約 119,459 件
https://w.atwiki.jp/monmas_x/pages/1250.html
妖精の微笑み 解放条件 第3章「増殖する血族」クリア ボス攻略:風精霊シルフ 種族:獣 弱点属性:闇 半減属性:光 状態異常耐性【超地獄】 麻痺:△ 混乱:◎ 睡眠:△ 沈黙:△ 毒:◎ 状態異常耐性【絶】 麻痺:✕ 混乱:◎ 睡眠:◎ 沈黙:✕ 毒:◎ フラッシュを使用(物理攻撃の命中率ダウン)するので魔法デッキ推奨 必然的にMP消費が増えるため、アグニ(MP120+MP5自動回復)やヘイズルーン(闇属性2倍+MP120)など ドロップモンスター 風精霊シルフ 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 獣 魔法 光 ★4 18 1549 748 1788 900 971 光精霊の恩寵【大】 【全】光属性攻撃1.5倍 ★5 25 1721 831 1987 1000 1079 光精霊の恩寵【極】 【全】光属性攻撃1.85倍 詳細 ★4:シルフの進化素材 シルフの魂×3、シルフの超魂×1、1,000,0000G 風精霊シルフを覚醒素材に使うモンスター お辞儀ロゼッタ 骸 滝夜叉姫 吉祥天 京八鬼一法眼 千疋狼 ハロウィンミサキ サンタ氷鬼 煌姫 ティンダロス カーミラ フロン ネルガル マクベス アグニ スターライトギドラ アニマ ジュリック 正月アグニ いたずらフローズン サンタチェルシー 水着チェルシー 恋菓ウンディーネ オルトロス 大天使ガブリエル エンリル ノルン 正月エンリル 水着シヴァ ハロウィンクシナダ 水着菊理姫 福士唯 風精霊シルフ(アルビノ)を覚醒素材に使うモンスター ヘルメス ニーナ ウズメ アプス イヴ 正月イザナギ ロキ 応龍 コメント コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/lhomega/pages/12.html
裁縫 NPC販売素材 画像 名前 販売価格 銀塊 8 金塊 12 純白水晶 16 銀線 4 金線 8 水晶線 12 金色の絵の具 4 黒い布 4 彫金 画像 名前 販売価格 鏡 4 透明水晶球 8 大きな透明水晶球 16 水精の彫刻 4 火精の彫刻 4 風精の彫刻 4 地精の彫刻 4 紅色宝石 12 緑色宝石 12 藍色宝石 12 金色宝石 40 銀線 4 金線 8 水晶線 12 機械 画像 名前 販売価格 硫黄 4 ラピスラズリ 4 錬金 画像 名前 販売価格 活性剤 4 濃厚活性剤 8 油 4 ラノリン 4 柔原液 4 鍛冶 画像 名前 販売価格 ラピスラズリ 4 鉛の塊 8 純白水晶 16 銀塊 8 金塊 12 鋳型 40 カード 画像 名前 販売価格 白い羽 4 アカディアの聖水 4 活性剤 4 濃厚活性剤 8 水精の彫刻 4 火精の彫刻 4 風精の彫刻 4 地精の彫刻 4 白紙の契約書 20 蝋燭 4 空白のカード 4 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/rainbowroselh/pages/31.html
+生産 裁縫 鍛冶 錬金 彫金 機械 カード 裁縫店売り品 販売品リスト 売値 銀塊 8 金塊 12 純白水晶 16 銀線 4 金線 8 水晶線 12 金色の絵の具 4 黒い布 4 ページTOPへ 鍛冶店売り品 販売品リスト 売値 ラピスラズリ 4 鉛の塊 8 純白水晶 16 銀塊 8 金塊 12 鋳型 40 ページTOPへ 錬金店売り品 販売品リスト 売値 活性剤 4 濃厚活性剤 8 油 4 ラノリン 4 柔原液 4 ページTOPへ 彫金店売り品 販売品リスト 売値 鏡 4 透明水晶球 8 大きな透明水晶球 16 水精の彫刻 4 火精の彫刻 4 風精の彫刻 4 地精の彫刻 4 紅色宝石 12 緑色宝石 12 藍色宝石 12 金色宝石 40 銀線 4 金線 8 水晶線 12 ページTOPへ 機械店売り品 販売品リスト 売値 硫黄 4 ラピスラズリ 4 ページTOPへ カード店売り品 販売品リスト 売値 白い羽 4 アカディアの聖水 4 活性剤 4 濃厚活性剤 8 水精の彫刻 4 火精の彫刻 4 風精の彫刻 4 地精の彫刻 4 白紙の契約書 20 蝋燭 4 空白のカード 4 ページTOPへ
https://w.atwiki.jp/chibicos/pages/399.html
クリスマス祭り10プレゼント(青箱大・赤箱大・青箱中・赤箱中・緑箱小) ■青箱大 LV80 頭:魔人のターバン 胴:魔人の太鼓腹 脚:魔人のランプ 右: 左: LV130 頭:黄昏のターバン 胴:黄昏の闘装 脚:黄昏の具足 右:黄昏の鋭刃 左:黄昏の残光 LV220 頭:イブリスタホーン 胴:イブリスタディ 脚:イブリスタレッグ 右:魔神の滅爪 左:魔神の剛爪 ■青箱大(胴脚右)・青箱中(頭左) LV110 頭:サラディスターバン 胴:サラディスメイル 脚:サラディスグリーブ 右:サラディスカタール 左:サラディスシールド ■青箱中 LV30 頭:ジニスのターバン 胴:ジニスの太鼓腹 脚:ジニスのランプ 右: 左: LV60 頭:熱砂のターバン 胴:熱砂のファティーグ 脚:熱砂のブーツ 右:デザートカタール 左:デザートシールド ■赤箱大 LV150 頭:アバーシャの頭巾 胴:アバーシャビスチェ 脚:アバーシャの腰布 右:炎魔のランプ 左:炎魔の契約リング LV200 頭:ラビリアベール 胴:ラビリアチョリ 脚:ラビリアスカート 右:ラビリアレクα 左:ラビリアレクβ ■赤箱大(頭胴脚右)・赤箱中(左) LV60 頭:マムーラの頭巾 胴:マムーラビスチェ 脚:マムーラの腰布 右:水精のランプ 左:水精の契約リング LV100 頭:タハリーティアラ 胴:タハリービスチェ 脚:タハリーアンクレット 右:タハリーブレード 左:タハリーエッジ ■赤箱中 LV50 頭:ウマーヤの頭巾 胴:ウマーヤビスチェ 脚:ウマーヤの腰布 右:風精のランプ 左:風精の契約リング LV50 頭:リラダンのピアス 胴:リラダンビスチェ 脚:リラダンパンツ 右:ハレミーブレード 左:ハレミーエッジ ■緑箱小 LV10 頭:アバーサの壷 胴:バザールベスト青 脚: 右: 左: LV20 頭:ハルドゥンの壷 胴:バザールベスト緑 脚: 右: 左: LV40 頭:ヘビ使いの笛 胴:バザールベスト紫 脚: 右: 左: LV15 頭: 胴: 脚: 右:ジャンビーヤ 左: LV30 頭: 胴: 脚: 右:黄金ジャンビーヤ 左: ■壁紙 風精のランプ壁紙(緑箱小) 水精のランプ壁紙(緑箱小) 炎魔のランプ壁紙(緑箱小)
https://w.atwiki.jp/jagjag/pages/7.html
竜の翼 竜の翼は未入手のため未記入 入力(調査)予定byjagjag 灯火の石×スライムアシッド はじける種子×触媒無し 素材1と素材2が入れ替わっても同じらしいが未検証 灯火の石×触媒無し 灯火の石×スライムアシッド 灯火の石×レモンストーン 灯火の石×フルオリカの霊薬 灯火の石×白い灰 灯火の石×沸騰銀 灯火の石×グリニアの秘薬 灯火の石×エルメタル 灯火の石×トライ・ミスリル 灯火の石×賢者の石 灯火の石×火精の吐息 灯火の石×風精の糸 灯火の石×地精の鱗 灯火の石×水精の涙 灯火の石×輝く角 灯火の石×夜色の羽根 はじける種子×触媒無し はじける種子×スライムアシッド はじける種子×レモンストーン はじける種子×フルオリカの霊薬 はじける種子×白い灰 はじける種子×沸騰銀 はじける種子×グリニアの秘薬 はじける種子×エルメタル はじける種子×トライ・ミスリル はじける種子×賢者の石 はじける種子×火精の吐息 はじける種子×風精の糸 はじける種子×地精の鱗 はじける種子×水精の涙 はじける種子×輝く角 はじける種子×夜色の羽根 魔法合成レシピテンプレ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/iwate-uta/
岩手の歌手、有名な方々を紹介します。 歌手じゃないひともいるかも・・・?
https://w.atwiki.jp/megamiengage/pages/16.html
キャラ情報 間違い等有れば直接編集するかコメントにお願いします カードNo レア 勢力 コスト 兵種 名前 攻撃 防御 知力 速度 スキル 1004 S 星 3 ルーク 小領幸 360 295 7 10 剣士の豪撃Lv2 1006 A 星 3 ナイト エストレイア・ヴィット 350 322 5 14 騎士の豪撃Lv2 1008 A 星 2.5 ビショップ ほしのゆめみ 190 275 17 9 土精の息吹Lv5 1010 B 星 2.5 ルーク 藤林椋 220 360 14 10 防戦万全Lv2 1011 A 星 2.5 ルーク シャルロット=ブランシュ 285 300 7 10 剣士の攻撃Lv3 1012 B 星 2.5 ルーク ラファルー 290 230 4 10 勇気の誓いLv3 1013 C 星 2.5 ルーク エウスリーゼ 290 230 13 10 勇気の誓いLv3 1015 B 星 2 ビショップ ランカ・シロガネ 235 255 5 9 司祭の進軍Lv2 1016 S 星 2.5 ナイト 中津川初 240 260 18 13 破壊の真髄Lv1 1017 B 星 2.5 ルーク リュアナ・ドロワーズ 205 235 8 10 剣士の守備Lv2 1021 B 星 2 ルーク 西村春菜 220 125 4 10 勇気の誓いLv1 1022 B 星 2 ルーク 瓜生桜乃 195 205 13 10 剣士の攻撃Lv2 1023 B 星 2 ポーン エリンシエ・ヤースロップ 55 85 12 8 風精の息吹Lv2 1024 C 星 2 ポーン 橘きっか 55 70 12 8 風精の息吹Lv1 1027 B 星 1.5 ポーン 日乃下香澄 65 55 9 8 土精の息吹Lv2 1028 C 星 1.5 ポーン 椎名香澄 65 45 9 8 土精の息吹Lv1 1030 C 星 2 ルーク カナイ・ジュリアラス 185 170 5 10 剣士の攻撃Lv1 1033 B 星 2 ナイト 芹沢マドカ 170 200 13 13 水精の息吹Lv2 1034 C 星 2 ナイト メイル・シーガル 165 190 13 13 歩兵の攻撃Lv1 1036 A 星 2 ルーク アマネカ・マッハバスター 220 320 15 10 全軍堅守Lv2 1038 A 星 2.5 ビショップ 入巣蒔菜 265 300 16 9 司祭の豪撃Lv2 1039 B 星 2 ビショップ 周防ななの 225 255 8 9 司祭の堅守Lv1 1040 C 星 2 ビショップ 稲乃神香奈恵 205 255 8 9 司祭の剛守Lv1 1041 SS 星 3.5 ルーク エウスリーゼ 400 435 22 10 天賊の才能Lv3 1042 A 星 2.5 ルーク 神野ひかり 280 240 8 10 剣士の豪撃Lv2 1043 A 星 2.5 ナイト 中津川初 290 225 3 14 騎士の突攻Lv1 1049 SS 星 3.5 ナイト 能美クドリャフカ 430 530 16 14 牽制の突攻Lv4 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/chibiribbon/pages/290.html
アバーサの壺Lv40 左 軽 制限1 防37 魅16 運16 ハルドゥンの壺Lv29 左 軽 制限1 防28 魅12 運12 マムーラの頭巾Lv24 頭 軽 制限30 防31 魅13 運13 マムーラビスチェLv36 胸 軽 制限30 防51 魅22 運22 マムーラの腰布Lv39 脚 軽 制限30 防47 魅20 運20 水精の契約リングLv35 左 軽 制限30 防45 魅19 運19 水精のランプLv32 聖杖 制限30 攻3 魔53 魅7 火2 水28 風7 土7 ウマーヤの頭巾Lv22 頭 軽 制限80 防40 魅17 運17 ウマーヤビスチェLv32 胸 軽 制限80 防62 魅26 運26 ウマーヤの腰布Lv24 脚 軽 制限80 防44 魅19 運19 風精の契約リングLv39 左 軽 制限80 防65 魅28 運28 風精のランプLv33 聖杖 制限80 攻5 魔72 魅10 火7 水7 風39 土6 アバーシャの頭巾Lv34 頭 軽 制限120 防72 魅31 運31 アバーシャビスチェLv40 胸 軽 制限120 防96 魅41 運41 アバーシャの腰布Lv30 脚 軽 制限120 防67 魅29 運29 炎魔の契約リングLv40 左 軽 制限120 防87 魅37 運37 炎魔のランプLv40 魔杖 制限120 魔136 火38 水4 風7 土7 熱砂のターバンLv40 頭 普 制限40 防58 魅14 運14 熱砂のファティーグLv33 胸 普 制限40 防59 魅15 運15 熱砂のブーツLv33 脚 普 制限40 防52 魅12 運12 デザートシールドLv37 左 普 制限40 防59 魅15 運15 デザートカタールLv20 剣 制限40 攻44 魅5 早10 黄昏のターバンLv35 頭 重 制限160 防121 魅13 運13 黄昏の闘装Lv21 胸 重 制限160 防96 魅10 運10 黄昏の具足Lv26 脚 重 制限160 防99 魅11 運11 黄昏の残光Lv16 左 重 制限160 防73 魅8 運8 黄昏の鋭刃Lv27 剣 制限160 攻103 魅12 早24
https://w.atwiki.jp/isekaikouryu/pages/1532.html
鼻息も荒く飛び込んできたセイランを出迎えたのはコウカだった。 衛視の副隊長は相変わらず壁に背中を預けて、ぼんやりとした表情で空を見ていた。怪訝そうな視線を向けてくるコウカにセイランは走り寄ると、風精をみなかったかと尋ねた。 「どの風精ですか」 「髭もじゃさんです」 「さあ? その辺にいるんじゃないですか」 そう言ってあくびをしながら肩をすくめる。セイランはコウカに内心見切りをつけると、物干し竿を指差して、Tシャツを一個でいいから下ろしてくれと命令した。 コウカは鼻も引っ掛けなかった。 「もう少し後でやるつもりでおります。ので、申し訳ありませんが、お持ちになりたければご自分でどうぞ」 見切りをつけていたおかげで、セイランは腹を立てなかった。揚げ棒を使って竿を下ろし、干されていたシャツを引っ張って取り出す。手早く物干し竿を元の位置に戻すと、セイランはTシャツを揚げ棒にくくりつけて簡単な旗を作った。原色のTシャツが翻る旗を振り回しながら、セイランは喉も裂けよとばかりに声を張り上げた。 「風精さま! お話があります! お越しください!」 そよ風一つ立たない。背後でコウカが壁に寄りかかりながら小さく口笛を吹いた。 「よろしければ、いったい何事なのか伺っても構いませんかね、公主様?」 セイランはコウカを無視した。再び旗を振り回し、飛び上がり、出来る限りの大声を上げて風精を呼ばわった。 小さな風が辺りをながれ、セイランの耳をなでる。半透明の顔がかすかに浮かび上がり、意味のない囁き声を残しては消えていく。風精たちだった。興味を引かれた名もなき風の精たちがセイランの元に立ち寄り、すぐにまた他のものに気をとられて去っていくのだ。羽音のようなざわめきがあたりを満たし、しかし肝心要の髭もじゃ風精は現れない。 名前を聞いておけばよかったと、セイランは内心歯噛みした。そしてすぐに、件の風精には名前がなかった事を思い出した。これからお願い事をしようかという相手、それも精霊の名前が分からないというのは、なかなか難しい話である。 ――でもそんなの、知ったこっちゃないです。 セイランはもはや迷わない。どうあっても風精を呼び出し、言うことを聞いてもらうつもりでいる。何があってもテンコウを捕まえると決意したのだ。使えるものは何でも使う。使えるものがないならば、どうやってでも手に入れる。立ち止まるという選択肢は、今のセイランにはない。 「風精さま! 風精さま! お願いします! お願いします!」 声を嗄らして叫ぶセイランの背後に、ふと気配が降り立った。 ひげもじゃの風精がそこにいた。見た事もないほどしおれ、うなだれ、生気のない目がセイランを見返している。セイランは旗を地面に突き立てて胸を張った。 「風精さま! お願いがあります! 手伝ってください!」 風精はピクリとも動かない。まるでセイランの言葉が耳に届いていないかのように、焦点のあわない目をどこか遠くに向けている。予想もしていなかった有様にセイランは内心たじろいだが、どうにか踏みとどまった。 ――絶対引けないです。 テンコウは犬かもしれないが、逃げ足だけは異様に速い。セイランがあたりに漂う名もない風精に呼びかけ、助力を願ったとして、テンコウに追いつき、捕まえる事ができるかどうかは疑わしい。何より、移り気な風精にどれほど言う事を聞かせられるものか、聞かせられるとして代わりに何を要求されるものか、セイランにはいまひとつ確信が持てなかった。テンコウ以外の風精を相手した事など、数えるほどしかないのである。 しかし、眼前の髭もじゃ風精ならば話は別だ。 この風精は決まった形をとり、人一人屋根の上に投げ上げられるだけの強い力を持っている。セイランとは面識があり、しかもセイランは風精のほしがっていたTシャツを持っているのだ。無論、Tシャツはセイランのものではないのだが。 ――構うもんですか。 旗ざおからTシャツを外し、竿を投げ捨て、セイランはTシャツを風精にかざした。 「風精さま、ご所望だったこれを差し上げます! だから、わたしのお願いを聞いてください! ねえってば!」 ようやく、風精の目が動いた。かすれた笛のような声が、風精の髭の間から滑り出した。 「もう、いらないです」 セイランは耳を疑った。 「いらないって、どういう事ですか。あんなにほしがってたじゃないですか」 「もういらないです」と風精は掌に顔をうずめた。「もう間に合わないです」 「めそめそしないでください! なんですか、間に合わないって何の事ですか!」 食って掛かりながらも、そういえば前にもそんな事を言っていた、とセイランは思い出した。 『Tシャツなんかどうするんですか』『着飾ります』 『じゃあ後であげます』『今すぐもらえませんか』 そう、あれはちょうど、白王の先触れが訪れる直前の事だった。風精は奇妙に焦っていた。そうしてわけもなく消えうせた。まるで何かを諦めるように。それこそ、何かに間に合わなかった時のように。 もう間に合わない。何に? 着飾らなければいけない。なぜ? 答えは自然と形をとり、セイランの腑に落ちた。 「――白王様ですね?」 風精が体を震わせた。まるで石でも投げられたかのように、風精は身を縮めてセイランをちらちらと見やった。セイランの言葉は、まさしく風精の心臓を捉えているようだった。セイランは勢い込んだ。 「おめかしして、白王様をお出迎えしたかったんですね?」 風精はこくんとうなずいた。髭もじゃのごつい体躯に似合わない、子供のようなしぐさだった。心細いのだ。セイランは少し表情を緩めた。 「あの、別に今からでも、お目通りしたらいいんじゃないですか。これ着て。なんなら、私が紹介しますよ。だから手伝ってください」 そう言ってTシャツを差し出しても、風精はいやいやをするように体を揺らすばかりである。 「――白王様に、お願い事があるのです」 風精が、ぼそりと言葉をこぼした。 「お願い事があるので、きちんとした格好でお会いしたかったのです。きちんとした格好で、一番最初にお出迎えして、きちんとしたわたしをみせて、白王様をびっくりさせてあげたかった。それからお願いを聞いてもらいたかったのです。でも、もう出来ません。白王様は私の事に気がついています。びっくりさせてあげられません。計画がだめになってしまいました。とても悲しいです。わたしはとても、悲しいです」 風精は、セイランが思っても見なかったほどに饒舌だった。目には大粒の涙が光っていた。思いもかけない光景に、セイランは少し勢いを落とした。 「あの、失礼ですけど、どんなお願い事なんですか?」 「恥ずかしいので言えません」 「あの、今からでも白王様に紹介してあげられますよ。白王様は私の友達なんです。それに、白王様に会うのに贈り物なんていらないですよ。白王様はいい人です。きっと、あなたのお願い事を聞いて――」 「それじゃだめなんです」 風精は頑なだった。 「とても大事なお願いなんです。大事なお願いをするのですから、きちんとしなくてはならないのです。白王様に認めてもらえるだけのことをしてからでなければ、白王様から何も受け取れないのです。そうでなくてはいけないのです」 訥々と語られた言葉は、セイランの心に響くものだった。 確かに白王は何でも与えてくれるだろう。白王はそういう人である。けれど、受け取る側だってただ与えられるだけで満足することなどないのだ。たくさん与えられれば与えられるほど、白王様が大事な人であればあるほど、何かお返しをしなくてはと思う。逆に何かを受け取るつもりであれば、あらかじめ何かをしてあげてからでなければ収まりが悪いのだ。 セイランと風精は、まさしく同じことで悩んでいるのだ。どうすれば、白王を喜ばせられるか? 恩返しが出来るのか? セイランは、その答えを知っている。 風精は、その答えに至るための力を持っている。 今こそ、二つが合わさるべき時だった。 「風精さま」 うつむいていた風精が、顔を上げた。セイランは胸を張り、姿勢を正して、飛び切りの笑顔を作った。難しい事ではなかった。セイランの中からあふれ出る活力ときたら、今にも風を巻き起こさんばかりだった。 「Tシャツを見せてあげるより、もっと良い贈り物があります。テンコウです。私の風精です。白王様はテンコウに会うために、わざわざ帝国を縦断してきたんですよ。知ってましたか?そのテンコウが、今は逃げてるんです。白王様に会いたくないからって、逃げ出しちゃったんです。困ったもんですよね? だから、誰かがテンコウを捕まえて、白王様のもとに連れて行けば、きっと白王様はものすごく喜びますよ。そして、捕まえてくれた人にとても感謝するはずですよ。白王様はテンコウの事が大好きなんです。会えなくてさびしがってるんです。だから、絶対喜んでくれます。どんなお願い事だって聞いてくれます。 ほら、笑ってください! 元気を出してください! あなたが捕まえるんですよ! ほら、捕まえにいきましょう! 今すぐ!」 一気に言い終わると、セイランは髭もじゃの風精にしがみついた。おずおずとセイランを抱きかかえる風精の瞳に、小さな理解がともった。 「テンコウ殿を捕まえたら、白王様は願い事を聞いてくださるんですね?」 セイランは深々とうなずいた。それが合図になった。 風精はセイランを抱えたまま、一息に飛び上がった。成り行きを横で見ていたコウカが立ち上がり、何事か叫ぶのをセイランは視界の片隅に捉えていた。そんなコウカの姿もあっという間に小さくなり、セイランはいまや、はるか上空から市城を見下ろしていた。 セイランは一度、兄のハンリョウに連れられて、燕条塔に登った事がある。 大都、いや帝国でも一番高い塔だ。糸のように細く伸ばされた何千何万本もの鋼の柱を編み上げ、塔の形に仕上げたのは歴代の玄王たち。大地に張り付いて生きる精霊達に、高所からの景色を贈るために作られた展望台だ。精霊達は金属の網を伝いながら高みに上り、見た事もない光景に目を瞠る。人間の立ち入りも許されていて、こちらは塔の中にめぐらされた螺旋階段を登りながら、金属の網の間から外を眺める仕組みになっている。見物人でごったがえする塔を登ったとき、階段と人ごみとに疲れて泣いていたセイランは、最上階から大都を見下ろすに当たって涙をあっさり引込めたものだった。それほどにも印象的な光景だったのだ。 今セイランが見ているのも、燕条塔からの景色に決して劣るものではなかった。 市城の全てが目に入る。城壁も、塔も、交差する大路も一望できる。最も印象的なのは市城の中心で金色に燃え盛る界門だ。少し目を転ずれば、遠くには大都の建物が立ち並んでいるのが分かる。天に向かって伸びる燕条塔すら見えるのだ。 テンコウの力で、セイランが空を飛ぶことはよくある。しかし、これほどまで高く飛び上がることはめったにない。セイランの行動範囲はせいぜい屋根の上か、そこから少し上がるぐらいに限定されていたのだ。少なくとも、これまでは。 風精はどんどん高度を上げていく。人が豆のように小さく見える。思わずセイランは固唾を呑み、風精にしがみついた。もじゃもじゃの胸毛が、セイランの鼻先をくすぐった。 風精はセイランを抱えたまま、じっと市城を見下ろしている。 「あの、風精さま?」 「はい」 「あの、テンコウを追いかけてほしいんですけど」 「はい」 「――風精さま?」 「テンコウ殿が、どこにいるのか、分かりません」 あっけらかんと風精は言う。いわれてみれば、いかにもその通りである。セイランは脱力感を覚えた。 「わ、私もわかんないですけど、じゃあ何でここに来たんですか」 「上からなら見えるかと思いました」 セイランは手のひらほどに小さくなった市城を見下ろし、目を凝らし、いま見つめているのは果たして屋根か人の頭かということを見極めようとして失敗した。当然、テンコウの姿など影も形もない。たとえそこにいるのだとしても、発見不能である。 「見えないですね」 風精が重々しくうなずいた。その髭もじゃの顔立ちとあいまって、なにやらすごく頼りがいのあるように見える。だがしかし、間違いなくその中身は空っぽである。セイランはこれと同じような人を知っていた。義理の兄の一人だ。狐人貴族の次男坊で、茶碗でも噛み砕けそうな顎と颪がねみたいな髭の持ち主なのに、胃腸も気も弱くてしかも要領も悪いのである。姉である冥鏡公主レイハがどうしてあんな男と結婚したのかと問われて「黙ってるときのあの人はなんだかものすごい説得力だったのよねぇ」と答えているのを、セイランはひそかに耳にした事がある。 セイランはこめかみを揉み解した。セイランとしたことが、大事な事を忘れていた。風精は後先をあまり考えないのである。 「あの、じゃあもうちょっと、低いところから見たらいいんじゃないですか。それとも、あちこち飛んで探し回るとか」 「そうですね」 風精は重々しくうなずき、即座に行動に移った。 悲鳴を上げる暇もなかった。まるで墜落するように、風精はセイランを抱えたまま地面へと急降下した。 叩きつけられる寸前で制動を掛け、そのまま地面に沿って飛ぶ。人々の足元をすさまじい速さでかすめながら、でたらめに方向を変えては加速する。土を巻き上げ、衣の裾を翻し、地面に転がっているものをなんでも吹き飛ばしながら、風精とセイランはやたらめったらに飛び回った。 逃げまどう人々に内心わびつつも、セイランはそれどころではない。胃の中身がせり上がってきて、外へ出すようにと暴れ始めているのだ。胃の中身をなだめながら言葉を搾り出すのに、セイランはこれまでにした事がないほどの努力を必要とした。 「ふ、ふうせ、い、さま」 「なんですか」 「あの、もうちょっと、押さえ、うえぷ」 「なんですか?」 「押さえ、あの、きもちわるい、です」 「そうですか」 「止まって、くだ、さい」 止まった。 直前にセイランが思い直したことには、「ゆっくり止まってください」と言うべきだったのである。 風精は何のためらいもなく一気に制動を掛け、十字路の真ん中に埃の渦を巻き上げた。それでも勢いは殺せず、セイランたちはちょうど十字路に侵入しつつあった車に正面からぶつかりそうになった。 どうにかかわせたのは奇跡としか言いようがない。 セイランは道に転がり、投げ出された。摩り下ろされていないかどうか顔を触って確かめていると、横転した車の影から立ち上がる影があった。いかにも能天気な面立ちの異人である。 「やあ、セイランちゃん」 シュウだった。セイランの傍らにたたずむ風精に少したじろぐも、風精は完全にシュウを無視している。それでも一応頭を下げて、シュウはセイランに顔を向けた。 「なんだか知らないけど、取り込んでるみたいだね」 埃を払い、車から投げ出された木箱に目をやるとシュウはわずかに顔をゆがめた。蓋の外れた箱の一つからは、わらと油紙に包まれた何かが顔を出している。足元に転がってきたかけらの一つを取り上げて、セイランは首をかしげた。陶器の破片だ。それに、こちらは金箔をふんだんに使った布張子の人形。厄魔を怒鳴りつけて退ける虎声女の顔は破れて、中から竹ひごが飛び出している。 「一体何やってるんですか?」 「僕もそれ聞こうと思ってたんだよ」 頭をかきながらシュウは肩をすくめた。「一応僕のほうから言っとくと、美術品運んでたんだ。ほら、例のカンペイさんところから持ち出す奴ね。元美術品って言うべきかな。まあいいや。手間が省けたよ」 ようやく、セイランの心に理解が追いついてきた。今までにも飛び回るセイランと風精は色々なものをだめにしてきたはずだが、これはその中でも一番高価なもののはずだ。 「あ、あの、ごめんなさい」 「いや、気にする必要ないよ。どうせ少しは埃で汚さないといけなかったから。知ってたかな、美術品じゃなくて民芸品とか、ゴミって扱いのほうが税関とおりやすいんだよ」 「そうなんですか」 「まあカンペイさんは気を悪くするかもしれないけどね。今回のはとっておきだって言ってたんだよ。いつもの蔵出しとは比べ物にならないぐらい高価な代物だって言ってた。金が入ったから、商売の手を広げるんだって」 セイランの脳裏に、手形を掴んで走り去るカンペイの姿がよぎった。 「それは別にいいです」 「かもね。今のカンペイさんなら食事抜かされても文句言わないと思うよ。いつのまにか金もとりもどしてたし。ありがとうね、セイランちゃん」 「へ?」 「例のマオの金の事だよ。セイランちゃんが確保してくれたんでしょ? どうやったかは知らないけど」 「――違います」 「ふぅん?」 「私がお金を用意したんじゃないんです。白王様が、あの、他の人が用意してくれたんです」 「そうなんだ?」 「そうなんです」 暗い思いがセイランの心に忍び寄り、その柔らかな部分をちくりと刺す。じくじくと染み出しそうになる何かを、セイランは腹に力をこめて振り払った。 一刻も早く、テンコウを見つけなくてはいけない。寄り道している暇はないのだ。 「そんなことより、あの、シュウさん、テンコウ見ませんでしたか?」 「見たよ」 「本当ですか? あの、どこで」 シュウはぽかんとセイランを見返し、なにやら意味深な笑みを浮かべ始めた。 「そういえばセイランちゃん、今朝方テンコウにひどい事されたんだっけね。そのお説教かい?」 「そんなところです。どこで見たんですか、私急ぐんです」 「やっぱり腹立ってきたのかい? 無理もないと思うよ」 「どうでもいいじゃないですか、そんな事! 急ぐんですってば!」 「じゃあ教えてあげるけど、今はセイランちゃんの後ろにいるよ」 「――へ?」 「そーっと振り向いてごらん」 素っ頓狂な声を上げずにすんだのは、セイランの自制心がここ一番の見事な働きを見せたためである。いかにも何の気なしに振り向いたセイランが見出したのは、地面に転がる箱から頭を突き出してあえいでいる真っ白な犬の姿だった。帝国一の馬鹿犬、わけもなく箱にはまる――という有様を披露しているのは、間違いなくテンコウである。 脱力は一瞬、怒りも一瞬、セイランの頭は芯から冷え切り、冴え渡った。これほどの機会はない。テンコウの逃げ足がどれぐらいのものであるとしても、今は完全に役立たずになっている。今しかないのだ。 「さっき、箱詰めしてたらやってきてね。どうしても入れてくれって頼むから入れてあげたん――」 「風精さま!」 地面を眺めて押し黙っていた風精が顔を上げた。セイランは抜け出そうともがいているテンコウを指差し、声を張り上げた。 「あれ! テンコウです! 捕まえてください」 「はい」 風精の腕が伸びた。テンコウが収まっている箱をがっしと掴み、持ち上げる。抜け出そうと体を揺さぶるテンコウをものともせず、風精はあたりに転がっていた板で箱にふたをすると、セイランに差し出した。ばたばたと暴れる箱を押さえつけている風精の腕には筋肉が盛り上がっている。 実にあっさり捕まった。 「やった――」 歓声をあげかけたセイランの目の前で、箱がきしんだ。 箱がたわみ、ゆがみ、大きく形を変えているのは、風精がとんでもない力を掛けているためだ。みしみしと音を立てる箱はまるで柔軟な餅のようにこねくり回され、明らかに圧力に耐えかねて崩れかけている。言葉を失って後ずさったセイランの目の前で、遂に箱がつぶれはじめた。 一瞬の後、箱はあっさり爆発した。あたり一面に撒き散らされた木っ端から、セイランは顔を庇った。 「にゃあああああ!」 解き放たれたテンコウは、追いすがる風精の両腕をいとも簡単にすり抜けた。ぶんぶんとあたりを飛び回り、甲高い鳴き声を響かせながら、テンコウは加速して道を曲がり、視界から消えうせた。 舞い上がった埃が落ちなくなるまで、しばらくの時間を要した。 「逃げましたな」 風精が事も無げに言った。 セイランはひそかに、この風精に助けを求めたことを後悔し始めていた。確かに力は強い。しかし、どうにも一筋縄ではいかない相手である。色々言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、セイランは顎を上げた。 「風精さま、追いかけましょう」 「はい」 セイランの伸ばした手を取り、風精はセイランを抱えあげた。 テンコウの脚は速かった。その速さはセイランの予想を大幅に裏切っていた。 始めのうち、テンコウは上空へと逃げた。視界をさえぎるものの何一つない場所で、テンコウは存分に逃げ回った。風精も中々の速さで追いすがるのだが、テンコウには敵わない。何より、こちらにはセイランという重りを抱えているのだ。壁に投げつけられた石が跳ね返るような急角度で自在に曲がるテンコウに追いつこうとするたびに、セイランは振り回されてどちらが地面かも分からなくなる有様。風精に必死にしがみつくだけで精一杯である。 セイランは早々に見切りをつけ、風精を止まらせた。息を荒げるセイランと風精とは対照的に、テンコウは余裕綽々である。 「テンコウ、おとなしく、して、くださ、い!」 いやです、とテンコウはいい、自分の尻を追いかけてぐるぐる回り始めた。空中に円を描く白い綿毛を眺めるほどに、セイランの中で吐き気が膨らんでいく。必死に呼吸を整えて、セイランは大声を出した。 「テンコウ! いう事を聞きなさい! でないとごはん抜きにしますよ!」 テンコウの動きがはたと止まった。途方もない裏切りを受けたような目で、テンコウはセイランを見やる。突き出された舌が、落ちつかなげに引っ込み、また突き出された。 この一言は実に効いたようだった。セイランは勢い込んで言葉を継いだ。 「そうです。そのままおとなしく止まってなさい。おとなしくしてたら、おいしいものを食べさせてあげますから」 たとえばどんな? とテンコウが首をかしげた。 セイランはしばし悩んだ末、ミン爺の焼き鳥を思い浮かべた。ミン爺の焼き鳥には特別な工夫がいくつも施してあって、たとえばその一つはタレだ。肉が漬け込んであるタレはかの大サクメイから直に授かったという触れ込みで、甘味を中心にすえながらもその味わいは千変万化、どんなクズ肉ですら食べたもののほっぺたを落とす一品へと変える魔法のタレだ。実際、ミン爺はタレのすばらしさを味わってもらうためにわざとクズ肉を仕入れては調理しているというのは有名な話だ。安くて旨いのだから、文句を言う筋合いは誰にもない。セイランも贔屓にしている隠れた名店の一つである。 「きちんとしてたら、ミン爺の焼き鳥をあげますよ」 セイランがそういうと、テンコウは顔を輝かせた。 だからいう事を聞け、とセイランが言おうとしたときには、既にテンコウの姿は消えうせている。 どこへ行ったのか、といえば、考えるまでもない。ミン爺のところに決まっている。こめかみを揉み解す時間すら惜しかった。セイランは声を張り上げた。 「風精さま! ミン爺のところへ」 「はい」 セイランたちは最短距離をたどり、ミン爺の屋台の真上から飛来した。ミン爺はセイランを見返すと、挨拶もそこそこにテンコウが持ち去った焼き鳥の料金を要求した。しぶしぶ財布を取り出すセイランの視界の隅では、今しも見覚えのあるふわふわが人ごみの中に飛び込みつつある。セイランは実に手早く代金を払うと、再び風精と共にテンコウを追いかけた。 そうして、何度も何度もセイランはテンコウに追いつき、何度も何度も振り切られた。 もはや食事抜きの脅しですらテンコウを留めることはできなかった。テンコウはありとあらゆる小路に飛び込み、くぐれるものは何でもくぐり、ひっくり返して面白そうなものはごみためから八百屋の果物まで残さずひっくり返した。セイランたちが力尽きて止まると自分も足を止め、追いかけてくるのをじっと待つ。セイランたちがよろよろと追いすがると、鳴き声をあげてまた飛び去る。何かの遊びだと思っている様子である。 何軒目の屋台を底からひっくり返し、怒号を背中に浴びながら、セイランは高度を上げるよう風精に命じた。 きりがない。 テンコウの足は思っていたよりはるかに速い。ただの追いかけっこでは、セイランたちに勝ち目はないらしい。追いつくには、何かの工夫が必要である。眼下の街を見下ろしながら、セイランは必死に頭を捻った。 ――どうやって? 頭を逆さに振れば名案が転がり出てくるというのなら、とっくに何か出てきていい頃間である。セイランは散々振り回された頭を押さえると、気遣わしげに見やる風精から顔をそらして目を瞑った。浮かんできたのは名案ではなく、吐き気である。戻しそうになる口元をぬぐい、セイランはふと、自分がTシャツを握り締めたままここまできてしまっていたことに気が付いた。せっかく綺麗に洗濯されていたTシャツは埃とセイランのよだれとに塗れて、ひどい有様である。 ――これでテンコウを釣れないでしょうか。 そんな胡乱な考えが、セイランの頭をゆっくりよぎる。 セイランの頭にあるのは、躍字を貼り付けたTシャツをもぐもぐやっているテンコウの姿である。あれが単なる気まぐれだったのかは分からない。口に入りさえすれば何でもよかった可能性もある。しかし、テンコウがTシャツを気に入っているように見えたことは紛れもない事実だった。今は四の五の言っていられない。ほんの少しでも可能性があるのならば、賭けてみるに越した事はない。何より、セイランには余裕がないのだ。 どうやってテンコウの目に入れるか――と思案しだして、セイランはふと風精の視線に気がついた。セイランの手の中でぐしゃぐしゃになったTシャツに目を据え、瞬き一つしていない。何事か言いたげな風精に、セイランはTシャツをかざして見せた。 「風精さま、あの、これが何か――」 「着ます」 「へ?」 「いまのままでは、テンコウ殿を捕まえられません」 「それは、そうですね」 「しかし、それを着れば、テンコウ殿を捕まえられます」 「そ、そうなんですか」 なんともつながらない物言いである。服を身につける事と、テンコウを追いかける事に何の関係が――と言いかけて、セイランは思いなおした。もともと、着飾りたいと言っていたのは風精である。白王を驚かせたいがために着飾るのだとばかり思っていたが、どうも事情が違うらしい。ひょっとすると、服を着る事で、何か新しい力が出せるようになるのかもしれない。年始の儀式でおとぎ話の登場人物や剣聖たちの仮装をしたとき、なにか別物になれたような気分をセイランが感じるように。 仮装にしては地味すぎないかなどと考えながら、セイランはTシャツを風精に渡した。 「ありがとうございます」 セイランを片手で抱え込んだまま、風精はもう片方の手でTシャツを受け取り、おもむろに自分の胸の中に押し込んだ。目を瞠るセイランの前でTシャツはずぶずぶと風性の体にもぐりこみ、かと思えば内側から浮かび上がってきて、きちんと風精の体を覆った。 「袖を通すのは難しいですので」 セイランを抱えた手を示しながら風精は言う。いかにもその通りであるとセイランは変に納得した。風精のまとうTシャツからはいつの間にか染みも取れて乾き、生地は筋肉によって弾けんばかりに盛り上がっている。思わずセイランは手を伸ばし、風精の胸元をなでた。シャツの内側から噴出している風に手を当てると、押し返されるような弾力がある。生地の手触りとあいまって、中々面白い感触である。気分よく撫で回していると、風精と目があった。セイランは思わずどぎまぎして手を引込めた。 「これはとてもよいものです。異界の息吹を感じます」 風精が重々しくうなずいた。髭もじゃの間に埋まっているような目が、今は確かに輝いている。力強い自信があふれるその姿は、今までの風精とは一線を画するものだ。 「やはり、これならうまくいくと思います」 風精が、ぱっと腕を突き出した。 握りこんだ拳を下ろし、ぐいと腕を曲げる。重い何かを引っ張り上げるように、風精の腕にこぶが膨らむ。気合とともに風精が腕を振りぬくと、まるで栓が抜けでもしたように烈風が吹き上がった。顔を庇ったセイランが手を下ろすと、そこには見た事もない光景があった。 Tシャツが、空に舞い上がっていた。 まるで彩り豊かな蛇のように、何十枚ものTシャツがきちんと列を成していた。衛視の詰め所に干されていたはずのTシャツの残りが群れを為して街の上を飛び回り、人々が指差すとそれに応えるようにぐるぐると回った。風精が腕を振るうにつれて、Tシャツは自由自在に空を覆う。ぱっと広がっては群れ集まり、かと思えば円を、四角を、五角形を描いて次々とその配置を変える。まるで一つの生き物のように息のあった動きは、すべてTシャツを吹き上げている風によって作り出されているのだ。 風精が見せる盗布の技でも、これは類を見ないほど手の込んだものだった。 「すごい――すごいです!」 歓声をあげるセイランに、風精はまじめくさった態度で応える。再び風精が腕を振り上げると、Tシャツは再び列を成して宙を走り、あっという間にセイランたちの所へと昇ってきた。Tシャツは円陣を組み、皇帝に跪く臣下のようにセイランたちを取り囲んだ。風精が満足げなため息を漏らし、ばっと手を伸ばして拳を握りこんだ。 長い長い時間を掛けて、風精はたっぷりと息を吸い込んだ。まるで風船のように膨らんだ胸郭に溜め込んだ空気を、風精は一息に解き放った。 「聞け! 聞け! 我がともがらよ! 虚空に解ける声なき声たちよ!」 発された大音声はセイランを腹のそこから揺さぶり、大気をびりびりと震わせる。風精の言葉は風に乗って当たり一面に響き渡り、木霊が一拍遅れて返事を投げ返す。そんな木霊の中に、曖昧な言葉がにじみ出はじめた。木霊たちの言葉だ。 ――何? ――何かあるの? ――大きい声だ ――変な服 ――何? セイランたちの周囲で風が揺らめき、透き通る輪郭がちらちらと姿を現しはじめる。呼び寄せられた無数の風たちが囁きかわし、くすくすと笑い声を上げる。 「これなるは異界よりもたらされし装束なり! 見よ! この類稀なる織りの技! いかなる風も滑らかに通すこの精妙なる生地! 縫いこまれしは異界の理! この装束を纏い、我は大いなる力を得たり! 見よ! そして触れよ! わが力の源を取り、その身に抱け!」 風精の腕に筋肉が盛り上がる。体の中から噴出する空気の流れが、取り付いているセイランの顔をなでていく。寄り集まった風精たちが、風精の言葉にざわめいた。始めは恐る恐る、やがては興味深げに、風たちはTシャツに身を摺り寄せた。 ――なにこれ ――変 ――変な手触り ――おもしろい ――変な服 毛布をくぐって遊ぶ子供のように、風たちはTシャツに裾から飛び込んで頭のほうへ抜ける。我も我もとTシャツに殺到するうちに、残響するさざめきがだんだんとはっきりした形をとり始めた。もはや風たちは透き通ってはいなかった。短い袖から右腕が、左腕が突き出した。膨らんだ胴体ははみだして宙に解ける尻尾となり、最後に飛び出した頭はいずれも風精の髭もじゃ面だった。風たちがお互いの顔を見合わせると、爆笑がはじけた。伸ばした手で、風たちはお互いの髭をむしり、引っこ抜いてまた笑った。 力弱き風精たちに、拠り所を与えて形を取らせる。『五法』に言う「招風・顕」の技法である。 セイランの目の前で、全てのTシャツに精霊達が宿った。風精の姿を真似た風たちは満足げにうなずき交わすと、セイランたちの周りをぐるぐると飛び回った。 『ははは、ははは』 『なるほど』 『なるほど』 『これは確かに面白い』 『この肌触りは面白い』 『この装束はいかにも面白い』 高らかに笑い声を上げる風たちが、一部の狂いもなく同時に口を開く。四方八方から投げかけられる声が、セイランたちを押し包んだ。声はまるで毬のように投げ放たれ、反対側の風に受け止められて投げ返される。わんわんと反響する声は、まるで透き通る洞穴の中にいるような感覚をセイランに抱かせた。 「気に入ってもらえて何より」 『すばらしい贈り物だ』 『ありがたい戴き物だ』 『それで?』 『それで?』 『それで?』 風たちがいっせいにその動きを止めた。いくつもの光り輝く瞳が、瞬きもせずセイランたちを注視した。 『我らに何を望む?』 『我らに何を求める?』 『我らに何を成し遂げさせる?』 風精は応える代わりに、セイランにうなずきかけた。セイランもまた、風精にうなずき返した。風精の腕に抱かれながら、セイランはあたり一面に充満する風たちに向けて、精一杯大きな声を張り上げた。 「お願いがあります。テンコウを、あの、私の風精を捕まえたいんです。どうか、どうか手伝ってください」 『テンコウ?』 『テンコウ』 『テンコウか』 『あれか』 『あれだ』 『あれに違いない』 テンコウの名に、風たちがざわめいた。風精のそれをまねた髭もじゃの額に、深い皺がよった。 『あれは難しい』 『あれは速い』 『あれは賢い』 『あれは力強い』 『あれを捕まえるのはとほうもなく難しい』 『あれは日に千里を駆け、万の言葉を宿し、際限なくどこまでも吹き渡る、そうした風だ』 思いもかけぬ言葉が、風たちの間から飛び出した。足の速さはさておき、他はいずれもテンコウには全く当てはまらないものである。セイランの知る限り、テンコウは人語も知らず空飛ぶだけの犬に過ぎないのだ。なにか勘違いがあるのではないかと思わず口を挟もうとしたセイランを、風精がそっと押さえ、代わりに口を開いた。静かな自信に裏打ちされる、狙い済ました一言だ。 「もしかの風を追い詰めたならば、この地に御幸されている白王様をも感嘆させられよう。この力を見せるよい機会に違いない」 『確かに』 『いかにも』 『その通りだ』 どよめきが木霊し、こらえがたい歓声となってはじけた。力にみちた言葉が、あたり一面に充満した。 『この異界の装束が、なにやら力を与えてくれる』 『この装束には、異界の息吹が宿っている』 『この装束を、この力を、白王様にお目に掛けたい』 『さぞや目を引くことだろう』 『試してみたい』 『力試しだ』 大気が熱を帯び、揺らめき、心臓の鼓動のように波打った。いや、これは確かに風たちの鼓動なのだ。セイランや風精のもたらしたTシャツによって命と力とを吹き込まれた精霊達の喜びと意気込みが、セイランの身も心も揺さぶっているのだ。 セイランは自分を抱える風精に振り返った。髭もじゃの顔立ちが、セイランを見返していた。Tシャツが欲しいとうろたえていた風精の姿はそこにはなかった。テンコウの入った箱を破り、呆けていた風精の姿はそこにはなかった。そこにあるのは澄み通った意思と確かな知性、明白な自信を備えた髭もじゃの貴公子の姿だった。 自信だ、とセイランは思った。目的地を見失って吹きすさんでいた風が、目標を見出して力を得たのだ。Tシャツがそのきっかけとなった。自らを着飾り、異界の息吹を力とし、その力で為すべきことを見つけだして、いくらもたたない間に風精は成長したのだ。無地の紙に輪郭を引けば、形が浮き上がってくるように。セイランはそうはっきりと理解した。 なんと手ごわい追っ手になるだろうと、セイランは思った。テンコウを捕まえるなど、今の風精には朝飯前に違いない。セイランは腹のそこから笑った。こんなにも愉快な事はなかった。こんなにも、わくわくさせられる事などなかった。 セイランは息を吸い込み、声を張り上げた。 「さあ、風精さま 風の皆様方! お願いがあります!」 風精が、ゆらめく風たちが、セイランの次の言葉を待っていた。セイランは出来る限りそっくり返ると、かき集められる限りの威厳と喜びを持って風精たちに呼びかけた。 「お願いします! そのすごいお力で、テンコウを捕まえてください!」 風たちは応えた。すさまじい力が、市城の空で渦を巻いた。 続く 但し書き 文中における誤り等は全て筆者に責任があります。 ひげもじゃ筋肉ダルマの増殖とは・・・おぞましい! -- (名無しさん) 2013-08-11 20 14 35 思い切って間をすっ飛ばして今作を読んでみた。最初のやりとりだけで何となく思い浮かぶセイランの人となりと、人よりも人らしく人と接しようとする精霊が琴線に触れた -- (名無しさん) 2013-08-21 21 49 56 シャツを掲げ振り回すところからずっと一生懸命なセイランとその風景を想像して胸躍る気分です。少ない口数の中で精霊の気持ちがぐっと込められているように感じて心打たれました。テンコウのやっぱり凄い風精だったのだというのも面白かったです -- (名無しさん) 2017-01-15 17 21 06 名前 コメント すべてのコメントを見る -
https://w.atwiki.jp/narou_matome/pages/91.html
書籍情報 あらすじ 既刊一覧 作者の他作品 関連リンク 書籍情報 タイトル 魔法使いと風精霊 著者 田中二十三 イラスト 大倉ほにか 出版社 林檎プロモーション レーベル フェザー文庫 Nコード N5884Z 連載開始 2011年 12月19日 あらすじ 魔法使いクリスは、契約している風精霊のフウリと共に、故郷の村へと向かっていた。道中、山賊や村の子供に襲撃されつつも、無事にたどり着いたクリスであったが、そこでも当然のように問題ごとが続いた。予期せぬ魔物の襲来と幼馴染の危機、そして無職という現実に、魔法使いが立ち向かう!迫り来る魔の手、埋められる外堀、気づけば子持ちのお父さん!?出稼ぎ行けば、やっぱりそこでも問題が巻き起こり……!そんな魔法使いと精霊の物語! 既刊一覧 タイトル 発売日 分類 ISBN 値段 詳細ページ ストア ランキングデータ 魔法使いと風精霊 2013年 08月27日 文庫 978-4-906878-22-2 600円 林檎プロモーション Amazon honto 書籍データ 作者の他作品 物語の中の人 関連リンク Web版 「魔法使いと風精霊」 特設サイト 魔法使いと風精霊