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登録日:2011/03/04 Fri 17 32 48 更新日:2024/03/19 Tue 18 48 33NEW! 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 Gカップ けど でこ でこ巨乳←それって吹寄? とあるシリーズの登場人物 とある魔術の禁書目録 ブレイン ヘソ出しカチューシャ ラブレター 上条フラグ 先輩 天才 姉 巨乳 科学サイド 第6位説 統括理事会も顎で使う軍師系スーパーJK 義眼 藤井ゆきよ 隻眼 雲川芹亜 高校生 雲川(くもかわ)芹亜(せりあ) とある魔術の禁書目録の登場人物。 CV:藤井ゆきよ 上条の高校の先輩。統括理事貝積継敏のブレインを務める天才少女。 口調は「~けど」を多用。そのせいで文脈を読まずに会話を見ると、否定の接続詞なのか語尾なのか判らなくなりがち。 (例)「楽しいよ。これでなかなか、私は今の生活を愛してるけど」 土御門が統括理事の協力を求める際に、親船と貝積が候補に上がったが、 ブレインである雲川芹亜が頭が切れすぎるという理由で、貝積ではなく親船に協力を要請したほど。 だが、能力の方に関しては作中では明らかにされていないが、学園都市が掲げる能力開発の分野ではそれほど価値のある存在ではない。 それでありながら統括理事会のブレインという『闇』に深く食い込んでおり、それに相応しい頭の回転と話術を持つ。 特に話術に関しては一種の催眠術レベルに達しており、人の心を容易く『掌握』し、 ただの一言で相手の行動を縛り心の奥を開陳させてしまうほどで、完全な話術によるコントロールを弾丸や刃物にまで匹敵するレベルにまで押し上げている。 精神系最強の超能力者『心理掌握』と同じ舞台に立つ事のできる『心の専門家』である。 土御門曰く「天才過ぎて手がつけられない」。 記憶を失う前の上条の知り合いでもあり、彼の不幸や幻想殺しに興味がある。 上条の通う高校の制服を着用し、彼女を見かけた生徒達には例えば吹寄等には「名前だけは知っている美人の先輩」として疑いなく認識されている。 彼女が実際に何年何組に所属しているかは誰も知らず、 教師ですら彼女の所属クラスなどを把握していないという認識で得意な話術を用いてブレインの仕事の傍ら、遊びに来てると思われる。 とある科学の超電磁砲では大覇星祭開会で彼女らしき人物が二人三脚の実況をしているシーンがあるので行事にもわりと顔を出している。 周囲に対しては常に飄々とした態度を取り、余裕を崩さない。貝積曰く「泣く子も黙る先輩キャラ」で刺激に溢れたとある学校での今の生活を愛しているとか。 故に周囲を巻き込んで「ラブレター」を出すことで、横槍を入れてきた勢力を釣り上げるという策を弄したことも。 上条の記憶にない所で色々あったらしく、本人曰く、「とっくに無血開城しているけど」とのこと。 どれくらい無血開城してるかと言う上条が第三次大戦終結後行方不明になった際は戦後処理はもちろん、 ブレインの仕事を放っぽり出してダラけたり、影で自分の悪口を言っていたと聞かされた際に一瞬で涙目になるぐらいショックを受ける程で何より上条との関係を大事にしてる様子で彼との関係を壊さない為、暗部などのしがらみを持ち込まない清浄な状態を保ちたいと考えている。 逆に言うと興味ない連中に関してはとことん容赦がない。 彼女と上条の出会いに関しては「とある魔術の禁書目録SS バイオハッカー編」にて語られているのだが、TVアニメ「とある科学の一方通行」の特典となっており、読む手段が限られるので注意。この時点で彼女は有能ぶりを発揮している。 巨乳で、サイズは鞠亜曰く「Gカップ」。新約2巻の記述によれば、風斬より大きいようだ。 食蜂とは1年以上前から面識があるようで顔見知りだが、互いに少々毒づき合う程、仲は悪い。 能力に関してもあるが、どちらも過去の上条と交流があり恐らく上条関係で犬猿の仲になったと思われる。 犬猿の仲ではあるが、食蜂の記憶が何らかの機械で操作されている可能性を指摘し、食蜂の首の後ろに刺さっていたストロビラを見つけ、その情報を彼女に教えていた。 ちなみにバイオハッカー編が現状一番古い時系列とされているので食蜂よりも前に上条と交流経験があり、この時に対面した彼女と同じく古参的位置付けとなっている。 繚乱家政女学校に通っている鞠亜という妹がいる。 新約七巻では妹の復讐の為に貝積を狙う土御門と相対した。 何気に新約7巻目でやっとの戦闘である。 戦闘経験豊富な土御門に対しても持ち前の話術で翻弄し、 右目を奪われるものの土御門の身体能力を並の女子高生の水準まで落とすことに成功。 しかし魔術に関しては素人だった為に土御門の感染魔術によって撃破された。 その後意識が戻り、貝積の暗殺を阻止すべく、上条当麻に彼女達のいる第三学区のビルへ向かう旨を非通知のメールで伝えた。 雲川はこの行動と考えが何者かの意図によって生み出されたものなのではないかと感じていたが、再び気絶してしまった。 他には療養している上条に食蜂と蜜蟻が交戦しているグラウンド・ジオ付近の人造湖へ向かうよう、 彼に適当な理由を言って向かわせたりと裏の顔は知られたくないものの影で上条をサポートしている。 ちなみに失った右目は瓶詰工場に連絡し代用品を補填している。 追記・修正お願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 別名 女帝。 -- 名無し (2013-07-16 14 16 14) 夏休み以前、上条と何があった? -- 名無しさん (2013-07-16 15 45 03) すげーストライクなキャラなんだよなあ。ちょろっと出ただけなのが残念 -- 名無しさん (2013-07-16 15 56 18) 『とっくに無血開城してるけど』 この言葉は、上条さんと『エロい事をした』ともとれる。 -- 名無しさん (2013-08-08 22 36 58) それなら血出るだろ -- 名無しさん (2013-09-04 18 01 29) 上条さんの過去に関わるキャラだから今後の活躍が楽しみかも -- 名無しさん (2013-09-05 22 31 07) 新約9巻ではオティヌスによってかなり活躍。 -- 名無しさん (2014-02-05 15 33 19) 新刊出番ありそう -- 名無しさん (2014-08-22 17 46 06) 上条さんに悪印象を持たれてると思うと涙目になる先輩が可愛かったな。 -- 名無しさん (2014-10-11 09 12 07) 未だに上条さんとの出会いは謎。ただ彼の年上のお姉さん好きは彼女が原因? -- 名無しさん (2014-11-21 18 54 10) 第六位説は完全に薄れちゃったかな -- 名無しさん (2014-11-21 21 48 43) 魔性の女のひとり。11巻では自分に迷惑をかけた土御門に罰とけじめとして『椅子』にしている -- 名無しさん (2015-01-10 12 21 01) この人の眼は土御門の件の後、治ったのか義眼なのかどっちか判る人います? -- 名無しさん (2015-07-26 10 21 35) 確か自分の体のパーツの生産工場持ってたはず -- 名無しさん (2016-01-25 20 38 17) 名前 コメント
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「…う~ん…」「あら…目が覚めたのね、まだ頭が起きてないみたいだけど」「え……あの~……雲川先輩?」「何かしら?」「……何で…俺縛られてるんですか…」「?」「いやいや、そこで何言ってるの?みたいな顔されても困るのは俺なんですが」「言わないと分からない?…しょうがないわね…特別に教えてあげるけど」 (…この状況、言わなきゃ普通分からんだろ…) 「前から私はお前の幻想殺しに興味があった…ここまではいいわね?」「はい」「そして、私はお前のチン○にも興味をもった…分かるわね?」「はい―――えっ?」「だから、お前のチン○にも興味が出て犯したくなったの…まあ、これからする事にはお前の拒否権なんてものはないけど」「…え~~っと…話しが飛び過ぎてお馬鹿な上条さんには理解出来ないんですが…」「いちいち五月蝿いわね…お前は黙ってチン○を硬くしてればいいのよ…」 (…何この流れ……先輩ってこんなキャラだっけ?) 「というわけで…早速始めさせてもらうけど…」ジ~「ちょっ!止めて下さい!何勝手にズボンのチャック開けてんですか!」ポロン「あら…随分と立派なモノもってるじゃない……パクッ」「うっ」ビクッチュバ…チュパ…ジュルッ…ペチャ…「う、うぅ…や、止め…」ムクムクッ「ふん…」ジュポジュポ 「んっ…ペロッ…ちゅぱちゅぱっ…」「はあ…はあ…」「んくっ…ぷはっ……こんなに大きく…硬くしておいて…」シコシコ「…うぅっ…」「止めなさいですって?……さっき言ったでしょ?お前には拒否権はないって…悪いけど」シコシコ「…うっ……あ…」「…上条当麻…お前を…味わせてもらうわ…パクッ」「ん……おっ…」 「んくっ…はぁっ…んちゅ…んっんっ…」先輩は俺の愚息を根元までくわえ、首を上下に動かして愚息を愛撫する…体を縛られ身動きがとれず俺は先輩に責められたまま…息を荒げて快感に酔いしれる「はぁ…はぁ…」「チュパッ……うふふ…苦しそうな顔…可愛いわね…私もっとお前を苛めたくなっちゃうんだけど…」シコシコ「はぁ…はぁ…はぁ」「…じゃあ…こんなのはどうかしら…」先輩は先程と同様に愚息をくわえ、そして……俺の玉を優しく揉んできた「あっ…うぁっ…」あまりの気持ちよさに、俺は女の子のような声を上げてしまう… 「んくっ…んくっ…はむっ…ちゅぱっ…」先輩はカリや裏筋などを舌を蠢かせ、俺の愚息を愛おしそうに可愛がる (…くっ…上手い…)あまりの絶技に愚息はビクビクと脈打ちあっさりと限界を迎えようとする…情けないことに… (うぅ……っあ…イク!)そして、愚息は射精しようとして―――「うふふ…だ・め♪…まだイカせてあげない」キュッ先輩はくわえるのをやめ、愚息の根元を手で抑えて射精を阻止する それでも愚息はなんとか射精しようと頑張るが…その努力も虚しく先輩に尿道を抑えられ愚息はただビクンビクンと脈打つのみだった…「うぅっ…はあ…はあ…」お預けを食らった俺は、苦悶の声を上げ、先輩を見る「ふふっ…お前だけ気持ち良くなるなんでズルいぞ…私も気持ち良くしてくれなきゃ…困るんだけど…」スッそう俺に言い放つと、目の前に立ち上がり先輩は自分のスカートを両手で捲り上げた… …驚いた事に先輩の秘部を覆い隠す布はなく、先輩はノーパンだった……綺麗なピンク色の女性器が俺の眼前で淫靡にてらてらと濡れていた… 「…お前のせいで私のはこんなになってるんだけど…責任とりなさいよ…」「責任って…何すれば良いんですか?」「決まってるじゃない…お前の口で…して欲しいんだけど」先輩は言うと同時に秘部を俺の顔に近付ける…射精を我慢させられ、半ば理性が欠けてる俺は先程の言葉に従うように、先輩の卑猥な部分に口をつけるクチュ‥クチュ‥ペロペロッ俺は犬のように先輩の秘部を舐め、彼女の女性器をしゃぶる「んっ…あんっ…んっ…ふふっ…上手よ…良い子ね…」 先輩は右足の靴を脱ぎ、くつしたを履いたままで俺の愚息を優しくリズミカルに踏む…踏まれ揉みをされてる愚息は更に硬度を上げ、ビクビクと悦んでしまう「はぁはぁ…あら…踏まれて悦ぶなんて…んっ…とんだ変態ね……んうっ!」 …少しカチンときたので、雲川先輩のクリを舌先を尖らせてくりくりと強めにつっつくように舐める「んうっ…ふふっ…気に障った…あんっ…かしら…」先輩は舌なめずりして、俺に妖艶な笑みを浮かべて囁く 「…はぁっ…はぁっ…んっ…んんっ…」俺は舌を使い執拗に先輩のクリを何度も何度も責める。クリを刺激されるたびに先輩は体を震わせ、甘い吐息を口からはく「はぁはぁ…」スッ先輩は離れると、秘部を俺に見せつけるようにして自分の指で慰め始めたくちゅくちゅ…「はぁはぁ…んっ…お前が…舐めたせいで…こんなに…疼くんっ…だけど…はぁはぁ」 先輩は、はぁはぁと切ない嬌声をもらして体の疼きを吐露し、自分を慰めながら俺に語る「んっ…我慢…できない…はぁはぁ…」スッ先輩はスカートを外し、俺に跨って、マン○をチン○にあてがい…「はぁはぁ…覚悟…しなさいよ…」ピトッ「えっ、ちょっ待っ――」そして、先輩は俺がを言いかけてる間に――ズプスプッ腰を落として膣内に愚息を迎える「んんぅっ!」 縛られてる俺は何もできないまま、愚息を先輩のおまん○に深くくわえられて、ビクビクと脈打つ歓喜する「あっ…はぁんっ…凄く…硬いんだ…けど」先輩は愚息を奥まで迎えると、目をトロンとさせて淫靡な笑みを浮かべる「うふふ…可愛がってあげるわ…上条当麻…」 …先輩は俺の腹に両手をおき、腰を動かし始めた ぐちゅっぐちゅぐちゅっぐちゅ先輩は腰を動かし、愚息をぐりぐりと膣内でかき回させ、快感を貪ってた「はぁんっ!いいわ!お前の…硬くて…気持ちいい!」グチュッグチュ!「ぅ…おっ…!」こちらも愚息を根元から締め付けられ、更に縦横無尽に刺激されて快感の度がハンパない…気を抜いたらすぐに、イカされてしまう… 責められっぱなしも、男として情けないので、唯一動かせられる腰を使い、俺は先輩を下から突き上げたズプッ!「あぁんっ!…んんっ…奥まで…突かれて…気持ちいいっ…!」先輩は一瞬腰をビクッとして動きを止めてしまい、突然の快楽に夢中になる「先輩ばかりズルいですよ…」そして、俺は腰を何度も何度も下から突き上げ、先輩を責め始めたぐちゅっ!ぐちゅっ!ぐちゅっ!「あっ…あっ…あっ…んくっ…!」 先輩は俺の愚息で奥まで突き上げられると、顔を上気させ嬌声を上げてしまう…だが…「んっ…んっ…生意気なん…だけど…」俺の突き上げに対抗するように先輩は逆に、俺が突き上げる瞬間に腰を落としてきた…パンッ!「あぁんっ!」「くっ!」 …それから、俺等はまるでカスタネットのようにお互い繋がった部分を衝突させ、突然の快感の増大に二人とも声をもらす しばらく俺達はどちら共一歩も引かずに、お互いを責め合ってた…パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!「んっんっ~…いいっ…気持ちいい!」「ぐ~~~……」パンッ!バンッ!「はぁはぁはぁはぁ!」「くっ……う…うぅ~~」 …だが、全てに始まりがあるように終わりもやがてはくるものだ……俺は最後のトドメと言わんばかりに先輩の奥に愚息を突き上げ……そして―――「はぁはぁはぁはぁ!―――んあぁぁぁぁっ!」ビクビクッ!「~~~~っ!」ドクッ!ドクッ!――――ドクンッ!俺達は同時にイキ、俺のスペルマは先輩の膣に向かって放たれた…… 「はぁ…はぁ…はぁ」先輩は俺のスペルマを体内で受け止め、腰を二度、三度震わせる。そして、繋がったまま俺に寄り添うように倒れてくる「はぁ…はぁ……まさか…ここまで…良かったなんて…思わなかったんだ…けど…」そして、俺の顔を見上げて…キスをしてきた…「…ありがたく思いなさいよ…お前は…私を満足させたんだから…ふふっ」 …ゲス条さん今回はなんか消化不良wwwwwwwwだって、全然責められなかったんだもんwwwwwwwwwwやっぱゲス条さんは責めて、苛めて、襲って、辱めをして…が、なんぼでしょ?wwwwwwwwwwwwまあ、たまにはいいかwwwwwwwwwwさて…次は誰にしようかなww
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【種別】 人名 【初出】 SS2巻 【CV】 藤井 ゆきよ 【解説】 【作中での行動】 【口調】 【バストサイズ】 【備考】 【解説】 学園都市統括理事会の一人、貝積継敏のブレインを務める天才少女。 肩まである長い黒髪をカチューシャでまとめていて、 (豊満な胸部のせいで)制服のサイズが合っておらず、常にお腹のへそ辺りが見えてしまっている。 上条当麻の通うとある高校の制服を着用し、 彼女を見かけた生徒達には「名前だけは知っている美人の先輩」として疑いなく認識されている。 しかし、彼女が実際に何年何組に所属しているかは誰も知らず、教師ですら彼女の所属クラスなどを把握していないという、謎の多い人物。 妹に繚乱家政女学校に通う雲川鞠亜がいる。 周囲に対しては常に飄々とした態度を取り、余裕を崩さない。貝積曰く「泣く子も黙る先輩キャラ」。 ただ本人的には「背伸びをしているだけだけど」とのことなので、本来の性格は別である可能性も。 「止められる悲劇は止めてきた」との発言から、以前から貝積と共に学園都市内外の事件に関して行動を起こしていた模様。 ただ立場の限界から止められないものも数多くあったようで、 絶対能力進化計画もその一つ。 記憶を失う前から上条の知り合いでもあり、彼の不幸や幻想殺しに興味があるようだ。 少なくとも作中1年以上前から知り合っていたらしく、上条自身「何でも出来る高校生」として彼女を慕っていた模様。 上条の記憶喪失を知っている数少ない人物でもある。 上条との関係性は非常に大事にしており、暗部などのしがらみを持ち込まない清浄な状態を保ちたいと考えている。 故に周囲を巻き込んで「ラブレター」を出すことで、横槍を入れてきた勢力を釣り上げるという策を弄したことも。 上条の記憶のないところでいろいろあったらしく、曰く「とっくに無血開城しているけど」とのこと。 第三次大戦で上条が消失した際には、ショックからか帰還するまでの数日間自堕落モードになっていた。 上条が影で自分の悪口を言っていた(真偽は不明)と聞かされた際は、一瞬で涙目になるほどショックを受けていた。 彼女的には、刺激に溢れた今の生活を愛しているらしい。 第五位のレベル5食蜂操祈とはライバルの様な関係にあり、「あのムカつく第五位」呼ばわりしている。 彼女も上条同様1年程前から面識はあるようで、上条にまつわる食蜂の事情も把握している。 所持する能力は作中では明らかにされていないが、能力開発の分野ではそれほど価値のある存在ではないらしい。 しかし、統括理事会のブレインという『闇』に深く食い込める辺りから分かる通り、それに相応しい頭の回転と話術を持つ。 特に話術に関しては一種の催眠術レベルに達しており、人の心を容易く『掌握』し、ただの一言で相手の行動を縛り心の奥を開陳させてしまうほど。 話術によるコントロールを弾丸や刃物にまで匹敵するレベルにまで押し上げており、 精神系最強の超能力『心理掌握』と同じ舞台に立つ事のできる『心の専門家』である。 土御門曰く「天才過ぎて手がつけられない」。 【作中での行動】 ジョージ=キングダムが画策する原石の懸案解決のため、貝積から意見を求められ、 妹達を使った『原石』の保護を提案・実行する。 その件について『妹達』に作った借りのため、彼女らのアフターケア程度はするつもりだとか。 大覇星祭の二人三脚走(超電磁砲44話・45話)では、 ラジオネーム『ヘソ出しカチューシャ』の名で解説役をしている。 名前は伏せているが、口調とラジオネームから正体は明らか。 競技の終盤では網目に能力の解説を持っていかれたことでイラついていた。 新約6巻。一端覧祭初日に行われたミスコン大会に出場させられる。 食蜂操祈とは仲が悪いらしく、互いに毒づき合っていた。 新約七巻では妹の復讐の為に貝積を狙う土御門元春と相対した。 プロのスパイで拳銃や手榴弾を使う土御門に対しても持ち前の話術で翻弄し、 右目を奪われるものの土御門の身体能力を並の女子高生の水準まで落とすことに成功。 しかし魔術に関しては素人だった為に土御門の感染魔術によって撃破された。 その後意識が戻り、貝積の暗殺を阻止すべく、上条当麻に彼女達のいる第三学区のビルへ向かう旨を非通知のメールで伝えた。雲川はこの行動と考えが何者かの意図によって生み出されたものなのではないかと感じていたが、再び気絶してしまった。 失った右目は瓶詰工場に連絡し代用品を補填している。 新約11巻では自分の記憶の異常に気づいた食蜂に、精神操作系の頂点である自分の記憶を気づかれないで操作出来る人間として挙げられた。 食蜂の記憶が何らかの機械で操作されている可能性を指摘し、食蜂の首の後ろに刺さっていたストロビラを見つけ、その情報を彼女に教えた。 療養している上条に食蜂と蜜蟻が交戦しているグラウンド・ジオ付近の人造湖へ向かうよう、彼に適当な理由を言って向かわせた。 【口調】 「~けど」を多用。そのせいで文脈を読まずに会話を見ると、否定の接続詞なのか語尾なのか判らなくなりがち。 例)「楽しいよ。これでなかなか、私は今の生活を愛してるけど」 【バストサイズ】 鞠亜が言うには「Gめ!」らしい。 新約2巻の記述によれば結標が「そこそこ」、風斬が「巨乳」、雲川が「もっと巨乳」だという。 【備考】 作者評して曰く、 何だか偉そうな事を言ってる割に大した活躍をしていない なお、妹である雲川鞠亜にも共通する特徴との事。
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【種別】 人名 【初出】 SS2巻 【解説】 学園都市統括理事会の一人である老人。妻と娘がいるらしい。 雲川芹亜をブレインとして雇っている。 『原石』ら個人の生活を尊重し、学園都市で保護する事を躊躇していた優しさを雲川芹亜には甘いと指摘された。 ちょっとした才能を持っているだけの、ただの子供達を『原石』という言葉で表現することにも抵抗がある様子。 学者でもあるようで『原石』の正体に頭を悩ませたり、学園都市第七位の原理解明に躍起になったりしている。 なお土御門が言うには親船と同じく善人なのだが、雲川の存在により有事の際に協力を仰ぐ事は難しい模様。 新約七巻で土御門に『人的資源』プロジェクトの中心人物と疑われ、復讐の最後の対象とされる。 雲川芹亜が土御門に撃破された後、 激怒している土御門に何を言っても無駄であると感じ、何の抵抗もなく拷問を受けようとする。 しかし実際は『人的資源』プロジェクト反対派。 薬味久子による反対派同士を潰し合わせる計略であった。 しかし上条の登場で土御門の拷問を受けずに済み、上条に『人的資源』プロジェクトに関する資料を託した後、気を失った。
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【種別】 組織・計画 【元ネタ】 Wikipedia「スターゲイト・プロジェクト」 【初出】 SS2巻 新約3巻にて新事実判明 【解説】 ジョージ=キングダムの指導下のCIAによって進められた、超能力開発プロジェクト。 当時は失敗に終わっているが、これに携わる組織は入念に偽装した上で現存しており、 アメリカ政府主導で行われた12のオカルト実験、『ノーリッジ12』によるプロジェクトの一つとして、 『原石』のリスト作成などに携っている。 原石強奪計画が成功した場合、 「その開発過程における失敗データは統合・解析されて研究に使われるだろう」と雲川芹亜は述べている。 ただ、そこまでやっても「放置した所でリスクは0%」と言い切られるあたり、 組織規模はともかく技術力では学園都市とは比較にすらならない代物のようだ。 アメリカ政府首脳陣に対しても秘密裏に計画は続行されており、 各地の組織に潜り込ませたスパイを介して原石を強奪したり、 郭に原石のリストを渡すなどして暗躍したが、 成功率0%の計画に原石達の命が奪われることを良しとしない貝積継敏と雲川芹亜によって妨害を受ける。 最終的に各施設は妹達によって襲撃されて壊滅し、 主導者であったジョージ=キングダムは刺客として差し向けられた絹旗最愛に処理されたことで、 計画は完全に幕を下ろした。
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(二日目)12時12分 第三学区。 学園都市が誇る高級ホテルの一つであり、七七階建ての『セブンズタワーホテル』の屋上に、プリズムルームと呼ばれるスウィートルームがあった。 二階続きの部屋であり、七七階へ上る階段から、中央一面がガラス張りの大きなウィンドウで第三学区を見渡せる。 高級ホテルの最高級の部屋らしく、煌びやかな装飾品で彩られていた。 高級な部屋には似つかわしくない黒の延長コードが、周囲に何本もあり、それは二階のベッドルームの机にある、五台のノートパソコンに繋がっていた。パソコンの前に人はいないが、膨大なデータが自動的に処理されていた。 一階には黒色のスーツケースが一〇個ほど置いてあった。中身は複雑な機械が入っており、コードが何本の接続されている。 快晴な空と第三学区の街並みが見渡せるプリズムルームに、黒スーツを着込んだ三人の男女がいた。 一階の中央には大きなガラスのテーブルがあり、その上には三つのグラスと、トランプ、そしてカジノチップが置かれていた。 スーツを着込んだ三人はテーブルを囲んでいる。第一二学区では『ドラゴン』と天草式が死闘を繰り広げている最中だというのに、彼らは平然と金銭を賭けたポーカーを興じていた。 「今頃、『一方通行(アクセラレータ)』はドラゴンにやられて、インデックスに治療魔術を施されてる頃かにゃー」 普段のB系スタイルとは打って変わって、真新しい黒スーツを着た土御門元春は、スペードのⅧ、一枚をテーブルに置いた。彼はネクタイを外し、シャツを第二ボタンまで外し、金色のネックレスが見えている。 透明のガラステーブルの上にある、トランプの山札から一枚のカードを引く。 「結局のところ、『ドラゴン』って一体何なのよ?」 ハートのⅡとダイヤのⅤを捨てた結標淡希は、土御門と同じく、トランプの山札から二枚のカードを引いた。彼女は上着を脱ぎ、シャツに赤いネクタイをしていた。長い赤毛を後ろで二つに結んでいる髪型は今も変わっていない。 「まあ、一言でいえば『神』だにゃー。それも神を罰し、神を殺す役割を持った例外中の例外の『神(カイブツ)』。 司馬遷の史記に記されているように、その存在は二〇〇〇年以上前から確認されている」 「で、アレイスターはドラゴンを手に入れて、世界の掌握を目論んでいたと…」 土御門と結標の会話中に、海原光貴の姿をした魔術師、エツァリは手札から四枚のカードを捨て、同数のカードを山札から引いた。 彼は土御門とは違い、ネクタイも上着も脱がず、スーツ姿のまま、背もたれの高い白の椅子に座っていた。 「…ドラゴンの前では天使も悪魔も歯が立ちません。なんせドラゴンの能力は神を殺すことに特化してますからね。 それに、上条さんに備わっている能力はさらに性質が悪い。ドラゴンを抑える鞘として能力とはいえ、その能力は最上級でしょう。『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除して、その効果範囲を広げると手の着けようがありません」 エツァリの言葉に、結標淡希は続いた。 ダイヤのジャックと、クローバーのⅡを捨て、二枚のカードを引いた。 「…確か、全身の『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除すると、超能力や魔術だけではなく、現実の物体まで打ち消すから、小さなブラックホールみたいに周囲の物質全てを消滅させていくんでしょ?流石はドラゴンを内包する器ね。 何が『無能力者(レベル0)』よ。 ドラゴンの能力を使わずとも、『一方通行(アクセラレータ)』と対等に渡り合えるっていうのに…」 土御門は手元にある五枚のカードを全て捨て、山札から五枚のカードを引いた。 オレンジサワーが入ったグラスを手に取り、口に含んだ。 「『吸血殺し(ディープブラッド)』が吸血鬼の存在を証明するように、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は幻想の証明していた。では、幻想とは一体何を指しているのか?」 エツァリは「パス」と言って、土御門に返答する。 「魔術と超能力を発現する『神の物質(ゴッドマター)』の存在の証明じゃありませんでした?私たち魔術側、いや、今や我々は『神上派閥』ですが、魔術側ではゴッドマターは『エーテル』、あるいは『賢者の石』とも言われてますね」 くくくっ、と笑って土御門は言葉を放った。 彼の向かい側に座っている結標淡希は、また二枚のカードを捨てた。 「『妹達(シスターズ)』の超能力発現の結果によって、魂の存在がなされ、カウンタースキルの存在が、対象物の存在を証明した。これは因果関係を証明する科学的理論には十分通用する。まあ、それを受け入れられるほど、世間は賢くないがな。 だが、これほど大規模な戦闘が展開されれば、ドラゴンの存在は認められるかも知れない」 三人はお互いの手札をテーブルに置いた。 土御門がAのスリーカードで、エツァリと結標淡希はツーペアであった。二人の手元にあった赤いカジノチップが土御門の手元に動いた。結標は『座標移動(ムーブポイント)』で、土御門のチップの上に移動させた。 彼女はストローで、グラスに入ったカシスソーダを飲んだ。 「上条当麻の『竜王の顎(ドラゴンストライク)』。 御堂シンラの『竜王の翼(ドラゴンウィング)』。 フィアンマの『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』。 オッレルスの『竜王の鱗(ドラゴンアーマー)』。 ドラゴンの元リーダーは『竜王の脚(ドラゴンソニック)』を持っていたわね」 「やつらはドラゴンの能力以外に強大な能力を兼ね備えていた。 カミやんの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』やアクセラ…いや、シンラの『ベクトル操作』やら、『北欧王座(フリズスキャルツ)』やらをな…だが、フィアンマは別だ。あいつは自分自身のドラゴンの能力に気づき、自ら開発していた」 エツァリは、散らばったトランプを集めて、ディーラーと同じようにリッフルシャッフルを二回、ミックスを一回行い、三人に五枚のカードを配った。 彼はグラスに入ったミネラルウォーターを飲み干す。そして、土御門に対して口を開いた。 「五〇〇年以上も生きていれば嫌でも気づくんじゃないですか?でも、上条さんに、あっさりドラゴンの能力を奪われちゃいましたけどね」 「それが引き金だったな。カミやんの中にいるドラゴンが覚醒を始めた。本来、起こりうるはずのなかった現象が起こり始めた」 「だから、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『パンドラの箱』っていう表現は的を得てたワケね。納得」 結標淡希は手元のカードを見て、口を緩めた。 「でも、ドラゴンの頭部を持っていた上条さんに、いずれ散らばったドラゴンの肉体が集積されるのは運命だったのでしょう?ドラゴンは、上条さんとは異なる、明確な意思を持っている」 「いや、ドラゴンが覚醒すること自体、不測の事態だったのさ」 「「?」」 土御門の言葉に二人は首をかしげた。 その様子を見た土御門は、三枚のカードを捨てて、山札から三枚のカードを引きながら言葉を紡いだ。 「前にも言っただろう?ドラゴンの能力は核兵器のような代物だと。彼らが持つ強大な能力は、ドラゴンを覚醒させない為に与えられた能力なのさ。 カミやんはともかく、シンラやオッレウスを窮地に追い詰めることなど、国家規模で挑まなければ出来はしない。 放っておけば、彼らはドラゴンの力を引き出さず、一生を終えるはずだった」 エツァリは、五枚のカードを全て捨て去り、静かな声で言った。 「…ドラゴンを覚醒させるために、アレイスターは彼らを危機的状況に陥らせた訳ですか。そんな馬鹿げたことに、私たちは翻弄され、仲間たちは死んでいった……」 彼の独白が、重い空気を生み出した。 結標淡希は無言を通し、土御門元春は言葉を続ける。 「カミやんに秘められている『ドラゴン』の存在を知った魔術側は『禁書目録』を作り、時期を見計らって、偶然を装いながら、日本に送り込んだ。禁書目録が女であることもそういう意図があったからだ。 カミやんも男だ。二人に恋愛感情でも芽生えれば、上条当麻の手綱につなぐことができる。牽いては、魔術側が『ドラゴン』を所有することになる。まあ、そもそもローラ=スチュアートにとっても万一の保険であって、『ドラゴン』が覚醒するとは夢にも思わなかっただろうよ。 それに、実際は違う結果になったがにゃー。まさか、あの『超電磁砲(レールガン)』を選ぶとは…意外だったにゃー」 意味ありげな視線を土御門はエツァリに送った。 ニヤついた二人の視線に気づいたエツァリは、表情に何の起伏も無く、返答した。 「そうですか?私には当然の結果と思いましたが」 「エツァリ…あんた、随分とあっさりしてるのね。意外だわ」 「美琴さんが幸せならそれでいいんです。私では、今のような彼女の笑顔を作りだすことはできないでしょう。一生ね」 「…日本人の感覚がかなり板についてきたわね。一言忠告しておくけど、あんたって、絶対女を幸せにできないタイプよ。私が言うのもなんだけど、彼氏に独占されてるっていう感覚を与えるのが大事なのよ。 プラトニックな関係が築けるのは、文字の上だけよ。肉体的なスキンシップは過度なくらいが丁度いいの」 「カミやんも確かそうだったにゃー。『超電磁砲(レールガン)』と深い関係を持ち始めた頃から、イキイキしてるっつーか、男のフェロモンが出てきたっつーか…というかあいつ等はもう少し、自分の立場と節度を考えた方がいいな。会ったら人目憚らず…」 顎に手を添えて土御門はブツブツとつぶやき始めた。 結標淡希は嘆息しながら、手札を置いた。 ダイヤのフラッシュ。土御門はノーペア。エツァリは前回と同じ、ツーペアだ。 カジノチップが結標淡希の『座標移動(ムーブポイント)』によって、瞬時に手元に来た。 散らばったトランプは、一つの束になって、瞬時に土御門の眼前に移動した。 「…人の幸せは十人十色ですから。それに、私には守る人が、もう一人いますからね」 土御門のリッフルシャッフルの手が、一瞬だけ止まった。 結標淡希はエツァリに言葉を発した。 「…彼女、生きてるの?」 「意識はありますが、肉体はありません。ですが、魔道書の中で生き続けています。私と共にね」 「…そう」 「そんな顔をしないでください。結標さん。話を持ちだしたのは私ですから…それに、私はまだいいほうです…貴女は…」 「……私は大丈夫よ。守るべき人たちを失って、一時期は自暴自棄になってたけど、生きる理由はちゃんとあるから」 土御門がトランプをパラパラとめくる音だけが、広い部屋に木霊していた。 日の光が内部を照らしているとは言え、彼らの心を照らしだす訳ではない。白い大きなカーテンに遮られている太陽は、まだ明るい。 スーツ姿の土御門元春はニヤッと笑うと、その空気を打ち砕くように、 「この暗ーい雰囲気はダメダメぜぃ。何事もポジティブにやることが成功するコツだにゃー。 それに結標。 本作戦の要は「お前」なんだぜぃ?頼むぜ。 『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』、結標淡希さんよ」 浮ついた土御門のセリフに、結標は冷ややかな目を向けた。 「…学園都市の内部抗争やら、先の『戦争』やらで『超能力者(レベル5)』を失って、現在は五人しかいないからね。それに言い方が嫌味にしか聞こえないんだけど」 エツァリは苦笑しながら、結標淡希に言った。 「まあまあ、二人とも。それぐらいにして、続きをしませんか?私もやっとポーカーの要領が分かってきたので、金銭の損得はともかく、少しでも腕を磨きたいんですよ。最も、作戦が失敗すれば、これが最期になりますし…」 「…アンタねぇ。喧嘩売ってんの?」 「あっはははは!エツァリ!お前、結構天然だな」 土御門は大きく笑いだすと、トランプのカードを配り始めた。 その時、 「待って」 結標淡希の一言が土御門の手をとめた。 彼女は上着の胸ポケットから、バイブレーションが作動しているピンク色の携帯を取り出すと、開いてモニターを確認した。 ピンポーン…というインターホンが鳴り、三人の目つきが変わる。三人は即座に席を立った。 そして、コンコンと重厚なドアをノックする音が聞こえた。 現在、学園都市には人はいない。 統括理事会合意の元、迅速な強制避難命令によって、核シェルターに二〇〇万人以上の人間が避難している。 このホテルはいる人間も『グループ』の三人のメンバーを除けば、無人であるはずだ。 エツァリは魔道書の原典の能力を発動させ、顔の右半身に紫のタトゥーのような紋章が浮かび上がった。 三人の間に、一種の緊張感が漂った時、 「私にも参加させてくれないか?」 という、呑気な言葉が、張り詰めた空気をブチ壊した。 プリズムルームの中央にあるガラス張りの風景を背に、一人の少女が立っていた。 『グループ』のメンバーと同じく、黒のスーツを身に纏っている。両手には黒革のグローブをつけ、背中にはハーフマントを備えていた。 ロングの黒髪をかき上げ、三人の表情を見る。彼女は歪んだ笑みを浮かべながら口を開いた。 「流石は『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』。私が指定した座標に寸分の狂いもない。まあ、これくらい出来なければ、貴女を使いはしなかったけど」 少女の姿を確認するや否や、『グループ』のメンバーは警戒を解いた。 エツァリの顔に浮かび上がっていた紋章は消え、スーツの袖を整えた。土御門はやれやれ、といった感じで手を振っていた。 「…そろそろ来る頃と思ってたよ。雲川芹亜。俺とエツァリは、とっくに仕事を終えてるぜよ。…しっかし、結標、サプライズにしては少々きついぜ」 「…全くです」 結標淡希と、彼女の能力によってこの部屋に招かれた少女、雲川芹亜はこの状況をニヤニヤしながら楽しんでいた。 雲川はその状況を見て、プッと声をもらすと、腹をかかえながら微笑した。 「土御門…お前のその格好、全く似合ってないぞ」 サングラスをかけ、スーツ姿の土御門は口を締めて、雲川を軽く睨んだ。 「俺は反対意見を述べるにゃー。『神上派閥』の制服にするんだろ?スーツなんて大人になりゃ何時でも着れるぜよ。短い青春時代にしか着れない服を着るべきだ。それにこれはお前が発案者だと聞いたが?」 「『神上派閥』の幹部にして、作戦部門『ジョーカー』のリーダーの私に対して、その発言は却下させてもらう。それに『神上派閥』の総帥様は随分と気に入ってくれたが?」 「カミやんが?」 土御門の呆けたリアクションに、雲川芹亜は腕を組み、フッ、と笑った。 「学園都市では『上条勢力』という通り名が有名だぞ。まあ、私は『神上派閥』の方が気に入ってるけど。 …今はまだ公には目立っていないが、我々は既に世界勢力の仲間入りだ。その総帥として、彼には相応の帝王学と上級社会のルールを身に付けねばならん。無論、今まで日の当らなかったお前たちも例外ではないけど…」 「…わかってるわよ」 結標淡希は皆に聞こえるほどの大きい溜息をついた。 「それと、『神上派閥』のトレードマークのアイディアを随時募集中だ」 雲川はそう言うと、ガラステーブルにある、土御門の隣の椅子に腰かけた。 「…考えておきます……はぁ、世界の終焉に直面しているとは、とても思えないですね。」 雲川芹亜の視線を受けたエツァリは、さらに苦笑した。三人とも彼女に続いて席に座り、ポーカーを再開した。 土御門がトランプを手に、リッフルシャッフルを再開した。 「ルールは?」 「レットイットランドだ。時代遅れのラスベガスでやるホールデムやセブンスタッドじゃない。分かるか?」 「ああ。知識としては知っている。なんせ、私も初めてだからな」 「はぁ?」 雲川の意外な言葉に、土御門だけは無く、ほかの二人も首をかしげた。 「これは確率論の問題だ。土御門、リッフルシャッフルを八回繰り返すと元に戻るということは、ド素人の私でも知っているぞ?」 「…流石だな」 そう言われた土御門元春はリッフルシャッフルをやめ、ミックスを三回行った。そして、五枚のカードが四人の手元に配られた。 雲川芹亜に、合計一〇〇万円の金を換金したカジノチップが置かれた。 配られたカードを三人が手に取ろうとした時、彼女は唐突に言った。 「結標。この回のゲームで私に勝ったら、報酬を二倍にしよう」 「ぶフっ!?」 彼女の予想外の結標淡希は口にしていたカシスソーダを吹きだした。急いで、上着のポケットからハンカチを取り出すと、強引に口元を拭いた。 白いハンカチに口紅がべっとりと付着していた。 「ちょっと待って!?振り込まれた金額を確認した時、私、一瞬意識が跳びそうになったくらいなのに…!でも、私が負けた時はどんな罰ゲームがあるわけ?」 「フフフ…別に、金銭的な取引ではない。それにお前が受け取った報酬は当然の金額だ。本作戦において、お前の立ち位置がそれほど重要だということだ。理解しろ。 ……それと、罰ゲームは無い。ただ、ある『計画』に加勢してくれるだけでいいのだ。我らの総帥様が絡む、ある『計画』にね…」 彼女の不敵な笑顔を見た三人は、ゾクッ!と凍りついた。 「我らの総帥様が関係する」というだけで、土御門は大体の事態が理解できた。雲川芹亜も、実は『とある男を巡るラブレース』に参加していることは知っていた。 彼は心の中で、その元凶たる人物に冥福を祈った。 (…モテモテだな。頑張れ、カミやん。でも、全然羨ましくないぜよ) 結標淡希は雲川の賭けを断ろうと思ったが、彼女の性格を知っている為、断れば何をされるのか分かったのではないことは明白だったので、 「…いいわ。乗ってあげる。でも一つだけ条件。犯罪行為はダメだからね」 「当たり前だ」 彼女たちの取引が成立したところで、四人は手元にあるカードを見た。 クスリ、と結標は不敵に笑った。 「ねえ、私、勝っちゃうけど…本当にいいのよね」 その言葉を、雲川は不敵な笑みと共に答えた。 彼女たちの悪魔じみた笑顔に怖気づいた男たちは、ブルブルと震えるだけだった。土御門元春とエツァリはソロリソロリと、手札のカードを交換し、結標淡希と雲川芹亜は一枚もカードを捨てなかった。 数秒で男二人のカードターンは終了し、ショーダウンは行われた。 土御門元春はスペードのⅦとハートのⅦのワンペア。 エツァリはⅨとⅩのツーペア。 そして結標淡希は、 「ファイブのフォーカード!」 ザッ、とガラステーブルに置かれた五枚のカードの内、間違いなく四枚のⅤが並んでいた。 二人の男と、うおおおっ!と声を上げる。 フォーカードの配当は五〇倍。彼女が賭けたチップはブルーチップ一枚。ブルーチップは一枚当たり五万円。これで彼女が勝てば、二五〇万円の利益となる。 結標淡希は赤毛の二つの髪を揺らせて、腕を組んだ。嬉々とした声が彼女の口から出る。 「さぁ?貴女はどうなの?フォーカードは役としては二番目に強い!私に勝つにはストレートフラッシュしか無い!貴女の手札は一体どうなっているのかしら?」 盛り上がる三人を見て、彼女はじっと手札を握ったままだった。 そして、雲川芹亜は突然、大きな高笑いを上げた。 「……ふっ、ふははははははは!」 その大声に怯んだ三人は、彼女の不敵な笑顔に気圧されていた。 「私は昔から賭けごとは嫌いでな…勝率が低く、不安定な勝負はしない主義なんだ。しかし、私が信じる確率論や数学的理論とはとても奇妙なものなんだよ。なぜなら、それを理論的に証明できたとしても、現実には中々当てはまらないからだ…」 「……何が、言いたいのよ?」 「つまりな。私が賭け事に強いという事実は、数学的には証明できないと言いたいのだ」 雲川は手札をガラステーブルに置いた。 三人の表情は凍りついた。 「ハートのロイヤルストレートフラッシュ」 彼らは絶句した。 一発で最強の役を出した雲川芹亜の強運も驚愕に値するが、彼らが凍りついた理由はそれだけはなかった。 レットイットランドのルール。 このゲームはホールデムとカリビアンスタッドを合わせて簡単にしたようなものであり、このルールを適応した場合、ロイヤルストレートフラッシュの賭け金に対する配当は一〇〇〇倍。 雲川芹亜が提示したチップは、レッドチップ一枚。すなわち、一〇万円に相当する。 つまり… 「「「い、いいい、いち、一億円―――――――――――――――――――――――?!!」 男女の絶叫がこのプリズムルームに木霊した。 慌てふためく彼らを余所に、ギャンブルに驚異の才能を発揮した雲川芹亜はクスリと笑うと、唖然としている結標淡希に告げた。 「…ふむ。このまま、お前の報酬をごっそり頂くのも悪くないな。さて、延長戦と行くか?『グループ』の諸君」 「や、やめてー!このままだと、俺は一生、雲川に借金を返済する人生を辿ることになるにゃー!」 「…私は、一年ほど返せると思いますが」 「……………あ………あ…」 統括理事会の一人である貝積継敏のブレインであり、『神上派閥』の作戦部門『ジョーカー』のリーダーを担い、また、その総帥である上条当麻に恋する乙女でもある少女、雲川芹亜 は意地悪い笑顔を共に、言葉を放つ。 「私たちが動き出すにはまだ時間はある。それまでこのハイレートゲームを続行しようではないか。 なぁに…心配することはない。 なぜなら、今日、この世界が終わるかもしれないのだからな」
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メニュー トップページ -人名別検索 とある魔術の禁書目録 科学サイド 《主要キャラクター》 上条当麻 御坂美琴 一方通行 《半主要キャラクター》 土御門元春 姫神秋沙 オルソラ=アクィナス 月詠小萌 《脇役》 青髪ピアス 吹寄制理 雲川芹亜 黄泉川愛穂 魔術サイド 《主要キャラクター》 インデックス ステイル=マグヌス 神裂火織 《半主要キャラクター》 《脇役》 とある科学の超電磁砲 《主要キャラクター》 御坂美琴 白井黒子 《半主要キャラクター》 《脇役》 ここを編集 初期メニュー保存場所
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【種別】 人名 【初出】 新約二巻 【CV】 下地 紫野 【解説】 繚乱家政女学校に所属する少女で、雲川芹亜の妹。 縦ロールにした長い黒髪と、控えめなサイズの胸が特徴的。 身につけていメイド服はミニスカートに蛍光カラーのコルセット、 ウサギの形をした名札をスカートに貼り付けた、 クラスメイトの土御門舞夏曰く「胡散臭い」代物。 因みに小学生の時から縦ロールのため、メイドとの関わりはない。 そんなふざけた格好ながら成績は繚乱家政女学校でもトップクラスで、 学園都市特有の能力開発関連から、 それ以外の勉学や運動などのあらゆる分野に『才能』があると豪語する。 所有する能力はレベル2の『暴風車軸(バイオレンスドーナツ)』。 『暴風車軸』を最大限活用するため、 カポエラ、ブレイクダンス、ポールダンスなどを組合わせた独自の格闘術を修めている。 曰く「右手と左足で投げたり折ったりできるし、右足で剣道、左足で槍投げできる」 「才能があるが故に滅多な事では窮地に陥らないが、いざ大きな窮地に立たされた時に免疫が無いと困る」 という独特な思想を持ち、自ら「プライドが折れない程度に傷つける」様に心掛けている。 周囲にもその思想を語って聞かせており、 話を聞き流そうとすげなく扱っても「これで自分の強度がまた上がった!」と素で喜ぶので、非常に面倒くさい。 「明らかに自分より劣る相手に仕える事」を目標とし、ふざけたメイド服もその目標に合わせて選んだ物らしい。 今日も無能で愚鈍なご主人様募集中。 過去、木原加群が『落第防止』として勤務していた学校に通っており、 彼に感謝と憧れを抱いている生徒の一人。 復帰に成功して学校へ登校する途中で通り魔に襲われたが、 加群が通り魔の少年を殺害という手段で排除し、事無きを得た。 目の前で起こした事件のせいで加群が姿を消した以降も彼の事を慕っており、 バゲージシティで起きる騒動に加群が現れるかもしれないという情報を得た事で、 自ら学園都市と『反学園都市サイエンスガーディアン』が激突する戦場に飛び込んだ。 『木原一族』率いる学園都市の侵攻による混乱の中、 近江手裏と出会い、彼女と共にバゲージシティ脱出を目指した。 自ら宣言するだけの事はあり、戦闘においても知識面においてもその才能を発揮し、 『暴風車軸』を利用した格闘術で対峙したマリアン=スリンゲナイヤーらを翻弄。 しかし、突発的な奇襲や隠していた攻撃などを受け、最終的には黒星を得る事が多かった。 マリアンに敗れた後はサフリー=オープンデイズに救助され、 木原円周が行おうとしているカビによる虐殺を止めるためにサフリーと協働体制を取る。 カビの増殖プラントとして利用されていた野菜コンテナの集積場にて円周と対峙し、 サフリー、近江との協力もあってこれを撃破した。 直後、円周が倒されるのを待っていた木原病理と、 その病理が完全に油断するのを待っていた木原加群が目の前で戦闘を開始。 加群の贖罪と復讐の戦いによって病理は倒されたが、 致命傷を負った加群から「済まなかった」という謝罪の言葉を受け取ると共に、彼の死を見届けた。 加群の死の後、仲間であるベルシの死に激昂したマリアン=スリンゲナイヤーに襲撃を受ける。 マリアンの持ち出した『戦乱の剣(ダインスレーヴ)』に対抗しようとしたが、 『戦乱の剣』の副次効果である『剣を使用される事に対する圧倒的な恐怖心』により、 仲間であったサフリーと近江は心停止して倒れてしまう。 彼女自身も倒されそうになったが、 上条当麻の乱入によってその場にある恐怖心が薄れた為、 意識を失う事なく上条とマリアンの戦闘を目撃する事になった。 上条とマリアンの戦闘が収束した際に乱入してきた、 オティヌスとオッレルスのやりとりにもその場で巻き込まれた。 オティヌスが『死者の軍勢』に加群を加えようとした際には、 「死んでも成し遂げるという先生の決意を何だと思ってやがる」 とオティヌスを糾弾したが、結局聞き入れられる事は無かった。 【備考】 作者評して曰く、 「何だか偉そうな事を言ってる割に大した活躍をしていない」。 なお、姉である雲川芹亜にも共通する特徴との事。 マリアン=スリンゲナイヤーと名前が似ている。「木原加群(ベルシ)」を通して対比されたキャラクターだと思われる。
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(二日目)12時12分 第三学区。 学園都市が誇る高級ホテルの一つであり、七七階建ての『セブンズタワーホテル』の屋上に、プリズムルームと呼ばれるスウィートルームがあった。 二階続きの部屋であり、七七階へ上る階段から、中央一面がガラス張りの大きなウィンドウで第三学区を見渡せる。 高級ホテルの最高級の部屋らしく、煌びやかな装飾品で彩られていた。 高級な部屋には似つかわしくない黒の延長コードが、周囲に何本もあり、それは二階のベッドルームの机にある、五台のノートパソコンに繋がっていた。パソコンの前に人はいないが、膨大なデータが自動的に処理されていた。 一階には黒色のスーツケースが一〇個ほど置いてあった。中身は複雑な機械が入っており、コードが何本の接続されている。 快晴な空と第三学区の街並みが見渡せるプリズムルームに、黒スーツを着込んだ三人の男女がいた。 一階の中央には大きなガラスのテーブルがあり、その上には三つのグラスと、トランプ、そしてカジノチップが置かれていた。 スーツを着込んだ三人はテーブルを囲んでいる。第一二学区では『ドラゴン』と天草式が死闘を繰り広げている最中だというのに、彼らは平然と金銭を賭けたポーカーを興じていた。 「今頃、『一方通行(アクセラレータ)』はドラゴンにやられて、インデックスに治療魔術を施されてる頃かにゃー」 普段のB系スタイルとは打って変わって、真新しい黒スーツを着た土御門元春は、スペードのⅧ、一枚をテーブルに置いた。彼はネクタイを外し、シャツを第二ボタンまで外し、金色のネックレスが見えている。 透明のガラステーブルの上にある、トランプの山札から一枚のカードを引く。 「結局のところ、『ドラゴン』って一体何なのよ?」 ハートのⅡとダイヤのⅤを捨てた結標淡希は、土御門と同じく、トランプの山札から二枚のカードを引いた。彼女は上着を脱ぎ、シャツに赤いネクタイをしていた。長い赤毛を後ろで二つに結んでいる髪型は今も変わっていない。 「まあ、一言でいえば『神』だにゃー。それも神を罰し、神を殺す役割を持った例外中の例外の『神(カイブツ)』。 司馬遷の史記に記されているように、その存在は二〇〇〇年以上前から確認されている」 「で、アレイスターはドラゴンを手に入れて、世界の掌握を目論んでいたと…」 土御門と結標の会話中に、海原光貴の姿をした魔術師、エツァリは手札から四枚のカードを捨て、同数のカードを山札から引いた。 彼は土御門とは違い、ネクタイも上着も脱がず、スーツ姿のまま、背もたれの高い白の椅子に座っていた。 「…ドラゴンの前では天使も悪魔も歯が立ちません。なんせドラゴンの能力は神を殺すことに特化してますからね。 それに、上条さんに備わっている能力はさらに性質が悪い。ドラゴンを抑える鞘として能力とはいえ、その能力は最上級でしょう。『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除して、その効果範囲を広げると手の付けようがありません」 エツァリの言葉に、結標淡希は続いた。 ダイヤのジャックと、クローバーのⅡを捨て、二枚のカードを引いた。 「…確か、全身の『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除すると、超能力や魔術だけではなく、現実の物体まで打ち消すから、小さなブラックホールみたいに周囲の物質全てを消滅させていくんでしょ?流石はドラゴンを内包する器ね。 何が『無能力者(レベル0)』よ。 ドラゴンの能力を使わずとも、『一方通行(アクセラレータ)』と対等に渡り合えるっていうのに…」 土御門は手元にある五枚のカードを全て捨て、山札から五枚のカードを引いた。 オレンジサワーが入ったグラスを手に取り、口に含んだ。 「『吸血殺し(ディープブラッド)』が吸血鬼の存在を証明するように、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は幻想の証明していた。では、幻想とは一体何を指しているのか?」 エツァリは一枚カードをきって、土御門に返答した。 「魔術と超能力を発現する『神の物質(ゴッドマター)』の存在の証明じゃありませんでした?私たち魔術側、いや、今や我々は『神上派閥』ですが、魔術側ではゴッドマターは『エーテル』、あるいは『賢者の石』とも言われてますね」 くくくっ、と笑って土御門は言葉を放った。 彼の向かい側に座っている結標淡希は、また二枚のカードを捨てた。 「『妹達(シスターズ)』の超能力発現の結果によって、魂の存在がなされ、カウンタースキルの存在が、対象物の存在を証明した。これは因果関係を証明する科学的理論には十分通用する。まあ、それを受け入れられるほど、世間は賢くないがな。 だが、これほど大規模な戦闘が展開されれば、ドラゴンの存在は認められるかも知れない」 三人はお互いの手札をテーブルに置いた。 土御門がAのスリーカードで、エツァリ吐血標段望はツーペアで会った。二人の手元にあった赤いカジノチップが土御門の手元に動いた。結標は『座標移動(ムーブポイント)』で、土御門のチップの上に移動させた。 彼女はストローで、グラスに入ったカシスソーダを飲んだ。 「上条当麻の『竜王の顎(ドラゴンストライク)』。 『一方通行(アクセラレータ)』の『竜王の翼(ドラゴンウィング)』。 フィアンマの『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』。 オッレルスの『竜王の鱗(ドラゴンアーマー)』。 ドラゴンの元リーダーは『竜王の脚(ドラゴンソニック)』を持っていたわね。 それと…『ドラゴンテイル(竜王の剣尾)』でしたっけ?」 「やつらはドラゴンの能力以外に強大な能力を兼ね備えていた。 例えるなら「核兵器」だけを所持していても、使えなければ意味は無いことと同じぜよ。だからこそ、「核兵器」を使わせないほどの軍事力が必要なんだ。 カミやんの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』やアクセラ…いや、シンラの『ベクトル操作』やら、『北欧王座(フリズスキャルヴ)』やらをな…だが、フィアンマは別だ。あいつは自分自身のドラゴンの能力に気づき、自ら開発していた」 エツァリは、散らばったトランプを集めて、ディーラーと同じようにリッフルシャッフルを二回、ミックスを一回行い、三人に五枚のカードを配った。 彼はグラスに入ったミネラルウォーターを飲み干す。そして、土御門に対して口を開いた。 「五〇〇年以上も生きていれば嫌でも気づくんじゃないですか?でも、上条さんに、あっさりドラゴンの能力を奪われちゃいましたけどね」 「それが引き金だったな。カミやんの中にいるドラゴンが覚醒を始めた。本来、起こりうるはずのなかった現象が起こり始めた」 「だから、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『パンドラの箱』っていう表現は的を得てたワケね。納得」 結標淡希は手元のカードを見て、口を緩めた。 「でも、ドラゴンの頭部を持っていた上条さんに、いずれ散らばったドラゴンの肉体が集積されるのは運命だったのでしょう?ドラゴンは、上条さんとは異なる、明確な意思を持っている」 「いや、ドラゴンが覚醒すること自体、不測の事態だったのさ」 「「?」」 土御門の言葉に二人は首をかしげた。 その様子を見た土御門は、三枚のカードを捨てて、山札から三枚のカードを引きながら言葉を紡いだ。 「前にも言っただろう?ドラゴンの能力は核兵器のような代物だと。彼らが持つ強大な能力は、ドラゴンを覚醒させない為に与えられた能力なのさ。 カミやんはともかく、シンラやオッレウスを窮地に追い詰めることなど、国家規模で挑まなければ出来はしない。 放っておけば、彼らはドラゴンの力を引き出さず、一生を終えるはずだった」 エツァリは、五枚のカードを全て捨て去り、静かな声で言った。 「…ドラゴンを覚醒させるために、アレイスターは彼らを危機的状況に陥らせた訳ですか。そんな馬鹿げたことに、私たちは翻弄され、仲間たちは死んでいった……」 彼の独白が、重い空気を生み出した。 結標淡希は無言を通し、土御門元春は言葉を続ける。 「カミやんに秘められている『ドラゴン』の存在を知った魔術側は『禁書目録』を作り、時期を見計らって、偶然を装いながら、日本に送り込んだ。禁書目録が女であることもそういう意図があったからだ。 カミやんも男だ。二人に恋愛感情でも芽生えれば、上条当麻の手綱につなぐことができる。牽いては、魔術側が『ドラゴン』を所有することになる。まあ、そもそもローラ=スチュアートにとっても万一の保険であって、『ドラゴン』が覚醒するとは夢にも思わなかっただろうよ。 それに、実際は違う結果になったがにゃー。まさか、あの『超電磁砲(レールガン)』を選ぶとは…意外だったにゃー」 意味ありげな視線を土御門はエツァリに送った。 ニヤついた二人の視線に気づいたエツァリは、表情に何の起伏も無く、返答した。 「そうですか?私には当然の結果と思いましたが」 「エツァリ…あんた、随分とあっさりしてるのね。意外だわ」 「美琴さんが幸せならそれでいいんです。私では、今のような彼女の笑顔を作りだすことはできないでしょう。一生ね」 「…日本人の感覚がかなり板についてきたわね。一言忠告しておくけど、あんたって、絶対女を幸せにできないタイプよ。私が言うのもなんだけど、彼氏に独占されてるっていう感覚を与えるのが大事なのよ。 プラトニックな関係が築けるのは、文字の上だけよ。肉体的なスキンシップは過度なくらいが丁度いいの」 「カミやんも確かそうだったにゃー。『超電磁砲(レールガン)』と深い関係を持ち始めた頃から、イキイキしてるっつーか、男のフェロモンが出てきたっつーか…というかあいつ等はもう少し、自分の立場と節度を考えた方がいいな。会ったら人目憚らず…」 顎に手を添えて土御門はブツブツとつぶやき始めた。 結標淡希は嘆息しながら、手札を置いた。 ダイヤのフラッシュ。土御門はノーペア。エツァリは前回と同じ、ツーペアだ。 カジノチップが結標淡希の『座標移動(ムーブポイント)』によって、瞬時に手元に来た。 散らばったトランプは、一つの束になって、瞬時に土御門の眼前に移動した。 「…人の幸せは十人十色ですから。それに、私には守る人が、もう一人いますからね」 土御門のリッフルシャッフルの手が、一瞬だけ止まった。 結標淡希はエツァリに言葉を濁す。 「…彼女、生きてるの?」 「意識はありますが、肉体はありません。ですが、魔道書の中で生き続けています。私と共にね」 「…そう」 「そんな顔をしないでください。結標さん。話を持ちだしたのは私ですから…それに、私はまだいいほうです…貴女は…」 「……私は大丈夫よ。守るべき人たちを失って、一時期は自暴自棄になってたけど、生きる理由はちゃんとあるから」 土御門がトランプをパラパラとめくる音だけが、広い部屋に木霊していた。 日の光が内部を照らしているとは言え、彼らの心を照らしだす訳ではない。白い大きなカーテンに遮られている太陽は、まだ明るい。 スーツ姿の土御門元春はニヤッと笑うと、その空気を打ち砕くように、 「この暗ーい雰囲気はダメダメぜぃ。何事もポジティブにやることが成功するコツだにゃー。 それに結標。 本作戦の要は「お前」なんだぜぃ?頼むぜ。 『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』、結標淡希さんよ」 浮ついた土御門のセリフに、結標は冷ややかな目を向けた。 「…学園都市の内部抗争やら、先の『戦争』やらで『超能力者(レベル5)』を失って、現在は五人しかいないからね。単に押し上げられてなっただけよ。それに、言い方が嫌味にしか聞こえないんだけど」 エツァリは苦笑しながら、結標淡希に言った。 「まあまあ、二人とも。それぐらいにして、続きをしませんか?私もやっとポーカーの要領が分かってきたので、金銭の損得はともかく、少しでも腕を磨きたいんですよ。最も、作戦が失敗すれば、これが最期になりますし…」 「…アンタねぇ。喧嘩売ってんの?」 「あっはははは!エツァリ!お前、結構天然だな」 土御門は大きく笑いだすと、トランプのカードを配り始めた。 その時、 「待って」 結標淡希の一言が土御門の手をとめた。 彼女は上着の胸ポケットから、バイブレーションが作動しているピンク色の携帯を取り出すと、開いてモニターを確認した。 ピンポーン…というインターホンが鳴り、三人の目つきが変わる。三人は即座に席を立った。 そして、コンコンと重厚なドアをノックする音が聞こえた。 現在、学園都市には人はいない。 統括理事会合意の元、迅速な強制避難命令によって、核シェルターに二〇〇万人以上の人間が避難している。 このホテルはいる人間も『グループ』の三人のメンバーを除けば、無人であるはずだ。 エツァリは魔道書の原典の能力を発動させ、顔の右半身に紫のタトゥーのような紋章が浮かび上がった。 三人の間に、一種の緊張感が漂った時、 「私にも参加させてくれないか?」 という、呑気な言葉が、張り詰めた空気をブチ壊した。 プリズムルームの中央にあるガラス張りの風景を背に、一人の少女が立っていた。 『グループ』のメンバーと同じく、黒のスーツを身に纏っている。両手には黒革のグローブをつけ、背中にはハーフマントを備えていた。 ロングの黒髪をかき上げ、三人の表情を見る。彼女は歪んだ笑みを浮かべながら口を開いた。 「流石は『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』。私が指定した座標に寸分の狂いもない。まあ、これくらい出来なければ、貴女を使いはしなかったけど」 少女の姿を確認するや否や、『グループ』のメンバーは警戒を解いた。 エツァリの顔に浮かび上がっていた紋章は消え、スーツの袖を整えた。土御門はやれやれ、といった感じで手を振っていた。 「…そろそろ来る頃と思ってたよ。雲川芹亜。俺とエツァリは、とっくに仕事を終えてるぜよ。…しっかし、結標、サプライズにしては少々きついぜ」 「…全くです」 結標淡希と、彼女の能力によってこの部屋に招かれた少女、雲川芹亜はこの状況をニヤニヤしながら楽しんでいた。 雲川はその状況を見て、プッと声をもらすと、腹をかかえながら微笑した。 「土御門…お前のその格好、全く似合ってないぞ」 サングラスをかけ、スーツ姿の土御門は口を締めて、雲川を軽く睨んだ。 「俺は反対意見を述べるにゃー。『神上派閥』の制服にするんだろ?スーツなんて大人になりゃ何時でも着れるぜよ。短い青春時代にしか着れない服を着るべきだ。それにこれはお前が発案者だと聞いたが?」 「作戦部門『ジョーカー』のリーダーの私に対して、その発言は却下させてもらう。それに『神上派閥』の総帥様は随分と気に入ってくれたが?」 「カミやんが?」 土御門の呆けたリアクションに、雲川芹亜は腕を組み、フッ、と笑った。 「学園都市では『上条勢力』という通り名が有名だぞ。まあ、私は『神上派閥』の方が気に入ってるけど。 …今はまだ公には目立っていないが、我々は既に世界勢力の仲間入りだ。その総帥として、彼には相応の帝王学と上級社会のルールを身に付けねばならん。無論、今まで日の当らなかったお前たちも例外ではないけど…」 「…わかってるわよ」 結標淡希は皆に聞こえるほどの大きい溜息をついた。 「それと、『神上派閥』のトレードマークのアイディアを随時募集中だ」 雲川はそう言うと、ガラステーブルにある、土御門の隣の椅子に腰かけた。 「…考えておきます……はぁ、世界の終焉に直面しているとは、とても思えないですね」 雲川芹亜の視線を受けたエツァリは、さらに苦笑した。三人とも彼女に続いて席に座り、ポーカーを再開した。 土御門がトランプを手に、リッフルシャッフルを再開した。 「ルールは?」 「レットイットランドだ。時代遅れのラスベガスでやるホールデムやセブンスタッドじゃない。分かるか?」 「ああ。知識としては知っている。なんせ、私も初めてだからな」 「はぁ?」 雲川の意外な言葉に、土御門だけは無く、ほかの二人も首をかしげた。 「これは確率論の問題だ。土御門、リッフルシャッフルを八回繰り返すと元に戻るということは、ド素人の私でも知っているぞ?」 「…流石だな」 そう言われた土御門元春はリッフルシャッフルをやめ、ミックスを三回行った。そして、五枚のカードが四人の手元に配られた。 雲川芹亜に、合計一〇〇万円の金を換金したカジノチップが置かれた。 配られたカードを三人が手に取ろうとした時、彼女は唐突に言った。 「結標。この回のゲームで私に勝ったら、報酬を二倍にしよう」 「ぶフっ!?」 彼女の言葉に、結標淡希は口にしていたカシスソーダを吹きだした。急いで、上着のポケットからハンカチを取り出すと、強引に口元を拭いた。 白いハンカチに口紅がべっとりと付着していた。 「ちょっと待って!?振り込まれた金額を確認した時、私、一瞬意識が跳びそうになったくらいなのに…!でも、私が負けた時はどんな罰ゲームがあるわけ?」 「フフフ…別に、金銭的な取引ではない。それにお前が受け取った報酬は当然の金額だ。本作戦において、お前の立ち位置がそれほど重要だということだ。理解しろ。 貴様が失敗すれば世界は終わる。だからこそ、それ相応の報酬も用意した。ただそれだけだ。 ……それとな、罰ゲームは無い。ただ、ある『計画』に加勢してくれるだけでいいのだ。我らの総帥様が絡む、ある『計画』にね…」 彼女の不敵な笑顔を見た三人は、ゾクッ!と凍りついた。 「我らの総帥様が関係する」というだけで、土御門は大体の事態が理解できた。雲川芹亜も、実は『とある男を巡るラブレース』に参加していることは知っていた。 彼は心の中で、その元凶たる人物に冥福を祈った。 (…モテモテだな。頑張れ、カミやん。でも、全然羨ましくないぜよ) 結標淡希は雲川の賭けを断ろうと思ったが、彼女の性格を知っている為、断れば何をされるのか分かったのではないことは明白だったので、 「…いいわ。乗ってあげる。でも一つだけ条件。犯罪行為はダメだからね」 「当たり前だ」 彼女たちの取引が成立したところで、四人は手元にあるカードを見た。 クスリ、と結標は不敵に笑った。 「ねえ、私、勝っちゃうけど…本当にいいのよね」 その言葉を、雲川は不敵な笑みと共に答えた。 彼女たちの悪魔じみた笑顔に怖気づいた男たちは、ブルブルと震えるだけだった。土御門元春とエツァリはソロリソロリと、手札のカードを交換し、結標淡希と雲川芹亜は一枚もカードを捨てなかった。 数秒で男二人のカードターンは終了し、ショーダウンは行われた。 土御門元春はスペードのⅦとハートのⅦのワンペア。 エツァリはⅨとⅩのツーペア。 そして結標淡希は、 「Ⅴのフォーカード!」 ザッ、とガラステーブルに置かれた五枚のカードの内、間違いなく四枚のⅤが並んでいた。 二人の男と、うおおおっ!と声を上げる。 フォーカードの配当は五〇倍。彼女が賭けたチップはブルーチップ一枚。ブルーチップは一枚当たり五万円。これで彼女が勝てば、二五〇万円の利益となる。 結標淡希は赤毛の二つの髪を揺らせて、腕を組んだ。嬉々とした声が彼女の口から出る。 「さぁ?貴女はどうなの?フォーカードは役としては二番目に強い!私に勝つにはストレートフラッシュしか無い!貴女の手札は一体どうなっているのかしら?」 盛り上がる三人を見て、彼女はじっと手札を握ったままだった。 そして、雲川芹亜は突然、大きな高笑いを上げた。 「……ふっ、ふははははははは!」 その大声に怯んだ三人は、彼女の不敵な笑顔に気圧されていた。 「私は昔から賭けごとは嫌いでな…勝率が低く、不安定な勝負はしない主義なんだ。しかし、私が信じる確率論や数学的理論とはとても奇妙なものなんだよ。なぜなら、それを理論的に証明できたとしても、現実には中々当てはまらないからだ…」 「……何が、言いたいのよ?」 「つまりな。私が賭け事に強いという事実は、数学的には証明できないと言いたいのだ」 雲川は手札をガラステーブルに置いた。 三人の表情は凍りついた。 「ハートのロイヤルストレートフラッシュ」 彼らは絶句した。 一発で最強の役を出した雲川芹亜の強運も驚愕に値するが、彼らが凍りついた理由はそれだけはなかった。 レットイットランドのルール。 このゲームはホールデムとカリビアンスタッドを合わせて簡単にしたようなものであり、このルールを適応した場合、ロイヤルストレートフラッシュの賭け金に対する配当は一〇〇〇倍。 雲川芹亜が提示したチップは、レッドチップ一枚。すなわち、一〇万円に相当する。 つまり… 「「「い、いいい、いち、一億円―――――――――――――――――――――――?!!」」」 男女の絶叫がこのプリズムルームに木霊した。 慌てふためく彼らを余所に、ギャンブルに驚異の才能を発揮した雲川芹亜はクスリと笑うと、唖然としている結標淡希に告げた。 「…ふむ。このまま、お前の報酬をごっそり頂くのも悪くないな。さて、延長戦と行くか?『グループ』の諸君」 「や、やめてー!このままだと、俺は一生、雲川に借金を返済する人生を辿ることになるにゃー!」 「私は、一年ほどで返済できると思いますが…」 「……………あ………あ…」 統括理事会の一人である貝瀬木次聡のブレインであり、「神上派閥」の作戦部門「ジョーカー」のリーダーを担い、また、その総帥である上条当麻に恋する乙女でもある少女、雲川芹亜。 は意地悪い笑顔を共に、言葉を放つ。 「私たちが動き出すにはまだ時間はある。それまでこのハイレートゲームを続行しようではないか。 なぁに…いくら損をしたところで意味は無い。 なぜなら、今日、この世界が終わるかもしれないのだからな」
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(二日目)12時12分 第三学区。 学園都市が誇る高級ホテルの一つであり、七七階建ての『セブンズタワーホテル』の屋上に、プリズムルームと呼ばれるスウィートルームがあった。 二階続きの部屋であり、七七階へ上る階段から、中央一面がガラス張りの大きなウィンドウで第三学区を見渡せる。 高級ホテルの最高級の部屋らしく、煌びやかな装飾品で彩られていた。 高級な部屋には似つかわしくない黒の延長コードが、周囲に何本もあり、それは二階のベッドルームの机にある、五台のノートパソコンに繋がっていた。パソコンの前に人はいないが、膨大なデータが自動的に処理されていた。 一階には黒色のスーツケースが一〇個ほど置いてあった。中身は複雑な機械が入っており、コードが何本の接続されている。 快晴な空と第三学区の街並みが見渡せるプリズムルームに、黒スーツを着込んだ三人の男女がいた。 一階の中央には大きなガラスのテーブルがあり、その上には三つのグラスと、トランプ、そしてカジノチップが置かれていた。 スーツを着込んだ三人はテーブルを囲んでいる。第一二学区では『ドラゴン』と天草式が死闘を繰り広げている最中だというのに、彼らは平然と金銭を賭けたポーカーを興じていた。 「今頃、『一方通行(アクセラレータ)』はドラゴンにやられて、インデックスに治療魔術を施されてる頃かにゃー」 普段のB系スタイルとは打って変わって、真新しい黒スーツを着た土御門元春は、スペードのⅧ、一枚をテーブルに置いた。彼はネクタイを外し、シャツを第二ボタンまで外し、金色のネックレスが見えている。 透明のガラステーブルの上にある、トランプの山札から一枚のカードを引く。 「結局のところ、『ドラゴン』って一体何なのよ?」 ハートのⅡとダイヤのⅤを捨てた結標淡希は、土御門と同じく、トランプの山札から二枚のカードを引いた。彼女は上着を脱ぎ、シャツに赤いネクタイをしていた。長い赤毛を後ろで二つに結んでいる髪型は今も変わっていない。 「まあ、一言でいえば『神』だにゃー。それも神を罰し、神を殺す役割を持った例外中の例外の『神(カイブツ)』。 司馬遷の史記に記されているように、その存在は二〇〇〇年以上前から確認されている」 「で、アレイスターはドラゴンを手に入れて、世界の掌握を目論んでいたと…」 土御門と結標の会話中に、海原光貴の姿をした魔術師、エツァリは手札から四枚のカードを捨て、同数のカードを山札から引いた。 彼は土御門とは違い、ネクタイも上着も脱がず、スーツ姿のまま、背もたれの高い白の椅子に座っていた。 「…ドラゴンの前では天使も悪魔も歯が立ちません。なんせドラゴンの能力は神を殺すことに特化してますからね。 それに、上条さんに備わっている能力はさらに性質が悪い。ドラゴンを抑える鞘として能力とはいえ、その能力は最上級でしょう。『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除して、その効果範囲を広げると手の付けようがありません」 エツァリの言葉に、結標淡希は続いた。 ダイヤのジャックと、クローバーのⅡを捨て、二枚のカードを引いた。 「…確か、全身の『現実守護(リアルディフェンダー)』を解除すると、超能力や魔術だけではなく、現実の物体まで打ち消すから、小さなブラックホールみたいに周囲の物質全てを消滅させていくんでしょ?流石はドラゴンを内包する器ね。 何が『無能力者(レベル0)』よ。 ドラゴンの能力を使わずとも、『一方通行(アクセラレータ)』と対等に渡り合えるっていうのに…」 土御門は手元にある五枚のカードを全て捨て、山札から五枚のカードを引いた。 オレンジサワーが入ったグラスを手に取り、口に含んだ。 「『吸血殺し(ディープブラッド)』が吸血鬼の存在を証明するように、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は幻想の証明していた。では、幻想とは一体何を指しているのか?」 エツァリは一枚カードをきって、土御門に返答した。 「魔術と超能力を発現する『神の物質(ゴッドマター)』の存在の証明じゃありませんでした?私たち魔術側、いや、今や我々は『神上派閥』ですが、魔術側ではゴッドマターは『エーテル』、あるいは『賢者の石』とも言われてますね」 くくくっ、と笑って土御門は言葉を放った。 彼の向かい側に座っている結標淡希は、また二枚のカードを捨てた。 「『妹達(シスターズ)』の超能力発現の結果によって、魂の存在がなされ、カウンタースキルの存在が、対象物の存在を証明した。これは因果関係を証明する科学的理論には十分通用する。まあ、それを受け入れられるほど、世間は賢くないがな。 だが、これほど大規模な戦闘が展開されれば、ドラゴンの存在は認められるかも知れない」 三人はお互いの手札をテーブルに置いた。 土御門がAのスリーカードで、エツァリ吐血標段望はツーペアで会った。二人の手元にあった赤いカジノチップが土御門の手元に動いた。結標は『座標移動(ムーブポイント)』で、土御門のチップの上に移動させた。 彼女はストローで、グラスに入ったカシスソーダを飲んだ。 「上条当麻の『竜王の顎(ドラゴンストライク)』。 『一方通行(アクセラレータ)』の『竜王の翼(ドラゴンウィング)』。 フィアンマの『竜王の鉤爪(ドラゴンクロー)』。 オッレルスの『竜王の鱗(ドラゴンアーマー)』。 ドラゴンの元リーダーは『竜王の脚(ドラゴンソニック)』を持っていたわね。 それと…『ドラゴンテイル(竜王の剣尾)』でしたっけ?」 「やつらはドラゴンの能力以外に強大な能力を兼ね備えていた。 例えるなら「核兵器」だけを所持していても、使えなければ意味は無いことと同じぜよ。だからこそ、「核兵器」を使わせないほどの軍事力が必要なんだ。 カミやんの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』やアクセラ…いや、シンラの『ベクトル操作』やら、『北欧王座(フリズスキャルヴ)』やらをな…だが、フィアンマは別だ。あいつは自分自身のドラゴンの能力に気づき、自ら開発していた」 エツァリは、散らばったトランプを集めて、ディーラーと同じようにリッフルシャッフルを二回、ミックスを一回行い、三人に五枚のカードを配った。 彼はグラスに入ったミネラルウォーターを飲み干す。そして、土御門に対して口を開いた。 「五〇〇年以上も生きていれば嫌でも気づくんじゃないですか?でも、上条さんに、あっさりドラゴンの能力を奪われちゃいましたけどね」 「それが引き金だったな。カミやんの中にいるドラゴンが覚醒を始めた。本来、起こりうるはずのなかった現象が起こり始めた」 「だから、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『パンドラの箱』っていう表現は的を得てたワケね。納得」 結標淡希は手元のカードを見て、口を緩めた。 「でも、ドラゴンの頭部を持っていた上条さんに、いずれ散らばったドラゴンの肉体が集積されるのは運命だったのでしょう?ドラゴンは、上条さんとは異なる、明確な意思を持っている」 「いや、ドラゴンが覚醒すること自体、不測の事態だったのさ」 「「?」」 土御門の言葉に二人は首をかしげた。 その様子を見た土御門は、三枚のカードを捨てて、山札から三枚のカードを引きながら言葉を紡いだ。 「前にも言っただろう?ドラゴンの能力は核兵器のような代物だと。彼らが持つ強大な能力は、ドラゴンを覚醒させない為に与えられた能力なのさ。 カミやんはともかく、シンラやオッレウスを窮地に追い詰めることなど、国家規模で挑まなければ出来はしない。 放っておけば、彼らはドラゴンの力を引き出さず、一生を終えるはずだった」 エツァリは、五枚のカードを全て捨て去り、静かな声で言った。 「…ドラゴンを覚醒させるために、アレイスターは彼らを危機的状況に陥らせた訳ですか。そんな馬鹿げたことに、私たちは翻弄され、仲間たちは死んでいった……」 彼の独白が、重い空気を生み出した。 結標淡希は無言を通し、土御門元春は言葉を続ける。 「カミやんに秘められている『ドラゴン』の存在を知った魔術側は『禁書目録』を作り、時期を見計らって、偶然を装いながら、日本に送り込んだ。禁書目録が女であることもそういう意図があったからだ。 カミやんも男だ。二人に恋愛感情でも芽生えれば、上条当麻の手綱につなぐことができる。牽いては、魔術側が『ドラゴン』を所有することになる。まあ、そもそもローラ=スチュアートにとっても万一の保険であって、『ドラゴン』が覚醒するとは夢にも思わなかっただろうよ。 それに、実際は違う結果になったがにゃー。まさか、あの『超電磁砲(レールガン)』を選ぶとは…意外だったにゃー」 意味ありげな視線を土御門はエツァリに送った。 ニヤついた二人の視線に気づいたエツァリは、表情に何の起伏も無く、返答した。 「そうですか?私には当然の結果と思いましたが」 「エツァリ…あんた、随分とあっさりしてるのね。意外だわ」 「美琴さんが幸せならそれでいいんです。私では、今のような彼女の笑顔を作りだすことはできないでしょう。一生ね」 「…日本人の感覚がかなり板についてきたわね。一言忠告しておくけど、あんたって、絶対女を幸せにできないタイプよ。私が言うのもなんだけど、彼氏に独占されてるっていう感覚を与えるのが大事なのよ。 プラトニックな関係が築けるのは、文字の上だけよ。肉体的なスキンシップは過度なくらいが丁度いいの」 「カミやんも確かそうだったにゃー。『超電磁砲(レールガン)』と深い関係を持ち始めた頃から、イキイキしてるっつーか、男のフェロモンが出てきたっつーか…というかあいつ等はもう少し、自分の立場と節度を考えた方がいいな。会ったら人目憚らず…」 顎に手を添えて土御門はブツブツとつぶやき始めた。 結標淡希は嘆息しながら、手札を置いた。 ダイヤのフラッシュ。土御門はノーペア。エツァリは前回と同じ、ツーペアだ。 カジノチップが結標淡希の『座標移動(ムーブポイント)』によって、瞬時に手元に来た。 散らばったトランプは、一つの束になって、瞬時に土御門の眼前に移動した。 「…人の幸せは十人十色ですから。それに、私には守る人が、もう一人いますからね」 土御門のリッフルシャッフルの手が、一瞬だけ止まった。 結標淡希はエツァリに言葉を濁す。 「…彼女、生きてるの?」 「意識はありますが、肉体はありません。ですが、魔道書の中で生き続けています。私と共にね」 「…そう」 「そんな顔をしないでください。結標さん。話を持ちだしたのは私ですから…それに、私はまだいいほうです…貴女は…」 「……私は大丈夫よ。守るべき人たちを失って、一時期は自暴自棄になってたけど、生きる理由はちゃんとあるから」 土御門がトランプをパラパラとめくる音だけが、広い部屋に木霊していた。 日の光が内部を照らしているとは言え、彼らの心を照らしだす訳ではない。白い大きなカーテンに遮られている太陽は、まだ明るい。 スーツ姿の土御門元春はニヤッと笑うと、その空気を打ち砕くように、 「この暗ーい雰囲気はダメダメぜぃ。何事もポジティブにやることが成功するコツだにゃー。 それに結標。 本作戦の要は「お前」なんだぜぃ?頼むぜ。 『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』、結標淡希さんよ」 浮ついた土御門のセリフに、結標は冷ややかな目を向けた。 「…学園都市の内部抗争やら、先の『戦争』やらで『超能力者(レベル5)』を失って、現在は五人しかいないからね。単に押し上げられてなっただけよ。それに、言い方が嫌味にしか聞こえないんだけど」 エツァリは苦笑しながら、結標淡希に言った。 「まあまあ、二人とも。それぐらいにして、続きをしませんか?私もやっとポーカーの要領が分かってきたので、金銭の損得はともかく、少しでも腕を磨きたいんですよ。最も、作戦が失敗すれば、これが最期になりますし…」 「…アンタねぇ。喧嘩売ってんの?」 「あっはははは!エツァリ!お前、結構天然だな」 土御門は大きく笑いだすと、トランプのカードを配り始めた。 その時、 「待って」 結標淡希の一言が土御門の手をとめた。 彼女は上着の胸ポケットから、バイブレーションが作動しているピンク色の携帯を取り出すと、開いてモニターを確認した。 ピンポーン…というインターホンが鳴り、三人の目つきが変わる。三人は即座に席を立った。 そして、コンコンと重厚なドアをノックする音が聞こえた。 現在、学園都市には人はいない。 統括理事会合意の元、迅速な強制避難命令によって、核シェルターに二〇〇万人以上の人間が避難している。 このホテルはいる人間も『グループ』の三人のメンバーを除けば、無人であるはずだ。 エツァリは魔道書の原典の能力を発動させ、顔の右半身に紫のタトゥーのような紋章が浮かび上がった。 三人の間に、一種の緊張感が漂った時、 「私にも参加させてくれないか?」 という、呑気な言葉が、張り詰めた空気をブチ壊した。 プリズムルームの中央にあるガラス張りの風景を背に、一人の少女が立っていた。 『グループ』のメンバーと同じく、黒のスーツを身に纏っている。両手には黒革のグローブをつけ、背中にはハーフマントを備えていた。 ロングの黒髪をかき上げ、三人の表情を見る。彼女は歪んだ笑みを浮かべながら口を開いた。 「流石は『超能力者(レベル5)』第五位の『座標移動(ムーブポイント)』。私が指定した座標に寸分の狂いもない。まあ、これくらい出来なければ、貴女を使いはしなかったけど」 少女の姿を確認するや否や、『グループ』のメンバーは警戒を解いた。 エツァリの顔に浮かび上がっていた紋章は消え、スーツの袖を整えた。土御門はやれやれ、といった感じで手を振っていた。 「…そろそろ来る頃と思ってたよ。雲川芹亜。俺とエツァリは、とっくに仕事を終えてるぜよ。…しっかし、結標、サプライズにしては少々きついぜ」 「…全くです」 結標淡希と、彼女の能力によってこの部屋に招かれた少女、雲川芹亜はこの状況をニヤニヤしながら楽しんでいた。 雲川はその状況を見て、プッと声をもらすと、腹をかかえながら微笑した。 「土御門…お前のその格好、全く似合ってないぞ」 サングラスをかけ、スーツ姿の土御門は口を締めて、雲川を軽く睨んだ。 「俺は反対意見を述べるにゃー。『神上派閥』の制服にするんだろ?スーツなんて大人になりゃ何時でも着れるぜよ。短い青春時代にしか着れない服を着るべきだ。それにこれはお前が発案者だと聞いたが?」 「作戦部門『ジョーカー』のリーダーの私に対して、その発言は却下させてもらう。それに『神上派閥』の総帥様は随分と気に入ってくれたが?」 「カミやんが?」 土御門の呆けたリアクションに、雲川芹亜は腕を組み、フッ、と笑った。 「学園都市では『上条勢力』という通り名が有名だぞ。まあ、私は『神上派閥』の方が気に入ってるけど。 …今はまだ公には目立っていないが、我々は既に世界勢力の仲間入りだ。その総帥として、彼には相応の帝王学と上級社会のルールを身に付けねばならん。無論、今まで日の当らなかったお前たちも例外ではないけど…」 「…わかってるわよ」 結標淡希は皆に聞こえるほどの大きい溜息をついた。 「それと、『神上派閥』のトレードマークのアイディアを随時募集中だ」 雲川はそう言うと、ガラステーブルにある、土御門の隣の椅子に腰かけた。 「…考えておきます……はぁ、世界の終焉に直面しているとは、とても思えないですね」 雲川芹亜の視線を受けたエツァリは、さらに苦笑した。三人とも彼女に続いて席に座り、ポーカーを再開した。 土御門がトランプを手に、リッフルシャッフルを再開した。 「ルールは?」 「レットイットランドだ。時代遅れのラスベガスでやるホールデムやセブンスタッドじゃない。分かるか?」 「ああ。知識としては知っている。なんせ、私も初めてだからな」 「はぁ?」 雲川の意外な言葉に、土御門だけは無く、ほかの二人も首をかしげた。 「これは確率論の問題だ。土御門、リッフルシャッフルを八回繰り返すと元に戻るということは、ド素人の私でも知っているぞ?」 「…流石だな」 そう言われた土御門元春はリッフルシャッフルをやめ、ミックスを三回行った。そして、五枚のカードが四人の手元に配られた。 雲川芹亜に、合計一〇〇万円の金を換金したカジノチップが置かれた。 配られたカードを三人が手に取ろうとした時、彼女は唐突に言った。 「結標。この回のゲームで私に勝ったら、報酬を二倍にしよう」 「ぶフっ!?」 彼女の言葉に、結標淡希は口にしていたカシスソーダを吹きだした。急いで、上着のポケットからハンカチを取り出すと、強引に口元を拭いた。 白いハンカチに口紅がべっとりと付着していた。 「ちょっと待って!?振り込まれた金額を確認した時、私、一瞬意識が跳びそうになったくらいなのに…!でも、私が負けた時はどんな罰ゲームがあるわけ?」 「フフフ…別に、金銭的な取引ではない。それにお前が受け取った報酬は当然の金額だ。本作戦において、お前の立ち位置がそれほど重要だということだ。理解しろ。 貴様が失敗すれば世界は終わる。だからこそ、それ相応の報酬も用意した。ただそれだけだ。 ……それとな、罰ゲームは無い。ただ、ある『計画』に加勢してくれるだけでいいのだ。我らの総帥様が絡む、ある『計画』にね…」 彼女の不敵な笑顔を見た三人は、ゾクッ!と凍りついた。 「我らの総帥様が関係する」というだけで、土御門は大体の事態が理解できた。雲川芹亜も、実は『とある男を巡るラブレース』に参加していることは知っていた。 彼は心の中で、その元凶たる人物に冥福を祈った。 (…モテモテだな。頑張れ、カミやん。でも、全然羨ましくないぜよ) 結標淡希は雲川の賭けを断ろうと思ったが、彼女の性格を知っている為、断れば何をされるのか分かったのではないことは明白だったので、 「…いいわ。乗ってあげる。でも一つだけ条件。犯罪行為はダメだからね」 「当たり前だ」 彼女たちの取引が成立したところで、四人は手元にあるカードを見た。 クスリ、と結標は不敵に笑った。 「ねえ、私、勝っちゃうけど…本当にいいのよね」 その言葉を、雲川は不敵な笑みと共に答えた。 彼女たちの悪魔じみた笑顔に怖気づいた男たちは、ブルブルと震えるだけだった。土御門元春とエツァリはソロリソロリと、手札のカードを交換し、結標淡希と雲川芹亜は一枚もカードを捨てなかった。 数秒で男二人のカードターンは終了し、ショーダウンは行われた。 土御門元春はスペードのⅦとハートのⅦのワンペア。 エツァリはⅨとⅩのツーペア。 そして結標淡希は、 「Ⅴのフォーカード!」 ザッ、とガラステーブルに置かれた五枚のカードの内、間違いなく四枚のⅤが並んでいた。 二人の男と、うおおおっ!と声を上げる。 フォーカードの配当は五〇倍。彼女が賭けたチップはブルーチップ一枚。ブルーチップは一枚当たり五万円。これで彼女が勝てば、二五〇万円の利益となる。 結標淡希は赤毛の二つの髪を揺らせて、腕を組んだ。嬉々とした声が彼女の口から出る。 「さぁ?貴女はどうなの?フォーカードは役としては二番目に強い!私に勝つにはストレートフラッシュしか無い!貴女の手札は一体どうなっているのかしら?」 盛り上がる三人を見て、彼女はじっと手札を握ったままだった。 そして、雲川芹亜は突然、大きな高笑いを上げた。 「……ふっ、ふははははははは!」 その大声に怯んだ三人は、彼女の不敵な笑顔に気圧されていた。 「私は昔から賭けごとは嫌いでな…勝率が低く、不安定な勝負はしない主義なんだ。しかし、私が信じる確率論や数学的理論とはとても奇妙なものなんだよ。なぜなら、それを理論的に証明できたとしても、現実には中々当てはまらないからだ…」 「……何が、言いたいのよ?」 「つまりな。私が賭け事に強いという事実は、数学的には証明できないと言いたいのだ」 雲川は手札をガラステーブルに置いた。 三人の表情は凍りついた。 「ハートのロイヤルストレートフラッシュ」 彼らは絶句した。 一発で最強の役を出した雲川芹亜の強運も驚愕に値するが、彼らが凍りついた理由はそれだけはなかった。 レットイットランドのルール。 このゲームはホールデムとカリビアンスタッドを合わせて簡単にしたようなものであり、このルールを適応した場合、ロイヤルストレートフラッシュの賭け金に対する配当は一〇〇〇倍。 雲川芹亜が提示したチップは、レッドチップ一枚。すなわち、一〇万円に相当する。 つまり… 「「「い、いいい、いち、一億円―――――――――――――――――――――――?!!」」」 男女の絶叫がこのプリズムルームに木霊した。 慌てふためく彼らを余所に、ギャンブルに驚異の才能を発揮した雲川芹亜はクスリと笑うと、唖然としている結標淡希に告げた。 「…ふむ。このまま、お前の報酬をごっそり頂くのも悪くないな。さて、延長戦と行くか?『グループ』の諸君」 「や、やめてー!このままだと、俺は一生、雲川に借金を返済する人生を辿ることになるにゃー!」 「私は、一年ほどで返済できると思いますが…」 「……………あ………あ…」 統括理事会の一人である貝瀬木次聡のブレインであり、「神上派閥」の作戦部門「ジョーカー」のリーダーを担い、また、その総帥である上条当麻に恋する乙女でもある少女、雲川芹亜。 は意地悪い笑顔を共に、言葉を放つ。 「私たちが動き出すにはまだ時間はある。それまでこのハイレートゲームを続行しようではないか。 なぁに…いくら損をしたところで意味は無い。 なぜなら、今日、この世界が終わるかもしれないのだからな」