約 1,040,674 件
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/140.html
三つのモットー ◆mtws1YvfHQ 二つの影がゆっくりと歩いていた。 女と男。 女が前を歩き、その後を男が付いて行く。 女、その女は日本最強と言われた事のある天才、鑢七実。 男、その男は至上最低の過負荷を持つ大嘘憑き、球磨川禊。 本人達には自覚一つないだろうが、恐らく現状最悪だろう二人組。 非常に遅い足取りで進む二人組の片方、球磨川が、ふと思い出したように指を立てた。 『そう言えば七実ちゃんに言い忘れた事があったんだ』 「なんですか?」 『マイナス十三組のモットーだよ』 「そうですか」 七実は、そんな事如何でも良いと思っている事が実によく分かる口振りで答えていた。 しかし気付いているのか気付かずに居るのか、球磨川は話を進めようとする。 『うん。七実ちゃんがマイナス十三組に入ってるんだし、ちゃんと説明した方がいいでしょ?』 「別に良いです」 竹を割るとしてもこうは行かないだろうと言うぐらいのバッサリ具合で斬り捨て、七実は足も止めず、進み続ける。 聞き流す気しかないと言わんばかりに。 一時停止したように固まっていた球磨川だが、 『うんうん、やっぱり気になるよね』 何事もなかったように続ける。 いや、続けようとした。 しかし面倒臭くなったのか七実、何を言うでもなくスルー。 匙一つ分の興味も持ち合わせていないと言わんばかりの無視。 『七実ちゃん』 声など聞こえていないような雰囲気。 『七実ちゃん?』 声など掛けられていないような態度。 『七実……ちゃん?』 声など、この世にないような無関心。 「………………」 『………………』 球磨川は黙った。 「………………」 『…………うぅ』 かに見えた。 しかしここからが球磨川禊の、『大嘘憑き』の、『全て虚構』の、始まり。 『うわぁーん』 「あら?」 突如球磨川は足を止めると、手で顔を覆って、しゃがみ込んで、泣き始めたのだ。 まさかと思うかもしれないが事実。 たかだか無視を決め込んだ程度で泣き始めるとは思ってもいなかった、思っても見なかった七実は、完全に虚を突かれた。 何度か瞬きをし、 「あの」 『七実ちゃんが虐めるー』 「いや、この程度で虐めると言われても困るのですが……」 思わず足を止め、七実は声を掛けるが止まらない。 それどころか更に涙の量が増し、地面に流れ落ちて行く。 七実は困ったような顔をし、思案に耽り、思い付いたのか、静かに言った。 「ふむ…………泣き止みなさい。爪を剥ぎますよ」 『びぇーん』 逆効果。 しかし表情一つ変えずにそんな事を言われては誰であろうと泣き出す恐ろしさがあるのだが、気付く様子もない。 七実本人はいたって平常のつもりなのだろうが、それだけに質が悪い。 再びどうするべきかと思案する。 「…………泣き止んで下さい。ね?」 『びぇーん』 思案の結果、そっと、諭すように声を掛けた。 しかし意味なし、甲斐なしで、単純に困った顔をした。 日本最強と呼ばれても所詮は人の子と言う事なのか、泣く子には弱いらしい。 分かり辛いながらも、うろたえていた。 まあ、無理もない。 幼少の頃は本土に居たが、過去も過去。 島流しに遭ってからその先で泣くような存在は弟の七花の子供時代だけだ。 気付かぬ内に泣くような歳から遠く離れていたし、泣き止まし方となると。 だから少し、うろたえた。 七実らしくなく、うろたえた。 手で隠された球磨川の顔も確認せずに、見る事もなくうろたえた。 物の見事に、球磨川の術中に嵌っていた。 それに気付く事無く、散々顔に出さずに困り続けた挙句、肩を落とすと、 「分かりました。ちゃんと話を聞いてあげます」 『……本当?』 七実は折れた。 未だに手で顔を覆っていた、未だにしゃがみ込んでいた球磨川が、顔を上げた。 涙で濡れに濡れた顔を上げた。 その言葉に、仕方がなさそうに、七実は頷く。 それだけで目に見えて球磨川の表情は明るくなった。 「ちゃんと聞いて上げます」 『うん』 そして立ち上がり、嬉しそうな笑みを浮かべる。 しかし本当に嬉しそうな顔である。 『マイナス十三組のモットーは三つ。ぬるい友情。無駄な努力。むなしい勝利。だよ☆』 「………………」 『ん、どったの七実ちゃん?』 「いえ、別に。良いモットーだと思っただけですから早く行きましょう――――いえ、悪いモットーなのかしら?」 『ハハッ、それほどじゃないよ』 自然な流れで球磨川の手を引きながら七実は話を聞いていた。 諦めたように、やけに似合うため息を付きながら。 そして気付かない。 手を引かれている張本人、球磨川禊は、全て予定通りと言わんばかりに笑みを浮かべていた事を、前で手を引いていた七実は知らない。 知らないでいた。 気付かないでいた。 見れないでいた。 気付かぬまま、言った。 「はぁ…………早く着かないかしら、クラッシュクラシック」 『え?』 「?」 呟くように言った七実の言葉。 それに思わず球磨川は驚きの言葉を上げ、七実は振り返った。 実際に球磨川は、繋いでいた手を離し、さも驚いていると言うような表情とポーズをしていた。 「どうしました?」 『こっちって、学習塾跡の方向だよ?』 「――あら」 ついうっかりとでも言い出しそうな具合に、七実は自分の頬に手を当てた。 知らぬ者は多いが、実は七実、極度の方向音痴なのである。 それを知らない球磨川は少し心配そうな表情をして見せた。 『…………少し休む?』 「そうですね……そうしましょう」 球磨川の言葉。 それに大人しく頷き、七実と球磨川は道の端に、お互いに小さく笑いながら、腰を下ろす。 二人して軽く息を吐いた。 忘れられそうだがこの二人、地味に体力なしなのである。 ちょっとした意地だったのか途中まで休憩は取っていなかったが、今少しの休憩。 そして、休憩がてらと言った所だろうか、七実が口を開いた。 「そう言えばモットーの中にぬるい友情と言っていましたが、その友情の中にわたしは入っているんですか?」 『勿論だよ。だって七実ちゃんと僕は仲間なんだから』 「――ああ、そう言えば何時だったかそう言う感じの事を言ってましたね」 『そうだよ。だからぬるく仲良くやって行こうぜ?』 時間は少しずつ過ぎて行く。 丁度良く、放送までの時間があと少しの所まで迫っていると知らず。 時間は過ぎて行く。 何も起こらず。 何も変わらず。 何も変わらず。 そう言ったものの、事実として変わった事が、いや、起こった事がある。 球磨川と言う男の存在が、七実の何処か深い所に螺子込まれていたと言う事だ。 殺して欲しいと願った弟ほどでなく。 居なければと思った母ほどでなく。 殺そうとして来た父ほどでなく。 弟を連れ去った女ほどでなく。 しかし、螺子込まれていた。 孤島で殺し合った忍達よりも。 死の山の神衛隊の剣士達よりも。 凍て付いた山の怪力無双達よりも。 刀大仏の鎮座する寺の僧侶達よりも。 球磨川は、七実の中に螺子入っていた。 弱く弱く弱い男が、遥かに強い筈の、忍達よりも、剣士達よりも、怪力無双達よりも、寺の僧侶達よりも、心に、あるいは意識に、螺子入っていた。 言うほどに深くもなく、言うほど浅くもなく、螺子入っていた。 その証拠が、何時の間にか握り合い、離していた手である。 少なくとも、どうでも良い相手だったとしたら既に死んでいる。 草のように踏み躙られて、死んでいる。 前例としては、とある山の男が不用意に七実の足を掴んだために、原形を留めぬまでに踏み躙られて死んだ事がある。 如何でも良い相手なら、草のように踏み躙られて、草のように毟られて、死んでいる。 しかし現に、球磨川は生きている。 それが何よりの証拠だった。 何時の間にか、草程度の存在では無くなっている証拠だった。 そんな最初は、邪魔さえしてこなければ良いとしか思っていなかった心境と、それとは違う何かが混じっている今の心境との変化。 それに七実本人は気付いていた。 気付いて、ただ、笑っていた。 案外、ぬるい友情と言うのも、良いかも知れないと。 案外、ぬるい友情と言うのも、悪いかも知れないと。 機嫌良く。 機嫌悪く。 ぬるい友情・無駄な努力・むなしい勝利。 それがマイナス十三組のモットーです。 【一日目/早朝/E‐3】 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(小) [装備]双刀・鎚@刀語 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6) [思考] 基本:弟である鑢七花を探す。 1:七花以外は、殺しておく。 2:まずは学習塾跡の廃墟に行く。 3:少し球磨川さんに興味が湧いてきた。 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ。だけどちょっと疲れたかな』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式とランダム支給品が3個あるよ』 [思考] 『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番はやっぱメンバー集めだよね』 『2番は七実ちゃんについていこう!』 『3番は七実ちゃん疲れてるのかな。よく分からないや』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り3回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。 (現在使用可) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 骨倒アパートの見るものは 時系列順 図書館での静かな一時 その事実も今は知れず 投下順 図書館での静かな一時 冒し、侵され、犯しあう 鑢七実 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted- 冒し、侵され、犯しあう 球磨川禊 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted-
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/357.html
探偵にゃんこーの厄日 第3話 あの変な人間を拾って今日で4日目になる、あれから何の依頼も無く、 新規の依頼者も来ないままである。 まあ、そもそも探偵の仕事なんて不定期な物だと相場が決まっては居るが、 それでも、あまり歓迎できない休暇だ、何しろ金だ、金が無い。 金が無ければ憂さ晴らしも出来ないし、酒も飲めなきゃ女も抱けない、 家に帰ればあの、何を考えてるか分からない女が居るし。 あいつを拾ってきてから何もかもがろくでもない、やったら綺麗に 掃除された部屋も、見やすく整理された資料も、 何もかもが気に食わない、さらには花なんて飾ってやがる、 下町の薄汚れた探偵なんだぞ、俺は いや、仕事場を片付けてくれるのは良い事なのだ、 依頼人に不愉快な思いをさせないほうが 後々有利なのは事実なのだ、だが生活空間まできっちり整備するのは落ち着かない、 まるで自分の部屋ではないようで、気に食わない 生活空間と接客の部屋との違いすら理解出来てないんじゃないか、あの女。 いや?あの女の私室は、未だに何一つ私物の無い 恐ろしく味気の無いものだし、ひょっとして 奴にとって私室はそういうものなのかもしれない、 娯楽も何も必要としない生き物なんて 面白みも無ければ可愛げもない、やっぱり拾うんじゃなかった。 そんなことを思いながら、繁華街を練り歩く ・・・・・中途半端な飲み方をしたせいで、 むしろ余計侘しくなりながら、自宅に帰る。 仕事机―整理された其れをどう散らかしてやろうか考えていると 、そこに見慣れない封筒が置かれて居ることに気がついた。 「灰猫さまへ」と宛先には書かれており、封筒の裏には、 優美な書体で「メアリー・アルバルナ」と書かれてある、 封筒の紙質からして上等な物、そこまで考えた所で アルコールで染まった脳みそが、記憶を引っ張り出した、 あの哀れなヒト奴隷の主人、前回の依頼の依頼主の名前だ。 中には前回の依頼の報酬と、次の依頼の前払い分 ―虐待死させた犯人を突き止めてほしい、という追加依頼の料金が入っている。 探偵にそんなことを頼むな、と言いたい所だが、この街の警官の腐れ具合を考え見ると ほぼ確実に、犯人側に賄賂掴まされてお仕舞い、というのが見えている。 それよりは、名前の売れている探偵に任せたほうが、まだ確実性があると踏んだのだろう ・・それとも、あの貴婦人、犯人達を私刑にするつもりなのかもしれないな そもそもヒトに人権などないから、壊したとしても 多少の賠償金で済む、しかし、あの愛着の入れ様じゃ それでは納得すまい、犬なら我慢するだろうが、彼女は猫なのだ。 そして彼女は、この国において万能なる力、財力という物を 有り余るほど保有している。 たかだかヒト一匹の為に嬲り殺しにされる猫、 と考えると非常に理不尽な気もするが、自業自得なので 同情する気にはなれないな。 さて、此方も返事を出さないと行けない訳だが、 此処で大きな問題が発生する、この報酬に関係した事柄だ つまり、ぶっちゃけ手紙を届けるより、本格的に酒を飲みに行きたいわけだが・・・ 結局、私がお使いに行くことに成ったのだった、 ポケットにはご主人の書いた地図、右太ももには 護身用のリボルバーという、いでだちだ。 ちなみにリボルバーは、私達の世界の拳銃ではなく、 魔法銃とかいうものである、火薬の代わりに火炎魔法の札が ぐるぐる巻きにして入れられており、 これをコックで叩く事で発砲することが出来る。 やたら高価な銃の代わりに、安価で作りやすい魔法銃は、 カモシカの国に大量に輸出され、外貨獲得に一役 買っているんだとか。 難点は、雨の中では札がだめになって使えなくなることと(火縄銃かよ)、 如何せん威力が実弾と比べて大きく下回る事らしい その代わり反動が少なく、女子供はおろかヒトでも扱える。 しかし、街中を拳銃を持って徘徊するというのは、 ファンタジー世界か、アメリカでもない限りありえない シュチュエィションだよなあ、などと思ったが、 よく考えたらここはファンタジー世界でした。 地図の場所にたどりついて唖然とした、 でかい、でかいですよこの家、家というか屋敷、屋敷というか ちょっとした城、富豪とは聞いていたが、之ほどまでとは。 警備員のヒトに事情を説明する、私としては此処で手紙を渡して さようならしたかったのだが(大きい家は、実家を思い出してすこぶる不愉快)、 彼らの主まあ、つまるところ依頼人は私に遭いたくて仕方がないらしく、 是非お呼びして是非お呼びして、と四回程言われたそうだった、 わがままである、実に我がままである、警備員のわんこのうんざりした顔が印象的だった。 お互い強く生きましょう、うちのご主人は今頃酒盛りしてます 豪華なシャンデリアがつるされたホールから、赤い絨毯が敷かれた廊下を通って 一室にたどり着く。 通された部屋には、数人の少年が裸でぐったりしているんですが。 あきらかにそっち用の道具が並べ立ててあるわけですが、コケシトカ なんだろうこの生臭いにおいとか考えたくもねー!たくもねー! こんなところに招待って何する気ですカー えっと、帰っていいかな?、いや、帰る、帰る!カエシテー、むしろ助けてー。 「すみません、客間は隣でした」 かちんかちんに硬直した私の目の前で、何事も無かったかのように扉は閉められました、 看守の犬の言葉のどこかしらしれっとした響きが大変気にかかります、むしろ警告か?、 今から会う人はそういう猫ですよっていう意味の・・・ あるいは、いっぺん見せてからつれて来いと命令されたとか、後者だと、ヤバス。 通された客間は、先ほどの部屋とはまったく異なり、 非常に清潔感のある部屋で、上等な椅子が並んでいて 一番豪華な椅子には一人の女性が座っていました、 外見年齢は私より少し上のおねえさんといった感じ、髪の毛は 軽くウェーブを書いて、腰辺りまで伸びていて、 ブロンドの髪の上に白い耳が違和感なく乗っかってる感じです 「はじめまして、私はこの館の主の、メアリー・アルバルナといいます」 「私はヒト召使の晃子といいます、よろしくお願いします」 「ご主人様は、この度の依頼を受けると言っておりました、 正式な書類は、此方の封筒の中に入っているのでご確認ください」 「ああ、之はご丁寧に、ですが、私があなたをお招きしたのは、 あなたのお話を聞きたかったからなのですよ」 そう言って、口を押さえて上品にくすくすと笑う、 メアリー夫人、うー、美人さんなんだけど、さっきの光景が 脳裏に浮かんでは消えしてる訳で、落ち着かない 「私の話ですか?」 「グレイさんがヒト召使を持っているという話は始めて聞きました、 買えるとも思えませんから、落ちたてなのでしょう? それなら、是非むこうの話を聞いてみたいな、と思ったのです、 私の持っているヒトは、いずれも子供のころから此方の世界に居る子達 ばかりですから」 「ああ、それで」 よかった、あなたを食べたい(性的な意味で)とかお近づきになりたいわあ(はあと) とか言われたらどうしようかと思った、幸いそっちの趣味は無いらしい。 っていうか、ご主人様グレイって名前なんだ、すっげえ安直だなあ、 シロクロブチとなんら変わらないじゃないですか。 いろいろ世間話をしていると、時計が五時を回る、 そろそろ帰らないと、暗くなってから帰るのは危なそうだし。 「帰りは送らせますよ、危ないですから」 「あ、いいえ、おかまいなく」 種族とか関係なく人に迷惑をかけるのは嫌いである、 それに正直それほど長居したくもないのです 第一印象が第一印象なので。 「せっかく、暗くなってからでも、ゆっくり楽しもうと思いましたのに」 ごくごく普通な調子で、さらっと言ってみせやがりました なにをですか?と聞きたい所だが実践で教えてくれそうなのでやめておこう ・・・私を少年と勘違いしてるとか? ほら、性別を見た目で判断できないという、 素敵なコメントをご主人からいただいてるからなあ。 「わたしは女ですよ?」 「いっこうに構いませんが」 はいアウトー! はいはいアウトー! 「晩御飯作らないといけないので、もうしわけありません」 作らなかったとしても正直百合は簡便というか、私まだ処女ですので、初体験女性とか嫌杉 しかしなんでこんなにオープンなんだこの人。 「これをグレイさんに渡してください、夜用といえば 分かってくださるでしょうし」 別れ際に紙袋をいただきました、中身はきっと考えないほうが良いんだろうなあ ヒトであれば男でも女でも見境なしですか。 なるほど、「ヒト狂い」と聞いてはいたが、此処までとは、 本当に恐ろしいお人やでこの猫 ////////////////////// くすくすと くすくすと たまらなさげにメアリーは笑う 無表情さとか ちょっと性的なニュアンスを加えただけで面白いくらい反応する初心さとか 綺麗なアーモンド形の目とか 少女と女性の中間のような、未完成な体つきとか かわいいなあ、わりと本気でほしいな、と思っている自分に気が付いた。 とりあえず、明日、内の子の中で最年長の子と、あの子を引き合わせてみよう あの子も最近人間の子が気になって仕方が無いみたいだし、うまく行くかもしれない。 彼女には自信があった 異性を落とすための技は仕込んだし、あの子たちの親だって そうやって子供を生んだり生ませたりしているのだから 今回だけ、うまくいかないなんて事は無いだろうと。 もっとも、堅物そうだから時間はかかるかもね それはそれで楽しみの時間が長くなって、嬉しいことだった。 しかしこの貴婦人、子供ゲットする気まんまんである
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2702.html
絶望を視覚的に表現できるとするならば、”それ”は正しく相応しい。 巨大な銀色の体躯は、それだけで見るものに畏怖の感情を呼び起こす。周囲を取り囲む二百近い板状のものから吐き出される赤々とした光線は死角なく降り注ぎ、本体下部から生えた柱上の砲台からは緑色をした光弾が全てを蒸発させる。 現代兵器ではその装甲の一枚も貫く事も出来ず、吐き出す光線の一条も防ぐ事が叶わない。最強の矛と盾をもった存在、それは正しく絶望である。 人類全ての敵、明確で強大な悪、それは憎しみと恐れを持って星船と呼ばれた。 ささくれ立ち、瓦礫で埋め尽くされた道を狙撃銃を片手に男が走る。 疎開がなされた町はゴーストタウンとなっていた。避難する途中に落とされたのか、ビニール製の人形が道路にぽつんと横になっている様が物悲しい。 乗り捨てられた自動車が引っくり返って腹を見せ、建物という建物は殆ど薙ぎ払われている。廃墟というよりも更地。これが、ほんの数ヶ月前まで日本の首都として栄えた町などとは誰も想像できまい。 倒れたバイクを飛び越えたところで立ち止まり、後方に振り返りざまに引き金を引く。マズルフラッシュの直後、自ら射線上に飛び込むかのように銀色のガンシップが現われ銃弾の洗礼を受けた。 結果を確認する間も惜しいと走り出すと、奇跡的に残っていたビルの影に身を隠した。 わずかばかりに訪れた休息に、急いで相棒の弾倉を交換する。 対物狙撃銃、ライサンダーZ。異星人と人間の技術の合いの子は、無茶な扱いにも動作不良を起こすこと無く男に付き従ってくれている。 口径12.7mm、銃としては最大級に部類されるものではあるが、たかだか個人携帯火器レベルで戦車砲に迫る装甲貫徹力というふざけた威力は、実射したことの無い人間からすれば出鱈目を通り越して狂人の妄言に聞こえるだろう。 かくいう男自身も緒元を聞いた時には欠片すら信じていなかった一人だ。けれど今ではその言葉は真実だったと確信している。 神経をささくれ立たせる嫌な音を耳にし、忌々しげに空を振り仰ぐ。 空には先ほど撃墜したものと寸分違わぬ姿のガンシップの群れが男を捜して飛び交っている。彼らの後ろに空は見えない。ただ銀色の”星船”と呼ばれる、侵略者たちの母船がビルから見える空一杯に浮かんでいた。 直径ほぼ千m、銀色の球体は地を這う虫けらなど歯牙にもかけていないかのように、威風堂々と浮遊している。 ――そうやって、余裕ぶっているがいい。すぐに地べたに叩き落してやる。 家族を殺され、仲間を喪い、故郷を更地に変えられた。 守るべき者も、帰るべき場所も、もはや残されていなかった。 ただ心にあるのは黒々とした憎しみだけ、諦観など心に入れる隙も無い。 虎の子の防護衣はとっくにバッテリーが切れていた。眼は激しい光で半ば焼け付き、片耳は鼓膜が破れ、体中に穴を穿たれ、骨も数本イカレている。満身創痍、それでも憎悪だけを糧にしてここまで来た。 首筋にチリつくような感覚を覚えた。隠れていたビルから飛び出した直後、星船の光弾が直撃しビルが倒壊を始めた。 目標を発見したガンシップがすぐさま殺到する。 アスファルトを転がりながら不自然な姿勢で無理やり敵に照準して発砲、止まることなく転がりながら槓悍を引いて装填。一瞬前までいた場所を、光線が走り道路がめくれ上がった。 スコープを覗く暇すら惜しみ、銃を構えて撃ち、後方へ転がる。 発砲、回避、装填。 機械よりも正確に一連の動作を繰り返す。怒りは熱く身を焦がすも、動作に一切の支障をもたらさない。 光線がまたしても迫り、回避しようとしたが身体がそれを裏切った。 唐突に膝が落ち、わけも分からずに転倒した。 見れば、いつのまに攻撃を食らったのか腹に黒々とした空洞が口を広げていた。血は、流れていない。痛みすら無いがそれでも傷は確実に力を奪っていた。 せり上がる熱に、堪えられず吐血した。着衣を濡らす赤々とした鮮やかな血に今まで感じたことも無い絶望感が訪れる。 立ち上がろうと足掻くが、手足は地面を擦るだけだ。 ――ここまできて! 一瞬の内に喪った家族と仲間の顔が脳裏をよぎる。助けられなかった、助けたかったかけがえの無い者たち。 視界を敵の光弾が埋め尽くた。 異星人との戦闘で初めて恐怖した。復讐を遂げる事も無く無意味に死ぬ事が、どうしようもなく恐ろしかった。 「あ、あ゛ああああぁああっ!」 無念が口から飛び出したその時、勢いよく横に押し倒された。すぐ脇に光弾が着弾し、アスファルトにクレーターを作る。 男を押し倒した何者かは、男を引き摺るようにして崩れたビルの陰へと移動した。 「大丈夫か!?」 男をすんでの所で助けた者はこの場には似つかわしくない格好をしていた。 身軽さと、低視認性を優先した都市迷彩、灰色に化粧した顔。スカウトだ。常ならば敵をいち早く発見し、情報を司令部に渡すのが仕事の彼らがなぜ激戦の最中に居るのか。 「なにを、している?」 「なに、ちと格好をつけにな。最後の最後までケツまくってたんじゃ、あの世の娘に会わす顔がねぇからよ」 スカウトの直ぐ傍を、ビルを貫通して光線が薙いだ。 「っと、無駄話してる暇はねぇな。これ、拾った弾なんだけどよ。使えや。俺の銃じゃ使えないが、お前のなら使えるだろ?」 こんな状況だというのに、スカウトは朗らかに笑いながら弁当箱ほどの弾倉を取り出すと男に押し付けた。 「なんでお前笑ってるんだ?」 「なんでって、そりゃあお前が生きてるからだよ。聞いてるぜ、お前の噂」 まるで英雄を見るかのようなスカウトの眼に、男は居心地の悪さを感じた。 自分は、そんな大層なものではない。正義のヒーローなどではなく、ただ復讐のために戦っていただけだ。 「俺は、そんなんじゃ」 続く言葉は爆音にかき消された。 もうもうと立ち込める粉塵に手をかざした。視界が限りなく零になる。 「もうここもダメか。俺が囮になる。お前も直ぐに復帰しろよ」 「おいっ!」 「俺らの地球を頼んだぜ。うおぉおおっ!」 粉塵の晴れた先には、倒壊したビルと、星船へ向かって走って行くスカウトの姿があった。 彼に群がるガンシップ、降り注ぐ光線。すぐさまスカウトは爆発と、ガンシップの影に隠れて見えなくなった。 『ぎゃぁあああ!』 ヘッドセットから、断末魔の悲鳴が聞こえた。 「ちく、しょう」 また一人、喪った。名前も知らない奴だったが、それでも命を助けてくれた恩があった。 もう流すまいと誓った涙が、嗚咽と共に漏れた。 「畜生畜生畜生っ! これだけ殺してもまだ足りないかっ。クソッタレの異星人め! 殺してやる、殺してやるぞ!」 銃を杖代わりに無理やり立ち上がった。膝はまだ力が入らず無様に震えたが構わなかった。 襲い掛かってきたガンシップの射線上から倒れながら回避、同時に発砲。最新戦車の前面装甲すらも貫通する銃弾は、銀の体躯を容易く沈黙させた。 「弾丸の味はどうだ!」 怒号を上げながら、転がり、撃ち、吹き飛ばされた。 少し前までの機械的な正確さは望むべくもなかった。身体はスクラップ寸前で、立っていることすらままならない。槓悍を引く手すらもが覚束なかったが、それでも絶望はしない。 「俺たちに帰る場所は無い。お前らが奪ったんだ!」 一発撃つたびに光線が体の何処かを貫き、光弾が肉を抉った。 発砲の反動すらも使って回避と攻撃を繰り返す。 意識が混濁しはじめ痛覚が完全に麻痺したが、引き金を引く指だけを認識する事ができた。それだけ判れば十分だ。地面に何度も叩き付けられながらも撃ち続けた。 どれだけの時間をそうしていただろうか。 『マザーシップ大破! 墜落します!』 『総員退避せよ! マザーシップが落ちる! できるだけ遠くに逃げろ!』 久しく聞こえなかった本部からの通信が聞こえた。 敵の弱点しか見据えていなかった目を離し、星船全体を見た。 黒煙が上がっていた。巨大な船体は傾き、炎を上げてゆっくりとだがこちらに近づいてきているのが見えた。 ――ああ、終わったのか。 笑い出したい程の達成感と歓喜を感じると同時に、空虚な風が男の心に吹く。まったく異なる二つの感情を、けれども自然と男は受け入れた。理由がなんとなくわかったからだ。どれほど憎んだ相手を倒そうと、喪った者までは帰ってこない。 厳しくも優しかった父母、腕白盛りだった弟、引っ込み思案だった妹、何度も馬鹿話を肴に盛り上がった中隊の仲間たち、誰も、帰ってこない。 腹ばいになっていた体を、銃を杖がわりにして立つ。しっかりと星船が落ちる様を眼に捉えた。 船が金属の軋む音を断末魔の悲鳴のように高らかにあげた。黒煙をたなびかせながら落ちてくる様は、星が迫ってくるかのようだ。 今更逃げた所で、最前線で戦っていた自分はもう助からないだろう。もとより助かるつもりはなかった。 「皆、今、そっちに行く」 視界を埋め尽くす怨敵を眼に焼きつけて、ついに力尽きアスファルトに向かって倒れこんだ。 何故か柔らかな土の感触と草の青臭さを感じたのを最後に、暴風の中の暴風と呼ばれた男は意識を手放した。 鉄錆めいた臭いが鼻に届いて初めて、少女は己が喚び出した使い魔が人間であることに気が付いた。 喚び出された人間は、体中から血を流してボロキレのように広場の中心に倒れていた。 「なに、あれ」 「人間か?」 「おいあれ、血じゃねぇのか」 周りを取り囲んだ学生たちがざわつき始める。無理も無い。トリステイン魔法学院、いや、ハルケギニアの長い歴史を紐解いてもメイジが人間を召喚した事例など無いのだから。 呼び出した少女自身、未だに自分のなした結果を受け止めきれず呆然としていた。 突然の異常事態に誰も動けなかった中、人垣から一人の男が召喚された男に駆け寄った。素早く脈拍と呼吸の有無を確認し、 「水メイジっ、今すぐ応急処置を! それからそこの君、急いで医務室へ行って職員に有りったけの秘薬の準備と状況を説明しておいてください。手隙の者は彼にフライを。頭は動かさないように。医務室に運びます!」 学生達の硬直を解くように怒鳴った。声を聞いて、初めてその男が自分の担当教諭であるコルベールであることに気が付いた。 怒鳴り声に普段の凡庸とした雰囲気は感じられず、部下を叱咤する指揮官じみた厳しさを感じる。こんな声もだせるのだな、などと他人事のように思う。 「ミス・タバサ、行きますよ」 声と共にコルベール教諭手を引かれ、ようやく少女は忘我の淵から脱出した。頷くことで返事をすると、教諭と、幾人かの生徒と共に医務室へと向かった。 学院に常備してあるけして安くはない秘薬を幾つか使い切る事によって、怪我人は辛うじて一命を取り留めた。 術式を担当した教諭が言うには、応急処置が少しでも遅れていたら命は無かった状態だったらしい。 コルベール教諭は治療が一段落すると、他の生徒の監督があると付き合った学生を引き連れて広場へと戻っていった。 医務室付きの教諭は、自分の噂を知っているのか特に話かけることもなく黙々と今回使用した薬の事務手続きを行っている。 先ほどのまでの治療の喧騒が嘘のように医務室は静けさを取り戻していた。ベッドで昏睡する男の寝息と、羽ペンが書類の上を踊る音だけが響く。 タバサは何をするともなく、ベッド脇の椅子に座り男を眺めた。 血塗れでずたずたになった見慣れぬ衣服は脱がされており、今は簡素な麻の下着だけをつけた状態でシーツに覆われている。 横たわっている状態でもわかるほどの長身だ。2メイル近くはあるのではなかろうか。大柄なもの特有の作りの大雑把さは無く、どこか彫刻めいた均整の取れた体つきをしている。 シーツからのぞく腕と首は、鍛えられた者のそれだ。でこぼこと隆起し、けれど無駄が感じられない筋肉は荒縄を連想させた。 筋肉以上に目を引くのは、まんべんなく残された傷だ。刺し傷、裂傷、擦過傷、火傷痕、それらが新しい肉特有の桃色をのぞかせていた。古いものも合わせるともう数え切れない。 特に顔が酷い。火傷痕が右半分を覆っており、眠っている今でさえ息を呑むほどの凶相に男を貶めていた。戦に明け暮れる傭兵のほうがまだマシな面構えだ。 「よかったわね」 唐突に後ろから話しかけられた。振り返ると、見慣れた赤毛の友人が此方を見つめている。 身分を隠した亡命者として肩身の狭い思いをしている自分にとって国を捨てたもの同士、唯一心を許せる女性だ。姉がもしいたとしたらこんな感じなのかもしれない。昔共に遊んだ従姉姫は、姉というより友人であったし今では怨敵の一人娘だ。 傍らに侍らせているサラマンダーは彼女が召喚した使い魔だろう。狼よりも一回りは大きい赤々とした体躯、尻尾の先に轟々と灯る炎、サラマンダーの中でも特に立派な部類に入るだろう。 タバサとは違い、なかなかの上玉を引き当てたようだ。 「キュルケ」 「彼、助かったんだって? いくら平民を呼んじゃったって言っても目の前で死なれちゃ寝覚め悪いものね」 お喋りな口を止めることなく、よっこいせ、などと年寄りじみた掛け声を上げながら引っ張ってきた椅子に腰掛けた。 彼女はベッドの男へ視線を向けると、ヒュッと息を呑んだ。 「酷いわね」 「ええ」 男の傷のことを言っているのか、それとも顔のことか。どちらにしろ同じだ。 「どこで何をすればこんな傷こさえられるのかしらね」 半ば呆れたようにキュルケが呟いた。声には抑えきれない畏怖と好奇心が滲んでいる。 古い傷にはいくつか致命傷とわかる傷があった。だというのに男は今現在生きてここにいる。よほど優秀な水メイジが治療にあたったのだろう。騎士か、それとも名の知れた傭兵隊長だろうか。でなければこれほどの高度な治療は受けられない。 「そういえばコントラクト・サーヴァントは終わったの?」 「まだ。教諭が意識を取り戻してからにしろって」 「ふーん。ま、無難な所よね。下手に刺激したら死にそうだし、彼」 寝息を立てる男の顔をキュルケが指でなぞった。 「この傷さえなければ、そこそこ見れる顔だったろうにね。あーあ、勿体無い」 「キュルケ」 「冗談よ、冗談。いくら微熱の私でも、あんたの使い魔に手を出すほど無粋じゃないわよ」 手をぱたぱたと左右に振り、冗談よ、と繰り返す。 「そういえば、あのゼロも平民を召喚してたわよ。ま、あっちは大怪我をしてる事も無く普通の男の子だったけどね」 「そう」 「彼が目を覚ましたら会わせてあげたら? 男の子のほうはなんか随分と混乱してたみたいだから、お仲間に会わせてあげたら多少落ち着くんじゃないかしら」 「考えとく」 目でキュルケに礼をする。一年を共にした友人は、タバサの感謝を間違う事無く受け取ると軽く頷いた。 「さってと」キュルケは大儀そうに椅子から腰を上げた。 「そろそろ私部屋に戻るわ。夕食の時にでも経過を聞かせてね」 手を振りながら、来た時と同じく唐突にキュルケはサラマンダーを引き連れて帰っていった。使い魔の立派な焔が見えなくなってから、深く溜息をついた。 平民というかつてないものを引き当ててしまったことが、堪らなく憂鬱であった。当分はヴァリエール嬢と共に学院の噂の中心となるだろう。目立たないよう一年間を過ごしてきたというのに、だ。 最悪、この噂が元で捨てた母国に存在が露見してしまうかもしれない。 死。寒気を伴ったイメージにタバサは身震いした。 毒を飲み床を転がる母を心底面白そうに眺めていた伯父王の瞳を幻視する。もしばれたら、あの男は自分を今度こそ抹殺しようとするだろう。トリステインも、自分たちを見捨てる。たかだか小娘一人のために圧倒的な国力差のある国に歯向かおうなどと思う馬鹿はいない。 毒矢という下賎な手段で謀殺された父、自分の代わりに毒をあおり三日三晩熱病に苦しみ悶死した母、自分を逃がす為に一人娘をタバサの影武者にして屋敷諸共焼死した執事、一人トリステインへ亡命して来てからの復讐に身を焦がした日々。 全てがこの男の存在、いや、平民を呼んでしまったという事実で無駄に終わろうとしている。 いっそこの男を殺してしまいたかった。無意味とわかっていても、この焦燥感と怖気を払拭するのにいくらかは役に立ちそうな気がする。 ぎりし、と杖が鳴った。手が白くなるほどに杖を握りこんでいた事に気づき、慌てて自制する。 感情に流されるな。無駄なことをするな。何度も自身に言い聞かせ男への殺意を抑える。 適当な詩集でも読んで気を紛らわせよう、そう思いたちカバンへ手を伸ばしたところでぎょっとした。 男が目を覚ましている。 真白な天井を微動だにせず凝視して、ただ一言「ここは、どこだ?」と呟いた。 男の声は妙にしゃがれていて、歳経た翁のようだ。 「トリステイン魔法学院」 内心の動揺を悟られないよう、出来るだけ平坦な声で答えた。 ゆっくりと、言葉に反応して男が首を向ける。虚ろな眼がタバサを捉えた。男は自分の傍にいるメイジに驚きも、怯えもしない。ただ仮面がはりついたような無表情で、じっとタバサを見つめる。 誰何の意だと解釈し、此方から自己紹介をする事に決めた。 「タバサ」 また沈黙が降りる。今度はお前の番だ、という無言の圧力を加えたが、男は答えない。ただ虚ろに、タバサを見つめ続けるだけだ。 先に痺れを切らしたのはタバサの方だった。 「名前」 「わからない」 短すぎる問いに、内容を理解出来なかったのだろうか。もう一度、今度は少しだけ長く問う。 「自分の、名前」 「だから、わからない」 「物狂い?」 「そうかもしれない。自分の名前も、どうして此処にいるのかも、何も覚えていない」 虚偽を述べているのかと思ったが、男の瞳がそれを裏切っていた。 男の黒色の瞳は、嘘を付く者特有の焦りや打算といった色が無い。それどころか感情の欠片一つ、捕らえる事が出来なかった。 人形。幾度と無く学院で囁かれた陰口が蘇った。情動をまったく感じさせない瞳は、まるで鏡に映った自分自身のようだ。 ――なんて皮肉。 感情の無い表情というのがいかに不気味かを、初めて知った。 思考を切り替える。嘘をついているにしろ、本当に何も覚えていないにしろ、今やらねばならない事は一つだ。 コントラクト・サーヴァント、これさえ行えば主人である自分の任意で五感の共有と、意思の疎通さえ可能だ。 本来ならば言葉の通じない使い魔との為にあるの機能だ。ハルケギニア広しと言えども使い魔の言葉の真偽を計る為に使うメイジは、自分が始めてなのではないだろうか。 「貴方は使い魔」 「つかい、ま?」 「私の手足になる」 「俺は、君の使い魔、という奴だというのか」 「そう。契約する」 素早くルーンを唱え、抵抗する暇も与えずに唇を合わせた。 少し勢いを付けすぎた。歯がぶつかり合い、歯茎と唇に鋭い痛みが走る。男は僅かに片方の眉を動かした。 厳しい外見とは裏腹に、男の唇はひどく柔らかい。 お互い目を開けたままだ。情緒も何も無い、などと埒も無い事を考える。 しっかりと男の身体に紋章が刻まれるのをメイジとしての感覚で理解してから唇を離した。 男の唇には、どちらのともつかない血が滲んでいる。 ファーストキスは、血の味がした。
https://w.atwiki.jp/yuiui/pages/261.html
56 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/09/20(月) 04 48 08 ID sMaSmGzXO [3/4] 梓「あったかあったかってしてもらったよ」 憂「そ、そうなんだ…」 梓「飴を唯先輩に貰ったんだ、チョコのお返しが飴というの唯先輩らしいね」 憂「…」 梓「?…憂?」 憂「…へ?な、何?」 梓「顔色悪いよ?大丈夫?」 憂「あ…えっと、ちょっと保健室行くね?先生に言っておいて、ごめんね?」 梓「あっ、憂」 ~~~保健室のベッド~~~ 憂「私何にも貰ってないよ…っ…ひっく…」 憂「…駄目だよね、見返りなんて求めたら…」 憂「でもホワイトデー期待してても…いいよね…」 ~~~ホワイトデー~~~ 憂「あっ、雪…ホワイトデーに雪っていいなぁ…」 憂「お姉ちゃんクッキーくれたりして♪」 ~~~自宅~~~ 唯「それでねーりっちゃんがねー」 唯「あっ皆でクッキー出し合って食べたんだ、美味しかったよー」 憂「!…そうなんだ、良かったねお姉ちゃん」 憂「ごめん、気分が良くないからもう寝るね、お休み」 ~~~翌日~~~ 唯「ういー?」 憂「まだ気分良くならないんだ今日は休むから…」 唯「分かったよー…何かあったら電話してね?」 憂「うん…」 憂「…雪なんて大っ嫌い…」 昨日と変わらず降り続けける雪に私はそう言った…雪も誰も悪くないのにね…それは言葉にしないまま静かに目を閉じた 感想をどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る 最後ハッピーエンドがよかった・・・ -- (唯憂は素晴らしいとは思わんかね?) 2010-10-18 21 03 26 え、なにこの寝とられた感じ -- (名無しさん) 2010-09-21 17 45 23
https://w.atwiki.jp/teampf/pages/166.html
ファーナング「僕はオリジネイター希望のファーナング」 ???「オリジネイターだと?」 ファーナング「そうだよ」 ???「貴様のような不審者がか?」 ファーナング「信じてもらえないか。ならこれでどうかな」 ???「なんだ!」 あたり一面が漆黒の闇に包まれる。 ファーナング「さぁ闇のデュエルをはじめようか。」 ???「こんな不可思議な力を使うとは……。こいつ本当にオリジネイターだとでもいうのか」 ファーナング「ようやく信じてくれたみたいだね。だけど僕に関わったのは運のつきだね」 ???「ふっ、この程度の事態問題ないさ。私の上司に比べれば、この程度のことなど…」 ファーナング「へ~、上司ねぇ」 ???「そうだ!いつも奴のせいで振り回される私たちはどれほど大変な思いをしていることか!」 ~ミストラルシティ・治安維持局~ 局員A「長官、副長官はどちらへ?」 ネオ「カレン君ならパトロールにでてるんじゃないかな」 局員A「う~ん、けど先ほどから副長官のGPSに反応がないんですよね」 ネオ「なに?それは大変だ!」 局員A「何かあったのかもしれません。至急部隊をだします」 ネオ「その必要はないよ」 局員A「えっ、何故です?」 ネオ「君はカレン君の事をわかってないね。彼女なら問題ないさ。どんなことが起ころうとこの街で起きたことは解決する。それが彼女のポリシーであり意地だからね」 局員A「そうですか。では部隊を向かわせますね」 ネオ「あれっ?今の話聞いてなかった?」 局員A「聞いてましたがだからといって放置するわけにもいかないですよ」 ネオ「それもそうだね。ではカレン君捜索部隊出撃だ!」 ~ミストラルシティ・裏路地~ ファーナング「君の事情は僕には何も関係ないからなぁ」 カレン「まぁいい。貴様で日ごろの鬱憤晴らさせてもらう」 ファーナング「本音が漏れてるよ」 カレン&ファーナング「デュエル!」 ファーナングLP4000 カレン LP4000 ファーナング「僕のターン。僕はモンスターをセット。カードを2枚セットしターンエンド」 カレン「私のターン。私はブリザード・ドラゴンを召喚。ブリザード・ドラゴンで伏せモンスターに攻撃」 ファーナング「来たね。僕のモンスターはニードルワーム。君のデッキを5枚墓地に送る」 カレン「私はカードを1枚セットしターンエンド」 ファーナング「君のデッキという名の希望を破壊しつくさせてもらうよ。僕のターン、僕は手札の獣族モンスターを墓地に送り、チューナーモンスター虚栄の大猿を特殊召喚。さらにゴキポンを召喚。僕はゴキポンに虚栄の大猿をチューニング。シンクロ召喚ボルテック・バイコーン。ボルテック・バイコーンでブリザードドラゴンに攻撃」 カレン「トラップ発動、アイス・ミラー・リフレクション。自分フィールドに水属性のモンスターがいるときモンスター1体の攻撃を無効にし破壊する」 ファーナング「ボルテック・バイコーンを破壊するか。ならばその効果を発動させてもらうよ。お互いにデッキを7枚墓地に送る。」 カレン 残デッキ 22枚 ファーナング「まだだよ。僕はトラップカードシンクロシフトを発動。シンクロモンスターが破壊されたときエクストラデッキからシンクロモンスター1体を特殊召喚する。このモンスターが君に引導を渡す。漆黒より現れし悪魔よ、我が敵の希望を刈り取れ。いでよ我が象徴、漆黒のズムヴォルト」 漆黒のズムヴォルト ATK2000 ファーナング「ズムヴォルトでブリザード・ドラゴンに攻撃」 漆黒のズムヴォルトATK2000 VS ブリザード・ドラゴンATK1800 カレンLP4000→3800 カレン「ぐぁぁ!」 ファーナング「ズムヴォルトは相手モンスターを破壊したときデッキを3枚墓地に送る。さぁ希望の芽を刈り取れズムヴォルト」 カレン 残デッキ 19枚 ファーナング「僕はこれでターンエンド」 カレン「私のターン。私はマジックカード カウンターブリザードを発動。フィールドのモンスターにそのレベル分アイスカウンターを置く。貴様のモンスターのレベルは4。よって4つのアイスカウンターを置かせてもらう。私はコールドエンチャンターを召喚。コールドエンチャンターはフィールドのアイスカウンター1枚につき攻撃力が300ポイントアップする」 コールドエンチャンターATK1600→2800 カレン「いけコールドエンチャンター!」 ファーナング「トラップ発動、希望の対価。ズムヴォルトの攻撃力をエンドフェイズまで0にする」 カレン「なに!どういうつもりだ」 コールドエンチャンターATK2800 VS 漆黒のズムヴォルト ATK0 ファーナングLP4000→1200 カレン「だが…どうだ、ファーナング。これで貴様の象徴は破壊したぞ」 ファーナング「ふ~、甘いね。この程度で僕の象徴を破壊できはしないよ。僕のズムヴォルトは戦闘によっては破壊されない。」 カレン「なんだと!?」 ファーナング「さらに希望の対価の効果だよ。このターン受けたダメージ200ポイントにつき1枚デッキを墓地に送る。僕が受けたダメージは2800ポイント。よって14枚デッキを墓地に送ってもらう」 カレン 残デッキ 4枚 ファーナング「これで君の希望を紡ぐためのデッキもわずか4枚」 カレン「くっ、私はこれでターンエンドだ」 ファーナング「ならば僕のターン。僕はズムヴォルトでコールドエンチャンターに攻撃」 カレン「どういうつもりだ!ズムヴォルトの方が攻撃力は下だぞ?」 ファーナング「ズムヴォルトにはまだ効果があるんだよ。このモンスターが相手モンスターに攻撃する場合、相手モンスターの攻撃力をズムヴォルトと同じにすることができる。そしてズムヴォルトは戦闘破壊耐性をもつ」 カレン「つまり破壊されるのはコールドエンチャンターのみというわけか」 漆黒のズムヴォルトATK2000 VS コールドエンチャンターATK2800→2000 ファーナング「これでズムヴォルトの効果が発動するよ。君のデッキを3枚墓地に送ってもらおう」 カレン 残デッキ 1枚 カレン「私のデッキはこれで残り1枚……」 ファーナング「たった1枚の希望…。これで君は終わりだね!やさしい僕はターンエンドしてあげよう。さぁその1枚のカードを引いて絶望しろよ!」 カレン「……」 うつむき肩を震わせるカレン ファーナング「どうした?サレンだーでもするか?僕はかまわないよ。この決闘で君が負けたら罰として僕の実験材料になってもらおうかな。まぁ勝つのは無理だろうけどね。ふふふふ。肩を震わして泣いているようじゃ、僕達が求めるものには程遠いんだよねぇ」 カレン「……」 ~ミストラルシティ治安維持局・休息室~ ネオ「いやぁ、やっぱりここのコーヒーはおいしいねぇ」 局員A「いいんですかねぇ。副長官が行方不明かもしれないのにこんなゆっくりしていて」 ネオ「あせったって仕方ないじゃないか。カレン君を信じて待とうじゃないか」 局員A「ですが副長官って実際いざというときになるといっつもプルプル震えてますよね。実はビビリなんじゃ…」 ネオ「やっぱり君はカレン君のことをわかってないな」 局員A「どういうことです?」 ネオ「カレン君が震えているのはあれはねぇ…武者震いだよ」 局員A「えっ?」 ネオ「彼女はビビリなんかじゃないよ。むしろその反対、戦闘狂ともいえるかもね。強い奴をみると戦いたいという気持ちが抑えられないんだよ。あげく逆境になればなるほど彼女は力を発揮するからねぇ」 ~ミストラルシティ・裏路地~ カレン「ふ…ふふふ」 ファーナング「どうした?」 カレン「この絶対的な不利な状況…。なんて、なんて」 カレン「素晴らしいんだ!」 ファーナング「は?」 カレン「私はこういう展開をまっていたんだ!」 ファーナング「とうとう頭がおかしくなったか……」 カレン「感謝するぞ、オリジネイター!貴様のおかげで私はさらなる高みに上れそうだ!」 ファーナング「なにを言っているんだい?君はここで負けるんだよ。そういうシナリオなんだからさぁ!」 カレン「くっくっくっ。ならば貴様のその言葉くつがえしてやろう。私のターン!」 ファーナング「どうだい?君のラストドローの結果はこれで終わりだねぇ」 カレン「いいや。希望はつながった!私はスノーマンクリエイターを召喚。スノーマンクリエイターは自分フィールドの水属性モンスターの数だけ相手モンスターにアイスカウンターを置く事ができる。これでフィールドに5つのアイスカウンターがたまった。私は5つのアイスカウンターを取り除きスノーダストドラゴンを特殊召喚」 スノーダストドラゴンATK2800 ファーナング「攻撃力2800……だが僕のライフを削り取るにはたりないなぁ!」 カレン「勝利のピースは揃っているさ。永続魔法 氷雪冷奏(アイス・ブレイズ)。水属性モンスターが相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手に500ポイントのダメージを与える」 ファーナング「なに!?」 カレン「私の勝ちだ!スノーダストドラゴンでズムヴォルトに攻撃、アイスブレス!」 スノーダストドラゴンATK2800 VS 漆黒のズムヴォルト ATK2000 ファーナングLP1200→400 ファーナング「ぐっ!」 カレン「氷雪冷奏(アイス・ブレイズ)の効果で500ダメージを貴様に与える。トドメだ!」 ファーナング「たかが人間ごときにこの僕が!」 ファーナングLP400→0 ファーナングのつくった闇のフィールドが消えていく。 カレン「さぁ、お前には聞きたいことが山ほどある。連行させてもらうぞ」 ファーナング「ちっ。餌はあきらめるしかないようだね。この屈辱は忘れないよ」 ファーナングはそういい残し姿を消した。 カレン「まて!くそっ、逃げられたか。まぁいい、まずはこの少女を保護するのが先か」 ~???~ ファーナング「くそっ!この僕がたかだか普通の人間ごときに負けるなんて屈辱だよ。でも」スッ ファーナングは結利から手に入れた黒いカードを取り出す。 ファーナング「このままじゃあ終わらせないよ。ビシオン…君の力を使って僕は……更なる力を」
https://w.atwiki.jp/rebornsong/pages/23.html
名前:ほさかだいすけ 神の七色の声 特徴 REBORN歌ってみたの中でも珍しい男性の歌い手 六道・輪廻・むくむくりん♪で憑依されちゃった人大多数 六道骸の声に定評があるが、嵐の守護者もいける七色の声 ぶっちゃけ太子じゃね、と思っている人も多数 REBORN!の他に銀魂やギャグマンガ日和(予想通りとか言わない)等の替え歌も歌っている 新しく歌を更新する度、キャラに似てくる 多い登録タグ 本人光臨シリーズ そっくりさん光臨シリーズ 実はこっそりアレな歌詞の歌も歌ってる 公開マイリスト http //www.nicovideo.jp/watch/sm3535116 動画 ひとりぼっちの運命 ゆー~骸ver~ 六道・輪廻・むくむくりん♪ リボーンで裏組曲 六道骸の通/り/道 獄⑩daime Th/e Bi/gge/st Fi/ght/er! 六道飛行 クフフのサンバの骸 守護者登場! リボーン流星群 クフッとマーチ 秋のむっくむく祭
https://w.atwiki.jp/battleroyale/pages/425.html
112.彼の長い夜【定時放送後~深夜】 ――ピ、ピ、ピ 無様に木々の間を疾走しながら、追われる狐は今にも自分の肩を叩こうとしている死の気配を無理矢理に押しとどめる。 大丈夫だ、このエリアは確か陸地が半分もなかった。 こうして海に背を向けてひた走っているのだから、必ず出られるはず、と自身に言い聞かせながら。 ――ピピ、ピピ、ピピ、ピ 「ちく……ショオッ! まだ一匹しか刻んでねえっつーんだよ!」 先程より一段早くなった音の間隔の意味を、狐は本能で察知する。 もうあと10分も猶予があるだろうか?いや、やめよう。残り時間のことを考えている余裕はない。 さっきまで居た小屋が東よりなのか西よりなのかを思い出す余裕もまた、ない。 この区画を抜けられなければ即ち、死を迎えるだけなのだ。 彼はひたすら、南に走る。今はとにかく確実に生き延びることだけを考えろ。 ――ピピピピ、ピピピ、ピピピピ 「クソが!カウントダウンのつもりか!」 音が忌々しくて思わず悪態をつく。と、突然体に重力を感じた。さっきまで足裏に伝わっていた固い地面を走る感覚が 途端に砂地を蹴るように重くなり、あまりの変異に足を取られた。このままでは転ぶ。そうして速度を落せば、そのまま死ぬ。 反射的に馬碑をもう一つ握りつぶし、瞬間弾き飛ばされるように加速する自分の体に 猛烈な吐き気と耳鳴りを覚えながらも、ひた走る。走る、走る、走る。 ――ピピピピピピピピピピピピピピピピピ 潅木を乗り越えゆるい上り坂を駆け抜け湿った地面をしっかりと蹴りながら。 走れ 走れ 走れ 走れ 走れ 止まるな 止まるな 止まるな 行け 行け 生きろ! 「うらぁぁぁぁ!!」 ボン、と彼には到底聞こえ得ない場所で憐れな男が盛大な最期の声を上げ ――ピ ――ピピピ ピピピ ピピピ そうして追われる獣の生への執着は、呆れるほどに強い ――ピピ ピピ 完全に木立ちから森へと風景が変わった頃、気付けば首元から聞こえる音に切迫した響きはなくなっていた。 それでもやはりどこか恐ろしくてそのまま走り続ければ、やがて音は止まってしまう。 「抜け、た……か…?」 呟きまろぶように足を止め、馬鹿馬鹿しいことに自分の首が繋がっていることをその手で確かめて、 そうして♂ローグはどう、と受け身もとらずにその場に倒れ伏した。 彼の体が発揮できる速力をさらに超え駆け続けたために、 足はおろか上体、腕までも――つまり全身が緊張状態を放棄した結果だった。 +++ ――ピ ピ ピ 「はーん、近づいても警告音ってわけか」 しばらく突っ伏していた♂ローグが漸く動けるようになったのは、月がその身二つ分傾いてからだった。 まだ体のはしばしに鈍い痛みは残るが、だからといってそのまま転がっているわけにもいかない。 地図で現在地を確認してから、ふと道中首輪の警告音が段々と消えていった事に思い当たり 自分が走ってきた方向に戻ってみれば、やはりしばらく歩くうちに例の電子音が鳴り出した。 どこまで踏み込めば禁止区域なのか、とも思ったが確証がないためこれ以上は近づけない。 こんな場所では死ねない。彼の命は、もっともっと他の肉を陵辱するために今この島にある。 危ない時には音が鳴る、それが分かれば今は充分と探索はそれまでにした。 音が鳴り出す場所より半歩南側に腰を据え、体を休める。禁止区域にほど近いこの場所ならわざわざ 突っ込んでくる馬鹿もそう居ないだろう、と。本来なら殺し合いの場において仕掛けの一つでも用意 しておくべきなのだが、あいにく罠を張って待つ事は彼の性分には合わなかったので採用されなかった。 「普通ならぶっ殺すのは夜、だが…」 せっかく合法で狩りが出来るとあっちゃぁ、断然昼間楽しんだほうが得だよなぁ、呟いて殊更楽しそうに笑う。 第一、寝込みを襲ったところでたいして面白くもないし、あまり暗くては引きつった表情も鑑賞できない。 「やっぱ血は赤くねぇとな」 包丁を拭き、支給された薬品でここまで走る間に負った細かい傷の処置をしていた彼は、 ズボンに付着した中年男の血を一瞥する。月が出ているとはいえ深夜の森の中では 血の汚れはただの黒い染みでしかなかった。あんな豚を嬲ったところで面白くもなんともない。 彼が聞きたいのは、人間の悲鳴だ。人間が殺されるときにその肉から搾り出される、命が上げる悲鳴だ。 逃がした4人はまだそう遠く離れていないだろうし。そして恐らく少なくとも二手に分かれているはず。 これはもう明日にでも殺そう、と♂ローグは口元を歪ませる。 「朝になったら気合入れてハンティングといくか」 一先ず休息を取り明日の仕事に備えよう、そう方針を決めた彼は、 元々自分の支給品である食料――それを3日分にわけておいたもの――を取り出し渋々頬張る。 これでは4日目の朝には尽きる計算になるのだが、いかんせん4日分で分けていては一食がかなり少ないのだ。 最終日に足りなくなった分は……そこら辺のヘビでもカエルでも捕まえて食べればいいだけのことだろう。 「ぁー。明日から殺す奴はとりあえず食ってみるかぁ?」 禁忌の味であるとされるそれは、筋張ったサベージなどより余程美味いと聞くが、果たして真偽の程はどうなのだろうか。 半ば本気で現地調達する食事の算段を立てながらも、商人と脂肪から奪ったものには手をつけずにおく。 正直、支給された食事についてはさほどに心配することもないだろうと彼は踏んでいる。 このゲームは、曰くイカレた年増の鬱憤晴らしだ。毒を仕込んで参加者を殺すなど そこらの刑罰と何も変わらないではないか。芸が無いにも程がある。他の参加者にしたって、自分が 死ぬことを想定して毒を仕込むはずもない――とは思うものの、欺瞞と嘲笑の充満する世界で生きてきた ♂ローグにとっては、自身への支給品を口にすることが彼の本能の許す最大限の譲歩だった。 もごもごといかにも居心地が悪そうに干し肉を咀嚼し、無理矢理水を含み流し込む。とにかく食事は終わりだ。 さて、と荷物を見やる。視線の先には子供が持っていた菓子が2つ残っている。 あの豚野郎は特に体調に異常をきたしてはいなかったようだが、しかし。 即効性の致死毒でないことは分かったし、幻覚を見せるものでもなさそうだった。 けれど、たかだか半日のことでこれが無害であるとの断定もできないだろう。 ……の前に、あのクソピエロが仕込んだモンがただの食い物なわきゃねぇンだよ。 そうごちて、今更ながらぶつけようのない苛立ちがこみ上げる。 首輪の件もある。あの男とこの島、どこまでがフェイクなのか分かったものではない。 「この地図は…俺が死なねぇところを見ると位置なんかは正確なんだろうがなぁ。 つーかどういう原理だよ、こりゃ」 胸くそ悪い、そう思いながらもこれを捨てるわけには行かない。今後殺し続け、最後にクソピエロもぶっ殺すためには どうしても必要なものだ、そう自分に言い聞かせて広げた荷物を纏めはじめる。 包丁は厚手の布(元は最初のガキのズボンだ)で包んでおく。食事は自分の分と拾った物を別にして 仕舞い、次は、と手を動かして馬碑に指が当たった。コト、と転げ出たそれは2つ。 その魔力のほどは身をもって体験したが、しかし反動は決して軽いものではではない。 立て続けに二度使用した所為であるかもしれないが、一度の使用で副作用が出ない保証はなく。 いちいちランニングの度に寝っ転がっていたのでは意味が無い、のだ、が。やはりあればあったで何かの役には立つか。 この島では、移動の邪魔にならない限り物を持っていたほうがいいだろう。 荷物の整理を終え腰の高さまである茂みの中に寝床を作る。気配を感じればすぐに覚醒できるよう訓練はされたが、 やはりこのように特殊な環境下では少々不安が残る。ひとまずこの場所ならば、周りの茂みを乗り越えて 近づこうとすれば派手な音が立つだろう。弓を持ち出しても遮蔽物の多さでとても狙えまい。 悲鳴を上げる体を休めながら見上げた空は、彼が疎んだ世界と変わらず星が瞬いている。 ただ、決定的に違う流れる死の気配と漂う血の匂い。それはまさしく日常に厭いた♂ローグが望んでやまないものだった。 全く散々な一日だ、と彼は今日の出来事を反芻する。まずは蝿の止まるほどトロい女からか、とやる気を出したところで逃げられる。 気を取り直して女連れのボケっとした騎士を襲えば邪魔が入る。そうして先程見つけたせっかくの斬りごたえのある獲物を2匹も逃がした。 決して装備に恵まれていないわけではない。だのに、切り刻めた肉はたったの一塊。 ん、一つと半分か?…いや、あの中年は脂肪だらけで嬲り甲斐のない体だったから、やはり一つ、だ。 放送で知らされた内容によれば確か、参加者は残り約40人。すでに彼が殺せる獲物は10近くも減ってしまった。 自分以外にも殺しまわっている奴が居る以上、ここからの殺戮は早い者勝ちになるだろう。 明日から何が何でも始まらせてやるめくるめく虐殺の数々を夢見ながら、彼は眠りについた。 ♂ローグ 所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、馬牌×2、青箱×1 外見:片目に大きな古傷 性格:殺人快楽至上主義 状態:体が軋む(たぶん筋肉痛)が眠れば問題なさそう?(I-6) 備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す 戻る 目次 進む
https://w.atwiki.jp/jojobr3rd/pages/484.html
ある漫画家がこういうセリフを言っている。 いわく、『キャラクターにはシンボル化が重要だ』と。 なるほどなるほど。確かにその通りだ。 黒い丸を三つ並べれば何故だかネズミに見えてくるように。 あるいはギャンブルをするときの心境といえば“ざわ・・・”であるように。 ――という前置きをして、次の説明をされたら、それは『何』だと思う? まずは顔。上下の唇は鋭く長く伸び。 後頭部には舟の舵を思わせる大きなトサカ。 わき腹から手首まで、身体の側面に伸びた一対の薄い膜は翼を思わせる。 さあ、一体これは『何』だ? 多少の知識がある人ならそれを『プテラノドン』と呼ぶだろう。 仮にそんな専門的な固有名詞を知らなくとも、多くの人が『怪獣』とか、あるいは。 『恐竜』と――そう言うだろう。 では、地面に潜る彼がなんでまたこの姿になってしまったのか。 “根拠”を問われたのなら……まあ、飛ぶように泳ぐ姿から、といったところだろう。 “原因”を問われたのなら……それは彼がこれから会う男にある。 「よう」 それは返事を求めて発したモノじゃあない。発言した男自身が――ご存知、ディエゴ・ブランドーが――よくわかっている。 相手がまともに言葉を発するとも思っていない。 ただ、ほんのチョッピリの反応があれば充分だった。 ――皆は知ってるだろうけど、一応補足をしておこう。 これはディエゴ・ブランドーがスタンド使いだから云々といった理屈ではなく、持って生まれた才能だ。 農場にいる暴れ馬たちを手懐けていた彼にとっては、たかだか頭の弱い恐竜一匹の言わんとしていることくらい容易に分かる。 動揺と警戒をしつつ、若干の威嚇を含んだその姿勢を見て、また方角と時間から察するに――作動した未知の禁止エリアに迷い込んだといったところだろう、と。 ――ちなみにもう一つ補足するなら。 さっきのスキルとは違い、こちらはディエゴ・ブランドーが身に付けたスタンド能力で成しえたことだ。 夜のジョギングというにはいささか速すぎるペースで“同族”の匂いをたどっていけば、他者に遭遇することなく相手を追跡することも容易も容易だろう。 もっとも、こんなことをドヤ顔で解説してやるような相手も近くにはいないのだが。 いや、いた――あ、いや、解説するかどうかという意味でなく、“相手が”という意味で。 その正体はどこからともなくひょっこりと現れた一枚のカード。 「あー、話はまとまった。今現場に向かってる……オメーも第四放送までに来い」 簡潔極まりないそのセリフに対してフム、と小さく漏らすディエゴ。 今、このタイミングでの報告は互いにとってどう影響するものなのか。言葉の内容とその裏に潜む意図はどうなのか。 わざわざムーロロが(ジョニィとルーシーはともかく)自分を放ってセッコだけを尾行をしていたとは思えないし、かといってこの“合流”を無視するようなマヌケを晒すこともまたないだろう。 言うことだけ言っていつの間にか視界から遠ざかっていくトランプを追うべきか追わざるべきか。あのトランプは最初から自分の速度についてきていたのか?それとも他で何かを見てから此処へ来たのか? などなど――考えるべき問題は決して少なくない。 だが、ここで急にディエゴは思考を遮られることになる。 つい先ほど自分の呼びかけに反応し、それ以来ずっと俯いていたセッコノドン……変なネーミングだな、やっぱり素直にセッコ恐竜と呼ぶか。 とにかく――そいつが今このタイミングで、低い声で唸りながらぶつぶつと呟き始めたのだ。 「……タイ……アマ…… クイ……タ……ツク……イ……」 何言ってんだコイツは、と目線を向ける。 恐竜化してなお喋ることは決して珍しい現象ではないが、その言葉は本当に文字通りの意味で『何言ってんだ』だったから。 ここで、先ほどの漫画家からもう一つ言葉を借りよう。 いわく、『キャラクターの行動には何かしらの動機が必要である』と。 たとえ“なんとなく”であろうが、キャラクターが動くということは、そこに何かしらの動機がなければならないそうだ。 ――という前置きをして、今のセッコの動機は、一体『何』だと思う? だらしなく開かれた口からは止まることなくヨダレが溢れ。 指先は柔らかな肉を揉みほぐすような手つきで握り、開きを繰り返し。 ギョロギョロと動かしていた視線がディエゴのそれと一瞬だけ交錯し、瞳孔が一際大きくなった。 さあ。彼の『動機』は一体どこにある? “根底”を考えるのなら……まぁ、彼自身が生み出した好奇心、といったところだろう。 “原因”を考えるのなら……それは彼がかつて出会った男にある。 「ディ……っディDIOオオォォオッッ」 それは返事を求めて発されたモノじゃあない。 ――セッコの言う“ディオ”は自分の事ではないのだろう。 話にこそチラリと聞いていたがディエゴ自身は直接セッコと関わった時間など僅かも僅かだったのだから。 そういう意味では、ルーシーのところから呼び寄せておいた名も知らない恐竜のほうがよっぽど付き合いが長い。 さておき。いくら突然のことと言えど、猛獣使いのスキルがあろうと、いくら素早く反応が出来ようと。 この顛末を予め想定出来無かったのは迂闊だった――いや、言い直そう。ディエゴ・ブランドーほどの男が想定していなかったわけでは、決してない。 純粋に、ただただ純粋に。ディエゴの想像以上だったのだ。 『DIOの残したモノ』の大きさが。異常さが。 「――おいッ!」 予備動作もなく着水……おっと、着地かな?羽根を器用に使って泳ぎ出すセッコを逡巡ののちに追うディエゴ。 護衛を先に動かすあたり、まだディエゴにも戦略的余裕が見受けられるが、それでも動揺は彼の腹の中にだって少なからずある。 直感だがアレを放置したらヤバい。 恐竜化したキッカケこそ自分ではあるが、その火の粉が降りかかってくる可能性が僅かにでも存在するのなら。 自分が悪だと思ってもいない、最もドス黒い悪。そんなヤツの!ブレーキが!壊れてしまったのならッ! 『飼い主』のなくなったセッコの能力は ――もはやとどまる所を知らない! 暴 走 “スタンビート” す る ッ ! 「クソッ……一体『DIO』は何をしたのか!何なのだあの“置き土産”は! あんな“邪悪の化身”をほっぽり出したまま死にやがって! ムーロロの野郎もッ!何が『DIOの事は完全に忘れた』だッ! ――あれじゃあ俺が“思い出させてやった”みたいじゃあないか! 『クズどもを上から支配する』なんて存在はこのDio一人で十分だッ!クソッタレどもめッ!」 そんな悪態をついてやる相手は今度こそおらず――三頭の恐竜が街中に消えていく。 ……今のディエゴには考えてる余裕なんかなくなってしまったが。 『ハッキリ言うぞ――――おまえの考えてるようにはいかない』 そうムーロロに言い放った自分自身にも、まさかこんな展開が待っていたとは。 まったく、なんという皮肉だろうかね。自分の生み出した恐竜が原因という意味ではある意味ムーロロ以上かもしれないな。 そして。その余裕のなさが一つ、決定的なことを見落とした。 『話はまとまった』ってのは、実際には全く『まとまって』いないことを。 ディエゴ自身だけでなく、ムーロロもまた抜き差しならない状況に陥り、そして“ブチ切れた”ことを。 ――え、一つじゃないじゃあないかって?まあ、そういうなよ―― 【E-3 川沿い / 一日目 真夜中】 【ディエゴ・ブランドー】 [スタンド] 『スケアリー・モンスターズ』+? [時間軸] 大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後 [状態] 健康、なかなかハイ、動揺(小) [装備] 遺体の左目、地下地図、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚 [道具] 基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球 ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、カイロ警察の拳銃(6/6) 、シュトロハイムの足を断ち切った斧 ランダム支給品11~27、全て確認済み (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、承太郎、花京院、 犬好きの子供、仗助、徐倫、F・F、アナスイ、ブラックモア、織笠花恵) [思考・状況] 基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る 1.暴走したセッコに何かしらの対処をせねばヤバイッ! 2.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる 3.ルーシーたちを追う?カーズ討伐同盟のもとに向かう?支給品確認するタイミングはあるのか……? [備考] ※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。 ※装備とは別に『オール・アロング・ウォッチタワー』のカード(枚数不明)が監視についています。 ※ディエゴが本来ルーシーの監視に付けていた恐竜一匹が現在ディエゴの手元にいます。 【セッコ】 [スタンド] 『オアシス』 [時間軸] ローマでジョルノたちと戦う前 [状態] 健康、恐竜化(進行:ディエゴに近づいたためほぼ100%) [装備] カメラ(大破して使えない) [道具] 基本支給品(元はジョニィの所持品)、死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ) [思考・状況] 基本行動方針 ?? 0.暴走状態。喰いたい、作りたい、角砂糖ほしい 1.ルーシーのところへ戻り、甘いのいっぱいもらう……? 2.禁止エリアに引っかからない誰かに変な自分の体、いったいどうなってんだ? 3.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい 4.吉良吉影をブッ殺す ※ディエゴと接触したためほぼ完全に恐竜化しました。見た目はプテラノドンのようです(空を飛べるかは不明) →このため思考力がほとんど低下し、本能のままに自分の欲望を叶えるモノになりました。 ※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。 ※千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。 DIOのことは完全に忘れ去りました。 →DIOに与えられた影響は精神の根底に残っています。 見た目が似たディエゴを見て(プラス恐竜化の思考力低下で)フラッシュバックした……? ※ルーシーから不明な禁止エリアを調べてくるよう頼まれていました。 それに伴いジョニィの基本支給品一式を譲り受けました。 ルーシーたちとどこで待ち合わせしているかなどは次回以降の書き手さんにお任せします。 →セッコ自身が覚えているかどうかは不明です。 →恐竜化した感覚で匂いをたどって彼らの元へ向かえる、かも? 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 196 目覚めぬ者に夜明けは来ない セッコ [[]] 200 Rule Out ディエゴ・ブランドー [[]]
https://w.atwiki.jp/83452/pages/4317.html
梓「師匠・・・」 律唯「ぬおおお!」 進「普段パソコンの作業が多い分、指にくるものだな」 さわ子「パソコン・・ さわ子「DTM。」 進「ええ。生業としています」 律「えーっ!じゃあプロなんじゃん!スゲーわけだよ。」 澪「わわわわ・・・」 律「何で唯教えてくれなかったんだよ!」 唯「だって、お父さんいつもあんまり家にいなくて」 進「はて?じゃあ君はこの世界のわた・・・いや、私の職業を今まで知らなかったと?」 唯「うん」 唯「だから前に突然演奏してくれた時、お父さんの知らなかった所が見れて・・!」 唯「本当に嬉しかったんだ。」 むむ。 職業に加えて気になることがもう一つある。 進「憂。」 憂「うん?」 進「この家は母親が・・・いや、お母さんはどこに行った」 憂「お母さん出張って言ってたよ、聞かされてなかったの?」 進「むむ」 Tシャツでジーパンという有象無象にはとても見せられない格好でソファに座っていた私は立ち上がり部屋に戻って パソコンを開く。メールの受信フォルダをひたすら見る。見る見る。むー。一応音楽の仕事は請けているようだ。 しかし名前は一向に明かしていないスタイルを取っているらしく一部では少し有名な様子も窺える。 何なんだこれは本当に私のやってきた事か?私が今まで築き上げてきたものすべてはこの世界では通用しない。 平沢進など誰も知らないのだ。私は・・ 進「何も持たないただの平沢進だ」 秋山もことぶきも田井中も中野も皆普通に生きている、普通に。ただただ目立つ事無く我々が出会う事も無く。 今の私には受け入れるしか無いのだ、現状に流されていくのだ。誰も知らない平沢進として世界の端を。 唯「」 進「む、その歌は?」 唯「ししょう知らないの?」 コチラの世界の常識など分かるはずもない 進「ああ」 唯「」 進「何だかずいぶん古臭いメロディーだ」 進「すごくアレンジしたい」 唯「おお~それもいいねえ」 進「で、曲名は?」 唯「それがよく分からないんだよね~」 唯「たぶんCMかなんかで覚えちゃったんだとおもうー」 しかし何度聞いてもこの子の歌が私とは全く違う「女の子」の歌い方だった事に驚く。 たかだかアニメソングだとなめていたがなかなか歌の芯はしっかりしている事にも驚いた。 アニメの中だけでは勿体無いと思う。 唯「放課後ティータイムのプロデューサーが決定しました!」 律「なんじゃっとー!!!!」 澪「って、けっこう予想できてるがなあ」 梓「先輩、ワクワクしてるじゃないですか。」 澪「!」 律「素直じゃないやつぅ」 律「私らの師匠って言ったらこの人しかいないよねー!」 進「断る」 一同「えっ」 進「唯、どういう事だ?」 唯「ごめんなさいししょう!!」 まさかこの年になって音自体には全く興味がもてない女子高生のお守りを? 進「私好みのニューハーフらが相手なら話は別だが一向に華が期待できないし」 澪「にゅ・・・」 進「おっとすまない何でもないからね」 唯「あっ 師匠、実は・・・さわちゃんはっおとこのひとなんだよっ」 進「信憑性に欠ける発言は」 律「これが昔の写真だじぇー」 進「アリだな」 梓「(変なひとだ・・)」 唯「ね?だから・・」 私は平沢進だ。何も持たないただの平沢進。 進「それでも私は君達を背負いきれない」 一同「」 進「嫌う嫌われるで話が済むならそれでいい。私の事を嫌い憎み恨み勝手にしなさい。」 進「私は現在の地位を築き上げるまでとても140文字以内じゃ語れない体験をしてきたその地位は今ではもう無いがね。 進「しかしここでも平沢として生きなければならないのだ。ハッキリ言うと私は自分のお世話で手一杯なので。」 空気が凍てつくのを肌で感じ取れた。きっと彼女達にこんな事言っても何一つ分からないんだよな結局。 しかしそれでいい。拒否の材料に私の今までの人生を乗せるつもりも無い。深く語る必要も無い。 それでも生きるしかない、その取捨選択で私は正しい方を選んだつもりだ。彼女達の音楽は知らない 私は己のための音楽を選んだのだ、決して人を育てるためではなく自身の音楽を守るために。それともう一つ。 唯「どうして?」 進「人の音楽まで育ててる余裕が無いのだ。」 進「私がもっと名の知れた者だったら唯も私の職業を知れていただろう」 進「私は音楽だけではなく家族も大事にするべきと考えた」 進「今の私は抱えるものが多すぎてすべてを選べないんだよ」 進「だから唯が胸を張って平沢進の名前が出せる日まで、私のレクチャーは待っててくれるか。」 唯「どうして・・」 なんと建前ばかりの言葉だろう。まあいい。 子供が泣く姿なんて久しぶりに目の当たりにしたかもしれない。 見る機会があっても目を伏せていたからな。しかし今は娘を泣かせた親という事で私は悪者になるのではないか 律「二人とも帰っちゃったな・・」 澪「唯が泣くなんて、よっぽど悲しかったんだろうな」 梓「悲しかったんでしょうか?」 律「どういう事だ」 紬「お父様は家族第一に考えた事を言ってたから、ね」 澪「感動して?そうかな」 梓「(私には断る材料で利用しているように見えました)」 律「んー唯もまだまだ分かんない所あるしなー。」 梓「単純な優しい言葉でも友達と親では重みが違うんですね」 紬「私達にはどうする事にもできない問題がそこにはあるから」 梓「にしても、唯のお父さん急にこうなったんですよね?憂も不思議だって言ってました。」 律「唯はずっと喜んでるけどなあ、お父さんがいる、って」 律「元から家にいるのは少ない夫婦だったんだろう?」 澪「デートの外出ばかりらしくておアツイっていうイメージだったが」 梓「いくらラブラブでも子供を放りっぱなしっていうのはちょっと問題があると思います」 澪「P-MODELなんて全然知らなかったしなあ謎の多い父親だと思うぞ」 紬「私は知ってたけれど」 律「えっ何で言わなかったんだよ」 紬「お父様ってアニメにも精通してらっしゃるのねーと思って」 紬「それアニメキャラのユニットですよねって言い辛いじゃない?次はYMOも出たし余計にね」 梓「アニメキャラのユニットなんですか?」 紬「そう、しかもアニメの登場人物が平沢・ことぶき・秋山・藤井なの。一つ惜しい!」 律「惜しくて悪かったな」 梓「the pillowsとかいうのもアニメのキャラなんですか?」 紬「もちろん、電気グルーヴっていうのも聞き覚えはあるような・・」 紬「しかも、主人公は本当にお父様そっくりなの。」 紬「本当にアニメの世界から出てきた人だと思ったわ。余程好きそうだしコスプレだと思うけど。」 律「確かに黒い服ばかり着てるなー。相当シックな色調が好きな人なんだーって」 紬「まあマニアックなアニメだし一般の人は知らないでしょう。ますます謎なお父様!」 梓「・・」 こうしていると自分が人並みの幸せを手に入れた錯覚に陥る。ソファで寝転がっていると夕飯の匂いが漂い 「ご飯できたよー」と娘がソファに寝転がっている私のそばまでズンズンと歩いてくるから はいはいと立ち上がり食卓によちよち歩いていく。私は平沢進だぞまったく。 でその途中に私が机の角に足の小指をぶつけた所を見ていた唯が笑う。私は痛がる。二人とも笑う。まったく。 本当に私が結婚して娘がいたならこういう生活を送っていたのだろうか?不思議なものだ。 私はこの世界の平沢進を嫌だと思う。名を知られていられず仕事に対し努力を欠いてるように見えるからである。 しかしその代償で彼が手に入れたものは妻だったのだろう。欠いたすべての時間は恐らくそれに注がれていた。 彼はただ愛情を求めることに集中しすぎていたように見える。与えることは一切しなかった。子供だと私は思う。 だからこそ唯も憂も愛されることなく半ば共依存して今まで生きてきたんだろう。 この子達は少しかわいそうだと思った。 進「コラやめなさい」 唯「おとうさーん」 進「仕事に集中できないし暑苦しいので離れなさい」 憂「おとうさんオフロ入ったよー」 進「分かった」 架空の存在だった私の分身とのやりとりが日々愛しい、少しだけだが。 同情心だけではない家族としての温かみも感じ始めていた。 進「それでも戻らねばならぬ日は来るのだ、恐らくは。」 進「しかしあの歌は・・」 …… 進「君は中野テルヲの・・」 梓「中野梓と言います。憂は?」 進「図書館に行くと言って出て行ったぞ。唯は修学旅行でいないし楽に動けるだろうから私が勧めた」 一人だと作業しやすい事が第一なので。 梓「少しお話ししたいのでお時間を頂いてもよろしいですか」 むむ私に?と指を自分に指すと目の前の小さな少女は小さく頷く。またこれ中野とは似ても似つかないなあと改めて思う。 いやそれ言ったら私も大概だ、あの姉妹に私のDNAの欠片も感じていないのだが。 進「さて何やら?まあ上がりなさい」 梓「ありがとうございます、では失礼します。」 進「・・・と、いうわけだ。」 進「違和感を感じてくれてありがとう。これでようやく理解者が出来た」 梓「いまいち信じられません」 梓「私達がアニメの世界の登場人物だなんて」 進「私のほうが信じられない」 梓「だって私の世界なら平沢さんこそがアニメの登場人物なんです、これでは鏡の世界です」 進「うん?」 梓「反転してるじゃないですか。この世界で平沢さんはアニメ、あっちでは人間」 梓「そして私達はこの世界で人間、あっちではアニメ」 進「むむ」 梓「・・でも信じるしかない物がここに」 進「これは一体、P-MODEL解凍の時のメンバー・・の絵?」 梓「好評のアニメなんです。メンバーがちょこちょこ変わったりして」 進「ははー、この世界のどこかに藤井ヤスチカも存在するのか」 3
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/4494.html
【検索用 たから 登録タグ 2009年 VOCALOID た 初音ミク 曲 曲た 青幇P】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:青幇P 作曲:青幇P 編曲:青幇P 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『だから』 春の暖かさを、気持ちよい空気を感じるかわいい歌 まだ寒い3月、卒業シーズンに似合う曲 冷たく、狭い気持ちが広がっていく様な歌詞とメロディ 歌詞 (ピアプロより転載) いま光さす道を 優しい風をつれて 振り返らずに歩く 遠くへ遠くへ 未だ見ぬ土地まで来て 疲れてひと休み ふと気付けば独りぼっちで 膝を抱えて 空を見上げようとして ねえ だけどその時 私は見たんだよ! 世界が宝石みたいに輝くのを そう私は一人 けれども独りじゃない そんなこと思えて 再び歩きだせた ステップのリズム 乱れないように もうどれくらい歩いたかな ゴールはまだ遠いのかな? 独りの夜 少し寒くて 膝を抱えて 空を見上げようとして ねえ そしてその時 私は見たんだよ! 夜空が宝石みたいに輝くのを そう私は一人 けれども独りじゃない そんなこと思えて 少し暖かくなれた そしてまた朝が来て 私も歩きだす いつかこの旅の果てに 君に出会えた時に すれ違った沢山の 宝石たちの事 聞かせてあげられるように コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。