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出典:【外交】AKB48で百合萌えPart3【歓迎】 レス:198-203 手を洗いながら目の前の鏡を見る。 まだ目は少し赤いままで、誰が見ても泣いたんだということにすぐ気付くだろう。 紙タオルでしっかり手を拭いてから、もう一度鏡に向き直る。 目尻を押さえても赤みは消えない。 さっきのショックが未だに拭いきれないでいた。 次の収録もあるから気持ちを切り替えなきゃいけないなんてことわかっているのに。 自分の手の平を見つめる。 無数に刻まれた線があたしの運命を決めるというのか?そんな馬鹿な。 なんて強気なもう一人のあたしの言葉はすぐに消えた。 だって事実、あたしはその線たちが表すという結果に涙した。 ため息は案外大きくトイレの中に響いた。 今何時だろうと時間を確認しようとするものの、あいにく携帯も何も持ってないことに気付いた。 時間がわからないと不安になる。特にあたしはそういう性分だ。 もう楽屋へ戻ろう。皆の元へ帰ろう。 そう思って最後に自分の両頬をぺちんと叩いた、ちょうどその時だった。 「あっ、ビンゴ」 入ってきたのは今年一番のラッキーガールだった。 別に皮肉んでるわけではない。 実際、麻里子は不幸さえもチャンスに変えてしまいそうな力を持っているように見えた。 物事に対してあまり動じることなく、ありのままを受け入れて、それでいて自分を決して曲げない。 麻里子には強さがあった。自分に負けない強さが。 「…どしたの」 「いやいや探してたんだよ才加ちゃん」 「なんで、」 あたしなんか、と続きそうになって言葉を飲んだ。 今のあたしが言うと僻みにしか聞こえないだろう。 言葉を続ける代わりに顔を背けた。 視界の端で麻里子が不思議そうに首を傾げるのが見えた。 「才加?」 「……探してたって、なんで」 「んー、会いたかったから」 なんの前置きもなく、突然頬にキスされた。 思わず飛びのくと変な動きと目を線にして笑われた。 「なっ、にしてんの!!」 「ほっぺにチュー?」 「それはわかるけど!」 「あ、やっぱ口がよかった?」 反論する前に触れてきた唇はいつもと変わらず柔らかい。 触れてるだけでこうも安心出来るのは一体何故なんだろう。 キスという行為そのものにそういう効果があるのか、それとも麻里子の唇が特別なんだろうか。 しばらくその感触にうっとりしてしまったけど、 今いるのは他に誰か入ってくるかもしれない結構危険な場所なんだということを思い出した。 ばっと身体を離すと麻里子はあからさまに唇を尖らせた。 いや、だってね。言わなくてもわかってるとは思うけど。 麻里子は特に不満も漏らさず、あたしの手首を掴んだ。 「こっち」 「ちょっ」 麻里子が腕をぐいと引いた先は個室だった。 あたしの手は掴んだまま、もう片方の手で鍵をかける。 あたしよりほんの少しだけ高い位置から優しい目でじっと見つめられる。 その目が細くなるのを見るのがあたしは好きだったりする。 「さーやか」 「……なに」 「あたしの運あげるよ」 何か言うより先にまた唇が触れてきた。 あたしは麻里子といると半分以上言葉を吸い取られてしまっている気がする。 どん、と背中に壁を感じる。 麻里子の手がいつのまにかあたしの腰に回されていた。 あたしの手もいつのまにか麻里子の首に回っていた。 さやか、とキスの合間に名前を呼ばれる。 麻里子、と呼び返したいのにそれは叶わない。 代わりにずいぶん短くなった麻里子の髪に指を差し込む。 言葉では伝えられない好きを、代わりに指で。 麻里子にもちゃんと伝わってることはわかってる。 麻里子の手があたしの頭をそっと撫でた。 またあたしの目頭が熱くなる。 本当は誰かにこうしてほしかったのかもしれない。 いや、誰かではなく、きっと麻里子に。 もし一番のラッキーガールじゃなかったとしても、麻里子に、あたしの不幸を蹴散らしてほしかったのかもしれない。 ひとしきりキスし終えると、湿った吐息が唇にかかった。 恥ずかしくなって視線を落とす。いつもこうだ。 麻里子が笑う声が聞こえる。それも、いつもと同じだ。 「……麻里子」 「はい」 「…あんたキスしたいだけでしょ」 なんのことでしょう、ととぼける声はいつもと変わらない。 ばーか、と少し滲んだ声で言うと、反論することもなく麻里子は笑ってまた顔を寄せてくる。 とびきりやさしいキスは、確かにあたしを一番幸せにしてくれた。 end.
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イベント名『混沌』 関連乗員:夕里子 夜・個室5 夕里子「……」 (主人公)『……ゆ、夕里……子?』 夕里子「……」 (主人公)『その恰好は、一体……』 夕里子「SQが寄越してきたのです。 服を替えれば気分も変わるだろう、と」 (主人公)『感想を……言った方がいいだろうか?』 かわいい・似合ってる・正直怖い ▼かわいい (主人公)『とてもかわいらしく見える、と言った』 ▼似合ってる (主人公)『そんな恰好も意外と似合っている、と言った』 ▼正直怖い (主人公)『夕里子がそんな恰好をしていると、なんだか恐ろしい、と言った』 夕里子「黙れ。 誰がお前の意見を求めた?」 ▼(無言) 夕里子「……」 (主人公)『……駄目だ。 夕里子に気圧されて、何も言えない……』 『スキル『反論を封じる』取得』 『スキル『反論を封じる』を取得しました。 『弁護する』などの反論を一切できなくします。 『カリスマ』が40必要です』
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2006年11月24日(金)03時47分-渋沢庚 赤インキが滲んだような暖かい陽射しがあった。 陽の光は谷の下の人家にある若葉に差しこんでいく。若葉は桜だろうか。枝にはわずかながらに花弁が残っていて、それが時折の青い風に吹かれ舞う。蝶がふわふわやっているようである。花弁はそうやって崖下のほうにも落ちてゆく。ぽつりぽつり―――春の名残を惜しむかのような風情だ。 駅の前は少しぬかるんで土はどろりとしていた。水溜りをよけながら人は動く。水溜りは忙しく動く人々をうつしてはきらきらと輝いていた。 駅の近くには赤レンガの工場があってもうもうと煙をたいている。その煙のせいかレンガは少しすすけて年代を感じさせる。その赤レンガ工場にもやっぱり桜が一本あって、晩春の風に若い枝は狂人のように舞う。白い花弁が赤レンガにはえては、泥にまみれるのであった。水溜りが陽光を反射しては怪しく彩色どられている。 大正は晩春の、とある町での話しだ。 軽く拭いた顔や首筋にはちらりとだけ汗が滲んでいる。里子は病院に行った帰りのことを布団の中で思い出していた。じっとしていると床に接している部分が熱くなってくる。布団は硬くて寝心地がいいといえないが、寝返りをうつごとに布団のひんやりとした感触が気持ちよかった。 まだ、お昼で外は陽気だというのに。里子は寝ていないといけない身の不遇を思った。 今朝、病院へ行ったのは、それはそれで気晴らしになった。汽車に乗ると谷の下の我が家が小さく見えて爽快な気分にさせてくれる。家は谷下の町の郊外にあった。里子は決して出たがりな女ではない。むしろ、日ごろは家で家事をやっている方が気が楽なのである。近年は、町を闊歩する女性も増えたと聞くが、里子には到底無理な芸当であった。しかし、こうも家に閉じこもって何もしていないと憂鬱になるものだ。里子が体調を崩したのはつい数日前だったのだが、何しろ良人が心配性なのもので、寝ていろと言って聞かない。家事はすべて女中に任せきりになっている。それでも、たまには台所へ行って家事をする。女中はむしろ里子の味方で良人には黙っていてくれるのだ。そうでもしないと数日のことではあるが本当に気がめいるのだ。 さて、良人は名を京介といったが、物書きなどをやっていて最近はもっぱら陸軍省で露西亜の本の翻訳などを手がけている。仕事は二階の書斎である。 里子は今、京介が仕事しているであろう二階をみてため息をついた。暗い天井は揺れれば埃がふってきそうでこの家が古いことを再認識させられる。 「五月にでもなれば、仕事もあらかた片付いて休暇が取れるだろうから少し早いが夏休みといこうではないか。君は海を見たがっていたね」 京介はそういって海に誘ってくれたのであるがうまい具合に病気と重なってしまった。何故こんな時に。里子はそれでも海が見たかったのであるが、良人は 「それは駄目だ。君は休みたまえ。体には用心しないといけないよ。海はまた何時でもいけるじゃないか」 といって聞かなかった。 そういっている内に京介には仕事が入り、里子は布団の中で楽しまない日々をおくることになった。軍の病院には予約を入れてみたものの、なかなか、診察にはならない。ため息をつくごとに二階の天井が自分に圧力をかけているように感じる。古いということはそれだけ重みがあるということなのだ。 今日は予約を入れていた病院に行くことになって朝早くに家をでたのであるが京介は仕事が忙しいといって結局二人では出られなかった。たまには一緒に町のほうに出てくれればと願っていた。里子は良人のつれなさを恨みこそしなかったものの、そんなにほったらかしにしておくのなら、いっそ、病気のこともかまわずに海に連れて行ってくれればいいのにと思った。海の潮の香りをかぐだけでどんなに気持ちが安らぐことか。 障子から入ってくる薄明かりを受けながら里子はまた寝返りをうった。 障子には庭の桜の陰がおぼろにうつっていて、ゆらゆらと揺れた。せめて、障子だけでも開け放ってしまおうかと思うのだが、つまらないことで良人に何かいわれたらたまらない。それに―――里子はある思いを胸中に秘めていた。 「とにかく、気晴らしにどこかいけたらいいのに。あの人ッたら!」 里子は良人を気分屋の頑固者と見ている。実際、その性格はこのようなかたちであらわれて里子を当惑させるのであるが、それでも憎めない人だと陰で笑っていた。こういうことはよくあることだ。しかも子どもじみている。京介は結局、里子がいないと何もできない。 男とはそういうもの。外では威張り散らしているくせに一人では何もできやしない。困ったお人。 京介はそんなことは露とも知らずにいる。 砂丘に植えられた小ぶりな松や、細やかな砂の波際、藍色の海と空が遠くで交じり合っているのが、里子には脳裏に浮かんだ。それは、四、五年前に新婚旅行で行った海岸の情景であった。里子はその焼けるような赤インクがしみこんだのを思わせる陽射しは嫌いではなったが、それより何より松の枝の先を踊り狂わせる青い海から吹く風が印象に残っていた。その風が強くて里子がよろけたのを京介が支えてくれた。里子はあの海を思い浮かべてみた。あの海に行って景色を眺めながら良人と二人、弁当でも広げたらどんなに楽しいか。また、あの風に吹かれたらどれだけ気晴らしになるか考えた。 里子はそこまで考えて、それなのに―――と思った。 「それなのにあの人ッたら、まったく分かってくださらないのだから」 幾度目かのため息をつきながらまた寝返りをうつ。こういう所在無い、やるせない気持ちを抱くと何かしていないといけないものだ。寝返りをうつことでそれが発散されるとは到底思えない里子であったが、今はそうして気を紛らわすことにしている。 何より、床と接している部分だけ汗ばむのだ。寝返りをうつ時に感じるひんやりとした感触は布団の中の世界しかない里子にとっては十分刺激的であった。 寝返りをうつと襖があって隣の部屋に続いていた。襖をなんとなく見つめていた里子であったが、突然、襖が開いた。 「気分はどうかな?」 京介がすっと顔をだした。 京介は軍服だった。陸軍省に出仕していたのであろうと里子は思った。つまり、さっきまで二階にはいなかったのだ。それなのに二階ばかり見つめていた自分は何なんだろう。しかし、そういった言葉をかけて、それだけ心配してくれるならもうちょっと気を使って何か買ってきてくれるなどできないものかしらと里子は思った。それでもやんわり。 「ええ、おかげさまで。ですが、障子を開けてくださいな。こういうくらい部屋にずっといたのでは気がめいります」 「体に障らんか?」 「ええ、ご心配なさらなくて結構。それより早く開けてくださいな」 京介はつかつかと障子のところまでいって開け放った。障子は少し開閉の不自由があったので力任せに思いっきり引っ張らなくてはならなかった。開け放った途端、ぱっと埃が散った。急に部屋が明るくなったで里子は目を細めた。部屋の中には夕暮れ時の落ちた日が差しこんでわずかに橙に染まった。日が当たって埃がきらきらと輝きながら舞っている。 明るくなった部屋を見て端の方に掛け軸があるのに里子は気づいた。もちろん、前々から分かっていたことではあった。が、部屋が明るくなってものが見えやすくなると、そういうものがあったかと分からせてくれる。陽を入れただけでこうも違うものかと思った。 「医者はなんといってたんだね」 京介は開け放った障子の先の縁側にでんと胡坐をかいて庭をみながら聞いた。その光景すらも里子には面白く見えてならない。 「そのことですが・・・・・・」 里子がためらいがちに言ったので良人は急に向き直って険しい顔になった。 「何か悪い病気なのか?」 里子はまたこれだと思って苦笑せずにはいられなかった。いつだったか、風邪を引いたときなどは医者を引っ張ってつれてきた人だ。 だから、里子はゆっくりと子どもに説明するように行った。そうしないと京介は飲み込めなかったかもしれない。 「いえ、そうじゃないんです。ただ・・・子どもができたみたいです」 京介はぽかんと口を開けて里子を見ていた。里子はくすりと笑って恥ずかしそうにしている。庭に風がすっと吹いて、残っていた花弁をすべて持っていってしまった。雪のように白い花弁が夕暮れの陽に染まってきれいだった。一枚だけ縁側に舞い降りて京介の横に座った。 「そ、そうか・・・それはめでたい。いや、めでたいぞ」 京介は笑い出したが、まだ、何かわかっていない感じだ。唐突に切り出されて唖然としている。 里子はそれを見て微笑んでいるだけだった。 京介はひとしきり喜んでみせると女中に命じて酒を持ってこさせた。里子が「でもまだ用心しないと」というと「祝い酒だ」といって、やはり聞かなかった。 女中に酒を用意させている間に京介は小袖に着替えて上機嫌だった。布団もとっくに片付けて里子に座らせる。里子は着物のよじれを少し元に戻した。 酒がくると、とにかく里子に一口ふくませて、自分が飲み始めた。肴は特になかったが、酒に浮かべた桜の花弁が美しい。 京介は「めでたい、めでたい」といって一人、酒をあおった。 「子どもができたのなら思い残すことはないな。しっかりとした男児をうんでくれよ」 京介は顔を朱に染めている。 「あらあなた。まだお若いじゃありませんか」 「いや、俺は思い残すことがないようにせねばといっているのだ」 「たとえば?」 「伝えなければならぬ思いががあるのなら、そうしておかなければならぬ、ということだよ」 「あら、あなた。私というものがありながらどなたか想いを寄せている方がおられるのですか」 里子はそういってわざと、ぷいとしてみせた。 「ば、馬鹿をいいなさい」 里子はそれをみて笑い出す。京介もまた笑った。 「酒を飲みながら話すというのもいいものだな」 「ええ」 京介はほうと息をつき、会話はやんだ。 里子の頬にはぽっと朱がさしてそれが妙に夕日とあっていた。 庭には、なにやらうっそうとした植物らしきものが生えていて我先にと競い合うように伸びていたが、桜だけはどっしりとかまえていて庭の主のようである。他にかえでやら、竜牙草、銀銭花などが繁茂している。京介はまったく手入れをしない。自然体がいいのだの一点張りで、どうにも雑草を刈るなどということはしなかった。二人はそんな庭を眺めながら杯を重ねた。里子の憂鬱はどこかに逃げている。 ことり、と音がして庭に何かが入ってきた。 二人はぱっとそちらの方を向く。なにやら菖蒲の影で動いているものがあった。 「猫か」 京介がそう呟くと影から猫が出てきた。ブチのついた小さな猫だった。猫はとぼとぼ歩くと、手水鉢によじ登って顔を洗ったり、桜の周りをうろついたりしていた。二人はそれを見ていた。尻尾を振りながらちょこちょこ動き回る。それは、愛らしくて奇妙な動きだった。子どももあんなものかなと、里子は想像してみた。 京介は「つまみだそうか」と聞いたけれどぴしゃりと断られた。そうしている内に猫は散々庭を歩き回りどこかに行ってしまった。 「ねえ、あなた。家でも猫かいましょうか。この子がうまれたら。きっと可愛いでしょうよ」 「そうだな。しかし、その前に海にでも行かないか?」 二人はそういってまた庭を眺めた。
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20話 免罪符 池田里子はごく一般的な主婦だ。 夫と息子の三人で平穏に暮らしていた。 だが、殺し合いに巻き込まれ、彼女の精神状態は非常に悪化していた。 「死にたくない、死にたくない、私はまだ死ぬ訳には……」 愛する夫と息子の元へ何としても帰らなければ。 その一心で、里子は支給された角材を手に持つ。 優勝すれば家に帰れる――あっさりと他人を殺す判断を里子はしてしまう。 ここは海岸、大海原の波が打ち寄せる。 夏場は海水浴場として機能しているのだろう、プレハブ小屋で作られた海の家もある。 「あそこに誰かいるかしら……」 里子の足は海の家へ向かう。 砂浜の砂が靴の中に容赦無く侵入し気分が悪いが我慢する、いちいち落としてもきりが無い。 海の家の建家まで数メートル、と言う所まで来た所で、中から人が出てくる。 20代前半の狼獣人の女性のようだった。 「!」 狼女性は里子に気付き少し驚いた表情を見せた。 里子は角材を振りかぶって、狼女性に殴りかかった。 「であああぁあああああ!!」 狼女性は少し驚きこそしたものの大して動じる事も無く、里子の懐に潜り込んだ。 「ぐうッ!?」 里子は腹部に熱い感覚を感じ動きを止める。 狼女性の持っていた、散髪用の鋏が、里子の腹部に深々と刺さっていた。 「うぐあ、あ」 角材を落とし呻く里子の腹から、狼女性は鋏を引き抜き、もう一回刺した。 内臓が傷付き血が溢れる。 里子の口から赤い液体が流れ出てくる。 「わ、わだシ、は……」 まだ死ぬ訳にはいかない。 だが、容赦無く意識は消失していく。 身体が崩れ落ちるのを感じながら、最期に里子が思い浮かべたのは夫と息子の顔だった。 杉下愛美は、血に濡れた鋏をたった今殺した女性の衣服でよく拭う。 「あなたが私を殺そうとするから悪いのよ……私は悪くない」 その言葉は女性の死体に向けて言ったのだが、自分に言い聞かせる文面でもあった。 愛美は理髪師だった。 3年程付き合っている彼氏もおり、順風満帆と言う訳では無かったが平穏な生活を送っていた。 それが、突然殺し合いに巻き込まれる。 最後の一人にならなければ生きて帰れない死のゲーム。 愛美は乗る事にした。 人は殺したく無かったが、死にたくないし、首輪で主催に命を握られているのだから、やるしか無い。 支給されたのがいつも仕事場で使っている物と全く同じタイプの散髪鋏だったのは、奇遇だった。 「悪くない……人を殺したって、だって、それがルールなんでしょ? このゲームの」 誰に問いかける訳でも無く、自分に言い聞かせるように、愛美は言った。 これから何人も殺さなければいけない自分の殺人への抵抗を薄めるために。 【池田里子 死亡】 【残り38人】 【G-2/海岸/早朝】 【杉下愛美】 [状態]やや精神に異常 [装備]散髪鋏 [持物]基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いに乗り優勝を目指す。 《人物紹介》 【池田里子】 読み:いけだ・さとこ 32歳。専業主婦。夫と10歳になる息子との三人暮らし。 恋愛結婚で、子供にも恵まれ、平穏な生活を送っていた。 【杉下愛美】 読み:すぎした・めぐみ 灰色の狼獣人。26歳の理髪師。3年の付き合いの彼氏がおり仲も良好。 019:覗きは良くないと思います 目次順 021:淫らなのにも理由はある ゲーム開始 池田里子 死亡 ゲーム開始 杉下愛美 044:DISSIDENTS
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20話 免罪符 池田里子はごく一般的な主婦だ。 夫と息子の三人で平穏に暮らしていた。 だが、殺し合いに巻き込まれ、彼女の精神状態は非常に悪化していた。 「死にたくない、死にたくない、私はまだ死ぬ訳には……」 愛する夫と息子の元へ何としても帰らなければ。 その一心で、里子は支給された角材を手に持つ。 優勝すれば家に帰れる――あっさりと他人を殺す判断を里子はしてしまう。 ここは海岸、大海原の波が打ち寄せる。 夏場は海水浴場として機能しているのだろう、プレハブ小屋で作られた海の家もある。 「あそこに誰かいるかしら……」 里子の足は海の家へ向かう。 砂浜の砂が靴の中に容赦無く侵入し気分が悪いが我慢する、いちいち落としてもきりが無い。 海の家の建家まで数メートル、と言う所まで来た所で、中から人が出てくる。 20代前半の狼獣人の女性のようだった。 「!」 狼女性は里子に気付き少し驚いた表情を見せた。 里子は角材を振りかぶって、狼女性に殴りかかった。 「であああぁあああああ!!」 狼女性は少し驚きこそしたものの大して動じる事も無く、里子の懐に潜り込んだ。 「ぐうッ!?」 里子は腹部に熱い感覚を感じ動きを止める。 狼女性の持っていた、散髪用の鋏が、里子の腹部に深々と刺さっていた。 「うぐあ、あ」 角材を落とし呻く里子の腹から、狼女性は鋏を引き抜き、もう一回刺した。 内臓が傷付き血が溢れる。 里子の口から赤い液体が流れ出てくる。 「わ、わだシ、は……」 まだ死ぬ訳にはいかない。 だが、容赦無く意識は消失していく。 身体が崩れ落ちるのを感じながら、最期に里子が思い浮かべたのは夫と息子の顔だった。 杉下愛美は、血に濡れた鋏をたった今殺した女性の衣服でよく拭う。 「あなたが私を殺そうとするから悪いのよ……私は悪くない」 その言葉は女性の死体に向けて言ったのだが、自分に言い聞かせる文面でもあった。 愛美は理髪師だった。 3年程付き合っている彼氏もおり、順風満帆と言う訳では無かったが平穏な生活を送っていた。 それが、突然殺し合いに巻き込まれる。 最後の一人にならなければ生きて帰れない死のゲーム。 愛美は乗る事にした。 人は殺したく無かったが、死にたくないし、首輪で主催に命を握られているのだから、やるしか無い。 支給されたのがいつも仕事場で使っている物と全く同じタイプの散髪鋏だったのは、奇遇だった。 「悪くない……人を殺したって、だって、それがルールなんでしょ? このゲームの」 誰に問いかける訳でも無く、自分に言い聞かせるように、愛美は言った。 これから何人も殺さなければいけない自分の殺人への抵抗を薄めるために。 【池田里子 死亡】 【残り38人】 【G-2/海岸/早朝】 【杉下愛美】 [状態]やや精神に異常 [装備]散髪鋏 [持物]基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いに乗り優勝を目指す。 《人物紹介》 【池田里子】 読み:いけだ・さとこ 32歳。専業主婦。夫と10歳になる息子との三人暮らし。 恋愛結婚で、子供にも恵まれ、平穏な生活を送っていた。 【杉下愛美】 読み:すぎした・めぐみ 灰色の狼獣人。26歳の理髪師。3年の付き合いの彼氏がおり仲も良好。 019:覗きは良くないと思います 目次順 021:淫らなのにも理由はある ゲーム開始 池田里子 死亡 ゲーム開始 杉下愛美
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関連乗員:ラキオ、夕里子 関連条件:ラキオ(バグ) 因みに夕里子にやられる前からも、ラキオは役職騙りをする。 イベント開始会話イベント再スタート会話 イベント中限定夜会話 決着後 イベント終了後 次ループ イベント開始会話 夜・ロビー 夕里子「(主人公)か。 相変わらずお前は歪んでいますね」 (主人公)『……出会い頭にののしられた』 ラキオ「ははッ、夕里子も(主人公)を疑ってるンだ? 確かに(主人公)の態度は不審だからね」 夕里子「疑うまでもない。 (主人公)の歪みは、あまりに露骨ですから」 夕里子「時々、思うのですよ。 全ての元凶は、(主人公)――お前ではないかと」 どういうこと? ▼どういうこと? (主人公)『自分が元凶とはどういうことなのか、と聞いた』 ラキオ「僕にも話が見えないね。 夕里子は何が言いたいンだい?」 ▼(無言) ラキオ「……話が見えないな。 夕里子は何が言いたいンだい?」 夕里子「ふ――ならばラキオ。 お前にも見えるようにしてやろう」 夕里子「お前達は気付いていないのです。 (主人公)とは何者なのか。あるいは何者だったのか」 ラキオ「う…… 夕里子、何のつもりだ? 何も見えないじゃないか」 夕里子「この宇宙そのものが、つじつま合わせのためにお前達を欺いている。 だから、気付くことが出来ない」 夕里子「ふふ、その歪みを―― 今、正してやろう」 ラキオ「うぅ……」 ラキオ「……僕に、何をした? 返答次第では許さないからね」 夕里子「無駄吠えするな。 お前が(主人公)を見れば分かることです」 ラキオ「フン……」 夕里子「さあラキオ。 お前の前に立っているのは――誰ですか?」 ラキオ「……!? どういうことだい? なんで(主人公)がここに居るンだッ!」 夕里子「ふふっ、その鳴き声。 気付いたようですね」 ラキオ「おかしいだろう、こンな事……! 矛盾している! だったら、僕は……」 ラキオ「……気分が、悪い。 僕は、失礼する……」 (主人公)『ラキオは、フラフラと去って行った……』 夕里子「ふ、わずかに認知のズレを正しただけで、あの取り乱しよう。 知るべからず事を知った人間など、あんなものか」 何を知った? ▼何を知った? (主人公)『ラキオは何に気付いたのか、と夕里子に尋ねた』 夕里子「ふふ、ラキオに聞きなさい。 ここで話しては興醒めというもの」 ▼(無言) 夕里子「(主人公)。 お前のどこが歪んでいるのか、お前自身気付いてはいまい?」 夕里子「それを知りたければ、ラキオに聞きなさい。 あの様子では、ふふ、難しいだろうが」 夕里子「さて―― お前とラキオ。二人で踊るがいい。 素晴らしいユニゾンを期待していますよ?」 イベント再スタート会話 夜・ロビー ???「う……」 (主人公)『アッ! またラキオがやられている!』 (主人公)『再びラキオが何かを知り、憎しみを向けてくるのだろう。 今回こそ、ラキオから話を聞き出したいが……』 ラキオ「う、うぁぁ……」 イベント中限定夜会話 ラキオ(1回目) ラキオ「悪いけど、君を見ていると気分が悪くなるンだよね。 出ていってくれない?」 (主人公)『ラキオが何を知っているのか聞きたかったが、取り付く島もない……』 ラキオ(2回目以降) ラキオ「また来たの? 話すことは何も無いよ。 僕は忙しいンだ」 (主人公)『……やはり門前払いされた。 グノーシアがいなくなったら、話を聞けるだろうか?』 決着後 ▼人間側勝利時 ラキオ「……結局、君を始末できなかったな。 全くグノーシアも役に立たないね」 ▼グノーシア勝利時 ラキオ「……よくもまあ、最後まで生き残ったものだね。 だけど残念。いずれここも制圧されるよ」 ラキオ「まあ良いさ。 これで、全部終わりなンだから」 (主人公)『今ならラキオと話ができそうだ。 夕里子から何を知らされたか、教えてくれないだろうか?』 ラキオ「……ああ、なるほど。 (主人公)は何も知らなかったンだ? 君自身の事なのに』 ラキオ「そうか……全く滑稽だな。 君も……僕もね」 ラキオ「……ならば君に問題を出そう。 なに、ちょっとした謎かけだよ」 ラキオ「では問題だ。 僕の出す問題に、正解した方がいいと思う?」 した方がいい・しない方がいい ▼した方がいい (主人公)『それは正解した方がいいだろう、と答えた』 ラキオ「おめでとう。不正解だ」 ▼しない方がいい (主人公)『正解しない方がいいだろう、と答えた』 ラキオ「あはははっ、正解! 残念だったね。正解しない方が良いンだよ?」 ▼(無言) ラキオ「……どうしたンだい? 答えなよ。 僕の問題に、正解した方がいいと思う?」 (再度質問繰り返し、答えるまで進まない) ラキオ「そう、正解なんてしない方が良い問題なのさ。 君自身についても、ね」 ラキオ「何故なら…… 君は、もう消えたはずの存在だからさ」 ラキオ「考えてみなよ。 何故船内にグノーシアが潜んでいることが発覚したと思う?」 誰かが消された ▼誰かが消された (主人公)『もしかしたら、誰かが消されたから? と答えた』 ラキオ「その通り。 まず最初に、グノーシアは消したのさ。そう、君をね」 ▼(無言) ラキオ「それは、人間が消えたからだ。 まず最初に、グノーシアは消したのさ。そう、君をね」 (主人公)『自分が……グノーシアに消された?』 ラキオ「ああ、君は第一被害者。とうに消えたはずなんだ。 だが君はここに居る。 そして、誰も、この矛盾に気付かない」 ラキオ「僕自身、夕里子に妙な事をされるまでは疑問にも思っていなかったよ。 これは一体どういう事なのか?」 ラキオ「この矛盾、夕里子が言う所の歪みについて、ずいぶん考えたものさ。 結果――僕は、ひとつの知見を得た」 ラキオ「即ち、何故バグなどという存在が発覚したのか。 その原因について、だ」 ラキオ「グノーシアについては、まだ良いンだよ。 元々この宇宙で実在が確認されているからね。 だが、バグは違う」 ラキオ「ただそこに居るだけで、宇宙を崩壊させる。 ハッ、お笑い草だよ。そんな代物が何故必要なんだ?」 ラキオ「――それはね。 恐らく、君がいるからだよ」 ラキオ「消えたはずの君が、ここに存在する。 それは摂理を置かす行為。修正すべき歪みだ」 ラキオ「だから―― 宇宙ごと、無かったことにする。 その為に生まれたのが、バグという存在なンだろうね」 ラキオ「そう、君のせいだ。 この違和感、何かが酷く狂ったような感覚は」 ラキオ「そして、君のせいさ。 この宇宙が崩壊するのは、ね」 イベント終了後 次ループ 1日目 セツ「(主人公)が――消えたはず? 何を言っているんだ……」 セツ「いや、私の知る限り、そんな記憶は無いよ。 だけど――」 セツ「その記憶自体が、間違っているかもしれない。 そういう事か……」 セツ「――LeVi。調査できる?」 LeVi『(主人公)様がお消えになった、などの事実は確認できません。 ですが、確かに若干の不整合が見られます』 LeVi『グノーシア汚染確認プロセスで、一部のログが消去されています。 あるいは……』 セツ「なるほど。 昨日のうちに、何者かがグノーシアに消されている。 その可能性は否定できないね」 セツ「もしそれが事実だとしたら…… 何故そのことに、気付かなかったのか……?」 セツ「――(主人公)。これは重要な情報だ。 この件については、私の方でも調べてみようと思う」 セツ「何か分かったら連絡するから。 (主人公)はいつも通り、話し合いに集中して欲しい」
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前ページ次ページNameless Archives/2ちゃんねる・エロパロ板/タイトル記録ミス 題 たぶん少しずれた日常 作者 -- Lunatic Invader -- ゴア 取得元 タイトル記録ミス,http //www2.bbspink.com/eroparo/kako/1060/10603/1060398502 取得日 2005年09月27日 タグ Author ゴア 牝犬 概要&あらすじ ありがちな学園物ドラマ風の一幕。 だが、その実態は、ちょっと違う。これから始まるのは、少しずれた世界の、少しずれた日常。その2/2 ページ 1-2 ご注意:以後の作品の著作権は、作者(書き込み主)にあります。 268 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 48 ID TWSqeZeX 「さー、いくよー」 「あやのからだねっ」 4回戦めである。ハンデとして縄で縛られ、両手を括られた綾乃は、マイクも 持てない。もちろんリモコンの操作などできはしない。 「なに歌わせよっか?」 美也が歌本を捲りながら笑う。最初から、綾乃の希望など聞く気のない言い方 だ。括られた綾乃は、皆で「苛めて上げる」事になっていて、雛子も由里子もそ うねなどと肯いている。側に跪いている綾乃自身、美也の言葉に文句一つ言わず 微笑んでいた。 「こないだの、あれがいいよ。ゆりこが考えたやつ」 雛子が提案したのは、前回のカラオケのときに由里子が考案した責めの事だ。 童謡の歌詞を恥ずかしい痴語に変えて歌わせる、というもので、羞恥系の調教を 受けたMである由里子ならではのアイディアだった。 「おおきなクリちゃんか。よっし。それね」 美也が肯くよりも早く、雛子は曲をリクエストしている。 「あやの、GO!」 雛子に背を押され、ステージに上がる綾乃。 ブラウスの前を開けたまま縄で乳房をくびり出され、下半身は丸出しで、股縄 をかけられている。ストレートのロングヘアで、いかにもお嬢様前とした風貌の 美少女なのに、綾乃は白昼のカラオケボックスでこんな痴態をさらして、しかも うっとりと頬を染めていた。 「おおきなクリの、綾乃です・・・ 私は奴隷・・・何でも、いたします・・・ おおきなクリの、綾乃です・・・」 童謡の歌詞を変えて、自らを辱める歌を歌い出す綾乃だ。調子外れの声なのは、 恥ずかしさのあまり、ではなくて、そう歌うようにあらかじめ命令されているか らだ。綾乃は、この恥ずかしい替え歌を歌うときは、最下位になるように決めら れていた。 真性マゾ娘の綾乃は、こんな責めというか苛めも、ちゃんと受け入れて快感に できる。それに最下位になれば、また罰ゲームという責めを受けられる。だから 綾乃は、喜んで惨めな姿を晒しているのだ。 269 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 48 ID TWSqeZeX 雛子、由里子、美也と歌って、結果は由里子がトップ。ビリは予定通り綾乃だ。 「さすがにビッグ1はきついよー」 上気した顔で、股座から巨根バイブを引き抜く美也だ。 「ふつーのにしていでしょ?」 「いんじゃない?」 雛子が言い、他の二人も肯く。 「それより綾乃の罰ゲームいっちゃお」 デジカメを構えて促す雛子。綾乃がステージに上がり、美也が股間から抜いた ビッグ1バイブを持って続く。 「跪いて、舌出して」 綾乃は美也の命令に従う。美也は、そんな綾乃の眼前に、自分のラブジュース で濡れたバイブを差し出した。 何も言われていないのに、綾乃は伸ばした舌で、バイブを舐め始める。吐息と 共に、濡れた竿に頬擦りまでして見せるのだ。 雛子が、タイミングをとらえて、シャッターを押す。バイブに頬擦りしながら、 舌を伸ばして舐めている顔のアップ。それに括られた全身を入れての、2枚の写 真を撮った。 ------------------------------------ 270 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 48 ID TWSqeZeX 「じゃー、由里子のハンデね」 美也がにや、という感じで笑った。 「何にする?乳首クリップなんかどーかな?」 「うーん、そーねー」 雛子がそう言い、美也が首を傾げた。そうしながら、あからさまにがっかりし た顔の由里子を見て笑う。由里子がハンデとして欲しがっている責めを十分分か っていて、からかっているのだ。頬を染めて節目がちになっている由里子を見な がら、美也が肯く。 「あはは、いきなりいっちゃおーね?由里子」 雛子もにっこり笑って肯いた。 「ゆりこ、持ってきてるでしょ?自前のをだしなよ」 「分かったわ・・・」 由里子は鞄の中から首輪と引き綱を取り出した。 由里子が別れたご主人様からもらったもので、由里子にとっては、綾乃の縄に 当たるアイテムだ。さすがに、毎日学校に持って来ている訳ではないが、実は時 々持って来ている。今日も、なんとなく期待するところがあったので、持参して いたのだ。いそいそと犬の首輪を取り出しながら、ほんの少し、我に返って恥ず かしさを感じる由里子だった。しかしもちろん、被虐への欲求と期待のほうが遥 かに優っている。 由里子は、美也の前で床に跪き、首輪を両手で差し出した。それが、由里子が 調教で身につけた、首輪をつけられる時の作法だった。 美也が首輪を受け取ると、由里子は首を傾けて髪を手でかきあげ、自ら首輪の 装着を助ける。 かちゃり。 冷たい音と共に、首に革と金属の感触がまといつく。 慣れ親しんだ感触。 そして、いつもの様に由里子の中で世界が変っていく。 ふわり、と浮かぶような、奈落の底へ落ちていくような・・・。 由里子は、自分の表情が綾乃と同じ変化をしたことを自覚していた。 (牝の顔、だわ・・・メスイヌの、顔・・・) 「ふ・・・」 思わず、吐息が漏れる。 271 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 51 ID TWSqeZeX 「あはは、もう感じ出しちゃってぇ」 雛子の冷やかしに頬が染まる。だが、牝犬になった由里子は、もはや理性や良 識の束縛から開放されているから、蕩けた顔で、こっくりと肯く事が出来る。 「うん・・・」 美也の手で、引き綱を首輪に止められながら、夢見顔で微笑む由里子だ。 雛子も、そんな由里子をみて、笑う。 「由里子、伏せ!」 「あ、わん」 雛子の声に、床に這いつくばる由里子。 「お手!」 「わん」 正座のまま上体を起こし、拳にした手を雛子の手に差し出す。 「いいこいいこ」 開いた手で雛子に頭を撫ぜられ、由里子は嬉しげに鳴いた。 「わんっ」 そうして、由里子は美也に綱を引かれ、綾乃の隣で床に這った。 「じゃ。次いくよー。次からは最下位即罰ゲームね」 「りょーかい」 「いーねっ、そこの2人も」 美也と雛子の間で、新しいルールが決められた。括られて跪いた綾乃、首輪を つけて四つんばいになった由里子の2人は、床の上でおとなしく肯くだけだ。 「はい」 「わん」 ------------------------------------ 272 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 51 ID TWSqeZeX さらにゲームは続く。再び綾乃から歌い始めた。綾乃は、今回は自分でリクエ ストしてちゃんと歌うように命令され、縛られたまま歌った。 そして、由里子の番。 「犬のまま歌うんだよ!」 雛子が由里子の引き綱を取って、立った。 「わん!」 由里子は雛子に引かれて、四つんばいのままステージに上がる。 そして、そのままマイクを取って歌い始めた。 這ったままではモニターが見えないが、幸いサブモニターが斜め上の見上げら れる位置にあった。 1フレーズ歌ったところで、美也がステージに上がって来た。雛子が引き綱を 軽く引く。 由里子が見上げると、雛子は上気した顔で笑いかけてきた。由里子も頬を染め て微笑み返す。美也が由里子の後ろに廻り、スカートごと下着をひき下ろし始め た。 由里子はされるままになる。ちょうど、そうして欲しいと思っていたからだ。 これから披露する牝犬の芸には、下半身丸裸のほうがふさわしい。 由里子自身がそう思っていた。 雛子が命令を下す。 「おすわり!」 「わん」 由里子は、歌を無視して牝犬の鳴き声を上げた。 採点マシーン「歌声くん」が表情を崩す。 由里子は、踵の上に尻を乗せ、膝を開いて跪き、床についた手を拳にする。 顔を上げて雛子の眼を見上げ、にっこり笑う、そうして「わん!」と一声鳴く。 これが「おすわり」だった。 「おまわり!」 「わん」 「おまわり」はこうだ。膝を上げて尻を高く掲げ、そのポーズのままその場で 3回回る。廻り終えたらおすわりをして「わん!」と鳴く。 273 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 52 ID TWSqeZeX 「ちんちん!」 「わん!」 お座りから上体を起こして、肘を曲げて脇をしめる。手首を曲げて拳は外側に 向け、胸を隠さないようにする。膝を真横に開いてしゃがみ、股間を丸出しにす る。ポーズを取ったら命令者を見上げて鳴く。バランスをとりづらいポーズなの で、いいところ数秒しか維持できない。この「ちんちん」では、鳴くまで膝を床 についてはいけない事になっていた。 「わん!」 「もいっかい、おまわり!」 「わん!」 雛子の命令が次々に飛び、由里子はカラオケをバックに牝犬ショーを披露する。 牡犬のように片足を上げての排泄ポーズも晒した。 もちろん、すごく恥ずかしい。だが、同時に、とても楽しい。 由里子は、そのことをはっきりと自覚していた。 自分は、犬にされて、芸をさせられて、楽しいと感じている。もっといろいろ なことを命令して欲しい。芸でも、いやらしい行為でも。 人としてではなく、牝犬として扱って欲しい。 犬の鳴き声を上げながら、股間を濡らしている自分は牝犬。芸をさせて欲しい。 上手く出来たら誉めて欲しい。 今、そう扱われて、嬉しい。牝犬扱いされて嬉しい。 今の由里子は、全く自然にそう自覚できる変態だった。別れたご主人様の調教 の結果だが、由里子は牝犬に変えられた事には彼に感謝さえしていて、怨んでな どいない。 (私はメスイヌ。由里子はメスイヌ) 何度も、心の中でそう繰り返しながら、本当に嬉しそうに、牝犬の芸をする由 里子だ。 美也が、脱がせた由里子のパンティーを投げた。由里子は、訓練された犬らし く、美也が投げるポーズと同時に身構え、空中を飛ぶ自分のパンティーを追いか けて見せた。 「いいぞー」 というはやし声を浴びながら、しっとりと濡れたそれを口に咥えて取ってくる。 それを咥えたまま「ちんちん」をしたところで曲が終わった。 274 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 52 ID TWSqeZeX 「ふう・・・」 這ったまま席に戻った。といってもソファには上がらず、床に座り込む。 束の間休憩、とジュースを飲む。が、ほとんど残っていなかった。 結果は、もちろん由里子が最下位。トップは、低レベルの争いとはいえ、なん と綾乃だった。 「由里子がびりだよー!」 「はーい、全裸ちんちんバイブ舐め!」 美也が罰ゲームを命じる。 「わん!」 由里子は一声鳴くと、ブラウスとブラジャーを脱いでいった。全裸になってス テージへ上がる。 「はい、ちんちん!」 「わん!」 美也の号令に従い、全く躊躇もためらいもなく、全裸でちんちんのポーズをと る由里子。雛子が横からバイブを突き出す。由里子は舌を伸ばして先端部を舐め 上げて見せた。 「もいっかい、やって!」 「わん」 舌を伸ばすと、雛子がバイブを少し引いた。「あん」追う様に首を伸ばした時、 フラッシュが光った。 「わお!やらしぃぃ」 デジカメの液晶を覗いた雛子が声を上げる。由里子も一緒に覗きこんだ。 液晶には、大股開きでしゃがみ、餌をねだる雛鳥のように首と舌を伸ばしてバ イブを舐める少女が映っていた。股間が濡れ、乳首が立っているのがはっきり分 かる。首輪がいっそう淫らな印象を強めていた。 由里子は、そんな自分の姿に、更に愛液が溢れてくるのを感じた。 ------------------------------------ 275 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 53 ID TWSqeZeX 4人の女子高生達の、「罰ゲーム付きカラオケ勝負」が、ゲームの体裁をまが りなりにも保っていられたのも、どうやらここまでだった。ゲームはほんとうに 形式だけになり、色責めがメインの、別の意味のゲームに様変りする。 トップになった綾乃には、更に乳首にクリップを付けるハンデが追加された。 一応、ばねは弱めてあるものの、プレイ用のものではなく文具を流用していて調 節が甘い。結構、というかかなり痛いものになっている。ハードマゾの綾乃でな ければ受けられない責めであった。 「さー、由里子いくよー」 由里子からスタートだ。美也が勝手に童謡を選曲して、由里子を促した。 「わん」 由里子は四つんばいのままステージに上がる。さっきの罰ゲームから全裸のま まだ。 雛子がまたステージに来て、マイクを消毒用のウエットティッシュで丁寧に拭 いた。拭きながら、由里子に尻を上げるよう命令する。 「わん」 由里子は従順に尻を上げて、責めを待つ。期待に股間が熱くなる。 雛子が、スイッチを入れたマイクを股間に擦りつけた。 「わ、ん」 羞恥と快感に鳴き声が上擦る。 「さあ、下のお口をぱくぱくしようね」 雛子の命令にしたがい、股間に手をやる。熱く濡れそばった陰唇に指をかけ、 開く。 くちゅっ 由里子の股間がたてるいやらしい音が、増幅されて響いた。 (ああ、恥ずかしい・・・濡れてる・・・) 身も世も無い恥ずかしさは、今の由里子には無上の快楽だ。そのまま、指を閉 じ、また開く。その度に股間で愛液が淫らな嬌声をあげた。 くちゅっ、ぴちゃっ。 「ほらゆりこ。歌声くんが『ちゃんと歌ってる?』っていってるよ。もっと大き く、くちあけなくちゃ」 「あ、わ、わん」 276 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 53 ID TWSqeZeX くちゅっくちゅっくちゅっ・・・ 童謡をバックに、淫らな音がマイクに乗って響く。 (いやらしい音・・・でも、もっと大きく・・・もっといやらしくしなくちゃ・ ・・) 由里子の頭の中はもう真っ白だ。大きく秘唇を開いては閉じをくり返し、スピ ーカーから聞こえる、自分の股間が立てる音と、その股間の熱い疼きだけがすべ てになっていく。曲が終わりかけているのが分かるが、指は止まらない。腰が勝 手に動いて、マイクに股間を擦りつけるように動く。 「はーい、お終いだよ」 曲が終わっても、乗ってしまった由里子は股間を弄りながら腰をくねらせてい た。点数はなし。「採点不能」と表示されていた。雛子が、笑いながら綱を引い て、そんな由里子をステージから下ろす。由里子は尻を振って続きをせがんだが、 雛子にお預け、と言われて、良い牝犬らしく我慢である。 次は美也。股間にバイブを入れたままで歌う。 途中で、雛子の命令で由里子が股間を舐めまわし、更にバイブを咥えて突いた。 「なによ、うん、たい、ぁん・・・」 さすがの美也もこの責めにはたまらず、立ったまま軽く絶頂してしまう程のよ がり様だ。 続いての雛子には妨害は無し。 「さー、綾乃」 綾乃の番だ。美也がまた勝手に童謡をリクエストして、綾乃を促した。 「はい」 ステージに上がる綾乃。 雛子がステージに上がり、乳首のクリップを引っ張る。綾乃はさすがにたまら ずうめき声をあげた。 「あう・・・」 「ほらぁ、よがり声出しなさいねー、あやの」 「はい、ああん・・・」 雛子の命令に従い、綾乃は乳首への責めに喘ぎ声で応える。 「ああん、あん・・・」 マイクは最初からスイッチも入れていない。もちろん「歌声くん」は「ちゃん と歌ってる?」というメッセージを出し続けた。結果は、採点不能だ。 277 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 53 ID TWSqeZeX 「綾乃と由里子、同点最下位ね」 「罰ゲーム、いこっか」 責められ、まともに歌う事を許されなかった2人は、もちろんこの宣告に肯い た。 「はい」 「わん」 2人は床に這わされ、ビッグ1バイブを両側から舐める様命じられる。 「んふふー、いやらしいい」 「あ、ふ」 「わん、あ」 巨大なバイブを、ぺろぺろと舐める眼鏡の優等生と、ロングヘアのお嬢様だ。 バイブを舐める全身像と顔のアップ、それに、バイブごしにキスしているところ を写真に取られる2人だった。 「さーて、雛子がトップねー」 上気した顔で笑う美也。予定通り、である。 「ハンデ、いっちゃおうか」 3人とも、桜色の頬で肯いた。美也がインターホンを取る。遼司が出たことを 確認して、オーダーした。 「カルピス、5つ」 ------------------------------------ 278 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 54 ID TWSqeZeX (4)ルーム・サービス オーダーしたルーム・サービスのドリンクを運んで、店員、遼司が部屋に来た。 グラスの乗ったトレイをやや慎重に持ちながら、遼司はドアをできるだけ細く開 けて、するり、という感じで入って来た。 遼司がドアを閉めるのを待ってから、雛子はリクエストを転送してステージに 上がった。 雛子は全裸だった。 手に持ったバイブレーターのスイッチを入れ、自ら乳首を責めながら歌い始め た。 遼司は、そんな雛子を横目でにやにやと眺めながら、カルピスの入ったグラス を4つ、テーブルに置いていった。 「5つめの」 美也が甘い声を出し、遼司の手を取って引き寄せる。 「ちょうだい」 美也も全裸だった。 「はやくぅ、ちょうだい」 言いながらズボンのベルトを外し始めている。 遼司は、部屋を見回した。 全裸でバイブを持ち、オナニーを始めながら歌うロリータ系少女がいる。雛子 だ。 全裸で自分のズボンとパンツを脱がせ、フェラチオを始めようとしている巨乳 コギャルは、SEXフレンドの美也。 全裸で縄掛けされ、縄とローターで股間を責められて悶えている日本人形風の 令嬢、綾乃。 そして、全裸で床に四つんばいになり、首輪と引き縄でテーブルに繋がれ、バ イブを一心に舐めているスレンダーな眼鏡っ娘、由里子。 タイプは違うが、4人とも「イケてる」美少女たちの痴態だ。 部屋に入った瞬間から勃起しているペニスが剥き出しにされ、美也の唇が被さ る。 279 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 54 ID TWSqeZeX (変態女子高生か・・・) 遼司は半ばあきれながらも、美也というSEXフレンドを得た自分はツイてい ると思う。 さすがに本番までは無理だが、4人の美少女の裸を見ながらフェラチオで抜け るのだ。白昼のバイト先で、こんな美味しい思いが出来る男は、そうはいない。 遼司にしてみれば、奥まった部屋を予約したり、監視カメラの調子が悪いと店長 をごまかしたりして、この乱れた遊びの片棒を担ぐリスク位は何でもないことだ。 「おう・・・」 美也の舌がペニスの「ツボ」を捉えてしゃぶる快感にね思わず唸る遼司だ。 雛子はそんな遼司を見つめながら歌っていた。 立ったまま股を開き、バイブを既にとろとろに蕩けている膣に挿入する。 「あぅ・・・ひぃのあたるとこ・・・・」 歌に集中する事で、快感を引き伸ばそうとするが、腰ががくがくして立ってい るのがやっとだ。それでも雛子は立ったまま歌い続け、腰を振りながらバイブの 注挿を続ける。 「ほら、雛子を見てあげて・・・キミに見られるのがあの子のハンデなんだから」 美也が遼司を促す。ペニスを含んだままなので「ふぉら」とくぐもった声にな った。 遼司は言われるまま、ステージの雛子を見つめる。 実は遼司は、美也以外の娘の名前は知らない。それに、床の上の2人の少女の ことは、あまりじっくり見たり顔を覚えたりしないように美也にきつく言われて いる。何度も店に来ておいて、顔を覚えるなというのは無茶なのだが、遼司はこ の2人には事情があると察して、なるべくまじまじと見つめたりしないようにし てはいる。そういう部分で信用を無くせば、2度とこんないい思いができなくな ると分かっているからだ。 280 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 54 ID TWSqeZeX 「ほらね、わすれていたなにか・・・」 雛子の歌は既に呂律が怪しくなっているが、まだ言葉になってはいた。 だがそれも、遼司と視線を絡めながら、絶頂に向かうにつれて意味の無い喘ぎ に変っていく。 曲が終わる。 でも、雛子はステージに立ったまま、股間のバイブを激しく動かしている。マ イクを持ったままなので、バイブの振動音も、股間の濡れた性器が立てる音も拾 われて部屋に響いていた。 ぶーん・・・くちゅくちゅくちゅ・・・ 雛子の声と動きが絶頂に近づく。 遼司も股間に電気が走るのを感じた。 「あ゛あ゛あ゛う!いっちゃう!イクう!」 甲高い嬌声の様な声を上げて、雛子は立ったまま絶頂した。 雛子が床に崩れる姿を見ながら、遼司は美也の喉に熱い精を放った。 ------------------------------------ 281 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 55 ID TWSqeZeX (5)そして日常 「7200円ちょうどお預かりしました。ありがとうございましたー!」 遼司の営業口調の礼を背に、4人はカラオケスタジオを後にした。 もう日が暮れている。金曜の夜のこと、駅前の繁華街はそろそろ会社帰りのサ ラリーマンが出て来ていた。4人は駅に向かって歩き出した。 「楽しかったね」 屈託のない顔で雛子が笑う。3人も、微笑んで肯きかえした。ちょっとだけは にかんで、でも次の瞬間には、日常の表情を取り戻している。 「あたしまだノートの整理終わってないんだよねー」 「美也の得意科目、終わってるものね。でもノートの整理は普段からしておくも のよ」 歩きながらの美也のぼやきに、優等生らしい突っ込みを入れる由里子だ。 「ねーあやの、月曜の古典、ヤマ教えてくれる?」 文科系が苦手の雛子は、綾乃に助けを求める。由里子なら一蹴するところだが、 綾乃はその辺りおっとりしているというか、お嬢様ならではのというか、余裕が ある。 「あら、いいですわよ。明日にでも家にいらっしゃいますか?」 「いいねー、勉強会やろうよ。由里子もさ、来てよ」 美也が尻馬に乗って、由里子も引きずり込もうとする。由里子はちょっと真面 目に考え込んだ。眼鏡に手をやり、考える仕草。 もともと、勉強を誰かと一緒にやるという習慣がなかったのだ。能率が下がる だけだし、ライバルと助け合うなんてとんでもない、と思ってもいた。 「ま、いいわ。でも明日、午後だけよ」 綾乃の勉強法に興味があるし、という表向きの理由を付け加える由里子だ。本 音の一部では、友達と勉強するってどんな感じなのかな、という興味が勝ってい る。 282 名前: たぶん少しずれた日常 投稿日: 03/08/15 00 55 ID TWSqeZeX 「それから」 と、咳払いする由里子。 「勉強だけよ」 付け加える。美也が笑った。雛子も。綾乃まで、くすりと笑った。 「あはは。 もちよー。わかってるって」 由里子の背中を叩く美也。 4人の少女達は、笑いながら、話しながら駅に入っていく。話題はテストの事、 TVの事、学校の先生や男子生徒のこと。 なんということのない、日常の風景。 --------------------------------- たぶん少しずれた日常 終 前ページ次ページNameless Archives/2ちゃんねる・エロパロ板/タイトル記録ミス Counter today - ,yesterday - ,summary - . 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里子奥 312 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 12 18 01 ID k3CzJI+/ 観葉植物の里芋の里子さんを泥棒未遂された。 前日子どもの打ち合わせを家でしたのだが、アレって何?って 聞かれたので里芋だよって答えた。 家の里子さんは178㎝も有る(鉢植え込み) さっき忘れ物したからと来て、丁度電話が掛かってきたので 玄関で待っていてと言ったのに勝手にリビングに入って持ち去ろうとした。 ドアにぶつかり葉っぱが切れて、茎は折れてしまいました。 挙句に今夜のおかずで里芋煮にするからって針から抜き取って …もう絶句。 10年も大切に育てた里子さんを元に戻してよ、泥ママと闘います。 313 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 12 25 28 ID AEjegVCD 312 それって、「クワズイモ」? しっかり育つと、花が咲くんだよね。 とにかく、戦い 頑張れ! 317 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 12 44 02 ID agA9kfAJ 針? 鉢かな。 里子さんの仇を打ってたもれ 321 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 12 58 53 ID k3CzJI+/ 泥ママ逃走して、戻って来た。 業務用スーパーで買ってきた中国産の冷凍里芋を持って。 これでいいでしょうって、再び逃走。 弟が弁護士なので正式に依頼します、徹底的に里子さんの 恨みはらします。 326 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 13 13 00 ID qWEUX4qX 318 「クワズイモの名は「食わず芋」で、見た目はサトイモに似ているが、 食べられないのでそう呼ばれている。 シュウ酸カルシウムは皮膚の粘膜に対して刺激があり、食べるのはもちろん、 切り口から出る汁にも手で触れないようにした方がいい。 ちなみに、クワズイモを誤って食べると舌がしびれて会話がうまく できない状態になったりすることから、英語では 「Dumb Cane(口のきけない茎)」とも呼ばれている。 日本でも誤食による中毒が北海道で2件報告されている。 東京都福祉保健局の分類では、クワズイモは毒草に分類されている。」 ウィキより 327 :里子さん ◆TkvQXkTHWqaW:2011/01/25(火) 13 14 25 ID k3CzJI+/ お世話になっている樹医さんに電話したら根っこだけでも 残っていたら持ってきて下さいと言われたので、これから出掛けます。 樹医さん北海道なんだけど里子さんの為なら親馬鹿も いいとこですがここはスルーして下さい。 後日報告させていただきます、酉付けてみました。 352 :里子さん ◆TkvQXkTHWqaW:2011/01/25(火) 14 23 14 ID roioalEM 最寄りの空港に着きました、直通の飛行機はもうなく 乗り換えになっちゃいます。 15時台の飛行機で少し時間があります。 地域は言わない方がいいみたいですね、かなり親馬鹿な地域からです。 愛娘の生まれた日に旦那が譲り受けたクワズイモの里子さんなんです。 品評会で賞もいただいた事も有る、愛娘同様に可愛がっています。 354 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 14 30 07 ID oDGgFahr 352 そこまで実況しなくていいから、今は第一に里子さんのこと考えて 進展もしくは解決したら報告よろしく 359 :名無しの心子知らず:2011/01/25(火) 15 15 02 ID 2qZ8c7CN 品評会で賞を取った、なら、誰にもわかりやすい価値を主張できるよね。 悲しいけど、素人には見ただけじゃ価値を査定できないから、 そういう実績が有る事は大きいと思う。 植物への愛情って、本人以外で理解しようとしない人には、 本当にわかってもらいにくいものだし。 早く元通り元気になるといいですね、里子さん。 次のお話→畑荒し泥ママ(345)
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特徴:レムナン初登場回、留守番初登場。夕里子と会うのはLOOP5以来。 レムナン&夕里子(留守番)。 初めて乗員15人全員が揃い、初めてグノーシアが3体。 1日目 オトメとレムナン 1日目 夕里子「さあ、ここからが本番です。 各々、覚悟するがいい」 (主人公)『夕里子だ……』 夕里子「ふふっ、人間もグノーシアも。 生き延びるために、せいぜいあがきなさいな」 沙明「アッハァ! いいねェ女王様。 下僕になっちまうのも俺的にアリだわ」 夕里子「ふ、道化が」 ククルシカ(ククルシカの表情が冴えない。 どうやら夕里子のことを恐れているようだ) ジョナス「時間が惜しい、議論に移ろうではないか。 ……ときに」 ジョナス「――少年。君は何者かな?」 ???「……え? ぼ、僕……ですか?」 ステラ「レムナン様でしたら、以前から乗船なさっていましたよ。 お会いになったこともあるかと存じますが……」 レムナン「あの……僕、話すのが苦手、ですから……」 ラキオ「他人と接していないんだろう? その上、印象が薄いから忘れられる。 いかにもレムナンらしい話だよ、全く」 レムナン「ええ……。 そういう事だと、思います」 ジナ「……わかる」 セツ((主人公)) セツ(今回は――全員が出てきたね。 厳しい状況になるかもしれない) セツ(気をつけて行こう。 ……お互いに、ね) シピ「んじゃ、そろそろ始めっか?」 夕里子「ならば最初の話題を提供しましょう。 皆、傾聴なさい」 議論開始 夕里子「まずは、この身がグノーシアに犯されていないことを証し立てます」 ラキオ「へぇ……自分はグノーシアじゃ御座いませんって? そんな事が証明できるのかい?」 夕里子「ええ。お前たちはルゥアン星系で、偶然この船に乗り込んだ避難民。 確かですね?」 SQ「そそ。あそこ、グノーシアにヤられて壊滅しちったからねー。 この船に逃げ込めた(SQちゃんたち・アタシら)ラッキーよね」 (SQがグノーシアかどうかでセリフが変わる) ステラ「……とはいえ、まだ危険な状況です。 避難時の混乱に紛れ、汚染体3体の乗船を許してしまいましたから」 夕里子「その通り。 グノーシアは、お前たちと共に乗船してきたのです」 夕里子「よって、この身がそうであるように…… ルゥアン以前からこの船にいた者は、グノーシアではありえない」 ジョナス「ふむ……。 だが、寄港中の船外でグノーシア汚染されてしまう。 そのシナリオは否定できまい?」 夕里子「レムナン」 レムナン「ぼ、僕と夕里子さん、は……。 船から、一歩も……出て、いません」 沙明「つって口裏合わせてるだけだったりしてなァ?」 レムナン「……! そ、そんな……」 夕里子「LeVi」 LeVi『はい。確かにルゥアン星系で、二名。 当船に留まっていた方がいらっしゃいます。 ただ、それが夕里子様とレムナン様かは――』 夕里子「この船に残っていたのは自分達だと。 他に、名乗り出る者は?」 夕里子「……ふ、居ないでしょうね。 ならば、これで決まりです」 セツ「……ああ。 夕里子とレムナンは、敵ではありえない。 それは確かなことだ」 『『留守番』の2人は、確実に人間の味方です。 2人とも残っている場合のみ名乗り出られます。 グノーシア等が留守番を名乗ることはできません』 オトメとレムナン 夜・廊下 (主人公)『……? 床に、水たまりができている』 (主人公)『水の線に沿って、廊下を進んでいった……』 合成プラント オトメ「キュ! (主人公)さん!」 レムナン「何か……用ですか?」 水がこぼれてた・何してるの? ▼水がこぼれてた (主人公)『廊下を濡らしていた水のことを聞いた』 オトメ「あの……あたし、ヘルメットぶつけちゃって。 ヒビが入って、中のお水こぼしちゃったの」 オトメ「それで、わわってなってたら。 レムナンさん、来てくれたのです!」 レムナン「放置……しておくと、危ないですから」 ▼何してるの? (主人公)『二人で何をしているのか、聞いてみた』 レムナン「オトメさん、の……ヘルメットを。 修理、してます」 オトメ「ヒビが入って、お水こぼれちゃったの」 ▼(無言) オトメ「あの……あたし、ヘルメットぶつけちゃって。 ヒビが入って、中のお水こぼしちゃったの」 オトメ「それで、わわってなってたら。 レムナンさん、来てくれたのです!」 レムナン「放置……しておくと、危ないですから」 レムナン「……はい、これでいいですよ」 オトメ「キュキュ! 干物にならなくてすみました。 レムナンさん、ありがとうでした!」 レムナン「いえ……。 ここの合成プラントなら、大抵の材料……揃いますかr。 難しく、ないですし……」 ほめる・使い方を教えて ▼使い方を教えて (主人公)『レムナンに、合成プラントの使い方を教えてくれるよう頼んだ』 レムナン「……ええ、いいですよ。 まずは材質のスキャンと合成プラントの資材チェックを並行して……」 オトメ「あ、なるほどです。 同時に進めればいいんですね」 レムナン「はい。 成形パターンや固定材も類推させて……」 オトメ「わあ。出力もバイパスして?」 レムナン「その方が効率が――」 オトメ「――」 (主人公)『レムナンとオトメの技術談義を聞いているうちに、空間転移の時間に なってしまった……』 ▼ほめる (主人公)『レムナンの技術に感心した』 ▼(無言) オトメ「ううん、レムナンさん凄いのです! パパっ、シャシャっと上手にやってくれました」 レムナン「工作は……好き、なので。 役に立てて、良かった……です」 オトメ「それに、わざわざ直してくれて。 レムナンさん、いい人です。 それが分かって、うれしいの」 レムナン「そんな……。 僕じゃなくても、きっと、誰でも……」 オトメ「ううん。 レムナンさんの前に、SQさんにも会ったんですけど。 「水芸?」って言って、行っちゃいました」 レムナン「……」 (主人公)『ひたすら褒めるオトメと、ひたすら謙遜するレムナンのやり取りは、 空間転移の刻限まで続いた……』
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448 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 03 59 36 ID KZpfkP/i 自転車の一件があってから、夕里子は縁の言葉に従い、身の回りに注意して過ごした。 普段から二人以上で行動し、周囲に異変がないか気を尖らせた。 元々友人は多いので、同じクラスの親しい友人の協力も得ることができた。 綾はしばらくの間、夕里子を襲う隙がないかと観察していたが、どうにも難しそうだとわかった。 (慣れてるっていっても、所詮私も一人の女だしね……) 力は人並みだし、持っている道具もごく一般的な凶器に過ぎない。 警戒をしていない相手と警戒をしている相手とでは殺害の難易度は雲泥の差だし、二人以上を一度に葬る自信はなかった。 (やればできなくはないだろうけど、危険すぎるわね) うまく殺せても、二人分の死体の処理や細工には、単純に二倍の作業が必要となる。 時間が長引けば人に見られる危険があるし、焦って作業が雑になることもあるだろう。 死体の処理で失敗をすると、警察その他に目をつけられる可能性が格段に高くなるのだ。 (しばらくは様子見ね……) やれやれと、綾は溜息をついた。 「あーあ……うちが何かの工場とかだったら楽だったのに」 「綾さん、経営者になりたいのですか?」 綾の嘆きに、隣を歩く夕里子が、ほんわかとした声で応じた。 放課後、夕里子を送る陽一に綾が同行する形で、三人並んで夕暮れの道を行く途中だった。 「は? 何言ってるんです?」 「いえ……今さっき家が工場だったら云々と仰っていたので……」 「あー、それは……」 あんたとあんたのお仲間の死体処理に頭を悩ませてるんだよ、とは言えない。 綾は「まあ、そんなところですね」と、適当な相槌をうった。 「綾さんはどういった工場がお好みなのですか?」 「そうですねえ、溶鉱炉とか、大きな粉砕機とかあればいいんですけど。ああ、薬品を扱ったりするのもいいですねー」 「鉄鋼、食品、化学……綾さんは色々なものに興味をお持ちなのですね。すばらしいです」 「すばらしいですか。それはどうも」 感心しきりとばかりに頷く夕里子に、綾は微笑しつつ答えた。 「しかし、あれから一週間経つのに、ストーカーとやらは何もしてきませんね」 「え? あ、はい、そうですね。縁さんもあくまで念のためと言っておりましたし……ストーカーなどではなかったのかも知れませんね、あの自転車は」 「ということは、夕里子さんが自転車を貸した男がやったことだったんですかね」 「そうなるんでしょうか……。いずれにせよ、何も起こらないで良かったです」 「ははあ、お気楽ですね」 にこりと笑う夕里子に、それまでとは一転、冷たい声で綾は言った。 「夕里子さんが見知らぬ男に自転車を貸してしまったおかげで、お兄ちゃんもあなたの友達も気を張ることになったわけですが」 「ぅ……はい……それについては本当に申し訳ないと……」 「人望と言えば聞こえがいいですけど、少し他人に甘え過ぎなんじゃないですか?」 「はい……すみません」 綾の追及に夕里子はしょんぼりと肩を縮こまらせてしまう。 また始まったか、と脇で聞いていた陽一は内心溜息をついた。 449 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 01 01 ID KZpfkP/i 二人が顔をあわせてから一週間、綾は夕里子に対して常に丁寧な言葉遣いで応じたが、何かにつけて厳しい言葉を浴びせることがあったのだ。 「お兄ちゃんの恋人が他人に平気で迷惑をかける人間だとは、私も思いたくないんですがね」 「本当に……不出来なもので、すみません」 細い声で再び夕里子は謝る。 見かねた陽一が、綾の肩に手を置いて制した。 「こら、綾、夕里子さんをいじめるなよ」 「いじめてなんかいないわ。夕里子さんに、お兄ちゃんの恋人としてふさわしい人になってもらうべく、アドバイスしてるだけでしょ」 「その、俺の恋人にふさわしい人の基準ってのは、誰が決めたんだよ」 「この私がよ。文句ある?」 「大ありだろ! 何でお前が決めるんだよ!」 「たった一人の妹である私が決めないで、誰が決めるっていうのよ!?」 肩をいからせて陽一に詰め寄る綾。 陽一も退くことはなく、二人は至近距離で睨みあった。 「あ、あの……喧嘩は……」 今度は夕里子が割って入ろうとするが、消え入りそうな声は二人の耳には届かなかった。 「……お兄ちゃんは夕里子さんにやたら甘いわよね」 「別に甘くはないだろ。お前が細かいことを気にしすぎるんだよ」 「何よ? 私、間違ったこと言ってる? 夕里子さんの能天気が原因で、みんなが無駄に苦労しているのは確かでしょ?」 「夕里子さんの無防備なところは俺も時々不安になるけど……夕里子さんのために色々するのをみんながどう思うかは、お前が決めることじゃないだろ」 「……」 「少なくとも俺は、無駄とも苦労とも思ってない。これっぽっちもな」 「へえ~、お兄ちゃんも言うようになったわね」 半眼で睨んで、綾は陽一の脛を勢いよく蹴飛ばした。 「うぐぉっ!」 「よ、陽一さん! だ、大丈夫ですか?」 痛さに悶える陽一と、おろおろと慌てふためく夕里子を尻目に、綾は小走りに交差点を渡る。 「あ、綾……どこに……」 「夕飯の買い物! それじゃあね!」 突っぱねるように言って、そのまま綾は駆けていってしまった。 綾の姿が見えなくなると、陽一は道脇の植え込みの石段に座り、蹴られた脛を見るべくズボンをまくった。 夕里子もその隣にちょこんと座った。 「いてて……あいつ、本気で蹴りやがったな……」 「大丈夫ですか? 私、さすります。任せてください」 「え、あ、いや……」 言うが早いか、夕里子は陽一の脛に触れて優しくさすった。 恥ずかしいのでやめてくれと言おうとした陽一だったが、夕里子の真剣な表情を見て、とりあえずは任せることにした。 「どうですか……? その、少しは楽に……?」 「う、うん。ちょっとくすぐったいかも」 夕里子は綺麗な眉の端を下げて、今にも泣きそうになりながら、懸命に陽一の脛をさすった。 450 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 02 05 ID KZpfkP/i 「……陽一さん、すみません。私のせいで、また綾さんと喧嘩になってしまって……」 「ん? 気にしなくていいよ。俺たち昔からあんな感じだから」 「え……昔から蹴られたりしていたんですか?」 「ああ。しょっちゅうケチつけられて、殴られたり蹴られたりしてるよ。だから大丈夫大丈夫」 陽一は軽く笑うが、夕里子の表情は晴れない。 俯いてぽつりと呟いた。 「……綾さんは……まだ私を認めてくださってはいないみたいですね……」 「綾の言ったこと、気にしてるのか?」 「綾さんの仰るとおり、私に落ち度があったのは確かですし……」 「いや、まあ、そんなに気にしなくていいと思うよ」 「え?」 「綾はけっこうきついこと言うけど、それもいつものことだから。夕里子さんに限ったことじゃないし」 「そうなんですか?」 そう、と何でもないことのように陽一は頷いた。 「前に宇喜多にも話したんだけど、あいつ、同じ人に対してもその時々で寛容だったり厳しかったり、わけわからない変化をするからさ。基本的に気分屋なんだ」 「気分屋さん……ですか」 「まあ……心配性なところもあるから、俺と夕里子さんが付き合うことについても色々気にしてるみたいだけど……」 「ですよね、やっぱり……」 陽一も夕里子も共にため息をついた。 「やっぱり会わせるのが早かったのかなあ。……と言ってもあいつから会いに来ちゃったからにはどうしようもないんだけど」 「すみません。私が至らないばかりに」 「あ、いや、こっちこそ、妹一人黙らせることができなくてごめん」 お互い謝って、思いのほか顔が近付いていることに気が付く。 二人は顔を赤らめて姿勢を正した。 「ま、まあ……そんなわけだから、綾の言うことなんて気にせずに……」 「いえ、気にします。ご家族に認められてこそ、陽一さんとお付き合いする資格があると言えるわけですし……」 「そんな大げさな」 「大げさじゃありませんよ。私……胸を張って陽一さんの恋人だって言えるようになりたいんです」 日が落ちて、夕闇に街灯が灯る。 涼しい風が、夕里子の栗色の髪を揺らした。 少し色素の薄い瞳は真剣そのもので、綾の去った後の交差点を見つめていた。 ガラス細工のように繊細なその横顔を見て、陽一は、本当に綺麗な人だなと、一瞬見惚れてしまった。 「うーん……そうまで言われると、俺も夕里子さんの恋人だって胸を張って言えるように頑張らなきゃな」 「え!?」 夕里子は顔を真っ赤にして、あたふたと胸の前で両手を振った。 「い、いえ、陽一さんはそんな、十分にその……私、陽一さんが傍にいてくれるだけで嬉しいですから」 「また大げさだな」 「全然大げさじゃありません! 私、心の底からそう思っていますから! 今もこうして話しているだけで幸せで……」 「そ、そっか」 陽一も夕里子も赤い顔のまま俯いて黙り込んでしまう。 やがて二人はまた並んで歩き出した。 言葉はないままで、互いの手をとって歩く。 陽一と夕里子の付き合いは、初々しくも順調で、少しずつ心の距離を近づけつつあった。 451 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 03 31 ID KZpfkP/i 家に帰った綾は、買ってきた鶏肉をまな板の上に置くと、包丁を手にとって思い切り突き刺した。 包丁がまな板に突き刺さる重い音が家の中に響く。 「くそ! あの女……!」 何度も何度も、綾は包丁を振るって肉を刺した。 この一週間毎日のように繰り返しているストレス解消法だった。 「何で……何でお兄ちゃんはあんな奴のことかばうのよ!」 綾が夕里子にけちをつけるのは、陽一の恋人にふさわしい人間になってもらいたいからとか、そんなわけでは当然ない。 陽一と夕里子が深い仲になるのを牽制するためにしていることだった。 あわよくば、文句を言われるのに疲れて、夕里子が陽一から離れていってくれたら、とも思っていた。 しかし、今のところ夕里子が陽一から離れる気配は全くない。 それどころか、陽一が綾の攻撃から夕里子をかばうという構図のせいで、むしろ二人の仲がより緊密になっているように思えた。 「くそ! くそ! くそ!」 綾は狂ったように刺し続け、やがて糸が切れたようにがくんと動きを止めた。 虚ろな目で時計を見る。 そろそろ陽一の帰ってくる時間だった。 「いけない……こんなことしてる場合じゃなかったわ」 綾は陽一の部屋に行くと、ゴミ箱を回収し、自分の部屋に敷いた新聞紙の上にゴミをぶちまけた。 紙くずやビニール袋が散乱する。 綾はそのうちのティッシュのゴミのみを選り集めた。 「一、二、三……今日は少な目ね」 包んで捨てられたティッシュを開き、臭いを嗅ぐ。 一つ目、二つ目と嗅いでいって、三つ目を開いたとき、何とも嬉しそうに微笑んだ。 「ふふ……これこれ」 両の手に捧げるように開いたティッシュを置き、口元に近づける。 微かだが、栗の花のような青臭い臭いがした。 「よしよし。お兄ちゃん、健全な生活を送っているようね」 当面は様子を見ると言っても、急がなければならない時もある。 それは、陽一と夕里子が肉体関係を持ってしまった時だった。 「お兄ちゃんが穢れるのは絶対絶対防がなきゃいけないものね」 陽一も年頃の男。 性欲はあるし、自慰もする。 綾は陽一が夕里子と付き合い始めてから、こうして陽一の自慰がどれくらい行われているかを毎日確認していた。 「これで今週は六回……一日平均〇.八六回……回数には異常なし、と」 安堵の息をつく。 陽一の自慰の回数は、夕里子とことに及んでいるかどうかの重要な指標だった。 自慰の回数が極端に減った時は、陽一と夕里子が肉体関係を結んだ時であり、多少の危険を冒してでも夕里子を排除せねばならない時だと綾は考えていた。 「どうやら今のところは大丈夫みたいね……と言っても、放っておく気もないけれど」 ゴミ箱にゴミを戻し、陽一の部屋に元あったとおりに置いておく。 ただし、精液のついたティッシュは戻さず、ベッドの枕元に置いてあった赤い箱の中にそっと入れた。 箱の中にはそれ以外にも、この数週間で集めた陽一が自慰で使用したティッシュが大量に入っていた。 「ふふ……お兄ちゃんの精子……」 綾はベッドの上で四つん這いになると、箱に顔を擦り付けるようにして、漂ってくる性臭を嗅いだ。 「お兄ちゃん……」 鼻を鳴らしながら、股間に静かに手を伸ばす。 上体を寝そべらせ、熱い息を吐いた。 「今は……こんなことしかできないけど……きっといつか……」 頬を紅潮させ、目を細める。 「大丈夫……お兄ちゃんは……あんな女すぐに嫌いになるはずだもの……ね? お兄ちゃん……」 声を押し殺し、夕影の差す部屋で綾は静かに自慰に耽った。 452 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 04 13 ID KZpfkP/i 数日後、綾は夜の街を静かに歩いていた。 綾の前方十数メートルの所には、予備校帰りの女子高生が一人、学校鞄を肩に提げて歩いている。 セミロングの髪を後ろで無造作に束ねた、地味な印象の少女だった。 彼女の名前を、綾は知らない。 ただ知っているのは、自分たちと同じ学校に通っていて、夕里子と同じクラスで学んでいるということ。 休み時間になっても話す友人もなく、机に向かって本を読んでいる、もの静かな人物であるということだけだった。 他にも夕里子のクラスに二、三人似たような人物は居たが、この数日調べたところ、定期的に一人になる時間帯が出来るのは彼女だけだった。 毎週木曜日、予備校の特進クラスで、彼女の帰宅は遅くなる。 帰る時は一人で、人通りの少ない道を通る。 綾が彼女を選んだのは、それらの条件が重なったからに過ぎない。 彼女とは話したこともないし、これといった恨みもなかった。 「気の毒だとは思うけど、これもお兄ちゃんと私の幸せのためだもんね」 綾はズボンのポケットの中で、束ねたストッキングを握た。 どこの店ででも簡単に手に入れることのできる、女性用のナイロンストッキングだ。 先を輪状にして、重みがかかると閉まるように結んである。 いわゆる、クローズドロープと言われる結びだった。 名も知らぬ少女の家は、街外れにある。 家がまばらに立ち、街灯がぽつぽつと立つ寂しい道を歩いて数分、綾は足音を忍ばせて少女に背後から近付くと、首にストッキングの輪をかけ、そのまま後ろに引き倒した。 「……!?」 驚きに、少女は顔を引きつらせる。 肩にかけていた鞄が道に転がった。 少女の尻が地面につかないよう、綾はストッキングの片端を腕に巻き、固定する。 少女は地面に足をつきながら、腰を宙に揺らめかせ、首を吊る形になった。 一秒、二秒と綾は心の中で数える。 少女は慌てたように首を絞めるストッキングを引き剥がそうとするが、しっかりと首に食い込んだそれは、指を割り込ませる隙間もない。 足を踏ん張らせて体勢を立て直そうとしても、綾が少し後ろに下がると、それだけで踏ん張りがきかなくなってしまった。 「……かっ……あ……!」 少女が声にならない声をあげ、綾が心の中で十秒を数え終える頃には、少女は動かなくなっていた。 「ふう……終わりっと」 とりあえず済んだが、のんびりしているわけにはいかない。 綾は少女の死体を引きずって道脇の林の中に運び込むと、適当な高さの枝にストッキングを投げかけて、少女の首をきちんと吊らせた。 綾の身長はそこまで高くないので、手の届く範囲で枝にストッキングの端を結び付けても、少女の足が少し地面についてしまう。 「まあ……自殺の形としては、結構多い型のはずだし、問題ないわよね」 道に転がった鞄を持ってきて、首を吊らせた少女の足元に置く。 さらに少女のスカートのポケットから携帯電話を取り出した。 アドレス帳を開くと、あ行の欄に『お母さん』と登録してあった。 綾は『お母さん』に宛ててメールを打った。 『勉強が辛い。友達もできない。クラスの人には無視される。四辻夕里子にはひどいことを言われた。もうやだ』 そう文面を打って、送信した。 首を吊らせてから既に数分経っている。 「まあ……多分助からないわよね」 もう数分置いて、少女の死をきちんと確認したかったが、長くここにいるのは危険だった。 少女の鞄には『宮入智恵』と名前が書かれていた。 「宮入さん、ね……」 暗闇の中、枝に首を吊った少女の顔を見る。 引きつったままの表情で、虚ろな視線を宙に向けていた。 「ごめんね、宮入さん。恨むなら私と……あと半分は宇喜多縁を恨んでね。あいつが余計なことをしなければ、死ぬのは夕里子さんだけで済んだんだから」 宮入智恵のポケットに放り込んだ携帯電話が、ブルブルと震えていた。 先ほどのメールを心配した母親からのものだろう。 「いいお母さんね……」 少し罰の悪そうな顔をして、綾は背を向けた。 道路に出て空を見ると、薄曇の中に星が見えた。 「まあ……夕里子さんだけ守れば済むと思っているのが、甘いところよね」 くく、と声を忍ばせて笑う。 陽一には買い物に行くといって外に出た。 遅くなった言い訳をどうしようか。 大いに頭を悩ませながら、綾は家路についた。 453 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 05 16 ID KZpfkP/i 翌日、学校で緊急の集会があった。 校長から短く、本校の生徒が亡くなったことが伝えられ、全校生徒が黙祷を捧げた。 教室に戻ってから、興味本位で話をする生徒たちもいた。 「なんかさ、自殺らしいよ」 「自殺?」 「ああ。俺、朝見たんだよ。その死んだ人の親が来てるの。凄い剣幕で校長室に怒鳴り込んでさ」 「なんで自殺だからって校長室に行くんだよ」 「よくわからないけど、いじめがあったんじゃないかって話だよ」 ひそひそと、囁くように教室のあちこちで会話が交わされていた。 「……死んだ生徒、ユリねえと同じクラスの人なんだって」 「あら、そうなの?」 沈痛な面持ちで言う小夜子に、綾は初めて聞いたという風に、驚きの表情を見せた。 「じゃあ夕里子さん、ショックを受けてるんじゃない? 優しい人だし」 「うん……多分ね」 はあ、と小夜子は陰鬱なため息をつく。 その顔は、どこか疲れているように見えた。 「何か、この学校ってけっこう人が死んでるよね」 「え?」 「だって……春には事故で一人死んでるし……今回も……」 「あー、まあ確かにね。でも世界では二秒で三人は死んでるんだし、そのうち二人がたまたまうちの学校の生徒になることも、十分ありうることなんじゃないの?」 「まあ……それはそうなんだけれどね……こうも立て続けに人が死んでいると、悲しい気持ちになるというか……」 よしよし、と綾は小夜子の頭を撫でた。 「小夜子はいい子ね。やっぱり従姉妹だけあって、夕里子さんに似てるのかしら」 「私はユリねえみたいに他の人のことを考えてるわけじゃないわよ。ただ、もしも自分が当人になったらって想像すると……悲しい気分になっちゃうのよね」 ねえ、と小夜子は勢い良く顔を上げた。 「綾は死なないでね。もしも綾が死んだりしたら……私……」 小夜子の目は、少しではあるが、潤んで見えた。 「まったく……よくわからない想像力ね。小夜子、泣かないでよ」 「泣いてはいないけど……」 「大丈夫、私は死なないわ。まだまだやりたいことがあるもの。小夜子こそ死ぬんじゃないわよ?」 「私が死んだら……綾は悲しんでくれるの?」 「あったりまえだのクラッカーよ。ま、せいぜい二人とも長生きしましょ」 そう言って、綾は力強く笑った。 454 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 06 04 ID KZpfkP/i その噂が流れてきたのは昼過ぎだった。 死んだ宮入智恵は自殺する直前にメールを母親に送っていたらしいということ。 そのメールにはいじめを示唆する内容が書かれていたということ。 そして、午前中からずっと、四辻夕里子という生徒が話を聞くために職員室に呼び出されたままだということ。 「メールに、四辻って人になんかされたって書かれてたらしいぜ」 「じゃあ……やっぱりいじめで自殺したのか」 「これって、ニュースとかになるのかな?」 噂は静かに、しかし素早く広がり、昼休みが終わる頃には、全校生徒で四辻夕里子の名前を知らない者はなくなっていた。 「馬鹿馬鹿しい」 と小夜子は噂を切って捨てたが、綾は何も言わなかった。 どこか不穏な雰囲気のままその日の学校は終わり、生徒たちはあまり騒ぎ立てないよう教師から注意を受けて、各々教室を出た。 委員会に行くという小夜子と別れて、綾は昇降口に向かう。 どうやら校長室に押しかけた宮入智恵の両親が、メールのことも喚きたてていたらしい。 さすがに昼ほどではないが、四辻夕里子の名を囁く生徒はやはりいた。。 昇降口を出た綾は、校門を出ようとしている陽一の後姿を見つけ、慌てて後を追った。 「お兄ちゃん!」 呼びかけると同時に、後ろから抱きつく。 その勢いに、陽一は前につんのめってしまった。 「おわ! な、何だ、綾か」 「今帰りなの?」 「ああ、まあ、そうなんだけど……」 下校時間だけあって、周囲にはたくさんの生徒の目がある。 突然陽一に抱きついた綾と、抱きつかれた陽一を、道行く人が興味深げに見ていた。 「……何でいきなり抱きついてるんだよ、お前」 「ふふ……これ、今私たちの間で流行ってる挨拶なの。別に深い意味は無いわ」 綾は笑顔で言って、陽一から離れた。 「今日は一人なのね」 「ああ」 「夕里子さんは?」 「……ちょっと色々あって、遅くなるらしいんだ」 「ふーん」 陽一も当然事情は知っているのだろう。 綾の問いに、何とも言えない複雑な表情を見せた。 二人は一緒に帰ることにしたが、言葉少なく、駅に着くまでも、電車に乗ってからも、最寄り駅から自宅に歩くまでも、あまり会話をしなかった。 ただ黙々と道を歩いた二人だが、近所の大きな公園の脇を通ったとき、綾が口を開いた。 「お兄ちゃん、ちょっと寄って行かない?」 「え……」 「公園に。寄っていこうよ」 その公園は、アキラが浮浪者たちに犯され、命を落とした公園だった。 陽一は躊躇したが、綾は有無を言わさず陽一の手を引き、公園に連れ込んだ。 455 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 17 48 ID KZpfkP/i アキラが死んだのはほんの二ヶ月ほど前のことだが、すでに公園は多くの人が平気で訪れるようになっていた。 木がたくさん植わっているおかげで、秋の彩をより身近に感じることができる。 広い芝の運動場では、子供たちが楽しそうにサッカーをしていた。 「元気よね、子供たちは」 「そうだな」 「夕日が真っ赤で綺麗ね」 「そうだな」 無邪気にボールを蹴る子供たちを見ながら、陽一と綾はベンチの脇に佇んで言葉を交わした。 「お兄ちゃん、この公園、覚えてるわよね」 「何がだよ」 「アキラちゃんが死んだ公園だよ」 「……ああ、覚えてるよ。当たり前だろ」 「お兄ちゃん、あの時すごく悲しんでたわよね。それに、自分を怒ってた」 「……まあ、そうだな」 「お兄ちゃんは正義感が強いのよね。ある意味、お母さんの影響なのかしら」 「綾……そんな話をするだけならもう行こう。俺はこの公園にいるのはあまり気が乗らないんだ」 「アキラちゃんのこと、随分引きずってるのね。そんなに悲しいことだったの? そんなに許せないことだったの? アキラちゃんを殺した人達が今も憎い?」 「当たり前だろ。人が死んだんだぞ? 忘れられないし、許せることじゃないだろうが」 憤りを露にする陽一の言葉に、綾は小さく微笑んだ。 「じゃあ、夕里子さんも許せないってことになるわよね」 「……!」 「お兄ちゃんも知ってるでしょ? 夕里子さんが自殺した宮入さんをいじめていたっていう話。 自殺する前に書き残していたんだってね。今日遅くなるっていうのも、その辺の話を聞かれてるんでしょ?」 「……まあ、そうみたいだな」 「いじめて自殺に追い込むのは、人殺しと違うのかしらねえ?」 「夕里子さんがいじめなんてしていたとは思えない」 夕里子の笑顔が思い起こされる。 穏やかな微笑を浮かべ、いつも心配になるくらい優しかった夕里子。 その夕里子がいじめをしていたなんて、到底信じられることではなかった。 「何かの間違い……だと思う」 「ばっかじゃない? 死ぬ前に送ったメールに、夕里子さんの名前がはっきり書いてあったんでしょ? どこをどう間違えるのよ」 綾は、陽一の逡巡を一言で叩き切った。 「別れなさいよ」 「え……」 「別れなさい、夕里子さんと」 「それは……」 「前に聞いたけど、お兄ちゃん、夕里子さんの裏表のないところが好きだって言ったんですってね でも、ああやって笑ってる裏でいじめなんてして、しかも自殺まで追い込んだとなると……それって、思い切り裏表があったことになるでしょ? お兄ちゃんの好きだったところが、全部嘘だったってことになるんじゃない? そうだとしたら、もう夕里子さんと付き合う理由が無いんじゃないの?」 綾の口調はあくまで静かで、冷たかった。 赤い西日が逆光になって綾の表情は見えない。 ツインテールに結んだ髪が、血の中に揺らめく影のように、黒く風になびいていた。 その異様な威圧感に圧されて、陽一は言い返すことができなかった。 「ねえ、別れなさいよ。お兄ちゃんとあの人は合わないわ」 「合わないって……」 「私の知ってるお兄ちゃんは、いい人の皮を被った鬼畜を恋人にするような人じゃないもの」 「綾……お前……言い過ぎ……」 綾は歩を進めて、陽一に抱きつき、その胸に顔をうずめる。 突然のことに、陽一は言いかけた言葉を飲み込んでしまった。 「お兄ちゃん、お願いだから……私を守ってくれたお兄ちゃんのままでいて……あんなやらしい人殺しに穢されちゃ駄目よ」 「……」 「ねえ、もう一度聞くけど、夕里子さんを許せるの? 宮入さんを自殺に追い込んだ、夕里子さんを」 「それは……」 456 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 19 00 ID KZpfkP/i 陽一は幼い頃に自分の母の壮絶な虐待を目の当たりにしている。 それで綾が死に掛けたことも覚えている。 そんな原体験を持つ陽一にとって、他人を傷つける行為、他人の命を奪う行為は、一般的な倫理観を越えたところで、許されざることだった。 「……許せることじゃないよ。もし……本当にいじめをしていて、自殺に追い込んだとしたら。でもまだ本当に夕里子さんが原因だと決まったわけじゃ……」 「仮にも恋人だから、どうしても贔屓しちゃうのはわかるけどね。死ぬ間際のメッセージを軽んじるのは、死んだ宮入さんがあまりに気の毒じゃないかしら。 絶望して、自ら命を絶とうという時に書いた最後の訴えなのよ?」 「……!」 綾は陽一に抱きついたままで顔を上げ、目で訴えかけた。 「別れてくれるわよね。アキラちゃんのために涙を流したお兄ちゃんなら……私を守ってくれたお兄ちゃんなら……わけもなく他人をいたぶる人を、好きになるはずないものね」 そう、夕里子があの笑顔の裏で級友をいたぶっていたとなると、それは陽一の許容する人物像ではない。 恋愛対象から嫌悪の対象に変わることは間違いなかった。 間違いなかったが―― 「別れる……?」 「そう、別れるの。人殺しのいじめっ子が大好きって宗旨変えするなら、それはそれでいいんだろうけどね」 「それはさすがにないけど……」 「じゃあ別れてくれるのね!?」 「そう……だな……許されることじゃないもんな……」 次々と繰り出される綾の責めの言葉に、陽一はついに頷いてしまった。 「じゃあ、今すぐメールを打ってくれる? 夕里子さんに」 「え……? 何も今すぐしなくても……」 「ここからは私の都合になるけど、『級友を自殺に追い込んだ女と付き合ってた男の妹』なんて周囲に認識されると私も困るしね。手早く別れてもらった方がいいわけ」 「……まあ、そうだな。俺だけの問題ってわけじゃないんだよな、こうなると」 陽一はのろのろとした動作で携帯電話を取り出したが、夕里子へのメールを打つ段になってまた止まってしまった。 「どうしたのよ? 文面が思いつかないなら、いっちょ私がすっぱり別れられる強烈なやつを書いてあげようか?」 「いや、いい。自分で打つよ」 しかし陽一の指は動かない。 綾はじっと期待の目で見ているが、数分経っても陽一は動かなかった。 「……ちょっと、お兄ちゃん?」 「ん……ああ、まあ、意外と思いつかないもんだな、別れの言葉って」 これから打つのは夕里子に向けた別れの言葉だ。 凝った文面なんて考えなくてもいい。 書こうと思えばすぐに書けた。 しかし―― (いいのか? 本当に……) 『私……胸を張って陽一さんの恋人だって言えるようになりたいんです』 そう言って恥ずかしそうに笑った夕里子。 綺麗で、冗談だろうと言いたくなるくらい優しくて、一途に自分を想ってくれた夕里子。 いじめは許されることではない。 人の命を奪ったとなれば、なおさらそれは嫌悪の対象になる。 そして、夕里子が死んだ宮入智恵になんらかの嫌がらせをしていたのは――どうやら間違いないらしい。 何しろ、宮入の死の直前のメールがあるのだ。 (でも……) 陽一は携帯電話の画面を見つめたまま、動くことができなかった。 いい加減痺れを切らした綾が陽一の手から携帯電話を奪い取ってしまった。 「あ……」 「私が送ってあげるわよ」 陽一の手を払い、綾が素早くメールを打ち始めたその瞬間、 「支倉君? 綾ちゃん?」 二人のすぐ近くから声がかかった。 457 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 21 18 ID KZpfkP/i 振り返るまでもなくわかった。 きっちりと編みこんだ三つ編みの髪に、一切崩すことなく着こなした制服。 眼鏡の少女は、小首を傾げて陽一と綾を見つめていた。 「宇喜田……」 「あら、縁さんじゃないですか」 縁は嬉しそうに手を振って、二人の元に駆け寄った。 「あはは。よかった。人違いだったらどうしようかと思ったよ。西日がきついねえ、この公園は」 「……縁さん、こんなところにどうしたんですか? お家とは別の方向ですよね」 「ちょっと支倉君に用事があってさ。今から家にお訪ねしようかと思ってたんだ」 「何の用事ですか?」 「夕里子ちゃんについてお話があって」 綾は舌打ちをしたくなったが、努めて平静な声を出した。 「そうですか。後で聞きますから、近くの喫茶店で待っていてください。今、兄と大切な話をしていますので」 「夕里子ちゃんに関することだよね? だったら私も混ぜてほしいんだけどな」 「家族としての話し合いですので、ご遠慮願えますか?」 「何か迷ってるようだったら、別の意見も聞いてみた方がいいと思うけど?」 言って縁はちらりと陽一の顔を見た。 いつもの朗らかな笑い顔。 眼鏡の下の瞳には、知性のきらめき。 そして、陽一を見つめる眼差しからは、『力になる』という確固とした意志が感じられた。 陽一の沈んだ表情が、みるみるうちに晴れていった。 「……綾、宇喜多にも話を聞いてもらおう」 「お兄ちゃん!?」 「宇喜多は俺やお前よりも、夕里子さんのことを知っているわけだし、話を聞くのは悪いことじゃないだろう」 「う……」 前回のちゃちな自転車への細工とは違う。 人を一人殺してまで打った、夕里子を陥れるための罠だ。 死に際して残した言葉というのは、日常口にする言葉の何倍も重く見られる。 『自殺した』宮入智恵は、四辻夕里子の名前を残したのだ。 学校や死んだ宮入智恵の親は夕里子を追及する流れになっているし、全校生徒も、四辻夕里子が何かしたのだろうと考えている者が多数だ。 四辻夕里子の名は、級友をいじめの末自殺に追い込んだ生徒として、定着しつつある。 例え縁であっても、挽回の余地はないように思えた。 (でもこの女は……) 油断ならない。 できれば縁を関わらせないうちに、陽一と夕里子を別れさせてしまいたかった。 「……話なんか聞く必要ないでしょ? これまで人前でどんな振る舞いをしてきたにせよ、宮入さんを死に追い込んだ事実に変わりはないんだから。後はお兄ちゃんからメールを送っておしまいよ」 「それは違うんじゃないかな?」 綾の言葉に、陽一に代わって縁が答えた。 「夕里子ちゃんが悪いなんて言い切れないでしょ?」 「お前には言ってない!!」 綾は目を見開いて、縁を睨みつけた。 射殺さんばかりの視線を、縁は笑って流した。 「はは。まあ、私も支倉君に言ってるだけだから、お互い気にせずいこうか」 「ここに居るだけで邪魔なのよ! あんたは!!」 「二人にとってお邪魔なら居なくなるよ」 縁はまた陽一を見る。 「話を聞かせてくれ」 はっきりと、陽一は言った。 「というわけで、支倉君に話をするから、ちょっと我慢していてね」 「この……!」 「あはは。うーん、綾ちゃん怒ってるね。できれば綾ちゃんにも綾ちゃんにも聞いてもらいたいんだけどな。考えが変わるかもしれないし」 「何をどうすれば変わるのよ。夕里子さんのせいで宮入って人が死んだのは間違いないんでしょ?」 「そうとも限らないよ」 ふん、と鼻で笑って、綾は縁を見据えた。 「遺書が残ってたのよ? それで親御さんが学校に怒鳴り込んできたんじゃない」 「遺書って言ってもメール遺書だからね。本人が書いたとは限らないし」 「へええ、また面白いことを言うのね」 「うん、これは今さっき綾ちゃんを見て閃いたことだから、本当に単なる思い付きだけど」 「私を?」 縁は綾が手に握った陽一の携帯電話を指差した。 458 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 26 01 ID KZpfkP/i 「ほら、綾ちゃん、今支倉君の代わりに夕里子ちゃんにメールを送ろうとしていたでしょ? それと同じことができるじゃない」 「……!」 「メール遺書なんて、そんなものだよ」 「……あなた、自分が何言ってるかわかってるの? 本人以外がメールを送ったんだとしたら、それは……」 「そうだね。自殺じゃないね」 「警察も自殺だって言ってるんでしょ? それが間違ってるっての? さすがに妄想が過ぎると思うけど」 「あはは。突飛だと自分でも思ってるよ。でも警察も人間の集まりだから、間違えもするし面倒くさがりもするよ。自殺の形になってれば、適当にしか調べないからね。……でもまあ思いつきだから、忘れてね」 置いといて、と物を除ける仕草をして、縁は話を続けた。 「宮入さんが自殺したのはまあ間違いないとして、メール遺書も宮入さんが送ったとしても、本当に夕里子ちゃんが悪いのかどうかは、それとは別問題だから」 「は? 名指しされていてどうしたら別問題になるのよ? あんたも身内贔屓が過ぎるんじゃないの?」 「身内贔屓っていうか、信頼の問題だよね」 「どう違うのよ、それは」 「ちゃんとした理屈があればそれは信頼の問題になって、理屈がなければ単なる身内贔屓だね」 「はー、いちいち仰ることが違うわね。何よ、夕里子さんが悪くないっていう理屈があるって言うの?」 綾はもはや敬語など抜きで、縁に素のままでぶつかっていた。 縁は気にした様子もなく綾と陽一の顔を交互に見ながら話をし、陽一はただ黙って話を聞いていた。 「殺す意図があった場合と殺す意図が無かった場合とで、殺人の罪も重さが違ってくるのは知ってる?」 「まあ、そんな話を聞いたことがあるわね」 「例えば、殺す意図が無くて、百人が見たら百人とも『人の死に繋がるわけは無い』と思う行動をして、その結果人が死んでしまったら、それはその行動をした人が悪いのかな?」 「……言ってる意味がわからないんだけど」 「夕里子ちゃんが宮入さんに『頑張ってくださいね』と声をかけて、その結果宮入さんが自殺したのだとしたら、それは夕里子ちゃんが悪いのかな、ってことだよ」 言葉の捉え方は人それぞれ。 精神状態によっても大きく違ってくる。 メールには『ひどいことを言われた』としか書かれていなかった。 「本当に何気ない一言や単なる挨拶を、不安定な精神状態だった宮入さんが『ひどい言葉』に変換しちゃっただけってこともあるんだよ。その場合、声をかけた人が悪いのかな?」 「……勝手に死んだ人間が悪いと、そう言いたいのね」 「言い方は悪いけど、ぶっちゃけるとそうなるね」 さすがに決まり悪げに縁は笑った。 「……全部縁さんの想像でしょ? それこそ、夕里子さんが陰に隠れてひどいことを言い続けていた可能性だってあるんだから」 「一応色々聞きまわったけど、誰もそんな様子を見た人がいなかったからね。 元々友達の居ない子だったみたいだけど……どんなに隠れるのがうまい人でも、まったく他人に気取られずに人を害するのは至難だよ。 私は、夕里子ちゃんは責められるようなことはしていなかったんだと思うよ。まあ、このあたりが最初に言った信頼の問題になってくるわけだけど……理屈は通ってるでしょ?」 「仮にあなたの言うことが正しかったとしても、夕里子さんが宮入さんの自殺のきっかけになったことに変わりは無いんじゃない」 「その辺は、誰もが可能性のあったことだからね。運の悪い宝くじに当たったようなものだし、私はどうでもいいやって思うけど、これは人によるかな」 ということで、と両の手を叩いて、縁は陽一に向き直った。 「夕里子ちゃんを信頼するのが私の意見、夕里子ちゃんを信頼しないのが綾ちゃんの意見だよ。どっちも理屈としては同じくらいのものだから、後は本当に、夕里子ちゃんを信じるか信じないかってだけ。 私も夕里子ちゃんの知り合いじゃなかったら、ひどいことする人だなあ、で終わってただろうしね」 言い終えて息をつき、縁はいつもの笑いを浮かべた。 「後は支倉君次第。夕里子ちゃんを信じるかどうか選んでね」 459 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 26 50 ID KZpfkP/i 「俺次第、か……」 考え込む陽一を、綾は苦々しい表情で見た。 後は夕里子を振るメールを送るだけという状況だったのに、二択にまで押し戻されてしまった。 そして、縁は自殺についてまで疑いを抱いていた。 (この女はどこまで……) 危険を冒してでも殺さなければならないのはこの女なのかも知れない。 しかし、今まで出会ったどの女とも、縁は明らかに質が違った。 縁は小首を傾げたままで、考え込む陽一を見つめている。 やがて陽一は、縁に向かって問いかけた。 「宇喜多、お前は、夕里子さんを信じるんだな」 「うん」 「……俺も信じるよ。まあ、出会って数週間の俺が信じるなんていうのもおこがましいけど……俺の見てきた夕里子さんと、夕里子さんを信じる宇喜多を信じることにする」 「お兄ちゃん!?」 愕然として、綾は陽一を見た。 「お兄ちゃん……私よりも、縁さんの言うことをとるの? 私のことは信じないって言うの?」 顔から血の気が引き、膝ががくがくと震える。 傍目に見ても、普通ではない反応だった。 「綾……?」 「何で……何でそうなるのよ! 何で……!」 「おい、綾、別にお前を信じないとかじゃなくて……」 「うるさい! 馬鹿!」 綾は陽一を平手で殴りつけた。 乾いた音が響く。 そのまま綾は顔を伏せて駆けていってしまった。 「綾!」 陽一は慌てて鞄を持ち、走りだそうとして、縁に向き直った。 「宇喜多、すまん! 俺、綾を追うから……」 「うん、いいよいいよ。夕里子ちゃんのこと、後でちゃんと励ましてあげてね」 「ああ。それと、綾のこと、ごめんな。別にあいつも悪気があるわけじゃなくて……」 「わかってるよ。綾ちゃんは支倉君のことが大好きでだから、心配なんだよね、きっと」 「……ありがとうな」 今度こそ陽一は駆け出す。 綾はすでに公園を出て、その姿はなかった。 一人残された縁は、陽一の後姿に向かって呟いた。 「こちらこそ。信じてくれて、嬉しかったよ」 460 名前:赤の綾 ◆5SPf/rHbiE [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 04 27 35 ID KZpfkP/i 綾は家に帰ると、部屋に閉じこもり、ベッドに伏せて泣いた。 すぐに後を追ってきた陽一も帰り着き、綾の部屋の戸を叩いた。 「綾! おい! ちょっと話を聞けって!」 「何よ……」 扉の向こうから聞こえる声はくぐもり、震えている。 泣いているのだとすぐにわかった。 「……余計なこと言って悪かったわね……っ……もう、夕里子さんとでも縁さんとでも、勝手に仲良くしてなさいよ」 「綾、さっきのは夕里子さんを信じるか信じないかって問題で、お前を信じるかどうかとは違うだろ。落ち着いてくれ」 「……お兄ちゃんは……私なんかより、縁さんがいいんでしょ」 「宇喜多を信じるって言ったのは、お前と比較したわけじゃない。夕里子さんを信じる理由の一つとしてという意味で……」 「例えば……変な話だけど、私が夕里子さんと同じ立場になって……縁さんが私の味方をしてくれなかったら……お兄ちゃんはどうするの?」 「どうするも何も……俺はお前の味方だよ。兄妹なんだから、当たり前だろ」 「……」 部屋の中から聞こえていた嗚咽が小さくなっていく。 しばらくして部屋の戸が開き、目元を赤くした綾が部屋着に着替えた姿で現れた。 「綾……」 「……」 「えーと……」 ぼんやりと、綾は陽一に顔を向けた。 「夕里子さんとは、別れないのね?」 「まあ」 「お兄ちゃんにも、よくない噂が立つかもしれないのよ?」 「ああ」 綾は細くため息をついた。 髪は解れ、荒んだ目をしていたが、だいぶ落ち着いた様子だった。 「……所詮、妹の心配なんて、余計なものよね」 「いや、ありがたいとは思ってるよ。ちょっと過激かなとも思うけど」 「……もういいわ。今回のことは、好きにすれば?」 腕を回し、コキコキと肩を鳴らしながら、綾は陽一の脇を通り過ぎた。 「さあて……今度はどうしようかしらね」 「え?」 「料理よ。最近つくねが多かったから。今度は何が食べたい?」 「ああ……別に何でもいいよ」 「そう」 綾が階段を下りるのを追って、陽一も階下に下りた。 開いたままの綾の部屋の扉がゆらりと動き、軋んだ音を立てる。 部屋の中には枕が一つ、綿を撒き散らし、包丁の突き刺さったままで転がっていたが、陽一がそれに気付くことは無かった。 戻る 目次 進む