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ウサギのナミダ・番外編 黒兎と塔の騎士 前編 ◆ 「遠野さんとティアって、強いのか?」 安藤智哉の言葉に、四人の少女はそれぞれドーナツをくわえたまま、静止した。 四人とも目が点になっている。 俺何か悪いこと言ったか? と首を傾げた。 悪気はなかった。 だが、四人の中で一番早く、蓼科涼子が解凍し、くわえていたドーナツを落として、般若の顔で安藤の胸ぐらを掴んだ。 「何言ってくれちゃってんの、このルーキー風情が!」 「いや、落ち着け蓼科……」 「セカンドリーグの全国チャンピオン『アーンヴァル・クイーン』と互角に渡り合えるのよ!? ティアは強いに決まってんでしょーが!!」 「それがさ……その……オルフェが勝っちゃったんだけど……ティアに」 「…………はあ?」 T駅前、おなじみのミスタードーナッツの店先である。 さすがに恥ずかしい状況なので、動き出した美緒たちが涼子を止めた。 彼女は、師匠に心酔しているので、遠野たちを卑下する話題には、過剰に反応してしまう。 渋々席に着く涼子。視線は安藤を睨んだままだ。 安藤の隣にいた美緒が、涼子をなだめるように口を開く。 「オルフェが勝ったって……遠野さんたちと対戦したの?」 「ああ……こないだの土曜日、ちょっと早い時間で、みんないなくてさ……遠野さんから、アルトレーネと対戦したことないから、やってみないかって」 「それで、ティアが負けた、って?」 ちょっと信じられない、有紀は目を見開いた。 安藤は頷く。 涼子がイスに背を預け、投げやりに言った。 「練習してたんでしょ。遠野さんは勝敗に頓着しない人だから」 涼子は以前、遠野に言われたことがある。 『勝敗よりも、問題点を見つけることが大切だ』と。 あのときの言葉は、涼子と涼姫にとっての座右の銘だ。 安藤は、その涼子の言葉にも頷いた。 「それも分かってるよ。クイーンと伝説的なバトルをしたことも知ってる。 だからこそ、遠野さんとティアが真剣に戦ったら、どれだけ強いのか、どんな戦いになるのか、興味があるんじゃないか」 ふーむ、と美緒たち四人は腕組みして考え込んだ。 確かに、ティアの強さを伝えるのは難しい気がする。 実際に見るのが一番なのだが、遠野は全力の真剣勝負をあまりしない。 しかし、安藤はしばらく後に、それを目の当たりにすることになる。 □ ……墓穴を掘った。 俺はゲーセンの定位置である壁際に背をつき、額を押さえて落ち込んでいた。 オルフェとクインビーの対決からしばらく後の週末である。 あの日、俺は武装神姫のチームを作ることにした。 ここ『ノーザンクロス』では、バトルロンドのチームを作るのがはやりだ。 チームを組むことのメリットは、仲間意識が強くなるだけではない。チームメンバーなら、練習のお願いもしやすいし、戦い方の研究や情報の交換にも役に立つ。 また、対戦もチーム形式で行える。バトルの幅が増え、楽しみも増す。 チームバトルの魅力にとりつかれた常連さんたちが、こぞってチームを組んだ。 俺もいくつかのチームに誘われたが、いずれも断った。 久住さんと大城が「チームを組もう」と言い出したときにも保留にしていた。 俺にとってメリットがないと思っていたからだ。 現状維持でも、俺が武装神姫に求めることは達成できると考えていた。 だが、先日の事件で少し考え方を変えた。 チームを組めば、おいそれとチームメンバーが理不尽な目に遭うことも抑止できるのではないか。 そう考えて、チームを結成することにしたのだが……。 「墓穴を掘った……」 今度は口に出して言う。 チームを結成してからこっち、俺は自分のバトルをろくにしていない。 忙しすぎるのだ。 チーム結成直後は、チームに入れてほしいという希望者が続出した。 それらはすべて断った。チームを大きくする気はないからだ。 それで一苦労した。 だが、今度は俺のチーム宛にチームバトルを申し込んでくる連中が続出した。 それもすべて断った。 そもそも自分を含めたチームメイトを保護する意味が強いチームだし、チーム戦ができるほど、まだチームとしての熟成が足りていなかったからだ。 それでもう一苦労した。 チームのみんなは、俺の考えをよく理解してくれているから、何も言わなかった。 こぢんまりとした俺のチームがなぜこうも注目されるのか、と疑問に思ったが、よく考えてみれば、あの『エトランゼ』と現ランバトチャンピオンと、三強を倒したルーキーがいるチームなのだから、目立って当然か。 そんな事務処理に追われながら、今度はチームメイトのよしみで、バトルの相談に乗ったりしている。 だが、今度はそれも遠慮がなくなってきている。 特に蓼科さんは俺の一番弟子を自称している(認めたくないが)ので、ひっきりなしに話しかけてくる。 それに負けじと、成長著しい安藤が、バトルのアドバイスを求めてくる。 そこに他のチームメイトも加わるのだから、正直いい加減にしろと言いたくなる。 だから、 「おーい、遠野、虎実の空中戦の機動なんだけどさー」 「大城、貴様もかっ」 と言って、大城を邪険にあしらうのも、無理からぬことと思ってほしい。 「まあまあ。それだけ遠野くんがみんなから信頼されてるってことじゃない」 隣にいる久住さんが、そう言って笑う。 ……本当にそうだろうか。 いいように使われているだけのような気がするのは気のせいか。 「ところで、ミスティの変形のタイミングなんだけど……」 「君もかっ」 なんだか誰も信じられなくなりそうな、日曜の昼下がりである。 気分は墓に片足を突っ込んでいる感じだったが、平穏な日々ではあった。 そこに、珍しい客が現れた。 □ ゲームセンター『ノーザンクロス』の入り口が開き、新たな客が入ってくる。 その客に気づいた武装神姫コーナーの常連さんたちが、にわかにざわめきはじめた。 それに気が付いて、俺はふと視線を上げる。 その人物は、いつものように人の良さそうな笑顔で、俺に向かって手を挙げた。 肩には、輝くばかりの存在感を放つ、銀髪の神姫。 「高村……」 「遠野くん、ご無沙汰してます」 俺と高村優斗は握手を交わす。 俺の胸ポケットから、ティアがひょっこりと顔を出した。 「こんにちは、雪華さん」 「ごきげんよう、ティア」 高村の肩にいた銀髪のアーンヴァルは、鮮やかな笑みでティアに応えた。 まわりにいる誰かからため息が聞こえた。 隣にいた久住さんたちも、高村と雪華に挨拶する。 彼がここを訪れたのは、おそらくティアと雪華の一戦以来だろう。 久住さんにとっても久しぶりの再会であるはずだ。 「それで、高村。今日はどうした、こんなところまで。 ……それに、そちらは?」 「今日は、彼と彼の神姫を紹介したくて、来ました。……鳴滝くん」 高村の呼びかけに、一歩後ろにいた男性が前に出る。 体の大きい短髪の青年だった。 堂々とした印象。 ラフな服装の上からでも、鍛え上げた筋肉が見て取れる。 「鳴滝修平です」 「……遠野貴樹です。よろしく」 「お噂はかねがね」 「……はあ」 俺と鳴滝は握手を交わした。物怖じしない性格のようだ。 鳴滝の肩には、神姫がいた。 見たところ、騎士型サイフォス・タイプのカスタム機のようだ。 不機嫌そうな顔で、こちらをやぶにらみである。 マスターである鳴滝の態度とまるでちぐはぐだ。 「というわけで、今日は鳴滝くんのランティスと、遠野くんのティアで対戦してもらいたいんです」 そう言う高村は、相変わらずにこにこと笑っている。 鳴滝は力強く頷き、そして俺は首を傾げた。 ◆ 「なあ、今遠野さんと話してる人……みんな注目してるけど、誰なの?」 安藤が話しかけた美緒と他三名も、やはり遠野たちの会話に釘付けになっている。 涼子はそれを聞いてため息を付いたが、美緒が丁寧に教えてくれた。 「高村優斗さんと、その神姫で雪華。二つ名は『アーンヴァル・クイーン』。現セカンドリーグ全国チャンピオンよ」 「クイーンの雪華って……あの、ティアとすごいバトルをしたっていう……!?」 「そう」 美緒はあっさりと頷いた。 あれがあの『アーンヴァル・クイーン』なのか。 安藤の目は、ひときわ存在感を放つ、銀髪の神姫に吸い寄せられる。 雪華と呼ばれる神姫は、人の目を引きつけずにはおかない何かを備えているように思えた。 □ 「彼の神姫、ランティスは強いですよ。近接戦闘に限れば、秋葉原でも最強クラスです」 「ふむ……」 高村はそう言うが、俺はなおさら首を傾げざるを得ない。 武装神姫の対戦のメッカ・秋葉原で、近接限定ながらも最強クラスなら、対戦相手に事欠かないはずだ。 なのに、なぜ東京から離れたゲームセンターまでやって来て、ティアとの対戦を望むのか? その疑問をぶつけてみると、高村はあっさりこう言った。 「ランティスに挑む相手は、もう秋葉原にはいないのです。彼女はあるステージにおいて無敵を誇ります」 「無敵……?」 秋葉原で、特定のステージ限定とはいえ無敵とは……。 それはある意味、全国大会優勝ほどの実力ではないのか。 「……どのステージか聞いてもいいか」 「それは塔のステージさ。塔においては無敵ゆえに、こうあだ名された。『塔の騎士』あるいは『ナイト・オブ・グラップル』と」 鳴滝が穏やかな表情のまま、さらりと答えた。 肩にいるランティスは、いまだに不機嫌そうな表情を崩さない。 彼女はずっと俺の方を……いや、どうやら俺の胸ポケットにいるティアを睨みつけている。 と、大城が珍しく小さな声で口を挟んだ。 「塔の騎士・ランティス……? 聞いたことあるぞ。秋葉原で無敵のサイフォス・タイプで、その特徴は……武器を持たずに、徒手空拳で戦うって……」 大城は神姫プレイヤーの情報に詳しい。 だが、秋葉原ローカルの神姫まで知っているとは、なかなかの精通ぶりじゃないか。 高村と鳴滝は頷いた。 大城の情報は正しいようだ。 しかし、俺には不可解な点がある。 いくら近接格闘戦が得意な騎士型とはいえ、セットにある多彩な武器を使わず、素手……つまり、格闘術を使った肉弾戦で戦うというのは、いささか無謀ではないか。 しかも、塔のステージでは無敵を誇るという。 にわかには信じがたい。 「塔で無敵って……たとえば、アーンヴァルなんかの飛行タイプを相手にしてもか?」 「もちろん」 「ゼルノグラードのように、銃火器の塊相手でも?」 「言うまでもなく」 「ストラーフのように、サブアームで手数を稼ぐ相手でもか」 「当然です」 高村は俺の言葉にいちいち頷いた。 「塔のステージは、いささか特殊です。塔で最高のパフォーマンスを発揮できる神姫を考えたときに、一番に思いついたのがティアだったんですよ」 「噂は聞いてます。地上戦用の高速機動型で、その戦闘スタイルは唯一無二。そして、『クイーン』を破った、と」 俺は、鳴滝の神姫以上に、不機嫌そうな顔をした。 雪華はティアに負けたと言っているが、実際の試合結果ではティアが敗北している。 クイーンに勝った、などという風評は、俺にとっては好ましいものではない。 そんなことを考えていると、鳴滝の肩から、声がした。 「娼婦風情が、我が女王を倒したなど……世迷い言にもほどがある」 俺は思わずランティスを睨んでいた。 ティアが俺の胸ポケットで、身体をびくり、と震わせたのだ。 ランティスは苛烈ともいえる視線で、ティアを睨んでいた。 そんな神姫を、マスターの鳴滝がたしなめる。 「おい、ランティス……その言い方はないだろう」 「いいえ、師匠。我が女王の強い勧めがあったから、このような辺鄙な場所に来ましたが……あそこの気弱な娼婦が、わたしの相手足りうるなど、到底思えません」 もはやそんな言葉に動揺する俺とティアではないが、初対面の神姫にそう言われて、いい気分はしない。 鳴滝の物腰とは対照的に、不機嫌の度をますます強めるランティス。 そこへ、雪華の静かな叱責が飛んだ。 「ランティス、たとえあなたであろうとも、ティアへの侮辱は、このわたしが許しませんよ」 「え……あの、女王……」 「ティアは我が友であり、我がライバルです。あなたがわたしに見せる忠誠と同じように、彼女にも敬意を払うべきです」 「しかし……あれは娼婦です。あのような下賤な……」 「お黙りなさい!」 雪華が珍しく厳しい口調で怒鳴る。 「そのようなことに囚われているから、あなたは井の中の蛙だというのです。今のあなたのバトルは卑しいというのです」 「そ、それは言い過ぎではありませんか、女王!」 雪華の言いように、ランティスは気色ばむ。 どうやらランティスは、『アーンヴァル・クイーン』に仕える騎士を気取っているらしい。 だとすれば、辺鄙なゲーセンに棲む、人に言えない過去を持つ神姫に対し、敬愛する女王が下へも置かない扱いというのは、納得が行かないのも道理か。 ランティスはなおも食い下がる。 「わたしにも自負があります。相手は高速機動型とは言え、地上戦用。塔であれば後れを取ることはありえません!」 「その増長が卑しいというのです」 「女王!」 「わたしの物言いに不満があるならば、ティアとバトルなさい。きっと今のあなたに足りないものを教えてくれるでしょう」 あくまで不遜な態度を崩さない雪華。 ランティスは雪華のつれない態度に呆然とし、そしてティアへの憎悪を露わにした。 苛烈な視線が俺の胸ポケットへと向けられる。 ティアははらはらした表情で、雪華とランティスを見比べていた。 雪華はやわらかな微笑みを浮かべ、ティアを見て言った。 「ティア。お手数ですみませんが、このランティスに稽古を付けてやってもらえませんか?」 「……え? あ、あの……えと……」 戸惑うティア。 そして、ランティスがついに切れた。 「……いいでしょう。そこな神姫を完膚なきまでに打ち砕いてご覧に入れます。 師匠! マッチメイクを!」 マスターである鳴滝は肩をすくめ、苦笑しながら言った。 「……ということなんだが……ランティスの無礼な物言いは謝る。すまん。 で、改めてバトルを申し込みたい。どうかな?」 ランティスとは違い、鳴滝は柔軟だった。 ランティスの物言いに、正直ムカつくところもあったが、鳴滝は謝ってくれたし、高村と雪華がわざわざここまでやって来て、バトルのセッティングをしようというのだ。 しかも相手は、近接戦闘では秋葉原最強の神姫。 神姫プレイヤーとして、受けなければなるまい。 「ティア、行けるか?」 「マスターが戦いたいというならば、いつでも」 胸ポケットのティアに尋ねれば、いつもの答えが返ってくる。 俺は頷いた。 「OKだ。バトルしよう」 「よかった」 笑って言った鳴滝の肩から、ランティスが続けて言う。 「ステージは『塔』を希望する」 「塔、か……」 「……何か不服でも?」 「いや……ちょっとトラウマがな……」 以前俺たちが経験した塔でのバトルは、あまり思い出したくない。 そばにいた仲間たちも、少しうんざりとした表情をしている。 だが、俺は気を取り直して言った。 「いいだろう。塔のステージで受けて立つ」 俺がそう言った瞬間、周囲から歓声が上がった。 いつの間にか、俺たちのまわりに多くのギャラリーが集まっていた。 ■ バトル直前。 サイドボードに納める装備を吟味しながら、マスターはわたしに言った。 「相手は近接戦闘のプロフェッショナルだ。ちょうどいい機会だ。練習させてもらえ」 「で、でも……ランティスさんはそういう雰囲気じゃなかったみたいですが……」 筐体を挟んだ向こう側のアクセスポッドから、いまだ剣呑な視線がわたしを突いている。 「むしろ好都合だ。こんな草バトルなのに、向こうは真剣勝負で来てくれる。こんなチャンスは滅多にない」 「はあ……」 マスターは楽しそうだ。 その相手に睨まれてるのはわたしなんですけど。 ランティスさんに、圧倒的な力でねじ伏せられるとは、マスターは考えないのだろうか? ランティスさんは、近接格闘戦のみなら、秋葉原で最強クラスだという。 ということは、近接格闘戦でなら、雪華さんをもしのぐ、ということではないのだろうか? しかもステージは『塔』。 地上戦闘用の神姫同士ならば、丸く区切られた、何の障害物もない、まるで円形闘技場のような場所でのバトルになる。 小細工の入る余地もない、真っ向勝負になる。 そんなステージで無敵のランティスさんとわたしで勝負になるのだろうか。 そんなことを思いながら、マスターを見上げる。 するとマスターは微笑んでくれた。 「心配するな。いつも通りにやればいい」 「はい……って、サイドボードに火器が登録されていませんけど……?」 「ああ、相手は武器を持たないんだろ? だったらせめて、近接武器だけにしておくのが礼儀と言うものだろう」 「どこがいつも通りなんですかっ」 マスターが相手を侮っているとも、面白がっているだけとも思えないけれど。 相変わらずマスターの考えはわたしにははかりしれない。 「よし、はじめよう」 わたしと筐体が形作るバーチャルフィールドをつなぐ、アクセスポッドが閉じてゆく。 外の光は、細い一筋の線となり、やがて真の暗闇に包まれる。 一瞬の浮遊感。 意識される対戦カードの文字列。 『ティア VS ランティス』 次に目を開いたとき、わたしは巨大な塔の中にいた。 そして、わたしの視線の先。 ランティスさんの姿があった。 ■ 「ナイフ……?」 ランティスさんはわたしを睨みつけながら呟く。 わたしの手には、大振りなコンバットナイフが一本。 逆手に持って構える。 ランティスさんのまなじりが、さらにつり上がった。 「貴様ッ……銃器も持たずに……舐めてるのか!?」 「いえ、その……マスターの指示で……」 「ふざけるなッ!! もう許さん……一気に決めてやるッ!!」 ランティスさんはそう言うと、両手を顎の前に構え、そのままわたしに向かって突進してきた! 一足飛びに距離を詰めてくる。 わたしはまだ動き出せずにいる。 右ストレートのパンチ。 ランティスさんの、分厚い手甲を着けた腕が、大気を裂いた。 「ハァッ!!」 「わわっ!?」 これほどに速いパンチははじめてだった。 わたしはなんとかかわすだけで精一杯。 でも、ランティスさんの動きは止まらない。 パンチを繰り出した姿勢から、上体を崩し、身体を回転させる。 わたしは瞬時にランティスさんの意図を悟った。 これはわたしが得意とする格闘技と動きが同じ。 このあと、ランティスさんの脚が跳ね上がり、かかとがわたしを狙い打つはず。 はたして、彼女の脚部アーマーに覆われたかかとが空を切る。 「むっ……」 ランティスさんが姿勢を戻したときには、わたしはすでに彼女の攻撃範囲から逃れ、間合いを取っていた。 そうでなければ危ない。 ランティスさんのパンチもキックも、神姫を一撃で破壊するに足る威力を持っている。 「少しはやるようだな……」 ランティスさんは落ち着いた口調でそう言うと、わたしの方を向いて構えを取った。 彼女の装備は、騎士型サイフォス・タイプの軽装アーマーのアレンジ。 銀色の装甲が鈍く光る。 隙のないその構え。 ランティスさんの姿が何倍にも大きく見える。 わたしも腰を落として構える。 そして、走り出した。 中編へ> Topに戻る>
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こっちのwikiはおえかきもできるのか・・・ -- ま_こ (2005-08-07 12 16 57) 名前 コメント
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現在、paint_bbsプラグインはご利用いただけません。 おおきさどんくらいまで可能なのかな・・・
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「アトシャーマの音楽隊」 むかしむかしあるそうげんに、一人のウマが住んでいました。 ウマは小さい頃から働き者で、力持ちでまほうもつかえ、頭もよかったのですが、あるときいいよられたながれもののウサギにだまされて、 じまんのきょこんもたたなくなるくらいに搾られていらい、こわくておんなのこを抱くことが出来なくなってしまいました。 まわりのなかまはそんなウマをあざ笑ったので、恥ずかしくなったウマはさっさとそうげんを逃げ出してシュバルツカッツェにやってきたのです。 たいりくでいちばんさかえているシュバルツカッツェのおいしゃさんなら、きっとじぶんのトラウマもなおしてくれるにちがいないと。 でもでも、そうはうまくいかないのが現実というもので、どんなおいしゃさんに見てもらってもおんなのこがこわいのがなおりません。 なんねんたってもなんねんたっても治らなかったのですが、あるときウサギのくににはこころをいやすおいしゃさんがいるといううわさを聞きました。 ウサギのくにに行くなんてほんまつてんとうだ、とウマはおもったのですが、それいがいに方法がないのなら仕方ありません。 かばんひとつを背にしょって、とおいとおいゆきぐにへの道のとちゅう、げっそりとした一人のイヌがたおれているのをウマはみつけます。 「やあ。とても疲れているみたいだけど、いったいどうしたんだい?」 ウマの言葉に、イヌが答えます。 「いやあ、ついさっきのはなしなんだがね。ぐんたいぐらしでずっとたまってたもんで、ついついウサギのしょうふを買っちまったのさ。 とても気持ち良かったんだが、かねも精もすっかりはきだしちまって……うっかりいっしゅうかんもいりびたっちまってね。 それでぐんたいをたたきだされて、悔しいからってもういっかいウサギに挑んだのがいけなかった。これからどうしたものかなあ」 「ふーん。きみもウサギのひがいしゃなんだね」 と、ウマは言いました。 「おれはこれからアトシャーマヘ行くところなんだけど、きみをごえいにやといたいな。お金ならそれなりにあるんだ。 ……それに、ウサギあいてにいっしゅうかんももつなら、おれのあいてだってできそうだしね」 それを聞いて、イヌはすっかり喜びました。イヌもウサギのせいでおんなのこがこわくなりかけていましたし、 もともとぐんたいにいたころからだんしょくにきょうみはあったからです。多めのおきゅうりょうもみりょくてきでした。 それからしばらくしたある日のこと、一人のネコが道ばたにすわりこんで、まるでこの世の終わりのような顔をしているのを二人は見つけました。 「おやおや、かわいいこねこくん、なにをそんなに悲しそうにしているんだい?」 と、ウマはたずねました。 「ぼくは、ふごうのひとりむすこだったんです。だけどおとうさんがウサギに入れ込んで、家業をほったらかしにして散財して、 おまけについ先日駆け落ちして……いまでは借金取りに追われる毎日なんです。もう疲れたんです。縄があったら首をつっているところです」 「ふーん。じゃあ、おれたちと一緒にアトシャーマヘ行こうじゃないか。死ぬならウサギに文句の一つでも言ってからでも遅くないだろう」 ネコは、それはいい考えだと思ったので、みんなと一緒に出かけました。かれはとてもかわいい姿をしていたので、 イヌとウマにそれは丁寧に可愛がられました。最初はあまり乗り気ではなかったかれも、だんだんとおとこの快楽におぼれていきました。 三人はどんどんと街道を進んでいきます。アトシャーマへあと二週間、と言ったところで、かれらは一人のニワトリに出会います。 ニワトリはまっかなトサカをぶんぶんと振りながら、ありったけの声でさけびたてていました。 「き、きみは、あたまをゆさぶるような大きな声で歌を歌っているが、いったいどうしたんだい?」 と、ウマが聞きました。 「愛するひとが去ってしまった悲しみを歌っているのさ!コケーッ!」 と、ニワトリは答えました。 「タンポポの綿毛のようにふわふわなあのひと!啄みたくなるまっしろな長い耳!それにあのとろけるような……コケーッ! アトシャーマにあのひとは帰っていった!ワタシは追いかけたい!追いかけたいのに!寒さに弱い私はきのみきのままではこれ以上北へは進めない! だからお金を稼ごうとせめて得意な歌を!のどの破れるほど!響かせているのさ!ケッコー!」 「おいおい、なにを言っているんだい」 と、ウマが言いました。 「そんな歌じゃあ必要なお金がたまるまでどれだけかかるかわかったもんじゃない。それよりおれたちと一緒に来たらどうだい。 目的は違うけれど、おれたちはアトシャーマヘ行くところだ。第一、きみの声はもっと別の事につかった方がいいとおもう」 ニワトリはまさに渡りに船と、感謝の気持ちを歌で表わしました。その大きさと言ったらあたりに積もりかけていた雪が爆音でふっとんでしまうほどでした。 ニワトリを攻略するのはウマにとってさえ難しい事でしたが、心はともかく身体を靡かせるのには成功しました。 かれは種族柄イってしまうのがとてもはやかったのですが、それをおぎなってあまりある量を出す事が出来るのです。 さてさてそんなこんなでくんずほぐれつの四人はアトシャーマに向かっていったのですが、あいにく雪がひどくてすすめません。 一行はとある森で夜を明かす事に決めました……。
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ウサギのナミダ・番外編 黒兎と塔の騎士 中編 □ ランティスの瞬発力に、俺は目を見張る。 一瞬とはいえ、ティアが反応できていなかった。 初撃はからくもかわしたが、油断はできない。 あの瞬発力を持ってすれば、たとえティアの高速機動を持ってしても、打ち込むチャンスは何度も作れるだろう。 ランティスは今、油断なく構えている。隙は見えない。 俺からティアへの指示はない。今はまだ。 ゲームは始まったばかりなのだ。 ◆ 一方、鳴滝もまた、ティアの機動力に舌を巻いていた。 ランティスの踏み込みをかわした神姫はそういない。あのクイーン・雪華でさえ、ランティスの攻撃を捌くのがやっとだったのだ。 「あれをかわすか……」 『我が女王が推挙するだけのことはある、ということでしょう』 ランティスの言葉に、鳴滝は頷き、そして笑みを浮かべた。 そう、こういう相手を求めていた。 ランティスと同じ土俵で戦ってなお、互角に戦える好敵手。 鳴滝はディスプレイに目を移す。 構えているランティス。 対してティアは、腰を落とした体勢から加速しようとしていた。 ■ わたしはランドスピナーをフル回転させ、一瞬にして加速する。 塔の壁の輪郭が崩れ、流れていく。 わたしはトップスピードに乗り、ランティスさんの周囲を走り回る。 ランティスさんは動かない。 わたしの動きにあわせ、身体の向きを変えるだけ。 わたしは、ランティスさんの左右に飛び違うように走ったり、大きくジグザグに走ったりして揺さぶりをかける。 やりにくい。 塔の最下層は、ただ何もない円形の平面だ。 廃墟ステージと違って、身を隠す場所もウォールライドできる壁もない。 だから、自分の走りだけで、ランティスさんに隙を作らなければならない。 だけど、ランティスさんに油断はない。 常にわたしに意識を集中している。 この状況で、相手に隙を作るのは、とても難しい。 わたしはさらに加速する。 とにかく動き、ランティスさんの背後をとろうと揺さぶりをかける。 その速度は彼女が振り向くよりも速くなる。 「くっ……」 そしてついに、ランティスさんがわたしの動きを追いきれなくなる。 今! 彼女はまだ、肩越しにわたしを見ているだけ。 振り向きはじめたばかり。 わたしはランティスさんに向けてダッシュする。 右手のコンバットナイフを閃かす。 でもさすが、近接格闘最強の神姫。 振り向きざまの籠手で、わたしのナイフを受け止めた。 さらにわたしの機動。 さっきのお返しとばかり、ナイフを振った勢いを殺さず、そのまま身体を回転させる。 右足を振り上げ、回し蹴り。 「くうぅっ!」 わたしのレッグパーツがランティスさんを襲う。 でも、ランティスさんは、両腕の手甲を揃えて構え、わたしの蹴りを受けた。 いくらライトアーマー並とはいえ、レッグパーツは神姫の通常素体以上のパワーがある。 受けたランティスさんは後ろに大きく弾かれた。 □ だが、ランティスの弾かれ方は、俺の想定と明らかに違っていた。 ランティスは予想よりも大きく後方に弾かれている。 衝撃を吸収するために、自ら後方に跳んだのか。 その証拠に、ランティスは体勢を崩さず着地した。 すぐに両腕をおろすと、構えをとり、臨戦態勢を整える。 ダメージは見られない。 さすがは近接格闘戦で秋葉原最強クラスというだけのことはある。 それにしても。 ランティスの動きは不思議だ。 ランティスはサイフォス・タイプをベースにしたカスタム機であることは疑いない。 サイフォスは確かに近接戦闘が得意な神姫だが、ソードやランスで戦うのが一般的だ。 徒手空拳で戦うサイフォスなんて、聞いたこともない。 それに、先ほど見せたランティスの踏み込みは、普通のサイフォス・タイプの機動と明らかに違っている。 どちらかといえば、ランティスの動きはキックボクシングのように見えた。 いまもまた、構えるその姿は立ち技を得意とした格闘家のようだ。 「なるほど……だから、ナイト・オブ・グラップル……格闘騎士というわけか」 俺は思わずつぶやいていた。 ◆ 「なんていうか……地味な戦いだなあ」 安藤が何気なくつぶやいたその言葉に、涼子は額を押さえてため息を付いた。 「これだから素人は……」 「なんだよ」 「ランティスの動きは、標準のサイフォス・タイプの動きじゃないわ。ということは、マスターが神姫に教え込ませた技ってこと。それをあそこまで練り上げているなんて、どれほどの修練だったのか……想像を絶するわ」 涼子は合気道をたしなむ武道家である。 だからこそ、ランティスの動きが尋常でないことが分かる。 それに、涼子の神姫・涼姫は、オリジナル装備を使う。だから、技の修練については人一倍思うところがあるのだった。 ティアとランティスのバトルは、弾丸やレーザーが飛び交うバトルに比べれば、確かに派手さにはかけるだろう。 だが、あの至近距離での攻防は、まるで薄氷を踏むがごとき緊張感と危うさをはらんでいる。 「しかも、まだ両マスターとも、指示らしい指示は出していない……神姫が思うままに戦ってるってことは、純粋に、練り上げた技同士の応酬ってことだわ」 「はあ……」 安藤はアルトレーネ・タイプのマスターで、現在自分のバトルスタイルを見つけようと研究中である。 涼子ほどにはまだ、バトルロンドを見る経験を積んではいない。 だから、このシンプルな戦いを、なぜ涼子たちが真剣に観戦しているのか、わからないのだ。 「安藤くん。このバトルはしっかり見て。きっとティアがすごいってことがわかるはずだから」 美緒にそう言われてしまっては、大人しく観戦するほかない。 自分たちの窮地を救ってくれた男はどんなバトルをするのか? それにはとても興味がある。 安藤が大型ディスプレイに視線を戻す。 「えっ……?」 画面の中。 ランティスが構えていた両腕を降ろすところだった。 腕の力を抜き、だらりと下げる。 顎を引き、肩幅に両脚を開いたまま、直立している。 そして、ランティスは目を閉じた。 「心眼……?」 「そんなこと、できるわけないでしょ!?」 安藤の言葉を即座に打ち消したのは涼子だった。 目を閉じ、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませる、という手法は確かにある。 しかし、実戦において視覚を閉ざすということは、自らハンデを背負うことに他ならない。 「武道の達人だって、戦闘中に目を閉じてガードを解くなんて真似……できるはずない」 そもそも、神姫が感覚や勘に頼ってバトルするということが、涼子には納得が行かない。 ならばなぜ、ランティスは目を閉じた? ティアは動かない。 ランティスは明らかに、ティアを迎え撃とうとしている。 あえて隙を作って誘っているのだろうか。 ギャラリーもざわめく中、状況はしばし膠着していた。 ■ わたしには、ランティスさんの意図が読めなかった。 構えを解き、目を閉ざすなんて。 自ら不利な状況に追い込んでいるだけなのではないか。 だけど、油断はできない。 動かないランティスさんを前に、わたしも動けずにいる。 わたしのAIがマスターの言葉を反芻する。 『いつも考えながら戦え』 わたしは考える。 彼女は今まで出会ったどんな神姫とも違っている。 ランティスさんの今の状態は「隙」ではない。 おそらくは、「誘い」であり、「待ち」の状態。 わたしの動きに対応しようとしている、と思われる。 つまり、わたしの出方次第。 なおさら迂闊には動けない。 だけど、このままでは二人とも動けずに終わってしまう。 やはり、銃火器を装備するべきだったんじゃ……。 そう思いながら、手にしたナイフを見る。 ここぞという時に、わたしの力になってくれた武器は、ナイフだった。 初勝利の時も、雪華さんとの対戦でも。 だから、銃火器がないことに納得は行かないけど、弱音は吐かない。 きっとマスターには考えあってのことだから。 ナイフでできることを考えて……わたしはつぶやいた。 「……マスター」 『なんだ?』 「正攻法で行きますけど……いいですか?」 『それでいい』 「はい!」 マスターが同じ考えでいてくれたことに嬉しくなる。 わたしは腰を低くして、再び全力で走り出す。 ◆ ティアは先ほどと同様、ランティスのまわりを縦横無尽に走り抜ける。 その動きは鋭さを増しているが、ランティスは微動だにしない。 表情さえもかわらない。 ティアはフェイントを混ぜ、左右に飛びちがい、ランティスを混乱させて隙を作ろうと動き回る。 だが動かない。 ランティスは彫像のように動かないままだ。 静と動の膠着。 それを破ったのはティアだ。 左から右へ、流れていくかと思った瞬間、一瞬にして方向を変える。 ティアならば刹那で届く距離。 ランティスのほぼ真後ろから、コンバットナイフを振り上げる。 そして、一歩。 跳ねるように刹那の距離を駆け、銀色の刃が閃めいた。 その刹那をついて、ランティスが動く。 振り向きざまに、右拳を振り上げつつ、バックナックル。 それは頭上へと伸び、ティアのナイフを根本から引っかけて、跳ね上げる。 しかし、ティアも止まらない。 腕ごと上体を跳ね上げられながらも、身体の勢いを利用して、右膝蹴りを送り込む。 ランティスは身体を回転させ、左の手でティアの膝を捌いた。 一瞬、空中で無防備になる。 ランティスの回転は止まらない。 膝を畳んでミドルに構えた脚を振るう。 狙いは、ティアのわき腹。 「あぐっ!」 バニーガール型神姫の小さな悲鳴。 意に関せず、彼女は動く。 畳んでいた膝を鋭い動きで伸ばす。 脚に乗っていたティアの身体を、思い切り弾き飛ばした。 「うああああぁっ!!」 ティアの身体は、宙を舞って地面に激突、横転する。 しかし、三回転もすると、回転力を起きあがる力に変え、あっという間に前屈みの姿勢で立ち上がった。 再びランティスと対峙する。 ランティスはゆっくりと構えをとりながら、冷たい目でティアを見据えていた。 ◆ 「なんで……ランティスは何であんな正確に、ティアの攻撃を捉えられるの!?」 涼子は驚愕していた。 あのティアの動きを、聴覚と勘で捉えるなんて、達人でも不可能だ。 だが、優しげで、いっそ暢気な口調が、彼女にあっさりと答えをもたらす。 「ああ……ランティスは聴覚でティアの動きを測定していたのですよ」 「高村さん……測定、ですか?」 「蓼科さん、でしたか……そう、彼女は視覚を閉ざした、のではなく、聴覚を最大限に利用して、ティアの動きを捉えようとしたのです。 つまり、ソナーです」 「ソナー……ですか?」 狐に摘まれたような顔の涼子に、高村は頷いた。 「ネット上で公開されている、武装神姫の運用プログラムには、耳をパッシブソナーのように運用するためのプログラムがあります。それを使ったのです。 さらに、電子頭脳の働きを聴覚に集中するために、視覚を閉ざして、十分なリソースを確保したのです。 もちろん、ランティスのように、ソナー化した聴覚に連動した動きをさせるには、熟練というデータの蓄積が必要ですけど」 フル装備の武装神姫であれば、わざわざそんな技を使うまでもない。 ソナーを装備すれば、素体の耳よりもよほど正確な測定結果が得られるし、装備の動作も簡単に連動させられる。 レーダーを積めば、全方位の視界を得ることも可能だ。 だから、ランティスのような素体運用は異端だし、まわりくどいやり方だった。 雪華は言う。 「マスター蓼科、神姫は人ではありません。人には不可能と思えることでも、神姫には工夫次第で可能となるのです。 人の常識にとらわれてはいけません。柔軟な思考こそが新たな可能性を切り開くのです」 涼子は改めて、大型ディスプレイに目を移す。 今バトルをしている二人の神姫は、そうした工夫を重ね、新たな可能性を突き詰めた神姫たちだ。 その結果、特別な装備がなくても、フル装備の武装神姫と渡り合える。 それは涼子が神姫マスターとして目指す境地であった。 ◆ 苦しそうに身体を折り曲げていたティアが、なんとか立ち上がる。 その様子を、ランティスは冷たい視線で見つめていた。 「所詮、貴様もその程度か……」 たとえクイーンの推挙であったとしても。 結局はこの塔で自分にかなう神姫などいないのだ。 「わたしは師匠の夢を託されている。その想いを背負って戦っている。 貴様のように、身体を売り、快楽を求めた神姫なぞに、負けるはずもない」 対峙するティアは、ひどく悲しそうな顔をしていた。 何が悲しい。 身体を売ることをよしとした、汚れた神姫のくせに。 走り回ることしか能のない神姫のくせに。 いや、彼女に限らない。 わたしと対戦する神姫は皆、ティアと変わらない。 ランティスの装備を見ては侮り、安易な武装で挑んでくる。 高火力によるエリア攻撃、高高度からのレーザー攻撃、手数とパワーに頼った格闘戦……。 うんざりだ。 どいつもこいつも、武装にばかり頼った、惰弱な神姫だ。 マスターとの絆を技に変えて挑んでくる神姫などいない。 ただ一人、『アーンヴァル・クイーン』雪華を除いては。 だからこそランティスは、雪華を敬愛する。 しかし、雪華は言う。 ランティスのバトルは卑しい、と。 そして、ティアの戦いこそ、自分が学ぶべきものだと。 だが、結局はこの程度。 塔の中では自分にかなう神姫などいようはずもない。 学ぶところなど、ありはしない。 今回ばかりは女王の見込み違いだろう。 「だが、我が女王の推挙なれば、せめて我が奥義を持って、終わりにしてやろう」 そう言うと、ランティスは両腕を軽く身体から離し、叫んだ。 「師匠、サイドボード展開! 装着、雷神甲!!」 ランティスの両腕が光に包まれる。 一瞬の後、ランティスの両腕は新たな手甲が装備されていた。 形は前のものとそう変わらない、無骨なデザイン。 その装甲の外側を青白い火花が走っている。 そして、ランティスの右手には、銀色の金属球が握られていた。 「受けるがいい……我が奥義……!」 金属球を両手で掴み、そのまま腰だめに構える。 ランティスの手甲が、青白い光を放ちはじめた。 □ 「遠野くん、君はレールガンを知っているか?」 唐突な鳴滝の問い。 戸惑いながらも俺は頷いた。 レールガンは、砲身となる二本のレールの間に、伝導体の砲弾を挟んで電流を流し、磁場を発生させて砲弾を加速、発射する武器である。 火薬を炸裂させて弾丸を発射する火器に比べ、弾丸が撃ち出される速度が高いという特徴がある。 「ランティスのあの籠手……雷神甲は強力な電力を発生する。 ランティスはあの籠手を使って、金属球をレールガンのごとく撃ち出す技を修得してる。 どの方向にも、意のままに撃てる。 破壊力は折り紙付きだ。なにしろ、重装甲で身を固めたムルメルティア・タイプを、サブアームごと破壊したほどだからな」 鳴滝の言葉に、ギャラリーがどよめく。 なるほど、塔で最強というのも合点がいった。 それほどの破壊力の飛び道具があれば、飛行タイプでも重装甲タイプでも相手にできるだろう。 これはランティスの要の技と言える。 俺は改めてディスプレイのランティスを見つめる。 雷神甲の表面に、青白い火花が走っている。 上下に合わせていた掌の間に金属球がのぞき、そこからも紫電が散っていた。 「いいのか、手の内を見せるようなことを言って」 「知っていたところで、ランティスのあれはかわせない。初速は通常の射撃武器の数倍だ。あれより速いのはレーザーくらいだろう」 不適に笑う鳴滝。 彼がそう言うなら、遠慮することもあるまい。 俺は耳にかかったワイヤレスヘッドセットを摘む。 「ティア、まだ走れるか?」 『はい、大丈夫、です』 「よし。それなら……」 俺はただ一言、指示を出す。 いつものように素直な返事が短く返ってきた。 ◆ 金属球を挟んだ両手に、電流が流れていく。 腰の位置においた両手の隙間からは、溢れ出た電流が、バチバチと音を立て放電している。 力が両手に溜まってくるのを感じる。 頃合いだ。 「くらえ、一撃必倒……」 ティアが動く様子はない。 バカにしてるのか。 だが、動いたところで、この技はかわせない。 ランティスが動いた。 大きく一歩踏み込む。 その動きに連動させて、身体の後ろから前へと、金属球を挟んだ両手をなめらかに伸ばす。 「雷迅弾! ハアアアアアァァァッ!!」 裂帛の気合い。 同時に両手が開かれ、必殺の金属球が射出された。 それはまさに雷光のごとき迅さ。 超速度の弾丸は、塔内部を一直線に駆け抜けた。 正面の壁に着弾。 そして爆発。 大音響と共に塔の壁が崩れ、爆煙が膨れ上がった。 雷迅弾の翔けた痕が地面に一直線に残り、その尋常ではない速度を物語る。 その直線上には何もない。 はずだった。 「な……! んだとぉ……っ!?」 腰を浮かせたのは鳴滝の方だった。 彼が見つめるプレイヤー用ディスプレイ。 雷迅弾の軌跡の上に影が見える。 「……なにをした……遠野!」 鳴滝は正面に座る対戦相手を見る。 そこに、表情を変えずに戦況を見つめる遠野を発見した。 ばかな。 これは奴の想定の範囲内なのか。 ランティスの正面。 雷迅弾の爆煙を背景に。 ティアは困ったような顔をして、立っていた。 後編へ> Topに戻る>
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【検索用 たいにーはにー 登録タグ 2020年 GUMI VOCALOID Youtubeミリオン達成曲 v flower youまん た 曲 曲た 殿堂入り 鳴花ヒメ 鳴花ミコト】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:youまん 作曲:youまん 編曲:youまん 唄:鳴花ヒメ 唄その他:GUMI・flower・鳴花ミコト 曲紹介 -Hope- そりゃ期待には応えたいですが。 曲名:『タイニーバニー』 youまん氏の8作目。 動画も自身で手掛けている。 自身初の鳴花ヒメ・ミコト使用曲。 関連楽曲:「ウィーニーウォーカー」 あ子氏主催のピアノコンピレーションアルバム『Pianism』収録曲。アルバムではGUMIが歌唱しているが、こちらよりピアノがメインのオケになっている。アルバム発売日以降にこの曲を偶然見つけた鳴花ヒメに歌わせたくなったのだが、VOCALOID5を購入しないと動かせないことに気付きそちらも一緒に購入。しかしこの曲の投稿時点ではまだ扱いに慣れていなかったためにVOCALOID4で調教した。因みに矛盾点があるこの謎についてガイノイド公式がTwitterで説明している。 投稿から3週間が経った7/30、日付が変わる直前にニコニコ動画にて氏としては初の殿堂入りを果たした。現在では50万再生を達成しており、鳴花ヒメオリジナル曲どころがニコニコ動画で鳴花ヒメを用いた動画の中でトップの再生数となっている。 9/9、YouTubeでも10万再生を果たす。偶然にも投稿日から丁度2ヶ月というタイミングだった。 2020年のまとめ動画の一部でセルフカバー音源が使われていたが、2021/5/3、(便宜上の)デビュー3周年と楽曲の10万再生を記念し、YouTubeにてフルバージョンが公開された。 23年3月5日、YouTube内で自身初のミリオンを達成した。 歌詞 (本人投稿動画説明欄より転載・編集) 背比べ 瓜二つの 良く似た落ち零(こぼ)れ 縦に並んで 立ち徘徊(もとお)っていた 一寸の行先さえ 測れぬ闇の底 音を頼って 道を手繰(たぐ)っていた君は何時(いつ)しか 罵詈(ばり)や虚言の奥に潜む 憐憫(れんびん)さえも汲み上げて 真に受けた心は粗鬆(そしょう)に成って仕舞っていた 不義や虚飾(きょしょく)の奥に覗く 延命ばかり積み上げて 何も無い未来に如何(どう)して僕は縋(すが)っていた? 少しだけ前に、何時も前に居た 君の足跡が今は途絶えて見当たらない 唯(ただ)一つだけ声に出せなかった儘(まま) 胸に閊(つか)えていた違和が唱えた過ちに気付いた 前倣え 今一つの 良く在る落ち零れ 例に倣(なら)って 立ち徘徊っていた 一寸の行先さえ 図れぬ木偶(でく)の坊 何を頼って 道を手繰っていた? 分からなくなった 縋る愛から数知れず 降り止まない問詰(もんきつ) 耳 障 り 必定(ひつじょう)、覚悟は避けられない 亀じゃ居られない 偉器(いき)は倨傲(きょごう)の奥に消えて 片鱗(へんりん)さえも消え失せて 間の抜けた貴方は粗鬆に成って仕舞っていた 不義や虚飾の奥に覗く 延命ばかり積み上げて 何も無い未来に如何して僕は縋って仕舞った? 少しだけ前に、何時も前に居た 君の足音が未だ捉(とら)えて収まらない 唯一つだけ他異(たい)に解(げ)せなかった儘 胸を締め付けた違和が唱えた過ちはもう正せない 間違った儘 苦しい儘に 行くしかない 少しでも前に、今は前に居たい 少しでも前に進みたい 嘗(かつ)ての君の様に コメント 音が気持ち良い美しい。。大好きです -- 分身 (2020-07-17 16 02 33) タイニーバニーは小さいウサギって意味だけど(たぶん)ラスサビの"他異に"がボーカルだけ聞いてるとタイニーって聞こえるの最高に好き -- 青色アリス (2020-07-18 18 10 37) かっこいい! -- 名無しさん (2020-07-28 16 03 06) 歌詞のリズム感が心地よくて楽しい -- 名無しさん (2020-08-08 19 15 18) イントロから引き込まれた。音もかっこいいし、調教が良すぎる。これは出会えてよかった -- なまり (2020-09-01 22 00 09) 滑るようになだらかな歌い方と、シンプルだけど心地いい曲がとっても好き -- 名無しさん (2020-09-11 15 14 24) タイバニかと -- 名無しさん (2020-10-30 19 16 51) ティアードクライシスから追いかけていました。ここにきてウィーニーウォーカーと繋がってきて、今までの曲も実はどこか繋がってるのでは…またはこれから繋がっていくのでは…という、youまんさんの可能性を無限大に感じた曲でした。自分自身、夢や野望を追っているのもあって、歌詞の言葉一つ一つが染み入りました…まさしく、”そりゃ期待には応えたいですが。”ですね。 -- させたがり (2020-11-24 18 16 54) 実は一番ヒメの曲で再生されている曲 -- 名無しさん (2021-11-25 00 09 57) この曲からヒメちゃん使いたいって思うようになった -- 名無しさん (2022-08-10 12 56 58) 青色アリスさんの言う通り、小さなウサギって意味だと思いますk -- 三重 (2022-09-11 20 15 42) この歌の歌詞に「亀じゃいられない」って書いてあるので多分ウサギと亀の話だと思うんですけど、瓜二つのよく似た落ちこぼれって歌詞にあるのでどちらもウサギなんだと思うんですけど、その二匹のウサギの片方のウサギが自分より前に走ってたけど走るのやめたから自分は亀なんだって思っても自分はウサギだから小さいウサギでタイニーバニーなんじゃ無いでしょうか?(謎考察)今は少しだけ前にいたいってウサギと亀でもウサギが先陣切って前にいたからじゃないですかね……? -- 三重 (2022-09-11 20 19 48) 正せないのところにんって入るのがめっちゃ好き! -- かえる (2023-03-06 14 08 25) 鳴花ヒメといったら、まずはこれですね -- 名無しさん (2023-10-03 12 18 09) いっそミリオン行くべき -- 名無しさん (2023-12-10 12 49 46) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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(夏目恵) 目次 創作注意事項 概要 プロフィール 人物像 一人称・二人称 台詞例 容貌・服装 各作品での活躍登場作品名 店の店員の関係やお客さん同士の関係その他 更新日:2021/11/26 Fri 09 57 32 タグ一覧 創作注意事項 ネタやパロディOK 各種創作に自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可 概要 画像左の女の子 プロフィール 本名 夏目恵 愛称 ナツメグ 種族 人間 年齢 小学生 誕生日 7月21日 好きなもの 友達 動物や植物 なりきりごっこ 嫌いなもの 特に無し 趣味 友達と遊ぶこと 人物像 幼少期のアンコの友達。 明るく好奇心の強い女の子だった。 青空町と言う町に住んでおり、学校の裏にある森……学校の裏庭の禁じられた場所に入りこみ、アナスターシャと言う名の女の子に出逢った。 出逢ってしまった。 一人称・二人称 一人称 わたし 二人称 あなた ○○ちゃん 呼び捨て 台詞例 「わたしはね~ナツメグって言うの~!」 「ナーシャ!今日は何して遊ぶ?わたしはね、おままごと!ナーシャに美味しいケーキを焼いてあげるの~!」 「ナーシャ、どうしたの?そんな変な顔でこっちを見て」 「痛い……怖いよ……助けて、お母さん……」 容貌・服装 赤と黄色の衣装を纏う。 大きなウサギの髪飾りは親友から貰った大切な宝物。 その親友と同じブレスレットをしていた。 各作品での活躍 登場作品名 店の店員の関係やお客さん同士の関係 無し その他 ○×△ 糧とした人
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