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前ページ次ページ使い魔のカービィ ルイズは意気揚々とミセス・シュヴルーズの『錬金』の授業を受けていた。 それもそのはず、先程カービィの意外な能力を発見し、役立たずではないと証明されたのだ。 カービィのあの吸い込み、風力だけならかなりの物だ。 何に使えるかは未知数だが、色々道はあるだろう。 風っぴきが教室に入ってきたとき野次を飛ばしてきたが、今まで感じていた劣等感を感じずに済んだ。 カービィが凄い力を秘めた使い魔だったことの嬉しさが、ルイズを苛んできた劣等感を上回ったのだ。 (優しくて、特殊な能力も持ってて、珍しくて……最高じゃない! 私の使い魔!) あとは強ければ……とも考えたが、それは流石に望みすぎだ。 とにかく、自分が理想としていた使い魔より若干劣るものの、カービィは使い魔として申し分のない存在だ。 あの食欲には驚かされたが、その辺はしっかり躾ればきっと最高のペアになれるだろう。 そんなことを考えながらニヤつくルイズだった。 一方ルイズの隣の席では、カービィがミス・シュヴルーズの話を熱心に聞いていた。 真面目に授業を受けているのか、というとそうではない。 ただ単に、カービィは周りの生徒達の真似をしているのだ。 第一カービィに魔法のイロハが分かるはずもなかった。 段々真似をして授業を聞くのにも飽き、睡魔が彼を襲いつつあった。 そんな2人に関係なく、授業はどんどん進んでゆく。 「……と、言うわけで。一年生の時に出来るようになった人もいるかと思いますが、もう一度おさらいしてみましょう」 そう言うと、ミセス・シュヴルーズは石ころをいくつか取り出した。 その動作が気になったのか、夢の世界へ旅立とうとしていたカービィの意識がゆっくり覚醒する。 ミセス・シュヴルーズがルーンを唱え、小さく杖を振った。 するとどうだろう、ただの石ころが輝きだし、光沢ある金属へと変わったではないか。 生徒達から感嘆の声が上がり、キュルケが興奮のあまり立ち上がた。 「ゴ、ゴ、ゴ、ゴォルドですか!? ミセス・シュヴルーズ!?」 「いえ、ただの真鍮です」 「なんだ」 熱を失うと、キュルケはつまらなそうに席に着いた。 「ゴールドが錬金金出来るのはスクウェアのメイジだけです。私はまだトライアングル……って、あ、あなた! 授業中ですよ!」 その声に教室中の視線が一点に注がれた。 授業を真剣に聞いていた者も、居眠りしていた者も、トリップしていたルイズも注目した。 追記しておくと、ルイズは今にも顔から火が出そうだった。 「カービィ!」 「ぴぃよ、ぽよぉ♪」 なんとミセス・シュヴルーズがたった今錬金した真鍮を、カービィがおもちゃにして遊んでいるのだ。 「やっぱりルイズの使い魔だな! やってくれるぜ!」 「主人が主人だからな!」 教室から湧き上がる爆笑。 ルイズは先程の考えも吹き飛び、穴があったら入りたい思いでいっぱいだった。 そうこうしている内にミセス・シュヴルーズはカービィを捕まえ、ルイズの下へ運んできた。 「コホン。ミス・ヴァリエール、使い魔の躾はちゃんとして下さいね?」 「すみませんでした……」 「ぽよ?」 主人が怒られているというのに、カービィは相変らずボケた顔をしている。 ルイズは初めて己の使い魔が恨めしいと思った。 しかしルイズの不幸はまだ続く。 「それでは、丁度良いですね、錬金のおさらいをあなたにやっていただきましょう」 ミセス・シュヴルーズがそう口にしたとたん、教室中が凍り付いた。 生徒達の顔からは血の気が引き、一部机の上を片付け始めた者もいる。 「わ、私がですか!?」「ええ、そうですよ。石ころを望む金属に変えてみなさい」 「あの、先生……やめておいた方がいいと思います……」 ミセス・シュヴルーズがルイズを教壇へ連れていこうとしたとき、キュルケが何かに怯えるようにそれを止めた。 「何故です? ミス・ツェルプストー」 「危険だからです」 キッパリと答える。 他のほとんどの生徒も大きく首を縦に振った。 しかし、昨年ルイズを教えていなかったミセス・シュヴルーズは、生徒達の忠告を嫌がらせだろうと捉えてしまった。 それにこれは錬金の授業、余程のことがなければ危険はない。 そう高を括ったのが彼女の不運であった。 「さあ、ミス・ヴァリエール。失敗を恐れずやってみなさい」 「………はい!」 ミセス・シュヴルーズと共に教壇へ上がったルイズは、杖を石ころへと向けた。 「やめて、ルイズ!」 キュルケが叫んだが、もうルイズは杖を構えていた。 (『サモン・サーヴァント』が成功したんだもの……錬金だって!) ルイズが自分にそう言い聞かせ、ルーンを唱え始める。 その様子を見ていたカービィは、視界が急に広くなったことに気が付いた。 「ぽよ……?」 周りを見回すが、誰も席に着いている者はいない。 机の下に隠れ、まるで『何か』を怖がっているようだ。 「カービィ!」 「ぽょ?」 カービィが後ろを振り向くと、キュルケが必死で手招きをしている。 その様子から、とても焦っていることが伺えた。 「悪いことは言わないから、早くこっちにいらっしゃい!」 「ぽぉよ?」 言われた通り、席から降りてキュルケの下へ向かうカービィ。 しかし、カービィがあと少しでキュルケの下へ『避難』できる寸前。 教室が爆光と爆煙と爆音と爆風に包まれた。 「ぽよぉぉーーーーー!?」 「あ……遅かったわね」 爆風に飲み込まれたカービィは、教室の扉に勢い良く激突。 頭の打ち所が悪く、そのまま気絶してしまった。 爆心地にいたルイズとミセス・シュヴルーズにいたってはもっと被害が酷かった。 髪はアフロになり、衣服はボロボロ。 おまけに黒板に後頭部を強打し、脳震盪を起こして授業時間中に目を覚ますことはなかった。 「はぁ………」 ようやく目を覚ましたルイズは、1人寂しく荒れ果てた教室の片付けをしていた。 カービィはまだ気絶しており、教室の隅に寝かせてある。 「また失敗……」 カービィの召喚が成功していただけに、ルイズにとってこの失敗は手痛かった。 いつもの失敗ならばこれほど落ち込むこともなかっただろう。 しかし、自分の使い魔を得、自信を持った矢先の出来事だっただけに、ショックも大きい。 (カービィが来たから全部うまくいく、なんて……甘かったのかな………) 人間、一度気分が沈むと、底に辿り着くまでなかなか立ち直れなくなるものだ。 特にルイズは今まで罵られ続けたせいもあり、こういうネガティブになりがちな一面があった。 「はぁ……」 ルイズは何度目か分からないため息をく。 「あの……」 その時、ルイズは不意に後ろから声をかけられた。 どこかで聞いたような声に後ろを振り返ると、シエスタが教室の出入り口に立っていた。 「シエスタ……どうかした?」 「お手伝いしましょうか? ミス・ヴァリエール」 「えっ、でもあなた仕事は……」 ルイズはシエスタからの意外な申し出に一瞬戸惑った。 確かにメイドに手伝いを頼むのは禁止されていない。 だからと言って、忙しいメイドの身である彼女に頼ってしまっていいのだろうか。 しかし、シエスタはルイズに向かってにっこりと微笑んだ。 「少し余裕がありますので、お掃除くらいでしたら手伝えます」 「……また世話になっちゃうわね」 「いえ、私は使用人ですから。お気になさらず」 「……そ、そうよね。あなたはメイドなんだし、当然よね! …………………でも、ありがと」 最後の方は小さすぎて、シエスタには聞こえていなかった。 シエスタという強力な助っ人を手に入れ、片付けの速さは驚くほど早くなった。 さすが現役メイドである、素人貴族とは格が違う。 そして、やっと片付けが終わりそうになってきた頃。 「あの、さっき落ち込んでいたようですが……」 シエスタが急に口を開いた。 しかもルイズが一番触れてほしくない内容について。 「………ええ、また失敗しちゃってね……」 いつもの彼女なら『関係ないでしょ』と怒鳴りつけそうなものだが、今の精神状態では無理があった。 自嘲気味に今日の失敗や、今までもそうだったことを堰を切ったように話すルイズ。 シエスタはルイズが話し終えるまで、黙ってそれを聞いていた。 そしてすべてを一通り聞き終えた後、シエスタはゆっくりと語りかけるように話し出した。 「私のような平民が、貴族様にこのようなことを言うのは厚かましいと思いますが……ここはトリステイン魔法学院です」 「?」 何を言っているのだろうかと、ルイズは作業をする手を休め、シエスタの話に聞き入った。 シエスタもそれに気が付いたのか、同じく手を止め、話しに集中する。 「つまり、勉強できる場所ということです。ですから、『今』は出来なくてもいいんじゃないでしょうか? ここでもっともっと勉強して、『いつか』使えるようになれば。」 「それに、ミス・ヴァリエールはカービィさんを召喚出来たじゃないですか。なら、他の魔法も使えるようになります。いつか必ず。……出過ぎた事を申しました。申し訳ありません、ミス・ヴァリエール」 シエスタは自分の非礼をルイズに詫び、深々と頭を下げた。 貴族を恐れているシエスタがこんなことを言えたのは、魔法を使うことができないルイズに何か近いものを感じたのかもしれない。 だからこんな少し無理があるようなことも言えたのだろう。 しかし、それは決してルイズを卑下しているという意味ではない。 普段の生活から垣間見える努力の姿から、ルイズは立派な貴族だとシエスタは思っているのだから。 「………本当に、そう思う?」 やはり不安があるのか、ルイズは躊躇いがちにシエスタに問った。 シエスタは穏やかな笑みで答える。 「はい。ミス・ヴァリエールなら大丈夫です」 「ぽよ!」 「ほら、カービィさんもそう言ってます」 「そうね……って、いつ起きてたのよ」 「ぽよ?」 「まったくもう……」 今更出て来て美味しい所を持っていった使い魔に苦笑いを浮かべるルイズ。 その顔からは先程の暗い雰囲気は感じられなかった。 「分かったわ、もう少し頑張ってみる! そして私のことをバカにした奴らみんなを見返してやるんだから!」 「その意気ですよ、ミス・ヴァリエール!」 「ぽよ! ぽぉよ!」 やる気も新たにルイズは拳を握りしめ、使い魔とメイドに自分の目標を公言した。 果たして、彼女がこの目標を実現することが出来る日は来るのだろうか。 それは神のみぞ知るところだが、意外にも、それは遠い未来ではないのかもしれない。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
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前ページ次ページ使い魔のカービィ 「ミス・ヴァリエール……カービィさん……」 校長室から決闘を見ていたオールド・オスマンとコルベールが、伝説の使い魔・ガンダールヴについて談義を交わしている頃。 シエスタは顔面蒼白のまま、厨房の椅子に座っていた。 あの時、自分がギーシュの言う通り機転を利かせていれば。 あの時、自分がすべての責任を負っていれば。 あの時、ルイズとカービィを止めていれば。 様々な考えが泡のように浮かんでは消えてゆく。 メイド仲間やマルトーが慰めようと何度か話しかけてはいるが、「大丈夫」と苦笑いするだけで一向に誰とも話そうとしなかった。 そして今頃ギーシュにボロボロにされているであろうカービィのこと、カービィを傷つけられ悲しむルイズのことを考え、シエスタは胸が引き裂かれるような思いに苛まれていた。 同時に、ルイズの言葉を信じ、本当になんとかなるのではないかと思っている節目もあった。 しかしそれはあまりに絶望的な確率の話。 メイジに逆らって無事でいられる筈がないのだ。 「私が……私のせいで……」 もしかしたらルイズは、カービィが傷つけられた責任を自分に問うかもしれない。 それも仕方のないことと、罰を甘んじて受けようと覚悟していた。 「シエスタ!」 シエスタの耳にルイズの声が入って来る。 彼女にはそれが死刑宣告のように重く聞こえたという。 「シエスタ! どこ!? カービィが、カービィが!」 (ああ……カービィさん……) シエスタの頭に無残なカービィの姿が浮かび上がる。 それだけで彼女はもう泣き出してしまいそうだった。 「勝ったのよ!」 (………………えっ?) 全く予想していなかった一言に顔を上げ、シエスタは急いで食堂へ出てみた。 すると、食堂の入り口にはルイズと―― 「ぽよー♪」 ――元気に手を振るカービィの姿が見えた。 一見しただけでも目立った外傷はなく、想像していた無残な姿とは程遠い。 それもそのはず、カービィは決闘後、水のメイジに治療してもらっていたのだ。 柔軟性のお陰で打撲は思ったより酷くなく、痕も残らなかった。 「シエスタ! もう凄かったのよ! こうズババーンって! それからドババーンというか!」 ルイズはシエスタの姿を見つけると、畳み掛けるように話し出した。 未だ興奮覚めやらぬようで、自分でも何を言っているのか分かっていない。 「それで、それでね!」 「ミス・ヴァリエール、カービィさん」 「ん?」 「ぽよ?」 シエスタはカービィを抱き上げると、ルイズと一緒にキツく抱きしめた。 「ちょ、し、シエスタ?」 「ぽょ」 「良かった……お二人とも無事で……」 シエスタが腕の力を強める。 彼女の胸がルイズに当たったが、ルイズが感じたのはコンプレックスからくる嫌悪感ではなく、意外なことに安心感だった。 (………ちいねえさま)カービィとはまた違った柔らかさに、ルイズは自分が敬愛する姉の面影を見出していたのだ。 シエスタの暖かさが、優しさが、すぅっとルイズの心に染み込む。 ルイズはそれに安堵感を覚えつつ、シエスタが慌てて2人を離すまでその感触を味わっていた。 「す、すみません! あまりにその、嬉しかったもので……」 「いいわよ、気持ちは分かるから」 こういう所はまるで違うけど、と、ルイズは心の中で微笑んだ。 「ところでシエスタ、ちょっといいかしら?」 「は、はい。なんでしょう、ミス・ヴァリエール?」 直立し、身構えるシエスタ。 恩人であるルイズとカービィの頼みとあらば、何があろうと協力しようという意思の表れらしい。 力みすぎてとても不自然に映る。 「そんなに身構えなくていいわよ………ねぇ、厨房にまだ食べ物は残ってる? それもたくさん」 「たくさんかは分かりませんが……賄いの残りやパンならまだあると」 「それ、全部カービィに食べさせてあげて! 今日のご褒美よ!」 「ぽょぉ! ぽよぽよぉ♪」 ルイズの言葉に飛び跳ねて喜ぶカービィ。 全身を使って喜びを表現する彼を見て、シエスタは思わずクスクス笑ってしまった。 「そういうことならお任せください。賄いだけじゃ足りないでしょうから、料理長や厨房のみんなと腕に腕によりをかけた料理を作らせていただきます!」 「えっ、いいの?」 「はい。きっと料理長も快く引き受けてくれると思いますよ」 ルイズとカービィに一礼し、シエスタは厨房へと駆けていった。 その後、カービィを主役とし、料理人やメイド達との宴会が行われた。 用意されたのはカービィも大満足な量の料理、マルトー秘蔵だと言うワインが2、3本、そして最高の歓迎体制だった。 生意気な貴族を叩きのめしたカービィは皆からもてはやされ、マルトーからは『我らの星』という名誉な称号までいただいていた。 ルイズの方もシエスタに手を差し伸べてくれた貴族として好印象を持たれ、メイド達からワインのお酌を受けたりしてた。 宴会の勢いはカービィの食欲のように止まるところを知らず、時が過ぎる毎にワインの空き瓶はその数を増やしてゆく。 遂には日が沈み、双月輝く夜となってしまった。 宴会が終わったのは月が真上に来た頃で、少し飲み過ぎたルイズと眠ってしまったカービィをシエスタが部屋へ送り届けることとなった。 「ふぃー……ふぃー……」 「ぐっすり眠っていますね、カービィさん」 「初日からいろいろあったからね、疲れたのよ」 シエスタの背で幸せそうに眠るカービィを見てルイズが呟く。 シエスタも「そうですね」と同意し、微笑んだ。 そうこうしている間に2人と1体は部屋の前に着いた。 ルイズはシエスタからカービィを受け取る。 「それでは、今日は本当にありがとうございました」 「お礼ならカービィに言って。よく考えたら、私は何もしてないもの」 「そんなことはありません。あの時ミス・ヴァリエールがお声を掛けて下さらなかったら……私、きっと自室に逃げてお二人を待つことが出来なかったと思います」 「……そう?」 「はい」 「まあ……シエスタがそう言うんなら、感謝されてあげてもいいわよ?」 せっかく礼を言われているのに突き返すのも悪いと思い、ルイズは照れ隠しに言い放った。 シエスタもそれが照れ隠しだと分かっているのか、キツいと思われる言葉を言われても笑顔だった。 「じゃあ、おやすみシエスタ」 「ふぃゅ……シエスタ……」 「ふふっ、おやすみなさいませ。カービィさん、ルイズ様」 深々と礼をし、シエスタは元来た道を戻っていた。 ルイズはその後ろ姿を見送ってから部屋に入り、カービィと一緒にすぐに寝入ってしまった。 同じ頃、窓から入る月光が照らし出す図書室内。 「………ない」 タバサはそこで幻獣や魔獣、その他諸々の生物の本を漁っていた。 彼女もキュルケに連れられギーシュとカービィの決闘の場にいた1人だった。 最初から決闘に興味がなかったため、黙々と本を読んでいるだけだったのだが。 しかし、途中急に吹き始めた強風に、タバサは読んでいた本を閉じた。 ギーシュが風のメイジではない以上、この風はカービィの吸い込みにより起こったもの。 『朝の惨劇』でカービィに少なからず興味を持っていた彼女は、その威力がどれほどの物か、風のメイジとして見極めてみようと思ったのだ。 「……!」 そして目の前で繰り広げられる逆転劇。 黄金の剣がワルキューレを微塵に切り刻み、エネルギーの刃が地面を抉る。 先住魔法にも似たその力は、タバサの興味を一気にかっさらっていったのだ。 それでこうしてこの不思議生物の正体を突き止めるため、タバサは図書室の魔法生物に関する本を引っ張り出しているというわけだ。 しかし成果はゼロ。 物を吸い込み、吸い込んだ物の特性を写し取る力。 そんな反則的な力を持った幻獣など、絶滅種にも絶滅危惧種にも存在していなかった。 「あの使い魔は、一体……」 興味のないものは基本的に冷たく切り捨てるタバサだが、一度興味を持つと意外に熱心になりやすい。 今もカービィに対する好奇心に、彼女の小さな胸は熱くなりつつあった。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
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カービィについて ピンクで丸い。身長は20cm程度。こう考えると大柄に思えるデデデ大王やカービィシリーズのラスボス達って実は相当小さいのでは… 年齢は不明だが、どうやら青年・若者であるらしい。青年の定義を当てはめるなら、人間年齢にして15~29歳となる。 ついでに性別も不明だが、説明書では「彼」と呼ばれていたり、一人称が「ぼく」だったり、英語版でも男性形の「he」だったり、 星のカービィWiiでリボンにキスされてメロメロになっていたりと、ほぼ確実に男性である。 自由気ままなのんびり屋で、天真爛漫にして純粋無垢。だが自分で決めた事を絶対に変えないという融通の利かない一面もある。 この性分に加え、迷わず本能に忠実に行動する為、度々トラブルを起こす。しかも一度行動し始めると周りの静止を聞かなくなる。 だが非を認めたりお詫びをする事は出来る模様。 また根本的に善人だが、純粋無垢で迷わない為か悪事に利用される事もある。 しかし誰かを憎む事は決して無く、散々利用した挙句裏切ったマホロアに対しても憎しみの気持ちは一切無い。 但し冒険の動機が食べ物であった場合、猪突猛進である事もあり、勘違いでデデデ大王に濡れ衣を着せる等無茶苦茶をする事も。 座右の銘は「明日は明日の風が吹く」。悩みの無い奴と説明された事があるが、カービィはその時しかめ面をした。 趣味は食べる、寝る、そして歌を歌う事。但し歌はコピー能力になる程の殺人的音痴。カービィ自身に自覚が無いのが更に性質が悪い。 味の好みについては「喰えれば何でも良いのか?」と言われた事がある。但し毛虫だけは無理。 好物はマキシムトマトだが、味が好みなのか、はたまた別の理由なのか… 時には皆を守る為、時には気付いたら平和を守ってた…等、度々宇宙の脅威を退け、宇宙規模の活躍をする事もあった為か、 本人の知らぬ間に宇宙でも名の知られた存在となっている。 今作『星のカービィ トリプルデラックス』でもワールドツリーがカービィを勇者として認識していた。 ただ本人はその点について全く興味が無いと思われる。まあ明らかに野心が無いし… 作品について 『星のカービィ』第1作目は1992年4月27日、任天堂より発売された。開発元はHAL研究所で、生みの親は桜井政博。当時22歳。 この時はコピー能力を持っていなかったが、それ以外の基本部分はほぼ完成されていた。 また開発当初はティンクルポポというタイトルで、主人公の名前はポポポであった。 「プププ」ランドや「デデデ」大王、「ロロロ」 「ラララ」と言ったネーミング法則はこれの名残なのかもしれない。 カービィという名の由来は掃除機のブランドネームや任天堂の顧問弁護士と諸説あるが、実際はどうなのだろうか…とは桜井氏の談。 アメリカの任天堂で募集した名であるせいか、生みの親でも由来が分からない模様。 全体的なゲームコンセプトは「初心者と上級者の住み分け」「皆が親しみ易い様に」。 操作やデザイン等から子供向けと勘違いされるが、クリア後の要素をプレイすれば誰もが考え直すのは間違いない。 今作『星のカービィ トリプルデラックス』はメインシリーズ第10弾。 奥行きのあるステージ、ビッグバンカービィ、サブゲームとやり込み要素がデラックスという事でトリプルデラックス。 前作の20周年の影響か、懐かしい顔ぶれも多い。 2つ目のデラックス要素であるビッグバンカービィは、 星のカービィWiiに登場したスーパー能力に匹敵、あるいはそれすら超える超チート能力。 中ボスを一撃で倒す所まではスーパー能力と同じで、使い勝手や派手さも考えるとスーパー能力の方が上。 だが、ビッグバンすいこみは何と大ボス(ウィスピーフラワーズ)すら飲み込むというぶっ飛んだ力を発揮。 しかも敵の名前や体力ゲージまで吸い込むという、カービィ史上類を見ないハチャメチャな演出付きである。 吸い込みというカービィの基本技がピックアップされた点を評価する声は多い。 http //q.hatena.ne.jp/images/question/1318507/1318507134.jpg
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カービィの新しい仲間を考えよう カービィの仲間や中立的な立場のキャラを考えてみてください。 テンプレ(コピペして使う事を推薦) 【(仲間や中立的なキャラの名前)】:(キャラの設定)(投稿者の名前) 例 【カレン’ルブメン】:ワゴンスターに乗って宇宙を彷徨う白いワドルディの女性。喋る事ができず、持っている竪琴をかき鳴らして言いたい事を伝える。様々な未来を運命として数字で感じ取る能力を持ち、カービィがポップスターへ旅するように陰で導いたらしい。(あきこ)
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前ページ次ページ使い魔のカービィ 教室の掃除を漸く終わらせたルイズとカービィは、昼食を取りに本塔へ向かっていた。 シエスタは昼食の準備のため途中で掃除を抜けてしまったが、殆ど終わらせてくれたので、思いの外早く済んだのだ。 もちろん、目覚めてからはカービィもゴミ捨てを手伝った。 粗大ゴミと化したイスを運んだり、ルイズやシエスタが届かなかった窓を拭いたり。 自主的に手伝いをするカービィに、ルイズはやっぱりカービィを喚んで良かったと改めて実感したのだった。 因みにカービィが窓を拭くため飛び上がった時、飛べることを知って狂喜乱舞していたという。 閑話休題。 食堂へ辿り着いたルイズ達は、早速昼食に―― 「まて!」 ――しようと思った矢先、マリコルヌを中心とした数人の生徒がルイズとカービィを取り囲んだ。 「何よ、風邪っぴき。用があるなら早くして?」 「だから僕は風邪っぴきじゃない! そ、それよりルイズ! お、お前、そいつを食堂の中に入れる気か!?」 「そうだけど、何よ」 何か問題でも? といった表情でマリコルヌ達を見るルイズ。 「何じゃない! その悪魔を食堂内に入れないでくれ!」 「悪魔?」 「そのピンクボールだ!」 「カービィが? 馬鹿馬鹿しいわね」 無視して食堂へ入ろうとするが、他の生徒が入り口を固めて入ることが出来ない。 「何よこれ! どういうつもり!?」 「それはこっちの台詞だ! ルイズは朝の悲劇を繰り返したいのか!?」 「朝? ……………あぁ」 ルイズは漸く足止めを食らっている理由が分かった。 要するに『吸い込み喰い』に怒った生徒達が、カービィを危険視してこんなことをしているのだろう。 尤も、ルイズはカービィの能力のが凄かった印象が強すぎ、忘れかけていたのだが。 「あんた、まだ根に持ってたの?」 「当たり前だ! 僕が今まさに手を付けようとしていたローストチキンが! 僕の手をすり抜けて飛んでいってしまったんだぞ!? こんがり焼けた皮やジューシーなもも肉を食べるのを楽しみにしていたのに!」 その後もマリコルヌは、カービィに食われた朝食のメニューを一品一品恨めしそうに語っていった。 それも唾を撒き散らし、脂汗をかきながら。 食べ物の恨みが恐ろしいとはよく言ったものだ。 しかし、いい加減にルイズは目の前のマリコルヌが鬱陶しくなってきた。 確かに1つのテーブルの朝食をすべて食べてしまったカービィはやりすぎだ。 実際ルイズも危うく朝食を食べ損なうところだった(違うテーブルにいたキュルケから分けてもらい、何とか事なきを得たが) だが、マリコルヌの恨みなどルイズとカービィにとってはそれこそ知ったこっちゃない。 「分かったわよ! じゃあカービィが食堂内で暴飲暴食しないように私が躾ればいいんでしょ!! まったくどいつもこいつも意地汚いわね!!」 もちろん朝の出来事を棚に上げた発言だが、本人は気づいていない。 とにかくカービィを食堂に入れるという意地が彼女を駆り立てたのだ。 しかもかなりの気迫が籠もった表情だったため、それに反対する生徒は誰もいなかった。 有無を言わせる気もさらさらなかったが。 彼女の目の前にいたマリコルヌなど、気迫を真正面から受けたため少し怯えていた。 こうして食堂に入ることが出来たルイズとカービィだったが、ルイズはやはり視線が集まってきていることに気が付いた。 それと同時に気が付く。 朝の一件の影響はかなり大きかったらしく、今まで『嘲笑』だった視線が『警戒』に変わっていたことに。 ルイズはそれが少しいい気分で、居心地も悪くなかった。 今までゼロと自分を笑ってきた者達が、自分(の使い魔)を恐れているのだ。 それだけでも少しだけ誇らしい気分になれた。 と、ルイズが優越感に浸っている下で、カービィが目を輝かせている。 「ぽよー♪」 「カービィ」 「……………ぽよ?」 ルイズはしゃがんでカービィの目を見つめると、少し厳しい口調で話し始めた。 「いい、カービィ。朝みたいにここで吸い込みを使っちゃ駄目よ! 」 「ぽよ?」 「そうねぇ、次に使ったらご飯抜き! 分かった!?」 「ぽよぉぉ! ふぃ!」 やはりご飯抜きは辛いのだろう。 カービィは大きく頷くと、今にも料理に飛びつきたい衝動を抑えた。 (よし……マリコルヌの言うことを聞くのは癪だけど、確かに使い魔の躾はしっかりしなきゃ) そう、カービィは精神的にも、恐らく肉体的にもまだまだ子供なのだ。 これから先の為にも、今からしっかり躾なければならない。 ルイズは自分の使い魔の教育方針を決定し、まずは空腹を埋めるために席についた。 もちろんカービィは床に座らせて。 ――結果から言おう。 この教育方針は後にあっさりと崩れ去る。 それはまた先の話なので、今は置いておく―― ルイズが食事を始めて数十分たった頃。 カービィは少し多めに用意されていた使い魔用の食事をあっさり食べ終え、暇を持て余していた。 ルイズを見るが、しばらく食べ終わる気配がない。 仕方なくトレイの上の食器を持て余しながら1人遊びをしていた。 「どうしてくれるんだ!?」 「ぷいぃっ!?」 突然食堂内に響いた怒鳴り声に驚き、皿を落としそうになるカービィ。 反応が早かったため、何とか落下を防ぐことは出来た。 「ふぃー……」 「? 何かしら」 ルイズもその声に気が付いたらしく、食事を中止した。 声がした方には大きな人だかりが出来ており、その中心には2人の人物。 よく見てみると、シエスタがギーシュに何かを問い詰められているようだ。 気になったルイズはカービィを連れ、人だかりへと近づいていった。 「ねえ、何の騒ぎ?」 「ぽよ?」 「み、ミス・ヴァリエール、カービィさん……」 ギーシュに何度も何度も頭を下げていたシエスタの目には、涙と恐怖の色が浮かんでいた。 ただ事ではないと判断したルイズは、シエスタから詳しい事情を聞いた。 なんでも、ギーシュが落とした香水の小瓶をシエスタが拾ってあげたらしいのだが、それが原因でギーシュの二股がバレてしまったらしい。 ギーシュの両頬が真っ赤になっているのはそのせいだ。 それで怒りの矛先をシエスタに向けたギーシュは、二股の原因をシエスタに全て擦り付けようとしていたというのだ。 「なるほどね。ギーシュ、二股なんかしてるあんたが悪いのよ」 「ぽよっ!」 厳しく目つきでギーシュを睨む2人。 カービィは二股がどういうものか理解していなかったが、シエスタがギーシュにいじめられているというのは分かったようだ。 ルイズに感化され、周りの生徒も一斉にギーシュを非難しだした。 「そうだギーシュ! お前が悪い!」 「そのメイドに謝れ!」 自分が不利な状況になっていくのを感じ、ギーシュは追いつめられていった。 しかし、彼にも貴族としての意地とプライドがあるのだ。 ここで非を認めてしまうことは出来なかった。 「し、しかし、ボクは小瓶を渡されたとき知らないフリをしたんだ。それに合わせるくらいの機転があったっていいじゃないか」 「そんなのあんたの都合でしょ? シエスタには関係ないわ。自業自得ね、天罰よ、て・ん・ば・つ」 「天罰、ぽよ!」 ルイズは至極冷たくそう言い放った。 しかし、それに逆上したギーシュは再びシエスタを睨みつけ、その腕を掴んだ。 「ひっ……!」 「とにかく! 全責任はキミにあるんだ! さぁ、どうしてくれるんだね!?」 周囲からの非難が更に激しさを増すが、ギーシュには聞こえていない。 自分のプライドを保つだけで精一杯なのだ。 ギーシュの怒りを腕から直に感じ取り、卒倒してしまいそうになるシエスタ。 「痛っ!」 「っ!」 と、ギーシュが小さな悲鳴を上げ、シエスタの腕を離した。 シエスタは何が起こったか一瞬理解しかねたが、目の前にカービィが現れたことで悟った。 ルイズの足下にいたカービィがギーシュの腕に体当たりしたのだ。 ギーシュはぶつかられた腕をさすり、凄みをきかせた目でカービィを睨んだ。 一方カービィはそのままシエスタの前に着地し、彼女を守るように佇んでいる。 「か、カービィさん……」 「くっ、使い魔風情が貴族に逆らう気かね!?」 「ぽよぉ!」 ギーシュが睨もうが怒鳴りつけようが、カービィは1歩も退かない。 その様子に何かを思いついたのか、ギーシュが口元を吊り上げる。 「確かお前はゼロのルイズの使い魔だったな。いいだろう、貴族がどれほど恐ろしいか、特別にたっぷりと叩き込んでやる」 そう言うとギーシュはバラの造花を1本取り出し、それでカービィを指した。 そして高らかに宣言したのである。 「決闘だっ!!」 「……ぽよ?」 瞬間、シエスタとルイズの顔が蒼白になった。 「ま、待ちなさいよギーシュ! 学院での決闘は禁止されているはずでしょ!?」 「それは貴族同士の話だ、使い魔とじゃない」 ギーシュ鼻で笑うと、食堂の出口の方へ向き直った。 「ヴェストリの広場で待っている!」 そしてギーシュは数人の男子生徒と共に去っていった。 周りの生徒達は急な展開に驚きを隠せないでいたが、『決闘』という2文字に目を輝かせ、次々とヴェストリの広場へ向かっていった。 「カービィ!」 ルイズは急いでカービィに駆け寄った。 とにかく、なんとか決闘だけは避けなければ。 もしギーシュとカービィが戦ったら、勝敗など目に見えている。 カービィを回収し、一緒にギーシュに謝ろうと思ったルイズだったが、それは叶わなかった。 「ぽょっ!」 「ルイズ、使い魔は借りてくぜ」 ギーシュについていた男子生徒が、あろうことかルイズより先にカービィを回収。 そのまま走ってヴェストリの広場へ行ってしまったのだ。 「ま、待ちなさい!」 「カービィ……さん……」 男子生徒を追おうとした矢先、ルイズは顔を両手で覆うシエスタを視界の端に見つけた。 カービィを追わなくてはいけないが、彼女を放っておくことも出来ない。 「シエスタ……」 「ミス・ヴァリエール……申し訳ありません……私のせいで、カービィさんが………」 心底申し訳なさそうに俯くシエスタ。 その顔には後悔、恐怖、悲痛、様々な感情が見え隠れしている。 この状態で決闘まで見たらそれこそ倒れてしまうだろう。 「……大丈夫よ。絶対に私が決闘なんて止めてやるんだから。カービィも怪我しないように、巧くやるわ」 「大丈夫……ですか?」 「私なら大丈夫。そうなんでしょ?」 ルイズはシエスタに微笑み、カービィと男子生徒の後を追った。 目指すはヴェストリの広場だ。 そして、今まさに、そこから星の伝説が始まろうとしていた。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
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前ページ次ページ使い魔のカービィ 「諸君、決闘だっ!!」 バラの造花を掲げ、天を仰ぎながらギーシュが叫んだ。 その叫びに呼応し、『ヴェストリの広場』に集まったたくさんのギャラリーからも大きな歓声が上る。 それらは、皆がこれから行われる戦いに胸を踊らせ、今か今かと始まりの時を待っている証拠だ。 娯楽の少ない生徒達にとって、貴族の誇りをかけた決闘は暇つぶしと賭の対象にしかならないようだ。 今も「俺はギーシュに銀貨20枚」「じゃあ大穴でピンクボールに銀貨15枚」といった声が聞こえてくる。 実際ギーシュも、自分の強さを誇示し、プライドを守るためだけにこの決闘を発案したのだ。 相手がメイドだろうがルイズだろうが使い魔だろうがどうでもいい。 なんとも薄っぺらい決闘である。 「さあ、お前の出番だ!」 熱気も最高潮に達しようかという時、先程の男子生徒が回収してきたカービィを広場の中心へ向けて放り投げた。 「ぽよーーーー!」 美しい弧を描き、なんとかカービィは広場に着地。 しかも着地した際、ちょうどギーシュと向かい合うような形になる。 「ほう……とりあえず、決闘へ逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」 「ぽよ?」 カービィはキョロキョロと辺りを見回し、自分の状況を確認した。 シエスタをいじめていた男が、自分と1対1で向かい合って佇んでいる。 カービィの脳裏にある場面が浮かび上がった。 それは彼が前にいた世界『プププランド』に来て間もない頃、仮面の騎士から戦いを挑まれた時のこと。 その時はギャラリーはこんなにたくさんではなく、荒れ果てた谷で行われた。 そして、結局それは決闘と銘打ったカービィを成長させるためのお芝居だった。 そんなことをぼんやり思い出していると、ギーシュがバラの造花を構えた。 「では、早速始めよう……二度とこの学園を見たくないようにしてあげるよ」 その言葉に身構えるカービィ。 星の戦士としての勘が、何かが来ると訴えてきたのだ。 ギーシュがバラの造花を振るうと、3枚の花弁が宙を舞いった。 ひらひらと地面に落ちてゆくと思ってカービィが見ていると、花弁が突然金属で出来た女性の像に変化したのだ。 しかもそれぞれに凶悪な武器を持っている。 「ぽ、ぽよぉ!?」 今まで様々な魔獣と戦い続けていたカービィだったが、これには流石に驚いた。 目の前に自分の何倍もある大きさの像が現れれば、当然の反応だろう。 「ボクの二つ名は『青銅』。よって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手させてもらおう。かかれ!」 3体のワルキューレが武器を手に、一斉にカービィへ向かっていった。 その頃、やっと広場へ駆けつけたルイズは、ギャラリーを押しのけて前へ前へと進んでいった。 この興奮様だともう既に決闘は始まっているのだろう。 (早く止めないと、カービィが……!) 人混みを掻き分け、漸く最前列に躍り出たルイズ。 そんな彼女の目に映ったのは、必死にワルキューレの攻撃を避け続けるカービィの姿だった。 3対1という圧倒的不利な戦いで、カービィは小さい体を生かした驚くほど機敏な動きで敵を翻弄している。 一方的な展開を予測していたギャラリーは大きく湧き上がり、少なからずカービィを応援する者まで出てきた。 そんな中、ギーシュはちょこまかちょこまか動くカービィに苛立ちを感じながらもワルキューレを操る手を止めなかった。 (ああいうボケた奴は絶対にどこかでヘマをする。その時がこのピンクボールの最期さ) 色ボケなバカでも軍人の息子、自分の勝利をギーシュは疑っていなかった。 隙が出来なくてもカービィが疲れるのを見越し、余裕を保って先頭を続行する。 そしてギーシュの望んでいた瞬間は訪れた。 カービィの主人の手によって。 「カービィ!!」 決闘をやめさせるため、とにかくカービィを呼ぼうとしたルイズだったが、これが仇になった。 「ぽよ?」 ルイズの声に反応してしまったカービィに、大きな隙が生じてしまったのだ。 ギーシュはニヤリとほくそ笑み、ワルキューレの持つハンマーの痛烈な一撃をカービィに加えた。 思わず目を背けるルイズ。 一部の女子生徒も悲鳴を上げた。 「ぷぎぃっ!」 壁に激突し、倒れ込むカービィ。 体の痛みに耐えて立ち上がろうとしたところを、ハンマーを持った2体のワルキューレ達が何度も殴りつける。 「ぷぎっ! うゅっ! ぼよっ!」 「もうやめて!」 柔らかい体のお陰でダメージは緩和されているが、殴られる度にカービィは体力を奪われていった。 ルイズがカービィに駆け寄ろうとするが、あまりに危険なため、級友達が必死にそれを止める。 そうしている内にカービィは傷だらけになり、動くことさえままならなくなっていた。 「はははは! やはりゼロのルイズの使い魔はこの程度だったようだね……さて、仕上げといこう」 ギーシュが命じると、2体のワルキューレが傷つき動けなくなったカービィの両腕を掴み、磔のようにしっかりと固定した。 そして、最後の1体ーー両手に剣を持ったワルキューレがカービィに近づく。 「貴族に刃向かうとどうなるか、その体に刻んでやろう!」 ワルキューレにサインを出し、その歩みを進めさせるギーシュ。 誰もが惨劇を予感した瞬間、ワルキューレの左腕が爆発を起こした。 左手と握られていた剣が地面に転がり、ワルキューレが足を止める。 『爆発』というワードで引っかかるのはただ一人をギーシュが睨む。 「……なんだね、ゼロのルイズ。神聖な決闘の邪魔をしないでくれないか」 「何が決闘よ! こんなのまるで公開処刑じゃない!」 「人聞きの悪い……ボクはただ貴族の礼儀を教えておこうと思っただけだよ。彼にね」 カービィを顎で指し、勝ち誇った表情をルイズに見せるギーシュ。 ルイズは級友の手を振り解こうとするが、 「やめておいた方がいい、魔法が使えない君に何が出来ると言うんだね? ……そこで見ているといい。使い魔に礼儀が刻まれる所を!!」 ワルキューレが右手の剣を振り上げる。 ルイズはその瞬間、最期の望みをかけて叫んだ。 「カービィ! 吸い込みよ!!」 「………ぽよ!」 ルイズの言葉に、今まで朦朧としていたカービィの意識が覚醒した。 同時に口を大きく開け、強風と共に吸い込みを始める。 「くっ……無駄な足掻きを! この程度でボクのワルキューレをどうにか出来ると思ったのか!?」 ギーシュの言うとおり、青銅製のワルキューレはカービィの吸い込みにビクともしない。 (お願いカービィ! 頑張って!!) ルイズはカービィの吸い込みの風でワルキューレを転ばせる、若しくは吸い込んでしまうことを最後の切り札と考えていた。 それしかカービィには手はなく、これが失敗すれば本当に終わりだとおもっていた。 しかし、ルイズの予期せぬところで確実に吸い込まれている物が1つだけあったのだ。 それはルイズが爆発させた際吹き飛んだワルキューレの腕……ではなく。 その腕が掴んでいた…………『剣』 強風の中、必死に祈っていたルイズは、カービィが『剣』を吸い込んだのを確かに見た。 直後、カービィは吸い込みをやめ、ワルキューレの拘束を強引に振り払っう。 「なっ! どこにそんな力が!?」 「はぁっ!」 驚愕するギーシュに目もくれず、カービィは回転しながら宙へと舞い上がった。 同時にその身が目映く輝き出す。 誰も目を背けなかった。 いや、背けられなかった。 その輝きがまるで『星』のように美しかったから。 輝きが収まり、カービィが姿を表す。 しかし、そこにいたのカービィではなく、緑の帽子に黄金の剣を携えた最強の剣士『ソードカービィ』だった。 「え、ええっ!? か、カービィ……!?」 「な、なんだ!? 何の手品だ!? くそっ!ワルキューレっ!!」 カービィの変身に動揺したギーシュは、カービィの一番近くにいたワルキューレを向かわせた。 しかし、今のカービィにはそんな行き当たりばったりの戦法は通じない。 向かってくるワルキューレの動きを見切ると、剣を構えた。 するとカービィの左手のルーンが輝き出す。 『百裂斬りっ!!』 目にも留まらぬ剣捌きでワルキューレを滅多切りにするカービィ。 最後の一振りを浴びせると、ワルキューレは文字通り百のかけらに分断された。 「う、嘘だっ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!!」 あっさりワルキューレを倒されたギーシュは錯乱し、自分が出せる残り全てのワルキューレをカービィに向かわせた。 もう隊列も連携もあったものではない。 とにかくギーシュは目の前にいる『ピンクの悪魔』を消し去りたかったのだ。 向かってくるワルキューレの数は6体。 カービィは飛躍し、剣を掲げる。 その時、頭に始めて決闘をした相手――メタナイトの言葉が鮮明に蘇ってきた。 『剣心一体となれば、届かぬ距離にも刃は届く! 疑うな、教えてやろう!』 『剣という破壊武器は、使いようによっては……風になるのだ!』 『ソードにエネルギーを蓄積し放出する。これぞ………』 『『ソードビーム!!』』 剣とルーンの輝きが共鳴し、エネルギーが唸りを上げる。 カービィは湧き上がる力を感じ、そのすべてを剣に乗せて振り下ろした。 剣から輝くエネルギーの刃が放たれる。 ワルキューレ達は為すすべもなく斬られ…… ―――爆発。 直視できないほどの爆風が収まり、生徒達は目を開いた。 そして目に入ってきた光景に、自分は夢を見ているのかと誰もが感じる。 ソードビームをまともに受けたワルキューレ達は跡形もなく消え去り、広場の地面が深く抉られていたのだ。 残っていたのはガックリ膝から崩れ落ちるギーシュと、元の姿に戻ったカービィのみ。 「ま、参った……」 静まり返るギャラリー。 カービィは悠長に砂埃を払い、ルイズの足下へ歩み寄った。 そしてただ一言。 「ぽよっ♪」 「カービィ……!」 カービィを抱き上げ、ルイズは嬉しさのあまり泣き出してしまっている。 ギャラリーは一気に爆発し、この小さき英雄を心から讃えた。 「はあ……何だよあれ、圧倒的過ぎるじゃないか……」 一方負けたギーシュはソードビームが抉った地面を苦笑いしながら見つめていた。 精魂尽きたといった顔をしている。 「でも…………負けたのは確かだ……」 ギーシュは気を抜けばへたり込んでしまいそうな足に鞭を打ち、自分を打ち負かした相手へと近づいていった。 賞賛と謝罪をするために。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
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カービィ 初代 カブーラー なぜこいつは初代カービィ登場以降「星のカービィ ウルトラスーパーデラックス」まで出番が無かったのか。 デデデ大王の飛行船なのに。こいつが真の黒幕だからだ こいつを操縦しているあいつこそが 川喜田直也
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前ページ次ページ使い魔のカービィ 「カービィ! 吸い込みよ!」 「ぽよっ!」 ルイズの指示でカービィが口を開ける。 直後強風が吹き、辺りの物を吸い込み始めた。 デルフは最初何が起こっているか理解できなかっが、カービィの口に吸い込まれていることに気が付いた。 そして悟ったのだ、『食われる』と。 「うわっ、ちょっ、おまっ、や、止めろ!! 食うな!! 食うなよ!!」 必死になって叫ぶがもう遅い。 哀れデルフはカービィの口の中へ吸い込まれていった。 「ギィヤアアアアアアアアアアァァァッッッ!!!」 夢に出そうなほど恐ろしい断末魔を残して…… 「………エグいですね」 「やっぱり普通の剣にすればよかったかしら……」 デルフの叫びを聞き、少し気分が悪くったルイズとシエスタであった。 そんな2人を後目に、デルフを吸い込んだカービィは飛び上がった。 光がカービィを包み込み、その身を最高の剣士に変えてゆく。 そして光は収まり、カービィはソードカービィへと変身した。 「はっ!」 そのまま地面に着地し、左手を天に翳す。 すると光の中から……… たった今吸われたデルフが現れ、カービィの左手に収まったのだ! デルフリンガー、奇跡の生還である。 「うわあああああああ!! 死にたくない! 死にたくないいいいいいいい!!」 「ふん!」 「なあああああああ!! ピンクボールが! 悪食の神がああああああああああ!!」 今まで訳の分からない空間をさ迷い、急に外に出されたデルフは一種の恐慌状況に陥っていた。 しかしカービィはお構いなしにゴーレムへ駆けてゆく。 その時、ガンダールヴのルーンが輝きだした。 デルフはその輝きにはっとし、急激に自我を取り戻した。 「うああああああああ!! あああああああああ………あ? …………こ、こりゃあ……おでれーたっ!! 相棒、お前こんなに強い力を持ってたのか!? それにこの『本当にひとつになっちまったような一体感』……相棒、お前一体俺に何しやがった!?」 カービィは答えない。 代わりに自身のエネルギーをデルフに注入し、その刀身を強く輝かせた。 同時にルーンの輝きも増し、デルフに注入されたエネルギーを増幅させる。 「おおおおでれーた! 力が漲ってくるぜ、おい! えぇい、もうこの際どうでもいい! 一撃で決めるぜ、相棒!!」 「ぽよっ!」 カービィがデルフをコピーしたからか、それともガンダールヴの力なのか。 意気は見事に合致し、カービィはデルフを大きく振り被った。 対するゴーレムは30メイルの巨大な怪物。 一目見れば勝ち目はないと思うだろう。 しかしカービィとデルフは恐れない。 2人の中に溢れる力が恐れを消し去っているのだ。 そして、その力を解放した。 「『ソードビーム!』」 2人の声が重なり、デルフからエネルギーの刃が放たれる。 刃はゴーレムの左腕をバッサリと斬り落した。 斬られた左腕はそのまま地に落ち、土くれへと戻っていった。 「やった!」 「!? ル、ルイズ様! あれ!」 ガッツポーズをとり、ルイズが勝利を確信した瞬間。 シエスタが切り落とされた左腕の部分を指さした。 ルイズが目を向けると、なんとそこには…… 「う、嘘っ!?」 ……左腕が修復されてゆくゴーレムの姿があった。 「何よあれ!? 復活するなんて反則じゃない!」 「あれじゃあ……いくらカービィさんでも……」 「カービィ! 逃げて!」 ルイズが叫ぶが時既に遅し。 カービィは頭上から迫り来るゴーレムの足を必死に避けていた。 左に逃げては左足に進路を阻まれ、右に逃げては右拳に逃げ道を塞がれている。 手にしたデルフで活路を開こうにも、すぐに再生されて意味をなさなかった。 「ヤバいぞ相棒! なんとかしないとやられちまう!」 左手に握られたデルフが警告するが、この場を逃げ切る術をカービィは持っていない。 もしも自由に『飛ぶ』事が出来れば…… デルフがそう考えていた時、ゴーレムの蹴りがクリティカルヒットし、カービィを本塔の方へ吹き飛ばした。 「ぽよおぉっ!!」 「相棒!」 凄まじい衝撃にカービィはデルフを離してしまい、そのまま地面に突き刺さった。 その頃、宝物庫に侵入したフーケは目的のブツを発見していた。 特徴的な台座の窪みにはめ込まれた星形の石が淡い光を放ち、説明書きの札には『煌めきの星』と書かれている。 「これが『煌めきの星』……」 窪みから石を取り外し、手のひらで弄ぶ。 この石からは、普通の宝石のような冷たさは感じられなかった。 まるで本物の星のようで、溢れる淡い光には温かさを感じたのだ。 と、フーケは慌てて首を振り、心にまで届きそうになった星の温かさを否定した。 こんな感情は、もう忘れ去ったはずだからだ。 「なんだか思ってたより地味だけど……まぁ、いいか。あとはいつものをちょいちょいっと」 ブツを懐にしまい、同じ場所から杖を取り出す。 そして慣れた手つきで壁にこう書き記した。 『“煌めきの星”確かに領収致しました 土くれのフーケ』 「さぁて、外の様子はどうなったかねぇ」 仕事も一段落し、あとは逃げるだけ。 気楽な気持ちでフーケは侵入してきた穴の縁に飛び乗った。 そして謎のピンクの生物と目があった。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………ぽよ?」 「うわあぁっ!?」 蹴飛ばす。 それはそれは容赦なく。 「はぁ、はぁ、はぁ……な、なんだい今のは」 塔の下を覗き込むと、ピンクの生物は真っ逆様に落下していた。 さらに下では先程のメイジ――ルイズが落ちてきたカービィを受け止めようと両手を広げている。 「……ちっ、まずいね、あの出来損ない貴族の使い魔かい……生かしておくわけにはいかないね、あの使い魔」 使い魔と主は感覚を共有する。 使い魔に顔を知られたと言うことは、それすなわち主に顔を知られたと言うこと。 カービィとルイズを見ながら、フーケは苦々しい顔で呟いた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「誰かー……俺を抜いてくれーー………相棒ー……娘っこー………」 その頃、デルフはトライフォースの勇者の剣よろしく、ルイズ達に忘れられて地面に直角に突き刺さっていた。 彼が救出されるのは、今から7時間後ーーフーケの騒ぎが学園中に広まり、シエスタが空の鞘に気がついた時のことであった。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
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前ページ使い魔のカービィ 「こちらです」 そう言ってロングビルがルイズを連れて来たのは、小屋の近くにある少し拓けた場所だった。 切り株がいくつかあるところから、小屋の持ち主が薪の調達などに使っていた場所なのだろう。 推察もそこそこに、ルイズは頻りに辺りを見回し始めた。 しかし、そこにはルイズが求めているような物は無い。 あるのは古びた切り株とロングビルの後姿。 それとルイズの腕から飛び出し、切り株の上で遊んでいるカービィだけ。 「あの、ミス・ロングビル。さっき言っていたものは一体どこに?」 「ああ、それならここですよ」 振り向いたロングビルが持っていたのは、彼女の報告にあった黒いローブその物だった。 その色が、ルイズの脳裏に昨夜の映像をフラッシュバックさせる。 確信を持つためにルイズはもっと近くでよく確認しようと、ロングビルに駆け寄った。 「おっと、それ以上動くんじゃないよ!」 だが何の前触れもなく、ルイズの眼前にロングビルの杖突き立てられた。 謂れ無く突き付けられた杖にルイズは硬直。 切り株で遊んでいたカービィも、目を丸くしてロングビルとルイズを交互に見ている。 対するロングビルの口元は、普段の冷静な雰囲気からは想像も出来ないほど嫌らしく歪んでいた。 「ったく。ガキの癖に盗賊を強請ろうなんて、随分図太い神経してるねぇ」 「盗賊? 強請る?」 「ここまで来ると感心するよ。あんたは『イイ貴族サマ』になるだろうよ」 皮肉たっぷりに言い放つロングビルだったが、ルイズにはその真意を半分も汲み取ることが出来ない。 分かるのは、彼女と自分の間に何か大きな誤解がという名の溝が生まれていることだけだった。 「ミ、ミス・ロングビル。さっきから話が見えないのだけれど……」 「まだしらばっくれる気かい!?」 「ひっ!」 「ぽよっ!?」 怒号と共にロングビルの杖を握る力が一層強まる。 覇気を含んだ怒号に、ルイズは思わず目を瞑った。 その声にカービィもやっと状況を把握し、ルイズの足元へ飛び付く。 「あんたにあたしの正体がバレてるのは分かってるんだよ」 ―――――えっ? 一瞬だけ、ルイズはロングビルの言葉を理解することが出来なかった。 その間にもロングビルは言葉を続ける。 「使い魔と主人の感覚は繋がっている。メイジの常識だろう?」 今度はちゃんとルイズの頭に言葉が情報として入ってきた。 そしてロングビルの言葉を理解したルイズは、先程感じた大きな溝の正体に気がついた。 「昨日の晩、あんたの使い魔はあたしの顔をバッチリ見てるんだよ」 簡単な話である。要は、カービィという存在が非常識だったのだ。 『使い魔は主人の目となり耳となる』というメイジの一般常識から外れていた。ただそれだけの事。 その為に、目の前の人物は盛大に勘違いし、ルイズを頭の中で悪女に仕立て上げ、勝手に自分の正体まで明かしてしまったのだ。 「だからあんたがあたしの、『怪盗フーケ』の顔を知らないわけがないだろう?」 言いたい事を言い放ったロングビル。いや、怪盗フーケの顔には、まだあの嫌らしい笑みが浮かんでいた。 だが、その表情は真実を理解したルイズにはこの上なく滑稽に映る。 貴族たちを恐怖に陥れている怪盗フーケの痴態を目の前にしているのだ。無理もないだろう。 「ぷふぅ」 「は?」 「ぽよぉ?」 ルイズは必死に笑いを堪えようと雑草だらけの地面を凝視したが、笑いは既に口から漏れ出していた。 気の抜けるような音を出したルイズの噴き出しに、間抜けな声で答えるカービィとフーケ。 これが引き金となったのか、ルイズの我慢は機能する前に限界を迎えた。 「あはっ、あははははは! お、おっかし、あははははははは!」 「な、何笑ってるんだい!?」 今度はフーケが困惑する番だった。 急に笑い出したルイズを前に、先程の笑みが引き攣りに変わる。 しかしルイズもルイズで、笑ってしまった以上もう止まれない。 込み上げてくる笑いを鎮めながら顔を上げる。 「く、くくく……あ、あんたね、勘違いしてるのよ!」 「勘違い、だぁ?」 怪訝そうな顔を浮かべ、フーケは構えていた杖を握る手に力を込める。 そんな事はお構い無しに、ルイズは勝気な姿勢を崩さない。 「そう、勘違い。カービィはね、他の使い魔とは違うのよ」 「何言ってんだい。使い魔に種族以外の違いも何もあるもんか」 「でも違うのよ。カービィと私は感覚を共有してないの。つまり、カービィの見聞きしているものは、私にはこれっぽっちも伝わって来ていないってことよ!!」 キュルケがこの場にいたら確実に笑い飛ばしていたであろう事を堂々と言い放つルイズ。 昂っている感情によって、本人がそれを自虐だと気付いていないのが救いであろう。 フーケはそれを聞いて、漸くルイズが笑いだした理由に気が付いたようだ。 「それじゃあ、あたしは」 「そ、勝手に勘違いして勝手に正体を明かしてくれたって訳!」 推理小説に登場する名探偵宜しく、ルイズはフーケに杖を突き付ける。 勝ちを確信したルイズは、高らかに叫んだ。それはもう清々しいほどに。 「さぁ、お喋りはここまでよ! 潔く捕まって『煌きの星』を」 「で、そんな事バラしてどうするんだい?」 「えっ?」 ルイズの決め台詞は、フーケのたった一言に遮られた。 同時に昂っていた感情は消沈し、冷静な思考が戻ってくる。 確かに、フーケの汚点を白昼の元に晒したところでルイズには何もメリットはない。 推理小説のように、犯人を追いつめ罪を認めさせればハッピーエンド。とは行かないのだ。 寧ろ実力差が大きく開いている相手の神経を逆撫でして、自分自身の身に危険が―― そこまで考えて、ルイズは鋭い殺気が自分の周りを包んでいるのに気が付いた。 いや、冷静に考えていれば、フーケを問い質せばこうなる事は簡単に予測できたのだ。 「さぁて、元からあんた達を生かしておく気はなかったけど……こりゃ本格的にヤらないとダメみたいだねぇ」 地響きとともに、フーケの視線がルイズの遥か上へ上へと昇って行く。 もちろん、フーケが巨大化したわけではない。 フーケの足元の地面が盛り上がり、巨大なゴーレムとなったのだ。 しかし、ルイズにはこの激しい地響きがフーケの怒りその物に思えてならなかった。 「と、とにかく退散よ!」 「ぽよおぉ!?」 ルイズは足下で右往左往しているカービィを引っ掴むと、一目散に小屋へと走った。 この時、ルイズはシエスタを連れて来なかった自分に心の底から感謝した。 彼女がいたら、間違いなく自分と共に危ない目に逢っていただろう。 そんな事を考えているうちに、ルイズの視界に小屋とキュルケ達の姿が入ってきた。 ルイズが駆け寄って来るのに気が付いたのか、キュルケ達もルイズ達へ駆け寄る。 「ヴァリエール、どこ行ってたのよ! あんたとカービィの姿は見えないわ、突然ゴーレムが出てくるわ、おまけにミス・ロングビルまで居なくなって!」 「そのミス・ロングビルがフーケだったのよ!」 「なんだって! それは本当かい!?」 「細かい話は後! 今はとにかくあのゴーレムから逃げないと、私たちみんなあのゴーレムに潰されちゃうわ!」 状況が全く把握できていない三人にも、ルイズから焦燥感が伝わる。 その間にも、ゴーレムは刻一刻と小屋へと近付いて来ていた。 時間がないことを悟ったキュルケがタバサへ視線を送る。 「タバサ、あなたの使い魔で何とか逃げられない!?」 「足止め出来れば、可能」 「だ、そうよ?」 キュルケが視線をルイズへ戻すと、その手には杖が握られている。 ギーシュ、タバサ、そしてキュルケも同じく杖を手にしており、臨戦態勢は既に整っていた。 「ファイア・ボール!」 最初に動いたのはキュルケとタバサだった。 灼熱の火球と槍状の氷塊がゴーレムへ襲いかかり、直撃する。 しかし、火球は軽い焦げ跡、氷塊はそのまま突き刺さり、大したダメージを与えることは出来ない。 続いてギーシュが二体のワルキューレを出現させたが、闇雲に向かわせたためにあっという間にゴーレムに踏み潰されてしまった。 「僕のワルキューレが、あんな簡単に……」 「弱音吐いてる暇があったら攻撃しなさい! ファイア・ボール!」 追撃とばかりにルイズはキュルケと同じルーンを唱えるが、発生したのはまたも爆発だった。 やはり駄目かと奥歯を噛みしめるルイズ。 しかし爆煙が晴れた先には、爆発によって抉られたゴーレムの胸があった。 (やった!) 誰もがそう思った次の瞬間、爆発によって抉られた穴は辺りの土によって瞬く間に修復されていった。 「くっ、なんて奴なの!」 「今は時間を稼げばいい。無駄でも攻撃して」 毒付くルイズの横で、タバサは淡々と攻撃を続ける。 その様子に勇気づけられたのか、ルイズ、キュルケ、ギーシュは再びゴーレムに向かって総攻撃を始めた。 一方、ゴーレムに乗っているフーケはこの状況がむず痒くなってきていた。 最初こそたっぷり遊んでやろうと思っていたのだが、ルイズの失敗魔法を受けてからはそうも言っていられなくなったのだ。 確かにゴーレムはいくら攻撃を受けても修復するが、爆発の際の衝撃を緩和させることは出来ない。 次の一発が来る前に、早々に片付けてしまおうとゴーレムの歩みを急がせた。 しかし、ゴーレムが片足を上げたまさにその時。フーケの恐れていた一発が上げられた片足を直撃した。 「うあぁ!?」 大きな衝撃に大勢を崩すフーケとゴーレム。 なんとか横転という最悪の事態は免れたが、フーケの懐から仄かに光る何かが滑り落ちた。 「ちょっ! 冗談じゃないよ!?」 フーケは必死に手を伸ばすが、何かは彼女の指の間を虚しくもすり抜けていった。 そして地上で失敗魔法を成功させたルイズは、フーケの手から落ちて行った物を見逃さなかった。 そう、間違いない。あれは―― 「『煌きの星』っ!」 意識した瞬間、ルイズは落下点へ向け一目散に走っていた。 背後で仲間が彼女を引きとめる声も聞かずに。 『煌きの星』はその名の如く、流れ星のように地面へと落下していく。 落下まで約15メイル、10メイル、5メイル、3メイル―――― (間に合う!!) ルイズは落下点へ滑り込み、地上スレスレのところで『煌きの星』をキャッチした。 「やった!!」 手中で輝く『煌きの星』を見つめながら、ルイズは直ぐ様立ち上がった。 これで後はこの場から逃げるだけ―― 仲間の下へ駆けだそうとしたのと、ルイズの視界が暗くなったのはほぼ同時だった。 「返しな! それはあたしの獲物だよ!」 天からの怒声にルイズが頭上を見上げると、そこにはゴーレムの巨大な掌が迫っていた。 「ヴァリエール! 逃げなさい!」 キュルケの悲鳴にも似た叫びに従い逃げようとするが、足が動かない。 ここに来て恐怖が一気にルイズに襲いかかって来たのだ。 掌はもうそこまで来ている。 ルイズはどうしようもなくなり、ただ強く目を瞑った。 「ぽよおぉぉ!!」 聞きなれた使い魔の声と共に、ルイズの腰に柔らかいものがぶつかった。 棒のようになっていた足ではその衝撃に耐えることが出来ず、ルイズはそのまま突き飛ばされた。 「痛っ!」 突き飛ばされた衝撃で膝を擦り剥いたが、ルイズにとってはそんな事はどうでも良かった。 さっきの声、腰にぶつかった柔らかいもの。そして、軽い怪我程度で済んでいる今の自分。 間違いであって欲しかった。 ついさっきまでゴーレムの掌があった場所を見ると、今にも握りつぶされそうなカービィがそこにいた。 「ぐ、ぴぃ……」 「カービィ!!」 擦り剥いた膝の痛みも忘れてルイズは立ち上がった。 杖を構え、離れていくゴーレムの手を追いかける。 ゴーレムに捕まり苦しがっているカービィを助ける為に。 しかし、目の前を横切った白い影が、カービィの下へ向かっていたルイズを浚った。 「ヴァリエール、大丈夫!?」 「えっ、ツェルプストー? ……こ、ここは?」 「ミス・タバサの風竜の上だよ。よかった、大した怪我は無さそうだ」 キュルケとギーシュが安堵の表情でルイズを覗き込んでいる。 ルイズが二人から視線を外すと、確かにそこは風竜の背の上だった。 先頭にはタバサが座っており、横手にはあの巨大なゴーレムが―― 「そ、そうだわ! カービィを助けなきゃ! タバサ、風竜をゴーレムに近付けて!」 「……それは出来ない」 「ど、どうして!?」 ルイズはタバサに詰め寄ろうとしたが、キュルケがそれを許さなかった。 キュルケはルイズの肩を掴みむと、自分の方へ引き寄せる。 「あんただって分かってるでしょ? 今逃げないと、下手したら私達全員」 「だからってカービィを見捨てろって言うの!?」 四人の間に沈黙が走る。 誰しもカービィを見捨てたくない気持ちは同じだった。 しかし、相手は何度も再生する巨大なゴーレム。 切り札とも言えるカービィの剣士の姿も、あのゴーレムの前では歯が立たなかった。 選択肢は、一つしかない。 しかし、ルイズはその選択肢を蹴った。 「私だけでも下ろして!」 「なっ!? ルイズ、君は!」 「分かってるわよ! 私の力じゃ敵うわけないってことくらい!!」 ギーシュの止めの言葉もまともに聞かず、ルイズは叫ぶ。 「でも、カービィは私を助けてくれたの! そして、カービィは今助けが必要なの!!」 手にしていた『煌きの星』を握りしめ、ルイズは再び立ち上がった。 今度こそカービィを助けに行くために。 「私は貴族よ! 魔法が使えるだけがそうじゃない! 助けを求めている相手に背を向けないのが貴族なのよ!!」 刹那、ルイズの掌から眩い光が溢れ出した。 ルイズが掌を見ると、先程まで仄かに光っていただけの『煌きの星』が激しく輝いている。 「な、なに、これ……?」 不思議なことに、ルイズは掌の上で力強く輝く物体に微塵も恐怖を感じなかった。 それどころか、この光に優しさすら感じるのだ。 他の三人も同じようで、光を見つめる三人の目に恐怖の色は無かった。 そしてゴーレムの手の中で今にも潰されそうになっているカービィも、この力強い光を感じ取っていた。 同時に、みるみる体に力が湧いて行く。 自分は、これを知っている。 ププビレッジに初めて墜落した日に、ある少女の祈りによって覚醒した力の源。 星の戦士である証。 (ワープ……スター……) 「きゃ!?」 『煌きの星』――ワープスターはルイズの手を離れると、ゴーレムの手目掛けて飛んで行った。 大きさは元の形状の数十倍になり、飛行のスピードも速い。 タバサの風竜に匹敵するのではないかという速度で激突されたのだから、いかにゴーレムの頑丈な拳でもたまったものではなかった。 激突した個所から罅が入り、完全に砕け散ると同時にカービィが姿を現す。 「ぽよ!」 「カービィ!!」 慣れた様子でワープスターに飛び乗り、ルイズに手を振るカービィ。 だが、そんな悠長な時間を与えてくれる程フーケはお優しくはなかった。 「この! あたしのお宝横取りしやがって!」 フーケはゴーレムの腕をブンブンと振り回しカービィを落とそうとするが、小さく小回りも利く空中の相手を捕える事は出来ない。 カービィはゴーレムの周りを飛び回りながら、フーケを撹乱し続けた。 「これなら、イケるわ!」 これを好機と読んだルイズは背中のデルフを引き抜いく。 「さぁ! 出番よ!」 「お、おい、娘っ子……ま、まさか今回もアレをやるなんて言わないよな……」 引き抜かれて早々、デルフの鍔はカタカタと震えていた。 前回吸い込まれたときによほど怖い思いをしたのだろうか。 長い年月を過ごしてきたデルフがこれほど怖がるとは、一体何が…… しかし、ルイズはその震えをきっと武者震いの類だろうと解釈した。 「私に買われたのが運の尽きよ、諦めなさい」 「そ、そりゃないぜぇ!」 「カービィ! 吸い込みよ!!」 ゴーレムの横腹辺りを飛行していたカービィは、ルイズの合図と共に大きな口を開けて吸い込みを始めた。 空気が風となり、風が渦となってカービィの口に吸い込まれていく。 「や、やめろ! やめろぉ!!」 「そぉれ!!」 「ぎいぃゃぁあああああああああああああああああああ!!!」 絶叫と共に問答無用で投げられたデルフは、抵抗空しくカービィの下へと飛んで行った。 しかし、デルフの前にカービィの口の中へ吸い込まれたものがあった。 それは、タバサの放った水魔法・シャベリンの氷塊。 溶けずにゴーレムに突き刺さっていたそれがカービィの吸い込みの勢いで抜け、そのまま口の中へ吸い込まれたのだ。 デルフが口内に収まる前に、カービィは天高く飛翔した。 眩い光がカービィを包み、その姿を変えてゆく。 しかし、今回はいつもと様子が違った。 剣を吸い込んだ時とは違い、カービィの周りに冷気が生まれたのだ。 光が収まると、そこにはルイズが予想していた『ソードカービィ』とは全く違う姿のカービィがいた。 帽子にはクリスタルにも引けを取らないほど美しく輝く氷塊があしらわれ、ピンク色の体は真っ青になっている。 この姿こそ冷気を自在に操る戦士、『アイスカービィ』 「か、変わった……!?」 新しいカービィの姿に、ルイズはただ呆気に取られると同時に頭痛を引き起こしていた。 『煌きの星』がカービィの乗り物となり、そのカービィが新しい姿へと変身。 余りにもルイズの想定外のことが起き過ぎているのだ、頭痛になるのも仕方のないことだろう。 だが、ルイズは嬉しくもあった。 『煌きの星』の発した輝きが、彼女の意思に答えてくれたものだと直感的に理解していたからだ。 変身を終えワープスターに再び飛び乗ったカービィは、再びゴーレムの下へ向かっていく。 途中死にそうな叫び声を上げて飛んで来たデルフを空中で回収し、高速で接近していく。 未知の姿への変身にフーケは驚きを隠せなかったが、向かって来たカービィを認め考えるのを止めた。 「調子に乗るんじゃないよ! このボール!」 更に激しくゴーレムの腕を振り回すが、その鈍重な動きではカービィを捕えることすらままならなかった。 そうこうしているうちに、カービィが冷気を吐きながらゴーレムの周りを何度も何度も周り始める。 最初は何をしているのか見当も付かなかったフーケだが、すぐにその真意を知ることになった。 「こ、こいつ! ゴーレムを丸ごと凍らせてる!?」 水のスクウェアメイジですら、このサイズのゴーレムを凍らせるのは難しいだろう。 それなのに、カービィはすでにゴーレムの下半身を完全に凍らせているのだ。 足の関節部が完全に凍らされてしまったためか、ゴーレムはもう歩くことが出来ない。 「嘘だろ、あ、あたしがこんなところで……」 カービィは既に上半身の半分を凍らせていた。 ここまで来たら、土くれのフーケと言えども何も出来ない。 ゴーレムの肩で、彼女はガックリと膝をついた。 そして、無意識に、呟いた。 「あ、悪魔……」 フーケが顔を上げると、そこには剣を振り上げゴーレムを真っ二つに切り裂いていくカービィの姿があった。 ――やっぱり、悪魔だ。 凍結したゴーレムが崩れていく中、フーケは破片と共に落下しながらそんな事を考えていた。 「ん、ん……」 「フーケが目覚めた」 「本当!?」 フーケが目を覚ますと、そこは行きに使った馬車の中だった。 どうやら縛られているようで、身動きが一切取れない。 うっすらとぼやけているフーケの視界には、ルイズ、キュルケ、タバサが自分を覗き込んでいる姿があった。 「やれやれ、あの麗しいミス・ロングビルがフーケだったなんてね……綺麗なバラには棘があるってことかな?」 「いいからあんたは手綱を握ってなさい」 ルイズにはいはいと軽く返事をし、ギーシュは再び馬車の運転に専念した。 張本人ながら先程まで殺されかけていた学生の集まりとは、フーケにはとても思えなかった。 そこでふと、フーケは先程のことを思い出す。 自分はゴーレムから落下したあとどうなっただろうか? 「あの後、あたしは一体……」 「ゴーレムから落っこちていくところをカービィが助けたのよ」 「なんだって?」 フーケは頭だけを必死で動かすと、足元でカービィがぐっすりと眠っているのを見つけた。 先程までの雄姿がまるで嘘のような寝顔だ。 その寝顔に毒気を抜かれたのか、フーケはルイズにあることを尋ねてみることにした。 「……なんで」 「ん?」 「なんでこいつはあたしを助けたんだい? あたしはあんたらを殺そうとしてたんだよ?」 「ああ、そんなこと」 ルイズは眠っているカービィを自らの膝の上へ乗せた。 余ほど疲れたのだろうか、全く目覚める様子がない。 「カービィは優しいからよ」 当り前のように言い放ったルイズの言葉に、フーケは思わず噴き出しそうになった。 あれだけの力があって、あれだけの強さがあって、優しい? そんなのは嘘に決まっている。いつだって強い奴は弱者を虐げるものだ。 強くて優しい奴なんて、所詮はおとぎ話の世界の住人。 でももし、本当にそんな奴がいるのなら。 それは悪魔じゃなくて、勇者と言うんじゃなかろうか――― 「は、はは……本当になんなんだい、こいつは?」 「決まってるでしょ」 カービィの頭を一撫ですると、ルイズは得意気に呟いた。 「私の使い魔よ」 前ページ使い魔のカービィ
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前ページ次ページ使い魔のカービィ 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」 杖を振り下ろすと、爆音と共に光が炸裂した。 彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、昇級をかけた使い魔召喚の儀を行っていた。 が、さっきから巻き起こるのはお得意の爆発という名の失敗魔法ばかり。 何度この行程を繰り返して来たか、だんだん数えることさえ面倒になってきいた。 周りの生徒達も彼女の失敗にはもう飽き飽きしたのか、自分の喚んだ使い魔達を愛でている。 (私だって、あの位……いや、あれ以上に立派なの喚んでやるんだから……!!) もう一度気合いを入れ、再び杖を構える。 と、その時、ルイズの瞳に煙の向こうの何かが映った。 まさかと思い、すぐに爆発の中心に駆け寄るルイズ。 するとそこには――― 「………何、これ」 ルイズの髪の毛と同じ、ピンク色のボールみたいな生物が倒れていた。 恐らく胴だと思われる部分からは短い三角の手が生え、真っ赤な足はまるでコッペパンのようだ。 気絶しているのか、このピンクボール(仮称)は全く動く気配を見せなかった。 動かないピンクボールに生物なのかどうかさえも怪しくなったルイズは、試しに手に持った杖でつついてみる。 ぷにっ (あっ、柔らかい) 感触としてマシュマロに近いかもしれない。 そんな事を考えながら更にピンクボールの体をつついていると、流石に気が付いたのか、目だと思われる部分がゆっくりと開いた。 「っ!? お、起きた……!」 「ぷぃああぁぁぁ……」 ピンクボールは大きな欠伸を1つすると、目を擦りながら周りを見渡した。 「……ぽよ?」 そして気付いた。そこが自分の家ではないことに。 見慣れた白い天井も、同居人の黄色い鳥も、大好きなテレビもない。 代わりに目に入ってきたのは、青空と自分を見つめる1人の少女。 しかもその少女は、何故か小刻みに震えている。 「……ぽよぉー?」 ピンクボールが訳も分からずただその様子を眺めていると、少女が飛び上がって叫んだ。 「いやぁっっったああぁぁーーーーーーーー!!!」 天にも昇る気持ちとはまさにこのことを言うのだろう。 何度も何度もその場で飛び跳ねながら、ルイズは今までに感じたことのない程大きな喜びに浸っていた。 遂に、憧れの、念願の、自分の使い魔を手に入れることが出来た。 予想していたのに比べれば大分頼りないが、まともにに魔法を使えたというのは紛れもない事実。 自分の喚びだしたピンクボールを抱きかかてクルクル回っていると、上の空だったギャラリーが漸く気付いた。 「ゼ、ゼゼゼ、ゼロのルイズが成功した!?」 「そ、そんな、まさか!?」 「天変地異の前触れじゃないのか!?」 「雪だ! 雪が降るぞ!」 『魔法成功率0%』のルイズの成功に、一瞬辺りが戦々恐々となる。 が、ルイズの腕に納まっているそれが生徒たちの目に入ったとたん、すぐにそれは嘲笑に変わった。 「ルイズ! 使い魔が喚べなかったからって縫いぐるみを代わりにするなよ!」 「流石ゼロのルイズ! 誤魔化し方のセンスもゼロだな!」 生徒達から笑いが飛び、先ほど以上の野次がルイズに投げつけられる。 その発言を、ルイズは顔を真っ赤にして否定した。 「縫いぐるみじゃないわよ! ほら、ちゃんと生きてるでしょ!?」 ピンクボールを生徒達に見せつけ、生きていることをアピールするルイズ。 ピンクボールは体を強く掴まれ、ちょっと痛そうに顔を歪ませている。 「でもそんな出来損ないのボール、なんの役に立つのさ?」 「やっぱり失敗には変わりないな、ゼロのルイズ!」 再び起こる爆笑。結局バカにされることに変わりはなかった。 一部の女子はその愛らしさに「あれ欲しい!」などと言っている。 いい加減頭に来たルイズはもう一発怒鳴ってやろうと前へ踏み出したが、召喚の儀を監督していたコルベールがそれを制した。 「ミス・ヴァリエール、儀式を続けなさい」 「でも、ミスタ・コルベール!」 あんな事を言われているのに! と、ルイズはコルベールに訴える。 コルベールはいきり立っているルイズの肩に手を置くと、穏やかな口調で彼女を諭し始めた 「言わせておけばいいのです、ミス・ヴァリエール。貴女の使い魔には貴女の使い魔だけの素晴らしい能力がきっとあるはずです。貴女の使い魔を信じてあげなさい」 教員にここまで言われては、流石のルイズでも引き下がらない訳には行かなかった。 グッと言いたいことを堪え、腕の中のピンクボールを見つめる。 確かに、今は言わせておけばいい。 きっとこの使い魔には、誰の使い魔にも負けない凄い力が有るはずだ。 ……多分、きっと、おそらく……… 気を取り直し、ルイズは杖を握りしめた。 まだ儀式は完全には終わっていない。 ルーンを刻むまでが儀式なのだ。 「ぽよ?」 未だに状況を掴めていないピンクボールが首(ほぼ胴体)を傾げる。 そんな幼さの残る姿を見つめながら、ルイズはルーンを唱え始めた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」 ルーンを唱え終えると同時に、ルイズはピンクボールに口付けた。 杖でつついた感触の通り、マシュマロのような柔らかさだ。 どんなに高価なぬいぐるみでも、この感触を再現することは出来ないだろう。 「ぷぃう………」 唇に伝わる柔らかさを享受していると、ピンクボールからふ抜けた声がした。 瞼を開け唇を離すと、心なしピンクボールに赤味が差していた。 恥ずかしかったのだろうか。 そう思うと、怒り心頭に発していたルイズに自然と笑みが零れた。 「コントラクト・サーヴァント、完了しました」 「よろしい。では……」 「っ! ぽっ、ぽよぉ! ぽよぉ!!」 コルベールの号令を遮り、急にピンクボールに苦しみだした。 いきなり左手に走った激痛と熱さに耐えられなかったようだ。 余りの苦しみように、ルイズは腕の中のピンクボールを強く抱き締める。 「大丈夫、使い魔のルーンが刻まれるまでの辛抱だから……大丈夫」 しばらくそのままでいると、ピンクボールの左手から発せられていた光が収まった。 光と一緒に熱も引き、後にはルーンだけが残される。 刻まれたルーンは、ルイズの目から見ても珍しいものだった。 一方痛みから解放されたピンクボールは、自分の左手に現れたルーンをただ単に不思議そうに見つめている。 それはルーンに既視感を覚えたコルベールも同じだった。 見慣れぬルーンだと、手にしていたスケッチブックに熱心に書き写す。 「それでは皆、教室に戻りますよ」 スケッチを素早く終えると、コルベールは生徒たちに改めて号令を出した。 号令と共に、生徒達が一斉に空へと舞い上がる。 「ルイズ! お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ? 精々あの風船お化けに掴まって飛んでくるしかないって」 「違いないな!」 そんな彼らのやり取りに下唇を噛みしめながらも、ルイズは使い魔に視線を戻した。 「ぽよ! ぽよ!」 使い魔の方はすっかり懐いたらしく、ルイズの無い胸に抱きついている。 先程ルーンが刻まれている時、強く抱き締めていたのが相当嬉しかったようだ。 手足をバタつかせながら、ルイズに擦寄って甘えている。 ルイズは使い魔を思いきり抱きしめたい衝動を抑え、一旦地面にそれを降ろした。 「あなた、名前は?」 「カービィ、カービィ!」 その場にしゃがみ込み、ルイズはカービィと名乗った生物と視線を合わせる。 カービィは嬉しそう笑い、ルイズも釣られて笑った。 使い魔のルーンのおかげで、言語の面は心配ないようだ。 何よりカービィがルイズにとても懐いているので、意思の疎通も問題ない。 「カービィね。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「ル、ルイィ……フラダンスゥ……?」 「……………ルイズでいいわよ。ル・イ・ズ」 「ル・イ・ズ?」 幼いのは性格だけではないらしい。 長い言葉を覚えたり、スムーズに会話をするのは無理なようだ。 ルイズは赤ん坊に言葉を教えるように、ゆっくりと名前を復唱した。 主の名前を言い切ってくれなかったことに一抹の悲しさを感じつつ。 「ル・イ・ズ……ルイズ!」 「そう、ルイズ!」 「ルイズ! ルイズ!」 初めて名前を呼んでもらった感慨から、ルイズは我慢できずにカービィを強く抱き締めた。 カービィは覚えたての主の名前を笑顔で連呼している。 ルイズはカービィの声を聞きながら、抱きしめる腕にさらに力を込めた。 『はるかぜとともにやって来たこの子となら、きっと最高のパートナーになれる』 そう信じて。 前ページ次ページ使い魔のカービィ