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★キャラクター紹介( 「さくぱんワールドの仲間たち」より) ちちさくぱんだ……さくぱんのお父さん やさしく、厳しい父。さくぱん工場勤務。 いもうとぱんだ(あいちゃん)……さくぱんの妹。おしゃれ隙で、ちょっと生意気な性格。
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つながり(前編) ◆T4jDXqBeas それは一つの始まりを告げるもの。 希望か、それとも光明を騙るより昏い深淵か。 殺戮に灼かれる者達が手にした一筋の、糸。 思いと。 想いと。 重しを繋ぐ。 * * * 朝が近い。 空が少しずつ白くなり始める時間。 放送まではあと一時間足らずといったところ。 レベッカ宮本とトマは幾ばくかの仮眠を終えて、動き始めていた。 トマは出立の準備、レベッカはシェルターで待機する予定だった。 しかし二人は、一つの部屋に篭り顔を見合わせていた。 その表情に緊張と、僅かな希望を浮かべて。 「ほんと危うく忘れるところだった。そうだよな、ここは記録が有るだけじゃなかったんだ」 「そうですね。結構時間が経ちましたし、人も入れ替わってるはずです」 レベッカとトマは頷きあって、受話器を取った。 シェルター通信管轄室の、短縮ダイヤルが登録された電話機だ。 夕方の放送前後、トマはここから電話をかけて島西端の工場や南東の病院と通話した。 それから半日近くが経過した。 折りしも雨の夜は終わり、放送が近づいている。 皆、落ち着いた場所で休息を取り放送を待ち受けているはずの時間だ。 今なら空振りだった場所にも誰か来ている可能性が有る。 二人は島の各地に電話ネットワークを張り巡らせる事にしたのだ。 工場は、後回しにした。 レベッカの気分である。 「E-8の救いの塔──繋がらないな。 B-7のタワーは禁止エリアだから無しだ。 B-3の廃病院──やっぱり繋がらない。 ここら辺、もしかしたら電話機が壊れてるのかもしれない」 「電話機が、ですか?」 「全部そうだとは思わないけど、廃病院とかありえるんじゃないかな。 それからD-4の学校とF-3の城は……あー……」 レベッカは困ったような苦笑いを浮かべた。 「どうしたんですか?」 「トマ、パスだ」 そう言ってレベッカは受話器を押し付けた。 困惑するトマ。 「ベッキーさん?」 「なんていうか、知り合いが居るかもしれないんだよ、その辺」 その二つはレベッカがレミリアを引き付け、アルルゥとレックスと分かれた場所に近い。 とはいえ必ずしも彼らが居るとは限らない。 限らないのだが……なんとなく、居る、予感がした。 単なる直感だが、妙に当たりそーな気がしてならないのだ。 ほら、吸血鬼のカン。 「知り合いが居るなら良いじゃないですか」 「いや、そうなんだけどさ。多分、私は死んだと思ってるだろうし」 「じゃあ生きてるって伝えてあげましょうよ」 「だけど私はこんなになっちゃったし」 「仲間なんでしょう。だいじょうぶ、きっと受け入れてくれますよ!」 「ああ、それもすごく有るんだけどさー、なんてゆーか……」 レベッカはたははと気恥ずかしげに笑った。 「だってカッコがつかないし」 もし電話の向こうにレックス達が居たら、レベッカはなんと言えばいいのだろう。 無事だったか? こっちは大丈夫だから気にするな? 吸血鬼にされたけど私は元気です? あれだけかっこつけて別れておいてなんともないとは言いにくいし、 実際になんともなくはないのだが、なんとも有ると言って心配させたくもない。 「どんな顔して話せば良いのかわかんないんだよ。電話だけど」 というわけでパスだと受話器を押し付ける。 トマは仕方なくそれを受け取った。 「わかりました。でもベッキーさんの方が信用してもらえそうだったら代わってくださいよ」 トマは短縮ダイヤルを試していく。 D-4の学校──繋がらない。 F-3の城────。 『もしもし』 少女の声が、受話器の向こうから返ってきた。 トマの顔がほころび、後ろで聞いているレベッカの顔の方が引き締まる。 「もしもし、ぼくはトマといいます。朝早くからすみませんが、一つ情報交換でもしませんか?」 『……仲間と、相談してからでいいですか?』 「はい、もちろんです。そういえばあなたのお名前はなんですか? 言いにくかったら偽名でも構いません」 『わたしの名前は、』 一瞬の。 迷いではなく何かを確かめるため、そんな間の後に。 『ヤムィヤムィです』 はっきりとした発音が返った。 横で参加者名簿を広げていたレベッカは、すぐさまヤムィヤムィという名前が無い事に気がついた。 (偽名か) そう思った矢先、補足が続く。 『名簿には無い名前だけど偽名というわけじゃありません。 それが、わたしの新しい名前だから』 「新しい名前?」 『はい。アルルゥさんに頂いた名前です』 聞いていたレベッカが、戸惑った。 困惑、というわけではない。 困る以前に、予想外の話に首を捻ったのだ。 (一体何があったんだ?) 謎だ。 『あまり詳しい話をしてみんなに迷惑をかけるのもイヤだから。 続きは少し待ってください』 「はい、わかりました」 言葉を交わすトマにも何が何だかわからない。 とにかくわからない事だけはわかった。 「それじゃ少し後で電話を掛けます。それで良いですか?」 『はい』 城との電話はアポイントメントを取り付けて、一旦終わった。 「ヤムィヤムィか。一体何者なんだろうな」 「ベッキーさんにも心当たり無いんですか?」 「ああ。てゆーかなんでアルルゥに名前もらったんだかさっぱりだ。 聞いた感じ仲間って複数居るみたいだし、アルルゥもそこに居るみたいだけどさ」 「レックスさんとアルルゥさんですか?」 「多分なー。カンは当たったみたいだ」 頭を捻ってもやっぱりなんだかわからない。 「気を取り直して、今の内に次に行ってみましょう」 「ああ。次は、工場か」 少し後回しにした工場に行き当たる。 「“白”さんはまだ居るでしょうか」 「…………さあな」 レベッカは想像している。 彼女の正体が何者であるかを。 それはもしかして、高町なのはが絶望し暴走しているのではないかという事を。 不味い流れになったら無理にでも電話を代わろう。 そう思うレベッカの前でしばらく呼び出し音が鳴った後、向こう側の受話器が上がった。 しかしそこから聞こえてきた声は、以前の電話相手の声ではなかった。 『えーっと、これでいいのかな』 聞き知らぬ少年の声だ。 それからもう一つ、トマにとって聞き覚えのある声がした。 『リンクさんもう繋がってますよー?』 「ルビーさん!?」 カレイドルビーの声がした。 『ああ、トマさんですか。こんばんは。いえ、そろそろおはようございますでしょうか? お元気ですかー?』 「ルビーさんは無事だったんですね! あの、アリサさんは?」 腰を浮かし身を乗り出して問いかけるトマ。 『大丈夫です、アリサさんもぐっすりとお休み中ですよ♪』 その答えにほっと息が抜けた。 浮かした腰をぐったりと椅子に戻して呟きをもらす。 「ああ、よかった……」 八神はやてと共に転移してから消息の知れなかったアリサとカレイドルビーの生存を確認できた。 放送で呼ばれる事が無いと判った。 それだけでもトマにとって心の底が安堵する話だった。 気を取り直して問いかける。 「夕方に別れたと思ったらすぐに……はやてさんが死んで。一体、何が有ったんですか?」 『それは……』 返事は濁る。 それはとても良くない事が有ったという意味だ。 レベッカが横から受話器を奪い取った。 「ちょっと代わるぞ」 『え? あなた誰ですか?』 「数時間前からのトマの仲間だ。レベッカ宮本だ、ベッキーでいいよ。 一つだけ、要点だけ確認したいんだ」 『要点ですか?』 「ああ」 レベッカ宮本はカレイドルビーに問いかけた。 「高町なのははどうなった?」 その言葉にトマはアリサ達が何処へ飛んだのかを思い出した。 一緒に居たアリサ達の心配で頭がいっぱいになり、そこまで考えが回らなかったのだ。 「そ、そうです、なのはさんも怪我とかしてるんじゃ」 『大丈夫です』 きっぱりとした返事があった。 レベッカは軽く息を呑んだ。 『確かに色々有りましたが、もう大丈夫です。安心してください。 何が有ったかはもースペクタルに次ぐ大スペクタルでアンビリバボーなミステイクのサスペンスから メランコリーなトラジディードラマにスイッチしたと思わせて突如主題歌が流れ出し インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって余韻を味わうスタッフロール中です!』 「……あー、大体わかった」 「わかるんですか今の!?」 「まあ、なんとなくなー」 なんともないふりをして笑みを浮かべる。 だいたい、わかった。 カレイドルビーの言葉はそう難しいものでもなかった。 カタカナ語を乱用し煙に巻いているだけで、内容はこの上なくストレートなのだ。 (『スペクタクルに次ぐ大スペクタクルでアンビリバボーなミステイクのサスペンスから メランコリーなトラジディードラマにスイッチしたと思わせて突如主題歌が流れ出し インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって余韻を味わうスタッフロール中です!』か。 多分、そのまんまなんだろうな) スペクタクルに次ぐ大スペクタクル──要するに物凄く派手な、多分戦闘があって。 アンビリバボーなミステイクのサスペンス──信じられない事故により惨劇が起きて。 メランコリーなトラジディードラマ──トレンディー(流行)ではなく憂鬱なトラジディー(悲劇)ドラマになった。 と思わせて突如主題歌が流れ出し──ここだけは意味不明。まさかほんとに歌で解決したわけでもないだろう。 インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって──愛と絆と力技で強引に解決して。 余韻を味わうスタッフロール中──なんとかなった。 それが高町なのはに流れた物語だという。 もしかするとレベッカの想像は半分ほど当たっていたのかもしれない。 高町なのはは殺し合いに乗っていたのかもしれない。 だけどもう大丈夫。 ルビーの言う現状はそういう事だった。 実を言うとレベッカの中にはそれを聞いても不安が残る。 偽名を使い自らを隠し偽る事もした彼女が、ほんとうの心を曝している保障など無い。 しかしそれは、親友であるアリサですら見抜けない物だろうか? 「そこだけ判れば十分だ。何が有ったのかは判らないし、失ったものは……大きい、けど。 トマ、大丈夫だよ。 きっと、生きてる二人は大丈夫なんだ」 レベッカは大丈夫だろうと判断した。 「そう、ですか」 一方のトマも別の意味で釈然としない様子ではあった。 八神はやてが。 アリサと共に転移した仲間がどうして死んでしまったのかは、判らないままである。 それを無かった事にするなんてできない。 だけど、きっと大丈夫だというならそれを信じる事しかできない。 トマと彼女達の間には10kmの距離があるのだから。 『ヘルメスドライブは盗られてしまいまして。こちらから会いに戻る事はできません。 登録はアリサさんになってますから、悪用される心配も有りませんけどね』 今は、それを受け入れるほかになかった。 「それじゃ情報交換といこう」 傷心のトマを置いて、レベッカは話を進めた。 考えればトマだって何が起きたか少しは気づくかもしれないが、他に考えるべきこともいっぱいある。 悩む時間で進んでしまえ。 乱暴な結論だけれど、決して間違ってはいないはずだ。 「そうだな、まずは大事な事から。 私たちはテレパシーとか念話……念波みたいなので情報を送れる奴を探してるんだけど、心当たり有るか?」 『念話ですかー。リンクさん使えます?』 『そういうのを受け取るだけならともかく、送るのは無理だ』 『なるほど。まあなのはさんやインデックスさんが起きたら聞いてみましょう』 『呼んだー?』 受話器の向こうで新しい声がした。 『インデックス!? ダメだよ、寝てなきゃ』 『うん、まだ大分熱っぽいかも。でもでも、超能力ならともかく魔術なら私の専門分野なんだから聞いてくれなきゃ』 『そうですねところでその手に持ったパンはなんでしょう?』 『しょ、食事は体力を消耗してる時こそ欠かしちゃいけないんだよっ、神様に感謝して食べることで気持ちも落ち着いてね』 『なるほど、つまり夜中に小腹が空いて目を覚ましパンを食べていたら私達が居ない事に気づいて捜しに来たと』 なんだか愉快な会話が聞こえてくる。 『それで念話だよね。念話、テレパティアはギリシア由来の言葉で「遠く離れた感受性」の意味で、 魔術にも念話の類は幾つかあるし、私が知っているものでも出来なくもないと思うけど、 魔術において精神により語りかけるっていうのは主に精霊など高次の存在との交信や神からの啓示が一般的で……』 「手っ取り早くできるかできないか、無理ならできそうな奴を教えてくれー」 『私には無理だよ。私は魔術を使えないもん。 私がその場で指導すれば一回なら使えうるけど、よっぽどの事が無いとさせられないからね』 「それを電話越しに教えてもらうんじゃ無理なのか?」 『詠唱だけじゃなく動作や手順を含めてちょっとでも間違えると神経を焼ききられて最悪体が弾けるんだけど……』 「はうはう今の無しー」 物騒な方法だった。 『ねえ、どうして念話が使える人を探してるの?』 「それはもちろん、むぐっ」 「あー、ちょっとタンマだ」 レベッカは答えようとしたトマの口を押さえた。 不満と混乱を顔に浮かべるトマの前でペンを素早く走らせる。 『電話の会話は録音までされてるんだぞ』 トマはハッとなった。 首輪を解除するために念話が必要だ。 だがそれを電話で口に出しても大丈夫だろうか? レベッカとトマはその危険を考えて、核心的な部分は筆談で行うようにしたのだ。 最初の頃は口に出していたのだから今更かもしれないが、最初の頃が何らかの幸運な偶然だった可能性もありえる。 今から考えれば、Q-Beeが殺害されるなどジェダ側もハプニングがあった時間帯だ。 何かが起きていた可能性は十分にありえる。 増してや電話の会話はわざわざ別に録音までされているのだ、危険すぎるにも程がある。 首輪の中のP-Beeによる監視が管理部分でザルっぽいとしても、こちらだけ聞かれる可能性も無いとはいえない。 首輪を解除する為ですなどとストレートに答えるのは危険すぎるだろう。 トマは判ったと頷いて、言葉を選んで囁いた。 「トリエラさんの宿題です。ようやく解法が一つ判ったんですよ!」 『本当ですか!? なるほど判りました、こちらでも捜しましょう』 『ルビー?』 『後で説明します、インデックスさん』 幸い、この電話先にはカレイドルビーという通訳が居た。 首輪解除か脱出法か、どちらの解法かまでは伝えていないがそこまで問題は無いだろう。 自力で理解できるかもしれないし、そもそも首輪解除は十分に準備が整ってから一斉に行った方が対策を取られず効果的だ。 例えば、島の逆端の彼女達とすら団結できるほど事態が進行してからでも大差は無いように思われた。 「頼むぞ。そういえば、おまえインデックスっていうのか」 『そうだよ?』 レベッカはふと思い出していた。 その名前には見覚えがある。 「元の世界でもいいからさ。おまえの名前宛ての電話番号って何か心当たり有るか?」 『電話番号? うーんもしかして、とうまからもらった携帯電話の事?』 「それだっ」 快哉を叫んだ。 「覚えてるならそれの電話番号を教えてくれ。どうやら仲間が持っているみたいなんだ」 『支給されてたんだ。判ったんだよ、それじゃ言うね』 インデックスは10桁の数字をすらすらと口にした。 慌ててトマが番号を書き取り、レベッカが復唱。 インデックスがそれを確認した。 『うん、それで間違いないよ……ケホッ、ケホッ』 電話の向こうから咳が聞こえた。 「お、おい、大丈夫なのか?」 『ほら、やっぱり寝ていた方が良いよ、インデックス』 『うん、お話が終わったらそうするんだよ』 『すまない、そういうわけだからこちらからも手短に行かせてもらうよ』 「ああ、わかった」 そして電話の相手は最初の少年に戻った。 『僕達は人を探しているんだ。出来ればその情報が欲しい』 『といっても夕方までのトマさんの知り合いはアリサさんも知っていますから、どっちかって言うと……』 「私が会って来た奴らか」 夕方以降の情報に加えて、レベッカ宮本の情報を聞きたい。 『ニケは多分、学校の辺りで雨宿りしてるんだと思うけど……』 その言葉で、横で聞いていたトマは思い出す。 そういえば“白”は言っていた、ニケとその仲間達は中央の学校付近を目指しているはずだと。 「そうか、あなた達が“白”さんの言ってた勇者さんの仲間なんですね」 『いや、僕は少し違うよ。インデックスはそうだけどね』 若干の訂正。 とはいえ同じような物なのだろう。 『“白”……っていうのは?』 「あ、放送の少し前頃にもその工場に電話をして情報交換したんです。 その時に“白”という名前で女の子が出て……名簿から見て白レンという人でしょうか? あなた達の仲間じゃないんですか?」 『白レン? いや、それは知らないけど……』 『ああ、いえ、心当たりは有りますよ。仲間です、お気になさらず』 『ルビー? ……そうか、そういう事か』 向こう側でなにやらよく判らない納得があったようだ。 トマは首をかしげるばかりだ。 しかしレベッカは確信する。 やはりトマが電話で話した“白”は高町なのはだったのだろう、と。 「トマ、ちょっと叩くぞー」 レベッカは問答無用で拳骨をいれた。 「いたっ!? な、なにするんですか!!」 「こっちの話だ。まーあんまり気にしなくていいから」 「気にします!」 仕方がない事なのだ。 あの時点のトマにそこまで推測できたはずは無いし、今でも気づいた様子は無い。 あの電話の相手が高町なのはで、トマの言葉が恐らく彼女の心を深く傷つけていた事など判るわけがない。 下手をすればその会話が高町なのはを暴走させた一因かもしれない事なんて。 それらをぶちまけて批判したら、トマは深く思い悩み、心の底から後悔するだろう。 だけど、仕方がない事なのだ。 トマのせいじゃない。 何もかも巡り合わせが悪かったのだ。 だからレベッカはそれ以上何も言おうとはしなかった。 (あー、やだなあ、隠し事って。大人になるってこーゆー事なのかもしれないけど。 なんか、やだな) もやもやした思いを押し込めて話を再開する。 「それで、捜してる人ってのは?」 『最優先はヴィータ、紫穂、エヴァの三人だ。 ヴィータとエヴァは説得したい相手で、紫穂はヴィータと同時に姿を消したらしい』 「……物騒な奴だと考えていいのか?」 『紫穂はそんなこと無いはずらしいんだけど、消えた理由さえわからないんだ。 今、生きているのかさえ』 「そっか」 『あとさくらって子も捜して欲しいんだけど、これは安全そうだったら一つ伝えておくだけで良い。 「夕方より少し前に、小狼が君を捜して南西の街に向かったよ」って事だけ』 「わかった。生憎、一人も聞いた事が無いよ」 そう、聞いた事が無い。 午後の森林地帯での激戦の中、レベッカは木之本桜の名前を聞いてすらいないのだ。 茂みから一方的に、集団の中に桜の姿を目撃した。 たまたま一度も名前が出ていない、彼女と仲間との会話を聞いた。 それだけがあの戦いにおけるレベッカと桜の接点だったのだ。 「あ、でももしかして……」 『何か心当たりでもあるの?』 「いや、さ。なんでか知らないけど新しい名前を貰ったっていう奴が居たから、もしかしたらって思ったんだ。 そういうの、思い当たる節はあるか?」 『新しい名前? よくわからないや。一応聞いておくけど、どんな子でどんな名前なの?』 「真面目で落ち着いた口調だったな。実はちょっと電話で話しただけだから私も詳しく知らないんだけどさ。 アルルゥから“ヤムィヤムィ”という名前を貰ったと言ってたんだ。あ、アルルゥってのは……」 『“アルルゥ”が“ヤムィヤムィ”と名づけた?』 電話の向こうから、再びインデックスの声がした。 『知ってるの、インデックス?』 『ううん、その子のことは知らないんだよ。 それにあの文明はアステカより文字が少なくてあまり詳しくないけど、でも……』 よく判らない少しの躊躇いの後に、インデックスは言った。 『電話の人、お願いがあるんだよ』 「お願い?」 少し息苦しそうなその声は体調の悪さによるものだろうか。 それとも胸の中で膨れる不安によるものだろうか。 『次に話す時があったら、ヤムィヤムィって子に訊いてみて。 もしかしてそのアルルゥって子に怨まれるようなことをしていないかどうか』 「どーいう事だ?」 インデックスは胸の奥から湧き上がる不安の理由を、告げた。 会話を手短に切り上げ、トマは再び城への短縮ダイヤルをコールした。 元々アリサとの情報を共有していた上に、盗聴を警戒して首輪関連をぼかした以上、 この二人とリンク達の間で新たに交換すべき情報は殆ど無かった。 詳しい話は後でも良い。 恐らく状況を、残酷にも変化させてしまう放送の後でも良い。 『もしもし』 受話器からヤムィヤムィの声が聞こえた。 「もしもし。仲間達との話し合いはできましたか?」 『うん。今呼んできてもらってる』 「そうですか」 城との電話という事で再び電話手を代わっているトマは、レベッカと目を合わせる。 頷きあって、言った。 「ヤムィヤムィさん。あなたについて、一つ訊いてもいいですか?」 『何ですか?』 インデックスからの問いかけを渡した。 「あなたは、そのアルルゥさんに怨まれるようなことをしてはいませんか?」 『──────っ!』 注意して聞いていたから、息を呑む音まで聞こえた。 レベッカが気づいた“白”の驚愕に似た音が。 まるで心の奥まで踏み込まれたような衝撃が聞こえた。 やはり、そうなのか。 『……どうして、それを』 「あなたの名前です」 インデックスはトマに頼んだ。 怨まれる心当たりがあるかどうかを聞いて、ヤムィヤムィがそれを否定したならただの杞憂だからごめんなさいと伝えてほしい。 だけどもしもヤムィヤムィに心当たりが有るようなら、今から話す情報を伝えてほしいと。 それは一つの知識だった。 「アルルゥと、ヤムィヤムィ。この発音である言語を連想した人が居るんです」 『言語……』 「はい。アイヌ語というそうです。 その音の連なりの両方に単語として意味がある別の言語が、たまたま有っただけかもしれません。 その人も当てになる保障は全く無いと言っていました。 殆ど文字の無い言語は専門分野から外れているとも」 『…………続けて、ください』 インデックスから伝えられた知識。 それは電話から聞こえる声を、僅かに震えさせている。 「アルルゥは特に奇妙な意味ではなかったそうです。 ただ、ヤムィヤムィの方が人の名前のようではなくて気になったのだとか」 『その、意味は?』 トマは淡々と教えた。 それ以外にどうすれば良いかわからなかった。 「冷たい私、そして冷たい私達、だそうです」 『………………』 そして、静寂が訪れた。 ヤムィヤムィは黙り込んだ。 何処かしら沈鬱な気配まで漂わせて。 想像以上に重苦しい空気を作り出す。 そうして出来た重苦しい空気を乗せて、ヤムィヤムィは訊いた。 『その人は、どうしてその話を?』 トマは伝えた。 「もし本当に心当たりがあるなら、知るべきだと思ったそうです。あなたが生きるために」 これは嫌な想像だが──もしその名前が怨みの名であるとすれば、最悪ヤムィヤムィの命が危ない。 仲間だと思っている者に殺したいほど憎まれているとすれば、生きるためにはそれを知らなければならない。 例えそれが身を引き裂くような真実であったとしても、背中から刺される前に向き合わなければならない。 武器を手に殺しあう為ではなく。 想いが届く事を信じて。 「だから伝えて欲しい。でもただの杞憂だと願っているんだよ、だそうです。 僕はあなたの事をよく知りませんけど……きっと、そうですよ。ただの偶然に決まってます」 『………………そう、ですか』 根拠の無い希望はむなしく響く。 ひたすら凝縮された懊悩が篭る返答は、素っ気無い。 耐えかねたレベッカが何か言おうとして。 『すみません、電話を代わります』 向こう側の受話器が誰かに手渡された。 『……で話せ…………?…………』 いきなり声が小さくなった。 首を傾げるトマ。 『あ、あの、ベルカナさんそれ口と耳が反対です』 『………………失礼』 交代した相手はどうやら電話に慣れていないらしい。 『聞いての通り、私はベルカナといいます。 こういう声だけのやり取りは私が長けていますので。そちらは?』 「トマです」 アルルゥとレックスにどう接するか悩んでいるレベッカは、ひとまず名前を出さない。 必要なら、で良い。 (しかしヤムィヤムィにベルカナか。アルルゥとレックスはなんで出ないんだ?) トマにそれを訊くよう促してみる。 トマは頷き、問いかけた。 「あなた達は三人組なんですか? ヤムィヤムィさんには、アルルゥさんから名前を貰ったと聞いたんですけど」 『他に心当たりでもあるのですか?』 「い、いえ、そういうわけでは」 咄嗟に誤魔化すが言葉は濁る。 返ってくる質問に心の準備ができていなかった。 『放送を前にして掛かってきた不審な電話ですから、警戒はしていますわ』 素直に信用していないと言われた。 当然かもしれない。 工場にはカレイドルビーが居てお互い疑う必要も無かったけれど、こちらはそうでもない。 トマは小声でレベッカに囁いた。 「レベッカさんが出た方がよくないですか?」 レベッカは少し迷いつつも頷く。 レベッカが吸血鬼と化した事はアルルゥもレックスも知らないはずだ。 この名前には信用がある。 「わかった、そうするよ」 元々城にはレベッカの方が縁深い。 レベッカは電話の前に座り、受話器を受け取った。 話し出す。 「交代する。私はレベッカ。ベッキーで良いや。アルルゥの、仲間だよ」 『………………』 得られたのは予想外の沈黙。 「おい、どうした?」 『幾つか、聞いても良いですか?』 「ああ。いいけど」 奇妙な緊張感。 『まず聞きます。あなたにとってアルルゥは大切な存在ですか?』 「ああ。それは約束するよ。仲間の仲間で、私もあいつを護ろうとした」 『そして死んだと思われた。だけど実は生きていた、と』 「……なんだ、聞いてるんじゃないか」 僅かな拍子抜けと、困惑。 その隙間に。 『では、あなたは人間ですか?』 「それは……っ」 真実が鋭く突き立った。 そして、理解する。 電話の向こうのベルカナという少女は知っている。 レベッカが吸血鬼であることを。 『人間では“なくなった”のですね?』 レベッカは沈黙と共に思考する。 それを知っている者は限られるはずだ。 レミリア本人すら気づいているかわからない。 トマを除けば後は──。 (橋で出会ったあいつか!!) 間違いない。 橋の上で遭遇した少女、明石薫。 放送で呼ばれとっくに死んでいるはずなのに、出現した謎の少女。 彼女が、電話の向こうに立っている。 いや、彼女ではなく彼女の仲間なのかもしれない。 どちらにせよ同じ事だ。 ベルカナはレベッカを敵とみなしている。 『私の情報から見て、あなたはもうどうしようもない程の、敵です』 それは当たり前の話だろう。 彼女と遭遇した時のレベッカは血に餓えていて、血臭を漂わせる彼女に襲い掛かったのだから。 どう考えても血に餓えた吸血鬼として確定されている。 『あなたをアルルゥとレックスに会わせるわけにはいかない。 いえ、吸血鬼として蘇った事すら教えたくはない。そういう事です』 「あの時とは違うんだ。人を襲わずに得られる血も手に入れたし」 『先ほどの電話の相手ですか?』 「違う! 輸血パックだ」 『ユケツというと』 「治療に使う血をパックに詰めた物だ。病院で手に入れたんだよ」 『それが有る間は、人を襲う事は無いと?』 「ああ。私の体格の血液量の、丸二倍余りは有るからな。 補充しなくても数日はいけると思っていいんだ」 『腐りませんか?』 「ちゃんと冷たく保存してあるから二日は保つ、はずだっ。 クーラーボックスの保冷力って一日以上あるし、足りなくなったら補充しに行けば良い」 『それよりも新鮮な血が目の前にあったら?』 「……だいじょーぶだっ」 ちょっぴり迷った。 だけど踏み止まれると信じられた。 何も問題は無いと。 『何にせよしばらく時間をおいて、様子を見させてもらいます』 「……ああ。それ自体は、良いんだ」 それにレベッカも今すぐアルルゥ達に会おうと考えてはいなかった。 今は大丈夫と言っても、血を飲むようになってしまったなんて教えたくない。 だからいきなりは会いたくない。 「生きてはいるけど、事情が有って会いに行けないとでも言っておいてくれ。 その方が良いとは思ってるんだ。ほんとに」 『ええ。伝えておきますわ』 「それと、電話に出なかったけどアルルゥとレックスは無事なんだろうな?」 『寝ているだけです、ご安心を。そろそろ起きてくるかもしれませんわね』 「あとそれから……明石薫は、そこに居るんだな?」 「え? ベッキーさんそれってどういう事ですか」 「私が橋で出会ったあいつ以外に知らないはずなんだよ。私が、人間じゃなくなったって事は」 『………………』 「本当ですか!? それなら教えてください。薫さんはどうなったんですか? まだ、生きているんですか?」 少しだけ間が有った。 そして。 『一つだけ断定しておきます。彼女は放送で呼ばれ、間違いなく死んでいます。 親切心で言うなら、期待しても呆気ない落胆しか得られないほど確実な事です。 あなた達にそれ以上を教える義理はありません』 応えた声は、答えではなかった。 どうしてあの橋の上に明石薫が居たのか。 死んだはずの彼女が姿を見せた理由は何なのか。 全てを謎のヴェールに包んだまま、回答を拒否した。 ただ死んだという事だけを教えてきた。 その真偽すらも謎に包んだまま。 「……悪いな、トマ。私のせいで警戒されたみたいだ」 「い、いえ、そもそもベッキーさんが居ないと何もわかりませんでした」 お互いに話し合う事はそこまでだ。 ベルカナがレベッカを信用していない以上、城の方からこれ以上の情報は得られないだろう。 あと出来るのはこちらから提供する事だけだ。 レベッカは、ベルカナをある程度は信用に値すると判断した。 気に食わないとか刺々しくてなんかイヤだという感情は置いておく。 「伝えとく事が三つある。テレパシーとか念話ができる奴を探してくれ、きっと必要になる」 『気に留めてはおきましょうか』 「もう一つ、私は東のシェルターに居る。必要だと思ったら、来てくれ」 『覚えてはおきましょう』 「エヴァ、ヴィータ、紫穂、さくらの四人を西端の工場に居る奴らが捜してる。 前二人は止めたいとか物騒な話だし、三人目は行方不明らしいけど、四人目は保護したいらしいな」 『そうですか』 「四人目は安全な場所に居るなら一つ伝えるだけで良いみたいだけどな。 『小狼は君を捜して南西市街地に向かった』だとさ」 「安全な場所で会ったら伝えておきましょう。それで終わりですね?」 「おまけ。A quelque chose malheur est bon」 『それは?』 「フランスの諺だよ。『不幸も何らかの役に立つ』ってな」 『………………』 「前向きに生きる為の努力はしてるよ。死にたくはないし、ダメになりたくもないからな」 『信じるよう善処はしましょうか』 「政治家みたいな物言いだなこんちくしょー。まあいいや。それじゃあ、またなー」 城との電話は、それで終わった。 素っ気無ささえ滲むほどにあっさりと受話器を置いた。 未練も何も無いかのように。 「良いんですか? あれで」 「いーんだよ。別に、悪い奴じゃなさそうだったし」 アルルゥとレックスは新たな仲間に護られて休息を取っている。 今は、それ以上に望むべき事なんてない。 レベッカは、それで良いのだ。 ヤムィヤムィの事はかなり気になるが、それも彼女達の問題だ。 彼女達の間でどうにかなる事を祈るしかない。 逆にトマへと話題を返す。 「で、インデックスからはトリエラの番号を教えてもらえたわけだけどどうする?」 「難しいですね。途中経過くらいは伝えたいところですが」 トリエラはトマに二つの課題を出した。 『首輪』からどうやって逃れるのか。 『島』からどうやって逃げ出すのか。 この双方の課題について、具体的かつ説得力ある方法論を用意すること。 それが、トリエラがトマに協力する為の条件だという。 両方ともかなりの難題だ。 しかし『首輪』についてはようやく取っ掛かりが見えてきた。 もう一つの問題は『島』だ。 そもそもこの『島』は一体何処にあるのだろうか。 「考えてみたら国どころか世界もバラバラなんだよな。無茶な世界だ」 「そうですね。……あれ?」 「どうかしたか?」 「そういえばベッキーさん、さっきの言葉はなんですか?」 「A quelque chose malheur est bon.か? 言った通り、フランス語…………うん?」 「フランス語?」 「そういえば私たち、何語で喋ってるんだ?」 「何語?」 それはもちろん普段使う言葉で、と答えかけて気づく。 トマの世界では日常語について世界中ほぼ統一されている。 しかし違う言語という概念が全く無いわけでもない。 「国どころか世界すら違ったら、同じ言葉を使えるわけがないんだ。 多分、制限とかで何かした際にジェダと話せるよう全ての言葉が判るようにもして──いや、これもおかしいか。 私はなんでフランス語を引用できたんだ?」 「お互いの言葉が判るようになってるなら、別の言語を使っても普通に通じるはずですよね」 「ああ。さっきのインデックスが教えてくれた、アイヌ語の名前だって典型的だ。 自動的に翻訳されてるとしたら、“ヤムィヤムィ”と聞こえるわけがない。 使われている字の意味に分解して、“冷たい私と冷たい私達”という風に聞こえるはずなんだ」 「でもそうなってはいません」 「他の名前もだな。外国語の単語そのものな名前も、名前として認識できてる」 奇妙な謎だ。 「普段使っていた、それぞれ全く違う日常語だけが統一されてるんだ。 それぞれの頭の中を一人一人弄って知識を調整……なんて面倒なことされてるわけないよな。 多分、それぞれは好き勝手別な言葉を喋ってるつもりなのに、意味はちゃんと通じてるんだ」 「それ、自動的な翻訳とは違うんですか?」 「言葉が翻訳されてるんじゃない。多分……いや、これだと文字や電話がダメか。むー?」 「なんですか?」 「あー、いや。実は私たち最初から念話で話してるんじゃないか、なんて思ったんだけどな。 これなら伝えようとしてる事がなんとなく伝わるわけだし、別の言葉は“別の言葉”という意味が乗るから伝わらない。 でもこれだと文字や電話が伝わらないし、素直に固有名詞だけ残し他は翻訳されていて、 別言語を使ったらそこだけ固有名詞として翻訳されずに伝わる都合の良い技術が有ると考えた方が良いか」 「うーん? よくわかりません」 「わかんなくて良いよ、考えすぎたみたいだし」 彼女達が知らないだけで色々な物を都合よく解決させる技術は存在するのだ。 例えばある世界ある未来の超科学、翻訳コンニャクとか。 そういう現物を知らないだけに、レベッカは思う。 (つまり難しい問題を都合よく解決している不思議な技術、か。厄介だよな、そういうの) 首輪の中に居る人だってそうだ。 なんだかよく判らない無茶苦茶な技術の力技で動いている。 取っ掛かりを見つけたとはいえ逆に言うとそんな段階でしかない。 一つでも仕組みを見落としていれば瓦解するかもしれない。 そしてその一つの有る無しを確かめる時間が残されているのかも判らない。 突き進む他に許されはしないのだ。 「で、どうするトマ。トリエラに電話しとかなくて良いのか?」 「そうですね、電話はしておきたいんですけど……」 トマはちらりと記録装置に目をやる。 朝になれば、この六時間に話された内容が聴けるようになる。 朝の放送までもうそれほど無いだろう。 「出来ればもう少し課題を済ませておきたいです」 「待つか?」 「はい。朝になったら……放送と。それから新しい記録を聞いて、情報を纏めて。 その後で電話します」 トマにとってトリエラへ電話する目的は単なる情報交換ではない。 課題への進行度合いを見せる事によりトリエラを説得する行為でもあるのだ。 出来れば確実に説得できるだけの情報を揃えてから電話したかった。 「なら、準備でも済ましておこう。トマは外に出るんだろ」 「はい。ベッキーさんは中ですね?」 「ああ。電話交換手って言ったかな、そういうのも必要だろうし。 ま、放送で考える事もあるけど……ここに居ても出来ることは多い気がしてきた。 城の奴らも、待ちたいしな」 結局、二人の方針はそういう事になった。 放送は目前に迫っている。 新たな情報も。 何を知り、何に気づき、何を思いつくのだろう。 何をもたらし、何を共有できるのだろう。 二人はまだ、知らない。 【H-5/シェルター地下/2日目/早朝】 【レベッカ宮本@ぱにぽに】 [状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。 [服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品) [装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル! [道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス 輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪 [思考]:なんとかなるだろ。なるといいな。なってくれ頼むー。 第一行動方針:放送を聞いたら情報を整理しトリエラに電話。雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。 第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。 また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など) 第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。 第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。 基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。 参加時期:小学校事件が終わった後 [備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。 トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。 宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。 シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。 イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。 インデックス携帯の電話番号を知りました。 【トマ@魔法陣グルグル】 [状態]:健康 [装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ [道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、 参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み) はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪 [思考]:トリエラさんを説得しないと……。 第一行動方針:放送を聞いたら情報を整理し、トリエラに電話して説得する。 第二行動方針:外に出て調査遠征予定。『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。 また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。 第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。 第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。 第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。 第六行動方針:どうにかしてベルカナから「明石薫」(ベルカナ)に関するもう少し詳しい話を聞きだしたい。 基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。 [備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。 レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。 イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。 インデックス携帯の電話番号を知りました。 NEXT
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972 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 02 21 29.45 ID ??? プル「ジュドー!遊びに来ちゃったー!だから遊ぼうよー!」 ジュドー「げぇっ!?もうちょっとで一仕事上がるって時に!」 ビーチャ「いーじゃん、もう後は調整だけだし遊んで来いよ」ニヤニヤ ジュドー「その笑顔を他に向ければ、エルだって落せるのに!」 ビーチャ「余計なお世話だ!」 エニル「ちょっとガロード!預けてる私のジェニス、まだ仕上がらないの?」 ガロード「おっと、依頼主様のご登場だ!ジュドー、チャッチャとやっちまおうぜ!」 ジュドー「だったらプルをなんとか・・・・あり?」 イーノ「プルならとっくにエニルさんの方に行ってるよ」 プル「・・・・あなた、とってもいい匂いがする!一緒にお風呂入ろうよ!」 エニル「は?ちょ、ちょっと!?」 いや、そういえばプルズとエニルって声が似てるよなぁと思って 973 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 02 29 20.83 ID ??? プル「きっと私の妹なんだ!」 マリーダ「姉さん、さすがに無理があります」 エニル「何なのよいったい?」 974 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 02 38 39.43 ID ??? プルツー「どっちかというと妹より姉さんなんじゃないか?」 ハマーン「よし、エニル・エル。長女としてプル姉妹を頼んだぞ。私も少々手を焼いていた」 プル「わーい!お姉ちゃんさっそく遊ぼうよ!」 エニル「なに勝手に話を進めてるのよ!私は子供がきら」 プル「お姉ちゃん?」ウルウル エニル「くっ、そんな目をしても!」 プルツー「ふん、これで姉さんを監視する負担がまた減るな」 マリーダ「寂しいんですか?」 プルツー「そ、そんな訳ないだろ!肩の荷が軽くなって清々したって言ってるのさ!」 マリーダ「ふふ、そうですか」 エニル「助けてトニヤ・・・・・」 976 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 05 21 38.47 ID ??? 974 プルツー「……ところで、マリーダがいてくれても私の負担が減った気がしないんだけど」 マリーダ「私はどちらかと言うとミネバ様の護衛ですから」 プルツー「ああ、あの怪奇体臭男の撃退か」 マリーダ「描かれてはいませんが日夜ミンチにしては屋根裏に送り返しているんです」 977 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 05 40 20.61 ID ??? エニル・エル ↓ えにるー・える ↓ えるぴー・ぷる プル「ほらそっくり!」 エニル「……今一瞬本当にそうなのかもって思っちゃったじゃない」 978 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 07 34 05.35 ID ??? トニヤ「別にいいじゃない、妹ができたと思えば」 エニル「簡単に言ってくれるわね…あんな子に付いて回られたら 仕事だってままならないわ」 トニヤ「その割には随分嬉しそうだけど?」 エニル「う…私は別に、嬉しくもなんともないんだからね!」 トニヤ「へぇ~」ニヤニヤ ヤンデレからツンデレへ エニルかわいいよエニル 979 名前:通常の名無しさんの3倍 :2011/05/13(金) 08 04 39.40 ID ??? セシリア「……との報告があがっております」 ギレン「うわああああああああああ」 セシリア「こんな事になるのならもっと構ってやれば良かったと?」 ギレン「変態兄弟みたいに見るからに怪しいのに着いていったんだったら 遠慮無く排除するのだがな……。見たところ善人だし……」
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元スレURL 璃奈「安価でみんなとつながりたい」 概要 果林さんって大人の女性って感じで憧れる タグ ^天王寺璃奈 ^朝香果林 ^安価 ^りなかり 名前 コメント
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京太郎「うっし、今日もネトマで練習するか」カチカチ 京太郎「ふー…お疲れ様でした、っと」カタカタ 京太郎「『普段から下ネタのツッコミをしてますwいい気晴らしになりました』」 京太郎「ん?」 京太郎「へえ、この人も一緒なのか。しかも生徒会で…」 京太郎「案外下ネタ言う女子高生って多いのかもなー」ハハハ 京太郎&????「そんなわけあるかー!」 ??「どうしたのよ津田、画面に突っ込んだりして」 ???「え!? 津田君画面に挿れようと押し付けちゃったの!?」 ??「だ、だめだぞ津田! 気持ちは分かるがまだそんな技術はないからな!」 ????「今の俺と同じ状況の人が居るとは…世界って怖いなー」
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その1へ 「なあ、唯。お前大丈夫なのか?」 そう話しかけられたのは、放課後の音楽室だった。 ムギちゃんは用事で遅れていて、あずにゃんはまだ来てない。澪ちゃんはそんなあずにゃんを迎えに行っているから、まだ来てない。 だから、今ここにいるのは私とりっちゃんの二人だけ。 二人きりの音楽室で、りっちゃんは私にそう話しかけた。 それが何のことか、私にはすぐわかった。あの、私が泣いてしまったあの日からりっちゃんはそのことを口にすることはなかったけど。 だけど、私はりっちゃんがそれに気付いているってことを、今まで忘れたことはなかったから。 ただ、今になってそのことに言及してきたことに、少しだけ驚いただけ。 「ん~、大丈夫って何が?私はいつでも元気だよ?」 だから、一応気付かない素振り。それでちょっと様子を見てみる。 だって、勘違いしてたら恥ずかしいしね。 「……わかってんだろ?」 そうして目を向けて見えたのは、いつもの表情じゃなくて、あの時私を教室に引き込んだときと同じくらい真剣さを交えたりっちゃんの顔。 やっぱりそのことか、と私は小さく、ごまかしてごめんねという意味も込めて苦笑を浮かべてみせる。 「うん、大丈夫だよ。りっちゃんが元気をくれたからね。私はまだ頑張れるよ」 元気、なんて小さくガッツポーズして見せたりして、おどけて見せたけど。 だけどりっちゃんの顔は全然ほころんでくれなかった。 「頑張れる、か。なあ、唯。それって頑張らなきゃ駄目ってことだよな?」 「え?」 私はきょとんと、そう言ったりっちゃんの顔を見返す。 「それって、無理してるってことだろ?……それでお前は、本当にいいのかよ」 「えっと……」 続けてそう言われて、私は少し戸惑った。 だって、そこまで突っ込んでこられるとは思わなかった。 私が勝手にそう思っていただけだけど、りっちゃんはいわゆる見守る的な立ち位置にいてくれるんだと思っていたから。 正直なところ、たとえりっちゃんでもあまり深いところまで立ち入って欲しくはなかった。 だって、これは私の想いだし。私だけが抱えるべき想いだし。私の大事な、誰にも触れさせたくないものだから。 だけど、それはつまり、それだけりっちゃんが私のことを心配してくれていると言うことなんだろう。 だから、私はそれを素直に嬉しく思った。 りっちゃんにそう思われているということは、あのときから今まで確かに私の元気の元になってくれていたから。 「いいんだよ、私は~。それで大丈夫だから」 だから私は笑って見せた。こうして笑顔を浮かべられるのも、りっちゃんのおかげなんだよってことを教えようと思って。 そして、これ以上は踏み込んできたら駄目だよって、暗にそれを示そうとして。 だけど、りっちゃんは笑わなかった。笑い返してはくれなかった。 それどころか、少し怒ったような顔で私をじっと見つめている。 何だろう、私、何か間違えたのかな。悪いことをしちゃったのかな。 私は不安になる。だっていつものりっちゃんなら、きっとそこで「そっか」なんて笑い返してくれたはずだから。 その不安が私の浮かべていた笑みを消してしまっても、それでもりっちゃんは表情を変えないまま私を見つめ続けるだけだった。 空気が重い。時間がずしっと重くなる。 どうしてだろ。何でりっちゃんは、私をこんな目で見つめているんだろう。 こんな目――どんな目?真剣なのはわかる。少し怒っているように見えるのも確か。 実際、少し怒ってるんだとは思うけど。でもそれだけじゃないとも思う。 それに、何かをこめているんだと思う。 だけど、私にはそれがわからない。 ねえ、りっちゃん。どうしたの。私に、何を伝えようとしてるの? 疑問はたくさん浮かんで、だけど私の口は動いてくれない。 じっと私を見つめ続けるその眼差しに縫い付けられているように、動いてくれない。 なんとなく、わからないままでも気付いていたのかもしれない。 もしそれを口にしてしまえば、きっと私は後悔してしまうだろうということに。 だから、私は何か理由をつけて逃げてしまうべきだったのかもしれない。 その目の届かない場所に、行ってしまえばよかったのかもしれない。 それがどこかなんて、全然わからなかったけど。 そんな場所が、この私に残されているなんて、少しも思えなかったけど。 「なあ」 沈黙を破ったのはりっちゃんの声だった。 当たり前といえば当たり前。だって、私からは何も言うことができなかったのだから。 だから、そうできるとしたらりっちゃんの声しかない。 もしくは、遅れて現れたムギちゃんかあの二人か、そのどちらかだったのかもしれないけど。 だけど、それはきっとなかった。そうなるには、まだ時間が足りない。 だって、私たちの間に沈黙が訪れてから今のこの瞬間まで、時計の秒針は一回りすらしていなかったのだから。 私にとっては、もう何十分も経っているようにも感じられていたけれど。 「私がただ友達だからって理由で、部活仲間だって理由で、あんなことしたと思うか?」 続けられたその言葉に、私は戸惑う。 それがどういう意味なのかわからなかったから。 あんなこと、というのはきっとこの間の空き教室でのことだと思う。 泣く私に胸を貸してくれたこと。泣き止むまで、慰めていてくれたこと。私を元気付けてくれたこと。 そして、その理由を私に尋ねているんだと思う。 だけど、わからない。だって、私の浮かべた理由は質問文の中で既に否定されているから。 りっちゃんは部活仲間で。 りっちゃんは友達で。もしそう言っていいのなら、私の親友で。 だから、そうしてくれたんだと思ってた。 だから、私はそれに甘えていいんだと思っていた。 でも、そうじゃないとするなら、一体りっちゃんは何を理由にして私にそうしてくれたんだろう。 「わかんないよ」 「だろうな」 私の返答に、りっちゃんは苦笑を返す。笑いの形へとその表情は変わったけど、眼差しは何も変わらない。 変わらずに、私をじっと見つめ続けている。 私もじっと見つめ続けている。 その奥にある、まだ見つからないものを見つけようと。 「だから、教えてやるよ」 ふっと無造作に、りっちゃんは目を閉じた。同時に、私をじっと見つめ続けていたその眼差しが消える。 だから、それがまだずっと続くと思っていた私は一瞬、呆けてしまっていた。 見つめ返していたものが急に無くなって、行く先のなくなってしまった視線をもてあまして、その行く先を探そうとする。 それはつまり、向こうにとってすれば隙と言うべきものだったんだろう。 だから、そこまで接近を許してしまったのは、不可抗力だって言ってもいいのかもしれない。 「え?」 焦点を取り戻した私の視界に移ったのは、その一瞬前に比べて半分以下の距離になったりっちゃんの顔。 それが何を意味するか、なんて考える暇も無かった。 だけど、その瞬間わかってしまっていた。どうして彼女がそうしてくれたか。その眼差しの奥に何がこめられていたのか。 そして、彼女が何をしようとしているのか。 「……っ」 反射的に身じろぎしようとして、動けないことに気が付く。 いつのまにか私の肩はぎゅっとその両手で掴まれていた。 だから、私は動けない。ただその瞬間が訪れるまで、身動きをとることは許されない。 ――違う、その気になれば、その手を振り解けることはわかっていた。 それができなくても、ただ顔をそらしてしまいさえすれば、その行為を妨げることができることもわかっていた。 だけど、身動きをとることは許されなかった。私にはその許可は与えられていないなんて、そう思ってしまっていた。 だって、りっちゃんは私を助けてくれたから。 そんなりっちゃんを拒むことなんて、できないって思ったから。 私はりっちゃんに借りがあるから。 りっちゃんがそう望むなら、私はそれを受け入れるべきだと思ったから。 ああ、そして、ひょっとしたら。 私は疲れてしまっていたのかも知れない。 届かない想いをずっと抱え続けていることに。 大丈夫だよなんていって笑っていたけど、頑張り続けることに疲れていたのかもしれない。 誰にも触れさせたくない、その重い重いものを受け止めてくれる何かを求めてしまっていたのかもしれない。 それを、私ならできると目の前で言ってくれたから――私は。 それに揺らいでしまったのだと思う。 だって、仕方ない。頑張れていたけど、それが幸せだと感じることもできていたけど。 だけどそれはずっとずっともうどうしようもないくらい痛くて―― ――だけど、逃げないって決めたんだよ、私は。 だから、私はそれを拒もうと思った。 駄目だって思った。 きっとそれはとても楽なことで、とても暖かいものかもしれないけど。 だけど、私が好きなのは。この瞬間でさえ、私が最初に浮かべてしまうのは。 あの子の笑顔なんだから。 「だめ……だよ、りっちゃん」 かすれる小さな声。その鼓膜にようやく届く程度のその声に、だけどりっちゃんはちゃんと止まってくれた。 触れ合うほんの一瞬前。その寸前。だけど、それは確かに触れてはいなかった。 間に合った、と私は思う。そしてよかったと思う。 そうしてしまえば、私はきっとたくさんのものを得られていただろうけど。 きっと、間違いなく後悔していたと思うから。 「……だよな、やっぱり」 その距離を離さないまま、りっちゃんは呟く。近すぎてその表情はわからないけど。 だけどきっと、その声色と同様の表情を浮かべているんだろうと私は思った。 「だけどまあ、間に合ったか」 「え?」 間に合った、って何のことだろう。私がそう聞き返す前に。 その視線が私ではなく、私の背後に向けられていたことに気付く前に。 「……ゆい、せんぱい……?」 私の耳に聞きなれたその声が届いていた。 勿論それは、目の前のりっちゃんの声じゃない。発生源は、私の後ろから。 おそらく、このシーンで私が一番耳にしたくなかったその声。 どさり、と何かが落ちる音。それに弾かれる様にして、私はまだ肩を抱いたままのりっちゃんを跳ね除け、振り返った。 何かの間違いだったら、って思っていた。 きっと私の頭はりっちゃんのことで混乱してて、そんな幻聴を作り出してしまったのかもしれない、と望んでいた。 そうであって欲しいと思った。 だってそうじゃなければ、今その声の主はそこにいることになってしまう。 そして、顔を寄せ合う私たちを見てしまっていたということになってしまう。 それは、駄目。 だって、確かに私たちの唇は触れ合っていなかったけど。 だけど私がそれを触れ合う瞬間まで近づけてしまったのは確かで。 そして、それが私の背後、音楽室の入り口から見てしまったときどう映るのかは考えるまでも無く明らかで。 つまり、私は間に合っていなかったということになる。 主観ではなく客観。あの子から見た私。その観点で言えば、私は明らかに間に合っていなかった。 きっとそれは、あの子が私に望んでいたものとはまるで違う光景。 だから、駄目。 だけど、振り返った私の目に映っていたのは、見間違える隙すらなく、寸分違わずあの子以外の何者でもないほどに、あの子だった。 ああ、違うかな。いつものあの子と一つだけ違う点を上げるとすれば。 まるで漫画みたいに、嘘みたいな量の涙をこぼし続けていたということ。 それは本当に魔法みたいに、私を硬直させてしまっていた。 何か言うべきだと思うのに、何も言葉が浮かんでこない。 そもそも、私にはもう何もできることは無いのかもしれない。きっと、そうなのかもしれない。 ずっと頑張って、あの子の望むだろう私を続けてきたけど。 それを、私は今裏切ってしまったのだから。 だから、私はもう何もできない。だから今、動けないんだと思う。 でも、それだけじゃない。ううん、きっとそんなことじゃない。 私が今動けずにいるのは、きっとこの子が――泣いているから。 声も出さずに、ただ溢れさせるそのままに、涙を流し続けているから。 どうして?なんで?そんな疑問が溢れる。 だって、キミにとっての私はただ傍にいるだけの、そんなに涙を流すほどの存在じゃないはずなのに。 キミにとっての一番は澪ちゃんで、私はそれ以下で。 だから仮にもし、私とりっちゃんがそうなってたとしても、キミがそんなに泣く必要は無いのに。 少し寂しそうな顔して、そうですかって笑って、私の居場所をその傍からなくしてくれるだけでよかったのに。 なのになんで、今キミは――あずにゃん、ねえ、そんなに―― どうしてそんなに、泣いてるの? 私がそうさせたの? 結局私はあの子が駆け出し、その姿が見えなくなってしまうまで、動くことができなかった。 ううん、その姿が見えなくなってもまだ、動くことができなかった。 どうすればいいのか、何をすればいいのか、全然わからなかったから。 「で、どうすんだよ?」 私の硬直を溶いてくれたのは、またりっちゃんの声だった。 そこではっと思い至る。さっきの台詞、つまりりっちゃんはもうすぐあずにゃんが来ることを知っていた。 その上で、あえてあの子からそう見えるように、私にそうしたということ。 「そーだよ。澪からメールがあったからな。梓のやつがもうすぐ来るってことはわかってた」 「だ、だったらなんで!」 「なんで、か。ま、そりゃ私も悪かったとは思うけどな」 りっちゃんは一度そこで言葉を切ると、大きくため息をついた。 そして一瞬後、まっすぐな眼差しを私に向けた。 「だけどな、唯。お前も悪いんだぞ?」 「え?」 そう言われて、私は戸惑う。それは、確かに私は悪いことだらけだったと思うけど、このタイミングで指摘されるとは思っていなかったから。 「梓のこと、好きなんだろ?」 「そ、そりゃそうだよ。可愛い後輩だし」 「誤魔化すな」 きっとりっちゃんの視線が鋭くなる。そうだよね、そう思ってたけど、やっぱりわかってるよね。 でも、何でここでそんなこと、確認してくるの。わかんないよ。 「そうだよ、私は……あずにゃんのことが好き。そうだよ、りっちゃんが思っている意味で、私はあずにゃんのことが好き」 だったらどうしたのと続けようとして、また吐き出されたため息に遮られる。 「だったら梓のやつに、そう言ってやればよかったんだよ」 そして、続けられた言葉はまた私を固まらせた。 だって、それはあまりに正論だったから。好きだったらそう伝えればいい、なんて本当にそのとおり。 私だって、そうできたらいいって思ってた。思ってたけど、だけど、そんなのできるわけ無い。 「できるわけ無いよ、だって、あずにゃんには澪ちゃんが……」 「それでもだよ」 だけど、私の言い訳はあっさりと切り捨てられる。本当にスパッと何のためらいも無く。 「何で隠すんだよ、そんなんだから無理してるって言うんだ。それって意味ないだろ、いや、むしろ悪いことだぞ、それって。 お前にとっても、梓にとっても、そして澪にとっても、……私にとっても、だ。 お前の行動は、誰にとってもよくないことだったんだよ」 畳み掛けられて、私は何も言えなくなる。 でも、意味が無いなんてことは無い。それは確かに意味があったと、私は信じてた。 だから、どんなに痛くても私は頑張ってたんだから。 でも、言い返す言葉が無い。その言葉を浮かべられない。 りっちゃんは間違ってるよ、なんていい返せない。 だって、つまり私は―― 「お前は良かれと思ってやっただけなんだろうけどな…悪く言えば、自分がこれ以上傷つきたくないからそうしてた、ともいえるんだぜ」 つまりは、そういうことだったんだと思う。 ぎゅっと目を閉じて、その言葉をかみ締める。 私は確かにいっぱい傷ついた。 そうだね、またあのゲームに例えるとするなら――私の体にはナイフがいっぱい刺さってる。 外れなんて無いから、ナイフは全て私に刺さる。 逃げられないから、刺さるナイフはどんどん増えていく。 それは全部、私のせいだと思ってた。だから私はそれを全部我慢しなきゃって思ってた。 だけど、私はそれに気が付いてなかったんだ。私に刺さり続けるたくさんのもの。それは勝手に刺さってくるわけじゃない。 それを私に刺して来る誰かがいるってこと。ナイフはそれだけじゃ、動けもしないんだから。 だとしたら、それを刺していたのは誰だったのか。 あずにゃん、でも無い。 ――だってあの子に悪いところなんて一つも無い。 澪ちゃん、でも無い。 ――澪ちゃんだってそう。そう指摘できることなんて、一つも無い。 りっちゃん、でもない。 ――むしろりっちゃんは、それを私に教えてくれたんだ。 そうだよ、考えるまでも無い。それは、あずにゃんでも澪ちゃんでも、今目の前にいるりっちゃんでも、そして他の誰でもなく。 私なんだ。 私を傷つけていたのは、ずっと私。だって私は、りっちゃんにそれを知られていた以外には、抱えているものを決して表に出そうとはしなかったから。 だから、私以外に私を傷つけられる人なんていない。 私は自分で自分を傷つけて、そしてそれに耐えることで正しいことをしてるつもりになっていて。 まるで自己犠牲のような、そんな高尚なものに浸っている気になっていて。 そんな馬鹿な勘違いをしてたんだ。 自分のせい自分のせいってずっと思いながら、その本当の意味に気が付いてなかったんだ。 そして、今更ながらに思う。 私は一杯ナイフを刺してきたけど、致命的な箇所には決して刺そうとはしていなかったということに。 苦しんでいた振りをして、逃げ続けていただけだって言うことに。 伝えてしまえば、そこで終わってしまう。 だから私は、ただ終わらせたくなかっただけ。 ただ緩やかに少しでもその瞬間を遅らせられれば、なんて考えていただけ。 そのときまで、なんて思っていたけど、それを迎えたとき私はきっとそれを受け入れられなかったと思う。 ひょっとしたら、そこに至るまで疲労しきってしまった私は、本当にひょっとしたらだけど、自分の全く望まない行動をとっていたかもしれない。 本当に、りっちゃんの言うとおり。 何の意味も無い。私はそこに意味を求めちゃいけなかったんだ。 ただ足踏みしていただけ。本当は、もっと早く先に進むべきだったのに。 次の場所へと、踏み出すべきだったのに。 「梓のところに行ってやれよ」 「……りっちゃん」 それを、りっちゃんは教えてくれた。 何もわかってなかった私に、教えてくれた。 それを私に気付かせるために、こんなことをしたんだと思う。 どうしてこの人はこんなに優しくしてくれるんだろう。 ううん、その理由は私にはわかってる。だけど、それなら。 何でこの方向の優しさを、この人は持つことができるんだろう。 私のそれとは違う。この人はちゃんとそれを踏まえさせた上で、そして私に直接そう告げている。 きっと一杯傷つけたのに。 私はこの人のことを、私の知らない間に一杯傷つけてしまったはずなのに。 だけど、りっちゃんはそんな私に、今優しく笑ってくれていた。 だから私は何も言えなくなる。 きっと謝ることも、この人は許してくれないだろうから。 だから、小さく頷いて、くるりと背中を向けた。 あの子が走り去った方へと、踏み出そうとした。 「なあ、唯」 背中に、声がかけられる。 あの時、空き教室を出ようとした私に駆けられたのと、全く同じ声。 ああそっか、あの時りっちゃんはそう言おうとしていたんだ。今更ながらに私は気付く。 「私じゃ駄目なのか?」 そして、私の予想通りの言葉が、続いた。 本当に私は馬鹿だなって思う。勘違いばっかり。やることも、空回りばっかり。 「私ならあいつみたいにお前を泣かしたりしないし、傷つけたりもしない。きっと幸せにできると思う」 そうだね、りっちゃんならきっと、そうしてくれると思う。 「だからさ……」 「駄目だよ、りっちゃん」 それを、私ははっきりと遮った。さっきの震える声とは違う。 自分でも驚くほどはっきりとした声で、否定の言葉を口にした。 「私は、あずにゃんのことが好きだから」 「そっか」 私は振り返らないまま。だからりっちゃんがどんな表情をしているのか、見ることはできない。 だけどきっと、最後に視界に映したときの、優しい笑みを浮かべているに違いないと思う。 「だから、しっかり振られてくるよ」 「ばーか、奪ってくるつもりで行って来いよ」 「そうだね」 そして、私は歩き出す。 きっとわざとなんだろうなと思う。だって、これはりっちゃんらしくない。 それがもう終わっていることをわかっていたのに、敢えてそれをちゃんと形にしてくれたんだと思う。 私にちゃんと、自分のことを区切らせるつもりでそうしたんだと思う。 それが足かせにならないように、私の背中を押してくれるような、そんなつもりで。 本当にりっちゃんは優しい。いくら感謝しても足りない。いくら謝っても足りない。 足りないけど、やっぱり言わなきゃ。 それはきっとりっちゃんのためじゃなくて、私のため。りっちゃんはきっとそうしていいって私に言ってくれたんだから。 だから、駆け出す直前、私はそう口にしてた。 「りっちゃん、ごめんね。そして、ありがと」 返事は無い。だけど、それはもう私の気にすることじゃなかったから。 私はただまっすぐと、あの子の消えた方向へと駆け出していった。 校舎中駆け回って、ようやくあの子を見つけたのは屋上の真ん中だった。 屋上の真ん中、北風に吹かれるままにただ一人、じっと空を見上げている。 息を切らせながら屋上の扉を空けた私の目に映ったのは、そんなあの子の姿だった。 駆け寄る私の気配に気付いたのか、あの子はゆっくりと振り返る。 よく私に見せる、困ったような笑顔を浮かべながら。 目元は腫れて、眼も赤いまま。きっと今まで泣いていたんだと思う。 それを私に感じさせないようにとでもするかのように、それでもあの子はいつもの笑顔を浮かべていた。 だから、私は足を止めない。 元からそうするつもりだった。そして、今はそうしなきゃって思っていた。 勢いをとめないまま近づく私に、あの子は小さく目を見開く。 かまわずに、私はそのままの勢いでただひたすらに強く、ぎゅうっと抱き締めた。 無邪気でいられた、あの頃のように。だけど、あの時とは違う想いを込めて。 「せ、先輩?どうしたんですか?」 あずにゃんはそんな私に、いつもの口調で問いかけてきた。 本当にいつものように、だけど震えてかすれた声で。 仕方ないと思う。だって、どう見てもついさっきまで泣いていたに違いないんだから。 だけど、なんで、それでもこの子はなんでもない振りをするんだろう。 まるで、さっきまでの私みたいに。 声だけじゃなくて、抱き締めている体も震えている。 今にもまた、泣き出してしまいそうなのに。それでもこの子は――あずにゃんは、私に抱き締められるまま、それがいつもことだと言わんばかりに笑みさえ浮かべていて。 そんなはずは無いのにね。だって、私はそうなってから、ずっとこの子を抱き締めることをやめていたんだから。 「ねえ、あずにゃん。私ね、あずにゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」 そう言った私に、そこで初めてあずにゃんは明らかな狼狽を見せた。 「な、何言ってるんですか。先輩が私に言うことなんて、何もないはずです」 「あるんだよ。ホントは、ずっと前に言わなきゃいけなかったことだったんだけど。私が弱かったから、ずっと言えなくて」 「違います!そんなの、あるはずが無いんです!」 その強い否定に、私は少しひるんでしまう。どうしてだろ、何でここまで強く否定しようとするんだろう。 あずにゃんは私の腕の中でもがきだして、私は思わずそれを離してしまいそうになる。 わからない。だけど、だけどやっぱり伝えなきゃ。 だから、離さない。ぎゅっと抱き締めて、暴れようとするあずにゃんを押さえ込む。 りっちゃんは言ってた。それは私やりっちゃんにとってだけではなく、あずにゃんや澪ちゃんにとってもよくないことだって。 私もそう思う。 はっきりとはわからないけど、そう言われたからじゃなくて、私は確かにそう思っている。 だから、ちゃんと伝えないと。 「……唯先輩は、律先輩のところにいればいいんです!もう、私の傍なんて、こなくていいんです」 「やっぱり、そう思ってたんだ……違うよ、私がいるべきなのは、りっちゃんの傍じゃない」 「……え?」 「今私がいるべきなのは、ここだもん」 私の言葉に、あずにゃんの動きが止まる。私の胸の中におとなしく納まって、きょとんと私を見上げてくる。 「違います、先輩は間違ってます……きっと先輩は優しいから、私に同情してくれてるだけなんです」 「同情って……わかんないよ、あずにゃん。でも違うよ、これはそんなんじゃない」 「だって、私唯先輩のこと一杯傷つけて……」 「それも違うよ。私は、自分で傷ついていただけ。他の誰でもないよ、それは私のせいなんだ。だから、もちろんあずにゃんのせいでもないんだよ」 「そういうとこが、優しすぎるっていってるんです」 「違うよ、優しくなんて無い……だって、私あずにゃんのこと、泣かしちゃったから」 「こ、これは違います!私が勝手に……泣いてただけですから」 「違わないよ。傷つけたのが誰かっていうなら、きっとそれは私。本当はさ、私にこんなこという資格なんて無いと思う」 だけど、それでも伝えなきゃいけない。 臆病だから隠し続けていたものを。それを勇気だって勘違いしていたものを。 「だけど、言うね」 もう、決着をつけないといけないから。終わらせないといけない。 誰かの償いなんて言葉は言い訳になってしまうから使わない。ただ、私が先に進むために。 だけどそれでもやっぱり、それがこの子の為になると信じながら。 駄目です、と首を振り続けるその仕草を遮るように、私は口にした。 「私、あずにゃんのことが好き。ずっとずっと、キミのことが好きだった」 達成感、とでも言うのかな。 私は変にすがすがしいとか、そういう言葉が似合う心境だった。 ずっと伝えたかったことを、ようやく口にできたのだから、無理の無いことかもしれない。 こんなことなら、もっと早くこうしておけばよかった。 だって、私は本当に、ずっとずっとあずにゃんのことが好きだったんだから。 私がそう気付かないときから。だから、それに気付いたときにそうしておけばよかった。 振られるのが怖いから。伝えなければ、ずっとこの気持ちを持っていられる、なんて。 そこで終わってしまうはずが無いのに。そんなことで消えてしまうはずが無かったのに。 たとえ誰の隣にいても、自分の隣にいなくても、その傍にいられなくても、私がキミを好きってことは変わらなかったのに。 変わらないままに、先に進んでいけたはずだったのに。 だけど、私はそこで足踏みしてしまっていた。そして、私自身を、りっちゃんを、そしてあずにゃんを傷つけた。 だけど、それもこれで終わり。 きっとあずにゃんは、澪ちゃんを選ぶ。 だけど、それでいい。 それでも私は変わらない。その上で、私はやっぱりキミのことが好きだって、胸を張っていえるから。 「……あずにゃん?」 だけど、その言葉はいつまでたってもやってこなかった。 そういうべきこの子は、私の胸に顔をうずめて、身を震わせている。 小さく嗚咽をあげている。 「……先輩はずるいです。折角あきらめたのに、私はもう大丈夫って、そう思えたのに」 ずるいって言われた。 どうして、なんでだろう。あずにゃんが何を言ってるのかわからない。 どうして、また泣いてるの。私、また何か間違えたのかな。 これで正解だって思ったのに。 私は想いに区切りをつけて、キミはまた澪ちゃんのところに戻る。そして私は今度はちゃんと、それを見守り続ける。 それでいいと思ったのに。 「……唯先輩には、律先輩がいるじゃないですか」 呟く声に、私はそっかと思う。あずにゃんはアレを誤解したままなんだ。 「何でそんなこというんですか……何で!律先輩と、キスしてたくせに!」 だから、戸惑ってるんだ。私がりっちゃんとそういう関係になっていると思っていて、それなのに私から好きなんて言われたから。 「違うよ……りっちゃんはちゃんと止まってくれたから。だからキスなんてしてない。それにそんなんじゃないよ」 あれは、ただ私がりっちゃんにしかられていただけだから。 私が駄目だったことを、教えてくれただけなんだから。 「そんなんじゃない、なんてことないです。律先輩は――」 うん、知ってる。知ってるよ、それは。 「それでも、だよ。それ以上の意味なんて、私には持てっこない。だって、私が好きなのはあずにゃんだもん」 「……なんで、どうしてなんですか。律先輩なら、唯先輩を傷つけることない。きっと幸せにしてくれるはずなのに」 りっちゃんも同じこといってた。 多分、それは正しいんだと思う。 でも、私にはそれは選べない。ううん、選んじゃいけないことだから。 だから首を振って、それに応えた。 そんな私に、あずにゃんはぎゅっと押し黙る。 そして、ぎゅっと私の服を掴んだ。 何かをこらえるように、そんな仕草で。 またわからなくなる。この子が何をしようとしてるのか。 私に何を言おうとしてるのか。 だって、君が私に今伝えるべきことは、一つのはずなのに。 だけどあずにゃんは口を開かない。だから、私からは何も言えなくなる。私が言うべきことは、もう全部伝えたから。次はあずにゃんの番なのに。 私たちはただ寄り添いあったまま、吹き抜ける風の中それに身震いする余裕すらなく、立ち尽くしている。 まるで時間が止まっているかのよう。 待つ私と、動かないキミ――そうかも、私はまだ、この期に及んでもこのまま時間が止まってしまえばいいのに、なんて思ってしまっているけど。 やっぱり駄目だから、ね。だから―― 「私は……私は――」 そんな私に応えるように、あずにゃんはようやく顔を上げてくれた。 「本当に、言うつもりは無かったんですよ。資格って言うなら、私にこそそんな資格は無いって、そう思ったんですから」 そして、涙で歪む顔でそれでもまっすぐに私を見つめてきた。 ああ、とうとうなんだ。と私は思う。 ようやく終わりになるんだって。そして始められるんだって。 同時にぎゅうっと心臓の下辺りが締め付けられる。 私が終わりにしてしまおうとしたものが、私を締め付けてくる。何でそんなことするのって。弱い私が、私を責めてくる。 それはとても痛くて、私の想像していたものよりずっとずっと痛くて、耐え難いものだったけど。 だけど、だからどうというものでもなかった。 それに耐えるなんて表現自体、私は使いたくなかったから。 手を握り締めることもなく、ぎゅっと奥歯をかみ締めることもしないままに。 私はその言葉をちゃんと耳にしようと、私にそうしてくれるこの子をちゃんと目に焼き付けようと。 抱き締める腕を離して、その肩に手を置いて、その分だけ距離を置こうとした。 それを、私を抱き締める両腕に阻まれた。 もちろんそれは、私の目の前のあずにゃんの両腕。 今までそうされたことの無かった私は、そしてどうしてこのタイミングでそうしてくれたのかわからなかった私は何事ってびっくりして。 そして続けられた言葉に、さらに驚かされることになった。 「好きなんです!」 ――へ? 私はぽかーんと口をあける。だって、それは全く予想してなかったことで。 あずにゃんが口にするはずだったのは、私への断りの言葉のはずで。 だけど、あずにゃんは好きだって言った。 誰が、誰を?ええと、言ったのはあずにゃんだから、あずにゃんが、で。 そして、あずにゃんが今抱き締めているのは、私だから、私、を――え? ううん、いやいや、まさかだよ。だって、そんなはずは――ないのに。 「そ、そんなはずないよ!だ、だって、あずにゃんは……澪ちゃんのことが――」 「やっぱりそう思ってたんですね。誤解です、それは。確かに澪先輩のことは尊敬してますけど、それとは違います」 で、でも。二人でいてあんなに嬉しそうにして―― 「尊敬する先輩が仲良くしてくれたら……そりゃ嬉しいですよ」 あの時抱き合って―― 「やっぱり見てたんですね。違います、アレは私が転びそうになって、支えてくれていただけです」 矢継ぎ早に訂正され、私は何も言えなくなってしまう。 それに納得してしまいそうになる。 つまり、ということは。本当にあずにゃんは、私のこと――好きだってこと、なの? ――本当に?嘘じゃなくて?だってこんなの、こうなるなんて、すぐには信じられないよ。 だって、こんな、都合よすぎだし――ああ、でも。 そっか、確かにりっちゃんはあの時、そう言ってた。 私が澪ちゃんのことを理由にしたとき、りっちゃんはそれでも言うべきだと私に告げてくれた。 りっちゃんは知ってたんだ。 私がそれを告げれば、あずにゃんが応えてくれていたってことに。 だから私の背中を押して、この子のそばに行かせてくれたんだ。 つまり、私は最初から間違えてた。 どこを、じゃ無くて、本当にもう何もかも。 本当に、手を伸ばせばすぐに届いたのに。届く場所にいてくれたのに。 「ふぇ……んぅ……」 目じりから熱いものがあふれ出してくる。 それは本当に熱くて、溶けてしまいそう。そのまま溶けてしまってもいいと思えるくらいに、嬉しくって。 溢れても溢れても、次から次へとまた溢れ出して来る。 「ゆ、ゆいせんぱ……な、何で泣くんですか」 「だって、だって、あずにゃ……んぅ……うえぇぇん……」 泣き出した私にびっくりした様子のあずにゃんにしがみついて、私は泣く。 あの時の、あの空き教室と同じ様子で、だけど全く正反対の衝動のままに。 「……絶対駄目だって思ってたから、絶対無理だって思ってたから」 「唯先輩……すみません、私がもっと早く気付けばよかったんです。もっと早く、先輩に伝えられていたら……」 「違うよ、あずにゃんのせいじゃないよ。私が……」 「違います、私のせいです。先輩は私のせいにしちゃっていいんです。だから、もう泣かないでください。先輩に泣かれると、私……私」 泣きじゃくる私に釣られるように、あずにゃんの声もだんだんと歪んでくる。泣き声へと、近付いていく。 「私、本当に最低です……先輩を、こんなに泣かせて。いっぱい悲しい思いをさせて」 私を抱きしめていたあずにゃんの腕に、さらに力がこもる。私がそうしているように、ぎゅっと私にしがみついて、泣いている。 「あずにゃん、泣かないで……」 「無理です……っ!だって、だって私……本当に言わないつもりだったんです。言える資格なんてないって思ってたんです!」 「……あずにゃん」 「なのに、先輩は……こんな私のこと、まだ好きだって……言ってくれたから。私は、そんなに言われたら、抑えられないじゃないですか……」 「先輩がずっと辛かったように、今度は私がそうなる番だって、幸せになっちゃ駄目なんだって……そう思ったのに」 ふるふる首を振って、まるでそういったことを後悔するようにあずにゃんは言う。 だけど、そんなの駄目。そんな必要、全く無いんだから。 「違うよ、あずにゃん……私、辛くなんて無かったよ」 「え、だ、だって……」 「ていうかさ、そんなの全部忘れちゃった。だって、私今こんなに嬉しいんだもん」 本当に、嬉しくて嬉しくて、泣いてしまうほどに嬉しくて。 私こそ、こんなに幸せになっていいのかなって思ってしまうほど。 いっぱい間違って、いっぱい遠回りして、そのせいでいっぱい傷つけて。 こんな風に今、本当にこんな私がこんなに暖かいものを抱きしめてていいのかなって。 「あずにゃんが私のこと好きだって言ってくれて、私のこと抱きしめてくれて、そして私のために泣いてくれてるんだよ」 「だから、私全然辛くなんて無いよ。そんな風になんて、思えないよ」 だけど、これでいいんだ。ううん、こうじゃなきゃいけないと思う。 私は幸せにならないといけないんだと思う。それを、手放しちゃいけないんだと思う。 だから、これでいいんだって教えてあげるように、私はぎゅっとあずにゃんを抱きしめた。 だって、それが自分の幸せだって、あずにゃんはそう言ってくれたんだから。 幸せになったら駄目と言ったこの子は、私の傍にいることがそれだって言ってくれたんだから。 私のことを好きで、私に好きでいられることが、幸せだって。 「だから、駄目だよ。そんな風に言っちゃ。幸せになっちゃいけないなんて、言ったらやだよ……あずにゃんは一杯幸せにならなきゃいけないんだから」 そして、それはあずにゃんにとってだけじゃない。 「そうじゃなかったら、私も幸せじゃいられないんだから」 それは、私も幸せだと思うことだから。 だから、私いっぱい幸せになるよ。あずにゃんのこと、幸せにしてあげられるように。 だから、もう遠慮なんてしない。もっと、いっぱいあずにゃんのこと好きになる。そして、あずにゃんにもっと私のこと好きになってもらうんだから。 「ゆい……せんぱい……っ」 「いいんですか、私、先輩の傍にいて。こんなに、こんなに幸せでいて……やだもう、嬉しくて……涙が止まらないです」 泣きじゃくりながら私にしがみついてくるあずにゃんを、私もまた強く抱きしめ返す。 私だって同じだもん。さっきからずっと、嬉しくて涙が止まらない。 でもぬぐったりはしない。だってこれは、私が今こんなに幸せだってことの、私たちが今こんなに幸せだってことの証だから。 だからぎゅうっと精一杯の力を込めて、私はあずにゃんを抱き締める。もう絶対離れないように。離さないように。 その可能性だってもう、私たちの間には欠片だって残らないように。 「私もだよ……あずにゃん。あずにゃん、好き。大好き、大好きだよ、あずにゃん」 「唯先輩……私もです。先輩に負けないくらい、先輩のこと大好きです。いっぱい、いっぱい好きです!」 いっぱい涙をこぼしながら、だけどいっぱい笑いながら、私たちは抱きしめあい、笑いあう。 本当に本当に幸せで、そうせずにはいられない。 こうして繋がりあえたことが、嬉しくてたまらない。 ううん、それは最初から繋がってたんだ。 私もあずにゃんもそれに気が付いてなかっただけで、そのままにずっと遠ざけてしまっていたけど。 ずっとずっと繋がっていた。 そして今ようやく、一つになることができた。 本当にようやくだけど、私たちはちゃんと繋がりあえることができたんだ。 ――もう、絶対離しませんから。 そして、この子は真剣な表情でそう呟くから。 ――うん、ずっと一緒だよ。あずにゃん。 だから私はふんわりと笑いながら、そう答えた。 そして、大好きだよって、もう何度目かわからない、だけどきっと何回言ってもこの想いを表しきれないその言葉を呟きながら、私は。 それでも伝わりあっているものを、少しでも形にしたくて。 ゆっくりと目を閉じたキミの、その小さな唇にそうっと優しくキスをした。 (終わり) おまけへ 感動した!! -- (ゆいあず命) 2010-06-13 08 17 08 心から言える 感動した -- (名無しさん) 2010-08-03 00 55 08 律がカッコ良すぎて号泣した -- (名無しさん) 2010-08-05 23 52 06 素晴らしすぎる -- (名無しさん) 2010-11-11 23 25 42 ここのwikiで一番お勧めのSSをあげろと言われたら俺はこのシリーズを推す -- (名無しさん) 2010-11-19 00 04 39 唯の地文がねちねち長すぎて読物には向いてない そこさえ改善すれば良い子 -- (名無しさん) 2010-12-28 11 44 42 遅ればせながらゆいあずSSを最初から読んで言ってるが暫定一位。 -- (名無しさん) 2011-01-15 01 28 44 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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693 通常の名無しさんの3倍2016/09/08(木) 23 36 44.67 ID UO9wcb8RO ハリー「ふがいないな藤川!」 バルトフェルド「甲子園で未だに巨人に未勝利とは情けないよ」 マオ「すんませんなぁ本拠地胴上げできなくて」 シャア「気に病むことは無い。我々は粛々と勝利を積み重ねるだけだ」 アムロ「えぇい!こうなったら明日は負けて移動日に優勝という盛り上がらない展開を招いてやれ!」 シャギア「哀れな男だ。嫌がらせのために贔屓チームの負けを願うようになるとはな」 オルバ「(器が)小さい男だね兄さん」 アーミア「アムロさんはそんな小さい人じゃありません!ビッグマグナムともカルヴァリン砲とも評され、夜の撃墜王と異名を・・・」 刹那「去れっ!話題が違うぞ!」 ロラン「イケイケの頃はアムロ兄さんの子どもを何人認知することになるんだろうかと我が家は戦々恐々でしたね」 シーブック「なんとぉっっ!!!」 コウ「シーブック、25年振りにかこつけて無理矢理出てくるんじゃない!」 シーブック「そう言うコウ兄さんも目的は一緒でしょ!」 ※1991年は0083とF91の年
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SFOのサーバーにつながらないのですが? OKよくあること。 理由は大体以下の通り 直IPでつながるケース DDNSサーバーが落ちている 毎朝ひそかにルータをリセットしているがDNSにそれが反映されていない 直IPでもつながらない 管理人の家のルータが落ちている 管理人の家の回線トラブル その他機材トラブル 災害に弱い地域なので影響がでる 管理人のゲームの設定ミス たまにある 回線もしくはサーバートラブルが長時間続いた場合、リアル時間とゲーム時間に誤差が生じるケースがあるので注意
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―8― 「そっか、チームに入るつもりはないんだな」 一部逃げ出してしまった末端の兵士を除いて、モレク鉱山裏の洞窟を根城にしていた盗賊団は壊滅し、自警団の手でそのメンバーは連行されて行った。 ティールとレオン達のチームは自警団のメンバーに去り際に報酬を手渡され、今はモレク~リエステールを結ぶ街道の上で別れの挨拶をしているところだった。 「うん……ちょっと、今は一人で考えたい事があるから……」 その時、レオンの口から自分達のチームに入らないかという提案が出されていたのだが、ティールは決して首を縦には振らなかった。 どちらかといえば、今は誰かと組むにしても、様々な人と関わっていきたい。 誰かと組みたいとは望んでいても、一つのチームに留まって、あまり情を深く持ちたくは無いと考えていた。 ―こんな考え方をするという事は、まだまだトラウマは払拭されているとは言えないだろう。 「なら、またどこかで共に戦える日を楽しみにしているよ」 「…そうね。 私も、楽しみにしてる」 最後にそれだけの言葉を交わし、レオン、アルト、クリスの3人と手を握り合いながら、ティールはリエステールへと帰って行く彼らに別れを告げた。 ……そして向かうところは、自分の旅の拠点であるモレクの街。 リエステールとモレクをつなぐこの街道を歩くのは、すでに慣れたものだった。 「…ん?」 そして、モレクの町への入り口が目に入った時、ふと横に目を向けると……自分からは少しはなれたところで、二人の支援士が3匹のウェアウルフと戦っている光景が眼に映る。 支援士の片方は、無骨な大剣を振るう聖騎士(パラディンナイト)の青年で、もう片方は理遣い(マージナル)の少女。 「……加勢する必要は無さそうだね」 戦いを見る限り、特に苦戦している様子もなく、むしろ余裕、と言った感じだった。 ぱっと見る限り、二人ともランク的にはBの中から末あたりで、それなりに熟練した支援士だろう。 人によるかもしれないが、下手な加勢はプライドにも関わる。 とりあえず大丈夫だろうと判断し、ティールは再びモレクへの道を進み始めた。 「―おい、待ちな」 ……が、その直後に背後から飛んでくる声。 いかにもガラが悪そうな、いわゆる”荒くれ者”が出す無作法な声だった。 「……何か?」 片手で支え、肩にかけるようにしていたハルバードを両手で持ち直し、何でもないような表情でその声の主に返事をする。 ……見ると、潰したばかりの盗賊団の末端の兵士が着ていたのと同じ服を着た男が5人、並んでこちらを睨みつけていた。 「よくも親分をやってくれたな! 俺らのチームを崩しやがって…!!」 「チームって……よくそんな事が言えたものだね」 他人の生き方を否定したくは無いが、他者から無理矢理物を奪うような横暴は、個人が行使できる自由の範疇を超えている。 それは決して許される行為ではなく、それが彼らにとっての生き方だとしても、御世辞にも肯定できるものではない。 「うるせぇ! 親分の仇だ、死にやがれ!!」 問答無用とばかりに武器を抜き放ち、斬りかかる盗賊の残党達。 ―そこまで言うならなんで逃げたりしたんだろう― 自警団に捕まらずにこの場にいると言う事は、つまりは親分とやらが捕まる瞬間にはあの場にいなかったと言うこと。 そして自分にかかってくるという事は、自分が頭を倒す瞬間はその眼で見ていたと言うことになる。 要するに、親分を捕らえる自警団に斬りかかる勇気は無くその場は逃げてしまい、後から一番弱そうな子供を仇として狙うような人間という事だろう。 ついでに言えば、その親分とやらは右手を斬り落とされ捕まりはしたが、まだ死んではいない。 「はぁ……」 正直呆れてモノが言えない。 例え相手が自分の敵わない者でも、仲間を守るために命を捨てられるような、かつての自分の仲間の姿を思い出し、目の前の男達にはただただ溜息しか出てこなかった。 ―目の前に5人…と、そこの木の上に4人か― 跳びかかってきた盗賊の一撃をかわしつつ、すぐ近くにあった木の上にちらりと目を向ける。 おそらく先に出てきた5人でこっちの体力を削り、隠れている者はあとから加わって一気に潰す算段なのだろう。 作戦としては普通の出来だが、目標となる相手にばれてしまえばあまり意味は無い。 「しょうがない、相手するよ!」 次々と跳びかかってくる五人の攻撃をかわし、時には自らの武器で弾き返し、蹴りや体術を交えた攻撃を加える。 ―できれば人間相手に命は奪いたくないため、武器の刃部分で斬りつけるのは腕や足が中心になってしまう。 が、相手のレベルはまだ低いほうなのか、それでも特に労することなく5人の身体にダメージを蓄積させていく。 「―ん?」 そんな中で、ちらりと敵が隠れている木の方へと目を向けると、四人の敵の姿はいつのまにかその上から消えていた。 だが、代わりにその下あたりから何か言いあうような声が聞こえ、視線をそちら側へと移す。 そこには、先程見かけた二人の支援士と、四人の盗賊が退治している光景があった。 「元々金目当てに徒党組んでる奴らだ。そんなもんだろ」 パラディンナイトの青年がそう口にすると、大剣を振るい目の前にいた盗賊の一人を斬り倒した。 ―……加勢に来てくれたんだ……― 余裕ではあるかもしれないが、自分は盗賊団をひとつ潰してきた後の身で、多少の疲労はまだ残っている。 半分の四人を相手してくれるのなら、正直に言うと、有り難い。 ……しかし、やはり仲間の死という事に対する不安は、この程度の状況でもどうしても脳裏に差し混んできてしまう。 そんな事を考えながらも、再び自分の戦いへと意識を向け直すティール。 消耗してきているだろう敵を選び、武器を持つ腕や足に斬りつけることで、戦闘不能へ持ち込んでいく。 あと2人…… 少し余裕ができ、再び加勢に来た支援士の方へ目を向けると…… 「―っ!?」 盗賊の一人が、背後から青年の首目掛けて剣を振るっているのが目に入った。 青年は目の前の敵に気をとられているのか、その攻撃に気がついていない。 「ライトニング!!」 が、刃が彼の首に触れる直前に少女の声が響き、その声に反応し転げるように青年はその場を離れ、同時に迸る雷が、剣をかざしていた男の身体を貫いた。 強烈な電撃を受け、ブスブスと全身からこげた匂いを出しながら倒れていく男。 少女はそれを見ながら高らかに勝利宣言しているようだったが…… 「……お前な、もうちょっと考えて撃てよ」 青年は、自分にも命中しかねない位置に魔法を撃ち込まれた事に少々ご立腹のようだった。 ―危なかったのに気づいてないし…― ティールは素直にそんな感想を抱きながら、残った二人のうちの一人を蹴り飛ばす。 ……そのまま耳を傾けていると、どうやら少女の方は青年の命が危うかった事に気付いていたようだが、そこを助けたなどと口に出すような様子はなかった。 それは青年のプライドを傷付けまいとしての行為なのかもしれないが…… 「……はぁああ!!」 「ぐあぁあ!!」 意を決し、最後の一人の顔面を、支援士の二人が立っている方向へと力の限り蹴りとばす。 「―っ…!」 やはり、ムリに全力を出すと一瞬ではあるがその部分に激痛が走る。 だが、子供が大人をあんな勢いで吹っ飛ばす様を見れば、誰でも自分の方へ興味を持つだろう。 「…完全に気絶しておるの」 つんつん、と杖でつつきながら、少女が一言。 「……すごい子供もいたもんだな、5人全員倒したのか」 足の激痛が治まるまでを絶えつつ、何でも無いように汗をぬぐい、そんな感想を口にする二人に向けて、笑顔を向ける。 ……そして、まず口に出すのはお礼の言葉 「ありがとう」 二人は、一瞬なにが起こったのか分からずに、沈黙してしまう。 「な…何がだ?」 「私を助けようとしてくれたみたいだから。 そのお礼」 ―そう、これから私がする事は、加勢してくれたお礼― まだ、戦う様を一目見ただけなのでなんとも言えないかも知れない。 しかし、目を向けた一瞬に行われた光景は、彼女の脳裏にしっかりと焼きついていた。 ……誰にも、大切な仲間を失う悲劇を味わわせたくは無い。 ―そう、絶対に― 『Turning Point』 ~FIN~ <<前へ あとがきへ キャラ紹介へ