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imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像ファイル名または画像URL) ある夕暮れの森の中を、鳥とも蝙蝠とも言いがたい生き物が、人の大人の目線程の高さを飛んでいた。 「うー!うー!」 その奇妙な生物は、ゆっくりの一種で、主に“ゆっくりれみりゃ”と呼ばれている。 まん丸の体の両端には、蝙蝠のような羽があり、ピンクの帽子を被った愛くるしい姿で、ゆっくり種の中では比較的 希少な部類に入る。 そんな可愛らしいゆっくりれみりゃだが、食事は同じゆっくり種の“ゆっくりれいむ”や“ゆっくりまりさ”を好ん で捕食する。 どうやら、そのゆっくりれみりゃが、今日の晩御飯を見つけたようだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 森の中の湖のほとりで、ぴょんぴょん跳びはねているのは、ゆっくりれいむだ。 どうやら、蝶々と戯れているらしい。 (蛇足だが、最近の研究によりゆっくりにも…例えばゆっくりれいむなら可愛らしい無垢な顔つきのタイプと、生意気 で憎たらしいタイプの二種類が存在することが分かってきている。このゆっくりれいむは無垢なタイプのようだ。) 「うー!うー!たべちゃうぞー!!」 早速、ゆっくりれいむに襲い掛かるゆっくりれみりゃ。 「ゆっくり!?」 ゆっくりれいむが気づいたが、もう遅い。ゆっくりれみりゃはゆっくりれいむに乗り掛かりその羽で押さえつけると。 噛み付いてムシャムシャと食べ始めた。 「ゆうううっ!!!」 悲鳴をあげ抵抗するゆっくりれいむ…だが、いかんせん羽の押さえ込みが強く、ゆっくりれいむではどうすることも できない。頭部に激痛が走り、涙を流して命乞いをするゆっくりれいむ。 「ゆっぐりだずげでえええっ!!!」 しかし、そんなことはお構い無しに食事を続けるゆっくりれみりゃ。そして、人間であれば、脳味噌があるだろう部 分を半分ほど食われた段階でゆっくりれいむは白目を向いてビクンビクンと痙攣を始めた。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 こうなれば絶命するのはすぐそこだ。 そうして、ゆっくりれみりゃは、大人しくなったゆっくりれれいむをそのまま食べ尽くすと。 「うー!うー!」と満足げに鳴き、 また飛び立っていった。 それから二時間後、まだゆっくりれみりゃは空のお散歩を続けていた。あたりはすっかり夜だったが、満月の光が森 の中を照らしていた。 「うー!うー!」 先ほどの餌がよほど美味しかったのか、ゆっくりれみりゃは上機嫌に空を飛んでいた。 そう、“天敵”の気配に気付かないほどに…。 突如、ゆっくりれみりゃが空中でピタリと止まる。顔が、ニコニコしたものから、カッと目の見開いた表情に一変す る。 それは、“天敵”の接近を許してしまったからだ。 その天敵とは、ゆっくりの中でも一、二を争う希少性と凶暴性を持つ、ゆっくりフランだ。 「ゆっくりしね!」 ゆっくりフランは狂気を帯びた笑みを浮かべながら、ゆっくりらしからぬ攻撃的な鳴き声をあげてゆっくりれみりゃ に襲いかかる。 「うあー!うあー!」 Uターンし、泣きながら逃げるゆっくりれみりゃ。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 恐ろしい形相でゆっくりれみりゃを追いかけるゆっくりフラン。 スピードはほぼ互角か。しかし…。 「ゆっくりしね!」 ゆっくりれみりゃの目の前に何ともう一匹のゆっくりフランが立ちはだかる。 絶句するゆっくりれみりゃ。 それにしても、超希少とされるゆっくりフランが何故二匹も…? 実は、原理は解明されていないが、ゆっくりフランは自身の体を複数に「分身」することができることが、八意永琳 の研究により分かっている。これは“フォーオブカインド現象”と呼ばれ、ゆっくり七不思議の一つとなっている。 「うあー!うあー!」 挟み撃ちにされ、逃げ場を無くして混乱するゆっくりれみりゃ。 そんなゆっくりれみりゃに、二匹のゆっくりフランは容赦なく飛び掛る。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりしね!」 ゆっくりフラン達はゆっくりれみりゃの翼にかじりつくと、凄まじい力で思いっきり引っ張りあった。 まずは逃げ足を無くすためである。 「うあー!うあー!」 ブチブチと、ゆっくりれみりゃの体から翼が引き剥がされていく。 ゆっくりれみりゃは痛みで暴れ出すが、ゆっくりフランの力は凄まじく、打つ手が無い。そして、 ブチィっ!!! ほぼ同時に両の翼がモギ取られる。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 ボトッと地面に落下するゆっくりれみりゃ。翼を無くしたゆっくりれみりゃは他のゆっくりように跳び跳ねることも できず、這うのがやっとだ。その姿は滑稽きわまりない。捕獲に成功したゆっくりフランは、体を一つに戻すと、ゆっ くりれみりゃに張り付き、先ほどゆっくりれみりゃ自身がゆっくりれいむにしたように、上から押さえつけて、食事を 始めた。 グチョ 「うあ゛ー!!!」 グチョ 「うあ゛ー!!!」 ゆっくりれみりゃはゆっくりれいむやゆっくりまりさ等と違って中身は餡子ではなく赤い血肉そのものであるため、 正視にたえない。 しかし…二回程カジってゆっくりれみりゃの肉片を飲みこんだ後、ゆっくりフランは食べることを止めゆっくりれみ りゃを解放した。 「う゛ー!う゛ー!」 激痛でのたうちまわるゆっくりれみりゃ。 何故、ゆっくりフランはゆっくりれみりゃを食べるのを止めたのか…。 実は、ここからがゆっくりフランがゆっくり達に最も恐れられる理由なのだ。 ゆっくりレティやゆっくりゆゆこは、ただ食べるためだけに、他のゆっくりを襲う。 それは野生の動物の世界では極々当たり前のことだ。 しかし、ゆっくりフランは違う。食べるためだけではない。他のゆっくりを「玩具」にするためにも襲うのである。 狂気の時間の始まりだ。 ゆっくりフランは、翼をもがれ文字通り「肉団子」となったゆっくりれみりゃの髪の毛を噛んで掴むと、そのまま高 速で森の上空へと飛び立つ。 「う゛ー!う゛ー!」 今や翼を失ったゆっくりれみりゃにとって、高いところは恐怖そのものでしかない。 「ゆっくりしね!」 ゆっくりフランはそう言うと、急降下して、ゆっくりれみりゃを、岩の角に叩きつけた。 「う゛う゛ー!!」 ゆっくりれみりゃの左目の部分が潰れ、血肉が飛び散る。 更に、その傷の部分を地面に押し当て、引きずりまわす。 「う゛う゛う゛う゛う゛う゛ー!!」 悲鳴をあげるゆっくりれみりゃ。 生かさず、殺さず。…二時間程ゆっくりフランはゆっくりれみりゃを弄んだだろうか。 ゆっくりフランは最後の仕上げとばかりに、虫の息のそのゆっくりれみりゃを“ある場所”へと運びだす。 …森の更に奥の奥に、その場所はあった。 その空間の地面には、先端の尖った鉄の槍のようなものが、いくつも突き刺さっていた。 おそらく、昔の戦争で使われたトラップだろう。 「ゆっくりしね!」 ゆっくりフランは、そのまま、ゆっくりれみりゃを、生きたまま槍の上に突き刺した。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 それはちょうど百舌の早贄のようだった。 自身の重みで、ズズズ…とより深くゆっくり貫かれていくゆっくりれみりゃ。 ジタバタするが、もはやこの状況から逃れることはできない。 「う゛ー!う゛ー!」 中途半端な生命力が仇となり、このゆっくりれみりゃは餓死するまで死ぬこともできず、もがき苦しむことになるだ ろう。 「ゆっくりしね!」 ゆっくりフランは、新しい“コレクション”が手に入り上機嫌だ。 コレクション…?。 そう、そのゆっくりフランがプロデュースする“美術館”に、串刺しにされているのは、このゆっくりれみりゃだけでは ない。ゆっくりれいむ、ゆっくりまりさ 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 、ゆっくりぱちぇりー、ゆっくりちぇん、ゆっくりみょん、ゆっくりすわこ、 そして他のゆっくりれみりゃ…。 様々な種類のゆっくりが、あるものは体の底から、あるものは体の耳から、あるものは頭頂部から逆さまに、あるも のは顔面から、皆それぞれ串刺しにされていた。 もちろん生きたまま。 「ゆっぐりだずげでえええ」 「ゆっぐりでぎないい」 「いたいimageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像ファイル名または画像URL) 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 半角 で始めると引用文になります。 よおおお…」 「ゆっぐりじだいいいいい」 「むぎゅうううぅぅん」 「ちんぽでぎないいいい」 「だずげでケロ~」 「う゛…!う゛…!」 合計すると、30匹はいるだろうか。 体をジタバタさせているゆっくりもいれば、ピクリともできないゆっくりもいる。 傷口が腐り、虫にたかられているゆっくりもいる。 正に、地獄絵図…。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 ゆっくりフランは、その生きたコレクション一つ一つに声を掛け、苦しむ様を興奮した眼差しで確----
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-プロローグ- 「咲夜、どこにいるの?」 紅魔館の主レミリア・スカーレットはお付のメイドを呼びつける。 「いかがなさいました?」 一瞬でレミリアの前にメイドが現れた。メイドの名前は十六夜咲夜、紅魔館のメイド長である。 彼女は時間を操る程度の能力を持っているため、主に呼ばれた時はその能力を使いすぐに駆けつける。 「今夜はなにか変わったものが食べたいわ。もちろん味も最高のものをね。」 「変わったもの・・・ですか?」 「そうよ、どのような物かはあなたに任せるわ。期待してるわよ。」 「・・・かしこまりました。」 そう言い残してメイドは消えた。 「フフフフフ、楽しみだわ。」 レミリアは優雅にお茶を楽しんでいる。 -幻想郷市場- 「ふぅ、どうしようかしら。」 幻想郷の市場を歩いている咲夜は悩んでいた。 「引き受けたもののお嬢様がお気に召すような物がなかなか見つからないわ。」 当てもなく市場をさまよっていると活気のある声が聞こえてきた。 「5万!」 「ぬぅ、5万5千!」 「なんの7万!」 どうやら何かの競(せ)りをしているようだ。 「あの、これはいったい何の競りなのでしょうか?」 競りには参加していない見物人に聞いた。 「なんでもある高級食材が競りにかけられているらしいよ。」 そう聞くと咲夜はすぐに高級食材が何なのかを確かめようと見物人を掻き分けて前へ進んでいった。 どうやら机の上に置かれている箱の中に商品が入っているらしい。 ひょっとしたらお嬢様がお気に召す物かもしれない。そう思い受付へ急いだ。 「おや?そのメイド服、紅魔館の方ですか?」 「はい、競りにかけられている物が高級食材だと聞きました。出品物は何なのですか?」 「あぁそれはね・・・」 「えっ・・・食材ですよね?」 驚いているメイドの後ろからはなにやら、 「うーうー」 と悲しげな泣き声が聞こえてくる。 -紅魔館- ここは紅魔館の裏の森。2匹の翼の生えたゆっくりが飛び回っていた。 「うー♪うー♪」 幻想郷のあちこちで見かけるゆっくり霊夢や魔理沙とは違い、なかなかお目にかかれないゆっくりれみりゃだ。 2匹は小さい頃から紅魔館の妖精メイドにご飯やお菓子などをもらい、ゆっくりとすごしていた。 「う?」 一匹のゆっくりれみりゃが遠くから近づいてくるメイドに気がついた。 「ぎゃおー♪」 「うーうー♪」 ご機嫌な様子でメイドに近づいていくゆっくり達、だが次の瞬間、目の前からメイドが消えた。 「うー?」 何が起こったかわからないゆっくりれみりゃ。 「うっうー」 もう一匹のゆっくりれみりゃへ話しかけようとしたが姿はなかった。 「うっうっ、うぅぅぅぅぅ」 泣きながらもう一匹を探して飛び回る。しかし二度と会うことはないのであった。 もう一匹のゆっくりれみりゃは見知らぬ場所に移動していた。そして目の前には銀髪のメイドが立っていた。 「がおー、たべちゃうぞー。」 いつもメイドにお菓子をもらっているのでまったく警戒せずに無邪気に振舞うゆっくりれみりゃ。 今自分が置かれている白い板が何かとも知らずに・・・。 「さてと、始めましょうか。」 「うー♪うー♪」 ゆっくりれみりゃが楽しそうにしゃべった直後にそれは起こった。 「う゛っ!う゛ーーーーーっ!! 悲鳴を上げるゆっくりれみりゃ。体に激痛が走った。そして急いで飛んでその場から逃げようとした。 しかし体は白い板の上から動かなかった。そしてゆっくりれみりゃは見た。 自分の翼が無残に切り落とされているのを。 「う゛ぅぅぅぅぅ。」 目に涙を浮かべながら転がって逃げようとする。 「に・が・さ・な・い・わ・よ。」 メイドがそうしゃべった直後、またしてもゆっくりれみりゃの視界が瞬時に変わった。 帽子はなくなり、体がちょうど入るくらいの入れ物に入れられ、蓋がされていた。 もう、ゆっくりれみりゃには何がなんだかわからない。ただひたすら、泣き声を上げることしかできなかった。 「さぁ仕上げよ。」 メイドの声が聞こえた直後、なにやらカチっと音がした。 メイドの声に反応し一瞬泣き止んだゆっくりれみりゃだったが、その後何の変化もなかったため再び泣き出した。 しばらくすると周りが白い煙で覆われてきた、体を動かして脱出しようとするが固定されているのか動けない。 そしてゆっくりれみりゃの閉じ込められている入れ物は高温の煙でつつまれ、どんどんと温度を上げていく。 「う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」 ゆっくりれみりゃは苦痛に満ちた悲鳴を上げた。 しかし無情にもどんどんと温度は上がっていく。 悲鳴を上げてもどうにもならない、脱出しようとしても体が動かない。 知能の低いゆっくりでも理解する。自分はもう助からないと。いままで感じたことがないほどの恐怖が体中を駆 け巡る。そして次の瞬間。 「う゛!うぅぅぅぅぅ!う゛ぅぅぅぅぅ!う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」 今まで上げたことがない苦痛に満ちた悲鳴を上げ、ゆっくりれみりゃの入った入れ物は静かになった。 「ふぅ、やっと静かになったわ。」 咲夜はそうつぶやくと、ゆっくりれみりゃの入った蒸篭(せいろ)をあけた。 「・・・ひどい顔。」 ほかほかのゆっくりりみりゃは言い表すことができないほどひどい顔をしていた。 「さすがにこのままお嬢様に出すのはまずいわね。」 咲夜は手馴れた手つきでゆっくりれみりゃを真っ二つにし、中のお肉をお嬢様の食べやすい一口サイズに切り刻む。 そしてゆっくりれみりゃの皮を切り取り、一口サイズに切った肉を包み込む。 時間を止めて作業をしているため冷めることなく作業をすることができた。 「こんなものかしら。」 皿の上には少々形は違うが一口サイズの肉まんがきれいに盛り付けられていた。 「お嬢様、夕食の準備が整いました。」 一瞬にしてテーブルの上に料理が並べられた。 「フフフ、どんなものを用意したのかしら。見たところただの肉まんの様だけど。」 「お食べになってください。そうすればわかると思います。」 無言で口に運ぶレミリア。 「・・・・・・」 「さすがね、咲夜。見た目はただの肉まんだけど、肉も皮も今まで食べたことがないすばらしい味よ。」 「ありがとうございますお嬢様。」 お嬢様は満足そうに料理を食べ終えた。 「咲夜、また今度この料理作ってくれるかしら?」 「かしこまりました。下準備に手間のかかる料理なのでお召し上がりになりたい時は今日のように早めにおっしゃって ください。」 食後の紅茶の準備をし、メイドは仕事に戻った。 「そういえば、あの夕食の材料は何だったのかしら」 紅茶を飲みながら月を眺めレミリアはつぶやいた。 -再び幻想郷市場- 「あぁそれはね、ゆっくりれみりゃだよ。」 「えっゆっくりれみりゃ?食材ですよね?」 「おや?ゆっくりれみりゃが食べられることを知らないのかい?」 「え、えぇ今初めて知りました。」 受付の人は説明してくれた、ゆっくりれみりゃの顔は肉まんで中の肉、周りの皮とも絶品であること。 また、ゆっくり霊夢や魔理沙と違い、なかなか見つからない上に捕獲も難しいため美食家の間で高額で取引されてい ると。 「メイドさんも競りに参加するかい?」 「あ、いえ。今回は遠慮させていただきます。」 「そうかい、残念だな。」 「それとは別のことなのですが、ゆっくりれみりゃの調理方法を教えていただきたいのですが、どなたかご存知の方を 紹介していただけないでしょうか?」 「調理方法なら私が教えてあげるよ。だけど、調理対象がないけどいいのかい?」 「えぇ、そこはなんとかします。」 咲夜は紅魔館へ戻る道を歩いていた。 「とてもいいことを聞くことができたわ。」 調理方法は至って簡単だった。 1.逃げられないように翼を切り落とす。 2.帽子を取り、きれいに洗い汚れを取る。 3.転がって逃げようとするため気をつけながら蒸篭で蒸しあげる。(暴れるので注意) 注意することは鮮度が落ちないように出来るだけ早く調理することであった。時をとめる事ができる自分にとって簡 単なことだった。 ゆっくりれみりゃは確かに捕獲することが難しいし、幻想郷でもなかなか見かけない。 しかし紅魔館周辺にはゆっくりれみりゃは複数生息している。あまり紅魔館周辺には人間が足を踏み入れないため知 られていないようだ。また、捕獲など時を止めてしまえば簡単なことであった。 「前々からうっとおしかったのよね、あの丸顔。私の大切なお嬢様に似ても似つかないのにれみりゃと名乗るなんて!」 今宵、一匹のゆっくりれみりゃの生涯が終わりを告げようとしていた。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございます。過去に書いた2作はともに加工場を舞台にしたものでしたが、今作は 前作の後書きに書いたように紅魔館を舞台にしたSSを書かせていただきました。 今回のSS作成で一番難しかったのはゆっくりれみりゃのセリフですね。ゆっくり霊夢や魔理沙と違い、人の言葉を満 足に話すことができず非常に困りました。あと、SS中の白い板はまな板ですので。 ちょっと咲夜さんが黒すぎたかな?PAD長ファンの方申し訳ありません。あと、SS中の白い板はまな板ですので。 現在頭の中にはゆっくりパチュリーいぢめのSSがある程度浮かんでいます。あまり文章を書くのは得意ではありませ んが、希望する方がいるならゆっくり書きたいと思います。 今回はおまけもあるよ↓(本編には何の関係もありません) -瓶詰めゆっくり- まず生まれたての小さなゆっくりを用意します。 小さなゆっくりがぎりぎり入る口の大きさ(自分の手も入るくらい)で、中である程度動けるビンへ小さなゆっくりを 投入。(蓋が必要です) 始めは「ここから出してね。ゆっくり出してね。」と泣いているが、エサを中へ入れてやるとゆっくりとくつろぎだす。 次の日からはもう出してとは言わず喜んでビンの中でゆっくりすごしている。 -数日経過- 異変に気がつく。ビンが以前より狭くなっているのである。(正確にはゆっくりが成長しているのである) それでもまだゆっくりできるので能天気にビンの中でゆっくりしている。 -さらに数日経過- とうとう満足に動けなくなるゆっくり。 「ゆっくりここから出してね!」 なんて言ってくる。 望みどおり蓋を開けてビンを横にしてやる。ビンから出ようとするがもちろんビンの口は小さくて出ることはできない。 「お願いだして!ゆっくりさせて!」 と言ってくるので手を中へ入れてどこでもいいのでゆっくりをつかみ思いっきり引っ張る。 「ゆ゛!ゆ゛!ゆ゛ーーー!」 もちろん出られるはずもなく。体が千切れそうになるので、 「ゆっくり引っ張ってね!もっとゆっくりしてね!」 と涙を流して言ってくる、 「ゆっくり引っ張ったんじゃ出られないよ。」 と冷たく言ってやる。そしてゆっくりはビンから出るのをあきらめる。 -さらにさらに数日経過- ゆっくりはビン内部へ密着し、息をすることもままならない状態になっている。 「ゆ゛っぐりじだいよぉぉぉ」 この状態になったらあとは自由にすればいい、 蓋を開けナイフで切り中の餡子を取り出すもよし。 「ビンを割ればゆっくりできるよ。」といい希望を持たせビンごと割ってもよし。 涙で溺れ死ぬのを待つのもよし。 使い方は無限大! おまけend ゆっくりいじめ系670 ゆっくり魔理沙の生涯『子育て編』
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この作品は以前のゆっくりれみりゃを山に放すの続きです。 そちらを先にお読みになられることをお勧めします。 紅魔館で何不自由なく暮らしていたゆっくりれみりゃ。 ある日、興味本位で抜け出したところ、男に帽子を取られてしまい。 追いかけたりなんだしして、山に連れて行かれた。 「うー! うー!」 男の背中がどんどんと小さくなっていく。 反比例するように、ゆっくりれみりゃの泣き声はどんどん大きくなる。 「うー! もどってごないどたべじゃうぞ!」 その場で手足をジタバタさせて泣き叫ぶれみりゃ。 「うぎゃーーーー!!!! ざぐやーーー!! ざぐやーーー!!!」 しかし、山の中ので幾ら騒いでも紅魔館に届くことは無く、ただ虚しく時間が過ぎていくだけであった。 「うーー!! う~♪ れみりゃう~♪ さぐやーーれみりゃがよんでるよーー♪」 泣き叫んでも咲夜がこないと分かると、今度は一転笑顔になって咲夜を呼び出す。 「う~♪ うーーたべちゃうぞーー!! たーべちゃうぞー!!」 それでも来ないので、いい加減諦めたのかもう一本の傘で周りの地面を叩き始めた。 「うーーー♪ うーーー♪ う~♪」 それもゆっくりぶでぃん脳では長く続かない、あっという間に地面を楽しく叩いているれみりゃがそこにいた。 「う~~♪ う?」 漸く、自分がおじさんにここに連れてこられた事を思い出したれみりゃ。 慌てて周りを見回す、既に日が落ちかけている山に段々と暗黒が訪れようとしていた。 「うーーー♪」 早く帰ろう、そう思って山の中に足を踏み入れる。 しかし鬱蒼と生い茂る木々に自分の目指す先が見つけられない。 「うーーー!!! ざぐやーーー!!!!」 「ゆ? ゆっくりーーーー!!!」 「うわーーー!!! ざぐやーーー!!! ざぐやーーー!!!」 その声に、慌ててもと来た道を駆け下りる、まもなくその豚足の様な短い足を縺れさせてすっ転ぶ。 そのまま転がって先ほどの場所へ。 「うーーー!!! うーーー!!!」 急いで男が準備した自分の家の中に入る。 日傘を地面深くまで埋めたので、丁度テントのような形状になっている。 必死に一部をまくって中に入り込む。 ゆっくりの頭でも、先ほどの事は記憶に残っているようで、必死に声を殺しながら泣き喚く。 「ぅーーー!! ぅーーー!!!」 しかし、何かが跳ねる音は確実にこちら側柄に近づいてくる。 「くんくん! こっちからゆっくりのにおいがする!!!」 バサ!!! 「うーー!!! ? う~?」 入ってきたのは数匹のゆっくりアリス、なんだ今日もお昼に食べたゆっくりじゃないか。 「う~♪ たーべちゃうぞ~♪」 そう思って一匹に狙いを定め襲い掛かる。 しかし。 「れ!れ!れみりゃ~~~!!!!!」 「う~♪ !!!!! うわーーー!! うわーーー!!!」 突然の抵抗、あっという間にゆっくりアリスに押し倒されるれみりゃ。 そして当然のように交尾に入るゆっくりアリス。 「れみりゃでもいいよ!!! れみりゃもだ~いすき!! まりさや、れいむやぱちぇりーやありすのつぎにだーいすきだよーーーーー!!!!」 「「「「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!!」」」」」 「うがぁっ!! う゛あ゛ああああああああぁ!!!」 体を振るわせたアリスが大群で自分に擦り寄ってくる。 恐怖に顔を歪ませ、なみだ目でなすがままにされるされるれみりゃ。 通常この種のれみりゃは発情しない。 大抵が一つの地区を荒らし終わった後のアリスの集団に襲われるのだ。 今その恐怖を、このれみりゃも体感している。 「れみりゃも!! ありずどのごどもがんばっでうんでねーー!!!!!」 「「「「う~♪ すっきり~~~~♪」」」」 それだけ言い残してアリス達はその傘の中を出て行った。 残されたれみりゃは、既に失神していた。 翌日。 太陽がもうそろそろ真上に昇りそうな時間。 れみりゃは漸く目を覚ました。 「う~♪ しゃくや~だっごじで~♪」 勢いよく両手を伸ばす、いつもは自分が起きる前に部屋の中に居る咲夜に抱っこしてもらう。 そして着替え終わった後においしいプリンを食べるのだ。 「う~♪ ざぐや~おぞいぞぉ~♪ おぞいどた~べちゃうz……!!!」 目を開けたらそこには自分のお気に入りの日傘。 床は硬い地面。 勿論咲夜の姿は無い。 「う~ざぐやーーー!!! どぉごーーー!!! ぷっでぃ~んもどごー!!!?」 昨夜の様に急いで傘から出る、そして辺りを見回す。 勿論自分の知らない場所だ、当然のように泣き出すれみりゃ。 「うーーーー!! ごごどぉごーー!!!」 ただ、昨日アリスたちにされたことは思い出したようだ。 慌てて辺りを見回すが、どうやらアリス達の姿は無い。 一息ついて巣に戻る。 「う!!」 巣の中には小さいが自分と同じ姿をした姿。 所謂ゆっくりれみりゃの赤ちゃんである。 れみりゃの三分の一ほどの大きさであろう、その体格にあった婆くさい服と帽子を被って、れみりゃよりも若干高い声で話している。 「う~? !! あがじゃん!! れみりゃのあがじゃん!!!」 「う~♪ みゃみゃ~♪」 四匹の子供がれみりゃに駆け寄ってくる。 「う~♪ れみりゃはおがーざんだどぉ~♪」 「「「「う~♪ みゃみゃ~おなかへった~おがしたべりゅ~♪」」」」 その言葉を聞いたれみりゃは、もう一本の傘を持ってお得意の笑顔で宣言する。 「う~~れみりゃおうちにがえどぅ~♪ じぶんのおやぎじにがえどぅ~♪」 「「「「かえりゅ~♪ おやしきにかえりゅ~♪」」」」 ぱんぱんと服に付いた埃を落とし、ニコニコと川に沿って進んでいく。 川沿いに歩けば山を下りられると思っている訳ではない。 自分のお屋敷にある水溜りと同じだからただ歩いているだけだある。 「おうちがえったりゃ♪ おがあさんはぷっでぃんたべどぅ~♪」 「「「「う~♪ ぷっでぃんってなぁに??」」」」 「ぷっでぃ~んはぷっでぃ~んなの!!! ぷるぷるしででおいじ~の♪」 「「「「れみりゃもぷっでぃ~んたべりゅ~♪」」」」 それからは一家でぷっでぃんの歌を歌いながら進んでいく。 「う~~♪ うっう~うあうあ♪」 のんびりとご機嫌に歩いていくれみりゃ。 それはそうだろう、自分の頭の仲では紅魔館の誇り高いお嬢様なのだから。 その後ろには四人の子供たち、母親の日傘が羨ましいのかそこら辺に落ちている大きな木の枝を持って母親の真似をして懸命にバランスと取っている。 「う~!! まじだーー!!!」 暫く歩いて大きな街に到着したれみりゃ一行。 優雅にここを通って帰ろうと、日傘をギュッと握り締めいざ街の中へ。 ここは、周りの村から色々な品物が集まる。 当然、毎日のように市が出来ている、それ程大きな街なのだ。 「う~♪ う~♪」 そんな中を、日傘をさして歩くれみりゃ。 しきりにあっちを向いてニコニコ、こっちを向いてニコニコとまるで自分がセレブの様に振舞っている。 真似して子供たちもニコニコ。 もちろん笑顔と一緒にう~、も忘れない。 真似して子供たちもう~♪ そう、あの笑顔と、う~が合わさってこそれみりゃの真骨頂なのだから。 「うっ! うっ~♪」 近くの屋台で何かを発見したようで、目を大きく見開き満面の笑みを浮かべるれみりゃ。 目線の先にはクッキー。 そう、れみりゃの大好物の一つ、クッキーが山盛り売られていたのだ。 「うっう~♪ あうあう♪」 ご機嫌にその屋台に向かう、もちろんお金は持っていない。 飛び上がって一つまみ、がさごそクッキーを落としながら真剣に選ぶ。 本人は何かを見定めているつもりなのだろう。 子供達も、他のお菓子に手を入れてがさごそ選ぶ。 真似ではない、母親も見よう見まねでやっているのだ。 「う~~♪ むしゃ……」 漸く一枚のクッキーを取り出して口に運ぶ、しかし途端に泣き出してしまった。 「う~ぽい!! ぺっぺっ!!!」 挙句、口に入っていたクッキーを店主に吐き出し、屋台に並んでいるほかのお菓子を根こそぎぶちまける。 「れみりゃはぷっでぃ~~んがたべたいのーーー!!! ぷっでぃーーん!!!」 「れみりゃもいりゃな~い。ぷっでぃんちょ~だい」 「ぷっでぃ~んたべたい~♪」 店主の罵声も気にせず以前のように屋台の上で駄々をこね始めるれみりゃ一家。 「ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!!!」 「「「「ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」」」」 「……」 店主が有無を言わさずれみりゃ達を捕らえる。 両手でしっかりと押さえ込み徐々に力を入れていく。 意外と、お菓子作りというものは屈強な男がやっているもので、この屋台の店主もそれに漏れず屈強な男だった。 また、ゆっくりを使ったお菓子も数多く作っていることもあり、その扱いも手馴れていた。 「いだいーー!! ざぐやーー!! どごーー!!! わるいひどがいるどぅー!! !!!!」 「みゃみゃ~いだいよ~」 「う~しゃくやにいいつけてやりゅ~!!!」 徐々に力を込めて握っていく。 腕がボキボキいっているが、気にせず更に力を込める。 子供達は失神してしまったので、近くの籠に閉じ込める。 「うあーー!!! れみりゃのごどもだじがーー!!! れみりゃのぎゅーとでぷりでーなごどもだじがー!!! ……がっはっ!! ひゅーー」 上手く声が出せなくなったところで一旦手を離す。 「うわーーー!!!! うわーーーーー!!!! いだいーーーーー、れみりゃしんじゃうどぉーーー!!!!」 れみりゃは随分と体内に傷を負ったようで、しばらくは地面にのた打ち回りながら絶叫をあげ続けていた。 だがそれも暫くの間、傷が回復すればまた以前の調子に戻る。 「う~~♪ ざぐやにいいつげてやどぅ~~~♪ さぐy!!!」 飛び上がってそんな事を言っていた矢先、突然後ろから羽を引きちぎられ地面に落とされる。 「う!! うー!!!! ぎゃおーーー!! いじわるずるとたーべちゃうぞー!!!」 何時もは自分が何をしても何も言わなかった人間、当然自分のほうが強いと思っていた。 だから、今も強気にでる。 「…………」 「!!! がぁおーーーたーべちゃうぞーー!!!」 次第に大勢に囲まれても強気に出る。 「…………」 「う~~~!!! がぁーーーお!!! t!!! ぶぎゃ!!!」 頭を踏みくけられ地面にキスする。 地面もそんなものはいやなのでれみりゃの顔に大量の擦り傷を作る。 「うっぎゃーーー!!! いだいよーーー!!! ざぐやーーー!!! わるいひどが!!!」 さっきの蹴りを合図に村人がれみりゃをいたぶり始める。 その殆どは、かつて自分の店で迷惑をかけられた人々だった。 「う!! うあ!!!! あーーーーー!!!」 殆ど声を上げるまもなくズタズタにされていくれみりゃ。 右腕はつぶれ中身をばら撒き、左腕はあらぬ方向へ曲がっている。 両足は太い串が刺さっており動こうにも動けない。 「う……が……。!!!! さぐや!! ざぐやーーーーーーー!!!!!!!」 れみりゃの視線の先、微かに見えるその先には、確かに紅魔館の十六夜咲夜の姿があった。 人々もそれに気が付き、一斉にれみりゃの周りから遠のく。 咲夜もれみりゃに気が付いたそうで、れみりゃのもとへ近づいてくる。 「う~~~♪ ざぐやにいいつげでやどぅ~~~♪」 まだ再生途中の右腕で人々を指差しながら、この日一番のとびっきりの笑顔で人々に宣言する。 帰ったら何をしようか、昨日は帰らなかったからふかふかのお布団で寝たい。 美味しいものも食べたい。 そうだ、ぷっでぃんをたべよう、かえったら直ぐ咲夜に持ってきてもらおう。 「う~~~ざぐやーーー!! あいづらがいじめるどぉ~♪ それから、れみりゃぷっでぃんたべたい!!!」 既に目前まで迫っていた咲夜に話しかける。 抱きつこうかとも思ったけれど、両足に刺さった串が邪魔で立つことが出来ない。 「う~~♪ ざぐやーーーごれどっでぇ~♪」 足の串を指差しながらお願いする。 何も言わず串を引き抜ききちんとれみりゃを立たせる。 そして両足の甲に、思いっきりナイフを突き刺す。 「!!!!」 そのままナイフの柄を踏みつけ、地面深くまで突き刺す咲夜。 それが終わると一言だけ呟いて返っていった。 「あなたみたいな醜い食べ物、紅魔館にはいないわ」 「ざぐやーーー!!! ぷっでぃんぷっでぃんたべだいの!!!」 訳が分からず追いかけようとするが、先ほどより頑丈なナイフが邪魔をして動くことは出来ない。 あっという間に再び人々に囲まれるれみりゃ。 正面には先ほどの店主。 手にしているのは石製の大きな麺棒。 「……」 咲夜が居なくなって変わりに他の人間に囲まれる。 「……うっ、う~♪ れみりゃぷっでぃんだべたい~♪」 先ほどやられた事を覚えているのか、一転今度はご機を取ろうとニコニコ愛想を振りまいてきた。 懸命に店主を見上げでニコニコと笑う。 その体勢からか、口元にはたくさんの涎が滴り落ちている。 「…………」 「う~♪ れみりゃねぷっでぃんたべだいの♪ ぷっでぃん♪」 「…………クス」 「♪ れみ☆りゃ☆う~☆♪ にぱー♪」 風を切る音と共に、勢いよく麺棒が振り下ろされる。 「んびゃお!!!」 額に直撃したそれは、勢いよくれみりゃを後ろに倒していく。 「うぎゃあぁーーー!!!」 支えきれなくなった足が、挿されたところからちぎれ落ちる。 顔は赤く腫れ足首から先は無くなっているれみりゃ。 羽はまだ再生中なので、これでは逃げることは叶わない。 「うあーーー!!! れみりゃがぁおーーーー!!! がぁおーーー!!! おまえらなんかざぐやにたべられちゃえ!!! ばぁ~がぁ!!!」 ジリッ、ジリッと歩み寄ってくる人間達。 「ばぁーか!! ざぐやーー!!! ざぐやーー!!! はやぐぎでーーー!!!」 その言葉を最後にれみりゃの意識は暫く途切れる。 数ヵ月後、街には新しい店ができた。 他の屋台の店主達が共同で行っているそのお店、ちょっと中を覗いてみよう。 「へい! いらっしゃい!!!」 「いらっじゃいまぜー!!!」 肉まん一つお願いできますか? 「はいよ! おいさっさと準備しろ!!」 そう言って隣のれみりゃの背中を叩く。 何時もの婆くさい服の上から着ている真っ赤なエプロン。 そして、首と胴体に大きな輪をはめられ溶接されているその輪は、どうやっても取ることは出来ないだろう。 しかも頭には河童特製の発信機が付けてあるので逃げ出すことも出来ない。 「ほら、肉まん一つだってさ」 「う~やぁだ~!! ざぁぐや~!!!」 しかし、ダダをこねてなかなか始めようとしないれみりゃ。 その様子に、店主が痺れを切らした。 「さっさとやらないとまたお仕置きだぞ!」 「!! うーーー!!! はいやりまどぅ~!!!」 それを確認して店主はもう一匹のれみりゃを連れ出してきた。 大きさはさっきのれみりゃの半分ほど、母親とおそろいの妙に婆くさい服を着ている。 母親と同じように輪をはめられている、頭にも発信機が付いているのだろう。 温室にでも入れられているのか、ぽかぽかと顔が赤く肉汁の汗も出している。 「うぎゃーーー!!! ま゛ま゛ーーー!!!! ま゛ま゛ーーーー!!!!」 店主が、その子れみりゃの腕を一気に引きちぎる。 「う゛わ゛ーーー!!! れみりゃのごどもがーーー!!!! れみりゃのぷりでーなこどもがーーー!!!」 泣き叫ぶお母さんれみりゃ。 その前に運ばれた腕。 「早くしないとお仕置きだよ!」 男が耳元でささやくと、お母さんれみりゃは急いで腕から中身を取り出し、腕の皮を丸めて整形していく。 れみりゃ専用の低いテーブルで行われる作業はまるでおままごとの様だ。 数分と掛からないうちにほっかほかの肉まんの出来上がりだ。 「おまだぜじまじた!!! れみりゃのごどもがらづぐっだおいじいにぐなんでずーー!!! おがあさんのれみりゃが、いっじょうげんめいずぐりましだ!!! れみりゃだじはこうじゅうなにぐなんなのでとっでもいいじいでずー!!!」 笑顔とも泣き顔とも付かない顔で差し出された肉まん。 一口食べれば分かる。 旨い! 確かにこれは旨い! 「ご馳走様。 たしかにこの肉まんはとっても美味しかったよ! さすがれみりゃだね!!」 そう言って頭を撫でて店を出た男。 「ありがどーございまじだー!!! れみりゃのおいじいにぐまんまだだべにぎでくだざい!!」 去っていった男に挨拶をするれみりゃ。 その様子を見て店主が呟く。 「今日の夕ご飯はぷっでぃんだよ! だから何時もよりがんばってね!!」 True END
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この作品は以前のゆっくりれみりゃを山に放すの続きです。 そちらを先にお読みになられることをお勧めします。 紅魔館で何不自由なく暮らしていたゆっくりれみりゃ。 ある日、興味本位で抜け出したところ、男に帽子を取られてしまい。 追いかけたりなんだしして、山に連れて行かれた。 「うー! うー!」 男の背中がどんどんと小さくなっていく。 反比例するように、ゆっくりれみりゃの泣き声はどんどん大きくなる。 「うー! もどってごないどたべじゃうぞ!」 その場で手足をジタバタさせて泣き叫ぶれみりゃ。 「うぎゃーーーー!!!! ざぐやーーー!! ざぐやーーー!!!」 しかし、山の中ので幾ら騒いでも紅魔館に届くことは無く、ただ虚しく時間が過ぎていくだけであった。 「うーー!! う~♪ れみりゃう~♪ さぐやーーれみりゃがよんでるよーー♪」 泣き叫んでも咲夜がこないと分かると、今度は一転笑顔になって咲夜を呼び出す。 「う~♪ うーーたべちゃうぞーー!! たーべちゃうぞー!!」 それでも来ないので、いい加減諦めたのかもう一本の傘で周りの地面を叩き始めた。 「うーーー♪ うーーー♪ う~♪」 それもゆっくりぶでぃん脳では長く続かない、あっという間に地面を楽しく叩いているれみりゃがそこにいた。 「う~~♪ う?」 漸く、自分がおじさんにここに連れてこられた事を思い出したれみりゃ。 慌てて周りを見回す、既に日が落ちかけている山に段々と暗黒が訪れようとしていた。 「うーーー♪」 早く帰ろう、そう思って山の中に足を踏み入れる。 しかし鬱蒼と生い茂る木々に自分の目指す先が見つけられない。 「うーーー!!! ざぐやーーー!!!!」 「ゆ? ゆっくりーーーー!!!」 「うわーーー!!! ざぐやーーー!!! ざぐやーーー!!!」 その声に、慌ててもと来た道を駆け下りる、まもなくその豚足の様な短い足を縺れさせてすっ転ぶ。 そのまま転がって先ほどの場所へ。 「うーーー!!! うーーー!!!」 急いで男が準備した自分の家の中に入る。 日傘を地面深くまで埋めたので、丁度テントのような形状になっている。 必死に一部をまくって中に入り込む。 ゆっくりの頭でも、先ほどの事は記憶に残っているようで、必死に声を殺しながら泣き喚く。 「ぅーーー!! ぅーーー!!!」 しかし、何かが跳ねる音は確実にこちら側柄に近づいてくる。 「くんくん! こっちからゆっくりのにおいがする!!!」 バサ!!! 「うーー!!! ? う~?」 入ってきたのは数匹のゆっくりアリス、なんだ今日もお昼に食べたゆっくりじゃないか。 「う~♪ たーべちゃうぞ~♪」 そう思って一匹に狙いを定め襲い掛かる。 しかし。 「れ!れ!れみりゃ~~~!!!!!」 「う~♪ !!!!! うわーーー!! うわーーー!!!」 突然の抵抗、あっという間にゆっくりアリスに押し倒されるれみりゃ。 そして当然のように交尾に入るゆっくりアリス。 「れみりゃでもいいよ!!! れみりゃもだ~いすき!! まりさや、れいむやぱちぇりーやありすのつぎにだーいすきだよーーーーー!!!!」 「「「「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!!」」」」」 「うがぁっ!! う゛あ゛ああああああああぁ!!!」 体を振るわせたアリスが大群で自分に擦り寄ってくる。 恐怖に顔を歪ませ、なみだ目でなすがままにされるされるれみりゃ。 通常この種のれみりゃは発情しない。 大抵が一つの地区を荒らし終わった後のアリスの集団に襲われるのだ。 今その恐怖を、このれみりゃも体感している。 「れみりゃも!! ありずどのごどもがんばっでうんでねーー!!!!!」 「「「「う~♪ すっきり~~~~♪」」」」 それだけ言い残してアリス達はその傘の中を出て行った。 残されたれみりゃは、既に失神していた。 翌日。 太陽がもうそろそろ真上に昇りそうな時間。 れみりゃは漸く目を覚ました。 「う~♪ しゃくや~だっごじで~♪」 勢いよく両手を伸ばす、いつもは自分が起きる前に部屋の中に居る咲夜に抱っこしてもらう。 そして着替え終わった後においしいプリンを食べるのだ。 「う~♪ ざぐや~おぞいぞぉ~♪ おぞいどた~べちゃうz……!!!」 目を開けたらそこには自分のお気に入りの日傘。 床は硬い地面。 勿論咲夜の姿は無い。 「う~ざぐやーーー!!! どぉごーーー!!! ぷっでぃ~んもどごー!!!?」 昨夜の様に急いで傘から出る、そして辺りを見回す。 勿論自分の知らない場所だ、当然のように泣き出すれみりゃ。 「うーーーー!! ごごどぉごーー!!!」 ただ、昨日アリスたちにされたことは思い出したようだ。 慌てて辺りを見回すが、どうやらアリス達の姿は無い。 一息ついて巣に戻る。 「う!!」 巣の中には小さいが自分と同じ姿をした姿。 所謂ゆっくりれみりゃの赤ちゃんである。 れみりゃの三分の一ほどの大きさであろう、その体格にあった婆くさい服と帽子を被って、れみりゃよりも若干高い声で話している。 「う~? !! あがじゃん!! れみりゃのあがじゃん!!!」 「う~♪ みゃみゃ~♪」 四匹の子供がれみりゃに駆け寄ってくる。 「う~♪ れみりゃはおがーざんだどぉ~♪」 「「「「う~♪ みゃみゃ~おなかへった~おがしたべりゅ~♪」」」」 その言葉を聞いたれみりゃは、もう一本の傘を持ってお得意の笑顔で宣言する。 「う~~れみりゃおうちにがえどぅ~♪ じぶんのおやぎじにがえどぅ~♪」 「「「「かえりゅ~♪ おやしきにかえりゅ~♪」」」」 ぱんぱんと服に付いた埃を落とし、ニコニコと川に沿って進んでいく。 川沿いに歩けば山を下りられると思っている訳ではない。 自分のお屋敷にある水溜りと同じだからただ歩いているだけだある。 「おうちがえったりゃ♪ おがあさんはぷっでぃんたべどぅ~♪」 「「「「う~♪ ぷっでぃんってなぁに??」」」」 「ぷっでぃ~んはぷっでぃ~んなの!!! ぷるぷるしででおいじ~の♪」 「「「「れみりゃもぷっでぃ~んたべりゅ~♪」」」」 それからは一家でぷっでぃんの歌を歌いながら進んでいく。 「う~~♪ うっう~うあうあ♪」 のんびりとご機嫌に歩いていくれみりゃ。 それはそうだろう、自分の頭の仲では紅魔館の誇り高いお嬢様なのだから。 その後ろには四人の子供たち、母親の日傘が羨ましいのかそこら辺に落ちている大きな木の枝を持って母親の真似をして懸命にバランスと取っている。 「う~!! まじだーー!!!」 暫く歩いて大きな街に到着したれみりゃ一行。 優雅にここを通って帰ろうと、日傘をギュッと握り締めいざ街の中へ。 ここは、周りの村から色々な品物が集まる。 当然、毎日のように市が出来ている、それ程大きな街なのだ。 「う~♪ う~♪」 そんな中を、日傘をさして歩くれみりゃ。 しきりにあっちを向いてニコニコ、こっちを向いてニコニコとまるで自分がセレブの様に振舞っている。 真似して子供たちもニコニコ。 もちろん笑顔と一緒にう~、も忘れない。 真似して子供たちもう~♪ そう、あの笑顔と、う~が合わさってこそれみりゃの真骨頂なのだから。 「うっ! うっ~♪」 近くの屋台で何かを発見したようで、目を大きく見開き満面の笑みを浮かべるれみりゃ。 目線の先にはクッキー。 そう、れみりゃの大好物の一つ、クッキーが山盛り売られていたのだ。 「うっう~♪ あうあう♪」 ご機嫌にその屋台に向かう、もちろんお金は持っていない。 飛び上がって一つまみ、がさごそクッキーを落としながら真剣に選ぶ。 本人は何かを見定めているつもりなのだろう。 子供達も、他のお菓子に手を入れてがさごそ選ぶ。 真似ではない、母親も見よう見まねでやっているのだ。 「う~~♪ むしゃ……」 漸く一枚のクッキーを取り出して口に運ぶ、しかし途端に泣き出してしまった。 「う~ぽい!! ぺっぺっ!!!」 挙句、口に入っていたクッキーを店主に吐き出し、屋台に並んでいるほかのお菓子を根こそぎぶちまける。 「れみりゃはぷっでぃ~~んがたべたいのーーー!!! ぷっでぃーーん!!!」 「れみりゃもいりゃな~い。ぷっでぃんちょ~だい」 「ぷっでぃ~んたべたい~♪」 店主の罵声も気にせず以前のように屋台の上で駄々をこね始めるれみりゃ一家。 「ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!! ぷっでぃーん!!!!」 「「「「ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」」」」 「……」 店主が有無を言わさずれみりゃ達を捕らえる。 両手でしっかりと押さえ込み徐々に力を入れていく。 意外と、お菓子作りというものは屈強な男がやっているもので、この屋台の店主もそれに漏れず屈強な男だった。 また、ゆっくりを使ったお菓子も数多く作っていることもあり、その扱いも手馴れていた。 「いだいーー!! ざぐやーー!! どごーー!!! わるいひどがいるどぅー!! !!!!」 「みゃみゃ~いだいよ~」 「う~しゃくやにいいつけてやりゅ~!!!」 徐々に力を込めて握っていく。 腕がボキボキいっているが、気にせず更に力を込める。 子供達は失神してしまったので、近くの籠に閉じ込める。 「うあーー!!! れみりゃのごどもだじがーー!!! れみりゃのぎゅーとでぷりでーなごどもだじがー!!! ……がっはっ!! ひゅーー」 上手く声が出せなくなったところで一旦手を離す。 「うわーーー!!!! うわーーーーー!!!! いだいーーーーー、れみりゃしんじゃうどぉーーー!!!!」 れみりゃは随分と体内に傷を負ったようで、しばらくは地面にのた打ち回りながら絶叫をあげ続けていた。 だがそれも暫くの間、傷が回復すればまた以前の調子に戻る。 「う~~♪ ざぐやにいいつげてやどぅ~~~♪ さぐy!!!」 飛び上がってそんな事を言っていた矢先、突然後ろから羽を引きちぎられ地面に落とされる。 「う!! うー!!!! ぎゃおーーー!! いじわるずるとたーべちゃうぞー!!!」 何時もは自分が何をしても何も言わなかった人間、当然自分のほうが強いと思っていた。 だから、今も強気にでる。 「…………」 「!!! がぁおーーーたーべちゃうぞーー!!!」 次第に大勢に囲まれても強気に出る。 「…………」 「う~~~!!! がぁーーーお!!! t!!! ぶぎゃ!!!」 頭を踏みくけられ地面にキスする。 地面もそんなものはいやなのでれみりゃの顔に大量の擦り傷を作る。 「うっぎゃーーー!!! いだいよーーー!!! ざぐやーーー!!! わるいひどが!!!」 さっきの蹴りを合図に村人がれみりゃをいたぶり始める。 その殆どは、かつて自分の店で迷惑をかけられた人々だった。 「う!! うあ!!!! あーーーーー!!!」 殆ど声を上げるまもなくズタズタにされていくれみりゃ。 右腕はつぶれ中身をばら撒き、左腕はあらぬ方向へ曲がっている。 両足は太い串が刺さっており動こうにも動けない。 「う……が……。!!!! さぐや!! ざぐやーーーーーーー!!!!!!!」 れみりゃの視線の先、微かに見えるその先には、確かに紅魔館の十六夜咲夜の姿があった。 人々もそれに気が付き、一斉にれみりゃの周りから遠のく。 咲夜もれみりゃに気が付いたそうで、れみりゃのもとへ近づいてくる。 「う~~~♪ ざぐやにいいつげでやどぅ~~~♪」 まだ再生途中の右腕で人々を指差しながら、この日一番のとびっきりの笑顔で人々に宣言する。 帰ったら何をしようか、昨日は帰らなかったからふかふかのお布団で寝たい。 美味しいものも食べたい。 そうだ、ぷっでぃんをたべよう、かえったら直ぐ咲夜に持ってきてもらおう。 「う~~~ざぐやーーー!! あいづらがいじめるどぉ~♪ それから、れみりゃぷっでぃんたべたい!!!」 既に目前まで迫っていた咲夜に話しかける。 抱きつこうかとも思ったけれど、両足に刺さった串が邪魔で立つことが出来ない。 「う~~♪ ざぐやーーーごれどっでぇ~♪」 足の串を指差しながらお願いする。 何も言わず串を引き抜ききちんとれみりゃを立たせる。 そして両足の甲に、思いっきりナイフを突き刺す。 「!!!!」 そのままナイフの柄を踏みつけ、地面不覚まで突き刺す咲夜。 それが終わると一言だけ呟いて返っていった。 「あなたみたいな醜い食べ物、紅魔館にはいないわ」 「ざぐやーーー!!! ぷっでぃんぷっでぃんたべだいの!!!」 訳が分からず追いかけようとするが、先ほどより頑丈なナイフが邪魔をして動くことは出来ない。 あっという間に再び人々に囲まれるれみりゃ。 正面には先ほどの店主。 手にしているのは石製の大きな麺棒。 「……」 咲夜が居なくなって変わりに他の人間に囲まれる。 「……うっ、う~♪ れみりゃぷっでぃんだべたい~♪」 先ほどやられた事を覚えているのか、一転今度はご機を取ろうとニコニコ愛想を振りまいてきた。 懸命に店主を見上げでニコニコと笑う。 その体勢からか、口元にはたくさんの涎が滴り落ちている。 「…………」 「う~♪ れみりゃねぷっでぃんたべだいの♪ ぷっでぃん♪」 「…………クス」 「♪ れみ☆りゃ☆う~☆♪ にぱー♪」 風を切る音と共に、勢いよく麺棒が振り下ろされる。 「んびゃお!!!」 額に直撃したそれは、勢いよくれみりゃを後ろに倒していく。 「うぎゃあぁーーー!!!」 支えきれなくなった足が、挿されたところからちぎれ落ちる。 顔は赤く腫れ足首から先は無くなっているれみりゃ。 羽はまだ再生中なので、これでは逃げることは叶わない。 「うあーーー!!! れみりゃがぁおーーーー!!! がぁおーーー!!! おまえらなんかざぐやにたべられちゃえ!!! ばぁ~がぁ!!!」 ジリッ、ジリッと歩み寄ってくる人間達。 「ばぁーか!! ざぐやーー!!! ざぐやーー!!! はやぐぎでーーー!!!」 その言葉を最後にれみりゃの意識は暫く途切れる。 数ヵ月後、街には新しい店ができた。 他の屋台の店主達が共同で行っているそのお店、ちょっと中を覗いてみよう。 「へい! いらっしゃい!!!」 「いらっじゃいまぜー!!!」 肉まん一つお願いできますか? 「はいよ! おいさっさと準備しろ!!」 そう言って隣のれみりゃの背中を叩く。 何時もの婆くさい服の上から着ている真っ赤なエプロン。 そして、首と胴体に大きな輪をはめられ溶接されているその輪は、どうやっても取ることは出来ないだろう。 しかも頭には河童特製の発信機が付けてあるので逃げ出すことも出来ない。 「ほら、肉まん一つだってさ」 「う~やぁだ~!! ざぁぐや~!!!」 しかし、ダダをこねてなかなか始めようとしないれみりゃ。 その様子に、店主が痺れを切らした。 「さっさとやらないとまたお仕置きだぞ!」 「!! うーーー!!! はいやりまどぅ~!!!」 それを確認して店主はもう一匹のれみりゃを連れ出してきた。 大きさはさっきのれみりゃの半分ほど、母親とおそろいの妙に婆くさい服を着ている。 母親と同じように輪をはめられている、頭にも発信機が付いているのだろう。 温室にでも入れられているのか、ぽかぽかと顔が赤く肉汁の汗も出している。 「うぎゃーーー!!! ま゛ま゛ーーー!!!! ま゛ま゛ーーーー!!!!」 店主が、その子れみりゃの腕を一気に引きちぎる。 「う゛わ゛ーーー!!! れみりゃのごどもがーーー!!!! れみりゃのぷりでーなこどもがーーー!!!」 泣き叫ぶお母さんれみりゃ。 その前に運ばれた腕。 「早くしないとお仕置きだよ!」 男が耳元でささやくと、お母さんれみりゃは急いで腕から中身を取り出し、腕の皮を丸めて整形していく。 れみりゃ専用の低いテーブルで行われる作業はまるでおままごとの様だ。 数分と掛からないうちにほっかほかの肉まんの出来上がりだ。 「おまだぜじまじた!!! れみりゃのごどもがらづぐっだおいじいにぐなんでずーー!!! おがあさんのれみりゃが、いっじょうげんめいずぐりましだ!!! れみりゃだじはこうじゅうなにぐなんなのでとっでもいいじいでずー!!!」 笑顔とも泣き顔とも付かない顔で差し出された肉まん。 一口食べれば分かる。 旨い! 確かにこれは旨い! 「ご馳走様。 たしかにこの肉まんはとっても美味しかったよ! さすがれみりゃだね!!」 そう言って頭を撫でて店を出た男。 「ありがどーございまじだー!!! れみりゃのおいじいにぐまんまだだべにぎでくだざい!!」 去っていった男に挨拶をするれみりゃ。 その様子を見て店主が呟く。 「今日の夕ご飯はぷっでぃんだよ! だから何時もよりがんばってね!!」 True END ゆっくり十八番~ノンフライ~ 選択肢 投票 しあわせー! (34) それなりー (4) つぎにきたいするよ! (5) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前 ゆっくりれみりゃの調教(加速) 今日から調教は次の段階に入る。 とは言っても、朝からの訓練はいつも通りだ。 「いいか? 手で食べるときは掴むんじゃなく手のひらに掬って口まで持っていく」 「う~♪ うまうま♪」 「おい、聞いてるか?・・・こぼれたな。 プリンが1個減ったぞ」 「うあーー! ぷりん~!!」 「こぼさないように食べるにはどうやるんだった?」 「う・・・うぅ・・・」 「よし、できたな。」 「う~♪」 「じゃあ、そのやり方でこの料理をこぼさず全て食べ終えろ」 「うあーー!?」 「ここにはいろいろな物が並べられている。 この中からさっき教えた"いらないもの"だけを捨てろ」 「う~♪ これは~いらないから~ぽ~い♪」 「・・・それは大根だ。 プリンも1個ぽーいだな」 「う゛あ゛~!! ぷりん~!!」 「早くしないと全部無くなるぞ」 「う・・・うあ・・・これ?」 「ああ、それは空き缶だ。 正解だよ」 「うっう~♪」 「あと40個のうちから10個選ぶんだ。 プリンはあと3個しかないぞ」 「うあ~!? むり~!!」 「じゃあプリンは全部無しになるが」 「う~!! やりますううぅ!!」 こぼさない食事の仕方、捨てていいものとそうでないものの分別をつける訓練を終えた後、助手を呼ぶ。 「じゃあ、頼んだぞ。」 「ん゛~・・・」 助手はめんどくさそうに、諦め半分でうなずいた。 夕方 れみりゃは一人で部屋に座っていた。 これからまた暗くなり、一人でこの狭いところに一晩いなくちゃいけないと思うと昨夜の心細さを思い出してしまう。 しかしここの人たちに逆らうわけには行かないので、明日までじっとしているしかない。 れみりゃがこれからを"想像"し涙ぐんだとき、ドアが開いてゆっくりフランが部屋に入ってきた。 「う~、ふらん~♪」 フランは何も言わず、ドアを閉めるといきなり服を脱ぎだした。 「う・・・う~?」 ゆっくりフランのいきなりの行動の意味が分からず、困惑するだけのれみりゃ。 「・・・ん」 フランは自分の服を脱ぎ終えると、今度はれみりゃの服を脱がし始めた。 「う~!?」 これから何をされるのかが分からず、ただ不安から逃げようと身をよじるれみりゃ。 「動かない!」 叱りつけるような口調にビクッと動きを止めるれみりゃ。 その隙にフランはれみりゃの服をさっと脱がし終えてしまった。 「う~・・・ふらん・・・ふらん・・・?」 「じっとしてる」 れみりゃの身体を横たえ、その上に覆いかぶさるフラン。 そしてれみりゃの身体をするすると撫でさすり始める。 「う・・うぁ・・・あぅ・・・」 「ん・・・」 今まで感じたことの無い感覚に怯えながらも、 「う~・・・ふらん~!」 れみりゃはその感覚を生み出しているフランに抱きつくしかなかった。 「順調なようですね。」 「ああ。これならほぼ確実に受胎するだろう」 「しかし・・・いかがですか?これを見て」 「あ?」 「巷にはゆっくりに性的興奮を覚える人間がいるそうですが」 「ほぉ・・・それはまた・・・しかしお前はどうなんだ? あれを見て欲情したりしないのか?」 「何が悲しくて饅頭ごときの絡みに欲情しなければならないのですか!」 「お前のゆっくり嫌いも筋金入りだな・・・」 「そんなあなたには私が直々に新しい世界を教えてあげようかしら?」 「寄るな激臭!」 「少女臭とお言い!!」 ・・・ ・・ ・ 翌朝 「ふむ・・・よし、妊娠しているぞ」 「よかったわね~、赤ちゃんよ~?」 「う~♪ れみりゃのあかちゃ~ん♪」 自分の腹部を愛おしそうに撫でるれみりゃ。 れみりゃの腹部はすでにうっすらと盛り上がっている。 ちなみに助手は、疲れと気だるさの混ざった表情でふわふわと自室に戻っていった。 ここからはあまり身体のバランスを崩させないほうがいいので、訓練もソフトな物にする。 食事マナー、思考能力の基礎、読文字など、あまり動かなくてもできる訓練を時間を減らして行う。 一見かなりのペースダウンだが、後々ペースアップするまでの辛抱だ。 「う~♪おなかすいたぞ~♪はやくごはんもってきて~♪」 「分かってるよ。 ほら」 「う~♪ ぷりんもたべる~♪」 「それを食い終わったらな」 まだ計画の範囲内なので、少々の我侭は見逃す。 忘れてはいけないのが育児指導。 「赤ちゃんは優しく抱きながらご飯を少しずつ口に含ませてあげる。」 「う~♪ れみりゃのぷりんもわけてあげるの~♪」 「そうだな。 そしてご飯を食べさせ終わったら・・・」 これは本来の育児指導の意味もあるが、どちらかというと生まれてくる子供への愛情や大切さを刷り込むための意図が大きい。 こうして我が子を唯一無二の宝物だと認識させていく。 二日目、れみりゃは自分の子供の名前を考え始め、 四日目、れみりゃはお腹の子に向かって子守唄を歌っていた。 そして一週間後。 れみりゃを実験台の上に載せて服を脱がし、仰向けに横たえる。 れみりゃの下腹部から臍のあたりまで裂け目ができ、中で子供が少しずつ動いているのが確認できる。 体つきゆっくりの胎生出産は、普通のゆっくりとそこまで変わることはない。 ただ、生殖器からの出産は物理的に不可能なので(子供のサイズが大きすぎるため)、一時的に生殖器が腹部まで伸び、一気に産み落とすのである。 「う~・・・う゛~!」 うなり声を上げていきむれみりゃ。 体つきゆっくりの出産は人間ほど緊迫した感じは無い。 子供がすでに意思を持ち、自分から這い出てくるため意外とあっさり生まれるのだ。 「う゛う゛~!!」 ず・・・ずるり! 「ぅー・・・う~!」 案の定、あっさりとゆっくりれみりゃの子供が誕生した。 「うあ~! れみりゃのあがぢゃ~ん♪」 「おめでとうれみりゃ」 「う~♪ うっう~うあうあ♪」 「う~・・・まぁま~、ぱぁぱ~♪」 さて・・・ 「れみりゃ。ここに食事がある。プリンもだ。」 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪」 「食事の順番は分かるな? いつものように食べるんだ。」 「う~? そんなのしらないどぅ~♪ ぷっでぃ~ん♪」 「ふぅ・・・」 やはりか・・・ 初めての出産を終えたゆっくりは、その衝撃と喜びで今まで覚えてきた事柄を忘れることが多い。 正確には、自分の生存に必要の無い、例えばテーブルマナーや正確な発音などを一時的にまるっと忘れてしまうのだ。 しかしまぁ、これも予測の範囲内ではあるのだが。 「そうか・・・じゃあ好きに食え」 「う~♪ いわれなくてもぷっでぃ~んたべるど~♪ ばぁ~か♪」 そして料理の乗っているカートに近づき、 「これはいらないからぽいっするど~♪ ぽーい♪」 「う~?」 料理を床に投げ捨てた後、プリンが乗っているカートによたよたと近づいていく。 母親が何をしているかよく分からないまま、よちよちとその後をついて行くあかちゃんれみりゃ。 「う~♪ぷっでぃ~ん♪」 カートに半ば身を乗り出し、手づかみでプリンをぐちゃぐちゃと食べていくれみりゃ。 と、いつもはどっしりとしているカートがぐらりと傾き、 がっしゃーーーん!! カートが倒れ、放り出されるれみりゃ。 「うぎゅ!!」 そのまま床に顔を思い切り打ち、涙ぐんでいる。 「う゛・・・う゛あ゛~! ざぐや~!!」 俺は泣いているれみりゃに近寄り、 「おい、れみりゃ!!」 「う゛!?」 俺の大声に驚き泣き止むれみりゃ。 俺はひっくり返ったカートに近づき、その下敷きになっているものを見せる。 「これを見ろ」 「う゛・・・う゛~・・・ う゛あ!?」 そこには、カートに押し潰され見るも無残につぶれている赤ちゃんれみりゃの姿があった。 「う゛・・・うぁ・・・あ、あ・・・」 ふらふらとぐしゃぐしゃの自分の赤ちゃんに近づき、 「う゛・・・う゛ぅ・・・う・・・?」 原形をかろうじてとどめているそれを抱き上げ、 「うあ・・・う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!」 慟哭した。 「う゛あ゛ーーー!! あ、あがぢゃん! れみりゃの、あがぢゃんがあああああぁぁ!!」 「それはお前のやった事だ」 「あぁ・・・あ・・・あがぢゃん・・・あがぢゃんんんんんんん!!」 「お前はいつもの手順を踏まなかった」 もともと、プリンのカートは料理のカートに比べて非常に不安定な構造になっている。 普段は、料理を食べ終わってから料理が載っていたカートと合体させ、安定させてからプリンを食べていた。 さらに最近では、カートに乗り出すことすらなく手でうまく掬って食べることができるようになっていた。 「お前が賢ければ赤ちゃんは生きていた。」 「う゛う゛う゛う゛ぅぅ・・・うあ・・・うあああぁぁぁ・・・」 「お前が愚かで馬鹿だから赤ちゃんは死んでしまった」 「うぅ・・・ぐしゅっ・・・う゛う゛う゛う゛ああああぁあ!!」 「もしお前が・・・今よりずっとずっと賢くなれたら・・・赤ちゃんは生き返るかもしれない」 「う゛・・・う゛ぅ・・・?」 「お前がやったこととどうやればよかったのか、これからどうするかを一晩ゆっくり考えるといい」 そう言ってれみりゃ親子を部屋に残し、ドアを閉めた。 なんでだろう・・・ 暗闇の中、もう動かない赤ちゃんを抱きしめながら思う。 赤ちゃんはかわいかった・・・ ずっと一緒に暮らしていけると思っていた・・・ あの人も赤ちゃんと一緒にいていいって言ってくれた・・・ 赤ちゃんのための勉強もした・・・ ずっとれみりゃが赤ちゃんを守ってあげるつもりだった・・・ なのに赤ちゃんはれみりゃのせいで死んじゃった・・・ なんでこんなことになってしまったんだろう・・・ ・・・そういえば・・・ れみりゃはいつもあの動く台を一緒にしてからのぼっていた・・・ 一緒にしないときはのぼらなかった・・・ れみりゃはさっき何も考えずにのぼった・・・ だから動く台が倒れたんだ・・・ いっぱいいっぱい考えてからやらないといけないことだったのに・・・ れみりゃがわるいんだ・・・ れみりゃがぜんぶわるいです・・・ あかちゃん・・・ ごめんね・・・ ごめんね・・・ ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・ッ!! あの人がさっき言ってた・・・ れみりゃが賢くなったら赤ちゃんが生き返るって・・・ あの人ならできると思う・・・ あの人は何でもできるから・・・ れみりゃは一生懸命賢くなろう・・・ それで赤ちゃんを生き返らせてもらおう・・・ あかちゃん・・・ ままはいっぱい賢くなって赤ちゃんを生き返らせてもらうからね それまでちょっとだけ待っててね! れみりゃがそんなことをぐるぐる考えていたその時、 「・・・ぁ・・・」 「う゛ぅ!?」 「・・・ぁ・・・ぁ・・・」 「あ・・・あかちゃん!?」 「まぁ・・・ま・・・」 生き・・・返った・・・ 赤ちゃんが生き返った!! あの人の言ったとおり赤ちゃんが生き返った!! 「う・・・うああああああああああぁぁぁぁ!!!!」 れみりゃの目から大粒の涙が零れ出す。 「あかちゃん・・・あかちゃん・・・! あかちゃん・・・!! あがぢゃん!!!!」 「まぁま・・・いだい・・・」 「う!・・・うぅ」 喜びのあまり力を入れすぎてしまった腕を解き、赤ちゃんに向き直る。 まだ手足は再生しきっておらず、痛々しい傷口がそこかしこに見える。 「う!ちょっとまってね!」 「うぅ?」 普通のゆっくりれみりゃならほぼ確実にやらないこと。 あの人の教えてくれたやり方にも無かったこと。 でも何故か最初から知っていたやり方。 「ん゛・・・ぐぷっ!」 「う~?」 「ん・・むちゅっ・・・」 「んっ! んっく、んっく、んっく・・・」 先ほど平らげた特大プリン。 半ば消化したそれを口移しで赤ちゃんに与える。 それがなくなると、今度はさっき床にぶちまけた料理の残骸を、床を舐めるようにして食べ、反芻して赤ちゃんに食べさせる。 賢くなる。 この子を守れるように賢くなる。 もう絶対に間違えない。 そうすれば、 私はこの子を守り抜ける。 「・・・予想の斜め上を行った結果ですね」 「いや、このパターンも予測していたさ」 「あの状態から回復すると・・・もしや何か薬品で?」 「まさか。 竹林の薬師さんじゃあるまいし、そんな都合のいい薬作れるかよ」 「では、なぜ?」 「俺の最高傑作であるフランと不死型の代表たるれみりゃの子だ。いけるかも、くらいには思っていた」 「その可能性を提示したのは私なんだけどね~」 「まぁいい。 これで調教のペースが跳ね上がるぞ。 お前達にもちゃんと手伝ってもらうからな」 「は~い」 「はい」 ・・・ ・・ ・ 次の日 気分を盛り上げてやるために特大プリンを2つ持って部屋に入る。 「うー! れみりゃのあかちゃん、いきかえりました!」 「ほぉ。 じゃあお前は賢くなったのかな?」 「なりました! でも、もっといっぱいかしこくなります!」 「それは楽しみだ。 まぁ、今日はお祝いだ。 ほら、プリンだぞ」 「うー!」 れみりゃ親子の前にプリンを置くと、れみりゃのほうが手を伸ばし、結構な勢いで2つとも平らげる。 「な・・・!?」 何か言おうとしたまりさを制し、様子を見る。 「う~・・・ん~・・・」 何度か首をかしげるようなしぐさをした後、 「ん・・・ん゛ぐっ!・・・むちゅっ・・・」 「んっ・・・んっく、んっく、んっく・・・」 「・・・少し自分の力で食べさせるのも育児のうちだぞ」 れみりゃが進化したのは喜ばしいが、過保護に過ぎると子供が甘えて退化するので目を光らせなければならない。 この手順を踏んだことで、身体面での強化実験がとてもやりやすくなる。 まず、子供がこちらにいるため飛行訓練などで逃げられることがない。(逃げたら捕まえればいい話なのだが、助手のストレスが溜まるので気が進まない) そして何より、多少きつくても文句一つ言わずこなすようになったのが一番大きい。 なだめ、すかし、脅す手間が省けるのは、地味なようでいてその実とても大きい。 もちろん、知能面での訓練も格段にやりやすくなった事は言うまでもないが。 「れみりゃ。 身体の調子はどうだ?」 「う・・・はい。 すっごくいいです」 「具体的には?」 「う~・・・はやくあるけるし、たかくとべます」 コミュニケーション能力が発達し、会話が成立し始めた時点でB3の投与を中止し、その後は自らの変化に任せる 。 あまり投与しすぎると、むらができたり密度が高まりすぎて関節が動かなくなったりするからだ。 やりやすいのでとことん行きたい所だが、身体能力向上の訓練はさらっと流す程度に終わる。 今回目指すところは戦闘型ではなく、どちらかといえば潜入型だ。 身体がよく動くようになると、比例して再生能力も上がるので一応の訓練はする。 だが、あまり素早く動いて相手に感づかれたら全く意味が無いのだ。 飛行訓練もほとんどする必要は無かった。 「よし、もうフランの半分くらいの高度なら余裕だな」 「ままたかーい!」 「よし。 れみりゃ! 降りて来い!」 「うー、はーい!」 「よし、順調に・・・あ」 「う~♪ う?・・・うぶぎゅ!!」 「ままのうでが・・・」 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 「はぁ・・・再生するまでそこで休んでろ。 この腕は・・・」 「ん~♪ ゆ~♪」 「丁度いい。 ゆゆこ!」 「ん~?」 「ほれ」 「あ~ん・・・ぱくっ♪ ・・・かたーい!」 「文句を言うな」 ・・・ ・・ ・ そろそろ全ての項目において合格点をつけられるな・・・ 「まりさ! ゆかりん!」 「ん?」 「はい?」 「明後日、れみりゃの試験運用を行う。」 「少し早くありませんか?」 「能力的には問題は無い。それにそろそろ期日が迫ってきている。」 「どっちからやるの~?」 「まずは人里での知能試験だ。 身体能力試験の内容も決まってはいるが、もう少ししないと実行できん」 「分かりました。 明日1日は休ませるのですね?」 「ああ。 ・・・さて、どんな結果が出ることやら」 続く このSSに感想を付ける
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流れはゆっくりゃと見て、速攻で書いてみました。 乱筆乱文、おまけにテンションが乱気流になっていますがご容赦を。 「……う~、だずげで……」 掠れる様な声に誘われ、森の中に進み入ると、瀕死のゆっくりれみりゃを見つけた。 全身をナイフで切り刻まれた跡で覆われており、血(肉汁?)がどくどくと流れ出ている。 このままだと死ぬのは時間の問題だ。 「可哀相に……家に来るか?」 「……う~」 お願いします、と頼んでいる様に見える赤い瞳を見て、何としてでも助けなければと強く思った。 最近、ゆっくりれみりゃの死がいを良く見る。 紅魔館の主が、外見だけは自分に似ている上に頭の悪いゆっくりゃを本気で排除にかかったからだ。 レミリア・スカーレット。 外見だけは10年後が楽しみなほど美しい少女だが、何年過ぎようと、人間の寿命では美しくなった姿を見る事は出来ないだろう。 彼女は、500年の時を生きる吸血鬼である。 名前を発音する事にすら恐怖心を抱いてしまうのは、俺が何の力も持たない人間だからだろうか。 ゆっくりゃを助ける事で、何らかの被害をもたらすかもしれない。 だが、このキレイな赤い瞳だけは守ってやりたい。 それによる被害だけは、出来る限り受け入れる覚悟は出来ていた。 家に帰ってから、まずボロボロのゆっくりゃを風呂に入れてやる事にした。 瀕死だったのが、家につくまでにほぼ回復したらしく、風呂に入りたいとしきりにねだっていたからだ。 服を脱がせる事には、若干……いや、かなり抵抗があったが、仕方なしに脱がせる。 ゆっくりゃ自身は無抵抗、というより脱がされるのが当たり前と思っているらしく、袖から腕を抜きやすく動かしたりして、ほとんど時間もかからずに裸にする事が出来た。 どうやら、こいつはかなりお嬢様育ちのゆっくりゃだったらしい。……いや、紅魔館の「おじょうさま」なんだったな。本人は。 下らない考えは脇に置き、先に沸かしておいた風呂が丁度良い温度になる時間なので、ゆっくりゃと一緒に風呂に入る事にする。 「おふりょ♪ おふりょ~♪ あったか~い♪ う~う~♪」 「気持ち良いな」 赤い瞳を細めて、気持ち良さそうに浴槽に浸かるゆっくりゃ。 水は平気なんだな、などと下らない事を考えつつも、何となく妹か娘が出来た様な気分になって、微笑ましかった。 「ほら、そろそろ出て。体を洗うぞー」 「かりゃだありゃう~♪ きりぇいきりぇい、うーうー!」 浴槽のお湯をばちゃばちゃ叩きながら、嬉しそうにしているゆっくりゃ。 だが、いつまでもそうしてはいられないので、腋の下を持って浴槽から上がらせる。 「うぅ~♪」と、遊んでもらっているとでも思っているのか、とても嬉しそうにしているゆっくりゃを見て、連れ帰ったのは間違った選択ではなかったと思った。 ――えーと、タオル、タオル……と。 ――体を洗うためにはタオルが必要だもんな。えーと……あった。 ――随分細長くて鋭いタオルだけど、これでゆっくりゃをキレイにする事が出来るぞ。 ――どうした? ゆっくりゃ。何か怖い事でもあるのか? そんなにおびえて。 ――ナイフ? 刺さないで? ――何を言っているんだ。これはタオルだよ。これでゆっくりゃをキレイにする事が出来るんだぞ。 ――ほら、怖がらないで良いからこっちに来なさい。きれいきれいにするんだろう? ――どうしても言う事を聞かないのか。なら、力ずくで……。 青年は『タオル』で何度も何度もゆっくりゃの体を『洗った』 赤くてキレイな瞳。少し前に始めて見たばかりの、その瞳は純度の高いルビーの様にきらめいていた。 ――どうして。 たった、数分前までの話だ。 ――なんで、俺はこんな。 今はもう、光を失っている。 ――体を洗ってやっただけのはずだ。 肉汁が、赤くテラテラとにごった光を放っている。 ――タオルで、キレイキレイにしてやっただけなのに。 あまりにも赤くて、血の様に見えた。 「ゆっくりゃ?」 呼びかけるが、返事はない。 「ゆっくりゃ?」 ずたずたになった頭部を持ち上げる。 べちゃっという汚い音がして、瞳がこぼれ落ちた。 「ゆっ……」 赤い瞳。キレイだった瞳。 今はもう、にごった瞳。汚いただのゴミ。 絶叫。 目の前に広がる肉塊は、恐怖に歪んだ表情のまま、時間を留めていた。 レミリア・スカーレットの本気は、人間のちっぽけな決意など吹き飛ばし、ゆっくりゃの死の運命を絶対のものとする。 その本当の恐ろしさに最後まで気付けなかった青年は、哀れな被害者であるが、同時に間抜けた道化でしかなかった。 おぜうさまが本気になったら、この程度は軽くやってしまうと思うんだ。
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ゆっくりれみりゃのおかしな友達 下 それから、ゆっくりれいむは、少しずつ変化していった。 れみりゃは最初、気づかなかった。翌日遊びに行くと、れいむはいつものように喜んで出迎えてくれた。 だが二日目に、れいむの左の房飾りがなくなっていた。 三日目には右のほっぺたが少し赤くなっていた。 四日目には後ろ髪がぼさぼさになっていた。 五日目には、切り株にいってもいなかった。「うーうー!」と踊ると木のうろからすぐに出てきたが、その日一日はよくころんでいた。 六日目には最初から切り株のところにいたが、やけにハイになっていた。 「ゆっくりしていってね! ゆぅっくりしていってね!!!」 大声で何度もゆっくりを連発し、れみりゃにむやみと頬ずりしてきた。れいむが元気そうなのは嬉しかったが、ちょっとうるさくていやだ、とれみりゃは思った。 「れいむは、れみぃとゆっくりするからね! もう心配ないからね!」 そんなことをれいむはずっと繰り返していた。 その日、れみりゃが帰ろうとすると、れいむは泣いた。 「もっとゆっくりしてってよ! いっしょに遊んでよー!」 「う、ううー……」 れみりゃはいつもの笑顔に困り汗を浮かべて、彼女なりに迷った。けれども、おなかがだいぶ減っていた。食欲第一の生き物であるれみりゃは、我慢できずにぱとぱとと飛び立った。 「まーたくーるねー!」 「明日もぜったいきてね! ゆっくりまってるね!!!」 切り株の上で、れいむは何度もぴょんぴょん跳んでいた。 そして七日目―― れみりゃが上空から降りてくると、切り株のかたわらにぼろ雑巾のようになったゆっくりが転がっていた。 「れーむ? れーむ!」 驚いたれみりゃは、あわててゆっくりのそばに下りて、丸い体を抱き起こす。幸い、れいむはまだ生きていた。れみりゃに気づくと、「ゆふっ」とかすかな笑みを浮かべて、言う。 「ゆっくり……きてくれたのね」 「れーむ、いたい? いたい?」 「だいじょぶ……ゆぐぅ!」 起き上がろうとしたれいむが、顔をしかめてれみりゃの腕の中に沈みこんだ。 れみりゃは危機感を覚えて、おろおろと辺りを見回す。 「んうー、れーむ、いたいいたいなってる……」 れみりゃに傷を治す知恵はない。 できるのは、たださすってやることだけだ。 弱ったれいむを抱きしめて懸命に後ろを撫でてやっていると、れいむが口を開いた。 「ありがとね、れみぃ。れみぃはいい子だよね!」 「んう、れみぃはいいこだよ?」 「だよね。でも、みんなはわかってくれなく……て……」 再びぐったりとなるれいむ。れみりゃは懸命に呼びかける。 「れーむ、れーむー!」 そのときだった。れみりゃの背後から、異様な叫びが投げつけられた。 「「「「「「「さっさとでていってね!!!!」」」」」」」 振り向いたれみりゃは、ぎょっとする。 そこに大勢のゆっくりが集まっていた。単独れいむや家族れいむ、まりさやぱちゅりーやちぇんやみょんなど、全部で五十体を越えているだろうか。 先頭のゆっくりまりさが、もういちど言った。 「さっさとでていってね! ゆっくりできないゆっくりはだいきらいだよ!」 「う、うー? れーむがきらい?」 「ゆっくりれみりゃとなかよくするなんて、へんだよ! おかしいよ!」 じわじわと寄ってきたゆっくりの集団が、れみりゃたちを取り囲んだ。飛び上がって、どん、どん、と弱っているゆっくりに体当たりをし始める。 「ゆっくりしないでね!」 「もうなかまじゃないよ!」 「きらいになったからね!」 前からも後ろからも体当たりされて、れみりゃは頭にきた。れいむを下において、両手を振りかざす。 「がおー! たべちゃうぞー!」 必勝のポーズ、のはずだった。ゆっくりたちは一瞬、びくりと動きを止める。 だが次の瞬間には、前にもまして激しく体当たりし始めた。れみりゃは必死になって、追い払おうとする。 「が、がおお! がおおおおー!! ほんとにほんとにたべちゃうぞー!」 「ゆっくりやってみれば?」 どしんと後ろから三匹にまとめて体当たりされて、れみりゃは前にのめった。勝てると踏んだか、家族ゆっくりの母が呼びかける。 「やっつけるよ! こいつはこわくないよ!」 「ゆっくりーーー!!!」 歓声を上げて、ゆっくりたちが殺到する。れみりゃは悔しくて泣きたくなる。 ゆっくりは楽しいことばだったはずなのに。 れーむがおしえてくれたまほうのことばなのに。 こんなやつらに言われてしまうなんて。 咲夜を呼んで、ぜんぶ潰してもらいたかった。でも咲夜はこないとわかっていた。野犬に襲われたあの日に、身に染みて知った。そう、助けは来ない。 ここにいるのは、自分とれいむだけ。 だから、ふたりでなんとかしなくちゃいけない。 れみりゃはれいむを抱き上げて、思い切り地を蹴った。 「ゆゆゆっ!?」 下手くそな羽ばたきでれみりゃが舞い上がった次の瞬間、彼女のいたところに、ゆっくりたちがどさどさと積みあがった。 去っていくれみりゃの耳に、ゆっくりたちの叫びが届く。 「ゆっくりしてきてね!!!」 「かえってこなくていいからね!!!」 戻るもんか、とれみりゃは思った。 あんな連中の居るところには、れいむを置いておけない。 自分とふたりで、なかよく暮らすんだ。 だが、紅魔館の庭に戻ったれみりゃを待っていたのは、魔法の森以上の苦労だった。 「がうー、おいしそー♪」 「れみー、たべちゃおー♪」 ちょっとした林ほどもある屋敷の庭園には、他のれみりゃが何匹も住み着いている。それが、傷ついておいしそうな匂いを放つ獲物につられて、次々と飛んできたのだ。 「だーめ、れーむはだーめ! れーむいいれーむなのー!」 れみりゃはれいむを抱きかかえて植木の根元にうずくまり、周りの仲間に食べてはいけないと言おうとした。だが、言葉が足りなくて伝えられない。 襲うれみりゃのほうも、もともと相手のことなど考えないわがままな性格だから、嫌がられるとますます笑みを浮かべて取り囲む。 そしてとうとう、手を伸ばしてつまみ食いをはじめた。 「ぐにー、ぷちっ♪」「あっ」 「もーらいー♪」「ああっ」 「ぷにぷに、すきー♪」「あああっ!」 必死にかばうれみりゃの横から手を出して、れいむの頬をぷつぷつとちぎり取る。そのたびに、れみりゃの腕の中で、だいじな友達がびくびくと震えた。 「れーむ、れーむだいじょーぶー?」 「ゆゆっ……だ、だいじょうぶだよ。れいむゆっくりしているよ!」 れいむがそう言って見上げるが、頬のもちもちした皮はだいぶくぼんで、あんこが覗きかけている。 れみりゃは振り返って、やけっぱちに腕を振り回した。 「もお゛お゛お゛お゛、だーめーなーのー! たべぢゃだめえええええ!!」 「ひとりじめ、ずるーい☆」 「れみーもほしーのー」 「ずるっ子は、さくやにいっちゃうぞー♪」 にこにこ笑いながら仲間たちが近づき、れみりゃをどんと突き飛ばした。「んあっ!」と転がってしまった拍子に、仲間はれいむに覆いかぶさって、いっせいにむさぼり食おうとする。 「「「「「いただきまーす♪」」」」」 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛、たべないでぇぇぇ!!」 れいむの絶叫が響く。 そのとき、木立の間から、すうっとひとつの影が滑り降りてきた。丸い頭の飛行ゆっくりだが、翼の形が違う。 そいつは、れいむを襲うれみりゃの一人に、がぶりと噛み付いた。噛まれたれみりゃがカッと目を見開いて悲鳴を上げる。 「にぎゃぁぁぁぁぁぁあ、ふ、ふらんきらいーーーーーーー!」 ゆっくりふらんの出現に、れみりゃたちは浮き足立った。れいむを放り出しててんでに逃げ始める。 その隙に、れみりゃはれいむを抱き上げ、再び飛び上がった。 その日の夕方、追いすがる他のれみりゃたちをようやく撒いて、二人は幻想郷のどことも知れぬ森に逃げ込んだ。 魔法の森とは違って、生き物の気配がしない森だ。ただ深閑と静まり返って、ちくちくした霊気が漂っている。その霊気は二人にとって不快だが、我慢するしかなかった。ここから出たら、またあいつらが襲ってくるに決まっているのだ。 れみりゃは倒木の陰になったくぼみを見つけて、逃げ込んだ。ようやく落ち着くことが出来て、れいむがほっとしたように言った。 「ここならゆっくりできるね!」 「ゆっぐぅー♪」 二人は無理してにこやかにそう言った。 二人とも、あえて現実から目をそらしていた。 れいむの体はあちこちが食いちぎれられて、でこぼこになっているのだ。ゆっくりできるわけがない。 それにれみりゃのほうも、今朝ごはんを食べたきりで、おなかがすいていた。 日が暮れると、座り込んだれみりゃのおなかが、ぐうぐうと盛大に音を立てた。一日中追い掛け回されて、いい加減疲れきっていたれみりゃが、愚痴を漏らし始めた。 「れみー、おなかすいたー……」 「ゆぅ、れいむもだよ」 「ぷいん、たべたいなー……」 「ゆぅ……」 「ぱっふぇー……とるて……あいすー……けーき……」 「それはおいしいもの?」 「すっごく、おいしいものー。うぅ、さくやぁ……」 れみりゃにとって、紅魔館の庭園は絶対の安住の地だった。おなかがすいても、そこに帰れば咲夜か妖精メイドが何かしら与えてくれた。 「れみぃ、おうちかえりたい……」 紅魔館に帰れないと頭ではわかっていても、しみついた習慣は簡単に抜けるものではない。れみりゃはふらふらと出て行こうとした。 スカートの裾を、れいむがくわえてけんめいに引っ張った。 「ゆ、おうちはだめだよ、たべられちゃうよ!!!」 「うう゛ー」 れみりゃは泣き顔になったが、かろうじて危険を思い出した。ぐしぐしと小さなこぶしでまぶたをこすって、うなずく。 「ん、おうち、やめう……」 「ちかくで食べ物をさがすといいよ!!!」 「たべもの、さがしてくぅー」 れみりゃは倒木の下から這い出して、飛び上がった。 「うまうま、ないかなー」 だが、その森には動物やゆっくりがまったくいなかった。見つかったのはいくらかの木の実や山菜、きのこだけ。だがれみりゃには、それらが食べられるものなのかどうか、わからなかった。 飛んでいるうちに、幼いれみりゃの頭には、楽天的な想像がわいてきた。 ――さくや、おむかえにきたかなー。 ――れいむが、うまうまもってきたかな。 ――なんにもなくても、ゆっぐぅーすればいいやー。 すると、なんとかなるような気がして、れみりゃは倒木のところへ舞い戻った。 「れーむー♪」 「ゆゆっ、れみぃ、なにかみつかった?」 れいむが出てきた。れみりゃは、彼女を押し戻すようにして、倒木の下へ入る。きっとなにかがあるはずだった。さくやかれいむが食べ物を見つけているはずだった。 だが、そこには何もなかった。乾いた土に囲まれて、落ち葉の積もったくぼみがあるだけ。 それは当然なのだが、今までほとんど苦労もなく可愛がられてきたれみりゃには、大きなショックだった。 ゆっくりたちに袋叩きにされ、れみりゃたちにもいじめられ、一日中逃げ回った苦労が、ずっしりと効いてきた。 後からきたれいむが気を使うように聞いた。 「れみぃ……なんにもみつからなかった?」 「ううう…うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あ゛ーーーーーーーーーーー!」 れみりゃはとうとう泣き出した。 「あ゛あ゛あーーー、おなかずいだぁぁぁぁ、あ゛ーーーーーーーーーーーーーー!!!」 立ち尽くしたまま思い切り口を開けて、ひたすら泣きわめく。 「あ゛ーあ゛ーあ゛ー、あ゛ーーーーーーーー! もう、や゛ーーーーーーーーー!!! いだいーーーー!!! づーかーれだあああああ!!! ね゛ーーーむ゛ーーーいーーーーー!!!! おながずいだのおおーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 ねたいねたいねたいねたいねたい、ねだーーーーーーーーーーーーーい!!!」 「れ、れみぃ、ゆっくり……」 振り向いたれみりゃは、れいむをにらんだ。たかが彼女一人を助けようとしたから、こんな目に遭うことになったのだ。憎悪が膨れ上がった。抑えきれずにぶつけた。 「れーむの、ばかぁぁぁぁぁ!!!」 肉まんの顔を真っ赤に染めて、やわらかなぷにぷにした手で、れいむをぶつ。 何度も何度も、べちべちとぶちまくった。 「ゆ、いだっ、いたいよ、れみぃ」 「ばぁーーーーーーーかーーーーーーーーーーーーー!!! あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」 「やめっ、だめ、れいむつぶれちゃ、だっ、だめっ!」 思わず、だろう。れいむがびょんと跳ねた。 それがれみりゃの顔面にまともに当たった。れみりゃは後ろへころんとひっくり返り、壁でぼにょんと頭を打つ。 そのまま立ち上がる気力もなく、れみりゃは火がついたように喚き続けた。 「 あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!! あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!! うあ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」 そしていつしか、疲れ果てたれみりゃは大の字に眠り込んでしまった。 ちょろちょろと水の流れる音、湿った冷たい空気を感じて、れみりゃは目が覚めた。 「う゛ー……?」 「ゆっくりねた? れみぃ」 すぐ隣に、依然としてれいむがいた。前方には、外の景色が見えた。 大粒の雨がばらばらと降っていた。 「あめ!」 「ゆっくり降っているよ!!!」 れいむが言ったが、その口調には何かやけになったようなところがあった。 ゆっくりれいむも、ゆっくりれみりゃも、雨が苦手だ。多少なら大丈夫だが、十分も動き回ると、体がぐずぐずになってしまう。 だから、雨の日は外に出られない。 しかしこの場合、それは飢えとの戦いを意味した。 丸一日以上何も食べていないれみりゃは、目を覚ましたものの、朦朧としていた。肩が接するほど近くにいる友達のことが、やけに気になった。 ぴとぴとと頬に触れて、揉んでみた。依然としてでこぼこしてはいたが、もちもちとして、とても魅力的な肌触りだった。 ――うー……。 もちもちとれみりゃはれいむの頬を揉み続けた。れいむが目を細めて、つぶやいた。 「ゆゆ~、くすぐったいよぉ」 れみりゃは顔を近づけた。かすかに甘い香りがした。舌の付け根から唾が湧いてきて、口の中が濡れた。ごくっ、と唾を飲み込んだ。もちもちとつまむ指に、力が入った。 「どうしたの? れみぃ」 れいむがぐるりと振り向いた。彼女と目があった。れみりゃは急に、とても悪いことをしていた気分になった。おびえるように後ずさった。 「ううん、なんにもー……」 「れみぃ、へんなの!!!」 れいむが笑って、向こうをむいた。 れみりゃはしばらくの間、膝を抱えて奥を向いていた。 雨は降り続いた。灰色の光に満ちていた森が、だんだん暗くなり、やがてそのまま夜に滑り込んでも、まだ降っていた。 れいむがれみりゃのほうに寄ってきて、言った。 「下がぬれてきたから、ゆっくり奥によってね!」 「うぅ」 れみりゃは生返事をして、体を縮めた。 おなかが減っていた。猛 烈 に減っていた。生まれてこの方、二日間何も食べなかったことなど、一度もなかった。昨日までぽっこりしていたおなかに触ると、服がべこべこと余っていた。あまりの空腹に、自分のお肉まで減り始めているのだ。 「うぅぅ……おなが……ずいだ……」 れみりゃはだらだらと泣き続けた。「れいむもだよ!」という、小さな叫びが聞こえた。 眠ったのか、気絶したのか、わからない。れみりゃは一度、意識を失った。 次に目覚めたのは、まだ夜が明ける前だった。空腹感を通り越して、しくしくと差し込むような痛みが腹部を襲っていた。寝てなどいられなかった。 れみりゃは外を見た。雨は、こちらの切なる願いなど知らぬげに、今でもまだ降り続いていた。今日も食べ物が手に入る見込みはなさそうだった。 このままだとまずい、という危機感が、際限なく膨れ上がっていた。 なにか食べないと、死んでしまう。 ほんとうに、しんでしまう。 死ぬのはいやだった。涙でぐずぐずになった顔で、れみりゃは弱弱しくいやいやをした。 その拍子に、顔がもちもちしたものに触れた。 「あ……ぶっ」 反射的に、食いちぎった。口の中に、ぽろりとかけらが落ちてきた。もぐもぐと噛むと、味が染み出して、唾液に混ざった。じわぁ、と舌の付け根が震えた。 甘みがこれほど嬉しいとは、知らなかった。その味は腹に染み渡り、喜びとなって体の隅々まで伝わった。れみりゃの頭は、あっという間にその味で染まった。強烈な欲求が湧き起こった。 たべたい。 たべなきゃ。 たべる。これ、たべる、たべて、もぐもぐして、おなかいっぱいになる。 「ああーん――むっ!」 「ゆぐっ!?」 二口目を噛み切ったとたん、声が聞こえた。それを耳にしたれみりゃの心に、悲鳴のような叫びが起こった。 ――これ、れーむ! おともだちのれーむ!! 自分が友達を食べていることに気づいて、れみりゃは凍りついた。 ともだち。 いっしょに遊んだともだち。 助けてくれた、なかよくしてくれた。 たべると、いなくなっちゃう。 凍りついたまま、れみりゃはぼろぼろと泣き始めた。奇怪なことに、声はまったく出さなかった。ただ笑顔のままで目尻から大粒の水をこぼし続けた。 それは葛藤の涙だった。 片方に、命に関わるとてつもなく強い欲求がある。 片方に、命をかけて助けた友達がいる。 どちらも、れみりゃの手には負えないほど重いものだった。その二つにのしかかられて、れみりゃは泣くことしかできなかったのだ。 その時、小さなささやき声が聞こえた。 「いまの、れみぃ?」 「……れーむ」 「れみぃ、おなかすいたよね。ゆっくりがまんしていたよね。れいむを抱っこして、あんなにいっぱい、飛んでくれたもんね」 れいむは振り向かなかった。頬を向けたままで、ぽつりと言った。 「ちょっとだけだよ」 「れーむ?」 「――ゆっくりたべてね!!!」 頬がかすかに、震えていた。 れみりゃは最初、相手の言っていることがわからなかった。たべて、という言葉の意味すら忘れていた。 やがてそれをじんわりと思い出すと、そっと手を伸ばして、またひとつかみ、頬をちぎった。ぶるっ! とれいむは震えたが、何も言わなかった。 それを食べ、飲み込んだ。 おいしかった。今まで食べたどんなゆっくりよりおいしかった。 もう止まらなかった。れみりゃは大きく口を開け、れいむの頬にかぶりついた。ひと口、ふた口、み口。よく噛んで、飲み込んだ。しくしくと痛んでいた腹に、やわらかなものが落ちていって、しっかりと溜まった。そこが目覚め、活発に動き出した。ぎゅるるるぅ、と音がした。 もっと食べたかった。もっともっと。何口でも。おなかいっぱいになるまで! れみりゃは恐ろしい勢いで、食い進んだ。ひと口かじるたびに相手は震えていたが、やがて震えが止まらなくなった。ぶるぶると震えっぱなしになった。頬を食っていたれみりゃは、食べにくくなったので、前へ回ろうとした。 きつくきつく歯を食いしばったれいむが、目を閉じて声もなく泣いていた。その顔は、普段の白い顔色とくらべても、なおぞっとするほど青白かった。 それを目にしたれみりゃは、動きを止めた。 自分が食っていた頬に目を戻した。そこにはすでに、りんごが入りそうなほどのくぼみができていた。それどころか中心部では皮を食い破って、餡子にまで達していた。 れいむがふと目を開け、細かく震えたまま、尋ねた。 「も、もういいの?」 「う、うー……」 「じゃあ、ゆっくりするね!」 そうつぶやいてすぐ、れいむは目の焦点を失ってしまった。丸い体から力が抜け、穴の開いた風船のようにぐったりとしぼむ。 痛みのあまり気絶してしまったのだ。 「れーむ、れーむれーむ!」 れみりゃは自分がどんなにおろかなことをしてしまったのかに気付いた。ゆっくりを餡子が見えるようなところまで食べてしまったら、瀕死になるのは当たり前だ。数え切れないほどゆっくりを食べてきたのに、そんなことも忘れていた。れいむなら大丈夫だと思っていた。大丈夫だから食べてと言ったのだと思った。 そんなわけがない、れいむだって食べられれば痛いのだ。苦しいのだ。けれど、れみりゃが好きだから、食べさせてくれたのだ。 それなのに自分は、ちょっとだけと言われたのに、われをわすれて、がつがつとむさぼってしまった。ひとりしかいない友達を! ぐったりしたれいむを抱きしめて、れみりゃは穴を押さえようとした。だが、力をかけてしまったために、かえってそこから餡子がどろりと漏れ出した。れみりゃはパニックになり、彼女を抱いたまま、くぼみから出てうろうろと歩き出した。いつの間にか雨はやんでいたが、それにも気付かなかった。 「れーむ、れーむ、しんじゃだめ!」 歩き出したのは、咲夜に助けてもらうためだった。だが少し行ったところで、紅魔館に近づけないことを思い出した。紅魔館がダメとなると、もうどこへ行ったらいいのかわからない。だがくぼみに戻ると、また閉じこめられて、おなかが空いてしまう。 木の根に足を取られて、どぺんと転んだ。ごろんごろんとれいむが転がる。あわててかけよって、助け上げた。泥まみれになって、ひうひうと隙間風のような息を漏らしていた。それをみるとますます切迫した気持ちになって、れみりゃは短い足で必死に走り出した。 「れーむ、れーむ!」 知る人が見れば驚いたろう。ゆっくりれみりゃと言えば何よりもわがままで泣き虫で、少しでも困ったことがあると、ひっくり返って泣きわめくしかない役立たずだ。 それが、必死の顔で泥まみれのゆっくりれいむを抱きしめて、自分も泥と湿気でぐちゃぐちゃになりながら、一心に森の中を走っていくのだから。 何度も転び、れみりゃ自身の皮もどよどよに溶け始めた。それでもれみりゃは止まらなかった。何 か を し な き ゃ と強く思っていた。何をすればいいのかわからないけれど、とにかく泣きわめく以外の何かを。 幻想郷には、神様がいる。――あるいは、その一人がたまたま、目をかけてくれたのかもしれない。 「うあっ!?」 十何度目かにれみりゃが転んだ時、その先には、地面がなかった。ゆるやかな下り坂がどこまでも続いていた。れみりゃは頭からつんのめって転がりだした。 「うあーーーーーーーーーーっ!?」 悲鳴を上げてごろごろ転がりながらも、れいむだけはしっかり抱きしめて離さなかった。 こわい犬をやっつけてくれたれいむ。 鬼ごっこや隠れんぼを教えてくれたれいむ。 いっしょうけんめい、ゆっくりの仲間に加えてくれようとしたれいむ。 ほっぺたを食べさせてくれたれいむ! れみりゃは、他のどんなれみりゃにもありえない根性で、れいむを守り抜いた。 石にぶつかり、木の枝にひっかかり、泥と落ち葉と虫にまみれて、どろどろのぐちゃぐちゃになった状態で、れみりゃは斜面の下まで転がっていった。 木立が途切れ、平らな地面にたどりついた。玉砂利の上でバウンドして、さらにれみりゃは傷ついた。延々と転がって、石畳の上までたどりついて、そこでようやく勢いを失った。 最後に、木の柱にどんとぶつかって、とうとうれみりゃは停止した。 それでもなお、抱きしめたものだけは離さなかった。 やがて小鳥たちが鳴き始め、夜と霧が晴れていった。朝日が、そのぼろくずのようなものを照らした。 ザッ、ザッ、という音が近づいてきた。 箒の音だ。 それは、そばまで来ると動きを止めた。いぶかしげな声がした。 「……なんなの、これ」 その声は奇跡的に、れみりゃの耳に入った。れみりゃは丸めた体をごわごわと伸ばし、抱いていたものを声のほうに押し出した。 「……ゆっ、ぐぅ……」 「うわ、しゃべった。――なに?」 「ゆっぐぅ、させ……て」 「……ゆっくり? これゆっくりなの? ――ほんとだ、リボンないけど私のと同じゆっくりだ」 その言葉のあとに、驚いたような叫びが上がった。 「って、あんたレミリアのゆっくりじゃない!? なんでそんなのがコレ抱っこしてんのよ? あんたらって、この子を食べるんじゃないの? ねえ、ちょっと!」 ゆっくりれみりゃは、気絶した。 「お邪魔するわね。……って、これ、何かしら?」 「それ私と同じリアクション」 「いえ、あの、本気で……。これは雑巾? それとも牛の糞?」 「ゆっくりよ。レミリアの」 「ええ? どれどれ……あら、本当。ゆっくりね。いわゆるゆっくりれみりゃかしら。一応生きてはいるみたい。どうしたの、紅魔館から盗んできたの?」 「自分で来たのよ。神社の裏に」 「へぇ。それとこっちは……ゆっくりれいむね、このふてぶてしい顔は」 「モデル本人を目の前にしてそういうこと言う」 「あら、不愉快? 同じのをペットにしてるぐらいだから好きなのかと」 「ペットと同じ顔と言われて喜ぶ飼い主は多くないと思うわ」 「ふふ、そうかしら。……それにしても、よくもここまで汚れたものね。泥どろのぐちゃぐちゃじゃない。洗濯機に十回ぐらい放り込んでもまだ綺麗になりそうもないわ。あら、でもそんなことをしたら型崩れしてミンチになってしまうわね」 「のんきなたとえ話をしてる場合じゃないわ。早く治してよ」 「治す?」 「ええ」 「何を?」 「ソレとソレを」 「誰が?」 「何のためにお医者を呼んだと思うの八意先生」 「この小汚い生き物未満食品以上を、私が?」 「そう言われるのは想像がついてたけれど、そこを曲げてなんとかしてほしいのよ。私だってこんな小汚い妖怪未満物質以上に触りたくないけれど、そいつは別なの」 「別って一体どういうことかしら」 「ちょっとね。ただの感傷よ。――でも、こう言えばあなたにもわかるかしら? その子は、そっちの子を抱えて、裏の山の上から転がり落ちてきた。自分の身を省みず」 「……」 「どう?」 「……ま、珍しい例だから、やってあげなくもないわ。その代わり――」 「はいはい、お代ね。どうぞ」 「何かしら」 「お呼び出しチケット三回分。永遠亭に誰か厄介者が来たら、引き受けてあげる」 「……お父さんの肩たたき券か」 「そう言わずに」 「転売するという手もあるわね。買い手は多そう」 「するな!」 暖かい日差しを浴びて、ゆっくりれみりゃは目を覚ました。白い紙の壁を透かして、明るい陽光が差している。紅魔館ではついぞ見かけなかった、不思議な壁だ。それが「障子」というものだと、その後長く暮らすうちにれみりゃは知る。 畳に置かれた、段ボールの箱の中だ。下には清潔なタオルが敷いてある。体のあちこちがずきずき痛む。だが手で触れると、どの傷にも丁寧に膏薬が張られていた。三日も経たないうちに傷は塞がる。 身を起こすと、そばに皿が二つおいてあった。水の皿と、白いドロドロの入った皿。張られた符がぼんやりと光を放ち、中身の温かみを保っている。「おかゆ」という言葉を、れみりゃはこれから三十分以内に覚える。 食べ物だ。そうと気付いた。 しかし、それに手を伸ばすより早く、れみりゃは大事なもののことを思い出した。きょろきょろと周囲を見回して、叫ぶ。 「れーむ、どこー!?」 「ゆっ?」 室内に置かれていたもうひとつの箱の中から声がして、ぴょこりと丸い頭が覗いた。 「ここだよ、れみぃ!」 「れーむ!」 れみりゃは食べ物を後回しにして、ひと跳びにそちらの箱に飛び込んだ。見れば、れいむの頬にも膏薬が張られ、あの忌まわしい傷がきちんと塞がれていた。 れみりゃは彼女を抱き上げておそるおそる言う。 「れーむ、ごめんね! いたいいたいして、ごめんね?」 れいむはにっこり笑って答える。 「いいよ、れみぃ! れみぃがげんきで、ほんとによかったよ!」 れみりゃはしっかりれいむを抱きしめる。ばいんばいん、ととても元気に友達は跳ねた。 廊下でそれを聞いた紅白の巫女が、腕に抱いた自分のゆっくりと顔を見合わせる。 「ゆっくりしていってね、と」 それから博麗神社での暮らし方を教えるために、障子を開けて入っていった。 fin. ================================================================== ああ長引いたっていうか、これゆっくりを愛でてねぇー! ゆっくりがイヤというほど苦労する放浪譚でした。 食い合う関係って素敵ですよね。 なお、この話の巫女と神社は、某少女隊氏のところの設定に合わせました。 YT ================================================================== 泣いてしまった -- nobody (2008-09-16 12 03 28) 涙が出た、よい作品をありがとうです -- ine (2008-09-23 11 58 53) れみりゃとゆっくりの葛藤モノ、作品として珍しいのでまたこういうの是非みたいです~ -- ine (2008-09-23 12 46 31) アニメの狼と羊を思い出した -- 名無しさん (2008-09-28 00 39 38) 全 俺 が 泣 い た -- 名無しさん (2008-10-25 12 13 36) 『あらしのよるに』を思い浮かべたのは自分だけじゃないはず -- 両刀お兄さん(虐待と愛での) (2009-01-22 16 50 04) 泣いた -- 名無しさん (2009-08-05 17 06 55) いい話だ・・・ -- 名無しさん (2010-06-03 14 01 37) 『あらしのよるに』以外のたとえ方を俺に教えてくれ -- 名無しさん (2010-06-07 20 54 09) 切なくも良い話。ハッピーエンドで良かった。 -- 名無しさん (2010-11-27 14 13 46) すまん皆言わせてくれ 群れのゆっくりどもストレスがマッハだ -- 名無しさん (2011-04-27 18 41 31) いい話だ···全編朗読しようとやってみたら3割読んだところでろれつが回らなくなってギブしたwおそるべしww。 -- 名無しさん (2011-10-24 22 06 39) よかったー!!!! -- 名無しさん (2012-06-04 01 45 51) 駄目だ。やはりれみりゃは嫌いだ -- 名無しさん (2012-12-29 01 42 37) 名前 コメント
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紅魔館の主、レミリア・スカーレット。 彼女が、ある日突然、幼女のような物体に変わってしまった。 新月の夜の幼女化などではない。 以前のような知性も無く、「うー」やら「うあうあ」と言っているだけの状態が幾日も続いていた。 何かの異変かと思い神社を訪ねたが、巫女はうるさい奴が来なくなってよかったわ、と言って関り合いになろうとしなかった。 そして、お嬢様付きのメイドである咲夜は、これからどうしたら良いかと散々迷った末、この状態のレミリアも甲斐甲斐しくお世話しようと試みた。 しかし、素の状態のレミリアの世話をする事とはずいぶん勝手が違った。 曰く 「お嬢様、おはようございます」 「……すぅー、すぅー」 「起きて下さい、お嬢様」 「う~? ま~だねる~」 と言って寝続ける。 咲夜が起こす前に起きている時といえば、ベッドから落ちてそのまま泣いていた時だけである。 曰く 「お嬢様、食事の用意が出来ました」 「うっ♪ う~、あうあう♪」 「お嬢様、食事の時間です」 食事に連れて行こうと、遊んでいるレミリアを抱きかかえるとまた泣き出す。 「ゆっくり遊ぼうね。グスッ。ゆっくり遊ぶのー!」 泣いているレミリアに、何とか食事をさせようとするがまったく食べない。 好物だった肉を口に運ぶと、好き嫌いする子供のように必死で口を結ぶ。 それならばと、デザートにと作っておいたケーキを出したところ、ピタリと泣き止み笑顔のまま完食した。 咲夜がこの数日お世話をして分かったことといえば、見た目通り中身も幼くなった事と、以前の記憶はまったく無くなっていた事くらいだろう。 その後、図書館へ来ていたアリスの人形達に目を輝かせていたのを見た咲夜が、パーティー用のきぐるみを着てみたところ何とか簡単な言うことは聞いてくれるようになった。 タンバリンやカスタネットを使えば更に効果が上がる、と咲夜は付け加えた。 その時パチェリーに、アリスの家はゆっくり達が集まってきて住んでいるから、根城が変わるまで暫くは図書館に住まわせる、と聞かされた。 二つ返事で了解し、椅子に突っ伏して眠っているアリスの為に、急いで小悪魔と一緒に残っていた司書室の掃除を始める咲夜。 紅魔館の中といっても、既にここはパチェリーの領域とかしている。 しかも当の主がこの状態では許可を求めてもどうしようもないだろう。 After half a year レミリアが変わってから半年ほどが経った。 以前はきちんととれていた統率が、半年の間に綻び始めていた。 原因は、今のレミリアにはまったく統率力が無い事、加えて今の彼女の言動が屋敷の庭でよく見かける二匹のそれにそっくりだという事。 この話題が咲夜の耳に入ると、直ぐに庭に居た二匹を捕獲した。 「「う~。 うっ~。お菓子うま~」」 もともと紅魔館の従者達には懐いていた二匹は、お菓子を持っていくと警戒することもなく近寄ってきた。 直ぐにでも殺してしまいたかったが、高く買い取ってくれますよ、と美鈴が話したことで、どうせならゆっくりと恐怖を味あわせてやった方がコイツららしいと思い、業者に売り飛ばす事にした。 二匹に後を着いてこさせ加工場まで連れてきた。 「れみりゃ種は十分成熟してますから、直ぐに発送用に加工できますよ」 と聞いた咲夜はその様子を見学させてもらった。 好奇心旺盛なれみりゃは、知らない職員に抱きかかえられていてもご機嫌だった。 「う~、う~。さんぽっ あうあう」 以前、従者が散歩に連れて行ったのだろう、今回も散歩だと思っているようだ。 「う~?」 今まで見たことの無い一室に連れてこられたれみりゃ、瞳はキラキラと輝いている。 「ご存知の通り、れみりゃ種は他と違ってそのまま食すことの出来る種類です。しかし、食べることのできない部分も有りますのでここで出荷前にその部分を処理しているんです」 咲夜への説明が終わると、職員達は備え付けの台の上にゆっくりを固定していく。 「う~♪ う~? うーーー!!!」 懸命に、固定を外そうとするゆっくりれみりゃ。 元々わがままなゆっくりの、他の種類よりわがままな性格の上、紅魔館の庭で何一つ苦労せずにもてはやされていたのだ、突然拘束されるなどとは思わなかったのだろう。 「まずは帽子をとります」 おそらく加工担当のものだろう全身を真っ白な白衣で覆った職員が帽子を取る。 「うー! れみりゃのぼうし!! かえして!!! かえして!!!」 「この帽子は、現在飼育中のゆっくり達の予備の他に、ペットとして飼われているゆっくり達用に、加工して販売もされています」 そう言って、男はアレンジされた帽子を咲夜に見せた。 確かに可愛らしい帽子だと、咲夜は思った。 「次は、羽です」 羽、と聞いてそれまで強気だったれみりゃの体がビクっと震えた。 更に激しく暴れるが、拘束が解ける様子はまったくない。 「ざくや!!! わるいひどがらだずげでよー。これをはずじでよー」 根元から羽が切り落とされると、まるでそこにスタミナが有ったかのようにぐったりとするれみりゃ。 「最後は歯です。目も食べることは出来ませんが、長年の研究で目を落とすと鮮度と味が格段に落ちるんですよ」 ぐったりとしているれみりゃ、すでに抵抗する気も無いのだろう。 なすがままに、職員達が慣れた手つきで歯を抜いていく。 その後、表面の皮を汚れをゆっくりお湯で体を洗われ、最後に別のお湯につけてかすを流して木箱に詰められる。 内側に特殊な加工がしてあり、中でれみりゃが動けないようになっているらしい。 「あとはこのまま商店に発送されます。手間がかかりますので一週間に十五匹程度になってしまいますが」 味は最高です。と自信を豪語する男に相槌を打ちながら木箱をみる。 ある程度回復したらしく、出して、としきりに騒いでいるようだ。 「あの声が大きいかどうかで値段が変わるんですよ、この大きさですと結構な高値がつきますよ」 もとからそんな事に興味が無い咲夜は適当に相槌をうち、代金を貰って帰路を急いだ。 ちなみに、ゆっくりフランも、既に出荷できる状態だった。 咲夜と一緒に、最初はげらげらと、れみりゃの様子を笑いながら見ていたが、自分が拘束されると、同じように泣き始めていた。 紅魔館に戻ってきた咲夜は、珍しくきちんと門番をしていた美鈴に、紅魔館からすれば二束三文しかない代金を渡して中に入る。 出て行くときよりも晴れやかな顔つきだ。 少なくとも、これでゆっくりと同一視されることはない、確かな確証がその顔から見て取れた。 そんな気持ちで玄関をくぐった咲夜が見たのは、壁一面に施された落書きだった。 ホール全体を、赤や黄色ので埋め尽くした落書き、どうやらクレヨンで描かれたようだ。 おそらくは今朝、家を出る前に遊んでもらいたそうにじゃれ付いてきたレミリアに、与えたクレヨンだろう。 ちょうど近くを通りかかったメイドに聞くと、予想通りの返答が返ってきた。 「だったら、なんで直ぐ消さないの」 「そ、それが、消そうとするとアイt、いっ、いえレミリア様が怒り出して……」 とりあえず掃除用具を持ってこさせ、後は私が消すからと言ってメイドと別れる。 最初は廊下からと、いざ落書きを消そうとモップに力を込めた時。 「ぎゃお~、たべちゃうぞ~♪」 パーティー用のきぐるみを着たレミリアだった。 最近は帽子だけでも言うことは聞くようになったのだが、本人はいたくあのきぐるみを気に入ったらしい。 ことあるごとに、着ているのをよく見かける。 もっとも、それを脱がすのは咲夜の仕事なのだが。 「お嬢様。申し訳ありませんが、お遊びは掃除が終わるまで待ってもらえませんか?」 そう言って、再度モップに力を込める。 「うー!!! 消しちゃダメ~」 そう言って咲夜の足にしがみ付くが、力が弱いの上に、きぐるみを着ている所為で、簡単に振りほどかれてしまう。 「だめです。いいですかお嬢様、クレヨンで描いていいのは紙の上だけですよ、壁や廊下に描いてはいけません」 「だめーー!!! たべちゃうぞ!!!」 なんども足にしがみ付いてくる。 どうやらお説教を聞く気はまったく無いらしい。 「お嬢様、ですからクレヨンは、……」 「だーめー!!!」 体重をかけてのタックル、不意をつかれてバランスを崩した咲夜は、そのまま前方に倒れてしまう。 目の前には水がたっぷりと入ったバケツが有った……。 バッシャーン 「……」 「うっう~♪」 全身水だらけで、頭にバケツの帽子をかぶる咲夜。 そして、その姿が面白いのか、楽しそうに笑うレミリア。 「っ」 服が濡れた事など気にせず、どこかに走り去ってしまう咲夜。 「う~♪ う~。がぁお~、た~べちゃうぞ~!!」 残されたレミリアは、自分の描いた落書きを守れて嬉しいのか、たどたどしいながらも、一人で踊り始めた。 「うっ、う~♪ うあうあ」 「う~、あうあう♪ う~う~」 「あうあう♪ う~♪ う~♪」 本人的に、その踊りが一段と盛り上がってきたの時、突然、轟音とともに扉が砕け散った。 勢いで尻餅をつくレミリア。 「ごきげんよう。お・ね・え・さ・ま! ……どうしたの、びっくりした顔しちゃって?」 唖然とレミリアの顔に微笑を向けながら、彼女の妹、フランドール・スカーレットが尋ねる。 「う~? がぁお~! た~べちゃ! う~!?」 他の従者と同じように、驚かそうと両手をあげたレミリア。 だが、気が付いた時には襟元を掴まれ、空中に浮かび上がっていた。 今の状態になってから、レミリアは、せいぜい2m程度しか飛べなくなっていた。 それも、二秒ほどで力尽きる。 「まさか、半年も屋敷内にさえ出られないと思ってたら、お姉様がこんな事になっているなんて思わなかったわ。でも、ダメじゃないお姉様、こんなに悪戯したら」 フランが余っている左手でレミリアの頬を軽く叩く。 その瞳は、どこか狂気じみていた。 一方、何が起こったのか、分からなかったレミリアだが、一呼吸の間を置いてようやく泣き始めた。 「う~、う~」 殆ど痛みは無かったが、今までは、泣けば咲夜が助けに来てくれた。 ためか、涙は流していても、どうにもワザとらしい、大げさな泣き方だ。 「お嬢様、どうかなさいましたか」 「ぶ~!ぶ~」 予想通りに来た咲夜を見て、フランドールを指差すレミリア。 既に涙は止まっていた。 口を窄めて、フランを非難するような顔を、咲夜に向けている。 「咲夜? お姉さまが悪戯してたからしかっただけだよ。……コレ、うるさいから部屋に連れてって頂戴」 「畏まりました」 「さぁ、お部屋にお連れいたします。レミリア様」 咲夜に抱きかかえられたレミリアは、しきりに声を上げてフランを指差すが、その訴えは聞き届けられずに部屋まで連れて行かれた。 「では、私はお嬢様の所に戻りますので、着替えは自分でなさって下さい」 お休みなさいませ、といいながら扉に鍵を閉める。 彼女のベッドに彼女のタンス、彼女の部屋のもの全てが有る。 無いものは壁だった。 時間を止めたのであろう咲夜は、短時間でレミリアの部屋とフランドールの部屋を入れ替えてしまったようだ。 こんな重労働を意とも簡単にこなすあたり、さすがは紅魔館のメイド長という所だろうか。 もっとも、今回ばかりは彼女でも根を上げた。 というよりもレミリアが変わった日から、彼女は殆ど惰性で世話をし続けていただけである。 それも、先ほどの出来事で終わりを告げた、それだけの事だ。 さて、部屋に取り残されたレミリア。 以前でさえ、自分で着替えなど殆どしたことが無いのだ。 まして、今の状態では、当然着替えは無理だろう。 「うー! ぇぐ。 うー!」 やはり、着替えるどころか、泣きながらドアを叩きまくるレミリア。 その顔は先ほどまでの余裕のある泣き顔ではなく、まさに必死の形相だった。 どの位そうしていたのだろうか。そのまま、レミリアは泣きつかれて眠ってしまった。 舞台を、元レミリアの部屋に移す。 「ここが私の新しい部屋ね。……でも、本当に良かったの咲夜? 私はまだ感情が上手くコントロールできないかもしれないし、世間の事も余り知らないのに……」 「いいえそれは違います、フランドールお嬢様。今、レミリアさまのままでは、紅魔館全体が危機に瀕する事は明確でした。それに、最近のお嬢様は以前とは比べても、随分と落ち着いていらっしゃいます。その証拠に、メイドの間では、今は自ら進んでお食事を運びたいと言うものも多いんですよ。もし、暴れたら私とパチュリーさまが止めればいいだけですから」 「……そっか。うん、ありがとう咲夜。そしてこれからもよろしくね」 そして、紅魔館は劇的に変わった。 主が変わっただけであるが。 それでも、それは、紅魔館の雰囲気を変えるのには十分だった。 今の紅魔館は、以前よりも穏やかだった。 フランは、主となってからは、従者に無理難題を吹っかけるような事はしなかった。 最近は、勉強がてら、図書館でよく小悪魔と楽しく話している。 周りから見れば歳の離れた姉妹のようだ。 地下での、監禁生活が長かったフランだ、自然と本を読む事が多かったのだろう。 来てはお茶を飲むばかりのレミリアと違って、図書館というものをよく利用している。 おかげで図書館の予算も随分増えたらしい。 一方のレミリアは、主の座から外れたばかりか、今や紅魔館での地位も最底辺に位置し、今話題に出る時の呼ばれ方といえば、『ゆっくり』か『れみりゃ』のどちらかだった。 初めは、紅魔館の恥だから監禁しろ、という激しい意見もあったが、パチュリーと小悪魔が自分達がきちんと面倒をみると名乗り出てそれは回避された。 何よりも、フラン自身がその辛さを判っていたためだ。 地下に移ってから二日後、二人が初めてゆっくりれみりの部屋を訪れた時のことだ。 さんざん暴れたのか、モノが散乱する部屋のベッドで、れみりゃはきぐるみを着たまま泣いていた。 汗を吸って、着心地が悪くなった服とシャツを乱雑に脱ぎ捨て、ドロワーズだけでも蒸れるきぐるみを着ていた。 ほぼ、裸に直接気ぐるみを着ていたため、肌は擦り剥いた様に赤く傷つき、所々汗疹が出来ていた。 こういう事になれていないパチュリーは、荒れたままだと衛生的ではないと思い、まずは暖かいお風呂に入れてやった。 「うぎゃー! いだいー!! でるー! だじでー」 絶叫しながら風呂から出ようとするれみりゃを、魔法で拘束してじっくりと湯に浸からせる。 「い゛だい゛ー!!! い゛だい゛よ゛ーざぐや゛ー!! だずげて゛ざく゛や゛ー!!!」 一人でいたのが余程寂しかった様で、しきりに(皆と)居たいと叫んでいるれみりゃに、パチェリーは涙を浮かべる。 近くで石鹸などを準備していた小悪魔は、パチェリーの行動におかしなところがあるのか、はたまたその勘違いに気付いているのか、ニコニコと微笑んでいた。 いったん浴槽から出して、小悪魔がゴッシゴッシと力をいっぱいに込めてれみりゃを洗い、またお湯に浸からせる。 今度は、湯冷めしないように暖かくしてたっぷり浸からせた。 れみりゃは、嗚咽混じりになってなお、絶叫し続けていた。 「これは、肌を清潔にしていないと聞かないの。だからさっきはちょっとだけ痛くしちゃったの」 ごめんね。 とうそか本当か知らない理由をれみりゃに聞かせ、回復魔法をかける。 ちなみに、れみりゃは肌が回復すると、あっさり信じた。 服を着せ、食事を与えた。 もちろん食事はお菓子の類だが。 着たがっていたので代えのきぐるみを着せ、外はまだ日が照っているので図書館に連れてきた。 「はい、お菓子ですよー。それじゃあ、今からこのご本を読みますね」 れみりゃの世話をする小悪魔。 こういうことが苦手なパチュリーには、汚れた服を洗濯室に持っていって貰っている 図書館に入ると、すぐ本に興味心身で悪戯しようとしていたが、すかさず出されたお菓子と絵本で、すっかりその気もなくした様であった。 「あっ、お帰りなさい。パチュリーさm」 小悪魔が持っていた絵本が床に落ちる。 れみりゃは自分で拾い上げて、絵だけを追っていた。 「パチュリーさま、それ……」 「……気にしないで、ちょっとふらふらしてメイドとぶつかっただけよ」 「だって……」 「大丈夫だから」 ちょっと着替えてくるわ、レミィをお願いね。 と言い残して自分の部屋の方へ消えていった、後には、どう考えてもカップ一杯の紅茶をかぶったとは思えないほど、濡れている床が残っていた。 「う~!!! 読みおわった~!!!」 笑顔で小悪魔に話しかけるれみりゃ。 「……ぁ、はい。ぇと、それじゃあ、こっちの絵本はどうですか?」 ちょうど、休憩にでてきたアリスとかち合ったらしく、なにやら騒ぐ声が聞こえる、暫くすると、着替えを手伝うといって部屋に入っていった。 小悪魔に、心当たりが無いわけではない。 元々、レミリアの無理難題にメイド達は困っていた、だからこそ監禁しろ等という意見が大っぴらに出てきたのだ。 それが叶わなかった事が、特に反抗心の強いメイド達には気に入らなかったのだろう。 せっかく監禁されると思っていたれみりゃがまだ館内を自由に歩いているのだから。 先ほど、地下から図書館に来る際にもそうだった。 「がぁお~♪た~べちゃうぞ~♪」 以前の調子に戻って、メイドたちに悪戯をしていた。 フランに叩かれたことに懲りていないのか、、メイドにだったら良いとまだ思っているのか。 その中でも、タックルの拍子に運んでいた紅茶をこぼしてしまったメイドがいた。 その、反抗心が強いメイドが、休憩がてら仲間と愚痴ろうと思って運んでいた紅茶だった。 パチェリーと小悪魔は直ぐに謝ったが、れみりゃは笑ったままだった。 すぐに、騒ぎを聞きつけたフランに叩かれて、泣きながら謝った。 ついでに、今は紅魔館で一番下の身分にいることも教えてみたが、どうやらそれはいまいち理解できなかったようだ。 小悪魔に用意させた紅茶を、受け取って仲間のもとへ急いだ彼女は、直ぐに仲間と相談した。 そこで出された結論は、 あの二人さえ諦めれば監禁されるのではないか? 二人が辛い目にあえば見かねたフランドール様が監禁してくれるのではないか? というものだった。 それが先ほどのパチュリーである。 ちなみに、ぶつかったのではなく、上からかけられたが正解である。 いくら力の有る魔女でも、魔力のまったく出ない方法では、避けることはできないらしい。 次の日の標的は、小悪魔だった。 図書館の給湯室に有る茶葉が無くなったので、厨房に貰いに行った帰り、中から不審な音がする缶を開けてみたら、大量のコックローチが入っていた。 思わず缶を落としてしまった拍子に、それが床にわらわらと這い出てきた。 「害虫は退治しないとね」 たまたま居合わせたメイドが、そう言いながら、小悪魔もろとも消毒液をかけてきた。 「小悪魔さん、害虫のお掃除はお願いしますね」 びしょびしょになりながら呆然とする小悪魔に向かって、そう言うと笑いながら行ってしまった。 大量のコックローチの死骸を、事務的に片付ける小悪魔の顔は、泣いてはいなかった。 それはもう、楽しそうに笑っていた。 日に日に、二人へのイジメは激しさを増していった。 食事の中に大量の虫が入っていたり、服が絵の具でべったりになっていたりもした。 それでも、二人は甲斐甲斐しく、れみりゃの世話を続けた。 「レミィは友達だもの、だから、あたしが面倒をみるわ。それと、フランや咲夜にも知らせないでいいわ、余計な心配をかけさせたくないから」 メイド達が心配になって声をかけても、そう言って世話を止めようとはしなかった。 しかし、それから数ヵ月後。 ちょうどアリスが来て一年ほどたったある日、とうとう二人に対してのイジメのことがフランの耳に入った。 直ぐに、フランはイジメの主犯格のメイドを捕まえこの場で消滅させようとした。 しかし、泣きながらパチュリーに止められた。 「……もう、レミィの記憶は無いのかも知れない、私の事も覚えていないのかもしれない。でも、それでもレミィの事は放っておけないの。」 小悪魔の胸に顔を埋めて泣きじゃくるパチェリー。 「……ねぇ、パチェリー。お姉さま……、ううん、これがゆっくりれみりゃと同じ様な生き物なら、自然に帰してあげない。勿論、すぐ適応するのは無理だろうけど、最初のうちは食事を持っていっても良いし、森にはゆっくり達も大勢いるし、……ふっ、服が汚れたらもって言っても……」 重苦しい空気の中、フランが口を開く。 次第に涙で、その声が擦れていく。 「だって、パチェリーや小悪魔がこんな事になってるなんて。お姉さまが私を閉じ込めてた時も、気が触れているって言われてた時も、二人は優しく接してくれたのに、何で……」 再び訪れた無言の時。 そのまま時間が、とまった様に過ぎていく。 「……そうね、フラン。私も、吸血鬼としてのレミィとしか考えて無かったわ。思えば、ゆっくりになったのなら、それに合った生活をさせてあげるべきよね」 「じゃ、じゃあ」 「ただし、最初は本当に仲が合うかどうか、確かめてからにして。レミィが一人ぼっちになるのは見ていて辛いから……」 「う、うん。わかったパチェリー。咲夜、何か良い方法はない?」 「それでしたら、以前訪ねたゆっくり加工場で、ゆっくりペットの預かりサービスを始めたそうです。そこへ数日預けてみてはどうですか?」 主の問いに直ぐに答える、まさに完璧な従者である。 「さすが、咲夜ね。……でパチェリー達もこれで同かしら?」 「ええ、判ったわ。レミィは私達が連れて行くから。それでいいかしら? 」 誰も異論はなかった。 今、紅魔館でれみりゃが一番懐いているのはこの二人だ。他の者にも人懐っこくじゃれつくが、いざ一緒に行くとなると言うことはきかないだろう。 「じゃあ明日、連れて行ってみるわ。そのついでにアリスの家の様子も見てくるから。彼女、人形の修理大体終わったから。それと……」 彼女達に、厳しい罰は与えないで、と言い残して扉の奥に消えていった二人。明日の準備をするのだろう。 「……さてと、ああ言ってたしね。とりあえず、あなた達は全員クビよ、それ以外の懲罰はしない。少ないけど退職金も払ってあげる」 咲夜、後はよろしく。と言い残して部屋を去るフラン。 この数ヶ月で随分と主らしくなってきたようだ。 翌日はどんよりとした曇り空だった。 どうやら近いうちに嵐が来るようだ。 お気に入りのきぐるみを、背負っているリュックに入れたおかげで、よたよたしているれみりゃ。 その手を引いたパチェリーは、一応日傘をもった、小悪魔にそんな事を呟きながら屋敷を出た。 やはり、以前は天敵だった日光の中でも平気なれみりゃは、もう吸血鬼ではないのだろう。 ゆっくりれみりゃ種も、日光には耐性が合った。 しかし、長時間当たると酷い日焼けが起こる、とも聞く。 外に出たれみりゃは、辺りを駆け回ろうとしたが、直ぐにパチェリーに手を引かれ戻された。 れみりゃを小悪魔に抱えさせて空を飛んでいく。 当の本人は、空を飛んでいるのが嬉しいようで、ずいぶんご機嫌だった。 加工場に着くと、連絡してあった通りすぐに職員の年配の男に会えた。 「こちらの空き部屋を準備いたしました。片側に檻が四つ、利用は二つとの事でしたが生憎二つの部屋は今、繁殖に使って空きがないんですよ」 「それなら仕方がないですね、パチュリーさま」 抱きかかえていたれみりゃを、檻の中にを入れながらパチュリーに訪ねる小悪魔。 ついでに、一人で取れないようだったリュックも外してやる。 れみりゃは始めてみる場所に興奮していた。 中でも、二メートル程の高さにあるはめ込み式の採光窓に興味深々のようだ。 少しくらいなら飛べる彼女は、外枠まで飛んでそこを手で掴んで外を見ていた。 「そうね」 ガチャン。遅れてきた別の職員がと鍵をかける音にかぶって聞こえるパチュリーの声。 音に気が着いて首を捻る。 何の音なのか分からない、れみりゃだったが、さらに一人、知らない人がいるのを見つけると、床に戻ってリュックを開け始めた。 中から出した気ぐるみを、四苦八苦しながらなんとか着て。 「ぎゃお~、た~べちゃうぞ~!!!」 お決まりの文句を、叫ぶれみりゃ。 「でも、ここでいいんですか? わが社の系列のペットホテルなら、村をはさんで反対側に有りますが」 「いいえ、ここで大丈夫です。それより以前の契約のことでお話が……」 「あぁ、それでしたらこちらの部屋で」 何の反応も示さない職員とパチェリー達。 れみりゃを残し、部屋を去ろうとしている。 「う~♪ ぅう? う~?」 後を着いて行こうと、檻を開けようとしたが開かない。 既にパチュリー達は、出口にまでさしかかっていた。 「うー。 まっで~!まっで~!!!」 必死に泣き叫んだのが効いたのか、小悪魔が小走りでこちらに向かってくる。 「ごめんなさい、レミリア様。すっかり忘れてました」 てへっ、と小悪魔っぽく笑う。 つられて、れみりゃも涙顔で笑う。 「ぶ~。わすれると、た~べちゃうぞ~!!!」 そう言って、抱っこをねだる様に両手を差し出す。 「はい。どーぞ」 笑顔の小悪魔から渡されたのは、大きなペロペロキャンディー。 お菓子を渡されみりゃは、嬉しそうに両手で掴んで舐め始める。 「う~♪ キャンデ~おいちぃ」 「それじゃあレミリア様、また後日お会いしましょう」 手を振って、小走りで駆けて行く小悪魔、他の人は既に部屋からでていた。 バタン。 小悪魔が部屋から出ると同時に扉が閉められた。 部屋の廊下の電気も消された。 「う~? !!!」 檻を激しく揺らす。 それでも、お菓子が大事なのか。片方の手でお菓子、もう片方の手で檻を揺らす、という格好だ。 もちろん、見た目相応の力しかないれみりゃでは、檻はビクともしない。 そのうち、キャンディーを放り投げ両手で試すが、結果は同じだった。 「うー。も゛どっでぎでー。う゛ー、う゛ー」 激しい泣き声、だがこの工場では、日ごろからよく耳にする声だった。 その頃、アリス宅を訪れたパチェリー達は、寝ている三人を起こさないように魔法をかけ、家の中に入っていった。 予定通り、入るのは自由だが出ることは出来ない、簡単な捕獲魔法をかけた。 その後、眠っている三匹を加工場まで運び、れみりゃがいる部屋の一番奥の檻に入れ、その日は仮眠室で睡眠をとった。 ちなみに、れみりゃは既に泣きつかれて眠っていた。 泣きながら、きぐるみを抱きしめてそのまま眠ったらしい。 まるで、以前までその気ぐるみを着ている人に抱きつくように。 翌日、小悪魔は別な仕事があると言って出かけてしまった。 なので、今朝はパチェリー一人で、仕事に取り掛かった。 ゆっくり魔理沙の友達に、明日から嵐だから皆を誘って、ゆっくり魔理沙達の家の避難したほうがいい、と言って回った。 アリスの家に着き、姿を消して様子を見ると、ゆっくり魔理沙に味方をした様々なゆっくり達が、食べ物や酒や氷、時には薬を持ち寄ってアリスの家に入っていった。 入る前から、何かを食べているようなゆっくりも何匹かいた。 それを暫く眺めた後、その場所を後にしたパチュリーは、紅魔館に戻る前もう一度れみりゃの元を訪れた。 パチェリーを見たれみりゃは、泣き顔を無理やり笑顔にして、帰る帰ると喜んでいた。 いそいで、きぐるみを着始めるみりゃ。 「いい子にしてたら迎えに来るわ、それと食べ物はちゃんと食べること」 それだけ言って、その場を後にした。 きぐるみを着終えて、必死にリュックを背負おうとしていたれみりゃの顔は、また泣き顔になった。 紅魔館に戻り、一緒に紅茶を飲んでいたフランとアリスに、れみりゃを預けてきた事を伝え、ついでに、ゆっくり達も殆どいなくなってた、と伝えると。 「そう、人形も直ったしちょうどいいわ」 今までありがとう、と咲夜に言ってから図書館へ戻った。 蓬莱と、修復された上海人形が付いて行く。 小悪魔が、それじゃあ明後日お別れパーティーをしましょうと提案すると、フランも咲夜も二つ返事で賛成した。 原因には、ここ一年間、パーティーらしいパーティーをしていなかったことも有るだろう。 図書館に戻る際、小悪魔は思い出したように、フランにお金の入った袋を渡した。 お金の料は先日クビにした分全員の退職金と同額。 「最近、蟲に襲われたモノがいるらしいですよ」 と咲夜。 「熱湯を被って、死んだモノもいたわ」 去り際に、パチュリーが呟いた。 所変わって加工場。 「う~~♪」 着ぐるみ正面に付けられた大きなポケットから、紅魔館特製のパイ、丸ごと一個を取り出すれみりゃ。 出かける前、咲夜が渡してくれたパイだ。 「う~、しゃくやのぱ~い」 少しつぶれてはいるが、つぶれていてもおいしそうなパイ。 パチュリーが出て行ってずっと、泣いていてから、お腹が減ったれみりゃ。 まわりに、散らばっているお菓子はここで与えられた食事だが、どれも一口食べて投げ捨ててしまった。 つまり、昨日から殆ど何も食べてない。 自分の顔ほどもある大きなパイを両手で持って一かじりしようとした時。 「おや、お嬢ちゃんおいしそうなの食べているね」 朝食にキャンディーを持ってきた若い男だった。 「う~う~!!!」 手を後ろに回し、パイを隠す。 「大丈夫、とらないよ。そんなに美味しいのかいそれ?」 「う~♪ う~♪ しゃくやのぱい、おいし~」 勢いよく首を縦に振る、首を倒すたびに、ぶかぶかのきぐるみにの頭部が顔まですっぽりかぶさるのも気にしないで。 「そうかい。……その前、ちょっと一緒においで。預けられた時に、他のゆっくりを紹介して欲しいって、頼まれてたの忘れてたよ」 鍵を開けて、きぐるみを脱がせてから抱きかかえる。 「う~。 おでかけおでかけ~」 トイレ以外で、出されるのが初めてなれみりゃは、空腹を一時忘れて、始終はしゃいでいた。 到着した扉の先には、たくさんのゆっくりたちが檻に入っていた。 「お友達?お友達?ゆっくりしていってね!!!」 ここで繁殖したものなのだろう、檻に閉じ込められていても殆ど気にしていない。 「う~?」 「君と同じゆっくりだよ。お前さんもこいつらと同じ仲間だ。」 「う~!ゆっくり、ゆっくり♪」 檻の前まで行って、一緒にゆっくりと叫びながら踊るれみりゃ。 張り切りすぎて何度か顔から転んだが、ゆっくり達に励まされて泣きもせずに踊っていた。 自分と同じ仲間と話せたのが、よほど嬉しかったのだろう。 「そろそろ戻ろうか」 「また、ゆっくりしようね!!!」 「う~♪ ゆっくりするする!!!」 元気よく挨拶して部屋をでる。 自分の檻に着いた時。 きぐるみの上に置いてあったパイを見て、食べる直前に連れて行かれたことを思い出した。 「しゃくやのぱ~い、はやくあけて、あけて」 急かされながら檻を空ける職員。 そして、中に入ってれみりゃを降ろすと、彼女より先にパイをとって帰っていこうとした。 しかし、返して、お腹減ったと、れみりゃが必死にしがみ付いてきたので、イチゴしか食べていないショートケーキを放り込んで。 「ここでは、勝手に自分の物を食べちゃダメだよ」 そう言って、頬を動かし水飲ませて、れみりゃに無理やり食べさせて、帰っていった。 咲夜のパイを取られたれみりゃは、また大声で泣いた。 となりから、ゆっくり、と楽しそうな声が聞こえて、さびしくなって更に泣いた。 しかし、今度はお腹が膨れた事も手伝って、割と早く寝てしまった。 また、きぐるみを抱いて。 翌日は、トイレに連れて行かれる以外何も無かった。 お気に入りのきぐるみを着ても、元気が出なかった。 夕方になって、お腹がすいたので、散らばっている中から、小悪魔からもらった、ペロペロキャンディーを見つけてなめる。 お腹は殆ど膨れなかった気を、紛らわせるように、今日はきぐるみを着て眠った。 翌日、れみりゃより早く起きたパチュリー達は、アリス家の補修を手伝うついでに泊まってくる、と言って、三人で紅魔館を出発した。 「そういえば、フランも言っていたけど、昨日のパーティーで出たお肉、すごく美味しかったわ。小悪魔が、準備して調理したって聞いたんだけど?」 「はい、色々をお世話になったので、美味しく調理して差し上げようと思いまして。特に下ごしらえが大変でした」 ニコリと笑う小悪魔。 よほど、褒められたのが嬉しかったのだろう。パチュリーに対しての悪戯が、成功した時のような満面の笑みを浮かべていた。 アリスの家に行く前に、加工場に立ち寄る。 手筈通り、一旦小悪魔に屋敷に戻らせる。 「う! う~!う~!」 パチュリーを見つけたれみりゃが、必死で声をかける。 しかし、それを素通りして、すぐアリスと見に行ったのは、奥の檻だった。 「そうね」 とだけ口にして、パチュリーと小悪魔は直ぐに別の檻、れみりゃが入っている檻の前に立つ。 「う~♪ う~♪」 迎えに来た、と思ったれみりゃは急いで、きぐるみを着て檻の前に近づく。 リュックを片手で持ち、もう片方の手で勢いよく檻をゆらす。 希望通り、直ぐに鍵が開いた。 勢いよく、パチェリーに抱きついた。 「れみ☆りゃ☆う~♪」 そして、あのふてぶてしい笑顔で喋るれみりゃ。 「だめじゃないレミィ、食べ物をこんなに散らかして。それにこんなに残して」 悪い子ね、と耳元で呟くパチュリー。 ふと、隣を見ると、アリスがゆっくり達の卸し価格を話していた、どうやらかなり高額で取引されたようだ。 「あぅ、あぅ。……れみりゃゆっくりじでだよ! いいごにじでだよ!!!」 また檻に入れられる。 そう思ったのか、目に大量の涙を浮かべながら、必死に説明するれみりゃ。 「大丈夫よ、またここに入れたりはしないわ」 優しく、パチュリーは言う。 れみりゃ、もこれで安堵したようだ。 「まぁ、今まで屋敷で食べていたお菓子に比べたら味は落ちるでしょうけど、これからはこれで我慢しなくちゃいけないのよ。……レミィ」 ぽつりと独り言の様に言うパチェリー、それに反論するアリス、言われた意味が分かっていないれみりゃ、がそこに居た。 一方、紅魔館。 「フランドール様」 「あっ、小悪魔。加工場から戻ってきたの?」 「はい」 「それで、あのゆっくりれみりゃはどうだった?」 「はい♪ 他のゆっくりたちと仲良く遊んでおりました。ですので、寂しくて辛いですが、森に放す事にしました♪」 今回の一番の張本人がそこにいた。 please wait next story
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ゆっくりれみりゃがいつもの様に寝床に着こうとすると、急に声が聞こえてきた。 「れみりゃ…あなたは少し馬鹿キャラが身に付きすぎている…可哀想だから人と同じくらい賢くしてあげよう」 「うー?」 「何、気にすることはない、私はただの頭の良い少女臭さ」 そう言うと納豆臭い声は消え去った。 次の日、れみりゃは目覚めてみると、なんだか違った感覚に襲われた。 この後れみりゃは他のゆっくりを狩りにいくのだが、 いつものようにただふらふら飛び回り、見つけた先からガツガツ喰らうのではなく、 ゆっくりの後を言葉通りゆっくり付けることで、さらに多くのゆっくりにありつけることを思いついた。 さっそくれみりゃは実行し、下をぽてぽてと跳ねているゆっくりを羽音をなるべく出さないようにつけていった。 そしてしばらくすると、そのゆっくりの寝床に辿り着いた。 そのゆっくりはお母さんゆっくりだったようだ。 「ゆゆゆ!おかあさん!おなかすいたよ!!!」 「ゆ!ゆっくりたべていってね!!!」 お母さんゆっくりは(口に入れて)持ってきた小さな果実やら雑草やら昆虫を床にぶちまける。 子ゆっくりはそれを一目散に食べていく。 お母さんゆっくりはそんな子供たちを見て幸せそう。 後をつけて来たれみりゃは、そんな光景を見てなぜか食欲が消え失せた。 もうここにいてもしょうがない。 そう判断したれみりゃはどこかへと飛び去った。 れみりゃは空腹に耐えながら空を飛んで獲物を探していた。 れみりゃは何故さっきの大量の飯をみすみす見逃したのか理解できなかった。 しばらく飛んでいると、また下にゆっくりがいる。 さっきみたいになるのは嫌だから、ここで食べてしまおう。 そう考えたれみりゃは一目散にそのゆっくりに急降下。 だが待っていたのは硬い土の地面。 横からゆっくりフランが掻っ攫っていったのである。 「うー!うー!」 れみりゃは文句を言うがフランは無視し、どこかへと飛び去った。 無視された悔しさからか、れみりゃはそのフランの後を追った。 しばらく飛んでいると、フランの巣らしきものが見え始めた しばらく木の陰に隠れ、フランが飛び去った後覗いてみると、 そこはなんともまぁ、悪趣味なオブジェが飾られていた。 「ゆ゙ぅ゙ぅ…」 「い゙だい゙よ゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙」 「ゆっくり…した…い…」 「ぅ゙……」 そこには無残にも木の枝に串刺しにされたゆっくり達の姿。 もう意識がないゆっくりもちらほらいる。 いわゆる、もずのはやにえという奴。いや、フランのはやにえか。 普通だったられみりゃはそれに飛びついて空腹を満たしていたことだろう。 しかしれみりゃは感情の奥底でふつふつと湧き上がるものに逆らうことはできなかった。 れみりゃはゆっくり達を串刺しにしている木の枝を体当たりで折り始める。 「ゆ゙!?」 あまりにゆっくりとしては非常識な行動に驚くゆっくり達。 意識のないゆっくりも、下に落ちた衝撃で目を覚ました。 全員のゆっくりを助け出すのにそう時間はかからなかった。 「こうもりさん、ありがとう!!!」 れみりゃは蝙蝠ではないのだがそんなことは気にしなかった。 串刺しにされていたゆっくりはそれぞれ思い思いの方向へと散っていった。 この瞬間、確かにれみりゃはヒーローだった。 れみりゃは謎の幸福感で満たされていた。 そうか…これを感じるために私は生まれてきたんだ…そう思った。 腹は減っているが、幸福感とは比べ物にならない。 さて、巣に戻ろうとした瞬間、れみりゃは下に叩き落された。 そりて赤い光がれみりゃ向かってまっ逆さまに… 教訓。 ゆっくりに人と同程度の知能を与えても無意味。むしろ損をするだけである。 ゆっくりはゆっくり。人は人なのだから、無理に同じにしない方がいいのである。まる。 BAD END by GIOGIO
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ゆっくりれみりゃのおかしな友達 上 「がおー! たーべちゃーうぞー!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛っぐりじでっでねぇぇぇ!!!」 胴付きゆっくりみれりゃの前で、ゆっくりれいむが悲鳴を上げている。 目をカッと見開いて口をあけ、わなわな震えておびえている。 ここは魔法の森の一角。紅魔館から飛んできたれみりゃの一匹が、一人で楽しく遊んでいるゆっくりれいむを見つけて、今まさにごちそうになろうとしているところ。 よくある光景ではあった。 「がおがお、がおー♪」 「ゆゆゆっ、ゆぐっ、ゆぐぅ! ゆっぐりぎでねぇぇ!」 遊び半分におどかすと、ゆっくりれいむは死に物狂いで逃げ出す。がさがさと茂みを突っ切り、ぽよんぽよんと石を乗り越え、みっともなくごろごろと転がって逃げる。赤いリボンが外れかかって、ぶらぶらと後ろにたれている。 それがれみりゃには、とてもおもしろい。 翼のあるれみりゃは、れいむよりずっと速く移動できる。れいむの苦労などまるでわからない。 ――にげるにげる、あかいの、にげるー。 ――あはは、ごろごろー。 ――ぽよぽよ、おいしそー♪ 紅魔館のまわりには天敵もいないので、れみりゃは追われるものの恐怖も知らなかった。無力なものを追い回す楽しみだけを味わっていた。 しばらく飛び続けていると、だんだん疲れが溜まってきた。れみりゃは軽い気持ちで決める。 ――もういいや、たべちゃおー♪ さっと降下して、れいむに襲い掛かろうとした、そのとき。 「ガウワウッ、バウッ!」 「いだあああ゛あ゛あ゛あ!?」 木陰から、突然黒いものが飛び出し、れみりゃに襲い掛かった。 「ゆっ、ゆゆ゛っ!?」 突然背後で起こった騒ぎに驚いて、ゆっくりれいむは行き足を止めた。 振り返ると、毛むくじゃらの生き物が、今まで追いかけていた空飛ぶこわいゆっくりに噛み付き、地面に押し付けていた。 野犬だ。魔法の森にも、数は少ないが普通の動物はいる。そのうちの一頭だった。 ただ、野犬にしてはいくらか体が小さい。大人になる前の、子供の犬らしかった。 「ガウ、アグウウウ……!」 「いっ、いだああああ! やめで、たずげでざくやあぁぁぁ!」 れみりゃはバタバタと羽をもがき、身をよじって泣き叫ぶ。だが野犬はれみりゃの腕に噛み付き、ギリギリと締め上げている。漏れ出る肉汁に食欲をそそられているらしい。尻尾を大きく振っていた。 それを見て、ゆっくりれいむは歓声を上げる。 「ゆゆっ! ゆっくりしにそう? ゆっくりしんでね! ゆっくりくるしんでね!」 ざまあみろと言わんばかりにぴょんぴょんと跳ねた。自分を食べようとしていたれみりゃが、もっと強いやつに食べられかけている。いい気味だった。 若い野犬は、れみりゃのもがきに、遊び心を刺激されたらしかった。いったん口を離して、れみりゃをくわえなおそうとする。その一瞬に、れみりゃは体をもぞつかせて逃げ出した。羽をばたつかせ、ふらふらと飛んでいく。 「がえる、おうぢがえるぅぅ!」 だが方向が悪かった。そちらには高さ三メートルほどの崖がそびえていた。泣きながら飛んでいたれみりゃは、その崖にごちんと頭をぶつけ、ころりと地面に落ちた。 そこへ走ってきた野犬が再びうれしそうにかみつき、びたんびたんと地面に叩きつけ始めた。 れみりゃの絶叫が響く。 「いぎゃぁぁ! いやっ、ざぐやっ、ざぐやぁぁぁ! いだいいだい、いだやぁあぁ!」 「ゆゆゆっ、ゆっくりいたがってる! ゆっくりしぬのねー!!!」 ゆっくりれいむは、何度も飛び跳ね、振って湧いたこのスペクタクルを見物した。 れみりゃの苦しみは、なかなか終わらなかった。若い野犬はよほど気に入ったのか、いつまでたってもとどめを刺そうとしなかったのだ。噛んでは投げ、飛ばしては捕まえ、弾き飛ばしては追いかける。 れみりゃはぼろぼろになり、肉汁をまき散らし、土ぼこりにまみれて、見る影もない姿になった。 「や゛あ゛あ゛……ざぐやぁ……なんでぎでぐれないのぉ゛……」 泣き声だけは続いている。半端に生命力が高いため、死に切れないのがれみりゃの不幸だった。 それを見つめるれいむは、いつの間にか、騒ぐのをやめていた。 「ゆっくり……ゆっくりすぎるよね……」 ゆっくりれいむはたいして頭がよくないし、我がままで自分勝手なところもある。 だが、苦しむ者を見ていつまでも嬉しがっていられるような、残虐さは持ち合わせていなかった。 むしろ、頭がよくないため、少し前のことよりも目の前の出来事が重要に思えてきた。 れみりゃが可哀そうになってきたのだ。 「ゆゆ……ゆっくり、したいよね……?」 れいむは周りをきょときょとと見回して、あることに気づいた。 崖の上に、何かが見えることに。 「ゆ、ゆっくり行くよ……!!!」 もぞもぞぴょんぴょんとゆっくりれいむは動き出した。 れみりゃは絶望していた。 体中を噛まれ、振り回され、元気のもとである肉まん汁をじゅうじゅうと吸われて、すっかり弱ってしまった。どんなに呼んでも咲夜はこなかった。 ――さくやのいじわる…… ――れみーがよんでもこないなんて、さくやなんかもうきらい。 ――さくやがこないから、れみー、もうしんじゃうから……。 「おぎゃっ!!」 薄れ行く意識ごとすさまじい力で引きずられ、崖にべしゃりと叩きつけられた。ハァハァと犬の臭い息がかかった。 ――そういえば、あのあかいの、どうしたかな。 ――あかいの、たべたかったなぁ……。 最後に、脳裏にゆっくりれいむの姿が浮かんだとき。 ゴツンと硬い音がするとともに、拘束が解けた。 「キャアンキャウン!」 れみりゃが目を開けると、野犬を尻尾を巻いて逃げていった。 かたわらに、一抱えもある石が落ちていた。それが野犬の頭に当たったらしい。 「う、ううー?」 れみりゃは目をぱちくりさせた。れみりゃの知能は、ゆっくりれいむよりも低い。れいむを六歳児とするなら、れみりゃは三歳か、いいところ四歳児ぐらいの知恵しかないのだ。 れみりゃにわかったのは、臭くて怖いあの生き物を、誰かがやっつけてくれた、ということだけだった。 そんなことをしてくれるのは、一人しかいないはずだ。 「さくや!? さーくーやー!」 れみりゃは顔を輝かせてあたりをみまわした。しかし、期待に反して、銀髪のメイドの姿はなかった。 「……さくやー?」 きょとんして顔を上げたとき、ちらりと赤いものが目に入った。それは、崖の上にいた。 ――けれども、一瞬で見えなくなった。 「……うー?」 咲夜がいなくて、赤いのがいる。 どういうことなんだろう? しばらく首をかしげていたれみりゃは、ふと、野犬に乗っている石に目を留めた。 石の割れ目に、赤いリボンが引っかかっていた。 † それからしばらくたったある日、れみりゃはまた魔法の森で、好物のゆっくりれいむを探していた。 ――おいしーあかいの、ほしいなー。 ――げんきなしろくろでもいーなー。 木漏れ日を縫って軽やかに飛翔していく――つもりでいるのは、本人だけ。 実際のところは、巣を出たての雛鳥よりも下手くそなはばたきで、ぱとぱとぱと、と進んでいる。それより遅いのは、獲物のゆっくりぐらいしかいない。 「たーべちゃうぞー♪ ……んうー?」 そんな彼女の目に、ある光景が映った。 仲間のれみりゃが、木の根元にしゃがみこんでウロを覗いているのだ。その中からは、引きつった叫び声が漏れていた。 「ゆゆゆゆっぐりあっぢへいっでねぇぇ!」 ――ごぁんだー♪ ゆっくりと言えば、れみりゃにとってはご飯でしかない。 少なくともこのときまではそうだった。 ぱとぱととー、と降下していって、仲間の隣に降りた。そこで、ぐいっと押しのけて中を覗き込んだ。 やはり、いた。紅白のゆっくりれいむが奥に隠れるようにして、目だけでこちらを振り向いている。 それを見たとき、れみりゃには何かが気になった。 ――うー? 普通のゆっくりれいむとは、違うような気がしたのだ。 しかし深く考えるまもなく、横からどんと押された。 「これ、れみーの!」 仲間のれみりゃだった。ぷんとほっぺたを膨らませてにらんでいる。 反射的にれみりゃも相手をどんと突き飛ばした。 「ちがうの、れみーのー!」 「だーめー、れみーの!」 「いっだあ、れみーのったられみーの!」 「もおおお、れみーのだってばぁ!」 「れみーのなの、あっぢいげー!」 どん、どん、と突き飛ばしあう。最終的にれみりゃは、そばに落ちていた木の枝を取って、ばちばちばちーっと闇雲に相手を叩いた。相手はうわ゛ぁん! と盛大に泣き出し、飛び上がってぱとぱとと逃げていった。 「ざぐやにいいづけでやるー!」 残ったれみりゃは、ふん、と胸を張って勝ち誇る。人や動物との争いならともかく、このようなれみりゃ同士の喧嘩では、咲夜は介入してこない。うんざりした顔で、なかよくしなさいね、と言うだけだ。だから怖くない。 ――やっつけたー♪ 勝利した嬉しさに満面の笑みを浮かべて、あらためて木のうろを覗き込んだ。 「うふふふ、たーべちゃーう――」 「ゆゆっ? あのときのひと!? たすけてくれたの?」 予想もしなかった言葉をかけられて、顔に笑みを貼り付けたまま、れみりゃは凍りついた。赤いゆっくりがもぞもぞと出てきて、ぴょんと小さく跳ねた。 「れいむ、あぶないところだったよ! ありがとう!!!」 「……う、うー?」 れみりゃは心底戸惑った。獲物のゆっくりに泣き喚かれたり、逃げられたりしたことはあっても、向こうから寄って来られた事は初めてだった。 「うー……?」 しばらくの間、どうしたらいいか首をひねって考えた。 「……うー」 答えは明らかだった。れみりゃの頭に、高等な知能は入っていない。 寄ってこようが逃げようが、することはひとつだ。 改めて向き直って、両手を挙げ、お得意のポーズを決めた。 そして言おうとした。「たーべちゃ……」 「ゆっ、なおってる! ゆっくりなおってるね!」 あごの下を覗き込んだゆっくりれいむが、にっこりと笑った。 そして舌でぺろっとあごの下を舐めた。 「……うううー??」 れみりゃはさらに戸惑った。自分のぷにっとした顔の下のそこは、傷跡だった。そこに牙を突き立てられ、危うく首をもぎ取られかけたときの記憶が、肉まんの底からじわじわと湧き上がってきた。 いくら三歳児並のれみりゃといえども、人生で最も死に近づいたあの出来事の恐ろしさは、忘れられるわけがなかった。強烈な記憶がフラッシュバックして、幼い彼女を襲った。 「ううう……うああぁぁぁん!!! あああ、ああ゛あ゛あ゛ん、ごあ゛い゛よー!」 見る間に涙をあふれさせて、ぺたんと地面に座り込み、大声で泣き出した。 「ゆ、ゆゆゆっ?」 今度はゆっくりれいむのほうが戸惑って、もぞもぞとれみりゃの周りを回りだした。 「どうしたの? なんにもこわくないよ! ゆっくりしていいよ!!!」 「あ゛あ゛ああ゛あ゛ああん、あ゛んあ゛ん、ざぐやあぁあああ!」 「な、なかないでね! ゆっくりなきやんでね?」 声をかけたが泣き止む様子もなかった。そこで、懸命にやわらかいほっぺたを押し付けて、腕や背中をふにふにとさすってやった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛ん、ああああん、ああああん……」 全力で泣いていたれみりゃは、次第に声を収めていった。咲夜はこなかったが、代わりに何かふにふにして温かいものが、寄り添ってくれていた。 「ゆっゆっ、ゆっくりおちついてきた?」 「う、うー?」 ぺたんと足を投げ出しているれみりゃの脇の下に、後ろからもぞもぞと入ってきたゆっくりれいむが、ひざの上にぼふんとあごを乗せて、見上げた。 「れいむがついてるから、こわくないよ!」 「れ……れーむ?」 「れいむだよ! あなたはだあれ?」 「……れみー」 「れみーもいっしょにゆっくりしようよ!!!」 「ゆっくぅー?」 「ゆっくりだよ!!! こうやってー……」 ゆっくりれいむはもそもそと近くの切り株に昇り、その上でうんっと力をためて、ぴょんと飛び上がった。 「ゆっくりー!!!」 「ゆっぐぃー?」 れみりゃが立ち上がって、とてとてと寄ってきた。れいむは教えたことの反応があったので嬉しくなって、もう一度、目を閉じてうーんと力をためてから、思い切り飛び上がって叫んだ。 「ゆっくりぃー♪」 「ゆっぐぃー!」 万歳、のようにれみりゃも手を伸ばして、叫んだ。れいむはすっかり得意になって、れみりゃの手をくわえて切り株の上に引っ張り上げた。 「もう一回、いくよー? せーの……ゆっくりー!!!」 「ゆっぐいー!!!」 二人同時にジャンプしたが、狭い切り株の上だったので、ぶつかり合って後ろへ転げてしまった。 ごろごろろん、と落っこちて重なり合う。 だが、すぐに起き上がって、二人ともけらけらと笑い出した。 「わあー、とってもゆっくりできるよぅ。れみーはゆっくりできる人だったのね!!!」 「ゆぐー、ゆっぐぅー」 れみりゃは不思議な楽しさを感じて、何度も万歳を繰り返し、ぴょんぴょんと跳ね回った。その後ろを、ゆっくりれいむも跳ねながら追い掛け回した。 「ゆっくりしていってね!!!」 ところがそのとき、上空から大きな声が聞こえてきた。 「お嬢様、お嬢様ー? どこですか?」 さくや? と思ってれみりゃは見上げるが、すぐに違うと気づく。この声は紅魔館の妖精メイドだ。咲夜のように心から可愛がってくれるのではなく、お義理でいやいや探している感じがありありと出ているので、よくわかる。 それを聞くと、れみりゃのそばにいた赤白のものが飛び上がった。 「ゆっ、だれかきたよ! れいむはにげるね!!!」 そう言って、もそもそと木立の中へ走り出した。 その後姿には、ゆっくりれいむのトレードマークであるはずの赤リボンが、なぜかついていなかった。 それを見たとき、れみりゃはようやく、相手と一度会ったことがあることに気づいた。だからさっき、木のうろの中で目にしたとき、変な気分になったのだ。 れみりゃは、一度見かけたゆっくりを、今までぜんぶ食べてしまっていた。 だから同じゆっくりと二度会ったり、ましてや遊んだりしたことは一度もない。 今のゆっくりれいむは、れみりゃが知らなかった気持ちを教えてくれた。 顔なじみという気持ち、一緒に何かをするという気持ち。 ――れーむ? それは、その名前とともに、れみりゃの心の中に、不思議な温かい思い出となって染み付いた。 「ああ、いたいた。おやつだから早く戻れってメイド長が言ってますよ」 降りてきた妖精メイドに抱かれながら、そのれみりゃはぽてぽてと森に向かって手を振っていた。 †† ぱとぱとと翼をはためかせて、ゆっくりれみりゃは降りていった。 魔法の森の小さな空き地だ。真ん中に切り株がある。そこに立つと、生い茂る草になかば埋もれた、小さな木のうろが見えた。 あれから三日。 ここ数日は紅魔館の周りでおとなしくしていた。しかしその間、どうもおもしろくなかった。咲夜に手製のプリンをもらったし、迷い込んできたゆっくりまりさを食べておなかも膨れたのだけど、何か物足りなかった。 あの変なのびのせいだと思った。一人で何度も、のびをしてみた。 ――ゆっぐぅー。 ――ゆっぐぅー。 でも、ぜんぜん楽しくなかった。何かが足りなかった。 それがここにあるような気がして、今日は空き地にやってきたのだ。 「ううー……」 切り株にぽてっと座って、何かが起こるのを待った。五分ほどたつと木のうろに行ってそこを覗いた。誰もいなかったので、切り株に戻ってまた五分待った。それからまた木のうろを覗いた。 そんなことを、四回繰り返した。 たった五分やそこらで何かが起こるわけがないのだが、幼いれみりゃにそんなことはわからない。すぐかんしゃくを起こすわがままなれみりゃにとって、五分はむしろ、長い。 それを四回も繰り返したのだから、れみりゃは飽きが来てしまった。 ――なんにもこなーい。 ――つまんなーい、おうちかーえろっと。 ぱとと、と飛び上がって旋回した途端。 ウロのある木とは正反対の方角で、木に隠れてじっとしてる赤いものを見つけしまった。 「ううー!」 思わず叫び声を上げて、急降下する。赤いものが、びくっと震えるのが見えた。 れみりゃは、赤い房飾りをつけたゆっくりれいむの前に舞い降りた。れいむはおびえたような顔で、小刻みに震えている。 「うー……?」 「ゆ、ゆ、ゆ……」 つかのま、奇妙な見つめあいが合った。これが他の場所で起こったなら、即座にハンティング開始なはずの組み合わせだ。 ぷるぷる震えていたれいむが、おそるおそる言った。 「ゆ、ゆっくりできる人……?」 れみりゃは、そのれいむの頭にリボンがないことに気づいた。 このひとだ、とつたない記憶がささやいていた。 身を縮めて、力をためた。 「ううーん――」 さっと万歳して、笑ってみた。 「ゆっぐぃー!」 そのとたん、相手の顔がぱっと輝いた。 「れみぃ! れみぃなのね!」 「れーむ!」 「ゆっくりしに来たのね! ゆっくりしようね!」 きらきら輝くような笑顔になったれいむが、ぴょんぴょんとれみりゃの周りを回って、「ゆっくりー!」と頬をこすりつけてきた。 「ゆっぐぃー、れーむとゆっぐぃー!」 れみりゃもにこにこと笑いながら、れいむと押し合った。 とてもうきうきした。これがしたかったんだ、と思った。 その日から、れみりゃとゆっくりれいむの、不思議な関係が始まった。 れみりゃが切り株にやってきて、「ゆっぐぃー!」と踊ってみせる。するとゆっくりれいむが現れて、「ゆっくりしていってね!!!」と挨拶する。 それから二人でいろいろな遊びをした。 鬼ごっこは、れみりゃのほうが圧倒的に得意だった。のてのてと逃げ回るれいむを捕まえるのは朝飯前だった。 れいむが鬼になると、れみりゃはぱとぱと飛んで逃げる。すると、れいむが地上をぴょこぴょこ跳ねて、「ゆっくり跳んでね、ゆっくりおりてきてね!!!」と必死になってついてくる。 地上に降りてしばらく待ち、れいむがはあはあ言いながら走ってきて、いざタッチ! というときにふわっと飛んで逃げた。するとれいむは勢いあまってころころとつんのめった。 そしてほっぺたを膨らませて怒るのだった。 「れみぃはとんでばっかりでずるいよ! ゆっくりあるいてね!」 「とばないでってば! もう、もうー、ゆっぐりじでよお゛お゛お゛!」 半泣きになって叫ぶれいむを見るのは、すごく楽しかった。れみりゃは手をぱちぱち叩いて、きゃっきゃと喜んだ。 しかしれみりゃにしても、とぶのが本当にうまいわけではない。三度に一度は、とっさのところで逃げ損ねて、つま先をがぷっと噛まれてしまった。 「やったよ、れみぃのおにだよ! ゆっくりついてきてね!」 そしてぴょんぴょん逃げ出すれいむを、もう一度追いかけるのだった。 かくれんぼもやった。これはれいむのほうがうまかった。れいむが本気で隠れると、れみりゃにはなかなか見つからなかった。最初にやったときはあまりにも見つからなかったので、れいむが帰ってしまったと思って、れみりゃは泣き出した。 「うあーあーー! れいむ、れ゛ーい゛ーむ゛ーー!」 「ゆゆっ? 泣かないでいいよ、ゆっくり隠れていたよ!」 出てきたれいむが教えてくれた。 「あのね、もーいーかーいってきくんだよ!! もーいーかーい!」 「もーかーい!」 「もーいーかーい!」 「もーかー! もーかーいー!」 れいむは向こうへ行って、木の陰からぴょこりと顔を出して言った。 「まーだだよー!」 「まーだー?」 「もーいーよ、って言ったらくるんだよ!!!」 れみりゃはルールを覚えて、れいむを見つけ出せるようになった。けれども小さくて丸いゆっくりれいむは、木の下にもしげみの中にも隠れられるので、なかなか見つからなかった。 逆に、れいむが鬼になると、れみりゃはすぐ見つかってしまった。れみりゃはどこに隠れても、羽を隠すのを忘れて、ぱとぱとと出しっぱなしにしているので、すごく目立つのだ。 「れみぃ、みーつけた!」 「ううー? れーむ、ずるい!」 「ずるくないよ、ゆっくりとさがしたよ!」 「うぶー、ずるいずるい! ばーか!」 べちん、とれみりゃはれいむを叩いた。れいむのほっぺたがへこむ。「ゆ゛っ」と目を閉じて痛そうな顔をする。 するとれみりゃは、すぐにしまったと思って、叩いたところを小さな手で撫でてやるのだった。 「れーむ、いたくないいたくないよ。ごめんね?」 「うん、いたくないよ! ゆっくりなでてくれてありがとうね!」 れいむがすぐ元気にゆっくりしてくれるので、れみりゃもすぐ嬉しくなった。 「れみぃの手は、あったかくてぷにぷにできもちいいよ!!!」 「れーむー♪」 抱き合ってすりすりと頬ずりをしていると、あったかい気持ちが高まってきて、思わず二人とも叫んでしまうのだった。 「ゆっくりー!!!」 「ゆっぐぃー!!!」 ほかにもいろんなことをした。 きれいな石を広場に隠してお互いに探しっこをしたり。 色のつく草の実をつぶして、顔に模様を書いてあげたり。 草を折って笛にしたり。これはれみりゃが知っている、ただひとつのおもちゃ作りだった。咲夜が教えてくれたのだ。でもれみりゃ自身は、造り方は知っていたがうまく鳴らせなかった。 つたない手つきでそれをつくってれいむに渡してみると、スッスッとしばらく空気を噴いてから、出し抜けにすごい音を立てた。 ぷぴーぃ! 「ゆゆゆ!? なにこれすごい!」 ぷぴー、ぷぴーー、とゆっくりれいむは笛を吹き鳴らした。それがあまりうまかったので、れみりゃは悔しくなって、笛を取り上げて自分も鳴らしてみた。 ぷひぃー……ぷひひぃー…… どうにも気の抜けた音しか出なかった。いらいらしてきて、笛を地面にたたきつけた。 「うぐぅー! つまんなーい!」 「ゆっ、れみぃはちからをいれすぎだよ!」 れいむがそれを拾って吹いた。 ぷぴー! ぷっぷくぷぴっぴー! 「やさしく吹くといいよ! そうっとゆっくり吹くんだよ!」 れいむが差し出した笛を、れみりゃはもう一度くわえた。そして、れーいむがやったみたいに、そうっと吹いてみた。 ぷぴっ んぷぴーぃ…… 「あった!」 「鳴ったねー!」 「あったあった! ゆっぐぃーったー!」 二人で代わりばんこに笛を渡して、何度も何度も笛を吹いた。 れいむとそんな風に遊ぶのが、れみりゃはとても楽しかった。 今までこんなことをしたことはなかった。れみりゃは、ゆっくりと見れば食べてしまうのが普通だった。仲間のれみりゃたちは、食べることと咲夜たちにかまってもらうことしか興味がなかった。 れみりゃは生まれて初めて――ただ一人きりの――友達を見つけたのだ。 そんな思いを表したくて、れみりゃはれいむを抱き上げて、ぱとぱとと飛び上がる。「ゆっ?」と驚いたれいむも、次第に高度が上がるにつれ、喜び始めた。 「たかいたかい! とおくがみえるよ!」 「れみぃ、れーむだいすきー」 「れいむもれみぃがすきだよ! ずっと仲良くしようね!!!」 魔法の森の上を飛んでいく、おかしな組み合わせの二人。 ゆっくりれいむも、あまり友達がいなかったので、新しい友達になったれみりゃのことが大好きだった。 でもひとつだけ、嫌なことがあった。 二人で遊んでいる最中、れみりゃはおなかがすいてぐずり始めるときがある。れいむがちょうちょやバッタをとってきたり、木の実を上げたりしても、ほとんど食べない。 「れみぃ、ごあんがいーのー!」 足元をでしでし蹴って、れみりゃはそう泣き喚く。 「れいむ、ごはん持ってきてあげたよ!」 「いやー! こーれーじゃーなーいーのー!」 そういうとき、れみりゃはいつもきょろきょ辺りを見回してから、れいむに聞くのだ。 「ごあんにいって、いーい?」 「ゆ……ゆっくりいってきてね!」 れいむはそう答えて、飛んでいくれみりゃを見送る。 小一時間ほど待っていると、れみりゃが戻ってきて叫ぶ。 「れーむ、あーそーぼ!」 「ゆっくりあそぼうね!!!」 そう言って、れいむは迎える。 嫌なのはこのときなのだった。 れみりゃの手や口元に、乾いたあんこがこびりついている。クリームの時もある。 満腹のれみりゃは、なにかひどく不安で不吉な雰囲気を身にまとっている。 うすうす、想像はつくのだ。れみりゃは本当は仲間じゃない。見つけたら逃げなきゃいけない、敵だ。自分だって「れみぃ」以外には見つからないよう、いつも注意している。れみぃ以外は、わるいれみりゃなのだ。 ううん。 多分、れみぃも――。 「ね、ねえ、れみぃ。あのね?」 「うー?」 「ごはん、ゆっくり食べないでほしい、な……」 「ごぁんー? ごぁんたべる!」 れみぃは無邪気な笑みを浮かべて、ごぁんごぁんと繰り返す。 その顔には、屈託のかけらもない。 たぶん、自分の友達はこの「れーむ」だけで、それ以外はみんなごはん、と割り切っているのだ。 何の悪意もなく。 それを見ていると、れいむは何も言えなくなってしまうのだった。 そんなある日、ゆっくりれいむとゆっくりれみりゃは、二人で森の上を飛んでいた。 「今日はとってもいいゆっくりポイントを教えてあげるよ!」 「ゆっぐぃー♪」 ぱとぱとと飛行するれみりゃの腕の中から、れいむは地上を見下ろす。 れみりゃに会う以前、別のゆっくりから聞いたそのポイントのことを、今朝になって思い出したのだ。 やがて緑の森の一角に、クジラの背のような灰色のこぶが見えてきた。れいむはむぎむぎと身動きして、れみりゃに教えた。 「れみぃ、あそこだよ! あの灰色のところにゆっくり降りていってね!」 「おりうー!」 そこはこんもりとそびえる、岩山だった。山といってもゆっくりが登れるぐらいのゆるやかな坂があり、てっぺんが平らになっていて、日向ぼっこにちょうどいい。 おまけにゆっくりがちょうど入れるぐらいの割れ目があって、万が一敵が来た時も、ゆっくりと隠れていられるという話だった。 れみりゃとともに、れいむは岩山に降り立った。そこにすでにたくさんのゆっくりが来ていた。紅白のゆっくりれいむと黒白のゆっくりまりさの一家が追いかけっこをし、紫のゆっくりぱちゅりーがうとうとと日向で体温を高め、緑のゆっくりちぇんが転がっている。 そこにれいむは声をかけた。 「みんな、ゆっくりさせてね!」 ふりむいたゆっくりたちが、挨拶しようとした。 「「「「「「ゆっくり……」」」」」」 「うっうー!」 れいむの背後で上機嫌に手を振るれみりゃを見た途端、全員が凍りついた。 「「「「「「……できないよぉぉぉぉ!!!」」」」」」 皆がなだれを打って逃げ出した。走る、飛ぶ、転がる。突き飛ばす。 あっという間に全員が、岩棚の隅にある割れ目の中へ隠れてしまった。 「ゆゆっ、みんなどうしたの!?」 ゆっくりれいむは戸惑って、割れ目の前へ近づく。すると、中から敵意のこもった声が飛んできた。 「その人はゆっくりできない人だよ!」 「ゆっくりつれてかえってね!」 「むきゅー、こわかったよぉ……」 ゆっくりれいむはおろおろと、れみりゃと割れ目を見比べる。 「そんなことないよ、このれみぃはいいゆっくりれみりゃだよ!」 「いいれみりゃだってさ」 「おお、こわいこわい」 「わからない、わからないよー!」 嘲りのこもったくすくす笑いが漏れてくる。ゆっくりれいむはだんだん腹が立ってきた。自分みたいに仲良くすれば、ゆっくりれみりゃだって怖いことをしないのに! 「ねえ、ゆっくりでてきてね?」 れいむはもぞもぞと割れ目に入り、一番手前にいたゆっくりまりさの帽子をくわえて、くいくいと引き出そうとした。 するとまりさは抵抗した。 「ゆっ? いやだよ、出る気はないよ! ここでゆっくりするよ!」 「そんなこと言わないで、ゆっくり外に出ようね!」 二人の様子を見て、ゆっくりたちが集まってきた。ゆっくりれいむを取り囲んで、体当たりする。 「なんでそんなことするの?」 「みんなはお外に出たくないよ!」 「あなたはわるい人のてさきなんだね!」 「ゆっ、わるいゆっくり、わるいゆっくりだ!」 「ゆっくりしんでね!」 取り囲まれ、突き飛ばされ、体当たりされたれいむは、悲鳴を上げた。 「ゆっ、ゆぐぅぅ!? れいむは悪くない、わるくないよ!」 「わるくないってさ」 「おお、あやしいあやしい」 「やべでぇぇ、づぶれぢゃう、だすげでぇぇ!!!」 すると、その声を聞きつけたのか、不意に岩の割れ目にれみりゃが頭を突っ込んできた。そして叫んだ。 「がおー! たーべちゃーうぞー!!!」 「ゆぎぃぃぃぃぃぃ!!?」 ゆっくりたちはあわてて割れ目の奥へ引っ込んだ。 その隙に、潰されかけたゆっくりれいむは、もたもたと外へ出てきた。 れみりゃの前で顔を上げて、無理に笑う。 「ごめんね、みんなは今ちょっと、ゆっくりしてるんだって」 「ううー……?」 「よそでゆっくりしようね」 れみりゃは戸惑った。楽しそうにしていたれーむが割れ目に入ってしばらくしたら、急に悲鳴を上げて、ぼろぼろになって出てきたからだ。 割れ目の中にいるのは悪いやつらなんだと思った。岩を覗き込んで、何度も叫んだ。 「がおー、がおがおー! もぐもぐしちゃうぞー!」 「わるいこ、ででこいー! がおー!」 そのたびに奥から、「ゆぐぅぅ、ゆぐぅぅぅ!」と恐怖と敵意に満ちた悲鳴が聞こえた。 無性に腹が立って、踏み潰してやりたくなった。 それを押しとどめたのは、友達のゆっくりれいむだった。彼女は横かられみりゃのスカートをくいくい引っ張って、訴えた。 「れみぃ、もういいよ! ゆっくりよそへいこうね!」 「ううー?」 そんなの嫌だと思った。あの腹の立つやつらを全部やっつけて、友達のれいむの仕返しをしてやりたかった。 けれどもそうしようとすると、れいむがとうとう声を上げて泣き出した。 「う゛あ゛あ゛あ゛ん、もういいよぅ!! れみぃ、もういいからぁぁ!!」 れみりゃには、れいむがなぜ泣いているのかわからなかった。 れみりゃが頑張れば頑張るほど、割れ目の奥のゆっくりたちが、れいむに恨みのまなざしを向けることが、理解できなかった。 それでも、れいむを泣かせたくはなかった。泣き止ませようと、抱き上げて不器用に揺さぶり、子守唄のつもりで下手くそな歌を歌った。 「うーうーううー、んっんーんうー」 割れ目の奥から、ため息のような驚きの声が聞こえたが、れみりゃは気づかなかった。 (続く)