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現在の法律では義務就学を免除される子どもがいる。 学校教育法 第十八条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる。 肉体的な条件によって就学が困難な場合には、就学義務が免除される。次の表によって就学が免除・猶予されている子どもが示されているが、平成16年で免除が役2200名である。これらの免除は決して国家が個人に対して行う免除ではなく、子どもとその保護者が主体的に結論を出すものとしての免除であって、国家や自治体はいかに重い障害であっても、その子どもの必要性に応じた教育を受けられるように学校を整備する義務を負っている。 Q 「その他」とはどんな場合がありうるか、あるいはないのか、考えてみよう。 学校教育法23条の文部科学大臣の定める規程とは学校教育法施行規則である。 第三十四条 学齢児童又は学齢生徒で、学校教育法第十八条 に掲げる事由があるときは、その保護者は、就学義務の猶予又は免除を市町村の教育委員会に願い出なければならない。この場合においては、当該市町村の教育委員会の指定する医師その他の者の証明書等その事由を証するに足る書類を添えなければならない。 この規程でわかるように保護者の願いによって市町村教育委員会が認めるものである。教育委員会が就学時検診の結果によって、就学することが困難と判断して提示するものではない。 従って免除に関わっては検討すべき課題はあまりない。むしろ障害をもった子どもがどのような形態で就学するのかの決定に関わることが問題となる。障害をもった子どもたちの共同教育への要求と、障害にあった教育の提供を調和させることが課題となる。かつては「特殊教育」という言葉が使われていたが、近年「特別支援教育」というように名前を変えたのは、こうした配慮からである。しかし、単なる言葉の変更であったら意味がなく、あくまでも「必要に応じた教育」という観点が実行されることが大切である。 義務教育段階において、普通学級で学ぶのか、あるいは、障害に応じた教育を準備している学校において学ぶのか、その決定権が誰にあるのかが常に問題になるところであるが、とりあえず文部科学省は、学校教育法施行令において、次のような基準を設定している。 学校教育法施行令 第二十二条の三 法第七十五条 の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。 区分 障害の程度 視覚障害者 両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によつても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの 聴覚障害者 両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によつても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの 知的障害者 一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの 二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの 肢体不自由者 一 肢体不自由の状態が補装具の使用によつても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの 二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの 病弱者 一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの 二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの 備考 一 視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によつて測定する。 二 聴力の測定は、日本工業規格によるオージオメータによる。 (図表 免除者数) これはあくまでも基準であるから、これによって機械的に処理するものではない。保護者や子ども自身が普通学級で学ぶことを希望することもあるし、また、その逆もある。その希望と学校側や教育委員会の判断が異なった場合どうなるのだろうか。 おそらく多くの場合、関係の専門家(教師、医師、特別支援教育者、ソーシャルワーカー)がじっくりと保護者や本人と具体的に話し合えば、意見の相違は生まれないに違いない。これらの専門的な知見に基づいたアドバイスが欠けていることによって意見の相違が生まれることが多いと考えられる。従って重要なことはそうした専門家を交えた話し合いが十分にもたれることが大切であろう。 認定就学者という制度もあるが、基本的には上記原則が同じように当てはまると考えられる。 認定就学者 学校教育法施行令 第六条の三 特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒でその障害の状態の変化により認定就学者として小学校又は中学校に就学することが適当であると思料するものがあるときは、当該学齢児童又は学齢生徒の在学する特別支援学校の校長は、速やかに、当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する都道府県の教育委員会に対し、その旨を通知しなければならない。 2 都道府県の教育委員会は、前項の通知を受けた学齢児童又は学齢生徒について、当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に対し、速やかに、その氏名及び同項の通知があつた旨を通知しなければならない。 3 市町村の教育委員会は、前項の通知を受けた学齢児童又は学齢生徒について、認定就学者として小学校又は中学校に就学させることが適当でないと認めたときは、都道府県の教育委員会に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。 4 都道府県の教育委員会は、前項の通知を受けたときは、第一項の校長に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。 なお「現代学校教育論」で扱った旭川での特殊学級訴訟においては、校長に決定権があるとの地裁判決が出ているが、判例の蓄積はまだあまりなく、この事例の判断としても必ずしも納得できない点もある。 さて次の問題として、就学免除を受けた者は、高校に行くことができるのだろうか。制度的には免除者のための中学校卒業程度認定試験があり、そこで合格することで高校進学への道が開かれている。 平成3年度の文部科学省によって示された受験安定を掲載しておく。 平成13年度就学義務猶予免除者等の 中学校卒業程度認定試験 受験案内 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課 〒100-8959東京都千代田区霞が関3-2-2 電話03(3581)4211 内線2345 1趣 旨 この認定試験は、病気などやむを得ない事由により保護者が義務教育諸学校に就学させる義務を猶予又は免除された者、やむを得ない事由により登校することができない者で保護者が就学させる義務の猶予又は免除を受けることができる事由に相当する事由があると文部科学大臣が認めたもの、年度末までに満16歳以上になる者及び日本の国籍を有しない者で年度末までに満15歳以上になるものに対し、中学校卒業程度の学力があるかどうかを認定するために国が行う試験であり、合格した者には高等学校の入学資格が与えられるものです。 2受 験 資 格 次の(1)から(4)までのいずれかに該当する者が受験できます。 (1) 就学義務猶予免除者である者又は就学義務猶予免除者であった者で、平成14年3月31日までに満15歳以上になるもの (2) 保護者が就学させる義務の猶予又は免除を受けず、かつ、義務教育諸学校に在学し、平成14年3月31日までに満15歳に達する児童又は生徒で、就学させる義務の猶予又は免除を受けることができる事由に相当する事由があると文部科学大臣が認めたもの (3) 平成14年3月31日までに満16歳以上になる者((1)及び(4)に掲げる者を除く。 (4) 日本の国籍を有しない者で、平成14年3月31日までに満15歳以上になるもの 3試験科目と程度 中学校の国語・社会・数学・理科・外国語(英語)の各教科について、これらを履修した程度です。教科書などを参考に準備してください。 なお、外国語は、願い出によりドイツ語又はフランス語とすることもできます。
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現代の国家はほとんどが国民に対して教育に関わる義務を課している。義務の形態は様々である。日本のように保護者に対して「学校に学校に通わせるようにする義務」を課している国もあるが、子どもに学校に通う、あるいは教育を受けることを課している国もある。 まずは日本の義務教育の歴史を整理しておこう。 1872年(明治5年) 学制 「学事奨励に関する被仰出書」 幼童の子弟は、男女の別なく小学に従事せしめざるは其父兄の越度たるべき事」 1886年(明治19年) 小学校令 尋常小学校四年が就学義務 1890年(明治23年) 教育勅語 1900年(明治33年) 義務教育では授業料を徴収しないことを決めた 1903年(明治36年) 国定教科書制度 1907年(明治40年) 尋常小学校を6年制とし、義務教育を6年間とした 1941年(昭和16年) 国民学校令 尋常小学校が国民学校と改名。 初等科6年、高等科2年を義務と決定したが、戦争のため実行せず。 1947年(昭和22年) 学校教育法 小学校6年、中学校3ねんとして、9年間を義務教育 大きく分ければ、国の指定する学校に通う義務あるいは必ずしも学校に通う必要はなく、教育を受ければよいというする場合に分けられ、また義務を課せられるのが親である場合と子どもである場合があるが、これは、子どもは通常法的無能力者であるとされ、親の監督下にあるから、実質的な意味はそれほどない。 そして、義務教育の修了をどのように認定するかについて、いくつかの考え方があるとされる。 ただし、その分類に関しては諸説ある。 東京アカデミー版「教育法規」は成績主義(成績を基準とし、必要な学力を見につけた時点を義務教育期間の終了とする)、課程主義(ある課程を用意し、その課程を修了した時点をもって義務教育期間とする)、年齢主義(ある年齢の期間を義務教育期間とする)という3つの分類をしている。25)東京アカデミー教員採用試験教育法規 p240 しかし、中央教育審議会の議論は多少異なるようだ。 「課程主義」・「修得主義」 「課程主義」とは,義務教育制度における「義務」の完了を認定するに当たり,一定の教育課程の習得をもって義務教育は終了したとみなすものである。我が国の明治期から戦前にかけての義務教育はこの課程主義に属しており,例えば,「小学校令」(明治33年)においては,「尋常小学校ノ教科ヲ修了シタルトキヲ以テ就学ノ終期トス。」と定められていた。 また,「修得主義」とは,当初は成績の評価・評定と深く関係付けられていた用語で,児童生徒は,所定の教育課程を履修して,目標に関し,一定の成果を上げて単位を修得することが必要とする考え方を指すものである。我が国の初等中等教育においても,高等学校については,単位制が採用されており,「修得主義」の原理に立つものとされている。 「年齢主義」・「履修主義」 「年齢主義」とは,義務教育制度における「義務」の完了を認定するに当たり,年齢に達したならば自動的に義務教育は終了したと認めるものである。我が国では,「国民学校令」(昭和16年)において,「満14歳ニ達シタル日ノ属スル学年ノ終迄」として年齢主義の規定に転換し,現在の学校教育法においても引き続き年齢主義が継承されている。 また,「履修主義」とは,当初は成績の評価・評定と深く関係付けられていた用語で,児童生徒は,所定の教育課程をその能力に応じて,一定年限の間,履修すればよいのであって,特に最終の合格を決める試験もなく,所定の目標を満足させるだけの履修の成果を上げることは求められていないとする考え方を指すものである。我が国の小・中学校においては「履修主義」が採られている。 26)http //www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/001/05021801/002/004.htm これは基本的に2分類であると考えられ、戦前は課程主義であったが、現在は年齢主義であるとされる。ただし、課程主義は文字通りに解釈すれば、落第があり、落第した場合でも標準の学年を履修しないと義務教育を修了したことにならないということであり、戦前の場合飛び級は事実としてあったが、落第はそれほどなかったとされるので、実質的に課程主義が機能していたかどうかは評価が分かれるところだろう。ヨーロッパでは小学校でも落第が少なくないが基本的に課程を修了しないと卒業できないから、実質的な課程主義であるといえる。デンマークは、義務教育段階では修了時以外に試験が行われることがなく、成績表もない国では、最後に行われる義務教育修了テストによるから、「修得主義」の典型であるといえる。 現在の日本の場合、年齢主義であることは間違いないが、あわせて履修主義が機能しているかというと、実際には不登校で学校に来なくても実際上卒業させてしまうから、履修主義が機能しているとは言い難いと言える。日本が年齢主義を採用しているのは、学校教育法の規定による。 学校教育法 第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。 ○2 保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。 ○3 前二項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。 第十八条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる。 第十九条 経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。 さて義務教育の開始は教育委員会による学齢簿の作成とその通知による。学校教育法施行令は次のように規定する。 (学齢簿の編製) 第一条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、当該市町村の区域内に住所を有する学齢児童(学校教育法 (以下「法」という。)第二十三条 に規定する「学齢児童」をいう。以下同じ。)及び学齢生徒(法第三十九条第二項 に規定する「学齢生徒」をいう。以下同じ。)について、学齢簿を編製しなければならない。 2 前項の規定による学齢簿の編製は、当該市町村の住民基本台帳に基づいて行なうものとする。 そしてその通知は通常就学時検診の通知及び実行を伴う。 学校保健法(就学時の検診) 第四条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第二十二条第一項 の規定により翌学年の初めから同項 に規定する学校に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。 なお検査項目は学校保健法施行令によって規定されている。 (検査の項目) 第二条 就学時の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。 一 栄養状態 二 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無 三 視力及び聴力 四 眼の疾病及び異常の有無 五 耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無 六 歯及び口腔の疾病及び異常の有無 七 その他の疾病及び異常の有無 教育委員会はこの通知を親に行うとともに結果を学校の校長に通知しなければならない。 ちなみにこのような就学時検診を行っている国はあまり存在しない。日本の学校は健康診断についてかなり重視されている。この検診は私立小学校に入学する児童についても公立学校の通学区で行われる。学校選択制度が導入されている地域でも、通学区が存続している理由のひとつはこの就学時検診があるためである。 このように日本では義務教育学校においては、原則として通うべき学校が市町村教育委員会によって指定される。従ってその指定の形態を変えることも市町村教育委員会の権限である。指定された通学区以外の公立学校に通うことは、1970年代から80年代にかけてはかなり規制が強く、越境入学として問題とされていた。これは、1960年代までに特に東京の都市部において、一部有名公立小学校に越境入学させることが大量に発生し、それが受験競争を激化させたとして批判されたためである。 しかし、80年代に学校のいじめが深刻化し、いじめから逃れるために転校したいという生徒が少なからず出たために、通学区を弾力的に運用することを文部省が認め、更に、学校選択制度への国民の希望が大きくなったために、通学区の運用はますます柔軟になってきた。 昭和60年に出されたいじめに対する緊急提言では次のように指示された。 文初中第二〇一号 昭和六〇年六月二九日 各都道府県教育委員会育教長・各都道府県知事・附属学校を置く各国立大学長あて 文部省初等中等教育局長通知 児童生徒のいじめの問題に関する指導の充実について 二 緊急提言に示された学校指定の取扱い等の配慮については、学校における十分な指導にもかかわらず、いじめにより児童生徒の心身の安全が脅かされるような深刻な悩みを持つている等の場合は、従来から学校教育法施行令第八条に規定する学校指定の変更の相当と認められる理由に該当するとされているところであるが、今後ともその運用に当たつては、医師、教育相談機関の専門家、関係学校長などの意見等も十分に踏まえた上、各市町村教育委員会が適切に対処されたいこと。 そして、現在では大都市を中心に義務教育段階から学校を選択できる制度がかなり浸透してきている。
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就学義務 就学義務とは、学齢期間である満6歳から満15歳までの子女を持つ保護者が、義務教育諸学校(小学校・中学校・特別支援学校など)にその子を就学させる義務を負うことである。 日本における義務教育においては、満6歳に達した日の翌日以降における最初の学年の初めから満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、小学校または特別支援学校の小学部に就学させなければならない。その後満15歳に達した日の属する学年の終わりまで中学校もしくは特別支援学校中学部に就学させなければならない。日本ではこのように9年間の義務教育年限がある。 特別支援学校か小学校に入学するかの判断は、就学時健康診断が入学する前に行われ、その結果に基づき、市町村の就学指導委員会が判断する。 また、特殊な場合に限り、就学義務の猶予・免除が認められている。 ゆき
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保護者は保護する子どもを就学させる義務があるが、経済的に貧しく学校に通って通常の学習をすることが困難な家庭に対しては、国家が経済的な援助をする義務を負っている。教育基本法3条に規定されている通りである。教育補助として学用品や修学旅行費等、そして生活保護の一環として教育扶助があるが、むしろこうした補助があることよりも、日本では義務教育の公立学校ですら、かなり多額の教育費が私的にかかることが大きな問題といえる。次の表は文部科学省の公表している公立小中学校で親が負担している教育費である。若干減少傾向にあるが、それでも特に中学校の場合には相当多額の費用がかかる。27)http //www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/mokuji17.htm 平10 平12 平14 ヨーロッパの多くの国では公立の義務教育学校ではこうした費用はほとんどかからず公費で賄われている。したがって教育補助そのものが不要になっているのである。これは社会的政策の問題であるが、貧しい者に補助をし、通常は費用を徴集する形態と、全員に対して公費で支出することは、社会的価値観の問題として各自考えておく必要があるだろう。 次に就学管理の問題を考えておこう。学校側の出席管理は校長の義務である。 学校教育法施行令(校長の義務) 第十九条 小学校、中学校、中等教育学校、盲学校、聾学校及び養護学校の校長は、常に、その学校に在学する学齢児童又は学齢生徒の出席状況を明らかにしておかなければならない そして親も当然子どもを出席させる義務を負っている。 学校教育法 第百四十四条 第十七条第一項又は第二項の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、十万円以下の罰金に処する。 日本のこの就学管理の実際は先進国の中では緩いと考えられている。実際に学校に行かないために罰金を払う例は親が確信的に子どもを行かせない場合に限られている。例えば日本の学校よりも外国人のための学校(アメリカンスクールなど)の方が教育的効果があがると考え、そこに入れている場合である。このような事例は決して多くはないが、学校に通っているために外国人学校を退学させて、日本の学校に入学させるような措置はとられていないと考えられる。 その他子どもが通学しないのは、不登校として扱われ、親は行かせようと考えているが、子どもがどうしても学校に行かないということで、親は義務を果たそうとしているとして91条はほとんど適用されていない。しかし、それがある程度通常の措置になってしまうと、不登校を是認する親が出てくる。文部科学省はフリースクール等でもよいとしているが、厳密に言えば「一条校」に就学する義務を規定している法律に、文部科学省が自ら違反を認めていることになる。もしフリースクールでも十分に教育効果があがるならば、一条校の就学義務ではなく、就学する学校の適用を広くする措置もありうるし、また、ホームスクールのような形態を認め、実際に学力がついているかをチェックするテストを実施するという方法もある。いずれにせよこうした曖昧な体系、法と実態の齟齬は何らかの形で解決する必要があると思われる。 アメリカでは子どもが出席しない親に刑事罰を課すという動きも一部にあったので、それを紹介しておこう。 生徒サボったら親禁固刑 米の公立学校、出席率改善策 子供が学校をサボったら、親が禁固刑!?米国で最近、学校の授業を無断で欠席する生徒が多いことに業を煮やし、怠慢な生徒の親たちに刑罰を科す動きが広がって、物議をかもしている。 6日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、ミシガン州デトロイトでは昨年度、公立学校に通う18万人の生徒のうち6万3000人が1カ月分相当以上の授業を欠席。地元検察当局は今週、病気など正当な理由なく100日以上欠席した生徒67人の親を呼び出し、授業に出席させなければ、最高で90日の禁固刑を受けることになると警告する予定という。 このような動きは米国各地で広がっており、アラバマ州ブルートンの大陪審は5月、10人の親を起訴したほか、2月にはイリノイ州スプリングフィールドで6人の母親が罪に問われた。有罪になった場合、アラバマ州のケースで最高90日の禁固と100ドルの罰金、イリノイ州の場合では最高30日の禁固と500ドルの罰金が科される。 こうした措置が功を奏し、出席率に改善が見られ始めているようだが、一方で、「子供の行いでなぜ親が罰せられるのか」「子供は親の所有物ではない」などと、親への刑罰を疑問視する声も上がっているという。28)http //cgi.jp.osakanews.com/cgi-bin/osknews/articles/showarticle.cgi/news/1999120706
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オウムの問題は教育についても大きな課題をなげかけた。しかし、まったく相反するふたつの問題において。 第一は、オウムの親は子どもを学校に行かせなかった。 第二は、オウムが事実上解体し、犯罪に加担した者たちが刑事罰を課せられるようになって以後、それ以外の信者や元幹部たちの子どもの教育問題が生じた。 親が子どもを学校に行かせないことは、通常就学義務違反であるし、多くの場合は批判される行為である。しかし、世界的にみると、宗教的な信念に基づいて学校に行かせない事例は無視できないほどに多い。アメリカで現在では多くの州で合法化されているホームスクールは、最初は宗教的な理由で学校に行かせない親が始めたものだった。 しかし、積極的に親が自己の信念に基づいて教育を施すのではなく、オウムの場合には事実上子育てや教育の放棄に近かったと考えられる。 オウムは当初熊本県に集団で居住していたが、村が高額な費用を負担して退去させ、その後静岡県や山梨県に移住した。集団生活をしていたために、子どももそこに居住しており、就学はしていなかった。そのころはオウムの住民票受け付け拒否はなかったから、未就学であったことは行政当局にも知られていたはずであるが、その点の指導がなされた形跡は少なくとも新聞の検索によって調べる限りない。文部省が通学指導をしたのは、1995年3月22日山梨県の施設の捜査に入ってからである。 「オウム」児童ら26人の通学措置を 文部省が指導 「オウム真理教」の静岡県富士宮市にある教団施設に住む義務教育年齢の子供二十六人が就学していないことがわかり、文部省は二十八日までに、同県教育委員会に対し、この子供たちが学校に行ける措置を講じるよう電話で指導した。山梨県上九一色村の教団施設にも学校に通っていない子供が相当数いると見られ、同省は同県教委に対しても就学させるための措置を講じるよう指導した。*5)1995. 03. 29 読売新聞 指導は、子どもたちの「教育を受ける権利」が侵害されているとして出された。 そして、児童相談センターなどに保護されていたオウム信者の子どもたちは、多くが復学している。 保護されたオウム信者の子ども112人は今… 児童相談センターの全員“卒業” ◆就学齢の88人復学 全国のオウム真理教の施設から保護された信者の子どもは、一歳から十五歳まで百十二人を数えた。児童相談所に預けられた子どもたちもその後、親類宅や養護施設に引き取られ、このうち学齢にある八十八人全員が入学や復学している。 子どもたちが最初に保護されたのは、オウムへの強制捜査さ中の昨年四月十四日。山梨県上九一色村の教団施設から、まず五十三人が同県中央児童相談所に収容された。それから約五か月の間に、群馬、熊本県や東京都内の教団施設などで育てられていた五十九人が次々と保護された。 その後、子どもたちは親や親類が住む地域の相談所に移され、そこで生活面の指導や学習指導などケアを受けた。 二十七人の子どもを保護した東京都児童相談センター(新宿区)では、栄養失調のため、どの子も、健康な子より二、三歳小さく見えたという。当初は職員への不信感をのぞかせる子が多く、中には手づかみで食事したり、頭をなでられると「尊師のパワーが逃げる」と嫌がったり、異様な言動が目立った。 しかし、時間の経過とともに、集団生活に溶け込んだ。今年四月には全員が児童相談センターでの指導を終えた。 結局、全国で保護された百十二人のうち、九十九人は親類宅や教団を脱会した親の元に引き取られた。経済的余裕がないなど、やむを得ない事情があった十三人が養護施設で暮らしている。 西日本に住む女児(9つ)は母と一緒に入信し、上九一色村の施設で保護された。現在は、祖父母と、脱会した母と暮らしている。祖母は「孫が教団にいたことは秘密にしています。普通の子どもとして生活し、友だちも大勢できた。いじめにあうようなこともありません」と話している。*6)1996. 11. 01 読売新聞 問題が複雑になったのは、幹部の子どもたちの就学が問題になったときからである。 文部科学省は子どもの教育を受ける権利が侵害されているとして、指導をしている。しかし、2000年の石井久子の子どもの就学通知拒否については、以下のように「理解」を示している。 このため、村教委は、〈1〉学校教育に支障をきたしたくない〈2〉村民感情を考えると、超法規的措置を取らざるを得ない――などを理由に、入学通知を送付しないことを決め、今月二十日、双子を除く村内の入学予定者約八十人の保護者に入学通知を郵送した。村教委では「今後も、入学通知を出すつもりはない」としている。 これに対し、文部省では「教育事務は市町村教委の権限。村教委から相談があれば、対応したい」という。県教委は「法に従った適切な決断をとってもらわなければ困るが、村は苦渋の決断をしたのだろう」(桐川卓雄教育長)と村教委の判断に理解を示している。*7)2000.1.28 読売 この点について、この記事の紹介によれば、小林節・慶応大教授(憲法)の話「オウムの社会復帰を認め難いという住民感情は、極めて自然だ。憲法でも、すべての人権は『公共の福祉』によって制約を受ける。教育を受けられない不幸な子女が出てしまうことになっても、公権力には、社会を安全な状態に保つ責任がある」という論理を紹介している。 さておそらく最も大きな話題を集めたのは教祖の松本智津夫の子どもたちが茨城県竜ヶ崎市に編入して以降の事態であろう。 2000年7月に松本智津夫被告(45)の二女(19)、四女(11)、二男(6)が竜ヶ崎市に移住したところ、教育委員会は就学拒否を決めた。そして市当局は住民票を受理しないことを決め、住民票がないのだから就学を認めないという論理をとった。市長は住民の不安や生活への影響を考えるとやむをえない措置と記者会見で述べている。しかし県の教育庁は市に対して、子どもの教育を受ける権利を尊重する必要があると口頭による意見を述べている。 一方住民はオウム対策協議会を設置し、就学問題や立ち退きに対する住民の意見の統一を図り、市に要望を出していくことを確認した。 新聞はその間の状況を次のように伝えている。 竜ヶ崎のオウム問題 地元対策協が拡大 周辺自治会もメンバーに=茨城 ◆監視小屋設置へ 竜ヶ崎市内の民家にオウム真理教の松本智津夫被告(45)の子供たちが転居してきたことについて、対応を協議していた地元自治会のオウム対策協議会は三十日、周辺の二区五自治会をメンバーに加えてオウム対策連合協議会に組織を拡大した。 同協議会では、〈1〉オウム関係者の退去、新たな転居の拒否〈2〉オウム関係者の就学の拒否〈3〉地域住民の安全――を目的に活動していくという。 同協議会は同日、転居してきた民家周辺に「オウム反対 オウムはすぐ出て行け」と訴えた張り紙の掲示を始めた。また、近く監視小屋を設置するなどして、オウム関係者の行動を住民で監視する方針を決めた。 きょう三十一日には、市と市議会に対し、〈1〉臨時交番の設置による二十四時間監視体制〈2〉民家前の市道の指定車両、許可車両以外の通行禁止措置〈3〉住民調査の徹底によるオウム関係者の転入未然防止〈4〉オウム関係者へのゴミ収集などの市民サービスの拒否――などを求めた要望書を提出する。*8)2000. 07. 31 読売新聞 8月になって市は住民届けを不受理とし、更に就学手続きを拒否している。住民側はそれを支持し、住民票の受理と就学許可をしないようことを求める署名を提出している。 結局事態は打開されず、8月の末に子ども側が就学拒否の取り消し処分を求めて提訴することになった。 この時期住民側の動きは次のようであった。 県、就学問題きょう協議 オウム松本被告の子供が竜ヶ崎に転居で=茨城 竜ヶ崎市に転居してきたオウム真理教の松本智津夫被告(45)の子供の就学問題で、同市内の小中学校計十八校の保護者らで組織する「竜ヶ崎市小中学校保護者の会」(吉田宣浩代表)は二十九日、県や同市に、子供の身柄の保護などを求める要望書を提出した。県はきょう三十日、関係各部署で構成する「オウム真理教をめぐる諸問題に関する連絡会議」(議長・宇田川渉理事)を開き、県としての対応を協議する。 同会はこの日、同市教育長と、知事、県教育長あてに要望書を提出した。同市教育長あての要望書では、就学拒否の方針を貫くよう要求、同市内の保護者ら一万二千五百七十二人の署名が添えられた。 また、知事あての要望書では、〈1〉被告の長男(7)は神奈川県の児童相談所に身柄を保護してもらう〈2〉二女(19)、四女(11)、二男(6)は県内の養護施設に身柄を保護してもらう――など三点を挙げて対処を求めた。 これに対し県の担当者は、同会に、きょう三十日の連絡会議で協議し、新学期のスタートを考慮し三十一日までに回答する方針を伝えた。 吉田代表は、「子供に教育を受ける権利はあるが、今の状況で就学したら混乱を招き、市が教団の拠点になる恐れもある」と要望の理由を説明した。*9)2000. 08. 30読売新聞 結局この事例で就学が認められたのは翌年の4月であった。4月の新聞では登校の際特に混乱はなかったと記されている。(4/7) こうした入学拒否は大学においても繰り返された。我が文教大学もその例外ではなかったのであるが、その詳細はここでは述べない。(必要に応じて授業中に説明乃至プリントを配布することにする。) さてこの一連のオウムの子どもの就学問題はどのように考えることができるのだろうか。 ひとつの考えは、小林氏に代表されるように、社会の安定や公共の福祉が優先されるべきで、それに反する場合には子どもの教育を受ける権利が侵害されても仕方ないという考えである。「住民の論理」は感覚的にこの見解と等しい。 それに対して、子どもの教育を受ける権利は公共の福祉の論理によって侵害してはならず、社会の安定などは「大人」の責任であって子どもに責任を転化することは許されないとする主張である。 更に別の観点として、オウムのような社会的な不安定要因となる集団があった場合、それを疎外して社会の中に受け入れることを拒否した場合、不安定さは更に高まるのであって、むしろ社会の安定のためには何らかの形で受け入れる必要があるという考え方もある。 10)http //www.egawashoko.com/menu3/contents/02_1_data_21.html
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/863.html
学齢簿
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/861.html
学齢児童
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/862.html
学齢生徒
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/1958.html
1 学齢簿とは何か。 2 学齢簿を編製するのはどこか。 3 学齢簿は何に基づいて作られるか。 教育法規4解答
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/864.html
学齢簿の編成