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・お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ! ゴッ 「「~~~ッッ!!!!」」 頭部に走った余りの激痛に二人してのた打ち回る。 周囲が笑いの渦に飲まれていたが二人ともそんな事気にしては居られない。そして見事に同じ事を考えていた。 (何だこの石頭はッッ!!!!) 腕を組みいかにも威厳たっぷりに此方を見下ろすピンク頭。 「で!あんた一体誰?!」 しかしその額は心なしか少し赤く腫れ上がっている気がしないでも無い。威厳はその腫れで帳消しになっており…どちらかと言えばマヌケだ。 恐らく明日には青くなっているだろう。 「…エルメェス…エルメェス・コステロだ」 取りあえず名前を答えておく。 …ん? 「エルメェス?変な名前」 私の名前は『それ』だったか? もう!もう!!何なのよこいつは!!! いきなり頭突きしたり私を無視して俯いたり! 何よ何よ変な髪型! 「ミスタコルベール!やり直しを!やり直しを要求します!!」 こんなの冗談じゃない 「流石はゼロのルイズ!」 「また失敗かよ!」 「平民だ!平民を召還しやがった!!」 うっせ―黙らっしゃいこのピザが 取りあえずマルコメヌは 「ピギィ!」 蹴っておいた 「ミスタコルベール!やり直しを!!」 全く冗談じゃ無いわよ マルコリヌうっさいのた打ち回らないで 「ミスヴァリエール、それは無理だ。 呼び出してしまった以上ゥ君の使い魔は彼女…?だ。残念ながらやり直しは出来ないのだよ。」 「糞ったれこのコッパゲが残りの毛全部むしってやろうか」 (そんな…ミスタコルベールあんまりです) 「「…」」 間違ったァ――!言ってることと思っている事が逆でしたァ―!! コホン… 「さ、さぁさっさと儀式の続きをを」 多少口元がひくついてるけど大丈夫でしょ 大丈夫大丈夫もーまんたい のた打ち回らないでってばマルコリヌ 何?股間?股間が痛いの?見苦しい見苦しい見苦しい三回言った ちらと後ろに目を向けるとまだ地面に座り込んでいる平民が居た。 性別は恐らく…女?厳つい顔をしている。 後、変な髪型。それに石頭。更に石頭。石頭。 ちょっと!何で私より胸があるっていうのよ!舐めてるわね!?クソッ!クソッ! と、言うかさっきから微動だにしないんだが大丈夫なのかしら まさかさっきの頭突きで色々吹っ飛んだなんて事無いでしょうね 「ねぇちょっとあんた一体どこの平民?頭(の中とか)大丈夫?」 「えっあっああ…うん大丈夫だ」 何よ周りをキョロキョロ見回して そっか平民だからこんなの見慣れてないのね それにしても…ああ、さようならルイズのファーストキッス せめて男が良かったわ 見た目男っぽいけど 行くのよルイズ!がんばっ!ルイズ! 平民の額(あ、赤くなってるわザマーミロ)に杖を向け呪文を唱える 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え 我が使い魔となせ。」 そしてそのまま顔を近づけぇ――― ドカッ! 「まそっぷ!」 後ろに吹っ飛ばされた 「なっ何をするだぁ―!!痛いじゃないの!」 「それはこっちのセリフだボケが!」 平民の癖に口答えするわけ!?頭に来た! 「ファイヤーボール!」 チュドーン! よっしゃ当たった!この際ファイヤーボールが失敗したとかどうでも良いわ 気絶した隙に契約する!なんて頭がいいの私! ズキュ――z___ン!! 契約完了 to be continued…-
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「嘘・・・どうしてフーケが!?」 岩石を切り抜いて作られたラ・ロシェールそのものを素材にして錬金された 巨大ゴーレム。突如出現したそれの肩に長い緑髪をなびかせて座っている女は、 忘れもしない土くれのフーケだった。自分の言葉を中断されて少し助かったと 思ってしまい、ルイズはぶんぶんと首を振る。フーケは端正な顔を不機嫌に 歪めてルイズに答えた。 「実に親切なお方がいらっしゃってねぇ わたしみたいな美人はもっと世の中に 貢献しなくちゃいけないっておっしゃってね 牢から出してくれたのよ」 皮肉たっぷりにそう言って、フーケはじろりと隣を睨む。彼女の刺すような視線の 先にいたのは、白い仮面をつけた黒マントの貴族の男だった。フーケの言動に 一切の反応を示さず、腕を組んで冷厳とルイズ達を見下ろしている。 「個人的にはあんた達なんかとは二度と関わりたくないんだけどね これも仕事よ、恨まないことね!」 言うが早いか、ゴーレムの柱を束ねたような腕が高速で振り下ろされた。いつの 間にか己の剣を握っていたギアッチョは、ルイズを小脇に抱えるとベランダの 手すりを踏み台にルーンの力で数メイルを飛び上がった。直後岩で出来た ベランダを粉々に破壊したその拳に見事に着地して、ギアッチョはピクリとも 動かない表情のまま口を開く。 「やっぱりよォォ~~ オレは戦うのが性に合ってるみてーだなァァ」 「ちょ、ちょっと!どどど、どこ触ってんのよこのバカ!離しなさいよ!」 小脇に抱えられたままルイズがじたばたと騒ぐ。 「どこ触ろうと同じだろーがてめーの身体は 黙ってねーと舌噛むぞ」 「おなっ・・・!?」 ルイズの頭にガーンという音が響き渡った。心に深いダメージを負ったルイズの ことなどつゆ知らず、ギアッチョは戦闘態勢に入った眼でフーケ達を睨む。 足場にしている拳に振り落とされる前に、「ガンダールヴ」の脚力で一瞬のうちに 肩へと駆け上がる。デルフリンガーを持つ方向に身体をひねり二人まとめて 横薙ぎにブッた切るつもりだったが、 「チィッ!」 仮面の男が一瞬の機転でフーケの首根っこを掴んで後方へ落下した為、 デルフリンガーは虚しく宙を切った。ギアッチョは特にイラだった顔も見せずに 地面を覗き込む。レビテーションをかけたのか、男とフーケは無事に地上に 降り立っていた。フーケと結託しているのなら、仮面の男とその仲間には当然 ホワイト・アルバムのことは知られているだろう。もはや隠す必要もないと考えて ギアッチョはゴーレムを凍結しようとするが――下のほうから聞こえてきた怒声や 物音がそれを中断させた。 「どうやら・・・あいつらも襲われてるみてーだな」 放っておくべきか一瞬迷ったが、酒を飲んでいるならマトモに戦えていないかも 知れないと考え、ギアッチョは助けに行くことを選択した。もはや抵抗もしない ルイズを小脇にかかえたまま、見るも無残に破壊されたベランダから部屋に 飛び込み、扉を蹴破って廊下を走り、手すりを乗り越えて階段を飛び降りる。 果たしてギーシュ達は、全員無事に揃っていた。もっとも、テーブルを盾にして いる彼らの頭上では無数の矢が飛び交っていたが。 ギーシュ達と共にワルドがいたのを見て、ギアッチョはピクリと眉を上げる。 背格好といいタイミングといいあの仮面の男がワルドだとギアッチョは殆ど確信 していたのだが、どうやら自分の推理は間違っていたらしい。考え込む彼に 気付いて、ギーシュが声を上げる。 「ギアッチョ!無事だったのかい!」 その声でキュルケ達は一斉にギアッチョを見た。ギアッチョはフンと鼻を鳴らすと、 ルイズを引っ張ってキュルケ達の後ろに身を伏せる。 ギアッチョはフーケがいることを伝えたが、どうやらその必要はなかったらしい。 戸口からは思いっきりゴーレムの足が覗いていた。「それはともかく」と前置きして、 キュルケは鬱オーラ全開で俯くルイズを見る。 「ルイズ、あなた大丈夫?」 「・・・・・・尊厳を汚された・・・」 「は?」 意味が分からずに怪訝な声を上げるキュルケだったが、「一年後に後悔しても 許してあげないんだから」だの「まだ変身を三回残してるのよ きっとそうよ」だのと 肩を震わせながらブツブツと呟いているルイズを見てなんとなく事情を察した。 とりあえずルイズは放置することに決めて、彼女はギアッチョに向き直る。 「どうするの?ギアッチョ」 言外に「魔法を使うのか」と尋ねるキュルケに、ギアッチョは思案顔で黙り込んだ。 しかしギアッチョが結論を下す前に、ワルドが口を開く。 「諸君、このような任務は半数が目的地に辿り着けば成功とされる」 周りの状況などおかまいなしに本を読んでいたタバサが、それを受けてワルドを 見る。ぱたりと本を閉じると、キュルケ、ギーシュ、そして自分を指差して「囮」と 呟いた。ワルドは重々しく頷いて後を引き継ぐ。 「彼女達が派手に暴れて敵を引きつける 僕らはその隙に、裏口から出て 桟橋へ向かう」 その言葉に、ルイズが弾かれたように顔を上げた。 「ダメよそんなの!フーケもいるのよ!?死んじゃったらどうするのよ!」 「いざとなれば逃げるわよ それにわたし、今ちょっと暴れたい気分なのよね」 キュルケは余裕の笑みでそう嘯く。それに追従してタバサが「問題ない」と言い、 ギーシュは相変わらずガタガタ震えていたが、「いいい行きたまえよ君達! ぼ、ぼぼ僕はフーケのゴーレムに勝った男だぜ!」 と誰が見ても明らかに分かる虚勢を張り上げてルイズ達を促した。 「行って」というタバサの声と、「行きなさい」というキュルケの声が重なる。 ルイズはそれでも二の足を踏んでいたが、 「別にルイズの為にやるわけじゃないんだからね 勘違いされちゃ困るわよ」 というキュルケの発破で、何とか行く決心がついたようだった。「わ、分かって るわよ!」とキュルケを睨むと、「おーおー、素晴らしきは友情だね」と笑う デルフリンガーに二人で蹴りを叩き込んで走って行った。それを追ってワルドも 裏口へ去って行く。去り際ルイズが小さく呟いた「ありがとう」という言葉に 意表を突かれて一瞬顔が赤くなったキュルケだったが、コホンと一つ咳をすると すぐいつもの顔に戻った。 「それで、今度はどんなお言葉を下さるのかしら?」 未だ動かないギアッチョに余裕の仕草で笑いかける。ギアッチョは溜息を一つ つくと、彼女達に向き直って口を開いた。 「このまま死なれちゃ寝覚めが悪いんで忠告しといてやる ・・・命を賭けてまで戦おうとするんじゃあねーぞ」 慈悲の欠片も見当たらないような表情で、しかしギアッチョはそう言った。 「無理を悟ったらとっとと逃げろ 桟橋とやらで追いつかれたところでどうせ オレが何とか出来るんだからな」 一見どうでもいいような口調でそう言って、ギアッチョはガシガシと頭を掻く。 そうならない為に今まで隠して来たんじゃないのか、等と言う気は誰にも なかった。一様に真剣な顔で頷く三人に一瞥を向けると、彼は無言で ルイズ達の後を追った。 音を立てずに駆け去るギアッチョの後姿を見送って、キュルケはふぅと 溜息をつく。 「全く、この主にしてこの使い魔ありって感じよねぇ」 やれやれといった風に笑うキュルケに、タバサはこくりと頷いて杖を握った。 大きな音を立てて自分の顔を叩いて、ギーシュは一つ気合を入れる。 「よ、よし!行こうじゃないか二人とも!」 「ええ、火傷しない程度にね」 二人して杖を抜き放ち、ニヤリと笑いあった。
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「下着のようなデリケートなモノは私に任せてください。慣れてないと生地を傷めます」 「あぁ、ぜひお願いするよ」 水場で肩を並べて洗濯しているのは、シエスタと露伴だ。 昨夜ルイズに洗濯しておくように言われたシャツ、スカート、下着に合わせ、ベッドに掛けられていたシーツも。 衣類三つはシエスタに任せ、露伴は一際大きいタライにシーツをひたし、裸足になって踏むように洗っている。 今朝はルイズの絶叫にて起こされた。それと同時に静の泣き声の協奏曲だった。 どうと言うことはない、ただ単純に静がおねしょしただけの事だ。 生後一年に満たない赤ん坊だ、おねしょして当然だろう。 しかし、突然生暖かいモノに襲われたルイズの驚きようは尋常じゃなかった。 塔全体に響き渡りそうな絶叫だったが、不思議と聞きとがめて覗きに来るようなモノはいなかった、何らかの魔法を使っているのだろうか。 とりあえず静を裸にして、汚物にまみれた服とシーツと、ルイズの服もまとめて洗濯している。 シエスタには洗い場を探しているときに遭遇したのだ、お約束である。 とりあえず汚れの酷い静の服と、シーツを重点的に洗う。 赤ん坊の排泄物はさほど匂わないと聞いていたのだが、離乳の始まる生後半年頃にもなるとすっぱい匂いを確認した。 コレで赤ん坊を書くときよりリアルな描写が出来るぞ、と思いつつ露伴は踏み洗いを続行する。 「そう言えばロハンさん。シズカちゃんはロハンさんの……?」 「ん? あっはっは。何を言ってるんだ、ぼくはまだ二十歳だぞ。それに人付き合いという煩わしいモノより大切なモノがあるからね」 静は知人からの借りものさ。言ってなかったっけ? と露伴が言う。 「え……ですが、十代で結婚は普通だと思うんですが……」 「そうなのかい。なるほど、それは勉強になった」 この間、露伴はシエスタの顔を一度も見ていない。 顔を見ようとしない露伴にシエスタは怪訝そうな顔をするが。 「あの、ロハンさん。ロハンさんってどんなところに住んでたんですか? ミス・ヴァリエールへの対応が平民とかけ離れてるように思えて……」 「杜王町という町だ。特に都会というわけではないが自然が一杯で静かで、仕事がやりやすい、良いところだよ」 露伴の言葉『自然が一杯』と言うフレーズでシエスタは己の故郷、タルブの村を思い起こす。 「お仕事、されてたんですか。どう言った?」 「ぼくの生業は作家だよ」 「作家さんですか……どう言った物を書いていたんですか?」 「タイトルは『ピンクダークの少年』という。最近はちょっと事情があって休載していたがね。そろそろ再開しないと。ははは……」 聞いたことのないタイトルにシエスタは首をひねるが、『イーヴァルディの勇者』みたいなモノだろうかと想像する。 活版印刷のないこの世界で、出版物としての物語でポピュラーなのは『イーヴァルディの勇者』という叙事詩である。 シエスタも幼い頃、母に読んでもらったことは覚えている。 「ここでの経験は素晴らしいよ!! 今こうしているだけでも創作意欲がわいてくる。しかし道具がないのが悔やまれるな……どうにかして調達しないと」 踏み洗いしながら露伴は呟く。 「コレからいったい何が起こるのかぼくには全く予想が付かない……… まぁ、あちらに残してしまった事をそのままにしておく訳にもいかないから、帰らなくちゃ行けないんだけどね……」 そう言って沈黙した露伴に、シエスタは何か言おうとして口を噤んだ。 自分では理解できない思いで露伴が悩んでいることを察したからである。 「きっと………帰れますよ」 「……あぁ、赤ん坊のためにも、見つけ出さないとな」 丁度、汚れがキレイに落ちた。 汚れは落ちたと言ってもまだ濡れている。 日干しをシエスタに任せて露伴は急ぎ足で部屋へと戻る。 途中何人かの生徒と擦れ違い、その度に指差されて笑われたが、露伴はそれらを全て無視した。 ノックもせずドアをガチャリと。 「ん? 鍵締めてなかったのか」 そう呟いて内開きの扉を押して開く。 するとそこには、部屋の真ん中で困惑した様子で静を抱くルイズの姿があった。 「ちょっとロハン遅いわよ。はい」 そう言ってルイズは静を定位置へ、露伴の腕へと帰す。 一着しかない服は洗濯しているため、その代わりにタオルケットでくるまれている。 「もう、この子、人の胸ばっかまさぐってくるのよ」 「お腹がすいたんだろうな。吸わせてやれば良かったじゃないか、良い経験になる」 「っ…………」 落ち着け、落ち着け~、とルイズは自制する。 こいつの性格はまだ一日しかたってないがすこし把握した。 こいつは『全て良い経験』で片付けてしまう節がある。 下心も何もあったもんじゃないと言うことを把握した。ニヤニヤ笑っていれば冗談で言っているのがわかるが、真顔で言うのだから抗議のしようがない。 「吸わせてやってもいい気になったら言ってくれ。ぜひその場をスケッチさせてもらいたい」 前言撤回、こいつはどうにか自重させなければ……。 「ところでもう着替えたのか」 露伴の言葉に、ルイズは呆れたような口調で応える。 「だって仕方ないじゃない。シズカのおねしょで服汚れちゃったし。汚れたままあんた待つってのもおかしいし」 「そうか、てっきり着替えさせろとでも言うかと思ったのだがね」 「させようと思ったわよ。でも汚れたまま待つのもイヤだし。服脱いで全裸で待つのもイヤだし」 「ぼくとしてはぜひさせてもらいたかったというのも少しあるかな。人の服の着脱をしてやるというのも良い経験になる。もちろん君の頃の女子の肌がどんな感触かも確かめさせてもらうがね」 露伴がそう言った途端、ルイズは紅潮し両手で肩を抱くようにして引いた。 「………どうした、使い魔に裸を見られてもどうって事無いんじゃなかったのか? それに恥ずかしがるような体型でもないだろう」 「ぁ、あんたの言い方がいちいち卑猥なのよ! なんであえてそんな言い方するのよ! 一言おおいのよあんたはっ!」 「違うな。卑猥なのはぼくじゃない、それを卑猥だと感じる君の方が卑猥なんだ」 「な…………なんで私がっ!!!」 「ぼくは常に知識を増やそうと努力している。その為ならばたとえどんなことだろうと甘んじて受け入れる『覚悟』をしている。そしてその知識には卑猥とか卑猥でないと言った区別は『ない』のだ。判断してるのはルイズ君だ」 「………なんかあんたと話してると頭いたくなってくるわ……良いわよもう、好きにしなさい」 そうさせてもらうよ、と露伴は応え。部屋を出るルイズの追従する。 それと同時に、隣の部屋のドアが開いた。 こいつは、確かキュルケと言ったか。 ヴァリエールの領地の隣、ゲルマニアのツェルプストーの一人娘。 確か歳は十八、ルイズの記憶によると男遊びが過ぎてゲルマニアにいられなくなってトリステインに来るようになった、とか書かれていたな。 しかしそれはあくまでルイズの記憶、ルイズの感想でしかないからあまり参考にはならんな。 後でこいつも直接読むか……。 なんて、露伴が考えていることを想像だにせず、等の二人は廊下のど真ん中でぎゃあぎゃあと叫いていた。 厳密に言えば、叫いているのはルイズだけで、キュルケはそれをさらりと流しているだけだったが。 「やっぱり使い魔はこうじゃなくっちゃね~。フレイム」 そう言ってキュルケの部屋からのそのそと出てきたのは真っ赤な何かだった。 「むっ、しっぽに炎があるデザインなのか。トカゲのようだが鱗は……なるほど、ずいぶん細かいな。体長は190ほどか。足はさすがに短いな」 フレイムが出てきた途端、露伴は飛びついてなで回し始めた。 もちろん、その腕のシズカはキュルケに押しつけた。 突然なで回されてフレイムは当惑しているようだったが。キュルケはそんな露伴の行為に満足そうに笑みを浮かべた。 「火竜山脈のサラマンダーよ。タバサのシルフィードには劣るけど、それでも一級品の使い魔よ。その辺の好事家に見せたら値段なんてつかないわよぉ~」 「ふん、あんた『火』属性だしね。そりゃよかったわね」 「えぇ、微熱のキュルケですもの、でもそれで男の子とはイチコロ、あなたと違ってね」 そう言ってキュルケが胸を張ると、豊かなバストがぷるんと震える。 負けじとルイズが胸を張るが、戦力不足は否めない、見ている露伴が惨めな物を見る目つきになっている。 「わ、わたしはこれからなんだもん! コレから大きくなるもん!」 「十六でそれでは絶望的だがな……」 ぽろりと零した言葉に、ルイズは殺気を込めて露伴を睨んだ。 「あなた、名前は?」 ルイズとのコミュニケーションをほどほどに切り上げて、次にキュルケは露伴に話しかける。 「岸辺 露伴」 「キシベロハン? 変わった名前ね」 「ロハンが名前だ」 顔を上げることなく露伴は未だにフレイムのしっぽをなで回してる。 時たま「あちっち」としっぽの炎に触れてる。 満足したのか、露伴はすっくと立ち上がり、キュルケから静を受け取る。 「可愛いわね。あなたの子?」 「違うわよっ! あんたわかってて言ってるでしょ!」 「当然じゃない。子供どころかあんたには付き合ってる男の子すらもいないものね。じゃあお先に失礼」 ほーっほっほと笑いながらキュルケが去ると、フレイムも図体の割に可愛い足取りでちょこちょこと付いていった。 「きぃーーーーーっ、悔しい、何よ自分が火竜山脈のサラマンダー召喚したからって調子に乗って!」 「良いじゃないか、別に何を召喚しても」 「良くないわよ! メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言われるくらいなのよ!? それなのになんであのバカ女がサラマンダーで私が平民なのよ!」 相当悔しいらしい、露伴から見ても哀れに思うくらいだから相当なモノだ。 「キュルケはフレイム一匹でお前はぼくら二人じゃないか、その時点で大当たりじゃないのか」 「平民なんて物の数じゃないわよ! いぬと狼くらいの違いがあるわよ! あぁもう、せめてなにか自慢できるようなことがあればいいのに、もうっ」 発狂寸前である、露伴が『お前』と呼んだ事にも気付かないほどだった。 何を血迷ったのか。 露伴はそう悔しがるルイズに、言ってしまったのだ。 「君がそう思うならその内見せてやるよ、ぼくのチカラを」 「……ねぇ露伴今なんて?」 「赤ん坊がお腹を空かせている、早く厨房に行こうじゃないか。ぼくもお腹がすいた」 「ねぇ露伴今なんて言ったの? ひょっとして何か特技でもあるの?ねぇ今確かに言ったわよね? 今すぐ見せてみなさいよ。あ、ひょっとして昨日『見えない』とかなんか言ったことが関係あるの? ロハン! ご主人様の命令が聞けないの!? ちょっとっ」 つい言ってしまった事をほんの少し後悔しながら露伴は歩く。 その後ろを、瞳をまるで子供のような好奇心一杯で輝かせるルイズを、力の限り無視しながら。 こんな生意気なガキは嫌いなはずなのに。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1076.html
(しかし何か妙ですぞ…) コルベールは一人思考を巡らせていた。 (先程サラマンダーの炎を浴びた時、影は炎と反対側に出来るはずなのに実際出来た影は私から見て反対の方向!今もその方向にある!これは一体どういう事だ…?) 惜しいかな。コルベールはボスほど勘が働かず、後一歩のところで考えが及ばなかった。 (一先ず時間をとるべきか…!) 「ミス・タバサ、ミス・ツェルプストー!再びあやつの足止めを!」 「え!?あ、はい!フレイム!」 「お願い」 主人から命令を受けた二匹は再び足止めをしだした。 「皆さん、あやつの影を見るのです。」 コルベールが影を指差した。 「影がどうしたのですか?」 「シルフィードが吐く炎と反対に出来るはずなのに、私たちから見て反対にある事に気付かないのですか!?」 コルベールは熱弁を奮うが、四人の態度は「それがどーした?」というものだった。 「そんなしょうもない事より倒す方法を考えましょうよ。」 「ツェルプストーの言う通りです、ミスタ・コルベール。」 「…(コク)」 「だから禿げるんですよ。」 一瞬『爆炎』で全員窒息死させてやろうかと考えたが、さすがに思い止まった。 「な、何かヒントになるかと思ったのですが…」 「倒すにはあの矢をどうにかして取り上げればいいみたいです。」 今更何を言わせるんだこの禿は、という態度でルイズが言った。 「しかしですな、その事が矢を取り上げる事に繋がりませんかな?」 コルベールが食い下がる。 「そんなわけが」…ぁごぁあぁ…「ないでしょう。ん?僕の顔に何か付いているのかい?」 その場にいた全員がマリコルヌの顔を穴が空くほど見つめていた。 「ま、マリコルヌ…な、なな何よそれ……!!」 ルイズは震えながらマリコルヌの顔を指差した。タバサも表情こそ変わってなかったが、足がガタガタ震えていた。 「な、なんなんだよ!」…ぉげぁあぁ…「僕の顔に何か付いてるならそういってくれよ!」 ザッザッとマリコルヌはルイズに近寄ろうとした。 「こ、来ないでぇぇっ!!」 ルイズが無我夢中で杖を振り、マリコルヌの顔面で爆発が起きる。 「あぎゃっ!」 爆発をもろに喰らい後方へ吹っ飛ばされたマリコルヌはピクピク痙攣した後、やがて動かなくなった。 「や、やったの…?」 「分からない…気絶したみたいだけど…」 …ぁごぉおぉ… 「「「ひっ…!?」」」 マリコルヌの顔の中から現れた『それ』は地獄で苦しみ続ける亡者のような声でまだ泣き続けていた。 「ほ、本当になんなのよ!何が起こってるの!?魂と身体が入れ代わったり、ギーシュが殺されたり…!今度はマリコルヌから変なのが出てきたり…!」 キュルケがパニクって叫び出した。それを聞いたルイズは全ては自分のせいだと思った。自分がサモン・サーヴァントであんな奴を呼び出したばっかりに…! ルイズは駆け出した。 「ちょ、ちょっとルイズ!?いきなり何を!」 「全部私の責任なのよ!私があいつをなんとしてでも止めてみせる!倒してみせる!!」 「無理よ!魔法が効かないどころか、あなた魔法を使えないじゃない!」 「まだ分からないでしょ!」 キュルケはルイズを止めようとしたが、タバサの身体では走り出したルイズに追いつくことは出来なかった。 『そいつ』はフレイムとシルフィードに足止めされていた筈だったが、既に五人から遠く離れた所まで移動していた。 ルイズは追い掛ける途中、マリコルヌ同様、身体のどこかから別の『何か』が蛇が脱皮するように出て来ているというグロテスクな姿で地面を転がるフレイムとシルフィードを目撃していた。 しかし、二匹だけではなかった。空を飛んでいた鳥も、地面を徘徊していた蛇や蛙も、同じ様な姿になっていたのだ。 しかも、最悪な事にルイズの身体にも『それ』は始まった。 バリバリ… …あがぃぃぃ… ルイズの顔と腕から見たこともないものが出てきたのだ。 「あ、あ、あ あ あ あ あ あ」 ルイズはそれを見て声にならない悲鳴をあげた。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 ここまで来て全てが虚しく感じた。今更あいつを追い掛けてどうする?倒せるの?希望はあるの?なら何故追い掛ける?もういい、私も楽になろうじゃない… 追い掛けてくる皆の声が後ろから聞こえてくる…。 あまりの虚無感からその場にへたりこんでしまった。このまま奴を倒さなければどうなるのか。分からなかったが、予想は着いた。きっと私は私じゃ、皆は皆じゃ無くなる。 皆きっとそうなる…お父様やお母様も、姉さま達も、キュルケやタバサ達も…そして…私の憧れだったワルドも……『平等』に…… ん…平…等…?…『平等』……私だけじゃなく…皆『平等』に… そうだ。あいつは一切の加減無く『平等』に皆の魂を入れ替えた。何故そのような事が出来る?一人一人の魂を支配しているから?でもどうやって… ルイズは二つの事柄を思い出した。それは『矢』と『影』である。 あいつは矢を守ろうとしている。ならば矢を奪い取るのが倒す方法だと思っていた。 だが、触ったらギーシュの様になってしまうだろう。攻撃も与える事もシルフィードが示したように、出来ない。 それは何故だ?ひょっとしたら矢が本体じゃないのか?あの黒い人影は矢がそれを守る為に生み出した『物』と考えられないか? もしこれが正しいなら、矢を奪うことは間違っている。矢が全てを支配している『方法』があるはずだ。それが倒す方法だ。 そしてそれはコルベールの言っていた『影』じゃないのか? あいつの影は私のいる方と反対にある。何故夕日や炎の光を無視してそんな所にある? 答えは簡単だ。『光』がそっちに差し込んでいるからだ。ならその光を出しているのはどこにある? 答えはコルベールが言っていた事にある。 『私たちから見て反対にある事に気付かないのですか!?』 コルベールにも見えていた。影が自分と反対にあることが。つまり『皆』そうなのだ。『皆』の反対にあいつの影がある。 ならば光源は…! 「あたしの頭の後ろ!」 ルイズが頭の後ろに目掛けて杖を振った。 …だが、不幸な事に、鎮魂歌の本編は進みすぎていて、終曲に向かいつつあった。 「何でよ…何で腕が動かないのよ…」 ルイズの顔から出た何かはその長く太い腕を伸ばし、ルイズの腕を握りしめていた。そのためルイズの腕はそこから動かなくなっていた。 「は、離しなさい!」 ルイズが開いた手でその腕を引きはがそうとした。だが、何かは腕を離そうとせず、それどころか更にもう一本腕を出すとルイズの首を締め付け出した。 「が……はぁ………ッ…!」 普通他人の首を絞めると頸動脈を締め付ける為、気絶するのに一分もかからない。だが、その腕は体勢が悪い為か呼吸器のみを締め付けた。 肺に空気が入らず、ルイズは自らの意識が次第に遠退いていくのを感じた………… その時、ルイズは気持ちのいい、暖かい『風』を感じた。その『風』は黄金に輝いていた。ルイズの魂はそれに乗って空高く浮上していった。 「……ズ!」声が聞こえてくる。 「…イズ!」誰だろうか…目をゆっくりと、光に慣らすようにして開けていった。 「ルイズ!」私はベッドの上にいて、目の前にキュルケとタバサがいた。泣いていた。何でだろう? 「良かった、本当に良かった…」キュルケが抱き着いて来た。いきなりの行動に私の頭は真っ白になった。 「死んだかと思ったのよ…覚えてる?首を絞められて…」思い出した。あの時私は自分から出てきた何かの腕に首を絞められて意識を失ったんだっけ… 「ぎりぎりのところで先生があいつを倒したの。貴女の叫んだのがヒントになってね…」 私はハッとして自分の身体を見た。起伏のない胸板は相変わらずだが、白い手、そして何より長い桃色のブロンドの髪。 「元に…戻ったの…?」「ええ。ただ…」「ただ…?」 話の先は分かっていた。だが、言いたく無かった。 「ギーシュとマリコルヌは戻れなかったの。」 ギーシュはあいつに殺されて、マリコルヌの身体にマリコルヌの魂は戻れなかったから…とキュルケは悲しそうに言った。 ルイズは俯いた。二人が死んだのはあいつのせいじゃない。あいつを喚び出してしまった自分のせいなのだ。私が二人を殺した… 二人の遺族や友人にどう謝ればいいのだろう。何をしても許してもらえるとは思えない。 「貴女のせいじゃない」 タバサが静かに言った。 「…タバサ…」 「貴女はあいつを喚んだけど、誰かが犠牲にならなくては倒せなかった。」 それに倒したのは貴女だから借無し、と付け加えた。ルイズは小さく、ありがとう、と言った。 後で聞いた話だが、私はあの日から二日も目を覚まさなかったらしい。その間、キュルケとタバサが付きっきりで介抱してくれていたそうだ。 そして目が覚めてから三日が経った今、私はミスタ・コルベールと親友二人に見守られながら、ルーンを唱えた。 また爆発するだろう。だが、きっと中からは一人の少年が現れるに違いない。そして紆余曲折を経て、私と彼は恋に落ちるだろう。 そんな気が、した。 使い魔の鎮魂歌-fin
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一章六節 ~使い魔は千鳥足を踏む~ 適度に間隔を開けて連なる窓から投げ込まれる日の光は、気だるさの漂う冷たい石の廊下に、ゆるゆるとした温もりを与えていた。昨日と同じでよく晴れた青い空は、悠々広がって澄み渡り、霞一つない。 リキエルはミス・ロングビルの後ろについて歩きながら、窓の外を、茫洋たる空を眺めている。フロリダの空も意味なく見上げてしまうほどに大きかったが、この世界の穏やかに広がる青空にも、不思議と目を引き付けるものがあった。 今二人が歩いているのは、リキエルとルイズが教室に行くために通った廊下とは違う、あまり生徒達が使わない狭い通路である。こちらの方が、食堂へは近いのだという。空腹感が異様に高まっているリキエルにとっては、ありがたいことだった。 しばらくして、連なった窓が途切れる。と思えば外に出た。柔い風があった。 と、目の端で動くものにリキエルは気づく。その場所は少し遠く、どうやら広場になっているようで開けていた。 目を細めてみて、リキエルは驚いた。塔の影になって見えづらいが、そこには、およそこの世のものとも思えない光景が広がっていたのである。考えてみれば、ここはリキエルのいた場所とは常識が全く異なるのだから、その眺めも当然といえば当然なのだろうが、まだ耐性のつききっていないリキエルにはそうも言えなかった。 電柱ほどもある太い大蛇が、血の滴り落ちるほどに新鮮な餌を丸呑みにしていた。かなりショッキングである。 蛸足つきの妙齢女性と、角の生えた人っぽいなにかが険悪に睨み合っていた。三流シネマチックである。蛸足の方は授業でも見かけたが。 テレビなどで紹介されていた想像図よりも、よほど難解不可思議な格好のUMA達が寝そべっていた。なんとも感無量である。 二昔ほど前のサーカスの出し物のような、リアルな胡散臭さがそこには存在し、否定しようもない現実感も、その空間に同居しているのだった。 「う、ぉ……」 「なにか?」 リキエルは思わず声を上げ、それに一拍遅れてロングビルが振り向いた。 「いや、デカルチャーというか、仰天の異文化圏というのか、あまりお目にかかったことがないもんで。ああいった生き物には」 「使い魔たちですか。確かにあそこにいるのは皆、人里には訪れないものばかりだから、驚くのも無理ありませんわね」 リキエルの隣に立ち、それらを見やったロングビルは、軽くうなずいてそう言った。それから、横目でちらりとリキエルに目配せし、ゆったりと歩き出す。リキエルもそれに倣った。 「授業に見たやつらで、全部ではなかったわけか。まあ仕方がないよなァ、あんなにでかいんじゃあな」 「ああ見えても、そう力の強いものはいませんわ。勿論、人間が素手で立ち向かうには手に余るものばかりだけど。中の上といったところかしら」 「くくれば中ほどだって? ……あれが?」 「単純な膂力以外にも、魔力の有無といったものがありますから。竜のように強力な幻獣を使い魔に、ともなれば、相当な実力を持ったメイジということになりますわ」 「相当……」 ロングビルの言うところによれば、使い魔の力はメイジの実力に比例するということである。となれば、やはり何の力もない人間を呼び出したルイズは、ゼロを言い過ぎとしても、決して優秀とはいえないのだろう。 ――熱心では……。 あるみたいなんだがなァ。授業での態度を間近で見ていれば、それがよくわかった。 ふとリキエルの脳裏に、人知れず努力し杖を振るい、その度に爆発を起こして唇をかみ締める、桃色髪の少女の幼い後姿が浮かんだ。リキエルにはそれが、自分の単なる想像とは思えなかった。閉じられた右目のまぶたの裏には、同じ少女が椅子に座り込み、うなだれている姿が残っている。そうしながらも、決して諦めないと言った声は、まだ耳の奥で響いているようでもある。 それらの姿は、自分の中の何かを呼び起こそうとしているように、リキエルには感じられた。同じものを、掃除の時やパニックを起こしていたときにも、一瞬だけ感じた気がする。それは憐憫の情や侮蔑的なものではなく、奇妙なことだったが、一種の…………。 ――なんだったか。 そこから先が詰まる。その感情の記憶は、脳に刻まれた皺の隙間にでも吸い込まれてしまったのか、思い出そうとすればするほど、掴みどころなく離れていくのだった。犬歯と前歯の間にニラが挟まったような、手袋の薬指の場所に小指まで突っ込んでしまったような、その気になればすぐにも解消できそうなもどかしさは、その感情が決して無意味なものではなかったことを告げてくるのだが。 「どうかなさいましたか?」 ロングビルの声は、静かだがよく通る。リキエルは慌てて前を向いた。思考にのめり込むあまり、周りを見ていなかったらしい。 「は……ええとなんだったか、すいません。聞いていなかった」 「いえ、難しい顔をしてらっしゃったので」 微笑むわけでもなかったが、穏やかな表情でロングビルは言い、また歩き出した。 「……」 リキエルは、五歩ほど遅れてロングビルに続いた。そこで、今までの思考がどこかへ失せてしまっていることに気づく。必死になって掴み取ろうとしていた何かを、指の先が引っかかった途端に取りこぼしてしまったような、強い喪失感をリキエルは感じた。試しに頭を二、三度ぐらぐらと振ってみたが、それでどうにかなるわけもない。 なんら落ち度の無いロングビルを責めるわけにもいかず、リキエルは憮然とした気持ちになって、溜息をつく代わりに、自分のこめかみに人差し指を当てた。 もうしばらく歩いて、本塔の入り口が見えてきた頃、強い風が吹いた。腐ち草が舞い上がり、しばらく渦を巻いてから散り散りになる。気を抜けば、よろけてしまいそうになるほどの風だった。ロングビルは咄嗟に、その長い髪を左手でおさえたが、おさえきれるものでもなく、乱れ髪となってしまう。 「……」 軽く嘆息し、手櫛で髪を梳くロングビルを、リキエルはぼんやりと見つめた。といっても、見とれているわけではなかった。ロングビルを美人だとは思うが、それで露骨な視線を投げるほど、リキエルは不躾な人間ではない。 リキエルはロングビルに、少し前からちょっとした違和感を抱いている。それがなんなのか、手探りをしているのだった。そしてその違和感の正体が、今わかったのである。 ――どうしてこの秘書さんは、オレを助けたんだ? ミス、あるいはミセス・ロングビルは恐らくメイジだろう。生徒達や吹っ飛ばされたシュヴルーズ同様、マントを羽織っているし、腰に杖らしきものが差してあるのも見た。 こちらの世界で貴族がかなりの幅を利かせていることはわかっており、自分――平民の扱いが粗雑であることも既に明らかだ。ルイズの態度が殊更にそれを強調するようだったので、わかりやすい。 ――だっていうのに。 メイジであるロングビルは自分を気に掛けた。こんなことは初めてだった。 パニックを起こせば、周りの人間は嘲笑うか避けるかで、介抱は大袈裟にしても、声をかけ、真摯な態度で接してくれた者など皆無である。あまつさえ、人を呼んでくれる者さえなかった。リキエルが人生にまいってしまった理由の一端は、ここにもある。 あった、といった方がいい。今のリキエルは、そのあたりのことに関して、少しだけ見方を転換させている。転換の切欠は、ミス・ロングビルだ。 メイジや平民だののへったくれを差っ引いても、手を差し伸べてくれる人間がいることは証明された。元いた世界でも、ロングビルのような人間は案外いるのかも知れないと、リキエルは思うようになっている。助けてくれる人間などいない、という風に悲観することもないのかもしれないと、そう思い始めたのだ。たった一度、軽い親切心に触れただけのことだが、リキエルにとってはそれが、重要な事柄だったのである。 ちなみに、昨日の夜、ルイズのときにそう思えなかったのは、ルイズが微妙な例外だからだ。その件に関して感謝の念はあるが、何せ当初から目にしているようなあの態度である。赤の他人状態の自分が街中でパニクっていた場合、見向きもしないということはないだろうが、駆けつけて手を差し伸べようと考えるかはかなり怪しい、というのが、リキエルのルイズに対する評価だ。 閑話休題。 ただ、疑問は残る。その疑問とは、ロングビルの態度のことである。秘書であるからなのかも知れないが、平民に、しかも使い魔である自分に敬語まで使うものだろうか。その敬語にしても、時折無理に使っているような違和感が気になる。単に慣れていないだけなのかもしれないし、たまに頭を覗かせる普通の物言いが、ごく自然なものに見えるので、それと比べたときの単なる差であるのかもしれないが。 腐ち草のように吹けば飛びそうに見えて、その疑問は以外に頑固だった。いっそ本人に聞いてみようかとも思う。だが、こんなことを聞くのもおかしい気がする。そもそも聞いてどうするというのか。それにしても腹が減った。そういやコッチに来てから考えてばかりだな。しかも堂々巡りばかり、我ながらよくやるもんだ。頭使うと白髪できるっていうよなァ。いや、自分の場合髪が――。 「あ? ええと……ミス? ロングビル」 思索の合間を縫って奇襲をしかけてきた空腹のため、一気に正常な働きを失ったリキエルの脳は、それでも今度は視覚野を頑張らせていたようで、本塔の入り口を通過したことをリキエルに知らせる。 リキエルは“ミス”の部分を少しぼかしてロングビルに呼びかけた。ミセスであれば多少なりとも失礼であると思ったのだ。セの字の有無は、場合によっては女性にとって重要な部分である。 「はい、なんでしょう?」 振り向いたロングビルは、レンズの向こうの琥珀にも似た瞳に、掛け値なしに小さく喜色を浮かべていた。どうやらミスで合っていたらしい。しつこいようだがこの正否は、場合によっては重要なのである。 「食堂は本塔の一階って聞いてたんだが……」 「食堂の裏に厨房があって、私、たまにそこで食事をとるんです」 「は~、なるほど。しかしなんでまた?」 「あまり大勢のいる場所はその、少し煩わしくて……。今日も厨房でまかないをもらおうと決めていたんですよ。それと、これは少し言いにくいのだけど」 ロングビルは、今度はリキエルの顔を窺うような、曖昧な渋みを顔に浮かべた。実に多彩な表情を持つ有能秘書である。 「言いにくい?」 「はい、言いにくいことですが……平民は食堂には入れないという決まりがあるんです」 「食事処の出入り禁止……ここまで来るとまるで黒人差別だな、考え方とかがよォー」 ぼそりとしたリキエルの一言に、ロングビルはきょとんとした顔になったが、すぐにもとの表情に戻り、いつも通りの静かな口調で言った。 「なので厨房でとった方が、あなたにとって無難でもあるんです」 「確かにそうかもしれないな。すいませんね、気を使わせて」 「いえ……では行きましょうか。と言っても、直ぐそこですが」 クスリ、と珍しくも笑うロングビルの顔は、天頂間近の日の光の下にあって、リキエルにはなお輝いて見えた。 「……」 その輝きに目を瞑ったわけでもないが、リキエルは、先ほどまでロングビルに抱いていた疑問は気にしないことにした。 ◆ ◆ ◆ 厨房には独特の熱がこもっているようだった。それは熱気というよりも、働きまわる人間のいる場所特有の、外界との温度差である。 「こんにちはミス・ロングビル……ってあれ? リキエルさん?」 「ン、シエスタか」 厨房でリキエル達を出迎えたのは、今朝洗濯の手伝いをしてくれたシエスタだった。リキエルは手を挙げて軽く挨拶する。 「今日は二人分のまかないを頼めるかしら?」 「あ、はい」 ロングビルの後ろにリキエルがいるのを見て、シエスタは不思議そうに首を傾げながら答えた。それからみるみる顔を青くして、リキエルの前に小走りでやってきたかと思うと、「すみませんです――――ッ、私のせいで、その、あのっ」 前傾四十度で頭を下げた。 下げられているリキエルとその隣にいるロングビルは、シエスタの唐突な行動で呆気にとられた。 「すいませんリキエルさん私朝うっかり食堂に向かわせるようなことを言ってしまって平民が入れないことわかってたのにすいません本当にわざとじゃなかったんですごめんなさいでも私分かってたのにああリキエルさん貴族の方に何か言われませんでしたかもしかして酷い目にあいませんでしたかそうでしたらほんとうに私申し訳が申し訳で申ぢちちッ!?」 そこまで息継ぎもせずに来て、シエスタは思い切り舌を噛んだ。リキエルとロングビルが顔をしかめるほどに、である。 しかし、濁流のように流れ出る謝罪の連続だったのだ。それでいて一言一言に誠意がこもっているのだからたいしたもので、口内が例え血の池になったとしても、そこは誇るべきである。 「大丈夫?」 涙目で肩を震わせ、口を押さえるシエスタの顔を覗き込むようにして、ロングビルが声をかけた。 「はひ。すふぃましぇん」 「……ごめんなさい。喋らせない方がよかったわね」 リキエルは呻いた。シエスタが顔を上げたので、リキエルにはちらとだが、シエスタの口の中が見えたのだ。案の定、舌は異様な赤に塗れており、痛みに耐えかねて悶えていた。 ――血湧き肉踊る……。 思わず、そんな間違った表現がリキエルの頭に思い浮かんだ。 「よくもまあ、言えたもんだな。そこまで噛まずによォ。良いアナウンサーになれるんじゃあないか? それはいいとして、オレが言うのもなんだが落ち着け、とりあえず」 「ああはひ、さふですね。いへでもしかしやっぱり本当にこれがまただふも――」 「落ち着きなさいって。少し舌を休ませないと」 「……ふゃい」 ロングビルに目で謝ってから、シエスタはようやく見るも痛々しい口を閉じたが、それでも気遣わしげな視線を、リキエルの顔のあたりにさまよわせている。リキエルが何か言わなければ、いつまでもそうしていそうだった。 優しさから来る、行き過ぎた心配性とでも言おうか。シエスタは単なる言いそびれをよほど気に病んでいるらしい。リキエルにしてみれば今朝の洗濯の件があるので、そのことについてシエスタを責める気は、勿論毛頭全く皆無である。 「オレはどうにもなってない。やばいぐらい腹が空いてる以外にはな。朝は時間に間に合わなかったんだ。食堂に入る入らない以前の問題で――ってまた謝ろうとするんじゃあない。お前は何も悪くないだろうがよォ~」 リキエルはそう言ったが、口を押さえながらシエスタはまた、首の骨が心配になるくらいに頭を上げ下げした。あまり人に頭を下げられることのないリキエルは、辟易して渋面を作る。 見かねたロングビルが、シエスタの肩を優しく叩いた。 「何があったか知らないけど、リキエルさんもこう言ってるんだし顔を上げて、ね? この話はこれくらいにしましょう」 シエスタはもうしばらくの間ガクガクと頭を振り、ロングビルとリキエルの顔を交互に見やってから、ぱたぱたと調理場に駆け込んでいった。 残った二人はそれを見送ってから、厨房の片隅にあった席に腰を下ろした。 「それにしても驚きました。まさかミス・ロングビルと一緒とは思いませんでしたから」 「話すとちょっとややこしいんだが、教室で会ったんだ、偶然な。それで腹が減ってると言ったら、ここまでつれて来てくれたってわけでな」 「その節はまことにもって本当――」 「だから言ったろう、謝らなくていいってよォ」 昼食を終えたリキエルは、シエスタを話し相手に一息ついている。ロングビルは食後の紅茶を淹れてくれるということで、しばし席を外していた。 厨房は、リキエル達が来たときよりも忙しさを増していた。食事の最中に気づいたが、食堂へと通じる通路から伝わってくる空気も、いくらかの騒がしさを孕んでいるようだった。生徒達も、昼食の時間が始まったのだ。 「洗濯の手伝いだってしてくれただろう。干すのは全部押し付けちまったしなァ。旨いシチューも十分食べさせてもらった。感謝してるくらいだ、オレは」 「感謝だなんてそんな。でもシチュー、お口に合ってよかったです」 花が咲かない程度の軽い雑談をしていると、ロングビルが三つのティーカップの乗った、銀のトレイを持って戻ってきた。それを卓の上に下ろし、それぞれの席にカップを置いていく。簡素な造りながら、淡い着色が趣味の良いカップだった。 「すみませんミス・ロングビル。私までご馳走になってしまって」 「こちらこそ、いつもまかないをありがとう。紅茶はそういう意味にしておいて」 すまなそうにするシエスタに微笑みかけながら、ロングビルは手馴れた動きで紅茶を注いでいる。板についたその動きには、秘書の仕事が活きているように見えた。 注ぎ終わってから、ロングビルはシエスタの隣――リキエルの対面に座る。してからリキエルに微笑みかけた。 「どうぞ、飲んでみてください」 「どうも。じゃあ遠慮なく、いただきます…………うっ!」 カップを口元にまで持ってきて、リキエルの手が止まる。そんなリキエルを見てロングビルの目がキラリと光り、シエスタが微笑む。 リキエルはカップを少しだけ口から離し、また近づけた。薄く立ち昇る湯気が、リキエルの鼻先を湿らせる。 「どうかしましたか? 何か『変なもの』でも入っていまして? それともヌルイのは嫌だったかしら? 直ぐ飲めるよう、温度を調節したのだけれど」 変わらない表情で問いかけてくるロングビルを、リキエルは鋭く見返す。その顔には軽い驚きが浮かんでいた。 「何か入っていたかだって? それはこっちの台詞だ、ミス・ロングビル。こいつは紅茶なんですか? 本当に『ただの紅茶だ』とそう言うってわけですか?」 「ええ、それは『ただの紅茶』です。……さ、遠慮せずどうぞ」 顔を上げて、ロングビルはリキエルも顔を真正面から見返して、言った。リキエルの顔が、いよいよ驚きに染め上げられていく。 不敵な色に彩られたロングビルの視線と、驚きに塗れたリキエルの視線が交わる。 リキエルはロングビルから視線を外し、手に持ったカップに戻す。しばし、そうしていたかと思うと、素早い動きで口元まで運び、グイィィ――ッと一気飲みに仰いだ。 緩慢な動きでカップを置いたリキエルの顔に、ふと笑みが浮かんだ。頬の筋肉がほんの一瞬、引き攣れたような感じになってうまく笑えず、皮肉っぽい笑い顔になった。思えば、この世界に来る以前から、随分と久しく笑っていなかった。 「オレはあまり紅茶には詳しくないし、匂いがキツイんで好きなわけでもない。手間がかかるだけの飲み物だと思っていた。だが今、紅茶を愛飲するやつらの気持ちがわかったぜ。……ミス・ロングビル、あんたの淹れた紅茶の『香り』に、紅茶の『苦味』はなじむ。実にしっくりと、よくなじんでいたぞ。うまかったぜ、要するになぁ」 それを聞いて、リキエルの顔を注視していたロングビルは、撫で下ろすように胸のあたりに手を置いた。褒めちぎられたからか、息苦しそうにも見える顔になっている。 ロングビルは蝙蝠の羽音ほどの、静かな息を吐いた。 「自分で淹れるのは、ここに勤めてから始めたばかりの素人芸で、ちょっと不安だったのですが、よかったわ。でもそんなに言われてしまうと、ちょっと気恥ずかしいわね」 「謙遜することないですよ。ミス・ロングビルの淹れてくれる紅茶、とても美味しいです。厨房の皆もそう言ってますし」 「……ありがとう」 屈託なく笑うシエスタに、ロングビルは嬉しそうな、それでいて困ったような微笑を返す。やはり恥ずかしいのだろうか。 そこで、はたと気づいたといった具合に、ロングビルは時間を確かめた。 「あら、もうこんな時間だったんですね。ゆっくりしすぎましたわ。シエスタ、私はそろそろお暇させて貰うわね。リキエルさん、機会があればまたご一緒しましょう」 慌てるほどではないが、リキエルたちがここに来てから、それなりの時間が経っていた。 「こちらこそ。それとすみませんでしたね、色々とよぉ」 「お仕事がんばってくださいね、ミス・ロングビル」 ロングビルは席を立ち、居住まいを正してから、シエスタ以下厨房の面々に礼を言いながら出て行った。 ――さて、オレはどうしようか。 昼食は馳走になった。食後の紅茶まで飲ませてもらった。これ以上自分が厨房に居座っても、邪魔になるだけだろう。リキエルはそう思った。居座ったところで、シエスタは嫌な顔一つしないだろうが、だからといって何もせずにだらだらとしていられるほど、無人な振る舞いができるわけもない。 ――なら。 「シエスタ、なにかオレに手伝えることはないか?」 「手伝い、ですか?」 シエスタは朝と同じように、きょとんとした顔でリキエルに問い返した。 「洗濯と昼食の礼がしたいんだ。あんまり出来ることはないがな」 「そうですか? なら、デザート運びを手伝ってくださいな」 「それだけでいいのか? そこまで出来ることがないわけじゃあないぜ」 「じゃあお言葉に甘えて、紅茶のポットもお願いできますか?」 頷くリキエルを見てシエスタは、ありがとうございます、と元気に笑い、厨房の奥へと歩いていった。リキエルは憮然としたような面持ちで後に続いた。 リキエルは、この手伝いにはあまり気が進まない。というよりも、進まなくなっていた。手伝いをしたいのは本当だ。雑巾がけだろうが厨房の掃除だろうが、できる限りの労働しようとリキエルは思っていた。 しかし、配膳となると話は別である。デザートを運ぶということは、食堂へ行くということだった。先ほどまでは空腹で、そこまで頭が回らなかったが、つまりは人混みの中へ入っていくも同然なのだ。 リキエルは人の多い場所が苦手だった。それは生理的な嫌悪感ではなく、公衆の面前でパニックの発作が起きたらどうする、という不安から来るものである。朝の授業にしても、これも空腹でそれとは思い当たらなかったが、あまりいい気分とはいえなかったのだ。 だが、自分から申し出た手前、やりたくないなどと言えるわけもないし、やめるつもりもなかった。さっさと終わらせばいいことだ、とリキエルは思い直すことにし、いつのまにやらこもっていた、肩の力を抜いた。 ――そういえば、あいつはどうしているんだろうな。 ルイズのことをさっぱり忘れていたのを、リキエルはぼんやりと思い出した。ぼんやりとしていたので、シエスタの持ってきた紅茶のポットの胴をうっかり掴み、危うく火傷しそうになった。 またあわあわと騒ぎ出すシエスタをなだめながら、リキエルは苦い笑いを浮かべる。それがまた皮肉げになったのは、もともとがそういう笑い方なのかも知れなかった。
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1100年前 古代都市「シャンドラ」栄える。 900年前 王国の存在・思想が現れる? 900年前 トンタッタ族がドレスローザで、ドンキホーテ王の奴隷として働かされた ▼空白の100年▲ 800年前 古代都市「シャンドラ」滅びる。ここまでの間に、地上で途絶えた ▲世界政府誕生▲ 800年前 20の国の王が世界政府を作る 800年前 ポーネグリフを残した「ある巨大な王国」が滅びる 800年前 19の国の王が聖地マリージョアに住み始める(巻七十三) 800年前 ドンキホーテ一族がマリージョアへ移住したため、リク一族がドレスローザの王になる(巻七十三) 700年前 テキーラ・ウルフで橋の建造開始(巻五十四) 400年前 モンブラン・ノーランドの探検船、ヴィラを出航。 398年前 モンブラン・ノーランドの探検船、ジャヤに到着。 394年前 突き上げる海流に乗って、アッパーヤード(ジャヤ)が空にやって来る。 以後、大地の先住民シャンディアと空の者との戦いが始まる。 391年前 ノーランド、国王や兵士達とともに2度目のジャヤ到着。 392年前 モンブラン・ノーランド、「ウソつき」として処刑される。2度目のジャヤ到着の日より半年後。 210年前 南の海の王国ブリスより、「セントブリス号」出航。(巻二十四) 200年前 リュウグウ王国が世界政府の加盟国になる(巻六十三) 158年前 ドリー、ブロギー誕生。 139年前 Dr.くれは誕生。 100年前 ドリー、ブロギー(ともに58)、リトルガーデンで決闘開始。 71年前 クロッカス誕生。 50年前 ラブーン、西の海から海賊とともにリヴァースマウンテンへ。 50年前 カーシー、オイモ、ドリー・ブロギーを探しに出るが海軍に捕らえられ、 お頭の解放と引き換えにエニエス・ロビーの門を100年間守るという条件をのむ。 40年前 ブードル、海賊にやられた古い町跡の荒れ地に町を再建。 40年前 マリリン、スカイピア一の美女、ミス・スカイピアになる。 40年前 シャクヤク(シャッキー)が海賊から足を洗う(巻五十一) 37年前 シャンクス誕生。 36年前 大泥棒ヒルルク、西の国で「奇跡の桜」を見る。医者として研究開始。 34年前 ゼファーが大将へ昇格(巻千) 32年前 ゼファーが海軍の教官に 31年前 ボア・ハンコック誕生 30年前 ニコ・ロビン誕生 28年前 ゴール・D・ロジャーが不治の病にかかる 28年前 クロッカスがロジャー海賊団の船医になる 26年前 トラファルガー・ロー誕生 25年前 ゴール・D・ロジャーが偉大なる航路(グランドライン)を制覇 25年前 ロジャー海賊団が解散する 24年前 金獅子のシキがマリンフォードで捕らえられる 24年前 ゴール・D・ロジャーが処刑される 24年前 フランキー、廃船島に現れトムに拾われる。 ~大海賊時代~ 23年前 たしぎ、くいな誕生 22年前 海軍のバスターコールによりオハラが滅びる 22年前 金獅子のシキがインペルダウンから脱走 22年前 ポートガス・D・エース誕生 21年前 サンジ、ゾロ誕生 20年以上も前 ガン・フォールが神の座にあった頃、 「豪快で気持ちのいい海賊(ゴール・D・ロジャー)」が空島に来る。 20年前 ナミ誕生 19年前 ルフィ、ウソップ誕生 19年前 ハンコック、マリーゴールド、サンダーソニアが天竜人の奴隷になる(巻五十三) 18年前 ネフェルタリ・ビビ誕生 17年前 チョッパー誕生 15年前 フィッシャー・タイガーがマリージョアを襲う(巻六十三) 14年前 海列車の開発に成功する(巻三十七) 12年以上前 ゲッコー・モリアがカイドウに破れる 13年前 シャンクス、東の海フーシャでルフィをかばい左腕を失う。ルフィは麦わらを託される 13年前 トラファルガー・ローとドンキホーテ・ドフラミンゴの間であの人(コラさん?)に関係した因縁が生じる(巻七十三) 13年前 ハンコックが九蛇海賊団船長として初めての遠征を行い、王下七武海に入る(巻五十三) 12年前 ドラゴン、バーソロミュー・くま、イワンコフが革命軍として活躍 10年以上前 革命軍がロビンを”革命の灯”と呼び探し始める 11年前 ジンベエが魚人初の王下七武海に(巻六十三) 10年前 トムがエニエス・ロビーに連行される(巻三十七) 10年前 ミョスガルド聖が遭難し魚人島へ辿り着く。オトヒメ王女が聖地マリージョアに同行し、1週間後に天竜人の書状を持って帰還(巻六十三) 10年前 ドンキホーテ・ドフラミンゴがドレスローザの王になる 9年前 海賊によりゼファーの右腕が切り落とされる(巻千) 8年前 エネルの育った空島、ビルカが消滅(巻三十) 7年前 CP9がウォーターセブン、ガレーラカンパニーに潜入を開始する 6年前 サー・クロコダイルがバロック・ワークスを立ち上げる 4年前 シーザーがパンクハザードでシノクニの実験を行う
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第1章 後編 やっぱり”ここ”はヤバイところだぜ? ティッツァーノ……。 「ほんとに知らないの?」 それは魔法のことか?それとも「ハルケギニア」のことか? 両方シラネェヨ! しかし、納得せざるを得ない。ここはオレの居た世界じゃないのだから。 …夜空に輝く月に、ここまで心奪われたことはない。 月が ”仲良く” 浮かんでる……。 美人の姉妹が互いを優しく、守るように照らしあっていた…。 ”月は 『二つ』 あったッ!” バァアァァーーz___ン! 「オレの世界では”luna”もッ! ”palla”もッ! 一つあれば十分なんだよ!」 『luna』(伊:月) 『palla』(伊:サッカーボール) 「月が一つしか見えない”国”なんて聞いたこともない!」 「だから”国”じゃない! ”世界”が違うんだッ!」 また話が同じところに戻ってきてる……。 さすがに無限ループはルイズも嫌なようで、無理やり終わらせることにしたらしい。 「わかったわよッ! 違う”世界”から来たってことは認めるわよ!(納得いかないけど・・・)」 「グラッツェ、シニョリータ(ありがとう。お嬢さん)。 ついでに”元の世界”に還してもらえませんか? シ・ニョ・リ・イ・タ?」 「……無理。そんな魔法聞いたことないもの」 彼女は召喚する魔法は知ってても、帰還させる魔法は知らないらしい。だが……。 「…オレは帰らなくてはいけない。 …なんとしてもッ!」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ (相棒をッ!… 一人でッ!眠らせるわけにはいかないッ! ヤツラには償わせてるッ!全員だッ!) 目の前にいる平民から、”凄み” を感じ、思わずブルっちまいそうになるルイズ。 (…こ、この使い魔には帰ってもらって、新しく ”私に相応しい使い魔!” を召喚しなおすのも、わ、悪くないわよね・・・?) (それがお互いの為ってもんよね?) 「と、とりあえず、すぐに帰れるワケじゃないってことはわかるわよね?」 「…そこは理解してるつもりだ。『帰る方法が、存在するかさえわからない』状態なんだろ?」 「グッド! だから、私が帰る方法を探してあげる。 あんたはその間、忠実な使い魔として私に仕える。」 「…つまりこういうことか? 『オレたちは、帰る方法が見つからないかぎり ”取引” をしなくてはならない』……」 「Exactly(そのとおりでございます)♪」 by 釘宮ボイス 「……」 「でも、あんたじゃ使い魔の仕事は無理そうね……」 どうやら使い魔とは、主人と視覚や聴覚をリンクさせ、トレジャーハントしたり、ボディガードするそうだ。 「あんたにできそうなこと……。 掃除、洗濯、その他雑用ってとこかしら?」 「御主人様が寂しくないよう、夜のお相手もできると思いますが?」 さっきの ”凄み” はどこへやら。軽~い調子になった使い魔の顎に右フックを叩き込む。 使い魔は崩れるように床に倒れこむ。 ルイズは知らない。コイツはギャングのエリート、『親衛隊』だったことを。…今の現状からはわかるまい。 「もし、平民でしかも使い魔のあんたが、貴族であり御主人様である私に、手を出したら……」 「……だ、出したら?」 「……… ”削りとる” わよ?」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ …こいつにはやると言ったらやる 『スゴm(ry やっぱり、”腕”が鈍ってんな……。 ティッツァと組んでからは、口説く役はティッツァの仕事だったからな……。 顎をいたわりながら起きると、貴族であり御主人様であるルイズ様がベッドの上で脱ぎだした。 「ルイズさん? 言ってることと、やってることがオカシイですよ?」 「…なにが?」 「男の前で脱ぐってことは ”OK” てことで……」 物凄い速さでゴツイ装飾がされた本が飛んできた。 頭に当たれば脳漿ぶちまけること必至! …だったので、さすがに避けた。 「あんたは使い魔なの。犬、猫、その他もろもろと同然なの」 「…犬や猫だって愛の営みはしますよ?」 ……なんでさっきからコイツ敬語なのよ? 「犬同士、猫同士はね。でも、メイジと使い魔は、人間と犬の関係なの! 犬に裸見られたって、全然恥ずかしくないわ!」 …かなりへこんだ。 男のプライドは地に落ち、泥にまみれ、アリがたかっていた。 「だから使い魔は床に寝なさい。そんで、(あんたはスケベだから)朝起こすとき以外はベッドに近づかないこと!」 変なことしたら、只じゃおかないからッ!と厳しく言いつけらた。床を見つめるスクアーロ。 ルイズはキャミソールに着替え終わると、下着をスクアーロに投げ渡し、ベッドに潜りこんだ。 洗濯しときなさい。変なことしたら―――。最後まで言い終えないまま、ルイズは夢の世界へ入っていった。 どうやらかなり疲れていたようだ。無理もない。彼女の手に負えないことばかり起こる日だったのだから。 スクアーロは、(御主人様の御慈悲である)毛布に包まりながら、壁にもたれかかる。 とんでもないことになってるぜ? ティッツァーノ……。 目をつむり、”この世界「ハルケギニア」”について想う……。 とにかく…… 帰る方法が見つかるまで ”馬鹿で使えない” 使い魔を ”演じる” しかない。 こっちのことは何もわからねぇ。 だから、情報を得るまで動かないほうが良い。 このオレが、ギャングだとか、スタンド使いってことはできれば……一切知られたくない。(ギャングだとか、スタンドって概念があればだけどな……) …ルイズって娘には悪いが…… …本当に可哀想だが… 利用させてもらう……。 精々ルイズの前では ”スケベな軟派男” で通すか…… ほぼ”地”でイケるし……。 …”元の世界”のことを考える。相棒のこと。裏切り者どものこと。ボスのこと。組織のこと―――。 必ず帰る! 何をしてでも帰って見せる! おまえのためにもッ!オレのためにもッ!必ず帰るッ! 心配するなよ?ティッツァ…… 復讐だけに囚われているわけじゃねぇ…… もちろん償いはさせる! だが…ナランチャの…ヤツラの見せた『精神力』は何なのだ? あれほどの『精神力』を持ちえた人間を、オレは知らない。今はそれが知りたい…。 オレとおまえでも、掴み得なかったものが…… ヤツラを動かしてたのかなぁ……。 だから… 必ず帰って…… 手に入れような…… あの…輝くような…… そう… まるで… 『黄金のような精神』を……。 きっと… 二人で…… すぐに… できるさ…… オレとおまえなら… きっと―――。 まどろむの意識の中、隣で相棒が笑った気がした。 鮫技男と桃髪女 「The Story of the "Clash and Zero"」 第1章 オレは使い魔 後編終了 To Be Continued ==
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ガルーダ最終緩和だけなんだ。440.240.140だと思ってたわ - 名無しさん 2013-02-05 07 16 23 ーーーーーっっっp - 名無しさん 2012-09-04 02 07 31 ↑しかしエーコの特殊には反応したハズだぜ? - 名無しさん 2012-07-05 15 41 02 アジルスとラージャン、ラッシュは通常攻撃扱いじゃないんじゃないか。 アリオーシュの特殊が1回しか発動しなかったので。 - 名無しさん 2012-05-26 09 55 45
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時は流れ夜、眩しい夕日の光もとうの昔に沈んでいき 空に浮かぶ二つの月が神秘的な輝きを発している。 そんな月の光に浴びながら、音石は目を覚ました。 医務室を後にしたあと、特にやることもなかったので 部屋に戻り昼寝をしていたのだ。当然藁の上で。 「あーあ……、ヒデェ中途半端な時間に起きちまったな…」 確実に狂ってしまっている自分の睡眠の習慣に頭を抱える 外の静けさから考えて、学院の生徒たちもとっくに夕食を終え 部屋に戻って寝静まり始めているくらいの時間だろう。 少し遅くはあるがシエスタに頼んでメシを恵んでもらおうかなと考えていると 壁に掛けてあったデルフリンガーが突然話しかけてきた。 ついでにその隣では音石のギターが掛かっている。 「気分が最悪のお目覚めだな相棒、どうだ気分は?」 「てめぇ自身が最悪だって言っといて喧嘩売ってんのかコラ」 「冗談だよ冗談、そんなに睨まねぇでくれよ、 でもよぉ、剣の俺様が言うのなんだが そんなんなるんだったら最初っから昼寝なんてしなきゃいいだろうよ」 「眠くもねぇのに無性に寝たいって気分があんだよ たくっ、これ俺夜寝れんのかねぇ~?」 【コンッコンッ】 音石とデルフリンガーの何気ない会話の最中、誰かが扉をノックした。 「あン?だれだよ?ルイズなら今いねぇぞ」 誰かわからないがわざわざ扉を開けるのも面倒なので 音石は扉越しに声をかけた。しかし帰ってきた言葉から、 訪問者が意外な人物だというのが判明した。 「私だオトイシ君、コルベールだ。 夜分遅くにすまない、君に用があるんだ」 「なにぃ~~?」 訪問者はなんとコルベールだった。 それがわかると音石は藁から立ち上がり、すぐさま扉を開けた。 それと同時に、部屋から差し出す月の光が扉を開けた先にある 『とあるモノ』によって反射し音石の目を刺激した。 「目…目がくらむッ!げ…限界なく明るくなるゥ!」 「……………なにか言ったかね?」 「あ、いや、なんでもないッス」 つい口が滑った発言にコルベールの嫌な視線を向けられたが 音石はすぐさまそっぽ向くことによってその視線を受け流した。 そして何事もなかったようにコルベールに質問する。 「召喚されと日の時といい、また俺になんか用ッスか?」 「いや、今回は学院長の頼みで君に会いに来たんだよ 詳しいことは私の研究室で話をしたいんだが………… ミス・ヴァリエールはいないのかね?」 「あの爺さんからの頼みで? …………いいッスよ、特に今やることもないんで。 ルイズもまだ帰ってきてねぇし、丁度いいでしょう?」 「ふむ、それはよかった では案内しよう、私についてきてくれ」 (あの爺さんからの頼みってコトはおそらく スタンド使いに関すること、あるいは地球の手掛かりがあるってことか? だがそれにしたって早すぎねぇか?頼んだのは今日の昼だぞ? それに学院長室じゃなくこの先生の研究室ってのも妙だ、 ………なにか……あるのか?この学院に、こんなすぐ傍に、 スタンド使いか、地球に関する手掛かりかなにかが………) 自分のなかに渦巻く疑問を胸に、音石はコルベールの後にを追うため 留守番をデルフリンガーに任せ、ギターを手にルイズの部屋を出て行った。 コルベールの後についていく内に音石は塔と塔に挟まれたいっかくにある 小汚い掘っ立て小屋に辿り着いた。 「これが………研究室?」 音石の呆然とした声にコルベールは苦笑した。 「はははっ…、以前はちゃんとした部屋があったのだがね 薬品などの臭いが理由で場所を移されてしまったのさ」 「はっ、随分優遇されてるなアンタ」 「君は嫌味で言っているんだろうが、実際そうなのかもしれない」 コルベールが扉を開き中に入り、音石もその後に続いた。 まず目に入ったのは薬品のビンや試験管、さまざまな実験器具だった。 壁は書物の詰まった本棚に覆われ、 蛇や蜥蜴や得体の知れない生物が檻に入れられている。 そして次に音石が感じたのは強烈な刺激臭だった。 「うあァ、こりゃ追い出されても文句いえねーわ」 「なぁに、これぐらいの臭いすぐに慣れるさ しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく 私はこの通りまだ独身だがね」 コルベールは慣れた表情で言うが、音石はそうはいかない。 ある程度の臭いは刑務所で多少慣れてはいるものの、 この研究室に漂う臭いはそれはまた別の臭みをもっていたため、 音石は自分の顔の前を手で振り払う仕草を示した。 「それでっ?どんな用件なんッスか? 人をわざわざこんなところまで連れてきて」 「こんなところとは酷いじゃないか、 しかしそう言われても文句は言えないね とりあえず本題に入ろう、実はオールド・オスマンから 君にあるモノを見せて欲しいと頼まれたんだよ」 「……ここに連れてきたってことは、 ここにそのあるモノってのがあるってわけかい?」 「さすがに察しがいいね、そして学院長から聞いたよ 君がこのハルケギニアとは違う別の世界から来たということも」 「げっ!?あのジジィしゃべりやがったのかよ!!」 「ああ、だが勘違いしないでほしい。 私が聞いたのはあくまで君が異世界の住人だということだけだよ それ以上のことは聞いていない。君の不思議なチカラのこともね 仮に聞いたとしても、私はそれを他人に話すつもりはないよ 当然、君が異世界の住人だということもね」 コルベールはそう言うが、それでも音石は苦い表情を浮かべた。 あの学院長が話す程の相手ならそれなりに信用性はあるのだろうが やはりどちらかといえば複雑な気分があった。 「だと嬉しいんだがなァ~、 ていうかアンタ、俺が異世界の人間だってのにえらく冷静だな それ以前に信じてんのかよ?こんな突拍子もない話」 「もちろん驚いたとも、しかしそれと同時に納得もした。 いままでの君の行動、その服装、見たことない楽器、 すべてハルケギニアの常識を覆しているからね。実に興味深いよ」 「あんた変わり者って言われたことないか? あっ、図星だな?めちゃくちゃ顔に出てるぜ? そんなんだからいい歳ぶっこいて独身なんだよ」 いつの間にか音石のコルベールに対しての言葉遣いが荒くなっていた。 ある意味これは秘密を知るもの同士の親近感を表しているのだろう。 「ゴホンッ!私のことはどうだっていい 話がそれてしまったが、君に見せたいあるモノというのが …………これなんだよ」 コルベールが研究所の奥から、キャスター付きの机を持ってきた。 その机の上には何かが黒い布で覆いかぶされていた。 なんだこりゃ?と音石は疑問を感じた。 しかしコルベールがその布を引っ剥がした瞬間、 その疑問は…………驚愕へと変わった! 「………ばかなっ!?おいおいタチの悪い冗談だろ? なんで………、なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」 時間は少しさかのぼり、 ルイズは今、食堂でキュルケ、タバサと一緒に夕食をとっていた。 そしてルイズはキュルケとタバサに医務室での出来事を話していた。 「へぇ~、前々から思ってたけど オトイシって結構やること容赦ないのね、 傷もまだ完治していないギーシュに掴みかかるなんて」 「………でもある意味、彼らしいといえば彼らしい」 「ふふっ、確かにそうかも♪ ………それでルイズ?結局ギーシュのことは許してあげたの?」 キュルケの質問にルイズは食事の手を止め、 難しそうな表情を浮かべた。 「正直………なんとも言えなかったわ、 ギーシュはああ言ってくれたけど………ギーシュが今まで わたしのことを侮辱してきたのは紛れもない事実だもの…… ギーシュ自身が言ってたようにね、 …………だから…………なんとも言えなかった」 重い静寂な空気が流れた。とても気まずく、とてもぎこちない空気、 しかし間もなくしてその空気の中で キュルケがグラスに入ったワインを 口に軽く流し込んだのに続いて言葉を発した。 「だったら……それでいいんじゃない? ギーシュが本気であんたにしてきたことを『反省』してるのなら これから先、あいつの行動がそれをあらわすはずよ」 「それこそ……あなたの使い魔のように……」 キュルケに続いてタバサまでが言葉を並べた。 「……………なんかさ……」 「「?」」 「あんたたちがなんで親友同士なのかちょっとわかったような気がしたわ だって、息がピッタリなんだもの」 その言葉にキュルケは笑い出し、ルイズもそれにつられて笑った。 そしてタバサも……その小さな口が薄く笑みを浮かべてるように見えた。 夕食を終えると生徒たちは自分の部屋に戻り寝静まっていく、 しかしルイズたちは寮から少し離れた広場にいた。 ルイズの魔法の練習が目的だ。しかもそのために キュルケとタバサに協力を求め、キュルケたちもそれに承諾した。 タバサならともかく、ルイズがあの犬猿の仲だったキュルケに こんなことを頼むなど、少し前の彼女なら考えられないだろう。 もちろんキュルケだって同じことだ。 ある意味これも音石明という男に関わったことによる 二人の変化………いや、成長なのだろう。 だが実際は…………、 【ドゴォォォンッ!】 「だからちがうでしょうヴァリエール! この魔法での詠唱はそうじゃなくてっ!」 とキュルケが説教をし、 「だからちゃんとその通りにしてるって言ってるでしょう!?」 ルイズが抗議し、 「…………………………」 タバサが黙って本を読む、……………の繰り返しである。 実はその口論の最中に音石とコルベールが研究室に向かって ルイズたちと入れ違いになったというのは誰も知る由もない。 「でもなんで詠唱も杖の振り方も完璧なのに 爆発ばっか起こんのよっ!!ホントわっけわかんない!!」 「そんなの私に聞かれても知るわけないでしょヴァリエール ほら!もう少し付き合ってあげるからがんばって………」 【ドオォンッ】 「「「!!?」」」 キュルケが喋っている最中に突然どこからか轟音が響いた。 「なんなの今の音!? ルイズ、あなた杖を振った?」 「振ってないわよ! 『大きな音=わたしの魔法』って認識しないでよね!!」 「あそこ」 タバサが冷静に、学院の中央塔の方角を指差した。 その指の沿ってルイズとキュルケも中央塔を見ると 10m以上はある巨大な何かが蠢いていた。 夜の暗闇でよく見えなかったが、目を凝らしてみると 徐々にその何かの正体が明らかとなった! 「あれは………ゴーレム!?なんて大きさなの!! それにあんなところで一体なにを………」 キュルケが驚愕の声をあげるが、 頭の中では自然に状況の分析が行われていた。 そしてその分析の中で『ある人物』の名前が浮かび上がった。 しかしその名を口にしようとする前に 親友タバサに先にその名を出されてしまった。 「『土くれ』の……フーケ…」 「フーケッ!?最近このあたりを荒し回っている盗賊じゃない!!」 一人だけ分析に遅れていたルイズが キュルケと同じような驚愕の声を上げた。 しかしそれでもキュルケに引きをとることもなく すぐさま次なる状況分析結果に辿り着いた。 「まさか宝物庫の宝を狙ってるんじゃ!?」 「おそらくその通りでしょうね、 さっきの大きな音………きっと宝物庫の壁を攻撃した音だわ。 でもまぁ随分とナメられたものね、 あんな堂々と大胆に学院の宝を盗もうとするなんて……… タバサ、急いで先生たちに………」 タバサに視線を向け、指示を送ろうとしたとき キュルケはあることに気付いた。 さっきまで自分の隣にいたルイズがいなかったのだ。 まさか!と思い、キュルケは視線を前方の塔の方角に移した。 予想した最悪の通り、ルイズがゴーレムに向かって走っているのだ! 「ルイズ!なにをするつもりよ!?危険よ!!」 「先生たちを呼んでいたら逃げられるでしょう!! フーケはわたしが捕まえて見せる!!」 「そんなの無茶よ!!あなたもわかってるでしょうルイズ!? あんな巨大なゴーレムを作り出せるなんて フーケは相当腕の立つメイジの筈だわ!!」 キュルケがいくら叫び止めようと、ルイズにも意地があった。 キュルケの言葉に耳を傾けることなくゴーレムに向かっていった。 「このままじゃルイズが危険だわ! 急いで追うわよタバサッ!! もうっ!ルイズッたらほんっと手間かけさせるんだか!!」 その言葉を合図にキュルケとタバサは走り出した! そしてタバサは走りながら口笛を吹くと空から月をバックに 風竜シルフィードが姿を現し、キュルケとタバサの横に近寄り 低空ギリギリを飛行する。そして二人は空飛ぶ魔法『フライ』を唱え シルフィードの背中に飛び乗り、塔の方角へと駆けていった。 そしてそのゴーレム自身は再度腕を振り上げ、全体重をかけて 宝物庫の壁に巨大な腕のパンチをぶつける。 しかしヒビも入らなければビクともしないその現実に ゴーレムの肩に乗りマントで顔と体を隠しているフーケが一番苛立っていた。 「くそったれっ!硬いッたらないねぇホントにっ!! あの禿げ、なにが外側の物理的衝撃には弱いよっ!! 外が『禿げてる』なら中も『剥げてる』ってことだねまったく!」 【ドゴォンッ】 「っ!?爆発!?一体どこの命知らずだいっ!!?」 突如自分のゴーレムの脇腹部分が爆発によって軽く削り取られた。 巨大なゴーレムに乗っていたせいで気付かなかったが、 よく見ると自分のゴーレムの足元に誰かがいた。 「『土くれ』のフーケ! これ以上、神聖なる学院で好き勝手にはさせないわ!」 しかしとうのフーケは相手がルイズだと認識すると鼻で嘲笑った。 「はっ!だれかと思えば落ちこぼれの『ゼロ』のルイズじゃないか 驚かせんじゃないよ! あんたごとき『障害』と呼ぶ以前に論外なのよ!!」 距離があるせいか、ルイズもフーケも互いに 相手の声が聞こえることはなった。 しかしフーケのゴーレムはルイズを攻撃しようとせず 再び宝物庫の壁に向けて腕を振り上げようとした。 その行動にルイズは自分が相手にされていないことに気付いた。 「わたしなんて相手に眼中にないってことっ!?舐めないで! 由緒正しきヴァリエールの血統のおそろしさ、 思い知らせてやるんだから!!」 ルイズが再び杖を振り上げようとしたとき、 自分の頭上にタバサのシルフィードが通ったのに気付いた。 よく見るとシルフィードの背中にはキュルケとタバサが乗っている。 しかし今はそれどころじゃない、 ルイズは再び目の前のゴーレムに視線を戻した。 「タバサ、はやくルイズをゴーレムから離れさせないと あのままじゃ危険だわ!」 シルフィードに跨ったままキュルケは現状を把握していった。 もちろんタバサも同じことだ。 しかし状況はそう簡単なものではなかった。 それを理解していたタバサは冷静にキュルケに伝えた。 「彼女を無理やり引き離すなら、『フライ』を使わないといけない」 「じゃあはやくそうしましょうよ!」 「落ち着いて。そうしたいのは山々だけど 簡単にはいかない、飛行している私たちと彼女との距離は 『フライ』の範囲外、近づこうとすれば間違いなく フーケのゴーレムが攻撃してくる」 迅速かつ簡潔な説明にキュルケは歯を強く噛んだ。 「じゃあ一体どうすれば……」 「幸い、フーケは彼女を敵と認識していない でもいつ攻撃されても人質にされてもおかしくない 今は無闇に攻撃するのはかえって危険」 せっかくわざわざ危険を冒してゴーレムに向かったというのに 手も足も出ないなど屈辱意外何者でもなかった。 そしてフーケも竜に乗ったふたりが攻撃してこないことでそれに気付いた。 「はっ、どうやら『ゼロ』のルイズのおかげで 余計な邪魔が入らずに済んだみたいね…………でも……」 【ドォォンッ】 フーケが乗っているゴーレムの肩の反対側の肩が爆発した。 「もうっ!なんでそっちで爆発するのよ! 反対よ!逆よ、逆!!」 ゴーレムではなく本体のフーケを狙って魔法を発動したが なんの嫌がらせか反対側で爆発した自分の魔法を起こした 手に持つ杖に向かって、ルイズは惜しむ声を上げた。 だがその行動が命取りとなってしまった! 危うく自分が爆発に巻き込まれそうになったことに 危機感を覚えたフーケが、標的をルイズに移したのだ。 壁を向いていたゴーレムがゆっくりとルイズのほうに体を傾けていく。 それにいち早く気付いたのはキュルケたちだった。 「まずいわ!ルイズを攻撃しようとしてる! タバサ、こうなったら一か八かの賭けに……」 「待って……」 焦るキュルケにタバサは静止の声をかけた。 「なにか……聞こえる……」 「え?」 【………ブゥ……ゥウ……………ウ……】 「なに………この音?」 珍しくタバサが不思議そうな声をだした。 二人はシルフィードに乗りながら辺りを見渡した。 しかし暗闇で何も見えはしない。 微かに聞こえる音もなぜかそこらじゅうから聞こえるような気がした。 もちろんこの音にフーケもルイズも気付いた。 「い、一体なんだいこの音は?」 「…………………?」 ルイズが無言のままキュルケたちのように辺りを見渡す。 しかしすぐにその視線はゴーレムのほうに戻った。 目の前のゴーレムが自分に向かって拳を振り上げているからだ。 「ちっ!なにかは知らないけど、 耳元でハエがさえずっているようでイライラするったら ありゃしないね、この苛立ちをアンタにぶつけてやるわ!!」 「ルイズッ!お願いにげてぇっ!!」 キュルケの願望も虚しく、 ルイズはゴーレムを前に勇気を振り絞って、誇りをかけて ゴーレムに向かって杖を振りかざした。 ルイズにとってこれが最後のチャンス、 呪文を口で唱え、魔法の名をゴーレムに…… フーケに向かって吐き出した! 「ファイヤーボールッ!!」【ドゴォオンッ】 …………最後の足掻きは虚しく宝物庫の壁へとぶつかった。 【ドゴバァンッ!】 「な、なにぃっ!?」 「えっ!?」 だが次の瞬間、 なんと振り上げられていたゴーレムの腕が粉々に粉砕していった! 「なっ、あいつの爆発は間違いなく壁に当たったのに なんであたしのゴーレムの腕が粉々に………ッ!?」 【ブゥウ……………ウウウゥ…………】 「はっ!またこの音!! さっきから聞こえるこの音は一体なんだってんだい!? 一体どこから聞こえ…………」 一瞬、フーケは自分の横を何かが横切ったのを感じた。 咄嗟に視線を向けてもそこにはなにもありはしない。 だが自分の横に間違いなく何かが横切った………、 そして気付いた。この音…………はじめはどこか遠くからかに 聞こえてくる音だと思っていた。だが実際はそうじゃなかった。 自分の耳が……脳での認識が、その音に追いついていなかったのだ。 『ソレ』が……あまりにも高速でゴーレムの周りを飛び回っていたから…… 「タ、タバサッ………あ、あれって……?」 上から見ていたキュルケたちもようやく 『ソレ』を認識することができた。 だが認識したことによって二人の混乱は増すばかりだった。 そしてタバサの口からぽつりと言葉が零れた………。 「鉄の……竜の子供……?」 「な、なんなのよあれ!? あんなの……今まで見たことがないわ……」 ゴーレムの足元でルイズが唖然として立ち尽くし、 視認した『ソレ』を目で追っていた。 すると空飛ぶ『ソレ』が再びゴーレムに急接近すると、 あるもの飛び出してきた。『光る腕』だった! 「あ、あの腕!あれってまさかっ!!」 その光る腕は強烈なラッシュをゴーレムの腹部に炸裂した! ラッシュによって抉られた腹部の影響で ゴーレムは大きくバランスを崩した。 不安定に全体がぐらぐらと揺れている。 「うっ……ッ!くそっ、なんだってんだいあれは!?」 フーケはすぐさま杖を振り、抉られたゴーレムの腹部を修復し、 体勢を立て直すと、すかさず空飛ぶ『ソレ』に向けて ゴーレムで攻撃させたが………… (は、速いッ!?) 『ソレ』の驚異的な速さにフーケは肝を冷やした。 ゴーレムの攻撃を回避した『ソレ』は一旦距離をとった。 するとルイズたちの耳につい最近聴き慣れた音が鳴り響いた! ドギュウァーーーーーーーーーンッ!!! 音が鳴ったのはルイズの後方! その場にいた全員がその方向に目を向けた。 そこに居たのは、ギターを構え、特徴的な長髪と 顔に大きな傷のある青年!ルイズの使い魔!! 「オトイシッ!!」 「On、YEAH!!」 数分前、コルベールの研究室にて。 「なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」 「……………やはりコレを知っているんだね オトイシ君、私はめずらしい噂や情報を耳に入れると よく休暇をとって研究しに行ったりしているのだが……… これはその中で一番興味深い代物だよ、 数ヶ月ほど前のことなのだが……ある田舎の村で 『奇妙な鉄の竜の子』が拝められているという情報を耳に挟んでね 非常に興味深かったので、実際に見に行ってみたら 私の中の研究意欲を最高に刺激してね、村人たちに頼んで 譲ってもらったんだよ、私の財産の四割程が消し飛んだがね。 それから色々と研究してみたのだが、いっこうに謎ばかりだよ。 だがこのハルケギニアで作れるような代物じゃないこと理解できる。 そして君は異世界の住人、私も………学院長も……… これは君の世界から来たモノなのではないかと予想しているんだよ」 「………ああ先生、あんたの言うとおりだよ。………こいつは…」 【ドオォンッ】 「!?」 「な、なんだ今の音はッ!?」 コルベールは素早い動きで研究室から飛び出すと 音石もそんな彼の後に続いて外に飛び出した。 そして二人の目に入ったのは本塔の前に蠢いている 巨大なゴーレムだった。 「な、なんだありゃ!?」 「ゴーレムだよ!それにあの大きさ、相当腕の立つメイジの仕業だ おそらく『土くれ』のフーケだ!」 「誰だそりゃ?」 「貴族を相手に盗みを働く盗賊だよ、 最近トリスティンにも現れはじめたとは聞いていたが まさかこの学院をねらってくるとは………ハッ!?」 するとコルベールはその巨大なゴーレムに走り向かっていく人影に気付いた。 「あれは………ミス・ヴァリエール!? まずい、彼女はフーケを捕まえるつもりだ!!危険だッ!! 急いで止めないと取り返しが付かなくなる!!」 コルベールがルイズを止めるため、駆け出そうとしたが 肩をグッと音石につかまれ静止された。 「あんたは学院長のジジィにこのことを伝えなよ! ルイズは俺がなんとかする、フーケもその間足止めしといてやるよ」 「だ、だが!いくら君でもあれだけ巨大なゴーレムが相手では………」 コルベールが音石の方へと向くと、音石の手には 先ほど見せた『ソレ』が脇に抱えられていた。 「きみ………それは………」 「まあ、確かに普通じゃ厳しいだろうーな… だが『コイツ』があるんだったら……勝算はあるかもな!」 そう言って音石はルイズを助けるために駆け出した! そしてルイズを助けるために己が分身の名を叫ぶ! 「レッド・ホット・チリ・ペッパー!! そして飛べェッ!『ラジコン飛行機スピットファイヤー』!!」 そしてゴーレムに攻撃されそうになった ルイズの危機を音石は見事に救った!! 「よ~うルイズぅ、随分と無茶やってんじゃねぇか? まあ後は任せろよ、なんで三年前に俺がジョセフを殺すために 使おうとしてた『ラジコン飛行機スピットファイヤー』が この世界に来てるのかは理解できねぇが………… まあ、せっかくだぁ。三年前あんまり使ってやれなかった分…… 思う存分暴れさせてやるぜぇっ!!」 ギュアァアーーーーーーーーーーンッ!! 【ブウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ】 ギターの音を響かせ、ラジコン飛行機の機動音が鳴り響く! スピットファイヤーinレッド・ホット・チリ・ペッパーは フーケのゴーレム目掛けて飛来していった!!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/393.html
やられた…やつは…こんなに近くまで…来ていたのか… 血がなくなって…体が冷たくなっていく。俺の出番も…ここまでか…… だがッ!やっと掴んだ奴の正体!皆に伝えなくてはならないッ! これが俺の最後の…役…め……だ……気づいて………く…れ そして意識は暗黒へ沈む 何も無い世界に侵され自分自身すら曖昧に消えながら、男は自分の最期に満足していた。 これでいいのだ 俺はやりきったのだ と 暗黒の世界、何も感じられず死んだ事も忘れて、次の生を待つ存在となったソレはふと 気が付いた 体の一部が暖かくなったのだ あぁ…ここは唇 そう理解した途端、全身が有る事を思い出した。身体に熱が巡る 身体がある事を思い出したが、未だ暗黒の中に居る 何もできない しかし急に左側の手が強く熱を持ちだした。堪らず叫ぶ 「うぉおお!熱い!何だこれは!」 すると暗黒は晴れ、視界は一面青空に満たされた 人影を除いて 「あんた…だれ?」 突然の光に目をくらませ、彼、レオーネ・アバッキオは眩しい光に包まれた桃色の髪の少女に、何か大きな感情を感じていた。 サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔