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【種別】 人名 【元ネタ】 Wikipedia -竹取物語 本文中に「現代のかぐや姫」との表記有り 【初出】 新約十巻 【解説】 学園都市の管理下にある3基の衛星の一つ、 『ひこぼしⅡ号』に住まう中学生くらいの少女。 時代錯誤なほどの長い黒髪に十二単を着込んだ、人間離れした美貌を持つ。 しかし、その美貌は顔や体のパーツの配置やバランスが明らかに狂っており、 骨格や臓器を切り詰めない限り実現できない少女漫画の登場人物のようなスタイルをしている。 その才覚から「捨てるには惜しいが、手元には絶対に置いておきたくない」と判断され、 『ひこぼしⅡ号』内の『無重力生体影響実験室』に軟禁されたまま現在に至る。 気が遠くなるほど長期の無重力空間生活の末、常軌を逸する究極の美貌を手にすることになったが、 代償として1G以上の環境、つまり地球上での食事や二足歩行が完全に不可能になっている。 学園都市統括理事会メンバーに仕える『忌まわしきブレイン』の1人でもあり、 彼女の与するトップは航空宇宙産業をメインにしている。 オティヌスをかばい世界の敵となった上条当麻に対して、 『S5』による学園都市からの荷物の移送を行った。 なお、『S5』使用時に会話していた人物(おそらく雲川芹亜)に対する独白から、 『S5』の使用には木原唯一からの強いオーダーがあったことが確認できる。 【口調】 可憐な容姿に反する粗野な口調。一人称:私、二人称:アンタ。 例)「私を誰だと思っているんだ、所属こそ違えどアンタと同じ、統括理事会を支える『忌まわしきブレイン』の一人だぞ」 「だからまあ、しょっぱなからラスボス投下して無理ゲーにしてみましたー的な?」
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五十音順です ア行 カ行 サ行 タ行 ナ行 ハ行 マ行 ヤ行 ラ行 ワ行 ア行 アウレオルス=イザード アウレオルス=ダミー 青髪ピアス 一方通行(アクセラレータ)一方通行 アックア アニェーゼ=サンクティス 天井亜雄 アレイスター=クロウリー 泡浮万彬 アンジェレネ 五和 インデックス 初春飾利 ヴィリアン ヴェント 薄絹休味 海原光貴 エイワス 枝先絆理 エツァリ エリザード エリザリーナ オッレルス 親船最中 オリアナ=トムソン オルソラ=アクィナス カ行 介旅初矢 貝積継敏 カエル顔の医者 垣根帝督 風斬氷華 カナミン 神の力(ガブリエル)神の力 上条詩菜 上条刀夜 上条当麻 神裂火織 絹旗最愛 木原幻生 木原数多 木原那由他 キャーリサ 木山春生 雲川芹亜 郭 黒妻綿流 傾国の女 鋼盾掬彦 固法美偉 駒場利徳 婚后光子 サ行 サーシャ=クロイツェフ 佐久辰彦 佐天涙子 査楽 シェリー=クロムウェル 妹達(シスターズ) 重福省帆 ショチトル 白井黒子 シルビア 鈴科百合子 ステイル=マグヌス ステファニー=ゴージャスパレス 砂皿緻密 スフィンクス 削板軍覇 タ行 第六位 滝壺理后 竜神乙姫 建宮斎字 月詠小萌 土御門元春 土御門舞夏 テクパトル 手塩恵未 左方のテッラ 鉄装綴里 鉄網 テレスティーナ・木原・ライフライン トチトリ トリック 騎士団長(ナイトリーダー)騎士団長 ナ行 布束砥信 ハ行 博士 服部半蔵 馬場芳郎 浜面仕上 原谷矢文 春上衿衣 ビアージオ=ブゾーニ 微細乙愛 一一一 火野神作 ビバリー=シースルー 姫神秋沙 フィアンマ 吹寄制理 フレンダ フロリス ベイロープ マ行 マタイ=リース ミーシャ=クロイツェフ 10777号 妹達(MNW) 御坂美琴 御坂美鈴 御坂妹 御坂旅掛 番外個体(ミサカワースト)番外個体 麦野沈利 結標淡希 心理定規(メジャーハート)心理定規 心理掌握(メンタルアウト)心理掌握 ヤ行 柳迫碧美 闇咲逢魔 芳川桔梗 四葉 黄泉川愛穂 ラ行 打ち止め(ラストオーダー)打ち止め ランシス リチャード=ブレイブ リドヴィア=ロレンツェッティ リメエア 寮監 ルチア レッサー ローラ=スチュアート ワ行 ワシリーサ 湾内絹保
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『並行世界(リアルワールド)』 ありとあらゆる物質は、轟音をかき鳴らし吹き飛ばされていく。 ビルを突きぬけ、学園都市の城壁を突きぬけ、山を貫通し、空を貫く。 雲が左右に引き裂かれ、青白い閃光が一本の線を描いた。 右手から解放されている『竜王の顎(ドラゴンストライク)』は現界し始め、その姿はリアルさを帯びていた。 人の腕と同じ長さがある尖った牙、二メートルを越えた口。分厚い皮膚を覆う漆黒の剛毛、そして、『魔神』と同質の真紅の瞳。 四つの眼が、『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』で焼け焦げた大地を見つめていた。 両脇には、荒廃した都市が残っている。 「…フッ」 ドラゴンが、 「フハハハハハ…」 小さな笑みをこぼした。 「…余ハ待ッテイタゾ」 そして、問いかける。 「『魔神』ヨ…」 ドラゴンの背後にいたのは、三人の少女だった。 一人は、『幻想御手(レベルアッパー)』を解き、力抜く御坂美琴。 もう一人は膝をつき、茫然自失としているミサカ一〇〇三二号。 そして、 ドラゴンに対して、二人の少女を背に立ちはだかる者は『魔神』だった。 「大丈夫?みことちゃん。ミサカ」 「…うん」 「…………」 一言も発せず、視点が定まらないミサカを見て、 「…『魔の波動』に精神をやられちゃってる。早く避難させて。魔力はこれ以上使いたくないから」 「了解…」 御坂美琴はミサカ一〇〇三二号に黒のマントを着せ、彼女の肩を担ぐ。 少女は再び、ドラゴンに目を向けた。 『歩く教会』と呼ばれる修道服を身に纏い、腰まである銀の長髪。整った容姿に碧眼の瞳、一六三センチほどの背丈。 一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記憶する世界最高の魔術師。 正式名称『Index-Librorum-Prohibitorum』。 魔法名、 「献身的な子羊は強者の知識を守る(dedicatus545)――――――――――――――」 『魔神』こと、インデックスは告げた。 大気中に溢れる莫大な魔力が、急激に収束する。 碧眼に宿る想いは、強固な意思。 ドラゴンは言った。 「ドウダ?余ト並ビ合ウ女ニハオ前コソ相応シイ。喜ベ、『魔神』。貴様ハ神ニ選バレ、生キル事ヲ許サレタノダ」 「神様は神様でも、『神(バケモノ)』に興味は無いの」 ふん、とインデックスは鼻で笑った。 「とうまはみことちゃんっていう恋人がいるのに、他の女の子といっぱい浮気するし、フラフラしてる男はもっと大っ嫌い!」 いつものように、上条当麻に説教をするが如く、インデックスは叫ぶ。 「それにね。貴女は私が好きなんじゃない」 「?」 「貴方はね。私が怖いんだよ」 「余ガ?オ前ニ恐怖ヲ抱イテイルダト?」 ドラゴンは、初めて『魔神』に振り返った。 一七九センチの身長に、ツンツンとした黒髪。 赤く染まった真紅の瞳。 露出した上半身に刻まれている漆黒の刻印。 右腕から出現した『竜王(ドラゴン)』の頭部。 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』はすでに消滅し、上条当麻の中で再構築されたドラゴンは、封印を解かれようとしている。 「貴方は私と対等って言ったよね?それは私が貴方を滅ぼせる唯一の存在ということ。だから、私を籠絡しようとしてる」 「フハハハハハハハha!!貴様ガ余ヲ殺スダト?!」 「私は『識』ってるよ。貴方を、ドラゴンを殺す方法をね」 「図ニ乗ルナァ!!小娘ガァアア!!」 嘲笑は突如として怒号に変わる。 大気を震わす波動。 凶暴な闇が地上を覆う。 漆黒に染まった『竜王の翼(ドラゴンウイング)』がついに顕在化した。 『一方通行(アクセラレータ)』の不完全な翼とは違い、輪郭が明確に見える。 例えるならば、『堕天使』の翼。 「お前こそ、人間を甘く見るな」 『L homme courageux confronte plusieurs mille ennemis à une épée――』 『Le sage unifie les gens avec la connaissance abondante――』 『Lorsqu un ange descend dans la terre, les gens se les prosterneront à l ange――』 『Le diable tente un être humain fidèle――』 『Les êtres humains entassent et provoquent le pouvoir énorme――』 魔神は唱えた。 重複詠唱は、二重の意味を持つ言葉を並列させ、同時に二つの呪文を唱えると言った事が多い。日本語においては、掛け言葉を用いると言った方が理解しやすいだろう。母音と子音を並行させ、一つの呪文に二重の意味を持たせる。これが『二重詠唱(ダブルスペル)』の基本である。 だが、インデックスの行った重複詠唱は次元が違う。 発生する声を時間ごとずらした異時間収束詠唱であり、幾多の魔道書を応用した『五重詠唱(ペンタスペル)』。 『我、耐え忍ばん(ペル・デュラーヴォ)――!!』 『真理の力もて宇宙を征服せり(ヴィ・ヴェリ・ヴィンバースム・ヴィヴス・ヴィシー)――!!』 『大いなる獣(メガ・テリオン)――――!!』 『最高位の神よ、我に力をお与えください(ケテル=アデプタス・マイナー)――!!』 『神々の楽園(ヴァルハラ・ディ・リューベヌ)――!!』 光が爆発する。 三日三晩唱え続けねばならない詠唱は、『高速詠唱(クイックスペル)』によって一瞬で終わり、伝説級の大魔術が同時に発動した。 『魔神』を幾多の紋章が覆う。 魔法陣を描く色は、白、黒、赤、青、黄、緑、紫の七つ。 全ての属性を表す七色の光が世界を彩った。 解き放たれる対軍式教皇魔術。 禁忌とされた広範囲爆撃の殲滅術式。 『全能神(ゼウス)』のみが使役できる伝説の神獣。 神の崇拝によって、人々の能力を向上させる上級魔術。 天使の加護を顕在化した治癒魔術。 魔力は刻まれた術式を流れ、姿、性質を変えていく。 「ナァッ…!」 ドラゴンは圧倒された。 震える大地。 闇を切り裂く光。 その光景に、魔術師たちは絶句した。 (二日目)16時59分44秒 戦場から数キロ離れている天草式に、変化が訪れる。 「光る…雨?」 キラキラと光る雫が、周辺に降り注いでいた。 光は、負った傷口へと触れて、 「傷が、癒えていく…?」 意識を失った者は取り戻し、怪我は目に見える速度で治っていく。 血が溢れだしていた腹部が徐々に塞がり、神裂火織は目を覚ました。 心配していた仲間たちは声を上げた。 「プリエステスさ…ま?」 「…あ…よ…よか、った……」 「目を、開けた…プ、プリエステス様ぁ…」 「……すごい」 御坂美琴は目を奪われていた。 インデックスが、ドラゴンを圧倒している。 一〇〇〇億ボルトの電撃とは比べ物にならないくらいのチカラで。 普段は、当たり前のように当麻の隣を独占していて、つまらない理由で当麻に噛みつくだけの少女だった。 可愛くて、賢くて、いつも何か食べている食欲旺盛な女の子、というのが彼女の印象だった。 だが、戦場に立つとその姿は豹変する。 並び立つ者は存在しない。 最強であるがゆえに―― 『魔神』であるがゆえに―― だからこそ、彼女は、上条当麻の隣にいる。 『魔神』は告げる。 雲川芹亜は告げる。 「結標!」 『ああ――――分かってる…わ、よっ!』 第三学区で待機していた結標淡希の眼には、戦場のリアルタイムの映像が映されている。『竜王』、『魔神』、『超電磁砲』、『妹達』のビジョンがあり、その下にはアルファベットと数字で表された座標が掲載されていた。 強烈な頭痛に、結標淡希の意識は揺らぐ。 (――――――――っ…あっ……―――――――!) 彼女の瞳は黄金に輝いていた。 全身が震えていた。あごが震え、ガチガチと歯を鳴らす。頭をバッドで何度も殴られているような衝撃が、彼女を襲っていた。唇を噛みしめるが、痛みがまったく感じられない。気を引き締めないと、今にも意識が遠のいてしまう。 しかし、これは当然の結果だった。むしろ、こうして彼女が意識を保っている事自体、奇跡と言ってもよい。 なぜなら、『幻想御手(レベルアッパー)』を用いて、避難している二三〇万人の脳を統括しているのだから。 第七学区の避難シェルター内の人間だけではない。今では全学区の避難した人々は、『幻想御手(レベルアッパー)』の音楽を耳にして、気を失っている。人々は、脳内の波長を強制的に雲川芹亜と合わせられていた。 至宝院久蘭はこの事に気づいたが、それを甘受した。 ドラゴンを倒す方法だと悟ったからだ。 エリア内のAIMが大きく歪み、雲川芹亜は膝をついた。モニターが赤く点滅し、アラームが鳴り響くが彼女はそのスクリーンを「機械は、黙っていろっ!」と叩き壊した。 (い、今なら―――『絶対能力者(レベル6)』にも、勝て――る気が、す、る―――――) 朦朧としている意識の中で結標淡希は笑った。鼻と目から血が溢れている。 雲川芹亜は小型マイクを手に、 『第一学区から第一四学区、一六、一七、一八、二〇学区内に待機している魔術師達に告げる!今から固定座標に向け、テレポートを行う!用意はいいな!失敗は許されない!では、いくぞッ!!』 黄金の瞳は輝いた。 結標淡希はチェアに座ったまま、ケーブルを引き千切り、両手を天に上げた。 (一二五号四四分二八秒八七〇一傾斜〇〇二二―――――――――――――――固定完了。 一二五号四四分二七秒八九四五傾斜〇〇一九―――――――――――――――固定完了。 一二五号四四分二七秒八九〇六傾斜〇〇一八―――――――――――――――固定完了。 一二五号四四分二七秒八八一四傾斜〇〇一九―――――――――――――――固定完了。 九八四号三二分七八秒四八三四傾斜〇〇〇五―――――――――――――――固定完了。 九八四号三二分七八秒四八七八傾斜〇〇一二―――――――――――――――固定完了。 九八四号三二分七八秒四八二二傾斜〇〇二〇―――――――――――――――固定完了。 五一一号六九分五九秒八八八八傾斜〇〇三一―――――――――――――――固定完了。 五一一号六九分五九秒〇四七七傾斜〇〇三四―――――――――――――――固定完了。 四四三八号七八分〇一秒〇〇二九傾斜〇〇〇〇―――――――――――――――固定完了。 コードP9C2000568S―シークレットコード『オメガ』。 承認しました。 『マザー』は、第一二学区エリアにおける移動先の固定座標を表示します。 以下、 EA〇〇〇一九八AA. EA〇〇〇一九九AA. EA〇〇〇二〇〇AA. EA〇〇〇二〇一AA. ・ ・ ・ 『転送』を開始します―――――――――――――――――――――――――――――) 数キロから数十キロ離れている九〇〇名以上の人間を、『超能力者(レベル5)』第五位、結標淡希は『座標移動(ムーブポイント)』を使い、一か所にテレポートさせた。 役目を終えた瞬間、彼女の意識は吹き飛んだ。 第一二学区。 九九六名の魔術師たちは突如、姿を現した。 その存在を感知したドラゴンは、 「――――――ナンダ?」 ドラゴンを囲むように、多くの魔術師たちは唱える。 全身の詠唱が一致する。 『El grupo de cielos da el velo――――――』 (天界の一団がヴェールを上げる――) 『Todos los hombres, todas las mujeres son las estrellas――』 (すべての男、すべての女は星である――) 『Todos los números son infinitos. Hay ningún cualquier amable de diferencia allí, también――』. (すべての数は無限。そこには如何なる差異も無し――) 『Tú como mi núcleo confidencial.Vuélvete mi corazón y mi lengua!――』 (わが秘密の中枢たるハディートよ、わが心臓、そして我が舌となれ!――) 『Parece. Los sirve. Fue revelado por ella――』 (見よ。それはパール、パアル、クラアトに仕える、アイリスによりて啓示された――) 『Hay él en ella, pero no hay ella en él.――』 (クハプスはクーに在るのであり、クーがクハプスで在るのではなく――) 『Ríndete culto a Dios si salgo. ¡Y debes ver a mi ser ligero vertido en ti!』 (さればクハプスを崇めよ、そして、わが光がおまえの上に降り注がれるのを見るがよい!) 『Realiza un lugar para hacer quiere del tú. No se vuelve todos ley――』 (汝の意志するところを行え。それが法の全てとならん――) 同じ魔術師とはいえ、かつては騙し合い、殺し合っていた。 科学を憎んでいた。 しかし、今、魔術師は一つの目的の為に互いに助け合い、共闘していた。 声も、心も、魔力も一つになり、一つの術式を完成させる。 『法の書(リベル・ギレス)』に記されていた伝説級の大魔術、 『魔神』は命名する。 その名も―――― 『並行世界(リアルワールド)――――――――――――――――――――――――!!』 時刻は、 17時00分00秒 を指していた。
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【種別】 人種/能力者 【初出】 SS2巻 【解説】 学園都市のような人工的な手段に依らず、超能力を発現させた天然の異能者。 偶発的に周囲の環境が『開発』と同じ効果をもたらした場合に発生するとされる。 学園都市の開発によって作られる異能者を人工ダイヤモンドとするならば、 こちらは天然のダイヤモンドにあたる存在であり、人工的なスタンガンと天然の雷、とも比喩される。 遥か昔に原石の力を羨望した者達が、彼らに追いつこうとして生み出された「技術」こそが、魔術である。 つまるところ、とあるシリーズの世界で最も古く、根源的な「異能の力」であるといえる。 原石である者の能力は、学園都市のカリキュラムで発現するものと比べて、 方向性からして大きく異なっていることが多いらしい。 特性を挙げるならば、「力が強いとは限らないが、とにかく稀少」とのこと。 極めて希少な存在で、総数は現在判明している限りで世界に50人ほどしかいない。 黒子には「測定誤差の範疇内」とも言われており、一般には噂の域を出ていない。 実在を知るのは学園都市の暗部に関わる者ぐらいだろうか。 しかし一介の美容師である坂島でも知っているので、ある程度は広まった噂のようである。 学園都市が能力開発関係の技術を独占しているため、 原石の才能をサンプルに異能者の開発を進めようとする者は後を絶たない。 作中では実際に過去のスターゲート計画、ジョージ=キングダムによる『採掘』などが立案、実行に移されている。 世界に散らばる原石達の『リスト』も学園都市やジョージ=キングダムの下で作成されており、 どこから入手したかは不明だがオッレルスや郭もこの『リスト』と思われる物を所持していた。 作中で原石とされている人物としては、 上条当麻、姫神秋沙、削板軍覇、手錠アタッシュケースの少女、暮亞、ゲーム版の『ホワイトプレイヤー』などが該当する。 ただし、幻想殺し(イマジンブレイカー)に関しては「原石のカテゴリに纏めないほうが良い」と雲川芹亜は貝積継敏に助言している。 後に様々な思惑を経て、原石達は雲川や世界中の妹達の手により学園都市に保護された。 ただし消息不明な手錠アタッシュケースの少女とオッレルスに助け出された中にいた数人の原石については不明。 暮亜がいることから、少なくとも全ての原石が学園都市に保護された訳ではないようだ。
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『並行世界(リアルワールド)』 二日目 16時55分 第三学区。 セブンズタワーホテルの地下七階に、秘密裏に増設された巨大モニタールームが存在する。かつては、学園都市の裏社会を暗躍する非合法組織を運営、または監視する『ウォッチャー』が使用していた場所であり、学園長の許可が下れば『滞空回線(アンダーライン)』を通じて、より詳細な情報をモニタリングする事が出来る。 現在、『ドラゴン』の状況を逐一確認するため、学園都市に漂う全ての『滞空回線(アンダーライン)』の使用が許可されていた。第一学区から第二八学区までの各部が映し出され、特に一八学区の状況は大きなスクリーンに表示されている。 『魔神』、『天使』と対峙している五〇〇〇人以上の『妹達(シスターズ)』と御坂美琴、剣多風水、『新たなる光』の魔術師達。 負傷し戦線離脱した『騎士団長(ナイトリーダー)』、オッレルス、シルビア、ステイル=マグヌス、バードウェイの五人の魔術師、神裂火織率いる天草式十字正教は、各々で回復魔術を施している。 学園都市最高峰の技術を結集している一室なのだが、妙な構造になっていた。部屋の中央に、コードがいくつも繋がったマッサージチェアのような機械仕掛けの椅子と、何重にも分厚いセキュリティードアの付近に、一台のデスクトップがあるだけだった。ここに集約されている情報の大半は『マザー』の即時適切な処理が行われているため、手動操作の機材が圧倒的に少ないからだ。 「そう落ち込むな。結標」 「…分かってるわよ」 「ならいい」 モニターの光だけが灯る暗いホールで、黒のスーツを身に纏った雲川芹亜は、彼女の肩をたたき、 「お前の取り分は残しておいたじゃないか。まあ、男共はタダ働きになってしまったけど」 「やっぱり、そうだったのね…余計凹むわ」 先ほど、レットインドランドのルールで行ったポーカーの結果、雲川芹亜に『グループ』の報酬は巻き上げられてしまった。土御門とエツァリはチップを全て奪われ、結標はプラスマイナスゼロの元金が手元に残っていた。だが、その結果すらも、『神上派閥』の作戦本部『ジョーカー』のブレイン、雲川芹亜の配慮だった事に結標淡希は気づいていた。 「理(ことわり)を数字で説明するのが科学。理(ことわり)を神の仕業で説明するのが魔術…私にとっての科学など、分かりやすく言えばこの程度の基準(スケール)でしか無い」 「…ねえ、雲川。『無能力者(レベル0)』なんてウソでしょ?脳の異常な発達が貴方の能力だったりするんじゃない?」 「はははっ、それは面白いな。だけど測定では『無能力者(レベル0)』で、この切れすぎる頭は『天然』だよ。そういう意味では、私と総帥は似ているけど」 結標淡希は深い溜息をついて、 「…私が言うのもなんだけどさ…総帥だけは止めておいた方がいいわよ?超電磁砲とは別の女を家に侍らせて、行く先々で愛人を作ってるんでしょ?一度、彼の女性問題が発端で内乱が起きたわよね?イギリスの経済が一時ストップして、数十億ドルの損失が出たって聞いてたけど…」 「…アレは仕方がなかったのさ。たかだか、一〇〇人程度の美女がいる酒池肉林如きで総帥を籠絡させようなど…私もついつい『本気』になってしまったよ」 …これ以上は聞いてはいけない、と結標淡希の本能が告げていた。 「総帥の周りには色恋の話が絶えず、色々と噂は絶えないが、彼は驚くほど硬派だぞ?それも総帥の美点の一つなのだが……お前は知らない方がいいだろう。泥沼の女同士の抗争に参加したくはあるまい?」 「…そんなのこっちからお断りよ。もしも、私が参戦するって言ったらどうするつもりだったの?」 「うん?万が一の場合、カエルのような顔をした医者に診せるのが数分遅れるくらいだが?」 「ちょ!?雲川、それマジで言ってんでしょ!」 「HAHAHAHA」 「うわ、ウザ!っていうかムカつく!」 結標の声を聞き流し、雲川は手元にあるノートパソコンのEnterキーを押す。 中央にあるチェアが音を立てて作動し、結標の頭部を機械仕掛けのヘルメットが覆った。 「雑談はこれぐらいにして…準備はいいな?」 『勿論よ。私が成功しないと世界が終わるんだから、私がどうなっても、任務をやり終えるまでは手出ししないで』 肉声から、フィルターごしの電子音へと変わる。 「無論そのつもりだ。役割を果たす前に脳を焼き切ってしまったりしたら、私はお前を許さないし、死体を切り刻む」 デスクトップには多くのアプリケーションが展開しており、マイク付きヘッドフォンを被った雲川は、パソコンに備え付けられている小さなスイッチに電源を入れた。『Connecting Complete』の文字が表示された。 『あー…てすてす…聞こえますかー?各学区にいる魔術師達に伝えます』 雲川芹亜は告げた。 「『並行世界(リアルワールド)』作戦―――――現時刻を持って、最終段階に入る」 二日目 16時56分31秒 「ライダーキーック!」 場所は、再び戦場へ戻る。 少女の掛け声と共に、『体内電気(インサイドエレクトロ)』で強化された肉体から、蹴りが放たれた。 的確に『闇』の首を捉え、ゴキィッ!と嫌な音が鳴る。頭部があらぬ方向に曲がった『闇』は霧散し、痕跡も残さず消えた。 「で?これは一体何なのさ?ゴキブリみたいにウヨウヨ出てくるんですけど」 背中合わせで戦っているフロリスに、ミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』は問いかけた。 「国を一夜で滅ぼしたとされる黒魔術、『夜舞う死を恐れぬ軍兵(ゾンビパウダー)』。ヴォドゥンの秘術。本来は死体に施すことによって、リヴィングデッドを作りだす魔術だけど、術式を変容させて、実態の無い『闇』に施して、不死身の兵隊を生み出してるみたい」 彼女の周囲には、人のカタチをしている『闇』が群れていた。各々は剣やら槍やらのカタチをした原始的な武器を持っており、動きは鈍いが、明らかな殺意を持って襲いかかってくる。四方八方から、『妹達(シスターズ)』のアサルトライフルと思われる銃撃音が鳴りやまない。彼女たちも、この『闇』の対処で精一杯なのだろうと、ゼロは推測した。 「ドラゴンって魔術も使えるの?」 「…神なんだから、なんでもアリじゃない?秘術なんて、おとぎ話にしか出てこないほどのシロモノだよ」 「なぁんだかな?私、伝説級の魔術しか見たこと無いんだけど」 「…確かに、『戦争』が起こるまで、神話クラスの魔術がオンパレードに展開されてたからね」 「キリが無いじゃん。こうやって倒してても意味無いじゃん」 「この術式は発動した時点で術者から独立する術式なの」 バンッ!と銃声が響く。ハッとしたフロリスの眼前で、『闇』の頭部が破裂し、消滅した。ミサカ『〇〇〇〇〇号』のベレッタW78が硝煙を上げていた。西部劇のガンマンを気取って、格好良くホルスターに銃を収めると、 「アシスト、次は無いよ?魔術師さん♪」 「それはこっちのセリフだっ!」 フロリスは御符が付加されたナイフで、眼前の『闇』を切り裂いた。 「作戦が最終段階に入ってる。もう一踏ん張り、するとしますかっ!」 ゼロは、振り下ろされる斧を掻い潜り、『闇』の懐に九ミリパラベラム弾を撃ち込んだ。バシュッ!と、大男のカタチをした『闇』は無に帰した。 (二日目) 16時57分10秒 『元素なる弩(ガストラフェテス)』が精製される。 強固な弦が撓り、勢いよく発射された四メートルの大槍が、『天使』の槍を絡め取った。 剣多風水は、両手に二本の剣を握る。次に地盤を、スプリングを底辺とする鉄板に変えた。弾性力を利用して、空へ飛び上がる上半身を回転させ、無防備な『天使』にカットラスの斬撃を放つ。 『天使』は刃を右手で掴んだ。 剣多風水は、『金属使い(メタルオブオーナー)』の能力を発揮する。 剃りがある剣は忽ち鎖に変貌し、『天使』を拘束した。彼女は全体重を乗せて、遠心力を利用して『天使』に軌道を描かせる。地面に降り立った風水は、 「ふっ!」 ゴシャァアア!と、『天使』を地上へ叩きつけた。 右手を振り上げる剣多風水の演算は止まらない。アスファルトからいくつもの鎖が出現し、『天使』を瓦礫に縫いつけた。身動きが取れない『天使』に『妹達(シスターズ)』が追撃した。 アサルトライフルに取り付けられた大口径の銃口がポップアップされ、グレネード弾が『天使』に撃たれた。 ポンッ!と間抜けな音の後に、爆発音が鳴り響く。 改良された『幻想御手(レベルアッパー)』を使用して、ミサカネットワークを通じ、剣多風水はミサカたちとリアルタイムで情報交換し、連携を組んでいた。『天使』を攻撃する数十人のミサカを見ながら、彼女は剣を突き立てる。 「…はぁー…は、はぁー…」 黒色のメイド服が小刻みに揺れる。 肩で息をする彼女の額から、大粒の汗が零れ落ちていた。 長時間の能力使用に、疲労を覚えていたのは彼女だけでは無かった。 「うぐっ…」 御坂美琴に頭痛が走る。 「お姉様、それ以上の『幻想御手(レベルアッパー)』の使用は脳に多大なダメージを与えますとミサカは…」 「ふん、それはお互い様よ。アンタだって、脳の一部が私と風水に使われていて、本調子じゃない癖に」 「それに加え、『一方通行(アクセラレータ)』の代理演算を常時行っているこの身にとっては何の支障もありませんよ、とミサカ一〇〇三二号は平気な顔でマガジンを装填します」 黄金の瞳がミサカを見つめた。一息吐くと、御坂美琴は背後に備えていたホルスターから拳銃を投げ捨てた。カラカラ…と地面を回るベレッタW78はスライドが伸びきっていた。 (オートマティック拳銃も二発が限界か…バレルが熱で溶けちゃう) 御坂美琴はミサカ一〇〇三二号から新たなベレッタW78を受け取った。彼女がベレッタを愛用している訳では無く、『妹達(シスターズ)』に配布された武器を使っているだけである。彼女はすでに一〇丁以上の拳銃を使い捨てていた。 一〇〇〇億ボルトのソレノイドによって生み出される熱は、一瞬とはいえ五万ジュールにも及ぶ。耐熱性に優れたポリマーフレームを使用しているが、拳銃サイズの武器では御坂美琴の高電圧が起こす熱には耐えきれない。故に、ハンドガンサイズの『超電磁砲(レールガン)』を実現するためには必要な消耗品であった。御坂美琴はセーフティーを解除し、ハンマーを下ろす。慣れた手つきでスライドを引き、初弾を装填した。 リアサイトとフロントサイトに『魔神』が捉えられた。 ズドンッ!と。 音速の一〇倍を超える九ミリパラベラム弾が『超電磁砲(レールガン)』となって突きぬけた。 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で御坂美琴の電撃が打ち消されたとしても、火薬爆発で加速された弾丸を打ち消すことはできない。幾度となく上条当麻と争って身に付けた『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の対処法。昔はパチンコ玉を使って、上条当麻を追い詰めた経験がある。 『超電磁砲(レールガン)』の衝撃を殺すが、爆風を伴うマッハ波までは防ぎきれなかった。 ミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』から得た『体内電気(インサイドエレクトロ)』を用いて、御坂美琴は常人を逸した脚力で空を駆ける。 ゴロゴロォォッ!!!と、一〇〇〇億ボルトの電圧が空気を瞬時に膨張し、眩い雷撃が放たれた。 『魔神』は右手を向ける。しかし、致死量を超えた電撃をまともに受けてしまう。雷鳴を轟かせる閃光が、『魔神』の体を突きぬけた。血に染まったワイシャツは焼け焦げ、吹き飛ばされた身体は瓦礫の地をバウンドした。 『魔神』に致命的なダメージを与えた。 その現実こそが彼女を驚愕させた。 (右手の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が無くなってる――――?) 御坂美琴の背中に、ゾクッと寒気が襲う。 「『妹達(シスターズ)』!最優先事項!今すぐ、ドラゴンを拘束して!手足の一、二本は構わないから!」 (ドラゴンが自閉モードに入ってる!) 悲鳴に近い『お姉様(オリジナル)』の命令に、同一遺伝子のミサカたちはすぐさまに反応する。 しかし、 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」 『魔神』の口から、不自然な音が広がった。 直後、 学園都市に夜が襲いかかる。 オレンジ色の夕焼けは、一瞬で暗闇に包まれた。 突然現れた青い満月。 「神戮―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」 ドンッッ!! 地上が揺れる。 魔を帯びる波動が支配した。 時間が停止する。 大気が殺される。 御坂美琴は息を呑みこんだ。 彼女だけではない。 その場にいた人間たちは動きを止めた。 理屈は無かった。 合理性も無い。 ただ、本能が理解する。 自分は死ぬのだと―― 「ぎ」 『魔神』は、 「ギィィャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハahasyutwpッ…!!!」 嗤う。 静寂な世界に、『神』の嘲笑だけが木霊した。 「……嘘…でしょ?」 『神』は、ボロボロになった赤色のシャツを破り捨てた。上半身には、五和が刺した刺し傷と、御坂美琴が撃った銃創から血が流れ、所々には、過去の戦いの証とも言える生傷の痕が残っている。『神』の首には、御坂美琴とお揃いのピンクゴールドアクアマリンのネックレスが揺れていた。 突如、禍々しく、黒い『何か』が上条当麻の全身を覆った。 体中から噴出した『何か』が右腹部の銃創と胸部の刺し傷に吸い込まれていく。そして、傷は消去された。 傷一つない筋肉質の肉体。そして、素肌に刻まれていく漆黒の紋章。 まるで群れる蛇のように這いずりまわる刻印は、『神』の顔面に到達した。 狂喜に染まった真紅の瞳が、青く輝く夜を映し出した。 「イMaジンbreakerは、消滅しタッ!余ヲ縛ル鎖は、余を妨ゲる殻は存在死ナい!」 上条当麻の声に、不穏なドラゴンの声が混じりだす。 「なぜ人は現実から目を逸らそウとする!?事象を数字や文字に置キ換えル時点で、齟齬が発生スル事は自明ノ理デハナイカ?故に、人ハ愚かであRu!たダ――――」 ドラゴンは言った。 「在ルガママヲ受ケ入イレレバヨイノダ」 絶対的な恐怖が、少女たちの心を殺した。 断続的に鳴り響いていた銃声すら、ピタリと止まった。 誰も、声を発する事が出来ない。 呼吸すら許されない。 「レールガン、ト言ッタカ?」 その声に、御坂美琴は震えだす。 ブワッ…と、漆黒の『何か』はあるモノを形成する。 禍々しくも神々しく感じられる竜王の頭部が、人間が呑み込めそうなほど大きな口を開いた。 「ナカナカ痛カッタゾ?アレハ…」 『上条当麻』の真紅の瞳と、『竜王の顎(ドラゴンストライク)』の深紅の瞳が、彼女の心を串刺しにした。 御坂美琴の喉は冷え上がった。 「ひっ…!」 視界が揺らぐ。 無意識に涙が溢れた。 視線を逸らし、隣を見た。 「……あ……あっ…い、いぃ…」 その場にへたり込んだミサカ一〇〇三二号は、口を開き、ドラゴンを見つめたまま、失禁していた。 恐怖で、身動き一つ取れない。 (いやだ……こんなとこで、死にたくない…) 竜王の顎が、青白く光り出す。 「失セロ―――――――――オンナ」 ドバァッ!!と。 天空を貫く『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』が、周囲一帯を巻き込んで彼女たちを掻き消した。
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(二日目)11時22分 第三学区にある、とある大企業の高層ビルの一室。第三学区の全景を見渡せるガラス張りの大きな部屋。モダンな家具やデスクが備えられている。 避難が完了し、外部にもビルの内部にも人はいない、はずだ。 だが、その一室に人はいた。 大きなデスクに、幾つものパソコンや電子機器を置いてあり、大きなソファには、制服を着た一人の黒髪の少女が寝そべっていた。 名前を雲川芹亜という。 彼女は携帯電話を片手に、ソファに悠然と体を傾けていた。 電話越しに男の怒号が聞こえた。その声が部屋中に響き渡っていた。 相手の男は貝積継敏。学園都市統括理事会のメンバーである。 『一体どうなっている!?なぜここまでの大規模な『戦争』を私は知らされなかったのだ!?』 片手で髪をかき上げならが雲川芹亜は言う。 「貴方だけじゃ無い。他の10人の統括理事会のメンバーも知らなかった。まさに寝耳に水ってやつだけど」 『…統括理事長の独断なのか?』 「いいや。彼もスケープゴートだ」 「今回の件は学園長と親船最中で極秘裏に進められた『避難』にしか過ぎない」 電話の先では大声を上げる。学園都市統括理事会の一員でもある大物が。 『何だと!?』 「はっはっは。最中の権力は随分と強くなったものだな。彼女の預かり知らぬ所で権力が増してしまったことなど知りもせずに、な」 雲川に本当のことを言われて、相手は押し黙るしか無かった。 「結局、正攻法でやってきた者が勝つのかね。小細工を好まない親船最中がアレイスターの次に強力な権力を持ってしまったのは統括理事会の不測の事態らしいけど。一般的に見てしまえば当然の帰結とも言えるけど」 大人相手に人生を諭すような哲学を聞かせ、雲川は皮肉交じりに相手を笑った。 『…何故、私に知らせなかった?』 声に秘められた怒気が電話ごしに伝わってくる。 遊び過ぎたかな。と心で雲川は思いつつも、平坦な声で返事をした。 「少し冷静になれ。いつものお前なら安易に想像がつくはずだけど」 『…また『幻想殺し(イマジンブレイカー)』か!』 「そういうこと。今は『魔神』で通ってるけど」 雲川は話を続ける。 「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『原石』というより『パンドラの箱』だったな」 『…ああ、確かにな。先の『戦争』にしてもそうだったな。『一方通行(アクセラレータ)』は『絶対能力者(レベル6)』というには不十分だが…』 「逆に上条当麻は『絶対能力者(レベル6)』という範囲を逸脱している。それほど彼は強い。この二人の戦いを『戦争』といわずして何と呼ぶ?」 『この被害状況から見てもそうだな…』 雲川は送られてきた被害状況をモニターとグラフで確認していた。 第二三学区の壊滅的な被害。第一八学区の被害も再建の目途すら立たないほどの状況。 それに続いて第一〇、一一、二二学区の被害も余波で深刻だ。 「そっちはどうなっている?」 『困惑しているよ。『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』同士の戦いを止められるものなど、この世に存在しないからな』 その言葉に、雲川芹亜は笑い出してしまった。 「ああっはははははははっ!!『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だと?そんな不可解な理屈でお前らは納得しているのか?統括理事会も落ちぶれたものだな」 『…何を言っている?』 「まさか本当に、あの二人が『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だから重宝されているとでも思っているのか?」 雲川は口を大きく開いて言った。 「逆だ」 『逆、だと?』 「能力者全員は『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だ」 次の瞬間、相手側が叫んだ。 『ふざけるな!貴様こそ何を根拠に言っている!?』 彼の反応を予測出来ていた雲川は淡々とした口調で言葉を紡いだ。 「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ」 『ッ!?』 「彼の能力は特に奇妙だとは思わなかったか?例えばだ。魔術であれ機械であれ、生み出された炎は何の違いもない。火は酸素の助燃性の下に可燃物を燃焼する。生み出された電気や水もプロセスの違いはあれ、性質は同様だ。 超能力や魔術で発生した火は打ち消せるが、燃えうつった火や、ライターの火では打ち消せないどころか、火傷をしてしまう。では一体『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は何を打ち消しているのか」 「それは簡単。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『神の物質(ゴッドマター)』を打ち消しているんだよ」 『何だと!?』 「やはり知らなかったか。それでは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力も。魔術と超能力が何たるか。それすらも知らないようだな」 『『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力だと!?異能の力を打ち消すだけでは無いのか!?』 雲川芹亜は首を横に振った。 「いいや。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『神の物質(ゴッドマター)』を打ち消す能力しか無い」 彼女は笑いを含ませながら言った。 口に飴を一つ入れた。カリ、コリと小さな音がする。 「…まあいい。一から説明してやろう。まず魔術と超能力についてだ。超能力は魔術回路を固定した固有魔術と(カリ)言われているが、これは本当だ。しかしな。アレイスターと同様の魔術回路が開(カリ)発されているわけじゃない。 カリキュラムは『神の世界(ヴァルハラ)』と『接続(アクセス)』す(コリ)るための魔術回路を脳に刻み込むた(パキ)めのものだ」 『…早く飲み込め。それで、『神の世界(ヴァルハラ)』との『接続(アクセス)』だと?そんなことをしてしまえば、開発を受けた人間は皆、魂が『神の世界(ヴァルハラ)』に取り込まれてしまい、死んでしまうのではないのか?』 「(ゴックン)その通りだ。『一方通行(アクセラレータ)』ですら巨大コンピュター『マザー』のプログラムを使用しなければ、すぐに取り込まれてしまう。シンクロ率も2,0パーセントが限界。 だから、『神の世界(ヴァルハラ)』に近づくだけでもいいのさ。近づけばそれだけで能力が発現し、また『神の世界(ヴァルハラ)』に近かければ近いほど、能力の質と威力はあがる」 『…ますます理解に苦しむな。では能力の差異はどうやって決まるというのだ?』 「魂の形だ。人の形成する人格に反映する。この時点ですでに能力がどのようなものかは決まっているんだ。いくら『無能力者(レベル0)』でも多少の能力は発現するだろう? 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を除く『原石』はすでに魔術回路が固定されているから、開発を受けても変化することは無い。 また、能力の発現だが、これは魂が『神の世界(ヴァルハラ)』との共振によって『神の世界(ヴァルハラ)』から漏れ出した『神の物質(ゴッドマター)』を、魂によって変換させる。それが炎であったり電気であったりするわけで、そうして初めて現実世界に発生する」 『?『神の物質(ゴッドマター)』は現実には存在できないのか?』 「ああ、特例を除いてね。 『神の物質(ゴッドマター)』の性質は名の通りだ。 『人の思考によって性質が変化する』物質だ。人はこれを『賢者の石』とも呼ぶな。しかし、これは色に例えるなら無だ。何か着色しなければそれは無いのものと同じだからな」 「特例というのは何だ?」 「その特例こそが『絶対能力(レベル6)』の正体さ。『絶対能力(レベル6)』とは『神の物質(ゴッドマター)』を無色のまま、現実に引き出せる能力を指すんだ」 『……ふむ』 「『神の物質(ゴッドマター)』で自身の周囲を満たし、物事を自分の思い通りに動かし、作り変えることができる。これが『絶対能力(レベル6)』だ」 『だから『一方通行(アクセラレータ)』は不完全な『絶対能力(レベル6)』と言われているわけか…』 「『超能力者(レベル5)』としては優秀だよ。『神の物質(ゴッドマター)』をベクトルという応用性の高い『物理法則』に変換する彼の魂の形は逸材だがらな。それにこの能力は一八〇万人の能力者の中で、最も『神の世界(ヴァルハラ)』に近く、無色に近い『神の物質(ゴッドマター)』を引き出せていたからな」 「これは余談だが、虚数学区・五行機関は人工的な『天界』だ。あれは『ドラゴン』の『檻』だ。ヒューズ・カザキリを媒体とした『天使』がそれを証明しているだろう。天使は『神の御使い』でしかない。ではその『神』たる存在は一体何が代理するのか。自ずと答えは見えてくるだろうよ」 『…だから『絶対能力者(レベル6)』ではなく『絶対能力(レベル6)』だったのか。『ドラゴン』という神の力があれば、そこに人格や肉体はいらない。むしろ不純物でさえある』 「まあ、その計画が頓挫した今となって、笑い話で済むんだろうがな。完成していたらこの世は名実ともに『アレイスター』のものだった」 声は殺しているが、内心では驚愕に満ちているだろう。子供の意見にいちいち驚いていると大人としての面子が無い、というプライドが動いていることを雲川は感じとっていた。 その事を察しつつも、雲川は口を動かした。 「次に、魔術についてだが、これは開発で魔術回路が固定されていない人間が使用できる。 術式で魔術回路を固定し、魔力を流して発動させる。 では、魔力とは何か。これは魂から流れ出るノコリカスのようなものだ。 魔力は魂そのものといっても過言ではない。 そして魂とは現実と『神の世界(ヴァルハラ)』を繋ぐものとも言えるし、ここでは『神の物質(ゴッドマター)』を現実に引き出すための変換機と言った方がいいだろう。 さっきも言ったとおり、 超能力は『神の世界(ヴァルハラ)』から得た『神の物質(ゴッドマター)』というガソリンを使って『魂』という変換機と使って現象を発生させる。 それに対して魔術は『魔力』というガソリンを使って、『術式』という変換機を持って現象を引き起こすのさ」 『?ちょっと待て。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は魔力も打ち消せるのか?』 「いや、『魔力』は打ち消せない。何故なら『魔力』は現実(リアル)だからだ」 『なんだと!?』 貝積継敏の予想通りの反応に、雲川は口元がニヤけてしまった。 「これは理論的な話だよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『魔力』を打ち消せるなら、魂も消してしまえることになる。しかし、できない。まあ、魔力の泉とも言われる自然界の『地脈』などといったものには反応しないからな」 『では、魔術は何を打ち消されているのだ?』 「術式だ」 雲川は言葉を続けた。 「術式という変換機が『神の物質(ゴッドマター)』を呼び込み、変換機としての役割を果たすのさ。 だから神器や聖具といった、大がかりな術式、つまりは大量の『神の物質(ゴッドマター)』を内包した物に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は反応する。だからだ。ただの絵を描いて、それが魔術的な力を持つものなら、それは発動せずとも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が触れただけでただの絵になってしまうのさ」 電話の相手の反応が鈍い。 確かにこれだけの情報を一気に理解できるほうが普通では無い。 しかし、これくらいのことが一度で呑み込むだけの理解力を持っていないと、『ブレイン』という役割はこなせないのだ。 一時の時間を待って、貝積継敏の合図を待った。 そして雲川は話を紡ぐ。 「では話そう。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力をな。それは———」 「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『死の運命』を打ち消せるんだよ」 『なっっ!!?』 貝積継敏は驚愕に声を震わせてしまった。 「そして、もっと興味深いことが出てくる。それは『運命』そのものが『神の物質(ゴッドマター)』で出来ていることになるのさ」 相手は声すら出せない。雲川は彼の驚く顔が頭に浮かんだ。 「くっくっく。面白いだろう?これを知ったとき、私は笑いが堪えきれなかったよ。なんせ『人の運命は神のみぞ知る』なんていう諺が、はるか一〇〇〇年の時を越えて、『科学的』に証明されたんだ。 人類の新たな発見に私は立ち会えたんだよ。科学者が新たなる境地を見出したい欲望が理解できたね。確かに、あれは忘れられん。一種の麻薬だ」 『……』 「もうこれは確証を得ている。彼が関わった戦いで、死者は一人も出ていない。 先の『戦争』でそれは分かっているだろう?あれだけの大規模な戦いが繰り広げられたこの地で、死者は両方共にゼロだ。 ≪なんという茶番。まるで観客に見せる大掛かりな『ショー』ではないか≫と、お前も言っていたではないか」 『そ、そんな事が信じられるか!!死の運命を打ち消すだと!冗談でもいいかげんにしろ!!』 365 :toto:2009/02/05(木) 00 43 58 ID vFaX9zPM 「だがな。その奇跡は『偶然』じゃないんだよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が引き起こした『必然』だったんだよ …ならば、イギリスに送り込んだ『妹達』はどうなった?四〇〇〇体もの無残な死体が転がっただけだろう?それだけじゃない。『強能力者(レベル3)』、『大能力者(レベル4)』は一〇〇名以上、そして『超能力者(レベル5)』を二人も失ってしまった」 『ぐっ…』 「もし、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』をイギリスに送り込んでいたら、彼らが生き残るかわりに、私たちは死んでいたさ。いや、それどころか学園都市そのものが存在しているかどうかさえあやしい」 『だが、『戦争』は『終結』したのではなく、『中止』になったのだぞ!?』 「ああ、そうだ。我々は暴走した『ドラゴン』という『神上』を抑え込むために、戦争を『中止』して魔術側と手を組んだ。そのお蔭で莫大な学園都市の敷地と、いくつかの島が消滅しただけで事が済んだ」 「だがその『偶然』のおかげで、で私たちが手を組み、誰一人血を流すこと無く、和解しえたという『奇跡』が起きたのだろう?」 『…っ!』 「だがら、お前らも甘い。彼が重要な事件の当事者にさせられていた本当の意味を見抜けなかった。 それは両者の間に犠牲者を出さないためだ。 死者さえださなければ、双方は和解できる可能性もより高いからな。そして被害を受けるのは彼だけ。」 『…被害を受ける、だと?』 「あいつの『不幸』さ。それは他人の『死の運命』を打ち消す代償なのさ」 『そ、それでは彼は…』 「そうだ。あいつは、いつも他人の『不幸』を肩代わりしているのさ。まあ、魂が内包する『死』は、流石に『幻想殺し(イマジンブレイカー)』でも打ち消せないみたいだがな。 …誰からも感謝されることなく、それどころか他人に近寄ることさえ嫌がられていても、彼は『赤の他人の命』を救っているんだ。 それを私が彼に話した時、彼は泣きながらこう言ったさ。 『よかった』 …とな」 絶句している貝積を無視して、雲川は話を続けた。 「やつは他人のために命をかけるお人よしだがな。人を動かすのは心だ。人を動かすのは金でも権力でもない。心だよ。心を揺り動かされた者に、人はついていくものさ。命すら惜しまずにね。 だからこの件はお前は関与するな。何か小細工をしかけようとした時、私は動く」 『…お前も、上条勢力の一員だったとはな』 「不服か?」 『いや、羨ましいんだよ』 「?」 『嫉妬しているのさ。私は。誰からも好かれる、『上条当麻』という男に』 「…そうか」 予想外の言葉に雲川は少し驚いていた。 しかし、そんなことは声に微塵も出さない。 「では切るぞ。これはサービスだ。私の長い独り言だと思ってもらっても構わない」 『…これは驚いたな。君がそんなことを言うとは』 「では、ごきげんよう」 そう言って、雲川は携帯を閉じた。 一度、体を伸ばして体をほぐしてした。 そして、机に置いてあるもう一つの携帯を取り、電話をかけた。 雲川は寝そべった態勢を崩さず、電話の相手を待った。 3コール後、相手が電話に出る。 『グループだ』 「なあ、土御門」 『何だ』 「パンドーラーは好奇心を抑えきれず、神々から授かった箱を開けてしまった。そして、世界に災いをもたらした」 『…いきなり何を言っている?『パンドラの箱』がどうかしたのか?』 「まあ、黙って答えろ。その箱の底に何が残ったか、知っているか?」 電話越しに、当たり前だと言わんばかりの返答が返ってきた。 『『希望』—————————だろ?』
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『とある魔術の禁書目録』1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 SS巻 14巻 15巻 16巻 SS2巻 17巻 18巻 19巻 20巻 21巻 22巻 『新約 とある魔術の禁書目録』1巻 『とある科学の超電磁砲』レギュラーキャラ 常盤台中学 『幻想御手』編 『絶対能力進化実験』編 『学芸都市』編 その他の登場人物 『乱雑解放』編 その他のアニメ版オリジナルキャラクター 『その他SS巻』 『とある魔術の禁書目録』 1巻 上条当麻 インデックス ステイル=マグヌス 神裂火織 御坂美琴 月詠小萌 青髪ピアス カエル顔の医者 2巻 姫神秋沙 アウレオルス=イザード アウレオルス=ダミー スフィンクス 3巻 ミサカ10032号(御坂妹) 『妹達』 白井黒子 『一方通行』 土御門舞香 4巻 土御門元春 ミーシャ=クロイツェフ 火野神作 上条刀夜 上条詩菜 竜神乙姫 5巻 闇咲逢魔 アステカの魔術師 海原光貴 ミサカ20001号(最終信号・打ち止め) 芳川桔梗 天井亜雄 6巻 風斬氷華 シェリー=クロムウェル 黄泉川愛穂 7巻 ローラ=スチュアート オルソラ=アクィナス アニェーゼ=サンクティス ルチア アンジェレネ 建宮斎字 浦上 8巻 初春飾利 婚后光子 結標淡希 9巻 吹寄制理 御坂美鈴 オリアナ=トムソン リドヴィア=ロレンツェッティ 10巻 11巻 五和 ビアージオ=ブゾーニ 12巻 木原数多 13巻 ヴェント アックア フィアンマ トマス=プラチナバーグ SS巻 駒場利得 浜面仕上 騎士団長(ナイトリーダー) 14巻 テッラ 親船素甘 親船最中 15巻 垣根帝督 ドレスの少女 砂皿緻密 ゴーグルの少年 佐久辰彦 手塩恵未 山手 鉄網 麦野沈利 絹旗最愛 フレンダ=セイヴェルン 滝壺理后 博士 馬場芳郎 ショチトル 査楽 服部半蔵 人材派遣(マネジメント) 電話の女 電話の男 塩岸 16巻 ウィリアム=オルウェル 心理掌握(メンタルアウト) SS2巻 イネス ヴァルキリー オッレルス シルビア 雲川芹亜 貝積継敏 工山規範 郭 坂島道端 ジョージ=キングダム ステファニー=ゴージャスパレス 削板軍覇 原谷矢文 バルビナ 御坂旅掛 ジーンズ店主 原石の少女 17巻 18巻 19巻 20巻 21巻 22巻 『新約 とある魔術の禁書目録』 1巻 フレメア=セイヴェルン 黒夜海鳥 シルバークロース=アルファ 丈澤道彦 『とある科学の超電磁砲』 レギュラーキャラ 御坂美琴 白井黒子 初春飾利 佐天涙子 固法美偉 常盤台中学 婚后光子 湾内絹保 泡浮万彬 寮監 『幻想御手』編 木山春生 枝先絆理 丘原燎多 重福省帆 介旅初矢 姉御 トリック 鋼盾掬彦 アケミ、マコちん、むーちゃん 木原幻生 鉄装綴里 『絶対能力進化実験』編 ミサカ9982号 布束砥信 『学芸都市』編 ビバリー=シースルー ショチトル その他の登場人物 絶対等速 柳迫碧美 木原那由他 『乱雑解放』編 その他のアニメ版オリジナルキャラクター 鴻野江遥希 大圄 城南朝来 『その他SS巻』
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あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行 あ行 アウレオルス=イザード アウレオルス=ダミー 青髪ピアス アガター 一方通行(アクセラレータ) アケミ アックア アニェーゼ=サンクティス 姐御 天井亜雄 アレイスター=クロウリー 泡浮万彬 アンジェレネ アンナ=シュプレンゲル 絶対等速(イコールスピード) 諫早 五和 イネス インデックス ヴァルキリー ヴィース=ワインレッド 初春飾利 ウィリアム=オルウェル ヴィリアン ヴェント ヴォジャノーイ 牛深 薄絹休味 海原光貴 浦上 エイワス エカリエーリャ=A=プロンスカヤ 枝先絆理 エツァリ エリザード エリザリーナ 丘原燎多 オッレルス オティヌス 親船最中 親船素甘 オリアナ=トムソン オルソラ=アクィナス か行 介旅初矢 貝積継敏 カエル顔の医者 垣根帝督 風斬氷華 カナミン 神の力(ガブリエル) 鎌池和馬 上条詩菜 上条当麻 上条刀夜 亀山琉太 神裂火織 神裂キゴミ 絹旗最愛 木原数多 木原幻生 木原那由他 キャーリサ 木山春生 釧路帷子 雲川芹亜 工山規範 クランス=R=ツァールスキー 郭 黒妻綿流 黒夜海鳥 傾国の女 ゲコ太 原石の少女 工示雅影 鋼盾掬彦 鴻野江遥希 香焼 ゴーグルの少年 固法美偉 駒場利徳 婚后光子 さ行 サーシャ=クロイツェフ 災誤 坂島道端 佐久辰彦 佐天涙子 査楽 山岳達子 ジーンズ店主 シェリー=クロムウェル 潮岸 妹達(シスターズ)その他の妹達 重福省帆 城南朝来 丈澤道彦 ジョージ=キングダム 食蜂操祈 ショチトル 白井黒子 シルバークロース=アルファ シルビア 杉谷 スクーグズヌフラ 鈴科百合子 ステイル=マグヌス/ステイル=マグヌス ステファニー=ゴージャスパレス 砂皿緻密 スフィンクス セイリエ=フラットリー セリック=G=キールノフ ソールジエ=I=クライコニフ 削板軍覇 た行 大圄 第六位 滝壺理后 竜神乙姫 建宮斎字 タメゾウ 月詠小萌 対馬 土御門舞夏 土御門元春 ディグルヴ テオドシア=エレクトラ テクパトル 手塩恵未 鉄装綴里 鉄網 テッラ テレスティーナ=木原=ライフライン トチトリ トマス=プラチナバーグ トリック な行 騎士団長(ナイトリーダー) ニコライ=トルストイ 布束砥信 野母崎 は行 灰村キヨタカ 博士 服部半蔵 パトリシア=バードウェイ 馬場芳郎 浜面仕上 原谷矢文 春上衿衣 バルビナ ビアージオ=ブゾーニ 微細乙愛 ビットリオ=カゼラ 一一一 火野神作 ビバリー=シースルー 姫神秋沙 フィアンマ 吹寄制理 ブラッシャ=P=マールハイスク フレイス フレメア=セイヴェルン フレンダ=セイヴェルン フロリス ベイロープ ペテロ=ヨグディス 蛇谷次雄 ま行 マーク=スペース マコちん マタイ=リース ミサカ10777号 御坂妹(10032号) 御坂旅掛 御坂美琴 御坂美鈴 番外個体(ミサカワースト)その他の妹達 むーちゃん 麦野沈利 結標淡希 心理定規(メジャーハート) や行 柳迫碧美 山手 闇咲逢魔 横須賀 芳川桔梗 四葉 黄泉川愛穂 ら行 打ち止め(ラストオーダー) ランシス リチャード=ブレイブ リドヴィア=ロレンツェッティ リメエア 寮監 ルチア レヴィニア=バードウェイ レッサー ローラ=スチュアート ロンギエ わ行 ワシリーサ 湾内絹保
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カカ(除外キャラ) キキ(除外キャラ) クク(除外キャラ) ケケ(除外キャラ) ココ(除外キャラ) カ 介旅初矢(かいたびはつや) 垣根帝督(かきねていとく) 風斬氷華(かざきりひょうか) 禍斗(かと) 神の力(ガブリエル) 上里翔流(かみさとかける) 上条当麻(かみじょうとうま) 神浄の討魔(かみじょうのとうま) 烏丸府蘭(からすまふらん) カリーチェ=I=ニーキノシ 神裂火織(かんざきかおり) カ(除外キャラ) カイツ=ノックレーベン 貝積継敏(かいづみつぐとし) カイテラー カエル顔の医者 柿田(かきた) カスタム職人 カテリナ 加納詩苑(かのうしおん) 加納神華(かのうしんか) 鏑木由美(かぶらぎゆみ) 上里勢力(かみさとせいりょく) 上条詩菜(かみじょうしいな) 上条刀夜(かみじょうとうや) 紙袋バニーガール 亀山琉太(かめやまりゅうた) 眼帯お化けちゃん 神裂キゴミ(かんざききごみ) 甘味栄華(かんみえいが) キ 木寺実莉(きでらみのり) キトリニタス(ダリス=ヒューレイン) 絹旗最愛(きぬはたさいあい) 木原数多(きはらあまた) 木原円周(きはらえんしゅう) 木原加群(きはらかぐん) 木原幻生(きはらげんせい) 木原那由他(きはらなゆた) 木原脳幹(きはらのうかん) 木原端数(きはらはすう) 木原病理(きはらびょうり) 木原唯一(きはらゆいいつ) 木原乱数(きはららんすう) キメラ キャーリサ 木山春生(きやまはるみ) 窮奇(きゅうき) 切斑芽美(きりふめぐみ) キ(除外キャラ) 機長(きちょう) キップシラ=エンディーニヤ キネシック=エヴァーズ 木原相似(きはらそうじ) 木原平均(きはらへいきん) 吸血鬼(きゅうけつき) キュティア=バージンロード 橋国亮太(きょうごくりょうた) ク 柊元響季(くきもとひびき) 雲川芹亜(くもがわせりあ) 雲川鞠亜(くもがわまりあ) クランス=R=ツァールスキー クリスチャン=ローゼンクロイツ クリファパズル545 郭(くるわ) 黒妻綿流(くろづまわたる) 黒夜海鳥(くろよるうみどり) ク(除外キャラ) 釘宮(くぎみや) 草壁優美(くさかべゆみ) 釧路帷子(くしろかたびら) 蜘蛛の女王(くものじょおう) 工山規範(くやまきはん) グリッキン 操歯涼子(くりばりょうこ) 胡桃(くるみ) グレッキー=リレッツマン クロッカ 黒松高尾(くろまつたかお) ケ 傾国の女(けいこくのおんな) 化粧院明日香(けしょういんあすか) 原石の少女(げんせきのしょうじょ) ケ(除外キャラ) ケイト=ウォルクス ケビン ケリールティ=タナブルック 乾山庄治(けんざんしょうじ) 源蔵(げんぞう) コ 警策看取(こうざくみとり) 固法美偉(このりみい) 口囃子早鳥(こばやしさとり) 駒場利徳(こまばりとく) コロンゾン 婚后光子(こんごうみつこ) 渾沌(こんとん) 獄彩海美(ごくさいかいび) 御霊冥亞(ごりょうめいあ) コ(除外キャラ) 工示雅影(こうじまさかげ) 鋼盾掬彦(こうじゅんきくひこ) 硬俵総太(こうたわらそうた) 鴻野江遥希(こうのえはるき) 香焼(こうやぎ) 小佐古俊一(こさこしゅんいち) 古森(こもり)
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情 EPISODE 3 Scene_14 【喫茶店 エトワール 店内】 (マ)「オッ、やっと終わったようだな。二人ともご苦労さん」 (上)「マスター、……あの……」 (上琴)「「ありがとうございました!!!」」 (マ)「わッ!? ビックリするじゃねえか?」 (上)「だって……マスターが段取りしてくれなかったら……オレ、間違いなく留年してただろうし……」 (琴)「私もずっと、当麻と会えないままで……、それがこんな風に、当麻の力になれるようにしてくれたから……」 (マ)「ああ、その事なんだが……まぁ、チョット座れや」 (上琴)「「あ……ハイ」」 二人はマスターに促されるまま、カウンター席に座る。 (マ)「とりあえず、まずは良くやったな。上条。お疲れさん」 (上)「イ、イヤ……全部、美琴が支えてくれたから……」 (マ)「それは間違いねえよな。だが、オマエが頑張らなきゃ、嬢ちゃんも頑張れなかった。色々ジャマが入ったりもしたが……オマエはやるコトをやり遂げたんだよ。胸を張れ」 (上)「あッ、……ハイッ!!!」 (マ)「嬢ちゃんもよく頑張ってくれたな。ありがとな」 (琴)「そんな……。マスターが言ってたように、当麻が頑張ったから私も頑張れたんだし……。何より、マスターが色々手を尽くしてくれたから……」 (マ)「オレは実際に何にもしてねえんだが……、……まぁ、その話はちょっと後にして……」 (上琴)「?」 (マ)「オレからのご褒美っつったら変だけど、頑張った二人にプレゼントだ」 そう言って、マスターは大きな箱を二つ出してきた。 (上)「え? ぷ、プレゼントって?」 (マ)「前に言ってた、簡易型の水出しコーヒーを作れるセットだよ」 (琴)「水出しコーヒー?」 (マ)「通常、コーヒーはお湯で出すのが当たり前だと思われてるが、時間をかければ水でも出せるんだ。お茶にも水出しがあるだろ?」 (上)「で、でも……コレって……高いんじゃ……」 (マ)「本格的なのはな。コレはあくまでも簡易型だ。でも、かなりイケる味を出すんだぜ。それに、この夏に仕入れた売れ残りだ。ウチもそんなに余裕がある訳じゃないから、こんなモノしかできないのが申し訳ないと思うけど……」 (琴)「そんなぁ……、色々お世話になってるのに……こんなプレゼントまで……」 (マ)「オマエさん達が頑張ってたからな。それに……実は、コレから話す話のお詫びも……チョット兼ねてるんだ」 (上琴)「「えッ!? お詫びって?」」 (マ)「実は、かなり言い難いことなんだが……」 (上琴)「「?」」 (マ)「今回の上条の補習の一件のシナリオを書いたのはオレじゃないんだ。オレは書かれたシナリオ通りに動いただけでな……」 (上)「えッ!? そ、それって……どういうコト?」 (琴)「あッ……ま、まさか……」 (マ)「嬢ちゃんは分かったみたいだな。そうなんだよ、今回、この一件のシナリオを書いたのは……芹亜なんだ……」 (上)「えッ!? くッ、雲川先輩が!?」 (琴)「……」 (マ)「小萌先生がどうしてオレのトコロに来たと思う? まるで、裏の事情を全て知っているかのようにさ」 (上)「え……、そ、そう言えば……」 (マ)「そのアタリを動かしたのも芹亜なんだ。どうやって動かしたかまでは知らないし……大体の想像は付くが、確信がないから言えないけどな……」 (琴)「あ……」 (マ)「小萌先生が来る前に、アイツから電話があってな。何をどうするのか、そのシナリオをかなり細かく指示されてな。オレはそれに沿って動いただけなんだよ……」 (上)「雲川先輩が……」 (マ)「そして、今日ここでオレがオマエさん達にその事を全部話してるのも、多分アイツのシナリオ通りだろうな……。全部アイツのシナリオ通りに動くのは癪に障るんだが……」 (琴)「でも、どうしてマスターが謝るの? 芹亜先輩がシナリオを組んだからって、その通りにマスターが動いたからって、別にそれが悪い訳じゃ……ないはず……」 (マ)「でもまあ、オマエさん達を騙してたってコトに代わりはねえしな。それに……」 (上)「それにって?」 (マ)「嬢ちゃんには辛いだろうけど……、こういう人の支え方もあるってコトを上条に知っておいて貰わないと、と思ってな……」 (上)「人の……支え方?」 (マ)「今回、芹亜がこういう絵を描かなかったら、オマエさんどうなってたと思う?」 (上)「え? ……あ……」 (マ)「留年確定……は免れなかっただろう?」 (上)「う……そ、それは……」 (琴)「わッ、私が……手伝っていれば……」 (マ)「それはそうだろうな。だが……今みたいな状況は到底作り出せなかっただろう?」 (琴)「あ……う……」 (マ)「二人なら確かに助け合って出来たかも知れない。でもその為には、色々と克服しなきゃならない条件があるはずだ」 (琴)「う……うう……」 (マ)「上条の『不幸』が起こりにくい状況を作り出し、周りの環境も整える。しかも、嬢ちゃんが協力しやすい体制まで作っちまってる」 (琴)「そっ、それをしてくれたのは……マスターでしょ?」 (マ)「確かに動いたのはオレだけど……、オレが動きやすいような段取りを組み、実際に案を出して来たのは芹亜だよ。つまり、こうやってこの一件の地を整えたのは芹亜だ」 (琴)「あ……」 (マ)「嬢ちゃんのようなサポートの仕方もあれば、芹亜のように地を整える支え方もある。人の支え方ってのは様々なんだ」 (上)「支え方……?」 (マ)「オマエは色んな人に支えられているってコトさ。オマエが知る、知らないに関わらずな。だから、それをオマエに知っていて欲しくってな」 (上)「え……?」 (マ)「その支えがなきゃ、オマエさんは外に出ることも、誰かを助けることも出来ないんだよ」 (上)「あ……」 (マ)「ついつい一人で突っ走りがちなオマエだが、オマエを支えるために色んな人が頑張ってくれてる訳だ。芹亜もその一人だってコトさ」 (上)「……『ガタッ!』」 (琴)「とっ、当麻ッ……」 (上)「チョットだけ、待っててくれ。すぐ戻るから……」 (マ)「芹亜なら多分、……裏の駐車場から少し離れたコンビニ辺りでウロウロしてるはずだ。オマエ達が帰るのを見届けるためにな」 (上)「マスター、ありがとう……。行ってくるよ」 (琴)「とっ、当麻ッ!?」 (マ)「行かせてやってやれよ、嬢ちゃん」 (琴)「でッ、でもっ……」 (上)「大丈夫だよ、すぐ戻ってくるから。……な、美琴」 (琴)「ぅ、うん……」 (上)「じゃあ、行ってくる」 (マ)「ああ、行ってこい」 『カランカランカラ~ン』 ドアベルを鳴らし、上条は外に出て行った。 (琴)「う……、うう……」 (マ)「心配要らねえよ。アイツが戻ってくるのは嬢ちゃんのトコロだけだ」 (琴)「え?」 (マ)「肝心なこと、ワザと言わなかっただろ?」 (琴)「ぅ、うん……」 (マ)「そこまでアイツのシナリオ通りに動いてやる義理はねえからな」 (琴)「あ……」 (マ)「最後は上条が決めることだ。そこまでの口出しはオレには出来ない。それに……」 (琴)「え? ……それに?」 (マ)「そこまでアイツの思い通りになって堪るかってんだ!! 人をイイようにこき使いやがって……」 (琴)「ま、マスター?」 (マ)「変なトコまでアイツに似やがってよォ……。オレは孫悟空じゃねえし、アイツはお釈迦様じゃあねえんだよッ!!!」 (琴)「あの……アッコさん? マスター、どうしてこんなに怒ってるの?」 (ア)「え……、あ、……チョットね。昔、色々あったんだ……。フフフ……」 (琴)「アッコさん、何か嬉しそう……」 (ア)「べっ、別に……そんなコトないわよ(//////////)。……フフフ……」 (琴)「変なアッコさん……。……当麻……早く帰ってきて……」 と、美琴が上条のことを心配している頃……。 上条はマスターの言った場所で雲川芹亜を見つけていた。 Scene_15 【喫茶店 エトワール近くのコンビニ】 (上)「く、雲川先輩……見つけましたよ……」 (芹)「あ……上条……」 (上)「お話しがあります。ココじゃチョット……なので……」 (芹)「あ、改まって何なの? まぁイイけど……」 (上)「近くに小さな公園があったので……そこで……」 (芹)「うん、良いわよ……」 そう言うと二人は、近くにある小さな公園に向かう。 上条と美琴が待ち合わせをしている公園とは違いかなり狭い。 街灯もあり、コンビニからも近いので、暗いところはほとんど無い。 公園に入るとすぐに芹亜が切り出した。 (芹)「で……話って何?」 (上)「マスターから聞きました。今回のこと、色々ありがとうございました!!!」 (芹)「喋ったんだ……マスター……。まぁ、あの人ならそうするだろうとは思ってたけど……」 (上)「オレが色んな人から支えられてるってコトを知って欲しいって。マスターに言われて初めて気が付きました……。本当にありがとうございました!!!」 (芹)「うん……」 (上)「どうしてもその件でお礼が言いたかったので。……それでは失礼します」 (芹)「えッ!? ……あッ、あの……上条?」 (上)「ハイッ!? 何でしょう?」 (芹)「ま、マスター……他に何も言ってなかったの?」 (上)「ええ。それ以外は別に……」 (芹)「あッ、そ……そう……。そうなんだ……。フーン……」 (上)「あッ、じゃあ……オレ、コレで。……み、美琴が待ってるので……スミマセン……」 (芹)「あ……うん。……あッ、上条……?」 (上)「えッ、……あッ、ハイ?」 (芹)「良く……頑張ったね。うん……ホント、頑張ったんだね……」 (上)「あ、ありがとうございますッ!!! それじゃあ、失礼します!!!」 (芹)「ぅ、うん……またね……」 芹亜からそう言われると、上条はそそくさと【エトワール】に戻って行った。 一人、公園に取り残された芹亜は……、上条の姿が見えなくなると……ガックリと項垂れた。 (芹)「あのクソオヤジ……最後の最後で、よくもやってくれたけど。……事の次第は伝えても……想いまでは……自分でやれってコト? ……ッたく」 (芹)「上条も上条よ……。私がどんな想いでって……ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……。アイツの鈍感を計算に入れてなかった……と言うより、想定外だからか……」 (芹)「普通なら気付くはずなんだけど……。これだけのことをしたって言うのに……。あのバカ……」 芹亜の瞳から滴が落ちる。 (芹)「抱きついて……、告白して……、ファーストキスも捧げて……、さすがにココまでやって、それでもダメッてコトは……。やっぱり私じゃダメなのかな……? まだ……諦めたくないんだけど……さすがにもう……うッ、……ううっ……」 ポロポロと滴を零しながら呟く芹亜。 そう、雲川芹亜が今回取った逆襲の方法とは……。 彼女本来のやり方。 『影』に徹して、相手が気付かぬ内に相手の心の中に入り込み、その存在感を大きくする。 『精神解錠(マスターキー)』が最も得意とする方法で、自分の存在感を上条の中で大きくしたかった。 そうすることで、上条と美琴の二人の間に少しでも割って入れたら……。 そう思ってのことだった。 途中までは全てが上手く行っていた。 いや、ついさっきまで、全ては芹亜の思惑通りに進んでいた……はずだった。 誤算があったとすれば、マスターの過去の出来事を知らなかったことと、『超鈍感魔神』である上条当麻を計り損ねたこと。 でも、そのどちらも最後の一歩を自分が踏み出せば……超えられたかも知れないことだった。 もう一度、もう一度だけ言えば良かったのかも知れない。 間違いなく、自分の前に上条当麻は来たのだから。 愛しい恋人を待たせて、自分の前に現れてくれたのだから。 そこまで『雲川芹亜』という存在を、『上条当麻』の中で大きくすることが出来たのだから……。 『私はあなたが好きです』 今、上条の恋人である『御坂美琴』が、何度も言おうとして言えなかった一言。 その一言が言えたなら……、全ては変わっていたかも知れない。 でも、その一言を伝えることを、最後の最後で踏み出せなかった。 最後の最後で、手綱を放してしまった。 それが嫌という程分かってしまった。 だから、らしくないと思いながらも……その瞳から溢れる滴を止めることが出来ずにいる。 ただ声を押し殺して……泣くしかなかった。 (?)『ホント……、何でココまで似ちゃったんだか……』 その時、自分の中で声がした。 聞き慣れた……でも、久しぶりの声。 (芹)『せっ、先生……!?』 声には出さない。いや、出す必要など無い。 頭の中で思うだけで、心の中で念じるだけで、相手に伝わる会話……。 自分を隠すことなく、全てを語り合える……常人には出来ない会話。 『精神感応(テレパス)』による会話だった。 (?)『雲川……ご無沙汰。見てたわよ』 (芹)『いッ、何時から?』 (?)『あなたがウチのレベル5を使えるようにと、あのバカを動かした時から……かな?』 (芹)『う……ウソ……。そんなトレースされてるなんて……』 (?)『雲川をトレースしたんじゃないわ。……あのバカを、トレースしたの』 (芹)『ま、マスターを?』 (?)『今回のことは、あなたの負けね。最後の最後で踏み出せないなんて……アナタらしくないとは思うけど……』 (芹)『う……』 (?)『それにあのバカに最後までやらそうとしたのがいけなかった。昔私が散々その手で扱き使ったから……』 (芹)『え? そ、それじゃあ?』 (?)『半分は私の責任。そう思っておきなさい。その方が少し楽になれるだろうから……』 (芹)『先生……』 (?)『それに……次があるでしょ? その時に精々扱き使ってやりなさい。あのバカを……』 (芹)『あ……ハイッ!!! ……あの、先生……ありがと……』 (?)『うん……』 『先生』にお礼を言った瞬間だった。 少し照れたような思念波と共に、あの人のイメージが流れ込んできた。 その時、ある一言が頭の中を過ぎった。 『今日のオマエさんじゃねえが、そういうトコロがアイツにもあるってコトだよ。自分の感情を完璧にコントロール出来る人間なんて、そうそう居る訳がねえんだ』 (?)『フーン……あのバカ、そんなコト言ったんだ……。チョット、……ううん、かなり気に食わないんだけど……』 (芹)『え? せ、先生?』 (?)『フフフフフフ……、イイ根性してるじゃない。シンちゃん……。今度会ったら、ちょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッと苛めてやらないと気が済まないんだけど……』 瞬間、芹亜が硬直する。 この人を怒らせてはいけない。 この人だけは……本気で怒らせてはいけない。 経験がそう告げていた。 (?)『じゃあね、雲川。……今度は会って話そうね』 (芹)『ハイ、先生……あ、あの……』 (?)『あ、あなたは気にしなくてイイから。……フフフ……シンちゃん、タダじゃあ済まさないんだからね』 最後の『先生』からのテレパシーは、とてつもない黒いオーラを纏っていた。 (芹)「マスター……、もしかしたら、ゴメン……かも……」 (芹)「でも……あの先生ですら……、漏れちゃうんだ。こういう感情って……」 先程『先生』が照れた思念波と共に漏らしてしまったイメージ。 それは……間違いなく、自分たちと同じ年齢だった頃の『マスター』だった。 (芹)「……今はまだ、ダメだけど……、でも……あの先生でもダメなら、今の私がダメなのも当然……だけど……」 『パンッ!!!』 両の手で勢いよく、自分の頬を叩く。 思ったより力が入っていて、ちょっと痛かったが……。 それが何故か心地良くもあった。 (芹)「しょうがない。今回は負けってコトで終わりにする。しばらく大人しくしておくけど……。あのバカは精々扱き使ってやることにしよう!!!」 そう言うと、雲川芹亜は落ち込んだ様子もなく、いつものように飄々と寮に向かって歩き出した。 Scene_16 【喫茶店 エトワール】 『カランカランカラ~ン』 (上)「ただいま~」 (琴)「とっ、当麻ッ!?」 (上)「えッ!? わッ……み、美琴?」 ドアが開き、帰って来た上条を見た瞬間、美琴は上条の胸に飛び込んでいた。 美琴は芹亜の意図していることを正確に読み取っていた。 だから、上条が戻ってこないのではないかと不安で仕方がなかったのだ。 (マ)「意外と早かったな?」 (上)「ええ、マスターの言ってくれた場所に先輩が居て、すぐに見つかりましたから」 (マ)「で?」 (上)「あ、ハイ。ちゃんとお礼を言ってきました」 (琴)「え? ……そ、それだけ?」 (上)「へ? それだけって……それ以外に何があるんだよ?」 (琴)「あ……そっか、そうよね……。アハ、アハハハハ……」 (上)「何言ってんだ? 変なヤツだな……?」 (琴)「(バカ……鈍感……)」 (上)「ん? 何か言ったか?」 (琴)「ううんッ、べっ、別に……何でも無いわよ……」 (上)「そっか? あ……マスター、腹減ったァァァァァ……」 (マ)「おう、分かった……。……ん、オレの作るメシでイイのか?」 (上)「へ? ど、どういうコトでせう?」 (マ)「嬢ちゃんに作って貰う方が良いんじゃねえの? 何せ、オレの作るメシの100万倍美味いって言ってたからなぁ……」 (上)『ボンッ!!!(////////////////////)』 (ア)「ダメよぉ~、また上条君が美琴ちゃんのエプロン姿に暴走しちゃうかも知れないでしょ?」 (琴)『ボボンッ!!!!!(////////////////////////////////////////)』 (ア・マ)「「アハハハハハハハハハハ……」」 (上琴)「「うう……」」 その瞬間……。 (マ)「『ゾクッ!!!』……うおッ!?」 (ア)「アレ? どうしたの? アンタ……」 (マ)「あ……イヤ、何やら……チョット、悪寒が……。……うん、チョット……スゴいのが……」 (ア)「へえ……。多分、芹亜ちゃん辺りじゃない?」 (マ)「ああ……、かもな……。アハハハハハハハハハハ……ハァ……」 (ア)「恨まれてんじゃない? 最後の最後に動かなかったから……」 (マ)「そっ、それは……ああッ、もうッ!!! イヤな事思い出させるんじゃねえよッ!!!!!」 (ア)「昔、散々やられたもんね。……あの女に……」 (マ)「うッ、うるせえッ!!! ッたく……」 (ア)「アハハハハハハハハハハ……」 (マ)「上条!! メシはどうすんだよッ!? オレが作ったのでイイのか!? それとも嬢ちゃんに作って貰うのかッ!?」 (上)「ええッ!? おッ、オレに八つ当たりなのッ!? ……ふ、不幸だ……」 と、『地獄の10日間』を終え、いつもと変わらぬ日常を取り戻した上琴と【エトワール】であった。 その中で美琴は一人、いつもは恨めしく思っている上条のそれに感謝するのだった。 (琴)(でも……今回は、ホント……当麻の鈍感に助けられちゃった……心配して損しちゃったかな?) (琴)(この人は誰にも渡さない。この人の隣にいるのは……絶対に私なんだから!!!) そう思い、彼の身体を抱き締める腕に力を込め、その胸に顔を埋める。 改めてその幸せを感じる美琴だった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情