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人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。 日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、 小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。 そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。 他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。 だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。 ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。 ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。 まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。 そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。 無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。 あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。 ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。 「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」 「…………」 ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。 「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」 「…………」 偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。 もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。 ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。 普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。 肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。 そして、 「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。 ―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。 全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。 一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。 今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。 「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。 このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。 「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」 それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。 「むきゅぅーん……」 ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。 もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。 そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。 もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。 「だから……!(福山潤の声で)」 翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。 ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。 もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。 ……新たな餌を、発見した。 数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。 体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。 今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。 ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。 そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。 好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。 だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。 もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。 決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。 大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。 どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。 そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。 森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。 地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。 射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――! その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが…… 王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。 世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。 そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。 「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」 食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。 ぐしゃり。 決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。 嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。 助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。 助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!! と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆! 「たすけろ、だってさ」 「おお、いやだいやだ」 大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。 どうしてこんな顔を向けられるんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに…… 「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」 「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」 「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」 「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」 「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」 「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」 「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」 「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」 彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 DEAD END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/214.html
家に帰ると手のひらサイズのゆっくりれいむが転がり込んでいた。 「ゆっくりしていってね!!」 さて窓からお帰り願うか。つかんでサッシに持っていく。 「ゆ?!ゆっくりはなしてね!」 「はいはい、外に放してやるから」 「そとはあめだよ!れいむあめはいや!」 なるほどそのものまんじゅうだもんな、死活問題だな。でもなー。 「といわれても、役に立たない奴を置いておくほどうちも裕福じゃねーからなー」 「ゆうふく?ゆうふくってなに?」 「お金があること・・・というか、ゆっくりできることだな」 「おじさんゆっくりできないの?れいむがゆっくりさせてあげるよ!だからいれて!」 やかましいで、ゆっくりなんかできっこないと思うんだけどなぁ。 「だーから、お前みたいなゆっくりが家にいても邪魔なだけだって」 「ゆっ!れいむやくにたつよ!れいむがんばるもん!!なんでもやるよ!」 ・・・殊勝なことをいうゆっくりもいるもんだ。やっぱ必死なのかねぇ。 「へぇ。何でもやるっていったな?何でもやるんだな?文句言わないな?」 「ゆ!がんばるよ!」 「わかったわかった、中には入れてやる。梅雨の間だけな」 「わーい!おじさんゆっくりできるひとだね!!」 ま、こんくらいのサイズならそんなに邪魔でもないだろうし、ちょっとした暇つぶしにはなるだろ。 ・・・めんどくさくなったら、おやつにしちゃえばいいし。 ゆーゆーふ抜けた顔で、うれしそうにゆっくりれいむは上がりこんできた。 しかしまぁ実際接してみて分かるが、こいつ本当に何の役にも立たないなぁ。 そう思いつつ、ゆっくりをデコピンの要領で、机の上ではじく。 勢いよく転がるゆっくりは、立てていたえんぴつにジャストミート。ちょっと痛そうだ。 「ゆーっ!おじさんいたいよ!」 不機嫌なゆっくり。まぁそりゃそうだろうけど。 「だってお前何の役にも立たないんだもん。おはじきぐらいにしかなんねーよ」 「れいむやくにたつもん!」 「じゃぁ何できるか言ってくれよ」 「・・・ゆー・・・ゆー・・・えーっと・・・ゆっくりできるよ!」 「食うか」 「いやぁああああ!ゆっくりやめてね!!」 「冗談だよ、まだ食おうとか思わないよ、まだな」 「おじさんこわい・・・」 「でも新鮮なうちがいいかもなー?」 「ゆーっ?!」 「ヘヘヘ。ま、ふざけたことはすんじゃねーぞ」 結局思いつかなかったので、当面箸置きにすることにした。これくらいしか思いつかん。 ゆっくりは自分のエサと俺のメシを比較してスネたり、 いちいち箸を乗っけられるのに文句を言っていたが・・・ほとんどタダみたいなもんだろ?我慢しろって。 1週間後。 当初は超ミニサイズだったゆっくりも成長し、野球ボールよりちょっと大きい程度になった。 やっぱりなーとは思ったんだが、幼体だったのか。 しょっちゅう食うぞ食うぞと軽めに脅したせいか、 ゆっくりがとんでもない悪戯をすることはなかったが、騒がしさと食費についてはグレードアップだ。 何で気付かなかったかなー、めんどくさー。 と思いつつ、ゆっくりを壁に投げつける。ぽいん。 跳ね返って戻ってくるゆっくり。また投げる。跳ね返る。戻る。 意外と丈夫で弾力性があるのね、ゆっくりって。 時々「ゆ゛っ」とちょっと痛そうな声を漏らしてるけど、まぁいいや。 「ゆっくり、痛い?」 「いたいよ!ゆっくりやめてよね!!」 「ゆっくりやめるかー。じゃああと10回かけてゆっくりやめるかー」 「おじさんのばかー!」 ぽいんぽいんぽいん。 ラスト1回を投げた後、跳ね返ったゆっくりが、新体操の選手のごとく直立で着地を決めた。 「ゆ!」フフン、と得意げな顔のゆっくり。褒めて欲しいのか?・・・ちょっと生意気。 軽く上から押しつけてやる。 「ゆっ!!ゆっくりほめてよね!」 「やーなこった。てか押しつぶすと面白い顔だなお前」 「ゆー!!」 面白ついでに横につぶれたゆっくりをキーボードのリストレスト代わりにした。 なかなか面白い感触だけど、いまいちかなー。 「ゆっくりー、シリコンっぽい感触にならね?」 「わかんない!!ゆっくりうでをどけてね!」 相変わらず役立たずだなー。 数週間後。 ゆっくりはサッカーボールサイズになった。 しつけというか脅しのおかげで暴れまわることはないのでいいのだが、 野生のこんなのが跳ね回ったらさぞかし迷惑なことだろう。 そう思うとこいつは、割とできたゆっくりなのかね? 考えながらゆっくりリフティングに勤しむ。 ボンボン壁に投げつけていたせいで衝撃耐性をもったらしく、 蹴られているのに「ゆ♪ゆ♪」と楽しそうな声を上げてリズム取りに貢献すらしている。 ・・・とはいえ、目や口に足がジャストミートして大いに痛がっていたが、 かまわず蹴られているうちに、体に回転をかけて避けることを覚えたらしい。こういうことだけは器用なんだなー。 とか余計なことを考えていると、ボール・・・もといゆっくりが思わぬ方向に出た。 やばい、ベランダの外まで行っちまう! ゆっくりが呆然とした顔から悲鳴を上げそうになるその前、思うより先に腕がゆっくりに伸びていた。 あっぶね。ナイスキャッチ。 「・・・ふー」 大家の仕事を増やすところだった。 「お、おじさんありがとう!ゆっくりたすけてくれたね!」 ・・・予想外。ゆっくりからこんなセリフは出るとは。てか、ゆっくり助けてたら間にあわなかったっての。 「うっせー。大家のおっさんに迷惑かけるとうっせーんだよ」 「ゆっくりありがとう!!」 はいはい。よくわかんねーや。 器用になったゆっくりは多少弾力がかえられるようになったので、 これまた横に潰して枕やザブトン代わりにした。 ケツに敷かれているのは 「おじさんおもい!ゆっくりおりてね!!」と頻繁に文句を言うくらいなので結構辛いようだが、 枕にする分にはあまり文句をいわない。 「ゅー、ゅー」と寝息が横に聞こえるのが気になって枕としては使いにくいのだが、 ゆっくりはむしろ枕になりたいんだと。ゆっくりの好みはよくわからん。 数年後。 ころころまるまると成長したゆっくりは俺の腰の辺りまでの高さになった。 もうさすがに投げるとか蹴るとかは出来ない。 サンドバッグにしてもいいが・・・大分酷使して鍛えたもんだから、ふてぶてしさだけが増しそうだ。 そんなことでもてあまして構わずにいると、ゆっくりがへんなことを言った。 「おじさん、れいむであそばないの?」 ・・・なんか卑猥なフレーズな気もするが、そういう意味はないだろう。 「だってもうお前でかいし、持て余すって言うかなー」 するとゆっくりは真剣な顔で言った。 「れいむやくにたたない?もういらないの?!」 ・・・んー。まぁ、いらないといえばいらないけど。 「まぁ、いらないといえばいらないけど・・・」 ゆっくりの顔が曇る。 「かといって、外に放してもアレだし、もう食う食わないのサイズでもないし。いいよ、別に居ても」 「ほんと!?れいむいていい?」 「はいはい」 「ほんとにほんと!」 「ほんとほんと うっさいと燃やすぞ」 「うるさくしないよ!ゆっくりしようね!いっしょにゆっくりしようね!!」 「うるさい」 ・・・やれやれ。 結構いいサイズになってきたので、座椅子がわりにしてみた。 文句も言わなくなる従順ぶりだが、放屁すると白眼を向いたすごい顔になった。やっぱこれはキツイか。 しばらくして。 ゆっくりは寿命が迫っているようだった。…まぁ少々無理をさせたフシも無きにしも非ずなんだけど。 死期を悟ったらしいゆっくりは、デカイ図体に似合うように、 慌てるでもなく静か且つおだやかに最後の時を過ごしていた。 さすがにもうイス代わりとかするのも忍びないので部屋の隅っこに鎮座させていると、ゆっくりが声をかけてきた。 「ねえおじさん」 「なんだよ」 「れいむはもうすぐゆっくりするよ」 「今までもゆっくりしてんだろお前は」 「もうすぐずっとゆっくりするよ」 ・・・死ぬってことか。そうか。 「そっか。ゆっくりするか」 「おじさん、いやじゃない?」 「別に」 「・・・れいむはちょっとだけいやよ」 「そうかい。死ぬのは怖いか」 「しぬのもちょっとこわいけど、おじさんといっしょじゃないのがこわいよ」 「・・・そうかね。あんだけ苛めまわしといてこんなこというとは真性のマゾだな」 「まぞってよくわからないけど、けっこうおじさんとくらすのはゆっくりできたよ」 「ふーん」 餡子ペースト脳の考えてることはよく分からんが、悪い気はしねーかな。 「おじさん」 「なんだよ」 「おじさんありがとう」 ・・・ 「・・・どういたしまして」 「おじさんひとつおねがいをきいてね」 「なんだよ」 「れいむがゆっくりしたら、れいむをちょっとたべてね」 「・・・はぁ?」 「れいむはおまんじゅうだから、たべられるんだよ」 「いや知ってるけど、なぁ。なんかなぁ」 「れいむをたべたら、れいむはおじさんのおなかにはいるよ。そしたらまたいっしょになるよ」 「・・・うーん」 なんかゆっくりに乗っ取られそうなイメージも浮かんだけど、まぁそういう話は聞かないし。 「分かった、でも一口だけな。お前みたいなデカいの全部食ってたら、1年はかかるぜ」 「ふふふ。そうだねおじさん。ありがとう」 そっかぁ、もうお別れか。・・・一応言っとくか。 「おいゆっくり」 「なあにおじさん」 「・・・ありがとな」 「・・・うん」 ゆっくりは今までで一番穏やか且つムカついて最高な笑顔を見せた。 ほどなくして、ゆっくりはずっとゆっくりするようになった。 かなり微妙な心持ではあるが、約束どおりゆっくりをひとかけら頂くことにした。 ・・・んー。あいつには悪いが、あんまりおいしくはないな。 ゆっくりの餡子は恐怖や絶望でより甘くなるそうだが、 終始ゆっくりしまくったゆっくりの餡子は、まぁだらしのない甘さ。 経年劣化+しょっちゅういじくられたせいで表面も微妙にぱさぱさ。 まったく、誰がこんな風にしたんだ? いざとなったらおやつにしちゃえばいいとは言ったもんだが、いろんな意味で食えたもんじゃねぇや。 最後まで役にたたないというかなんというか。それもあいつらしいかねぇ。 全部食うわけにもいかないので、無粋だが残りの死骸は加工場に引き渡して、 ゆっくりは部屋からいなくなった。やかましい奴が居なくなって、静かな生活が戻ったわけだ。 ・・・ちょっと部屋が広くなったな。最終的にはちょっとした家具並みの図体だったもんなー。 ミニサイズだから大丈夫とか、どこのアホがいったんだか。 「なぁゆっくり?」 返事がない。 「・・・あ、いないんだっけ。・・・そっか」 そりゃそうだな。アホか俺は。まぁアホだな。 ゆっくりに見られたら、あの腑抜けた面でうるさく笑われそうだ。 ゆっくりなんか、役立たずなくせにうるさいことだけは一級品だもんな。 せいぜいあの世で待ってろゆっくり。 向こうでたっぷりいじめてやるから、今のうちに体鍛えとけよ。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2807.html
いうまでもなくこのSSのみの設定です。虐待なし。オリキャラ登場注意 幻想郷の辺境に一人の魔法使いがいた。名前はおろか性別も知られていない。 その行動を見るに、おそらくは格の低い魔法使いなのかと思われる。 その魔法使いは甘味をこよなく愛していた。なかでも和菓子を。 甘味好きが高じて、自作するまでにもなっていたが、魔法使いはとても不精でもあった。 買いに行くにせよ、自分で作るにせよ、その手間を省く方法はないかと長い間考え続けていた。 ひとつの方法として、菓子を作る人形を作ろうと試みたが、うまくいかなかった。 人形は作れたものの、納得できる品質の菓子を作らせることができなかった。 だが、この失敗からひとつの着想を得ることが出来た。 それは人形ではなく菓子の方に生命を付与するという手段だった。 そして、動物のように繁殖させるのだ。元の菓子が美味しければ、子供も美味しいに決まっている。 魔法使いは試行錯誤を繰り返した果てに、植物、動物、饅頭、大福を混ぜ合わせたような性質を持つ、まったく新しい菓子を作り出した。 魔法使いはうぉ~と叫んだことだろう。 生ゴミのような粗末な食物でも育ち、急速に殖えることができ、どのような環境化で育とうとも常に美味。夢の菓子生物が誕生したのだった。 「ゆっくりしていってね!」 生きている饅頭は生れ落ちてすぐさま第一声を放った。 なぜゆっくりなのかというと、おそらくは魔法使いのサボりたい気持ちが移りこんだ結果こうなったのだろう。 バグに近いものだったが、魔法使いはそのままにした。 来客に供された饅頭が「ゆっくりしていってね!」と言ったとしたら、面白いもてなしの趣向ではないか。 食べ物なのだからゆっくりしてくれた方が好都合でもある。作り直すのが面倒でもあったのだろう。 魔法使いはいい加減な性格だったので、この饅頭をそのまま「ゆっくり」と呼ぶことにした。 ちなみに、この原種ゆっくりは饅頭に目と口がついただけのシンプルな姿である。ハゲまんじゅうを想像してもらえればよい。 こうして魔法使いは寝ているだけでも三食甘味三昧の生活を手に入れたが、そこで欲が出てきた。 (売り物にならないだろうか?) 食物兼ペット兼家畜兼玩具として大流行するに違いないと魔法使いは安易に思い込んだのだ。 (これだけでは弱いな……) このままではただの生きている饅頭だ。なにかもうひとつ“売り”になる要素を追加したかった。 そこで魔法使いの目に着いたのが、幻想郷の歴史を綴った一冊の書だった。また、魔法使いは新聞もとっていた。 それらの書には幻想郷で起きた異変や、それを解決した巫女、弾幕合戦のことが書かれていた。 (これだ!) 魔法使いはゆっくりを一種のキャラクター商品として売りこむことに決めた。 ゆっくりを幻想郷の少女たちをかたどった饅頭にするのだ。 まず最初にもっとも有名な二人の人間を題材に、ゆっくりれいむとゆっくりまりさを作り上げた。 とにかく殖えてもらう必要があったので、れいむには強めの母性本能が付与された。 これにオリジナルの神社を守るという設定が組み合わさって、縄張り意識が強まり、“おうち宣言”の習性を得ることになったのだろう。 まりさは偏見込みのモデルそのままだ。野菜を盗むのは、図書館から本を盗むという記述に影響されたのだろう。 こんな調子で、モデルの性質を奇妙にゆがめた(顔面もゆがんだ)幻想郷のゆっくりたちが作られていった。 だがさっぱり売れなかった。 理由はいろいろあるが、やはり喋る饅頭は気持ち悪かったのだろう。 モデルの不興を買うことを恐れたというのもあるだろう。言うまでもなく許可などとっていない。 欲に目の眩んだ魔法使いは大量の在庫ゆっくりを抱えることとなった。 この在庫が意図的に投棄されたか、管理がずさんなせいで逃げ出したのか、 野生化し、増殖し、里に現れ……あとは皆のよく知るところである。 魔法使いは儲けられなかったが、ゆっくりは幻想郷に定着することとなった。 今更出てきて権利を主張することはないだろう。前述の通り、モデルに許可を取っていないし、 方々でゆっくりによる少なくない被害が出ている。 魔法使いは今でも知られざる庵にて、ゆっくりたちと暮らしている。 そこには捕食種、希少種、変異種も含めたすべてのゆっくりたちがいる、ゆっくりの故郷だ。 魔法使いはたまに創作意欲が湧き上がると、新たな種類のゆっくりを生み出して野に送ると噂されている。 これらはすべて人づてに聞いた話である。真偽のほどは定かではない。 ところで、もしこの記述を目にしたゆっくりがいたのなら警告しておく。 この魔法使い、ゆっくりの創造者を探そうなどとは考えないことだ。 「どぼじでー? そのひとはゆっくりのかみさまなんでしょ? きっとそこならすごくゆっくりできるにきまってるよ!」 などと言い返すかもしれないが、この創造者が、ゆっくりを食べるために生み出したことを忘れてはならない。 魔法使いはゆっくりを愛している。だが、それはあくまで甘味としてだ。 書き忘れたが、この魔法使いは大層大食いだそうな。 自分を食べられないためには、ひたすら子供を産み続けるしかないということだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3279.html
※あんまり虐待してません ※俺設定をひたすら書き綴ってみたくなったので、書いてみました ※ここのゆっくりは、すっきりするゆっくりです タイトル『ゆっくりの光』 ゆっくりゲージの中で、ゆっくりが全滅していた。 幅1メートル、奥行き2メートル、パイプフレームに全面透明プラスチック板を嵌め込んだゲージだ。 天井部分には20センチ四方の蓋が付いており、そこから餌を入れたりできる。 二階一戸建て、その一階の空き部屋にビニールシートを敷いて、その上に設置した。 ゆっくりハウスとして段ボール箱を隅に、その側に水場、対角線上にトイレを置いていた。 全滅したゆっくりはいずれも苦悶の表情を浮かべ口から泡を吹いて死んでいた。 やることのなかった青年は、死因特定のための解剖を行った。 それで何かが判るとも思っていなかったが、意外な発見があった。 未消化な昆虫の外骨格の断片が見つかったのである。 他のゆっくりも、昆虫の断片や木の実などが未消化のままであった。 これは、ゆっくりが餡子化できていなかった、ということである。 悪食なゆっくりは、なんであれ、食べたモノを餡子化できると一般的に考えられている。 しかし、このゲージで全滅していたゆっくりは、例外なく未消化な何かがあった。 ゲージに入っていたゆっくりは、ゆっくりショップを経営する青年の友人から押しつけられたモノだ。 その友人はゆっくりを増産する際、うっかり作り過ぎてしまった。 潰してゴミにする場合、ショップからだと産業廃棄物として処理しなければならないので、手間と費用がかかる。 そこで、両親が海外出張中に自宅警備員として待機している青年に白羽の矢を立てたのだ。 野生で拾ってきてショップで繁殖させてから良種を選別した、20世代目のゆっくりだった。 青年はゆっくりについてほとんど知識を持ち合わせていなかった。 ゆっくりを引き取ったときも、飼育方法など、調べることすらしなかった。 ただ、ネットで検索したとき、「ゆっくりコンポスト」のHPに興味を引かれた。 「ゴミ箱代わりに使えるのか、餡子に変換できるんなら、生ゴミの臭い消しもいらねーな」 自宅警備員だから、外にゴミ出しに行くのは保安上問題がある。 しかし、生ゴミはため込むと悪臭が発生してしまう。 せめて生ゴミだけは何とか処理しないと…。 そこで赤ゆっくりを引き取る条件として、中古のゆっくりゲージを貰いうけた。 ゲージは密閉度が高く、臭いも漏れない。 万が一、ゆっくりの処理能力を上回る生ゴミを投入してしまっても大丈夫だ。 もっとも、インスタント食品中心の食生活をしているので、そんなに生ゴミが出ることはないが。 ゆっくりを引き取ってから、早くも問題が発生した。 餌不足である。 生ゴミの臭い消し代わりに導入したゆっくりだが、餌となる生ゴミが出なければ意味がない。 かといって、愛着のないゆっくりごときのために、ゆっくりフードを購入する気もない。 しばらく放置していたら、ゲージ内に全く見たことのないゆっくりを発見した。 白、緑、黒の斑模様で、何か毛のようなものに覆われている。 「新種発見!まあ嬉しい!」 早速写メを友人に送信したら、返信ではなく電話が直接かかってきた。 「バカ野郎!そいつは死体にカビがはえてんだよ!」 青年は驚いた。 ネットの情報では、ゆっくりは仲間が死体になると、それがゆっくりと認識できなくなり、喰らうとあったからだ。 共食いもせず、餓死死体をカビが生えるまで放置していたとは、なんと冷たい連中だ。 とりあえず青年はビニール袋に手を突っ込み手袋のようにして死体を掴み、そのまま袋を裏返して口を縛り、ゴミ箱に捨てた。 「このままでは生ゴミ処分場が死体生産場になってしまうな…」 自宅警備員である青年は、食料は全てネット注文宅配店で調達している。 ゆっくりごときのために、わざわざ追加発注するのも勿体ない。 このままではゲージ内が腐海になってしまうので、裏山からゆっくりの食料になりそうなものを集めてくることにした。 ネットで調べた結果、野生のゆっくりは主に木の実やキノコ、昆虫を食すらしい。 大きめのゴミ袋を片手に、餌になりそうなものを片っ端から放り込んだ。 ゲージ中央に大きめの紙皿を置いて、そこに先ほど集めたゆっくりの餌をぶちまける。 餌はご丁寧に、ネットで調べた通りの、木の実、キノコ、昆虫の死骸だった。 「ソフトボールサイズだから、こいつらは子ゆっくり。よって、食べやすく潰してやる必要はないな」 しかし子ゆっくり達は食べようとしない。 ペットショップで世代交代を繰り返してきたゆっくりには、目の前の皿に盛られたそれがごはんと認識できないのだ。 青年が「ごはんだよー」と言うのに対し、こんなものは食料ではない、ゆっくりフードをよこせと抗議してくる。 そこで青年は証拠映像を見せてやると、ゲージの壁面に液晶モニタを設置して、ネットで公開されている野生ゆっくりの食事風景ビデオを流してやった。 画面上でまさに眼前に在る木の実、キノコ、昆虫を「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」する野生ゆっくり達。 それを見た子ゆっくり達は、おそるおそる餌を食べる。 あまりの不味さに吐き出してしまう個体もいたが、それ以外の餌を与えられない状況なので、必死に飲み込んだ。 「むーしゃ…むーしゃ…ふしあわせー…」 青年は、文句ばかり言うゆっくりを見て、こいつらがゆっくりできないのはナチュラルじゃないからだと悟った。 人間もジャンクフードばかり食べていたら、イライラする。 日本の若者が荒れているのも、ジャンクフードのせいらしい。 アメリカじゃ、それが原因で暴動まで発生したではないか。 この子ゆっくり達も、ゆっくりフードばかり食べていたから、イライラしているのだ。 今こそ自然食を食べて、ネイチャーゆっくりに回帰するときなのだ! 青年はなんだかよく判らない使命感に目覚め、突き動かされるように山に行っては餌を取ってきてはゆっくりに与えた。 そして冒頭の惨劇につながる。 ゆっくりフードはゆっくりがゆっくりするために研究開発されたもので、それが原因でゆっくりできないことはあり得ない。 しかし、青年のように天動説を信仰しているような人間には、そんなの関係ねぇ。 青年は何故子ゆっくりが全滅したのか考察していた。 同じ食事をしている野生のゆっくりと全滅した子ゆっくりの映像を見比べてみる。 その違いは明白で、「しあわせー♪」と「ふしあわせー…」にあった。 しかも、「しあわせー♪」の時には、『パアァァァ』と光り輝いているように見える。 そういえば、ゆっくり関係のHPにすっきりしている映像もあったが、「すっきりー♪」の時も同様の輝きが見られた気がする。 この光こそが、餡子成分の欠片もないような物質を、餡子変換させる秘密に違いない。 青年はこの光を「ゆっくり光」と名付け、ゆっくりの生命活動の根幹であるとの仮説を立てた。 早速、ゆっくりショップに行って1匹2円の、パチンコ玉より価値のある野良ゆっくりを買い込んでゲージに放り込んだ。 ゲージからランダムに選出したゆっくりれいむを取り出して、別室に連れて行く。 そこで同じくゆっくりショップで買ってきたゆっくりフードを与える。 空腹だったれいむはかぶりついた。 「むーしゃ、むーしゃ、」 しあわせ〜♪を発する前に、青年は手に持った刃渡り60センチのブッシュナイフでれいむを正中線に沿って両断した。 見事に真っ二つになったれいむの口内から後頭部近くにかけてまで、未消化のゆっくりフードが確認できた。 ゆっくりの内臓は発見されていない。 あにゃる付近まで未消化物あることから、この辺りがそうなのだろうと仮定した。 次に、先ほど両断したれいむと同齢と思われるれいむを、同じく別室で食事させる。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 青年主観で『パアァァ』とゆっくり光が出た後、同様に両断した。 れいむの断面からは、未消化物は確認できなかった。 青年はこの結果から仮説を更に発展させた。 ゆっくりが摂取した物質を餡子に変換する際、ゆっくり光を発する 「ゆっくり光」は物質の原子配列変換時に放出される、光子である 以上より、体内で餡子変換を行う「ゆっくり線」の存在が推測される。 ゆっくりが摂取した物質に「ゆっくり線」が照射されると、「ゆっくり光」が体外に透過されるのだ。 青年は更に実験を重ねた。 ゲス個体、とくにまりさ種に良く見られる採餌行動の時はどうだろう。 サンプリングしたゲスっぽいまりさに、大量の高級餌「ゆっくりの缶詰(通称:ゆ缶)」を与える。 「うっめ、これ、めっさうっめ!」 汚く食い散らかすまりさを、れいむ同様両断。 喉らしき部位からあにゃるにかけてバルーン状にたっぷりゆ缶が詰まっている。 予想通り、「しあわせー♪」とゆっくり光を発した後は、全て餡子変換されていた。 「このゆっくり線を自由に使用できるようになれば、すごいことになる」 青年は友人に大量のゆっくり断面写真を見せつけながら言った 「第二次産業革命の始まりだ!地球にやさしくなれるッ!」 「自由に使えりゃ、な」 ゆっくりの餡子変換能力を利用ようと、様々なプロジェクトが立ち上がった。 しかし、いずれも謎の塊であるゆっくりを制御できずに失敗した。 結局、ゆっくりはペットとしての存在価値しかない。 青年もそのことはよくわかっていた。 「うん、ゆっくり線の解明は現在の科学では不可能だろう」 「で?俺を呼んだ理由は?」 「これを見て貰いたい」 青年はテーブルの上にフィールドスコープを置いた。 対物レンズに手作りらしきフィルターのようなものがテープで貼り付けてあった。 「なんだこりゃ?」 「ゆっくり光スコープ、だ」 青年が野良ゆっくり相手に実験中、「しあわせー♪」しているゆっくりを見ている他のゆっくりの目が光った気がした。 そこでゆっくりの目玉を取り出し、板に挟んで引き延ばして円盤状に整形して、フィルターを作成。 フィルター素材の生体部品は乾燥に弱いので、薄いガラスにゆっくりの目玉を挟み込んでキャップに嵌め込み密封してある。 ゼラチン質のゆっくり目玉フィルターを通して見るゆっくりは、ぼやけて見えた。 そして「しあわせー♪」した瞬間、ゆっくりの輪郭が輝いたのが観察できた。 ゆっくり光を青年の感覚ではなく、視覚で捉えることに成功したのだ。 農業地域におけるゆっくり害は深刻化していた。 耕作地に侵入してきたゆっくりは、人間や簡単なトラップで退治できた。 犬を訓練してゆっくりハウンドとして、ゆっくりを狩らせたりもした。 しかし、そうやって高められた選択圧は、ゆっくりの性能を飛躍的に向上させた。 ゆっくりは餡子に記憶を刻み込むため、全体の記憶容量はかなり限定されている。 生息環境によって、生存に必須な記憶を本能として餡子に刻み、次世代に継承させることも必要になる。 強烈な繁殖力を持つゆっくりは、各個体それぞれが膨大な戦略パターンを展開し、人間をも出し抜く個体を出現させた。 巣の迷彩、野外活動時における擬態などが、かなり高度なレベルに進化したのだ。 以前は簡単にわかる巣も、ゆっくりハンターや訓練された犬でさえ発見困難なほどの迷彩を施す。 擬態も高レベルになった。 ある農家が鍬で耕作していたとき、雑草を掘り起こそうとしたら、おりぼんにそれを結び付けたれいむがでてきたのだ。 土に穴を掘って潜り込み、土から露出した部分を草で偽装していたのだ。 掘り起こすまでそれと分からないほどの偽装に、農家は舌を巻いた。 某グリーンベレーのように全身に泥を塗って土壁と同化したり、おぼうしに枝葉をさしてゆっくり畑に接近したりする個体も発見された。 ゆっくりは本来、忍耐力が致命的に欠如している。 おやさいさんがめのまえにあったら、もうがまんできない! だがこの新しい個体群は、苦手であったはずの待機行動を「ゆっくりできる」状態として本能を書き換えることに成功した。 土の中で待つ、泥を体に塗って壁に張り付いて待つ、おぼうしを偽装して待つ…。 それらを実に「ゆっくり」できる行動として、餡子に刻み込んだのだ。 友人はゆっくり害対策について、専門家として意見を求められていた。 だが、ここまで特化したゆっくりを見たことがなかった。 データを集めようにも、巣を見つけることが困難で、発見される個体も死体ばかりだ。 打つ手がないと思われたところに、この「ゆっくり光スコープ」だ。 これが実用に耐えうるものなら、決定的な武器になる。 青年は、このスコープは生体部品を使用しているので劣化が早く、2日しか持たないことと、野生のゆっくりほどゆっくり光感受性が高いことを説明した。 友人は早速この「ゆっくり光スコープ」を借り受け、ゆっくり害が酷い農村へ出向いた。 はたして、スコープを覗いて山を観察したところ、いくつかの光点を確認できた。 さっそく光点の場所へ行くと、迷彩が施され、普通だと絶対分からないゆっくりの巣が発見された。 農村は救われた。 あとがき 読んでいただいた方、ありがとうございます。 ドキュメンタリーっぽく書こうと思ったけど、上手くいきませんでした。 暇を持て余して、一つのことに集中できる環境があると、良いアイデアが出たり発見があったり。 そんな状況にならねーかなー、とか妄想してたら、こんなんができました。 あまり文章が上手くなくてすみません、精進します。 これまで書いた作品 ゆっくり爆弾
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ゆっくり魔理沙はご満悦だった。 今までお友達のゆっくり霊夢たちと思う存分ゆっくりしていたからだ。 日があるうちはぽかぽかとしたお日様の下で草原を走り回り、蝶々を追いかけばったと一緒に飛び跳ねる。 お腹が空いたら蝶々やばったを食べたり花の蜜を吸ったりした。 夜はゆっくり霊夢たちの巣で、夜通しゆっくりとおしゃべりに興じたり、星を眺めて眠ったりした。 この数日間は、ゆっくり魔理沙にとって本当に幸せな日々だった。 もっとゆっくりできるといいなと思いながら、ゆっくり魔理沙は自分の巣に戻ることにした。 お友達のゆっくり霊夢たちは、もっとゆっくりしてほしそうだったが、たまには別のゆっくりをしたくなるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 おおよそ四日ぶりに巣に戻るゆっくり魔理沙。 その巣は落雷で死んだ木の洞だ。 ゆっくり魔理沙一匹には広すぎるが、自分が気に入ったものを並べたりできるから、そこはまさに楽園だった。 巣の周りには緑鮮やかな木々が立ち並んでおり、草も豊富で色とりどりの花々が思い思いに咲き誇っている。 そばには川も流れていて、そこで暮らしている限りゆっくり出来ないことなどないと思える。 大勢でゆっくりするのもいいが、一人でゆっくりするのもまたいい。 ゆっくり魔理沙は久しぶりにするそれに、期待で目をぎらぎらさせながら飛び跳ねていた。 鼻息も荒く、興奮で頬ははちきれんばかりにふくらみ、いつも以上に赤らんでいる。 焼け焦げが目立つ折れた木が見えてきた。 そこには四匹のゆっくり魔理沙たちがいた。群れのようだ。みな微笑みながらゆっくりしている。じつに楽しそうだ。 同種のゆっくり同士には、基本的に縄張りの意識はない。 だから帰ってきたゆっくり魔理沙は元気よくその群れに飛び込み一声あげた。いつもどおりの鳴き声だ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 次々と聞こえるそれはやまびこのようだった。 帰ってきたゆっくり魔理沙は手近なところにいた中くらいの、と言っても帰ってきたゆっくり魔理沙と同じくらいのゆっくり魔理沙にほお擦りをした。 「ゆぅ~」 「ゆゆゆ」 気持ちよさそうな声をあげて親愛の情を返す中ゆっくり魔理沙。 その様子を微笑ましそうに見ている群れの長だろう大ゆっくり魔理沙。これは帰ってきたゆっくり魔理沙よりも一回り大きい。 明らかに繁殖経験ゆっくりだ。きっと群れの仲間はこれの子供たちなのだろう。 しばらく五匹でゆっくりしていたが、小さな声が聞こえてきた。 「おかーさーん、ゆっくりしようね!」 「しよーしよー!」 「ゆーゆー!」 大きな木の洞から小さなゆっくり魔理沙が三匹でてきた。中ゆっくり魔理沙よりも一回り小さいそれらは、今まで眠っていたのか大きなあくびをしている。 「ゆゆっ!?」 帰ってきたゆっくり魔理沙は戸惑いの声をあげた。 今、小ゆっくり魔理沙たちが出てきた見覚えのある洞は、自分の巣ではないか? そんな疑問を抱いたゆっくり魔理沙をよそに、小ゆっくり魔理沙たちは大ゆっくり魔理沙に頬をこすられて気持ちよさそうにしている。 「ゆゆゆゆっ!?」 いぶかしげな顔をしながら、ゆっくりと巣に近づいて、中の様子を探るゆっくり魔理沙。 「ゆ゛っ!?」 中は酷い有様だった。ゆっくり魔理沙が集めた宝物の鳥の頭蓋骨は粉々に砕かれていてもはや白い残骸だ。 布団代わりに敷き詰めた草は半分以上がむさぼられていたし、後で食べようととっておいた桃はどこにもなく、代わりに食べかけのカボチャがでんと置かれていた。 なかでも一番嫌だったのが、巣の中から自分の臭いがまったくしないのに、それとは違うゆっくりの臭いがしていることだった。 急にゆっくり魔理沙の頭に餡子が上る。 その視線の先には飛び跳ねている小ゆっくり魔理沙の姿があった。 「ゆぅううーーーっ!」 跳躍し、小ゆっくり魔理沙の一匹に体当たりする。 「ゆぎゃっ!!」 吹っ飛ばされ転がる小ゆっくり魔理沙。 続いて他の小ゆっくり魔理沙を弾き飛ばそうとするが、それは出来なかった。中ゆっくり魔理沙が思い切り体当たりしてきたのだ。 「なにするのー!」 「ゆぐっ!」 家族を攻撃されて、こちらも頭に餡子が上った中ゆっくり魔理沙。威嚇なのか「ぷんぷん!」といいながら帽子のリボンをひときわ大きく広げている。 他の中ゆっくり魔理沙も無言でにじりよってくる。 弾かれた小ゆっくり魔理沙は、ほかの小ゆっくり魔理沙たちと一緒に、大ゆっくり魔理沙にすりよって慰められていた。 体勢を立て直したゆっくり魔理沙は、その場で勢いよく飛び跳ねて声高に訴える。 「ゆっゆっ!わるいのはそいつらだよっ!」 「わるくないよっ!まりさたちはいいものだよっ!!」 すぐさま言い返す中ゆっくり魔理沙。リボンはまだ大きい。 言い合いは続く。他の中ゆっくり魔理沙もそれに混じる。 「ゆぅ~、ここはまりさのおうちなのっ!ゆっくりしないでね!」 「なにいってるの?ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ちーがーうーの~!まりさのおうちなの~~!いいからさっさとでてってね!!」 「いやだよ!ここはまりさたちがゆっくりするおうちだよ!!」 「ちがうもん!ちがうもん!!はやくでてけっ!」 地団太を踏むように小刻みに跳ね続け、顔を真っ赤に染めてゆっくりしないで叫ぶゆっくり魔理沙。 中ゆっくり魔理沙たちは、そんな様子を餡子が腐ったようなものを見る目でみつめている。 「ここはまりさたちがみつけたんだよ!」 「まりさたちのおうちだもん!ゆっくりしないでさっさとどっかいってね!!」 「はやくきえてね!まりさたちはゆっくりするから!」 「「「ばーかばーか!うそつきー!どっかいけ!!かえれー!!!」」」 ゆっくり魔理沙は三匹に立て続けに言われてとうとう怒ったのか思い切り飛び掛った。 「いいからさっさとでてくのーーー!」 体当たりされて転がる中ゆっくり魔理沙。それを見て勝ち誇るように鼻で笑うゆっくり魔理沙。 「なにするのーッ!!!」 「ゆ゛ッ」 同時に重い音とともに潰されるゆっくり魔理沙。大ゆっくり魔理沙が飛び乗ったのだ。 すぐさま中ゆっくり魔理沙のもとへと跳ねよる大ゆっくり魔理沙。だが中ゆっくり魔理沙は大丈夫だと言うように跳ねている。 そのままゆっくり魔理沙へと向かう。 「ゆ~~」 体を起こすと、ゆっくり魔理沙は中ゆっくり魔理沙に囲まれていた。いや中ゆっくり魔理沙だけではない、六匹の群れが全員でゆっくり魔理沙を取り囲んでいるのだ。 ゆっくり見渡したところ、逃げられるような余裕はなかった。とたんにきょろきょろと慌てるゆっくり魔理沙。 「ゆっゆっゆっ?」 なぜ囲まれているのかゆっくり魔理沙には理解できない。自分はただ、自分の巣でゆっくりしたかっただけなのだ。 「ゆー!」 べよん。 小ゆっくり魔理沙が体当たりする。少し痛かったが、すぐにしかえそうとするゆっくり魔理沙。 しかし逆側からも体当たりされる。 「ゆぅっ!!」 そちらを向く。 すると背中に衝撃が。 「ゆぐっ!?」 ほどなくゆっくりリンチが始まった。 大ゆっくり魔理沙がのっかり攻撃し思い切り飛び跳ねる。 まわりで中ゆっくり魔理沙は三方向から勢いよく体当たりをする。 その隙間からは小ゆっくり魔理沙が噛み付いているのが見える。 みんな思い思いの方法で、ゆっくり魔理沙に暴行を加えている。 ゆっくり魔理沙は最初こそ反抗的だったが、ものの数秒もしないうちに号泣し、命乞いの声をあげていた。 しかし群れの攻撃はやむどころか弱まる気配すらない。ぼこぼこぼこぼこといい音がしている。 それに混じる悲鳴や泣き声。なにかが飛び出る音。 「ゆっゆ゛っゆっゆ゛っゆっゆ゛っ!!!」 「いや゛っ!いや゛っ!よじでっ!びゅっ!」 「ぐるぢいよ!だぢでっ!やべでぇっ!!だぢでよおおお!!!」 「どお゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛お゛ぉ゛!?」 「い゛や゛ぁあ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ」 「も゛う゛や゛め゛て゛ね゛っ゛!」 「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「ゆ゛っぐり゛じだい゛よ゛ぅ」 「ゆ゛……っぐり゛……ざぜ……でぇ……ぜっぜっ」 「……ッ!……ぅっ!!…………っ」 ぴくぴくと動くゆっくり魔理沙のようなもの。 それは涙と鼻水、よだれや泥で汚れきっており、餡子まみれで帽子もこれ以上ないほどによれて、ところどころに噛み跡が見える。 もはや虫の息でゆっくりとしているゆっくり魔理沙。 「ゆっ!」 仕上げとばかりに大ゆっくり魔理沙はそれに思い切り体当たりをする。 餡子を撒き散らしながら声もなく転げていくそれを追いかける三匹の中ゆっくり魔理沙たち。 それは近くの川岸でゆっくりと止まった。 その様子に明らかに不満顔で膨れていく三匹。顔を見合わせると、何かを決めたように頷く。 「「「ゆぅ~う~うぅ~っ!!!」」」 声を合わせて、三匹は汚れたゆっくり魔理沙を川に投げ入れてやった。 「「「ゆっくりしんでね!」」」 汚れたゆっくり魔理沙が川をゆっくりと流れていく様子を、げらげらげらげらという笑い声が見送っていた。 ぶくぶくと泡をだしながらゆっくりと薄れていく意識の中でゆっくり魔理沙は思った。 こんなことならゆっくり霊夢たちの巣でもっとゆっくりしてればよかった……と。 おわり。 著:Hey!胡乱
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俺が山で山菜を取っていると、ゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が近づいてきた。 「おじさんなにとってるの?」 「あぁ、これはさんs「あぁ、これおいしいたべものだ!!!」」 言うが早いか、俺の籠に迫り来る二匹、なす術もなく倒される俺。 「うめぇ、めちゃうめぇ」 「これ、なかなかとれないんだよね! おじさんまりさたちのためにとってくれてありがとう」 朝から苦労して取っていた山菜をどんどん食べられる。 こっちも苦労した身なので、唖然と居て座ったまま動けなかった。 「はぁ、おいしかった!!! おじさんありがとう! おかげでゆっくりできたよ!!!」 「また、まりさたちにごちそうしてね」 ゆっくりゆっくりと言いながら、二匹は山の中に消えていった。 『ゆっくりの住む山』 数分はそこに座り込んでいただろうか。 驚きが通り過ぎると、今度は怒りがこみあげてきた。 あれだけ苦労して取った山菜が、全てゆっくりどものエサになってしまったのだ。腹が立たない奴などいないだろう。 しかも、ご丁寧にまたよこせなどとほざいた日には、いたぶったあげくにずたずたに引き裂いてやりたいと思うのが人情だ……と思う。 ともかく、ぶち殺してやる事には変わりない。 座り込んでいてもどこの方向に逃げたかは分かっているんだ。俺は、慎重に二匹を追いかけた。 足音を立てない様、静かに二匹を追いかけると、ほどなく見つける事ができた。 ゆっくりゆっくり言ってどこにいるか合図を出している上、満腹のためか、極めて遅い速度で移動していたからである。 そのまま持ち上げて握り潰してやろうと思ったが、ふと別の事を思いついたため、そのまま二匹をつける。 しばらく追いかけていると、二匹は洞穴に入っていった。そこが奴らの住みかなのだろう。 同居しているとは好都合だ。無意識に、俺の口元が笑みの形を作る。 制裁の手段として考えている事をするためには、絶対に逃げられてはいけない。 辺りはかなり暗くなっているからもう眠っているだろうが、念のため入り口その他のすきまに石を詰め込み、絶対に出られなくしておく。 これからの事を考えながら、俺はニヤニヤしつつ家に戻った。 次の日、俺は昨日閉じ込めたゆっくり達の巣へと向かった。 奴らはまだ眠っていて「ゆ~、ゆぅ……」などと気色の悪い鳴き声をあげていた。 寝言のつもりだろうか。本当にふざけた饅頭どもである。 殴りつけたくなる衝動を抑え、静まり返って何も音が聞こえない巣の中を進むと、一番奥に食糧貯蔵庫らしき穴があった。 雑草や虫の死がい、花が大量に入っているその穴に、石を投げ込む。 ゆっくりどころか、人間にすら取り出せないほどびっしりと石が詰め込まれたのを確認してから、俺はその場を後にした。 無論、入り口その他のすきまに石を詰め込み直しておくのは忘れない。 そのまま入り口付近で待っていると、奴らが起きたらしく「ゆっくりおはよう!」などという声が聞こえた。 「ゆーゆーゆー♪ きょうのごはんはなんだろなー♪ ……ゆっ!? ゆっくりでれないよ!?」 「なにこれ! いしがいっぱいつまってるよ! なんでぇ!?」 「……ゆっ! ごはんもない! いししかないよぉぉぉ!!!」 「なにごれえええぇぇぇぇぇぇ!!!」 巣の中は大混乱に陥っているらしい。 俺は、もう二度と外に出られないゆっくりどもの悲鳴をしばらく楽しんでから、山菜を取りに行った。 ウドにアケビ、たらの芽にワラビ……この山は、食材の宝庫とも言える(注1)。 だからこそあのゆっくりどもはこの周辺に住み着いたのだろうが、奴らにはトリカブトやドクゼリやハシリドコロで十分だ(注2)。 しばらく探し続け、背負ったカゴが半分程度埋まった頃、あの忌々しい「ゆっくりゆっくり」の大合唱が聞こえてきた。 このままでは、昨日と同じ結果になりかねない。俺は、背を出来るだけ低くしてその場を去った。 帰る途中、ふと気になって閉じ込めたゆっくりどもの元へ行ってみる事にした。 念のためと、入り口を調べてみると、動いた形跡は全くない。 耳を近づけると「ゆっぐりおぞどにでられないよー!」「だれがだずげでー!」などと言う悲鳴が聞こえた。 ずっと叫び続けていたらしく、最初の時と比べてかなり声は小さくなっている。 狙い通りの結果になった。奴らは、このまま放置しておけば確実に餓死するだろう。 無駄に死体など見たいものではないし、ゆっくりなど食べる気にもならない俺にとっては、この方法が一番だ。 「だずげでえぇぇぇぇぇ!」 「ゆっぐりざぜでぇぇぇぇぇぇ!」 二匹が泣き叫んでいる。だが、奴らの仲間は助けに来られないだろう。周囲を見回って、絶対に出られなくなる様にと考えて閉じ込めたのだ。 こいつらの悲鳴を聞いていると、先ほどの大合唱でささくれ立った心が僅かに癒えた。 ゆっくりどもの助けを求める声を背に、俺は帰途についた。 無事に山菜を取って帰ってこられた後、鬱々とした感情が俺の心に淀んでいた。 山菜を食ったゆっくりどもへの仕置きは終ったが、それ以外にもたくさんのゆっくりどもがいる。 つまり、今この時も、ゆっくりごときに美味しい山菜が食われているのだ。 いや、ただ食うだけならどうにか許せるが、奴らは無計画に全てを食いきってしまうだろう。 ゆっくりのアンコ頭では、山菜がどれだけ貴重なものなのか、だからこそ一定以上の量は採ってはならないと教え込んだとしても、絶対に理解出来ないだろう(注3)。 俺の頭に、山菜も雑草も何もかもが食いつくされて荒涼とした山の風景が、映像として浮かび上がってきた。 そうなってからではもう遅い。俺は、ほぞを固めた。 ――あそこのゆっくりどもを全滅させる。一匹も残らずだ。 そうと決まれば、のんびりとなどしていられない。 俺は、急いで人間の里の有力者達の元へ走った。 ゆっくりは子供が思い切り殴っただけでも死ぬ程度の弱さだが、その分数が多い。 単純に駆除するだけなら道具を使う事で少数でも不可能ではないが、今回は山の環境にも注意せねばならないため、火や水は全く使えない。 つまり、一匹も残らず全滅させるためには、可能な限りの人員を集めなければならないという結論に到るワケである。 そのためには、有力者の手が絶対に必要だ。 何時間もかけて説得しただけの事はあり、人間の里の有力者のほとんど全員が集まってくれた。 中心となる部屋の入り口には『山のゆっくり駆除委員会』と書かれた立て札がかかっている。 俺が集めたためか、名だたる有力者を押しのけて視界進行役をおおせつかってしまった。 「本日は、お集まりいただいてありがとうございます」 まずは頭を下げる。大きくない部屋の中に拍手の音が鳴り響いた。 俺は、声が震えていないか気をつけながら、ゆっくりによって貴重な山菜が全滅しようとしている現状について訥々と説明した。 「……という事で、山のゆっくりどもから山菜を守りたく思い、今回お集まりいただきました」 「対策などがございましたら、皆様からのご意見を拝聴したく思います」 話が終わると同時に、ざわざわと相談がはじまり、静まり返った部屋が一気に雑然とする。 それを遮る様に、細く美しい腕が上がった。あれは、寺子屋の慧音様だ。 「皆様、お静かに。慧音様からご意見があるそうです。よろしくお願いします」 慧音様はうむと一つ頷いて、立ち上がった。 「今回の事を解決するには、私の能力が最も適していると考える」 「つまり、山の草木そのものの歴史を保護する事で、奴らを別の場所へ誘導する作戦だ」 「この場合、ゆっくりどもを皆殺しにする必要性はない」 「皆はどうやってゆっくりを殺そうか考えてる様だが、目的を履き違えてはならない」 「最優先すべきは山菜であり、ゆっくりを殺害する事ではないからだ」 「もちろん、この作戦ではかなりの人員を使う事になるが、それは皆も協力して欲しい」 以上だ、と締めくくり、慧音様は座った。 皆、目からうろこが落ちる思いで、慧音様をしばらく見つめていた。 この中の誰もが、どうやってゆっくりを皆殺しにするかという一点について考えていたというのに、慧音様は全く別の考えをお持ちだった。 その事に感銘を受けたのは、俺だけではないだろう。 事実、有力者も加工所職員も関係なく、皆が尊敬の眼差しを慧音様に注いでいる。 だが、慧音様は視線が恥かしいらしく、頬を赤く染めて咳払いをした。 「……えー、慧音様、ありがとうございました。他に、何か対策がある方はいらっしゃいますか?」 それでようやく立ち直った俺は、皆を見渡して意見がない事を確認した。 「ご意見がないようですので、慧音様の案を採用させていただきたく思います」 ありがとうございました、と頭を下げて、人員や具体的な方法について意見を出してもらう。 思っていたよりずっと早く作戦は決まった。これも、慧音様の案のおかげだろう。 数日後、ゆっくりの駆除作戦はつつがなく実行され、全てのゆっくりは山からどこかへと去っていった。 俺は、ゆっくりが消えた山の中で、以前の様にのんびりと山菜を採っている。 慧音様は凄い。今回の事件で、改めてそれを確認した。 だから、その情報を聞いた時、俺は激怒を通り越してあきれ返ってしまったほどだ。 『慧音様が追い出したゆっくりは、全てがとある研究施設の実験材料として使われている』 お優しい慧音様がそんな事をするはずもない。 いや、仮に一部を実験材料として提供したとしても、別に咎める事ではない。 少なくとも、あの山のゆっくりが害獣であるのは確かで、それを追い出したのは慧音様のおかげだからだ。 いずれにせよ、慧音様には一片の非もない。我々人間の里の者は、皆慧音様に感謝しなければならないだろう。 ――そうだ、山菜を持って行こう。慧音様も妙な噂でお心を痛めているだろうし、美味しい山菜を食べれば元気になられるはずだ。 慧音様の笑顔を想像しつつ、俺はうきうきした気分で山菜を採っていった。 「こんにちは、元気かな」 「あぁ、元気だよ。そっちは?」 「私も悪くない……どうだ、奴らは?」 「知らないな。見に行きたいものじゃないし」 「そうか。ところで妹紅」 「なんだ、慧音?」 「山の中で面白いものを見つけたんだ。ゆっくりなんだが、石みたく硬くて、本当に興味深いんだ。そこは歴史を隠したままにしてるから、誰も来ないんだ。それで……」 「わかった、ちょっと見に行こうか」 「……ああ、見に行こう!」 妹紅の手を笑顔で引く慧音。 その姿は、外見年齢相応の少女の様だった。 こちらのSSは、ゆっくり十八番~ノンフライ~氏の触媒をお借りしました。 お礼申し上げます。 もこけーねは正義。 by319 注1:ウド・アケビ・たらの芽・ワラビは食用の山菜で、人を選びますが、合う人は非常に好む味です。 注2:トリカブト・ドクゼリ・ハシリドコロは全て毒草です。絶対に食べてはいけません。 注3:山菜は自然に生えている草木なので、美味しいからと乱獲をしてしまうと、後々取れなくなる恐れがあります。資源を大切に。 このSSに感想を付ける
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サアーサアーお立ち会い、ご用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで。 サテお立会い 手前ここに取りい出したる湯栗膏(ゆっくりこう)は、これ「ゆっくりの油」 ゆっくりと言ったってそこにもいる、ここにもいると言う物とは物が違う。 「ハハァーン、ゆっくりかい ゆっくりなら俺んとこの縁の下や流し下にゾロゾロいるよ」と言うお方があるかもしれないが あれはゆっくりとは言わない、ただの汚饅頭(おまんじゅう)。何の薬石効能はないよお立会い。 ゆっくりと申してもただのゆっくりとゆっくりが違う、これより北の山のふもとは、おんばこと云う薬草をくろうて育った四六のゆっくり 四六五六はどこで見分ける。 前足の指が四本、後足の指が六本合せて四六のゆっくり サテ お立会い、 このゆっくりからこの油を取るには、山中深く分け入って捕らえ来ましたるこのゆっくりをば四面鏡張りの箱の中に放り込む。 ゆっくりはおのが姿の鏡に映るを見て驚きターラリターラリと油汗を流す、 これをすきとり柳の小枝にて三七 二十一日間、トローリトローリと煮つめましたるがこのゆっくりの油。 サテ お立会い、手前 ここに取りい出したるは、我が家に昔から伝わる家宝・正宗が暇にあかして鍛えたと言う代物である。 実によく切れる。エイッ 抜けば玉散る氷の刃。ここに、ちょうど一匹のゆっくりがあるから、切ってお目に掛けよう。 一匹のゆっくりが二匹 二匹のゆっくりが四匹 四匹のゆっくりが八匹 八匹が十と六匹 十六匹が三十と二匹 三十二匹が六十四匹 六十四匹が一束と二十八匹 ほれこの通り 細かくよく切れた。ふっと散らせば、比良(ひら)の慕雪(ぼせつ)か嵐山には落花の吹雪とござい お立会い。 これなら名刀も一たびこのゆっくりの油をつける時はたちまち切味が止る、おしてもひいても切れはせぬ。 と云うてもなまくらになったのではない、この様にきれいにふきとるときは元の切味となる。 サーテお立合 この様にゆっくりの油の効能が分かったら遠慮は無用だ、どしどし買って行きやれ。 このSSに感想をつける
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内容がブラックです。 自分設定を垂れ流しています。 古本屋の虐待(?)SSです 一応交尾はありません、ぺにまむも無いです。 『人間がたくさん死にます』 『でもゆっくりもたくさんしにます』 それでもよければ、読んでいただけると嬉しいです。 【ゆっくりの世界】 野鳥、野良猫、野良ゆっくり わけても都心部では昨今の野良ゆっくりによる衛生の悪化は社会問題になっている。 ゴミ捨て場荒らしに始まり、町中に散乱する死骸は衛生面だけでなく 交通機関にも多大な影響を与え、美観も損ね悪臭を撒き散らす。 想像してみて欲しい 生ゴミの詰まった袋が、数百数千と街中を跳ね回っているのだ。 条約で野良ゆっくりに餌を与える事が禁止され、飼いゆっくりを捨てる事が禁止されても 焼け石に水にすらならない、元から誰も餌など与えないし 捨てられる飼いゆっくりはますます増えたがそれに関係なくネズミ算ならぬゆっくり算式に増える野良たちに 市民の苦情を一手に受ける保健所も必死だった。 そしてついに、行政が重い腰をあげる。 汚臭を放つ生きた生ゴミは、法整備を皮切りに 汚臭とともに絶叫を、街中で上げることになり ボランティアの公衆衛生に加えて自衛隊も狩り出され、生ゴミ被害は夏季を前に解決した。 市街からは汚臭を放つ生ゴミは姿を消し 野良ゆっくりが現れてから十数年間の間喪われていた ゆっくりのいない衛生的な生活が取り戻され 忌まわしい事件が起こった。 * * * 【わーむゆうっど】 三年前、ゆっくり駆除法に合わせて 専用の処理施設として国費を投じて造られた 世界最大のゆっくり処理施設 世界最大規模のリサイクル施設として 世界中にバイオ燃料や最上級の有機肥料を 安価で提供する施設として話題になり 国内外から多数の見学者が連日訪れる ゆっくり再利用の一大施設が 爆音/悲鳴/怒号 燃え上がり、照らし出され 我先に雪崩出る人々 人類の長い歴史の中で、決して絶えない 思想による争い、その最悪の形の一つである 「Take it Easy!!!」 「F××k!!!」 蛮声を挙げながら重火器を乱射し 次々と爆薬を起爆させていく 数十人もの覆面をかぶった集団 見学に訪れていた人たちと施設で働いていた職員達が逃げ惑い まさに阿鼻叫喚の地獄絵図となった【わーむゆうっど】 このテロによる死傷者の数は300人以上に昇り 世界的にも大きく報道された。 世界初の【ゆっくり愛護派】によるテロ事件として。 * * * 「まりさ…こわいよ…」 「れいむ…なにがあってもずぅっといっしょだよ…」 二匹のゆっくりは、寄り添い震えている。 【わーむゆうっど】の生産プラントで生まれた900世代目以降の促成ゆっくり種 遺伝子組み換えにより、生後4日で成体に成長し 二日間で20回の植物型出産をさせた後 センサーによる判別で一定以上の質量を持つ物は分解して肥料又は飼料に そうでないものはバイオ燃料に精製される 人工物に生態系ピラミッドがあるとすれば その最底辺の存在として不動の地位を確立しているのが このプラント産ゆっくり達である。 品種改良した雑草が自家製のゆっくり有機肥料でプラント中の草原を形成しているため 一体あたりの終身生育コストは僅かに20円 決められたスケジュールによって定められた繁殖には 繁殖用ありすすら使われない。 都合よく組みかえられた培養精子餡が、機械によって噴霧される。 計画的に世代を重ねるだけ 数百代に渡って子孫へと受け継がれる情報は 誕生⇒管理⇒繁殖⇒精製されるだけが自分達の全てだと伝えるだけ 死ぬために生きなければならない事を理解しながら、逆らう事など出来るはずも無い。 人工物と言える彼等が生態系のピラミッドに属するならば バクテリアに分解される廃棄物と同等かそれ以下の位置に属する底辺。 それが【わーむゆうっど】で生まれるゆっくりのゆん生の全てだった。 遺伝子的に受け継がれるゆっくりの基本情報が おぼろげに伝える【加工場】ですら このプラントのゆっくり達にとっては羨望すら抱く境遇なのだ 此処には一片の【ゆっくり】すら存在しない 【ゆっくりできない場所】より【ゆっくりがない場所】の方がかれらには恐ろしいのだ。 そこで生まれて三日 ともに最終生産固体であるこの二匹は 一瞬たりとも親というモノに触れることは出来なかった。 植物型発生と同時に茎ごと濃縮培養液槽にうつされ(この時点でコンベアによって母体ゆっくりは各工程に処分される) 1時間後に生れ落ちた場所が、たまたまプラントの同じエリアだっただけの固体だ。 与えられた茎のペーストを言葉も無く咀嚼し 適温に維持された室内で 定刻どおり照明が落とされた時 偶然一番近くに居た固体に、寄り添って眠っただけだ。 それから三日間、離れる理由も無いので一緒に居ただけの二体だ 「…」 「…」 只それだけの二体は今、理解できない状況に怯えながら 言葉も無く身を寄せ合って、身体を揺らす爆音と人間の悲鳴に恐怖している。 何が起こっているのかは判らないが とても恐ろしいモノが迫っているのだけは、わかる。 * * * 憐憫・侮蔑・嘲笑、あるいはそれ以外の何か 連日のように訪れる見物客の視線は 【ゆっくりしたい】という本能を捨てきれないプラントゆっくりにとっては 耐え難い苦痛だったし 一人で居る事は、それだけでいらぬ視線を集める事になるのを識っている彼等は 或る程度の数群れて、見学時間中殆んど動く事をしない。 すこしでも、ほんの僅かでも【ゆっくりしている状態】に近くあろうとする。 何代にも渡って受け継がれた体内時計は、自分達を観るために人々がやってくる時間が来る事を知らせていた。 「いこうか」 「そうするぜ」 見学用の窓にからもっとも遠い壁際が、二体の定位置だった。 壁が落とす僅かな影に隠れ、二体で見学時間が終るまで草を食み続ける。 生まれてから3日間、おそらく何代も前から繰り返してきた 可能な限り消耗しない時間つぶし 新しい事など、試そうとも思わない そういう事をするのは世代の浅いゆっくりか 時折生まれるドス化の兆候を見せる固体だけだ。 二体は最初期からのプラントゆっくりの系譜であり そういう事をして消耗する事が、いかに無意味かを餡子で理解している。 二体が影に移動してから、僅か数分で見物客が姿を見せだした 「…」 「…」 ただただ身体を小さく、気配を消して耐え続ける。 校外学習の小学生達が喚き散らしながらバンバンと強化硝子を叩きながらはしゃいでいる。 遮断されているため、音は聞こえないが 硝子を叩く衝撃だけは本能的に身体をすくませる。 あの硝子がもし割れれば、あの人間たちは自分達を捕まえて踏み潰しにかかるのではないか ありえない、だが本能的な恐怖に駆られて 自分達の安全を確かめたいと 二体が震えながら、ほんの僅かに視線を見物人に向けたその時。 「っ…!」 「ゅ…!?」 強化硝子に貼り付きゆるゆると滑り落ちていく 放射状に広がる子ゆっくりの死骸 おそらく子供達の誰かが持ち込んで、悪戯に投げつけたのだろう 二体にはその口が【たすけて】と動いたような気がした。 「ゆ、ゆあ、ああああああああああああああ゛!!!」 離れた所で一匹のまりさが猛然と駆け出し、見物客の並ぶ窓に体当たりを繰り返す。 余りの形相に、一瞬だけ見物客がたじろいで その後は皆、思い思いに懐から四角いものを取り出して パシャパシャと光を放つ何かを体当たりを続けるまりさに向ける。 薄笑いを浮かべて。 「…」 「…」 二匹は声も上げない、哀しいとさえ思わない ただ【見なければよかった】という想いだけを共有して ひたすらに草を食み続けた。 間も無く昼時になり、見物客が飲食コーナーに移動しだすと 円筒型の清掃ロボット(別エリアで行われるゆっくり発電で稼動する)が 体当たりを続けるまりさを排除するために、僅かな音を立てて現れ 精密な動きをするロボットアームで取り押さえられる 「や゛べろ゛を゛っ、は゛な゛ぜぇ!!までぃざを…」 プシュっと音を立てて、清掃ロボットの頭部が開き その中にゆっくりと、アームがまりさを運んでいく。 「ふざけるなぁっ!ばでぃざはゆっぐりなんだぜっ!!!ゆっくじするたべに…やべっ、やべで!!」 エリア中のゆっくりたちが眼をそらし、耳を塞げない事に絶望する。 清掃ロボットは、そのまま精製ロボットでもある。 問題行動を起した固体や、繁殖に問題の有る固体を発見した場合 その場で内蔵センサーによる質量測定を行い、適切な形に精製する。 「い゛や゛た゛!!」 視界に無くとも、全方位の音を聞き続けるゆっくりにとって 「た゛す゛け゛て゛ぇ゛!!!」 その絶叫は雄弁であり 「【ゆ゛っ゛く゛り゛し゛た゛い゛】!!!!」 その断末魔は【わーむゆうっど】の全てのゆっくりの祈りだった。 現れた時と同じく、僅かな音を立てて姿を消す清掃ロボット ぷらんとゆっくりの恐怖の代名詞である機体が回収口に姿を消した瞬間 悲鳴に鋭敏になった全てのゆっくりの聴覚に 殴りつけるような爆音が襲い掛かった。 * * * 「まりさ…こわいよ…」 「れいむ…なにがあってもずっといっしょだよ…」 相互依存 理解不能の恐怖を感じている今、それだけが二体を支える最後の砦だった。 野生のゆっくりであるならば、その情動は番うに値するかもしれないが プラントのゆっくりからはそんな先の見えた楽観はとうに喪われている。 立て続けに起こった正体不明の恐怖 時間はまだのはずなのに突然消える照明、環境系の停止による暖房の停止。 あまりにも唐突な状況の変化に、急性ノイローゼを起し 失神、気絶、痙攣、発狂…果ては(餡子)脳死するゆっくりまで現れる中で 二匹はただただ震えて、怯えていた。 やがて、覆面をした男たちが現れ 証明は点り、部屋が余所に暖かさを取り戻していった。 男たちは、生き残ったゆっくりを集め 一体一体丁寧に体中を調べつくした。 男達に解放されたゆっくりたちの中から 僅かに勇気の有る固体が『自分たちはこれからどうなるのか』を恐る恐る尋ねると 親指を立て覆面をしているから、顔の全体は見えないがそれでも理解できるほど快活に プラントのゆっくりたちが忘れ去った【笑顔】で、宣言した。 「「「Take it Easy!!!」」」 それは、意味こそ理解できなかったが 【希望】そのもののような、自分達の未来そのものの様な言葉だった。 男たちが作業を終えて立ち去った後 静寂が戻ったプラントエリアで生き残ったゆっくりたちは フワフワと浮き足立つような感覚を味わいながら 餡子の詰まった総身に、何か熱いものを感じていた。 「れ、れいむ…」 「まりさ…れいむね、れいむね…」 なかでも、数少ない最初期からの遺伝情報が伝える絶望を植えつけられてきた二体は 歯の根も合わず、打ち震えている 何かが、起ころうとしている なにかを、取り戻せそうな気がする。 「れ、れ、れいむっ!」 「まりさぁっ!!」 「「ゆっくり、して……っ!!」」 * * * この日 過激派ゆっくり愛護団体によるテロ行為によって 死者129名 重軽傷者290名を数える大惨事となり 【わーむゆうっど】全施設が保有していた 六億匹のゆっくりも喪われた 同日インターネット上に犯行声明が発信され 『人類に歪められた、全ての哀れな【ゆっくり】を開放するまで我々の活動は終らない』 という宣言が世界中を愛護派排斥の動きに傾かせる結果になったのは、皮肉としか言いようが無い。 年をまたいで同日 過激派テロの起こったこの日が 【わーむゆうっどの日】と制定され 三年後の2×××年の【わーむゆうっどの日】を目処に 化石燃料を安価で安全なゆっくり由来のバイオ燃料に完全移行する事を目的に 世界中に大規模なゆっくり精製工場が建設される事が ×カ国協議で正式に発表された。 地球上の全ての人類が ゆっくりに感謝し、依存して生活している 世界は今、ゆっくりで繋がろうとしているのだ。 by古本屋
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『ゆっくりの歌』 「ゆ~ゆゆゆ~ゆ~♪」 またやってやがる。 お店にも畑にもゆっくり対策がされている昨今、ゆっくり達は野生に生えた草木や小さな虫ぐらいしか食べる物がなくなった。 しかし中には人里に現れて人間に食料を貰おうとするゆっくりもいた。 町の中央通りに面する俺の家の前には何故かゆっくりが現れては下手な歌を歌っている。 ここ数日間はゆっくりれいむの家族が歌っていた。 どこで仕入れたのか「たべもの」「おかね」と書かれた箱をそばに置いている。歌に満足したら入れろというのか。 そんな歌で誰か満足するものか。通りすがる人々は皆不快そうな視線を向けて通り過ぎていく。 しかしゆっくり達はめげない。 「おかーしゃん、おうたうまいよ!」 「もっとうたってね!!」 「れいむもいっしょにうたうよ!!」 「「「「ゆゆゆ~♪ ゆゆゆゆ~♪」」」」 今度は子ゆっくり、赤ゆっくりを交えての大合唱だ。 聞くに堪えない。マジでやめてほしい。 お前たちが歌ってるのは俺の家の前なんだぞ! 成果がなければすぐにやめるだろうと一週間我慢したがもう限界だ。 「ゆゆゆ~、ゆっ? おにーさんたべものくれるの? おかねでもいいよ!」 「みんなのうたがうまかったからいっぱいくれるよね!!」 「おにーしゃんほめてほめて!!」 「ああ、いいだろう。俺の家に来なさい」 「ゆ! いいの!?」 「これでゆっきゅりできるよ!!」 「れいみゅたちのおうちができりゅよ!!」 何勝手なこと言ってるんだか。 まぁ、一般家屋にもゆっくり対策がされてるから人の家になんて入れたことないんだろうなぁ。 嬉しそうにニコニコするれいむ家族は開けた戸に向かって駆けっこだ。 だが、荒らすかもしれないお前たちを玄関より奥へは行かせねぇ。 「ゆっ? いきどまりだよ!!」 「おくにいけないよ! どういうこと!?」 すでに玄関には透明な箱をセットしておいたのさ。 ゆっくりが家に入ったときにはすでに箱の中。 俺は全てのゆっくりが箱に入ったことを確認すると入口を閉じた。 「とじこめないでね! ゆっくりだしてね!!」 「これじゃゆっきゅりできないよ!!」 「やめちぇよね!!」「おにーさんゆっくりださないとゆっくりさせてあげないよ!!」 「はいはい、奥へ行くぞ」 れいむ達の抗議なんて無視無視。奥の部屋へと連れていく。 その時いろいろと用意しておく。虐め道具とかいろいろ。 「おじさんもういいでしょ! はやくだしてよね!!」 「もしかしてばかなの? おじさんばかでしょ!!」 「ばーか! ばーか!」 いつの間にかおにいさんからおじさんに呼び方変わってるし。 ゆっくり脳のこいつらにはその程度の罵倒しか思いつかないんだろうなぁ。スイーツ(餡) 「上手い歌を唄えたらゆっくりさせてあげるよ」 「そんなのかんたんだよ! ゆっくりきいてね!!」 「みんなでうたおうね!」 「おじさんきっとこしをぬかすよ!!」 「い~いさ~、い~いさ~♪ ゆっくりでいいさ~♪」 「うん、下手。死んだ方がマシ」 なんだろう。何か分からないけど不快にさせる声とテンポで歌うやつらだ。 俺がれいむ達の歌を否定すると顔を真っ赤にして怒りだした。 「ゆ! なにいってるのおじさん!」 「れいむたちすっごいうまいでしょ!!」 「おんがくせいのちがいだね! おじさんゆっくりふるすぎだね!!」 「おじしゃんゆっきゅりおんちだね!!」 「何でもいいけどさ。俺を満足させる歌を出さない限りずっとそこにいることになるぞ?」 その言葉に自分たちの置かれた状況をようやく理解したらしい。 母れいむなんかは冷汗を垂らしてやがる。 「ゆ! ならおじさんれべるでゆっくりうたうよ!」 「れいむのびせいにききほれてね!」 「ゆゆ~♪ ゆ~♪ かわのながれのゆ~っくり~♪」 今度は人間様の曲をレイプかよ。 それにしても元ネタを知ってるのかこのゆっくりは。 まぁ、どっちにせよ下手だな。でもこいつらが歌えるのはこれで最後かもしれないしもう少し歌わせてやるか。 「ゆゆゆ~♪ ゆゆ~♪」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆ~~♪」 三秒で前言撤回。下手なくせに下手な裏声使うな。 「もうやめろ! お前たちを俺がプロデュースしてやるよ!」 「ゆぎゅっ!?」 俺は箱の上蓋を開けて赤ちゃんれいむを片手で一匹ずつ掴んで取り出す。 割と握力かけてるので赤ちゃんれいむは苦しそうだ。 「なにするの! はやくあかちゃんをはなしてね!!」 「そうだよ! いもうとをゆっくりはなしてね!!」 「ゆっくりできないからやめてね!!」 「良い声出せよぉ?」 そう言って赤ちゃんれいむ達を緩やかに握りつぶす。 「ゆぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!?」 「ぎゅるじぃぃぃ!! はな"じでぇぇぇ!!!」 顔を真っ赤にして苦しむ赤ちゃんれいむはさっきの歌よりもずっといい声を出してくれた。 そうそう。ゆっくりの歌と言えばこれが一番だろ。 クラウザーさんがデスメタルを歌えば伝説になるように、ゆっくりが悲鳴を上げればこんなに良い曲になる。 嗚呼、最初からこうやって歌ってくれれば許したかもしれないのに。 「やめでね! あかちゃんぐるじぞうだよ! はなじでぇぇぇ!!!」 「ゆぅぅぅぅ! ゆっぐりできないよぉぉぉ!!」 「はなじであげでよぉぉぉ!!!」 涙を流して赤ちゃんを放してと頼みこんでくる。 こいつらの必死な声もいいハーモニーを奏でてくれるじゃないか。 「何故? 良い歌を歌ってるじゃないか」 「ぎゅぅぅぅうぇぇ!!!」「ゆっぐりでぎな"、い"ぃ"ぃ"ぃ"」 赤ちゃんれいむはその言葉を最後に潰れて静かになった。 もう終わりか。ま、お望みどおりゆっくりできたから良かったじゃないか。 「ゆぅぁぁぁぁぁああ!! なんでごろじだのぉぉぉぉぉお!!!!!」 「おじさんはゆっぐりじねぇぇぇ!!!」 「れいむのいもーどがぁぁぁ!!!」 泣き叫ぶれいむ達三匹だが、構わず子れいむを一匹取り出す。 片手では掴めないので一匹ずつ歌わせてやるとしよう。 「こんどはなにずるのぉぉ!! これいじょうこどもをいじめないでぇぇぇぇ!!!」 「今度はこれだよ」 どこからともなく取り出した釘を子れいむの右目に刺す。 「ゆぎぃぃ!! いだいよ! れいむのめがあぁぁぁぁ!!!」 「ああああ!! なんでごどずるの!!」 「やめでぇぇぇ!!!」 次は左目だ。その次は右頬、またその次は左頬。 両耳穴、足、額、脳天、リボンの結び目と体中に釘を刺し込んでいく。 「ゆぎゃっ、ゆぎぃぃぇぇぇぇぇえ!! ゆびっ!?」 今度は舌を貫いてやった。 全身釘だらけになる子れいむ。今素手で握りつぶそうとしたら主に俺の手がやばい。それぐらい釘を刺し込んでいた。 特に足の部分には重点的に刺してやった。 「やめでね! ぬいであげでよぉぉ!!!」 「みでるごっちもいだいよぉぉぉぉ!! やめでぇぇぇ!!」 「じゃあ抜いてあげるね」 「ゆっ! はやくぬいでね!!」 俺は母れいむの望みどおり子れいむの釘を抜いていく。 抜くとそこから餡子が漏れ出していく。 十本抜いた時点で体中から餡子が洩れていた。 「だ、だめだよ!! あんこがでてるよ!! やめでぇぇぇ!!!」 「えー? 抜いてほしいんでしょ?」 言いながら今度は足の部分の釘を一気に全部抜いてやった。 抜くと同時に重力にまかせて餡子が床へとぶちまけられていく。 「ゆぎぁぁぁぁぁ!!! れいむのあんこがぁぁぁぁ!!! おかーざんだずげでぇぇぇ!!!」 「あああああ!!! これいむぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「やぁぁぁぁぁぁ!!!」 素晴らしい声だ。高音が綺麗に出せてるじゃないか。 あぁ、もっと聞いていたいが餡子が尽きた子れいむから声が出なくなってしまった。 次の子れいむて続きを奏でなければ。 次の子れいむを箱から取り出してすぐさま金槌で叩く。 「ゆべぇ!? ぎゃめでぇぇ!!」 「もうやめでぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 今が盛り上がりどころなんだ。一息でもつかせてたまるものか。 なるべく一度に潰れないように力を加減しながら叩く。餡子が少し漏れるぐらいなら構わない。さらに叩く。 「ゆぎぃ?! ひでぶっ! や、やめで!? いだっい! だたがっ、ないでぇっ!!」 「あっはっは、いいリズムで歌うじゃないか。もっとだ。もっと歌えよれいむ!!」 ノってきたぞ。もっと殴ってやる。 潰れないように潰れないように…潰れないようにぃ! 「ゆぶげぇぇぇっ!!?」 「れいぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 あ、いっけね。勢いあまって潰しちゃった。 餡子が子れいむから大量に流れ出てる。これは死んだな。 「あああああ!!! みんなじんじゃったぁぁぁぁ!!! おじさんはじねぇぇぇ!!!」 「いやぁ、でもいい歌だったじゃないか」 「なにをいっでるの!? くるじぞうなごえだったよ!!!」 「えー、君にはこの良さが分からないのかぁ。音楽性の違いかな」 「じねぇ! ごのゆっぐりごろじ!! ゆっぐりじないでいまずぐじねぇぇぇ!!!」 「まったく。君には良さが分かるよう教育しないといけないな」 そう言ってヘッドホンを母れいむに取り付けた。 ゆっくり用の特製ヘッドホンで、万力のように締めつけて取り付けるのでゆっくりには決して取れない仕様だ。 「ゆっ!? なにもぎごえないよ!!」 遮音性の高いやつだからな。 でも大丈夫。すぐに音楽をかけてあげるよ。 俺収録の『ゆっくりの歌』だ。 音楽を再生すると母れいむはすぐに顔を青ざめた。 すでにこの世にはいないゆっくり達の悲鳴が延々と聞こえることだろう。 『ゆげぇぇぇ、まりざはわるぐないんだぜ! やめぎゅぇぇ!!?』 『ちちちちんぽー!? いたちんぽー!!』 『おかーしゃんだしゅげでぇぇ!!! あちゅいょぉぉぉぉぉ!!!!』 『わがらないよぉぉぉ!! しっぽをだべないでぇぇぇぇぇ!!!』 「やめでぇぇ!! こんなのききたぐないよぉぉぉぉ!!!」 「何、すぐに良い曲だって思えるようになるさ。 そうだ。後でさっき録っておいた君の子供の歌を聞かせてやるよ」 「おじさんなにいっでるのがぎごえないよぉぉぉ!!! ひめいじがきごえないぃぃぃ!!!」 数日後、精神に異常をきたして外部からの刺激に対して何も反応しなくなったれいむが出来上がった。 食事は口元に持ってけばもしゃもしゃと咀嚼する。 ただそこに在って生きているだけの物だ。 つまらん。結局こいつもゆっくりの歌の良さが分からなかったか。 こいつはもういらない。明日の朝には生ゴミと一緒に捨てておこう。 終 by ゆっくりしたい人 短めのを書こうと思った結果がこれです。 考えながら文を書いたので最初と最後で矛盾が生じてるかも。ゆっくりゆるしてね! このSSに感想を付ける
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403 :名無したんはエロカワイイ:2008/09/13(土) 01 00 12 ID vPyZEYMF0 生物(いきもの)じゃなくて食物(たべもの)だもんな いや、ナマモノか? ================================================================ 食物でしょう。 ゆっくりの身の程 魔法の森の奥で、一人の少女がバスケット片手にきのこ取りをしていた。 黒い三角帽子に黒いエプロンスカート、波打つ金髪にちょっと勝気な瞳。 いわずと知れた霧雨魔理沙である。 「今日はなかなか実入りがいいぜ……」 フンフンと鼻歌を歌いながらバスケットを満たし、森の奥へと歩いていく。 と、いきなり横手からとげとげしい声をかけられた。 「ゆ! おねえさん、やめてね!」 「そうだよ! れいむたちのじゃまをしないでね!」 「ゆっくりとあやまってね!」 「あやまらないとひどいんだぜ!」 魔理沙は驚いて振り向いた。そこにいたのは、いくつもの饅頭たち。 いや、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの群れである。 「は……?」 魔理沙は目を点にして立ち止まる。といっても、ゆっくりの存在に驚いたからではない。 森にゆっくりが出始めてから、もうずいぶんたつので、その存在には慣れている。 驚いたのは、そのれいむとまりさたちの態度に、だった。 はっきり言って、魔法の森における魔理沙の生態的地位は―― 王。 のそれである。マスタースパークを撃つまでもなく、弾幕をほんのちょっと張るだけで、妖怪山賊の類でも逃げていく。 いわんやゆっくりにおいておや。 この森に住むゆっくりの中で、本家魔理沙の力を知らないものは、一匹たりとていないはずだった。 だが、この饅頭たちは…… 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!」 「そーらよ、ゆっくちぷれいちゅだよ!」「ぷれいちゅ!」 「みんなでゆっくりキノコとりをしてるんだから、きちゃだめだぜ!」 「だめだぜ!」「らめらじぇー!」 「「「「ゆっくりあっちへいってね!!!」」」いっちぇね!」 れいむ家族もまりさ家族も、口をそろえて言う。舌足らずな赤ゆっくりだけはちょっと遅れる。 魔理沙はぽかんとそれを見つめていたが、「んー」と唸ってこめかみをぽりぽりかき、聞き返した。 「おまえら、ひょっとしてよその森から来たか?」 「ゆ? そうだよ! きょうついたばかりだよ!」 「だから、とってもつかれているんだぜ!」 「でも、こんなにきのこのいっぱいあるゆっくりプレイスをみつけられたから、ゆっくりしているよ!」 「「「「「ゆっくりしているよ!!!」」」りゅよ!」 そう言ってなんのつもりか、にゅいにゅい、と二度ほど背伸びをし、 「ひさしぶりのゆっくりだから、ゆっくりするの!」 「するの!」「ちゅるのー!」 「ゆっくりとね!!!」 そう言って、勝ち誇るようにふんぞり返った。 「はぁー……」 なんというか、ゆっくりのゆっくり宣言のフルコンボを食らった感じで、唖然とする魔理沙だった。 しばらくそうしていたが、キノコ取りをしていたことを思い出した。 で、しゃがんでそこらのキノコを、ひょいひょい、と取った。 当然、一帯をゆっくりプレイス化していたれいむたちは、激怒した様子で喚きだした。 「ゆゆゆ! れいむのゆっくりプレイスだっていったよね!」 「はやくやめてね! やめて、とらないでね! とらないでね! ゆーーーーーっ!」 「やめろっていってるんだぜ! ゆるさないんだぜ! むぅーーーーっ!」 「やっつけるんだぜ!!!」 とうとうれいむとまりさたちは魔理沙に殺到し、体当たりを始めた。それなりに重いやわらか物体が、もこんぼこんどよんぶよんと、魔理沙の肩や背に当たる。 もちろん、痛くはない。 だが、うざい。 魔理沙はため息をつき、ひとことだけ警告してやった。 「私は生き物。お前たちはそれ以下。物を食うな。わかったか?」 「ゆ? なにいってるの?」 「わけがわかんないんだぜ!」 もこんぼこんどよんぶよん。 魔理沙は決意した。 顔の前に人差し指を立てて、唱える。 「Зола для золы, пыли, пыли, бун к булочке.」 ぽっ、と爪の先に光がともった。 その指で、一頭の母れいむの額に触れる。 「ゆっくりあっちへいってね! ゆっくりしんでね! ゆっ……」 叫びながら自信満々で体当たりしていたれいむが、触れられた途端、ぽてん、と地に落ちた。 傷はない。打たれたわけでもない。病や薬に冒されたようでもない。 ただ、のたりと落ちた。 勝気だった表情はそのままだ。目もしっかりと見開かれている。ただ、その瞳にもはや光はない。プラスチック玉のように無機質に景色を映しているだけ。 バレーボールほどの丸い体が、わずかに傾き、のろのろと平らに潰れていく。 その姿に、周りのゆっくりたちが驚き、駆け寄った。 「お、おかーさんん!?」「おかしーゃぁぁん!」 「れっ、れいむ? どうしたんだぜ?」 「ゆっくりしてね、ゆっくりげんきをだしてね!」 話しかけたり、揺さぶったり、頬ずりしたり、懸命にぺろぺろとなめたり。 ゆっくりにできる、精一杯の方法で、気遣ってやる。 だが、反応はない。まったくない。悲鳴やうめき声さえも。 即死したのだろうか。そう思い込んだ子供たちが、涙を流して魔理沙を罵倒した。 「れ゛い゛む゛の゛おがーぢゃんに、なにずるのぉぉぉぉぉ!?」 「ゆっくりできないひどだね! さいていだねぇぇ!!」 「いっしょうゆっくりしないでねぇぇぇ!」 「ゆっくりごろじいぃぃぃぃぃ!!!」 「私は、人間」 我関せずとばかりにぷちぷちとキノコを取っていた魔理沙が、肩越しに言った。 「お前たちは、それ以下。――Зола для золы, пыли, пыли, бун к булочке.」 再び、指先の光。今度はゆっくりまりさに触れる。 「ゆっくりじね! ゆっくりじ……」 飛び掛る途中で触れられたまりさは、ごろごろん、と地に転がった。 その顔は、れいむと同じだ。何の表情もない無機質。いや―― ただの、有機物。 食物。 そう、饅頭であるゆっくりたちが、饅頭本来の姿に戻ったのだ。思考も運動もなく、幸福も不幸もなく、生も死もない、ただの菓子に。 それは魔法の力。正確には、魔法を打ち消す力。 「魔法使い」である魔理沙にそれができて、なんの不思議があろう? だがゆっくりにはわからない。魔法はおろか、力の差すらわからない。 おのれたちがいかに不自然な存在であるか、すら――。 「おかーしゃんたちをゆっぐりがえしでねええええ!」 「「「がえじでねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」 殺到するゆっくりたちにむかって、魔理沙はくるりと振り向いた。 両手の指を花びらのように向ける。 呪文――そして光。 その瞬間、光に触れられたゆっくりたちは、啓示を受けたように悟る。 れいむたち―― まりさたち―― お ま ん じ ゅ う ? ただちに悟りは消える。 なぜなら、饅頭は悟らないから。 ただ柔らかな和菓子と化して、ぼたぼたと落ちた。 「ん~ふふ~ふふ~♪ さあ、今日はこれぐらいでいいかな。……っと、いけないいけない」 キノコ取りを終えて立ち上がった魔理沙は、周りの光景を見てつぶやいた。 八卦炉を取り出して、何もない地面に向け、発砲する。 魔砲・Fマスタースパーク。絶大な閃光があふれ、森の空が一瞬暗くなる。 後には、煙を立てるおおきな穴。 「食べ物を粗末にしちゃ、いけないからな」 転がっていたたくさんの饅頭を、足など使わず丁寧に手で穴に放り込むと、ようやく満足した様子で、少女は去っていった。 ================================================================ YT