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俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件 重要人物 コメント 七月隆文による日本のライトノベル。イラストは閏月戈。 2011年より、一迅社文庫(一迅社)より刊行されている。『月刊Comic REX』2012年7月号から、作画りすまいによる漫画版が連載されている。2013年2月20日発売の小説第5巻特装版ではドラマCD化された。 重要人物 ドレディア:有栖川 麗子 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前へ 「阻止……だね」 「阻止……なんだよね?」 「阻止……です」 「私は興味「本当にあるの?」 「す、少しだけ。怖いもの見たさ?」 5人が見つめるその先には小柄な人物が一人。 別に怪しい人物ではない。私達は勿論の事、全校生徒が知っている人物。 “生徒会副会長・清水佐紀” えっ? 何で見つめる必要があるのかって? 彼女が今いる場所と行動が問題なの。 場所は家庭科室。ブタのキャラクターがプリントされたエプロンに身を包んだ彼女は…… バレンタイン用のチョコを作成していた。 ◇ ◇ ◇ 「好きこそ物の上手なれ……だったら良かったんだけどね」 「佐紀ちゃんの場合は下手の横好きなんです。とゆいたい」 「でもさでもさ、本当にそのヤバ……美味しくないの?」 「被服はそこそこの成績だけど調理で成績をガクッと落とすから先生も困ってるとの情報 だカンナ」 「みぃたんに清水先輩の作ったオムライスを『从・ゥ・从<ガーッ!』されて気絶した事 あるけど?」 「ごめん。凄く納得出来たよ、なっきぃ」 あの時はさすがのみぃたんも本気でヤバイと思ったらしくそれから一週間は気味が悪い位 優しかった。 「っていうか茉麻が手伝ってくればいいんじゃないの?」 「言ったんですけど「一人で作るから!」って意地でも譲らなくて」 「阻止するボーダーラインの基準は?」 「出来れば私達も被害に遇わない方向で。最低ボーダーはお嬢様」 「でもお嬢様、炒飯……食べてるんだよね」 「一口食べたら泣き出したから強制終了させたらしいよ」 「あっ! チョコを溶かすみたいだよ」 「って刻みもせずに鍋に直接なの!?」 「傍らに本を置いてる意味無いよね」 「みぃたん! 何か策は無いの?!」 「う~ん。出来たチョコを佐紀につまみ食いさせるとか?」 「愚策じゃないですか?」 「清水先輩のチョコと同じチョコを私達が作るのはどう?」 「「「「えっ?」」」」 「だから包装紙も同じのを使って見た目も全く同じチョコを作って…」 「成る程。それだったら清水先輩に自然に返せるわけか」 「でも全員が全員同じだとさすがにバレると思うんだけど」 「ん~~。どうし「あれ? そんな所に座り込んで何してるの?」 「「「「「!?」」」」」 頭上から声が聞こえて思わず振り返った。其処にはにこにこ顔の清水先輩が立っている。 ……しくじった。あまりにも作戦会議に夢中になり過ぎて監視を怠っていた。しかも咄嗟 の言い訳が出てこないし。 「え…いや…あの~」 「まぁいいや。ねぇ時間ある? 試食していかない?」 “試食” その言葉に5人が顔を見合わせる。それが何を意味しているのか分かってる私達。 頷き合って出た返事は…… 「「「「「戴ける分だけで十分ですッ!!」」」」」 「あ、そう……」 心底残念そうにしている清水先輩を残して私達はその場を後にした。 誰も何も言わないまま須藤先輩と別れ寮に着いてからもお嬢様に声を掛けられるまで4人 共そのままだった。 ……ミッション失敗。果たしてどんな結果が待っているんだろう。 運命は全て清水先輩のチョコに懸かっている。 川´・_・リ<あのあと結局一人で全部食べちゃったから市販のだけど 从*・ゥ・从ノソ*^ o゚)从o゚ー゚从州´・ v・)ノk|‘-‘)<(神様がいたッ! ありがとう神様ッ!!) 次へ TOP
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前へ 街のあちこちに貼ってある、学園祭の立て看板。いよいよ近づいてきた。 今まであの学園の学祭には行ったことがなかったけれど、今年は是非行ってみるつもり。結構賑やかな学園祭と聞いてるので、いろいろ楽しみにしている。 舞ちゃんにも会えるといいなあ。 朝の通学時間、学園の生徒さん達が通っていく。 気付いたんだけど、最近学園の生徒さん達は妙に化粧が濃かったり制服を着崩してる生徒が多くないだろうか。あれはいったい、どうしちゃったんだろう。 化粧が濃いっていうか塗りたくってるような、何だあれは。あんな変な化粧してる生徒ウチの学校では見たこと無いんだけど、あれが今の女子校の流行なのだろうか・・・ そんな事を考察していたら、向こうから舞ちゃんが歩いてきたのだ。 舞ちゃんは変な化粧などしていなかったので、ちょっと安心した。 今日はお一人で登校ですか。 そんな舞ちゃんが珍しく僕を見てくれた。いや、見てくれたというより睨みつけられたように見えた。 なんでそんな怖い表情なんですか・・・ まさか、この間お嬢様と会ってお話ししてたことを見抜かれてるんじゃないか・・・ 思わず目をそらしてしまった。 何やってんだ自分!! それじゃ、まるで後ろめたいことがあるみたいじゃないか。 たぶん、彼女は特別な意味があって睨みつけてきたというわけでなく、ただ無表情で僕を見ただけにすぎないんだと思う。 それを睨みつけられたと思ってしまうのは、僕自身の心にやましいと思う気持ちがあるからだろう。 せっかく舞ちゃんが僕を見てくれたというのに、僕自身の問題に起因する自分のリアクションに少し気分が凹んだ。舞ちゃん、ごめんなさい。 そう思いながら舞ちゃんにそっと視線を戻すと、舞ちゃんは少しニヤリと笑ったように見えた。そう見えたのは、気のせいだったのだろうか。 彼女の前では絶対に嘘とかつけないんだろうな。全てを見抜かれるような気がする。 舞ちゃんが行ってしまった後、僕も学校に向かうことにした。 こんな調子では、お嬢様にはあっさりと見抜かれた僕の思いが舞ちゃんに届く日なんてやってくるのだろうか。 歩きながら、とりとめもなくいろいろ考える。 そのうち、それがだんだん妄想に変わっていく。 「こっそりちしゃとと密会とはいい度胸してましゅね」 「そんな・・・違うよ、舞ちゃん」 「何が違うんでしゅか。ちしゃとに手を出したりしてタダですむとでも思ってるんでしゅか」 「手を出すだなんてそんな・・・僕が好きなのは舞ちゃん、君なのに」 「あら、そうなんですか? じゃあ千聖のことはどう思っているの?」 「お、おじょじょ・・・」 そんな妄想劇場を脳内でくりひろげていたら、横断歩道でまた車に轢かれるところだった。 突然、後ろからぐいっと背負っていたカバンを引っ張られた。 目の前数十センチのところを、車が結構なスピードで通り過ぎていく。 助かった。カバンを引っ張られなければ完全に轢かれていた。 「ちゃんと信号を守らないと危ないですよ」 振り向くと、そこにはモデルさんかと見紛うような派手な美人が立っていた。 舞ちゃんたち、特にお姉ちゃんとよく一緒に歩いている上級生だ。ありがとう、あなたは命の恩人です。 そしてその横にもう一人、この子はこのあいだも図書館で見かけた子。えっと、栞菜ちゃん。 ちょっと緊張したような顔で僕のことを見ているけど、この間のことがあるからなのかなあ・・・。 「ありがとうございました。おかげで助かりました」 「いいえ、どういたしまして。ところで、どこかでお会いしたことありましたか?」 「!??」 質問の意味がわかりかねる。そういえば、いつかの朝に僕のことを見ていたことを指してるんだろうか。その時に限らず、朝の通学の時に見かけはするが「会った」というのとはちょっと違うのでは。 そもそも、彼女はどういう意図でもってこの質問をしたんだろう。 だから、答えあぐねてしまった。 「えりかちゃん、遅れちゃうよ」 遠慮がちに栞菜ちゃんが言う。その表情はやはり心なしか眉が寄っているような。 「そうだね。行こうか。じゃあ歩く時は気をつけてくださいね」 「は、はいっ」 栞菜ちゃんからえりかちゃんと呼ばれた美人の上級生。 スタイルのいい長身、ラフな制服の着こなし。ちょっと派手めのメイクに、艶やかな長い髪。 高校生離れ、というか日本人離れしているビジュアルだ。こんな美しい人がこの世に存在するんだなと思うぐらい。 それは、お姉ちゃんとはまた全く違うタイプの美しさだった。 見た目の格好良さだけでなくて、包み込んでくれるようなやさしさも感じられて、こういう人には憧れるなあ。 えりかさん、か。綺麗なお姉さまは大好きです。 「えりかちゃん、あのさ、今の男の子のこと知ってるの?」 「どこかで見たことあるなと思って。通学の途中でたまに見かける」 「そうなんだ・・・それは気付かなかった。いまの子のことなんだよ、このあいだ相談したの」 「えっ!? そうなの? ふーん、なるほどね」 「なるほどって何が?えりかちゃん」 「どうして朝よく見かけるのか分かったってこと。うん、栞菜の話しとつながった」 「それでね、あの子に嘘ついちゃったってことがやっぱり気になって。」 「このあいだも言ったじゃん。そんなの全然気にすること無いって。しかし、舞ちゃんにねぇ、何度聞いてもそれ面白いね。ムフフ、うん、実に面白い。ムフフフフ」 ツボに入ってしまったのか笑い出したえりかちゃんを見ていたら、なんだか安心した。 やっぱりえりかちゃんは私のお姉ちゃん。とっても頼りにしてる。 次へ TOP 作者の備忘録 この時点での生徒さん達の面識 リl|*´∀`l|<朝たまに見かけるのはそういうことですかククク 从・ゥ・从<その子からプレゼント貰った ・・・ってことは ノソ*^ o゚)<ん~ 全然そんな男子知らないし~ みたいな ははっ ---- ---- 州´・ v ・)<?? でも、どこかで見たことがあったような・・・ リ*・一・リ<その方は舞の事をお慕いしていらっしゃるのよ(キリッ (o・ⅴ・)<ちしゃとのこと舐めるように見やがって この(自主規制)が! ノk|‘-‘)<舞ちゃんのこと聞かれたけどとぼけておいたかんな 川*^∇^)||<??
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前へ 「まぁいい 。それよりも今は・・・・・」 「・・・・・な、なんだよぉ?」 「今はオメーのその女好きの性癖について議論しようじゃないか」 「性癖って・・・・・ いや、その前に女好きとか言うな! 違うだろ!!」 「まーたまたぁw じゃあ具体例をあげてやるかんな。最近のお気に入りはさ、梨沙子ちゃんなんでしょ?かなり気になってるみたいじゃん」 「な、な、な、なんで知ってるんだよ!!」 「あ、やっぱり。自爆するとか本当に分かりやすい男だかんな。単純すぎてこの私としては張り合いがないったら」 「なんだよ!カマをかけてきたのかよ!! ひどいじゃないか・・・僕の純情な男心を弄んで・・・・」 愉快そうな栞菜ちゃん。 いいけどさ。僕はこういう扱いには慣れてるから。泣いてなんかいないし。 「りーちゃんのことも好きになっちゃった?」 「そんなんじゃないよ!! 僕が“好き”って言葉を使うのは舞ちゃんにだけだから!!」 「分かったってw そこはそういうことにしておいてあげるから、そんなムキにならないで、もっとざっくばらんに話そうぜ」 「男ってさ、好きな子がいるのに、他のカワイイ子のことも見ちゃうってのはさ、それはしょうがないことだかんな。うん、そこは分かるから」 「本当によく分かってる感じだよね・・・・ 栞菜ちゃんってさ、本当は女の子じゃないんじゃ・・・・・」 「はーん? なに言ってるんだか。こんな美少女に向かって」 冗談はさておき、いま栞菜ちゃんが言ったことは、まさしく真理をついていると思うんだ。 僕が内心いつも思っていることを彼女は代わりに言ってくれたわけで。 「確かに栞ちゃんの言うとおり、なのかもしれない、真面目な話し。 ・・・・・うん、そうなんだよね。僕が一番想ってるのは、もちろん舞ちゃんのことなんだ。でも・・・」 「でも?」 「でも、梨沙子ちゃんって本当にカワイイなあ・・・なんてw」 「ニヤケてるぞ。気持ち悪い顔を見せるなよ」 「そっか。りーちゃん、ね。やっぱり男ってああいう子が好きなんだかんな。だからあのツバサもいっちょまえに・・・・」 「え? なんだって?」 「いや、こっちのこと。でもまぁ分かるよ。りーちゃんは本当にカワイイもんな。お人形さんみたいで」 「だよね!! ウチの学校にはあんなリアルお人形さんみたいな子はいないもん。そんな超絶カワイイ梨沙子ちゃんだよ。近くに来たら、そりゃ見とれちゃうって」 「力説乙。さすがりーちゃん大人気だね。やっぱり男子はああいうふわっふわでふよんふよんの感じのするボディがいいんだかんな(出典=メンカン)」 「・・・・・そういういやらしい言い方はしないでくれる? 僕はあなたのそんなのとは視点が違うから!」 「でも、本当のことだかんな。知ってる? りーちゃんの脇腹とか、それはもう至高の触り心地なんだかんな」 「!!!!」 「ほら興味あるんじゃん。オメー本当に分かり易すぎだよ」 「そんな梨沙子ちゃんはツバサに目を付けられちゃったからなあ・・・」 「ツバサって、お嬢様の弟の、あの空翼くん?」 「そうだよ。あのツバサだよ」 「ムフフ。そうかー。梨沙子ちゃんのことが相変わらず好きなのか。意外と一途なんだな。かわいいじゃないかつばさw」 「そんな微笑ましいもんじゃないかもよ。あいつ、なんでも自分の思い通りに行くと思ってるお坊ちゃんだから。 初めての感情に思いつめたツバサの奴が欲望のままにりーちゃんに・・・・考えるだけでも恐ろしい・・・ヒイィィィ」 あなたのその思考の方がよっぽど恐ろしいよ。 「相手は岡井家の長男。つまり、あの財力がついてるってこと。オメーは顔からして相当なハンディなのに、とてもツバサには勝てねーだろ」 「顔のことはほっとけよ・・・ いや、別に僕は梨沙子ちゃんに対して、つばさくんみたいな感情は抱いてないから。だからまぁ、それは僕には関係の無いことだし」 「そんなのんびりしたこと言ってていいのかな。あいつ結構本気だぞ。梨沙子ちゃんが空翼の餌食になってもいいの?」 餌食、とか言うなよ・・・・・ いちいち表現の下品な人だ。 でも、栞菜ちゃんのチョイスした言葉の響きもあって、僕はなんとなくモヤモヤとした気持ちが湧き上がってきたんだ。 いつだって僕に上から目線のあの偉そうな態度のツバサが梨沙子ちゃんといい関係になったりするかもしれないなんて、それはなんとなく腹立たしくて悔しい気持ちがする。 そう、悔しくなってくるんだ!! だって、金持ちで美少年のお坊ちゃま。 か、完璧じゃないか!! その最強の立場であの梨沙子ちゃんに言い寄る(!)なんて、そんなのずるいじゃないかよ!! まず何といっても千聖お嬢様似のあの外見。あれは反則といってもいいだろ。 見た目はそんなかわいらしい男子中学生なんだ。それって、ひょっとして梨沙子ちゃんの母性本能をくすぐったりするんじゃ・・・・ その上、超絶お金持ち。 小遣いなんか中学生の分際で凄いことになってるんだろうな。それこそ湯水のような感覚で金を使いまくってるに違いない。 そのように、まず外面を利用して梨沙子ちゃんを油断させておいてから、次にカネの力で・・・ うわあぁぁ・・・!! りーちゃん!! 「あのボンボン・・・・ 金の力で梨沙子ちゃんを無理矢理・・・・ そんなの、絶対に許さない・・・」 「そうだ、そうだ。奴の好き勝手にさせちゃダメだかんな」 「あ、でも、梨沙子ちゃんはしっかりしてるし心配ないような気もするけど。僕らがそんな勝手に先走るのもどうかと・・・」 「分かってないなー。世の中、金を持ってる奴が一番強いんだよ。カネの力にかなうものなんか無いんだから」 「そんな夢のないことを言わないでよ! 男は、ココだから!!!」 そういって、握りこぶしで自分の左胸をたたく。 そんな僕のことを有原さんは半笑いの生ぬる~い表情で見ていた。 「漢だねぇ。カッコいい!! そうだよ、大切なのはハートだよ。金持ちの横暴を阻止できるのは、オメーしかいないかんな!頑張れ!」 「よーし、そんな横暴は僕が絶対阻止してやる。梨沙子ちゃんを守るんだ。軍団の仲間として(僕は舎弟部門だけど)」 「おー、その意気だよ。徹底的に闘うべきだかんな!グヒョヒョヒョ」 (これは面白いw アホな男子を炊きつけて、それを高みの見物と洒落込むことにするかんなww) 「何か言った?」 「いーや、何も? しっかし、りーちゃんはホント人気あるね。でもまぁ、分かるよ。梨沙子ちゃんは確かにカワイイ。この私でもそう思うかんな」 うんうん、と頷く有原さん。 「しっかし、結局りーちゃんのこともそれなりに意識してるってことがよーく分かったかんな」 「だから!それ違う。何度も言わせるなよ。そんなんじゃないんだって。だいたい今のは栞菜ちゃんの誘導尋問に引っかかったようなもんじゃないか!」 「引っかかるってことは、つまりそういうことだかんな。さすが女好き。本当にオメーは手当たり次第なんだな。気になる子の姿を見つけてはすぐに手を出したりして」 「手を出したりなんかしたことないでしょ! 講習帰りの時のなかさきちゃんだって偶然会って話しをしただけだ。それ以外何もしていない!!」 「誰もなっきぃのことなんか言ってないかんなw でも、反論するのはそっちのことなんだねww “女好き”に関してはついに否定するのやめたんだw そりゃ、もうバレバレだもんなww」 心の底から愉快そうな表情の有原さん。 この人とこれ以上議論しても時間を無駄にするだけだ。 だから彼女の言うことに、もういちいち真面目に反論するのはやめた。 それにしても、何かにつけては僕を挑発してきたりして、、この℃・・・ 「おい、誰に向かって言ってるんだよ。℃変態とか、何だその表現は」 「な、、まだ何も言ったりしてないじゃないですか・・・・」 「まったく・・・ 男ってやつはホント多情なんだから。次は誰に目を付けたりするのかね。愛理かな」 「愛理ちゃんだなんて! そ、そんな恐れ多い・・・ じゃなくて! 違うから!! ぼ、僕はいつだって舞ちゃんしか見ていない!!」 嘘。 もちろん、僕がいつも見ているのは舞ちゃんだ。 でも、お嬢様はじめ寮生の人たちや他の人たちのことも、僕はしっかり視界に捉えてたりしちゃってるんだ。 さっきから栞菜ちゃんに指摘されていることは、実は当たらずといえども遠からずなことで。その自覚はあるんだ。 でも、だって、それは学園の生徒さんたちは本当にカワイイ子が多いんだから・・・・ それでも、それでも僕が一番に想ってるのはもちろん舞ちゃんで・・・・ 「本当だって! いつだって僕が見ているのは舞ちゃn 「まぁ、いい」 興奮して抗議する僕のセリフを遮るようにして、真顔を向けてきた有原さん。 それはドキッとするほどの美人顔だった。思わず息を飲んだ。 でも、急にそんな顔で見られると、ちょっと怖い。 「そんなことはどうでもいいんだよ。ちょっと遊びすぎた。ようやく本題に入るとするかんな」 「本題?」 「そう、本題はここからなんだかんな」 この狭い路地裏、栞菜ちゃんが声をひそめて僕に話しかけてくる。 そんな彼女が言ったことは、僕の気持ちを180度ひっくり返すぐらいの衝撃的な言葉だった。 「オメーちょっと聞くけど、萩原の写真欲しくない?」 次へ TOP
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今日 - 合計 - 銀河お嬢様伝説ユナMika Akitaka Illust Works2の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時22分30秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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前へ あの人”を初めて見た時の衝撃を、私は今でも、言葉に表す事が出来ない。 あんなにたくさんの人の中で、あの人のいるところだけ、光が射しているみたいだいった。 綺麗な瞳。綺麗な髪。まるで昨日の事みたいに、鮮やかに思い出す。 あんな人が、この世に存在するなんて。 あの日からずっと、私の心の中には、一人の上級生が住みついてしまっている。 「・・・遥、次の授業美術室だよー。もうみんな行っちゃうよー」 「んー」 今日も今日とて、私はぼんやりとあの人のことを考えていた。 もともと授業なんて、大して真面目に受けてたことなんてないんだけど・・・・最近は特にヒドい。 「ねー、遥ってば」 「あー・・・、いいよ。先行ってて。てか、いいよ別に、いちいち誘わないで。 合わせんのだるいから、一人で行くし」 そろそろ移動しなきゃいけないってのはわかってるんだけど、もう少しあの人について一人でぼんやり思っていたい。 それに、いちいちみんなでダンゴになって行動するのって、超めんどい。便所とか、一人で行けよっつー。 私のそういう態度に慣れっこな友達は、呆れたようにため息をついた。 「遥って、ホントは男子なんじゃないのー?」 「あー、自分でもたまに思うわ、それ」 みんながキャッキャとはしゃぐ声が、どんどん遠ざかっていく。 春の日差しはポカポカ暖かくて、私は机に突っ伏して目を閉じた。 ――やばい、こんなことしてる場合じゃないのに。心地よい気温が私のやる気を奪っていく。 そういえば、あの人は今頃・・・何してるんだろう。 こっそりパクッてきた、高等部の時間割を広げてみる。・・・体育か。この時期って、高等部も体力テストをやるのかな? 運動、どうなんだろう。おっとりしてそうだし、体も小さいし、少なくとも活発そうには見えない。 本当は美術サボって、こっそり見学にでも行きたいんだけど・・・さすがにバレたらヤバいだろう。 思い立ったら行動せずにはいられない私、先生に怒られるのは日常茶飯事だから、それ自体は別に構わない。 だけど、お説教、反省文、正座と、ここ最近の先生のお仕置きは少しずつレベルアップしている。いろいろ積み重なってるし、そろそろママにチクられるころかもしれない。当分は大人しくしてないと・・・ 「・・・行くか」 独り言ともに、私はリコーダーと楽譜を抱えて教室を出た。 廊下の大窓からは、隣の敷地にある、高等部の校舎が見える。 あそこに、いるんだ。あの人。 あの時は赤だった制服も、今はもう青か。早く、その姿を見たい。それで、私があの人を・・・ 音楽室へ向かう間、私は数日前の、あの日の出来事をゆっくりと思い返していた。 ***** 「みずきちゃん、マジで?」 「うん、だってこんなチャンスはもう巡ってこないんだよ」 3月下旬。 私とみずきちゃんは、中・高等部の正門の前にいた。 私たちは3つも年が違うけど、妙に気があうから、こうやってたま~につるんだりすることがある。 今日はなぜ、こんなところにいるのかというと・・・ごめん、私にもよくわからない。 中等部1年のみずきちゃんが、私を初等部の昇降口まで迎えにきたのはさっきの出来事。 そして、こう言われたんだ。“私と一緒に、楽しいところに行こう”って。 うちとは違ってお金持ちで、でっかいおうちに住んでるお嬢様のみずきちゃん。だけど、すっごい変わってて、変な遊びばっか持ちかけてくる、おかしな子。 そんなみずきちゃんが、こういう誘いをかけてくるときは、間違いない。何か面白いことが起こる。 そう信じてついていくと、連れて行かれたのはここ、大きいお姉さんたちの学び舎の真ん前。 着いた途端、みずきちゃんはくるっと振り返ってこういったんだ。“高等部の卒業式、見たくない?”と。 「いや~・・・さすがに無理でしょ」 校門の前では、“風紀委員”“環境委員”という腕章をつけた上級生たちが、変質者の侵入を防ごうと目を光らせている。 「いいですか、今日は絶対に、いい式にするんですから!外部の方をお入れする場合は、招待状を必ず拝見すること!」 輪の真ん中で、キャンキャンと黄色い声で指示を飛ばしている、他の人とは違う赤い腕章の人。 「こえ~・・・」 「あ、あの人?ウフフフ~、あの人はねぇ、中島さんといって、すでに来期の生徒会幹部に内定している、優秀な方なんだよ」 「へー・・・」 「ご覧の通り、風紀委員長さんも兼務しているの。 中高等部の先輩たちって、制服もオシャレに着崩してるでしょ?でも、あんまりやりすぎる人が出てこないのは、中島さんの厳しい風紀チェックのおかげなんだよ。 で、その横。環境委員の腕章つけてて、ニコニコしてるポニーテールの人ね。 あの人が、鈴木さん。ほわーんとしたオーラが素敵じゃない?鈴木さんはね、時期生徒会の、副会長っていう噂。 学園祭のBuono!のステージだと、あんなに激しいパフォーマンスなのに、普段はあのおっとりした・・・ああ、そっか、遥ちゃんは学園祭遊びに来なかったんだっけ」 「興味ないし」 「もったいないなあ」 ああ、本当に素敵な人たち・・・とみずきちゃんはうっとりした声でつぶやく。・・・わからん。全然ついていけない。 「ま、とりあえず、中島さんはあんな可愛い顔なのに怖い人ってのはわかったよ。鈴木さんはおっとり系ね」 「・・・もー、冷めてるなぁ。 ま、いっか、生徒会幹部の魅力はまた今度教えてあげる。じゃあ、そろそろ行こう!」 「は!?」 そうやって、話すだけ話した聖ちゃんは、満足そうな顔で私の腕を取って、ぐんぐんとその風紀部隊へと迫っていく。 「待って待って!ヤバイよ!」 「何が?」 「私、まずいんだって!今月悪さいっぱいしたからさー、初等部に連絡入ったら困る!」 教室のドアに黒板消し挟んだり、理科の実験でわざと爆発起こしてみせたり、その他余罪多数。 昨日なんて、ムカつくこと言ってきたクラスメートと取っ組み合いのケンカになって、止めに入った先生に超怒られた。 極めつけに、こうやって大事な高等部の卒業式に侵入しようとしたとなったら・・・そりゃもうただじゃすまないだろう。 「大丈夫だってば」 「無理!ここで待ってるし」 「何でー?」 腕を引っ張るみずきちゃんと、踏ん張る私。 2人で意地になってウーウーと唸っていたら、噂の中島さんがこっちに向かってズンズンと歩いてきた。 「うわっ来た、ヤバイヤバイ!」 「・・・あれー、みずきちゃん?」 だけど、意外なことに、中島さんはみずきちゃんにフレンドリーに話しかけた。 「中島先輩こんにちはー。・・・ほら、遥ちゃん!挨拶して」 「・・・っス」 「ス?」 雑な私の挨拶に、その大きな目が若干光ったような気がしなくもない。・・・が、忙しいタイミングだったからか、別に注意とかはされなくて、中島さんは再びみずきちゃんを見た。 「みずきちゃん、何かあった?なんでも力になるからね?」 なんだ、知り合いなのか。 そうじゃなきゃ、変人のみずきちゃんとはいえ、上級生の風紀委員にこんなフレンドリーにはできないか。 「先日も少しお話ししたんですが、私、今写真クラブに入っておりまして。 今日の卒業式を撮影させていただくよう、顧問の先生から言われて参りました」 「あ、そうなの?それじゃ、いい写真撮って、卒業生を喜ばせてあげてね!キュフフ えーと、あなたは・・・」 「彼女も部員です。初等部だけど。紹介します、工藤遥ちゃんです。ね?」 「えぇ!?あー、そうらしいっすね」 「ふーむ・・・」 特徴的などんぐり眼で私をじーっと見る、風紀委員長さん。 反射的にガン飛ばし返しそうになるけれど、ここはグッと堪えておあいそ笑い。・・・メッチャほっぺ引き攣るんですけど。 「・・・ま、みずきちゃんの後輩なら、大丈夫か。どーぞ、入って!あと15分ぐらいで式始まっちゃうから、先生たちにちゃんと挨拶して、立ち位置とかしっかり確認してね!」 「はい、わかりました。いい写真が撮れる様に、頑張りますね」 おっとりとお辞儀を返し、校門をくぐるみずきちゃんに続いて、私もついに敷地内に侵入する。 「ねー・・・ほんとに顧問の先生に言われたの?」 「・・・・・・・普段いい子にしとくのって、やっぱ大事だよね」 「うへっ、こえーな、みずきちゃんは!」 こういうとこが面白いから、みずきちゃんとの付き合いはやめられん。 まあ、何だかんだいって、私だってまったく卒業式に興味がないってわけでもない。 よくあるじゃん、テレビドラマとかで見る、めっちゃ熱い卒業式。ああいうノリ、嫌いじゃないし。 ま、おとなしめなうちの学校で、そんなのが見れるのかは謎だけど。 「今年の卒業生はね、魅力的な人がたくさんいるから。一人一人、じっくり解説つきで紹介してあげるから」 「うわ、いらねー」 体育館につくと、既に在校生は後ろの方に着席していた。 中等部は、希望者だけが参加するってシステムらしいけれど・・・館内には、赤い制服の生徒もたくさんいる。 紺色の紐リボンに、丸襟ブラウスの私はあきらかに浮いていて、ステージに近づいてく間もジロジロ見られているのを感じる。 みずきちゃんはあんまりそういうの気にならないみたいで、私の手首を掴んだままどんどん進んでいく。 「○○先生、こんにちは。 中等部の譜久村です。写真クラブの活動で・・・」 近くにいた先生に、丁寧に挨拶している姿は、やっぱりお嬢様で優等生。 私なんかと友達なだけあって、かなりおかしな子だけど、みずきちゃんって見てて飽きないと思う。色々な顔を持ってる。 「ヌフフフ・・・今日は超絶美人の御尊顔を、合法的に撮りまくれるファンタスティック・デー。 フィルム1000枚で足りるかな?遥ちゃん」 「なんかもうあなた、どうしようもないっスね」 卒業式なんかより、みずきちゃん見てた方がよっぽど楽しそうだな、と私は残念な友達を眺めながら思った 次へ TOP
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前へ 先日の出来事、あれはひどい話しだった。 せっかく舞ちゃんが僕の家に来てくれたというのに、一緒に来た大きな熊さんに全て持っていかれてしまった。 夢のようなひとときになるはずだったのに、熊井劇場と化してしまった僕の部屋。目眩でクラクラする。 あそこまでやられると、一周回ってもう笑うしかないけど。 しかも、最後はあんなひどい展開・・・・ それに対しては舞ちゃん、自分には無関係のこととして流してくれたようだ。 熊井ちゃんのいつもの暴走ということで、僕の方が被害者の立場だというのを理解してくれてるのだろう。 (あの時の、ちょっと顔を赤らめたように見えた舞ちゃん、めちゃめちゃかわいかった・・・) でも、あんなドタバタ勉強会になってしまったにも関わらず、舞ちゃんの機嫌は決して悪いものにはならかったように見えた。 僕の家に来たときのあの固い表情に比べると、舞ちゃんのその表情は帰りのときの方が明らかに柔らかくなっていたし。 うん、それは確かに。 やっぱり、あの日舞ちゃんと直に言葉を交わすことが出来たってのが大きい。 コミュニケーションってやっぱり大事だ。そうやって僕らの心は通じあうことが出来たんだから。 あの勉強会のあと、僕と舞ちゃんの仲が以前よりもずっと近いものになったのは間違いないだろう。 うん、そこは本当にそう思う。僕らの距離は確実に縮まってきているのが実感として感じられているんだから。 一緒に勉強をしたというその既成事実もあいまって、これから僕らの間は何か進展するかもしれないな。 (※筆者注・ここまでのお花畑的思考はもちろん全て脳内) 舞ちゃんとのそんなことをじっくりと考えながら、ゆっくりと歩いていく。 僕はリハビリのために毎日長めの散歩をするように心がけているんだ。 だから、今もそのリハビリのためなんだけど、今日はこの林道を歩いている。リハビリのために。 その林道をリハビリのために歩いていたら、なんとまあ、お嬢様のお屋敷の前に出てしまった。 やあ、これは何という偶然なんだらう。 お屋敷の門の前で立ち止まる。 この場所での出来事、あれから何日経ったのだろう。 再びここに戻ってくることが出来た。 でも今日は、あの時のようにそこにお嬢様が待っていてくださるということは無かった。 立派な門構え。今は人気も感じられず、ただひたすら静かな時間が流れているその門の前に僕は立った。 せっかくここまで来たんだ。 入院のことでお嬢様にはお世話になったのだから、ここはお嬢様にお伺いして直接お礼をすべきなのではないか? そう、アポイントなんて無いけど、お屋敷にお伺いする口実としては十分な理由だ。 でも、目の前に聳え立つ、この門構え、この格式。 世界の違いを感じてしまい、どうしても気後れしてしまう。 とてもじゃないが僕ごときが呼び鈴を押すことなどできなかった。 かと言って、諦めもつかない。このまま立ち去ってしまうのは名残惜しい。 だから、何かきっかけのようなものにでも出会えないかと、門から塀沿いをゆっくりと進んでみる。 (歩き回るのはリハビリになりますからね) 長い長い真っ直ぐに続く塀。 でも、もちろんお嬢様の気配なんか微塵も感じられなかった。 足を止めて立ち尽くす。 見上げると青い空に浮かぶ白い雲。 夏らしい高い空からは、強い日差しがふりそそいでいる。 もうすぐ夏も終わりだなあ・・・ 残暑お見舞い申し上げます。 しばし佇んだあと、空しくなってきた。 ここまで来たけど、残念ながらお嬢様には会えないみたいだな。 寂しいな、切ないな、せめて一言、なんて思いながらお屋敷を後にしようと背を向けたとき。 聞こえたんだ、確かに。 ごくごく小さい音だったけど、水のはねるような音がかすかに聞こえた。空耳なんかじゃない。確かに聞こえた。 今日プールが開かれている!? それを知ってしまったからには、僕の取るべき行動は決まっている。この機会を逃すわけにはいかない。 思わず柵に飛びついて中をがっつりと覗き込んでしまった。 どこだ? どこでやってるんだ? 必死で覗き込むが、それっきり水音も聞こえず様子も全く分からなかった。 まぁ、外から覗けるようなところでプールが開催されているわけもないだろうけど。 お屋敷の柵に、飛び越えんばかりに飛びついて中の様子を伺う僕。 これじゃあ、思いっきり不審者だ。 そんな僕の姿は防犯カメラでバッチリと捕捉されていたようだ。 静寂を破って、とがめるような声が僕の耳に入ってきた。 「そこで何をしているんですかァ!?」 この声。 聞き覚えのあるこの声。 「!! 執事さん!」 「なんだ、君か。こんなところで何を?」 「プール、やってるんですよね!」 「え? えぇ、今日がこの夏最後のプール開催日です」 「執事さん!!」 「な、なんでしょう・・」 「僕を中に入れてください!」 「はぁ??」 「それを見なければ僕は一生心残りになってしまうんです!だから僕をプールに!」 何を言ってるんだこいつは、というドン引き顔の執事さん。 「そんなわけにはいかないですよ」 「何でですか!!」 「何でって・・・そんなの当たり前じゃ・・」 「僕は行かなきゃならないんだ。お願いです!僕をプールサイドに!!」 頭がおかしい人間を見たとき、人はこんな表情をするよね。 でも、そのとき僕は本当に必死だった。 熊井ちゃんと一緒に来れば良かった。 彼女が一緒なら、やりたいことを気ままにやる彼女が一緒なら。 僕は、そんな彼女についていきさえすれば、プールサイドに行くことだってきっとあっさりと実現したことだろう。 でも、いま彼女はいない。僕ひとりなのだ。 そんなこの場に、思いがけない人が現れたんだ。 敷地の中、ここを通りがかったその人が、のんびりとした口調で声をかけてきた。 「あらー、もうケガの方は良くなったんですかぁ?」 「あ、愛理ちゃん!!」 「す、鈴木さん!!」 そこにいたのは、愛理ちゃんだった!! あ、あ、愛理ちゃん!? うわぁ、本当に愛理ちゃんだ!! 彼女はパーカー姿だったのだが、そのパーカーの裾からは、すらっとした生足が伸びていた。 その格好、そうか愛理ちゃんは今プールに向かっている途中なのかもしれない。 ってことは、そのパーカーの下は、たぶん、み、み、み、水着姿ってこと? 彼女のその長く美しいおみ足、なんと眼福なことか!! つい見とれてしまいそうになるが、その白さもまぶしい太モryを見るのは一瞬だけにした(モニター越しのそちらからの殺気を感じるので)。 そのように僕は見とれることを自粛したというのに、目の前の執事さんは全くお構い無しにその視線を愛理ちゃん一点にロックオンしているようだ。 うわー・・・ 愛理ちゃんの全身をガン見しちゃってるよ。 信じられない、この人。 でも、まぁ気持ちはわかる。 だって、愛理ちゃんが水着姿で目の前にいるのだ。それを見て平然としていられる男なんかいるわけがない。 しかもですね、ズバリ水着姿が見えているのではなく、パーカーで隠されてるのが余計に想像力を刺激して(ry 愛理ちゃんを見つめて固まっている執事さん。 小うるさいこの人が黙ってしまったのは、僕にとってこれ幸いだ。 そんな僕に、愛理ちゃんが話しかけてくれた。 「今日プールがあるって知ってたんですか?」 「いえ、リハビリで散歩をしていてですね、偶然なんです」 「そうですかぁ」 「あの、さっきの・・・ 僕のケガのこと知ってるんですか?」 「もつろん。寮生みんな知ってますから。ケッケッケッ」 もつろん、って言ったw カワイイ・・・・・ ホント、愛らしいひとだなあ。その上、落ち着いていて理知的で。 その名前どおりの女の子だよ。親御さんもまた、見事に似合う名前をつけたものだと思う。 でも、今のその笑い、なんか含むところがあるように聞こえたのは気のせいか。 まぁいい。 それより、寮生みなさんがそんなに僕のことを心配されてたなんて・・・感激です。 「寮生の方がみなさん御存知・・・そうなんですか!」 「特に舞美ちゃんが気にしてて。その舞美ちゃんからよく聞いてましたから。入院中いつも熊井ちゃんと一緒なんだよ微笑ましいよねあの2人!ってw」 あ、まただ。 笑顔なんだけど、何か裏の意味がその目には宿っていませんか。 何というか、若干黒いオーラが混じっているような・・・ 「いや、全然微笑ましくなんかなかったですけどね・・・」 「ゴホン!」 執事さんがした咳払いで僕らの会話が途切れた。 柵越しではあるが、愛理ちゃんと会話をするという幸福を存分に味わっているところに、割り込むように執事さんが口を挟んでくる。 「ここで柵越しに話すというのも警備上アレですので、あとは私にまかせて、鈴木さんはどうぞプールの方へ」 「さぁ、君も自宅に戻られて安静になさってください。お大事に」 この執カス(怒)!! 僕らの邪魔をしてくる相手に手を出そうにも、この柵が僕の行く手を阻む。 柵を掴んでいる手がプルプルと震える。 この柵が、僕と目の前の愛理ちゃん、そしてひいてはお屋敷の皆さんとの間を無情にも分断している。 無力だ。いまの僕は自分では何も出来ない。 そんな僕を、その大きな目でじっと見ていた愛理ちゃん。 すると、彼女が信じられないような言葉を口にした。 それを望んでいた僕でさえ、まさかと思うその言葉を。 「あの、お嬢様も気にされていたようですし、良かったらちょっとだけ中へ入ってお顔を見せていきませんか?」 「す、鈴木さん!」 「あら、やっぱりダメですか?」 「お嬢様の判断を仰がずにそんなことは・・・」 「私の判断なんですけど、いけませんか、やっぱり?」 「いえ!鈴木さんがそう思われたのなら結構です!」 「ありがとうございますぅ執事さん♪」 執事さん、何か死にそうな顔になっちゃってるけど、大丈夫なんだろうか、この人。 魂を抜かれたようなうつろな視線で執事さんが僕に向き直った。 「・・・・どうぞお入りください」 おい!僕には態度が全く違うじゃないか。何だ、その棒読みは。 僕にはあからさまに投げやりな口調を向けてくる執事さんだったが、しぶしぶ裏門の扉を開けて僕を中に入れてくれた。 こうして、ついに僕は岡井家のお屋敷に足を踏み入れたのだ。 (正門じゃなくて裏門からとは、ぴったりだかんな!この間男が!) 3人で連れ立って歩いていく。 愛理ちゃん、執事さん、そして僕という3人の並び。なんだ、この組み合わせ。 ここが千聖お嬢様のお屋敷。 ぐるりと周りを見渡す。 隅々まで手入れが行き届いている植栽。風格のある重厚な建物。 僕が普段目にしている風景とは全く異なる世界がそこには広がっていた。 初めて見る風景に圧倒されながら歩いていく。 そんな僕の横には愛理ちゃんがいるのだ。愛くるしいニコニコとした表情で。 ま、なんか淀んだ顔で僕を監視してる様子の執事さんも一緒なんだけどさ。 そんなとき、彼のケータイが鳴った。 「えっ、なんですか。またそんな無茶振りを・・・・ハイわかりました・・・ すぐ伺います」 「鈴木さん、すみません。僕は有原さんから呼び出されてしまいました。これで失礼します」 「忙しいですねぇケッケッケッw どうぞ、わたしにはお構いなく」 その去り際、僕のことを露骨にすんごい目付きで睨みつけてくる執事さん。 な、なんだよー・・・ そんな彼に、愛理ちゃんが声をかけたんだ。 「あっ、そうだ、執事さん」 「な、なんでしょうか・・・」 「今朝のスクランブルエッグ、とっても美味しかったです。さすがですね!」 愛理ちゃんからお褒めの言葉をかけられたというのに、それには返事もせず慌てたようにすっ転んだりしながら行ってしまった執事さん。 なんなんだ、あの人は。大丈夫なのか? 執事さんは行ってしまった。 ということは、僕は愛理ちゃんと2人っきりになってしまったということじゃないか! 次へ TOP
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「なあ、人居なくなっちまって暇なんだけどよ、良かったら一戦どうだ?」 「あら? わたくしと? 構いませんわ、わたくしも暇でしたし」 交渉はあっさりと成立した。 彼女が自分のデッキを隠したがるタイプなら無理だっただろうが、関門突破だ。 「よっしゃ! 俺はエド。宜しくな!」 「わたくしはミリア、お見知りおきを」 吸血鬼デッキの使い手はミリアというらしい。 去年は耳にした記憶が無い名前なのでやはり今年入ってきた大型新人と言ったところか。 交渉も成立し、エドがミリアの対面に座った所でゲームは開始した。 エドLP25 ミリアLP25 先攻 エド 「ドロー! 疾風の狙撃者を召喚! 更に手札から2枚をノードにしてターンエンド!」 「わたくしのターン、1枚引いて手札からカウンターカード3枚をセット! ターン終了ですわ」 お互いに最初のターンを終える。 エドが攻めの態勢を作っているのに対してミリアは見と言った所か。 初対決の相手の伏せカード3枚と言ったら不気味でしかない。 エドLP25 ノード3 ミリアLP25 ノード1 「ドロー! 援軍を発動! 疾風の狙撃者で朱鷺戸沙耶をサーチして召喚! 狙撃をスペルカード扱いで発動して2ダメージ!」 エドの調子が上がってきた。 2ターン目にして狙撃回収コンボが可能な最高の状態まで持って行った。 ここでエドがターン終了宣言をする。 「それでは1枚引きかせて頂きますわ。手札を1枚捨ててフランドールを召喚!疾風の狙撃者にアタックしてターン終了しますわ」 吸血鬼デッキの片鱗。1枚目の吸血鬼……フランドールが姿を現す。 一撃で疾風の狙撃者を破壊する強力なパワー。 (早くも大ピンチってところか……) エドLP23 ノード0 ミリアLP23 ノード2 「俺のターン、ドロー!」 バーンカードを期待してデッキからカードを引くもそう上手くは行かない。 引いたのは不運にも「弾丸」のカード。 ガンナーデッキの必須カードと言えばそうだが、この状況では何の役にも立たない。 フランドールのHPは2……手札の狙撃1発ではこの窮地は切り抜けられない。 しかもノード0のこの状況では、この1枚の狙撃を発動するのすら危険。 「ターンエンド」 「ドローして、フランドールのコストとして手札を1枚捨てますわ。フランドールで朱鷺戸沙耶にアタック、ターン終了ですわ」 状況はかなりきつい。 カウンターカードを投入しなかったのが裏目に出てしまったか? フランドールの攻撃を防ぐ術が見つからない。 エドLP21 ノード1 ミリアLP23 ノード3 「ドロー!魂魄 妖夢を召喚! ターンエンド」 ドローで見事に魂魄 妖夢を引き当て、それをスリープで召喚するエド。 相手がフランドールという強力なキャラクター故に時間稼ぎにしかならないが仕方ない。 魂魄 妖夢が破壊される前にバーンカードを引き当てなければ絶望的である。 「ドローしてコストを支払いますわ。オファーノードを発動してノードを補給。そしてフランドールで魂魄 妖夢にアタックですわ」 ミリアのノードが上限に達する。 維持コストとして支払っているのが手札故にノードが貯まりやすいのだ。 フランドールにカウンターカード3枚、そしてノードが6つ。 エドにとってはただ絶望でしかない。 エドLP21 ノード1 ミリアLP23 ノード3 「ドロー!ライフケア発動!魂魄 妖夢のHPを2回復してターンエンド!」 「それではドロー! 引きましたわ、スペルカード<禁忌「フォーオブアカインド」>」 ミリアの発動宣言したカードはフランドールのスペルカード。 ノード6つ全てを支払うという大型スペルカードである。 その対価としてミリアのフィールドには「フランドールトークン」が3枚置かれる。 「更にわたくしはライフを2つ払って奇襲作戦を発動しますわ。このターン、トークンはアタックが可能になります」 最悪だ。 あの攻撃を全部受けなければならないなんて。 フランドール本人とトークンの攻撃でまず妖夢が破壊され、そしてトークン2つのダイレクトアタック。 合計ダメージは9……大ダメージである。 (こりゃ凶悪だって噂されるわけだぜ……) レベルの違いをひしひしと思い知るエド。 が、彼もまだ諦めているわけではなかった。 エドLP12 ノード1 ミリアLP21 ノード0 「ドロー!」 ここで引き当てたのは待ち望んでいた狙撃。 フランドールを破壊できる秘策! 相手のカウンターカードは気になるが、ここは進むしかない。 「狙撃を2枚発動!対象はフランドール!」 ミリアの反応を窺うがカウンターカードを発動する気配はない。 見事にフランドールの撃破に成功した! 「ターンエンド!」 「わたくしのターン、1枚引きましてターンエンドですわ」 先程からフランドールのコストとして手札を捨てていた為ミリアの手札はやっと1枚である。 仕掛けてくるまでには猶予がありそうだ。 エドLP12 ノード0 ミリアLP19 ノード1 「ドロー! カウント・ダウンを発動! 更に疾風の狙撃者を召喚してターンエンド!」 フランドールという脅威が去り、キャラクターの召喚に躊躇いが無くなったエド。 更にこのターン引いたカウント・ダウンを発動し一気にミリアのLPを奪いに行く。 このままカウント・ダウンが発動し、レイジーエイトを引いてこれれば勝利が見える! 「ドローさせていただきますわ。手札からエナジーライトを発動。2枚ドローしますわ」 ミリアの手が加速する。 この時点でミリアの手札は3枚に到達、危ないか? 「LPを1支払ってレミリア様を召喚しますわ!」 遂に吸血鬼デッキの切り札であるレミリアが召喚されてしまった。 ただ、エドにとってこれは逆に好都合なのかもしれない。 レミリアのコストはLP……ガンナーのバーンスピードが有れば押し切れるかもしれない。 「フィールドのフランドールトークン3枚を破壊してレミリア様のHP+6、疾風の狙撃者にアタックですわ」 エドLP10 ノード1 ミリアLP18 ノード0 カウント・ダウン 残り5ターン 「ドロー! 集約の騎士を召喚! ターンエンド!」 兎に角時間稼ぎを繰り返すエド。 攻めを考えずにただ凌いでいるだけで相手のLPはどんどん減少していく。 そこを一気に叩くのが得策だ。 「ドローですわ! あら?引きましたわ、フランドール召喚!」 「な!?」 慌てるエド。 2枚目のフランドールが召喚されてしまったのだ無理もない。 先程、なんとか凌げたピンチの場面に加え、今回はレミリアも居るという状況。 この状況を切り抜けるのはかなり辛い…… 「フランドールで集約の騎士にアタック、そしてレミリア様で直接攻撃ですわ!」 鬼のような攻め。 集約の騎士破壊による3ダメージ、そしてレミリアの直接攻撃……合計ダメージは7 万事休すか? エドLP3 ノード2 ミリアLP16 ノード1 カウント・ダウン 残り4ターン (手札には弾丸が1枚に朱鷺戸沙耶、このドローで有効なカードが引けなければ終わりか……) と言ってもこの状況を逆転出来るカードなんてあるだろうか? この絶望的な状況を一変させる……そんなカードが…… 考えても仕方ない……運命のドロー! 引いたのはエマージェンシータイフーン。 「俺はエマージェンシータイフーンを発動して2枚ドローするぜ!」 そして2枚……引いたのは…… 狙撃、そしてミラージュスナイパー! このターンのノード供給もありノードは今丁度2つ、レミリアは無理でもフランドールは撃破出来る! 「朱鷺戸沙耶を召喚! スペルカード<銃符「ミラージュスナイパー」> 手札から狙撃1枚と弾丸1枚を捨ててフランドールとレミリアに2ダメージ!」 「カウンターカード発動させて頂きますわ、肩代わり。フランドールの受けるダメージをLPから支払いますわ!」 ここに来てまさかのカウンターカード。 エドの作戦は完全に破綻してしまい、敗北が確定してしまう。 「お前つええな! ターンエンドだ」 満足したかのようにエドがターン終了宣言をする。 実力を完全に出し切って負けたのだ、エドは悔いを感じていない。 そしてミリアのターン。 吸血鬼姉妹のアタックによりゲームセットとなった。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288544881/670-675 「悪いな、桐乃は今日モデルの仕事なんだよ」 「いえいえ、急に押しかけた拙者が悪いのですから」 京介お兄様が紅茶を差し出しながら、今この家には自分しかいないと説明なされました。 私は紅茶の香りを一通り楽しむと、お兄様の淹れてくれた紅茶を口に含み、ほぅ、と声を上げましたの。 「……さらにできるようになったな、京介氏」 紅茶の温度が適温に保たれていて、カップもキチンと温められいます。 お兄様の気遣いを感じられて、私は思わず口を綻ばせてしまいましたわ。 「安物の紅茶で悪いけどな」 「謙遜するなよ、兵が見てる」 「どこの兵士だ!」 「いやいや、京介氏の気配りはガンダムファイターレベルでござるぞ」 「国家代表かよ!?」 「拙者、京介氏を執事として雇いたいぐらいでござるよ。 どうでござろうか、拙者のガラスの王国に、パーガン京介として使える気はござらぬか」 「お前ん家はガラスの王国じゃなくて、ガラスケースの王国だろうが」 京介お兄様も、自分の分の紅茶を一口飲み始めました。 それが、会話を切り替えるタイミングの為だと、私が気づくのは後になってからでした。 「……桐乃の事だろ?」 「はて? 何のことでござろうか?」 「"たまたま"千葉くんだりまでお前が来るとは思えねぇ。 アポ無しで友達の家にくるようなヤツでもねぇ。 俺と話がしたかった、違うか?」 こういう時のお兄様は本当に鋭いですわね。きりりんさんや黒猫さんが頼りにしているのも、よくわかります。 私だって……このような姿を見せられると、頼りたくもなります。 「そうでござるなー。実は拙者、京介氏とお話がしたくて……」 「で、俺に相談となると、桐乃か黒猫のことだろ」 「そう断言されると……私、哀しくなりますわ」 メガネを外し、バジーナを脱ぎ捨てる。いえ、きっと脱ぎ捨てたのは他の仮面…… 「私が、個人的にお兄様と仲良くなりたいと、お話したいと、思ってはいけないのでしょうか?」 いけない……そう思っているのは私自身。 だって、きりりんさんも、黒猫さんも、お兄様の事を…… それなのに、私がお兄様を仲良くなっては、私達の関係が壊れてしまう…… 「お、おい、いきなりお嬢様は卑怯だぞ! からかうのはやめろ!!」 「ふむ……京介氏、本当に"たまたま"でござるよ。偶々、コチラにくる用事がござってな」 「お嬢様の方の用事で?」 「左様」 「……ならその格好でくるのおかしくね?」 「京介氏、カツ丼はいつ出るのでござるか?」 「あれ金払うのは警察側じゃねーからな。まあ、腹減ったなら出前とろうか?もちろん、俺の奢りで」 「それはいいでござるな。拙者、出前というものを一度見てみたかったでござる! オカモチというもので持ってくるのでござろう!?」 京介お兄様は、私の嘘を見抜いた上で、私から切り出すのを待ってくれているのでしょう。 「優しすぎるんだよ、京介氏は」 「へ……だから生きていられるんだ」 お兄様は死神ですね。乙女の心ばかり刈り取る、悪い死神さんです。 お兄様の直感(消費SP25)は当たっています。 確かに私はきりりんさんの事で、お兄様に相談があってお邪魔したのですが…… ですが、この問題はお兄様自身も関わりのあること、 しかしお兄様以外にはきりりんさんの名誉の為に相談することはできないことなのです。 そう、あれは以前、この家に遊びに来たときのことです。 その日は今日とは異なり、きりりんさんしか在宅ではありませんでした。 黒猫さんはリビングのテレビでマスケラを鑑賞中、きりりんさんは「もってくる者がある」と二階のご自身の部屋へ。 しかし、暫くたっても戻ってこないきりりん氏に、私は失礼かとは思いましたが、様子を伺いに二階に上がったのでした。 もし、今の私が過去の私に語りかけることができるなら、この時の自分を必死に引き留めたでしょうね。 「……スンスン……はぁぁぁ……兄シャツ最っ高ぉぉ………」 きりりんさんが、お兄様のものと思われるシャツをメルルちゃん抱き枕に被せて抱きしめていましたもの。 「ハァ…ハァ……兄貴、さっきからあたしばっかアンタの事抱きしめてんじゃん。 す、すこしはあたしの事抱きしめなさいよ。アンタシスコンでしょ? いつになったらあたしを抱いてくれるのよ!」 きりりんさん、抱き枕の形状からいって、抱きしめ返すことは不可能だと思われますわ。 そもそも抱き枕に、対象を抱く機能なんてついていませんし。 ……私はあまりの光景に、思わず見当違いのツッコミを心の中でしてしまいました。 「はぁぁ…真っ赤な兄シャツ。兄貴の寝汗が付いた兄シャツゥゥ…… 兄貴センス悪すぎぃ…キモっ…赤とかぁ、興奮する色っていうじゃん。それって安眠できないじゃん。 ただの兄貴だって、あたしは超興奮してるのに、赤ってどういうこと!? 誘ってるの? 誘ってるんでしょ? きもっ シスコン兄貴きもっ! 妹誘うとか信じらんないっ! 赤いのヒラヒラさせてさ、闘牛士気分なワケ!? 体当たりしてほしいの? 妹の柔らかい身体、兄貴の逞しい身体に飛び込んで欲しいの? 妹牛、兄貴に突進しちゃいまーす! 変態兄貴マジヤバイ、妹牛呼ばわりとか。ありえない! 読モで、陸上部のエースで、成績優秀なあたしを牛呼ばわり!? きもっ あんたどんだけサドなわけ? そんな、首輪とかさー、妹に付けるとか独占欲強すぎでしょ? 兄貴マジ鬼畜。鬼畜の畜は畜産の蓄ね。そうでしょ? アンタ妹牛の、お、おっぱい絞ろうとしてるんでしょ? ミルク欲しいんでしょ? ひゃんっ……はぁぁ、揉んでるぅ……兄貴、あたしのおっぱい揉んでるぅ…… で、でるわけないのにぃ、まだ兄貴の子供妊娠してないのにぃ……兄貴揉みすぎぃ!おっぱいまいすたーぁぁぁぁっん!!」 きりりんさんは、どうやら京介お兄様を思って、その……いたしている模様で…… お兄様の幻想まで見えているというか……私はどうすれば……その幻想をぶっ壊せばよろしいのでしょうか? し、しかし、きりりんさんは、あれはあれで幸せそうといいますか、今、私がこの場に出て行くことは気まずいのは確かなのです。 「あ、赤いってことはさー……ち、血とか付いてもバレないってことじゃん? はぁ…はぁ……ダメ、ダメダメ……処女はマズいって! 処女は生兄貴がいいもん、流石に! ……スンスン……はぁ……兄貴ぃ……はやく抱いてよぉ……最近歯止めがきかなくなってきてるしぃ……」 ビクン!ときりりんさんが電池が切れたように動かなくなると、暫くした後、スッと機敏な動きで立ち上がりました。 一瞬、私の存在に気づかれたのではないかと思ったのですが、それはいつものきりりんさんに戻るスイッチであったようでした。 激しい…じ、自慰行為から、充填期間を置いての復活……まさに妹ランザムというべきでしょうか? 「はぁ……」 「おーい、沙織、手止まってるぞ。お前が持ってきたんだろ、このガレキ」 「さ、左様でござる。このコクピットアーマーは河森デザインでござってな、やはりレゴで培われた可動が……」 「このマ●ロス、プラモとは違うのか?」 「失敬な、プラモとガレキは全然違うでござるよ。それにこれはマク●スではござらん。 キ●ダムというアニメに登場したメカでござる、キス●ムはまだDVDが出ていない、ある意味レアなアニメでござるよ」 「そ、そうなのか。いや、俺も最初はガ●ダムとマ●ロスの見分けがつかなかったぐらいだったけどよ 最近はそーでもないかなーって、結構自身あったんだけどなぁ」 「まあメカデザイナーが一緒でござるからな。ちなみにこっちが同じガレキで、キスダ●の主人公・哀羽シュウのフィギアでござる」 「ああ、なんつーの、クリーチャーっぽいな。なるほど、確かに●クロスじゃねーや。 ……けどよー、なんか俺、この主人公嫌い。なんつーか、ウジャい感じ。やっぱ主人公は七回生き返るぐらい強くないとな」 「京介氏も女性関係で七回ぐらい刺されてもおかしくないでござるな!」 「ばーか、そんなに俺がモテるわけがないっての」 ……その方面に関しては恐ろしく鈍感ですわね、京介お兄様。 まあ、それぐらい鈍くなければきりりんさんの気持ちに気づいていらっしゃるでしょうけれど。 はあぁ…… 正直に申しますと、私はこうしてお兄様と一緒にいる時間が楽しくて、楽しくて、しょうがありません。 お兄様は自分が興味を持ってない筈の、私の話に根気よく付き合ってくれますし(私だけに限りませんが) それなりにオタクに染まった今でも、自分が知らないことには素直に聞いてきたり、感心してくれたりします。 そういうオタクの人って少ないのですけれど、お兄様の自尊心とかヘンケン艦長とかは、きっと綿菓子のように柔らかいのでしょう。 お兄様との時間が楽しければ楽しいほど、私はきりりんさんの事で辛くなります。 やはりこのままの関係がよいのでは? そうです、私があのきりりんさんの姿を忘れれば、それで元通り…… ピンポーン 「お、カツ丼きたんじゃね?」 お兄様が玄関へ向かいましたが、私は暫くきりりんさんの事を考え続けていました。 このまま黙っているのはいいでしょう。だた気になるのはきりりんさんの言葉。 「最近歯止めがきかなくなってきている」 もう充分歯車はスッ飛んでる気もいたしますが、これ以上となると…… 京介お兄様の貞操に関わるのではないでしょうか? そういえば、京介お兄様、遅いですわね…… 「だからさぁ、注文間違えたのは分かったけどよ、この間違え方はねーだろ。 マーボカレー丼って何だよ? カツ丼をどう聞き間違えたらマーボカレー丼になるわけ? せめてカツ丼が天丼なら分かるぜ。まあいいかって気分にもなるぜ? でもマーボカレーって、カツ丼から離れすぎてるだろ!? っていうか、いつからこんなメニュー増やしたんだよ!? 迷走しすぎだろ! ああ、ちくしょう! 俺はいつまでも待ってるからな! ナムカプ2の発売を!」 なにやら出前の方と揉めていらっしゃるようですわ…… と、私はソファに脱ぎ捨てられた京介お兄様のパーカーに視線を落としました。 そういえばお兄様はガレキ製作で汚れると困るからと、長袖のパーカーを脱ぎ捨てていましたね…… 京介お兄様の……パーカー…… お兄様の……臭い…… ごくっ そ、そうです。やはりお兄様ではなく、本人に、きりりんさんに話すべきではないのでしょうか。 あの行為を、きりりんさんが一番知って欲しくないのは京介お兄様の筈。 それに、それに、私ときりりんさんはちゃんと友達ですわ。 友達なら…友達なら…正直に見たことを言うべきなのでは? その上で共に世界のことを考えよう、この小うるさい見物人を倒してな、とアクシズの摂政も仰ってましたし! きりりんさんの思いを、私は受けとめ、相談に答える必要があるのではないのでしょうか。 きりりんさん達が私を心配して家に来てくれたように、私もきりりんさんの力になりたいと……そう思うことが不自然なことでしょうか? そうです、そうと決まったら…… ガバッ スンスン な、なるほど、これが京介お兄様の匂い…… スンスン い、いえ、これはあくまで、きりりんさんと同じ立場に立つことで きりりんさんの視点になって、物事を考えようと、そういう友人として当然の行為で 決して、自らの性的欲求に基づいた行動ではなく、理知的な欲求に基づいた行動なのでありまして EXAMシステムをクルスト博士が開発したような、本能的な恐怖とは全くもって無縁の むしろアクシズ落としで見せた人の心の光のような温かさで、京介お兄様の匂いを嗅いでいるわけですが しかし、サイコフレームの光も人によってはボッシュ大尉のような悪意を生み出すわけでして つまりこのような姿を見られて、私がそういう性癖であると誤解されても、それはそれで仕方ないと言いますか そのようなリスクは覚悟して、私はクンカーしているのであって、心境としてはアレックスに挑むバーニィに近いと言っても差し支えなく 誰かを恨んで欲しくない、ただ私の意地のようなものでこうして嗅いでいるのですと、そういうことなのですわ。 スンスン ……私、プラモを作ることもあって匂いにはさして抵抗がありませんの。 いえ、匂いに無頓着というわけではございませんわ。 普段の生活をしっかりするという条件で、この趣味を認められておりますので、身だしなみもしっかりしております。 香水なども色々知っていますし、ですから普通の方よりは多少は鼻が効くのではないか、と思う部分もあります。 ですから、この京介お兄様の匂いは、その…… 「け、決して、世間一般において良いとされる香りではありませんわ…… で、でも……わ、私は……好きです……京介お兄様の匂い……」 きっと京介お兄様の匂いだからですわね。 なんだ、結局、私はお兄様の匂いならなんでもいいのでしょう きりりんさんもそうなのですね? スンスン きりりんさんの気持ちを理解できたのですから、もういいでしょう。 スンスン はやく止めないと、お兄様が戻ってきてしまいますわ。 スンスン ああ、お兄様……まるで、夢を見ているみたい…… スンスン いけませんわ……お兄様のパーカーを嗅いでいると、ココロオドル気持ちが止まりません アンコール湧いて、もう一回、もう一回と、やめられなくなってしまいます!! ああ、ずっと前に脱ぎ捨てた筈なのに、お兄様の体温がまだ残ってるような……お兄様は沈まない太陽のような方ですわ!! スンスン ああ、わかります、わかりますわ、きりりんさん! 京介お兄様の匂いを嗅ぐことを止められる筈がありませんわ! これはお兄様の魂ィィィィィの塊ィィィィィ!! 私は見つけてしまいましたの、私自身に流れる無限のクンカーとしての力を! 「ゆ、ゆ、ゆ、……ユニヴァァァァァァァァァァァァァァァァス!!」 はぁ…はぁ……まさか、リアルでディアナカウンターに入隊するが訪れるとは、想像もしていませんでしたわ。 危険です。京介お兄様の匂いは危険すぎます。この威力はソロモンを連邦の艦隊ごと消滅させるに充分です! 同時にこれは非常に切ないですのね。 ここにあるのは京介お兄様の残り香であって、京介お兄様ではありませんもの。 この匂いを嗅げば嗅ぐほど、京介お兄様を近くて遠くに感じてしまいますわ。 ああ、お兄様ぁぁん…… 「ああ……私のあそこ、濡れてますわ……一度も触っていないのに、ビショビショになっていますわ…… こ、これが人の夢、人の望み、人の業……スンスン……このお兄様の匂い、決して枯れることのない匂いの泉 まさしくマフティー・ナビーユ・エリンですわ。ああ、お兄様! 卑怯です、お兄様は鬼子です!! お兄様は愛のレジスタンスです! 私、お兄様に処刑されてしまいましたぁぁ!!」 はぁ…はぁ…… 私、達してしましましたわ…… そんな、お兄様の匂いだけで……面相筆や、ルーターも使ってないのに…… 認めたくないものですわ、若さ故のあやまちというものは…… 「沙織ー、悪いんだけどさ、カツ丼じゃなくていいか?」 「ひっ!?」 お、お兄様がマーボカレー丼を持って、リビングに戻ってきました。 私、なんとか気乱れを直して平静を装いましたが、ま、間に合ったでしょうか? 「ん? どうした、沙織? 具合悪いのか!?」 「い、いえ、その……シンナーを使っていたからでしょうか?」 「んなに?! 換気! 換気!」 よかった、お兄様にバレてはいないようですね…… 「ったく、部屋締め切ってシンナー使うヤツあるかよ。 しゃーねーな、寒いし、飯は俺の部屋で食うか?」 「お、お兄様のお部屋!?」 お、お兄様のお部屋ということは、つまりお兄様の匂いでいっぱいということで…… 「おい、沙織、大丈夫か? やっぱ俺の部屋は嫌か? っていっても桐乃の部屋使うワケにもいかないしな。換気終わるまで待つか。 それとも外に食いに行くか?」 「い、いえ! 構いませんわ! 私、京介お兄様の部屋でお食事させていただきますわ!」 「お、おう……ところでよ、いつまでお嬢様モードなんだ? からかおうとしても無駄だぞ。流石に慣れた」 「そ、そうでござるな。今の私は沙織バジーナ、それ以上でもそれ以下でもないでござるよ」 「そうそう、それそれ」 あ……そ、その笑顔は反則です、京介お兄様…… 「きょ、京介氏はこっちの拙者の方が良いのでござるか?」 「ん? んー…どっちも沙織なんじゃね? どっちか良いとかねーよ」 「そ、そうでござるか。……くしゅっ!」 「おい、大丈夫か? ちょうどいいや、これ羽織っとけ」 「あ……」 それは、さっきまで私が嗅いでいた…… つまり、京介お兄様公認でクンカーしていいと……って、そんなわけありませんね。 「俺なんかの服を着させられて固くなるのは分かるが、せめてお礼ぐらい言って欲しいものだな」 「あ、ありがとうでござる。そ、それに拙者は京介氏の服を嫌がるなどということはないでござるよ」 「そうか? 桐乃はスゲーいやな顔すんだけどな」 「……傲慢が綻びを生むということか……きりりん氏も難儀な性格でござるな」 私は京介お兄様の部屋に入る前、きりりんさんの部屋を目にとめると、一つ溜息を吐きました。 お兄様に見つからないように。だってお兄様に見つかると、絶対聞いてきますもの。 私の溜息の理由、それは、もうきりりんさんを止めることはできなくなったな、という感嘆でした。 だって、今もこうしてお兄様の匂いにつつまれていると、とても幸せですもの。 もう、きりりんさんにこれをやめろなんて、私、言える筈がありませんわ。 スンスン はぁ…… 「なんだよ、そんなに出前初体験が嬉しいのか?」 「へ? ああ、そうでござるな……初体験……やみつきになったかもしれないでござるよ」 「お嬢様のことはよくわかんねーな」 「くすっ…」 「オタクモードでお嬢様笑いしやがって、なんか気持ち悪いぞ」 「あら、どっちも私なのでしょ?」 「そりゃそーだけどよ」 「だから、拙者は京介氏のこと、好きでこざるよ」 「そいつはどーも。いただきまーす」 「いただきます」 <了>
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前へ っていうか、もう既に見抜かれているようだ。 「男のくせに怖いのぉ? でもホラー映画って言っても、これは心理ホラーだから、いわゆるホラー映画の怖さはあまりないよ」 「いや、それでも怖いんですよ。夢に出てきそうで。最近はいい夢を見れることが多いから、その流れを止めたくないし・・・」 慌てて口をつぐむ。言わなくても言いことを喋りそうになった。 それを桃子さんが見逃すわけが無い。 「いい夢を見るってなーに? どういう夢を見てるの? それ、もぉに詳しく話してみて」 ほらね。この人は本当に鋭いんだから。 適当な話しを作って誤魔化してもいいんだけど、嘘をつくのは苦手なんだよなあ。 それに、桃子さんはそういう嘘を一発で見抜きそうだし。 まぁ、別に本当のことを言っても問題は無いだろう。別に恥ずかしいことは何も無いんだ。 「最近、舞ちゃんの夢をよく見るんですよ」 「やだー! どうせ変な夢なんでしょ・・・ 女の子にそんな話しないで!」 わざとらしく目を見開いて、握った手で口元を押さえる桃子さん。 全っ然、違います! 勝手に変な夢にしないで下さい。僕を見くびらないでもらいたいです。 彼女のそんなリアクションにあきれながらも、思わず立ち上がって声に力を込める 「違いますよ! 変な夢なんて見てません!!」 気を取り直して、持っていた本のページを開いて桃子さんの前に差し出す。 ここを読めば分かってもらえるはずだ。僕の気持ちを代弁しているかのようなこの一節。 僕は、ゴホン!とわざとらしく咳払いをして、荘厳な面持ちを作り桃子さんに諭すように話しかけた。 「桃子さん、“こころ”の、この一節を読んで欲しいです。僕の気持ちは正にここに書いてある通りなんですから」 -----引用ここから----- 私はお嬢さんの顔を見るたびに、自分が美しくなるような心持がしました。お嬢さんの事を考えると、気高い気分がすぐ自分に乗り移って来るように思いました。 もし愛という不可思議なものに両端があって、その高い端には神聖な感じが働いて、低い端には性欲が動いているとすれば、私の愛はたしかにその高い極点を捕まえたものです。 -------ここまで------- 主人公のお嬢さんに対するこの気持ち、これには共感を覚えてならない。 まさに僕の心境はこの文章の通りなのです。僕の場合は相手がお嬢様ではないけれど。 でも、お嬢様のことを考えると気高い気分が乗り移ってくるっていうのには、自分の気持ちを重ね合わせてしまいそうにもなる。 これは千聖お嬢様のことにも当てはまるんだから。 この本を読んでいると、何か錯覚も感じてしまうのだ。 だんだんとお嬢さんに恋心を寄せるようになる先生と呼ばれる主人公。 その気持ち、分かるんだよね、何となくだけど。 読んでいるうちに感情移入してしまい、現実と虚構の世界の区別がつかなくなりそうになる。 そんな感じでまた虚構の世界に入り込みそうになっていた時、僕の視線と意識がある一点に集中した。 桃子さんに力説するために立ち上がったことで、さっきまでテーブルで見えなかった桃子さんの制服のスカートとニーソのその間、そこがばっちり僕の視界に入ってきたのだ。 いわゆる、絶対領域。 はい、俗物の僕は一瞬で虚構の世界から目の前に広がる素晴らしい現実世界に戻ることができました。 僕の目は釘付けになる。桃子さんスカートみじかすぎ・・・ そこに見とれてしまうのは、男の性なのだ。それはしょうがないことだ。 でもだからと言って、そんなところに見とれていることがバレてもいいということにはならない。 ましてや、相手は桃子さんなのだ。それがバレたら、僕にどんな制裁を下されるのか考えるだけで恐ろしくなる。 いいものが見れた・・・ いやいやそうじゃなくて、今すぐそこから視線を外さなければ。 いやいや、もう少しくらいいいでしょ。いやいや、バレたら大変なことになるからすぐにやめろ。 いやいや、そうは言いましてももう少しくらい見ていたいし。いやいや、相手が悪すぎるだろバレないわけがない。 いやいや、別に見てはいけないものをこっそり覗いてるわけじゃないんだからいいじゃないか。いやいや・・・ (ここまで考えること所要時間0.2秒) 気付くと、桃子さんは僕のことをじっと見ていた。 な、なんですか、その顔は。 これはやはり僕の葛藤を見抜かれてしまったのだろうか。 だが意外な事に、桃子さんはそこには触れてこなかった。どういうわけだかスルーしてもらえたみたいだ。 しかしそこには、これは貸しにしとくからね、という無言のメッセージも感じられるような。 やはりバレちゃったのかな、そこがはっきりしなくて何とも落ち着かない。 桃子さんは、あらためて先ほど僕の言ったこと、そっちの方に言及してきた。 「つまり、見ているのは神聖な内容の夢だってこと?」 皮肉っぽい笑顔が浮かんでる。やっぱり見とれてたの完全にバレてるよ。 それでも僕は動揺を悟られないように、あくまでもキリッとした顔を保って真顔で答えた。 「そうです。最近舞ちゃんの夢をよく見るんですよ」 「それは分かったから、二度も言わなくていいよ」 「高い極点を捕えてる、とか何とか立派なこと言ってる割には舞ちゃんの夢を見てニヤニヤしてるんだ」 「ですから、ニヤけてなんかいません。今言ったように、僕の彼女への想いは神聖なものなんですから」 「いや、だから、実際ニヤけてるんだって。それ自覚してないのぉ、ひょっとして?」 そうなのか、それは素で気づいていなかった。 このあいだ栞菜ちゃんにも同じこと指摘されたっけ。 そんなにいつもニヤケてる顔してるんだろうか。気をつけよう。 あの時は、なかさきちゃんを目の前にして、そりゃ彼女のかわいさについニヤケちゃったのかも知れないなあ。 ・・・なかさきちゃん? そうだ、思い出した! 「ところで桃子さん、最近なかさきちゃんに何か言われたりしましたか?」 「風紀委員長さん? 最近? 何か言われたかなあ?特に覚えて無いけど」 「そうですか。それならいいんですけど、あの時なかさきちゃん凄い剣幕だったから」 「いいんちょさんにはしょっちゅう色々言われてるから、そんなのいちいち覚えてないよ。ウフフフ」 なかさきちゃん、桃子さんに別に何も言わなかったのかな。 それっきり、桃子さんはそのことには特にこれ以上触れようとはしなかった。 僕の言ったことに、“凄い剣幕ってどういうこと?”とかさえ聞いてこないんだな。 これが例えば熊井ちゃんだったら、こういう発言は聞き逃さずがっつり食いついてくるだろう。 彼女は自分が納得するまで、徹底的に物事をハッキリさせないと気がすまない人だから。 対照的に、桃子さんはいちいち気にしないんだ。 こういうことには淡白だよなあ、桃子さんって意外と。自分のすること以外には、あまり興味を示さないというか。 他人から何を言われたとかそういうことは全く気にしないんだろうな。男らしい態度だなあ、見習いたいものだ。 「そんなにしょっちゅう、いろいろ言われてるんですか?」 「風紀委員長さん、もぉのこと大好きだからね」 「はぁ」 なかさきちゃんのあの口ぶりからは、とてもそんな感じには聞こえなかったけど・・・ 「もぉが卒業しちゃったら、いいんちょさん寂しさのあまり元気なくなっちゃうんじゃないかと思って、それがとても心配で心残りなの」 ウフッ、と笑った桃子さんが続ける。 「でも、くまいちょーがいるから、いいんちょさんも元気なくしてるヒマないだろうね」 そうですね。 きっと、そうなるんでしょうね。その光景が目に見えるようです。 「ところで、少年は何でいつもくまいちょーの言うことを聞いてるの?」 「え、どういうことですか?」 「こうやって席を取っておいたりとかさ、くまいちょーの言った事はその通りにするでしょ」 何でって言われても。そんなこと疑問に思ったことも無いけど。 わざわざ聞いてくるってことは、僕の取ってる行動はちょっとおかしいのかな。 「それは・・・ 熊井ちゃんの言うことは絶対ですから」 ちょっと違う気もするけど、説明するのが難しい。 「よく分からないんだけど、くまいちょーに何か弱味でも握られてるの?」 「あ、そういうのとは全然関係無いです。確かにそんなものはいくらでも握られてそうだけど、それとはちょっと違います」 「ひょっとして少年、くまいちょーのこと大好きだったりなんかしちゃったりして?」 「ち、ち、違いますよ!」 な、なんですかそのニヤニヤ顔は。 ここで僕が動揺してはまた桃子さんに格好のネタを与えてしまう。だから僕は真面目な表情をつくる。 「熊井ちゃんの言うことはいつも正しいんです。だから彼女の言うことには従ってしまうわけで」 その僕の答えがピンと来なかったのか、ん? って感じで小首を傾げる桃子さん。 その仕草は、不覚にもかわいい!と思わされてしまった。 「そうかなー? くまいちょーってけっこう天然な子だなと思うけど」 「彼女の言ってることは、見当外れのこと言ってるようでも、実は本質を突いていたんだって後から分かることが多いんですよ」 ちょっと力を込めてそう言った僕に、桃子さんはうんうんと頷いてくれた。そして予想外に優しい顔を見せてくれる。 その顔は、妹を褒められたお姉さん・・ちょっと違うか・・メンバーを褒められたリーダーかな、そんな感じの顔だった。 その表情からはお互いの信頼感が感じられて、そういう関係にあるのっていいなあと思ってしまった。 もぉ軍団とはお互いを尊重しあう崇高な団体なんだYO、って言ってたのを思い出した(その時は話し半分にしか聞いてなかったけど)。 「あとは、条件反射ですね」 「条件反射?」 「昔のクセで。昔は熊井ちゃんの言うことに逆らうことの出来るやつなんかいなかったですから」 「みなさんが彼女と接するときの感じを見て、熊井ちゃんのこと、ほえーっとした温厚キャラだと思われてることがちょっと意外でした」 「うん、確かにそういうイメージ持ってる人が多いかもね」 「そりゃ確かに元から天然な人ですけど、昔はもっと怖かったのに。熊井ちゃん丸くなりましたよね、性格」 昔は本当に怖かったんですよ。 ま、今もじゅうぶん怖いけどさ、いろいろな意味で。 昔の彼女の怖さは、睨み付けられたり恫喝されたりはたまた殴られたり、ストレートに言えば暴力的な意味の怖さだったのに。 そうだよな。あの頃に比べると、熊井ちゃん本当に穏やかになってるよな。 「丸くなったかなぁ? 今でも怒ってる顔を見せることもあるけどね。筋の通ってないこととかは大嫌いみたいだから」 さすが桃子さんは熊井ちゃんのことを知り尽くしてるんだろう。 もうちょっと、熊井ちゃんのこと桃子さんがどう思ってるかそれを聞きたい。 「正義感(無駄に)強いからねーw でも、そういうところもくまいちょーらしくていいんじゃない」 「でもさ、ひょっとしたら変わったのはくまいちょーじゃなくて、周りの人達の方なのかもしれないよ」 「くまいちょーが大人になったんじゃなくて、周りの人達自身が大人になったから、そういう風にイメージが変わって見えるんじゃない?」 なるほど。 桃子さんの言うことには目からウロコが落ちた。 熊井ちゃんの感情の起伏っていうのは、周りのひとの人間性を映し出している鏡のようなものなのか。 つまり、熊井ちゃんが温厚なキャラに見えるとしたらそれは、この学園の人達自身が柔和な人達だっていうことの証明なんだ。 昔は相手が誰であろうと、お構い無しに感情をぶつけるような気性の激しい女の子だったのに。 今考えてみると、それはいわゆるクソガキな子供っぽい男子の相手をしてたからってことなのか。 その実害を受けてきた人間からすると、あんなに恐ろしかった女の子でも穏やかになるものなんだな、っていうのが正直な気持ちです。 大人になるってこういうことか。 でも、「三つ子の魂百まで」ってことわざにもあるように、人の性格っていうのはそう簡単には変わらないと思うんだよなあ。 つまり、今の熊井ちゃんは休火山のようなもので、落ち着いていても次いつ噴火するか全く分からないような状態っていうことなのだろうか。 怖すぎるだろ、それ・・・ それを想像して、僕は一人で背筋を冷やすのだった。 次へ TOP