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スネークの提案に対し、まずメタナイトは、 「今すぐ向かうのには賛成だ。だが、正面から行くのは承服できない」 やはりとでも言うか、それに乗った。 時間がないことを考えればここでこれ以上モタモタしているのは愚策以上の何物でもない。 結果的に採るべき選択肢は限られていくのだ。 「だろうな。やはりリスクが大きすぎる」 しかしそこからもかなり行動の自由が狭められる。 例えば、正面からの突破を行うとする。その場合、どうやって辿り着けるのだろうか? たしかに本拠地の目前では生い茂る木々が隠れ蓑となるだろう。 しかしその先はどうなっているか分かったものではない。 おおよそ上ることも出来ない大きな壁が聳え立っているかもしれない。 そんな壁がなかったとしても、入り口があるのならばそこを護るために何らかの措置が為されていると 考えるのは至って自然だ。むしろ無いと考えるのは楽天的過ぎる。 「しかし地下も道が通っているとは限らないぞ……。もし閉まっていたら後戻りする時間はあるのか?」 「単純に辿り着くだけではダメだからな。どんなに短くてもおそらく2時間がタイムリミットだ」 「希望的観測だろ?でもまあ、地下から行くほうがまだ比較的危険は少ないけどさ」 「じゃあ早いほうがいい。もう一度格納庫に行こう」 「ああ……」 タケモトはあまり乗り気ではなかった。 どのみち自分に出来る事は何もない。ここまで事態が大事になっているのに、運営側が策を講じていない筈がないからだ。 密かに行けばまだ隙を突けたかもしれないのに、巣を叩いてからではそれも不可能になる。 一度は持ちかけた希望も、彼は少しづつ捨てかけていた。だが、捨てたからといって彼にはどうすることも出来ない。 運命に抗うための条件が、全く揃っていない今では。 今しがた行われた予想は全て予想でしかない。 何の保証もない希望的観測。しかしそうだと分かっていても、そんなものにすがらなければならない現状が彼らを苛んでいた。 どの道何もしなくても8時間後には死んでしまう。だからヤケクソになっているのかもしれない。 そんな事は自覚済みだ。だから誰も口に出さない。 実は諦めていたとしても、それでも、生きたいと想っていることに間違いはないのだから。 その時、西のほうから機械音混じりの大きな足音が響いてきた。 可能性はあるが、チルノではないと4人は即座に理解する。 向かってきたのはデパートに置いてあった魔導アーマー。それに乗っているのは、 「キョン子と、言葉だけ……?」 数が合わない、と言うより人が合わない。 デパートから来たのだろうが、彼女らだけとはおかしい。 「どうなっているんだ?」 「ともかく待とう」 間も無く、彼女達を乗せた機体は到着した。 言葉はゆっくりと魔導アーマーから降りてくる。 「何があった?」 スネークの問いかけに、言葉は目を逸らした。 その行動には疑問を呈したが、理由と思われるものはすぐに出てきた。 キョン子が、座席から何かを持ち上げていた。彼女一人の力では苦労する、大きな荷物。 それを見たとき、タケモトは絶句した。 「冗談だろ……」 グラハムの、死体だった。 頸部を鋭利な刃物で切られたようで、血が拭われているために中の筋繊維や骨がよく見える。 顔面はまさに蒼白。生気は全く感じられない。 一目見て死体だと理解できるほどに、生きているとはとても言えなかった。 おおよそ想像する中で最悪の部類に入る結果を見て、タケモトの脳内では高速で思考が張り巡らされた。 この状況で実行に移れるか?それを考えるまでもなく、感情のほうは結論を出しそうだったが。 俯いて固まったままのタケモトを庇うようにスネークは一歩前に進み、言葉を見つめる。 「もう一度訊く。何があった」 「私が……説明する」 答えたのは言葉ではなく、キョン子だった。 昏い、沈鬱な表情は何があったかを想像させるには簡単だった。 そして事の次第を説明された。誰が死んだか以外は、全くの絵空事を。 首輪のことでうっかり口を滑らせたグラハムのせいでリンと一悶着になり、グラハムが謝ったことで その場は治められたと誰もが思った。しかしリンは全く納得していなかったようで、グラハムが 魔導アーマーに乗り込もうと後ろを向いた瞬間に、言葉が床に置いていた鉈を奪い取って彼を斬りつけた。 さらにすぐに側にいたキョン子をも襲おうとしたが、キョン子は手に持っていた銃で思わず撃ってしまい、 リンは死んでしまった。 と、彼女は語った。 搾り出すように、言葉を詰まらせながらの独白はおおよそ白々しさとは無縁のものだ。 キョン子は嘘をつけるような人間ではないとこの場の誰もが思っていたし、それに 疑いを抱いて事実を確かめようにも、もはやデパートまで戻っている時間は無い。 殆どの疑念を持たずに、4人はそれを信じてしまった。 重苦しい雰囲気の中、スネークは口を開いた。 「…戦闘機は俺が動かそう。マニュアルは一通り頭に入れてある」 「そうするしかないようだな。戦闘機を何処に置いたか聞いてるか?」 「えっと……B-3って聞いてたけど」 「なら、もう行くしかない。タケモト達はすぐに下に降りてくれ。お前達も、あの動画を観たなら知っているだろう」 もう迷っている余地はない。 そう決断したら、スネークの動きは素早かった。 それを止める理由はタケモトには無い。しかし、言いようの無い不安が彼を襲っていた。 話を急ぎすぎる。地下に潜ったとしてもまともに戦力になるのは馬岱とメタナイトのみ。こんなもので突破できるわけが無い。 もちろん、いくら戦力があったと仮定しようが、その不安を消す事は出来ないのだが。 「魔導アーマーを借りていくぞ」 「待て待て、そんな戦力になる武装をみすみす放置するわけにはいかんだろ。俺も乗るよ」 時間短縮のためにスネークは戦闘機のある場所まで乗っていこうとしたのだが、それでは勿体無い。 だから馬岱が持ち帰るために名乗りを上げたのだが、タケモトに制された。 「それなら俺が乗るほうがいい。一番安全だからな」 「安全も何も誰が乗るかなんて関係ないだろ」 「バカか、咲夜がいるのを忘れるな」 「ああ……」 馬岱がスネークと行ってしまうと戦力はメタナイトしか残らない。 その場合に咲夜に対抗できるかと言えば、ほぼNOだ。 今こうして集まっているからこそ咲夜も手を出しかねているのかもしれない。 だが彼らが抜けてしまうと彼女にとっての難易度は大幅に下がる。 故に最低限、馬岱とメタナイトを残さなければならないのだ。 よってスネークと一緒に乗るのは、 「俺しかいないだろ」 「乗りたかったのなら初めから素直にそう言えよ…」 タケモトになった。 まあ妥当と言えば妥当か。 表面的に見ればキョン子でも言葉でも構わない気がするのだが。 スネークから荷物の大部分を馬岱は預り、スネークは魔導アーマーを起動させた。 タケモトは直前に馬岱に耳打ちをしてから乗り込み、ようやく出発した。 見晴らしのいい平原。あっちを咲夜が襲う事はまず無いだろうから、やはり襲われるのはモールの4人か。 100mくらい離れたところで見送りを止め、全員がモールの中に入った。勿論、周りを警戒しながら。 奈落のように伽藍としたエレベーターの空洞。 メタナイトはまず、先陣を切って飛び込んだ。 内部に危険が無いかどうか確かめるためだ。べジータのあの破壊の後とは言え、何か残っている危険がある。 すぐ戻ってくるとは言ったが、おそらく数分はかかるだろう。それほどにあの格納庫は広い。 その間も馬岱は気を緩めてはいなかった。未だに危険は残っているのだから。 「あの…すいません」 「ん、何だ?」 「……ちょっと行っていいですか」 「何処に…って、ああ。御不浄か……」 トイレである。 言い出したのはキョン子だった。 「どうすんだ?俺が付いて行ったほうが……いや、言葉。お前も来い」 どちらかと言えば全体行動が望ましい。 幸いトイレの入り口からエレベーターは見えるので、一応監視は継続できた。 (咲夜がどこに潜んでいるか分からんからな……まさか女子トイレに…?いやいや、それはまずくないか? つーかこの場合だと俺が確認しないといけないんじゃないだろうな……) 立場上そうせざるを得ないのは明らかだ。 拒否権は無い。 (てか、時間操作系能力者に直接突っ込んでいくのはかなり危険じゃないのか?それを言ったら何処にも行けないんだろうが… 何かいい方法は―――そうだ) 馬岱はふと思いつき、スネークから預ったデイパックからある支給品を取り出した。 もはや紹介するまでもない愛犬ロボット、『てつ』である。 「おい、ちょっと調べて来い」 『ワカッタ』 支給品に調べに行かせればいいのだ。 しかしDMカードは一度使うと12時間は使えないから割に合わない。 ポケモンは(今この場にはいないが)一度死ぬとそれっきりだ。 てつならば痛手はさほど無いということである。 で、数十秒と掛からずに『異常ナシ』との応えが返ってきた。 個室トイレに篭ったキョン子を待つために、トイレの入り口付近で馬岱は言葉といた。 特に会話も無い状況。ほんの少しの間無言の状態が続く。 が、静寂を破ったのは馬岱が先だった。 「グラハムは何故死んだんだ?」 「……さっき聞いたとおりですよ」 伏目がちに視線を逸らす。 やはり何処か怪しいと、馬岱は感じた。 さっき説明した時も、どうして言葉が応えずにキョン子が答えたのか。 その違和感が消えなかった。それをどうしても解決したい。彼は思った。 故に、 「そうか。じゃあ……グラハムを殺したのはどっちだ?」 言葉は、応えなかった。 代わりに視線がぶつかり合う。火花が散るといったものではなく、どろどろとしたものが混ざり合う感覚。 どちらも動こうとはしない。出方を見る余裕があるのは、馬岱の方だが。 カマをかけた程度で、彼の発言には確固たる確証は存在しない。 だが返答が無い以上はクロだと判断できるのは当然だろう。しかし殺せるまでには至らない。 彼の主観はこの場で殺すべきだと訴えているが、いきなり殺してしまってはそれこそ全体の不和に繋がる。 しかし、こうも思う。 その全体の不和を理由にして今まで何度言葉の事を不問にしてきただろうか? 三度か、いや、それ以上か。少なからず障害の要因となっていた筈だ。 これ以上許していては仏様よりも慈悲深くなってしまう。 このまま捨て置くわけにはいかない。 だが再びになるが、グラハムを殺したという確固たる証明は存在しない。 純粋に考えればキョン子の説明は至極まっとうだ。不意打ち以外でグラハムが死ぬとも思えない。 それにキョン子が嘘をつくとも思えなかった。言葉に脅されて言わされていた可能性もあるが、モールに 着いてからは二人はそれなりに離れており、不正を糾弾する事は充分に出来る。 さらに、言葉に彼女が共謀する理由がない。メリットもない。 一瞬という割にはあまりにも長い時間の中、馬岱は少し自分の行動を後悔しだした。 キョン子が嘘をついている、もしくは言わされている可能性は限りなく低い。 故に言葉がグラハムを殺したというのも命題としては偽となる。 馬岱の問いかけに黙ったのも、『何言ってんだコイツ』みたいな心境の所為かもしれないし、それを理由には出来ない。 しかし不自然さがあったのもまた事実だ。 だからこそ馬岱は切り出す気になったのだが、その根拠も実際は薄弱な物で、今となっては虫の報せ程度でしかなかったと 彼に実感させていた。けれども言い出そうと思わなければ言うこともない。そこに思い至る過程があったからこそ結果が出ているのだ。 それは詰まるところ今までの積み重ねに集約されている。彼女達の煮え切らない態度。言葉の暴走。キョン子に何処か見える不自然さ。 過去の事例の蓄積が馬岱に勇み足をさせるに至ったのだ。 そして、彼の直感は正しい。 言葉はまだ行動にこそ移していないが殺意は持ち続けている。 隙あらばいつでも実行に移せるよう、身構えていたのだが馬岱に先手を打たれることになってしまった。 この膠着状態が続いた場合、言葉が絶望的な立場に追いやられるのは明白だった。 あらゆる面から見て利があるのは馬岱の方。言葉の弁明では状況を覆す事ができない。 やり過ごすならばさっきの質問に即座に回答すべきだったのだが、彼女はそれをしなかった。 「何をしてるんだい?」 そう、やり過ごすつもりなどない。 「? キョン子……―――!?」 馬岱は後ろからの声に反応しようとし、振り向こうとした。 だがその前に、背後の金属質な触感に違和感を持ち、そしてキョン子の言葉の意味を考え、愕然とした。 もう、間に合わない。 彼の背中に銃口が押し付けられている状況を確認した言葉は、うっすらと嗤った。 その口から洩れたのは、 「まず一人目」 2発の銃声がモール内に響き渡り、その音と同時に馬岱は倒れた。 人を殺すのに弾幕など要らない。たった数発の銃弾。それだけで脆い生き物は死に至る。 どういう攻撃を受け、どんな状況なのか彼はまだ理解に至っていない。 しかし分かっている事があった。 「おま……えら…………ッ!!」 震える手で身体を持ち上げようにも、馬岱はどうしようもなかった。 横腹から堰をきったように血が溢れ出す。 「喉も潰しておいたほうがいいんじゃないですか?」 「いや、その必要はないよ。ごらん」 馬岱の口からも血が吹き出していた。 これではまともに喋ることすらままならない。 それ以前に、命があと1分も持つかどうかの瀬戸際だった。 彼を助ける者は、残念ながらこの場にはいない。 朦朧とし始めた意識の中、馬岱はぼんやりと考えた。 (コッペ…パンは……くそ、バッグを取られ……………) 彼自身が自分を救う方法も奪い取られた。 メタナイトが銃声を聞いている可能性は高い。しかし此処に来るまでどんなに速くとも20秒はかかるだろう。 それだけ時間があればこの二人が平静を装うには充分だ。そして言い訳も簡単に成り立つ。 この場にいない、それらしい人間に罪を擦り付ければいいのだから。 (咲夜か…ときちく………辺りだろうな……、、、ダイイングメッセージ……は、駄目か……) そんなものを残す挙動をした瞬間に抹消に入られるのは当然だ。 下らない考えを思いついたことで、あまりの馬鹿らしさに馬岱は笑いを堪えられなかった。 その笑いも咳き込む血に遮られ、苦しいのか笑っているのかよく分からない顔になった。 彼の言葉への警戒は万全だった。 充分すぎたと言ってもいい。その間にも咲夜への注意は怠らなかったのだから。 だが、キョン子に対しては殆どノーマークだった。 可能性の一つとしては上げられても、考慮するだけ無駄に等しい。そんな認識だったからだ。 それだけ、彼女を何も出来ない存在と誰もが考えていた。 現実は違っていたのだが。 状況の理解は追いついた。誰にも知ることはできないが、それはグラハムでも辿り着けた事だ。 だが、その前提にある理由が分からない。 キョン子がこのような行動を起こすきっかけが、プロセスが不明瞭すぎた。 今まで見てきた性格とはほぼ真逆の態度。そんなものが唐突に発現するものなのだろうか? 「これで後3人ですよね?」 キョン子はまず馬岱のバッグを漁りながら言葉に受け答えした。 「うん。道中で結構拾ったしね。後は必要最低限で集められる」 (……なに……を……集める……?) 言葉は頭の中に浸透するが、それを考える気力はもう無かった。 自分の終わりが近づいているのがまざまざと感じられたし、これ以上の思考は彼にとって無駄だったからだ。 「後は所在不明の2人のどちらかの仕業ってことにしておけばいいんですよね。…でも十六夜さんだと私達が何もされてないのは 逆に不自然だからどちらかと言えばときちくさんの方がいいと思いますけど」 「まあそうだね。そろそろメタナイトも来る頃だろうし次の準備に取り掛かろうか」 「そうですね。会話聞かれたら拙いですし」 「ああ、少し黙るのが遅かったな」 突然、男の声が響いた。 知っている声だ。誰かなど、この場にいる者にとっては今更言うまでも無い。 言葉は咄嗟に振り返り、キョン子は声の方向に銃口を向けた。 間違いなく的確な行動だった。少なくとも彼女らの肉体的なスペックを考慮すれば。 だが、奇襲をかけられた者が初撃を防げる道理は無い。 「………ッづ……!!」 肉を裂く音が響き、キョン子は呻き声を上げた。 銃を持ったその腕は予め狙われていた通りに銃弾に貫通され、さらに彼女の左足にもう一撃が喰らわされた。 反撃を許さない連続的な攻撃。実際はもっと前にこの近くに潜んでいたのだろうとわかる行動だ。 周りへの注意をキョン子は――ユベルは全く怠っていなかった。 しかしそんなものは、ときちくにしてみれば何の意味も無い。 味方として行動していた者で、彼の特異性を完全に理解していたのは誰一人としていなかった。 彼は目の前の二人の驚愕を無視してさらにステアーでたたみかけを行った。 だがそれは間一髪で逃れられることになる。 キョン子の左足がナイフで貫かれた時に、言葉はすぐさまキョン子の身体をトイレに引きずり込むようにして退避した。 その判断は咄嗟を凌ぐには優秀な判断で、少し長い目で見れば愚かな決断だった。 トイレは袋小路。篭城するには不向きで逃げ場は無い。 ときちくはバッグからコッペパンを取り出し、馬岱の口に突っ込んだ。 「ゲフッ」と少し咽た後、馬岱はゆっくりと立ち上がった。 「グラハムもあんな感じでやられたのかもな」 「そうか」 聞き流したような返事をしながら、ときちくはキョン子が取り落としたバッグを拾う。 そして中身を覗くと、その中からコッペパンを一つ取り出した。 「あ、おい」 「当然の権利だ。それとも俺を殺すか?」 「そこまで対比させるのはどうかと……それよりこれからどうするつもりだ?」 「メタナイトはまだ帰ってこないのか?」 「ああ、随分と遅いが……まさか何かあったんじゃないだろうな」 「いや。それはないだろう」 「なぜそう言いきれる?」 「俺も降りたから」 「なるほどな。それよりあいつらはどうする?」 「貴重なモンスター達を使うのは勿体無いな。だからと言って単身じゃ飛び込めない」 「向こうも武器持ちだからな。飛び込んだ瞬間に死ぬかもな」 「死にたくはないな」 自分の血でべたついた服に嫌気を感じながら、馬岱はときちくを注視した。 会話する限りは以前のように持ち直しているように見える。 しかしおかしな点も見られた。 「今までどこにいたんだ?」 「チルノを探しに図書館まで」 「……チルノは?」 「スネークのところに行かせた。戻って来させるためにな」 「何故だ?」 「……五月蝿いな、一々訊かなきゃ分からないのか?」 「状況把握は重要だろう。何を言ってるんだ?大丈夫か?」 「チッ……」 「聞こえるように舌打ちをするんじゃない」 やはり精神的な不安定さが感じられる。 前はもっと余裕のある態度だったが、今はそうでもないようだ。 「キョン子の方は放って置けば倒れるだろうが……だとしても言葉がいるな」 「時間が惜しい。投擲武器でも使って制圧するか」 そう馬岱が言った瞬間、そのトイレの通路から人影が飛び出してきた。 それに対し、ときちくはすぐさまトリガーを弾いた。 自分に危害を加える存在が隠れていると分かっている場合、かつその存在しかいないと知っている場合。 その敵に対する攻撃の躊躇は限りなく低くなる。そして倫理的な観点を越えてでも自らの身を護るに足る 状況の場合は、確かな意志を併せて行動が実行されることになる。 今のような状況がまさにそうだ。この場合飛び出してくるのはキョン子と言葉以外有り得ない。 ときちくはそのことを前もって探知機の情報で知り得ているし、彼女達に対して一切の油断を持ってはいない。 何もしなければ確実にこちら側がやられてしまう。そんなシビアな状況で自己防衛を行わない方がどうかしている。 だからこの行動はときちくにとってなさねばならない事だったし、当然馬岱もそれを理解していた。 どさり、と出てきた一人が倒れる。 それより僅かに早く、アサルトライフルが銃弾の嵐をときちく達に浴びせかけた。 それを見るまでもなく二人は物陰に隠れてやり過ごす。相手の武装が分かっているため、予め距離を取っていたのだ。 タタタ……と速いスピードで駆けていく足音が建物の入り口に近づく。 ときちくはそれを見るや、すかさず包丁を2本同時に投げつけた。 至近距離ならいざ知らず、彼の射撃の腕は一般人とあまり変わらない。 十字軍時代の暗殺術には銃器の扱い方など存在しないからだ。 故に刃物の投擲の方が彼にとっては有効性が高い。 が、しかし標的はくるりとこちら側に身体をむけるとライフルで包丁を薙ぎ払った。 無駄のない鮮やかな動作だった。とても常人とは思えないほどの。 包丁を弾くと同時にさらにライフルでの攻撃が来たためにときちくは、さらに遅まきながら加勢に入った馬岱は またしても隠れるしかなかった。顔を覗かせてみると、もう姿は見えなくなっていた。 「……しまったな」 そういえば言葉は居合いが出来たんだっけと、ときちくは今更ながらに実感した。 ◇ さて、残りの一人といえば、ときちくに撃たれて床に横たわっていた。 腹部と脚を主にやられていて意識はない。放置すれば確実に出血多量で死に至るレベルだ。 「言葉を追うか?」 「今外に出るのはあまり賢明とは言えないな」 それより、と言いかけて馬岱はハッと視線を別の方向に向けた。 キョン子の意識が戻っている。 ビクッと身体を震わせたかと思うと、彼女はゆっくりと目を開けていた。 状況を把握できていないようだ。しかしすぐに自身の異状に気づいたようで、 「……ぁ、ああ……ああああああああああっっ!!」 苦痛に声を張り上げた。 当然の反応と言える。体中の銃創から血が流れ出し、呼吸をするたびに生命力が失われている。 致死に至らずに意識を取り戻したため、その痛みは計り知れないものだ。 「い、痛い……よ…………なん…で……………っ」 白くなっていく手を震わせながら、ときちくと馬岱に対して助けを求めるかのような動作を取る。 それに対して馬岱は、侮蔑の視線を向けた。自分を殺そうとした者に同情をかける余地などないからだ。 「自分から仕掛けておきながらよくもまあ言えたもんだな」 「アレが……ある…でしょ……はやく出し…て……」 「お前にやるコッペパンはない」 一つ馬岱が食べてしまったし、その見返りに半ば強引にときちくが一つ取ってしまった。 フリーなコッペパンは2つだけ。これ以上使用したらタケモト辺りが激怒するかもしれない。 それ以前に、床に這いつくばっている殺人者にくれてやる気などさらさらないのだが。 それでも、キョン子はまだ言い続けた。 「何………言ってるの…?はやく……助けてよ……助けてよぉ!!」 彼女は文字通り死力を振り絞って叫んだ。 自分は何も悪くないという風に。自分は何もやっていないという風に。 だが、それが彼らに聞き入れられる筈がない。 さっき起こったことに、言い逃れなど出来る筈がない。 「…………わけ…わかんないよ……」 たとえ彼女が、何もしていなかったとしても。 それから10秒もたたずに、キョン子は死んだ。 自分の身体を血の海に沈めて。誰にも理解されないまま。 キョン子が死んだのを馬岱が確認した頃、ようやくメタナイトが地上に戻ってきた。 事態を初めて見た時彼はかなり驚いたが、事の成り行きを馬岱が説明すると悔しそうな雰囲気を出しながらも 神妙に頷いた。仕方ないと思ったのだろう。 何故遅かったのか、銃声は聞こえなかったのか、と訊いたところ、開いていた穴をかなり念入りに調べていたらしい。 水音も重なれば確かに聞こえにくくはなるだろう。 「それより、大丈夫なのか?お前」 馬岱は気になっていた事をときちくに訊いた。 「は?」 「いや、いいんだ…」 訊いたとしても期待通りの応えはないと分かっていたが、どうしても訊かずにはいられなかった。 あんな現実を見せ付けられて平然としていられる筈がない。そう思ったからだ。 馬岱が考え込んでいる間、ときちくは探知機を取り出していた。 あと使えるのは数回程度の、貴重な支給品。 それを少しの間見つめて彼は電源を切り、小さく溜息をついた。 「どうした?」 「スネーク達が戻ってくる。ついでにチルノも一緒にな。まだ時間は掛かるだろうが、外で待っておいたほうが良さそうだ」 探知機の画面に映っていた点は、7つだけだった。
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名前 攻撃属性 分類 Rank 消費HP 消費MP 必要TP スキル盤 説明 クロスカット 剣 物理 R1 8 0 2 スキル盤「十字斬」 十字型に敵を切りつける攻撃 スパイラルカット 剣 物理 R2 120 0 20 --- 螺旋状に斬りつける攻撃 ラストカット 剣 物理 R3 300 0 60 --- 相手の急所を確実に切りつける奥義 瞬迅槍 槍 物理 R1 3 0 2 スキル盤「瞬迅」 素早い突きを繰り出す攻撃 烈翔槍 槍 物理 R2 不明 不明 不明 --- 敵を打ち上げ突きを繰り出す技 守護方陣 槍 物理 R3 570 0 65 --- 地面に武器を突き地中からの攻撃を繰り出す奥義 下段突き 拳 物理 R1 8 0 2 スキル盤「鉄拳」 上方から敵の急所を突く攻撃 回し蹴り 蹴 物理 R1 不明 不明 不明 --- 回転力を利用して攻撃する アライクカッター 蹴 物理 R2 不明 不明 不明 --- カッターのような切れ味のキックを繰り出す ジェノサイドカッター 蹴 物理 R3 550 0 60 --- ナイフのような切れ味で2段キックを繰り出す奥義 タイガーニー 襲 物理 R1 不明 不明 不明 --- 虎のように素早く膝蹴りを繰り出す エアレイド 襲 物理 R2 不明 不明 不明 --- 通常は上空の敵に対して行う膝蹴り攻撃 ヴァーティカルエアレイド 襲 物理 R3 550 0 60 --- 通常は上空の敵に対して行う多段膝蹴りの奥義 乱れ撃ち 銃 物理 R1 5 0 5 スキル盤「時雨」 銃を連射し敵に攻撃する隙を与えない 狙い撃ち 銃 物理 R2 不明 不明 不明 --- 敵の急所を確実に見極め撃つ技 ガトリングショット 銃 物理 R3 650 0 70 --- 弾がなくなるまで打ち続ける奥義 ファイア 炎 魔法 R1 0 2 2 スキル盤「火種」 炎で敵を包む イグニートプリズン 炎 魔法 R2 0 100 20 --- 激しい炎で敵を包み込む エクスプロージョン 炎 魔法 R3 0 450 15 --- 大爆発で敵を焼き殺す イラプション 炎+地 魔法 R4 0 1600 760 --- 敵直下で火山噴火を起こす ウォーターレイ 水 魔法 R1 0 2 2 --- 水で敵を攻撃する ウォーターカッター 水 魔法 R2 不明 不明 不明 --- 水圧で敵の皮膚を切り裂く アースクエイク 地 魔法 R1 0 5 5 --- 地震による攻撃 スパイラルクエイク 地 魔法 R2 不明 不明 不明 --- 回転する地震により攻撃する スプラッシュ 風 魔法 R1 0 6 3 スキル盤「突風」 空気エネルギーを放出する ブラスト 風 魔法 R2 0 103 6 --- 突風により敵を切り裂く ダウンバースト 風 魔法 R3 0 580 15 --- 上空から降下してくる爆風で攻撃 エレクトリック 雷 魔法 R1 0 2 2 --- 放電により敵を感電させる ムーンライト 聖 魔法 R1 0 6 5 スキル盤「月光」 聖なる輝き ダークライト 闇 魔法 R1 0 6 5 スキル盤「闇光」 怪しい輝き アロウダークネス 闇 魔法 R2 0 210 18 --- 敵を闇へといざなう ポイズン 毒 魔法 R1 0 5 4 スキル盤「毒」 毒による攻撃 ヒール 癒 魔法 R1 0 5 5 スキル盤「治癒」 自分のHPを少し回復する リカバリー 癒 魔法 R2 0 100 20 --- 自分のHPを結構回復する レイズデッド 癒 魔法 R3 0 600 120 --- 自分のHPを大幅に回復する キュア 治 魔法 R1 0 4 3 スキル盤「復帰」 状態異常を治療する ドレイン 吸 魔法 R1 0 7 4 スキル盤「吸血」 敵のHPを吸い取る サックドライ 吸 魔法 R2 0 320 30 --- 敵のHPを大幅に吸い取る ヴァンパイア 吸 魔法 R3 0 640 97 --- 敵のHPを更に大幅に吸い取る シューティングチキン ? 魔法 R1 0 5 5 スキル盤「落鶏」 鶏を敵に落とす何が起こるかわからない魔法 シューティングストーン 無 魔法 R2 0 105 25 --- 大きな岩石を敵に落下させる シューティングスター 無 魔法 R3 0 430 50 --- 隕石を敵に落下させる シューティングプラネット 無 魔法 R4 0 900 100 --- 惑星を敵に落下させる シューティングフィクスター 光+炎+地+風 魔法 R5 0 3150 1500 --- 恒星を敵に落下させる 召喚 召喚 混合 R1 25 20 30 スキル盤「召喚」 モバイル版からサモンを呼び出す
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初夏。私は鳴き始めたセミの声を聴きながら、市の運動場に向かって歩いている。 なぜ私がそこに向かっているのかと言うと・・・ 「ひ~らぎ~。 今度の日曜ヒマか?」 「え?んーと・・・。 あ、空いてるわよ・・・」 「じゃあさ、その日陸上の大会があるんだけど来てくれないか?」 「は?何で?」 「いやー、最後の大会だしさ、応援してもらいてーんだ」 「峰岸は?」 「あやのはその日、ちょーっと用事があるみたいでさ。なっ?あやの?」 「もう、みさちゃんたら」 「ははーん。幸せそうで良いですなぁ」 「柊ちゃんまで」 「ま、そういうわけなんだ。だから来てくれよ」 「どういうわけだ!」 「ダメなのか?」 「え?あ、いや・・・。 ったく、しょうがないわねぇ」 「お?来てくれるのか?」 「わかったわよ。で、何時に何処に行けばいいのよ?」 「やったー!!これで優勝だー!!」 「って話を聞け!!」 「弁当はミートボールな」 「作るか!!」 ・・・と言いつつも、結局早起きして作った弁当を持って、私は会場に向かっている。 日下部とは、中学からクラスがずっと一緒だった。その頃から、誰に対しても同じテンションで接し、自由で楽しそうにしていた日下部が私は気になっていた。 日下部ともっと仲良くなりたかったし、日下部もたまに話しかけてくれたけれど、どうしても私は近づくことが出来なかった。 それは、日下部の周りには、いつも同じ陸上部の友達がいたし、放課後はすぐに部活だったから、というのもあるのだけれど、それよりも日下部の横にいつも峰岸がいたことが大きかった。 峰岸は日下部の保護者みたいな感じで何かと面倒をみていたし、たまに、休みの日に遊びに行った話をしていることもあった。 楽しそうに二人で話している所を見ると、もしかしたら日下部は峰岸と付き合っているんじゃないかって考えて、一人で落ち込んだこともあった。 それは私の勘違いだったみたいだけれど・・・ でも、そんな風にいつも日下部といられる峰岸が羨ましかったし、いつかは峰岸の場所に私が立っていたいとも思っていた。 高校に入ってからも相変わらず峰岸とくっついていたけれど、それでも何かと話すことも多くなってきて、今までわからなかったバカっぽくて、ガキっぽい日下部も見えてすごく嬉しかった。 ま、呆れることの方が多いけどね・・・。 日下部に「中学からずっと同じクラスだな」って言われたときは、本当は嬉しかったんだけど、それを認めちゃうことが何か照れくさくて、わざと気がつかないフリをして誤魔化した。 はぁ、私って何で素直になれないのかな・・・。 仲良くなってきたことで、日下部も私にじゃれてくることが増えてきたけれど、私はそんな日下部とどう接していいのかわからなくて、冷たくし過ぎたり、からかい過ぎちゃったりして日下部を泣かすこともあった。 そんな時、決まって目を潤ませながら峰岸に助けを求める日下部を見ると、胸の奥を締めつけられるような苦しさを感じた。 こんなことしていたら、いつか日下部が離れて行っちゃうんじゃないかって・・・。 それに、やっぱり峰岸の場所には立てないんじゃないかって・・・。 私がこなたたちとお昼を食べるようになったのは、その苦しさを感じたくなかったのもある。こなたと一緒にいると、腹立つことも多いけれど、その時間は苦しさを感じなくてすんだ。 それに・・・ちょっとだけ・・・。本当にちょっとだけだけど、こなたと一緒にいると、どこか安心するところもあった。 でも、教室に戻って、峰岸と日下部が仲良くしているのを見ると、何ともいえない焦燥感を感じて、やっぱり私は日下部と一緒にいたいって思った。でも、一緒にいると苦しくて・・・。 そんなどっちつかずな気持ちのまま、毎日を過ごしていた。 だから、日下部に大会を見に来て欲しいと言われた時はすごく驚いた。 ホントはその日が日下部の最後の大会だっていうのは知っていたけれど、そういう時はいつも峰岸が一緒に行っていたし、私は日下部に冷たくすることが多かったから、正直声をかけてくれるとは思っていなかった。 それに、自分でもちょっと嫌になるけど、峰岸が来ないことが・・・少しだけ嬉しかった。 運動場に着くと、応援席には他校の生徒らしき団体が様々な色の応援旗を掲げていた。陵桜の生徒も何人かいて、その辺りを見ていると、少し離れたところでアップをしている日下部を見つけた。 日下部はいつも教室で見せるにやけた表情じゃなくて、とても真剣な顔で集中しているみたいだった。普段は見慣れない顔だったからか、ドキドキしながら日下部を眺めていると、日下部が途中で私に気がついたみたいで、大きく手を振りながらいつもの笑顔でこっちにきた。 「おーい!ひーらぎー! 来てくれたんだな」 「ま、まあね。約束したし」 「ありがと。あれ?それなんだ?」 「え?あ、その、べ、弁当よ。お昼食べるにも、近くにお店ないじゃない。 そ、それに・・・、最後の大会なんだし、せっかくだから・・・」 あー!!やっぱり恥ずかしいっ!! って、あれ?日下部?何かポワーっとしてない? 「く、日下部? どうしたの?」 「へ? あ、いやいやいや!! ありがと! これで負けねぇぞー!!」 「か、勘違いしないでよ! わ、私の分のついでにあんたのも作っただけなんだからね!」 「ん? いいっていいって。作ってきてくれたことが嬉しいんだぜ」 「う・・・。そ、そう?」 なーんか調子くるうのよね・・・。 その時、出場選手を呼ぶアナウンスが流れた。 「おっ?予選が始まるみたいだな。んじゃ、ちょっと行ってくるよ」 「あ、うん。 がんばってきなさいよ」 「おう!まかせとけ!」 私から離れ、監督らしき人の所に向かった日下部は、何か指示を受けているみたいで、真剣な顔でそれにうなずいて、他の選手が並んでいるスタート位置に向かっていった。 全員がポジションに着き、しばしの沈黙の後、電子音が聞こえ、日下部たちは一斉に走り出した。 日下部の走る姿を見るのはこの日が初めてだった。日下部は背筋を伸ばして正面を見据えたまま、前を行く選手を次々に追い抜いていった。その姿がとてもかっこよくて、私はさっきと同じように胸がドキドキしていた。 結果日下部は1位でゴールをした。 私は相変わらずドキドキしていたけれど、できるだけそれを悟られないように平静を装いながら、陸上部の仲間と話している日下部のところへ向かった。 「おつかれ。あんた結構やるのねー」 「そりゃあ、ずっと部活やってたんだぜ。簡単には負けないよ」 「その代わり勉強は全然だけどね」 「うっ・・・。それを言うなって」 「ふふふ。冗談よ。 でも、その、日下部のこと・・・ちょっと見直したわ」 「にゃはは。まぁな。 それに柊が見に来て・・・」 「え?な、何て言ったの?」 「な、なんでもねぇよ。 っと、次の予選か」 「へ?まだ走るの?」 「んー。そうだよ。あと2回走って、残ってたら決勝だ」 「ふーん。すぐに決まるわけじゃないんだ?」 「まあな。そいじゃあ、行ってくるよ」 「うん。がんばってね」 その後も日下部は順調に勝ちあがり、決勝までくることができた。 さすがに緊張したような顔はしていたけれど、スタート前の様子は落ち着いていて、どこか頼もしく見えた。 スタートの音と同時に選手達は走り出した。 少し出遅れた日下部は、始め4番手辺りを走っていたけれど、最初の時と同じように前の選手を抜かしていき、そのまま1番前を走っていた選手との差を、徐々に詰めていった。 ゴールまであと僅かという距離で日下部がその選手と並びそうになった時、思わず私は大声で叫んでいた。 「もう少し・・・。 がんばれー!!日下部ー!!」 ゴールの瞬間、本当に僅差だったけれど、日下部の身体はわずかに届かなかった。 走り終えた日下部は、中腰の姿勢で膝に手を置いたまま動こうとせず、そんな日下部のところにすぐにでも行きたかったけれど、私よりも先に陸上部のメンバーが近づいて行くのが見えたから、私はその様子をただ見ていることしかできなかった。 首にタオルをかけられ、言葉を交わしている日下部の顔には、いつもの笑顔があったけれど、どこか寂しそうにも見えた。 話を終えた日下部は、そんな寂しそうな笑顔のまま、ゆっくりと私の方へ歩いてきた。 「あーあ。負けちまった・・・」 私はそんな日下部になんて声をかけたらいいのか、すぐには言葉が見つからず、結局、ありきたりな言葉しかかけられなかった。 「残念・・・だったわね・・・」 「ああ・・・。 ま、しゃーないよ。 今までは表彰台に上がれなかったんだから、これだけでも充分だよ」 「日下部・・・」 「そんな顔すんなって。柊が応援してくれたからがんばれたんだ」 「う、うん・・・」 「・・・。 試合終わったらなんかトイレ行きたくなっちゃった」 「おまっ、この場面でそんなこと言うか普通?」 「しゃーねーじゃん。ずっと緊張しっぱなしだったんだぜ?ま、ちょっと行ってくるよ」 「ったく・・・」 日下部はいつもと同じようにバカみたいな話をしていたけれど、でも、どこか無理をしているようにも感じた。 それにトイレに向かっていく日下部の後姿が妙に寂しげで、私はそっと後をつけた。 「日下部は・・・。あっ、いた」 しばらく探すと、トイレの前の水道で顔を洗っている日下部を見つけた。 私は声をかけようとして近づいていったけれど、水道の縁に手をかけてうつむいたままの日下部を見て、すぐには声がでなかった。 「うう・・・ひっ・・な・・何でだよ・・・あと少しだったのに・・・・・。 あやのにまでお願いして・・やっと柊のこと誘えたのに・・・。 こんなときくらい・・・うぅぅ・・勝たせてくれよ・・・」 うつむいたままの日下部の目から、大きな涙の粒が次々と落ちていた。 それを見たら、胸の奥を締めつけられる苦しさを感じて、気がついたら声をかけていた。 「日下部・・・・」 「ん? あっ!柊? わわわ! あ、あの、ちょ、ちょーっと顔洗ってたんだ。さっきの試合で汗かいちゃったからさー」 「日下部・・・」 ―なんでごまかすの? 「いやー、やっぱ優勝すんのは厳しいな。上には上がいるもんだ」 「日下部・・」 ―なんで正直に話してくれないの? 「ま、これで、あとは受験だけ―」 「日下部」 ―なんで峰岸にするみたく私には泣きついてくれないの? 色々言いたいことが胸の奥から飛び出しそうになっていたけれど、私はどうしても言葉にすることはできなかった。 それがどうしようもないくらいもどかしくて、でも日下部には伝えたくて・・・。 「日下部!!」 私は、ただ一方的に話すだけの日下部にも、そして気持ちを言えない自分にも段々腹が立ってきて、思わず大声で叫んだ。 「な、なんだよ・・・」 驚いた日下部は不安げな表情を見せるとそのままうつむいてしまい、私も頭が真っ白になって何も言えなかった。 重苦しい沈黙の後、なぜかはわからないけれど、自分でも驚くくらい自然に日下部を抱き寄せた。 「ひ、柊?」 日下部は戸惑ったみたいで、少しだけ身体を強張らせたけれど、別に抵抗はしなかった。 そのまま自分の胸に日下部の頭を持ってきて抱きしめると、さっきまで怒っていた気持ちがゆっくりと消えていった。 「日下部・・・・。あんた、すごくがんばったんだよね・・・。かっこよかったよ」 色々不満とかむかつくことはあったけれど、日下部の頭を撫でているとそんな気持ちはなくなって、自然と優しい言葉が口からでてきた。 「・・・う、うん・・。わ・・たし・・が・・がんばったんだ・・・。 柊・・・の・・ために・・・すご・・く・・が・・がんば・・・った・・。 ・・・・う・・うわああああああああああ!!ひーらぎぃー!!!」 日下部は私の胸の中で、まるで子どもみたいに大きな声を出して泣いた。 私はそんな日下部がたまらなく愛おしかった。今までがんばって部活に打ち込んできた日下部が・・・。 ―そして、私のためにがんばってくれた日下部が。 そっと口の中でつぶやいた。 「ありがとう・・・。日下部・・・」 泣いている日下部からは、汗と制汗スプレーの香りがした。 その香りを嗅ぎながら日下部の頭を撫でているとすごく幸せな気持ちになって、その時、私は自分がずっと日下部にしたかったことを今しているんだってことに気がついた。 しばらくして落ち着いた日下部を連れて、木陰のベンチに向かった。 調度お昼時だったからか周りには誰もいなくて、セミの鳴き声がうるさいくらいに感じた。 「少し落ち着いた?」 「あ、う、うん。 ・・・泣いたりして悪かったな」 「いいのよ。中学校から陸上一本で来たんだもんね」 「それもあるけどな・・・」 日下部は何かを含んだまま黙ってしまい、気まずい沈黙が流れたけど、私の中では心臓が大きな音で脈打っていた。 さっき日下部が言っていたことの理由が聞きたくて・・・。 「ね、ねえ・・・。どうして・・・私のために・・がんばってくれたの?」 思い切って聞いてみると、日下部は驚いた顔で私の方を向いて、みるみるうちに赤くなっていった。 なんかその顔を見たら、どうにも恥ずかしくなっちゃって、わざと視線を逸らしてうつむいた。 しばらくすると、横から日下部の真剣な声が聞こえてきた。 「あ、あのな、柊・・・。じ、実は、前から」 え?え? く、日下部?ちょっ、ちょっと!待ー 「柊のことが・・・す」 ぐ~~~~~~~~~~~~~~~ 「き・・・。 へ?」 は?お腹の音?だ、だれ? って私?! 「う、うわああああぁぁぁぁっ!!!!!! い、今のなしっ!!なしだから!!」 「は?腹、減ったの?」 「ちょっ!!そそそ、そんなことないって!!何でもないんだったら!!」 「い、いや、今のは腹の音だろ?」 「も、もー!!何でこんな時に鳴るのよー!!!」 確かに日下部の弁当作ってて時間なくなっちゃったから朝ごはん食べてないけどさー!! 何でこのタイミングなのよ!!!!思いっきりフラグへし折ってんじゃん!! 「あははははははは」 「ちょっと!! わ、笑うな! ね、ねぇ?さっきの続きは?」 日下部は大笑いしてるし、私はなんとかさっきの雰囲気に戻したくてしどろもどろだし。 もー!!!バカバカバカ!!!私のKY!!何でいざって時にこんなんなのよ!!!!! 「もう良いじゃんよ~。いい加減、腹減ったよ~」 「さっきまでのシリアスな雰囲気はどこ行ったのよ!!」 「え~?そうだっけ~?」 「あんたねー、久しぶりに真面目になったと思ったのにもうこれか・・・」 「まぁまぁ。それも柊の腹の音で終止符が打たれたと」 「くっ・・。ホントのことだから何も言えない・・・」 「なぁ、話は終わりにして一緒にご飯食べようぜ」 「うぅぅ・・・。わ、わかったわよ! でも、後でちゃんと続き聞かせなさいよ!」 「よーし!じゃあ、早速弁当食べようぜ。楽しみだな~。柊の弁当~」 「って、人の話を聞けー!!!!!」 はぁ・・・。自分のせいだけど、なんだか日下部のペースにもろはまっちゃった。 日下部はいつものにやけ顔に戻っちゃったからたぶんこれ以上言ってもダメだろうし、私もお腹が空いていてこれ以上無駄なエネルギーは使いたくなかった。 でも・・・、はっきりとは言われなかったけど・・・日下部も私と同じ気持ちなのかな?でもこれって自惚れ? うーん・・・。でも日下部も部活は終わるし、これからもっと一緒にいられる時間は増えるよね?今度はちゃんと聞きたいな・・・。 その後は、一旦弁当を取りに行ってから、さっきのベンチに戻ってお昼にした。 「おー!! ミートボールだー!!」 「あ、あんたがミートボール食べたいって言ってたから私も食べたくなっただけよ」 「へへー。うれしいなー。ひーらぎはやっぱり優しいよなー」 「そ、そんなに喜ぶとは思わなかったわ」 「ありがとな。ひーらぎ」 「う・・・。べ、べつにあんたのために作ったわけじゃないけどさ・・・」 そうは言っても、まるでお母さんが作ったお弁当を見る幼稚園児みたいに満面の笑みを浮かべている日下部を見ると、がんばって作ってきて良かったなって思ったし、それに、 私の作った弁当をご機嫌に食べている日下部を見ていると、なんだかとっても幸せな気分になった。 「あーん・・・もぐもぐ・・・ごっくん・・・。 うん、うめぇなー。ひーらぎって料理苦手って言ってたけど なかなかやるじゃ― あっ!!」 日下部はいつもよりも話に熱中しすぎたのか、ふとしたはずみに箸からミートボールが落ちてしまった。 「あちゃー、落っこっちゃったわね。 ねぇ、3秒ルールは?」ニヤニヤ 「みゅぅ・・・。さすがに外は勘弁してくれよ。・・・ごめん」 「まぁ、仕方ないじゃない」 「・・・これさ、ひーらぎが作ってくれたんだよな・・・」 「ち、違うわよ!ミートボールはつかさが―」 「形がいびつだぞ」 「いっ!? いびつで悪かったわね!!!」 「・・・な?」 「うっ・・・」 「だからさ・・・。ホントは全部食べたかったんだ。・・・ごめん、柊・・・」 日下部は目を潤ませて私を見上げながらそう言った。 本当にすまなそうな、そして心細そうな、普段だったら絶対に見せない顔をしている日下部があまりに可愛くて、 不覚にも私は思わず見惚れていた。 (ぐはっ!か、かわいい・・・。くそー!峰岸はいつもこんな顔見てたのか!!羨ましい・・・。) 「ひ、ひーらぎ?どうした?」 「は?え?い、いや。そ、そんなに気にしなくていいわよ!どうせまた作ればいいんだし」 「ホントか?また作ってくれるのか?」 「え、あ、まぁ、気が向いたらね」 「よかったー。もう食べられねぇなら、拾って食べちゃおうかと思ってたんだ」 「ちょっ!それはやめとけ。腹壊すから」 「だよなー」 「当たり前だろ」 「で、いつ作ってくれるんだ?明日?」 「調子に乗るな!!」 機嫌の直った日下部は、その後は妙に慎重にミートボールをつまんで口に運んでいた。 ちょっと極端だけど、そこまで大切に食べてくれるんだったら悪い気はしないわね。近いうちにまた作ろうかな・・・。 「ごちそうさまー。 はー。食ったら眠くなってきたな。・・・ちょっと膝貸して?」 「え?おいおい、ちょっと待―」 弁当を食べ終わると日下部は大きく伸びをして、私が止めるのも聞かず太ももの上に頭を乗せた。 いきなりだったからちょっとびっくりしたけど、でも、日下部が自然な感じで甘えてきてくれたのがすごく嬉しかった。 「うーん。ひーらぎの膝って気持ちいいなー」 「ったく。今日だけだからね」 「んー。 嫌だよ。またしてくれよ」 「峰岸にしてもらえばいいじゃない?」 「あやのはしてくれないよ。それにあたしはひーらぎにしてもらいたいんだ」 日下部?何か今、結構重要なこと言ってなかった? 「へ?ちょ、そ、それってどういう意味なの?」 「ふふ。ひ・み・つ。 それに学校じゃこんなことしてくんねぇじゃん?」 「あ、当たり前じゃない!」 「そうだよなー。ちびっ子もいるもんなー」 「え?こ、こなたは関係ないでしょ。人前でそんなことできないってことよ」 「そう言って、ちびっ子にはしてるんじゃないのか?」 「そ、そんなことしたことないわよ!!」 「ふーん・・・。じゃあ、何で今してくれるんだ?」 「え? そ、それは・・・」 正直言葉に詰まった。まさか、『日下部が好きだからするのよ』なんてことは言えないし。 あー、でも言っちゃった方がすっきりするのよね・・・。それだったら何も気にしなくていいし。 それにこの距離ならいきなり日下部にチューしちゃうってのもアリよね・・・。 って何を考えてるんだ私は!!まだ明るいのに・・じゃなくて!それはいきなりすぎるだろ!! 常識的に考えて!! 「そ、その・・ご・ご・・ご褒美よ!ご褒美!! 日下部ががんばったご褒美!」 「ご褒美」という言葉が日下部には効果覿面だったらしい。思わず膝から頭をあげて、目をキラキラさせながら私の顔を覗き込んできた。 ったくガキなんだから・・・。 「じゃあ、また何かでがんばったらしてくれるのか?」 「そ、そうねぇ・・・。考えてみてもいいわよ・・」 「よし!!じゃあ、今度は勉強でがんばる!!」 「受験生なんだから勉強がんばるのは当たり前だろ!!」 「えー。いいじゃんいいじゃん。そういうこというなよー」 「はぁー。 ったく。なんであんたはいっつもそうなのかねぇ」 「じゃあさ、今度あやのも誘って3人で勉強しようぜ。 ひーらぎとあやのに教えてもらえれば勉強もはかどるし、がんばれそうじゃん?」 「ま、まぁ、そうよね。わ、私は、べ、別にいいけど・・・」 なんでここで峰岸もってくるかなー。ったくこっちの気持ち考えろって!! あ、でも自分ではぐらかしちゃったんだっけ。・・・はぁ・・・。 「ようし、決まりだな。じゃあ、そんときがんばったらまた膝枕してくれよな」 「バ、バカ言ってんじゃないわよ! 峰岸がいたらできるわけないでしょ!!」 「んー? じゃあ、あやのがいなかったらいいのか?」 「そ、そういう意味じゃ・・・・」 鋭いつっこみに思わず言葉が出ない私を見て、日下部は勝ち誇ったような顔をしていた。 く~!!あっそう! それなら膝枕よりすごいご褒美あげようじゃないの!!日下部が泣いて叫ぶくらいのさ!! ・・・・って自重しろ、私・・・。 「ふふふ。ま、いっか。勉強がんばればご褒美くれるってことで」 「だから、一人で納得するな!!」 「いいじゃんかよー。だってひーらぎにご褒美もらいたいもんなー」 「ま、待ちなさいよ。誰も絶対あげるって言ってないじゃない」 「へへー。そうはいかないぜ。約束したからよー。ひーらぎは約束したら守ってくれるもんなー。優しいもんなー」 そういって日下部は口元に八重歯をのぞかせ、いたずらっぽい笑顔で空の弁当箱を指でつまみ、目の前でブラブラさせていた。 「くっ・・・!」 はぁ・・・、何でこんなの好きになっちゃったんだろ・・・。 でも、こんな日下部が私は好きなんだよなぁー・・・。バカでガキっぽくて、それでいて気持ちに真っ直ぐで。笑ったときの八重歯がかわいくて・・・。 こんなことになるんだったら、さっさと言っちゃえば良かったのかな・・・。なんか、色々自分の中で理由をつけてたけど、 結局は日下部のことを好きだっていうことが怖かったのかもしれないな。 でも、日下部が勇気を出して今日の大会に私を誘ってくれたことはよくわかったし、私のためにがんばってくれたのもわかった。 だから、次は私がそれをする番なのよね・・・。 いつまでも気持ちは誤魔化していられないもんね・・・。 そんなことをボーっと考えていると、日下部がなぜかモジモジして私の方を見ていた。 さっき丸め込まれてむかついていたところもあったから、ちょっと意地悪をするつもりで、わざと不機嫌そうな声で返してやった。 「何よ?」 「えっと、その、怒った?」 「え? ・・・べ、別に怒ってないわよ」 「そっか・・・」 「な、何よ。何か言いたいことでもあるわけ?」 「う、うーんと・・・。 もう少しだけ、膝枕してくれねぇ?」 「え?」 「いや、頭上げちゃったからさ・・・」 日下部はそう言うと、照れくさそうに顔を真っ赤にして視線をそらした。 そのしぐさがなんだか微笑ましくて、それでいてなんだかとっても嬉しくて・・・。 「ぷっ・・・あはははははは!!」 「なっ?なんで笑うんだよ!」 「あはははは・・・いやー、なんというか、日下部っぽいというかね」 「なんだよそれ! むー・・・」 そう言うと、日下部は口をあひるみたいにしてむくれた。 ふふ、照れたりむくれたり忙しいやつね。ま、レアな顔も見れたし、今日は許してあげようかな、 なんて思いつつも、そんな顔見なくたって私もしてあげたいんだけどね。 「もう。今日は特別だからね」 「え?い、いいのか?」 「いいわよ」 「ほんとに?」 「しつこいなぁ。いいって言ってんでしょ!」 私は向き合っていた日下部の頭を掴むと、そのまま自分の太ももに押し付けた。 日下部はしばらくそのまま動かなかったけれど、照れたように少しずつ向きを変えて、私の方に顔を向けた。 下から見上げる日下部の顔はさっきよりもずっと赤くなっていて、さっきまでの不安そうな顔が嘘みたいな、とびきり嬉しそうな笑顔を私にくれた。 その満点の笑顔がすごく可愛くて、やっぱり私は日下部が大好きなんだなって思った。 ・・・勉強会か・・・。途中で2人っきりになれればチャンスはあるかな・・・。 でも、今の気持ちのまま日下部に告白したら、なんか歯止め利かなくなりそうなのよねぇ・・・。 自重・・・できるかな・・私・・・。 了 Last Summer ~みさおの場合~(みさお視点) コメントフォーム 名前 コメント 欲しい コレの本が欲しい いいなこの二人 -- 名無しさん (2009-05-08 03 27 38) 販売しないの? -- mkl (2009-04-25 07 23 35) うん、いいよ!この作品 -- 15 (2009-01-26 22 45 33)
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高校最後の夏のある日、私はある大きな決心をした。 ―柊に告白をしようと。 「あの・・、あやの。ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・いいかな?」 「うん。どうしたの?」 「あのさ、今度の日曜日のことでさ・・・」 「あ、最後の大会だよね。何時からだっけ?」 「そのことなんだけど・・・」 口ごもる私を不思議そうに見ていたあやのは、しばらくすると言いたいことを察したみたいで、小さくうなずくと私の手を引っ張ってだれもいない空き教室に連れて行った。 「もしかして・・・柊ちゃんのこと?」 「いっ!? いや、その、なんつーか・・・」 「ふふふ。やっと気持ちが固まったみたいね?」 「・・・う、うん」 「みさちゃん、長く悩んでたもんね~」 私と違って勉強ができて女の子らしい柊は私にとっての憧れで、中学の頃からずっと好きだった。 あやのも女の子らしくてかわいいし、勉強もできんだけど、どっちかっつーとお姉さんって感じかな・・・。 いつもだったら思ったことをそのまま言っちゃうんだけど、こればっかりはどうしても言えなかった。それに、柊のことが好きなんだって気がついた時、そんな自分はどっか変なんじゃないかとも思っていた。 『みさお』なんて男みたいな名前だったから、本当は自分が男だって思ってんじゃないかとか、男になりたいんじゃないかとかいろいろ考えたけれど、別に男になりたいわけじゃなかったし、あやのに『みさちゃん』って女の子っぽい名前で呼ばれるとすごく嬉しかったから、私は自分が女として柊のことが好きなんだって思った。 まぁ・・・どっちにしろ人に相談できるような話じゃなかったんだけどな・・・。 あやのにだって、こんなこと相談したらヒかれるんじゃないかって思っていたから、結局だれにも話せなかったけれど、あやのが兄貴と付き合い始めて、恋愛の話をするようになったとき、勇気を出してあやのに相談してみた。 あやのは私の話を聞いて、 『うーん・・・。みさちゃんが柊ちゃんを好きなら、それで良いんじゃないかな。同性っていうのは確かに少ないかもしれないけれど、人が人を好きになることに変わりはないんだし、と私は思うけど』 って言ってくれた。正直あんまりよくわからなかったけど、なんか・・・自分はおかしくないんだってわかって、すごくホッとした覚えがある。 それ以来、あやのに柊のことを話すようになったけど、あやのは無理に告白させようとか、変にアドバイスをすることもなくて、ただ私の話をうなずいて聞いてくれたのが一番嬉しかった。 高校に入ってからもあやのと柊はずっと同じクラスだった。柊は私たちのことをちゃんとは覚えていなかったみたいだったけど、それでも同じクラスでいられたことが、すげー嬉しかった。 でも、柊は隣のクラスに行くことが多かったし、休みの日もちびっ子と遊んでいるみたいだったから、柊はきっとちびっ子のことが好きなんだろうなって思っていた・・・。 でも、それでも柊のことを諦めることはできなくて、学校にいる時はいつも話しかけるようにしてたし、携帯で長電話したり、それに、あやのも一緒だったけど、3人で遊びに行ったりすることもあった。 柊と二人じゃ何話していいかわかんないからって、あやのには無理言って来てもらってたんだけどな・・・。 3人でお昼を食べたり、一緒に勉強したりすることもできるようにはなったけど、それでも相変わらず柊はちびっ子の方にも顔を出していて、このまんまじゃ、いつかはちびっ子に柊をとられちゃうんじゃないかって不安も感じていた。 さっさと告白しちゃえば良かったのかとも思うんだけど、どうしても柊に気持ちを伝えることは怖かった・・・。 そんな自分が嫌で、今度の大会が柊に告白する最後のチャンスだって自分に言い聞かせて、「優勝したら告白する!」ってなんとか決心した。 今まで決勝までいくことはあっても、表彰台にはどうしても上がれなかったから、結構ハードルは高いとは思う・・・だけど!! それぐらいの気持ちじゃないと、ヘタレな私が柊に告白することは無理なんじゃないかっ!! ・・・と自分を弁護してんだか奮い立たせてんだかわかんない理屈をつけて・・・。 一応、練習でも手ごたえを感じているし、ま、なんとかなるかなとは思ってんだけど。 「―ということなんだけど・・・どう、かな?」 「うん。みさちゃんがそう決心したなら私も良いと思うよ」 「そ、それでな・・・本題なんだけど・・・」 「え?」 「あ、あの、今までずっとあやのに頼りきってたから、今度は私1人でがんばりたいんだ・・・。 こんなこと言うなんて自分勝手だと思うんだけど・・・」 「・・・・・」 あやのは珍しく考え込んでいた。 それはそうだと思う。今まで柊のことで相談にのってもらったり、慰めてもらったりしていたし、それに、大会だっていつも応援しに来てくれていたのに今回だけは来ないでくれって言うのは、あまりにも自分勝手だって思うし、それであやのに嫌われても仕方ないのかなっても思う・・・。 嫌だけど・・・。 でも、最後はあやのに甘えないで自分1人でがんばりたかった。だから、あやのにはちゃんとそのことを伝えたかったし、それでもあやのが嫌だって言うなら、別な方法にしようって思っていた。 重苦しい沈黙に耐え切れなくなって私が床を見つめていると、頭の上からあやのの優しい声が聞こえた。 「みさちゃん」 「ん?」 「みさちゃんは、やっぱり優しいね」 「へ?」 「あのね・・・。私がお兄さんと付き合うようになってから、放課後一緒に帰ることも少なくしてくれたし、休みの日に遊ぶ約束しようとしても『自主トレするから』って気を遣ってくれてたよね」 「あ、い、いや・・・。ホント、練習したかっただけだよ・・・」 「ふふ。 いいよ。隠さなくても。私、いつもみさちゃんには感謝してたんだよ?」 「あやの・・・」 「だからね、私のことは気にしなくていいから、がんばって柊ちゃんを誘って」 「あ・・・、あ、あやの~!!」 それを聞いたら自然と涙が出て、思わずあやのに抱きついた。あやのはやっぱり優しいんだって。私が考えていたより、ずっとずっと優しいんだって。 5年間ずっと見に来てくれていたんだし、本当はあやのだって見に来たかったと思う。でも、それを我慢して、私のことを優先してくれたのが嬉しかった・・・。 「よしよし。みさちゃんだって5年間がんばってきたんじゃない。だから自分が幸せになることを優先していいんだよ」 「う・・ひっく・・うん・・・。・・ひっ・・あ・・ありが・・と・・。あ・やの・・」 そう言ってあやのは、いつもよりも優しく私の頭を撫でてくれた。頭を撫でられながら、きっとあやのがこんなにも優しかったから、私も柊のことを想い続けることが出来たんだなって思ったら、また涙が溢れてきた。 しばらくして私が落ち着くと、あやのと一緒に柊を誘うための相談をした。あやのは兄貴とデートっていう設定だったら自然なんじゃないかってことで話がまとまって、柊にはそれで声をかけた。 変に疑われることもなかったし、結局予定もあいていたみたいですんなりOKがもらえた。あまりにもうまくいったから思わず大声で叫んじゃったけど・・・バレてねぇよな。 競技場は家から遠いから、朝早く起きなくちゃならなかったんだけど、前日は不安と緊張でいつまでも眠れなかった。 ほんとに来てくれんのかな・・・。でも、いまさら連絡するのは気がひけるし・・・。調子に乗って弁当頼むとか言っちゃったし・・・。 うわー!心配だー! 頼むよぉ。きてくれよぉ、ひいらぎぃ・・・。 それでもなんとか明け方に寝付くことができて、睡眠時間は少なかったけれど、朝起きた時、いつもより頭がすっきりしているような気がした。 競技場に着いてアップをしていると、グランドの端の方に柊が立っているのが見えた。柊は白いノースリーブのシャツに大き目の青いネクタイをしめてスカートをはいていた。普段の制服とは違っていつもよりも女の子っぽくて、なんだかまぶしかった。 なんかそれを見ただけですげー嬉しくなって、大きな声で名前を呼びながら柊のところまで走った。 「おーい!ひーらぎー! 来てくれたんだな」 「ま、まあね。約束したし」 「ありがと。あれ?それなんだ?」 「え?あ、その、べ、弁当よ。お昼食べるにも、近くにお店ないじゃない。 そ、それに・・・、最後の大会なんだし、せっかくだから・・・」 ホントに弁当作ってきてくれたんだ!これじゃ負けらんねぇよな。 ぃよしっ!!ここはばっちり優勝して、その後は・・・ 『柊! 前から好きだったんだ!私と付き合ってくれ!』 『私も好きだよ・・・。日下部・・・』 『うぉー!! ひーらぎー!!』ガバッ 『ちょっ、ちょっと、みんないるのに・・・ダ、ダメだってば・・。ぁ、あん・・・』 くふふ。なんてなー。弁当と一緒に柊もたっぷりいただいて・・・ 「く、日下部? どうしたの?」 「へ? あ、いやいやいや!! ありがと! これで負けねぇぞー!!」 「か、勘違いしないでよ! わ、私の分のついでにあんたのも作っただけなんだからね!」 これがちびっ子が言っていたツンデレってやつなんだな。うーん、ちびっ子の気持ちがわかる・・・気がする。 「ん? いいっていいって。作ってきてくれたってことが嬉しいんだぜ」 「う・・・。そ、そう?」 その時、出場選手を呼ぶアナウンスが流れた。ホントは照れてる柊がもっと見てたかったけど、それじゃあ本末転倒だよな。後ろ髪を引かれる思いで、なんとか気持ちを切り替えた。 「おっ?予選が始まるみたいだな。んじゃ、ちょっと行ってくるよ」 「あ、うん。 がんばってきなさいよ」 「おう!まかせとけ!」 柊の声を聞いて、身体の芯が熱くなった。今日は負ける気がしないぜ。 スタート位置に行くと、周りは今まで負けたことがないやつらばかりだったから少し安心したけれど、でもやっぱり最初は緊張する。 どうしてもスタートが遅れるから、そこだけは気をつけねーと。 位置についてスタートの合図を待つ。 よし、スタートはバッチリだ。それに今日はなんだか身体が軽くて、面白いように前を走るやつらを抜かせる。 やっぱりひいらぎが来てくれると違うのかな・・・。あ、でもあやのが来てたから負けてたってわけじゃないぜ。 最初の予選を1位で通過して陸上部のやつらと話していると、柊がやってくるのが見えた。少し顔が赤いように見えたけど、今日は結構暑いからか? 「おつかれ。あんた結構やるのねー」 「そりゃあ、ずっと部活やってたんだぜ。簡単には負けないよ」 「その代わり勉強は全然だけどね」 「うっ・・・。それを言うなって」 「ふふふ。冗談よ。 でも、その、日下部のこと・・・ちょっと見直したわ」 「にゃはは。まぁな。それに柊が見にきて・・・」 うわ!口が滑った! 「え?な、何て言ったの?」 「な、なんでもねぇよ。 っと、次の予選か」 「へ?まだ走るの?」 「んー。そうだよ。あと2回走って、残ってたら決勝だ」 「ふーん。すぐに決まるわけじゃないんだ?」 「まあな。そいじゃあ、行ってくるよ」 「うん。がんばってね」 ふぅ・・・。呼び出しかかって助かった~。お楽しみは最後までとっておかないとな。 んで、特にやばいこともなく、順調に予選をクリアーして、ついに決勝まできた。さすがに緊張するなぁ・・・。 しかも周りはいつも上位に入ってくるやつらばっかりだし・・・。でも柊をおいしくいただくためにも負けらんねーぞ! でも、少し気合が入りすぎたのかスタートで少し出遅れた。 いつもだったらそのまま前には行けないんだけど、今日は違っていた。自分でも驚くくらい足が前に出たし、前を走っているやつらが次々に視界から消えていって、最後に先頭を走るやつの背中も段々近づいてきた ・・・けど、どうしてもその距離は縮まらなかった。 ゴールまであと少し・・・。く・・やっぱり届かないか・・・ 「がんばれー!!日下部ー!!」 その時柊の声が聞こえたような気がした。 ダメだ!!勝って柊に気持ちを伝えるんだ!! ゴール寸前、思い切りトラックを蹴って前に出た。 前のめりになってゴールして、すぐに振り向いたら、さっきのやつが両手を挙げて喜んでいるのが見えた。自分は負けたんだってわかったら、その瞬間頭が真っ白になって、顔をあげる気力もなかった。 どれくらいそうしていたのかわかんないけど、気がついたら陸上部のやつが首にタオルをかけてくれていた。『惜しかったな』とか言っていたみたいだけど、 それよりも柊のことが気になって見てみると、なんだか困ったような顔でこっちを見ていた。 「あーあ。負けちまったよ」 柊は相変わらず困ったような顔で私を見ていた。そんな柊の顔を見ていたら泣きそうになったけど、柊に心配かけたくなかったから、笑顔を作って近づいて、できるだけ明るい声で話しかけた。 「残念・・・だったわね・・・」 「ああ・・・。 ま、しゃーないよ。 今までは表彰台に上がれなかったんだから、これだけでも充分だよ」 「日下部・・・」 「そんな顔すんなって。柊が応援してくれたからがんばれたんだ」 「う、うん・・・」 「・・・。 試合終わったらなんかトイレ行きたくなっちゃった」 「おまっ、この場面でそんなこと言うか普通?」 「しゃーねーじゃん。ずっと緊張しっぱなしだったんだぜ?ま、ちょっと行ってくるよ」 「ったく・・・」 それ以上柊と話していたら泣いちゃいそうだったから、適当にごまかしてトイレに行った。水道の水はぬるかったけど、走った後で汗をかいていたから顔を洗ったら結構気持ちよかった。 がんばったけど、だめだったな・・・。 あんな顔させたくなかったのに・・・。笑顔で一緒に笑いたかったのに・・・。 そう考えたら途端に涙が溢れてきた。 「うう・・・ひっ・・な・・何でだよ・・・あと少しだったのに・・・・・。 あやのにまでお願いして・・やっと柊のこと誘えたのに・・・。 こんなときくらい・・・うぅぅ・・勝たせてくれよ・・・」 その時、いきなり後ろから声をかけられた。最初はよくわからなかったけど、それが柊だってわかったらすげー焦って、でも必死に誤魔化そうとして口からは次々と言葉が出た。 「日下部・・・・」 「ん? あっ!柊? わわわ! あ、あの、ちょ、ちょーっと顔洗ってたんだ。 さっきの試合で汗かいちゃったからさー」 ―こんなんじゃ柊に告白なんてできないよ・・・。 「日下部・・・」 「いやー、やっぱ優勝すんのは厳しいな。上には上がいるもんだ」 ―優勝できなかったんだから・・・。 「日下部・・」 「ま、これで、あとは受験だけ―」 ―ちびっ子にだってかなわない・・・。 「日下部!!」 柊は突然大きな声で叫んで睨んだ。 「な、なんだよ・・・」 何か悪いことしたのか?それとも何か怒らせるようなことを言ったのか? 頭の中でいろんな言葉がグルグル回っていたけど全然わからなくて、何も言えずに私はうつむいた。 どれくらいそうしていたのかはわからないけど、しばらくして柊が近づいてくるのがわかった。そしたら頭に腕を回されて、いきなり柊に抱きしめられた。 「ひ、柊?」 な、何で?意味わかんねーよ!!さっきまで怒ってたんじゃねーの? 驚いて何も言えないでいると、上から柊の優しい声が聞こえた。 「日下部・・・・。あんた、すごくがんばったんだよね・・・。かっこよかったよ」 そう言われて頭を撫でられた途端、今まで我慢しようとしていた気持ちの代わりに温かい気持ちが胸に湧いてきて、抑えようと思っていた涙がどんどん溢れてきた。 「・・・う、うん・・。わ・・たし・・が・・がんばったんだ・・・。 柊・・・の・・ために・・・すご・・く・・が・・がんばっ・・・た・・。 ・・・・う・・うわああああああああああ!!ひーらぎぃー!!!」 あやのにだってこんなに大声で泣いたことはなかったんじゃないかってくらい、大きな声で泣いた。 柊は泣いている私の頭をずっと撫でてくれていて、あやのとは違ったけれど、でもあやのに撫でられるよりずっと嬉しかった。 頭を撫でられながら、柊からは良い香りがした。それを嗅いでいたらすごく落ち着いて、その時、ずっと柊にして欲しかったことを今されているんだってことに気がついた。 一通り泣いて落ち着いた私は、柊に連れられて木陰のベンチに座った。 「日下部、少し落ち着いた?」 「あ、う、うん。 泣いたりして悪かったな」 「いいのよ。中学校から陸上一本で来たんだもんね」 「それもあるけどな・・・」 『ほんとは柊に告白したかったからなんだ』とは、ちょっと言えねーかなー・・・。なんて考えていると、柊が突然話しかけてきた。 「ね、ねえ・・・。どうして・・・私のために・・がんばってくれたの?」 驚いて柊の顔を見ると、真っ赤な顔で視線を逸らした。 あ!さっき泣きながら言っちゃったんだ!うわっ、どうしよ・・・。むむむ。このまま誤魔化すのが良いのか、それとも告白するチャンスなのか・・・。 うーん・・・。でも、ここまできたら言うしかねーよな!! 「あ、あのな、柊・・・。じ、実は、前から」 柊はなんだか驚いたような顔で口をパクパクさせて、顔はどんどん赤くなってきていたけど、それでもかまわず言葉を続けた。 「柊のことが・・・す」 ぐ~~~~~~~~~~~~~~~ 「き・・・。 へ?」 な、なんだ?今の音? 「う、うわあああああぁぁぁぁっ!!!!!! い、今のなしっ!!なしだから!!」 「は?腹、減ったの?」 「ちょっ!!そそそ、そんなことないって!!何でもないんだったら!!」 「い、いや、今のは腹の音だろ?」 「も、もー!!何でこんな時に鳴るのよー!!!」 「あははははははは」 「ちょっと!! わ、笑うな! ね、ねぇ?さっきの続きは?」 焦ってる柊が妙におかしくて、思い切り笑ったらなんだか気持ちがすっきりしちゃった。 それにそういうこと言う雰囲気じゃなくなっちゃったな。ま、いっか。腹も減ったし。 「もう良いじゃんよ~。いい加減、腹減ったよ~」 「さっきまでのシリアスな雰囲気はどこ行ったのよ!!」 「え~?そうだっけ~?」 「あんたねー、久しぶりに真面目になったと思ったのにもうこれか・・・」 「まぁまぁ。それも柊の腹の音で終止符が打たれたと」 「くっ・・。ホントのことだから何も言えない・・・」 「なぁ、話は終わりにして一緒にご飯食べようぜ」 「うぅぅ・・・。わ、わかったわよ! でも、後でちゃんと続き聞かせなさいよ!」 「よーし!じゃあ、早速弁当食べようぜ。楽しみだな~。柊の弁当~」 「って、人の話を聞けー!!!!!」 なんだか有耶無耶になって終わっちゃったけど、でも、あれだけでも変にすっきりしちゃったな。 柊の気持ちはわかんなかったけど、何かまんざらでもなかったみたいだし、今はお腹が空いたからいいや。後で考えよ。 それにこれから部活もないから、もっと柊といられる時間も増えるんだし、そのうちチャンスはあるよ。 柊はちゃんとミートボールを作ってきてくれて、形がいびつだったから柊が作ったこともすぐにわかった。 でもとってもおいしくて、残さず食べた。 まぁ、1つ落っことしちゃったけど・・・。みゅぅ・・・ 「ごちそうさまー。 はー。食ったら眠くなってきたなー。・・・ちょっと膝貸して?」 「え?おいおい、ちょっと待―」 ちょっとやりすぎかなっても思ったけど、別に嫌がらなかったからそのまま頭を乗せちゃった。柊も怒らなかったから大丈夫だよな? 「うーん。ひーらぎの膝って気持ちいいなー」 「ったく。今日だけだからね」 「んー。 嫌だよ。またしてくれよ」 「峰岸にしてもらえばいいじゃない?」 その時、魔が差したというか、なんか柊のことをからかいたくなった。 「あやのはしてくれないよ。それにわたしはひーらぎにしてもらいたいんだ」 「へ?ちょ、そ、それってどういう意味なの?」 くふふ。焦ってる焦ってる。 「ふふ。ひ・み・つ。 それに学校じゃこんなことしてくんねぇじゃん?」 「あ、当たり前じゃない!」 せっかくだしちびっ子のことも聞いてみちゃおうかなー。 「そうだよなー。ちびっ子もいるもんなー」 「え?こ、こなたは関係ないでしょ。人前でそんなことできないってことよ」 「そう言って、ちびっ子にはしてるんじゃないのか?」 「そ、そんなことしたことないわよ!!」 「ふーん・・・。じゃあ、何で今してくれるんだ?」 「え? そ、それは・・・」 柊はあたふたして困ったような顔をしていた。んん?どうなんだい? 「そ、その・・ご・ご・・ご褒美よ!ご褒美!! 日下部ががんばったご褒美!」 ご褒美!ああ、なんて魅力的な言葉なんだ! 思わず頭をあげて柊の顔を覗き込む。 「じゃあ、また何かでがんばったらしてくれるのか?」 「そ、そうねぇ・・・。考えてみてもいいわよ・・」 「よし!!じゃあ、今度は勉強でがんばる!!」 「受験生なんだから勉強がんばるのは当たり前だろ!!」 「えー。いいじゃんいいじゃん。そういうこというなよー」 「はぁ。 ったく。なんであんたはいっつもそうなのかねぇ」 「じゃあさ、今度あやのも誘って3人で勉強しようぜ。ひーらぎとあやのに教えてもらえれば勉強もはかどるし、がんばれそうじゃん?」 「ま、まぁ、そうよね。わ、私は、べ、別にいいけど・・・」 あやのがお菓子を作って、それで勉強がんばって、その後柊から「ご褒美!」もらって。いやー、これぞ一石二鳥!!やっぱわたしって天才? 「ようし、決まりだな。じゃあ、そんときがんばったらまた膝枕してくれよな」 「バ、バカ言ってんじゃないわよ! 峰岸がいたらできるわけないでしょ!!」 「んー? じゃあ、あやのがいなかったらいいのか?」 「そ、そういう意味じゃ・・・・」 「ふふふ。ま、いっか。勉強がんばればご褒美くれるってことで」 「だから、一人で納得するな!!」 「いいじゃんかよー。だってひーらぎにご褒美もらいたいもんなー」 「ま、待ちなさいよ。誰も絶対あげるって言ってないじゃない!」 「へへー。そうはいかないぜ。約束したからよー。ひーらぎは約束したら守ってくれるもんなー。優しいもんなー」 柊の目の前でからの弁当箱をブラブラさせてみた。な?柊は優しいんだよなー? 「くっ・・・!」 やったー!久しぶりに柊をやりこめたぞ!!いやー、なかなか気分がいいもんだね。 ・・・はっ!!つい頭あげちゃった。もっと柊の膝を堪能してたかったのに・・・。ここからもう1回膝枕頼むのはちょっと難しいかな・・・。でも次いつしてもらえるかわかんねーし・・・。うーん・・・。 言おうか言うまいか悩んでいると、柊が不機嫌そうな声で聞いてきた。 「何よ?」 「えっと、その、怒った?」 「え? ・・・べ、別に怒ってないわよ」 「そっか・・・」 「な、何よ。何か言いたいことでもあるわけ?」 「う、うーんと・・・。 もう少しだけ、膝枕してくれねぇ?」 「え?」 「いや、頭上げちゃったからさ・・・」 勇気をだして言ったら、柊は一瞬棒を飲み込んだみたいな顔になったけど、次の瞬間には思い切り笑っていた。 「ぷっ・・・あはははははは!!」 「なっ?なんで笑うんだよ!」 「あはははは・・・いやー、なんというか、日下部っぽいというかね」 「なんだよそれ! むー・・・」 なんで涙ぐんでんだ?そんなに変なこと言ったかな? 「もう。今日は特別だからね」 「え?い、いいのか?」 「いいわよ」 「ほんとに?」 「しつこいなぁ。いいって言ってんでしょ!」 柊はそういうと、私の頭を掴んでいきなり太ももに押し付けた。 う、うおっ!!やわらけー。 で、でも、こっから柊に顔を向けるのはちょっと恥ずかしいな・・・。どんな顔すればいいんだ・・・。 おずおずと柊の方を見てみると、そこには赤い顔ですごく嬉しそうに笑う柊の顔があっって、そんな今日のお日様みたいな柊の笑顔を見たら、私もすごく嬉しくなって自然と笑顔になった。 そのまま一緒に笑いあっていたら、やっぱり私は柊のことが大好きなんだなって思った。 表彰式の時も柊は待っていてくれて、表彰台から応援席に向かって手を振ると、少し照れたように小さく振り返してくれた。 帰りの電車ではいつもと同じように話していたけど、なんか、どっか違う感じがしてた。 どこが違うのかって聞かれると難しいんだけど・・・。うーん・・・もっと仲良しになった?みたいな。 家に着くと、あやのの靴があって、兄貴に会いにきてたんだなって思った。ホントにデートしてたのか。やるなぁ、あやの。 「ただいまー。来てたんだ?」 「あ、おかえり。どうだった?」 「いやー、決勝まで行ったんだけどな。結局2位だったよ」 「そっかー。惜しかったね・・・。それと・・・もう一つの方はどうなったの?」 「え? あ、あの・・・」 「ん?」 「あ、いや、告白はできなかったけど・・・」 「けど?」 別に恋人になったとかそういうことはなかったんだけど、なんだか自然と笑みがこぼれちゃう。あやのも何かわかったみたいで、私と同じ笑顔を返してくれた。 何か色々ありすぎてどこから話せばいいのかわかんないけど、今日は夕飯食ってくだろうし話が長くなっても大丈夫だよな?聞いてくれよ。あやの。 「それがさー。今日柊が・・・」 了 Last Summer ~かがみの場合~(かがみ視点) コメントフォーム 名前 コメント 最高の気分だ。本当にありがとう -- 名無しさん (2010-02-13 04 24 53) みさかが最高やあああ -- 名無しさん (2009-08-04 04 57 54) めっちゃ泣ける・・・ けどみさおは負けん! -- mkl (2009-04-25 23 27 54) スゲェェェ! -- 名無しさん (2009-04-01 08 22 02)
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ラスト・チーム・アライブ・アップデート (1.17) imageプラグインエラー ご指定のURLまたはファイルはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLまたはファイルを指定してください。 1つだけのライフを賢く使いましょう。ラスト・チーム・アライブ・アップデートによって、強力な武器、戦略的な装備、高性能な乗り物、全く新しいクリエイター機能が追加され、「GTAオンライン」の最も危険なモードが登場。―GTAオンライン公式サイト 説明 2014年10月2日にPlayStation®3、Xbox 360版のGTAオンラインに配信されたアップデート。一部のコンテンツはストーリーモードでも利用可能。 コンテンツ ジョブ 「クリエイター」機能に新しい「ラスト・チーム・アライブ(LTA)」クリエイターを追加。この新しいオプションはレース、デスマッチ、キャプチャーのクリエイターとともに利用できる ラスト・チーム・アライブアルタ デル・ペロ高速道路 グランドバンクス ハウィック ジョサイア山 N.O.O.S.E. パレト・ベイ - 戦車 高層ビル 排水管 - 戦車 タタヴィアム・ドライブイン キャラクターのカスタマイズ 「GTAオンライン」限定で、20種類の「国旗」がテーマの新しいパラシュートバッグをアミュネーションに追加 「GTAオンライン」の男女両方のキャラクターで使用できる、チームをテーマとした30種類以上の新しい服、コスチュームを服屋に追加 新しい「防弾ヘルメット」が5種類のカラーバリエーションで服屋にて入手可能。ヘッドショットに対する防弾ヘルメットの防護機能は限られたものとなる 2種類の新しいマスクを「ベスプッチ映画用マスク」に追加 戦闘マスク、スケルトン 乗り物 ランパダーティ フロレGT LCC イノベーション シッツ ハクチョウ カニス カラハリ オープンカー 武器 ヘビーショットガン マークスマンライフル その他 携帯電話に追加したオプションにより、方向パッド「上」を2度押しでスナップマティックが開く「クイック起動」をオフに設定できる キャプチャーとLTAクリエイターに「ラウンド数」オプションを追加。これにより、「目標ラウンド数」を設定した一連のマッチをプレイできる。1~7ラウンドまで設定可能 すぐにジョブに参加できる新しい「ランダム・ジョブ」オプションを起動画面に追加 次のジョブの投票画面後もホストとして続行できるオプションをポーズメニューに追加(ONLINE オプション 次のジョブ投票画面後にマッチメイキングを有効にする)。詳細はこちらを参照 https //support.rockstargames.com/hc/ja/articles/203610186 セッションが定員オーバーの場合に、プレイヤーがロビーに参加、または順番待ちできるロビー順番待ちシステムを追加 スムーズなジョブ参加を可能にするため、「待機中」機能を利用しているプレイヤーがわずかな確率でロビーのホストに即座に選ばれる仕様に変更 ホストがジョブを開始した際、待機中のプレイヤーに通知される仕様に変更 アクティビティーの待機が可能になる(アームレスリング、ダーツ、ゴルフなど) 携帯電話のオプションを使用して、フレンドと一緒に、またはソロでアクティビティーのクイック マッチを利用できる仕様に変更(アームレスリング、ダーツ、ゴルフなど) アクションメニューからパラシュートを切り替えられる仕様に変更 ペガサスの乗り物を所有しているプレイヤーが乗り物から離れている場合に、より短時間で消失する仕様に変更 モース相互保険の電話メニューに、複数の車を同時に請求できる「すべて請求」オプションを追加 レースのスタート時にラップ数が表示される仕様に変更 ユーザー作成デスマッチのテストが成功した場合、公開できる旨を知らせる短い確認メッセージが終了時に表示される。これにより、他のクリエイターと整合性を図る 路上強盗のターゲットになったプレイヤーは、一時的なクールダウンが終了するまで再度狙われない仕様に変更 プレイヤーがジェット機、飛行機、またはヘリコプター内にいる場合、ジェット機、飛行機、ヘリコプターの小さいアイコンがレーダーに表示される仕様に変更 ストーリーモード中、方向パッドの「上」を2度押しでスナップマティックの「クイック起動」を行う機能を削除 プレイヤーが賭けられるGTAマネーの上限額を2500ドルから1万ドルに引き上げ 「アワード」メニューの「武器」カテゴリーで獲得した全てのアワードを「戦闘」カテゴリーに統合。「アワード」メニューから「武器」の項目は削除される 理容店をさらに素早く簡単に利用するための新しいメニューを導入 LTAジョブの「チームバランス」がデフォルトでオンになり、ジョブのホストが設定できない仕様に変更 プレイヤーがレスターのスキル「レーダーから消える」を利用した旨の通知をロビー全体に追加 フライト訓練所ジョブをクリアする際の飛行スキルの優位性をわずかに軽減 LTAジョブで獲得できる現金およびRPのバランスを再調整。これによって全てのLTAジョブで、ミッションの難易度と所要時間に応じて公平な報酬を獲得できる 変更点 一部のプレイヤーがクルーエンブレムを一部のジャケットに使用できない問題を修正 システムの悪用に関する様々な問題を修正 プレイヤーの武器ホイールからマスケット銃が消失する問題を修正 ストリップクラブのATMを利用中にフリーズし得る問題を修正 ユーザー作成のキャプチャーミッションをテストした後、ランキングにプレイヤーのランクが正しく表示されない問題を修正 対戦ミッション中にインスタントレースを開始できてしまう問題を修正 ドライバーが観戦モードに移行する際、稀に観戦中のプレイヤー側から、乗り物がドライバーなしで移動しているように見える問題を修正 ラリーレースで矢印が長く表示される問題を修正。矢印は2秒間だけ表示されるようになる ピストルをベースにしたデスマッチの目標で、ヘビーピストルがカウントされない問題を修正 ドライバーがシミオンの優先度が高い乗り物をチューニング・ショップに持って行き、その場でセッションを退室した場合に、乗り物が動かなくなる問題を修正 コンタクトミッション完了後、プレイヤーが「GTAオンライン」へと戻されてシミオンの運び屋リストにある乗り物内に出現し、手配度がつく問題を修正 優先度が高い乗り物にNPCが乗っているにもかかわらず、シミオンが受け取れてしまう問題を修正 最初のレスターのカットシーン中、稀に他のプレイヤーキャラクターの姿が見える問題を修正 プレイヤーが粘着爆弾を使用できないパッシブモード中にもかかわらず、粘着爆弾を投げると使用方法の説明が表示される問題を修正 投票しないことを選んだプレイヤーにより、ユーザー作成コンテンツがマイナスの影響を受ける可能性がある問題を修正 稀にプレイヤーがチュートリアルミッションをリプレイしなければならない問題を修正 優先度が高い乗り物をシミオンに届けた後、カットシーン中にその乗り物が消失してしまう問題を修正 優先度が高い乗り物を届ける際に、プレイヤーが乗り物を置き去りにできる問題を修正 携帯スキル(空爆など)の遅延がキャラクター間にまたがって解消されない問題を修正 レスターのスキル「警察に賄賂」を使用中、フォート・ザンクードの兵士が反応を示さない状態で攻撃できてしまう問題を修正 フィニッシュ不可能なデスマッチを公開できてしまう問題を修正 エアレースクリエイターで高度が間違った尺度で計測される小さな問題を修正 招待を承諾すると、プレイヤーがハシゴから落ちる場合がある問題を修正 個人車両を押収保管所から盗み出しても手配度がつかない問題を修正 所持金が足りない間は、押収の罰金額が通知されない問題を修正 押収保管所内の個人車両が見えなくなる問題を修正 チューニング・ショップで修理、あるいはレース中に復活した後、クルーエンブレムが消失および/または再表示される件に関する様々な問題を修正 クルーエンブレムを適用後、「GTAオンライン」に戻らずに編集した場合に、エンブレムが消失する問題を修正 プレイリストの終了時にプレイヤーが「リスタート」オプションを選択する際に、短い音による確認を追加 観戦ランキングを見る際にHUDボタンが表示されない問題を修正 デスマッチで「敗者ボーナス」を正しく選択できない問題を修正 次のジョブの投票画面を閉じる際にフリーズし得る問題を修正 プレイヤーが自分の個人車両を破壊すると、稀に手配度がつく問題を修正 稀に押収保管所で個人車両にアクセスできなくなる問題を修正 特定のアニメーションでプレイヤーがフリーズし得る問題を修正 乗り物内からセッションを変更すると、プレイヤーの個人車両がどこかにワープしてしまう問題を修正 出現地点の設定がランダムになっていると、フォート・ザンクードに出現し得る問題を修正 ジョブの招待を承諾すると、プレイヤーがパラシュートから切り離される場合がある問題を修正 映画館内でジョブを承諾すると、プレイヤーとカメラが交差する問題を修正 ごく稀に、招待を送っていない他のプレイヤーからジョブの招待が送られてくる問題を修正 復活後に、プレイヤーの携帯電話から整備士の連絡先が消える問題を修正 イベントが終了したにもかかわらず、稀に優先度が高い乗り物のアイコンがレーダーに表示されたままになる問題を修正 観覧車から降りる時に、観覧車が早く動きすぎてプレイヤーをすり抜ける場合がある問題を修正 プレイヤーがランク25に達した後、警察車両が正しい位置に全く出現しない問題を修正 望遠鏡の前に立っている別のプレイヤーの頭部が透けて見える場合がある問題を修正 ガレージをダウングレードした後、乗り物が保管のために移動されるという説明が不明瞭だったテキストの問題を修正 ユーザー作成ジョブがジョブリストに追加されない問題を修正 フランス語で「ベスラ」の説明が誤っていた小さな問題を修正 フライト訓練所を終えた後、プレイヤーの個人車両が到達困難なエリアに出現する場合がある問題を修正 ジョブを中止することで建物の一番上に到達できる問題を修正 「最後の位置」を使用する際、稀にプレイヤーの個人車両が様々な誤った場所に出現する問題を修正 プレイヤーが「コケットレトロ」を2タイプとも購入している場合、モース相互保険への請求時に両者を区別できなくなる問題を修正 「GTAオンライン」をプレイ中にプレイヤーがフリーズする問題を修正 プレイヤーが一度も訪れていないにもかかわらず、フライト訓練所に完了したマークが表示される問題を修正 稀にデスマッチで傭兵を要請できない問題を修正 稀に「特別な箱」の投下が正しく始まらない問題を修正 次のジョブの投票画面で「リプレイ」を選択時に、アイコンが間違った色で表示される問題を修正 対戦ミッションの観戦時にランキングを閲覧すると、ボタンオプションが消える問題を修正 複数チームによるミッション中、ランキングを正しくスクロールできない問題を修正 一部レースのチェックポイントでコリジョンが発生する問題を修正 プレイリスト中、ラリーレースでナビゲーターにポイントが一切与えられない場合がある問題を修正 レース中、プレイヤーが個人車両からはじき出される場合がある問題を修正 プレイヤーがアパートのベットに入ると、カメラが不自然に動く小さな問題を修正 レスターのスキルを見るために方向パッドの「下」を押すと、稀にレーダーがサイズ変更される問題を修正 パラシューティング・レースのカメラが稀に2回再生される問題を修正 ランキングの「賭け」の列にオーバーラップが発生する問題を修正 乗り捨てられた個人車両が消失する問題を修正 「GTAオンライン」を出てから再び戻ると、稀にクルーランクが大幅に低下する問題を修正 多数のヘアスタイルが理容店のメニューから消えてしまう問題を修正 LTAを含むプレイリスト後、プレイヤーがにエル・ゴルド灯台に復活する場合がある問題を修正 LTAを観戦中のプレイヤーから見て、対戦中の各チームのアイコンが同じ色で表示される問題を修正 キャプチャーのマッチ中、プレイヤーが相手チームの開始エリアで待ち伏せできる問題を修正 プレイヤーがガレージ内にいる場合に、個人車両のアイコンが表示されない問題を修正 アパート内でストリッパーの字幕が正しく表示されない問題を修正 プレイリストのランキングにプレイヤー数が誤って表示される問題を修正 パラシューティングでターゲットの中心を通過した際のポイントが正しく与えられない問題を修正 レベルが低いプレイヤーがほかのプレイヤーをキルした際に、誤った量のRPが与えられる問題を修正 運び屋の優先度が高い乗り物がセッションごとに一度しか走らない場合がある問題を修正 観戦中、プレイヤーの頭上の表示が正しい色で表示されない問題を修正 マッチを観戦中のプレイヤーが勝利したプレイヤーのセレブレーションを見れない問題を修正 一部のリム(スチール/ラリー・マスター)がチューニング・ショップのホイールメニューから消えてしまう問題を修正 「消防車」や「トラッシュマスター」の後部に立っている最中、ヘッドギアが脱げた状態になる問題を修正 バイク「ディンカ スラスト」の後ろに隠れることができない問題を修正 水上にシーレースのマーカーを配置できない問題を修正 携帯で全てのストリッパーの連絡先が永久に失われる場合がある問題を修正 理容店に座っている時、3人称の自分撮りができてしまう問題を修正 ラップダンスの後、アパートから出られなくなる問題を修正 ジョブをブックマークした後に「ブックマーク」メニューを閉じようとすると、プレイリストの終了を確認する画面が表示される問題を修正 Social Clubアカウントのリンクを解除した後に「GTAオンライン」に戻ろうとすると、プレイヤーがハングアップ状態となる問題を修正 1位のプレイヤーがフィニッシュラインを越える前にレースを中止した場合、その後に1位でフィニッシュしたプレイヤーが賭けの勝利額を受け取れない問題を修正 プレイヤーが乗り物を使用中に死亡した場合に、乗り物から正しく降ろされない問題を修正 稀にユーザー作成ジョブがプレイヤーのプロフィールの「マイ・ジョブ」に表示されない問題を修正 記事 Double GTA$ Double RP for All Deathmatches this Halloween Weekend San Andreas Anniversary Weekend in GTA Online Bonus RP + Featured Playlist Unlocks Throwback SA Radio Tees and More 「GTAオンライン」で「ラスト・チーム・アライブ」イベントウィークエンドを開催 限定の無料解除アイテム、RPボーナスなど 「GTAオンライン」のラスト・チーム・アライブ・アップデート配信開始 上へ
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The last battle-戦光 始まりは、ナイフが一本。お終いは、魔剣が一本。 突き刺さったのは同じ脚。倒錯する愛情と他への憎悪と。 平たく言って、親近憎悪と何が違う。 深々と降り積もる雪の中、結晶が吸いきれなかった戦場音楽が漏れ響く。 左手を大きく振り上げたユグドラシルが雪を押し固めるようにして雪原に掌を叩き付けた。 「ディースネル!!」 高らかと言ってもいい成句に従い、光の柱が五条落ちる。 光柱は地面に判を押し無数の羽と霧散する様は本来ならば荘厳であろう光景だが、積もり積もる雪の中では同じ白としてしか判別できない。 そして、荘厳とは対極にあろう怪物が滑空する以上、その手合いの幻想は懐きようがなかった。 雪の合間に覗く巨躯は地面から数メートル上を滑らかに飛んでいた。90度身体を傾け、器用にも旋回する。 “翼”を持つ水の民としての先天だった。悉く光を避けて、天使へと接近する。 徐々に高度を落としていく怪物の口が深呼吸するように開いた。 その黒々とした異海の門の向こうから、紅いモノが吐き出される。鼻先の雪すらを蒸発させながら怪物は焔を手のように伸ばした。 ユグドラシルの羽根を焼き払うように、彼の立つ点から半径数メートルの地面を露出させる。 怪物から充分な距離を取った位置に出現したユグドラシルはさも何事もなかったかのように、しかし確実な苛立ちを示しながら言った。 「当てずっぽうでは掠りもしないか」 エクスフィギュアとしては異常な速度。それに加え、あの奇形の翼は少なからず翼としての最低限の職務を忘れていない。 あの火炎を含め、雪に脚を取られるという僥倖は一切期待できなかった。 ユグドラシルが敵の異変に気付く。 既に着地した怪物の片翼が蛇のように収納され、同時に左腕が膨張していた。膨張量はロープの総体積の半分にほぼ一致していた。 その左手を怪物が身体全身を使って振り抜く。同時に延ばされた触手は地面の雪を薙ぎ払いながら、出現した直後の天使を狙い撃った。 咄嗟に右手を振り払いユグドラシルは左からの猛撃を弾く。しかし、充分な加速の付いた触手は縄というより棍棒に近く、 防御したユグドラシルをそのまま吹き飛ばした。 羽根を羽ばたかせて飛ばされる速度を抑えるが完全にとはいく訳もなく、膝を突いて地面に対し斜めに入った天使は積もった雪を再び宙に浮かす。 ユグドラシルはそのまま転がり、遮蔽にしては幾分心許ない木を支点に怪物と点対称の位置を取った。 翼を広げ天を自在に舞う怪物と膝を突いて地を這う天使の図は、想像以上に滑稽だった。 舌打ちをしながらユグドラシルは膝に手を突いて立ち上がろうとする。 鼻を通る息が止まった。右手の甲の肉が溶けて、骨が少し露出していた。 弾いただけでコレか。ユグドラシルは心底嫌そうな顔をする。状況は最悪、かどうかは分からないがこの雪のように不透明だ。 逃げてしまおうかという気分が横合いからはみ出たのだ。理屈ではなく、純粋な嫌気として。 とりあえず退いて、ネレイドかこの天候を操る鳶―――状況から考えてヴェイグか―――にアレの相手をさせる間にアトワイトと合流する。 少なくとももう一度三竦みの状態に持って行くことは出来るはずだ。戦術としては悪くない。定石故、悪くないというだけでしかないが。 だが、この目論見は実現しないであろう事を判断する程度にはユグドラシルの恐怖は高ぶっていなかった。 まずネレイドはもう生きていない公算が高い。メルディがネレイドであろうが無かろうが。 キール=ツァイベルがネレイドの話を持ち出した時点で、その可能性は考えてはいたのだ。向こうもそれは承知の上だっただろう。 こちらとしては寝た子を起こすリスクを負ってまで喧嘩をする程血が余っているわけでもない。闘わずに済むならそれで放置していた話だ。 だがこの状況に照らし合わせれば、どちらにしても生きていないことは疑う余地がない。 前者ならキールが死んだ時点で行動は自由、シャーリィを排除にかかるはずだ。いや、それ以前にキールがこうもあっさり死ぬのが不自然になるか。 後者なら話は早い。両方とも普通に死んだだけで片が付く。 どちらにしてもアトワイト利、無しとして戦線を離脱する。もう少し厳格に命令を定めて於かなかったのは僕の過誤だな。 どうやらネレイドの話はブラフだったと考えるのが妥当だ。 ユグドラシルはこの予断に関してはさほどの嫌悪を覚えなかった。いや、嫌悪自体は既に幾らでも体内を蠢いているが。 少なくとも既に手札を切り尽くした虫螻に感慨など沸こうはずもなく、寧ろあまりの細工の小ささに面白さすら感じる。 多少の気分転換を行ったミトスは立ち上がりながら現実に視線を向けた。 ヴェイグもここまで自分を嵌めきったのだから、そう易々と今の座を捨てる気はないだろう。下手に状況を崩せば即1対2の構図になってしまうかもしれない。 逃げても、逃げるだけの意味を果たせないのだから、これはこれで結局意味がない。 無論、生理的な嫌悪だけで行動を変えられる立場・状況ではないというミトス本人の事情もある。 空を見上げても夕日はどこにも見当たらない。時計を引っ張り出す余裕もない今、時間を瞬時に判別できる要素が無い。 アトワイトが言うところの刻限、日没が過ぎれば彼女は故障する。魂が失われる。肉体を維持できない。 詰まるところ、引いて立て直す時間はミトスには与えられていなかった。 さてどうしようか。 木に寄りかかるようにして、ユグドラシルは怪物の方を向いた。 何故シャーリィがここにいるのか、何故生きているのか、何があったのか、何処までエクスフィギュアの枠からはみ出ているのか。飛び道具はあの火炎と触手だけか。 それを解決する手法は無く、徒に疑問だけが積もっていく。この循環の果てにあるのは堆積した汚泥による配管の窒息だ。 アトワイトは居らず、手持ちと呼べるほどの情報もない。エターナルソードが向こうにある内は焦土作戦と言うわけにもいかない。 問題を解決するのではなく、問題そのものを排除してしまうと言う明快且つ単純な方法も至難だ。 ああいう手合いはじっくりと分析にかけた上で呵るべき手法を用いて粉砕すべきなのだ。 実際、ユグドラシルは不確定要素たるシャーリィとネレイドに関してそれを行うに足る準備を備えた積もりではあった。 コレットを用いて索敵は可能な限り行った。その後知る限り誰も村には入っていないという事実。 キールの言が誤りで、シャーリィが死んでいなかったと仮定しても時間と人数が合わない。一体どういう絡繰りか。 首を戻して、ユグドラシルは溜息を一つ付いた。 いや、とユグドラシルは思い直す。今更自らの行動を批評する時間はない。 ましてやその結論が采配の過誤を悔やむ心情に引き摺られることは分かり切っている。ならば無駄だ。 まずは、エターナルソードを… 『ねえ、いつまでダラダラしてるつもり?』 ユグドラシルは半ば反射的に声ならぬ声の方に向いて固唾を呑む。その先には、怪物が両手を広げて待っていた。 シャーリィは、否、怪物の左手の中で蠢く蒼い石の中の意志は大声で叫んだ。 『アハッ!こっちを向いた。聞こえた! やっぱり聞こえた!! ねえ、私の声が聞こえてるんでしょ!?』 嬉しそうに、それは本当に純粋に嬉しそうに響く波だった。 『良かった……少し、怖かったんだ。このまま誰にも“私”のことを知らずに死んでしまうんじゃないかって。 ただの挽肉になっちゃうんじゃないかって!! 皆皆私を知らないまま私に殺されるんじゃないかって!! 嫌よね、 誰にも覚えて貰えないって!! 私はここにいるのに。私はここにいたのに!!』 喜悦を弄ぶように触手がユグドラシルの方へ伸びた。 まるで自らの指のようにしてユグドラシルがいるであろう木を掴み、決して軽くは無い根を引き抜いた。 そのまま掴んだ木を上に持ち上げ、叩きつける。木はあっという間に木屑になった。 その破片の向こうに、天使の姿は確認できない。 『またその技? 馬鹿の一つ覚えみたいにピョンピョンピョンピョンピョン飛んで、つまんない』 姿を消したミトスにシャーリィは心底あきれた様な意をみせようとして、一つ思い出した。 『そうだ! あの時もそうだったよね!! 自信たっぷりに私の後ろから切りつけたのに、全然浅くて、私に蹴られたの!! 痛かったでしょう? 痛かったよね!? 大切なところだもんね? ざまあみろ!!』 怪物が上を見上げて揺れる。その肉体ゆえ、げらげら笑うという印象は殆ど無かった。 『……そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ。出来れば一生黙ってて欲しいけど』 不意に聞こえた少年の声に、怪物は単眼を見開いてそちらを向いた。雪原だけで何も目ぼしいものは無い。 『ごめんなさい。でも私嬉しくってしょうがないの! こんな様に成って、もう誰も私のことを分かってくれないと諦めてたから、貴方が生きててくれて本当に嬉しい!! でも殺すけど!!』 それは“怪物”の正直な感想だった。既にそれに与えられた役目は唯の怪物シャーリィであり、“誰もシャーリィ=フェンネスという少女を認識しないから”であった。 『話をしましょう! 何の話がいい!! そうだ、貴方のお姉さんは、マーテルさんはどうなったの!?』 大気がざわつく様な感じを、怪物は一身で受けた。シャーリィはユアンの言葉をしっかりと覚えていた。 『やっぱり、やっぱり死んじゃったの? 私を置いて? お姉ちゃんみたいに? 何で?何で?』 『死んでないよ。これから僕が取り戻す』 ミトスが割って入った。 満足そうに怪物が身体を振りかぶった。 『それは無理よ。私がお兄ちゃんを取り戻すから! お姉ちゃんを取り戻せないのは少しだけ悲しいけど、仕方ないよ!!』 「僕の姉様だ!!」 突如怪物の主攻正面、その雪原の一部がボンと噴水のように吹き上がった。 舞った雪の銀幕をから、雪の上で伏せていたユグドラシルが怒り心頭、その形相で怪物に突進する。 その汚れ一つ無い純白の衣は、実に雪原の迷彩として機能していた。 「お前の、だと、おこがましい。姉様は僕の姉様だ。お前の、じゃあない!!」 滑るようにして、天使は怪物の懐に直進する。 『駄目!! アレは私がここで最初に見つけたの!! だからダメッ!!』 怪物が右手を突きだして触手を伸ばす。緩やかな弧を描いて、しかしその延びはとても鋭く侵食する。 触手はユグドラシルの肩を掠め、彼の白絹と仮初の肉を黒く泡立たせた。しかし彼に痛みなど無く、更に低く疾駆する。 「それが姉様を傷つけた餓鬼の言う台詞かッ!!」 ユグドラシルの右手に乳白色の光が纏う。 『お姉ちゃんが悪いの! あんなのに、私を見捨てて、あんなのを抱きしめるなんて!!』 怪物は大きく振りかぶった左手をユグドラシルの横合いに向けて殴りつけた。脇の下を潜るようにしてユグドラシルは浸透する。 『それだけじゃない……私の気持ちを知ってたのに!! お兄ちゃんを奪って!! 私を、私を、私ヲヲヲヲォォォォッッ!!!!!!!』 怪物が大気で肺を満たすようにして仰け反る。完全にそりきった瞬間、弓を打つようにして跳ね返った身体と同時に、怪物の口から業炎が吹き上がった。 怪物は誰のことを叫んでいたのだろうか。ユグドラシルには判別が付かなかった。付けようもなかった。 それで良い。ユグドラシルにはそれで構わなかった。 記憶が混交している? それともエゴが崩れ始めたか、あるいはイドが表層に湧き出た? 何とも豪毅な。少なくともエクスフィギュアにはそんな症状は無いというのに。 何とも奇っ怪。まだまだ僕の計画には僕の知らない要素が満ちあふれている。 ユグドラシルの右手は既に消えたと思うほどに輝いていた。犬歯が見える程に凶相を露わにする。 “そんなことはどうでも良い” ただ誰とも知らない誰かと、“姉様”を混ぜた。それだけで不快。それ故に万死だ。 伏せていた理由も忘れ、輝石の中のミトスは完全に血が昇っていた。 しかし、その勘所の良さは寧ろ鋭さを増していた。 ミントの一挙一動に心を揺らしていたミトスとはあまりにもかけ離れた即応性で左腕を前に出す。 炎の直撃を腕で避ける。しかし、炙られていたのは僅か一秒間にも満たない時間だった。 既に天使は、股下を潜らんばかりに、怪物に最接近していた。業火過ぎる故の、発射口が頭部故の、ある種必然的な死角が確かにある。 その巨躯と重量故に拳と触手は円軌道を描かざるを得ない。高すぎる砲口は直下の敵を直火に晒せない。 大戦を駆け抜けた身体が確信した、大きすぎる怪物の唯一の安全地帯だった。 彼の右手は、アウトバーストのトリガーへ手を掛けていた。接触した瞬間に怪物の肉体全てを塵芥に帰す心根だった。 この瞬間、確かにミトス=ユグドラシルは、敵が持つエターナルソードを失念していた。 「このまま滅んでしまえ!! 姉様は、僕の、僕の……ッ!?」 ミトスはもう一つ失念していた。それは失念と言うには些細すぎることだったが。 敵の放火を受けないこの安全圏では、静かに狂い嗤う怪物の表情を知ることが出来ないことに、思い至らなかった。 ユグドラシルの瞳が一瞬泳ぐ。瞳孔の黒が忙しそうに白色の中を駆け回った。 怪物の下腹部から剣が肉を掻き分けて、その姿をもう一度露わにした。 その魔剣、エターナルソードはまるでその形で埋め込まれたかのように安置しており、その偉容と異様を見せつけていた。 『そんなの使ってイイの? そんな危ないの、本当に使って、いいの? またあのレーザーで吹き飛ばすの? 壊れちゃうよ?』 反動音が鳴ったかと思うほどに、ユグドラシルの身体が急激に制止したのを確認して、シャーリィはにんまりとした。 解放の場を失った光が、苦しそうに、やがて諦めたように霧散する。 二度目となれば、必然を、せめて蓋然を疑う他ない。 「……それを……貴様ァ……」 漸く、ユグドラシルの口から魂を切り売りするかのような声が絞り出された。 嗜虐心を満たしながら、それを増幅させるようにシャーリィは笑う。 『やっぱり、欲しかったんだ。そんなにコレが欲しかったって、この身体が言ってるもの。 お前がこんなモノを欲しがったせいでこうなったって、言ってるもの!!』 嗤いを噛み殺したような音が、腕と触手で囲んだ空間に響き渡る。 ミトスがこれを求めている。まるで消印も差出人も書かれていない風の便りがふと届いたかのように、 自分が知らぬ自分の記憶以下の何かが、それを確かに教えていた。 『でもコレもだめ……だって、私も欲しがってるもの』 怪物の左肩が粘性の高い水泡を立てて隆起した。次いで、右腿の内側にから何かが顔を出した。 『ダメ……ダメ……お姉ちゃんは私のモノ……渡さないよ』 肩から出たそれは、取っ手を付けた金属の板―――フライパンだった。黒色の粘液が落ちた部分からかろうじて金色が覗く。 腿からは外に出るのも辛そうという感想を抱いてしまいそうな遅さでベレッタが半分姿を現していた。 『この剣だって私のモノ……これがこれのこれで為に走ってきたんだから』 左脇腹から、瓶の破片が鱗のように生えた。それぞれがサンプルの化学薬品に晒され色とりどりに変色している。 右肘から邪剣が突き出る。刀身を捩らせて獲物を待ち望んでいるかのようだった。 右指の間だから首輪が三つ水掻きのようにして沸いた。 掌には手の甲から突き刺すようにしてスティレットが伸びる。 『全部……全部私……私なの……私が欲しがってるものなんだから……私“を”欲しがってるから……』 左の二の腕から出た金属は分解されたセンサーではなく、唯の石ころと同義だった。 植え付けたかのように、左手にメガグランチャーが、右腕には短機関銃があった。 『お兄ちゃんは、私のモノなんだから』 右胸からポーチが、鎖骨からマジックミストが、 右脛から妖精の指輪が、 喉からケイジが、肋骨から本が、 紙類は固めて丸めて全て頭部へ、 『でも、私だけが独り占めするのも佳くないよね』 もう、体外に出た体積は容積を超えていた。臀部のウイングパックが無かったら納得すら出来ないだろう。 ありとあらゆる、“ゴミ”が怪物を内側から覆っていた。 その全ての表面が毒に染まり、黒く穢れていた。 丁度身体、右腕、左腕が一辺として、正六角形の半分を構成していた。 中心に天使が一匹。面に垂直に伸びる射線は六角形の中心で重なる。 『だから、あげる。これ、全部』 最後に、既に黒く染まった誰かの腕が、人はそこから生まれたのだと無条件に信じられる場所から生まれた。 怪物が、とても穏やかそうに、或いは未来の穏やかさを前借りしたかのように、言った。 『本当に詰まらないものですけど、どうぞ!!』 ユグドラシルの姿が光に包まれる。二歩遅かった。 無数の役立たずが、まるで最後の見せ場と言わんばかりに、一斉に射出された。 アトワイトがその光を見たとき既に中央広場に入ろうとしていた矢先のことだった。 踏み固める度に雪は地面に与えるべき加重を分散し、無駄な力みを必要とする。 雪は靴の中に入り、歩きづらさを容赦なく累乗していた。不快感というべき概念を持っていないだけで幸いだった。 『……戻るだけで、一仕事ね。ディムロスの指示か、それとモ』 既にこの雪への苛立ちをぶつけるべき相手を彼女は誤らず了解していた。 雪の中で思考を止めれば糸が切れてしまう。恐怖を閉じこめる時間だけは充分にあった。 ヴェイグという男が氷使いであることは怪物を追い払った時点で理解の埒外ではあったが事実として知るところではあった。 あとは呵るべき情報解析に晒せば、数秒かからず推論は出る。 しかし、理由を知ったとしても、彼女には選択権がなかった。と、いうよりも、選択する時間が刻一刻と摩耗していた。 雪の中で片膝を付く。本当は身体全部で盛大に倒れてしまいそうだったが、彼女を彼女たらしめる何かがそれを辛うじて拒んだ。 『……もウ、時間が残ってなイのに。最後まで邪魔ヲするのね、でぃムロス』 このか細い身体では幾ら力があろうとも、ロスが目立つ。移動時間の増加、体位制御、何れもアトワイトを削り取っていた。 微かに笑おうとしたが、表情は変わらない。人形の唇が少し凍っていた。 立ち上がって、正面をむき直す。光景は色以外の全てを一変していた。 光と、白い雪煙が夏の雲のように高く伸びる様は、着弾音と相まって微かに弱まった吹雪の中でも見て取れる。 アトワイトは、五秒ほどの時間で最低限必要を理解する。 少なくとも、闘っている相手と自らのマスターの苦境を察する程度には。 『ミトす』 不味い。そう思ったアトワイトは人形の脚を無意識に駆け出そうとした。しかし、再び雪に脚を取られ、今度は盛大に突っ伏すことになる。 『ッ……こんな所で足止めをクらっテる場合じゃなイのに……!!』 キールを見捨てたときとの温度差は、ミトスに捧げたモノの分量と合致していた。 雪を握りしめるが、冷たさは伝わらない。熱もないから溶けもしなかったが。 『――――――――――――――――アトワイト…………こえるか?』 『ミトス!!』 突如の通信に生娘のような声を出した自分に驚く自分をアトワイトは感じた。 『……近くに、いる……重畳……だな』 断線しながら聞こえる、石の声はか細く、主の肉体の異常を察するには過分すぎた。 『無ジなの!? 相手は!? いや、いイわ!! すグにそっちに向かうからそれまで……』 『アトワイト、私の願いは、なんだ?』 唐突すぎる問いに、アトワイトは息を止めた。止めたように言葉を区切った。 『何ヲ、いきなり』 『私の願いは、なんだった? 答えろ』 『そんなコとを言ッてる場合じゃな』『答えろ。命令だ』 もう一度、ミトスはアトワイトの言葉を封じた。将校としての絶対原則がアトワイトの根幹から引き摺り出される。 結局、アトワイトは命令を履行する他なかった。 『…………マーテルの復活、そしてその確保』 戸惑いを差し引いても素早い解答だった。数秒、会話が途切れる。 クク、と笑い声が聞こえた。 『そうだな。そうだった。何でそんなことに気付かなかったんだろう……矢ッ張り、どうかしてた』 子供のような声が響く。切れ切れの波に似合わない陽気さだった。 そうアトワイトが思った途端、ユグドラシルとしての波が、アトワイトに強く届けられた。 『晶術準備。完了状態にまでして、射程圏外の際で待機』 『レイズデッド?』 素早く応答し、必要な問いを返す。馴れ馴れしい口調以外は完全に上官と部下だった。いや、違うのかも。 『いや、術種アイスニードル。特装・四連だ。少々規定とは異なるがユニゾンで放つ。タイミングはこちらに、いや、“鳴き声”に合わせろ』 アトワイトが朽ち行くコアの中で微かに頬笑んだ。この戦争ごっこはどうにも何かが危なっかしくて見ていられない。 もう少しばかりは、私に縋って、私に甘えて、私を使い潰してもらわないと。 『操るなら兎も角、恨みを買うのは面倒だ。劣悪種は劣悪種同士で殺し合って貰うに勝る効率はない。そうして生きた4000年を忘れるなんて、どうかしてる』 アトワイトは何かを言いかけて、口を噤んだ。それはきっと貴方が、子供に戻っていたからよ。 何かを察したのか、一言だけ言葉を述べて、通信は切られた。 『何をしている? 仕事の時間だ』 『了解しました。マスター』 怪物の目の前には、破壊の痕と呼ぶべきモノが広がっていた。 剔れた土が雪を汚し、数少ない建造物の壁に穴を開ける。それが三方に伸びて、まるで弾痕の爪痕だった。 『ギャハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!』 その集中点で、怪物は高らかに笑う。 『バッカじゃないの!? 本当にバカじゃないの? 見え見えの挑発に引っかかって、中に入っておいて勝手に安全だと思いこんで! そんな訳ないじゃない!! 虫は虫籠に入れてからの方が潰しやすいに決まっているじゃない!!』 懐に誘い込んでの集中斉射だった。策が見事に嵌る快感に万人を隔てるものはない。 快楽に身を包みながらシャーリィは其方を見た。雪の煙が、風で緩やかに晴れていく。 爪と爪の間、そこに傷を羽根に負った天使がいた。 右肩に穴が開いていた。左足の指を全部無くしていた。左脇腹に手を当て、漏れ出そうな何かを押さえていた。 右の腿をパックリと割っていた。無数の傷跡、その全てが、黒く染まっていた。 かつての華やかさを一気に失ったユグドラシルは、息を荒げて、俯こうとする面を下げないようにするので精一杯だった。 『そんなんでお姉ちゃんを取り戻すなんて、よく言えたよね。全然ダメじゃない』 シャーリィは呆れたようにユグドラシルに言った。視線が俯いたままの天使は彼女の期待する反応すら出来なかった。 『甘ちゃんばっかのあいつらよりは少しだけまともだったけど、やっぱりダメ。私と貴方じゃ覚悟が違うよ』 怪物は握り拳を作り、足を一歩前に出した。余裕を見せても武器を奪う機会は与えない。 左はいつでも触手を出せる状態を維持し、テレポートを牽制していた。 『……何が、どう違うって?』 ユグドラシルがぼそりと呟いた。歩きながら答える。 『決まってるわ…………想いよ! お兄ちゃんともう一度会いたいって想い!! 貴方のお姉ちゃんともう一度会いたいって想いじゃあ、私の想いには!願いには敵わない!! 私の願いは神を下した。だから身体が朽ちてもここにいる!! お前なんかの想いは、私に踏み潰されて終わるだけ!!』 確信を煮詰めたような声だった。迷いは一辺もなく、後悔は何処にもない。 『そうか。そうやってお前はあらゆる敵を踏み潰してきたのか。成程な』 ユグドラシルが頭を上げた。怪物が手を振り上げたまま走る。打ち下ろす前から殺せる速度が付いていた。 『分かってるじゃない!! 私は神に勝った私に、踏みつぶせないモノなんて無い!!』 射程に収めた怪物が拳を振り下ろそうとした時、完全に怪物を見据えた天使は、 「クゥゥゥゥゥィッッキィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 『じゃあ、潰し損ねたモノに関してはその限りではないのか』 怪物の肩越し、その先の青い影を見て、陰険そうに笑った。 怪物を殺す。それのみに特化することを決意したとはいえ、クィッキーは自分の能力を完全に把握していた。 正面から挑んでも勝ち目が無い。いや、四方八方上下左右、どの面から攻めたところで勝ち目など微塵もない。 だが、勝たねばならない。いや、殺さなければならない。 喩え、それが理想とは程遠かろうとせめて肉体的な意味でメルディを救うとクィッキーは決めた。 其処までに至る苦渋は、決してキールに勝りこそすれ劣らないとクィッキーは思っていた。思い込もうと信じていた。 その過程は、あっという間に無意味なモノに転じた。それをバックの中で見続けるだけで三回は死ねそうだった。 袋の中でクィッキーは思った。これからどうするか。何をどうしようも何もならない。 自分が小動物だからという根源的な意味合いも勿論あったが、仮にヒトだったとしても何が出来るというわけでもない。 キールとロイド、立場は違えど二方向から希望を求めた対極の二人は潰えた。ならば、もう可能性は何処にもない。 ならば、どうするか。クィッキーは動物らしくすぐに答えを弾き出した。 決まっている。生に望みを繋げないなら、死に望みを繋ぐしかない。自分が気に入る形で、殺し合いの縮図に組み込まれてやろうじゃないか。 雪の中を慎重に這いながらクィッキーは思考を済ませていた。思考と言うよりは、手段の検討だ。 あの化け物を殺す。それが生半可な行為でないことは一番よく知っていた。他の連中ならば、まだ喉を噛み切れば死にそうだが、それで死ぬかも疑わしい。 あのユグドラシルとかいういけ好かない奴に、殺させる、という手も考えた。それが一番合理的に思えた。 しかし、クィッキーはそれを拒否した。奴の死体が見たいのではない。殺すことに意味があるのだ。 そこまで考えて、自分の理不尽さ、その無い物ねだりの原因に思い立った。 自分があの怪物に奪われたモノは、主人だけじゃないのか。クィッキーは筋骨隆々とした、牛の背を思い出す。 あれはターニングポイントであり、節目だ。敵おうが敵うまいが自分の手で清算を付けたがるのも当然か。 既に召された彼ら二人に許しは請わなかった。仲睦まじくやっているだろう二人は絶対に自分を止めるだろうし、何より無粋だと思った。 現実と理想に折り合いを付けたクィッキーに思いつけた手段は、ユグドラシルを利用することだった。 戦闘が始まって、ずうっと観察を続けた。見続けたのは、石の位置。 ユグドラシルと同じような羽根を持っていた男が、あの石を狙っていたことを思い出した。 確証は無くとも、それしか自分の牙が通じる場所が無いと思った。 憎悪が眼球から零れ落ちそうになった時、一瞬、ユグドラシルと眼があった。 気付かれぬようにと位置を変えたとき、自分よりも蒼いそれを漸く怪物の左手に見つけた。 銃声のような騒音が轟く中、自らを丸め、クィッキーは注意深く待つ。 それは外敵に対する防御というよりは、自らの気持ちが折れぬようにと堪える体勢だった。 轟音が鳴り止み、フラフラとクィッキーは雪の中から這い出る。一歩足を出して雪跡を刻む度に、焔に薪が入った。 背中を迂回して、左側面に踊り立つ。あのバカみたいな散弾はもう無い。 殺す。絶対に、絶対に。怪物が奔った。平行して走り、距離を詰める。 糞、何でこんならしくないことをしてるんだ。 「クゥゥゥゥゥィッッキィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 疑問に思った時には、既に身体をそこに向けて踊らせていた。 目測通り怪物の手の甲にしがみつく。その小さな手が半液状の皮膚にめり込んだ。 恐怖を噛み殺すように、歯を石の縁に掛けた。突如、自分の身体がめっためたに揺さぶられる。 眼を瞑ったまま、クィッキーは懸命に噛んだ。これだけは放さない。 ダンダンと身体に何かが打ち付けられる。肉の線維が切られていくという感覚をリアルタイムで実感した。 意識を飛ばしながらも、クィッキーは泣きながら噛み続けた。これだけは話さない。 こんなはすじゃ無かったのに、畜生、畜生。 クィッキーだったモノが引き離されたとき、まだ歯は、その縁に挟まったままだった。 横合いからの虚撃に怪物は全くの無防備だった。 怪物よりも二歩前にそれを察していたミトスは素早く、詠唱を開始する。 『あああああああ!!!!!!!! 何を、何をッ!! 何してんのよォ!!』 ゴミが、襲ってきたと油断して、“ゴミがピンポイントでアキレスを狙ってきた”という重大さに気付いたシャーリィは完全にミトスに横合いを晒した。 想定外の事態に、彼女の視野が急速に狭まる。 振り解こうとして一秒。叩き付けようとして、全力で殴ればエクスフィアが傷つくかもしれないと躊躇して半秒。 右手を完全に使って叩き、それでも離れず握り潰すのに一と半秒。合わせて三秒の時を要した。 『ハンッ!! ゴミ屑が頑張っても精々これよ!! 私の想いの前には、これだけにしかならない!!』 混乱と昂揚を混ぜ合わせたまま怪物は腹に右手を深々と突き入れ、魔剣を取り出した。 攻撃と防御を一挙に行える一策だった。 よりにもよって詠唱。シャーリィは自らの想いが神に通じていることを噛みしめた。 この剣に気を遣って術撃を選んだのだろうが、上級術でこの身体を滅しようにも、あと数秒の時は要する。その間に大切断だ。 『私は、絶対にお兄ちゃんに会いに行く!! 絶対に、この想いは絶対よ!!』 号砲一喝と雪原表面の雪がふわりと舞った。その霞の中で、ユグドラシルは。 『生憎と、死者に想いを馳せるなんて非生産的なこと、僕の趣味じゃないよ』 手首に掛けたミスティシンボルをクルクル回しながら、ユグドラシルが指を弾いた。 「第一節・ファイアボール」 ユグドラシルの頭上に炎の球が出現し、怪物を目掛けて襲いかかった。 怪物は剣を盾にして構える。 『ご大層なこと言った割にこんな術? こんな弱い術で何が出来るっての……ガァッ!?』 「キープスペル解凍―――――第二節・ライトニング」 怪物の頭上に雷撃が落ちる。生きている神経群が、強制的に反射を起こした。 剣が蹌踉めき、その右手首に炎が狙い澄まして集中する。たまらず魔剣が落ちた。 『クソ……小細工ばっかりしてえ!! もう種切れの癖ににいcう゛!!!!!!』 怪物の声をかき消すように、鈍い音が数度雪の中微かに鳴り響いた。 その背中に剣ほどの大きさの氷の針が数本、突き刺さった。最後の一本が右手を地面に縫いつける。怪物の上体が崩れた。 半ば自然と、怪物の顔が向いていた。 『晶術並列運行―――――第三節・アイスニードル』 射程圏ギリギリから、アトワイトが、自らを怪物の目線に向けていた。 シャーリィはここまで来て、漸く悟った。自分はこの技を知っている。いや、この島に来た者ならば誰もが知っている。 果敢にも王に挑んだ、魔王の手札。常識破りの連殺術式。 ミスティシンボルが回転を更に強める。ユグドラシルの12枚の羽根が雪に舞い散る。 「魔術直列起動―――――第四節・グレイブ!!」 怪物の身体が地面から浮いた。土塊の大槍は怪物の真芯を射抜く。 完全に封じられた怪物は、ただもがくだけだった。 『晶魔四連―――――――――――――――テトラスペル。奴が生きていたら遣うつもりだった、僕の切り札だ。 オリジナルより些か精度に落ちるが、第三節以外は術を選ばないのが自慢でね。冥土の土産にでもするといい』 ユグドラシルは魔剣を取り、そばに寄ったアトワイトに持たせた。 『僕も、お前も、少し勘違いをしていたんだよ。あの動物を見て思い出した。動物は何時だって賢くて、気高い』 ミスティシンボルを再び回し、ユグドラシルの周りに魔法陣が起動した。 『お前は、そのお兄ちゃんとやらを救うのに、全員を殺そうとしているんだろ? 大変だね。ご苦労様』 巨大な円陣が雪原を刻む。 『でも、僕は、そんな面倒なことをする必要がない。だって、姉様はここに生きてるんだから。 だからお前を殺すことは諦めるよ。恨み辛みは、操る方が性に合ってる。ま、エクスフィアは逃がさないけどね』 紋章を持たない手の方に、一つの実が存在していた。 『死んだ奴が生き返る? あの莫迦な王が生き返らせてくれる? 僕は信じないね』 天に光が満ちる。 『僕は僕の手で、全てを叶えてみせる。王なんてお呼びじゃない』 黄泉路に続く門が開く。 『何が違うのか、最後に教えてやる』 世界が帯電する。雷雲が轟いた。 『神はいない。故に、神を越えることは出来ない。それが出来てしまったお前は、願いを享受する側から与える側に回ってしまった。 お前は、上り詰め過ぎたんだ。甘えることを覚えるべきだった』 ユグドラシルが背を向けた。 『最後にチャンスを上げるよ。セネルを諦めれば、ひょっとしたらお前は生きて戻れるかもしれない。お前が死ねば、僕の姉様は確実に蘇る。 自分か、お姉ちゃんか、好きな方を選びなよ』 言い終わった瞬間、ミトスは術を撃った。既に解答は聞くつもりが無かった。 神の雷が、怪物の左手に落ちた。爆音が開けたこの広場を満たす。雷の通った路にあった雪と雲は強制的に電解しイオン臭を放った。 怪物の左手、その意志は、粉々に砕け散った。雪の中に混じって、文字通り消え失せる。 『そんなの決まってる。お前が死んで、お兄ちゃんが生きるよ』 スカーフを口元まで上げる。 終ぞ、ユグドラシルは望む死を観ることが出来なかった。 「終わったな」 ヴェイグが剣を持ちながら、雪の向こうに目を凝らしていた。 『ああ、予想通りというか、クィッキーが動いた分、僅差でミトスが勝ちを握った』 ディムロスが淡々と戦況から熱を抜いた言葉を放つ。 『ミトス、怪我ノ治リョうを』 「不要だ。それよりもアトワイト、あの肉塊にレイズデッド一発。無いとは思うがあの細胞一辺にシャーリィの意志が残留していた場合面倒だ」 ユグドラシルは押さえきれない焦りを早口に表しながらまくし立てた。 キョロキョロと辺りを見回し、何かを探っている。 ヴェイグが背に掛けたディムロスの柄に手を掛ける。 「仕掛けるか?」 『いや、まだだ。向こうも今この瞬間を待ちかまえているだろう』 そういうディムロスに、ヴェイグは納得できないという溜息を付いた。 『確かに、回復されては面倒が……あの毒はそう簡単には治療できまい』 「なら?」 ヴェイグの問いに、ディムロスは一拍を置いた。 「仕掛けて来ないか……出来れば完全排除したかったが仕方あるまい。アトワイトの時間も残り少ない、か」 ユグドラシルは苦々しげにスカーフを千切り、深手を縛り付ける 『情報が正しければ、絶好の奇襲点が一点残っている』 ディムロスのレンズが暗く輝いた。 「アトワイト、時間だ。これを何とかするのにソーディアンが要る以上はこちらを先にするしかない。その身体を返して貰う」 ユグドラシルが首をこつりと叩いた。アトワイトから魔剣を手に取る。 『失敗するにせよ成功するにせよ、儀式の結果が出た瞬間こそ、奴が無防備になる一瞬だ』 「さあ―――――――――――――――――――――――――――――万願成就の瞬間だ」 ありとあらゆるモノが蠢く中、最後の歯車が回り始めた。 【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】 状態:HP45% TP30% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り 極めて冷静 両腕内出血 背中に3箇所裂傷 中度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走 エクスフィギュアの正体を誤解 キールの惨たらしい死に動揺 所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル 基本行動方針:優勝してミクトランを殺す 第一行動方針:ミトスの儀式終了後、襲撃 現在位置:C3村中央広場・民家屋根上 備考:フォルスによる雪は自然には溶けません 【SD】 状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調 感情希薄? エクスフィギュアの正体を誤解 基本行動方針:優勝してミクトランを殺す 第一行動方針:ヴェイグをサポートする 第二行動方針:シャーリィやミトスの戦力を見て分析する 第三行動方針:アトワイトが気になる 現在位置:C3村中央広場・民家屋根上 【アトワイト=エックス@コレット 生存確認】 状態:HP30% TP10% コレットの精神への介入 ミトスへの羨望と同情 エクスフィア侵食 “コレット”消失 思考を放棄したい 胸部に大裂傷(処置済) エクスフィギュアの正体を誤解 全身打撲 全身に擦り傷や切り傷 所持品:苦無×1 ピヨチェック ホーリィスタッフ エクスフィア強化S・A(エクスフィア侵食中) 基本行動方針:積極的にミトスに従う 第一行動方針:儀式を行う 現在位置:C3村内 特記事項:エクスフィア強化S・Aを装備解除した時点でコレット死亡 【ミトス=ユグドラシル@ユグドラシル 生存確認】 状態:HP40/50%(毒特性:最大HPカット) TP60% 良く分からない鬱屈 高揚 頬に傷 右腿裂傷 右肩貫通 左足指欠損 左脇腹裂傷 所持品:ミスティシンボル 大いなる実り ダオスのマント(治療に消費) キールのレポート エターナルソード 基本行動方針:マーテルを蘇生させる 第一行動方針:蘇生儀式を行う 第二行動方針:襲撃者を警戒 第三行動方針:蘇生失敗の時は皆殺しにシフト(但しミクトランの優勝賞品はあてにしない) 現在位置:C3村中央広場・雪原 【??? ???】 状態:??? 所持品:プリムラ・ユアンのサック リーダー用漆黒の翼バッジ メルディの漆黒の翼バッジ ダブルセイバー 魔杖ケイオスハート 基本行動方針:??? 現在位置:C3村中央広場・雪原 ドロップアイテム(全て汚染):マジックミスト 占いの本 首輪×3 ソーサラーリング ベレット セイファートキー 凍らせたロイドの左腕 邪剣ファフニール C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) マジカルポーチ 分解中のレーダー ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック メガグランチャー UZISMG フェアリィリング 【クィッキー:死亡確認】 前 次
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登録日:2009/12/15 Tue 19 58 56 更新日:2024/01/13 Sat 00 22 37NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 CAPCOM DC EDテーマは名曲 GC PS たまに待ち伏せられる カプコン ゲーム ゲームキューブ スカートの中は… スタァァァズ…! ←こっちくんな ドリームキャスト ニンテンドーゲームキューブ バイオハザード バイオハザード3 名物ラクーン迷路 追跡者 追跡者のストーカーされる絶望感がたまらない 青鬼のルーツ 本作はバイオハザードシリーズ3作目。ハードはPlayStation。 ●目次 概要 あらすじ 登場人物 武器 主なクリーチャー 主なステージ THE MERCENARIES OPERATION MAD JACKAL 備考 概要 前作では語られなかったラクーンシティでのバイオハザードの結末を描いた作品。 今回では「ガンパウダー」による「弾薬調合システム」があり、ガンパウダーの組み合わせで自分がメインで使う武器に合わせて様々な弾を作り出すことができる。 色とりどりのグレネード弾を作るもよし、雌伏の時を経てマグナムを乱射するもよし、ハンドガンとショットガンで戦うもよし、と人それぞれのスタイルを作り出せる。 また「緊急回避」が取り入れられており、敵の攻撃の瞬間に構えるか攻撃すると緊急回避が発動し敵の攻撃を避けられる。 ただしあくまで回避行動をするだけで、位置によっては壁の方へ回避してしまい食らうこともある。 更に目の前の敵を攻撃しようとして緊急回避に化けてしまうこともあり、この時はさすがにウザイ。 (例:接近してきたハンターにショットガンを撃とうとしたら緊急回避→避けれず食らう→以下ループ→首刈りでYOU DIED) 一方で狙って発動できるようになるとボス級の敵をノーダメージで撃破したり、敵を一カ所に固めたりとやりたい放題できるようになる。 目押しが得意な人には難易度を下げる要因、苦手な人には意味のない微妙なシステム。 『ディノクライシス』で実装された進行方向を瞬時に180度へ方向転換する「クイックターン」が本作でバイオハザードシリーズに輸入。 こちらは方向転換に時間がかかりやすいラジコン操作において操作の快適性を向上させており、後の作品でも実装される要素となった。 ゲーム中にはピンチな状況で一定時間内に選択をする「ライブセレクション」と呼ばれるイベントが発生することがある。 万人向けに調整された『2』と比べると 最序盤からいきなり終盤ボス級の強さを誇る「追跡者」に追われる展開のため、初心者にはややきつく 独特な要素が多いため人によって評価が変わる作品である。 2020年4月にリメイク版となる『バイオハザードRE 3』が発売された。 あらすじ 洋館事件から1ヵ月。 惨劇の末に壊滅状態に陥ったS.T.A.R.S.の数少ない生存者たちは、事件を引き起こした元凶である製薬会社アンブレラの生体兵器開発の実態を訴えるも、 街自体がアンブレラの庇護のもとに発展してきたこと、そして警察自体がアンブレラとの癒着関係にあったためにあえなく握りつぶされ、 市民はアンブレラの息がかかった街で見せかけの平和によどんでいた。 しかし、アンブレラが垂れ流したウィルスによる大規模な生物災害は既に手遅れなまでに街を蝕んでいた。 人々は次々とゾンビと化し、ラクーン市警やSWATは壊滅、市に降り立った特殊部隊も壊滅してしまう アンブレラの実態調査のためヨーロッパに旅立った仲間たちと別に、内部から調査するために市内に残留していたジルは、 恐るべき事態を目の当たりにするとともに、脱出を決意する。 そんな彼女を狙う恐るべき追跡者の影…… 彼女の最後の脱出が今、始まる…… 登場人物 ★ジル・バレンタイン 主人公。 1の時とは打って変わったラフなミニスカで登場。 他の隊員がアンブレラの実態調査のため街を去った中、単独調査のためラクーンシティに居残っていたため事件に巻き込まれた。 ★カルロス・オリヴェイラ アンブレラが市民救出のために投入した特殊部隊U.B.C.S.のD小隊A分隊の隊員。 ブラジル出身のインディオの元ゲリラであり、陽気な性格で年齢は若いが優秀な傭兵。 ミニゲーム(後述)ではアサルトライフルとEAGLE6.0で手数は豊富だが決定力に欠ける。 ★ミハイル・ヴィクトール U.B.C.S.D小隊隊長。 元はソ連軍人だが、ソ連崩壊後は妻の所属するゲリラに所属しており、一緒に逮捕された仲間の助命のためにU.B.C.S.に入った。 冷静沈着で仲間思いの頼れる隊長だが、ゾンビとの戦いで重傷を負っておりあまり役にたたない。 追跡者に「やらないか」と誘われるが拒否して自爆。 ミニゲームではショットガン、マグナム、ロケランと歩く弾薬庫であり、怖いのは弾切れだけと頼れるキャラ。 ★ニコライ・ジノビエフ U.B.C.S.D小隊B分隊隊長。 元スペツナズで暗殺術などに優れる。 冷淡で合理的な性格。 実はアンブレラから独自の任務を受けて各種データを収拾・回収している監視員だが、自分の報酬を上げるために他の監視員も抹殺していた。 選択によっては死ぬ展開が多いが、アンブレラクロニクルズでは生存が判明している。 ミニゲームではハンドガンとナイフのみで最も難しいが、ナイフは得点が倍になるので使いこなせれば荒稼ぎができる。 ★ダリオ・ロッソ ジルと一緒にいたデブのおっさん。 ゾンビのいる市街に出るのを嫌がりコンテナに引きこもって妄想日記を書いていたが、怖くなって顔を出したところをゾンビに襲われて死亡。 ミニゲームでは本編ではすでに死んでいる娘のルチアが要救助者で登場する。 ★ブラッド・ヴィッカーズ ヘタレ。S.T.A.R.S.隊員。 洋館事件ではヘリに引きこもっていて現場を見ていないせいか生存者では唯一日和見な態度を取っていたが、そのために事件に巻き込まれて追跡者に殺られる。 何気に1から3まで全作に登場している唯一のキャラ。1では声だけだし2はゾンビだけど。 ★マーフィー・シーカー U.B.C.S.の隊員。 カルロスとは同じ分隊の親友だったが、市内で飲んだ水から感染しゾンビ化しかけており射殺された。 ★タイレル・パトリック U.B.C.S.の隊員。 監視員だが、元々ただの横領犯のためか戦闘技術が低く、ニコライに謀殺される。 ★バリー・バートン 選択次第でエンディングでまさかの登場。 ちなみに彼がつけている時計は前作の銃砲店のおっさんの遺体から形見分けしたもの。 武器 ◆ハンドガン 最初からジルが装備しているM92Fカスタム(*1)と、カルロス編で使用できるSIGPRO SP2009の2種がある。 性能差は無く、どちらも序盤から中盤にかけての主力武器となる。 ◆ショットガン アップタウンのY字路地の遺体で手に入るベネリM3S。 近距離であれば一撃でゾンビを屠れる他、銃口を上下にスライドさせて頭部・脚部の部位破壊も可能。 ◆グレネードランチャー 前作のM79グレネードランチャーと微妙に違うが一緒のタイプ。 炸裂・火炎・冷凍・硫酸の4種を使い分ける。 仕様上それぞれに弱点を持つ敵が多く、炸裂はガンパウダーと合わせて素材に扱われがち。 弾速が遅いので、ネメシスやハンター相手に使用すると回避される弱点がある。 入手場所がS.T.A.R.S.オフィス内武器庫か発電所ロッカールーム内のどちらかのランダムに設定されている。 ◆マグナム S WM629C。 グレネードランチャーと入手場所が共通されており、どちらかに片方が格納されているのだが、圧倒的にグレネードランチャーの使いやすさが勝るため外れ扱いにされている。 前作でレオンが使っていた銃と比べて反動が大きく連射が効かない、弾薬の入手箇所が少なくガンパウダーで自作すると消耗も激しいなどの欠点が大きすぎるのが理由か。 ◆マインスロアー 着弾後に一定時間経つと起爆して追加ダメージを与える特殊な銃。 EASYでは手に入らず、HARD限定の銃という珍しいタイプ。 マーシナリーズで無限弾化をすると改となり誘導機能が付与される。 ◆アサルトライフル M4A1。 EASYでは初期アイテムボックス内に格納されており、それ以外ではカルロス編の主力武装として活躍する。 弾薬が個数表記ではなく%表記となっているが、1%=3発という括りになっている。そのため弾数管理をしやすくするためか、フルオートと3点バーストのどちらかをメニューで切替ができる。 敵へのストッピングパワーが非常に高く、ボス級以外であれば制圧力はかなり高い。 ただし弾薬の入手機会は一切無く、最初の手持ちだけでやりくりする必要がある。 ◆ロケットランチャー 本作のデザインは4発発射型のもので、ネメシスが担いでいるものとも違う。 終盤の廃工場内武器庫からキーカードを使用すれば手に入るが、使用相手はニコライのヘリかネメシス第三形態くらいしかない。 ◇カスタム武器 ◆EAGLE6.0 HARDモードでネメシス1~2回目を撃退すると、それぞれカスタムパーツが手に入るのでそれを組み合わせると手に入るハンドガン。 連射力とクリティカル率が通常ハンドガンより強化されているメリットが強みだが、反面強化弾を使用できないデメリットもある。 ◆ウエスタンカスタム HARDモードでネメシス4~5回目を撃退すると、それぞれカスタムパーツが手に入るのでそれを組み合わせると手に入るレバーアクションのショットガン。 連射力と弾の拡散範囲が通常ショットガンより強化されているが、やはりこちらも強化弾を使用できない。 ◇おまけ武器 ◆無限アサルトライフル マーシナリーズのポイント交換報酬で手に入る無限版アサルトライフル。 一番交換ポイントが少ないので最も手に入りやすい。 ◆無限ガトリングガン マーシナリーズのポイント交換報酬で手に入る武器。 ……なのだが発射までの間隔が遅く、威力こそ高いが正直アサルトライフルと大差なく正直地味。 ◆無限ロケットランチャー マーシナリーズのポイント交換報酬で手に入る無限版ロケットランチャー。 シリーズ恒例の最強武器で、これがあれば地獄のラクーンシティもピクニック感覚で踏破できる。 構える時間が長いのでネメシスやハンター向きではないのが玉に瑕か。 主なクリーチャー ●ゾンビ 今回はデブが登場し、女性のバリエーションも増えた。 また走りゾンビが登場し、ハンドガンでは押し負けることも。 噛み付き攻撃のみ、デンジャー状態でも実行可能なタックルで回避できる。構える間中は発動タイミングなので構えが遅いロケランだと回避しやすい。 ●ゾンビ犬 こちらは特に変化なし。 ●ドレインディモス ノミのような虫が寄生していた生き物の血から感染したTウイルスで巨大化した。 主に立ち上がって走ってつかみかかって脊髄の髄液を吸い取ろうとしてくる。たまに卵を産む。 後述のブレインサッカーとはランダムでどちらかがステージ上に出てくる。 ●ブレインサッカー ドレインディモスと似た虫だが、寄生先の違いで習性が変わった。 こちらは直接頭をこじ開けて脳をすする習性がある。 走る距離が長く、毒液を飛ばすなどドレインディモスより少し厄介。 ●大クモ 特に変化なし。撃退するとランダムで子蜘蛛を産卵する。 ●カラス いつものカラスです。 ●ハンターβ 1のハンター、ハンターαを改良したもの。 改良されたためか1に比べて頭のまわりがブツブツだらけの醜悪な外見になっているが、異常な程の反射神経を誇り、時折マグナムやグレネードランチャーの銃弾をかわす。 即死攻撃の首刈りは健在。下記のγとこいつは常に2・3体のペアで攻撃してくるため、先手をうって一体は潰しておかないと、波状攻撃で一方的に嬲られあっという間に首チョンパされる。 ●ハンターγ(フロッガー) 人の卵子に爬虫類の遺伝子を植え込むαやβとは違い、両生類の卵に人の遺伝子を植え込んで作られたハンター。その為乾燥に弱いという設定がある。 即死攻撃は小突いてから呑み込む丸呑み。 初登場時にうかうかしてると挟み撃ちになりやすく多くのジルが丸呑みされた。 ●グレイブディガー Tウイルスに汚染された土壌にいたミミズが巨大化したもの。 地下鉄のごとく掘り進み、主に墓場の死体を食い荒らす。 2回戦うが、どちらも地の利が悪く苦戦しやすい。 墓場戦では2のワニに比べると時間がかかるが即死させることができるオブジェクトがある。 ●スライディングワーム 下水道によくいるグレイブディガーの幼虫。 ダメージは微量だがウザい。 ◎追跡者 タイラントの性能向上のために寄生生物NE-αを寄生させた新型B.O.W.。改造のせいか端正な顔立ちのタイラントに比べるとオバチャンのように歯をむき出した凶悪な顔つきをしている。 NE-αにより知能が向上しており、複雑な指令を自己判断で遂行し、武器も使える。 ラクーンシティに「S.T.A.R.S.隊員及び関係者の抹殺」の任務で投下されており、ジルたちを付け狙う。 素で移動スピードが速く、特定のラインを超えるまでエリア移動しても追いかけたり先回りしたりする。 倒すと特殊なアイテムを落とす。 ●追跡者第1形態 最初の形態。 殴ったりつかんで投げ飛ばしたりする。 つかみ攻撃が厄介で避けにくくぶん投げられては即死攻撃をハメられる初見殺し。 並のボス以上に体力も攻撃的も高いのにこんなのが序盤から頻繁に出てくるからたまったもんじゃない。 弾速の遅い武器を使用すると距離によっては避けられてしまう。 たまにロケットランチャーを引っ提げて登場することもあり、他の敵をも巻き添えにして遠距離からでも容赦なく撃ちまくってくる。 ただし弾が切れるまで即死は使わないのでチャンス。 時計塔の決戦では腕から触手を出して鞭のように攻撃してくる。 ●追跡者第2形態 時計塔での戦いで拘束具であるコートが破損しネメシスが暴走しかけている状態。 右腕から触手を大量に生やして鞭のように攻撃してくる。攻撃範囲に優れるが大振りな攻撃が多く回避自体は楽な方。 即死攻撃もしなくなり、左手を全く使わなくなって連続技も使わなくなったのもあってか全体的には第一形態よりもやや弱体化気味。 廃棄処理場での決戦では、廃液を浴びさせると戦闘力を大幅に低下させられる。 頭部を欠損すると追尾性能も大幅に低下し、適当に鞭を振り回したり接触した方向に攻撃を仕掛ける。 ●追跡者第3形態 廃棄物処理場で処理されたために肉体が暴走し大きく変異し仰向けにブリッジしてる形態。 処理場の処理液から作り出した有害な体液を飛ばす。 主に体液飛ばしがメインで攻撃範囲は広いが地味。 決戦場に置いてあるレールキャノンを起動させることで倒せるが、HPを0にすると射線上のスーパータイラントの死体を食い出すので当てやすくなる。 HP自体は減らさなくても良いので、その気になれば丸腰でも倒せる。 主なステージ ●アップタウン ジルが最初に逃げ込む場所。少数ながら生存している市民の姿や声、S.T.A.R.S.隊員のブラッドが逃げ惑う様子が見られる。 序盤でありながら中盤に戻ってくる要素も多く、アンブレラの製薬施設に重要アイテムを取りに行ったり、ダリルの行く末などを見届ける事ができた。 ●警察署 ダウンタウン市街を抜けて最初に向かうステージ。忌々しい追跡者との初遭遇と、ブラッドの死亡する箇所でもある。 2の前日という事もあって、気絶こそしているが一応生存しているマービンがいる。 あくまでキーピックを取りに行くためだけなので、2のように凝ったギミックは存在しない。 ●ダウンタウン カルロスと対面するレストランや新聞社、ニコライやミハイルと会う電車など序盤の要所。 このあたりからランダム要素が増えてくるため、覚えておくか自分なりのチャートを組んでおくとやりやすい。 ●時計塔 電車で向かった先で、追跡者第一形態との決戦場。 ハードモードではマインスロアーが落ちていたりする。 ●病院 カルロス操作中で向かうステージ。 ハンターが初登場するが、全体的にステージの移動幅が狭いためアサルトライフルで立ち向かえば楽。 最終的にはニコライの爆破工作で消滅するので、ジルが向かう事は無い。 ●公園 多くの箇所の敵がランダム配置で、それによって難易度も大幅に左右されてしまう。 ●廃工場 公園奥地にあるアンブレラ社所有の工場。 最終ステージとあって敵の配置数や難易度がかなり多くなる。 米軍が設置したレールガンが置いてあるが、一体いつそんなものを置く余裕があったのだろうか……。 THE MERCENARIES OPERATION MAD JACKAL 本編クリア後に遊べるおまけミニゲームで、本作を語る上で欠かせない要素の1つ。通称「マーシ」(*2)等。 ルールは本編に登場したカルロス、ミハイル、ニコライから1人を選び、制限時間内に敵の撃破等を行いつつ、目的地へ向かうというもの。 開始時にタイムが2分与えられるが、これだけでは目的地までにはとても足りない。ではどうするかというと 敵を倒す 緊急回避を成功させる 市民や味方隊員を救出する(*3) マップ内に存在する隠しポイントを見つける これらを行うことでタイムを増加させていきながら進んでいく。 「敵を連続又はまとめて撃破」「緊急回避から敵を撃破」等のファインプレイを行うともらえるタイムにボーナスがかかるため積極的に狙っていきたい。 無事にゴールできると残タイムや敵撃破数等の戦績に応じた評価付けが行われ、賞金を獲得できる。(*4) 獲得した賞金を消費することで本編で使用できる強力な隠し要素をアンロックできる。 『2』の「The 4th Survivor」等クリア後のおまけミニゲーム自体はこれ以前にも存在してたが、 これまでとは打って変わって爽快感を重視した内容になり、更に「コンボ」「スコア」等のやり込み要素が導入により、このモードを極めるプレイヤーが続出した。 後の『4』では「制限時間内に多くの敵を倒す」ルールに変更された上で収録され、更にこのモードを主題としたスピンオフ作が作られる程の人気要素となった。 それぞれのキャラの特徴 カルロス・オリヴェイラ アサルトライフルとEAGLE6.0というスタンダードな武装と、緑+赤+青の調合ハーブを3つ所有している。 市民や味方隊員を救助すると貰えるアイテムがハンドガンの弾か救急スプレーのみなので、基本はハンドガンで敵を倒す必要がある。 それ以外にしても最大火力がアサルトライフルなので、怯みにくい相手や耐久値の多い強敵には苦戦しやすい。 ニコライ・ジノビエフ 武装がハンドガンとナイフのみで、救急スプレー3つとブルーハーブ1つという耐久特化タイプ。 ハンドガンの弾薬は救助時のみ貰えるが、後半になると強化弾が貰えるため多少はマシになる。 ジルとナイフのモーションが違うため、狭所で使用する時にはしっかりスペースを取らないと障害物にぶつかって隙を晒すため注意。 ミハイル・ヴィクトール ショットガン、マグナム、ロケットランチャーと重火力な装備だが、緑+赤+青の調合ハーブを1つしか持たない。 弾の無駄撃ちにさえ気を配れば敵に苦戦する場面は中々起こらないものの、ダメージに対するリカバリーが最後まで調合ハーブ1個だけなのが難点。 とはいえ最もクリアーしやすいので、初心者にはおススメ。 備考 クリアするとシリーズのキャラの後日談が語られ、1周クリアするごとにジル、クリス、バリー、レオン、クレア、エイダ、シェリー、ハンクと開放される(*5)。 本作ではロケラン等イベント武器に持ち替えることなく最後までナイフクリアが可能。 コスチェンジは、1コス、レジーナコス、バイクスーツ、ディスコスーツ、ミニスカポリス。 ライトモードだと最初の2つのみ。 実写版2作目『バイオハザードⅡ アポカリプス』は本作をモチーフにしており、ジルやカルロス、すぐ死ぬニコライが登場している。 追記・修正はネメシスに追いかけられながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 何でこれがPS3なんかでリメイクされないんだろう。人気高い作品なんだしやればいいのに。 -- 名無しさん (2014-11-04 15 20 46) ↑初心者にはやはり追跡者が厄介だからじゃない?あと二週目だと無限弾化出来なかったっけ? -- 名無しさん (2015-02-08 06 29 39) ↑ミニゲームの報酬で解禁になる。そこそこ大変。後日談ぜんふ見たいなら推奨 -- 名無しさん (2015-02-08 18 25 49) ↑3 クリエイターってのは一度つくった作品を再びつくり直すなんてことは普通はしたがらないからね。初代みたいに特別な存在は別だけど。 -- 名無しさん (2015-03-04 10 59 44) 追跡者は第一形態が一番手強い。まあ倒せなくても進められるからなんだろうけどね。河津秋敏メソッドって奴か(ボスが倒せないのはバグだが、ザコを倒せなくてもクリアは出来るという設計理論) -- 名無しさん (2015-11-07 01 54 07) そう言えば、追跡者は第2形態になると部屋を移動する際にドアをぶち破るようになるんだっけ。第1形態まではわざわざ開けたドアを閉めてただけに紳士的だと思った矢先にアレだからなぁ・・・。 -- 名無しさん (2016-07-13 01 50 30) ヴェンデッタでもレールガンが登場したけど、あちらは敵に当てた弾が貫通して近くビルも破壊されたし -- 名無しさん (2018-06-26 00 19 33) リメイクされるがジルが美人に見えない。 -- 名無しさん (2019-12-11 22 01 10) 様々な弾薬を箱(ケース)付で作り出せ、グレネードと組み合わせると液化窒素や硫酸になる謎のガンパウダー……。ゲームシステムに突っ込むのも野暮だけど、AAAがハンドガン、BBBがショットガンの弾なのに、ABBがハンドガンの弾なのは何故なんだ? -- 名無しさん (2020-01-20 18 10 09) リメイクの情報だいぶ出てきたね。地下鉄がOBまんまだしカイト兄弟の看板とかあったしスタッフ流石。 -- 名無しさん (2020-02-26 18 26 17) リメイクマジで・・・ -- 名無しさん (2020-04-04 11 40 42) 名前 コメント
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ラノで読む ◇六月二十一日(金) 就寝後 考え直してみれば、その違和感は親友|相羽《あいば》|呼都《こと》の夢に侵入した最初からあったのだ。 「獏《ばく》化しなきゃ人の夢に入れないなんて、こんなこと今まで一度もなかったのになぁ」 人型に戻った獏の異能者、|姫音《ひめね》|離夢《りむ》はその赤黒く長い巻き毛を指で梳きながら、全裸姿のままひとりごちる。 肉体が睡眠状態になり意識が夢の中へと向かえば、いつものならばイメージする先の夢へと入り込むことができるのだが、今回に限ってコトの夢の周りに、まるで見えない壁が自分を遮っているかのように覆っていた。 これもまた、先ほどの帰宅時にコトが「最近夢を見ていない」と言っていた原因と関係があるのだろうか……。 「とりあえず服を調達しなきゃ」 一度獏化してしまうとその体格差故に身につけていた衣類は破れてしまう。本人の知る限りその夢を食べて消す力しか持ち合わせていないリムには、一度目を覚まし夢へと再突入しないことには、自身に起こった状態変化をリセットすることができないでいた。 例え親友コトの夢とはいえ全裸のまま闊歩するわけにもいかない。リムは接続地点として寮の自室に着地し――、本来そこにあるべきである自分の私物の一切ない、備え付けの家具だけとなっている空部屋の自室に疑問を感じた。 「えっと、なんで?」 見知らぬ他人の夢ならまだしも、この部屋に幾度となく訪れたことのある親友コトの夢なら、記憶の断片としてでも自室について何らかのパーツが構築されていてもおかしくないはずなのだが……足がかりさえあれば共通の認識として上書き補正することもできるのだが、ここまで情報のない状態からでは介入する余地もない。 「やっぱり、何かがおかしい……よね」 リムは空っぽのクローゼットの前で、顎に手を当て首を捻り考え込んだ。 衣類を探すのは諦め、このままコトにばれないように探りを入れてみようか。それとも一度戻ってみるべきか……、しかしまた獏化しなければ再突入できないならそれは無駄足となってしまう。 ひとまず、窓の外からコトに見つからないよう様子を覗いてみようと、リムはベランダに手をかけ空中へと踏み出そうと――、 「へぇ、まさかこんな早くに会えるとは思わなかったよ」 突然、先ほどまで自分しかいなかったはずの|空《・》っ《・》ぽ《・》の《・》自《・》室《・》から声をかけられ、リムは踏み出そうとした足を止め、部屋へと振り返った。 部屋の中央、そこには双葉学園男子制服を纏った、リムと同じほどの背丈をした線の細い少年が、彼女に向かい微笑み立っていた。 「いっ……嫌ぁぁぁぁぁあ!!」 リムは、普段なら滅多に出さないほどの大声で悲鳴をあげた。男の人に裸を見られてしまった。顔面を真っ赤に染め、慌ててその豊満な胸を両腕で隠すと、勢いよくベランダへとしゃがみ込む。 「おっと、これは失礼。女性に素肌を晒させたままというのは申し訳ないな」 しかしその少年はリムの悲鳴にもまるで物怖じしない様子で、彼女へと右手を差し出すとその爪の尖ったその指をパチンと弾き鳴らした。 突如、座り込んだリムの体の周りを黒い影が覆い、そしてそれはリムの背丈に合った漆黒のワンピースドレスの形を成した。 何が起きたのかわからなかったが、ひとまず男の人の前で全裸でいるという事態が回避できた安堵感もあり、リムは頬を赤らめたまま眉間にしわを寄せゆっくりと立ち上がると、じっと少年を見つめた。 先ほどはあまりに急なことで確認できなかったのだが、襟足を刈り揃えられた赤黒い癖っ毛に、彫りの深い目鼻立ちと鋭い八重歯。その姿はまるで自分と同じようで―― 「……えっと、何。誰?」 嫌な予感がよぎり、リムはいぶかしげに少年を睨みつけ、ゆっくりと尋ねた。 「そうか、僕の方は幾度か君を目にしていたんだけど、いつも遠目に君を見つめていただけで自己紹介がまだだったね」 そして、少年は微笑みを崩さないまま、言った。 「僕は君と同じ、ラルヴァ『獏』だよ」 「え……っと、え!?」 少年の言葉に嫌な予感が的中し、リムは躊躇した。 この人も獏? しかも私が獏だってばれてる? やっぱり髪とか八重歯とか同じような特徴を持った仲間だと見られたから、獏だとばれたのだろうか? ……って、ラルヴァ? 「ちょっと待って、っていうかばれてるみたいだから隠すのはもう諦めるけど……私はラルヴァじゃなくて人間の、獏の能力を持った異能者だよ?」 リムは困惑しながらも慌てて訂正する。 「そう思うのならそうなんだろう、君の中ではね」 しかし少年は相変わらずの笑顔のまま続けた。 「でも、事実は変えられないよ」 リムは大きく頭《かぶり》を振った。例えそれが事実だとしても受け入れられるわけがない。 「あなたはいったい何者なの、どうして、私のことを?」 「そうだね……。と、その話の前にとりあえず場所を移そうか。ここでは夢の主に近すぎる。この|素《・》材《・》に何かあったら大変だ」 言って少年はリムから壁、正確には壁二枚先にいるであろうコトへと目線を逸らすと、再びパチンと指を弾き鳴らす。 するとリムの視界が急に暗転し――、目が慣れるといつの間にか少年と二人、双葉公園の中央広場へと移動していた。 「なっ……!?」 リムは驚きを隠せないままあたりを見回す。雨上がりの薄曇りの空。毎週休日の朝に散歩している見慣れた双葉公園だ。今ここには一定の距離を保って対峙する二人以外に人影はない。 「これだけ離れておけば夢の主に影響を及ぼすこともないだろう。逆に離れすぎて情景の再現度が酷く低下していたから、僕が再構築しておいた」 少年が恩着せがましく言った。 「で……」 「そうだね、まず何から話そうか」 口を開いたリムを遮るように少年が言葉を続け、リムは警戒しながら再び彼を睨みつけた。 しかし少年は一切気にする素振りすら見せず、淡々と語り出した。 「初めて君を見かけたのは一ヵ月半ほど前になるかな。僕がずっと目を付けていたこの素材に君が現れたんだ。嬉しかったよ。同族の、しかもこんなに美しい異性と巡り合えるなんて思いもしなかったから」 一息入れて、少年は目線を寮棟のある方角へ向ける。 「そして何日か前、この素材の|子持ち悪夢《プレグナント》化に成功した際に、再び目にすることができた。二人の会話から友達同士だと判断してね。それから新しい力の実験も兼ねて罠を張ってみたんだ。まぁこんなに早く再会できるとは思いもしなかったけど」 罠。この夢に入り込みづらかったこと、そして自室の荷物が何もなかったことから察するに、なんらかの手法でこの夢から姫音離夢という存在そのものを拒絶するようなプロテクトをかけたのだろうとリムは考える。 「……そういえばあの時、君はは力任せに運よく|子持ち悪夢《プレグナント》を打ち消すことができたみたいだけど、君はまだ僕らの能力を上手く使いこなせてないみたいだね」 そして少年は人差し指を立てると、キザっぽくチッチッチと舌を打ちながらその指先を左右に振って見せる。 「僕たちは『夢を見るだけの人間』なんかじゃない、夢に生き|悪夢《ナイトメア》を糧とするラルヴァ『獏』なんだ」 「っ……」 単に『獏の能力を持った人間の異能者』とラルヴァ『獏』との考え方の差か、あの不味い|悪夢《ナイトメア》を自身の食料と捉える発想にリムは目眩がした。 違う、やっぱりこの人は自分と同じなんかじゃない。リムの警戒心が一層強まる。 「心を解放しなよ、こちら側へおいでよ。君はその『人間』などという枠に捕らわれたままではいけない」 言って、少年は突然リムの視界から消え去り、瞬時に、触れ合える程に間近へと再び姿を現した。 「何せ――君は僕の妻となるべき存在なのだから」 そして少年はリムの頬に手を添《そ》えると、 「――っ!?」 有無を言わさず彼女の唇を奪った。 それはあまりに突然の出来事でリムは頭が真っ白になってしまい、数秒の間、何の抵抗もできないでいた。 頬を撫でる異性の手。初めて触れた唇同士の感触。 何よりも先にひたすら恐怖心と嫌悪感が湧き起こり、手足の先が小さく震えだした。 そして、少年の舌先がリムの唇をなぞった瞬間、 「……――ガァァァァアアアアアッ!!」 リムの理性は消し飛んだ。 突如その肉体が膨れ上がり巨躯の獏へと変貌すると、たとえこれが夢の中とはいえ、ファーストキスを奪った少年の口を含めた顎周りをその鋭い牙で噛み砕く。 そしてバランスを崩した少年を体当たりで突き飛ばすと、自身も大きく跳び下がり、 「ォォォオオオオオオオ!!」 威嚇交じりに一吠えした。 しかし少年は顔色一つ変えず体を起こすと、喉元まで抉られた顎周りを手のひらで覆い隠す。するとしばらくの間、手がぼんやりと陰り――その手が退《の》けられると、隠されていた傷口はまるで何事もなかったかのように元の状態に戻っていた。 そして地を蹴り再度突進した獏の大きく伸びた鼻先を、少年は造作もなく片手一本で押さえ止め、 「――やはり、この程度なんだね」 ため息交じりに言い捨てると、反対の手を獏化したリムの眼前に差し出し、パチンとその指を弾き鳴らす。 すると音と同時にリムの獏化は強制的に解除され、そして再び先ほどの黒のワンピースドレスをまとった人間の姿に戻されてしまった。 「なん、で……?」 少年の手で鼻先を触れられたままでいたリムは我に返ると、少年の傍らから飛び離れると狼狽《うろた》えながらその唇を手の甲で拭うようにゴシゴシと擦《こす》った。 そのリムの行動に何かを感じたのか、少年は深くため息をつくと、 「さっきも言っただろう? 君はまだ僕らの能力を上手く使いこなせていないって。まぁこの僕からすれば、今の君の能力なんて獏化したところでまだまだ赤子同然なんだ。……それに、僕には――いや、なんでもない」 それまで流暢に話し続けていた少年は急に言い淀み、リムから目線を逸らす。 一瞬の間。 リムは小首を傾げると、その隙間に口を挟んだ。 「以前から目を付けていたって言ったよね。どうしてコトの夢に……」 「コト――あぁ、この夢の主はチェックしていた|悪夢《ナイトメア》に取り付かれやすい素材の一人でね。しかも|子持ち悪夢《プレグナント》化できたとなれば、なかなかにレアなんだ」 少年はリムへと向き直るとうんうんと頷き、言葉を続けた。 「それに友達同士のようだし、ここにいればまた君と出会えると思ったしね」 「やめて。そんな理由でコトの夢に入り込まないで」 リムはその鋭い八重歯を剥き出し、少年へと睨みつける。 「おっと嫌われたもんだ。まぁ、ここで出来ることはあらかた片付いたし、仕方ない。もう二度とこの素材へと関わらないことを約束しよう」 「約束なんて、そんなの信用できない」 「それもそうだな、うぅむ」 少年はわざとらしく考え込むような素振りを見せると、 「元々|悪夢《ナイトメア》にとりつかれやすい、つまりは僕らの糧である|悪夢《ナイトメア》を養殖できる|素《・》材《・》として利用していたに過ぎなかったんだ。でも実はそれももう終わり。この素材で成功した|子持ち悪夢《プレグナント》化を解析、応用して、僕は――それを僕自身に植え込んだ」 「植え込んだ……って、まさか!?」 少年の言葉にリムは顔面蒼白になる。少年はニヤリと笑って見せた。 「そう、今の僕はラルヴァ『獏』であると同時に|子持《ナイトメア》ち《・》悪夢《プレグナント》でもある。|悪夢《しょくりょう》を求めてさまよう必要もない、自己発電できる永久機関なんだ」 少年はまたその指を弾き鳴らしてみせる。音と同時に黒い|悪夢《ナイトメア》が姿を現し、そして少年はそれを掴むとパクリと口へ放り込んだ。 ずっと感じていた違和感。他人の夢を操作したり、服を作り出したり、瞬間移動したり、傷口を一瞬で修復したり。リム自身には一切できない、大凡《おおよそ》『獏』というだけでは説明しきれない力の原因が、まさか|悪夢《ナイトメア》によるものだったとは……。 「さて、手の内も明かしてしまったし、今日はこの辺りで身を引くとしよう。それではいずれまた。僕のお姫様」 そして、呆然とするリムに深々と一礼すると、少年はそのまま一瞬にしてその姿を消し去って行った。 少年が居なくなったことで、構築されていた双葉公園の情景が徐々に崩れ始める中、リムはしばらくの間その場に立ち尽くしていたが、はっと我に返ると、急いで寮棟へと飛んだ。 空を覆う雲は徐々に黒く厚みを増し、再びいつ雨が振り出し始めてもおかしくない。 寮棟へと辿り着いたリムは、無意識に手の甲で再び唇を擦りながら、ベランダ側からコトの寮室の前まで移動する。すると―― それはまるで彼女を待ち受けていたかのようなタイミングでコトが窓を開け姿を現し、ベランダを挟んで洗濯物越しに二人は顔を見合わせた。 「――なっ……!?」 コトはリムの顔を見るなり絶句し、数歩後ずさった。 無理もない、この夢のコトはリムに関する記憶を忘却させられているのだ。 「コト……」 リムは居ても立っても居られず、ベランダを飛び越え勢いよくコトを押し倒すように抱きついた。 「ちょっ……?」 突然の出来事に困惑するコトに、 「もう大丈夫だから、コト、夢から目を覚まそう? そして一緒に買い物に行こう」 リムは力強く抱きしめると、彼女の耳元で優しく声をかけた。 「リム――」 コトは少女の名を呼ぶと、目尻から一筋の涙が零れ落ちた。 そして彼女はリムの腕の中からその姿を消した。 コトの寮室で一人となったリムはゆっくりと立ち上がると、着せられていた黒いワンピースドレスを引き破ると徐《おもむろ》に口へと放り込んだ。 夢の主であるコトが目を覚ましたから、この空間もじきに消え去るだろう。ここ数日間の夢を覚えていないということは、根幹となったのはきっとあの少年に依るものである可能性が高い。恐らく今夜の夢も覚えていないはずだ。 これにて一件落着――なのだが……、 『僕は君と同じ、ラルヴァ『獏』だよ』 リムの頭の中では先ほどの少年の言葉がずっとリピートし続けていた。 「私は、ラルヴァじゃないもん……」 リムは俯き、誰にも聞き取れないほどに小さく呟くと、歯を食いしばり強く握った拳《こぶし》をわなわなと震わせていた。 【眠り姫に迫る影】 Rim s Side【ラストリゾート -Last Resort-】終 Koto s Side【らすりぞ!】 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 真女神転生5攻略Wiki|メガテン5 - AppMedia(アップメディア) ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」(2021年12月6日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - PR TIMES 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) アイプラ攻略Wiki|アイドリープライド - AppMedia(アップメディア) 「Wiki」創設者のPC 競売に - auone.jp 篠原悠希×田中芳樹が明かす「歴史ファンタジー小説ならではの悩み」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【Apex Legends】ヴァルキリーの能力と評価【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) モンハンライズ攻略Wiki|MHRise - AppMedia(アップメディア) 白夜極光攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【ひなこい】最強ひな写ランキング - ひなこい攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ウインドボーイズ】リセマラ当たりランキング(最新版) - ウインドボーイズ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ポケモンBDSP(ダイパリメイク)攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【テイルズオブルミナリア】リセマラ当たりランキング - TOルミナリア攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) SlackからWikiへ!シームレスな文章作成・共有が可能な「GROWIBot」リリース - アットプレス(プレスリリース) メトロイド ドレッド攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) Among Us攻略Wiki【アマングアス・アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】チャンピオンズミーティングの攻略まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ナリタブライアンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【シャーマンキング】リセマラ当たりランキング【ふんばりクロニクル】 - ふんクロ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) サモンズボード攻略wiki - GameWith 【まおりゅう】最強パーティー編成とおすすめキャラ【転スラアプリ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スタオケ】カード一覧【金色のコルダスターライトオーケストラ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】ソラのコンボと評価【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ブレフロレゾナ】リセマラ当たりランキング【ブレイブフロンティアレゾナ】 - ブレフロR攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトの評価と性能詳細【UNITE】 - Gamerch(ゲーマチ) 仲村トオル、共演者は事前に“Wiki調べ”(オリコン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ENDER LILIES】攻略チャートと全体マップ【エンダーリリィズ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】あんしん笹針師の選択肢はどれを選ぶべき? 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4 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 15 57 35 ID E7A4fxlJ0 これから、まだ明かしていなかった謎を解き明かしていこう。 形式としては以前のように、ユールとの対話を通じて明かしていく。 そういえば、カーニバル事件の後、ダロールはどうしたのだろう。 私は気になってユールにそれを尋ねてみた。 「ダロール? 彼なら……もうこの世にはいないよ」 「死んだのか」 「うん。もしクロイスが彼の事が好きだったのなら、ごめんね」 「いいや、悪い印象は抱いていないが…… 大丈夫だ。あの人が死んでも、私はどうもこうもしない。 それで……彼はどのように死んだ? お前と戦ってか?」 「大体はそうね」 「ちょっと待て、お前『大体は』ってどういう意味だ」 「私が戦って殺したのは、ダロールにとりついていた闇なの。 『全てを回帰に導くもの』という名前が付いてる、そんなやつ」 「じゃあお前はダロールを殺していないと?」 「そう。だけど、間接的に私も関わっている。 私の葬式が昨年末に行われたでしょ? その時に灰が投げられたけど……」 「そうか、その灰は……」 「うん。ダロールのものなんだ」 これで、ダロールは今どうしているのかが分かった。 彼はもう死んでいるし、ユールの葬式の時に灰は撒かれた。昇天している事を願う。 5 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 16 09 21 ID E7A4fxlJ0 次に気になった事があった。 ユールと彼女の友人達は、ダロールが率いた四体の機動兵器と 戦ったことは知っているし、なぜ勝てたのかも分かった。 しかし、どうも釈然としない部分がある。今度はそれをユールに尋ねてみた。 「え? なんで私達がカーニバル事件の戦闘で勝てたかって?」 「データから推測する限り、お前たちに与えられた装備が かなりの高性能を発揮するものだったから……と思わざるを得ないのだが」 「あぁ、そうかもしれない。でも、その装備だけで戦ったわけじゃないわ」 「分かった。お前は心の光の力で戦ったんだな?」 「そうそう。蠍を相手にした時は、私の体は乗っ取られたんだけど……」 「乗っ取られた? どういう意味だ」 「あぁ、ごめん。分からないよね。 その意味はね、ちょっと危ないから離れてて」 ユールに言われた通り、私は立ち上がって数歩後ろに下がった。 何が起きるのだろうかと思いながら、ユールの動作を注視する。 ユールは自分の右手を首の方へともっていった。 私はその時に初めて、ユールがネックレスを付けているのを見た。 少女にはふさわしくなさそうな、しかしユールだからこそ似合う、剣のネックレス。 それをユールは、思い切り引きちぎった。そして、目を疑う現象が…… 「な、んな馬鹿な……」 「この剣の名前はマキナ。私に与えられた最初の武器ね」 「ネックレスが、大剣になっただと?」 「うん、まぁその……危ないって言ったのはこの事なんだ」 「それは十分分かった。でだ、乗っ取られたってどういう意味なんだ」 「マキナが私の体を乗っ取ったんだよ。この剣にはそんな力がある。ねぇ、マキナ?」 ユールはまるで大剣に人格が存在するかのようにそう言った。 この発言はそう考えなければ、そうとしか思えないのである。 私は何か嫌な予感がした。もしかするとこの剣は喋るのではないか……? 6 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 16 28 28 ID E7A4fxlJ0 『うん……あの時は状況が状況だった。すまない事をしたね』 喋った。予感は的中してしまった。 「な、な……!?」 「驚くのは無理もないと思うけど、マキナは喋る事が出来るんだ」 「……もう、なんでもありだな、お前は……」 『すまないね、お客さん。僕の名前はマキナ。 この名前はユールにつけてもらったものだ。 本当の名前はゆう。松木ゆうだ。ところで、君の名前は?』 私の耳は、剣が本当の名を告げた所で機能を失っていた。 マツキ。千年前から名が伝わっている有名人。 オグレの名を知らしめる手伝いをした名前。 「……マツキ、だって?」 『そうだよ。で、君の名前は?』 「おいおいおい、まさかそんな馬鹿な話があるわけないだろう……」 『馬鹿な話じゃないよ。で、君の名前は?』 「……私の名前? 名はまだ伝える事が出来ない。姓だけ教える。クロイスだ」 『クロイス君か。はじめまして……っても、握手は出来ないね、この姿じゃ』 あはは、と笑ったマツキと名乗った大剣は、とても楽しそうであった。 その外見では判別する事はほぼ不可能だったのだが、声の調子はそうだった。 『僕の事はゆうって呼んで欲しい。マツキじゃあ……他人行儀っていうかね』 「そうか。なら、ゆう。もし仮に私の名前を知っていたとしてもだ。 私の事はクロイスと呼んで欲しい。まだ、名前で呼ばれたくない」 『オーケイ。じゃあ早速、君の知りたいことを教えよう。 どうしてユール達が勝利できたか。それは……ユールのおかげさ』 「そうなのか」 『うん。他の四人もかなり頑張ったんだよ。 でも最後の敵にはユールが立ち向かわなくてはならなかった』 「闇にとりつかれた、ダロール・フェニルのことか」 『そうそう。勘が良いねぇ。 それで……まぁ、例えとしてはだ。 今のIIDXの最後のボス曲って知ってる?』 「現行のバージョンは 13 DISTORTED だよな。だから……嘆きの樹とか言ったか?」 『そうそう。それのアナザ―譜面、見たことある?』 「あぁ。前作の冥とは違った路線の難しさなのだなとは感じた」 7 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 16 37 44 ID E7A4fxlJ0 『まぁ嘆きでも冥でも蠍火でもワンモアでも何でもいいんだけどさ。 とにかくそれをAAAとってクリアーしろったら出来る?』 「何の難易度でだ。私の場合、それによるぞ」 『勿論、アナザ―譜面でだよ』 「……そんなの、ランカー並みの実力がないと出来るわけがないだろ」 『でしょ? つまりはそういう事なんだ』 「何が」 『最後の敵に立ち向かうのは、ユールでないと駄目なんだって話』 「……あぁ、そういう事なんだな? 分かった。よく分かった」 『流石音ゲーマー。こういう例え話はよく分かってくれる』 「いまやこの時代の殆どの人間が音ゲーマーだ。 どれだけやりこんでるかの程度も表れるが……ゆうは良い時代だと思うか?」 『千年後がこんな世界だと知っていたら、体を冷凍保存しておきたかった。 それで3000年のミレニアムを、体を解凍してここで過ごしたかった……』 「だけどそれは無理だった。千年前の戦いで死んでしまったからだ」 『そうだね……でも、ここで今を過ごせるというだけでも幸せさ』 えへへ、とゆうは笑った。表情はないから読み取る事が出来ない。 『ところで』 ゆうが話題を変えた。 『確か君の友達に、オグレの血筋の人がいなかったかい?』 「オグレ……?」 『あ、大丈夫だよ、言っても。その人には何の危害は無いから』 「そうか。なら喋ろう。 オグレの血筋を継いでるっていう後輩がいる。 アヤノっていう名前でな。多分もう、お前たちなら知っているとは思うのだが」 『アヤノっていうんだ。この時代に彼の子孫がいるらしいという事は聞いていたし なにより昨年の事件を調べている、ということは分かっていたからね。 だけど名前だけは分からなかったんだ。 彼は僕の友人だからね。その……アヤノちゃんにも、挨拶はしたかった』 「なら、私が向こうに帰ったら、お前がよろしくって言っていた、とでも言っておこうか?」 『ありがとう。で、やっぱり彼女も探偵なの?』 「そうだ。アヤノにあの事件の調査を依頼したのは私だからな……」 『そうかぁ、分かった。僕は色々考えたい事があるし、ちょっと黙ってるよ』 8 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 16 50 18 ID E7A4fxlJ0 それからは、ゆうは口を閉じた。 口なんてないのだが、表現する上ではそう書く事しか出来ない。 「ところでユール」 「なに?」 「一体お前はどうやって生活を成り立たせている?」 ふっと思いついた質問がこれだった。 女の子を相手にこんな話をするのはこれが初めてだ。 「ここで色々やってるよ」 ひどく曖昧な答えだった。 「……色々とは?」 「色々は色々だよ」 「例えば? 何が挙げられる?」 「……え? あぁそうか、そういうことね。 カーニバル事件の後、WSFが私の光の力に目を付けたの。 さっきも言ったけどこの力は、円環が生み出したと言い換えてみてもいいのね。 天文学的な数の並行世界を支える、そんな存在が生み出した力…… ねぇクロイス、そんなものがあれば使ってみたいと思わない?」 「思わないな。身の程に似合わない力なんて持ったら、自分が死ぬ」 「クロイスならそう言うと思った。 ……あの事件の後、WSFは私にここに住むように言ったの」 「機密保持のためだろうな。それと、お前の持っている力の分析もしたいだろう」 「そうなんだよね。それで……私は彼らの指示に従った。 とりあえずはここに住み続ける事になってる。 この家には隠し通路があるんだ。そこを通ってターミナルタワーの深い所に行くの。 んで私は、表向きはこの家を買ってカーニバルに住んでる人ってことになってる」 「賢明だとは思う。そういうことにしたのなら、 私みたいに突っかかる人間がいない限りは大丈夫だろう」 「実際そうだから助かってる。そうだ、私の家の表札を見た?」 「表札? そんなのあったか?」 「あったあった。今の私の名前は『ナターレ』っていうの。 知り合った人やその場で話をした人には、そのナターレって名前で呼ばせているの」 「そうなのか……待てよ、ちょっと待ってくれ」 何かが変だった。ユールの発言のどこに違和感を感じたのだろうか…… 9 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 17 01 50 ID E7A4fxlJ0 その答えは簡単に浮かんだ。 この子は本当に大丈夫なのかと心配になりそうな、そんな答えだ。 「知り合った人やその場で話をした人、か」 「うん」 「どうしてお前は外を自由に出歩ける? この家には秘密連絡通路があり、ターミナルタワー深部へのアクセスは容易だろう? 何で外を歩く? 外を出歩かれちゃ、奴らが黙っちゃいないだろう」 「だから偽名を使うのよ。今の髪は白いし、誰も分からないって。 んで……私の髪は、一年前は黒色だった。良い髪だねって、クーリーは言ってくれた」 「そうなのか?」 「黒色って言っても、なんか烏みたいな色なのね。 だから小さい頃に『カラス』ってあだ名なんかつけられちゃって…… でもクーリーは、それを気にしている私に言ったの」 「何を言ったんだ?」 「『すっごく良い髪だと思う。僕なんか見てよ、金髪だよ金髪。あり得ないよ、ホント』」 「……無い物ねだりってやつだな」 「クロイスはそう思うかもしれないけど…… 私はそうは思えないんだ。だって、クーリーは良い人だもん」 「根元から良い奴なんて、ファンタジーの世界にしかいないと言いきかされて育ったんだが」 「誰に?」 「母親に。もう死んだが」 「そうなの……でも、クロイスのお母さんは勘違いしてると思う」 「何を?」 「確かに、根元から良い人なんていないよ。クーリーだってそうなんだもん。 でも、良い人であるために根元からそうでなくてもいいと思うの。 その人が良い事をすれば、そして行動を受けた人が感謝して良い人だと思えばそれでいいのよ」 「それもそうだな……」 私はユールの言葉を聞き、心からそう思った。 私の母は妙にシビアな人だった。何事をも疑ってかかり、確信を持つまで用心する……そんな人だった。 そんな母の背中を見て育ったのだ、私も何か、妙に凝り固まった所があったのかもしれない。 ちなみに、父の背中を見て育った覚えはない。毎日が出張だったような気がする。 10 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 17 10 13 ID E7A4fxlJ0 ユールとそんな話をして、その場は盛り下がることなく、上手く話が続いていた。 彼女と話をしていると、なにか落ち着くような気がするのだ。 それは光の力によるものなのか、 それともユール自身が持ち合わせている何かなのかは分からない。 「ところでクロイス」 「どうした」 「クロイスは人間の心の要素で、どれが重要だと思ってる?」 「心の要素というと、喜怒哀楽の事か?」 「そうそれ。どう思ってる?」 変な質問だと思った。 流石にそれを口にするのはまずいから、ちゃんと答えを用意する。 「喜と、楽」 「どうして?」 「私は……人間は、ポジティブな思考をしていた方がいいと思っている。 あぁ、ネガティブなそれが不必要だとは言わない。何事もバランスが大事だから」 「そうかもしれない。でも私は怒と哀を選ぶ」 「何故だ」 「怒りと哀しみがなければ、人は進歩しない。 確かにポジティブな思考や感情も必要よ。でも、人は反省と後悔をすべきだと思うの」 「反省と後悔か。それって、あれに似ているな」 「あれって?」 「WOS設立者のモンド・スミスの言葉だ。 『成長は猛省と共に訪れる。人は罪を犯し、それを償おうとする過程でのみ成長する』ってやつだ」 「あぁ……それ、それは……」 ユールの表情が暗くなっていく。 明るめのそれだったものが、どうしてそうなっていくのだろう。 「どうした?」 「ちょっと……一年前を思い出して……」 「一年前? カーニバル事件の事か」 「うん……だめだなぁ私」 「どうしたんだ、いきなり」 「クロイスとクーリーを重ねて見てしまうの。いくら否定しても、駄目なの」 「私と、ジェームズが似ていると?」 「うん。結構似ているとは思うよ」 それに対して私はただ一言、そうか、としか返せなかった。 芸のない奴だと心の内で自嘲しつつ、私はある事を聞いてみた。 11 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 17 23 33 ID E7A4fxlJ0 「成長は猛省と共に訪れるって言うが…… 私はジェームズのように、いつも他人の事を考えられるような人間じゃない。 ここに来る前に彼と話をした事がある。 その時の彼の印象も良かった。いつもお前の心配をしていた」 「そうなの?」 「あぁ。それで、ユール。 彼から一つ興味深い話を聞いたんだ」 「え、なに?」 「一年前にジェームズは撃墜されている。 正確に言うと機体のコントロールが取れなくなって ゆっくりと落下していったそうだ。 地面に機体が触れたら、大爆発を起こして死ぬ……そんな状況だったらしい。 ……って、お前はもう分かっているか」 「うん、まぁ……当事者だし」 「その時にジェームズはお前と二人で話をしたそうだな? この会話の内容を彼は教えてくれた」 「あの、あの話を?」 ユールの表情に、少しだけ焦りの色が見て取れた。 私はそれをしっかり確認して、ユールの目を見つめて言う。 「実はジェームズ、幼い頃に大きな罪を犯した、と言っている。 小学校の低学年だかの話で、クラスメイトにラブレターを代理で渡すよう頼まれたそうだ。 だが、ジェームズは……今となっちゃ珍しい紙の手紙をだな、処分してしまった。 別にそのクラスメイトが嫌いだったって話じゃない。 そいつが好きだった女の子が問題だったんだ」 「……」 「その女の子こそが、ユール、お前だ……っていう話を教えてくれた。 この時にジェームズは相当な後悔をしたらしい。 クラスメートに『ダメだった』とウソの報告をして、 その時に返された言葉が、彼が後悔する事のトリガーになったそうだ」 「……それって?」 「『分かった。じゃあ、一番彼女に近いのは君だから、君は彼女と仲良くしてくれ』だと。 とても小学生が吐けるセリフとは思えないが、こんな感じの事を言ったらしい。 この時にジェームズは、不確かながらもクラスメートは 自分が何をやったのかを知ってたのではないかと思ったらしい。 そこで強烈な自己嫌悪に陥り……猛省と共に成長が訪れたってわけだ」 「やっぱり、そのまんまだった。あの時、クーリーが話してくれた事と同じだ……」 ユールはそう言って、少しだけ目に涙をためたように見えた。 しかしそれは、まるで見間違えたかのように姿を失せ、そしてユールは口を開いた。 12 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 17 47 13 ID E7A4fxlJ0 「同じ事を、同じ状況で言われた事があるの。 その時……私は怒らなかった。 怒れなかったのか、そうしなかったのかは分からないけど 問題はそれじゃない。そこが問題じゃないの」 ユールはそこで言葉を切った。 何かを言いたそうに私の目を見つめる。 言いたい事は自分で分かってる。だけど、上手くまとめられない。 私を見つめる目を見た印象は、そんな感じだった。 同時に、ユールの眼は、見ていて悲しくなってくるものがあった。 「私は……何でこんな時にそんな事を言うの?って思ったの。 もっと別の言葉があったはずなのに、なのに…… そうはならなかったけど、私がそれを聞いて傷つくかもって、思わない?」 「考えられなくはないな」 「クーリーは人を傷つける事は言わないって思ってた。 でもあれは、クーリーらしさがなかった。あれはクーリーじゃないと思った。 けど……あれもクーリーなんだって、今は思う」 「……そうか」 「クーリーは良い人なの。私から見て、善を体現している人なの。 けれど全てが良い人なんていない。 あの時のクーリーの言葉をこの耳で聞いて、それを確信できた。 だから……出来る事ならクーリーに一言だけ、言いたいんだ」 「何て?」 「うん……『今までありがとう』って。それだけを言いたいのに……」 そこでユールの言葉は止まった。 ここから何と続けるかは彼女の口次第なのだが、 その先の言葉は容易に推測できる。恐らくは「どうして言えないの?」だろう。 ジェームズが生きている事を何らかのルートで知ったユールは 一言のメッセージだけでも伝えたいのに、伝えられない。 その理由は、ユールが既に死亡扱いされていているために 外出に制限が掛けられているからだ。 ナターレなんて偽名を使っても、その効果は万能ではない。 これはユールがジェームズに会いに行くという前提での話であり、 それが駄目ならジェームズがユールの住む所、 即ちカーニバルを訪れればよい話かと思われるが、それも実現は不可能に近い。 私は一月に、ジェイと名乗ったジェームズと会った。 この時の彼の目的は、当時の私と同じだったと思われる。即ち『ユールの救出』である。 しかし残念なことに、彼の様子からして、彼はこの目的を達成できなかったものと思われる。 13 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 17 57 00 ID E7A4fxlJ0 それからジェームズは何度となくカーニバルに足を運んで ユールに会おうとしたに違いない。だがそれは何度も失敗したはずだ。 何故なら、彼の視界は今もモニタリングされているからだ。 ジェームズの視界を通じてWSFカーニバル支部の連中は彼の接近を悟り、 ユールに外出を禁止させたり、彼女に秘密通路を使わせて 自分達の基地に来るように言う事が出来る。 これに対してユールは断る事が出来ない。 なぜなら彼女はカーニバル事件の真相を知っているどころか、 それの当事者の中の当事者というどころか、この世界の破滅を阻止した人物だからだ。 その人物の中に私も入るのだろうが、それは置いておこう。 とにかくユールは知りすぎた。 よって彼女の存在はWOSやWSFの管理下に置かれなければならない。 そうでないと、世界中に真実がばらまかれるかもしれないからだ。 それにユールがカーニバルにいることを条件に WOSやWSFに絶大な圧力をかけることが出来るようになったのかもしれない。 殺されるべきユールの友人達の命がまだある事と 私が殺されずにいる事は、ユールがカーニバルに縛り付けられているおかげなのかもしれない。 「……すまない。そして、ありがとう」 「え、どうしたの?」 「考え事をしていたんだ。お前がここにいるおかげで 私は殺される事はなかったんじゃなかったかと。 そして、お前の友人達が生きてるのも、お前のおかげなんじゃないかと……」 「……うん、そうだね……」 「やはりそうか。なら、もう一度言わせてくれ……ありがとう」 「返事に困るような事、言わないで……」 ユールはそう返し、そして少しだけ微笑んだような気がした。 私はその顔を見て、つられて笑ってしまった。 「そうだ、言う事を忘れていたよ、ごめんごめん」 ユールは表情をそのままにして私に語りかけた。 何を? と尋ねる私に、彼女はこう言った。 14 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 18 09 10 ID E7A4fxlJ0 「クロイスは、最近自分でやってることが 自分でやっていないような気がしたり、 勘が外れたりしたってこと、無い?」 そんな事だった。 確かに思い当たる節はいくらでもある。 例えば、アヤノとルークと共にジュデッカにいた時の事で 変な笑いを浮かべてしまった事がある。 そして、アヤノの身の危険を勘で感じて カーニバルに行った時も、結局彼女に危害は加えられなかった。 私はその事をユールに話した。 ユールはうーんと唸り、口を開きたくなさそうな表情を浮かべ、言った。 「ごめんクロイス。大事な事を言うのを忘れていた」 「だから、それは何だ?」 「クロイスの頭の中には『勘』が埋め込まれている。 でもこれ、WSFが設計したそれは、もう一つ役割があったんだ」 「もう一つの、役割……?」 「……人を遠隔操作する技術の開発。 WSFは極秘の中の極秘でその技術を、クロイスの『勘』に埋め込んだの」 「な、何だと?」 「被験者が自覚できるって事は、もうあの技術は失敗って事。 でもクロイスだって無意識のうちに、何かやっていたかもしれない」 自分の意思で動いていたのは、実は……ってことよ。 ……なんてね。あれ、クロイス? おーい」 私の頭は止まっていた。 今までやってきた事は自分の意志ではなく、 他人の意志で動かされたかもしれないと聞かされた。 言い換えるなら、何か……例えば、RPGの主人公を操作するのはプレイヤーだ。 主人公が私で、操作するのがWSFの連中。 そんな馬鹿な。あり得ない。あり得てたまるものか。 15 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 18 21 57 ID E7A4fxlJ0 「まぁでも、実際に操られたのは三回までらしいよ」 「……三回?」 「うん。一つはクロイスが初めてルセに会った時。 もう一つはあなたの協力者がカーニバルに潜入した時なんだって。 そして最後は……クロイスが私を見て、何か変だと思わせた時らしいよ」 「……それは本当か」 「うん。だって、クロイスを操ってた人たちから聞いたんだもん、間違いないよ」 それを聞いて、私はとてつもない不安から解放された。 いや、完全に解放された訳ではない。 カーニバル事件を調べるきっかけになったあの違和感が 操られて感じていただけだったとしても。 それから後の行動は、彼らに操られていたという訳ではない。 つまり、大体ながら私は私の意志で行動出来ていた、ということになる。 「よかった……」 「え?」 「棺桶に入っているお前を見て、違和感を感じたんだ。 まぁ操られてっていうのはショックだがな。 だけど、色々な協力があって、ここまでやれたんだ。 それが全て偽物だった、何て言ったら……」 「……そうだね。よし、それじゃ遊びに行こう!」 「……そうだな。よし、それじゃ遊びに……って、どうしたんだ、いきなり」 ユールの発言の意味が分からなかった。どうしてそこからこんな言葉が出る? 「こういう気分の時は遊びに行くのが一番だよ」 「それはそうかもしれないが、お前、いつもそんな感じなのか?」 「そうだよ。だって、誰も私を見て『君、死んだユールって子に似てるねぇ』何て言わないから。 いつだったか同じような事を言ったと思うんだけど、聞いてた?」 「……責任はとれないぞ」 「大丈夫。いつも私も気づかない所で、なんか特殊部隊みたいな人が 監視と私の正体に気づいた人を捕まえてから 該当する記憶だけを消去するみたいだから。あれ、言わなかったっけ?」 「言ってないぞ……全く、恐ろしいな。お前を敵に回しても仕方がない、行くか」 私はそう言い、ユールの後に続いて家を出た。 その頃の時刻は既に13 20を過ぎていた。時間を忘れて、誰かと語り明かしたのは久しぶりだった。 carnival (re-construction ver) Last Phase -day break- St.9へ続く コメント 名前 コメント