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ぽこ ZEROPRO95 基本情報人物像 活動の記録スタートダッシュイベント期間 スタートダッシュ〜本選前の期間 4/20本戦直前アカBAN替え歌事件 本選イベント期間 名言集 基本情報 SHOWROOM リンク:ぽこのおうた部屋 Twitterアカウント:ZEROPOKO95 Twitter自己紹介 ZERO Project様の第3回魂オーディションに参加しております95番目のれいちゃん、「ぽこ」です。 歌をメインに活動していきたいと思っています\( ⍢ )/ 上記の通り歌うことを中心に配信中! 可愛い曲もカッコいい曲も力強い曲も綺麗に歌いこなす歌声は、ぜひ一度聞いてみてもらいたい。 特に好きな歌を楽しそうに伸びやかに歌う声は、きっと聴いていて楽しくなることでしょう。 BE MY BABY(COMPLEX)、デビルマンのうた(十田敬三)など男性ボーカルの曲をイケボでノリノリで歌うのも是非聞いてみてほしい。 なお、配信の最初にリスナーさんが誰でも知っている曲を考え、行き着いたのが国家「君が代」であった。 毎回配信の初めに歌ったり笛で吹いたりするが、政治的意図など全くない 人物像 好きなもの 好きなもの 「好きなことは、歌とアニメとゲームと食べること!」 とのこと。トークもこれらが中心になることが多い。 篠笛を吹けるのだが、「演奏しますね!」と言った後に紛失していることに気づき、急遽学校教材用と同じプラスチック製の篠笛を購入。 一年ぶりの演奏で感覚を失っていたが、それでも吹けるのが楽しいらしく終始テンションが上がっていた。 好きなもの、楽しいことについて話しているときの可愛らしい声を是非聞いてほしい。 好きなゲーム Tokyo7thシスターズ (初日にも歌ったり、れいちゃん(仮称)たちとナナシス(Tokyo7thシスターズの愛称)オンリーコラボをしたがるなど、ナナシス愛に溢れている。ライブの円盤もサイリウムを振りながらみたり、現場参戦したりする) スプラトゥーン 他のれいちゃん(仮称)と遊ぶことになったようだ。 好きなアニメ 魔法少女まどか☆マギカ けいおん! 物語シリーズ ヴァイオレット・エヴァーガーデン 好きなアーティスト 中島みゆき (歌を好きになったきっかけ) JUDY AND MARY COMPLEX BOØWY アーティストというわけではないがTokyo7thシスターズの楽曲がとにかく好き 好きなアーティストの余談 声優 田村ゆかりさんの美しい脚が好きとのこと 好きなVtuber (現時点で判明している方のお名前のみ) 周防パトラ 周防パトラ様作曲「イヤイヤちゃんのうた」をぽこさんが歌ってみた スタートダッシュ期間の配信では可愛い歌を可愛く歌うことに恥じらいが残っていたが、この歌は原曲に寄せてかなり可愛く歌っている。 1分もない短い曲なのでぜひ気軽に聞いてみてほしい。 まだまだ底が見えない。 オーディションのスタートダッシュ期間という、人間性を深く知るには短すぎる時間ゆえ底が見えないのは普通だが… 「幼いころにバッドエンドにハマってしまって、それから好みが歪んでるんだと思うですよねw」 「クソアニメ好きなんですよー。ポプテピピックさん…ポプテピピックは表面上のクソアニメだと思ってるんです。内面的なクソアニメがありまして、皆さんご存知か分からないですが、ダイナミックコード(DYNAMIC CHORD)っていう…」 金色のガッシュベルの挿入歌、「チチをもげ!」を歌い、そのままおっぱいトークへ。女子の友達にアンケートをとってみたことがあるが、お尻派より胸派のほうが多かったとのこと。…何してるんですか? まだまだ奥が深そうだ。 活動の記録 スタートダッシュイベント期間 配信の思い出 上記の通り歌うことを中心に活動 初日の曲目 君はロックを聞かない (あいみょん) 貴方解剖純愛歌 (あいみょん) ヒッチコック (ヨルシカ) God knows...(平野綾/涼宮ハルヒの憂鬱) お願い!シンデレラ (シンデレラガールズ/アイドルマスターシンデレラガールズ) SAKURA (WITCH NUMBER 4/Tokyo7th シスターズ) スタートライン (777☆SISTERS/Tokyo7thシスターズ) 千本桜(黒うさP) シャルル(バルーン) 今まで歌った曲一覧(順不同) BE MY BABY(COMPLEX) マリーゴールド(あいみょん) motto☆派手にね!(戸松遥) MELODY IN THE POCKET(777☆SISTERS) カラフル(ClariS) ヒトリゴト(ClariS) ソラニン(ASIAN KUNG-FU GENERATION) ふでペンボールペン(放課後ティータイム) 五月雨20ラブ(放課後ティータイム) アンインストール(石川智晶) デビルマンのうた(十田敬三) はじめてのチュウ(あんしんパパ) 瞬き(backnumber) 生きていたんだよな(あいみょん) 今夜このまま(あいみょん) コネクト(ClariS) Make☆it!(i☆Ris) Star☆Glitter(セブンスシスターズ) 1925(とみー) 以下随時追加 Twitterの思い出 Twitter自己紹介 ZERO Project様の第3回魂オーディションに参加しております95番目のれいちゃん、「ぽこ」です。 歌をメインに活動していきたいと思っています\( ⍢ )/ スタートダッシュ〜本選前の期間 配信の思い出 ナナシス楽曲縛りで歌い倒したこと 篠笛を吹けると豪語したものの、無くしていたことが発覚。急遽取り寄せ後に奏でたメロディは美しい笛の音色とは程遠いものだった… (↑ご本人が書いたようだ) 4/20本戦直前アカBAN替え歌事件 「にんげんっていいな」の替え歌 「アカBANってやだな」爆誕 (※歌詞は全てコメントから。ぽこさんはそれを見て笑っていた) 運営見ていたかくれんぼ BANになった子一等賞 夕焼け小焼けでまた炎上 また辞退 いいな いいな 清楚っていいな 可愛い発言に まともなコメント こどもの視聴を待ってるだろな 僕もなろう 清楚になろう BAN BAN されたくないのに BAN♪ BAN♪ BANっ♪ 自称清楚→BANの話題→中島みゆき「ひとり上手」内で替え歌→「アカBANってやだな」爆誕 という流れであった この曲が直前の話題であったれいちゃんズだらけの大運動会のエンディングテーマに決定した Twitterの思い出 フォロワーさんが本垢より多くなりました。 皆さん応援ありがとうございます (↑おめでとうございます!) 本選イベント期間 配信の思い出 ここに追記をお願いします! Twitterの思い出 ここに追記をお願いします! 名言集 「皆なんで清楚が逃げたって言うんですか!清楚は居るでしょここに」 「次の曲何にしようかな〜。地上の星!地上の星と目が合った!」 「皆さん女児だったりしますー?」
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おうたをうたったけっかがこれだよ! 16KB 「おうたをうたったけっかがこれだよ!」 晩秋、昼間でも半そでは少し寒くなった時期 大きな街の公園、ビルの隙間にぽっかりと浮かんでいる場所があった その公園の端、トイレの建物の蔭に薄汚いダンボール箱が倒れたまま鎮座している その中にすっぽりと挟まる様に入っている数匹のゆっくりがいた 「ゆゆーん♪おちびちゃんたち!きょうはおうたをうたいにいこうね!」 「ゆっきゅりわかっちゃよ!」 「まりしゃもおうちゃをうちゃうんだじぇ!」 「ゆゆーん!れいみゅがいちばんじょうじゅなんぢゃよ!」 「なにいってりゅんだじぇ!まりちゃがいちばんじょうじゅなんだじぇ!」 そこには親と思わしきゆっくりが一匹、その周りに子ゆっくり程のサイズのゆっくりが4匹体を擦り合わせて箱の中にぴったりと納まっていた 成体はれいむ種、子れいむが二匹と子まりさが二匹ずつと言った構成だ 少々珍しいのは子ゆっくりが四匹も父親役のゆっくりがいない状態で成長しているという事だ 周知の通り街に住んでいるゆっくりは短命(期限?)である 往々にして「おうち宣言」「公園の花壇を荒らす」「人間に対して襲いかかる」「人間に対し高慢な態度で何かを要求する」 こう言ったゆっくりは人目にも憚らず迷惑なため加工所行きになったりそのまま潰されるといった事が多いのは周知の事実だ さてこのれいむはいわゆる「捨てゆっくり」である 銀バッジ認定試験の規格スレスレを取った安いゆっくりであったれいむは運がいい事に飼われる事になった 捨てられた理由は全く普通、飼い主の反対を押し切って野良のゆっくりを飼えとせがんですっきりはしないという取りきめを破ったというのものだ れいむが見つけた野良ゆっくりはまりさ種だったが、すっきりが判明した途端に飼い主に叩き潰された れいむの方はと言うと暫く子ゆっくり達と飼われる事になったのだが、しつけが全くできていなかったため赤ゆっくりサイズから子ゆっくりサイズになるころにこの公園に放り出されたのが一週間前 手心と言うかなんというか、一週間分の食料も置いて言ってくれたのだがそれが尽きて途方に暮れたのが昨日の話 食料を求めてあてどなく街を彷徨うれいむ一家は衝撃的な物を目にする それはとてもゆっくりしたお歌を歌うゆっくり達だった、通行人は殆どが立ち止まり、あまあまさんを置いていくのだ 行儀よく一瞥すると、そのゆっくり達は人間についてどこかへ行ってしまった れいむは革新した、お歌の上手な自分とその子供たちならあまあまさんをたっぷりともらえると そのゆっくり達は歌を歌う専用のトレーニングを受けた飼いゆっくりだったのだがそんな事は餡子脳では考えられず、自分たちの方が上手いと根拠のない自信を持って決行しようとしている と、言うわけで日も昇りきった朝、れいむ一家は自身の巣から勢いよく飛び出し、公園のベンチの上に飛び乗った まだ人は少なかったが昼頃になるともっと人が集まってくることをれいむは知っていたからだ 「ゆ!まだにんげんさんがあつまってないよ!おちびちゃんたち!いまのうちにれんしゅうしようね!」 「「ゆっきゅりわかっちゃよ!」」 「「ゆっきゅりわかっちゃんだじぇ!」」 「まずはおかーさんがおてほんをみせるね!あとについてうたってね!ゆ~♪」 「「ゆ~!ゆっきゅり~!ゆゆ~!」」 れいむは体を上下に伸び縮みさせながら声を出す、子ゆっくり達もそれにならって体をゆすってリズムらしきものを取りながら声を出し始めた その歌声は素晴らしいと言うにはほど遠く、全くお話にならない程の物だった 音程は滅茶苦茶で声は甲高い、声同士の統率がとれている所かてんでバラバラで傍から見れば凄まじくうるさい音を立てて喚いてるようにしか見えなかった 数少ない公園にいた人間たちは一様に眉をしかめて立ち去ってゆく、ついには人が全くいなくなってしまった 当のれいむ一家はそんな事には全く気付かず、歌という名目の騒音を撒き散らしていった 「ゆゆーん!おちびちゃんたち!すごいじょうずだよ!さすがはれいむのこどもだね!」 「ゆ!きゃわいくちぇごめんにぇ!」 「まりしゃはまりしゃなんじゃからとうじぇんだじぇ!」 「まりしゃじょうじゅだっちゃよ!しゅーりしゅーり」 「ゆゆー!れいみゅもじょうじゅだったんだじぇ!しゅーりしゅーり!」 一旦休憩を取ったのだろうか、子ゆっくり達はそれぞれ別の行動をとっている 体をグネグネとくねらせたり、すーりすーりをしたり、親れいむと同じように体を上下に伸び縮みさせのーびのーびをするなど 元は飼いゆっくりだったとはいえ一週間も外でいたゆっくりだ、外見は野良ゆっくりと全く変わらず小麦粉の皮はドロが付いて薄汚れており、底部はススが付いたのかネズミ色所か黒く汚れている そのくせ、飾りのリボンや帽子だけは手入れしたのかピカピカなのが更に違和感となって悪い面で目立たせる要因となっている あのレベルの騒音を出しておいてこの風貌だ、誰だって見れば怒るだろう 凄い形相の青年がズンズンと荒っぽい足つきで近づいて来た、とても歌声に感動したとかそんな理由ではなさそうだ 「おい!さっきからここで喚きやがって!声がでかくてうるさいんだよ!」 「ゆ?なにいってるの?れいむはおうたをうたってただけだよ?」 全く悪びれた素振りも見せずにその男の声に答える 「さっきからおうちゃをきいちぇちゃにょにあまあましゃんももってきょないなんてゆっきゅりできないじじいだね!ばきゃなの?しにゅの?」 「さっさとあまあましゃんをもっちぇきちぇね!れいみゅおこりゅよ!」 「まりしゃのびせいにしっちょしちぇるんだじぇ!おお、きょわいきょわい」 「まりしゃはちゅよいんだじぇ!いたいめをみちゃくなかっちゃらあまあましゃんをもっちぇくるんだじぇ!ぷくーっ!」 れいむの態度はまだましな方だった、捨てられたとは言え腐っても銀バッジだ、普通に会話が出来る程度は出来る 問題なのはその後ろの子ゆっくり達だった、あまあまを持ってこいと口々に罵る子れいむ二匹と好戦的な子まりさ二匹 さらにそんな態度を向けた相手が虐待お兄さんだった事が一番の不運だった 「ああ?さっきのがお歌?喚き散らしてるだけだろ」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおお!!!!れいむはいちばんおうたがじょうずだったんだよ!?」 「何が一番上手だよ、ギャグで言ってんのか?」 「ゆぐぐ!とにかくおうたさんをきいたならあまあまさんをもってきてね!はやくしてね!れいむはぐずがきらいだよ!れいむおこるよ!」 プクーッと空気を吸い込み大きく膨れて左右のピコピコを上下に揺らしながら威嚇する、都市部で生きるゆっくりが人間に対して最もしてはいけないことの一つだ その時点でこのゆっくりは山野から下ってきたか、捨てゆっくりかと言う事を察知した虐待お兄さんは、れいむではなく後ろで膨れたまま威嚇している子まりさを掴むと、力を込めて握る 「ゆぎゅううううう!!ぐるじいんだじぇええええ!!ばなずんだじぇええええ!!」 「ゆ!ゆ!やめてね!おちびちゃんをゆっくりはなしてね!」 「「おねえじゃああああああああん!?」」 ソフトボールほどの大きさの子まりさはヒョウタンの様な形になりながら底部の方を左右にグネグネと動かしている 口からは餡子が少量出ており、小麦粉の体からは玉の様な砂糖水がヌラヌラと噴き出している 虐待お兄さんは子まりさの言葉通りに手の力をゆるめて離しながら片手で帽子を取った、どうやら気づいていないようだ 「ゆぎゅぎゅ・・・ゆっぐりできないんだじぇえええ!!」 「おねえしゃあああん!ゆっきゅりよくなっちぇね!ぺーりょぺーりょ」 「なにしゅるんだじぇ!ゆっきゅりできないじじいはゆっきゅりちね!」 「やめちぇね!いもうちょにいちゃいこちょしにゃいじぇね!」 体をベタっと潰してのた打ち回っている子まりさをぺーろぺーろする子れいむ、その前には子まりさと子れいむが虐待お兄さんを罵っていた れいむは只ならぬ虐待お兄さんの気配を感じ、子ゆっくり達に向けて叫びながら口を大きく開けた 「おちびちゃんたち!れいむのおくちのなかにはいってね!」 その声に反応してか子ゆっくり達は跳ねながられいむの口の中に入っていく、三匹入ったところで帽子のない子まりさが帽子がない事に気づく 「おぼうししゃんがないんだじぇえええ!ゆっきゅりできないんだじぇえええ!!」 「帽子ってこの小汚いのか?」 虐待お兄さんが手に持っている帽子を見せつける 「ゆ!ゆ!しゃっしゃとかえしゅんだじぇ!」 「おちびぢゃああああん!ゆっぐりもどっできでえええええ!!!」 れいむの制止を振り切り虐待お兄さんの方へと跳ねていき、舌をあらん限りに伸ばして垂直ジャンプを繰り返す 「人の事を悪く言うようなゆっくりには返しません」 そう言うとビリビリと帽子を細切れに破いて地面に落とす ヒラヒラと帽子だった布きれが落ちていき、その瞬間子まりさが凄まじい声を出す 「まりじゃのおぼうじがああああああ!!」 舌をうまく使いながら布きれを拾い集める 「ゆ!おぼうししゃんゆっきゅりもちょにもどるんだじぇ…どうじでもぢょらないんだじぇええええ!!」 虐待お兄さんは子まりさを両手でつかむと、髪の毛をブチブチと抜き始めた 砂糖細工でできているとはいえ結構力がいる、子まりさは縦に引き伸ばされてブチっと音がして抜けるたびにばねのように上下に伸び縮みする 「いじゃいんだじぇえええ!!まりじゃのぎゃみがああああああ!!」 すぐに抜けおち、何種か分からない禿げ饅頭が完成した、すかさず虐待お兄さんはポケットからライターを取りだして底部を綺麗に焼いていく 「あぢゅいいいい!!やべるんだじぇえええ!!」 脂汗の様な粘液を出しながら焼きまんじゅうの香ばしい匂いが漂い、すぐに底部は真っ黒焦げになる 地面に降ろされた頃には衰弱しきって地面に潰れたようになったまま体を伸び縮みするだけになってしまう 止めとばかりに子まりさを踏みつけると徐々に体重をかけて行った 「ゆぎゅうううううう!!ぐるじいんだじぇえええええ!!」 子まりさは平たく引き伸ばされながら、口から餡子を吐き出し、さらに底部の方の皮が裂け餡子が漏れ出し始める 足をどけると細長く平べったくなった子まりさが体をぐねらせながら 「あんこしゃん!ゆっきゅりとまるんだじぇ!」と叫んでいた 元気なようだが既に致命的に皮が裂けてしまっているために助かりはしないだろう 「さて次はそこのデカ饅頭だが…」 虐待お兄さんが振り返ると、れいむはすかさず口を閉じ、大きく膨れながら威嚇している 所々内側から「ゆっきゅりできりゅね!」「これであんしんぢゃね!」等と聞こえる辺りかなり楽観視している様だ 虐待お兄さんはれいむの右側のピコピコを片手で引っ掴むと、もう片手を握ってれいむの体に拳を叩き込む ピコピコを視点に膨れた体がグルングルンと回る、続けて何度も拳をれいむに叩き込んだ 「ゆぐ!ゆぐううううう!!」 中の餡子の形が不規則に変わったのか皮が薄くなって痣の様に餡子が透けて見えたり、凸凹に膨れていたりしている 虐待お兄さんはピコピコを振り上げるとそのまま地面に叩き降ろした 「ゆぐぇえええええ!!」 れいむが口を開き、餡子を吐き散らしながら中から子ゆっくり達が零れ出す、不規則にバウンドをして地面に転がる 虐待お兄さんはまったく手を休めずに何度も地面に叩き降ろす 「ゆべえええええ!!ゆがああああ!!やべでええええええ!!!」 暫くするとピコピコがブチっと抜けてそのまま地面に二度三度バウンドしてれいむの体が落ちる 「ゆひゅー…ゆひゅー…どぼじでごんなごどずるのおおお…!!」 片方のピコピコはきれいに根元から無くなっており砂糖細工の歯は折れて口腔に突き刺さっていた 皮はボロボロで凸凹にへこんでいたり膨れていたりしており、おまけに口の端に餡子が付いている 暫くは跳ねる事も満足にいかないだろう 「ゆっきゅるにげりゅよ!」 「おうちににげりゅんだじぇ!」 「まっぢぇえええ!れいみゅをおいでかないでええええ!!」 子ゆっくり達はと言うと、れいむを見捨てて一目散に同じ方向に跳ねていく、恐らくそこに巣があるのだろうか トイレの裏まで50m程、子ゆっくり達の速度なら急いでも2~3分はかかる距離だ 虐待おにいさんは先回りしてトイレの裏にある汚いダンボール箱を見つけると、ペシャンコになるまで踏みつける、 グシャグシャになったのを確認すると、再び振り返り、子ゆっくりの方へ向けて走り出した そうして向かってくる子ゆっくり達の内、遅れて跳ねていた一匹の子れいむを捕まえる 「ゆっきゅりはなじぢぇえええええ!!」 「は?一向に離しませぬが?」 手の中でモゾモゾと動く子れいむを見ながら、たすき掛けしたバックの中からチューブわさびを取りだした なんでそんなものを常備しているのかは謎だが、線を取り、子れいむのあにゃるにブスっと突き刺して一気にわさびを餡子に注入する そして虐待お兄さんは子れいむを地面に置いて距離を取った、子れいむは暫く無言でブルブルと震えているが、くわっと目を見開いて凄まじい声で叫んだ 「れいみゅのあにゃりゅぎゃあああ!!ゆびゅぼおおおお!!」 その瞬間うんうんが凄まじい勢いで放出された、子れいむは秋の青空向けてまるでロケットの如くうんうんを噴射して飛んでいく 約10秒後、ペシャっと小麦粉でできたペラペラの皮が地面に落ちた、その瞬間に横たわっていたボロボロのれいむが声を上げた 「でいぶのおぢびぢゃんがああああああああああ!!!!」 さらにもう一匹の子まりさを掴むと水道の蛇口に向かう 「やめりゅんだじぇ!やりゅなられいみゅにしゅるんだじぇえええええ!!」 やるなら子れいむにしろと言いながら体をぐねらせて抵抗する、虐待お兄さんは子まりさの口を蛇口に突っ込んで口当たりを絞るように握る そして一気に蛇口をひねって水を出した一気に水が子れいむに流れ込む 「ゆびゅぼぼぼぼぼ!!」 奇声を発しながら子れいむは大量の水を飲み込んでいく、どんどん体は膨張し、ついにはバスケットボールサイズにまで膨れる 皮はパンパンにひきつっており、まるで気球の様になっていたその時、限界が来た 「ゆびゅぼん!」 最後にそう叫ぶと子まりさは、水風船の如く爆散した 辺りには水っぽい餡子が飛び散り、上に向いた蛇口が無常に水を流し続ける 虐待お兄さんは蛇口をひねって水を止めると、今度は木の周りに落ちた枯れ葉を地面の土ごと集める 落ち葉と土が3・7程度の割合になった 虐待お兄さんはそのまま残った子れいむを掴んで口をこじ開けると、落ち葉と土を一気に詰め込んで口を閉じる、餡子を吐き出さないようにするためだ 「ゆぐぐぐ・・・!」 体がふた回りも大きくなる程に詰められて、寒天の目を血走らせ水雨の粘液を体から噴出させて体をグネグネとよじらせる 暫くすると体がプルプルと震えだした、それを合図に虐待お兄さんは子れいむを地面に置いた その瞬間子れいむのあにゃるからうんうんが吹き出した、水の様にしーしーと出るがこれは立派なうんうんだ 「ぐるじいいいいい!!うんうんがとみゃらにゃいいいいいい!!」 餡子が薄められたお陰で死ぬほどではないが勢いよく水の様なうんうんを放出してねずみ花火の様にブレイクダンスをかましている 赤ゆっくりは柔らかい物を食べないと餡子に吸収しきれず消化不良を起こす事がよくある 多少強くなったとはいえ子ゆっくりにも当てはまる事だ、特に土や枯れ葉の様な物を大量に飲み込んだ場合は餡子ごと吐き出す しかし、それを抑えられ無理やり餡子に変えた場合はどうなるか?同じように消化不良を起こすのだ 暫くするとうんうんの勢いは弱まり餡子が抜けたのか皮に皺が出来て一回りも小さくなった子れいむは力なく這いずるだけだ れいむ一家を襲ったすさまじい悲劇の張本人である虐待お兄さんはもう満足したのか暫くするとどこかへ行ってしまった 残ったのは底部が真っ黒焦げに焦げた上に底部が裂けて餡子が漏れ出している禿げ饅頭の子まりさとゲッソリと餡子が無くなってやつれた子れいむとピコピコが片方無くなった上にボロボロになったれいむだけだった れいむは体をずりずりと這わせながら子まりさの方へ向かう、子れいむもれいむを目指して這って行った 「ゆ”!ゆ”!いぢゃいんだじぇえええ…!」 「おちびちゃんゆっくりよくなってね…ぺーろぺーろ…」 「ゆ”ゆ”ゆ”!じみりゅんだじぇええええ!!」 「おなぎゃがいぢゃいいいいい!!」 「ゆ”!とにかくおうちさんでゆっくりしようね…」 れいむは子まりさを口の中に入れると巣の方向へ力なく這っていく 子れいむも後ろについてずるずると這っていく、10分もすると巣があった所に就くことができた 「どぼじでおうぢざんがなぐなっでるのおおおおおお!!」 れいむは驚いた、ダンボール箱がペシャンコに踏みつぶされていたからだ 綺麗にまっ平らになったダンボール箱はゆっくりには修復不可能だ 無論、備蓄なんてある筈がない、しかもご丁重に弾いていた古タオルまでどこかへ行っているのだ この時期は夜はかなり冷え込む、ゆっくりにとって巣なしで夜を明かすのはかなり危険であった 途方に暮れたままれいむ一家はダンボール箱の上で体を休める 夜になる頃には戦場のような逓送を擁していた 「ざむいいいいいいいい!!!」 ガタガタとれいむが震えている、壁側とれいむの体に挟まれて比較的風が当たらない子れいむと子まりさも震えていた 子れいむの方はさらに深刻で、冷やされたのか再びうんうんが止まらなくなっていた 「うんうんがとみゃらにゃいよおおおお!!ゆぎいいいいい!!」 「ゆ”…!ゆ”…!」 噴き出すほどの勢いはないものの、水の様なうんうんが辺りにまき散らされる、動けない子まりさの体にも掛かって凄まじい絵面になっていた さらに子まりさの方は時折くぐもった声を出して体をクネクネと動かすだけで反応がなくなりつつあった 「ゆゆ!うんうんさんゆっくりとまってね!ぺーろぺーろ」 「なべないじぇえええええ!!ゆぎいいいいい!!」 れいむが子れいむのあにゃるをぺーろぺーろする 山野のぱちゅりー種の様に薬草の知識がないゆっくりにとって治療とはこのぺーろぺーろであるが、それが刺激となってさらなるうんうんの輩出を促してしまう結果となっていた 既に子れいむはふた回り近く体がしぼんで居てもっちりとしていた皮はひび割れすら起こってカピカピになっている それでも餡子自体はそれほど減ってはいないのだ、しかし見る見るうちに目減りしていっている、対策を講じなければ明日にでもパサパサとした乾いた饅頭になってしまうだろう 最悪には最悪が重なるもので、今度はポツポツと雨が降り始めている 今のところはそれほど降っていないが結構な霧雨になりそうだ 少し筒雨脚が強くなって生きている、溶けはしないもののさらに冷え込みはじめた 「あめざんゆっぐりどまっでね!ゆうう・・・!おちびちゃんたちはれいむのおくちのなかにはいってね!」 舌で拾い上げると口の中に子ゆっくりを入れてひたすら寒さに耐える、餡子を吐き出し弱った体に冷たい横風と霧の様な雨が更にれいむの体力を奪っていった 寒天の目を血走らせ砂糖細工の歯を食いしばりながらひたすら寒さに耐える、昼に見ても腰を抜かすような怖さだ 結論からいえばれいむ一家は朝日が昇るころには物言わぬ饅頭となり果てていた 秋雨と風によりれみりゃの襲撃は防げたが、餡子が少なくなった体ではその寒さに耐える事が出来なかったのだ しかも霧雨だったので一気に溶けるのではなく少しづつ少しづつ溶けて行っていた デロデロに溶けたわけではないが口らしき穴をぽっかりと開けたまま泥にまみれた丸っこい何かが転がっているだけの様に見える 中にはカピカピにひび割れた小麦粉の皮と餡子が飛び出た饅頭があった 片方の方はリボンなどでれいむ種だとかろうじて分かるがもう片方は何種かすら分からない こうしてれいむ一家は壮絶な幕切れでゆん生を終えたのだった トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る やはり現役の金バッジ以上でないと、自分の何が悪かったのか理解出来ないんだね~わかるよ~ しかし飼い主も最後まで処理しないのはゆっくりできないですね~おぉ、怠慢、怠慢~ -- 2018-01-23 08 33 28 縺薙l隱ュ繧薙〒蜃コ縺励■繧?▲縺溘●? -- 2016-12-29 12 53 22 かんそうさんはとてもおもしろかったよ!あいではきしょうしゅさんでぎゃくったいはつうじょうしゅがすきだよ!まりちゃはちゅよいー!いっちばんちゅよいー! -- 2016-09-02 15 55 47 げんじつにもゆっくりがいたらいいのにね!きめえまるをかってれいみゅたちをきめえまるといっしょにぎゃくったいしたいよ! -- 2016-09-02 15 53 23 迷惑行為をしながらいい事したと思っている輩は現実にもいるからなあ そういう人になってはいけないというきょうっくん!だね -- 2016-01-14 16 54 40 騒音を撒き散らしたんだからとうっぜんの末路だね! -- 2015-06-11 21 18 08 ぺーろぺーろで治ると思う頭がチンポンカンだにぇ -- 2015-02-22 20 03 10 わさびか… -- 2014-09-23 22 16 46 水風船か、参考になりますねぇ・・・(^U^) -- 2014-08-01 12 49 11 野良一家虐待なんだねー。わかるよー -- 2014-06-10 21 54 18 ゆぎゃく神 -- 2014-05-23 23 05 55 うんうんがとみゃらにゃいよぉ よかったね -- 2014-05-01 22 23 32 やっぱりゲスな糞袋が苦しみぬいて死ぬのは何度見ても興奮するね!! -- 2012-11-09 02 18 50 途中で読めなくなったり、子まりさと子れいむが入れ替わったりしてるw -- 2012-09-26 19 06 25 久しぶりにすっきりー!できる作品だった -- 2012-07-31 00 14 45 やっぱり馬鹿だな -- 2012-07-11 20 28 53 うんうんが止まらないSSさんは ゆっくりできるね。 うんうんろけっとさんは最高にゆっくりできるよ~。 -- 2012-05-04 22 05 32 うんうんで約10秒も滞空し続けられるとか どんだけ推進力あるんだよw -- 2011-12-14 04 56 35 お兄さんがわさびを持ってるのは常識、エチケットの類じゃね? -- 2011-10-13 00 25 01 ゲス赤ゆ子ゆ虐待は本当にすっきりーする -- 2011-07-06 20 52 22
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「ゆうぅ・・・・・・ゆぐっ・・・・・・ゆぅぅぅ・・・・・」 お歌を歌い終え、力無く泣いているまりさに、女がいつものように オレンジジュースと水溶き小麦粉で補修を施している。 お歌が終わった後は、透明な箱に戻され、 お歌を歌わなかった子のご飯とは違う、 少し美味しいご飯とあまあまを与えられ、それでお終い。 お姉さんが部屋から出ていき、部屋は元の真っ暗闇。 だが、今日はそれが違っていた。 女は補修を終えたまりさを抱えて、再びソファに腰を下ろした。 「ゆ・・・・・?」 今日二度目の、いつもと違う事に、まりさがまだ涙を流したまま、 お姉さんの顔を見上げる。 その瞳に、お姉さんの優しい笑顔が写る。 まりさに向かって、お姉さんが口を開いた。 「ねえ、まりさ。まりさ、赤ちゃんを産みたくない?」 「ゆ・・・・・あか・・・ちゃん・・・・・・」 赤ちゃん。 小さくて、可愛くて、とってもゆっくりできる、ゆっくりの赤ちゃん。 まりさの妹のれいむも、とっても可愛くて、ゆっくりできた。 赤ちゃんがいれば、ここの苦しくて痛くて、ゆっくりできない生活も、 少しはゆっくりできるかも。 ううん、きっと、ゆっくりとした、可愛い赤ちゃんを見れば、 お姉さんも、ゆっくりしてくれるかもしれない。 そうだ。きっとそうだ。そうに決まっている。 そして、昔の、優しいお姉さんに戻ってくれる。 赤ちゃんと、お姉さんと、まりさで、いっぱい、いっぱい、ゆっくりできる。 「ゆっ!!ほしいよ!!まりさ、あかちゃんほしいよ!!! うみたい!!あかちゃん、うみたい!!!」 何度も裏切られたであろうに、垂らされた細い糸に縋ろうと、 必死で懇願をするまりさ。 「そう。じゃあ、行きましょうか。」 柔らかい笑顔でそう応えて、お姉さんがまりさを抱えて立ち上がり、歩き出す。 いつもの、壁の透明な箱にではなく、入り口の扉に向かって。 その光景に、部屋の他のゆっくり達がざわめく。 声を出すことなく、空気がざわめく。 羨むような視線で、まりさを目で追ってゆくもの、 選ばれたのが自分ではなかった事を悔やみ、落胆の表情を見せているもの、 どこか安堵を浮かべた表情でまりさをみつめているもの、 まりさに向かって人をも殺せそうな嫉妬の視線を送るもの、 ただ虚空を見つめているもの。 「・・・ゆっ!!まりさなんかより、れいむをたすけてね!! れいむはこそだてとくいだよ!! まりさなんかより、ずっとずっと、かわいいあかちゃんうむよ!!」 耐えきれず、一匹のれいむが声を張り上げた。 禁を犯して。 女がそのれいむの方を振り返る。 その顔には、まりさに向けていた笑顔は貼り付いていない。 「ゆひぃっっ・・?!」 向けられた、魂すらも凍えそうな冷たい視線に、 れいむは己が取り返しのつかない過ちを犯したことを知った。 こうして、まりさは、"仲間"達からの様々な視線に見送られ、 数ヶ月ぶりに、その部屋の外に出た。 -------------------------------- 「ゆっ!まりさ、がんばって、かわいいあかちゃんうむよ!」 誰もいない部屋で、一人楽しそうに笑顔を浮かべながら、 まりさが語っている。 ゆっくりできない部屋から出されたまりさは、 昔、お姉さんによく遊んでもらったお部屋に連れてこられた。 「お姉さん、少し出かけてくるから留守番しててね。」 「ゆん!まりさ、いいこでまってるよ!おねえさん!!」 そう言って外出したお姉さんの帰りをそわそわとしながら待つ。 しばらくすると、お姉さんが戻ってきた。 「ただいま~ごめんね、まりさ、待ちくたびれちゃった?」 「ゆゆん!だいじょうぶだよ!まりさ、いいこで・・・ゆっ!?ゆゆぅ~!!」 お姉さんが抱えていた、成体のれいむに、まりさは目を奪われる。 どこかの飼いゆっくりか、或いは、ペット用として売られているものか、 きちんとした身なりをした、とても綺麗な美れいむであった。 「まりさのお友達になってくれる、れいむよ。仲良くしてあげてね。」 微笑みながら、お姉さんが、れいむをまりさの横に置く。 「「ゆっくりしていってね!!」」 二匹が同時に挨拶を交わす。 「ゆぅぅ~~!れいむはとってもゆっくりしてるね!!」 「ゆっ!まりさもゆっくりしてるよ!!」 お姉さんは、仲良く会話を始めた二匹に美味しいあまあまを出してくれた後、 二匹を残して部屋から出て行った。 「れいむ゛ぅぅぅぅぅ!!!まりざ、ずっぎりじぢゃうぅぅぅ!!!」 「まりざぁぁっ!!れいむ゛ぼっ!!れいむ゛もぉぉぉぉぉぉ!!」 「「すっきりぃぃぃぃぃーーーー!!!!!!!!!」」 お互いの事を気に入って楽しそうにはしゃいでいた二匹であったが、 やがて、あまあまに混ぜてあった少量のゆっくり用媚薬の効果もあり、 いい雰囲気になって、すっきりを交わした。 目論み通り、にょきにょきと、 まりさの帽子を押し上げて蔦が伸びるのを確認してから、 女はその光景を覗いていた扉の隙間を閉じた。 -------------------------------- 「ゆぅん・・・・・・ゆ・・・・ゆっ!?れいむは?」 部屋の窓から差し込む赤い夕日の中で、 すっきりーの疲れから眠りに落ちていたまりさが目を覚まし、 パートナーとなったれいむの姿を探して、辺りを見回す。 だが、その部屋にいるのは、お姉さんと、まりさだけだった。 「ゆ・・・おねえさん・・・・」 「あら?まりさ、起きたの?ゆっくり眠れた?」 「うん・・・ねえ、れいむは・・・?」 「れいむはね、初めて来るお家で、緊張して疲れちゃったみたいだから、 他の部屋で眠ってるわ。明日には起きてくるんじゃないかしら?」 「ゆっ?そうなの?」 「ええ、そうよ。・・・まりさの赤ちゃん、早く生まれてくるといいわね。」 お姉さんが、そう言って、まりさの頭から生えた蔦を ちょんと突いて揺らす。 「ゆ・・・ゆゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・!!!!」 その言葉に初めて、新たな命を得た、まりさの赤ちゃん、 実ゆっくりの存在に気づく。 まだ、完全なゆっくりの形を形成しきっていないが、 目や口らしき物ができはじめている。 それが、10匹。 「ゆぅぅぅぅ・・・!!まりさのあかちゃん!!かわいいよぉぉぉ・・・ あかちゃんたち!!ゆっくりうまれてね!!!」 顔ができあがっていない実ゆっくりでも、赤ちゃんの顔の判別がつくのか、 嬉しそうに、まりさがはしゃぐ。 勿論、まだお口が完全にできていない実ゆっくり達は、返事を返さないが、 それでも微かに笑っているように見えた。 「おねえさん!みて!みて!まりさのあかちゃんだよ!! とってもかわいいよぉぉ!!」 「そうね。とてもゆっくりとした可愛い赤ちゃんね・・・ 見てるだけで、お姉さんもゆっくりしてきちゃう。」 お姉さんの優しい微笑みに、 まりさの今までの辛く、苦しい思い出が洗い流されてゆく。 とっても痛かったけど、とっても苦しかったけど、 でも、もう忘れよう。 お姉さんは、やっぱり、優しいお姉さんだった。 昔の優しいお姉さんに戻ってくれた。 これからは、皆でゆっくりしよう。 お姉さんと、赤ちゃん達と、れいむと。 ポロポロと、辛い記憶と共に、まりさの目から涙が流れ落ちる。 「・・・まりさ、お腹空いたでしょ?晩ご飯、何が食べたい? 何でも好きな物作ってあげる。」 「ゆ・・・ゆぅぅ・・・・!ゆぐっ・・・!まりさ、しちゅーがたべたい!! おねえさんがつくってくれた、 あったかい、しちゅーがたべたいよぉぉ・・・!!」 まりさが泣きながら、そう答える。 初めてこのお家に来たとき、お姉さんが食べさせてくれた、 とてもおいしくて、冷え切った餡子があったかくなった「しちゅー」。 今の季節は既に春。 ポカポカと暖かい日だったが、 辛く苦しい地獄のような生活を送っていたまりさの心は、 その温かいご馳走を何よりも渇望した。 「はいはい、シチューね。いいわよ。お姉さん、腕によりをかけて作るわね。」 その晩は、まりさは、お姉さんと一緒に 暖かくて美味しい「しちゅー」を一杯食べ、 デザートの、甘くて美味しい餡蜜を食べ、 それから、可愛い赤ちゃんを一緒に眺めたり、呼びかけたりしながら過ごし、 やがて、幸せな眠りに落ちていった。 -------------------------------- 翌日の昼近く、まりさが目を覚ます。 「ゆぅん・・・・・ゆっ!ゆっくりおきたよ!!」 そして、頭上の赤ちゃん達を見やる。 親の栄養が十分に伝わり、すくすくと大きく育った、実ゆっくり達。 既に目も口も飾りもしっかりと形成されている。 赤れいむが5匹に、赤まりさが5匹。 もう程なく、生まれ落ちることだろう。 「ゆぅ・・・まりさのあかちゃん・・・!まちどおしいよぉぉ・・・!」 芽生えたばかりの母性に満ちた瞳で赤ゆっくりを見つめる。 その時、部屋の扉が開いて、お姉さんが入ってきた。 「まりさ、おはよう。もう起きた?」 「ゆっ!おねえさん、おはよう!!ゆっくりしていってね!」 「はい。ゆっくりしていってね。」 まりさに返事をしてから、赤ゆっくりに視線を移す。 「あら・・・もう少しで産まれそうね。急がなきゃ・・・」 そう呟くと、慌ただしく部屋を出て行ってしまった。 「ゆ・・・・・?」 少し寂しそうに疑問の表情を浮かべたまりさだったが、 すぐにお姉さんは戻ってきた。 何かの道具が入った箱を持って。 「ゆぅぅぅ・・・・・おねえさん、まりさのあかちゃんになにしてるの・・・?」 少しだけ不安そうな声色で、まりさがお姉さんに疑問の声を投げかける。 「これはね、赤ちゃんの体をとっても丈夫にしてくれるお薬なのよ。 赤ちゃんのお体はとっても弱いでしょ? でも、このお薬を塗ると、赤ちゃんの体が頑丈になって、 簡単には、傷ついて餡子を出しちゃったりしなくなるのよ。」 お姉さんは、まだ茎に繋がった実ゆっくりを、一匹一匹、順番に 透明な液体の入った小さなコップに浸している。 その粘性の高いドロリとした液体が、実ゆっくりの肌に厚い層を形作る。 「ゆぅぅぅ・・・!じょうぶにぃ・・・!?すごい!?すごいね!!お姉さん!」 お姉さんの作業を邪魔しないよう、嬉しくて飛び跳ねたい気持ちを抑えて、 プルプル震えながら、まりさがはしゃぐ。 「そう。凄いでしょう。 これはね、死んじゃったお姉さんのお友達のお兄さんが考えてくれたのよ。」 今度は、ドロリとした液体に包まれた実ゆっくりを、別のコップに浸す。 すると、たちまちドロリとした液体は硬化を始め、 実ゆっくりをすっぽりと包んだ状態で固まった。 「ゆぅぅ・・・そうなんだぁ・・・! きっと、そのおにいさんは、あかちゃんがだいすきだったんだね!!」 「ふふふ・・・ええ、そうね。とっても赤ちゃんゆっくりが大好きだったわ。」 お姉さんは、さも可笑しそうに笑った。 女は何一つ嘘は言っていない。 男は赤ちゃんゆっくりが大好きだった。 赤ちゃんゆっくりを潰すのが大好きだった。 己の命と引き替えにする程にまで。 その男が、己の欲求を満足させるために考えた虐待方法。 赤ゆを弾力性のあるゴムで包み込み、 力一杯踏み潰しても容易にゆっくりの命の源である餡子を漏らさないようにする。 踏み潰され、体がひしゃげ、たわむ、 その苦しさに悲鳴をあげる赤ゆっくりの命を奪うことなく、 何度も何度も踏み潰して悲鳴を聞く事を繰り返せるように。 男の亡骸の周りに散らばっていた、ゴムで包まれた無数の 赤ゆっくりの死骸から、虐待仲間達は、男がやっていたであろう、 その虐待の内容を知ることになった。 そして、男の死出の旅立ちを送るため、仲間達は、銘々、 ゴムで包んだ赤ゆを用意することを申し合わせていたのだ。 だから、女は、このまりさの赤ゆを男に送ることにした。 男が何らかの関わりを持ったであろう一家の、このまりさの赤ちゃんを。 -------------------------------- 「ゆぅん♪ゆゆ~ん♪まりさのあかちゃん♪」 それから、まりさは、一時間ほど、赤ゆっくりを嬉しそうに眺めていた。 不意に、一匹の赤まりさが、閉じていた目を初めて開いた。 「ゅ・・・ゆっきゅりしてっちぇにぇ!!」 母であるまりさの姿を目にすると、元気良く、 最初のゆっくりしていってね!を口にする。 「ゆぅぅ・・・あかちゃぁん・・・!ゆっくりしていってね!!」 初めての赤ちゃんの誕生に、感動に身を震わせながら、 まりさがご挨拶を返す。 本来なら、蔦から落ちた後で、喋り始めることが多い赤ゆっくりであるが、 この赤ちゃん達の場合、蔦の付け根の部分まで、 ゴムで覆われ、しっかりと蔦に固定された状態だったため、 蔦から落ちることができなかったのだ。 赤まりさと母まりさの声に反応するかのように、 他の赤ゆっくり達も次々に目を開ける。 「ゆっきゅりしちぇっちぇね!!」 「ゆっきゅりしてっちぇね!!」 「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!!」 母まりさとご挨拶を交わしてゆく、赤ゆっくり達。 すぐに部屋の中は、 ゆ~♪、おきゃーしゃん♪、ゆんゆん♪、ゆっきゅりしてっちぇにぇ♪ と言った、赤ゆの声で賑やかになる。 「まりさー・・・あら?生まれたのね?」 部屋に戻ってきたお姉さんが、赤ゆっくりの声に気づく。 「ゆっ!うまれたよ!みんな、げんきなあかちゃんだよ! あかちゃんたち!まりさのおねえさんに、げんきよくあいさつしてね!!」 「「「おねえしゃん!ゆっきゅりしてっちぇにぇ!!」」」 綺麗に揃った、ご挨拶をする赤ゆっくり達。 お母さんよりも大きな、人間のお姉さんをゆわわぁぁぁ~♪と 瞳を煌めかせながら見上げている。 「ふふふ、ゆっくりしていってね。」 お姉さんも笑顔で答える。 そして、赤ちゃんが繋がったままのまりさを、ひょいと抱え上げた。 「ゆ?」 「まりさ、お姉さんと一緒にお出かけしましょう。赤ちゃん達も一緒よ。」 「ゆ・・・おでかけ・・・・ゆっ!おそとにいくの!? まりさ、おでけかするよ!あかちゃんたちも、おでかけしようね!」 この家に来て以来、一度も外に出された事が無かったまりさが喜びの声を上げる。 「ゆぅ~・・・おじぇかけ・・・?」 「そうだよ!おそとにいくんだよ! おそとはとってもひろくて、ゆっくりできるよ!」 「ゆゅ!ゆっきゅりできりゅのぉ~?!」 「れいみゅも!れいみゅもおじぇかけしゅるよ!」 「ゆゆん♪おかあしゃんとおじぇかけぇ♪」 赤ゆっくり達も、まだ見ぬお外の光景にそれぞれに夢を膨らませて、はしゃぐ。 「ゆゆ?」 お出かけのため、玄関口で靴を履いているお姉さんの姿が いつもと違うことにまりさが気づく。 「ゆっ・・・!おねえさんのおようふく、まりさとおそろいだね!!」 「え・・・おそろい・・・?ああ、ホントね。お揃いね。」 一瞬疑問の声を上げたお姉さんだが、すぐにまりさの言わんとしている事に気づく。 自分の黒いお帽子とお揃いの黒いお洋服、ワンピースの喪服、に身を包んだ、 いつもよりもちょっと綺麗なお姉さんを、 まりさはキラキラと賞賛と憧れが籠もった目で見上げている。 「さあ、行きましょうか。まりさ。」 「ゆぅん♪おでかけ♪おねえさんとおそろいでおでかけ♪」 靴を履き終えたお姉さんに抱きかかえられ、 まりさは子ゆっくりのように嬉しそうにはしゃいでいた。 -------------------------------- 遠くに見える雄大な山々、 どこまでも広がる青い空とふわふわと浮かぶ白い雲、 一面に広がる緑の田畑。 そんな光景を眺めながら、まりさと赤ゆっくり達は、 ゆんゆん♪と賑やかに談笑しながら、お姉さんに抱かれて行った。 そして、目的地、葬儀場に辿り着く。 そこにいたのは、お姉さんと同じ黒の喪服に身を包んだ男女。 その顔は、皆一様に、悲しみに包まれている。 「ゆぅ・・・みんな、ゆっくりしてないね・・・どうしたのかな・・・?」 人間達の悲しみが伝染したか、まりさも少し悲しそうにお姉さんに尋ねる。 「・・・ここはね、死んじゃったお兄さんをお見送りする所なの。 だから、みんな、お兄さんの事を思い出して悲しい気持ちになっているのよ。」 そう答えるお姉さんの表情も、どこか悲しそうであった。 「ゆぅん・・・・・・」 「だから、まりさもちょっとの間だけ、静かにしててね。赤ちゃん達もね。」 「ゆっ!まりさ、ゆっくり、りかいしたよ! あかちゃんたちも、しー、だよ!」 「「「ちー、ぢゃよ!!」」」 漠然とだが、死者への追悼の気持ちを感じ取ったか、 素直に言うことを聞くまりさ。 赤ゆっくり達は、流石に理解できていないだろうが、 素直な赤ゆっくり達なので、お母さんの言いつけをしっかり守ろうとする。 -------------------------------- 控えの間で葬儀が始まるの待っている間、 まりさは、お姉さんの膝の上に抱かれていた。 不謹慎かもしれないと思ったが、まりさは幸せを噛みしめていた。 お姉さんが、優しいお姉さんに戻ってくれたことが。 可愛い赤ちゃんができたことが。 まりさは、幸せの絶頂にあった。 だから、お姉さんが、ハンドバッグから、針と糸を取り出した時も、 その様子を楽しそうに眺めていた。 それで、まりさのお口を縫い合わせ始めた時も、 痛かったけど、じっと我慢していた。 いたいよぉ・・・おねえさん。 そんなことしなくても、まりさ、ちゃんとしずかにしてるよ! まりさはいいこだよ!まりさ、もう、おかあさんなんだもん! 少し涙が出てしまったけど、それでも、まりさはにこにこしていた。 そうしていないと、今の幸せが逃げてしまうような気がして。 お口を完全に縫いつけられるまで、にこにこしていた。 -------------------------------- やがて葬儀が始まる。 時折、人々の嗚咽が流れる、しめやかな空気の中、厳かに儀式は進んでゆく。 そして、納棺。 席を立ち、棺に向かって歩くお姉さんに抱えられたまりさ。 目の前に集まった人間さん達は、みんな、何かを持っている。 あれは・・・赤ちゃんだ。ゆっくりの赤ちゃんだ。 可愛い赤ちゃんだけど、何人か、泣いている子もいる。 「・・・・・・・・・?」 お口を開けないので、お姉さんに視線で訴えかける。 お姉さんは、その視線に気づく。 いや、その視線が向くのを、待っていた。 そして、まりさの耳元に小さな声で囁く。 「あれはね・・・死んだ人と一緒にね、その人の好きだったものを入れて、 一緒に埋めてあげるの。死んでからもゆっくりできるようにね。」 お姉さんが、棺の横に立つ。 「ゆぇぇぇん!はなしちぇぇ!!」 「やめちぇぇ!だしちぇぇ!」 「れいみゅを つぶしゃないぢぇ!つぶしゃないぢぇ!」 「ゆっ!つぶしゅのは、れいみゅだけに しゅるんだじえ! まりしゃは ゆっきゅり にがちてにぇ!」 「どぉぉちちぇ ちょんなこちょ ゆぅにょぉぉぉぉ!?」 何人かの人間さんが、持っていた赤ちゃん達を、 眠っている人間さんが入った箱の中に落としている。 赤ちゃんが入ってるよ? まりさがお姉さんに、目で語りかける。 入ってるわね。 とでも答えるかのように、お姉さんが優しい笑顔を返す。 死んだ人と一緒に その人の好きだったもの ゆっくりの赤ちゃんが大好きだったお姉さんのお友達 一緒に埋めてあげる 死んじゃったお姉さんのお友達 箱に入れられてる知らない赤ちゃん達 …まりさの赤ちゃん 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!!!!」 それらの言葉が繋がった時、まりさは開かない口で絶叫を放った。 「うちのゆっくりに今朝作らせたばかりの赤ちゃんよ・・・ 向こうで沢山可愛がってあげてね。」 女は、そう言いながら、暴れようとしているまりさを 左手でしっかりと抱きかかえ、 まりさの頭に伸びた蔦から、ゴムで包まれたまりさの赤ちゃん達を プチプチと毟り取り、棺に落としてゆく。 「おきゃーしゃーん・・・」 「ゆゆ、れいみゅおしょらをゆべっ」 「ゆっ?おきゃあしゃん、どきょいくの?・・・ゆぴゅっ!」 母親と離される事を悲しんだり、 ゆっくりできるお遊びと思ってはしゃいだり、 何も状況がわからず、ぽかーんとしていたり、 様々な反応を見せながら、赤ゆっくり達が棺に飲み込まれてゆく。 女の瞳から涙が零れ落ちる。 まりさも、次々に棺に収められてゆく可愛い我が子を呆然と見つめながら、 ブルブルと震えて涙を流している。 糸で結わえ付けられた口が千切れそうになる程、 何かを叫ぼうとしているが、それすらも叶わない。 10匹の赤ゆを棺に納めると、女が一歩退く。 遠ざかる、可愛い赤ちゃん達。 「ゆぁぁぁん!おきゃーしゃん!ぢょこいくのぉぉ!?」 「おいちぇかないじぇぇぇ!?」 「ゆぇぇぇん!!ゆぇぇぇぇん!!」 遠ざかる、可愛い赤ちゃん達の泣き声。 「さようなら。」 女が、永遠の別れの言葉を告げた。 「はぁ・・・はぁ・・・間に合ったか。ほらよ、三途の川の渡し賃代わりだ。」 息を荒くしながら、駆け込んできた体格のいい男が、 女と入れ替わるようにして、棺の横に立つと、 ザラザラと音を立てながら、背中に背負っていた籠から 百個以上の赤れいむと赤まりさが詰まったゴムボールを棺に流し込んだ。 もう、まりさの赤ちゃん達の姿は見えない。 「楽しかったぜ、ゆっくり共の群れにレイパーありす十匹けしかけてやったんだ。 ハッハッ、あの時のあいつらの顔って言ったら・・・ …どうして死んじまうんだよ・・・まだ・・・これからじゃねーかよ・・・・」 男が嗚咽を漏らす。 よく見ると、ボールの中には栄養不足で赤ゆっくりになれず、 黒ずんで朽ちた実も混ざっていた。 -------------------------------- 「・・・死んでるのも混ざってたじゃない。」 自席に座った女が、隣席に座った先程の男にハンカチを差し出しながら、 咎めるような口調で、ヒソヒソと言った。 死んだ男は、悲鳴を上げて潰れてゆく、赤ゆっくりが好きだった。 物言わぬ赤ゆっくりの残骸など、何の興味も無いだろう。 ましてや、赤ゆっくりになる前に朽ち果てた実ゆっくりなど。 「いや・・・そうなんだけどさ・・・あいつらの親が・・・」 女の言葉の意図を理解して、ハンカチで涙を拭いながら答える。 「親・・・?」 「ああ・・・あいつらを生やしてた、れいむ・・・ 頭に鉄杭を打ち付けられてたんだ。」 れいぱーありすをけしかけた、ゆっくりの群れ。 その群れの生息地帯の外れにある森の中の洞穴で、 男は朽ちたれいむを見つけた。 その、何かから解放されたような安らかな死に顔を思い起こしながら、 男が答える。 「珍しくないじゃない。そんなもの。」 女が冷たく返す。 娯楽の少ない田舎故か、この近辺には、虐待お兄さん&お姉さん人口が多い。 森の中で、人の手が入った被虐ゆっくりが見つかることなど、 さして珍しいことではなかった。 「その杭に、コイツがぶら下がってたんだ。」 言って、男は懐から、ある物を取り出した。 「う・・・・・」 醜悪なソレに、女が思わず呻く。それから、 「ああ・・・・そういう事ね・・・」 と得心した様子で言った。 ジャラ ソレからは、錆びた鎖が垂れ下がっている。 その鎖に繋がれた物は、ゴムで包まれた、赤ゆっくり・・・なのだろうか。 ただし、饅頭皮は無い。 少し腐敗し、崩れかかった黒い餡子の塊。 その中に無造作に浮かぶ、剥きだしの二つの眼球だったもの。 剥きだしのピンク色の歯茎と、そこについている白い歯が、 眼球と眼球の間に浮いている。 そして、それを包む透明なゴムは、黄色く変色していた。 女や、他の仲間達が持参した赤ゆっくりを包むゴムとは違う。 明らかに、加工後、数ヶ月は経過している、ゴムの饅頭皮。 これを作る事ができた者は、恐らく一人しかいないだろう。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ?! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!」 まりさが、陸に打ち上げられた魚のように、突如として、 体がグネグネと曲がるほどに、ビクビクと跳ね出す。 まりさの体を力を込めて押さえつけながら、女が口を開く。 「ねえ、コレ、私に貰えないかしら?」 「ん・・・?別にいいけど、どうすんだ?こんなもの?」 女はまりさの金髪を撫でながら、笑みを浮かべて答えた。 「妹なのよ。この子の。」 -------------------------------- 「ゆ゛びりぎげぇぇっっ!?ぎっぐゆ゛っげっげっぎゆ゛ぎょげぇぇ!! ゆぎぎぃっ!!ゆ゛びゃりゃべぇぇ!?ゆ゛ぎがぁぁぁぁ!!!」 今日も、まりさは歌う。 まりさのおうたを。 母を想い、姉妹を想い、そして、赤ちゃんを想い。 揺れているまりさの三つ編みには、まりさの"妹"のまりさが、 しっかりと、結びつけられていた。 まりさのおうたの中で、この"妹"へは、どんな想いが込められているのだろうか? 女が、ソファに座り、まりさの歌声を聞きながら本のページを捲っている。 不意に、ページを捲ろうとした、その白い指が止まる。 「・・・・・・あら・・・」 何かに気づいたように、声を漏らし、 そして、満面の笑みを浮かべた。心から、嬉しそうに。 「まりさ、また、お歌上手になったわね。」 おわり -------------------------------- あとがき ちょっと自分で突っ込みどころなど。 「うちのゆっくりに今朝作らせたばかりの赤ちゃん」 →実際に仕込んで蔦が生えたのは前日ですが、 赤ちゃんの形になったのが当日ということで、強引に解釈してください。 この部分まで書いて、前々作の葬儀の場面に繋げた時点で、 「やべ、赤ゆ作ったの当日にしてた。」と気づきました。 赤ゆがはえてきてお姉さんもゆっくりできるよ!→晩ご飯はしちゅー の流れに変わる話を考える気力が出なかったので、妥協してしまいました。 まあ、新参空気の空気SSですし、誰も気にしませんよね? 「スーパー赤ゆっくりボール」から繋がるお話はこれでお終いにします。 暗めのお話で二本書いたので、今度は楽しいのを書いてみたいです。 短いやつを。 短いやつを。 by ゆっくりボールマン2世 このSSに感想をつける
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「ゆうぅ・・・・・・ゆぐっ・・・・・・ゆぅぅぅ・・・・・」 お歌を歌い終え、力無く泣いているまりさに、女がいつものように オレンジジュースと水溶き小麦粉で補修を施している。 お歌が終わった後は、透明な箱に戻され、 お歌を歌わなかった子のご飯とは違う、 少し美味しいご飯とあまあまを与えられ、それでお終い。 お姉さんが部屋から出ていき、部屋は元の真っ暗闇。 だが、今日はそれが違っていた。 女は補修を終えたまりさを抱えて、再びソファに腰を下ろした。 「ゆ・・・・・?」 今日二度目の、いつもと違う事に、まりさがまだ涙を流したまま、 お姉さんの顔を見上げる。 その瞳に、お姉さんの優しい笑顔が写る。 まりさに向かって、お姉さんが口を開いた。 「ねえ、まりさ。まりさ、赤ちゃんを産みたくない?」 「ゆ・・・・・あか・・・ちゃん・・・・・・」 赤ちゃん。 小さくて、可愛くて、とってもゆっくりできる、ゆっくりの赤ちゃん。 まりさの妹のれいむも、とっても可愛くて、ゆっくりできた。 赤ちゃんがいれば、ここの苦しくて痛くて、ゆっくりできない生活も、 少しはゆっくりできるかも。 ううん、きっと、ゆっくりとした、可愛い赤ちゃんを見れば、 お姉さんも、ゆっくりしてくれるかもしれない。 そうだ。きっとそうだ。そうに決まっている。 そして、昔の、優しいお姉さんに戻ってくれる。 赤ちゃんと、お姉さんと、まりさで、いっぱい、いっぱい、ゆっくりできる。 「ゆっ!!ほしいよ!!まりさ、あかちゃんほしいよ!!! うみたい!!あかちゃん、うみたい!!!」 何度も裏切られたであろうに、垂らされた細い糸に縋ろうと、 必死で懇願をするまりさ。 「そう。じゃあ、行きましょうか。」 柔らかい笑顔でそう応えて、お姉さんがまりさを抱えて立ち上がり、歩き出す。 いつもの、壁の透明な箱にではなく、入り口の扉に向かって。 その光景に、部屋の他のゆっくり達がざわめく。 声を出すことなく、空気がざわめく。 羨むような視線で、まりさを目で追ってゆくもの、 選ばれたのが自分ではなかった事を悔やみ、落胆の表情を見せているもの、 どこか安堵を浮かべた表情でまりさをみつめているもの、 まりさに向かって人をも殺せそうな嫉妬の視線を送るもの、 ただ虚空を見つめているもの。 「・・・ゆっ!!まりさなんかより、れいむをたすけてね!! れいむはこそだてとくいだよ!! まりさなんかより、ずっとずっと、かわいいあかちゃんうむよ!!」 耐えきれず、一匹のれいむが声を張り上げた。 禁を犯して。 女がそのれいむの方を振り返る。 その顔には、まりさに向けていた笑顔は貼り付いていない。 「ゆひぃっっ・・?!」 向けられた、魂すらも凍えそうな冷たい視線に、 れいむは己が取り返しのつかない過ちを犯したことを知った。 こうして、まりさは、"仲間"達からの様々な視線に見送られ、 数ヶ月ぶりに、その部屋の外に出た。 -------------------------------- 「ゆっ!まりさ、がんばって、かわいいあかちゃんうむよ!」 誰もいない部屋で、一人楽しそうに笑顔を浮かべながら、 まりさが語っている。 ゆっくりできない部屋から出されたまりさは、 昔、お姉さんによく遊んでもらったお部屋に連れてこられた。 「お姉さん、少し出かけてくるから留守番しててね。」 「ゆん!まりさ、いいこでまってるよ!おねえさん!!」 そう言って外出したお姉さんの帰りをそわそわとしながら待つ。 しばらくすると、お姉さんが戻ってきた。 「ただいま~ごめんね、まりさ、待ちくたびれちゃった?」 「ゆゆん!だいじょうぶだよ!まりさ、いいこで・・・ゆっ!?ゆゆぅ~!!」 お姉さんが抱えていた、成体のれいむに、まりさは目を奪われる。 どこかの飼いゆっくりか、或いは、ペット用として売られているものか、 きちんとした身なりをした、とても綺麗な美れいむであった。 「まりさのお友達になってくれる、れいむよ。仲良くしてあげてね。」 微笑みながら、お姉さんが、れいむをまりさの横に置く。 「「ゆっくりしていってね!!」」 二匹が同時に挨拶を交わす。 「ゆぅぅ~~!れいむはとってもゆっくりしてるね!!」 「ゆっ!まりさもゆっくりしてるよ!!」 お姉さんは、仲良く会話を始めた二匹に美味しいあまあまを出してくれた後、 二匹を残して部屋から出て行った。 「れいむ゛ぅぅぅぅぅ!!!まりざ、ずっぎりじぢゃうぅぅぅ!!!」 「まりざぁぁっ!!れいむ゛ぼっ!!れいむ゛もぉぉぉぉぉぉ!!」 「「すっきりぃぃぃぃぃーーーー!!!!!!!!!」」 お互いの事を気に入って楽しそうにはしゃいでいた二匹であったが、 やがて、あまあまに混ぜてあった少量のゆっくり用媚薬の効果もあり、 いい雰囲気になって、すっきりを交わした。 目論み通り、にょきにょきと、 まりさの帽子を押し上げて蔦が伸びるのを確認してから、 女はその光景を覗いていた扉の隙間を閉じた。 -------------------------------- 「ゆぅん・・・・・・ゆ・・・・ゆっ!?れいむは?」 部屋の窓から差し込む赤い夕日の中で、 すっきりーの疲れから眠りに落ちていたまりさが目を覚まし、 パートナーとなったれいむの姿を探して、辺りを見回す。 だが、その部屋にいるのは、お姉さんと、まりさだけだった。 「ゆ・・・おねえさん・・・・」 「あら?まりさ、起きたの?ゆっくり眠れた?」 「うん・・・ねえ、れいむは・・・?」 「れいむはね、初めて来るお家で、緊張して疲れちゃったみたいだから、 他の部屋で眠ってるわ。明日には起きてくるんじゃないかしら?」 「ゆっ?そうなの?」 「ええ、そうよ。・・・まりさの赤ちゃん、早く生まれてくるといいわね。」 お姉さんが、そう言って、まりさの頭から生えた蔦を ちょんと突いて揺らす。 「ゆ・・・ゆゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・!!!!」 その言葉に初めて、新たな命を得た、まりさの赤ちゃん、 実ゆっくりの存在に気づく。 まだ、完全なゆっくりの形を形成しきっていないが、 目や口らしき物ができはじめている。 それが、10匹。 「ゆぅぅぅぅ・・・!!まりさのあかちゃん!!かわいいよぉぉぉ・・・ あかちゃんたち!!ゆっくりうまれてね!!!」 顔ができあがっていない実ゆっくりでも、赤ちゃんの顔の判別がつくのか、 嬉しそうに、まりさがはしゃぐ。 勿論、まだお口が完全にできていない実ゆっくり達は、返事を返さないが、 それでも微かに笑っているように見えた。 「おねえさん!みて!みて!まりさのあかちゃんだよ!! とってもかわいいよぉぉ!!」 「そうね。とてもゆっくりとした可愛い赤ちゃんね・・・ 見てるだけで、お姉さんもゆっくりしてきちゃう。」 お姉さんの優しい微笑みに、 まりさの今までの辛く、苦しい思い出が洗い流されてゆく。 とっても痛かったけど、とっても苦しかったけど、 でも、もう忘れよう。 お姉さんは、やっぱり、優しいお姉さんだった。 昔の優しいお姉さんに戻ってくれた。 これからは、皆でゆっくりしよう。 お姉さんと、赤ちゃん達と、れいむと。 ポロポロと、辛い記憶と共に、まりさの目から涙が流れ落ちる。 「・・・まりさ、お腹空いたでしょ?晩ご飯、何が食べたい? 何でも好きな物作ってあげる。」 「ゆ・・・ゆぅぅ・・・・!ゆぐっ・・・!まりさ、しちゅーがたべたい!! おねえさんがつくってくれた、 あったかい、しちゅーがたべたいよぉぉ・・・!!」 まりさが泣きながら、そう答える。 初めてこのお家に来たとき、お姉さんが食べさせてくれた、 とてもおいしくて、冷え切った餡子があったかくなった「しちゅー」。 今の季節は既に春。 ポカポカと暖かい日だったが、 辛く苦しい地獄のような生活を送っていたまりさの心は、 その温かいご馳走を何よりも渇望した。 「はいはい、シチューね。いいわよ。お姉さん、腕によりをかけて作るわね。」 その晩は、まりさは、お姉さんと一緒に 暖かくて美味しい「しちゅー」を一杯食べ、 デザートの、甘くて美味しい餡蜜を食べ、 それから、可愛い赤ちゃんを一緒に眺めたり、呼びかけたりしながら過ごし、 やがて、幸せな眠りに落ちていった。 -------------------------------- 翌日の昼近く、まりさが目を覚ます。 「ゆぅん・・・・・ゆっ!ゆっくりおきたよ!!」 そして、頭上の赤ちゃん達を見やる。 親の栄養が十分に伝わり、すくすくと大きく育った、実ゆっくり達。 既に目も口も飾りもしっかりと形成されている。 赤れいむが5匹に、赤まりさが5匹。 もう程なく、生まれ落ちることだろう。 「ゆぅ・・・まりさのあかちゃん・・・!まちどおしいよぉぉ・・・!」 芽生えたばかりの母性に満ちた瞳で赤ゆっくりを見つめる。 その時、部屋の扉が開いて、お姉さんが入ってきた。 「まりさ、おはよう。もう起きた?」 「ゆっ!おねえさん、おはよう!!ゆっくりしていってね!」 「はい。ゆっくりしていってね。」 まりさに返事をしてから、赤ゆっくりに視線を移す。 「あら・・・もう少しで産まれそうね。急がなきゃ・・・」 そう呟くと、慌ただしく部屋を出て行ってしまった。 「ゆ・・・・・?」 少し寂しそうに疑問の表情を浮かべたまりさだったが、 すぐにお姉さんは戻ってきた。 何かの道具が入った箱を持って。 「ゆぅぅぅ・・・・・おねえさん、まりさのあかちゃんになにしてるの・・・?」 少しだけ不安そうな声色で、まりさがお姉さんに疑問の声を投げかける。 「これはね、赤ちゃんの体をとっても丈夫にしてくれるお薬なのよ。 赤ちゃんのお体はとっても弱いでしょ? でも、このお薬を塗ると、赤ちゃんの体が頑丈になって、 簡単には、傷ついて餡子を出しちゃったりしなくなるのよ。」 お姉さんは、まだ茎に繋がった実ゆっくりを、一匹一匹、順番に 透明な液体の入った小さなコップに浸している。 その粘性の高いドロリとした液体が、実ゆっくりの肌に厚い層を形作る。 「ゆぅぅぅ・・・!じょうぶにぃ・・・!?すごい!?すごいね!!お姉さん!」 お姉さんの作業を邪魔しないよう、嬉しくて飛び跳ねたい気持ちを抑えて、 プルプル震えながら、まりさがはしゃぐ。 「そう。凄いでしょう。 これはね、死んじゃったお姉さんのお友達のお兄さんが考えてくれたのよ。」 今度は、ドロリとした液体に包まれた実ゆっくりを、別のコップに浸す。 すると、たちまちドロリとした液体は硬化を始め、 実ゆっくりをすっぽりと包んだ状態で固まった。 「ゆぅぅ・・・そうなんだぁ・・・! きっと、そのおにいさんは、あかちゃんがだいすきだったんだね!!」 「ふふふ・・・ええ、そうね。とっても赤ちゃんゆっくりが大好きだったわ。」 お姉さんは、さも可笑しそうに笑った。 女は何一つ嘘は言っていない。 男は赤ちゃんゆっくりが大好きだった。 赤ちゃんゆっくりを潰すのが大好きだった。 己の命と引き替えにする程にまで。 その男が、己の欲求を満足させるために考えた虐待方法。 赤ゆを弾力性のあるゴムで包み込み、 力一杯踏み潰しても容易にゆっくりの命の源である餡子を漏らさないようにする。 踏み潰され、体がひしゃげ、たわむ、 その苦しさに悲鳴をあげる赤ゆっくりの命を奪うことなく、 何度も何度も踏み潰して悲鳴を聞く事を繰り返せるように。 男の亡骸の周りに散らばっていた、ゴムで包まれた無数の 赤ゆっくりの死骸から、虐待仲間達は、男がやっていたであろう、 その虐待の内容を知ることになった。 そして、男の死出の旅立ちを送るため、仲間達は、銘々、 ゴムで包んだ赤ゆを用意することを申し合わせていたのだ。 だから、女は、このまりさの赤ゆを男に送ることにした。 男が何らかの関わりを持ったであろう一家の、このまりさの赤ちゃんを。 -------------------------------- 「ゆぅん♪ゆゆ~ん♪まりさのあかちゃん♪」 それから、まりさは、一時間ほど、赤ゆっくりを嬉しそうに眺めていた。 不意に、一匹の赤まりさが、閉じていた目を初めて開いた。 「ゅ・・・ゆっきゅりしてっちぇにぇ!!」 母であるまりさの姿を目にすると、元気良く、 最初のゆっくりしていってね!を口にする。 「ゆぅぅ・・・あかちゃぁん・・・!ゆっくりしていってね!!」 初めての赤ちゃんの誕生に、感動に身を震わせながら、 まりさがご挨拶を返す。 本来なら、蔦から落ちた後で、喋り始めることが多い赤ゆっくりであるが、 この赤ちゃん達の場合、蔦の付け根の部分まで、 ゴムで覆われ、しっかりと蔦に固定された状態だったため、 蔦から落ちることができなかったのだ。 赤まりさと母まりさの声に反応するかのように、 他の赤ゆっくり達も次々に目を開ける。 「ゆっきゅりしちぇっちぇね!!」 「ゆっきゅりしてっちぇね!!」 「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!!」 母まりさとご挨拶を交わしてゆく、赤ゆっくり達。 すぐに部屋の中は、 ゆ~♪、おきゃーしゃん♪、ゆんゆん♪、ゆっきゅりしてっちぇにぇ♪ と言った、赤ゆの声で賑やかになる。 「まりさー・・・あら?生まれたのね?」 部屋に戻ってきたお姉さんが、赤ゆっくりの声に気づく。 「ゆっ!うまれたよ!みんな、げんきなあかちゃんだよ! あかちゃんたち!まりさのおねえさんに、げんきよくあいさつしてね!!」 「「「おねえしゃん!ゆっきゅりしてっちぇにぇ!!」」」 綺麗に揃った、ご挨拶をする赤ゆっくり達。 お母さんよりも大きな、人間のお姉さんをゆわわぁぁぁ~♪と 瞳を煌めかせながら見上げている。 「ふふふ、ゆっくりしていってね。」 お姉さんも笑顔で答える。 そして、赤ちゃんが繋がったままのまりさを、ひょいと抱え上げた。 「ゆ?」 「まりさ、お姉さんと一緒にお出かけしましょう。赤ちゃん達も一緒よ。」 「ゆ・・・おでかけ・・・・ゆっ!おそとにいくの!? まりさ、おでけかするよ!あかちゃんたちも、おでかけしようね!」 この家に来て以来、一度も外に出された事が無かったまりさが喜びの声を上げる。 「ゆぅ~・・・おじぇかけ・・・?」 「そうだよ!おそとにいくんだよ! おそとはとってもひろくて、ゆっくりできるよ!」 「ゆゅ!ゆっきゅりできりゅのぉ~?!」 「れいみゅも!れいみゅもおじぇかけしゅるよ!」 「ゆゆん♪おかあしゃんとおじぇかけぇ♪」 赤ゆっくり達も、まだ見ぬお外の光景にそれぞれに夢を膨らませて、はしゃぐ。 「ゆゆ?」 お出かけのため、玄関口で靴を履いているお姉さんの姿が いつもと違うことにまりさが気づく。 「ゆっ・・・!おねえさんのおようふく、まりさとおそろいだね!!」 「え・・・おそろい・・・?ああ、ホントね。お揃いね。」 一瞬疑問の声を上げたお姉さんだが、すぐにまりさの言わんとしている事に気づく。 自分の黒いお帽子とお揃いの黒いお洋服、ワンピースの喪服、に身を包んだ、 いつもよりもちょっと綺麗なお姉さんを、 まりさはキラキラと賞賛と憧れが籠もった目で見上げている。 「さあ、行きましょうか。まりさ。」 「ゆぅん♪おでかけ♪おねえさんとおそろいでおでかけ♪」 靴を履き終えたお姉さんに抱きかかえられ、 まりさは子ゆっくりのように嬉しそうにはしゃいでいた。 -------------------------------- 遠くに見える雄大な山々、 どこまでも広がる青い空とふわふわと浮かぶ白い雲、 一面に広がる緑の田畑。 そんな光景を眺めながら、まりさと赤ゆっくり達は、 ゆんゆん♪と賑やかに談笑しながら、お姉さんに抱かれて行った。 そして、目的地、葬儀場に辿り着く。 そこにいたのは、お姉さんと同じ黒の喪服に身を包んだ男女。 その顔は、皆一様に、悲しみに包まれている。 「ゆぅ・・・みんな、ゆっくりしてないね・・・どうしたのかな・・・?」 人間達の悲しみが伝染したか、まりさも少し悲しそうにお姉さんに尋ねる。 「・・・ここはね、死んじゃったお兄さんをお見送りする所なの。 だから、みんな、お兄さんの事を思い出して悲しい気持ちになっているのよ。」 そう答えるお姉さんの表情も、どこか悲しそうであった。 「ゆぅん・・・・・・」 「だから、まりさもちょっとの間だけ、静かにしててね。赤ちゃん達もね。」 「ゆっ!まりさ、ゆっくり、りかいしたよ! あかちゃんたちも、しー、だよ!」 「「「ちー、ぢゃよ!!」」」 漠然とだが、死者への追悼の気持ちを感じ取ったか、 素直に言うことを聞くまりさ。 赤ゆっくり達は、流石に理解できていないだろうが、 素直な赤ゆっくり達なので、お母さんの言いつけをしっかり守ろうとする。 -------------------------------- 控えの間で葬儀が始まるの待っている間、 まりさは、お姉さんの膝の上に抱かれていた。 不謹慎かもしれないと思ったが、まりさは幸せを噛みしめていた。 お姉さんが、優しいお姉さんに戻ってくれたことが。 可愛い赤ちゃんができたことが。 まりさは、幸せの絶頂にあった。 だから、お姉さんが、ハンドバッグから、針と糸を取り出した時も、 その様子を楽しそうに眺めていた。 それで、まりさのお口を縫い合わせ始めた時も、 痛かったけど、じっと我慢していた。 いたいよぉ・・・おねえさん。 そんなことしなくても、まりさ、ちゃんとしずかにしてるよ! まりさはいいこだよ!まりさ、もう、おかあさんなんだもん! 少し涙が出てしまったけど、それでも、まりさはにこにこしていた。 そうしていないと、今の幸せが逃げてしまうような気がして。 お口を完全に縫いつけられるまで、にこにこしていた。 -------------------------------- やがて葬儀が始まる。 時折、人々の嗚咽が流れる、しめやかな空気の中、厳かに儀式は進んでゆく。 そして、納棺。 席を立ち、棺に向かって歩くお姉さんに抱えられたまりさ。 目の前に集まった人間さん達は、みんな、何かを持っている。 あれは・・・赤ちゃんだ。ゆっくりの赤ちゃんだ。 可愛い赤ちゃんだけど、何人か、泣いている子もいる。 「・・・・・・・・・?」 お口を開けないので、お姉さんに視線で訴えかける。 お姉さんは、その視線に気づく。 いや、その視線が向くのを、待っていた。 そして、まりさの耳元に小さな声で囁く。 「あれはね・・・死んだ人と一緒にね、その人の好きだったものを入れて、 一緒に埋めてあげるの。死んでからもゆっくりできるようにね。」 お姉さんが、棺の横に立つ。 「ゆぇぇぇん!はなしちぇぇ!!」 「やめちぇぇ!だしちぇぇ!」 「れいみゅを つぶしゃないぢぇ!つぶしゃないぢぇ!」 「ゆっ!つぶしゅのは、れいみゅだけに しゅるんだじえ! まりしゃは ゆっきゅり にがちてにぇ!」 「どぉぉちちぇ ちょんなこちょ ゆぅにょぉぉぉぉ!?」 何人かの人間さんが、持っていた赤ちゃん達を、 眠っている人間さんが入った箱の中に落としている。 赤ちゃんが入ってるよ? まりさがお姉さんに、目で語りかける。 入ってるわね。 とでも答えるかのように、お姉さんが優しい笑顔を返す。 死んだ人と一緒に その人の好きだったもの ゆっくりの赤ちゃんが大好きだったお姉さんのお友達 一緒に埋めてあげる 死んじゃったお姉さんのお友達 箱に入れられてる知らない赤ちゃん達 …まりさの赤ちゃん 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!!!!」 それらの言葉が繋がった時、まりさは開かない口で絶叫を放った。 「うちのゆっくりに今朝作らせたばかりの赤ちゃんよ・・・ 向こうで沢山可愛がってあげてね。」 女は、そう言いながら、暴れようとしているまりさを 左手でしっかりと抱きかかえ、 まりさの頭に伸びた蔦から、ゴムで包まれたまりさの赤ちゃん達を プチプチと毟り取り、棺に落としてゆく。 「おきゃーしゃーん・・・」 「ゆゆ、れいみゅおしょらをゆべっ」 「ゆっ?おきゃあしゃん、どきょいくの?・・・ゆぴゅっ!」 母親と離される事を悲しんだり、 ゆっくりできるお遊びと思ってはしゃいだり、 何も状況がわからず、ぽかーんとしていたり、 様々な反応を見せながら、赤ゆっくり達が棺に飲み込まれてゆく。 女の瞳から涙が零れ落ちる。 まりさも、次々に棺に収められてゆく可愛い我が子を呆然と見つめながら、 ブルブルと震えて涙を流している。 糸で結わえ付けられた口が千切れそうになる程、 何かを叫ぼうとしているが、それすらも叶わない。 10匹の赤ゆを棺に納めると、女が一歩退く。 遠ざかる、可愛い赤ちゃん達。 「ゆぁぁぁん!おきゃーしゃん!ぢょこいくのぉぉ!?」 「おいちぇかないじぇぇぇ!?」 「ゆぇぇぇん!!ゆぇぇぇぇん!!」 遠ざかる、可愛い赤ちゃん達の泣き声。 「さようなら。」 女が、永遠の別れの言葉を告げた。 「はぁ・・・はぁ・・・間に合ったか。ほらよ、三途の川の渡し賃代わりだ。」 息を荒くしながら、駆け込んできた体格のいい男が、 女と入れ替わるようにして、棺の横に立つと、 ザラザラと音を立てながら、背中に背負っていた籠から 百個以上の赤れいむと赤まりさが詰まったゴムボールを棺に流し込んだ。 もう、まりさの赤ちゃん達の姿は見えない。 「楽しかったぜ、ゆっくり共の群れにレイパーありす十匹けしかけてやったんだ。 ハッハッ、あの時のあいつらの顔って言ったら・・・ …どうして死んじまうんだよ・・・まだ・・・これからじゃねーかよ・・・・」 男が嗚咽を漏らす。 よく見ると、ボールの中には栄養不足で赤ゆっくりになれず、 黒ずんで朽ちた実も混ざっていた。 -------------------------------- 「・・・死んでるのも混ざってたじゃない。」 自席に座った女が、隣席に座った先程の男にハンカチを差し出しながら、 咎めるような口調で、ヒソヒソと言った。 死んだ男は、悲鳴を上げて潰れてゆく、赤ゆっくりが好きだった。 物言わぬ赤ゆっくりの残骸など、何の興味も無いだろう。 ましてや、赤ゆっくりになる前に朽ち果てた実ゆっくりなど。 「いや・・・そうなんだけどさ・・・あいつらの親が・・・」 女の言葉の意図を理解して、ハンカチで涙を拭いながら答える。 「親・・・?」 「ああ・・・あいつらを生やしてた、れいむ・・・ 頭に鉄杭を打ち付けられてたんだ。」 れいぱーありすをけしかけた、ゆっくりの群れ。 その群れの生息地帯の外れにある森の中の洞穴で、 男は朽ちたれいむを見つけた。 その、何かから解放されたような安らかな死に顔を思い起こしながら、 男が答える。 「珍しくないじゃない。そんなもの。」 女が冷たく返す。 娯楽の少ない田舎故か、この近辺には、虐待お兄さん&お姉さん人口が多い。 森の中で、人の手が入った被虐ゆっくりが見つかることなど、 さして珍しいことではなかった。 「その杭に、コイツがぶら下がってたんだ。」 言って、男は懐から、ある物を取り出した。 「う・・・・・」 醜悪なソレに、女が思わず呻く。それから、 「ああ・・・・そういう事ね・・・」 と得心した様子で言った。 ジャラ ソレからは、錆びた鎖が垂れ下がっている。 その鎖に繋がれた物は、ゴムで包まれた、赤ゆっくり・・・なのだろうか。 ただし、饅頭皮は無い。 少し腐敗し、崩れかかった黒い餡子の塊。 その中に無造作に浮かぶ、剥きだしの二つの眼球だったもの。 剥きだしのピンク色の歯茎と、そこについている白い歯が、 眼球と眼球の間に浮いている。 そして、それを包む透明なゴムは、黄色く変色していた。 女や、他の仲間達が持参した赤ゆっくりを包むゴムとは違う。 明らかに、加工後、数ヶ月は経過している、ゴムの饅頭皮。 これを作る事ができた者は、恐らく一人しかいないだろう。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ?! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!」 まりさが、陸に打ち上げられた魚のように、突如として、 体がグネグネと曲がるほどに、ビクビクと跳ね出す。 まりさの体を力を込めて押さえつけながら、女が口を開く。 「ねえ、コレ、私に貰えないかしら?」 「ん・・・?別にいいけど、どうすんだ?こんなもの?」 女はまりさの金髪を撫でながら、笑みを浮かべて答えた。 「妹なのよ。この子の。」 -------------------------------- 「ゆ゛びりぎげぇぇっっ!?ぎっぐゆ゛っげっげっぎゆ゛ぎょげぇぇ!! ゆぎぎぃっ!!ゆ゛びゃりゃべぇぇ!?ゆ゛ぎがぁぁぁぁ!!!」 今日も、まりさは歌う。 まりさのおうたを。 母を想い、姉妹を想い、そして、赤ちゃんを想い。 揺れているまりさの三つ編みには、まりさの"妹"のまりさが、 しっかりと、結びつけられていた。 まりさのおうたの中で、この"妹"へは、どんな想いが込められているのだろうか? 女が、ソファに座り、まりさの歌声を聞きながら本のページを捲っている。 不意に、ページを捲ろうとした、その白い指が止まる。 「・・・・・・あら・・・」 何かに気づいたように、声を漏らし、 そして、満面の笑みを浮かべた。心から、嬉しそうに。 「まりさ、また、お歌上手になったわね。」 おわり -------------------------------- あとがき ちょっと自分で突っ込みどころなど。 「うちのゆっくりに今朝作らせたばかりの赤ちゃん」 →実際に仕込んで蔦が生えたのは前日ですが、 赤ちゃんの形になったのが当日ということで、強引に解釈してください。 この部分まで書いて、前々作の葬儀の場面に繋げた時点で、 「やべ、赤ゆ作ったの当日にしてた。」と気づきました。 赤ゆがはえてきてお姉さんもゆっくりできるよ!→晩ご飯はしちゅー の流れに変わる話を考える気力が出なかったので、妥協してしまいました。 まあ、新参空気の空気SSですし、誰も気にしませんよね? 「スーパー赤ゆっくりボール」から繋がるお話はこれでお終いにします。 暗めのお話で二本書いたので、今度は楽しいのを書いてみたいです。 短いやつを。 短いやつを。 by ゆっくりボールマン2世 このSSに感想をつける 選択肢 投票 しあわせー! 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ぽこ ZEROPRO95 基本情報人物像 活動の記録スタートダッシュイベント期間 スタートダッシュ〜本選前の期間 4/20本戦直前アカBAN替え歌事件 本選イベント期間 名言集 リスナーからのSHOWROOM推薦コメント集(投稿早い順 編集され後ろに回ったものもそのまま掲載。リスナーさん方に確認を取っていないため匿名) 基本情報 SHOWROOM リンク:ぽこのおうた部屋 Twitterアカウント:ZEROPOKO95 Twitter自己紹介 ZERO Project様の第3回魂オーディションに参加しております95番目のれいちゃん、「ぽこ」です。 歌をメインに活動していきたいと思っています\( ⍢ )/ 上記の通り歌うことを中心に配信中! 可愛い曲もカッコいい曲も力強い曲も綺麗に歌いこなす歌声は、ぜひ一度聞いてみてもらいたい。 特に好きな歌を楽しそうに伸びやかに歌う声は、きっと聴いていて楽しくなることでしょう。 BE MY BABY(COMPLEX)、デビルマンのうた(十田敬三)など男性ボーカルの曲をイケボでノリノリで歌うのも是非聞いてみてほしい。 なお、配信の最初にリスナーさんが誰でも知っている曲を考え、行き着いたのが国家「君が代」であった。 毎回配信の初めに歌ったり笛で吹いたりするが、政治的意図など全くない 人物像 好きなもの 好きなもの 「好きなことは、歌とアニメとゲームと食べること!」 とのこと。トークもこれらが中心になることが多い。 篠笛を吹けるのだが、「演奏しますね!」と言った後に紛失していることに気づき、急遽学校教材用と同じプラスチック製の篠笛を購入。 一年ぶりの演奏で感覚を失っていたが、それでも吹けるのが楽しいらしく終始テンションが上がっていた。 好きなもの、楽しいことについて話しているときの可愛らしい声を是非聞いてほしい。 ちなみに好きなお肉は鶏肉で、本戦終了日の晩御飯は鶏肉だったとのこと。 好きなゲーム Tokyo7thシスターズ (初日にも歌ったり、れいちゃん(仮称)たちとナナシス(Tokyo7thシスターズの愛称)オンリーコラボをしたがるなど、ナナシス愛に溢れている。ライブの円盤もサイリウムを振りながらみたり、現場参戦したりする) スプラトゥーン 他のれいちゃん(仮称)と遊ぶことになったようだ。 好きなアニメ 魔法少女まどか☆マギカ けいおん! 物語シリーズ ヴァイオレット・エヴァーガーデン 好きなアーティスト 中島みゆき (歌を好きになったきっかけ) JUDY AND MARY COMPLEX BOØWY アーティストというわけではないがTokyo7thシスターズの楽曲がとにかく好き 好きなアーティストの余談 声優 田村ゆかりさんの美しい脚が好きとのこと 好きなVtuber (現時点で判明している方のお名前のみ) 周防パトラ 周防パトラ様作曲「イヤイヤちゃんのうた」をぽこさんが歌ってみた スタートダッシュ期間の配信では可愛い歌を可愛く歌うことに恥じらいが残っていたが、この歌は原曲に寄せてかなり可愛く歌っている。 1分もない短い曲なのでぜひ気軽に聞いてみてほしい。 まだまだ底が見えない。 オーディションのスタートダッシュ期間という、人間性を深く知るには短すぎる時間ゆえ底が見えないのは普通だが… 「幼いころにバッドエンドにハマってしまって、それから好みが歪んでるんだと思うですよねw」 「クソアニメ好きなんですよー。ポプテピピックさん…ポプテピピックは表面上のクソアニメだと思ってるんです。内面的なクソアニメがありまして、皆さんご存知か分からないですが、ダイナミックコード(DYNAMIC CHORD)っていう…」 金色のガッシュベルの挿入歌、「チチをもげ!」を歌い、そのままおっぱいトークへ。女子の友達にアンケートをとってみたことがあるが、お尻派より胸派のほうが多かったとのこと。…何してるんですか? まだまだ奥が深そうだ。 活動の記録 スタートダッシュイベント期間 配信の思い出 上記の通り歌うことを中心に活動 初日の曲目 君はロックを聞かない (あいみょん) 貴方解剖純愛歌 (あいみょん) ヒッチコック (ヨルシカ) God knows...(平野綾/涼宮ハルヒの憂鬱) お願い!シンデレラ (シンデレラガールズ/アイドルマスターシンデレラガールズ) SAKURA (WITCH NUMBER 4/Tokyo7th シスターズ) スタートライン (777☆SISTERS/Tokyo7thシスターズ) 千本桜(黒うさP) シャルル(バルーン) 今まで歌った曲一覧(順不同) BE MY BABY(COMPLEX) マリーゴールド(あいみょん) motto☆派手にね!(戸松遥) MELODY IN THE POCKET(777☆SISTERS) カラフル(ClariS) ヒトリゴト(ClariS) ソラニン(ASIAN KUNG-FU GENERATION) ふでペンボールペン(放課後ティータイム) 五月雨20ラブ(放課後ティータイム) アンインストール(石川智晶) デビルマンのうた(十田敬三) はじめてのチュウ(あんしんパパ) 瞬き(backnumber) 生きていたんだよな(あいみょん) 今夜このまま(あいみょん) コネクト(ClariS) Make☆it!(i☆Ris) Star☆Glitter(セブンスシスターズ) 1925(とみー) 以下随時追加 Twitterの思い出 Twitter自己紹介 ZERO Project様の第3回魂オーディションに参加しております95番目のれいちゃん、「ぽこ」です。 歌をメインに活動していきたいと思っています\( ⍢ )/ スタートダッシュ〜本選前の期間 配信の思い出 ナナシス楽曲縛りで歌い倒したこと 篠笛を吹けると豪語したものの、無くしていたことが発覚。急遽取り寄せ後に奏でたメロディは美しい笛の音色とは程遠いものだった… (↑ご本人が書いたようだ) 4/20本戦直前アカBAN替え歌事件 「にんげんっていいな」の替え歌 「アカBANってやだな」爆誕 (※歌詞は全てコメントから) 運営見ていたかくれんぼ BANになった子一等賞 夕焼け小焼けでまた炎上 また辞退 いいな いいな 清楚っていいな 可愛い発言に まともなコメント こどもの視聴を待ってるだろな 僕もなろう 清楚になろう BAN BAN されたくないのに BAN♪ BAN♪ BANっ♪ 自称清楚→BANの話題→中島みゆき「ひとり上手」内で替え歌→「アカBANってやだな」爆誕 という流れであった この曲が直前の話題であったれいちゃんズだらけの大運動会のエンディングテーマに決定した 4/21日 本戦直前!みんなを応援する歌 ファイト! ガッツだぜ FUNBARE☆RUNNER スタートライン 負けないで 俺たちの明日 どんなときも レディー・アクション キラっとスタート 帰り道 「皆を応援するつもりが私のほうが元気もらっちゃったよ」 とおっしゃる。 きっとリスナーさんも皆、ぽこさんの歌に元気をもらってます。 Twitterの思い出 フォロワーさんが本垢より多くなりました。 皆さん応援ありがとうございます (↑おめでとうございます!) 本選イベント期間 配信の思い出 4/22 月曜 本選初日 ボカロ縛り 懐かしのボカロを20曲近く歌う 弱虫モンブラン 妄想税 からくりピエロ 恋愛裁判 巨大少女 サマータイムレコード アヤノの幸福理論 夜咄ディセイブ オツキミリサイタル ゆるふわ樹海ガール サリシノハラ ルカルカ★ナイトフィーバー みくみくにしてあげる(してやんよ) (ぽこぽこにしてあげる(してやんよ)になった) いーあるふぁんくらぶ (ツイッターでの曲目ではいーあーるふぁんくらぶと書いてあった。おそらくサビを歌うときのイメージで書いたのだろう。可愛い) この日は走り回ったせいでかなり疲れていたらしい。 某おめでたい発表があったが、ご本人のプライバシーに触れるような触れないような、ご本人が言ったからセーフのようなアウトのような、判断しにくい微妙なラインのため詳細は伏せる。案外配信が終わった後にツイートされるかもしれないし、配信だけの情報かもしれない。 4/23 懐かしのJ pop 前半 ギザギザハートの子守唄 ルージュの伝言 フレンズ あなたは生きている プラチナ JUDY AND MARY only you BOØWY 大空と大地の中で 瑠璃色の地球 配信が途切れることを仏壇パワーかと心配していたが、この頃SHOWROOMの調子が悪かったらしい。 (この日の後半枠) セーラー服を脱がさないで やさしさに包まれたなら 俺ら東京さ行くだ OH MY LITTLE GIRL 4/24 懐かしのJpop 後半 MARIONET リンダリンダ セーラー服と機関銃 銀の雨 季節が君だけを変える あ〜よかった 卒業写真 今宵の月のように BE MY BABY 1990 津軽海峡・冬景色 なごり雪 赤いスイートピー 青い珊瑚礁 PRIDE 地上の星 4/25 マシュマロで届いた知らない曲をそれっぽく歌ってみよう!企画 アクティブ・ハート (原曲より難しい歌い方をしている、とはリスナーの言) K (BUMP OF CHICKEN) (独特のリズムや音程に翻弄され一番を歌ったところでリタイア) アニメじゃない (歌ってみたところお兄さんが歌っていたような気がするとのことで、サビだけはなんとなくそれっぽかった) 勇者王誕生!! (綺麗すぎる勇者王) 星獣戦隊ギンガマン (サビがそれっぽけりゃいいんだよ!ととあるリスナーは吠える) 檄!帝国華撃団 (コーラスにありそうなメロディラインに。おそらくカラオケのガイドメロディに合わせて歌ったところそうなったのでは?(という筆者の予想)) 後半枠、『蜘蛛の糸』を朗読する。 1時間丸々と朗読するつもりでいたが、15分で読み終わってしまった。 4/26 シャフトアニメ楽曲縛り コネクト カラフル 君の銀の庭 Magia and I m home またあした 恋愛サーキュレーション オレンジミント chocolate insomnia perfect slumbers sugar sweet nightmare fast love the last day of my adolescence 君の知らない物語 さよならのゆくえ 4/27 プリティ女児を目指す日 DANZEN! ふたりはプリキュア O-week-old コノウタトマレイヒ サンシャインベル キラっとスタート ドリームパレード Alright! ハートキャッチプリキュア 純・アモーレ Play sound☆ ブライトファンタジー チクタク・Magicaる・アイドルタイム Memorial 4/28 歌えるかな?カラオケランキング楽曲チャレンジ 空も飛べるはず 打ち上げ花火 前前前世 ハルノヒ 愛を伝えたいだとか 恋 3月9日 丸の内サディスティック アイネクライネ チェリー 今夜このまま 灰色と青 君はロックを聞かない ハナミズキ 糸 さよならエレジー マリーゴールド lemon 4/29 懐かしのアニソン ハレ晴レユカイ オラはにんきもの 恋☆カナ バラライカ 創聖のアクエリオン タッチ 心絵 キン肉マンGo Fight! はじめてのチュウ タイプ ワイルド めざせポケモンマスター (歌い間違え注意) アンインストール ハム太郎とっとこうた うしろゆびさされ組 残酷な天使のテーゼ Get wild デビルマンの歌 愛をとりもどせ God knows... 4/30 本戦最終日 朝 おジャ魔女カーニバル fancy baby doll Little Wish "first step" 檄!帝国華撃団 夕方〜最終枠 はなまるぴっぴはよいこだけ Honey Come!! motto☆派手にね! 15の夜 プラチナ 思い出を語る 配信は最初緊張でいっぱいだったが、篠笛を買ったあたりから心から配信が楽しめるようになった。とのこと。 垢BANってやだな 再演 本戦での思い出を語る 知らない曲をそれっぽく、でリクエストされた 『檄!帝国華撃団」をリベンジに次ぐリベンジ Twitterの思い出 ここに追記をお願いします! 名言集 「皆なんで清楚が逃げたって言うんですか!清楚は居るでしょここに」 「次の曲何にしようかな〜。地上の星!地上の星と目が合った!」 「皆さん女児だったりしますー?」 「もう一曲歌いますけど、皆さんもう一度女児なれるー?」 「明日はアレ歌います。…あれ、自分でアレ歌うって言ったのに忘れたよw」←ギザギザハートの子守歌が出てこなかった 「檄!帝国華撃団の最初のを俺!って読み間違えちゃった」 「(垢BANってやだなのラストを普通に歌ってしまって)いや、清楚だからさ」 リスナーからのSHOWROOM推薦コメント集(投稿早い順 編集され後ろに回ったものもそのまま掲載。リスナーさん方に確認を取っていないため匿名) お歌が得意な女の子!((時々篠笛を吹いている姿も見られます)綺麗な声を是非1度お聞きください。 お歌が得意なぽこさん!可愛い曲もカッコいい曲もしっとりした曲もネタ曲も、綺麗な声で本気で歌います!ボカロ曲縛り、懐かしJpop、シャフトアニメ縛り、プリティな女児を目指す(!?)、懐かしアニソンなどの歌企画があります!是非聞きに来て下さい! 数あるれいちゃんズの中でもトップクラスの歌唱力をもつ、未来のバーチャルシンガーの卵。アニソン、ボカロといったサブカル系の曲から、ラップ、昭和歌謡まで幅広いジャンルを歌いこなす。問答無用で足止めさせる力をもつ彼女の歌を一度聴きに来るといい。 お歌ガチ勢。一回聞いてみるべき。 ナナシス好き、他にも沢山歌うよ! 突発の替え歌にも適応する 歌が上手い、声も良い、面白い れいちゃん95番!ぽこちゃん! また会える日を、待ってます
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乞食れいむのおうた 作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定。 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 ゆっくり特有のリズムを奏でながら、新聞紙の上でおうたを歌うれいむ。 彼女は、この街に住む乞食ゆっくりでした。 乞食ゆっくり。 もしかすると、皆さんは初めてお聞きになったかもしれません。 だって、この街でしか使われていない言葉ですから。 「おにいさん、こじきってなんなのぜ?」 それは、とある銀バッヂまりさの質問から始まりました。 飼い主の横でテレビを見ていたまりさが、お兄さんに、いきなりそんな質問をしたのです。 「ん?どこでそんな言葉覚えたんだ?」 「きょう、おさんぽのとちゅうで、ちいさなにんげんさんたちがいってたのぜ。」 やれやれ、とお兄さんは思いました。 あまり良くない言葉を覚えて欲しくなかったのです。 けれども、これも社会勉強と、まりさにその言葉の意味を教えることにしました。 「んー、なんて言えばいいのかな……。」 お兄さんは、知識の少ないゆっくりに、何とか説明を試みます。 「乞食って言うのはね、街中で物乞いをする人のことだよ。」 「ものごいってなんなのぜ?」 「道ばたで、人にお金をもらったりすること。」 「なんでなのぜ?にんげんさんは、かいしゃからおきゅうりょうをもらうのぜ?」 「そういう人は、仕事が無かったり、自分の家が無かったりするからね。」 まりさは、お兄さんの説明にしばらく体を捻っていましたが、 ふと全ての謎が解けたかのように、ぴんと背筋を伸ばして言いました。 「ゆん!ゆっくりりかいしたのぜ!こじきはのらのにんげんさんなのぜ!」 このまりさ、お兄さんの説明を少し勘違いしてしまったようです。 けれども、お兄さんも面倒くさかったので、あえて訂正はしませんでした。 翌日、銀まりさは、お友達のゆっくりに、この話を伝えました。 みんな、近くの家で飼われている高級なゆっくりばかりです。 「むきゅ。ぱちゅも、えきまえでみたことあるのだわ。」 「のらのにんげんさんだねー。わかるよー。」 「それじゃあ、のらのゆっくりも、こじきなのかしら?」 「きっとそうだみょん!」 野良の人間が乞食なら、野良のゆっくりも乞食だろう。 彼らは、そう結論付けました。 そして、街中で野良を見かける度に、彼らを乞食と呼ぶようになったのです。 「あんなところにこじきがいるのぜ!きたないのぜ!」 「こじきはとかいはじゃないわ!ありすのそばにこないでね!」 この2匹、別にゲスではありません。 ペットショップで、店員さんから、野良は汚くてゆっくりできないと教えられ、 それを忠実に守っているだけなのです。 けれども、この呼び名を広めたのは、当の飼いゆっくりたちではありませんでした。 それを横で聞いていた、地元の小学生です。 小学生というものは、相手を馬鹿にする言葉が大好きなのです。 あっと言う間に、地元の小学校でこの呼び名が広まりました。 そして、今度は、小学生の言葉遣いが、他の飼いゆっくりに影響を与えます。 「おーい、こっちに乞食がいるぜ!」 「ゆゆ!こじきがいるよ!」 「おおこじきこじき。」 こうして、分別のある大人を除き、みんなが野良ゆっくりを乞食と呼ぶようになりました。 野良ゆっくりたちは、それが悪口だと分かると、とても怒りました。 「れいむはこじきじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「まりさはりっぱなのらゆっくりだよ!こじきじゃないよ!」 ですが、毎日のように乞食乞食と言われ続けると、 なんだか本当に乞食のような気がしてしまうものです。 1年も経った頃には、野良ゆっくりも、自分たちのことを乞食と呼ぶようになりました。 ですから、この街では、野良ゆっくりはみんな、乞食ゆっくりと呼ばれているのです。 ところで、名は体を表す、という諺があります。 乞食ゆっくりたちは、だんだん本物の乞食と一緒の生活をするようになりました。 街中で、物乞いをするようになったのです。 もちろん、ただ座っているだけでは、何も貰えません。 だから、乞食ゆっくりたちは、芸を披露することにしました。 あるものはダンスを踊り、あるものはおうたを歌います。 こうして、乞食ゆっくりたちは、街中の風景にすっかり溶け込んでしまいました。 「ゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆ~♪」 このれいむも、昔は街の近くにある小さな森で暮らしていましたが、 土地開発で巣を追われ、こうして乞食になったのです。 都会での生活に慣れていないれいむには、苦労苦労の連続でしたが、 仲間の手助けにより、ここまでやってこれました。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆゆ~♪」 「こじきのれいみゅにおきゃねをめぐんでくだちゃい!」 おうたを歌うれいむの横で、通行人に笑顔を振りまいているのは、 森を追われるときに助けた妹れいむです。 両親と他の姉妹は、おうちを潰そうとする巨大なすぃーに立ち向かい、 そして、ぺっちゃんこにされてしまいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 「おねがいしましゅ!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!」 森にいた頃は、うたひめと呼ばれ、みんながれいむのおうたを褒めてくれました。 でも、この街では、誰もれいむのおうたなど聴いてくれません。 みんな、顔色ひとつ変えずに、れいむたちの前を通り過ぎて行くだけです。 だけど、おうたを歌う以外に何もできないれいむは、おうたを歌い続けるしかありません。 「ゆゆ~ん♪ゆ~ゆゆ~♪」 おうたを歌っているとき、れいむはいつも、森での暮らしを思い浮かべます。 とっても優しいお父さんとお母さん、可愛らしい妹たち、 そして、みんなと遊んだゆっくりプレイス。 れいむは、ゆっくりとした記憶に浸りながら、今日もおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、部長の指示が悪いんだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、2匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 男は、ほんの一瞬、れいむの顔に目をやりました。 森の暮らしを思い出して歌うれいむの表情は、幸せそのものです。 男は、そのまま通り過ぎようとしましたが、何を思ったのか、 ポケットに手を入れると、きらきら光るものを、空き缶に投げ入れました。 チャリーン 金属のぶつかる音がします。 「ありがとうございます。」 れいむは、おうたを中断し、もみあげで三つ指をついて、頭を下げました。 「ありがちょうごじゃいましゅ!」 妹れいむは、ぴょんぴょん跳ねて、サラリーマンにお礼のダンスを披露します。 サラリーマンは、そんな2匹を無視すると、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなったところで、ようやく顔を上げます。 「きょうはおかねもらえたね。くらいからもうおうちにかえろうね。」 「ゆっくち~♪」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、お金ではありませんでした。 ただのビール瓶の蓋でした。 男は、嫌がらせをするために、わざとそれを入れたのです。 「ごめんね……。これおかねじゃないよ……。ごめんね……。」 「ゆぅ……。」 れいむは、白玉の目からすっと涙を流し、妹に何度も何度も謝ります。 やっと貰えたと思ったお金。 これなら、何も貰えない方が、どれほど良かったことでしょう。 「おにぇしゃんなかにゃいでにぇ。れいみゅゆっきゅりがまんしゅりゅよ。」 心配した妹が、れいむの頬にすーりすーりして来ます。 「おにぇしゃんしゅーりしゅーり。なきゃないでにぇ。」 そんな健気な妹を見ると、れいむも泣いてはいられません。 笑顔を取戻し、元気よく妹にすーりすーりし返してあげます。 「さあゆっくりおうちにかえろうね!」 「ゆっくち~♪」 れいむたちは、もみあげともみあげをしっかりと繋ぎ合わせ、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 「ゆゆん!このあんぱんさんはさんえんだよ!とってもやすいよ!」 「ちぇんかうよー!きょうはごえんだまもらったよー!」 「まりさもあまあまさんいっぱいあつめたよ!ゆっくりかいものしていってね!」 「ちーんぽ!」 ここは乞食谷。 乞食ゆっくりたちが集う、街の下宿所です。 もちろん、町中に谷などありません。 誰も住んでいないビルに囲まれた空き地が、谷底に似ているので、そう呼ばれているだけです。 乞食たちは、この谷の真ん中にあるドラム缶の前で、毎晩市場を開きます。 食べ物や段ボールなど、生活に必要なものを集めたゆっくりが、 人間からお金をもらったゆっくりに、それを売っているのです。 今日も市場は大盛況。 ゆっくりたちの賑やかな声が、あちこちから聞こえてきます。 「ゆぅ……。あんぱんしゃん……。」 そんな市場を遠くから眺めているのは、さきほどのれいむ姉妹です。 お金も物ももらえなかった2匹は、何にも交換するものがありません。 ただただ、他のゆっくりたちの買い物を見ている以外、することがないのです。 「れいみゅもあんぱんしゃんたべちゃいよ……。」 妹れいむが、物欲しそうに涎を垂らしながら、ちぇんの買った餡パンを見つめています。 「ごめんね。あしたはおかねをもらってあんぱんさんたべようね。」 「ゆぅ……。」 そんな会話をしていると、ふと市場の方から、1匹のゆっくりが跳ねて来ます。 それは、よく見知った帽子の子、ゆっくりまりさでした。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは、笑顔でれいむに挨拶します。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 れいむとその妹も、先程までの空腹を忘れて、元気よく挨拶を返します。 れいむは、このまりさと大の仲良しでした。 この乞食谷に案内してくれたのも、街中でたまたま出会ったこのまりさだったのです。 まりさは、人間にもそうと分かるくらいの美ゆっくりでしたが、野良は野良。 お帽子にはあちこちに穴が空き、お肌も都会の空気ですっかり汚れてしまっています。 そんなまりさは、とびっきりの笑顔で、れいむに話しかけます。 「きょうもいっぱいおかねもらえたよ!」 嘘ではありません。 このまりさは、1日になんと15円も稼ぐのです。 普通は5円も集まれば御の字なのですから、どれほど凄いかが分かります。 それもそのはず、このまりさは、芸の名人でした。 ぴょんと30センチも飛び跳ねてトンボ返りをしたり、 口に棒をくわえて、コーンの間に張った綱を渡ったりできるのです。 だから、人間さんたちの間でも、まりさはとっても有名でした。 「れいむはおかいものしないの?」 まりさは、れいむにそっと尋ねました。 れいむは何も答えませんでしたが、まりさには分かっています。 だって、れいむがお買い物をすることなど、滅多にないのですから。 れいむは、それくらい物乞いが下手なのです。 けれども、嫌みで尋ねたわけではありません。 まりさは、いつもこうやって、れいむにプレゼントする機会を作っているのです。 「れいむにこれあげるよ!」 まりさは、帽子の中から、野菜屑を取り出して、れいむに差し出します。 それは、八百屋さんの前で芸を披露したときに、店のおじさんから貰ったものでした。 このおじさん、普段はじゃがいもの皮しかくれないのですが、 その日はまりさの宙返りがあまりにも見事だったので、キャベツの葉っぱをくれました。 「ゆゆん!まりさありがとう!」 れいむは、うれし涙を流しながら、キャベツの葉っぱを受け取ります。 それを見た妹のれいむは、今にも端っこに噛み付いてしまいそうでしたが、 お姉さんのお腹がぐーぐー鳴っていることを、ちゃんと知っています。 だから、溢れそうになる唾を飲み込み、お行儀よく我慢することができました。 「こまったときはおたがいさまだよ!」 困ったときはお互い様。 まりさは、いつもそう言ってくれます。 だけど実際には、れいむが貰う一方で、お返ししたことなど一度もありません。 本当はお返ししたいと思っていても、あげるものが何もないのです。 れいむがまりさにしてあげられることは、ひとつだけ。 そして、まりさも、そのたったひとつのことを、いつもお願いして来ます。 「ねえ!まりさにおうたをきかせてよ!」 「いいよ!ゆっくりきいていってね!」 れいむは、まりさの前で、ゆっくりとおうたを歌い始めます。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆ~♪」 まりさは、本当にゆっくりとした表情で、れいむのおうたを静かに聴きます。 「れいむのおうたはほんとにゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!ありがとう!」 まりさは、お世辞を言ったのではありません。 れいむのおうたは、ゆっくりにとって、本当にゆっくりしたおうたなのです。 だけど、そのおうたを聴いてくれるのは、街中でも、このまりさしかいません。 その理由は簡単でした。 みんな生きることに必死で、おうたなど聴いている場合ではないのです。 だから、このまりさがおうたに耳を澄ますのは、彼女が恵まれていることの証なのです。 「おとうしゃんだけじゅるいよ!まりちゃもなきゃまにいれちぇにぇ!」 れいむとまりさの間に割って入ったのは、小さな体をのーびのーびさせた子まりさでした。 まりさをお父さんと呼んでいますが、2匹の間に餡子は繋がっていません。 子まりさの母親が車に轢かれ、側で泣いていたところを、まりさが拾ってあげたのです。 最初は母親が死んだショックで、まりさにはあまり懐いてくれませんでしたが、 いつからか、子まりさは、まりさをお父さんと呼ぶようになっていました。 「まりちゃだけにゃかまはじゅれにゃんてぴゅんぴゅんだよ!」 「ごめんね。でも、おちびちゃんがすーやすーやしてたから、おこさなかったんだよ。」 子まりさも、本気で怒っているわけではありません。 その証拠に、子まりさは、まりさの頬に擦り寄ると、すぐに笑顔に戻ります。 「れいみゅおねーしゃん。まりちゃにもおうちゃをきかちぇてにぇ。」 「ゆふふ。いいよ。もういっかいうたおうね。」 れいむは、そんなまりさたちのやりとりに、思わず顔が綻んでしまいます。 「れいみゅもおうちゃうちゃえるよ。」 子れいむが、もみあげさんをぴこぴこさせながら、可愛い声をあげました。 彼女も、お姉さんにおうたを教えてもらっているのです。 「それじゃあ、ふたりでうたおうね!」 「「ゆゆゆ~♪」」 その夜、乞食谷に、姉妹の楽しそうな歌声が、いつまでも響き渡りました。 次の日のこと。 物乞いから帰ったれいむのおうちへ、例のまりさが息を弾ませてやって来ます。 いったい何だろうと思っていると、まりさは次のように言いました。 「まりさ、てれびにでるよ!おかねもいっぱいもらえるよ!」 これでは、いったい何のことだか分かりません。 れいむはまりさを落ち着かせ、詳しく話してくれるように頼みました。 まりさの話はこうでした。 今日、いつもの繁華街で曲芸をしていると、いきなり男の人が話しかけてきたのです。 そして、男の人は、こう言いました。 テレビに出てみないかい、と。 彼は、某テレビ局のディレクターさんでした。 ディレクターさんの話によると、来月、街中の変わったゆっくりを紹介する番組があり、 ぜひまりさにも出演して欲しいと言うのでした。 「出演料として、500円出すよ。」 500円! まりさはびっくりしました。 だって、まりさの一ヶ月分の稼ぎが、1日で手に入るのですから。 まりさは、喜んでテレビ出演を快諾しました。 ディレクターさんは、日曜日にまた来ると言って、その場を去りました。 「もし500えんもらったら、れいむにすてきなぷれぜんとをするよ!」 500円もあれば、大きな板チョコが何枚も買えます。 まりさは口にしませんでしたが、その板チョコをれいむにプレゼントし、 そして愛の告白をするつもりだったのです。 「まりさすごいね!れいむゆっくりおうえんするよ!」 「うん!まりさもゆっくりがんばるよ!」 その日、まりさは、前祝いとして、とっておきの5円チョコを4匹で分け合いました。 上手く割れなかったので、れいむは子れいむに、まりさは子まりさに、 それぞれ大きな欠片を渡します。 「「「「む~しゃむ~しゃ♪しあわせ~♪」」」」 その夜、乞食谷に、4匹の幸せな声が、いつまでも響き渡りました。 日曜日、ついにまりさのテレビ出演の日がやって来ました。 もちろん、今日は単なる収録日で、放送は後日なのですが、 ゆっくりであるまりさたちには、そんなことは分かりません。 それに、どうせテレビを見ることなどできないのですから、 テレビに出られるかどうかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれません。 「おにいさん!きょうはまりさのすごいわざいっぱいみせてあげるね!」 まりさが、少しばかり声を震わせて言いました。 さすがに緊張しているのでしょう。 早速、得意のバク転を決めようと身構えたところで、ディレクターさんが止めに入ります。 「あ、悪いけど、君がやることは、こっちで決めてあるんだ。」 ディレクターさんは、そう言うと、奇麗な青空を指差しました。 まりさもれいむも、そして同伴した子ゆっくりたちも、不思議そうに空を見上げます。 「あそこに綱が見えるだろう。あれを渡ってくれ。」 最初は気付きませんでしたが、ビルとビルの間に、一本の太いロープが張られていました。 それは、建物の5階から伸びていて、長さも10mはあるでしょうか。 まりさは、言葉が出せません。 だって、こんなことをやるとは、聞いていなかったのですから。 「ゆゆ。これはたかすぎるよ。それにひもさんもながすぎるよ。」 「なに、やらないの?やらないなら、他のゆっくりに頼むけど?」 ディレクターさんは、まりさを睨みつけました。 「でも……あぶないよ……。」 「危ないからこそ、視聴者も喜ぶんだろう。普通の芸で500円貰おうなんて甘いね。」 まりさは迷います。 いくらゆっくりでも、この高さから落ちれば死ぬことくらいは理解できました。 以前、お友達のまりさが、誤って歩道橋から落ちてしまい、 地面でぺちゃんこになったのを、まりさは見たことがあるからです。 まりさは、困ったように視線を落とした後、今度はれいむの方を見ました。 まりさの目には、不安と同時に、何かを諦めきれない気持ちが、入り交じっていました。 れいむは、何も言うことができません。 これは、まりさの舞台なのです。 決めるのは、まりさであって、れいむではないのです。 しばらく悩んだ末、意を決したように顔を上げると、まりさはこう言いました。 「ゆん!まりさやるよ!」 「だめだよまりさ!こんなのゆっくりできないよ!」 大声を上げたのは、れいむでした。 そんな危険なことをして欲しくない。 ただその一心から出た声でした。 「あーん?なんだこのれいむは?」 ディレクターさんが、れいむの方へ近付いてきます。 すると、まりさが、慌ててディレクターさんの前に立ちはだかりました。 「れいむはまりさのおともだちだよ!いじめないでね!いじめたらまりさやめるよ!」 ディレクターさんは、少し不機嫌そうでしたが、黙ってスタッフに合図を送ります。 カメラが用意され、撮影が始まりました。 まりさは、若い男のスタッフに持ち上げられ、ビルの中に消えて行きます。 「ゆ~ん♪おそらをとんでるみたい♪」 そんな暢気な声が、半開きの自働ドアから聞こえてきました。 まりさが棒をくわえ、ロープの前に立ったとき、彼女はびっくりしてしまいました。 下から見上げたときよりも、ずっとずっと高く感じられたからです。 さすがのまりさも、あんよが震えてしまいます。 「よーし!じゃあ始めてくれ!」 遠くから、ディレクターさんの掛け声が聞こえました。 「おとうしゃん!がんばっちぇにぇ!」 「まりしゃおじしゃんがんびゃりぇー!」 地上で無邪気にまりさを応援しているのは、子まりさと子れいむの2匹です。 彼らは体をのーびのーびさせながら、一生懸命に声を張り上げます。 その横にいるれいむは、もみあげを合わせ、不安そうにまりさを見つめているだけ。 まりさのことが心配で心配で、舌が動かないのです。 そんなれいむの顔を見ていると、何としてでも渡り切ってやろうという気持ちが、 まりさの餡子の中に、むらむらと湧いてきました。 「これがめいじんまりさのつなわたりだよ!みんなみててね!」 まりさは、棒を上下の歯でしっかりと挟み、ぐっと表情を引き締めると、 まるっこいあんよを、ロープの端に乗せました。 めまいがしそうな高さです。下を見てはいけません。 「……。」 ゆっくりと、本当にゆっくりと、まりさはロープを渡って行きます。 人間さんたちは、最初から応援も何もしていませんでしたが、 今や子ゆっくりたちも、黙ってまりさの勇姿を見守るしかありません。 芸の最中に声を上げると気が散ることは、彼らも知っていたからです。 どれほどの時間が過ぎたでしょうか。 1時間とも2時間とも感じられるような緊張の連続が過ぎ去り、 気付けば、まりさはロープの半分を渡り切っていました。 さすがの人間さんたちも、これには驚きを隠せません。 あと半分。 この調子であと半分を渡り切れば、500円玉が手に入る。 そして、れいむに愛の告白をすることができる。 まりさの餡子を支配していた恐怖が、だんだんと希望に取って代わられます。 と、そのときでした。 ビューーーッ 「!」 強烈なビル風が、道ばたにいる人々を襲います。 まりさは、歯を食いしばり、ロープの上でバランスを取ろうと必死に踏ん張りました。 普通のゆっくりならば、すぐに吹き飛ばしてしまったであろうこの強風も、 まりさの素晴らしいバランス感覚の前では、柳に風です。 そう、まりさの前では。 「おぼっ!?」 まりさは、全身を器用にくねらせ、ロープの上で絶妙なバランスを取っていました。 しかし、まりさが動かせるのは、まるっこい饅頭の体だけなのです。 だから、辛抱を切らした風は、まりさではなく、 まりさの大事なお帽子を攫って行くことに決めました。 まりさは、外れかけたお帽子を放すまいと身を捩りますが、全く意味がありません。 お帽子は飾りであり、体の一部ではないのです。 ついに、風が、お帽子のツバに、見えない指を掛けました。 「まりさ!だめだよ!」 れいむの声は、遅過ぎました。 まりさは、お帽子に対する愛着から、うっかり後を追おうとしてしまったのです。 当然、バランスを失い、そのまま地面へ真っ逆さま。 ぐちゃ、という音と一緒に、永遠にゆっくりしてしまいました。 一瞬の出来事だったので、れいむたちには、何が起きたのか分かりません。 「よーし、いい絵が取れたぞ。」 「ディレクター、テロップはどうしますか?」 「薬中まりさ、白昼の錯乱綱渡り。バカとゆっくりは高いところがお好き。」 「お、いいですねえ。高視聴率間違いなしですよ。」 ディレクターさんは、嘘を吐いたのではありません。 ゆっくりの番組が放送されるというのは、本当です。 成功すれば500円玉をあげるつもりだったのも、本当です。 ただ、ディレクターさんは、ひとつだけ言わなかったことがあるのです。 番組のタイトルが、『爆笑☆街中のおかしなゆっくりたち』だということを。 「じゃ、それっぽく見えるように、適当に編集しといてね。」 ディレクターさんがその場を去ると、他の人間さんたちも、道具の片付けを始めました。 がちゃがちゃという音に、れいむは、ようやく意識を取戻します。 そうだ、ここには人間さんたちがいる。 人間さんは、どんな病気でも治すことができる。 れいむは、昔、死んだ長のぱちゅりーに、そう教えられたのを思い出しました。 「にんげんさん!おねがいだよ!まりさをたすけてあげてね!おねがいだよ!」 しかし、人間さんたちは、誰も助けてはくれません。 れいむは、側にいた女の人のところへぴょんぴょん跳ねると、また大声で言いました。 「おねえさん!まりさはまだいきてるんだよ!だからゆっくりたすけてあげてね!」 女の人は、五月蝿そうにれいむを避けると、道具を持ってどこかへ行ってしまいました。 れいむは向きを変え、少し離れたところにいる男の人に、跳ねながら話しかけます。 「おにいさん!まりさをびょういんにつれていってあげてね!おねがいだよ!」 れいむがさらに近付こうとすると、男の人の踵が、れいむの顔に当たりました。 体の中からメキッという音が聞こえ、れいむは後ろに転がってしまいます。 起き上がってみると、口の中が何やら変な感じです。 そうです。前歯が折れてしまったのです。 男の人も、それに気付きました。 「あーあ、足下でうろちょろするから。どっか行けよ。」 「まりひゃをびょういんにひゅれてってあげてね!おねがいだよ!」 れいむは、歯の折れた痛みなど忘れて、もう一度男の人に頼みます。 「あのさ、生きてるわけないっしょ。少しは現実見ろよ。」 「まりひゃはいきてるよ!だからたひゅけてあげてね!おねがいだよ!」 男の人は、やれやれと首を横に振り、その場を離れて行きました。 誰も助けてくれないことが分かったので、れいむは涙を流しながら、 まりさのところへ駆け寄ります。 「おとうしゃん!おめめあけちぇえええ!」 「まりしゃおじしゃんげんきになっちぇね……。ぺーろぺーろ……。」 まりさの側で、子れいむと子まりさが、しくしくと泣いています。 「まりひゃ!れいむといっひょにおいひゃひゃんにいこうね!」 れいむはそのとき、初めてまりさの顔を見てしまいました。 白玉の目玉が飛び出し、そこから餡子がたくさん漏れています。 それに口の形もいびつで、だらしなく舌が垂れていました。 街中でも指折りの美ゆっくりだったまりさの面影は、もはやどこにもありません。 「まりひゃ!きっとよくなるよ!だからおいひゃひゃんへいこうね!」 まりさは、返事をしてくれません。 それから何度かまりさの名前を呼んだ後、れいむは、 ようやくまりさが死んだのだと分かりました。 「まりびゃあああ!!!まりびゃああああああ!!!」 れいむも、わんわんと泣きました。 こんなことなら、まりさを止めれば良かった。 そう思っても、全ては後の祭りです。 そして、れいむにはもうひとつ、とっても後悔したことがありました。 彼女は聞いてしまったのです。 まりさが最後に叫んだ言葉を。 れいむあいしてるよ、と。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆひゅ~♪」 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 そうです。あの乞食れいむです。 れいむはあれからも、同じ場所で、同じおうたを歌い続けています。 「こじきのまりしゃにおきゃねをめぐんでくだちゃい!おにぇがいしましゅ!」 「こじきのれいみゅはおうたがとってもじょうずなんでしゅ!きいてくだちゃい!」 だけど、歯が折れてしまったれいむは、もう今までのようにおうたが歌えません。 以前は顔色ひとつ変えずに避けていた人たちも、今や我慢ができないといった様子で、 れいむたちを睨みつけ、罵声を浴びせます。 「くっせぇ饅頭がこんなところで歌ってんじゃねーぞ!」 「きもー。あのれいむ歯がないじゃん。」 「ゆひゅ~♪ゆひひゅ~♪」 溢れそうになる涙を堪えながら、れいむはおうたを歌います。 もう、おうたを歌っても、昔の楽しかった思い出は、餡子の中に浮かんできません。 だかられいむは、何も考えず、生きるためにおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、ありゃ新入りのヘマだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅになにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、3匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 そのまま通り過ぎようとしたとき、男は、ふと足を止めました。 この光景、どこかで見たことがある。そうだ、あのれいむだ。 ずっと前に、ビール瓶の蓋で、このれいむをからかったことを、男は覚えていました。 男は、しばらくの間、じっとれいむの顔を見つめていました。 れいむの方は目を瞑り、真剣におうたを歌っています。 前歯の隙間から空気が漏れ、ひゅーひゅーと間の抜けた音が聞こえても、 れいむは真剣におうたを歌っているのです。 チャリーン 缶の底で、金属のぶつかる音がします。 「ありがとうごびゃいまひゅ。」 「「ありがとうございましゅ!」」 れいむと2匹の子ゆっくりは、もみあげとおさげで三つ指をつき、深々と頭を下げます。 サラリーマンは、お礼を言う3匹を無視して、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなると、ようやく体を持ち上げます。 「ひょうはおかねもらえひゃね。くらいからもうおうひにひゃえろうね。」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、1円玉でした。 「ゆわ~♪いひえんだまひゃんだよ♪」 れいむの顔がぱっと明るくなります。 「いちえんだましゃんゆっくりしていっちぇね!」 妹れいむも目を輝かせ、1円玉さんにすーりすーりしようと体を伸ばします。 「おじしゃんありがちょね!」 子まりさは、もう姿の見えない男の方角に向かい、何度も何度もお礼を言いました。 「ゆっくりおうひにかえってくひゃひゃんをむーひゃむーひゃひようね!」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、右のもみあげで子れいむを、左のもみあげで子まりさを抱き寄せると、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 そんなれいむの唇には、生まれて初めて恵んでもらった1円玉が、 何か大事なものと交換されたかのように、赤く赤く、輝いているのでした。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して
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乞食れいむのおうた 作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定。 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 ゆっくり特有のリズムを奏でながら、新聞紙の上でおうたを歌うれいむ。 彼女は、この街に住む乞食ゆっくりでした。 乞食ゆっくり。 もしかすると、皆さんは初めてお聞きになったかもしれません。 だって、この街でしか使われていない言葉ですから。 「おにいさん、こじきってなんなのぜ?」 それは、とある銀バッヂまりさの質問から始まりました。 飼い主の横でテレビを見ていたまりさが、お兄さんに、いきなりそんな質問をしたのです。 「ん?どこでそんな言葉覚えたんだ?」 「きょう、おさんぽのとちゅうで、ちいさなにんげんさんたちがいってたのぜ。」 やれやれ、とお兄さんは思いました。 あまり良くない言葉を覚えて欲しくなかったのです。 けれども、これも社会勉強と、まりさにその言葉の意味を教えることにしました。 「んー、なんて言えばいいのかな……。」 お兄さんは、知識の少ないゆっくりに、何とか説明を試みます。 「乞食って言うのはね、街中で物乞いをする人のことだよ。」 「ものごいってなんなのぜ?」 「道ばたで、人にお金をもらったりすること。」 「なんでなのぜ?にんげんさんは、かいしゃからおきゅうりょうをもらうのぜ?」 「そういう人は、仕事が無かったり、自分の家が無かったりするからね。」 まりさは、お兄さんの説明にしばらく体を捻っていましたが、 ふと全ての謎が解けたかのように、ぴんと背筋を伸ばして言いました。 「ゆん!ゆっくりりかいしたのぜ!こじきはのらのにんげんさんなのぜ!」 このまりさ、お兄さんの説明を少し勘違いしてしまったようです。 けれども、お兄さんも面倒くさかったので、あえて訂正はしませんでした。 翌日、銀まりさは、お友達のゆっくりに、この話を伝えました。 みんな、近くの家で飼われている高級なゆっくりばかりです。 「むきゅ。ぱちゅも、えきまえでみたことあるのだわ。」 「のらのにんげんさんだねー。わかるよー。」 「それじゃあ、のらのゆっくりも、こじきなのかしら?」 「きっとそうだみょん!」 野良の人間が乞食なら、野良のゆっくりも乞食だろう。 彼らは、そう結論付けました。 そして、街中で野良を見かける度に、彼らを乞食と呼ぶようになったのです。 「あんなところにこじきがいるのぜ!きたないのぜ!」 「こじきはとかいはじゃないわ!ありすのそばにこないでね!」 この2匹、別にゲスではありません。 ペットショップで、店員さんから、野良は汚くてゆっくりできないと教えられ、 それを忠実に守っているだけなのです。 けれども、この呼び名を広めたのは、当の飼いゆっくりたちではありませんでした。 それを横で聞いていた、地元の小学生です。 小学生というものは、相手を馬鹿にする言葉が大好きなのです。 あっと言う間に、地元の小学校でこの呼び名が広まりました。 そして、今度は、小学生の言葉遣いが、他の飼いゆっくりに影響を与えます。 「おーい、こっちに乞食がいるぜ!」 「ゆゆ!こじきがいるよ!」 「おおこじきこじき。」 こうして、分別のある大人を除き、みんなが野良ゆっくりを乞食と呼ぶようになりました。 野良ゆっくりたちは、それが悪口だと分かると、とても怒りました。 「れいむはこじきじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「まりさはりっぱなのらゆっくりだよ!こじきじゃないよ!」 ですが、毎日のように乞食乞食と言われ続けると、 なんだか本当に乞食のような気がしてしまうものです。 1年も経った頃には、野良ゆっくりも、自分たちのことを乞食と呼ぶようになりました。 ですから、この街では、野良ゆっくりはみんな、乞食ゆっくりと呼ばれているのです。 ところで、名は体を表す、という諺があります。 乞食ゆっくりたちは、だんだん本物の乞食と一緒の生活をするようになりました。 街中で、物乞いをするようになったのです。 もちろん、ただ座っているだけでは、何も貰えません。 だから、乞食ゆっくりたちは、芸を披露することにしました。 あるものはダンスを踊り、あるものはおうたを歌います。 こうして、乞食ゆっくりたちは、街中の風景にすっかり溶け込んでしまいました。 「ゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆ~♪」 このれいむも、昔は街の近くにある小さな森で暮らしていましたが、 土地開発で巣を追われ、こうして乞食になったのです。 都会での生活に慣れていないれいむには、苦労苦労の連続でしたが、 仲間の手助けにより、ここまでやってこれました。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆゆ~♪」 「こじきのれいみゅにおきゃねをめぐんでくだちゃい!」 おうたを歌うれいむの横で、通行人に笑顔を振りまいているのは、 森を追われるときに助けた妹れいむです。 両親と他の姉妹は、おうちを潰そうとする巨大なすぃーに立ち向かい、 そして、ぺっちゃんこにされてしまいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 「おねがいしましゅ!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!」 森にいた頃は、うたひめと呼ばれ、みんながれいむのおうたを褒めてくれました。 でも、この街では、誰もれいむのおうたなど聴いてくれません。 みんな、顔色ひとつ変えずに、れいむたちの前を通り過ぎて行くだけです。 だけど、おうたを歌う以外に何もできないれいむは、おうたを歌い続けるしかありません。 「ゆゆ~ん♪ゆ~ゆゆ~♪」 おうたを歌っているとき、れいむはいつも、森での暮らしを思い浮かべます。 とっても優しいお父さんとお母さん、可愛らしい妹たち、 そして、みんなと遊んだゆっくりプレイス。 れいむは、ゆっくりとした記憶に浸りながら、今日もおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、部長の指示が悪いんだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、2匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 男は、ほんの一瞬、れいむの顔に目をやりました。 森の暮らしを思い出して歌うれいむの表情は、幸せそのものです。 男は、そのまま通り過ぎようとしましたが、何を思ったのか、 ポケットに手を入れると、きらきら光るものを、空き缶に投げ入れました。 チャリーン 金属のぶつかる音がします。 「ありがとうございます。」 れいむは、おうたを中断し、もみあげで三つ指をついて、頭を下げました。 「ありがちょうごじゃいましゅ!」 妹れいむは、ぴょんぴょん跳ねて、サラリーマンにお礼のダンスを披露します。 サラリーマンは、そんな2匹を無視すると、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなったところで、ようやく顔を上げます。 「きょうはおかねもらえたね。くらいからもうおうちにかえろうね。」 「ゆっくち~♪」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、お金ではありませんでした。 ただのビール瓶の蓋でした。 男は、嫌がらせをするために、わざとそれを入れたのです。 「ごめんね……。これおかねじゃないよ……。ごめんね……。」 「ゆぅ……。」 れいむは、白玉の目からすっと涙を流し、妹に何度も何度も謝ります。 やっと貰えたと思ったお金。 これなら、何も貰えない方が、どれほど良かったことでしょう。 「おにぇしゃんなかにゃいでにぇ。れいみゅゆっきゅりがまんしゅりゅよ。」 心配した妹が、れいむの頬にすーりすーりして来ます。 「おにぇしゃんしゅーりしゅーり。なきゃないでにぇ。」 そんな健気な妹を見ると、れいむも泣いてはいられません。 笑顔を取戻し、元気よく妹にすーりすーりし返してあげます。 「さあゆっくりおうちにかえろうね!」 「ゆっくち~♪」 れいむたちは、もみあげともみあげをしっかりと繋ぎ合わせ、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 「ゆゆん!このあんぱんさんはさんえんだよ!とってもやすいよ!」 「ちぇんかうよー!きょうはごえんだまもらったよー!」 「まりさもあまあまさんいっぱいあつめたよ!ゆっくりかいものしていってね!」 「ちーんぽ!」 ここは乞食谷。 乞食ゆっくりたちが集う、街の下宿所です。 もちろん、町中に谷などありません。 誰も住んでいないビルに囲まれた空き地が、谷底に似ているので、そう呼ばれているだけです。 乞食たちは、この谷の真ん中にあるドラム缶の前で、毎晩市場を開きます。 食べ物や段ボールなど、生活に必要なものを集めたゆっくりが、 人間からお金をもらったゆっくりに、それを売っているのです。 今日も市場は大盛況。 ゆっくりたちの賑やかな声が、あちこちから聞こえてきます。 「ゆぅ……。あんぱんしゃん……。」 そんな市場を遠くから眺めているのは、さきほどのれいむ姉妹です。 お金も物ももらえなかった2匹は、何にも交換するものがありません。 ただただ、他のゆっくりたちの買い物を見ている以外、することがないのです。 「れいみゅもあんぱんしゃんたべちゃいよ……。」 妹れいむが、物欲しそうに涎を垂らしながら、ちぇんの買った餡パンを見つめています。 「ごめんね。あしたはおかねをもらってあんぱんさんたべようね。」 「ゆぅ……。」 そんな会話をしていると、ふと市場の方から、1匹のゆっくりが跳ねて来ます。 それは、よく見知った帽子の子、ゆっくりまりさでした。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは、笑顔でれいむに挨拶します。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 れいむとその妹も、先程までの空腹を忘れて、元気よく挨拶を返します。 れいむは、このまりさと大の仲良しでした。 この乞食谷に案内してくれたのも、街中でたまたま出会ったこのまりさだったのです。 まりさは、人間にもそうと分かるくらいの美ゆっくりでしたが、野良は野良。 お帽子にはあちこちに穴が空き、お肌も都会の空気ですっかり汚れてしまっています。 そんなまりさは、とびっきりの笑顔で、れいむに話しかけます。 「きょうもいっぱいおかねもらえたよ!」 嘘ではありません。 このまりさは、1日になんと15円も稼ぐのです。 普通は5円も集まれば御の字なのですから、どれほど凄いかが分かります。 それもそのはず、このまりさは、芸の名人でした。 ぴょんと30センチも飛び跳ねてトンボ返りをしたり、 口に棒をくわえて、コーンの間に張った綱を渡ったりできるのです。 だから、人間さんたちの間でも、まりさはとっても有名でした。 「れいむはおかいものしないの?」 まりさは、れいむにそっと尋ねました。 れいむは何も答えませんでしたが、まりさには分かっています。 だって、れいむがお買い物をすることなど、滅多にないのですから。 れいむは、それくらい物乞いが下手なのです。 けれども、嫌みで尋ねたわけではありません。 まりさは、いつもこうやって、れいむにプレゼントする機会を作っているのです。 「れいむにこれあげるよ!」 まりさは、帽子の中から、野菜屑を取り出して、れいむに差し出します。 それは、八百屋さんの前で芸を披露したときに、店のおじさんから貰ったものでした。 このおじさん、普段はじゃがいもの皮しかくれないのですが、 その日はまりさの宙返りがあまりにも見事だったので、キャベツの葉っぱをくれました。 「ゆゆん!まりさありがとう!」 れいむは、うれし涙を流しながら、キャベツの葉っぱを受け取ります。 それを見た妹のれいむは、今にも端っこに噛み付いてしまいそうでしたが、 お姉さんのお腹がぐーぐー鳴っていることを、ちゃんと知っています。 だから、溢れそうになる唾を飲み込み、お行儀よく我慢することができました。 「こまったときはおたがいさまだよ!」 困ったときはお互い様。 まりさは、いつもそう言ってくれます。 だけど実際には、れいむが貰う一方で、お返ししたことなど一度もありません。 本当はお返ししたいと思っていても、あげるものが何もないのです。 れいむがまりさにしてあげられることは、ひとつだけ。 そして、まりさも、そのたったひとつのことを、いつもお願いして来ます。 「ねえ!まりさにおうたをきかせてよ!」 「いいよ!ゆっくりきいていってね!」 れいむは、まりさの前で、ゆっくりとおうたを歌い始めます。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆ~♪」 まりさは、本当にゆっくりとした表情で、れいむのおうたを静かに聴きます。 「れいむのおうたはほんとにゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!ありがとう!」 まりさは、お世辞を言ったのではありません。 れいむのおうたは、ゆっくりにとって、本当にゆっくりしたおうたなのです。 だけど、そのおうたを聴いてくれるのは、街中でも、このまりさしかいません。 その理由は簡単でした。 みんな生きることに必死で、おうたなど聴いている場合ではないのです。 だから、このまりさがおうたに耳を澄ますのは、彼女が恵まれていることの証なのです。 「おとうしゃんだけじゅるいよ!まりちゃもなきゃまにいれちぇにぇ!」 れいむとまりさの間に割って入ったのは、小さな体をのーびのーびさせた子まりさでした。 まりさをお父さんと呼んでいますが、2匹の間に餡子は繋がっていません。 子まりさの母親が車に轢かれ、側で泣いていたところを、まりさが拾ってあげたのです。 最初は母親が死んだショックで、まりさにはあまり懐いてくれませんでしたが、 いつからか、子まりさは、まりさをお父さんと呼ぶようになっていました。 「まりちゃだけにゃかまはじゅれにゃんてぴゅんぴゅんだよ!」 「ごめんね。でも、おちびちゃんがすーやすーやしてたから、おこさなかったんだよ。」 子まりさも、本気で怒っているわけではありません。 その証拠に、子まりさは、まりさの頬に擦り寄ると、すぐに笑顔に戻ります。 「れいみゅおねーしゃん。まりちゃにもおうちゃをきかちぇてにぇ。」 「ゆふふ。いいよ。もういっかいうたおうね。」 れいむは、そんなまりさたちのやりとりに、思わず顔が綻んでしまいます。 「れいみゅもおうちゃうちゃえるよ。」 子れいむが、もみあげさんをぴこぴこさせながら、可愛い声をあげました。 彼女も、お姉さんにおうたを教えてもらっているのです。 「それじゃあ、ふたりでうたおうね!」 「「ゆゆゆ~♪」」 その夜、乞食谷に、姉妹の楽しそうな歌声が、いつまでも響き渡りました。 次の日のこと。 物乞いから帰ったれいむのおうちへ、例のまりさが息を弾ませてやって来ます。 いったい何だろうと思っていると、まりさは次のように言いました。 「まりさ、てれびにでるよ!おかねもいっぱいもらえるよ!」 これでは、いったい何のことだか分かりません。 れいむはまりさを落ち着かせ、詳しく話してくれるように頼みました。 まりさの話はこうでした。 今日、いつもの繁華街で曲芸をしていると、いきなり男の人が話しかけてきたのです。 そして、男の人は、こう言いました。 テレビに出てみないかい、と。 彼は、某テレビ局のディレクターさんでした。 ディレクターさんの話によると、来月、街中の変わったゆっくりを紹介する番組があり、 ぜひまりさにも出演して欲しいと言うのでした。 「出演料として、500円出すよ。」 500円! まりさはびっくりしました。 だって、まりさの一ヶ月分の稼ぎが、1日で手に入るのですから。 まりさは、喜んでテレビ出演を快諾しました。 ディレクターさんは、日曜日にまた来ると言って、その場を去りました。 「もし500えんもらったら、れいむにすてきなぷれぜんとをするよ!」 500円もあれば、大きな板チョコが何枚も買えます。 まりさは口にしませんでしたが、その板チョコをれいむにプレゼントし、 そして愛の告白をするつもりだったのです。 「まりさすごいね!れいむゆっくりおうえんするよ!」 「うん!まりさもゆっくりがんばるよ!」 その日、まりさは、前祝いとして、とっておきの5円チョコを4匹で分け合いました。 上手く割れなかったので、れいむは子れいむに、まりさは子まりさに、 それぞれ大きな欠片を渡します。 「「「「む~しゃむ~しゃ♪しあわせ~♪」」」」 その夜、乞食谷に、4匹の幸せな声が、いつまでも響き渡りました。 日曜日、ついにまりさのテレビ出演の日がやって来ました。 もちろん、今日は単なる収録日で、放送は後日なのですが、 ゆっくりであるまりさたちには、そんなことは分かりません。 それに、どうせテレビを見ることなどできないのですから、 テレビに出られるかどうかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれません。 「おにいさん!きょうはまりさのすごいわざいっぱいみせてあげるね!」 まりさが、少しばかり声を震わせて言いました。 さすがに緊張しているのでしょう。 早速、得意のバク転を決めようと身構えたところで、ディレクターさんが止めに入ります。 「あ、悪いけど、君がやることは、こっちで決めてあるんだ。」 ディレクターさんは、そう言うと、奇麗な青空を指差しました。 まりさもれいむも、そして同伴した子ゆっくりたちも、不思議そうに空を見上げます。 「あそこに綱が見えるだろう。あれを渡ってくれ。」 最初は気付きませんでしたが、ビルとビルの間に、一本の太いロープが張られていました。 それは、建物の5階から伸びていて、長さも10mはあるでしょうか。 まりさは、言葉が出せません。 だって、こんなことをやるとは、聞いていなかったのですから。 「ゆゆ。これはたかすぎるよ。それにひもさんもながすぎるよ。」 「なに、やらないの?やらないなら、他のゆっくりに頼むけど?」 ディレクターさんは、まりさを睨みつけました。 「でも……あぶないよ……。」 「危ないからこそ、視聴者も喜ぶんだろう。普通の芸で500円貰おうなんて甘いね。」 まりさは迷います。 いくらゆっくりでも、この高さから落ちれば死ぬことくらいは理解できました。 以前、お友達のまりさが、誤って歩道橋から落ちてしまい、 地面でぺちゃんこになったのを、まりさは見たことがあるからです。 まりさは、困ったように視線を落とした後、今度はれいむの方を見ました。 まりさの目には、不安と同時に、何かを諦めきれない気持ちが、入り交じっていました。 れいむは、何も言うことができません。 これは、まりさの舞台なのです。 決めるのは、まりさであって、れいむではないのです。 しばらく悩んだ末、意を決したように顔を上げると、まりさはこう言いました。 「ゆん!まりさやるよ!」 「だめだよまりさ!こんなのゆっくりできないよ!」 大声を上げたのは、れいむでした。 そんな危険なことをして欲しくない。 ただその一心から出た声でした。 「あーん?なんだこのれいむは?」 ディレクターさんが、れいむの方へ近付いてきます。 すると、まりさが、慌ててディレクターさんの前に立ちはだかりました。 「れいむはまりさのおともだちだよ!いじめないでね!いじめたらまりさやめるよ!」 ディレクターさんは、少し不機嫌そうでしたが、黙ってスタッフに合図を送ります。 カメラが用意され、撮影が始まりました。 まりさは、若い男のスタッフに持ち上げられ、ビルの中に消えて行きます。 「ゆ~ん♪おそらをとんでるみたい♪」 そんな暢気な声が、半開きの自働ドアから聞こえてきました。 まりさが棒をくわえ、ロープの前に立ったとき、彼女はびっくりしてしまいました。 下から見上げたときよりも、ずっとずっと高く感じられたからです。 さすがのまりさも、あんよが震えてしまいます。 「よーし!じゃあ始めてくれ!」 遠くから、ディレクターさんの掛け声が聞こえました。 「おとうしゃん!がんばっちぇにぇ!」 「まりしゃおじしゃんがんびゃりぇー!」 地上で無邪気にまりさを応援しているのは、子まりさと子れいむの2匹です。 彼らは体をのーびのーびさせながら、一生懸命に声を張り上げます。 その横にいるれいむは、もみあげを合わせ、不安そうにまりさを見つめているだけ。 まりさのことが心配で心配で、舌が動かないのです。 そんなれいむの顔を見ていると、何としてでも渡り切ってやろうという気持ちが、 まりさの餡子の中に、むらむらと湧いてきました。 「これがめいじんまりさのつなわたりだよ!みんなみててね!」 まりさは、棒を上下の歯でしっかりと挟み、ぐっと表情を引き締めると、 まるっこいあんよを、ロープの端に乗せました。 めまいがしそうな高さです。下を見てはいけません。 「……。」 ゆっくりと、本当にゆっくりと、まりさはロープを渡って行きます。 人間さんたちは、最初から応援も何もしていませんでしたが、 今や子ゆっくりたちも、黙ってまりさの勇姿を見守るしかありません。 芸の最中に声を上げると気が散ることは、彼らも知っていたからです。 どれほどの時間が過ぎたでしょうか。 1時間とも2時間とも感じられるような緊張の連続が過ぎ去り、 気付けば、まりさはロープの半分を渡り切っていました。 さすがの人間さんたちも、これには驚きを隠せません。 あと半分。 この調子であと半分を渡り切れば、500円玉が手に入る。 そして、れいむに愛の告白をすることができる。 まりさの餡子を支配していた恐怖が、だんだんと希望に取って代わられます。 と、そのときでした。 ビューーーッ 「!」 強烈なビル風が、道ばたにいる人々を襲います。 まりさは、歯を食いしばり、ロープの上でバランスを取ろうと必死に踏ん張りました。 普通のゆっくりならば、すぐに吹き飛ばしてしまったであろうこの強風も、 まりさの素晴らしいバランス感覚の前では、柳に風です。 そう、まりさの前では。 「おぼっ!?」 まりさは、全身を器用にくねらせ、ロープの上で絶妙なバランスを取っていました。 しかし、まりさが動かせるのは、まるっこい饅頭の体だけなのです。 だから、辛抱を切らした風は、まりさではなく、 まりさの大事なお帽子を攫って行くことに決めました。 まりさは、外れかけたお帽子を放すまいと身を捩りますが、全く意味がありません。 お帽子は飾りであり、体の一部ではないのです。 ついに、風が、お帽子のツバに、見えない指を掛けました。 「まりさ!だめだよ!」 れいむの声は、遅過ぎました。 まりさは、お帽子に対する愛着から、うっかり後を追おうとしてしまったのです。 当然、バランスを失い、そのまま地面へ真っ逆さま。 ぐちゃ、という音と一緒に、永遠にゆっくりしてしまいました。 一瞬の出来事だったので、れいむたちには、何が起きたのか分かりません。 「よーし、いい絵が取れたぞ。」 「ディレクター、テロップはどうしますか?」 「薬中まりさ、白昼の錯乱綱渡り。バカとゆっくりは高いところがお好き。」 「お、いいですねえ。高視聴率間違いなしですよ。」 ディレクターさんは、嘘を吐いたのではありません。 ゆっくりの番組が放送されるというのは、本当です。 成功すれば500円玉をあげるつもりだったのも、本当です。 ただ、ディレクターさんは、ひとつだけ言わなかったことがあるのです。 番組のタイトルが、『爆笑☆街中のおかしなゆっくりたち』だということを。 「じゃ、それっぽく見えるように、適当に編集しといてね。」 ディレクターさんがその場を去ると、他の人間さんたちも、道具の片付けを始めました。 がちゃがちゃという音に、れいむは、ようやく意識を取戻します。 そうだ、ここには人間さんたちがいる。 人間さんは、どんな病気でも治すことができる。 れいむは、昔、死んだ長のぱちゅりーに、そう教えられたのを思い出しました。 「にんげんさん!おねがいだよ!まりさをたすけてあげてね!おねがいだよ!」 しかし、人間さんたちは、誰も助けてはくれません。 れいむは、側にいた女の人のところへぴょんぴょん跳ねると、また大声で言いました。 「おねえさん!まりさはまだいきてるんだよ!だからゆっくりたすけてあげてね!」 女の人は、五月蝿そうにれいむを避けると、道具を持ってどこかへ行ってしまいました。 れいむは向きを変え、少し離れたところにいる男の人に、跳ねながら話しかけます。 「おにいさん!まりさをびょういんにつれていってあげてね!おねがいだよ!」 れいむがさらに近付こうとすると、男の人の踵が、れいむの顔に当たりました。 体の中からメキッという音が聞こえ、れいむは後ろに転がってしまいます。 起き上がってみると、口の中が何やら変な感じです。 そうです。前歯が折れてしまったのです。 男の人も、それに気付きました。 「あーあ、足下でうろちょろするから。どっか行けよ。」 「まりひゃをびょういんにひゅれてってあげてね!おねがいだよ!」 れいむは、歯の折れた痛みなど忘れて、もう一度男の人に頼みます。 「あのさ、生きてるわけないっしょ。少しは現実見ろよ。」 「まりひゃはいきてるよ!だからたひゅけてあげてね!おねがいだよ!」 男の人は、やれやれと首を横に振り、その場を離れて行きました。 誰も助けてくれないことが分かったので、れいむは涙を流しながら、 まりさのところへ駆け寄ります。 「おとうしゃん!おめめあけちぇえええ!」 「まりしゃおじしゃんげんきになっちぇね……。ぺーろぺーろ……。」 まりさの側で、子れいむと子まりさが、しくしくと泣いています。 「まりひゃ!れいむといっひょにおいひゃひゃんにいこうね!」 れいむはそのとき、初めてまりさの顔を見てしまいました。 白玉の目玉が飛び出し、そこから餡子がたくさん漏れています。 それに口の形もいびつで、だらしなく舌が垂れていました。 街中でも指折りの美ゆっくりだったまりさの面影は、もはやどこにもありません。 「まりひゃ!きっとよくなるよ!だからおいひゃひゃんへいこうね!」 まりさは、返事をしてくれません。 それから何度かまりさの名前を呼んだ後、れいむは、 ようやくまりさが死んだのだと分かりました。 「まりびゃあああ!!!まりびゃああああああ!!!」 れいむも、わんわんと泣きました。 こんなことなら、まりさを止めれば良かった。 そう思っても、全ては後の祭りです。 そして、れいむにはもうひとつ、とっても後悔したことがありました。 彼女は聞いてしまったのです。 まりさが最後に叫んだ言葉を。 れいむあいしてるよ、と。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆひゅ~♪」 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 そうです。あの乞食れいむです。 れいむはあれからも、同じ場所で、同じおうたを歌い続けています。 「こじきのまりしゃにおきゃねをめぐんでくだちゃい!おにぇがいしましゅ!」 「こじきのれいみゅはおうたがとってもじょうずなんでしゅ!きいてくだちゃい!」 だけど、歯が折れてしまったれいむは、もう今までのようにおうたが歌えません。 以前は顔色ひとつ変えずに避けていた人たちも、今や我慢ができないといった様子で、 れいむたちを睨みつけ、罵声を浴びせます。 「くっせぇ饅頭がこんなところで歌ってんじゃねーぞ!」 「きもー。あのれいむ歯がないじゃん。」 「ゆひゅ~♪ゆひひゅ~♪」 溢れそうになる涙を堪えながら、れいむはおうたを歌います。 もう、おうたを歌っても、昔の楽しかった思い出は、餡子の中に浮かんできません。 だかられいむは、何も考えず、生きるためにおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、ありゃ新入りのヘマだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅになにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、3匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 そのまま通り過ぎようとしたとき、男は、ふと足を止めました。 この光景、どこかで見たことがある。そうだ、あのれいむだ。 ずっと前に、ビール瓶の蓋で、このれいむをからかったことを、男は覚えていました。 男は、しばらくの間、じっとれいむの顔を見つめていました。 れいむの方は目を瞑り、真剣におうたを歌っています。 前歯の隙間から空気が漏れ、ひゅーひゅーと間の抜けた音が聞こえても、 れいむは真剣におうたを歌っているのです。 チャリーン 缶の底で、金属のぶつかる音がします。 「ありがとうごびゃいまひゅ。」 「「ありがとうございましゅ!」」 れいむと2匹の子ゆっくりは、もみあげとおさげで三つ指をつき、深々と頭を下げます。 サラリーマンは、お礼を言う3匹を無視して、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなると、ようやく体を持ち上げます。 「ひょうはおかねもらえひゃね。くらいからもうおうひにひゃえろうね。」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、1円玉でした。 「ゆわ~♪いひえんだまひゃんだよ♪」 れいむの顔がぱっと明るくなります。 「いちえんだましゃんゆっくりしていっちぇね!」 妹れいむも目を輝かせ、1円玉さんにすーりすーりしようと体を伸ばします。 「おじしゃんありがちょね!」 子まりさは、もう姿の見えない男の方角に向かい、何度も何度もお礼を言いました。 「ゆっくりおうひにかえってくひゃひゃんをむーひゃむーひゃひようね!」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、右のもみあげで子れいむを、左のもみあげで子まりさを抱き寄せると、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 そんなれいむの唇には、生まれて初めて恵んでもらった1円玉が、 何か大事なものと交換されたかのように、赤く赤く、輝いているのでした。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して このSSに感想を付ける
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乞食れいむのおうた 作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定。 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 ゆっくり特有のリズムを奏でながら、新聞紙の上でおうたを歌うれいむ。 彼女は、この街に住む乞食ゆっくりでした。 乞食ゆっくり。 もしかすると、皆さんは初めてお聞きになったかもしれません。 だって、この街でしか使われていない言葉ですから。 「おにいさん、こじきってなんなのぜ?」 それは、とある銀バッヂまりさの質問から始まりました。 飼い主の横でテレビを見ていたまりさが、お兄さんに、いきなりそんな質問をしたのです。 「ん?どこでそんな言葉覚えたんだ?」 「きょう、おさんぽのとちゅうで、ちいさなにんげんさんたちがいってたのぜ。」 やれやれ、とお兄さんは思いました。 あまり良くない言葉を覚えて欲しくなかったのです。 けれども、これも社会勉強と、まりさにその言葉の意味を教えることにしました。 「んー、なんて言えばいいのかな……。」 お兄さんは、知識の少ないゆっくりに、何とか説明を試みます。 「乞食って言うのはね、街中で物乞いをする人のことだよ。」 「ものごいってなんなのぜ?」 「道ばたで、人にお金をもらったりすること。」 「なんでなのぜ?にんげんさんは、かいしゃからおきゅうりょうをもらうのぜ?」 「そういう人は、仕事が無かったり、自分の家が無かったりするからね。」 まりさは、お兄さんの説明にしばらく体を捻っていましたが、 ふと全ての謎が解けたかのように、ぴんと背筋を伸ばして言いました。 「ゆん!ゆっくりりかいしたのぜ!こじきはのらのにんげんさんなのぜ!」 このまりさ、お兄さんの説明を少し勘違いしてしまったようです。 けれども、お兄さんも面倒くさかったので、あえて訂正はしませんでした。 翌日、銀まりさは、お友達のゆっくりに、この話を伝えました。 みんな、近くの家で飼われている高級なゆっくりばかりです。 「むきゅ。ぱちゅも、えきまえでみたことあるのだわ。」 「のらのにんげんさんだねー。わかるよー。」 「それじゃあ、のらのゆっくりも、こじきなのかしら?」 「きっとそうだみょん!」 野良の人間が乞食なら、野良のゆっくりも乞食だろう。 彼らは、そう結論付けました。 そして、街中で野良を見かける度に、彼らを乞食と呼ぶようになったのです。 「あんなところにこじきがいるのぜ!きたないのぜ!」 「こじきはとかいはじゃないわ!ありすのそばにこないでね!」 この2匹、別にゲスではありません。 ペットショップで、店員さんから、野良は汚くてゆっくりできないと教えられ、 それを忠実に守っているだけなのです。 けれども、この呼び名を広めたのは、当の飼いゆっくりたちではありませんでした。 それを横で聞いていた、地元の小学生です。 小学生というものは、相手を馬鹿にする言葉が大好きなのです。 あっと言う間に、地元の小学校でこの呼び名が広まりました。 そして、今度は、小学生の言葉遣いが、他の飼いゆっくりに影響を与えます。 「おーい、こっちに乞食がいるぜ!」 「ゆゆ!こじきがいるよ!」 「おおこじきこじき。」 こうして、分別のある大人を除き、みんなが野良ゆっくりを乞食と呼ぶようになりました。 野良ゆっくりたちは、それが悪口だと分かると、とても怒りました。 「れいむはこじきじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「まりさはりっぱなのらゆっくりだよ!こじきじゃないよ!」 ですが、毎日のように乞食乞食と言われ続けると、 なんだか本当に乞食のような気がしてしまうものです。 1年も経った頃には、野良ゆっくりも、自分たちのことを乞食と呼ぶようになりました。 ですから、この街では、野良ゆっくりはみんな、乞食ゆっくりと呼ばれているのです。 ところで、名は体を表す、という諺があります。 乞食ゆっくりたちは、だんだん本物の乞食と一緒の生活をするようになりました。 街中で、物乞いをするようになったのです。 もちろん、ただ座っているだけでは、何も貰えません。 だから、乞食ゆっくりたちは、芸を披露することにしました。 あるものはダンスを踊り、あるものはおうたを歌います。 こうして、乞食ゆっくりたちは、街中の風景にすっかり溶け込んでしまいました。 「ゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆ~♪」 このれいむも、昔は街の近くにある小さな森で暮らしていましたが、 土地開発で巣を追われ、こうして乞食になったのです。 都会での生活に慣れていないれいむには、苦労苦労の連続でしたが、 仲間の手助けにより、ここまでやってこれました。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆゆ~♪」 「こじきのれいみゅにおきゃねをめぐんでくだちゃい!」 おうたを歌うれいむの横で、通行人に笑顔を振りまいているのは、 森を追われるときに助けた妹れいむです。 両親と他の姉妹は、おうちを潰そうとする巨大なすぃーに立ち向かい、 そして、ぺっちゃんこにされてしまいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 「おねがいしましゅ!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!」 森にいた頃は、うたひめと呼ばれ、みんながれいむのおうたを褒めてくれました。 でも、この街では、誰もれいむのおうたなど聴いてくれません。 みんな、顔色ひとつ変えずに、れいむたちの前を通り過ぎて行くだけです。 だけど、おうたを歌う以外に何もできないれいむは、おうたを歌い続けるしかありません。 「ゆゆ~ん♪ゆ~ゆゆ~♪」 おうたを歌っているとき、れいむはいつも、森での暮らしを思い浮かべます。 とっても優しいお父さんとお母さん、可愛らしい妹たち、 そして、みんなと遊んだゆっくりプレイス。 れいむは、ゆっくりとした記憶に浸りながら、今日もおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、部長の指示が悪いんだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、2匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 男は、ほんの一瞬、れいむの顔に目をやりました。 森の暮らしを思い出して歌うれいむの表情は、幸せそのものです。 男は、そのまま通り過ぎようとしましたが、何を思ったのか、 ポケットに手を入れると、きらきら光るものを、空き缶に投げ入れました。 チャリーン 金属のぶつかる音がします。 「ありがとうございます。」 れいむは、おうたを中断し、もみあげで三つ指をついて、頭を下げました。 「ありがちょうごじゃいましゅ!」 妹れいむは、ぴょんぴょん跳ねて、サラリーマンにお礼のダンスを披露します。 サラリーマンは、そんな2匹を無視すると、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなったところで、ようやく顔を上げます。 「きょうはおかねもらえたね。くらいからもうおうちにかえろうね。」 「ゆっくち~♪」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、お金ではありませんでした。 ただのビール瓶の蓋でした。 男は、嫌がらせをするために、わざとそれを入れたのです。 「ごめんね……。これおかねじゃないよ……。ごめんね……。」 「ゆぅ……。」 れいむは、白玉の目からすっと涙を流し、妹に何度も何度も謝ります。 やっと貰えたと思ったお金。 これなら、何も貰えない方が、どれほど良かったことでしょう。 「おにぇしゃんなかにゃいでにぇ。れいみゅゆっきゅりがまんしゅりゅよ。」 心配した妹が、れいむの頬にすーりすーりして来ます。 「おにぇしゃんしゅーりしゅーり。なきゃないでにぇ。」 そんな健気な妹を見ると、れいむも泣いてはいられません。 笑顔を取戻し、元気よく妹にすーりすーりし返してあげます。 「さあゆっくりおうちにかえろうね!」 「ゆっくち~♪」 れいむたちは、もみあげともみあげをしっかりと繋ぎ合わせ、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 「ゆゆん!このあんぱんさんはさんえんだよ!とってもやすいよ!」 「ちぇんかうよー!きょうはごえんだまもらったよー!」 「まりさもあまあまさんいっぱいあつめたよ!ゆっくりかいものしていってね!」 「ちーんぽ!」 ここは乞食谷。 乞食ゆっくりたちが集う、街の下宿所です。 もちろん、町中に谷などありません。 誰も住んでいないビルに囲まれた空き地が、谷底に似ているので、そう呼ばれているだけです。 乞食たちは、この谷の真ん中にあるドラム缶の前で、毎晩市場を開きます。 食べ物や段ボールなど、生活に必要なものを集めたゆっくりが、 人間からお金をもらったゆっくりに、それを売っているのです。 今日も市場は大盛況。 ゆっくりたちの賑やかな声が、あちこちから聞こえてきます。 「ゆぅ……。あんぱんしゃん……。」 そんな市場を遠くから眺めているのは、さきほどのれいむ姉妹です。 お金も物ももらえなかった2匹は、何にも交換するものがありません。 ただただ、他のゆっくりたちの買い物を見ている以外、することがないのです。 「れいみゅもあんぱんしゃんたべちゃいよ……。」 妹れいむが、物欲しそうに涎を垂らしながら、ちぇんの買った餡パンを見つめています。 「ごめんね。あしたはおかねをもらってあんぱんさんたべようね。」 「ゆぅ……。」 そんな会話をしていると、ふと市場の方から、1匹のゆっくりが跳ねて来ます。 それは、よく見知った帽子の子、ゆっくりまりさでした。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは、笑顔でれいむに挨拶します。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 れいむとその妹も、先程までの空腹を忘れて、元気よく挨拶を返します。 れいむは、このまりさと大の仲良しでした。 この乞食谷に案内してくれたのも、街中でたまたま出会ったこのまりさだったのです。 まりさは、人間にもそうと分かるくらいの美ゆっくりでしたが、野良は野良。 お帽子にはあちこちに穴が空き、お肌も都会の空気ですっかり汚れてしまっています。 そんなまりさは、とびっきりの笑顔で、れいむに話しかけます。 「きょうもいっぱいおかねもらえたよ!」 嘘ではありません。 このまりさは、1日になんと15円も稼ぐのです。 普通は5円も集まれば御の字なのですから、どれほど凄いかが分かります。 それもそのはず、このまりさは、芸の名人でした。 ぴょんと30センチも飛び跳ねてトンボ返りをしたり、 口に棒をくわえて、コーンの間に張った綱を渡ったりできるのです。 だから、人間さんたちの間でも、まりさはとっても有名でした。 「れいむはおかいものしないの?」 まりさは、れいむにそっと尋ねました。 れいむは何も答えませんでしたが、まりさには分かっています。 だって、れいむがお買い物をすることなど、滅多にないのですから。 れいむは、それくらい物乞いが下手なのです。 けれども、嫌みで尋ねたわけではありません。 まりさは、いつもこうやって、れいむにプレゼントする機会を作っているのです。 「れいむにこれあげるよ!」 まりさは、帽子の中から、野菜屑を取り出して、れいむに差し出します。 それは、八百屋さんの前で芸を披露したときに、店のおじさんから貰ったものでした。 このおじさん、普段はじゃがいもの皮しかくれないのですが、 その日はまりさの宙返りがあまりにも見事だったので、キャベツの葉っぱをくれました。 「ゆゆん!まりさありがとう!」 れいむは、うれし涙を流しながら、キャベツの葉っぱを受け取ります。 それを見た妹のれいむは、今にも端っこに噛み付いてしまいそうでしたが、 お姉さんのお腹がぐーぐー鳴っていることを、ちゃんと知っています。 だから、溢れそうになる唾を飲み込み、お行儀よく我慢することができました。 「こまったときはおたがいさまだよ!」 困ったときはお互い様。 まりさは、いつもそう言ってくれます。 だけど実際には、れいむが貰う一方で、お返ししたことなど一度もありません。 本当はお返ししたいと思っていても、あげるものが何もないのです。 れいむがまりさにしてあげられることは、ひとつだけ。 そして、まりさも、そのたったひとつのことを、いつもお願いして来ます。 「ねえ!まりさにおうたをきかせてよ!」 「いいよ!ゆっくりきいていってね!」 れいむは、まりさの前で、ゆっくりとおうたを歌い始めます。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆ~♪」 まりさは、本当にゆっくりとした表情で、れいむのおうたを静かに聴きます。 「れいむのおうたはほんとにゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!ありがとう!」 まりさは、お世辞を言ったのではありません。 れいむのおうたは、ゆっくりにとって、本当にゆっくりしたおうたなのです。 だけど、そのおうたを聴いてくれるのは、街中でも、このまりさしかいません。 その理由は簡単でした。 みんな生きることに必死で、おうたなど聴いている場合ではないのです。 だから、このまりさがおうたに耳を澄ますのは、彼女が恵まれていることの証なのです。 「おとうしゃんだけじゅるいよ!まりちゃもなきゃまにいれちぇにぇ!」 れいむとまりさの間に割って入ったのは、小さな体をのーびのーびさせた子まりさでした。 まりさをお父さんと呼んでいますが、2匹の間に餡子は繋がっていません。 子まりさの母親が車に轢かれ、側で泣いていたところを、まりさが拾ってあげたのです。 最初は母親が死んだショックで、まりさにはあまり懐いてくれませんでしたが、 いつからか、子まりさは、まりさをお父さんと呼ぶようになっていました。 「まりちゃだけにゃかまはじゅれにゃんてぴゅんぴゅんだよ!」 「ごめんね。でも、おちびちゃんがすーやすーやしてたから、おこさなかったんだよ。」 子まりさも、本気で怒っているわけではありません。 その証拠に、子まりさは、まりさの頬に擦り寄ると、すぐに笑顔に戻ります。 「れいみゅおねーしゃん。まりちゃにもおうちゃをきかちぇてにぇ。」 「ゆふふ。いいよ。もういっかいうたおうね。」 れいむは、そんなまりさたちのやりとりに、思わず顔が綻んでしまいます。 「れいみゅもおうちゃうちゃえるよ。」 子れいむが、もみあげさんをぴこぴこさせながら、可愛い声をあげました。 彼女も、お姉さんにおうたを教えてもらっているのです。 「それじゃあ、ふたりでうたおうね!」 「「ゆゆゆ~♪」」 その夜、乞食谷に、姉妹の楽しそうな歌声が、いつまでも響き渡りました。 次の日のこと。 物乞いから帰ったれいむのおうちへ、例のまりさが息を弾ませてやって来ます。 いったい何だろうと思っていると、まりさは次のように言いました。 「まりさ、てれびにでるよ!おかねもいっぱいもらえるよ!」 これでは、いったい何のことだか分かりません。 れいむはまりさを落ち着かせ、詳しく話してくれるように頼みました。 まりさの話はこうでした。 今日、いつもの繁華街で曲芸をしていると、いきなり男の人が話しかけてきたのです。 そして、男の人は、こう言いました。 テレビに出てみないかい、と。 彼は、某テレビ局のディレクターさんでした。 ディレクターさんの話によると、来月、街中の変わったゆっくりを紹介する番組があり、 ぜひまりさにも出演して欲しいと言うのでした。 「出演料として、500円出すよ。」 500円! まりさはびっくりしました。 だって、まりさの一ヶ月分の稼ぎが、1日で手に入るのですから。 まりさは、喜んでテレビ出演を快諾しました。 ディレクターさんは、日曜日にまた来ると言って、その場を去りました。 「もし500えんもらったら、れいむにすてきなぷれぜんとをするよ!」 500円もあれば、大きな板チョコが何枚も買えます。 まりさは口にしませんでしたが、その板チョコをれいむにプレゼントし、 そして愛の告白をするつもりだったのです。 「まりさすごいね!れいむゆっくりおうえんするよ!」 「うん!まりさもゆっくりがんばるよ!」 その日、まりさは、前祝いとして、とっておきの5円チョコを4匹で分け合いました。 上手く割れなかったので、れいむは子れいむに、まりさは子まりさに、 それぞれ大きな欠片を渡します。 「「「「む~しゃむ~しゃ♪しあわせ~♪」」」」 その夜、乞食谷に、4匹の幸せな声が、いつまでも響き渡りました。 日曜日、ついにまりさのテレビ出演の日がやって来ました。 もちろん、今日は単なる収録日で、放送は後日なのですが、 ゆっくりであるまりさたちには、そんなことは分かりません。 それに、どうせテレビを見ることなどできないのですから、 テレビに出られるかどうかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれません。 「おにいさん!きょうはまりさのすごいわざいっぱいみせてあげるね!」 まりさが、少しばかり声を震わせて言いました。 さすがに緊張しているのでしょう。 早速、得意のバク転を決めようと身構えたところで、ディレクターさんが止めに入ります。 「あ、悪いけど、君がやることは、こっちで決めてあるんだ。」 ディレクターさんは、そう言うと、奇麗な青空を指差しました。 まりさもれいむも、そして同伴した子ゆっくりたちも、不思議そうに空を見上げます。 「あそこに綱が見えるだろう。あれを渡ってくれ。」 最初は気付きませんでしたが、ビルとビルの間に、一本の太いロープが張られていました。 それは、建物の5階から伸びていて、長さも10mはあるでしょうか。 まりさは、言葉が出せません。 だって、こんなことをやるとは、聞いていなかったのですから。 「ゆゆ。これはたかすぎるよ。それにひもさんもながすぎるよ。」 「なに、やらないの?やらないなら、他のゆっくりに頼むけど?」 ディレクターさんは、まりさを睨みつけました。 「でも……あぶないよ……。」 「危ないからこそ、視聴者も喜ぶんだろう。普通の芸で500円貰おうなんて甘いね。」 まりさは迷います。 いくらゆっくりでも、この高さから落ちれば死ぬことくらいは理解できました。 以前、お友達のまりさが、誤って歩道橋から落ちてしまい、 地面でぺちゃんこになったのを、まりさは見たことがあるからです。 まりさは、困ったように視線を落とした後、今度はれいむの方を見ました。 まりさの目には、不安と同時に、何かを諦めきれない気持ちが、入り交じっていました。 れいむは、何も言うことができません。 これは、まりさの舞台なのです。 決めるのは、まりさであって、れいむではないのです。 しばらく悩んだ末、意を決したように顔を上げると、まりさはこう言いました。 「ゆん!まりさやるよ!」 「だめだよまりさ!こんなのゆっくりできないよ!」 大声を上げたのは、れいむでした。 そんな危険なことをして欲しくない。 ただその一心から出た声でした。 「あーん?なんだこのれいむは?」 ディレクターさんが、れいむの方へ近付いてきます。 すると、まりさが、慌ててディレクターさんの前に立ちはだかりました。 「れいむはまりさのおともだちだよ!いじめないでね!いじめたらまりさやめるよ!」 ディレクターさんは、少し不機嫌そうでしたが、黙ってスタッフに合図を送ります。 カメラが用意され、撮影が始まりました。 まりさは、若い男のスタッフに持ち上げられ、ビルの中に消えて行きます。 「ゆ~ん♪おそらをとんでるみたい♪」 そんな暢気な声が、半開きの自働ドアから聞こえてきました。 まりさが棒をくわえ、ロープの前に立ったとき、彼女はびっくりしてしまいました。 下から見上げたときよりも、ずっとずっと高く感じられたからです。 さすがのまりさも、あんよが震えてしまいます。 「よーし!じゃあ始めてくれ!」 遠くから、ディレクターさんの掛け声が聞こえました。 「おとうしゃん!がんばっちぇにぇ!」 「まりしゃおじしゃんがんびゃりぇー!」 地上で無邪気にまりさを応援しているのは、子まりさと子れいむの2匹です。 彼らは体をのーびのーびさせながら、一生懸命に声を張り上げます。 その横にいるれいむは、もみあげを合わせ、不安そうにまりさを見つめているだけ。 まりさのことが心配で心配で、舌が動かないのです。 そんなれいむの顔を見ていると、何としてでも渡り切ってやろうという気持ちが、 まりさの餡子の中に、むらむらと湧いてきました。 「これがめいじんまりさのつなわたりだよ!みんなみててね!」 まりさは、棒を上下の歯でしっかりと挟み、ぐっと表情を引き締めると、 まるっこいあんよを、ロープの端に乗せました。 めまいがしそうな高さです。下を見てはいけません。 「……。」 ゆっくりと、本当にゆっくりと、まりさはロープを渡って行きます。 人間さんたちは、最初から応援も何もしていませんでしたが、 今や子ゆっくりたちも、黙ってまりさの勇姿を見守るしかありません。 芸の最中に声を上げると気が散ることは、彼らも知っていたからです。 どれほどの時間が過ぎたでしょうか。 1時間とも2時間とも感じられるような緊張の連続が過ぎ去り、 気付けば、まりさはロープの半分を渡り切っていました。 さすがの人間さんたちも、これには驚きを隠せません。 あと半分。 この調子であと半分を渡り切れば、500円玉が手に入る。 そして、れいむに愛の告白をすることができる。 まりさの餡子を支配していた恐怖が、だんだんと希望に取って代わられます。 と、そのときでした。 ビューーーッ 「!」 強烈なビル風が、道ばたにいる人々を襲います。 まりさは、歯を食いしばり、ロープの上でバランスを取ろうと必死に踏ん張りました。 普通のゆっくりならば、すぐに吹き飛ばしてしまったであろうこの強風も、 まりさの素晴らしいバランス感覚の前では、柳に風です。 そう、まりさの前では。 「おぼっ!?」 まりさは、全身を器用にくねらせ、ロープの上で絶妙なバランスを取っていました。 しかし、まりさが動かせるのは、まるっこい饅頭の体だけなのです。 だから、辛抱を切らした風は、まりさではなく、 まりさの大事なお帽子を攫って行くことに決めました。 まりさは、外れかけたお帽子を放すまいと身を捩りますが、全く意味がありません。 お帽子は飾りであり、体の一部ではないのです。 ついに、風が、お帽子のツバに、見えない指を掛けました。 「まりさ!だめだよ!」 れいむの声は、遅過ぎました。 まりさは、お帽子に対する愛着から、うっかり後を追おうとしてしまったのです。 当然、バランスを失い、そのまま地面へ真っ逆さま。 ぐちゃ、という音と一緒に、永遠にゆっくりしてしまいました。 一瞬の出来事だったので、れいむたちには、何が起きたのか分かりません。 「よーし、いい絵が取れたぞ。」 「ディレクター、テロップはどうしますか?」 「薬中まりさ、白昼の錯乱綱渡り。バカとゆっくりは高いところがお好き。」 「お、いいですねえ。高視聴率間違いなしですよ。」 ディレクターさんは、嘘を吐いたのではありません。 ゆっくりの番組が放送されるというのは、本当です。 成功すれば500円玉をあげるつもりだったのも、本当です。 ただ、ディレクターさんは、ひとつだけ言わなかったことがあるのです。 番組のタイトルが、『爆笑☆街中のおかしなゆっくりたち』だということを。 「じゃ、それっぽく見えるように、適当に編集しといてね。」 ディレクターさんがその場を去ると、他の人間さんたちも、道具の片付けを始めました。 がちゃがちゃという音に、れいむは、ようやく意識を取戻します。 そうだ、ここには人間さんたちがいる。 人間さんは、どんな病気でも治すことができる。 れいむは、昔、死んだ長のぱちゅりーに、そう教えられたのを思い出しました。 「にんげんさん!おねがいだよ!まりさをたすけてあげてね!おねがいだよ!」 しかし、人間さんたちは、誰も助けてはくれません。 れいむは、側にいた女の人のところへぴょんぴょん跳ねると、また大声で言いました。 「おねえさん!まりさはまだいきてるんだよ!だからゆっくりたすけてあげてね!」 女の人は、五月蝿そうにれいむを避けると、道具を持ってどこかへ行ってしまいました。 れいむは向きを変え、少し離れたところにいる男の人に、跳ねながら話しかけます。 「おにいさん!まりさをびょういんにつれていってあげてね!おねがいだよ!」 れいむがさらに近付こうとすると、男の人の踵が、れいむの顔に当たりました。 体の中からメキッという音が聞こえ、れいむは後ろに転がってしまいます。 起き上がってみると、口の中が何やら変な感じです。 そうです。前歯が折れてしまったのです。 男の人も、それに気付きました。 「あーあ、足下でうろちょろするから。どっか行けよ。」 「まりひゃをびょういんにひゅれてってあげてね!おねがいだよ!」 れいむは、歯の折れた痛みなど忘れて、もう一度男の人に頼みます。 「あのさ、生きてるわけないっしょ。少しは現実見ろよ。」 「まりひゃはいきてるよ!だからたひゅけてあげてね!おねがいだよ!」 男の人は、やれやれと首を横に振り、その場を離れて行きました。 誰も助けてくれないことが分かったので、れいむは涙を流しながら、 まりさのところへ駆け寄ります。 「おとうしゃん!おめめあけちぇえええ!」 「まりしゃおじしゃんげんきになっちぇね……。ぺーろぺーろ……。」 まりさの側で、子れいむと子まりさが、しくしくと泣いています。 「まりひゃ!れいむといっひょにおいひゃひゃんにいこうね!」 れいむはそのとき、初めてまりさの顔を見てしまいました。 白玉の目玉が飛び出し、そこから餡子がたくさん漏れています。 それに口の形もいびつで、だらしなく舌が垂れていました。 街中でも指折りの美ゆっくりだったまりさの面影は、もはやどこにもありません。 「まりひゃ!きっとよくなるよ!だからおいひゃひゃんへいこうね!」 まりさは、返事をしてくれません。 それから何度かまりさの名前を呼んだ後、れいむは、 ようやくまりさが死んだのだと分かりました。 「まりびゃあああ!!!まりびゃああああああ!!!」 れいむも、わんわんと泣きました。 こんなことなら、まりさを止めれば良かった。 そう思っても、全ては後の祭りです。 そして、れいむにはもうひとつ、とっても後悔したことがありました。 彼女は聞いてしまったのです。 まりさが最後に叫んだ言葉を。 れいむあいしてるよ、と。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆひゅ~♪」 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 そうです。あの乞食れいむです。 れいむはあれからも、同じ場所で、同じおうたを歌い続けています。 「こじきのまりしゃにおきゃねをめぐんでくだちゃい!おにぇがいしましゅ!」 「こじきのれいみゅはおうたがとってもじょうずなんでしゅ!きいてくだちゃい!」 だけど、歯が折れてしまったれいむは、もう今までのようにおうたが歌えません。 以前は顔色ひとつ変えずに避けていた人たちも、今や我慢ができないといった様子で、 れいむたちを睨みつけ、罵声を浴びせます。 「くっせぇ饅頭がこんなところで歌ってんじゃねーぞ!」 「きもー。あのれいむ歯がないじゃん。」 「ゆひゅ~♪ゆひひゅ~♪」 溢れそうになる涙を堪えながら、れいむはおうたを歌います。 もう、おうたを歌っても、昔の楽しかった思い出は、餡子の中に浮かんできません。 だかられいむは、何も考えず、生きるためにおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、ありゃ新入りのヘマだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅになにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、3匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 そのまま通り過ぎようとしたとき、男は、ふと足を止めました。 この光景、どこかで見たことがある。そうだ、あのれいむだ。 ずっと前に、ビール瓶の蓋で、このれいむをからかったことを、男は覚えていました。 男は、しばらくの間、じっとれいむの顔を見つめていました。 れいむの方は目を瞑り、真剣におうたを歌っています。 前歯の隙間から空気が漏れ、ひゅーひゅーと間の抜けた音が聞こえても、 れいむは真剣におうたを歌っているのです。 チャリーン 缶の底で、金属のぶつかる音がします。 「ありがとうごびゃいまひゅ。」 「「ありがとうございましゅ!」」 れいむと2匹の子ゆっくりは、もみあげとおさげで三つ指をつき、深々と頭を下げます。 サラリーマンは、お礼を言う3匹を無視して、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなると、ようやく体を持ち上げます。 「ひょうはおかねもらえひゃね。くらいからもうおうひにひゃえろうね。」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、1円玉でした。 「ゆわ~♪いひえんだまひゃんだよ♪」 れいむの顔がぱっと明るくなります。 「いちえんだましゃんゆっくりしていっちぇね!」 妹れいむも目を輝かせ、1円玉さんにすーりすーりしようと体を伸ばします。 「おじしゃんありがちょね!」 子まりさは、もう姿の見えない男の方角に向かい、何度も何度もお礼を言いました。 「ゆっくりおうひにかえってくひゃひゃんをむーひゃむーひゃひようね!」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、右のもみあげで子れいむを、左のもみあげで子まりさを抱き寄せると、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 そんなれいむの唇には、生まれて初めて恵んでもらった1円玉が、 何か大事なものと交換されたかのように、赤く赤く、輝いているのでした。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して このSSに感想を付ける
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※根はいいゆっくりなんですが、非道い目に遭うお話です。 ※前作「お化けまりさ」に続くお話です。 また、前々作「スーパー赤ゆっくりボール」とも繋がりがあります。 前二作の内容を知らないと意味が通じない箇所があると思います。 えすえすさんはまいにちかってにはえてくるんだよ! 空気作家の書いた駄作なんて読んでもいちいち内容まで覚えてられないよ! ばかなの?しぬの?ゆぎゃっやめてねやめてねれいぶっ は重々承知の上での、作者オナニ○仕様であります。ごめんなさい。 まりさのおうた 「ゆぅぅ・・・もう・・・・やだぁ・・・・・・・」 そう呟きながら、まりさは今日も暗い闇をただ見つめていた。 まだ日が落ちる時間ではない。 そこはある人間の家。その中のある一室。 一つも窓の無いその部屋は、いつでも闇に包まれている。 その部屋の主がやって来る時を除いて。 暫くして、ギィ・・・と音がしたかと思うと、部屋の扉が開いた。 その音に、まりさはカタカタと震え出す。 部屋の外から差し込む明かりに、うっすらと部屋の中の光景が浮かび上がる。 そこは、広いが簡素な作りの部屋だった。 開いたドアの先、部屋のほぼ中央には、ドアに背を向ける形で ゆったりとした座り心地の良さそうな一人用のソファ。 その脇には、ガラス製の小さなサイドテーブル。 ソファと、その正面の壁との間には、 黒檀でできた、古めかしい細身のチェストが鎮座している。 その上には、何かの機械が置かれていた。 そして、ソファの左右の壁面は、作りつけの棚となっていた。 一段の高さが40センチ程度の四段の棚が、壁の全面を覆っている。 それ以外におよそ家具と呼べそうな物と言えば、 強いて挙げるなら、天井に埋め込まれる形で設置された照明器具と、 後は入り口のドアぐらいだろうか。 そして、およそ家具と呼べそうにない物と言えば、 壁面の棚にずらりと並んだ透明な箱。 その中に閉じこめられたゆっくり達。 棚のゆっくりは、れいむとまりさが大半、少数のありす。 他には一匹ずつだが、みょんとちぇん。 いずれもバスケットボール大の成体ゆっくりだ。 ゆっくり達の体にぴったり合わせたサイズの透明な箱に閉じこめられているので 自由こそ利かないが、皆、目立つ外傷などは負っていない。 また、饅頭肌の張り具合や、しっかりとした体つきから、 食事も必要十分な質・量の物が与えられていることが窺える。 にも関わらず、そのゆっくり達全てが、まりさと同じように恐怖に震えていた。 ドアから入ってきたのは、一人の人間の女性だった。 持っていた、陶磁器のシュガーポットとコーヒーマグが乗ったお盆を サイドテーブルの上に置く。 そして、ソファの肘掛けについている、何かのボタンを操作すると、 天上の照明が灯され、部屋の中が明るく照らし出された。 「・・・・・・・」 入ってきた入り口のドアを閉ざすと、 女は無言のままソファに腰を下ろす。 「ふぅ・・・」 仰向くようにソファの背にもたれかかり、 右手で眼鏡を外した後、その腕で少し赤くなっている目を覆った。 その様子をいまだ震えながら固唾を飲んで見守るゆっくり達。 沈黙の中、数分が経過し、女は立ち上がる。 そして、ソファの右手の壁に向かう。 女は、棚の前を移動しながら、そこに並んだ数十匹のゆっくり達を 品定めするかのような視線で端から順に眺めてゆく。 いやだよ、こないでね、こっちこないでね こちらに背を向けて、対面の壁のゆっくり達を眺めている 女の背を見つめながら、まりさは心の中で必死に祈る。 女の足が棚の端で止まった。 おねがいだよ、そこのこにしてね、こっちこないでね 期待と恐怖にまりさの餡子が早鐘を打つ。 だが、まりさの期待を裏切り、恐怖にだけ応えて、 女はくるりと向きを変えると、まりさ達が並ぶ側の棚の前に歩いて来た。 同じように、こちら側の棚の前をゆっくりと歩いて来る。 ドクン、ドクン 女がこちらに近づくにつれ、餡子の鼓動が大きくなるのを感じる。 やめてね、こっちこないでね、まりさのまえまで、こないでね だが、女は一歩一歩、確実にまりさへと近づいてくる。 そして、ピタ、とまりさがいる棚の正面で止まった。 やめてね、やめてね、やめてね、やめてね、やめてね、 まりさをえらばないでね、まりさのうえにいる、れいむをえらんでね まりさのしたにいる、ありすでもいいよ 女と目が合い、ブルブルと震え、涙を流すまりさ。 だが、一言も声を発することなく、ただ心の中だけで、悲痛な叫びを漏らす。 女は暫くまりさを見つめ、次いで、まりさの上下の段にいる 他のゆっくり達に視線を向け、それからまた、まりさに視線を戻した。 やべでぇ、までぃざをえらばないでぇ、おねがいじばすぅ 恐怖の余り、叫び声を漏らしそうになるのを必死の思いで堪える。 すると、まりさの願いが通じたのか、女は再び歩きだし、 まりさの目の前から消えた。 ゆぅ・・・・・たすかったよ・・・・・・・ まりさが声に出さずに安堵の溜息をついた、その時、 「・・・・・・・」 スッと、女が踵を返して再びまりさの前に立った。 ど、ど、どおじで じっとまりさの目を見ている。 女の冷たい目で見つめられ、 まりさは目を背けたくなる衝動に駆られるが、 それはできない。 そんな事をすれば・・・ ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃ、 までぃざ、もうゆっぐりでぎないごどは、いやなんでず だが、女はまりさを見つめたままだ。 そして、白い手がそっと伸びて、まりさが閉じこめられた透明な箱を掴んだ。 ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ -------------------------------- まりさは、まだ子ゆっくりだった頃、 ゆっくりできない家族の元を飛び出した家出ゆっくりだった。 元々、家族はとてもゆっくりとした家族だった。 強かったまりさのお父さんまりさは、ある日、狩りに出かけたきり、 そのまま帰ってこなかったけれど、 でも、優しいれいむお母さんと、同じ蔦から生まれたお姉ちゃん達、 そして、とても可愛くてゆっくりできる赤ちゃんの妹達と一緒に、 毎日ゆっくりと過ごしていた。 だが、そのゆっくりとした日々は、ある日、終わりを告げた。 れいむお母さんが、大怪我をした可愛そうな赤ちゃんまりさを連れてきた。 悪い人間に虐められ、親まで殺された上に、 美味しいご飯をむーしゃむーしゃするためのお口まで取られてしまった ゆっくりできない赤ちゃんだったけれど、 まりさ達が家族代わりになって、ゆっくりさせてあげようと頑張った。 でも、その赤ちゃんは、とても怖いお化けだったのだ。 自分の妹の赤ちゃん達は、ゆっくりできないそのお化けを怖がって泣き続けた。 まりさ自身も怖くて泣いていた。 最初に、可愛い妹の赤ちゃんれいむが、お化けに襲われて、 小さな体を半分潰されて、苦しそうに泣きながら、 ゆっくりできなくなってしまった。 優しくてしっかりものだった、一番上のまりさお姉ちゃんは、 そのお化けを退治しようとして、 逆にゆっくりできなくされてしまった。 その後、もうひとりのお姉ちゃんのれいむお姉ちゃんは、おかしくなってしまい、 その内に、おかしな声で叫びながら、頭をお家の壁に何度も打ち付けて、 そのまま、ゆっくりできなくなってしまった。 ごはんを食べているときも、夜寝ているときも、何もしていないときも、 いつも、怖いお化けがこっちを見ていた。 こっちを見て、クスクスと笑い声を上げていた。 怖くて怖くて、たまらなかった。 逃げ出したかったけど、何日も雨が降り続いて、お外に出ることはできなかった。 そして、優しくて大好きだったお母さんまで、おかしくなってしまった。 まりさは何も悪いことをしてないのに、怒られ、ゆっくりできない言葉で罵られた。 まりさも泣きながらお母さんを怒って、罵った。 妹達はいつも泣いていた。 優しかったお母さんは、おにばばになってしまった。 だから、まりさは、もうゆっくりできなくなったお家から逃げ出した。 その日も雨が降っていて、お外に出るのが怖かったけど、 もう一秒でも、あんなゆっくりできないお家にはいたくなかった。 少しでもお家から離れたくて、段々と体が溶けてゆくのも構わずに、 夢中で走り続けた。 -------------------------------- 「はふっ!はふっ!うっめっ!これめっちゃうっめ!」 森の中にあったお家を飛び出した子まりさは、いつしか人里まで降りてきていた。 人里を目指していたわけではない。 何のアテもなく、ただ、お家から離れたい一心で、 まっすぐに跳ね続けた結果、そこに辿り着いただけだった。 子まりさにとって幸運だったのは、 人里近くでは、雨が小降りになっていたため、 なんとかお帽子や、濡れた地面に接している底部が溶け切る前に、 人里の外れまで辿り着けたことだった。 そこにあったお地蔵様を祀った祠で疲れ切った体を休め、夜を明かした。 翌日は、朝から強い雨が降り、祠から一歩も出られなかった。 お腹が空いてたまらなかったが、雨水を少し飲んだだけで我慢した。 季節はもうすぐ雪が降ろうかという頃。 凍てついた空気に、餡子を震えさせながら、ただじっとしていた。 そして、今日、ようやく雨があがり、 ご飯を探して人里をうろつく内に、その畑を見つけた。 子まりさは生まれてこのかた、人里まで降りてきたことはなかった。 それ故に、そこが人間の畑であり、 そこに生えている野菜を食べているのを見つかったら、 人間にゆっくりできなくされるという事も知らなかった。 もっとも、知っていたとしても、 丸一日以上何も食べておらず、空腹に苛まれていた子まりさが、 盗み食いをしなかったかは怪しい物であるが。 「むーしゃむーしゃ!しあわせぇー! ゆゆーん♪とってもおいしいごはんなのぜ!」 嬉し涙を流しながら、ガツガツと、大根や白菜を貪り喰らう。 「やっぱり、ゆっくりできない、おにばばぁからにげてよかったんだじぇ! ゆっ!そうだよ!ここをまりさのゆっくりぷれいすにするよ! ここなら、おいしいごはんさんがいっぱいあるから、 まりさはとってもゆっくりできるのぜ!」 憎たらしい言葉を吐きながら、あっちの野菜が旨い、こっちの野菜も旨いと、 次々に野菜を囓って歯形をつけてゆく。 その時だった。 「うぅ~・・・今日は一段と冷える・・・あ・・・! こらぁっ!!こんのクソゆっくりがぁっ!! またウチの畑荒らしにきやがったかぁ!!」 一人の人間が子まりさを見つけ、猛スピードで走り寄ってきた。 「ゆゆっ・・・!?ゆっ!ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだぜ! ばかなおじさんはゆっくりでていってね! さもなくば、まりさにおいしいあまあまをちょうだいね! ゆっくりしないで、はやくくれないと・・・」 人間を見て、身の程知らずにも小さな体をぷっくぅ!と膨らませ、 どんな幻想を抱いたか、これでもっと美味しいご飯にありつけると笑みを浮かべて、 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら逆に文句を言う子まりさ。 勿論、そんなゆっくりが辿る末路は一つだ。 「ざっけんなぁ!ド腐れ饅頭がぁぁぁっ!!」「ゆっべぇぇっ!?」 男の蹴りを食らって、子まりさは畑の外まで飛んでいった。 ひゅぅぅぅ・・・・ぼすっ、べしょっ。 汚らしい音を立ててあぜ道に落ちる。 「ゆっ・・・いじゃい・・・ゆぐ・・・いじゃいよぉ・・・おかあしゃあん・・・」 「だじぇぇぇ・・・ゆべっ・・・!あんこしゃん・・・でないでぇ・・・・・」 子まりさは、まだ死んでいなかった。 幸運にも当たり所が良かった上に、 跳ねている最中に蹴られたため、その衝撃の大半は空中に逃がれていた。 子まりさが、体重の軽い子ゆっくりであった事も幸いした。 重量のある成体ゆっくりであれば、蹴りの衝撃をモロに受け止め、 空中に舞うのと同時に餡子を四散させていただろう。 無論、無傷とはいかない。 蹴られた時に、衝撃で大量の餡子を吐き出した上、お腹の饅頭皮も破れてしまった。 そして、地面に落下した時の衝撃で、更にお口とお腹から餡子を漏らしていた。 「ゆぅぅぅ・・・いだいんだじぇぇ・・・いだいぃぃ・・・ まりざの・・・あんござん・・・でないじぇぇ・・・ ゆっぐり・・・でぎないよぉ・・・」 己の体から出た餡子を目の当たりにしたまりさが、泣き声を上げる。 この数日間で、相次いだ死んでいった姉妹達。 地面に横たわり、苦悶の表情に凍り付いたまま、 ピクリとも動かなくなった、かつて姉妹だったモノ。 そして、常にその周りに広がっていた、黒い餡子。 その光景が、目の前の光景と重なり、 己の死が間近まで迫っている事を実感する。 冷たい木枯らしが、まりさの残り僅かな体力を更に奪ってゆく。 「ざぶいぃ・・・おじざぁん・・・たじゅげでぇ・・・だじゅげでよぉ・・・ まりざ・・・まりざ・・・まだじにだくないぃぃ・・・ ざぶいよぉぉ・・・・じにだく・・・ないよぉぉぉ・・・・・・」 男は既に黙々と畑仕事を開始していた。 子まりさの声が聞こえていないのか、或いは、聞こえていても、 単に畑を荒らす饅頭にかける情けなど持ち合わせていないだけか、 子まりさには目もくれない。 しばらくかぼそい声で泣き続けた子まりさだったが、 餡子を出し過ぎたことと、凍えるような寒さにより、 やげて意識が朦朧としてくる。 「あら、ゆっくり。」 その時、子まりさの頭上で声がした。 「ゆ・・・?」 頭上を仰ぐまりさ。 そこでは人間の女性がしゃがみこんで、子まりさを見下ろしていた。 「まあ・・・ひどい怪我ね。」 悲しそうな表情で子まりさの様子を眺めている。 「ゆ・・・おねえしゃん・・・たしゅけてね・・・まりさをたしゅけてね・・・」 子まりさが、最後の望みに縋るべく、必死の思いで声を絞り出す。 「いいわよ。私の家へ来なさい。怪我を治してあげるわ。 美味しいご飯もあげる。ゆっくりさせてあげるわよ。」 微笑みながら、お姉さんが子まりさの目の前に手を差し伸べる。 「ゆゅぅ・・・・」 その言葉に、これで助かると希望を抱いた子まりさは 残された力を振り絞り、痛む体に鞭を打ち、 夢中でずーりずーりと這ってお姉さんの手に乗った。 そして、そこで子まりさの意識は途絶えた。 -------------------------------- お姉さんの家に連れて行かれた子まりさは、 水溶き小麦粉で破れた皮の補修をしてもらった後、 とっても美味しいオレンジジュースをたっぷりと飲ませてもらった。 その後、お姉さんは、とても暖かくて美味しい 「しちゅー」というご飯を一杯食べさせてくれた。 「むーしゃむーしゃ!し、し、し、しあわじぇぇ!!なんだじぇぇ!!!」 冬の冷気に晒され、凍てついていた餡子が、 内側からポカポカと暖かくなってくる、その美味しい「しちゅー」を、 子まりさは涙を流しながらガツガツと食べ続ける。 お姉さんは、そんなまりさを微笑みを浮かべて眺めていた。 その後、子まりさは、 ゆっくりできる、ふかふかのお布団さんで丸一日眠り続けた。 子まりさが目が覚ますと、お姉さんが朝ご飯を作ってくれた。 「ねえ、まりさ。どうして一人であんなところにいたの? まりさのお母さんは一緒じゃなかったの?」 お姉さんの作ってくれた、おむらいすをたいらげ、 ゆっくりしていた子まりさに、お姉さんがそんな質問をした。 「・・・ゆぅ・・・・・・・・・」 途端に子まりさの表情が翳る。 「どうしたの?何かあったの?良かったらお姉さんに聞かせて。」 「ゆ・・・・・」 しばしの逡巡の後、子まりさはポツリポツリと語り始めた。 ゆっくりできていたお家の事。 怖いお化けの事。 ゆっくりできなくなってしまった家族の事。 話をしている内に、自然に涙がポロポロと零れてきた。 「そうだったの・・・・ごめんなさいね、まりさ。 辛い事を思い出させちゃったわね・・・」 「ゆぅぅ・・・」 「まりさ・・・そうだ!まりさ、甘いお菓子食べたい? お姉さん、まりさのために用意しておいたのよ。 とっても甘くて美味しいわよ?」 「ゆっ!?・・・あまあまさん・・・たべたい!たべたい! ゆっくりしないで、はやく、あまあまさんもってきてね!」 「はいはい、ちょっと待っててね。ゆっくりしないで早く持って来るわ。」 「あ~んだぜ!ゆっ!ゆゆぅ~ん♪とってもあまいんだじぇぇ!!」 「ねえ・・・まりさ。」 デザートのあまあまをスプーンで掬い、テーブルの上の子まりさに食べさせながら、 お姉さんが言った。 「ゆ?」 「まりさ、お姉さんの家の子にならない?」 「ゆ・・・?おねえさんの・・・いえのこ・・・?」 「ええ、そうよ。お姉さんが、まりさのお姉さんになってあげる。 これからずっと、美味しいご飯もあげる。 お姉さんと一緒に、ゆっくりしましょう。」 「ゆ・・・・・・な・・・なりだい・・・なりだいよ・・・・ まりざ・・・おねえざんのいえのごに、なりだいんだじぇぇぇ・・・!」 まりさが、泣きながら、元気になった体でぴょんぴょんと飛び跳ね お姉さんの胸の上に飛び乗り、そこから這い登って、 お姉さんの頬にすーりすーりをする。 「ふふ・・・くすぐったいわ、まりさ。」 「おねえざぁん・・・おねえざぁん・・・・・・」 こうして、まりさは、お姉さんの家で暮らすことになった。 -------------------------------- お姉さんと共に暮らすことになった子まりさは、 とても大事に育てられた。 お外は寒かったが、家の中はいつも暖かく、 その暖かいお家で、お姉さんが作った美味しいご飯を一杯食べさせてもらった。 一緒に遊ぶゆっくりの姉妹や友達がいないのは寂しかったが、 その替わり、お姉さんは毎日お仕事から帰ってくると、まりさと遊んでくれた。 見たこともない色々なおもちゃで遊んだり、 一緒にかくれんぼをしたりした。 まりさのために、お歌を歌ってくれることもあった。 勿論、甘やかすだけではない。 子まりさが、悪戯をして物を壊したりした時などは、叱られることもあった。 ごはんを食べさせてもらえなかったり、遊んでもらえなかったりした。 でも、子まりさが反省してちゃんと謝れば、お姉さんは笑って許してくれた。 そして、その後は、いつもより優しくしてくれた。 子まりさの「だぜ」口調も、お姉さんから 「女の子は、そんな言葉使っちゃいけないわよ。」 と言われてからは、やめるようにした。 大好きだったお父さんまりさの真似をして使い始めた言葉だったが、 同じくらい大好きなお姉さんの笑った顔を見ていたかったから、 頑張ってやめるようにした。 びっくりした時や、興奮した時は、 時々、元の「だぜ」口調が出てしまうこともあったが、 そんな時は、お姉さんも 「まりさは、しょうがないわね、だぜ。」 と言いながら笑ってくれた。 そして、美味しいご飯を十分に与えられた子まりさは、すくすくと成長し、 やがて成体サイズと呼べる程までに大きくなる。 -------------------------------- そんなある日、お姉さんがまりさに言った。 「あなたもすっかり大きくなったわね、まりさ。もう立派な大人ゆっくりね。」 「ゆっ!まりさはもうおとなだよ!」 まりさが、誇らしげな声でピョンピョンとジャンプしながら答える。 「ふふ、そうね。うちに来たときには、こ~んなに小さかったのにね。」 そう言ってお姉さんは両手の親指と人差し指で輪っかを作る。 ピンポン玉ぐらいの輪っか。 「ゆぅ~・・・まりさ、そんなにちいさくなかったよ!? それじゃ、あかちゃんだよ!!ゆっくりいじわるいわないでね!」 「ふふふ、冗談、冗談。・・・ねえ、まりさ。 お姉さんのお話、ゆっくり聞いてね。」 楽しそうに笑っていたお姉さんの表情が、途中から真顔になる。 「ゆっ!ゆっくりきくよ!」 まりさが元気良くお返事をする。 「いいこと、まりさはもう大人のゆっくり。 大人のゆっくりは働かないといけないものなのよ。」 「ゆぅ~?はたらく・・・?」 聞き慣れない言葉に、まりさが首を傾げるかのように体を傾ける。 「ええ、そうよ。 まりさのお父さんやお母さんは、ずっとお家でゆっくりしてた?」 「ゆ・・・?ゆ~ん・・・・・・ゆっ!! ちがうよ!おとうさんたちは、まりさたちのために"かり"にいってたよ! ゆっくりできる、おいしいごはんをいっぱいもってきてくれたよ!」 「・・・ゆぅん・・・おとうさん・・・おかあさん・・・」 自分の言葉に、幸せな日々の中でいつしかその記憶を薄れさせていた 親ゆっくり達の事を思い出し、まりさの瞳がじんわりと滲む。 「・・・ごめんね。思い出させちゃったわね・・・」 「ゆ・・・だいじょうぶなんだぜ!・・・だよ!」 まりさは、またやっちゃたという風に「ゆへへ・・・」と照れ笑いする。 お姉さんも、それを見て微笑む。 それから、また言葉を続ける。 「まりさには、やさしいおねえさんがいてくれるから、さみしくないよ! とってもゆっくりできてるよ!!」 「ふふ・・・ありがとう、まりさ。」 「ゆ!」 「・・・それでね、まりさも大人になったから、 まりさのお父さんたちと同じように、今日からは働いてもらいたいの。」 「ゆっ!ゆっくり、りかいしたよ!まりさも"かり"にいくよ!!」 「ふふふ・・・狩りはいいのよ。ご飯はお姉さんがあげるから。」 「ゆぅ・・・?じゃあ、まりさはなにをすればいいの・・・?」 「もっと大事なお仕事よ。あのね、まりさにはね、・・・・」 -------------------------------- 「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」 透明な箱から出され、お姉さんの両手で抱えられたまりさの体が、 女の腕にまで伝わる程にブルブルと震える。 じっとりと、饅頭肌にヌメヌメとした汗が滲み出る。 必死に何かを訴えかけるような瞳を女に向けている。 その瞳からは、涙が止めどなく溢れ出している。 だが、女は、その瞳に冷たい一瞥を返しただけで、 ゆっくりと歩き出す。 まりさの、その反応は、恐怖。 これから何が起こるのか、正しく理解しているが故の恐怖。 だが、恐怖の中にあって、まりさは普通のゆっくりのように、 やべでぇ どおじでごんなごどずるのぉ ゆっぐりでぎないぃ 等と濁った声で泣き叫んだりはしない。 いや、"しない" のではなく、"できない"。 それは、まりさだけではなく、 この部屋にいる全てのゆっくりに共通した事だった。 『お姉さんがいる時に、声を出してはいけない。』 それが、この部屋のゆっくり達に与えられた絶対のルール。 二つの例外を除いて。 女がまりさを抱えたまま、部屋の中央のソファに向かって歩いてゆく。 まりさに向かって、ソファが近づいてくる。 その前にあるチェストが、その上にある機械が近づいてくる。 近づいてくる恐怖に、まりさは声を上げぬまま、 逃れようとするかのように身を捩らせるが、 女にしっかりと抱えられている状態では、空中でグネグネと体が動くばかり。 やめでね、やめでぇ、ばりざ、そのぎがいざんはいやなんでずぅ ゆっくりできないんでずぅ、ゆっぐりざぜでぐだざぁい、 おねえざぁん、おねがいじまずぅぅ、 むがじの、やざじいおねえさんにもどっでぐだざいぃぃぃぃぃ 漏れそうになる絶叫を必死に飲み込みながら、 まりさは、ただひたすら涙を流す。 だが、女は、まりさの方を見ようともしない。 だずげで!だれがだずげでぇ!! 今度は、助けを求め、両側の壁にいる、"仲間"のゆっくり達を見回す。 まりさの視線から目を逸らして俯くもの、 自分が選ばれなかった事に安堵の表情を見せているもの、 悲しげにまりさをみつめているもの、 まりさに向かって嘲るような笑みを見せるもの、 ただ虚空を見つめているもの、 "仲間"達の反応は様々。 全員に共通している事と言えば、 誰も言葉を発しない事と、誰もまりさを助けようとしないこと。 はぐじょうものぉぉぉ どおぉじでまりざをだずげでぐれないのぉぉ!! まりさが恨みの籠もった視線を"仲間"達に向ける。 別の日には、まりさ自身も"仲間"達に同じ反応を返していたことなど、 思い返しもしない。 あの機械が段々と近づいてくる。 やだ、やだ、やだ、やだ、やじゃ、やじゃ、やじゃ、やぢゃぁぁぁ まりさは、少しでも、その恐怖から遠ざかろうとするかのように、 後ろに身を反らす。 その時不意に、機械が近づいてくるのを止めた。 お姉さんは、再び柔らかいソファに身を沈めていた。 そして、手で抱えていたまりさを膝の上に置く。 ゆ・・・・・・・・・・? まりさは、顔に疑問を浮かべたまま、 どうしていいのかわからず、固まっている。 それは、壁にいる"仲間"達も同様だった。 棚から出されたゆっくりは、あの恐ろしい機械に直行する。 それ以外の光景は、どのゆっくりもいまだ見たことがなかった。 「・・・・・ねえ。まりさ。」 お姉さんが、膝の上のまりさに向かって呼びかけた。 「ゆ・・・ゆっ!な、なんでずが!おねえざん!!」 まりさが、始めて言葉を発する。 ゆっくり達に与えられた"ルール"の例外。その一つ目。 『お姉さんに話しかけられた時には答えてよい。』 いや、正確には、『答えなければならない』か。 ここで無視でも決め込もうものなら、想像を絶する苦痛を味わうことになる。 だから、まりさは、慌てて返事をした。 「・・・お姉さんのお話、ゆっくり聞いてくれる?」 「は、はい゛ぃ!!ぎぎまずぅ!ゆっぐりぎぎまずぅ!!」 「ふふ・・・ありがとう。」 お姉さんは、そう言ってから、サイドテーブルに置いてあった コーヒーマグを口に運ぶと、コーヒーを一口飲む。 そして、縁に紅い色のついたマグを再びサイドテーブルに戻す。 「お姉さんのね、お友達だったお兄さんが、死んじゃったの。」 ポツリと、呟くように言った。 「ゆぅぅ・・・・・ゆっくりできないね・・・・・」 悲しげな表情を浮かべたまりさが、ゆっくりなりの表現で同情の言葉を漏らす。 決して、お姉さんへのご機嫌取りではなく、本心からの言葉だった。 自分も、姉妹を失った時には、とても悲しかった。 だから、お姉さんも、きっとまりさに負けないくらい、 とても悲しいに違いない。そう思った。 「そうね、ゆっくりできないわね。 ふふ・・・ホント、バカなのよ。 お兄さんはね、とっても大好きな趣味があったんだけど、 それをやり過ぎてね、体を壊して死んじゃったの・・・」 「ゆぅぅぅ・・・もしかして、その人お姉さんの好きな 「それはない。」 「ゆ・・・」 クイ、と持ち上げられたお姉さんの眼鏡が冷たく光ったので、 まりさは黙った。 まあ・・・そういう対象ではなかったけど・・・ 女は思い起こしていた。 今日、村の虐待仲間から、その死を知らされた、 同じ虐待仲間であった男の事を。 男は、何よりも赤ゆを踏み潰すのが好きだった。 単純と言えば、あまりに単純な虐待。 ゆっくりをどのように苦しめるか、どのように痛めつけるか、と 日々、競うように、新しい虐待方法、凝った虐待方法を 編み出す事に腐心している他の虐待仲間達から見れば、 一つの虐待に執心している男は"変わり者"であり、 周りの仲間からはその事を揶揄されていた。 そして、女もまた、一つの虐待だけに執心している"変わり者"だった。 虐待の内容は全く違う二人だったが、 ただ己の望む一つの虐待に執心する、それもまた、 一つのゆ虐の形として認める者同士での共感のようなものがあった。 だから、男とは性別や年齢を超えて、良い友人であった。 そういえば、年齢の話は、仲間内での御法度だったけ。 そう思い出して、クスリと笑う。 以前、仲間の一人が、三年物のゆっくり酒を開けるからというので、 村の虐待仲間が集まって酒宴を開いた事があったが、 その席で誰かがうっかり口を滑らせた。 あの時は、 「どおぉぉじでねんれいのはなじをずるのぉぉ!? さんじゅうだいごうはんでも、 『ぎゃくだいおにいざん』なんだがら、『おにいざん』でじょお!?」 と泣き叫び出してしまい、皆でなだめるのが大変だった。 正直、あれはウザかったなぁ、と思わず苦笑する。 そんな男も逝ってしまった。 赤ゆを殺さずに何度も踏み潰せる画期的な虐待方法を考えた、 だいぶ前に楽しそうにそんな話をしていたっけ。 それで、夢中になるあまり、寝食を忘れて没頭し、 終いには興奮しすぎて、心臓麻痺を起こした、だって。 彼らしいと言えば、彼らしい。 あまりにもバカだ。 そして、女は、そんな男がどこか羨ましくもあった。 まりさは、不思議そうな表情で、お姉さんの顔を見上げていた。 いつも、箱から出された後は、 あの、とてもゆっくりできない、"お仕事"をやらされた。 でも、今日は違った。 お姉さんは、昔のように、まりさとお喋りをしてくれた。 今は、まりさの顔を見ておらず、どこか違う所を見ているが、 時々、楽しそうに笑う。昔のお姉さんのように。 そうだ。きっとそうだ。 まりさは、希望と期待に餡子胸を高鳴らせる。 お姉さんは、昔のお姉さんに戻ってくれたのだ。 あの日から、優しかったお姉さんは、変わってしまった。 怖いおにばばに変わってしまった。 まりさの、優しかったお母さんと同じように。 でも、優しいお姉さんに戻ってくれたんだ。 ううん。きっとお姉さんは、まりさのことをからかって、 意地悪してただけなんだよね。 ひどいよ、おねえさん。 まりさ、ほんとうに、いたかったんだよ? ほんとうに、くるしかったんだよ? でも、いいよ。 まりさ、ちゃんといいこで、がまんしていたから、 もういじわるは、おわりなんだよね。 また、まりさといっしょに、ゆっくりあそんでね。 「ゆっ・・・おねえさん」 ゆっくりしていってね 昔みたいに、そう言おうとした時、お姉さんが再び口を開いた。 「ねえ、まりさ。」 「ゆっく・・・ゆ?」 「可愛そうなお兄さんのために、お歌を歌ってあげて。」 「まりさのお歌を。」 「ゆ・・・・・・・・・・・・?ゆ・・・・・・・・・」 まりさがその言葉を理解するのに、数秒を要した。 その言葉の意味する所を、まりさは知っている。 正確に知っている。 だから、今その言葉を聞く筈がない、 優しいお姉さんから、その言葉を聞く筈がない、 そう考えたが故に、理解が遅れた。 そして、まりさは、また声を出さずに涙を流して震えた。 スッ・・・とお姉さんが、まりさを抱えて立ち上がる。 そのまま、前へと進む。怖い機械に向かって。 どおじでぇぇ!?どおじでなのお゛ぉぉ!? もういじわるはおわりなんでじょおぉ?! やめでね!やめでね!やめでぐだざいぃ!!おねえざぁぁん!! 己の頭の中で勝手に描いた妄想に縋り付き、 まだ助かると、お姉さんは助けてくれると、 その思いで、涙を流し、訴えかけるような顔でお姉さんの顔を見上げ、 声には出さずに心の中で絶叫する。 だが、『声を出さない』。 おにばばになってしまったお姉さんから与えられた、 そのルールに未だ従っていることが、 その妄想が幻想に過ぎないという事を自覚している、何よりの証。 そして、まりさは機械の上に乗せられた。 つづく 選択肢 投票 しあわせー! (13) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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※根はいいゆっくりなんですが、非道い目に遭うお話です。 ※前作「お化けまりさ」に続くお話です。 また、前々作「スーパー赤ゆっくりボール」とも繋がりがあります。 前二作の内容を知らないと意味が通じない箇所があると思います。 えすえすさんはまいにちかってにはえてくるんだよ! 空気作家の書いた駄作なんて読んでもいちいち内容まで覚えてられないよ! ばかなの?しぬの?ゆぎゃっやめてねやめてねれいぶっ は重々承知の上での、作者オナニ○仕様であります。ごめんなさい。 まりさのおうた 「ゆぅぅ・・・もう・・・・やだぁ・・・・・・・」 そう呟きながら、まりさは今日も暗い闇をただ見つめていた。 まだ日が落ちる時間ではない。 そこはある人間の家。その中のある一室。 一つも窓の無いその部屋は、いつでも闇に包まれている。 その部屋の主がやって来る時を除いて。 暫くして、ギィ・・・と音がしたかと思うと、部屋の扉が開いた。 その音に、まりさはカタカタと震え出す。 部屋の外から差し込む明かりに、うっすらと部屋の中の光景が浮かび上がる。 そこは、広いが簡素な作りの部屋だった。 開いたドアの先、部屋のほぼ中央には、ドアに背を向ける形で ゆったりとした座り心地の良さそうな一人用のソファ。 その脇には、ガラス製の小さなサイドテーブル。 ソファと、その正面の壁との間には、 黒檀でできた、古めかしい細身のチェストが鎮座している。 その上には、何かの機械が置かれていた。 そして、ソファの左右の壁面は、作りつけの棚となっていた。 一段の高さが40センチ程度の四段の棚が、壁の全面を覆っている。 それ以外におよそ家具と呼べそうな物と言えば、 強いて挙げるなら、天井に埋め込まれる形で設置された照明器具と、 後は入り口のドアぐらいだろうか。 そして、およそ家具と呼べそうにない物と言えば、 壁面の棚にずらりと並んだ透明な箱。 その中に閉じこめられたゆっくり達。 棚のゆっくりは、れいむとまりさが大半、少数のありす。 他には一匹ずつだが、みょんとちぇん。 いずれもバスケットボール大の成体ゆっくりだ。 ゆっくり達の体にぴったり合わせたサイズの透明な箱に閉じこめられているので 自由こそ利かないが、皆、目立つ外傷などは負っていない。 また、饅頭肌の張り具合や、しっかりとした体つきから、 食事も必要十分な質・量の物が与えられていることが窺える。 にも関わらず、そのゆっくり達全てが、まりさと同じように恐怖に震えていた。 ドアから入ってきたのは、一人の人間の女性だった。 持っていた、陶磁器のシュガーポットとコーヒーマグが乗ったお盆を サイドテーブルの上に置く。 そして、ソファの肘掛けについている、何かのボタンを操作すると、 天上の照明が灯され、部屋の中が明るく照らし出された。 「・・・・・・・」 入ってきた入り口のドアを閉ざすと、 女は無言のままソファに腰を下ろす。 「ふぅ・・・」 仰向くようにソファの背にもたれかかり、 右手で眼鏡を外した後、その腕で少し赤くなっている目を覆った。 その様子をいまだ震えながら固唾を飲んで見守るゆっくり達。 沈黙の中、数分が経過し、女は立ち上がる。 そして、ソファの右手の壁に向かう。 女は、棚の前を移動しながら、そこに並んだ数十匹のゆっくり達を 品定めするかのような視線で端から順に眺めてゆく。 いやだよ、こないでね、こっちこないでね こちらに背を向けて、対面の壁のゆっくり達を眺めている 女の背を見つめながら、まりさは心の中で必死に祈る。 女の足が棚の端で止まった。 おねがいだよ、そこのこにしてね、こっちこないでね 期待と恐怖にまりさの餡子が早鐘を打つ。 だが、まりさの期待を裏切り、恐怖にだけ応えて、 女はくるりと向きを変えると、まりさ達が並ぶ側の棚の前に歩いて来た。 同じように、こちら側の棚の前をゆっくりと歩いて来る。 ドクン、ドクン 女がこちらに近づくにつれ、餡子の鼓動が大きくなるのを感じる。 やめてね、こっちこないでね、まりさのまえまで、こないでね だが、女は一歩一歩、確実にまりさへと近づいてくる。 そして、ピタ、とまりさがいる棚の正面で止まった。 やめてね、やめてね、やめてね、やめてね、やめてね、 まりさをえらばないでね、まりさのうえにいる、れいむをえらんでね まりさのしたにいる、ありすでもいいよ 女と目が合い、ブルブルと震え、涙を流すまりさ。 だが、一言も声を発することなく、ただ心の中だけで、悲痛な叫びを漏らす。 女は暫くまりさを見つめ、次いで、まりさの上下の段にいる 他のゆっくり達に視線を向け、それからまた、まりさに視線を戻した。 やべでぇ、までぃざをえらばないでぇ、おねがいじばすぅ 恐怖の余り、叫び声を漏らしそうになるのを必死の思いで堪える。 すると、まりさの願いが通じたのか、女は再び歩きだし、 まりさの目の前から消えた。 ゆぅ・・・・・たすかったよ・・・・・・・ まりさが声に出さずに安堵の溜息をついた、その時、 「・・・・・・・」 スッと、女が踵を返して再びまりさの前に立った。 ど、ど、どおじで じっとまりさの目を見ている。 女の冷たい目で見つめられ、 まりさは目を背けたくなる衝動に駆られるが、 それはできない。 そんな事をすれば・・・ ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃ、 までぃざ、もうゆっぐりでぎないごどは、いやなんでず だが、女はまりさを見つめたままだ。 そして、白い手がそっと伸びて、まりさが閉じこめられた透明な箱を掴んだ。 ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ -------------------------------- まりさは、まだ子ゆっくりだった頃、 ゆっくりできない家族の元を飛び出した家出ゆっくりだった。 元々、家族はとてもゆっくりとした家族だった。 強かったまりさのお父さんまりさは、ある日、狩りに出かけたきり、 そのまま帰ってこなかったけれど、 でも、優しいれいむお母さんと、同じ蔦から生まれたお姉ちゃん達、 そして、とても可愛くてゆっくりできる赤ちゃんの妹達と一緒に、 毎日ゆっくりと過ごしていた。 だが、そのゆっくりとした日々は、ある日、終わりを告げた。 れいむお母さんが、大怪我をした可愛そうな赤ちゃんまりさを連れてきた。 悪い人間に虐められ、親まで殺された上に、 美味しいご飯をむーしゃむーしゃするためのお口まで取られてしまった ゆっくりできない赤ちゃんだったけれど、 まりさ達が家族代わりになって、ゆっくりさせてあげようと頑張った。 でも、その赤ちゃんは、とても怖いお化けだったのだ。 自分の妹の赤ちゃん達は、ゆっくりできないそのお化けを怖がって泣き続けた。 まりさ自身も怖くて泣いていた。 最初に、可愛い妹の赤ちゃんれいむが、お化けに襲われて、 小さな体を半分潰されて、苦しそうに泣きながら、 ゆっくりできなくなってしまった。 優しくてしっかりものだった、一番上のまりさお姉ちゃんは、 そのお化けを退治しようとして、 逆にゆっくりできなくされてしまった。 その後、もうひとりのお姉ちゃんのれいむお姉ちゃんは、おかしくなってしまい、 その内に、おかしな声で叫びながら、頭をお家の壁に何度も打ち付けて、 そのまま、ゆっくりできなくなってしまった。 ごはんを食べているときも、夜寝ているときも、何もしていないときも、 いつも、怖いお化けがこっちを見ていた。 こっちを見て、クスクスと笑い声を上げていた。 怖くて怖くて、たまらなかった。 逃げ出したかったけど、何日も雨が降り続いて、お外に出ることはできなかった。 そして、優しくて大好きだったお母さんまで、おかしくなってしまった。 まりさは何も悪いことをしてないのに、怒られ、ゆっくりできない言葉で罵られた。 まりさも泣きながらお母さんを怒って、罵った。 妹達はいつも泣いていた。 優しかったお母さんは、おにばばになってしまった。 だから、まりさは、もうゆっくりできなくなったお家から逃げ出した。 その日も雨が降っていて、お外に出るのが怖かったけど、 もう一秒でも、あんなゆっくりできないお家にはいたくなかった。 少しでもお家から離れたくて、段々と体が溶けてゆくのも構わずに、 夢中で走り続けた。 -------------------------------- 「はふっ!はふっ!うっめっ!これめっちゃうっめ!」 森の中にあったお家を飛び出した子まりさは、いつしか人里まで降りてきていた。 人里を目指していたわけではない。 何のアテもなく、ただ、お家から離れたい一心で、 まっすぐに跳ね続けた結果、そこに辿り着いただけだった。 子まりさにとって幸運だったのは、 人里近くでは、雨が小降りになっていたため、 なんとかお帽子や、濡れた地面に接している底部が溶け切る前に、 人里の外れまで辿り着けたことだった。 そこにあったお地蔵様を祀った祠で疲れ切った体を休め、夜を明かした。 翌日は、朝から強い雨が降り、祠から一歩も出られなかった。 お腹が空いてたまらなかったが、雨水を少し飲んだだけで我慢した。 季節はもうすぐ雪が降ろうかという頃。 凍てついた空気に、餡子を震えさせながら、ただじっとしていた。 そして、今日、ようやく雨があがり、 ご飯を探して人里をうろつく内に、その畑を見つけた。 子まりさは生まれてこのかた、人里まで降りてきたことはなかった。 それ故に、そこが人間の畑であり、 そこに生えている野菜を食べているのを見つかったら、 人間にゆっくりできなくされるという事も知らなかった。 もっとも、知っていたとしても、 丸一日以上何も食べておらず、空腹に苛まれていた子まりさが、 盗み食いをしなかったかは怪しい物であるが。 「むーしゃむーしゃ!しあわせぇー! ゆゆーん♪とってもおいしいごはんなのぜ!」 嬉し涙を流しながら、ガツガツと、大根や白菜を貪り喰らう。 「やっぱり、ゆっくりできない、おにばばぁからにげてよかったんだじぇ! ゆっ!そうだよ!ここをまりさのゆっくりぷれいすにするよ! ここなら、おいしいごはんさんがいっぱいあるから、 まりさはとってもゆっくりできるのぜ!」 憎たらしい言葉を吐きながら、あっちの野菜が旨い、こっちの野菜も旨いと、 次々に野菜を囓って歯形をつけてゆく。 その時だった。 「うぅ~・・・今日は一段と冷える・・・あ・・・! こらぁっ!!こんのクソゆっくりがぁっ!! またウチの畑荒らしにきやがったかぁ!!」 一人の人間が子まりさを見つけ、猛スピードで走り寄ってきた。 「ゆゆっ・・・!?ゆっ!ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだぜ! ばかなおじさんはゆっくりでていってね! さもなくば、まりさにおいしいあまあまをちょうだいね! ゆっくりしないで、はやくくれないと・・・」 人間を見て、身の程知らずにも小さな体をぷっくぅ!と膨らませ、 どんな幻想を抱いたか、これでもっと美味しいご飯にありつけると笑みを浮かべて、 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら逆に文句を言う子まりさ。 勿論、そんなゆっくりが辿る末路は一つだ。 「ざっけんなぁ!ド腐れ饅頭がぁぁぁっ!!」「ゆっべぇぇっ!?」 男の蹴りを食らって、子まりさは畑の外まで飛んでいった。 ひゅぅぅぅ・・・・ぼすっ、べしょっ。 汚らしい音を立ててあぜ道に落ちる。 「ゆっ・・・いじゃい・・・ゆぐ・・・いじゃいよぉ・・・おかあしゃあん・・・」 「だじぇぇぇ・・・ゆべっ・・・!あんこしゃん・・・でないでぇ・・・・・」 子まりさは、まだ死んでいなかった。 幸運にも当たり所が良かった上に、 跳ねている最中に蹴られたため、その衝撃の大半は空中に逃がれていた。 子まりさが、体重の軽い子ゆっくりであった事も幸いした。 重量のある成体ゆっくりであれば、蹴りの衝撃をモロに受け止め、 空中に舞うのと同時に餡子を四散させていただろう。 無論、無傷とはいかない。 蹴られた時に、衝撃で大量の餡子を吐き出した上、お腹の饅頭皮も破れてしまった。 そして、地面に落下した時の衝撃で、更にお口とお腹から餡子を漏らしていた。 「ゆぅぅぅ・・・いだいんだじぇぇ・・・いだいぃぃ・・・ まりざの・・・あんござん・・・でないじぇぇ・・・ ゆっぐり・・・でぎないよぉ・・・」 己の体から出た餡子を目の当たりにしたまりさが、泣き声を上げる。 この数日間で、相次いだ死んでいった姉妹達。 地面に横たわり、苦悶の表情に凍り付いたまま、 ピクリとも動かなくなった、かつて姉妹だったモノ。 そして、常にその周りに広がっていた、黒い餡子。 その光景が、目の前の光景と重なり、 己の死が間近まで迫っている事を実感する。 冷たい木枯らしが、まりさの残り僅かな体力を更に奪ってゆく。 「ざぶいぃ・・・おじざぁん・・・たじゅげでぇ・・・だじゅげでよぉ・・・ まりざ・・・まりざ・・・まだじにだくないぃぃ・・・ ざぶいよぉぉ・・・・じにだく・・・ないよぉぉぉ・・・・・・」 男は既に黙々と畑仕事を開始していた。 子まりさの声が聞こえていないのか、或いは、聞こえていても、 単に畑を荒らす饅頭にかける情けなど持ち合わせていないだけか、 子まりさには目もくれない。 しばらくかぼそい声で泣き続けた子まりさだったが、 餡子を出し過ぎたことと、凍えるような寒さにより、 やげて意識が朦朧としてくる。 「あら、ゆっくり。」 その時、子まりさの頭上で声がした。 「ゆ・・・?」 頭上を仰ぐまりさ。 そこでは人間の女性がしゃがみこんで、子まりさを見下ろしていた。 「まあ・・・ひどい怪我ね。」 悲しそうな表情で子まりさの様子を眺めている。 「ゆ・・・おねえしゃん・・・たしゅけてね・・・まりさをたしゅけてね・・・」 子まりさが、最後の望みに縋るべく、必死の思いで声を絞り出す。 「いいわよ。私の家へ来なさい。怪我を治してあげるわ。 美味しいご飯もあげる。ゆっくりさせてあげるわよ。」 微笑みながら、お姉さんが子まりさの目の前に手を差し伸べる。 「ゆゅぅ・・・・」 その言葉に、これで助かると希望を抱いた子まりさは 残された力を振り絞り、痛む体に鞭を打ち、 夢中でずーりずーりと這ってお姉さんの手に乗った。 そして、そこで子まりさの意識は途絶えた。 -------------------------------- お姉さんの家に連れて行かれた子まりさは、 水溶き小麦粉で破れた皮の補修をしてもらった後、 とっても美味しいオレンジジュースをたっぷりと飲ませてもらった。 その後、お姉さんは、とても暖かくて美味しい 「しちゅー」というご飯を一杯食べさせてくれた。 「むーしゃむーしゃ!し、し、し、しあわじぇぇ!!なんだじぇぇ!!!」 冬の冷気に晒され、凍てついていた餡子が、 内側からポカポカと暖かくなってくる、その美味しい「しちゅー」を、 子まりさは涙を流しながらガツガツと食べ続ける。 お姉さんは、そんなまりさを微笑みを浮かべて眺めていた。 その後、子まりさは、 ゆっくりできる、ふかふかのお布団さんで丸一日眠り続けた。 子まりさが目が覚ますと、お姉さんが朝ご飯を作ってくれた。 「ねえ、まりさ。どうして一人であんなところにいたの? まりさのお母さんは一緒じゃなかったの?」 お姉さんの作ってくれた、おむらいすをたいらげ、 ゆっくりしていた子まりさに、お姉さんがそんな質問をした。 「・・・ゆぅ・・・・・・・・・」 途端に子まりさの表情が翳る。 「どうしたの?何かあったの?良かったらお姉さんに聞かせて。」 「ゆ・・・・・」 しばしの逡巡の後、子まりさはポツリポツリと語り始めた。 ゆっくりできていたお家の事。 怖いお化けの事。 ゆっくりできなくなってしまった家族の事。 話をしている内に、自然に涙がポロポロと零れてきた。 「そうだったの・・・・ごめんなさいね、まりさ。 辛い事を思い出させちゃったわね・・・」 「ゆぅぅ・・・」 「まりさ・・・そうだ!まりさ、甘いお菓子食べたい? お姉さん、まりさのために用意しておいたのよ。 とっても甘くて美味しいわよ?」 「ゆっ!?・・・あまあまさん・・・たべたい!たべたい! ゆっくりしないで、はやく、あまあまさんもってきてね!」 「はいはい、ちょっと待っててね。ゆっくりしないで早く持って来るわ。」 「あ~んだぜ!ゆっ!ゆゆぅ~ん♪とってもあまいんだじぇぇ!!」 「ねえ・・・まりさ。」 デザートのあまあまをスプーンで掬い、テーブルの上の子まりさに食べさせながら、 お姉さんが言った。 「ゆ?」 「まりさ、お姉さんの家の子にならない?」 「ゆ・・・?おねえさんの・・・いえのこ・・・?」 「ええ、そうよ。お姉さんが、まりさのお姉さんになってあげる。 これからずっと、美味しいご飯もあげる。 お姉さんと一緒に、ゆっくりしましょう。」 「ゆ・・・・・・な・・・なりだい・・・なりだいよ・・・・ まりざ・・・おねえざんのいえのごに、なりだいんだじぇぇぇ・・・!」 まりさが、泣きながら、元気になった体でぴょんぴょんと飛び跳ね お姉さんの胸の上に飛び乗り、そこから這い登って、 お姉さんの頬にすーりすーりをする。 「ふふ・・・くすぐったいわ、まりさ。」 「おねえざぁん・・・おねえざぁん・・・・・・」 こうして、まりさは、お姉さんの家で暮らすことになった。 -------------------------------- お姉さんと共に暮らすことになった子まりさは、 とても大事に育てられた。 お外は寒かったが、家の中はいつも暖かく、 その暖かいお家で、お姉さんが作った美味しいご飯を一杯食べさせてもらった。 一緒に遊ぶゆっくりの姉妹や友達がいないのは寂しかったが、 その替わり、お姉さんは毎日お仕事から帰ってくると、まりさと遊んでくれた。 見たこともない色々なおもちゃで遊んだり、 一緒にかくれんぼをしたりした。 まりさのために、お歌を歌ってくれることもあった。 勿論、甘やかすだけではない。 子まりさが、悪戯をして物を壊したりした時などは、叱られることもあった。 ごはんを食べさせてもらえなかったり、遊んでもらえなかったりした。 でも、子まりさが反省してちゃんと謝れば、お姉さんは笑って許してくれた。 そして、その後は、いつもより優しくしてくれた。 子まりさの「だぜ」口調も、お姉さんから 「女の子は、そんな言葉使っちゃいけないわよ。」 と言われてからは、やめるようにした。 大好きだったお父さんまりさの真似をして使い始めた言葉だったが、 同じくらい大好きなお姉さんの笑った顔を見ていたかったから、 頑張ってやめるようにした。 びっくりした時や、興奮した時は、 時々、元の「だぜ」口調が出てしまうこともあったが、 そんな時は、お姉さんも 「まりさは、しょうがないわね、だぜ。」 と言いながら笑ってくれた。 そして、美味しいご飯を十分に与えられた子まりさは、すくすくと成長し、 やがて成体サイズと呼べる程までに大きくなる。 -------------------------------- そんなある日、お姉さんがまりさに言った。 「あなたもすっかり大きくなったわね、まりさ。もう立派な大人ゆっくりね。」 「ゆっ!まりさはもうおとなだよ!」 まりさが、誇らしげな声でピョンピョンとジャンプしながら答える。 「ふふ、そうね。うちに来たときには、こ~んなに小さかったのにね。」 そう言ってお姉さんは両手の親指と人差し指で輪っかを作る。 ピンポン玉ぐらいの輪っか。 「ゆぅ~・・・まりさ、そんなにちいさくなかったよ!? それじゃ、あかちゃんだよ!!ゆっくりいじわるいわないでね!」 「ふふふ、冗談、冗談。・・・ねえ、まりさ。 お姉さんのお話、ゆっくり聞いてね。」 楽しそうに笑っていたお姉さんの表情が、途中から真顔になる。 「ゆっ!ゆっくりきくよ!」 まりさが元気良くお返事をする。 「いいこと、まりさはもう大人のゆっくり。 大人のゆっくりは働かないといけないものなのよ。」 「ゆぅ~?はたらく・・・?」 聞き慣れない言葉に、まりさが首を傾げるかのように体を傾ける。 「ええ、そうよ。 まりさのお父さんやお母さんは、ずっとお家でゆっくりしてた?」 「ゆ・・・?ゆ~ん・・・・・・ゆっ!! ちがうよ!おとうさんたちは、まりさたちのために"かり"にいってたよ! ゆっくりできる、おいしいごはんをいっぱいもってきてくれたよ!」 「・・・ゆぅん・・・おとうさん・・・おかあさん・・・」 自分の言葉に、幸せな日々の中でいつしかその記憶を薄れさせていた 親ゆっくり達の事を思い出し、まりさの瞳がじんわりと滲む。 「・・・ごめんね。思い出させちゃったわね・・・」 「ゆ・・・だいじょうぶなんだぜ!・・・だよ!」 まりさは、またやっちゃたという風に「ゆへへ・・・」と照れ笑いする。 お姉さんも、それを見て微笑む。 それから、また言葉を続ける。 「まりさには、やさしいおねえさんがいてくれるから、さみしくないよ! とってもゆっくりできてるよ!!」 「ふふ・・・ありがとう、まりさ。」 「ゆ!」 「・・・それでね、まりさも大人になったから、 まりさのお父さんたちと同じように、今日からは働いてもらいたいの。」 「ゆっ!ゆっくり、りかいしたよ!まりさも"かり"にいくよ!!」 「ふふふ・・・狩りはいいのよ。ご飯はお姉さんがあげるから。」 「ゆぅ・・・?じゃあ、まりさはなにをすればいいの・・・?」 「もっと大事なお仕事よ。あのね、まりさにはね、・・・・」 -------------------------------- 「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」 透明な箱から出され、お姉さんの両手で抱えられたまりさの体が、 女の腕にまで伝わる程にブルブルと震える。 じっとりと、饅頭肌にヌメヌメとした汗が滲み出る。 必死に何かを訴えかけるような瞳を女に向けている。 その瞳からは、涙が止めどなく溢れ出している。 だが、女は、その瞳に冷たい一瞥を返しただけで、 ゆっくりと歩き出す。 まりさの、その反応は、恐怖。 これから何が起こるのか、正しく理解しているが故の恐怖。 だが、恐怖の中にあって、まりさは普通のゆっくりのように、 やべでぇ どおじでごんなごどずるのぉ ゆっぐりでぎないぃ 等と濁った声で泣き叫んだりはしない。 いや、"しない" のではなく、"できない"。 それは、まりさだけではなく、 この部屋にいる全てのゆっくりに共通した事だった。 『お姉さんがいる時に、声を出してはいけない。』 それが、この部屋のゆっくり達に与えられた絶対のルール。 二つの例外を除いて。 女がまりさを抱えたまま、部屋の中央のソファに向かって歩いてゆく。 まりさに向かって、ソファが近づいてくる。 その前にあるチェストが、その上にある機械が近づいてくる。 近づいてくる恐怖に、まりさは声を上げぬまま、 逃れようとするかのように身を捩らせるが、 女にしっかりと抱えられている状態では、空中でグネグネと体が動くばかり。 やめでね、やめでぇ、ばりざ、そのぎがいざんはいやなんでずぅ ゆっくりできないんでずぅ、ゆっぐりざぜでぐだざぁい、 おねえざぁん、おねがいじまずぅぅ、 むがじの、やざじいおねえさんにもどっでぐだざいぃぃぃぃぃ 漏れそうになる絶叫を必死に飲み込みながら、 まりさは、ただひたすら涙を流す。 だが、女は、まりさの方を見ようともしない。 だずげで!だれがだずげでぇ!! 今度は、助けを求め、両側の壁にいる、"仲間"のゆっくり達を見回す。 まりさの視線から目を逸らして俯くもの、 自分が選ばれなかった事に安堵の表情を見せているもの、 悲しげにまりさをみつめているもの、 まりさに向かって嘲るような笑みを見せるもの、 ただ虚空を見つめているもの、 "仲間"達の反応は様々。 全員に共通している事と言えば、 誰も言葉を発しない事と、誰もまりさを助けようとしないこと。 はぐじょうものぉぉぉ どおぉじでまりざをだずげでぐれないのぉぉ!! まりさが恨みの籠もった視線を"仲間"達に向ける。 別の日には、まりさ自身も"仲間"達に同じ反応を返していたことなど、 思い返しもしない。 あの機械が段々と近づいてくる。 やだ、やだ、やだ、やだ、やじゃ、やじゃ、やじゃ、やぢゃぁぁぁ まりさは、少しでも、その恐怖から遠ざかろうとするかのように、 後ろに身を反らす。 その時不意に、機械が近づいてくるのを止めた。 お姉さんは、再び柔らかいソファに身を沈めていた。 そして、手で抱えていたまりさを膝の上に置く。 ゆ・・・・・・・・・・? まりさは、顔に疑問を浮かべたまま、 どうしていいのかわからず、固まっている。 それは、壁にいる"仲間"達も同様だった。 棚から出されたゆっくりは、あの恐ろしい機械に直行する。 それ以外の光景は、どのゆっくりもいまだ見たことがなかった。 「・・・・・ねえ。まりさ。」 お姉さんが、膝の上のまりさに向かって呼びかけた。 「ゆ・・・ゆっ!な、なんでずが!おねえざん!!」 まりさが、始めて言葉を発する。 ゆっくり達に与えられた"ルール"の例外。その一つ目。 『お姉さんに話しかけられた時には答えてよい。』 いや、正確には、『答えなければならない』か。 ここで無視でも決め込もうものなら、想像を絶する苦痛を味わうことになる。 だから、まりさは、慌てて返事をした。 「・・・お姉さんのお話、ゆっくり聞いてくれる?」 「は、はい゛ぃ!!ぎぎまずぅ!ゆっぐりぎぎまずぅ!!」 「ふふ・・・ありがとう。」 お姉さんは、そう言ってから、サイドテーブルに置いてあった コーヒーマグを口に運ぶと、コーヒーを一口飲む。 そして、縁に紅い色のついたマグを再びサイドテーブルに戻す。 「お姉さんのね、お友達だったお兄さんが、死んじゃったの。」 ポツリと、呟くように言った。 「ゆぅぅ・・・・・ゆっくりできないね・・・・・」 悲しげな表情を浮かべたまりさが、ゆっくりなりの表現で同情の言葉を漏らす。 決して、お姉さんへのご機嫌取りではなく、本心からの言葉だった。 自分も、姉妹を失った時には、とても悲しかった。 だから、お姉さんも、きっとまりさに負けないくらい、 とても悲しいに違いない。そう思った。 「そうね、ゆっくりできないわね。 ふふ・・・ホント、バカなのよ。 お兄さんはね、とっても大好きな趣味があったんだけど、 それをやり過ぎてね、体を壊して死んじゃったの・・・」 「ゆぅぅぅ・・・もしかして、その人お姉さんの好きな 「それはない。」 「ゆ・・・」 クイ、と持ち上げられたお姉さんの眼鏡が冷たく光ったので、 まりさは黙った。 まあ・・・そういう対象ではなかったけど・・・ 女は思い起こしていた。 今日、村の虐待仲間から、その死を知らされた、 同じ虐待仲間であった男の事を。 男は、何よりも赤ゆを踏み潰すのが好きだった。 単純と言えば、あまりに単純な虐待。 ゆっくりをどのように苦しめるか、どのように痛めつけるか、と 日々、競うように、新しい虐待方法、凝った虐待方法を 編み出す事に腐心している他の虐待仲間達から見れば、 一つの虐待に執心している男は"変わり者"であり、 周りの仲間からはその事を揶揄されていた。 そして、女もまた、一つの虐待だけに執心している"変わり者"だった。 虐待の内容は全く違う二人だったが、 ただ己の望む一つの虐待に執心する、それもまた、 一つのゆ虐の形として認める者同士での共感のようなものがあった。 だから、男とは性別や年齢を超えて、良い友人であった。 そういえば、年齢の話は、仲間内での御法度だったけ。 そう思い出して、クスリと笑う。 以前、仲間の一人が、三年物のゆっくり酒を開けるからというので、 村の虐待仲間が集まって酒宴を開いた事があったが、 その席で誰かがうっかり口を滑らせた。 あの時は、 「どおぉぉじでねんれいのはなじをずるのぉぉ!? さんじゅうだいごうはんでも、 『ぎゃくだいおにいざん』なんだがら、『おにいざん』でじょお!?」 と泣き叫び出してしまい、皆でなだめるのが大変だった。 正直、あれはウザかったなぁ、と思わず苦笑する。 そんな男も逝ってしまった。 赤ゆを殺さずに何度も踏み潰せる画期的な虐待方法を考えた、 だいぶ前に楽しそうにそんな話をしていたっけ。 それで、夢中になるあまり、寝食を忘れて没頭し、 終いには興奮しすぎて、心臓麻痺を起こした、だって。 彼らしいと言えば、彼らしい。 あまりにもバカだ。 そして、女は、そんな男がどこか羨ましくもあった。 まりさは、不思議そうな表情で、お姉さんの顔を見上げていた。 いつも、箱から出された後は、 あの、とてもゆっくりできない、"お仕事"をやらされた。 でも、今日は違った。 お姉さんは、昔のように、まりさとお喋りをしてくれた。 今は、まりさの顔を見ておらず、どこか違う所を見ているが、 時々、楽しそうに笑う。昔のお姉さんのように。 そうだ。きっとそうだ。 まりさは、希望と期待に餡子胸を高鳴らせる。 お姉さんは、昔のお姉さんに戻ってくれたのだ。 あの日から、優しかったお姉さんは、変わってしまった。 怖いおにばばに変わってしまった。 まりさの、優しかったお母さんと同じように。 でも、優しいお姉さんに戻ってくれたんだ。 ううん。きっとお姉さんは、まりさのことをからかって、 意地悪してただけなんだよね。 ひどいよ、おねえさん。 まりさ、ほんとうに、いたかったんだよ? ほんとうに、くるしかったんだよ? でも、いいよ。 まりさ、ちゃんといいこで、がまんしていたから、 もういじわるは、おわりなんだよね。 また、まりさといっしょに、ゆっくりあそんでね。 「ゆっ・・・おねえさん」 ゆっくりしていってね 昔みたいに、そう言おうとした時、お姉さんが再び口を開いた。 「ねえ、まりさ。」 「ゆっく・・・ゆ?」 「可愛そうなお兄さんのために、お歌を歌ってあげて。」 「まりさのお歌を。」 「ゆ・・・・・・・・・・・・?ゆ・・・・・・・・・」 まりさがその言葉を理解するのに、数秒を要した。 その言葉の意味する所を、まりさは知っている。 正確に知っている。 だから、今その言葉を聞く筈がない、 優しいお姉さんから、その言葉を聞く筈がない、 そう考えたが故に、理解が遅れた。 そして、まりさは、また声を出さずに涙を流して震えた。 スッ・・・とお姉さんが、まりさを抱えて立ち上がる。 そのまま、前へと進む。怖い機械に向かって。 どおじでぇぇ!?どおじでなのお゛ぉぉ!? もういじわるはおわりなんでじょおぉ?! やめでね!やめでね!やめでぐだざいぃ!!おねえざぁぁん!! 己の頭の中で勝手に描いた妄想に縋り付き、 まだ助かると、お姉さんは助けてくれると、 その思いで、涙を流し、訴えかけるような顔でお姉さんの顔を見上げ、 声には出さずに心の中で絶叫する。 だが、『声を出さない』。 おにばばになってしまったお姉さんから与えられた、 そのルールに未だ従っていることが、 その妄想が幻想に過ぎないという事を自覚している、何よりの証。 そして、まりさは機械の上に乗せられた。 つづく