約 1,493,428 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/30.html
この俺、ディアボロはGERの能力で永遠に死に続けることとなった 何百、いや何千死んだだろうか しかし、転機を俺は迎えた。 「ハッ?!今度は何だ?」 いつの間にか俺はまた見知らぬ所に飛ばされた 周りには黒いコートを着た集団がいる 「どこから・・・どこから襲ってくるんだ?!」 そうして戸惑っていると一人の桃色の髪をした少女が近づいてくる 「くくく来るな?!俺のそばに近寄るな!!!」 少女は訝(いぶか)しい表情をして俺に聞き取れない言語で怒鳴る 俺の目の前まで来てわけの分からない言語で言葉を発した後 「???!!!!」 俺に口付けをしてきたのだ (何か・・・いつもと違うようだぞ・・・?) 口付けをされながら俺は考えをまとめていた (GERの能力が解けたとは思えない・・・だが) いつもだったら死を迎えるのは二、三分だ だが今回はどうだ。時間は経っているが死を迎えない (まさかジョルノ自身に何かがあってGERの能力が・・・) 考えをまとめた結果は (・・・この世界には俺の救いがあるかもしれん!) 今までの自分とは思えないほどの楽観的な答えだった しばらくの間、周りは静寂としていた だが 「・・・プククッ」 その笑いから 「くくくっ」 「あっはっはっはっはっは」 「ぶーっはっはっはっはァ――――ッ」 「ちょ、ちょっと、ぷはっ、アハハハハハハハハ」 「くわははははは」 「さっすがルイズッ ぐはははは」 「平民を召喚したぞおおおお」 周りの笑いによって静寂は打ち破られた 「・・・くっ」 召喚をした張本人、ルイズは恥ずかしさで顔が真っ赤だった そして無意識にその怒りを使い魔である目の前の男にぶつけようとした 「お前!」 無作法に呼びかける。だが 「ククッハハハハックハハハハハハッ!!!」 目の前の男は突然笑い出した 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 俺は嬉しさのあまり笑い出してしまった もしかするとこの先すぐに死んでしまうかもしれない だが終わりを終わらせる可能性が少しでも見えたのだ。笑わずにはいられまい 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 だがその絶頂の心情を無粋にも汚すものがいた 「・・・ご主人様?」 「そうよ。貴方は私に召喚された使い魔、貴方はさっきの契約で私の使い魔になったの」 つまりこの少女によって俺は救われたのだろうか (この世界・・・スタンドとは違う力がある世界のようだな 我が野望の成就にはいつ、またチャンスがあるか分からん ならばここで我が野望を成し遂げる!) 「ちょっと聞いているの!」 主人を名乗る少女からの怒声が聞こえる (・・・今はこの者たちに合わせて世界について調べるべきか 我が野望の成就はまず世界を知らなければ) 「トゥルルルルルルルル!」 「なに?!」 それは俺自身が発した声だった 「・・主人、それを貸してくれないか?」 「え?」 それと言って指差したのはステッキだ 「・・・何に使うって言うのよ」 「なんでもいい。貸してくれないのなら」 キング・クリムゾンを出す・・・これは問題ないようだ キング・クリムゾンを使いステッキを奪う 「あ!ちょっと」 「・・・もしもし」 俺はステッキを耳と口にあててそう言った (ボス!聞こえますか!) 「・・・ドッピオ?まさかドッピオなのか?!」 (はい!・・・よく分かりませんがいつの間にかボスと意識が入れ替わっていたみたいです) ドッピオが生きている・・?あのとき死んでしまったと思ったドッピオが生きている? 「・・・よく生きていてくれたドッピオ。俺自身もこの状況についていけていない この世界について目の前にいる少女について行き、世界について調べてくれ ・・・私の可愛いドッピオ、やってくれるな?」 (はい!もちろんですボス!!) 意識が変わる。その寸前で (・・・前のときと同じくエピタフと腕を渡そう 私の可愛いドッピオ、生きていてくれてよかった) 「・・ボス・・ありがとうございます」 「・・いいかげん返してくれないかしら」 「あ、すいません」 (ドッピオ、この少女が私を・・私たちを救ってくれたようだ 利用以前に大切にしてやりたい。そう思うのだ) (・・・ボス?) (・・・忘れてくれ、ドッピオ。今のはただの戯言だ) ドッピオは少々驚いた あのボスが戯言とは言えどこんなことを言うとは思わなかったからだ (・・・僕たちを救ってくれた少女、ちゃんと礼儀を持たないといけないよな) そう決心したドッピオだった 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/591.html
ルイズが他の生徒たちを怒鳴りつけていると、教師らしい中年男性がため息をつきながら近寄ってきた。 「オホンッ!ミス・ヴァリエール・・・速やかに契約を。 時間が・・・あまりないのでね。」 「・・・ハイ、ミスタ・コルベール。そこの餓鬼、後で覚えてなさい。 それにしても貴方、ずいぶんおとなしいわね。声もあげないなんて。ま、いいわ。 ・・・我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・我の使い魔となせっ!!!」 ズキュウウーンンッ!!!! スーパーフライ、アヌビス神、チープトリック・・・いずれも主を必要とし、求めていた! その能力ゆえに主を殺したものもあったが、いずれも主を求めていたのだ! 確かに例外も存在する!主の死を発動の条件とするものも存在する! しかしこのキラークイーン、断じてそのような性質のスタンドではない! ならばっ!主を失ったキラークイーンが、 この少女を新たな主とすることは極々自然なことではないだろうか!? ルイズの口付けがキラークイーンに新たな運命を与えた! 「ッ!!?」悠然と少女を見下ろしていた彼が突然震えた。 彼の左手にルーンが刻み込まれているのだ。 そう、シアーハートアタックと呼ばれていた、追尾戦車の部分に・・・。 「これはッ!?キラー・・・クイーン・・・? こいつの名前が、力が・・・言葉ではなくっ!心で理解できるっ!! そして・・・この能力!魔法ではない力!スゴイッ!スゴイけど・・・微妙にムカつくわ・・・。 これじゃあまるで私が爆破しかできないみたいじゃない・・・。」 強化能力・・・シアーハートアタック 自動追尾型爆弾戦車。基本性能、原作通り。 ルーン発動時、ちょっとガンジョーになる。 しかしもともとガンジョーなため、とくに意味はない。 ルイズ・・・どうして爆破なのよお~!!と心の中で叫んだ。 To Be Continued → 1話< 目次
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/807.html
食堂にルイズが着いたのを1人の生徒が気がついた 「あ、『平民』を召喚したゼロのルイズじゃないか」 すると・・・ 「本当だ、平民を召喚するなんて流石だな!」 「そこに痺れないし憧れないぃ!」 次々とルイズを侮辱する言葉が飛んできた 「な・・・・な、こ、こいつはただの召使いよ!」 「へー 召使いって名前の平民なのか」 「なな・・・なんで知ってるの!?」 散々侮辱され流石に酷いんじゃ・・・と思ったが 昨日の自分の受けた扱いを思い出しその考えを取り消した また、今回の原因は今朝赤髪に話したせいだと思ったが嫌な予感がしたので黙っている事にした そんな事を考えながらルイズの席を引いて座らせ、自分も座ろうとすると ルイズは無言で床を指差した。そこに皿が一枚と焦げたパンが置いてある 「これは何ですか?」 「あのね、ホントは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」 エンポリオはその一言で全てを理解し・・・・今度こそ心が折れそうになった そして、そのルイズ様から頂いた素晴らしい食事を食べ終え外へ行こうとすると 香水が転がってきた けれど無視して行こうとした・・・・が (な、なんだ? ここで香水を拾わなければいけない気がする・・・・) そして香水を拾い転がってきた方向を見ると 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザで見るからにマンモーニなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 「会話中にすみませんがこれ、落としましたよ」 すると周囲に居た友人らしき人の1人が 「おや? それはもしや、モンモランシーの作っている香水じゃないか?」 「ああ、この特徴的な色合いは間違いないな。彼女が調合している香水だ」 「つまりギーシュは、今モンモランシーと付き合っているのか」 そのマンモーニが何か言いかけたとき、近くの席から茶色のマントをつけた少女がギーシュの席にやってきた 「け、ケティ……。違うんだ、これは…」 ケティと呼ばれた少女は弁解をしようとしたギーシュの頬を思いっきりひっぱたいた そして涙を零しながら去っていった するともう一人少女が近づいてきた こちらがモンモランシーだろうか? その少女はマンモーニの前に立つと・・・・スープを顔面に叩き込んだ 「嘘つき! 二度と顔を見せないで!」 そう言うと その少女もまた、去っていった 呆然とその光景を見ていると 「どうしてくれるんだ? 君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!」 そのマンモーニが言いがかりとしか思えない発言をしてきた 「え?ぼ、僕が悪いんですか?」 「当たり前だろう! 君が香水を拾うからこんな事になったんだ!」 流石マンモーニ その考え方には尊敬してしまう 「でもマンモーニさn・・あ、えっとギーシュさんが二股をしていたのが行けないんじゃ・・・」 その言葉に周囲から「子供に言われてるよ・・」などと失笑が漏れる プライドが高いのだろうか?怒りで表情を歪めている 「確か君はミス・ヴァリエールの使い魔だったな・・・・ いい機会だ 彼女の変わりに僕が躾けてやる!」 その言葉には流石にカチンと来る そしてエンポリオは・・・・・ モンモランシーと同じように、スープを、叩き込んだ! 少しの静寂の後周囲に爆笑の渦が広がる 「き・・・き、き 貴様 許さん!決闘だ!!! 死ぬまで痛めつけてやる!!」 周りが 子供相手に何を言ってるんだこのマンモーニ っていうかマンモーニって何? という視線にも全く気がつかずギーシュは目を純血させながら激怒していた ~~~~~~~~~~ その頃のルイズ・・・・校舎裏で今日も真面目に魔法の勉強中(マンモーニ事件は知りません
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/31.html
「あんた名前は?」 「ヴィネガー・ドッピオです」 「それじゃあんたのことはドッピオって呼ぶから…」 魔法学院の一室の椅子に座る青年、もといドッピオは目の前のベッドに座る少女の質問に答えていた 広場でボスと話をしていると突然手を捕まれて城のような建物の中の彼女の自室らしき場所に連れ込まれたのだ そしてドッピオは質問責めにあっていた 話を聞いているうちにわかったことはここはイタリアじゃなく魔法使いがいる国 少女はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 通称ルイズ そしてここ魔法学校 魔法生物の使い魔呼んだんだけどあんた誰? って話らしい しまいには「呼んじゃった以上仕方ないから平民のあんたのご主人様になってあげるから感謝しなさい!!」 ときた。…のだが彼やもう一人の彼的には (言っていることがわからない。イカれてるのか?この状況で?) (ボス・・・僕、ストレスで挫けてしまいそうです ) と当然の反応である(一人は未来に不安しているが) キング・クリムゾンの腕を発現させルイズの反応を見たがどうやら見えていないらしい つまり新手の敵スタンド使いではないらしいのだが魔法使いがいるなんて考えられなかった 常識的に考えて もちろん自分が特殊であることもキスのせいで頭から吹っ飛んでいる されているのはボスだが彼にされたのも事実、彼はとっても純愛系なのだ 「貴女の話はわかりました ここが魔法の国、貴女の魔法で僕が来た、使い魔の儀式ってのでキスした それで帰れたりするんでしょうか?」 もしGERの能力が切れた(ジョルノに何かあった)のなら元の世界に戻ってもう一度再建したほうがいい と考えたドッピオの考えは 「無理よ… サモンサーバントであんたを呼び出したのは私 だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ」 この主人にスパっと切り捨てられたのだ 「そうですか・・・僕はどうなるんでしょう」 「元々人間なんて使い魔になられたって困るのよ とりあえず掃除や洗濯をしてもらうわ」 「・・・分かりました」 ドッピオはこれでも譲ったつもりだった だが次の一言で温厚なドッピオは怒ってしまうのだった 「それにしても最初と今とではまったく別人よ なんだかよくわかんない変な平民かと思えば今は礼儀正しい人になってるし 「どこから襲ってくるんだ」とか「俺のそばに近寄るな」とか、最初は精神障害と思ったけど今はそんなことないし あんた、なんなの?」 「・・・変?」 最初、もちろんそれはディアボロ自身のことだ。ドッピオ自体も分かっている いや、それが悪かった。彼は自分が変な扱いをされるぐらいならまだ怒らない だが、ルイズは罵倒してはいけない人を罵倒した 人にはいくつか言われたり、やられたりすると許せない個人個人の地雷と言うものがある (この人・・・ボスを侮辱した・・・!) ドッピオは怒ってしまったのです 「何でボスを貴女なんかに侮辱されないといけないんですか!! 自分で呼び出しておいて無責任な魔法使い様で… 付き合ってられません。僕は帰ります!!」 そしてそのまま出ていった 罵倒した本人は 「・・・ボス?」 聞きなれない人物の事を半濁していた 建物を出ると見渡す限り地平線 どんな田舎に来てしまったのだろう この怪しい魔法使いどもの敷地をでていこうと正門らしき場所に向かいドッピオは歩を進める 「・・・それにしてもここは地球のどこなんだろう」 周りの景色を見渡しながら首を傾げる 木々や草花を見る限りどうも地元で見たことないものばかりである 「これはまさか異世界…」 頭を回転させるが何者かの言葉によって遮られた 「トゥルルルルルル!」 何者かの言葉はドッピオ自身の言葉だ 「電話だ!・・・えっとどこに・・・」 そこにある木の枝を拾い耳と口にあてる 「もしもし」 (ドッピオ、このまま抜け出すつもりか?) 「あ・・・はい」 (ならばあては?) 「・・・ありません」 (・・・私も侮辱されたのは腹が立つが今はそのようなことで怒るな 我々には今はあの少女しか・・・ルイズしかあてが無いのだから) 「すいません・・・ボス」 (いいのだ、私の可愛いドッピオ。私のために怒ったのだろう?) ドッピオはボスが少し変わったのに気がついていた GERによって地獄を味わい、ディアボロが他人の痛みをわかってあげられるようになったことを 「・・・ボス」 (なんだ?ドッピオ) 「・・いえ、やっぱりなんでもありません」 ドッピオはこう思ってしまった。今のボスなら野望という大きな幸せではなく日々の小さな幸せで生きていけるのではないかと そんな日々をドッピオは欲しいと思ってしまったのだ (このままこの世界でボスと一緒に・・・) そんなことを考えていたドッピオの思考は 「やあ、そんなところで何をしているのかな?」 突如の声で切られてしまったのだ 「・・・あ、ルイズさん・・・」 「ハアハア・・・急に抜け出してどこに行くつもりなのかしら?」 息を切らしながら最初に声をかけた人の後ろからルイズがやってきた 「・・・すいません、ルイズさん。急に怒り出してしまって」 ドッピオはディアボロを侮辱されたのをまだ良く思っていないが急に怒り出したのは悪いと思いまず謝った 「・・・あれから少し考えたんだけど」 ルイズが口を開く。ドッピオはそれが何かと思って顔を上げると 「あんた、やっぱり精神障害でしょ」 そんなことを言われた 「・・・え?」 「そうとしか考えられないのよ。部屋でボスとか言ってたでしょ? 最初と今と違うならあんた二重人格とかそういうのよ」 「えっと・・それは・・その」 ドッピオは少々迷っていた。このまま自分のことを正直に言うべきかそれとも嘘を言うべきか どうするか迷っていたとき 「まあまあ、そこら辺にしておいたほうがいいのではないかな?ミス・フランソワーズ」 一緒に来た金髪の人に遮られたのだ 3へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1715.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 享年16歳 嗚呼、美人薄命とはいうけれど恋の一つでもして死にたかった 振り下ろされる巨大な拳を前に、16年間の出来事が走馬灯のように流れていく 恐れ多くも姫殿下の遊び相手として王宮で過ごした日々 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 小船で泣いている所を婚約者に慰められたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと ちぃ姉さまの動物に危うくじゃれ殺されそうになったこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと ・・・・・。 何だろう、急に悲しくなってきた 私の人生こんなことでいいのだろうか?いいやよくない!! せめて抗ってやる! 屹然と杖を構え、目の前のゴーレムに向けて魔法を放とうとする。しかし 「「きゃっ!?」」 不意に脇腹に衝撃を受け、続いて頬の辺りにボヨヨンと何か暖かく柔らかな感触 「ちょっとヴァリエール、重いから退きなさいよ!」 「う、うるさい!今退くわよっ!!」 どうやらにっくきツェルプトーの胸に溜まった二つの脂肪の塊がクッションになったらしい いっそそのまま潰れてしまえばよかったのに・・・・いや、その前にさっきの衝撃は何だったのだろう? 「ッ、そうだヴァニラ!」 慌てて振り返るが、そこにあったのは今正にドスンという鈍い音共に地面に減り込むゴーレムの拳 「え、嘘!?」 「まさか私たちを庇って・・・・?」 何ということだろう あまりのショックに地面に膝をつき、呆然と拳の着弾地点を見つめる ツェルプトーが横で何か言ってるが分からない 全然いう事を聞かなくても私の使い魔 平民でも、何だか訳のわからない力を持っていた私の使い魔 あの物を削る力でもあの面積は防ぎきれなかっただろう 私があの時直ぐ逃げていればヴァニラは・・・・ 「ヴァリエール! ルイズ!! あれ見てあれッ!!」 うるさいわね、今感傷に浸ってるんだから邪魔しないで・・・・って何? 「ほらあそこ!」 ツェルプトーの示す先を見ればゴーレムの腕を伝い、壁に開いた穴に入っていく人影が一つ 「何あれ・・・・まさか賊!?」 「ていうかあの穴アナタの失敗魔法で出来た皹じゃないの?」 「なッ!?そ、そんなわけないじゃないの!!」 冗談じゃない、でもまさか・・・・・ってそんなことよりヴァニラ! ガオンッ! 突如、独特な音と共にゴーレムの右腕が崩れ落ちる 「え、何事!?」 「ヴァニラ!!」 私とツェルプトーが声を上げるうちにも、次々とゴーレムの体にボコボコと風穴が穿たれていく 「やっちゃいなさいヴァニラ!!」 このままいけばあのゴーレムを倒せる! そう考えついつい逃げるのも忘れて観戦してしまったが、それがいけなかった 「「え?」」 不意にゴーレムがぐらりと傾ぎ、そのまま私たちの上に大量の土砂が覆いかぶさった To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2592.html
夜、陽気に賑わう酒場に、一人の男が入ってきた。 マントを着けているが、身なりからすると貴族とは思えない。 幅の広い帽子と、担いでいるこざっぱりとした荷物からすると旅人の様だ。 だが、酒場の喧騒の中その男に注目する者は居なかった。 その男は、大声で歌っている男の側を通り抜け、踊っている者たちを押しのけ、喧嘩をしている連中を避けてやっとカウンターにたどり着いた。 「お隣よろしいかな?」 緑色の髪の女に声を掛け男は席に着いた。 声を掛けられた女は気だるそうに顔を上げた。 「はん?…あんた誰よ?……さっきまで居たボーヤは?」 かなり呑んでいるらしい。ワリと整った顔は酒の為に火照っている。 年齢は二十代後半ぐらいだろか。 「坊やって…こいつの事かい?」 足元を指差す男。 見ると16、7の少年が酔いつぶれて寝ている。 「そうよ…いや、違ったかも………もうどうでもいいわ。マスター!もう一杯!」 「それじゃあ」 足元の少年を跨いで席に着く男。 「僕に奢らせてくれないか?」 「あら~いいの?じゃあ一番高い奴」 「おいおい…まあいいか。僕にも同じのを頼むよ。僕はジャック。君の名前は?」 少しの間、酒が注がれているグラスを見つめてから、女は答えた。 「…マチルダよ」 「マチルダか…ステキな名前だ」 「あら、口説いてるの?」 「そう聞こえるかい?」 グラスを受け取ると、ジャックはマチルダに向き直って言った。 「乾杯しないかい?」 「何によ」 「僕らの出会いに」 「プッ。何よそれ」 「では、アルビオン共和国の戦勝一周年を記念して」 「いいわよ」 「乾杯」 「乾ぱ~い」 神聖アルビオン共和国がトリステインに宣戦布告をしてから2年。 戦争はたった1年で終結してしまった。 当初、トリステインとゲルマニアが同盟を組むというと言う噂もあったのだが、開戦とほぼ同時に反故にされてしまった。 さらにトリステインのカリスマであるアンリエッタ王女が、開戦直後のタルブで戦死してしまったのだ。 突然の悲報に兵士達の士気は落ち、王宮勤めの貴族たちはアルビオンの事よりも、王女をタルブへ行かせたのは誰か?と責任を押し付け合った。 その様な状態では『空の怪物』『羽を持つ悪魔』『灰の塔』等とあざなされるレキシントン号率いる空中艦隊と戦えるはずも無く、トリステインはアッサリと降伏したのだった。 その後、ジャックとマチルダは他愛も無い話をしながら酒を楽しんでいた。 深夜に近づいているというのにあたりの騒音はいっそう酷くなってきている。 「所であんた仕事は何?あ!ちょっと待って当てるから……吟遊詩人?」 「ハッハッハ、何でそう思ったんだい?」 「いや、何か帽子がそう見えたからね。で、本当は何さ?」 「こいつだよ」 そういってジャックはマントをめくって見せた。 「杖…あんた貴族かい」 マチルダの顔が少し険しくなった。 「いやいや、傭兵さ。とっくの昔に没落しててね。貴族制が廃止されたんで少しスカッとしてるよ」 「フフ、あたしもだよ」 「君も…するとやっぱり傭兵でもやってたのかい?」 「まあね。この戦争のおかげでちょいと稼がせてもらったよ」 頬杖をつくマチルダ。 そんなマチルダにジャックが質問した。 「戦争の前は何をやっていたんだい?」 「何って…まあ色々さ」 「色々とは?」 「…レストランとか、宿屋で働いてたよ」 「それだけじゃないだろう?」 「…どういうことだい?」 ジャックの顔が険しくなった。 「魔法学院でも、だろ?」 「フン!傭兵にしちゃ礼儀正しいと思ったら…あんた何者だい?」 袖口に隠し持っている杖に手を掛けるマチルダ。 「早まるな」 手で制するジャック。 「ちょっと話を聞きたいだけさ」 「話って?」 杖に手を掛けたまま怪訝そうな顔になるマチルダ。 「あの日の事をだ」 「あの日…」 マチルダの顔に、一瞬怯えが過ぎった。 「そう。あの日だよ」 ジャックはマチルダにグッと顔を寄せた。息が掛かるぐらい近くに。 「…一体何があったんだ?」 「何って…」 喧騒に掻き消されそうな声で呟くマチルダ。 「3年4ヶ月前の春の召喚の儀式の日。トリステイン魔法学院の教師・生徒・使用人全員が死んだ。何故だ?」 「……」 「トリスタニアで検分書を読んだよ。全員即死。殆どの者に外傷は無い。被害者の死んだ場所はわりとバラバラで、厨房で死んでいた者。 洗濯物の山に埋もれていた者。廊下に倒れていた者。木に寄りかかっていた者。生徒全員が居眠りしている様に机に突っ伏して死んでいた教室も在るそうだ。 3人ほど、首の骨が折れていた者があったな。フライ中に落ちた様だが、フライを使ってて落ちるか?普通。落ちたために死んだのではなく、死んだために落ちたんだろうな。 そして二年生だけは全員サモン・サーヴァントを行っていたであろう広場で死亡していた…」 ジャックは溜息を付く様に一旦言葉を切った。 「検分書に因ると、二年生の誰かが悪質な病気を持った生物を呼び出したのだろうとある。確かに病気なら被害者たち殆ど無傷という説明が付くかもしれない。 だが、明らかに何者かから逃げて、狼に怯えた羊のように数人で寄り添って死んでいた者たちも見つかっている。病気の感染者から逃げたのか?違う。感染すると即死するのでこれは違うだろう。 では病気を持った生物から逃げていたのか?それも違う。スクウェアのメイジ達が検査したが生徒と生徒の使い魔以外の痕跡は見られなかった。 …というか、病原体や毒物の痕跡すら全く見られなかったのだよ!そしてそんな大惨事のなか…君だけが生き残った。何故だ!!」 ジャックに両腕をつかまれ、ビクッとするマチルダ。 「あ、あたしは……」 一瞬言葉に詰まる。 「あたしは何にも知らないよ」 ジャックの目が鋭くなった。 「隠してもために成らんぞ…」 「隠してるんじゃあない!本当に何も知らないんだよ!!あの日あたしは…」 マチルダことロングビルは辟易していた。 魔法学院に潜り込んだはいいが、あのスケベじじいが終始セクハラをして来るわ、忌々しい白鼠を使って下着を覗こうとするわ、あまつさえ昨日は着替えを覗かれたのだ。 これも辛抱、宝物庫からお宝を頂くまでの我慢だ!お宝さえ手に入ればこんな所さっさと辞めてやる!!ついでにセクハラの事を上に訴えてやろうか。 そういえば、今日は使い魔召喚の儀式があるんだっけ?使い魔を手に入れてハシャぐあまり、覗きをやろうとする生徒がいるから気を付けろってシュヴルーズが言ってたが、やれやれそんな奴はオールドオスマン一人で十分だよ… 等と考えながら学院長室の前に来たロングビル。 ノックしてから「失礼します」と声を掛ける。 ………………… おかしい。 いつもならスケベじじいが浮かれた声で招き入れるというのに、返事が無い。 「失礼します。入りますよ」 ドアを開けて中に入ると、いつもの席に座っていたオスマンが、ハッとこちらを向いた。 その瞬間、ロングビルは心臓が締め付けられるような嫌な感じを覚えた。 こちらを見たオスマンの顔には、はっきりと恐怖が表れていた。 何?何がどうしたのよ?まさかフーケだとバレた?!いや、そんな筈は無い! もしフーケだとバレたとしても、オスマンが恐怖を抱くだろうか?このあたしに。 ここに勤め始めてから初めて見たオスマンの恐怖。他人の恐怖が、ロングビルに言い知れぬ不安を与えた。 「ど、どうかなさったんですか」 オスマンはロングビルの方と遠見の鏡の方を交互に見た。 「大変な…大変な事が起こったんじゃ!!こ、こんな事が!!」 「オールドオスマン。落ち着いて下さい」 と言ったものの、自分も落ち着けぬロングビル。 「何が起きたのですか?」 「こ、これは!こんな事が!!まさかこんな!これはどういう事なんじゃ!!??」 日ごろからボケた様な事を言うオスマン。 しかし、これは違う。これはボケ老人の戯言ではない! 知能の高い者が理解不能の状況を目の当りにして混乱しているんだッ!!。とロングビルは思った。 オスマンはロングビルと遠見の鏡の方を交互に何度も見ている。 「ああ!何ということじゃ!!これは…そ、そういう事か!何ということじゃぁああ~!!!」 叫ぶと同時にイスから立ち上がり、ロングビルをビシッと指さし指示を出す。 「ミス・ロングビル!!急いでぜんs――」 指示はそこで途切れた。 唐突に。何の前触れも無く。糸が切れた操り人形が倒れるように、オスマンは崩れ落ちた。 「オールドオスマンッ!!」 持っていた書類を投げ出し駆け寄るロングビル。 鼻の前に手をかざすが、呼吸が無い。 首筋に指を当てるが、脈が無い。 死んでいる。 死んでいる、という事には多少慣れていた。 色々危ない橋も渡ってきた。 死を覚悟した事もあった。 目の前で人が死んだことも一度や二度ではない。 もちろん…殺した事もだ。 だが… だが……この『死』は異常過ぎる!! 矢を射られる訳でもなく、氷を射られる訳でもなく、炎に焼かれる訳でもなく、岩に潰される訳でもなく、唐突に『死』が現れた。 どうする?助けを呼ぶか?いや、死んだ原因は何だ?その原因はまだここにあるのか?オールドオスマンをも殺せるような原因が。 このオールドオスマンを殺せる…? 背筋に激しい悪寒が走った。 胃の中から何かがせり上がってくる。 駄目だ、助けを呼んでいる場合ではない!宝物庫なんて知ったこっちゃあない!!逃げるんだ!! 自分の盗賊としての勘がそう叫んでいる。 部屋を駆け出したロングビルは、手近な窓を見つけると、そこから飛んだ。 今まで出したことも無い速度で。 自分の荷物さえも置いて。 三日後。 トリスタニアの宿屋で、学院の人間が全員死んだと聞いたロングビルは、しばらく震えが止まらなかった。 「それだけか?」 ジャックの声は、落胆した声で聞いた。 二人は多少静かな方へ席を移していた。 「そうよ。だから言ったでしょ、何も知らないって…がっかりさせて悪かったね」 「いや」 気を取り直すようにジャックが言った。 「疫病ではないと確信できただけでも進展さ」 「フ。目の前で死なれて、その死体を触ったあたしが死ななかったからね」 と自嘲気味に言ってからグラスを煽るマチルダ。 酔いもスッカリ醒めてしまった。 「では僕はこれで失礼させてもらうよ」 そう言って席を立つジャック。 「協力を感謝する」 歩き出そうとした所をマチルダが引き止めた。 「ねぇ…一つ聞いて言いかい」 「何だね?」 「…あんた何でこの事件を調べてるんだい?」 「何でそんな事を聞く?」 「いや、何か随分がっかりしてたからさ…ちょっとした好奇心だよ」 「………大した事じゃあない。トリステイン魔法学院に許婚が居たんだ。それだけさ」 「そう。悪い事聞いちゃったね」 「いや。では今度こそ失礼する」 そう応えると、ジャックは酒場の喧騒の中へ消えていった。 一人残されたマチルダは、少し悩んでから、次のボトルを開ける事にした。 許婚か……一体どの『教師だったんだろう』…。…シュヴルーズ? 「まさかね」 呟いてから、新しいワインに口を付けた。 魔法学院で一体何が起こったのか?ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは生涯この謎を追い続けた。 家庭を築いて後も、暇を見つけてはトリステイン魔法学院跡地に赴き、時には家族と、時には一人で調査を続けた。 しかし、結局最後まで何も判らぬまま、その生涯を閉じる。 では、何が起きたのか?時は3年4ヶ月前に遡る。 春の召喚の儀式の日。 進級試験に臨んでいたルイズは、同級生が何の問題も無く使い魔を召喚して行った後に、自分が召喚したものが信じられなかった。 「……先生!召喚のやり直しをさせてください!!」 ルイズが叫ぶ。 現れた物は、一人の『おじさん』だった。 何の変哲も無い、普通の、どう見ても平民にしか見えない『おじさん』だった。 青い帽子を被り、パイプを咥え、青緑の上着を着ている、無精ひげを生やした『おじさん』……。 到底、使い魔にしたい相手でもなければ、コントラクトサーヴァントしたい相手でもない! 「残念ながら、ミス・ヴァリエール。儀式のやり直しは許可できません」 監督をしていた教師のコルベールが言う。 ルイズにとっては無情な言葉だが、コルベール本人も前代未聞の出来事にこれ以上の事を言えないのだ。 「そんな!!でも――」 「すみません」 「!!」 いつの間にか、コルベールとルイズのそばに来た『おじさん』。 「ちょっと質問したいのですが」 「な…なんでしょうか?」 コルベールが答える。顔に少し、緊張の色が見える。 「サンレミの病院は、どちらにいけば良いのでしょうか?」 質問しながら、帽子を取る男。 「サン・レミの…病院ですか?」 「何言ってるのよあんた。それより引っ込んでなさい!今は取り込み中よ!しかも!あんたのせいでね!」 「おや?」とルイズの顔を覗き込む男。 「な、何よ!」 「ちょっと待って。この私の事知ってますよね?そうでしょう?私ですよ」 知ってるんですか?という顔のコルベール。 「知らないわよ!こんなおっさん!見たことなんて無いわ!」 「そうですか…でも、今わたしを見て感動したでしょう?皆さんも」 と周りを見渡す男。え?という顔の生徒達。 確かに、この『おじさん』には何か引きつけられる物がある。何かわからないが。 「…あんた何なの?」 ルイズが聞く。 「わたしは…ヴィンセント」 パイプを咥えなおし、帽子を被る男。 「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。『ゴッホの自画像』です。昨日カミソリで耳を切り落としました………所で病院は、どちらでしょう…?」 こうして、同日中にトリステイン魔法学院は全滅した。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/673.html
煙の晴れた中庭を前にしてルイズは天に向かって祈りをささげた (我等が始祖にして偉大なるブリミル、私何か悪いことを致しましたでしょうか? 今まで生きてきた中で嘘をついたことはあります、隠し事をしたこともあります ですが魔法が使えぬゼロという嘲笑に耐え、懸命に努力してきたつもりです たしかに神聖で美しく強い使い魔というのは高望みし過ぎたかもしれません、自分でもそう思います でもこれはあんまりじゃないでしょうか) 何度かの失敗の後でやっと呼び出すことに成功した自分の使い魔に視線を移す 髪の色は自分と同じピンク‐でも斑模様、服装はほぼ半裸‐三十過ぎがする格好ではない 平民という時点で問題外、外見でも不合格を宣告するには十分、駄目押しなのはその態度だ 私を、可憐でひ弱な百合の花の様な貴族の美少女を見て、怯えているとはどういうことだ 平民が突然こんな所に来れば混乱するのは無理も無いが、これはありえない 結論:これは使えない 「ミスタ・コルベール、もう一度召喚の儀式をやらせて下さい」 「ミス・ヴァリエール、それはダメだ」 あっさりと却下される 人事だと思って…、薄いの髪の毛だけではないらしい 神聖な儀式だの、伝統だの、ルールは絶対だの、再召喚が行えるのは使い魔が死んだ時だけだの、 どうでもいいことをまくし立てた挙句の果てに、時間が押しているからさっさと契約を済ませろと来た まあ確かに何時までもこうしている訳にはいかない、極めて不本意ではあるが契約を行うことにする 決してU字禿の言葉に押された訳ではない 口の中で呪文を唱えた後、怯える男に口付けをした 唇が離れた後、左手を抱えて男はのた打ち回りながら倒れた 私の唇に触れたのだから感激して涙するのが筋だろうに失礼な奴だ 刻まれたルーンを興味深そうに見ていたU字禿や私を馬鹿にしていた同輩が室内に戻ってなお、男は倒れたままだった その様を見て一人残ったルイズは声を上げる 「ほら、いつまでも寝てないでさっさと起きなさいよ」 反応がない いぶかしみながら、爪先でつついてみる ピクリとも動かない 「えっ!」 口に手をかざしてみる 息がない 「あれっ!?」 首に手を当ててみる 脈がない 「これって、つまり」 ■今回のディアボロの死因 ×ルイズにキスされたショックで死亡 ○ルーンを刻まれたショックで死亡
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/32.html
「ちょっとギーシュ、人の使い魔の教育方針に口ださないでくれる?」 どうやら目の前の金髪の人はギーシュというらしい 「ミス・フランソワーズ、ここで人の目に付いているのが分からないのかな?」 よくよく後ろを見るとこちらを見て笑っている人たちがいる 「う・・・」 「教育をするのはかまわないが笑いものにされるのは君もよろしくないと思うのだが」 ギーシュさんがこちらに手を出す 「あ、どうも」 その手をとり立ち上がる。いい人なのかもしれない 「平民風情が貴族に手を出してもらったんだ。光栄に思うことだね」 ・・・この世界は平民とか貴族とか階級に拘り過ぎている面があると思う 同じ人間なのにこう気を使う必要があるんだろうか 「まあ使い魔探しはこれで終わらせてもらうよ。僕には僕の用事があるからね」 「別に協力してとは頼んだ覚えないけどね」 「それじゃあね。ゼロのルイズ」 「・・・ドッピオ、さっさと部屋に戻るわよ」 「・・・はい」 ゼロのルイズと呼ばれたとき、ルイズさんに怒りの表情が見えたのは気のせいではなかったと思う その後大きな食堂で食事を取った後部屋まで2人は帰ってきた 二つの月が登り日は暮れていた 部屋に入るなりルイズは指を鳴らしランプを付ける ランプに驚き珍しそうに眺めながらさっきから口を開かない少女の事を考えていた 沈黙が気まずくてたまらないため何か話しかけようとあれこれ考えているとベッドに座っていたルイズは頭を上げて言った 「うん、やっぱあんたが何だろうと関係ないわ!!」 「…いきなり何の話ですか?」 貝のように口を閉ざしていたルイズに仗助は驚く 「あんたがその…精神障害でも平民であり私の使い魔よ!!その事実は全てに優先するわ そうよ!!こいつをどうしようかなんて考える必要が無かったのよ!!」 ルイズは先程までの悩んでいた顔とは別人のように明るく楽しそうに言いうんうんと頷いた 「悩みが解消されたのはめでたいですけど、言っていることがわからないんですが・・・・・」 半分呆れ顔のドッピオをルイズはビシッと指差し叫ぶ 笑いながら何かを投げてよこしながら 「それ、よろしくね」 「わっと・・・なんですか?これ」 「洗濯物よ。洗っておいてね」 「え!!パンツもですか?」 「使い魔らしくご主人様の身の回りの世話ぐらいしなさいよ!!じゃ寝るから」 言うだけ言うとさっさとベッドに潜り込み指を鳴らし灯りを消してしまった その後ドッピオは数回言葉を交わしたが無駄だったため諦めて洗濯をすることにした とわ言ってもドッピオは洗濯と言うものを出来るかどうか不安だった 「・・・すいませーん」 道具も無い以上、出来るわけも無い 昼間の脱走のうちに見て回ったところの一つ、メイドさんたちが働いていた所についた 「・・誰かいませんかー?」 だが無人、夜も少々遅い時間に入ったためか無人だった 「・・・ちょっとだけ借りて行きまーす」 おそらく洗濯に必要と思われるものを拝借し、後は水道と思われるところに戻るだけです 「誰かいるんですか?」 「うわああ?!」 「きゃ・・?!」 無人と思ったら見回りと思われる人に見つかってしまったドッピオはつい叫んでしまいます 誰だって夜に人がいないと思っていたのにいきなり声をかけられたら驚きます ちなみにちょっとドッピオは拝借するのに罪悪感がありました。吃驚するのも当然です 一方見回りの人も驚いています。いきなり叫ばれたら誰だって驚きます 「す・・すいません!すぐに戻しますから!」 「こちらの方こそすいません!いきなり来てしまって」 ゴチンッ! 「イタっ!」 「っ・・!」 反射的に謝った二人の頭と頭がぶつかってしまいました 「・・重ね重ねすいません。僕は洗濯に必要なものを取りに来たんですけど」 「っ・・お洗濯に必要なものをですか?」 暗がりの中、よく見るとその人はメイドさんでした 「・・あの、どういう物がいいか教えてくれませんか?」 「お洗濯をですか?」 「・・・えっと道具さえ教えていただければこっちでやろうと思ってるんですけど」 「・・お洗濯の道具でしたら・・あ、これは食器用の洗剤です」 「あ、すいません・・」 「お洗濯でしたらこちらの洗剤を使ってくださるといいと思います」 こうして妙な譲り合いの会話がしばらく続きました 「いろいろ教えていただいてありがとうございます」 「あ、いえそんなに気になさらないでください」 「えっと・・・それじゃ僕はこれで!」 ドッピオは自分がいろいろ間違っているのを指摘されて恥ずかしくなっていました 少し逃げるように洗い場に行こうとしますが 「あ、あの!洗い場だったらこっちのほうが近いですよ!」 と、また指摘されてしまったのでした 「・・ありがとうございます。それではこれで」 「あまりお気になさらないでください」 近いといわれた洗い場に歩みを進めるドッピオでしたが (・・あ、名前とか聞いておいたほうが良かったかも) なんてことを考えていました 「・・ふう」 ドッピオはドッピオなりに洗濯を頑張ってみましたがやっぱり素人、洗濯物は半分も終わっていません 「・・・やり方が悪いのかな?」 洗濯板にこすって汚れを落とすのですが良く洗わないと汚れが落ちません 「・・・力を入れるとダメみたいだし」 少々力んでしまってほつれてしまった服も少しあります 「うーん、どうすればいいんですか?ボス」 左手に石をもって言ったドッピオにディアボロは (私が知っていると思うか?) と、予想どおりに答えます 「・・・あの」 と、ディアボロ以外から話しかけられました 「貴方は・・・えっと」 「シエスタです。その、お洗濯で困ってるように見えたんですけど」 事実困っていました。家事スキル0のドッピオとディアボロがやっても上手くいく訳がありません それでもディアボロよりもドッピオのほうが上手と言えば上手でした ディアボロは力を入れすぎてしまい服をほつれさせてしまうのです ドッピオは力を入れて服をダメにしてしまうのが怖いため、ゆっくり丁寧にやろうとします ですが結果として遅くなってしまいます 「シエスタさんの言うとおりです・・・ちょっと困っていまして」 「・・良かったら教えましょうか?」 「え?いいんですか?!」 「よろしければなんですけど」 「もちろん大歓迎です!」 ドッピオに洗濯物の救世主が現れました。今のドッピオには女神にも等しいでしょう 「ここはこうやったほうが早く・・・」 「じゃあこれはどうしたらいいんでしょう」 「前もって薄めた洗剤水の中に入れておけば落ちやすくなります」 「なるほど・・・」 シエスタ開催、お洗濯講座も少し立つとドッピオは家事スキル0から3くらいまであがりました ちなみに家事スキルは10まで、10基準はシエスタです (・・・ふむ) ディアボロも少々関心があったのか邪魔をせず、お洗濯講座を聞いていました 「こんな感じなんですけど・・・」 とお洗濯講座が終わるころにはもう残りの洗濯物はなくなっていました 「教えてくださってありがとうございます」 「え?」 ドッピオは感謝の表れをと思って礼をしました 「そ、そんなこれくらいで、お礼なんていいですよ」 「いえ、最初の僕と比べたら要領も分かるようになったんです シエスタさんのおかげです」 ドッピオは本当に感謝していました 「・・・お礼だけで十分ですよ。道具は私が後で戻しま「いえ、そこまで迷惑かけられません」 シエスタの言葉をさえぎってドッピオは言いました 「教えてもらった上にそこまで迷惑かけられません。 昼間とかも働いてたんですからもう寝てください」 「・・・それではお言葉に甘えさせていただきます。 あ、その前に」 「なんですか?」 「お名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」 「・・ドッピオです」 「ドッピオさん、おやすみなさい」 「はい、おやすみなさい」 こうしてお洗濯によってドッピオに新しい知り合いが出来たのでした 洗濯物も干しました。後は眠るだけなのですが (ドッピオ、大丈夫か?) 「・・大丈夫です。ボス」 ドッピオは眠りの限界寸前のようでした。洗濯に時間をかけすぎたのです (・・それにしても) ドッピオは昼間に考えたことをまた考え始めました (・・・二つの月、地球とはまったく違う世界) ここでボスと一緒に静かに暮らしていく、だけどボスは野望を果たそうとするだろう (・・・ボス、ここで静かに・・・) ドッピオの意識は緩やかに落ちていった (・・・・・・) ドッピオが眠りについたとしてもそれは意識が眠りついただけであり、ディアボロ自身は起きていた もっとも表層意識にディアボロが来たわけだが (・・・ドッピオ) ドッピオの考えが頭に浮かぶ。そう、ドッピオの考えはディアボロにも分かっているのだ それをドッピオは知らない。自分の心の内にだけ留めていると思っているものもディアボロには知れている (・・・何を考えている。俺は俺の野望を果たすだけだ) 次があるか分からない。だからこそここで我が野望を果たす だがここでゆっくり暮らすのも悪くは無いと思ってしまう (・・・今は、今はここで) そう、まずは情報を集めてから そう自分に言い訳をしながら、ディアボロも眠りに入るのだった 4へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1800.html
教室の一角。マントを羽織った少年少女達の間に、大男が倒れていた。 気を失っているようだが、それでもその雰囲気にはなにか語るべくないものがあった。 「へ、へいみん?」 「そもそも人間?」 「ゴーレムとかじゃない・・・よな?」 「ざわ……ざわ……」 筋肉質であり、マントや宝石などの小奇麗なものはつけていないことから、貴族ではないことはわかる。 しかし、彼の頭には角。彼の両肩にも角。人間ではないのか、人間、あるいは亜人だとしても平和的な人間でない可能性が 非常に高そうだとメガネの少女は冷静に分析した。 「ゼロのルイズ!なにを呼び出したんだ!」 「何度も失敗して、成功したと思ったらこれかよ!」 「まともに使える魔法はないのか!」 教室から少女に向けて野次が飛ぶ。 桃色の髪の少女が叫ぶ。 「こ、コルベール先生、やっぱりこの大男とも『契約』しなければいけませんか?」 「ミス・ヴァリエール、例外はありませんよ。」 少女は少し唸った後、諦めたように気絶しているであろう大男に近づく。 「き、貴族にこんなことされるなんて……普通は一生ないんだからね!」と気絶している大男に話し掛ける。 そして、彼の顔に顔を近づけ、唇をあわせた。 左手の甲が光る。 「ROOOOAHHHHHHH!!」 それとほぼ同時に大男が叫び声と同時に目を覚ました。 (な、なんだこの痛みはァーーッ!このような痛みは……例えるなら、そう『波紋』ッ! それに…なぜ俺はこんなところにいるッ!?) 叫び声をあげた大男の迫力から、本能的に命の危険を感じて逃げるようにして 教室の出口へ向かうものが現れる。 「女ァーーッ!俺になにをしたーーッ!」 少女はその叫び声に怯み、数歩下がりつつ答えた。その前にさりげなく髪の薄い男性が立つ。 「つ、使い魔のルーンを刻んでいるのよ。すぐ終わるから、あ、安心しなさいよ…」 左手の甲の光が収まり、痛みが治まった大男は状況を確かめようとする。 (俺は、『エイジャの赤石』を賭けて、ピッツベルリナ山神殿遺跡で、古代ローマの戦車戦を行い… ジョセフと戦った末……奴に敗れて死んだはず…… しかし、無い筈の両腕!両足!胴体!全て元通りだ……どうなっているんだ?俺は死んだのではないのか? 死んだことに悔いはない。一人のジョセフを戦士に成長させ、その戦士に全力を持って戦い、 敗れて死んだということは誇りでもあるし、名誉でもある。 が、しかし……生きている……死ぬ前の走馬灯という奴でもなさそうだ……) 彼は少女に向き直って強く問い詰める。 「女、ここはどこだ……俺に何をした。」 「さ、さっき言った通りよ。あんたを私が『サモン・サーヴァント』で召還して使い魔の契約をしたの。 つまりあんたは私の使い魔。わかった?平民だからわからない?」 「『サモン・サーヴァント』だと?確か人間どもの言葉で『召使』だったか……俺に召使をやれと?」 「だからさっきから使い魔だって言ってるでしょ。主人である私の望むものを見つけてきたり、守ったりするのよ。 使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるはずなんだけど……まだ契約して時間が短いからかしら、 なにも見えないし聞こえないけど……そうそう、もちろん主人である私には絶対服従ね。」 「先ほど召還などといったか……よくわからんが何か普通の人間どもとは違う能力を持っているようだな? 死の淵に居た俺を五体満足までに回復させるのだからたいしたものだ。場所もどうやらピッツベルリナ山神殿遺跡でもなさそうだ……」 「あ、あんた?魔法も知らないの?どこのド田舎のド平民よ!?ピッツベルリナ山なんて聞いたことないわよ! だいたいあんた、人の話聞いてないでしょ!あんたは私の使い魔になるの!わかってるの?」 少女はルーンを結べたこともあって面食らいつつも少し強気に出ていた。 が、使い魔に素直になる気を微塵も感じられないためにただでさえ常日頃バカにされている少女は 焦り、いらついていた。 が、やはり大男の返答は少女の望むものではなかった。 「体のいい召使い兼ボディーガードなどをなぜ俺がしなければならない?俺が従うのは強者だけだ。断る。」 「は、はぁ?あんた、人の話わかってるの?大体強者って……平民だか亜人だかしらないけど、 仮にもここは魔法学校。これだけの貴族に囲まれて勝てると思ってるの?」 「そう思うなら……試してみるか?力づくでここを出ても構わなんしな。」 大男はなめ回すようにクラス見る。その迫力に短く声をあげるもの、後ろに倒れるものなどがいたが、各自同じようなものであった。 「……が、この部屋には俺の相手をできるような者はいないようだな……そこの男は見込みがありそうだが、生憎リングがないものでな。さ、どけ」 「だ、誰がどくっていうのよ!私がどくのは道にマリコルヌが落ちてるときだけよ!」 少女は数歩後ろに飛びのき、杖を向ける。 「ミス・ヴァリエール!貴女は下がっていなさい!」 男が叫び大男に杖を向ける。ぶつぶつと何事か唱えた後に杖の先から炎の玉が大男へ向かう! しかし彼は、片手だけで、その巨大な炎の玉を払いのけた。 まるで、ハエを払うかのように。 普通の相手であればかわすのも難しいタイミング、威力も普通の相手であれば手で払いのけることなど選択肢にすら 入らなかったであろう威力。まさに絶妙な攻撃であった。 惜しむらくは、放った相手が普通の相手ではなかったことだ。 「ここの人間どもは波紋の一族とは違う……なにか不思議な能力を持っているようだな……魔法学校などといっていたが… これらを『魔法』と呼んでいるのか?だが、威力も工夫も足りなかったな。貴様でこの程度ならば……たかが知れるな」 彼は致命傷どころか火傷すらしていない。 怯む様子もなく、彼は起き上がった。そして、光、前の世界であれば忌むべきものであった光の差す 窓の方向へ走り出し、その方向にいた先ほど攻撃してきた杖を持った男に蹴りを放とうとするッ! 起き上がった勢いによる攻撃と脱出を同時に行う。彼の戦闘のセンスは失われていなかった。 1対1ならば確実に仕留めていただろう。1対多でも彼の神経が研ぎ澄まされた、彼が言えば激昂するであろうが 油断していない状況であればその蹴りは入っていたであろう。しかし、彼はその男以外を敵としてみなしていなかった。 伏兵は男の後ろの少女だった。 少女が叫ぶ。 「コルベール先生……下がるなんてできません……敵に……敵に背中を向けないやつを貴族と呼ぶんです! 『ファイアー・ボール』!」 先ほどの少女が大男に杖を向け、なにかを飛ばす。 大男は先ほどと同じタイプの攻撃であると断定し、同じ対処を試みた。 片手をなにかが飛んでくる方向に出し少女を見据える。 「馬鹿の一つ覚えかッ!MOOOOOO!!」 片手でそれを払いのけようとした…が!それが腕に着弾した途端!爆発をおこしたッ! 彼女の唯一の『得意技』である爆発が大男を包む! 轟音が部屋を包む。教卓の上の備品が少々吹っ飛ぶ。教卓も吹っ飛ぶ。しかし、それでも大男は立っている…はずだった。 その大男の類まれなる身体能力をもってすれば、この程度の規模の爆発では驚きすらしなかっただろう。 しかし、大男は立てなかったッ!爆発による煙が舞っている中、彼はひざまずいていた。 その爆発は『普通』の爆発ではなかった。 (か、体が痺れるッ!う、動けんぞッ!幸い体は無事のようだが……これはまるで『波紋』ではないかッ……MOOOOOO……! しかし、この少女…波紋戦士には見えん……シーザーのシャボン玉のような攻撃のように攻撃してきたなにかに波紋を含めているなら、 俺の体の神経は破壊されるはずッ!しかし、動けないだけでそれはない……さらに、無意識下の波紋戦士でもしているはずの 波紋の呼吸をしていない。そして、なによりもッ!戦いについて場数を踏んでいる雰囲気、こういった命の危険に大して無防備すぎる…… つまり、この程度の能力を持った人間はこのあたりにはいくらでもいるということか? ということは、俺に適うだけの戦士がまだどこかにいるのではないだろうか? 我が柱の男たちの敵は波紋戦士たちだけだと思っていたが……少し…興味がでてきた…この魔法とやらに) 強者と戦いこそ全てである大男は心境の変化とともに立ち上がった。 そして、煙がはれたのち、少女は立ち上がった大男に話し掛けた。 「これで貴族と平民の格の違いがわかったでしょう!おとなしく使い魔になりなさい!」 「……いいだろう……少しの間、その使い魔とやらになってやろう……」 「少しの間って…ま、今のところはまあいいってことにしておいてあげる。 じゃあ、使い魔には名前が必要ね。あんた、名前ある?」 風の戦士が、二度目の二〇〇〇年ぶりの目覚めを果たした。 「俺の名はワムウ。風の戦士ワムウだ。」 風と虚無と使い魔 召還潮流
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/924.html
虹村億泰は憂鬱だった。 なんで俺が掃除を手伝わされているのだろうか、と。 マリコルヌとミセス・シュヴルーズが搬出された後の教室にはルイズと億泰の二人だけ。 他の生徒は既に引き上げていた。 「なーるほどなぁ~~~失敗するからゼロね。 俺もテストの点数悪いからよォ~~、似た物同士かもなぁー」 どこから持ってきたのか、三角巾にエプロンをして完全装備をした億泰が上半分の無い教卓を運び出す。 「アンタのバカと一緒にしないでよ!? 私は知識問題なら点数良いんだからね!」 「変わんねーだろー、実技失敗なら『ゼロ』点なんだからよォ~~。 お、だから『ゼロのルイズ』って事かぁー、納得だぜ」 でもよぉー、オレでも酷くても三十点は取るぜェ~と億泰が言った途端、 ルイズの額に血管が浮き出たような気がした。 どうやら今の言葉がルイズの怒りの琴線に触れたらしかった。 「ねえ」 「あァん?」 「ここ、アンタが片付けといてね」 「今だってそーじゃねーか! オメーも手を動かせルイズ!手をよぉ!」 「私、着替えて食堂行くから」 「人の話を聞きやがれこのボケがぁ! って、おい、ちょい待て!マジに行くんじゃ! 気に障ったんならもう『ゼロ』なんて言わねーからよぉ!」 その言葉にルイズが廊下から戻ってきた。 おお、真面目にやってくれんのね!?と億泰が嬉しそうに思った瞬間! 「あんた、向こう一週間ご飯抜きね」 そう言い放ってスタスタと行ってしまった! よく見ると笑顔を浮かべているように見えたが、それは酷く引きつっていた。 言われた億泰はというと…… 「…………?ウギギギギギ?」 理解不能だった。それはもう宝クジを破られた重ちーのように。 ただし、こっちには理解可能になる瞬間なんて来ないけど。 とにかく、ルイズが居なくなった事で『ザ・ハンド』が使えた分はかどったが、 机にめり込んだ石ころの破片に、マリコルヌの血反吐、 天井に突き刺さったミセス・シュヴルーズの歯など簡単には取れない物が多く酷く面倒だった。 「ブゲ!?」 その後食堂でルイズが見てないのを確認してこっそり入ろうとした億泰だったが、 滑車に乗って物凄い勢いで滑ってくる見覚えのある岩に吹っ飛ばされた。 「よ、ヨォ……アンジェロ……」 アギ 犯人は見なくても分かる。 わざわざこんなことをする理由が他の連中には無い。 鼻血を垂らしながら床に這い蹲り、 やっぱり逃げたほうが良いような気がしてきた億泰だった。 「ヂクショー、腹減って動けないわ、 アンジェロ岩に吹っ飛ばされるわってアイツは悪魔かコンニャロォーッ!」 動く気力も無く、する事もないので億泰は窓から空を眺める事とした。 真っ青な空が恨めしい。 と、一匹のドラゴンが飛んでいる様子が見えた。 (あー、アイツは……って聞いてもいねーから名前なんて知らねーよ。 でも……羨ましいよなァ~~!自分の飯があってあんだけ遊んでられるんだからよぉぉお! オレが泥ならアイツは星だなァー) と、先程の授業で窓越しに目で会話した(ような気のする)ドラゴンを眺める。 視線に気づいたドラゴンがきゅいきゅい、と慰めるような鳴き声を出したような気がした。 「だ、大丈夫ですか!? い、生きてますよね?」 ふと死体のように転がっていた億泰に声がかけられた。 転がって見上げると、銀のトレイを持ったメイドの少女が驚いたように見つめてきている。 「正直もうダメかもしれねぇ…… なあ姉ちゃん。俺の遺言でも聞いてやってくれ。 『ランク外 5話 スコア3120 ルイズにアンジェロ岩で吹っ飛ばされて餓死』ってな」 「え……ええと、そう言うって事はミス・ヴァリエールの使い魔になったって言う…… あ!そうだ、よろしければ厨房に来ませんか? 賄いで良ければ空腹で死なれる前にお出しできますけど」 「なんだってェーーーーっ!! 行く、行くぜ!行かしてください!?」 倒れたままの姿勢から急に飛び上がったものだから、 少女は相当驚いたようだったが、暫くすると少し吹き出した。 「うわああああああ、はっ腹が空いていくう~~~~~~~~っ! 食えば食うほどもっと食いたくなるッ! ンまぁーーーいっ!!」 朝食のスープなんかとは比べ物にならなかった。 流石にかったいパンとうっすいスープと果物数個で体が動く程億泰は燃費がよくない。 そこにきてまともに作られただけでも神の施しのような物だ。 そうじゃなくても、十分に美味い代物だったのだが。 「食材の余りとかから作ってるシチューなんですけど…… よかった。お代わりも十分ありますからね」 娼婦風スパゲティをズビズバ食った時のように勢いよく食べる億泰を少女はニコニコしながら見つめている。 使い魔に囲まれていた時もそれなりに和めたが、 すぐに爆発で台無しにされた事を考えるとやっと心の洗濯ができたような気がした億泰だった 「ところで、なんであんな事になってたんですか?」 「ングッ、ゴクッ……ああ、なんか急に機嫌悪くしたみてーでさぁー。 少しだけ事実言っただけだったのによぉーっ」 「まあ!貴族相手に言えるなんて勇気が有るんですね!」 「別によォ~~、貴族だとか平民だとか俺にゃー関係ねーしなー。 魔法が使えるからって威張ってんじゃーねーよっての」 「ゆ、勇気がありますわね……」 唖然とした顔で億泰を見つめるシエスタをよそに、空になった皿を返した。 「美味かったぜェー、ホント~~にあんがとな!」 「あの、お腹が空いたらいつでも来てくださいな。 私達の食べている物でよかったらお出ししますから。 えーと……」 「ん?ああ、億泰だ。俺は虹村億泰だぜ。 つーか、うん、すまねえな。ホント。 そんじゃさァ~~、世話になりっぱってのもワリーし、 手伝える事あんなら手伝わせてくれねーか?」 ルイズの下着は気づかれるまで毎日ガオンしてやると心に決めたが、 この少女の手伝いなら何でもしていいや、という気分だった。 「私はシエスタといいます。 それなら、デザートを配るのを手伝ってくださいなオクヤスさん」 ケーキの並べられた大きな銀のトレイを億泰が持ち、シエスタが配っていく。 途中、金色の巻き髪に薔薇をシャツに挿したキザな勘違いメイジが居た。 周りに友人が集まり、口々に冷やかしているのが聞こえてくる。 「なあ、ギーシュ!お前、今は誰と付き合ってるんだよ! 「誰が恋人なんだ、言いやがれギーシュ!」 「つきあう?僕にそのような女性はいないよ。 薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 勘違いここに極まれり。反吐が出る事この上ない所だった。 一人だったら間違いなくボコってるなァ~と少しムカつきながら億泰はその集団から目を背けた。 「あ……」 「ん?」 「すみませんオクヤスさん、 ちょっと厨房に戻ってケーキの補充をしてきてくださいな。」 「おう」 そう言って億泰は厨房へ行き、シエスタが勘違いの所へと駆け寄っていく。 「あの、落としましたよ?ミスタ・グラモン?」 「何を言ってるんだメイド。 それは僕の物ではな……」 「おお!それはもしやモンモランシーの香水の壜ではないか!?」 「つまり、お前は今!モンモランーと付き合っている!違うか?」 「違う、いいかい?彼女の名誉のために言……」 そう言いかけた時、ギーシュのテーブルの両側から足音が聞こえてきた。 「ギーシュ様……『二股』しましたわね? チャンスは差し上げません、向かうべき道は『一つ』です」 「な、ケティ!?違うんだ!」 「これは『試練』ね。 二股に打ち勝てという『試練』と私は受け取った。 人の成長は……未熟な過去を清算することだと…… ねえ?貴方もそう思うでしょう?ギーシュ・ド・グラモン」 「モンモランシー、違うんだ誤解なんだ。 彼女とはただいっしょにラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで……」 ギーシュは冷静な態度を取ろうとしていたが、心の中では三つの思いが交錯していた。 『彼女達を落ち着かせなければ』 『ヒィイ~~!怖いよマーマ!』 『たかがメイドの分際で!何か有ったら仕置きの時間だ!』 「行くわよ!ケティ!」 「はい!お姉さま!」 右のケティからワインボトルのフルスイング! 左のモンモランシーからケーキの乗った皿のフルスイング! 左右の少女の怒りの間に生じる真空状態の圧倒的破壊力はまさに歯車的裁きの小宇宙!! 「……あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 ハンカチを取り出して、ワインとガラスとクリームでグシャグシャになった顔を拭うギーシュ。 ある程度拭き終わったところで、呆然としていたシエスタに話しかけた。 冷静になっちまうほどにプッツンしているようだ。目がうつろで焦点が合っていない。 「どうしてくれるんだい? 君が軽率に香水の壜などを拾い上げてくれたせいで、こんな事になってしまった。 二人のレディを傷つけてしまったんだぞ?」 「も、申し訳ございません!」 「謝って済む問題だと思っているのか!? フン、やはり平民は平民か。 空気を読んで拾わない程度の事さえ期待するほうがバカだったね」 ギーシュが薔薇の造花を胸ポケットから抜き取った。 それを見てシエスタは『魔法を使われる』と恐怖に震え、腰を抜かして泣きながら土下座をする。 「す、すみませんすみませんすみません!」 「フン、今すぐ出て行きたまえ。君にこのトリステインでメイドをやる資格なんてない」 鼻で笑い造花をポケットへと仕舞うと、ギーシュは振り返ってその場から立ち去ろうとする。 「おいおいおいちょっと待ちやがれテメーよぉ。 テメーの不始末くらいテメーでやりやがれってんだボケが」 が、そこに厨房から戻ってきた億泰がギーシュを呼び止めた。 「なんだい君は?……ああ、ゼロのルイズの使い魔だったね、確か。 使い魔の平民如きが軽々しく話しかけないでくれたまえ。 貴族に対する礼という物を知らないのかい?」 使い魔の平民如きという言葉が引っかかるが、そんな事はどうでもよかった。 それよりもカチンと来たのはギーシュがテメーの二股の不始末をシエスタに押し付けていることだ。 厨房から戻ってきた時点で既にワインとケーキのツープラトンが炸裂していた所だから、顛末は分からない。 しかし、理不尽な内容でシエスタに八つ当たりしている事はよく分かった。 「おー、俺バカだからなァー!んなモン知らねーぜ! だからよぉーっ!」 「ぶっ!?」 億泰がそのまま自らの拳をギーシュの鼻へと叩き込んだ。 鼻の骨が折れる音と共に鼻血を撒き散らしてギーシュが倒れる。 「おれの『ザ・ハンド』を使うまでもねーっ 顔ボゴボゴにしてやっどォーッ」 「な、ま、待っ杖、杖もまd……ウヒィイイイイ!?」 その後の様子は、言わない方がいいだろう。 ギーシュ・ド・グラモン →メイジに治療されるも全治一日 魔法を使う前にボコられたせいで億泰に対して強い恨みを持った。