約 52,782 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2977.html
前ページ次ページ虚無の王 駆動輪が、カラカラと音を立てて回っていた。 空の座す車椅子は軽く、電動の補助動力を備えている。小柄なルイズでも、押して歩くのは苦にならない。 辺りは明るかった。 明るく、そして何も無かった。 靄が立ちこめた様に真っ白な世界で、車椅子の空とルイズの二人だけが、鮮やかに浮かび上がっていた。 帽子の下で、空はいつもの笑顔を浮かべている。 どことなく澄ました顔のルイズも、その表情は柔らかい。 暖かな光を体一杯に浴びて、長閑に歩を進める。 「ねえ、空」 屈託の無い声で、ルイズは尋ねた。 「今日は、どこに行く?」 「せやなあ……」 空は軽く顎を撫でると、 「もう、ええわ」 「え?」 意外な言葉に、怪訝な声が漏れた。思わず、足が止まる。 その時だ。空は車椅子のステップから地面に足を降ろした。 よいしょと掛け声を一つ――――。 ルイズは唖然とした。 空が立った。両脚を失った筈の男が立った。 どうなっている?どうなっている? 立ち尽くしている間にも、車椅子を頼っていた異世界人は、大きな足取りで歩き始めた。 「ちょっ……!」 声を挙げるルイズに、空は笑顔で振り向く。 「ほな、さいなら」 手をひらひら振ると、空は更に脚を早める。 ルイズは慌てて後を追った。 何が何だか判らなかった。 ただ、このまま行かせてはいけない。そんな思いだけが、焦燥感と共に平たい胸の中で膨れ上がった。 「ちょっと!待ちなさいよ!」 ルイズは小走りに追いかける。やがて、それが疾走に変わる。 空が歩いている。目の前を歩いている。 まるで近付いて来ない。寧ろ、離れて行く。 「待ちなさいよ!こら!御主人様の言う事が聞けないの!そんな使い魔は、食事抜きなんだからね!待ちなさい!」 ルイズは走る。懸命に走る。 空が歩いている。その背中がみるみる遠離る。靄に霞んで行く。 「待ちなさい!……待って!――――空!待って!行かないで!」 肺が焼け付く。心臓が潰れそうだ。それでもルイズは走る。 細い脚が縺れる。腿の筋肉が酸欠を起こして言う事を聞かなくなる。 「空っ――――!」 ルイズは必死で手を伸ばし――――…… ルイズは手を伸ばす。 その手には、杖が握られている。 かつて使用していた、小さなタクトでは無い。小剣程の大きさをした、十字型の杖。四つの先端には、それぞれ異なる装飾、異なるルーンが彫られている。 狭く薄暗い場所だった。地面と垂直に穿たれた、5メイル立法の岩室。 桜色の薄い唇が、ルーンを紡ぐ。 空気が弾けた――――。 高く、小気味良く、三つの破裂音が連なった時、目の前から目標の少年は消えていた。マントが裂け、切れ端が舞い散るその中に、造花の花びらが紛れている。 腹の下に、重い音が響く。刹那、青銅色の風が眼前を過ぎる。右に、左に。 右後背から物音。車輪が壁を削る音にルイズは振り向く。空中に一体のゴーレム。全身に備えた車輪により、壁を利して高速反転。刃物の様な体で襲い来る。 手刀が唸りを揚げる。文字通り、重く鈍く柔らかい、鈍器にも似た青銅の刃。 詠唱は終わっている。杖の中央に掌を添え、平面をゴーレムに向ける。刹那、生まれる爆発の壁。 青銅の乙女がバラバラに弾け飛ぶ。腕が、脚が壁に突き刺さり、音を立てて崩れ落ちる。 ルイズは既に杖を翻している。 背後からもう一体。長い先端を向け、小袋から取り出した包みを反対に詰め込む。杖は中空だ。単音詠唱で小さな爆発。飛び出す一二の鉄球が、ワルキューレを蜂の巣に変える。 眼前にもう一体が迫っている。詠唱は間に合わない。身をかわす閑も無い。 単音詠唱。小さな爆発が地面を抉り、ワルキューレが宙を舞う。派手に転倒する戦乙女を屈んでやり過ごす。背中を重く固い感触が転がり落ちる。身を起こすと同時に爆発――――。 正面でゴーレムが弾けた。振り向き様、半ば盲打ちに鉄球を放つ。半身を抉られ、ワルキューレが独楽と回る。と、その影に術者の姿――――居た! 足止めに、小さな爆発を放ち――――刹那、首筋を重い何かが、軽く叩いた。 ルイズは一瞬、身を強ばらせた。そのまま、数秒に渡って硬直し、やがて小さく息を漏らす。 「参りました」 声に、悔しさが滲んだ。 深さ5メイルの岩窟で争う二人を、見下ろす影と光が有る。 車椅子に座した空は、オペラグラス片手に長銃を弄っている。 コルベールは眼下の勝負が決着したのを見ると、左右に視線を巡らせる。あちらこちらで飛び交う魔法の光。 「最近、勝率落ちよったなあ」 銃声が岩場に響いた。空はオペラグラスで岩壁を遠望する。 弾着を確認。技術力の高さで知られるゲルマニアの職工に造らせた銃だが、集弾性は皆無に近い。 「勝率?ミス・ヴァリエールですか?」 「ああ。最初“キューブ”じゃ、無敵やったんけど……」 岩窟にはルイズとギーシュが居る。 礼を交し、今し方の勝負について意見を交換している様だ。 「“キューブ”?」 「ああ。パーツ・ウォウのDランク」 中折れ式の銃に弾薬と火薬を再装填しながら、空は説明する。 向こうでやっているのが、Fランクの“ダッシュ”、向こうがEランクの“ハードル”―――― 放課後は特訓の時間だ。 最初は二人だけだったが、そこに空を目当てにしたキュルケとタバサが加わった。更にギーシュとマリコルヌがやって来る。モンモランシーとレイナールも参加する。 人数が増えた事で、空は合同での特訓を提案した。実戦形式の訓練で、魔法それ自体ばかりでは無く、その活用を研究する。これは、誰にとっても意義が有る筈だ。 但し、決闘や私闘を繰り返す訳にはいかないから、ルールを決める。内容はパーツ・ウォウ。 キュルケは面白がって同意した。彼女が賛同すると、タバサも釣れた。 ギーシュは空との決闘でパーツ・ウォウには馴染みが有ったし、マリコルヌはこの異世界人を師と崇め奉っている。 レイナールは二人に同調。モンモランシーは医療係を買って出た。 「空ー」 「おお。コッパゲ、これ頼む」 手にした銃とオペラグラスをコルベールに預け、空は対戦を終えた檻〈キューブ〉へと降りて行く。 レビテーションもフライも使えない御主人様を、迎えに行ってやらねばならない。 なるほど――――各所で対戦する生徒達を眺めて、コルベールは頷いた。 魔法の実践的な使い方が身に付くのも良いが、各系統の得手不得手が判るのも面白い。 右手の平地、レイナールとタバサが魔法を応酬しながら走っている。極めて優秀な風使いの少女は、どこかやりにくそうだ。 移動時のみ攻撃可の競争で、後進後退禁止のルール下においては、誘導性能を持つ火の系統が圧倒的に有利。やや後に火球を放ってやれば、相手は前進しつつ後方からの攻撃に対応しなければならない。 左手の絶壁には、マリコルヌとキュルケの姿。目標が停止している時のみ攻撃可能な障害物競走“ハードル”では兎に角、飛行に長けた風メイジが圧倒的だ。 因みに、登攀型ワルキューレの速度で一時無敗を誇ったギーシュだが、今はワイヤーを伸ばしている所を狙い撃ちにされ、勝率が落ちている。尚、飛べないルイズは全敗。 そして、キューブ。 ルイズを抱えて、空が飛び出して来る。 ギーシュの元には、モンモラシーが駆け寄る。どうやら、ワルキューレの破片が掠めたらしい。腕に出血が見える。 限定空間の戦闘。極めて詠唱時間の短いルイズは、当初無敵だった。仲間達が開き直って、最初の一発を逃げに徹し始めると話が変わった。 それでも、未だ上位に居る事に変わりは無い。 また、屋外では火、風両系統の的でしか無いワルキューレも、室内戦では恐るべき力を発揮する。 空が戻る。 「おや、仲がいい」 コルベールは思わず呟いた。空の首に、ルイズがしがみついたままだったからだ。 一方、教師の存在に気付いたルイズは、慌てて車椅子から飛び降りる。 「ミミ、ミスタ・コルベール、ごご誤解しないで下さい!こ、これは……」 「ああ、判っている。しっかり掴まっていないと危ないからだろう」 「え、ええ。そうです。その通りです……あの、何時いらしたんですか?」 「つい、さっき。ミスタ・空と皆さんが、何か変わった事を始めていると言う事で、オールド・オスマンから様子を見て来る様に言われてね」 だが、これは面白い。コルベールは繰り返す。 どう言う訳だろう。魔法や、その技術を競い合う競技と言うのは極めて少ない。 精々、一部の男子生徒が、手を使わず、魔法でボールを籠に放り込む遊びをしているくらいだ。 「もっと参加者増えたら、上のクラスもやれる。オスマンの爺さんに、カリキュラムに取り入れる気無いか、相談して見るかな」 「どうでしょうね?それはオールド・オスマンの一存で決められる事ではありませんし……」 「この学院、学園祭とか……体育祭の代わりに、魔法祭とか無いんか?」 「魔法祭?」 「ああ、ワイの国の学校じゃ、大抵、体育祭つーのをやってな。クラス対抗で競い合うんや。文化祭やら学園祭やらを、生徒が協同で開催する事も有るしな」 「ほほう、なるほど。それは面白い――――所でミスタ・空。これは……?」 「ああ、前話したやろ。うちで作り始めた、新式の銃や」 空が言う“うち”はコルベールと協同で経営している、トリスタニアの工房だ。 コルベールの発明品を主として、幾つかの製品を手掛けている。 「銃?」 ルイズはコルベールが手にする銃――――数打ちの品質をチェックする為、空が抜き取って来たと言う一丁を覗き込む。 変わった形だ。引き金の付近で二つに折れているが、壊れているのでは無い事くらいは判る。 「ああ。後込め式や。今までの先込め式やと、訓練された奴でも二分で三発が精々やろけどな。こいつなら一分で五発はいける。それと弾が違う」 「弾が?」 空が差し出す弾丸を、コルベールは指で摘む。 単なる鉛丸だ。特に変わった所は見られないが……。 「土メイジに一切頼らんで造った奴でな。粗悪品やわ」 「何故、そんな物を?」 「発射時に、炸薬の熱で溶けよるんや。貰たら、悲惨やで。内臓がズタズタにされる」 コルベールとルイズは、揃って渋い顔をした。聞いていて気分の良い話では無かった。 何故、そんな物を?それが素直な感想だ。 「村がオーク鬼に襲われる。領主が兵隊出してくれへんから、村人は村を捨てざる得ん。そんな話をちらほら聞いたんや。それでな」 「これがあれば、平民でもオーク鬼が倒せる、と?」 「こいつだけやと辛いな。足止め用や。で、お前が今設計しとる、“空飛ぶ蛇くん”で仕留める」 「なるほど……」 それを聞いても、コルベールの表情は晴れない。 今、空が提案した装備を持つ平民の部隊が存在したらどうだろう。その戦闘力はメイジには及ばないにしろ、既存の鉄砲隊など問題にしない。 そんな部隊が相対する二つの軍に広まったら? メイジは魔法により身を守り、治癒も出来る。その恩恵を受ける事が出来ない平民の部隊で、被害が激増するのではないか。 この銃の設計に、自分は関わっていない。何を言う権利も無い。 だが、コルベールはどこか釈然としない物を覚えた。 「……お前のそう言う所見ると、安心する」 不意に、空が言った。 「どう言う事です?」 「『技術に善悪は無い。使い手が決める』――――何か有ると、科学者、技術者は大抵この一言で逃げよる」 空は眉を顰める。 研究には必死なっても、それが世に与える影響には目を向けない。 客観的な事実についてはペラペラと喋るが、自分自身の考えについては、子供同然の事も言えない。 「そないなケチな連中が多くてな。お前がそうや無いのは、ホンマ有り難い――――どうせ、大した数は造れへんし、無闇矢鱈な所に売る気も無いさかい、心配すな」 漸く、コルベールは表情を弛めた。 自分もまた、そうした人間では無い――――そう、保証された気がした。 一礼して、コルベールは立ち去る。放課後とは言え、教師も閑では無い。 まして、協同工房の開設以来、この偉大なる発明家は多忙で、その忙しさを楽しんでいる。 「工房ねえ……順調なの?」 「ああ。ホンマ、姫さん様々や」 空は笑う。 開設の切っ掛けは使い魔品評会だ。 空は以前コルベールに造らせた、“腕を必要としない松葉杖”で登場して見せた。 それが、行啓していたアンリエッタ王女の目に止まり、彼女名義の施療院で採用される運びとなった。 聊か使用条件が限られている品ではあるし、収益自体は大した物では無い。 大きかったのは、ギルドにがっちり固められた職人街に足場を築けた事だ。 アンリエッタ王女の名前を聞くと、ルイズは息を詰まらせる。頬が鮮やかな薔薇色に染まる。 使い魔品評会。 空は車椅子で様々なトリックを決め、衆目を驚かせたものの、結局はただの人間。最優等に選ばれたのは前評判通り、タバサのシルフィードだった。 キュルケのフレイム、ギーシュのヴェルダンデもそれぞれの系統メイジの賞賛と羨望を浴びた。 ここまでは良い。問題はその後だ。 夕刻、アンリエッタ王女はお忍びでルイズの部屋を訪れた。互いの立場を一時忘れ、一頻り思い出話に興じる二人。 ふと、アンリエッタは空に興味を示す。 品評会の最初に見せた松葉杖について説明を受け、ついで、自分の友人を宜しく頼む、と車椅子の平民に高貴な御手を許す。 ここで事件が起きた。空はアンリエッタの手を取ると抱き寄せ、唇に接吻をした。予想外の事態に、王女は意識を失い、崩れ落ちる。 ルイズはキレた。 勘違いした、と言う空の弁明にも耳を貸さなかった。絶対、わざとだと思った。すると、ここで不埒な色魔は、もう一度“勘違い”を起こし…… 「……――――」 杖を握る手に力が篭もった。 あの後起きた出来事は。記す事も憚られる。 ルイズは古い友人共々仲良く失神し、数年振りに、同じベッドで眠る事となったのだ。 新しい杖は金属製だ。大きさも手頃で、打撃力にも優れている。 短経の一端がやや尖り気味である事は、取り分け都合が良い。 ルイズがもう大分古くなった話を思い出して身を震わせていた時だ。空が大きく欠伸を漏らした。 「……また、決闘?」 「せや。なんか、最近色んな奴に絡まれてなあ。ワイも挑戦は拒まん質やけど、最近は忙しい身の上やからなあ。叶わんわ」 ヴィリエとの決闘以来、挑戦が急増している。或る日、空がそんな事を口にした。 逐一、報告させる様にすると、毎週必ず決闘があり、一対多の私闘や闇討ちまで含めると、殆ど毎日の有様だった。 ルイズは表情を曇らせる。 今の所、空は無事だ。だが、これ以上、相手が手段を選ばなくなれば、何が起きるか判らない。 「大丈夫なの?」 「ああ、心配要らへん。せやけど、面倒なんも確かやからな。コッパゲに相談すれば良かったわ」 「次会った時、そうしたら。教師や学院が止めに入ってくれれば、多分、収まるわ」 「せやな」 他の勝負も決着した様だ。モンモランシーを中心に、全員が集まっている。負傷した者は治療を受ける。 「さて。勝敗はどや?」 空はメモ帖代わりの携帯を取り出す。 タバサが目印に突き立てたデルフリンガーを引きずっている。“ダッシュ”は彼女の勝ちらしい。 レイナールは悔しそうだ。圧倒的有利の火系統だが、魔法を放つタイミング一つで、負ける事も有る。 「“ダッシュ”はチビっ子の勝ちか。情っけないのう、ホモ」 「な、違う!僕はホモでは無い!おぞましいホモなどでは無い!断じて違う!」 レイナールは絶叫した。 非生産的な性は神に背く罪悪と言う時代だ。セクシャルマイノリティーの人権なる物は、ハルケギニアには存在しない。 「スマン。なんか、知り合いのホモに似とってな」 一方、ハードルはどうか。 黒焦げになったマリコルヌを、モンモランシーが言葉だけは必死に、露骨な手抜きで治療している。 「こっちはキュルケの反則負けか」 移動中の目標は攻撃禁止。 そのルールをキュルケが破った理由は簡単だった。速度で勝る筈の風メイジが障害物を前にして後についたとなれば、その魂胆は見え透いている。 「傷はもういいの?」 「ああ。衣服が破れる方が、寧ろ辛いかな」 ルイズの問いに、ギーシュは正直な答えを返す。衣服代か嵩んで仕方無い。いっそ、対戦用に安物と服を用意するか……。 空は勝敗を記録する。 競技毎、向き不向きの系統はあれど、やはりトライアングルの二人が傑出している。 タバサの総合一位は、“ハードル”における風の優位が、“ダッシュ”における火の優位よりも大きい為だろう。 キュルケに続いてギーシュ。キューブでは飛び抜けて勝率が高い。広地での競技はワルキューレを盾に健闘するも、誘導性能を持つ火系統には苦戦する。 ルイズは初期に築いたキューブでの貯金を削られジリ貧。 レイナール、マリコルヌは同系統に上手が居る為、どうしても伸びない。 「所で、杖を変えたのだね」 「ええ。つい昨日、やっと儀式が終わったから」 ルイズが杖を差し出して見せると、一同は珍しそうに集まって来た。 「変わった形ね。どう言う意味が有るの?」 「大した意味は有らへん」 答えたのは、空だ。 十字架型で、四つの先端毎に装飾とルーンが違うのは、それぞれ使用する魔法のイメージを造り安くする為。これは、杖の形状が爆発に与える影響を調査した結果に基づいている。 また、長経のみ中空の構造から、単音詠唱での爆発を利用する事で、散弾の発射筒としても機能する。 「本人は“破烈”の玉璽〈レガリア〉なんぞと嘯いとるがな。ま、子供の歩行器みたいな物やわ」 その言葉に、ルイズは唇を尖らせた。数種の爆発を駆使出来る様になったと言うのに、却って半人前扱いだ。 不満を覚えて、空の胸を軽く肘で小突く。 「玉璽〈レガリア〉?」 誰かが疑問の声を挙げた。トロパイオンの塔の伝説を知るのは、この場ではルイズだけだ。 空はその伝承と、八人の“王”、八つの“玉璽〈レガリア〉”について説明する。 「なるほど。それで、ヴァリエールは自分の爆発を、新たな“道”にしようとしている、と……」 笑う者は居ない。ルイズの爆発が如何に恐ろしい物かは、身に沁みている。 「ま、実際、八つの“道”から新しい物も派生しとるし、そん中から、“王”が出た言う噂も聞くしな」 「ふーん。じゃあ、私は“炎の王”て所かしら?」 「意義アリ!僕にも権利が有る!」 「僕は……一番近そうなのは、“石の王”か……?」 「私は“風の王”」 「ああ、あかんあかん」 タバサの呟きに反論したのは、マリコルヌでは無く、空だった。 「風はワイやから。売約済みやから。お前の二つ名“雪風”やろ。雪や。“雪の王”で我慢しとき、雪ん子」 タバサは何も言わなかったが、見る人間が見れば、どこか不満そうだった。 「何言ってるのよ。あんたは“元”王でしょう」 「へえ、ダーリンは元“風の王”。なるほどね。所で、“炎の王”てどんな人?」 「スピットファイア言うてな。燃え頭の気取った奴やわ」 「もし、私と戦ったら?」 「お前じゃ、何もさせて貰えへん。話にならん」 空はばっさり切り捨てた。 「あら、手厳しいわね。そんなに強いの?その人」 「スピの奴はな、“時”を止めよる」 その言葉に、キュルケは吹き出しかけた。何かの冗談かと思った。 “時”を止める?そんな馬鹿な。そんな人間相手に、どう戦え、と言うのか。 「仮にも“王”やからな。せやけど、あいつは昔、両脚の腱切っとる。戦士としては、とっくに終わっとる男や。八人の中では、一番弱い部類やろ」 一同は声を失う。 そんな男が一番弱い?途方も無い話だった。 陽が暮れようとしていた。一同は雑談混じりに、帰路を急いだ。 ギーシュはつんと済ましたモンモランシーの御機嫌取り。 未だ焦げ臭いマリコルヌは、レイナールと大宇宙の真理について語り合う。 タバサも律儀に徒歩で付き合う。 「あら……」 キュルケは声を漏らす。ルイズが空の車椅子を押している。 最初は、気位ばかり高いあのヴァリエールが、平民に奉仕する姿に驚いた。 その明るい表情に、春の訪れと呼ぶには幼い心中を見取って、微笑ましくも思った。 ルイズが車椅子を押す。握りを掴む手には、どこか頑なさが見える。 何時頃からだろう。その表情に陰が差し始めたのは。 一体、何が有った?――――キュルケは首を捻る。 恋愛の機微には通じているつもりだが、最近のルイズが見せる表情は、どうにも判断がつかなかった。 * * * ルイズのベッドには天蓋が無い。 最近は着替えの為、天井からカーテンを吊している。 衣服を空に取らせる事もしない。 一度、主人と人間ならざる使い魔と言う関係を崩してしまうと、後はなし崩し。忽ち、一六歳の恥じらいが顔を出した。 空は忙しい。 寝起きの悪いルイズがぐすぐす言いながらも身支度を済ませると、一緒に部屋を出る。そして、朝食を終えると、そのままどこかに出掛けてしまうのが常だ。 最近の活動範囲は専ら学院の外で、昼間にその姿が見られたとしたら、コルベールと共に居る時だけ、と言って良い。 「今日も出掛けるの?」 「ああ。うちの工房もようやっと落ち着いたさかい。タルブに足伸ばす予定でいる」 「タルブ?」 「ラ・ロシェールの近く。シエスタの故郷の村やな」 「あのメイドの?」 そんな所に、何の用だろう。 「あの“飛翔の靴”を作る所や。技術持った職人が居るやろ。車椅子の部品が複製出来ないかと思うてな」 勿論、チタンやステレンス鋼が造れる筈も無いが、寿命度外視の予備部品なら何とかなるかも知れない。空はそう言った。 「一人で行くの?」 「いや。何人か閑な連中と行く事になっとる」 「そう――――」 ルイズは目線を落とした。 匙がスープの中をグルグルと回っている事に、当の本人は気付いていなかった。 「なんや、考え事か?」 空に指摘されて、始めて気付く。 「あ、うん。何でも無いわ――――何人か、て事は、馬車で行くの?」 「せや。タルブはええシャトーが仰山ある言う話やからな。ついでに寄る予定や」 実は、話としては葡萄酒が先だった。空は素直に白状する。 「そう。じゃ、私も行く」 意外な一言だった。空は目を丸くする。 「何言うとる。駄目や駄目」 「私は邪魔だって言うの?」 「授業有るやろ。サボる気か?」 「今日行く中に、学生は一人も無いの?」 「そう言う訳や無いけどな」 「なら、いいじゃない」 「他人様は関係有らへんやろ。親御さんが折角、ええ学校入れてくれたんやないか」 空は時折、思い出した様に真面目な事を言う。 ひょっとすると、保護者を自任しているのかも知れない。 「いいのよ」 ルイズはムキになった。 空がそう考える事に不満は無いが、気に入らない。 「なにがええんや」 「どうせ、今日の授業は女子一同でボイコットする話になってるんだから」 「あ?」 「ミスタ・ギトーの講義よ」 風の系統こそ最強。しつこくしつこく訴え続けるギトーは、大抵の学生に嫌われていた。 その手段に変化が生じると、男子から熱烈な支持を得た代わりに、女子からは総スカンを食らう事になった。 「署名集めて、講義を担当させない様、学院側に要求したけれど、まだ受け容れられてないの。それでね」 「あいつも大変やなあ」 実家に訴えて、圧力をかけて貰おうと画策している女学生も少なくない、と言う。 その話を聞いて、空は同情した。 「ま、明日は虚無の曜日やし、そう言う事なら構わへんけどな――――」 「けど、なによ?」 「ギトーの奴も来るで。つーか、あいつが発起人や。ええんか?」 ルイズは唖然とした。学生ならまだしも、教師が授業をサボる? だが、何しろ“あの”ギトーのする事だ。 女子が一人も居ない教室を前にして、講義を放り出した所で、不思議でも何でも無い。 「……いいわよ。行く」 数秒の凍結を経て、ルイズは言った。 別に、意地になっている訳では無い。 学院正門前には、大きな幌馬車が止まっていた。 荷台からは、葡萄酒の芳醇な香りが、半ば刺激臭に姿を変えながら漏れ出している。 「紳士諸君っ!」 酒瓶を片手に、ギトーは口舌も滑らかだ。 愛する貴族令嬢達に見限られた不幸な男は、出発前から酔っていた。 「最強の系統は何か、知っているかね?」 「はい!それは“風”であります!」 三つの声が答えた。 風メイジたるマリコルヌの声は一際誇りに満ちていた。 レイナールとギーシュの顔はどこか複雑だ。 それでも二人は風こそを最強と認めている。認めなければならない理由が有る。 ギトーは深々と溜息をついた。年来の主張に理解有る学生達を前にしても、気分は晴れなかった。 「ったく……飲まねばやっておれん。そうだろう。紳士諸君」 「だ、大丈夫ですよ、ミスタ・ギトー」 傷心の師が見せる物憂げな表情に居たたまれなくなったのか、レイナールは精一杯慰めた。 「ミスタ・空が女子に誘いをかけてます。絶対に何人か参加する筈です」 「ミスタ・空か……」 その名前を聞いて、ギトーの顔は若干晴れる。 風の系統こそ最強。年来の主張に確信を与えてくれたのは、他ならぬあの男だった。 レイナールの言葉は程なくして、現実となった。 キュルケ、タバサ、ルイズにモンモランシー。二年生でも有数の綺麗所が、小声で囁き合い、躊躇いがちに近付いて来る。 自分の存在がそうさせているのだ、と言う事実に気付く事が出来ない哀れな男は、少女達の見せる初々しい仕草に、大喜びで荷台を飛び降りた。 「やあやあ、諸君。本日、パンチラの予定はないのかね?」 最後まで言わせておいたのは、乙女達に残された僅かばかりの慈悲だった。 ギトーが気取った仕草で尋ねた瞬間、学院の庭園に火の手が上がる。竜巻が人間大の炎を上空に巻き上げる。 キュルケ、タバサに続いてルイズが杖を振るう。爆音に叩かれ、学院中の窓ガラスがビリビリと震動する。 「「汚い花火ね」」 領地を接する二人の貴族は、同時に声を漏らした。 「ああっ!キャメラが!キャメラは無事か!」 何故、自分の出番を残してくれなかったのか。水メイジの少女が猛然、抗議した時だ。 ギーシュは慌てて飛び出した。荷台に落着した花火の燃えかすを、二人の仲間が慌てて鎮火しているのもお構いなしだ。 「え、なに?」 「ミスタに預けていたのだ!――――あ、有った。良かった良かった……」 火球の魔法が着弾した衝撃で、吊り皮が切れたのだろう。 地面に転がる木製の箱を、ギーシュは大切そうに持ち上げた。 「なに、それ?」 「ああ、ミスタ・コルベールとミスタ・空の発明品で、キャメラと言うらしい」 「それは、何に使う物なの?」 「あー……二人は例の魔道書を憶えているかな?」 ルイズはさっと頬を赤らめた。 「秘宝の魔道書のこと?」 「おお、憶えてる訳ないでしょ!そそ、そんなによく見てないんだからね!」 「あの表紙、人の手で書かれた物では無いのだそうだ」 何気ない切っ掛けで、空に魔道書の事を話した時だ。 車椅子の異邦人は、腰から不思議な道具を取り出した。その絵と言うのは、こう言う物では無かったか――――突然、道具の表面に絵が浮かび上がった事に仰天しながらも、ギーシュは首肯する。 「あれは写真と言って、このキャメラに良く似た道具で作られた物らしい」 「魔道書、て、あの変な噂の元になった?」 「ああ、モンモランシー。君は見た事が無かったのだったな」 実際に見て貰った方が話が早いだろう。 ギーシュは懐から、大きな写真を取り出す。魔法学院を写した物だ。 「何、これ……」 「なんか灰色っぽい……と言うか色無いけど……凄いわね」 「その機械で造れるの?」 取り敢えず、ギトーの質問の魂胆を知ったキュルケは、もう一度火球を放った。もう一度タバサが宙に舞揚げ、ルイズがもう一度爆破。モンモランシーはもう一度文句を言う。 それにしても、この写真とやらは本当に凄い。モット伯も単なる助平貴族では無かったらしい。 あの魔道書――――後日、直接見る機会を得た空が言うには、『エロ凡パンチ』と言う――――は、方々に多大な影響をもたらした。 空はギーシュを通じてモット伯と接触。キャメラの開発、生産の支援を取り付けた。 今、手元に有るのは、その誼で回って来た試作品だ。利益が出れば、紹介料として幾ばくか回してくれる、と言う。 「手広くやってるのね」 「彼は自分の国に帰る方法を探しているそうだからね」 自国の書物が偶然とは言え、召喚されていた。 それを知った空は、ゲルマニアの研究機関と繋がりを作りたい、と考えている。利益を急ぐのはその為だ。 同研究機関への投資や、場合によっては、ゲルマニア貴族となる事も考えているのだろう。 その言葉を聞いて、ルイズは人知れず睫を伏せる。 「僕らも大変だった」 「私は楽しかったけど?」 ギーシュとキュルケについては、おかしな噂が立った。 何しろ、ツェルプストー家の家宝。おまけに、嫁入り道具として持参していたそれが、グラモン家の四男の手を通じて、モット伯の手に渡った、と言うのだ。 すわ、グラモン、ツェルプストーの両家で婚姻か。そんな噂が学院から、社交界までをも駆けめぐった。 ギーシュは実家に戻って釈明しなければならず、学院に戻ってからは、キュルケに惚れ込んでいた何人もの学生から決闘を挑まれる羽目になった。 「勘違いだ、て言えば良かったのよ」 「信じて貰えなかった」 「あんた、弱っちい癖に。大丈夫だったの?」 「御生憎様。ミスタ・空との決闘で鍛えられていたからね。全勝さ」 得意気に嘯くギーシュの腿を、モンモランシーは思い切り抓り挙げた。 「痛っ!モンモランシー、痛いっ!」 「なに、得意がっているのよっ!何人もの貴族を敵に回してっ!将来、マイナスになるって判らないのっ!」 「そうは言ってもっ!……痛っ!……貴族がだね……千切れるっ!本当っ!……後を見せる訳にはっ……つつつっ!」 「……ひょっとして、空に決闘を挑む貴族が増えてるのは、そのせい?」 不意にルイズが言った。 モンモランシーは怪訝な顔で振り向いた。漸く解放されたギーシュは、涙混じり跛を引いている。 「どう言う事よ」 「ギーシュは空に負けている。そのギーシュに負ける。その貴族の力は、平民である空に劣る、と言う位置付けになる」 「それを挽回する為に?」 「馬っ鹿馬鹿しい!」 モンモランシーは声を上げた。ギーシュとの決闘騒ぎや、特訓時の所見から、空の能力は漠然とだが判っている。 あれに負けた。だから、なんだ? 「あんなのに勝てるメイジなんて、そうそう居る訳が無いじゃない」 「てて……でも、有り得る事だね。それを知ってるのは、僕らだけなんだから」 厄介な事だ。ギーシュは唸った。 「あんたが考え無しな行動を取ったのが原因でしょ」 「しかしだね……」 ギーシュが抗弁しようとした時だ。同行する最後の一組が到着した。 空は当然として、残りの顔が、一同を唖然とさせた。 「ミスタ・コルベール!」 「発明にはインスピレーションが必要なのですぞ!」 何より、“飛翔の靴”の産地へ行く機会となれば、この発明狂が黙っている訳が無い。 コルベールは頭に似合わぬ身軽な動作で、意気揚々、荷台に乗り込んだ。 「しかし、諸君っ!授業は宜しいのですかなっ!」 「何、言うとる。お前かて、他のセンセに頼み込んで授業ずらして貰たんやろが」 「いや……それは……これは課外授業ですぞっ!」 あまりに苦しい言い訳だ。 だが、ギーシュとモンモランシーをして声を失わせたのは、非番の魔法学院教師では無かった。 「皆さん、今日は宜しくお願いします」 丁寧に頭を下げる少女。普段とは服装が違うので、一瞬判らなかった。ギーシュがモンモランシー言う所の、考え無しな行動を取る切っ掛けとなった人物。 シエスタだ。 「あの……ミスタ?」 「ワイが誘った。あんな騒ぎが有った後も、実家には帰れてへんみたいやったしな」 空が誘いをかけると、マルトーはあっさり承諾した。 嫌な予感がした。ギーシュは幌の中にこっそりと逃げ込んだ。 馬車の後で、私服のメイドと、ロール髮の貴族、笑顔と露骨な警戒心とが交錯する。 「……あんた――――」 「ミス・モンモランシですね。ミスタ・グラモンから伺っています。お二人は恋人同士なんですよね?」 シエスタが機先を制した。 「え……ええ。まあ……そう言う事にしておいてあげてもいいわ」 「こうして、御挨拶出来るなんて夢みたいです。私、いつも遠くから見ていて、思っていたんですよ。なんて素敵な方なんだろう、て。なんて素敵な恋人同士だろう、て。お二人が結婚されて、こんなにも素敵な御夫婦にお仕えする事が出来たら、どんなに素敵だろう、て」 モンモランシーは呆気に取られた。 なんだ、意外に良い娘では無いか。全く、貴族の淑女が、噂話に振り回されて、メイドの娘を警戒するなど、こんなに馬鹿げた話は無い。 モンモランシーは余裕の笑顔を浮かべる。 その笑顔が凍り付くまでには、三秒かからなかった。 シエスタは当然の様に、ギーシュの隣に座った。 その時、あのメイドが見せた笑み――――あの小賢しい笑い。そして、虚ろに目を泳がせている、貴族の少年に耳打ちする。 「今日は宜しくお願いしますね。ギーシュ様」 「あ、ああ――――」 その囁きが聞こえた訳では無い。だが、モンモランシーの脳内で厳戒態勢が敷かれるには充分な光景だった。 こいつは油断ならない。油断してはならない。 「そこ、私の席よ」 「あ、も、申し訳ありません。ミス」 メイドは慌てて立ち上がり、そして反対隣に座った。 そして見せる、あの笑い。 (こ、このメイド……っっ!) モンモランシーは内心で歯噛みする。 二人に挟まれ、ギーシュは脂汗を流す。 「ねえ、レイナール」 その光景に、マリコルヌは言った。 「なんで、貴族同士の決闘が禁止されているか、知っているかい?」 「理由は知らない。知らないが、よく判る」 この時、ギーシュの友人が二人減った。 空は車椅子ごと乗り込んだ。部品の見本が必要な為だ。なら、丸ごと持ち込んだ方が話が早い。邪魔にならぬ様、一番奥に車椅子を固定する。 車椅子を降りて、荷台に座り込む。座席は荷物置きとして利用する。 その隣に、キュルケは当然の様に腰掛けようとする。 と、寸前でルイズが割り入った。 「ごめんなさい」 聊か強引な入り方だ。 脚を跨れ、押し退けられかけた何人かが、怪訝な顔を見せる中、一言詫びると、空の隣にストンと腰を降ろす。 「何?」 「別に……」 キュルケは大人しく、その隣に座った。最近、ルイズが空絡みで見せる態度は、どこか奇妙だ。 それは、恋に生きる女を、燃え上がらせるよりも、寧ろ困惑させる類の物だった。 参加者が揃った。 教師はギトーとコルベール。 学生はギーシュ、マリコルヌ、レイナール、ルイズ、キュルケ、タバサ、モンモランシー。 平民の空とシエスタ。 計11名の大所帯だ。 三つの殺人魔法から、早くも奇跡の生還を遂げたギトーが御者に一声命令。 大きな幌馬車は、巨体通りのゆるゆるとした速度で動き出す。 「ミスタ・グラモン!キャメラを貸してくれ給え!キャメラを!」 「いいですけど……随分、気に入られたのですね」 「うむ。当然だよ。これは素晴らしい。実に素晴らしい。きっと、我々に幸福を約束してくれるだろう。真に偉大なる発明と言うべきだろうな」 「嬉しい事を言ってくれますなあっ」 「あんな、ギトー」 一人、興奮するギトーに、空が水を差した。 「そいつ、作りが原始的やさかい。露光に10秒ばかりかかりよる。お前が撮りたがってる様な物は、絶対無理やで」 それを聞くと、ギトーは見ていて気の毒になる程、落胆の色を露わにした。 仕方が無い。今、彼が手にする物でも、ハルケギニアの技術水準を考えれば、100年や200年は進んでいる。 一方、女子一同はほっとする。 よく判らないが、撮影に10秒かかると言うなら、おかしな写真を撮られる危険は少ないし、或いは、この問題教師も、風の性的な悪戯に諦めを覚えてくれるかも知れない。 と、不意に笑い声がした。 「ははは、何を落ち込んでおられるのですか、ミスタ・ギトー。貴方らしくも無い」 レイナールだ。態とらしく眼鏡を押さえた。 「最強たる風の系統が生み出す奇跡は、機械などでは無い。己が魂にこそ刻むべき物――――そうではありませんか、ミスタっ!」 ギトーは弾かれた様に身を起こした。 「その通りだ……――――」 呟く、その声は震えていた。 「全く、その通りだっ、その通りだぞっ!」 「見事な見解だ、レイナール!」 「ああっ!偉大なる師は優れた弟子を育て、よき弟子は師を育てる。なんと、美しい光景たろうっ!」 ギトーを中心に盛り上がる男子三人を、女性陣は白けた目で見つめていた。そう、女生徒ばかりでは無い。 今や、最強の系統を身に着けた魔法学院教師は、平民にも本性が知れ渡る程の有名人だった。 「……貴族って――――」 シエスタが溜息混じりに漏らすと、女生徒達は血相を変える。 「一緒にしないでっ!」 ――――To be continued 前ページ次ページ虚無の王
https://w.atwiki.jp/freetibetnagoya/pages/29.html
Q 一人で参加するんだけどいいですか? A 一人でも大歓迎です。一人で参加表明されている方多々いらっしゃいますのでお気軽にご参加下さい。 Q 恥ずかしがり屋なので、マスク・サングラス・帽子を被って参加してもいいですか? A 東京のデモでもそういった方いらっしゃいました 平服・歩きやすい靴でお気軽にご参加ください。 Q シュプレヒコールや掛け声ってどうなってるの? 以下の内容で決定しました。 ・チベットに.自由を ・言論の自由を ・教育の自由を ・宗教の.自由を ・チベットに平和を ・FREE TIBET ・SAVE TIBET ・STOP KILLING ・中国政府は弾圧を止めろ ・ダライラマと対話を ・パンチェンラマを返せ ・真実を隠すな ・チベット人を見殺しにするな ※下記は2chスレより運営スタッフの方が回答したレスを転載。 (Qは分かりやすいようにちょっと改変 A(運営側の方のレスは原文そのまま) Q かなり大きな旗持って参加するんだけど? A 「大きな旗竿が走行中の車両や看板類とぶつかる恐れがある」 警察が最も心配されているのはこれです。 ここはそれほど深刻にお考えにならずとも大丈夫です。 大きな旗をお持ちの方は4列ある隊列の端ではなく、中側の2列に入っていただければ 警察の方も安心していただけることでしょう。 竿なしで横断幕のようにしたり肩に掛ければなお安心です。 ただし「4畳分の巨大旗」とか「歩道橋に当たるほど長い竿」など 一見して極端な大きさ・長さのものはお断りせざるを得ないと言うことです。 ただ、二人で持つゲート型のものは危険です。 警察からは風にあおられ易いため、倒れてしまうケースが多いため 最も危険性が高いと言われています。 高く掲げずに横断幕のように持つなど、柔軟に対応しましょう。 Q 車乗りながらデモしてもいい?それと街宣車いた方がよくない? A 今回のデモは車両なしで申請されているはずなので、車等の乗り入れはだめである。車両で張り付く場合、申請が必要。よって、街宣車は無理。 Q 何かあった時スタッフがどう対処するか参加者をどう守るかも考えておいたほうがいいんじゃないでしょうか?。 A 日射病で参加者が倒れたりなど、行列の中でトラブルが発生した場合のコトは一応想定してはいます。 行列の脇に数十メーターおきにスタッフ(今までの話し合いの中に参加した有志です。あくまでも組織ではありません……)を配置し、列の乱れの防止・トラブル発生時に付き添い・警察や救急への連絡などを出来るようにと考えています。 有志の中でのその役割も決定しています。 Q メディア&マスコミ対応ってどうなっているの? A 朝日に限らず、中日も、産経も、毎日も、読売も、 可能な限り全ての新聞社に取材を依頼するつもりです。 みなさんも、思いつく限り全てのメディアに情報を流してください。 特にリアルで報道関係者に縁がある人は、 軽いお願いでもいいので話を振ってみてください。 リリース一枚を送るより、効果が高いはずです。 どんな形であれ、 「チベット弾圧に抗議の声が挙がった」とニュースになることは 大きな力を持つはずです。 ご協力お願いします! (※補足 報道機関への告知担当は決定しているそうです) 追記の追記 プレスリリース送付済み 中京テレビ・テレビ愛知・NHK名古屋支局・東海テレビ 中部日本放送・名古屋テレビ放送 産経新聞・中日新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・岐阜新聞 AP通信(共同)、AFP通信(フランス通信)、ロイター Q 代表者はいないんですか? A スタッフの中で警察等への申請のための代表者はきちんと決まっております。代表者の件では御心配をおかけしましたが、今のところその件に関しては上手く行っておりますので、御安心下さい。 Q 花火・爆竹とかOKなんですか? A また、前スレの最後で爆竹?花火?のようなものを持ち込み派手にいこうとの意見が散見されましたが、今回のデモはそのようなハチャメチャ爆発系(?)の主旨では御坐いません。 警察や公安の方々もおられますし、参加者の皆様にも迷惑がかかります。危険物の持ち込みは固く禁止したく存じます。 Q ウイグル問題とかもあるけどウイグルの国旗は駄目? A ウイグルは今回なしです。 「中国政府のチベット弾圧に抗議するデモ実行委員会」主催なので (^^; トルファンに友人がいるので、とてもやりたいのですが ウイグルがいいなら●●は?△△は?となってきた時 収集をつけるだけの組織力がありません。 なので、今回はチベットに統一して、一度実績をつくることに 専念させてください。 Q 途中で抜けたり、再参加は可能か? 「参加者は最初から最後まで隊列にいて欲しい」というのが警察の見解です。ただし、歩道をぞろぞろついて歩かれてはデモに無関係な方に迷惑がかかります。それに危険なこともあるかも知れません。 その場合は直近のスタッフや警察の「現場判断」に委ねられます。 参加見込み人数に対してスタッフ数が少なかったことから 当初は途中での抜け出し・再参加は完全NGでしたが この土日でスタッフに50名近い方が登録して頂けましたので、 ある程度柔軟な対応が可能になりました。 Q 途中でトイレ行きたくなったらどうすればいいの? 「集合時間前までにトイレを済ませておくことが基本」です。 上記、列を抜けて再度隊列に戻れるのか?に関連します。 とはいえ出そうなのを我慢しなさいとは言えませんw お子さんや小用が近い方もいらっしゃいますので心配でしょう。 どうしても、という時はさっと抜けていただいて構いません。 そのときお一人になることに抵抗が無い方はお一人でお願いします。 一人では心配だと言う方はスタッフに申し出て下さい。 抜ける時は左側から抜けて下さい。右側はクルマの往来がある車道です。大変危険です。 Q 車椅子/電動車椅子とかはいいの?自転車は? 車椅子は可能です。歩行者として扱われるためです。 ですが自転車は押して歩いていたとしても禁止とします。 車道一車線に4列はギリギリであり、ここに自転車が混ざると危険性が高くなります。ローラーブレードなども禁止です。 ご本人にいかに自信があっても、主催者としては危険だと判断せざるを得ません。 Q プラカードとかのデザインはどうなの? A <プラカード類のデザイン> テンプレの注意事項の通りです。 これらは「ダライ・ラマのスタンスを踏襲しよう」と考えて決めたことです。 ですので「聖火リレー」に関することも、できればお控え頂きたいです。 真っ先に「上からステッカーを貼る」などの強い処置対象となり得るのは中国人を貶める物、中国国旗の持込、または中国国旗を貶めるもの。 また2ちゃんキャラやアニメキャラなど「チベット問題とは本質的に無関係」なものです。 これらに対しては強い姿勢で臨みます。
https://w.atwiki.jp/bc5656/pages/744.html
ウルウさんが入室しました ウルウ- (黒塗りの和風お屋敷 ウルウ- (ポウフェナ地方、高級別荘地からは少し離れた寂しげな場所にある建物 ウルウ- (池の魚は全て死に絶え、庭の草木は自由に生い茂り、入り口には首の折れた亀の石像 ウルウ- さあ。着きましたよ黒様。(車椅子を押してやってくる ウルウ- (車椅子に座る少女は ゴスロリ衣装に深い帽子を被り、黒のパラソルを差すお嬢様。 ウルウ- (車椅子を押す青年は 蒼と濃い紫を基調とした着飾らない服を着た静かな雰囲気の召使い。 ウルウ- (動物も草木も置物も、全て死んでるこのお屋敷に、酷くミスマッチな洋風な二人 ウルウ- ・・・・・・・(一本だけ、綺麗に舗装されたタイルの道を車椅子を押して進む ウルウ- さあ。黒様、もうすぐ日も落ちます。 ウルウ- ご就寝のお時間ですよ・・・・・・・(車椅子を押したまま離れの一室へと入って行く ウルウさんが退室しました ウルウさんが入室しました ウルウ- (数十分後、独りで中から出てくる召使いの姿 ウルウ- (独り箒を持って、タイルの上だけ掃除を始める 璃雨さんが入室しました 璃雨- (昔は栄華の中にあったであろう、黒塗りのお屋敷へと続く広大な庭 璃雨- ……。(その玄関前に立つ一人の女性 ウルウ- ・・・・・・・、(掃除の手を止める ウルウ- どうやら、客人のようですね。(玄関前に立つ女性を見て 璃雨- ……(足下には一本だけ綺麗に掃除されたタイルが伸び、屋敷へと続いている。 ウルウ- (箒を置いて、ゆっくりと玄関へと歩む 璃雨- …人の手が掛かった形跡がある。という事は…(小さく呟き 璃雨- …やっぱり、只の噂でしょうね。 璃雨- (ふと顔を上げると、奥から歩いてくる人の姿 璃雨- 今晩は。夜分にごめんなさい。(人影に穏やかな笑顔で挨拶 ウルウ- いえいえ、構いませんよ。(玄関の柵を横に開き ウルウ- こんばんわ璃雨様。 ようこそ玄源武家へ。(璃雨へ挨拶をする 璃雨- あら…。やっぱり漆さんだったのね。(穏やかに微笑み ウルウ- ええ、ココは黒様のお屋敷ですから。 ウルウ- 黒様に仕える召使いとして、ココに住まわせて頂いております。 璃雨- …そう、ここは玄源武家の本邸だものね。 ウルウ- 左様で御座います。璃雨様。 璃雨- でもあなた達は別の地で暮らしているものだと思っていたから…少し驚いてしまったわ。(うふふ、と ウルウ- いえ、ここが黒様のお屋敷ですから。 ウルウ- ずっと、ココで暮らしますよ。 黒様さえ許してくれるのであれば。(振り向いて離れを見る 璃雨- …そうね。誇れる相手に従者として身を捧げられる…とても素敵なことだと思うわ。(微笑み ウルウ- お褒めに頂き光栄です。璃雨様。(璃雨へ振り向き軽く一礼 璃雨- ……(そんな漆を見て 璃雨- …一応、用件があってここへ来たの。聞いてくださる? ウルウ- えぇ、どうぞなんなりと。 璃雨- 近隣の住民から相談を受けたの。この屋敷の付近で霊障が発生すると。 ウルウ- ・・・・・・・ 璃雨- …うちは魂魄の存在を信じているから。…でも、あなた達が居るという事は、きっと見間違いか思い込みね。 璃雨- だからここに人が住んでいる事を確認しに来たのよ。書類上手放されてはいないみたいだから。 ウルウ- それはそれはご面倒をおかけ致しました。(丁寧に頭を下げる ウルウ- ココには私めと・・・・・・・黒様が住んでおりますから。 璃雨- ええ。それが確認できたなら充分。こちらこそお邪魔してごめんなさいね。 ウルウ- いえいえ、わざわざご足労頂き申し訳ないです。 璃雨- ………。 璃雨- ……漆さんって、霊感の類はあるのかしら。 ウルウ- さあ…どうでしょう… ウルウ- 知識に偏りがあるものですから… 璃雨- そうなの…。 ウルウ- 無いとは…言えませんね。 璃雨- …いえね。 恥ずかしながら、私には霊感の類がまったく無いの。 璃雨- 道士の名を持っていても。……だから此処で実際に霊障が起こっているのかどうか、感じる事はできないのよ。……(漆を見て 璃雨- ……漆さんは、どうかしら。 ウルウ- そうですか… それでは、調査は難航を極めますね………(ふと暗くなった空を見上げ ウルウ- わたくしは…見ようと思ったものしか見えませんから… 璃雨- ………。(同じく空を見上げ ウルウ- 璃雨様………人はいつ、死ぬと思いますか? 璃雨- ……人によって信じるものは違う、としか言えないわ。私には。 璃雨- ……少なくとも、他人が見届けられるのは肉体の死まで。その先の事は…証明できないわ。 ウルウ- そう…そうですね… 璃雨- …けれど、証明できないという事は、その先は強制されるものではない。 璃雨- だから宗教なんかでは、死後についての教えを多く扱う。……私はそういう風に考えているわ。 ウルウ- ああ・・・・・・・ ウルウ- 私めの考えは…少し、医学的には可笑しなものなので… ウルウ- 急に話しても驚かれるかと思いましたが… ウルウ- ・・・・・・・ ウルウ- 璃雨様なら大丈夫かもしれませんね…(薄く笑って 璃雨- うふふ、教えてくださる? 訊こうと思っていた所なの。 ウルウ- 私めは…人は…人が死んだ認めたとき、生を諦めたときに死ぬと考えております… ウルウ- あぁ、死んだのを認めるのも、生を諦めるのも…これから死に行くその人ではありません… ウルウ- 周りです。 他人に死んだと思われて、ようやくその人は死ぬ。 ウルウ- 心臓が止まっても、脳が死んでも、体が粉々になっても…医師が諦めなければまだソノヒトは死んでないでしょう…? 璃雨- ………。(漆をじっと見て 璃雨- ……驚いたわ。……私が昔居た土地の人と、全く同じ考え方をしているのね。 ウルウ- それはそれは…そうでしたか…。 それなら話が早いかもしれません。 ウルウ- ココから先も一緒かどうかわかりませんが・・・・・・・ 璃雨- うふふ。続きを聞かせていただける? ウルウ- 私めと璃雨様に共通の友人―そうですね、仮に燦山様としましょう。 ウルウ- 燦山様が何者かに心臓を握りつぶされて絶命してしまった…その時に… ウルウ- 私めが燦山様の死を認めてしまえば…燦山様は私めにとって"死んでいる"事になります… ウルウ- 私めが幽霊を信じており、霊感が強ければ…"死んでしまった"燦山様の幽霊を見ることもあるでしょう… ウルウ- しかしながら…燦山様の死を認めていない者にとっては… ウルウ- 彼はまだ"死んでいない"のですから…幽霊を信じていて霊感が強くとも… ウルウ- 見ることは出来ないと考えております… 璃雨- …………。 ウルウ- つまり・・・・・・・(玄源武家の敷地を見渡す ウルウ- 私めには今、ココに誰の幽霊も見えませんが……… ウルウ- 玄源武家の一族が何者かに皆殺しにされ既に"死んでしまって""幽霊になってしまっている"と信じる者なら、 ウルウ- そういった方の幽霊が、見えるかもしれませんね・・・・・・・(薄っすらと微笑み 璃雨- …零障は、現象を察知する人間が「死」を認識する事でもたらされる。 璃雨- ……そういう解釈でいいかしら? ウルウ- そう、ですね・・・・・・・(璃雨を見て少考し ウルウ- 一般的にはそうです・・・・・・・正確には「死後」を認識する事で幽霊や死霊やはたまた転生となる。 ウルウ- これは例外的な…例外中の例外の話なので聞き流してくださって結構なのですが… ウルウ- 「ネクロマンシー」と呼ばれる術師の中には、 ウルウ- 「生存」でも、「死後」でもなく、 ウルウ- ―『死を固定する禁術』―を扱えるものもいるそうですよ・・・・・・・ 璃雨- ………『死』を、固定する……。 ウルウ- そういった方であれば…「死」を認識しているにも関わらず、 ウルウ- 蘇りも、幽霊になったりも、生まれ変わったりも、死後の世界に飛ばされたりも、する事無く、 ウルウ- "死んだまま"この世にあり続ける存在も…作れるのかもしれませんね… ウルウ- ・・・・・・・ 璃雨- …………。 ウルウ- あぁ、少し、特殊な事例を話しすぎましたね。 申し訳御座いません。(一礼して 璃雨- いいえ。……とても興味深いお話だったわ。(微笑み ウルウ- そう言って頂ければ幸いです。 ウルウ- 幽霊を見られた方がいるんでしたら、確かにこの屋敷にはその人にとっての幽霊が居るのでしょう。 璃雨- ……ええ、そうなのかもしれないわ。 璃雨- ………。 そう、ね。 璃雨- ……例外中の例外の方についての話を…少ししてみてもいいかしら。 ウルウ- えぇ、どうぞ…。 璃雨- …… 璃雨- ……その人は、辛くは無いかしら。 ウルウ- ・・・・・・・それは、どちらが?(少しの沈黙の後、尋ねる 璃雨- 「ネクロマンシー」の方よ。(即答し ウルウ- ・・・・・・・ 璃雨- 「死」は恐怖とは違うと、私は前に言ったけれど…… 璃雨- それでも、人をひどく疲れさせるわ。……見つめる人間を消耗させていく。 ウルウ- ・・・・・・・ 璃雨- その消耗は、通常時の経過によって癒えてゆくもの。…身近な人の死を受け入れる事。思い出にする事。それには「時間」が必要なの。 璃雨- 私の居た所は、死体を凍結させて永久保存するのだけれど……それでも同じ事よ。 璃雨- だけれど、「死を固定」してしまったら、どうかしら。 璃雨- 「死」が目の前に絶え間なく存在し続ける……その人は一体、どんな気持ちでそれを見つめるのかしら。 ウルウ- ・・・・・・・ ウルウ- きっと、 ウルウ- 辛い、のでしょうね。 その人は。 ウルウ- でも、おそらく・・・・・・・ 璃雨- ………。 ウルウ- 他の生き方は知りませんから・・・・・・・ ウルウ- 知らないですから・・・・・・・ ウルウ- すがるしか無いんです・・・・・・・ 璃雨- ……そうね、きっとその人には、 璃雨- ……その死を受け入れられないほど……大切な人がいたんでしょうね。 璃雨- ………私には、死を受け入れられないほど大事な人間なんていないから。(ポツリと、 ウルウ- ・・・・・・・ 璃雨- ……きっと、その人の気持ちを解れる事はないでしょうね。(少し俯き、遠くの地面を見つめて ウルウ- ・・・・・・・ ウルウ- はい・・・・・・・ ウルウ- 変わらなければならないのはどっちか・・・・・・・明白ですから・・・・・・・ 璃雨- …………、(顔を上げて漆を見て 璃雨- …………どうかしら。……変わる必要なんて無いと思うわ。(再び視線を地に移し ウルウ- どうで・・・・・・・しょうかね・・・・・・・ 璃雨- …………少なくとも、私には彼等が少しだけ、羨ましい……(ぼんやりと遠くを見上げる ウルウ- ・・・・・・・そうですか。 ウルウ- 不思議な方です…璃雨様は……… 璃雨- ………無い物ねだりなだけよ。 璃雨- ……形振り構わず人を想える、強い感情と、純粋な心。……そういうものに憧れてしまうだけ。 璃雨- 私には無い物ばかりだから……… ウルウ- そう、おっしゃられたのは………璃雨様が初めてでございます………… 璃雨- ………。 璃雨- ……うふふ、なんだか、貴方にはおかしな話ばかりしてしまうわね。(微笑み ウルウ- いえいえ。こちらこそ………ですが…興味深い話ばかりで御座います………… ウルウ- 璃雨様………………… 璃雨- …………何かしら? 漆さん。 ウルウ- これからも、宜しくお願い致します…………………(頭を下げる。何かが彼をそうさせたのか。 璃雨- …………………(彼のその言葉に、驚き、戸惑い、複雑な感情が入り混じる 璃雨- ………………、(けれど、 璃雨- …………ぜひ、またお会いしましょう。(穏やかに―――だが、いつもと何かが違う微笑みを見せる ウルウ- えぇ………………… ウルウ- またお会い致しましょう。 ウルウ- (スッと後ろへ下がる ウルウ- 私めは離れの方へ行かねばなりません・・・・・・・ ウルウ- どうか………夜道にお気をつけてお帰りくださいませ。 璃雨- ……そうね。 …お時間を取らせてごめんなさいね。(困ったように微笑み ウルウ- いえいえ、こちらこそ申し訳ない。(薄っすらと微笑み 璃雨- それじゃあ、そろそろ失礼するわね。(微笑みながら、少し漆から離れ ウルウ- えぇ………お気をつけて………… ウルウ- (深々と一礼し、こちらも離れへと歩む 璃雨- 漆さんもお仕事お疲れ様。(笑顔で手を振り、踵を返して帰路に 璃雨- ……… 璃雨- (互いに背を向け、随分離れた所で 璃雨- ………最後の言葉は、余計だったかもしれないわね。(ポツリと 璃雨- ………(だけど、ああ言われた瞬間、本当に、単純に 璃雨- (――――嬉しかった。 璃雨さんが退室しました ウルウさんが退室しました
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3575.html
「ドラなの」第1章「魔法の世界へ・・・・・・」 前編 日本のとある町にある公立小学校。 既に日は傾いており、学童達は学校という強制収容所からの生還に歓喜しながらそれぞれの家路に着く。 彼らの頭はすでに「学校に行った」という過去ではなく「これからどうやって遊ぶか?」という未来に向けられている。 未来の存在を無邪気に、そして楽しいものであると信じられるのは若者の特権であり、それこそ若者のもつパワーの源なのだ。 まぁそれはさて置き、こんなご時世に一人だけ教室という牢獄からの脱出に失敗した者がいた。 4階5年3組 彼はライトグリーンの服に紺の短パン。そして野暮ったい丸いメガネを掛けた少年だった。 そして彼の目前には学校では一角の地位である“先生”と呼ばれる役職に就いた中年のおじさんが眉間にシワを寄せ、1枚の紙切れを少年にかざしながら切々と語っている。 その紙切れには社会科の問題が書かれており、解答欄の全てに『ターン“へ”』が赤ペンで振られている。 アメリカの人がそれだけを見れば「Greatjob!」と褒めてくれるだろう。しかしここは日本の学校であり、全く正反対の意味を持つ。 つまり日本でのターン“へ”(チェック)は正答ではなく誤答であり、日本での正答は言わずもがな、マルである。 そしてその紙切れにも1つだけ“マル”が存在した。しかしそれは多数ある解答欄ではなく、氏名欄の隣であった。 この事実に少年が先生の話を真摯に聞き、反省の色を示していればまだ同情の余地がある。だが彼の意識は下界で自分を呼ぶ友人2人に注がれていた。 2人の要求はただ1つ。 『試合に遅れるから早く降りてこぉーい!』 というものだ。 何でもレギュラーメンバーの1人が病欠で、ベンチを温める彼に出番が回ってきたのだ。 彼は『今は動けないから先に行ってて!』とジェスチャーで返すが、2人には伝わらないのか更に激しい調子でこちらに叫ぶ。 お互いの要求が通らないことで双方の動きが苛烈化していく中、遂に先生に雷が落ちた。 「こぉら野比!君は先生の話を聞いておるのか!?」 「は、はい!」 「まったく君は人の話は聞かないし、努力もしない。そんなので将来いい大人になれると―――――!」 その後先生のお叱りから彼、野比のび太が解放されたのは20分後のことであった。 (*) 「ああ、ひどい目にあった・・・・・・」 のび太はそう呟きながら今も肩を怒らせながら自らを待っているだろう友人達の元へ急ぎ足で向かう。 そして 「(また打(ぶ)たれるだろうか・・・・・・)」 と背筋をゾクッとさせた時、彼の視界にある光景が入った。 『少女が床に落ちた本、十数冊を拾おうとしている』 字に起こせばこれだけのことだが、彼女が同じクラスの同級生であり、その行為を“車椅子に乗った状態”から行おうとしている事が一番重要だ。 その本は絵本のように薄い物もあるが、辞書みたいに分厚い物もあるので拾うのにいちいち苦労している。 のび太はそのまま通り過ぎても良かったが、その良心が許さなかった。 「大丈夫?」 呼びかけながら転がる本を拾い集める。その拍子にそれらのタイトルが読み取れた。 『ぼくらの1週間戦争』、『空想化学読本』、『決定版!これだけ見とけ世界遺産百選』などなど・・・・・・。しかしこれらは彼女のものではなく、学校の図書室の蔵書らしい。全てに学校名のスタンプが押印されていた。 「ああ、のび太くん。おおきに」 その車椅子の同級生、八神はやては笑顔とともにのび太からそれを受け取ると、本の多数積まれた台車にそれを戻した。 どういう拍子か台車を揺らして落としてしまっていたようだ。 「はやてちゃんって図書委員だったっけ?」 「そうや。わたし本読むの好きやから、待ち時間ゆっくり本が読めるこの委員って結構乙なスポットなんよ~」 確かに小学校の図書室にしては規模が大きいこの学校だが、しょせん小学生。読書好きなどそうはおらず、聞いた噂では年中“閑古鳥”が鳴いていると聞く。 その噂を聞いた時 「(図書室になぜ鳥が鳴いてるんだろう?先生のペットかな?)」 と思ったのび太ももちろん全く利用したことがなかった。 「へぇ、そうなんだ。・・・・・・そういえば1人でこれを図書室に?」 目の前の台車を示してきく。図書室はこの学校の最上階である5階に位置し、ここは1階であった。 そして彼女は 「うん」 と頷く。 「それじゃ手伝うよ。はやてちゃん1人じゃ大変だろうし」 「ほんまか?そりゃありがたいわぁ~。しずかちゃんが塾で急いで下校せなあかん、ちゅうとった(下校しなきゃいけない、って言っていた)から困っとったんよ~」 彼女はパッと明るい顔を見せると、礼を言った。 そしてのび太には台車を押すよう頼んで並進するようにして輸送を開始した。 その間にはやてからこの本について話を聞くと、何でもこれは新たに図書室に入れられる蔵書で、2日程前に図書室担当の先生が 『2日後は出張で私(先生)がいないけど、届いたものを台車に載せておくよう業者の人に頼んだから、あなた達で図書室に運んでおいてね』 と頼まれたのだという。 しかし同じく図書委員を務め、はやてにとっても親友である源静香が急用で下校せねばならなくなり、彼女1人で行おうとしていたのだという。 「ふ~ん。そんな理由があるなら明日やってもいいと思うんだけどなぁ~」 のび太は呟きながら一階の給食室にそれを運ぼうとする。 「ああ、そっちやないで」 「え?このエレベーターを使うんじゃないの?」 給食室には給食センターから届いた巨大なワゴンを上に運ぶための大型エレベーターが存在する。クラス内で順繰りする給食係という役職に就いたことのある彼はそれをよく知っていた。 「ううん。そんな大掛かりなことをせんでも運べるやろ?」 「ま、まさか階段で・・・・・・!?」 はやては台車を見つめて絶句するのび太に微笑みを見せると、 「ま、ついて来(き)いや」 と促した。 (*) 「へぇ、こんな所にエレベーターがあったんだ」 のび太は呟くと“↑”ボタンを押し、3階を示す液晶ディスプレイからはやてに視線を移した。 この定員が数人の通常型エレベーターは先ほどの給食室からさらに奥に行った倉庫の近くにあった。 「やっぱりのび太はんも知らんかったんかいな。・・・・・・まぁ、普通の人は使っちゃいかんかんね」 ピンポーン 軽やかなチャイムと共に扉が開き、のび太は台車と共に「それ行け!」とばかりに滑り込む。しかしはやてがなかなか乗ってこない。 不審に思って振り返ると、彼女の電動車椅子は廊下で超信地旋回(その場でくるりとターンすること)。エレベーターへバックで駐車しようとしている最中だった。 「(そっか、車椅子なんだっけ・・・・・・)」 彼女の口調や笑顔からは全く見られない自分達との違い。しかし確かにハンディという壁が存在する事を彼は改めて実感した。 のび太は彼女がエレベーターの空きスペースに収まるのを確認すると“開”ボタンから“閉”ボタンへと押し替えた。 「おおきに」 「うん。でもいいなぁ~、いつもエレベーター使えるんでしょ?ほら、僕達の教室4階だから疲れてる時だと階段が山に見えてさ~それだけで嫌になっちゃうもん」 のび太としては純粋に実感を言ったまでだったが、そのような話題はあまり振るべきものではなかった。 「ふーん・・・・・・わたしは・・・・・・自分の足で歩ける方が羨ましいかな・・・・・・」 不意に過る寂しそうな声。 遅まきながらようやくのび太は気づく。 彼女らのような人にとって最も嫌なのは、そのような普通との違いを言われること。例え相手に悪意が無いにしても。 それにはやては特殊な事例であった。 しずかに聞いた話によれば、はやては昔から原因不明の下半身マヒの障害を患っており、ずっと車椅子生活だった。 しかし、ある日に奇跡が起こった。 それは彼女が魔法とか家族が増えたりとかそんなの“何にも起こっていない”小学校3年生の独りクリスマスを迎えた時だ。 朝起きると突如として彼女の足を含む下半身は運動神経に至るまで全て回復。病院でのリハビリ生活の末、数日で歩けるまでになったのだ。 しずかなどの友人は『聖夜の奇跡』や『サンタの贈り物』としてこれを喜び、はやて自身も突如として広がった世界に大きな夢を持ったはずだった。 だが半年前。何故か再発してしまったそれは、やってきたのと同じように突然彼女から世界を、夢を奪い去ったのだ。 人間最初からダメなら諦めもつく。しかし安易に夢を見させられて、それを突然奪い去られるショックは計り知れない。 彼女とて同じである。 ついこの間まで、みんなと同じように走ったり、歩いたり、座ったりできた。 その長い階段でもみんなと同じように肩で息をしながらも一緒に登れた。 そんな普通の生活を彼女は夢に見、実現され、何の前触れなく瞬時に奪われてしまった。 彼女は自分を心配する人達に笑顔でこう言ったという。 「元に戻っただけやから、心配せんでええよ」と。 八神はやては強い子である。だからその真実を受け止める。だがその心中、穏やかでないことは容易に想像がついた。 「ごめん!そんなつもりじゃ・・・・・・!」 「・・・・・・うん、ええよ。もう慣れっこやし、のび太くんがわざとそんなこと言う人やないのはわかっとるから」 はやてはそう言うと微笑んでみせる。しかしそれが無理したものであることが分かる気がして、のび太には嫌だった。 (*) 「のび太くんありがとうな。助かったで」 はやては図書室のカウンターまで台車をのび太に運ばせ、労を労(ねぎら)った。 「こんなの全然へーきだよ!他にも何か手伝えることある?」 のび太の言にはやては振り返るが、何かに気づいたような顔をして小声で言う。 「あぁ・・・・・・気持ちは嬉しいんやけど、“何か大切なこと”を忘れてへんか?」 『え?』となるのび太に、はやては彼の背後に立つ人達に会釈した。 「「のび太ぁぁぁ!」」 突然の怒声と脳天に貫く衝撃と激痛。 「いたぁーい!痛い痛い・・・・・・」 腰が砕けたのび太はその場に座り込み、カチ割れそうな頭を抑えながら振り返る。果たしてそこには怒りに目を爛々と燃やす2人組がいた。 言うまでもないが、彼の友人である剛田武(たけし)ことジャイアンと、骨川スネ夫だった。 「お前いつまで待たせるつもりだ!?」 ジャイアンがその巨躯に秘められたる莫大な肺活量を使って怒鳴る。 これにのび太は完全にすくんでしまう。 「ちょっと人助けをしてて・・・・・・」 「あんだと?お前、人助けとジャイアンズの進退とどっちが大事なんだ!?今日負けたら河川敷(練習場所)が南校の連中に取られちまうって言っただろうが!」 「そうだぞ!どうしてくれるんだ!?」 スネ夫がジャイアンの威光を被って援護射撃。 この分だとあと2、3発は拳骨を食らうことになるだろう。のび太は覚悟したが、今日は勝手が違った。 「まぁまぁ、たけしくんもスネ夫くんもそんなに責めないであげてや。わたしが急いでるのび太くんを呼び止めて、“無理にでも”ってお願いしちゃったんや。堪忍してあげて。な?願いや」 はやてが仲裁役として加勢。加えて 「(あれ?呼び止められたんだっけ?)」 と思ったのび太の視線に小さくウィンクして見せた。 こう正面から庇われてしまってはガキ大将を自称するジャイアンも振り上げた拳を納めざるを得なかった。 「はやてちゃんがそこまで言うなら仕方ない・・・・・・だがな!」 ジャイアンはのび太を煩雑に立たせると、スネ夫に問う。 「今何時だ?」 「え~と、2時47分」 「試合開始まであと15分ないな・・・・・・だからのび太!」 「う、うん」 「全速力で走るぞ!遅れたらケツバット20回だ!」 「えぇ~!」 「スベコベ言うなぁ!」 そうして2人はのび太を半ば担ぐようにして階段を駆け降りていった。 そして図書室に残された少女は、祭りが終わった後のようなもの寂しさを感じていた。 シレンヤ氏 ドラなの 第1章 後編へ
https://w.atwiki.jp/nouryoku/pages/2218.html
---------O ROMEO, ROMEO! wherefore art thou ROMEO? Ah, dear JULIET,Why art thou yet so fair?--------- Valkyrie Singing Absurdity- 不条理を謳う戦乙女 ■------ Character ------ Cecilia Lanz=No.121 ※写真はイメージです。実際のキャラクターとは異なる場合がございます。 カノッサ機関・氷の国支部所属≪No.121≫。 緩やかなパーマがかかった黒髪ポニーテール、茶色の瞳を持つ少女。 南雲利織から購入した義足を装着している。 着脱しづらいのでスラックスは基本的に身に付けない。 人生の大半は車椅子生活だったので、妙な歩き方をしている 右肩に〝卵〟が撃ち込まれており、そこから伸びた〝根〟が顔の右側に浮き出ている。 その影響か、右の白目部分はべっとりと黒く染まっている。 キレた姿はリーナ=ヴェイセシスに狂犬と称された。 ■------ Items ------ デリンジャー男性の手の平に収まってしまいかねない小さな護身用銃。弾数は二発で威力も小さい。 ナイフ軽くて小振りの普通のナイフ。 義足南雲利織から購入。戦闘を想定して作られてはいない。足への負担を減らすため、義足自体に風の術式を浸透させている。耐久度は普通で少し重いが術式でカバー。脚を動かす時には普通の人が普通に歩行する時と何ら変わらない感覚である。走行スピードに比例して風の術式が補助的に作用する。デザイン的には特に何の変哲も無いが、くるぶしの部分にデフォルメされた羽根が描かれていたり、踵部分に何故か相合傘が描かれており、カノッサ機関員ナンバーズを示す≪No.121≫の刻印がある。 車椅子義足生活の短い彼女が気分次第で使用する。滑らかに操作するその姿からは長年の経験を窺わせる。 十字架型ドッグタグカノッサ機関・氷の国支部所属を示す、銀製の十字架型ドッグタグ(認識票)。 ■------ Atman / Skill Before EGG ------ theHate 下半身と体毛が無く、人間大の大きさでのっぺりとした濁った水色の肌を持つアートマン。 〝卵〟の影響で肩、顔、頭の右半分が黒い斑点で覆われている。 鮮やかな色をした球体を核に肉が沸きだして形成される。この球体は彼女の感情の塊である。 移動はほふく前進であり… その形態から瞬時に後ろを振り向けない。 速さも力もあるが、移動に腕を使っているために攻撃の直前動きが一瞬減退、攻撃の予兆が分かりやすい。 操作性の低さから防御や回避をしなかったり、攻撃の際にも間合いの取り方がとてつもなく拙い。 同じく操作性の低さから、脚に対して稀に戦闘に支障が出るほどに拘りを見せる場合がある。 …等の欠点を持つ。 以前持っていた重力のベクトル操作能力は〝卵〟の影響か消滅。 ■------ Atman / Skill After EGG ------ theLovewink 黒き雷電を放つ力。 放電前には右肩の黒い魔力が〝根〟を通して右眼に供給される。 〝根〟の脈動と帯電音で予兆を読み取ることが可能。 戦闘で実用的に使える電撃の威力は静電気よりも若干強い程度であり、痛みで一瞬相手を怯ませる位しか出来ない。 だがアートマンの力と併用することで有用性が格段に上昇している。 ■------ Battle Style After EGG ------ 基本はアートマンが前衛、本体が後方援護というスタイル。 だがアートマンの力を最大限に生かすために彼女も積極的に攻撃を行う為、 絶え間ない襲撃を相手は受けることとなる。 その怒涛の連撃は正に戦乙女〝Valkyrie〟の名を冠するに相応しい姿だろう。 ■------ Lovely Dairy ------ ★ 恋綴った日記帳♪ 路地裏でニナちゃんと闘う。 腕も痛いけど、心が痛いよ……。 あの眩しさが、怖い……。 (2011-06-17 16 04 49) 南雲利織…もう友達なんかじゃない。許せない。それに危険。宮下さんが何考えてるのか知らないけど?処分?すべきよ でも桜さんに怒られたし、?悪意?を意識的に抑えることも必要かな…… この子(ガリ)どうしよう… (2011-06-05 11 06 33) 路地裏でスーフォンって男の子に会った。シルヴァーグ っていう吸血鬼を探してるみたい。一応心に留めておこう…… (2011-05-29 23 29 14) 夜の公園、エルフェス君に話しかける 機関員だってバレちゃった。多分一般人だから大丈夫だと思うけど… あと“データベース”に書かれてたけど、私、不安定なのかな…? (2011-05-17 09 00 09) 〝遊び〟過ぎて路地裏で寝ていたところ、パッション・プレイ≪No.111≫に遭遇。スカウトされ氷の国支部所属の機関員に。 〝卵〟をJusticeに届けようと路地裏を走っていたところで宮下 正次≪No.112≫に遭遇。卵を撃ち込まれ、そのまま戦闘。結果孵化する。 夜中に海を見に行ったところレギンに遭遇。卵を撃ち込まれかけるが回避、戦闘に入りかけるがすぐに逃げられる。 カフェで朝食を採っていたところ南雲利織と再会。近況を話し合った後、頼んでいた義足を魔術協会にて受け取る。 街中で護と再会。魔斬 香月≪No.41≫の伝言のことも忘れて戦闘(?)になるが和解───しかけたところにシズリが乱入。護とシズリの舌戦(?)となるがセシリアの攻撃による傷で彼は気絶。護の姉だと言う沙月に彼を託し、シズリの家へと帰る。 路地裏入口で頭痛に呻いていたところでニナ(チェルシー)に遭遇。少し会話をして別れる。 公園で運動していたところに魔斬 香月≪No.41≫が訪れる。〝正義〟に「水の国のことで協力を頼みたい」と伝言を頼まれたが彼女は忘れている。再会すれば思い出すだろう。 街中の坂で車椅子が暴走したところグルゴン=イクシールに助けられる。その後喫茶店で同僚に恋をしていると言う彼を冷やかしたり護のことを思い出しかけて卒倒しかけたり……連絡先を交換する。 路地裏を使おうかどうか迷っていたところフォルスに再会。シズリの毒牙にかかっていることを知られて〝乗っかられた〟。 街中でコケたところシズリに遭遇。護の心の行方を示唆され心を折られる。同棲することに(ただし現在この時のことは自分が悪く考えすぎただけで彼女に悪気は無かったと思っている)。 ナンパされていたところ西谷リナとフォルスに遭遇。ふぁみれすで楽しく会話。 Dove-feather'd raven ! wolvish-ravening lamb ! Beautiful tyrant ! fiend angelical ! William Shakespeare Romeo and Juliet ■------ Commercial Message ------
https://w.atwiki.jp/negiccofan/pages/437.html
CoCoLo NIIGATA OPENING EVENT 概要 日時 2024年4月29日(祝・月) 13 30-14 20 整理券配布 10 30- 場所 新潟駅 CoCoLo新潟 吹き抜け広場「ガタリウム」 内容 Negiccoトーク&ライブ ニュース記事 【4/25 CoCoLo新潟 GRAND OPEN】オープニングイベントのご案内 セットリスト 1. RELISH 2. それって魔法かも? 3. Walk With MC 4. サンシャイン日本海 5. ねぇバーディア SNS 本日は「CoCoLo NIIGATA OPENING EVENT」にお集まりいただきありがとうございました! - Negicco_Info【公式】 CoCoLo新潟オープニングイベントNegiccoライブ本当にありがとうございました - Nao☆@Negicco CoCoLo新潟オープニングイベントでトーク ライブをさせていただきました -Megu@Negicco 本日はCoCoLo NIIGATA OPENING EVENTでした! - Kaede(Negicco) CoCoLo NIIGATA オープニングイベント Negicco トーク ミニライブ セトリ - フジボー 取り急ぎ本日のセトリ - らいすけいく セトリは - アイビス45 ブログ 2024/4/29 CoCoLo新潟 - note - まゆ イベント2本! - 境界知勇のはざまの大人? ゴールデンウィークの八木橋百貨店で感謝祭 2024 概要 日程:2024年4月27日(土) 開場15 30/開演16 00 会場:八木橋百貨店 8階カトレアホール (埼玉県熊谷市 仲町74) チケット: 全自由席 ¥3,021(税込) ※本公演は『紙チケット』となります。 ※チケット記載の整理番号順での入場となります。 ※時間に遅れた場合は最後尾からの入場となります。ご了承ください。 ※4歳未満ひざ上無料、ただし4歳未満でも席が必要な場合は有料となります。 ※車椅子エリアを用意させていただきます。 《注意事項》 ・体温が37.5度以上の方、また体調の優れないかたは入場をご遠慮ください。 ・マスクの着用は個人の判断に委ねさせていただきます。 セットリスト MC 01. ねこの夢 / Megu MC 02. 光の射すままに / Kaede MC 03. 向日葵の歌 / Nao☆ 大抽選会 04. それって魔法かも? MC 05. 裸足のRainbow MC 06. クリームソーダ Love MC 07. カナールの窓辺 MC 08. Good Night ねぎスープ 09. Walk With (新曲初披露) MC ブログ Negicco Live@八木橋百貨店カトレアホール 2024.4.27 感想 - POP MUSIC MAN SNS 本日はNegicco感謝祭@八木橋百貨店ありがとうございました!Negicco新曲「Walk With」(作詞・作曲・編曲 辻林美穂さん(@tsvaci))披露させていただきました! - Negicco_Info【公式】 八木橋百貨店感謝祭Negiccoライブ、ありがとうございました - Nao☆@Negicco 八木橋感謝祭2024来てくれたみんなありがとうでした - Megu@Negicco Negicco感謝祭@八木橋百貨店、ありがとうございました!!皆様お元気そうで - Kaede(Negicco) Negicco感謝祭@八木橋百貨店、ご来場ありがとうございました! - connie/Runo/セカンドライフP Negicco感謝祭今年も販売します! - 八木橋百貨店 八木橋百貨店Negicco現場離脱 - らいすけいく Nao☆ 36th Anniversary Live 〜hop!step!hop!〜【新潟公演】 概要 日時:2024年4月14日(日)開場16 15/開演17 00 会場:NIIGATA LOTS 出演:Nao☆ バックバンド: sugarbeans(Key)、設楽博臣(G) 千ヶ崎学(B)、岡本啓佑(Dr / 黒猫チェルシー) チケット: (1)一般指定席:6,000円(入場時別途ドリンク代500円必要) (2)学割席(一般指定席):4,000円(入場時別途ドリンク代500円必要) ※4歳未満ひざ上無料、ただし4歳未満でも席が必要な場合は有料となります。 (3)後方スタンディング:5,000円(入場時別途ドリンク代500円必要) (4)学割(後方スタンディング):3,000円(入場時別途ドリンク代500円必要) ※スタンディングの方は整理番号順の入場となります。 ※(スタンディングの方)12歳以上のお客様はチケットが必要となります。 (12歳未満のお客様は、保護者1名同伴につき2名入場可) ・学割は、高校生以下が対象となります。ご入場の際、公的身分証明書をご用意ください。 (例:健康保険証、住民票、戸籍謄本、学生証など) ・車椅子エリアをご用意させていただきます。 ・本公演は「紙チケット」となります。 ニュース記事 NegiccoリーダーNao☆、東京&新潟で誕生祭ライブ開催 - ナタリー SNS Nao☆ 36th anniversary Live来てくださった皆様、本当にありがとうございました - Nao☆@Negicco Nao☆ 36th Anniversary Live 〜hop!step!hop!〜【東京公演】 概要 日時:2024年4月7日(日)開場16 15/開演17 00 会場:SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 出演:Nao☆ バックバンド: sugarbeans(Key)、設楽博臣(G) 千ヶ崎学(B)、岡本啓佑(Dr / 黒猫チェルシー) チケット: (1)一般指定席:6,000円(入場時別途ドリンク代600円必要) (2)学割席(一般指定席):4,000円(入場時別途ドリンク代600円必要) ※4歳未満ひざ上無料、ただし4歳未満でも席が必要な場合は有料となります。 ・学割は、高校生以下が対象となります。ご入場の際、公的身分証明書をご用意ください。 (例:健康保険証、住民票、戸籍謄本、学生証など) ・車椅子エリアをご用意させていただきます。 ・本公演は「紙チケット」となります。 セットリスト 01. 射抜け!Midnight 02. 何回もドアを叩くんだ! 03. rainy~next season~ 04. 向日葵の歌 05. 約束 06. ゆるく ゆれる 07. ホログラム 08. さよならMusic 09. ベスト☆フレンド 10. 悠久の星 Enc. 11. 恋をしたらキッチンテーブル 12. 菜の花 ニュース記事 NegiccoリーダーNao☆、東京&新潟で誕生祭ライブ開催 - ナタリー Negicco Nao☆が歌とユーモアでファンを笑顔に!大盛況の36歳バースデーライブ東京公演 - ナタリー SNS 今日はNao☆生誕祭のバンドリハをしてきました - Nao☆@Negicco 昨日はNao☆バースデイライブ東京編にお越しくださりありがとうございました - Nao☆@Negicco Nao☆36th Anniversary LIVE SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セトリ - らいすけいく
https://w.atwiki.jp/vcrgta5second/pages/194.html
概要 ロスサントスで救急救命医療サービスを提供する職業。 病院を中心にロスサントス全域における要救助者の救助任務にあたる。 隊員 隊員名簿 氏名 ランク 備考 氏名 ランク 備考 夕刻ロベル 4 藍沢エマ 4 甘城なつき 4 しゃるる 4 兼業:店舗経営 わきを 4 兼業:ディーラー 犯罪サポート ユッカ 4 兼業:不動産 チュートリアル担当 緋月ゆい 1 ハセシン 1 夜空メル 1 犬山たまき 1 兼業:ホットドッグ屋 喫茶店 胡桃のあ 0 獅白ぼたん 0 昏昏アリア 0 兼業:ピザ屋 Kotoka Torahime 0 兼業:喫茶店 ラトナ・プティ 0 兼業:ごみ収集 水無世燐央 0 兼業:喫茶店 LEON代表 0 兼業:木こり まいたけ 0 兼業:ピザ屋 緋崎ガンマ 0 兼業:喫茶店 夏色まつり 0 にゃんにゃんふぁみりあ(ボス)→救急隊 花芽すみれ 6→0 院長(チュートリアル担当)→警察/名誉院長(ヘルプ要員) 花芽なずな 0 ヘルプ要員 橘ひなの 0 ヘルプ要員 如月れん 0 ヘルプ要員 叶 0 ヘルプ要員(個人医のため救急隊ジョブはついてない可能性あり) ※ランクについては12/22付けのものを参考(夕刻ロベル視点) 退職者 氏名 備考 カワセ チュートリアル担当→KAKUMEI 高木 救急隊→CRAZYRASCAL 赤髪のとも 救急隊→個人医(ネオポリス) 常闇トワ 救急隊→警察 猫汰つな 救急隊→ネオポリス 羽継烏有 KAKUMEI→救急隊→KAKUMEI 主な業務 行動不能者の蘇生 要救助通知の発生した地点へ急行し対象を救助、病院へ搬送し蘇生させる。 場合によって現場で蘇生させることがある。 軽度の傷病の治療 出血、挫傷などのステータス異常を治療する。 備品 使用車両 救急車 ストレッチャーを使って後ろに患者を直接乗せることができる。台数制限なし。 Coil EMS Raiden(EMS雷電) Dodge Chargerの代わりに導入。特別仕様のリバリーが施された電気自動車で、静音性・加速性能・ハンドリング性能・ブレーキ性能が非常に高い上に頑丈。表のガレージから出すことができる。 Police Maverick(救急ヘリ) 警察と同じ種類の高性能ヘリ。病院の表から出動する。 支給品 メディカルバッグから取り出せる道具 メディカルバッグを使用することで、中から治療道具や松葉杖などを取り出すことができる。 これらの道具は医療関係者しか使うことはできない。 ピンセット 弾丸の除去に使用(銃創) 縫合キット 傷を縫うのに使う(切創) アイスパック 腫れを抑えるために使用(挫傷) 軟膏 火傷の治療に使用(熱傷) 止血キット 止血に使用(出血) 除細動器 要蘇生患者のための機器 回復キット 患者の治療に使用 鎮静剤 患者の鎮静化に使用 ストレッチャー 患者の移動に使用 松葉杖 松葉杖は患者の歩行を補助する 車椅子 車椅子は歩けない患者を補助する Mobile Database Terminal(タブレット、携帯情報端末) 救急救命隊員全員が常時携行するタブレット形状の情報端末。 自身の勤務状況切替・コールサイン変更・接続無線周波数変更・マップピン指定、勤務中の救急救命隊員・警察官・弁護士の名前、コールサイン、接続無線周波数の一覧表示、要救助者通知とメンバーアサイン・マップピン指定、救急救命隊の情報整理・共有(データベース、未実装要素の情報も含まれているとみられる)が可能。 救急隊の能力 各種アイテムをコスト無しで使用できる。 行動不能者の通知が届く。 警察含む勤務中公務員の居場所がナビに表示される。 救急隊専用データベースが使えるタブレットが使用できる。 勤務中はストレスを感じない(ストレスゲージが上昇しない)。 懸垂下降用クレーンが使用できる。 要救助者搬送用担架が使用できる。 患者への車椅子、松葉杖の使用ができる。 歴史 日付 出来事 備考 日付 出来事 備考 12/10 救急隊発足 初期メンバー 藍沢エマ、緋月ゆい、しゃるる、ハセシン、高木甘城なつき、獅白ぼたん、犬山たまき、胡桃のあ、常闇トワ、赤髪のともチュートリアル担当 花芽すみれ(院長)、ユッカ、カワセ 新人研修 今回初めて救急隊を務めるメンバーが多かったため、チュートリアル担当陣による基本事項の講習が行われた。これに関連してダッシュボードから参照できる救急隊用ドキュメントが作成される。 12/11 夕刻ロベル、夜空メル、わきを、猫汰つな、ralph入隊 カワセ脱隊 ギャングへの道を歩むため ヘリ訓練コース創設 ヘリ初心者向けの訓練用コースが作成される 高木脱隊 個人医に転職 12/12 花芽すみれ脱隊 サポート期間終了に伴い警察に転職、院長の後任は置かれず名誉院長となる 12/13 ラトナ・プティ入隊 ralph脱隊 12/14 Kotoka Torahime入隊 胡桃のあ泥酔事件 人見知りを克服すべくお酒の力を借りた胡桃のあの酔いっぷりが生んだ事件。結果的に救急隊の仲は深まり、笑って話せる思い出の一つとなった。 12/15 昏昏アリア入隊 忘年会 集まれる隊員で集まって飲酒ありの忘年会を実施。 12/16 ハセシン置きグレ事件 病院前でグレネードを投げようとしたハセシンだったが、走って投げようとしたところ駆け出す直前誤ってその場にグレネードを置いてしまう。直後、様子を見ていた夕刻ロベル、藍沢エマ、わきをが起爆したグレネードでダウンした。なお、肝心のハセシンは走った結果グレネードの範囲外にいたので無事だったという。 12/17 赤髪のとも脱隊 個人医になるため 水無世燐央、LEON代表、まいたけ入隊 常闇トワ、猫汰つな、Kotoka Torahime脱隊 叶、橘ひなのがヘルプ要員となる 救急隊の辞職者が増えたため 12/18 Kotoka Torahime復隊 12/19 夕刻ロベル、藍沢エマがお試し銀行強盗を実施 対応したのは北署メンバーだったが、大目に見てもらえた 緋崎ガンマ入隊 12/20 花芽なずながヘルプ要員となる 救急隊人手不足のためまた、警察との連携強化を模索 羽継烏有入隊 12/21 ボブによる藍沢エマ襲撃事件 カジノで夕刻ロベル・藍沢エマ・甘城なつき(なちょ)が遊んでいたところ、なぜかカジノに入り込んでいたボブ(NPC)が突如エマを襲撃。逃走するエマを執拗に追うボブだったが、なちょによって射殺され事件は収束した。 夏色まつり入隊 12/22 羽継烏有脱隊 KAKUMEI復帰のため 救急隊によるユニオンヘイスト敢行 入念な準備を行ったが警察には敵わず、短時間で鎮圧される 如月れんがヘルプ要員となる 救急隊ユニオンヘイストで救急隊不足になったため 花芽すみれがヘルプ要員として復帰 救急隊ユニオンヘイストで救急隊不足になったため 救急隊によるボブキャットヘイスト敢行 ユニオンヘイスト失敗に対するリベンジ 閉会式に参加 病院前で記念撮影 脱隊したメンバーも含め、集まれるメンバーで思い出を写真に収めた 最後の一時 飛行機を飛ばしたり車相撲を楽しんだりした後、病院ロビーで集まり、皆で「わっせい!」を繰り返しながら最後の時間を過ごした。 🔝ページTOPへ
https://w.atwiki.jp/alliance2000/pages/362.html
外に出て空気を吸う。夜の味がした。 それからフレンラの方を見た。お互いに満面の笑みだった。 「ついに、グラードのくだらない理念をつぶすことができました」 「は、はい!やりましたね!」 「それでフレンラ、さいごにお願いがあります」 ポケットから機械を取り出した。 「グラードの人間として、宣言してほしいのです。二度と力など望まないと、グリークに未練などもはやないと」 彼女は本当に賢い。意味が分からなくても生きるための選択を誤らない。 「わ、わかりました」 それを聞いて、録音機器の電源を入れる。 「もう、グラード家は、もう、グリークを奪還しようなんていう意思も、そのために力を求めたりすることも、もうありません」 録音を終える。私にとってはこれだけでいい。これを聞ければもういい。 やりました、旦那様。旦那様を殺したグラードの家はグラードの家が否定しました。旦那様。 そう小さな声でつぶやき、お腹をさすると、またドキドキする。 フレンラが安心した顔をしている。 その背中には四つ足のアームヘッド。だが、ガリア王国軍のヨツアシではない。 漆黒の体。四つの足。股にも肉食動物の様な顔があり、上半身には羽が生えている。 「フレンラ」彼女を呼ぶ。腰に抱き着いてくる少女。最初は私に怯えてばかりだったけれど、いつのまにかこうもなつかれていた。 だから簡単に捕まえて、殺すことができた。 夜の手で掴み、圧迫し、潰し、その残骸をすべて鍋に収めた。 どぼどぼどぼ、と。 「貴方のことも好きですよ、フレンラ。生き意地が汚くて。でも、あなたはかつてのグラードの人間ですから、生きていてはいけないんです。 まして、そんなに力を持ってしまっていて、いいはずなどないのです。また、力の象徴として祭り上げられてしまいます」 屋敷に戻り、鍋に水をたくさん入れる。火をかける。ぐじゅぐじゅと音を立てて煮立っていくのをゆっくりと眺める。 「ごめんなさい旦那様、途中でやめるわけにはいかなかったのです。ごめんなさい」 ぐじゅぐじゅ。 「え、そんな、でも、やっぱり、私アッサム様のお気持ちに沿いきれなかったから、それはやっぱり、ごめんなさいです」 ぐじゅぐじゅ。 「アッサム様、そんな、勿体ないお言葉です。いえ、そんな、もちろんわたしも愛しております」 ぐじゅぐじゅ。 「えぇ、いい子ですよ、とってもかわいくて。でも、ダメですよ、私が一番です。あなたの一番は私です」 ぐじゅぐじゅ。 「もう、そんなに楽しみな風にして、意地悪な人です」 ちょっとだけ味見。 「うーん、前の方がおいしかったなあ。貴方様に振舞うなら前の方でしょうか。」 ぐじゅぐじゅ。 「あれ、でも前の方は貴方には振舞えないのでした。なんででしたっけ」 ぐじゅぐじゅ。 「アッサム様、何故だかご存知ですか?そうですか、残念。旦那様のためにいつか私もなにかお食事を振舞えればいいなと思っていたのですが」 ぐじゅぐじゅ。ぐじゅぐじゅ。 ずっとずっと旦那様とお話をして、数日もそれが出来上がるのを待って。 あれ、なにを待ったんでしたっけ。フレンラ、わかりますか?もう!忘れっぽいなんて馬鹿にして。って、旦那様まで!ひどい! もう知りません!――なんて、すねたほうが可愛いかなと思いまして。 えへへ、本当にすねたりはしませんよ。私はそんなことする暇はありませんからね。 旦那様に愛された以上、グラードも頂かねばならないのです。私、旦那様の望むグラードになります。 ヨワ・グラードです。あれ、でもアフォガードは旦那様から頂いたもので。 うーん、あっ、アフォガードでグラードも食べちゃえばいいんですね。 待っててください、旦那様。私、頑張りますから。 そうして、窓の外の私の愛機だったものを見る。ヒドゥン・マインドボウは壊れていた。 その残骸の一部しか残っていなかった。 それに気が付かなかったが、グラードのすべてを一度壊したあの日から、もう何日も、何週間もたっているようだった。 しかしそんなことより、私の愛機だと思っていたものは食べられる側だったのか、と思った。 だが、私の体はまだ嘘が解けてはいない。 四つ足の、異世界の神の名で呼ばれたらしいアームヘッドがヒドゥン・マインドボウを喰らっていた。 「では、いってきます。旦那様、フレンラ」 彼らのもとで立ち止まった。喰らう側の漆黒の体もボロボロだった。このボロボロの名前がわかる。 そしてその体が崩れる。その下から新たな体が覗いていた。いや、あれが本来の彼か、それもわかる。 「これまでの体が嘘で、本当の姿に戻っただけ。ずっと真実の主を探していたのですね。あなたも私と同じで」 ゼウスと呼ばれていたアームヘッドを見る。彼も私を見る。 「ねえ、私、旦那様のためにいちからグラードを作ります。旦那様の愛すべきグラードを作ります。力ではない方法で、旦那様のために。 だから、あなたに協力していただきたいのです。ホロウスローン、あなたも私も、それでも尚、未だ嘘でできた身なのだから、せめて二人で正しいもののために頑張りませんか」 私は、彼を本当の名前で呼び、旦那様が私に向けてくれたような笑顔を向けた。 彼もそれに応えてくれた。否、本当は旦那様と会う前には飢えて死んでいたはずの私が、旦那様の後に殺されたはずの私がヒドゥン・マインドボウの支えなしで生きていた。 彼はそもそもが応えてくれていたのだ。 私の嘘は虚ろな玉座に座して一層深くなる。 「ねえ、もっと嘘を重ねましょう。真実の愛だけがあればいいのだから」 私は、口紅を塗った。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2541.html
蒼い光。 兄弟の右腕から放たれた白い極光を、塗りつぶすかのように拡大していく蒼い光。 その神々しいまでの光は、数瞬もしない間に兄弟へと到達し、覆い隠した。 だが、それでも光は進行を止めない。 着実に自分の方へと近付いてくる。 (……この現象も俺達の力か?) この異常な事態にも関わらず男は寸分も動じず、澄んだ空に似た色を放つ光を観 察する。 ふと、男の顔に笑みが浮かぶ。 この光が何なのかは男でさえも分からない。 一言で言えば未知数。 だが、それでも男は顔を歪めたまま逃げようとはしない。 この光に、自らの種の新たな可能性を垣間見た気がするから。 その先には自分の望む物が存在する、そんな気がしたから。 獰猛な笑みを浮かべたまま男は動かない。 (この光の先に何があるのか……) 兄弟がそうしたように男は光へと手を延ばし――同様に極光へと呑み込まれた。 □ 今にも雨が降り落ちてきそうな曇り空の下、三人の人間が歩いていた。 とはいっても、実際に歩いているのはその中の二人だけ。 もう一人は車椅子に腰掛け、のんびりと今晩の夕食について考えていた。 「なぁ、二人とも今日の晩御飯はどうする?」 灰色の空とは対称的に眩しいまでの笑みを浮かべ、車椅子の少女は後ろの二人に話し掛ける。 「私は何でもいいですよ」 「私も主の作ったものなら何でも」 車椅子を押す女性は肩まで掛かった金髪を揺らし、鮮やかなピンク色の髪をポニーテールに結わえた女性は買い物袋を片方の手に抱えながら、どちらも優しげな笑みを浮かべて答える。 だが女性達の微笑みとは逆に、車椅子の少女は不満げに頬を膨らました。 「なんや気ぃ使わんで、好きな物頼んでいいんよ? もう、ほっぺた落ちる位の料理作ったるから」 少女の言葉に罰が悪そうに苦笑いを浮かべる二人の女性。 それは、端から見ていても幸福に包まれているのが分かる、和やかな光景であった。 彼女達は楽しそうに自宅へと続く道を歩いていく。 時々、車椅子の少女――八神はやては思い出す。 あの孤独な日々を。 親もいない、足は動かない、学校にもいけない。正直いって退屈以外の何物でもなかった日々を。 だけどそれはある日を境に急変した。 ――家族 叶うことのない夢だと理解していても、心の底ではずっと望んできた世界。 それをはやては手に入れた。 それからの毎日は楽しい事ばかりだった。 いや、何をしても楽しく感じた。 一人きりの寂しい食卓。 それが、今ではみんなで笑い合える賑やかな食卓。 今までの色褪せていた世界からは考えられない程、楽しい日常。 はやてにとって、絶対に離さない、離したくない、そんな世界。 はやては笑う。 今までの寂しかった人生の分まで、はやては笑う。 ――孤独な車椅子の少女と戦いしか知らない騎士達。 そんな五人が作る、何処までも純粋で、何処までも穏やかな『家族』という名の器。 その器は、四人の守護騎士に感情を与え、平穏を望む心すら与えた。 その器は、車椅子の少女には楽しい日常を与え、家族の温もりを与えた。 悲しい過去を持った者達に、ようやく訪れた平穏。 『家族』の誰もが願っていたこの日常が永遠に続けばいいと。 その事件――後の彼女達の運命を大きく変える事件は、我が家まであと数分といった薄暗い一本道で発生した。 はやての視界に映る物は、等間隔に植えこまれた街路樹と、その間に埋め込まれた淡い光を放つ街灯があるだけだった。 当然それだけの光で道を照らし尽くせる訳も無く、辺りは少々薄暗い。 そして信じられないくらいの静寂。 人々が消失したかのように、物音一つしない。 帰宅途中のサラリーマンや、散歩中のおばさん、買い物帰りの主婦さえもいない。 自分達の足音しか聞こえない夜道。 (う~何か薄気味悪いなぁ……) 後ろの二人にバレないよう体を震わすはやて。 別にバレたところで何という事はないのだが、普段は大人びているはやてと言えども、やっぱり子供、無意識に子供特有の見栄張りが出てしまった。 「はやてちゃん、大丈夫ですか?」 だが、顔を上げたはやての目に映ったものは、心配そうな顔で覗き込むシャマル。 自らの見栄が一瞬で看板された事に気付き、はやては思わず苦笑してしまう。 ――そや、今は一人じゃない。 シャマルが、シグナムが、みんながいるんや。 怖いことなんて、何もない。 はやての胸中に宿る、暖かい何か。 それが何なのかは分からないけど、とても心地良い。 「なんでもあらへんよ」 満面の笑顔はやてが答える。 緩やかに流れ続ける和やかな時間。 何時までもそうあって欲しい、何時までも終わらないで欲しい、楽しい時間。 だが、そんな願いを打ち砕くかのように、事件は発生した。 最初にその異変に気付いたのは湖の騎士シャマルだった。 それに気付くやいなや、驚愕に足を止める。 次いで気付いたのは烈火の騎士シグナム。 いきなり歩みを止めたシャマルに訝しげな視線を送り、そのシャマルの視線の先にあるものに気付き、動きが止まる。 そして、最後に気付いたのは二人の主、八神はやて。 その表情に驚愕を張り付かせ、動きを止めた二人の視線を辿りそれを見つけた。 そして二人同様に動きを止めた。 三人の視線の先に存在する物。 三人を驚愕させ、時間が止まったかのように行動停止に陥らせている物。 それの正体は――『ヒビ』。 卵を固い物にぶつけると出来る『ヒビ』。 窓にボールをぶつけてしまい出来る『ヒビ』。 その『ヒビ』が、まさに何もない筈の空中に存在している。 前触れもなく唐突に現れ、悠然と佇む『ヒビ』に、三人は息を呑む事さえ忘れていた。 「……な、なんなんやろ……あれ……?」 その硬直から最初に抜け出す事ができたのは八神はやてであった。 驚愕に震える声ではやてが後ろの二人へと問う。 「シャマル、離れるぞ」 だが、その疑問に答えられる者など居るはずもなく、ただ烈火の騎士は避難を呼び掛けた。 将の言葉に、一つ頷き従うシャマル。 主と共に、直ぐさまその場から離れようときびすを返し―― ――その瞬間亀裂が強烈な光を放ち始めた。 「キャア!」 「主ッ!」 「はやてちゃん!」 シャマルはその身を盾にするかの様にはやてを抱き締め、シグナムは二人を護る防壁の如く亀裂と二人の間に身を滑り込ませる。 だが、そんな守護騎士達を嘲笑うかの様に光は輝きを増していく。 光は全てを塗り潰す。 街路樹も街灯も自分自身の姿さえも『青』の中に溶け、見えなくなる。 まるで己の存在が消失したかの様な感覚。 目を瞑ろうと、瞼越しに『青』が瞳を占領する。 ――抗うことさえ不可能。強烈な『青』が世界を支配した。 □ 「主はやて!大丈夫ですか!」 「ううう……まだチカチカするけど何とか……」 『青』が世界を支配したのはほんの僅かな時間であった。 光はほんの数秒で消え失せ、漆黒に染まる元の世界が現れる。 だが三人の網膜には、今だ強烈な『青』が焼き付いていて、眼は薄ぼんやりとしかその機能を果たさない。 三人の視力が回復したのは光が消えた数分後の事だった。 「何やったんやろうな、さっきの……二人は分かる?」 今だ違和感を感じる瞳を擦り、はやてが声を上げた。 その元気そうな声に安堵しながら、二人の守護騎士が口を開き―― 「いえ、私にも何が何だか…………ッ!?」 「私もあんな物見たことありませ…………ッ!?」 ――二度目の驚愕に動きを止めた。 また何かあったのか? そう思いながら二人の視線を辿るはやて。 その視線の先には、 「…………なぁっ!?」 一人の男。 何十年もほったらかしにしたかの様なボサボサな金髪。 それらの間から覗かせる凛々しく端正な顔。 そして下着一枚羽織っていない、ほど良く引き締まった体。 気絶しているのかピクリとも動かない。 誰、この人? いつの間に現れた? 何で足から血を流してるの? 様々な疑問が湯水の様に湧き上がる。 だが、それらの疑問を押しのけ、一つの巨大な疑問が頭の中を占領する。 ――何故、男は全裸なのか? その一点に思考が集中して止まる。 うら若き車椅子の少女は初めて見る男性の全裸に、顔を真っ赤にし声にならない叫び声を上げた。 □ 緑色の芝生が何処までも続く広い広い草原。 気が付いたら男はそこに立っていた。 豊かな緑、丘の上にポツンと立つ一本の木。 どこか懐かしい光景。 男が事態を把握しようと周辺を見回していると、いきなり二人の子供が現れた。 男は、腕を組み少年たちの方へと体を向ける。 トンガリ頭の少年に短髪の少年。 二人は、鮮やかな金髪を揺らし楽しそうに語り合っている。 「おい、―――――!お前もそう思うだろ?」 「ああ、人間もプラントも一緒に歩いていけるさ、必ず」 満面の笑みで、反吐が出るほど甘い事をトンガリ頭は言った。 男が僅かに顔を歪める。 だが、短髪の少年は正反対に満足気な微笑みを浮かべる。 「あぁ楽しみだなぁ。ねぇ、お兄さんもそう思うだろ?」 短髪の少年は男の方を向きそう言った。 男の目が見開かれる。 だが、それも一瞬。 直ぐに無感情な表情へと変わり、無言で佇む。 「……お兄さんは信じられないの?」 トンガリ頭が純粋な眼で男を見る。 「…………人間の何を信じろというのだ」 男はその視線を真っ向から受け、口を開く。 「全部さ!」 男の問いに、迷うことなく短髪の少年答えた。 男は眉をひそめる。 「……俺には無理だな」 そう言い男は少年達に背を向け、何処へともなく歩き始める。 ――男は知っていた。 少年達の希望が絶望に変わることを。 少年達がどういう人生を歩むのかを。 今、嬉しそうに微笑んでいる少年達が何を知り何を選択するかを。 少年達との距離はどんどん離れていく。 男は一度も振り向かない。 あの頃には戻れないし、戻りたくもない。 こんな幻想に付き合っている暇など自分には存在しない。 自分には、なすべき事があるのだから。 □ 「あ! 目ぇ覚ました!」 上から覗き込む茶色がかった髪色の少女。 それが意識を取り戻した男が見た、始めの光景だった。 男は、少女――はやての問いに答える事なく、体を起こす。 反動でベッド代わりのソファが僅かに軋んだ。 男は、気を失う前の事を思い出そうと頭を回転させる。 あの時、自分を包んだ青い光。 あれに包まれたと同時に自分は気絶し、目を覚ましたら見覚えのないここに居る。 気を失っていた所を拾われたのか? 「思ったより元気そうで良かったわ。私は八神はやて、よろしくな」 考える男に、微笑みながら話し掛けて来るはやて。 だが、男はチラと目をやるだけで何も答えない。 「なんや無愛想やな……何処か痛いんか?」 男の身体を気遣った言葉。 だが、それさえシカト。 ガン無視。 顔すら向けない。 その態度に流石のはやても頭に血が上り掛ける。 (落ち着くんや、八神はやて……怒ったらいかん。相手は怪我人なんや。深呼吸、深呼吸) 肺に大きく空気を取り込み気を落ち着かせる。 「……………お前が俺を拾ったのか?」 と、そこで男が口を開いた。 「そ、そうやで、足から血ぃ流して倒れてたんよ。治療してくれたシャマルにお礼言っとき」 「そうか」 ようやく成立した会話に僅かな喜びを感じているはやてに一つ頷くと、男は無造 作に左手を掲げた。 その行動が何を意味しているのかはやてには理解出来ない、出来るはずがない。 「どうしたん?左手が痛いんか?」 不可解な男の行動にはやてが首を捻る。 実際、男からしたらこの行動に大した意味は無い。 単にはやてを殺そうとしている――ただ、それだけだ。 理由など無い。 強いて言えば『人間』だから。 自らの為なら他を省みず、寄生虫の如く全てを搾取しつくす『人間』だから、殺す。 目の前にいる、自分を助けてくれた少女でさえ、殺す。 その行動には一辺の躊躇いも見受けられない。 端正な顔に何の感情も写す事なく、男は目の前の少女の殺害を決めた。 視認できない程に極小な『門』を発現。 『門』を媒介に『持ってくる力』と『持っていく力』が交差。 選択するは『持ってくる力』。 それを数十の斬撃へと変換して放つ。 一秒にも満たない時間で行われるであろう作業。 ただそれだけで少女の体は数十の肉片へと変貌し、そのついでに、九年間少女を見守り続けた家も、数十の木片へと成り変わるだろう。 男自らの腕で切り刻む事も出来た。 その方が断然楽だし、疲労もない。 返り血で腕が汚れるが、それは『力』を使用したとしても大差はない。 メリットが無い能力の行使。 だが、それでも男は能力の行使を選んだ。 それは男なりの感謝の念なのかもしれないが、その真相は誰にも、男にすら分からない。 ただ一つ、無力な少女に人知を越えた力が襲う、その事実は悠然と変わる事がなかった。 (消えろ) 男は、少女の命を摘み取るべく『力』を発動する。 全てを斬り刻む不可視ね刃が発現する―― 「はやてちゃん、あの人の様子はどうですか?」 ――寸前、踏みとどまった。 部屋に入って来たのは三人の女。 いや、別に女達が入って来たから攻撃を止めた訳では無い。 だが男は、一瞬である事実に気が付いた。 自らも人間ではないせいか、気付けた僅かな違和感。 (この女達、人間ではない――?) 『人』ではない女達が部屋へと入り、『人』であるはやてに親しげに話し掛けた。 それを見て、男は『力』を行使するのを取り止めたのだ。 「貴様等は……」 自然に声が出た。 「あ、この子らは、私の家族なんやで」 そう言うとはやては、どこか嬉しそうに女達を紹介していく。 その紹介を聞きながら、男は思案する。 こいつらは人間ではない。だが、プラントでもない存在。 自分でさえ知らない存在。 それに――良いナイフになりそうだ。 様々な異能者達を見抜いて来た観察眼が告げていた。 その女達――守護騎士達が相当な実力者である事を。 彼女達にナイフとなる可能性がある事を。 無表情を貫き通していた男の顔が歪む。 見る者が見れば戦慄をする様な笑みをその顔に浮かべた。 「――それで、そろそろお兄さんの名前を教えて欲しいんやけど……」 はやての言葉に男は一考し、口を開く。 「……ナイブズだ」 男――ナイブズは考える。 ここでこいつらを殺すのは造作も無い事だ。 だが、それは勿体無い。 人に在らざる者にして、人を慕う者。 そして最高のナイフになるだろう存在。 ナイブズは知らず知らずの内に目の前の者達に興味を持っていた。 それは気紛れとも呼べるモノかも知れない。 だが、今この時点で四人の命が助かった事は事実であった。 □ 「それ、ほんまの話なんか……?」 「ええ、確証はありませんが……」 それから騎士達のした発言は、はやてを大いに驚かせた。 その内容は『ナイブズが異世界の人間かもしれない』といったもの。 「恐らくナイブズは、偶然に発生した次元断層に巻き込まれたんだと思います。それでこの世界に……」 「へ~良く分からんけど、ご愁傷様やな……」 そんなやり取りを聞いている間にもナイブズは終始無言であった。 驚愕の一言も発さず、何かを考え込むかのように俯いている。 「…………ナイブズ?」 「おい、こっちはおめーを気ぃ遣ってんだぞ。何か言えよ」 そんなナイブズを見て、はやてが心配そうな声を上げる。 だがそれでも何も言わないナイブズに、ヴィータが苛立ちの言葉を飛ばした。 「こら、ヴィータ。そんな言い方したらあかんよ」 「だって、さっきから何も言わないじゃん、こいつ」 そう言い頬を膨らませるヴィータにはやては苦笑する。 確かに反応が薄すぎる気はする。 闇の書の事や、シグナム達の事のような不可思議な存在を知っている自分でさえ、異世界については驚いたのに、ナイブズは大して驚いた様子がない。 そんなナイブズを見つめ少し唸ると、はやては驚くべき事を提案した。 「そや、ええ事思いついた!ナイブズもここで暮らさへんか?」 「……何だと?」 その破天荒な一言にナイブズの目が見開かれる。 「あ、主ッ!?」 「な、何言ってんだよ、はやて!!」 「いいやん。ナイブズは異世界の人なんやし、帰る方法が見付かるまでって事で」 シグナムとヴィータの驚愕の声を物ともせず、悪戯っ子の笑みを浮かべ、はやて はナイブズに向き直る。 「どや?」 ナイブズは険しい表情のまま、はやてを見る。 ――こいつは何を考えているんだ? その疑問がナイブズを包んでいた。 ――この部屋には明らかに自分の世界とは様式が違う。 それに窓から見える緑溢れる庭園。 成る程、ここが異世界というのも信じられなくもない。 だが、このガキはなんなのだ? 何故、初対面の、しかも異世界の住人という不可解な存在である俺を匿おうとする? ナイブズの顔が苦々しく歪む。 何故か、自らの命と引き換えに人間を生き延びさせた『あの女』の姿が頭をよぎったから。 ――まぁ、良い。 だが、ナイブズは直ぐさまその無意味な幻影を振り解く。 それに色々とやりやすくなる。 この女達をナイフとして利用する事も出来る。 そして、ナイブズは口を開いた。 「……仕方がない、頼む」 何処か棘のある言葉に聞こえたが、はやては満面の笑みを浮かべる。 「ほな、決まりやな。よろしく頼むで、ナイブズ」 ――この瞬間、物語に必要な全ての役が出揃った。 車椅子の少女と孤独な王。 交わるはずの無かった線が交わる。 □ そして、運命の邂逅から一月後の海鳴市。 ビルから放たれる様々な光が、闇に包まれている筈の海鳴市を照らす。 その一つのビルの上でシグナムが立っている。 そして、その横には立つナイブズ。 「……どうやらヴィータ達は管理局の魔導師と戦闘に陥ったらしい。助けに行くぞ」 「管理局……前の奴らか」 ナイブズの問いにシグナムが頷く。 「そうだ。奴らは手強い、抜かるなよ」 その声と同時にシグナムを光が包む。 光が晴れると、そこには騎士甲冑と烈火の剣・レヴァンティンを装備したシグナムが立っていた。 「……それは俺の台詞だろう。前回助けてもらったのは何処のどいつだ」 「それもそうだったな」 辛辣な物言いに苦笑するシグナム。 だが、その表情も直ぐさま引き締まる。 相手は前回と同様の魔導師。手強い相手だ。 「まず、私が先行する。お前はまだ飛行魔法に慣れてない。後からゆっくりついて来ればいい」 「分かった……俺が到着するまで負けるなよ」 「ふっ……任せておけ」 その言葉と共にシグナムは一筋の光と化した。 見る見るうちにナイブズから遠ざかり、仲間を救う為、戦場へと向かう。 遠ざかっていくシグナムを眺めつつ、ナイブズも飛行魔法を行使する。 守護騎士達との共闘の約束から数日。 守護騎士達の教導により唯一取得できた魔法。 決して早く飛行できるとは言えないが、戦闘に役立つ位には使いこなせる様になった。 体が宙を浮き、シグナムが向かった方へと滑り出す。 下のビル街のネオンも届かない程の上空を駆けながら、ナイブズは一人考える。 ――この世界は信じられない物ばかりだった。 自らが飛んだ『地球』という名の惑星。 まるで人間共に搾取され尽くす前の全盛期の姿のような『地球』。 砂の惑星の何十倍もの人間がはびこる『地球』。 悲しみの連鎖が起こる前の『地球』がここにはある。 だが、この世界でも人間は変わらない。 寄生虫の如く、この惑星から全てを吸い取っている。 醜悪にこの健全な『地球』を滅びへと押し進めている。 醜い。 ――人間共をこの惑星から抹消する。 そして次元の扉を開け、自らの世界にて虐げられている同朋達を救出しよう。 その事実にナイブズは憤慨し、より深い決意を心に刻んだ。 丁度その時だった。 シグナム達の正体、そして八神はやてが如何なる存在かを知ったのは。 偶然見かけた、守護騎士と管理局との戦闘。 そして知ったシグナム達の正体、魔法、管理局について。 シグナム達の正体、それは、闇の書を護る守護騎士。 何百年もの間、様々な主から命ぜられるがままに戦い、人々を殺し続けてきた騎士達。 ――自らの勘が告げた通り最高のナイフに成りうる存在。 八神はやて。 シグナム達の主。 闇の書の持ち手。 はやての存在はナイブズにとって鬱陶しいの一言であったが、ここに来て大きな意味を持った。 守護騎士達の話によると、はやては闇の書の覚醒と共に強大な力を得るらしい。 ――これもまた、上手くいけばナイフに成り得るかもしれない存在。 自由に空を駆け、絶大な火力の魔法を操る守護騎士。 闇の書の完成と共に守護騎士を超える程の力を得る八神はやて。 あの異能殺人集団に勝るとも劣らない、いや純粋な戦闘力ならあいつ等よりも上 に位置するかもしれない圧倒的な存在。 知らず知らずの内にナイブズの口から笑い声が漏れる。 それは、冷徹で、それでいて心底嬉しそうな笑い声。 ――極上のナイフを見つけた。 人類を粛正するにはこの上ない実力を持っている。 堪えきれないのか、笑い声はどんどん大きくなっていく。 狂気を含んだ高らかな笑い声が虚空に響き渡り、誰の耳にも届く事なく霧散する。 真っ暗な闇だけがその笑い声を聞いていた。 □ それから数分後、ようやく戦場が見えてきた。 ドーム状に張られた結界に、空を舞う十数の魔導師。 どうやら、結界を張る事に専念している魔導師と戦闘を行っている魔導師に別れているらしい。 戦闘を行っている魔導師は数人。 あのシグナム達と渡り合っているのだ、見た目によらず相当な実力者なのだろう。 そして―――― 空も飛ばず一つのビルの上で銃を構えているその男を見て、ナイブズの口が弧を 描く。 「やはり、お前は戦いを選ぶか……」 予想通り奴は戦場に立っている。 奴とあの魔導師達がどのような関係かは知らないが、どうせまた、あの下らない信念を貫く為に戦っているのだろう。 ――いいだろう、ヴァッシュ。 何度でも教えてやる。 人間の醜さを。 男は舞う。 自らの正義を貫く為に。 それは双子の弟とは正反対の狂った正義。 だが、ある意味では真実とも言える正義。 ――本来ならば有り得ない邂逅。 兄と弟は、次元を越えた世界にて、再会する。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/storyteller/pages/1951.html
NAM-1975 連絡用掲示板・議論スレ-3 3 :NAM-1975:2016/05/20(金) 21 16 39 ID ??? ●NAM-1975 1990年アーケードで稼働の、アクションシューティング。後にネオジオに移植。wiiに配信。 自キャラを左右に動かし相手の銃撃を避けつつ、ガンアクションするタイプのゲーム。 主人公はコードネームで、1Pのシルバーと2Pのブラウン。 1975年、夏。悪夢が俺を待ち受けている…。 ナ・トルンの情報指令本部への出頭が命令されたのだ。ふたたび…、又、再びあの地獄へと還るのか。 元アメリカ軍科学者リチャード・ムックリー博士が、北側と思われるテロリスト達にベトナム奥地へと捕われてしまった。 そこで博士を救出すべく俺達特殊工作部隊が結成された。 作戦開始・5時間後。敵の発見を防ぐため、ヤン河をさかのぼる。 (船の上から、陸地に向かって大量の敵に対して銃撃を行う。) あなたたちの行動は全てお見通しですよ。ここでくたばっていただきましょうか。 (ボスは火炎放射器と手りゅう弾で攻撃してくる二人組。) こちらファイヤーバード。本部応答せよ、敵に発見されている。ボートは捨てド・ナン市内を進む。 なぜ奴らは侵入を知っていたんだ。作戦開始・22時間後。 (市内を銃撃戦しながら進む、ボスは大型の戦闘ヘリ。) 本部より連絡、計画変更。味方機と接触空よりパラシュートで侵入せよ。 作戦開始・29時間後。敵機発見、攻撃してきます! (爆撃を受けた空を飛ぶ味方航空機、その中から敵飛行機を銃撃していく。ボスは巨大戦闘機。) パラシュート降下成功、これより敵飛行場を攻撃する。我々の中にスパイがいる。しかし、作戦の中止は出来ない。 作戦開始・32時間後。 (敵基地を銃撃戦しながら進む、ボスはヘリから手りゅう弾を投げてくる。ヘリを破壊すると降りて手りゅう弾をばら撒く) 我々の連絡は敵に傍受されている。そこで、直接現場にいる大尉から新たな情報と命令が下された。 大尉からの情報によると、博士と共に娘のナンシー・ムックリーが捕われていることが分かった。 そして俺たちは敵兵器工場へとむかった。作戦開始・37時間後。 (兵器工場を銃撃戦しながら進む。最後まで進むとナンシーがぶら下げられている。) あれは、たしか…、ナンシー・ムックリー! 気をつけて! あなた達はだまされているの! あなたたちの敵は…! (銃で撃たれるナンシー。) (ボスは三人組、飛び回り銃を撃ち、さらに爆発するドラム缶を投げつけてくる。) 言え! なぜ俺たちの作戦を知っている! うう、俺は知らな…ま、まて、言う、言うよ。君たちの通信が傍受されているのは、 (敵を締め上げ、銃口を向けてしゃべらせる。だが口を開いたとき、死角からの銃弾が男を撃ち殺した。) 敵司令官は狙撃されたがしかし、少しだが情報を聞き出せた。 それは、博士の完成間近のレーザー兵器を敵側で完成すると言うものだった。 兵器はすでに完成しているかもしれないが俺達は敵本部へと向かう。作戦開始・51時間後。 (月夜の森、様々な種類の敵が大量に出現。最後、背後に二人の縛られた女。そして車椅子に乗った科学者リチャード。) よくぞここまできた。だが、だれにもわしのじゃまはさせん。 (ボスのリチャード、左右に動き爆弾をばらまく車椅子。倒すと逃げて行き、捕われの女が解放され、銃を向けてくる。) もう遅いわ! おまえらなどわが新兵器の前では赤子どうぜんよ! (たくさんの銃弾を撃ってくる女二人。倒すと背後の屋敷が崩れ、二足歩行の赤い戦闘兵器が姿を見せる。 高速のレーザー弾と爆弾ばら撒き、むき出しの操縦席のリチャードを倒す。) 作戦は終わった。後に分かった事だが、博士はレーザー兵器で世界を焼きつくすつもりだったらしい。 ともかく世界は救われた。そして、俺達は英雄とよばれた。しかし、地獄は終わらない。 スタッフロール。終わり。