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第1話 第2話 第3話 第4話 最終話 逆襲編 エピソード1 最後の聖戦 前 後 最終回 さらばしっと団 聖夜の復活 前 後
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さて、いよいよ「しっと団」との最終決戦が始まったわけだが、 別に闇の洞窟にいるわけでも異次元にいるわけでも無く、 穏やかな春空の下の競技場。とても緊張感に欠ける。 なんというのかね、運動会気分? 「さあキョン君!クジを引いてください!」 朝比奈さんが取り出したのは手を入れるタイプの抽選箱。 お楽しみ回じゃないんだから……余計に緊張感が薄れるな。 さて、俺が取り出した紙に書いてあったのは! 『長距離走』 どうやら本当に運動会だったようだ。というか、コレってもしかしなくてもハズレのような気がする。 「おいキョン!!なんつーもん引き当ててくれたんだ!!」 言うな、俺だって辛いんだ。 なんでこんな戦いでマラソンをさせられなきゃいかん。棄権させてくれ、罰金払うから。 「距離は10km。10km分このグラウンドを走ってもらいます。1周200mだから50週です。」 じゅっきろ……ごじゅっしゅう……勘弁してくれ……… 「キョンー!谷口なんかに負けたら死刑よ!!」 「『ジャッカル』君!負けは許されませんよ!」 ハルヒと朝比奈さんが互いを応援している。ああ、どうせなら朝比奈さんに応援してほしかったぜ。 俺と谷口はしぶしぶスタートラインにたった。 新川さんが銃を上に向け、合図をする 「よーい……スタート!」 俺達は10kmのマラソンをスタートした……っておい谷口!最初から飛ばしすぎだろ! 谷口は一瞬こちらを振り向くと、ニヤリと笑った。 野郎……… そういうことならこちらも乗ってやるさ! 俺も長距離走とは思えないハイペースで追いかける。というか、ほぼ全力疾走だ。 周りの観客もヒートアップする。 「『ジャッカル!』いいわよ!そのまま逃げきりなさい!」 「キョン~!!早く抜かすのよ~!!」 我ながらムキになりすぎていると思う。 だが、コイツにだけは、絶対に負けられねえんだ! ~1時間後~ はぁ……はぁ……ぜぇ……ぜぇ…… 俺は重い身体を引きずって歩いている。え?歩くな?冗談じゃない。もう走れない。 最初に飛ばしすぎたのが原因だな、どう考えても。 そして俺のすぐ横には谷口がいる。コイツもバテて一緒に歩いている。 「キョン、俺はもう歩くのも辛い。棄権する、お前の勝ちでいい。」 「何言ってるんだ谷口。ゴールまであと少しだ。最後まで一緒に行こうぜ。」 「キョン……!!」 そうだ後少しだ。俺のカウントが間違ってなければあと1周……! あまりに辛い闘いだった。だが、それももうすぐ終わる! 長門は読書してるしハルヒは古泉とオセロに興じている。何持ってきてるんだ古泉よ。 朝比奈さんも朝倉となんか談笑してるし、真面目に見てくれてるのは周カウントしてる新川さんぐらいだ。 でも構わない。これは自分自身との闘いなんだ!! そして俺は谷口と並んで同時にゴールした。 「ゴール!!」 新川さんが高らかに叫ぶ。終わった、終わったんだ……!! 「あ、終わったの?で、どっち勝った?」 「同時にゴールされたようですよ。」 「同時ぃ!?何やってるのよキョン!ラストスパートぐらいかけなさいよ!」 ハルヒが怒鳴る。だが俺には関係ないのさ。 最後の最後で裏切ってスパートかけるなんて出来るわけなかったさ。 だって俺らは…… 「戦友、だもんな!」 谷口が言う。その通りだ。俺は勝利なんかよりよっぽど大事なものを手に入れたんだ…… 「何いい話で終わらせようとしてるんですか!ただマラソンでバテただけじゃないですか! ……まあいいです、引き分けで。次!長門さんと朝倉さん!」 宇宙人対決か。さてどんな戦いになるのやら。チート合戦か? 長門がくじを引いた。そこに書いてあったのは…… 『大食い対決。』 ……勝ったな。長門が大食いで負けるはずがない。 「ちなみにメニューは、カレーとなります。」 負ける要素が無いとはまさにこのことだろう。大食い勝負でしかもカレー。 どうすれば長門が負けるのか逆に教えてもらいたいね。 何時の間にか用意された長机と椅子に長門と朝倉が並んで座る。 長門にカレーを渡す役は古泉、朝倉にカレーを渡す役は新川さんが担当する。 ……そういや大量のカレーなんてどうやって調達したんだ。これも機関クオリティか。 「長門さん、頑張ってくださいね。」 「大丈夫。負けるわけがない。」 古泉が長門を激励するが長門は強気だ。まあそりゃそうだろうな。 「よーい……すたーとぉ!」 朝比奈さんの可愛らしい掛け声で大食い対決がスタートした! おお、早速長門が猛スピードで食ってる。流石だ。 ……って何!?朝倉も同じ速度で食べている!? 「ゆはんひははねなはとはん。わはしほはやふいにはひひんあるのほ。 (油断したわね長門さん。私も早食いには自信あるのよ)」 「ほうひて?はなたはおおふいはらではなはったはふ (どうして?あなたは大食いキャラでは無かったはず。)」 「ふうとうへいきゃらへんひへたはらね。へもほんほうははへるのはいすひほ。 (優等生キャラ演じてたからね。でも本当は食べるの大好きよ。)」 「ふはふ。へほまへない。(うかつ。でも負けない。)」 端から見てると何言ってるのかさっぱりわからん。 口に食べ物含みながらしゃべるのやめなさい!汚いから! AマイナーとAAランクプラスの美少女が、とても映像には表せないような食い方をしている。 よかったなこれがSSで。アニメだったら放送禁止ものだぜ。 「すごい戦いね……いろんな意味で……」 ほら見ろ。あのハルヒでさえ若干引き気味だ。 古泉と新川さんも大忙しだ……ってあれ? 「どうしたのよ。」 「次は?」 カレーが止まってしまった。もしや…… 「申し訳ありません、どうやらカレーのストックが切れたようです。」 やっぱり!そりゃあんな化け物×2が居たらすぐに無くなるだろうさ。 仕方ないのでそこで勝負終わり、食った皿の数を数えてみたが、 「なんと……」 「まったく同じ、ですね。」 驚く古泉と新川さん。どうやらまったく同じペースで食い尽くしたらしい。流石、としか言えない。 ……おお!長門と朝倉が握手をしている!大食い同士、友情が生まれたんだろう………イヤな友情だな。 さて、結局また引き分けに終わり、副将戦へと移る。新川さん対古泉の機関対決だ。 古泉がくじを引く。中から出てきた紙に書いてあった対決内容、それは…… 『我慢対決』 ……もう競技場がどうとか関係無くなってきたな。 我慢対決って、何をするんだろう。 「我慢と言えばやはりこれでしょう!熱闘風呂!!」 朝比奈さんが指さした先には、現在進行形でグツグツに煮えてる熱闘風呂が。 ……なんでここにこんなもんがあるんだよ。これもまた機関クオリティか。 「やっぱり我慢の定番はコレよね……」 おいハルヒ、少しはおかしいなと気付け。相変わらずおめでたいな。 他のヤツらも……ってあれ?肝心の古泉と新川さんが居ないぞ。 「僕ならここですよ。」 古泉が歩いてきた。その姿はタオルを腰に巻いているだけ!新川さんも同じだ。 3月とは言えまだまだ寒いこの時期に、そんな格好で外に居たら寒いだろうに。 もうこの時点で我慢が始まっているような気がする。 「ではよぉい……すたぁとぉ!!」 相変わらずの癒し系ボイスを合図に二人が熱闘風呂に入った。 その瞬間、二人の顔が苦痛に歪む!キツそうだ…… おや?その時俺は妙なことに気がついた。お湯から、小さな泡が出ている……これってまさか! 「おい長門!今あのお湯何度になってるか分かるか?」 「摂氏100℃。沸騰状態にあると思われる。」 「やっぱり!!」 あの泡は、沸騰している泡だったんだ!もう風呂ってレベルじゃねーぞ! 「朝比奈さん!沸騰はやり過ぎでしょう!」 「いいえ!これぐらいやらないと……どっちが先にギブアップしますかね……?ふふふふ……」 「死にますって!ほら、二人も苦痛に顔を……って……あれ?」 俺は自分の目を疑った。二人は……笑ってる? 「いやあいいですねぇ。この痛みを伴うほどの熱さ。ふふふ……」 「まったくですな。このままずっと入っていたい気分ですぞ。ほっほっほ……」 この笑みは……間違いない。快感を感じている笑みだ。もちろん性的な意味で。 コイツラそろいも揃ってMだったのか…… まあハルヒに振り回され閉鎖空間へ行かされる日々、マゾじゃないとやってられないよなあ…… どうやら他の面々もそれに気付いたらしい。みんなドン引きしている。 「あ、朝比奈さん……」 「なんですか?」 「どうやら快感を覚えているようだから……自分から出ることは無いと思いますよ。 それこそ気絶するまで……」 「そうですね……中止して引き分けにしちゃいましょう……」 朝比奈さんもげんなりした顔だ。まあそうなるわな…… 中止を言い渡され風呂から出た二人は、残念そうな顔をしていた。 「ドクターストップは残念でしたね。あと3分続けてれば新たな境地に辿り着けそうでしたが。」 ええい、近づくな!気持ち悪いからさっさと着替えて来い!! ここまで3引き分けとまったくの互角。というかまだ白黒すらついていない。 最後ぐらいは、ちゃんとした結果にならないと納得いかないだろう。 しっと団もSOS団も、そしてパソコンの前にいる諸君らも。 最後は大将対決。ハルヒと朝比奈さんの対決だ。 「みくるちゃん!こんな組織作って私にはむかったことを、後悔させてあげるわ!」 「後悔するのはそっちです!年中頭の中がお花畑のバカップル達に負けるつもりはありません!」 おお、朝比奈さんがハルヒと互角にやりあっている! そしてハルヒの手が抜き取った勝負内容は…… 『100mハードル走』 ……勝ったな。お世辞にも朝比奈さんは運動神経が良いとは言えない。 ハルヒなら、陸上選手並みに軽やかにハードルを越えていくことだろう。 「…………」 しかし、ハルヒの様子がおかしい。顔が青ざめている。どうしたんだ? 「あたし……ダメなのよ。」 「ダメ?何がだ。」 「ハードルだけはダメなのよ……あたし……」 な、なんですとー!?運動神経抜群のハルヒが、なんでまた! 「小学校の頃ハードルで転んで骨折したことがあってね…… それ以来ハードルだけは怖くて飛べないの……」 小学校の時のトラウマが原因か……そう言えば体育でハードルやってる時も休んでたな。 「棄権してもいいですよぉ?」 朝比奈さんが挑発してくる。まさか、狙ってたんじゃないだろうな…… 「……冗談じゃないわ!SOS団に敗北は許されない!あたし、やるわ!」 ハルヒは強がる。だが、まだ顔は青ざめている。無理するなよ、ハルヒ……どうせくだらん戦いなんだから。 とそこで、俺のシャツが引っ張られた。……なんだ長門。 「作戦があります。」 すぐ横に元の服に着替えた古泉が居た。顔を近づけるなっての! 「来て。」 長門が歩き出した。何をするのかまったくわからんが、この二人が言うならまともな作戦なのだろう。 朝比奈さんとハルヒはスタートラインに立った。 そして新川さんは銃を構え…… ドン! その銃声と共に朝比奈さんがぽてぽてと走り出した……あれは走っているのか?相当遅い。 だがそれ以上に問題なのはハルヒだ。まだ1歩も動けていない。やはりトラウマなのだろう。 さて、そんな俺はどこにいるかと言うと、ゴールラインの前にいる。 そして何故か……古泉に羽交い締めにされてる。なんだこりゃ! 『涼宮さ~ん!!』 古泉がスピーカーを使いハルヒに呼びかける。 『彼の身柄は預かりました!さあ長門さん!やっちゃってください!』 長門が俺の前に立つ。そして手にはアレだ、ティッシュを細い糸状にしたものが握られてる ……おい、まさか……冗談だろ……? 「へっへっ……ふぇっ……!!」 冗談では無かった!長門の持ってるティッシュが、俺の鼻の穴に侵入する! 長門の神懸り的な手さばきで、的確にくしゃみが出そうで出ない状態を持続させる!これはキツすぎる! そんな中古泉が耳打ちしてきた。 (さあ、涼宮さんに助けを求めてください。) そういうことか。作戦の趣旨は理解した。だがこれは無いだろう。 俺は古泉からスピーカーを奪い取り、全力で叫んだ。 『ハルヒ~!!助けてくれ~!!!』 その時であった!ハルヒが走り出し、ハードルを次々と乗り越えていく!! すげえ……それはまるで陸上選手を見ているかのような、軽やかさであった! 「キョン!大丈夫!?」 結局30秒もかからずにここまで来てしまった。惚れ惚れするぜ、ハルヒ。 「大丈夫さ、お前が来てくれたからな。」 「まったく情けないわね!あたしがいないとほんとダメなんだから!」 まあ否定はしないさ。この勝負はハルヒの勝ち。1勝3引き分けで、俺達SOS団の勝利だ! ようやくこれまでの因縁にも終止符が…… 「待って!まだよ!」 まだ?ハルヒの視線の先には、まだコースの半分しか行ってない朝比奈さんが居た。 ハードルは……見事に全て倒しながら進んでいる。 「ふぇぇ……」 今にも泣きそうな顔をしている。そりゃそうだ、もう負けが決定してるわけだからな。 もうやめさせてあげてもいいんじゃないか? 「ダメよ!……古泉くん、それ貸して。」 ハルヒは古泉の手からスピーカーを奪い取った。 『みくるちゃん!最後までやりとげなさい!あんたが売った喧嘩なんだから、最後まで責任持つのよ! あたしも応援するから!頑張って、みくるちゃん!』 そうだ。俺達も応援しなければ、朝比奈さんの走りを! 「朝比奈さ~ん!!頑張れ~!!」 「あともう少しですよ、朝比奈さん!!」 「……頑張って。」 長門と古泉も俺と一緒に応援する。みんな心は1つなんだ。そう、コイツらだって…… 「『トゥモロー』!頑張ってください!!」 「ハードルなんかに負けちゃダメよ、『トゥモロー』!!」 「自分との闘いですぞ!『トゥモロー』!!」 しっと団のヤツらも朝比奈さんを応援する。 この時、競技場は1つになっていた。しっと団もSOS団も関係無い。 みな、朝比奈さんの走りを応援しているのだ! 「はぁ、はぁ……」 そして朝比奈さんが最後のハードルを超える!へたへたと走り……ついにゴールをした。 「やった!!」 俺は思わず隣に居たハルヒとハイタッチをしてしまった。 そうさ、これが答えなんだ。勝ち負けなんて関係ない。 大事なのは、みんながひとつになるってことなのさ……! 終わり 「終わるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 朝比奈さんが叫んだ。 ……やっぱダメですか?俺的にはあれで終わりで構わないんですけど…… 「構います!それに……応援してくれたのは嬉しいですけどこれ本人にとってはみじめなんです! マラソンでビリの人に贈られる拍手の残酷さを知らないのですか!?」 ああ、確かにアレは本人にとっちゃトラウマものだよな…… 「まあとにかく、これであたし達の完全勝利よ!!残念だったわね、しっと団!」 ハルヒが高らかに言った。3引き分けだから完全ってほどでも無いと思うが…… だがそれでも勝ったのは事実だ。朝比奈さんを始めしっと団の面々は悔しそうな顔をしている。 「くぅ~……悔しいです!特に最後、『愛の力で勝った』的な展開になったのが特に……!!」 まあ、確かにアレはハルヒの愛の力だと思う。感謝してるぜ、ハルヒ 「ちょ、今そんなこと言わなくてもいいでしょ……」 ハルヒは顔を赤らめた。そういうところが可愛いんだぜ。 「バカ……」 「「「「いちゃつき禁止!!」」」」 しっと団の4人の声がハモった。 ちっ、せっかくいいムードになりかけてたのに…… とここでハルヒが、とんでもないことを言い出した。 「ていうかさ、一人身がイヤなんでしょ?だったらあたしにいい考えがあるわ。」 いい考え?あまり期待できないが、言ってみろ。 「あんた達でカップルになればいいじゃない。 ちょうど女二人男二人だし、いいんじゃない?」 そうか、その発想は無かった。 「「「「えええーーー!!?」」」」 またもやハモる4人の声! ハルヒの予想外の提案をしっと団はどう受けとめるのか! そしてしっと団はどのような結末を迎えるのか! 俺個人としてはあまり興味は無いが……次回、最終回!
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第1話 第2話 第3話 第4話 最終話 逆襲編 エピソード1 最後の聖戦 前 後 最終回 さらばしっと団 聖夜の復活 前 後
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※恋愛相談と時間軸がリンクしています みなさん、こんばんは。朝比奈みくるです。 今日もSOS団のマスコットとして活動しています!毎日が楽しいですよぉ。 なんでって?SOS団には、かっこいい男子が二人もいるからです! 一人目はキョン君。涼宮さんに連れてこられた平凡な男子高校生です。 でも彼の見せる優しさに、私はもうメロメロです。 残念ながら彼は涼宮さんとほぼ相思相愛と言っていい状態にあり、もう付き合うのも時間の問題。 でも彼はよく私(特に胸)に視線を向けてくれます。まだ望みはあるんです! もう一人は古泉君。キョン君とは違ったベクトルのカッコ良さです。 はっきり言えば、完全に狙い目です!長門さんはキョン君しか目に入っていません。 つまりフリーなワケです。 うふふふ、バラ色の恋愛生活ももう少しですよ! え?この時代の人と付き合えない?そんなのは【禁則事項】を【禁則事項】しちゃえばいいんです! さて、そんなある日のこと、いつも通り私はメイド姿でキョン君達にご奉仕していました。 いつも通りの団活。しかし、それが終わった後キョン君がとんでもないことを言いました。 「みんな聞いてくれ。俺決めたよ。明日、ハルヒに告白する。」 な、なんだってー!? ついに来るべき時が来てしまったようです。まあ時間の問題ですから、仕方ないです。 正直、涼宮さんに勝てると思ってませんでしたし、しょうがないですね。 だから私は笑顔で言いました。 「わぁ~!頑張ってくださいねえ!」 どっかの誰かさんがモノローグで「手放しで喜んだ」とか言いそうなぐらい喜ぶフリをしました。 しかし、私の心にはどす黒い感情が渦巻いていました。あんちくしょうめ……! ま、まあいいです。これでようやく、古泉君一人に狙いを絞ることが出来ますからね。 さっそく明日からアタック開始しますよ!! と、決意したのもつかの間、翌日の部室にて今度は長門さんが衝撃告白をしました 「私と古泉一樹は交際することになった。」 はい、私はお盆を盛大に落としました。な、なんだってー!?(2回目) そんなバカな!!長門さんはキョン君に夢中だったはずなのに! こ、これは計算外です、ていうか、こんな連続コンボでカップル成立するなんて聞いてませんよ…… これじゃあ、私が一人余り者になっちゃうじゃないですか…… 「あ、お前の席ねーからwwwwwwww」と言われているようです…… 「一人身……私だけ……一人身……」 いつの間にか口から出てしまっていたようです。キョン君がこっちを見ています。 しかし、もう私にマスコットをする余裕はありませんでした。 そう、この瞬間から、私は嫉妬に燃える鬼神となったのです! 「うふふ……ふふふ……ふふふのふ……」 自宅にて。私はポスターを作成していました。目的のために。 そう、『あの2カップルの邪魔をする』という目的が! 「ふふふ……これで良し。」 私はポスターを完成させました。 「来たれ!嫉妬に燃える諸君! 共にこの世のバカップルに制裁を加えましょう! 興味のある方は、今週の土曜日に○○まで!」 ふう……完璧です。 私の目的を達成させるには、仲間を増やす必要があるのです。 これを校内の掲示板に貼っておけば、きっと何人か来てくれるはずです! しかし、問題があります。 長門さんです。長門さんにかかれば、こちらの目的などすぐ見破られてしまいます。 それどころか、あの反則的な力で何一つ出来ずに終わる可能性が高い。 つまり、長門さんに対抗出来るメンバーが必要なのです。 喜緑さんは長門さん寄りですから、期待出来ないでしょう。 となると、あとは一人だけ……! 思いたったらすぐ実行。私は去年の4月までひとっ飛びしました。 目的の人物に会うためです。 え?申請が必要?そんなもの【禁則事項】を【禁則事項】しちゃえば(ry その人は、あっさり捕まえることが出来ました。 「あの、少しよろしいですか?」 「あ、あなたは確か……2年の朝比奈さん、よね?」 「はいそうです、今日はあなたに用があって来ました。朝倉さん。」 「私に?何かしら。私は、先輩に目をつけられるようなことはしてないはずですけど……」 「あなたの正体は知っています、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス。 そして長門さんのバックアップ。そうでしょう?」 「……あなた、何物?」 彼女は警戒を強めました。でも私は続けます。こちらには切り札があるのです。 「私はこの時間の人間ではありません。もっと未来から来たのです。 あなたには私がいる時間、約一年半後に来てもらいます。」 「私がおとなしく従うとでも?」 「あなたは今から数ヶ月後、長門さんに情報連結を解除されます。」 「なんですって!?」 「さらに、長門さんは古泉一樹という超イケメンと付き合ってイチャイチャし始めるんです。 どう思いますか?」 「そ、そんなの許せないわ……!あの子に彼氏なんて生意気よ!私の方が絶対モテるんだから!」 「私はそれを妨害したいのです。でも長門さんは万能です。私では太刀打ちできません。 だからこそ、あなたの力が必要なのです!!協力してくれますか!?」 「……分かったわ!あの娘にだけいい思いなんてさせないんだから!!」 交渉成立です。私は仲間になった彼女を引き連れて元の時間に戻りました。 朝倉さんはこの時間に存在しているはずのない存在なので、しばらくは私の家で隠居しててもらいます。 さて、土曜日です。 今日は不思議探索はお休みということになっています。 でもどうせ二人でデートという名の探索をするつもりなんでしょう!カーッ!ペッ!! 古泉君達も遊園地がどうとか話してたし、 ああもう、観覧車に乗って1番上に来た時点で観覧車が止まってしまえ! あ、でもそれじゃあ逆にいろいろとムードが出て……って何想像してるんですか私! さて、召集をかけたのはいつもSOS団が集合するのとは違う公園。 いつもの公園じゃ忌々しいカップル共が集合場所に利用する可能性が高いですからね。 今現在いるのは、5人。私と朝倉さん。そして…… 「まさか召集をかけたのが朝比奈さんだったなんてな!ていうか朝倉、いつ帰ってきたんだ?」 キョン君の友人、谷口君。まあ彼は来るだろうと思っていました。 こういう類のイベントには絶対参加しそうです。そういうオーラがあります。 「ふう、まさかいかがわしい集団に所属している貴様がリーダーとはな。 まあ、あの古泉達の邪魔をするというのには私も同意だ。」 ため息をつくのは生徒会長(本名不明)さん。 SOS団では敵ですが、ここでは仲間になって頂きます。 「このようなイベントを、私待ち望んでおりました。」 ……1番のサプライズはこの人。まさかこの人が参加するなんて思ってませんでした。 ていうか、学校にしか貼ってないのにどうやって来たんですか 「『機関』の情報収集力を、甘くみないで頂きたいですな。」 物凄い勢いで『機関』を無駄遣いしています。 まあいいです、彼はきっと物凄く強い。きっと力になってくれます。 私は、みんなに語りかけ始めました。 「みなさん、今日はよく来てくださいました。今この瞬間から、私達は『同士』です! そしてこの団体に名前をつけたいと思います。それは……「しっと団」!」 記念すべき「しっと団」結成の瞬間です。これは歴史に残りますね。 「しっと団……!!」 「ふむ、なかなかだ。」 「素晴らしい名前です。」 「私、気に入ったわ!」 みなさんも喜んでくれてるみたいです。良かった…… 「さて、「しっと団」では、コードネームで呼び合うことを義務付けます!」 「コードネーム!本格的だな……!」 「私は『トゥモロー』。そう呼んでください。谷口君は『ジャッカル』。」 「『ジャッカル』!なんかカッコいいぜ!」 「会長さんは『フォックス』。」 「ふん、いいだろう。」 「新川さんは『スネーク』。」 「何故だか分かりませんが物凄く私にピッタリな気がしますぞ!」 「そして朝倉さんは『キラー』です。」 「あら、カッコいいわね♪」 「さあ、皆さん!カップル達を、地獄に落としましょう!!」 「「「「おーー!!!」」」」 私達は聖なる雄叫びをあげました。 ちなみに、今公園には小さなお子様を連れているお母様方がいっぱいいるのですが、 何やら私達に「なにしてんだコイツラ」的な視線を向けています。 流石にこれ以上ここでやるのは少し恥ずかしいので…… 「では、計画について話し合いたいと思います。 場所を変えましょうか。どこがいいかな……出来れば周りに人が来ない場所……」 「だったらいい場所があるぜ!『トゥモロー』!」 『ジャッカル』君が提案しました。さて、どこでしょうか……? 「WAWAWA忘れもの~♪俺の忘れもの~♪」 えっと……なんでこんなことになったんでしょうか。 『ジャッカル』君の提案はカラオケボックスでした。確かに個室という点ではベストですね。 それまでは良かったのですが……何故かノリでカラオケ大会になってしまいました。 ま、まあまだ時間はあるし、今日は親睦を深めるという意味で……あ、次私ですね! 「みっみっみらくる♪みっくるるんる……」 ノリにノって歌っている最中でした。私は見てしまったんです。 ドアの前を歩く、キョン君の姿を!! 「『トゥモロー』、どうした?」 気持ち良く歌っている途中でマイクを落とした私に、『フォックス』が声をかけました。 私は、「すいません、ちょっとトイレに……」と言って慌てて部屋を出ました。 ちなみにみくる伝説は『スネーク』が引き継ぎました。ノリノリでした。 私は見つからないように、そ~っと隣の部屋の中を覗きました。するとそこには…… キョン君、涼宮さん、古泉君、長門さんの姿が!!! 「な、な、なんでここに……!!」 思わず声に出してしまいました。だってそうでしょう? キョン君と涼宮さんは二人きりで市内探索すると言っていたし、 古泉君と長門さんは遊園地に行っているはず、なのに何故!? 「ま、まさか……」 ワタシ ハブラレテル? 私は外から見えないようにかがみこんでドアに耳をつけました。 周りから見ると不審者以外の何物でもありませんがそんなこと気にしてられません。 聞こえてきたのは、涼宮さんとキョン君のラブラブデュエットでした。 「もー!キョン音外しすぎよ!」 「だから俺はいいって言っただろ。一人で歌えば良かったじゃないか。」 「……いっしょが……よかったのよ……」 「ん?なんだって?」 「キョンと一緒に歌いたかったって言ってるのよ!!このバカ!!」 ああ、私の胸に、脳に、全身に、どす黒いパワーが溜まっていくのが分かります。 そうか、これが、「しっと」の力……!! ふふ、楽しんでいられるのも今のうちですよ。 クリスマス!その日あなた達は、地獄に落ちるのです…… ふふ……ふふふ……ふふふのふ……!! 終わり(本編に続く)
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SOS団結成から一年半が経過し、冬の到来を予感させる11月のある日に、 紆余曲折を経て、ようやく俺はハルヒと付き合いだした。 それからの1ヶ月間は、はっきりいって天国だったね。 二人きりだと甘えてくるハルヒのかわいさったら無いぜ? 最初はどうなることかと思ったが、こんなにも楽しいもんなんだな、恋愛ってヤツは。 そして12月下旬となった今、俺達二人は公園のベンチで肩を寄せ合って座っている。 「ねえねえ、もうすぐアレじゃない?」 「アレってなんだよ。」 「クリスマスに決まってるじゃない!」 「ああ、もうそんな季節か……楽しみだな。」 「でしょ!?あのね、行くところはもう決めてあるの!」 そう言うとハルヒは、一枚のチラシを取り出した。 「なになに?『セントラルタワー、クリスマスの日は恋人達だけの夢の楽園に!』……なんじゃこりゃ。」 セントラルタワー。二つほど隣の駅にある人気スポットだ。主に若者向けの店などが並んでいる。 俺はほとんど行く機会無かった場所だが…… 「あのね、クリスマスの日にカップルで行けば、いろんな店で割引きやサービスをしてくれるらしいの! これは絶対行かなきゃダメでしょ!!」 なるほど。クリスマスにあやかった戦術ってワケか。まあ確かに得できるのはいいことだし、 何よりそこに行くことでハルヒとカップルであるということをより実感できるからな。 クリスマスデートの場所としては、最適かもな。 「でしょでしょ?じゃあ決まりね!早速……」 「やめた方がいいぜ。」 んん!?どこからともなく声が聞こえてきた。 この声は…… 「谷口!」 そう、こいつは俺のクラスメイトであり友人である、谷口である。 「チッチッチ。違うぜ。」 指を振り否定する。何が違うというんだ。あとカッコつけてもお前じゃカッコつかないからやめろ。 「俺はコードネーム『ジャッカル』だ。」 ……はぁ?頭でも打ったのか? 「あんた、頭でも打ったの?」 ハルヒが俺の思ったことをそのまま言葉にしてくれた。 「友人のよしみで教えてやる。クリスマス、その場所は地獄となるぜ。 だから行くのはよした方がいい。」 「おい待て。お前は何を言っているんだ。」 「俺は「しっと団」のメンバーに入れて貰えたんだ。そう、我等がボス『トゥモロー』によってな。 しっと団の目的はカップルの撲滅。最もカップルが多くなるであろうその場所を、ぶち壊してやるのさ。」 「おい……正気か?」 「俺は正気だぜ?そして、『トゥモロー』はさらに本気だ。本気でカップルを撲滅させるつもりでいるぜ。」 「そんなこと、させるわけないじゃない!」 ハルヒが叫ぶ。 「ククク、俺達しっと団に逆らうつもりか?なら見せてやる……しっと団の力おををを!?!!」 谷口がファイティングポーズを取った瞬間、ハルヒの回し蹴りが谷口にクリーンヒットした。 おいおい、瞬殺にも程があるだろう。 「くっ……!これで終わりだと思うなよ、しっと団には俺以外にも4人いる……!」 なんか悪役がやられる時のよくあるパターンなセリフを言い出した。 しかも全員で5人かよ。思った以上に小規模で脅しにもなっちゃいない。 「しかも全員俺より強い!!」 そりゃ当たり前だ。 「冥土の土産に教えてやるよ……俺達はクリスマス、セントラルタワーを爆破す……る……ガクッ」 っていきなりヤバいこと言うな! 爆破……マジかよ?そんなことしたら…… 「そんなことになったら……カップル達の幸せな時間がメチャクチャじゃない!」 そうだ。下手したらケガどころじゃすまなくなるかもしれん。 「当然阻止よ!SOS団全員集めて、しっと団の企みを止めるのよ!」 それには同感だが、なんか話が変な方向に動き始めた気がしなくもない。 俺とハルヒのラブラブデートは一体どこへ…… 続く!
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SOS団結成から一年半が経過し、冬の到来を予感させる11月のある日に、 紆余曲折を経て、ようやく俺はハルヒと付き合いだした。 それからの1ヶ月間は、はっきりいって天国だったね。 二人きりだと甘えてくるハルヒのかわいさったら無いぜ? 最初はどうなることかと思ったが、こんなにも楽しいもんなんだな、恋愛ってヤツは。 そして12月下旬となった今、俺達二人は公園のベンチで肩を寄せ合って座っている。 「ねえねえ、もうすぐアレじゃない?」 「アレってなんだよ。」 「クリスマスに決まってるじゃない!」 「ああ、もうそんな季節か……楽しみだな。」 「でしょ!?あのね、行くところはもう決めてあるの!」 そう言うとハルヒは、一枚のチラシを取り出した。 「なになに?『セントラルタワー、クリスマスの日は恋人達だけの夢の楽園に!』……なんじゃこりゃ。」 セントラルタワー。二つほど隣の駅にある人気スポットだ。主に若者向けの店などが並んでいる。 俺はほとんど行く機会無かった場所だが…… 「あのね、クリスマスの日にカップルで行けば、いろんな店で割引きやサービスをしてくれるらしいの! これは絶対行かなきゃダメでしょ!!」 なるほど。クリスマスにあやかった戦術ってワケか。まあ確かに得できるのはいいことだし、 何よりそこに行くことでハルヒとカップルであるということをより実感できるからな。 クリスマスデートの場所としては、最適かもな。 「でしょでしょ?じゃあ決まりね!早速……」 「やめた方がいいぜ。」 んん!?どこからともなく声が聞こえてきた。 この声は…… 「谷口!」 そう、こいつは俺のクラスメイトであり友人である、谷口である。 「チッチッチ。違うぜ。」 指を振り否定する。何が違うというんだ。あとカッコつけてもお前じゃカッコつかないからやめろ。 「俺はコードネーム『ジャッカル』だ。」 ……はぁ?頭でも打ったのか? 「あんた、頭でも打ったの?」 ハルヒが俺の思ったことをそのまま言葉にしてくれた。 「友人のよしみで教えてやる。クリスマス、その場所は地獄となるぜ。 だから行くのはよした方がいい。」 「おい待て。お前は何を言っているんだ。」 「俺は「しっと団」のメンバーに入れて貰えたんだ。そう、我等がボス『トゥモロー』によってな。 しっと団の目的はカップルの撲滅。最もカップルが多くなるであろうその場所を、ぶち壊してやるのさ。」 「おい……正気か?」 「俺は正気だぜ?そして、『トゥモロー』はさらに本気だ。本気でカップルを撲滅させるつもりでいるぜ。」 「そんなこと、させるわけないじゃない!」 ハルヒが叫ぶ。 「ククク、俺達しっと団に逆らうつもりか?なら見せてやる……しっと団の力おををを!?!!」 谷口がファイティングポーズを取った瞬間、ハルヒの回し蹴りが谷口にクリーンヒットした。 おいおい、瞬殺にも程があるだろう。 「くっ……!これで終わりだと思うなよ、しっと団には俺以外にも4人いる……!」 なんか悪役がやられる時のよくあるパターンなセリフを言い出した。 しかも全員で5人かよ。思った以上に小規模で脅しにもなっちゃいない。 「しかも全員俺より強い!!」 そりゃ当たり前だ。 「冥土の土産に教えてやるよ……俺達はクリスマス、セントラルタワーを爆破す……る……ガクッ」 っていきなりヤバいこと言うな! 爆破……マジかよ?そんなことしたら…… 「そんなことになったら……カップル達の幸せな時間がメチャクチャじゃない!」 そうだ。下手したらケガどころじゃすまなくなるかもしれん。 「当然阻止よ!SOS団全員集めて、しっと団の企みを止めるのよ!」 それには同感だが、なんか話が変な方向に動き始めた気がしなくもない。 俺とハルヒのラブラブデートは一体どこへ…… 続く!
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予告編 クリスマスのアベックを殲滅した英雄、しっと団。 彼らはクリスマス以後目立った活動はしていなかった。 クリスマスに彼女ができたと笑うかつて友だったものを妬み、恋人と別れたものをざまぁみろと笑い、新年になってカップルになった人間を妬む。 だが、その感情を決して表には出さずに耐えてきた。 クリスマスと同じか、それ以上にアベックがはびこるイベント、バレンタインのために…… 「なぁ、リヴァル」 「どうした、ライ」 「なんで僕らは経済特区日本に向かってるんだっけ?」 「おいおい、もう忘れたのか? しっと団エリア11総本部での会合に俺たちしっと団・アッシュフォード学園支部が招かれたからじゃないか」 「……いや、僕は――――」 「ライ、お前はすごいよ。 入団したてでアレだけのアベックを殲滅できるなんてさ。 なんでも新しく就任したエリア11総本部団長から激励の言葉もあるらしいぜ」 「……どうしてこんなことに」 特区日本へと止まることなく進んでいくアッシュフォード学園の極々一部の生徒を乗せた電車から窓の外を眺めながら、ライは悔いていた。 セシルの料理のあまりのまずさに暴走してしまった過去の自分を。 クリスマス以後活動などなかったものだから、そんなことをしたのを忘れていた自分の愚かさを。 ゴキブリホイホイのように粘着質なしっと団の絆を甘く見ていたことを。 ライは彼女のいる友人の話を憎憎しげに語る周りの皆の話を自分には関係ないと聞き流し――――― 「それでさ、トムのやつ彼女に弁当作って貰ってるんだ。 しかもすっげぇ美味そうなんだ……」 トムは死ねばいい。 そんなことが瞬時に頭に浮かんだライ。 なんだかんだ言いつつ、彼もしっと団になじんでいるのだろう。 周りの白い目を気にしつつも受け流し、彼らはしっと団総本部へと向かうのだった。 「ワシの若いころはアベックどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、やつらを恐怖のどん底へ叩き落したものだ…… 最近のやつらは生ぬるい! 昔は告白しそうな軟弱な男どもには48のしっと技を食らわせて再起不能にしていったものだ。 しかしながら、最近の若いやつは――――――」 ライ達アッシュフォード学園のしっと団団員たちが総本部に入ってからしばらくして始まった先代しっと団総本部団長の演説は既に一時間以上続いていた。 かつての栄光、最近の活動は生ぬるさ、基本的にこの二点を繰り返し話し続けていた。 幾人かのしっと団団員達はその長い演説により眠りの世界へといざなわれていた。 「つまりだ、アベックどもを――――――むっ、もうこんな時間か。 まぁ、長々と話してきたが、ワシは今のしっと団は今のしっと団でよいものだと思っておる。 ワシもさすがに年をとり、しっと心が薄れてきてしまった……かつての過激な行動はできん。 そして、今平和が保たれている時期にそのようなことをすべきではないこともわかる。 ゆえに、そろそろ次の世代へとバトンを渡そうと思う。 あと、最後にひとつ忠告をしよう……取調べ中のカツどんは自腹だ」 先代しっと団総本部団長の演説が終わる。 そして先代総本部団長はゆっくりとそのマスクに手をかけ、高らかに宣言する。 「もう、普通のおっさんに戻ります!」 「……あれ? なんか僕あの人見たことが……あ……」 そこにいるのはもうしっとの心の代弁者ではない。 上半身裸の若干太り気味のおっさんだった。 そのおっさんの顔を見たライはあることに気づいた。 日本解放戦線、そして黒の騎士団の一員として手配されていた男の顔を思い出す。 「仙波……崚河……」 奇跡の藤堂の部下、四剣聖の一人、仙波崚河。 エリア11がまだ日本という名前の時からアベックを殲滅し続けた男は後人に道を譲った。 「そして、新たなしっと団総本部団長は、この漢だ!」 仙波が腕を伸ばした先にしっと団団員たちの視線が集まる。 と、いきなりその場の明かりが消え、二つのスポットライトが動き始める。 しばらくスポットライトは無秩序に動き、仙波の示した場所にとどまる。 そこには黒い仮面の男がいた。 チューリップのような仮面には燃える炎のようなペイントがなされている。 「しっと団総本部団長を承った、ゼロだ……!」 仮面のペイントのスキマが光を浴びて輝く。 右腕を高く掲げ、左腕はそれに垂直になるようにピンと伸ばされている。 ピシっと揃えられた脚はO脚やX脚とは無縁の代物だ。 しばらくその格好を維持した後、右腕をゆっくりとおろし、肩の高さより少し低めの位置に両腕を持ってきて、そして胸を張る。 「聞け! しっと団の諸君よ! 私は悲しい……。 哀れみと優越の視線。 振りかざされる自慢話! 悪意なき言葉の刃! 勘違いされる我々の善意、報われぬ好意! そう、世界はいつだって不平等、弱者への虐げが存在する! だから私は、この壇上に立った……アベックどもが、持たざる者を虐げ続ける限り、私は諸君らの味方となろう!」 手のひらを上方に向けた両腕を掲げ、ゼロは説く、彼の思う理論を。 彼は示す、しっと心の行き場を。 「さしあたって一週間後、2/14に私は粘膜の作り出す幻想に溺れるアベックどもへと天誅を下そう……。 バレンタインデーは聖人をたたえる日、同時に愛が生み出される日、それを認めよう。 だが、アベックどものそれは決して愛ではない! 性欲に溺れる愛などはあってはならない。 人は、心を繋ぐことができる。 互いに好意を抱き、互いにすべてを捧ぐ。 それが愛だ! 我々の求める、愛だ! だというのに、やつらの向ける哀れむ視線。 真に哀れなのは彼らだ! 私は示そう! 君たちに、彼らに、真実の愛とはいかなるものかを! 製菓会社に踊らされる愛などは不要! チョコレートが欲しいのならばコンビニエンスストアに行くがいい! 愛のある贈り物がしたいのならば、いつでもいいだろう。 誤った愛を撒き散らす、バレンタインデー! それを我らの手で正そうではないか!」 ゼロの叫びが終わり、その場にいたものは静まり返る。 だが、その静けさは一瞬のものだった。 「……ゼロ、ゼロ、ゼロ!」 「ゼロ、ゼロ、ゼロ! ゼロ、ゼロ、ゼロ!」 「ゼロ! ゼロ! ゼロ! ゼロ! ゼロ!」 誰かが叫びだすと、まるで堰が外れたかのごとく、ゼロ、と叫ぶ声が響きあう。 それを仮面越しに眺めるゼロだったが、ある一箇所に視線を向けた瞬間、仮面の中の顔は驚きに歪んだ。 (ラクシャータ謹製のリア充スカウターに反応……? ……バカな! 何故しっと団のアジトにリア充力5000ガバスのやつがいる……! いや、だがしっとカウンターでは500万ギガバイトか……くっ、遠くて見えんが確かあのあたりはアッシュフォード学園から招いた……まさかリヴァルか!? フッ、ありえないな……ともかく不確定要素には早めに対処しなければ……!) 考えをまとめたゼロは歓声の中両手をあげ高らかに言う。 「諸君らの健闘を祈る!」 そして、やまぬ歓声を後にゼロは総団長室へと向かう。 しっと団幹部へとある指示を出した後に。 「やるじゃあないか、ルルーシュ」 部屋に入ってかけられた言葉、それを聞きゼロは即効で扉を閉めて鍵をかける。 幻ではないかと仮面の中の瞳を2,3度瞬かせ、それでもなおそこに存在する人物に対する言葉を捜す。 しかしながら、とっさに出てきたのは思っていたこと、すなわち 「何故お前がここにいる」 「私がC.C.だからさ」 しれっと答えるC.C.に頭に血を上らせながらもゼロは言葉を吐き出す。 「俺が聞きたいのは、どうやってこの場所を知り、どうやってここにきたか、だ」 「忘れたか、私は魔女だぞ? 契約者の場所を知ることなど造作もないことだ」 答えになってはいない答え、だがC.C.の中ではそれはしっかりとした答えなのだろう。 やはり持っていたピザを食らいながら悠然とソファに寝そべった姿勢を崩そうとはしない。 「しっと団総団長ねぇ……そんなことだからお前は童貞ぼうやなんだ……」 「なっ……!」 ゼロに聞こえるようにC.C.は呟く。 その言葉は彼の冷静さを容易に奪い去る。 彼の怒りが有頂天を迎えようとしたとき、その怒りをとどめさせ、頭を冷やさせる事態が起こる。 コンコン、と部屋に響く音、続いて彼の良く知る声が聞こえた。 「総本部団長、アッシュフォード学園支部の団長 リヴァル・カルデモンド、ただいま到着しました」 その声を聞いたゼロはソファで寝そべっていたC.C.の腕を引っ張り、前任者の予備のマスクが大量に保管されている隣の保管庫へと押し込め、外から鍵をかける。 普段の彼には決して出せない力を出せたのはしっとマスクのおかげかもしれないし、そうでないのかもしれない。 「あぁ、入ってくれたまえ」 数分前、ゼロの演説が終わってからリヴァルとその隣にいたライはゼロの呼び出しを受けた。 そのしっと団員も、ただ呼び出して欲しいと言われただけでその理由は聞かされていなかった。 「んー、ゼロが俺たちを呼ぶ理由か……いったいなんだろうな」 「確かに……」 リヴァルの何気ない言葉に、適当に相槌を打つライ。 彼は頭の中でさまざまな可能性を推測、吟味、整理していた。 単純にこのまえのクリスマスのことでの呼び出しを考えたが、アオモリゲットーのしっと団員、しっとサイクロンが出会うアベックにパイルドライバーを食らわしていった功績で壇上でたたえられていたからそれはないだろうと考える。 自分がブリタニア軍人だからというのも考えたが、黒の騎士団とブリタニア軍は和解しているといっていい。 それに彼は黒の騎士団のゼロではなく、しっと団員のゼロとしてこの場にいるのだろう、と考える。 他人のしっと心はある程度以上のしっと心を持った人間には、あいまいだが読み取ることができる。 無意識のうちに自分がしっと心をはかることが出来ているのをライは全力で見逃す。 結局、何故呼ばれているのかわからぬままにゼロの待つ部屋の前に彼らはたどり着く。 そしてリヴァルがドアをノックして中へと声をかけた。 少し間をおいて今現在のその部屋の主の入出許可がおりたので二人は部屋へと入る。 「……っ! ……君たちがアッシュフォード学園のしっと団員か」 「は、はい!」 「……アッシュフォード学園しっと団団員、ライです」 ゼロはリヴァルとともに入ってきたライに一瞬驚きを見せるが、すぐに取り繕った。 間近でゼロを見たリヴァルは少し緊張気味に言葉を返し、ライは少し間を空けて自己紹介する。 「……君がしっと団に入団しているとは思わなかったな」 「僕もですよ」 ゼロがライのほうを向き言葉をかけ、それにライが言葉を返す。 二人の言葉を聞いたリヴァルは首をかしげる。 そして、遠慮がちに二人に声をかけた。 「えーっと、知り合い……なん……ですか?」 「あぁ、特区日本の仕事でね……まぁ、それ以前からの付き合いではあるな」 ゼロの言葉にライもうなづく。 それを見たリヴァルはライがブリタニア軍に所属していたことを思い出す。 なるほど、ゼロと面識があってもおかしくはないだろう。 だが、知り合いだから呼ばれた、というわけでもないだろうとリヴァルは考える。 先ほどのゼロのセリフからライがいることは予想外だったということが推測できるのだから。 「……とりあえず用件を言おう、今度のバレンタインの作戦、私はアッシュフォード学園へと向かう」 「……えっ」 「……」 二人の困惑を感じ取り、ゼロは更に言葉を続ける。 「大人になれば、バレンタインという行事は義理の絡む、製菓会社の陰謀に巻き込まれたイベントとなるのが大半だ。 なにが逆チョコだ、なにが友チョコだ。 チョコレートを食べたいなら毎日でも食うがいい! ……すまない、取り乱した。 つまり、学生の欲というのは恐ろしいものだ、若さゆえの過ちという言葉もあることだしな。 乱れた風紀を正すために、おそらく今のエリア11、日本の中でもっとも学生の多い地区であるアッシュフォード学園の近辺を警戒しようと思ってな。 ゆえに君たちに許可を取ろうと思ったのだ」 「当然OKですよ! ゼロがきてくれるならこちらの士気も上がります! 今日の演説だって、俺ら聞きほれてしまいました!」 「僕らの団長がそういうんだから、僕に異論はない」 二人の言葉を聞き、ゼロは仮面の中で笑みを浮かべる。 彼がしっと団団員になった目的はこれでクリアされたといってもいいだろう。 「ありがとう、リヴァル君……いや、同志リヴァル! そして同志ライ! 君たちの奮戦を期待する!」 「はい!」 「了解です!」 話が終わり、リヴァルとライは部屋から出て行こうとする。 だが、それをゼロはさえぎった。 「ライ、君に話がある……少し残ってくれないか? 少し長くなるかもしれないが……」 「……はい……リヴァル」 「ん、了解。 俺らは特区日本の見物でもしておくよ」 そういい残し、リヴァルは部屋の外に出る。 残されたゼロとライはしばらく互いに黙っていたが、ゼロが話を切り出した。 「ラクシャータの作ったリア充スカウターという装置がある。 ……まだ実験段階と言ってもいいものだが、なかなか信用の置ける装置だ」 「……つまり、僕から……」 「理解が早くて助かるよ。 君からはリア充値5000ガバスが検出された。 だが、しっとカウンターでは500万ギガバイトほどのしっと心が計測された」 ちなみに実験として扇要のリア充値を測ったところ、1500かける10の三乗モジャ(単位はいろいろ変わるので実質数値のみを考えればよい)だった。 その後、彼は黒の騎士団内のしっと団から闇討ち(特に玉城は「親友だと思ってたのに!」と叫びつつ積極的に扇にビンタをかました)を受ける羽目になった。 「……僕は、一応セシルさんという彼女がいる」 「……お前ッ!」 「僕がしっとするのはね……料理が上手な彼女を持つ人間なんだ」 「……」 「君にはわかるかい? 彼女の手料理が紫色の煙を出しているのが見えた時の気持ちが。 それを食べなければならないものの気持ちが。 しかも、それが味見をした結果の産物だということが!」 料理が下手な原因は多々ある。 ライの言うセシルという女が味音痴な部類に入る、とゼロは理解する。 興奮して「おにぎりにジャム」「ケーキにポン酢」と叫ぶライの声を聞き、アレンジャーであることも理解した。 「――――――卵かけご飯にあんことバニラアイスを入れられたとき……」 「もういい! すまない……! すまない……! 本当にすまない……!」 卵かけご飯のアレンジという失敗するほうが難しいものを聞かされて、ゼロはライの言葉をさえぎる。 料理の名前を出すたびにだんだん青ざめていくライの顔を彼は見ていられなかった。 「……ちなみに、アッシュフォード学園にいる君の仲間はなんと?」 「毎回ねぎらいの言葉を」 「そうか……だが、君に彼女がいることはあまりまわりに知らせないほうがいい。 言ってはなんだが、君の仲間は甘い。 それは悪いことではない。 だが、しっと団のなかには彼女がいる! という一点のみにしか注目しないやつが大多数だ……あんな演説をした後で言えるセリフではないと私も思うがな……」 「ゼロ……」 「話はそれだけだ……気をつけてくれ」 そしてライは部屋を去る。 と、同時に隣の部屋へと続く扉が開く。 「まったく……よく回る舌じゃないか」 「……C.C.……以外だな、お前が話に乱入してくるものとひやひやしたが……」 「お前の私に対する認識がどんなものかよくわかったよ」 「あ、いや……」 「私の心を深く傷つけた罰だ、お前にはこのバレンタイン限定チョコレートピザを10枚とバレンタイン限定チョコレートチーズ君を奢ってもらわねばなるまい。 いや、その程度では到底この傷は癒せんな……冬季限定のホタテピザも5枚ほど必要だな。 あと―――」 「わかった、俺が悪かった、謝ろう。 ピザだろうがなんだろうが奢ってやる。 だから、今は、速やかにここから誰にもばれないように出て行け!」 「……いいだろう。 奢るという約束、忘れるなよ」 そう言い残し、一応辺りをうかがったあとに出て行くC.C.を見送った後、ゼロはバレンタインの作戦案をまとめる。 「……とりあえず、最近流行りの逆チョコというのを警戒して男からチョコを奪うべきだな……もてなくなる可能性を示唆すれば女性から奪う、ということはないだろう。 奪ったチョコは恵まれないエリアの子供たちに配る―――――このあたりの手配はディートハルトに任せるか。 ……黒の騎士団のメンバーの大多数が所属しているとは思わなかったが、これはこれで俺の目的を達成するのには好都合だ―――」 ナナリーに近づく害虫どもの駆除にはな! と心の中で叫ぶゼロ。 ちなみにロリコン疑惑のあった南はしっと団より追放処分を受けている。 ゼロが「幼女、少女には手を出すべからず」の項目を更に強化した結果である。 「ふぅ……まったく……」 監視の目をすり抜け、C.C.はしっと団のアジトの外へと抜け出していた。 そして、特区日本に最近出来た公園のベンチに座り、中空を見ながら一人で喋る。 「―――――マリアンヌ……ルルーシュは否定するだろうが、あいつはシャルルに似ている……」 かつて、皇帝になる前の若き日のシャルル・ジ・ブリタニアの姿を思い描く。 長髪をまとめ、マスクを被り、ビスマルクとともに大暴れしていた彼が108人の妻を持つことになるとは、誰が想像できただろうか。 皇帝がマリアンヌにアックスボンバーをくらって沈められていたなど誰が信じられようか。 「まぁ、あいつらがどんなことをするのか、少し楽しみではあるがな……」 まだ見ぬチョコレートピザの味に思いをはせて、C.C.は微笑みながら呟いた。 バレンタインデー当日。 しっと団は各々が持つアジトにて作戦開始を待っていた。 「我々は、すべてのモテない男たちの代弁者である! 彼らは、モテるやつらには天誅が下るべきである、とそう思っていることは間違いない! しかし、彼らには行動を起こす力がない。 ならば、我々がかなえてやろうではないか! 理想があっても、力のないもののために! 我らが力を振るう! 出来るということを見せる! だからこそ、後に続くものが現れるのだ! 何も恐れることはない、私が肯定しよう! 君たちは正しいのだ! 行くぞ! 甘いチョコに脳内を汚染された愚か者に、罰を与えるのだ!」 『承知!』 『了解!』 『いくぜぇぇぇ!』 『うおりゃあああああああ!』 ゼロの号令の元、各地のしっと団たちはいっせいに行動を開始する。 自らの肉体を頼りにモテる男からチョコレートを強奪するしっと団員もいれば、手に持ったカカオ100%の人体に有害ではないチョコレートをもてていそうなの男の口に押し込む。 いそうな、とは言ったが勘でそのような男をすぐに見分けられるしっと団員が大多数である。 うらみやしっとは時として理屈を超えた力を生み出すのだ! また、今にも口に運ばれそうなチョコレートにすぐさまにタバスコをかけて無理やり押し込める、という世の中の辛さを教えるしっと団員もいる。 そう、彼らは世間の恐ろしさを教えているのだ。 甘いと思ったものが甘いとは限らないということを、親切にも教えているのだ。 しっとする相手にそのようなほどこしを与える、そう、彼らの心は冬の海のように、広大で荒れ狂った心なのだ! 「よし、ではこちらも作戦を開始するぞ、全員、マスクの準備は万全か?」 「はい、皆しっかりとマスクを被っています、ゼロ!」 「今の私はゼロではない、しっとジャスティス・ハイパーだ! わかったな、しっとリーダー!」 「了解です、しっとジャスティス・ハイパー殿! ではいくぞ、皆!」 『チョコはどこじゃぁぁぁぁああああああ!』 「……なん……だと……!?」 呆然とするしっとジャスティス・ハイパー(ゼロ)としっとリーダー(リヴァル)、そしてしっとエース(ライ)を残し、アッシュフォード学園のしっと団員たちは学園内へと散らばっていく。 突然の出来事に固まっていた3人だったが、絹を裂くような悲鳴を耳にして、ようやく我に返る。 「くっ、どういうことだ!? 女生徒には手を出すなと、あれほど言っておいたはずだが……」 「すまない、しっとジャスティス・ハイパー。 おそらくあいつらチョコレートのにおいで我を忘れるほど暴走しちまったんだ。 俺がしっかりと教育をしていなかったから……」 「しっとリーダー、君だけの責任じゃないさ。 僕だってアッシュフォード学園のしっと団の一員。 僕にも責任はある。 でも、今は……」 「あぁ、わかっているさ……しっとエース、しっとジャスティス・ハイパー、あいつらを止めるのに力を貸してくれ」 「了解」 「承知した」 三人が悲鳴の聞こえた場所へと向かうと、そこには数人の女生徒を囲むしっと団員の姿があった。 「ギブミーチョコ!」 「チョコをよこせ!」 「おいてけー、おいてけー」 「な、なんなの、こいつらは……」 じわりじわりとにじり寄るしっと団員たちはその格好と合わさり、明らかに変質者に見える。 ヒィ、と怯える生徒たちの中には泣き出しそうなものもいた。 「クラブ・キィィィィック!」 「あべしっ」 そんな彼女たちの姿を見るや否や、しっとエースはとび蹴りを放つ。 ジャンプした後空中で回転を加えたキックはその威力を逃がすことなくもっとも女生徒に近づいていたしっと団員へと命中する。 「無事ですか」 「は、はぃ……」 劇的なシチュエーションに若干ほほを赤らめる女生徒だが、救いの主が明らかに目の前の変質者と同じような格好をしているためか、声が引きつる。 それに少し遅れてしっとジャスティス・ハイパーとしっとリーダーが駆けつけた。 「貴様ら、今回の作戦内容を忘れたかッ! 女生徒を襲うなかれ、とあれほど言っただろうに!」 「あぁ、わかっているさ……だが……」 しっとジャスティス・ハイパーの言葉に彼らは俯く、が、顔をあげると同じ言葉を、同じタイミングで放つ。 『チョコレートが欲しいんだ!』 あまりの必死さにしっとエース、しっとジャスティス・ハイパー、女生徒は気おされる。 だが、しっとリーダーだけは違った。 「そうか……そんなにチョコが欲しいのか……じゃあやるよ」 そういって彼は腰に付いているホースにて手を伸ばす。 そしてそれを両の手で構え、しっと団員たちに向ける。 「受け取れ! カカオ100%チョコレートを!」 「あぷッ! に、にげぇ……」 茶色い霧のようなものがホースの先から放出されてしっと団員たちにかかる。 しっとリーダーいわく、カカオ100%チョコレートの霧を浴びたしっと団員たちはとたん、苦しみだした。 しっと団員たちを縛り上げて見せしめのために放置し、そして女生徒に謝った三人は他のしっと団員たちのむかった先を探す。 「まったく、アベックたちに使うはずの装備を味方に使うことになるとは……」 「暴走する味方は敵よりも厄介だ、覚えておくといい……ん?」 「どうしたんだい……しっとジャスティス・ハイパー?」 「いや……なんでもない……」 しっとジャスティス・ハイパーは少しの間どこか遠くのほうを見たが、首を振って再び2人とともに走り出した。 (いましっとカウンターに強力な反応があったが……故障か? いくらなんでもしっと力100億×200立方メートルという数値はありえない……) 一方、アッシュフォード学園の某所では、緑の髪の少女が毒々しい色の義理チョコを怨念交じりで作成していた。 ……か、どうかは定かではない。 ちなみに、この後数日間枢木スザクという人物が病院で生死の境をさまよった、という噂が流れた。 そんなこんなで本来アベック用だった装備の大体を暴走したしっと団員たちに費やしたが、通りすがりに見つけたモテる男からチョコを奪い去り、告白しようとしている男子生徒を妨害したり。 そして男子生徒に告白しようとする男子生徒を生暖かい視線で見守ったり、一応しっと団としての活動はこなしたといってもいいだろう。 そして作戦が終わった後、アジトに戻ってしばらく経ち、しっとリーダーが口を開いた 「……しっと団を解散しようと思う」 「……リーダー!? 何故ですか!」 しっとリーダーの言葉に一人のしっと団員は大きく反応する。 「今日のお前らを見てさ、正直な話俺じゃあまとめきれないって思ったんだ……だから、正確に言えば解散っていうよりかは俺がやめるってかんじかな」 「そんな……」 「……ならば、僕もやめるべきだろうね」 「……私もだな」 しっとリーダーに続き、しっとエース、しっとジャスティス・ハイパーまでもが同じことを言う。 そのことにその場にいたしっと団員たちは更に動揺を見せる。 「しっと心を一定の方向に持っていくことである程度の制御が出来るのではないか、と私は思った。 しかし、ここアッシュフォード学園においてそれは不可能だった……アッシュフォード学園のしっと団員たちが悪かった、というわけではない。 だが、作戦の立案者としては責任を取らねばならない……私は、しっと団エリア11総本部団長の名において、ゼロ、リヴァル・ライの三名を永久退団扱いとする!」 「よかったのかい、リヴァル?」 「あぁ……未練がないって言えば嘘になるけど、あいつらを率いるのに疲れてきたってのは確かにあるな……」 「そうか……」 なんとなくクラブハウスへと向かうリヴァルとライ。 二人はどこかやり遂げた表情をしている。 「しっと団はどうなるんだろうね……」 「さぁ? 一応俺が団長になる前からあった組織だし、たぶんこれからもあるんじゃないか……あそこまで表立った行動はしないだろうけど」 ライが来る前のアッシュフォード学園しっと団の活動はせいぜい呪いのわら人形に釘を打ち付けたり、告白を受ける男子生徒に怨念をこめておくる、といった極々普通の平和的なものだったらしい。 クリスマスでの成功に少し調子に乗ったのだろう、というリヴァルの推測はまぁ、つじつまの合うものだ。 「とりあえず、ここ最近しっと団の活動にかまけっぱなしで生徒会の活動してなかったから、会長に謝りに行きますか……」 「あぁ……怒られるくらいならいいんだが……」 二人を待っていたのは、満面の笑みを浮かべたミレイ会長と、自分たちの机に山ほど置かれた書類の束。 そして何故か同じくらいの書類を相手に格闘するルルーシュの姿であった。 なお、しっと団が獲得したチョコレートは新団長・玉城が責任を持って恵まれないエリアの子供たちに送り届けた。 はずだったが、一部のチョコを横領していたことが発覚したため彼は三日で団長の座から引き摺り下ろされた。 おまけ 「おい、C.C.」 「なんだ?」 「もう、チョコレートピザ15枚目なんだが?」 「細かいことは気にするな、5枚くらい誤差の範囲だろう?」 「どこがだ! ピザのLサイズ5枚、確かに十人ほどいれば誤差の範囲だろうが一人で食うのにそこまで違いが出ると思うか!? その体のどこに15枚ものピザが入るんだ!」 「ほう、セクハラとはいい度胸じゃないか、童貞ぼうや」 「ああいえばこういう、お前は子供か!」 「ぐだぐだうるさいやつめ、お前は私のおかんか」 「誰がおかんだこのピザ女!」 この後、三十分以上の口論が続き、結果として二人とも店からたたき出された。 おまけその2 「ライ君、バレンタインチョコ、手作りよ」 セシルの言葉を聞き、ライは身構える。 とうとうこのときがきたのか、と覚悟をきめた。 生徒会の仕事が思ったよりも早く片付いてしまったために特派のトレーラーへと来ざるをえなかったのだ。 「いただきます……」 差し出されたチョコを口に含む。 ゆっくりと噛み砕き、味わう。 一思いに飲み込んでしまいたいのだが、目の前でセシルが見ている以上そのようなことは出来なかった。 「……マグロですか」 「えぇ、日本の人はマグロが好物だって聞いて……」 生臭いチョコレートではあるが、食べられないわけではなかった。 「うん、食べられますよ、これは」 ライはその言葉を後悔することとなる。 その日から、一週間ほどおやつにマグロチョコが出続けたのだった。 全力感想人Y 44 *
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谷口こと、コードネーム『ジャッカル』がハルヒに瞬殺されたその日の夜、 4人の男女が一同に会していた。 世界のカップルを撲滅させることを目的とした「しっと団」の緊急会合である。 「たにぐ……もとい、『ジャッカル』がやられたというのは本当か?『スネーク』。」 「『ジャッカル』は、涼宮ハルヒにやられたようですな。」 『スネーク』と呼ばれる男は、淡々と説明をする。 「チッ……役立たずが。」 「そう言わないの『フォックス』君。彼がダメってことぐらい、分かってたことじゃないの。」 「しかしだな『キラー』、まさかここまでの役立たずだとは……。」 「彼はちゃんと役に立ってくれましたよ。」 『トゥモロー』は穏やかにそう言った。 言い合っていた『フォックス』と『キラー』、そして『スネーク』が『トゥモロー』を見る。 「彼に涼宮ハルヒを倒すことなんて期待していません。 彼の役割は涼宮ハルヒをセントラルタワーにおびき出すこと。 この計画を伝えれば彼女のことです、きっと首をつっこむはずです。」 「しかし『トゥモロー』。彼女を呼び出す必要はどこに?」 『スネーク』が疑問を呈した。それに『トゥモロー』は、不敵な笑みを浮かべながら答えた。 「彼女がいないと意味ないんですよ……」 谷口が電波なことを言った翌日、俺とハルヒは部室で古泉、長門、朝比奈さんに昨日あったことを伝えた。 「ふぇ~、まさかそんなことがあるんですかぁ~?」 「もし本当なら、これは問題ですね……」 「……。」 古泉の言う通りだ。冗談にしちゃタチが悪すぎるぜ。 「というわけでみんな!当日はそこに乗り込んで、計画を阻止するわよ!!」 「ひぇ~、で、でも危なくないですかぁ?」 「何言ってるのみくるちゃん!私達がやらないで誰がやるのよ!!」 警察の人とかに任せればいいんじゃないか? 「何言ってるの!警察に言ったって信じてもらえるわけないでしょ! 私達がやらなきゃ!」 「あのなあハルヒ。最近ではネットにウソの爆破予告があったって警察は動くんだぞ。 事情を説明すればきっと……」 「私も彼女と同意見。」 「……長門?」 長門の意外な発言に驚く俺。 長門なら、警察も動いてくれることぐらい知っているはずだが…… 「ほらね!有希もこう言ってるのよ!当日はいつもの場所に集合! その後みんなでセントラルタワーに乗りこむわ!」 やれやれ……どうやら俺達がやることに決定しちまったらしい。 まあいざとなったら長門がいるし、大丈夫だとは思うが……。 帰り道、俺は長門と古泉と一緒に歩いていた。ハルヒと朝比奈さんは別の方向だから道は別だ。 さて……ハルヒもいなくなったことだし、ハルヒの前じゃ聞けないことを聞くとするか。 「古泉、今回の件についてどう思う?」 「さて、僕はなんとも……ただ、『機関』でそういう動きが無いことだけははっきり言えます。」 「なるほど。つまり今回は『機関』は関係無いということか。」 「いえ、そうとも言い切れません。」 ん?どういうことだ。機関では動きが無いんじゃなかったのか? 「それはあくまで『機関』全体としての動きです。個人の行動までについては把握できていません。」 「つまり『機関』の人間もその……「しっと団」とやらのメンバーの可能性があるってワケか。」 「ええ。もちろん、あくまで可能性としての話ですけどね。」 可能性であってほしいね。『機関』の連中はなんというか、べらぼーに強そうだからな。 「長門は、どう考えてる?」 少し気になることがあった。先程の長門の態度だ。 警察に相談することを止めたのには何か理由があるのだろうか? 「……先程から「しっと団」という組織に関して情報探索を行っている。」 「マジか。それで何か分かったか?」 「無理。何物かによって情報プロテクトがかけられている。」 「つまり長門さんの力による介入を、何物かがブロックしているということですか?」 「そう。そしてそのようなことが出来る存在は限られている。 私と同じように、情報統合思念体と繋がりのある存在……」 「ってことは、長門と同じ対有機なんちゃらが「しっと団」にいるってことか?」 「そう。」 おいおい……冗談じゃねぇぞ。 さっきは長門がいるから大丈夫だと思ったが……こりゃそう安心も出来ないんじゃないのか? 「大丈夫。私が守る。」 頼もしいぜ長門。 「ふふ、それは無理というものだよ。」 ん?誰の声だ。聞き覚えがあるよな無いような…… とそこで、前方から歩いてくる男の存在を確認した。お前は……! 「生徒会長!」 「これは奇遇ですね。こんなところで会うとは。」 古泉があいさつをする。しかし会長は鼻で笑い流した 「とぼけるのはよしてもらおうか。貴様らが計画を阻止しようとしていることは知っている。 そして今の俺は生徒会長ではない。「しっと団」メンバー、コードネーム『フォックス』だ。」 ……またコードネームか。頭が痛くなる。 「『トゥモロー』は涼宮ハルヒがセントラルタワーに来ることを望んでいる。 だから今は始末することは出来ない。忌々しいことだがね。 だが貴様らは別だ。この場で始末してやろう!」 おいおい、まさかこんな街中でバトルするつもりじゃないだろうな! 通行人だっているんだぜ!? 「大丈夫。情報操作は得意。」 そうかい。そりゃ安心だね。別の意味で不安だがなっ! 「まずは貴様からだ!古泉一樹! 知ってるぞ!貴様最近、そこのヒューマノイドインターフェイスといちゃいちゃしてるらしいな!」 「おや、ご存知でしたか。」 「忌々しい!喜緑君は私がいくらアピールしてもまったくなびいてくれないというのに! 何故貴様だけ……!!」 うっわあ……流石は「しっと団」。全身から負け組のオーラがこれでもかと言うくらい出ている…… 「それはあなたの魅力が足りないのでは?」 「黙れ!そもそも身分をわきまえろ!宇宙人なんかと付き合ってどうする!」 言いたい放題だな……って長門さん?何をしているのですか? 長門「…@@@@@@」 とその時であった!会長が古泉に攻撃をしかける! 古泉はとっさに右手で防御し……防御したら 「うわあああああ!!!」 会長が遥か彼方へ飛んでった。……なんだこれ。 「………」 古泉も口をあけたまま呆然としている。珍しい表情だな。 長門「……古泉一樹の右腕をブースト変換、ホーミングモードにした。」 つまりアレか。野球大会の時のバットと同じようになったってわけか。古泉の右腕が。 しかしそこまでせんでもよかったような気もするが…… 「問題無い。それに、私と古泉一樹の関係をとやかく言われたくは無かった。」 なるほど、宇宙人と付き合ってどうするとか言われたのに腹が立ったってワケか。お熱いことで。 長門を怒らせるのはマズいってことがよーく分かった。 「と、とにかく、これで「しっと団」は残り3名ということですね。」 ようやく落ち付きを取り戻した古泉がそう言った。顔が若干赤いのは見逃してやる。 さて、クリスマスイブは2日後だ。いよいよ「しっと団」との決戦が始まる! ……って煽り文句をつけてみても、なーんかカッコつかないな。やれやれ…… 続く!
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谷口こと、コードネーム『ジャッカル』がハルヒに瞬殺されたその日の夜、 4人の男女が一同に会していた。 世界のカップルを撲滅させることを目的とした「しっと団」の緊急会合である。 「たにぐ……もとい、『ジャッカル』がやられたというのは本当か?『スネーク』。」 「『ジャッカル』は、涼宮ハルヒにやられたようですな。」 『スネーク』と呼ばれる男は、淡々と説明をする。 「チッ……役立たずが。」 「そう言わないの『フォックス』君。彼がダメってことぐらい、分かってたことじゃないの。」 「しかしだな『キラー』、まさかここまでの役立たずだとは……。」 「彼はちゃんと役に立ってくれましたよ。」 『トゥモロー』は穏やかにそう言った。 言い合っていた『フォックス』と『キラー』、そして『スネーク』が『トゥモロー』を見る。 「彼に涼宮ハルヒを倒すことなんて期待していません。 彼の役割は涼宮ハルヒをセントラルタワーにおびき出すこと。 この計画を伝えれば彼女のことです、きっと首をつっこむはずです。」 「しかし『トゥモロー』。彼女を呼び出す必要はどこに?」 『スネーク』が疑問を呈した。それに『トゥモロー』は、不敵な笑みを浮かべながら答えた。 「彼女がいないと意味ないんですよ……」 谷口が電波なことを言った翌日、俺とハルヒは部室で古泉、長門、朝比奈さんに昨日あったことを伝えた。 「ふぇ~、まさかそんなことがあるんですかぁ~?」 「もし本当なら、これは問題ですね……」 「……。」 古泉の言う通りだ。冗談にしちゃタチが悪すぎるぜ。 「というわけでみんな!当日はそこに乗り込んで、計画を阻止するわよ!!」 「ひぇ~、で、でも危なくないですかぁ?」 「何言ってるのみくるちゃん!私達がやらないで誰がやるのよ!!」 警察の人とかに任せればいいんじゃないか? 「何言ってるの!警察に言ったって信じてもらえるわけないでしょ! 私達がやらなきゃ!」 「あのなあハルヒ。最近ではネットにウソの爆破予告があったって警察は動くんだぞ。 事情を説明すればきっと……」 「私も彼女と同意見。」 「……長門?」 長門の意外な発言に驚く俺。 長門なら、警察も動いてくれることぐらい知っているはずだが…… 「ほらね!有希もこう言ってるのよ!当日はいつもの場所に集合! その後みんなでセントラルタワーに乗りこむわ!」 やれやれ……どうやら俺達がやることに決定しちまったらしい。 まあいざとなったら長門がいるし、大丈夫だとは思うが……。 帰り道、俺は長門と古泉と一緒に歩いていた。ハルヒと朝比奈さんは別の方向だから道は別だ。 さて……ハルヒもいなくなったことだし、ハルヒの前じゃ聞けないことを聞くとするか。 「古泉、今回の件についてどう思う?」 「さて、僕はなんとも……ただ、『機関』でそういう動きが無いことだけははっきり言えます。」 「なるほど。つまり今回は『機関』は関係無いということか。」 「いえ、そうとも言い切れません。」 ん?どういうことだ。機関では動きが無いんじゃなかったのか? 「それはあくまで『機関』全体としての動きです。個人の行動までについては把握できていません。」 「つまり『機関』の人間もその……「しっと団」とやらのメンバーの可能性があるってワケか。」 「ええ。もちろん、あくまで可能性としての話ですけどね。」 可能性であってほしいね。『機関』の連中はなんというか、べらぼーに強そうだからな。 「長門は、どう考えてる?」 少し気になることがあった。先程の長門の態度だ。 警察に相談することを止めたのには何か理由があるのだろうか? 「……先程から「しっと団」という組織に関して情報探索を行っている。」 「マジか。それで何か分かったか?」 「無理。何物かによって情報プロテクトがかけられている。」 「つまり長門さんの力による介入を、何物かがブロックしているということですか?」 「そう。そしてそのようなことが出来る存在は限られている。 私と同じように、情報統合思念体と繋がりのある存在……」 「ってことは、長門と同じ対有機なんちゃらが「しっと団」にいるってことか?」 「そう。」 おいおい……冗談じゃねぇぞ。 さっきは長門がいるから大丈夫だと思ったが……こりゃそう安心も出来ないんじゃないのか? 「大丈夫。私が守る。」 頼もしいぜ長門。 「ふふ、それは無理というものだよ。」 ん?誰の声だ。聞き覚えがあるよな無いような…… とそこで、前方から歩いてくる男の存在を確認した。お前は……! 「生徒会長!」 「これは奇遇ですね。こんなところで会うとは。」 古泉があいさつをする。しかし会長は鼻で笑い流した 「とぼけるのはよしてもらおうか。貴様らが計画を阻止しようとしていることは知っている。 そして今の俺は生徒会長ではない。「しっと団」メンバー、コードネーム『フォックス』だ。」 ……またコードネームか。頭が痛くなる。 「『トゥモロー』は涼宮ハルヒがセントラルタワーに来ることを望んでいる。 だから今は始末することは出来ない。忌々しいことだがね。 だが貴様らは別だ。この場で始末してやろう!」 おいおい、まさかこんな街中でバトルするつもりじゃないだろうな! 通行人だっているんだぜ!? 「大丈夫。情報操作は得意。」 そうかい。そりゃ安心だね。別の意味で不安だがなっ! 「まずは貴様からだ!古泉一樹! 知ってるぞ!貴様最近、そこのヒューマノイドインターフェイスといちゃいちゃしてるらしいな!」 「おや、ご存知でしたか。」 「忌々しい!喜緑君は私がいくらアピールしてもまったくなびいてくれないというのに! 何故貴様だけ……!!」 うっわあ……流石は「しっと団」。全身から負け組のオーラがこれでもかと言うくらい出ている…… 「それはあなたの魅力が足りないのでは?」 「黙れ!そもそも身分をわきまえろ!宇宙人なんかと付き合ってどうする!」 言いたい放題だな……って長門さん?何をしているのですか? 長門「…@@@@@@」 とその時であった!会長が古泉に攻撃をしかける! 古泉はとっさに右手で防御し……防御したら 「うわあああああ!!!」 会長が遥か彼方へ飛んでった。……なんだこれ。 「………」 古泉も口をあけたまま呆然としている。珍しい表情だな。 長門「……古泉一樹の右腕をブースト変換、ホーミングモードにした。」 つまりアレか。野球大会の時のバットと同じようになったってわけか。古泉の右腕が。 しかしそこまでせんでもよかったような気もするが…… 「問題無い。それに、私と古泉一樹の関係をとやかく言われたくは無かった。」 なるほど、宇宙人と付き合ってどうするとか言われたのに腹が立ったってワケか。お熱いことで。 長門を怒らせるのはマズいってことがよーく分かった。 「と、とにかく、これで「しっと団」は残り3名ということですね。」 ようやく落ち付きを取り戻した古泉がそう言った。顔が若干赤いのは見逃してやる。 さて、クリスマスイブは2日後だ。いよいよ「しっと団」との決戦が始まる! ……って煽り文句をつけてみても、なーんかカッコつかないな。やれやれ…… 続く!
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「いらっしゃいませ~、はい。チーズケーキですね。1200円になりまーす」 こんばんは。朝比奈みくるです。え?今何をしているのかって? 見ての通りアルバイトですよ。ケーキ屋さんでアルバイトです。 今ケーキ屋さんは大忙し!なんたって今日はクリスマス・イヴですからね! クリスマスイヴと言えば……思い出すのは去年のこと。同じ1人身の同士を集ってSOS団に闘いを挑みました。そう、「しっと団」として。 あれから何度かちょっかい出したり対決したりしましたが、全て失敗。今年の3月に解散しました。 そして私は今……浪人生。未来から指示されていた大学に受かることが出来なかったためです。 まあそりゃそうですよね。大事な受験の時期にあんなことしまくってたらそりゃ落ちるってもんです。 場合によっては未来から手を回して(裏金的な意味で)入れてくれたりもするんですが、私の場合は浪人を命令されました。 まあそりゃそうですよね、最後の方は未来からの指示とか無視しまくって暴走してましたからね。 でも私は後悔などしていませんよ。あの時の私は間違いなく人生で1番輝いていましたし、そのおかげで今は1人身に悟りを開いて、穏やかな毎日を過ごしています。 もう決して嫉妬などはしません。本当ですよ? 「いらっしゃいませ~……あ。」 「あ、朝比奈さんじゃないですか。お久しぶりです。」 店に入ってきたのは国木田君でした。隣に居るのは……あれ?どこかで見覚えが…… 「お久しぶりなのね、朝比奈さん。」 思い出した!この人は確か……阪中さん!ルソーの事件の時にご一緒したキョン君のクラスメイトの方です。 今でもそうなのかは知りませんが…… でも……クリスマスイヴに二人でこんなケーキ屋に入ってくることから考えると…… 「お久しぶりです。あの、もしかしてお二人は……」 「ええ、恋人同士です。今年の春頃から。」 はい出た。また私を差し置いて1カップル成立ですよ!ま、まあ脇役同士お似合いなんじゃないですか? その後二人はいちゃいちゃしながらケーキを買って帰りました。まあ悟りを開いた私はまったく心乱されませんでしたけどね!ほ、本当ですよ? しかしさらに私に精神攻撃をしかけてきた人がいました。 「おーっす、みくる~!」 「あ、鶴屋さん。」 鶴屋さんです。県内トップレベルの大学に合格して、今はキャンパスライフをエンジョイしています。 それでも浪人生の私とも時々会ってくれます。とてもありがたいです。 しかし…… 「そのケーキ1つ貰うっさ!」 その……隣にいる人は…… 「おいおい、1番高いヤツじゃないか。」 「構わないっさ!こういうのは豪華な方が雰囲気出るっさ!」 コ、コ、コ…… 「まったく、君らしいね。」 コンピ研部長!? 「あああありがとうござざざいます。あああの、ももももしかして二人はつつつつ……」 「うん!実は同じ大学でねっ!夏頃から付き合っているっさ!なかなか面白い人だよ!」 「いやはや、長いこと二次元しか見ていなかったが、三次元も良いものだね……」 私はいちゃいちゃする二人を、呆然と眺めるしかありませんでした…… ~~~~ 午後8時、バイトも終えた帰り道。私は一人悶々とした気持ちを抱えていました。 まあ国木田×阪中は許しますよ。ええ。脇役同士で出番少ないとは言え、割とよく見かけるカップルですしね。 でも!でもコンピ研部長×鶴屋は無いでしょう!!それは流石に!どう考えても需要が存在しません!! お、落ち付け。落ち付けみくる!落ちついてこのシリーズで成立したカップルを数えるんだ! ハルヒ×キョン、長門×古泉、会長×喜緑、谷口×朝倉、新川×森、国木田×阪中、鶴屋×コンピ研部長…… 私思うんですけど、男と女が居たらとりあえずカップルにしよう的な流れって良くないと思うんですよね! トランプの神経衰弱じゃないんだから!別にカップルにならなくたって……カップルにならなくたって! 「あ、あの~、朝比奈さん……」 私は1人身です!だけど生きている!生きているんだぁぁ!! 「あ、朝比奈さ~ん……」 ……あれ?私が悶々とした思考をしているうちに、誰かに声をかけられていたようです。 振り向くとそこにあったのは……ツインテール。この人は確か…… 「橘さん、でしたっけ?」 「覚えていてくれて光栄なのです。」 そりゃ覚えてますとも!この私を誘拐した人ですからね!と私は警戒心を強めました。 「あっ、そんなに警戒しないでください。もうあんなことはしませんから。」 「はぁ……それで、私に何か用ですか?」 「ええ。お願いがあるんです。これは機関とかじゃなく、私個人として…… そして、しっと団の団長を務めたあなたへのお願いなのです!」 「ちょ、ちょっと待ってください!なんであなたがそのことを!?」 「藤原君が教えてくれました。未来では結構有名みたいですよ?」 あのパンジー野郎め!っていうか、未来で有名!?どうしましょう、未来に帰れないですよ……恥ずかしくて。 「それでそのパンジー君は今どうしているんですか?」 「彼ですか?九曜さんとラブラブデート中なのです。」 あのヘタレパンジー野郎!!ああ、またカップルが1組増えましたね…… パンジーのくせに生意気な…… 「でも、今回はそっちはどうでもいいんです!問題なのは佐々木さんで……」 「佐々木さんも誰かと付き合ってたり?」 「はい……」 「でも、多分主要な男キャラはほとんどカップルにされちゃったと思うんですけど…… あとはもう多丸兄弟ぐらいしか……あ、でもあれはあれでカップルかな……」 「何を言ってるのかさっぱりわかりませんが……佐々木さんが付き合ってるのは、キョン君です。」 はい? 「い、今なんと……」 「だから、キョン君と付き合っているらしいんです。」 「でもキョン君は涼宮さんとうざったいぐらいラブラブですよ?」 「ええ。ですからキョン君は、涼宮さんと付き合いつつ佐々木さんとも付き合っているらしいんですよ。」 な……なななな 何をやっているんですかキョン君!!あなたいつの間にそんな女たらしに!! 「この件については佐々木さん自身から話を聞いた方がいいと思います。実は近くの喫茶店に来てもらっているのです。……来てくれますか?」 「分かりました。とりあえず詳しい話を聞かないと……私もまだ少し混乱していますし。」 ~~~~~~~~~ そして私は橘さんに連れられて、近くの喫茶店へとやってきました。 そこには既に、キョン君の中学時代の同級生……つまり佐々木さんが居ました。 「やあ、朝比奈さん、だったっけ。久しぶりだね。」 「お久しぶりです、佐々木さん。それでいきなりですが……キョン君と……」 「うん、お付合いさせて貰っているよ。」 や、やっぱりそうなんだ…… 「でも、キョン君は涼宮さんと付き合っているはずですけど?」 「ああ。知ってるよ。だからこそ燃えるのさ!不倫というのもなかなかいいものだよ。」 佐々木さんはうっとりとした目でそう呟きました。ダメだこの人、完全にこの状況に酔っている…… 私が呆然としていると、隣に居た橘さんが叫び出しました。 「それじゃあダメなのです!佐々木さん、それでも男ですか!」 「いや、女だけども……」 「言葉のあやです!いいですか佐々木さん、このままこの状態を続けてても、最終的にはキョン君は涼宮さんを選びますよ!?」 「う……し、しかし」 「しかしもお菓子もありません!そして涼宮さんはキョン君と結婚して幸せな家庭を築いて、あなたは影でそれを羨むだけ! ドラマで言うと完全に悪女のポジションですよ!?」 「だ、だけどどうしようもないじゃないか。彼女の方が先に付き合っていたのだから……」 「とにかくこの現状を変えるしかありません!そのためにその手のエキスパートである朝比奈さんを呼んできたんですから!」 え……ええ~……? なんか私が変なエキスパートになっちゃってるんですけど…… 「そうだね……略奪愛と言うのも悪くはないね。ここは1つ、朝比奈さんに全てを任せてみてもいいかもしれない。」 なんか私が全部任せられる流れになってるんですけど!困りますよ! ていうかこの人はなんでそういうシチュエーションが大好きなんでしょうかね!不倫だとか略奪愛だとか…… 齢18にして物凄く捻くれてますよ。 まあでも……私としてもこのままキョン君の横暴を許すわけにはいきません。 何よりも、先程の出来事や今聞いた事実を知ったことで、久しぶりに燃えあがってきました…… そう、「しっと」の心が!! 「……いいでしょう!協力します。というか私について来てください! あなた達二人の「しっと団」への加入を認めます!」 「やったー!よろしくなのです!」 「ふふ、面白くなってきたね。」 歓喜の声をあげる橘さんと含み笑いをする佐々木さん。 さて、じゃあまず最初にすることは…… 「入ったからには、これからはコードネームで呼び合います。これはしっと団始まって以来の伝統です。 ちなみに私は『トゥモロー』。これからは朝比奈みくるでなくこの名で呼んでください。」 「はい!『トゥモロー』!」 「了解したよ、『トゥモロー』。」 そう、コードネーム決めです。 橘さんはあっさり思いつきました。この人、なんか雰囲気とかウサギっぽいんですよね。だから…… 「橘さん!あなたは『ラビット』です!」 「わあ、かわいい!ありがとうございます!」 で、問題なのは佐々木さんです。この人は雰囲気的にはキツネなんですよね。 しかし「フォックス」は既に他の元団員に使ってしまいました。 ええ、第二回ですぐに抜けて全然印象に残っていないであろう、生徒会長です。 ということで動物的なものは諦めます。あとは……イメージですね。 佐々木さんのイメージ……うんちく……哲学……哲学者といえば…… 「さ、佐々木さんのコードネームは……ソ、『ソクラテス』です!」 ……………… 空気が、凍りました。 橘さんを見ると、見るからに「ええ~……?」って感じで引いています。 佐々木さんはうつむいてプルプルしてらっしゃいます。うわあ、こりゃ怒らせましたかね…… 「や、やっぱりダメですよね、変えますからそんなに怒らないで……」 「いや、怒っていないよ……」 「え?でも先程からプルプルと……」 「違うよ……これは……歓喜の震えさ!!」 顔を上げた佐々木さん。その顔は、とても輝いていました。そう、親にプレゼントを貰った、子供のように……! 「『ソクラテス』……なんて知的な響きなんだ!こんなコードネームを僕にくれたことに感謝するよ! このようなコードネームを貰ったからには、『トゥモロー』に忠心するしかないね!橘さん!!」 「え!?あ、そ、そうですね……」 急に話を振られてしどろもどろに答える橘さん。その顔は完全に苦笑いです。 いやはやまさか、『ソクラテス』と名付けられてここまで喜ぶ女子高生がいるとは思いませんでした。 なんというか、最初はまともな人かと思いましたが、この人も結構アレですね…… 「よ、喜んでくれたみたいで何よりです。とりあえずあの二人は絶対デートをしているはずです。 その現場に行くことが出来れば、デートの邪魔も出来るし不倫関係にケリをつけることが出来ます。 問題は、あの二人がどこでデートをしているか……心当たりはありますか?」 「うーん、僕には検討がつかないよ。僕もクリスマス、恋人と過ごすなんてことはしたことが無いからね……」 頭を悩ます私と『ソクラテス』。そりゃモテない女二人が知恵を振り絞ったところで分かるはずがありません。 私にとってデートなんて「なにそれ?おいしいの?」って感じでしたからね。 う~~~~~~~ん…… 「セントラルタワーです!」 ……!?『ラビット』は、力強く宣言しました。その顔には自信に満ち溢れています。 セントラルタワー……それは恋人達の聖地と呼ばれている場所です。特にクリスマスには力を入れています。 そして去年のクリスマス、そこで涼宮さんカポーと長門さんカポー相手に死闘を繰り広げました。無様に負けましたけどね…… 「な、何故そう言いきれるんですか?」 「そうだね。確かにセントラルタワーは恋人達の聖地だ。かと言って彼らがそこに行くとも限らないだろう。 特に涼宮さんと普遍的なことを嫌う傾向があるからね。」 「大丈夫です!私が直接聞きましたから!」 「え?会ったんですか?」 「いえ、盗み聞きしました!お忘れですか?私だって『組織』の一員なのです!彼らをつけるぐらい朝飯前です!」 ああ、そう言えば…… でもなんとなくこの人、『組織』って感じがしないんですよね。古泉くんや新川さんと比べると、格が落ちるというかなんというか…… 「ちょっと『トゥモロー』!今何か失礼なこと考えましたね!」 「い、いえとんでもない!流石『組織』の人は違うなあと思って感動してたんですよ!」 「お手柄だよ。たちば……いや『ラビット』。でも涼宮さん達にしてはありきたりな気がするなあ。」 「なんでも、『去年は変な軍団に邪魔されたからね!今年こそ純粋に楽しみましょ!』『そうだな、今年は純粋にハルヒと二人きりで過ごしたいね。』『バカ……』だそうで……」 「変な軍団とはなんですか!!」 「何が二人きりだ!!!」 私と『ソクラテス』は同時に『ラビット』につめよりました。『ソクラテス』は物凄く恐ろしい形相です。そして私も…… 「ひえええ!!お、落ちついてください!言ったのはあの二人ですから!私じゃないですからぁ~!!」 「はっ!……すいません『ラビット』。つい……」 「僕としたことが取り乱してしまったようだね。」 『ラビット』は半べそをかいています。そんなに怖かったんですかね?大げさだなあ。 まあなんにせよ、今のを聞いて私の嫉妬パワーはもはや限界値を超えようとしています。 久々に見せてあげますよ……「しっと団」の力を……!ふふふ……ふふふ……ふふふのふ……!! 後編に続く