約 1,493,430 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/147.html
深夜 ドッピオはルイズから渡されたカードを使っていろいろと不思議に見せるための特訓をしていました ちなみに渡されたカードはトランプでした。案外この世界に流れ着いているこちらのものはあるようです カードの扱いに慣れてきたところでもう眠気がきたので寝床に就こうとしますが コッ・・・コッ・・・ 物音が聞こえます。これは足音でしょうか コッ・・・コッ・・・・・・・・・ ルイズの部屋の前で足音は止まりました ・・・こんな深夜に誰かと思いドッピオはドアを開きました 「・・・あれ?」 そこには誰もいませんでした。確かに足音は聞こえていたはずですが・・・ 「あの」 「うひゃい?!」 突然左から話しかけられました。そこにいたのは 「・・・どちら様でしょうか」 「あの・・・アンリエッタと申しますが・・・貴方がルイズの使い魔ですか?」 「はい、そうですけど・・・ルイズさんに用ですか?」 「はい・・・」 よく見ると服装も学院生とは違う服装です 「・・・ルイズさん。起きて下さい」 ユサユサとルイズを起こします 「・・・なによ。こんな時間に・・・」 寝ぼけ眼で起き上がるルイズですが 「・・・?!」 アンリエッタを見た瞬間とても驚いた顔をします 「・・・ルイズさん?」 「す、すいません!このような無礼な格好で・・・」 いきなりあわただしくするルイズを見てドッピオは (・・・もしかしてアンリエッタさんは偉い人なんですか?) 小声でルイズに聞きます。帰ってきた返答は (当たり前じゃない!トリステイン王国の王女・・いや、今は女王になった方よ!) そう返されました 「早く部屋へお入りください。この様なところにいたと知られれば・・・」 そう言ってルイズはアンリエッタを手招きしました 「そうですね。でもそんな言葉遣いなんてしなくていいですよルイズ ―――私たち、友達でしょう?」 友達という言葉に一瞬気を取られそうになったルイズですが 「いえ、たとえ幼少時の遊び相手である私でも失礼に値するような言葉遣いなんて・・・」 そう言って自制しました 「・・・ところで」 アンリエッタの視線はドッピオに流れました 「これが貴女の使い魔ですか・・・」 その言葉にルイズは 「あ、あのえっと・・こ、こんな平民でもとても強くて―――」 「分かっています。なの土くれのフーケを倒したのでしょう?」 「え?」 ルイズはなぜ知っていると言う顔でした 「王家から守れと言われている破壊の杖を学院は秘密裏に取り戻したつもりだったんでしょうが そんな一大事が発生したら王家からの諜報が働きます。活躍も聞きましたよ、ルイズ」 「そ、そんな・・殆どこの使い魔が倒したようなものですし・・・」 ルイズはしどろもどろになりながらそう答えました 「・・・明日の品評会。楽しみにしていますよ」 「はい!」 そう言ってアンリエッタは戻っていきました ドッピオは結局何も喋らずじまいで女王さまを見送りました 「・・・女王様と知り合いだったんですね」 「ええ・・・」 ドッピオはアンリエッタが品評会を楽しみにしていると言うことを聞いて 「もしかして見に来ちゃったりしますか?」 そういうことかと思って聞いてみました 「そうよ・・・だから絶対ドジ踏んだりとかしちゃダメよ」 ようするにルイズはいいところを友人に見せたいのです 「それにしても驚いたわ。まさか前日にたずねてくるなんて」 「案外行動力のあるお姫様なんですね」 「そうね・・・子供のころはいっつも私が連れまわしてあげてたんだけどね・・・」 遠い昔を見つめるように窓から空を見上げているルイズ 「・・・絶対に失敗は出来ないな」 少しでも友人にいいところを見せたいと願う主人に愛らしさを覚えながらも明日の品評会に熱意を燃やすドッピオでした 14へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1506.html
ルイズメモNo.12-使い魔について- あの決闘から一週間が過ぎた。 意外にも、最大の懸念事項だった謹慎は無し。 ハゲ曰く、「怪我人が出なかったから今回だけは許す」らしい。 けれど、もしモンモランシーが機嫌を直していなかったら、ギーシュは確実に死んでたわね。 何かの陰謀を感じなくもない。だとしてもわたしに出来ることは特にないけど。 それよりもセッコね。格闘が強いのはうすうす判ってた、 けど岩を操ったのは何だろう?直接聞いてみたけれど答えは要領を得ない。 セッコは朝わたしを起こして、朝食を食べるといつの間にかいなくなる。一体どこへ行っているのだろう?要検証ね。 一応呼ぶと現れるので、それほど遠くへは行ってないみたい。微妙に感覚共有ができているのかも、そうだとしたら喜ばしいことだわ。 ふと思って「来い」と念じてみた。来る様子はなく、肩を落とす。しかし声に出して呼ぶと、いつも通りすぐにやってきたわ。意味がわからない。これも要検証。 気になることが多すぎるので一日使ってセッコを監視することにする。 他の使い魔達を連れて厨房に餌をたかりに行っている。やっぱり足りてないのかしら? 信じられないものを見てしまった。セッコはともかくとして、ドラゴンとジャイアントモールが食材の搬入を手伝っている。誰の使い魔か知らないけど意地汚いわね。 中庭でギーシュと話している。妙にギーシュの腰が低いのは気のせいだろうか。 ギーシュが錬金したとおぼしき棍棒をセッコが振り回している。もしかして武器が欲しいのかしら?今度の休みにでも何か買ってあげよう。 その間ギーシュは横で震えている。その様子は実に面白い。 思ったよりあいつは人望がある。わたしのよく知らない子と普通に会話していた。ハシバミ草愛好会って何なのかしら? 部屋に戻るといつの間にかセッコが戻ってきていた。謎の鎧のような服の手入れをしている。「大事なもんだ、何に使うかは忘れたが。」と言っていた。 呼べば来るけど念じても来ない謎が遂に判明。単にわたしの声を聞いていただけみたい。目がいいのに、耳もきくってのは珍しい。才能ね。 不思議な事も言っていた。硬い物を持つと身が軽くなる?理解できない。けど嘘ではなさそう。 「起きろー」 うるさい 「起きろぉー」 まだ眠いのよ 「起きろおおおお」 今日は休日じゃない 「起きろつってんだろおおおおおおおおおお!」 「ああ……おはよう」 そういえば、今日は買い物に行くから早く起こせって言ったんだわね。 「オレも行くのか?」 「当たり前じゃない、というかあなたの武器を買いに行くのよ。」 「うー」 ひどくやる気のない面でこっちを見ている。 「付いて来るなら飴を一缶買ってあげるわよ。来ないなら当分おやつ抜き。 もう一度聞くわね。付いて来るかしら?」 「うおお、うん、うん!」 いつもながらこの扱いやすさは評価できるわ。 「ならさっさと行くわよ。」 「うん。」 タバサはセッコの事が気になっている。 召喚した次の日、普通にハシバミ草を食っていたこと。 自分の使い魔である風韻竜シルフィードと妙に仲がいいこと。 そして……決闘で見せた不思議な、見たこともない戦い方。 しかも昨日はサイレントを掛け、かなり後ろからつけていたのにわたしに気づいて話しかけてきた。修行が足りないだろうか。 勘は鋭いが頭は良くないようで、適当にごまかしたら納得していた。 そうだ、今日は虚無の曜日だ。休みを満喫すべく図書館に向かうことにする。 部屋でゆっくり読もうと本を2冊借りて出てくると、窓から馬で町へ出て行くセッコと主人ルイズの姿が見えた。 どうも気になる。 ……空で本を読むのも悪くないか。そう自分を納得させシルフィードを呼んだ。 「きゅい?」 「馬2頭。食べちゃダメ」 「きゅいきゅい!」 あら?よく見たらセッコちゃんなのだわ! たぶん町へ行くのよね、ついでだし乗せてあげちゃおうなのだわ! シルフィってなんて友達想い! 「シルフィード?」 タバサが気づいた時既に遅し。シルフィードは、セッコとルイズのすぐ横まで急降下していた。 「きゃあああああああ!何?何なの?」 ルイズはあまりのことに落馬してしまった。 まあ、いきなり横にドラゴンが降りてきたのだ。 驚くなという方がどうかしている。 「いたた、セッコ生きてるかしら?」 ……あら? 「うおっ、おおおっ」 「きゅい、きゅっきゅ!」 「うん!うん!」 「きゅいい!」 「おあ、おうおう!」 「きゅいきゅい!」 腰をおさえながら起き上がったルイズが見たものは。 意味不明な言葉でドラゴンとコミュニケーションを取るセッコと、ドラゴンの背中でプルプルと震えている同級生の姿だった。 しかも……あのドラゴンは確かに校舎の裏手で食材を運んでいた奴だ。 「早い、早いわ!さすがドラゴン!」 横でルイズがはしゃいでいる。キュルケ並みに騒がしい。 「おっおっ」 「きゅい!」 シルフィードとセッコが何か言い合っている。はあ、何でこんなことに。 まだまだ「教育」が必要みたい。 (……シルフィード) (なに?) (帰ったらあれよ。) (な、なにもわるいことしてないの!喋れることもばらしてないの!) (追跡対象は今乗せた2人。) (……) 「タバサ、だっけ。ありがとう。凄く助かったわ。」 「いえ、別に。」 元は乗せるつもりなんかなかったのに。 「あれ、どこ行くの?」 「用事。」 もう頓挫したけど。 ……せっかく街まで来たんだし、秘薬屋に足を伸ばそうか。 「帰りも乗せてもらえる?」 「……」 シルフィードとセッコはまだ何か話し?ている。 害はなさそうだし、乗せてもいいか。 「ここで待つ。」 「ありがとう。タバサ」 タバサとわかれて武器屋を探す。どこだったかしら…… 「狭い道だなあ~」 え? 「ここが一番広いのよ?それはそうと、スリには気をつけなさいよ。」 「わかった。」 セッコを呼び出してかなり経つ。でもわからない事が多すぎるわ。 こいつ自体記憶喪失なんだから、どうしようもないのだけれども。 「見えたッ!チクリと見えたぜ!」 セッコが指差した先には何も見えない。何言ってるのこいつ。 「剣の看板!」 「どれよ」 「その先だ、オメー目が悪いぞぉ。」 あなたが良すぎるのよ。 100メイルほど歩くと確かに剣の看板であることが分かった。 そういえばこんな場所だったわね。 「こんにちはー」 店の中は薄暗く、乱雑に剣や槍や甲冑が並べられていた。 店の奥に座ってパイプを銜えていたヒゲ親父が、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめ、口を開く。 「旦那。貴族の旦那。うちは真っ当な商売してまさあ。 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや。 「失礼ね、客よ。」 「こりゃおったまげた!貴族が剣を!おったまげた!」 「使うのはわたしじゃないわ、使い魔よ。 後、剣よりもハンマーとかメースとか、頑丈で重いものがいいのだけれど。」 店主がよく見ると、少女の後ろに変な鎧を着た男が立っている。 確かに力は強そうだ。 「困りましたなあ、うちは剣と槍が専門でしてね、 殴る武器はそれ、そこの護身用の棍棒しかありませんや。」 指した先を見ると、0,5メイルほどの貧相な棒が数本吊ってあった。 「うーん、さすがにこれはちょっと。」 ですよねー。 といった表情でヒゲ親父が何か考えている。 「ああ、そういえば物凄く頑丈な奴が居ますぜ、片手剣ですがね。 値段も新金貨で50もあれば十分でさあ」 「いいじゃない。」 「ただ、少々素行に問題がありまして。」 「素行……?」 突然、奥に積まれていた剣の山から低い男の声がした。 「何が素行に問題ありだ馬鹿親父!おめえと比べたら清廉潔白もいいとこだぜ!」 「やい!デル公!黙ってろって言ったろうが! せっかくてめえを売り込んでやろうと思ったのによ!」 「デル公って呼ぶなっつーたろう!デルフリンガー様と呼べ!」 「へえ、インテリジェンスソードじゃない。口は悪いけど。」 ルイズは妙に興味が湧いた。 「こいつの喋る以外の能力って何?」 「強いて言えば、硬いことですねえ。切れ味は悪いですが。」 「どのぐらい?」 「頑丈さだけなら、ここにある何よりも上でさあ。」 嘘は言ってない。あの外見と罵詈雑言がなきゃ業物で通るだろう、と店主は思う。 もっとも、その欠点のおかげで数十年売れてないのだが…… 「よさそうね、セッコ。ちょっとあの声の主を拾ってきて。」 「うん。」 「本人を無視して勝手に話を進めるなバカヤロー!使い手は自分で選ぶぜ!」 「黙ってろデル公、また話がこじれるだろうが!」 「うわっ変態!俺を掴むな!おめえなんかに使われてたま……ん? おでれーた!てめ、[使い手]じゃねえか!」 セッコは思った。この五月蝿さはともかく、持ち易いし丈夫そうだ、と。 「サビてるわね。」 「ええ、サビてはいます。」 「今にも崩れそうに見えるんだけど。」 「「そんなことはねえ」」 セッコと剣の声が重なった。 「そうかしら。」 素手でワルキューレの腕を捻じ切ったセッコが言うならそうなのかもしれない。 そうだ、いいことを思いついたわ。 「セッコ」 「何だ」 「その剣を、えーとデルフリンガーだっけ?思い切り殴ってみなさい」 「ちょおまやめ」 剣が何か言っているけど気にしない。 「……わかった。」 セッコが剣を机に置き、思い切り腕を振り下ろす。 ドッボオォォ 「UGYAAAAAAAAAAAA!」 物凄い音と聞くに堪えない叫び声がして、金属でできた机が凹む。しかし、剣は汚い叫びを上げはしたが無傷だった。 刃を横から叩くなんてことをしたら、普通の人がやっても折れて当たり前だ。 しかしこいつは……あのセッコに机が凹む勢いでぶん殴られても、曲がってすらいないのだ。 これはきっととんでもない掘り出し物に違いない。 「これに決めたわ。サビは見逃してあげる。新金貨50でいいのよね?」 「へえ、ありがとうございます。ところでですね。」 「何よ」 「あの……机の修理代を……できればでいいんでがすが……」 店主は泣きそうな顔で縮こまっている。正直哀れだ。 「いくらよ」 「新金貨20……」 ヒゲ親父はデルフリンガーを凄い勢いで振り回すセッコをちらりと見て、更に怯えた表情になった。 セッコにしてみれば、新しい玩具が手に入ったから遊んでいる、 その程度なのだろう。しかしこの状況ではほとんど脅迫といっていい。 「いや、15でいいでさあ。」 ちょっと哀れかもしれない。 それにこの剣はなかなか使えそう。もう少し払ってやってもいいわね。 「わかったわ。合計65枚ね。」 ヒゲ親父の顔がぱっと輝いた。 「へい!まいどありい! あと、もしあまりにもこいつが五月蝿いようなら、 鞘に入れれば大人しくなりますぜ。鞘はサービスでさあ。」 ……普通鞘は最初から剣についてるもんじゃないのかしら?まあいいけど。 デルフリンガーを振り回すのを止めさせ、鞘に突っ込む。 何か言いかけたけど、とりあえず無視が一番ね。 勝手に出てこないように厳重に紐で縛ってからセッコに持たせた。 おそらくセッコが使う分には、抜き身でも鞘に入ってても変わらない。 それに、このインテリジェンスソードはずいぶん性格が悪そうだ。付き合ってられないわ。 「学院に帰るわよ、セッコ」 「待て、飴一缶。」 すっかり忘れてた。危ない危ない。 「そういえばそうね。菓子屋に寄ってからタバサを探しましょ。」 飴って砂糖を沢山使うから高いのよね。クッキーとかじゃあダメなのかしら? ま、約束しちゃったものは仕方ないか。あ、菓子屋ってどこだっけ。 その頃、武器屋の店主は満面の笑顔でルイズたちを見送っていた。 デル公の厄介払いも素晴らしいが、せしめた机の修理代のおかげで笑いが止まらない。 鍛冶である己の技術をもってすれば、この程度の修理朝飯前である。 今日はもう休みにし、ゆっくり酒でも飲もう。どうせ客はめったに来ないのだ。 飴を買って最初に降りたところまで戻ると、既にドラゴンとタバサが待っていた。 セッコは後ろで買ってやった飴をバリバリと噛み砕き食べている。 飴は舐める物じゃないのかしら?まあいいけど。 「ありがとう、タバサ。待っていてくれたのね。」 「待ったのはシルフィード。」 「きゅい!」 「似たようなものよ。とりあえず帰りましょ。」 それにしても、キュルケのサラマンダーもあれだけど、風竜の使い魔とか、それに輪を掛けてうらやましすぎるわ。セッコが悪いとは言わないけど。 「きゃあああああ!」 突然シルフィードが急降下した。何、何なの? 「よぉーしよしよしよし!」 「きゅい!きゅい!」 セッコがシルフィードの頭をなでている。 その瞬間わたしは理解した……飴を投げて空中キャッチさせたのね。 「セッコ」 「シルフィード」 「「やめなさい。」」 「「……」」 一人と一匹が何が悪いのか理解できない といった表情でこっちを見る。 セッコを呼び出してから初めて、本気でぶん殴りたくなった。 ここが空中なのを思い出し、何とか抑える。ちらりとタバサを見る。 なんだか心が通じ合った気がしたわ。きっと気のせいじゃない。 風竜は速い。あっという間に馬を停めていた学院入口に到着する。 「今日はありがとう、助かったわ。これからもよろしく。」 「ちょっとした偶然。」 なんかわたし達を追ってきたように見えたけど気のせいよね。 気のせいということにしとこう。 「3個やる、3個!」 「きゅいきゅいきゅい!」 「「……」」 「セッコ、帰るわよ」 「……わかった。」 ルイズが去っていった後、本を読みつつ今日のことに付いて考える。 使い魔同士なんだか仲良くしているな、程度に思っていた。 とはいえ、シルフィードがセッコにあそこまで餌付けされているとは、想定の範囲外もいいとこだ。 やはり教育不足?まあそれは追っ付け叩き込めばいい。 それにしても……結局セッコの謎については全く不明のままだ。 かなり慎重に観察したのに。それも近くで。 もしかしてルイズが能力を隠させているのか?私のように。 それとも、記憶が? たしかキュルケはルイズと部屋が隣同士だったはず。暇な時に調べてもらおう。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/849.html
「フゴ……」 柔らかな朝日が差し込んできて、億泰は目を覚ました。 固い床で寝てすっかり凝り固まった体をボキボキと解しながら、部屋を見渡す。 そして、まだぐっすりと眠っているルイズを見て大きくため息をつく。 「冗談じゃねーよなァー、ったくよー」 そう呟きながら億泰は窓辺へ行き、窓を開け放った。 朝の新鮮な空気と日差しを全身に浴びつつ、昨日の事を思い返す。 「それ、本当なの?」 「あたりめーだろ。 んな事冗談で言ってなんだってーんだよォ~~」 十二畳程の部屋の中で、テーブルを挟んで二人は向かい合っていた。 億泰の手にはルイズから分捕った夜食用のパンが握られている。 「だって、そんな話を信じろっていう方が無理じゃない。 メイジがいない、月が一つしかないだなんて。 ね、アレでしょ?平民のくせに意地張ってるだけなんでしょ?」 「おいおい…『平民』はねーだろう? 既に名乗ったし、初対面の人間に対して『平民』とはよう! 口のきき方知ってんのか?」 「な、何よ!アンタこそ貴族に対する口のきき方知ってるの!? そんなに言うなら証拠見せなさいよ!証拠!」 「うっ……!」 そう言われて億泰は答えに詰まった。 頭の中には証拠になる景色は山ほどある。 しかし、実物として存在している物は一つとして無い。 学ランに財布しかないのだ。 鞄は『鏡』の前に落として来たし、需要が無いので携帯電話も持っていなかった。 しかも財布は補充寸前にトニオさんの所で食ってスッカラカンだ。 簡単に言うと何も無かった。 「ほら、無いんじゃない!」 「ああ、確かにねーよ。 ともかくよー、オレを元の場所に戻してくれよ。 信じてくれなくたっていいからよー」 「うん、それ無理」 その後ルイズに言われた話しは億泰に取って頭を抱えたくなる内容だった。 第一に、異世界を繋ぐ魔法なんて無い。 『サモン・サーヴァント』はこの世界の生き物を使い魔にするために召喚する魔法。 なんで億泰を召喚したのかの原理は解明不能で、 しかも『サモン・サーヴァント』は召喚の一方通行で、 一度召喚に成功すると使い魔が死ぬまで次に使う事はできない。 ルイズ様は偉大。 ルイズ様を崇めよ。 ルイズ様は貧乳ではなく微乳で美乳。 という内容を数十分に渡って言われ、その頃にはパンはすっかり消化されていた。 「とにかく、アンタが私の使い魔をやるって事は依然変わりないわね」 「……仕方ねーな。 他に帰る方法が見つかるまでやってやるぜ、『使い魔』。 で、使い魔って何すりゃーいーんだよォ~~?」 億泰としても帰る方法を知らず、しかも無いとまで言われ、 衣食住のアテも無いとくれば拒否する選択肢は無かった。 他の頭の良い連中なら逃げても生きれるかもしれないが、 自分はそこまで要領がよくないと自覚していたからである。 「まずは使い魔には目となり耳となる能力が与えられるの。 ……けど、私達には無理みたいね。何も見えないもの。 後は、秘薬とか主人の必要とする物の探索とか、 一番重要な主人の身を守る事なんだけど…… アンタじゃ無理ね、きっと。間違いなく」 オツム足りなさそうだし、とわざわざ最後に付け足された。 流石にこの時はカチンと来たので、『ザ・ハンド』の事を隠したのだった。 「んで、床で毛布に包まって寝かされて、 キャミソールとぱ、ぱぱパンティー投げつけられて……」 そう言って毛布と一緒に床に転がっているルイズの下着に目を向ける。 思いっきり転がされてると気分が風船のように萎んでいくのがよく分かった。 「めんどくせェー」 下着を持ち上げると放り投げ、『ザ・ハンド』の右手で握りつぶす。 ガオンッという小気味の良い音と共に下着はこの世から永遠に削り取られた。 仗助や兄貴に『恐ろしい能力』とまでいわれたスタンドをこんな事に使う辺りが億泰たる所以かもしれない。 それを見て満足そうに鼻で笑うと、ルイズのベッドに近づいていった。 「オラ! さっさと起きやがれダボがッ!」 思いっきりベッドを蹴り飛ばす! 衝撃に勢いよく揺れるベッドに、ルイズは寝ぼけ眼で飛び上がった。 「ふぁや!? な、なななに!?地震!?」 「朝なんでよォー、とっとと起きやがれおじょーさま」 「はうぇ?ああ、そう、朝。 で……あんた誰?」 「忘れてんじゃねーよ。 てめーが使い魔にしたんだろォ?」 寝ぼけ眼のルイズの顔を見て、こいつこの年でボケてんのかと億泰は思った。 「あ、あー。 オクヤスねオクヤス。召喚したんだっけ」 目をこすりながら起き上がると、ルイズは億泰に命令する。 「服」 椅子に掛けてあった制服をルイズへ放り投げる。 ネグリジェを脱ごうとしているのを見てつい背を向けた。 いくらペタンのルイズとはいえ、流石に直視するには免疫が足りていないのだ。 「下着」 「んな!?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下ー」 寝ぼけ声で言われてムショーにムカついてきたが、 我慢して下着を適当に掴んで放り投げる。 「服」 クローゼットの上の段に有った予備の制服を投げてやる。 「……これ、なんのつもり?」 「服っつったじゃあねーか」 「違うでしょ!?着せてって言ってるのよ! 平民のあんたは知らないでしょうけど、召使が居たら自分でなんて着ないの」 「おめーは自分の事くらい自分でできねーのかよ」 「文句言うなら、朝ごはん抜き。 ほら、早くしなさいよ。朝ごはんに遅れるでしょ?」 そう言われるのとほぼ同時に、億泰の腹が鳴った。 「き…きたねーぞ」 そう愚痴りながら制服を手に取るしかない億泰を見て、 ルイズはふふんと満足そうに笑う。 そして、今日一日でキッチリと上下関係を叩き込むべく、 昨晩のうちに仕込だ『アレ』に億泰が引っかかる瞬間を想像し、 更に浮かび上がってくる笑みを噛み殺していた。 「ほへ~~~ こいつが食堂~~っ……!?」 学年別に並べられた豪華な飾りつけのされた長テーブル三列に、 ローソクや花、そして果物の盛られた籠が載っている。 食事の内容も丸のままの鳥のローストに、魚の形のパイ、 そしてワインまで並べられている。 「っつーか朝飯にしちゃー豪華すぎねェ~~~? しかもトニオさんのにゃ及びそーにねーがァー、 ヨダレずびっ!は間違いなさそーだぜぇ~~!」 わかりやすい位に喜ぶ億泰を見てルイズは最高にハイになっていた。 席についたルイズの隣にウヒョルンと座ろうとするのを手で制す。 そして親指立てて億泰へ向け、クルリと下に向ける。 貴族がやるにはあまりに下品だが、他の誰にも見られなければ問題ない。 「アンタのは、これ」 その先には皿が一枚。それも床の上に。 肉のかけらが虫眼鏡で見れば分かるほどの大きさで浮いているスープ。 その端に硬そうなパンが二切れだけ。 昨晩のうちに厨房に命令しといたメニューだ。 「なんじゃあこりゃあ~~? おめーはオレに食いてーもん食わせねーっつゥのかよー!」 億泰は思わず皿を持ち上げて中身を指差しながらルイズに抗議した。 その様にルイズはザマミロ&スカッと爽やかの笑みを浮かべる。 「あのね?使い魔はほんとは外。 アンタは私の特別な計らいで、床。 それに食べたい物食べさせたりしたらクセになるじゃない」 「アホ言ってんじゃね~~! オレは外に行くゼ! 草むらにでも座りながら食った方がマシだァー! クソッ!どーせお前らが食い終わる方がず~~ッと後だから問題ねーよな!」 「え、あ、ちょ!ちょっと!?」 チクショー!と言いながらそそくさと皿を掴んで億泰は出て行ってしまう。 予想外の行動をされて、ルイズは慌てて呂律が回らなかった。 その姿が廊下に消えた辺りで、ようやく悪態をつく。 「何よ、つまんない。 思い切り見せつけながら食べてあげようと思ってたのに。 っていけないいけない……今朝もささやかな……っと」 そう呟き、周囲がお祈りを始めているのを見て慌ててルイズもお祈りに参加する。 そこに有った果物の籠の中身が大幅に減っているのにも気づかずに。 「はぁ~~ったく。 毎度毎度こんな手は使ってらんねーよなァー、流石にィ」 外に出て建物に寄りかかりながら億泰は硬いパンをスープで流し込む。 そうして手にした果物を齧りだした。 食堂から出る寸前、『ザ・ハンド』で空間を『削り』幾つかの果物を 『瞬間移動』させて持ってきたのだ。 出る辺りで食前の祈りが始まったらしく、誰も注意を払っていなかったのが幸いした。 「それに肉とかも欲しかったんだけどなァ~~ タンパクとか脂肪とかよぉ~~」 次からは一際スットロそうだったあいつからパクるかのォ~~~ と、昨日一番ハイテンションにルイズをバカにしていたメイジの顔を思い出してそう呟いた。 「ぶぇっくしょぉい!」 同時刻、マリコルヌは派手にくしゃみをしてしまい、 正面に座っていたタバサに『エア・ハンマー』で吹っ飛ばされていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1026.html
「五つの力を司るペンタゴン 我の運命(さだめ)に従いし――」 「使い魔を召喚せよ━━」 その言葉を紡いだと同時に メメタァ!! よく解らない音と共に――━━ 爆発が起こった。 第1話●ロの使い魔 (狭い…暗い…ここ…どこ?) 必死に記憶を反芻するも思い当たる節もない (確か…病院に…居たはず…) 息がし辛い口をガムテープで塞がれて居る、体もロープで拘束されてるみたいだ ━理解不能理解不能理解不能理解不能━ などとちょっとした電波を受信していると浮遊感が体を包み込み―― 彼はこの世界から別れを告げた (お願い、皆が私のことゼロなんて言えなくなるようなすっっっごい使い魔よ来なさい!むしろ来て下さい!) 爆発を起こした張本人であるルイryは自らが起こした爆発に内心ビビりながら祈っていた そして土煙が晴れてくると次第に長方形の何かが姿を現し始めた (やったわ!とりあえず召喚には成功したんだわ!第三部完っ!ってとこかしら) しかしその喜びは束の間であった、何故なら姿を現したのは ━━箱? いや取っ手もついてるしカバンかしら、ああ、ちょうど良かった新しいカバンが欲しかったのよ、ウケウコケウケコウケッ ル(ryは現実から逃げ出した、しかし回りこまれた 周囲の生徒からは 「流石ゼロっ!俺達に(ry」 「そこにしびれ(ry」 とはやし立てられている、(ryは屈辱に肩を震わせて今にも泣きそうな表情へと変化している その様子を伺っていた褐色の胸がグンバツな女キュルケは (泣きそうな顔もそそるわねぇ、ルイズカワイイよルイズ――ってアレ??) (あの箱微かに動いてる?それに呻き声みたいなのも聞こえるわ) 「ねぇルイズ」 「なによ!!あんたも私を馬鹿にするんでしょ?笑いたければ笑いなさいよ!!」 キュルケは苦笑しながら答える 「アナタが召喚した箱なんだけど…中に生物が入ってるみたいよ?」 その言葉にルイズは箱を見やる、確かに呻き声や動きが見られる。 それを見てルイズの表情が緩みかけるが思いとどまった (駄目よ過度の期待をしては駄目、どうせ裏切られるんだから) などとネガティヴまっしぐらになってると乳女が 「早く中を開けて御覧なさいよ、ま、どうせ死の呪文を唱える舌の長いモンスターが出てくるだけでしょうけどw」 キュルケのその言葉にルイズは顔を真っ赤にしながら反論しつつも箱に近づく (ほほほ、本当に皿木を唱えるああああ、あいつがでたらどどどうしよう) 真っ赤にしていた顔を真っ青にしながらもルイズは意を決し箱を開ける―― 「――え?」 間抜けな声が出てしまった それもその筈モンスターが出てくるとばっかり思っていたのに箱の中には奇妙な恰好をした平民の少年がおり、しかも口を塞がれロープで体の自由を奪われてたのだ、少年の傍らに本があったがこれまた見た事の無い字であった。 ルryは混乱している (どういう事よ、くそっくそっ、舐めやがって!!) 周囲の奴らは 「ゼロが平民をしやがった!」 「しかも縛ってやがる」 「俺も縛られてルイズに詰られたい」 などとルイズを馬鹿に?しだしたのだ 「ちちち、違うわよ!ちょっと失敗しちゃってこの子が召喚されちゃっただけよ、ミスタ・コルベール!再召喚を要求します!」 「だが断る!再召喚など許可しなぃぃぃぃぃ!!」 「ですが平民を使い魔になんて聞いた事ありません!!」 だがルイズも食い下がる、平民を使い魔にするなんて良い笑いものだ、それだけは避けたい。 ルイズの必死の講義にコルベールは 「では留年という事で良いかな?」 と頭を輝かせながら言う、ルイズは留年という単語を聞き (留年なんて事になったらヴァリエール家の恥!それこそ家を追い出されてしまうわ、それだけはイヤ!) ルイズは観念し、少年に近づき━━ 思いっきり嫌そうな顔をした (なんなのよ!?平民でもせめて強そうな平民ならまだしもこんな子供なんて、しかもなによその前髪?ワカメなの?) (しかも私みたいな絶世の美少女が近づいっていってあげてるのになんで脅えてるのよ!) 見ると平民の少年は体をぶるぶると震わせながら泣いている (ああ!!もう!さっさと終わらせてしまおう、後の事は今考えない!) ルイズは自棄になりコントラクト・サーヴァントを行う 「感謝しなさいよ、平民のあんたが貴族で美人で素晴らしい私にこんなことしてもらえるなんて、二度とないんだからねっ!!」 少年は一層脅えだした、(俺のそばに近寄るなぁぁぁぁ)と聞こえた気がしたが無視する事にした。 「五つの力を司るペンタゴン、此の者に祝福を与え━━我の使い魔となせ━━」 ズキュゥゥゥゥン 「……あれ?なんで?失敗…したの?」 (そ、そんな、失敗したっていうの?人生オワタ\(^o^)/) ルイズが失望感に苛まれていると、禿ベールが近づいて来る 「あー、ミスヴァリエール?彼の猿ぐつわをとらないと、直接唇が触れないと契約は行えないよ?」 その言葉にルイズは希望を得るが同時にファーストキスを平民にあげる事に失望を感じた (ああっ!!もう!“覚悟”を決めるのよ私!) そして平民の子に対し出来るだけ威厳を損ねないような口調で話しかける、今更威厳もへったくれもないようなものだが、彼女のプライドがそうさせるようだ。 「今からこの猿ぐつわをとるけども泣き叫んだりしないって誓えるかしら?」 平民の少年は首を激しく縦に振る、どうやら苦しいようで顔色も心なしか悪く見える 「よぉーし良い子ね、安心しなさいリラックスよリラックス」 平民に言い聞かせながら猿ぐつわを取る その時衝撃の出来事が!! 「オゴェェェェェーーッ、ゲロゲロ」 平民が勢いよくゲ●を吐き出したのである、その勢いたるや圧倒的破壊力の小宇宙と言わんばかりであった 「何をするだァァァ!!許さんっ!!」 メメタァ! その後無事(?)にコントラクト・サーヴァントを終えルイズが少年に問う 「そういえば名前を聞いてなかったわね、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールよ!あんた名前は?」 使い魔のルーンを刻まれる際の痛みで泣き転んでいた少年は少し落ち着きをルイズの問いに答える 「ぼ…僕…僕の名前……ボインゴです…はい」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/231.html
康一が、ルイズの使い魔として『召喚』された日の翌日。 ロクな寝床を与えられず、床で毛布に包まっていた康一は、両肩の痛みと共に目が覚めた。 現在の時間を確認するために、時計を手探りで掴もうとする。 しかし脳ミソが半分も活性してない康一は、時計じゃなく昨晩ルイズが投げてよこしたパンティを掴んでしまった。 「う、うわあああああああッ!」 あたふたしながらパンティーを放り投げ、康一は一気に目が覚めた。 周りをキョロキョロと見回し、やっとのことで自分が置かれている状況を理解する。 (そうだ、僕は自分が住んでいた世界から別の世界に呼び出されたんだっけ……) 康一のことなどまったく気にもとめずに、ルイズはベッドの上でスヤスヤと寝息を立てている。 顔を覗き込むと、ニヤニヤと笑っている。良い夢でも見ているのだろう。 顔は可愛いけど、ワガママなんだよな。などと思いながら、康一は昨日起こった出来事を回想していた。 康一が呼び出された世界は、魔法が当たり前のように使われているファンタジー世界。 ここはトリスティン魔法学院とかいう所らしく、その学院は、まるで中世の城のような佇まいだ。 しかし、そんな中世の城よりも康一が驚いたことは、二倍程の大きさがある月であった。 大きさだけでなく、数も二倍に増えており、この世界に月は二つも存在しているらしい。 なお、地球のどこを探しても、月が二つ見える場所なんて存在しない。 つまり、ここは地球外の場所であるということの証明である。 もし飛ばされたのが康一じゃなく露伴だったら、 「凄い! 本当に凄い所だ! こんな体験は他の誰にも出来ないぞ! 僕は最高のネタを手に入れた!!」 と言いながら、大はしゃぎしているだろう。 しかし、今回この世界に連れてこられたのは康一であり、そんな感動に浸る余裕がある人物ではない。 早く自宅に戻って、犬の散歩をして、宿題をしなくちゃいけない。 このままでは学校にも通えず、母親や姉に再会することすら出来ないのである。 召喚されてから数時間後、ルイズの部屋にいた康一はこのままじゃまずいと思い、 「なんとか元の世界に帰る方法は無いんでしょうか?」 とルイズに聞いたが、「無理よ」という期待外れな答えが返ってくるだけだった。 「でも、僕をこの世界に連れてきたのだから、元の世界に戻す事だって……」 ルイズは困り顔で、康一の言葉を遮った。 「あんたが、他の世界から来たなんて信じられないけど、別世界を繋ぐ魔法なんて知らないもの」 「じゃあ、どうやって僕をここに連れてきたって言うんですか!」 「こっちが聞きたいわよ!」 ルイズに逆ギレされ、ショボボーンと肩を落とす康一。 「いい加減諦めなさいよ。 私だって、あんたみたいなのが使い魔なんて嫌だけど、取り消すことはできないし……」 はぁ、とため息をついてベッドに座るルイズ。 康一も同じようにため息をつき、左手の甲に描かれた謎の文字を見つめた。 ルイズの使い魔となった時に印されたものである。 「ああそれは、私の使い魔ですって印みたいなものよ」 それを聞いて再びため息をつく康一。もう何度目のため息なのか覚えていない。 結局のところ、『運命』というものらしく、どうあがいても帰れないのだと悟った。 「……わかりました。帰る方法が見つかるまで、ルイズさんの使い魔ってやつになります」 「ちょっと、そこは『なんなりとお申し付け下さい、ご主人様』でしょ」 反論する余力などないので、康一はルイズの言う事をスルーして話を続ける。 「ところで、使い魔というのは、具体的には何をすればいいんです?」 「まず、主人の目となり耳となること」 「以心伝心ってやつですか?」 どういう意味かわかっていない様子のルイズは、首を傾げながら聞く。 「……何それ?」 「言葉とか使わないで、考えてることがお互いに理解できるって意味です」 「そうね、そんなところかも。でもあんたじゃ無理みたいね。私、何も見えないし感じないもん!」 「そうですか……」 そりゃあ、そんな簡単にお互いが分かれば苦労しないよ。と康一は思った。 「でも、一番大事なのは主人を守ることよ! 使い魔の能力で主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃ無理ね……」 「ははは……」 もっとも、康一はエコーズというスタンドがあるため、ルイズを敵から守るのは難しいことじゃない。 しかし、スタンドは魔法使いにも見えないらしく、ルイズから見れば康一はただの平民である。 康一はスタンドの事を話そうかとも思ったが、色々とややこしいことになりそうなので、やめておいた。 ようは、ルイズがピンチになった時にエコーズを使えばいいだけなのだ。説明は、その後いくらでもできる。 「ま、あんたが出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」 「はぁ……」 それじゃ家政婦じゃないか、と思いながらも、康一は素直に従うことにする。 いちいちモメたところで、気が弱い康一が言い負かされるのは目に見えているからだ。 「わかったら、明日から早速やりなさいよ」 そう言って、ルイズは眠たげにブラウスのボタンを外す。 下着があらわになったルイズの姿を見て、康一は慌てて視線を逸らす。 「う、うわぁあああ! ちょ、ちょ、ちょ、何してるの!?」 ルイズは頭に?マークを浮かべた表情をしている。 「何って、寝るから着替えてるのよ」 「そ、それならそう言ってよ! 僕に着替えてるところを見られても平気なの!?」 「あんた使い魔でしょ。別になんとも思わないわ」 つまり、僕は男として見られてないのか……。そういえば、犬とか言ってたし……。 康一は、男として見られてない自分がちょっぴり悲しくなった。 「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」 ルイズの下着姿を見ないように視線を逸らしていた康一の後頭部に何かが飛んできた。 なんだろうと思って、頭に乗っかっていたソレをマジマジと見つめる。 手には、レースのキャミソールと白いパンティが握り締められていた。 「……わぁぁぁあああッ!」 慌てて握り締められていたソレを手から離す。 「し、下着まで洗濯するのォ~!?」 「当然でしょ。誰があんたを養うと思ってるの?犬のあんたは私の言うことに従ってればいいの」 もう少し恥じらいを持ってほしいよなぁ~……。などと思いながら、ルイズの下着を慎重に拾う。 ネグリジェに着替えたルイズは、寝支度が整ったのか、薄暗いランプ付けて布団に包まっていた。 「あの~、ところで僕はどこで寝れば……」 ベッドは一つしかない。布団もベッドの上にあるのしかない。 ルイズは毛布を康一に投げ、床を指差して再び布団に包まった。 「はぁ~あ……」 康一は、一日を締めくくる大きなため息をついて布団に包まった。 そして、話は冒頭に戻る。 康一は、とりあえず自分の主人を起こそうと思い、スヤスヤと寝ているルイズの体を揺すった。 ルイズは、「う~ん……」と唸った後、うっすらと目を開ける。 「うー、なによ……なにごと?」 「あの~、朝ですけど……」 「はえ? そう……。って、誰よあんた!」 ルイズはまだ寝ぼけているのか、康一を見るなり怒鳴った。 「僕だよ、康一だよ! 酷いなぁ、もう。忘れるなんてさぁ~……」 「ああ、使い魔ね……。昨日、召喚したんだっけ」 ルイズは、大きなあくびをしながら起き上がる。 そして椅子に掛かっていた制服を指差しながら、康一に向かって命じる。 「服」 康一は素直に制服を取って、ルイズに渡す。 だるそうにネグリジェを脱ぎ始めるルイズ見て、慌てて視線を逸らす。 「下着」 「もお~、下着くらい自分で……」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 康一は、何を言っても無駄だと思って引き出しをあけた。 中には、沢山の下着が入っており、康一は思わず顔を赤くする。 適当に選んで、ルイズの姿を見ないようにしながら下着を渡した。 「服着せて」 康一は頭を抱えた。そして思った。 彼女は異常ではないが、常識がまるっきりない! と。 「早くしなさいよ!」 「あ、あのねぇ! 服ぐらい自分で着なよッ! いくら僕より年下だからって、服くらい自分で……」 「あっそ。言うこと聞かない使い魔は、朝ごはんヌキ」 ルイズは康一の言葉を遮って、勝ち誇るように言った。 いくら温厚な康一でも、これはさすがにカチンときた。 「冗談じゃないぞー――ッ! もう付き合っていられるかッ! もう我慢できないッ! 1から10までキミの言うことを聞いていたら僕の身が持たないよッ! 朝ごはんなんているものかッ!」 そう言って、康一はルイズの部屋から出て行った。 「コラーッ! ご主人様を置いてどこ行くのよ!」 ルイズは康一の後を追おうと廊下に飛び出すが、 下着姿であることを思い出してすぐに部屋の中へと引っ込んだ。 衝動的に部屋から飛び出した康一であったが、部屋を出て行った事をすぐに後悔した。 何せ、右も左も分からないような場所に、一人飛び出して来てしまったからだ。 しかも、さっきから腹がぐーぐー鳴っている。 朝ごはんはいらないと言ったが、昨日から何も食べていないため、腹が減って仕方がなかった。 「おなか減ったな……。やっぱり素直に従った方がよかったかなぁ……」 必死に腹の虫を抑えようと、腹を支えるが、さっきからずっと鳴りっぱなしだった。 鳴らすまいと思えば思うほど虫は鳴く。満腹なんだと思えば思うほど空腹になっていく。 「どうなさいました?」 その言葉に反応して振り向くと、銀のトレイを持った少女が心配そうに康一を見ていた。 カチューシャで纏めた黒髪とメイド服が特徴的な女の子だ。 「いえ……おかまいなく」 康一は、自分を心配する女の子に感謝しながらも、 名前も知らないような子に迷惑をかけるわけにはいかないと思って、その場を立ち去ろうとする。 「あなた、もしかして、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 「あれ? 僕のこと知ってるんですか?」 「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ」 女の子はかわいらしい笑みを浮かべた。 ルイズと違って、随分と大人しそうな子だなぁ。と思いながら康一は尋ねる。 「キミも魔法使いなの?」 「いえ、私は違います。あなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいてるんです」 自分と同じ平民と聞き、康一は妙に親近感を覚えた。 「そっかぁ~、何だか安心するなぁ~。あ、僕は広瀬康一って言います」 「変わったお名前ですね……。私はシエスタっていいます」 お互いに自己紹介を終えたところで、再び康一の腹の虫が鳴いた。 「おなかが空いてるんですね」 「あ、はい……」 康一は、顔を赤くしながら腹を抑える。 「こちらにいらして下さい」 シエスタは、康一を誘導するように歩き出した。 康一が連れていかれたのは、食堂の裏にある厨房だった。 大きな鍋やオーブンが沢山並んでいる。周りには、コックやシエスタと同じ格好をしたメイドたちが大勢いた。 「ちょっと待ってて下さいね」 康一を厨房の片隅にあった椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥に消えた。 そして、お皿を二つ抱えて戻ってきた。大きな皿にはスープが、小さな皿にはロールパンのようなものが二つ乗っかっている。 「朝ごはんを用意したときに出たあまりで申し訳ありませんが、よければ食べて下さい」 「え? でも僕、お金とか持ってないし……」 「あまり物ですから、気にしないで食べてください」 康一はシエスタの行為に感謝しながら、パンをかじり、スープを飲んだ。 「おいしいッ!おいしいですよ、コレ!」 康一は、涙を流しながら夢中になって朝飯を頬張る。 シエスタは、ニコニコしながらその様子を見つめている。 「そういえば、ルイズさんはどうしたんですか?」 「ワガママばかり言うから、ついカッとなって出てきちゃったんだ……」 「まあ! なら、早く戻らないと……」 「どうせ朝ごはんはヌキだろうし……。それに、あっちが謝ってくるまで戻ってやるもんかッ!」 「何があったか知りませんが、大変そうですわね……」 シエスタは、哀れむような顔で、康一を見つめている。 康一は、あっという間に朝飯を食べ終わり、空になった皿をシエスタに返した。 「とてもおいしかったですよ、ありがとうございます」 「よかった。もしおなかが空いたら、いつでも来てくださいな」 康一は、シエスタの優しさに感動して再び涙を流した。 この世界に来てから、こんなに嬉しいことはなかった。 「うう……ありがとうございます。シエスタさん、もし困ったことがあったら何でも言って下さい。お手伝いしますよ」 ルイズに召喚されるより、この子に召喚されたほうが、何倍も幸せだっただろうな……。と思いながら、 康一はシエスタの手伝いをしようとした。 「なら、次にここにきた時に、食事を運ぶのを手伝ってくださいな。朝の分は全て終わってしまったので……」 シエスタは微笑んで言った。 その言葉を聞いて、康一は大きく頷いて返事をする。 「よろこんでやりますよ!」 「あ、それともう一つお願いが……」 席を立とうとする康一に、シエスタが一言付け加える。 「ルイズさんの所に戻ってあげてください。 きっと、困ってると思います……」 「……わかりました。実は、僕もちょっと大人気なかったかなって思ってて……」 康一は、シエスタに向かって深々とお辞儀をすると、礼を言って厨房から出て行った。 厨房からルイズの元へ戻ろうと、キョロキョロと辺りを見回していると、偶然にも食堂から出てきたルイズと出会った。 ルイズは康一を見るなり、不機嫌そうな顔をしながら言った。 「ご主人様の命令を無視して、どこに行ってたのよ!」 「勝手に飛び出したことは謝るよ。でも、キミも、もうちょっと……」 「言い訳は聞きたくないわ! 昼食もヌキだからね! フンッ!」 そう言って、昼食ヌキを言い渡したルイズは踵を返す。 ついて来いと言わんばかりの背中を見つめながら、康一はルイズの後に続いた。 (はぁ……この性格は露伴先生のスタンドでも直りそうないや……) そう思いながら、康一は深いため息をついた。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1603.html
ラ・ロシェールで一番上等な宿、「女神の杵」亭に泊まる事にした一行は、一階の酒場でだらだらしていた。 さすが貴族を相手にするだけあって、隅々まで掃除が行き届き、テーブルは床と同じ一枚岩からの削り出しで輝いている。 そこに、「桟橋」へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。 ワルドは席に着くと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに・・・」 ルイズは口を尖らせている。ギーシュの瞳が輝いている。セッコは首を捻った。 「なんで隔日なんだあ?アルビオンてのは、そんなに田舎なのかよ。」 ワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう?[スヴェル]の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 ワルドは、まるでこれが完全な答えだ、と言わんばかりの様子だ。 「・・・おあ?」 横でキュルケがなるほどと頷いているものの、セッコには完全に意味不明である。 考えるのをやめた。 「さて、今日はもう寝よう。部屋を取った」 「キュルケとタバサが相部屋だ。そしてギーシュとセッコが相部屋」 ギーシュが怯えた。 「僕とルイズは同室だ」 ま、婚約者ならなあ。 ルイズが反論する。何でだろ? 「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」 「いや、大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 「・・・わかったわ」 「女神の杵」で一番上等な部屋。そこでワインを傾けながらワルドとルイズは話していた。 「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」 ルイズはちょっとふくれた。 当たり前よ。もう子供じゃないんですから。 むしろ不安なのは、手紙を書きながら見せたアンリエッタの表情。 あれはもしかして・・・いや間違いないわ・・・ 「・・・ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」 「そうね、心配だわ・・・」 「大丈夫だよ。きっとうまくいく。」 「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね。で、大事な話って?」 ワルドは何処か遠くを見つめている。 「覚えているかい?あの日の約束。ほら、きみのお屋敷の中庭で・・・」 「いやだ、そんな変な事ばっかリ覚えているのね。」 「そりゃ覚えているさ。君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、デキが悪いなんて言われてた。」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。ワルドは言葉を続ける。 「でも、君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを持っていた。 それは、きみが、他人にはない特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」 ルイズにはなにがなんだかわからない。 「まさか」 「まさかじゃない。たとえば、そう、きみの使い魔・・・」 「セッコがどうかしたの?」 「そうだ。彼の身のこなし、そして武器をつかんだときに、左手に浮かび上がったルーン・・・ あれは、ただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説・・・?」 「そうさ。あれは、[ガンダールヴ]の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が鋭くなった。 「ガンダールヴ?」 「誰もが持てる使い魔じゃない。君はそれだけの力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ・・・」 ルイズは考え込んでしまった。確かにセッコは不思議だ。 変な格好をしているし、異常に目と耳が鋭いし、素早いし、不思議な力を持っている。 命令には忠実だし、悪い奴には見えないが、幼児のように無邪気で適当で残酷だ。 記憶のことも含めて謎が多すぎる。しかし、いくらなんでも伝説の使い魔とはとても思えない。 そういった神聖なものにしては、馬鹿すぎる。 そしてわたし。どう考えても魔法に関しては落ちこぼれだ。考えたくないけどゼロだ。 ワルドが言うようなことはやはり納得できない。 「きみは偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、 歴史に名を残すような、すばらしいメイジになるに違いない。僕はそう予感している。」 ワルドの表情が熱っぽいものに変わる。 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え・・・」 いきなりのプロポーズに、ルイズは固まってしまった。 「で、でも・・・」 「ルイズ、僕にはきみが必要なんだ」 「ワルド・・・」 ルイズは俯いた。再びセッコのことが頭に浮かぶ。あんなのでも一応男だし、ワルドと結婚してしまったら側においておくのは問題だろう。 その時、わたしのコントロールを離れたセッコはどうなるだろう? セッコに信頼されているらしいタバサか、あるいはオールド・オスマン辺りが手綱を握ってくれるかもしれない。 けれど、もしそれがされなかったら? 理由もなく不安感が募る。でも・・・ 「どうしたんだい、ルイズ?」 ワルドが心配そうに私を覗き込む。 「あの・・・その・・・わたしまだ・・・」 「急がないよ、僕は」 「いえ、あのそういうわけじゃ・・・」 「いいさ、今返事をくれとは言わない。でも、この旅の間に君の気持ちを傾けてみせる。もう寝ようか、疲れただろう」 ルイズは再び俯いた。 ワルドは優しくて凛々しいし、もちろん憧れだ。でも、まだ早すぎる。 特に何か理由があるわけではない、そんな気がするのだった。 その様子を窓に貼り付いて眺めていたキュルケは呟いた。 「随分と純情ねえ、あのワルドって人。」 てっきり押し倒すとばかり思ったのに、残念。 ワルドとルイズがキュルケに観察されていたその頃。 セッコとギーシュとタバサはそのまま酒場で雑談しつつ食事をしていた。 しかし・・・ 「よく、君たちはそんな同じものばかり食べ続けられるねえ、ヒック。」 酒が回ってきたギーシュが辟易とした調子でくだを巻いた。 「そうかなあ。」 「・・・」 甘苦く、なんともいえない匂いが高級酒場の一角に漂っている。 「甘いのもう一皿くれえ。」 「はしばみ草サラダのラ・ロシェール風」 「は、はい。かしこまりました」 ウェイトレスの声もやや引きつっている。 ギーシュは右を見た。 セッコは生地が崩れるほど蜂蜜を塗ったホットケーキを貪っている。 気分が悪くなった。 正面を向く。 タバサがはしばみ草をドレッシングもかけずに頬張っている。 見ただけで口の中が苦くなった。 「もう、勘弁してくれぇ~!!」 翌朝。 目を覚ましたセッコが日課となっているスーツの手入れをしていると、ドアがノックされた。 ギーシュの方を見ると、二日酔いなのか伏せて唸っていた。 仕方なくスーツを着てドアを開ける。 「おはよう、使い魔くん」 ワルドが羽帽子を被って立っていた。 失礼な奴だなあ。部屋の中では帽子を取れよ。 「なんかあったのかあ?」 ワルドはそれには答えず、にっこり笑って言葉を続けた。 「きみは伝説の使い魔[ガンダールヴ]なんだろう?」 なんだこいつ? 「違う。オレはセッコだ」 「いや、そういう意味じゃない。左手のルーンの名前さ。」 「あー。それがどうかしたのかよ?」 そんなにこの印は目立つもんなのか? 確かにスーツの上まで浮き上がってるけど。 面倒なもんなら手袋でもするかなあ。それとも誰かに聞いたのかあ? いくらなんでも昨日今日でタバサが言うわけがねえ。言ったのがヒゲ校長だとしたら最悪だ。 そんな嫌がらせみたいな事ないと思いてえ。 「僕は歴史と、兵に興味があってね。フーケを尋問したときに、君に興味を抱き、王立図書館で君の事を調べたのさ。 その結果、[ガンダールヴ]にたどり着いた」 ・・・手袋決定。今すぐでも欲しい、面倒事なんか大嫌いだ。無かった事にしてえ。 「でだ、あの[土くれ]を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「てあわせ?」 「つまり、これさ」 ワルドが腰に差した剣と杖のあいのこを引き抜いた。 「今ここでえ?」 「そうだ。この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったんだよ。 中庭に錬兵場があるんだ」 「いや、そういうことじゃねえし」 「ん、ああ、大丈夫だ。寸止めするし、きみの心配したようなことにはならんさ」 本当かよ。まあ体動かすのは好きだけどなあー。 「わかったよお」 「それでこそ男だ」 変な奴だなあ。 セッコとワルドは、今ではただの物置と化している錬兵場で向かい合った。 「昔・・・かのフィ・・・王が・・・」 ワルドが何か歴史的なことを言っているが、セッコには当然理解できない。 「でだ、立ち会いには、介添え人が必要なんでね。もう呼んであるが。」 なんかめんどくさい事になってきた。全力で断るべきだったかなあ。 と、物陰からルイズが現れた。 「セッコ!何やってんの!ワルドは味方なのよ!」 はあ? 「いやちげーし!オレ悪くねえ!向こうからやろうってきたんだって!」 「え、嘘、ワルド?」 ワルドは頷いた。 「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」 「もう、そんなバカなことやめて。今は任務中よ!」 「そうだね、でも、貴族というやつは厄介でね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」 「セッコもやめなさい!」 「ちょっと遊ぶだけだってえ。」 「ああもう、仕方ない人たちね!殺しても殺されても潜ってもダメよ!」 「わかった。」 「ちゃんと加減するから大丈夫だよ。安心して、僕のルイズ」 ワルドは首をかしげた。・・・潜るとは一体? 考えてもわからない。 「では、始めるとするか」 ワルドは腰から杖を抜き身構えた。 セッコは鞘に入ったままの剣を構えた。 「おや、抜かないのかい?」 「加減するつったのはテメーだろお。」 ワルドが電光の様に突きを繰り出す。セッコがそれを力任せに弾き返す。 「たいした怪力だな、だが隙だら・・・うおおおおおっ!」 本来死角のはずの場所へ飛びこんだワルドに、セッコの後ろ蹴りが襲いかかる。 「そうかなあ?」 間一髪で跳び退りワルドが体勢を立て直す。 「やはり、魔法無しでどうにかなる相手ではないか、[ガンダールヴ]よ」 「パワーなら負けねえぜ、多分なあ。」 セッコの単純かつ強力な大振りの攻撃をなんとかかわしつつ呪文を唱える。 これをかわさず受け止めたら、間違いなく杖か腕が折れてしまうだろう。 むしろ、こんな使い方をされて、損傷しない剣の正体の方がワルドには恐ろしかった。昨日見たときは、刃が錆びていたように見えたが。 一体どんな材質に固定化をかければこんな荒っぽい使い方に耐えうるのだろう? 「デル・イル・ソロ・ラ・ウィンデー・・・」 ボンッ! 詠唱が完了し、空気が撥ねた。巨大な空気のハンマーが剣を弾き飛ばし、 セッコ本人をも10メイルほど吹き飛ばして、そこに積んであった樽に叩きつける。樽がガラガラと崩れ落ちた。 ワルドは素早くセッコの剣を踏みつけた。 「勝負あり、だな。きみではルイ・・・」 ドボォッ! だが、ワルドは最後まで発言することができなかった。 セッコの投げつけた樽が今度はワルドを彼方に吹き飛ばす。杖を取り落とさなかったのは奇跡といっていい。 「思ったよりつええじゃねえか、帽子のおっさんよおおおお。」 セッコがゆっくりと剣を拾い上げ、鞘から抜いた。足元の地面が微妙に沈む。 「すまない、舐めすぎていたようだ。今度は全力で行かせてもらうよ」 起き上がったワルドはセッコから距離をとり低く、低く詠唱を開始した。 「ユビキタス・デル・ウィ・・・」 「いい加減にやめて二人とも!秘密任務を何だと思ってるの!」 その様子を見ていたルイズは、慌てて間に割って入り叫んだ。 「うおあ、冗談、冗談だよおルイズ。」 「失礼、ちょっと興奮してしまった」 二人はなんとか正気を取り戻した。 「俺様には、とてもちょっとした冗談に見えなかったけどな」 抜かれたばかりでその前の状況を理解してないデルフリンガーが呟いた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1375.html
決闘に勝利したにも関わらず、ルイズはその場から逃げるようにして離れた。 顔を真っ赤にしている彼女のその手には、一枚のパンツが握られている。 一枚、たった一枚。その他多くはルイズの放った失敗魔法の爆発に巻き込まれ天に召されたか、あるいは第三者の手に渡ってしまったようだ。 「ブラック・サバス」 ルイズは怒りのこもった声で、自分の使い魔を呼んだ。だが、神出鬼没の使い魔は姿を現そうとしない。 ルイズはいろいろ高ぶる気持ちを抑えながら、例の装置と鞭を手にする。 そして、もう慣れた手つきで装置を『再点火』する。 「お前、『再点火』したな!」 「サバス…………あれは、どういうこと?」 予定通り現れたブラックサバスに、できるだけ笑顔で答える。鞭をもつ手はプルプル震えていたが。 「チャンスをやろう!」 「うるさい!意味分からないこと言っても、もう逃がさないわよ!あんたにはもうチャンスはないからね!!」 ルイズはブラック・サバスに向かって鞭を振るった。 「ブグッ!」 ブラック・サバスはうめき声を上げるものの、痛そうなそぶりは皆無だった。 それを見たルイズはますますむかっ腹が立ってくる。 「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」 ルイズは顔を真っ赤にして鞭を振るった。 しかしそれでも、ブラック・サバスは特に堪えた様子は無い。 いい加減疲れがピークに達したので、ルイズは考えるのをやめた。ベッドに横になる。 ブラック・サバスが相変わらず自分のすぐ側に立っているのを確認して、そして泥の様に寝た。 その可愛らしい寝顔を見ることなく、ブラック・サバスはただルイズの横に立つ。 長い長い一日がやっと終わった。 「いつまで寝てんのよ!さっさと起きなさい!」 「……もうちょっと寝かせて……後5分……」 「まったくだらしないんだから。あなたもそう思うわよね~?」 ルイズは寝起きのボンヤリとした頭で考える。 今、私は誰と会話してるんだ?……ブラック・サバスか……朝、起こすのも使い魔の仕事よね…… それにしても声変わったんじゃない?妙に高いわね。それにいつの間にやらボキャブラリー増えてるじゃない…… なんかムカつくしゃべり方だけど……まるでキュルケに似て…… そこでルイズは跳ね起きた。 横を見るとキュルケが、ブラック・サバスと普通におしゃべりをしている。といっても一方的に話しかけてるだけだが。 「なななななな!」 「何よ。朝から元気ねー」 「なんであんたがここにいるのよ!鍵かかって……勝手に開けたのね!?」 見るとキュルケの後ろのドアが、全開で開いている。 「勝手に開けて入ってくるなんて、ホントにツェルプストーの人間ってデリカシーがないのね!」 「そういうあんたこそ。ヴァリエールの人間は抜けてるようね。いつまで寝てんのよ」 「いつまでって………今何時」 「朝食、もう終わったわよ」 「えええええええええええ!?」 朝食の時間、食堂での話題は昨晩の決闘のことで持ちきりだった。 ギーシュはもうケガは治ってるとか、いや全治一週間だとか再起不能だとか。 ルイズの魔法によって、大爆発と共にパンツが舞い始めたとか。 そして、なによりあの謎の使い魔のこと。 不気味な姿、決闘の時見せたトリッキーな動きと、ギーシュを異様な状況に追い込んだ奇妙な力。 あれは先住魔法だ、つまりあれは亜人ではなくエルフなんだよ。 違う!あの黒づくめの格好……あれは悪魔だったんだよ!な、なんだってー! という具合だ。 しかし、その話題の中心であるルイズとギーシュがなかなか現れない。 まぁギーシュはケガを負ったので、今も療養中というのは理解できるが、ルイズが来ないのはなぜか? キュルケも顔には出さないが、少し気にかけていた。 すると後ろから声を掛けられる。振り向くと昨日の決闘の関係者の一人であるシエスタが立っていた。 「あの、ミス・ツェルプストー。ミス・ヴァリエールはどうなさったんでしょうか……昨日のことで具合を悪くなされたとか……」 「別に心配することはないと思うけど……」 そう言って二人で顔を曇らせる。後で様子を見に行ったほうがいいかもしれない。 食事が終わるとキュルケはルイズの部屋の前まで行き、何度かノックしてみる。しかし返事はない。 少し考えた後、ドアをアンロックの魔法で開けて入ってみる。 幸せそうな顔で寝ているルイズと、その横でじっと立っている使い魔をみてため息をついた。 心配して……いや、別に心配なんかしてないわよ。 ここから最初のやり取りへと展開していくのだ。 「もう!サバス起こしなさいよ!使い魔でしょ!…………ってあれ」 とりあえずブラック・サバスに文句を言おうとしたら、またもや姿を消していることに気づく。 「ああ、あんたの使い魔なら洗濯物持って……ていうか食べて出てったわよ」 「止めなさいよ!」 ベットから飛び出してルイズはブラック・サバスを追おうとするが 「あんた、もう用意しないと授業に遅れるわよ?それともそんな格好で出るつもり?」 言われて自分が昨日の決闘の時と同じ格好であることに気づく。 目だった汚れは無いが、それでも砂や泥が付いてる所があるし、なによりシワだらけだ。 というかこの格好でベットで寝たのか……と、少し後悔の念が生まれる。 「き、着替えるから出てって」 ルイズが慌ててクローゼットの前に移動する。 しかし、言われたキュルケは出て行かずにニヤリと笑った。 「着替えならあるわよ」 ニヤニヤ笑うキュルケの手の中には、パンツがあった。 「!!!!か、返して!!!」 ルイズがものすごい勢いで飛びつくが、キュルケは手を上に伸ばしてヒョイッとかわす。 「やっぱりこれあんたのだったのね~。この色気の無さはあんたのだと思ってたのよ。まぁあなたの体にはお似合いだけどね」 そう言って自分の胸を強調するキュルケを見て、ルイズの顔がどんどん赤くなっていく。 「じゃあね!早くしないと授業に遅れるわよ!」 キュルケはいろいろなものが飛んでくる前に、部屋から飛び出した。 ルイズの怒りの叫びが後ろから飛んでくる。 なぜかとても清清しい気分だった。やっぱりルイズは面白い。 その日の昼休み、ルイズはギーシュの元へ出向いた。 勝負の結果とはいえ、やりすぎた感はある(あまり覚えていないけど)。 というのも授業中、回りの生徒が自分を見る目がどうもおかしい。 決闘に勝利したことによる、改めて見直したとかそういうのではなく、なんというか畏怖しているというか。 たまに『デビル』とか『キラー』とか物騒な単語が聞こえるけど、私のことじゃないわよね。 ……いざギーシュの部屋の前に来ると、ドアを開けるのをためらってしまう。 開けた瞬間「ご臨終です」とか聞こえたらどうしよう。 …………え~い、ままよ! 覚悟を決めてドアを開ける。 「ああああああああああああああああああ」 まず聞こえたのは学院中に響いたのではないかという泣き声。 見るとモンモランシーが包帯まみれのギーシュ……恐らくギーシュである物の横で号泣している。 ギーシュ・ド・グラモン死亡確認! 処罰…………退学…………実家に強制送還………… そんな単語がルイズの頭の中を駆け巡る中、呑気な声が彼女に届く。 「おや、そこにいるのはルイズ。君も見舞いに来てくれたのかい?」 …………らせん階段……カブト虫 ……廃墟の街……イチジクのタルト…………ん? 「ギーシュ!生きてたの!」 「君はいきなりだね……」 「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!」 包帯男とその横の目を赤くしたモンモランシーが順番に答える。 「ギーシュはね!今やっと目を覚ましたところなのよ!」 「まぁまぁモンモランシー落ち着いて。そんな顔をしてはせっかくの美貌が台無しになるよ」 「ギーシュ…………」 「元気そうでよかったわね。お大事に」 もう帰ろうと思い始めたルイズに包帯男があわてて声をかける。 「ま、まってくれルイズ!…………まず君と君の使い魔を侮辱したことに対して謝らせて欲しい。すまなかった」 そういって頭を垂れる包帯男に、ルイズは少々驚いていた。こんなに素直に謝るとは。 意外な顔をするルイズに包帯男、もといギーシュは続けた。 「決闘に負けて、モンモランシーが僕に付きっ切りで看病してくれてる間にいろいろ考えてね。 僕は女性には優しい薔薇のつもりでいたが………モンモランシーにケティに君に、あとあのメイドの……」 「シエスタ」 「そう、そのシエスタって子も傷つけてしまったんだ。動けるようになったら彼女にも謝罪しに行くつもりだよ」 それを聞いたルイズは、ギーシュに謝られるシエスタを想像した。 きっと頭を下げるギーシュ以上にペコペコするんだろうなあの娘は。 それを考えると少しおかしくなったルイズは二人にばれないようにフッと笑った。 「ままぁ私もちょっとやりすぎたわ。悪かったわね。私の使い魔の分も謝っておく」 予想以上にギーシュにあっさり謝罪されたので、ルイズもそれに合わせるかのように謝罪の言葉を口にする。 なんとなく気恥ずかしくなったルイズは、もうさっさと部屋を出て行こうとしていた。 そこへモンモランシーが呼び止める。 「ルイズ!ひとつ教えて…………あなたの使い魔はいったいなんなの?あれは魔法じゃないんでしょ?」 「…………」 改めてブラック・サバスのことを考える。 ……たしかにブラック・サバスの力はルイズたちの魔法の基本である四系統から、大きく逸脱している。 ……まぁそれはある意味ルイズもなのだが…… とにかく、だからといってブラック・サバスが、例えば「虚無」や「先住魔法」を使っているなんてことは思えない。 ファンタジーやメルヘンじゃあないんだし。 でも……あの力がなんだろうと……ブラック・サバスは私の使い魔なんだから。 使い魔である以上……大丈夫よね。 ……はたして本当にそうだろうか。ブラック・サバスは本当に自分を主と思っているのだろうか? あの力を、自分は御することはできるのだろうか……。 実際、今ブラック・サバスがどこで、何をしているかルイズは分からない。 「…………さぁ」 ルイズはそれだけ言うとギーシュの部屋を後にした。 その頃ブラック・サバスは 「サバスさん。あまり強くするとゴムが切れてしまいますよ」 「…………」 パンツを洗っていた。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/83.html
フーケを倒し、学院に帰ることとなったドッピオとルイズですが 「・・・・っ」 「・・・・・・」 ドッピオの足はとても酷いことになっていました 何か支えが無いと歩けないほど酷く、ルイズに少し寄り掛からないと歩けないのです 「・・・・・・」 ルイズは自己嫌悪を起こしていました 結局は今回自分は邪魔なだけで自分がいなければこの使い魔はすぐに勝てたと言うのに 「・・・・あの」 自分の責任で負傷した使い魔に謝ろうと、ルイズはたまらず声をかけてしまいました 「今回は・・・その・・」 謝ろうとしても謝罪の言葉が見つからずモゴモゴしていると 「謝らなくていいですよ」 「え?」 まるで自分のことを見透かされたかのように声をさえぎられたのでした 「今回はあの場でルイズさんを取り残したのが悪かったんです ・・・本当にすいません」 事実ドッピオはロングビルがいるから大丈夫ということを考えてルイズを残しました 結果そのあとの戦いに支障がでました。ドッピオは自分が甘いと考えていました 「・・・なんで?」 その後、主からでた言葉は疑問でした 「なんでそんなに自分ばっかり責めるの?ディアボロだって私を邪魔って言ったのよ? なんでアンタは・・・私を責めないの?」 なんで、そんなの考えるまでも無い。自分の不注意で招いた結果だったのにルイズを責める道理は無い そう思っていたドッピオは 「全部僕が悪いんです。力を持たない主を守れなくて何が使い魔ですか? ・・・もしルイズさんが自分のことを悪いと思っているなら」 一区切りおいてドッピオは 「成長してください。自分の未熟な過去に打ち勝って強くなってください 今回のことに対する謝罪はそれで十分です。まずは・・・」 ドッピオは笑って 「その泣きそうな顔をどうにかするところから始めましょうか」 そう言いました。ルイズはあわてて顔を隠します ・・・今は寄りかかる訳にもいかないのでドッピオは座っています 目をゴシゴシしてから向き直るともうその顔はいつもの顔です 「・・・今回は助かりました。次回もまた期待していいですね?」 微笑みながらそう聞いてくる使い魔に 「もちろんじゃない!」 なんの臆面もなく答えられたルイズの顔には憂いは浮かんでいませんでした 「・・・頼りにしてくれてありがとう」 聞こえたか聞こえなかったかわからないほどの小声でしたがドッピオはしっかり聞こえていました ですがあえてそれには何も言いません。しばらく無言で歩いた後 「そろそろ学院が見えてきますね」 「さぁ、さっさと帰るわよ」 「もちろんです」 辺りはだんだんと暗くなり2つの月が見え始めていました 帰った後ドッピオはすぐに保健室へ運ばれました。傷だらけですがどれも致命傷ではありません 二日ほどで完治したドッピオはいつも通りに家事をこなしていました その後、破壊の杖を取り戻したコンビとして周囲から注目の的となったルイズは困惑しドッピオはあまり取り乱しませんでした そんな毎日を少し楽しみながらドッピオは家事にいそしんでいました。 12へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1803.html
「…で、俺はなにをすればいいんだ?」 あぐらをかく使い魔。 生徒たちが好き勝手な方向にクモの子を散らすように逃げ去っていった中、 歩いて少女の使い魔の部屋に到着したワムウと少女。 ワムウは、部屋に向かうまで真昼間であるはずの今、遮蔽物もなしに歩けることを不思議に思った。 しかし、それ以上に不思議に思ったのはッ! (月がッ!月が2つあるッ!…どういうことだ?太陽の光も少し体の調子を下げる程度で十分に動ける… 長い間直射を浴びていればダメージを受けるだろうが…風のプロテクターを使うよりもスタミナは安上がりだな…… だが、油断はできんな…シーザーのやったように、鏡などで太陽の光を集中させれば、十分致命傷になりうる… 天敵である波紋使いが今のところ見当たらん…そのためにも唯一の『天敵』である太陽光…もっとも違う世界であるようだし 太陽とは呼ばないのかもしれないが…太陽光には十分気をつけなければいけないな…) 「さっきも言ったように…使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるはずなんだけど…なにも見えないし聞こえないわね…… 次に使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね。あんたどこの田舎に居たかしらないけど亜人なんだから そういうの詳しくないの?」 「そもそもここはどこだ?それすらわかっていない…魔法学校などと言っていたな、ここはスイスではないのか?」 「スイス?そんなところ聞いたことないわ。トリステイン魔法学院くらいは知ってるわよね?」 「そもそも魔法自体俺は知らん。俺の知らない土地で人間は二〇〇〇年の間にそこまで成長していたのか? ……ああ、ここは違う世界だったな、まあ似たようなものだろう。」 一呼吸空く。 「あ、あんた?なに言ってるの?違う世界から来て、しかも二〇〇〇年前から生きてるなんて言わないわよね?」 「正確には二〇〇〇年前から眠っていたというところか。念のために聞いておくがここは『地球』という言葉を知らないよな? もしくは『Tellus』『Earth』…それに似たような言葉でも構わん。」 「チキュウ?それがあんたのいた国?聞いたことないわね。大体二〇〇〇年間寝てて、ご飯とかどうしてたのよ?他にもいろいろ 生きてく上で必要あることあるでしょ?さすがに私でもそんな嘘にひっかからないわよ。」 「石と同化して二〇〇〇年間眠っていた。食料も二〇〇〇年程度いらん…が、こちらに来てなにも食べていないな。 お前ををまず食ってみようか?」 しばしの沈黙。 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 大声で悲鳴をあげる。 窓を思いっきりあけ逃げようとする少女。 「冗談だ、それほど騒ぐな」 「冗談って、あ、あんた二〇〇〇年眠ってたってのも?」 「それは本当だ。人間を食うこともな」 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 二度目の悲鳴。先ほどの悲鳴より強いようだ。 「ルイズッ!うるさいわよッ!」 悲鳴を聞きつけたのか、赤髪のグラマーな女性が彼女の部屋に怒鳴り込んでくる。 「ひとりで逃げるのよキュルケ。あんたを逃がすのは私であり……そこのサラマンダーであり、あたしの魔法 爆発… 生きのびるのよ あんたは『希望』!来いッ!ワムウ!」 「あ、あんた、何を言ってるのよ…脳みそがクソになったの?」 「……なにを勘違いしているんだ。お前の使い魔になったといっただろう。起きている間でも二〇〇〇年やそこら人間を食わなくても済む。 他の…人間どもの一般的な食事があればな」 「な、なんだ……じゃあやっぱり私の使い魔で私を食べたりはしないのね」 「うむ。少なくともお前はとりあえずしばらくの間は食わないし、食う価値も今のところはなさそうだ」 「やっぱ逃げてええええキュルケェえええええッ!」 もう既に赤髪の女は居なかった。 * * * 「先ほどの女はなんだ?そういえばお前の名前も聞いていなかったが。ルイズというのはわかったがな」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、由緒正しきヴァリエール家の三女よ」 「さっきの女、キュルケとやらは?」 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。忌々しきツェルプストー家の尻軽女よ。 ああ、憎たらしい!あんな女逃がそうとなんかしなきゃよかったわ。とっくのとうにいなくなってるしね……」 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。 「ツェルプストー家になにか因縁でもあるのか?」 「数え切れないほどあるわよ!キュルケのひいひいひいひいおじいさんのツェプルストーはわたしのひいひいひいおじいさんの恋人を 奪ったのよ!今から二百年前に!それから、わたしのひいひいおじいさんは……」 「人間どものつまらん話など聞く必要はない。それより飯だ。まさか使い魔にはないとは言わないよな?」 先ほどの『食料は人間』という話を思い出す。 顔が青ざめていき、高ぶっていた心は一気に冷めていった。 彼女の口の動力機関はぴたっと止まった。 「え、ええ。食堂はこっちよ。」 (数段ランク落ちたものを食べさせて威厳を見せつけようと思っていたのに、こんなんじゃそんなものあげるにあげられないじゃないッ! はあ、私なにを呼び出しちゃったのかしら……い、いえ!ポジティブに考えるのよ!『ゼロ』だってバカにしてた奴らを追い払うくらいの…) 「どうした、行くんじゃないのか?」 ワムウに声をかけられ、思考は中断する。 「ひゃっ、……は、はい。」 寮の出口へ2人は歩き出した。 * * * 「うーむ、なんじゃあの使い魔は。あんなパワーを持った亜人みたことないぞい……多少鈍っているとはいえ、コルベール君、君が 本気を出して放ったファイヤーボールを片手で止めるとは……」 老人がいすの上で唸る。 「しかも、現状を一瞬で理解したことから、私たち以上といっても過言ではない判断力を持っているといっていいでしょう…… 特に……戦闘の際の判断力は、私が見てきた軍人たちの中から探してもあれほどの人間は居ませんでした。」 髪の薄い男性も唸る。 「で、君が調べたあのルーンは間違いないのかね?」 「はい、私も何度も確かめましたが間違いないでしょう。喜ぶべきなのか困るべきなのか……」 「やれやれ、よりにもよって伝説の使い魔ガンダールヴとはな…」 老人はため息をつく。 「やれやれ、ミス・ヴァリエールもやっかいな者を呼び出したようじゃわい…」 外からノック音が聞こえる。 息を切らした様子の緑色の髪の女性が入ってくる。 「ミス・ロングビル、そんなに慌てていてどうしたんじゃ?そんなんだから婚期を逃すんじゃよ」 「婚期は関係ありません!そんなことより、ヴェストリの広場で決闘がおきて大騒ぎになっています! 止めに入った教師たちも、生徒たちに邪魔されて、止めるに止められないようです」 「なんじゃ、そんなことか暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。 おおかた女の子のとりあいじゃろう。相手は誰じゃ?」 「そ、それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です…」 老人は二回目のため息をついた。 「やれやれ、今日は厄日かのう……」 * * * 数十分前の食堂。 ややにぎわっており、生徒たちであふれている。給仕たちや料理人たちもいそがしそうである。 そこに入っていったルイズとワムウ。 教室での騒ぎを知らない者の一部は好奇の目を向け、知っている者はそそくさと立ち去る、ルイズが座る席から離れる、気づかない振りをするなど 多種多様だが、多くは友人たちとの会話や食事を続けている。 ルイズ達が席について少し経つと料理が二人の前に運ばれてくる。 運んできたメイドは、ワムウの顔に少しおびえたのか、目の前に立った瞬間怯んだものの、何事もなかったかのように仕事を再開した。 「なあ、ギーシュ、お前、今誰とつきあってるんだよ!」 「誰が恋人なんだギーシュ!」 気障な少年が数人の友人に囲まれて話をしていた。 「つきあう?僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」 今日も絶好調、気障なセリフが全快だッ! 友人の一人がギーシュのポケットの中のふくらみに気が付く。 「なあギーシュ、お前のポケットに入ってるものはなんだ?見せてみろよ」 「や、こ、これはだめだって!」 「いいじゃねえか。見られて困るものじゃないだろ?困るならなにか教えろよ」 「そ、それは……」 友人たちに迫られて後ずさりする。 ギーシュには幸運が二つあった! 友人が迫るスピードが遅かったために彼の影を踏むときにギリギリまで彼から遠くに居たこと! そして! 幸いにも回し蹴りが下半身に行ったこと! そのどちらの幸運がなかったとしても彼の人生は老化して首の骨を折られる以上の悲しい死因だったであろう。しかし彼はその大きな幸運より 目先の不運を恨んだのだった。 「うわらばッ!」 容器が割れる甲高い音と、彼の断末魔に似た声がする。 「な、なにしてるのよワムウ!」 「すまんな、坊主。俺は影に入られるのが嫌いでな。反射的に攻撃してしまった。まあ生きているようだし次からは気をつけるんだな。」 「お、おいギーシュ、大丈夫か?」 「なにか割れた音がしたけど……あれは!」 「モンモンラシーの香水の入った小壜じゃないか!割れてるけど」 「そうか、ギーシュはモンモンラシーとつきあってたんだな!」 「ああああああ!モンモンラシーからのプレゼントがあああッ!」 その嘆きを無視し食堂を出ようとするワムウに少年、ギーシュは叫び声を突きつける。 「お前!貴族になにをしたかわかっているのかッ!そして、お前が割ったのは僕の最愛の人モンモンラシーからのプレゼント! 謝罪ではすまないぞ!」 「ふむ、ではなにをすればいいんだね?」 ワムウが振り向きギーシュを見据える。 「決闘!それがグラモン家の流儀ィイイイイッ!ヴェストリの広場に来やがれッ!」 /|_________ _ / | | ̄| | | \ TO BE CONTINUED .. | |_| |_| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/30.html
この俺、ディアボロはGERの能力で永遠に死に続けることとなった 何百、いや何千死んだだろうか しかし、転機を俺は迎えた。 「ハッ?!今度は何だ?」 いつの間にか俺はまた見知らぬ所に飛ばされた 周りには黒いコートを着た集団がいる 「どこから・・・どこから襲ってくるんだ?!」 そうして戸惑っていると一人の桃色の髪をした少女が近づいてくる 「くくく来るな?!俺のそばに近寄るな!!!」 少女は訝(いぶか)しい表情をして俺に聞き取れない言語で怒鳴る 俺の目の前まで来てわけの分からない言語で言葉を発した後 「???!!!!」 俺に口付けをしてきたのだ (何か・・・いつもと違うようだぞ・・・?) 口付けをされながら俺は考えをまとめていた (GERの能力が解けたとは思えない・・・だが) いつもだったら死を迎えるのは二、三分だ だが今回はどうだ。時間は経っているが死を迎えない (まさかジョルノ自身に何かがあってGERの能力が・・・) 考えをまとめた結果は (・・・この世界には俺の救いがあるかもしれん!) 今までの自分とは思えないほどの楽観的な答えだった しばらくの間、周りは静寂としていた だが 「・・・プククッ」 その笑いから 「くくくっ」 「あっはっはっはっはっは」 「ぶーっはっはっはっはァ――――ッ」 「ちょ、ちょっと、ぷはっ、アハハハハハハハハ」 「くわははははは」 「さっすがルイズッ ぐはははは」 「平民を召喚したぞおおおお」 周りの笑いによって静寂は打ち破られた 「・・・くっ」 召喚をした張本人、ルイズは恥ずかしさで顔が真っ赤だった そして無意識にその怒りを使い魔である目の前の男にぶつけようとした 「お前!」 無作法に呼びかける。だが 「ククッハハハハックハハハハハハッ!!!」 目の前の男は突然笑い出した 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 俺は嬉しさのあまり笑い出してしまった もしかするとこの先すぐに死んでしまうかもしれない だが終わりを終わらせる可能性が少しでも見えたのだ。笑わずにはいられまい 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 だがその絶頂の心情を無粋にも汚すものがいた 「・・・ご主人様?」 「そうよ。貴方は私に召喚された使い魔、貴方はさっきの契約で私の使い魔になったの」 つまりこの少女によって俺は救われたのだろうか (この世界・・・スタンドとは違う力がある世界のようだな 我が野望の成就にはいつ、またチャンスがあるか分からん ならばここで我が野望を成し遂げる!) 「ちょっと聞いているの!」 主人を名乗る少女からの怒声が聞こえる (・・・今はこの者たちに合わせて世界について調べるべきか 我が野望の成就はまず世界を知らなければ) 「トゥルルルルルルルル!」 「なに?!」 それは俺自身が発した声だった 「・・主人、それを貸してくれないか?」 「え?」 それと言って指差したのはステッキだ 「・・・何に使うって言うのよ」 「なんでもいい。貸してくれないのなら」 キング・クリムゾンを出す・・・これは問題ないようだ キング・クリムゾンを使いステッキを奪う 「あ!ちょっと」 「・・・もしもし」 俺はステッキを耳と口にあててそう言った (ボス!聞こえますか!) 「・・・ドッピオ?まさかドッピオなのか?!」 (はい!・・・よく分かりませんがいつの間にかボスと意識が入れ替わっていたみたいです) ドッピオが生きている・・?あのとき死んでしまったと思ったドッピオが生きている? 「・・・よく生きていてくれたドッピオ。俺自身もこの状況についていけていない この世界について目の前にいる少女について行き、世界について調べてくれ ・・・私の可愛いドッピオ、やってくれるな?」 (はい!もちろんですボス!!) 意識が変わる。その寸前で (・・・前のときと同じくエピタフと腕を渡そう 私の可愛いドッピオ、生きていてくれてよかった) 「・・ボス・・ありがとうございます」 「・・いいかげん返してくれないかしら」 「あ、すいません」 (ドッピオ、この少女が私を・・私たちを救ってくれたようだ 利用以前に大切にしてやりたい。そう思うのだ) (・・・ボス?) (・・・忘れてくれ、ドッピオ。今のはただの戯言だ) ドッピオは少々驚いた あのボスが戯言とは言えどこんなことを言うとは思わなかったからだ (・・・僕たちを救ってくれた少女、ちゃんと礼儀を持たないといけないよな) そう決心したドッピオだった 2へ