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それは幻想郷の森深く、とある大きな大きな木のうろの中 そこには数匹のちびゆっくり霊夢の楽しそうな姿があった 「おーしくーらまんじゅ♪」 「おーされーてなーくな♪」 木のうろの中で、まだあどけない声でちびゆっくり達が体を寄せ合い無邪気に遊んでいる きゃっきゃっとはしゃぐちびゆっくり達 飛んで、跳ねて、でんぐりがえって、それはなんとも仲睦まじい光景である 「ゆっくりしていってね!」 日が暮れた頃、一際大きな体をしたゆっくり霊夢が現れる ご飯の調達から帰ってきたお母さん霊夢だ 「ゆっ!おかえり!ゆっくりしていってね!」 「おかえりっ!おかえりっ!」 母が帰るのををまちどおしくしていたちびゆっくり達が元気にその場で跳ね回る 自分を待っていてくれる可愛い子供達の笑顔に、お母さん霊夢の顔も思わずほころぶ 「ゆっくりたべていってね!」 お母さん霊夢は口の中をモゴモゴと動かし、ペッ!と、ほおばっていた虫やら草やらを次々に吐き出していく べしゃべしゃに濡れたご飯に群がるちびゆっくり達 「ゆっくりたべるね!」 「うめえ!めっさうめえ!!」 今日の収穫は上々だ、ちびゆっくり達も大満足である 「ごちそうさま!」 「おいしかったよ!」 ご馳走を平らげて満面の笑みを向ける子供達 やがて、満腹になって眠くなったのかちびゆっくり達はうとうとしはじめる 「ゆっくりしていってね」 お母さん霊夢の子守唄を聞きながら、ちびゆっくり達は体を寄せ合い眠りに落ちた そうやって毎日、幸せそうにゆっくり霊夢達の日々が過ぎて行く… 早朝、暖かい朝の日差しが樹木の隙間を抜けてうろへと届く 木の上から聞こえてくる鳥の鳴き声に、ちびゆっくりは目を覚ました 「ゆっくりしていってね!」 朝の挨拶である 加減のきかない声に、次々と目を覚ましていくちびゆっくり達 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 全員起きたことを確認すると、ゆっくり霊夢の家族はお母さん霊夢を先頭に巣から出て行く 朝の散歩である 「ゆっゆっ」 と、お互いに声を掛け合い、はぐれる事のないようにぴょんぴょんと進むゆっくり霊夢一行 まもなく行列のたどり着いた場所は小さな小さな池であった その池の横の小さな水溜りにちびゆっくり達は飛び込んでいく 「おみず、おみず、んぐんぐ」 「きもちいい!ゆっくりできるよ!」 水を飲んだり、水に浸かって汚れを落としたり、パシャパシャと音をたてて遊ぶゆっくり霊夢達 ひとしきり遊んだ後、水溜りから出ると体をブルブル振って水気を飛ばした 「すっきりー!」 水浴びを終えたゆっくり霊夢達はとても気持ちよさそうだ 水浴びを後にしたゆっくり霊夢の行列は、次に森を抜けたところにある草原に向かった 背の低い草が並ぶ広い草原は、ゆっくり達の格好の遊び場所である ポカポカと暖かい日差しを受け、ちびゆっくり達は蝶々を追かけたり、花を見つめて微笑んだり、 その花を食べてみたり、ポカポカ陽気でおひるねしたりと自由気ままに遊び始める その姿を笑顔で見守るお母さん霊夢 やがて、お母さん霊夢の前にちびゆっくり達が集まってくる 「おはな!おはな!」 「ゆっくりしてね!」 子供達が一本のたんぽぽを加えて母にプレゼントする お母さん霊夢の髪にたんぽぽをさしこみ、お洒落完了だ 「ゆっ♪ゆっ♪」 子供達の予想外の贈り物に嬉しくて飛び跳ねるお母さん霊夢 「おかあさん、だいすき!」 「おそとでおなかがへったら、たべてね!」 広い草原の真ん中、ゆっくり霊夢の家族はお互いに向かい合って微笑んだ 巣に戻りお夕飯を済ませると、子供達はくたびれたのか、すやすやと寝息をたてはじめる お母さん霊夢に身を寄せて眠るちびゆっくりたち、寝顔はまさしく天使そのものだ 可愛い我が子の幸せそうな寝顔を眺めながら、お母さん霊夢も眠りについた 翌日もまた、暖かい朝の日差しが木々を縫って巣に届く 「ゆっくりしていってね!」 いつもの朝の挨拶が巣に響き、その声で目を覚ますゆっくり霊夢達 しかしその声は、いつものちびゆっくり霊夢の声とは異なるものであった 「ゆっくりしていってね!」 その挨拶の主は、金色の髪と金色の瞳を持つ、別の種類のゆっくり、ゆっくりアリスであった どうやら朝の散歩中にゆっくり霊夢の巣を見つけて飛び込んできたようである その姿に気がつき、ゆっくり霊夢は礼儀正しく挨拶を交わす 「はじめまして!ゆっくりしていってね!」 「よろしくね!」 元気に飛び跳ねるちびゆっくり達 ちびゆっくり達は、自分達以外の種類のゆっくりを見るのははじめてだ 自分達とは異なる姿に興味津々である 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくり霊夢のお母さんも笑顔で挨拶 子供達にお友達ができるかもしれない、今日も良い一日になりそうだ しかしそろそろ水浴びに出かける時間である… …そうだ一緒に水浴びに出かけよう!そしてみんな一緒に遊ぶのだ そんなことを考えていると、突然ゆっくりアリスがお母さん霊夢に頬擦りをしはじめた 「ゆっ♪ゆっ♪」 くすぐったそうに笑うお母さん霊夢 仲良く頬擦りしている二人の姿に、ちびゆっくりも嬉しそうに笑みをこぼす 体を擦り付けあう二人 その姿は次第に艶をおびていく 「れっ、れっ、れっ、れいむっ!」 のしかかりながら体を強く擦り付けるゆっくりアリス 「ゆっ、ゆっ、ゆっ」 ゆっくり霊夢のお母さんは抵抗することなくそれを受け入れる 交尾である ちびゆっくり達は勿論交尾などという行為を理解していない、お母さん霊夢とゆっくりアリスが遊んでいるように勘違いしているようだ 性的な快感に耐えられず、気持ちよさそうに涎や鼻水を垂らす母の姿を眺めて、おおはしゃぎするちびゆっくり霊夢達 横目にふざけて自分達も体をぶつけあったりしている 「れ、…れいむっ!ハァッハッ…れ、れいむ!」 「ンフーッ!ンフーッ!」 ガタガタと激しさを増す二人の動き 荒げる吐息 「ハァッ…ン…ハァハァ……ッッ!…ッゆっくりしていってねっ!」 ゆっくりアリスは声をあげると、途端にぶるぶると体を震わせはじめる 生殖の開始だ 「ん゙っ!ん゙ぃ゙っ!ん゙い゙い゙っ!!」 顔を真っ赤にしながら、白目をむくゆっくり霊夢 強く食いしばった歯はギリギリと音をたて、口の横からは泡が漏れている その声と危機迫る表情にただならぬ雰囲気を感じたちびゆっくり達 先ほどまでの笑顔も消え、心配で不安そうにお母さん霊夢を見つめる ビクビクッ お母さん霊夢は激しく体を痙攣させた後、仰向けに倒れこんだ 「ゆゆっ!!」 状況が読み込めずに駆け寄るちびゆっくり達 お母さん霊夢の反応は無く、ただ体中から汁を垂らしながら痙攣するだけである 一方、ゆっくりアリスの顔はつやつやだ 「ゆっくりしていってね!」 そう言うと、ゆっくりアリスは子供達の心配そうな声を背に、ゆっくり霊夢の巣からでていくのであった 夕暮れ時 「…さん」 「…おか…」 「おかあさんっ!」 誰かに呼ばれる声で目を覚ます 「おかあさんっ!!」 ひし、と跳び付くちびゆっくり達 「よかったよう!よかったよう!」 ちびゆっくり達はお母さんの無事を確認すると声をあげて大泣きする 一方、お母さん霊夢はよく状況を理解できていない様子 「へいきだよ!へいきだよ!」 とりあえず子供達を泣き止ませなければ、そう思って飛び跳ねてみせる 「もっとゆっくりしてねっ!もっとゆっくりしてねっ!」 子供達の顔は涙でくしゃくしゃだ お母さん霊夢の元気そうな姿に安堵すると 嬉しくってもう一度大きな声で泣きはじめた 子供達をなだめるお母さん 泣きつかれたのだろう、安心したちびゆっくり達はお母さん霊夢にくっつきながら眠りに落ちていった 子供達に心配をかけてしまっていたようだと反省する反面 そうやって心配してくれる子供達の思いに、お母さん霊夢はそっと涙した その翌日、目を覚ましたちびゆっくり霊夢達はお母さん霊夢の頭のうえに思いがけないものを見た お母さん霊夢の頭の上からニョキニョキと蔓がのびており、その先にゆっくりアリスの赤ちゃんが沢山実っているのだ ゆっくりアリスの赤ちゃんは、幸せそうに目を閉じてすやすやと眠っている 様子を見るかぎり、生れ落ちるのもそう遅くはないだろう 「おかあさん!あかちゃんだよ!」 それがゆっくりの赤ちゃんであると気がつくやいなや、嬉しくて跳ね回るちびゆっくり霊夢達 初めてできる自分達の姉妹にうれしくてたまらない様子 「わたしたちも、おねえちゃんになるね!」 みんなで顔を合わせてむふーっと笑い始める 姉妹の誕生を楽しみにする、微笑ましい光景である 新たな命の誕生を嬉しく思ってくれる子供達に、ゆっくりお母さんも笑顔がこぼれる 「ゆっくりしててね!」 赤ちゃんを実らせている身を案じて、その日の昼食はちびゆっくり霊夢達が調達してきてくれることになった と言っても、まだ生まれて間もないちびゆっくり霊夢達のことである その辺に落ちている落ち葉を集めることくらいが精一杯なのだが、お母さん霊夢はその心遣いがとても嬉しい その晩、ついに誕生の時がきた 体を揺らして、実ったゆっくりアリスの赤ちゃんを地面に落としていくお母さん霊夢 地面に当たった衝撃でゆっくりアリスの赤ちゃん達は目を覚ましていく 「ゆー?」 目を開けて周りをキョロキョロするゆっくりアリスの赤ちゃん 「ゆっくりしていってね!」 それに笑顔で挨拶していくちびゆっくり霊夢 敵意の無いその笑顔に、つられてゆっくりアリスの赤ちゃんも笑顔になる 「ゆっ♪ゆっ♪」 「ゆっくりしていってね♪」 ゆっくりアリスの赤ちゃんをあやすちびゆっくり霊夢達 無事全ての赤ちゃんを産み落とすと、ゆっくり霊夢のお母さんから生えていた蔓はしなしなと枯れていく その晩、数を倍に増やしたゆっくり達は、幸せそうに寄り添いあいながら朝を迎えるのであった それから数日たったろうか 可愛い我が子のために今日も食料を調達してきたお母さん霊夢 巣穴に戻ると、そこではちびゆっくり霊夢とゆっくりアリスのあかちゃん達が楽しそうに遊んでいた 「ゆ~♪」 「ゆっ、ゆっ、おんまさんごっこ!」 「きゃっきゃっ♪」 自分より少しだけ大きいちびゆっくり霊夢の上にのって遊ぶゆっくりアリスの赤ちゃん その姿は仲の良い姉妹そのものだ 「ただいま!ごはんだよ!」 お母さん霊夢の姿に気がつくとみんなでお出迎え 「おかえりなさい!ゆっくりしていってね!」 口に頬張っていたご飯をペッ!と次々に吐き出していくお母さん霊夢 凄まじい勢いで平らげていくゆっくりアリスの赤ちゃん達 姉のちびゆっくり霊夢の分まで食べてしまう勢いである ちびゆっくり霊夢は可愛い妹達が幸せそうに食事しているのを見てると、怒る気も起きないご様子 「いっぱいたべて、おおきくなってね!」 お母さん霊夢はご飯に群がる子供達を幸せそうに眺めていると、あることに気がついた なにやらゆっくりの数が減っているような気がする ひい、ふう…んー お母さん霊夢は2つ以上の数を数えることができない 気のせいか、と思いその一日を終えた それからまた数日後 朝起きると、お母さん霊夢は再び違和感を感じた あれほど沢山跳ね回っていた、ちびゆっくり霊夢の数が3人に減っている もともと3人だったのでは?といわれるとそうだったような気もしなくはない 最初はゆっくりアリスの赤ちゃんと同じ数くらいいたような覚えがある それから大きさである ちびゆっくり霊夢のほうが先に生まれたのにも関わらず、ゆっくりアリスの赤ちゃんのサイズはちびゆっくり霊夢のそれを一回り上回っている 不思議に思うお母さん霊夢だったが、ちびゆっくり霊夢もゆっくりアリスの赤ちゃんも、いつもと変わらず無邪気に遊んでいる 杞憂だろう 自分の子供達が元気に遊んでいるのを見ていると不安が消えていく ご飯をたらふく食べた子供達は、その日も幸せそうに床に就くのであった ガサゴソ その晩、みんなが寝静まった夜 お母さん霊夢は、ある物音で目を覚ました 暗闇のなか、ゆっくりアリス達が何かをしているようだ 一箇所に集まるってもぞもぞと音をたてている 「ァ……ァァ…」 弱々しい声がその中から聞こえてくる ちびゆっくり霊夢の声だ しゃぶしゃぶ 小さな音の中、ちびゆっくり霊夢のうめき声と何かをしゃぶるような音がきこえる お母さん霊夢は目を凝らす 「……ッ!」 それは、ちびゆっくり霊夢がゆっくりアリス達に押さえつけられて食べられている光景だった 「ゆっ!ゆっくりしていってねっ!!」 思わず声をあげるお母さん霊夢 声をあげてもゆっくりアリス達は行為をやめる気配は無い 「ムグ…ッ」 押さえつけられて声があげられないちびゆっくり霊夢は、ものの数秒でゆっくりアリス達のお腹に納まってしまった 「ゆ…ゆ…ゆっ!」 状況が理解できない そんな 今日も、昨日も、一昨日も 一緒に仲良く遊んでいたゆっくりアリスが 自分の姉を…食べるなんて…! お腹が一杯になったゆっくりアリス達は何事も無かったように、再度寝息をたてはじめる お母さん霊夢は只々呆然とするだけであった ──数日後 その巣には、ちびゆっくり霊夢の姿は無く 無機質に食料を調達し続けるお母さん霊夢と、元気に跳ね回る無数のちびゆっくりアリスの姿があった ~ゆっくり霊夢達の素敵な日々~ END カッコウって鳥がいるらしいですね、 頭の良いヤツはやることが違う。 選択肢 投票 しあわせー! (8) それなりー (2) つぎにきたいするよ! (3) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/battler/pages/413.html
http //www8.atwiki.jp/yukkuri/ のサイトよりAAで書かれている・・・ ウザイセリフをいったり・・・ けっこう速かったり・・・ 他にもキャラがいるので侮れない 顔だけのキャラクター・・・ ゆっくりしていってね!!! __ _____ ______ い ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 っ 'r ´ ヽ、ン、 お し ,'==─- -─==', i .菓 ょ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | 食 子 に レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| べ を !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | ま L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| せ | ||ヽ、 ,イ| ||イ| / ん レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ か列車「ガタンゴト~ンガタンゴト~ン」 ____ __________ ____________ ____ __________ ____________ ,,´´ __,,,, ''--´´ ̄ ̄ ̄ ̄``--ゝゝ 、、__ イイ、、 ,,´´ __,,,, ''--´´ ̄ ̄ ̄ ̄``--ゝゝ 、、__ イイ、、 ''rr ´´ ヽヽ、、ンン、、 ''rr ´´ ヽヽ、、ンン、、 ,,''====──-- --──===='',, ii ,,''====──-- --──===='',, ii ii イイ iiゝゝ、、イイ人人レレ//__ルルヽヽイイ ii || ii イイ iiゝゝ、、イイ人人レレ//__ルルヽヽイイ ii || レレリリイイii ((ヒヒ__]] ヒヒ__ンン ))..|| ..||、、ii ..|||| レレリリイイii ((ヒヒ__]] ヒヒ__ンン ))..|| ..||、、ii ..|||| !!YY!!"""" ,,______,, """" 「「 !!ノノ ii || !!YY!!"""" ,,______,, """" 「「 !!ノノ ii || LL..'',,.. ヽヽ __ンン LL」」 ノノ|| ..|| LL..'',,.. ヽヽ __ンン LL」」 ノノ|| ..|| || ||||ヽヽ、、 ,,イイ|| ||||イイ|| // || ||||ヽヽ、、 ,,イイ|| ||||イイ|| // レレ ルル`` ーー----── ´´ルルレレ レレ´´ レレ ルル`` ーー----── ´´ルルレレ レレ´´ぶれるよ!!! 他キャラとの関係 ◎0系ひかり1号?(乗ってゆっくりしたい!!!) ○マリオ?(ゆっくり遊んでくれるよ!!!) ○小野塚 小町?(つねにゆっくりしてるね!!!) △博麗霊夢(にせもの?ばかなの?) ×中村大輔(ゆっくり未勝利してね!!!)
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ゆっくり霊夢好き! ゆっくり霊夢好き!紹介文 性別 ? 年齢 秘密歳 メイン職業 秘密 紹介文 ここに自分の紹介文を書き込みます。 メンバー一覧に戻る
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2008年、秋、東京。 俺はカメラ片手に駅の改札を通った。 ターゲットはゆっくり霊夢。 俺は都会に住むゆっくり達のみすぼらしい姿を、ドキュメンタリー風に編集してyoutubeにアップロードしている。 それに関連したブログは日本語、英語の二ヶ国語で配信。 全ては、アフィうめぇと言える日のために。 先日アップロードしたドキュメンタリーは、ゆっくり魔理沙が主役だった。 繁華街に生きる、食事時には見たくない動画だ。 感想は世界中から届いたが、次の企画のタネになりそうな気になるメールがいくつかあった。 それは「れいまー」と呼ばれる、ゆっくり霊夢愛好家からの要望だ。 "私の愛するゆっくり霊夢が、日本でどのように生活しているのかとても気になります" といった内容のメールが、少なくとも300通ほど届いた。 なぜ断定できないのかというと、俺は日本語と英語しか読めないからだ。 感想メールは、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中文、ハングルなど、それこそ世界中から届いた。 だから読めなかったメールの中にも、「れいまー」のご意見があったかもしれない。 一度、ネット上の自動翻訳にかけた時に「ゆっくり霊夢」という単語が何回か出てきたこともあった。 ゆっくりアリス愛好家「ありさー」や、ゆっくりパチュリー愛好家「ぱちゅりあ」などのメールもあったが、れいまーが一番多かった。 なので、今回のターゲットはゆっくり霊夢なのだ。 秋と言っても、まだ9月始め。 夏は最後の抵抗とばかりに、気温を上げてくるだろう。 早朝に出てきたのは、早めに取材を始めて終わりにしたかったのもある。 貴重な土曜日なのだ。 「さて・・・っと」 ゆっくり霊夢を探すといっても、単体ではつまらないと思う。 個人的に、ゆっくり霊夢の魅力はそのアホさと、母性にあると思っているからだ。 前にテレビCMで流れていた、とある政党の広告が記憶に新しい。 「家族とゆっくりできる日本を作る!」 というフレーズだった。 とりあえず流行りモノを利用しとけという、いかにも政治家らしいCMである。 そのCMの主人公は、ゆっくり霊夢であった。 周囲は薄暗く、広い部屋から物語は始まる。 プチトマトほどのゆっくり霊夢は、親もなく、孤独におびえていた。 ぷるぷると小刻みに震え、悲しげに泣く赤れいむ。 すると、そこにその党の党首が現れる。 大きな掌に赤れいむが乗り、満面の笑みを浮かべるのだ。 それから成体になるまでの時間は、アルバムをめくるかのようなエフェクトで進む。 お風呂で笑う赤れいむ、野菜に目を輝かせる赤れいむ、ケガをして大泣きする子れいむ、ベッドで党首に寄り添って寝る子れいむ。 1匹のゆっくり魔理沙と出会い、恋をして、プロポーズをされる。 そうすると、アルバムが閉じるエフェクトが入るのだ。 最初、赤れいむが孤独におびえていた部屋。 そこには成長し、親れいむとなったれいむと、伴侶の親まりさ、そして小さな赤ちゃんゆっくりが8匹もいる。 「おじさんのおかげでゆっくりできたよ!これからもゆっくりしていってね!」 それに笑顔で党首は応え、視聴者に向かってキャッチフレーズを言うのだ。 そのCMはそれなりにインパクトがあったようで、ペットショップでれいむ種が飛ぶように売れたらしい。 一時の流行でペットを買うあたり、実に情けない国民性である。 そもそも、れいむ種に限らず大抵のゆっくりは母性が強い。 なんとなくイメージがついているだけで、母性の強さは個性によるものが大きく、種の平均を見てもたいして変わらないと専門家がよく言っている。 しかし、ゆっくり大国の日本がそんなイメージに染まっているせいか、諸外国でも「れいむ種=母」といったイメージが強い。 ブログを見てくれている外国人も、きっとそういうものを期待しているのだろう。 あえて、母性のカケラも持たずシビアに都会を生きるれいむを撮影してもよいのだが、今回は家族を持つれいむ種を追うことにする。 「ん、いきなりか」 駅を出て少し歩くと、乱雑に投げ出された自転車の山の中に、1匹のゆっくり霊夢がたたずんでいた。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺が注目していることに気がついたのか、そのれいむは俺に向かってお得意の挨拶をしてくれた。 都会に住むゆっくりは、大抵愛想がいい。 「ああ、ゆっくりしていってね」 自転車をかき分け、俺はれいむに近づいた。 大きさはバスケットボールよりも少し大きい。 かなりの大型だ。 「ん?」 そして、綺麗だった。 髪の毛は油汚れやホコリがついていることもなく、サラサラとしている。 リボンの赤がまぶしい。 「お前、ペットか?」 「ゆゆ!そうだよ!おにいさんをゆっくりまってるの!」 ペットだというのに、リボンにペット証が付いていなかった。 人目につくとは言え、ペット証も付けずに放置するなど考えられないことだ。 つまり考えられることは一つ。 「いつから待っているんだ?」 「ゆー!きのうからだよ!おにいさんがいってたよ!ここでゆっくりしてねって!」 要するに、捨てられたのだ。 捨て犬、捨て猫のように、捨てゆっくりは今や大きな社会問題の一つになっている。 残念ながら、飼い主の住所氏名を言えるようなゆっくりはまずいない。 なのでペット証を外せば、簡単に捨てられてしまうものなのだ。 「おにいさんが、れいむにおともだちをつれてきてくれたんだよ!はやくかえっていっしょにゆっくりしたいね!」 ゆんゆんと歌い始めるれいむ。 まだ捨てられたことに気が付いていないのだ。 「お友達か。なんて友達?」 「ゆゆっ!まりさだよ!すごくゆっくりしたあかちゃんだよ!れいむのあかちゃんじゃないけど、いっしょにゆっくりしたいよ!」 俺はカメラを構えていた。 これは使えるかもしれないからだ。 「そーか。可愛いまりさなのか。よかったなー」 「ゆゆん!とってもうれしいよー!」 満面の笑み。 れいむは知らない。 最近、まりさ種が注目を浴びていることに。 最近始まった、大手飲料メーカーがやっているCMは、ゆっくり魔理沙が主人公だ。 そのCMがウケた結果、まりさ種がブームになっている。 元飼い主はきっと、あの政党のCMを見てこのれいむを飼い始めたのではないだろうか。 れいむの大きさとCMの時期から考えて、そんな感じがする。 そして次のブームが来たので、古いれいむは捨てて新しいゆっくりに手を出したと。 「まあ、お前はでっかいからなー」 「ゆ?」 ぽむぽむとれいむの頭をなでる。 そう、無駄に大きい。 はっきり言って部屋の邪魔になるレベルだ。 求めるエサの量も多いだろう。 しかも大きいからといって、メリットもない。ごく潰しの粗大ゴミだ。 まりさ種ブームがこなくても、いずれ捨てられたのではないだろうか。 「ま、頑張って待ってな。俺はもう行くよ」 「ゆっくりがんばってね!」 何をするのかも分からない癖に、応援をしてくれる。 こんなに良いゆっくりを捨てるなんて。 世界のれいまーの方々はさぞ嘆き悲しむだろう。 せっかくなので、しばらくしたらまたここに来よう。 その時はきっと、いつまでも帰ってこない飼い主をボロカスになりながら待つれいむがいるはずだ。 コラムの題材に丁度いい。 そんなことを考えながら、俺は家族持ちのゆっくりを探しに行った。 翌日。 俺はまた昨日と同じ駅で降りた。 昨日は一日探したというのに、家族持ちのゆっくりは1匹も見つからなかった。 独り身の成体ゆっくりは腐るほどいたというのに。 やはり、エサの少ないこの地区では家庭を持つのは厳しいのかもしれない。 俺は前に撮影をした繁華街に行こうと考えていた。 わざわざこの駅で降りたのは、昨日見つけた、捨てゆっくり霊夢の様子を見るためだ。 「ゆぅ・・・・おに・・・ざ・・・」 昨日と同じ場所。 そこにいたれいむに、昨日の面影はなかった。 「随分とまあ・・・」 カメラを構える。 「昨日のれいむかな?」 小型マイクを手に乗せ、れいむの方に向ける。 それをエサだと勘違いしたのか、れいむが一瞬だけ目を光らせた。 「これは食べられないよ」 しゅん、と小さくなる。 そして泣き始めた。 「ゆぉっ・・・ゆゆゆうううう・・・!おにいざんもどっでぎでよぉおお!!!」 電車の音と、鳥の声だけが響く早朝の空に、れいむの嘆きが混ざる。 そして、その嘆きに応えたのは俺ではなかった。 「おきゃーしゃん!なかないで!」 「ゆっくちしようね!」 「ゆー!」 そう、れいむは一晩で親となっていた。 何度頬を重ねたのかは分からない。 だが、俺の目の前には50匹をゆうに超える赤ちゃんゆっくりが所狭しと犇めいていた。 「こりゃ凄い」 ぞわぞわと動く様は、ヘタな害虫よりも気持ち悪い。 親れいむに「すーりすり♪」と言いながらまとわりつくプチトマトの集団。 ヒルか何かに浸食されているようだ。 「れいむ、これどうしたんだ?」 頭は撫でない。 昨日に比べると、だいぶ薄汚くなっている上に、赤ゆっくりを実らせていた茎が生えっぱなしだったからだ。 茎は6本。 交尾が成功した回数だけは分かった。 「ゆっ!ゆっ・・・!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、親れいむはゆっくりと話し始めた。 昨日、俺が立ち去った後もれいむはここで元飼い主を待っていたらしい。 だが、いつまでたっても飼い主はやってこない。 諦めず、それでも待っていると1匹のゆっくり魔理沙がやってきた。 動く汚物のようなまりさだったという。 飼いゆっくりとして生きてきたれいむには、直視できるものではなかった。 「ゆ!すごくきれいなれいむだね!」 そう言いながら、まりさはれいむに寄って来た。 れいむは逃げ出したかったが、逃げた間に元飼い主が来るかもと思い、逃げられなかった。 「すごくおっきくてゆっくりしてるね!きれいなりぼんだね!まりさとゆっくりしていってね!」 そのまま頬を押し付けられ、初めての交尾を経験したのだという。 一度の交尾でまりさは満足してどこかへ行ってしまった。 残ったのは頬に残る不快感と、頭に生えた茎。 飼いゆっくりは、野良ゆっくりから見れば絶世の美ゆっくりだ。 栄養状態もよく、大型であったれいむは魅力的な存在だった。 その後も、近くを通ったゆっくりに次々と頬を押し付けられ、交尾に疲れて眠ってしまったのだ。 「なるほど。お前は可愛かったからな」 過去形。 なぜなら今はあまり可愛くない。 「おちびちゃんたちもかわいいよ・・・」 ぴょんぴょん跳ねる赤ゆっくり、まりさ種を親れいむは舌でぺろりと舐める。 嬉しそうに赤まりさは跳ねる速度を上げた。 「どぼじで・・・れいむはなにもわるいごどじでないのにぃい・・・む゙りや゙りずっぎりずるなんでひどいよぉお・・・」 赤ちゃんの誕生は嫌ではないようだが、無理やりのすっきりがお気に召さないようだ。 「しかし、どんだけ種類いるんだコレ」 見れば、れいむ種とまりさ種がほとんどであったが、ありす種やぱちゅりー種までいる。 栄養たっぷりの親れいむだからこそできた出産だろう。 「家庭を持つゆっくり霊夢」という条件は満たせないが、「子を持つゆっくり霊夢」というシチュエーション。 良い題材かもしれない。 「捨てられた飼いゆっくりの末路」というテーマでうまいこと編集しよう。 俺は素早く、親れいむのリボンに小型マイクを仕込んだ。 「ゆ?」 違和感を覚えたのか、親れいむが声を出す。 何か言われる前に、俺が先制する。 「ま、そのうちお前の飼い主も帰ってくるだろうよ。ガンバレ」 「ゆっ・・・ゆっくりりかいしてるよ・・・ゆぅ・・・」 小さく丸くなった親れいむをおいて、俺はその場を離れた。 幸い、近くには隠れて撮影するのに好都合なモノがいくつかある。 俺はとりあえず高架橋の柱に身を潜めた。 『・・・ゆゅ・・・おにいさぁん・・・・れいむ、ゆっくりできてないよぉ・・・・』 耳につけたイヤホンから、親れいむの独り言が聞こえてくる。 『ゆゅー!』 『おきゃーしゃん、おなかちゅいたー!』 同時に、赤ゆっくりの甲高い声もマイクに届く。 『ゆ・・・!ごめんね!おにいさんがかえってきたら、すぐゆっくりできるからね!』 どうやらあの親れいむは、茎を落として食べさせることを知らないようだ。 粗悪品を売る、激安ペットショップ出身かもしれない。 困惑する親れいむの顔にズームイン。 頭にエサがあるというのに、無知とは罪なものだ。 メガネを額に上げたことを忘れて、メガネメガネと彷徨う人のよう。 『ゆー!もうがまんできにゃいよ!』 『ごはん!ごはーん!』 『れーみゅ、あまあまたべちゃい!』 『まりしゃも!』 『ありちゅもあまあま~!』 『むきゅ・・・・・ぱ・・・も・・・』 少し離れているが、赤ゆっくり達の声はマイク越しでなくとも聞こえる。 「住宅街だったら即死だな」 もっとも、あんな危機意識のないゆっくり達は即死でなくともいずれ死ぬ。 死までの時間が少し長引くだけだ。 『あかちゃんたち、おねがいだからがまんしてね!おにいさんがきっとゆっくりさせてくれるよ!』 『はやくゆっくちちたい!』 『おかーしゃんはゆっくちさせてくれないの!?』 『もうがみゃんできないいい!!』 『ゆっ!?おにいしゃん!ありちゅにごはんちょうだいね!』 1匹の赤ありすが、道行く男性に声をかけた。 スーツ姿の男性だ。時間的に、休日出勤をするサラリーマンだと思う。お仕事お疲れです。 『きいてりゅのぉ!?』 男性は赤ありすとゆっくり約50匹をちらりと見ると、すぐに視線を正面に戻して歩いて行った。 一言も、赤ありすに言葉をかけることなく。 『ゆぎゅ!いなかもにょ!ありちゅにごはん!』 野良ゆっくりの相手などする人間は、ほとんどいない。 マナー違反であるし、下手に甘やかせば余計に酷い思いをすることが多いことを知っているのだ。 「ああ、出勤時間か」 時計を見れば、今は出勤するサラリーマンが増えてくる時間帯だ。 柱に隠れてカメラを構える俺は、さぞかし怪しい姿に映るだろう。 最悪、盗撮魔と通報されてしょっぴかれてしまうかもしれない。 「んー」 数秒考え、俺はカバンを近くのフェンスに引っかけた。 続いて、カバンにカメラを入れる。 「角度は・・・っと」 カバンには穴が空いているので、そこにレンズを突き通す感じでセッティング。 ちゃんと録画されていることを確認し、俺はフェンスに寄りかかるように座った。 パッとみた感じ「フェンスに寄りかかって音楽を聴いている男性」に見えないこともない。 ただ、カバンとカメラを調べられたら一発で盗撮の烙印を押されてしまうので注意だ。 『ゆゆ!おねえさん!れいむのおにいさんをしってたらゆっくりおしえてね!』 そうこうしている内に、駅に向かうサラリーマンやらOLが増えてきたようだ。 親れいむは道行く人に、必死で元飼い主のことを尋ねている。 健気だ。 『ゆっくりしてね!おねがいだかられいむにおしえてね!』 1人のOLに目をつけた親れいむが、ぴょんぴょんと跳ね寄って行く。 『ちょっ・・・ちょ、こっち来ないでよっ!』 カメラの角度が気になったが、多分撮れているだろう。 親れいむは必死でOLを追いかけていた。 まるで、そのOLが飼い主であるかのように。 そしてそれに赤ゆっくり達も続く。 多分何も分からず、とりあえず親に置いて行かれないようにしているだけだろう。 50匹近い赤ゆっくりの集まりは、丸い影のようにも見える。 それがぞわぞわと動いているのだ。 『うっわ、きっもぉ!何でこんなに湧いてんの!?』 片足を上げ、露骨に嫌な顔をするOLと、それを哀れそうに見つめるサラリーマン達。 『ゆ!れいむのかわいいあかちゃんだよ!ゆっくりあやまってね!』 『ゆー!ゆっくち!』 『おねーしゃんはゆっくちできりゅひとぉ?』 『いっちょにゆっくちちようね!』 『ありちゅがしゅりしゅりしてあげるね!』 親れいむに追いついたため、マイクに赤ゆっくりの声が届いた。 『・・・うっざ。も、いいわ』 言うが早いか、OLは全力疾走で駅の方へと駆け抜けていった。 『邪魔だ、どけ』 次に飛び込んできたのは、低い声。 近くにいた、頭をハゲ散らかした男性が言ったようだ。 『むー!じゃまじゃないよ!ゆっくりおこるよ!ぷんぷん!!』 『ぴゅんぴゅん!』 『ぷんっ!』 親れいむはその事実を否定するが、はたから見ても邪魔そうだった。 本格的に人が多くなってきたこともあるし、親れいむはじめ赤ゆっくりは道のド真ん中でぷんぷんしているのだ。 ここは駅に行くのにちょうど良い道であるし、さぞかし邪魔だろう。 そんな、混雑した道。 1匹の赤まりさが、親れいむを中心とした塊からはぐれていた。 無数に動く足のなか、その姿を発見できたのは奇跡といっていいだろう。 『おちびちゃん!こっちにおいで!そっちはゆっくりできな』 言い終える前に、赤まりさは潰れされた。 悲鳴も聞こえない。 潰れた音も聞こえない。 聞こえるのは、人の込み合う時に出るごみごみとしたノイズだけ。 しかし親れいむの眼には、赤まりさが潰された様子が鮮明に写っていたようだ。 『れ゙い゙ぶのあがぢゃ゙ん゙ががあぁあ゙ああ゙っ!!!!』 イヤホンから飛んできた爆音に、俺は一瞬目を瞑った。 一気にどよめく人の波。 親れいむの叫びは、ものすごい音量であった。 『あがぢゃんだちぃぃぃ゙い゙!はや゙ぐにげでぇええっ!!ごごはゆ゙っぐりできな゙いよぉぉ!!』 『ゆっ!?』 『ゆっきゅりできにゃい!?』 『こわいいぃい!!』 ゆっくりできないという事実に、赤ゆっくり達は恐怖した。 道の中央で一か所に集まっていた赤ゆっくりは、四方八方へと蜘蛛の子を散らすように逃げていく。 「うえっ!!ふんじまった!」 「げえ!きったねえ!」 「こっちくんなっ!」 残念ながら、親れいむの叫びで波は止まらなかった。 どよめきながらも、駅へと進む人々。 プチトマトほどの赤ゆっくりは次々と潰されていく。 『や゙べでえぇえっ!!れいむ゙のあがぢゃんふまないでぇええええっ!!!』 そんな切なる願いに返ってきたのは、踏んだことに対する嫌悪感に満ちた声。 『ゆぼおぉおっ!?』 すると、誰かに蹴られたのか、親れいむが人の中から飛び出してきた。 一瞬、俺と目が合うが、すぐに視線をさっきまでいた場所に戻す。 『あがぢゃんっ!あ゙がぢゃん゙ん゙゙ん゙んん゙っ!れいむの゙ぉおっ!!れいぶのあがぢゃんっ!がえじでぇ!!ゆっぐりがえじでねっ!!』 親れいむは戦場へと戻って行った。 2時間後。 親れいむは道の隅で目が覚めた。 メタボリックな人に踏みつけられ、ずっと気を失っていたのだ。 「ゆ゙・・・!?あ、あがっ、あがぢゃんっ!?」 もう歩く人はまばらだった。 だからよく見える。道にこびりついたいくつもの円が。 「ゆがっ・・・ゆぎ・・・あがっ、れいぶのっ・・・!?」 一番近くにあった黒い円に、親れいむはソロソロと近づいた。 俺は背後からカメラを構えている。 「おちびぢゃん・・・まりざのおちびちゃん・・・」 黒い円の中心に、ぐちゃぐちゃになった帽子らしきものがある。 赤まりさの変わり果てた姿だ。 実に汚い。 「ごっぢは・・・れ、れいぶど、れいぶどおなじおぢびぢゃん・・・ゆぅっ!」 次に近寄った円の中心には、黒と赤で見事なコントラストを奏でるリボンが置かれていた。 「あ、ありずのっ・・!おちびぢゃん・・・ゆぐうぅう!!」 薄い黄色の円は、赤ありすの潰れた跡だ。 皮とカチューシャが比較的分かりやすく残っていた。 朝からこんな不快な光景を目の当たりにしたサラリーマンが哀れでならない。 「どぼじでぇっ!?どぼじでごんなごどずるのぉおおっ!!?おにいざんどこにいるのぉお!?れいぶゆっぐりできないよぉぉお!!」 顔面をコンクリートに近づけながら、親れいむは嘆き悲しむ。 すると、フェンスの隙間から1匹の赤ゆっくりが近寄って来たではないか。 「おかーしゃ!れいみゅだよ!ごわがっだよぉおお!!」 ゆゆーと泣きながら、赤れいむは親れいむの頬へと飛び込んだ。 この赤れいむが唯一の生き残りのようだ。 「ゆっ!おちびちゃん!よがっだよおぉお!!いっじょにゆっぐりじようねっ!!みんなのぶんもゆっぐりじようねぇえええ!!」 「ゆっきゅりちたいよおぉお!!おかーしゃんとゆっきゅりちちゃいよぉお!!」 すぐに激しいすりすりが始まった。 大量に子を失った悲しさを埋めるように、2匹は体をこすり合わせる。 交尾とは違う、親れいむが赤れいむを包み込むように動くすりすり。 赤れいむの表情は涙であふれていたが、明るい顔をしていた。 「お、こりゃまずい」 ふと顔を上げると、数人の男性の姿が目についた。 全員が作業服を着てこちらに向かってきている。 俺は、親れいむに近づいた。 その顔は赤れいむと同じく涙でいっぱいであったが、優しい笑顔をしていた。 「マイク、返してもらうよ」 一言つぶやき、リボンからマイクを回収する。 「失礼します、こちらのゆっくりは」 立ち去ろうとする俺に、作業服を着た男性が声をかけてきた。 彼らは保健所の人間だ。 朝のラッシュの騒動で、誰かが連絡したに違いない。 こんなに仕事が早いなんて、公務員もバカにしたものではないと思う。 いつか、保健所の取材でもしてみたい。 「ああ、野良のゆっくりでしょうね。俺のじゃないですよ」 さよなら、ゆっくり霊夢。 最期に親子の絆を確認できてよかったね。 俺は餡子を踏まないように気をつけながら、駅へと向かった。 ふと壁を見ると、餡子がこびり付いている。 赤ゆっくりを踏んだ誰かが、靴をすりつけて汚れを落としたのかもしれない。 「やべでぇええええっ!!!れいぶのあがぢゃんがえじでぇええっ!!!」 背後から変な声が聞こえたが、俺は振り返らなかった。 おわり このSSに感想を付ける
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___ _______ ______ ,´ ,, ''"´ ̄ ̄ ̄ ` "ゝ 、_ イ、 'r==─- --─===ヽ、ン、 ,' イリiゝ、イ人レル/_ルリ ', i i ル (ヒ_] ヒ_ン ) ヽイ i | レリイ//// ,___, ///// | .|、i .|| !Y! ヽ _ン 「 !ノ i | L.',. L」 ノ| .| | || | ||イ| / | ハ ノ| || |/ レルヽ ノルレ `" ー--- ─ "´・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━ ゆっくり Lv 23 HP ??? @? 攻撃 F- 防御 ? 速度 G 魔力 ? 精神 D・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━・・・━ 【アタック】 パスウェイジョンニードルⅡ : 至近距離に近寄って無数の針で攻撃する連続攻撃。【物理】【連続】【赤】【白】 昇天蹴Ⅱ : 巫女サマー! 飛行している敵にちょっと強い。【物理】【赤】【白】 【ディフェンス】 夢符「二重結界」Ⅱ : 二重に重ねた結界により、自身を守る。連続攻撃に脆い。【複合】 夢符「封魔陣」Ⅱ : 魔を封じる陣を作る。反撃の命中した対象の攻撃と精神を一段階下げる。【複合】【反撃】 【サポート】 ホーミングアミュレットⅡ : ものすごい命中しやすい護符を飛ばす。ただし威力は微妙。【魔法】【赤】【白】 【アビリティ】 なし 【パッシブ】 ゆっくり : ゆっくりしていってね!!! 戦場に登場時、全員の速度が一段階下がる。 聖なるゆっくり : ……聖なる存在? ……たぶん聖なる存在。 ふわふわ : ふわふわしてる。【特攻】や【弱点】などを受けない。
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2008年、秋、東京。 俺はカメラ片手に駅の改札を通った。 ターゲットはゆっくり霊夢。 俺は都会に住むゆっくり達のみすぼらしい姿を、ドキュメンタリー風に編集してyoutubeにアップロードしている。 それに関連したブログは日本語、英語の二ヶ国語で配信。 全ては、アフィうめぇと言える日のために。 先日アップロードしたドキュメンタリーは、ゆっくり魔理沙が主役だった。 繁華街に生きる、食事時には見たくない動画だ。 感想は世界中から届いたが、次の企画のタネになりそうな気になるメールがいくつかあった。 それは「れいまー」と呼ばれる、ゆっくり霊夢愛好家からの要望だ。 "私の愛するゆっくり霊夢が、日本でどのように生活しているのかとても気になります" といった内容のメールが、少なくとも300通ほど届いた。 なぜ断定できないのかというと、俺は日本語と英語しか読めないからだ。 感想メールは、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中文、ハングルなど、それこそ世界中から届いた。 だから読めなかったメールの中にも、「れいまー」のご意見があったかもしれない。 一度、ネット上の自動翻訳にかけた時に「ゆっくり霊夢」という単語が何回か出てきたこともあった。 ゆっくりアリス愛好家「ありさー」や、ゆっくりパチュリー愛好家「ぱちゅりあ」などのメールもあったが、れいまーが一番多かった。 なので、今回のターゲットはゆっくり霊夢なのだ。 秋と言っても、まだ9月始め。 夏は最後の抵抗とばかりに、気温を上げてくるだろう。 早朝に出てきたのは、早めに取材を始めて終わりにしたかったのもある。 貴重な土曜日なのだ。 「さて・・・っと」 ゆっくり霊夢を探すといっても、単体ではつまらないと思う。 個人的に、ゆっくり霊夢の魅力はそのアホさと、母性にあると思っているからだ。 前にテレビCMで流れていた、とある政党の広告が記憶に新しい。 「家族とゆっくりできる日本を作る!」 というフレーズだった。 とりあえず流行りモノを利用しとけという、いかにも政治家らしいCMである。 そのCMの主人公は、ゆっくり霊夢であった。 周囲は薄暗く、広い部屋から物語は始まる。 プチトマトほどのゆっくり霊夢は、親もなく、孤独におびえていた。 ぷるぷると小刻みに震え、悲しげに泣く赤れいむ。 すると、そこにその党の党首が現れる。 大きな掌に赤れいむが乗り、満面の笑みを浮かべるのだ。 それから成体になるまでの時間は、アルバムをめくるかのようなエフェクトで進む。 お風呂で笑う赤れいむ、野菜に目を輝かせる赤れいむ、ケガをして大泣きする子れいむ、ベッドで党首に寄り添って寝る子れいむ。 1匹のゆっくり魔理沙と出会い、恋をして、プロポーズをされる。 そうすると、アルバムが閉じるエフェクトが入るのだ。 最初、赤れいむが孤独におびえていた部屋。 そこには成長し、親れいむとなったれいむと、伴侶の親まりさ、そして小さな赤ちゃんゆっくりが8匹もいる。 「おじさんのおかげでゆっくりできたよ!これからもゆっくりしていってね!」 それに笑顔で党首は応え、視聴者に向かってキャッチフレーズを言うのだ。 そのCMはそれなりにインパクトがあったようで、ペットショップでれいむ種が飛ぶように売れたらしい。 一時の流行でペットを買うあたり、実に情けない国民性である。 そもそも、れいむ種に限らず大抵のゆっくりは母性が強い。 なんとなくイメージがついているだけで、母性の強さは個性によるものが大きく、種の平均を見てもたいして変わらないと専門家がよく言っている。 しかし、ゆっくり大国の日本がそんなイメージに染まっているせいか、諸外国でも「れいむ種=母」といったイメージが強い。 ブログを見てくれている外国人も、きっとそういうものを期待しているのだろう。 あえて、母性のカケラも持たずシビアに都会を生きるれいむを撮影してもよいのだが、今回は家族を持つれいむ種を追うことにする。 「ん、いきなりか」 駅を出て少し歩くと、乱雑に投げ出された自転車の山の中に、1匹のゆっくり霊夢がたたずんでいた。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺が注目していることに気がついたのか、そのれいむは俺に向かってお得意の挨拶をしてくれた。 都会に住むゆっくりは、大抵愛想がいい。 「ああ、ゆっくりしていってね」 自転車をかき分け、俺はれいむに近づいた。 大きさはバスケットボールよりも少し大きい。 かなりの大型だ。 「ん?」 そして、綺麗だった。 髪の毛は油汚れやホコリがついていることもなく、サラサラとしている。 リボンの赤がまぶしい。 「お前、ペットか?」 「ゆゆ!そうだよ!おにいさんをゆっくりまってるの!」 ペットだというのに、リボンにペット証が付いていなかった。 人目につくとは言え、ペット証も付けずに放置するなど考えられないことだ。 つまり考えられることは一つ。 「いつから待っているんだ?」 「ゆー!きのうからだよ!おにいさんがいってたよ!ここでゆっくりしてねって!」 要するに、捨てられたのだ。 捨て犬、捨て猫のように、捨てゆっくりは今や大きな社会問題の一つになっている。 残念ながら、飼い主の住所氏名を言えるようなゆっくりはまずいない。 なのでペット証を外せば、簡単に捨てられてしまうものなのだ。 「おにいさんが、れいむにおともだちをつれてきてくれたんだよ!はやくかえっていっしょにゆっくりしたいね!」 ゆんゆんと歌い始めるれいむ。 まだ捨てられたことに気が付いていないのだ。 「お友達か。なんて友達?」 「ゆゆっ!まりさだよ!すごくゆっくりしたあかちゃんだよ!れいむのあかちゃんじゃないけど、いっしょにゆっくりしたいよ!」 俺はカメラを構えていた。 これは使えるかもしれないからだ。 「そーか。可愛いまりさなのか。よかったなー」 「ゆゆん!とってもうれしいよー!」 満面の笑み。 れいむは知らない。 最近、まりさ種が注目を浴びていることに。 最近始まった、大手飲料メーカーがやっているCMは、ゆっくり魔理沙が主人公だ。 そのCMがウケた結果、まりさ種がブームになっている。 元飼い主はきっと、あの政党のCMを見てこのれいむを飼い始めたのではないだろうか。 れいむの大きさとCMの時期から考えて、そんな感じがする。 そして次のブームが来たので、古いれいむは捨てて新しいゆっくりに手を出したと。 「まあ、お前はでっかいからなー」 「ゆ?」 ぽむぽむとれいむの頭をなでる。 そう、無駄に大きい。 はっきり言って部屋の邪魔になるレベルだ。 求めるエサの量も多いだろう。 しかも大きいからといって、メリットもない。ごく潰しの粗大ゴミだ。 まりさ種ブームがこなくても、いずれ捨てられたのではないだろうか。 「ま、頑張って待ってな。俺はもう行くよ」 「ゆっくりがんばってね!」 何をするのかも分からない癖に、応援をしてくれる。 こんなに良いゆっくりを捨てるなんて。 世界のれいまーの方々はさぞ嘆き悲しむだろう。 せっかくなので、しばらくしたらまたここに来よう。 その時はきっと、いつまでも帰ってこない飼い主をボロカスになりながら待つれいむがいるはずだ。 コラムの題材に丁度いい。 そんなことを考えながら、俺は家族持ちのゆっくりを探しに行った。 翌日。 俺はまた昨日と同じ駅で降りた。 昨日は一日探したというのに、家族持ちのゆっくりは1匹も見つからなかった。 独り身の成体ゆっくりは腐るほどいたというのに。 やはり、エサの少ないこの地区では家庭を持つのは厳しいのかもしれない。 俺は前に撮影をした繁華街に行こうと考えていた。 わざわざこの駅で降りたのは、昨日見つけた、捨てゆっくり霊夢の様子を見るためだ。 「ゆぅ・・・・おに・・・ざ・・・」 昨日と同じ場所。 そこにいたれいむに、昨日の面影はなかった。 「随分とまあ・・・」 カメラを構える。 「昨日のれいむかな?」 小型マイクを手に乗せ、れいむの方に向ける。 それをエサだと勘違いしたのか、れいむが一瞬だけ目を光らせた。 「これは食べられないよ」 しゅん、と小さくなる。 そして泣き始めた。 「ゆぉっ・・・ゆゆゆうううう・・・!おにいざんもどっでぎでよぉおお!!!」 電車の音と、鳥の声だけが響く早朝の空に、れいむの嘆きが混ざる。 そして、その嘆きに応えたのは俺ではなかった。 「おきゃーしゃん!なかないで!」 「ゆっくちしようね!」 「ゆー!」 そう、れいむは一晩で親となっていた。 何度頬を重ねたのかは分からない。 だが、俺の目の前には50匹をゆうに超える赤ちゃんゆっくりが所狭しと犇めいていた。 「こりゃ凄い」 ぞわぞわと動く様は、ヘタな害虫よりも気持ち悪い。 親れいむに「すーりすり♪」と言いながらまとわりつくプチトマトの集団。 ヒルか何かに浸食されているようだ。 「れいむ、これどうしたんだ?」 頭は撫でない。 昨日に比べると、だいぶ薄汚くなっている上に、赤ゆっくりを実らせていた茎が生えっぱなしだったからだ。 茎は6本。 交尾が成功した回数だけは分かった。 「ゆっ!ゆっ・・・!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、親れいむはゆっくりと話し始めた。 昨日、俺が立ち去った後もれいむはここで元飼い主を待っていたらしい。 だが、いつまでたっても飼い主はやってこない。 諦めず、それでも待っていると1匹のゆっくり魔理沙がやってきた。 動く汚物のようなまりさだったという。 飼いゆっくりとして生きてきたれいむには、直視できるものではなかった。 「ゆ!すごくきれいなれいむだね!」 そう言いながら、まりさはれいむに寄って来た。 れいむは逃げ出したかったが、逃げた間に元飼い主が来るかもと思い、逃げられなかった。 「すごくおっきくてゆっくりしてるね!きれいなりぼんだね!まりさとゆっくりしていってね!」 そのまま頬を押し付けられ、初めての交尾を経験したのだという。 一度の交尾でまりさは満足してどこかへ行ってしまった。 残ったのは頬に残る不快感と、頭に生えた茎。 飼いゆっくりは、野良ゆっくりから見れば絶世の美ゆっくりだ。 栄養状態もよく、大型であったれいむは魅力的な存在だった。 その後も、近くを通ったゆっくりに次々と頬を押し付けられ、交尾に疲れて眠ってしまったのだ。 「なるほど。お前は可愛かったからな」 過去形。 なぜなら今はあまり可愛くない。 「おちびちゃんたちもかわいいよ・・・」 ぴょんぴょん跳ねる赤ゆっくり、まりさ種を親れいむは舌でぺろりと舐める。 嬉しそうに赤まりさは跳ねる速度を上げた。 「どぼじで・・・れいむはなにもわるいごどじでないのにぃい・・・む゙りや゙りずっぎりずるなんでひどいよぉお・・・」 赤ちゃんの誕生は嫌ではないようだが、無理やりのすっきりがお気に召さないようだ。 「しかし、どんだけ種類いるんだコレ」 見れば、れいむ種とまりさ種がほとんどであったが、ありす種やぱちゅりー種までいる。 栄養たっぷりの親れいむだからこそできた出産だろう。 「家庭を持つゆっくり霊夢」という条件は満たせないが、「子を持つゆっくり霊夢」というシチュエーション。 良い題材かもしれない。 「捨てられた飼いゆっくりの末路」というテーマでうまいこと編集しよう。 俺は素早く、親れいむのリボンに小型マイクを仕込んだ。 「ゆ?」 違和感を覚えたのか、親れいむが声を出す。 何か言われる前に、俺が先制する。 「ま、そのうちお前の飼い主も帰ってくるだろうよ。ガンバレ」 「ゆっ・・・ゆっくりりかいしてるよ・・・ゆぅ・・・」 小さく丸くなった親れいむをおいて、俺はその場を離れた。 幸い、近くには隠れて撮影するのに好都合なモノがいくつかある。 俺はとりあえず高架橋の柱に身を潜めた。 『・・・ゆゅ・・・おにいさぁん・・・・れいむ、ゆっくりできてないよぉ・・・・』 耳につけたイヤホンから、親れいむの独り言が聞こえてくる。 『ゆゅー!』 『おきゃーしゃん、おなかちゅいたー!』 同時に、赤ゆっくりの甲高い声もマイクに届く。 『ゆ・・・!ごめんね!おにいさんがかえってきたら、すぐゆっくりできるからね!』 どうやらあの親れいむは、茎を落として食べさせることを知らないようだ。 粗悪品を売る、激安ペットショップ出身かもしれない。 困惑する親れいむの顔にズームイン。 頭にエサがあるというのに、無知とは罪なものだ。 メガネを額に上げたことを忘れて、メガネメガネと彷徨う人のよう。 『ゆー!もうがまんできにゃいよ!』 『ごはん!ごはーん!』 『れーみゅ、あまあまたべちゃい!』 『まりしゃも!』 『ありちゅもあまあま~!』 『むきゅ・・・・・ぱ・・・も・・・』 少し離れているが、赤ゆっくり達の声はマイク越しでなくとも聞こえる。 「住宅街だったら即死だな」 もっとも、あんな危機意識のないゆっくり達は即死でなくともいずれ死ぬ。 死までの時間が少し長引くだけだ。 『あかちゃんたち、おねがいだからがまんしてね!おにいさんがきっとゆっくりさせてくれるよ!』 『はやくゆっくちちたい!』 『おかーしゃんはゆっくちさせてくれないの!?』 『もうがみゃんできないいい!!』 『ゆっ!?おにいしゃん!ありちゅにごはんちょうだいね!』 1匹の赤ありすが、道行く男性に声をかけた。 スーツ姿の男性だ。時間的に、休日出勤をするサラリーマンだと思う。お仕事お疲れです。 『きいてりゅのぉ!?』 男性は赤ありすとゆっくり約50匹をちらりと見ると、すぐに視線を正面に戻して歩いて行った。 一言も、赤ありすに言葉をかけることなく。 『ゆぎゅ!いなかもにょ!ありちゅにごはん!』 野良ゆっくりの相手などする人間は、ほとんどいない。 マナー違反であるし、下手に甘やかせば余計に酷い思いをすることが多いことを知っているのだ。 「ああ、出勤時間か」 時計を見れば、今は出勤するサラリーマンが増えてくる時間帯だ。 柱に隠れてカメラを構える俺は、さぞかし怪しい姿に映るだろう。 最悪、盗撮魔と通報されてしょっぴかれてしまうかもしれない。 「んー」 数秒考え、俺はカバンを近くのフェンスに引っかけた。 続いて、カバンにカメラを入れる。 「角度は・・・っと」 カバンには穴が空いているので、そこにレンズを突き通す感じでセッティング。 ちゃんと録画されていることを確認し、俺はフェンスに寄りかかるように座った。 パッとみた感じ「フェンスに寄りかかって音楽を聴いている男性」に見えないこともない。 ただ、カバンとカメラを調べられたら一発で盗撮の烙印を押されてしまうので注意だ。 『ゆゆ!おねえさん!れいむのおにいさんをしってたらゆっくりおしえてね!』 そうこうしている内に、駅に向かうサラリーマンやらOLが増えてきたようだ。 親れいむは道行く人に、必死で元飼い主のことを尋ねている。 健気だ。 『ゆっくりしてね!おねがいだかられいむにおしえてね!』 1人のOLに目をつけた親れいむが、ぴょんぴょんと跳ね寄って行く。 『ちょっ・・・ちょ、こっち来ないでよっ!』 カメラの角度が気になったが、多分撮れているだろう。 親れいむは必死でOLを追いかけていた。 まるで、そのOLが飼い主であるかのように。 そしてそれに赤ゆっくり達も続く。 多分何も分からず、とりあえず親に置いて行かれないようにしているだけだろう。 50匹近い赤ゆっくりの集まりは、丸い影のようにも見える。 それがぞわぞわと動いているのだ。 『うっわ、きっもぉ!何でこんなに湧いてんの!?』 片足を上げ、露骨に嫌な顔をするOLと、それを哀れそうに見つめるサラリーマン達。 『ゆ!れいむのかわいいあかちゃんだよ!ゆっくりあやまってね!』 『ゆー!ゆっくち!』 『おねーしゃんはゆっくちできりゅひとぉ?』 『いっちょにゆっくちちようね!』 『ありちゅがしゅりしゅりしてあげるね!』 親れいむに追いついたため、マイクに赤ゆっくりの声が届いた。 『・・・うっざ。も、いいわ』 言うが早いか、OLは全力疾走で駅の方へと駆け抜けていった。 『邪魔だ、どけ』 次に飛び込んできたのは、低い声。 近くにいた、頭をハゲ散らかした男性が言ったようだ。 『むー!じゃまじゃないよ!ゆっくりおこるよ!ぷんぷん!!』 『ぴゅんぴゅん!』 『ぷんっ!』 親れいむはその事実を否定するが、はたから見ても邪魔そうだった。 本格的に人が多くなってきたこともあるし、親れいむはじめ赤ゆっくりは道のド真ん中でぷんぷんしているのだ。 ここは駅に行くのにちょうど良い道であるし、さぞかし邪魔だろう。 そんな、混雑した道。 1匹の赤まりさが、親れいむを中心とした塊からはぐれていた。 無数に動く足のなか、その姿を発見できたのは奇跡といっていいだろう。 『おちびちゃん!こっちにおいで!そっちはゆっくりできな』 言い終える前に、赤まりさは潰れされた。 悲鳴も聞こえない。 潰れた音も聞こえない。 聞こえるのは、人の込み合う時に出るごみごみとしたノイズだけ。 しかし親れいむの眼には、赤まりさが潰された様子が鮮明に写っていたようだ。 『れ゙い゙ぶのあがぢゃ゙ん゙ががあぁあ゙ああ゙っ!!!!』 イヤホンから飛んできた爆音に、俺は一瞬目を瞑った。 一気にどよめく人の波。 親れいむの叫びは、ものすごい音量であった。 『あがぢゃんだちぃぃぃ゙い゙!はや゙ぐにげでぇええっ!!ごごはゆ゙っぐりできな゙いよぉぉ!!』 『ゆっ!?』 『ゆっきゅりできにゃい!?』 『こわいいぃい!!』 ゆっくりできないという事実に、赤ゆっくり達は恐怖した。 道の中央で一か所に集まっていた赤ゆっくりは、四方八方へと蜘蛛の子を散らすように逃げていく。 「うえっ!!ふんじまった!」 「げえ!きったねえ!」 「こっちくんなっ!」 残念ながら、親れいむの叫びで波は止まらなかった。 どよめきながらも、駅へと進む人々。 プチトマトほどの赤ゆっくりは次々と潰されていく。 『や゙べでえぇえっ!!れいむ゙のあがぢゃんふまないでぇええええっ!!!』 そんな切なる願いに返ってきたのは、踏んだことに対する嫌悪感に満ちた声。 『ゆぼおぉおっ!?』 すると、誰かに蹴られたのか、親れいむが人の中から飛び出してきた。 一瞬、俺と目が合うが、すぐに視線をさっきまでいた場所に戻す。 『あがぢゃんっ!あ゙がぢゃん゙ん゙゙ん゙んん゙っ!れいむの゙ぉおっ!!れいぶのあがぢゃんっ!がえじでぇ!!ゆっぐりがえじでねっ!!』 親れいむは戦場へと戻って行った。 2時間後。 親れいむは道の隅で目が覚めた。 メタボリックな人に踏みつけられ、ずっと気を失っていたのだ。 「ゆ゙・・・!?あ、あがっ、あがぢゃんっ!?」 もう歩く人はまばらだった。 だからよく見える。道にこびりついたいくつもの円が。 「ゆがっ・・・ゆぎ・・・あがっ、れいぶのっ・・・!?」 一番近くにあった黒い円に、親れいむはソロソロと近づいた。 俺は背後からカメラを構えている。 「おちびぢゃん・・・まりざのおちびちゃん・・・」 黒い円の中心に、ぐちゃぐちゃになった帽子らしきものがある。 赤まりさの変わり果てた姿だ。 実に汚い。 「ごっぢは・・・れ、れいぶど、れいぶどおなじおぢびぢゃん・・・ゆぅっ!」 次に近寄った円の中心には、黒と赤で見事なコントラストを奏でるリボンが置かれていた。 「あ、ありずのっ・・!おちびぢゃん・・・ゆぐうぅう!!」 薄い黄色の円は、赤ありすの潰れた跡だ。 皮とカチューシャが比較的分かりやすく残っていた。 朝からこんな不快な光景を目の当たりにしたサラリーマンが哀れでならない。 「どぼじでぇっ!?どぼじでごんなごどずるのぉおおっ!!?おにいざんどこにいるのぉお!?れいぶゆっぐりできないよぉぉお!!」 顔面をコンクリートに近づけながら、親れいむは嘆き悲しむ。 すると、フェンスの隙間から1匹の赤ゆっくりが近寄って来たではないか。 「おかーしゃ!れいみゅだよ!ごわがっだよぉおお!!」 ゆゆーと泣きながら、赤れいむは親れいむの頬へと飛び込んだ。 この赤れいむが唯一の生き残りのようだ。 「ゆっ!おちびちゃん!よがっだよおぉお!!いっじょにゆっぐりじようねっ!!みんなのぶんもゆっぐりじようねぇえええ!!」 「ゆっきゅりちたいよおぉお!!おかーしゃんとゆっきゅりちちゃいよぉお!!」 すぐに激しいすりすりが始まった。 大量に子を失った悲しさを埋めるように、2匹は体をこすり合わせる。 交尾とは違う、親れいむが赤れいむを包み込むように動くすりすり。 赤れいむの表情は涙であふれていたが、明るい顔をしていた。 「お、こりゃまずい」 ふと顔を上げると、数人の男性の姿が目についた。 全員が作業服を着てこちらに向かってきている。 俺は、親れいむに近づいた。 その顔は赤れいむと同じく涙でいっぱいであったが、優しい笑顔をしていた。 「マイク、返してもらうよ」 一言つぶやき、リボンからマイクを回収する。 「失礼します、こちらのゆっくりは」 立ち去ろうとする俺に、作業服を着た男性が声をかけてきた。 彼らは保健所の人間だ。 朝のラッシュの騒動で、誰かが連絡したに違いない。 こんなに仕事が早いなんて、公務員もバカにしたものではないと思う。 いつか、保健所の取材でもしてみたい。 「ああ、野良のゆっくりでしょうね。俺のじゃないですよ」 さよなら、ゆっくり霊夢。 最期に親子の絆を確認できてよかったね。 俺は餡子を踏まないように気をつけながら、駅へと向かった。 ふと壁を見ると、餡子がこびり付いている。 赤ゆっくりを踏んだ誰かが、靴をすりつけて汚れを落としたのかもしれない。 「やべでぇええええっ!!!れいぶのあがぢゃんがえじでぇええっ!!!」 背後から変な声が聞こえたが、俺は振り返らなかった。 おわり このSSに感想を付ける
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※ゆっくりを用いる必然性低し。 ※実話を元にしたフィクションです。 「れいむっ! れいむっ! オニギリ作ってね! おべんと作ってね!」 「ん~……ちょっと早すぎじゃないのよ…………」 早朝の博麗神社での出来事でした。 布団の中でゆったりと睡眠を楽しんでいた博麗霊夢の上では、わくわくそわそわとした表情のゆっくり霊夢がぽすっぽすっと跳ねています。 霊夢は自らに飛び乗ってくるゆっくり霊夢をむんずと掴んで壁に向かってぶち当てると、 緩慢な動作で体を起こして台所に向かいます。 彼女は眠そうにふぁぁとあくびをひとつあげながら、炊飯ジャーからほかほかのご飯を取り出しました。 この作者の幻想郷では文明レベルが現代日本並みなのです。 「具は何がいいの?」 「ツナマヨ!」 「はいはい、ちょっと待ってなさいね」 霊夢は慣れた手つきで綺麗な三角形をしたオニギリを作り、それを二つタッパーの中に入れて、更にそれを風呂敷で包みます。 「はい、出来たわよ」 「ありがたうっ!」 ゆっくり霊夢は抱擁の代わりなのかそのぷにっとしたほっぺたを霊夢の足にすりつけて感謝の意をあらわします。 それから霊夢はゆっくり霊夢に風呂敷をかぶせました。 首がない一頭身のゆっくり霊夢に風呂敷を被せると、まるで泥棒のほっかむりのように見えました。 「それにしても旅行ねぇ……。まぁ、気をつけて行ってきなさいよ」 「いってくるね! ゆっくりしていってね!」 そうなのです。 ゆっくり霊夢は先日思い立ったものがあって、今日日帰りの旅行に行くことにしたのです。 おみやげを持って帰ってくることを条件にしなければ、物ぐさな霊夢はわざわざオニギリなんて作ってくれないでしょう。 「そう言えば肝心なこと聞いてなかったんだけど、どこに行くの? 何でも外の世界のどこかって言ってたじゃない」 そう、ゆっくり霊夢が今日向かうのは外の世界です。 わりとあっさり幻想郷と外の世界は行き来できるのです。 ただしそれはあくまでも自己責任。 見目麗しい少女の姿をした妖怪が無用心にも外の世界に遊びに行って、幽白の垂金権造さんみたいな人に捕まってskmdyな目に会ってもそれは自己責任です。 だけどそんな薄い本世の中にはあまり無いのが不思議ですね。 さぁ、今日の旅行先は外の世界。 ゆっくり霊夢がどこへ向かうのか。 それは――。 「タイさ!」 ~ゆっくり霊夢の日帰りタイ旅行♪~ 最近ゆっくり霊夢はとある映画DVDを見ました。 その映画のタイトルは「トム・ヤム・クン!」。 古式ムエタイを体得した青年(演じたのはトニー・ジャー。台詞がほぼ‘象を返せ!’のみ)が、友達である象を誘拐した密輸組織とドンパチやらかすアクション映画です。 「これ死んでるんじゃね?」「絶対病院送りになったスタントマンいるよねコレ」といった凄まじいまでの過激なアクション、4分以上のワンカットでの殴りこみシーン(段々主役が疲れて動きが鈍くなっていくのがリアル!)、連続関節技49人怒涛抜き、カポエラ→刀剣使い→レスラーの3連続バトルや絶望的なラストバトルからの覚醒など、やたら熱い要素が盛り込まれたB級アクション映画の傑作です。 その映画を見たゆっくり霊夢は思いました。 「タイいきてー! ムエタイ見てぇぇ!」と。 「楽しみだね!」 そういうわけで早速転載アフィリエイトサイトで稼いだ貯金を下ろして行くことにしました。 一緒に旅行に行く程親しい友達は人間にも妖怪にもゆっくりにもいないのでぼっち旅です。 「別にいいさ、そっちの方がマイペースでゆっくり楽しめるしね!」とゆっくり霊夢は悲しみを含んだ笑顔で言いました。 いつもの一頭身だと流石に‘幻想郷→外の世界’間の検閲に引っかかってしまうので、借り物のボディにパイルダーオンしたゆっくり霊夢。 降り立ったのはタイ内某地方のとある町。 まず第一に思ったことはコレでした。 「あっちぃね…………」 そうです。 暑いのです。 タイは高温多湿な気候にあり、11月~2月の乾期でも平均気温は26~27℃。 ましてや今は6月。 平均気温29度・湿度87%。 暑さのピークの日本の都市部程ではないにしろ、とにかく蒸し暑くて蒸し暑くてたまらないのです。 そんなゆっくり霊夢の目の前に現代日本の人々なら見慣れた店舗、セ○ンイレブンが見えました。 そうなのです、タイにもコンビニはあるのです。 本のコーナーには仏教徒をターゲットにした雑誌があるなどの違いはあるものの、品揃えの良さは日本のコンビニと遜色がないと言えるでしょう。 さて、ここで一つ問題があります。 タイ語を喋れる人は日本には殆どいないでしょう。 そんな言葉の通じない国ではどうすればいいのか。 コレについては実のところあまり問題がありません。 タイ語が喋れるように事前に勉強するにこしたことはありませんが、喋れなくてもようは意思疎通さえ出来ればいいのです。 ①日本⇔タイ用の辞書及び翻訳本を持っていき、指で指したり筆談しながら意思疎通する。 これが一番確実です。 特にイラスト付きの翻訳本を用いると良いでしょう。 ②英語を使う。 日本人が授業で英語を学ぶようなことをタイでも行っているため、お互いたどたどしい英語でも結果それなりの意思疎通は出来ます。 中学卒業レベルの英語さえ身につけていれば、取りあえず買い物ぐらいは何とかなります。 以上の方法はある程度治安の良い国なら他の国に旅行に行った際もある程度応用できます。 もっともタイはおおらかな国なので、『サワディーカップ(こんにちは)』『コップンカップ(ありがとうございます)』『マイペンライ(大丈夫です)』『ペッ(辛ッ!?)』さえ覚えておけばある程度大丈夫です(女性の場合はカップではなくカーと伸ばす)。 「こっぷんかー(ありがとうございました)」 レジのおばちゃんにお礼を言ってコンビニを後にするゆっくり霊夢。 取り合えずペットボトルのお茶を購入しました。 暑くて暑くて、甘ったるいジュースなんて飲む気にはなれないからです。 ゆっくり霊夢はお茶を手に取り、爽やかな苦味とその中にあるほんのりとした甘さを期待して口にしました。 「ゆべしっ!!?」 ですがその期待は無残にも打ち砕かれました。 「なんじゃこりゃああああああああああっ!!?」 そう、タイのお茶は甘いのです。 お茶の中に砂糖だか蜂蜜だか知りませんが何かが入っていて、とにかく甘いです。 日本みたいな苦いお茶を期待するとまずびっくらこきます。 そもそもタイ人は甘いものが大好き。 慣れない人なら翌日のお通じの時に激痛が走るほど辛いタイ料理を食べ、それを即虫歯になりそうなほど甘いジュースで中和するという食生活を多くのタイ人が送っています。 高血圧の人と糖尿病の人――というか年寄り全般の体に優しくない国です。 「わけがわからないよ……」 さすが外国。 日本とは味覚も常識も異なります。 ゆっくり霊夢は甘いものもそれは一応好きですが、甘いものが飲みたければジュースを飲むのでお茶に甘さなんて求めていません。 醤油味の煎餅と共にするのが蜂蜜でも混ぜたようなやたら甘いお茶だったらまず耐えられないでしょう。 もし霊夢だったら発狂してちゃぶ台をひっくり返すに決まっています。 まさにカルチャーショック。 異国の常識とのご対面。 更に道端に視線を向けると、喉が渇かないのかクッキーを飲み物を飲まずにむしゃむしゃ食べているおっちゃんがいます。 「……妖怪だよアレ」 この日帰り旅行、目的は勿論ムエタイ観戦なのですが、興行は夜なのでそれまで時間を潰す必要があります。 言い換えれば昼は観光に当てられるということなのですが、生憎昼は前述したように猛暑。 ゆっくり霊夢は正直言って動きたくありません。 ゆっくりしたいです。 ですからある公園にある椅子とテーブルが置かれた広場の中の、木陰の席でゆっくりすることにしました。 「ゆ~…………」 流石に暑い日中ゆえかみな気だるげです。 さて、そこでゆっくり霊夢は考えます。 そろそろお昼を食べなくてはと。 霊夢から作ってもらったオニギリはあるのですが、まだこれを食べる気にはなれません。 よって何か買って食べる必要があるのですが、先ほどのコンビニではお茶のショックにより食べ物を買うことを忘れてしまいました。 そこでゆっくり霊夢は暑さにうだりながら辺りを見回しますと、屋台があります。 タイは田舎でも50m歩けば二軒は屋台が見つかるほど、屋台が多いです。 人の多い区画だと屋台だらけの屋台フェスティバルと表現できるほどあります。 ゆっくり霊夢は色めき立ちました。 せっかくだから現地の食べ物を食べよう。 美味しくって評判と話題のタイの屋台料理に舌鼓をうとうとします。 ゆっくり霊夢はずるずるとボディを引きずりながら、屋台まで歩み寄りました。 「何食べよー……」 ガパオ・ガイ(鶏肉のバジル炒め。やたら旨い)にしようかな、それともカオトムマッ(焼いたバナナのちまき。甘くて美味い)にしようかな、グリーンカレーなんかもいいかもね(ココナッツミルクを調味料に使った緑色のカレー。辛くて美味い)。 さぁゆっくり霊夢は期待に目を輝かせながら屋台で売っている品物を覗き込みました。 寿司でした。 「…………」 寿司です。 ジャパニーズSUSHIです。 ナマモノです。 ここは炎天下です。 直射日光ビンビンです。 どっからどう見てもO-157だらけです。 「………………」 どうやらコイツ等は寿司という食べ物についてあまり理解が深くないようです。 隣の屋台を見ました。 生肉です。 な・ま・に・く・です。 ここは炎天下です。 直射日光ビンビンです。 O-157大繁殖です。 「…………まじか」 更に隣を見ました。 生レバーです。 な・ま・れ・ばーです。 ここは炎天下です。 直射日光ビンビンです。 O-157の満員電車です。 「………………ありえねー」 どう考えて傷んでいます。 ですがタイ人は直射日光に置いた生肉であろうと「焼けば食える」と皆笑顔で言います。 「だったら寿司はどうなんだよ。生のまま食べるじゃねーかアレ」と、疼いたジャパニーズスピリットによる突っ込みは「マイペンライ(大丈夫だ。問題ない)」とあっさりスルーしてくるから始末に終えません。 食中毒を起こせば日本だったら責任問題で店は廃業ですが、タイではお腹を壊す客のほうが悪いのです。 「…………」 ゆっくり霊夢はずるずると体を引きずって元の席に戻りました。 隣の席ではパパイヤサラダをおかずにしながらタイ米を食べているおっちゃんがいます。 サラダをおかずにして米を食べる。 日本人からすればありえないことですが、タイ人からすれば普通の光景です。 このパパイヤサラダはソムタムと呼ばれ、細く切った青いパパイヤ、インゲンを専用の鉢に入れた後、.唐辛子、ニンニク、ライム、ナンプラー、砂糖、を適量加え棒で叩いて作ります。 ピーナッツや干しえび、生の蟹をまぶす、‘ご飯にあう’サラダです。 ただし生の蟹には寄生虫がいる時もあるので、やっぱりお腹を壊さないように気をつけましょう。 「……もうやだおうちかえる」 たった一日の日帰りの旅行とはいえ、ゆっくり霊夢は霊夢のことが恋しくなりました。 ゆっくり霊夢はここでの食料調達を諦めます。 タイ料理は美味と評判とはいえ、人それぞれ合う合わないはあるのです。 ましてや辛い料理と甘い料理が多くて極端な上、香辛料をふんだんに使うタイ料理は好き嫌いがコレでもかというほど分かれます。 しょうがないと思ったゆっくり霊夢はいそいそと霊夢に作ってもらったオニギリを取り出しました。 大事に大事にとっておいた霊夢の作ったオニギリを、ゆっくり霊夢はここで食べるように決めました。 登山するわけでもないのにわざわざお弁当を作ってもらった理由。 わざわざ外国に行くのに、一食を現地の食べ物以外で行う理由。 それには一つワケがあります。 それは子供の頃のお弁当を作ってもらう機会のもつわくわく 何が入っているのかな、何を作ってもらえるのかな。 その高揚感というものは、多くの人々が経験してきたものだと言えるでしょう。 インドア派ゆえにお弁当を作ってもらえるような機会のないゆっくり霊夢。 ですのでゆっくり霊夢は楽しみでした。 誰かの、霊夢の作ったお弁当を食べるということが。 「しあわせ~!」 しかし残念ここは高温多湿の国タイでした! オニギリは腐ったオニギリになっていたようだ! ゆっくり霊夢は毒状態になったとさ! ◆ さて、ゆっくり霊夢は数時間もがき苦しみましたが何とかムエタイの興行が始まる時間には間に合ったようです。 時間に余裕の無い日帰り旅行なのに、更に毒状態で時間を無駄にしてしまいました。 観光なんて殆ど出来ない残念旅行です。 せめて肝心のムエタイは見逃さないようにしようと思ってスタジアムに行って入場料を払うと、取りあえず空いている席に腰を下ろします。 スタジアムの中は年季の入ったリングを中心にしてその周囲に興奮した観客が入ってこないように金網が張られ、更にその周りには木で出来たベンチが段になっています。 ゆっくり霊夢は取りあえず高みの見物を決め込もうと、上のほうの席に座りました。 ですが更に上のほうにVIP席があるようです。 何か黒幕っぽいおっちゃんが数人います。 タイマフィアです。 マフィアである彼らに対してあまり良い印象を持たない人が多いのは当然のことでしょう。 一応彼らの弁護をするのなら、彼らは興行主でありスポンサーであるので、彼ら無くして興行が成り立ちません。 それすなわち経済が動かなくなり、却って治安が悪化するのです。 取りあえず仕事する地元ヤクザみたいなものだと考えてください。 間違えてもアクション映画の真似して喧嘩売らないでください、撃たれます。 「ゆっくり楽しむね!」 さて、ここで一つ説明をいたしましょう。 ムエタイ。 基本のパンチと蹴り、そして殺傷力の高い肘と膝を用いた、最強の立ち技格闘技と呼ばれています。 特に本場タイにおけるレベルの高さは半端なものではありません。 外国人でムエタイでタイのランカーに通用するような選手は稀です。 それが例えその選手が祖国では強豪や国内チャンピオンと呼ばれるレベルの選手であろうと、です。 実際ムエタイ及びキックボクシングの世界では、どこぞの団体が勝手に作った世界チャンピオンのベルトよりもタイのラジャダムナンとルンピニーの二大スタジアム(オタ業界における、とらのあなとメロンブックスみたいなもの)のチャンピオンベルトの方が価値があると言われています。 そしてそのムエタイ史上最強の選手と呼ばれている、膝蹴りと首相撲(相手の首や体を掴んでコントロールしながら膝・肘に繋げる技術)の名手ディーゼルノーイ・チョータナスカン。 彼の強さを格ゲーで例えるとこんな感じになります。 硬直しないオートガード&スーパーアーマー常備。 画面半分以上が射程の打撃投げ(威力極大。更にボタン連打で追撃して威力アップ)。 更にシステム上飛び道具無し&自キャラが大ジャンプが出来ない。ジャンプ出来たとしても着地時にディーゼルノーイに確実に掴まれる。 打撃投げ→打撃投げ→打撃投げ→相手ダウン→起き上がりに合わせた打撃投げの無限ループハメ。 はい、チートです。 対戦で使ったら確実に友達を無くします。 事実こいつは強すぎてほぼ勝ってしまうため、ムエタイに必須のギャンブルが成り立たなくなって引退に追い込まれました。 話が脱線しましたが、その間にお客さんがずいぶんと集まってきました。 いよいよ試合開始です。 これから先どのような血沸き肉踊る戦いが繰り広げらるのか、ゆっくり霊夢はドキドキしながら固唾を呑みました。 ミドルキック(オーイ!) ミドルキック(オーイ!) ミドルキック(オーイ!) ミドルキック(オーイ!) ミドルキック(オーイ!) ミドルキック(オーイ!) 「じみ~……」 そう、本場のムエタイの試合は基本的に地味です。 一応肘や膝などの強力な技も打ちますが、それ以上に一撃KOしにくいミドルキックとボディへの膝の割合が多すぎます。 そもそもムエタイは判定勝利を美徳としている上、更に1~2Rはお互いに様子見するのが暗黙の了解です。 理由はムエタイはギャンブルと切っても切り離せない競技なので、その1~2Rの間の動きで掛け率を変動させるためです。 更になんと言っても試合を最後で見ても殆どKOがありません。 理由としてムエタイ選手達は幼少の頃より実践をこなしてきた事による卓越されたディフェンス能力が挙げられます。 彼らは対戦相手の動きにおける筋肉の収縮を見て、それだけで次にどの攻撃がどの部位に来るのか予測してしまうのです。 そしてそれ以上に、ムエタイは5R終了後の判定によって勝敗を決めることが美徳とされているためです。 賭けは5R終了後の判定を前提に進行していくので、KOして早々と試合を終えてしまうとギャンブルが成り立ちにくくなってしまうため、観客から苦い顔をされてしまいます。 よってKOばかりしてしまう選手は賭けが成り立たなくなるため、最悪干されて引退です。 「かえろっかな……ゆっくりしててもつまんないよね……」 ですが彼らを侮ってはいけません。 ムエタイ選手達はけして攻撃力不足で倒せないのではありません、単に観客の空気を読んで倒す気がないだけなのです。 それはゆっくり霊夢がその場を後にしようとしたその時でした。 肘によって切り裂かれた瞼の上からの出血。 膝蹴りによって打ち抜かれた腹部の鈍い音。 そして無残に崩れ落ちる青コーナーの選手。 なんと肘・膝からのコンビネーションによる、血まみれの凄惨なKO勝利が起こりました。 どうやら片方の選手がもう片方の選手の顔面に誤って前蹴りを当ててしまい、当てられた選手が腹を立ててMAXパワーで突っ込んだようです。 実はタイ人は足の裏を非常に不浄のものとします。 そして頭には神様が宿っているというように教えられています(よってタイの子供の頭をなでると嫌がられる。神棚に触られているようなものだから)。 そんな足の裏で顔面に打たれるということは、顔面と神棚と先祖代々のお墓に唾を吐きつけられるようなものです。 そうなればもはや空気を読んで判定に持ち込むような真似をするようなことはしません。 ですのでタイ人の顔面には決して前蹴りを打たないようにしましょう。 冗談抜きで病院送りにされます。 ◆ ゆっくりしていってね!!! ゆっくり達がよく用いる言葉です。 意味は勿論歓迎ですが、実はそれ以外の意味もあるのです。 それはその場を荒らす不届き物に対して「とっとと出てけや」という煽りの意。 ゆっくり達は北斗の拳で笑顔で無抵抗をしていたらあっさり殺されたおっちゃんのような行為はしないのです。 敵に対して無抵抗を貫いてやり過ごそうというのはもっとも愚かな選択だからです。 ですので煽ります。 煽っておちょくって悪口言いまくってやりたい放題かまします。 それで帰って自分や周囲に迷惑が掛かっても知ったこっちゃありません。 何故なら無抵抗によって蹂躙されることで生じる被害のほうが、遥かに甚大だからです。 タイ人。 彼らは金と顔面前蹴りさえ絡まなければ、実はとても穏やかな気性の民族です。 『マイペンライ(大丈夫だ、問題ない)』という言葉を口癖にして、のんびりゆっくりゆったりとした生活を好みます。 直射日光の下においた生肉でも取りあえず焼けば食えると主張するように、細かいことも細かくないことも気にしないのです。 ですが彼らは自分とその友人を脅かす敵とは徹底的に戦うのです。 そんなタイ国だからこそ列強の脅威に晒されるアジア圏にありながら、植民地とされることが無かったのかもしれません。 「受け売りだけどね!」 試合を見終わったゆっくり霊夢はスタジアムからの帰り道でそのようなことを考えていたのでした。 ゆっくり霊夢がトム・ヤム・クン!を見ていて一番興味があったことは実はムエタイの技術ではありませんでした。 もっとも興味があったこと、それはゆっくりを好む気性でありながら、敵とは徹底的に争うというエピローグにおける主張。 そんなタイスピリッツ。 彼らの穏やかさの中にあった激情。 それを勝手に感じて一方的に持ち帰ることが出来て、この日帰りのタイ旅行に満足して幻想郷に帰るゆっくり霊夢でした。 そんなとってつけたようなゆっくり要素を加え、この話はおしまい。おしまい。 おまけ 「ただいま! ゆっくり出迎えてね!」 「あ、ゆっくりお帰り。どうだった? 旅行は楽しかった?」 「それなりさ! ごはん食べながら話すね! おみやげあるよ! お酒あるよ! フルーツもあるよ!」 「あら、気が利くじゃない。おぉよしよし~」 「ゆ~♪」 「そういえばね、ゆっくり。さっき人里のスーパーに行って夕飯を買ってきたのよ」 「ゆ~♪」 「それがなんとタイ直輸入の料理がお惣菜だったの。何かやたら安かったから買ってきたわ。だから今日もタイに行ってきたゆっくりはひょっとしたら食べちゃっていたかもしれないけど我慢してね」 「ゆ~……」 「本当に不思議よね~。海の無い幻想郷だと外の世界の新鮮な海産物は高いのに、何であんなに安かったのかしら?」 「れ、れいむ……。何買ってきたの?」 そして霊夢は、この上ないほど嬉しそうな笑顔で悪夢のような現実を口にするのでした。 「寿司よ!」 なあにおもいっきり酢締めしてあればマイペンライ -- 名無しさん (2012-06-09 20 36 52) 確かにゆっくりあんまり関係ないかもしれませんが、それだけにツッコミが中々シュールで面白いです。 ゲーム実況動画のSS版といったところでしょうか。ゲームじゃなくて現実なのが恐ろしいところだZE! 小ネタ満載で面白かったです -- 名無しさん (2012-06-10 01 32 46) とりあえず幻想郷には身体をレンタルしてくれる所があるという事実に吹いた。 -- 名無しさん (2012-06-16 00 04 39) マイペンライの和訳…イーn(ry -- 名無しさん (2014-03-22 20 35 07) 名前 コメント
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ある男のゆっくりレポートのおまけ ゆっくり霊夢一家の越冬(誤算編) ゆっくり霊夢一家は師走の寒さの中家路を急いでいた。 「さむい! さむいよおかあさん!」 「おうちにかえったらゆっくりしようね!!」 そんな返事しか出来ないお母さんゆっくり。 それも当然だ、今までこの時期は巣の中で皆でゆっくりしていたのだ。 しかし今年はそれが出来なかった、出来なくなってしまった。 「いそいでかえってゆっくりしようね!!!」 ともかく家路を急ぐ事しか出来ない、雪に埋まってうまく進めない中、懸命に家まで進んでいく。 日が完全に落ちようとしていた頃、ようやく自分達の巣に到着できた。 「ゆー?」 中を覗いてみるが気配はない、入り口にはドアを塞ぐのに毎年使っている石と松葉が転がっていた。 しかし、既に外気にさらされて冷え切っているが、確かに先ほどまではゆっくり魔理沙一家が居た形跡が感じられた。 「いまのうちにうちにはいろうね!」 のんびりもしていられない、雪の中を進んできた体は凍りそうなほど冷たくなっていた。 今か今かと待っていた母親の号令で、急いで中に入る一家。 お母さんとお姉さん達が急いで入り口を塞いでいく。 何時もならゆっくりしながら数日かかる作業が、あっという間に終わり入り口は綺麗に塞がれた。 これで外気が入ってくる心配はない。 依然として寒い室内だが、だんだんと暖まってきている。 次第に、一家の顔にも暖かさが戻ってくる。 「よかったね!」 「あったかいね!」 「はるまでゆっくりしようね!!!」 「はるになったらみんなでゆっくりしようね!!!」 無事に巣が戻ってきたことが嬉しいのだろう、口々に出るのは越冬の間の楽しそうな計画と、春になってからのゆっくりする計画だった。 「いっぱい歩いて疲れたからごはんにしようね!」 お母さんゆっくりが提案する。 ふと、ゆっくり魔理沙一家が蓄えておいた食糧はどこだろう、と巣の中を見渡す。 綺麗な鳥の羽、大きくて綺麗な石、そんな素敵なものは多々あったが肝心の食料は何処にもなかった。 「たべものがないよ!」 焦るお母さんゆっくり、何時もなら冬の前に実り豊かな山の幸をたっぷりと蓄えて冬を越す。 いや、蓄えなければ途中で凍死か餓死してしまう。 その大事な備蓄が今年は出来なかった、何時までも暖かい部屋に居た所為で季節感覚が狂ってしまっていたのだ。 「おかあさん、たべものならあるよ!!」 「ゆっくりできるよ!!」 今年生まれた子ゆっくり達だ。 当然、この六匹はまだ越冬を経験していない。 明日にでも取りに行けば良い位に思っているのだろう。 「だめだよ! それたべたらゆっくりできないよ!!!」 あの男から貰ってきた綿菓子の袋に口を伸ばそうとしたところを、お姉さんゆっくり達が止める。 小さくても、越冬の経験だけは頭に残っているらしく皆の表情は必死だった。 「これはれいむがもらったおかしだよ!!」 「れいむのだもの!!!」 口々に文句を言ってくる、お母さんゆっくり達が何とか今の状況を伝えようとするが、なかなか伝わらない。 「あしたになったらみんなでおさんぽにいって、そのときにあつめればいいよ!」 「あしたゆっくりあつめるよ!!!」 「それよりも、おうちさむいよ!!!」 「すとーぶをつけてね!!!」 「おかあさんすとーぶつけてゆっくりしようよ!!!」 「すとーぶ♪ すとーぶ♪」 お母さんゆっくりは困り果てた、どうしても今の緊急事態が理解してもらえなかったからだ。 今も、お姉さんゆっくり達が懸命に説明しているが、おそらくは徒労に終わるだろう。 「おねえちゃんたち、れいむのおかしかってにたべようとしてるの!!?」 「ずるい! ずるいよ!」 「ゆっくりできないなら、おうちからでていってね!!!」 同時に、お姉さんゆっくりに飛び掛る。 妹とはいえ、既に十分成長したゆっくりの攻撃を食らった数匹のお姉さんゆっくりは壁まで吹っ飛んだ。 「ゆ!! このおかしは、ゆっくりできるれいむたちがたべるんだよ!!!」 「おかあさんたちは、ゆっくりできないからたべれないよ!!」 プンプン、と再びお姉さん達に襲い掛かろうとする。 「ゆっくりごめんね!!!」 吹っ飛ばされたのは襲い掛かろうとしていた子ゆっくりの方だった。 「ゅー、ぃたいよ……ゆっくりでぎないよぉ!」 「どうじでゆっぐりざせてくれないの! ゆっくりじだいよぉ」 弱々しく呟く子ゆっくり達、既に大半の餡子は外に飛び出していた。 半ば瀕死のそれを、躊躇なく踏んでいく大きなゆっくり。 先程まで、子ゆっくりと残りのゆっくりを天秤にかけていたお母さんゆっくりだった。 「ほかのゆっくりがゆっくりできなくなるから、ごめんね!!!」 必要以上に潰してくお母さんゆっくり、姉たちも真意を理解したようで母に倣って他の子ゆっくりを潰していった。 その一方的な虐殺は、あっという間に終わりを迎えた。 先程とは打って変わって静寂が辺りを包む。 泣き叫ぶ子ゆっくりは見る影も無く、床に転がっている皮と餡子が混ざった物体がその名残を残しているだけだ。 「あのこたちのぶんも、ゆっくりふゆをこそうね」 「うん、ゆっくりこそうね」 今や十匹ほどに減ったしまった巣の中で、お母さん霊夢と他の霊夢達がお互いに口々に話す。 残念ながら、そこに罪悪感が有るのかは窺い知る事は出来ない。 それから数日が経った。 既に潰れた子ゆっくりの餡ペーストを少しずつ食べながら、越冬するゆっくり一家。 少なくなったことで室内の温度は下がってしまったが、それでも越せないことは無い。 去年と同じ人数になっただけだ。 どのゆっくりもそう思っていた。 だから、誰も不満も言わずじっと寒さに耐えていた。 大寒時、美味しかった餡ペーストも後僅か。 その頃には、子ゆっくりとその餡ペーストを結びつけるゆっくりはいなかった。 殺したことは覚えているが、今食べているこれが野山を駆け巡っていたとは、既に思っていないのだろう。 巣の中も当初は寒かったが、段々となれてきた一家には徐々に口数も戻ってきた。 「おいしいのすくなくなってきたね」 「だいじょうぶ! もうすぐさむいのおわるから!!!」 「でもこれだけだと、あたたかくなるまえにゆっくりできなくなるよ」 「おじさんからもらったおかしがまだのこってるよ。これだけあればゆっくりふゆをこせるよ!!」 「じゃぁこのおいしいの、いまたべちゃってもだいじょうぶだね!!」 「おかあさん、たべていい?」 「ゆゆ……。 ! なんとかぶじにふゆをこせそうだから、きょうはゆっくりおいわいしようね!!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 久しぶりにお腹いっぱいご飯を食べれるゆっくり達はご機嫌だ。 「むしゃ、むしゃ、おいしいよ♪」 「むっしゃむしゃ♪ ゆっくりできるね!!!」 「ゆっくりたべようね!!!」 床がピカピカになるまで舐め終えて、その日の楽しい食事は終わった。 最後の晩餐は、とても賑やかなモノになったようだ。 翌日、お昼頃に目を覚ましたゆっくり達は食事を取ろうと、あのわたあめの袋を運んできた。 一日半分ずつ食べれば間に合う、長年の経験からお母さんゆっくりはそう思っていた。 本当に袋の中にそれに見合うだけの中身が入っていたならば。 「ゆゆ!!?」 「ないよ! ないよ!!!」 大きな袋の中身は殆どなく、そこには微かに甘い香りのする中に、米粒程の塊が入っているだけであった。 「なんで!? なんでないの!?」 「これじゃあゆっくりできないよ!!!」 「おいしいわたあめがないよ!!!」 おじさんの所で出された中でも、特に美味しかったわたあめ。 そのおいしかったわたあめが、袋の中に入っていない。 ゆっくり達には無くなった理由など分かるはずもなく、巣の中はパニック状態だ。 「お、おがしがないよー!!!」 「れいむのおがしがーーー!!!」 「もってでるときはあっだのにー!!!」 必死で他の袋も開け始める、勢いよく飛びつき袋を食い破るゆっくり達。 が、全て同じ、小さな塊が出てくるだけだ。 ボロボロに引き裂かれた袋、訳が分からず叫び続けるゆっくり一家。 丼一杯にも満たない塊、これが今この家にある全食料だった。 それから、数日が経った。 既に一家の顔は青白くなり、目もトロンとしている。 「しんだ、ゆっくりたちの、ために、ゆっくり、ふゆを、こそうね」 「「……ゆっくり、こそうね」」 まるで合言葉のように、死んでいった仲間のためにも、と呟きながら懸命に寒さと空腹に耐え続ける。 この頃には、自分達で殺した子ゆっくり達が他の原因で死んだと思っているらしい。 いつもはゆっくりゆっくり騒がしいゆっくりの巣だが、今は雪が降り続ける外の方が賑やかなくらいだ。 次第に意識が朦朧としてきた、目に映るのはぼんやりとした家族の姿。 それが、段々と輪郭を失っていく。 「……ゆ!」 輪郭を完全に失ったそれは、大きな饅頭の姿になってゆっくりの目に映りこんだ。 「たったべもの!!! ゆっくりできるよ!!!」 一匹が力を振り絞ってもう一匹にかぶり付く、周りでは同じように数匹がかぶり付いていた。 「ゆ! いだいよ! れっ、れいむはたべものじゃないよ!!!」 「やめて! ゆっくりやめてね!」 「むしゃむしゃ、はぁはぁ、うめぇ、めちゃうめぇ!!!」 「ごくんっ! はぁはぁ、ゆっぐりたべるよ!!!」 既に正常な判断が出来なくなっているゆっくり達は、ただ生きるために目の前の饅頭に貪り付いていた。 家族なんてものは関係ない、まさに弱肉強食、たべれれている方が霊夢や魔理沙で食べているほうがれみりゃやフラン、それと同じことだ。 「やめてね!!! みんなでゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢が大きく膨らんで残った数匹の子供達を隠す。 ゆっくりが子供を守る時の常套手段だった。 「うっめぇ! このおおきいまんじゅうもうっめぇ!!!」 「これだけあればゆっくりできるよ!!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛! み゛ん゛な゛でゆ゛っぐり゛じでよ゛ーーーー!!!」 突進するでもなく、殴りつけるでもなく、ただただその大きな饅頭を食べていく。 後ろに隠れていた子供達も、段々と母親の声が小さくなっていくのが分かる。 か細くなっていく声、それがあるときぴたりと止んだ。 今聞こえるのは何かを咀嚼する音のみ、その音はどことなく、ゆっくりれみりゃのそれと酷似していた。 「……ぷはぁ!」 「!!!」 今まで守ってくれていたお母さんゆっくりの背中から、ゆっくり霊夢が顔を出した。 一匹、また一匹とその数は段々と増えていく。 おそらく全員が顔を出したのだろう、一匹のゆっくりがこう叫んだ。 「みんなでゆっくりしようね!!!」 「…………!!!」 巣の中にはゆっくりが数匹、これが巣の中に残っている全ての食料だ。 「むっしゃむっしゃ♪ う~すっきり~!!!」 最後の一口を綺麗に食べ終え、ご満悦のゆっくり霊夢。 どうやら、これで最後の晩餐が終わったようだ。 だが、ユダさえも居ない一人さびしい晩餐だった。 「!! おかあさんたちどこ? どこにいるの?」 正気に返った霊夢は辺りを見回すが、母親達の姿はない。 皆、お腹の中に入っているのだから。 「わかった! たべのもさがしにいったんだ! れいむはゆっくりまってるよ!」 キラキラと目を輝かせて部屋の真ん中に佇む。 時折、体を揺らしてリズムを取りながら母達の帰りをワクワク待つ。 このゆっくり霊夢が犯した間違いは二つ。 一つは、家族は全て自分が食べてしまったという事。 二つ目は、大事な食料を何の考えもなしに全て食べ尽くしてしまったという事。 「ゆっくりまってるから、はやくかえってきてね♪」 雪が津々と降る二月の山の中、あと一ヶ月以上も続くこの冬は、彼女をいったい何時まで生かしておいてくれるのだろうか。
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■標準顔 ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■左向き ____ ,,-- 、___ い 廴 -‐''´ ̄ ̄ ̄```ミく 汲 .っ. 廴γ´ ヽ. 乃' お .し 弋/==ー- -‐==彡, ,x仍 菓 ょ. { //_\レハノ/_Vv、 i´ ` 食 子 に Viyイ(ヒ'] ヒ'_〉) } ィ'゙ヽ レイ べ .を 「 ! ''' ,__, ''' ГI_,,ノ | | ま |{ ヽ_ン′ | | j 亅 .せ. .l__ト、 ,|__j Ν j ん }レjり≧=‐-- --‐''´,}レj;ΝWiノ .か ■点目 ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j .ん、_,j! ャ彳 o o j,ハノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■むしゃむしゃ ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ Υ' iY `ГI ''' '''「Ι. 」, !ゝ_| | '')ー一, } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■頬を染める ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ Υ' iY `ГI./// ,__, ///「Ι. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■HARD ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j .ん、_,j! ャ彳 ttテュ,. .,rェzラj,ハノ Υ' iY `ГI ''' ̄,__,  ̄'''「Ι. 」, !ゝ_| | } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■目をつぶる ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j .ん、_,j! ャ彳 ー― ‐一 j,ハノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■大声 ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | (___}’ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■ウインク ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( > ヒ_〉) jハ,ノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | ヽ_,ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■滂沱 ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j .ん、_,j! ャ彳 〓〓///〓〓 j,ハノ Υ' iY `ГI.//| |///////| | 「Ι. 」, !ゝ_| | || , -- 、 | | } i| ヤ И . |__j. | | 'ー⌒ー'.||イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■お怒り ( ⌒ ⌒ ) (、 , ,) || |‘ ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! .ノノ_\,∧ハノ/_Vj j .ん、_,j ャ彳 ( ヒ_] ヒン ) jハノ Υ' iY `ГI ''' '')へ '''「Ι. 」, !ゝ_| | '' } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■ぐぬぬ ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j .ん、_,j! ャ彳 ttテュ,. .,rェzラj,ハノ Υ' iY `ГI ''' ̄  ̄'''「Ι. 」, !ゝ_| | E三ヲ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■ヤンキー座り ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j ャ彳 ( ヒ_] ヒン ) jハノ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι. 」, !ゝ_| | ヽ..ン′ } i| ヤ И . L_j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐--.--‐''_´ N{ /⌒ ヽ | ヽ__ _ ', 、_ ) ( ̄ _丿 | /  ̄`i / ̄ `i | | , | ∧ | |__/ / `ーヽ _ | | _/ (__) 、__) ■少女祈祷中… ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ \∧ハノ/ Vj j. ん、_,j ャ彳 ttテュ,. .,rェzラjハノ. | ヽ |. `` Υ' iY `ГI ''' ̄,__,  ̄'''「Ι |  ̄ ̄`i. |. 」, !ゝ_| | } i| ヽ_/ よ . _/ ヽ_/ よ ヤ И . |__j _.,.,j_j!. _ ヘ _. __,r z__ Гフ ヤwИ|Nj{≧=‐--,--‐.///;ト,. .__} i゙_,、 .//. __} i゙_,、 `ニ' Zニニ,’.. .iヽ.―‐┘└―‐ 'ヽ. ,. く ` 、\ 〉l゙ ////゙l゙l. .`ー‐ァ丿 .| ー――'ヽ `ー‐ァ丿 _`ニ' Zニニ..,, | 「 ̄ ̄| 「 ̄ ̄||. / . . . \ . . . .` 、ソ/ . | | | / く | .「 ̄| .「 ̄ / く. `ーァ ッ¬т",、 ||_______| |_______|| /. . . . . . . . . \ . . . У . ;l /./ ∠ イ Ν | .| !| .∠ イ Νゝニ′'ニ~ 三ノ し‐.―.┐┌――v. / . . . . . . .r'´`‐,`、 /.,. ‐{ | !` 、 i.| 丿ノ | .! i.| /,へ、)| | | . !. ,'. . . . . . . . .';_,゚.,ノ. ./, ' . . . 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Υ' iY `ГI./// ,__, ///「Ι. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ヤ И . |__j イ_j! ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ■おみくじ引いてってね!!! ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 廴 /==─- ヾ -=彡゙、 お み く じ 引 い て っ て ね. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ ____ Υ' iY `ГI./// ,__, ///「Ι /////////.|. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| | ̄ ̄ ̄ ̄| | ヤ И . |__j イ_j! | 【奉 納】|| ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ |____|/ ■霊夢と魔理沙 . , ==ー- 、 _人人人人人人人人人人人人人人人_. ,r'三三三=\ > ゆっくりしていってね!!! <. <_=三/´ ̄`ヽ,\ /´ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ }三{ 1 ̄j } ____ ,,-- 、___. 丨三L.__,,,ィェz'二壬三ニッ'z,,_ 廴 -‐''´ ̄ ̄ ̄```ミく 汲. _, -'=ニ'≠≦て乙ん゙ん芯マ2z三ニ≧、 .廴γ´ ヽ. 乃'∠二三z.ん'~'^,イ ∧ Λ `マ三≡) 弋/==ー- -‐==彡, ,x仍`¬≡ん' / /__{/_, } /、_},ハ、 j,)゙彡' { //_\レハノ/_Vv、 i´ ` . { ゝ'i ( ヒ_] レ' ヒ_〉)У) Viyイ(ヒ'] ヒ'_〉) } ィ'゙ヽ レイ |(} ハ''' ,__, '''|メ) 「 ! ''' ,__, ''' ГI_,,ノ | | ,/ / 丿 丶_ン′ }[I]コ. |{ ヽ_ン′ | | j 亅 ( ( ゝ、 ,イlN .l__ト、 ,|__j Ν j ゝ_jレヘ,ノ)_)リ≧=‐-- --‐''´jリjr' }レjり≧=‐-- --‐''´,}レj;ΝWiノ ■みかん食べたい . , ==ー- 、 _人人人人人人人人人人人人人人人人人人_. ,r'三三三=\ > ま゛り゛さ゛も゛み゛か゛ん゛た゛へ゛た゛い゛!!!<. <_=三/´ ̄`ヽ,\ /´ ̄`ヽ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ }三{ 1 ̄j } ____ ,,-- 、___ うんうん. 丨三L.__,,,ィェz'二壬三ニッz',,_ 廴 -‐''´ ̄ ̄ ̄```ミく 汲 r─────- 、. _, -'=ニ'≠≦て乙ん゙ん芯マ2z三ニ≧、 .廴γ´ ヽ. 乃'| わかるよー } ∠二三z.ん'~'^,イ ∧ Λ `マ三≡) 弋/==ー- -‐==彡, ,x仍 `ーy────'’ `¬≡ん' / /__{/_, } /、_},ハ、 j,)゙彡' { // \レハノ/ Vv、 i´ ` . { ゝ'i 圷旡≧レ' ≦乏У) Viyイ rr=-, r=;ァ } ィ'゙ヽ レイ |(} ハ | |/ / / / | | |メ) 「 !  ̄  ̄ ГI_,,ノ | | ,/ / 丿| | , -- 、 | | }[I]コ. .|{ 'ー=-' | | j 亅 ( ( ゝ、{ |ー'⌒ー' } iイlN l__ト、 ,|__j Ν j(;;゚;;) ゝ_jレヘ,ノ)_)リ≧=‐-- --‐''´jリjr' .}レjり≧=‐-- --‐''´,}レj;ΝWiノ ■取り替えっこ , ==ー- 、 _人人人人人人人人人人人人人人_ ,r'三三三=\ > 違和感を感じていってね!!! < <_=三/´ ̄`ヽ,\ /´ ̄`ヽ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ }三{ 1 ̄j } .____ ___ 丨三L.__,,,ィェz'二壬三ニッz',,_ .廴 -‐''´ ̄ ̄ ̄```ミく 汲 _, -'=ニ'≠≦て乙ん゙ん芯マ2z三ニ≧、 廴γ´ \ 乃'. ∠二三z.ん'~' `マ三≡)..弋/ ヽ,x仍. `¬≡ん' ヾ彡' .〃 Λ ∧ i ` . / ! ノノ_\∧ハノ/_Vj j / ハ__/_, } /、_},__ハ、 レ'’ ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ. ヽ ,ノ r=ミ レ' r=ミ !У) }. Υ' iY `ГI./// ,__, ///「Ι ) i xxx ,__, xxx |メ){) | 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| / { 丶_ン′ モ[I]ヨ ヽ \. ヤ И . |__j イ_j! ( ト、 ィlN ) ). ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ゝ_jル≧=‐-- --‐‐''.´レjr'へNwリL ■霊夢と易者 い ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 .っ 廴. γ´ 丶乃' 運 .し _,, -─ー──= 、,_ 廴 /==─- ヾ -=彡゙、 勢 .ょ r ´---──────´i. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j .見 . を に | i | _ .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ ま --|____|_______,/ / Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι せ \| ''!ll!i- -!llll!!" ミ/, /. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ん !///'v---v', /// ´',ノ ヤ И . |__j イ_j! か ヽ ヽ __ン ,ノ ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ ? `ー------─ ´ ■霊夢とノートパソコン ,辷ー- ニー''"´ ̄ ̄``ミく ̄~汲 廴. γ´ 丶乃' 秋の行楽には神社めぐりがお勧め!…っと。 廴 /==─- ヾ -=彡゙、. /弋_! ノノ_\∧ハノ/_Vj j ,____________________ .ん、_,j! ャ彳( ヒ_] ヒ_〉) j,ハノ / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ Υ' iY `ГI ''' ,__, '''「Ι / / ,/. 」, !ゝ_| | 丶_ン′ } i| ,/ / / ヤ И . |__j イ_j! / / ____ i、 ./ / ヤwИ|Nj{≧=‐-- --‐''.´ N{ / / /____ ./ ̄y  ̄/ i、 / ,/ ______/ / / / / / i、 / ,/ |\ヽニヽニヽヽニ/ / / / / i、/ / \ \ヽニヽニ゙;/ / / \ \ヽニ / / / \ \/ /____________________/ ヽ0 )))────────")))))───────从 各キャラ紹介文 霊夢 まそ絵風ゆっくり霊夢
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ある男のゆっくりレポートのおまけ ゆっくり霊夢一家の越冬(誤算編) ゆっくり霊夢一家は師走の寒さの中家路を急いでいた。 「さむい! さむいよおかあさん!」 「おうちにかえったらゆっくりしようね!!」 そんな返事しか出来ないお母さんゆっくり。 それも当然だ、今までこの時期は巣の中で皆でゆっくりしていたのだ。 しかし今年はそれが出来なかった、出来なくなってしまった。 「いそいでかえってゆっくりしようね!!!」 ともかく家路を急ぐ事しか出来ない、雪に埋まってうまく進めない中、懸命に家まで進んでいく。 日が完全に落ちようとしていた頃、ようやく自分達の巣に到着できた。 「ゆー?」 中を覗いてみるが気配はない、入り口にはドアを塞ぐのに毎年使っている石と松葉が転がっていた。 しかし、既に外気にさらされて冷え切っているが、確かに先ほどまではゆっくり魔理沙一家が居た形跡が感じられた。 「いまのうちにうちにはいろうね!」 のんびりもしていられない、雪の中を進んできた体は凍りそうなほど冷たくなっていた。 今か今かと待っていた母親の号令で、急いで中に入る一家。 お母さんとお姉さん達が急いで入り口を塞いでいく。 何時もならゆっくりしながら数日かかる作業が、あっという間に終わり入り口は綺麗に塞がれた。 これで外気が入ってくる心配はない。 依然として寒い室内だが、だんだんと暖まってきている。 次第に、一家の顔にも暖かさが戻ってくる。 「よかったね!」 「あったかいね!」 「はるまでゆっくりしようね!!!」 「はるになったらみんなでゆっくりしようね!!!」 無事に巣が戻ってきたことが嬉しいのだろう、口々に出るのは越冬の間の楽しそうな計画と、春になってからのゆっくりする計画だった。 「いっぱい歩いて疲れたからごはんにしようね!」 お母さんゆっくりが提案する。 ふと、ゆっくり魔理沙一家が蓄えておいた食糧はどこだろう、と巣の中を見渡す。 綺麗な鳥の羽、大きくて綺麗な石、そんな素敵なものは多々あったが肝心の食料は何処にもなかった。 「たべものがないよ!」 焦るお母さんゆっくり、何時もなら冬の前に実り豊かな山の幸をたっぷりと蓄えて冬を越す。 いや、蓄えなければ途中で凍死か餓死してしまう。 その大事な備蓄が今年は出来なかった、何時までも暖かい部屋に居た所為で季節感覚が狂ってしまっていたのだ。 「おかあさん、たべものならあるよ!!」 「ゆっくりできるよ!!」 今年生まれた子ゆっくり達だ。 当然、この六匹はまだ越冬を経験していない。 明日にでも取りに行けば良い位に思っているのだろう。 「だめだよ! それたべたらゆっくりできないよ!!!」 あの男から貰ってきた綿菓子の袋に口を伸ばそうとしたところを、お姉さんゆっくり達が止める。 小さくても、越冬の経験だけは頭に残っているらしく皆の表情は必死だった。 「これはれいむがもらったおかしだよ!!」 「れいむのだもの!!!」 口々に文句を言ってくる、お母さんゆっくり達が何とか今の状況を伝えようとするが、なかなか伝わらない。 「あしたになったらみんなでおさんぽにいって、そのときにあつめればいいよ!」 「あしたゆっくりあつめるよ!!!」 「それよりも、おうちさむいよ!!!」 「すとーぶをつけてね!!!」 「おかあさんすとーぶつけてゆっくりしようよ!!!」 「すとーぶ♪ すとーぶ♪」 お母さんゆっくりは困り果てた、どうしても今の緊急事態が理解してもらえなかったからだ。 今も、お姉さんゆっくり達が懸命に説明しているが、おそらくは徒労に終わるだろう。 「おねえちゃんたち、れいむのおかしかってにたべようとしてるの!!?」 「ずるい! ずるいよ!」 「ゆっくりできないなら、おうちからでていってね!!!」 同時に、お姉さんゆっくりに飛び掛る。 妹とはいえ、既に十分成長したゆっくりの攻撃を食らった数匹のお姉さんゆっくりは壁まで吹っ飛んだ。 「ゆ!! このおかしは、ゆっくりできるれいむたちがたべるんだよ!!!」 「おかあさんたちは、ゆっくりできないからたべれないよ!!」 プンプン、と再びお姉さん達に襲い掛かろうとする。 「ゆっくりごめんね!!!」 吹っ飛ばされたのは襲い掛かろうとしていた子ゆっくりの方だった。 「ゅー、ぃたいよ……ゆっくりでぎないよぉ!」 「どうじでゆっぐりざせてくれないの! ゆっくりじだいよぉ」 弱々しく呟く子ゆっくり達、既に大半の餡子は外に飛び出していた。 半ば瀕死のそれを、躊躇なく踏んでいく大きなゆっくり。 先程まで、子ゆっくりと残りのゆっくりを天秤にかけていたお母さんゆっくりだった。 「ほかのゆっくりがゆっくりできなくなるから、ごめんね!!!」 必要以上に潰してくお母さんゆっくり、姉たちも真意を理解したようで母に倣って他の子ゆっくりを潰していった。 その一方的な虐殺は、あっという間に終わりを迎えた。 先程とは打って変わって静寂が辺りを包む。 泣き叫ぶ子ゆっくりは見る影も無く、床に転がっている皮と餡子が混ざった物体がその名残を残しているだけだ。 「あのこたちのぶんも、ゆっくりふゆをこそうね」 「うん、ゆっくりこそうね」 今や十匹ほどに減ったしまった巣の中で、お母さん霊夢と他の霊夢達がお互いに口々に話す。 残念ながら、そこに罪悪感が有るのかは窺い知る事は出来ない。 それから数日が経った。 既に潰れた子ゆっくりの餡ペーストを少しずつ食べながら、越冬するゆっくり一家。 少なくなったことで室内の温度は下がってしまったが、それでも越せないことは無い。 去年と同じ人数になっただけだ。 どのゆっくりもそう思っていた。 だから、誰も不満も言わずじっと寒さに耐えていた。 大寒時、美味しかった餡ペーストも後僅か。 その頃には、子ゆっくりとその餡ペーストを結びつけるゆっくりはいなかった。 殺したことは覚えているが、今食べているこれが野山を駆け巡っていたとは、既に思っていないのだろう。 巣の中も当初は寒かったが、段々となれてきた一家には徐々に口数も戻ってきた。 「おいしいのすくなくなってきたね」 「だいじょうぶ! もうすぐさむいのおわるから!!!」 「でもこれだけだと、あたたかくなるまえにゆっくりできなくなるよ」 「おじさんからもらったおかしがまだのこってるよ。これだけあればゆっくりふゆをこせるよ!!」 「じゃぁこのおいしいの、いまたべちゃってもだいじょうぶだね!!」 「おかあさん、たべていい?」 「ゆゆ……。 ! なんとかぶじにふゆをこせそうだから、きょうはゆっくりおいわいしようね!!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 久しぶりにお腹いっぱいご飯を食べれるゆっくり達はご機嫌だ。 「むしゃ、むしゃ、おいしいよ♪」 「むっしゃむしゃ♪ ゆっくりできるね!!!」 「ゆっくりたべようね!!!」 床がピカピカになるまで舐め終えて、その日の楽しい食事は終わった。 最後の晩餐は、とても賑やかなモノになったようだ。 翌日、お昼頃に目を覚ましたゆっくり達は食事を取ろうと、あのわたあめの袋を運んできた。 一日半分ずつ食べれば間に合う、長年の経験からお母さんゆっくりはそう思っていた。 本当に袋の中にそれに見合うだけの中身が入っていたならば。 「ゆゆ!!?」 「ないよ! ないよ!!!」 大きな袋の中身は殆どなく、そこには微かに甘い香りのする中に、米粒程の塊が入っているだけであった。 「なんで!? なんでないの!?」 「これじゃあゆっくりできないよ!!!」 「おいしいわたあめがないよ!!!」 おじさんの所で出された中でも、特に美味しかったわたあめ。 そのおいしかったわたあめが、袋の中に入っていない。 ゆっくり達には無くなった理由など分かるはずもなく、巣の中はパニック状態だ。 「お、おがしがないよー!!!」 「れいむのおがしがーーー!!!」 「もってでるときはあっだのにー!!!」 必死で他の袋も開け始める、勢いよく飛びつき袋を食い破るゆっくり達。 が、全て同じ、小さな塊が出てくるだけだ。 ボロボロに引き裂かれた袋、訳が分からず叫び続けるゆっくり一家。 丼一杯にも満たない塊、これが今この家にある全食料だった。 それから、数日が経った。 既に一家の顔は青白くなり、目もトロンとしている。 「しんだ、ゆっくりたちの、ために、ゆっくり、ふゆを、こそうね」 「「……ゆっくり、こそうね」」 まるで合言葉のように、死んでいった仲間のためにも、と呟きながら懸命に寒さと空腹に耐え続ける。 この頃には、自分達で殺した子ゆっくり達が他の原因で死んだと思っているらしい。 いつもはゆっくりゆっくり騒がしいゆっくりの巣だが、今は雪が降り続ける外の方が賑やかなくらいだ。 次第に意識が朦朧としてきた、目に映るのはぼんやりとした家族の姿。 それが、段々と輪郭を失っていく。 「……ゆ!」 輪郭を完全に失ったそれは、大きな饅頭の姿になってゆっくりの目に映りこんだ。 「たったべもの!!! ゆっくりできるよ!!!」 一匹が力を振り絞ってもう一匹にかぶり付く、周りでは同じように数匹がかぶり付いていた。 「ゆ! いだいよ! れっ、れいむはたべものじゃないよ!!!」 「やめて! ゆっくりやめてね!」 「むしゃむしゃ、はぁはぁ、うめぇ、めちゃうめぇ!!!」 「ごくんっ! はぁはぁ、ゆっぐりたべるよ!!!」 既に正常な判断が出来なくなっているゆっくり達は、ただ生きるために目の前の饅頭に貪り付いていた。 家族なんてものは関係ない、まさに弱肉強食、たべれれている方が霊夢や魔理沙で食べているほうがれみりゃやフラン、それと同じことだ。 「やめてね!!! みんなでゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢が大きく膨らんで残った数匹の子供達を隠す。 ゆっくりが子供を守る時の常套手段だった。 「うっめぇ! このおおきいまんじゅうもうっめぇ!!!」 「これだけあればゆっくりできるよ!!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛! み゛ん゛な゛でゆ゛っぐり゛じでよ゛ーーーー!!!」 突進するでもなく、殴りつけるでもなく、ただただその大きな饅頭を食べていく。 後ろに隠れていた子供達も、段々と母親の声が小さくなっていくのが分かる。 か細くなっていく声、それがあるときぴたりと止んだ。 今聞こえるのは何かを咀嚼する音のみ、その音はどことなく、ゆっくりれみりゃのそれと酷似していた。 「……ぷはぁ!」 「!!!」 今まで守ってくれていたお母さんゆっくりの背中から、ゆっくり霊夢が顔を出した。 一匹、また一匹とその数は段々と増えていく。 おそらく全員が顔を出したのだろう、一匹のゆっくりがこう叫んだ。 「みんなでゆっくりしようね!!!」 「…………!!!」 巣の中にはゆっくりが数匹、これが巣の中に残っている全ての食料だ。 「むっしゃむっしゃ♪ う~すっきり~!!!」 最後の一口を綺麗に食べ終え、ご満悦のゆっくり霊夢。 どうやら、これで最後の晩餐が終わったようだ。 だが、ユダさえも居ない一人さびしい晩餐だった。 「!! おかあさんたちどこ? どこにいるの?」 正気に返った霊夢は辺りを見回すが、母親達の姿はない。 皆、お腹の中に入っているのだから。 「わかった! たべのもさがしにいったんだ! れいむはゆっくりまってるよ!」 キラキラと目を輝かせて部屋の真ん中に佇む。 時折、体を揺らしてリズムを取りながら母達の帰りをワクワク待つ。 このゆっくり霊夢が犯した間違いは二つ。 一つは、家族は全て自分が食べてしまったという事。 二つ目は、大事な食料を何の考えもなしに全て食べ尽くしてしまったという事。 「ゆっくりまってるから、はやくかえってきてね♪」 雪が津々と降る二月の山の中、あと一ヶ月以上も続くこの冬は、彼女をいったい何時まで生かしておいてくれるのだろうか。