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第五章 25番目のイブ いつのまにか早いもので息子は高校生に、娘は中学生になった。 早熟で色気づいた娘は、クリスマスイブを家族と過ごす習慣を早々に切り上げた。 気に入った男の子とイブを過ごすために。 「恋愛なんて精神病の一種よ」 などと看破していたかつての奇人美少女の娘としては随分まっとうな展開だな。 俺もハルヒも40歳を過ぎ、そろそろ髮に白いものが混じり始めた。それでも、 ハルヒは依然として魅力的な若々しさを保っていたし、長門ほどじゃないにせよ 随分と加齢が遅いたちらしかった。 今度のクリスマスイブは長門が待機モードに入ってから25度めだという時期に、 俺たちの家族、正確には息子、によくある話と言えば話だが、まさか自分に 降り掛かるとは誰も思っていない事態がふりかかった。 それはちょうど明日はUSJに行くというクリスマスイブの前日のことだった。 冬休みの特別部活動に行くために息子が登校していた学校から 「息子が倒れた」という連絡が職場に入ったのだ。とりあえず、とるものも とりあえず、転送先の病院に向かう。小さい頃から健康で、真冬にUSJで開園から 閉園まで吹きっさらしの中で過ごさせるという暴挙を敢行しても熱ひとつ 出さなかった息子だから、逆にちょっと心配になった。勿論、入院なんて初めてである。 病院に駆けつけると、やはり職場から駆けつけたハルヒが既に到着していた。 下の娘は実家に行かせることにしたようだ。 「どうなってる?」 「まだ意識が戻らないって」 こんなに落ち込んでいるハルヒを見るのも久しぶりだ。 おそらく、ハルヒが世界を改変しかけたあの高1の5月の日の前日、 何もかもに退屈し切って、この世を見限ってしまったあの日の午後以来だろうな。 ハルヒといえども、人の子の親ってことだろうな。 「医者はなんって言ってるんだ」 「まだ、検査の結果がでないのよ。とりあえず、いますぐ生命に危険が あるとかいう状態じゃないらしいわ」 「そうか」 そんな会話をしていると、看護婦らしき女性がやってきて(ナース服を 来た時の朝比奈さんをちょっと思い出してしまった。なにせ、病気には 縁のない家族で滅多に看護婦を目にすることなんてないからな)、 「お子さんが気がつかれました」 と教えてくれたので、俺たちは息子が収容されている病室に向かった。 息子は至って元気そうだった。 「心配かけてごめん」 「まったく、だから無茶するなっていつもいってるでしょ。やりすぎなのよ」 はい、お前が言うな、ハルヒ。大体、高校に存在するクラブ全部に仮入部してみる という暴挙はもともとお前が始めたことだし、息子はそれを継承しているだけだ、 ある意味。もっとも、その後、やめないでそのまま全部入部すると言うところは 誰に似たんだか解らないがな。 「わかったよ。1つか2つ、やめるよ、部活」 「何いってんの、半分にしなさい」 いや、高校にある全クラブの半数に入部しているだけで、充分多すぎると思うぞ、俺は。 「なんでそんなこと言われなくちゃならないんだよ」 「こっちは大事な仕事をふいにして駆けつけてんのよ。なのにその言いぐさはなによ」 はいはい、それぐらいにしておけ。とりあえず、今は息子は病人なんだからな。 「何言ってんの。こういう時でもなきゃ、あたしたちの言うことになんか 耳傾けないでしょ、こいつは」 そういう人の話を聞かないところもお前ゆずりじゃないのか、ハルヒ。 そんな実にしょうもないやりとりを繰り返していると、先程の朝比奈さん似の 看護婦さんが入って来て医者が呼んでいるという。 「あんた、今日はおとなしく寝てるのよ。抜け出したりしたら死刑だからね」 ハルヒは、そう息子に捨て台詞を吐くと、俺と肩を並べて、医者が待っている 面接室に向かった。面接室に入ると、俺たちより一回りくらい年上らしい 女医がテーブルの向こうに座っていて、「どうぞ」と手前の椅子を勧められた。 「息子の病態はどうなっておりますでしょうか?」 さっきとは別人の様な話し方だな。場に応じて話し方を変幻自在に変えられる ところも変わってないな、ハルヒ。女医はしばらく返答に窮しているようだったが それからこう切り出した。 「お二人とも、社会的にそれなりの地位をお持ちの方の様ですし、 もって回った説明をしてもすぐばれてしまいそうですから、端的に申し上げます」 なんだ、そんな前置きをされるとかえって緊張するぞ。 「御子息の余命は1ヶ月です」 世界が静止したかと思われた。さすがのハルヒも呆然としている。 お前がそんな顔をしているのを見るのも滅多にない。 いやいや、そんなツッコミをしている状況じゃないな。 「どういうことでしょうか?」 「御子息のかかっておられる病気は100万人に一人しかかからない 極めてまれな病気です。つい3年前まで病気そのものが知られていませんでした」 「どんな病気なんでしょうか?」 「原因、治療法、その他全く不明です。この病気はほとんどの場合、 非常に健康な思春期の男性にのみ発症します。これを御覧になってください。 これは御子息の体内から抽出した組織のマイクロアレイ検査の結果です。 この遺伝子発現プロファイルを健常人と比較すると、こことここに 異常な発現が見られますね?この遺伝子発現プロファイルはこの疾患 にかかった患者にだけ見られるものです」 専門用語はよくわからない。長門なみに説明がへたくそな先生だな。 「このあと、息子はどうなるのでしょうか?」 ハルヒが尋ねる。説明が下手な先生は答えた。 「特にどうということはありません。このあと、大した症状は ありません。ただ、ほぼ一ヶ月後に御子息の生命活動は 停止すると思われます」 「どんな風にですか?」 「痛みも苦しみもありません。今回と同じ様に意識を失われて そのまま亡くなられるでしょう。この疾患では最初の昏倒までは 特にこれといった症状は表れません。マイクロアレイを使わない限り、 この疾患の患者であることは診断することさえ不可能です。 ただ、ほぼ一ヶ月後に亡くなられるのはほぼ確実です」 「手の施しようもないと?」 「はい、残念ながら。それと御子息には告知されないことをお勧めします」 「なぜですか?」 「先程申し上げたように、この疾患には特に苦痛を伴う 症状はありません。治療も不可能です。お若い患者の場合、 特に人生を清算されると言う様な必要もないでしょうし、 告知されても無駄な苦しみを与えるだけではないかと思います。 受験生などの場合には、また別の対応が必要と思われますが、 御子息の場合は高校1年生ですし、現在は高校生活をエンジョイされておられる と思います。告知した場合、これから亡くなられるまでの1ケ月間は 地獄の苦しみを味あわれると思います」 ハルヒは何も答えなかった。 「息子と会っても構いませんか」 「現在は何も症状が無いようですから、帰宅されても構いません」 「解りました」 俺たちはいっしょに面接室をでると病室に向かった。 ハルヒが何を考えているか、俺には解らない。 「どうする気だ」 「話す」 「なぜだ?さっきの医者も言ったじゃないか?苦しませるだけだと...」 ふいにハルヒは向き直ると、昔、よくやったように俺のネクタイをつかんで 捻り上げた。 「あんたはそうやってまた同じ間違いを繰り返すつもり?」 「何の話しだ?」 「あんた達はあたしの力が消えるまで、あたしの力のことを あたしから隠し通した。それを聞いたとき、どんな気持ちだったか解る? 仲間だと思ってたSOS団の中で私だけ蚊帳の外だったのよ。 いま、このことを隠し通したら、同じことをあの子にすることになるわ。 まわりの誰もがあの子が死ぬことを知っている。あの子だけが知らない。 そんなのひどすぎるでしょ」 「ハルヒ、今度は違うよ。あの子が本当のことを知ることはありえないんだ。 あの子は一ヶ月後には...その、死んでしまうんだ。あとでおまえみたいな思いをする 心配は金輪際...」 「だめよ。黙っていたらあの子を裏切ることになるわ。あんたにはわからないのよ。 あの時、あたしがどれだけショックだったか」 「ハルヒ、それは俺への腹いせか?息子を巻き込むのはやめろ」 「嫌よ」 「なんでおまえはそういつもいつもわからないんだ」 気づくと俺はハルヒの横っ面をはっていた。ハルヒは愕然としている。 それはそうだろう。俺はハルヒに手をあげたことなんか一度もない。 「一生に一回くらい、俺の言うことを聞いてみろよ」 「キョン」 こいつはまだ俺のことをこう呼んでいるんだ、信じられるか? 「あたしはあんたのいうことに筋がとおっていると思っているときはきいてきたわ。 ううん、たぶん、他人のいうことを聞いたのはきっとあんたの言ったことだけよ。 でも、今回は好きにさせてもらうわ」 病室に戻ると、息子は既に制服に着替えてベッドに腰かけて俺たちを待っていた。 帰っていいと言われたんだろう。 「あんたはここにいて。入って来ちゃダメよ」 そういうとハルヒは一人で病室に入った。何か会話している。 俺は中から叫び声や泣き声が聞こえて来るのを待った。そうなったら、 ハルヒがなんと言おうと中に入るつもりだった。が、そんなことは一切無く、 ドアがあくと真っ青な顔をした息子と笑顔のハルヒがでてきた。 「何、ぼさっとつったってるのよ。帰るわよ」 帰りの車の中で俺は息子に言った。 「明日、USJ、止めてもいいんだぞ」 「父さんは?」 「お前が行かないならやめるよ」 「でも一回もすっぽかしたことないんだろ?今まで」 「それはそうだが」 「行くよ。有希姉にもさよならを言わなきゃ」 生理的な年齢が長門に近づいた今でも、息子は長門のことを「お姉ちゃん」 と思っているようだった。それにしても、泣きもわめきもしないのか、お前は。 驚いたな。 家に戻ると、息子は早々に部屋に引っ込んだ。俺たちもぐったりとして早めに 就寝した。夜中目覚めると、ハルヒのベッドが空だった。 キッチンに降りて行くと、ハルヒがこっちに背をむけて座っていた。 声をかけようと思って気づいた。ハルヒは泣いていた。俺はそのまま寝室に 戻った。自分が泣いているところなんてハルヒはきっと見られたくなかっただろうからな。 次の日、何も無かったように俺たちは朝起き、開園と同時にUSJに入園した。 長門をみつけると息子は 「二人だけにして」 というと一人で長門の方に向かって歩いていった。何か話した後、 今ではすっかり自分より背が低くなってしまった長門の前にひざまづくと、 いきなり抱きついた。そうか、お前は俺たちの前じゃあ泣きたくなかったんだな。 つまらんところがハルヒに似たんだ。そうやってどれくらい時間が過ぎたろうか。 ハルヒの方を見ると顔面蒼白だった。自分には泣き顔を見せない息子が 長門の前では泣いているのを見てきっと複雑な気分なんだろう。 ふと気づくと、長門がそばに来ていた。 「話がある」 ハルヒは息子に向かって駆けていってしまった。 長門はこう切り出した。 「彼に言って。望めば、あと30年生きられると」 「何?」 「私と一緒に生きれば、年1日ずつ、あと30年生きられる」 「ダメよ!」 いつのまにかハルヒが戻って来ていた。 「あの子は渡さないわ」 ハルヒ、おまえ何言ってるんだ? 「キョンの代わりにあの子を連れて行くつもりなんでしょう?」 そう、息子は高校生時代の俺にそっくりに成長していた。 性格はハルヒに似ていたけどな。 「あなたの言っていることは非論理的。私と来なければあなたの 息子はあと30日で死ぬ。失うものは何もない」 「ダメだったら!」 ハルヒ、お前の自由にはならないぞ、あの子に決めさせるんだ。 「何の話?」 いつの間にか、息子も戻って来ていた。 長門は息子に説明しはじめた。自分とくれば、時空間を凍結して1年に一回だけ 目覚める生活をすることであと30年生きられると。 「長門姉といっしょに?」 「そう」 「やめなさい。いっちゃだめ」 ハルヒは必死だった。息子との最後の掛け替えの無い1ヶ月を 取り上げられようとしているのだ。かつて、長門は一年に一日しか生きられないために 俺を諦めなくてはいけなかった。今、ハルヒと長門の立場は逆転したのだ。 長門が一年に一日しか生きられないがために、今度はハルヒが息子を諦めなくては ならない破目になっていたのだ。 「いくよ」 息子は大して迷いもせずに言った。 「そう」 「やめて」 「ハルヒ、あきらめろよ。これは運命だったんだ」 ハルヒにはこれが合理的な帰結だと解っていたが、受け入れ難かったのだろう。 息子は言った。 「今日は、もう帰って。来年会おう」 帰りの電車の中でハルヒは言った。 「罰があたったんだわ」 「何の話だ」 「あんたはあたしがUSJで披露宴をやったのはあたしが有希のことを思いやったからだと おもってるでしょう」 「違うのか?長門はうれしそうだったぞ」 「あんたはお人好しだから。本当は有希にあんたがとられるんじゃないかと 不安だったのよ。だから、つきあう許可を得てから次のイブまでに結婚したかったのよ。 抜け駆けしたんだわ私。で、いま、罰があたってる」 「考えすぎだぞ」 ハルヒは答えなかった。 第六章
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第五章 25番目のイブ いつのまにか早いもので息子は高校生に、娘は中学生になった。 早熟で色気づいた娘は、クリスマスイブを家族と過ごす習慣を早々に切り上げた。 気に入った男の子とイブを過ごすために。 「恋愛なんて精神病の一種よ」 などと看破していたかつての奇人美少女の娘としては随分まっとうな展開だな。 俺もハルヒも40歳を過ぎ、そろそろ髮に白いものが混じり始めた。それでも、 ハルヒは依然として魅力的な若々しさを保っていたし、長門ほどじゃないにせよ 随分と加齢が遅いたちらしかった。 今度のクリスマスイブは長門が待機モードに入ってから25度めだという時期に、 俺たちの家族、正確には息子、によくある話と言えば話だが、まさか自分に 降り掛かるとは誰も思っていない事態がふりかかった。 それはちょうど明日はUSJに行くというクリスマスイブの前日のことだった。 冬休みの特別部活動に行くために息子が登校していた学校から 「息子が倒れた」という連絡が職場に入ったのだ。とりあえず、とるものも とりあえず、転送先の病院に向かう。小さい頃から健康で、真冬にUSJで開園から 閉園まで吹きっさらしの中で過ごさせるという暴挙を敢行しても熱ひとつ 出さなかった息子だから、逆にちょっと心配になった。勿論、入院なんて初めてである。 病院に駆けつけると、やはり職場から駆けつけたハルヒが既に到着していた。 下の娘は実家に行かせることにしたようだ。 「どうなってる?」 「まだ意識が戻らないって」 こんなに落ち込んでいるハルヒを見るのも久しぶりだ。 おそらく、ハルヒが世界を改変しかけたあの高1の5月の日の前日、 何もかもに退屈し切って、この世を見限ってしまったあの日の午後以来だろうな。 ハルヒといえども、人の子の親ってことだろうな。 「医者はなんって言ってるんだ」 「まだ、検査の結果がでないのよ。とりあえず、いますぐ生命に危険が あるとかいう状態じゃないらしいわ」 「そうか」 そんな会話をしていると、看護婦らしき女性がやってきて(ナース服を 来た時の朝比奈さんをちょっと思い出してしまった。なにせ、病気には 縁のない家族で滅多に看護婦を目にすることなんてないからな)、 「お子さんが気がつかれました」 と教えてくれたので、俺たちは息子が収容されている病室に向かった。 息子は至って元気そうだった。 「心配かけてごめん」 「まったく、だから無茶するなっていつもいってるでしょ。やりすぎなのよ」 はい、お前が言うな、ハルヒ。大体、高校に存在するクラブ全部に仮入部してみる という暴挙はもともとお前が始めたことだし、息子はそれを継承しているだけだ、 ある意味。もっとも、その後、やめないでそのまま全部入部すると言うところは 誰に似たんだか解らないがな。 「わかったよ。1つか2つ、やめるよ、部活」 「何いってんの、半分にしなさい」 いや、高校にある全クラブの半数に入部しているだけで、充分多すぎると思うぞ、俺は。 「なんでそんなこと言われなくちゃならないんだよ」 「こっちは大事な仕事をふいにして駆けつけてんのよ。なのにその言いぐさはなによ」 はいはい、それぐらいにしておけ。とりあえず、今は息子は病人なんだからな。 「何言ってんの。こういう時でもなきゃ、あたしたちの言うことになんか 耳傾けないでしょ、こいつは」 そういう人の話を聞かないところもお前ゆずりじゃないのか、ハルヒ。 そんな実にしょうもないやりとりを繰り返していると、先程の朝比奈さん似の 看護婦さんが入って来て医者が呼んでいるという。 「あんた、今日はおとなしく寝てるのよ。抜け出したりしたら死刑だからね」 ハルヒは、そう息子に捨て台詞を吐くと、俺と肩を並べて、医者が待っている 面接室に向かった。面接室に入ると、俺たちより一回りくらい年上らしい 女医がテーブルの向こうに座っていて、「どうぞ」と手前の椅子を勧められた。 「息子の病態はどうなっておりますでしょうか?」 さっきとは別人の様な話し方だな。場に応じて話し方を変幻自在に変えられる ところも変わってないな、ハルヒ。女医はしばらく返答に窮しているようだったが それからこう切り出した。 「お二人とも、社会的にそれなりの地位をお持ちの方の様ですし、 もって回った説明をしてもすぐばれてしまいそうですから、端的に申し上げます」 なんだ、そんな前置きをされるとかえって緊張するぞ。 「御子息の余命は1ヶ月です」 世界が静止したかと思われた。さすがのハルヒも呆然としている。 お前がそんな顔をしているのを見るのも滅多にない。 いやいや、そんなツッコミをしている状況じゃないな。 「どういうことでしょうか?」 「御子息のかかっておられる病気は100万人に一人しかかからない 極めてまれな病気です。つい3年前まで病気そのものが知られていませんでした」 「どんな病気なんでしょうか?」 「原因、治療法、その他全く不明です。この病気はほとんどの場合、 非常に健康な思春期の男性にのみ発症します。これを御覧になってください。 これは御子息の体内から抽出した組織のマイクロアレイ検査の結果です。 この遺伝子発現プロファイルを健常人と比較すると、こことここに 異常な発現が見られますね?この遺伝子発現プロファイルはこの疾患 にかかった患者にだけ見られるものです」 専門用語はよくわからない。長門なみに説明がへたくそな先生だな。 「このあと、息子はどうなるのでしょうか?」 ハルヒが尋ねる。説明が下手な先生は答えた。 「特にどうということはありません。このあと、大した症状は ありません。ただ、ほぼ一ヶ月後に御子息の生命活動は 停止すると思われます」 「どんな風にですか?」 「痛みも苦しみもありません。今回と同じ様に意識を失われて そのまま亡くなられるでしょう。この疾患では最初の昏倒までは 特にこれといった症状は表れません。マイクロアレイを使わない限り、 この疾患の患者であることは診断することさえ不可能です。 ただ、ほぼ一ヶ月後に亡くなられるのはほぼ確実です」 「手の施しようもないと?」 「はい、残念ながら。それと御子息には告知されないことをお勧めします」 「なぜですか?」 「先程申し上げたように、この疾患には特に苦痛を伴う 症状はありません。治療も不可能です。お若い患者の場合、 特に人生を清算されると言う様な必要もないでしょうし、 告知されても無駄な苦しみを与えるだけではないかと思います。 受験生などの場合には、また別の対応が必要と思われますが、 御子息の場合は高校1年生ですし、現在は高校生活をエンジョイされておられる と思います。告知した場合、これから亡くなられるまでの1ケ月間は 地獄の苦しみを味あわれると思います」 ハルヒは何も答えなかった。 「息子と会っても構いませんか」 「現在は何も症状が無いようですから、帰宅されても構いません」 「解りました」 俺たちはいっしょに面接室をでると病室に向かった。 ハルヒが何を考えているか、俺には解らない。 「どうする気だ」 「話す」 「なぜだ?さっきの医者も言ったじゃないか?苦しませるだけだと...」 ふいにハルヒは向き直ると、昔、よくやったように俺のネクタイをつかんで 捻り上げた。 「あんたはそうやってまた同じ間違いを繰り返すつもり?」 「何の話しだ?」 「あんた達はあたしの力が消えるまで、あたしの力のことを あたしから隠し通した。それを聞いたとき、どんな気持ちだったか解る? 仲間だと思ってたSOS団の中で私だけ蚊帳の外だったのよ。 いま、このことを隠し通したら、同じことをあの子にすることになるわ。 まわりの誰もがあの子が死ぬことを知っている。あの子だけが知らない。 そんなのひどすぎるでしょ」 「ハルヒ、今度は違うよ。あの子が本当のことを知ることはありえないんだ。 あの子は一ヶ月後には...その、死んでしまうんだ。あとでおまえみたいな思いをする 心配は金輪際...」 「だめよ。黙っていたらあの子を裏切ることになるわ。あんたにはわからないのよ。 あの時、あたしがどれだけショックだったか」 「ハルヒ、それは俺への腹いせか?息子を巻き込むのはやめろ」 「嫌よ」 「なんでおまえはそういつもいつもわからないんだ」 気づくと俺はハルヒの横っ面をはっていた。ハルヒは愕然としている。 それはそうだろう。俺はハルヒに手をあげたことなんか一度もない。 「一生に一回くらい、俺の言うことを聞いてみろよ」 「キョン」 こいつはまだ俺のことをこう呼んでいるんだ、信じられるか? 「あたしはあんたのいうことに筋がとおっていると思っているときはきいてきたわ。 ううん、たぶん、他人のいうことを聞いたのはきっとあんたの言ったことだけよ。 でも、今回は好きにさせてもらうわ」 病室に戻ると、息子は既に制服に着替えてベッドに腰かけて俺たちを待っていた。 帰っていいと言われたんだろう。 「あんたはここにいて。入って来ちゃダメよ」 そういうとハルヒは一人で病室に入った。何か会話している。 俺は中から叫び声や泣き声が聞こえて来るのを待った。そうなったら、 ハルヒがなんと言おうと中に入るつもりだった。が、そんなことは一切無く、 ドアがあくと真っ青な顔をした息子と笑顔のハルヒがでてきた。 「何、ぼさっとつったってるのよ。帰るわよ」 帰りの車の中で俺は息子に言った。 「明日、USJ、止めてもいいんだぞ」 「父さんは?」 「お前が行かないならやめるよ」 「でも一回もすっぽかしたことないんだろ?今まで」 「それはそうだが」 「行くよ。有希姉にもさよならを言わなきゃ」 生理的な年齢が長門に近づいた今でも、息子は長門のことを「お姉ちゃん」 と思っているようだった。それにしても、泣きもわめきもしないのか、お前は。 驚いたな。 家に戻ると、息子は早々に部屋に引っ込んだ。俺たちもぐったりとして早めに 就寝した。夜中目覚めると、ハルヒのベッドが空だった。 キッチンに降りて行くと、ハルヒがこっちに背をむけて座っていた。 声をかけようと思って気づいた。ハルヒは泣いていた。俺はそのまま寝室に 戻った。自分が泣いているところなんてハルヒはきっと見られたくなかっただろうからな。 次の日、何も無かったように俺たちは朝起き、開園と同時にUSJに入園した。 長門をみつけると息子は 「二人だけにして」 というと一人で長門の方に向かって歩いていった。何か話した後、 今ではすっかり自分より背が低くなってしまった長門の前にひざまづくと、 いきなり抱きついた。そうか、お前は俺たちの前じゃあ泣きたくなかったんだな。 つまらんところがハルヒに似たんだ。そうやってどれくらい時間が過ぎたろうか。 ハルヒの方を見ると顔面蒼白だった。自分には泣き顔を見せない息子が 長門の前では泣いているのを見てきっと複雑な気分なんだろう。 ふと気づくと、長門がそばに来ていた。 「話がある」 ハルヒは息子に向かって駆けていってしまった。 長門はこう切り出した。 「彼に言って。望めば、あと30年生きられると」 「何?」 「私と一緒に生きれば、年1日ずつ、あと30年生きられる」 「ダメよ!」 いつのまにかハルヒが戻って来ていた。 「あの子は渡さないわ」 ハルヒ、おまえ何言ってるんだ? 「キョンの代わりにあの子を連れて行くつもりなんでしょう?」 そう、息子は高校生時代の俺にそっくりに成長していた。 性格はハルヒに似ていたけどな。 「あなたの言っていることは非論理的。私と来なければあなたの 息子はあと30日で死ぬ。失うものは何もない」 「ダメだったら!」 ハルヒ、お前の自由にはならないぞ、あの子に決めさせるんだ。 「何の話?」 いつの間にか、息子も戻って来ていた。 長門は息子に説明しはじめた。自分とくれば、時空間を凍結して1年に一回だけ 目覚める生活をすることであと30年生きられると。 「長門姉といっしょに?」 「そう」 「やめなさい。いっちゃだめ」 ハルヒは必死だった。息子との最後の掛け替えの無い1ヶ月を 取り上げられようとしているのだ。かつて、長門は一年に一日しか生きられないために 俺を諦めなくてはいけなかった。今、ハルヒと長門の立場は逆転したのだ。 長門が一年に一日しか生きられないがために、今度はハルヒが息子を諦めなくては ならない破目になっていたのだ。 「いくよ」 息子は大して迷いもせずに言った。 「そう」 「やめて」 「ハルヒ、あきらめろよ。これは運命だったんだ」 ハルヒにはこれが合理的な帰結だと解っていたが、受け入れ難かったのだろう。 息子は言った。 「今日は、もう帰って。来年会おう」 帰りの電車の中でハルヒは言った。 「罰があたったんだわ」 「何の話だ」 「あんたはあたしがUSJで披露宴をやったのはあたしが有希のことを思いやったからだと おもってるでしょう」 「違うのか?長門はうれしそうだったぞ」 「あんたはお人好しだから。本当は有希にあんたがとられるんじゃないかと 不安だったのよ。だから、つきあう許可を得てから次のイブまでに結婚したかったのよ。 抜け駆けしたんだわ私。で、いま、罰があたってる」 「考えすぎだぞ」 ハルヒは答えなかった。 第六章
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はじめに とにかく一つの問いに対して一つは図(グラフ,回路図,概要図など)挿入するということ. 文章については口頭試問で答えられるように自分なりに理解をするということ.頭のなかで構造だとか動きをイメージ出来るくらいになると良いということ. また,文章に含まれる単語については自分が説明できる単語のみを用いるということ. 1.同期電動機の動作原理について説明せよ. これはここで記述しなくてもインターネットにもっとよいページがあるので省略するということ. 2.同期電動機の特徴を述べよ. これはここで記述しなくてもインターネットにもっとよいページがあるので省略するということ. 3.同期電動機の始動方法についてまとめよ. 自己始動法の図はこのような概要図を描いて電機子巻線を示す矢印でも書いておけばいいということ. 図の出典:energychord 同期電動機の回転原理 図3 energychord 同期電動機の回転原理 またこのホームページはわかりやすくまとめられているため参考にするということ. また,この同期電動機の自己始動法は誘導電動機の全電圧始動と同じということ.いいかい 誘導電動機の全電圧始動や回転原理についてはこの動画がわかりやすいということ.いいかい 始動用電動機を用いる方法の図については こんな感じで同期電動機の軸を直流モーターが回すことのできる雰囲気になっていればいいということ.いいかい imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (3-4SM.png) 4.V曲線から力率を調整する方法について考察せよ.一定の力率に保つ場合を具体例にして答えよ. 5.V曲線がV字特性をもつ理由について,ベクトル線図から考察せよ. 説明が4番と5番とでは被っているところがあるので同時に説明します. 出典:松井信行(1989)『電気機器 (基礎からの電気・電子工学) 』森北出版 P98から まず『電気機器 (基礎からの電気・電子工学) 』の90P 式(4-20)からEa=(MmaxIdcΩm)/√2(ここでIdcは界磁電流のことを指す)よりEaには界磁電流Ifの影響があることがわかる. また,この1/√2は実効値にするための数字である.1/√2の導出はこちら電気の資格とお勉強 正弦波交流波形の実効値はなぜ最大値÷√2か? cosθ=1のときθ=0なので点Pと点Aが重なった時は力率=1である. 点PをYからXに動かしていくと図はこんな感じになります imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (3-4Vector2.PNG) ここで1をグラフにしてみます. 線分PQはめっちゃ短い→Ifはめっちゃ小さい 線分OPはめっちゃ長い→Iaはめっちゃ大きめ こんな感じでIfとIaから大体でIa-Ifグラフに点を打ってみると こんな感じになりますよね 同じような感じで全部に点を打ってみると・・・ 綺麗にV字曲線になりますね これが 5.V曲線がV字特性をもつ理由について,ベクトル線図から考察せよ.の説明になります 力率がいいのはさっき説明したとおりにθ=0のとき つまり点Pと点Aが重なった時なのでさっきのベクトル図の5番の図になりますね このときはIaが最小にいます. つまり 力率を1に保つにはIaが最小になるようにIfを調整するということ.いいかい ということ.いいかい コメント これで再来週の口頭試問は完璧です!!ありがとうございます!!本当に助かります!! -- 名無しさん (2015-01-06 21 46 33) 名前 コメント
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ヴィルヌーヴ千愛梨 0225番 基本情報基本情報 活動の記録スタートダッシュイベント期間 予選イベント期間 本選イベント期間 名言集 ファンのブログやnote、togetterまとめなど 基本情報 基本情報 SHOWROOM リンク:https //www.showroom-live.com/mss_0225 Twitterアカウント: Twitterハッシュタグ: 愛称: 活動の記録 スタートダッシュイベント期間 配信の思い出 Twitterの思い出 予選イベント期間 配信の思い出 Twitterの思い出 本選イベント期間 配信の思い出 Twitterの思い出 名言集 ファンのブログやnote、togetterまとめなど
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詩百篇第1巻 25番* 原文 Perdu1, trouué2, caché de si long siecle Sera pasteur3 demi dieu4 honoré5, Ains que la6 lune7 acheue8 son grand cycle9 Par autres10 veux11 sera deshonoré12. 異文 (1) Perdu Pendu 1611B 1981EB (2) trouué trouuee 1612Me, treuué 1627Di 1627Ma 1644Hu (3) pasteur pasteurs 1588-89 1612Me, Pasteur 1644Hu 1653AB 1665Ba 1667Wi 1672Ga 1772Ri (4) demy dieu 1555 1589PV 1840 demy-Dieu 1597Br 1627Di 1627Ma 1644Hu 1653AB 1667Wi 1672Ga 1716PR(a c), demy Dieu T.A.Eds. (5) honoré honore 1607PR (6) que la quel a 1628dR (7) lune 1555 1588-89 1612Me 1716PRb 1840 1981EB Lune T.A.Eds. (8) acheue acheué 1588Rf (9) cycle 1555 1589PV 1590SJ 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1840 siecle T.A.Eds.(sauf Siecle 1672Ga) (10) autres autre 1612Me (11) veux 1555 1588-89 1612Me 1840 veutx 1557U, veutz 1557B, ventz 1568X 1568A 1590Ro, vents 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1628dR 1649Xa 1667Wi 1672Ga 1716PR 1772Ri 1981EB, vieux 1589PV 1590SJ 1649Ca 1650Le 1668, veus 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba (12) deshonoré deshonore 1557B (注記)1555Aの2行目 honoré は現在流布している影印版ではアクサンが見えないが、復刻印刷にあたり、ノイズをクリーニングした際に一緒に消えてしまったのだろう。Lemesurier [2003b] も honore と転記しているが、Brind Amour [1996] はそもそも異文として認識していない。実際、オリジナルのフォトコピーで確認する限り、ごくうっすらとだがアクサンは見える。 校訂 4行目 veux は様々な異文があるが veux のままでよいだろう。これは現代フランス語の voeux に対応する(*1)。エヴリット・ブライラー、ピエール・ブランダムール、ピーター・ラメジャラー、ジャン=ポール・クレベール、ブリューノ・プテ=ジラール、リチャード・シーバースらはいずれもそちらを採用している。 日本語訳 失われ、見つけられ、非常に長い間隠されてきた 牧者は半ば神と称えられるだろう。 月がその大いなる周期を完成する前に、 別の祈りによって名誉を傷つけられるだろう。 訳について 2行目 pasteur は一般名詞で「牧者、羊飼い」の意味。 Pasteur は上の「異文」欄から明らかなように、17世紀以降の一部の版に見られる表記だが、正統性を欠いている。 後述するように細菌学者ルイ・パストゥール(パスツール)の登場によって、信奉者側の文献ではそのまま固有名詞のように扱われる事例は少なくないが、いささか恣意的な表記といえるだろう。 4行目前半はどんな異文を採用するかによって訳が変わる。 初版通り veux なら「別の祈りによって」、1568などのように vents とするなら「別の風によって」、1589PVなどのように vieux とするなら「別の老人たちによって」、1627などのように veus とするなら「別の見方によれば」となる。 エヴリット・ブライラーは、初版の時点で「別の祈りによって」と「別の見方によれば」が掛け合わされていたと推測している。 既存の訳についてコメントしておく。ただし、pasteur を「パストゥール」(パスツール)と固有名詞然として訳すことの当否は上で論じたので省く。 大乗訳について。 1行目 「なくし また見つかり いつまでも隠れている」(*2)は誤訳。大乗訳の底本となったロバーツ本は綴り字記号が全て省かれているという悪条件はあるにせよ、本来の原文は caché で「隠される」の意味 (cache を採るとしても「隠す」であって、「隠れる」なら se cache となるべき)。 3行目「かくして月は かの偉大な世紀を終え」は誤訳。 「世紀」は採用されている底本の違いにしても、Ainsは接続詞としては逆接なのだから、「かくして」はおかしい。この点、元になったはずのロバーツの英訳では But と逆接で訳されていたのだが、日本語版ではこれを順接の Ainsi と読み替えてしまったのだろう。 なお、Ains que は avant que と同じなので(*3)、この場合は「~の前に」と訳すのが妥当である。 4行目「他の風説は 不名誉を得るだろう」は誤訳。 vents となっている底本を採用したことを差し引いても2点おかしい。まず、vent(s) は「風」の意味はあるが、「風説」の意味はない。また、直前に Par (~によって)があるのだから、これを主語にとることはできない。4行目の主語は2行目の「牧者」である(3行目の「月」は活用語尾から主語と見るには不自然で、文脈としても考えがたい)。 山根訳について。 1行目 「何世紀も埋もれていた 失われし物が発見される」(*4)は、語順を入れ替えて意訳すれば成立する。 この詩については五島勉も大ベストセラー『ノストラダムスの大予言』で紹介していたので、その訳についても検討しておく。 1行目「失われ、長いあいだかくされ、ふたたび見いだされる」(*5)は、山根訳と同じく、語順を入れ替えて理解すれば成立する。 3行目「そのように長かった月の時代は終わり」は大乗訳と同じく、Ains を Ainsi と混同する誤訳。 4行目「彼以外の古い頭の連中は名誉を失うだろう」も誤訳。大乗訳同様、Par を無視している。また、「彼以外の古い頭の連中」は autres vieux (別の老人たち)を採用して訳したにしても、言葉を補いすぎではないだろうか。 信奉者側の見解 19世紀半ばまでにこの詩に触れたのは2人だけで、いずれも宗教的に捉えていた。 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、ある有名な牧師(a famous Churchman)の予言としていた(*6)。 アナトール・ル・ペルチエ(1867年)は、未来の大君主(偉大なケルト人)が現れる頃に教皇(「牧者」)が神のように崇められるが、反キリスト(「別の風」)出現で苦難に遭うといった意味に理解していた(*7)。 しかし、細菌学者ルイ・パストゥール(パスツール)(Louis Pasteur, 1822年 - 1895年)がその名声を高めると、20世紀以降には彼の予言とする解釈が少なからず見られるようになる。 ヘンリー・C・ロバーツ(1947年)は、2行目に Pasteur とあることから、細菌学者パストゥールの業績が高くされる一方、それ以前の学説と衝突する予言と解釈した。 似たような解釈は、エリカ・チータム、ジョン・ホーグ、ネッド・ハリーも展開している(*8)。 五島勉は、ゲーテがこの詩にパスツールのことが書かれていることを知って驚嘆したという、「ゲーテのパスツール・ショック」というエピソードも紹介している(*9)。 死海文書の発見ではないかという志水一夫の指摘を批判した際に、加治木義博は「そのパスツールを有名なパスツールのこととしてなぜ悪いのか?」と述べている(*10)。 【画像】パストゥール『自然発生説の検討』岩波文庫 他方、ル・ペルチエと類似の視点も残っており、マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)(1938年)は、近未来の偉大なローマ教皇の出現に関する予言としていた(*11)。 ロルフ・ボズウェル(1943年)も近未来の教皇としたが、彼は聖マラキの予言の109番「月の半分」と関連付けて、その教皇のことではないかと解釈した(実際に「月の半分」の順番に当たった教皇はヨハネ・パウロ1世)(*12)。 セルジュ・ユタン(1978年)は星位に関する記述が含まれているとして、描写されているのはイタリアのムッソリーニではないかとした。 しかし、ボードワン・ボンセルジャンの補訂(2002年)では、今までの、あるいは未来のイスラーム指導者ではないかとする解釈に差し替えられている。 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは1980年のベストセラーでは一言も触れなかったが、晩年の著書ではごく近い未来(2010年代のうち)に実現するフランス王政復古の予言と解釈した(*13)。 内藤正俊(未作成)(1986年)は、ここでの牧者をキリストのこととし、月は義の太陽(キリスト)の反対であるサタンと解釈している。その上で、4行目の「名誉を失う」の主語を3行目の「月」として、キリストがあがめられる一方、サタンが名誉を失うという意味に理解している(*14)。 志水一夫(1991年)は過去に自分が考えた解釈例として、牧童によって発見された死海文書についての予言とする解釈を挙げていた(*15)。 志水はその時点では、そのような解釈例は他に見当たらないようだとしていたが、のちにプフェッテンバッハの陰謀論的な死海文書関連書(1997年)の中で、この解釈が展開された(もっとも、その解釈は「風説」を主語に置くなど、大乗訳の不適切な要素に立脚した解説を含んでいる。訳編者の並木伸一郎は原書にかなり手を加えていることを後書きで認めているので、この部分は日本語版で付け足されたものだろう)(*16)。 そして、和田幹男によるまともな死海文書の概説書『死海文書 聖書誕生の謎』でも、サブカルチャーによる受容の例として、この詩と死海文書を結びつける解釈が紹介されている(*17)。 【画像】和田幹男『死海文書 聖書誕生の謎』 懐疑的な視点 ゲーテのパスツール・ショックについて、五島はスチュワート・ロッブらが紹介していると述べた。 だが、ロッブの著書に見当たらないのはもちろん、他の海外の論者の文献にも見当たらない。 同時代的な視点 Pasteur と固有名詞であるかのように綴られているのは、17世紀以降の一部の版である。 ジョン・ホーグはポール・アルボー博物館所蔵の1568年版から転記したと称する原文で Pasteur としているが、実物がネット上で容易に確認できるため、単なる改竄にすぎないことが明らかになっている。 チータムも同様のことをしているが、彼女の場合、底本の所蔵先を明示していないので、検証不可能。 そもそも、pasteur(牧者)は、le bon Pasteur(よき牧者)とすればイエスを指す慣用句となるし、プロテスタントでは「牧師」の意味である。 pasteur が大文字であれ小文字であれ、原文に医学をにおわせる言葉がないことからしても、宗教的なモチーフの詩と捉えられるべきだろう。 3行目の「月の周期」はアブラハム・イブン・エズラ(未作成)(アヴェネズラ)が提示し、リシャール・ルーサなどが引き継いでいた7つの天体(太陽・月と5つの惑星)が世界を支配する354年4ヶ月(未作成)の周期のことである。この場合の月の周期は1533年に始まり、1887年に終わる。 とはいえ、実証的な視点でも何が描写されているのかについては、一致していない。 ピエール・ブランダムールは、イエス・キリストの信仰が褒め称えられるが、1887年より前に別の信仰によって名誉を失うといった内容の注記をしているが(*18)、かなり漠然としたものである。高田勇と伊藤進の注記もこれに近い(*19)。 ロジェ・プレヴォは、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼に関連付けている。聖ヤコブの墓とされるものは、羊飼いによって9世紀に発見され、巡礼地として賑わうようになったが、イスラーム勢力によってイベリア半島が征服されると中断された(1、2行目)。 1887年までに、サンティアゴ・デ・コンポステーラが新しい辱めを受けることになるという見通しが、後半2行に描写されているという(*20)。 ピーター・ラメジャラーはプレヴォの見解などを踏まえつつも、『ミラビリス・リベル』などに描かれた、未来のキリスト教会への迫害が投影されている可能性を示している(*21)。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 コメントらん 以下に投稿されたコメントは書き込んだ方々の個人的見解であり、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。 なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 最初の2行はイエスのことだが、後半は「反キリスト」を表したニーチェwo -- とある信奉者 (2010-09-18 22 19 12) (途中で送ってしまった。):批判者の代表がドイツ哲学者のニーチェ。名誉を傷つけられたのは同年代の1870年に無謬性を唱えたローマ教皇。 -- とある信奉者 (2010-09-18 22 38 24)
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百詩篇第6巻 25番 原文 Par Mars1 contraire sera la monarchie2, Du grand pescheur3 en trouble4 ruyneux Ieune noir5, rouge prendra la hierarchie6, Les proditeurs7 iront iour bruyneux. 異文 (1) Mars mars 1589Rg (2) monarchie Monarchie 1588-89 1620PD 1644 1649Ca 1650Le 1653 1665 1668 1672 1772Ri 1840 (3) pescheur pecheur 1588-89 1589PV 1620PD 1627 1630Ma 1644 1650Ri 1653 1665 1840, Pescheur 1672 1772Ri (4) trouble troble 1668 (5) noir no r 1653, uoir 1665 (6) hierarchie hirarchie 1600 1867LP, Hierarchie 1588-89 1620PD 1644 1653 1665 1672 1840 (7) proditeurs produiteurs 1605 1649Xa 1840 日本語訳 逆さまのマルスにより、偉大な漁師の君主政体は、 破滅的な困難に陥るだろう。 若くて黒い赤き者はヒエラルキアを掌握するだろう。 裏切り者たちは霧雨の日に決行するだろう。 訳について 1行目「逆さまのマルスにより」は直訳。ジャン=ポール・クレベールは占星術に引き付けて理解している。他方で、ピーター・ラメジャラーは戦争の隠喩と見て「敵意に満ちた戦争を通じて」(Through a hostile war)(*1) と意訳している。リチャード・シーバースは「マルスをかわしつつ」(Fending off Mars)(*2)と訳している。エドガー・レオニは星位と隠喩の双方の可能性を挙げていた。 2行目前半は「偉大な漁師の」で、1行目の「君主政体」を形容している。他方、1行目の sera に繋がるのは2行目の後半であり、原文の行ごとに厳密に対応させようとすると分かりづらくなるため、訳文では「偉大な漁師の」は1行目に回した。 4行目 iront は「行くだろう」が最も一般的な訳語。ただし、ラメジャラーは act と英訳し、シーバースは名詞的に deeds を使っている。また、クレベールの釈義では opéreront が使われている。こうしたことを踏まえ、「決行する」と訳した。 既存の訳についてコメントしておく。 大乗訳について。 1行目 「火星によって君主は逆転し」(*3)は、contraire が sera に対応していると見なせば可能な訳だが、前半律(最初の4音節)の区切りは contraire までなので、単語の区切り方が不自然であるように思われる。上で紹介した様に、実証主義的論者は大乗訳のような区切り方をしていない。 2行目「漁夫に破滅的苦難をもたらし」は、grand が訳に反映されておらず、やや不適切である。「漁夫に」とすること自体は、du に「~への」という意味もあるので、一応可能な訳といえるが、実証主義的論者には、1行目と分けた上で du を「~への」と解する読みは見当たらない。レオニ、ラメジャラー、シーバースは1行目からの連続で ... monarchy of the... と読んでいる。 3行目「若いながら黒と赤は自分の位を所有し」は間違いではないが、「黒と赤」が同一の存在であると伝わりづらいのではないだろうか。 山根訳について。 1・2行目 「敵対する火星に災いされた君主国/大いなる漁夫の国 滅亡の騒乱に遭遇しよう」(*4)は、行ごとに対応させるための苦肉の策だろうが、「君主国」と「大いなる漁夫の国」が同じ国を指すことが伝わりづらいのではないだろうか。 3行目「赤色の若き王が政権を引き継ぐだろう」は、不適切。山根訳の元になったエリカ・チータムの英訳ではしばしば noir (黒)が roi (王)のアナグラムとされる。ここではそうした解釈が持ち込まれているため、原文にない「王」が登場している。また、ヒエラルキアを「政権」と訳すことの妥当性も疑問である。 信奉者側の見解 匿名の解釈書『1555年に出版されたミシェル・ノストラダムス師の百詩篇集に関する小論あるいは注釈』(1620年)は「偉大な漁師」を暗殺者の隠喩と解釈しつつ、ピエール・バリエールやジャン・シャテルが1590年代に相次いで試みたアンリ4世暗殺未遂事件と解釈した (*5)。 「偉大な漁師」を暗殺者としているのは pescheur (現代語の pêcheur, 漁師)を pécheur (罪びと)と理解し、「偉大な漁師」ではなく「大罪人」と読んだためだろうと思われる。 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、「偉大な漁師」はローマ教皇の隠喩、「赤」は服の色で枢機卿の隠喩などとし、未来のローマ教皇が直面する困難について述べた詩と解釈した(*6)。 アナトール・ル・ペルチエ(1867年)は数少ない未来予測の詩篇の一つとしてこれを採り上げ、ローマ教皇の世俗権が脅かされ、煽動的な若い王(noir を roi とアナグラムしている)が政権を掌握するといった釈義を展開した(*7)。 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)(1938年)は非常に曖昧な釈義しか示していなかった(「君主政体」や「若くて黒い赤の者」が何を指すか明示していない)ので、近未来の情勢と理解していたらしいという程度にしか分からない。(*8)。 アンドレ・ラモン(1943年)は偽教皇がローマ教皇庁を掌握することと解釈した(*9)。 ジェイムズ・レイヴァー(1952年)は、19世紀のイタリア統一運動と解釈した(*10)。3行目の若い王(レイヴァーも noir を roi とアナグラムしている)を統一イタリア王国の初代国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世と解釈し、苦難に瀕していた教皇領が彼のもとで統一イタリアに併呑されたことの予言としたのである。 エリカ・チータム(1973年)はこの解釈を踏襲した(*11)。 スチュワート・ロッブ(1961年)はナポレオンによるブリュメール18日のクーデター(1799年)と解釈した(*12)。ロッブも noir を roi とアナグラムしており、「霧の日」は革命暦のブリュメール(霧月)に対応するとした。同じ年にはローマから退去を命じられていた教皇ピウス6世がヴァランスで客死していた ヘンリー・C・ロバーツ(1949年)はガランシエールに近い漠然とした解釈だったのだが(*13)、後の改訂版ではロッブと同じくブリュメール18日のクーデターと解釈した。ロッブとは違い、noir を roi ではなく、roi-N とし、「王者ナポレオン」を導いている(*14)。 ヴライク・イオネスク(1976年)は他の詩篇の解釈の際にこの詩の4行目に言及し、ブリュメール18日が暗示されているとした(*15)。 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ(1980年)は1行目をフランス革命による王権の没落と解釈したが、他の部分はブリュメール18日のクーデターやピウス6世の客死と結びつけた(*16)。 ジョン・ホーグ(1997年)、ネッド・ハリー(1999年)もこうした解釈を踏襲したが、ハリーはブリュメール18日のクーデターの結果、ピウス6世が投獄されたと意味不明なことを書いている(*17)。ブリュメール18日は現行暦1799年11月9日、ピウス6世の客死は1799年8月29日であり、ピウスはブリュメールのクーデターを見る前に歿している。 同時代的な視点 1行目「逆さまのマルス」は占星術的なものなら火星の逆行(地球からの見た目が逆戻りしているように見える時期)か、火星が凶の影響をもたらす星としてその人物に悪い形で作用することを言ったものではないかと思われる。反面、ピーター・ラメジャラーのように、その人物にとって悪いほうに作用する戦争の隠喩などの可能性もある。 「偉大な漁師」が使徒ペトロ(ペテロ)を指すのは疑いないだろう。ペトロは漁師であったし、『ルカによる福音書』にはペトロ(シモン・ペトロ)に対するイエスの言葉としてこうある。 すると、イエスはシモンに言われた。「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる。」(5章10節抜粋、新共同訳) その象徴として、ローマ教皇は遅くとも13世紀以来、「漁師の指輪」と呼ばれる印章用指輪を受け継いでいる(*18)。 3行目の「赤き者」は枢機卿を指すのだろう。枢機卿は赤色(緋色)をシンボルカラーとしており、その長衣、帽子、法冠などはいずれも赤である(*19)。「黒い」について、ピエール・ブランダムールは他の詩に出てくる「黒」とともに、外見的な黒さ(黒髪、黒ひげ、黒い肌、黒衣など)に関連している可能性を示している(*20)。 こうした単語の意味からすれば、教皇庁に関する困難や内紛などが描写されているようにも見えるが、詳しいモデルの特定には至っていないようである。 ピーター・ラメジャラーは2003年の時点では『ミラビリス・リベル』に描かれたイスラーム勢力の侵攻と、それによる教皇庁の苦難がモデルになっていると見なしていたが、2010年には撤回し、「出典未特定」とだけ書いた(*21)。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
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【日時】 3月18日(日) 13時~ 【待ち合わせ場所・開催場所】 大阪城公園駅・太陽の広場 【持ち物】 野球道具・防寒具・己ノ信ズルバットヲ持参サレタシ 【参加者(敬称略)】 丼川 しゅう 25番という男 リック 武田 ガリー 森谷 吹田 いりき (野球のお兄ちゃん4名) 練習メニュー キャッチボール 一箇所ノック (球場救済) ボール回し シートノック (怒りの撤退) シート打撃 紅白戦 気象庁(怒)
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詩百篇第10巻 25番* 原文 Par Nebro ouurir1 de Brisanne2 passage, Bien eslongnez3 el tago fara4 muestra5, Dans Pelligouxe6 sera commis l outrage7 De la grand dame8 assise sur l orchestra9. 異文 (1) ouurir ouurit 1716PRc (2) Brisanne Bisance 1590Ro, Bisanne 1606PR 1607PR 1610Po 1667Wi 1716PR, Nebro le 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To (3) eslongnez 1568A 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1603Mo 1772Ri esloignez T.A.Eds. (sauf eslongnes 1568X, eslonignez 1590Ro, eslognez 1627Di 1627Ma) (4) fara rara 1611B, fe a 1627Di, fera 1605sn 1627Ma 1644Hu 1649Xa 1716PR, arra 1650Mo (5) muestra mœstra 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1716PR 1720To 1840 (6) Pelligouxe Pelligoux 1611B 1981EB, Perigueux 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1720To 1840 (7) l outrage l otraige 1568X 1590Ro, outrage 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To 1840 (8) la grand dame la dame 1653AB, la Dame 1665Ba 1720To, la grand Dame 1672Ga 1772Ri 1840 (9) l orchestra lorchestra 1568X 1590Ro, l horchestra 1653AB 1665Ba 1720To, l Orchestra 1672Ga 校訂 1行目、3行目の固有名詞についてはいくつかの誤りが含まれている可能性があるが、諸説あり、確定しているとはいいがたい。3行目 Pelligouxe は Perigueux と同一視されることが多いが、誤りなのか、意図的な綴り替えなのかは不明である。 日本語訳 ネブロによってブリザンヌへの道が開く。 ずいぶん離れた場所でタホ川が手本を示すだろう。 ペリグーズでは陵辱されるだろう、 劇場の貴賓席に座る貴婦人が。 訳について 1・3行目の固有名詞は、とりあえず初出のものをそのまま音写した。その解釈については、「同時代的な視点」の節で述べる。 2行目の後半律は珍しくスペイン語の短文である。el Tago は現代式には el Tajo でタホ川 (当「大事典」ではポルトガル名のテージョ川で基本的に統一しているが、スペイン語つづりであることからこの詩の訳では「タホ川」とする)を指すことに異論はない。問題は残りで、エドガー・レオニは「証明する」(make a demonstration)、ピーター・ラメジャラーは「(テージョ川の)灯台が照らす」(shall the Tagus lighthouse show)、リチャード・シーバースは「誇示する」(make a show)、ジャン=ポール・クレベールは「氾濫する」(débordera) でめいめい異なっている(*1)。 彼らは詳しい語注を施していないが、少なくとも手許のスペイン語辞典に fara はない。faro ならば「灯台」の意味である。動詞としては fardar (自慢する、誇示する)の直説法三人称未来形 fardara の語中音消失と解釈できるかもしれない。 他方、muestra は動詞としては mostrar (見せる、表す)の三人称単数現在形、名詞ならば「手本、証明」などの意味である。 以上を踏まえると、レオニ、ラメジャラー、シーバースの訳は何となく根拠が推察できるが、クレベールの訳はよく分からない。この点、スペイン語に詳しい方のご助言をいただければ幸いである。 以上のように、スペイン語と解釈するのが一般的だが、プロヴァンス語と解釈したのがマリニー・ローズである。彼女は fara はプロヴァンス語動詞 far の活用形で、フランス語の fera (英語の will do ないし will make) だとし、muestra はプロヴァンス語の mouestre (怪物) から来たと解釈した(*2)。これを踏まえれば、「テージョ川が怪物を生み出すだろう」 という意味になる。 4行目 l orchestra はフランス語では l orchestre と綴る。orchestra は韻を整えるために語源のラテン語を持ち出したものかもしれない。ラテン語の orchestra は「劇場の元老院議員席」「元老院」「楽隊・合唱隊席」などの意味である(*3)。フランス語の orchestre について DFE には「劇場で舞台と一般席の間にある元老院席あるいは貴賓席。また、舞台そのもの」とある。 既存の訳についてコメントしておく。 大乗訳について。 2行目 「道はとじ その時をしるす」(*4)は根拠がまったく不明である。なお、元になったはずのヘンリー・C・ロバーツの英訳では、後半がまったく訳されていない。これをスペイン語以外で訳出しようとして、Tago (現代スペイン語の Tajo) をドイツ語 Tag (日) に結び付けるなどしたのではないだろうか。 4行目 「オーケストラにすわっている婦人に」は grand が訳に反映されていない。当「大事典」では貴族を意味すると判断し、「貴婦人」と訳出している。 山根訳について。 1行目 「エブロを通じてブリザンヌへの道がひらかれよう」(*5)は、後述するように、可能な読みの候補。 2行目 「遠くではタゴ川が脅威を示すだろう」 は、まず「タゴ川」をタホとテージョのいずれか、もしくはラテン語名の「タグス川」にすべきだろう。後半は元になったはずのエリカ・チータムの英訳でも make a demonstration が使われている。デモは確かに「示威行動」とも言うが、「脅威を示す」は訳しすぎではないだろうか。 信奉者側の見解 基本的に全訳本の類でしかコメントされてこなかった詩であり、数少ないコメントも、ほとんど取るに足らないものである。 テオフィル・ド・ガランシエールはオルケストラが劇場の貴賓席の意味であるとコメントした以外は、解釈を投げた(*6)。 ヘンリー・C・ロバーツは、さる貴婦人に関する詩で詳しくは解釈できないものの、その女性の受難という以上の意味のある予言ではないだろうとした(*7)。 エリカ・チータムは当初一言もコメントしておらず、のちには「解釈困難」とコメントしただけだった(*8)。 ジョン・ホーグはいくつかの地名の候補に説明をつけた上で、ガランシエールのコメントの引用を混ぜているが、そのほとんどは(引用部も含めて)エドガー・レオニのコメントの盗用に近い。 セルジュ・ユタンは、4行目の貴婦人をフランス革命の擬人化とした上で、革命期のサン=キュロットに関する予言とした(*9)。ただし、1行目や3行目の固有名詞については、何も解釈していない。 ジョセフ・サビノは全訳本以外で扱った例外的な論者だが、彼の場合、訳すら載せずに原文とヒントだけ示し、インカ帝国最大の財宝のありかを示す詩だから、読者自身で解読してみるとよいと主張していた(*10)。もっとも、彼が1990年代初頭にその解釈を示してかなり経つが、彼やその愛読者によってインカ最大の財宝が発見されたという話は聞こえてこない。 同時代的な視点 後述するロジェ・プレヴォを除くと、内容上のモデルの提示などを行なっている論者はほとんど見られず、地名の候補自体が多種多様である。 エドガー・レオニは内容的な解釈はほとんどしなかったが、Nebro は L Ebro の誤りでエブロ川のこと、Brisanne はベズナ (Bézenas / Pézenas)ではないかとした (Pelligouxe には触れず)(*11)。 この読み方はリチャード・シーバースも採用した。シーバースはさらに Pelligouxe はペリグー (Périgueux) ではないかと、疑問符つきで示した(*12)。 ピーター・ラメジャラーもエブロとペリグーについては一致しているが、Brisanne はブルターニュ (Bretagne) ではないかとした(*13)。 ジャン=ポール・クレベールは Nebro はデュランス川の古称ドルエンティア・ネブロドゥヌム (Druentia Nebrodunum) に由来し、Brisanne はその流域の町ブリヤンヌ (Brillanne) とギザンヌ (Guisanne) を混同したものではないかとした。 Pelligouxe については、南仏の伝説上の町としてパンパリグスト (Pampaligouste) という名称があることを指摘した(*14)。 ロジェ・プレヴォは南仏のヴァルド派弾圧がモデルと推測した。 ヴァルド派の拠点となっていた小渓谷には 「ヴァルドの城壁」 と呼ばれる地形があり、かつては湖だったという。プレヴォは tago を lago (湖) と読み替え、muestra を「痕跡」の意味に理解している。また、地名には混乱が見られるとして、Nebroはアンブランの古称 ヘブロドゥヌム (Hebrodunum)、Brisanne はブリヤーヌ (Brillane)、Pelligouxe はピエモンテ付近の渓谷プリス (Pelisse)と読み替え、いずれもヴァルド派を庇護したサンタル女男爵ブランシュ・ド・ルヴィ (Blanche de Levis, baronne de Cental) の領地に含まれており、後半の貴婦人に対応するとしている(*15)。 【画像】関連地図。細かすぎて緯度・経度を調べられなかった地名は割愛。なお、エブロ川はバルセロナの南西130 km で、タホ(テージョ)川はリスボン付近で、それぞれ海に注ぐ。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
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登録日:2011/02/02(水) 00 17 13 更新日:2021/03/11 Thu 06 10 20 所要時間:約 2 分で読めます ▽タグ一覧 というわけ どういうわけ? なめくじねこ 単語 台詞 日本語 省略 解説 説明 『というわけ(~で、~だ)』とは、漫画や映画、ドラマなどの物語で多く用いられる台詞。 この台詞だけで、これまで描かれて場面が“過去の説明”と化す便利な魔法の言葉でもある。 作者はその場の展開を…物語中に今起こっている出来事を詳しく描ける上に、そこで『というわけ』を唱えることによって、一気に次の場面に進むことが可能となる。 書き手は登場人物にわざわざ出来事の解説をさせずに済むし、読者に分かりやすく伝えられるかつ簡単に描ける。 読み手にとってもサクサク話が進むので、非常に効率が良い。 オプションとして前後に『~前』と入れることで、時間も数分どころか数時間、物語によっては数日間を一気にジャンプできるのだから、便利なことこの上無い。 勿論、使いすぎには気をつけよう。 ●使用例 じゃあ今起こってる問題はどうするんだ!?僕はもうお前たちにはうんざりだ! というわけで、僕は組織から離れて、今ここにいる…。 ぎゃー!また敗けちゃったよ!このキャラ、本当に強ぇなァ。今のオレじゃあ、とても敵わないぜ…。 というわけで、お前に必勝法を聞きに来たんだ! とまぁ、確かに漫画や小説などでは頻繁に用いられる台詞だが、あくまで二次内の省略用のものであり、三次では通用しないので注意。 当然か。 というわけで、ここの追記・修正を貴方にお願いしたいんだ。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 名前 コメント
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詩百篇第5巻 25番* 原文 Le prince1 Arabe Mars, Sol,2 Venus, Lyon, Regne d Eglise par mer3 succombera Deuers la Perse4 bien pres d vn million5, Bisance, Egipte6, ver.serp.7 inuadera. 異文 (1) prince 1557U 1557B 1568 1589PV 1590Ro 1649Ca 1650Le 1668A 1668P 1772Ri Prince T.A.Eds. (2) Sol, Sol. 1611B (3) mer Mer 1672Ga 1712Guy (4) Perse Persa 1605sn 1649Xa (5) million Million 1672Ga (6) Egipte Egipre 1589PV, Ægypte 1672Ga (7) ver. serp. ver.serp 1557B 1591BR 1606PR 1649Xa, ver,serp. 1627Di, ver serp 1665Ba 1716PR, versera, 1588-89 1612Me, Ver.Serp. 1672Ga 1712Guy (注記)ピエール・ブランダムールは、1866年頃に復刻された1611年シュヴィヨ版では4行目の serp. が sepr. となっているとしたが、実際にはその版でも serp. となっている。 校訂 4行目のver.serp.をピエール・ブランダムールは vers sept. と校訂している。ただし、ブリューノ・プテ=ジラールら後続の論者は従っていない。 日本語訳 火星、太陽、金星(が)、獅子宮(に入る)。アラブの君主(により)、 教会の統治は海から潰されるだろう。 ペルシアの辺りで、まさにほぼ百万。 ビュザンティオンとエジプト(に)、ヴェル=セルプが侵攻するだろう。 訳について 1行目は普通に読めば、「アラブの君主、火星、太陽、金星、獅子宮」という名詞の列挙にしかならない。アラブの君主を2行目と繋げ、星位を挿入的に読むのは、ピエール・ブランダムールの句読点の打ち方やピーター・ラメジャラーの英訳を参照したものである(*1)。 1行目と2行目の「アラブの君主」と「教会の支配」の関係は、ラメジャラーの英訳やジャン=ポール・クレベールの釈義に従ったが、逆に捉えることもできなくはない。 3行目 devers は「~の方へ」「~の辺りで」「~の側に」など、いくつもの意味がある。 4行目はver.serp.の意味を特定できないため、様々な可能性がある。上の読み方はラメジャラー、クレベールの構文理解を踏まえたが、ラメジャラーは「ヴェル=セルプ」を「とぐろを巻いた蛇」、クレベールは「害虫と蛇」と理解している。ほかにも ビュザンティオンとエジプトに、真の蛇(または真の柩)が侵攻するだろう。 ビュザンティオンとエジプトは、真の蛇(またはとぐろを巻いた蛇、真の柩)に侵攻するだろう。 ビュザンティオンとエジプトは、北方へと侵攻するだろう。 ビュザンティオンとエジプトは、見て、屈曲して、侵攻するだろう。 などの候補がある。 既存の訳についてコメントしておく。 大乗訳について。 4行目 「トルコ エジプト バーサープが侵入するだろう」(*2)の「トルコ」は、Bisance を都市(ビュザンティオン、イスタンブル)ではなく、ビザンティン帝国と解釈するならば、許容される意訳だろうか。 山根訳について。 3行目 「ペルシアの方 百万に達せんとする軍勢」(*3)は微妙。「軍勢」にあたる語はない。確かにそう解釈できる余地はあるが、クレベールが犠牲者の数と解釈しているように、別の解釈の余地もある。 信奉者側の見解 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、前の詩(24番)と同質の詩とした上で、(24番を自分よりも占星術に詳しい人物に任せるとしたのと同様)、そういう人物に任せるとだけ書いて、解釈を放棄した(*4)。当然、ver.serp.も一言も解説していない。 バルタザール・ギノー(1693年/1712年)は、1行目を星位と解釈したうえで、中東の国々が互いに戦い、ペルシアに100万人近い死者が出ると解釈した(*5)。ver.serp.の意味も、星位の示す時期も明記してはいなかったが、2行目を教会への迫害と解釈したことと併せ、1727年のペルシア情勢予言(第3巻77番)、1792年まで続くキリスト教会への迫害(アンリ2世への手紙)と関連付けており、18世紀の事件と位置付けていた。 エリゼ・デュ・ヴィニョワ(未作成)(1910年)は、1873年の出来事と解釈した。彼は1行目を星位ではなく、アフリカにも進出したナポレオン3世と、その妃ウジェニーと解釈し、2行目はイタリア統一運動の影響で、ローマ教皇の世俗権力が削がれたこと、3行目はペルシアで約100万人の餓死者が出たこととした。4行目の ver.serp. は vers serp. と引用し、「『蛇が岸辺に置かれる』時の辺りに」(vers le moment du «serpent sur le bord mis»)と釈義し、invadera は単に「行くだろう」(ira)とすることで、エジプトのヘディーヴ(副王)とペルシアの王が、オスマン帝国の首都イスタンブル(ビュザンティオン)に赴いたこととした(*6)。 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)(1938年)は、1999年に先立つ時期に起こると想定していた反キリスト到来に関する詩のひとつとし、アジアからヨーロッパへと約100万人がやってくる予言とした。1行目は星位ではなく、アラブの君主以外は「戦争、フランス君主政、放蕩、独裁体制の後で」と釈義し、ver.serp. は「真の蛇」と解釈した上で、「サタンの化身」(Satan en personne)と釈義した(*7)。 1999年の少し前と解釈する点はアンドレ・ラモン(1943年)だが、前半をアラブの君主が教会勢力に屈すると解釈した。1行目のほとんどを星位と見なし、(年を限定しない)7月と8月の間に起こることを示しているとした(*8)。 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌも1行目を星位でなく象徴と捉えるのは同じだが、彼はこの詩を1999年以降にトルコやエジプトへのアジアからの侵略があると解釈した(*9)。 リー・マッキャン(未作成)(1941年)は、1行目の星位を1987年8月21日と解釈した(*10)。 エリカ・チータム(1973年)は、マッキャンの算定を踏まえた(*11)。実際に期日を過ぎた最終改訂版(1989年)では、1980年代のペルシア湾岸の情勢と解釈した(*12)。 レニ・ノーバーゲン(1979年)は、マッキャンに触れていないが、1行目の星位は1987年8月2日(原文ママ)とし、その時にアラブの独裁者が中東を制圧すると解釈した(*13)。 高橋良典(未作成)(1982年)もマッキャンに触れていないが、この詩を1987年の夏に位置づけ、アラブ生まれの将来の独裁者アンリの暗躍で、中東で大戦が起こると解釈していた(*14)。しかし、予定期日を過ぎた後に出された高橋の1996年の解釈書では、一切言及されていない(*15)。 タッド・マン(1993年)はマッキャンに言及しつつも、挙げられている星位は2000年8月にも起こるとして、そちらの時期に起こる戦いと解釈した(*16)。 ジョン・ホーグ(1997年)は、1987年とする算定を踏まえ、その当時行われていたイラン・イラク戦争などと関連付けた(*17)。ホーグは、この星位が未来のものならば、2000年8月、2019年8月、2032年8月にも見られるとした。 ロルフ・ボズウェル(1943年)は、ver.serp.を「真の蛇」と理解し、『ヨハネの黙示録』と関連付けた(*18)。 内藤正俊(未作成)(1986年)は「真の蛇」とは訳せないとして「ウジ虫、蛇」としつつも、詩の全体的なモチーフは黙示録からの借用と見なした(*19)。 ヘンリー・C・ロバーツ(1947年)は、ver.serp.を「真の蛇」と理解し、「キリスト教の理想は東洋のイデオロギーに打ち負かされるだろう」とだけ解釈した(*20)。この解釈は、娘夫婦や孫もそのまま踏襲した(*21)。 セルジュ・ユタン(1972年)は「オスマン帝国の没落」とだけコメントしたが、ボードワン・ボンセルジャンの補訂(2002年)では、第三次世界大戦とする解釈が併記された(*22)。 五島勉は当初(1979年)、1行目の大半を星位と見なして、1980年代から90年代にかけてのいつかの夏の事件とし、1999年までに起こると想定していた第五次中東戦争=中東大戦の一場面と位置づけ、ver.serp.はアナグラムとしてEE・SR・PRV(電子機・超高空偵察機・無人機)と解釈した(*23)。 しかし、前述のマッキャン(五島の表記では「マッケン」)の指定していた1987年8月が外れると、1行目は星位ではなく国名の象徴と解釈しなおし、英国(獅子)、日本(太陽)、アメリカ(金星)が、トルコ、エジプトなどとともにイランの辺りに進軍し、100万人集結するような中東大戦が起こると解釈した(*24)。 五島がいつマッキャンの解釈を知ったのかは定かではないが、日本語文献では、クルト・アルガイヤー『1987年――悪魔のシナリオ』(1985年)の方が先にマッキャン解釈に触れていた(そもそも日本語版タイトル自体が、この算定に立脚していた)。アルガイヤーはマッキャンの算定も踏まえつつ、20世紀のうちには1987年7月31日から8月22日、1989年7月23日・24日、1998年8月21日から23日のいずれかに第三次大戦が起こると解釈し、1998年は遅すぎるので可能性が低いとした(*25)。 のち、モーリス・シャトラン(1998年)は1998年8月22日を採用し、その日に「ペルシャの100万のアラブ人」(原文ママ)がトルコやエジプトに侵攻すると解釈した(*26)。 前述の通りチータムはマッキャンの算定を超える情報を提示していなかったが、その日本語版(1988年)では、流智明(未作成)の解釈に差し替えられ、1行目が指し示す時期は1989年7月か1998年8月のいずれかで、後者に中東大戦が起こる可能性が高いとした(*27)。 飛鳥昭雄も、1行目の大半を星位と見なし、1998年8月21日とした。その期日の前(1997年)には、その日に第三次世界大戦が始まり、1999年までの終息した後に世界政府が樹立されると解釈していた(*28)。そして、その日に、アメリカがアフガニスタンとスーダンへ巡航ミサイルを打ち込むと、これが第三次世界大戦の「布石」になると解釈した(*29)。1999年上半期までは、1999年8月前後に第三次世界大戦はあるという解釈だった(*30)。その後も、シナリオが「圧縮」されていたという観点から、基本的な解釈は変更していない(*31)。 なお、上杉直胤(1997年)が、1998年8月下旬に「イランを主力とするイスラム中東連合軍が」「ロシアからの援軍を受けて」ヨーロッパ侵攻をすると解釈していたのは、シナリオの類似性から言って、飛鳥の解釈に影響されたものと思われる(*32)。 加治木義博(1991年)は、1行目を国などの比喩としたが、詩番号から年代を導く手法で1991年・92年・93年のいずれかに、(加治木が90年代前半に起こると想定していた)第三次世界大戦の一場面として、イスラーム勢力の敗北が描写されているとした(加治木は2行目の「教会」を「聖職者」=「イスラーム指導者」と読み替えている)(*33) 佐藤天樹(未作成)(1998年)は1999年に起こる第三次世界大戦に関する詩とした(*34)。 山田高明(2016年)は、近未来のイスラーム勢力のヨーロッパ侵攻に関する詩の一つとした(*35)。 同時代的な視点 ノストラダムスの時代から見て未来のことを書いているとしたピエール・ブランダムールは、百詩篇第5巻14番、百詩篇第5巻23番(未作成)とともに、1594年7月半ばを想定していたのだろうと推測している(*36)。ノストラダムスは、暦書で16世紀末から17世紀初頭にかけての破局的な状況を描いているので、近い将来にオスマントルコが侵攻してくると考えていたとしてもおかしくはない。 他方でエドガー・レオニは、「百万」という数字を除けば、この詩とよく似た状況が7世紀にも見られたと指摘している。ペルシアはアラブ人の侵攻を受けてイスラム帝国に編入されたし(642年)、先にエジプトもそうなっていた(641年)。また、655年にアラブの艦隊は東ローマ帝国の艦隊に大勝している(*37)。こうしたことは詩の情景と確かに一致している。 ピーター・ラメジャラーは当初、『ミラビリス・リベル』のモチーフとの類似性を指摘する一方で、ノストラダムスの存命中にこの星位になった時期として、1535年から1536年にかけてと、1564年7月を挙げていた(*38)。 しかし、のちに見解を翻し、1510年代・20年代のオスマン帝国の動向がモデルになっていると解釈した。オスマン帝国はチャルディラーンの戦い(1514年)で、ペルシア(サファヴィー朝)に大勝し、一時は首都タブリーズも占領した。また、1517年にはエジプトのマムルーク朝を滅ぼして同地を支配下に置き、キリスト教勢力にとっての防波堤であったロードス島も1522年に占領、自慢の海軍力で聖ヨハネ騎士団をマルタ島へと追いやっている。 ラメジャラーは1行目の星位を1513年のものとし、上記のようなオスマン帝国の勢力伸長の前兆と位置付けられていたと指摘した(*39)。 こちらもまた、詩の情景にかなりの程度あてはまるが、やはり「百万」がネックになる(チャルディラーンの戦いのオスマン側兵力はサファヴィー朝を圧倒したが、その兵力は12万人以上と見積もられている(*40)。「以上」の幅をやや広くとったとしても、「百万」との隔たりは歴然としている)。 もっとも、ノストラダムスは歴史を忠実に描いているとは限らない。オスマン帝国の侵攻を警戒していた彼の場合、その脅威を踏まえて韻を踏ませることも考えて、あえて過大に表現した可能性も想定できる。また、16世紀の情報環境から、中東の戦いのデータをどこまで正確にノストラダムスが捉えられたのかという問題もある(そもそも現代でさえもチャルディラーンの戦いの規模の推定には、少なからず幅がある)。こうしたことを考えれば、レオニの主張する7世紀よりも、ノストラダムスと同時代の16世紀の情勢の方が、適切なのかもしれない。 なお「真の蛇」という読みが正しいのなら、旧約聖書『創世記』に登場する誘惑者としての蛇と関連付けることが出来るのかもしれない。「アンリ2世への手紙」29節には、「サラセン人たちの憎むべき誘惑」という表現が登場しており、イスラム教徒を誘惑者として捉えているように読めるからだ。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 コメントらん 以下に投稿されたコメントは書き込んだ方々の個人的見解であり、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。 なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 これはまだ未来に属することであり、イラクとアフガンあわせて100万近い兵が集まるのだろう。 -- とある信奉者 (2010-03-07 23 12 03) 2015年8月にも「火星、太陽、金星、獅子宮」この星位は見られます。 -- f (2012-02-07 19 41 50) 米・イラン戦争が今年(2020年)の夏に起きて第三次世界大戦に発展しそう。米国は早まったマネをしないで欲しい。 -- とある信奉者 (2020-01-07 02 22 57)