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この世のどんなことよりもやさしい力 ◆b8v2QbKrCM 『ドラァッ!』 「……クソッ!」 繰り出された"クレイジー・ダイヤモンド"の拳を、レヴィは後方に跳んで回避した。 "サバイバー"によってレヴィの身体能力は強化され、常人の域を大きく越えている。 そのことを知ってか知らずか、レヴィは肉体の能力をフルに動員して戦場を立ち回っていた。 だがその条件はこの場にいる全ての者に当てはまるのだ。 いつの間にか背後に回っていたクレアがレヴィの両脚を払い、左腕を掴んで引き倒す。 ただでさえ破壊された左腕に更なる負荷が掛かる。 本来ならば激痛で意識すら危ういであろう状況だが、麻痺した痛覚ではそれほど大きな影響はない。 レヴィは完全に押さえつけられる前に身を捩り、折れた腕をありえない方向に歪ませて、クレアから胴体を逃れさせた。 同時にクレアの頭を狙って引き金を引く。 だが放たれた銃弾は瞬時に発現した"スタープラチナ"によって掴み取られてしまう。 皮肉にも、レヴィが最も殺したいと思う相手に対して、レヴィの攻撃は全く通用しなかった。 モンスターボールを使用できれば違う展開もあったのかもしれない。 しかし前回の使用から二時間が経過していないため、レヴィが動員できる得物はスプリングフィールドXDただ一挺である。 9mmパラベラム弾の破壊力の源泉は超音速の初速と貫通力。 しかし超音速程度では超スピードと精密動作を誇る"スタープラチナ"と"クレイジー・ダイヤモンド"のガードは抜けられない。 また人を『殺害する』という目的に最効率化された兵器であるが故に、"シェルブリット"の装甲を『破壊する』ほどの威力も備えていない。 よって、レヴィはこの場において一番不利な状況にあるといえた。 仮に、拳銃を遥かに上回る速度と連射のアサルトライフルや、腕一本では凌げない範囲のショットガンでもあれば話は違っただろう。 「抹殺のッ! ラストブリットォ!!」 レヴィと組み合って地に伏すクレアにカズマが飛び掛る。 最後の羽を推進力に変え、真上から拳を振り下ろす。 レヴィの腕を放して回避しようとするクレアを、レヴィが脚を絡めて引き止めた。 乱戦とは強ければ勝てるものではない。 最後まで倒されなかった者が勝者となるのだ。 「チッ……」 『オラァ!』 うつ伏せのままのクレアの背から"スタープラチナ"が出現し、カズマを迎え討たんとする。 レヴィは肩を地面に擦りながら上体を捻り、クレアと"スタープラチナ"の頭部に向けて立て続けに弾を放った。 銃弾そのものは、一つはクレアの左腕に当たって止まり、もう一つは"スタープラチナ"の拳に弾かれる。 それで充分だった。 片腕を銃弾の対処に割り振らされた"スタープラチナ"は、片方の拳だけで"ラストブリット"と激突せざるを得なくなる。 カズマが繰り出す最後の必殺の一撃を右腕だけで止められるはずがない。 拮抗したのは一瞬だけ。 "スタープラチナ"の腕はあえなく弾かれて、"シェルブリット"が"スタープラチナ"の胸板に直撃する。 クレアの口から鮮血が溢れた。 拳同士の衝突によって多少威力が削がれていたとはいえ、かなりのダメージであることに変わりはない。 しかし数拍の間を置いて、"スタープラチナ"の左腕が勢いよく跳ね上がった。 槍のようにカズマの腹部へ叩き込まれる左拳。 「ガッ……!」 レヴィとクレアは転がるように距離を取り、その間にカズマが落下した。 そこへ容赦なく"クレイジー・ダイヤモンド"のラッシュが放たれる。 『ドララララッ!』 カズマは右腕で地面を殴り、反動で辛うじて身を反らす。 ラッシュに晒された舗装面は粉々に砕け、その下の地面まで掘り起こされていく。 乱戦に休息などない。 身を起こすカズマにスプリングフィールドが向けられ、その銃口を"シェルブリット"が握り押さえる。 「どけ! てめぇは後で殺す!」 「喧嘩売っといてそれはねぇんじゃねぇか、えぇ!?」 睨み合うカズマとレヴィを一瞥してから、仗助はクレアに顔を向けた。 空気を割って迫る鉄塊。 それが何であるのか理解する前に、仗助は地面に身を伏せた。 「うおっ……!」 仗助の頭上を細長い鉄の塊が掠める。 それは広場の周辺に設置された街灯であった。 根元付近で圧し折られた街灯を、"スタープラチナ"が長柄物のように振り抜いたのだ。 仗助はタイミングよく振り向いたために回避できたが、クレアから注意を逸らしていたレヴィとカズマはそうはいかない。 街灯の先端付近が二人を容赦なく薙ぎ払う。 意識の外からの攻撃を食らい、二人は受身も取れずに吹き飛ばされた。 十メートルは飛ばされた上で植え込みにぶつかり、そこでレヴィが止まる。 カズマはそこから更に撥ね、何度かバウンドしてから路上に四肢を投げ打った。 「……これで残ったのは俺とオメーか」 仗助は身を起こしながらクレアと"スタープラチナ"を睨んだ。 あれほどアツくなっていた思考が急激に冷えていくのが分かる。 相手の身体に浮かんでいた明るい部分と暗い部分も見えなくなっている。 今の攻撃で本体が倒されて、連鎖的にスタンドも機能を停止したのだろう。 男と女のどちらのスタンドだったのかは、仗助にとってはもうどうでもいいことだ。 残された問題は、目の前に立つ車掌服の男――クレア。 クレアは武器に使った街灯を足元に投げ捨てて、素手で仗助と対峙している。 空条承太郎のスタンドであるはずの"スタープラチナ"を使い、更に本人の身のこなしも尋常ではない。 その上、どう考えても穏便に話を聞いてくれそうにないときている。 しかしスタンドからのダメージ伝達によって、右拳と腹部にかなりのダメージを追っているようだ。 加えて"スタープラチナ・ザ・ワールド"までは使いこなせていないらしい。 そこは仗助にとって有利な点だった。 「念のため聞いとくが、俺は途中から乱闘に加わったんで一番消耗してねぇ。 それでも俺とやりあうつもりか?」 「当然だ」 短い言葉で男は答えた。 その眼差しに妥協の余地は見られない。 先に仕掛けたのはクレアであった。 放たれた"スタープラチナ"の豪拳を、仗助それと同等の一撃で以って弾き返す。 "スタープラチナ"と"クレイジー・ダイヤモンド"の能力はほぼ互角。 精密さでは"スタープラチナ"が勝るものの、単純なパワーは"クレイジー・ダイヤモンド"が上を行く。 二体の人型スタンドの打ち合いは、スタンドの扱いに慣れている仗助が優勢であるように思われた。 だが、一方的に有利な土俵での戦いにクレアが甘んじているはずもない。 スタンド同士の殴り合いの傍ら、クレアの拳が仗助の頬を打った。 「……ッ!」 「人型の性能は同等らしいが、俺はお前には倒されない」 胸、腹部、脚と次々に殴りつける。 傷を負った右拳を使わず、左拳と右肘を駆使した連続攻撃。 スタンドの能力は対等でも、本体の格闘能力の差は歴然であった。 回避も防御もあったものではない。 仗助はクレアの攻撃をまともに食らい続け、数歩退いて地面に膝を突いた。 「終わりだ」 止めを刺すべく迫る"スタープラチナ"を"クレイジー・ダイヤモンド"が防ぎ止める。 だが、それと同時にクレアが駆け出していた。 隙だらけの仗助に拳を振りかぶる。 「スタンドはよぉ……殴るだけが能じゃないんだぜ?」 そう言うなり、仗助は屈んだ状態から更に姿勢を低くした。 その直後、クレアの胴体に凄まじい衝撃が走った。 「……ぐっ!」 "クレイジー・ダイヤモンド"は"スタープラチナ"が抑えている。 仗助が何かしたような様子はない。 クレアの胴体を打ち据えていたのは、ひとりでに動き出した街灯だった。 "スタープラチナ"が接近する直前、"クレイジー・ダイヤモンド"はクレアが武器に使っていた街灯を一発殴っていたのだ。 "クレイジー・ダイヤモンド"の力は直す力。 その力を受けた街灯は凄まじい速度とパワーで元の位置に戻ろうとし、その軌道上にいたクレアを強かに打ち据える。 「グレートだぜ」 全くもって想定通り。 宙に飛ばされたクレアを追って仗助は駆け出した。 飛距離は数十メートル。 方角は南方。 空中で体勢を整えて着地したクレアに追撃を仕掛ける。 カズマやレヴィとの戦闘のダメージもあってか、クレアの動きは確実に鈍くなっていた。 倒すならばこの機に乗じない理由はない。 仗助は防戦に移ったクレアに対して容赦のないラッシュを繰り出し続けた。 一方のクレアは"クレイジー・ダイアモンド"のラッシュを凌ぎながら、少しずつ南門付近へと後退している。 「……調子にのるな」 南門の目前で、クレアはラッシュの合間を縫って下から突き上げるように拳を放った。 "スタープラチナ"によるものではなく、クレア自身の肉体による攻撃。 仗助は大きく身を逸らしてアッパーを回避し、更に後方へと飛び退いた。 同時にクレアも後退を止め、体勢を整える。 結果、両者は南ゲートの門前で仕切り直す形となっていた。 「最後にもう一度だけ確認しておくぜ。どうしても退く気はねぇんだな」 「俺はすぐにでも戻らなければならない。悪いが命は諦めろ」 問答の内容は今までと何ら変わらない。 クレアは仗助をも殺して勝ち残るつもりであり、仗助にはそれを受け入れるつもりはない。 「……クレイジー・ダイヤモンド!」 仗助の号令一下、"クレイジー・ダイヤモンド"が豪腕を振るう。 狙いはクレア……ではなく、足元の地面であった。 人間離れした拳が舗装材を砕く。 そして、飛び散った破片が宙に留まり、一挙にクレアへと襲い掛かる。 「防げ!」 『オラオラオラァ!』 原因を考えるより早く、クレアは"スタープラチナ"に防御を命じた。 殴られ、砕かれる舗装材の破片には、どれも赤い血痕が染み付いていた。 ここに移動するまでのラッシュ合戦で"スタープラチナ"から伝達したダメージは、少しずつ、しかし確実にクレアを傷つけた。 そこから流れ落ちた血液は地面の舗装材に染み付き、広場から南門前までの道を斑点のように示していた。 "クレイジー・ダイヤモンド"が『直した』のはその血痕。 血痕はそれの染み付いた瓦礫ごと、血液の持ち主たるクレアへと戻っていったのだ。 全ての瓦礫を弾いたクレアの眼前には、既に"クレイジー・ダイヤモンド"が壮健な肉体を現していた。 それに呼応するように"スタープラチナ"も両腕を唸らせる。 南門近辺の外壁を背に、二体のスタンドがその力の限りを発揮する。 『ドラララララララララララララララ!』 『オラオラオラオラオラオラオラオラ!』 繰り出される拳は尽くが残像を残し、まるで数十の腕が飛び交っているかのよう。 際限なく放たれる打撃は、しかし共に相殺し合い、互いの本体には届かない。 一見すれば互角の殴り合いに思えるが、実際にはそうではないようだ。 スタンドのスペック差に加え、能力を活用した奇襲で先手を取られたことにより、クレアと"スタープラチナ"は確実に追い詰められつつある。 ここまで壮絶なラッシュともなると、もはや生身の人間が横槍を入れられる濃度ではなかった。 それは身体能力の問題などという単純な話ではない。 ミキサーに手を突っ込んで耐えられる人間がいないように、生物としての構造物質の問題なのだ。 クレアはじりじりと後退し、ついに外壁すれすれにまで追い込まれていた。 『ドラララララララララララララララララララララララララララララ!!』 『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』 本体の負ったダメージも響いているのだろう。 嵐のようなラッシュの趨勢は、次第に"クレイジー・ダイヤモンド"へと傾いてきていた。 それでもクレアは自らが死ぬとは思ってはいない。 しかし『迅速に勝ち残る』という誓いが揺らぎつつあるのは事実であった。 残り人数を省みれば、今はまだ序盤であるに違いない。 そんなところで苦戦しているのでは、迅速に事を成すなどできるはずがない。 『ドラララララララララララララララララララララララララララララララララ!』 ついに拮抗が破れる。 両腕を同時に弾かれた"スタープラチナ"の頬に"クレイジー・ダイヤモンド"の拳がめり込んだ。 スタンドから伝達されたダメージによってクレアの頭部も揺るがされる。 勝ち残らなければならないのに。 助けにいかなければならない人達が待っているというのに。 『ドラァ!!』 瞬間的に無防備となったクレアの身体に会心の一撃が迫り来る。 如何なクレアの身体能力を以っても、この攻撃には間に合わない。 防ぐこともあたわず、かわすこともあたわず。 乱戦の終わりを告げる一撃は驚くほど速やかに吸い込まれ―― ――錯覚かと思った。 一瞬――ほんの一瞬だけ―― ――世界が静止した。 気がつけば、"スタープラチナ"の拳が、"クレイジー・ダイヤモンド"の腹を抉り抜いていた。 「ヤロ……ウ、そこま……」 仗助の口と腹部から大量の血液が溢れ出る。 しかし放たれた攻撃は完全には停止せず、クレアもまた凄まじい力で外壁に叩きつけられる。 「終わったな……」 クレアは壁にもたれたまま呟いた。 あの一瞬に何が起こったのかは分からないが、結果としてクレアは致命傷を受けず、仗助は血まみれで地に伏している。 これを勝利と言わずに何と言うのか。 確かに、際どい戦いではあった。 ここに呼び寄せられて数時間で経た如何なる戦闘よりも、この男との戦いは伯仲していた。 人型のダメージが跳ね返ってきた影響であろうか、視界の右側が暗い。 全身に負った傷も決して浅くはないだろう。 だが、もはや勝負は決した。 考えるべきはこれからのことについてだ。 クレアは今後の指針に思考を傾けつつ、痛む身体を起こそうとした。 「……な、に?」 身体が動かない。 右半身が壁に張り付いてしまったかのように硬直し、クレアの随意に働かないのだ。 それどころか首も右に傾いたまま曲がらず、視界も大きく制限されていた。 まともに機能する左目をゆっくりと下に向ける。 ――信じがたいことに。 クレアの右半身は本当に壁と溶け合ってしまっていた。 右脚、右腕、右肩、右頬、右目……全てが例外なく。 理由などクレアには分かるまい。 "クレイジー・ダイヤモンド"が放った最期の一撃は、その『直す』力によって、クレアの肉体を遊園地の外壁と融合させていたのだ。 『直す』とは決して本来の形状に戻ることを意味しない。 仗助が怒りに我を忘れれば、あるいはそうなることを望めば、見当違いの形状で『直って』しまう。 事実、これまでに仗助は複数人のスタンド使いを無機物と融合させ、再起不能に追い込んできている。 クレアもまた、不完全ながらその力によって『直されて』しまっていたのだ。 「砕け!」 『オラオラオラオラオラ!!』 "スタープラチナ"が強力かつ精確な手刀の連打でクレアの周囲の外壁を破壊していく。 破壊作業は一分と掛からず終了し、クレアは発掘された化石のように外壁から解放された。 しかし、コンクリートと癒着した右半身の自由を取り戻すことはできなかった。 右目の視力は完全に失われ、遠近感までもがぼやけている。 どうにか歩き出そうとしたクレアだったが、右脚が一切動かず、嘘のように転倒してしまう。 起き上がるために腕を突こうとするも、右腕はぴくりとも反応しない。 左腕と左脚、そして"スタープラチナ"の助けによってどうにか身を起こすも、脇腹が固まっているせいで姿勢を変えることも辛い。 もはやどこからどう見ても、クレアは戦闘者として再起不能であった。 しかしクレアは歩みを止めようとしない。 戦いからも逃げはしないだろう。 自分は死なないのだという確信と共に。 必ず帰るという誓いと共に。 ◇ ◇ ◇ 「ぐ……ぁ……」 全身に走る痛みを堪え、カズマは立ち上がった。 どれくらいの間、気を失っていたのだろう。 辺りに人の気配は全くない。 それどころか戦闘の音すらしなかった。 「あんの野郎、無茶苦茶しやがって……!」 カズマは生身に戻った右腕で地面を殴った。 車掌服の男はどこにもいない。 口の悪い女も、変な髪形のガキもだ。 やり場を失った憤りは留まるところを知らず、カズマの思考をも焼き焦がしていく。 もし次に連中と遭ったら容赦などしない。 いや、出会ったことのない誰かであっても手加減など有り得ない。 「……覚悟しやがれ!」 聞く者のいない叫びを残し、カズマは歩き出した。 そもそも最初から誰に向けた言葉でもなかったであろう。 確かなのはひとつだけ。 決着をつける機会を永遠に奪われ、肉体的にも深く傷ついた獣は、これからも無差別に牙を剥くのだろう。 戦いを招く火種は、今も彼の中にあるのだから。 ◇ ◇ ◇ 瞼を開くと、景色が変わっていた。 仗助はいやに痛む腹に触れようとして、腕が動かないことを知った。 腕どころか全身のどこにも力が入らない。 現状はよく分からないが、どうやら何かにもたれかかって、地面に座り込んでいるようだ。 「大丈夫ですの? 気をしっかり持って下さいまし!」 誰かが肩を揺さぶっている。 少しずつ、視界から靄が晴れてきた。 小さな少女だ。 アルルゥと同じくらいに―― 「あんた……助けてくれたのか……?」 おかしなことを言っているなと、仗助は自分でも思った。 どてっ腹に大穴がブチ開いているのだ。 放っておこうとそうであるまいと、いずれ死ぬ。 それは自分自身がよく理解している。 こうして一時的にせよ意識が戻っただけでも僥倖だ。 身体の端から、少しずつ空っぽになっていく。 「わたくし達は、ただ逃げていただけですわ。 大事な仲間の仇が目の前にいたというのに……」 少女は仗助から目を逸らした。 もう一人、今の仗助からはぼやけてよく見えない場所にいる男も、視線を足元に落としているようだ。 二人の視線の先には、壊れた人形の部品らしきモノ。 ああ、あれが『大事な仲間』なんだなと、おぼろげながらに理解する。 「わたくしは翠星石の想いを、翠星石の姉妹に伝えると決めていましたの。 けれどその意地のせいで貴方は……」 少女の言葉は、どれだけ仗助に届いていたのだろう。 仗助は動かない四肢の代わりに"クレイジー・ダイヤモンド"の片腕を発現させ、小さく手招きをした。 開いた口からは言葉ではなく血の泡が溢れる。 「喋っては駄目ですわ!」 少女と、慌てて駆け寄ってきた男、そして人形の残骸―― それらに"クレイジー・ダイヤモンド"の拳が振るわれる。 注ぎ込まれていく最期の力。 残骸がふわりと宙に浮き、少女のデイパックに吸い込まれていく。 少女は信じられないといった表情でデイパックを開き、ソレを取り出した。 「姉妹に……家族に会いに行くんならよぉ……ちっとはキレー……に……」 ソレに軽く触れてから、跡形もなく消滅する"クレイジー・ダイヤモンド"の腕。 少女の腕に抱かれているのは、瑕一つない美しい人形であった。 失われた命は"クレイジー・ダイヤモンド"でも戻せない。 けれど、その身体を元のカタチに戻すことならできる。 ごふ、と血液が喉を逆流する。 今のが正真正銘の打ち止めだ。 もうスタンドを使う力も残されていない。 心臓は動いているだろうか。 呼吸は続いているだろうか。 答えはどちらも、ノーだった。 だけど、ひとつだけ、やらないといけないことがのこされている。 「……っ!」 少女は仗助の血まみれの口に耳を添える。 かたることばはこえにならない。 「あるるぅ、あるるぅさんですね!?」 しかし少女は片言も聞きのがさまいと耳を澄ます。 あとふたこと、せめてひとこと。 「……分かりましたわ。必ず……! わたくし達が必ず!」 少女は頷き、仗助の目をまっすぐに見据えた。 たとえその目が何も映していないとしても。 ◇ ◇ ◇ 空が、青い。 雲が、白い。 風が、冷たい。 今のレヴィにとっては、それらの全てが苛立ちの元でしかなかった。 何が穏便だ。 何が情報だ。 妙な腕したクソ野郎に出会ったと思ったら急にイライラして、結局あのザマだ。 しかもあれだけ撃ちまくって一人も殺せず、それどころかヤラれて植え込みの中で仰向けに倒れてるなんて無様この上ない。 「クソッタレが……」 徹底的に潰された左腕が、脳ミソに激痛を絶え間なく叩き込んでくる。 これはもう応急処置のレベルでは済まないだろう。 「これはヤベぇよな……病院……医者、居るかぁ?」 これだけ広大な遊園地に、参加者以外の誰もいないのだ。 病院に行ったところで、きっと医薬品や機材が置いてあるばかりで、スタッフは一人も居ないに違いない。 大掛かりな手術など期待は出来まい。 「まぁ、鎮痛剤くらいは見つかるだろ」 レヴィはそう考え、植え込みから身を起こした。 眼前の広場は荒れ果てていたが、戦闘自体は終わってしまっているようだ。 植え込みに深くはまり込んでいて気付かれなかったのか、それどころではなかったのか、気絶している間に襲われることはなかったらしい。 もしもわざと無視されていたのだとしたら、それは紛れもない屈辱だ。 ……情報を集めるという方針は、まだ変えない。 だがあの乱戦に加わっていた奴は例外だ。 出会い次第ブッ殺す。 頭に弾丸をブチ込むまで許さない。 「見てやがれ、クソッタレ」 まずは病院。 それと武器弾薬だ。 手持ちの予備弾数では心許ない。 できればもっと火力のある武装が欲しい。 決意も新たに、レヴィは新たな目的地を目指した。 ◇ ◇ ◇ 狭くて暗い箱に光が差した。 木箱の蓋がごとりと動き、少しずつ光が広がっていく。 アルルゥは逆光に目を細めて、光の中の誰かを見つめた。 「……だぁれ?」 仗助ではない。 人影は背が低く、木箱の端から顔だけを覗かせている。 「アルルゥさんですわね」 人影が身を乗り出す。 木箱によじ登って身を乗り出し、すっと手を伸ばす。 アルルゥは首を傾げた。 人影――金色の髪をした少女は、アルルゥの知らない子だった。 「わたくしは……わたくし達は……」 少女はそこで言葉を切って、少しだけ哀しそうな顔をした。 けれどそれは一瞬のこと。 すぐに優しそうな微笑みを取り戻して、アルルゥの前で手を広げた。 「わたくし達は仗助さんの……お友達ですわ」 【ドラえもん@どらえもん 死亡】 【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】 【G-3北部/1日目 朝(後半)】 【カズマ@スクライド】 【状態】:疲労(大) 全身に負傷 砂鉄まみれ 右腕に痛みと痺れ 右目の瞼が上がらない 右頬に小さな裂傷(アルターで応急処置済み) 腹部と頬に打撃ダメージ、脇腹と左肩に銃創 【装備】:桐生水守のペンダント(チェーンのみ)、スタンドDISC『サバイバー』@ジョジョの奇妙な冒険 【道具】:基本支給品一式(食料を二食分、水を1/3消費)、ランダム支給品0~2 【思考・状況】 1:とにかくあの野郎をぶん殴る。(誰かはよく分かっていない) 2:優勝狙い。 3:次に新庄、伊波と出会ったら…… 4:メカポッポが言っていた、レッド、佐山、小鳥遊に興味。 ※ループには気付いていません ※メカポッポとの交流がどんな影響を及ぼしたのかは不明です。 ※参戦次期原作20話直後。 ※DISCが頭に入っていることは知っていますが、詳細については一切把握していません。 ※レヴィには気付かず移動を開始したようです。 ※何処へ行くかは次の方にお任せします。 【G-3南部/1日目 朝(後半)】 【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】 [状態] 疲労(中) 拳に血の跡 脚にいくらかの痛み、左肩にわずかに切り傷、背中に銃創、腹部・胸部・右頬にダメージ(中)、右拳の骨にヒビ 右半身がコンクリートと癒着(右目失明、右腕並びに右脚の機能喪失等) [装備] スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険 [道具] 支給品一式×2 未確認支給品0~1 [思考・状況] 1:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。 2:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。 3:レヴィ、ウルフウッド、梨花、沙都子、クリス、カズマと再び出会った時には彼女らを殺す。 4:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。 【備考】 ※何処へ向かうかは後続の方にお任せします。 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明) ※フィーロがいたことを知りましたが、名簿はまだ見ていません。 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりましたが、本人はまだ気付いていません。 ※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。 ※右半身の数箇所がコンクリートと一体化しました。余分なコンクリートはスタープラチナが破壊しましたが、機能は戻っていません。 【G-3中央 広場内植え込み/1日目 朝(後半)】 【レヴィ@BLACK LAGOON】 [状態]疲労(大)、全身に負傷(中)、左小指欠損(応急処置済み)、顔面と左脇腹に痛み、左腕複数箇所骨折等 [装備]スプリングフィールドXD 5/9@現実、スプリングフィールドXDの予備弾10/30 @現実、 カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL [道具]支給品一式(一食消費、水1/5消費)、応急処置用の簡易道具@現実 [思考・状況] 基本行動方針:悪党らしく、やりたいようにやる。 1:医薬品、武器弾薬を調達する 2:他の参加者と接触してなるべく穏便に情報を集める。他にバラライカの情報を集める 3:クレア、仗助、カズマは出会い次第殺す 4:爆発?を起こしたゼロを許さない。(レヴィは誰がやったかは知りません) 5:他の参加者に武器を、特にソードカトラスがあったら譲ってくれるように頼む。断られたら力尽く。 ※クレア、仗助、カズマが何処へ行ったかは知りません。 ※カズマが移動して暫くしてから気がついたようです。 ※参戦時期は原作五巻終了後です。 ※スタンドの存在を知りましたが、具体的には理解していません。ポケモンと混同してる節があります。 ※ポケモンの能力と制限を理解しました。 【G-3南端 南門付近 サーカステント用具室内/1日目 朝(後半)】 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:健康、疲労(小)、L3 [装備]:象剣ファンクフリード@ONE PIECE、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL [道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、 翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき [思考・状況] 1:真紅、もしくは蒼星石にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。 2:アルルゥを家族に会わせる。 3:部活メンバーに会いたい。 ※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。 ※名簿は確認したようです。 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。 ※クリストファーの名前をクリスタルだと思っています。 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません。 【クリストファー・シャルドレード@BACCANO!】 [状態]:健康、疲労(小) [装備]:F2000Rトイソルジャー@とある魔術の禁書目録(弾数40%)、5.56mm予備弾倉×4 [道具]:支給品一式、クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ 包丁@あずまんが大王、不明支給品(0~1) [思考・状況] 1:沙都子をアルルゥを守る? 2:クレアには会いたくない。 ※ローゼンメイデンについて簡単に説明を受けました。他のドールの存在を聞きました。 ※名簿を確認しました。 ※参戦時期は、『1934完結編』終了時です。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]健康 [装備]なし [道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、 不明支給品(0~2) <アルルゥ>、不明支給品(0~1)<仗助> [思考・状況] 1:誰……? 2:ハクオロ達に会いたい 3:仗助を待つ ※ココが殺し合いの場であることをイマイチ理解していません 【翠星石の亡骸首輪つき】 クレアに破壊された翠星石の亡骸。首輪付き。 仗助のクレイジー・ダイヤモンドによって損傷は復元されたが、蘇生はしていない。 【DISC『サバイバー』】 第6部に登場したスタンドと、その能力を封じたDISC。 本体が怒ることによって周囲の生物を無差別に凶暴かつ好戦的にして争わせる。 射程は通常で十数メートル、電気が伝わりやすい環境であれば数百メートル。 効果の度合いは個人によってばらつきがある。 凶暴化に伴って、潜在能力を引き出したり、相手の肉体の優れた部位やダメージを負った箇所が分かるようになる。 対象を選択できない能力のため敵味方関係なく戦うようになってしまう。 DIO曰く「最も弱いが、手に余るスタンド」 時系列順で読む Back Survivor Next 救いと因果と 投下順で読む Back Survivor Next 図書館戦争 Back Next Survivor 東方仗助 死亡 Survivor アルルゥ 喜怒哀嫌 Survivor クリストファー・シャルドレード 喜怒哀嫌 Survivor 北条沙都子 喜怒哀嫌 Survivor クレア・スタンフィールド 止まらない世界 Survivor レヴィ 喜怒哀嫌 Survivor カズマ 路傍の石 Survivor ドラえもん 死亡
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峰不二子の暴走Ⅰ ◆LXe12sNRSs 時刻は午後11時を回り、バトルロワイアル第二日目の開始まであと数十分となった。 今日が昨日に変わり、明日が今日になる瞬間がもう間もなく……一般人ならとっくに就寝していてもおかしくないこの時刻、寝息を立てている者は逆に希少と言えた。 (機会を逃しちゃったわね……) 今、峰不二子の眼前の部屋が消灯した。 騒がしかった声は深い沈黙へと変わり、人の気配すら薄くさせる。 この中には、序幕の際に主催者に食って掛かった少年と青ダヌキ、青ダヌキに同行していたゴーグルの少年、そして劉鳳が話していた『カズマ』に酷似した外見的特徴を持つ男がいた。 合計四人。数はぶりぶりざえもんから聞いた話とも一致している。 ただ一つ、不二子自身が橋で目撃した赤い髪の少女が見当たらないのが気がかりではあったが、それについてはすぐに答えが出た。 彼等とは別行動を取っている――これは希望的観測。 現実はもっと非情。ここにいないということはつまり、『死んでしまった』のだろう。 病室と廊下、たった一枚の扉を隔てて、峰不二子とドラえもんたち四人組は超接近を果たしていた。 ぶりぶりざえもんから病院にいる弱者たちの話を聞いたのが、まだ6時過ぎ頃のこと。 本当ならもう少し早く到着する予定であったが、『人形』と『魔法少女』という二人のイレギュラーに遭遇してしまったがために、少々慎重になりすぎてしまったようだ。 不二子が病院に辿り着いてまず目撃したのは、三つの盛り土に黙祷を捧げる眼鏡の少年。 とても声をかけられるようなムードではなく、その時は傍観に徹してしまったのが手痛いミスその一。 直前に人形に正体を見破られたという苦い経験も重なり、不二子は信頼を得るに最高な出会いのタイミングを見計らっていた。 その後、死者への鎮魂を終えた少年は青ダヌキ他三名と共に夕食を取り、そしてすぐにギガゾンビに関する情報交換と作戦会議に移行した。 日頃の諜報活動のクセが出てしまったせいか、その会議の際、不二子は四人組の前に姿を見せず、室外から聞き耳を立てていた――これが手痛いミスその二。 多少強引な出会いだとしても、あの時に姿を見せ、こちらが無害であるということを主張するのが正解だったかもしれない。 チャンスを窺い、絶好の機会を模索する内に――四人組は不二子の存在すら知らず寝入ってしまった。 これではもう彼等との接触は不可能だ。まさか寝静まっているところを起こすわけにもいくまいし、ここは大人しく明日の朝を待った方が懸命だろう。 情報や駒を入手するなら早い内が望ましいが、焦りは禁物だ。 不二子自身も精神的疲労に侵され始めている現状、安息の時は喉から手が出るほどに欲しい。 信頼を得る機会は遠のいたが、状況が悪くなったわけではない。 今の内に自分も睡眠を……と、不二子が四人組の眠る病室から離れようとしたその時だった。 「――だ、誰! そこにいるのは!?」 薄暗い廊下の先から、甲高い女性の声が木霊した。 不意の一声が院内を反響して響き渡り、不二子は反射的に警戒心を強める。 声の主は不二子よりも身長が低く、学生服を着た少女。暗がりであったため顔を確認するまでには至らなかったが、顔見知りでないことは明白だった。 数秒前まで明かりが点いていた部屋の中を、コソコソと嗅ぎ回る不審な女――廊下先の彼女に見つかったことにより、立派な犯罪者が誕生してしまう。 ここで顔を見られ怪しい人間というレッテルを貼られてしまっては、後の計画に支障が生じる。 早々に退散するべきだ――本能的に足を動かそうとしたが、脳が逃走に成功した場合の一パターン映像を浮かび上がらせ、思いとどまらせた。 あの少女の一声により、もしかしたら室内の四人組が目を覚ましたかもしれない。 その場合、当然外の様子を窺いに顔を出し、目先の少女と対面する。 そして彼女からこう伝えられるわけだ。「あなたたちを覗き見していた不審な女がいる」と。 四人の警戒心は自然に強くなり、不二子の利用しやすい、『駒』としての資質は低くなる。 そうなっては今までの尾行及び計画が全てパー。それを回避するためにはどうすればいいか。 ――目の前の少女を、殺す。 簡単なことだった。 四人組に不審人物の情報が伝わるのがマズいというのであれば、それを伝える情報源の命を絶てばいい。 銃を抜き、照準を定めて、引き金を引く。 別に初めての経験ではない。慣れたことだ――不二子はすぐさま行動に移ろうとしたが、また寸前で思いとどまる。 射殺したとして、事後の死体処理はどうする。 いつ四人組が部屋を出てきてもおかしくない現状、銃声など鳴らせば火に油を注ぐようなものだ。 命を奪うのは後の処理が面倒と判断し、ならば速やかに、そして静かに鎮圧を、と不二子は駆け出した。 同タイミングで、少女がスカートのポケットに入れておいた小瓶を取り出す。 蓋を開け、中の液体を頭に振り掛ける。その一連の動作を行わなければ小瓶の効果は発揮されなかったのだが、駆ける不二子を対処するには動きに無駄が多すぎた。 足音を気にさせない静かなダッシュで少女の胸元まで詰め寄り、長い美脚を振り上げる。 不二子の右足は放物線上を描いて高く舞い上がり、少女が手に握っていた小瓶を跳ね上げた。 少女は不二子の無駄のない動きに目を見開いたが、その後の動作に支障を来たすような間違いは起こさなかった。 第二の対抗手段として、肩に下げていたデイパックから一台のカメラを取り出す。 シャッターに指を置きファインダーを覗く頃には、不二子の姿はもう眼前まで迫っていた。 攻撃の第二派が来ると少女は直感したが、怯まずシャッターを切る。 するとどうだろう。カメラが正面に捉えていた不二子の着衣――その全てが突然消え失せ、輝かしい裸身が晒されたではないか。 身に付けている衣服が唐突になくなるという摩訶不思議な現象。そこから生まれる隙を突くのが、少女の作戦だった。 だが身体を剥き出しにされた当の不二子は、動きに一寸の躊躇も隙も見せず、逆に軽やかな動作で少女の背後に回りこんだ。 そのまま少女の首を腕で絞め、身体を羽交い絞めにして拘束する。 着せ替えカメラの裏効果で裸になったというのに、一瞬の戸惑いも見せぬその根性……決して不二子に羞恥心がないわけではない。 ただ、仕事をコンプリートするためには自らの美貌さえも武器にする女は、こういった視聴者が喜びそうなハプニングに対しても動じない。ただそれだけだった。 「いやぁ~ん。随分とハレンチなお嬢さんね……男性のカラダより女性のカラダの方が気になるお年頃かしら?」 「ちょ、なによアンタ! 痛っ、離しなさいよ!」 初撃で『クローンリキッドごくう』を蹴り飛ばされ、そして『着せ替えカメラ』すら無力となってしまい、さらには身体の自由まで奪われてしまった少女――涼宮ハルヒに、残された打開策はなかった。 さっきまで明かりの灯っていた部屋、その外でコソコソしていた謎の女……まず間違いなく危険人物。 身体を拘束されてなお抵抗を続けようとするハルヒだったが、不二子の腕は完璧に首にかかっており、不審な動きを見せればすぐ絞殺されてもおかしくない体勢だった。 危機を感じてもがくハルヒ。しかしそれは不二子も同様で、早くこの場を立ち去らないともれなくドラえもんたちに危険人物として認識されてしまう。 不二子の最重要目的は、主催者ギガゾンビと密接な関係を持ったドラえもん、のび太らの信頼を得ること。 こんなつまらない不幸で計画を台無しするわけにはいかない。 とにかくこの場は、彼等に気づかれないようハルヒごと早期退散を――と、玄関方面へ移動しようとした時だった。 ガチャリ、と病室の扉が開けられ、中から眼鏡をかけた少年が一人、廊下の様子を窺いに出てきた。 少年は眠たそうな目を擦りつつ不二子とハルヒの方を見やり、表情を変えることなく一度眼鏡を外した。 服の裾で眼鏡をゴシゴシと擦り、またかけ直す。 どうやら眼鏡が曇っていないか確認したかったらしい。 そうさせるほどに、目の前の状況はマズイものだったのだろう。 結果として、眼鏡は曇っていなかった。 現実を捉えた少年はゆっくりと口を開け、目玉を眼鏡ごと飛び上がらせ、舌をウネウネと長く伸ばし、顔面を真っ赤に染め上げ、果てには自分自身も飛び、仰天しながらこう叫んだ。 「――ど、ドラえもぉぉぉぉぉん!!!」 ◇ ◇ ◇ 「ここか、人質を取った凶悪犯が立て篭もってる部屋ってのは!?」 「そうだよ! 未来のネコ型ロボットであるぼくの精巧な視覚センサーが捉えたんだ、間違いないよ!」 「で、犯人はどんなヤローだったんだのび太!?」 「く、暗がりだったからよく見えなかったんだよ~! たぶん捕まってた子は高校生くらいの人で、犯人は身長からして大人だったと思う」 選ばれし子供、二十二世紀のネコ型ロボット、ネイティブアルター、何をやってもダメな小学五年生。 就寝するはずだった男四人組に包囲された部屋の内部で、素っ裸のままの不二子は溜息を吐いていた。 不二子に降りかかった不幸は、あの人形と魔法少女との遭遇から始まる。 銭形の変装を見破られた上に、そのせいで病院への到着も遅れ、最終的には彼等との接触機会も逃してしまった。 さらに謎の少女との邂逅、不思議な道具で身ぐるみを剥がされたこと、少女の声が原因でのび太が外に出てきてしまったこと、 放送が近かったという理由もあり、万が一に備えてのび太とドラえもんがまだ眠っていなかったこと、二人に叩き起こされカズマと太一の二人も騒動に参加してきたこと。 挙げればそれこそキリがない。遊園地での一件や駅での一件、橋の一件や劉鳳に誤解されそうになったのもその一端だ。 峰不二子という女性は、ここまで不運な女だったろうか? 幸運の女神に見放されるような女だったろうか? ……思わず問いたくなる。 この時ばかりは不二子もガックリと肩を落とし、最近の境遇と周囲の環境を恨んだ。 今の気分を一言で言い表すなら、憂鬱。退屈な日常に魅力を感じなくなっていた、SOS団結成前の涼宮ハルヒと同レベル欝っぷりだった。 あぁ、なんでこうなってしまったんだろう……視線をそのSOS団団長様にして不二子の身を剥いたハレンチ娘に向け、「どうしてくれんのよ」と言わんばかりの嫌悪感を込める。 「何よ、何か文句があるなら言ってみなさいよ」 ハルヒもまたムスッとした表情で返し、不二子はさらに溜息をついた。 「……あなたのおかげで私の計画がメチャクチャだわ。いったいどうしてくれるの?」 「それはご愁傷さま。でもね、いつだってこの世に悪の栄えた試しはないのよ。あたしに言いがかりつける前に、まず自分自身の計画とやらに落ち度がなかったかどうかもう一度よく見つめ直したら?」 美女と美少女の二人しかいない静かな病室、ハルヒはその中に置かれた椅子に座り、峰不二子と正面から対話をしていた……身体を破かれたシーツでグルグル巻きにされているという、オプション付きで。 今のハルヒの扱いは、外の四人が捉えている内容どおり人質。それを利用している不二子は、いわば凶悪犯罪者となる。 泥棒や詐欺などの悪事は散々働いてきたが、さすがにこんな下劣な真似はしたことがない。 しかしそれもしょうがないことだった。度重なる不運で不二子の計画は完全におじゃんとなり、四人組とは信頼関係どころが敵対関係が生まれてしまった。 唯一幸いなのは、第一目撃者ののび太が不二子の容姿を的確に捉えられなかったこと。 正体がバレていないならまだ挽回は可能かとも思われたが、それ以上に現状が厳しすぎる。 憂鬱を訴える脳をこき使い、色々策を廻らす不二子だったが、それもハルヒの毒舌のせいで集中できない。 「大体よくそんな格好のままでいられるわね。恥ずかしくないの?」 「……こんな格好にした張本人が言ってくれるじゃない」 「羞恥心をなくしちゃ女性としてはお終いね。いい? 恥じらいっていうのも重要な萌え要素の一つなのよ。 普段は気丈な態度を取っていたとしても、ここぞというところでは女の子らしい純情で可愛らしい仕草を見せる。 メイドとか巨乳とかロリとか、そういう記号で売っていくのは確かに手堅いけど、最近はそういった安易なものよりも、より複雑な思考ルーチンの生み出す萌えが必要とされているのよ」 「あなたみたいな子供に言われなくたって、男のハートを掴む術なら心得てるわよ……」 「ハッ、あまいわね! ただ美人ってだけじゃ、今のご時勢権力持ちのエロオヤジぐらいしか引っ掛けられないわよ! 今の時代は男性だけでなく、女性も萌えを求める時代だわ! その点アルちゃんは優秀よ! 犬耳尻尾にメイドにロリ! そして何よりその仕草! 男性はもちろん女性だってイチコロの究極萌え生物よ! 世界中のテーマーパークがマスコットとして欲しがること受けあい! 我がSOS団の秘密兵器に抜かりはないわ!」 「誰よアルちゃんって……」 何度目か分からない溜息を吐きつつ、不二子は鬱々として感情がだんだんイライラしてきたことに気づき始めた。 どうやら、ハルヒの言葉攻めにペースを乱されつつあるらしい。 この危機的状況でこれだけの無駄口が叩けるのだから、彼女の神経も相当図太い、いや立派なものだ、と敬服する。 いつだってクールに。逆境を乗り越えるには他者を利用して。自分の手は出来る限り汚さず。 不二子は溜息ばかりの呼吸を一旦整え、真剣な眼差しでハルヒに向き直った。 「……怖くはないのかしら? これから殺されるかもしれない、死ぬよりもっと酷い目に遭わされるかもしれない、そういった恐れはない?」 「お生憎様。あたしはこれまで相当な数の修羅場を経験してきたの。ピンク色の髪の騎士とか金髪の髪の騎士とかに襲われたり色々とね。 あの時のピンチに比べれば、あんたなんて全然怖くない。やれるものならやってみなさいよ。すぐに化けて出てやるから」 ――強い。そしてそれ以上に、舌戦の才能がピカイチだ。不二子は贔屓目なしでそう思った。 ハルヒがどんな生活を、どんな心境でこの一日を過ごしてきたかは知らない。 もちろんハルヒの一日にルパンや次元の姿があったことも、知るよしはない。 彼女なら、あるいは生き残れるかもね。 根拠もなしに、突然そんな予感を感じた。 強い瞳、強い意志、強い心。生きるために必要な要素というのは、力や頭よりもまず、気持ちが最重要であると言えた。 不二子のように狡猾な手を使うでもなく、他者を利用するでもなく、ただ生き延びてやる、という強い信念の下に行動している。 健気で美しく、そして思わず応援したくなるような『弱者』だった。 不二子は真っ直ぐに見つめてくるハルヒから視線を逸らし、デイパックに仕舞い込んでいた銃を取り出す。 向ければそれは即刻殺害対象として定められる銃口――矛先は気高い誇りを掲げたハルヒを刺し貫き、動揺を誘った。 だが、屈しない。多少ビクついたりはしたものの、人の命を奪う道具から視線を背けるような真似はしなかった。 やれるものならやってみなさいよ――宣言どおり、ハルヒはこれしきの脅しに負けるつもりなどないようだ。 この少女を気持ちで打ち負かすには、どうやら正攻法以外の手段を使う必要があるらしい。 室外で騒いでいる四人、自分の素顔を裸身含めて記憶してしまったハルヒ、その双方をいかにうまく利用し、この場を切り抜けるか。 考えに考え、やがて不二子は決断した。 「今度はいったい何をするつもり?」 「直に分かるわ」 銃を収めた不二子は依然としてハルヒを拘束したまま、病室に置かれていたコップに支給物の水を注ぐ。 ――『他者を利用し、生き延びる』 不二子の目的は、最初から今に至るまで一貫してこの通りのはずだった。 利用する。それが彼女が得意とするスタンスであり、その実力は天下の大怪盗を手駒にするほどの魔性の威力。 洗脳やらマインドコントロールやら、そんな大層なものが扱えるわけでもない。 必要な工程はたったの三つ。相手を理解し、自己を理解し、決断する。 不二子は今、その第三工程を踏んだ。あとは決行するのみ。 結果として現れてくるのは、不二子の望んだ世界か、それとも。 「ちょっと、なによその怪しげなクスリ」 「気にしないで。単なる睡眠薬よ」 不二子は水で満ち足りたコップに粉末状の薬品を加え、掻き混ぜながら不気味に笑った。 裸の女性が、暗がりの病室で薬を作っている。恐ろしくシュールな光景にも関わらず、舞台は奇妙な緊迫感によって彩られていた。 銃を向けられた瞬間よりも、セイバーやシグナムに襲われた時よりも、嫌な予感がする。 錯覚だと思い込みたかったが、ハルヒは目の前の不二子に怯えを感じずにはいられなかった。 暗闇の中、一滴の汗がハルヒの頬を伝う。別に暑いわけでもないのに。 その間、不二子はコップの中の水を全て口に含み、すかさずハルヒの下に駆け寄った。 そして、峰不二子と涼宮ハルヒ、二人の唇と唇が接触を交わす。 「……んん!?」 唐突で衝撃的、センセーショナルでインパクト抜群。突然すぎて、思考回路が麻痺してしまう。 ハルヒは不二子からの魅惑的な接吻を受け、一瞬の内に顔面中を上気させた。 「ん……ん、ん、んー!? んん…………ぁん……っ……!」 唇を離そうとしない、それどころか執拗に口内へと魔手を伸ばしてくる不二子に対し、ハルヒは力の限り抗った。 だが突然のキスで混乱しているのか、妖艶な魅惑に身体を縛られてしまったのか、思うように力が入らない。 虚脱感は拭えない涙へと変わり、抵抗の意を示す喘ぎ声も小さなものへと変わっていく。 唇を通して、全身の生気という生気が奪われてしまったような感覚。 舌と舌が絡み合う艶かしい感触も初めて体験するものだったし、他人の唾液が口に流れ込んでくるという珍事もまた同様に。 頭がぽぅっとして、もう何もかも考えられなくなってきた。 「んっ……ふゅぅ……っく……ん」 ハルヒの知らない未知の世界――その片鱗を味わったというのに、なんだかやけに気持ち悪い。 好奇心やワクワクとは無縁な、大人への階段。 まだ昇りたくない。まだここにいたい。 ハルヒがイヤイヤと身を捩ったところで、ようやくルージュの儀式が終わりを迎えた。 「はぁ、はぁ、は、ぁ――」 解放された口で荒い呼吸を繰り返し、ハルヒは鋭い視線で不二子を睨もうとして――瞼をガクンと落とした。 何するのよこのヘンタイ! 痴女! 強姦魔! と罵倒を浴びせたかったのに、それが困難な状況に陥っている。 身体が鉛のように重い。特に、瞼からは鉄塊かと疑ってしまうほどの重みを感じる。 いったいなにがどうなってしまったんだろう……考える能力も低下し、ハルヒの生体機能は闇の世界へと誘われていった。 つまり、急に眠くなったのだ。 度重なる事件で疲れきった身体は安息を求め、襲ってきた眠気の前にあえなく陥落した。 にしても唐突すぎる。何か原因があるはずだ――とハルヒは閉鎖寸前の視界で、不二子が飲んだ水の容器を捉えた。 不二子がコップの水に混ぜた、正体不明の怪しい薬。本人はあれを、睡眠薬と言っていた。 薬の正体は不二子の言うとおり睡眠薬で、しかも医療用に使う強力なものである。 強引に飲ませようとしたところで、相手が飲み込まなければ効果は薄い。だから、口移しという手段を用いたまでのこと。 先ほどのキスは、あの睡眠薬をハルヒに無理矢理飲ませるためのものだったのだ。 「……」 その結論に到達したのかどうかは定かではないが、今、ハルヒは完全に沈黙した。 「相当な数の修羅場を経験してきた、ね……なら、溜まった疲労も相当なものでしょ。 今は何もかも忘れ、安心してゆっくり眠るといいわ。今は、ね」 眠ってしまったハルヒを気遣っているのか、不二子はやや小さくした声で囁きかけ、そして微笑んだ。 「ふふふ……おやすみなさい、リトルレディ」 その笑みがどこか妖艶に見えてしまうのは、峰不二子という女の特性みたいなものだろうか。 ◇ ◇ ◇ 「がぁー、もう待てねぇ! のび太、ドラえもん、太一! 俺はもう突っ込むぜ!」 病室の外で機会を窺うこと数十分。 いつまで経っても姿を現さない、それどころか要求の一つも言わない犯人に、カズマはついに痺れを切らした。 アルターを形成しようとしたところをのび太、ドラえもん、太一の三名が必死に宥め、そのやり取りを繰り返すこと計三回。 「止めんなお前ら! ようは、人質をどうこうされる前に犯人ヤローをボコにすれば問題ねぇんだろ!? 簡単じゃねぇか!」 何がどう簡単なんだ。三人は思いつつも、カズマと口論するような余裕はなく。 やっと休めると思った時に起こった、想定外のアクシデント。この四人組も肉体の疲れからか、やたらと動きがチグハグしていた。 カズマが暴走して、他三人が止めようとした、そんな時である。 不意に、不審者の立て篭もっていた部屋のドアが開いた。 この時ばかりは四人一斉にピタリと動きを止め、一方向に視線を注ぐ。 中から出てきたのは、茶色のトレンチコートに鍔付きのソフト帽を被った、年配の男性。 男性はセーラー服の女性を抱え、真摯な態度で喋り出した。 「突然驚かせてしまってすまない。わしは、国際刑事警察機構総務局国際協力部第1課の銭形という者だ。 偶然にも、外から不審な男がこの少女を捕らえている姿を目撃したのもんでな。 黙っているわけにもいかず、隙を見て救助させてもらった。少女は眠っているだけだから安心してくれ。 惜しくも犯人には逃げられてしまったが、手傷を負わせておいたからこれ以上の犯行に及ぶことはないだろう」 その男、銭形の自己紹介に対して四人組の返答は、沈黙。 全員が全員、彫刻のように動かなくなり、疑念に満ちた目で銭形を見つめていた。 (さて、伸るか反るか……) この銭形、もちろん本物の銭形幸一ではない。 病室に立て篭もっていた不二子が、自身の支給品である変装セットを利用した姿だった。 作戦はただ一つ。 銭形の姿を借り、この場をやり過ごす。 素顔を見られていないとはいえ、彼女の背格好はのび太とドラえもんが目撃している。 犯人と思われる可能性が高い以上、素顔のままで姿を晒すわけにはいかなかった。 その点、銭形の変装セットを使えば容姿がまるごと逆転することに加え、警察官という肩書きで相手の信憑性を高める効果も狙える。 しかも、今の不二子は着せ替えカメラの効果によって着るものを剥ぎ取られている状態だ。裸身のまま降伏するよりは、よっぽど健全な選択と言える。 作戦がうまくいったとして、融通が利くのは不二子の正体を知っているハルヒが目覚める間まで。 その間にどうにか作戦を立て直し、峰不二子としてドラえもんの仲間に加わる。それこそが不二子の決断した、時間稼ぎの策だった。 が、この作戦には一つだけ、あってはならない、だが十分に有り得る、『最悪ケース』への懸念があった。 思い出されるのは、不二子の変装を一発で見破った水銀燈の存在。 もしこの四人の内の誰かが、銭形本人、もしくは銭形の死体と面識を持っていたとしたら。 嘘も弁解も通用しない、最悪の展開が待っている。 (分の悪い賭けじゃないわ。むしろ、ここでの賭けには勝って当たり前なのよ) 今までの不幸続きを考えれば、そろそろ不二子の思惑通りに進んでもいい頃だと思えた。 数々の窮地を回避し生き延びてきた実績は、全てとは言わないが幸運の成果によるものが多い。 そうそう不幸が継続するはずがない。そう信じきっていた。 自信に満ちた演技で四人組の対応を待つ不二子。四人の中で真っ先に口を開いたのは、眼鏡をかけた少年だった。 「に、に……偽者だぁー!」 ――前言撤回。どうやら今日はとことんまで厄日らしい。うっそぉ~ん。 「銭形のおじさんは僕とスネ夫を庇って死んだんだ! 死体もさっき埋めた! ここにおじさんがいるはずないよ!」 「のび太くんの言うとおりだ! やい、お前はいったい何者なんだ!」 どうやら、こののび太という眼鏡の少年は、銭形と直接的な面識を持っていたらしい。 しかも死体を埋葬したという証言から、病院の表の墓に誰が眠っているのかも想像できた。 最悪だ。賭けには惨敗し、最悪の結果が訪れてしまった。 そして、最悪はさらに加速する。 「つまり、このヤローは変装をして俺たちを騙そうとしたってわけか。ハッ、気にいらねぇな。 その腐った性根も気にいらねぇが、死人を利用しようとしたことがますます気にいらねぇ!」 正体が露見した銭形もとい不二子は、次に移るべき行動を模索しようとするが、すぐには動けなかった――自分の不幸に動揺していたのだ。 あり得ないことではなかったが、最悪のケースであるという観点から、そうそう起こりえないだろうという甘い認識で臨んでしまったのが最大の敗因。 故に、思考回路に狂いが生じた。その隙を狙い、カズマが右拳を構える。 暗い廊下に虹色の奔流が落ち、壁の一部分を抉り取って消える。 この力は、この現象には見覚えがある。 これは、あの劉鳳が行使していた下僕、絶影と同じアルター能力――! 「か、カズマさん!? そりゃマズイって、相手は女の子を人質に――」 「人質に当たんねぇように野郎だけをぶっ飛ばす! 衝撃の……ファーストブリットォォォォォ!!!」 太一の制止も聞かず、カズマは顕現させたアルターを用いて不二子に突っ込んでいった。 言葉通りの肉弾砲に普通はたじろぐはずであったが、不二子はこれを持ち前の運動神経と直感で回避。 カズマの右拳は病室のコンクリート壁を叩き割り、白い粉塵が巻き上がる。 事前に劉鳳と接触し、アルター使いという存在を知っていたことはせめてもの幸運と言えた。 もちろん、あんな非現実的な輩とやり合う気は毛頭ない。不二子は粉塵に紛れ、そのまま逃げ出した。 深い眠りに落ちたハルヒを背負ったまま、普段は追う立場にあるはずの銭形が追われる。 逃げ足には自身があったが、相手がアルターなどという訳の分からない能力者なら、絶対とも言えない。 (マズイわよねこれ! 何か、何かこのピンチから脱する方法を探さないと――) 『――もう諦めちまったらどうだ、不二子? ここらが正念場なのさ。五ェ門やとっつぁんも手招きしながら待ってるぜ』 (る、ルパン!? 本格的にヤバイわ……とうとう幻聴まで聞こえるようになっちゃったみたい。でも、私はまだ死ぬ気はないわ!) 『おいおい、つれないこと言うなよふ~じこちゃ~ん。さっさと諦めて、あの世で俺と楽しくやろうぜ?』 (お断りよ!) 顔面全体を覆った銭形マスクに汗が滲み、不二子はさらに足を加速させた。 まだ死ぬつもりはない。『命』というのは、どんな金銀財宝にも代えがたい唯一無二のお宝であり、物欲の対象だ。 ここで逆上したカズマに殴り殺されることはもちろん、ドラえもんたちに敵として認識されることも避けねばならない。 馬鹿な幻聴を聞いている暇はないのだ。ベストはこのままハルヒを連れての逃走――そこから、峰不二子として改めてドラえもんに接触する。 問題は不二子の正体を知るハルヒだが、最悪口封じのために殺害することも厭わない。今の不二子には、それだけのことをする覚悟があった。 生き延びるために、理想的な行動をする。全ての歯車がうまく噛み合えば、あとはもう不二子の思い通りだ。 月明かりの広がる入り口、正面玄関一歩手前まで迫って、不二子はスピードを減速せざるを得なくなった。 それというのも、病院の外から中へ、新たに二人の参加者が訪れたためである。 「ハルヒおねーちゃん!」 一人は、やたらフリフリなメイド服に袖を通した、獣耳と尻尾を併せ持つ異界の少女。 もう片方は、まだ見た目に幼さの残る金髪の少年。 予期せぬ部外者に眉を顰めた不二子は、一瞬だけ後ろを振り返り、カズマを先頭とした四人組集団も追ってきていることを確認する。 後ろにも敵、前にも敵。後ろの敵から逃れても前にも敵がおり、前の敵から逃げても後ろの敵がいるという悪循環……虎口を逃れて竜穴に入る、とはまさにこういった状況を指し示すのだろう。 ついてない時はとことんまでついていない。不二子は「あーもう!」とヒステリックな声を漏らし、正面玄関口へ突進していった。 来訪者――アルルゥと石田ヤマトの二人を意に関さず、力ずくで突っ切ろうという魂胆である。 だが、そんな不二子に対してアルルゥは、 「おねーちゃん、かえす!」 猛進する不二子目掛け、勢いよく飛びかかってきた。 極度の人見知り気質であるアルルゥだったが、この時ばかりはハルヒを助けたいという一念が初対面への恐怖を凌駕した。 予想外の飛びかかり攻撃に不意を喰らった不二子は、そのままバランスを崩してハルヒごと転倒。 すぐに立ち上がって正面玄関を出ようとしたが、寸前でもう一人の来訪者、石田ヤマトが立ち塞がる。 バスケットのディフェンスのようなポーズで行く手を阻むヤマトと、それを強引に打ち破ろうとする不二子。 不二子の狙いは、病院からの逃走。既にハルヒはアルルゥの体当たりによって落としていたため、無理に止める必要もなかった。 だが、この男はハルヒを攫おうとした極悪人――SOS団の、仲間の絆を断ち切ろうとした輩を、見逃すわけにはいかない。 ヤマトは正義感を奮い立たせ、脇を通り抜けようとした不二子のコートの裾を掴んだ。 瞬間、出口方面へと身体が引っ張られるが、犯人を掴んだ手だけは意地でも離さない。 最後にはヤマトの意地が打ち勝ち、掛かっていた引力が消失した。 犯人が諦めた――そう判断したヤマトは、不二子を捕らえるために身を寄せ、 「観念しろ――!?」 逆に、全身を拘束された。 不二子は別に、観念して逃走を諦めたわけではない。 人質を失った以上、一番の要注意人物であるカズマは、これまでよりも容赦なく不二子を攻め立てるだろう。 あんな馬鹿げた能力を持つ相手から逃げるのは骨が折れる。 ならば、さっき以上にカズマが攻撃しにくい状況を作り出せばよい。 新たな人質を取り、その人質のこめかみに銃を突きつけるという形で。 「――全員動くな! 少しでも動けば、このガキの頭を撃ち抜くぞ!!」 しゃがれた大声を絞り上げ、不二子はその場にいる全員に向けてそう告げた。 飛び込んできた警告、本能的に危機を感じざるを得ない光景が重なり、ドラえもんとのび太と太一とカズマ、そしてアルルゥの五人が、ピタリと制止する。 ――そう。この場は不二子以外に誰も動けない。 この場にいる面々は年齢や種族、生まれや性格などの差異はあったが、一つ、ある共通点が存在していた。 それは、決して仲間を見捨てないという正義感。強い仲間意識。友情。 ヤマトと直接的な面識がないのび太やカズマでさえ、銃を突きつけられた様を見れば想像してしまう。 もしあれが、しずかちゃんやスネ夫やジャイアン、かなみや君島、ハクオロやエルルゥだったら……。 「――太一!? お前、なんでこんなところに!?」 「それはこっちのセリフだ! ヤマト、なんでお前が――」 身動きを封じられた環境の中で、二人の『選ばれし子供』が最悪の再会を果たす。 顔見知りと合流できたことは嬉しいが、シチュエーションが酷すぎる。 なにせ再会して早々、片方の命は半分奪われているようなものなのだから。 「チッ、また人質かよ! 姑息な手ェ使ってねぇで俺と勝負しやがれッ!」 「ど、どどどどうしようドラえも~ん!」 「お、落ち着くんだのび太くんっ。え~とこういう時はあれでもないこれでもないえーとああ! そうかひみつ道具は取り上げられてたんだった!」 「ヤマト、離すっ!」 イライラを募らせるカズマと、動揺して慌てまくるのび太と、それ以上に大慌てなドラえもんと、今にも飛びかかっていきそうなアルルゥ。 誰もが皆、この状況に憤りを感じ、それでいて何もすることができない。 ――陥った状況は酷く悪趣味で、人質というのは典型的な小悪党の用いる非道手段である。 咄嗟に思いついたこととはいえ、不二子も「下劣な行動ね」と自身に悪態を吐いていた。 生きるために、逃げ延びるために取った行動とはいえ、子供を人質に取るなど彼女のプライドが許せるはずもない。 だがそんな彼女のプライドを打ち崩したのは、あのルパン三世が死んだという現実。 殺しても死なないような男が、易々と死んでしまう世界……そんな場所でプライドに媚売って、果たして生き残れるだろうか。 大事な人を守るためなら修羅になる――そう考える人間がいるように、大事な命を守るためなら下衆にでもなってやる。そう考える人間もいる。 そして作戦の効果は気持ちに反比例し、大成功を収めたと言って過言ではない。 事実、ヤマトを人質に取ったことで短気なカズマすらも落ち着きを見せ、不二子の前に服従している。 銃を突きつける、相手の命にリーチをかけるだけで、こうも反応は変わるのだ。 「よーしよしよし。全員聞き分けが良くて助かるぞ。いいか、少しでも妙な動きを見せればこいつはオダブツだからな」 「くっ! アルルゥ、俺のことはいいからハルヒさんを連れて逃げろ! 太一たちも、こいつの言うことなんて聞いちゃいけない!」 若干ヤケクソになっているのか、不二子の演技はますます堂に入っていた。 暴れようとするヤマトを押さえつけつつ、銭形の口調を真似てみせる余裕ぶり。 実際、小学生のヤマトと、実戦に長けたエキスパートである不二子とでは、力の差だけでもかなりのものがある。 ヤマトが自力で逃げ出すことはほぼ不可能。他の面子も手出し不能な状態。 助け出す方法がないというわけではなかった。 のび太が銃を抜けば不二子よりも早く引き金を引けただろうし――もっとも、勇気が足りないのだが。 アルルゥがタヌ機を使えば不二子に幻覚を見せて隙を作れただろうが――銃を突きつけられた今、おかしな真似をするわけにはいかない。 カズマが本気で突っ込めば、あるいは不二子だけを狙ってぶっ飛ばせたかもしれない――さすがにそこまで軽率ではない。 ――人間、物事がうまくいけば、さらに欲が出てくるものである。 例えばギャンブルで大勝していたとして、さらにどんどんチップをつぎ込んでみたり。 例えば何気なく買った宝くじで運よく四等が当たったとして、次は本気で一等を狙ってみたり。 例えば一回悪事が成功したとして、次はもっと大きな悪事が狙えるんじゃないか……? と野望を燃やしてみたり。 この、『誰も不二子に逆らえない状況』は、彼女の欲を引き出す最高の空間であると言えた。 それ故に、不二子が持つ欲求の中で特に秀でて強い、『物欲』が疼き始める。 「……お前ら、このガキを助けて欲しかったら、素直にわしの言うことを聞くんだ。 まず、お前らの持っている荷物を全部こちらに渡してもらおう。携帯している武器から食料まで全部だ。 断ればこいつがどうなるか……もちろん分かるな?」 本来は善良な銭形の表装が、悪人の面に変わる。 子供を人質にした挙句、力のない弱者たちからさらに金品を要求するその所業、正に悪党。 堂に入っては堂に従え、不二子は完璧な極悪卑劣な小悪党へと成り下がり、自身の目的を定めようとしていた。 事態は、不二子自身からしても予想外な展開を迎えようとしている。 場合によっては、これからの指針を変える余地もあるほどに。 「まずはそこのアルター使いの男。そのアルターを解いて、お前の荷物をこっちに放れ」 「ふざけんな! この俺が、このカズマ様がなんでテメェなんかの言いなりに――」 「ちょっと待った! 君はなんで、カズマくんのアルターのことを知っているんだ!?」 反論しようとしたカズマの前に立ち、被さるようにドラえもんが反論する。 「ふふふ……わしに知らんことなどありはせんのさ。そんなことより、さっさと命令を聞いた方がこいつの身のためだぞ? そうだな、一言反論するごとにこいつの指を折っていくってのはどうだ? そういったルールがあった方が従いやすいか?」 「ぐっ……!?」 爆発しそうになった拳を必死に抑え、カズマは言われるがままにアルターを解除した。 横からは、太一の心配に満ちた視線が突き刺さる。 カズマとて、思いやりの精神はある。仲間の目の前で仲間の仲間を見捨てるなど、できるはずがなかった。 「わぁったよ。渡しゃいいんだろ渡しゃ。ほらよッ!」 乱暴にデイパックを放り投げ、カズマは力いっぱい舌打ちをした。 カズマに次いで、太一、アルルゥ、ハルヒ、のび太のデイパックと携帯武器、諸々が不二子の懐へとなだれ込んでいく。 詳細な中身はすぐに確認できないが、アルルゥからはクロスボウ、のび太からは銃が没収できた。これだけでも十分すぎるほどの儲けものだ。 「さぁ、最後はそこの青ダヌキ、お前だ」 「タ……!」 最後に要求したのは、ドラえもんの持つデイパック。 ただし、この際に不二子は一つ重大なミスを犯してしまった。 それはほんの些細な一言。常日頃から考察等で使っていた、見たままのドラえもんの代名詞を、そのまま言い放ってしまったこと。 「ほらどうした青ダヌキ。もたもたしてないでさっさと荷物をよこせ」 「また……ぼくを、このぼくを二度も青ダヌキと……」 わなわなと震えるドラえもんの姿を怪訝には思ったが、過ちを犯してしまったとは夢にも思わず。 絶対言ってはいけないタブーを言ってしまい、それがドラえもんの逆鱗に触れるきっかけとなろうことなど、誰が推測できるだろうか。 いるとすればただ一人――それは、ドラえもんの性格をよく知っているのび太のみである。 「ぼくは……ぼくは、タヌキじゃな~い!!!」 刹那、ドラえもんの顔が沸騰したかのように真っ赤に染め上がり、身体は大きくをジャンプする。 そのまま怒りに任せて不二子へダイブ。予想外、予想できるはずもないドラえもんの逆上に面食らい、不二子は唖然としてしまった。 少しばかりの混乱の中、反射的に発砲。銃弾はドラえもんの頭上、天井に付けられていた蛍光灯を撃ち落とし、破片諸共下に落下する。 「ふぎゃっ!」 蛍光灯の直撃を受けたドラえもんは、そのまま昏倒。 不二子は隙を突いて逃走を図ろうとするが、ドラえもんが作ってくれた隙を狙う者は他にもう一人いて―― 「シェルブリット――」 振り返る間際の視界。そこには、再構築させたシェルブリットを構えるカズマの姿が。 脳が、本能が、逃げろと伝えてくる。その伝達速度は、風よりも光よりも速く。 ここが引き際だと、不二子の生体本能が悟った。 「――バーストォォォォォ!!!」 力が圧縮、放出、迸り、病院の正面玄関口を吹き飛ばした。 時系列順で読む Back 破滅と勇気と Next 峰不二子の暴走Ⅱ 投下順で読む Back 破滅と勇気と Next 峰不二子の暴走Ⅱ 225 黒き王女 峰不二子 234 峰不二子の暴走Ⅱ 231 SOS団新生 石田ヤマト 234 峰不二子の暴走Ⅱ 223 なくても見つけ出す! カズマ 234 峰不二子の暴走Ⅱ 223 なくても見つけ出す! ドラえもん 234 峰不二子の暴走Ⅱ 223 なくても見つけ出す! 野比のび太 234 峰不二子の暴走Ⅱ 231 SOS団新生 アルルゥ 234 峰不二子の暴走Ⅱ 231 SOS団新生 涼宮ハルヒ 234 峰不二子の暴走Ⅱ 223 なくても見つけ出す! 八神太一 234 峰不二子の暴走Ⅱ
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○× 四択 連想 画像タッチ 並べ替え 文字パネル スロット タイピング キューブ エフェクト 線結び 一問多答 順番当て グループ分け 問題 解答 補足 カズマが得意とするスキルです スティール コロナタイトが爆破した屋敷の持ち主である貴族 アルダープ めぐみんの使い魔です ちょむすけ
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スーパー光線銃 服部平次に支給された。 片手で持てて、おそらく撃った際の反動も少ないと思われる光線銃。 玩具のような見た目だが、威力は絶大。 ハイブリット使用中のカズマと、正義武装使用中の劉鳳に、ダメージを与えるほどである。
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*【全漫画キャラクター最強ランキング】 セーラームーン>植木耕助>カズマ>黄猿=魔人幽助>高槻巌>花菱烈火>緋村剣心>九頭龍もも子 >乱崎凶華>桐柳道士郎>桜木建二>真中淳平>濱中アイ>笹原完士>未来ヒトデ>桜木茉莉>梶原篤司 ラッキーマン
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【作品名】おじゃる丸 【ジャンル】アニメ 【名前】田村マコト 【属性】サラリーマン 【年齢】36歳 【長所】家族を何よりも大切にする 【短所】といいつつ、田村カズマが田村愛と自分のどちらに似ているか勝負したときに坂ノ上おじゃる丸をないがしろにした vol.6
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投下順【000~050】 NO. タイトル 書き手 場所 日時 登場人物 000 オープニング ??? 一日目 佐天涙子、御坂美琴、シャーロック・シェリンフォード、怪盗L、ゴラン、団長の手刀を見逃さなかった人、モタリケ 他 001 帝王VS反逆者 ◆5nQ5x0Hl2Y B-4 一日目 深夜 カズマ、DIO 002 ほぼゼロの手がかり ◆HELLmKU1MQ E-6 一日目 深夜 譲崎ネロ、ゴレイヌ 003 歪曲少女 ◆5nQ5x0Hl2Y G-5 一日目 深夜 浅上藤乃、神行太保・戴宗、ネス 004 兄のプライド ◆nNhT27043c G-4 一日目 深夜 クリフ=ギルバード、安藤兄 005 魔法都市の四人 ◆XGTXlmhswc I-1 一日目 深夜 吉良吉影、ジェームズ・ホワン、野上葵、劉邦 006 契約の星は流れた ◆5nQ5x0Hl2Y F-7 一日目 深夜 素晴らしきヒィッツカラルド、アルセーヌ、シャーロック・シェリンフォード、黒 007 その男、貪欲につき ◆5nQ5x0Hl2Y E-9 一日目 深夜 無常矜持 008 人は誰でも死にたがっている ◆nNhT27043c D-4D-5 一日目 深夜 一方通行、鯨、衝撃のアルベルト 009 収容所スタートがお約束 ◆XGTXlmhswc A-1 一日目 深夜 空条承太郎 010 宇宙からきた殺し屋 ◆5nQ5x0Hl2Y H-5 一日目 深夜 夜科アゲハ、花京院典明、兵部京介、さいごのスターマン 011 バベルの塔の上で ◆nNhT27043c I-3I-4 一日目 黎明 明石薫、ストレイト・クーガー 012 父と娘 ◆XGTXlmhswc E-5 一日目 深夜 空条徐倫、衝撃のアルベルト 013 三宮紫穂のプロファイリング講座 ◆nNhT27043c F-8 一日目 深夜 初春飾利、三宮紫穂、ヒソカ 014 壊れた幻想 ◆5nQ5x0Hl2Y E-6 一日目 深夜 上条当麻、ブローノ・ブチャラティ、ビスケ 015 黄金体験―螺旋― ◆XGTXlmhswc E-8 一日目 深夜 キャロル、ジョルノ・ジョバァーナ 016 再び会いたい人がいる ◆nNhT27043c I-7 一日目 深夜 天樹院フレデリカ、由詑かなみ 017 短期は損気 ◆5nQ5x0Hl2Y F-4 一日目 深夜 エルキュール・バートン、両儀式、ドルキ、麦野沈利 018 今すぐ捨てたい偽りの仮面 ◆nNhT27043c B-5 一日目 黎明 雨宮桜子、カズマ 019 レベル0×黄金の精神×盗賊 ◆5nQ5x0Hl2Y F-8 一日目 深夜 東方仗助、クロロ=ルシルフル、佐天涙子 020 とあるテレパシスト達と異能力者達 ◆5nQ5x0Hl2Y A-2 一日目 深夜 空条承太郎、ユーゴー・ギルバート、蘇芳・パブリチェンコ、プー、食蜂操祈 021 制約と契約 ◆nNhT27043c E-9F-9 一日目 深夜 キルア=ゾルディック、白井黒子、御坂美琴、無常矜持 022 警戒 ◆/G0oWXKUoE H-6 一日目 黎明 安藤潤也、ポーラ、ゴン=フリークス 023 探偵オペラ サイレンアルターズ ◆/G0oWXKUoE B-5 一日目 黎明 カズマ、コーデリア・グラウカ、朝河飛龍 025 他力本願という生き方 ◆nNhT27043c A-2 ユーゴー・ギルバート、食蜂操祈、ドゥーチェのマスター 026 B.A.B.E.Lだョ!全員集合 ◆y4RLDebwEw I-4 安藤兄、クリフ=ギルバード、明石薫、ストレイト=クーガー 027 逃亡者 ◆nNhT27043c E-8 東方仗助、クロロ=ルシルフル、佐天涙子、ジョルノ=ジョバァーナ、キャロル 000 ]]|[[
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トップ|基礎知識|合体|訓練所|バトルネット|攻略|マップ|デビル|魔法・技|アイテム|その他 Aクラス 黒の書 ミライ エレジー ナガヒサ ルシファー タツヤ マヤ カズマ コージー 赤の書 セツナ エレジー ナガヒサ ルシファー タツヤ マヤ カズマ コージー LV50 ミライ もうひとりのデビルチルドレンおもにかわいいデビルをつかうグリフォンのこうげきはちょうきょうりょく! 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 169 シーサー 171 とけいウサギ 176 バク 170 ネコマタ 172 ペガサス 177 モコイ 171 とけいウサギ 173 ニスロク 178 バジリスク 172 ペガサス 174 エンゼル 179 マンドレイク 173 ニスロク 176 バク 180 メッチー 148 グリフォン 149 デスグリフォン 150 ヘルグリフォン LV50 セツナ もうひとりのデビルチルドレンケルベロスのこうげきはちょうきょうりょく! 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 162 ユニコーン 146 デスケルベロス 165 ウロボロス 163 クラドホルグ 163 クラドホルグ 166 ハクリュウ 145 ケルベロス 164 セイリュウ 167 ヴァスキ 168 リュンクス 147 ヘルケルベロス (ダミー) 上へ LV54 エレジー アゼルのむすめせいかくは かなりワガママでちちおやのことを きらっているなぜか ゾウリムシがスキ 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 151 ゾウリムシ 151 ゾウリムシ 151 ゾウリムシ 152 アスモデウス 151 ゾウリムシ 151 ゾウリムシ 153 デモゴルゴン 151 ゾウリムシ 151 ゾウリムシ 154 アスモデウス 151 ゾウリムシ 155 デモゴルゴン 156 アスモデウス 157 デモゴルゴン 上へ LV58 ナガヒサ テンシとニンゲンのあいだにうまれたエンゼルチルドレンつれているスフィンクスはせいちょうすると すがたがかわる 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 158 オルトロス 159 ヒポグリフ 158 オルトロス 160 スフィンクス 160 スフィンクス 159 ヒポグリフ 161 デススフィンクス (ダミー) (ダミー) (ダミー) 上へ LV67 ルシファー マカイを おさめているダイマオーデビルチルドレンの ちちおや6つのマカイにいるマオーたちをしたがえている 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 181 ヘル 181 ヘル 182 ビビサナ 182 ビビサナ 183 ビビサナ 183 ビビサナ 184 ヴリトラ 184 ヴリトラ 185 イシス 186 ベリアル 187 マモン 上へ LV78 タツヤ こどくな だんしこうこうせいあるじけんをきっかけにデビルをあやつるちからにめざめたワザがとくいなデビルをつかう 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 188 パワー 188 パワー 188 パワー 189 アゾット 189 アゾット 190 カッパ (ダミー) (ダミー) (ダミー) 上へ LV76 マヤ ざっししゃではたらく おねえさんあるじけんをきっかけにデビルをあやつるちからにめざめたマホウがとくいなデビルをつかう 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 191 アークエンゼル 191 アークエンゼル 191 アークエンゼル 192 サタン 192 サタン 193 ルシファー (ダミー) (ダミー) (ダミー) 上へ LV88 カズマ ?????フロストけいのデビルをつかう 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 197 プチフロスト 197 プチフロスト 197 プチフロスト 198 イチゴフロスト 198 イチゴフロスト 198 イチゴフロスト 194 ジャックフロスト 194 ジャックフロスト 195 フロストエース 195 フロストエース 196 キングフロスト (ダミー) 上へ LV99 コージー ?????さいきょうのデビルをつかう 1戦目 2戦目 3戦目番号 デビル 番号 デビル 番号 デビル 199 ザントマン 200 ザントマン 201 ザントマン (ダミー) (ダミー) (ダミー) (ダミー) (ダミー) 上へ
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前:二部/030 次:二部/032 090 しかし俺の気分は晴れず、ただ弱々しく笑い返すことしか出来なかった。 その後もカズマは言われるがままに人殺しを続けていく。そしてそれを止めるものもいない。旧人類の武装部隊は1人残らず殺された。目標を達成したカズマ達の目の前に亀裂がはしりそこからカルアが現れた。 「順調なようだな」 相変わらずカルアの声には感情がなかった。 「なぁカルア…これが本当に平和に繋がるのか?」 いつだって俺の目の前は、地獄絵図だった。こんなの俺が求めていたものとちがう! カルアはさっきから何かを考えているのか俺の言葉などまるで聞いていない。 「…そろそろか」 言い終わるとほぼ同時、俺は吹き飛ばされた。 背中からの予想外の襲撃に受け身がおくれる。 「な…にが…!?」 無意識にカルアだと思っていた。 「お役目終了だよ、カズマ。」 けど、その声はいつも明るく、時に優しく… 「あ…お前…どういうことだよ…」 俺といつも戦ってくれていた… 「アトル!!」 俺のパートナーだった。 アトルは、語りながら近づいてくる。 「お前は、自分自身が平和を崩す原因となっている事実に気づかないのか?」 いつもとは違う口調。 「同等程度の力が2つ以上なければ争いは起こらぬ。」 感情が乗っていない声。 「頂点はひとりで良いのだ。」 そして、理解した。この語り方… 「カルア!!!アトルになにをした!」 アトルの目に光は無く、表情も仮面をかぶったようになくなっていた。 「なにを言っている?この体は俺が作ったものだ。ただ操作をオートからリモートに変えた。それだけだ。」 「お前は強くなった。お前には素質があった。そうだ、俺でさえここまでの急成長は予想しなかった」 カルアの声は冷たかった。 「しかし残念だ。このまま何の疑問も持たずに俺の言いなりになっていればよかったものを、無駄な慈悲を持ちやがって。あの使いの女すら殺せなかったのは失望した。……アトル、こいつを始末しろ」 冷たい目をしたアトルが迫ってくる。 「速いっ」 アトルは急加速をして突っ込んできた。 「でも、見える!」 身体をひねって攻撃をかわす。 「へー、カズマ避けれるンだ。少し前ならもう死んでたよ?」 一瞬以前のアトルのような表情を見せた、が直ぐに死んだ目に戻った。 091 その後の攻撃も全て身をかわした。 直線的で今の俺には当たらないだろう。 「避けてばかりじゃアトルは倒せないぞ」 カルアは冷酷に笑う。 「俺には、アトルは殺せない」 何度もアトルの攻撃を避けてはいるが、俺はアトルに反撃出来ずにいた。 「好都合だ。」 薄笑いを浮かべたカルアがそう一言だけ返す。 アトルの攻撃は一向にやまない。 俺の体力も徐々に削られてきていた。 「くそっ、こんなところでやられてたまるか!!」 どうにかしてアトルとの戦闘を終わらせなくては...… アトルを傷つけずに戦いを終わらせる。できるのか?俺に。 思考を巡らす。きっと何かあるはずだ…… ──「安心しろ。痛みはない。」 確かに、痛みは無かった。しかし、麻酔をされているかのように、両腕に力が入らない。── そうだ、あの時カルアが俺に打ち込んだ杭の様な物、あれを受けた時両腕に力がはいらなかった。あれがカルアのリアルブートしたものなら、俺にも……!! 意識を集中させる……想像をより詳細に、より鮮明に、感覚を研ぎ澄ませ、俺のものにする!! 「リアルブート!!」 掛け声と共に右手に白光と輝く長剣が現れた。 兄さんのとは違って俺好みに創って見たが、うまくできたようだ。 剣をアトルの両腕に刺す。想像するだけでそれはアトルの腕に吸い寄せられるように刺さった。 「これは…、まあ当然と言えば当然だな。」 カルアの能力だ。本人が知らぬはずはない。 また二本の剣をリアルブートする。今度はアトルの足に。 四肢を封じられたアトルの体は、動くことすらままならなかった。 「アトルを殺さず止めるか。俺の弟であるなら、できて当然か」 カルアは納得したような口振りで言った。 「兄さん…本当にこんな道しか選べなかったのか?戦わずに手を取り合うことは出来なかったのか?」 この言葉を聞いた途端、カルアは恐ろしい程冷たい目で俺を睨んだ。 「まだそんな甘い事を言っているのか…」 「俺達が戦う必要だって無いはずだ!」 それを聞いたカルアは無言で溜め息をついた。 「…。言っただろう。お前はもう用済みだ、と」 「ぐっ?!」 その言葉と同時に俺は見えない拳をくらったかのように、後方へと吹っ飛ばされる。 「がっかりだよ。もう少し役に立ってくれると思ったんだがな…」 そう言いながら近付いてくるカルアに対し、俺は何も出来ずにへたりこんでいた。 「これで終わりだ」 その死刑宣告を聞いても体が動かず、恐怖すら麻痺していた。 そして、カルアの眼が妖しく光り、俺が死を覚悟したところで、 「そうだな。そろそろ終わりにしようか!」 前:二部/030 次:二部/032
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『スクライド』 『スクライド』概要 味方キャラクターカズマ 劉鳳 ストレイト・クーガー 敵キャラクターマーティン・ジグマール 無常 矜侍 常夏三姉妹(バーニングサマー) 橘 あすか アルター結晶体 HOLD隊員 ダース 非戦闘キャラクター瓜核 イーリャン シェリス・アジャーニ 雲慶 来夏月 爽 君島 邦彦 由詑 かなみ 桐生 水守 概要 放映日時TV放送:2001年7月4日~2001年12月26日 サンライズ製作のオリジナルアニメ作品 味方キャラクター カズマ 本作の主人公 劉鳳 ストレイト・クーガー 敵キャラクター マーティン・ジグマール 無常 矜侍 常夏三姉妹(バーニングサマー) 橘 あすか アルター結晶体 HOLD隊員 ダース 非戦闘キャラクター 瓜核 イーリャン シェリス・アジャーニ 雲慶 来夏月 爽 君島 邦彦 由詑 かなみ 桐生 水守