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【平唯の人間観察 第四話「呼」】 ――――――――――ねぇ 子供の頃、要らなくなった人形とか捨てたこと無いかな? 捨てていなくても良いんだ。 子供の頃は一緒に眠って、一緒に笑って、一緒に遊んでいた人形。 いつの間にか忘れちゃって何処に行ったかも解らなくなっていないかな? 私はある。 金色の髪に青い瞳。 メリーさんって名前を付けて可愛がっていた。 携帯電話は鳴り止まない。 何処に行っていても私を追いかける。 私を愛しているからどこまでも彼女は付いてきてくれる。 「――――――私、メリーさん――――」 ほら、電話ごしに声が聞こえる。 「今、貴方の家の前に居るの。」 「冗談みたいでしょう?」 「ええ。」 こんにちわ、皆様。 私の名前は平唯。 ※ただしイケメンに(ryと呼ばれる都市伝説と契約した人間だ。 今は友人とお茶していた。 「それは怪談なの?」 「いいえ、実話よ。家の中に入れないの、って言って最後に帰るのがいつものパターンなのよ。」 私にこんな信じられない話をしている目の前の女性は久瀬由美。 至ってまともな電波系一般人。 家は大変なお嬢様な為か無意識に上品な気配を漂わせている。 気品って言うのかしらね、こういうの。 「本当なの?」 「本当よぉ。なんだったら今日、家に確かめに来る?毎晩電話は来るから。」 「別にお泊まりなら良いけど……。」 実はあまり良くない。 彼女こそ私を男装に目覚めさせた張本人なのだ。 中学生の時に学園祭で私を女装させて、 その年の学園祭の出し物のランキングで一位を取った彼女は今でも隙あらば私を男装させようとする。 「あら、嬉しい。じゃあ家の皆様に用意させるわね。」 そう言うとそそくさと携帯電話を出して電話しようとする オーモーイーガーシュンヲーカケーヌーケテー 「あらあら、着信。」 丁度良く電話がかかってきたらしい。 なんだろうと思っていると彼女の顔がどんどん青くなっていく。 真っ青な顔のままこちらをみつめて携帯電話を私に渡す。 「私、メリーさん。今、貴方のお茶している喫茶店の前に居るの。」 コトン 足下で何かが転がる音がする。 「私、メリーさん。今、貴方のお茶している席の真下にいるの。」 「私、メ…………。」 プツッ 素早く電話を切った。 新手の都市伝説か……? 由美の手を引くと振り返らずにすぐに店を出る。 彼女の家までは人気のないトンネルを通ると近いのでその方向へ真っ直ぐ向かう。 「その電話ね、電話からかけられていないのよ。 何度電話を変えても携帯電話を持っていなくても どこからともなく私に告げてくるの。 嘘だと……思う?」 「何時からなの?」 「私のこの前の誕生日からだけど……。」 「解った、ちょっと待ってて。」 歩きながら電話をかける。 勿論、黒服Fの所にだ。 プルルルルルルル プルルルルルルルルルルル 「はい、こちらFだよ、どうしたの平さん。」 プツッ 「私、メリーさん。いま、久瀬さんはどこなの? 貴方が私の大事な久瀬さんを隠したの? 返してよ、返し………」 プツッ 唯一の専門家と連絡がつかない。 不味い。 そうしている間にも私達はトンネルに辿り着いていた。 一旦、由美の家に帰ればメリーさんは入れない。 『コマッテルミタイジャネーカ、契約者。多分そいつはメリーサンダゼェ?』 急に頭の中に声が響いてきた。 ケメの声だ。 『当たり前じゃない!どうにかしてよ!』 『おやすいご用ダ!※ただしイケメンに(ryのノウリョクの正しい使い方をオシエテヤルヨー』 『どうすれば良いの?』 『マズハ………。』 『うっそ……、それはずるくない?』 『イケメンだからユルサレルンだよぉ!!』 私はケメから聞いた嘘みたいな能力の使い方を試してみることにした。 「ねぇ、由美。男装セット持っている?」 「え?貴方に使う為に持っているけど……。」 すばやくそれを奪い取るとトンネルの中で男装を始める。 ぴしっ!バシッ!ピキーン! 「ちゃんとできてるかい?」 「完璧…………///」 鏡がないので由美に尋ねると何故か顔を赤くしている。 「ねぇ唯ちゃん、押し倒して良い?」 「え、ちょ、ちょっと待って?俺、女だから?ね?」 この娘は友人に向けて何を言い出しているのだろうか? そうだ、中学生の時もこうやって暴走していて……。 彼女は男装した女性と百合百合するのが好きな方なのだ。 「ああ、もう駄目!貴方の子供ならァ!!!愛の力でえええええええええ!!」 「いいいやあぁあぁぁああああああ!!」 やばい、奪われる。 そう思った瞬間だった。 プルルルルルルルルル 二人の動きが止まる。 また電話だ。 「ねぇ、由美。これから見ることは秘密だよ?」 「え……?」 電話を取る。 「私メリーさん。今、トンネルの前に居るの。」 「へぇ……。」 「私、メリーさん。今、貴方のずっと後ろにいるの。」 「早く来なよ。」 相手を誘う。 「私、メリーさん。今、貴方の後ろに居るの。久瀬さんを返して頂戴?」 背中を氷が這うような感触。 来た。 「※ただしイケメンに限る!」 都市伝説発動、イケメンならば何でも許される! 私の“目の前”に現れたのは人形ではなく、沢山の人間の顔を一つに合わせたような化け物だった。 ガシッ! そうだ、イケメンならば…… 「その恨みも、そして貴方の能力を無視することも許せ!」 ガッシリとつかみ取る。 ※ただしイケメンに限るのもう一つの能力。 それが都市伝説の能力に対する無効化能力。 発動すれば私の半径2mでは都市伝説の能力を無視しても許される。 手に残るのは柔らかい感触。 フワフワとした物が手の中にある。 綿の入った……、ぬいぐるみ? 「「え?」」 メリーさんと私はほぼ同時に素っ頓狂な声をあげた。 「なんで私をつかまえられるの?」 「もしかして只のぬいぐるみ?」 「あ、メリー!!!」 由美の声がトンネルに響く。 私が掴んでいるのは只のぬいぐるみだ。 「くーちゃん……。」 うわっ、喋った。 只のぬいぐるみじゃない。 「えっとね、唯ちゃん。そのぬいぐるみは私の小さい頃に持っていたぬいぐるみで……。 名前はメリー。 本当はもう捨てた筈だったの。」 目の前で起きている妙な状況に怖じ気づくこともなく彼女は私に説明をする。 メリーさんの方向に向き直ると彼女は問いかけた。 「ねぇ、貴方は本当にメリーなの?」 「そうよ、私はメリー。 くーちゃんにまた会いたくって……。」 「でも、それなら何でまたわざわざこんな由美が怖がる方法で現れたの? 嫌われちゃうじゃない。」 「う………。」 「それしかなかったんだよ。」 急に背後から声が響いた。 「その人形だって元を正せば只の人形だ。 自分を捨てた主の所まで戻る力なんて有るわけがない。 だから『なった』。そういうものに。 解るかな、二年生の……平さんと久瀬さん。」 後ろを振り返ると見上げるような長身の男性が経っていた。 整った顔立ち、私達と同じ学校の制服、胸に輝くバッジに書かれているのは……。 “生徒会会計”の文字。 「こんにちわ、二人とも。 俺は生徒会会計の田居中光だ。 ちょっとした都市伝説マニア。」 謎の闖入者に私はメリーさんを持ったまま身構える。 「……俺は敵じゃないぜ?あとそのメリーさん、離してやれよ。 そいつの目的はもう達成されている。 そいつはそこの久瀬さんに会いたがっていたからなあ……。」 「まだ信用でき無いじゃない。 メリーさんってそもそも危ない都市伝説だし……。」 「メリーさんはもう正気に戻っている。 あとはそこの久瀬さんに判断を任せるべきだと思うぜ?」 「え?私は………、」 由美はゆっくりと口を開く。 「私は一度この子を捨てました。 でも彼女は帰ってきて…… だから、もうしばらくは家に居させてあげたいかなあ?って思うんです。 狂ってしまうほどで、迷惑を掛けながらだったけど、私のことを思ってくれたから。 つまりその………、うーんと……。」 ………そうだな、そういうことなら仕方がないか。 ポン、と彼女にメリーさんを手渡して田井中の方向に向き直る。 「そうだね、それでメリーさんも幸せだ。 ところで契約はしないのかい?」 いきなり由美に対して問いかける田井中。 「え?」 「えっとね、都市伝説は人間と契約ができて、 契約すると人間が都市伝説の能力を使えたり、都市伝説がパワーアップするの。」 「へぇ……。 なら私は別に良いわ?」 「ほう、なんでだい?」 「え、なんで?」 「もう、この子には普通の人形として過ごして欲しいもの。 別にそう言うのも悪くないでしょう?」 久瀬由美は優しい笑顔でそう言った。 「ハッ……、敵わないね。 優しい人だよ、あんたは。 契約するっていうならまた別だったんだがそれじゃあ仕方ない。」 田井中はため息をつく。 「一体貴方は何の為に出てきたの?」 急な登場で驚いていたがこれだけは聞かねばなるまい。 「俺? いやぁ、会長のお使いでね。 平唯、あんたにメッセージだ。 【あまり組織と関わるな】 だってよ、俺としてはあいつら嫌いじゃないってか良い奴だと思うんだけどな。 あと今のあんたの能力?あれも黒服には絶対見せない方が良いぜ。 良いように使われるから。 そんじゃあ。」 田井中は面倒臭そうにあくびをしながらトンネルから出て行った。 それを確認すると私達、メリーさんと久世由美と私の三人は久瀬由美の家に向かったのであった。 【平唯の人間観察 第四話「呼」】
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「……お前は、何を企んでいたんだ」 在処が、現在のK-No,0……影守蔵人を訓練中に爆破して自分を推薦するつもりであった、と それを聞いて、龍一は小さくため息を付きながら、そう在処に問うた 龍一のその問いに、在処はきょとん、と答える 「さっき言った通りですよ。龍一さんをK-No,0に推薦しようとですね」 「………「組」の仕事で手一杯だ。推薦されても俺は断る」 えー、と不満そうな声を在処はあげてきたが、実際、高校卒業後に実家の家業を継いでいる龍一としては、「組」の仕事で手一杯であり「組織」の一員となりその仕事をやれ、と言われても不可能だ 少なくとも、龍一自身はそのように考えている 人間社会の中での「組」の仕事と、自分が継いでからは都市伝説絡みの問題も扱うようになった故、「獄門寺組」としての仕事は増えており、自然とその組長たる龍一の仕事も増えている よその組織の仕事まで付き合う事は出来ないし、そもそも「組織」に手を貸す義理もない 「大門 大樹さん辺りに協力要請されたら、手伝ったりしているじゃないですか」 「……こちらとしても見逃せない件が多いからだ。こちらの仕事にも関わるし。あの人個人には、あまり悪い印象もない」 筆を動かしながら、返事を返す あの苦労人からの頼まれ事は、どうにも無碍にする気にはなれない ……こちらも絡んでいる件での頼まれ事である事例が多いのも、また事実なのだし 確かに、と在処も頷いているので、その辺りは理解しているのだろう。理解しているふりと言う可能性も否定はできないが 「………ところで、龍一さん」 「何だ」 「さっきから、ずーーーっと書き物してますけど。何書いているんです?それも筆で」 じっ、とこちらの手元を見てくる そういえば、何をしているのかは説明していなかった気がする 「……式の招待状を書いていたが」 「式?」 「………俺と、お前の。結婚式だ」 …しばしの沈黙 きょとんとした表情をしていた在処だったが、ようやく脳へと(恐らく)正しく情報が行き渡ったのか、あ、と声を上げた 「あ、あぁ、そうですよね。式やるんですもんね………って、龍一さん、自分で招待状書いてたんですか。しかもパソコンじゃなくて手書き」 「……普通の知り合いはともかく、家として古くから付き合いがある相手にも出すものだからな」 効率が悪いと言われるかもしれないが、昔ながらのやり方を好む老人もいるということだ 「あまり、派手な式にするつもりはないが。それでも人数を呼ぶことになる。早いうちから書いておいた方がいいからな」 「龍一さん、夏休みの宿題とか早めにぱぱっと終わらせるタイプですしね」 …それは、関係あるのだろうか 在処からすれば、関係あることなのかもしれない 「まぁ、お家の付き合いやら、都市伝説関連の付き合いやら………私は親戚らしい親戚もいないのでほぼ龍一さんの知り合いと言うか、この獄門寺家の知り合いでしょうけど、結構な人数ですよね」 「……念の為言うが。都市伝説絡みと都市伝説絡みではない者とで、式は分けるぞ」 ……… ………………? 在処が「よくわからない」と言う顔をしている 伝わりにくい言い方をしてしまっただろうか 「……都市伝説と知っている者と、知らぬ者と。分けるからな。式は」 「え?…えーっと、んんん?」 「そうなるから、必然的に式を二回やる事になる」 「あ、あぁー、なるほど。やっとわかっt待ってください龍一さん」 「どうした」 「………二回、やるんですか?」 そうだ、と頷いてやる 先程そう告げたのだから、その通り以外の何でもないのだが 「本来なら、都市伝説関係者以外を招待する式は、北区の神社で執り行いたかったが………問い合わせてみたところ、少人数の式でなければ不可能なようで、諦めた。結婚報告の儀は予定通り北区の神社で行うつもりだが」 「それって、かなりお客さん呼ぶって事ですよね!?どれだけ人来るんですか!?」 「……獄門寺家と付き合いがある家の者や企業の社長もしくは重役だが…………あぁ、だから。朝比奈さんは都市伝説関係者以外の方の式で呼ぶことになるな。必然的に」 「あ、あの大魔王も呼ぶんですね」 その呼び方は止めておけ、と一応注意しておく 今後も、付き合いがある相手なのだからなおさらだ 「……朝比奈さんは、首塚の隠れ小島で式を行う、となると参加を嫌がりそうでもあるしな」 「はい、ストップです。龍一さん」 …………? 何か、問題となる発言をしただろうか そのようなつもりは、いっさいないのだが 「式を、どこでやるって?」 「首塚の隠れ小島だ。都市伝説関係者ばかりを呼ぶのだし、問題ないだろう」 「ありますよっ!?ってか、式はどこでやるとか、おもいっきりたった今初耳なんですが!?」 「……あぁ、たった今、話した」 ……ぺふん、と。在処が文机の上に突っ伏した 何故だ 「……ブライダルって、女が主役、だったような……」 「………花嫁衣装は、和装の範疇でお前に選ばせるが」 「ドレスじゃないのは確定なんだ!?」 「……着たいなら、お色直しの方で考えておく」 「やったー!でも、首塚の隠れ小島での式は確定なんですねー!!」 「…………他に。都市伝説関係者を一同に集めて式を行って問題なさそうな場所が思い当たるか?」 こちらの問いかけに、在処は黙りこむ いや、恐らく考え込んでいるのだろう それも、だいぶ苦戦している 「……ま、マッドガッサー逹の」 「却下された」 「すでに話通ってた!?うぅ、連中、仲間内の式はあそこの教会でやった癖に……」 「……集まる人数が違う」 なんだか、将門公が来るのを嫌がっていたのが主な理由だった気がするが気のせいだろう、恐らく 将門公がその場に現れてのプレッシャーその他は、多少わからないでもないが 「そして、龍一さん。先程スルーしたのですが、「結婚報告の儀」ってなんですか。式以外にも何かやるんですか?」 「…式や披露宴が終わってから、だな。それは。その際に説明しておく」 在処には悪いが、一気に全て伝えても混乱してしまう気がする こちらがそう考えていることを知ってか知らずか、在処はわかりましたー、と返事した後……再び、ぽってり、文机の上に突っ伏す 「……古くからの名家的お家への嫁入りって、なんか色々大変なんですね…」 …今更気づいたのか とうに、気づいていたとばかり思っていたのだが 一度、筆を止めて、在処へと視線を移す 「…どうしても、しがらみ等あるからな………めなら、嫁入りはやめておくか?」 「嫌です。何がなんでもこのまま嫁入りします」 そうか、と答えて、再び作業を再開した この家に嫁入りするのだから、この程度で引いてもらっては困る あまり困らせるつもりはないが、多少は頑張ってもらわなければ 後で、在処用にウェディングドレスのカタログも取り寄せてやらなければいけないな 続かない 前ページ連載 - 次世代の子供達
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「爆発しろ」 私の呟きと同時に、私の前を歩くカップル達からちいさな爆発音が上がった。 お察しの通り、私は「リア充爆発しろ」の契約者。 それも、もともと契約していたのはただ一人の親友だった。 「あたし、彼氏できたんだ」 だからもう契約解除なのと笑って言った彼女にその都市伝説をくれと頼み、晴れて私は契約者となった。 「爆発しろ」 軽い破裂音が響き、周囲のそこここで爆発が起きる。リア充だらけじゃないか。ちくしょう。 幸か不幸か。私にとっては不幸だが、もともとその程度の威力なのか、 それとも契約者である私の力不足か、爆竹程度の爆発しか起きやしない。 小爆発を起こしたカップルはと言えば、きゃあきゃあ歓声を上げて、なあにこわーいなんて甘ったるく抱き合ってやがる。ちくしょう。 それに引き替え、こんなしょっぱい事しかできない私には、一生彼氏なんか出来ないかも知れない。 たまらなく惨めになって 「リア充爆発しろ!!」 絶叫してその場にしゃがみ込んだ。でもどれだけ連中が爆発したって、ちっとも慰められやしない。 「あの、お嬢さん」 顔を上げると、そこには黒いスーツにグラサン姿の、なかなかイケメンのおじ様が。 連れの女などは居ないよう。もしかしてナンパ?私に一目惚れしちゃいましたとか?ようやく私にも春の訪れが!?今12月だけど。 「あ…すみません。邪魔でしたか」 涙を拭いて立ち上がると、彼はそうではありませんと言い、名刺を差し出してきた。 「組織…?」 「ええ、威力は子どもの悪戯程度とは言え、 こちらの立場上、危害が発生する可能性を放置しては置けませんので」 つまり私に、「組織」の管理下に入るか、契約を解除し、 都市伝説を手放すか。どちらか選べと言うことらしい。 私はしばし考えて。いや、考えるふりをして。 「貴方が…担当になって下さるなら、どこまでもついて行きます」 声音にばっちり甘さを乗せてアピール。これに気付かない男はよほど鈍いか三次元不感症だ。 黒服はしばしぽかんと私を見つめ、 「せっかくですが…私は今でこそ『黒服』ですが、都市伝説に飲まれる前からの妻と子が居りまして」 ……やっぱり春なんか遠いんだなあ 「もうみんな爆発しろおおおおお!!!!」 END
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合わせ鏡のアクマ 23 私の名前は倉田ミカゲ、フリーの幽霊さ!・・・つまり、浮遊霊。 昔から衝動に流されやすかった私はある日、「幽霊になりたい」と思い首を吊って死にました。 いやー、我ながらぶっ飛んだ思考回路と行動力だよね! そして念願の幽霊になれてハッピーな私。なれたと知った時の空でも飛ぶかというくらいの喜び!! ただ、なって初めて幽霊にも制約が多く存在することを私は知った。 まず私は空を飛べない。浮遊はできるがそれも地面から10センチ程度までだ。 次に物や人に触れるとき、ただ手の感触だけを与えるというものが私にはできない。 幽霊であることに慣れればできるようになるのかもしれないけど・・・ 何かに触れる時は全身を「実体化」させなければならない、これはさほど力を使わないけれど人にぶつかる。 あ、でも声は「実体化」せずに届かせることができるらしい。一度、あくびをしたら近くの人がビックリしてたし。 それと・・・当たり前だけど、生前の友人達に会いづらい。死んだ人間が会いに行けば、必ず騒ぎになる。 いっそ友達も全員忘れてしまえば良かったのに・・・私は、死んだ瞬間とその前後以外は記憶がある。 だから、まだ友人達と会っていない・・・いや、通っていた学校にすら行っていない。 それには友人達に再び悲しい思いをさせそうだからとか、色々理由はあるけれど・・・ 「今は人を驚かしているのが一番楽しいしね!」 おっと、声が出ちゃった。大丈夫周りには誰もいない・・・ 今はまだ友人達と会う気はない。まずはこの幽霊ライフを存分に楽しみたいから!! 「・・・お、私と同じとこの生徒じゃん」 人があまりいない公園を走って通り抜けようとしている一人の少女・・・制服が私のものと同じ、少女。 (なんか見覚えある顔だけど・・・ま、今日の最後のターゲットは彼女で決まり!) 私は幽霊なのに、疲れる。いや幽霊は元々疲れるのかもしれないけれど・・・とにかく、夜は眠らねばならない。 普通は昼間休むのかもしれないけど、私は深夜の怖いニーチャンに声をかける勇気がない。 と に か く ! 「実体化」して彼女とは逆方向から歩き出す。 彼女は私に気付き、怪訝な表情をしている・・・よし完璧! 少女とすれ違う瞬間、声をかける。 「あなた、見えtぐぇっ!!」ドスン! 脳天に重い衝撃が伝わり、私の視界は暗転した・・・ * ・・・・・・しまった。 「わ、私に後ろから話しかけるからそうなるのよ・・・」 まさか都市伝説に突然話しかけられただけで反射的に投げ飛ばしてしまうなんて・・・ 「・・・どうしよ、これ。害はなさそうだけど・・・」 地面で目をグルグル巻きにしている都市伝説をしげしげと眺める。 (なんか、この子見覚えがあるような・・・?) 首を捻って考えるが、思い出せない。・・・あ、ロープみっけ。 「ま、こんなもんでしょ」 都市伝説をロープで縛ってベンチの後ろに置く。早く帰って調べないといけないことがあるのだ。 「・・・『夢の国』」 ボソッとその名前を口にする。おそらく史上最悪の部類に入る強大な都市伝説。 それが、秋祭りの最中に攻撃をしかけてくるという・・・おそらく、街を呑み込む規模で。 その情報を教えてくれた『声』との会話を思い出す・・・ 『・・・ですから、私達『怪奇同盟』にはあなたの力が必要なのです』 「だってさ、妹ちゃん。手伝うくらいはいいんじゃないの?」 夜の墓地で携帯電話を持つ私と、置いてあった黒電話の受話器を持っている妹ちゃん。 ××に『怪奇同盟』という都市伝説と契約者達の集団の話を聞き、直接話を聞くためにやってきたのだ。 代表だという『声』は、現在の『学校町』の状況を大まかに伝えてくれた。 いわく、二大勢力である『組織』と『首塚』組織が協力関係を結んだということ。 それが『夢の国』の大攻勢に備えてのことなのだということ。 また、多くの契約者達が『夢の国』と戦う為に準備を始めているということ。 そして・・・『怪奇同盟』でも、『組織』等の援護のために準備をしているということ。 その中でも重要な作戦を決行するのに・・・妹ちゃんの力が必要だということ。 はっきり言って、一度に色々聞かされても整理がつかない。もっと時間がほしい。 でも、その時間は刻一刻と過ぎ去っている・・・秋祭りまで、もう何日もない。 決断は早ければ早いほどいい。しかし、妹ちゃんは決めかねている。 「・・・あの、私が姫さんから離れたら姫さんが危険に晒されるのでは」 つまり、自分がいないことで私を『夢の国』から守れないかもしれない・・・と。 * 「そんな細かいこと気にしててどーすんのよ!」 バンッと強めに背中を叩く。 「・・・痛いです」 「そーかいそーかい。あのね、私のことなんて気にしなくていいのよ」 叩いた背中をさすってやる。 「私が家の中で寝ててもだーれにも迷惑かかんないし、『夢の国』の侵攻にも関係ない」 でも、と続ける。 「妹ちゃんの力があれば、人を守れるかもしれないんでしょ? だったら私のことなんていっそ忘れてドーンとやっちゃいなさい!」 「姫さん・・・」 妹ちゃんがいない私は、一般人となんら変わりはない。 でも、そんな私でも人の背中を後押しすることはできる。 「というか、やりなさい。契約者としての命令よ!」 「別に私達ってそういう関係じゃないんですが・・・ま、いいです」 妹ちゃんが笑い返す。 「それじゃあ、手を貸しましょう。具体的になにをすればいいんですか?」 『ありがとうございます。まず、あなたには山の隠し神と一緒に山で待機していてください」 「『神隠し』事件の、あの神様とですか?」 『はい。それでなにをやるのかということですが・・・・・・』 そう、妹ちゃんも立派に戦いに役立とうとしている。××も勿論戦うという。 戦闘能力などない私が役に立つには・・・情報戦しかない。 『怪奇同盟』も独自のネットワークで情報を集めているが、それにも穴はできている。 そんな穴を少しでも埋めるため・・・ネットを介しての掲示板や、自らの足で情報を得る。 ほんの少しでもいい・・・彼等の、役に立ちたい。その為には・・・ 「遊んでいる暇は無いのよ、それじゃあね」 遅れてしまった分を少しでも取り戻すため、姫さんは走る。 彼女は知らない。この時、縛り上げた都市伝説が何であったかということも、 この後、帰宅した彼女に父親がまとわりついてその頭に見事なハイキックを決めることも。 なにも・・・・・・知らない。 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
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メリーさんと契約した男 メリーさん 名称 メリーさん 発祥 日本 タイプ 協力者。【接触】を媒体とする【憑依】型。 攻撃方法 不明。人間には知覚不能。身体欠損から意識支配。生命反応停止まで多様。 総じてネガティブな結果をもたらす。 一見強力な都市伝説に見えるが、攻撃するにはなんらかのカタチでターゲット【接触】しなくてはならず、一般的な伝承である電話から、契約者による直接的な接触。あるいは【憑依】されたと思わせる条件付けが必要。 必ず背後に現れるという伝承による縛りも存在する。 少女の姿をしていると言われるが、契約者であれ、彼女の姿を知覚してしまえばネガティブな結果が待っている。
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さぁ、復讐の刃を抜け あなたには復讐する権利があります あなたに、復讐のチャンスを与えましょう ???????? 空は、分厚い雲に覆われている 月も、星も、姿を隠している しとしと、しとしと 静かに、雨が降っていた しとしと、しとしと それは、まるで誰かの涙のように 静かに、静かに、振り続ける 「………」 その、雨の中 青年は、傘も差さずに歩いていた しとしと、しとしとと 静かに振り続ける雨を浴びながら、足音を忍ばせ、静かに歩く 「……鬱陶しいなぁ…」 ぐっしょりと濡れた髪をかきあげる しとしと、しとしとと 雨は、やむ事なく振り続ける --雨は、ね。お空が泣いている時に降って来るものなのよーー ふと、そんな母の言葉を思いだした …ズキリ、頭が痛む 余計な事まで思い出しそうになって 思い出すな、と思考にブレーキがかかった --見るな --思い出すんじゃない、思い出さなくていい そんな兄の言葉が、何度も響く 「…兄、さん」 ふらり 一瞬、体がよろけた 駄目だ、しっかりしろ 今は、昔の事なんて、思い出している場合ではない しとしと、しとしと、しとしと 雨の中、歩き続ける青年の携帯に…着信が 「……はい…………うん、わかった。すぐに行くね」 ぱたん、と携帯を閉じて 顔をあげた青年は、いつも通りの笑顔を浮かべていた いつも通り? 本当に、いつも通り? 「さて……手加減なしで行こうかな?」 くすり、青年は笑って 雨のふる夜道を、駆け出した ばしゃばしゃばしゃ 水溜りを踏み越える音が響く 夜道を、一人の逃亡者が走る、走る、走る、走る 「はぁ……っ、くそ……!」 何がいけなかったのか 何が、この不運の始まりだったのか それは、彼にはわからない いや 微かに、わかってはいる 理解しているはずなのだ しかし、わかろうとしない、理解しようとしない 眼を、耳を、心を塞ぎ 彼はその事実を受け入れない 「…畜生めが…!」 何がいけなかったのか? 自分は、正しい事をしてきたはずだろう? …都市伝説なんて、みんなみんな、悪党だろう? 「……どちらに行かれるおつもりで?」 「……!」 …ぱしゃり 道を塞ぐように現れたのは、黒服の男 雨の中、傘もささずにいたのだろう 全身ずぶ濡れで、いつもはオールバックにしている髪も濡れて、前髪が垂れている 「……組織か!」 「はい、ご察しの通り」 黒服は、感情の篭っていない声で銃を抜いた 静かに、男を真正面から見詰めてきている 「…あなたの信念は、変わりませんか?」 「………?」 「都市伝説は全て悪だと言う、あなたの考えは、変わらぬままですか?」 淡々と、黒服はそう、男に尋ねてきた 静かに、静かに まるで、教師が生徒に何か伝えようとしているような、そんな声で …ここで、ふと、男は気付く 自分は、何を怯えていたのだろうか? 相手は一人 しかも、戦闘力などないと言われる、黒服ではないか 相手は都市伝説だ、殺したって、何の問題もないだろう? そもそも、相手は銃を向けてきている 正当防衛が成立するはずだ (…正当、防衛?) 何故、そんな事を考えた? そんな事は関係ない 相手は都市伝説なのだ いつも通り、始末すればいいだけの事 …そう、相手は××××じゃないのだから 「-----っ」 やめろ 思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出すな思い出させるな 考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えさせるな あれは、俺が悪いんじゃない! 俺のせいなんかじゃない!! あれは、事故だ! 自殺だ!! 俺が殺したんじゃない!! 「当たり前だ」 さぁ、この黒服も殺してやろう 黒服と言う都市伝説 悪の都市伝説のその一部 殺したって、なんら問題はないのだ 「……そう、ですか」 男の回答を聞いた、黒服の声は 落胆している訳でもなく 絶望した訳でもなく 軽蔑した訳でもなく むしろ、その声に含まれているのは 「……あなたは、わかっていないのですね」 …哀れみだった 「わかっていない、だと?」 「…そうです。あなたは、都市伝説は全て悪である、と断言します……知っているでしょう?都市伝説は、全てが意思持つ存在ではない。中には、意思を持たない都市伝説も存在します………あなたが契約している都市伝説のように」 …この黒服は、馬鹿にしているのか? そんな事、知っている わかりきっている 自分が契約している都市伝説の力もわからない、なんて事は… 「まだ、お気づきになりませんか?」 銃を向けられたまま しかし、同時に哀れみを向けられる 「あなたが契約している力も、都市伝説に変わりはないのですよ?」 …黒服の、その言葉に 男は、ようやく、黒服が言わんとしている事に、気付いた 「すなわち、あなたのその考えに基づくならば……あなたは、悪の力を持ってして、悪を倒している事になりますね」 「っそ、それがどうした!」 そうだ! それが、どうしたと言うのだ! 俺は、選ばれた存在なのだ! 許された存在なのだ!! だから、この力を使うことは、真っ当な、正しい事なのだ!!! 「……そして、あなたの考えが、もし、正しいのであれば」 銃は、向けられたまま そして、向けられる哀れみが強くなる やめろ やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ 俺を憐れむな!!! 「大気に宿る…猛き風の精霊よ…眼前の敵を切り裂け!」 黒服の言葉が終わるよりも先に、男は攻撃を繰り出した 話を聞く必要など、最初からなかった さっさと殺してしまうべきなのだ! 風の刃が、黒服に襲い掛かる 次の瞬間には、黒服はその刃によって、ズタズタに切り裂かれる …はず、だった ぱりんっ、と 何かが砕けた小さな音がした キラキラと、粉末のような物が宙を舞い…攻撃は、黒服に届かない 「な……!?」 「…ターコイズ一個で、何とか防げましたか」 ぼそり、黒服が呟く 何をしたのか、わからないが…こちらの攻撃を防いだだと!? 男は、焦りながらも次の攻撃に移る そう、何度も奇跡が続くものか 今度こそ……! だが、しかし 男が、次の攻撃の呪文を唱えるよりも、先に 「み~つけた」 聞こえてきたのは、この場にそぐわぬ。場違いな声 どこか無邪気な、しかし、同時に狂気を含んだ声 ぞくり 全身を、悪寒が走りぬけた それは、剥き出しの刃を首筋に当てられたような、殺意 男は、慌てて横に飛ぶ ばしゃり!! 直後、男がいた場所に、茶色い液体がぶちまけられて じゅうじゅうと音をたて、アスファルトの道路が溶けていく 「…もう少し、早く来ていただけるとありがたかったのですが」 「うん、御免ね?」 ニコニコと、黒服の言葉に答える…青年 コーラのペットボトルを手に、何か楽しいのか、微笑んでいる 何者だ? 「知識の泉…その英知を…我に分けたまえ」 ぼそり、呟き、青年を見る …人間だ しかし、都市伝説の契約者 契約しているのは… 「…骨を溶かすコーラか」 「あ、わかっちゃうんだ?」 くすくすくすくすくすくすくす 青年は、笑ってくる 「…あなたと同じ、意思を持たない都市伝説との契約者ですよ」 「え~、僕、こんなのと一緒にされたくないな」 歳相応、とは言えない、少々子供っぽい口調で、青年は不満そうな声をだした …しかし、すぐに笑顔を浮かべ、男を見つめてくる 笑顔 そう、笑顔なのだ しかし、その笑顔には、どこか狂気が混じって 向けられるのは、剥き出しの殺意 「あのね、そう言う事だから…君が、この『骨を溶かすコーラ』って都市伝説を倒したいんなら、僕を殺さなくちゃね?」 「……っ!?」 何を こいつは、何を言って… 「あ、そうそう。君は、人殺しを躊躇するかもしれないけど。僕、遠慮しないから」 にっこり、笑顔で言われた言葉は、死刑宣告に近かった ごぽりっ 青年が手に持つコーラのペットボトルから…コーラが溢れ出し、男に襲い掛かる! 「凍てつく風よ…北より来りて…束縛せよ!」 ぴしりっ 男の言葉が終わると同時に、コーラが凍り付いていく 「ふぅん?」 ぱきんっ、と 近づいてきていた氷の束縛を、青年はまだ凍っていない部位のコーラを操る事によって回避した じゅうじゅうと、凍ったコーラが溶けていく 「本当に、魔法使いなんだ」 にっこり、と どこか面白そうに、青年は笑う きゅう、と その口の端が、残酷に釣り上げれた 「それじゃあ、足や腕の一本くらい無くしても、平気だよねっ!?」 ごぽぽぽぽぽぽぽぽ コーラは、留まる事なく溢れ続ける そして、その全てが青年の意思に従うように、男に襲い掛かってくる! 「く…!」 じ、冗談じゃない! 相手は人間だ 『都市伝説と契約している人間』だ 都市伝説じゃない それを、殺してしまったら…自分は人殺しだ いや 自分はとっくに………人殺しだ 「………っ」 人殺し 人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し その単語が、何度も何度も脳内でリフレインする 煩い、煩い、煩い、煩い、煩いっ! あれは俺が悪いんじゃない! あれは事故で自殺なのだ!! 俺が悪いんじゃない 全て、都市伝説が悪いのだ! じろり 男は、黒服に視線を向けた 銃を向けたまま、黒服は撃ってはこずに、こちらの様子を窺っているようだ …そうだ、こいつは都市伝説だ こいつだけ、さっさと始末してしまえばいい…! 「凍てつく風よ……北より来りて……」 「!」 黒服が、スーツの内ポケットから何かを取り出す 先ほどの、こちらの攻撃を防いだ手段か? …そう、なんども防げるものか! 「眼前の敵の命を……うば………っ!?」 じゅう、と 何かが、焼ける匂いがした じゅうじゅう じゅうじゅうじゅう それは、肉が焼ける匂い 「-----ぎ」 それは 男の体が、焼ける匂い 「ぎゃあああああああああああああああああ!!??」 じゅううううううううううううう 体が、焼かれていっている それも、一気に焼かれていっているのではない じわじわ、じわじわと じょじょに、じょじょに、焼かれていっている いつから? いつから、この攻撃は始まっていた? 日焼けしたように、茶色くなっていた肌 それが、茶色を通り越して、黒くなっていっている…! 「煩いなぁ」 「ぎーーーーっ!?」 ばしゃりっ! 痛みに、足が鈍った男の腕に…コーラが、かかった じゅううううううううううう 腕が…溶けていく! 「ぐ……癒しの炎よ…我が傷に…命の火を灯したまえ!」 男の言葉が終わると同時に、溶かされた腕が 焼かれた体が再生していく 痛みが、じょじょに消えていく 「っち、うぜぇな……魔法使い様はばんのー、ってかぁ?」 じゃらり 金属がじゃらじゃらと鳴っている音がする 黒服の、その背後から 金髪に、チャラチャラとした服装をした青年が、姿を現した …何だ!? 今夜は、一体何だと言うのだ!? 何故、自分はこんなにも敵に囲まれている!? 「…あなたも、来ましたか」 「あぁ、あんたが呼んでくれたからなぁ」 すたすたと チャラけた格好の青年は、黒服を庇うように、彼の前に立つ そして、じろりと男を睨みつけてきた 「…俺の大事なもんに、何しようとしがってんだ、おっさん」 …この状況を、一言で言い表すならば…私刑会場、とでも言うべきか 一本道で、挟み撃ちにした体勢 そう簡単には、逃げられまい 「あれ~?いいの?君、首塚のメンバーでしょ?」 コーラの契約者が、日焼けマシンの契約者にそう声をかける それに、30過ぎの魔法使いは、ハっとした声をあげた 「っく、首塚だと!?仲間じゃなかったのかよ!?」 「っは!!誰がてめぇみてぇな腐れ外道、仲間だなんて思うかよ!」 吐き捨てるように、日焼けマシンの契約者は魔法使いを睨みつける 嫌悪と、軽蔑の篭った眼差しで 「女子供をいたぶるような野郎、将門様の配下に相応しくねぇんだよ」 「わぁ、見捨てられたみたいだね」 にこにこと、コーラの契約者が楽しそうに笑う どこか無邪気で、しかし残酷な、狂気の笑みを魔法使いに向けている 「安心してね、あっさりは殺さないから」 「っは!俺も同意見だ、あっさりとは死なせねぇ」 青年二人 なにやら、今だけは、意見があっているようだ 「「じわじわと、苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんでから、死なせて」やるよ」あげるよ」 ごぽっ! コーラが生き物のように地面を這い、魔法使いの足に襲い掛かった じゅううううう! まずは、右足が溶かされる 「ぎ……っ」 そして 日焼けマシンの契約者の攻撃も、既に始まっている 一度は元の色に戻った魔法使いの肌の色が…再び、茶色く染まり始めている 日焼けが始まっているのだ 日焼けマシンで人間ステーキ 途中までは、ただの日焼けですむ しかし、ある線を越えた瞬間から、それは残虐な攻撃へと変わるのだ 「先に足を潰しちゃえば、逃げられないよね?」 「…すっげぇ、鬼畜。なぁ、あんた。あんなの見捨ててやっぱ俺のところこねぇ?」 「今は、そんな事を言っている状況ではないでしょう?」 場をわきまえぬ日焼けマシンの契約者に、小さくため息をつく …まぁ、口ではそう言いながらも この日焼けマシンの契約者は、魔法使いへの殺意に支配されている状態だ じゅうううううう 今度は、左足を溶かされた魔法使い 最早立つこともできずに、倒れこむ くすくすくすくすくすくすくす 闇夜に、笑い声と、悲鳴と、何かが溶けて、焼ける音だけが響き渡る…… 次は右手 手の辺りからじわじわと、肩の付け根まで溶かしてあげよう その次は左手 こっちも、手からじわじわと肩の付け根まで溶かしてあげよう ほうら、これでダルマの出来上がり ダルマ男の完成だ 「ぎ……ぐ、癒しの炎よ…我が傷に……っが!?」 「治しちゃだぁめ」 ぐり、と 倒れこんでいる男の胸元を、踏みにじる …こいつが こいつが、ルーモアのマスターを殺したのだ どこか、不器用ながらも幸せそうだったあの空間を…壊したのだ 「…………」 そう 幸せを、壊した あんなにも、幸せそうだった あの店には、そうしょっちゅう行っていた訳ではない でも、行くたびに、暖かかくて 幸せそうで …羨ましかった 自分がなくしてしまったものを、彼らはちょうど持っていて とても、とても、幸せそうだった それを こいつが壊した こんな奴が! 身勝手な考えで!! 壊したのだ!!! 「がぱっ……!?」 ごぽり 口にコーラを注いでやる まだ、舌と喉は溶かしてやらない 溶かすのは 「--------っ!?」 「痛い?痛いよね?だって、内臓を溶かされてるんだもん」 くすくすくすくすくす 自然と、笑みがこぼれてくる 体中を焼かれ、ダルマになって あぁ、なんて無様な事だろう 「苦しい?辛い?死にたい?」 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす 笑いが、止まらない 「でも、駄目だよ。まだ死なせない。まだ足りない、全然足りないよ。まだまだ、全然駄目」 そうだ、まだ、足りない …不意に 笑い声が、止まった 「…この程度で、楽に死ねると思うんじゃねぇえよ!!このっ、腐れ外道がっ!!」 「ぐがっ!?」 だんっ!!と 力強く、男の胸元を踏みにじる 痛みに悲鳴をあげてくる男を、さらに、さらに踏みにじる 「てめぇが殺した人が!どう言う人だったか、てめぇにわかるか!?」 ごぽり コーラを、男の右目に垂らす 悲鳴が上がる じゅう、と右目が溶けていく 「あの人が……あの子と、どんな約束をしていたのか!てめぇにわかるのか!?」 ごぽり コーラを左目に垂らす じゅう、と音たて、左目が溶ける 「てめぇが……てめぇなんぞに!!幸せな家庭をぶち壊す権利なんざ、ありゃしねぇんだよっ!!」 ごぽり コーラを鼻に垂らす じゅうと音たて、鼻が溶ける 男の絶叫が、暗い道に響き渡る 「てめぇなんざ死ねっ!死にやがれっ!!てめぇみてぇな野郎、生きていてもなんの価値もある訳がない!!あいつらの幸せを壊しやがったてめぇが、許されるはずがない!そんな権利なんざ存在しねぇ!!!てめぇは有罪だっ!!有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪!!!」 …脳裏に、過去の記憶がフラッシュバックする まだ、家族全員が揃っていた頃の記憶 父も母も、生きていた頃の記憶 とても とても、幸せだった頃の記憶 兄と一緒に、大学に合格できて 自分たちは、両親にそれを報告するはずだった よくやったね、と、褒めてもらうはずだった それなのに 『----っ見るな!!』 兄は、それを自分に見せようとしなかった 優しい兄は、それを自分に見せようとしなかった しかし、自分は見てしまった いや、見てしまわなくても、きっと、あの濃い血の匂いで気付いてしまっていただろう 部屋のリビングで、両親は死んでいた 一目ではっきりと、死んでいるのがわかった 両親には、首がなかった 首が、切り落とされていた そして、切り離された、首は テーブルの上に二つ並べられて……… 痛い 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い 頭が、痛い 普段、思い出さないようセーブしていた記憶が蘇る 幸せを壊された記憶 家族を殺された記憶 それが、はっきりと蘇る 輪が感じる悲しみ それを真に理解するには、家族を失っている必要がある 家族を殺されている必要がある どんなに理解しようとしても、本当に全てを理解できるのは、同じ境遇に立った者だけだ 自分は、輪の悲しみを理解できる しかし、完全ではない 家族を失ったのは同じ 家族を殺されたのは同じ しかし、決定的に、違うのは 自分は、両親が死んだ瞬間を見ていない 両親が殺された瞬間を見ていない 輪は、見てしまっている マスターが死んだ瞬間を、殺された瞬間を あの少年の悲しみと怒りと嘆きと絶望を、自分は完全には理解しきれていない …だが ここまで理解できていれば、充分だ これ以上理解しようとしたら……きっと、自分の心は、今度こそ壊れる まるで、おのれの過去の境遇を重ね合わせるかのように 彼は、男に怒りと憎悪をぶつける いまだ見付からぬ、己の両親を殺した誰か それを見つけられぬ恨みも、一緒にぶつけるように 「有罪、有罪有罪っ!有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪!!!」 「お、おいっ!?」 何だ? どうしたんだ、こいつは? ただの、ちょっと鬼畜どSな優男 以前会った時のこいつの印象は、そんな奴だった だが、しかし 今、目の前にいるこいつは 自分の能力で全身焼けただれた男に追撃するように踏みにじり、拷問するように溶かしていっているこいつは 復讐心に囚われた、化け物のようだった 「…っこれは、いけませんね」 「お、おい」 足早に、黒服がコーラを持った青年に近づく じろり 狂気に、復讐に囚われた眼差しが、黒服に突き刺さっている 「邪魔を……」 「正気に、戻りなさい」 黒服は、懐から何か、小さな小石を取り出して そっと、コーラを持った青年に押し付けた っぱん、と 小石は、音をたてて砕けて 「-------ぁ」 すぅ、と 青年の目に、光が戻る 意思が、戻ってきた 「あ…僕、は…」 よろり 青年は、男から足をどけた ぶすぶすと、体中から煙を出している男 全身黒くこげ、体中溶かされ…それでも、まだ、生きている いっそ、死んだ方がマシなのではないかというそんな状態で、しかし、まだ生きていた 「…楽に、させるべきですね」 正気に戻りながらも、若干ふらついている青年を庇うようにたちながら 黒服は、男に銃を向けた もう助からないだろう、この苦しみから、解放させてやるための せめてもの、慈悲の一撃を、放とうとする …それよりも 「……癒し…の炎よ…我が…傷に…命の火を………灯したまえ……!」 「----!?」 「んなっ!?まだ、喋れたのか!?」 男が、呪文を唱える方が、早かった どう見ても、死体一歩手前だったその体が…再生していっている!? 「ッ野郎!!!」 再生したならば、また攻撃するまでだ!! 再び、相手を焼いてやろうと攻撃を向けようとするが 「…………………………」 男が、何か呟いた 直後…男の姿が、消えた 「っ!?」 「…転移ですか。もしかしたら、決めていた場所へと帰っただけかもしれませんが…厄介、ですね」 銃を下ろす黒服 …逃げられた 逃がしてしまった 「ちっくしょう!!」 畜生! あの外道野郎を、逃がしてしまうだなんて! うかつだった あんな腐れ外道、すぐに殺すなんて生ぬるいと思って、加減したのが悪かった ……さっさと、殺すべきだった!! とさりっ コーラを持つ青年が、座り込む 一度は光が戻った目 しかし、何かの記憶に締め付けられているかのように、その視線は定まらない 「……逃がし、ちゃった?」 「そのようですね」 「……そう」 沈む、声 俯いていて、表情は見えない しかし、その声は、地の底から響くかのように、暗かった 「…立てますか?」 「…………平気だよ」 にこり 顔を、あげた時 青年は、また、笑っていた 「逃がしちゃったなら…帰らなきゃ。兄さんが心配する。兄さんを、心配させちゃ駄目だ」 それは、誰に言うでもなく まるで、自分に言い聞かせるかのような、言葉 「また、あいつが見付かったら教えてね。今度こそ、殺してやるから」 にっこり、と笑みを浮かべて 青年は、ふらふらと立ち去っていく …その、後ろ姿は まるで、迷子になって泣いている、子供のようだった 「…ご協力、感謝します」 「感謝なんて、される資格は俺にはねぇよ…逃がしちまったんだ」 小さく、舌打ちする あぁ、畜生 今度見つけた時こそ…焼きつくしてやる! 「私は、これで。あの状態の彼を、放っておく訳にはいきませんから」 「……おぅ」 ふらふらしている青年に、黒服は駆け寄っていく …悔しいが、自分でもよくわかる あの状態は、放っておくのは不味い ふっ、と目を放した隙に、消えてしまいそうな、死んでしまいそうな そんな危うさを、感じたから …しとしとと、雨は降り続けている 戦っている間は気にならなかったが、気がつけばずぶ濡れだ ぐしゃり、髪をかきあげる 「----っちくしょう!!」 ばしゃり 苛立ち混じりに、水溜りを踏みしめる あんな奴を逃がしてしまった自分が許せない 黒服に、気をかけられるあの青年が、羨ましい いくつもの苛立ちが混ざり合い、思考を掻き乱す 「畜生、畜生、畜生……っ!!」 叫ぶ 叫んだどころで、どうにかなる訳ではない ただ、空しいだけだ わかっている わかっては、いるが それでも、彼は叫ばずにはいられなかった しとしと、しとしと ……ざあああああああああああああああああああああ 振り続けていた雨は、何時の間にか、強さを増して 耳障りなノイズとして、夜道に響き渡ったのだった 泣くな 悲しむな 立ち止まっている暇など存在しない 復讐せよ 復讐は汝らにあり 復讐の刃を折るなかれ ???????? 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【上田明也の探偵倶楽部39~神の領域~】 「よっしゃあ!国中佑介の正体がわかったぜ!」 「ていうかマスター、これってあれじゃないですか? 最初から周りの人間に頼っていれば簡単に発覚した事じゃあ……。」 「良いんだよ、俺の個人的な調べごとに他人を巻き込みたくない。」 「あっそーですか。」 国中佑介 普段は会社員として働いているがその正体は「組織」のF-№0が製作した人間型ホムンクルス。 最近付き合っていた女性との結婚が決まり、そこそこ幸福な模様。 契約都市伝説は『振り袖火事』 ホムンクルスとしては実験作にあたるらしく、炎を操る都市伝説との相性が良くなるように設計されているそうだ。 契約特化型の試作品だが基礎スペックも従来品に負けていない、そうだ。 上田明也の情報収集能力ではどれも確証が取れないが、概ね事実である。 「さあ、それが解ったところでどう料理するか。 ぶっ殺す、良くないね、その恋人というのが俺の元カノだ。 そんな真似は無粋極まりない。 放っておく、悪くない、あいつの妹を殺したのは俺だが、 それでも彼にはほどほどに幸せに生きて欲しい。 あいつが俺に仇を討ちに来るように誘いをかける、良いね、最高だ。 でも結果は最初のそれと同じように最低になることが簡単に予測できる。」 「放っておけば良いじゃないですか。」 「まあね、向こうが仕掛けてくるまでのんびり待つか。 ああ疲れた、少し寝るぜ。」 吸っていた電子煙草(ストロベリー)の電源を消して、上田明也は昼寝を始めた。 場面は変わって組織内部の図書館の一室 サンジェルマンは先日の小火で燃えたアルバムの復元作業を続けていた。 その隣では橙が妖怪系都市伝説の資料を読んでいる。 「ふひゅー、深刻な主人公の出番不足ですね。」 「何を言っているんだサンジェルマン。」 「気にしてはいけません。ところで聞いてくださいよ、橙さん。」 「なんだ?イクトミに警告喰らったことか? お前が何をしようとお前の運命は変わらないよ。 警告を聞こうと聞くまいとお前が行くところはもう既にきまっている。」 「そうですか。 貴方に相談すると相談内容を話すまでも無くって楽ですよ。」 「そうかそうか、それは重畳。ちなみにお前死ぬぞ。」 「え゛…………。」 「死ぬ死ぬ、ラプラスの悪魔によると塵も残さず分解される予定になっている。 お前を殺す都市伝説の名前は……。 ああ、こいつか。」 橙は丁度読んでいた本をサンジェルマンに投げつけた。 「それだよ、そいつがお前を殺す。」 「……こいつですか。」 サンジェルマンは深くため息を吐いた。 「いやね、正直言ってイクトミにあそこまで言われるとは思ってなかったのですよ。」 「なんだ、お前らしくもない繊細なこと言い出すな?」 「いえいえ私は何時でもデリケートです。 彼ってば一応神様じゃないですか、彼に警告されるということは私の研究は本当にやばいんだろうなあと思ったんですよ。 そのうえ研究してもしなくても結果が一緒なんでしょう? じゃあ今は黙っているに越したことはないのかなあ……。」 「まったく、お前も小物化が進んだなあ……。 初期の頃なんて黒幕臭全開だったぞ? 上田明也達のピンチに都合良く現れてホイホイ力を貸して、 その裏にまるで何か陰謀でもあるかのような雰囲気醸し出してたのに。 ―――――――――がっかりだよ!」 「がっかりてなんですか!? 勝手にがっかりされても困りますってば。 私は私の望みを叶える為に努力していただけですよ。」 「あとあれだ、じつは元人間って設定にもがっかりだ。 なんかちょと身近じゃないかこれじゃあ。」 「いや、良いじゃないですか。古代人ですよ!? 都市伝説の力で栄えた古代文明の生き残りとか十分キャラ立ってますってば!」 「ああ、そういえば都市伝説も『オーパーツ』だもんな。」 「いやー、あれが私の所に引き寄せられた時はびっくりでしたよ。 なんせ私が人間だった頃には普通に使われていたものばかりですから。 そのうえそこから派生して物品系都市伝説集まってくるし。」 「ただ高級な武器を湯水の如く乱射するとかなんか戦闘スタイル被ってるんじゃないか? ゲーム化した時動きが少なくてつまらないぞ。」 「ゲーム化って何!?」 「あ、もうこんな時間か。私は彼方と少し買い物してくるから大人しく留守番していろよ。」 「え、そんな!?」 橙はそそくさと部屋を出て行ってしまった。 その様子を見てサンジェルマンは少し微笑む。 彼は何時の間にか、偶然とはいえ彼女を救えて良かった、などと人間くさいことを考えていた。 「それにしても、神の領域か……。」 人間が立ち入っては行けない領域。 と、言うよりはこの世に存在する全てが立ち入ってはいけない領域。 それこそ聖杯ではないか。 どうやら自分の試みは順調に動いているらしい。 「くく、ふふ……。 あはは、あははははははは! 最高だ、最高じゃないですか!」 サンジェルマンは自らの心が沸き立つのを感じていた。 死ねるというならそれも良し。 試みがうまくいくなら尚良し。 どのみち彼の目的は果たせるのだ。 「良いでしょう。 彼女が私の所に来るか、私が彼女の所に行くか。 結局どちらでも良いのです。 私の計画は間違いなく進んでいる。 待っていてください、もうすぐ会えますよ……。」 そう言って胸のペンダントを開く。 中には女性の写真が入っていた。 サンジェルマンが一瞬だけ、普段からは想像もつかないような穏和な表情を浮かべる。 prrrrrrr! その時、急に電話が鳴る。 「ようサンジェルマン、COAの話なんだけど今大丈夫かい?」 ―――――――――来た! 「ええ、幸い研究のペースも落ちてきたところなので、 サポートが必要でしたらいくらでも大丈夫ですよ。」 「それは良かった、じゃあそろそろ行くわ、ラストダンジョン。」 「ええ、お願いします。あそこには私だと入れませんからね。」 「じゃあこれから頼むものを用意してくれ。 まず…………。」 人の理を越えて彼等は何処へ行き、何処へ着き、何処で終わるのだろう。 今この瞬間から、上田明也とサンジェルマンの神の領域への挑戦が始まる。 【上田明也の探偵倶楽部39~神の領域~fin】
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合わせ鏡のアクマ 21 某日夜 駅の南区側 「ここが××市・・・通称、『学校町』・・・」 駅から出てきたその女性は、ポツリと独り言を洩らした。 今回は運が良かった、「依頼」と同じ街で仕事の予定ができるなんて。 これで昼間は仕事・・・夕方からは「依頼」を済ませることができる。 以前、同じようなことが別々の街で起こったけど・・・うん、あれは思い出したくないわね。 「とりあえずホテルホテル・・・」 仕事の連絡が取れるよう、泊まる場所は指定されている。近くの交番で道を聞くと、案外近そうだ。 (問題は、いつ都市伝説と遭遇してもおかしくない・・・だっけ?) 「依頼」をしてきたこの街の都市伝説からの忠告だ。 しかし、都市伝説と遭遇するなんて滅多なことではない。気にする必要は・・・ 「ちょっとそこのアンタ!あなた契約者ね!!」 ・・・甘かった。うん、私甘かったわ。 振り返ると、小学生くらいの女の子が立っていた。真っ赤な靴を履いて、傍らには大男を従えている。 たぶん男の方が都市伝説ね・・・、などと私が考えながら歩き出すと 「コラ、無視するんじゃないわよ!」 怒られた。でも、私別にあなたに用なんてないんだけど・・・ 「私達はあるのよ!」 理不尽だ。 「さぁ、やっちゃいなさい」 「ちっ、ババア相手は遠慮したいんだがな」 女性に向かってババアとは失礼な!と怒る私に構わず、女の子は息を吸った。 「赤い靴履いてた女の子♪」 少女が聞き覚えのあるフレーズを歌いだす・・・が、 「歌謡曲系の都市伝説?でも、させないわよ」 瞬時、空から黒い影が女の子を襲う 「きゃあっ!」 驚いた女の子は歌を中断した。よし、チャンスだ!! * 「さようならっ!!」 「あ、コラ待てー!!」 踵が高い靴では確かに走りにくいが、そんな状況にはもう何度も遭っている。 「しつこいなぁ・・・行って」 契約する都市伝説へ呼びかけると、彼等はすぐに応えてくれた。 「うわ、ちょっと何!?」 「これは・・・カラスか!」 大男が自身と契約者(?)にまとわりつくカラスを殴りつけると、数羽が叩き落された。 「うわー、力強いわね・・・でもまだ終わりじゃないわよ」 カラスが起き上がって飛び上がる・・・と、そのカラスが突然燃え上がった。 「熱っ!」 「ぬおぉ!?」 いきなりの発火に驚いている間に走り出す。 上空のカラスの視界を借りて曲がりくねった路地を迷いなくと走り抜ける。 ・・・と、もう二人は私を追うのを諦めたようだ。でも、しばらくは会わないように監視しておこう。 「あー、もう・・・なんなのこの街」 どうやらあの忠告は誇張ではなく、本当にこの街は都市伝説が多いらしい。 「・・・嫌な「依頼」受けちゃったかなー」 しかし、受けてしまったものはしょうがない。仕事はしっかりこなさないと。 「早くホテル行って休もう・・・あ、連絡しとかなきゃ」 懐から携帯電話を取り出して、教えられた番号にかける。 「・・・あ、もしもし?・・・・・・あ、私は「依頼」をされた・・・はい、『消えるカラス』の契約者です」 滞在予定日数や、ホテルの名前なども伝えて通話を切る。 「ふぅー・・・ま、頑張りましょ」 自分を励ますと、ホテルを目指して彼女は路地を歩いていった・・・ 『・・・そうですか、来ましたか。では、後は見つかることを祈るばかりですね』 同盟員である『理解者』から『消えるカラス』の契約者到着の連絡を聞いた『声』は、 『・・・このまま、順調に進めばいいのですが・・・ね』 誰にともなく、呟いた。 * 『消えるカラス』 街でカラスの死骸を見かけないのは、特別な方法で死体を消しているからだ・・・という都市伝説。 対消滅や異空間に消えるなど色々なパターンがあるが、今回は「自然発火」説を元にしている。 カラスの群れの姿をしており、数は30~50羽ほど。契約者の体力を削ったり、時間をかけることで数を増やす。 能力は【傷ついている時のみ体を発火させる】。発火したカラスはじきに体が燃え尽きて消滅する。 契約者と視界を共有することができ、探査などにも役立つ能力だがカラス一体一体の力は通常のカラスと同じである。 契約者 ファッションモデルをしている女性、そこそこ有名(らしい)。 契約の経緯は詳しくは分からないが、かなり昔から契約していたらしい。 おとなしい性格で、基本的に戦わない。もし戦いに巻き込まれたら?カラスで目くらましして逃げます。 探査能力を見込まれて色々なところに協力を求められている、都市伝説関係者でもなかなか有名な人物。 ・・・・・・しかし、『学校町』ではあまり認知度がないようだ。その事実も本人に「落ち着く」の一言で片付けられている。着やせするけどDカップ。 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
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【電磁人の韻律詩17~笛吹探偵事務所の日常~】 麻薬みたいな男を一人知っている。 その男は人を酔わせる不思議な魅力を持っている。 その男は万人が求める悪人としての要素を十分すぎるくらいに持っていた。 他人など意に介さず自らの意志の赴くままにあらゆる悪行を為し、 自分の目的の為には他人を道具としてしか考えない。 人を酔わせる麻薬そのものか、麻薬に操られる人間か。 この差は大きい。 同じ悪を為す人間であっても前者は自らの意志で悪事を行い、後者は状況に流されて悪事を行うからだ。 どちらが悪いという話でもないが……。 正義の味方をやっていると善にはなり得ない人間が居るってことを実感せざるを得ない。 自らの意志で悪事を行う人間はそういう意味で恐ろしい。 彼らは自分が悪だなんて欠片も思わずに自らの思うままに行動するのだ。 自分を大事にとか心のままになんて言葉は良く聞くが、程々にして欲しい物だ。 「悪魔の囁きの契約者とその仲間。 今の学校町を騒がせているのはそいつらだ。 お前が言うところの悪人ってならそいつらじゃねえかな? 組織から任務が降りてくるだろうからくれぐれもお前一人で突っ走るなよ?」 「はい、ありがとうございます。」 「それとお前さんが会ったポケモンマスターだったっけか? お前とは相性が悪すぎるから戦うのはやめておけ。 超遠距離から契約者を一撃で倒すタイプの都市伝説で対処することになると思う。 お前らには恐らく蛸妊娠だかの契約者の対処が割り当てられるんじゃないか? 対生物が一番刺さるだろう?お前らの攻撃って。」 「そうですか……。 解りました、でも俺達の接触した契約者って………。」 「ああ、知っている。子供なんだろう? 組織だってそこまで酷い奴らばかりじゃねえよ。 というか今は善良な奴が多いぜ?何故か“事故死”する過激派の黒服が多いそうだ。」 「そうですか……。」 「そうなんだよ。それじゃあ切るぜ。」 「はい、それじゃあ。」 携帯電話の電源を切ると俺はそれをポケットに投げ込んだ。 身体をバタンとソファーに投げ出す。 俺は笛吹探偵事務所の所長室の椅子に腰をかけていた。 学校は終わって、今は春休みである。 「どうしたのアスマー?」 「いや、Hさんからの電話。」 「おーい、恋路!もう一回勝負しろ!」 奥の部屋、恐らくここの主がプライベートで使っている部屋から子供の声が聞こえる。 「あ、ちょっと待っててねレモンちゃん!」 「橙だ!」 「似たような物じゃないか!」 ハーメルンの笛吹きからこの事務所を預かり受けた時、助手を一人紹介された。 橙レイモンという少女だそうだ。 複雑な経緯で彼の事務所の助手をしているらしいが詳しいことはまだ教えられていない。 ただ、このレイモンという少女はハーメルンの笛吹きの語るときに嬉しそうな顔をする。 だからハーメルンの笛吹きに何か恩義が有るのだろう。 「小足みてから昇竜拳!」 「うわああああああああああ!!!」 恋路と橙は格闘ゲームをやっていた。 そしてまた橙が負けた。 恋路の超速反応について行っている分、今までの挑戦者よりはまともに戦えているのだがそれでも彼女には勝てないようだ。 「なあ、橙……さん。」 「なんだ明日真。」 「その、君の都市伝説ってのは本当に……?」 「しつこい奴だな、僕の都市伝説はラプラスの悪魔だと言っているだろう。」 「アスマー、女の子に詮索かけるのはあんまり良くないよー!」 「むぅ……。」 橙レイモンという少女は『ラプラスの悪魔』と契約している契約者なのだそうだ。 どうも俺にはそれが信じられない。 こんな小さい少女がそれ程巨大な都市伝説と契約できそうには思えない。 その辺りの詳しい事情も聞きたいが恋路に阻まれて聞き出せない。 「壁際まで追い詰めて1killコンボ!」 「うわー!また負けた!」 「レモンちゃん大分強くなってきたねえ!」 まあ解らなくても良いかと思う。 橙は優秀な助手だったしこれ以上探るのも野暮という物である。 というか探偵そのものだった。 おそらく笛吹は彼女に探偵業務の大半を行わせていたに違いない。 「明日君、頼まれていた都市伝説の出没マップ持ってきたよ。 元気無さげじゃない?」 ドアが開くとセーラー服の少女が事務所に入ってきた。 向坂境、この探偵事務所の所長だ。 笛吹がまとめた都市伝説の資料を向坂が持ってきてくれたのだ。 「ああ、向坂さん。いやどうにも笛吹という男が解らないんだよね。」 「そう?あの人って良い人よ。私のお姉ちゃん見つけてくれたし。」 「そりゃあ仕事だったからだろう。」 「わたしお金払ってないよ?」 「ああ、そういやそうだったな。良い人って……どんな風に?」 よく考えれば俺は笛吹という人間をよく知らない。 これから戦うことになるにしてもこのまま協力関係が続くにしてもあいつのことを知っておくべきだろう。 「彼は、神様みたいに良い人でした。」 歌うように語り始める向坂。 そうとうあの男が好きなのだろう。 そういえば笛吹は女性に好かれやすいな、この事務所のスタッフも彼が契約している都市伝説も女性だ。 あんな性格なのに何故だろう? 理不尽だ。 「まあ神様というのは冗談として彼って基本的にずれた人です。 だからなのか知らないんですけどついつい見ていたくなります。 彼は彼しか愛せない人間ですが、そんな彼だからこそ不思議な魅力を持っている。 むしろあれほど魅力的な自分だったならば愛せざるを得ないかもしれない。」 「変わっているけど良い奴なのか?」 おかしい、俺は会った瞬間殺されかけたはずなのだけどな? 「自分はろくでもないド外道の畜生野郎だからできるだけ人に優しくしているって言ってました。」 うん、確かにあいつはド外道だ。 「成る程ね、他になんか特徴って無いの?」 「ああ、すごく自己中だよ。」 今度は後ろから声が届く。 橙レイモンが口を挟んできた。 「あいつはとにかく自分の感性を優先する。 他人の事なんて一切考えない。 自分の都合で誰かを幸せにして誰かを不幸にする。 そこそこ優秀な人間だからなおのこと他人に迷惑かけるんだよ。 人間味が薄い、ってのが一番言い得ているかな?」 「あー、それは私も思った。 笛吹さんって人間っていうには頭の捻子外れちゃっているよね。」 今度は恋路だ。 なんでみんなあいつのことを話したがるのだろう? 「お前ら楽しそうだなおい……。」 思わず呟く。 悪人ほど人を惹き付けると言うがその通りなのだろうか? 誰かと人間関係を作るとき善悪なんて人はそれほど気にしない物なのかもしれない。 でも、悪いことは悪いこと。 どこまで言っても変わることはない。 だからそういう考え方は駄目だと思うのだが、今言っても仕方がないか。 「話題にしてると飽きないから。」 「話題にしかならないから。」 みんな、同じようにそう言った。 カランコロン! 事務所のドアが開く。 「皆さんこんにちわ………?」 遠慮がちに扉を開けて来たのは金髪の幼女だった。 「おや、メルちゃんじゃないか。」 「お久しぶりです皆さん。」 「やっと来たか笛吹(小)。」 「メルちゃん元気になったー?」 幼女、といっても都市伝説『ハーメルンの笛吹き』、しかも本体である。 本来とても危険なはずの都市伝説なのだがここに居る女性陣は普通に接していた。 普通身構えないか? 俺がおかしいだけなのかもしれない。 「明日さん、その節はどうもお世話になりました。」 ぺこりと頭を下げるハーメルンの笛吹き。 「いえいえ、こちらこそ。」 一応自分も頭を下げてみる。 どうも彼女のことは苦手だ。 「メルちゃんとりあえずスマブラやろうぜー。」 女性陣は四人揃ったのでスマブラを始めることにしたらしい。 俺は人数にカウントされていないようだ。 「私wii出してきますね。」 「――――――向坂さんそこを開けちゃ駄目だアアアアアア!!」 「え、あ、…………うわあ。」 絶叫するレイモン。 愕然とする向坂。 「所長が何か妙な物でも隠してたんですか?」 メルが後ろから覗き込もうとする。 「駄目だ、メルちゃん貴方は見ちゃ駄目!」 「あ~れ~!?」 向坂はすばやくメルの目を隠す。 「あはは、まあ所長も成人男子だしねえ……。これくらいなら許容範囲内じゃない?」 恋路がとりあえず弁護し始める。 「じゃあ恋路さん、仮に明日君がこんな物持ってたらどうしますか?」 俺の話にするな、向坂。 「そりゃ決まってるじゃないか向坂さん。」 「と、言いますと?」 「正直引くわー………。」 俺は家に帰ったらすぐに『Hで綺麗なお姉さん』のDVDを処分することに決めた。 さらば、俺の秘蔵コレクション。 「さて、気を取り直してゲームやりましょうか。」 「そだね、これは見なかったことにしよう。」 くそっ、あいつの隠してたDVDってなんだったんだ! すげえ気になるじゃないか! あいつの好みってなんなんだ? わがままな性格だから年下か? いや、もしかしたら人妻とかそういうドロドロしたのなのか? 気になる!すっげえ気になるじゃないか!!! 「あ、あのさ……。」 意を決して聞いてみることにした。 「其処にあったのって……。」 女性陣が同時に振り返る。 少々怖い。 「あ、すいませんでした。」 とてつもない疎外感を感じた。 「テンッ!クウ……ウボァー!」 「ふっ……そこだぁ!」 女性四名はスマブラをしている。 先程までは恋路が圧倒的に強かったようだが今度は橙が強いらしい。 「橙さん、弱った相手だけ狙いますよね。」 それに真っ先に気付いたのはメルだった。 ピクミンを投げながら向坂を牽制している。 「これはそういうゲームだよ。」 「それにしてもまさか私達の動きを能力で読んでいるなんてことは……。」 まさかこのゲームでも橙は都市伝説の能力を使っているのか? 「だからどうしたんだと言うんだ!ハッハー!勝てば良いんだよ勝てば!」 もはやキャラが違う。 スマブラが友情破壊ゲームだとは聞いていたがここまでとは知らなかった……。 「その通りだ、レモンちゃん。」 「えっ、嘘!?」 一瞬で橙のマルスまでの距離を詰める恋路のウルフ。 「こいつで遊んでやるぜ!」 「あーれー!?」 橙のマルスはなすすべもなく吹き飛ばされていった。 はて、ここは探偵事務所だったような気がするのだが……? これだけ遊んでいても良いのだろうか? 一しきり遊ぶと恋路は夕飯の為に買い出しに行ってしまった、 橙は親御さんらしき謎の紳士のお迎えで帰り、 向坂は親と約束した時間なので自宅に帰って行った。 そして俺とハーメルンの笛吹きのみが事務所に残されてしまった。 「明日さん、私が暴走している時に所長の手助けをして頂いたって話を聞きました。 本当にありがとうございます」 急に真面目な顔になって俺に頭を下げるメル。 どうにもこうやってまともに感謝されるのは苦手だ。 別に当たり前のことを当たり前にやっているだけな訳だから。 「いや、誰かを助けるのに理由なんて要らないよ。」 「……本当に良い人なんですね。理由が有ればなんでもするあの人とは正反対だ。」 「理由が有れば?」 「ええ、あの人は都市伝説として消えかけていた私を明確に人々に記憶させる為にあんなことしてたんです。 そこに彼自身の趣味趣向はあったのでしょうけど……。 そういう大義名分は少なくともありました。」 「この前の孤児院襲撃もそうなのか? 男の子一人に説教決める為だけに大暴れしたそうじゃないか。」 「ああ、あれも組織の過激派に連れて行かれそうだった女の子救い出す為にですね。 あの人は悪魔ですから、自分と自分の周りの物の為ならなんでもやります。」 「悪魔ねえ……。誰かを守る悪魔?」 「誰かを守るから悪魔なんですよ。」 「まったくだな。」 メルの言葉は不思議と胸に納まった。 「誰かを守るから、誰かを傷つけなきゃならない。」 「私は他人を犠牲にしてでも生き残ろうと思った。 でも私は手を染めたくない。 そんな時、彼が私の代わりになんでもやってやると言ってくれた。 ほんと、そんなもんですよ彼なんて。」 「悪だなあ、退治するべきだったか?」 「もう遅いですよ。 私は恐怖の都市伝説として生きていけるんで向こう1000年いけますね。 もうしばらく私が戦うことはないです。 だから私を殺しても無駄です。」 「そっか、じゃあやめる。」 わるいことをもうしないなら良いんだ。 「ていうかあれです。 もう私は只の人間とそんなに変わらないんですよ。 都市伝説の能力がほとんど無くなっちゃったんで。」 突然、メルから思わぬ言葉が飛び出た。 信じられなくてもう一度聞き返す。 「今、なんていった?」 「いや、だから所長にとりこまれちゃったんですよ。 私はまあ……ハーメルンの抜け殻的なあれです。」 「都市伝説を取り込むって……。」 「だから、私はもう何も出来ない無害な存在ですよ。」 そういってメルは力なく笑った。 「その話を聞いて気になったんだけどさ。 じゃあ今、お前の契約者はどうなっているんだ?」 「特に変わった様子はないみたいですけどねえ?」 「……少し気になるな。」 「まあ学校町もすっかり平和になりそうですからあの人は大人しくなりますよ。 いつも平和になったら真っ先に消されるのは自分だってぼやいてますし。 それを避ける為にも静かになるんじゃないですか、多分。」 「悪人も苦労しているわけだ。」 「ていうか悪いことするのってすごい労力が必要ですから。」 「苦労してわざわざ悪いことするのか? やめて欲しいなそれは。」 苦笑せざるを得ない。 「善悪なんて誰かが後から決めるものですよ。」 「いいや、善悪は自分が決めるのさ。」 「決められるほど立派な人間なんですか?」 自分は立派な人間じゃない。 それ位は解っている。 「いいや、でも悪いことは悪いって誰もが解るだろう? 常識的に考えて。」 「常識………、ですか。」 「良心でも良い。」 常識とか良心が無かったらお終いだろう? そうとしか自分には言えない。 「善悪って理屈じゃないと思うんだよ俺。 最後は何も言わずに解るような常識とか良識にかかってると思うんだよね。 そうじゃないと同じ人間で居る意味が無い。 理屈抜きにして伝わる物が一番大事だよ。」 「…………ふっつーに善人ですねあんた。」 「ありがとう、偶に言われる。」 良い人だね、この言葉が正義の味方の証明だ。 この言葉があれば自分はいつだって正しくいられると思うのだ。 それが皮肉でもあてこすりでも構わない。 だって駄目だろ、常識的に。 何時だってそう言えるのが理想ではあるがそうも言えないのが中々悲しい。 「どうしたんですか明日さん、難しそうな顔をして?」 「そうか?」 契約者もそうだがこいつも結構するどいなあ。 やはり苦手だ。 「只今ー!夕ご飯の材料買ってきたよ、メルちゃんも食べていくかい?」 しばらくすると恋路が両手にスーパーの袋を抱えて帰って来た。 「お、恋路おかえりー。」 「ああ、じゃあ私も食べていきます。」 「今日の晩ご飯はウナギです。」 「うわっ、贅沢!?」 「あれ、ああそういうことなら邪魔者は退散しますね。」 いそいそと帰り支度を始めるメル。 「いや待って!?そういうんじゃないから!」 慌ててメルを止める恋路。 個人的には彼女が帰ってくれた方が俺は嬉しかった。 「じゃあ私キッチン借りるからー!」 「じゃあ私はお皿とか準備しときますね。」 いそいそと二人が夕食の準備を始める。 俺も事務所の表札をopenからclosedにしてくることにしよう。 ウナギの焼ける良い香りを楽しみながら俺は所長の椅子から立ち上がったのである。 【電磁人の韻律詩17~笛吹探偵事務所の日常~fin】 前ページ次ページ連載 - 電子レンジで猫をチン!
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組織構成員(A-№100~A-№110) A-№100 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 A-№101~A-№110をまとめる長 A-№101 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 長髪の黒服 A-№102 【性別】 男 【都市伝説】『真柄直隆・直澄同一人物説』 【能力】 220センチの巨大刀「太郎太刀」と「次郎太刀」による二刀流 【備考】 戦闘担当 大柄な男 A-№103 【性別】 男 【都市伝説】『忍者服部半蔵』 【能力】 伊賀忍法 【備考】 諜報担当 元H-№だったところをA-№100に引き抜かれ現在に至る A-№104 【性別】 男 【都市伝説】『忍者猿飛佐助』 【能力】 猿飛流忍法 【備考】 戦闘担当 元S-№だったところをA-№100に引き抜かれ現在に至る A-№105 【性別】 女 【都市伝説】現状不明 【備考】 戦闘担当 A-№106 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 諜報担当 A-№107 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 実験担当 A-№108 【性別】 女 【都市伝説】現状不明 【備考】 実験担当 A-№109 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 諜報担当 A-№110 【性別】 男 【都市伝説】現状不明 【備考】 雑務担当