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【上田明也の探偵倶楽部39~神の領域~】 「よっしゃあ!国中佑介の正体がわかったぜ!」 「ていうかマスター、これってあれじゃないですか? 最初から周りの人間に頼っていれば簡単に発覚した事じゃあ……。」 「良いんだよ、俺の個人的な調べごとに他人を巻き込みたくない。」 「あっそーですか。」 国中佑介 普段は会社員として働いているがその正体は「組織」のF-№0が製作した人間型ホムンクルス。 最近付き合っていた女性との結婚が決まり、そこそこ幸福な模様。 契約都市伝説は『振り袖火事』 ホムンクルスとしては実験作にあたるらしく、炎を操る都市伝説との相性が良くなるように設計されているそうだ。 契約特化型の試作品だが基礎スペックも従来品に負けていない、そうだ。 上田明也の情報収集能力ではどれも確証が取れないが、概ね事実である。 「さあ、それが解ったところでどう料理するか。 ぶっ殺す、良くないね、その恋人というのが俺の元カノだ。 そんな真似は無粋極まりない。 放っておく、悪くない、あいつの妹を殺したのは俺だが、 それでも彼にはほどほどに幸せに生きて欲しい。 あいつが俺に仇を討ちに来るように誘いをかける、良いね、最高だ。 でも結果は最初のそれと同じように最低になることが簡単に予測できる。」 「放っておけば良いじゃないですか。」 「まあね、向こうが仕掛けてくるまでのんびり待つか。 ああ疲れた、少し寝るぜ。」 吸っていた電子煙草(ストロベリー)の電源を消して、上田明也は昼寝を始めた。 場面は変わって組織内部の図書館の一室 サンジェルマンは先日の小火で燃えたアルバムの復元作業を続けていた。 その隣では橙が妖怪系都市伝説の資料を読んでいる。 「ふひゅー、深刻な主人公の出番不足ですね。」 「何を言っているんだサンジェルマン。」 「気にしてはいけません。ところで聞いてくださいよ、橙さん。」 「なんだ?イクトミに警告喰らったことか? お前が何をしようとお前の運命は変わらないよ。 警告を聞こうと聞くまいとお前が行くところはもう既にきまっている。」 「そうですか。 貴方に相談すると相談内容を話すまでも無くって楽ですよ。」 「そうかそうか、それは重畳。ちなみにお前死ぬぞ。」 「え゛…………。」 「死ぬ死ぬ、ラプラスの悪魔によると塵も残さず分解される予定になっている。 お前を殺す都市伝説の名前は……。 ああ、こいつか。」 橙は丁度読んでいた本をサンジェルマンに投げつけた。 「それだよ、そいつがお前を殺す。」 「……こいつですか。」 サンジェルマンは深くため息を吐いた。 「いやね、正直言ってイクトミにあそこまで言われるとは思ってなかったのですよ。」 「なんだ、お前らしくもない繊細なこと言い出すな?」 「いえいえ私は何時でもデリケートです。 彼ってば一応神様じゃないですか、彼に警告されるということは私の研究は本当にやばいんだろうなあと思ったんですよ。 そのうえ研究してもしなくても結果が一緒なんでしょう? じゃあ今は黙っているに越したことはないのかなあ……。」 「まったく、お前も小物化が進んだなあ……。 初期の頃なんて黒幕臭全開だったぞ? 上田明也達のピンチに都合良く現れてホイホイ力を貸して、 その裏にまるで何か陰謀でもあるかのような雰囲気醸し出してたのに。 ―――――――――がっかりだよ!」 「がっかりてなんですか!? 勝手にがっかりされても困りますってば。 私は私の望みを叶える為に努力していただけですよ。」 「あとあれだ、じつは元人間って設定にもがっかりだ。 なんかちょと身近じゃないかこれじゃあ。」 「いや、良いじゃないですか。古代人ですよ!? 都市伝説の力で栄えた古代文明の生き残りとか十分キャラ立ってますってば!」 「ああ、そういえば都市伝説も『オーパーツ』だもんな。」 「いやー、あれが私の所に引き寄せられた時はびっくりでしたよ。 なんせ私が人間だった頃には普通に使われていたものばかりですから。 そのうえそこから派生して物品系都市伝説集まってくるし。」 「ただ高級な武器を湯水の如く乱射するとかなんか戦闘スタイル被ってるんじゃないか? ゲーム化した時動きが少なくてつまらないぞ。」 「ゲーム化って何!?」 「あ、もうこんな時間か。私は彼方と少し買い物してくるから大人しく留守番していろよ。」 「え、そんな!?」 橙はそそくさと部屋を出て行ってしまった。 その様子を見てサンジェルマンは少し微笑む。 彼は何時の間にか、偶然とはいえ彼女を救えて良かった、などと人間くさいことを考えていた。 「それにしても、神の領域か……。」 人間が立ち入っては行けない領域。 と、言うよりはこの世に存在する全てが立ち入ってはいけない領域。 それこそ聖杯ではないか。 どうやら自分の試みは順調に動いているらしい。 「くく、ふふ……。 あはは、あははははははは! 最高だ、最高じゃないですか!」 サンジェルマンは自らの心が沸き立つのを感じていた。 死ねるというならそれも良し。 試みがうまくいくなら尚良し。 どのみち彼の目的は果たせるのだ。 「良いでしょう。 彼女が私の所に来るか、私が彼女の所に行くか。 結局どちらでも良いのです。 私の計画は間違いなく進んでいる。 待っていてください、もうすぐ会えますよ……。」 そう言って胸のペンダントを開く。 中には女性の写真が入っていた。 サンジェルマンが一瞬だけ、普段からは想像もつかないような穏和な表情を浮かべる。 prrrrrrr! その時、急に電話が鳴る。 「ようサンジェルマン、COAの話なんだけど今大丈夫かい?」 ―――――――――来た! 「ええ、幸い研究のペースも落ちてきたところなので、 サポートが必要でしたらいくらでも大丈夫ですよ。」 「それは良かった、じゃあそろそろ行くわ、ラストダンジョン。」 「ええ、お願いします。あそこには私だと入れませんからね。」 「じゃあこれから頼むものを用意してくれ。 まず…………。」 人の理を越えて彼等は何処へ行き、何処へ着き、何処で終わるのだろう。 今この瞬間から、上田明也とサンジェルマンの神の領域への挑戦が始まる。 【上田明也の探偵倶楽部39~神の領域~fin】
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クラヤミクライン Log ↓テンプレ [[]] yyyy/mm/dd GM PL1 PL2 PL3 PL4 廃屋のメリー 2018/05/18~22 GM Noja PL1 武田詩音(旋盤) PL2 夜藤麻耶(ポマ) PL3 奥宮葉月(ヴィリー) PL4 ゆい(のゔぇ)
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夜の公園を二人の男が走る。 片方は神父のような恰好をした人の良さそうな中年の男。 もう一人は、対照的にダラけてた服装の、目つきの悪いずる賢そうな若い男。 突然、二人の足が止まる。 目の前には、大きな池。昼間なら小船を漕いだりできるが、さすがに夜にそんな事をしている人はいないようだ。 「やぁっと追いついたぜぇ」 二人の後ろから、若い男が現れる。その傍らには、白い鰐。 都市伝説「下水道の白いワニ」の契約者である。 神父風の男が振り返り、口を開く。 「何なんですか、あなたは。急に襲い掛かって来て。危ないでしょう」 「うるせぇ!お前らが母ちゃんから取った二百万!返して貰うぞ!」 「取ったって……アレは貰ったんだぞ?」 目つきの悪い男が言う。 「そうです。アレは寄付ですよ?」 神父風の男が同意する。 「何が寄付だ詐欺師ども!お前らが契約者なのは分かってんだ! 何と契約してるか知らねえが!その能力を奇跡とか言って宗教やってるらしいじゃねえか!このペテン師ども!」 男は二人に怒鳴る。 その言葉に、二人は黙ったまま何も言わない。それを見て、男は言い訳もできないらしいと判断した。 「金を返すなら見逃してやる。返さないなら、ワニの餌だ!!」 男の言葉とともに、鰐の口が大きく開かれる。 「あなたは、何か思い違いをしているようですね」 神父風の男が静かに口を開く。 「確かに、私達は契約者です。しかし、私達はやっぱりあなたのお母様を騙してなどいない」 「この野郎、そんなにワニの餌になりてぇか……」 「まあ見なさい」 神父風の男は、地面に落ちている石を拾った。はずだったが、それが男の胸の高さまで来た時、その手にはパンが握られていた。 「……は?」 「分けてあげますね」 神父風の男はそう言うと、石だったはずのパンをちぎって男に投げた。 何かの罠かと、男は受けとらず、パンは地面に落ちる。 「何を……」 「もう一つあげます」 神父風の男はまたパンをちぎる。 ちぎっては男に投げる。何度も繰り返し、いつしか、男の足元には大きなちぎられたパンの山ができていた。 しかし、神父風の男の手にはいまだにパンが一つ。 「ま、さか……」 「ご理解いただけたようですね。 私は石をパンに変える事ができます。この池の水をワインに変える事ができます。 水の上を歩く事も、死人を生き返らせる事もできます。」 そして、神父風の男は言った。 「私が契約しているのは、『キリスト』です」 「そ、そんな馬鹿な……」 「まだ信じられませんか?水をワインに変えて見せましょうか?」 神父風の男はにこやかに言う。 「だから言ったろう。あれは寄付だって」 ずっと黙っていた、目つきの悪い男が口を開く。 「確かにこいつは契約者だけどな、キリストの契約者だ。人を救う力を持つ。何も問題は無いはずだ。 それでもまだ文句があるっつうなら、そのワニで、戦ってみるか?神の子と」 男は迷っていた。「キリスト」の契約者、そんなモノに勝てるのか。人を救う能力を持つモノを殺して良いのか。 「お前は、何の契約者なんだ……?」 男は、目つきの悪い男に尋ねた。この男も契約者だったはずだ。この男が人に害をなすなら、こちらだけでも。 そう考えた。 「俺か?俺はこれさ……」 そう言うと目つきの悪い男は、公園の池の方を向き、手をあげる。 その瞬間、池が割れた。 「これが俺の都市伝説、『モーゼ』だ」 男が呆然と立ち尽くすのを尻目に二人は割れた池を歩いて去っていった。 「なーんかさあ、この辺り都市伝説と契約者多くね?」 「そうですね。早めに別の町に移った方が良いかもしれませんね」 夜の公園の池、小船から二人の男がおりる。 「コップや洗面器以外の水を割って『見せる』なんて久しぶりだぜ」 「私はいつもやって『見せて』いる事をしただけですけどね」 二人は公園の外に停めていた高級な車に乗り、話し合う。 「いくら稼いだよ」 「この辺りではまだ、一千万と少しですね。まだ他の町の半分です」 「んー、どーすっかなぁ。ここ金持ち多いけど、契約者も多いし。俺らの都市伝説がばれる事は無いとは思うが……」 「ばれるだなんて、何言ってるんです。私たちの都市伝説は『キリスト』と『モーゼ』でしょう?」 神父風の男が人の良さそうな顔を崩し、ニヤリと笑いながら言う。 「おおっと、そうだったな」 それに合わせるように目つきの悪い男も笑うのだった。 この二人の都市伝説が「青森のキリストの墓」と「石川県のモーゼの墓」であり、 その能力はそれぞれの人物の行った事を「見せる」事だと。その幻影を見せる能力だと、 ただの聖人の真似事をしているだけだと、気づけたモノは誰もいない。 終 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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とある廃工場で、銃声が響き渡る 発砲音が響くたび、雄叫びが一つ、消えていく 「がああああああああああ!!!!」 麻薬中毒者が、雄叫びを上げて警官たちに突撃してくる 一人の中年警官は、怯むことなく発砲した 撃ち出された弾は吸い込まれるように麻薬中毒者に命中した 麻薬中毒者は、ただの麻薬中毒者ではなく…今、学校町を騒がせているコーク・ロア支配型の被害者 そして、それに向かって撃ち出された銃弾もまた、ただの銃弾ではなかった 銃弾は相手の体内に入り込むと同時に、中に入り込んでいた液体が体内へと溶け込んでいき…コーク・ロア支配型の被害者は、びくりと体を震わせて、その場に倒れた 銃弾に込められていた液体は…薬品は、コーク・ロア支配型の影響を除去するものだ 「組織」が、コーク・ロア支配型の被害者を救済するために使っている薬品と、同じものだ 「よし、これで最後だな…無事かー?」 「はい。坂上は…!?」 「こっちも無事だ」 コーク・ロア支配型被害者達と応戦していたのは、三人の男性警察官 「……皆さん、ご苦労様でした。被害者達を回収しましょう」 そして、それらに指示を出していたのは、一人の女性警官だ 女性警官の名前は広瀬 美緒 …「組織」に通じて、学校町の都市伝説絡みの事件を、もみ消し続けている その代償として、都市伝説絡みの事件の解決を「組織」に任せているのだ そんな彼女が、部下を伴って、コーク・ロア支配型被害者の制圧に…都市伝説絡みの事件に動くなど、異質な光景である 「まったく。こんな銃弾、どこで手に入れたんだ?」 「…あなた達を、わざわざ都市伝説絡みの事件に関わらせたのです。余計な質問は受け付けません」 中年警官の言葉に、広瀬は冷たくそう答えた その表情は、酷く苦々しい 本当ならば、彼女は部下を都市伝説絡みの事件に巻き込ませたくはないのだ しかし、彼らはどうしても、都市伝説事件に関わっていってしまう …ならば 前もって、危険度の少ない都市伝説事件に関わらせて、危険な都市伝説事件と関わらせないようにするしか、ない それが、彼女が見つけ出した答えなのだ だが、それでも…彼女からは、迷いが消えない 「…それでは、この場は任せます。私は、残党がいないか、調べてきますから」 「一人で行かない方がいいんじゃないか?現場は慣れてないだろ」 「…馬鹿にしないでください。訴えますよ?勝ちますよ?」 中年警官の言葉にそう答え、彼女は廃工場の奥へと踏み込んでいく …「組織」から得た情報によれば、コーク・ロア支配型の被害者達が暴れている傍には、高確立でその支配者が存在する 恐らく、遠く離れすぎると、指令が届かないのだろう ……ならば、この廃工場内に、先ほど部下達が制圧した被害者達を操っていた者がいる可能性は高い 広瀬は銃を手に、警戒して歩く ……ぴちゃり、ぐちゃり 小さな音が、聞こえてきた 「………?」 ゆっくりと 警戒しながら、そちらに向かう そして 「----っ!!」 彼女は、見てしまった 死体を喰らう、犬を 顔が、手が、脚が 犬達に、食い散らかされている、その現場を 血の匂いが、辺り一面に漂っている 「う………」 嘔吐感を堪える広瀬 後ずさった拍子に…カタン、と、小さく、音がなってしまって ぴくり 犬達が、一斉に、広瀬の方を向いた 慌てて、犬達に銃を向ける しかし、一匹の犬が、そんな事に構う事なく、広瀬に向かって飛び掛り 「っぎゃん!!??」 「…!」 何者かに、弾かれた 「大丈夫ですか?」 「…影守、さん?」 かごめかごめの契約者、影守蔵人が、広瀬と犬達の間に割り込んできていた 刀を構え、犬達を睨みつけている 「何故、あなたがここに…」 「コーク・ロアが出没したって報告がきたから、僕に仕事が回されたんです…どうやら、契約者は既に、口封じされた後のようですが」 犬達が、唸り声をあげて広瀬と影守を睨みつける ……その、犬達の、向こう側から 「……「組織」の狗か」 かつん、と足音をたてて 尾なしの犬を引き連れた、灰色のコートを着た男が、姿を現した 冷たい眼差しで、広瀬と影守を睨みつけてくる 「あなたが親玉ですか?」 「…そうだ、と言ったら、どうする?」 刀を向けてきた影守に、男は嘲うように、そう言った 「組織」には、既に悪魔の囁きとコーク・ロア騒動の主犯の顔と名前は、情報が入ってくる …朝比奈 秀雄 影守の元に寄せられたその情報で見た写真の顔と、男の顔は一致していた 「その身柄、拘束させてもらいます」 この部屋は、扉が壊れてしまっていて、「かごめかごめ」の能力を発動できる状況下ではない そして、一応、上からの指示は「拘束しろ」と言うものである 殺せ、ではない だから、影守は忠実に、それに従おうとした 鍛えられた脚力で一瞬で朝比奈に近づき、みね打ちで相手を気絶させようとして ---っが!!と 鈍い音が、響く 「……!?」 片手で 影守の刀は、朝比奈の片手で、あっさりと受け止められた ぎろり、朝比奈が影守を睨む 「…私を、拘束する?……「組織」の狗風情が……私に、敵うとでも思っているのか!?」 「う、わっ!?」 「…影守さんっ!?」 ぶんっ!!と 影守の体は、朝比奈によって壁に向かって放り投げられ…広瀬の横を通り過ぎて、壁に叩きつけられた どごぉん!!と大きな音が響き渡り……壁が、崩れる 人間一人を片手で放り投げて…その衝撃で、壁が砕ける どれだけの怪力で投げたのだ? そして、その力で叩きつけられて…人間は、生きていられるのか? 広瀬は、急いで影守に駆け寄った 骨を痛めたのか、影守がうめいている 「影守さん……影守さん!」 「…駄目、です…相手に、背を、向けちゃ……!?」 己に駆け寄ってきた広瀬の背後で…朝比奈が、大きく息を吸い込んだ様子が、影守には見えた 逃げろ 本能が、そう叫ぶ 「っ…!?」 痛みを堪えて起き上がり、影守は自分を覗き込んできていた広瀬の体を、抱え上げる その、直後 朝比奈の口から吐き出された炎が、室内を包み込んだ 「-----うわっ!?」 ごぉうっ!!! その炎の先端は、中年警官たちがコーク・ロア被害者達を回収していたその部屋にも、ほんの少し入り込んだ どさり その炎から逃げてきた影守が…広瀬を庇うように抱きかかえた状態で、倒れこむ 背中を炎が掠ったのか、酷い火傷を負っていた 「…っ影守さん!影守さん、しっかりしてください!」 「おい!救急車を呼べ。早く!!」 広瀬が、気を失いかけている影守に必死に呼びかける その傍で、中年警官は若い警官に、救急車を呼ぶよう指示する 「…だ、大丈夫、ですから……これくらい、なら、「組織」で所持している、霊薬で…」 「しかし………!」 影守を、じっと見つめる広瀬 …その頬を、一瞬、光るものが伝ったように見えたのは、気のせいか? 「…私の、せいで………っ」 影守を見つめる、広瀬の体は 小さく、小さく、震え続けていたのだった to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「子供の頃傘持ってジャンプとかしたよね」 ざあざあ、ざあざあ。ざあざあ、ざあざあ。雨が降っている。学校の屋上に、傘をさした少女が一人。 屋上は弁当を食べたり、黄昏たりする場所であるというイメージがある。いくら傘をさしているとはいえ、本来雨の日に行く場所ではない。 しかしそこには確かに少女が居た。傘をさした少女が居た。ぴちぴち、ちゃぷちゃぷ、長靴で水たまりを踏みながら歩いていく。 そして。次の瞬間――― 「え~いっ!」 傘をさしたまま――――少女は飛び降りた。屋上から飛び降りた。 コンクリートから足を離した少女の身体は、そのまま地球の重力に従って、真っ逆さまに――― ―――落ちなかった。何ということだろう。その少女の身体は、ふわふわと。ふわふわと、宙を舞っているではないか! 背にパラシュートを背負っているわけではない。天使のような翼が生えているわけではない。 あるものと言えば、手に握った傘ひとつ。にもかかわらず、少女の身体はふわふわしていた。 「やっぱり気持ちいいなあ、雨の日の空の旅!」 少女の名は傘松 小雨(かさまつ こさめ)。小学生である。黄色い傘が可愛らしい。 「こんな~雨の日は~ヘリとか~鳥とかもいないし~。雨空は~私だけの~フリ~ワ~ルド!」 傘を差すだけで宙を舞っている。その異常性だけで気づく人は気づくだろうが、彼女は都市伝説契約者である。 彼女の契約都市伝説、それは『傘をパラシュート代わりにできる』。星のカービィなんかでイメージが付いたのだろう。 我々は子供のころ、傘を差して飛び降りるとパラシュートのようにふわふわ舞い降りることができると信じていた。 それが形になった、その『子供たちの夢』から生まれた都市伝説。それが『傘をパラシュート代わりにできる』である。 「地面ならともかく~、こ~んな雨の日に空飛んでる都市伝説なんていないだろうしね~」 言いながら、少女はふわふわ空を舞う。雨音をBGMに、空を舞う。 「あっ、そろそろ地上かぁ。しょうがない、また昇り直……」 その瞬間、びゅん、と何かが飛んでくる。器用に位置を変え、小雨はそれを間一髪躱した。 「なんなの~、も~……」 呟き、地上に足を付ける。何が飛んできたかは分からないけど、危ないじゃない。気を付けてよね―――と、思っていると。 「きゃっ!」 躱したはずの『それ』が戻ってきて。小雨の小さな体を突き飛ばした。 「ひっひっひっ」 飛んできた何かは不気味に笑う。動きを止めたことでその正体が露わになった。老婆だ。 「何~、何なの~?」 「こんな雨の日に出歩くなんて危ないじゃないかい」 「そんなこと~、聞いてないんだけど~?」 「暗くて誰もいない時に一人で出歩くだなんて……私達に襲われたいって言ってるようなもんだよぇ!」 言いながら、老婆は腰を曲げ、小雨めがけて飛びかかる。 「当たらないよ~? 何なのお婆さん?」 しかし、小さな体躯を生かしてすらりと躱す小雨。 「やっぱり子供は子供。甘いねぇ!」 二度も同じ手に引っ掛かるだなんて――――言いながら、老婆は戻ってきた 「んぐっ……!」 クリーンヒット。小さな体に老婆一人分の体重は大ダメージとなり得る。 「何で……羽根もないのに~……。いや~……そっかぁ~」 苦しそうにしながらも立ち上がり、小雨は言う。 「『ブーメラン婆』~! だから避けても避けられなかったんだぁ~~!」 「ひっひっひっ、ご名答。子どもにしちゃ賢いじゃないか」 「どうしてこんなことするのよ~。人が気持ちよ~く飛んでるときに~」 「ひっひっひ、都市伝説(わたしたち)が人を襲うのに……理由が必要かい?」 「あはは~、そりゃそうだ~!」 言いながら、小雨は飛び退き『ブーメラン婆』と距離を取る。 「逃げるつもりかい? 無駄だよ、遠距離(それ)は私の間合いだ!」 『ブーメラン婆』はその名の通り、ブーメランのように回転しながら、小雨めがけて飛んでくる。 「逃げる? ちがうよ~?」 その瞬間、強い風が吹いた。こんな天気だ、風くらい吹くだろう。しかし―――それが何だというのだ? 「戦うつもりかい? でも残念! 私はこの程度の風、物ともせず飛んで行ける!」 一方お前さんの得物は傘じゃないかい。突風の中じゃまともに傘なんか差せない。 どうやら天は私に味方したようだね!言いながら、『ターボ婆』は飛んでくる。 確かにそうだ。この状況、普通なら圧倒的に小雨の不利。 「違うよぉ~? 天運はどうかしらないけど~……天気はいつでも、私の味方なの~」 そう、あくまで普通なら。普通も常識もないのが都市伝説や契約者の戦いだ。 『ターボ婆』の身体は風にあおられ、地面にたたきつけられた。 「ぐえっ……! お前、何をしたんだい!?」 「『何をした』~? おかしなことを聞くんだね~? 貴女は風に吹き飛ばされ落っこちた。それだけでしょ~?」 「そんなわけあるかい! 私が吹き飛ばされるくらいの風なら、お前が吹き飛ばないわけがない! お前、契約者だね!?」 都市伝説の力で風を起こしたんだろう!? と、『ターボ婆』は吠える。 「さぁ~? ど~だろ~ね~?」 間延びした声で、小雨は答える。しかし、質問には答えない。 「なめんじゃあないよっ、ガキめ!」 『ターボ婆』は体勢を立て直し、再び飛びかかろうとする。しかし、それは叶わない。 「全く~、大きな声をあげるものじゃ~ないよ~? お婆さん。血管切れますよ~?」 頭では冷やしたらどうです~? と小雨が言うのと同時に、『ターボ婆』の頭上に滝のような鉄砲水が降り注いだからだ。 「ごぽごぽ! げほっ、げほっ! やっぱり……契約者!」 恐らくは水や風……つまり、嵐を操る能力! 『ターボ婆』は推理する。 「残念だけど~、お婆さんに勝ち目はないよ~?」 「言ってろ!」 と吠えてみるものの、しかしその通りだ。ターボ婆は本来雨の日の都市伝説ではない。 嵐という、最上級の悪天候を操る能力者への対抗法を持ち合わせていない。 しかし―――― 「あれ~~~?」 心なしか、雨足が弱まってきた? いや、気のせいではない。確かだ。なぜなら―――― 「ひっひっひっ、どうやらやっぱり、天は私に味方しているようだねぇ!」 突如雨が上がるばかりか、雨雲も晴れ上がったからだ! これ幸い、と『ターボ婆』は反撃の体勢に入る。 「だ~か~ら~、言ったでしょ~? 天運はともかく、天気はいつでも私の味方だって~」 言いながら少女は『ターボ婆』に傘を向ける。傘に付いた水滴が日光を反射し―――― 「うぎゃああああああああ!」 ビームのように、『ターボ婆』を焼いた。 「何……『嵐を操る能力』じゃあないのかい……?」 「嵐を操る~? そ~んな怖い能力、私が持ってるわけないじゃな~い」 私はただ、天気を味方に付けるだけだよ~? 言いながら、少女は指鳴らそうとする。 が、鳴らない。すっ、となるだけである。 「う~~~~……」 可愛い。 しかしその可愛さと裏腹に、能力はしっかりと働いていて。 天から降り注ぐ光が、『ターボ婆』を焼き尽くした。 「まさか~……私の持ってる傘がただの傘だとでも思ってたのかな~? 答え合わせしてあげるね~。『幽霊傘』。それが私の、もう一つの契約都市伝説だよ~」 その声に答えるように、傘は―――否、『幽霊傘』は目と口を開き、ぺろりと舌を出す。 『幽霊傘』。『唐傘お化け』の類話の妖怪であり、突風の日に人を空へ巻き上げてしまう。 契約によって得た能力は、『天気の影響の超強化』。 即ち風であらゆるものを吹き飛ばし、雨を鉄砲水に変え、日光を熱光線に変える。そんな能力。 「屋外で私に勝負を挑んだのが~、貴女の敗因だよ~? な~んて、聞こえてるわけないか~」 そう呟き、少女は踵を返す。 「あ~あ、晴れちゃった。スカイダイビングはおしまいだね~。しょうがない、帰ろ~」 空はすっかり晴れたけど、小雨は相変わらず傘を差し。長靴で水たまりを踏みながら、ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ、家に帰るのであった。 続く EXIT
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さぁ、復讐の刃を抜け あなたには復讐する権利があります あなたに、復讐のチャンスを与えましょう ???????? 空は、分厚い雲に覆われている 月も、星も、姿を隠している しとしと、しとしと 静かに、雨が降っていた しとしと、しとしと それは、まるで誰かの涙のように 静かに、静かに、振り続ける 「………」 その、雨の中 青年は、傘も差さずに歩いていた しとしと、しとしとと 静かに振り続ける雨を浴びながら、足音を忍ばせ、静かに歩く 「……鬱陶しいなぁ…」 ぐっしょりと濡れた髪をかきあげる しとしと、しとしとと 雨は、やむ事なく振り続ける --雨は、ね。お空が泣いている時に降って来るものなのよーー ふと、そんな母の言葉を思いだした …ズキリ、頭が痛む 余計な事まで思い出しそうになって 思い出すな、と思考にブレーキがかかった --見るな --思い出すんじゃない、思い出さなくていい そんな兄の言葉が、何度も響く 「…兄、さん」 ふらり 一瞬、体がよろけた 駄目だ、しっかりしろ 今は、昔の事なんて、思い出している場合ではない しとしと、しとしと、しとしと 雨の中、歩き続ける青年の携帯に…着信が 「……はい…………うん、わかった。すぐに行くね」 ぱたん、と携帯を閉じて 顔をあげた青年は、いつも通りの笑顔を浮かべていた いつも通り? 本当に、いつも通り? 「さて……手加減なしで行こうかな?」 くすり、青年は笑って 雨のふる夜道を、駆け出した ばしゃばしゃばしゃ 水溜りを踏み越える音が響く 夜道を、一人の逃亡者が走る、走る、走る、走る 「はぁ……っ、くそ……!」 何がいけなかったのか 何が、この不運の始まりだったのか それは、彼にはわからない いや 微かに、わかってはいる 理解しているはずなのだ しかし、わかろうとしない、理解しようとしない 眼を、耳を、心を塞ぎ 彼はその事実を受け入れない 「…畜生めが…!」 何がいけなかったのか? 自分は、正しい事をしてきたはずだろう? …都市伝説なんて、みんなみんな、悪党だろう? 「……どちらに行かれるおつもりで?」 「……!」 …ぱしゃり 道を塞ぐように現れたのは、黒服の男 雨の中、傘もささずにいたのだろう 全身ずぶ濡れで、いつもはオールバックにしている髪も濡れて、前髪が垂れている 「……組織か!」 「はい、ご察しの通り」 黒服は、感情の篭っていない声で銃を抜いた 静かに、男を真正面から見詰めてきている 「…あなたの信念は、変わりませんか?」 「………?」 「都市伝説は全て悪だと言う、あなたの考えは、変わらぬままですか?」 淡々と、黒服はそう、男に尋ねてきた 静かに、静かに まるで、教師が生徒に何か伝えようとしているような、そんな声で …ここで、ふと、男は気付く 自分は、何を怯えていたのだろうか? 相手は一人 しかも、戦闘力などないと言われる、黒服ではないか 相手は都市伝説だ、殺したって、何の問題もないだろう? そもそも、相手は銃を向けてきている 正当防衛が成立するはずだ (…正当、防衛?) 何故、そんな事を考えた? そんな事は関係ない 相手は都市伝説なのだ いつも通り、始末すればいいだけの事 …そう、相手は××××じゃないのだから 「-----っ」 やめろ 思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出させるな 考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えさせるな あれは、俺が悪いんじゃない! 俺のせいなんかじゃない!! あれは、事故だ! 自殺だ!! 俺が殺したんじゃない!! 「当たり前だ」 さぁ、この黒服も殺してやろう 黒服と言う都市伝説 悪の都市伝説のその一部 殺したって、なんら問題はないのだ 「……そう、ですか」 男の回答を聞いた、黒服の声は 落胆している訳でもなく 絶望した訳でもなく 軽蔑した訳でもなく むしろ、その声に含まれているのは 「……あなたは、わかっていないのですね」 …哀れみだった 「わかっていない、だと?」 「…そうです。あなたは、都市伝説は全て悪である、と断言します……知っているでしょう?都市伝説は、全てが意思持つ存在ではない。中には、意思を持たない都市伝説も存在します………あなたが契約している都市伝説のように」 …この黒服は、馬鹿にしているのか? そんな事、知っている わかりきっている 自分が契約している都市伝説の力もわからない、なんて事は… 「まだ、お気づきになりませんか?」 銃を向けられたまま しかし、同時に哀れみを向けられる 「あなたが契約している力も、都市伝説に変わりはないのですよ?」 …黒服の、その言葉に 男は、ようやく、黒服が言わんとしている事に、気付いた 「すなわち、あなたのその考えに基づくならば……あなたは、悪の力を持ってして、悪を倒している事になりますね」 「っそ、それがどうした!」 そうだ! それが、どうしたと言うのだ! 俺は、選ばれた存在なのだ! 許された存在なのだ!! だから、この力を使うことは、真っ当な、正しい事なのだ!!! 「……そして、あなたの考えが、もし、正しいのであれば」 銃は、向けられたまま そして、向けられる哀れみが強くなる やめろ やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ 俺を憐れむな!!! 「大気に宿る…猛き風の精霊よ…眼前の敵を切り裂け!」 黒服の言葉が終わるよりも先に、男は攻撃を繰り出した 話を聞く必要など、最初からなかった さっさと殺してしまうべきなのだ! 風の刃が、黒服に襲い掛かる 次の瞬間には、黒服はその刃によって、ズタズタに切り裂かれる …はず、だった ぱりんっ、と 何かが砕けた小さな音がした キラキラと、粉末のような物が宙を舞い…攻撃は、黒服に届かない 「な……!?」 「…ターコイズ一個で、何とか防げましたか」 ぼそり、黒服が呟く 何をしたのか、わからないが…こちらの攻撃を防いだだと!? 男は、焦りながらも次の攻撃に移る そう、何度も奇跡が続くものか 今度こそ……! だが、しかし 男が、次の攻撃の呪文を唱えるよりも、先に 「み~つけた」 聞こえてきたのは、この場にそぐわぬ。場違いな声 どこか無邪気な、しかし、同時に狂気を含んだ声 ぞくり 全身を、悪寒が走りぬけた それは、剥き出しの刃を首筋に当てられたような、殺意 男は、慌てて横に飛ぶ ばしゃり!! 直後、男がいた場所に、茶色い液体がぶちまけられて じゅうじゅうと音をたて、アスファルトの道路が溶けていく 「…もう少し、早く来ていただけるとありがたかったのですが」 「うん、御免ね?」 ニコニコと、黒服の言葉に答える…青年 コーラのペットボトルを手に、何か楽しいのか、微笑んでいる 何者だ? 「知識の泉…その英知を…我に分けたまえ」 ぼそり、呟き、青年を見る …人間だ しかし、都市伝説の契約者 契約しているのは… 「…骨を溶かすコーラか」 「あ、わかっちゃうんだ?」 くすくすくすくすくすくすくす 青年は、笑ってくる 「…あなたと同じ、意思を持たない都市伝説との契約者ですよ」 「え~、僕、こんなのと一緒にされたくないな」 歳相応、とは言えない、少々子供っぽい口調で、青年は不満そうな声をだした …しかし、すぐに笑顔を浮かべ、男を見つめてくる 笑顔 そう、笑顔なのだ しかし、その笑顔には、どこか狂気が混じって 向けられるのは、剥き出しの殺意 「あのね、そう言う事だから…君が、この『骨を溶かすコーラ』って都市伝説を倒したいんなら、僕を殺さなくちゃね?」 「……っ!?」 何を こいつは、何を言って… 「あ、そうそう。君は、人殺しを躊躇するかもしれないけど。僕、遠慮しないから」 にっこり、笑顔で言われた言葉は、死刑宣告に近かった ごぽりっ 青年が手に持つコーラのペットボトルから…コーラが溢れ出し、男に襲い掛かる! 「凍てつく風よ…北より来りて…束縛せよ!」 ぴしりっ 男の言葉が終わると同時に、コーラが凍り付いていく 「ふぅん?」 ぱきんっ、と 近づいてきていた氷の束縛を、青年はまだ凍っていない部位のコーラを操る事によって回避した じゅうじゅうと、凍ったコーラが溶けていく 「本当に、魔法使いなんだ」 にっこり、と どこか面白そうに、青年は笑う きゅう、と その口の端が、残酷に釣り上げれた 「それじゃあ、足や腕の一本くらい無くしても、平気だよねっ!?」 ごぽぽぽぽぽぽぽぽ コーラは、留まる事なく溢れ続ける そして、その全てが青年の意思に従うように、男に襲い掛かってくる! 「く…!」 じ、冗談じゃない! 相手は人間だ 『都市伝説と契約している人間』だ 都市伝説じゃない それを、殺してしまったら…自分は人殺しだ いや 自分はとっくに………人殺しだ 「………っ」 人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し その単語が、何度も何度も脳内でリフレインする 煩い、煩い、煩い、煩い、煩いっ! あれは俺が悪いんじゃない! あれは事故で自殺なのだ!! 俺が悪いんじゃない 全て、都市伝説が悪いのだ! じろり 男は、黒服に視線を向けた 銃を向けたまま、黒服は撃ってはこずに、こちらの様子を窺っているようだ …そうだ、こいつは都市伝説だ こいつだけ、さっさと始末してしまえばいい…! 「凍てつく風よ……北より来りて……」 「!」 黒服が、スーツの内ポケットから何かを取り出す 先ほどの、こちらの攻撃を防いだ手段か? …そう、なんども防げるものか! 「眼前の敵の命を……うば………っ!?」 じゅう、と 何かが、焼ける匂いがした じゅうじゅう じゅうじゅうじゅう それは、肉が焼ける匂い 「-----ぎ」 それは 男の体が、焼ける匂い 「ぎゃあああああああああああああああああ!!??」 じゅううううううううううううう 体が、焼かれていっている それも、一気に焼かれていっているのではない じわじわ、じわじわと じょじょに、じょじょに、焼かれていっている いつから? いつから、この攻撃は始まっていた? 日焼けしたように、茶色くなっていた肌 それが、茶色を通り越して、黒くなっていっている…! 「煩いなぁ」 「ぎーーーーっ!?」 ばしゃりっ! 痛みに、足が鈍った男の腕に…コーラが、かかった じゅううううううううううう 腕が…溶けていく! 「ぐ……癒しの炎よ…我が傷に…命の火を灯したまえ!」 男の言葉が終わると同時に、溶かされた腕が 焼かれた体が再生していく 痛みが、じょじょに消えていく 「っち、うぜぇな……魔法使い様はばんのー、ってかぁ?」 じゃらり 金属がじゃらじゃらと鳴っている音がする 黒服の、その背後から 金髪に、チャラチャラとした服装をした青年が、姿を現した …何だ!? 今夜は、一体何だと言うのだ!? 何故、自分はこんなにも敵に囲まれている!? 「…あなたも、来ましたか」 「あぁ、あんたが呼んでくれたからなぁ」 すたすたと チャラけた格好の青年は、黒服を庇うように、彼の前に立つ そして、じろりと男を睨みつけてきた 「…俺の大事なもんに、何しようとしがってんだ、おっさん」 …この状況を、一言で言い表すならば…私刑会場、とでも言うべきか 一本道で、挟み撃ちにした体勢 そう簡単には、逃げられまい 「あれ~?いいの?君、首塚のメンバーでしょ?」 コーラの契約者が、日焼けマシンの契約者にそう声をかける それに、30過ぎの魔法使いは、ハっとした声をあげた 「っく、首塚だと!?仲間じゃなかったのかよ!?」 「っは!!誰がてめぇみてぇな腐れ外道、仲間だなんて思うかよ!」 吐き捨てるように、日焼けマシンの契約者は魔法使いを睨みつける 嫌悪と、軽蔑の篭った眼差しで 「女子供をいたぶるような野郎、将門様の配下に相応しくねぇんだよ」 「わぁ、見捨てられたみたいだね」 にこにこと、コーラの契約者が楽しそうに笑う どこか無邪気で、しかし残酷な、狂気の笑みを魔法使いに向けている 「安心してね、あっさりは殺さないから」 「っは!俺も同意見だ、あっさりとは死なせねぇ」 青年二人 なにやら、今だけは、意見があっているようだ 「「じわじわと、苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんでから、死なせて」やるよ」あげるよ」 ごぽっ! コーラが生き物のように地面を這い、魔法使いの足に襲い掛かった じゅううううう! まずは、右足が溶かされる 「ぎ……っ」 そして 日焼けマシンの契約者の攻撃も、既に始まっている 一度は元の色に戻った魔法使いの肌の色が…再び、茶色く染まり始めている 日焼けが始まっているのだ 日焼けマシンで人間ステーキ 途中までは、ただの日焼けですむ しかし、ある線を越えた瞬間から、それは残虐な攻撃へと変わるのだ 「先に足を潰しちゃえば、逃げられないよね?」 「…すっげぇ、鬼畜。なぁ、あんた。あんなの見捨ててやっぱ俺のところこねぇ?」 「今は、そんな事を言っている状況ではないでしょう?」 場をわきまえぬ日焼けマシンの契約者に、小さくため息をつく …まぁ、口ではそう言いながらも この日焼けマシンの契約者は、魔法使いへの殺意に支配されている状態だ じゅうううううう 今度は、左足を溶かされた魔法使い 最早立つこともできずに、倒れこむ くすくすくすくすくすくすくす 闇夜に、笑い声と、悲鳴と、何かが溶けて、焼ける音だけが響き渡る…… 次は右手 手の辺りからじわじわと、肩の付け根まで溶かしてあげよう その次は左手 こっちも、手からじわじわと肩の付け根まで溶かしてあげよう ほうら、これでダルマの出来上がり ダルマ男の完成だ 「ぎ……ぐ、癒しの炎よ…我が傷に……っが!?」 「治しちゃだぁめ」 ぐり、と 倒れこんでいる男の胸元を、踏みにじる …こいつが こいつが、ルーモアのマスターを殺したのだ どこか、不器用ながらも幸せそうだったあの空間を…壊したのだ 「…………」 そう 幸せを、壊した あんなにも、幸せそうだった あの店には、そうしょっちゅう行っていた訳ではない でも、行くたびに、暖かかくて 幸せそうで …羨ましかった 自分がなくしてしまったものを、彼らはちょうど持っていて とても、とても、幸せそうだった それを こいつが壊した こんな奴が! 身勝手な考えで!! 壊したのだ!!! 「がぱっ……!?」 ごぽり 口にコーラを注いでやる まだ、舌と喉は溶かしてやらない 溶かすのは 「--------っ!?」 「痛い?痛いよね?だって、内臓を溶かされてるんだもん」 くすくすくすくすくす 自然と、笑みがこぼれてくる 体中を焼かれ、ダルマになって あぁ、なんて無様な事だろう 「苦しい?辛い?死にたい?」 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす 笑いが、止まらない 「でも、駄目だよ。まだ死なせない。まだ足りない、全然足りないよ。まだまだ、全然駄目」 そうだ、まだ、足りない …不意に 笑い声が、止まった 「…この程度で、楽に死ねると思うんじゃねぇえよ!!このっ、腐れ外道がっ!!」 「ぐがっ!?」 だんっ!!と 力強く、男の胸元を踏みにじる 痛みに悲鳴をあげてくる男を、さらに、さらに踏みにじる 「てめぇが殺した人が!どう言う人だったか、てめぇにわかるか!?」 ごぽり コーラを、男の右目に垂らす 悲鳴が上がる じゅう、と右目が溶けていく 「あの人が……あの子と、どんな約束をしていたのか!てめぇにわかるのか!?」 ごぽり コーラを左目に垂らす じゅう、と音たて、左目が溶ける 「てめぇが……てめぇなんぞに!!幸せな家庭をぶち壊す権利なんざ、ありゃしねぇんだよっ!!」 ごぽり コーラを鼻に垂らす じゅうと音たて、鼻が溶ける 男の絶叫が、暗い道に響き渡る 「てめぇなんざ死ねっ!死にやがれっ!!てめぇみてぇな野郎、生きていてもなんの価値もある訳がない!!あいつらの幸せを壊しやがったてめぇが、許されるはずがない!そんな権利なんざ存在しねぇ!!!てめぇは有罪だっ!!有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪!!!」 …脳裏に、過去の記憶がフラッシュバックする まだ、家族全員が揃っていた頃の記憶 父も母も、生きていた頃の記憶 とても とても、幸せだった頃の記憶 兄と一緒に、大学に合格できて 自分たちは、両親にそれを報告するはずだった よくやったね、と、褒めてもらうはずだった それなのに 『----っ見るな!!』 兄は、それを自分に見せようとしなかった 優しい兄は、それを自分に見せようとしなかった しかし、自分は見てしまった いや、見てしまわなくても、きっと、あの濃い血の匂いで気付いてしまっていただろう 部屋のリビングで、両親は死んでいた 一目ではっきりと、死んでいるのがわかった 両親には、首がなかった 首が、切り落とされていた そして、切り離された、首は テーブルの上に二つ並べられて……… 痛い 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い 頭が、痛い 普段、思い出さないようセーブしていた記憶が蘇る 幸せを壊された記憶 家族を殺された記憶 それが、はっきりと蘇る 輪が感じる悲しみ それを真に理解するには、家族を失っている必要がある 家族を殺されている必要がある どんなに理解しようとしても、本当に全てを理解できるのは、同じ境遇に立った者だけだ 自分は、輪の悲しみを理解できる しかし、完全ではない 家族を失ったのは同じ 家族を殺されたのは同じ しかし、決定的に、違うのは 自分は、両親が死んだ瞬間を見ていない 両親が殺された瞬間を見ていない 輪は、見てしまっている マスターが死んだ瞬間を、殺された瞬間を あの少年の悲しみと怒りと嘆きと絶望を、自分は完全には理解しきれていない …だが ここまで理解できていれば、充分だ これ以上理解しようとしたら……きっと、自分の心は、今度こそ壊れる まるで、おのれの過去の境遇を重ね合わせるかのように 彼は、男に怒りと憎悪をぶつける いまだ見付からぬ、己の両親を殺した誰か それを見つけられぬ恨みも、一緒にぶつけるように 「有罪、有罪有罪っ!有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪!!!」 「お、おいっ!?」 何だ? どうしたんだ、こいつは? ただの、ちょっと鬼畜どSな優男 以前会った時のこいつの印象は、そんな奴だった だが、しかし 今、目の前にいるこいつは 自分の能力で全身焼けただれた男に追撃するように踏みにじり、拷問するように溶かしていっているこいつは 復讐心に囚われた、化け物のようだった 「…っこれは、いけませんね」 「お、おい」 足早に、黒服がコーラを持った青年に近づく じろり 狂気に、復讐に囚われた眼差しが、黒服に突き刺さっている 「邪魔を……」 「正気に、戻りなさい」 黒服は、懐から何か、小さな小石を取り出して そっと、コーラを持った青年に押し付けた っぱん、と 小石は、音をたてて砕けて 「-------ぁ」 すぅ、と 青年の目に、光が戻る 意思が、戻ってきた 「あ…僕、は…」 よろり 青年は、男から足をどけた ぶすぶすと、体中から煙を出している男 全身黒くこげ、体中溶かされ…それでも、まだ、生きている いっそ、死んだ方がマシなのではないかというそんな状態で、しかし、まだ生きていた 「…楽に、させるべきですね」 正気に戻りながらも、若干ふらついている青年を庇うようにたちながら 黒服は、男に銃を向けた もう助からないだろう、この苦しみから、解放させてやるための せめてもの、慈悲の一撃を、放とうとする …それよりも 「……癒し…の炎よ…我が…傷に…命の火を………灯したまえ……!」 「----!?」 「んなっ!?まだ、喋れたのか!?」 男が、呪文を唱える方が、早かった どう見ても、死体一歩手前だったその体が…再生していっている!? 「ッ野郎!!!」 再生したならば、また攻撃するまでだ!! 再び、相手を焼いてやろうと攻撃を向けようとするが 「…………………………」 男が、何か呟いた 直後…男の姿が、消えた 「っ!?」 「…転移ですか。もしかしたら、決めていた場所へと帰っただけかもしれませんが…厄介、ですね」 銃を下ろす黒服 …逃げられた 逃がしてしまった 「ちっくしょう!!」 畜生! あの外道野郎を、逃がしてしまうだなんて! うかつだった あんな腐れ外道、すぐに殺すなんて生ぬるいと思って、加減したのが悪かった ……さっさと、殺すべきだった!! とさりっ コーラを持つ青年が、座り込む 一度は光が戻った目 しかし、何かの記憶に締め付けられているかのように、その視線は定まらない 「……逃がし、ちゃった?」 「そのようですね」 「……そう」 沈む、声 俯いていて、表情は見えない しかし、その声は、地の底から響くかのように、暗かった 「…立てますか?」 「…………平気だよ」 にこり 顔を、あげた時 青年は、また、笑っていた 「逃がしちゃったなら…帰らなきゃ。兄さんが心配する。兄さんを、心配させちゃ駄目だ」 それは、誰に言うでもなく まるで、自分に言い聞かせるかのような、言葉 「また、あいつが見付かったら教えてね。今度こそ、殺してやるから」 にっこり、と笑みを浮かべて 青年は、ふらふらと立ち去っていく …その、後ろ姿は まるで、迷子になって泣いている、子供のようだった 「…ご協力、感謝します」 「感謝なんて、される資格は俺にはねぇよ…逃がしちまったんだ」 小さく、舌打ちする あぁ、畜生 今度見つけた時こそ…焼きつくしてやる! 「私は、これで。あの状態の彼を、放っておく訳にはいきませんから」 「……おぅ」 ふらふらしている青年に、黒服は駆け寄っていく …悔しいが、自分でもよくわかる あの状態は、放っておくのは不味い ふっ、と目を放した隙に、消えてしまいそうな、死んでしまいそうな そんな危うさを、感じたから …しとしとと、雨は降り続けている 戦っている間は気にならなかったが、気がつけばずぶ濡れだ ぐしゃり、髪をかきあげる 「----っちくしょう!!」 ばしゃり 苛立ち混じりに、水溜りを踏みしめる あんな奴を逃がしてしまった自分が許せない 黒服に、気をかけられるあの青年が、羨ましい いくつもの苛立ちが混ざり合い、思考を掻き乱す 「畜生、畜生、畜生……っ!!」 叫ぶ 叫んだどころで、どうにかなる訳ではない ただ、空しいだけだ わかっている わかっては、いるが それでも、彼は叫ばずにはいられなかった しとしと、しとしと ……ざあああああああああああああああああああああ 振り続けていた雨は、何時の間にか、強さを増して 耳障りなノイズとして、夜道に響き渡ったのだった 泣くな 悲しむな 立ち止まっている暇など存在しない 復讐せよ 復讐は汝らにあり 復讐の刃を折るなかれ ???????? 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漫画やゲームで、幼なじみの可愛い女の子に起こされるという展開がある。 あれは、どんな気分なんだろう。少なくとも、俺よりはさぞや清々しい目覚めなのだろう。 「起っきろー!!」 壊れんばかりの勢いで扉を開き、鈴ちゃんが部屋にやってきた。 「鈴ちゃん、人の家に勝手に入ってこないで」 「やだなぁケンちゃん。将来を約束した仲なんだから、私の家も同然じゃーん」 将来を約束て……それ幼稚園の頃の、しかもおままごとしてた時の話だし。 「そんな事よりケンちゃん、今日は公園をパトロールだよ!」 「公園?」 「そ、なんかあの辺りで女の人や小さい子が倒れる事件が頻繁してるの。これは都市伝説の臭いがするよ! そういう訳で!私達契約者としては、ほうってはおけないのです!!」 そう、俺と鈴ちゃんは契約者だ。都市伝説と契約し、都市伝説と戦う。それが俺達の仕事だ。 まだ高校生なんだけどねえ。 「そういえば、ケンちゃんと二人だけで、公園に……これはデートだね!」 「違うから」 夜、鈴ちゃんの案内で着いた公園は、ちょっとした散歩ができる広さがあった。 もっとこじんまりした公園を想像してたんだが。これは都市伝説を捜すところからやらないと駄目か。 戦うだけだと思ってたから、普段着で来ちゃったよ。茂みとか捜しやすいジャージにすればよかった。 ちなみに鈴ちゃんはいつも、動きやすいという理由で短いスカートだ。戦闘の時に動き回るとたまに、下着が見えたりする。 気持ち悪いので止めてほしい。 「しかし、暗いなぁ」 「そうだねえ。お化けとか出たら抱き着いても良い?」 「戦ってよ……」 攻撃能力あるの鈴ちゃんなんだから。 「もう、連れないなあ。……抱き着いてやる!」 重い。あと胸が当たって痛い。 「ふふふ、当ててんのよ」 「嬉しくないから」 無いんだから無茶だよ。 「イチャイチャしてんじゃねええぇぇぇぇぇ!!」 「うわ!?」「きゃっ!?」 へんな おっさんが あらわれた! 「夜の公園で何するつもりだ!ナニするつもりだったんだな!」 変な箱を持ったおっさんは、唾を飛ばしながら喚く。 正直、都市伝説とか関係なく、別の意味で怖い。春か?春だからか? 「あれ?おじさんも契約者?」 鈴ちゃんがおっさんを見ながら口を開く。 「あん?そうだが、も?も、って事は……」 「うん!私達も契約者だよ!最近、この辺りで倒れる人が多いらしいから調べに来たの。 おじさんは?」 「おじさんかぁ?おじさんはなぁ……」 このおっさんニヤニヤ笑ってキモいな。 「最近、この辺りに来る人間を襲ってるのさ!!」 あ、やっぱり犯人だった。 たまにいるんだよな。契約者なのに、都市伝説と戦わずに自分の為だけに使う人。 とりあえず…… 「どいつもこいつも、欝陶しいんだよ!いちゃつきやがっ、て……ぁ、んだ……?体が……動か……な」 「俺の都市伝説、『金縛り』です。しばらく動けませんよ」 都市伝説だろうと契約者だろうと人を襲うならどっちでも良いや。テキトーに懲らしめよう。 「鈴ちゃん、パス」 「はいは~い」 まあ、懲らしめるのは俺の役目じゃないけど。 「く、来る……な。俺の、都市伝説は『コトリバコ』……だぞ!お前みたいな、女、近寄っただけで……」 おっさんの言葉を無視して、鈴ちゃんはおっさんに近づく。 「……お、おい。なんで平気なんだ……。おい、待て……止まれって、おい。来るな……!」 鈴ちゃんはおっさんの前に立ち、肩に手を置く。それだけで、 「いっ…………!!?」 おっさんの骨が折れた。 「おじさん。おじさんが襲った人の数覚えてる?」 「ぉぼっ、……お、覚えてない……っ」 「そっかぁ。じゃ、私が調べた人数分だけ、おじさんの骨を折るね」 「ひっ…………!」 鈴ちゃん笑ってるけど、怒ってるなあ。おっさんはご愁傷様。 鈴ちゃんは『骨折アルバイト』の契約者だ。触れただけで相手の骨を折る能力を持つ。 俺が動きを止めて、鈴ちゃんが攻撃する。いつもの戦法。 しかし、『コトリバコ』かぁ。たしかに子供や女性には危ないね。鈴ちゃんには関係ないけど。 本名、「七五三木 鈴太郎」だし。 あーあ、可愛い女の子の幼なじみが欲しい。 終
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南区のその一角で、銃声が鳴り響く 三人の警察官が、襲い掛かってくるコーク・ロアに支配された被害者達に、その影響を取り除く特殊な薬品を内臓する特殊弾を放っていく …何らかの都市伝説の影響が働いているのだろう 一般人の姿がない為、わりと遠慮なく発砲し続けている 「あぁ、くそ、弾切れか!?……ッ広瀬警部補!」 「今、そちらに装填済みの銃を………っ!?」 中年の警察官に、特殊弾を装填済の銃を投げ渡そうとした広瀬 美緒 しかし…その彼女の体を、背後から現れた何者かが、押さえ込んだ 振り返れば、包帯塗れの顔の何者かがいて……その、ぽっかりと空洞になったような目の位置に、狂気がにじみ出ていて その体に、漆黒の蛇が巻きつき、ゲラゲラと笑っていた 「注射ぁ……して、あげようかぁあ……?」 『ヒャッハハハハハハハハ!!やッチマエ!!タップリト注射シテヤレヨォオオ!!』 「--ッ注射男……!」 その腕から逃れようとするが、都市伝説の強い腕力で押さえ込まれ、身動きできない 注射男の片腕に…どす紫色の液体の入った注射器が、現れて 中年警官が、急いで駆け寄ろうとしてくるが……距離がありすぎる 間に合わない 注射器は、そのまま、美緒の腕に、注射を打とうとして 「----っぎ!?」 『グァ!?』 すぱぁんっ、と その腕が……あっけなく、切り飛ばされた 鮮血を撒き散らし、注射男は痛みに悶え、美緒から手を離す 「無事ですか!?」 「…影守、さん…………はい、問題、ありません」 刀を手にし、鎧を纏った影守が美緒を背後に庇うように、注射男の前に立った 刀の切っ先は、痛みに悶える注射男に向けられている 「都市伝説や、悪魔の囁き憑きの相手は、俺達が引き受けます。あなた達は、コーク・ロア被害者の対処を!」 「……わかりました」 影守がきたことで………少し ほんの、少しだけ 美緒は、ほっとしたような表情を、浮かべたのだが その表情は、すぐにいつもの、どこか冷たい表情へと、戻った 「無事か?警部補殿」 「…問題ありません。都市伝説の相手は「組織」の方にお任せしましょう」 駆け寄ってきた中年警官に、弾を装填済の銃を手渡す美緒 あぁ、と中年警官は、頷いて 「……よかったな?ここに駆けつけたのが、あの兄ちゃんで」 「……………どう言う意味ですか?」 「いや、警部補殿としては、嬉しいんじゃないかと思ってな」 「この状況で、馬鹿な事を仰らないでください。訴えますよ?そして勝ちますよ?」 わかったわかった、と苦笑して、中年警官は再び、コーク・ロア被害者達に向かっていく 美緒も、そちらに応戦したいが……自分は三人のサポートで精一杯だ 駆けつけた影守のサポートも…彼女には、無理だから 「………どうか………………誰も、死なないでくださいよ……」 ぽつり、と 小さく呟かれた、美緒の言葉は 誰の耳にも届く事なく、喧騒の中吸い込まれて、消えた to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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今回の討伐対象は葵井宇宙という男。宇宙と書いてソラと読むらしい。 変な名前だと思ったが、討伐対象の中には天使と書いてエンジェルと読む人もいたし、案外普通なのかもしれない。 僕には名前が無いので、そのあたりの事はよく分からないのだ。 「言い訳とか聴いてくれないかねぇ」 「無理です」 この男は突然組織の黒服に対して攻撃をしたらしいが、いちいち討伐対象の事情など聞いている暇は無い。 組織には過労死しそうな黒服だっているのだ。 「お前、俺の都市伝説が何か知ってるのか?」 討伐対象の問いに黙って首をふる。渡された資料に書いてあったのかもしれないが、読むのを忘れていた。 「そうか。それなら、教えてやろう。俺の都市伝説は四次元ババアだ。 問答無用で敵を異空間に閉じ込める能力だ。4時44分にしか使えないがな!!」 わざわざ能力を教えてくれたのは親切ではないだろう。今は5時半。自棄になっているだけだ。 「殺すなら殺せよこの野郎!!」 半泣きになっている。そんなに死にたくないのだろうか。 殺せと言われても僕の能力はしばらく僕を見てくれないと発動できないのだから仕様が無い。 と思っていたら、どうやら条件が満たされたようだ。 僕の、いや、僕達の都市伝説、「クリネックスティシューのCM」は自分を一定時間見た相手を殺す事が可能になる能力を持つ。 強力な都市伝説である。ただ、この都市伝説の契約者も一月もせずに死ぬが。 あ、討伐対象が倒れた。心筋梗塞か脳梗塞か原因不明の病か、とにかく死んだようだ。 あんな風にいつか僕も死ぬ。怖くは無い。 この都市伝説と契約する為だけに育てられた子供達。この都市伝説で組織の為に戦い、組織の為に死ぬ、それが唯一の幸せだと信じて。 さて、そろそろ帰るとしよう。僕が後何日で死ぬかは分からないが、それまでにたくさん組織の為に働かなくては。それ以外に僕が生きる意味など無いのだし。 終 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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ファンキーな口裂けさん 09 ヤンデレ「いいの?あの人、随分色んな都市伝説に護られているみたいだけど。 君たち組織にとって、不都合なんじゃないの?」 黒服D「手を出さない限り、害はなさそうですし。 それに、幸せそうな仲良さそうな状況を引き裂くのは個人的に嫌ですから」 ヤンデレ「…君、目、悪いでしょ」 男「何か、すげぇチャンスを逃したような気がするorz」 前ページ次ページ連載 - ファンキーな口裂けさん