約 1,537,619 件
https://w.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/866.html
【名前】日辻 那由多(ひつじ なゆた) 【性別】男 【学年】二年生 【能力名・レベル】算視数明(マスマチックビジョン)レベル3 【能力説明】全ての情報を数値に置き換えそこからあらゆる計算を行う事ができる。 観察・分析し、そこから導き出される予測は予言にも等しい。 【概要】真面目で融通の利かない風紀委員 【特徴】スキンヘッド・眼鏡・白ランをきっちりかっちり着こなす 【備考】スキンヘッドなのは自分の体の一部でありながら自分の意志に反して乱れる髪が許せないから。 上記の事からもわかるように、神経質、完璧主義、合理主義 【台詞】どんなに複雑な式でもあらかじめ解は決まっているのです。 君のような不確定な存在は許せないのですよ。
https://w.atwiki.jp/nanaitatrp/pages/842.html
【名前】日辻 那由多(ひつじ なゆた) 【性別】男 【学年】二年生 【能力名・レベル】算視数明(マスマチックビジョン)レベル3 【能力説明】全ての情報を数値に置き換えそこからあらゆる計算を行う事ができる。 観察・分析し、そこから導き出される予測は予言にも等しい。 【概要】真面目で融通の利かない風紀委員 【特徴】スキンヘッド・眼鏡・白ランをきっちりかっちり着こなす 【備考】スキンヘッドなのは自分の体の一部でありながら自分の意志に反して乱れる髪が許せないから。 上記の事からもわかるように、神経質、完璧主義、合理主義 【台詞】どんなに複雑な式でもあらかじめ解は決まっているのです。 君のような不確定な存在は許せないのですよ。
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1306.html
――――彼方まで愛を込めて―――― そう君、今日はあなたの誕生日。 あなたがいなくなってから今年で17回目の、誕生日。 出会ってから数えるともう、何回目になるのかしら? 赤ん坊だったこなたも、もう18になったのよ? 時の流れは早いよね。 あなたにも見せてあげたいな、私達の大事な娘の姿を……。 ずっと小説家になることだけを志して必死に生きていた、そう君。私の大事な旦那様。 私は時に優しく、時に厳しくあの人を守ってきたつもりだ。 だけど、貧困な生活はそれなりに長く、食生活の貧しさからか、知らないうちに、そう君の身体は病に侵されていた。 19年前。大きな賞を貰って、出版が決まった。あの時のそう君のはしゃぎかたったらなかったよね? もう、本当に小さな子供みたいに飛び跳ねて。ふふふ、私も一緒になって飛び跳ねたんだけどね。 その年の内に私は赤ちゃんを授かって、何もかもが上手くいくと思ってた。 けれど、そう君の身体を蝕んでいた病魔は、私達の幸福を奪い去っていく。 それでも、そう君は必死になって小説を書いていた。 「俺は小説家だ。小説には印税ってのがある。お前達に迷惑をかけないためにも、 俺は腕を動かすことが出来なくなるまで、何本でも書き続ける」 春になって、柔らかな風と共にこなたはやってきた。 名前は、私の名前「かなた」と対を成すようにって、そう君が決めたんだよね。 同じ総合病院で家族そろって一緒に入院なんて、笑い話にもならないよね? だけど、それはそれでよかったのかもしれない。 そう君は自分の病室を抜け出して、私とこなたを毎日、抱きしめてくれた。 それからすぐに私とこなたは退院して、今度は私達二人がそう君を抱きしめるため、毎日病院へと通った。 家族三人が共に過ごしたのはそれからたったの1年間だけ。 こなたの身体の調子が悪いとき以外は必ず、お見舞いに行った。 辛くって、悲しくってどうしようもなかったけど、少しでもあなたと一緒にいたかったから。 春になってすぐに、そう君は還らぬ人となった。 お医者様の見立てでは予想されていた死期よりも1年以上存えたのだと言う。 ずっと分かっていたことだから、泣かないと思ってた。 覚悟していたから、泣かないように我慢した。 私達は、ほぼ駆け落ち同然でここまで来たよね。 私の両親はそう君の事を毛嫌いしていたから、とても話をする気にはなれなかった。 けれど、そう君は知らないうちに田舎のご両親に連絡を取ってくれていたらしく、その日の内にお義父さんが病院にやってきた。 お義父さんは何度も私に頭を下げて謝ってくれる。でも、別にお義父さんが悪いわけじゃない。不幸な女とも思われたくない。 少なくとも私にとって、そう君と過ごした時間はとても幸せだったよ。 その後、通夜や葬儀の話、今後の話。それから、実際の通夜とか、親戚への挨拶とか……。 正直、その辺は覚えてないのよね。ずっと、コップいっぱいに注いだ水のように、いつ零れてしまうかも分からない、そんな状態だったから……。 全てが終わって、何日かぶりに我が家へ帰った日のこと。 そこは、そう君との思い出がいっぱい染みこんでいて……。 ついにコップの水は溢れ出してしまった。 疲労や不安、そして悲しさや悔しさが綯い交ぜになって溢れてきたよ。 私は泣いた。一晩中、泣いた。こなたもつられて泣いた。 泣いてるこなたを抱きしめて、涙を流すことを止めた夜。 翌朝、気がつくと、こなたは私の頭を優しく撫でてくれていた。 私はそう君のためにも、きっとこの子を立派に育ててみせる。そう強く誓った。 生活自体はそう君のおかげで安定していたよ。そう君の出版したいくつかの小説の印税が主な収入源。 それに私のパートのお給料を足せば、こなたと二人、なんとか暮らしていけた。 そう君は二人で実家に戻れって言ってたよね? だから、怒られちゃうかもしれないけど、その時の私は誰にも頼りたくないと思ってたの。 天国で私達を見守ってくれてるはずのそう君に心配をかけたくなくて、一番不安な方法をとってしまった。 バカだね、私。 それから私は、アパートと保育園とパート先を行ったり来たりする日々がずっと続いた。 こなたはそう君によく似て、なんにでも興味を示す、好奇心旺盛な子だったの。 保育園の帰り道には、その日の出来事を一生懸命に話してくれるあの子が微笑ましくて、 それを見るだけで、辛さや悲しさはどこかに消えていった。 そう君譲りの泣き黒子も癒しの一つだったわね。 数年が経ち、こなたも小学生になった。 前と比べると、なんとなく笑顔が減った気がしたけど、とても強い子だなって思ったよ。 お父さんがいないことを寂しく思わず、強く育ってくれてた。 私はそれに安心したのもあるけど、大きくなっていろいろ入り用なものも増えたし、 パートの量を少しずつ増やしていった。 中学に入り、こう、個性が出てきたっていうのかな? 私としては不満だったけど、あなたと同じで、ゲームやアニメにハマり始めたみたい。 「みたい」っていうのは……。 その頃から、こなたと私は会話が減っていったから……。 笑顔を見ることも徐々に無くなっていった……。 こなたが3年生になった頃、ついに私達の間の会話は消滅した。 あの頃の私はいつもこなたの部屋を開けることが出来なかった。 毎日、毎日こなたに怯えながら生きていた。 無表情で無感動で何を考えているのか分からない。 できる限りのことはしたつもり。 パートが終わり、帰宅するのはいつも夜9時ごろ。 アパートの前で部屋を見上げると、ウチだけが真っ暗だった。 唯一、あの子の部屋のディスプレイだけがぼんやりと淡い光を外に放っていた。 私は、それを見るたびに深いため息を吐き出す。 「ただいま~。こなたー、今帰ったわよー」 「おかえり」の声は、いつも無い。 静まり返る部屋に私の声が吸い込まれていく。それがとてつもなく、悲しかった。 パート先で貰った、残り物の惣菜をおかずに、一人遅い晩御飯を食べる。 時折トイレに向かうこなたを見かける以外、何の接触もとることは無かった。 こなたが話してくれなかったことは寂しかった。 こなたが笑ってくれないことが悲しかった。 そう君がここにいないことが、何よりも辛かった。 そして、一眠りして朝を迎えれば、また同じ日常が始まる。 私は必死に働く、こなたを守るために。 お金が無くちゃ、生活できない。お金が無くちゃ、何も出来ない。 お金さえあれば、そう君は……。お金さえあれば……こんな思いする必要はなかったのに……。 ある日、パート中に体調を崩して急遽、帰宅したことがあった。 家に帰ると、カギが開いている。 不思議に思った私は玄関を恐る恐る開いて、中を確かめる。 すると、そこにはある筈のないこなたの靴が脱ぎ散らかしてあった。 正午を少し回ったくらいの時間。 本来なら学校にある筈のこなたの靴が目の前にある。 私はこの状況をしっかりと理解できないまま、自分の身体の調子も忘れてこなたの部屋へと走る。 「こなた!」 電気の消えた部屋はカーテンで閉め切られ、薄暗い。 その中にディスプレイの灯りで顔を照らされたこなたが、ぽつんと座っていた。 「なあに? おかあさん?」 「あなた……、学校は……?」 沈黙。カタカタとキーボードを叩き続けるこなた。 「つまんないから……、帰ってきたんだよ……」 気のない、感情のない返事。 うっすらと見える横顔には生気のかけらも無く、こちらに向く様子もない。 表情からは何も伝わってこない。 視線を下ろすことなく手だけがカタカタと音を立てて動いている。 私の中に何か分からない感情が生まれた。 いや、最初からそこにあったのだと思う。 それが、今、膨れ上がり、破裂した。 頭に血が上り、体温が上がる。吐き気に襲われ、汗がにじみ出る。 ――――パシーン パソコンとキーボードを叩く音が小さく流れる部屋の中に、大きな破裂音が響く。 私はその日、初めてこなたを、叩いた。 「痛いよ、おかあ……」 「なんで分かってくれないの!お母さんこんなにがんばってるじゃない!?」 頬に手を当て、言葉を言いかけた娘を遮り、私は続ける。 「お父さんがいなくて辛い思いもさせた。そのために私が働きに出て寂しい思いもさせた。 だけど、生活に不自由をさせたことは無いし、なんでも与えてあげたじゃない! あなたには立派に生きていって欲しいから、立派な大人になって欲しいから……。 だから、私こんなにがんばってるじゃない!なんで、分かってくれないのぉ!?」 私は思うままのことを吐き出し、その場に蹲った。 涙が溢れてくる。 自分の苦労が伝わらない悔しさ。 女手一つで育ててきた疲れ。 若さゆえに、遊びたい時もある。それさえも押し殺してきたストレス。 その全てが綯い交ぜになり、一気に押し寄せる。 醜かった。自分で自分の事が嫌になり、とてつもなく醜く感じた。 そう君、ねぇそう君!あなたは何で逝ってしまったの? なんで、私を残して、逝ってしまったの? 「ばか――――」 パソコンから漏れ出るファンモーターの音が耳に残る、この虚無的な空間に、こなたの声が響く。 はっとして顔を上げる私。 「ばか……、ばか……、ばか、ばか! お母さんのばかー!」 こなたが泣いてる。 ずっと、無表情で、何の感情も見せなかったこなたが、泣いてる……。 「私、一度でもお父さんが欲しいって言ったことあったかなぁ!? 私、一度でもお母さんにそんなわがまま、言ったことあったかなぁ?」 こなたは小さな肩を震わしながら、私に近づいてくる。 「ねぇ、お母さん。私は、私だよ? 泉こなただよ? お母さん、いつになったら私のこと見てくれるのさー!?」 ――――えっ!? 「ちゃんと見て、私を見てよ、おかあさん! 私はお父さんの替りじゃないんだよ!? 私はお母さんの子供なんだよ!? 泉こなたなんだよ!?」 小さいと思っていたその両手は、いつの間にか私と同じくらいの大きさになり、 掴まれてる肩に入れられた力も、もう子供のものじゃない。 この子はちゃんと育ってる。こなたは立派に育ってる。 なんで、気がつかなかったんだろう、そんなことに。 何の為に私はがんばっていたんだろう……。 私はいつ、この子を置き去りにしてしまったんだろう? そんな疑問と後悔が湧き上がり、再び涙が溢れ出す。 こなたの腕を払いのけて、今度は私が抱きしめる。 うん。育ってる。大きくなってる。 でも、まだまだ小さいこなた。こんなに小さいこなたは、こんなにたくさんの不安を抱えていた。 知らず知らずのうちに私が植えつけていった不安。 頬を寄せ合い、互いに嗚咽する。 涙と涙が混じりあう。それはとても暖かい。 あの人がいなくなってから14年間、感じたことの無かった暖かさ。 ごめんね、そう君。私、ダメな母親だったわ。 あなたがいなくちゃ何も出来ない、ダメな母親だわ。 でも……、でもね、そう君。 これからはきっと大丈夫。私にはこなたが、いるから。 あなたの残してくれた……ううん、あなたと私の大事な子供。こなたがいるから、大丈夫。 私達二人、きっとうまくやっていける。そうだよね?そう君。 「ごめんね」 ようやく出すことの出来た言葉はたったのそれだけ。 でも、こなたは何度も何度も頷き、私にしがみついていた。 その日、私はこなたと一緒に寝ることにした。 床に布団を敷き、枕を三つ並べて、真ん中にこなたをその横に私。 反対側は……言わなくても分かるよね。 こなたは初めて学校のことを話してくれた。 友達は少ないみたいだけど、決してさびしくは無いって。 学校をサボってよく先生に怒られるって。 でも、その先生は優しくしてくれるって。 そういえば、中学になってから一度も学校へ行ったことが無かった。 今度、お礼代わりにあいさつに行かなきゃ。 取り留めの無い話をしているうちに、こなたは私にしがみついたまま眠ってしまった。 私はこなたの為に生きていかなきゃ、こなたの為にがんばらなきゃ。 そう君じゃない。一人の人間として、私の大切な娘、泉こなたを守っていかなきゃ。 その為なら、助けてくれるよね、そう君―――― 「お母さん! 大根がぁー!」 「へ?」 こなたの声にびっくりして飛び起きる。 鍋を覗くとお湯は蒸発し、大根は絶体絶命のピンチ。 うそ!? いつの間に眠っちゃってたんだろう! 「あ、ああっ! どうしようっ!? み、みずーっ! こなた、みずちょうだーい!」 寸でのところで、大根は無事、救出された。 こなたは呆れ顔で、お母さんには任せられないって必死に仕上げをしている。 私は、テーブルに軟禁され、そう君の書いた本を開く。 台所に立つあの子を見てると、さっきまで考えていたことが嘘のように思えてくる。 いまだに、アニメやゲームは大好きだけど、家の中はいつも会話と笑顔で満ち溢れている。 こんなにも私を暖かくしてくれているのはこなたのおかげ。 そんなことを考えて、後姿を眺めていたら、こなたは急に振り返って、私に問いかけてきた。 「ねえ、お母さん。お父さんってどんな人だったの?」 私はその言葉に、心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。 そうだった、この子には何も聞かせてなかった、そう君の事を……。 私は何も言わなかった。言うと、余計にこの子は寂しがってしまう、そう勝手に思い込んでいた。 それに、本人から聞いてくることも無かった。だから、なんとなく有耶無耶にしてしまっていた。 だけど、やっぱりそれは違うね。教えてあげなきゃいけないんだよね? ねぇ、そう君。そう君の事、何から話したらいいかな? 「私、お父さんが手羽大根を好きなこと以外、何も知らないのは、ちょっと寂しいよ~」 「ふふふ、そうねぇ~……」 こなたにそう君のことを話す前に、お誕生日おめでとう。 今年も、私とこなたの笑顔を受け取ってね。 了 エピローグ 「ねえ、こなた」 「ん? なあに? お母さん?」 食器を洗いながら頭だけでこちらを向く。 こちらに振り向いて、結い上げた髪の毛がふわりと揺れる。 「そんなに邪魔なら、切っちゃえばいいんじゃない?その髪」 人のこと、言えた義理じゃないんだけどね。 でも、あの子は何もいわず、ずっとあの髪型のまま。 私と同じ青い髪を、長く長く伸ばしてる。 「あはは、なんでだろうね?」 いたずらっぽい微笑をして、空いたほうの手で髪をくしゃくしゃと触ってみせる。 そしてまた、こなたは黙って洗い物を再開した。 「え?教えてくれないの?」 「あはは、教えないよ~」 「なによ、けちんぼ!」 「お、お母さん、それ、禁則事項……」 こなたが猫口で頬を掻く。私はそんな顔できないわ。 「……これはね、お母さんとずっと一緒にいられるおまじないだよ」 片づけを終え、タオルで手を拭くと、こなたが降りてくる。 頬を赤らめて、手を後ろに回した。 リボンを解くと、真っ青にきらめく長い髪が舞い散る花びらのように広がった。 恥ずかしいわね、そんな嬉しいこといきなり言うもんじゃないわ。 「それと……」 「え?まだあるの?」 ゆっくりとこなたが窓の外に視線を動かす。 私もつられてその方向を見つめる。 「お母さん、今、幸せ? お父さんいないけど、幸せだよね?」 「え? うん、そうね、幸せ、だね……」 「だから、伸ばすの……」 その瞬間、少しだけこなたが大人っぽく見えた。 親バカじゃなく、とってもきれいな横顔……。 「空の上からでも、私が分かりますように……。 いつか、お母さんとお父さんみたいな、素敵な出逢いに、巡りあえますように……」 こなたの横に立ち、肩を引き寄せる。 二人で窓の外を眺めながら、星を探す。 こつんと頭を寄せてくる、こなた。 此方から愛を込めて。届いていますか? そう君? 彼方まで愛を込めて。届いているよね? そう君―――― 終 コメントフォーム 名前 コメント 感動した。それだけ。 -- 名無しさん (2010-06-11 00 57 45) そうじろうさん‼ 2人は幸せに生きていますよ(/ _ ; ) -- ユウ (2010-04-13 02 17 40) とても、とても、すごくいいお話でした。 -- 空我 (2010-02-07 23 37 48) 良い話過ぎて、泣けた!他にいう事は、何もない! 文句あるか?! -- 名無しさん (2008-11-20 12 10 20) 途中すれ違い衝突しつつも最後には分かり合い、かなたとこなた2人の、温かな 母子関係を築いてゆく描写に、大変感動しました。 それにしてもこなた、かなたと2人の場合でもオタクになるんだ・・・。 -- 名無しさん (2008-10-18 09 21 59) 何つー…良い話だ…感動だ!! -- 名無しさん (2008-10-05 05 21 11) 綺麗な話ですっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!! -- 名無しさん (2008-05-09 19 44 01) すごく良い話でした! こんな作品をみれたことに感謝! -- 名無しさん (2008-04-02 11 10 31)
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/646.html
135 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 18 01 ID 6g0RFYsR 朝と言うのは凡そ平均的な人類一般にとって心地良いものであると、ふと目覚めの後に思う。 その理由を説明しろと言われてもオレ如き凡人の理解が及ぶ範囲では到底不可能なこと請け合いだが、 今のところそのような事態になったことはないので苦労はしていない。 目蓋越しの光と布団越しの鳥の声。 この早朝に独特な清涼ながらも段々と温度を増していく室内の、温まった空気の眠気を誘うことに比べたら、 そんな難解な思考で安眠を遠ざける必要性は獏にでも食わせておけばいい。 朝と布団は気持ちいい。ついでに二度寝だともっと気持ちいい。これが常識である。 どんな理屈と難解な語句に溢れた論文よりも、こっちの方が全国のお子様お父様お母様の支持を得ること請け合いだ。 ビバ人類共通。ビバお日様の恵み。気持ち良すぎてまた眠くなってきたぜ。はぁ~ビバノンノン。 さて。 しかしここで眠れば育つ年齢の諸君ならばそのまま二度寝タイムなところ、 朝寝上級者を脳内で公言する身のオレとしてはこのまま眠ったりはしない。 まあ個人差もあるだろうがオレにとって睡眠に関する最も気持ちいい時間とは、 ふと目が覚めた時にそのまま眠らずちょっとだけ意識を起こしてウトウトしている時間なのである。 考えてもみて欲しい。何故、多くの人間にとって普通に寝るよりも二度寝や昼寝の方が気持ちいいのか。 単純に寝てる時間が快楽とイコールならば前者の方が得られる満足度は高いはずである。 にも拘らず、あくまでオレとしては、 と添えることで決して自分がジコチュウなる虫や電気鼠の親戚ではないことをアピールしつつ述べさせてもらうと、 全オレによる一人脳内会議では圧倒的に後者の方がキモチイイ。まさに満場一致。異議なしコールのガンパレード。 国連も真っ青、拒否権持ちのちょっと素敵な五大国の方々が涙を流して羨ましがること間違いなしの全会一致だ。 ちなみに異論は認める。異議ありの場合は住所・年齢・性別・電話番号(出来ればケータイのやつ)と、 ここが重要なんだが顔写真を添付の上でオレの下駄箱まで投函して欲しい。 オレのメアドにメールするのもオッケーだ。その際は写メの添付を忘れないように頼む。 さてさて。 話が少々サイドステップを踏んだようだが、兎に角、オレは通常の睡眠よりも二度寝の方が気持ちいい。 勿論それなりの論拠はある。先ず、基本的に二度寝というのは一度目が覚めてからするものだ。 つまり一回目と二回目の睡眠の間には幾らかの目覚めの時間があるわけで、実はここが得られる快楽が最も大きい。 何でかと言うと、そのまま文字通りに目が覚めているからだ。 人間、記憶に残らないものは基本的に楽しめない。と言うか意識がない時だと感覚がどれだけ働いていてもあんまり関係ない。 対して二度寝、正確に言うとその直前は違う。 何せ睡眠の余韻を引きずりつつも意識があるので、しっかりとその快感を感じることが可能なのだ。 『人は目覚めている限りにおいて生きている』という有難い言葉をどこかの学者が言ったかもしれないが、 オレは諸手を挙げて同意するね。 どんな体験も体感も意識がなければ無意味。 極論を言ってしまえば、男ならプロポーズせずにはいられないような超絶美人のネーチャンに逆レイプされても、 それが寝ている時じゃあ意味がないのさ。何の有難味もない。何故って憶えていないから。 認識出来ないものはないのと同じ。 例えばクラスで人気のあの子なんかに片思いされていたとしても、それに気付けないなら不毛である。 片思いは、本人がされていることに気付かないとチャンスとして活かせないのだ。 『実はアイツってお前のことを好きだったんだぜ』なんて後に友人から聞いても後の祭り、逃した人魚は戻らない。 青春の苦い思い出である。 これで解り難いなら、酒を飲んでる時は気持ちいいが、 その気持ち良さは酔い潰れて気を失った瞬間に終わってしまうようなものだと思って欲しい。 オレ達が認識する睡眠の快感とは、正確には睡眠の直前直後の快感なのである。 この理論でいくと、 睡眠の直後であり睡眠の直前でもある二度寝前のタイミングこそが、まさに至高の快楽タイムなのだ。 意識が覚め過ぎずしかし眠らず、夢と現実の狭間にたゆたうファンタジーな時間。 幸せ絶頂である。人はこの時のために『あと五分』という名台詞を発明したのだと断言するね。 ああ、ありがとう。ありがとう。神様ありがとう。両親よありがとう。 この素晴らしき快楽タイムを味わわせるべくオレをこの世に産んでくれたアンタらに、オレは心から感謝します。 136 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 19 43 ID 6g0RFYsR だからあと五分と言わず、オレはこの幸福な時間を少しでも長引かせるべく最大限の努力をすることにしよう。 二度寝前の気だるーい時間をちょっとでも長く味わう秘訣は、当然ながらうっかり寝ないことだ。 折角の気持ちよさも意識が途切れちゃ意味がない。眠らない、しかし起きないという絶妙な眠気の維持が肝要である。 ここで大抵の人間は舵取りを謝って夢の中に真っ逆さまだ。だがオレはそんな轍は踏まない。 伊達に朝寝上級者を自称していないのだよ。 朝起きて二度寝し、昼飯を食って昼寝して起きて二度寝し、夕飯を食って本寝して起きて二度寝すること四捨五入して20年。 無数の失敗を経験し、最近にやってようやく得たまどろみの極意、決して無駄にはしない。 まあ、そんな大層なことを言ってもちょっと目を開けるだけなんだがな。 いやー、起きてから最初に目を開ける時の、 何と言うか目蓋の外の明るさに目が慣れるまでのあの感じが丁度いい眠気覚ましになるんだ。 開けっ放しだと完全に目が覚めるから、何秒か目を開けたらまた閉じるんだが。 眠気が消えそうになったら目を閉じ、夢の世界へ行きそうになったら目を開く。 この無限ループこそが絶対にして唯一の覚醒阻止かつ二度寝防止法だ。 人はこれによって二度寝直前の快楽を味わい続けることが出来るのである。 とまあ、オレは大体そんなことを考えてから、より長く心地良くこの気持ちよさに浸るべく目を開けたんだが。 知らない、じゃなくて見慣れた、だがぼやけた天井。 お天道様の投げかける光はまだ両目に厳しく、目は半分くらい閉じたまま。 それでもふと明るい方へと目をやれば、 カーテンの隙間から部屋へ差し込み、健気にもオレの覚醒を促すお日様の光が映る。 好い感じにぬくい陽光が部屋の中を反射してキラキラと輝いていた。でもちょっと眩しい。 何か知らんが日光がやけに一箇所で反射しまくっている。キラキラを通り越してギンギラギンというレベルだ。 古いか。 それにしても開きたてのぼんやりした視界にはウザったいってレベルじゃねーぞ。 しかもその光源がゆぅらゆらと狙いを定めるみたいに揺れているもんだから堪らない。 目を閉じ直しても目蓋越しに光っているのが分かるくらいだ。 寝起きの気怠さと天秤にかけてもぎりぎりで鬱陶しい方に傾く。仕方がない。 どうも誰かに負けた気がして気が進まないが、本当に仕方なく←ここ重要、光源の排除にかかるとしよう。 決めたら即実行が成功の道。 うっかりと見始めた夢の向こうで手を振っている美人のねーちゃんの誘惑を振り切り、 オレは幾らかの勿体無さを感じながらもしっかりと目を開いて焦点を合わせた。 その木造のグリップより伸びる刃は厚みと鋭さを両立し、肉を斬る重さと扱い易さを追求したものにして、 古くは刀匠の技術を取り入れて今なお広く民に伝える一品。 その用途は野菜を切り魚を捌き肉を裂き骨を断ち、時には人間をも斬るという広範さ。一家に数本、主婦の友。 姓は持たず、名は包丁。江戸っ子でありんす。 という。 目覚めたら包丁。目を開ければ包丁。ナイフとも西洋剣とも違う独特の長さと反りを持つ刀身に、鍔のない持ち手部分。 日本人伝統の調理用具が、刃先をオレに向けて滞空していた。 新ジャンル「朝から包丁」、始まります。 って最初っからクライマックスかよ!? 「愛してるから殺したーーーーーーーいっっ!!」 「ふるおあああああぁぁぁぁぁぁあっ!?」 まさに黒ヒゲ間一髪、 殺る気満々のセリフと同時に転がったオレに遅れてザクッ、とかズバッ、じゃなくてドズゥッて感じの音が鳴る。 間違いなくマットを貫通した証拠を耳に、オレは勢い余って滑り落ちたベッドの脇から下手人を見上げた。 勿論その間にも命の危機を感じていたのは言うまでもない。 ヤバイ。トはともかくスに濁点がつくとか半端ないぞ、犯人はどこのヤの字だ。ヤスか。 137 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 21 35 ID 6g0RFYsR 「────────ちっ。 はぁい♪ お兄ちゃん。いい朝ね。太陽は今日も私のために燃えているわ」 落ちる時に受身を取り損ねて痛みを訴える頭の上、オレの顔と天井の間から舌打ちと共に声が降りる。 随分と気さくで馴れ馴れしい、そして盛大に不本意ながらも聞き覚えのある声だ。 世界広しと言えども朝一でこんな挨拶を飛ばしてくる奴を、オレは一人しか知らない。 「・・・・・・朝っぱらからどういうつもりだ? 此方(こなた)。 いくらオレでも、起きた瞬間から実の妹に命を狙われる覚えはないんだが」 「そうね。 このアタシ様の大いなる慈悲で懇切丁寧に説明してあげてもいいんだけど、先ずは起きてくれないかしら。 妹のスカートの中は見上げるものではないわよ? お兄ちゃん」 色々と言いたいことはあるが、一歩下がった妹に従って体を起こす。 立つのも面倒なのでベッドを椅子代わりにして腰掛けたが、やはり愛用の寝具には小さな裂け目ができていた。 憂鬱だ。しかも黒か、似合ってないな。 「失礼な上に今日も朝からだるそうね、お兄ちゃん。 そのくせにゴキブリのような素早さとしぶとさを発揮した点は褒めてあげるわ。 冥土の土産に被せてあげようと履いて来たパンツが台無しね」 「おい」 心の重さに拍車をかける爽やかボイス、ただし色は真っ黒である。 頭痛のしてきた額に手を当てながら視線を上げると、そこには意味不明に幸せそうな女の笑み。 と言っても一見した年齢は幼く、まだ中学生程度だ。 早朝、外に人の声もしない時間から皺一つない女子用の学生服を着込み、 とうに整えたらしいツインテールを頭の左右で揺らしている。 室内の薄い朝日を浴びて綺麗に艶を出す髪は黒く、座ったオレを見下ろすくりっとした瞳の光は強い。 「此方」 「何かしらお兄ちゃん。 アタシが褒めてあげると言ったのに話の途中で言葉を切らせるとはいい度胸ね。 それに生意気だわ。実の兄だからって名前で呼ぶことを許可した記憶はないわよ? 家族だからってあまり馴れ馴れしくしないでよね、許可するからもっと呼んで下さい」 「おい。いいから話をさせろ、此方」 「何かしらお兄様、アタシは今いい気分よ。そう、人間の一人も殺せそうなくらい」 頼むから会話を成立させる努力をしてくれ。 それと、たった今オレを刺殺しようとしたばかりだろうが。 「ノン♪ ノン♪ ノン♪ どうやら貴様の体に黒目という部位は存在しないようね、お兄ちゃん」 背を曲げ、寄せた顔の前で指を左右に振る我が妹。 思わず首を捻るオレの前に、愛用のベッドを傷物にしてくれた凶器が差し出される。 「竹光よ。このアタシ様の迸る殺気が強烈な余り、どうやらただの竹のオモチャが真剣に見えてしまったようね。 流石はアタシ、溢れんばかりの才能だわ。正直惚れる」 刃文も木目も存在しないのっぺりとした刀身は、触れさせた指を刃に沿って引いても血も出ない。 成程。確かにこれは竹光である。が。 「ちょっと待て。そもそもの行動の理由とか色々と突っ込みどころはあるが、 それは置いといてお前、今さりげなく指を振りながらもう片方の手で背中にそれを隠さなかったか? まさかその隙に本物と入れ替えたんじゃないだろうな? 竹光でベッドを貫いたんならそれはそれで恐ろしいが」 幾らなんでも竹製の刃がギラギラと光を反射するだろうか。怪しい。 138 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 22 34 ID 6g0RFYsR 「突っ込むとはいきなりご挨拶ねお兄ちゃん。 セクハラは人類が生んだ最も低俗な意思の疎通法よ、喪男の求愛活動なら他所でヤって頂戴。 それと仮にアタシが本物の包丁を使っていたとしても大丈夫、 いくらアタシでもこんな朝っぱらから人をSATSUGAIしたりはしないわ。もうシャワー浴びちゃったもの」 「何だその返り血を落とす手間がなければ殺ってる的な発言は・・・・・・」 「何だも何もそれが真実と言うものよ?」 「あっさり認めやがった!?」 「悲しいけど、これって現実なのよね」 「うざいっ!」 ああ。まったく、なんだって睡眠を妨げられた朝からこんな会話をしければならんのか。本当に疲れる。 御境(みさかい) 此方。たった1つ違いの上に母親の腹も同じなのに、どうしてコイツはこうもこんな奴なのか。 性格を形容しようとしたのに当てはまる言葉が思いつかん。 「まあ流石にまだお兄ちゃんを殺すつもりはないわよ。 殺るならそれに相応しい格好というものがあるわ・・・・・・・・・その、ウエディングドレス・・・とか」 「随分と用途を間違った花嫁衣裳だなおい!?」 あの女性の憧れには『貴方の色に染まります』という意味があると聞いたことはあるが、 そこで血の色を想定するのはいくらなんでも間違いだろう。あと頬を染めるな。 更にさりげなくいつかはオレを殺す可能性も示唆しなくていい。兄は悲しいぞ、妹よ。 「・・・・・・はあ。分かった、取り敢えずお前の奇行に関するあれやこれは脇に投げ捨てておくとしよう」 話がサイドステップを踏むくらいならいいが、このまま行くとムーンウォークを刻みそうだからな。 「で。朝っぱらから何の用だ?」 「『で。朝っぱらから何の用だ?』ねえ・・・・・・ふうん。随分と偉くなったものねえ、お兄ちゃん。 家族相手に、それは他人行儀と言うものよ?」 文脈が解らない。 「おはようございます」 いきなり頭を下げられた。 向こう10年は白髪の心配が無さそうな頭部が目の前を縦に通り過ぎ、シャンプーの香りを振り撒いてから戻る。 何のつもりだ。 「だから『おはようございます』よ、お兄ちゃん。 まさか全国一億二千万の日本国民共通の一般常識を知らないの? 頭は大丈夫?」 少なくともお前よりは自信があるぞ、妹よ。まあ言いたいことは理解できたがな。 質問に答えるのにこんな回りくどい真似をする理由は別だが。 「はぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう、此方」 「ええ。存分におはようございます、お兄様」 人一人起こして朝の挨拶をするまでにこうも時間がかかるかね、普通。 よその家庭も兄妹ってのはこんなに複雑なのか。いやはや。面倒な話だ。 139 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 24 18 ID 6g0RFYsR 睡眠欲の次は食欲。これこそが正しい朝の順番である。寝たら食べる、起きたら食う。朝食は一日の活力だ。 そんな訳で、オレは我が家の食卓へと急いでいるのである。 「まったく。お兄ちゃんが着替えに手間取ったせいで予想より遅れてしまったわ。 冷たいものはお腹に良くないのに、冷めた味噌汁のおかげでこのアタシがお腹を下したらどう償ってくれるのかしら? 学校を休んで付きっ切りの看病を要求するわよ。 でも看病の前にアタシの健康を損なったことに関する懺悔が先だがら、 その時は土下座させて心行くまで踏んであげるわ」 そんなオレに半歩くらい先行する気の早い我が妹。 お前が部屋に残ってオレの着替えを覗こうとしなければ揉めて時間を食うこともなかったんだがな。 あと人の腕を抱きかかえながら歩くな。当たらない胸の発育具合に悲しくなる。 「当ててないのよ」 最近のツンデレが負け惜しみも兼ねるとは知らなかった。 「おはよう、彼方(かなた)姉(ねえ)」 「連れて来てあげたわよ、お姉ちゃん」 そんなやり取りをしつつ階下へ到着。食卓と同時に目に入る、台所に立つ姉の背中に声をかける。 妹である此方より背は高く髪は短く、肩口で切られた黒髪の下でエプロンの紐が学生服の上を走っていた。 「あ、おはよう在処(ありか)ちゃん。此方もご苦労様かな」 綺麗に保たれた西洋版割烹着の前がこちらを向き、朝に相応しい朗らかな声が返ってくる。 表情も柔和かつ穏やかであり、厨房で包丁を握ることへの緊張感は全くないのは手馴れている証拠だ。 家の両親は朝が早く、そのため放置プレイを放任主義と言える程に育った子供達に朝食の仕度は任せっ放しであり、 自分達は通勤途中にコンビニやチェーン店で朝の栄養摂取を済ませているような人間である。 そんな一男二女の我が家、 御境家の食卓を預かるのは主に長子にして長姉である彼方姉であり、それは今朝も変わらない様子だ。 「今、温め直しているところだからもう少しかかるかな。 ちょっとだけ待っていて欲しいかも。先に座ってて」 振り向いた姉が菜箸で食卓の方を指す途中で、腕に押された胸が形を変えた。 まだ食欲を満たす時間だというのに目と腰のやり場に困る光景である。 歳はオレと一つしか違わないのにこれが女体の神秘とでも言うのか、 性別の差が我が姉の胸に与えた果実は他の野郎に収穫されることもなく日々豊かに実りっぱなしで、 こう、何と言いますか大変にけしかりやがりませんね、はい。 前に向き直る時にヒップが描く軌道も実にグッド。 今日も朝からナイスバディ、 姉より(年齢差から来る体型的に)優れた妹などいないということを見事に体現してくれている。 眼福とはこのことだ。流石に姉相手に性欲を持て余す趣味はないがな、大佐。 「────────お兄ちゃん」 よって横から聞こえるブリザードな響きに負けてテーブルを目指す訳では決してない。 ないったらないのだ。 妹に負ける兄などいない。そう思いたいところである。 「女の胸が大きいのは夢を詰め込んだからで、小さいのは夢を与えたからよ。 悪女=ナイスバディ=非貧乳の法則を知らないのかしら・・・・・・? 豊胸は罪悪よ、憶えておきなさい」 まだ何か言っているが聞こえない。 『貧乳はステータス』と言って自己正当化に走らないだけよしとしよう。そうだろう、全国一千万の男児諸君よ。 140 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 25 38 ID 6g0RFYsR 「よっと。此方、リモコン取ってくれ」 「座る時、立つ時の掛け声は衰えの現れよお兄様。・・・・・・はいどうぞ、感謝するがいいわ」 「サンキュ」 そんな調子で引いた椅子に腰を下ろし、リモコン片手にチャンネル操作。 どう見てもバラエティにしか見えないニュース番組からマシなやつを選び出す。 最終的にボタンを二週させて決めたのは『朝ズドッ!』だった。 Tv テレビ Crew クルー Station ステーション 略してTCSという局が流している番組で、 司会者のみの ぶんやが主にマスコミだけの支点から勝手に世論を代弁するニュース(笑)番組である。 これがなんのかんのいって面白い。 番組の趣旨が、ぶんやが庶民にとって特に大きな問題をズドッ!と突き刺すことなのだが、 これが如何に見当外れの方に行くかを生暖かく見守るのが最近の視聴者の流行らしい。 オレも、たまに特集コーナーを引っ張り過ぎるが、扱うニュースの量もそこそこなので比較的よく見ている。 「ふーん。『○○の少女、恋敵を脅すために家を爆破!?』ねえ。正直、手段としてはどうかしら」 「海外はやることが過激だな。やっぱ日本が一番だ」 「甘いわねお兄ちゃん。日本人って派手さを嫌う分、被害は少ないけどやる時は陰湿なのよ。 アタシなら爆破なんてしないで攫(さら)って流すか埋めるか消すかするわ。 ガキ相手なら刃物をちらつかせるだけで十分だし、バレる犯罪に意味はないのよ」 「このご時勢に余り怖いことを言うな。まあ、逮捕されたら恋も何もないとは思うがな」 「『真のオタクは犯罪などしない! 来週のアニメが見れなくなる!!』ってやつ?」 「なんだそりゃ」 「メディアのオタク批判のあり方に対する有志の意見よ」 なんて会話を交わしながらまったりと待つこと数分。 「お待たせかな」 姉が温まった食事を載せた皿をオレ達に渡し、せめてもの手伝いと並べている間にエプロンを解いて席に着く。 横長のテーブルの端にオレ、左右に此方と彼方姉という形で卓が埋まった。 家族五人が食事時に揃うことは滅多にないので、使わない椅子は仕舞われているのだ。 「今朝のメインはホッケの開きの塩焼かな」 首相の『煮付け』発言で話題になったやつか。TCSでも何か言っていたかな。 確かあるにはあるって結論だった気がするが、どちらにせよホッケ自体に罪はない。 成長途中の男子としては美味しくいただくだけである。 「戴きます」 「戴きます」 「戴きます」 姉弟・兄妹の三人、合わせて合掌する。親はいないけど、それでも家族で囲む食卓だ。 家族の大切さが叫ばれる昨今、照れ臭いが温かい気分にはなる。 出される料理が美味ければ尚更で、家の姉の料理は下手な主婦顔負けだしな。 学生だから時間をかけていられないが、ちゃんと習って時間をかければ相当なものが作れるのではなかろうか。 密かにそう思わないでもないね。何にせよ手作りの料理ってのはいいもんだ。 ビバ手料理。ビバホームメイド。ちなみにビバはイタリア語で、ホームメイドは英語だ。 「へえ。ホッケって、居酒屋以外で普段から食べるものじゃない気がするけど、普通にイケルんだな」 「身が多い割には安かったし助かったかな。焼くだけだと調理も簡単。 普段よりちょっと量があるけど、朝からで大丈夫だった?」 「ああ平気平気。そのために塩焼にしてくれたんだろ?」 141 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 27 42 ID 6g0RFYsR その位の配慮は信頼出来る。 最近は家族でも気付けない、なんてことが強調され易いが、家族だから気付けることもちゃんとあるのだ。 味付けが軽いお蔭で箸が進む進む。 もともと庶民の朝食なんてシンプルなもの、一汁一菜が基本。 ホッケを中心に、味噌汁を飲んで、たまに漬物を挟んで。 そうして体重を増やしながらあっと言う間に大部分を食べ終わってしまった。 残るホッケの頭は流石に残し、いい具合に焼かれた皮を端で切り取って白米に乗せて挟む。 「あれ? 在処ちゃんってこういうお魚の皮も残さず食べちゃう人だったかな?」 「ん? いや、大体はそうするけど」 普通はそうするよな、うん。ホッケの開きは皮も食うはず。地方とかで違うもんだったっけ。 エビフライの尻尾は否定派賛成派で分かれた気がするが。 「ふーん、そう。 じゃあお姉ちゃんの分もあげちゃおうかな。在処ちゃん、はい、あーーん」 「ぶっ!?」 などと考えたところで差し出される魚の皮。箸で挟まれ、丁寧にも下に手が添えられている。 「お姉ちゃんっ!」 妹がテーブルに掌を叩き付けた。 「此方に文句を言われる筋合いはないかな。 在処ちゃんが降りてくるのが遅かったの、原因は何?」 「ぬぐ」 が、勢いこそ良かったものの相手の質問に女らしからぬ声で詰まる。 「と言うかオレの意思の確認はないのかよ」 そこは最初に尋ねるべきではないだろうか。 「在処ちゃんは私がお箸をつけたものを食べるのは嫌かな・・・・・・?」 聞き方の再考を求める。誤解を招くぞ。 「そう。嫌なのかな」 解っててやっていませんか。 「い、いや、オレは別に彼方姉のことが嫌いではないし、 関節キスで騒ぐ年齢でもないのであって、厚意そのものも有難迷惑ではないんだがな!?」 「じゃあ問題ないかな! はいあーーーーーーんん!!」 言い切らないうちに、開いた口をロックした彼方姉の箸が突き出される。 人間、喋っている間は警戒が薄いもので隙を衝かれやすい。 これが漫画やアニメなら流れ的にも口にしてしまう展開だろう。しかし。 「────────だが断る」 この御境 在処が最も好きなことのひとつは、 それをお約束と思ってるやつに『NO』と現実を教えてやることだ。 142 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 29 23 ID 6g0RFYsR 「かなっ!?」 空中で互いの箸が激突した。予想外のことに驚愕の声が上がる。 別に叫ぶ程のことじゃあないだろ、彼方姉。 何が起きたのか。真実はたったひとつだぜ、我が姉よ。たったひとつの、単純(シンプル)な答えだ。 箸を思い切り刺し出した姉の突きを、閉じた箸を上向きにした弟の盾が防いだ。それだけさ。 不意を打とうとしたようだが、甘かったな彼方姉。 「かな・・・・・・かなッ!」 「パリィッ!」 初撃は防いだ。動揺も引きずり出した。両方やんなくっちゃあならないのがつらいところを両方こなした。 覚悟もできてる。 しかし相手も然る者、そう易々と諦めてはくれない。 一旦は引いてから箸を別角度で繰り出し、それも同じように防がれたと見るや、 ホッケの皮を挟んだまま、先端をオレが握る箸の隙間へと押し込んでくる。 間隔が無理やりに押し広げられた瞬間に咄嗟にパリィ(受け流し)へ切り替えたが、くそっ、脂で滑る!? 「かなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかな」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」 食卓の上を覆う無数のラッシュ。 飛び散る脂、響く掛け声、高速で行き交う箸が弾き合って奏でる澄んだ剣戟音。 一秒に十回『かな/アリ』発言が十秒に渡って続く。 その間に、流星のような攻防を繰り返しながら一見して互角の勝負は、僅かにオレが押されていた。 いや、時間が経つ程に押され始めていたと言うべきか。 箸の側面で受けたホッケの皮にべっとりと付いていた脂が、手に落ちて力の伝達と操作性を歪めているせいだ。 握力×体重×スピード=破壊力。 握力と体重ではオレが勝り、筋力差によるスピードは女性特有のしなやかな動きを駆使する姉が相殺。 三要素のうち二つもの舞台で上に立ちながら、にも拘らず不安定なその足場が邪魔をしている。 裸の相手を投げるのが難しいように。氷の上で体重を足に乗せながらする歩行が困難であるように。 脂による摩擦の減耗が、それを補うための余分が、オレの箸捌きから重さを奪っている。 ラッシュの速さ比べでは負けていないというのに、マズイ。 このままではディ・モールト(非常に)マズイぞッ! このままでは敗北を免れ得ない。あの、姉が笑みと共に繰り出してくる一口を詰め込まれてしまう。 そんなのはゴメンだ、冗談じゃない。それはオレの意思じゃあない。 この歳にもなって実の姉に『あーん』なんて死んでも嫌だ。 来るべきその初体験の瞬間は、いつか、共に過ごす美しい彼女との黄金の未来へ取っておくべきもの。 そこは断固として譲れない。 仮にそれがなかったとしても。そう。 男一人に女二人の姉弟/兄妹が座る食卓で『はい、あーん』が展開されるなどと。 現実の家庭にラブコメを持ち込むがごとき思想!!! オレにリアル萌えの趣味は断じてない。 そして脳内の嫁も夢で見る美幼女美少女美女美熟女男装麗人の皆さんで既に乗車率400%。 つまり、実姉(じつあね)の萌え要素など。 全 力 で お 断 り し ま す ! 143 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 31 10 ID 6g0RFYsR 「KANAHHH!」 「PARRYYY!」 だが、残念ながらそのための手段がない! このますます手を滑らす脂のように、血が滴るように今ッ、じわじわとオレが押し負けているのが現実! 防御の決壊は目前だ。ここは機転がいる。 初手で負ったハンデを、そのまま勝利の布石に変えるような逆転的発想がッ! 「隙ありかな? ボラーレ・ヴィーア(飛んで行きな)!」 「しまった!?」 思考のせいで生まれた間隙を思い切り殴り付けられた。 脂に塗れ、 スチュワーデスがファースト・クラスの客にサービスするワインのグラスのようにツルツルピカピカの箸が、 掴みきれなくなった手を抜けて弾き飛ばされる。 思わず、オレの手はそのちっぽけで頼りない2本の棒切れを追っていた。 「もう遅いかな! 回避不可能よッ! かなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなァーーーッ」 そんなオレの顔面に叩き込まれる箸先がいやにはっきりと見える。 ああ。世界がゆっくりだ。何て言えばいいのか。 普段とは違う流れの中にいるっていうか、周囲が止まっている中で自分だけが変わらず流れているみたいな。 そんな感覚がある。 ふと、伸ばした自分の手に目が行った。 思い付き、実行する。 「・・・・・・かな?」 スローになった世界の加速は早い。 無限に引き伸ばされた一瞬が、今度は無限を凝縮した刹那になる。 二人の時間が同じ世界に重なった時、 姉の箸は────────箸を掴む『右手』は、オレの『左手』に押さえられていた。 「深い理由なんか要らねえよな。 “箸で挑んでくる相手に、何も箸で応じてやるこたあねー”。咄嗟にそう思っただけだよ」 考えてもみれば間抜けな話で、相手の流儀に合わせてやる必要なんかない。 でなくとも利き腕に、右手に握った箸が駄目になったら右手を使えばいい。 それが無理なら左手を使えばいい。 そんなのは腹を空かせた子供がお握りを両手に掴むくらい当然のことだ。 「ず、ずるい・・・っ!」 そして、この『食べない』と『食べさせる』の争いに付き合う義理もない。 そもそも食べることを拒否し続けても体力の消耗戦になるだけでオレには不毛なのである。 ではどうするか。 逆に考えるんだ、 『“姉に食べさせられる”のを拒否するんじゃなくて、“姉に”食べさせればいいさ』と考えるんだ。 「ひょいっと」 そんな訳で、まだ脂塗れの右手で姉の箸からホッケの皮を摘み出す。 144 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 32 35 ID 6g0RFYsR 「あ」 摘み出し、どうせ指ももう脂塗れなのでついでに丸め、間抜けに開かれた姉の口へ投入してやった。 「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」 姉のホッケよ、その口へ帰れ。それがお前の運命だ。 「勝った! 今日の朝ごはん完! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅー、ご馳走様でした」 いい加減に疲れたのでテンションを下げ、手を合わせて深々と食卓に頭を垂れる。 働き出した胃が朝の少ない血液を貪欲に持って行ってくれているので、ついでに賢者タイムへ突入。 きっかり三秒。顔を上げて見ると、変わらない体勢の姉と、何故か妹まで肩を震わせていた。 「あ、あわわわわ」 「あ、あああああ」 壊れた声優音声付き目覚ましのような声を上げてから口を閉じる。 突っ込んでやった餌を飲み込んだ彼方姉の喉がごくりと鳴った。 「こ、これはこれでいいかもしれなくもないかもかなーーー!?」 「なっ、何をしてくれてんのよお姉ちゃんっ!!!」 立ち上がり、飛んでいった箸を探す。 「わ、私は何もしていないかな!? 此方っ。してくれたのは在処ちゃんの方だよ!」 どう跳ねたり転がったりしたのか、二本ともテーブルの下に落ちていた。 「お姉ちゃあぁぁぁぁあああああああんん!?! アンタのくだらない『あーん』はこれを狙っていたのなら予想以上の効果をあげたわ! アンタがッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!」 屈みこんで拾う時にスカートから伸びてばたばた動く足が四本ほど見えたが、 血は股間より腹部に集まって来ていたし、 ニーソでもなかったためにオレの心が燃え尽きるほどヒートもしなかったので無視した。 「もう頭にきた、アタシは妹をやめるわ! お兄ちゃんッ!! アタシは兄妹を超越する! お兄ちゃん、アナタの愛でねェーーッ!!」 剣呑な気配が渦巻く前に食器を流しへ置いて回れ右。背後の厄介毎に絡まれるはごめんだね。 御境 在処はクールに去るぜ。あらほらさっさー。 なんて。 罷り間違っても、これが毎日の日常なんてことはあるはずがないんだが。 それにしても、我が家ながら何とも疲れる食卓である。 やれやれだぜ。 向けられるお兄ちゃんの背中を見るのは、いつもツライ。 刹那でも、帰って来る保障があっても、それはお兄ちゃんがアタシから離れるということだから。 145 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 35 41 ID 6g0RFYsR 「・・・・・・行っちゃったわね。 はあ。どうして肝心な時に限って妹の方を向いてくれないのかしら」 早起きしたアタシ達と違って済ませてない登校の準備をしに行っただけだし、 終わっても外に出て待っててくれるから、どうせすぐに会えるけど。 すぐにすぐに必ず会えるはずだけど。そんな理屈はアタシの心に響かない。 「それは在処ちゃんが此方なんかに興味がないからかな」 逆のベクトルでなら、この女の声はよく響くけど。 「五月蝿いわね、馴れ馴れしく名前で呼んでるんじゃないわよ。一体いつアタシがそれを許可したのかしら?」 「それは在処ちゃんのことかな? それとも自分の名前?」 ウザイ。 「五月蝿いっつってんのよ。その馬鹿みたいな口癖を止めなさい。 お兄ちゃんの名前にちゃん付けでお姉ちゃん面をするのもね。気持ち悪い」 「くすくす。仕方のない妹」 本当に、この女は。 「そんなに羨ましかったの?」 キモチノワルイ。 「黙りなさい。それ以上、一言でも喋ったら殺すわよ」 「出来もしない癖に」 音が鳴る。握ったままの箸の先を合わせ、かちかちと姉が打ち鳴らす。 「自分が最初に協定を破って着替えを覗こうとでもしたんでしょう? なら、私がちょっとくらい在処にアクションを起こしたって、咎めるのは筋違い」 いつも食べ終わるとすぐに食器を片付けてしまうお兄ちゃんの、 本当なら流しに浸けられて落とされてしまう唾液が少し────────でも確実についた2本の棒切れ。 もしかして。あのやり取りは、少しでも多く自分の箸にお兄ちゃんの唾液を擦りつけようとしたのか。 「つい・・・・・・お兄ちゃんを起こす以上のことをしようとしたのは謝るわ。 でも、着替えを覗くのはお兄ちゃんに対して積極的に何かをする訳じゃない。 あくまでお兄ちゃんに何かを強いたり意思を無視するような邪魔はしない、消極的な行動よ。 アンタのはそうじゃない。特に、お兄ちゃんに拒まれてまで食べさせようとしたのはやり過ぎよ」 圧(へ)し折ってやる。そう思ったのがバレたのか、姉はそれを口に入れると、しばらく舌で弄んでから抜き出した。 「ん・・・・・・ぷあ。 あれは在処の照れ隠し。嫌がられたような言い方は心外ね」 自分の唾液だけを帯びた棒切れを皿に乗せる。 「最後まで抵抗されておいてよく言えるわね。お兄ちゃんの都合を考えないのは相変わらずか」 「それは間違い。私は在処のことしか考えない」 「お兄ちゃんのことじゃなくてお兄ちゃんの都合って言ったのよ」 「同じことよ」 「違うわ」 「違わない」 「違う」 「違わない」 「違う」 「違わない」 146 此方から彼方まで在処を求め sage 2009/01/19(月) 11 37 21 ID 6g0RFYsR 平行線だ。 この女とアタシはいつもそう。お兄ちゃんを基点に、アタシとコイツは常に対極にいる。 まるで線を引いた境目の、此方(こちら)と彼方(あちら)にいるように。 姉妹だけど。むしろ姉妹だからこそ、求める在処に3人は居られないから。 いつかと願う其処を境界線に、これまでもこれからも対立する。し続ける。 どちらかが消えるまで。どちらかを消すまでは。 「不毛ね」 「不毛よ」 だから、アタシ達の争いはそう長く続かない。 だけど、アタシ達の諍いはいつも終わらない。 「ご馳走様でした」 「ご馳走様でした」 お兄ちゃんがそうしたように手を合わせ、食事を終えて食器を流しへ運ぶ。 家族の情などなくても同じ家に住む姉妹。 いつか着けるべき決着は、いつにでも着けられる。優先事項はお互いにあった。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 無言でお兄ちゃんの後を追う。当然に抜け駆けを監視し合いながら。 お兄ちゃんは既に外に出て待っているだろう。待たせていると言ってもいい。 玄関で、左右に置かれた鞄のうち、自分の物を取る。同時に用意を終えて顔を見合わせた。 「はん」 「ふん」 アタシが姉を殺さない理由。 コイツが妹を殺さない理由。 それは敵がお互いだけじゃなく、どこにでもいるから。どこにでも生まれる可能性があるから。 例えば、アタシとコイツがお兄ちゃんと通う学校なんかでも。 アタシがお兄ちゃんより下の、コイツがお兄ちゃんより上の、二人がお兄ちゃんの側の邪魔者を始末する。 お兄ちゃんに近寄る存在の排除。その一点が共通の利益だ。 此方から彼方まで、御境 在処の全存在をカバーする。 そのためだけに。最後のその瞬間まで、お互いがお互いを殺せない。 奇しくもお兄ちゃんを挟んだ二人の不一致が生んだ、唯一の一致だ。 時が来るまではせいぜい利用してやろう。どちらもそう思っている。 それはそう、自分がそこにいたいと思う、未来の在処を確実にするためだけに。 「「じゃあ、其処(そちら)は任せたから」」 扉を開ける。数歩先には思った通りの背中があった。 今はまだ、その背中に自分から近付いて行ける。それが出来なくなった時がどちらかの最期だ。 言葉には出さない、暗黙の決意。 胸に抱く想いを新たにしながら、アタシはお兄ちゃんに向かって歩き出した。
https://w.atwiki.jp/orisuta/pages/1056.html
私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。 現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。 仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。 ……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ…… ** 「なっ、何この顔ーッ!」 鏡を見て、私は絶叫した。どっちかというと母親似の私の顔が父さんソックリにされてしまっていたのだ。 どうやら、ついさっきキモオタのスタンドに殴られた際に顔を整形させられたらしい。悪趣味すぎて反吐が出る。 よし、気にいらねぇ。あの変態、私の顔を直し次第阿部さんにファックされてよし! むしろ、見つけてぼこってから、阿部さんにファックさせてやる! 「……な、那由多ちゃん、思考が口からダダ漏れ!」 「あァ? ショコラ、そんなことはどうでもいい。まずは、知り合いを呼び集めて、キモオタを探させないと……。 覚えてろ、キモオタ。私を怒らせたらどうなるかを……。クケケケケ……」 ブチ切れた私は、すぐさまトニオさんに事情を話し、ショコラと手分けして知り合いたちに電話した。なんか、ショコラがビビってたようだけど、なんでだ? ちなみに、トニオさんは意外なことに店を閉めてまで、知人を集める手伝いをしてくれた。なんか、二枚看板の内一枚がなくなると困るとか言ってたけど、どうにも意味が判らなかった。 ** 「あれ? クスリ売りは?」 「連絡ヲ受ケテ、アワテテ家ヲ飛ビダシタラ、運悪ク居眠リ運転ノとらっくニハチアワセシテ、大怪我シマシta……」 「……あいつらしいわ」 イタリアンクスリ売りの答えに私は頭を抱えた。あんなやつではあるが、クスリ売りは昔の仕事柄裏の方に人脈がある。そいつらから情報を得れば楽だったが、つくづく間の悪い奴だ。 「まあまあ、落ち着けって那由多姉ちゃん。俺と、俺のハーレムメンバーもそのキモオタを見つける手伝いをしにきたんだから」 割って入った垓の姉孝行ぶりに、少し心を打たれる自分。けど、連れてきた女の子は、 「えー、あたしは垓くんの女になった覚えはないよ! あたしはただ、『日ごろ一緒に那由多姉ちゃんの下着を盗んで売りさばいてるお前なら、姉ちゃんが優性遺伝になった場合のデメリットは理解してるよな?』って言われて手伝いに来ただけ……あ!」 「ちょっ、ヨーコちゃん!」 「ほほう……、詳しい話を聞かせてもらおうか」 やはり、我が弟はダメなやつだった。ドスの利いた声で、指をパキポキ鳴らしながら近づいていく。ビビって半泣きになる二人に、こういう時だけ優性遺伝の顔は便利だと思ってしまうのが逆にむかついた。 本体名―虹村垓 スタンド名―イースタン・ユース(状況が状況だから、とりあえず半殺しで済ませられる。今は再起可能だが、後で再起不能にされるのは確定) 本体名―天帝ヨーコ スタンド名―ミュンヘン・アウトバーン(状況が状況だから、とりあえず半殺しで済ませられる。今は再起可能だが、後で再起不能にされるのは確定) 「ともかく、那由多ちゃんを整形させた犯人の顔を見ないと、話にならないな……。『ニューシネマパラダイス』!」 私が二バカをボコる様を苦笑いしてた作家さんが、事件当時の上映を開始する。 映った顔と、そのスタンドをみんなが目に焼き付ける。よし、全員で探しに…… 「私ノ『シンフォニー・オヴ・デストラクション』ニ任セテクダサイ。街中ノごきぶりニ探サセMASU!」 「『トラサルディー』にゴキブリなんていないけどなぁ……」 「そうだと思って、捕まえといたわ。で、見つかったら、私の『アローズ』でそこまで移動するんでしょ? だから、動き回ることは無いわよ」 『よーりょくそー、オイラガワザワザごきぶりニ運バレテヤルンダー。ダカラ今スグめしクワセロー。ただばたらきハごめんダー!』 『こーごーせー、オイラタチハ運ンデヤルマデタイクツダー。酒ヨコセー』 『みどりー、顔直シタラ、感謝ノシルシニオイラタチノ前デすとりっぷシロー』 流石に、弓を持ってる時の弓張先輩は頼りになる。けど、飲食店にゴキブリをつまんで入ってくるのはやめてほしい。そして、『アローズ』どもは黙れ。 「みんなが那由多ちゃんに手助けしてくれるから、すぐに犯人が見つかりそうだね」 「だといいんだがなぁ……」 やはり、ちょっと心配ではある。けど、実は心配する必要なんてなかった。 「ミツカリマシタ!」 探し始めてから1時間もたたないうちに、イタリアンクスリ売りの声が店内に響いた。 ** 「ククク……、ここまでやれば、まず見つかりっこない。後は、なゆたんが僕に股を開く気になるのを待つだけ……。な、なんだ?!」 廃ビルの中を殴りまくることで、階層の間に本来はあり得ない空間を作り上げて隠れていたキモオタであったが、突然、ビルが揺れだしたのには驚きの声をあげた。 空気を取り入れるために作った小さな隙間から、彼を探索してゴキブリが入っていたなどと彼は知らず、さらに、その下の階で起こったことは予想すらできなかった。 「『ジプシー・キングス』! ヨーコちゃんが、鉄骨を金属疲労で破壊し、その上でビルを脱出して、更に周囲の人間をみんな避難させるまでの時間を1秒に圧縮しなさい!」 エッチなことは許さない、ぶどうが丘高校の生徒会長はその能力を存分に発揮し、下着泥棒だった少女をこき使う。 無茶苦茶な仕事を1秒に圧縮され、少女が過労でひっくり返る場所から遠く、支えの鉄骨を全て破壊された廃ビルは自重に耐えかね、轟音をあげて崩れ落ちていった。 本体名―天帝ヨーコ スタンド名―ミュンヘン・アウトバーン(ビル破壊に関する大量の仕事にかかる時間を1秒に圧縮され、過労でぶっ倒れる。再起不能) ** 「な、何があったんだ……」 スタンド能力で自分の形を自在に変えて、キモオタは命からがら瓦礫の中を這い出した。ともあれ、ここから離れないと不味い。誰かに見られたら、怪しまれる。 そう思った彼の頭を、突如何者かが踏みつけた。 「いてっ! 誰だっ……、あっ!」 視線を上げた彼が見たモノは、ウェイトレスのスカートの合間からのぞく縞パン……ではなく、憤怒に顔を真っ赤にした二目と見られぬ顔の少女の姿。 言うまでもなく、彼が整形した少女、虹村那由多である。 「うっ、うわぁぁっ! クレイジー・クラフト!」 下から伸びたスタンドの手、しかしそれは少女のスタンドによって蹴り上げられた。 「さっきは奇襲だったから防げなかったけど、面と向かう分には私のスタンドの方が強いんだよな……」 もはや絶体絶命! 今にも白目をむいて気絶しそうな彼をスタンドで掴んだ那由多は、 「今すぐ私の顔を元通りにしろォッ!」 と、怒鳴りつける。大慌てで直したキモオタに、彼女は元通りのかわいらしい顔で不気味に笑ってみせ、 「さーて、今度ばかしは徹底的に痛めつけてやらないとな……」 と呟いたが、ふと顎に手を当て、何かを考え始めた。 「あんた、ちょっと前までは太ってたはずだよね? もし、スタンド能力でやせたんなら、逆に太らせるのも出来るはずよね。 なら、私の胸を今すぐ大きくしなさい!」 仁王立ちする少女の無言の圧力に、キモオタの顔が見る間に青ざめていく。 「や、痩せたのはダイエットしただけです! 僕のスタンドは、もともとの性質と質量は変えられないんです!」 「ふーん、そうか。……じゃあ、後はぶちのめすだけか」 ダボガァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! あでぃすあべばぁぁぁぁっ! そんな感じの騒音が響き、すぐに止んだ。 本体名―キモオタ スタンド名―クレイジー・クラフト(リトル・ミス・サンシャインにボコられ再起不能) ** 「ったく、結局私の胸はどうにもならなかったぞ」 翌日、バイト中の私はショコラをとっつかまえて延々と愚痴を聞かせていた。 「あはは……。でも、よかったんじゃない? 大きく出来たとしたら、那由多ちゃんは変態さんのスタンドに胸を触らせることになってたんだよ」 「あ、確かに」 そこまでは考えてなかった。思わず、私はプッと吹きだした。 使用させていただいたスタンド No.473 【スタンド名】 クレイジー・クラフト 【本体】 芸術家志望の青年 【能力】 殴った対象の形を変える No.1515 【スタンド名】 ミュンヘン・アウトバーン 【本体】 女子高生 【能力】 殴った相手を疲れさせる < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
https://w.atwiki.jp/orisuta/pages/1049.html
私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。 現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。 仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。 ……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ…… ** 「すっかり遅くなっちゃったな、今日はバイトがないからいいんだけど。……それにしても、弓張部長といい、碧陽会長といい、人使いが荒いんだよなぁ」 私は、心底疲れ切った表情で夜の街を歩いていた。父さんが心配していそうだが、私だって好き好んで遅くなったわけじゃない。 今日は弓道部の練習があったのだが、片づけの際にバケツに躓いて転んで、雑巾を絞った水をぶちまけてしまったのがそもそもの始まりだ。 おかげで弓張部長に掃除をやらされて、終わってさあ帰ろうという時に、今度は我が高校の生徒会長こと碧陽葵先輩に捕まった(垓が生徒会の書記なんてやっているおかげで、知り合いなのだ)。 書類整理に人が足りないとかで、無理やり働かされて私はもうヘトヘトだ。会長の『ジプシー・キングス』で、三日はかかる作業を一時間で終わらせたのはいいけど、疲労は残るからなぁ…… げんなりした顔で私が歩いていると、 「えっと……、どうしよう」 「どうしようも何も、出てくるのを待つしかないんじゃないかな……」 姉と作家さんが心底弱りきって顔を見合わせていた。どうしたんだろう? 「お姉ちゃんと作家さん、何かあったの?」 「あ、那由多ちゃんか。今日は学校から帰るのが遅かったのか。実はね……」 どうも、話を聞くとこういうことらしい。 出版社の社員の名刺を、キャバ嬢か何かの名刺と勘違いした姉が、泣きながら作家さんを追いまわしているうちに、偶然無関係の人を『オープン・ユア・アイズ』でブン殴ってしまったらしい。 うわ、ドジだ……。まあ、放ってもおけないから、何かしらアドバイスしてみよう。 「とりあえず、ニューシネマパラダイスで、殴っちゃった人の過去を見てみたらどう? どこの誰か分かれば、手の打ちようもあるし」 そう言ったのが間違いの元だった。私たちが見た、被害者の過去は想像を絶するものだったのだ…… ** 「母・静香、姉・芽依子、妹・泉、従姉妹・譲華、幼なじみ・遥、友達・亜希、ご近所の外人さん・イザベラ、恋人・なゆたん、嫁・クスリさん、 セフレ・ジョルナータ、こういう家庭を俺は持ちたい」 茂木卓男はオリスタSS板を見ながらこう呟いた。そして、不味い事に彼にはそれを成し遂げるだけの「力」があった。 SEX-メン・ファイナル・ディシジョン、「触れた人間に一度だけ、自分が心の底から望む相手との性交をさせる能力」、それが彼のスタンドだ。 ただし、その後で相手は必ず死んでしまうが、それでも今の彼は構わなかった。 「俺は、必ず彼女たちの上で腹上死してみせるッ!」 ……変態が、妙なことを力説していた。 そして、彼は自分自身をSEX-メンで触れ……、待ち受ける出会いを求めて路上へと飛び出し、『オープン・ユア・アイズ』に顔がひしゃげるほどに殴られたわけである。 ** 「「「…………」」」 私たちは口をあんぐり開けて、被害者もとい変態の過去を眺めていた。正直、こいつには情けはいらないと思う。 「私のスタンドの中が18禁になってるって考えたら、凄く死にたくなっちゃうよぉ……」 頭を抱える姉だったが、ぶっちゃけ私も頭を抱えたい。『オープン・ユア・アイズ』の中は姉自身でも管理不能だから、実際そうなっててもおかしくない。 「しかし、最悪だな。たぶん、異世界で女の子になったクスリ売りちゃんが『あなたのその大きなトラックを私につっこんでぇ!』とか言ったり、 『宝石』主人公の気弱なジョルナータ嬢が『うふふ、みんなを満足させられるように、タコの足を全身につけてあげますね』と言ってたり、 那由多ちゃんがスカートのすそを咥えて、『お客様、私の貝料理をお召し上がりください』とか言ってると考えたら……」 「うん、そんなことを考える義兄候補も最悪だ」 あ、私の言葉に作家さんまで目に見えて落ち込みだした。……まあ、他の作家さんのSSキャラのエロパートを思い浮かべないだけマシか。 そんなことやってたら、それこそシャレにならないし。 「で、どうするの? この変態を、どうやって処理するの?」 私の言葉に、現実世界へと引き戻された作家さんと姉は顔を見合わせ、 「「ふ、ふ……、腐ハハハハアアアハッハアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」 と突如高笑いを始めた。ごめん、現実世界に引き戻して悪かった。頼むから、元に戻ってくれ。でないと、割とマジで逃げたくなる。 「「決まっているじゃないか(の)。こういう場合はね……」」 二人の説明に、私は自分の顔が見る見るうちに引きつっていくのを覚えた。 ** 「うがあああああ~! だが、ヤッたぞ、俺はついにヤッてヤッたぞ!」 『オープン・ユア・アイズ』から、直接川へと放り出された茂木卓男は、それでも大いに勝ち誇っていた。 しかし、その顔が不意に引きつる。彼の腕に、いつの間にか黒い触手が巻きついていたのだ。 その先には 「……ウホッ、いい男」 青いツナギを着た男が、紫色の口にするのもおぞましい姿のスタンドを身にまとっていた。 「見てくれ、俺の『マーラ・ザ・ビックボス』をどう思う?」 「凄く……大きいです。……って、違う! く、来るなァッ……アッーーー!」 ** 「『河原で全裸の男性遺体発見。死因は直腸破裂。警察は現在、事件と事故の両面から捜査している』ねぇ……。 なんか、妙な事件もあるもんだな。……それはそれとしてよォ~、母さん、コーヒーもう一杯! 砂糖は2本で頼むぜ」 「はーい!」 今日も我が家は平和なようだ。なんか妙な事件が聞こえたような気がするが、気にするつもりはない。 変態なんぞには関わりたくないし。 使用させていただいたスタンド No.1056 【スタンド名】 ジプシー・キングス 【本体】 スタンド使いが多く存在する高校の生徒会長 【能力】 時間を凝縮する No.1126 【スタンド名】 SEX-メン・ファイナル・ディシジョン 【本体】 キモオタ童貞 【能力】 触れた人間に一度だけ、自分が心の底から望む相手との性交をさせる No.131 【スタンド名】 マーラ・ザ・ビックボス 【本体】 青いツナギをきた男 【能力】 白い液体を射出し付着した相手の生気を奪い取る < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/46049.html
そらのかなたのそのさきまで【登録タグ VOCALOID そ 和太 太田PoN太 曲 鏡音レン】 作詞:太田PoN太 作曲:和太 編曲:和太 唄:鏡音レン 曲紹介 「寒くなってきましたね!!!こんなときは!!!あったかそうな夏っぽい曲を聴きませんか!!!」太田PoN太 「素晴らしい提案だ」和太 歌詞 (PIAPROより転載) あのね いつまでも いつまでも 忘れない歌にしよう 空の彼方の その先まで 響かせるように 頑張れと 言えないのは 特別なんて 君も 僕も なれやしないから 後戻り 出来ないでしょ 進むしかないでしょ 君と僕 別々だから ちょっと口下手だから 伝えたいこと ちょっとだけしか 伝えられないの だけど、だから、 歌うよ 聞いて あのね、「ここにいる」の証明を 遠くて見えない君へ 届けて いつか 未来で会えるまで どんな 怖い夜が来ても 全部 歌にするから 変わらない 特別を 君にあげる まだ終わらないよ いつまでも いつまでも ずっと 不器用で 天邪鬼で 特別なんて 誰も 信じてくれないでしょ 今僕が 消えたとして どれだけの「誰か」が 見て 聞いて 悼んでくれる? ずっと捨てられなくて 重たい熱を ずっと言えずに 抱え込んできたの だけど、だから、 歌うよ 聞いて あのね、「ここにいる」の証明を 遠くて見えない君へ 届けて いつも 胸に息づいてる 強い 向かい風の朝も 全部 歌にするから 変わらない この熱を 君にあげる まだ終わらないよ あと少し もう少しだから ねえ聞こえる? あのね、「ここにいる」の証明を 遠くで見ている君へ 届けて いつか どこかで巡り会おう 君が 特別だと叫ぶ 聞いて あと一度だけ 忘れない この歌を 君にあげる 空の彼方まで いつまでも いつまでも 響け コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/orisuta/pages/1047.html
私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。 現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。 仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。 ……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ…… ** 「あー、お客様。うちのトイレはハッテン場じゃないんで、つなぎを着て待機するのはやめてほしいんですが」 「だが構わん。俺は女でもかまわず喰っちまう男だぜ。……ってことで、やらないか」 「やらない。そして、もうそろそろ店仕舞いだから本気で帰れ」 手で追い払うしぐさをして、つなぎ姿の男を無理やり追い出す。何処かで以前関わったような気がするが、きっと気のせいだろう。私の知り合いにホモはいない。 「那由多ちゃん、お疲れ様~!」 「うん、お疲れ。……ただ、今日はこれからもっと疲れるんだよなぁ……」 更衣室でショコラとだべりつつ私服に着替えるが、この後のことを考えると実にめんどうくさい。 さっき店仕舞いと言ったのは正確には間違いで、これから『トラサルディー』は何人かの先輩たちに貸しきられることとなっている。 そろそろ文化祭が近いとかで、出し物について話し合うそうだ。最近のぶどうが丘高校はなぜかスタンド使いが結構多いので、おそらくそれをうまく使うのだろう。 ちなみに、私の組はどこをどうとち狂ったか、『メイド執事喫茶』などという垓の馬鹿げた企画が通ってしまっている。 まったく、何で私が「おかえりなさいませ、ご主人様♪」だなんて満面の笑顔で言わなきゃならないのやら……。 「私は楽しそうだと思うけどね~」 「厨房担当だからメイド服を着ないショコラには言われたくない。私なんか一日中メイド服だぞ?」 「あはは。那由多ちゃんは料理ダメだから仕方がないよ」 「それを言うな……、事実だから本当にグサッとくる」 カランコロン。 「あれ? もう来たみたいだね」 私たちがおしゃべりしているうちに、もう先輩たちがやってきたようだ。さて、トニオさんのところへ行って、用意した飲み物と軽食をもらってこよう。 ** 「なゆたん、そこのコップとって~」 「手を伸ばせば届くじゃないですか、部長」 「うん。でも、手を伸ばすのがめんどいの~」 部長のだらけぶりに、私はハァとため息をつきながら、わざわざ部屋の反対側に位置するコップを取りに行く。 この人は弓張月夜(ゆみはり つくよ)先輩、2年生で、私が所属している弓道部の女部長だ。 弓の腕前は全国レベルで、弓道場で弓を引く際のピシッとした姿は今でも私の憧れだ。 ……ただ、この先輩がキリッとしているのは弓を持っている時だけで、弓から手を離すと途端に自堕落になってしまう。 割と二重人格っぽい人だ。 「はい、先輩。お茶ですよ」 「んー、ありがとね。なゆたん。はぁ……、お茶を飲みながら軽食をつまむ。まさに至福の一時ねぇ」 「いや、今はまったり過ごす時じゃないんじゃ『よーりょくそー、せろりすてぃっくオカワリー!』 『あるこーるヨコセー、こーごーせー!』『みどりー、モットメシクレー!』 「…………むかっ」 部長の周りを浮かんでいる矢のスタンドどもが、なんか失礼なことを言いやがった。人の髪が緑色で、スタンドが『太陽』の能力だからって、植物扱いしくさって……。 この『アローズ』が部長のスタンドじゃなかったら、即座にぶちのめしてるところだ。ともあれ、スタンドと言い争うのも不毛なんで、部長には弓を持たせよう。 「よし、みんな! はりきって、『お化け屋敷』の構成を考えるわよ!」 ……すげー。一気にテンション上がったよ。 「いや、だからもう話は始まってるよ。だからさ、私の『セクシャリー・ノウイング』で視界をぼんやりとさせようってさっきから言ってるじゃん」 「却下。お客さんを酩酊させてどうすんのよ」 「えー、幻覚で色々怖いものを見てもらうとかできるじゃない!」 「それじゃやりすぎだって。だから、ここは狼男に仮装した俺が、血に見立てた赤ペンキから突如飛び出して……」 「私たちは『アクモン』の能力知ってるからいいけど、お客さんに聞かれたらどうすんのよ。あ、煙草ちょうだい」 「ん? 一本100円な。……そりゃあ、お前、『それは禁則事項です』って答えりゃいいだろ」 「なにそのぼったくり。そして、丈二。あんたはいつ未来人になったのよ?!」 「だからさ! あたしの『ダウンワード・スパイラル』で、突如トゲを飛びださせて……」 「いや、そこはわいの『サマンサ・フォックス』で、機械の木々を使ってな……」 「なにその不思議なダンジョン!」 「じゃあさ、ゲーフェンバウアー教頭に頼んで、突如動き出すバラバラ死体って役をやってもらうとか」 「おっ! いいな、それ!」 ……なんか、話し合いがカオスだ。スタンド使いが多い学園ってことでSPW財団から監視役として来たはずの教頭もなんか悲惨な目に遭うらしい。 ハゲる前にこの店紹介しとくか。 ふと見ると、ショコラが奥の部屋へと忍び足で歩いていく。あいつ、このカオスを私一人に押し付けるつもりか。 「チョイ待ち、ショコラ。まさか、ここを私一人に任せるつもりじゃないよね?」 「ひゃうっ! ち、違うよ那由多ちゃん! 今日は、クスリ売りさんが、『麻薬中毒に悩んでいる元売人のチンピラさん』の従兄を更生させたいって、わざわざイタリアから引っ張ってきたんだよ」 「ああ……、つまりトニオさんと『ファンタスティック・プラスチック・マシーン』で心も体もきれいにってことか。 ならいいや。でも、なるべく早く戻ってくれ……。私一人じゃ、先輩たちを対応しきれる自信なんてないぞ」 手を振って、ショコラを放免したのと同時に、カランカラン。 「あれ? 今日は貸し切りだったのか?」 ドアを開けて、見覚えのある顔が入ってきた。私の姉と、作家さんだ。 「あ、お姉ちゃんと作家さん」 「やあ、那由多ちゃん。……えーと、今日は普通のお客はもうお断り? なら、別の店を探すけど」 「んー、いいよ。何かしらもらってくる。なんだかんだで、ここにいる人はみんな作家さんとお姉ちゃんのこと知ってるし。 それに、デートの予定崩すのもかわいそうだし」 「そ、そうかい、悪いね……「やだもぉ、那由多ったらぁ! きゃ♪」 バキィ! ……あ、姉が照れ隠しに『オープン・ユア・アイズ』で作家さんをブン殴った。で、作家さんは悲鳴をあげて吸い込まれてく。あーあ。 先輩達もそれを見てしまったのか、血の気が引いてるよ。かわいそうに、作家さん。 ** 三十分後、そこには青あざだらけで、息を荒げている作家さんの変わり果てた姿があった。 「ご、ごめんなさぁい!」 「い、いや、いいけどね……。死ぬかと思った(ボソッ)」 平謝りになってる姉に、惚れた弱みなのか全く怒ってはいないようだが、本当に大変だったらしい。 頑張れ、作家さん。それがまた小説のネタになるぞ。 「えーと、お取り込み中のところすいませんけど、童貞の作家さん」 「どどど、童貞ちゃうわ!」 「じゃあ、魔法使いになれなかった作家さん」 「嫌味?! なあ、俺に何か恨みでもあんの?!」 「まさか。ちょっと、ニューシネマパラダイスで、私たちの出し物の、『お化け屋敷』が成功する未来を見せてもらえないかなー、と思いまして」 なら、せめて普通に作家さんと呼んでほしかった……。作家さんは疲れた顔でそう呟いて、スタンドを発現させた。 ** 1時間後。 「そーだよ、なんで兄貴のことを忘れてたんだ」 「僕が、『ゴールド・シーカーズ』で動物の死体を集めて」 「あたいが『ワイルド・アット・ハート』でおどろおどろしい風を吹かせて」 「集めた動物の死体を兄貴の『シックス・フィート・アンダー』でゾンビ化させてうろつかせて」 「バラバラになった死骸は『ゴールド・シーカーズ』に集めさせれば済む話じゃないか……」 ……なんか、さっきまでテンションの高かった先輩たちがズゥンと沈み込んでた。 でも、まあ、話がうまくまとまって何よりだろう。うん。 ** 文化祭当日 『うわぁああああん! お化けが出たでし! あねさん、ぼくこわいでしぃぃぃ!』 「あ! こら、キャッツ! こんなところで電撃放っちゃダメ!」 「……お化け役の人たちまで感電させてどうするんですか。ねぇ、エタさん」 『…………はぁ』 使用させていただいたスタンド No.1252 【スタンド名】 サマンサ・フォックス 【本体】 黒ブチメガネの男 【能力】 『機械の森林』を生み出す No.337 【スタンド名】 ダウンワード・スパイラル 【本体】 ドリル巻き毛の女子高生 【能力】 殴った場所に「トゲ」を生やす No.1027 【スタンド名】 ワイルド・アット・ハート 【本体】 喧嘩っ早い女 【能力】 スタンドに風を纏わせる No.186 【スタンド名】 エターナルフォースブリザード 【本体】 片目に眼帯をしている中二病患者の少女 【能力】 相手は死ぬ No.393 【スタンド名】 ブラック・クロニクル 【本体】 ゲーフェンバウアー 【能力】 義手や義足などを神経が通ってるかのように自在に操る No.229 【スタンド名】 キャッツ・グローブ 【本体】 背の低い今どきの女子中学生 【能力】 対象の機能を本体の想像出来る範囲で操作することが出来る No.679 【スタンド名】 セクシャリー・ノウイング 【本体】 飲酒、喫煙常習の17歳のJK 【能力】 煙を吸った相手が酩酊し、徐々に体調を崩していく No.1258 【スタンド名】 ゴールド・シーカーズ 【本体】 飽くなき探求心を持つ青年 【能力】 対象を『長方形のスケール』に当て嵌めてその「情報」を探知する No.81 【スタンド名】 シックス・フィート・アンダー 【本体】 葬儀屋の男性 【能力】 死体に6つ穴をあけるとその死体をゾンビにすることができる No.261 【スタンド名】 ニューシネマパラダイス 【本体】 売れない小説家 【能力】 対象(生物でも物でも)の未来と過去を知る No.1532 【スタンド名】 アローズ 【本体】 弓道部の女部長 【能力】 矢が刺さったもの同士を高速で引き合わせ衝突させる No.99 【スタンド名】 シンフォニー・オヴ・デストラクション 【本体】 元パッショーネの薬の売人 【能力】 小型の非知的生命体を選択し、操る No.113 【スタンド名】 アークティック・モンキーズ 【本体】 喫煙家の青年 【能力】 赤い色のものに出入りできる 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
https://w.atwiki.jp/orisuta/pages/1064.html
私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。 現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。 仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。 ……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ…… ** 「はぁ……、どうも生徒会でのことがトラウマになっちまって、性欲がなくなっちまったぜ……。なんつーか、ここは新たな性癖に目覚めねーとダメだと思うんだわ」 「私はお前の頭がもうダメだと思うぞ」 復帰早々に寝ぼけたことをぬかしてついてくる弟を、バイト先に向かいながらも私は一刀の下に斬って捨てる。むしろ、性欲のない弟の方がよっぽどありがたいから現状に不満なんてないのだ。 この点ばかしは、七不思議に感謝してる。……けど、こいつはこのままだとすぐ新たな危険な性癖に目覚めそうで怖いんだよなー。主に、違法ロリに萌えるとか。 バカ弟をどうやって制御するか、頭を悩ましていた私であったが、その時ふといい考えが思いついた。 「あー、垓。あんた、どうしても新たな性癖に目覚めたければ、せめて明日にしなさい。で、明日になったら、更にその明日まで待ちなさい。で、これをどこぞのボスの死ぬ回数と同じくらい繰り返しなさい。 それが済んだら、近親相姦萌えでも何でも生温かい目で見守ってあげるから。むしろ、協力してあげる」 言うまでもなく、詭弁である。明日が今日になる時、新たな明日が存在するのだから、毎日後回しにしていれば永遠にその日は来ない。つまりは、ずっと変な性癖に目覚めるな、と言っているのと同じことだ。 が、生憎垓はバカだった。 「明日かー……。まあ、姉ちゃんのいうことだしな、そうするわ」 この時ばかりは、弟の頭の単純さをありがたく思う私であったが、そうこうするうちに『トラサルディー』に到着する。さてと、バイトを頑張らないとな。 「おはようございます、こんにちはー!」 明るく元気にドアを開けた私を待っていたモノは…… fイ} ト, 弋ヽ i l.lノフ i }/ T!/ _,,.. f ) ノ { // .`/ / _ / .i / / (rテ.¨Eョ‐─-- 、 ┌└冂7^ ┐/ヽ.人_ノ /¨´ /ヽ、/{_/ /¨´ ̄ヽヽ ,rく冂ーYト/´7 _..i_ T/ l / / ! / /⌒ヽノ )‐ニ=-=ニ二( / \/ l"´ i ,' / ´ | |,,_ _,{| /゙丶、 _..!、 人i_il.. ---r‐、 N| "゚'` {"゚`lリ`¨ ‐く ¨''ー-==-─ ¨ ニニ二{ミ、 ト.i ,__''_ ! ..,,_ ヽ -‐=ニ¨-、 /i/ l\ ー .イ|、 l  ̄ ̄ ̄¨ T ー--─ ''"´ ̄¨ニ'‐'ヽ! ヤ ラ な い か ,.、-  ̄/ | l  ̄ / | |` ┬-、 .. /  ̄ )__,,..__入..__ノ )ノ / ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ.て"⌒Y´ ヽ `¨´ノ / ∨ l |! | ` | i丶、_ ヽ_,,.. -干- ..,,_/ / |`二^ l. | | <__,| |  ̄¨ ミ_| |.|- \ i / ,イ____!/ \ ミ .| {.| ` - 、 ,.---ァ^! | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l__{ ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________| }/ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'゙ l |__f゙// ̄ ̄ _ -' |_____ ,. -  ̄ \____| | | -  ̄ / | _ | ̄ ̄ ̄ ̄ / \  ̄|___`\ __ / _l - ̄ l___ / , / ヽi___.| ̄ ̄ ̄ | _ 二 =〒  ̄ } ̄ / l | ! ̄ ̄|_______l -ヾ ̄ l/ l| |___ ……席に座るキモオタであったとさotz ** 「なんでッ、あんたがッ、来てるのよッ! このキモオタぁぁぁっ!!!」 「な、那由多ちゃんおちついて! キモオタさんが呼吸できなくなってるよ!」 「それでいいの! ショコラ、私はこいつの息の根を止めようとしてるんだから!」 首根っこをつかんでブン回すおかげで、キモオタは既に酸欠で気が遠くなりかけてるって時に、先にやってきてたショコラが慌てて私を止めやがる。 ちぇっ、こんなやつは一辺あの世に行かせるくらいでいいと思うんだけどなぁ。……今度、『振り返ってはいけない小道』に騙して連れ込むのもアリだな、うん。 ともあれ、ショコラの顔を立ててキモオタを離してやる。で、店の外に追い出しといて、 「次に来たら、容赦無しに燃やす! あんたの『クレイジー・クラフト』で酷い目に遭ったのを私は忘れてないんだからな!」 と、怒鳴りつけた揚句にこれ見よがしに塩を捲いてやったら、泣きながらキモオタは帰っていく。願わくば、今後二度と現れないでほしい。さてと、店内に戻るか。 「ふぅ、やっと変態がいなくなった……って……」 どうやら、私の考えが甘かったようだ。何時の間にやら阿部さんと相席になっていた垓であったが、 「うわああああ じゅっ 準にゃんかわいすぎるうよぉ~~~っ! 見れば見るほどもっと萌えたくなるぞッ! こりゃあよお―――ッ!! か わ い ー ー い っ !! 『男の娘』に目醒めたァーっ! 阿部さんッ! 俺、『男の娘たちのハーレム』を築くことに決めました!」 ……なんか、雑誌を見ながら変なことを口走ってた。しかも、阿部さんは、 「判ってくれるか、垓。ようこそ……『おホモの世界』へ…………」 なんて煽ってるよotz 「ちょっ、あんたねぇ! さっき言ったことはどうしたのよ!」 暴走する弟に、柄にもなく大慌てする私であったが、垓のやつはこともあろうにケロリと、 「姉ちゃん! 明日って今さッ!」 と返して来やがった。しかも、阿部さんに至っては、 「おいおい、那由多……。男と男のコミュニュケーションに口をはさんじゃいけないな……。 と、いうことで、早速だがその制服を今すぐ脱いで、垓のやつに着せてやってくれ。男の娘を通して、めくるめく『漢の世界』へと引きずり込みたいんでな」 「………………か」 「か?」 「帰れぇぇぇぇぇぇぇっ!」 どうなったかは言うまでもない。変態どもに、『リトル・ミス・サンシャイン』の鉄拳をお見舞いしただけだ。 ** 「はぁ……、まったくあのバカたれは」 「あはは、お疲れ様那由多ちゃん。今日も平常運転でよかったね」 仕事を始めてから1分、どっと押し寄せてきた疲れに肩を落とす私に、ショコラがニコニコしながら声をかける。 ……これがマジでいつもの光景だから始末に負えないんだよなぁ。私、何気に恵まれてないと思うんだがどうだろう? げんなりする私であったが、この日は更についてなかった。最凶のお客が来ていたのである。 ** バイトに取り掛かってから一時間。私の太ももがモジモジし始めてきた。 「どうしたの? 那由多ちゃん」 「あー……、その、何というか……。うん、ショコラ、ちょっとここ任せた。私、ちょっと用を足してくるわ」 も よ お し た 。大慌てでトイレへと向かった私であったが、 「『アクセンスター』、この世からトイレを消しされ……」 という呟きを聞いた直後、なぜか私はどこへ行くつもりだったか判らなくなってしまったのだ。 尿意は刻一刻と高まってくるのに、何処へ行けばいいのか判らない。まさか、女の子が野外で済ませる訳にもいかないけど、店の中に尿意を解消できる場所もない。 どうすればいいのか判らず、私は戸惑いながら股に力を入れた。せめて、出すのをこらえて、後でトニオさんから適当な瓶でも貰って済ませよう。 そう思った私であったのだが…… 「『アクセンスター』、今度はパンティだ……」 何処からかまた呟きが聞こえてくるとともに、今度は下腹部が急にスースーするようになる。 どうも、スカート越しの感触からすると、スカートの中は何も履いてないみたい。(ちなみに、ショコラはブルマーを履いてたから問題はなかったらしい) (な、なんでなんでなんで??? 私、下着を履かないなんて羞恥プレイする訳ないのに!) どうしてこんな風になったのかが判らない。驚いた拍子に、下腹部に込めていた力が抜ける。 チョロ、チョロチョロチョロ……。何かが脚を伝わって床へとこぼれ落ちていく。その感覚に、私はヘタヘタとへたり込んで茫然とした。 やってしまった、私は、やってしまった……。放心状態になってしまった私は、うつろな目で濡れる床を見ていた。 その光景に、ショコラとお客さんたちはいたたまれない表情であったが、なぜか一人だけ舐め回すような視線でこちらを見ていることに、だから私は気付けなかった。 ……私は気付けなかった。けれど、気づいた人がいた。 ** その時、全ての動きが凝固した。そして、空間がおかしくなってから一分ほどの後、彼女は突然現れた。 ゴゴゴゴゴゴゴ……。擬音の出そうな雰囲気をまとって、何かをかき分けるようにしてその少女はやってきた。店の隅に座っていた男が、今にも飛び出しそうなほどに見開いた眼で彼女を見つめていた。 そして、 「『ザ・ファイナルレクイエム――アクセンスター』……。……父が、迷惑をかけてごめんなさい。今すぐ連れて帰るから」 「か、カズハ……。そうか、貴様は何処までも私の邪魔をするか……」 言葉は、最後まで紡がれることはない。その男は、手向かいする事さえできずに彼女のスタンドにボコボコにされていく。 そして、少女は男の首根っこをつかんで、 「この人の所為で、JOJOとのデートがパーになった。この恨み、どうやって晴らそう……」 と、ぶつぶつ呟きながら店を出ていった。……私が漏らしてしまったモノを『消し去る』のをすっかり忘れたままで。 ……結局、私がかかされた恥はどうしようもなかった訳である。最悪の一日って、こういう日のことを言うんだろうなぁ…… 本体名―虹村那由多 スタンド名―リトル・ミス・サンシャイン(店内で漏らすことを強要され、精神的に再起不能) 使用させていただいたスタンド No.315 【スタンド名】 ザ・ファイナルレクイエム 【本体】 18歳の女子高校生 【能力】 触った事のある『スタンド能力』を使うことが出来る No.452 【スタンド名】 アクセンスター 【本体】 30代から50代のカッコイイが邪悪そうな男 【能力】 物を触った瞬間、その『物』をこの世から全て消し去る事が出来る < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
https://w.atwiki.jp/sorano_kanata/pages/19.html
ギルド紹介(暫定版) Qどんなギルド? メンバーとの交流を大事にして、時に協力して時に笑い合えるそんなギルドです^^ Qメンバーは何人で活動時間は? 現在重複なしで18人ほどで平日は4人~10人くらいで活動していて、社会人と学生で構成されています。 初心者~上級者で構成されています。 活動時間はPM8:00~深夜 夜型が多いです Q普段何をしているの? メンバーで声かけ合って、狩りやお手伝いにギルチャでの雑談など 誰でも気軽に参加をモットーにメンバーと交流しつつ自由に活動してます。 Q今後の予定は? イベントを開くなどして交流を深めて行こうと考えています Q前回の募集に酷似してるのですが? 多分気のせいです・・あまりきにしてはいけません・・ この文章5分で出来たとか決していえませn( <募集案内> 累積や種族は関係なく初心者~上級者までお気軽にどうぞ できればメインで、IN率も高いと嬉しいです^^ 基本的なマナーを守れる人(IN、OUT時の挨拶や迷惑行為をしない) 体験からでも受け付けているので興味を持たれた方やもっと詳しく聞きたい方は、マスター「ロイナ」又はサブマス「レイビス」まで気軽にメモを送ってください^^