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今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 ※注意事項 東方キャラが登場します。オリキャラいうな。 登場するゆっくりは全滅しません 虐待っていうか……なんだろう。 _______________________________________________ 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 安心して欲しい、これは『すっきり』の光景ではない。 ここは人里の畑に間近い、とある森の中の巣穴。 決して広いとはいえないその空間に、まだ成体になったばかりのまりさとありすのつがいが幸せそうな顔でその身を寄せ合わせていた。 それは子作りのためのすりすりではなく、単純な愛情表現としてのすりすりだ。 二匹は幼馴染同士くっついて、群れを出たばかりの新婚夫婦だった。 一通り生きる為の知恵は身につけて、同胞の数が増えゆっくりできなくなりつつあったゆっくりプレイスから移住してきてから最初の冬篭りなのだった。 「はるになったら、いっぱいこどもつくるんだぜ」 「ええ、りっぱなとかいはれでぃにそだてなくちゃね」 幸い、近場には「かってにおやさいがはえてくるゆっくりプレイス」がある。食料には困らないだろう。 問題は「おやさいをひとりじめするばかなにんげんさん」が山ほどいることだが……まあ、まりささまが本気出せば何とかなるはずだ。 本当の考えはどうあれ口ではまりさはそういっていたし、ありすはそんな「とかいはのまりさ」を全面的に信用していたから疑う理由はこれっぽっちもない。 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 お互い気持ちが高まってしまわない程度に身体をすり合わせ、一緒になれた今の幸せを確かめあう。 幸い、このありすにレイパーの傾向はなく、やや大言壮語の気があるまりさにもゲスというほどの極端な性向はなかった。 そもそも、口でいうほどには人間の恐ろしさも畑の仕組みも軽んじて考えているわけではない。迂闊に畑を狙って殺された同族の例は、嫌というほど見てきている。 春になったらとりあえず畑の様子を窺いつつ、危険が伴うようならさっさとより人里からもう少し離れた場所に移住するつもりだった。 さいわい、つがいのありすもまりさと同じく判断力がゆっくりにしては高い。多分、二匹とも理性が本能を抑圧できるタイプなのだ。 きっと、まりさの状況判断を聞き分けてくれると楽観することができた。 二者二様、夫婦の夢を語らいながら、ゆっくりとまどろみに落ちていく。 二匹が望むのは、幸せな家族と安全な暮らし。ありすはこれに「とかいはのくらし」を付け加えるのだが、この二匹なら高望みさえしなければ天寿をまっとうする事もできるだろう。 あるいは、二匹の判断力を超越するようなよっぽどのことがないかぎり。 ……そう、よっぽどのことがない限り。 ぽんっ、となんだか軽い音がした。 頭がなんだかむず痒い。はて、一体なんだろう? 二匹は不思議そうに揃って頭上へと目を向けて、 「「…………」」 そこにあるモノを眼にして数瞬、言葉と思考と身体の自由とを失った。 「…………っ!!」 「…………っ!?」 ……最初、自由になるのはぱくぱく意味もなく開閉する口元だけ。 ようやく身体の自由は戻ったけど、互いに驚愕の表情で固まった顔を見合わせる二匹になかなかおつむと言葉の自由は戻らなくって。 一頻り、自分はパニックに陥ってますよー、ってアピールを続けた二匹の喉奥から、ようやく言葉が競りあがってくるまでにまたしばらく。 「「ゆげえええええええええぇぇぇぇぇっ!?」」 ……うん、声は出せてもまだうまく言葉にできなかったみたいだけれど。 「「ど、どぼぢでえええぇぇぇぇぇっ!!?」」 「「「「「「「「「「……うみゅ、うるしゃいょ……しゅーや、しゅーや♪」」」」」」」」」」 その代わり、主語も述語もない絶叫に混じって仲良く声を揃えた寝言の合唱が聞こえたりしたりする。 ……二匹のつがいゆっくりだけしかいない巣の中のはずなのに。 うん、二匹はこう思ったんだ。 自分たちは軽くしゅーりしゅーりしただけなのに。 「「どぼぢでごんなにいっばいいるのおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」」 なんで頭に茎が生えて、かわいいあかちゃんがこんなに実っちゃったのって。 * * * ところ変わってここは妖怪の山、そのどこかにあるうらぶれたお社の中のこと。 「……んげぁっ」 「……どうしたの、穣子。幾ら冬だからって欝だ死のうは止めてね、止めるのも億劫だから」 夏過ぎて、秋も去り、冬となれども神は在り。 神生に疲れ果てた老婆のような声を床間から投げてくる姉神に、奇妙な叫び声を上げた妹神はそれに負けず劣らずどんより曇った陰鬱な目線を向けた。 「欝だ死のう……って言わないわよそんなの。っていうよりも姉さんも人のこと言えないじゃない」 「そんなこと……ない、とはいえないけど……」 自覚症状は、もう嫌って程に備わっている。そりゃまあ何百年何千年と付き合ってきているサイクルなので。 だからって慣れるもんであるはずもなく、姉妹二人して明るさの欠片もない風貌を無理にゆがめて笑いあった。自嘲というヤツだ。 秋静葉と秋穣子。 幻想郷の秋を司る二人の姉妹神にとって、冬は言わずと知れた鬼門の季節である。 秋にはそれぞれが司る豊穣と紅葉の神徳を互いに誇りあって過ごす二人だが、紅葉の最後の一枚も散り果てて冬場ともなれば二人仲良く 春まで鬱病に掛かって過ごすというのは知る人ぞ知るところ。 それが家の中、姉妹相手とは言えど、この時期這い出して活動しているなんてのは珍しい話ではあるのだ。 「それよりもさ」 「……なぁに、穣子ちゃん」 ことに穣子は幻想郷の地図など持ち出して何やら難しい顔をしている。 その地図から目を離さないまま、自分に向けられた妹の言葉に姉はなにやら面倒ごとが迫っているのを察知し、少し難しい顔をした。 別に妹が何をしているのか、気になったわけじゃない。変な声を上げるから、気になっただけで――でもこれは、どうも巻き込まれるのを避けるのは無理っぽい。 そして案の定、ルナサ要らずの重苦しい溜息と共に、穣子が地図の一点を指差して地霊殿から聞こえてくるような声を搾り出した。 「……ごめん、ちょっと間違えちゃって。お願いがあるんだけど、聞いてくれない……?」 * * * またまた場面は切り替わり、ここは先刻のゆっくり家族とはまた別の家族の――ちょうど畑を挟んで向こう側の林にある巣穴のお話。 「ゆっ!」 「あかちゃんがふるえてるよ!」 薄暗い巣穴の奥も奥、干しわらを敷き詰められたその部屋には赤ちゃんが実る茎を生やしたれいむとまりさが、未だ固く眼を閉じた十匹の我が子が突然身震いを始めたことに戸惑いと喜びが混ぜ合わさった表情を見せている。 こちらは先刻の家族とは異なり、待ち望まれたにんっしんっと出産を迎えるつがいである。 一見すると冬に出産など正気の沙汰ではないように見えるが、この群れはその問題を解決する為に人間と『協定』を結んでいた。 この群れの『協定』は、畑の雑草取りや害虫駆除をゆっくりが請け負う代わりに冬場に一定量の食料を人が提供するというギヴアンドテイクのものだ。 まあ作物に手を出して人間や仲間のゆっくりに即決処刑されるゲスも絶えないが、今のところ順調に機能しているケースといえるだろう。 春先の野外で子供を育てるよりは、冬場に安全な巣穴の中で子育てをしようというのが、この群れのリーダーを務めるドスまりさの方針らしい。 「ゆう……もう、うまれるのかな」 「ゆゆっ。もううまれるんだね」 どのようなにんっしんっ形態であれ、ゆっくりはお産の瞬間に見るものをゆっくりさせる至福の表情を浮かべるという。 「「……ゆっくりうまれてきてね!」」 ひょっとして、そのささやかな呼び掛けが赤ゆっくりに届いたのかもしれない。 直後に赤ゆっくり達の身震いが、一斉に止まった。 息を呑む二匹。茎から垂れ下がったまま静止する赤ゆっくりたち。 永劫とも思えるひと時のあと――寸分のずれもなく、閉ざされたままだった十対の愛らしい瞳が一斉にぱちくりと見開かれる! 「「ゆっくりうまれてね!!」」 両目から流れ落ちる滂沱の涙と、一匹も欠けない無事なる生誕を寿ぐ言葉とどちらが先立ったか分からない。 親ゆっくりにとって、それは待ちわびた瞬間だった。 愛する我が子にゆっくりと呼びかける。そして、次には還ってくるはずだ。愛する我が子のゆっくりとした幸せな呼び掛けが。 はたしてまだ母親から伸びる茎に連なったまま、揃って目を覚ました赤ゆっくりたちは素敵な笑顔と共にそろって産声となるはじめての挨拶を叫ぶ。 「「「「「ゆっきゅちうまれちゃきゃったよ……ゆぎぇぅっ!?」」」」」 その愛らしい、舌ったらずな声を聞いて親ゆっくりは思わず……いや、待て。はて、何故に過去形なのか。 しかも、えらい苦しそうな声を出すし。 ぱああっ、と輝く笑顔を浮かべる両親も、さすがにゆっくりと疑問を感じざるを得ない。 まじまじと今にも零れ落ちてきそうなの赤ちゃんたちを見詰める――と、同時にがくんと顎が落ちた。 小さい我が子の顔色をよくよく見れば、何故かすでに全員真っ黒だったり。 満面の笑顔が十個並んで大空にキメとか、すごい、シュールです。いやここ洞穴の中だけど。 「「っ!!!!!!??????」」 それと気が付いた直後、両親の絶叫が巣穴という巣穴に轟いたことはいうまでもない。 * * * 「……ふう。穣子ちゃん、終わったわよ」 「ありがと、姉さん」 再度再三とところを変えて、またしてもここは秋姉妹のお社である。 あいも変わらず疲れた顔×二人分……なのだが、どうも静葉が先ほどよりさらにお疲れのご様子だった。 地図を広げたままのおこたに入り込み、お礼の言葉と共に妹が差し出した番茶をずずーっと啜る。ああ、ちょっと人心地ついた。 「……それにしても、最近の人間は冬場でも収穫できる作物を作るのね」 感慨深げに呟きながら、お茶請けに手を伸ばすのは大福餅だ。 まったく、ゆっくりが増えてからというも幻想郷に餡子が不足することだけはなくなったのは良いことだと思った。 「……外の世界の豊穣の神はもっと大変みたいだけどね」 自分の湯飲みにお茶を注ぎつつ、穣子はうんざりした様子で姉に応えた。 秋に種を撒き、夏に収穫する冬小麦や冬場に収穫する冬キャベツなどなど。 外界からスキマ経由で入って来た種を含め、冬場に収穫や生育の重要な時期を迎える作物も今の時代は多いのだ。 穣子が毎年恒例の来賓として招かれる収穫祭は秋の収穫には間に合わないけど、逆に冬や春収穫の作物の豊穣を願われればそれに応えなければならない道理なのだ。 なにせ、冬の神に豊穣の神様はいないから。 ……秋の神様に冬の豊穣なんかやらせるから、加護を与える場所を間違えたりするんだととりあえず穣子は呪ってみた。 一応立場的に神を呪う訳にもいかないから、とりあえず運命のダークサイド方面を。 「外の世界は、ねぇ……」 神無月、八百万の神様が出雲大社に集まる日。 秋姉妹もその例外でなく、出雲への道中目にした外界の光景――まるで季節感のない外界人の生活に思わず二人揃って重苦しい溜息を吐いてしまう。 いやほんと、自分たちが秋を司る場所が幻想郷でよかった。 ここは何時までも古き良き昔のままだ。 外界の信仰が絶え果てても、地上人が月にまで攻め入って月人と覇権を争っても、ここだけは変わることはない。 まあ、しょっちゅう異変なんてものに襲われて、妖怪や人が右往左往したりもするけど。 そんなものは ……うん。 そんな異変に比べたら、ちょーっと穣子に頼まれた場所と反対方向の森の実りを枯れ果てさせてしまったこととか、 面倒だからってやり直しはパスしちゃったことぐらいたいした事はないだろう。 ないはずだ。 ないんじゃないかな。 「ま、ちょっと覚悟はしておけ」 「……何を?」 「ううん、なんでもないわ」 胡散臭げにこちらを見る妹に、とりあえず静葉は穏やかに笑ってごまかした。 うん、我ながら最高に穏やかな笑みだったと思う。 どうやら自分にとっては本当に、この件は「なんでもない」ことのようだ。 だからこれにてこの案件は終了なのである。 * * * 一方そのころ、件の畑を取り巻く森や林の中では。 「あがぢゃんがうばれだら、じょぐりょうがだりないよおおおぉぉぉ!!」 「ゆがあああああっ、ぶゆざんをごぜないよおおおぉぉぉっ!!」 「どぼぢであがぢゃんみんなじんじゃっだのおおおぉぉぉ!!」 「いっじょにゆっぐりじだがっだのにいいぃぃぃ!!」 まあ、ゆっくりにとってはなんでもないこととか、大したことってレベルじゃねえぞって話なんですけどね。 神様の庇護からゆっくりがまるっと外れてるのは、恐らく幻想郷の仕様。 今日も神なきゆっくり達には大声で泣き喚き餡を吐き玉の緒を絶え果てる仕事が待っているのだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1874.html
今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 ※注意事項 東方キャラが登場します。オリキャラいうな。 登場するゆっくりは全滅しません 虐待っていうか……なんだろう。 _______________________________________________ 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 安心して欲しい、これは『すっきり』の光景ではない。 ここは人里の畑に間近い、とある森の中の巣穴。 決して広いとはいえないその空間に、まだ成体になったばかりのまりさとありすのつがいが幸せそうな顔でその身を寄せ合わせていた。 それは子作りのためのすりすりではなく、単純な愛情表現としてのすりすりだ。 二匹は幼馴染同士くっついて、群れを出たばかりの新婚夫婦だった。 一通り生きる為の知恵は身につけて、同胞の数が増えゆっくりできなくなりつつあったゆっくりプレイスから移住してきてから最初の冬篭りなのだった。 「はるになったら、いっぱいこどもつくるんだぜ」 「ええ、りっぱなとかいはれでぃにそだてなくちゃね」 幸い、近場には「かってにおやさいがはえてくるゆっくりプレイス」がある。食料には困らないだろう。 問題は「おやさいをひとりじめするばかなにんげんさん」が山ほどいることだが……まあ、まりささまが本気出せば何とかなるはずだ。 本当の考えはどうあれ口ではまりさはそういっていたし、ありすはそんな「とかいはのまりさ」を全面的に信用していたから疑う理由はこれっぽっちもない。 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 お互い気持ちが高まってしまわない程度に身体をすり合わせ、一緒になれた今の幸せを確かめあう。 幸い、このありすにレイパーの傾向はなく、やや大言壮語の気があるまりさにもゲスというほどの極端な性向はなかった。 そもそも、口でいうほどには人間の恐ろしさも畑の仕組みも軽んじて考えているわけではない。迂闊に畑を狙って殺された同族の例は、嫌というほど見てきている。 春になったらとりあえず畑の様子を窺いつつ、危険が伴うようならさっさとより人里からもう少し離れた場所に移住するつもりだった。 さいわい、つがいのありすもまりさと同じく判断力がゆっくりにしては高い。多分、二匹とも理性が本能を抑圧できるタイプなのだ。 きっと、まりさの状況判断を聞き分けてくれると楽観することができた。 二者二様、夫婦の夢を語らいながら、ゆっくりとまどろみに落ちていく。 二匹が望むのは、幸せな家族と安全な暮らし。ありすはこれに「とかいはのくらし」を付け加えるのだが、この二匹なら高望みさえしなければ天寿をまっとうする事もできるだろう。 あるいは、二匹の判断力を超越するようなよっぽどのことがないかぎり。 ……そう、よっぽどのことがない限り。 ぽんっ、となんだか軽い音がした。 頭がなんだかむず痒い。はて、一体なんだろう? 二匹は不思議そうに揃って頭上へと目を向けて、 「「…………」」 そこにあるモノを眼にして数瞬、言葉と思考と身体の自由とを失った。 「…………っ!!」 「…………っ!?」 ……最初、自由になるのはぱくぱく意味もなく開閉する口元だけ。 ようやく身体の自由は戻ったけど、互いに驚愕の表情で固まった顔を見合わせる二匹になかなかおつむと言葉の自由は戻らなくって。 一頻り、自分はパニックに陥ってますよー、ってアピールを続けた二匹の喉奥から、ようやく言葉が競りあがってくるまでにまたしばらく。 「「ゆげえええええええええぇぇぇぇぇっ!?」」 ……うん、声は出せてもまだうまく言葉にできなかったみたいだけれど。 「「ど、どぼぢでえええぇぇぇぇぇっ!!?」」 「「「「「「「「「「……うみゅ、うるしゃいょ……しゅーや、しゅーや♪」」」」」」」」」」 その代わり、主語も述語もない絶叫に混じって仲良く声を揃えた寝言の合唱が聞こえたりしたりする。 ……二匹のつがいゆっくりだけしかいない巣の中のはずなのに。 うん、二匹はこう思ったんだ。 自分たちは軽くしゅーりしゅーりしただけなのに。 「「どぼぢでごんなにいっばいいるのおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」」 なんで頭に茎が生えて、かわいいあかちゃんがこんなに実っちゃったのって。 * * * ところ変わってここは妖怪の山、そのどこかにあるうらぶれたお社の中のこと。 「……んげぁっ」 「……どうしたの、穣子。幾ら冬だからって欝だ死のうは止めてね、止めるのも億劫だから」 夏過ぎて、秋も去り、冬となれども神は在り。 神生に疲れ果てた老婆のような声を床間から投げてくる姉神に、奇妙な叫び声を上げた妹神はそれに負けず劣らずどんより曇った陰鬱な目線を向けた。 「欝だ死のう……って言わないわよそんなの。っていうよりも姉さんも人のこと言えないじゃない」 「そんなこと……ない、とはいえないけど……」 自覚症状は、もう嫌って程に備わっている。そりゃまあ何百年何千年と付き合ってきているサイクルなので。 だからって慣れるもんであるはずもなく、姉妹二人して明るさの欠片もない風貌を無理にゆがめて笑いあった。自嘲というヤツだ。 秋静葉と秋穣子。 幻想郷の秋を司る二人の姉妹神にとって、冬は言わずと知れた鬼門の季節である。 秋にはそれぞれが司る豊穣と紅葉の神徳を互いに誇りあって過ごす二人だが、紅葉の最後の一枚も散り果てて冬場ともなれば二人仲良く 春まで鬱病に掛かって過ごすというのは知る人ぞ知るところ。 それが家の中、姉妹相手とは言えど、この時期這い出して活動しているなんてのは珍しい話ではあるのだ。 「それよりもさ」 「……なぁに、穣子ちゃん」 ことに穣子は幻想郷の地図など持ち出して何やら難しい顔をしている。 その地図から目を離さないまま、自分に向けられた妹の言葉に姉はなにやら面倒ごとが迫っているのを察知し、少し難しい顔をした。 別に妹が何をしているのか、気になったわけじゃない。変な声を上げるから、気になっただけで――でもこれは、どうも巻き込まれるのを避けるのは無理っぽい。 そして案の定、ルナサ要らずの重苦しい溜息と共に、穣子が地図の一点を指差して地霊殿から聞こえてくるような声を搾り出した。 「……ごめん、ちょっと間違えちゃって。お願いがあるんだけど、聞いてくれない……?」 * * * またまた場面は切り替わり、ここは先刻のゆっくり家族とはまた別の家族の――ちょうど畑を挟んで向こう側の林にある巣穴のお話。 「ゆっ!」 「あかちゃんがふるえてるよ!」 薄暗い巣穴の奥も奥、干しわらを敷き詰められたその部屋には赤ちゃんが実る茎を生やしたれいむとまりさが、未だ固く眼を閉じた十匹の我が子が突然身震いを始めたことに戸惑いと喜びが混ぜ合わさった表情を見せている。 こちらは先刻の家族とは異なり、待ち望まれたにんっしんっと出産を迎えるつがいである。 一見すると冬に出産など正気の沙汰ではないように見えるが、この群れはその問題を解決する為に人間と『協定』を結んでいた。 この群れの『協定』は、畑の雑草取りや害虫駆除をゆっくりが請け負う代わりに冬場に一定量の食料を人が提供するというギヴアンドテイクのものだ。 まあ作物に手を出して人間や仲間のゆっくりに即決処刑されるゲスも絶えないが、今のところ順調に機能しているケースといえるだろう。 春先の野外で子供を育てるよりは、冬場に安全な巣穴の中で子育てをしようというのが、この群れのリーダーを務めるドスまりさの方針らしい。 「ゆう……もう、うまれるのかな」 「ゆゆっ。もううまれるんだね」 どのようなにんっしんっ形態であれ、ゆっくりはお産の瞬間に見るものをゆっくりさせる至福の表情を浮かべるという。 「「……ゆっくりうまれてきてね!」」 ひょっとして、そのささやかな呼び掛けが赤ゆっくりに届いたのかもしれない。 直後に赤ゆっくり達の身震いが、一斉に止まった。 息を呑む二匹。茎から垂れ下がったまま静止する赤ゆっくりたち。 永劫とも思えるひと時のあと――寸分のずれもなく、閉ざされたままだった十対の愛らしい瞳が一斉にぱちくりと見開かれる! 「「ゆっくりうまれてね!!」」 両目から流れ落ちる滂沱の涙と、一匹も欠けない無事なる生誕を寿ぐ言葉とどちらが先立ったか分からない。 親ゆっくりにとって、それは待ちわびた瞬間だった。 愛する我が子にゆっくりと呼びかける。そして、次には還ってくるはずだ。愛する我が子のゆっくりとした幸せな呼び掛けが。 はたしてまだ母親から伸びる茎に連なったまま、揃って目を覚ました赤ゆっくりたちは素敵な笑顔と共にそろって産声となるはじめての挨拶を叫ぶ。 「「「「「ゆっきゅちうまれちゃきゃったよ……ゆぎぇぅっ!?」」」」」 その愛らしい、舌ったらずな声を聞いて親ゆっくりは思わず……いや、待て。はて、何故に過去形なのか。 しかも、えらい苦しそうな声を出すし。 ぱああっ、と輝く笑顔を浮かべる両親も、さすがにゆっくりと疑問を感じざるを得ない。 まじまじと今にも零れ落ちてきそうなの赤ちゃんたちを見詰める――と、同時にがくんと顎が落ちた。 小さい我が子の顔色をよくよく見れば、何故かすでに全員真っ黒だったり。 満面の笑顔が十個並んで大空にキメとか、すごい、シュールです。いやここ洞穴の中だけど。 「「っ!!!!!!??????」」 それと気が付いた直後、両親の絶叫が巣穴という巣穴に轟いたことはいうまでもない。 * * * 「……ふう。穣子ちゃん、終わったわよ」 「ありがと、姉さん」 再度再三とところを変えて、またしてもここは秋姉妹のお社である。 あいも変わらず疲れた顔×二人分……なのだが、どうも静葉が先ほどよりさらにお疲れのご様子だった。 地図を広げたままのおこたに入り込み、お礼の言葉と共に妹が差し出した番茶をずずーっと啜る。ああ、ちょっと人心地ついた。 「……それにしても、最近の人間は冬場でも収穫できる作物を作るのね」 感慨深げに呟きながら、お茶請けに手を伸ばすのは大福餅だ。 まったく、ゆっくりが増えてからというも幻想郷に餡子が不足することだけはなくなったのは良いことだと思った。 「……外の世界の豊穣の神はもっと大変みたいだけどね」 自分の湯飲みにお茶を注ぎつつ、穣子はうんざりした様子で姉に応えた。 秋に種を撒き、夏に収穫する冬小麦や冬場に収穫する冬キャベツなどなど。 外界からスキマ経由で入って来た種を含め、冬場に収穫や生育の重要な時期を迎える作物も今の時代は多いのだ。 穣子が毎年恒例の来賓として招かれる収穫祭は秋の収穫には間に合わないけど、逆に冬や春収穫の作物の豊穣を願われればそれに応えなければならない道理なのだ。 なにせ、冬の神に豊穣の神様はいないから。 ……秋の神様に冬の豊穣なんかやらせるから、加護を与える場所を間違えたりするんだととりあえず穣子は呪ってみた。 一応立場的に神を呪う訳にもいかないから、とりあえず運命のダークサイド方面を。 「外の世界は、ねぇ……」 神無月、八百万の神様が出雲大社に集まる日。 秋姉妹もその例外でなく、出雲への道中目にした外界の光景――まるで季節感のない外界人の生活に思わず二人揃って重苦しい溜息を吐いてしまう。 いやほんと、自分たちが秋を司る場所が幻想郷でよかった。 ここは何時までも古き良き昔のままだ。 外界の信仰が絶え果てても、地上人が月にまで攻め入って月人と覇権を争っても、ここだけは変わることはない。 まあ、しょっちゅう異変なんてものに襲われて、妖怪や人が右往左往したりもするけど。 そんなものは ……うん。 そんな異変に比べたら、ちょーっと穣子に頼まれた場所と反対方向の森の実りを枯れ果てさせてしまったこととか、 面倒だからってやり直しはパスしちゃったことぐらいたいした事はないだろう。 ないはずだ。 ないんじゃないかな。 「ま、ちょっと覚悟はしておけ」 「……何を?」 「ううん、なんでもないわ」 胡散臭げにこちらを見る妹に、とりあえず静葉は穏やかに笑ってごまかした。 うん、我ながら最高に穏やかな笑みだったと思う。 どうやら自分にとっては本当に、この件は「なんでもない」ことのようだ。 だからこれにてこの案件は終了なのである。 * * * 一方そのころ、件の畑を取り巻く森や林の中では。 「あがぢゃんがうばれだら、じょぐりょうがだりないよおおおぉぉぉ!!」 「ゆがあああああっ、ぶゆざんをごぜないよおおおぉぉぉっ!!」 「どぼぢであがぢゃんみんなじんじゃっだのおおおぉぉぉ!!」 「いっじょにゆっぐりじだがっだのにいいぃぃぃ!!」 まあ、ゆっくりにとってはなんでもないこととか、大したことってレベルじゃねえぞって話なんですけどね。 神様の庇護からゆっくりがまるっと外れてるのは、恐らく幻想郷の仕様。 今日も神なきゆっくり達には大声で泣き喚き餡を吐き玉の緒を絶え果てる仕事が待っているのだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2960.html
今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 ※注意事項 東方キャラが登場します。オリキャラいうな。 登場するゆっくりは全滅しません 虐待っていうか……なんだろう。 _______________________________________________ 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 安心して欲しい、これは『すっきり』の光景ではない。 ここは人里の畑に間近い、とある森の中の巣穴。 決して広いとはいえないその空間に、まだ成体になったばかりのまりさとありすのつがいが幸せそうな顔でその身を寄せ合わせていた。 それは子作りのためのすりすりではなく、単純な愛情表現としてのすりすりだ。 二匹は幼馴染同士くっついて、群れを出たばかりの新婚夫婦だった。 一通り生きる為の知恵は身につけて、同胞の数が増えゆっくりできなくなりつつあったゆっくりプレイスから移住してきてから最初の冬篭りなのだった。 「はるになったら、いっぱいこどもつくるんだぜ」 「ええ、りっぱなとかいはれでぃにそだてなくちゃね」 幸い、近場には「かってにおやさいがはえてくるゆっくりプレイス」がある。食料には困らないだろう。 問題は「おやさいをひとりじめするばかなにんげんさん」が山ほどいることだが……まあ、まりささまが本気出せば何とかなるはずだ。 本当の考えはどうあれ口ではまりさはそういっていたし、ありすはそんな「とかいはのまりさ」を全面的に信用していたから疑う理由はこれっぽっちもない。 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 お互い気持ちが高まってしまわない程度に身体をすり合わせ、一緒になれた今の幸せを確かめあう。 幸い、このありすにレイパーの傾向はなく、やや大言壮語の気があるまりさにもゲスというほどの極端な性向はなかった。 そもそも、口でいうほどには人間の恐ろしさも畑の仕組みも軽んじて考えているわけではない。迂闊に畑を狙って殺された同族の例は、嫌というほど見てきている。 春になったらとりあえず畑の様子を窺いつつ、危険が伴うようならさっさとより人里からもう少し離れた場所に移住するつもりだった。 さいわい、つがいのありすもまりさと同じく判断力がゆっくりにしては高い。多分、二匹とも理性が本能を抑圧できるタイプなのだ。 きっと、まりさの状況判断を聞き分けてくれると楽観することができた。 二者二様、夫婦の夢を語らいながら、ゆっくりとまどろみに落ちていく。 二匹が望むのは、幸せな家族と安全な暮らし。ありすはこれに「とかいはのくらし」を付け加えるのだが、この二匹なら高望みさえしなければ天寿をまっとうする事もできるだろう。 あるいは、二匹の判断力を超越するようなよっぽどのことがないかぎり。 ……そう、よっぽどのことがない限り。 ぽんっ、となんだか軽い音がした。 頭がなんだかむず痒い。はて、一体なんだろう? 二匹は不思議そうに揃って頭上へと目を向けて、 「「…………」」 そこにあるモノを眼にして数瞬、言葉と思考と身体の自由とを失った。 「…………っ!!」 「…………っ!?」 ……最初、自由になるのはぱくぱく意味もなく開閉する口元だけ。 ようやく身体の自由は戻ったけど、互いに驚愕の表情で固まった顔を見合わせる二匹になかなかおつむと言葉の自由は戻らなくって。 一頻り、自分はパニックに陥ってますよー、ってアピールを続けた二匹の喉奥から、ようやく言葉が競りあがってくるまでにまたしばらく。 「「ゆげえええええええええぇぇぇぇぇっ!?」」 ……うん、声は出せてもまだうまく言葉にできなかったみたいだけれど。 「「ど、どぼぢでえええぇぇぇぇぇっ!!?」」 「「「「「「「「「「……うみゅ、うるしゃいょ……しゅーや、しゅーや♪」」」」」」」」」」 その代わり、主語も述語もない絶叫に混じって仲良く声を揃えた寝言の合唱が聞こえたりしたりする。 ……二匹のつがいゆっくりだけしかいない巣の中のはずなのに。 うん、二匹はこう思ったんだ。 自分たちは軽くしゅーりしゅーりしただけなのに。 「「どぼぢでごんなにいっばいいるのおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」」 なんで頭に茎が生えて、かわいいあかちゃんがこんなに実っちゃったのって。 * * * ところ変わってここは妖怪の山、そのどこかにあるうらぶれたお社の中のこと。 「……んげぁっ」 「……どうしたの、穣子。幾ら冬だからって欝だ死のうは止めてね、止めるのも億劫だから」 夏過ぎて、秋も去り、冬となれども神は在り。 神生に疲れ果てた老婆のような声を床間から投げてくる姉神に、奇妙な叫び声を上げた妹神はそれに負けず劣らずどんより曇った陰鬱な目線を向けた。 「欝だ死のう……って言わないわよそんなの。っていうよりも姉さんも人のこと言えないじゃない」 「そんなこと……ない、とはいえないけど……」 自覚症状は、もう嫌って程に備わっている。そりゃまあ何百年何千年と付き合ってきているサイクルなので。 だからって慣れるもんであるはずもなく、姉妹二人して明るさの欠片もない風貌を無理にゆがめて笑いあった。自嘲というヤツだ。 秋静葉と秋穣子。 幻想郷の秋を司る二人の姉妹神にとって、冬は言わずと知れた鬼門の季節である。 秋にはそれぞれが司る豊穣と紅葉の神徳を互いに誇りあって過ごす二人だが、紅葉の最後の一枚も散り果てて冬場ともなれば二人仲良く 春まで鬱病に掛かって過ごすというのは知る人ぞ知るところ。 それが家の中、姉妹相手とは言えど、この時期這い出して活動しているなんてのは珍しい話ではあるのだ。 「それよりもさ」 「……なぁに、穣子ちゃん」 ことに穣子は幻想郷の地図など持ち出して何やら難しい顔をしている。 その地図から目を離さないまま、自分に向けられた妹の言葉に姉はなにやら面倒ごとが迫っているのを察知し、少し難しい顔をした。 別に妹が何をしているのか、気になったわけじゃない。変な声を上げるから、気になっただけで――でもこれは、どうも巻き込まれるのを避けるのは無理っぽい。 そして案の定、ルナサ要らずの重苦しい溜息と共に、穣子が地図の一点を指差して地霊殿から聞こえてくるような声を搾り出した。 「……ごめん、ちょっと間違えちゃって。お願いがあるんだけど、聞いてくれない……?」 * * * またまた場面は切り替わり、ここは先刻のゆっくり家族とはまた別の家族の――ちょうど畑を挟んで向こう側の林にある巣穴のお話。 「ゆっ!」 「あかちゃんがふるえてるよ!」 薄暗い巣穴の奥も奥、干しわらを敷き詰められたその部屋には赤ちゃんが実る茎を生やしたれいむとまりさが、未だ固く眼を閉じた十匹の我が子が突然身震いを始めたことに戸惑いと喜びが混ぜ合わさった表情を見せている。 こちらは先刻の家族とは異なり、待ち望まれたにんっしんっと出産を迎えるつがいである。 一見すると冬に出産など正気の沙汰ではないように見えるが、この群れはその問題を解決する為に人間と『協定』を結んでいた。 この群れの『協定』は、畑の雑草取りや害虫駆除をゆっくりが請け負う代わりに冬場に一定量の食料を人が提供するというギヴアンドテイクのものだ。 まあ作物に手を出して人間や仲間のゆっくりに即決処刑されるゲスも絶えないが、今のところ順調に機能しているケースといえるだろう。 春先の野外で子供を育てるよりは、冬場に安全な巣穴の中で子育てをしようというのが、この群れのリーダーを務めるドスまりさの方針らしい。 「ゆう……もう、うまれるのかな」 「ゆゆっ。もううまれるんだね」 どのようなにんっしんっ形態であれ、ゆっくりはお産の瞬間に見るものをゆっくりさせる至福の表情を浮かべるという。 「「……ゆっくりうまれてきてね!」」 ひょっとして、そのささやかな呼び掛けが赤ゆっくりに届いたのかもしれない。 直後に赤ゆっくり達の身震いが、一斉に止まった。 息を呑む二匹。茎から垂れ下がったまま静止する赤ゆっくりたち。 永劫とも思えるひと時のあと――寸分のずれもなく、閉ざされたままだった十対の愛らしい瞳が一斉にぱちくりと見開かれる! 「「ゆっくりうまれてね!!」」 両目から流れ落ちる滂沱の涙と、一匹も欠けない無事なる生誕を寿ぐ言葉とどちらが先立ったか分からない。 親ゆっくりにとって、それは待ちわびた瞬間だった。 愛する我が子にゆっくりと呼びかける。そして、次には還ってくるはずだ。愛する我が子のゆっくりとした幸せな呼び掛けが。 はたしてまだ母親から伸びる茎に連なったまま、揃って目を覚ました赤ゆっくりたちは素敵な笑顔と共にそろって産声となるはじめての挨拶を叫ぶ。 「「「「「ゆっきゅちうまれちゃきゃったよ……ゆぎぇぅっ!?」」」」」 その愛らしい、舌ったらずな声を聞いて親ゆっくりは思わず……いや、待て。はて、何故に過去形なのか。 しかも、えらい苦しそうな声を出すし。 ぱああっ、と輝く笑顔を浮かべる両親も、さすがにゆっくりと疑問を感じざるを得ない。 まじまじと今にも零れ落ちてきそうなの赤ちゃんたちを見詰める――と、同時にがくんと顎が落ちた。 小さい我が子の顔色をよくよく見れば、何故かすでに全員真っ黒だったり。 満面の笑顔が十個並んで大空にキメとか、すごい、シュールです。いやここ洞穴の中だけど。 「「っ!!!!!!??????」」 それと気が付いた直後、両親の絶叫が巣穴という巣穴に轟いたことはいうまでもない。 * * * 「……ふう。穣子ちゃん、終わったわよ」 「ありがと、姉さん」 再度再三とところを変えて、またしてもここは秋姉妹のお社である。 あいも変わらず疲れた顔×二人分……なのだが、どうも静葉が先ほどよりさらにお疲れのご様子だった。 地図を広げたままのおこたに入り込み、お礼の言葉と共に妹が差し出した番茶をずずーっと啜る。ああ、ちょっと人心地ついた。 「……それにしても、最近の人間は冬場でも収穫できる作物を作るのね」 感慨深げに呟きながら、お茶請けに手を伸ばすのは大福餅だ。 まったく、ゆっくりが増えてからというも幻想郷に餡子が不足することだけはなくなったのは良いことだと思った。 「……外の世界の豊穣の神はもっと大変みたいだけどね」 自分の湯飲みにお茶を注ぎつつ、穣子はうんざりした様子で姉に応えた。 秋に種を撒き、夏に収穫する冬小麦や冬場に収穫する冬キャベツなどなど。 外界からスキマ経由で入って来た種を含め、冬場に収穫や生育の重要な時期を迎える作物も今の時代は多いのだ。 穣子が毎年恒例の来賓として招かれる収穫祭は秋の収穫には間に合わないけど、逆に冬や春収穫の作物の豊穣を願われればそれに応えなければならない道理なのだ。 なにせ、冬の神に豊穣の神様はいないから。 ……秋の神様に冬の豊穣なんかやらせるから、加護を与える場所を間違えたりするんだととりあえず穣子は呪ってみた。 一応立場的に神を呪う訳にもいかないから、とりあえず運命のダークサイド方面を。 「外の世界は、ねぇ……」 神無月、八百万の神様が出雲大社に集まる日。 秋姉妹もその例外でなく、出雲への道中目にした外界の光景――まるで季節感のない外界人の生活に思わず二人揃って重苦しい溜息を吐いてしまう。 いやほんと、自分たちが秋を司る場所が幻想郷でよかった。 ここは何時までも古き良き昔のままだ。 外界の信仰が絶え果てても、地上人が月にまで攻め入って月人と覇権を争っても、ここだけは変わることはない。 まあ、しょっちゅう異変なんてものに襲われて、妖怪や人が右往左往したりもするけど。 そんなものは ……うん。 そんな異変に比べたら、ちょーっと穣子に頼まれた場所と反対方向の森の実りを枯れ果てさせてしまったこととか、 面倒だからってやり直しはパスしちゃったことぐらいたいした事はないだろう。 ないはずだ。 ないんじゃないかな。 「ま、ちょっと覚悟はしておけ」 「……何を?」 「ううん、なんでもないわ」 胡散臭げにこちらを見る妹に、とりあえず静葉は穏やかに笑ってごまかした。 うん、我ながら最高に穏やかな笑みだったと思う。 どうやら自分にとっては本当に、この件は「なんでもない」ことのようだ。 だからこれにてこの案件は終了なのである。 * * * 一方そのころ、件の畑を取り巻く森や林の中では。 「あがぢゃんがうばれだら、じょぐりょうがだりないよおおおぉぉぉ!!」 「ゆがあああああっ、ぶゆざんをごぜないよおおおぉぉぉっ!!」 「どぼぢであがぢゃんみんなじんじゃっだのおおおぉぉぉ!!」 「いっじょにゆっぐりじだがっだのにいいぃぃぃ!!」 まあ、ゆっくりにとってはなんでもないこととか、大したことってレベルじゃねえぞって話なんですけどね。 神様の庇護からゆっくりがまるっと外れてるのは、恐らく幻想郷の仕様。 今日も神なきゆっくり達には大声で泣き喚き餡を吐き玉の緒を絶え果てる仕事が待っているのだ。
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蒸籠神ニック・マンデーロ 蒸籠に宿るとされる神。神徳は肉まん出現。
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登録日:2012/04/10 Tue 10 29 01 更新日:2020/11/20 Fri 23 22 13 所要時間:約 2 分で読めます ▽タグ一覧 MoF スペルカード ブライトさん「弾幕濃いよ!お疲れさん」 マウンテン・オブ・フェイス ムージー レザマリ「^^」 八坂神奈子 初心者殺し 山オブ顔 弾幕 最終スペル 東方 東方project 風神様の神徳 風神録 東方風神録 ~Mountain of Faith.の6面ボス、八坂 神奈子の使ってくるスペルカード。 最終スペルであり、EasyとNormalでは「マウンテン・オブ・フェイス」、HardとLunaticでは「風神様の神徳」となる。 弾幕は諏訪大社の神紋である梶の葉を模しており、札弾の横列がバラバラになって放たれる。 マウンテン・オブ・フェイスの意味は信仰の山、もしくは山岳信仰。作品サブタイトルを見れば分かるが、信仰を意味するfaithであって顔のfaceではない。 風神様の神徳は、その名の通り風神である神奈子が使うことによる。 他作品の最終スペル同様、ボムを使ってもボムバリアによりダメージが与えられない。 が、加えてこのスペル中では霊撃の範囲と移動速度が著しく減少し、弾消し性能もろくに期待できなくなる。 高性能なボムを何回も放てるのが風神録の特徴だが、このスペル中に限っては本当に一時しのぎにしかならず、 乱発すればいたずらにパワーが下がっていくだけになってしまう。 元々の弾幕の難易度も相まって、風神録最大の関門とされている。 実際の弾幕では、ある程度塊になって飛んでくるので、それを避けていくことになる。 時間経過でどんどん発射間隔が短くなっていくため、後半になると弾数も増え、ショットの威力が低い装備だと時間が長引き、さらに苦戦を強いられる。 難易度が高くなるごとに弾速が速くなっていき、風神様の神徳になると塊ごと避けるのが難しい時があり、弾の間を抜けざるを得ないことがある。 判定の小さめな札弾とはいえ、怖いものがある。 逆に低難易度では弾速はそう速くないのだが、そのせいで密度が高くなる。 またEasyではなぜか弾列がバラけて範囲が広くなり、その分間を抜けさせられるため事故が多くなる。 そのため、マウンテン・オブ・フェイスはノーマルよりイージーの方が難しいとよく言われる。 実際にはプレイヤーの得意不得意もあり、さすがにハード以上と比べるほどでもないが、EasyでもNormalと同等程度の難易度と覚悟した方がいいだろう。 倒し方としてはU字避けであったり、高速移動で避け低速で中央に調整…といった作業をひたすら繰り返すこととなる。 上述したようにボムではダメージを与えられないものの、実はボムによる無敵時間はこちらの方が少し長いため、短時間だが一方的にダメージを与えることができる。 追記・修正よろしく △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 山オブ顔ってたしかネイティブ顔と戦って死んだんだっけか -- 名無しさん (2016-01-21 19 37 40) 弾幕自体の項目ってあんまり見かけないな -- 名無しさん (2016-01-22 10 13 22) 名前 コメント
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Amatsu hikoneアマツヒコネ龍神日本----------出典----------日本神話 天彦根神(アマツヒコネノカミ)、天彦根命(アマツヒコネノミコト)とも呼ばれ、天津日子根とも表記される。一般的に北伊勢大神、多度神とも呼ばれている。 日本神話において、天照大神と須佐ノ男が誓約をした際、須佐ノ男が天照大神の勾玉を噛み砕いて吹き付けた息から生まれた5神の3番目の神とされる。 天彦根は、山の神であり、雨乞いの神であり、また、風の神、嵐の神でもある。そして、数多くの氏族の氏神であり、その分布は近畿から関東に至る。天彦根は、その氏族が崇めていた土着神の集合体としても考えられ、その神徳は、農業、漁業、金属工業の守護、産業開発、祈雨、風難・水難・火難除けと多岐にわたって発揮される。 名前から分かるように、三重県多度町の多度大社の祭神である。伝説では、多度大社の背後の多度山には、一つ目の龍が住んでいたとされる。龍は主に海神だが、水の神でもあるため、雨の神として信仰され、風水害を防いだとされている。その、一つ目の龍を祀ったのが多度大社の始まりだとされる。 天彦根は天照大神の御子であるため、伊勢神宮に対して、多度大社は北伊勢大神宮と呼ばれている。そして子の、天目一箇と共に一目連神として祭られている。
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**住所 静岡県富士宮市宮町1-1 JR身延線「富士宮駅」下車 徒歩10分 **関係あるとみられるもの 十六夜咲夜(東方紅魔郷ほか) **富士山本宮浅間大社 富士山本宮浅間大社の説明 「富士本宮浅間社記」によれば、第7代孝霊天皇の御代、富士山が大噴火をしたため、周辺住民は離散し、荒れ果てた状態が長期に及んだとある。 第11代垂仁天皇はこれを憂い、その3年(前27)に浅間大神を山足の地に祀り山霊を鎮められた。これが浅間大社の起源である。 その後は姫神の水徳をもって噴火が静まり、平穏な日々が送れるようになったと伝えられている。この偉大な御神徳は、 万人の知るところとなり、篤い崇敬を集める事となった。また、富士山を鎮めるため浅間大神をお祀りしたのはここが最初であり、全国にある浅間神社の起源ともなっている。とのこと **東方projectにおける富士山本宮浅間大社 「木花之佐久夜毘売命(コノハナサクヤヒメノミコト)」の「サクヤ」を咲夜にした。ただそれだけ。 *ご利益 ・人を癒して和らげ、気持ちを明るく陽気にする ・対人関係に楽しみや寛大さなど、対人関係の豊かさをもたらす ・恋愛・愛情の縁や、家庭円満など、愛情運をもたらす ・自分の五感と気の浄化(浅間大社東側の湧玉池で) *主な祭典 流鏑馬祭り 富士山御神火まつり 富士宮祭り(富士山本宮浅間大社秋季例大祭)など
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Ukanomitamaウカノミタマ神獣/精霊日本----------出典----------日本神話、稲荷信仰 宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)。倉稲魂命(ウガノミタマノミコト)、宇賀御魂命(ウガノミタマノミコト)などとも呼ばれるが、一番有名なのは、“お稲荷さん”である。名の由来は、宇迦は食と同じで、『稲に宿る神秘的な精霊』を意味する。 『古事記』には須佐之男と大市比売の子、『日本書紀』では、伊耶那岐と伊耶那美の子とされる。 日本でも有数の食物神であり、日本人の主食である五穀(米、麦、粟、きび、豆)の「稲」の名を冠する。『延喜式』神名帳には「ウカノミタマ神は、百穀の神なり。ゆえに稲荷神なり。」と注釈されている。 稲荷信仰は奈良時代に発生し、渡来の豪族、秦氏の氏神である穀霊神、農耕神がはじまりだったが、「稲生り」が転訛して稲荷となり、秦氏の勢力拡大と共に稲荷信仰も広がった。その後に、仏教と習合し、宇迦之御魂と習合して現在に至った。 稲荷と言えば狐だが、本来は、稲荷神の御使いの霊獣である。しかし、命婦神のように単なる神使以上の存在と考えられている。 神徳は、五穀豊穣、商売繁盛、産業興隆、家内安全、芸能上達と多岐に渡る。食物の神だけでなく、商業の神、銀行、百貨店の神、麻雀の神、煙草の神と多くの信仰を集めている。 全国の稲荷社は、3万2000社で、名も無い小社を含めると4万とも5万ともいわれ、神社の分布率は日本で第1位である。 稲荷神社の総本山は、京都の伏見稲荷大社で、全国に豊川稲荷、笠間稲荷、裕徳稲荷といった名のある社が数多く存在する。
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七元徳(しちげんとく)とは、カトリック教会の教義における7つの基本的な徳をいう。 古代ギリシアの「知恵」、「勇気」、「節制」、「正義」の4つの枢要徳に、『新約聖書』のパウロの手紙に見られる「信仰」、「希望」、「愛」の3つの徳を加えたものである。 カテキズム(キリスト教の教理をわかりやすく説明した要約ないし解説)においては、徳を人間的徳と対神徳に分け、4つの枢要徳を人間的徳の中心的な役割を果たすもの、信仰・希望・愛の3つを対神徳とする。 13世紀のトマス・アクィナスは、その著作の中で、キリスト教徒の七つの枢要徳と対比する形で七つの「枢要罪」をあげている。 歴史 4つの枢要徳については、プラトンやアリストテレスの著作に見える。なお、ギリシャ哲学からの逆輸入と考えられるものの、旧約聖書外典の「知恵の書」にも書かれている。 知恵の書8 7 だれか正義を愛する人がいるか。 知恵こそ働いて徳を得させるのだ。 すなわち、「節制」と「賢明」、 「正義」と「勇気」の徳を、知恵は教えるのである。 人生にはこれらの徳よりも有益なものはない。 3つの対神徳は、『新約聖書』のコリントの信徒への手紙一に見える。 コリントの信徒への手紙一13 13 それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。 なお、上記の3つの内、「信仰」に関しては「敬虔」として、また「神の無償の愛」としての「アガペー」に関しては後期末(最後)の対話篇『法律』の神学部分である第10巻における「神々は人間を配慮していて、宇宙全体の善を目指している(だから人間もそれに応えて善を目指していかなくてはならない)」といった記述として、プラトンの時代から既に提示されている発想であることに、留意が必要。これらは完全にキリスト教オリジナルの発想というわけではない。 プルデンティウス(Prudentius)によって西暦400年ごろに書かれた寓意的なラテン語叙事詩『プシュコマキア』(魂の闘い)は7つの美徳が7つの悪徳を倒す物語である。その7つの内容は現在の七元徳や七つの大罪とは多少異なっているが、美徳が7つあるという概念はこの書によって一般的になった。 トマス・アクィナス『神学大全』の第二部・第1部の問61で枢要徳について、問62で対神徳について取りあげている。また第2部では7つの徳のそれぞれを取りあげている。 七つの美徳 枢要徳/四元徳 七元徳 Prudentius(400年頃) 知恵の書8 7(前1世紀)プラトンの著作など 中世 純潔(⇔色欲) 知恵/賢明 人間的徳 知恵 節制(⇔暴食) 勇気 勇気 救恤(⇔強欲) 節制 節制 勤勉(⇔怠惰) 正義 正義 慈悲(⇔憤怒) (敬虔) 対神徳 信仰 忍耐(⇔嫉妬) - 希望 謙譲(⇔傲慢) (神々の人間への配慮) 愛(アガペー) https //ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%A2%E8%A6%81%E5%BE%B3
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出遅れたけど、久しぶりだし投下。 上海・蓬莱人形vsオンバシラ。お題はお使い。行き先は人里の各種商店。 という事で、アリスはせっせと買い物に関する情報を上海蓬莱に入力。 怪しい人についていかないように、お金はきちんと店の人に渡すように。さらには迷った時も帰ってこれるように複数の帰宅ルートも設定する。 一方オンバシラに「このメモに書いてある品を結んで妖怪の山まで運ぶといい事があります」と言うメモを貼り付け発射する神奈子。 結論から言うと、規定の品が結びつけられたオンバシラが翌日妖怪の山の入り口で天狗に発見され、無事守矢神社に運ばれた。 しかし上海と蓬莱は一週間経過しても帰宅せず、アリスを悩ませていた。 異様な速さで目的を達成したオンバシラだが、それには理由があった。 「八坂様、何故あんなメモだけでオンバシラが戻ってきたのでしょう? 本当にオンバシラを自立させたのですか?」 「そんなわけないでしょう。柱は柱。あれを運んできたのは人間よ」 「では何故……?」 神奈子は試合の一週間ほど前、人里の北に「この柱を村の南に運ぶといい事があります」と書かれたオンバシラを置いておいた。 人間達はそんな上手い話があるわけがないと疑っていたが、酔狂な人間の一人がこれを村の南へ運んだ。 翌日、その人間の妹が元気な子供を出産した。 そして今度は人里の東に「この柱を村の西に運ぶといい事があります」と書かれたオンバシラが置いてあった。 人間達は相変わらず疑っていたが、子供の病に悩む親がこれを西へと運んだ。 翌日、子供は近所の子達と遊び回れるほど元気になっていた。 そしてまたオンバシラが人里の側に置いてあり、「この柱を村の中央に運ぶといい事があります」と書かれていた。 人間達は争ってその柱を村の中央へと運んだのだった。 「と、いうわけで、あれは運べばいい事があると信じた人間達が運んできたの。奇跡はこうして起こすものよ」 早苗は神奈子の智慧に感服し、聞き入っていたが守矢神社の奥から 「実際の神徳は私にやらせたくせに……」という恨めしげな声が聞こえてきた事には気づかなかった。 余談だが、上海と蓬莱は試合終了後、さらに一週間経過してからようやく戻ってきた。 上海たちに会った人間が与えたのか、アリスが持たせたお金は倍に増えていた。 加えて目的の品のみならず、子供が描いた似顔絵だの、人形サイズのちゃんちゃんこと笠だのを山盛り持って帰宅したのだった。 自立型オンバシラ×4の勝ち。 アリス オンバシラ 上海 人里の住人 神奈子 蓬莱 諏訪子