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何故私は殺されてしまったの?と彼女は嘆く どうして殺されてしまったのか、と嘆き続ける 嘆く彼女は人を殺す 理不尽に殺された自分と同じように 理不尽に殺していく 彼女が本当は殺された事なんてないと気付くまで、あとどれくらい? Red Cape ある小学校に勤めていた給食のおばさん、誰かに殺されちゃった 工事現場に埋められたおばさん、そのうちそこはコンクリートで固められた 出来たばかりの真新しい道路 そこが一箇所だけ、黒く変色し始めた そこを歩く小学生 面白がって、変色した場所を踏んで遊びだす …そこから、ず、と手が伸びて 小学生の足を掴んだ 足を捕まれた小学生、コンクリートの中に引きずり込まれて 料理の具にされちゃった 黒く変色したのは、おばさんの恨みが漏れたから だから、黒く変色したコンクリートを踏んじゃいけないよ 理不尽に殺されちゃったおばさん、その恨みから気が狂って 踏んづけてくる人を、問答無用で殺しちゃう 「…そう言う、都市伝説、だったっけ」 黒く変色したコンクリートを見下ろし、青年は呟く …既に、数人の小学生が行方不明になっているそうだ きっと、行方不明になった子供たちは、もう見つからない 骨が見付かれば、運がいいと言ったところか 「酷いよね。子供を殺すのはもはや人間でもない腐れ外道だって兄さんが言ってた ……あ、元々人間じゃないんだし、関係ないか」 憤慨している様子もなく、かと言って、最早死んでいるであろう子供たちに同情した様子もなく 青年は、ペットボトルの蓋を開ける …いつも通り、やればいいだけの事 いつも通り、相手を溶かし尽くしてやればいい どうせ、他人に迷惑しかかけない都市伝説である 消してしまっても、なんら問題はあるまい 面倒臭いなぁ、とは思う どうして、自分に仕事が回ってきたのだろう 時間が空いているからと、仕事を受けたのは自分だけど 「…まぁ、いいか」 せいぜい、こちらを利用すればいい こちらも、利用させてもらうから こぽり ペットボトルから溢れ出すコーラ ごぽごぽと、黒く変色したコンクリートへと向かっていく 相手の本体は、あのコンクリートの下 ならば、相手が出現する前に、一気に溶かしてやるだけだ …もしかしたら、コンクリートの下を走る水道管とかをちょっぴり巻き込むかもしれないが、まぁ気にしない方向で ごぽぽぽぽぽぽ ……じゅうっ、と コーラがコンクリートを溶かし始めた …直後 「っ!?」 ぞくり 殺気を感じ、彼は横に跳んだ っしゅ!と 直前まで彼が立っていた場所を、包丁が通り過ぎていく ごぽりっ 溶かされ出した変色したコンクリートから…それが、姿を現す 血塗れの割烹着に身を包んだ、中年の女性 割烹着姿で殺された訳ではないだろうに、「給食のおばさん」と言うイメージから、こんな姿なのだろう …いや、そもそも 彼女と言う人間がかつて存在していて、それが殺された、と言う事実など、存在しないのだが 噂から生まれる都市伝説 根も葉もない噂から、事実に近いものまで これは、小学生が何気なく語る怖い話 たまたま、色が変色していたコンクリートを見て、想像を膨らませた結果だろう その結果生まれた、都市伝説「給食おばさん」 それが、青年が今回、始末を依頼された相手 無差別に人を襲う凶悪さが、始末対象になった理由 …だから その生まれに同情して手加減する理由などない 根も葉もない噂 そこから生まれた存在だ そんな事件は「起こらなかった」 誰かが殺された訳ではない それでも彼女は生まれ、ありえなかった事件の代わりに誰かを殺す ならば、止めるべきなのだ 殺して止めるべきなのだ 何かの間違いで、兄が犠牲になってしまったら大変だし 「姿を現してくれたんだね、ありがとう。お陰で狙いやすくなったよ」 にっこり微笑み、青年はコーラを放つ 相手は実体を持っている ならば、溶かす事ができる いつも通り、溶かしてしまえばいい その口からコーラを注ぎ込み、じわじわと内部から溶かしてあげよう 女性相手なんだから、顔が解けるのは最後にしてあげた方がいいよね、きっと 間違った親切心を抱きながら、青年は給食おばさんを攻撃する ---しかし その攻撃は、彼女の直前で、止められた 「え?」 ばちゃり それは、何かとぶつかり合い、給食おばさんに届かない 白い、どろりとした液体 …あれは 「ッシチュー!?」 とろとろ、ごぽごぽと じっくり、煮込まれた状態の、シチュー それは、給食おばさんが何時の間にか抱えていた、大きな鍋から溢れ出ていた どろり 煮込まれたシチューの中に…小さな骨が見えたのは、気のせいか? 「ッ駄目じゃない、食べ物を粗末にしちゃ…!」 自分も、攻撃にコーラを使っていることを棚にあげ、青年はぼやく …しまった まさか、液体系の攻撃もしくは防御手段を、相手が持っていたとは… …いや それでも、自分の戦い方は変わらない 本体が液体と言う訳ではないのだ 本体さえ溶かし尽くしてしまえば…! しかし、一瞬、おのれの攻撃を受け止められた、その事実が 致命的な隙を作ってしまった事に、青年が気付いたのは 「………え?」 己の、腹部に 深々と…包丁が刺さっている事を、確認した直後だった 「……っ」 ずきり 痛みを自覚する 「骨を溶かすコーラ」と契約している青年だが…彼自身には、特別な強化などされていない あくまで、全てを溶かすコーラを自由自在に操れる程度の能力しかないのだ だから 体に、深々と包丁など刺されては…当然、ダメージを食らう それも、致命的なダメージを 青年は、思わず膝をついた コーラを操る為の集中力が途切れる 新たに生まれたその隙を、給食おばさんは見逃してはくれなかった がし!!と 腕を伸ばし、青年の足首を掴んできた ずるずると、そのまま恐ろしい力で、青年をコンクリートまで引きずり込もうとする 「か、は……っ」 痛い 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ……! 痛みが、集中力を削いでいく 青年が意識しなければ、コーラは何も溶かしてくれない ただ、空しく零れるだけだ …ニタリ 給食おばさんが笑ったのを 青年は、確かに見た 「…………っざけんじゃねぇぞ、糞ババァが!!!」 叫ぶ こんな所で殺されてたまるか 死んでたまるか 自分が死んだら、兄さんはどうするのだ 兄さんには、自分がいなければ駄目なのだ 自分が、ずっとずっとずっとずっとずっとずっと傍にいてあげないと 兄さんを、護ってあげないと …記憶が、フラッシュバックする あれは、両親が死んだ日 両親が、誰かに「殺された」日 両親の死体を前に、見るな、と自分の目を両親の死体へと向けさせようとしなかった兄 首の無い死体という、あまりにもショッキングなそれを、こちらのトラウマにならないよう…見せないようにしてくれた、優しい兄 両親の葬式の後、青年は決めていた …自分が、兄さんを護らなければ、と 両親を殺したのが誰かはわからない でも、あぁ言う事態は、いつ、誰の身にも起こりうる可能性がある事なのだ だから、兄さんがあんな目にあわないように…自分が、兄さんを護らないと だから、ここで死ぬ訳にはいかない ここで自分が死んだら、兄さんを危険から護る事ができなくなってしまう……!! 再び、意識を集中させる 零れたコーラは、再び青年の意思に従って動き出す 動き出したコーラは、狙いたがわず…青年の足首を掴む給食おばさんの手首に、命中した 「ッギャアアアアアアアアアア!!??」 耳に突き刺さる悲鳴 一瞬で手首を溶かされ、給食おばさんは痛みにうめく 束縛から逃れ、青年は距離を取ろうとして 「ぐ……」 しかし、立ち上がれない 痛みが、体中の力を奪っていく そして…青年の足首を掴む、給食おばさんの手は 本体から切り離されてもまだ、強く強く、握りつぶさんばかりの力で、青年の足首を掴み続けていた ならば、本体を溶かしきるまで 青年が、給食おばさんにコーラを向けたのと 給食おばさんが、青年に再び包丁を…それも、心臓目掛けて、放ったのと 果たして、どちらが先だったのだろうか? ピュンっ、と まるで、安っぽいSF映画で聞こえてくるような音が、聞こえたような気がして キィン、と、カン高い音とともに、包丁がはじけ飛ぶ 包丁は、青年に届く事なく、宙を舞って 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!??」 給食おばさんの絶叫が、辺りに響き渡る じゅううう、と 青年が放ったコーラを全身に浴びた給食おばさんは、どろどろとその体を溶かしていく 手加減など、してやるか 骨も、何も残さずに、溶かし尽くしてやる じゅうじゅう、じゅうじゅう やがて、悲鳴は鳴り止んで …後には、どろりと溶けたコンクリートだけが、残された 「…っう」 ズキリ 痛い、いたい、イタイ 意識が、遠ざかっていく …どうしよう 救急車を呼ぼうにも、はたして、今の自分はまともに声を出せる状態だろうか それでも…何とか、ポケットから、携帯電話を引っ張り出すと 「…だから、言ったでしょう。油断は禁物であると」 ざん、と 黒服の男が、青年の前に姿を現した 黒服を見上げ、青年は笑ってみせる 「…見てた、んだ。助けてくれれば良かったのに」 「だから、助けたでしょう」 そう言って、黒服は銃を見せる どこか現実味のない、SF映画に出てきそうな形の銃 恐らく、給食おばさんの包丁をはじいたのは、銃から放たれた銃弾なり光線なりだったのだろう 「……それ、で。救急車か何か、呼んでくれるの?」 「いえ、騒動を大きくしたくありませんので、救急車は呼べません」 そう言って、黒服は青年の前で屈む いつも持っているジェラルミンの鞄をあけ…中から、何かを取り出した それは、その鞄から取り出される物としては、どこか不釣合いな…古ぼけた、小さな壷 黒服はそこから、どろりとした何かを取り出す 「………何、それ」 「妖しい物ではありませんよ。「蝦蟇の油」、古き時代に生まれた、由緒正しき都市伝説です」 そう言って、黒服は青年の腹部に突き刺さった包丁に、手を伸ばす 「…また、痛みが走りますよ、少し、我慢してください」 と、ずぷりっ、と包丁を引き抜いた 「……っ」 痛みと共に、傷口から血が溢れ出す 黒服は素早く、その傷口に蝦蟇の油を押し付けるように塗ってきた 正直、それだけでかなり痛い だが…蝦蟇の油が塗りこまれた直後から、痛みが嘘のように引いていく 黒服が青年から離れた時…青年の腹部には、傷一つ残っていなかった ただ、服に空いた穴と血の痕だけが青年が傷を負ったのだと言う事実を物語る 「これで、大丈夫でしょう。流石にその服の替えまでは用意できませんよ。 家に帰るまでに警察に見付かって、職務質問されないよう、お気をつけください」 「うん、わかってるよ」 立ち上がる もう、大丈夫だ この黒服に、貸しを作ってしまった そこだけがまぁ、不満ではあるが…感謝しなければなるまい 「ありがとう、助けてくれて」 「……仕事ですから」 黒服は、感情を押し殺した声で、そう言って来た 「それに、この仕事をあなたに依頼したのは私です。 …これで死なれては、目覚めが悪いですから」 そう、呟くように言って、黒服はこちらに背を向けてきた 相変わらず、得体の知れない組織の一員である事が嘘のように、感傷的な男だ 人間臭い、とでも言うべきか …だからこそ、こちらとしても扱いやすい 「…さて、と。兄さんに気付かれる前に、帰らなくちゃ」 服は…まぁ、いいや どうせ、安物だし 兄さんからもらった物じゃないから、いいや そう考え、青年は蓋を開けっ放しだったコーラのペットボトルに蓋をして、帰路についたのだった 誰も居なくなった道路 後には、どろりと溶けたコンクリートと、大量の血の痕だけが、残って 翌朝、ちょっとした騒ぎになったのは、また別の話…… 死んで生まれて 生まれて死んで 私たちは、何度死に続ければいいのでしょう? 私たちを噂しないで 私たちの事を考えないで あなたたちが何の気なしに噂しただけでも 私たちは、また生まれてしまうのです Red Cape 前ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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ドクター58 「とりあえず、目立たない時間に目立たない格好で改めて調査するか……動きやすい服、調達しないとな」 犬メイドなどと呼称されている現状、何故か用意されている衣類はどれもこれもメイド服かその亜種ばかり 普通の服も買ってみたりはするものの、女物の服の組み合わせなど考えた事も無かったため、いまいちしっくりとこないのだ 「ま、作業着ならぶっちゃけ目立たない動きやすいだけでいいしな、帰りに買ってくか……つーかこの格好でうろついて不審がられないこの町ってホントすげぇわ」 そんな犬メイドの様子を、離れた場所から伺う女黒服の姿 彼女はその視線を介して、結界の中に引き篭もる中華黒服達への情報中継を行っているのだ ――― 「どうする、また面倒な輩が嗅ぎ回っているぞ」 「呂布めの拾い物だ。黒服のような『そのもの』ではない、人間のままの契約者だ」 「どちらにせよ探られるのは居心地が悪い」 「捕らえるか」 「消すか」 「どちらにせよ呂布に悟られると面倒だ」 「彼奴め、勘だけは恐ろしく良いからな」 「結界に気付かれなければ放置しても問題あるまい」 「『悪魔の囁き』の主めが跋扈しているうちは、大人しくしていると決めたばかり」 「巻き込まれてはたまったものではない」 「泳がせておけばよい、どうせ我らの元へは辿り着けぬ」 「この一騒動が落ち着いても我らの周りを嗅ぎ回るようであれば」 「その時には捕らえ黙らせれば良い」 「呂布めは暴れれば目立つ、監視はこの女に絞っておく方が無難であろう」 「どうせ無頼を気取っていても、あやつめは我らを裏切れまい」 学校町を映し出していた水鏡が、その映像を消して透明な水面を取り戻す その底には一人の女性が脈動する何かに包まれるような姿で沈んでいた ――― 背中を貫く凄まじい怖気に、犬メイドの尻尾の毛が思わず逆立つ 「今、なんかすげぇヤバい気がしたんだが……やべぇな、相手に感付かれたか」 どこかへっぽこな印象が目立つ彼女も、曲がりなりにも国家のお抱え諜報員である 「相手の正体も掴めないうちにコレか……どうすんだ俺、死亡フラグ立てちまったか、マジで」 ぺたりと寝た耳を更に伏せ、げんなりしながら物資調達のためににバイクを走らせていた 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「いいえ、あの人はみんなが思っているような傲慢な人でもなければ、 死と破壊に取り付かれたような怪物でもありません。 ただ、ちょっと怒りっぽくて、世界のあり方と自分の違いに苦しんで、でもそれをなんとかしようとしている。 ──そんな、どこにでもいるような男の子です。わたしの、大切なお兄ちゃんです」 横浜──。 日本でも有数の港町であり、世界でも有数の中華街、その街並みを一人の少年が歩いていた。 真夏だというのに長袖のシャツを着込んでいるが、暑そうに感じている様子はない。 かといって涼しそうな顔をしているわけでもなく、ただ暑さも寒さもどうでもいい、そんな風情だった。 「あ、ねえねえ、あの子可愛くない? 外国人?」 「モデルとかじゃない?」 そんな声が少年の耳に聞こえてきた。それが自分を指していることは、周囲から発せられる視線と 気配でなんとなく知れた。 (……くだらねえ。なにをじろじろ見てやがるんだ) 少年はかすかに眉をひそめた。そのせいで、もともと険しかった目つきがいっそう厳しいものになる。 無造作に伸ばされた金髪をかきあげると、青い瞳が苛立たしげに光を放った。 アーリア人種としての特徴を完璧にそなえたその相貌は、確かに人目を引くものではあった。 外国人を珍しがる日本人の性格についても知識の上では把握している。 なにかの明確な悪意がある訳ではないことは理解していた。 だが、それでも、少年の心に湧き上がるささくれた気持ちを抑えることは出来なかった。 唾でも吐いてやろうかと思ったが、それだと自分が今苛立っていることを認めているようで、 少年の気にはいらなかった。その代わりにがさがさとポケットから一枚の紙を取り出し、眺める。 「『卵ヨリ鵺ヘ──飼イ葉ヲ食ム黒イ羊ヲ屠殺セヨ』、か。ふん、何様のつもりだ」 誰にも聞こえぬように毒づき、 「まあいい。あんたらのお望みどおりに仕事をしてやるよ。オレは誰にも負けない」 ぐしゃりと紙を握りつぶす少年の瞳は、ぎらぎらと不穏に輝いていた。 横浜港から少し離れたところにある、倉庫街の一つ、古ぼけて打ち捨てられたその廃倉庫に、彼らは集っていた。 幾つもの木箱が山と積まれた真ん中で、二つの集団が微妙な緊張感を漂わせながら対峙している。 「それで、ブツはこれか?」 そう言ったのは二つの集団の片方側のリーダー格、明らかに日本のヤクザと分かる出で立ちの男だ。 「そうだ、確認してくれ」 それに答えるもう片方の──そいつらは、一目にはどういうやつらなのか計りかねる雰囲気を纏っている。 そいつらの身なりは黒のスーツで統一されているが、その着こなしはマフィアやギャングというには上品すぎた。 ただの武器商人というには染み付いた血の匂いがきつ過ぎる。どこかの諜報機関といわれればそんな気もするが、 やはり違和感はぬぐえない、そんな集団だった。 「しかし、これだけの銃器をどうやって──?」 「あんたたちが知る必要はない。契約の内容に不満が?」 言葉をさえぎる口調に、ヤクザたちは思わず息を呑む。そこにはおよそ人間らしい響きが欠落していた。 まるで人を人と思わない、自分たちをここに居並ぶ箱と同列の物として扱っているような──。 「い、いや、そんなつもりじゃないんだ。……お、おい」 「へい」 あたふたと、ジュラルミンのアタッシュケースが差し出される。 黒服がそれを受け取ろうとしたときだった。 「おいおい、火遊びが過ぎるんじゃねーのか」 そんな場違いな声が倉庫に響き渡った。 その場の全員が身構えるのへ、さらにどこか投げやりな言葉が降ってくる。 「ま、あんたらがどうやって小遣い稼ぎしようがオレには知ったこっちゃねーんだけど、よ──」 「上か!」 黒服の一人が懐から拳銃を抜く。それが示す先、うずたかく積み上げられた木箱の上に、一人の少年が座っていた。 「ただな、ボスの命令なんだ。ウチの物資を横流ししてる馬鹿の息の根を止めて来い、ってな」 その言葉に、黒服たちが真っ先に反応する。 「貴様、まさか──!」 少年は木箱を蹴って宙に踊る。数秒後にはだん、とコンクリートの床に着地した。 端正な顔立ち、無造作に伸ばされた金髪、その奥に光る青い瞳。 「で、ま、こうしてオレみてーなエージェントが派遣されたわけだ。 ……ああ、ヤクザのおっさん、あんたらは大人しくしてりゃ殺さない。命令に入っていないんでな」 冗談っぽく言う口の端は、きゅう、と吊上がっていた。 「ふざけるな!」 激昂したヤクザの一人が、少年に向けて発砲する。 だが、少年はそれをするりと避けた。まるで当然のように。歩くような速度で。 「ふん、相手の実力も見極められない馬鹿だってんならしょーがねえ」 少年はひらひらと両手を振り、今や黒服もヤクザたちもいっせいに銃を構え、 「全員、死にな」 その両手が背後に回された次の瞬間には、少年は両手に二丁拳銃を握り横に跳んでいた。 それは、信じられないような光景だった。 幾重もの銃口が向けられているにも関わらず、それらが放つ銃弾は一発たりとも少年に命中しないのだ。 その一方で、少年が吐き出す弾は確実にこちらの人数を減らしてゆく。 最初はヤクザから、そしてそれが全滅してから、黒服へと。 弱いものから戦力を削る──。 冷静に、かつ容赦のないその動きは、明らかに特殊な戦闘訓練を積んでいる者のそれだったが、 それを踏まえても、この圧倒的な人数差を覆す理由にはならない。 こいつは、人間なのか? 少年が発砲してから数分後、累々と重なる死体と、不敵な笑みを貼り付けてこちらを睨む少年とを眺めながら、 もはや最後の一人となった黒服はそんなことを思った。 「お前は……何者なんだ? 本当に人間なのか?」 そう問いながら、黒服は一歩後ろに下がった。 「さーな。オレが教えて欲しいくらいだ」 と、馬鹿にしたような答と共に少年が足を踏み出そうとするのを見て、黒服は内心でほくそ笑む。 そして、二人の間に隔たる六メートルほどの距離を、一歩で詰めた。 「なに──」 少年の口からそんなつぶやきが漏れるのにかまわず、黒服は己の右腕の内部から 特殊鋼のブレードを突き出し、それで少年の胴を斬りつけた。 がき、と鈍い金属音がする。少年が咄嗟にに交差させた拳銃が両断された音だ。 だが、手応えはあった。その障害物すら物ともせず、少年の胸と肋骨を切り裂いた感触が。 どさりと少年がうつぶせに倒れる。それを見下ろしながら、破れたスーツの袖を押さえる。 「悪いな、こっちもただの人間ではない。自分はサイボーグだ。湾岸戦争で右腕と両足を失い、そして新たな手足を得た」 もう聞こえてないだろうがな、と男が心の中で付け加えた。 だが。 「あんた、サイボーグだったのか」 確かに致命傷を負わせたはずの少年が、けろりとした表情で起き上がるではないか。 「しかもその異常な速度……最近、試験的に配備されてる高機動型か?」 血に染まった長袖を脱ぎ捨て、Tシャツ一枚になる。 「くそ、あいつ、そんなこと一言も言ってなかったぞ。情報を出し惜しみしやがって。 オレの戦闘能力でも計るつもりだったのか? ったく、マジで何様のつもりだ」 そして、少年はやっと男のほうを見た。その双眸は、怒りに燃えていた。 歯を剥き出しにして、身体全体から憤怒の感情を放射していた。 「チンケな裏切り者にこいつを使うつもりは無かったが……最新型のサイボーグだってんなら話は別だ」 少年は両腕を真横に伸ばした。引き締まった、よく鍛えられた腕だった。 「な……」 男は、今度こそ驚愕と恐怖に襲われた。 少年の両腕が、異様な音を立て、その形を変えていく。人間の、いや、生物のものとは思えぬ異形の腕へ。 そして、それは鋭角状の……まるで二本の刃のような形へと変貌した。 「貴様……何者だ!?」 再び発せられたその問いに、少年は苛立ちを隠せない、棘のある口調で答えた。 「ああ? 見て分からねーか? あんたと同じだよ。エグリゴリの生み出した怪物さ」 そう言い、少年はその大型のブレードを振るった。 男は無駄だと半ば悟りながら、それでも機械化された俺の腕でそれを防ごうとする。 だが、やはり、少年の刃は男の鋼鉄の腕を難なく断ち、もう片方の刃が男の胴体を真っ二つにしてしまった。 自分で作った血の海にぐちゃりと落ちる。消え行く意識の中、男は最後の力を振り絞って再三の問いをぶつけた。 「貴様は、いったい……」 男の思考が闇に溶けるその直前、少年の声が耳に届いた。 「レッド。オレは……キース・レッドだ」 夕暮れの横浜中華街を歩きながら、少年──レッドは、心の内でぶつぶつ呟いていた。 (ムカつくぜ……どいつもこいつも) 血染めの服は早々に着替えたが、肌に染みた血の匂いはまだこびりついているような感じであった。 問題なく仕事を終えたのだから、こんなにカリカリすることもないだろうと自分に言い聞かせてみるが、効果はない。 手傷を負わせられる不覚を取ったこと、その原因である情報の隠蔽、そしてそれを命令した──。 「キース・ブラック」 その言葉が口から漏れるとき、レッドはいつも叫び出したくなる。 胸に渦巻くあらゆる悪感情のすべてが、そこに起因しているような気がして。 「見てやがれ……オレはもっと強くなって、そして、あんたら全てを、あんたらの信じている全てを覆してやる」 ふと、振り返る。 真っ赤な夕日が街の向こうに沈もうとしていた。それを美しいと思うだけの心の余裕はあった。 キース・レッドの苛立ちは、まだ収まらない。 第一話『赤』 了
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合わせ鏡のアクマ 29 南区、ある廃ビルの屋上で一人の女性がカラスの群れに囲まれていた。 「そう、そこが怪しいのね?」 カァー!と答えるようにカラス達が鳴く。 「おーい、姉さーん!入り口見つかった?」 扉を開いて一人の青年が屋上へ出てくる。 「ええ、見つかったわよ。そんなに離れてないみたいだからサクッと終わらせましょ」 「姉さんはホテルで待ってればいいのに・・・傷でも作ったら大事だろ?」 「だって関わっちゃったからには待ちぼうけは嫌だもーん」 「はぁ・・・子供っぽいよねぇ姉さんは」 「あーら、あなたに言われたくはないわね」 トントンとビルの階段を降りつつ、待て待たないと言い争う姉と弟。 「大体、あなただってカメラなんかぶら下げちゃって・・・商売道具は大事にしなさいよ」 「これは自分のだからいいんだよ、あと姉さんは体が商売道具でしょ」 ビルを出てからも言い合いは続く。はたから見れば微笑ましい風景だが、当人達は真剣だ。 その言い争いも、数分やりすごしたことで姉の勝ちに終わる。 「着いたわよー」 「し、しまった・・・またこのパターンかよ・・・」 目的地に着くまで言い争いを続ける。戦闘地域に姉がついてくる常套手段だ。 「毎回騙されるアンタがバカなのよー。じゃ、開けて」 「いや、これすっごく硬そうな扉なんだけど?」 「アンタの都市伝説ならやれるわよぉ・・・はい、いいからさっさとやる!」 「はいはい・・・・・・・・・撃てぇ!」 青年が伸ばした右腕から何かが飛び出す・・・と、一瞬送れて金属の扉がドガンと吹き飛ぶ。 「さー、いくわよぉ!!」 「はぁ・・・結局こうなるんだね・・・」 やる気満々の姉とエレベーターに乗って地下へ降りながら、弟は頭を抱える。 (普段は戦いとか嫌いなのに、どーして仕事明けは好戦的になっちゃうかなぁ・・・) エレベーターの扉が開く、と大勢の黒服が扉の前で待ち構えていた。 だが、これくらいは予想済みだ。 「さぁ、いっくわよー!!」 * 姉さんの掛け声と同時に、エレベーターに詰め込まれていたカラス達が飛び出す。 銃を構えながら一瞬戸惑う黒服達に、カラスは容赦なく襲い掛かった。 「ほーらどんどん食いちぎっちゃいなさい!」 普段の姉からは絶対に聞くことのできない言葉。 もしかして、別の都市伝説がとり憑いているのではないだろうかといつも思う。 カラスに襲われた黒服達がだんだんと冷静になり、銃を向けてくる。だが、させない。 さっきのカラスは囮である、真の狙い・・・足元に敷かれた線路に彼らはまだ気づいていない。 「さあ・・・行け!」 右腕を前に突き出して叫ぶ。その右腕の上に列車模型が括り付けられていた。 左手で括り付けていた布を取り外すと、右腕から模型が落ち・・・ることはない。 まばたきをする程の間に青年の横に列車が出現する。列車の車輪はしっかりと線路を噛んでいた。 「姉さん乗って!」 自身も列車へ乗り込みながら姉へ声をかける。彼女もすぐに乗り込む。 黒服達が銃で列車を撃つが、装甲を施された列車はびくともしない。 まじまじと見ると、その列車は奇妙な形をしていた。 窓もなく、装甲の施された車体・・・さらに屋根から大きな円筒形の物体が顔をのぞかせている。 その物体は、まるで巨大な大砲のような形をしていて・・・ 「行くぞ、発進!!」 動力もなさそうな列車が、ゆっくりと動いていく。立ちふさがった黒服達を巻き込みながら。 通路の幅ギリギリの車体を避けることは難しく、避けたとしてもカラスに襲われる。 「・・・それで、どっちに線路を敷けばいいの?」 「えーっとね・・・あ、右よ右」 「はいはい」 先行して通路を確認するカラスの情報どおり、線路が敷かれていく。 だが、弟は知らなかった。姉はほとんど何も考えずに適当に答えていたということを。 彼らの行く末に待つものは・・・本当に『組織』の「暗部」なのかどうか。 それは誰も知らない。そう、彼らを先導することになったカラス以外は・・・誰も、何も。 「行っけー!GoGo!!」 「あー・・・なんか黒服潰してばっかりだけど、車体もつかなぁ・・・」 頑張れ弟!また太陽を見るその時まで!! 「不吉な文を加えるなぁああ!!」 * 『謎の連絡線』 東京の地下鉄には、政治家の非難を目的とした「脇線」と呼ばれる、 蜘蛛の巣よりも複雑な線路が存在する、という都市伝説。 別にこのような目的の為のものではないが、連絡線自体は本当に存在するとか。 能力は【地下空間の一時的な通路作製】と【線路敷設】 簡単に言うと、地下へ存在しない通路を作ることができる能力。 ただし、普通は同時に線路が敷かれる。 今回は既に地中に通路が存在した為、線路敷設の能力のみ発動している。 『山手線の列車砲』 自衛隊は巨大な大砲を積んだ列車を持っていて、非常時には山手線を走らせて戦うという都市伝説。 ぶっちゃけ列車砲が使いたくて「列車砲 都市伝説」で検索したら、あるブログの記事が引っかかっただけ。 能力は【砲撃対象を遠方から視認できる】。つまり、望遠鏡能力。 さらに本体のサイズを大小に変更が可能で、腕に忍ばせて拳銃代わりに使うことも可能である。 しかも、小さくても反動は大きいが本来のサイズの威力を出すこともできる。 恐ろしく便利な能力なのだが、本来のサイズの時は近くのものしか狙えず、 小さい時は近くのものしか狙えないため中距離への攻撃が苦手。あと潮風も苦手。 契約者 『消えるカラス』の契約者の弟。モデルを撮ったりするのが仕事のカメラマン。 姉との仕事が非常に多いが、これは「彼が撮る方がいい表情をする」という理由から。 姉より一足遅くやってきたが、仕事が秋祭り1日目に終わり結局巻き込まれた苦労人。 巻き込まれたというより姉が首を突っ込んだ・・・というのが正しいかもしれないが。 ちなみに彼の姉がこんな風に積極的になるのは彼が一緒のときだけである。 たぶん、お姉ちゃんとしての威厳を見せたいとかそんな感じだろう。頑張れ弟!いつか報われるさ! 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
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#blognavi タイトル:NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(7) 作成日時:2006/03/13 17 47 URL:http //blog.tendice.jp/200603/article_72.html 登場人物:源健司、芝村英吏、黒服の女(+グリンガム、クイーンオブハート/ウォードレス“彼方”) 日時:不明 場所:不明 ダイジェスト:人間の愚かさの罪を受け取った、殺戮の権化としての雷電の本質。二体の雷電の違い。40倍以上のズーム機能のある雷電の目。英吏もこれを体系立てて使っている、山岳騎兵の流儀、(ダウジング&)幻視を使う源。彼らは生き残るためにあらゆる禁忌を踏破する。黒服の女と、幻獣の発見。死んだ部下しか見たことのない英吏の笑顔。クイーンの絶対の信頼。善行の言葉、正義を守れを貫き、二人はウォードレス“彼方”を取り出し着用、互いの着用完了をも確認する。そして信号弾発射。 カテゴリ [SS] - trackback- 2006年03月17日 00 47 57 #blognavi
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「只今情報が届きました。どうやら涼宮ハルヒの力は消失した模様です」 『そうか・・・・下がれ』 「失礼します・・・」 『漸く、か・・・・なあ理鶯よ、どう思う?身勝手にも我々に奇怪な能力を植え付け、自分の作ったストレスを刈らせる・・・・ 我々は其れを拒否する権利すら無く、強制的に苦痛の日々を強いられた。不気味な化け物と闘いながら過ごさなければ ならない・・・・睡眠時間を取る事すら満足に許されず一歩間違えば死と隣り合わせだ。 我々が本来進むべき運命のベクトルは捻じ曲げられ、死を隣に置く恐怖に怯えながら過ごしてきた日常 神に・・・いや、元神に同等か其れ以上の苦痛を与えたいとは思わないか?』 「真に同感で御座います。涼宮ハルヒの確保・・・・手配して参ります。駁攣様」 『 さ あ 、 復 讐 の 時 間 だ 』 ============================================== ハルヒと付き合い始めてから一か月 とは言ってもラブラブ二人きりな下校をするのも団員に悪いというハルヒの配慮から 帰り道は普段通りSOS団五人で帰宅している 古泉「それにしても貴方がここまでやってくれるとは思いませんでしたよ」 もうその話はよしてくれ。何か恥ずかしい 古泉「いえいえ、貴方の功績は素晴らしいです。出来る事なら僕からスペクタクル賞でも受賞させて頂きたいものです」 その訳のわからん賞とやらより諭吉さんを100枚ほど手渡しして頂けた方が圧倒的に数億倍感謝するぜ お前を一生の大親友と認めてやってもいいな 古泉「一応機関に掛け合ってみましょうか?僕としても貴方に大親友と認めて頂くのは大変光栄な事なので」 いや、冗談だ そんなに貰っても第一使い道が無い 古泉「そう、ですか・・・・」 なに少し残念そうな顔になってるんだ そんな会話をしている内に、俺とハルヒ以外の団員は別々の帰路に足を運んでいった ハルヒ「ねえキョン、今日そっち行っていい?」 すまんな、妹がいるんだ 妹の塾がある日に俺から誘うよ ハルヒ「わかった・・・じゃあ・・・」 ・・・・なんだ? ハルヒ「お別れのキスよ!!鈍感ね `ヘ´ 」 ああ、すまん ほら ハルヒ「んっ・・・・・」 今日は深く口付けしてやるか ハルヒ「ありがと・・・・・大好き・・・・//じゃあねキョン!!」 そう言うとハルヒは自分の家のある方向に走って行った さて俺も我が家に帰るか ハルヒ「いやっ!!」 !? 俺が振り向くとハルヒが黒服の男二人に襲われている お前等何やってんだ!! 黒服「!!」 ハルヒ「助けてキョン!!」 ああ待ってろ今こいつらを始末して・・・・・ぐはっ!! 黒服の男の拳が俺のみぞおちに炸裂する ぐ・・・・・くそ ハルヒ「キョン大丈夫!?ちょっとアンタ達・・・・ふぐ・・むぐぅ~む~」 黒服「おとなしくしていろ」 くそっ・・・・ハルヒッ・・・ハルヒィィィィ!!!!!!!!! 意識が朦朧とする中、俺は心の中でハルヒの名前を叫び続ける事しか出来なかった 第二章へ続く
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190 :仮面アステカー第五話「紫電」:2010/06/25(金) 01 17 16 ID VOuMqaQ. 仮面アステカーは改造人間である! 今日もぷっくりおっぱいをこれでもかと言わんばかりにブルンブルンさせ、悪の秘密結社と、その首領遠藤を倒さんとしていた! アステカー「ていうか仮面かぶっても福路さんの身体になったままなんですよね」 池田「キャプテンの身体の何が不満だし!」 アステカー「いや、この身体ってなんていうか実戦向きじゃないっていうか…」 ビリビリ「あんた、なにゼータク言ってんのよ!福路って人はその身体でバサカと戦ったりしてたのよ?」 アステカー「僕はレイニーデヴィルなんていうオプション持ってませんし…」 部長「見下げ果てたわね、アステカー!」 アステカー「貴女は!悪の女幹部、竹井久!」 部長「いえ、今の名はバラのタトゥー(シール)の女よ!」 池田「あぁあの意味ありげに登場し続けていたにもかかわらず一発撃たれただけで死んだアレ」 ビリビリ「綺麗だったのにもったいなかったわよね~」 部長「ともかく!美穂子の身体を持ちながら有効活用してない貴方にはがっかりしたわ!行きなさい!黒服たち!」 黒服「イーッ!」 ビリビリ「めんどくさいわねぇ…はいはいレールガンレールガン」 シュゴォォォォォォォォォォォォ! 池田「さすが御坂!一気に黒服全滅だし!」 ビリビリ「で?どうしたいわけ、竹井さん?」 部長「どうしたい?決まってるじゃないの!代々木公園まで二人でサンドイッチが入ったコンビニ袋をカップル持ちして! 芝生に寝っ転がりながら『サンドイッチ美味しいですね』『でも美穂子の作ったサンドイッチの方がもっと美味しいわよ』『もう…久ったら///』 なんていうバカップルっぷりを堪能したのちに代々木上原のマンションにしけこんで三回ドカーンドカーンドカーンしたいに決まってるじゃないの!」 アステカー「ちょっと待って下さい!ドカーンドカーンドカーンっていったい何なんですか?!」 部長「言わせないでよぉ。恥ずかしい!」 池田「振ったのはそっちの方だし!」 部長「とにかく。ここは一旦退散させてもらうわ!あと中の人のアルバム「Devotion」が発売中だから。本人あんまり売る気ないけどよろしくね!ばぁ~い」 ビリビリ「あ、ちょっと待ちなさいよ!」 こうして「バラのタトゥー(シール)の女」の工作は、仮面アステカーの手によって挫かれた! しかし彼女はまた第二、第三の工作を繰り出してくるかもしれない! 戦え、仮面アステカー!本来の自分を取り戻す、その日まで!
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ケモノツキ_CoA編_1話_異世界への訪問者 CoAのとある町。そのメインストリート。 武器屋、防具屋、道具屋などが軒を連ね、人の往来は活発。 さながら祭のような様相をかもし出しているが、この世界ではいたって普通の光景だ。 そして、その通りを歩く、とある一団がいた。 黒いスーツの女性を先頭に、妙齢の女性、青年、少女がその後に続き、青年の背には、少年が負ぶさっている。 「…ね、ねえタイガ。僕はもう大丈夫だから降ろしてもらっても……」 「うるせぇ黙ってろ。」 「う、うん、ごめん……。」 タイガと呼ばれた青年は、少年の言葉にぶっきらぼうに返し、黙々と歩き続けている。 それを見て、隣を歩く少女がクスクスと笑い、女性は優しげな瞳で微笑んでいる。 ここで、時間軸を数十分巻き戻す。 ・ ・ ・ 「これが…CoAの世界。」 『わー、いかにもファンタジーって感じ。』 鎧を纏い武器を持った人間、人外、有象無象が歩き、露天や商店が立ち並ぶ町。 日本では…否、現代では見ることが出来ない光景が、悠司の目の前に広がっていた。 その光景を呆然と眺める悠司の後ろから近づく、一つの黒い影。 悠司が気配に気付いて振り返ると同時に、その人物は悠司に声をかけた。 「橘野悠司、お待ちしておりました。」 「あ、はい。ええっと、エイダ…さん?」 「『さん』は不用です。いつものように『エイダ』と呼んで下さい。」 都市伝説『死を招くカーナビ』であるエイダ。 それが、橘野悠司の担当黒服A-No.218と全く同じ外見で、悠司の目の前に立っていた。 「な、なんだか気が引けるなぁ…。黒服さんを呼び捨てにしてるみたいで…。」 『エイダの容姿は私のものをトレースしておりますが、気にしないでください。』 どこからか響く、黒服の声。 CoAに入る前に『CoAの外から常時監視を行う』と、黒服が言っていたことを思い出した。 『気にするなって言われても…ホントにそっくりだよねぇ。』 『黒服との外見上の違いが見当たりませんね。』 外見は黒服と全く同じだが、どことなく黒服と違う。 悠司たちは、そんな奇妙な感覚を覚えていた。 「これからCoAについて色々と説明しますが、その前にこれをつけてください。」 エイダが差し出したのは、片耳だけのイヤリング。 「イヤリング…だよね。片方だけ?」 「「通話のイヤリング」というアイテムです。片割れをつけた相手と、遠距離での会話が可能となります。」 その言葉に悠司はエイダの顔を見あげる。 ポニーテールによって露出されたその耳には、悠司が渡されたものと同じイヤリングが揺れていた。 不慣れな手つきでイヤリングを耳に付けながら、悠司はエイダに問いかけた。 「えっと…遠距離の会話が可能ってことは、一旦離れ離れになるってこと?」 「いえ。あなたの都市伝説との会話に応用できないか、という推測です。実際に何か喋ってみていただけますか?」 『あーあー、こほん。こんにちわ、エイダ!』 「こんにちは、ミズキ。どうやら問題なく作用しているようですね。」 『なるほど。言葉を直接伝えられるのは便利ですね。』 「わからないことがあれば適宜聞いてください。そちらの声は聞こえておりますので。」 『じゃあ早速聞くが、この変な模様は何だ?』 「え、タイガ?模様って何のこと?」 『主、“こちら側”を見ていただけますか。』 タマモの言葉に悠司は目を閉じ、自分の中に意識を向ける。 悠司の心の中――真っ白な空間の中で、三匹の獣が、青く光る魔法陣を囲んでいた。 「魔法陣…?僕は何も感じないけど…。」 「では、それに関係しそうな説明を先に行いましょう。」 「え、これが何かわかるんですか?」 その言葉に、悠司は目を開いてエイダに向き直った。 「CoAというゲームにおいて、橘野悠司のジョブは「サマナー」。従者を使役し、『召喚』と『憑依』による戦闘を行います。」 「えっと、『憑依』はいつもやってるアレだよね?『召喚』って…僕がタイガたちを?」 「はい。おそらく橘野悠司の中にある魔法陣は、それに関係するものだと思われます。」 『この中に入れば、俺自身が外に出られるってことか?』 「実際にやってみないとわかりませんが、おそらくそういうことだと思われます。」 『それって主様と一緒に冒険できるってコト!?じゃあ一番手ミズキ、行きますっ!』 言うが早いか、ミズキは魔法陣の中へ飛び込んだ。 同時に魔法陣が光を放ち、ミズキの姿が悠司の中から消失した。 その直後、悠司の目の前に魔法陣が展開し、そこから真っ白な猫が現れた。 しばし硬直する、悠司と白い猫。 「み、ミズキ…だよね?」 「……主様だーーーー!!!」 真っ白い猫は一瞬にして少女の姿に変わり、悠司に抱きついてきた。 「ホントに主様と一緒になれた!あぁもう幸せだよぉ!」 「そ、そんなにはしゃがなくても、寝るときいつも会ってるじゃないか。」 「それとはまた別なの!ああ、主様暖かいよぉ…主様柔らかいよぉ…主様の匂いがするよぉ…。」 悠司は苦笑しつつも、自分の胸に顔を埋めているミズキの頭を撫でてやる。 そして二人はふと、撫でる手、撫でられた頭に違和感を覚えた。 「ん?」 「あれ?」 二人がその違和感を確認するより早く、悠司の目の前に魔法陣が二つ展開する。 そしてそこから、人型をとったタイガとタマモが姿をあらわした。 「…てめぇらは何いちゃついてんだ。」 「仲が良くていいじゃないですか。…あら?」 タマモはミズキをじっと見ると、次いで隣に立つタイガを見上げた。 そして最後に、自分の頭に手を伸ばした。 「これは…。」 ミズキとタイガも“ソレ”に気付き、自らの頭に手を伸ばした。 頭部の“ソレ”に触れると、続いて自らの腰に手を伸ばした。 そして、腰についた“ソレ”にも触れた彼らは、お互いを見回した。 彼らの頭と腰には、いつもの彼らには存在しないもの――すなわち、獣耳と尻尾が生えていた。 「なんか生えたーーー!」 「なっ…おい黒服!これ消す方法さっさと教えろ!」 『容姿に関しては、それがこの世界の仕様です。諦めてください。』 「ふむ……。こういうものだと割り切るしかありませんね。…少々気恥ずかしいですが。」 ぴこぴこふりふりと、自らの狐耳と9つの尻尾を揺らすタマモ。 タイガと違い、既にこの状況を受け入れているようだ。 「えっと…みんな可愛いと思うよ…?」 「んー…主様がそう言うなら、あたしはこのままでいいやー。」 「ふざけんな!こんな格好で歩けるかッ!俺は主の中に戻るぞ!!」 「ちょ、ちょっとタイガ待っ……」 言うが早いが、タイガの足元に魔法陣が展開し、その姿が消えた。 それと同時に悠司の意識が引き込まれ、タイガが表に出てきた。 「…へっ、いつもみてーにこうやって主の体で動けば、あんな格好に…は……。」 絶句するタイガの目に留まったのは、近くにあった防具屋の表に置いている姿見。 そこには先ほどのタイガと同じく、犬耳と尻尾が生えた悠司の姿が映っていた。 「…これがこの世界の仕様という奴ですか。」 『ま、まさか自分のこんな姿を見ることになるとは思わなかったよ…。』 「大丈夫!主様もかわいいよ!」 『ええっと、ありがとう…でいいのかな?』 「…もういい。俺は中に戻る。あとはてめーらで勝手にやってろ。」 直後、タイガが中へ戻り、悠司が外に出てくる。 そして容赦なく襲い掛かる筋肉痛に、カクンと膝を付いた。 「い痛…ッ。こ、これはいつもと…変わらないみたい…ッ!」 「むー……。あ、そっか。こうやって外に出られるなら、あたしたちが主様の代わりに戦えばいいじゃん!」 「この世界においては、それが一番いいかもしれませんね。」 『俺は出ねーぞ。あんな格好で歩けるかっての。』 「ちょっとー。任務なんだから、あんたも手伝いなさいよね、馬鹿犬。」 「タイガの扱いは後で考えるとして…黒服、それにエイダ。主を休ませたいのと、説明の続きをお願いしたいのですが、適当な場所はありますか?」 「了解しました。では宿屋へ向かいましょう。ナビゲートしますので、付いてきてください。」 「は、はい。わかりまし…ッ!」 立ち上がろうとした悠司は、激痛に声を詰まらせた。 「橘野悠司、歩けますか?」 「大丈夫、主様?あたしが支えて……。」 そこまで言いかけてミズキは、イタズラを思いついた子供のようにニヤリと笑った。 「ハイ提案ー。馬鹿犬が主様をおんぶすればいいと思います!」 「ああ、それはいいですね。ではタイガ、こちらに出てきてください。」 『な…ふざけんなッ!何で俺がそんなことを……!』 「折角の機会ですし、たまには主の負担を肩代わりしてあげなさい。」 「あんたのせいなんだから、責任取りなさいよねー。」 「い、いいよタイガ。これくらいいつものことだからっ…!っ痛……。」 『……あぁぁぁぁぁあ畜生ッ!!』 悠司の目の前に展開する魔法陣。 かくして冒頭にある、犬耳尻尾を付けた青年におぶられる少年、という図が完成した。 ・ ・ ・ 時間軸を冒頭に戻す。 とまれ、宿屋に到着した一行。 その一室に通され、悠司はタイガの背からベッドへと居場所を移した。 「ありがとう、タイガ。もう戻っても大丈夫だから。」 「……いや、いい。」 「えっ、さっきまであんなに嫌がってたのに?」 「このイラツキ……俺自身の手で発散しねぇと気が済まねぇ…。」 拳を握り締め、歯を食いしばり、今にも襲いかからんばかりの雰囲気をかもし出している。 「た、タイガ、落ち着いて、落ち着いて……。」 「カルシウム足りてないんじゃないの?骨食べなよ骨。」 「ミズキは煽らないでッ!?」 「ああ?てめぇで発散してやろうか雌猫?」 「タイガも乗らないでッ!?」 「その拳は向けるところが違うでしょう?エイダ、説明の続きをお願いします。」 「はい。しかし、CoA世界の説明は実際に体験した方が早いと思われますので、先に任務の説明をしましょう。黒服、お願いします。」 『では、任務の説明を行います。今回の任務は『Cup of Aeon』、通称CoAに発生中の異常調査、それに伴う犠牲者の救出、および異常の解決です。今後の具体的な行動内容は……』 ―――悠司たちのCOAの旅は今、ようやく入り口の門をくぐった。 ―――この先、悠司たちは誰と出会い、何を見つけ、どんな結末を迎えるのか。 ―――それはまだ、誰にもわからない。 【ケモノツキ_CoA編_1話_異世界への訪問者】 終 前ページ次ページ連載 - ケモノツキ
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【上田明也の探偵倶楽部18~禿、追撃~】 「筋肉の鍛錬は完璧か? 」 そう啖呵を切ると俺はマ神に正面から戦いを挑んだ。 決して勝つ自信が有った訳ではないのだが蜻蛉切を握っていると無意識のうちに気分が高揚してくるのだ。 忘れがちだがあれも妖刀村正の系譜に繋がる都市伝説。 持ち主の戦闘意欲を向上させる働きがあるのだろう。 「截断工程第一過程完了、寸断工程第二過程完了、両断工程第三過程完了。 目の前の肉塊の構造を鑑賞し設計を理解し概念を想像する。 演算終了。 戦況を切開しよう。」 紫とピンクのオーラを練り上げ、その身に纏った禿がこちらに突っ込んでくる。 ギリギリまで力を抜いて腰に修めた蜻蛉切を引き抜く。 それを頭上に掲げ、突っ込んでくる禿に向けて両手でまっすぐ振り下ろす。 その動作が客観的に見て速いのか遅いのかは知らないが、 俺にはその動作が朝起きて歯を磨きに行くまでの時間のようにゆったりとした物に感じられた。 しかしだ。 それはあの禿の黒服にとっても同じ事だったらしい。 彼は水鳥が湖上でステップでも踏むが如く俺の渾身の一太刀を躱して見せたようだ。 「初撃必殺、一之太刀を疑わず、成る程悪くない一撃だ。思わず躱したくなった。」 「………ありゃ、外れていたのか。」 刀を振るい終わってから俺は躱されたことに気がついた。 斬り合いは蜻蛉切に全て任せてしまっているので俺自身の反応はどうしても一瞬遅れるのだ。 「アブドミナル・アンド・サイ! 」 俺が一瞬だけ気を緩めた隙を突いて禿の黒服は妙なポーズを取り始めた。 なんだあれは……? 見ているだけで頭が痛い。 吐き気もしてきた。 グルグルグルグルグルルグルグルグルグルグと視界が揺れる。 目を瞑って彼の姿を視界の外に追い出す。 そうすれば隙ができている勘違いした禿の黒服は俺の背後をとるに違いない。 「――――――そこだ! 」 「アッー! 」 一瞬だけ俺の背後の空気が揺れた。 俺の履いていたデニムに何か生暖かい物が押しつけられる感触もする。 半ば反射のように俺は後ろをなぎ払った。 「危ない危ない、去勢されるところでした。」 「されちまえ。」 「それはお断りしましょう。」 彼がそう言った瞬間、その何気ない会話の一瞬を狙ってもう一度村正を振るう。 狙うのは勿論首。 彼のような筋肉の塊を殺害するには筋肉が比較的付きづらい首筋を狙うしかない。 「サイドトライセップス!! 」 辺りに響く金属音。 強調される上腕三頭筋が斬撃を受け止めた。 「………貴方の攻撃は非常に読みやすい。」 俺の蜻蛉切を簡単に受けた禿は呟いた。 「都市伝説の力によって何の修練もなく修めた剣技、それは良い。 精神に感応して切れ味を増す刀、それもまた良い。 しかし、肝心の貴方はその特質を生かし切れているのか? 」 「――――――どういうことだ? 」 「貴方の一撃は全て殺す為に振るわれている。 それはそれは効率の良い攻撃だし単純に誰かを殺すならばそれがベストなのだろう。 しかし貴方の持つ技術全てが意識するとしないとに関わらずパターン化されてしまっている。 だったら攻撃を読んで防御するなりカウンターするなりは非常にやりやすい。」 「つまり……。」 「ええ、貴方の技は全て見切った。もう貴方に勝ち目は無い。」 禿の黒服はそう言うと再びアブドミナル・アンド・サイの構えをとる。 黙って見ていると脳に悪いことが解ったので俺は禿に対して背中を向けた。 「あえて背中を見せて私の動揺を誘う気か? 」 そのまま男体化しているユナを抱えて走り去る。 「………って逃げた!?」 後ろから禿の絶叫が聞こえた。 「待て!」 上田明也は逃げ出した! しかし回り込まれた! 「やはり駄目だったか……。」 「う、う~ん……。」 どうやらユナさんが目を覚ましたようだ。 「あれ、私は……?」 「目を覚ましたみたいですね、ユナさん。 只今今回のラスボスと戦闘中です。」 ユナはガバッと起き上がって辺りを見回し、自分の身体をぺたぺた触る。 「やっぱり男になっている……。」 「………ご愁傷様です。犯人はそちらの方でございます。」 「目を覚ましましたか、安心して下さい、その男体化ガスはまだ不完全なので………。」 『いやああああああああああああああああ!!!! 』 当然の反応である。 「笛吹さん、私のこの姿を見た人は……今何人いますか? 」 「ええと、村長とその人と俺だけじゃないでしょうかネエ……。」 「……コロス。ブッコロス。」 余程見られたのが恥ずかしかったのだろう。 しかし殺害対象は俺も含めてなのだろうか?正直怖くなってきた。 「笛吹さん、ここは私に任せて下さい。」 「は、はい……。」 ユナさんの表情が引きつっている。 『都市伝説【ルーシー7】、行きます! 』 彼女、今は彼がそう言うと禿の背後からいきなり包丁を持った男性が現れた。 「――――――何ッ!? 」 包丁による背後からの一撃を背筋で受け止める禿。 その隙を突いてユナは銃器を取り出す。 「ユナさん、そいつに拳銃やらは効かないぞ! 」 「大丈夫です! 」 BANG!BANG! ユナのキャリコM100が禿に向けて火を噴く。 キャリコM100、1986年にキャリコ社(Calico Light Weapon Systems)が開発した短機関銃だ。 最大の特徴はヘリカルマガジンと呼ばれるユニークな弾倉で、 通常の銃だと弾倉がトリガー前部や内部にあるのに対し、 M100の弾倉は銃後方(他の銃で云うストック部)にある。 円筒状の弾倉の中には螺旋状に銃弾がストックされていて、 コンパクトな見た目とは裏腹に実に50発もしくは100発の.22LR弾が装填可能である。 「そのような銃弾など……! 」 当然禿はその山のような筋肉で銃弾を受け止める。 1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、すかさずもう一丁キャリコを取り出す……10秒。 「笛吹さん、彼を足止めする手伝いお願いできます? できればその間に貴方が先程の蜻蛉切とやらを準備してくれるとありがたい。 銃弾が尽き次第、もう一度蜻蛉切であの禿げた黒服を切って下さい。 彼にダメージを与えうる武器はそれだけでしょうから。」 「解ったユナさん、これを使え。」 俺も丁度持ってきていたMP7を取り出して彼女に渡す。 10秒+3秒の足止めだ。 一秒経過 確かに銃弾の一発や二発では禿は倒れない。 しかし、そんな銃弾一発でもその中にはプロボクサーのパンチ並の運動エネルギーが込められているそうだ。 故に、いくらこれを受けて死ななくても喰らい続ければ動きは止まる。 更に言えば禿の性格上、銃弾を正面から受け続けようとする。 その予想通り、禿は銃弾を真正面から受け止めてジワジワと近づいてくる。 二秒経過 本当に蝸牛のようにゆっくりゆっくりと近づいてくる。 10cm?5cm? そんなのどちらでも良い。 禿は一歩ずつ近づいてくる。 一歩でもわずかでも近づいてくる。 銃弾を正面から受け止めて近づいてくる。 それが恐怖。 俺は今確実に恐れている。 三秒経過 恐怖を制御しろ。 呼吸は極限までペースを落とせ。 恐れることは恥ずべきではない。 そんなことより大事なのは最高の状態を作り出すことだ。 恐れていても良い。 だがその感情すらいとも容易く手放せる心境が必要だ。 その心が身体に究極の脱力を生む。 脱力から緊張までの圧倒的な落差が爆発的な破壊力を生み出す。 手元にあるだけの破壊力をすべて爆発させて尚敵うか否かの相手なのだ。 禿は近づいてきている。 まるで王者のように薄ら笑いさえ浮かべているように見える。 俺がまだ恐れているからそう見えるのだろう。 ならばもっと感情を薄くしろ。 生まれた時の状態まで戻るんだ。 風の音が聞こえてきた。 よし、これで良い。 腰の刀に重量を感じる程の脱力。 「……動けない?」 禿の足下がまるでコンクリートで固められたかのように動かない。 「それがルーシー7の能力の一つです。 ルーシー7は彼らの起こした7つの事件にちなんだ能力を扱えます。 ちなみに先程貴方につかったのは『ルーシーseventh』、ルーシー序列七番目の殺人鬼を相手に直接送りつけます。 一応切り札のつもりだったんですが……。」 只の人間ではそいつは倒せない。殺人鬼が殺せるのは人だけってことですよね。 しかし今あなたに使った能力は違う。 ルーシーthirdの子供達をコンクリ詰めにした事件からとった能力だ。 名前はそのままルーシーthird、 私の半径6m以内に居る事を条件に、 10秒以上半径1mから外に動かない人間をコンクリ詰めのように金縛りにします。」 ユナはそう言うと俺に目配せをする。 「ただしこのルーシーthirdの能力。 相手を殺せません。 これを使っている間は私も動けないんですよ。 そこで上田さん、……一撃で頼みます。 攻撃を一撃でも食らえば金縛りは解けます。」 千載一遇の禿の黒服を殺すチャンス。 そう思った瞬間に俺の脱力にわずかな隙が生じていた。 「截断工程第一過程完了、寸断工程第二過程完了、両断工程第三過程完了。 目の前の肉塊の構造を鑑賞し設計を理解し概念を想像する。 演算終了。」 呪文のようにその言葉を唱える。 自分の身体がこれ以上なくスムーズに動くのを確認してから俺は禿に斬りかかった。 俺の一撃は禿を確実に捉えたように見えた。 しかしそれは違った。 「あなたの攻撃は、既に見切っている。」 「……馬鹿な。」 禿の首筋からわずかばかりの血液が零れている。 それが意味する所は俺の攻撃の失敗だ。 「……そこまで貴方は説得されたくないのか?」 「掘削の間違いじゃないのか?」 「おや、その二つの意味は違ったか?」 「ほらね。」 「じゃあ仕方ない、私が貴方を討伐せざるを得ないようだ。」 禿の拳が俺に迫る。 今の俺の精神状態じゃ防ぐことは出来ないし間に合わない。 死んだかな?と思い俺は禿の瞳を静かに見つめた。 ……絶対に目は閉じない。 ドバァン! 死を確かに覚悟した次の瞬間、俺達を土砂崩れが襲った。 「マスター、ずいぶん苦戦なさっているみたいですね。」 「遅いぞメル、待ちわびた。」 すっかり傾いてしまった陽の光を背に、土砂崩れの元になった山の上からこちらを見下ろす影がある。 ハーメルンの笛吹き、メルだ。 こちらにむけてトテトテ歩いてくる。 あ、転んだ。流石我らがチームの癒し要員である。 「メル、ユナさんは?」 「心配には及びません、誰ですかその子?」 「俺の契約している都市伝説だ。名前はメルとでも呼んでやってくれ。」 「ああ、貴方多重契約者だったんですか?」 「まぁね。」 俺達だけを見事に避けた土砂崩れは禿だけを飲み込んで河の中に消えていった。 この調子ならば禿が出てくるのにはまだしばらく時間がかかるだろう。 約10秒くらい。 「とにかく二人とも急いで車に乗ってくれ。 禿が出てくる前にこの町を離れよう。」 「え、車?」 ユナが首をかしげる。 「あんたを助けに来る途中、どっかの家から鍵ごと盗んだ。」 先程のどさくさに紛れて車と鍵を盗んでおいて正解だった。 「それじゃあ行くぜ、二人とも乗ったな?」 「「はーい」」 ユナとメルが乗ったのを確認してエンジンをかける。 車はランボルギーニのカウンタック。 今まで乗ったことはないが多分乗りこなせるはずである。 後ろから土砂を吹き飛ばす音が聞こえる。 俺達は急いで発進することに決めた。 山道を軽快に飛ばしてしばらく経つと後ろから禿がおいかけてきた。 「マスター、来ましたよ。」 助手席のメルがバックミラーを確認して俺に教える。 「解っている。しかしおかしいな、実は俺300km/h前後出しているんだが?」 「笛吹さん、なんでブレーキ踏まないでカーブ曲がれるんですか?」 「え、踏んでるよ?」 「ごめんなさい、そろそろ酔ってきて……。」 本日の犠牲者一名である。 俺は車に誰かを乗せる度にこのような不幸を運んでしまうのだ。 「マスター、横につけてきました。」 「構わん、カウンタックを舐めるな。」 ハンドルを小刻みに揺らして車を回転させる。 まだ冬の香りの残る路面なのでよく回ってくれた。 禿の黒服は予想もしない攻撃に丁度良く前に吹き飛ばされた。 このまま一気にひき殺すとしよう。 アクセルを全力で踏み込む。 スピードメーターもエンジンの回転数も先程から限界を迎えているようだ。 スピードはまったく変わることなく禿につっこむ。 ゴトォン! 「う……。」 「マスター!ユナさんが!ユナさんの三半規管が崩壊します!」 「うるせえ、とりあえず逃げ切るのが先決だ。ユナさん、応援呼べる?」 「……できるだけ、ウップ、頑張ってみます。」 もう一杯一杯みたいである。 だがもう少しだけ頑張って欲しい。 ユナさんは携帯電話で自らの所属する組織に応援を頼む。 車酔いで限界を迎えているのはわかるがこのままでは逃げ切れる気がしない。 先程轢いた禿の黒服はまだ生きているようだ。 本当に化け物だ。 恐らく村正で会心の一撃を放った所でびくともしなかったのではないだろうか? 「マスター!また近づいてきましたよ!」 山道も終わりにさしかかってあとはカーブを一つ越えれば直線だ。 只の直線道路になれば流石に禿でもスーパーカーには追いつけない筈だ。 しかしカーブを目の前にした直線で禿はまたも現れた。 ここからが本当の正念場だ。 「メル、そこらへんの物に捕まっていろ。」 「ユナさんも……。」 ユナ・オーエン、もしくは『ルーシー7』の契約者、乗り物酔いにより再起不能。 死体に構っている暇はない。 そろそろタイヤもエンジンも限界だ。 ここで一気に抜けるしかない。 カーブがドンドン迫ってくる。 しかし俺は構わずまっすぐに突っ切った。 ガードレールを破壊してカウンタックは宙を舞う。 俺のドライビングテクニックで直線道路に見事着地。 そのまま真っ直ぐに禿から逃げる。 数分後、禿の気配が無い。 無事に町中にも入れたしどうやら俺達は逃げ切ったようだった。 流石に禿も町中に出るのは『組織』に止められたのだろう。 とりあえずこれであの村はゲイパレスからプレゼントパレスに戻った筈だ。 そう思った瞬間だった。 妙な音を立ててカウンタックが動きを止める。 どうやら使いすぎたようだ。 俺が乗る車はどれもすぐに壊れてしまうから困る。 車を路肩に適当に止めると半死人になっているユナとメルを車から運び出した。 「あれ、無事帰って来たんですか?」 「なんとかね、とりあえずあとはNYまでなんとかして帰らないと……。」 「いえ、その必要は無い。」 場が凍り付く。 後ろに禿が居る。 「……まだ居たか。」 「貴方達もこれで終わりです。」 『いいや、終わりなのはお前だよ。』 俺達の目の前には黒い馬に乗った新しい黒服が現れた。 『あんたは誰だ?』 『そこの黒服の同僚だ。』 俺達の目の前に現れたのはどこからどう見てもカウボーイとしか言い様のない黒服だった。 カウボーイの服装なのに全てが黒。 しかもサングラス着用である。 「おお、アメリカ支部の黒服ですか……。」 『K-No.あんたは少しやりすぎた。反省して貰う。 あとこんな所で暴れられると一般人への記憶の消去が大変なことになる。』 どうやら今回は俺達の敵じゃないらしい。 カウボーイの黒服はKをロープで縛るとどこかに連れて行こうとする。 『お前ら、つかハーメルンの笛吹き、一応お前も俺達の敵だが……。 さっさと行ってくれ。 俺が殺意を抑えられている内にだ。 俺はお前みたいな男が一番嫌いだ。』 『恩に着る。』 俺はカウボーイの黒服の言うとおりにユナとメルを連れてとりあえずニューヨークに戻ることにしたのである。 【上田明也の探偵倶楽部18~禿、追撃~fin】
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基本データ 梶 博哉の妹。 帰宅場所:天釘花屋 好きなデート場所:銭湯 嫌いなデート場所: 好きな食べ物:甘い物 嫌いな食べ物: 合コン参加: 攻略性別:男女共可能 同棲条件:冷静・鬼畜での告白成功を確認 パチンコデート時のパラ:運 18 健 20 鋭 5 清 80 修 3 腹八分 攻略 1.ED後に出玉総合病院へ会いに行く。以降、1日ごとにイベントが進む。 2.3回目に会いに行くと、黒服達が美里を連れて行こうとしているのでそれを止める。黒服・三木と腹下し汁を飲んだ状態でパチンコ勝負して、これに勝利する。 3.翌日、出玉総合病院へ会いに行ってイベント。 4.更に翌日、出玉総合病院へ会いに行くと美里が退院する。その際に「劇団春秋 夏・増刊号」と電話番号ゲット。以降美里は天釘花店で働くようになる。 ※腹下し状態だとゲージが溜まらないので注意。 ※2で負けてしまうと攻略不可になるのでセーブしておくと吉。負けた場合は、2の時点で「劇団春秋 夏・増刊号」を入手出来る。 美里退院後に病院3Fに座っている男に話しかけると「美里のポスター」がもらえる。(バトル敗北後でも入手可能)