約 546,577 件
https://w.atwiki.jp/support00/pages/672.html
作:荒川真介 どのくらい歩いたのか長時間の探検のためか背中に気持ち悪い汗が流れるなか、敵を発見し瞬く間に射撃態勢に移行する猫歩兵達。 後は指揮官の命令ひとつで攻撃を始めるだろう。 いつもの戦場と違ってここには軍神と呼ばれる指揮官も某偵察の天才もいなかったが、まあその程度を気にする猫もあまりいないかった。 ようは気合いと努力の問題であると1人の隊員は言った。 優秀な指揮官のより凡庸だが全力で勝たせたいと思える指揮官もいると、いまだ戦果をあげていない小鳥遊が英雄小鳥と呼ばれるのと同じ理屈だと彼は思っていた。 ならば気合いさえ足りていて、十分な準備を整えていれば勝てると、なにより万単位で敵を撃破したり、I=Dの砲撃を受け止めるようなアラダを相手にしなくていいのはいいことであると。 他国の報告によればホラー映画のような骸骨の兵隊やミノタウロスが現れたらしく、全体的にI=Dに頼らない戦闘能力の低い芥辺境としては真っ正面からやり合いたくはなかったが、相手が分かっている時点で戦いようはあるというものである。 いつもの地を埋め尽くすくらいの数に比べれば狙う手間はあるがいくつもの夜とともに鍛えられた殺しの技と、何よりも死線を越えた場数が射撃のための最適動作を驚くほどの速さで可能にしていた。 彼らは彼らこそは芥辺境が誇る夜間戦闘から偵察までこなす猫歩兵であり、I=Dのコパイロットが主な仕事と思われがちだが本当に得意なのはI=Dを降りた戦闘である。 普段I=Dに乗っているのは彼らがいなければI=Dが動かないだけであり、それは彼ら猫歩兵の戦闘力の低さのためではない。 指揮官の命令が飛んだ瞬間、猫歩兵達は攻撃を開始した。
https://w.atwiki.jp/support00/pages/675.html
作:荒川 真介 どのくらい歩いたのか長時間の探検のためか背中に気持ち悪い汗が流れるなか、敵を発見し瞬く間に射撃態勢に移行する猫歩兵達。 後は指揮官の命令ひとつで攻撃を始めるだろう。 いつもの戦場と違ってここには軍神と呼ばれる指揮官も某偵察の天才もいなかったが、まあその程度を気にする猫もあまりいないかった。 ようは気合いと努力の問題であると1人の隊員は言った。 優秀な指揮官のより凡庸だが全力で勝たせたいと思える指揮官もいると、いまだ戦果をあげていない小鳥遊が英雄小鳥と呼ばれるのと同じ理屈だと彼は思っていた。 ならば気合いさえ足りていて、十分な準備を整えていれば勝てると、なにより万単位で敵を撃破したり、I=Dの砲撃を受け止めるようなアラダを相手にしなくていいのはいいことであると。 他国の報告によればホラー映画のような骸骨の兵隊やミノタウロスが現れたらしく、全体的にI=Dに頼らない戦闘能力の低い芥辺境としては真っ正面からやり合いたくはなかったが、相手が分かっている時点で戦いようはあるというものである。 いつもの地を埋め尽くすくらいの数に比べれば狙う手間はあるがいくつもの夜とともに鍛えられた殺しの技と、何よりも死線を越えた場数が射撃のための最適動作を驚くほどの速さで可能にしていた。 彼らは彼らこそは芥辺境が誇る夜間戦闘から偵察までこなす猫歩兵であり、I=Dのコパイロットが主な仕事と思われがちだが本当に得意なのはI=Dを降りた戦闘である。 普段I=Dに乗っているのは彼らがいなければI=Dが動かないだけであり、それは彼ら猫歩兵の戦闘力の低さのためではない。 指揮官の命令が飛んだ瞬間、猫歩兵達は攻撃を開始した。
https://w.atwiki.jp/support00/pages/676.html
作:小鳥遊 「やっぱり、こっちにも来ましたか……」 対空機関砲を装備したコトラのコクピットの中でに、常世知行の声が聞こえて、小鳥遊はゴクリとつばを飲み込んだ。 通信が響く前から、レーダーには敵を示す光点が点滅をしながら中心へと向かってきている。敵の対地部隊だ。 いつも戦闘に出るときと同じように、指先から手のひら、手首、肘、肩と、震えが全身に広がっていく。マトモな思考が残っている間にだけ現れる、死の恐怖。 震えは首筋から顎へと移り、歯の根がガチガチとぶつかる音だけが、耳に響く。 怖い、怖い、怖い、怖い。 今にも機体を反転させて、この場から逃げ出したい衝動に駆られるのを、自分の体をきつく抱いて必死で耐える。 今から逃げ出したところで間に合わないことも分かっていた。それでも、恐怖はぬぐえない。何もかもから逃げ出して、膝を抱えて目を閉じていたい、そんな誘惑に駆られてしまう。 それでも、そうすることはできなかった。 「はあ……ここで負けたらサヨコさんまで巻き添え食らっちゃうなあ……ああ、まずいまずい……」 焦ったような早口で、それでもどことなく軽妙な、そんなゲドーの声が聞こえる。 脳裏に浮かぶ、自分勝手で理不尽で、でも快活でかわいらしい、そんな王猫の娘の姿。 それを起点として、様々な光景が浮かぶ。 藩王、王猫、摂政、同僚と友達、家族、知り合い、顔なじみ。 沢山の知っている人がいて、沢山の知らない人が自分たちの背後にいる。 そう思うと、いくら震えようと、怖かろうと、逃げ出すわけにはいかなかった。 「守りきりましょう。……絶対に」 静かな声でそう呟いたのは、霧原涼だった。それを聞くだけで震えが止まるような、そんな決意に溢れた声だった。 まだ10台も半ばの、自分と歳も変わらない友達の凛とした決意に、震えは殺された。 自分の体にまわした腕をゆっくりと解く。手は前に。操縦桿を握る。見るのは、ただ明日のみ。 「うん、絶対に、守ろう」 小さな声、かすれて消えてしまいそうな声。恐怖に震えてしまうのを必死で隠す声。 それでも、小鳥遊は応えた。 敵は近く、明日を守るための戦いが始まる。
https://w.atwiki.jp/support00/pages/674.html
作:歩露 「(よし、今だ)」 小声で合図を出し、東堂と同時に通路から飛び出し、攻撃を開始する。 暗闇の中、猫妖精の暗視能力を発揮し、敵を一体一体個別撃破していく。 (わかるか、お前らにわかるのか、レムーリアにも宇宙にも行けないこの俺の恨みが!) 全然関係ない恨みを弾丸に込めて、撃ちまくる歩露。 なんとなくその思いを察しつつ、無言で敵を撃つ東堂。遠隔知で入院患者に伝わっているんじゃなかったかとか、そんなことを言える雰囲気ではない。 2人の銃撃が敵を減らしていった。 弾の中を抜けてきた敵を銃剣で突き殺し、更に近づく敵に向かって蹴り飛ばす。 死体が敵の動きを制限し、そこに弾丸を撃ち込んで殺す。 弾倉を交換しながら、相手の死角にまわりこむ。 動くものがいなくなるまで、2人の歩兵は撃ち、突き、蹴り続けるのだった。
https://w.atwiki.jp/ssteam/pages/103.html
幕間戦闘SS『夢はきっといつかの』 対馬堂理玖は、夢を見る。 姉から奪った瑞夢(あくむ)ではなく、姉、穂波の夢の戦いを。 雲一つない快晴。 燦々たる陽光が、地平線までをくっきりと描き出す。 上下にはっきりと分かたれた、空の青と、地面の茶。 熱混じりの砂が、肌を叩くように吹き付ける。 日差しは地獄のように熱く、地面の砂もその熱を蓄え、炙り返す。 広漠な熱砂の空間。これは、現実の風景ではなく。 夢だ。二人の人間が、同時に見る夢の風景。 二人は相争う運命にある。 “夢の戦い”。 世界各地で昏睡事件として周知されつつある事件の真実。 “無色の夢”を見た者同士が相争い、勝敗に応じた夢を見続ける。 ここはその戦場。 戦場の名は、そして対戦する二人の名は。 幕間戦闘SS『夢はきっといつかの』 日差し降り注ぐ砂地には、一人の少女が佇んでいる。 黒い長髪をゆったりと結んだ、ゴシックドレスの少女。 過酷な環境には場違いなその出で立ちの少女こそが、夢の戦いの参加者の一人。 名を対馬堂穂波(ついまどう ほなみ)。 黒いロング・スカートは、この環境では熱を蓄えるのだろう。 涼しげな顔の少女の額にも、一筋の汗が伝う。 少女は少しばかり、苛立たしげに顔を歪める。手を翳し、額を拭った。 “無色の夢”が、対馬堂穂波に告げた、夢の戦いの場所。 ――それが『蟻地獄』と言われた時は、どういうものかと思ったが。 熱射降り注ぐ、一面の砂漠に、巨大なすり鉢上のコロシアムが抉り作られている。 彼女の立つ位置はさしずめ、地獄の最外郭。 周縁から眼下を見下ろす。 角度のついて、日の差し込まぬ蟻地獄の中心は、視認することもままならない。 砂は徐々に中心に呑まれ、いずれは戦場全体が砂に沈むという。 実質的に制限時間があるということだ。 それまでに敵を殺すか、屈服させるか。すり鉢の外まではじき出すか、砂に沈めてしまうか。 これから踏み出すは、夢への一歩であり、地獄への片道切符。 それを彼女は、躊躇なく踏み出した。 流砂に乗るかのように、悠然とした所作ですり鉢を下っていく。 何歩か進み、日陰が生じたところで、その場に膝を折り、ゆっくりと腰を落とす。 スカートが地面を覆うように広がった。 「――解放(オープン)。では何某かの、お手並みを拝見いたしましょう」 対馬堂穂波は独り言つと、自らのスカートの下に手を伸ばした。 ぬっと、黒い棒が伸びる。 巨大なスコープに、長い銃身。 黒鉄が鈍く影色を湛える、大きなスナイパー・ライフル。 慣れた手つきでスカートから取り出す。それを抱えたまま、砂地にうつ伏せる。 瀟洒なデザインの洋服は、砂塗れに。 「服が汚れてしまって……汚れに見合うだけの価値が、あればいいのですけど」 口ではそう呟くものの、実際には行動を厭う様子はない。 彼女の能力、『スカートの中の戦争』は、スカートの中に古今東西の兵器武器を招来する。 そのような能力に目覚める以上、対馬堂穂波は、兵器に対し人並み以上の興味があるし、 普通に生活している限り、兵器を大手を振って扱う機会など来ない。 そして夢の戦いならば、殺しも夢の中の出来事である。 現実の罪を負うことはない。 ――これはチャンスなのだ。 夢の戦いの報酬だけではない。 日頃、兵器をぶつけるべき場所に満足に揮えない、自分のフラストレーションを解消する機会。 身を伏せ、スコープに片目を覗きこませた対馬堂は、独り、薄く笑った。 銃声が鳴った。 その少女がそれに気づいた時には、既に弾丸は到達していた。 「……つっ。狙撃かよ。どっちだ?」 タンクトップにホットパンツの、日焼けした少女は、音の方向に耳をそばだてた。 無骨なグローブを両手に嵌め、スコップを武器のように携行するその少女こそ、 夢の戦いのもう一人の参加者。平霧無綴(ひらぎり むすぺる)。 狙撃されたと嘯く彼女は、銃弾を受けた様子はなく。凶弾は、砂上にことりと転がった。 再び銃声。二撃目の狙撃。 「……つっ!そっちか!」 銃声から敵に目星をつけ、彼女は駆け出した。 砂に足を取られ、満足に動けぬはずのその地面を、苦にもせず駆け回る。 過たず、彼女に真っ直ぐ届くはずの銃弾は、やはり再び動きを止めた。 しばらく後に、砂へと自由落下していく。 平霧は砂上を駆け続け、敵の影を捉える。断続した狙撃は非常に正確だ。 接近の折にも、何度も撃たれた。 能力がなければ何度死んでいたのやら。 敵はゴシックドレスの少女。砂地にうつ伏せ、狙撃銃を構えていた。 年齢は、平霧と同じくらいだろうか? 「ご挨拶もなしに一方的たァ、いい性格してるじゃねえか姉ちゃん!」 平霧は叫び、名乗りを上げる。 「――オレは平霧無綴(ひらぎり むすぺる)!希望崎学園二年、雪合戦部部長!」 読者諸兄は御存知の通り、雪合戦部とは“新潟”探索を目的とした部活である。 いずれ来る突入の日に備え、日夜修練に励む集団の首魁が彼女、平霧無綴であり、彼女は雪合戦における、最強の盾である。 特に副部長の尼崎とは“冷静と情熱の間コンビ”の異名を取る名タッグだが、独りで巻き込まれた今となっては、 雪合戦においてほどに絶対強者ではなく、ただの一人の魔人ではある。 「妃芽薗学園、生徒会所属。対馬堂穂波と申します」 たおやかに腰を折り、少女は挨拶を返した。 「妃芽薗……ハッ、とんだお嬢様じゃねえか!そんな物騒なもん担いでないでよォ、寮に帰って姉妹(スール)とでも乳繰り合ってなァ!」 「そうしたいのはやまやまですけど――」 穂波は「解放(オープン)」と二の句を継ぐ。 スナイパーライフルが掻き消え、スカートの中からどさりと物の落ちる音。 「吼え猛る仔犬を躾てからでないと。煩わしくて困ってしまう」 足先で器用に蹴り上げ、それを拾い上げた。 スカートが大きくめくれあがり、白く艶やかな大腿が覗く。 取り出したるは、散弾銃。 「ヒラヒラめくりやがって……見かけよか、はしたねえ奴だなァ」 「それほどでも。先達にはまだまだ敵いませんし」 タンクトップ姿の少女を眺めながら、穂波は呆れたように応じる。 「オレの事言ってんのかテメッ……これは能力の……じゃねえ、もういいっ!」 平霧無綴はスコップを腰だめに構え、静止する。 「言っとくが、オレは戦いが好きなわけじゃねえ。痛い目見る前にさっさと――」 ドン、と鈍い爆音が響く。 銃声。 散弾が近距離からぶちまけられ、ジュッと焼けるような音が複数聞こえる。 対馬堂穂波のショットガンから、多数の子弾が放たれた。 しかし、その弾丸は全て、平霧の眼前でまったく停止して。 しばらくすると、地面にポトポト落ちていく。 「――っついな。話し聞く気、ねえみたいだなゴスアマァ……!」 「……焼き落とした?」 対馬堂は呟いた。熱による迎撃能力?それにしては妙な挙動をする。 「無駄だ、銃なんざ効くかっての……『帰化熱(ヒート・エンド)』!」 平霧はスコップを振りかざす。 その掘削刃は、じゅうじゅうと音を立て赤熱している。 再びショットガンをぶちかます。 平霧は地面を転がるように射線を回避。 数発がとらえたはずだが、それは全て焼けるような音とともに無力化される。 砂の斜面を転がりながら、平霧無綴は対馬堂穂波に肉薄していく。 対馬堂は距離を取ろうとしても、足を取られ満足には機動できない。 だが、平霧には問題ではない。 足場の悪い斜面は、過酷に吹雪く冬山に比べれば可愛いものだ。 「解放(オープン)!」 ショットガンが掻き消える。続いてスカートをめくり掴んだのは、フルオートの突撃小銃。 両手に構え、無数の銃弾が叩き込まれる。 じゅうじゅうとした音は、より激しく。 弾丸は相変わらず、平霧の身体には傷一つつけないものの、 彼女は不愉快そうに顔を歪め、スコップを地面に突き刺した。 「――さっきから、熱っちーんだよ!」 砂をすくい上げ、撒き散らす。即席の目潰しと煙幕。 対馬堂は仰け反り、尻もちをついた。 平霧はこれ幸いにと接近し、体制を立て直そうとする対馬堂に襲いかかる。 「――解放(オープン)」 スカートが翻り、雲霞のごとく白の群れが飛び出す。 それは大量の――鳩。 ――古くは通信用途に用いられた、歴とした兵器の一種である。 その鳩が、スカートの下から大量にまろび出た。 ぶつかり合いながら羽撃き、あちこちに羽根散らし、不規則に飛び回る。 撹乱としては秀優なはずのそれも、平霧に近づくと全く動きを止める。 じゅうじゅうと音を立てなながら、辺りに肉の焼ける匂いが漂い出す。 鳩どもはボトボトとその場に落ちていく。 平霧はそれを踏み分け、なおも対馬堂への接近の手を緩めない。 「またびっくり手品か?次は何だ?」 平霧無綴が肉薄。 すでに手の届く距離。 対馬堂は無言でスカートを翻す。 飛び出すのは兵器ではなく、彼女の長く白い脚。 ロングスカート内から繰り出す、軌道予測困難の鋭い蹴り。 そしてインパクトの瞬間。 穂波は能力を解放(オープン)し、重厚な足甲を蹴りに纏う。 一瞬だけ展開する足鎧により、瞬間的に増した質量と硬度。 打撃の威力を突然積み増す、穂波の奇襲蹴撃。 彼女はこれを、“稲妻の脛当て(グリングリーブ)”と呼び愛好した。 しかし、その攻撃も。平霧の直前でピタリと止まる。 見えない壁にぶつかったとか、そういった風情ではない。 勢いを完全に殺されている。 遅れて、激しい熱が穂波の脚を襲う。 「……熱っ……!」 片足を上げた状態で一瞬静止した対馬堂穂波の隙を、平霧無綴は逃さない。 軸足に対し、スコップの金属柄が叩きこまれた。 穂波は砂を巻き上げながら、斜面を転がり落ちていく。 「あー、暑っちい暑っちい。砂漠ってのは過酷だなァ」 平霧はタンクトップの胸元を掴んで、パタパタと扇ぐ。 「……流石に、全部マジでモコモコしまってたわけじゃねえよなァ。そいつが能力か」 対馬堂穂波は起き上がると、砂まみれのスカートを、手ではたく。 「……プッ」 砂を吐き出し、平霧を見上げる。 「ご名答。そういう貴方の能力は――」 わざわざ答えるのは、穂波自身も能力に確信を持ったからだ。話に乗せるため。 相手の99%の予想を100%にする代わりに、自分の80%の予想が90%にでもなれば儲け物だ。 「物体のスピードを。いえ、多分こういう言い方のほうが正確なのでしょう。 ――“運動エネルギー”を、“熱エネルギー”に変える能力」 「ハッ!よく見てるお嬢様だ。だいたい正解だァ」 平霧無綴の魔人能力、『帰化熱(ヒート・エンド)』は、エントロピー増大能力。 自分とその体表近くの、力学的エネルギーを熱エネルギーに変換する。 銃撃の弾丸も、平霧無綴に近づいた瞬間に、自動的に運動エネルギーを0にしてしまえる。 無論、無尽蔵に弾丸を受け止められるわけではない。無尽蔵の運動エネルギーを変換すれば、同じだけの熱が至近に発生するためだ。 だからこそ、雪合戦――対雪球においては、最悪の防御能力たりえるのだが。 「――だいたい、な」 平霧はじゅうじゅうと音を立てるスコップを構えたまま、眼下の対馬堂へと跳びかかった。 この赤熱するヒート・スコップも、能力応用の一つである。 スコップをフルスイングする力をかけ続けた状態で、『帰化熱(ヒート・エンド)』を発動。 スコップを振り抜かせる運動エネルギーが全て熱エネルギーとなり、金属部に蓄積されるのだ。 飛び上がった平霧を、対馬堂は目で追う。 新たな武器を取り出し構え。 ――見失う。 周囲を見渡すと、彼女の姿は見ていた場所のすぐ真下。 地表に既にあり。 「熱っちいー……!隙ありィ!」 対馬堂穂波へと突撃していた。 (見誤った……!)対馬堂は舌打ちする。 『帰化熱(ヒート・エンド)』が熱へと変換するのは、位置エネルギーもである。 平霧が空中で発動すれば、それは自身が加熱されることを制約とした、地表へのワープ能力のように機能する。 穂波が構えたのは、火炎放射器。 その空へ向いた射角を引き戻す前に、平霧に近づかれた。 スコップにかち上げられ、対馬堂は火炎放射器を手放す。 「解放(オープン)!」 追撃のスコップ斬撃を、鞭のようにしなる刃が絡め防いだ。 「火ってのはいい判断じゃねえの?たらたら遅くなきゃ、よ!」 平霧の攻撃の手は緩まない。 蛇腹剣を振りほどき、クローズ・レンジでの打撃戦に持ち込もうとする。 対馬堂は対して距離を取り、一歩一歩と下がっていく。 鞭剣の最大射程へと後退しながら応戦する。 刃同士が数度と交錯する。 蛇腹剣は白熱を受けてボロボロと崩れていくが、完全に破壊される前に、次から次へと新しい蛇腹剣がスカートから引き出される。 「万国旗かっての、曲芸女ァ!」 平霧無綴が叫ぶ。 『帰化熱(ヒート・エンド)』の濫用はない。 オートで効かせればよい防御運用に比較して、能動的に仕掛ける攻性運用には困難が伴う。 目まぐるしい攻防の中で、自分を巻き込まない形の巧妙な能力範囲で発動するのは、思考負荷が極めて大きいのだ。 だが、それでも。 ――『帰化熱(ヒート・エンド)』。 穂波の鞭撃が、空中で静止した。 その隙を逃さず、腹部に拳打。 穂波の口から、苦悶の呻きが漏れる。 要所で使うことで、隙を産み出すことは十分できる。 ――追撃。首を狙ったスコップの突き。 身を捩り穂波は紙一重でかわす。 ずれ込んだ一撃は肩口を大きく焼き削る。 「グッ……解放(オープン)!」 「させねえ!」 平霧は手首を手刀で打ち据える。次の武器を握らせない。 対馬堂の肩に刺さったスコップを引きぬく。 それを横薙ごうと一歩、踏み出した瞬間。 殻のようなものを踏み割った感覚。平霧は弾かれるように足元を見る。 「――蠍!」 ――かつて、古代ローマ帝国では、蠍を詰め込んだ袋を投石機で飛ばし、敵陣の隊列を崩すために用いたと言われている。 つまりは、毒蠍はまごうことなく兵器である。 兵器であれば、対馬堂穂波が召喚できない道理はない。 地面を埋め尽くさん勢いで増産されていく蠍の群れ。 平霧は飛び退るように距離をとった。 数歩下がり、対馬堂穂波と、彼女の足元から湧き出る毒虫の群れを観察する。 蠍どもは、統率を持って平霧に襲いかかるわけでもない。 また、彼女の『帰化熱(ヒート・エンド)』の下では、蠍も一歩たりとも動けはしない。 だが、砂面を黒く染め上げ蠢く、その数が問題だった。 これだけ足場を奪われては、踏み出すのに何匹も踏み砕くことになるだろう。 その際に、自分から毒針を踏んでしまうことは、無視できる可能性ではないのだ。 方針を変え、この夥しい蟲どもを、弾丸として逆用するか。 スコップで掬い上げては、対馬堂に叩きつけていく。 雪合戦で鳴らした飛ばしの技術があれば狙いは正確。 あわよくば毒針でも直撃させられるやもしれない。 ――ここまでの彼女の思考判断は、決して長いものではなかったが。 ――それでも遅すぎた。夢の戦いはここに決した。 「――感謝しないと。ようやく、私よりも下に立ってくれて」 穂波は勝ち誇るように、スカートの裾をつまみ上げてお辞儀。 「解放(オープン)。――貴方が私より下に来れば、その時点で私の勝ち」 蠍の群れが、一斉に消失した。 ――どういう意味だ? そう訊き返そうとしたが、声にはならなかった。 「ガエッ……!ガフッ!クフッ!ガ……ア……」 平霧は声にもならない、呻きを漏らす。 対馬堂穂波が解放(オープン)した兵器は、神経ガス。 彼女の能力は、スカートの中に兵器を産み出す。 取り出した際には、本来そこにある、周囲の空気は押し出される。 無限に神経ガスを生み出し続けるならば、無限に神経ガスを押し出し続ける。 一瞬にして急速蔓延した神経ガスが、呼吸困難に陥らせ、さらには、全身の筋神経を麻痺しきらせる。 無論、それは平霧のみに起こるわけがない。 「コ……カッ……」 対馬堂穂波も既に膝を折り、悶絶するように砂面に倒れこんでいる。 二人の少女は、もはや全身を動かせない。 これでは千日手――ではない。 蟻地獄は、徐々に中心へと獲物を滑り落ちさせる。 当然、飲み込まれればエリア・オーバー扱いだ。 どちらの蟻が、先に中心へと呑まれるか。立ち位置からして、それは明白だった。 動かぬ少女二人が、じりじりと砂に沈んでいく。 蟻地獄の戦闘は、既に決している。 砂の流れる音と、苦痛に咽ぶ少女らの呼吸だけが、すり鉢の戦場に幽かに響いていた。 対馬堂理玖は、夢を見る。 姉から奪った瑞夢(あくむ)ではなく、姉、穂波の夢の戦いを。 思い返し、糧にするのだ。彼女には経験も素養も足りない。 ――穂波(お姉ちゃん)の技を全部盗んで、穂波(あたし)になる。 対馬堂穂波は、密かに独り、決意した。 幕間戦闘SS『夢はきっといつかの』 終
https://w.atwiki.jp/sunjiten/pages/97.html
PW ぱわーうぇーぶ(名/スキル/略称) 解説(表) 「パワーウェーブ」の略称。
https://w.atwiki.jp/j4964dfgs/pages/36.html
MPO+兵士交換所です 利用規約を守ってお使いください 都道府県兵士と何か強い兵士(ゲノムがいい)を交換してもらえないでしょうか? -- (manning) 2007-09-30 12 16 08 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/j4964dfgs/pages/19.html
MPO+兵士交換所です 利用規約を守ってお使いください 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/j4964dfgs/pages/12.html
兵士交換所1 兵士交換所2 兵士交換所3
https://w.atwiki.jp/j4964dfgs/pages/22.html
MPO+兵士交換所です 利用規約を守ってお使いください 名前 コメント すべてのコメントを見る