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「……そして三つ目は貴様の命だ、ウェールズ皇太子!」 ルイズを騙し、彼女と女王の手紙の奪取、そして皇太子殺害を目論んだ裏切り者・ワルドの兇刃が奔る。 魔法の風を纏った杖は一直線にウェールズの胸を狙っていて、それが当たればこの優しい皇太子の命は儚く散るだろう。 だが、ワルドの魔の手から皇太子を守るように突然一つの影が跳び込んで来た。 「な、なんだこいつは!?」 「ウェールズ!」 「無事であるか、我が主ウェールズよ」 そこに現われたのは、なんだかブサイクな赤いドラゴンだった。 眼つきとか地味に恐い。 この赤い韻竜こそ、皇太子が異世界より召喚した使い魔。 己を王権の象徴と証するドラゴンは、偶然にもその名をウェールズと言った。 「くっ、おのれ邪魔立てをっ! だがドラゴンとてスクウェアメイジである私の手にかかればっ!」 暗殺を阻止されそうになったワルドは激昂して魔法を唱える。 その姿が風に霞んだかと思うと、そこには5人のワルドが現われていた。 最強の風スペル、遍在である。 「死ねっ! ブサイクなドラゴン!」 「なんのっ!!」 一端散開し、五方向から切りかかるワルド。 だが、ドラゴンはその攻撃を両手と尻尾に握ったニラネギで受け止める。 「ちょwwおまっwww」 「ふん。このニラネギこそ勇猛果敢な王国男子の象徴。暗殺者風情の杖などに打ち破れるものでは無いわ!!」 豪放一閃、三本のニラネギに打たれ、三体のワルドが消滅する。 慌てて距離をとるワルドに、しかし間髪入れずドラゴンのブレスが放たれた。 高温のブレスに、あっと叫ぶ隙も無く燃え尽きるワルド。 最後の一人となったワルドは、ドラゴンからとった間合いを保ちつつ、再び遍在のスペルを唱えようとする。 だが。 「ぐがあぁ!?」 「ウェールズに集中し過ぎるのはともかく、私の存在を忘れるのはいけないね、子爵?」 「ウ……ウェェルズこうたいしぃぃぃぃ!」 背中から風を纏った杖で貫かれ、憎悪に歪んだ表情で息絶えるワルド。 かくして裏切り者の逆賊は、皇太子とその使い魔によって討伐されたのであった。 その後、ルイズ達を逃がしたウェールズ皇太子は国軍を指揮し、使い魔と共に華々しい最期を遂げる。 使い魔のドラゴンに乗ったウェールズは単騎で数百の敵を屠り伝説となった。 後年、再興されたアルビオン王国で新たに作られた国旗には、ブサイクな赤い竜の姿があしらわれたと言う。 あの国の国旗がウェールズ皇太子に召喚されました・完 ttp //blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1061497.html ttp //blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1062202.html
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注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のヤン・バレンタインを召喚 ルイズとヤンの人情紙吹雪-01 ルイズとヤンの人情紙吹雪-02 ルイズとヤンの人情紙吹雪-03 ルイズとヤンの人情紙吹雪-04 ルイズとヤンの人情紙吹雪-05 ルイズとヤンの人情紙吹雪-06 ルイズとヤンの人情紙吹雪-07 ルイズとヤンの人情紙吹雪-08 ルイズとヤンの人情紙吹雪-09 ルイズとヤンの人情紙吹雪-10
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行きは2人だが帰りは4人となり、そのうち2人は喧嘩をしていた。ルイズとキュルケだ。 賑やかなのを通り越して煩くなったが、移動による疲れもあってじきに静かになった。 「やっと黙ったか?うるせー娘っ子達だ。ちったー慎みってのを覚えたほうがいいな」 「何ですって!? …って、あらダーリン。インテリジェンスソードなの?それ」 「……そうらしい」 「あえてそんな口の悪い錆びてる剣を選ぶなんて、やっぱり面白くて素敵だわダーリン♪」 「いつアンタのダーリンになったのよツェルプストー!」 「あら私の前じゃ…」 「「……」」 タバサが少しだけ眉をひそめていた。本が読みたいのだが捗らないらしく、黙って竜を操っている。 しかしそのまま喧嘩が再燃しそうなのをとうとう腹に据えかねたのか、おもむろに杖を振るった。 「うるさい」 「う、わ、悪かったわよ……ところで誰よアンタ。何でツェルプストーと一緒にいるの?」 「あたしの友達だからよ。この風竜は彼女の使い魔なの」 「タバサ」 「え、霧亥も知ってるの?」 「図書館で助けてもらった」 タバサが頷く。様々な視線が4人(主に霧亥を除いた3人)の間で交差する。 その後は誰も喋ることなく、夕食の時間になるころには学院に戻ることができた。 空に月がぼんやりと浮かびあがり大地を照らすころ、4人は外にいた。 結局タバサと霧亥は2人の喧嘩を止めることができなかった。 そして壁にヒビが入る。 「あたしの勝ちね、ヴァリエール」 「うう、屈辱…」 「帰るぞ」 霧亥が戻ろうとしたその時、地鳴りとともに地面が隆起して巨大な人の姿を形成していく。 「……素材が地面と同じもので構築されている。何だあれは」 「きゃあああああああああ!ゴーレム!?」 「盗賊!?ちょっと霧亥!なにボサっとしてるのよ!」 「行け」 「いいからこっちに「逃げるわよヴァリエール!」ちょっとツェルプストー!離してよ!」 「乗って」 霧亥はデルフリンガーに手をかけながら様子を伺うと、いつでも回避できるように構える。 一方で2人をレビテーションで浮かばせたタバサがそのまま風竜で2人を掴むと距離をとる。 ゴーレムは、ルイズとキュルゲがタバサの風竜で逃げ、霧亥がじっと眺めているのも意に介さない。 そのまま壁を破壊して中が見えると、黒いローブを身に纏った盗賊が宝物庫に侵入した。 しばらくして何かを持ち出してくる。それは長方形のプレートのようなものだった。 壁に何か文字を刻んで、悠々と立ち去っていく。誰も止めるものはいない。 「これが『異界の板』ね…いったい何なのか知らないけど、確かに2つとない宝だわ」 黒いローブの正体は『土くれ』のフーケという。 フーケはルイズ達の存在に気づいているが、この距離なら顔は見られないだろうと思っている。 顔さえ見られなければ、後はどうとでも誤魔化すことができる。それは事実だった。 霧亥はフーケの顔より手に持った道具に目を奪われた。 素材までは判別できなかった。だが見逃せない刻印があったのだ。 縦線と十字架を左右対称に刻んだ、その文様。 「セーフガード」 網膜の表示を確認した霧亥は、フーケの追跡を開始した。 2人が野を駆けている。一人は逃げて、一人はそれを追いかけている。 フーケが背後を振り返れば、夜の闇に紛れて竜が追いかけてくるのも見ることができた。 だが追跡してくる霧亥を確認して以来、フーケに振り返る余裕はない。 「(大剣を持ったままでなんてスピードだい?さっきから随分走ってるのにと、ちっとも疲れが感じられない…)」 このままでは霧亥に追いつかれるのは明らかであるのをフーケは認識する。 その追跡者を振り切るべく、3回同じ呪文を唱え、続いて別の呪文を1度唱えた。 「おでれーた!この速度なら追いつけるぜ相棒!」 「様子が変だ」 異変を察知した霧亥は、走りながらデルフリンガーに手をかける。 「エネルギーを計測…周囲の素材でまた何か生成している」 「ありゃゴーレムだ。魔力が小さい?ゴーレムにはもっと…けど数が11、12…まずい、まずい!」 「黙っていろ」 ルーンが起動し、霧亥が戦闘行動を開始する。 胴体を両断。縦に両断。胸に突き立てたデルフリンガーを抜く間に襲い掛かるゴーレムを殴って動きを止める。 だがその間に別のゴーレムが霧亥を思い切り殴りつけ、デルフリンガーごと霧亥の体が宙を舞う。 3メイルほど飛んだかと思うと、霧亥は口から血を流しながらデルフリンガーを支えに立ち上がった。 「やられたぜ相棒。他のゴーレムは単なる土人形か単なる土の造形で、本命はあいつだ」 「……」 鈍い音を立てて近寄ってくるそのゴーレムをデルフリンガーを振りぬいて破壊する。 ズン、と鈍い音を立てて全てのゴーレムは元の素材に戻った。 後には土くれの山が出来上がっただけである。 「なあ、ちょっといいかい」 「……」 学院に向かって歩いてかえる霧亥に、デルフリンガーが話しかけた。 「今ので思い出したことがあるんだ。俺の刀身で触れた攻撃魔法を吸収して動力に変換できる。 今のゴーレムは厳密には攻撃魔法じゃないから無理だが、役に立てそうかい」 「ああ」 「良かった。あともし何かあったとしても、一時的ならこっちで所有者の体を操作できる。ある程度の魔法を吸収してないとダメだけどな。 それに手に持ってくれないと無理だ」 「……」 霧亥は立ち止まってデルフリンガーをじっと眺めた。しばらくしてデルフリンガーが弁解する。 「待ってくれ!あくまでも緊急避難用だし動作優先権はそっちの方が上位だ!勝手に操ったりしねーって! まさかここに置いていこうなんて考えてないよな?」 霧亥は答えず、黙って歩く。風竜がこちらに接近してくる。 「なっ?せっかくいいコンビになれそうなんだ。俺ッちが機能を回復させれば探索も楽になるぜ。だから捨てないでくれよ相棒」 「……帰るぞ」 その後で心配する3人をよそに、霧亥は歩いて学院まで戻った。 翌朝になってもまだ、学院は『土くれ』のフーケについてで大騒ぎになっていた。 教員一同は詳しく現場を調べたり、生徒たちに事情を説明したりしていた。 昼前になるころには目撃者に対する聴取が行われていた。 この時に教員一同を集めてルイズ、キュルケ、タバサを召喚するべきだと提案した教員はコルベールという。 コルベールはかつて従軍していた経験もあって、こういう異常事態にも適応力を持つ人だ。 今回も慌てる教員や生徒たちに対して、冷静に沈静化を図るべく行動をしていた。 「申し訳ないが、君たちには事件について話してもらわなくてはならない」 こうして3人と使い魔である霧亥(トカゲ2匹は大きさと有効性が無いと判断されて放置された)は 教員一同と学院のトップに囲まれることになった。 「さあ、見たことを詳しく説明してくれたまえ」 進み出て語りだしたのはルイズだった。 「大きなゴーレムが壁を壊して、その肩に乗っていた黒いローブのメイジが何かを持ち出したんです」 「つまり、君たちが魔法の練習をしていたところに『土くれ』のフーケがゴーレムで現れたと」 そう尋ねるのはオスマン学院長。動揺よりも疲労感のほうが色濃い。 「それで?」 「城壁を越えてゴーレムは歩いてきました。そしたら私の使い魔がフーケを追いかけていって…」 「なんと!君の使い魔が『土くれ』のフーケを?」 これには多くの教員たちが驚いた。だがルイズの次の発言に、更に教師たちは驚かされる。 「それで、私たちは使い魔を追いかけたんです。とても危険なことだと思いました。 そうしたら霧亥…使い魔は、少し進んだ先で無数のゴーレムと戦って足止めされていました。 結局は逃げられてしまったようなのですが……」 「戦った?一生徒の使い魔が、あのフーケのゴーレムと?ならば無事なわけが」 「いやいやギトー先生、彼は以前、グラモン家の子息との血統で…」 「だけどあの黒い服は確かに怪しい……」 静粛に、というオスマンとコルベールの声により沈黙が取り戻される。 「君は…確かキリイという名前だったね。キリイくん。君はフーケについて何か知らないかね。どんな些細な事でもいい」 「俺が見た限りでは――」 霧亥が答えようとしたとき、遅れてミス・ロングビルが現れた。彼女はオスマンの秘書だ。 「……と、いうことで私が調べたフーケの報告は以上です」 「ふむ、この生徒たちの証言とも辻褄が合うな」 彼女は遅刻に対する非難の目を意に介さず、調べ上げたデータを報告した。 「ではフーケに対する捜索隊を編成する。我こそは、と思うものは杖を掲げよ」 コルベールの最初の提案は政治的な都合により却下され、捜索隊が編成されることになった。 だが志願する教員はいない。フーケの実力からして、下手をすれば戦闘になるからである。 そのまま無言で部屋を出て行こうとする霧亥と、それに気づいて杖を掲げるルイズ。 「行きます」 それに合わせてキュルケとタバサも杖を掲げた。 「しかしタバサが『シュヴァリエ』の称号を持ってるとはね」 彼女たちは馬車に揺られている。移動に疲労せず魔力を使わずに済むように、という配慮である。 御者を務めるのはロングビルである。戦力になり、道を知っている、というのが選出の理由だった。 「ところでミス・ロングビルは…」 「よしなさいよ」 「あら、いいじゃない」 霧亥はロングビルを何度か眺めるとじっとしている。 タバサは本と霧亥を交互に眺めてから、本を読むことに専念した。 そして一向は馬車を降りて森へと向かっていく―――… 一向は開けた場所に出た。森の中の空き地。広さはそこそこ。 真ん中に廃屋が1軒だけ存在している。 「わたくしの聞いた情報では、あの中にいるという話でした」 ミス・ロングビルは廃屋を指差してそういった。人が住んでいる気配は無い。 そんな気配よりも雄弁に語る情報を霧亥は見ていた。4人が相談をすべく集まるが、霧亥は歩いて小屋へ近づく。 「ちょっと霧亥!」 「あの中に有機…生き物は存在しない」 戸惑う4人を意に介さず、そのまま近づいてドアノブに手をかける。 鍵すらかかっていないドアは乾いた音を立てて開け放たれた。 「近くにフーケがいないかどうか、偵察に行ってきます」 そう言い残してミス・ロングビルは森の中に消える。 他の3人は、罠が無い事を確認すると小屋の中に入ってきた。 持ち去られた品物の奪還が、この捜索隊のひとつの目的だからである。 「異界の板」 発見したのはタバサだった。それはチェストの中に無造作に放り込まれていた。 「あっけないわね!」 キュルケがそう叫んだ。ルイズもそれに同意したようだ。 「携行型マルチデバイス。上位セーフガードの標準装備」 霧亥がそう口にする。 「え、どういうこと?」 3人の視線が霧亥に集中した。全員が興味津々といった様子だ。 「この世界の道具じゃない」 「あら、使い魔さんはこの道具の使い方をご存知なのですか?」 偵察を終えたミス・ロングビルが戻ってくる。霧亥はそれを手にとって操作してみた。 電源が生きている。そのまま幾つか操作してログを調べてみた。 「これに触れたことはあるか?」 ミス・ロングビルに尋ねる霧亥。彼女は首を横に振った。 「見たことはありますが、触るなんてとても」 「……持っててくれ」 ポケットを探りながらデバイスをミス・ロングビルに手渡す。 ミス・ロングビルは霧亥の手元が気になるのか、何の気なしにそれを受け取った。 「おい、相棒。俺を置いてどうしたんだい」 「待て」 地面に突き立てたデルフリンガーも理解できない、といった具合に尋ねている。 そのまま霧亥はミス・ロングビルからデバイスを返してもらうと、再び操作を開始した。 「……お前がフーケだ」 「何の冗談ですか?」 片手で構えたデルフリンガーをミス・ロングビルに突き付ける霧亥。 操作して生体反応のログを確認していたのである。 「これには触れた人間の記録が残る。フーケが持っていったときの記録とお前が一致した」 「……ちょっと油断しすぎたね。そんな面倒なマジックアイテムだと知ってたら触らなかったのに」 「ミス・ロングビル!?」 3人は目の前で起こった出来事が理解できないようだったが、じきにタバサは杖を構えていた。 「なぜこれを狙う」 「魔法学院の宝だからさ。だけどアタシにもそれが何なのか判らなかった。アンタ、知ってるみたいだね? 逃げも隠れもしないから教えてくれないかい?そりゃ、いったい何なんだい?」 「俺の世界の手帳のようなものだ。だがこれを持つ存在はかなり限られる」 フーケが笑ったような気がした。事実笑っていたのだが、それを認識する瞬間に部屋が煙に包まれた。 「煙――キャッ!?」 タバサがとっさに杖を振るい部屋の窓ごと煙を吹き飛ばしたが、そこで状況が変化していた。 ルイズが人質にとられてしまったのである。 「ミス・ロングビル!どうしてこんなことを!」 「簡単よ。1つはお金、もう1つは、私が貴族を嫌いだって事。さあ、その『異界の板』の使い方と中身を説明して渡しなさい。 下手に動けばこの娘の首を切り裂くわ」 「わかった」 「おい、相棒」 「別にいい」 そのまま操作して情報を調べ上げる。所有者は上位セーフガードの一人で、最後にアクセスしてから随分と長い時間が経過していた。 とある大規模な珪素生物との交戦の際に、時空隙に巻き込まれてしまったようだった。 「この『異界の板』にある機能を全て開放させるには、この板に持ち主を認識させる必要がある」 「続けな」 「お前がこの板の、この赤い四角の中に触れた後に特定の操作を行えば、その認識が可能だ」 「中身はどうだったんだい?」 「周囲の地形の情報を見ることができる。どんな形で、目立つような生き物がいるかどうか」 「そいつはいいねえ……さあ渡すんだ」 「ルイズを開放するのが先だ」 「立場ってもんが判ってないようだね?」 ミス・ロングビル……フーケは、そのまま長い呪文を詠唱すると、巨大なゴーレムを作り出す。 そこに乗っかると、ルイズとの交換だと言った。 「持って行け」 「霧亥!それを持って帰ってフーケを手配してもらって!私は死んでもいいから!」 「……」 放り投げられるデバイス。 フーケはそれを受け取るとルイズを突き飛ばし、手帳の赤い部分に指を押し付けた。 「へえ、綺麗な画面だね……ん?何か点滅して……キャアッ!?」 突然デバイスは稲妻のようなものを放つと、ボン、と音を立てて爆発した。 「お前、騙したね!」 激昂したフーケのゴーレムが、霧亥を軽々と殴り飛ばして樹木に叩きつける。 木の幹はそのまま真っ二つに折れた。フーケは次にキュルケとタバサに攻撃を加えようとした。 「無理よこんなの!」 すかさず杖を拾ったタバサとキュルケは魔法を打ち込むが有効打には成りえない。 ルイズも杖を拾ったとき、風竜が飛んできた。 「ヴァリエール!逃げるわよ!」 「退却」 だがルイズは動かない。彼女は怒りと恐怖で震えていた。 目の前で人が殴り飛ばされるのも、ナイフを突き付けられるのも初めてだ。 「このーっ!この!この!」 ルイズはファイアーボールを打ち込む。当然失敗して、そのままゴーレムの一部が抉れただけだった。 「ヴァリエール!ちょっと、ヴァリエール! ああもう、馬鹿ルイズ!」 「レビテーション」 「待って!霧亥が!」 「もう駄目よ!」 ルイズの体が浮遊したのをすかさず風竜が口に咥え、急いで飛び去る。 膨大な質量を持つ拳が彼女たちの存在する空間座標に攻撃を加えるが、ギリギリでの回避運動に成功していた。 「チッ、逃げたか!とんだ失態だよ…!」 飛び去る風竜を見送りながら、フーケはゴーレムを解除して逃げる算段に入る。 「(このまま森を抜けてゲルマニアの方面に逃げるか、あるいはアルビオン方…)」 そんな思考は、倒したはずだと思った使い魔の攻撃で中断された。 腹から飛び出している錆びた刃は血で濡れている。 「あ……」 理解する間もなく自分の腕が折られ、足が折られた時点で彼女は気を失った。 「相棒、容赦ねーな…って、相棒…おめーも腕が…」 「これは敵だ」 「まだ生きてるぜ」 「どちらも回収して帰る」 フーケの杖をへし折り、デルフリンガーを握りなおす霧亥。 「待った、殺すな相棒。上手くいけば賞金が手に入るぜ。確かこういうのは生きてた方が増えることが多いんだ」 「……」 無言でデルフリンガーを腰に固定し、爆発したデバイスの外側の残骸を回収する。 そのままフーケを抱えあげると、霧亥は再び歩き出した。 そして止めていた馬車を使って学院に戻る。 「フーケを捕らえ、不完全だがデバイスも回収した」 「霧亥?」 「ダーリン?」 「……生きてる?」 学院に戻ると、3人がそれぞれ驚きの余りに立ち尽くしていた。 しかしその後ですぐに駆け寄ってきて、抱擁を受ける。 その際に腕が折れているのに気がついた一同により、霧亥も治療を受けることができた。 ルイズは何を思ったのか、少し泣いていた。
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学院長室でオスマンとコルベールは、4人の報告を聞いていた。 「ふむ、つまり宝物は失ったが、そのお陰でフーケは捕らえることができたんじゃな」 霧亥は無言で頷いて、それを肯定する。秘薬とメイジの治療を受けたとはいえ、巻かれた包帯は痛々しいものだった。 「失った物は仕方が無い。フーケを捕らえ、なおかつ死人が出なかったことを幸いとしよう。 今回の君たちの勇敢な働きに応えるべく学院は君たち3人へ『精霊勲章』の推薦を行った。追って沙汰があるじゃろう」 3人の顔がぱぁっと輝いた。 「本当ですか?」 キュルケは驚いた声で言った。オスマンは静かにうなずく。 「……」 霧亥はオスマンを黙って見つめていた。オスマンに聞く事が、彼には存在した。 ルイズはそんな霧亥の視線を、少し勘違いしてはいるものの察することができた。 「オールド・オスマン。霧亥には何も無いんですか?」 「残念ながら彼は貴族ではないからの。使い魔である以上、彼の功績は自動的に主人である君に反映されるのじゃよ」 「そうですか……」 オスマンは思い出したかのように手を打つ。 「さて、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。トラブルはあったが外側だけでも宝は取り戻せたし、フーケも捕まった。 予定通りに執り行うとしよう。楽しむといいじゃろう」 キュルケの顔はぱっと輝いた。 「そうでしたわ!フーケの騒ぎですっかり忘れておりました!」 「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」 3人は礼をするとドアに向かった。だが霧亥は微動だにしない。 ルイズもキュルケもタバサも霧亥のことチラっと見つめて立ち止まった。 「先に行け。俺は聞くことがある」 切り替えが早いキュルケは笑顔で立ち去り、タバサが後に続く。最後のルイズも、頷いて出て行った。 「何かね?君は今回の最大の功労者じゃから、できる限りの力にはなろう」 「3つ聞きたいことがある」 「言ってみなさい」 コルベールは興味深げに、2人の会話に耳を傾けた。 「視界に文字が見える人間の話を聞いたことはあるか?」 オスマンは首を横に振った。 「あの『異界の板』は、いつ、どこで手に入れた?」 「ワシの命の恩人の遺品じゃよ。30年も前になるか…ワイバーンに襲われているところ、その者に助けられてのう」 「……助けた?」 「うむ、いきなり空に出現して落下してきたのでワシも驚いていたのじゃが、運悪くワイバーンも驚いてしまってな。 そのとき咄嗟に放った魔法は今でも忘れんよ。見えない力がワイバーンの首を綺麗に刎ねた、あの光景はな」 「それからどうなった」 「いきなり彼は倒れてしまったよ。今思えば、あれは彼の最後の力ではなかったかと……そう思うこともある」 「そのときに『異界の板』を手に入れたのか」 「彼は奇妙な鎧に身を包んでいたがそれはどうやっても外せんかったし、杖は一緒に埋葬するべきだと思ったからのう」 オスマンは遠い目をしていた。 「その男の遺体はどこにある」 「うむ?」 「墓を調べる必要がある」 「待ちなさい、どういうことかね?」 「男は俺と同じ世界から来た可能性が高い」 「世界?つまり君は別の世界から来たということかね?」 「ほほう。興味深いのう」 これにはコルベールが反応した。オスマンの目も光る。 「今から、というわけにはいかないが、墓は近いうちに見せてあげることはできるじゃろう」 「よろしいのですか?」 「かまわんよミスタ・コルベール。彼の功労無くしてはこの一件、君も含めた教員を動かさねばならんところじゃった」 「……もうひとつ聞きたいのは、これだ。何か知っている事はあるか?」 霧亥は自身のルーンの事も伝えた。自分の力では制御できない未知の存在。優秀な補助機能だが干渉が強制的なのも確かだ。 ルーンに関する知識を持たない彼にとってこれは危険なデバイスという認識だった。 そちらの方はすぐに正確な解答を得られることができた。 ガンダールヴ。魔法の祖の使い魔。あらゆる武器を使いこなす存在。魔法の詠唱を行う主の防衛を目的とする。 大剣と長い槍を用いたとされるがその武器が現存するかは不明。その知名度を利用した贋作も多数存在。 「ルイズは伝説の魔法使いなのか?」 「わからん。彼女はむしろ魔法の実技に関して言えば最低レベルと言ってもいいじゃろう。しかしな…」 「彼女の失敗は通常の失敗とも違う。少なくともあんな失敗例は正直なところ、異常です」 「と、ミスタ・コルベールの言うとおり、少し気になる点があるのも事実じゃ」 「……」 とにかく、とオスマンは言った。 「君には感謝している。あまり力にはなれないかもしれないが、私もコルベールも君の味方じゃ、ガンダールヴ。 おぬしがどういう理屈でここにいるのか、似たような事例は無いのか、私なりにあたってみるとしよう。でも」 「……?」 「何も判らんでも恨まんでくれよ?なぁに、この世界も住めば都。何なら嫁さんも探してやろう。ふぉふぉふぉ」 「…………」 霧亥は話は終わりだと言わんばかりに、踵を返して部屋を出た。そしてデルフリンガーに話しかける。 「デルフリンガー」 「ダメだ、思い出せない」 「そうか」 「悪ぃな相棒……」 「気にするな」 アルヴィーズ食堂の上層が大きなホールになっていて、舞踏会はそこで行われていた。 なぜ人々が踊るのかを霧亥は知らない。だが特に行くあてが無いので、会場の隅にひっそりと立っていた。 キュルケは男たちに囲まれて笑っている。タバサは料理と格闘中だ。 「こんばんは、キリイさん。噂では大変な活躍をしたと伺いました。あ、肉料理はいかがですか?」 「……くれると助かる」 給仕をしていたシエスタが話しかけてくる。あちこちで忙しそうに人々が動き回っていた。 「お怪我はよろしいのですか?」 「ああ」 モグモグと動物性のたんぱく質を摂取する。シエスタは気を利かせて、ワインの瓶を渡してくれた。 「不純物が多い」 「それは澱(おり)って言うそうですよ。古くて良いワインには、そういうものがあるそうです」 「そうなのか」 「マルトーさんの受け売りですけどね……でもキリイさん、凄いですね。フーケを捕まえちゃうなんて」 「偶然だ。運が良かった」 このセリフはデルフリンガーの受け売りだ。どうせ何度か聞かれるだろうから、という彼の見込みは正解だった。 運というのは、この世界では確率よりも通りが良くて当たり障りの無い表現だ。 霧亥は特に反対する理由は無いので、こういう状況での言動はデルフリンガーの提案を採用することにした。 「でも、やっぱりすごいですよ」 「それが役割だ。俺にシエスタのような技術は無い」 「役割ですか」 「洗濯は苦手だ」 「……キリイさんって、実は面白い人ですね」 くすくすとシエスタが笑い出した。なぜ笑っているのか霧亥には理解できない。 「あ、私、そろそろ仕事に戻らなくちゃ。何か欲しいものがあったら言ってくださいね」 「わかった」 シエスタが去ってから暫くして、ホールの壮麗な門が開かれていった。 騎士と思しき兵装の男が、声高々にルイズの到着を告げる。 楽師達が音楽を奏で、多くの男たちが今まで小馬鹿にしていた美しい少女へとダンスの誘いへ向かっていく。 しかしルイズはそれらの誘いを全て断ると、霧亥の元へと真っ直ぐ歩いてきた。 「楽しんでる?」 「……」 無言で肉料理をルイズへ差し出す霧亥。ルイズはひとつそれを口に運ぶと、美味しい、と言った。 霧亥は近くにあったテーブルにトレイを戻すと、ふたたび壁に寄りかかる。 「おお。馬子にも衣装じゃねーか」 デルフリンガーもルイズに気づいたのか、そう言った。 「文句ある?」 ルイズはどこに持っていたのか、杖を取り出す。 「いえ、全然大丈夫です」 「踊らないのか」 霧亥はルイズに尋ねた。 「相手がいないの」 「あれは誘いじゃなかったのか?」 ルイズは無言で霧亥へ手を差し出した。 「どうした」 「お、踊ってさしあげても、よくってよ」 霧亥は首を横に振る。 「それは俺の役割じゃない。それに両腕が完治しないとあの動作は困難だろう」 「あ……そっか、腕……」 ルイズはしばらく無言だった。音楽だけが、静かに流れている。 「ねえ、霧亥。私、信じてあげるわ」 「……?」 「あなたが別の世界から来たってこと。あんな道具、私、見たこと無いもの」 「そうか」 「私の姉さまが王立魔法研究所の研究員だから、私も少しはマジックアイテムなんかには詳しいの。 それで、その道具がマジックアイテムかどうかを調べる魔法があるんだけど、その魔法では引っかからなかったみたいね」 「……」 ルイズは俯いた。 「ねえ。帰りたい?」 「戻って確認したいことがある。その為にも情報が必要だ」 そうよね、と彼女は呟いた。それから頬を赤らめると、思い切ったようにこういって来た。 「ありがとう。その、フーケに人質に取られたとき、助けてくれて」 「気にするな」 そう霧亥は答えた。 「俺は使い魔としての役割を果たしただけだ」 「おでれーた!」 静かにパーティを眺める2人の後ろでデルフリンガーが感嘆の声を漏らす。 「主に踊りを誘われる使い魔も見るのも、それを断る使い魔を見るのも、俺ァ初めてだぜ!」
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学院の教室。一施設の設備としては広大な部類に入る。 そのまま教室に入ると一斉に視線を浴びる2人。 不思議に思い考え込む霧亥。周りをにらみ返すルイズ。 しばらくすると霧亥の興味は、見たことの無い生物に向けられる事になった。 中年の女性が教室に入ってくる。挨拶もそこそこに、彼女は使い魔について思うことを幾つか口にした。 その段になってまたルイズとクラスメートの諍いが起こる。近くの男によれば定番のやりとりらしい。 騒ぎが静まれば、今度はシュヴルーズ(中年の女性の名前だ)が魔法について講義を始めた。 霧亥にとってそれは幻想的な光景だった。もちろん余りに現実離れした、という意味で。 なにせこれだけの人間が一堂に会して、それなりに真面目に『魔法』なんてものについて語る。 ネットスフィアが混沌に沈む前までは残っていた、ありふれていた、現実だった筈の光景。 懐かしい、と思う自分がいることに気づいたのは、ルイズが壇上に立って現実を再認識した時だった。 「ミス・ヴァリエール。練金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 「はい先生。私、やります」 力場が不確定要素により変化して不純物の塊を置換。次に、別のエネルギーが空間と対象の物体に干渉する。 それを認識してから0.5秒後に霧亥は空を飛んでいた。つまりルイズが魔法を行使して、石を机ごと吹き飛ばしたのだ。 「先生が倒れているぞ!」 「だからゼロのルイズに魔法を使わせるなって!」 「メチャクチャだ…誰か手を貸してくれ!」 さながらセーフガードに襲撃された集落を眺めているかのようであった。 その辺の地面に転がっている石を持ち上げれば、似たような状況を昆虫に見ることが出来るかもしれない。 つまり、パニックだ。 霧亥は『魔法』の存在を疑うことはしなかった。要するに理解できない未知の技術だろう、と納得していた。 しかしそんな中でルイズには心理的動揺が見られないこと、本人のダメージが少ない事に対しては驚かされていた。 いくつか理屈をもっともらしい分析で飾り付ければ、確かに彼女の状況を説明することは出来るだろう。 だけどそんなことを誰もしなかった。当の彼女自身でさえ、そんな理屈は必要としていなかった。 彼女の魔法は常に失敗するのだ、と誰かがぼやく。彼女もそれを認め、少し失敗したわ、と呟いた。 別室で老人が美女に蹴り飛ばされている頃、霧亥とルイズは2人で黙々と瓦礫の片付けを続けていた。 幸いにも生命活動を停止した生物はいなかった。ただ、ほんの少しの失敗で盛大に部屋が壊れただけである。 「私、魔法が成功しないのよ。だからゼロって呼ばれてるの」 「そうか」 それ以上、霧亥は何も言わず、ただ黙々と作業は続く。 霧亥は超構造体に無数に存在した建設者のことを思い出していた。 あとは作業が終了するまでの時間を概算し、タスクを解決するだけ。 ルイズも手伝ってくれているので、少しは早く終わるだろうか。 「ねえ、霧亥の世界に魔法は無かったの?」 「お前たちのような技術は無い」 「じゃあどうやって暮らしているの?」 「場所によって違う」 「…そう」 無事な机は元の位置に戻され、戻しようの無いほど壊れた机は適当に部屋の隅へ放り投げられる。 割れたガラス片はずた袋の中に纏められ、新しい窓を運び込む。煤で汚れた卓上を拭いて、元の位置に戻す。 所要時間89分。タスク完了。 「私、やっぱりダメなのかしら。満足に『錬金』もできないなんて」 ガゴン、と最後の机が元に戻る音がした。霧亥は手を止めて、こう答える。 「魔法そのものが使えないわけじゃない」 「私だって努力したわ!だけど何をやっても魔法使いらしいことは何一つできないのよ!」 「俺を転送したのは魔法じゃないのか」 「信じられないかもしれないけど、あんたが最初の成功だったのよ?次はコントラクト・サーヴァント。やった、と思った…」 そこまで言ったルイズの瞳から涙が流れていた。 「変わったと思ったのに!やっと魔法が使えるようになったと思ったのに!結果はこれ?どうしてなのよ!」 煤だらけのボロ布が空しく地面に叩きつけられた。 霧亥はそれを拾い上げ、ルイズを真っ直ぐに見つめて言う。 「お前は一瞬だが魔法に成功していた」 「……失敗してたのはわかってる、わ。嘘なんて、つかないで。そう、わかってるの…もういい…」 「練金の直後、別のエネルギーが流れ込んでいた」 「だって……詠唱は完璧、だったのよ……」 嗚咽が言葉を途切れ途切れにするのを聞きながら、霧亥は自分の理解できる事象に置き換えて説明を試みる。 「聞け。さっき見た限り『練金』というのを、机の交換を行うようなものと考えろ」 廃棄された机を掴み新しい机の前に立つ。ルイズは話を聞くつもりらしく黙った。 「これを交換するのが『錬金』だ。だが、さっきのお前の『錬金』は…」 机の間に立ち、両方を突き飛ばした。 「今の俺みたいに別の何かが邪魔をしている。だから吹き飛んだんだ」 机を元の位置に戻した霧亥を、ルイズは呆けたような表情で見つめていた。 そして彼女の内臓が空腹を主張したことで正気に戻った。ほんのりと頬に朱がさしている。 「……い、行くわよ」 「わかった」 不安定なドライバで動くハードウェアのような彼女に頷くと、霧亥も食堂に向かって歩き出した。 ほんの1歩だけ彼女が距離を縮めた事には特に気づかずに…。
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無数の超構造体を越えた先。いつかの未来。ネット端末遺伝子。 システムの正常化。暴走の停止。再起動。機能の正常化。 ――そして探索者は不要となり、解体屋が生成された。 これはその不要となった探索者が辿り着いた世界の話である。 Maybe on the earth. Meybe on the future. クエストクリア 一人の男が、端末から正常化していくネットスフィアを見つめていた。 彼の網膜に表示されるのは任務の成功を告げる文字であり解雇通知である。 この瞬間、人類は魔法のような能力を失う代わりに平穏な世界を手に入れた。 そして混沌の時代が終焉していく。その、始まりだった。 ギン、という金属的な音が聞こえてくる。 珪素生物たちの襲撃が始まったのだ。目的はこの端末だろう。 接続された少女と機械を交互に見て男は銃のようなものを握り、外へ出る。 やがて敵は倒れた。だが、彼は2度と端末のある部屋に戻る事は無かった。 『冷たく静かな大地が明るくなる頃、人影は丘の上に登った。 ……大地ってなんだ』 彼は、その大地に立つことになった。 Maybe on the ******. Maybe beyond the something. 至る所に、ぽかりと抉れた無数の穴が開いている。 魔法使い見習いの少女が、何回も何回も頑張って魔法を使い続けた成果だった。 そこから大して離れていない場所で、無数の生徒や教師たちが彼女を見守っている。 やがて魔法で呼び出されたのは一人の男だった。 男は、名前を尋ねる少女を見てこう言う。 「霧亥だ」 その後、彼女は彼に口付けるために顔を寄せてきた。 彼は動けなかった。痛みではない。もっと別の事実からだ。 「……感染の形跡が無い?だがネット端末遺伝子も持っていない」 「何ブツブツ言ってんのよ。いいから行くわよ」 フィールド……霧亥の用いる認識なら階層……は、彼にしてみれば酷い混沌に満ちていた。 無数の色、流動する大気。空には、多くの人類が永劫目にすることの無いと思われた雲まである。 何かハッキリしていることがあるとすれば、霧亥には理解できず、言語化できない状況だということ。 そして探索を終え、来たる脅威を退け、永木にわたる時代に終止符を打ち、用済みになったことだけだった。 彼らの装備は、霧亥から見れば原始的と言って差し支えないレベルのものだった。 基本的に探索のため、メンテナンス不要で人間とはそう変わらない構造のボディではある。 霧亥に自由は無い。この世界に迎合するか自壊するかのどちらかしかないだろう。 そこまで考えた彼が常に持っていた装備が無いことに気づくまで、そう時間はかからなかった。 ルイズとの会話には問題は生じなかった。だが、文字の認識には問題が発生していた。 認識についてもかなりの齟齬があり、彼女に理解できるレベルまで説明を簡易化するのには時間を要した。 彼女の認識はこうだ。 1.霧亥はこの世界とはまったく違う場所から来た。その世界のことはよくわからない。 2.どこかで働いていたがクビになった。だけど何とか最後の仕事はやりとげた。 3.武器を持っていたが失われてしまった。ここの文字は読めないけど会話は出来る。 つまりルイズは霧亥のことを、異世界の平民か兵隊で、今は無職なのだと認識していた。 さらに遠方の国家の人間のように、文字が読めないので教育の必要があるとも思っていた。 一方、霧亥はルイズの状況に関しては正確ではないものの、概ねの把握を行うことができた。 彼の蓄積されたデータと似たようなケースを照合した結果で、経験の勝利である。 たっぷりとした時間を使って、ようやく彼女は本題に入ることが出来た。 空には2つの月が昇り、きらきらと星が輝いている時間で、夢の世界へ行きたがる時間だ。 「で、貴方には使い魔になって欲しいのよ」と、ルイズは言う。 「使い魔って何だ」と霧亥は尋ねた。 珪素生物の発生源となった『教団』と呼ばれた連中の一部が、準独立型デバイスを指してそう言っていた。 彼のデータにあるのはそれくらいであり、行動が多岐にわたる程度にしか記録されていない。 「まず目となり、耳となってもらうわ」 「お前は接続端末を持っていない」 「何それ?っていうか、私のことはご主人様って呼びなさい。口の利き方がなってないわ」 「……他には何だ」 「特定の品を見つけてくることね。秘薬の材料である硫黄とかコケとか」 「わかった」 「知ってるの?」 「見たことは無いが、サンプルさえあれば可能だ」 「はぁ……それからこれが最優先事項なんだけど、主人を、その能力で敵から守ることよ」 「わかった」 「ホントにわかってんの?アンタ見た感じ、タダの顔色の悪い平民じゃない」 「……他には何だ」 「洗濯、掃除、その他雑用」 「わかった」 「………さっきから同じ言葉しか聞いてない気がするんだけど?」 「そうだな」 ルイズは呆れたようで、そのまま眠ることに決めたらしい。 霧亥はどうしたらいいのかわからないので部屋を出ることにした。 ここには珪素生物もいない。それほど睡眠も大切ではない。 敵でない相手の機嫌を損ねないようにするのが上策。 それが霧亥の探索行における原則であり、経験則であり、男女間に対する常識でもあった。 いくら時間が経とうとも変わらぬ本能の営みは、確かに人という種に残り続けたのだ。 「どこにいくの?」 「外だ」 「基本的に外出禁止だし、いくら学院近くでも外には狼や野犬がいるわ。ここで寝なさい」 「狼?ここには野生の生物がいるのか?」 「当たり前じゃない……ねえ霧亥、貴方のいた場所では、そんなに生き物が珍しいの?」 「俺のいた環境の有機生命体は数が乏しかった」 「ユーキ……生き物のこと?」 「そうだ」 「寂しい場所なのね……ここはたくさん生き物がいるわよ」 「興味があるな」 「私が許可するまで勝手にどこか行っちゃダメよ」 「……」 「おやすみ。アンタは床で寝なさい。あと洗濯物、そこに置いてあるから明日洗って。」 霧亥は答えなかったがそのまま横になる。そのうちルイズが眠ったのを確かめると、自分も寝た。 "使い魔"霧亥の新たなクエストが、今、始まる… 何時間か経過して外が薄っすらと光っていることに気づいた霧亥はそのまま起きて外に向かう。 洗濯をする場所を求めて1時間ほどさ迷い続けた結果、川と呼ばれた場所に向かい、手で洗うことになった。 シエスタと名乗るメイドと偶然出会い、そのまま案内してもらったのだ。 「噂には聞いています。平民の使い魔なんて聞いた事が無いって…あの、顔色が悪いですよ」 「元々だ」 「そっ、そうでしたか。失礼しました! ………あ、あの」 「?」 「そんなに強く洗うと破けちゃ…」 ビリ、という嫌な音が聞こえる。 「……。」 「……後はやっておきますか?」 「頼む」 こうして霧亥は下着と朝食を失う代わりに、協力者を一人得ることに成功した。 周囲の建材や人々をスキャニングをして、彼はここが全く異なる世界であることを認識していた。 ここは多くの有機物で溢れていた。まるで丁寧にデバッグしたプログラムのようだと霧亥は思った。 重金属や合金、合成製品の類は極めて微量であるか、全く存在していなかった。 太古の昔、超構造体が設計されるより、ネットワークが存在するよりも前の時代がこの風景だった。 ハルケギニア。素晴らしき有機物の楽園。珪素生物たちの言うカオスとは異なる、真の混沌の満ち溢れる世界。 光は程よく減衰して適切な温度を提供していた。強固な外装やシェルターのような設備など、ここには不要なのだ。 霧亥は自分が死者の国にいるか、あるいは自分の意識だけがシミュレータの中で動いているような錯覚を覚えた。 もちろんそんなことは無い、ということを彼の有機デバイスの方が教えてくれる。 自分はスタンドアローンである。その事実が自分自身に対する論理的な矛盾の解消を可能にしていた。 サナカンにより登録を抹消された時よりも前から、ずっとそれは変わることは無かった。 彼は人間と呼ぶには多くの部分で異なっている。だが、機械と呼ぶには余りにも人間的だった。 それが幸運なのか不運なのかは人によって判断が分かれる部分だろうが、とりあえず霧亥にとっては幸運なのかもしれない。 部屋に戻るとルイズはまだ寝ていた。放っておくのも問題だというのは想像することができる。 それに新しい情報が必要であった。ネットワークが滅んだ環境で活きてくるのは、原始的な方法である。 そういう点で不都合を出さないことが彼の長期間の、それなりに安定している探索を可能としていた。 霧亥はルイズを起こそうとしてみた。 体をゆすってみる。起きない。 声をかけてみる。返事はあるが、起きない。 両方同時に試みてみる。起きた。 「何…誰あんた」 「霧亥」 「使い魔…そっか、昨日召喚したんだっけ…」 もぞもぞと起き上がってくると、欠伸をして、ぶっきらぼうにこう言い放つ。 「服」 無言で近くにある洋服を手渡す。 「下着」 「どこだ」 「そこのクローゼットの一番下に入ってるわ」 確かに昨夜見た下着と同型のものが入っている。霧亥はそれを取り出すと、ルイズに手渡した。 「服」 違うのか、と尋ねると、どうやら着せて欲しいようだった。 「自分では装着できないタイプなのか?」 確かにナノスキンスーツのような形式のものは特殊な設備が必要だった筈だ、などと見当違いの解釈をする霧亥。 「時々変な言い回しを使うわね。そっか…異世界人だったっけ…。もう少し言葉を覚えた方がいいわよ。 ……私が言いたいのはね?霧亥。着せてくれる人がいるなら、わざわざ自分から着ないということ」 霧亥は頷いた。滅多に無いことだが、大規模な人間の集落で特定の人間に対してそういう事をさせる場合がある。 あまりいい気分では無かったが別に断る理由もないので、さっさと着せておくことにした。 部屋を出ると別の女と鉢合わせした。女性はキュルケと名乗り、何やらルイズとしゃべっている。 霧亥は名前を一言告げると背後の有機生命体に気づいた。どういう原理か、尻尾が燃えている。 「どうやって燃焼させているんだ?」 「知らないわよ、そんなの」 その後、キュルケと名乗る少女が食堂へ向かい、自分たちも続くことになった。 食堂は広大なもので、これほどの人数を収容するほどの集落を、霧亥はあまり見たことが無かった。 設備が残っていても肝心の人間が死滅しているケースは何度かあったが、両立しているのは稀だ。 「貴方の食事はそれよ」指差す先にあるのはスープとパン。 「少ないな」 「貰えるだけありがたく思いなさい」 「そこにあるのは食べられないのか」 霧亥は人間の食物や珪素生物のグリス、他には電力等のエネルギーを動力とすることができる。 効率では断然後者だが前者でも最低限の活動は可能であり、制御可能な範囲ではあるが食欲というのもある。 エネルギーが無いのに動ける訳は無いのだから、それを求めるのは当然の事だった。 最も、その「動ける」時間は人間よりも遥かに長いのだが。 食事が終わると彼女たちは再び移動を開始した。聞けば授業だと言う。 『学校は戦場だ』 「…?」 霧亥は何故かそんなフレーズを意識していた。
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「歩いていかないのか」 「城下町は遠いのよ。歩いていったら今日中には帰ってこれないわ。馬に乗るのよ」 「なんだこれは」 「だから、馬よ……まさか乗ったことが無いとか?」 「生きている」 「当たり前じゃない。死んでたら乗れないでしょ。私みたいに、そのまま跨ればいいのよ」 「……」 霧亥は始めて見る馬という生物に乗れ、と言われ冷や汗をかいていた。 そもそも制御できない意思を持った生命体に移動を依存するということが危険に思えてならなかった。 だが他に代替手段も無いと理解すると仕方なしに乗ることにした。時間を考えれば、手段は選べない。 「これが街か」 「そ、大きいでしょ!」 結局、馬に慣れるには幾らかの時間を要したが、何とか辿り着くまでには乗りこなせるようになっていた。 城下町も霧亥から見れば、狭く、うるさい。学院ですら雑多な環境に圧倒されていたが、ここは更に強烈な場所だった。 物売りが声を上げ、道端に食物が放置され、人々がそれを眺めたり取引を成立させたりしている。 急いでる人、のんびり歩いている人、老若男女、様々な人種がそこにひしめいていた。 「ブルドンネ街。この国で一番大きな通りよ。この先にトリスティンの宮殿があるわ」 「中央政府か」 「そういうことになるわね」 「そんなものがあるんだな」 「馬鹿ね。無ければどうやって国の事を決めていくのよ」 「企業が支配している場所があった」 「企業?わけわかんないわ……」 そのまま路地裏に向かって歩く。路地裏は更に不衛生で狭かった。 うずくまる人間、破砕された壁。悪臭の立ち込める溝。中ではゴミが腐敗している。 どうみても普通の人間――ましてやルイズが好き好んで寄り付くような場所ではなかった。 「おい」 「何よ」 「どこに行くつもりだ」 「武器屋よ。『守れ』っていうなら、それなりの道具は与えておかないといけないじゃない?」 「……」 「あ、ここよ。あったわ」 石段をあがり、羽扉を開け、店内に入る。中はランプが主な光源だからか、薄暗い。 そこには所狭しと武器や防具が並んで、奥には店主と思しき男がいた。 胡散臭げに、しかし値踏みするようにこちらを見つめる。 「旦那。何をしたかは聞きませんが、ウチは貴族のガキを売りに来る場所じゃありませんぜ。 そういうのを売りたけりゃ3軒隣の薬売りの婆さんに相談してみてくだせぇ。厄介ごとは御免ですよ」 「客よ」 ルイズがそう答えると武器屋の親父は2人を交互に見つめて首をかしげ、のそりと立ち上がった。 「こちらの旦那が剣を?失礼ですが、金は持ってるんでしょうね」 「これだけあれば足りる?」 懐から袋を取り出して何度か振ってみせる。中には少なからず金属の詰まっているような音が聞こえた。 親父は面倒くさそうにパイプを卓上に置いてと店の奥に入っていくと、小ぶりな剣を持って戻ってきた。 「こういうのを御所望で?」 「あら、綺麗な剣ね」 「昨今は宮廷貴族が下僕に武器を持たせるのが流行っているようでしてね。そういうとき選ぶのがこういうのですよ」 「下僕に剣を?どうして?」 「何でも貴族ばかりを狙った盗賊がいるようでしてね。『土くれ』のフーケというそうですよ」 盗賊には興味が無かったのか、ルイズが剣をじろじろと眺めている。 長さ1メートル。細身。手元を狙われにくくするためか、ハンドガードもついている。 「これでいいんじゃない?」 「すぐに折れる」 「そうなの?」 霧亥は周囲の武器に含まれる材質をいくつかスキャンしていた。 その結果、この剣では役不足だと判断したのだ。 「別のはあるかしら?」 「少々お待ちを」 今度は布で拭きながら、大きな剣を持ってくる。 柄は長く、随所に宝石が散りばめられ、刀身は光り輝いていた。 「すごい…」 「この店一番の業物、ゲルマニアの錬金術師、シュペー卿の作でさぁ。 なんでも魔法がかかってるらしく、鉄でも切れるんじゃないかって言われてますぜ」 「おいくら?」 ルイズは気に入ったようだった。1番、という言葉のもたらす魔力なのかもしれない。 一方、霧亥の視線は違った。魔法がどうかは計測できないが、材質だけ見れば単なる銅と錫の合金である。 「新金貨なら3000、エキューなら2000」 「立派な家と森付の庭が買えるじゃない」 「良い剣は城に匹敵することもありますぜ」 「ルイズ」 「だからって……何よ、霧亥」 「これは駄目だ。宝石は本物だが、刀身はさっきの剣のほうが硬い」 「わかるの?」 「ああ」 ルイズが驚いた表情で霧亥を見つめている。一方の店主も、面倒くさそうな表情とパイプの火を消した 腰を伸ばして霧亥をまっすぐ見つめると、ハッキリとした声でこう言ってきた。 「……たまげたね。モノを知らない貴族だと思って馬鹿にしていたが、旦那は大した目をお持ちだ。 確かにこいつは飾るほうの武器で、戦う為のモンじゃありやせん。いますぐ真っ当なモン持ってきやす」 「だはははは!おめぇの負けだな親父。素直に本物のシュペー卿の作品でも持ってくるしかねえなあ、こりゃ!」 「うるせぇデル公!目の節穴な貴族ばっかり相手にしてりゃ嫌気もさすってもんだ!ああ、そうだよ!俺の負け、大負けよ!」 「ここいらが年貢の納め時だな、親父よう!」 店の奥ではなくカウンターの下から箱を取り出したかと思うと、1本の長い剣と鞘を出してきた。 霧亥とルイズは声の主を探しているが、じきに霧亥が堆積した剣の奥から剣を引きずり出す。 錆の浮いた刀身は、その剣が長きに渡って使われずに放置されていることを示していた。 ガチガチと鍔のあたりが動き、そこから声を発しているように見えた。 「お、おお?なんだテメー、俺をどうするつもりだ?」 「お客さんすいません!そいつはデルフリンガーってインテリジェンスソードでさぁ。 口は悪いわ客に喧嘩は売るわで手を焼いてるんです。ウチが売るのは装備だけで十分だってのに」 「ケッ、何も知らずに武器について偉そうにしている連中が悪いのよう」 大剣と呼ぶには刀身が細いが、長さは遜色が無い。そのまま霧亥はデルフリンガーを片手で手にとって眺める。 「自我を持っているのか?素材も他のとは随分違う。さっきの2つよりも硬い」 「…おでれーた。こりゃ親父を笑えんね。しかも、てめ『使い手』か」 「『使い手』って何だ」 「フン、何だ。おめ、自分の実力もしらねーのか」 「……スロットついているか?」 「あン?なんだそりゃ」 「これは理解できるか?」 「ちょっと霧亥!なにやってるのよ!」 ルイズの言葉は耳に入らないかのように、店主やルイズに聞きなれない言語――音と言ってもいい――を口にする。 0100101011010101110―― 『ッハァ!?何だテメーは!なんで俺ッチの始祖の言語を知ってやがる!60世紀ぶりに聞いたぜ!』 『お前はどこから来た。』 『ワリーが今すぐには思い出せねえ。てめ、マジで何モンだ?始祖ブリミルだってこの言葉は知らないはずだぜ』 『情報が欲しい。』 『いいぜ。だが俺の記憶は上代みたくはいかねえ。素材の魔力的侵食と精神構造からか、もう随分と欠落しちまって治せないんだ。 人間たちの言葉なら「忘れた」っていえばわかってもらえるか?それと、俺はこの世界で作られたから細かいことは…』 『お前を買うように伝える。思い出したら言え』 「キリ、イ?」 「お、おい、デル公?ブッ壊れちまったのか?」 不安そうに見つめる2人に、霧亥は平然と答えた。 机の上にある『本物』のシュペー卿の剣が輝いている。 「これを買う」 「買ってもらうぜ」 「へ、へえ、そう言うなら勿論お売りいたしやすが…こっちはどうしやす?紛れも無い本物ですが」 「どうなの?霧亥。私にもこれはさっきの2本より良いってわかるわ……」 明らかに魔力が付与された剣だった。素材、形状は申し分がない。 「買えるのか?」 「そうだ、お値段…」 「新金貨なら600、エキューなら400ですよ。随分と良心的な値段だとは思いますがね」 「んー…これなら納得できるんだけど…生憎と200しかないのよ。諦めるわ」 「んじゃデル公をお買い上げで?あいよ。ついでに、この鞘と短剣もお付けしまっさ」 「短剣?」 「へい、何でも旅の職人が愛用してた『三得包丁』って品でして。武器には物騒ですが、1本あると便利ですぜ」 「貰えるなら貰っておくわ」 ルイズが袋の中身を何枚か出している間に、霧亥は店長に尋ねる。 「他にこういうのは無いのか?」 「このデル公は黒衣の商人から買ったんですがね、来歴はサッパリわからねーんでさぁ。 それに元々、インテリジェンスソードってのは数が少ないんで、もうウチにはありやせんね」 「わかった」 「こら!ご主人様を置いていくな!」 外に出ると見慣れた2人が物陰に隠れているのを霧亥は探知した。片方はキュルケ、片方はタバサである。 「ツェルプストー!なんでこんな場所にいるのよ!」 「あら、私のことはよくご存知でなくて?」 「あ、アンタまさか…!」 「プレゼントで先手を打ったつもりでしょうけど……」 「「……」」 2人が喧嘩を始めるのを、霧亥は剣を2本、タバサは本を1冊抱えて、黙って眺めていた。
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食堂は空席も目立つものの随分と賑わっていた。遅かったのか、既にデザートも配られている。 ルイズは席に座ると、いつもどおりの始祖に対するお祈りを捧げていた。 床には粗末な食事が置いてあるので、霧亥は空いてる椅子に座り、それを食べだす。 「あ、こら。ちゃんとお祈りしなさいよ」 「余っている食料は無いのか」 「そりゃ厨房に行けば残飯くらいあるだろうけど……ほ、ほらっ、少しなら私のをあげるわ。感謝なさい」 「……。」 ルイズはあれこれ言い訳をして自分の行動を正当化しているが、霧亥は別にどうでもよかった。 近くのテーブルに集まった男子たちは、何やら話に華を咲かせている。 大げさなリアクションを取る生徒。そして、その拍子に小瓶が床に転がった。 そのまま食事を終えるが誰も小瓶の存在には気がついていない。 男子生徒たちは場所を移すのか立ち去ろうとしたので、霧亥は少し考えてビンを拾う。 「おい、落としたぞ」 ギーシュと呼ばれた、落とし主の生徒に呼びかける。 「うん?何だ君は――それは僕のじゃない。近くの給仕に渡したまえ」 「お前が落としたのを見ていた」 その言葉を聴いてギーシュの友人たちが騒ぎ出す。彼らにとって、ビンの中身の製作者が重要なようだ。 事態は次々に進行していく。まず少女にギーシュが叩かれ、別の少女にギーシュが叩かれた。 霧亥は席に戻ってルイズに情報収集の許可を貰うか学校を探索するのか、どちらがいいかを考えていた。 「待ちたまえ、君のせいで2人の名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」 呼び止められる霧亥。振り返ると、大仰なリアクションで霧亥に対して文句をつけてくる。 「俺には関係のないことだ」 そうだそうだと野次が飛び、ギーシュの立場はどんどん悪くなっていった。 「話を合わせるくらいの機転はきかせてもよいだろう?」 「もう手遅れだ」 「……ほう、どうやら貴族を馬鹿にしているのかね?よろしい。では教育してやる!」 事態は次々に進行していた。 ギーシュは霧亥を突き飛ばして指をさしながら、ヴェストリの広場に来いと告げて立ち去っていった。 その次に話を聞きつけていたシエスタが飛んできて、今すぐ謝罪すべきだと勧告してきた。 遅れてルイズがやってきて、メイジにかなうわけが無いから謝罪しなさいと命令してきた。 探索をしていると、少なくない割合でこういったトラブルに巻きこまれる事がある。 なぜなら小規模な人間の集落は閉鎖的であり、余所者は統治局や珪素生物と同じように見られるからだ。 助けがもらえるよりもほんの少し、銃で撃たれたり襲い掛かられることがあった。 そういうときに解決するプロセスには、プログラム言語、現地の言葉、そして肉体言語が必要だった。 「ヴェストリ広場に行く」 「あっちだぜ、平民」 ギーシュの友人が顎で教えてくれる方向に、止める2人に構わず霧亥は歩き出した。 どう立ち振る舞うにせよ、戦闘は十分に想定されていた。想定される。可能性がある。 こういう文字が網膜に映るということは、つまり確実に発生する事を指している。 違いは遅いか早いか。それだけだった。 ヴェストリ広場は薄暗い場所だった。空が青い事を覗けば、どこか超構造体に似ている部分もある。 2つの塔の狭間であり、中庭にあたる。普段は人を寄せ付けないことは容易に想像できた。 巨大な建築物には、それのみが持つ独特の空気のようなものがあるのだ。 「諸君!決闘だ!」 ギーシュが造花で出来た薔薇を掲げると、歓声があがる。 人が寄り付かないであろう広場は今、噂を聞きつけた生徒で溢れかえっていた。 「逃げなかった事だけは褒めてやろうじゃないか」 「さっさとしろ」 「クッ……いいだろう。では始めよう」 距離は13メートル。1歩を踏み出す霧亥に対してギーシュは薔薇の花を振って応える。 花びらが一枚宙に舞ったかと思うと、いきなり甲冑を着た女剣士の姿になった。 「!」 慌てて腰に手を当て銃器を探すが一つも無い。視界には『武装消失』のメッセージ。 構造を解析したところ、銅と錫の合金で形成されている。動作箇所は人体に酷似。 しかし分類には『ERROR』が表示されている。 「驚いたかい?僕はメイジだ。だから魔法で戦う。何の文句もあるまい?」 「造換塔も無しに生成できるのか」 「何だそれは?フフ…言い忘れたが、僕は『青銅のギーシュ』と呼ばれている。君の相手はその青銅のワルキューレさ」 そのワルキューレが霧亥に突進してきた。右の拳で容赦なく霧亥の腹部を殴りつけ、続いて左の拳で頭部を狙う。 だが霧亥は両手でワルキューレの右の拳を掴むと、そのまま捻りあげて銃身を崩してから、投げた。 「なッ!」 周囲にどよめきが走る。だが、霧亥はその程度の反撃では終わらない。 そのまま顔面を何度も何度も何度も何度も殴り、地面に少しめり込んで動きが鈍ったのを確認すると、ワルキューレの腕を曲げた。 「何だお前は!」 ギーシュは後退しながら慌てて薔薇を振り、さらに6体のゴーレムを形成。 そのまま数で制圧しようとするが、霧亥は動じることもなくワルキューレの腕を引きちぎる。 その腕を振り回して正面のワルキューレの頭部を破壊。同時にちぎった腕もくの字に曲がったので放棄する。 別のワルキューレが迫ってくるが、2、3度殴られた後に地面を転がって回避して、そのままギーシュに駆け出した。 あとは思い切り殴りつけるだけで戦闘不能にできるだろう。 「く、来るな!」 恐怖に顔をゆがませるギーシュとは裏腹に、霧亥の顔には何の感情も無かった。 彼にとっては『司令塔』を潰し、まだ動くようならワルキューレと戦うだけであった。 ただ敵性存在に対して淡々と処理を行う。ただそれだけのことなのだ。 ギーシュの胸倉を掴み、そのまま地面に背中から落とす。 あとはワルキューレと同じ処理を行う。 「そこまでよ!霧亥、やめなさい!」 「これは決闘だ」 握り締めて引いた左の拳を突き出す0.3秒前に停止命令が下る。 霧亥は自分の網膜の表示『enable/disable -ERROR-』を疑った。 「制御を奪われた?」 主導権を取り戻すべくノイズの発生源を捜査すると、ノイズは左手から発生していた。 『禁圧』『新規デバイス』の表示を確認して霧亥は驚愕していた。 そんなものがあるはずがないのだ。ここの技術が追いつくまでには途方も無い時間がかかるだろう。 今まで認識されなかった部分も納得がいかない。拘束させるタイプなら全身を動かせなくする筈だ。 「戦闘用追加演算ユニット…ライブラリ…不測エネルギー生成機能…なんだこれは」 『認識完了』という表示と共に左腕から拳にかけてほんの僅かに、帯電するようなエネルギーが発生していた。 霧亥は、臨時セーフガードの男が使用した内部電源の放射攻撃を思い出す。 「霧亥!もういい!ギーシュ、貴方も降参して!」 「わ、わかった……僕の負けだ……」 どよめき。そして霧亥の勝利を、見物客の一人が大声で叫ぶと、それは歓声と拍手に変わった。 霧亥はそれを認識すると、立ち上がり自分の手のひらを眺める。 デバイス認識前の状況と今の状況を比較しても、システムや心理の表層に問題は発生していないようだった。 だが念のために深層も確認する必要がある。そう判断した霧亥は自らの機能の大半を一時停止させ、診断と調整に入る。 そのまま地面に横たわり、125秒間、全身の98.4%のデバイスを停止した。 「ちょ、ちょっと霧亥大丈夫?ねえ!霧、亥……寝ちゃってる…」 「ルイズ。彼は何者なんだい?まさか僕のワルキューレがあんなになるなんて…」 「わかんないのよ、私も。ただ遠くから来たことぐらいしか知らないの」 「ただの平民に僕のゴーレムを倒せるとは思わない。それに、最後のアレは……」 「何かあったの?」 「いや…なんでもない。勝者は丁重に運ばなければならないね。誰か、手を貸してくれ!」 気絶したのだろうと思った生徒の誰かが、霧亥に『レビテーション』をかけてくれる。 「使い魔のくせに勝手なことしないでよね…心配したんだから…」 聞こえてないのをいいことに、そんなことを言ってみる。ルイズは少しだけ楽になれた。 一方、広場に残されたギーシュは霧亥への認識を改め、それを見抜けない自分を恥じた。 「(彼の左手に見えたあれは何だったんだろうか?先住魔法?それとも、幻かい?」 野次馬に混じり決闘を眺めていたキュルケはうっとりと霧亥を眺めていた。 隣にいる青い髪の少女はキュルケとは別の観点で本を読まずに霧亥の事を見つめていた。 3人は同じ事を考えている。 つまり、『彼は何者なのか?』ということだ。 霧亥の勝利は学院に住む多くの平民にやメイジに少なからず影響を与えた。 羨望であり、感動であり、希望であり、恐怖であった。 それはちょっとしたウィルスのように皆の心の中に増殖していった。 だが、それが表面に現れることの無い、あくまでも水面下での変化である。 よって本人たちにはさしあたって変化は無い。せいぜい晩の食事が増えたくらいである。 翌朝、霧亥はトリスティンの施設の探索と図書館の利用を許可されていた。 ルイズはいくらか文句を言ってきたが、文字が読めないことを告げると同情的な反応で許可をくれた。 ある程度の把握が完了すると図書室へ向かい、幾つかの文字を眺めてみる。 「言語の種類が全く異なる。意味が理解できない」 かつて自分が持っていた古いハードコピーを思い出す。あれは読むことが出来た。 今となっては永久に自分の手元に戻るわけでは無い。ただ霧亥には本に関して一つだけ鮮明な記憶がある。 『冷たく静かな大地が明るくなる頃、人影は丘の上に登った』『大地って何だ』 答えは、見つかるのだろうか。 結論から言えば、答えどころか管理者すら見つからなかった。 人影は2、3見当たるが、めいめいが自分の読みたいであろう本を手にとって没頭している。 ルイズからは勝手に持ち出すな、と注意を受けている。つまり一度戻る必要が発生していた。 「どうしたの」 振り返ると近くの青い髪をした少女が立っていた。 「ここの管理者を探している。ハードコピーについて聞きたいことがある」 「今はいない。戻るには時間がかかる」 しかたない、と判断して霧亥は踵をかえした。だが後ろから呼び止められる。 「何を探しているの?」 「文字が判読できない。ここの言語の基本的な読み方を記したものが必要だ」 「待ってて」 「これは何だ」 「クマ」 「これは何て書いてある」 「『おさるさんは、ヤギさんのかたきをうつことにしました』」 「もっと情報量の多いものは無いか」 「単語ごとに詳細が記されているのはこれ。文法については、これ」 無言で本を受け取る霧亥。どうしたことか目の前の少女から文字を教わっていた。 霧亥はパターンを見つけ出しては解析し、照合し、何度か適用しては認識率を上げていった。 あと、約43000秒もあれば簡単な文字を読み、書くことが出来るようになるだろう。 自分の中で進歩率を概算してから、青色の髪を持つ少女が部屋に戻るまで作業を続けた。 「私は戻る」 「助かるよ。だが今の俺は何も持っていない」 「構わない」 少女が部屋の外に出ると「あらタバサ、今日もここにいたの?」という声が聞こえてきた。 霧亥は本を元の位置に戻し、最後に『タバサ』という固有名詞を覚えて図書室を後にした。 ルイズに成果を報告すると色々と複雑な表情をしていた。 「ううーん……………決めた。霧亥、明日は街まで出かけるから、私と一緒に来なさい」 「街?別の集落があるのか?」 「集落じゃなくて、街は街。国の中に町や村みたいな集落があって、その中に家があるのよ。そういう意味でここは例外ね」 「そこまでの文明があるのか」 「ハァ。ホントに変なところから来たのね。今更だけど、何か呆れちゃうわね。」 「……。」 「え、あっ、そうよ!そうだわ!あ、貴方が変なことを喋って恥をかかないように、わた、私が常識を教えてあげる!」 「いや、それならこの文字の…」 「ほ、ほらっ!さっさと座る!」 「…………。」 恐らくは主観の多分に入った常識は覚えたが、なぜルイズの調子が変なのかは結局判らなかった。
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まともに召喚させてもらえないルイズ 「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールはトリステイン魔法学園の生徒。今日は進級試験の日、ルイズはその試験の課題である使い魔召喚の儀式の真っ最中です。 「私は求め訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズは魔法が得意ではありません。今日もどうせ爆発で終わるんだろうなとルイズを含めたその場全員が思っていたのですが… 「あれ?何かいるわ…?まさか成功した?」 なんと召喚魔法は一発で成功。鏡からゆっくりと現れる緑色のフォルム。二本足で立ち、背中には黒い羽のような物がついている。 召喚されたのはどうやら亜人…?何はともあれルイズは喜び召喚したそれに話しかけます。 「アンタ亜人ね?この私に召喚されたんだから光栄に…」 「ここは…何処だ?…まぁそんな事はどうでも良い…まさか孫悟空が私と一緒に自爆するとは…な?」 緑の亜人はブツブツと何かを呟いています。ルイズは自分が無視されている事に気付き緑の亜人の側でぎゃーぎゃー喚きますが、亜人の耳には全く届いていない様子。 「ククク…だがおかけで新たな力が手に入った…待っていろ孫悟飯…このセルが…パーフェクトに貴様を消してやろうー…!」 亜人は人差し指と中指を額に押し付けます。次の瞬間、緑の亜人は姿形もすっかり無くなっていました。 「はぇ?あれ?」 辺りがシーンと静まります。召喚した本人はというと、一体何が起きたのかといった様子で事態が飲み込めていない様子。 数分後、事態を理解したルイズが儀式のやりなおしを教師のコルベールに申し出、再びルイズの使い魔召喚が行われました。 再召喚で現れたのは黄土色の鎧と鉄仮面を被った男だった。今度は成功したとルイズが鉄仮面に近づこうしたその時… 「ここは…神崎士郎の望む世界ではない。…修正が必要だ」 鉄仮面は腰の黒い箱から一枚の札を取りだし…! 『TIME VENT』 「え?」 チクタクチクタクチクタクチクタク… 「はっ!あれ?あいつは!?」 一瞬、何かが起きた後、黄土色の鎧の男はどこかへと消えていました。ルイズがコルベールに「アイツはどこへ行ったの!?」と問いかけましたが、コルベールは何の事やらさっぱりといった態度で接します。 いまいち納得のいかないルイズは再び召喚魔法「サモン・サーヴァント」を行います。今度は爆発が起こりました。召喚成功の手応えを感じたルイズでしたが、周りを見渡しても使い魔が見当たりません。 ふと足元に目をやると何かが浮かんでいました。文字です。ハルケギニアの言葉で「ここにいた」と書かれています。 おまけに矢印まであるではありませんか!ルイズが足を上げるとそこには体の潰れた自分の使い魔がいました。 やっぱり諦められないルイズはまたまたコルベールにやり直しを申し出、コルベールはこれを承認。四回目の召喚。 「やった!今度こそ成功よ!」 今回召喚されたのは、青い帽子を被った平民のようでした。しかし、それと一緒に見たこともない『魔物』が居ます。 これは当たりだとルイズが喜んでいるとどこからともなく青い毛に包まれた魔物が現れました。 「わたっ!わたっ!テリー、ここは異世界の扉で飛ばされた世界じゃないわた!ひとまず城に帰ろう!」 「そうなのか?じゃあ帰るかな!」 と平民の少年が言いました。ルイズの脳裏に嫌な予感が過ります。 「ちょ…ま…」 「わたわたわた~!」 取りつく島もなく少年は遥か空へと飛んでいってしまいました。 流石にストレスが溜まってきたルイズはコルベールに許可を取ることも忘れ召喚魔法を唱えます。 五回目に現れたのはおかしな帽子を被った少女、しかし背中には大きな羽が… 「よくも私を召喚してくれたな…人間。このレミリ…」 あるのを確認するところで日に当てられた少女は灰になった。 再再再再再再度召喚に挑むルイズ。現れたのは紅蓮の巨人! 「なめんじゃねぇ…異次元だろうが…多元宇宙だろうが…ハルケギニアだろうが関係ねぇ…俺を誰だと思っていやがる…穴堀りシモンだあぁ!」 紅蓮の巨人は気合い(螺旋力)で空間をねじ曲げ元の世界へ帰っていった。 それでもめげないルイズは渾身の力を込め召喚を行います。 「ドカ「ウボァァァ!」ァァン!」 断末魔の叫びと共に爆発が起こります。土煙が引くと底には黒こげになった鉄のゴーレムがいました。 ルイズが召喚した残骸が増える中、ルイズは藁にすがる思いで使い魔を召喚します。 召喚されたのは平民の少年とどう見ても人間には見えない異形の者。両者共に腕に何かを着けています。良く見ると少年の方は何かを手にしています。しらない文字書かれた緑色の札です。どうやら少年はその札で何かをするようです。 「俺のターン!魔法カード『超融合』を発動!…来い、ユベル!」 「十代…!」 すると二人は一つに重なり、眩い光となって空へと消えていった。 その後もルイズは召喚を続けました。 「あぅあぅ~…ここはカケラの世界じゃないのですよ…オヤシロワープ!」 …しかしいずれも 「はかせー、ここにはサルいないよー」 「ははは、悪かったなカケル君、今転送するぞい」 皆帰るなり死ぬなりして、 「エトナの奴こんなボトルの中に閉じ込めおって…おい、時空の渡し人!さっさと俺様をエトナのところへ飛ばせ!」 とうとう100回を超えたところでルイズの意識が 「キテレツー、ここどこナリ?」 途切れた。 次の日の朝、ルイズが起きると平民の少年が彼女の部屋にいました。何でも気を失う前にルイズが召喚したそうです。 その平民は「早く元の世界に帰せよ」等と馬鹿らしい事をほざいている。早く自分の力で帰れば良いのにと思いながら再びルイズは眠りについたそうな。 お し ま い 以上小ネタ ドラゴンボールよりセル 仮面ライダー龍騎より仮面ライダーオーディーン ぷよぷよよりのみ DQモンスターズ1よりテリー 東方プロジェクトよりレミリア・スカーレット 天元突破グレンラガンよりグレンラガン(シモン入) ボンバーマンよりボンバーマン 遊戯王GXより十代とユベル その他もろもろ… でした
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注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 ルイズ→アンデルセン キュルケ→旦那(ロリ) タバサ→大尉 をそれぞれ召喚したお話 フーケの憂鬱-1