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『赤ちゃんゆっくりの冒険-前編-』 今宵は満月、けーねがきもけーねに変身する頃 巨大な倒木の空洞の中でうごめく二つの影があった。 一つは黒髪に紅白のリボンを付けたゆっくりれいむ、もう一つは金髪に黒い帽子を被ったゆっくりまりさだった。 その二匹の体躯は通常の成体ゆっくりよりもずっと大きく、一般的な成人男性の身長ほどはある。 そんな巨大な生首が満月の光で狂ったのか、激しく体を震わせながらお互いを求めて交尾していた。 「ゆっゆっゆ! れいむぅ! こんなのはじめてだよよよぉ!!」 「まりさぁぁぁ!! こんやはねかさないからねぇぇぇぇ!!!」 お互いの舌を艶かしく絡ませながら粘液にまみれた頬を擦り付けあう。 ニチャネチャと淫猥な音が辺りに響く。 「ああぁ! もっと、もっとはげしくやろうよぉぉ!」 「いいよぉ! でもすぐにすっきりしちゃだめだからねぇぇぇ!!」 「わかってるよぉぉ! いっしょにすっきりしようねぇぇぇ!!」 蕩けた瞳で見つめあいながら二匹は小刻みに体を上下して相手と自分を絶頂へと登らせていく。 まりさはすぐにでもすっきりしそうだったが、いっしょにすっきりしようと言ったからには先にすっきりする訳にはいかない。 自然とペースダウンして自分の性欲を静めようとする。 「まりさぁ! うごきがにぶくなってるよぉぉ? うごかないなられいむがいっぱいうごいてあげるねぇぇ!!!」 「れいむぅぅ! はげしくしたらだめだよぉ! すっきりしちゃうよぉぉ!!」 まりさはすっきりしないよう我慢するが、まだ余裕のあるれいむの激しい振動がまりさを襲う。 次々と与えられる快感の波に、元々我慢弱いまりさは容易く屈してしまった。 「ご、ごめんれいむぅぅ……す、すっきりー!!!」 だらしなく蕩けた表情のまますっきりするまりさ。 それを見たれいむは頬をプクっと膨らましてぷんぷん怒る。 「まりさぁ、はやいよぉ! がまんできなかったの?」 「れいむごめんね! でもすっきりがはやくてもかずでしょうぶするからね!!」 「ああっ! まりさぁぁぁ!!」 「きょうはあさまでふぃーばーだぜ!!」 夜が開けて朝の日差しが森を照らす頃 ようやく巨大れいむと巨大まりさの交尾は終わりを告げた。 二匹の体は茎にまみれ、茎の先にはプチサイズのれいむとまりさの実が、つまり赤ちゃんゆっくりがたくさん実っていた。 合わせて百以上は実っている赤ちゃんに養分を供給して昨夜のような元気が無く、顔も皺だらけになった二匹は最後の会話をする。 「ちょっと…すっきりしすぎちゃったね」 「うん。これじゃあかちゃんをそだてられないね……」 「でもだいじょうぶだよ。れいむたちに似てげんきでかしこいあかちゃんにまちがいないよ」 「そうだよね。まりさたちがいなくてもじゅうぶんゆっくりできるよね」 「……れいむはさきにねるね。いっしょにゆっくりできてたのしかったよまりさ」 「おやすみれいむ。…まりさもたのしかったよ………」 それっきり二匹の体は急激に黒ずんでいき、ゆっくりとその生を終えた。 残ったのはたくさんの実。すぐにでも目を覚ましそうな赤ちゃんゆっくり達だけだった。 「ゆっくりちていってね!!」 最初のすっきりで生えた茎の赤ちゃんゆっくりが目をぱちくりと開いて元気に産声を上げた。 その産声を皮切りに他の赤ちゃんゆっくりも次々と目を覚ましていった。 「ゆっくりちていってね!」 「ゆっくりちようね!」 「みんなでなかよくちようね!!」 みんな目が覚めて隣に実っている姉妹と雑談しているうちに一匹、また一匹と茎から切り離されて落ちていく。 落ちた赤ちゃんゆっくり達は初めての地面の上できゃっきゃと元気に跳ねまわり、頬を合わせてお互いの生を感じ取っていた。 産まれた百匹近くの赤ちゃんゆっくり達はどれも健康で、とてもゆっくり出来ていた。 だがお腹が減ってはゆっくりできない。 ここでようやく母親がいないことに気が付いた。 「ゅ? おかーしゃんどこにいるの??」 「ゆっきゅりおなかがすいたよ!!」 「このままじゃゆっくりできないよ!」 「おかーしゃーん!!」 キョロキョロと辺りを見回してみるが母親らしきゆっくりはいない。 あるのは自分達がぶら下がっていた茎と、その根元にある黒い変な物体だけ。 ここで一匹の赤ちゃんまりさが一つの回答を導き出した。 「きっちょ、おかーしゃんたちはまりさたちのためにたべものとりにいっちゃんだよ!!」 「ならあんしんしたね!」「ゆっきゅりまとうね!!」 「でもおなかすいたよ!!」「がまんできないよ!!」 親ゆっくりはきっと食べ物を持ってきてくれる。 しかし赤ちゃんゆっくりがお腹が減っているのは今なのだ。 何か食べるものはないかと見回して視界に入るのは親の残骸。 いや、赤ちゃんゆっくり達はこれを親だと認識できていない。飢えた今となっては食べ物にしか見えなかった。 「だったらここにあるへんなのをみんなでたべようよ!!」 「しょうだね! おおきいからみんなゆっくりできるね!」 親だったものに赤ちゃんゆっくり達が群がってむーしゃむーしゃと食べていく。 だがこれはよくあること。子を産んだ結果で死んだゆっくりは産んだ子の栄養となる。 今回は両親がどっちも子を産んで死んだのでそれを教えるものがいなかっただけのことだ。 「ゅぅ、おいちかったね!!」 「ゆっくりできたね!!」 「おなかいっぱいになったからこんどはあしょぼうね!!」 百匹近くいるとはいえ、親の残骸は人間程度の大きさだ。 赤ちゃんゆっくり達がお腹いっぱいになるまで食べても親の残骸はまだ原型を残していた。 いっぱい食べて元気になった赤ちゃんゆっくり達は巣の中で飛び回って遊びまわる。 本能なのか産んだ親の遺伝子を受けづいているのか、何となく外は危険だと感じ取って巣の外に出る赤ちゃんゆっくりは一匹もいなかった。 お母さん達が帰ってきたらいっぱい遊んでもらおう。 そんな幻想を抱きながら赤ちゃんゆっくり達は巣の中でゆっくりと過ごしていた。 それから三日経っても母ゆっくりは帰ってこなかった。 それはそうだろう。帰るも何も最初から巣の中に居たのだから。 その親の残骸もすでに残り少なくなっていた。 産まれた時から一回り大きくなった赤ちゃんゆっくり達の中には いくら待っても母ゆっくりは帰ってこないんじゃないかと考え始めるゆっくりもいた。 「おかーしゃんおそいね。ゆっきゅりしすぎだよ!!」 「このままじゃたべものなくなっちゃうよ!!」 「それじゃゆっきゅりできないよ!!」 赤ちゃんゆっくりでも巣にある残りの食料の量は分かる。 後一回みんなで食事したら全部無くなると。 「だったらおそとにいこうよ!!」 「しょうだね! おそとならたべものいっぱいあるよ!!」 何匹かのゆっくりが巣の外に出ようと言い始めた。 他の姉妹の反応は様々だ。 「ゆ! おそとはあぶないよ!!」 「いってみないとわからないよ!!」 「そうだよ! このままだとゆっきゅりできないよ!!」 「おかーしゃんはかえってくるよ!!」 結局意見は二つに分かれた。 外に行く派と母を待つ派の二つだ。 数が多いのは外に行く派で、全体の8割を占めた。 「ゆっ! たべものをゆっくりさがしゅよ!!」 「みんなでしゃがしてくるからね!!」 「ゆっくりちようね!!」 外に行く派の赤ちゃんゆっくり達はすぐに巣の外へと旅立っていった。 危険だと警告する本能を抑え、約80匹の赤ちゃんゆっくり達が巣の外へと初めて身を投じた。 初めての巣の外は気持ちよかった。 さらさらと吹く優しい風。どこからともなく香る草の匂い。ぽかぽかとする陽の光。 「すごい! ゆっきゅりできるよ!!」 「おうちにいるよりずっときもちいいよ!!」 「しゅっきりできるよ!!」 外に出たゆっくり達は見るもの全てに感動していた。 産まれてからの三日間は巣の中と入り口から見える小さな外の世界しか知らなかった。 こうして出てみると、どうして今まで出なかったのか不思議だった。 「こんなにゆっくりできるならおかーしゃんがかえってこないのもわかるね!!」 「しょうだね! でもかわいいれいむたちにかおをみせないなんてかってだよね!!」 「きっともっとゆっくりできるばしょにおかーしゃんはいるんだよ!!!」 「それじゃあみんなでさがしにいこうよ!!!」 「ゆっくりさんせい!」「ゆっくりさんせいだよ!!」 こうして赤ちゃんゆっくり達の冒険が始まった。 母を待つ派の中には外に出た姉妹の声に誘われて意見を変えたゆっくりがいたので、 結局おうちに残ったのはたった9匹の赤ちゃんゆっくりだけだった。 「ゆっきゅりきをつけてね!」 「あぶなくなったらもちょってきてね!!」 「おかーしゃんがかえってきてもしらないよ!!」 おうちに残る赤ちゃんゆっくり達の見送りの声を背に赤ちゃんゆっくりの集団は楽しそうに森の向こうへと跳ねていった。 残された9匹の赤ちゃんゆっくり達は旅立った姉妹の姿が見えなくなるとお互いの顔を見合わせた。 「みんないっちゃったけど、のこったみんなでゆっくちちようね!!」 「おかーしゃんがかえってきたらほめてもりゃおうね!!」 「おうちのなかでゆっくりちようね!!」 「おかーしゃんがかえってくるのがゆっくりたのしみ!!!」 いない母ゆっくりを待ち続けるこの赤ちゃんゆっくり達の運命はもう決まったようなものだった。 大多数の姉妹が冒険に出かけたので残りの食料ももうしばらく持つだろう。 しかし無くなったその時のことを考えるゆっくりは誰もいなかった。 巣に残ったゆっくりが窮地に立つのはまだ先の話。 『おかーさんのいるもっとゆっくりできるばしょ』を求めて冒険に出かけた90匹近くの赤ちゃんゆっくり達は現在森を元気に跳ねていた。 小さく足も速くないのでまだ元のおうちからはそんなに離れていなかった。 「ゆっゆっゆ!」 「はしるとたのしいね!」 「こんなにうごくのはじめて!!」 「ゆっ! むこうはひろくてゆっくりできそうだよ!!」 「みずがみえりゅよ!!」 「ゆっゆ! じゃあむこうへゆっくりいこうね!!!」 特に行き先は決まっていない。 先頭集団が何となくゆっくり出来そうな方向へ進み、後続のゆっくり達がそれに続いているだけだ。 今は先頭集団が見つけた木の少ない開けた場所、湖へと向かっている。 「ゆっくりついたよ!!」 「いっぱいはしってゆっくりちゅかれたよ!!」 「おなかしゅいたよ!!!」 「のどもかわいちゃよ!!」 「いっぱいたべれそうなくさがありゅよ!!」 「みずもたくさんあるよ!!」 「みんなでゆっきゅりたべようね!!」 湖の周りは赤ちゃんゆっくり達の背ほどの草木が生えていて、食べるのにはちょうどいい。 さらに湖なので水はたくさんある。赤ちゃんゆっくり達にとっては初めてみる水だ。 初めて見るのに"水"だと分かるのは、親ゆっくりの残骸を食べて知識を受け継いだ結果だ。 ただし分かるのは"水"であることぐらいで安全か危険かの判断はつかないし、ゆっくりの頭では想像もできない。 「ゆっゆ~、つめちゃくてきもちいいよ!!」 「すごいよ! うかべるよ!!」 「しゅご~い! れいむにもゆっくりやらせてね!!」 湖に飛び込んだ赤ちゃんゆっくりが冷たくて気持ちがいいと報告すると、 水は安全な物だと認識した赤ちゃんゆっくりが続いて湖に浮かんだり、水をガブガブと飲み始めた。 その様子を見た他の赤ちゃんゆっくりも湖の周りに集まって自分達も遊ぼうとし始めた。 と、その時だった。 「ゆっ!? からだがしずみゅよ!! だしゅげ…っ!!」 「さっぎまでうがんでだのになんじぇぇぇぇぇ!?」 湖に浮かんでいた赤ちゃんゆっくりの皮が水を吸って重くなり、水に沈んでいく。 その様子を見て湖で浮かぼうとした赤ちゃんゆっくりは陸へと逃げ戻る。 「みずのうえはあぶないよ!! ゆっきゅりもどってきちぇね!!」 一匹のゆっくりがそう叫んだが、すでに水の上に浮かんでいる赤ちゃんゆっくり達は自力で陸へは戻れない。 最初に浮かんでいた姉妹が沈んだのを見て泣き叫んでいる。 「あ"あ"あ"あ"あ"!! だれかだしゅげでぇぇ!! おがーじゃーん!!!」 「しじゅんできだよ! だしゅげでぇ! だしゅげっ……」 そこらに生えている草を咥えさせて引っ張れば助けられたのかもしれない。 だが赤ちゃんゆっくりにそんな知恵などあるわけもなかった。 ただただ泣け叫んで沈んでいく姉妹に声をかけ続けるしかなく、 湖に入った姉妹全員が沈み切った後も泣いていた。 「ゆぅぁぁあん!! ゆっきゅりできないよぉぉ!!!」 「ここはじぇんじぇんゆっくりできないよぉぉ!!!」 「ほがのどごろにいぎょうよぉぉぉ!!!」 残った赤ちゃんゆっくりの心は一つだった。 ここではゆっくり出来ないから他の所に行く。 赤ちゃんゆっくり達は怖いものから逃げるように跳ねていく。 進む先など考えていない。とにかく恐ろしい湖から離れたかったのだ。 しかし泣きながら跳ねていくゆっくり達の中、動けないゆっくり達もいた。 湖にこそ入らなかったものの大量の水を飲んでしまった赤ちゃんゆっくりだ。 「ゅ…まっちぇ…まっちぇぇぇ……!」 「おいちぇいかないちぇぇぇ……!」 もう少し育っていれば過剰に摂取した水分を小便のように排出することも出来たのだが、まだその器官がない。 餡子化できる限界を超えた水が体の餡子を溶かし、皮もぶよぶよになってまともに動けなかったのだ。 中には完全に体の中身が溶けてしまい、茶色の水たまりに沈むゆっくりすらいた。 もうこの赤ちゃんゆっくり達は助からない。 数秒で体内の水分が乾ききれば助かるかもしれないが、そんなことあり得ない話だ。 このまま体が溶けるか虫か何かに食われて死ぬことだろう。 湖から逃げた赤ちゃんゆっくり達は再び森の中に戻ってきていた。 適当な木の近くで立ち止まる。必死で逃げて来たので皆クタクタだ。 「ゅっゅっ…ちゅ、ちゅかれたよぉ」 「ゆっくり、やすもう、ね…」 「ゅぅ、ゅぅ…」 赤ちゃんゆっくり達は地面にへばりつくように垂れて体を休める。 走り回ってお腹が減ったゆっくりは雑草をもしゃもしゃと食べていた。 そんな中、一匹のゆっくりが毛虫を見つけた。黒いもさもさの付いた体でゆっくりと動いている。 「しゅご~い! とってもゆっきゅりしてるよ!!」 「これもたべられりゅのかなぁ?」 「ゆっきゅりたべりゅよ!!」 「あ! まりさじゅるいよー!!」 赤ちゃんまりさが毛虫を食べる。しかしそれはゆっくりが食べられるものではなかった。 毛虫の毛は柔らかい赤ちゃんまりさの口の中に刺さり、同時に変な味のする液体が口の中に溢れる。 毒だ。幻想郷に住むこの毛虫の毒は人間でも飲み込むと頭痛と嘔吐感が襲い、全身に軽い痺れが走る。 人間の大きさでそれなのだから小さなまりさはどうなるのか。 「ゆ"ぎゅべぇぇぇっぇぇぇ!!!!」 全身に激痛が走り、中身の餡子を吐き出してしまう。 「ゅゅ!? まりしゃだいじょうぶ!?」 「ゆっきゅりしていっちぇね!! ゆっきゅりしてねー!!!」 「なんでなのぉぉぉぉ!!!」 「ゆぶおぉぉぉぉっ!!! おぼっ………がぼっ……………」 赤ちゃんゆっくりにとっての嘔吐は餡子の容量が少ないだけに死に直結する。 まりさも例外なく体内の餡子を漏れなく吐き出し、そのまま死んでしまった。 だが周りにも同じように餡子を吐き出して死んでいく赤ちゃんゆっくりがいた。 皆同じ毛虫を食べた結果だった。 「ゅげぇっぉぉぉぉぉおっ!!!」 「ゆぼぼぼぼぼぉぉっ!!!」 「げぇぇぇえっぇぇぇっぇ!!!」 「ゅー!! ゆっきゅりしちぇよぉぉぉ!!!」 「はいちゃだめだよぉぉぉぉお!!!」 「はいたらゆっきゅりできにゃいよぉぉぉ!!!」 「むしさんたべたらゆっきゅりできないよぉぉ!!!」 辺りは餡子を吐き出すゆっくりの断末魔とそれを見て恐怖に震えるゆっくり達の悲鳴が響いた。 同時に赤ちゃんゆっくり達はこの毛虫を食べると死ぬと言う事を理解できた。 ゆっくり達にとって幸運だったのはこの虫の毒が即効性だったことか。 遅効性であれば気づかずにむしゃむしゃ食べてほぼ全滅していたことだろう。 赤ちゃんゆっくり達は十分休めていなかったが、 姉妹の死んだ場所ではゆっくり休めないということで再び集団で移動していた。 「ゆっきゅりはしろうね!」 「こんどこそゆっくりできるばしょにいこうね!!」 「みんなでいけばこわくないね!!!」 湖と虫の毒とでたくさんの姉妹が死んだが、それでもまだ70匹近くのゆっくりが生き残っていた。 しかしこれほど目立つ集団も中々ないだろう。これだけの数の赤ちゃんゆっくり達が群れを成して移動するなど普通はあり得ない。 あり得ないが、捕食種や野生の動物にとってこれ以上ない格好の獲物である。 先頭を進むゆっくり達の目に影が見えた。 「うー、うー!」 体付きのれみりゃだ。大勢のゆっくりの話し声に誘われて姿を現した。 赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさはれみりゃの姿を見て震えあがる。 赤ちゃんゆっくりでも本能的に知っている。自分たちを食べるゆっくりできないゆっくりであると。 「ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"! ぎょないでぇぇぇぇ!!!」 「ゅぅぅぅぅ!!!」 「みんにゃにげでぇぇぇぇ!!!!」 先頭のゆっくり達から連鎖して悲鳴の波が起こり、一斉に踵を返して逃げ出した。 「うー! つかまえるー! うあうあ♪」 「ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!! は"な"ち"て"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」 一匹の赤ちゃんれいむがれみりゃの手に捕まえられてしまった。 その手に握られた赤ちゃんは苦しそうに離してと懇願するがれみりゃはニコニコと無邪気に笑って聞いていない。 「は、はなちてあげてよぉぉ!!」 「ゆっくりできないよぉ!!」 「やめちぇぇぇぇ!!!」 大勢が逃げる中、何匹かのゆっくりは逃げずにれみりゃに向ってやめてとお願いする。 しかしそれは勇気というよりも無謀な行為である。 「うー♪」 「あ"あ"あ"あ"あ"!?」 もう片方の手でれみりゃに楯突いたゆっくりの一匹が捕まった。 れみりゃの片手に収まるほど小さな身体を必死に動かして逃げようとするが、 赤ちゃんゆっくりの力ではれみりゃの握力にすら敵わない。 「うー、たーべちゃうぞー!!」 「やめちぇっ…ゅ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!! ずわないでぇぇぇ!!!」 先に捕まったれいむがれみりゃに咥えられて中身を吸われていく。 れみりゃの吸う力は強く、数秒で赤ちゃんれいむは皮だけになって二度と動かなくなってしまった。 次は二番目に捕まえたゆっくりの番だ。 「やぁぁぁ!!! やめちぇぇぇ!! おがーしゃーん!!!!」 「う~♪ うまうま」 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 二匹目も抵抗空しく餡子を吸われて皮だけになってしまった。 これを見た赤ちゃんゆっくりは圧倒的な力量の差に恐れおののいて固まってしまった。 それを見逃すれみりゃではない。体付きのれみりゃは燃費が悪い。だからたくさん食べないと満足できない。 れみりゃはそうして次々と赤ちゃんゆっくりを捕まえては吸い、捕まえては中身を吸い上げた。 「ゅぁぁぁ!!! ゆっきゅりできないよぉぉぉぉ!!!」 「なんでこんなことしゅるのぉぉぉ!!!」 そう言いながられみりゃの前から全てのゆっくりが逃げ出した。 れみりゃはそれを歩いて追いかける。 「うー、にげてもたべちゃうぞー!!」 「ゅー! きょないでぇぇぇ!!!」 れみりゃのよちよち歩きにすら、逃げた赤ちゃんゆっくり達は追いつかれてしまう。 手が伸びる。れみりゃの食事はまた始まったばかりだ。 れみりゃが先頭集団を襲ったことを知って後続の赤ちゃんゆっくり達は踵を返して元来た方向へと跳ねていく。 少なくとも今まで通ってきた道は安全だった。だから戻ればゆっくり出来る、と。 だが時が過ぎれば状況は変わる。 赤ちゃんゆっくりの集団を見つけて後を付けていた野犬数匹が踵を返した赤ちゃんゆっくり達と鉢合わせた。 「わふっわふっ!」 獲物から自分に飛び込んできて涎を垂らして喜びを表現する野犬たち。 見たことのない大きな生物だったが親の遺伝子によりに犬と分かる。 だが獲物として狙われていることに気づかない赤ちゃんゆっくり達は野犬に対して暢気に声をかけた。 「ゅ~? いぬさんはゆっきゅりできる??」 「もふもふしてゆっきゅりできてるよ!!」 「いっしょにゆっきゅりしようね!!」 今まで逃げていたことを忘れてお犬さんとゆっくりしようと飢えた野犬の周りに集まる赤ちゃんゆっくり達。 「わふっ!」 「ゅぎゃっ!?」 一匹の野犬が口の前にいた赤ちゃんまりさに帽子ごと噛み付いた。 それに続いて他の野犬も近くにいた赤ちゃんゆっくりへと襲い掛かる。 野犬の口は大きく、プチトマトより一回り大きい赤ちゃんゆっくりなど一口で頬張ってしまう。 口の中の赤ちゃんゆっくりは泣きながら逃げようとするが何度も噛み付かれ、物言わぬ饅頭と化して飲み込まれていく。 飢えた野犬がこんな小さな獲物一匹で満足するわけもなく、続けて二匹目、そして三匹と食べていく。 赤ちゃんゆっくり達は体中を震え上がらせ、またも踵を返して逃げ出した。 「ゅぅぅぅ!! おいぬさんゆっきゅりできないよぉぉぉ!!!」 「きょわいぃぃぃぃ!!!」 「ゅゅゅ!! こっちきちゃだめだよぉぉぉ!!!」 「なにいっちぇるの!? れみりゃがいるのぉぉ!!」 「こっちはおいぬさんがおそってきゅるのぉぉぉ!!!」 「や"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」 れみりゃと数匹の野犬に囲われた赤ちゃんゆっくり達は大混乱である。 一箇所に固まり、逃げようともせずただ泣き叫び、少しでも捕食者から逃げようと中央に向かって必死にオシクラ饅頭する。 「ゅぎゅぁぁぁ!!! ちゅぶしゃないでぇぇぇえ!!!」 「もっちょつめちぇぇぇえ!!」 「ちゅぶれちゃうよぉぉぉぉ!!!」 「うあぁぁぁぁ!! おがーしゃんんんん!!!!」 オシクラ饅頭の中央の赤ちゃんは周りの赤ちゃんの圧力によって潰れされて、餡子を吐いて息絶え絶えだ。 しかしそれに構う余裕のあるゆっくりはいない。 オシクラ饅頭の外周にいる赤ちゃんゆっくりかられみりゃと野犬に食べられているのだ。 "今"は安全な中央に少しでも進もうと姉妹に体を押し付ける。 もうこのままゆっくり出来ないのか。このままみんな食べられてしまうのか。 絶望的な状況だったが、一匹の野犬により希望の光が差した。 「わふわふっ」 ふと、ガツガツと赤ちゃんゆっくりを食べていた野犬がれみりゃの姿を見つけた。 この甘ったるくてべたべたする小さな生き物と違い、肉の臭いがする生き物を。 それはそれはとても美味しそうな獲物を。 「ガウッ」 「うー? う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 一匹の野犬がれみりゃに飛び掛った。 野犬はれみりゃを押し倒すとすぐさま首へと噛み付いて食いちぎった。 「あ"あ"あ"あ"あ"!!! い"だい"~!! しゃぐやぁぁぁぁ!!!」 「わふわふっ!!」 れみりゃの中身は肉まん。野犬にとって餡子なんかよりもずっといい物だ。 その香ばしい匂いに誘われて赤ちゃんゆっくりを襲っていた他の野犬もれみりゃの元に集まる。 「ううううう!! だしゅげでぇぇぇぇ!!」 数匹の野犬によって体を貪られていくれみりゃ。 じたばたともがいて逃げようとするが野犬の力には敵わない。 そうしているうちに手足を噛み千切られてしまった。 「う"あ"ー! う"あ"あ"ー!」 赤ちゃんゆっくり達は呆然とれみりゃが襲われる様を見ていたが、しばらくして我に返ったようだ。 「ゅ、ゅっくりにげりゅよ!!!」 「おいぬさんありがとね!!」 「れみりゃはゆっくりしね!!」 「こっちだよ! こっちはゆっきゅりできるよ!!!」 「れいみゅとまりしゃはにげるからね!! しょこでゆっきゅりしていっちぇね!!!」 れみりゃと数匹の野犬の脇をすり抜けて、生き残った赤ちゃんゆっくり達は飛び跳ねていく。 非常にゆっくりとしたスピードだったが、 野犬たちはれみりゃを食べて「うっめ! めっちゃうっめ!」状態だったので気に留める犬はいなかった。 こうして残り数少なくなったが、なんとか全滅を逃れることが出来た。 生き残ったゆっくり達は皆どれも髪はボサボサ、飾りも汚れてしまっている。 そして何匹かは仲間の返り血、いや返り餡子で染まっていた。 最初の頃のように暢気に喋るものは誰一人いなかった。 (後編へ続く) by ゆっくりしたい人 =あとがき= 書いてる途中に色んな死亡パターンが頭に浮かんでしまってその選別に時間がかかりました。 結果として、簡単に死にすぎないように少し頭のいい赤ちゃんゆっくりになっちゃったかも知れません。 このSSに感想を付ける
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作品の後ろにある文字の説明はジャンルマークについてに纏めてあります。 作者名の改名は、お気軽にお申し出下さい。ご自分で編集して変えていただいても問題ありません。 作品の一覧追加も、漏れがありましたらお気軽にお申し出下さい。これまたご自分で編集していただいても問題ありません。 個人作品集のある作者は作者別試験ページから作品集に行けます。 作者別(敬称略・「な」~「ん」まで)ななな 名も無き作者 春巻 半年ROM 羊の羽 ぽてち 抹茶アイス 水半分 ゆっくりいくさんはフカヒレまんだと思う人 改め ゆいふ人 ゆっくり飾りゴージャスの人 ゆっくりハンターの人 ゆっくり饅頭大好きの人 ゆっくりまんじゅうの人 ゆっくりモンスターズの人 らしいの人 れみりゃが大嫌いな人 作者別(敬称略・「な」~「ん」まで) ななな ゆっくりいじめ系77 くたばれゆっくりぁあああああ!!!!虐そ ゆっくりいじめ系95 しにさらせゆっくりぁあああああ!!!!そ 名も無き作者 ゆっくりいじめ系100 ピタゴラゆっくり虐家無 ゆっくりいじめ系106 小ねたっぽいゆっくりいじめ虐環 ゆっくりいじめ系288 ピタゴラゆっくり2虐機無 ゆっくりいじめ系301 ゆっくりゃかわいがり(笑)虐無 その他 ゆっくりクッキングそ 春巻 ゆっくりいじめ系545 挙の歳末_1 ゆっくりいじめ系546 挙の歳末_2 ゆっくりいじめ系547 挙の歳末_3 ゆっくりいじめ系696 SSC ゆっくりいじめ系1667 SSC part.2 ゆっくりいじめ系1833 SSC part.5 ゆっくりいじめ系2102 それでも、ゆっくりは要求る。(前篇) 半年ROM ゆっくりいじめ系1174 頭 ゆっくりいじめ系1298 ありすをいじめる。 ゆっくりいじめ系1439 ゆっくりいじめる ゆっくりいじめ系1444 いっぱいいじめる ゆっくりいじめ系1455 ちょっぴりいじめる ゆっくりいじめ系1457 短編にほん ゆっくりいじめ系1515 こいじめ ゆっくりいじめ系1614 たいとるがおもいうかばない。 羊の羽 ゆっくりいじめ系637 木まりさで永久機関そ性無 ゆっくりいじめ系767 おしつぶし虐家無 ゆっくりいじめ系839 赤い靴 ゆっくりいじめ系1127 ありすほいほい ゆっくりいじめ小ネタ189 新製品 ぽてち ゆっくりいじめ系669 ゆっくりめんどくさいそ性 ゆっくりいじめ系812 ゆっくりごはんですよー虐そ環無 ゆっくりいじめ系824 ぶたまんじごうじとく ゆっくりいじめ系954 だいふくしょっく ゆっくりいじめ系1584 ゆっくりファミリーの日常 ゆっくりいじめ小ネタ376 子は親の背を見て育つ ゆっくりいじめ小ネタ367 愛、雪原にて その他 ようじょのにっき 抹茶アイス 霊夢×ゆっくり系4 ゆっくりれいむと霊夢そ ゆっくりいじめ系94 ゆっくりまりさとおうち虐そ無 ゆっくりいじめ系216 ゆっくりれいむとおいしい味虐無 ゆっくりいじめ系235 ゆっくりまりさと泣いた赤鬼前編虐無 ゆっくりいじめ系247 ゆっくりまりさと泣いた赤鬼中編そ性無 ゆっくりいじめ系253 ゆっくりまりさとないた赤鬼 後編虐そ無 水半分 ゆっくり加工場系9 幻想郷滅亡の日 復 その他 ゆっくり大戦 そ その他 広告主そ 性 その他 yukkuri_jaketそ ゆっくりいじめ系195 yukkuri_bean虐制共捕性家 その他 yukkuri_sisugita_kekkaそ ゆっくりいじめ系661 ずんぼー虐性 ゆっくりいじめ系819 嫌われありすの一生虐家捕無 ゆっくりいくさんはフカヒレまんだと思う人 改め ゆいふ人 ゆっくりいじめ系554 -森の彼女とゆっくり知恵比べ-そ無 ゆっくりいじめ系585 -森の彼女と逆襲のゆっくり-制無 ゆっくりれみりゃ系いじめ39 VSれみりゃ制 ゆっくりいじめ系656 -森の彼女と孤独のグルメ-虐料 ゆっくり飾りゴージャスの人 ゆっくりいじめ系113 ゆっくり飾りゴージャス虐家無 ゆっくりいじめ系167 ゆっくり飾りシャッフル復家無 アリス×ゆっくり系10 ぼくのかんがえたさいきょうのしてんのう虐性 ゆっくりハンターの人 ゆっくりいじめ系29 ゆっくりハンター 制 妹紅×ゆっくり系1 ゆっくりたちのトラウマの夜前篇 制家料 妹紅×ゆっくり系2 ゆっくりたちのトラウマの夜後編虐 ゆっくりいじめ系121 ゆっくりふぉんでゅ その他 あたっく おぶ ざ きらー ゆっくりそ 紅魔館×ゆっくり系20 ゆっくりはまさに世紀末 ゆっくり饅頭大好きの人 ゆっくりいじめ系47 ぐちゃぐちゃゆっくり天国 虐 アリス×ゆっくり系8 アリスのぐちゃぐちゃゆっくり駆除 制 ゆっくりいじめ系68 お母さん霊夢の受難そ家 ゆっくりまんじゅうの人 ゆっくりいじめ系110 髪飾り制共無 ゆっくりいじめ系136 働きゆっくり?虐無 ゆっくりいじめ系137 ゆっくりまんじゅう制そ共無 ゆっくりいじめ系153 ゆっくり調教師 前編制環性無 ゆっくりいじめ系154 ゆっくり調教師 後編制環無 ゆっくりいじめ系272 出産ゆっくり_1虐家無 ゆっくりいじめ系273 出産ゆっくり_2虐家無 ゆっくりいじめ系756 ゆっくりニトロ (上)虐薬家無 ゆっくりいじめ系757 ゆっくりニトロ (下)虐薬家無 ゆっくりいじめ系2035 赤ゆっくり ゆっくりいじめ系2146 裁き(前編) ゆっくりいじめ系2147 裁き(後編) ゆっくりモンスターズの人 ゆっくりいじめ系142 ゆっくりモンスターズ1虐無 ゆっくりいじめ系178 ゆっくりモンスターズ2虐無 らしいの人 ゆっくりいじめ系50 寿司の恨み 制 ゆっくりいじめ系60 環境にやさしいゆっくり虐 ゆっくりいじめ系64 寿司の後の水責め制 ゆっくりいじめ系75 鬼母虐共家無 ゆっくりいじめ系90 cube虐そ機 その他 alien そ ゆっくりいじめ系158 ヴェニスのゆっくり制家 ゆっくりいじめ系243 チョコエッグ的な何か虐家料道 れみりゃが大嫌いな人 ゆっくりれみりゃ系いじめ32 俺はれみりゃが嫌いです その他 ゆっくり殺しノート
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前ページから ※ 元いた座敷に戻る途中、思考が渦巻いていた。 親父は一体何を作る気なのか。 「大量の野菜を用意してくれ」と言っていた。まさか野菜炒めを作るわけでもないだろう。 それとわからないのが、俺とれみりゃの手も借りたいと言っていたことだ。後でまた呼ぶから、それまでたっぷり食事を取っておいてくれとも。 店の料理人に手伝ってもらうんじゃダメなんだろうか。それだけでなく色々引っ掛かるところのある言葉だった。 「あー、もーワケがわかんねぇ!」 「Oh、息子サン」 両手で頭を抱えたところで、金髪ビキニがお膳を持って現れた。 恥ずかしいところを見られた気がして、慌てて腕を下ろす。 れみりゃが俺の陰に隠れた。金髪ビキニが苦手なのかな? 威嚇するように頬を膨らませている。 「チョウド息子サンノ所ニ注文シタノ運ブトコダッタヨ。飲ミ物ハモウ持ッテイッタカラ、コレハオ料理ネ」 店長が給仕するはずだったのが、あんなことになって、それで代わりになったわけか。店長は事の収拾に右往左往しているとこだからな。 会ったついでに気になっていた質問をしてみる。 「そういやお前ら何でバイトなんてしてんだ。さっさとイタリアに帰ればいいじゃん」 「ボスガ山直スマデ待タナイトダメヨ。バイトシテルノハ日本デノ生活費稼イデルワケ」 「日本にい続けるわけはわかったけど、お前らマフィアだろ、バイトするほど金ないのか?」 いろいろ資金には事欠かないはずだ──白い粉売るとか、依頼受けてタマとるとか。 「何言ッテルネ、今ハ百年ニ一度ノ大不況ヨ? 組織ニ属シテレバ安泰ナンテ甘スギナ考エネ。全クコレダカラ土地持チノボンボンハ」 ため息をついて首を振られる。 そこまで言うことないじゃんよ。貧乏なのはウチも同じだし。 「で、順調なのか、バイト」 「OKネ。店長サン優シイシ、オ給料モ悪クナイヨ。胸ノ大キサデUPスルミタイ」 「いや、どういう基準だよ」 店の経営方針が皆目見当つかん。 あと、女チャンピオンがここで働いたら、不当に低い給与で労働基準監督署に訴えることになるだろうな。大草原の小さな胸。 「ボスモ山ガ治ルノモウスグダッテ言ッテルシ、ソロソロ帰レルヨ。ソノ時ハオ土産チョウダイネ」 「銃を乱射した相手に向かってあつかましいな。何か欲しいのでもあるんかよ」 「息子サンノwifeネ」 「俺の妻? ──ああ、れみりゃか」 「モラエル?」 「やらねーよ。何ちょっとしたプレゼントみたく言ってんだ。でもまたなんでだ?」 欲しがる理由がわからん。イタリアでは歩く肉まんがブームなのか? 「最強レベルノ兵器デファミリーヲ強化シタイヨ」 ああ、そういうことか。 確かにあれを超える毒ガス発生装置はそうないな。見た目も普通の幼女でどこにでも持ち運び可能だし。 そんなのと寝食を共にしている俺の立場については、あんまり考えないようにした。 「うー*」 れみりゃの顔を覗き込む金髪ビキニ。対する本人は膨れっ面でさらに俺の後ろに隠れる。 「れみりゃはここにいるんだどー」 ぎゅっと俺のズボンをつかんでつぶやく。小さいが強い宣言。 金髪ビキニが避けられている理由が何となくわかった。多分強引なスカウトでも掛けたんだろう。なら嫌われて当然だ。 「Oh、残念ネ。ソレナラ代ワリニ大和撫子ノ手料理ヲ持ッテクヨ。アレモカナリノ物ネ」 「あー、毒物的にな」 確かにあれを超える暗殺兵器はそうないわ。見た目も普通の料理で警戒心も持たれないし。 そんなのをしばしば食している俺の立場については、あんまり考えないようにした。 よく生きてるな、俺………………現実から目をそらそうとお膳の上に目を移す。 「へぇ、寿司か。いろんなのが載ってるな」 「本店自慢ノ品々ネ。バリエーション豊カヨ」 「うー、れみりゃも見たいんだどー」 背の低いれみりゃが何度もつま先立ちになってアピールし始めたので(さっきまで警戒してたのに、子供は気分屋だ)、金髪ビキニが膝をかがめて料理を見せる。 見た途端、れみりゃは「うぁー」と口を開けた。 驚くのもわかる。寿司さえほとんど目にしたことがないだろうに、ここにあるのは独創性そのものであると言っていい。載る物全てがだ。 一目見てどんなネタなのかわからないものがほとんど。わかるものでさえ、握り方・盛りつけ方が他とは一線を画す。 「この緑の太巻きは何だ?」 「コレネ。キュウリ&ビントロマグロヲアボガドデ巻イタヨ。上ニイクラヲトッピングシテアルネ」 「じゃあ、こっちの何か山盛りになってんのは」 「合鴨ノスモークシタノニ、タップリ玉ネギノマリネヲ載セテルヨ」 「このねっとりした緑の軍艦は?」 「モロヘイヤ&シソ&山芋ヲミジン切リシテネットリサセタネ」 「すげえ。よくまあここまでいろいろ考えつけるもんだ。……ん?」 れみりゃの「ぅおー」「あぅー」とか言ってる口を見ると、よだれが出まくっている。ベトベトに濡れ光っている様は、食いしん坊万歳。 やれやれだぜ。 ハンカチを取り出してふいてやる。 「部屋戻るまで我慢しろよ。思う存分食っていいから」 「うー! れみりゃいっぱい食べるどー♪」 「食欲旺盛でよろしいこった」 「Oh、タクサン栄養摂ッテ毒ガスヲ生成スルノネ」 不吉なことを言うな。事実だから否定できねぇだろ。 「チナミニ息子サンハ何ガ好キナノ?」 廊下を歩きながら金髪ビキニが尋ねる。 「何って言っても、食わないと味も予想できなさそうなんばっかで、な。──ああ、そのイクラなんか美味そうだな」 「ダメネ、ソコデ『俺ノ好キナノハレミリャ一択ダ』トカ言ワナイト」 「俺は受け狙いの芸人かよ?!」 「ギャグジャナイヨ。イタリアデハ愛ノ言葉ハ息ヲ吐クヨウニ言ウネ」 普通の受け答えをしろよ。コミュニケーション成り立たねぇだろ。 ──『関税ヲモット低クシナサイ!』『アイ・ラブ・ユー』 ──『移民ヲモット受ケ入レルノデス!』『オー・マイ・ゴッド! 君ノ瞳ハ薔薇ノヨウダネ!』 イタリアが世界から取り残されない未来を祈る。 「デモイクラニ目ヲ付ケタノハオ目ガ高イヨ。オメガ級ニ高イヨ」 「くっだらねえ。ギャングのギャグかよ」 「ソレモツマラナイネ」 「うっせぇ!」 「コノイクラノ軍艦巻キハ溶岩ガ流レル火山ヲイメージシテイルネ」 イクラがこんもりと盛られていて、こぼれそう、でなく、こぼれて皿の上に広がっている。清々しいほどの豪快さだ。 「んじゃ、俺はそれをいただこうかな」 食欲で胃がきゅっと震えるのを感じながら、俺はふすまを開けた。 「ゴク・ゴク・ゴク・ゴク……ぷふぁー!」 そこには一升瓶を掲げて飲み干す女チャンピオンの姿が。 やだ……なに、これ……。 「清々シイホドノ豪快サネ」 「豪快さがとてつもなさ過ぎるだろ!」 俺たちが二階に行っている間にいったい何があった?! 「飲みっぷりハンパねぇぞ! 一杯目が一升瓶って何だ?!」 「ア、ソレ二杯目ヨ」 「え」 見ると、女チャンピオンの手を離れ、テーブルの上にでんとそそり立つ瓶には『魔王』の文字はない。 貼られたラベルには大仰な毛筆で──『魔界への誘い』 「だから怖ぇよ! 名前が!」 加えて、そんな焼酎をストレートで一気のみというのも恐ろしい。 女チャンピオンは目元をほんのりと赤らめ、しかし恐ろしく目を据わらせて、言う。 「すみません、次の焼酎は『閻魔』で」 「またかっ、やめろって!」 『魔王』に『閻魔』に『魔界への誘い』と禍々しい品目そろえやがって。この場を地獄の最下層に変貌させたいのか。 「芋焼酎から麦焼酎に変えてみたのですが、いけませんか」 「そういう問題じゃねぇんだよ!」 「焼酎ダッタラ『鬼火』モオ勧メヨ」 「お前も煽るなよ!」 女チャンピオンは「ふぅ」と酒臭そうなため息をついて、「わかりました、でしたら植田さんに倣ってカクテルなどを」と提案。 ああ、気分転換にはいいかもな。和服美人にカクテルは乙な取り合わせだ。 「ブラッディマリーでお願いします」 「だからッッ!」 ブラッディマリーの名前の由来:16世紀、およそ300人の異教徒を処刑したイギリス女王「血まみれのメアリー」から。 不吉にも程がある。 「第一もう十分飲んだろうが。いい加減やめとけよ、水飲め、水」 「何を言っているのですか。どちらを見ても胸、胸、胸。おっぱいだらけです。巨乳の大洪水です。これが飲まずにいられますかっ」 いられるよ。お前以外は。 「うー、だったられみりゃの飲み物あげるんだどー☆」 無垢なる肉まんが純粋な善意を差し出す。しかしてその一品は、 「Oh、ソレハ店長自慢ノ一品、カレーシェイクノソーダ割リ・チェリー添エネ」 常識の領域を超えたもの来たコレ。 「チェリーハ梅酢ニ漬ケテ酸味ガ程良イヨ」 「味の想像がつかねぇ……」 というか、食感から何から何も想像できない。むしろこれこそが魔界への誘いなんじゃなかろうか。 ダメだ。こんなん飲んだら女チャンピオンが魔神と化してしまいかねん。 「もっと一般的なもの、普通のもん頼もうぜ。巨峰サワーとかさ」 「巨乳アワーですって……?」 「おいおい」 親父ギャグレベルの勘違いするなよ。そして殺意をみなぎらせるなよ。 「そうですか、今はふくよかな胸の時間、つまり私に出て行けと……。ならば互いの存続を掛けて決闘ですね」 「おっぱいで命を懸けるのはお前くらいだ。なあ、金髪ビキニ、早く出て行った方がいいぞ。いらんとばっちりを受ける」 「言ワレナクテモスタコラサッサネ」 いつの間にやら品々はテーブルに並べられ、お膳と共に金髪ビキニがふすまを閉めて出て行った。手際のいい退出ぶりだ。 女チャンピオンは愚痴り酒モードに突入している。 「持てる者は持たざる者の気持ちを理解すべきです。なのに! なんですか! なんなんですかっ、この格差社会の象徴はっ。こんな日本に誰がしたのでしょう!」 女チャンピオンの脳内では、おっぱいが社会問題化しているようだ。深刻だな、別の意味で。 「いつかやりますよ、私は。全国の貧民を集めてクーデターです!」 貧乳たちが全女性の胸を更地化するのだろうか。胸が厚くなるな。いや、薄くか。 気を取り直して俺の注文したドリンクを飲もうとする。テーブルの上を見渡したが、あれ? ない。ないぞ、有機トマトジュース。 ふと目を部屋の隅に移すと、饅頭二匹が、 「「ゴク・ゴク・ゴク・ゴク……ぷふぁー!」」 ツインストローでトマトジュースを楽しんでいた。 「ゆゆん、とってもゆっくりできるよ」 「おお、美味い美味い」 「てめぇら、それ、俺のだぞ!」 指差す俺に、れいむときめぇ丸は「ゆ?」「おお?」とこちらを見るも、またストローに口をつけて、ズズズズッと最後まで飲み干しやがった。 そして一言、 「ゆぅーん、この一杯のために生きてるね!」 すぐ死なせてやるよ。 ※ 座敷にいても全然落ち着けないので、予定を繰り上げて親父のところに行くことにする。 女チャンピオンの精神状態がやや不安ではあるが。 最終的には「こぶ取りじいさんって良い昔話ですよね……。私も悪いおばあさんになって、もいだ乳をくっつけてもらいたい、ふふふ……」などと、あっちの世界に行ってしまわれていた。 けど、ペット二匹に丸投げしとけば大丈夫だろう。まあ、大丈夫でなくても一向に構わん。むしろ死ね。 「うー、お料理の手伝いをするんだどー?」 れみりゃが聞く。顔がほころんでいる。 「ああ、面倒くさいけどな。れみりゃは違うのか」 「れみりゃはお料理好きなんだどー☆」 「そうか、そりゃいいお嫁さんになれるな。…………ぁいや、既にそうだったか」 「うー♪」 なんか墓穴掘ったような。 ともかく厨房へと歩を進めていく。確かこの先、うん、あそこだろうか。 暖簾(のれん)をくぐる。 「親父ー、いったいどんな具合……」 空中でジャガイモが弾けていた。ニンジンが砕け、玉ネギが破裂する。 フンドシ一丁の親父の拳や蹴りが、宙を舞う野菜に叩きつけられているのだった。 そのあふれんばかりのマッスル臭に、俺は「すみません、部屋間違えました」ときびすを返した。 「いや、ここで合っているぞ、息子よ」 瞬間、がっしりと肩をつかまれる。 「どうかしたのか? 何の変哲もない台所を見間違えるとは」 「変哲ありまくりだろーが! 何やってんだよ!」 ドラム缶のような寸胴鍋がたっぷりの水をたたえている。そこまではいい。 しかし、筋肉ムキムキのフンドシ中年が汗だくでそれを前にしていると、鍋が調理器具というより拷問用具に見えてしまう。 しかも、野菜をどうしてた? 「わからないか。農作物を美味しくいただくには、包丁という金属よりも己の肉体を用いるのが良い」 「どういう理屈?!」 「直接身体で触れあうことで野菜と対話するのだ。それで美味さを引き出す。全神経を使うので普段はしないがな」 そう言って脇のザルの縁を叩く。水洗いされた数本の大根が勢いで舞い上がった。 「はぁあああッ! ふぅんッぬ!!」 気合いと共にほとばしる筋肉の連弾。蹴りが一本の大根に入ると四つのヒビが入る。続けて拳がその四つに等しく叩き込まれると、それぞれが細かく砕けて(葉の部分にまで!)鍋に落ちる。一つの欠片も外にこぼさずにだ。 運動力学をまるで無視した調理風景に、俺は茫然自失そのものと化すしかない。 他の大根についても肘、膝、回し蹴りを数瞬で行った後、とどめの頭突きで食材を鍋に入れ終えた親父は「ふぅ」と軽く息を吐く。 「よし、これで全ての処理が済んだ。材料はほぼ野菜のみだからな、非常にヘルシーだぞ」 「……HELL死ー?」 「さて、次はダシを取るとしようか」 言うと、鍋の銀色に光る胴回りに両の手を当てた。 途端に視界がぼやける。いや、違う。親父の全身が超高速で微振動しているのだ。 何を、と思う間もなく、もわっ、と。寸胴鍋から白い湯気が湧いた。 え、さっきまで水だったよな? 「ど、どうなってんだ?!」 「何を驚いているのだ。水分子を細かく震えさせれば温度が上がる。理屈だろう」 「理屈じゃ人間にはできねぇんだよ!」 そんなんできたら貧乏揺すりであっちこっち火の手が上がるぞ。消防署が大変だ。 「ふぅむ、どうにも頭が固いな。我が息子には、へそで茶を実際沸かすネタでも見せておくべきだったか」 「見せなくてよかったな。トラウマになってたぞ」 「まあ、ともかくもダシだ。では、息子よ」 「何だよ」 「れみりゃと一緒に服を脱げ」 「は?」 「まぐわうのだ」 「はぁ?!」 「やれやれ、我が息子ながら困ったものだな」 なんで俺の方が物わかり悪い奴扱いされてんの。 全年齢対象のサイトでやっていいことじゃねぇだろが。石原出張ってくんぞ。 「いかに物を知らないお前でも『調味料のさしすせそ』くらいは耳にしたことがあるだろう」 「内容も知ってるよ。『さ』は『砂糖』で、『し』は『塩』だろ」 「その通りだ。そして、『す』は『酢』とくれば、『せ』は『セックス』だろう」 「何でだよ!?」 話がいきなり性行為にテレポートしただと?! 「意外そうな顔をするのがよくわからんな。おお、そうか、今風に言ったのがまずかったか。『せ』は『性交』や『接合』と言えば通りがいいな」 「横文字も日本語も同じだよ! ふざけたこと言ってんじゃねぇ!!」 「昔から言うではないか──愛は最高の調味料だと」 「上手いこと言ったつもりか?! じゃあ三分間クッキングは三分間ファッキングか? キッチンプレイ上等で、裸エプロン万歳か?」 「息子よ、公共の場で下品なことを言うものじゃない」 「こ、この親父……っ」 怒りで死にそうになる俺を意に介さず、親父は鍋へと顔を向ける。腕組み。 「聞き分けのない息子を持つと苦労するな。仕方ない。ダシは別のやり方で取るとしようか」 掛け声の「よいしょっと」の「と」で、並んだ両足が跳ねとんだ。親父の筋骨隆々とした肉体が腕組みした状態のまま、天井にぶつかりそうなほど宙を上がり、そして──ザッップーン! 鍋の中へダイブした。 「何ぃい?!」 「農作物と苦楽を共にしてきた農家から染み出るエキス。これ以上のダシはあるまい」 いろいろとねーよ! 「では、息子とれみりゃよ。お前たちも農家の一員としてエキスに加わってもらおうか」 「あほかーっ! どこの人食い人種の郷土料理だよ!」 「うー♪ れみりゃも野菜風呂に入るんだどー☆」 「ちょ、おまっ」 脱ぎ出すれみりゃを慌てて止めようとする。そこに肩をがっしりつかまれる。 「こら、息子よ、自分の嫁がやる気になっているのに水を差すものではないぞ。むしろお前も脱がねばなるまい」 「いいから離せ! ってか、脱がすな! パンツに手を掛けるな!」 「うー、すっぽんぽんだどー♪」 「れみりゃも脱ぐな!!」 と、そこへ植田さんJr.がやってきた。 「あの、お仕事中失礼します。料理の方はいかがで……」 彼が目にしたのは、スープまみれになったフンドシ姿の中年が少年にしがみつき、パンツを無理矢理引っぺがそうとしているところ。そしてその少年は、ほぼ全裸の幼女に抱きついていて…… 「ごゆるりと」 植田さんJr.は何事もなかったように出て行った。明らかな営業スマイルと共に。 「勘違いされた! 今ものすごく嫌な勘違いされた!」 「家族の団らんに水を差さないようにという気遣いか。細かい配慮のできる店主だ」 「関わりたくないだけだろ!」 「やれやれだな。分からず屋は放っておいて、私と一緒に鍋に入ろうか、れみりゃ」 「うー☆」 「な、ちょっと、」 待て、の言葉をいう間もなく、親父とれみりゃは仲良く鍋の中に入った。 「おい、こら、これ料理だぞ、人に食わせるもんだぞ。風呂か何かと勘違いしてねーか?!」 「まったく、我が息子は鍋と風呂の区別もつかんのか。これが料理であることぐらい一目瞭然だろうに。ところで、れみりゃよ、湯加減はちょうどよいか?」 「はービバノンノだどー」 「やっぱ風呂じゃねーか!!」 ※ 三十分ほど浸かった後、ようやく親父とれみりゃが鍋から出る。 「ふぅー」といかにも良いお湯だったと言わんばかりの息をつく。 「ずっと見ているだけではつまらなかったのではないか、息子よ」 「鍋に入れば面白くなれると思えるのがすげーよ」 二人にタオルを渡す。さっき借りてきたものだ。なお、店長には誰も厨房に入らせないようにと言っておいてある。名目上は「企業秘密だから」。 「では、ダシも取れたところで仕上げといくか。煮詰めていくぞ」 「またあの変態電子レンジか」 身体をふいた親父は再び両手を鍋に当てる。 ブゥ…ンンと、ブレる輪郭。さっきより音が大きく、動きが激しい。特撮映像みてーだ。 鍋から出る湯気の勢いが強くなった、かと思うと、ボコボコと沸騰し始めた。 段々と勢いが強くなっていく。次々と破裂する気泡から飛沫があちこちに散る。 中を見ると液体はどす黒く変色し始めていた。得体の知れない化学変化が起きているらしい。もう一度確認した方がいいのだろうか──これ、食い物だよな? 不気味に泡立ちながら液体の表面が渦巻き始める。ごぽっと一際大きな気泡が弾けたかと思うと、真っ黒なシルエットが浮かび上がってきた。角が生えている。 「我ヲ呼ビ起コス者ハ誰ゾ……」 「ふっんっ!」 「グフッ」 「おい、今何か変なもん召還しなかったか?! そして殴って追い返さなかったか?!」 「うろたえるな、息子よ。美味い料理を作る際には悪魔の一匹や二匹つきものだろう」 ねぇよ。三つ星レストランが邪教の館になんぞ。 ってか、さっきの悪魔だったのか。 と、再び大きな気泡が弾けて、角頭が浮かび上がってくる。 「グ、グゥウ……オノレ、賢シキ人間メ……ダガ、コレデ終ワッタト思ウナ……我ノ後ニハ第二、第三ノ……」 「れみりゃ砲発射」 親父が後ろ向きにしたれみりゃを肩に担ぎ、尻を標的に向ける。合図と共に、れみりゃが「うー!」と一発放屁。 ブゥォオオオオッ! 「グ、ギャァァァアアアァアア!!!」 断末魔の叫びを上げ、何だかおぞましぽかった存在は鍋の中に消えた。 屁が死因か。無念過ぎる。 こんな事態の後でも、何事もなかったかのように親父は快活に言った。 「さてこのまま温めつづければ完成だぞ」 産業廃棄物が? 「うー、スープが段々きれいになってきたんだどー」 「うむ、農家スープにあく取りは必要ない。全てを旨味として提供できるからな」 というより、全てがあくそのものなんじゃねぇのか。 だが、先ほどのどす黒さが嘘のように液体の透明度が上がり始めている。きらきらと金色の澄み切ったスープに変わりつつあった。食欲をそそる匂いまで立ち上り始める。 何だこれ。 ※ 「素晴らしい!」 海千山千とやらが開口一番、叫んだ台詞がそれだった。 お椀に入れられたスープ、その匂いをかいだ途端に顔色が変わり、一口すすった途端に立ち上がり絶賛したのだった。 「ワシはこれまでこのようなスープを飲んだことはない! 何と素晴らしいのだ、これは! 口の中で一つの革命が起こっておる!」 作られた経緯を知っている俺は内心冷や汗かきまくっていた。 革命か……無血革命であることを祈ろう。明日あたり全身から血を流して死亡とかあるかもしれんし。 周りを見やると、他の客やウェイトレスたちもスープを賞味している。寸胴鍋で作ったから量はたくさんあるのだった。 みんな口々に「美味い!」「最高ー!」「でらデリシャス!」などの賛辞を述べ合っている。 そこから悪魔が現れたとか夢にも思わないだろう。 だが真相は墓の中まで持っていくつもりだ。バレたら間違いなく保健所が駆けつける。ついでに警察と悪魔研究会も。 海千山千がうなった。 「うぅむ、それにしてもこの味はどうやって出せるのか。特にダシが他の凡骨とは違う。野菜中心なのはわかる。だが、それ以外の要素が──小賢しい、この山千を試そうというのかッ。むぅう……豚骨でもない……煮干しでもない……そうかッ、わかったぞ! 間違いなくこれは、桑の実だな!!」 親父と肉まんの汁です。 「うー、勝利のダンスなんだどー☆」 れみりゃが座敷に飛び込んでいって、テーブルの上で踊り始めた。 両の拳を胸の前で回して尻を振る、例のあれだ。 自らが関わった料理を大いに褒められたことが嬉しかったのだろうか。 大丈夫か、そんなことしてせっかくご機嫌になった大先生がまた癇癪(かんしゃく)起こすんじゃないか。そう思ったが、 「おお、これは和ませる。この店は舌だけでなく目と心も幸福にしてくれるとは」 海千山千はえらくご満悦だ。 店長の植田さんJr.も、 「そうでしたか。これが真のサービスなのですね」 と目頭を押さえている。周囲からは拍手が湧いた。 いや、ここ、感動するところなの? もしかして、明日から尻を振りつつ拳を回すウェイトレスが見られるようになるのだろうか。 この店の奇抜度がますますレベルアップする可能性に、俺はこめかみが痛くなった。 ※ 店内の喧噪を逃れるように二階より先の階段を上った。 どん詰まりの扉を開けると外気。夜の冷たい風が心地よく頬を撫でた。 「やれやれ。……ん?」 「おお」 足下にきめぇ丸。座敷にいたはずがなんでこんなところに。 細かく静かな音が外に広がっていた。きめぇ丸のやや後ろから先のコンクリートタイルが黒く濡れている。曇り空は雨空に移り変わっていたようだ。 視線を上げる。 視界いっぱいにでかい饅頭があった。 「ゆぅん、困ったよ」 普通車がすっぽり入るような口が気弱な声を吐く。 れいむだった。 何にもない屋上の空間を巨大な体積で埋めている。恐ろしくでかくなっていた。 「な、な、なんででかくなってんだ?!」 ドスまりさほどではないが、とてつもない大きさだ。これじゃあ店のディスプレイと思い違いされてしまう。ここは饅頭の店ではないし、さらし首をやる風習もない。 「ゆゆん、ちょっと涼むつもりでうっかりしていたね。れいむは水に触れると大変なことになるんだったよ」 グレムリンかよ。 ゆっくりの場合はどうも水を吸収してでかくなるらしい。そんなオモチャがあったな。 キモイ足が生えたこともあったし、なんてデタラメな生態だ。饅頭が活動している時点で今更だろうけど。 「でも本当に困ったよ。これじゃお兄さんに愛してもらえないし……」 「安心しろ。小さくても毛嫌いしてるから」 「ゆっ、そうだよ、お兄さんがデブ専になれば一発解決だよ!」 「さらりと恐ろしいこと言ってんじゃねぇ」 目の前のクジラ饅頭を解体してみんなに振る舞ってやろうと思ったが、そこでふと気がつく。 確かドスまりさがこっちに来ていて、マフィアの連中を見守っていたはずだ。 となると、外で雨に打たれているということに── 叫ぶ。 「おーい、いるかぁ? ドスまりさぁっ!」 瞬間、空が白くなった。 じゃなかった。 空全体がドスまりさになっていた。饅頭の底面が、あっちの地平線からそっちの地平線まで伸びていた。 「おお、デカいデカい」 「ビッグになっていってね!」 ゆっくり二匹がはしゃいでいるが、俺の口はあんぐり開いて物も言えない。 いや、ビッグとかデカいとかって範疇(はんちゅう)超えてるだろ。 これじゃ、生物とか物体とかの話じゃなくて、もはや天候として扱っていいんじゃないか。曇りのち饅頭。 ドスまりさが“ぐりんっ”と動いて下にいる俺たちの方を見る。 うげぇ、月がでんぐり返ったような感覚。 天体並の大きさの饅頭が眉を寄せて苦笑した。 「ゆへっ、ちょっと失敗しちゃったよ。面倒くさがらずにオリーブ油を塗っとくべきだったね」 「イタリアの防水はオリーブ油なのか。靴とか香ばしくなるんだろうな。あと、ゆへっとか可愛くないから」 吹っ飛んでいた意識をようやく取り戻し、突っ込んでやる。ついでに気になっていたことを尋ねてみた。 「ところで、ずいぶんとデブくなってるみてーだが、いったいどんくらいの大きさなんだ?」 ドスまりさはやや首を傾げて(それでもタイタニックが傾く以上の動きだ)考えていたが、やがて答えた。 「13㎞や」 なんで関西弁? おわり 毎回台詞回しやセンスが秀逸で驚く かなり不気味な(褒めてます)人間たちの空気の中で、ゆっくり達の可愛さがやばい でもれいむのふてぶてしさや主人公の反応がとても「らしく」て好き ちょっとまねできる人はいない気がする -- 名無しさん (2011-01-25 00 21 07) 名前 コメント
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斎藤です。 DQNものはゆっくりできないって、偉い人が言ってたね。 もうやめようと思ったけど、途中まで書いていたからアップしてみるよ。 読む気が無くても、しんさくさんがあると気分が違うからね。 最近沢山アップされるようになってうれしいね!! ぼけーっとテレビ見ていて思いついたよ。 サンテレビが視聴できない人には何が何だかわからないはず、ごめんね。 ここの会社結構義理堅いのかなぁ? CM出てるコンニャク打法、今北海道にいてるのになぁ。 駄文です。それでもいいならどうぞ。 ゆー橋はええとこだっせ ゆランゆトーがおまっせ♪♪ でお馴染みの総合ゆっくりレジャービルへと、私はやってきた。 今回の取材は初心に戻り、ゆっくりレジャーの基本を学ぼうといったものである。 ゆー阪から環状線に乗り、ゆー橋で降りる。 うどん出汁の匂いと、朝から一杯やっているおっさん達が出迎えてくれる。 古き良き時代のゆー阪の風景がそこにはある。おされな店が増えたといっても、駅前の様子は何時の時代も変わらない。 ゆー橋駅東出口より徒歩1分、そこにゆランゆトーはある。 地下1階、地上6階の中に、ゆっくりレジャーの全てがあるといっても過言ではない。 今回は下から取材することになっている。 まずは地下1階と地上1階の『ゆチンコ』だ。 今から30年前位に、一世を風靡した大人のゆっくりレジャーだ。 今のパチンコはこのゆチンコがモデルとなっている。多くの人はこのことを知らない。私も知らなかった。 時刻は午前9時半。今日は新台入れ換え初日となっており、多くのお年寄りがすでに列を作っている。 常連さんと話をすると、やっぱりここの台は他所とは違う、殴り心地がたまらないとのことだ。 台を殴る? ゆチンコ初体験の私には意味がよくわからない。パチンコ台を殴った友人が、パンチの店員に連れて行かれたことは あるのだが。やってみればわかるとのこと、期待感でいっぱいになる。 「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」 まりさ時計が10時を告げる。開店の時間だ!! 私は店内をダッシュし、何とか新台を確保できた。 初挑戦のゆチンコ台は、『たのしいゆっくり一家の大冒険』という何ともファンシーな名前だ。 ゆチンコ台は、台そのものがゆっくりでできている。 ゆっくりがペッタンコにされ、14インチ程に伸ばされる。目と口の間にパチンコ台が埋め込まれている感じだ。 上部には台に使用されたゆっくりの家族が埋められ、演出を盛り上げてくれる。 大当たりすると口から玉が出てくるのだ。 早速500円分の玉を借り、ハンドルを握る。 「ゆふん!!」と台のゆっくりが喘ぐ。ハンドルはぺにぺにでできているのだ。 遊び方はパチンコと大きな違いは無いので、誰でもすぐに馴染めるだろう。 「リーチ!!!」 横の説明を見ているうちに、れいむ&まりさ絵柄でリーチがかかった。 「おきゃあしゃん、がんばっちぇ!!」 「ゆっくちしないで、あてろ!! くしょばばあ!!!」 台上部の子ゆっくりが、台の親ゆっくりを罵る。大当たりしないと子ども達は餌が貰えないのだ。 「ゆっくりしないでがんばるよ、おかあさんは!!! えさん、はやくそろってね!!!」 台ゆっくりは子どもに答える。 場面が巣の中に変わり、れいむしゅっさんっリーチに変化した。 れいむかまりさを産むことができれば、大当たりである。 画面上ではれいむが必死に息んでいる。 「ゆぶうぅぅぅっ!!! あ、あ、あかちゃんゆっくりしないでうまれてね!!」 アニメ調ではあるが、非常にリアルである。気持ち悪い。頑張る所を間違っている感じがする。 産道がメリメリと開いていく。れいむの顔は苦痛で歪み、汗と涎まみれとなっている。 それにしても長い。なかなか産まない。もしかして死産なのかと見ていると。 「れいむ!! このおぼうしさんでまりさがうけとめるよ!!!」 番のまりさが出てきた。台の説明によるとチャンスアップらしい。れいむ種とまりさ種の番なので、まず当たりだろう。 ドキドキして見守る。早く産みやがれ、このくそでいぶ!! 「うーん、う゛ーん!!! う、う、う、うばれるぅぅぅぅ!!!!」 産道から汚い尻が見えてきた!! がんばれあと少しだ!!! 『スポーーーーーン!!!!』 「ゆっくちうまれちゃよ!!!」 おお、産まれた!! 画面が暗転しているので、何が産まれたのかわからない。どきどきする。 まりさならもう1回当たりやすくなるのだ。 画面が段々と明るくなる。 そこにいた赤ゆっくりは………… 「にゃかにゃかちょかいはなおうちね!!!」 ありすだった!!! 「どういうごとなのぉぉ!!!! でいぶぅぅ!!!!」 画面の中のまりさと私の声がシンクロした!! 「ゆーん!! きゃわいくちぇごみぇんね!!!」赤ありすがそう言って再び絵が動き始めた。 はずれである。 「どぼじで!! どういうことなのおぉ!! なんでれいむとまりさからありすがうばれるのぉぉ!!!」 思わず叫んでしまう。隣のおじいさんが大笑いしている。 「このくそゆっくりが!!! しね!! ゆっくりしていないゆっくりはしね!!」 と私。 「どぼじではずしちゃうの゛ぉ!!! おぎゃあざぁぁぁん!!!」 「れいみゅたちをゆっきゅりさせないおきゃあさんはいりゃないよ!!!」 「いやあぁぁぁぁーーー!!! もうびりびりじだぐなびいぃぃぃ!!!」 と上部の赤ゆっくり。 「ごべんねええぇーーー!!! だめなおかあさんでぇぇぇっ、おちびちゃんごめんねえええーーー!!!」 次の瞬間!!! 「「「ゆびゃあぁぁぁ!!!! びりびりいびゃああぁぁぁぁーーーーー!!!!」 赤ゆっくり達が湯気を立て、ピクピクしながら餡子を吹き出した。 これがゆチンコの売りの1つ、『せいさい』である。今回は電撃が選択された模様だ。 プレイヤーのいらいらを、赤ゆっくりが受けてくれるのだ。 「あーあ、赤ちゃんゆっくりできなくなっちゃった!! これもれいむがはずしたからだ!!! このくず、のろま、うんうん、しーしー、でいぶ!!!」 私は溜まりに溜まった鬱憤をれいむにぶつけてやる。 すると… 「ゆっ、ゆっ、ゆゆっ!!!」 れいむの様子がおかしくなった。白目を剥いて反応がなくなった。 続いて台も操作不能になった。 私が焦っている様子を見て、隣のおじさんが 「姉ちゃん!! 餡子当たりだよ!! 店員呼ばなきゃ!!」 と言って店員を呼んでくれた。 急いでやって来た店員が手に持っていたのはタッパー!! 何? 何でタッパー? 「お客さん!! 餡子、餡子が出てきますから受け止めて!!!」 と店員に言われる。店員は台に打ち止め札を刺す。 玉が出てくる所にタッパーを置く。 するとしばらくして 「えれえれ、えれえれ!!!」 れいむが餡子を吐き出し始めた。 うわっ!! すごい!! 餡子が、餡子がどんどん出てくる!!! あっという間にタッパーが一杯になった。 「どうします? 交換されますか、お持ち帰りになられますか?」 店員が聞いてくる。いまいち状況が掴めない。 店員による説明はこうだった。 数字が揃う以外にも当たりがあり、それが餡子当たりである。 台のゆっくりが強い精神的ショックで餡子を吐き出すのがそれである。 そのまま食べながら打ってもいいし、カスタード、チョコレート等にも変えてくれる。 周りを見回すと、爺さんたちが餅、食パン持参で打っている。 まだ取材する所が残っているので、半分をカスタードに替えてもらい終了した。 さすがゆっくりレジャーの殿堂!! 私の思いも寄らぬ所で楽しませてくれた。 まだ甘味が貴重だった時代の名残が感じられた。お年寄りが多いのも納得である。 続いて私は2階へと向かった。2階はゲームセンターとなっている。 ここのゲームセンターも歴史は古く、今流行りのゲームなどは一切無い。 だが、ゆんベーダーや平安京ゆっくり等が当時の筐体のままありマニアの人気は非常に高い。 今回の私の目当ては『ゆっくりたたき』である。 ゲームセンターの定番であるゆっくりたたきは、ここが発祥の地である。 現在多くの店舗では管理の問題から、実際のゆっくりは使われていない。 だがここでは設置当時から生きているゆっくりが使われている。 それが人気で数人が順番待ちをしている。私もその列に並ぶ。 15分程待っただろうか、私の順番となった。 係員が新しいゆっくりをセットしていく。 「いや、いやあぁぁぁぁーーーー!!! れいむ、れいむたたかれたぐないぃぃっ!!!」 「やめて、やめてえぇぇぇっ!!! こんなのとかいはのすることじゃないわよっ!!!」 「むぎゅうぅぅぅーーー!!! えれえれー」 これからどの様な目に遇うかわかっているゆっくり達は悲鳴を上げ、セットされるのを拒む。 だが係員は淡々とゆっくりを穴の中に入れていく。 「ゆぎゃっ!!! あんよがあぁぁっ、まりさのあんよがああぁぁーー!!!」 「ぬいてええっぇぇ!!! あんよからはりさんぬいてぇぇぇぇっ!!!」 「はい、準備できました。どうぞ。」 係員が私に告げる。 200円を台に投入すると、ゲームの開始だ!! がんばるぞ!!! 『ウイイーーン!! ウイーーン!!』 と音を立て、ゆっくり達が穴から姿を見せる。 まだ始まったばっかりなので速度はそれ程ではない。 『ポカッ!!』『ゆぎゃっ!!!』 『ボコン!!』『いちゃいいぃぃ!!!』 私は1匹も叩き逃さないように集中する。 段々と速度が上がってくる!! 『ボカ!!!』「ゆべっし!!」 『ドゴッ!!!』「ゆげげっ!!!」 『パシーンッ!!』「いだぃぃぃ!!!」 ここまでノーミスだ!!! 調子がいい。今日のハイスコアを更新できそうだ。 「うー いたいのいやだどぉぉぉーー!!! おぜうさまをはやくはなすんだどぉぉーーー!!!!」 叩いた分だけ点数が加算されるれみりゃが出てきた!!! 他のゆっくりを叩くよりも効率がいいので、こちらを集中して叩く。 『バシッ!! ドコッ!! パシンッ!! ボコン!!! ビシッ!!!』 「う、うー!! やめろ、やめるんだどー!! いたい、い、い、いたいんだどー!!! かえる、かえる、こーまかんにかえるんだどおぉぉぉーーーー!!!!」 『ドゴンッ!!! ブチッ!!!!!!!』 し、し、しまったあぁぁぁぁっ!!! れみりゃの首を叩き落してしまったあぁぁぁっ!!!! 「はい。終了です。おつかれさまでした。」 固まる私に係員が告げた。 「うー あうー うぅぅぅーーー!!! あぶうぅぅぅっ!!!」 首だけのれみりゃが苦しそうに唸る。主のいなくなった胴体はバタバタしている。 このゆっくりたたき、ゆっくりを潰してしまうとそこで終了となるのだ。 だからゆっくりを叩く際には、細心の注意が必要となる。 熱くなっていたのと、れみりゃの顔が余りにも憎たらしかったため、思わず本気で叩いてしまった。 まだ時間大分残っていたのにぃーー!!! くやしい!! 「お客さん!! 体の方どうされますか? お持ち帰りになられますか?」 係員がれみりゃの胴体を包んでくれるのを断り、私はゲームセンターを出た。 時刻は12時過ぎ、そろそろ昼ごはんにしたい。エレベーターに乗り込み、6階のボタンを押す。 ゆっくり料理の老舗『ゆっくり飯店』に予約を取ってある。費用は会社持ちなので安心である。 エレベーターを降りると、まずサンプルケースが目に入ってくる。 デパートの大食堂によくあったものだ、懐かしい。 ざっと眺めると、今の時期は『ぱしたフェア』が行われているらしい。 ぱちゅぼなーら、かるぼさん、れみりゃそーすといった定番から、れいむ入りパスタライス、 森の賢者のありす添えすっきり風等の変わったものまで揃っている。 ぱしたを1品頼むと、べーこんごはんがセットで付いてくる。 今回のお目当てはこれではない。 特級れみりあ士が作る、れみりゃ料理が目的なのだ。 入り口で予約していたことを告げると、個室へと案内された。 よくわからないコンセプトで統一されたインテリアが目に付く。こーまかん風らしい。 れいむ、まりさ、ありす等のデスマスクが並ぶ。壁の絵画は、れみりゃがればんてぃんでふらんを串刺しにしている。 こーまかんとはどんな所かよく知らないが、写真を数枚撮っておく。 前菜は、まりさの帽子とぱちゅりーの婆帽ときゅうりの酢の物、まりさつむりの壷焼きであった。 帽子のコリコリ感ときゅうりのシャキシャキ感がうまくマッチしている。 壷焼きの方も、絶命する際漏らしたしーしーとうんうんの加減が何とも言えない。 共に文句の付けようの無いものであった。 前菜を食べ、ウイスキーのちるの割りを飲んでいると、ウエイターがワゴンを押してやって来た。 ワゴンには数匹のれみりゃが吊るされている。この中から選ぶことができるのだ。 れみりゃの選び方等わからないので、ウエイターにオススメはどれか教えてもらう。 胴付きれみりゃはでぶっと肥えた方がおいしいとのこと。顎がタプタプしていると油のノリがよい。 ウエイターの個人的好みではあるが、馬鹿面な方がいいらしい。 ワゴンの中から2匹選んだ。『ぷっでぃーん♪ ぷっでぃーん♪』ばかり言っていた奴とにんしんっしている奴を 今回は調理してもらう。 どんな調理法がいいか、私は初めてなのでおまかせにしてもらった。 小1時間程でできあがるとのこと。その他の料理を楽しむことにする。 らんの握り、ぱちぇとありすのはさみ揚げが次に出てきた。 握りの方は素材のうまみを活かした、シンプルながら味わい深い一品であった。 はさみ揚げは正しく絶品であった!!! あにゃるとまむまむをレイパーありすに攻められたぱちゅりーは、甘さが消えこくだけがうまく残り、 攻め手のありすはこれ以上ないといった具合に甘い!! それぞれすっきりする瞬間を揚げてあるため、筆舌し難い表情をしている。匠の技をここに見た気がする。 私がそれらを堪能し終えると同時に、れみりゃが運ばれてきた。一体どの様に料理されているか楽しみである。 まずは馬鹿面をしていた方からだ。ウエイターがお皿を私の前に置く。 れみりゃの姿揚げクリームソース煮である。 なんとこのれみりゃ、まだピクピクと動いている!! 生なのか? 恐る恐る口をつける。 な、な、何ということだ!!! れみりゃにはしっかりと熱が通っている!!! 半生といった状態でもない!! 足の方から食べ進んでいく。 「うー!! いたい、いたいんだどぉぉーー!!! おぜうさまをたべるんじゃないんだどー!!」 とれみりゃが小さな声で泣く。 素晴らしい!!! 驚くべき火の通し方!!! クリームソースもまろやかでれみりゃの油っぽさを打ち消してくれる!! 頭を最後に食べる。 「うあっ!! うーやめるんだど………」 れみりゃの断末魔が心地よい。 次はにんしんっれみりゃだ!! ウエイターが皿を運んでくる。 私は皿の上のものを見て、何も言えない。 ただ真っ黒な炭の塊がそこにあるだけだ。どういうことなの、これは? ウエイターが炭の塊を、スプーンで軽く叩く。中からは裸で丸坊主のれみりゃが表れた!! れみりゃからは湯気が立ち上り、プルプルと震えている!! またもや生きたままだ!! ここのれみりあ士、一体どれ程の腕の持ち主なのか? ウエイターが手馴れた手つきで、れみりゃを切り分けていく。 腹の中から胎児が出てきた。胴なしのれみりゃだ。 そのまま塩を付けて食べる。 「うー!! れみりゃのあがちゃんがあぁぁぁっ!!! たべものじゃないんだどー!!」 「うー!! しみる、しみるんだどー!! まんまー、まんま、どこおぉお!!!」 れみりゃ達の声もおいしさの1つと言わんばかりの生かし方、食べるのがもったいない気もする。 一思いに頭からガブリといく。 「うー!! うーーーっ!!! いだい、いだああぁぁぁい゛!!!」 口の部分を残すといい声で泣いてくれる。まさにヘブン状態!!! しっとりモチモチの皮と、脂っぽい中身とのハーモニー!! 絶品でした!! ごちそうさまです!!! ちなみに外側の親れみりゃは食べるものではない。ただの器に過ぎないのだ。 デザートには、ちぇんの丸焼きと活け赤ゆっくり。 活け赤ゆは親のれいむから直接ちぎって食べる。 「やべでぇぇぇぇぇっ!!! でいぶの、でいぶのあかじゃんたべないでぇぇぇーーー!!!」 親れいむの悲鳴がいいアクセントとなり、極上の甘さが感じられた。 もう何も言うことはない。満腹、満腹♪ 支払いを済ませ、次は5階に降りる。 満腹で眠たくなってきたので、温泉に軽く浸かって昼寝でもしようと思う。 ここの5階は、天然温泉とサウナがあるのだ。 私は湯浴み着に着替え、浴室に入る。 いやあー♪ 人が働いている時間に入る風呂は絶品である!!! ここの温泉は美肌効果に優れていて、女性にも人気がある。真昼間なので私しかいないが。 ここの目玉は『日替わりゆ』である。ゆっくり自体が浴槽となっているのだ。 今日はどすまりさの日ということで、早速浸かってみる。 「いだいいぃぃーーー!!! どすの、どすのあんこさんのなかにはいらないでぇぇぇぇ!!!!」 どすの帽子を外し、ヒーターで温められた餡子の中に浸かる。 「はあぁぁぁーーーっ!!! 極楽極楽!!! このあんまーい香りもいいねぇぇーー!!」 思わず声が出てしまう。 この餡子風呂、どすがまだ生きているため、中にいると消化されていくのだ。 長く浸からなければ大きな問題はなく、体の垢を食べてくれる感じなのだ。 ゆ船から上がり、シャワーで餡子を落とす。 つるっつるのお肌だ。とても30前の肌とは思えない!!! 一家に1匹欲しいくらいだ!! 毎日違った大型のゆっくりに浸かれるということもあり、リピーターも多い。 特にぱちゅりーとありすは大人気だ。ミルク成分がお肌にいいらしい。 別料金を払えば、『らんの蒸し風呂』に入ることもできる。 大型のらんが外側から熱され、中の酢飯がいい具合の温度となる。 また酢飯が汗を吸ってくれるので、サッパリできる。私は酸っぱい匂いが苦手なので遠慮したが。 高温サウナは特に変わった所はなかった。 だがミストサウナが特徴的だった。ミストがゆっくりから出た汗なのだ。 ミストが出てくるノズルの向こう側、熱風が出てくる所にゆっくりが閉じ込められているのだ。 チョコレートの香りがする。今日はちぇんの日なんだね、わかるよー 耳を澄ますとちぇん達の声が聞こえてくる。 「あづいぃぃっ!! あづいよおぉぉっ!! わがらないよぉぉぉーーー!!!」 「らんじゃまたずけてぇぇぇっ!!! ゆっぐりでぎなびぃぃーーー!!!」 サウナで火照った体を水風呂で冷ます。水の中にはちるのが数匹浮かんでいる。 「あたいってばさいきょうよね!! ゆっくりしていくのよ!!!」 そんなに何時までも浸かってられません!! 少し氷が張っているじゃないの!! 風呂上りにはもちろん冷たいスイーツ!! ここはシンプルにちるのを水で!! 宇治れいむやありまりも捨てがたいところだが、さっぱりといきたい。 カウンターのおばさんが冷凍庫から、ちるのを取り出す。 『あたい さいきょう』しかしゃべらない。やっぱり馬鹿だ。 カキ氷機にちるのがセットされる。おばさんがスイッチを押す。 『ガリガリ ガリガリ!!!』 「いだああぁっ!!! いたいいいぃーー!!! あたいのあたまがあぁぁぁーーー!!!」 削られたちるのが皿に盛られ、砂糖水が注がれる。砂糖水はゆっくりのものではないとのこと。 シャリシャリと気持ちい音がする。うーん、冷たくておいしい!! やぱりちるのは水に限るわね!! ブルーハワイなんて邪道よ、邪道!! サウナでさっぱりいい女になったので、昼寝することにする。 リラックスボックスへ移動する。 ここのリラックスボックスはゆっくりでできており、口の所から中に入る。 カプセルホテルを想像してもらえるとわかりやすい。 ゆっくりの皮のポヨンポヨン感が何とも言えず気持ちいい。 あっという間に眠りに落ちてしまう。 「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」 セットしていた目覚ましが鳴る。これはれいむでできている。まりさより少し音階が高い。 ささっとメイクし、次の取材へ向かう。 目指すは4階、『ナイトクラブ・ゆっくりしてもいいのよ!』である。 こちらは昔のキャバレーの雰囲気を残した大箱である。 在籍するホステスさんも年配の方が多く、ご老人の社交場といった感じである。 今回取材を申し込んだのは、ゆっくりホステスのぱちぇねえさんである。 ゆっくりとしてのゆん齢は公表されておらず、在籍年数は5年とゆっくりとしては最長期間を誇っている。 取材の場に指定されたボックス席に案内される。 「むきゅ!! じょせいがしゅざいにこられるなんて、めずらしいわね!! どうぞゆっくりしていってちょうだいね!!」 おしろいの中に顔を突っ込んだのかと言いたくなる程白い顔、血を啜った後の様な真っ赤な口紅を引いた ゆっくりがどんと待ち構えていた。ぱちぇねえさんだ。誰だ、こんな化粧をしてやっているのは? 「初めまして、月刊ゆっくりうぉーかー編集部のSです。今日はよろしくお願いします。」 「こちらこそよろしくね、おじょうさん!!」 「いきなりで申し訳ないんですけれども、この道に進まれた訳をお聞かせ下さいませんか?」 「あら、せっかちさんね。もっとゆっくりしなさいよ!! うーん、ぱちぇはなんだかおなかがすいたし、 のどもかわいたわねぇー」 「あっ、すいません。何でも好きなもの注文してくださって結構ですよ。」 「そう? なんだかさいそくしたみたいでわるいわね。 じゃあ、くだもののかんづめのもりあわせとひやしあめをいただこうかしら。」 「お酒の方は飲まれないんですか? あっ、私は焼酎水割りちるの多めで。」 「おさけさんもねえ、わかいころはよくのんだわ。でもねえ、さいきんめっきりよわくなったのよ!! もうぱちぇもとしなのよ!! もうすぐゆっくりしちゃうかもしれないわねぇ。」 「いやいや、まだまだお若いですよ!! ぱちぇさんは!! 赤ゆみたいなモチモチお肌ですよ!!」 「むきゅん、あなたおじょうずね!! おせじでもうれしいわよ!! そうそう、ぱちぇがどうしてこのおみせにおせわになってるかだったわね。 すこしながくなるかもしれないけど、いいの?」 「はい、構いません! 私自身も非常に興味のあることですから。」 私はレコーダーを取り出しセットする。 ここからの話は非常に長い!! 本当に長かった!!! ぱちぇさん、もうボケが始まっているに違いない!! きっと!! 要約する。 ぱちぇさんは、ありすとぱちゅりーの番から産まれた三女である。 姉ありすといっしょに京ゆー電車に乗り、ゆ治からゆー橋にやって来た。 姉ありすが、とかいはとかいはうるさいので一緒について来た。 最初はゆー阪城公園に住んでいた。しかし他のゆっくりに追われ、ゆー橋に戻ってきた。 ゆランゆトーのゴミ箱を漁っている時に、姉妹共々今の支配人にスカウトされた。 始めた頃は、右も左もわからない世界だったので毎日泣いてばかりだった。 どうすればお客が喜ぶかを勉強し、人気が出るようになった。 姉ありすは1匹の飼いゆっくりに見初められ、今はゆのおの山に住んでいる。 ぱちぇさんは、何度もいっしょにゆっくりしないかとアタックされたが、この仕事が好きで断った。 後悔することもあるが、たくさんのお客さんと話す毎日が楽しくて仕方ない。 現在はこのビルの3階の事務所に住んでいて、出勤するのは週に3回程。 仕事をしない日は、中ゆ島の図書館で本を読むか、講演に行くことが多いらしい。 「むきゅん、たしかにこのしごとはつらいことばかりよ!! でもね、ここにくるおきゃくさんは、ゆっくり、にんげん、りょうほうともゆっくりできていないのよ!! それをすこしでもゆっくりさせてあげること、それがとかいのけんじゃのしごとだと、ぱちぇはおもうのよ!! あっ、でももうすこしわかいおきゃくさんがふえてくれるといいわね!! ねんぱいのおきゃくさんばかりじゃ、せけんのはやりについていけなくなるのよねぇ。」 ぱちぇねえさんは缶詰の白桃を3回、みつまめの缶詰を追加で2回おかわりし、3時間じっくりと話してくれた。 「ぱちぇねえさん!! 次のお客さんがお待ちです。」 ボーイがぱちぇねえさんに耳打ちする。さすが売れっ子、出勤の日は予約で一杯だ。 「あらあら、ちょっとゆっくりしすぎちゃったわね。ごめんなさいね、ゆっくりおはなしできなくて! ほかのおきゃくさんがおまちになってるから、そろそろしつれいするわ!! またゆっくりしにきてね!! これをおわたししておくわ!!」 ぱちぇねえさんは、私に営業用の名刺をくれた。 「ありがとうございました、大変興味深いお話でした。また機会があれば、寄らせてもらいます。 ぱちぇねえさん、これからもお元気で。」 ぱちぇねえさんはボーイに抱かれ、次のお客の席へ移っていった。 ゆっくりとは思えない貫禄!! やはり人気なのには訳がある。今回の取材でよくわかった。 支払いを済ませてビルを出る。時刻は午後9時をちょっと過ぎた位だ。 ゆー橋駅には我が家へと帰るサラリーマンで溢れている。 飲み屋街には、朝見たおっさんがまだ飲んでいる。 その陰を野良ゆっくりが人に見つからないように跳ね回っている。 私も一杯飲んでいきたい……が 先程のぱちぇねえさんのおかげで取材費が空になってしまった。飛行機代もない。 今の時間ならまだ夜行バスがある。コンビニで缶ビールとめーりんでも買っていくか!! 私は環状線でゆー阪へ、そこから夜行バスでゆー京へと戻った。
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台車に乗せられた檻の中にいるのは10匹の胴体の無いゆっくりれみりゃ。 この最もメジャーな捕食種は、空を飛ぶことでゆっくりとしてはでたらめな速さで移動することが出来る。 その高い機動力と旺盛な食欲を武器に通常種を追いまわし、蹂躙する恐るべき存在。 「うー!うー!」 「ううーーー!」 「ぎゃおー!」 人語を話すことの出来ない彼女達は一見すると楽しそうな笑顔を浮かべながらもここを出せと訴えてくる。 そんな要求を適当に聞き流しつつれみりゃ達をゆっくり達の姿が見えるところまで連れてゆく。 白い牙を光らせて、いっそう元気良く鳴いた直後、れみりゃ達を檻から解き放った。 「うーうー!」「うーっ!」 「れれれ、れみりゃだあああああああ!?」 「れびりゃいやああああああ!」 これが本能のなせる業なのか、生気を失った瞳で怯えていたゆっくり達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ始める。 もはや絶望しきって微動だにしないのではないかとも思っていただけに、これは嬉しい誤算だった。 しばらく餌を与えていなかった10匹のれみりゃは涎を垂らしながら獲物めがけて一直線に飛んでゆく。 「うーうー!」 「や、やべでえええええええええ!?」 「ま、まりざああああああ!?」 最初に襲われたのは1匹の成体のゆっくりまりさ。 彼女の頭に食いついたれみりゃは本能の赴くままにその中身を吸い上げる。 そして、まりさが襲われたためについ足を止めて振り返ってしまったれいむ目掛けて2匹のれみりゃが牙を剥いた。 「ゆぐっ!いぢゃ、いだぃい!?やべでね!ゆっぐぢやべでね!?」 「「うーっ!」」 「ゆっぐ・・・やめでよぉ、ゆっぐぢぃ・・・!」 毒による理解不能の死や人間による不条理かつ一方的な暴力とはまた違った恐怖がゆっくり達を包み込む。 毒ならば、人間相手ならばもはや諦めるしかなかった。 しかし、れみりゃならば逃げれば死なずに済むかもしれない。 「ゆっぐぢやべでね!あでぃず、ゆっぐぢぢだいわ!?」 「おちびちゃんはまもるよ!ぷくうううううう!」 「「おかーしゃん!?」」 若いありすが喚く傍らで1匹のれいむが頬を膨らませてれみりゃを威嚇していた。 恐らく子どもを守るためなのだろうが、空を飛べるれみりゃに通常種が一対一で勝つ事は不可能。 1匹のれみりゃが彼女の頭に噛み付いている隙に、別のれみりゃが子ゆっくりに迫る。 「おぢゃああぢゃ・・・ぎゅ!?」 「うーうー!」 「ゆゆっ、おちびぢゃ!?やべでね、ゆっくぢはなれでね!?」 が、そうそう簡単に食うものと食われるもの関係が変わるほど世の中は甘くない。 何とか対抗策を考えようにもそれを仲間に話す前に食われ、よしんば話してもうまく実行できる保証も無い。 ましてや、こんな平坦で開けた場所でれみりゃを相手にするなど自然では愚の骨頂でしかない。 「ゆ゛っ・・・」「まぢざぁ・・・」 「おきゃ、ゆびぃ!?」 「おぢびぢゃあああ、ゆぎぃ!?」 「ごんなの!どかいはぢゃ、ないいいいい!」 そうこうしているうちにも全てのれみりゃが適当なゆっくりを見繕ったらしく、満面の笑みを浮かべて食事に取り掛かる。 彼女達は狡猾にも上から覆いかぶさるようにして食いついているので他のゆっくりから攻撃を受けにくい。 もっとも、幸いにも狙われなかったゆっくり達は離れたところで固まって怯えるばかりなのだが。 「ゆっぐ・・・れいぶのおぢびぢゃ・・・ゆ゛っ」 「ぢんぼおおおおおおおお!?まらっ!?まらっ!?」 「むっきゅううううううう!」「ゆげぇ・・・」 やがて最初に襲ったゆっくりを食べ終えたれみりゃ達は次の標的を探し始めた。 うーうー!と先ほどよりも力強い声で鳴きながらふらりふらりと飛び回る。 それを見たゆっくり達の中には立ち向かおうと頬を膨らませるものもいたが、大半は逃げ惑う。 「ごわいよおおおお!ゆぐっ、おみずざっ、やべっ・・・やべでぇ!?」 「おびずざん、どがいはぢゃないわああああ!?」 「ゆゆっ、やべでね!こっぢごないでね!?」 逃げ惑う最中に柵のあった場所の外側にはみ出してしまい、3匹ほどのゆっくりが落とし穴に落ちた。 それを見た他のゆっくり達は方向転換しようとするが、前が見えていないゆっくり達とれみりゃが行く手を阻む。 こうして思うように身動きが取れなくなったところに更にれみりゃが悠然とゆっくり達の頭にかじりついた。 「ゆ゛っ!や、やべでねぇ!?」 「ゆっぐりぃ!ゆっぐりぃ!?」 「ゆっくりやべでね!ゆっぐぢぢでね!?」 必死になって許しを請うゆっくり達。 しかし、れみりゃ達にそれに応じる理由がない以上、止めるはずがない。 それどころか、悲鳴を楽しむためにいっそう勢いづいてしまった。 「うーうー!」 「やべでー!でいむのあがぢゃああああん!?」 「おきゃああああぢゃあああああ、びぃ!?」 あえて死なない程度に衰弱させてから子どもを狙うれみりゃ達。 身動きひとつ取れない彼女達の前で、必死に助ける子ども達が無残にもれみりゃの中に消えてゆく。 そして、喪失感に絶望する親達は落とし穴の中の水へと落とされた。 「やめぢぇえええええ、びゅ!?」 「あぢずのおぢびぢゃああああああん!?」 「やべでね!おびずざんはゆっぐぢでぎないよ!?ゆぐぅぅぅ!?」 「わきゃりゃに゛ゃいよおおおおお!?」 流石は捕食種とでも言うべきだろうか。 自分とさほど変わらない大きさの成体を含めた相当の数のゆっくりがあっという間に消えてゆく。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん・・・いろんな味を楽しむかのように。 「ゆひぃ!こっち、ごないでね!」 「「おきゃあああぢゃあああ、まっぢぇえええええ!?」」 「もうやだ!れいむおかーさんやだあああああ!?」 中には恐怖のあまりに子どもを見捨てて逃げ出すものもいた。 しかし、そういった個体を追うときはあえて子ゆっくりを狙わず、とにかく成体の捕獲に全力を上げる。 恐らく、そうやってじっくり恐怖を味あわせることで甘味が増すことを理解しているのだ。 「ゆっぐ・・・もうやだ!おうぢがえる!?」 「「おきゃーしゃあああああん!」」 「うーっ!!」 こうして次々にゆっくり達の中身を吸い出し、あるいは面白半分に嬲り殺してゆく。 哀れな餌達はなすすべもなく食われ、時には食われることさえなく次々にはかない命を奪われる。 その、傍目には間抜けだが凄惨な宴は10匹のれみりゃが遊びつかれておりに戻ってくるまで続けられた。 「ゆゆっ!なんだかへんなこがいるよ!」 「ゆぅ・・・なんだかゆっくりできないよ・・・」 「りーぐるんるん!」 れみりゃが去って一息ついたゆっくり達に新しい脅威が差し向けられる。 その名もゆっくりりぐる。成体でも赤ゆっくりの半分ほどの大きさしかない希少種のゆっくりだ。 彼女達の特徴はその小ささと、古いゆっくりが持っていたとされる壁のぼりの能力を受け継いでいる点。 そして・・・・・・ 「ゆゆっ、やめてね!?れいむのおくちにはいら・・・ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!?」 「ゆ?・・・れ、れいむ?!」 「やめちぇね!れーみゅ、ゆぐっ!?」 何よりも特筆すべきは相手の体内に侵入し、中から食い破ると言う恐ろしい捕食方法だろう。 真っ先に標的にされたれいむ親子がりぐるの集団に進入を許し、内側から食い破られていた。 泡を吹き、白目を剥いた恐ろしい形相で呻きながらのた打ち回り、やがて赤れいむの皮を破ってりぐるが飛び出してきた。 「りーぐるんるん!」 「おくちをとじるよ!むん!」 「むーしゃむーしゃ!」 そう言ってまりさは思いっきり口を瞑った。 しかし、りぐるは口内で生成される微量の鬼胃酸でいとも容易く皮を破って体内への侵入を試みる。 結局、まりさはその拍子に声を上げてしまい、他のりぐるの口からの侵入を許してしまった。 「ゆぐっ!やべでね!まぢざ、おいぢ、ぢぢ・・・ぢ、ぢ・・・ゆ゛びぃ!?」 「りーぐるんるん!」 「ゆぅぅぅううう!そうだわ!」 その凄惨な光景に驚愕し、多くのゆっくりが逃げ惑う中、1匹のありすが敢然とりぐるに飛び掛った。 圧倒的な体格差に物を言わせてのボディプレス。 平地であることが幸いしたのか、りぐるはくぼみに身を隠して攻撃をかわすことが出来なかった。 「ゆゆっ!いっぴきやっつけたわ!」 「「「「りーぐるんるん!」」」」 「ゆゆっ!どおぢでー!まだいっばいいるよおおおおお!?」 が、解き放たれたゆっくりりぐるの数はおよそ100匹。 あっという間に取り囲まれてしまったありすは、わずかな隙にりぐるに侵入される。 こうなってしまえば後はただ食われるばかり。 「ゆ゛っ!いだっ、いだいいいいいい!?ごんなの、どかいはぢゃないわ!?」 「「「りーぐるんるん!」」」 「や゛べ・・・でぇ・・・」 またたく間にありすの柔らかい皮は外と内から溶かし、食いちぎられてみるも無残な姿になってしまう。 破れた皮からカスタードが漏れ出し、彼女がもはや助からないことを示している。 10秒後、中に侵入したりぐるが飛び出してきたときには、ありすはすでに息絶えていた。 「「「「「りーぐるんるん!」」」」」 「「「りーぐるんるん!」」」 「ゆうううう!ゆっくりしね!」 カサカサと地面を這いながら逃げ惑うゆっくり達に近づいて行くゆっくりりぐるの群れ。 衝動に任せて若いまりさがその群れの中に飛び込んで行くが、2匹ほど潰しただけで大半が健在。 今度はそのまりさに目を付けたらしく、彼女の周りをくるくる回りながら、歯と酸でじわじわと嬲る。 「ゆぐっ!いだいよ、やべでね?!」 「りーぐるんるん!」 「ゆぶぅ!やべでえええええ!?おぐぢさんはまりざのゆっぐぢぷれいずだよ!?」 が、必死の抵抗もむなしく、まりさもまた中と外から食い破られてずっとゆっくりしてしまった。 その後もりぐる達は今までと同じように集団からはなれた個体を襲う戦法を繰り返した。 その度に数を減らしながらも1匹1匹確実に食い散らかしてゆく。 「むきゅ・・・ここまでね。でも・・・!」 「「「りーぐるんる、びぃ!?」」」 「さあ、ぱちぇのおくちにはいってきなさい!」 集団の中にいてこそ力を発揮するはずのゆっくりぱちゅりーが意外な奮戦を見せていた。 どうやら彼女は現在のりぐるの戦法が最善のものでないことに気づき、身をもって仲間に戦い方を示しているようだ。 小さなりぐるがその力を遺憾なく発揮するのは一箇所に固まっている集団の中に潜り込んだその時である。 「む゛ぎゅ・・・」 「「りー・・・ぐ、るん・・・る・・・」」 「「「!!?」」」 何故かぱちぇを食い破って出てきた仲間が虫の息であることを知ったりぐる達は驚愕した。 1匹はぱちゅりーに食われ、もう1匹は彼女があらかじめ含んでいた土を彼女の中で被って痛手を負わされた。 平坦な場所で、死を覚悟して戦えば体の弱いぱちゅりーでさえも5匹は倒せる。 その事実がゆっくり達を励まし、りぐる達を恐怖のどん底へと陥れた。 「れいむ、おちびちゃんのためにがんばるよ!」 「まりさもゆっくりがんばるよ!」 「わかるよー」「ちーんっぽ!」 生き残ったゆっくり達の中でも勇敢な数匹がぱちゅりーの遺志を継いで、りぐる達めがけて飛び跳ねてゆく。 一方のりぐる達は一応抵抗するものの、先ほどまでの勢いは微塵もなく明らかに逃げ腰だった。 「ゆっくりふまれてね!」 「「ゆぎっ!?」」 「「「りーっぐるんるーん!?」」」 れいむの一撃で2匹のりぐるが潰され、続く2度目の踏みつけで更に1匹のりぐるが潰される。 りぐるの攻撃には先ほどまでのキレも統率の取れた動きもなく、それがさらにれいむ達を優位に立たせる。 こうして、たった1匹のれいむを倒すために最終的に9匹ものりぐるが犠牲になった。 「ゆーっ!ありすもいくわ!」 「むきゅ・・・ぱちぇもがんばるわ~」 「りーっぐるんるーーーーん!?」 更に続々と参戦するゆっくり達を前にりぐる達は完全に戦意を失って逃げ惑う。 が、必死の逃亡も逃げられない状況ではジリ貧を招くだけ。 1匹、また1匹と潰されながら徐々にその数を減らし、更に10匹ほどのゆっくりを道連れにりぐるは全滅した。 「ゆふぅ~ん、ゆうかすっきりしたいわ!」 「ゆゆっ!ゆうかだよ!?」 「ゆうかがたくさんいるよ!ゆっくりぃ?」 思った以上に不甲斐なかったりぐるの代わりに、今度は発情しているゆうかを20匹ほど差し向ける。 ゆっくりゆうか。何故か畑を耕すことを好むゆっくりで、一般に捕食種とされている。 しかし、正当防衛でもない限り積極的に他のゆっくりを食べようとしない彼女の捕食種たる所以はあまり知られていない。 「ゆっくりしていってね!ねえ、まりさ、ゆうかとすっきりしましょ?」 「ゆゆっ!?ま、まりさは・・・ゆ、ゆっくりぃ・・・?!」 「まりさのほっぺ、とってもすべすべでゆっくりできるわ!」 本来ここまで積極的な種ではないのだが、すでに発情しているがゆえにすぐにすっきりーを求めるゆっくりゆうか。 まりさはその申し出にためらうが、ゆうか種は総じて美ゆっくりとされている。 このゆっくり出来ない地獄の中でそんなゆうかに積極的に迫られて抗うことなど出来るはずもなかった。 「ゆぅ~ん!ゆ、ゆうかのほっぺもとってもゆっくりしてるよ!」 「す~りす~り」 「す~りす~り・・・ゆっくり~」 ゆうかの美貌を間近で目の当たりにしたまりさはもう彼女の虜。 他のゆっくりの目もはばからずにすりすりに興じる彼女の頬はとてもだらしなく緩んでいる。 今、柵?の中ではそんな痴態が差し向けられたゆうかと同じ数だけ繰り広げられていた。 「ゆぅ~ん、ゆうかおーねちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「れいむもとってもゆっくりしてるわ!す~りす~り」 「ゆぅぅうん・・・とってもとかいはだわ!」 最初は軽いスキンシップ。 その行為を徐々に激しくしていくと、頬をこすり付けあう2匹の体から汗のようなものが噴き出す。 汗のようなものをお互いの頬に練りこむように、いっそう激しく頬を擦り付ける。 「ゆ~ん、ゆふん・・・ゆぅぅぅうん・・・」 「ゆぅ・・・まりさぁ~、ゆっくりぃ~♪」 やがて、2匹の頬が赤く染まり、体温も若干上がって本格的にすっきりーの体勢に入る。 と言っても人間の目には今までの頬ずりを体が湿った上体で続けているだけにしか見えないのだが。 それでも2匹にとっては情熱的な愛の舞踏であることに違いはなく・・・お互い、徐々に昂ぶって行く。 「ゆっ!まりさぁ・・・ゆっくりぃいいぃぃい!」 「ゆぅぅぅぅうん・・・ゆうかぁあぁぁ・・・!」 「「すっきりー」」 お互いのゆっくりした気持ちが最高潮に達した瞬間、同時にすっきり宣言をした。 直後、まりさの額からにょきにょきと茎が生え、そこにいずれ赤ゆっくりとなる小さな実が実る。 他のゆっくり達もゆうかでないほうの種がにんっしんっしたらしく、それぞれ額に赤ゆっくりを実らせていた。 「ゆゆ~ん・・・すごくゆっくりしたあかちゃんだよ~♪」 「ゆうかとありすのとかいはなあかちゃんだわ!」 「みんなとってもゆっくりしてるね!」 本人達ばかりでなく、周りに居た他のゆっくり達も子どもの誕生を祝福する。 こんなゆっくり出来ない場所でようやく見つけたゆっくりをかみ締め、分かち合うように・・・。 後のことを考えていないのか、考えたくないだけなのか、ただ目の前のゆっくり出来るものを眺めながら微笑んでいる。 「ゆぅ・・・ゆうか、みんながみてるよ!ちゅっちゅははずかしいよぉ」 すでに公開交尾をしているにも関わらずゆうかにキスを迫られて照れる彼女のつがい達。 しかし、その表情はまんざらでもなくあっさりとゆうかのキスもといちゅっちゅを受け入れた。 「~~~~~~~っ!!?」 「おああああああ!?」 「うあ゛あ゛ーーーーっ!?」 直後、ゆうかと口づけを交わしたゆっくりがろれつの回っていない悲鳴を上げた。 当のゆうかは涼しい顔をしてつがいから引きちぎった舌を地面にはき捨てると、再びパートナーに擦り寄る。 そして、茎を折らないように彼女達をひっくり返すと、底部を容赦なく食いちぎり始めた。 「あ゛あ゛あ゛・・・!?」 「う゛い゛い゛いい゛ぃ!?」 「ゆゆゆっ!や、やめてあげてね!いたがってるよ!?」 周囲のゆっくりはその凶行を必死に止めようとするがゆうかは一向に止めようとしない。 何匹かは力づく止めようとしたが、ゆうかの方が圧倒的に身体能力が高くそれも叶わなかった。 そうこうしているうちにも茎を生やしたゆっくり達の底部は二度と使い物にならないほどに傷つけられていった。 「う゛う゛・・・うい゛ッ!?」 「・・・ゆっくりかんせいしたわ」 「ゆえーん、ぎょわいよおおおお!?」 今や周囲のゆっくり達はゆうかに近づこうとすらせず、遠巻きから様子を伺いながら怯えるばかり。 が、ゆうかは舌と底部を失いただの鉢植えとなってしまったつがいを眺めながら満足げに笑っている。 それから傷を付けすぎて中身が漏れ出している場所がないかを念入りに確認し終えると、大事な鉢植えに頬ずりをした。 「ゆうかのあかちゃん・・・ゆっくりうまれてね」 総勢20匹、もとい20個のゆっくり植木鉢というのは中々の壮観で、虐待家にとっては悪くない光景だろう。 しかし、今回の目的はあくまで虐殺。そんな有様になったゆっくりを生かして嬲るというのは目的外。 と言うわけで、全力で植木鉢どものそばまで駆け寄ると彼女達を踏み潰し、放り投げ、水の中に落として処分した。 「ゆゆっ、ゆうかのあかちゃ・・・ゆ゛っ!?」 「なにするの、ゆっくりやめて・・・ぎぃ!?」 ついでに文句をたれてきたゆうかも処分し、いつの間にやら100匹以下にまでを数を減らしたゆっくり達と向かい合った。 (その5へ)
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「う~、ぷっでぃ~んおいしいど~♪」 「むきゅ!このけんきゅうしりょうはきょうみぶかいわ!」 「むこうであそぶんだぜ!」 「ゆふ~」 好物に舌鼓を打つもの、ただの広告チラシを百科事典と勘違いするもの、家においてある遊具で遊ぶもの、何もせずただぼーっとしているだけのもの。 とある家の一室でみな思い思いの方法でゆっくりしている。 彼女達はこの家の主である青年の飼いゆっくりだ。 しかし普通のゆっくりとは違う部分がある。 それはこのゆっくり達がすべて体つきの固体だからだ この家の主である青年はゆっくりのコレクターだ。 ただのコレクターではなく、体つきのゆっくり専門とするコレクターである。 「ゆ!おにいさん!まりさもあまあまたべたいよ!もってきてね!」 「はいはい、わかったよ」 体つきまりさの尊大な口調にもニコニコ顔で請け負う青年。 彼はここのゆっくり達がゆっくりする事に関して手間を惜しまない。 それが自らのコレクションを最高品質に保つもっともよい手段だと分かっているからだ。 ましてそれが希少種を通り越して奇形種とまで言えるようなまりさの要求であればなおさらだ。 いそいそと台所に向かう青年。 自慢のコレクションのすばらしさをかみ締めながらプリンを用意した。 「ああそうそう」 「むきゅ?」 青年は読めもしないチラシを見ていたぱちゅりーを抱えると楽園とも呼べるその部屋を後にした。 所変わってここは家の地下室。 ここにも体つきのゆっくり達がいる。 しかしその様は先ほどと同じ家とはとても思えないものだ。 青年はとある特殊な用事のためにその部屋へ足を踏み入れた。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「ゆ!おじさん!れいむをはなしてね!」 青年が入るなり罵声が飛び交った。 数対の体つきゆっくり達が木でできた簡素なベッドに固定されオレンジジュースをチューブで与えられている。 ここはゆっくり達の養殖場だ。 体つきゆっくりの子は比較的体つきとなる可能性が高いため不要になった体つきゆっくりを養殖用の家畜としてここに置いている。 彼は最も質の高い個体が一種につき一体いればOKという主義だった。 「うああああ~!!!うばでるどおおおおお!!!!」 今まさに一匹のれみりゃが子を産もうとしている。 体つきは動物型にんっしんが多いため時間も手間もかかる。 しかし質のいい固体を生ませるには必要な手間だ。 犬や馬などと同じくゆっくりもやはり優秀な固体からは優秀な子が生まれやすいのだ。 すぽーんとれみりゃの下膨れから赤ゆっくり達が産み落とされる。 「う~…、れみりゃのあかちゃんだどぉ…、かわいいどぉ…」 「う~♪まんまぁ~♪」 「どれどれ。…はあ」 産み落とされた赤れみりゃは早速親に甘えようとしている。 親のれみりゃは出産の消耗で元気が無いものの素直に子供の誕生を喜んでいる。 しかし青年は産み落とされた子を見るなり落胆のため息を漏らした。 勢いよく出てきた時点で分かりきっていたことだがこの赤れみりゃは体無しだ。 「う?うべっ!!!」 それを確認すると青年はその赤れみりゃを勢いよく踏み潰した。 その光景に一瞬何が起きたか分からぬ表情をするれみりゃ。 しかしすぐにその光景の意味するところを悟り大声で騒ぎ出す。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!でびりゃのあ゛がぢゃんがあ゛ああ゛う゛う゛っ!!!!!!」 しかしその声も途中で掻き消える、なにせ次の子が生まれようとしているのだ。 結局生まれてきた子はすべて体無しであった。 無論すべて青年によって踏み潰されている。 「あ…ああ…れみりゃのあかちゃん…」 もはや悲しみを叫ぶ気力も無いれみりゃを無視し先ほどから呆然とその光景を見ていたぱちゅりーに振り返る。 ぱちゅりーには分からない。 なぜあの優しい青年がこんな残酷なことをするのか分からない。 なぜ自分がここに連れてこられたのか分からない。 なぜ自分を抱いている青年が他のゆっくり達と同じようなベッドに自分を固定しているのか分からない。 なぜ青年が自分にチューブを突き刺さすのか分からない。 さっきまで天国のような場所にいたのに。 さっきまでごほんを読んでとてもゆっくりしていたのに。 ぱちゅりーが考えているうちに作業は終わった。 もはや他の母体と変わらぬ有様に自分がどういう事態になったのかようやく理解する。 「むぎゅぅ!!!!はなしてぇ!!!!」 大声で懇願するが青年は耳一つ貸さない。 今まで何か言えば必ず聞いてくれた青年が一切話を聞かない。 その事実はぱちゅりーを大きく打ちのめした。 青年はというと先ほどとは別のぱちゅりーの前にいた。 「まったく何度も死産しやがって、もう代わりがいるからお前はいらないよ、この不良品」 「む、むぎゅううううぶべら!!」 青年は騒ぐぱちゅりーを踏み潰す。 加工所に持っていけばそれなりに高く売れるのだが独占してこそのコレクション。 彼は売ってしまうくらいなら自分の手で殺すことこそ愛情であるという考えなのだった。 死体は繁殖用のありすが食べてしまうだろう。 用もなくなったため青年は部屋から出ていく。 「むぎゅうううううううううううううう!!!!!!」 一体のぱちゅりーの悲痛な叫び声を残して。 さて先ほどの青年はまた別の場所を訪れていた。 「むきゅ!おにいさんこんにちは!」 「ぷっでぃ~んをよこすんだどぉ~♪」 「れいみゅはあまあまたべちゃいよ!もっちぇきちぇね!」 ここは子ゆっくりを育てる場だ。 無論すべて体つきである。 この中から青年のお眼鏡にかなったものは晴れてコレクション入り、この家で最高の扱いを受けることとなる。 逆にお眼鏡にかなわなかったものは先ほどの養殖場行きか捕食種達の餌となる。 青年は子ゆっくり達に餌を与えるとコレクション入りを果たしたぱちゅりーを連れて行く。 「むきゅ?みんなごはんたべてるのにどおしてぱちゅりーだけつれていくの?ぱちゅりーもごはんたべたいよ」 「ああすまない、別の場所で食べさせてあげるからご飯は少しまってね」 そう言いながら出口へと向かう。 他の子ゆっくり達は出された餌に群がっている。 最近生まれた連中は質もよくないし落第が多そうだ。 「おにいさんもういっちゃうの?ゆっくりしていってね!」 不意にそんな声がかけられる。 子まりさだ。 この子まりさは性格も温和で髪質も良好、肌も質がよくで順調に育てばすぐにでもコレクション入りを果たすだろう。 「お兄さんはまだやることがあるからね、後また来るよ」 「ゆっくりりかいしたよ!まりさはゆっくりまってるね!」 そんな言葉をかけながら自分も餌の元へ向かう。 数日後この子まりさの代わりに生意気な体つきまりさが天国から地獄へ落とされたのは言うまでもない。 この青年は後に新種のゆっくりの発見で世間をにぎわせることとなる。 それでも変わらず彼は自慢のコレクション達とゆっくりし続けた。 彼は本当にゆっくり達を愛していた。 ──────────────────────────────── 過去書いたもの 奇跡のゆっくりプレイス 醜い男 生きるための選択 このSSに感想を付ける
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ペットショップネタ 読みづらいのはいつものこと れいむはれいむお母さんから生まれた。とてもゆっくりしていてお歌も上手だった。 お姉ちゃんや妹もたくさんいてみんなと遊んだり、ご飯を食べたりするととてもゆっくりできた。 このままずっとゆっくりしていたい。 でもそれは突然終わりを告げた。 朝になってれいむが目を覚ましてお決まりの「ゆっくりしていってね!」というとてもゆっくりできる挨拶をすると 近くにいた姉妹たちも目を覚まして「ゆっくりしていってね!」を返す。 でもその日はいつもと違い、お母さんの「ゆっくりしていってね!」はなく、辺りを見回してもお母さんはいなかった。 頑張って探しても見つからない。れいむは寂しくて、ゆっくりできなくて泣いてしまった。 その時、お兄さんがお部屋に入ってきた。いつもれいむたちにゆっくりできるご飯をくれる人間さんのお兄さん。 お兄さんならお母さんがどこにいるか知ってるかもしれないと思い、れいむはお兄さんに尋ねた。 「れいむたちはこれからもっとゆっくりするために、お母さんから離れてここで暮らすんだよ」 そんなことはない、お母さんと一緒にいればゆっくりできる。だからお母さんに会いたい。そうお兄さんに伝えても 聞いてくれなかった。 「あっちを見てご覧」 お兄さんが指差した方にはれいむたちよりも大きいれいむが「ゆっくりしていってね!」と言っていた。 だがそれはれいむたちにむかって言った言葉ではない。そのれいむは透明な壁さんの向こうにいる人間さんに必死に 「ゆっくりしていってね!」と言いながらぴょんぴょん跳ねていた。その様子はゆっくりできているとは思えなかった。 お兄さんはあのれいむを指差しながら 「ゆっくりできるゆっくりには飼い主さんが現れてもっとゆっくりすることができるんだ。だから みんなはゆっくりできている姿を見せてあげてね」 もっとゆっくりできる、その言葉にれいむは敏感に反応した。きっとたくさんのあまあまが食べられる、 ぽかぽかしてふわふわなベッドがある、そして綺麗なゆっくりと一緒になって赤ちゃんをたくさん産んで もっともっとゆっくりできるに違いない。れいむは目を輝かせバラ色の生活に胸を躍らせた。 もっとゆっくりしたい、そうと決まったられいむは我先にと透明な壁さんの向こうにいる人間さんに れいむがいかにゆっくりしているかを教えなければと、れいむは透明な壁さんの近くで一生懸命 「ゆっくりしていってね!」と言った。 お兄さんは大きいれいむを抱えてお部屋を出て行った。きっとあのれいむは飼い主さんが現れたのだ。 次はれいむの番だよ!「ゆっくりしていってね!」 月日は流れ、れいむは今日も向こうにいる人間さんに「ゆっくりしていってね!」と挨拶をする。 周りにはれいむのお姉ちゃんも妹も誰一人としていない。みんないなくなってしまった。きっと今頃は 飼い主さんと一緒にゆっくりしているに違いない。でもまだれいむの飼い主さんは現れない。 「ゆっくりしすぎだよ……れいむもゆっくりしたいよ……」 もう何回寝たかもわからない。それでも飼い主さんは現れない。れいむはこんなにゆっくりしているのに、 どうしてれいむにだけ飼い主さんが来てくれないの?お兄さんに尋ねてもわからないと言われた。 でも今日はいつもと違った。お兄さんがご飯ではなく、たくさんの小さいれいむたちを抱えてきた。 みんな眠っていてとてもゆっくりしている。でもれいむには関係ない。早く飼い主さん来てね! 透明な壁さんの向こうの人間さんにれいむがゆっくりしていることを教えてあげることに集中する。 やがて小さいれいむたちが目を覚ます。関係ない。「ゆっくりしていってね!」 お兄さんが何か言っている。関係ない。「ゆっくりしていってね!」 小さいれいむたちが透明な壁さんの向こうの人間さんに「ゆっくりしていってね!」と言い始める。 れいむも負けじと叫んだ。「ゆっくりしていってね!!」 その時すっとれいむの体が浮いた。「おそらをとんでるみたい!」と自然と声が出た。 気付くとお兄さんに抱きかかえられていた。しばらく考えて思い至った。 やった!ついにれいむにも飼い主さんが現れたんだ!れいむは舞い上がった。 でもゆっくりしすぎだよ!だからその分、たくさんゆっくりしようと考えた。 まず何をしようか、たくさんのあまあまさんが食べたい。その次にふわふわしたベッドで お昼寝しよう。そしてとてもゆっくりしたゆっくりと一緒に赤ちゃんを作ってゆっくりするんだ。 れいむはこれからの生活を思い、喜びに満ち溢れていた。 そしてさっきとは違うお部屋に入った。まず暗い、なんだかゆっくりできない気がする。 「ご飯だよー」 「ゆゆっ?ごはんさんはいらないよ!かいぬしさんのところにつれていってね!」 「あまあまだよーいらないのー?」 あまあま!欲しい!きっとお兄さんはれいむのお祝いのためにあまあまをくれるんだ! それならそうと言ってくれればいいのに、「ちょうだいね!」と言おうとして固まった。 「うーうー♪あまあまー♪」 初めて聞く声なのにとてもゆっくりできない声。その声はれいむよりも上にある木のおうちからした。 そしてそこからピンクのお帽子、ニコニコと笑った顔、そして後ろにはゆっくりしてない黒い羽。 「れ、れ、れみりゃだー!!!」 自然と口から出た。はじめて見るはずなのに。でも体は勝手に動いた。お兄さんの腕から飛び降りて 部屋の隅に逃げる。 「あのれいむ食べていいよ」 「なにいっでるのおおおお!?」 「うー!」 れみりゃがこっちに来た。逃げなきゃ、さっき入ってきた壁さんに急いで跳ねた。でも開かなかった。 「どおじであがないのおおおお!?」 「うーうー」 「ごっぢごないでねっ!ゆっぐりじででっでね!?ゆっぐりじででっでね!?」 ゆっくりしていってね、これでゆっくりしないはずがない。でもれみりゃは止まらなかった。 「ぎゃおーたーべちゃーうぞー♪」 「おにいざんだずげでええええ!!ゆぎゃああああ!!」 お兄さん、いつもご飯を持ってきてくれるお兄さんなら助けてくれるはず。でもお兄さんは何も答えなかった。 れみりゃがれいむに噛み付いた。痛い、ものすごく痛い。こんなこと生まれてから一度もなかった。気が狂いそうだった。 「がいぬじざああああんんんん!!れいむをゆっぐりざぜでええええ!!」 飼い主さんに助けを求めた。飼い主さんはれいむをゆっくりさせてくれるんだ。呼べば必ず来てくれるはずだ。 だが来なかった。 「どおじでええええ!?れいむはごんなにゆっぐりじでるのにいいいい!!」 ゆっくりしてるれいむがゆっくりできないはずがない。なのにどうしてこんな目にあわなければならない。 れいむはこれからたくさんのあまあまを食べて、たっぷり寝て、綺麗なゆっくりと一緒になって、 それから、それから……なんだっけ?もう思い出せない。餡子さんいっぱい吸われちゃったせいかな。 「もっと…ゆっくり…したかった…」 れいむはゆっくりできないまま、絶望と苦痛の底に沈んだ。残ったのは何の表情も浮かず、 何も語らない皮だけであった。 れいむの餡子を全部吸い尽くしたれみりゃはご満悦な表情でれいむの成れの果てから口を離し、 巣である木箱の中へと戻っていった。これだけたくさん食べたのだからもう食べられないのだろう。 まだ食べてもらわなければならないゆっくりはいるのだが次の食事まで待つことにしよう。 このれみりゃは売り物にならないれみりゃだった。一緒に生まれた姉妹たちはゆっくり以外のものも 喜んで食べていた。だがこのれみりゃだけはゆっくり以外を口にしようとしない。ゆっくりを毎回の 食事にしていては食費でとんでもないことになる。ペットとしては失格だった。 だが幸いなことにうちはペットショップであり、廃棄されるゆっくりは毎日のようにでる。 これはあまり綺麗ではないから、これは声が悪いから、これは帽子の形が悪いから。しかし捨てるには 店のイメージダウンになるから普通のゴミに捨てるわけにはいかない。しかたなく業者に頼むが 金がかかって仕方ない。そこでこのれみりゃに処分してもらっているのだ。 あのれいむは子ゆっくりとして売り出した内の一匹だったがその中でも群を抜いて駄目なやつだった。 なんと言うか他人を見下すような態度を取っていたのだ。しかもそれを自覚していない。 こんなのでも欲しがる人はいるかもしれないと思ったのだがやっぱり駄目だった。 ゆっくりしたいという気持ちが面に出すぎていてゆっくりさせることができていなかったのだ。 ただ飯食いの役立たずだったな、と思うがパチンコで負けたと思えばそこまで懐は痛くない。 部屋に箱を持ってきて中身を取り出す。今日追加した子ゆっくりの中で駄目だと思ったのを 抜き出してれみりゃに食べてもらうためだ。腹が減れば勝手に食べてくれるだろう。 「ゆっくりしていってね!」 声をかけてやると皆一斉に「ゆっくりしていってね!」と返す。 残り数時間の生だ。最後までゆっくりするといい。扉を閉めてその部屋を後にした。 終わり ペットショップは全部が全部売れてくれるわけではないのです。 じゃあ売れ残りはどうなるのか?などと考えて書いてみました。微妙。 『オマケ』でした。 このSSに感想をつける
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前 「おかあさん、だいすき!」 ――ああ、これは娘の声だ。 目の前をぴょんぴょん飛び跳ねている赤ちゃんゆっくり霊夢は、目の中に入れても痛くないほど可愛い存在だ。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 それが、七人。 皆、元気があって、頭も良くて、何よりすごくゆっくりしている。 まりさは、それだけが嬉しかった。 まりさは五人姉妹の末っ子として誕生した。 父はゆっくり魔理沙、母はゆっくり霊夢。 自分以外の姉妹の種族はゆっくり霊夢種。 自分だけがゆっくり魔理沙種。 だけど、家族皆仲の良い、本当にゆっくりした家族だった。 だが、その生活は一変する。 おうちが胴体付きのゆっくりれみりゃに襲われたのだ。 すると父親であるゆっくり魔理沙は、家族を犠牲にして逃げ出した。 最低のゴミクズだった。 幸いにも、ゆっくりれみりゃはまりさたちを無視し、家族の中で一番太っていて美味しそうなゆっくり魔理沙を追いかけていった。 家族は全滅の危機を逃れた。 ゆっくり魔理沙がどうなったかは、誰も知らない。 ただ、近くで帽子だけが見つかったから、きっと死んだのだろう。 もし生きてまりさたちの前に現れたとしても、帽子がないから父親だと認識出来なかっただろうが。 そんなことがあって以来、まりさは姉妹たちにいじめられるようになった。 まりさが家族を捨てて逃げ出したゆっくり魔理沙と同じ種族だから、理由はそれだけだった。 母はそれに気付いていたようだったが、止めることはしなかった。 それどころか、あからさまに食事の量を減らされるようになった。 少ないと文句を言うと、末っ子で一番身体が小さいんだから我慢しろと逆に怒られた。 なんでまりさがこんな目に合わなくちゃいけないの? まりさは酷く悲しかった。 そして、もし自分が親になることがあれば、絶対に、何があろうとも、家族だけは守ろう。 そう誓った。 目の前を、七人のゆっくりが飛び跳ねている。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 そのうちの一匹が、突然眼前から姿を消した。 「……ゆっ!?」 慌てて周囲を見渡す。すると、遠く離れたところに、黒い霧のようなものの中に引っ張り込まれている赤ちゃんの姿があった。 「おかあさん、たすけてー!」 赤ちゃんが泣いている。 急いで助けないと。 だって、まりさはお母さんなんだから。 あのゴミクズの父親とは違う、ちゃんと子供を守るお母さんなんだから…… でも、あと一歩というところで、黒い霧は子供をすっぽりと飲み込んでしまい、そのまま掻き消えてしまった。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 まりさは悲しくて咽び泣いた。 ふと、気配を感じて後ろを振り向く。 するとそこには、残り六人になった姉妹たちが、感情のない目でまりさを見上げていた。 「み、みんな……」 「どうしてころしたの?」 一人のゆっくりが、ぽつりと呟いた。 「ま、まりさはころしてないよ!?」 「うそだよ。ほら、うしろをみて」 背後を振り向く。 するとそこには、先程消えてなくなってしまった赤ちゃんの無残な死体が転がっていた。 「あ、あがぢゃぁぁぁぁぁぁん!!?」 「れいむたちのいもうとをころすなんてひどいおやだね」 「ゆっくりできないよ」 「ゆっくりできないおかあさんはゆっくりしんでね」 「や゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛ないでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!!」 可愛い子供に罵られ、まりさは慟哭の声を上げた。 違う。 まりさはやっていない。 やったのは、あの黒い霧だ。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは…… 「この後に及んで、まだ言い訳か」 突然、どこからかそんな声が聞こえた。 そして、まりさの意識は薄れていった。 「ねえ、お兄さん……」 「ん? どうした?」 最後の赤ちゃんゆっくり霊夢が死んで、数時間が経った。 未だに夏の暑さが続く気怠い昼を迎え、少しでもスタミナが付くようにと知人の夜雀が経営している屋台で購入したまま保存してあった八目鰻を食べていると、ペットのゆっくり霊夢がおずおずといった様子で話しかけてきた。 「まりさ、そろそろ許してあげてほしいよ……」 「なんだ、またその話か」 おかずの野菜を食みつつ、俺はぴしゃりとゆっくり霊夢の進言を跳ね除けた。 「駄目だ駄目だ。許してやるわけにはいかん」 「でも……」 「あのな、ゆっくり霊夢」 箸の先をぴしっとゆっくり霊夢に突き付ける。 「悪いことしちゃいけないってのは、知ってるだろ?」 「知ってるけど……」 「俺はな、人間や妖怪、ゆっくりに関わらず、悪いことしたやつは大嫌いなんだ。悪いことをするやつには当然、裁きが与えられる」 「ゆ……」 「あのゆっくり魔理沙たちは悪いことをした。だから、あんな仕打ちにあった。当然の結果だ」 ゆっくり霊夢は納得しかねる、といった顔をする。 言いたいことは分かるがやりすぎだ、そう言いたいのだろう。 だけど俺は気付かなかったフリをして、食事を進めることにした。 確かにあれは、どう考えてもやりすぎだった。 何故なら、八割以上が俺の趣味だったから。 『涙目で必死なゆっくりが見たい』 そのために、俺はあらゆる手段を尽くした。 そして、目論見は成功したと言って良い。 あの時間は夢のような時間だった。願わくば、もっかいやってみたい、とも。 ただ、そのためにはまた悪いゆっくりを捕まえなければならない。 流石に善良なゆっくりをいじめて悦に浸れるほど、罪悪感の欠片も持っていない人間ではないんだ、俺は。 いじめというのはやってはいけない行為。 それをやるからには、正当な理由が必要とされる。 だから俺は、悪いゆっくりしかいじめない。 元々、ゆっくりは可愛いと思ってる人間だ。 あいつらがきちんと礼儀良くしていたのなら、俺は大層歓迎していたことだろう。 だから、悪いのはあっち。 俺は悪くない、うん。 偽善者なのは分かってるよ。 きっと地獄行きだろうね。 でもゆっくりいじりは止めない俺。 「ゆっくり霊夢も悪いことするなよ。もし悪いことしたら、『ゆっくり出来ないようにする』からな」 「ゆっ!?」 ゆっくり出来ないようにする。 それはゆっくり霊夢のトラウマを抉る禁句だ。 かつて悪いことをしたせいで、地獄のような苦しみを体験した一週間。 それを思い出し、ゆっくり霊夢はぶるぶる震えだした。 「れ、れいむは悪いことなんてしないよ! きちんとゆっくりしてるよ!?」 「分かってるよ。可愛いなぁ、ゆっくり霊夢は」 優しくゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は複雑そうに微笑んだ。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 だが、目を覚ましたという表現が正しいのかどうか、ゆっくり魔理沙には判断がつかない。 そこは暗かった。 星明りも届かぬ夜の世界、それよりも更に深い暗闇が身を包んでいる。 そして、今までゆっくり魔理沙が味わっていた圧迫感が続いていた。 自分はまた閉じ込められたようだ。 ここはどこだろう。 確か、自分はお兄さんに、自分を殺して欲しいと頼んで…… そこからの記憶が定かではない。 あの後、自分はどうしたんだっけ? 「……」 思い出そうとして、面倒になったので止めた。 もう、どうでもいい。 大好きだった赤ちゃんを守れなかった。 原因は、自分自身。 自分が赤ちゃんを殺したのも同然。 これから先、例え生きて森に帰れたとしても、心の底からゆっくりすることなんて出来ないだろう。 なら、もういい。 ゆっくりしないまま、死が訪れるのを待つだけだ…… ―――― 「?」 右隣から、何者かの息遣いが聞こえる。 生きることに億劫になったゆっくり魔理沙だったが、疑問に無関心になったわけではない。 純粋な興味につられ、右を振り向こうとして、 「……ゆ……」 振り向けない。 思ったより自分を包む箱(?)は狭く、身動きが取れなかった。 ようやく気付いたが、息苦しさも今までより遥かにキツい。 仕方なく、ゆっくり魔理沙は唯一自由に動かせる視線だけを右に移した。 するとそこには、 「……ぅー……ぅー……」 「!!?」 眠りこけるゆっくりれみりゃの姿があった。 先刻、自分の子供を無惨に殺害したゆっくりれみりゃと同種と認識。 だが復讐の炎が燃え上がることはなく、逆に本能的な恐怖が瞬時に湧き上がり、ゆっくり魔理沙は先程まで死が訪れるのを待っていた自分を忘れて悲鳴を上げた。 か細い声が風に乗って耳まで届いたので、俺は腰を上げた。 ようやくゆっくり魔理沙がお目覚めらしい。 妙に元気の無くなってしまったゆっくり霊夢を残し、玄関から庭に出る。 縁側なんて洒落たものは存在しない。 そもそもこの家自体借金して建ててもらったもので、未だ返済は終わっていない。 返済するためには働く必要がある。 働けば時間がなくなり、ゆっくりをいぢる機会が減ってしまう。 これでは俺の心が満たされない。 この幻想郷の何処かには日々の全てをゆっくりいじめに費やしている人間がいるらしいが、どうやって彼らは日々の時間と生活費を同時に捻出しているのだろうか。 俺も噂に聞いた幸せを呼ぶチェンジリングのゆっくりでも探してみようかねぇ…… などと取り留めの無いことを考えているうちに庭に到着。 そこには、地面に不自然に刺さった竹が一本、異様な存在感を放っていた。 俺はその竹の真上に陣取り、竹穴に耳を近づけた。 すると、 「いだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざをだべな゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 待ちわびたゆっくり魔理沙の悲鳴が。 俺が想像していた通り、ゆっくりれみりゃに身体を齧られたようだな。 俺はにやにや笑いを隠すことなく、竹の中に声を響かせる。 「おーい、ゆっくり魔理沙ー」 「ゆ゛っ!?」 ギクリと身を強張らせたような声。 だがすぐに痛みが戻って来たのか、穴から涙声が返ってきた。 「おね゛がい゛じまずっ、ま゛りざをだじでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ!!!」 「死にたいんじゃなかったのか?」 「い゛だいのや゛だぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!! ごろ゛ずん゛な゛ら゛はやぐごろ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなこと言わずに、ゆっくりしていけよ」 「ごれじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 顔が見れないのは少々残念だが、簡単に想像は付くのでまずは満足。 装置は完全に機能しているようだ。 俺は二つの透明な箱を用意し、片方にゆっくり魔理沙、片方にゆっくりれみりゃを入れた。 二つの箱は、少し位置がずれるように連結。ゆっくりれみりゃの口が丁度ゆっくり魔理沙の頬の部分に当たっている。 そして、その部分の壁に穴を開け、排除。 ゆっくりれみりゃの入っている箱は大きくてゆとりがあるが、ゆっくり魔理沙の入っている箱はかなり狭いので、どうしても隙間である穴から頬が押し出てしまう。 つまり、頬がゆっくりれみりゃの口の部分に侵入する。 だから、ゆっくりれみりゃはゆっくり魔理沙の頬『だけ』を齧ることが出来、完全に食べることは出来ない。 そしてゆっくり魔理沙を入れた箱の天井に更に穴を開け、そこに空気穴兼言語伝達用の竹(デカい)をセット。 ちなみにゆっくり魔理沙はこの竹穴が丁度口の部分になるよう位置を調節してある。人間でいうなら仰向けの状態だ。 口の部分は不用意に閉じられないよう、鉤で広げたまま固定。 これで全ての準備は完了。 俺はこの装置を重力で餡子が漏れ出ない程度に斜めにして地中に埋め、二匹が起きるのを待っていたのだった。 「は、はやぐごろじでよぉぉぉぉ……はやぐ、てんごくのあがぢゃんだぢのどごろに……」 ゆっくり魔理沙が少し落ち着いた様子で懇願してくる。 どうやら、食べられる部分の頬を全て齧りとられてしまったようだった。 今頃、ご飯が全然足りないゆっくりれみりゃが不満気にうーうー唸っているのだろう。 「まぁまぁ、その前に食事と行こうじゃないか」 俺は懐に用意してあったオレンジジュースを取り出し、竹の中に流し込んだ。 ただのオレンジジュースではない。 永淋さん特性のゆっくり回復促進剤を混ぜられたジュースだ。 「ゆぐぐぐっ!!?」 突然振ってきた液体に驚いた様子のゆっくり魔理沙の声。 だが口は開かれたまま固定してあるので、零れることなく口の中へと収まっていく。 「ご、ごーくごーく…………ゆ!? 痛いのがおさまってきた……よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 流石永遠亭特性の妖しい薬、効果は抜群のようだ。 オレンジジュースを飲んだゆっくり魔理沙の傷は瞬時に癒える。 癒えた身体は箱の質量を超え、ゆっくりれみりゃ側の箱にはみ出る。 それを嬉々としてゆっくりれみりゃが食べる。 ゆっくり魔理沙はまた激痛を感じる。 これが俺の考えた『強制無限激痛発生装置』だ。 後は適当に飢えないよう餌をやりつつオレンジジュースを飲ませればいい。 雨が降っても大丈夫なように、傘を作る必要もあるな。 俺が飽きるまで、この拷問は永遠に続く。 暗い闇の中、何も変化のない世界で、ただゆっくりれみりゃに食べ続けられるだけの毎日。 それは一体、どんな苦しみなのだろうか。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐりじだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛っ!!!」 これ以上ないくらいの、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 俺は胸の中から溢れて垂れ流さんばかりの快感に包まれ、ひとしきり笑い続けるのだった。 ゆっくり霊夢は全てを見ていた。 ゆっくり魔理沙の家族が死んでいく様を、ずっと見てきた。 いつも優しく、自分をゆっくりさせてくれる主人。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちを嬉々として殺害していった主人。 どちらが本当の主人なのだろうか。 分からない。 ほんのちょっと遊んだだけの仲だったが、ゆっくり魔理沙は友達だった。 加工所から引き取られ、主人の家でずっと暮らしてきたゆっくり霊夢には、友達と呼べる存在はいなかった。 だから初めて友達が出来て、とても嬉しかった。 でも、その友達は…… 主人はゆっくり魔理沙が悪い、だから罰を与えている、と言った。 でも、あそこまでやられるほど、悪いことをしたのだろうか。 それとも、自分が無知なだけで、あれくらい普通なのだろうか。 自分も悪いことをすると、あんなことをされるのだろうか…… 以前の『お仕置き』を思い出して、ゆっくり霊夢はギュっと目を瞑る。 ゆっくり魔理沙。 きっと、数日もすれば、顔も思い出せなくなってしまうのだろう。 何故なら、自分たちゆっくりは、そういう風に出来ているのだから。 余程の強い刺激がない限り、ありとあらゆる物事を忘却してしまう。 主人に感じた『恐怖』も忘れ去り、また主人との楽しい日々に戻るのだろうか。 ゆっくり霊夢は生まれて初めて、自分がゆっくりであることを呪ったのだった。 このSSに感想を付ける
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タグ希望は環境 現代にゆっくりがいます。 ゆっくりは幻想郷から落ちてきました。 おおかたどこかの誰かさんがスキマでも使ったとお思いください。 それでも幸せなゆっくりがいます。 ゆっくりと現代 近年突如現れた饅頭に知能が付与されたようなびっくり生物(なまもの)ゆっくり。 モノの数年でかなりの数に増えた彼らは、少しずつ都市部へと流れ込み始めた。 町に行けばおいしいものがあるに違いない、と妙にポジティブな希望を抱いて。 しかし、彼らに待ち受けていたものはそんな幻実ではなくありふれた現実だった。 「ゆっゆっゆっ……」 ここに跳ねているのはゆっくりれいむ。れいむは実にゆっくりできていなかった。 この『町』というところは前にいた山よりゆっくりできないものが多いのだ。 「これじゃぜんぜんゆっくりできないよ!」 そうごちりながられいむは跳ねる。 昨日も黒い四つのわっかが現れて道の真ん中で寝てた親友だったまりさが潰された。 「いたたた……」 跳ねるのを止める。ここの道は霊夢達には固すぎる。 長時間跳ね続けると皮が腫れてしまうからこうして足を定期的に休まなければ跳ねることもままならない。 「でもすーりすーりすると……」 ここにきて間もないころにれいむは子供達のにこれと同じような道ですり潰されたようむを見た。 この道で張って進む事はできない。れいむはそう思っていた。 「ゆぅ、おなかがすいたよ………」 ここ数日何も食べていない。ここは草が極端に生えていなかった。 最初はお花を食べていた。だけどお花は妙に苦かった。 それでも空腹よりはましだと思って食べていたのだが、 「花を荒らす奴は誰だ」 と人間が夜に見回りするようになったから食べられなくなってしまった 「ゆうかよりこわいよ……」。 山にいたころに長から人は怖いものと教えられてきたから人には近寄らないようにしてきた。 だから人の多い昼間は隠れている。夜がれいむ達の生活時間だ。 「ここにはれみりゃがいなくてよかったよ……」 れいむは少しだけホッとする。だがホッとしたところで空腹感は変わらない。 れいむは再び跳ねてご飯を探しに行く。 「ごみさんでもいいからなにかたべたいよ……」 ごみ集積所にたどり着く。夜にゴミを捨てる不届き者はまだまだ健在らしくゴミ袋はたくさんあった。 「ゆゆゆ、やったね!」 れいむはすなおに喜び、ごみ集積所へと跳ねていく。だがその喜びはぬか喜びに終わった。 「フーーー!!」 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 先客の猫がいたのだ。猫にとってもこういった生ゴミは貴重な栄養源。 よくわからんポッと出の丸っこい新参者にとられるわけには行かないのだ。 「ゆぅぅぅぅぅぅ………」 このれいむは勝ち目のない戦いはしないことにしていた。 このいかにも強そうな猫に戦いを挑んで食べられてしまったら元も子もない。 トボトボとその場を立ち去っていく。 空腹感は増すばかり。 「ゆぅぅぅぅぅ……こ、こうなったらにんげんさんのおうちに」 人の家に侵入する。これも山にいたとき人里にいったというまりさから聞いたものだ。 そのときに簡単な構造を教えてもらった。 まりさいわく 「にんげんさんはおうちにたくさんたべものをたくわえてるんだぜ!だからすこしぐらいもらってもいいんだぜ!」 とのこと。このまりさはしばらく後に見かけなくなったのだが多分人間に捕まったのだろう。 そう考えると怖くなってきたが 「す、すこしぐらいならばれないよね」 悪さをするのは気が引けるが自分ももう少しゆっくりしたいのだからいいよね、と自己正当化を行いめぼしい家を探すことにした。 夜道にていんていんとマンガみたいな足音が響く。 そして人の家の前に着いた。 しかしおかしい。まりさの言ってたような戸があるわけでなし、屋根へ上るための梯子もない。というか家が妙に四角い。 昔自分が遠目に見たにんげんさんの家屋はもっと平べったくなかっただろうか。 「ゆぅぅぅ・・・・・・」 どうしようか、と困っていたときれいむは一つの突破口を見つけた。 ガラス窓だ。そうだ、まりさは確かこうも言っていた。 「とうめいないたでおおってるところはいしをぶつければすぐにわれるぜ」と。 れいむはそのまりさの言葉に賭けた。 庭に手ごろな石がないかを探す。 あった。 口に入るかを確かめる。 入る。 石を口に咥えて方向を確かめ、れいむは石を噴き出した。 カィン 「ゆ? ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」 石は当たった。確かに当たった。しかし、音はしてもガラスは割れなかった。 技術の発展はガラスでもある程度の衝撃は防げるようになったのである。 今のへろへろのれいむの射出した石では20発撃ってやっと割れるかどうかだろう。 「ま、まりざのうぞづぎぃぃぃ………」 今は亡き無謀と勇気を履き違えたゆっくりに恨み言をこぼしもうだめだ、とへこたれるれいむ。 ふと足元の草に気づく。 「ゆっ!くささんだよ!たべれるよ!!」 そうだ、草はあまりおいしくはないが食べられるではないか。 家に入ることばかり考えていて足元にある食べ物に気づかなかったわけである。 灯台下暗しとは正にこのこと。 それはともかくれいむはくさに噛り付く。 食べる、食べる、食べる!! 「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~!」 寝静まっている人やゆっくりもいるだろうからか控えめの声でれいむは久しぶりの食事の喜びを表した。 数時間後、れいむは自分の巣に戻っていた。 あれから数件ほど別の家の庭に入っては草を毟り巣に運んでいたのだ。 人の家に入らずともお庭に草があったのは助かった。これでしばらくは暮らしていける。 「やっと、ここでゆっくりできそうなきがしてきたよ……」 とれいむが思った矢先、むんずと何かに掴まれる。 「ゆ?」 目線を開けるとそこには にこにことわらった 古臭いドレスを着た ふとましい体つきゆっくり。 「れ み り ゃ だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「う~♪」 ハッピーエンドが好きな一部の人には実に最悪な話なのだが れいむがれみりゃがこの町にいないというのは たまたま今まで出会わなかったというだけだ。 実際のところは数日ほど前に一匹の胴付きれみりゃが町に来ていた。 そして、れいむと同じようにご飯を探し回っていた。 だが、ここはれみりゃの住んでた森のテリトリーより広く。生きているゆっくりは森より少ない。 潰された死体はみかけるが生きたゆっくりはそうそう見つからない。 つぶれたゆっくりはおいしくない。 それだけの理由でれみりゃは生きたゆっくりを探した。貴族は食わねど高楊枝と言ったところか。 そして今日、おなかをすかせてふらふらのれみりゃはついにおいしそうな獲物を見つけたのである。 たまたまそれがさっきまで大変だったれいむなだけで別に誰でも良かった、といっておく。 「うぅ~、いただきまぁす」 「ゆべぇ!?」 頬に齧り付く。齧りとった箇所から餡子が漏れ出てくる。 「あまあまぁぁぁぁ」 甘い。今までつぶれたゆっくりを我慢してきた甲斐があったものだ。 「ひゅ、ひゅうっぐりひゃべふぇべ!?」 頬に開いた穴で満足に発声はできない。 「れみりゃはおなかすいてるんだどぉぉぉ おとなしくたべられるんだどぉぉぉ」 「ひゅヴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 齧る。齧る。啜る。毟。啜る。喰らう。 今までの空腹を癒すかのように一心不乱にバレーボールサイズのれいむを食べ続けるれみりゃ。 このサイズを食べつくしたなら数日はもつだろう。その間に次の獲物を探そう、とれみりゃは考えていた。 なに大丈夫だ、自分ならきっと見つけられるとも思っている辺りはほんと楽観主義だが。 一方食われ、餡を削られどんどん薄れ行く意識の中 (もっとゆっくりしたかった……) と思いながられいむの意識は消えていった。 明け方近くにれみりゃはれいむを食べ終えた。 「うぅ~♪ おなかいっぱ……うぅ!?」 日が昇り始めていた。 今まで森に住んでいたこのれみりゃが日傘を持っているわけがないのでこれは致命的だった。 食欲に我を忘れ、時間を考慮していなかった結果がこれだよ! 「うぁぁぁぁ、うぁぁぁぁぁぁ!!」 たちまちれみりゃの体は火傷の症状を表し始めた。このままではれみりゃは灰になって死んでしまう。 「う?」 食べていたれいむの巣だったポリバケツに気づき、慌ててれみりゃはそれを被った。 これでもう太陽に当たらない。 「うぅ~♪」 しかし、慌ててもぐりこんだせいで変に嵌ってしまいバケツから出ることができなくなってしまった。 歩けるには歩けるのだがちょこちょことしか歩けず、視界が見えないのでどっちに進めば良いのかもわからない。 「うぁぁぁぁぁぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!だれがだじゅげでぇぇぇぇぇ!!ざぐやー!ざぐやー!!」 誰も来るわけがない。ここは人一倍人を恐れていたれいむが見つけた場所だ。 そんなところに人がくるわけなど当然なかった。 このれみりゃは奇特な人間が来なければ死ぬまでバケツの中にいるしかなかった。 これはほんの一部の例である。 ゆっくり達がこの世界の都市に適応するまではもう少しの時間がかかるだろう。 後書き アスファルトの床には首だけのゆっくりにはさぞかし響くだろうなぁ、と思って書き始めたらなんか違う方向に………。 しかも、先越されたぁぁぁぁぁぁ! 現代都市にゆっくりを住ませようとしたらかなりきつい感じがしました。 あいつらはいるとしたら田舎に住ませてやるべきです。それでも畑荒らしたら潰されますし、冬眠寸前の熊に食われたりと大変な気がしますが。 公園に落ちたドスとかはなんかうまくやってけそうなイメージがあります。 ドスが少食、という設定ならですが。 以前書いたもの fuku3328.txt ドスに纏わる二、三の話.txt fuku3313.txt 小ネタ.txt fuku3290.txt 中立な話.txt このSSに感想を付ける