紅坂は淡々と、表面的には愛想良く仕事をこなしていく。 そうして半刻ほど過ぎた頃、その客はやってきた。 レジに立ったのは、紅坂の仕事上での先輩にあたる大学生だった。紅坂は指示を受けてサイドメニューの調理にかかる。そのかたわら、紅坂は今来た客がいつもの席に座るのを確認した。最奥・壁際のテーブル席、通称「城」。誰が言いだしたのかは知らないが、よく客が長居する席としてスタッフの間でひそかにそう呼ばれている。 そして、紅坂の手のなかでチーズ・トーストができあがるまでのわずかな間に、彼はまた落し物をした。 (……最近、特に多いな) 紅坂のバイトのシフトは平日のみの週3日だ。時間はいつも同じ、夕方4時半から9時までの4時間半。 バイトを始めて一月もしない頃、5時から6時までの間、いつも同じ客が「城」に座っていることに紅坂は気づいた。他のスタッフもおそらく気づいているのだろうけど、そういう常連客は珍しいわけではなくて、だから特に話題には上らなかった。 気になったのは、彼がよく溜息をつくことだった。 いつも同じ時間に来て同じ時間に帰り、来ている服もほぼ同じで、グレーのスーツと白のカッター。ネクタイの色はまちまちだが、地味な色だということは共通している。A4サイズのブリーフ・ケースを愛用している。格好からするとまるでサラリーマンのようだが、それにしては荷物は少ないし若く見えるし、塾講師のバイトをしている大学生というのが妥当な線だろう、紅坂はそう推測している。 もっとも、彼の持つ雰囲気は、どことなく疲れた40代のサラリーマンを連想させる。紅坂は何度かレジに立ったこともあるが、その表情はいつも陰鬱なそれだった。注文する声もくぐもった感じで聞き取りづらいし、視線はいつも下だ。背は高いがいささか不健康気味な痩せ方をしているし、目つきも悪い。神経質そうな感じもする。。 正直なところ、そういうわけだから、印象はよくなかった。暗いし、冷たい感じがした。 そんな印象だったから紅坂が彼の存在を気にかけなくなるのに時間はかからなかったが、それからさらに一月が過ぎた頃、その印象は過去形に変わる。 バイトにもそろそろ慣れてきていたから、気が抜けていたのかもしれない。紅坂はレジ打ちの仕事中、ちょっとしたミスをした。大したことがないとはいえミスはミスで、忙しい時間でもあったから、紅坂は一緒にいた先輩に手酷く注意された。間の悪いことにその先輩がとびきり嫌味な人で、不覚にも紅坂は結構落ち込んでしまった。元はと言えば自分のミスの所為でもあったし、場所が場所なので客からも丸見えで、紅坂は穴にでも入りたい気分だった。 そのとき、ちょうど接客していたのが彼だった。それがまた嫌で、無表情の内側で彼が自分を嘲笑うさまを想像して、紅坂は溜息をこらえるのに一苦労だった。それでもどうにか笑顔を保ったまま、マニュアル通りに彼の前にショートサイズのコーヒーを差し出した。 そのときだった。 『…ありがとうございます』 いつもどおりの、聞き取りにくい、低い声だった。けれど、その声が紡いだ言葉は、いつもとは違った。 聞き違えたかと思った。 びっくりした紅坂は、思わず彼を見上げてしまった。一瞬眼が合った彼はすぐにうつむいてしまって、コーヒーを受け取るとそそくさとその場を去った。 普段なら何の反応もないのに、一体どういう風の吹き回しかと考えて、もしかして叱られたわたしを慰めようとしたのだろうかと、紅坂はふとそんなふうに思った。 もちろん、それは紅坂の思い違いかもしれない。けれど紅坂は、自分の持つ彼についての印象の方が思い違いなのではと、そう考えるようになった。 それから、なんとなく彼を眼で追う日々が続いている。 そして今また、彼は落し物をした。 ちょうど客足が途絶えていたせいか、つい紅坂は気を緩めていたらしい。 レジ前に客が来ていることに紅坂は気づかず、しまったと思った瞬間にその客は、 「恋・ねっ!」 などと、唐突にわけの分からないことを口走った。おかげで紅坂の顔は接客用表情を取り繕えず、代わりに困惑色を表現した。 そして今度は、それは驚きの色に変わる。 「い――らっしゃい、ませ」 それでもどうにか、顔の形は接客用の笑顔に戻した。そんな紅坂を見て、その客はにやにや笑う。 突拍子もないことをのたまった客は、よく見る制服を身に纏った女子高生だった。そしてその制服以上に、その顔はかつてよく見たものだった。中学までは同級生だった――義務教育9年間を共に過ごした、美しく表現して悪友、そんな知り合いの顔だ。 「あらあらよく見たらみーこさんじゃないですか、うふふふ」 客――九里村秋海はわざとらしくそう言った。紅坂は若干顔が引き攣るのを自覚はしつつも、接客スマイルを保ちつつ、 「ご注文は何になさいますか?」 あくまでも店員としての対応を貫いた。そして注文を聞いておきながら、紅坂の手は既にデザートの入ったショー・ケースに伸びていた。九里村の頼むものなどシュークリームしかないと、紅坂は知っている。 「あら、冷たいのね。まいいわ、ティーセットで、シュークリームね」 さして意に介した様子もなく――そしてこちらに合わせて初対面の客のフリをしてくれるということもなく、九里村は紅坂の予想通りの注文をした。進歩のない奴、紅坂は内心で呟く。 そして紅坂が手際よく紅茶を淹れている最中、 「それより――あの、隅の席のスーツの人、そうでしょ? 片思い中?」 そしてもって内緒話のポーズで・かつ大声でそんなことを彼女は言い出してくれて、それにいたって紅坂の脳はようやく最初に言われた言葉の意味を解して、すぐにごく素直な反応を顔に命じた。 「――シュークリームティーセットになりますっ!」 姓と同じ色に染まった顔で、紅坂はそう叫んだ。同時に、紅茶とシュークリームを載せたトレイをカウンターに叩きつける。 当然の結末だが、その勢いでカップが跳ねた。こぼれた紅茶が九里村にかからなかっただけ、紅坂も運がよかった。ついでに言えば、紅坂以外のスタッフが偶然店の奥に入っていたこともだ。 「ぁ、ごめん――なさいっ!」 紅坂としてはギリギリで接客言語にしたつもりなのだろうが、正解は「申し訳ありません」ではあった。いっそう顔を赤くして、それでもって今しがた謝ったばかり相手に怨恨の視線を投げる。 「相変わらず分かりやすい反応ねぇ」 九里村は気にした様子もなく笑っている。 「すぐに新しいものを淹れますので…」 口でそう言いながら、同時に「なんてこと言い出すのよアンタ」と眼で訴えかける紅坂。接客マニュアルは紅茶と一緒にこぼれてしまったらしい。 「すぐにお持ちしますので、席で、お待ちください」 「席で」を強調して、半ば追い払うように、紅坂はシュークリームだけ乗せかえた新しいトレイを彼女に手渡す。眼が怖いわよと、彼女が呟く。 「まあまあ、わたしはアンタの味方よ、みーこ」 そういう九里村は慈母のような笑みを浮かべていたが、紅坂にはどうみてもあくどいことを企んでいる笑みに見えた。 そのことに関しては何も言わず、紅坂は紅茶を淹れなおすために、彼女に背を向けた。 九里村の思惑はともかく、それよりも紅坂は今の騒動を彼に気づかれたかどうかが気にかかった。ちらりと視線をやると、しかし彼はどうやら考え事に集中しているのか、気づいた様子はなかった。安心する一方で、テーブルに置かれたチーズ・トーストがまったく手をつけられていないのが気になってしまう。 そこで九里村に言われたことを思い出した紅坂は、慌ててかぶりを振った。 (…ていうか、そもそも。これは別に恋と言うわけじゃなくて、単に、そう、前にもらった恩をかえそうとか、そういうことよね) 戻ってきた先輩にレジを任せ(幸い紅坂のミスには気づいていたにようだった)、紅坂は淹れなおした紅茶を九里村の席へ運ぶ。彼女の席は、東西を区切るように観葉植物が並べられた細長いテーブルの一角だった。その席にした彼女の意図が、紅坂にはすぐに分かった。視線を横にやれば、簡単に彼が覗ける席だ。 ところで、テーブルの上のトレイには、もうシュークリームが乗っていなかった。早い。 「ふふふ、また彼のこと、見てたでしょ?」 心底楽しそうに彼女が言う。 「…それでは、ごゆっくりどうぞ」 かつてないほど無愛想な声で、紅坂は言い放った。そのままカウンターに戻ろうとする紅坂を、九里村は引きとめる。無視を決め込んだ紅坂だったが、 「まあ待ちなさいよ、恋する乙女モードみーこちゃん」 こいつトレイのカドで殴ってやろうか一瞬なら多分バレないわよね、などということ考えたために紅坂の足が止まった。 そこへ、 「そんなあなたにわたしが言ってあげられることは一つよ――とにかく押し倒しなさい」 「アンタいつもそればっかじゃないのよシュー」 つい条件反射的に、紅坂はそう答えてしまった。 「まあ怖い店員さん」 「…申し訳ありませんわねエロみさん」 手にしたトレイが軋む音を無視しながら、紅坂は言った。 「冗談よ、じょーだん。…連敗街道みーこちゃんには、いきなりレベルが高すぎるわよね?」 嫌な音を立ててトレイが折れた――のは、紅坂の心中風景のなかの話だったが。 「まあとにかく。そんな健気なみーこに、このわたしがアドバイスをあげるわ」 心中風景のなかでは紅坂が九里村にドロップキックを放っているところだったが、現実化はどうにかこらえて紅坂は丁重に断りの意を表明した。 「いりません」 「まあそう言わないで」 「仕事中ですので」 「仕事終わる頃にはいなくなっちゃうでしょ、彼」 あくまでも食い下がる九里村。そこで紅坂は、そもそもの誤解を解かなければと気づいた。わたしは別に、恋をしているわけではないのだと。 九里村の眼を見据える。 「あのですね。そもそもわたしは、彼のことを、す、好きとか…、そういうわけでは、ありません」 口に出してみて初めて、これほど嘘っぽいセリフもないなと自分で気づいた。 「………」 また顔が赤くなるのを、紅坂は自覚した。 「うふふふ」 そして当然のように、九里村はそれが嘘だと判断したようだ。というか、九里村の場合もとより疑いなど持っていなかったようだが。 紅坂も、反論する気にはもうなれなかった。 「アドバイス、ほしい?」 「……それとこれとは別だ」 「わたし、百戦錬磨よ?」 「嘘をつくな嘘を」 「あら。女子高生になってグレードアップしたわたしを甘く見ては駄目よ」 背を反らして胸を強調する九里村。紅坂は無言でそのなだらかな斜面を撫でた。スキー場で言えば、初心者用コースのような平らさだった。 「…セクハラよっ!?」 「お引き取りください」 「ぶー。いいじゃないのよぅ、どうせみーこじゃストーカーみたく眺め続けて自然消滅がオチでしょう」 「突撃と玉砕を繰り返してたシューに言われたくないわよ」 「……」 「……」 「ねえ、みーこ」 「なんだ」 「間を取ればいいと思うの、わたしたち」 「ほう」 「というわけだから、お互いの意見を聞き合うと言うのは大切なことじゃないかしら」 「……」 「ね?」 「…人の恋愛に首突っ込みたいだけでしょ、シューの場合」 「この際それは気にしないで」 そして。 九里村があまりにしつこいので、聞くだけ聞けば気が済むだろうと判断し、紅坂はアドバイスを受けることにした。 別に、期待とかは、してない。 レジに立つ先輩の様子を窺う。客足がまばらになっているのと、加えて店長も戻ってきているおかげで、カウンター内の人手は足りているようだった。紅坂は少し逡巡してから、予備のメニューを持ってきて、九里村を相手に接客をしているフリをしながら、簡単ないきさつを話した。話し終えると、九里村は満足げにうなずいた。 「ま、みーこらしいわね」 「悪かったな」 「とにかく、まず一歩踏み出さないと、ね。簡単なことからでいいの。わたしに考えがあるわ――」 確かに簡単だった。とはいえ、今の自分にできるのはこれくらいだろうと、紅坂は妙に納得した。 「あと、シュークリームもう一つね。おごってくれるんでしょ?」 「……まあ、いいわ」 落し物を、届けに行こう。それはほんの一部かもしれないし、ともすれば全然違うものかもしれない。でも、なにもしないよりは、きっとずっといい。 しばらくして。 紅坂が息を切らせて店に戻ってくると、九里村の姿はもうなかった。残されたトレイの上に紙ナプキンが置かれていて、そこには一言、 『あとは、押し倒すだけよ』 と書いてあった。 「……うん、それは無理だから」 紅坂は物言わぬ紙にツッコミをいれ、仕事を再開した。 * ◇(ガトーショコラ・コーヒーセット) * (普段の生活圏が田舎一辺倒なせいか、たまに人通りの多いところに出ると眩暈がするな…) 通り過ぎていく無数の人々を無感動に眺めながら、浩灯はそんなことを思った。 放課後、高校最寄の駅から揺られること20分弱、市の中心にして市内唯一の都会である御戸代駅前特区を、管原浩灯は訪れていた。平日にこんなところまで足を伸ばすのは珍しいのだが、贔屓にしているアーティストの新譜の発売日となれば話は別だ。 (しかし、予約しといてよかったな…。そこそこ売れてきたのに、どうしても入荷しないつもりかあのオヤジ) 南部に限っては開発が進んでいる御戸代市を、浩灯がそれでも都会とは決して認めない理由は、CD屋が市内に一軒しかないからだった。その一軒も大きい店ではないため、新譜でも入荷されない曲も多い。選考基準は、おそらく親父の趣味だ。 ともあれ。目当てのCDを手に入れた浩灯は、まっすぐ帰ろうかどうか考えながら駅への道を歩いていた。まだ日も暮れないような時間であり、あまり訪れることのない街中に来ているのだから、このまま帰るのももったいない気がする――電車代とかが。 (つっても、特に用はないなぁ…) 制服姿でデパートに入るのは気が引ける。100円ショップは消費税を取るのが気に入らないし、本屋は雑誌の発売日と言うわけでもない。結局全てを素通りし、駅まで戻ってきてしまった。さっさと帰って新譜を聞くのがいいかなと一旦は決めた浩灯だったが、駅の横にある“その店”に気づき、その考えを却下した。 スター・フォワード・カフェ。近年急速に広まりつつあるコーヒーショップ・チェーンで、市内にも数年前に一店舗目が開店し、当時ちょっとした話題になった。機会に恵まれず浩灯は未だに行ったことがないのたが、喫茶店よりは安くコーヒーが飲めると聞いていたので、興味は以前から持っていた。 普段缶コーヒーしか飲まないで、たまにはいいかもしれない。そんなふうに考えて、浩灯はスタカに足を向けた。 「あれ、先輩じゃないですか」 そんな浩灯に、声をかける人間がいた。 振り向いた浩灯は一瞬だけ眼を丸くして、すぐに眼を細くした。こめかみを押さえる浩灯。 「…誰だ?」 浩灯の眼に映ったのは、ダッフルコートを着込みマフラーを巻き、そして明らかに不似合いなサングラスをかけた不審人物の姿だった。 (………) あごまでの長さに切りそろえられたチョコレート色の髪と、浩灯のあごほどしかない身長とを考え合わせると浮かぶ人物は一人だったが、彼女が何故サングラス着用なのかが分からない。 「あ、しまった。…はい、これで分かりますよね?」 サングラスを取ったその顔は、予想通り何度か駅で顔を合わせた少女のそれだった。浩灯は溜息をつく。 「…まさかとは思うが、変装のつもりではないよな?」 「ふふ、完璧でしたね。先輩くらいなら欺けることが証明されました」 されてないけどな、と浩灯は呟く。彼女は聞いていないようだったが。 「ところで、管原先輩はどうしてここに?」 「いや、ちょっと買いたいCDがあったんで――って、あれ。僕、名乗ったっけ?」 顔見知りではあったが、浩灯は彼女の名を聞いた覚えはなかった。自分の名を教えた覚えも、だ。 「ほら、わたし、図書部ですよ?」 「それは聞いたけど」 「図書カードって、個人情報漏洩ですよね」 「…まあ、いいけどな」 公立の図書館ですらコンピュータ化されている時代だが、公立高校の図書室程度にそのレベルを望むのは無理があるらしい。 とりあえず店に入ろうと足を踏み出そうとした浩灯だったが、制服のすそを引っ張られていることに気づいて足を止めた。見ると、彼女が自分を指差してなにか言いたげな表情をしている。仕方なく、浩灯はそれに付き合ってやる。 「…それで、君――ええと、僕も図書カードで調べてこいと?」 「明冶千代子です。うお座のA型ですよ」 「星座と血液型まで書いてあるとは知らなかったな。まあいいや、で、アキヤはなんでそんなカッコでこんなとこに?」 「良くぞ聞いてくれましたねコーヒさん!」 「ヒロヒだ」 図書カードにはルビが降ってないのか。 「実はですねー、少し前からみーこの様子がおかしいんですよ。あ、みーこってのはわたしの友達で、紅坂美湖って名前です。それでちょっと、つけてみようかと」 「その発想はどうかと思うが」 かなり斬新な発想だった。 「といってもみーこは自転車通学なので、先回りしてみました。じゃん、あれがみーこのバイト先です」 そういって千代子が指差したのは、今まさに浩灯が入ろうとしていたコーヒーショップ、スター・フォワード・カフェだった。 「…まあこの際、バイトってたしか禁止じゃなかったかなんてツッコミはしないが」 「心が広いですね」 「しかしなんでまた、バイト先なんだ?」 「勘です。乙女の」 自信たっぷりに千代子が宣言したそれは、浩灯には理解の仕様がない根拠ではあった。 「時々空を見上げるみ-この遠い眼、あれは絶対恋する乙女の眼ですよ」 「いや、知らんが」 「まあそういうわけで、相手は誰かなっと思って。校内にはいないと読みましたので、バイト先まで足を伸ばして見たと言うわけです」 「はあ」 「それにしても先輩と出会えるとは、ラッキーです。これで怪しまれずに済みます」 「…なんでだ?」 浩灯の脳裏に、何となく嫌な予感がこみ上げてくる。 「というわけで、注文は頼みますね! わたし、席取っておきますから。あ、心配しなくても、ちゃんとお金は払いますよ?」 どういうわけなのか問い詰める前に、千代子に手を引っ張られ、浩灯はスタカの店内へと連行されてしまったのだった。 それはさておき。。 困惑する浩灯をよそに、千代子は一人、巡り合わせってあるのね、などとほんのり夢見心地な気分を味わっていた。具体的には、 (みーこの恋模様をひっそり観察するつもりだったけど、思わぬところでチャンスが回ってきちゃったなぁ…) ――と言った具合だ。浩灯と並んでスタカへ入った瞬間なんて、これってデートに見えたりしないかな、などと考えていたりした。本来の目的を忘れかけている千代子ではあった。 「…それで、その紅坂ってのはどいつなんだ?」 自分用にコーヒー、千代子用にガトーショコラを買った浩灯は、席に着くなりそう尋ねた。正直なところ紅坂とやらの恋模様はどうでもよかったのだが、誰の所為でこんな探偵まがいの真似をすることになってしまったのかくらいは把握しておこうという意図だ。意趣返しのためというわけではなく、単なる好奇心ではあったが。 しかし今千代子の目には、ガトー・ショコラしか映っていなかった。 「わあ、おいしそうですね」 「つか、サングラスを取れ」 「え。だって、ばれたら困るじゃないですか」 「いや、多分、関係ないと思うぞ」 それ以前に浩灯にはどうして隠れなければならないのか分からない。 スタカの店内は思ったより広く、高校の教室一つ分くらいはあった。窓に沿うように設置されたカウンター席の他に、縦長で観葉植物の置かれたテーブル席が中央に四つ、ソファに座れるタイプの席が奥に四組ある。千代子の取った席は縦長のテーブルの一角で、一列に置かれた観葉植物の隙間から、レジが覗ける席だった。 「今レジに立ってるのが、みーこです。髪を四つ編みにした子です。…あ、これおいしい」 ガトーショコラを頬張りながら、千代子が言う。 「きびきびと働いてるな。…それ、これの倍するんだからな、ちゃんと払えよ?」 ショートサイズのコーヒーをすすりながら、浩灯はぼやく。 そして千代子は、その横顔をこっそり覗いていたりする。 (いつもどおり、どことなく疲れた感じのクールな顔だなぁ…) どちらかというと貶しているような字面の感想だったが、千代子自身は褒めているつもりだ。 なにか気配を感じたらしい浩灯が振り向き、視線がぶつかると、と千代子は慌てて眼をそらした。レジのほうに眼を向けて、紅坂の観察をしているという体裁を繕う。 「む、むー、同僚はみんな女の人ですねぇ…。あ、あの人はかなー?」 とそこで、そもそもそれが本来の目的だったと思い出す千代子。 「どうでしょう、先輩の意見としては?」 「どうでしょうったってな。あれはたぶん正社員の人だろ。紅坂ってのは、年上好きか?」 「さあ? …あ、客足が途絶えましたよ。みーこさん、暇そうにしています。さてさて、どうなるでしょうか。今のうちに正社員にアタックか…!?」 「どうもならんと思うが」 「でしょうねぇ。普段は強気ですけど、どっちかっていうと遠くから見つめ続けるタイプですし」 「…なんのためにここにきたんだ?」 「だから、要は見つめ続ける先を見つけれないいんですよ」 「そんなもんか…?」 「あ、ほら。あれです、あの眼ですよ!」 仕事がなくなり、所在無げに店内を見渡している紅坂。浩灯には判断がつかなかったが、千代子に言わせるとあれが”恋する乙女の眼”らしい。 なるほど、確かにその視線はある一点を見つめたまま動かずにいるようだ。まさかねと思いながら浩灯は紅坂の視線を追ってみて、 「――ぶふっ!」 口に含んでいたコーヒーを盛大に吹いた。 「あ、もしかしてあの人じゃないですか? 隅の席のスーツ着てる――って、大丈夫ですか? 汚いですよ?」 千代子は眉をひそめる。 「い、いや、ちょっとびっくりしただけだ…」 「そですか? あの人結構カッコいいと思いますよ。背、高そうですし。まあでも、サラリーマンってのは確かにびっくりかも」 「…大学生だ」 苦虫を噛み潰したような声で呟く浩灯。 首をかしげる千代子。 「え? でも、スーツですよ?」 「講師のバイトをしてるからな。そのせいだろ」 「ああ、なるほど――じゃなくて、なんでそんなに詳しいんですか?」 不審に気づいた千代子の脳裏で、電撃のように思考がめぐる。どういう経路をたどったか、千代子は一つの結論を導き出した。 「まさか、先輩もみーこを!?」 「阿呆」 大ハズレだったが。 千代子の推論を一蹴した浩灯は、コーヒーの付いた口元を紙ナプキンで拭い、そして答えた。 「従兄弟だ。…胃痛もちの」 家ではコーヒーを止められていると聞いていたが、こんなところで飲んでいたとは。ブラックでを飲むなら何か食べてからにしろと浩灯が言ったのを覚えているのか、サイドメニューも頼んでいるようだが、手をつけた様子がない。それじゃ意味ないだろと、浩灯は頭を抑えた。 「それは、すごい偶然ですね。どんな人なんです?」 「んー、暗い、後ろ向き、口下手、卑屈、頑固、あとなんか打たれ弱い」 「…うあ、なんか駄目っぽいですね…」 ちょっと眉をひそめる千代子。 「まあでも、律儀だし真面目だし、嫌な人ではないとは思うけど。まあ、変わり者だよ」 そう言うと、千代子は笑顔になって、 「それは先輩もだと思います」 ひどく失礼なことを言う。 「いや、君も人のこと言えんだろ」 浩灯は苦笑する。 しかしあのハヤミ兄が女の子に好かれるとはねぇと思いながら当の本人を覗くと、紅坂は客の対応に追われていた。しかもなんだか無駄に力が入っているように見える。千代子もなんだかおかしいと感づいたのか、浩灯の横で首をかしげている。 「みーこ、動揺してますね。なんでしょう?」 「さあ、なんだろうな。見つかったのか?」 「そんな様子ではないみたいですけど…」 どうやら、紅坂が何かしらのミスをしたらしい。女子高生らしきその客は別段怒った様子ではなかったが、紅坂は新しい飲み物を淹れなおしていた。シュークリームだけ乗せたトレイを持ったその女子高生は、浩灯達のすぐ後ろの席に座った。 これはまずいんじゃないかなと浩灯が思っていると、案の定、紅坂が淹れなおした飲み物をトレイに乗せ、女子高生に届けるべくこちらに向かってきた。千代子が慌てて顔を隠す。 「…なんで、そうなる?」 千代子はなぜか浩灯に寄り添ってきていた。 「いえ、この方が自然なんじゃないかと」 「そうか…?」 とことん振り回されているような気はするが、浩灯は気を取り直して、残っていたコーヒーを飲み干した。 そして勢いにのって大胆な行動に出た千代子は、思ったより浩灯の反応が薄いのを不満に思っていたりした。 (むー…。もうちょっとこう、押しが足りないんだろうか。あーこんなことなら色々パターンを考えておくべきだった…) 足りないのは色気だということに気づかない千代子だった。 千代子の意図は露知らず、浩灯は紅坂と女子高生の会話に聞き耳を立てていた。まもなく、浩灯はあることに気づく。 「…なぁ、あの二人、どうも知り合いみたいなんだが」 うつぶせている千代子に、小声で話しかける。 「え、ほんとですか?」 同じく小声で答えた千代子はしばらく黙り、どうもそうみたいですねと同意の言葉を返す。 「わたしの予想、当たってましたね?」 そして得意げに微笑む千代子。背後での会話は、紅坂の片思いが前提になっていた。 「…しかし、なんかすごいこと言い合ってるな」 それほどはっきりと会話が聞こえるわけではないが、浩灯は耳に「押し倒しなさい」というような言葉が入ってきたような気がしてならなかった。聞き間違いであってほしいと願いつつ、すこしばかり従兄弟の貞操を案じたりする。でも少し考えて、そういう手段が通じそうな男でもないか、との結論に至る。 「それで、どうするんだ? もう裏は取れたんじゃないのか――」 浩灯が千代子の方を見ると、彼女はなんだかすごく真剣な耳で聞き耳を立てていた。なんでこんなに必死なんだろうと浩灯は疑問に思ったが、まあ友達思いってことなんだろうかと、好意的な解釈に落ち着けておいた。 もちろんそんなはずはなくて、千代子は聞こえてきた「アドバイス」という単語に激しく反応していただけだった。アドバイス、それはまさに、今の千代子にこそ必要なものだった。もっとも浩灯にとっては幸いと言うべきか生憎と言うべきか、千代子が「押し倒せ」というアドバイスを聞き取ることはなかったけれども。 「…なんか知らんが、話は終わったみたいだな」 「結局よく聞こえませんでした…」 肩を落とす千代子に、そもそもそれが目的ではなかっただろ、と浩灯は呟く。 浩灯はどちらかというと、従兄弟である速水のほうが気になってはいたが、横目に見ると、速水はもう席を立つところだった。見つかったらこの状況を同説明しようかと心配していたが、それは浩灯の杞憂に終わった。トレーを返却棚に戻すと、速水はうつむきがちな姿勢で足早に店を出て行った。一つ息をつく浩灯。 「あれ、先輩」 「ん?」 千代子が今しがた速水が出て行ったドアを指差す。見ると、紅坂が急ぎ足で外へ出て行くところだった。ちょうど、速水を追いかけるような雰囲気だった。 「それ、案外正解じゃないですか?」 「そうか? なんで」 「ほら、思い切って告白とか」 「それはないだろ」 しばらくして戻ってきた紅坂の顔は、どことなく満足げな表情だった。 「ほらぁ」 「違うと思うぞ」 だがまあしかし、と浩灯は思う。紅坂の表情は確かに、見ていてすがすがしいと言うか、そういう表情ができることをうらやましいと思わせるようなもので、 「…なにかしら、あったんだろうな」 と、浩灯はついそんなことを呟いた。 「ん? なにがですか?」 「知らんけど。そう――たとえば、二人の距離を縮めるようなこととか、がさ」 そう言って、浩灯はちょっと口の端を緩めた。 キザだな僕の阿呆、と内心で呟く浩灯ではあったけれども。 千代子のほうは珍しく見られた浩灯の笑顔(のようなもの)に、ちょっとほわっとした気分になっていたりして、 「ねえ、先輩」 「ん?」 「従兄弟さんより先に、彼女作りたいとか、思いませんか?」 上目遣いに、そんなことを尋ねてみる。 「いや、別に」 「…けちですね」 素っ気無い浩灯の反応に、千代子は頬を膨らませた。 * まずお詫び、千代子の名前が永森から明冶に変わりました。理由、明治の板チョコのほうが好きっていうかポピュラーな気がする、ので(待て)。…あとはまあ、キャラメルは森永だったことに気づいたから、ですかね。 abcd以来の続きもの、ようやく完結。推敲が甘いのは自覚しつつも、学祭ように間に合わせたので勘弁してください、と。 なお、いまさらですがjは木組お題「シュークリーム」課題作。
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/1136.html
「このビルなの? なんかこのくたびれた感じが確かにそれっぽいけど」 「そそ、ここの三階が問題の場所。それにしてもなんかこう、ドキドキしてこない? ここでふたりの運命が変わるかもしれないって思うとさ」 深刻そうな内容の台詞とは裏腹な軽い調子に私はあきれ返ってしまう。まったく大胆なんだか無神経なんだか。 「そういう不謹慎なことを言うな。万一見つかったら大変なことになるんだからねっ」 「だいじょぶだいじょぶ。いざ行かん、我らの勝利のためにー」 「いったい誰が何と戦うんだよ……」 さっさとビルの出入口に姿を消してしまったあいつを見失わないように、しかたなく私もスピードを速めて後を追う。 「ふたりの運命、私たちの可能性、か」 決して信頼してないわけではないけど、なんせふたりとも素直じゃないから。ま、だからこうして様子を見に来たりしてるわけだし。 などと必死に言い訳している自分に気づいてしまい、思わず吹き出しそうになる。 やれやれ、素直じゃないのは私も同じか── ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『コーヒーブレイク/キャラメル・ラテ』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― なすすべもなく、ただ私はその場に立ちすくんでいる。 切れかかった蛍光灯が硬質な音を立て、せわしなく明滅を繰り返していた。くすんだコンクリートの壁のそこかしこには無数の細かなヒビが浮き上がっている。毒々しいペンキを塗りたくって精一杯化粧をほどこしているが、残念ながらそれを隠し通す試みは無残な失敗に終わっていた。 本当に、ここは何もかもが狭く澱んでいて息が詰まりそう。たとえばここまで登ってきた細い急傾斜の階段。大人がすれ違うのも難しそうだ。 開け放たれた階段の踊り場の窓から、生暖かく湿った空気とともに外の喧騒が流れ込んでくる。それにはわずかにすえた臭いが混ざっていて、ここが繁華街であることをいやでも思い起こされてしまう。呼吸を続けていると鼻やのど、いや肺のすみずみまで腐ってしまいそうだ。 もしかすると旧約聖書に載っている、神の怒りに触れ滅ぼされたという街ソドムも、こんな感じだったのだろうか。 そういえば、英語のソドミィというのは同性愛者という意味もあるのよね。 こなたがバイトしているメイド喫茶の出入口は私の目の前にある。このドア一枚を隔てた向こう側に存在するのは一部の人々にとっての天国。ほんの少しドアノブをひねるだけで簡単に入り込めるはず。だけど、私にとっては決して崩れることのないジェリコの壁のように感じられてしまう。 だから。 なすすべもなく、ただ私はその場に立ちすくんでいる。 ◇ ポケットで何かが間欠的に振動するのを感じる。ケータイにどこからかメールが着信したらしい。取り出して差出人を見ると、どうやら最近入会した新しいネトゲのサイトからのようだった。とりあえず急ぎの用件でないことだけ確認して、再びポケットにしまい込む。 ネットでいろんなサイトをめぐっていると、たまにネトゲの広告が表示されていることがある。今まであまりそういうのには関心がなかったのだけど、私が好きなラノベ作家がかかわっているということで、とうとうネトゲにも手を出してしまった。なんだか、いろいろな意味でこなたに影響されているようで、あまりおもしろくないのだけど。 最初のうちは無料でプレイできるというのも魅力だった。だけど、世の中そんなに甘くない。無料で用意できるアイテムなんてたかが知れている。すぐに行き詰まってしまい、有料アイテムを購入するか、さもなければ他の人たちと交渉で譲ってもらうかしなければならなくなる。 懐のさびしい私ではアイテムの購入はためらわれた。かといって女キャラで見知らぬ他人とやりとりするのは、やっぱり問題があったりする。少し仲良くなると、こちらのスペックとかメルアドを聞き出そうと躍起になる莫迦が時たまあらわれるからだ。 いったい何を勘違いしてるのか。もし私がネカマだったりしたらどうするつもりなんだろう。まあ、それはそれで面白いかもしれないけど。いやもちろん、自分が当事者でなければの話よ。 そういえば、こなたなんかあっちの世界ではかなりうまく立ち回ってるらしい。オトコキャラのシーフで軽くレベル六〇超えてるし。でも世の中は広い。上には上がいる。 こなたがどこからか聞いてきた話によると、我が国にはレベル七五のキャラを五つも育てているという、とんでもない若い女性廃プレイヤーが実在するらしい。なんでもオフの時間全てをネトゲに費やしているのだとか。確かにそのくらい入れ込まないとレベル七五なんてとても無理。ましてそんなキャラを五つもだなんて、どんだけネトゲ好きなんだよっ、とツッコみたくなる。 ようやくレベル六かそこらをうろちょろしてる私から見れば神さま、いや女神さまみたいな存在だ。もっとも……リアルではあまりお近づきになりたくないかなぁ。やっぱり私は血の通った人間のほうが性に合っているみたいだし。 でももし実在するのなら、いったいどんな人なんだろう。ちょっとだけ興味ある、かも。 それにしても、さっきからなんだかヘンな気分。どうして自分で自分を責めているかのような感覚を覚えてしまうのか。うーん、わからん。 そんなどうでもいいことを考えていると、絶対障壁のようなドアがいきなりきしんだ音を立てて開いた。別に私が開錠の呪文をとなえたわけじゃない。喫茶店から誰かが外出しようとしていたのだ。 「いってらっしゃいませ、ご主人さま」 そんな女性店員の声に送られ、ふたりの男が中から姿をあらわした。どちらも度の強そうなメガネをかけ、どデカいバックパックをだらしなく肩に引っかけている。お世辞にもファッショナブルとは冴えない風体だ。 男たちは私という想定外の存在に戸惑ったようだった。ぎょっとしたように目が見開かれ、一瞬遅れてわずかに好奇の色が宿るのがわかる。 その4つの目が、靴の先からひざ、太もも、腰、腹、胸、首と、まるで舐め回すように私の身体を捉えていく。 何よ、こいつら。 本能的な嫌悪感を押し隠しながら、私は男たちをにらみ返した。こちらから目をそらすのは、なんだか負けを認めるようでイヤだった。 はたして男たちは急に落ち着かなくなり、慌てて視線をはずしてそそくさとエレベーターの前に向かって歩き出す。そのあとには顔を背けたくなるような犬の臭いだけが残った。 ドア越しに店の内部の様子を伺おうとすると、今度はショートボブの女性店員と目が合った。眼鏡の奥で何ひとつ感情を読み取れない、ガラス球のような瞳が私のことを凝視している。まるで日本人形を連想させるかのような、こじんまりと整った顔立ちだった。空色を基調とした県立北高のセーラー服に、濃紺のカーディガンを重ね着している。 一見して、いかにもおとなしそうな文学少女風味。文芸部と書かれた部室棟の一室で、パイプ椅子に座り込んで分厚いハードカバーを読み耽っていれば、さぞかし絵になることだろう。もし長門有希が──『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する、あの対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースが実在していたとしたら、ちょうどこんな感じかもね。 「何?」 ちょっぴりハスキーな小声で、彼女が最小限の質問をぶつけてくる。どうしよう、彼女に呼び出してもらおうか。私がどう話を切り出そうかと悩んでいると、意外なことに向こうの方から話しかけてきた。 「涼宮ハルヒの関係者?」 ハルヒ? ああ、こなたのことか。 「う……ん。まあ、そんなとこ」 私がそう答えると、長門有希は注意深く観察していないと見逃してしまうほどの小さなうなずきで「了解」と返してくれた。 「いま呼んでくる」 それだけ言い残すと、彼女は再びふらふらと店の中に引き返していった。 それにしても、イヤな視線だった。先ほどの男たちのそれを思い出す。まるで異物を見るような、まるで虫でも見るような彼らの目つきを。もし私とこなたとが友人の関係を踏み超えたら、否応なしにそのような視線に晒されることになるのだろう。 私はまだいい。それが自らの決意で選んだことなのだから。だが、こなたはどうだろうか。それでなくても、あいつはマイノリティだ。チビだし、オタクだし、さらにその上……。 いや、あいつは耐えるだろう。それどころか、ひょっとしたら意にすら返さないかもしれない。 だけど、果たして私が耐えられるだろうか。ほかならぬ私のワガママで、あいつが好奇の視線にさらされる事態に陥ることに。 『ある時は、白い目を向ける人々から娘を護る盾となった』 桜庭先生の声が脳裏に響く。 そんなマネ、とても無理だ。 私は天原先生みたいに強くない。 私はあの少女みたいに聡明じゃない。 私はみゆきみたいに完璧超人じゃない。 ──なら話は簡単よ。 もうひとりの私がささやく。 あんたが我慢すればいい。 あんたが気持ちを殺せばいい。 あんたが黙ってこの場を去ればいい。 そっか。そうよね。私がそう納得しかけると、さらにもうひとりの私が反論する。 何言ってんのよ。 好きなんでしょう。 周りのことなんて関係ないじゃん。 どちらの主張にも一理ある。どちらがより正しいのかはわからない。ただこんな中途ハンパな気持ちで、こなたと向き合ってもまともな話し合いができるとは思えなかった。 その時だった。再びドアが開いたのは。 中から現れたのは涼宮ハルヒ──ではなくて、涼宮ハルヒのコスプレをしたあいつ。例によって県立北高の制服を身にまとい、黄色いリボン付きのカチューシャで長い髪をまとめてる。 今いちばん会いたくない、だけど、今いちばん会いたかった人間だった。 「お帰りなさいませ、ご主人さま」 「やめんか」と私。 「まあまあ、ここはお約束ってことで。これでも飲みながらゆっくりしていってね」 トレイの上にふたつのコップが乗っかっている。薄褐色の液体に充たされたそれから、わずかにコーヒーのような香りが漂っていた。 「なんでこんなところで……」 「うーん、中だとかえって落ち着かないよ? ほら、何か大事な話があるんじゃないか、と思ってね」 「どうしてそれを?」 「みゆきさんからメールを貰ったから。かがみがこっちに向かってるって」 ニマニマとだらしない笑みを浮かべるこなた。なんだか手のひらの上で踊らされているような気がして無性に腹立たしい。 「さっきまではそのつもりだったんだけどね」 きっと私は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていることだろう。 「やっぱり今日はやめとく。帰るわ」 「ちょ……かがみ?」 わけがわからないという感じのこなたを残し、ひとり私は階段を急ぎ足で駆け下る……ことは残念ながらできなかった。眼下の踊り場にふたりの人影が見えたからだ。 誰だろう。私は足を止め、目を凝らす。 ふたりともおそろいの、飾り気のない紺色のブレザーとジャンパースカートに身を包んでいる。高校、いやひょっとすると中学の制服だろうか。 ひとりは襟のところできっちり髪を切り揃えていて、これで眼鏡でもかけていれば典型的な委員長タイプといった雰囲気をかもし出している。もうひとりはショートカットがとてもよく似合うスレンダーな少女。もしスカートを穿いていなければ少年と言われても信じてしまいそうだ。それでいてどことなく似た印象を受けるところを見ると、おそらくは姉妹かなにかなのだろう。そのふたりともが心配そうな顔で私のことをじいっと見つめていた。 ──胸が鈍く痛む ひょっとしたら修羅場モードだとでも思われただろうか。確かにこれじゃあまりにも言葉が足りなすぎる。誤解されても仕方ないかもね。 「カン違いしないでよね。あんたのこと、嫌いってワケじゃない。むしろその正反対なんだから」 ふたりの顔におやっという当惑の表情が浮かぶ。 「でも、それだけじゃ、気持ちだけじゃ、多分足りない」 私は、ふたりにも理解できるようにと、できるだけ言葉を選んで口にした。 「もし私たちが友人の枠を踏み超える関係になったとしたら」 「周囲の反応は、私にもなんとなく想像できるよ」 硬い声で、こなたが同意する。 「一時の感情に流されてしまいたくない。きっと悔いを残すことになるから。どうでもいい相手なら、遊び相手なら別にそれでもいいけどね。でも私にとってあんたは決してそんな存在じゃない。この世の誰よりも何よりも大切なの。だからこそ慎重に事を進めたい」 しだいにふたりの表情が当惑から理解、さらに全面的な賛意へと変化していくのがわかった。きっと、あいつも似たようなモンだろうな、と思う。 「こなた、お願いだからもう少し考えさせて。私たちに何が必要なのか。どうすべきか、どうしたいのか。ほかならぬ、あんたのことだからこそよ」 「かがみはおくびょうモノで、心配性で、見栄っ張りで考え方が硬くて、ほんとワガママだよね」 いつもの調子であいつが答えてくれる。それを聞いたふたりの顔にも薄い苦笑いが浮かんだ。 「ありがとう。私が私らしくいられるのは、きっとあんたのおかげよ」 ようやく私は、こなたのほうへと振り返る。多分、ふたりはもう大丈夫だと思ったから。 「私は後悔したくないし、あんたに後悔させたくもない。それだけはわかって」 「ん、待ってる。かがみは納得するまで考えて」 こなたは大きく同意のうなずきを返してくれた。 「それがたとえどんな結論でも、私とのことを真剣に考えてくれたという事実だけは忘れないから」 久々に見る、こなたの会心の笑顔だった。心の底からほっとする。どうやら私たちは一定の合意に達することができたようだ。 唐突にある単語が頭に浮かんだ。みゆきから、日下部から──正確には天原先生の恋人さんから聞かされた、白雪姫という単語が。 彼女はその後、どんな人生を過ごしたのだろうか。物語は何も語らない。 多分、王子と幸せに暮らしたのだろう。 多分、周囲から祝福されて。 多分、何一つ不自由なく。 でも、私たちには何もない。 おそらく、誰からも祝福されることもない。 おそらく、ハッピーエンドもない。 おそらく、何のメリットもない。 だけどこれは。 自らの意志で選ぶ運命。 自らの手で掴み取る選択。 自らの全てを賭けて歩む苦難の道。 私は白雪姫じゃない。 何一つ自分で選択しなかった白雪姫じゃない。 だから私は多分、白雪姫よりも幸せだ。 少なくとも今、この瞬間だけは。 「ごめんね、階段ふさいじゃって……あれ?」 話が一区切りついたところで、踊り場のふたりに詫びようとしたのだが、どういうわけか姿が見えない。あきれ果てて階下へ引き返してしまったのだろうか。 「どこ行ったのかしら、あの子たち」 「あの子たちって?」 「ほら、今までそこにいたでしょ。女の子がふたり」 「かがみが何を言ってるのか、よくわからないんだけど」 首を傾げながら、こなたが答える。 「私たちが話し合っている間中、階段には誰もいなかったよ?」 「ちょ、やだ……何言ってるのよ。だって、ついさっきまで踊り場に……」 そこまで言いかけて、ようやく理解が追いついた。 さきほどの少女たちの姿が、こなたには見えていなかったのだ。 ◇ 「まあまあ、とりあえず一息つかない。正直なところ、喉がカラカラなんだよねー」 ようやくいつものペースを取り戻したこなたが、ニマニマと笑いながらトレイを差し出してくる。 「まあいいけど。それにしても何なの、この得体の知れない液体は」 「これはね、キャラメル・ラテ。エスプレッソをベースにしたカフェラテに、キャラメル味のシロップで味付けしてるんだ」 「よりによってシロップかよ。誰がコーヒーにそんなの入れようなんて考えたんだろ。しかもなんかこれ、滅茶苦茶甘そうじゃない?」 「まあ、確かにコーヒーっぽくはないかもねー」 一段とニマニマ笑いが大きくなる。 「ほら、シアトル系コーヒーってあるじゃん。あの辺りの人たちが考えたらしいよ」 「それって、たとえばスタバとか?」 「そそ。シアトルのあるワシントン州は、別名『コーヒーステイツ』とも呼ばれてて、 米国内でもエスプレッソの消費率が高い州って言われてるんだって」 私にコップの一つを手渡しながら、こなたはなおも続ける。 「で、このシロップは、もともとカクテルやソーダとかっていう冷たい飲み物に入れるために開発されたものなんだけど、それをベースにしてシアトルの人たちがいろいろと改良して、今ではラテ専用のが製造されてるんだ」 「ふーん。結構工夫されてるのね」 そう言われてみると、なんだかキャラメルとエスプレッソの香りが意外にマッチしてるようにも思えてくる。 「じゃあ、いただきます」 例によって香りを試してから、恐る恐る一口含んでみた。 「うわっ、甘っ!」 覚悟していたつもりだったが、予想をはるかに上回るねっとりとした甘ったるさが口の中一杯に広がった。しかしすぐにエスプレッソの苦味が急速にそれを中和していく。かつて味わったことのない、なんとも風変わりなハーモニーじゃないか。 「確かにまあ、これはこれでアリかも知れない」 「もともと欧州でも、エスプレッソは砂糖やミルクを入れて飲む人が多いらしい。だから『じゃあシロップ入れてみよう』って発想があっても全然不思議じゃないよね」 スタバかー。やたら高級そうなイメージがあるんだけど、今度行ってみようかな。 「さっき地下鉄で天原先生の恋人さんから缶コーヒーをおごってもらったけど、この甘さはそれどころじゃないな」 「天原先生の恋人って、桜庭先生のこと?」 「え、いや、そうじゃなくって。うーん、どこから話せばいいものか」 私はさきほど地下鉄で出会った天原先生の恋人さんの話をかいつまんで聞かせた。 はあっと、こなたが盛大にため息を吐く。 「かがみってさ、たまに夢見がちっていうか、ものすごーくアホの子なんじゃないかって思うことがあるよ。ほらこの間、金魚に甘声で話しかけるって聞いたときも」 「なんだその哀れむような目は。ものすごーくムカつくんですけど」 そう言いながらも、私は無理もないなと思う。もし自分が逆の立場だったとしたら、何の物的証拠もなしに信じることなどできないだろう。 ん、待てよ、証拠か。 「じゃあほら、これ見てよ。彼女が置いていった空き缶の写真」 ケータイを取り出し、さきほど撮影した写真を呼び出す。それを見たこなたの態度が一変した。 「ちょ……かがみ。これ、エヴァ缶じゃん!」 「エヴァ缶? 何よそれ」 聞きなれない単語に、今度は私のほうが首を傾げてしまう。 「九十年代に爆発的ブームを巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』ってアニメの宣伝のために、UCCとタイアップして作った缶コーヒーのことっ」 よほど嬉しかったのだろうか。声が上ずっている。 「しかもこれ、一九九七年に発売されたバージョンだから。間違いないよ。最近再販されたまがい物と違って、ちゃんと漢字で『乳飲料』って書いてあるし」 すっかり興奮状態に陥ったこなたは、私の手をケータイごと握りしめ、そのまま上下に振り回す。 「信じるよっ。かがみの言ったこと、全面的に。うんっ!」 「なんか、ものすごく嫌な信用のされ方なんだが……」 どうにも納得できない微妙な気持ちを抱えながら、私は先ほどの地下鉄での会話を思い浮かべる。そういえば、あの天原先生の恋人さん、ちょっと……いや、かなりオタクっぽかったもんなぁ。 それにしても、こんな一部の人たちににしかわからないような証拠の残し方をするとはね。もしかしたらこれは、こなた宛のメッセージなのかも知れない。 私がそんなことを考えていると、どこからともなくかすかな振動音が響いてきた。こなたがそれに気づいて自分のふところからケータイを取り出す。 「ちょっとごめん。……ん、黒井先生からだ」 「黒井先生がどうかしたの?」 「うーん。なんでも自分の参加したノラパーティがボス戦で全滅しちゃったから、せめて骨だけでも拾いに来てほしいって」 「あー、そういうことか。確か、教会に連れて行くんだっけ?」 あれ。 ちょっと待て。 こんなシチュ、以前にもどこかであったような……。 『ボスの逆襲で、今にもパーティが全滅しそうなんだからっ!』 こなたの声が。 『せめて死体だけでも教会に連れて行ってくれなきゃ、復活も出来ないよーー』 そう叫んでいる。 「ま、家に帰ってからだねー。さすがにケータイだけじゃネトゲは辛いし」 ニマニマ笑いを浮かべていたこなたの表情がふっと陰る。どうやら私の異変に気づいたらしい。 「どったの、かがみん?」 だがすでに私は、こなたの言葉に答える余裕をほとんど失っていた。 頭の中でぱたぱたと絵が組みあがる。 あの子たちと出会った記憶が鮮明によみがえる。 消したくても消しきれなかった、胸の鈍い痛みとともに── 『ただいまー。今日も疲れたな』 『お帰り、かがみ。ご飯、お風呂、それともわ・た・し?』 『いやさあ、そういう冗談はせめて相手の目を見て言わないか』 スーツの上着をハンガーに引っかけると、私はこなたの頭を両手でがしっと掴んで、無理やりこちらに振り向かせようとする。 『PCの画面を真剣に見つめながらそんなこと言っても、説得力ゼロだっつーの』 『ちょ、ちょっと待ってよ。いま重大な局面を迎えてるんだって。ボスの逆襲で、今にもパーティが全滅しそうなんだからっ!』 悲痛な声で窮状を訴えるこなた。それとほぼ同時に、どこからともなく黄色い悲鳴が沸き上がるのが聞こえた。 『こなたママ、後ろから何やってんの! この状況で味方の下着盗んでる場合じゃないでしょ!!』 『シーフに戦闘までは期待してないけど、せめてポーション使って回復するくらいの機転、利かせてよっ!』 私たちの愛しい娘たちが、奥の部屋から転がるように飛び出してくるなり、こなたに向かって文句を言い始める。 『ちょ、おま。子どもたちまで巻き込んでネトゲ三昧かっ!』 頭を抱えたくなるほどの惨状。ようやく今日の激務を終えて我が家にたどり着いたというのに、まったくこいつらときたら。 『かがみー、助けてよーーー。このままじゃ私まで死んじゃう。せめて死体だけでも教会に連れて行ってくれなきゃ、復活も出来ないよーー』 『かがみママー、助けてー』 『お願い、かがみママ。愛してるからっ』 しかも代わる代わる懇願してくるじゃないか。 『ああっ、もうっ!』 髪をかきむしりたくなるような気分を我慢しながら、私はタイトスカートのポケットから携帯端末を取り出す。 『それで、今どこなの? これから助けに行くから、三人ともちょっと待ってなさいっ』 『さすがはかがみママ!!!』 狂喜する三人の歓声が、十五年のローンを残した我が家いっぱいに響き渡った── そうよ、あの時。こなたと初めて出かけた喫茶店。ロバーツ・スペシャルブレンドを味わった帰り道で。てっきり私の妄想か何かだと思い込んでたのに。 ──なんてこと。 両手で自身の身体を力任せに抱きしめる。 身体の奥底から熱いものが湧き上がる。 呼吸がひどく苦しい。 胸が鈍く痛む。 「かがみ……?」 こなたが心配そうに私の右手の甲に触れる。しかし今の私には応じるだけの力がない。 もしも、私がコーヒーにはまらなかったら。 もしも、こなたがあの喫茶店に誘わなかったら。 もしも、桜庭先生が天原先生の物語を語らなかったら。 もしも、みゆきが私たちのために行動を起こさなかったら。 今日私が、ここまでやってくることはなかったはず。 そうとも。今ならはっきりと理解できる。あの光景は、あの子たちは、妄想でも幻覚でもない。私の中に眠っていた夢……いや可能性とでも呼ぶべきものだ。 選ばれなかった可能性。 喪われてしまった可能性。 これから見つけ出す可能性。 無数のさまざまな可能性が私の中でぐるぐると渦巻き溶け合い、しだいにひとつの明確な形をあらわしていく。 それは巌のような決意。 ──約束する。 ──必ず見つけてみせる。 ──あなたたちと出会える方法を。 そして私は、顔を上げてもう一度無人の踊り場へ目を向けると、私たちの愛しい娘たちに向けて祈るような気持ちで語りかけた。 「だからお願い。もう少しだけ待ってて。未来で」 くすんだコンクリートの壁に一瞬、娘たちの笑顔が浮かんで見えたような気がした。 (Fin) コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-06-24 08 03 55) high quality・・・・・ -- 名無しさん (2010-01-01 19 46 14) 上手いよ構成が -- ケン (2009-08-19 00 48 34) 最初のやり取りはかがみの見た子供達?とにかくGJ! -- 名無しさん (2009-04-02 16 05 55) こういうのもいいですね。現実と非現実の混濁した雰囲気がなんとも。 かがみははたして未来を見つけ出せるのか。続きもお待ちしてます。 -- 名無しさん (2009-03-27 16 45 47) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/1341.html
深煎りのヨーロピアンローストで濃いめに入れたコーヒーを人肌の熱さにしたミルクと合わせる。 高い位置でコーヒーとミルクを合わせて入れるのが、フランス式のカフェ・クレームの流儀。 「おや白蓮さん!どうしたんですか?そんなものものしい恰好は?」 「本日は節分!季節の変わり目には邪気(鬼)が生じ、それを追い払うための悪霊ばらいを命蓮寺で執り行う!」 「ちょっwwww!俺は一般ピープルだから悪霊なんて関係ないって!」 「一輪・・・・例の物を」 「これは俺のSHUNGA・・・・誰が!」 「このような魔導書を読むなんて悪霊が取り付いている証拠!いざ南無三!!!!!!!」 ハードボイルドに茹で上げた卵にソースをかける。 お隣が五月蠅いようだが、それだけで気分を悪くするほど狭い心ではない。 パーコレーターを準備する。 外の世界でも使う人間が少なくなったのだろう、道具屋で安く入手できた。 お湯が沸いたのを確認し、浅煎りのコーヒー豆をセットする。 手間はかかるが、アメリカンコーヒーを楽しむためには手を抜いてはいけない。 「なあちょいと酌してくれないかい?たっぷりサービスしてあげるからサァ」 「忘れたと言わせないぞ!勇儀!お前達が俺に何をしたかを!!!」 「アンタが持ってきたハブ酒で滾っちまって、ナニが乾く前に楽しませてもらっただけさ?」 「アンタにとっては天国でも俺にとっては地獄だ!!!」 「ならなおさら旧地獄へ招待しないとね・・・」 「今は懐かしのサバゲ用ゼンマイ式手榴弾だ!!!中には炒った豆を仕込んでいる」 「弾幕勝負かい?いいね」 「喰らえ!!!!」 「・・・・炸裂しないかい?知り合いの鬼に頼んでゼンマイをあらかじめ切ってもらったんだ」 「畜生!!!」 「さて弾幕勝負に負けた奴は好きにしていいんだよな?」 「たすけてぇぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇ!」 秘蔵のハブ酒を楽しんでいただけたようだ。 送った側としても鼻が高い。 パーコレーターの覗き窓から抽出具合をみる。 良い頃合いだ。 火を消すとファイアストーンのマグカップに淹れる。 昼食用のクラブサンドを用意し、ゆったりとした時間を楽しむ。 夕食を食べ終えた後はカフェ・ロワイヤルを楽しむことにしている。 カップに渡したスプーンの上に、コニャックに浸した角砂糖を慎重に乗せる。 マッチで火を点けると青白い炎に包まれ角砂糖がカラメル化していく。 十分にアルコール臭が消えた頃合いで手早く混ぜ合わせる。 「○○様はおられますか?」 「こんばんわ咲夜さん」 「主人から事付けを預かっております」 瞬間移動したかのように、いつものように彼女は立っていた。 そしていつものように分厚い茶封筒を手渡す。 こちらが提示した額よりも多い。 「主人・・・レミリア様はあなたからの情報に満足されておいでです」 「それは何より」 「その後の動向は?」 「遊廓に誘ってみたりしてみたが、顔を赤らめていたからな・・・おそらくまだ童貞だ」 「紅魔館就職については?」 「やはり根深い不信がある。通いで様子を見てはどうだ?」 「的確なアドバイス感謝いたします」 十六夜咲夜はスカートの端を摘む、優雅な仕草をすると銀髪を靡かせ夜の闇へと消えていった。 「俺としたことが・・・・」 やや若い豆を使ったのが悪かったのだろう。 何か生臭い匂いがしていた。 「まあいいか」 数週間後、「貴賓室」という名の監獄で何度も味わう味であることを、このときの彼はまだ知らなかった。
https://w.atwiki.jp/t0944520022/pages/641.html
海外の雑貨や食料品が買えるため、人気が高い。ここは定期的にコーヒーで試飲ができ、試飲には行列が出来る。 所在地 福岡県大牟田市 岬町3-4イオンモール大牟田 1F 電話番号 0944-57-7072 営業時間 10 00〜22 00 ホームページ http //omuta-aeonmall.com/index.jsp
https://w.atwiki.jp/gods/pages/45567.html
ヴァラーヒー ヴァーラーヒーの別名。