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ここは人里はなれた森の奥深く 比較的餌が多いその場所はゆっくりプレイスであったが いましがた、発情ありすの集団が襲いほとんどのゆっくりは命を落とした。 1匹の赤ありすがいた。 集団発情ありすから生まれた赤ありすは 生まれながらに性欲が強く 赤ちゃんのうちからすっきりをしたかった。 「ちゅっきりしたいわ!とかいはのありしゅははやくちゅっきりしたいわ!」 「ゆゆ~ん!ゆゆ~ん!」 生まれながら親はなく ただ1匹の孤独な赤ありす お家もなく、明日の餌もなく、言葉を交わす友達もいない。 「にゃんでありしゅはおかーしゃんがいにゃいのぉ!」 ただ、その日を生きるために苔や小さな虫を食べ命を繋いでいた。 「ゆっ!ゆっ!」 まずは、お家がなくてはゆっくりできない。 赤ありすは落ち葉を集めて重ねてその中に潜り込んだ。 若葉が多く冷たくゆっくり出来ないが、野ざらしで寝るよりはマシだ。 そのままニガイ若葉を少しづつかじり食事にする。 「まじゅいわ、じぇんじぇんとかいはじゃにゃい!」 そこへ楽しそうな一家の声が聞こえてくる。 「ゆっくりしていってね~♪ゆっくり~♪」 「「「ゆっゆっゆ~♪」」」 親れいむと子まりさが3匹、赤れいむが3匹、赤まりさが2匹のゆっくり一家だ。 この一家は少し離れた川辺までピクニックへ行ったため発情ありすから難を逃れ 今しがた巣へと帰ってきたのだ。 9匹のゆっくり一家が巣穴に入っていくと 見つからないように赤ありすは、葉っぱを被りながら様子を伺う。 「すっきりできしょうなまりさがいたわ!でもおやがいるからきけんね!」 赤ちゃん達は親れいむと「すーりすーり」をして幸せそうにしている。 子まりさは姉妹で巣の中を走り回り追いかけっこ 果物やキノコ、赤ありすではとってこれない美味しそうな食べ物を食べている。 「ゆ~ん・・・しょこはありすのおうちよ! そのたべものもまりしゃも、おかーしゃんもありすのものなのに・・・ゆぐぐ!」 勝手な事を言って悔しがる赤ありす。 その時、赤ありすは閃いた! 「ゆっくちできるほうほうをおもいついたわ!」 夜が更けるまで赤ありすはジッと息を殺して待った。 深夜0時 「ゆっくち、しーしーしたくにゃったよ おうちでしーしーするとおかーしゃんにおこられるから おそとでしーしーすりゅよ」 寝ぼけまなこで赤れいむが外に出てきた。 「あれはだめでゃわ」 赤ありすが赤れいむに聞こえない声でぼそりと呟いた。 しーしーを済ませた赤ありすは巣穴へと戻っていく。 深夜1時 「ゆ~ん、しーしーしたくにゃったよ おみずのみしゅぎちゃったよ」 今度は赤まりさが外に出てきた。 「まりしゃだわ!しゅっきりさせてもらうわね!」 赤まりさは巣穴からすぐ傍の木の根へしーしーをする。 ちょろろろろ・・・ 後ろ向きのため近づいてきた赤ありすに気づかない。 スッっと頭の上が軽くなった。 帽子をとられたのである。 「ゆっ?」 違和感を感じて振り向くと、そこには発情した赤ありす。 あっという間にのしかかられ、小刻みにぷるぷると震えだし性交へ入る。 「ちいしゃなまりしゃきゃわいいわぁぁぁあああ、ぬほぉぉおおぉお!」 「ゆ!やめちぇね、まりしゃのすてきなおぼうし・・・ゆ”ゆ”ゆ”!」 「「しゅっきりー!」」 赤まりさは、あっという間にすっきりさせられた。 帽子を取り返そうと、自分から赤ありすに密着した結果である。 赤ありすは赤まりさが絶命する前にお帽子を被ると 黒ずんで動かなくなった赤まりさに興味が失せ、巣穴へと潜り込んでいった。 このまま赤まりさに成りすますつもりである。 その夜、赤ありすはおかーさんれいむの横で 「すーりすーり」と身を寄せて眠りについた。 くしくも、この赤ありすの片親はれいむ種であったのだが、それを赤ありすは知らない。 おかーさんとお家と餌と、すっきり出来そうな姉妹達を手に入れた喜びに 生まれてはじめてゆっくりした気持ちで眠ることが出来た。 まりさの帽子さえ被れば、親や姉妹がまりさだと思ってくれるという短絡的な作戦であったが 実は的を射ている。 ゆっくりは飾りで固体を識別するため、赤まりさだと信じて疑わないだろう。 そして、殺害方法にスッキリを用いたことで、死に至るまでの時間差が生じて 帽子に死臭がついていないため、死体から盗んだことにならないのだ。 仮に死体から盗んだ飾りである場合、たちどころにゆっくりに気づかれ 集団リンチを受けてしまうことだろう。 それらの問題を偶然とはいえ赤ありすはクリアーした。 「おかーしゃん・・・ありしゅはちあわちぇだよ・・・」 その声に少しだけ目を覚ました親れいむは舌を伸ばし赤まりさ(赤ありす)を舐めてあげた。 「ゆ~ん・・・おかーしゃん・・・くしゅぐっちゃい」 赤ありすの瞳には涙が滲んでいた。 続くかも? 過去の作品:ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 作者:まりさ大好きあき このSSに感想を付ける
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「ゆっゆっ、ゆ~っ」 赤まりさは、お帽子をコレクション置き場に持っていった。 「ゆゆん、こっちのおぼうちにはまけりゅけど、これもにゃかにゃかだよ!」 一番のお気に入りの帽子の隣に、今回の帽子を置いてみると、やはり一番の座は動かない。 「ふっ! ふとんがふっとんだ!」 突然、震えるだけだった子まりさが叫んだ。ぽんぽん遊びによって姉妹が二匹殺され、自分たちもその後を追うことから逃れられぬことに絶望して心が壊れてしまったのだろうか? 「お、おとーさんだああああ! おとーさんがいるぅ! たすかるよ! まりさたち、たすかるよ!」 しかし、その口から出てきたのは、希望に満ちた喜びの声。その声に触発されて、他の子供たちも明るい顔になる。 「ゆゆゆ! どこ? おとーさんどこ?」 「ゆわーん、おちょーしゃーん、たすけちぇー!」 「おちょーしゃんがきたなら、もうゆっきゅりできりゅよ!」 「ほら、あそこだよ!」 子まりさの視線の先には、いた! 一家の大黒柱。強くて狩りが得意で優しいみんなのおとうさんまりさ。 「ゆあああん、たすけてー!」 「おちょーしゃーん!」 みんな、多少なりとも傷付いていたが、最後の力を振り絞ってぽよんぽよんと跳ねて行く。 「う? う? うー?」 子ふらんたちは、何が起こったのかと不思議がっている。どこにも、こいつらの親のまりさなどいないではないか。 「ゆゆ?」 赤まりさも不思議そうにしている。 「おとーさーん!」 「おちょーしゃーん!」 しかし、なにやら自分の方へと向かってきているので、跳ね飛ばされてはかなわないと思って横に避けた。 「おとーさん!」 「ゆわわわわん、きょわかったよー!」 「あいつらだよ、あのふらんたちが、おねえざんといぼうとを」 「おちょーしゃん、あいつらやっちゅけて!」 子供たちがそうやってすがったのは……赤まりさのコレクションの中でも一番お気に入りの帽子だった。 「うー」 子ふらんの一匹が、その帽子をくわえて浮き上がる。 「ゆ! おちょーしゃん!」 「おとーさんがぁぁぁぁぁ!」 「だ、だいじょーぶだよ! おとーさんはあのぐらいじゃやられないよ!」 子ふらんは、なんとなく帽子をくわえたものの、どうしようか迷った。迷った挙句、姉妹の長女である子ふらんの上まで行って、帽子を落とした。 ぽふっ、と、長女ふらんの頭の上に、ゆっくりまりさの山高帽が乗っかる。 「うー、おとーさんなのー」 ふざけて、長女ふらんは言ったが、それへの反応は思いもよらぬものだった。 「おとーさん!」 「おちょーしゃん!」 ゆっくりの子供たちが、そのふらんの元へと我先にと跳ねてきて、その後ろに隠れたのだ。 「う? う? うー?」 てっきり、それでこれがただの帽子で、おとうさんなどどこにもいないことを悟ってまたゆんゆんといい悲鳴を聞かせてくれるだろうと思っていた子ふらんは困惑する。 「おとーさん、がんばれ!」 「おとーさんはつよいんだよ! あやまるならいまのうちだよ!」 「おちょーしゃん、さいきょー」 「きょれでゆっきゅちできるね!」 そんなゆっくりたちを見ていたふらん一家の赤まりさは、三匹の姉ふらんたちを呼び寄せて、なにやらひーそひーそと内緒話を始めた。 「ゆっ! ひーそひーそしてる!」 「きっと、おとーさんをやっつけるさくせんをはなしてるんだ!」 「ゆゆん、そんなのおとーさんにはいみないよ!」 「ゆゆーん、そうだよ、おとーさんはつよいんだから!」 「ゆっきゅち! ゆっきゅち! おちょーしゃんちゅよーい」 子供たちは、もうすっかり助かったと思い込んで、そのおとーさんとやらが、 「うー?」 と、自分を除け者にして内緒話をしている妹たちを少し不安そうに眺めているのには気付かない。 「うー! おおきいまりさはゆっくりしね!」 「うー! ふらんたちのあそびをじゃまするな」 「うー! ちびのあまあまをこっちにわたせー」 「う? う? う?」 三人の妹ふらんたちに突然そう言われて長女ふらんはますます戸惑う。 「おとーさん、れいむたちをまもってね!」 「おちょーしゃんがいればだいじょーぶだよにぇ!」 事態が全く予想できない方向へ行ってしまい、長女ふらんは何をどうしたらいいかわからない。まさか、妹たちまでもが自分をこいつらのおとうさんまりさだと思うわけはないはずなのだが。 「うー、ゆっくりしね!」 すぐ下の妹ふらんが突っ込んで来た。 「うー!?」 「うー!」 激突。妹ふらんが弾き飛ばされる。 「ゆゆーっ! おとーさんすごーい!」 「しゃすがおちょーしゃんだにぇ!」 子供たちは大歓声だ。 「うー、こいつつよい」 飛ばされた妹ふらんは、悔しそうに言った。 「……」 対する、長女ふらんは何か考えるような面持ちである。 「うー、つぎはふらんがいく」 そう言って、別の妹ふらんが突っ込んでくる。 「うー!」 だが、やはり先ほどと同じように、跳ね返されてしまう。 「うー、やられた」 またまた子供たちの大歓声が上がる。 「……」 長女ふらんは、だんだんと事態が飲み込めてきた。 今までの二回の体当たりは、いかにも長女ふらんが二匹を撃退したように見えるが、実際はそうではない。妹たちは、当たるか当たらぬというところで、自ら後ろに飛んだのだ。 「うー! おとーさんはつよいのー!」 長女ふらんがそう雄叫びを上げると、子ゆっくりたちは大喜びで父を讃える。対するふらんたちは、にやり、と笑った。長女が全てを飲み込んだと悟ったのだ。 それからは、もうおとーさんの独壇場と言おうか、次々に襲い掛かる子ふらんたちを片っ端から跳ね飛ばしていった。 「おとーさんすごーい!」 「おちょーしゃんさいきょー!」 そんな声を聞いて、親ふらんに押さえつけられていた母れいむが声を上げる。母れいむは、子供たちがぽんぽんされている間も声を限りに騒いでいたが、うるさいので親ふらんによって子供たちの方が見えないように位置を変えられて口を塞ぐように押さえられていたのだ。 「お、おぢびぢゃんだぢ、ばりさ……ばりざがいるのっ!?」 少しずつ、ずりずりと位置を変えて、ようやく声を出せたのだ。 「おかーさん、もうだいじょうぶだよ! おとーさんがたすけにきたんだよ!」 「ちゃすけにきちゃんだよ!」 「ゆゆゆゆゆっ!」 母れいむは、感極まった声を上げる。死んだと思っていたまりさが、今この大ピンチに颯爽と現れたというのだ。 「うー」 再び口を塞ごうとした親ふらんだが、なんか面白そうなので放っておいた。 そして子ふらんたちは―― 「ひーそひーそ」 また、なにやら赤まりさを加えた四匹で内緒話を始めた。 「ゆゆん、どんなさくせんをたててもむだだよ!」 「おちょーしゃんにかてるもにょか!」 「ゆーん、ゆっきゅちできりゅよ」 もうすっかり安心している子供たちであったが……。 「うー、こっちきて」 子ふらんの呼びかけに、おとうさんまりさがパタパタと(まあ、パタパタ飛んでる時点でおかしいのだが)とあっちに行って、なにやら一緒になってひーそひーそし始めると、さすがに怪訝に思った。 「お、おとーさん、なにしてるの!」 「はやくそいつらをやっつけてよ!」 「おちょーしゃん、ひーしょひーしょしにゃいで!」 「ゆゆぅ」 だが、一度安心するとゆっくり――特に子供のゆっくり――は容易に物事への楽観視を止めることはない。 「ゆゆ、きっとふらんたちがこうさんしてるんだよ」 「そうか、それでゆっくりゆるしてもらおうとしてるんだ」 「ゆふん! ふりゃんたちはよわむしだにぇ」 「このおうちをもらわにゃいとゆるせにゃいよね」 「あのあまあまももらわにゃいとね」 「ゆゆーん、ゆっくりできるね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 広いおうちと山のようなあまあまを賠償として奪い取ることを決め付けた子供たちは、ゆっくりできそうな未来へ思いを馳せる。 「うー」 やがて、おとうさんが戻ってきた。その後ろには子ふらんと赤まりさを、まるで付き従えるようにしている。それを見て、ますますふらんたちが降伏したのだと確信した子ゆっくりたちは沸き立つ。この広いおうちもたくさんのあまあまも自分たちのものだ、と。 「うー、ごめん。ふら……おとーさんは、ふらんたちのかぞくにいれてもらうことにしたの」 「……ゆ?」 子ゆっくりたちは理解できない。いや、これは理解しろというのが無理な話だろう。 「……ゆ?」 「……ゆゆ?」 「……ゆゆゆ?」 「……ゆゆゆゆ?」 ゆっくりりかいできないよ、なにをいってるの? と、その顔というか全身にはそう書いてあった。 「うー、おまえらはもうじゃま。ゆっくりしね」 いつまで経っても理解しそうにないのに面倒臭くなったのか、長女まりさは一匹の赤まりさに噛み付くと、中身の餡を吸い上げた。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ ゆ゛っぎゅ……ぢでき……に゛ゃい」 「ゆわわわわ!」 「にゃ、にゃにするにょ、おちょーしゃーーーーん!」 赤ゆっくりなど、子ふらんが一気に吸い込めばあっという間に中身を吸い尽くされてしまう。 「うー、ぺっ」 皮だけになった赤まりさを吐き出す。もちろん、とっくに死んでいる。 「うー、おまえらもゆっくりしね!」 「お゛どうざん、や゛べでえええええ!」 「おぢょーじゃん、でいぶだぢのごちょ、ぎりゃいになっぢゃの?」 「ばりざ、いいごにじでだよ、おがーざんのい゛うごどぎいでだよ」 「お、おがーざん、だずげでええええええ!」 頼みの綱のおとうさんの信じられない裏切りに、子れいむがおかあさんに助けを求める。 「ゆゆゆゆ! どうしたの、いったいなにがあったの!?」 声は出せるものの、依然として子供たちの方が見えない位置に押さえ付けられていた母れいむが、突然ゆっくりできなくなった子供たちの声を聞いて叫んだ。 「おどーざんがあああああ!」 「おどーざんが、でいぶだぢをい゛らない゛っで」 「おぢょーしゃん、ふら゛んだぢのな゛がま゛にな゛るっでえ」 「まりじゃだぢは、じゃま゛だっちぇ、ゆ゛っぐりじね、っでえ」 「ゆゆゆゆゆゆゆ! そんなわけな゛い! ばりさは、ばりさはそ゛んなごど!」 愛する子供たちの必死そうな声と言っても、到底、母れいむには信じられることではなかった。 「うー、ゆっくりしね」 「うー、そろそろおなかへってきた」 「ゆわーーーん!」 今にも、虐殺が開始されるというその時、 「ま、まりざも、まりざもな゛がまにじで!」 子まりさが、言った。 「まりじゃも、まりじゃも!」 途端に、赤まりさもそれに続く。 彼女らの頭にあるのは、もう何をしても助からないという絶望と、それと相反する希望。 ――あの子みたいに、家族になれば。 あの、赤まりさのように、このふらん一家の一員になれば助かるのではないか、という一縷の望み。 自分たちが恐怖し、苦痛にのたうつ間も、終始ニコニコと笑ってゆっくりしていた赤まりさ。自分もああいうふうになりたい。ずっと、羨ましく思っていた。自分だって同じまりさだし、それに同じまりさのおとうさんも、ふらん一家に入るとのことだ。きっとお願いすれば、自分たちだって――。 「うー?」 またもや思いもよらぬ行動に子ふらんたちはどうしたものかと思う。 「おねーしゃん」 そこで声を上げたのは赤まりさだ。この子は、狩りの手伝いだけでなく、色々と面白い提案をする。さっき、帽子をかぶった長女ふらんをおとうさんと言い出したゆっくりたちを見て、しばらくそのフリをすること、その後で、フリをしたまま裏切って見せて絶望させることも、この赤まりさが提案した。類稀なる素質を持った赤ゆっくりであった。普通ならばどうやってもゲスにしかなりえないような赤まりさだが、ふらん一家の一員である以上、その才能は、家族にとっては大いに使えるものであった。赤まりさが、なんだかんだで子ふらんたちに可愛がられているのもそのせいであった。 三度、ひーそひーそと内緒話をするふらんたちと赤まりさ。そこで、赤まりさは悪魔のごときアイデアを出す。そして……通常種にとっては悪魔というしかない性質を持つ子ふらんたちは、それにすぐさま賛成した。 「うー、なかまにしてやってもいいけど、じょーけんがある」 「ゆ?」 「うー、うちのかぞくになるなら、まえのかぞくをすてる」 「ゆゆ? つまり、どうすればいいの?」 条件を出してくるということは、それをクリアすればいいということだ。苦し紛れに喚いたお願いだったが、なにやら受け入れられそうな目が出てきたことで、子ゆっくりたちは俄然その気になってきた。 「うー、そこのれーむをゆっくりころせ!」 「ゆっ!」 「ゆゆゆ!」 そこのれーむ、とは母れいむのことである。つまり、母れいむに引導を渡して前の家族との決別を行動で表せれば、うちのファミリーに入れてやろう、ということである。 「そ、ぞんなごと、でぎるわげないでしょおおおおお!」 「じょんなゆっぎゅぢでぎないごと、れ゛いみ゛ゅはじないよ!」 子れいむと赤れいむは、真っ先に拒絶する。 「ゆぅ……」 「ゆゆっ」 対して、子まりさと赤まりさ。特に拒絶の言葉は口にしない。 その間にも子れいむと赤れいむは、ふらんたちを罵り続ける。そんなゆっくりできないことはしない! そんなゆっくりできないことをやれというおとーさんもふらんもゆっくりしんじゃえ! と。 「……おかーさんをゆっくりころしたら……ほんとうになかまにしてくれるの?」 「……ほんちょーに、してくれりゅの?」 やがて、子まりさと赤まりさが、ゆっくりと口を開いた。 「う? うー、ほんとう!」 「うー、ふらんはうそつかない」 と、どの口で言うのか、そう言ったのは、まりさの帽子をかぶった長女ふらんであった。 「ゆゆ、やるよ」 「ゆっきゅち、やりゅよ」 「ゆゆゆゆ?」 驚いたのは、子れいむと赤れいむだ。一体何を言い出すのか。 「れいむ、どいて」 「れいみゅ、どいちぇ」 「な、なにいってるの! おかあさんをころしたりしたら、ゆっくりできないよ!」 「しょーだよ、まりしゃたちはげしゅだったんだにぇ!」 しかし、まりさたちの目の色は既に変わっていた。 「どかないれいむはゆっくりしね!」 子まりさ渾身の体当たり。子れいむがふっ飛ぶ。いくらなんでもいきなり攻撃はされないと思っていたところに不意打ちを貰ってしまった。 「ゆっきゅちちね!」 赤まりさは、赤れいむに体当たり。ぽよん、と飛ばされた赤れいむに追い打ちをかけようとした赤まりさだったが、子まりさに制止されて止まる。 「ゆっくりしね!」 その直後、赤れいむは降って来た子まりさに潰されて死んだ。 赤ゆっくり同士が体当たりをし合ってもそう効果は無い。だから、子まりさは、自分の一撃で手っ取り早く赤れいむを始末したのだ。 「ゆゆゆ! な゛にずるのぉ、ばりざあ!」 と、言いつつころりと転がっていた体を起こした子れいむも、いまいち切迫した事態を把握しているとは言い難い。赤れいむが殺されたのに気付いていないせいもあったが、その声は未だに姉妹喧嘩の際に上げる抗議の声に似た響きを持っていた。 「ゆっくりしね!」 「ゆっきゅちちね!」 すぐに、二匹のまりさに攻撃を受けてしまった。赤まりさの攻撃など大して効かなかったが、同じ程度の大きさの子まりさに何度も体当たりされて、やがて子れいむは動かなくなった。 「ゆゆ! あとは、おかーさんだよ!」 「ゆゆ! おきゃーしゃん、まりしゃたちのゆっきゅちのために、ゆっきゅちちんでね!」 凄まじい形相で母れいむに向かうまりさたち。 「う?」 母れいむを押さえるためにその上に座っていた親ふらんだが、さすがにそのゆっくりしていない鬼の形相には多少怯んだ……というか、引いた。 「ゆっくりどいて! そいつころせない!」 「ゆっきゅちどけぇ!」 「うー」 別に邪魔する必要も感じなかったので腰を上げ、二匹の方へ母れいむを蹴り転がしてやる。 「ゆゆゆ、おちびちゃんだち、まりさは、どこ?」 とにかくもう、母れいむの中では、音声だけで得た情報のどこからどこまでが本当で、どこからどこまでが嘘なのかゴチャゴチャになってわからなくなっている。しかし、とにかく求めたのは番の愛するまりさであった。子供たちは、まりさが裏切ってふらんたちの仲間になったと言っていたが、もちろん、母れいむはそんなことは信じていない。 「ゆー、おとーさんはあっちだよ! それよりも……」 「おきゃーしゃん、ゆっくりちんでにぇ! そうしにゃいと、まりしゃたちがゆっきゅちできにゃいんだよ!」 「ゆゆゆ、落ち着いてねおちびちゃんたち、おかあさんにゆっくりしねとかいったら駄目だよ!」 この期に及んで、そんなことを言っている母れいむだったが、そう言いつつ、目は愛するまりさのことを探していた。 「ゆゆ! まりさ……のお帽子!」 「ゆ?」 「ゆゆ?」 母れいむの言葉に、今にも飛び掛ろうとしていたまりさたちが動きを止める。 「うー、おとーさんなの」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、どこがばりさな゛のっ! ふら゛んでじょおおおお!」 さすがに、母れいむはおとうさんまりさの正体を見破った。 「うー、ばれたか」 「うー、ばれちゃしょーがねえの」 おとうさんのフリ作戦で既に散々楽しんだ後なので、ふらんたちはそれには執着しなかった。あっさりと妹ふらんが長女ふらんの頭からまりさの帽子をくわえて持ち上げる。 「ゆゆゆゆゆ! おどーざんじゃながっだのぉぉぉぉぉぉ!」 「だましちゃな゛ぁぁぁぁぁ!」 まりさたちは、あらん限りの呪詛の言葉を投げかける。約束を信じて姉妹殺しまでして、その上母殺しまでやらかそうとしていたのだから、それも当然だろう。 「うー、おとーさんはうそだったけど、なかまにしてやるのはほんとう」 しかし、長女ふらんは涼しい顔でそう言った。 「ゆゆゆ? それってつまり……」 「おきゃーしゃんをきょろせば、にゃかまにしてくれりゅの?」 その約束が生きている、ということを聞いて、色めき立つまりさたち。母れいむは、赤まりさの口から自分を殺す、などという言葉を聞いて愕然としている。 「うー、ふらんうそつかない」 十秒前ぐらいまでとんでもない大嘘をつき続けていたのを棚に上げて、平気な顔して長女ふらんは言った。 その背後に、赤まりさが見えた。さっき殺した赤れいむの死体を食べている。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」 「うー、ゆっくりしろー」 子ふらんが、その頭を羽で撫でている。 「おねーしゃんありがちょー、ゆっきゅちしてりゅよ!」 そのサマは、まさにゆっくり。自分と同じまりさが、とってもゆっくりしている。強いふらんたちに守られて、食べ物もたくさん貰って、ゆっくりしている。自分たちと同じまりさが……。 「お、おがーさんは、ゆっぐりじねえ!」 「ゆっきゅぢぢねえ!」 「ゆゆゆ! おぢびぢゃんだち!」 子まりさと赤まりさは、母れいむに体当たりした。優しくしてくれた母れいむを殺そうとする非道な行為。しかし、それへまりさたちを駆り立てたのは、あの赤まりさのゆっくりぶりであった。 子れいむたちが、あくまでも母殺しを拒んだのは、赤まりさのことを羨みつつも、所詮自分たちはああはなれないと確信していたからだ。同じ通常種と一くくりにされているが、れいむとまりさでは、やはり違う。 だが、まりさたちにとっては、そうではなかった。全く同じ、完全に同じ種類のまりさがあんなにゆっくりしているのだ。自分たちにだって、そうする資格はある。そうする権利はある。 「やべで、おがあさん、おごるよ!」 「ゆっぐりじね、ゆっぐりじね!」 「ゆっぎゅちぢね!」 母れいむは、怒声を上げるも、直接反撃はしなかった。もうこの状況ならば誰も非難はしないだろうに。 「おがあざん、ばりさだちのゆっぐりのだめにじね!」 「ばりじゃだちは、ゆっぐりじぢゃいよ!」 その言葉を聞いて、もう母れいむは何も言わなくなった。自分は、一生懸命この子たちをゆっくりさせてきたつもりだが、もうふらんたちに捕まってしまったこの状況では、自分の力でこの子たちをゆっくりさせることは不可能。ならば――。 なんの抵抗もしないとは言っても、成体サイズの母れいむには、赤まりさはほとんどダメージは与えられない。子まりさが必死に何度も体当たりし、さらには親ふらんにやられた傷口に噛み付いてそれを広げたりして、ようやく母れいむを死に追いやることができた。 まりさたちは、泣いていた。ゆっくりを全てに優先させると言っても、やはり、ひどい仕打ちをしたでもなく、精一杯に優しくしてくれた親を殺すことなど、望んでやったことではなかった。 「……ゆ゛っぐり……じでね、おぢびぢゃ……ん」 母れいむの最後の言葉が、まりさたちの心に突き刺さっていた。 「まりさ……ゆっぐり、じようね、ごれから」 「……ゆっぎゅちずるよ」 目的を達成しつつも、まったくゆっくりしていないまりさたち。それでも、これで、これからはゆっくりできる。あの赤まりさのように、ふらんに守られてゆっくりできる。 振り返った。そこには、自分たちを仲間に迎え入れてくれるふらん一家がいるものだと思っていた。 「……うー」 しかし、なんだかふらんたちはおかしな様子だった。はじめて見る表情。まりさたちの家族をゆっくりさせないでしていた残虐な笑顔でも、まりさたちの家族を喰らってニコニコしている笑顔でもなかった。 それは……ある種の恐れであった。捕食種でも最強の一角であるふらんたちが、たった二匹の、子まりさと赤まりさに対して向けるような表情ではないが、ふらんたちは、まりさたちに攻撃された母れいむがもうこれ以上やったら本当に死んでしまう、というほどに傷付いても、なおまりさたちが攻撃を止めぬのを見てから、ずっとこんな表情でまりさたちを見ていた。 「ゆ、ゆっくり……なかまに……」 「ゆっきゅち、にゃかまに……」 まりさたちのその声には答えず、しばし沈黙。 「うー、なんでおかあさんころしたの」 やがて、その沈黙が破られた。まりさたちにとっては信じられないような言葉で。 「ゆ……ゆ……ゆ……」 さすがに、すぐに答えることができない。 「ふ……ふら゛ん゛がや゛れ゛っでいっだんでじょおおおおおおおおおおお!」 「に゛ゃにいっぢぇるの゛! はやぐ、はやぐまりじゃだぢをにゃがまにじでね!」 「……うー、おかあさんをころすようなやつはなかまにできない」 「うー、そうだね」 「うー、ふらんもそうおもう」 「ゆゆぅ、きょのまりしゃたち、きょわいよぉぉぉ!」 ふらんにはあっさり拒否され、赤まりさには泣かれる始末である。 親ふらんが、怖がる赤まりさを抱き上げて後ろに下がっていった。 「だがら゛、ぞれはぶら゛んだぢが、やれ゛っでいっだんだよ!」 「ぞうじたら、にゃがまにじでぐれるっで!」 まりさたちの言うことは全くその通りである。 「うー、ほんとにやるとはおもわなかった」 しかし、一蹴された。 「うー、ふつうおもわない」 「うー、あいつらがおかしい」 「うー、ひどいやつら」 子ふらんたちは、親ふらんを見た。親ふらんは、頷いた。好きにしろ、という意味だ。 「うー」 子ふらんたちが集まってひーそひーそと内緒話を始める。しかし、出る結論など最初から決まっているのだ。内緒話は、三秒で終わった。 「うー、おかあさんをころしたひどいやつらは、ゆっくりしね」 「うー、ゆっくりしね」 「うー、こんなやつら、ゆっくりしないでさっさところそう」 「うー、そうしよう、ゆっくりしないでさっさとしね」 それは、親殺しへの裁き。 追い詰められた弱者が、その弱さゆえに犯してしまった罪への、強者による裁き。 その強さゆえに、自分たちはそんなことはしない、という確信の元に振り下ろされる倫理の刃。 「ゆ゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「ゆ゛ぴゃあ゛あ゛あ゛あ゛」 泣き叫ぶこと以外許されぬまりさたちは、その唯一許されたことを、殺されるまでやり続けるしかなかった。 ふらんたちの手にかかる寸前に見えたのは、親ふらんに寝かし付けられて、ゆっくりとした寝顔でゆぴぃーと眠っている赤まりさ。 そして、死ぬ寸前に上げた声は、 「お゛があざん、おどうざん、だずげでええええ!」 「おぎゃあじゃん、おぢょうじゃん、だじゅげぢぇええええ!」 「ゆっへっへ、ゆっくりさせられたくなかったら、あまあまをよこすのぜ!」 「よこすのじぇ!」 強盗まりさの親子は、その日も獲物を見つけて仕事に励んでいた。 「ゆぴ?」 「おちびでもよーしゃしないのぜ!」 「しないのじぇ!」 「あまあまほちいの?」 「ほしいのぜ、まりささまはおなかがぺーこぺーこなのぜ」 「ぺーきょぺーきょなのじぇ」 「しょれなら、まりしゃをおうちにつれていっちぇ!」 「ゆゆ? おうち、このちかくなのぜ?」 「ちかくなのじぇ?」 「うん、まりしゃあんよがいちゃくておうちにかえれにゃくてこまっちぇちゃの、おうちにつれていってくれちゃら、おれーにあまあまをあげりゅよ!」 「ゆっゆっ、そんなのおやすいごようなのぜ。……おちびのおうちにはあまあまはどのぐらいあるのぜ?」 「あるのじぇ?」 「たーくしゃん、だよ。おちょーしゃんは、きょれでふゆさんもだいじょーぶ、っていってちゃよ」 「それはすごいのぜ。それじゃ、おうちにいくのぜ。おれいははずんでくれなのぜ」 「はずんでくれなのじぇ」 「うん! まりしゃのおうちで、ゆっきゅちしていっちぇね!」 もちろん、強盗まりさはおうちに着いたらこのおちびのまりさも両親も殺して、おうちと食べ物を全ていただこうと思っている。これで、今年の冬は優雅に越せる。 「ゆっへっへ」 強盗まりさは、素晴らしい未来に今からゆっくり過ごす冬が楽しみであった。 がさがさっ―― そばの繁みが音を立てたのはその時だった。 終わり ※作者はふらんが大好き。 このSSに感想をつける
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※作者はふらんが大好き。 「ゆぴゃぁぁぁぁ、おきゃーしゃーん!」 薄暗い中、愛するれいむと子供たちのいるおうちへの道を急ぐ一匹のまりさがそんな声を聞いた。 「ゆゆっ、これはゆっくりしていない赤ちゃんのこえだね」 夜は、夜行性である恐ろしい捕食種、れみりゃやふらんが本格的に活動し始める時間だ。そのために家路を急いでいたまりさは、当然、様子を見に行くか迷った。 「おきゃーしゃーん! おきゃーしゃーん!」 ひたすら母親を呼ぶ声から、その赤ちゃんゆっくりが迷子になったであろうことが容易に知れた。暗くなるというのに、あんなに大声を出していたら、あっという間に捕食種がやってくるだろう。 「赤ちゃん、どこにいるの! ゆっくりしてね!」 まりさは逡巡した後、その声がする方へとぽよんぽよんと跳ねていった。自分にも最近子供ができた。どうしてもほうってはおけなかった。まだおうちには遠い所だが、まりさは自分の足には自信があった。 「ゆぴぃ、おきゃぁしゃーん……」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっきゅりちていっちぇね!」 まりさがその姿を見つけて声をかけると、赤ゆっくりは嬉しそうに返事をした。まりさと同じ種の赤まりさだ。 「まいごになったんだね。おうちはどっちかわかる?」 「ゆぅ……おうちは……」 「ゆゆ?」 さっきまでの張り裂けんばかりの大声はどこへいったのか、小声でぼそぼそと言う赤まりさへ、まりさが近付いて声を聞き取ろうとする。 がさがさっ―― そばの繁みが音を立てたのはその時だ。 「ゆっ!?」 そちらへ目をやって、まりさの目は、限界まで見開かれてしまった。 「うー」 「ゆ、ゆ、ゆ」 悲鳴を上げようとして、それが喉で詰まってしまったように、まりさは細切れの音声を吐いた。 「うー、ゆっくりしね」 「ふ、ふらんだぁぁぁぁぁぁ!」 それは、出会えばゆっくりできなくなること確実の凶暴な捕食種。同じ捕食種のれみりゃと似た姿をしているが、れみりゃよりも恐ろしいふらん種であった。 それほど大きくないまだ子供のふらんだったが、子ふらんでも通常種の大人ゆっくりを平気でなぶり殺してしまうだけの力がある。 「うー」 「うー」 「うー」 「ゆ……ゆぎゃぎゃぎゃああああ!」 まりさは、つかえていた悲鳴が一気に溢れ出たかのように絶叫した。一匹でも恐怖する以外になかったふらんが新たに三匹、別の繁みから飛び出したのだ。 「「「ゆっくりしね!」」」 ふらんたちが声を揃えて言った。まりさのただでさえ容量の少ない餡子脳には既に対処不可能な事態である。硬直してまったく動けなくなって当然の状態でありながらも、なんとか逃げ出した。 「ゆっくりごめんね!」 この状況では、赤ちゃんなど守りようがない。そして赤ちゃんが自身を守れるはずなどない以上、100%助からない。それならば、まりさが全力で逃げた方がまだまりさだけは生き残れる可能性がある。限りなくゼロに近くはあるが……。 あのふらんが空腹ならば、望みは無いこともない。捕まえやすく美味な赤まりさにまずは殺到するに違いないからだ。だが―― 「うー!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛、やべでえええ!」 ふらんたちは赤まりさには目もくれずに逃げ出したまりさを追い、すぐさま追いついた。そして、一匹のふらんが帽子を噛んで持ち上げた。 「ゆ゛あ゛あ゛、おぼうじがぁ!」 まりさの大切なお帽子をくわえたふらんが、嬉しそうに「うー!」と鳴いた。他のふらんは少し悔しそうにそれに唱和した。 れいむと子供たちのために一生懸命集めた食べ物がぶちまけられる。その中には、ふらん種が食べるものも入っていたが、当然、一番の御馳走があるのだから、そんなものは無視である。 「ゆっくりしね!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛」 次々にふらんがまりさに噛み付く。力の強いふらん種といっても、子供である。大人ゆっくりのまりさは容易に持ち上がらなかったが、帽子をくわえていたふらんが、それをぺっ、と吐き出して加わると、とうとうまりさの底部は地面から離れてしまった。 「や゛べぢぇぇぇぇ! はなぢでえええええ!」 必死に暴れるまりさだが、ゆっくりに牙を突き立て中身の餡子を吸い出すことができるふらんの噛む力は強い。四匹のふらんはぶんぶんと振り回されながらも、決してまりさを離そうとはしなかった。 「うー!」 「ゆ゛っ゛」 ふらんたちが甲高い嬉しそうな声を上げるのと同時に、まりさのただでさえ緊迫していた顔が、さらに切羽詰ったものになる。 「ず、ずわないでえ、ぢゅーぢゅーしないでえ」 遂に、ふらんたちがまりさの中身を吸出し始めたのだ。 子供とはいえ、四匹に一辺に吸われたのだからたまらない。まりさは見る見るうちにしぼんでいってしまった。 「もっどゆっぐり゛じだがっだ……でいぶ……あ゛がぢゃん゛」 もはやこうなっては覚悟を決めるしかなかったが、どうしても断ち難い未練は、自分の帰りを待つ愛するゆっくりたちであった。 まりさを襲った出来事は、確かに不幸には違いなかったが、それでもふらん種に捕食されたゆっくりにしては楽に死ねた方であったろう。 あまり空腹ではないふらんは、捕まえたゆっくりをいたぶって殺すことが多いからだ。 「うー、おちびたち、あまあまおいしかったかー 死の寸前、まりさの視界が捉えたのは、おそらくこの子ふらんたちの親であろう、胴付きふらんであった。その掌の上に乗っているさっきの赤まりさを見て、まりさはもう一度、二度と会えない子供たちのことを思い出した。 子れいむと子まりさが二匹ずつ、赤れいむが二匹、赤まりさが三匹の子供たち。友達のぱちゅりーとありすには、無計画にすっきりしすぎだと怒られたけれど、まりさが頑張って狩りをして一度も飢えさせたことはない。 しかし、自分が死ねば、自分ほど狩りが得意ではないれいむに同じだけの食べ物を集めることは不可能だろう。それが、どうしても未練だった。 胴付きふらんが、赤まりさを乗せた掌の上に、もう一方の掌を被せた。 ――ああ、あの赤ちゃんもたべられちゃう。ゆっくりさせてあげたかったよ。 そう思った次の瞬間、まりさの意識は途絶えた。限界を超えて中身を吸い出されてしまったのだ。 だから、その後に起こったことをまりさが見ることはなかった。見たら、とても信じられなかっただろう。ふらんは捕食種、まりさは被捕食種、その常識を覆す光景だったからだ。 「うー、いいこいいこー」 優しい顔をした胴付きふらんが、優しく優しく、赤まりさの頭を撫でていた。 赤ちゃんまりさは、自分の家族が大好きだ。 やさしいおかあさんと、いっしょにあそんでくれるおねえさんたち。 そして、なんといっても嬉しいのは、狩りを成功させた時におかあさんが頭を撫で撫でしてくれること。その瞬間、まりさはとってもゆっくりできるのだ。そのために、まりさは狩りのお手伝いをしていた。 「なんでばりさがふら゛んどいっじょにい゛う゛のぉぉぉぉ!」 狩りの獲物にはよく言われる。しかし、なんでと言っても、そんなの家族だからとしか答えようがない。 「うー、そろそろふゆさんがくるの、きょうもあまあま狩りにいくよ」 おかあさんの号令に、姉妹たちはパタパタと飛び回る。狩りは生活のためであると同時に楽しみであった。 飛べないまりさは、おかあさんの掌の上に乗って狩りに出発だ。 「ゆぅ、暗くなってきたよ……」 れいむは、不安そうに呟いてハッとして後ろを見た。 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 お姉さんたちの声に合わせて舌足らずだが、元気一杯の声を上げる赤ちゃんたち。自分の弱気な言葉が聞かれていなかったことに、母れいむは安堵した。 「おうちまでもう少しだよ、ゆっくりするのは後にして、すこしだけ急ぐよ!」 まだ、おうちは遠い。このままでは帰り着く前に完全に陽が落ちてしまう……。そんな内心の不安を表に出さずに、母れいむは子供たちを励ます。 「おうちに帰ったらゆっくりしようね!」 あくまでも、ゆっくりするために家路を急ごうと促す。こういう時、暗くなったられみりゃがくるよ! ふらんがくるよ! などと下手に脅かすと、子ゆっくりはともかく赤ゆっくりはパニクって動けなくなるだろうから、この判断は賢明であった。 急ぐだけ急いで、赤ちゃんが疲れたらおくちの中に入れて行こう、それでなんとか間に合うはず。と、母れいむは算段する。 「ゆわぁぁぁん、もうあるけにゃい~!」 しかし、赤ちゃんたちが母れいむの計算よりも遙かに早く音を上げてしまった。このれいむは賢いゆっくりだったが、餡子脳の限界と言うべきか、未来予測がどうしても楽観的過ぎた。 「ゆゆっ! おちびちゃんたち、おかあさんのお口にはいってね!」 予定よりは早いが、母れいむはそれでもまだ楽観論者であることを止めようとはしない。急げば間に合う、急げば間に合う、と思い続けていた。 赤ちゃんたちは大喜びで母れいむの口の中に入る。れいむが二匹、まりさが三匹、みんなが入ったところで口を閉じて、ぴょん、と一飛び。 「ゆっ!」 これは行ける、と確信して、母れいむはゆっくりとした笑顔になる。 口の中に赤ゆっくりがいるために、小刻みに跳ねていると、やがて口の中から、赤ゆっくりたちの寝息が聞こえてきた。 「ゆぴぃ~」 「ゆゆぅ……ゆゆぅ……」 ゆっくりしたおねむの声を聞きながら、母れいむはますますゆっくりした笑みを浮かべた。 しかし…… 「ゆぅ~、もう歩けないよ……」 「つかれたよ、あんようごかないよ」 やがて、子ゆっくりたちまでもがもう進めぬと訴え始めるに至って、母れいむはようやく自分の見込みが甘かったことを悟った。母れいむの算段では、子ゆっくりたちはおうちに着くまで元気に飛び跳ねていられるはずだったのだ。 「ゆぅ……おちびちゃんたち、がんばって進んでね、くらくなるよ」 母れいむの激励に応えようとはする子ゆっくりたちだが、苦しそうな顔をしている。母親に甘えているのではなく、本当に疲労困憊してしまっているのだ。 「くらくなったら、れみりゃとかふらんがくるよ、ゆっくりできなくなるよ!」 とうとう、控えていた脅し言葉を口から出すが、子ゆっくりたちは恐怖をあらわに必死に跳ねようとするものの、すぐに止まってゆひぃゆひぃと荒く息をついたり、転んで泣いたりする。 「ゆゆぅ……」 母れいむは困ってしまって唸るばかり。 口の中の赤ゆっくりたちを外に出して、子ゆっくりたちを口に入れようかとも考えるが、子れいむ二匹と子まりさ二匹はさすがに入らない。 妙案は浮かばず、思いつくのは泣き言ばかりだ。 「ゆぅ、まりさがいてくれたら……」 番のまりさがいてくれたら、子ゆっくりたちを運んでくれただろう。まりさはお帽子を被っているので、半分を口に入れ、半分をお帽子に入れることが可能だ。 そもそも、こんな追い込まれた状況になっているのは、番のまりさが行方不明になってしまったことが原因である。 行方不明――と、言っても、ほぼ十中八苦死んでしまっているだろうことは母れいむにはわかっている。まりさは、自分や子供を捨ててどこかに行ってしまう無責任なゆっくりではない。強くて優しくて、自分がゆっくりする時間を全て削ってでも、大勢の子供たちの腹を空かせまいと夜明けから日没まで狩りに励んでいた立派な大黒柱だったのだ。 子ゆっくり四匹に赤ゆっくり五匹を養うのには、その優れたまりさの能力と献身が必要だった。れいむには、まりさほどの食べ物を集めることはできなかった。備蓄はすぐに尽きた。 友達のありすとぱちゅりーは狩りに行っている間に子供の面倒を見てくれたり、色々とよくしてくれたが、彼女たちもそれぞれ家族があり、食べ物の援助などはやはり最低限のものにならざるを得なかった。 遠出の狩りに、子ゆっくりはともかく、五匹もの赤ゆっくりを伴ったのは、どう考えても失敗であったと言わねばなるまい。赤ゆっくりたちは、ありすとぱちゅりーに預けるべきであった。 しかし、ゆっくりを全てに優先させるゆっくり脳である。まりさがいなくなってからというもの、必死に得意でない狩りに一日を過ごし、ろくに子供たちとゆっくり遊べずに眠り起き、狩りに出かけることを繰り返していた母れいむは、赤ちゃんたちがそれに不満を漏らして「もっちょおかあしゃんとゆっきゅちちたい!」と訴えたのに心動かされてしまったのだ。 「それじゃあ、きょうはみんなでゆっくりと狩りにいこう!」 と、母れいむが言ってしまったのが、今朝のことだ。もちろん子供たちは大喜び、狩りとは言っても、実態はピクニックみたいなものであった。 一家は幸い外敵にも遭遇せずに、元気に愉快に森を進んだ。そして、草花が咲き乱れ、虫さんたちが這い回り飛び回り、おひさまが照りつけるゆっくりプレイスを発見し、そこで思う存分ゆっくりした。そのあまりの居心地のよさに、この近くに引っ越してもいいのではないかと思ったほどだ。 結果、ゆっくりとし過ぎた。正に、ゆっくりとした結果がこれである。 母れいむを擁護してやるならば、彼女は心の底から今日の子供たちとのゆっくりを活力に明日からまた頑張ろうと思っていた。しかし、そんな擁護もなんの役にも立たない。明日を迎えられるかが危うくなりつつあるのだから。 「ゆぴゃぁぁぁぁん! おきゃーしゃーん!」 「ゆゆっ!」 赤ゆっくりらしき泣き声が聞こえてきたのはその時だ。 一瞬、母れいむはそれが自分の口の中の赤ちゃんのものかと思ったが、声の聞こえてくる方角から、すぐにそんなことは無いとわかった。 「おかあさん、赤ちゃんがゆっくりしていないみたいだよ」 疲れる体を引きずるように動かしながら、子供たちが言う。 「ゆゆぅ、ゆっくりしてるばあいじゃないけど、赤ちゃんがないてるのはほうっておけないよ」 声のする方は、おうちへの最短距離からは少しズレてしまうのだが、やさしい母れいむは、そちらへとあんよを向けた。 「ゆえーん、ゆえーん」 「あ、いた。まりさだね」 泣きじゃくる一匹の赤まりさを見つけて、そばに行くと叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ? ……ゆっきゅり、ちて、いっちぇね!」 餡の繋がらぬ他ゆっくりでも、赤ちゃんの舌足らずな挨拶には、見聞きするゆっくりをゆっくりさせる効果がある。母れいむも、それに遅れて跳ねずにずーりずーりとやってくる子供たちも、赤まりさの挨拶にゆっくりと微笑む。 「どうしたの? まいごになったの?」 「あんよがいちゃくてあるけにゃいの!」 話を聞くと、おうちの場所はわかるのだが、歩けないので帰れずに途方にくれていたらしい。 「ゆゆ? おうちはすぐちかくなの?」 「うん、ありゅければ、しゅぐにつくよ!」 赤まりさがそうならば、相当に近いのだろう。母れいむはこの子を送ってあげることにした。 「おちびちゃんたち、ゆっくりおそとにでてね」 口を開けて、体を傾けると、ころころころりと口内で寝ていた赤ゆっくりたちが転がり出る。もちろん、優しく衝撃を与えぬようにしているし、そこは心得たものでおねえさんの子ゆっくりたちが赤ゆっくりたちを受け止めて上げる。 「ゆゆ? もうおうちにちゅいたの?」 「このおちびちゃんをおうちに送ってくるから、少しここで待っててね! おねえさんたちの言うことを聞いてね!」 「ゆっ!?」 そう言われて、家族以外の赤まりさがいることに気付く。 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 赤ちゃん同士の挨拶に、とってもゆっくりした気分になった母れいむだが、ゆっくりしている場合じゃないことを思い出し、赤まりさに頭の上に乗るように促す。口の中に入れては、道案内をしにくいからだ。 子ゆっくりたちに手伝ってもらって、赤まりさは母れいむの頭上に乗った。 「ゆゆーん、おしょらをとんじぇるみちゃい~」 「ゆぅ、いいにゃあ、いいにゃあ」 「ゆっきゅちちてるね! うらやまちぃね!」 おかあさんの頭上で楽しそうな赤まりさを羨望の眼差しで見つめる赤ゆっくりたち。 「すぐにかえってくるから、おうちにかえろうね。おうちにかえったらゆっくりあそぼうね」 母れいむがそう言って赤ゆっくりたちを宥める。 「みんにゃのおうちはどきょにゃの?」 頭上の赤まりさが尋ねる。ちょっとここからは遠くて、今から急いで帰っても真っ暗になる前に着けないかもしれない、と言うと、赤まりさは言った。 「しょれなら、まりしゃのおうちにおとまりしゅればいいよ!」 「ゆゆっ」 そう言われてみれば、そうすることができるのならば、願っても無い申し出である。詳しく話を聞くと、赤まりさの家族は、子供は赤まりさだけで、両親ゆっくりとの三匹家族。その上におうちが広いのでスペースがかなり余っているらしい。 「しょれに、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、かりのめーじんなんだよ! おうちにはおいちーあまあまがたーくしゃんありゅよ!」 さらに、この言葉である。 おうちに帰るのに精一杯で、食料の備蓄も乏しい事情から、今晩のごはんはおうちの近くに生えている美味しくない草さんを食べるしかないと覚悟していた母れいむの心を動かすには十分過ぎた。 「あまあま!」 「あまあまちゃべたいよ!」 「ゆっきゅちおとまりしよーよ!」 もちろん、子供たちの心は一気に赤まりさのありがたい申し出を受ける方に傾く。 「まりしゃをおうちにつれていけば、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、おれいにあまあまをくれりゅよ」 「ゆっ、それじゃえんりょせずに、ゆっくりおとまりさせてもらうよ」 状況が状況であるから、母れいむもありがたく受けることにした。母れいむがこの赤まりさの両親の立場だったとしたら、大事な子供をおうちに連れてきてくれたゆっくりには精一杯のおもてなしをするのが当然と思う。きっとこの赤まりさの言うように、両親は快くゆっくりと歓迎してくれるに違いない。 「それじゃあ、おうちのほうを教えてね!」 「ゆー、あっち!」 赤まりさがそう言いながら、母れいむから見てやや右斜め前方を向くが、頭の上に乗っているために、母れいむからはそれが見えない。 「こっちだよ!」 「きょっち、きょっち!」 しかし、子供たちがそれを見て、そっちの方へと跳ねて行くので、それを見て、母れいむは方向を知ることができた。……当初は自分だけで送って行こうとしていたのだが、そうしたら方向がわからなかっただろう。その辺は餡子脳である。 まだまだ遠い道のりと思えば、余力が残っていても、それを振り絞る気力が無くなってしまいがちだ。すぐそこでゆっくり休めて美味しいものも食べられると知って、子ゆっくりたちは先ほどまでの疲れを吹き飛ばして、ぴょんぴょんと跳ねていく。おかあさんのおくちの中で休んだ赤ゆっくりたちもすっかり元気になっていた。 「きょきょだよ!」 赤まりさの言った通り、おうちはすぐだった。 「それじゃ、ゆっくりおじゃまします」 「ゆっくりおじゃまします」 「ゆっきゅちおじゃましみゃす」 礼儀正しく、挨拶しておうちに入っていくれいむ一家。おうちは、天然の洞窟で、中は確かに凄く広かった。一家がおとまりしても、それでもなお広いぐらいだ。 「ゆわわわわ!」 「あみゃあみゃだー!」 そして、さらに、おうちの隅にこんもりと積み上がった、とっても甘い臭いのする大量のあまあま! 黒い山、白い山、黄色い山と、色とりどりのそれはどの色もとっても美味しそうだ。 「ゆっくりしてね! まだたべちゃだめだよ!」 今にもそのあまあま山の登山を開始しそうな子供たちを、母れいむは制止する。大事な赤ちゃんを送り届けたれいむたちへのお礼に御馳走してくれるだろうことは全く疑っていなかったが、それでも一応、両親に許しを得るべきであろうと思ったのだ。この辺り、母れいむはゆっくりとしてはだいぶ自制心がある方だ。 「おとうさんとおかあさんはいないの?」 しかし、その許可を取るべき両親が見当たらない。おそらくは、赤まりさを探しに出ているのであろうが、いつ帰ってくるのかわからない。 「ゆぅ、赤ちゃん……」 おうちの入り口の所にいる赤まりさへと声をかける。とりあえず子供たちは母の制止に従って、よだれをダラダラと垂れ流しつつも、おとなしくあまあまの山を見つめているが、あれだけの御馳走を目の前にしては、そう我慢は続かないだろう。 だから、赤まりさの許しを得ようと思ったのだ。もちろん、赤まりさが、 「まりしゃをおうちにつれてきてくれちゃみんにゃにごちそーすりゅよ!」 と、言ってくれることは疑っていない。 「……ゆびゃっ!」 しかし、それどころではないものを赤まりさの背後に見てしまい、母れいむは短く絶叫して硬直してしまう。 その声を聞いて母れいむを見て、その硬直ぶりを見て母れいむの視線の先を追った子ゆっくりと赤ゆっくりたちも同じく、 「ゆぴぃ!」 「ゆああ!」 「ゆ、ゆゆぅぅぅぅ!」 と、震える声で叫んで硬直し、すぐにガタガタ震え出し、赤ゆっくりたちは全員残らずしーしーをもらした。 「うー!」 赤まりさの背後、つまりおうちの入り口の所に、胴付きのふらんが立っていた。 すぅ、と右足を上げる。その先には赤まりさがいる。 ――潰される! 母れいむたちは、もちろんそう思った。しかし、ふらんは大きく足を踏み出して、赤まりさをまたいだ。 ほっ、としたのも束の間、ふらんがそうやっておうちの中に入ってくるのと同時に、その背後から四匹の子ふらんが羽をパタパタさせて現れる。 「ゆあああああああ!」 「ふ……ふらんだあぁぁぁぁ!」 「きょわいよー!」 「おきゃーしゃーん!」 たちまち恐怖の叫びが上がり、子供たちは一斉に母親の元へと集まっていく。 「ゆびぃぃぃ……」 もう完全にビビりまくって涙ぐんでいた母れいむだが、そうやって子供たちに頼られて、なけなしの勇気を総動員した。 「おちびちゃんたち! いそいでおくちに入ってね! ゆっくりしたらだめだよ!」 あーん、と大口を開けて、子ゆっくり四匹と赤ゆっくり五匹をその中に受け入れる。口の中がパンパンになるが、すぐに母れいむは、ぷくーっ、と空気を吸いこんで膨れた。 これは、威嚇であると同時に、口の中のスペースを広げて、子供たちがぎゅうぎゅう詰めになって苦しむのを防ぐ効果があった。 ――おちびちゃんたちは、れいむが守るよ! 声は出せないが、れいむは心中で叫んだ。ちらりと赤まりさを見た。 ……かわいそうだが、この状況ではとても助けられない。とってもゆっくりとした赤ちゃんなので心は痛むが、しょうがない。 胴付きふらんが、後ろを振り返って赤まりさを掴み上げた。 自分が子供たちを口の中に隠してぷくーっと威嚇したので、とりあえず赤まりさを捕獲したのだ、と母れいむは思った。 「うー、いいこいいこー」 「ゆ! ……」 だがしかし、思わぬ光景に、声を出すまいと決意していたのに、少し声を上げてしまう。それはそうだろう。凶悪さで知られる捕食種ふらんが、赤まりさの頭を撫でて、あろうことか、赤まりさがとってもゆっくりした笑顔で言ったのだ。 「おきゃーしゃん!」 と。 「……」 ――ど、どぼい゛う゛ごどな゛のぉぉぉぉぉぉぉ! と、叫び散らしたいのを必死でこらえる母れいむ。 「うー、よくやったー」 「うー、たいりょー(大漁)」 「うー、うー」 子ふらんたちも、そのまりさの周りを飛んで、彼女を誉めている。まりさは、とても嬉しそうだ。 ――なんで? なに? なんなの? なにがどうなってこうなってるの? 母れいむは、全く事態を把握できない。餡子脳ゆえではなく、通常種ゆっくりの常識とあまりにも乖離した事態だからだ。 まりさは、産まれた時のことを今でも覚えている。 「ゆ、ゆっきゅちちていっちぇね!」 本能に従って、生まれ落ちた瞬間に元気に挨拶した。 「うー!」 目の前には、パタパタ飛び回るおねえさんたちがいた。でも、はじめはそれをおねえさんとは認識できなかった。 「ゆゆ?」 このゆっくりたちは誰だろう? まりさと餡の繋がった姉妹たちはどこにいるのだろう? 「ゆべ!」 後ろから、そんな声が聞こえた。ゆっくりと振り返ると、そこには飛び回るおねえさんたちと同じ顔をして、胴体と手足がついたゆっくりがいた。 「うー! ゆっくりしていってね!」 「ゆ! ゆっきゅちちていっちぇね!」 まりさは、心の底からわき上がるゆっくりとした気分を吐き出すように、元気に答えた。 「うー、ゆっくりしろ」 飛び回っていたゆっくりたちも、そう言ってまりさを祝福してくれているようだった。 「うー、これたべる」 「むーちゃ、むーちゃ、……ち、ちあわちぇぇぇぇ!」 彼女たちがくれた黒っぽいものは、信じられないような美味しさだった。 狩りをしたのは、生後すぐだった。わけがわからず、その辺に放置されてしまい、悲しくて泣き喚いた。ゆんゆん泣いていると、一匹の大人のまりさがぽよんぽよんと跳ねて来た。 はじめて見る同類だった。一緒に住んでいるふらんというゆっくりたちよりも自分に似ていることに、まりさは親近感を抱いた。 「ゆゆ、赤ちゃん、どうしたの?」 だが、そう言って近付いてきたその大人まりさは、ふらんたちが現れると目を見開いて絶叫し、後ろを向いた。しかし、後ろにもふらんがいることを知ると右左と視線を走らせ、そちらにもふらんの姿を見出すと、泣き喚いてその場で動けなくなった。 まりさには、それが不思議だった。何をそんなに怖がっているのか? ふらんたちは、とてもやさしいのに。 そのやさしいふらんたちが大人まりさをなぶり殺すのを、まりさは呆然と眺めていた。 「うー、まりさ、これたべろー」 大人まりさの中に入っていた黒っぽいもの。そうか、あれはそういうものだったのか、と思った。普通ならば、そんなものは食べられないと思うところだが、まりさは何しろ生まれて初めて食べたものがそれで、しかもその美味は忘れ難いものであった。 「ゆ、ゆっきゅちたべるよ!」 戸惑いながらも、食欲のままに食べてしまった。 胴付きふらんを、おきゃーしゃん、胴のついていないふらんたちを、おねーしゃん、と呼んで、まりさに似たゆっくりや赤いリボンをつけたゆっくりなどの中身を食べて暮らしているうちに、まりさは、自分が姿こそ違えどふらんたちの側――つまり、帽子やリボンのゆっくりたちを捕食する側――であり、姿こそ同じだが、帽子をかぶったゆっくりたちが捕食される側であると認識していった。 狩りのお手伝いについてもゆっくりりかいした。最初は寂しくて泣いていたが、その内に、意識してわざと泣くようになった。 獲物たちは大概、まりさがふらんと一緒に暮らしていて、その狩りを手伝い、ゆっくりを食べていることを口を極めて非難した。おかしい、ひどい、ゆっくりしてない! 「まりしゃ、ゆっきゅちちてるよ」 だが、とってもゆっくりしているまりさはいささかの痛痒も感じない。そのゆっくりとした笑顔に、獲物たちは絶望する。本当にゆっくりしているいい笑顔だからだ。 まりさは、すっかりふらん一家の一員であることの幸福を喜び、ゆっくりするようになっていた。なにしろ、ふらんは、家族たちは強い。ゆっくりたちは、その姿を見ただけでしーしーちびって泣き喚くほどである。 生物として相当弱い部類に属する赤ゆっくりとしては、そんなふらんに頼もしさを感じ、それを恐れ抵抗らしい抵抗もできずになぶられ食われていくゆっくりに軽蔑を感じざるを得ない。 見た目こそ同じだが、まりさはあいつらとは違う。強い強いふらんたちの仲間なのだ。そのことへの幸運に感謝する。 まりさは、この家族の一員であることを当然だと思っていた。だって、ゆっくりできるのだから。 胴付きふらんは、成果に満足していた。生まれたばかりの四匹の子供たちのためにゆっくりれいむを狩って来た。頭からは茎が生え、その先には五つの赤ゆっくりがゆっくりと誕生の時を待っていた。 「うー、やった。ごちそう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 当然、れいむは泣き喚いているが、ふらんの力には到底かなわない。 おうちに帰ると、早速、赤ゆっくりたちを収穫して一匹ずつ子供へと与える。ふらん種の本能か、子供たちは教えられずとも、赤ゆっくりたちを軽く殺さない程度に痛め付ける。 と、言っても、まだ生まれる時期でないところを無理に茎からもぎ取られた赤ゆっくりだから、すぐに死んでしまった。 「……うー!」 胴付きふらん、最後に一匹残ったまりさを見ていて思いついた。 元々、ふらん種はゆっくりの中でも知能が高い方である。同じ捕食種で性質や能力も似ているれみりゃが馬鹿で、そこを衝かれると通常種に敗北することもあるのに対し、ふらんにそのような例が稀であるのはそのためだ。 その胴付きふらんは、かつて自分の親が、一匹の赤ゆっくりをすぐに殺さずにその辺に放置して、その泣き声を聞いてやってきたゆっくりたちを捕獲していたのを思い出し、自分もそれをやってみようと思った。そして、親が囮に使った赤ゆっくりをすぐに食べてしまったのに対し、すぐ殺さずに囮として使い続けようとした。 子供たちが襲わないように、これは姿形は違えど妹なのだ、と言って聞かせた。それでも、殺されてしまったらしょうがないと思っていたのだが、幸い、子ふらんたちは赤まりさを妹として扱っていた。赤まりさを囮にした狩りが順調で、一度たりとも空腹にさせたことがないせいであったろう。 親ふらんも、この赤まりさには、人間が使い馴染んだ道具に持つのに似た愛着を抱いていた。いざとなれば、真っ先に食料にすることは動かなかったが。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 ぷくーっと膨らみながらも混乱の絶頂の母れいむ。ふらん一家は、赤まりさを誉めるのにかかりっきりでれいむたちのことを忘れてしまったかのようだ。 ――いまならゆっくりしなければにげられるかもしれないよ。 母れいむは、ぽよん、と全力の跳躍をした。口の中に子供たちがいるので、当然その飛距離は悲しいほどに短い。 もちろん、ふらんたちはれいむのことを忘れていたわけではない。ただ単に、出入り口を完全に塞いでいるから逃げられっこないと判断していたので平気で目を離していただけだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛」 母れいむも、逃げ道が完全に絶たれていることにたちまち気付いた。 ぷくーっ! 膨れる。それぐらいしかやれることが無いのだ。 「ゆゆぅ、ぎゅうぎゅうしてるのがすこしきついけど、ゆっくりしてるよ!」 「さすがのふらんも、おかあさんのぷくーにはなにもできないんだね!」 「しゃすがおきゃーしゃん!」 「ゆっきゅちできるよ!」 「しゅーり、しゅーりしようにぇ!」 特に何も起こらないので、口の中の子供たちは、母れいむの威嚇にふらんたちが恐れをなして手出しができない素晴らしい情景を想像してゆっくりしている。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ」 喋ったら、ぎゅうぎゅう詰めの子供たちが零れ落ちそうなので、母れいむは唸ることしかできない。 「うー、そろそろちいさいあまあまであそびたい」 「うー」 やがて、恐れていた瞬間が来た。子ふらんたちに言われて、親ふらんが母れいむの方へと向かってきた。 「うー、くちのなかのあまあまよこせ」 「ゆ゛ーっ!」 母れいむは頑として拒否する。 無造作に親ふらんのパンチが母れいむを叩く。凄まじい衝撃。ごろんと転がった母れいむの口の中に子供たちの悲鳴が響き渡る。 「ゆっくりできないよ! なんなの!」 「おかーさん! どうしたの! ゆっくりさせてね!」 「ゆあああ、いちゃいいいい」 「ゆべっ」 「お、おねーしゃんがしんじゃうよ!」 一匹の子れいむは、丁度殴られた所にいたため、母れいむの頬越しとはいえ衝撃をモロに食らってしまった。 口の中に、甘い味がしたのに、母れいむは恐怖する。中の子供たちが負傷か、或いは餡を吐いたかに違いないからだ。 「うー、うー、うー」 ぼこ、ぼこ、ぼこ、と滅多打ちにされ、母れいむの頬は腫れ上がる。口の中の悲鳴も一層大きく、切迫感のあるものになっていった。 「いぢゃい゛ぃぃぃぃぃ!」 もう、痛みを訴えるしかできなくなったようだ。それでも、母れいむは口を開けなかった。 「うー」 親ふらんは、少し迷った。このまま殴り続ければ口を開かせることはできるだろうが、その時には、中の子供たちは死んでいるだろう。ただ食べるだけならそれでもいいが、食べる前にあそぶのがふらんの習性であり、子ふらんたちもそれを楽しみにしている。 「うー、ればてぃん!」 子ふらんの一匹が言った。 「うー、おかーさんのればてぃんみたい」 「うー、みたいみたい」 他の姉妹たちも、それに唱和し出す。 「うー」 親ふらんは頷いて、奥の方に行った。そこには狩りの途中で見つけた色々なものが置いてある。その中から、ればてぃんを取り出す。 胴付きふらん種は、棒状の武器を使う時にそれを「ればてぃん」と呼称することがある。 ただの木の棒だったりすることが多いが、この親ふらんが持っているのは、人間がキャンプをした時に忘れていったナイフであった。 「ゆ゛っ!」 親ふらんが離れたので一息ついていた母れいむは、その光に本能的な恐ろしさを感じてずりずりと後ずさった。 しかし、そんなのお構い無しに親ふらんはずんずん近付いてきて、母れいむを押さえつけた。左手一本でだ。それほどに胴付きふらんとごく普通のゆっくりれいむの間には力の差がある。 突き刺しては中の子供を傷つけてしまうので、母れいむの頬を軽く切った。一度目は浅すぎて表面が切れただけだったが、何度かやっているうちに、切れ目が頬に口を開けた。 「うー!」 切れ目に指を突っ込んで左右に思い切り広げる。 「ゆ゛びびび」 右頬にぱっくりと口が開き、震える子供たちが丸見えになった。 「うー」 親ふらんは手を突っ込んで、どんどん子供たちを取り出していってしまう。 「うー、あそぼあそぼ!」 「うー、なにしてあそぶ?」 「うー、ぽんぽん」 「うー、ぽんぽんやろー」 たちまち、子ふらんたちが群がって来て、一匹の子れいむをくわえて行ってしまう。 「おぢびぢゃんがああああああ!」 「おねーさんつれてかないでええええ!」 「ゆわーん、きょわいよー!」 残された母れいむと子供たちは、それを見ていることしかできない。子供たちはダメージと恐怖で動けないし、母れいむは子ふらんたちの邪魔をしないように、親ふらんが押さえつけている。 子ふらんの一匹が子れいむをくわえたまま飛び上がり、他の三匹が地面に降りる。 「うー!」 子ふらんが、くわえていた子れいむを離した。 「ゆっ、おそらを、ゆべ」 とんでるみたーい、とお決まりの台詞を続けようとした子れいむだが、その前に、衝撃を受けて中断。 衝撃は、地面への衝突によるものではなく、下にいた子ふらんが羽で叩いたためであった。 「うー!」 ぽーんと飛んでいった子れいむの先にいた子ふらんが、羽で子れいむを叩く。後は、その繰り返しだ。最初に上から子れいむを落とした子ふらんも地上に降りてそれに加わる。 ぽんぽん、と子ふらんたちが呼んでいる遊びだ。いわば、ゆっくりを使った蹴鞠のようなものか。 「うー!」 「いぢゃい!」 すぐに殺さないように、それほど強くは叩かないが、それでも子ゆっくりには相当な激痛だ。一定の間隔を置いて連続して加えられる痛みというのも精神へのダメージは大きかった。さらには、子ふらんが打ち返し損なえば、地面に落ちて痛い目を見る。つまりは、なにがどう転んでもこのまま子れいむは死ぬまで痛みを感じ続けるのだ。 「うー、こいつもうおしまい」 しばらくすると、子れいむが悲鳴を上げなくなった。まだ生きてはいるのだが、このぽんぽん遊びは打つ度に上がる悲鳴も楽しみの一つである。 「ゆっ、しょれたべちぇいい?」 子ふらんたちのぽんぽん遊びをゆっゆっと楽しそうに見ていた赤まりさが涎をたらしながら、尋ねる。 「うー、いいよ」 「ゅゅゅ、や……め……ちぇ……」 「ゆわーい、むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」 「うー、おいしいか」 半死半生の子れいむの言うことなど全く聞く耳持たずにそれを貪り食らう赤まりさ。地獄のような光景を見る子れいむの姉妹たちの目に浮かぶのは一様に恐怖、というわけでもなく、そこには恐怖を上回る羨望があった。 ――なんで、あのまりさはあんなにゆっくりできているの。 強いふらんたちにいじめられるどころか可愛がられて、むーちゃむーちゃして、ちあわちぇで、自分たちと同じ通常種のゆっくりなのに、どうして自分たちはふらんになぶられ殺され食べられるのを恐れてゆっくりできないのに、なぜあのまりさはその逆なのだ。 「うー、べつのでやろー」 「うー、まだまだたーくさん」 「うー、ぽんぽんできるおおきいの三ついる」 子れいむ一匹が鬼籍に入ったが、まだ子れいむ一匹、子まりさ二匹がいる。赤れいむ二匹と赤まりさ三匹もいるが、これは小さいので数に入れていない。あまり小さいと打ち返すのが困難で地上への落下で死んでしまうことが多いため、ぽんぽん遊びには適していないのだ。 「うー、こんどはくろいの」 「ゆびぃぃぃ、やべで! やべでええええ!」 くわえられた子まりさが絶叫して懇願する。おそらをとんでるみたい、などと言う余裕も無かった。さっきの子れいむのようになぶられ生きながら食べられて殺される。そんな運命を受け入れられるわけはない。わけはないが、それに抗うことなどできない。聞く耳持たれぬに決まっている懇願を繰り返すだけ。 そして、子まりさもまた当然同じ運命を辿った。ただ、子れいむと少し違ったのは、途中で帽子が脱げてしまったことだ。 「うー」 「いぢゃい! おぼ!」 「うー」 「おぼうじ! いぢゃ!」 「うー」 「ばりざのおぼ!」 「うー」 「おぼ、いぢゃ!」 痛みへの悲鳴と、帽子を求める悲鳴が混ざり合ってわけのわからぬことになり、この悲鳴には子ふらんたちは大喜びであった。 「うー、こいつもおしまい」 「うー、こいつはたのしかった」 「うー、おぼうしかえしてやろうか」 「……ばりざ……の、おぼ……がえじで……」 死に掛けの状態だというのに、帽子をくわえてきた子ふらんに向かって懇願する子まりさ。 「ゆー! そのおぼうちちょうらい!」 だが、ふらん一家の赤まりさが言うと、子ふらんは赤まりさの方へと帽子を落とした。そもそも、帽子を返してやろうというのは気紛れ以外のなにものでもなかったのだから、家族の「妹」である赤まりさの方を優先するのは当然と言えた。 「うー、これくしょんにするのか」 「ゆん! このおぼうちカッコいいにぇ!」 人間の目からは全く同じに見えるゆっくりの装飾具だが、ゆっくりたちはこれで個体識別をするので、違いがわかる。それゆえに、ゆっくりの目から見ると、中にはカッコいいと分類されるものもある。この赤まりさは、自分と同じまりさ種の帽子で気に入ったものをコレクションしていた。もちろん、死ぬ前にまりさから離れて死臭がついていないものに限ってだが。 「ゆ゛ぅぅぅ」 赤まりさが嬉々として自分のお帽子を持ち去ってしまうのをなす術なく見ながら、子まりさは絶命した。 (後編へ?)
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※作者はふらんが大好き。 「ゆぴゃぁぁぁぁ、おきゃーしゃーん!」 薄暗い中、愛するれいむと子供たちのいるおうちへの道を急ぐ一匹のまりさがそんな声を聞いた。 「ゆゆっ、これはゆっくりしていない赤ちゃんのこえだね」 夜は、夜行性である恐ろしい捕食種、れみりゃやふらんが本格的に活動し始める時間だ。そのために家路を急いでいたまりさは、当然、様子を見に行くか迷った。 「おきゃーしゃーん! おきゃーしゃーん!」 ひたすら母親を呼ぶ声から、その赤ちゃんゆっくりが迷子になったであろうことが容易に知れた。暗くなるというのに、あんなに大声を出していたら、あっという間に捕食種がやってくるだろう。 「赤ちゃん、どこにいるの! ゆっくりしてね!」 まりさは逡巡した後、その声がする方へとぽよんぽよんと跳ねていった。自分にも最近子供ができた。どうしてもほうってはおけなかった。まだおうちには遠い所だが、まりさは自分の足には自信があった。 「ゆぴぃ、おきゃぁしゃーん……」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっきゅりちていっちぇね!」 まりさがその姿を見つけて声をかけると、赤ゆっくりは嬉しそうに返事をした。まりさと同じ種の赤まりさだ。 「まいごになったんだね。おうちはどっちかわかる?」 「ゆぅ……おうちは……」 「ゆゆ?」 さっきまでの張り裂けんばかりの大声はどこへいったのか、小声でぼそぼそと言う赤まりさへ、まりさが近付いて声を聞き取ろうとする。 がさがさっ―― そばの繁みが音を立てたのはその時だ。 「ゆっ!?」 そちらへ目をやって、まりさの目は、限界まで見開かれてしまった。 「うー」 「ゆ、ゆ、ゆ」 悲鳴を上げようとして、それが喉で詰まってしまったように、まりさは細切れの音声を吐いた。 「うー、ゆっくりしね」 「ふ、ふらんだぁぁぁぁぁぁ!」 それは、出会えばゆっくりできなくなること確実の凶暴な捕食種。同じ捕食種のれみりゃと似た姿をしているが、れみりゃよりも恐ろしいふらん種であった。 それほど大きくないまだ子供のふらんだったが、子ふらんでも通常種の大人ゆっくりを平気でなぶり殺してしまうだけの力がある。 「うー」 「うー」 「うー」 「ゆ……ゆぎゃぎゃぎゃああああ!」 まりさは、つかえていた悲鳴が一気に溢れ出たかのように絶叫した。一匹でも恐怖する以外になかったふらんが新たに三匹、別の繁みから飛び出したのだ。 「「「ゆっくりしね!」」」 ふらんたちが声を揃えて言った。まりさのただでさえ容量の少ない餡子脳には既に対処不可能な事態である。硬直してまったく動けなくなって当然の状態でありながらも、なんとか逃げ出した。 「ゆっくりごめんね!」 この状況では、赤ちゃんなど守りようがない。そして赤ちゃんが自身を守れるはずなどない以上、100%助からない。それならば、まりさが全力で逃げた方がまだまりさだけは生き残れる可能性がある。限りなくゼロに近くはあるが……。 あのふらんが空腹ならば、望みは無いこともない。捕まえやすく美味な赤まりさにまずは殺到するに違いないからだ。だが―― 「うー!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛、やべでえええ!」 ふらんたちは赤まりさには目もくれずに逃げ出したまりさを追い、すぐさま追いついた。そして、一匹のふらんが帽子を噛んで持ち上げた。 「ゆ゛あ゛あ゛、おぼうじがぁ!」 まりさの大切なお帽子をくわえたふらんが、嬉しそうに「うー!」と鳴いた。他のふらんは少し悔しそうにそれに唱和した。 れいむと子供たちのために一生懸命集めた食べ物がぶちまけられる。その中には、ふらん種が食べるものも入っていたが、当然、一番の御馳走があるのだから、そんなものは無視である。 「ゆっくりしね!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛」 次々にふらんがまりさに噛み付く。力の強いふらん種といっても、子供である。大人ゆっくりのまりさは容易に持ち上がらなかったが、帽子をくわえていたふらんが、それをぺっ、と吐き出して加わると、とうとうまりさの底部は地面から離れてしまった。 「や゛べぢぇぇぇぇ! はなぢでえええええ!」 必死に暴れるまりさだが、ゆっくりに牙を突き立て中身の餡子を吸い出すことができるふらんの噛む力は強い。四匹のふらんはぶんぶんと振り回されながらも、決してまりさを離そうとはしなかった。 「うー!」 「ゆ゛っ゛」 ふらんたちが甲高い嬉しそうな声を上げるのと同時に、まりさのただでさえ緊迫していた顔が、さらに切羽詰ったものになる。 「ず、ずわないでえ、ぢゅーぢゅーしないでえ」 遂に、ふらんたちがまりさの中身を吸出し始めたのだ。 子供とはいえ、四匹に一辺に吸われたのだからたまらない。まりさは見る見るうちにしぼんでいってしまった。 「もっどゆっぐり゛じだがっだ……でいぶ……あ゛がぢゃん゛」 もはやこうなっては覚悟を決めるしかなかったが、どうしても断ち難い未練は、自分の帰りを待つ愛するゆっくりたちであった。 まりさを襲った出来事は、確かに不幸には違いなかったが、それでもふらん種に捕食されたゆっくりにしては楽に死ねた方であったろう。 あまり空腹ではないふらんは、捕まえたゆっくりをいたぶって殺すことが多いからだ。 「うー、おちびたち、あまあまおいしかったかー 死の寸前、まりさの視界が捉えたのは、おそらくこの子ふらんたちの親であろう、胴付きふらんであった。その掌の上に乗っているさっきの赤まりさを見て、まりさはもう一度、二度と会えない子供たちのことを思い出した。 子れいむと子まりさが二匹ずつ、赤れいむが二匹、赤まりさが三匹の子供たち。友達のぱちゅりーとありすには、無計画にすっきりしすぎだと怒られたけれど、まりさが頑張って狩りをして一度も飢えさせたことはない。 しかし、自分が死ねば、自分ほど狩りが得意ではないれいむに同じだけの食べ物を集めることは不可能だろう。それが、どうしても未練だった。 胴付きふらんが、赤まりさを乗せた掌の上に、もう一方の掌を被せた。 ――ああ、あの赤ちゃんもたべられちゃう。ゆっくりさせてあげたかったよ。 そう思った次の瞬間、まりさの意識は途絶えた。限界を超えて中身を吸い出されてしまったのだ。 だから、その後に起こったことをまりさが見ることはなかった。見たら、とても信じられなかっただろう。ふらんは捕食種、まりさは被捕食種、その常識を覆す光景だったからだ。 「うー、いいこいいこー」 優しい顔をした胴付きふらんが、優しく優しく、赤まりさの頭を撫でていた。 赤ちゃんまりさは、自分の家族が大好きだ。 やさしいおかあさんと、いっしょにあそんでくれるおねえさんたち。 そして、なんといっても嬉しいのは、狩りを成功させた時におかあさんが頭を撫で撫でしてくれること。その瞬間、まりさはとってもゆっくりできるのだ。そのために、まりさは狩りのお手伝いをしていた。 「なんでばりさがふら゛んどいっじょにい゛う゛のぉぉぉぉ!」 狩りの獲物にはよく言われる。しかし、なんでと言っても、そんなの家族だからとしか答えようがない。 「うー、そろそろふゆさんがくるの、きょうもあまあま狩りにいくよ」 おかあさんの号令に、姉妹たちはパタパタと飛び回る。狩りは生活のためであると同時に楽しみであった。 飛べないまりさは、おかあさんの掌の上に乗って狩りに出発だ。 「ゆぅ、暗くなってきたよ……」 れいむは、不安そうに呟いてハッとして後ろを見た。 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 お姉さんたちの声に合わせて舌足らずだが、元気一杯の声を上げる赤ちゃんたち。自分の弱気な言葉が聞かれていなかったことに、母れいむは安堵した。 「おうちまでもう少しだよ、ゆっくりするのは後にして、すこしだけ急ぐよ!」 まだ、おうちは遠い。このままでは帰り着く前に完全に陽が落ちてしまう……。そんな内心の不安を表に出さずに、母れいむは子供たちを励ます。 「おうちに帰ったらゆっくりしようね!」 あくまでも、ゆっくりするために家路を急ごうと促す。こういう時、暗くなったられみりゃがくるよ! ふらんがくるよ! などと下手に脅かすと、子ゆっくりはともかく赤ゆっくりはパニクって動けなくなるだろうから、この判断は賢明であった。 急ぐだけ急いで、赤ちゃんが疲れたらおくちの中に入れて行こう、それでなんとか間に合うはず。と、母れいむは算段する。 「ゆわぁぁぁん、もうあるけにゃい~!」 しかし、赤ちゃんたちが母れいむの計算よりも遙かに早く音を上げてしまった。このれいむは賢いゆっくりだったが、餡子脳の限界と言うべきか、未来予測がどうしても楽観的過ぎた。 「ゆゆっ! おちびちゃんたち、おかあさんのお口にはいってね!」 予定よりは早いが、母れいむはそれでもまだ楽観論者であることを止めようとはしない。急げば間に合う、急げば間に合う、と思い続けていた。 赤ちゃんたちは大喜びで母れいむの口の中に入る。れいむが二匹、まりさが三匹、みんなが入ったところで口を閉じて、ぴょん、と一飛び。 「ゆっ!」 これは行ける、と確信して、母れいむはゆっくりとした笑顔になる。 口の中に赤ゆっくりがいるために、小刻みに跳ねていると、やがて口の中から、赤ゆっくりたちの寝息が聞こえてきた。 「ゆぴぃ~」 「ゆゆぅ……ゆゆぅ……」 ゆっくりしたおねむの声を聞きながら、母れいむはますますゆっくりした笑みを浮かべた。 しかし…… 「ゆぅ~、もう歩けないよ……」 「つかれたよ、あんようごかないよ」 やがて、子ゆっくりたちまでもがもう進めぬと訴え始めるに至って、母れいむはようやく自分の見込みが甘かったことを悟った。母れいむの算段では、子ゆっくりたちはおうちに着くまで元気に飛び跳ねていられるはずだったのだ。 「ゆぅ……おちびちゃんたち、がんばって進んでね、くらくなるよ」 母れいむの激励に応えようとはする子ゆっくりたちだが、苦しそうな顔をしている。母親に甘えているのではなく、本当に疲労困憊してしまっているのだ。 「くらくなったら、れみりゃとかふらんがくるよ、ゆっくりできなくなるよ!」 とうとう、控えていた脅し言葉を口から出すが、子ゆっくりたちは恐怖をあらわに必死に跳ねようとするものの、すぐに止まってゆひぃゆひぃと荒く息をついたり、転んで泣いたりする。 「ゆゆぅ……」 母れいむは困ってしまって唸るばかり。 口の中の赤ゆっくりたちを外に出して、子ゆっくりたちを口に入れようかとも考えるが、子れいむ二匹と子まりさ二匹はさすがに入らない。 妙案は浮かばず、思いつくのは泣き言ばかりだ。 「ゆぅ、まりさがいてくれたら……」 番のまりさがいてくれたら、子ゆっくりたちを運んでくれただろう。まりさはお帽子を被っているので、半分を口に入れ、半分をお帽子に入れることが可能だ。 そもそも、こんな追い込まれた状況になっているのは、番のまりさが行方不明になってしまったことが原因である。 行方不明――と、言っても、ほぼ十中八苦死んでしまっているだろうことは母れいむにはわかっている。まりさは、自分や子供を捨ててどこかに行ってしまう無責任なゆっくりではない。強くて優しくて、自分がゆっくりする時間を全て削ってでも、大勢の子供たちの腹を空かせまいと夜明けから日没まで狩りに励んでいた立派な大黒柱だったのだ。 子ゆっくり四匹に赤ゆっくり五匹を養うのには、その優れたまりさの能力と献身が必要だった。れいむには、まりさほどの食べ物を集めることはできなかった。備蓄はすぐに尽きた。 友達のありすとぱちゅりーは狩りに行っている間に子供の面倒を見てくれたり、色々とよくしてくれたが、彼女たちもそれぞれ家族があり、食べ物の援助などはやはり最低限のものにならざるを得なかった。 遠出の狩りに、子ゆっくりはともかく、五匹もの赤ゆっくりを伴ったのは、どう考えても失敗であったと言わねばなるまい。赤ゆっくりたちは、ありすとぱちゅりーに預けるべきであった。 しかし、ゆっくりを全てに優先させるゆっくり脳である。まりさがいなくなってからというもの、必死に得意でない狩りに一日を過ごし、ろくに子供たちとゆっくり遊べずに眠り起き、狩りに出かけることを繰り返していた母れいむは、赤ちゃんたちがそれに不満を漏らして「もっちょおかあしゃんとゆっきゅちちたい!」と訴えたのに心動かされてしまったのだ。 「それじゃあ、きょうはみんなでゆっくりと狩りにいこう!」 と、母れいむが言ってしまったのが、今朝のことだ。もちろん子供たちは大喜び、狩りとは言っても、実態はピクニックみたいなものであった。 一家は幸い外敵にも遭遇せずに、元気に愉快に森を進んだ。そして、草花が咲き乱れ、虫さんたちが這い回り飛び回り、おひさまが照りつけるゆっくりプレイスを発見し、そこで思う存分ゆっくりした。そのあまりの居心地のよさに、この近くに引っ越してもいいのではないかと思ったほどだ。 結果、ゆっくりとし過ぎた。正に、ゆっくりとした結果がこれである。 母れいむを擁護してやるならば、彼女は心の底から今日の子供たちとのゆっくりを活力に明日からまた頑張ろうと思っていた。しかし、そんな擁護もなんの役にも立たない。明日を迎えられるかが危うくなりつつあるのだから。 「ゆぴゃぁぁぁぁん! おきゃーしゃーん!」 「ゆゆっ!」 赤ゆっくりらしき泣き声が聞こえてきたのはその時だ。 一瞬、母れいむはそれが自分の口の中の赤ちゃんのものかと思ったが、声の聞こえてくる方角から、すぐにそんなことは無いとわかった。 「おかあさん、赤ちゃんがゆっくりしていないみたいだよ」 疲れる体を引きずるように動かしながら、子供たちが言う。 「ゆゆぅ、ゆっくりしてるばあいじゃないけど、赤ちゃんがないてるのはほうっておけないよ」 声のする方は、おうちへの最短距離からは少しズレてしまうのだが、やさしい母れいむは、そちらへとあんよを向けた。 「ゆえーん、ゆえーん」 「あ、いた。まりさだね」 泣きじゃくる一匹の赤まりさを見つけて、そばに行くと叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ? ……ゆっきゅり、ちて、いっちぇね!」 餡の繋がらぬ他ゆっくりでも、赤ちゃんの舌足らずな挨拶には、見聞きするゆっくりをゆっくりさせる効果がある。母れいむも、それに遅れて跳ねずにずーりずーりとやってくる子供たちも、赤まりさの挨拶にゆっくりと微笑む。 「どうしたの? まいごになったの?」 「あんよがいちゃくてあるけにゃいの!」 話を聞くと、おうちの場所はわかるのだが、歩けないので帰れずに途方にくれていたらしい。 「ゆゆ? おうちはすぐちかくなの?」 「うん、ありゅければ、しゅぐにつくよ!」 赤まりさがそうならば、相当に近いのだろう。母れいむはこの子を送ってあげることにした。 「おちびちゃんたち、ゆっくりおそとにでてね」 口を開けて、体を傾けると、ころころころりと口内で寝ていた赤ゆっくりたちが転がり出る。もちろん、優しく衝撃を与えぬようにしているし、そこは心得たものでおねえさんの子ゆっくりたちが赤ゆっくりたちを受け止めて上げる。 「ゆゆ? もうおうちにちゅいたの?」 「このおちびちゃんをおうちに送ってくるから、少しここで待っててね! おねえさんたちの言うことを聞いてね!」 「ゆっ!?」 そう言われて、家族以外の赤まりさがいることに気付く。 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 赤ちゃん同士の挨拶に、とってもゆっくりした気分になった母れいむだが、ゆっくりしている場合じゃないことを思い出し、赤まりさに頭の上に乗るように促す。口の中に入れては、道案内をしにくいからだ。 子ゆっくりたちに手伝ってもらって、赤まりさは母れいむの頭上に乗った。 「ゆゆーん、おしょらをとんじぇるみちゃい~」 「ゆぅ、いいにゃあ、いいにゃあ」 「ゆっきゅちちてるね! うらやまちぃね!」 おかあさんの頭上で楽しそうな赤まりさを羨望の眼差しで見つめる赤ゆっくりたち。 「すぐにかえってくるから、おうちにかえろうね。おうちにかえったらゆっくりあそぼうね」 母れいむがそう言って赤ゆっくりたちを宥める。 「みんにゃのおうちはどきょにゃの?」 頭上の赤まりさが尋ねる。ちょっとここからは遠くて、今から急いで帰っても真っ暗になる前に着けないかもしれない、と言うと、赤まりさは言った。 「しょれなら、まりしゃのおうちにおとまりしゅればいいよ!」 「ゆゆっ」 そう言われてみれば、そうすることができるのならば、願っても無い申し出である。詳しく話を聞くと、赤まりさの家族は、子供は赤まりさだけで、両親ゆっくりとの三匹家族。その上におうちが広いのでスペースがかなり余っているらしい。 「しょれに、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、かりのめーじんなんだよ! おうちにはおいちーあまあまがたーくしゃんありゅよ!」 さらに、この言葉である。 おうちに帰るのに精一杯で、食料の備蓄も乏しい事情から、今晩のごはんはおうちの近くに生えている美味しくない草さんを食べるしかないと覚悟していた母れいむの心を動かすには十分過ぎた。 「あまあま!」 「あまあまちゃべたいよ!」 「ゆっきゅちおとまりしよーよ!」 もちろん、子供たちの心は一気に赤まりさのありがたい申し出を受ける方に傾く。 「まりしゃをおうちにつれていけば、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、おれいにあまあまをくれりゅよ」 「ゆっ、それじゃえんりょせずに、ゆっくりおとまりさせてもらうよ」 状況が状況であるから、母れいむもありがたく受けることにした。母れいむがこの赤まりさの両親の立場だったとしたら、大事な子供をおうちに連れてきてくれたゆっくりには精一杯のおもてなしをするのが当然と思う。きっとこの赤まりさの言うように、両親は快くゆっくりと歓迎してくれるに違いない。 「それじゃあ、おうちのほうを教えてね!」 「ゆー、あっち!」 赤まりさがそう言いながら、母れいむから見てやや右斜め前方を向くが、頭の上に乗っているために、母れいむからはそれが見えない。 「こっちだよ!」 「きょっち、きょっち!」 しかし、子供たちがそれを見て、そっちの方へと跳ねて行くので、それを見て、母れいむは方向を知ることができた。……当初は自分だけで送って行こうとしていたのだが、そうしたら方向がわからなかっただろう。その辺は餡子脳である。 まだまだ遠い道のりと思えば、余力が残っていても、それを振り絞る気力が無くなってしまいがちだ。すぐそこでゆっくり休めて美味しいものも食べられると知って、子ゆっくりたちは先ほどまでの疲れを吹き飛ばして、ぴょんぴょんと跳ねていく。おかあさんのおくちの中で休んだ赤ゆっくりたちもすっかり元気になっていた。 「きょきょだよ!」 赤まりさの言った通り、おうちはすぐだった。 「それじゃ、ゆっくりおじゃまします」 「ゆっくりおじゃまします」 「ゆっきゅちおじゃましみゃす」 礼儀正しく、挨拶しておうちに入っていくれいむ一家。おうちは、天然の洞窟で、中は確かに凄く広かった。一家がおとまりしても、それでもなお広いぐらいだ。 「ゆわわわわ!」 「あみゃあみゃだー!」 そして、さらに、おうちの隅にこんもりと積み上がった、とっても甘い臭いのする大量のあまあま! 黒い山、白い山、黄色い山と、色とりどりのそれはどの色もとっても美味しそうだ。 「ゆっくりしてね! まだたべちゃだめだよ!」 今にもそのあまあま山の登山を開始しそうな子供たちを、母れいむは制止する。大事な赤ちゃんを送り届けたれいむたちへのお礼に御馳走してくれるだろうことは全く疑っていなかったが、それでも一応、両親に許しを得るべきであろうと思ったのだ。この辺り、母れいむはゆっくりとしてはだいぶ自制心がある方だ。 「おとうさんとおかあさんはいないの?」 しかし、その許可を取るべき両親が見当たらない。おそらくは、赤まりさを探しに出ているのであろうが、いつ帰ってくるのかわからない。 「ゆぅ、赤ちゃん……」 おうちの入り口の所にいる赤まりさへと声をかける。とりあえず子供たちは母の制止に従って、よだれをダラダラと垂れ流しつつも、おとなしくあまあまの山を見つめているが、あれだけの御馳走を目の前にしては、そう我慢は続かないだろう。 だから、赤まりさの許しを得ようと思ったのだ。もちろん、赤まりさが、 「まりしゃをおうちにつれてきてくれちゃみんにゃにごちそーすりゅよ!」 と、言ってくれることは疑っていない。 「……ゆびゃっ!」 しかし、それどころではないものを赤まりさの背後に見てしまい、母れいむは短く絶叫して硬直してしまう。 その声を聞いて母れいむを見て、その硬直ぶりを見て母れいむの視線の先を追った子ゆっくりと赤ゆっくりたちも同じく、 「ゆぴぃ!」 「ゆああ!」 「ゆ、ゆゆぅぅぅぅ!」 と、震える声で叫んで硬直し、すぐにガタガタ震え出し、赤ゆっくりたちは全員残らずしーしーをもらした。 「うー!」 赤まりさの背後、つまりおうちの入り口の所に、胴付きのふらんが立っていた。 すぅ、と右足を上げる。その先には赤まりさがいる。 ――潰される! 母れいむたちは、もちろんそう思った。しかし、ふらんは大きく足を踏み出して、赤まりさをまたいだ。 ほっ、としたのも束の間、ふらんがそうやっておうちの中に入ってくるのと同時に、その背後から四匹の子ふらんが羽をパタパタさせて現れる。 「ゆあああああああ!」 「ふ……ふらんだあぁぁぁぁ!」 「きょわいよー!」 「おきゃーしゃーん!」 たちまち恐怖の叫びが上がり、子供たちは一斉に母親の元へと集まっていく。 「ゆびぃぃぃ……」 もう完全にビビりまくって涙ぐんでいた母れいむだが、そうやって子供たちに頼られて、なけなしの勇気を総動員した。 「おちびちゃんたち! いそいでおくちに入ってね! ゆっくりしたらだめだよ!」 あーん、と大口を開けて、子ゆっくり四匹と赤ゆっくり五匹をその中に受け入れる。口の中がパンパンになるが、すぐに母れいむは、ぷくーっ、と空気を吸いこんで膨れた。 これは、威嚇であると同時に、口の中のスペースを広げて、子供たちがぎゅうぎゅう詰めになって苦しむのを防ぐ効果があった。 ――おちびちゃんたちは、れいむが守るよ! 声は出せないが、れいむは心中で叫んだ。ちらりと赤まりさを見た。 ……かわいそうだが、この状況ではとても助けられない。とってもゆっくりとした赤ちゃんなので心は痛むが、しょうがない。 胴付きふらんが、後ろを振り返って赤まりさを掴み上げた。 自分が子供たちを口の中に隠してぷくーっと威嚇したので、とりあえず赤まりさを捕獲したのだ、と母れいむは思った。 「うー、いいこいいこー」 「ゆ! ……」 だがしかし、思わぬ光景に、声を出すまいと決意していたのに、少し声を上げてしまう。それはそうだろう。凶悪さで知られる捕食種ふらんが、赤まりさの頭を撫でて、あろうことか、赤まりさがとってもゆっくりした笑顔で言ったのだ。 「おきゃーしゃん!」 と。 「……」 ――ど、どぼい゛う゛ごどな゛のぉぉぉぉぉぉぉ! と、叫び散らしたいのを必死でこらえる母れいむ。 「うー、よくやったー」 「うー、たいりょー(大漁)」 「うー、うー」 子ふらんたちも、そのまりさの周りを飛んで、彼女を誉めている。まりさは、とても嬉しそうだ。 ――なんで? なに? なんなの? なにがどうなってこうなってるの? 母れいむは、全く事態を把握できない。餡子脳ゆえではなく、通常種ゆっくりの常識とあまりにも乖離した事態だからだ。 まりさは、産まれた時のことを今でも覚えている。 「ゆ、ゆっきゅちちていっちぇね!」 本能に従って、生まれ落ちた瞬間に元気に挨拶した。 「うー!」 目の前には、パタパタ飛び回るおねえさんたちがいた。でも、はじめはそれをおねえさんとは認識できなかった。 「ゆゆ?」 このゆっくりたちは誰だろう? まりさと餡の繋がった姉妹たちはどこにいるのだろう? 「ゆべ!」 後ろから、そんな声が聞こえた。ゆっくりと振り返ると、そこには飛び回るおねえさんたちと同じ顔をして、胴体と手足がついたゆっくりがいた。 「うー! ゆっくりしていってね!」 「ゆ! ゆっきゅちちていっちぇね!」 まりさは、心の底からわき上がるゆっくりとした気分を吐き出すように、元気に答えた。 「うー、ゆっくりしろ」 飛び回っていたゆっくりたちも、そう言ってまりさを祝福してくれているようだった。 「うー、これたべる」 「むーちゃ、むーちゃ、……ち、ちあわちぇぇぇぇ!」 彼女たちがくれた黒っぽいものは、信じられないような美味しさだった。 狩りをしたのは、生後すぐだった。わけがわからず、その辺に放置されてしまい、悲しくて泣き喚いた。ゆんゆん泣いていると、一匹の大人のまりさがぽよんぽよんと跳ねて来た。 はじめて見る同類だった。一緒に住んでいるふらんというゆっくりたちよりも自分に似ていることに、まりさは親近感を抱いた。 「ゆゆ、赤ちゃん、どうしたの?」 だが、そう言って近付いてきたその大人まりさは、ふらんたちが現れると目を見開いて絶叫し、後ろを向いた。しかし、後ろにもふらんがいることを知ると右左と視線を走らせ、そちらにもふらんの姿を見出すと、泣き喚いてその場で動けなくなった。 まりさには、それが不思議だった。何をそんなに怖がっているのか? ふらんたちは、とてもやさしいのに。 そのやさしいふらんたちが大人まりさをなぶり殺すのを、まりさは呆然と眺めていた。 「うー、まりさ、これたべろー」 大人まりさの中に入っていた黒っぽいもの。そうか、あれはそういうものだったのか、と思った。普通ならば、そんなものは食べられないと思うところだが、まりさは何しろ生まれて初めて食べたものがそれで、しかもその美味は忘れ難いものであった。 「ゆ、ゆっきゅちたべるよ!」 戸惑いながらも、食欲のままに食べてしまった。 胴付きふらんを、おきゃーしゃん、胴のついていないふらんたちを、おねーしゃん、と呼んで、まりさに似たゆっくりや赤いリボンをつけたゆっくりなどの中身を食べて暮らしているうちに、まりさは、自分が姿こそ違えどふらんたちの側――つまり、帽子やリボンのゆっくりたちを捕食する側――であり、姿こそ同じだが、帽子をかぶったゆっくりたちが捕食される側であると認識していった。 狩りのお手伝いについてもゆっくりりかいした。最初は寂しくて泣いていたが、その内に、意識してわざと泣くようになった。 獲物たちは大概、まりさがふらんと一緒に暮らしていて、その狩りを手伝い、ゆっくりを食べていることを口を極めて非難した。おかしい、ひどい、ゆっくりしてない! 「まりしゃ、ゆっきゅちちてるよ」 だが、とってもゆっくりしているまりさはいささかの痛痒も感じない。そのゆっくりとした笑顔に、獲物たちは絶望する。本当にゆっくりしているいい笑顔だからだ。 まりさは、すっかりふらん一家の一員であることの幸福を喜び、ゆっくりするようになっていた。なにしろ、ふらんは、家族たちは強い。ゆっくりたちは、その姿を見ただけでしーしーちびって泣き喚くほどである。 生物として相当弱い部類に属する赤ゆっくりとしては、そんなふらんに頼もしさを感じ、それを恐れ抵抗らしい抵抗もできずになぶられ食われていくゆっくりに軽蔑を感じざるを得ない。 見た目こそ同じだが、まりさはあいつらとは違う。強い強いふらんたちの仲間なのだ。そのことへの幸運に感謝する。 まりさは、この家族の一員であることを当然だと思っていた。だって、ゆっくりできるのだから。 胴付きふらんは、成果に満足していた。生まれたばかりの四匹の子供たちのためにゆっくりれいむを狩って来た。頭からは茎が生え、その先には五つの赤ゆっくりがゆっくりと誕生の時を待っていた。 「うー、やった。ごちそう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 当然、れいむは泣き喚いているが、ふらんの力には到底かなわない。 おうちに帰ると、早速、赤ゆっくりたちを収穫して一匹ずつ子供へと与える。ふらん種の本能か、子供たちは教えられずとも、赤ゆっくりたちを軽く殺さない程度に痛め付ける。 と、言っても、まだ生まれる時期でないところを無理に茎からもぎ取られた赤ゆっくりだから、すぐに死んでしまった。 「……うー!」 胴付きふらん、最後に一匹残ったまりさを見ていて思いついた。 元々、ふらん種はゆっくりの中でも知能が高い方である。同じ捕食種で性質や能力も似ているれみりゃが馬鹿で、そこを衝かれると通常種に敗北することもあるのに対し、ふらんにそのような例が稀であるのはそのためだ。 その胴付きふらんは、かつて自分の親が、一匹の赤ゆっくりをすぐに殺さずにその辺に放置して、その泣き声を聞いてやってきたゆっくりたちを捕獲していたのを思い出し、自分もそれをやってみようと思った。そして、親が囮に使った赤ゆっくりをすぐに食べてしまったのに対し、すぐ殺さずに囮として使い続けようとした。 子供たちが襲わないように、これは姿形は違えど妹なのだ、と言って聞かせた。それでも、殺されてしまったらしょうがないと思っていたのだが、幸い、子ふらんたちは赤まりさを妹として扱っていた。赤まりさを囮にした狩りが順調で、一度たりとも空腹にさせたことがないせいであったろう。 親ふらんも、この赤まりさには、人間が使い馴染んだ道具に持つのに似た愛着を抱いていた。いざとなれば、真っ先に食料にすることは動かなかったが。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 ぷくーっと膨らみながらも混乱の絶頂の母れいむ。ふらん一家は、赤まりさを誉めるのにかかりっきりでれいむたちのことを忘れてしまったかのようだ。 ――いまならゆっくりしなければにげられるかもしれないよ。 母れいむは、ぽよん、と全力の跳躍をした。口の中に子供たちがいるので、当然その飛距離は悲しいほどに短い。 もちろん、ふらんたちはれいむのことを忘れていたわけではない。ただ単に、出入り口を完全に塞いでいるから逃げられっこないと判断していたので平気で目を離していただけだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛」 母れいむも、逃げ道が完全に絶たれていることにたちまち気付いた。 ぷくーっ! 膨れる。それぐらいしかやれることが無いのだ。 「ゆゆぅ、ぎゅうぎゅうしてるのがすこしきついけど、ゆっくりしてるよ!」 「さすがのふらんも、おかあさんのぷくーにはなにもできないんだね!」 「しゃすがおきゃーしゃん!」 「ゆっきゅちできるよ!」 「しゅーり、しゅーりしようにぇ!」 特に何も起こらないので、口の中の子供たちは、母れいむの威嚇にふらんたちが恐れをなして手出しができない素晴らしい情景を想像してゆっくりしている。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ」 喋ったら、ぎゅうぎゅう詰めの子供たちが零れ落ちそうなので、母れいむは唸ることしかできない。 「うー、そろそろちいさいあまあまであそびたい」 「うー」 やがて、恐れていた瞬間が来た。子ふらんたちに言われて、親ふらんが母れいむの方へと向かってきた。 「うー、くちのなかのあまあまよこせ」 「ゆ゛ーっ!」 母れいむは頑として拒否する。 無造作に親ふらんのパンチが母れいむを叩く。凄まじい衝撃。ごろんと転がった母れいむの口の中に子供たちの悲鳴が響き渡る。 「ゆっくりできないよ! なんなの!」 「おかーさん! どうしたの! ゆっくりさせてね!」 「ゆあああ、いちゃいいいい」 「ゆべっ」 「お、おねーしゃんがしんじゃうよ!」 一匹の子れいむは、丁度殴られた所にいたため、母れいむの頬越しとはいえ衝撃をモロに食らってしまった。 口の中に、甘い味がしたのに、母れいむは恐怖する。中の子供たちが負傷か、或いは餡を吐いたかに違いないからだ。 「うー、うー、うー」 ぼこ、ぼこ、ぼこ、と滅多打ちにされ、母れいむの頬は腫れ上がる。口の中の悲鳴も一層大きく、切迫感のあるものになっていった。 「いぢゃい゛ぃぃぃぃぃ!」 もう、痛みを訴えるしかできなくなったようだ。それでも、母れいむは口を開けなかった。 「うー」 親ふらんは、少し迷った。このまま殴り続ければ口を開かせることはできるだろうが、その時には、中の子供たちは死んでいるだろう。ただ食べるだけならそれでもいいが、食べる前にあそぶのがふらんの習性であり、子ふらんたちもそれを楽しみにしている。 「うー、ればてぃん!」 子ふらんの一匹が言った。 「うー、おかーさんのればてぃんみたい」 「うー、みたいみたい」 他の姉妹たちも、それに唱和し出す。 「うー」 親ふらんは頷いて、奥の方に行った。そこには狩りの途中で見つけた色々なものが置いてある。その中から、ればてぃんを取り出す。 胴付きふらん種は、棒状の武器を使う時にそれを「ればてぃん」と呼称することがある。 ただの木の棒だったりすることが多いが、この親ふらんが持っているのは、人間がキャンプをした時に忘れていったナイフであった。 「ゆ゛っ!」 親ふらんが離れたので一息ついていた母れいむは、その光に本能的な恐ろしさを感じてずりずりと後ずさった。 しかし、そんなのお構い無しに親ふらんはずんずん近付いてきて、母れいむを押さえつけた。左手一本でだ。それほどに胴付きふらんとごく普通のゆっくりれいむの間には力の差がある。 突き刺しては中の子供を傷つけてしまうので、母れいむの頬を軽く切った。一度目は浅すぎて表面が切れただけだったが、何度かやっているうちに、切れ目が頬に口を開けた。 「うー!」 切れ目に指を突っ込んで左右に思い切り広げる。 「ゆ゛びびび」 右頬にぱっくりと口が開き、震える子供たちが丸見えになった。 「うー」 親ふらんは手を突っ込んで、どんどん子供たちを取り出していってしまう。 「うー、あそぼあそぼ!」 「うー、なにしてあそぶ?」 「うー、ぽんぽん」 「うー、ぽんぽんやろー」 たちまち、子ふらんたちが群がって来て、一匹の子れいむをくわえて行ってしまう。 「おぢびぢゃんがああああああ!」 「おねーさんつれてかないでええええ!」 「ゆわーん、きょわいよー!」 残された母れいむと子供たちは、それを見ていることしかできない。子供たちはダメージと恐怖で動けないし、母れいむは子ふらんたちの邪魔をしないように、親ふらんが押さえつけている。 子ふらんの一匹が子れいむをくわえたまま飛び上がり、他の三匹が地面に降りる。 「うー!」 子ふらんが、くわえていた子れいむを離した。 「ゆっ、おそらを、ゆべ」 とんでるみたーい、とお決まりの台詞を続けようとした子れいむだが、その前に、衝撃を受けて中断。 衝撃は、地面への衝突によるものではなく、下にいた子ふらんが羽で叩いたためであった。 「うー!」 ぽーんと飛んでいった子れいむの先にいた子ふらんが、羽で子れいむを叩く。後は、その繰り返しだ。最初に上から子れいむを落とした子ふらんも地上に降りてそれに加わる。 ぽんぽん、と子ふらんたちが呼んでいる遊びだ。いわば、ゆっくりを使った蹴鞠のようなものか。 「うー!」 「いぢゃい!」 すぐに殺さないように、それほど強くは叩かないが、それでも子ゆっくりには相当な激痛だ。一定の間隔を置いて連続して加えられる痛みというのも精神へのダメージは大きかった。さらには、子ふらんが打ち返し損なえば、地面に落ちて痛い目を見る。つまりは、なにがどう転んでもこのまま子れいむは死ぬまで痛みを感じ続けるのだ。 「うー、こいつもうおしまい」 しばらくすると、子れいむが悲鳴を上げなくなった。まだ生きてはいるのだが、このぽんぽん遊びは打つ度に上がる悲鳴も楽しみの一つである。 「ゆっ、しょれたべちぇいい?」 子ふらんたちのぽんぽん遊びをゆっゆっと楽しそうに見ていた赤まりさが涎をたらしながら、尋ねる。 「うー、いいよ」 「ゅゅゅ、や……め……ちぇ……」 「ゆわーい、むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」 「うー、おいしいか」 半死半生の子れいむの言うことなど全く聞く耳持たずにそれを貪り食らう赤まりさ。地獄のような光景を見る子れいむの姉妹たちの目に浮かぶのは一様に恐怖、というわけでもなく、そこには恐怖を上回る羨望があった。 ――なんで、あのまりさはあんなにゆっくりできているの。 強いふらんたちにいじめられるどころか可愛がられて、むーちゃむーちゃして、ちあわちぇで、自分たちと同じ通常種のゆっくりなのに、どうして自分たちはふらんになぶられ殺され食べられるのを恐れてゆっくりできないのに、なぜあのまりさはその逆なのだ。 「うー、べつのでやろー」 「うー、まだまだたーくさん」 「うー、ぽんぽんできるおおきいの三ついる」 子れいむ一匹が鬼籍に入ったが、まだ子れいむ一匹、子まりさ二匹がいる。赤れいむ二匹と赤まりさ三匹もいるが、これは小さいので数に入れていない。あまり小さいと打ち返すのが困難で地上への落下で死んでしまうことが多いため、ぽんぽん遊びには適していないのだ。 「うー、こんどはくろいの」 「ゆびぃぃぃ、やべで! やべでええええ!」 くわえられた子まりさが絶叫して懇願する。おそらをとんでるみたい、などと言う余裕も無かった。さっきの子れいむのようになぶられ生きながら食べられて殺される。そんな運命を受け入れられるわけはない。わけはないが、それに抗うことなどできない。聞く耳持たれぬに決まっている懇願を繰り返すだけ。 そして、子まりさもまた当然同じ運命を辿った。ただ、子れいむと少し違ったのは、途中で帽子が脱げてしまったことだ。 「うー」 「いぢゃい! おぼ!」 「うー」 「おぼうじ! いぢゃ!」 「うー」 「ばりざのおぼ!」 「うー」 「おぼ、いぢゃ!」 痛みへの悲鳴と、帽子を求める悲鳴が混ざり合ってわけのわからぬことになり、この悲鳴には子ふらんたちは大喜びであった。 「うー、こいつもおしまい」 「うー、こいつはたのしかった」 「うー、おぼうしかえしてやろうか」 「……ばりざ……の、おぼ……がえじで……」 死に掛けの状態だというのに、帽子をくわえてきた子ふらんに向かって懇願する子まりさ。 「ゆー! そのおぼうちちょうらい!」 だが、ふらん一家の赤まりさが言うと、子ふらんは赤まりさの方へと帽子を落とした。そもそも、帽子を返してやろうというのは気紛れ以外のなにものでもなかったのだから、家族の「妹」である赤まりさの方を優先するのは当然と言えた。 「うー、これくしょんにするのか」 「ゆん! このおぼうちカッコいいにぇ!」 人間の目からは全く同じに見えるゆっくりの装飾具だが、ゆっくりたちはこれで個体識別をするので、違いがわかる。それゆえに、ゆっくりの目から見ると、中にはカッコいいと分類されるものもある。この赤まりさは、自分と同じまりさ種の帽子で気に入ったものをコレクションしていた。もちろん、死ぬ前にまりさから離れて死臭がついていないものに限ってだが。 「ゆ゛ぅぅぅ」 赤まりさが嬉々として自分のお帽子を持ち去ってしまうのをなす術なく見ながら、子まりさは絶命した。 (後編へ)
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『売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅰ』 『売れるゆっくりを開発せよ!! プロローグ』の続きです 「では…これで会議を終わります」 加工所の会議室にて社長も同席した会議が終わった。 「俺が担当するのは…若干楽な方かな」 会議の内容は"売れるゆっくりを開発せよ"というものだった。最近ちょっとしたペットゆっくりブームなのだ。 だがブームというのはすぐに去ってしまうもの。特に単純な構造で、動く饅頭に過ぎないゆっくりに関するブームなどあっという間だろう。 一般的に消費者というのはより良いものよりもより新しいものに惹かれやすいという。高い品質の製品が生き残るとは限らないのだ。 ペットゆっくりブームを少しでも長く続かせ利益を得るためには新しいゆっくりを定期的に投入することが一番の方法である。 余談だが最近新興企業であったセルス商会が新たに"未熟児ゆっくり"なるものを開発、販売した。 売れ行きは順調であり赤ゆっくりよりも虐待のし甲斐があると一部の虐待鬼意山が鞍替えをしてしまった。 最早新ゆっくり開発競争は始まっているのだ。加工所も早急に手を打つべきである。 「期待しているよ。頑張ってくれたまえ」 社長はそう言って会議室を後にした。 「ゆっくりだったらなんでも出来ちゃいそうだが…上手くいくもんかね?」 「さぁ?下手したら目指していたものと違うゆっくりが出来上がりそうだがな」 「俺はどうもあんなものをペットにする奴の気が知れないよ…」 今回このプロジェクトを任されたリーダーが3人。つまり3種類の新ゆっくりを開発するのだ。 「つむりは一応売ってるよな」 「"量産計画"っていうくらいだからな。こっちは"開発計画"になってやがる…」 「そう簡単に言うなよ。ありゃ奇跡の生き物だからな」 「つむり班が一番早く実現しそうだな」 「成功したらこっち手伝ってよ。色々考えてるんだがどうしたものか…見当がつかん」 1つ目のプロジェクトは"まりさつむりを量産計画"である。実はまりさつむりはペットショップで既に販売されているのだ。 だが流通している数は極めて少ない。全国で1年に50匹に届かないのだ。しかし数に反してその人気は凄まじい。 ペットショップで販売される際は抽選形式を取っている。数百人くらいが応募し当選は1人だけ。値段は10万円ジャストと高値だ。 ペットショップで販売されているゆっくりで最低ランクは銅ゆっくりの数百円。銀ゆっくりで数千円。最高ランク金ゆっくりで数万円だ。 値段だけ見てもまりさつむりがどれだけ高価なゆっくりであるかが分かる。そもそもまりさつむりとはどんなゆっくりなのだろうか。 まりさつむり、まりさの名が冠されているように基はまりさ種だ。まりさ種と言えば金髪に黒い帽子を被った腕白で小生意気なゆっくりだ。 ゆっくりの代名詞でもある。このまりさつむりも金髪だが帽子の代わりに貝殻を被っている。貝殻を取れば普通のまりさと全く同じだ。 本来はまりさ種の亜種らしい。亜種、というとあまり良いイメージがわかない。事実まりさつむりは悪魔の子として殺される群れもある。 大抵の群れでは物凄くゆっくりした存在としてアイドル的な扱いを受けるらしい。だがそれが続くのは群れが裕福なときだけだ。 群れが貧しくなれば全く相手にされない。自分が生きていくことで精一杯で他のゆっくりに構ってる暇がないのだ。 しかしまりさつむりはその頃にはちやほやされたり与えられることが当たり前だと思ってるゲスなゆっくりになっている。 結果周りから疎んじられ迫害される。野良ではまりさつむりが天寿を全うすることはほとんど無いという。 ではなぜそんなまりさつむりが人気なのだろうか。1つは珍しさである。希少価値が高いということだ。もう1つはその大きさにある。 実はまりさつむり、大人になっても小さいままなのだ。大きめの成体まりさつむりで通常の子ゆっくりサイズだ。 通常のまりさ種の飾りである帽子は本体の成長とともに大きくなる。帽子は小麦粉で出来ており饅頭である本体と共に成長していくのだ。 一方まりさつむりの飾りである貝殻は小麦粉ではなく本物の貝殻なのだ。質量も貝殻そのものだ。 貝殻の主成分はカルシウムだがゆっくりがカルシウムを作り出すとは考えられない。つまり飾りの貝殻を成長させることが困難なのだ。 ゆっくりの命の次に大切な飾りが成長しなければ本体が成長しにくいと考えられている。 また飾りの大きさが変わらないのであれば本体が成長してしまうと貝殻を被ることが出来なくなってしまう。 ヤドカリのように自分の大きさに合った貝殻と交換するようなことはしない。生まれたときに被っている貝殻を生涯被り続けるのだ。 ちなみにまりさつむりは胎生型妊娠でないと生まれない。植物型妊娠で茎から貝殻が実るなんて奇妙奇天烈極まりない。 さて、小さいということは飼い主にとってメリットだ。まず餌は少量でいい。場所も小さくて済む。 しかもまりさつむりは帽子よりもずっと重い貝殻を被っているためあまり動けないのだ。動き回って家のものを壊すことも無い。 加工所名物透明な箱の中にいれておけば充分。外に出せなどとは言わない。動かないから体力も無い。 結果まりさつむりは内気で大人しいゆっくりとなる。…はずなのだが基がまりさ種であるため甘やかし過ぎるとゲスになる。 飼い方を間違えなければ大人しく、ペットとしては理想的である。 「チーフ、まりさつむりはどうやって生産してるんですか?」 つむり量産計画を任された男性は部下と早速議論していた。 「そうか…。シークレットだったな。じゃあ今から見に行くか」 「今からですか?」 「ああ、地下の"牧場"で作ってるよ。実は俺も…赤つむりを見たことないんだわ」 彼は部下を連れて加工所地下へ向かった。 「どうしてシークレットなんですか?」 「見れば分かるよ」 加工所の地下室に着いた。地下室は薄暗くとても大きかった。 「ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 「ありちゅはありちゅよ!ちょきゃいはでしょ!」 「まりちゃはあみゃあみゃがたべちゃいんだじぇ!!」 至る所から赤ゆっくりの声が聞こえる。ここは赤ゆっくりを生産する場所なのだ。だから"牧場"と呼ばれている。 この中で形のいいものを選抜し教育させる。優秀なゆっくりはペットショップで販売されることとなる。 その他は研究用や食料品、虐待用に回される。母体がペットショップで売れ残ったゆっくりであるため赤ゆっくりの程度は高が知れている。 この牧場からペットショップへ行けるのはほんの一握りに過ぎないのだ。 「ここだよ。この部屋の中だ」 関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアが開かれた。 「ぼ…ぼうやぢゃあああぁぁ!!!!おうぢがえじでええぇぇ!!!!」 「いづまでうべばいいのおおおぉぉ!!!!!?ぼうあがぢゃんうびだぐないぃ!!!!」 「ゆっぐりさぜでえええぇぇ!!!!ゆっぐりじだいよおおおぉぉ!!!!」 「ゆぁぁぁぁ!!!ばたうばれぢゃっだぁぁぁ!!!」 ゆっくりの悲鳴が聞こえてきた。部屋の中は異様な光景だった。 「何ですか…これ?」 「まりさしかいねぇ…何匹いるんだ?」 部下がざわめいた。部屋の中には成体まりさがずらっと3列に並んでいた。 「1、2、3……20。それが3列で60匹ですか」 「あれ?こいつら固定されてますね」 「この箱は何ですか?……おっと…」 まりさは台の上に乗せられていた。逃げ出せないように金具で固定されている。そしてまりさの下には箱が置いてあった。 「ゆっきゅち!ゆっきゅち!!」 「まりちゃはまりちゃだよ!!」 「おきゃあしゃんはどきょ?しゅりしゅりちたいよ!!」 箱の中には赤まりさがいた。今現在も赤まりさがどんどん誕生している。 「大体分かったでしょ。どうやってまりさつむりを生産しているか」 「ええ。とにかくたくさん産ませてその中から見つけると……。やっぱり精子餡もまりさの…」 「そういうことだ。ほら、見てみな。額が焦げてるだろ?植物型妊娠ができないように燃やしたんだよ」 「確かに外部には発表できませんね。こうやって生まれてきたゆっくりだと知ったら応募者も減るかもしれませんね」 「あの…。つむりは亜種で中々生まれないから流通量が極めて少ないという噂は……」 「噂じゃなくて事実だよ。今ここにいる60匹が何回も何回も赤まりさを生んでその中につむりが何匹いると思う?」 「1ヶ月で…1匹くらいですか?」 「甘いな。1ヶ月に1匹生まれたら超ラッキーだよ。1年ぐらい生まれなかった時もあるしね。この牧場だと1年で3~4匹だな」 「つむり同士で交尾させてもダメなんですか?」 「ダメだったよ。体が小さいし体力も無いし。子供作るほど丈夫じゃないんだ。折角生まれた子も普通のまりさだったし」 「本当に奇跡なんですね」 「饅頭が貝殻作り出すんだぜ。普通に考えればありえない話さ。…もっとも饅頭が動いたり話したりするのもありえない話なんだが」 「ここのまりさはどこから調達したんですか?何か特別な処置がしてあるとか…」 「何もしてないよ。田舎から健康そうなのを集めてきただけだ。売れ残りより野良の方が生んでくれそうな気がしてね」 こうしている間にも赤まりさはどんどん生まれていった。段々赤まりさと親まりさの声が五月蝿くなってきた。 「ゆぎぃっ!!!ゆぎぃぃぃ!!!!う…うばれるぅっ!!!!」 「ぼうゆるじぢぇええぇぇ!!!あがぢゃんうびだぐないいぃ!!!うびだぐないぃ!!!!」 「いやあああぁぁ!!!!!ばりざには…でいぶがいるのにいいぃぃ!!!!!おうぢがえじでよおぉぉ!!!!」 「ゆっくちちていっちぇね!!」 「おにゃかしゅいちゃぁ…なにかたべちゃいよ!!」 「おきゃあしゃんはどきょにいりゅの?まりちゃはおはなちがちたいよ!!」 と、部屋に1人の男性がやってきた。いつもはこの男性がこの部屋でつむりが生まれているかどうか確かめているのだ。 「聞きましたよ。つむりを量産するんですってね」 「他の2つのプロジェクトに比べれば可能性はありそうだがね。どうだい、つむりを生みそうな個体の特徴とかないの?」 「全然無いですよ。最初は細かく観察してたんですが馬鹿馬鹿しくなりましてね。運ですよ。それに賭けるしかない」 「じゃあ箱の中を見てみるか。どう?このプロジェクトが成功するかどうか運試しといこうか」 「縁起でもない。少しでいいですから手伝ってくださいな。帽子被ってるのはこっちの籠の中に入れてください。すぐ処分しますので」 彼らは箱の中に生み出された赤まりさを調べ始めた。 「まりちゃはまりちゃだよ!ゆっくち!」 帽子。 「まりしゃしゃまはおにゃかがしゅいたんだじぇ!!」 帽子。 「お…おきゃあしゃんはどきょなにょ?きゃわいいまりちゃをひちょりにしにゃいでぇ…」 帽子…。帽子帽子帽子帽子帽子…………。やはりまりさつむりには中々お会いできそうに無い。 「え?これって…」 その声に彼らは一斉に反応した。 「まりちゃはまりちゃだよ!ゆっくちちていっちぇね!!」 「うお!!!貝殻被ってやがる!!!」 皆が集まった。 「さ…幸先いいな。もしかしたら…」 「これが…10万もするのか…」 「一人称まりさなのか…。つむりじゃないんだ」 「マジだ…。本物の貝殻だわ…」 皆の視線がまりさつむりに注がれた。 「ゆ?……しょ…しょんなに…みにゃいで…ほちいよ……」 つむりが恥ずかしそうに貝殻を深く被った。 「ちょっと…カワイイわね…」 「運がいいですよ!このプロジェクト絶対成功しますって」 「そうだな!」 彼らは沸いた。その後も調べられたがつむりはこの1匹だけだった。 「じゃあ私はつむりを飼育部屋に持って行きますので…。帽子の方処分してもらえますか?」 「ああ、ミキサーにかければいいんだろ」 「ええ。すぐ戻ってきます」 男性はまりさつむりを持って部屋を出た。 「じゃあ籠持ってきて」 「チーフ、ミキサーって?」 「赤まりさは別のところで生産してるからここのはいらないんだよ。精々ここのまりさの餌になるぐらいなもんさ」 「すり潰して食わせるんですね」 「元に戻してやるって言う意味もあるけどな」 部屋の隅にある大型のミキサー。籠をひっくり返してミキサーの中に赤まりさを入れた。 「や…やべでえええぇぇ!!!あがぢゃんにひどいごどじないでええぇぇ!!!」 「もうだべだぐないぃ!!!だべだぐないよおぉぉ!!!」 「やぢゃああああぁぁ!!!!あがぢゃんゆるじであげでええぇぇ!!!」 「どぼじでぞんなごどずるのぉぉぉ!!!?ゆっぐりでぎるあがぢゃんなのにぃぃぃ!!」 親であるまりさ達が叫んだ。 「ゆ!ころぎゃるよ!!」 「ゆわっ!!…なにちゅるにょ!?」 「ゆぎゅ……きゅりゅしぃんだじぇ…」 「せみゃいよぉ…」 ミキサーの中に赤まりさが詰まった。蓋をしてスイッチを入れた。 「ゆぎぃいい!!!」 「いぢゃいよおぉぉ!!!ゆぎゃあああぁぁ!!!」 「ばりちゃのあんよしゃんぎゃああぁぁ!!!!ゆぎょぎょぎょぉぉぉ!!!」 ミキサーの刃がガリガリと赤まりさを削っていった。 「ゆぎゃっ!!!!ゆぎゃぁぁ!!あんよぎゃああぁぁ!!」 「ゆぎゅっ!!!やびぇぇぇ!!いぢゃいいぃぃ!!!!」 「だじゅぎぇぢぇええぇぇ!!!!おぎゃあじゃああぁぁぁん!!!!おぎゃあじゃあぁん!!!!」 「ゆぎぃぃぃ!!!!やびぇぢぇえ!!!じにぢゃぐにゃい!!じにぢゃぐにゃいぃぃ!!!!」 底の赤まりさからどんどん削られ餡子の海が出来上がっていった。 「やべでえええぇぇ!!!!あがぢゃん!!!!あがぢゃああぁぁん!!!」 「ぎぎだぐないいぃぃ!!!!どめでええぇぇ!!!どめでえええぇぇ!!!」 「ゆるじでええぇぇ!!!!ゆぎゃあああああぁぁぁ!!!!ごろざないでえええぇぇ!!!」 赤まりさの悲鳴を聞きまりさ達が泣き喚いた。もう何度も何度も断末魔を聞かされてきたのだ。しかもその餡子を食べさせられている。 「後は私がやります。何かヒントが浮かんだら嬉しいです。お疲れ様でした」 男性が戻ってきた。チーフは部下を連れ部屋を出て行った。 「よーしお前ら、餌だぞ。一杯食べて一杯赤ちゃん生んでくれよな」 男性はミキサーから取り出した餡子を1匹ずつ食べさせていった。 「いやぁ!!!いやぁぁぁ!!!いらない!!!たべだぐないよぉぉぉ!!!!」 「あまり手をかけさせるなよ。そんなんじゃつむりは生めないぞ」 「ぼうやぢゃぁぁぁぁ!!!おうぢにがえじ……ゆぎょぉぉぉぉぉ!!!」 まりさは餡子を拒絶した。が、男は無理やり口を上下に伸ばし口の中に餡子を詰め込んだ。 「ゆぎぇ……!む…ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!………」 「早く飲めよ。でないと口閉じたまんまだぞ」 餡子を吐き出さないようにまりさの頭と顎を押さえた。ゆっくり程度の力では口を開けることは出来ない。 「ぅぅぅぅぅ!!!……むぅぅぅぅぅぅ!!!!……」 鼻があればそこから息をしたり餡子が飛び出ることもあろうがゆっくりには鼻が無い。このままでは息は出来ないし餡子は外に飛び出ない。 「ぅぅぅ………」 餡子で膨らんでいた頬が元の大きさに戻った。諦めて餡子を飲み込んだのだ。 「はい。美味しかったね。じゃあ妊娠しようね」 男は手を放した。そして今度は注射器を取り出した。 「ぼ…ぼうやべでぇぇぇぇ!!!あがぢゃんほじぐない!!!!にんじんじだぐないぃ!!!」 注射器の中身は市販されているまりさ種の精子餡と妊娠促進剤、そして濃縮したオレンジジュースだ。ゆっくりの胎生型妊娠期間は約2週間と言われている。 薬を使うことで1週間ほどになる。更に過剰な栄養を与えることで赤ゆっくりの成長スピードが速くなり妊娠期間は短縮する。 この方法で10日に2回出産が可能となるのだ。 「ゆぎっ!!!!や…やべ……ゆぎぃぃぃぃ!!!!は…はいっでぐるぅぅぅ!!!!」 注射器がまりさのまむまむに突き刺さりゆっくりと精子餡が注入されていく。全ての精子餡を注ぎ込んでから注射器を抜き取った。 「ゆぁぁぁ!!!!あがぢゃんでぎぢゃっだぁぁ!!!まだにんじんじぢゃっだぁぁ!!うびだぐないのにぃぃ!!!!」 まりさの下腹部が盛り上がった。ゆっくりは簡単に妊娠してしまうのだ。何はともあれおめでとうございます。妊娠1日目です。 「ぼうやぢゃぁぁぁ!!!おうぢがえじでぇぇぇ!!!」 「たべだぐないっでいっでるでじょぉぉぉ!!!!むぐっ!!!……ぅぅぅぅぅぅぅぅ……」 「あがぢゃんほじぐないっでいっでるでじょぉぉ!!!!!いやだ!!!やべでぇぇ!!!うびだぐないぃぃぃ!!!」 残りのまりさ達にも餡子と精子餡が与えられた。唯一今日つむりを生んだまりさは何もされなかった。 「お…おうぢにがえじでよぉぉぉ!!!でいぶぅぅう!!!!でいぶぅぅう!!!!」 つむりを生んだまりさは必死に番であろうれいむの名を叫んでいた。 「いいぞ。お前は返してやるよ」 男性はまりさを固定していた金具を取り外した。 「ゆ!!……ゆ?か…かえして…くれるの?」 「ああ、お前は自由だ。好きなところに行け」 つむりを生むということは奇跡なのだ。奇跡が2度も起きるはずがない。そのためつむりを生んだまりさは解放されることになっている。 貴重なつむりを生んでくれたお礼という面も含まれており、そのためまりさを捕獲した場所や森も1匹ずつ記録されている。 起こらないから奇跡って言うんですってアイスクリームが大好きな女の子が言ってたよ。 起きるから陳腐って言うんですってその女の子にそっくりな子が言ってたよ。 「じゃあな。元気で暮らせよ」 まりさはその後田舎に運ばれそこで解放された。勿論そこはまりさが生まれ育った場所だ。 「み…みんなぁぁぁぁ!!!まりざかえっできだよぉぉぉぉ!!!!」 まりさは一目散に森の中へ走っていった。 「ふん……ゆっくりできるものなら…してみろよ」 まりさを運んだ車は走り去っていった。 加工所に戻る前にこのまりさがどうなったか追ってみよう。 「れいむぅぅぅ!!!げんきにしてるよね!!!!ゆっくりしてるよね!!」 まりさは森の中を駆けた。途中2匹のゆっくりに出会った。 「ゆぅぅ!!!!ゆ…ゆっくりしていてね!!!」 久々にゆっくりと遭遇した。嗚呼、生きている間にまたこの挨拶が言えるなんて……。まりさは嬉しかった。 「ゆっくりし………」 「ゆぅ?ま…まりさ?……な…なんだかゆっくりできない……よ??」 2匹の反応は微妙だった。 「ゆ?ゆ?ゆ…ゆっくりしていってね!!?」 まりさはもう1回挨拶した。と、その時だった。 「んほおおおおおぉぉ!!!!!すっきりしたいわぁぁぁぁ!!!!」 「こんなところにかわいいこがいるじゃないぃ!!!!!」 れいぱーありすが数匹やってきた。2匹とまりさは慌てた。 「れ…れいぱぁはゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!!」 「いやぁぁぁ!!!!こっぢごないでぇぇぇぇ!!!!!」 「すっぎりはぼういやぁぁぁ!!!ゆっぐぢさぜでぇぇぇ!!!!」 3匹は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。特にまりさは必死だった。ようやく妊娠地獄から解放され自由を得たのだから。 「つかわえたわぁぁぁ!!!」 「まりさぁぁぁ!!いっしょにすっきりぃしましょぉぉぉ!!!」 しかしまりさはすぐに捕まってしまった。妊娠出産の繰り返しで体力が落ちていたからだ。 「いやぁぁぁぁ!!!はなじでぇぇぇ!!ぼうやぢゃぁぁぁ!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」 まりさは必死にもがいたが数匹のれいぱーありすに組み伏せられ身動きが取れなかった。 「いぐわよぉぉぉぉ!!!」 「やぢゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!にんじんはぼういやだぁぁぁぁ!!!!おうぢにがえじでぇぇぇぇ!!!!」 「まりざっだらつんでr……ゆ?…ゆゆ?」 突然れいぱーありす達の動きが止まった。 「な…なんなのこのこ!!?ぜんっぜんゆっくりしてないわ!!」 「なによ!このいなかもの!!とかいはなれでぃにふさわしくないわね!!」 「いきましょ!!いなかもののあいてなんかしてられないわ!!」 れいぱーありすはどこかへ行ってしまった。 「「「あんないんらんなゆっくりのあいてなんかできないわ!!」」」 まりさは何十回と妊娠出産を繰り返してきた。そのせいでまむまむはガバガバで常に少しぽっかりと開いていた。 しかも胎生型妊娠しかできないようにするために額を焦がされたままで治療すら受けていない。 まりさから漂う何やらゆっくりできないオーラ…というか匂いを他のゆっくりは敏感に感じ取っていたのだろう。 「た…たすかったの?……まりさは…たすかった…んだよね?」 まりさはそのことを知らない。安堵すると再び生まれ育った故郷へ走り出した。 「ゆっ!!ゆっ!!……つ…ついたぁ!!ついたよぉぉ!!!みんなぁぁ!!まりさかえっできだよぉぉぉ!!!!」 まりさは久しぶりに群れに帰ることが出来た。 「とまるんだぜ!!!!」 群れに入った途端まりさは横から体当たりをされた。 「ゆぎゃ!!な…なにするのぉ……」 「おさ!!きたんだぜ!!ゆっくりできないまりさがやってきたんだぜ!!」 群れから数匹のゆっくりがやってきた。中でも一際大きいゆっくりがこう言った。 「このむれはゆっくりできないゆっくりはおことわりだよ!!さっさとでていってね!!」 「そ…そんなぁぁぁ!!!ここはまりさがそだったところだよぉぉ!!!!そんなひどいごどいわないでぇぇぇ!!!」 「うるさいよ!!みんな!!このまりさをおいだすよ!!」 「ゆー!!!」 「さっさとでていってね!!」 「ゆっくりできないまりさはしんでね!!」 先程出会った2匹がここの群れに所属しておりれいぱーありすから逃げた後このまりさの事を話したようだ。 「やべで!!やべでぇぇぇ!!!いじわるじないでぇぇぇ!!!ゆわぁぁぁ!!!れいぶぅ!!れいぶぅぅぅ!!!」 「うるさいよ!!れいむはわたさないよ!!」 「きやすくれいむのなまえをよばないでね!!」 「ゆっくりできないよ!!さっさとどっかにいってね!!!」 「ゆっくりできないまりさのぼうしなんかこうしてやる!!」 まりさは帽子を奪われた。 「か…かえじでぇぇぇ!!!ぞれはまりざのぼうじだよぉぉぉ!!!!がえじで!!がえじでぐだざいぃぃ!!!」 帽子を奪ったゆっくりはもう1匹のゆっくりと帽子のつばを咥え合って帽子をビリビリに破いてしまった。 「ぞんなぁぁぁぁ!!!ばりざの…ばりざのゆっぐりじだぼうじざんがぁぁぁ!!!ゆぎぇっ!!!いだい!!いだいぃぃぃ!!!」 まりさは更に暴行を受けた。そうしてる間にも帽子は更に破かれていった。 「どぼじでぇぇぇ!!!?ばりざ…なにもあるいごどじでないのにぃぃぃ!!!ぼうじざん!!ぼうじざん!!なおっでぇぇぇ!!!」 「まだでていかないんだったらここでえいえんにゆっくりしてもらうよ!!!」 「ゆひぃぃ!!!ごべんなざい!!!ごべんなざい!!」 まりさは群れから追い出されてしまった。ビリビリに破かれたクズ切れを持って逃げていった。 「ぼ…ぼうじざん!!なおっでぇぇ!!ばりざをゆっぐりざぜでぇぇ!!ぺーろ…ぺーろ……ゆぅぅぅ!!なおんないよぉぉ!!!」 まりさは帽子だったクズ切れを舐めていた。 「ゆぅぅぅ!!!ぼうじじゃんがぁぁぁ!!これじゃぼう…ゆっぐりでぎないよぉぉ!!!」 しかし帽子は直らなかった。クズ切れは丸い小麦粉の塊になっただけだった。 「どぼじでぇぇぇ!!!まりざは…ばりざはゆっぐりじだいだげなのにぃぃぃ!!!!」 れいぱーありすだって相手にしてくれない。結局まりさは独り寂しく残りのゆん生を送ることとなった。 つむりを生んで解放されたまりさの末路は大抵こんなものなのだ。 「……寝てるか?」 「大丈夫です。寝てますよ…」 場面を加工所に移そう。現在の時間は午後9時。この時間になればほとんどのゆっくりは眠りについている。 加工所地下の牧場もこの時間は静かだ。電気も薄暗く時々当直の職員が見回りに来るだけだ。 「明るくしたけど…起きないのか?」 「起きませんね。…じゃあさっさと済ませちゃいましょう」 2人の職員が牧場の1室へ入った。この部屋では植物型妊娠で赤ゆっくりを製造しているのだ。 「「「「「「…………………」」」」」」 「「「「「「ゅぅ………ゅ……」」」」」」 部屋には頭から茎を生やしたゆっくりが大量にいた。まだ飾りの無いものからもう生まれてもいいものまで多くの赤ゆっくりが実っている。 部屋を少し明るくしたがどのゆっくりも目を覚まさなかった。 「…………」 「…………」 2人はうなずき合い1匹ずつ赤ゆっくりを吟味し始めた。 さて、まりさつむり量産計画についてだ。奇跡的にまりさつむりを発見した後彼らは議論を重ねた。 その結果ゆっくりの思い込みを利用することになった。具体的に言うと"自分はまりさつむりである"と思い込ませて子を産ませるのだ。 まずまだ目を開けていない赤まりさを採取する。帽子を見たことが無い赤まりさが必要なのだ。 この場合植物型妊娠で生まれた個体が望ましい。動物型妊娠で生まれた個体は胎内で既に目が開いており多少の知恵があるからである。 次に赤まりさが目を開く前に帽子を取り上げてフェイクの貝殻を被せるのだ。後はそのまま育て適度な大きさになったところで産む機械にする。 "まりさつむり同士で妊娠するのだから生まれてくる子供は当然貝殻を被っている"と思い込んでいるはずだ。 しかしまりさつむり同士の妊娠だからといって必ずしもつむりが生まれてくるとは限らないことはチーフの言葉通り既に実験で分かっている。 それでもまりさ同士の妊娠に比べればまりさつむりが生まれる確率は遥かに上がるだろう。そう予測したのだ。 「…………」 「…………」 2人は適度な大きさに育った赤まりさを1匹ずつ採取した。起こさないように慎重に茎を切っていく。 「…ゅ……ゆ?」 途中あろう事か1匹の赤まりさが職員の手の中で目を覚ましてしまった。 「っ!!!」 「ゆぴゃっ!………」 職員は咄嗟に手に力を込めて赤まりさを潰した。目を開けてもらっては困るのだ。それに大声を出して他のゆっくりが起きてしまうと厄介だ。 「………」 もう1人の職員が"静かに"とジェスチャーした。 「………」 "すまんすまん"とジェスチャーで返した。 何はともあれ予定の数の赤まりさを採取した。後は帽子を取り去りフェイクの貝殻を被せてケースの中に入れておけばいい。 「終わりましたね」 「外見は本物のまりさつむりそのものだよ。こいつらが大きくならないでいてくれたらこれで10万なのに…」 余談だが実際にただのまりさに貝殻を被せた偽物が一時期出回ったことがある。悪質なことに名前も"つむりまりさ"となっていた。 買った当初はまだ気付かれてなかったが月日が経つと本体が成長して貝殻とのバランスが非常におかしくなり詐欺だと発覚したのだ。 勿論企てた阿呆は逮捕されたという。 「そんな美味い話はありませんよ」 「分かってるよ。そんなことより撤収するぞ」 「うまくいけば良いですね」 「ああ」 さっさと仕事を終わらせ彼等は撤収した。 「どうだ?順調に進んでるかい?」 次の日、チーフはまりさつむり量産計画のプランを社長に報告してから研究室へ赴いた。 「いやぁ…それがですね…」 「え?もう失敗なのか…?」 「はい…。奴らもう気付いてます。見てください」 赤まりさ達は研究用の特製ケースに入れられている。マジックミラーを取り付けているため赤まりさ達は職員の姿を見ることは出来ない。 だが職員達は内部を見ることが出来る。チーフはケースの中を覗いた。 「かえじぢぇぇぇぇぇ!!!まりちゃの…まりちゃのおぼうししゃんかえしちぇぇぇぇ!!!」 「こんなにょゆっくちできにゃいんだじぇ!!ゆっくちちないでおぼうししゃんかえしゅんだじぇ!!」 本能とは恐ろしいものである。赤まりさは既に帽子というものを生まれる前から認識していたのだ。 「やぢゃぁぁぁ!!!こんにゃのやぢゃぁぁぁ!!!ぼうじぃぃ!!!ぼうじぃぃぃ!!!」 「こんにゃへんにゃのかぶりちゃくにゃいよぉぉぉ!!!かえちちぇぇぇぇ!!!」 「おきゃぁしゃぁぁぁん!!!おぼうししゃんとりかえちちぇぇぇぇぇ!!!!」 赤まりさ達は皆貝殻を脱ぎ捨てていた。ケースの中を必死で探し回っているが帽子は無い。 「嘘だろ…。いつどこで認識してたんだよ?」 「これがゆっくりなんですね…」 「その一言で片付けられるから困るよ」 「どうするんですか?」 「やるしかないでしょ…。荒沢さん…こんな状況だけど…やってみてよ」 「やってみます」 マイクの前に女性が座った。いつもは飼育部門で声で赤ゆっくりの母親役を担当しているのだ。 『おちびちゃん!!ゆっくりしていってね!!』 ケースの中に声が響いた。 「ゆ!!?だりぇ?」 『おちびちゃんのお母さんだよ!!ゆっくりしていってね!!』 「「「「ゆ…ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」」」」 「「「「ゆっくちしちぇいってにぇ!!」」」」 赤まりさ達は一斉に挨拶をした。が、すぐに話題は無くなった帽子に移った。 「おきゃあしゃん!!!まりちゃの…まりちゃのゆっくちしちゃぼうししゃんしらにゃい!!?」 「おぼうししゃんがにゃいとゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!!」 「かえしちぇぇぇぇ!!!まりちゃの!!まりちゃのゆっくちちたぼうちかえちちぇぇぇぇ!!!」 『何言ってるの?飾りさんはそこにあるじゃない』 「ゆ?こ…こりぇ?」 「ちぎゃうよぉぉぉ!!!こんにゃのゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!!」 「まりちゃのおぼうししゃんはもっちょゆっくちしちぇるよぉぉぉ!!!!」 『お…お母さんを困らせないでね!!それがおちびちゃん達の飾りさんだよ!!!』 「ちぎゃうぅぅぅぅ!!!こりぇじゃないよぉぉぉ!!!!」 「おきゃあしゃぁぁぁん!!!!かえちちぇよぉぉぉ!!!!!ぼうししゃんかえしちぇぇぇぇ!!!」 「こんなにょやぢゃぁぁぁ!!!こりぇじゃゆっくちでぎにゃいよぉぉぉ!!!ゆえぇぇぇぇん!!!!」 『お母さんを困らせないでって言ったでしょ!!!言うことを聞かない悪い子はお仕置きだよ!!!!』 ケースの中に人間の腕が伸びてきた。 「ゆぅぅぅ!!!!にゃにかきちゃよぉぉぉ!!!」 「きょわいよぉぉぉ!!!」 「まりちゃにいじわりゅじにゃいぢぇぇぇぇ!!!」 赤まりさ達は突然現れた腕に驚きケースの中を逃げ惑った。腕には赤いリボンが巻かれている。これは人間の腕と認識させないためだ。 ゆっくりというのは飾りでお互いを認識しているのだという。友達も恋人も親も子も基本は飾りで識別しているのだ。 このためか飾り、例えばれいむ種のリボンを付けたりドスまりさの帽子を被ると人間でもゆっくりと認識してしまう。 人間の存在を赤まりさ達から極力排除するために腕にリボンを巻きつけたのだ。 「ゆぴゃっ!!いぢゃい!!!いぢゃいぃぃぃ!!!!」 「こ…こっぢこにゃいぢぇぇぇぇ!!!ゆびゃ!!!い…いぢゃい!!!」 「ゆっくちできにゃいのはやぢゃぁぁぁ!!!ゆぴぃぃぃ!!ぢぐぢぐはやぢゃぁぁぁ!!!」 人間の手には針が握られていた。1匹ずつ針でぶすぶす刺しているのだ。 「にゃんぢぇ……まりしゃの…きゃざりはおぼうぢ……しゃんなにょにぃ…」 「おきゃあしゃぁん……。まりちゃのこちょ…きりゃいにゃの…?」 「いぢゃいよぉ……しゅりしゅりちてよぉ……」 『まだ分からないの!!?おちびちゃんの飾りはそれなんだよ!!!悪い子はゆっくりさせないよ!!』 再び腕が現れた。赤まりさ達はしぶしぶ貝殻に近付いた。 「わ…わきゃっちゃよぉ…」 「こりぇが……まりちゃのかじゃりしゃん…なんだにぇ…」 「ゆ…ゆっくち…できにゃいよぉ……」 『そうだよ!!おちびちゃん!!お似合いだよ!!ゆっくりしてるよ!!』 「ゆ…ゆぅ…」 「しょ…しょうな…にょ?」 「……ちぎゃうよぉ……」 初日から既に暗雲が立ち込めてしまった。 次の日になった。 「ぼうちぃぃぃ!!!まりしゃのおぼうぢぃぃ!!!」 「こんにゃのゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!!」 「ゆわぁぁぁん!!!かえじぢぇよぉぉぉ!!!」 振り出しに戻ってしまった。 『昨日も言ったでしょ!!!おちびちゃん達の飾りはそれだって!!!お仕置きするよ!!!悪い子はお仕置きだよ!!』 お仕置きすると諦めるのだが暫くすると帽子帽子喚くのだ。 「うぁぁぁ!!無理です!!説得できません!!」 1週間後には荒沢さんが思いっきり匙を投げてしまった。早くも失敗である。 「ダメか…」 「また何か考えないといけませんね…」 職員達はうな垂れてしまった。 「帽子どうします?一応捨てては無いんですが…」 「あの餓鬼共々潰しちゃえよ」 「あの…。いいですか?」 1人の職員が手を上げた。 「どうした?」 「帽子はあるんですよね。でしたらもっと良い方法がありますよ」 「何だ何だ?ちょっと皆静かにしな。おお、続けて続けて」 手を上げた職員に視線が集まった。 「要は"自分がつむりである"ことを思い込ませたいんですよね。でしたら"つむりがとてもゆっくりできる"と思い込ませれば良いんですよ」 「はぁ?」 「どういうこと?」 質問が殺到した。 「つまりですね、"とてもゆっくりしたつむり"と"ゆっくりできないまりさ"の両方を見せ付けてやるんですよ」 「おお!!」 「そうか!!」 「なるほどぉ。考えたな。確かにそれなら初めは貝殻を嫌がっててもそのうち抵抗が無くなるかもしれないな!」 職員達は沸いた。 「じゃああの餓鬼はその"ゆっくりできないまりさ"に仕立てちゃいましょう」 「なぁ…。つむりはどうするんだ?」 「あ……」 「そうだ…つむりがいなきゃ…」 「う~ん…」 「あ、先週生まれたあのつむりはどうなったんですか?」 「確かまだ販売されてなかったはずだが…。ちょっと待って。今から聞いてくるわ」 チーフは飼育部門へ走った。 「どうも。部長さんいる?」 「あ、これはどうも。部長ですか。今呼んできます」 すぐに飼育部門の部長がやってきた。 「どうしました?」 「いや…。実は先週そちらに回されたまりさつむりなんですが…」 「そういえばつむりの量産を計画されてましたね」 「ええ。それで…その…つむりをですね、こちらに回して欲しいんですよ」 「急にそう言われましても…。う~ん…とりあえずどうしてつむりが欲しいのか話せる範囲で教えてくれませんか?」 チーフは熱心に新しい計画の内容を説明した。 「あくまで計画レベルなんですが…」 「なるほど…確かにその計画ならつむりが生まれてくる可能性はありますね」 「どうですか?予算はありますから購入させてくれませんか?多少割高でも…」 「そうですねぇ……まだ販売の目途が立ってないんですよ……。分かりました。売りましょう。その賭けに乗ってみましょう」 「そうですか!ありがとうございます!」 「いつ渡しますか?」 「できれば今すぐにでも」 「今ですか?それは少し早いですよ」 「早い?」 「まりさつむりは周りからちやほやされるので増長しやすいんですよ。基が小生意気なまりさ種ですし。ですから教育期間が長めなんです」 「ゲス化しやすいんですね」 「ええ。ですからもう少しこちらで教育してからでも…」 「いや…。待ってください………。むしろゲス化するくらいでいいかもしれません」 「そうですか。あぁ……そうですね。礼儀正しいつむりよりもゲス化した方が成功しやすそうですね。では持ってきます」 すぐにまりさつむりが籠に入れられて運ばれてきた。 「ゆっくちちていっちぇね!!ちゅむりはちゅむりだよ!!」 「へ?つむり?」 「あぁ。皆でつむりちゃん、つむりちゃんって呼んでたらいつの間にかそう自称するようになったんですよ」 「そうですか。あ、そっちの方がいいですね。分かりやすいですし」 「じゃ、期待してますよ」 チーフはつむりを研究室へ持っていった。 「ゆ?」 「ゆっくち…うまれちゃよ!!」 「ゆっくちちていっちぇね!!まりちゃはまりちゃだよ!」 ケースの中で10数匹の赤まりさが目を覚ました。先週同様赤まりさ達は黒い山高帽子を脱がされ貝殻を被らされていた。 「にゃ…にゃんだきゃゆっくちできにゃいよ!」 「にゃにこりぇぇぇぇぇ!!!!?」 「これまりちゃのおぼうちしゃんじゃにゃいぃぃぃ!!!」 「こんにゃへんにゃぼうちしゃんじゃゆっくちできにゃいよ!!」 次々と貝殻を脱ぎ捨てていった。やはりゆっくりというのは自らの飾りを生まれる以前から認識しているようだ。 「まりしゃのおぼうししゃんどきょぉぉぉ!!!?」 「ゆぇぇぇん!!!いじわりゅしにゃいでぇぇぇ!!!かえちてぇぇぇ!!!」 「あれぎゃにゃいとゆっくちできにゃいぃぃぃ!!!!」 ケースの中を必死に走り回り帽子を探した。しかしケースの中には帽子の欠片すらなかった。 「ゆぇぇぇぇぇん!!!おぼうちぃ!!!!まりちゃのおぼうちぃぃぃ!!!!」 「ゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!!!ゆっくちさしぇちぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐ……ゆわぁぁぁぁん!!!かえじぢぇぇぇぇ!!」 赤まりさ達がぴーぴー泣き出した。と同時にケースに光が差し込んだ。 「ゆ!!?」 「にゃ…にゃに?」 「ゆ!!?ゆっくちがいりゅよ!」 先程まで赤まりさ達を囲っていた4つの壁は真っ黒であった。突然そのうちの1つの壁が透明になったのだ。 その透明な壁の向こうにも赤まりさが10数匹いた。 「どびょじでそっぢのまりしゃはおぼうししゃんがありゅのぉぉぉ!!?」 「じゅるい!!じゅるいよぉぉ!!!まりちゃにもおぼうちかえちてよぉぉぉ!!!」 「にゃんでまりしゃはゆっくちちちゃいけにゃいのぉぉ!!!?あっぢのまりちゃはゆっくちしちぇるのにぃぃぃ!!!」 壁の向こうの赤まりさ達はまりさ種本来の飾りである黒い山高帽子を被っていた。当然ケースの中の赤まりさ達は羨望の眼差しを向ける。 「ゆ…?ゆっくち?ゆっくち…できちぇる…の?」 どうやら一部の赤まりさは気付いているようだ。実は壁の向こうの赤まりさ達をよく見るとボロボロなのだ。 大切な帽子は所々が破れ上部が折れているのもいる。 「…ゅ……ゅ…」 「もう……やぢゃぁ……」 「いじゃいよぉ……いじゃいぃ…」 「ゆるじぢぇぇ……」 微かに呻き声も聞こえる。ケースの中の赤まりさ達は騒いでいるせいで聞き取れなかったようだ。 「しょれまりちゃの!!!!まりちゃのおぼうちしゃん!!!かえちちぇぇぇぇ!!!」 壁の向こうの赤まりさ達の帽子はケースの中の赤まりさ達の帽子ではない。が、我慢できなくなったのか壁の前に走り寄り叫び出した。 「しょうだよぉぉぉ!!!かえちちぇぇぇぇ!!!まりちゃもゆっくちちちゃいよぉぉぉ!!」 数匹の赤まりさが壁の前に殺到したところで変化が起こった。 「あぢゅ!!!あぢゅいぃぃぃ!!!」 「やびぇぢぇ!!!もうやぢゃぁぁぁぁ!!!」 「あぢゅいのはゆっくぢでぎにゃいぃぃぃぃ!!!」 「あぢゅい!!!やぢゃぁぁぁ!!!ゆぎぃ!!!じにゅぅぅぅ!!!」 「あんよじゃんがぁぁぁ!!!ぼうゆるじぢぇぇぇぇぇ!!!」 突然壁の向こうの赤まりさ達が悲鳴を上げながら飛び跳ねた。 「あぢゅい!!!あぢゅいぃぃぃぃ!!!」 「だぢゅぎぇぢぇぇぇぇぇ!!!」 「いいごになりゅかりゃぁぁ!!!ゆるじぢぇぇぇぇ!!!」 流石にこの状況を見せ付けられてゆっくりしているとは思えない。ケースの中の赤まりさ達は驚き声を潜めてしまった。 「ど…どうしちゃったにょ?」 「ゆ…ゆっくちちてにゃいよ……」 「きょ…きょわいよぉ……」 「いたしょうだよ……ど…どびょじでぇ……」 一部の赤まりさは生まれて初めて見る惨劇に恐怖でブルブル震えていた。 「ゆひぃぃぃ………ゆひぃぃ…」 「みょ…みょうやじゃぁ……がえじぢぇ…おうぢに…かえじぢぇよぉ…」 「だじゅげぢぇ……おきゃあ…しゃん…だじゅぎぇでぇ……」 熱が引いたのか壁の向こう側の赤まりさ達は飛び跳ねなくなりぐったりとしていた。弱々しい呻き声もケースの中の赤まりさ達には聞こえていた。 「ゆ?あ…ありぇはなんなんだじぇ?」 「うごいちぇるよ…にゃにありぇ?」 ケースの中の赤まりさ達は一斉に斜め上を向いた。壁の向こう側の天井が徐々に徐々に下がってきているのだ。 「ゆひぃ……あぢゅいよぉ……」 「ひりひりすりゅよぉ………ぺぇりょ…ぺぇりょ…しちぇぇ…」 壁の向こうの赤まりさ達はまだ気付いていなかった。が、天井が下がるにつれ1匹1匹とそのことに気付いていった。 「いやぁぁぁぁ!!みょうやべぢぇぇぇぇ!!」 「ちぐちぐはゆっぐりでぎにゃいぃぃぃ!!!」 「いぢゃいのはやぢゃぁぁぁ!!!ゆるじぢぇぇぇぇ!!!」 天井には無数の針が氷柱の如く立っていた。天井と言うよりも尖った針先が赤まりさに向けて徐々に下がってきていると言った方がいい。 「いやぁぁ!!いやぁぁぁ!!いじゃいのはやぢゃぁぁぁ!!」 「だじぢぇぇぇぇ!!!ここかりゃだじぢぇぇぇぇ!!!」 「みゃみゃぁぁ!!!みゃみゃぁぁぁ!!!だじゅげぢぇよぉぉぉ!!だじゅぎぇでぇぇぇ!!!」 赤まりさ達はずりっずりっと這い出した。底部の痛みがまだ残っているらしく満足に動けないようだ。 「ごっぢくりゅなぁぁぁ!!!いぢゃいのはやぢゃぁぁぁ!!!」 「ゆっぐちさしぇぢぇぇぇ!!!ゆっぐぢさしぇでよぉぉぉぉ!!」 針は天井にびっしりと立っていた。つまり赤まりさがどこに逃げようと針は刺さる運命なのだ。 「いぢゃい!!!!いぢゃいよぉぉぉ!!!」 「ゆぴぃ!!ゆぴぃ!!!やびぇで!!やびぇでぇぇ!!!」 「いぢゃい!!ゆぎぃぃぃ!!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!」 針は容赦無く赤まりさ達に深々と突き刺さった。 「もうそろそろいいんじゃないか?天井上げてやれ」 「はい」 研究室に3つのケースが隣接して並べられていた。真ん中のケースには貝殻と飾りの無い赤まりさが入れられている。 そしてその隣のケースにはボロボロになった赤まりさが入れられていた。 「天井を上げたら次は水ですね」 「砂糖の方じゃないぞ。まだ治すなよ。塩の方だからな」 「はい。準備OKです」 「よし。入れてやれ。溶かすなよ」 「ゆぅぅ……いぢゃいよぉ……」 「だりぇ…かぁ……ぺぇ…ろ…ぺぇ……ろ…しちぇ…」 「ゆっくち…しちゃい……」 「ゅ…ゅ…」 「ゆ…っぐ……にゃんでぇ……にゃんで…ゆっくち……しちゃ…いけにゃいのぉ……」 天井が元の高さまで戻った。赤まりさ達は全身傷だらけだが皆生きていた。赤ゆっくりでも体内の餡子が無事なら死にはしないのだ。 「ゆ?にゃ…にゃんの…おちょ?」 「ゅ……ゆあぁぁ……お…おみじゅしゃん…」 「と…とけちゃうぅぅ…に…にぎぇるよ…」 赤まりさ達への仕打ちはまだ続く。今度は水が流れてきたのだ。 「やぢゃぁぁ!!ぢにじゃくにゃいぃぃ!!」 「おみじゅしゃんはゆっくぢでぎにゃいぃぃ!!」 「あっぢいっぢぇぇぇ!!とげぢゃうぅぅぅ!!」 元気のある赤まりさはよろよろと逃げ出したが大半はまだ動けずにいた。 「ま…まっぢぇぇぇ!!おいでぎゃないぢぇぇぇ!!」 「いやぢゃぁぁぁ!!まぢゃゆっぐぢぢでにゃいのにぃぃぃ!!だぢゅげぢぇぇぇ!!」 水はあっという間に床一面を覆い全ての赤まりさの足元を飲み込んだ。 「どぎぇぢゃうぅぅ!!とぎぇるぅぅぅぅ!!!!」 「お…おみじゅしゃん!!あっぢいっぢぇね!!あっぢいっぢぇぇぇ!!」 帽子に浮かんで難を逃れるという方法もあるがこの状況で赤まりさ達がそういった行動に移れるわけが無い。 水位はどんどん上がりついに赤まりさの背丈を超えてしまった。 「ゆぎょぼぼっ……ぷひゃぁっ!……いやっ!…だぢゅ…」 「だぢゅぎぇ……がぼっ……ゆひぃっ!……っぷ……」 「やぢゃぁぁ!……ゆぼっ……ゆ……」 もがいていた赤まりさもいたが水位は更に上がり完全に水の中に飲み込まれてしまった。が、水は1分もしないうちに排出された。 「ゆひぃぃぃ……ゆひぃぃ………」 「ゅ……ゅ……」 「…ぅ……ゅ……ゅ…」 水が全て引いたときには息も絶え絶えだ。 「ゆ……ゆぎぃ!!!いぢゃい!!!いぢゃいよぉぉぉ!!!」 「じびりゅぅぅぅ!!!じびりゅぅぅぅぅ!!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!」 「かりゃだがいぢゃいぃぃ!!!ゆぎぇぇぇぇ!!!」 「ゆぁぁぁ!!!!いぢゃいよぉぉ!!!じんじゃう!!!じんじゃうぅぅぅ!!!!」 突然赤まりさ達がのた打ち回った。水に何か仕込んであったのだろう。 「ゆぅぅ……にゃに…にゃんにゃのぉ…」 「きょわいよぉ……」 「にゃんでゆっくち…しちゃいきぇないの?……」 「ゆぅぅぅ……」 壁の向こう側での出来事を一部始終見ていた帽子無しの赤まりさ達はすっかり怯えてしまった。 「ゆ?こっちにもゆっくちがいりゅよ?」 堪らずそっぽを向いた赤まりさが叫んだ。 「ゆ?」 「しょっちにも?」 次々に赤まりさは後ろを向いた。今まで見ていた壁の反対側の壁もいつの間にか黒から透明に変わっていたのだ。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 その壁の向こう側では貝殻を被った赤ゆっくりがクッションの上ですやすやと眠っていた。 「ゆっくちちてにゃいおぼうししゃんだじぇ」 「へんにゃおぼうちだよ?」 「ゆ?あにょぼうししゃんこりぇにしょっくりだよ?」 実は何からも影響を受けなければまりさつむりの飾りである貝殻はゆっくりからすればそれほどゆっくりできるものではないのだ。 ただ周りが珍しいだのゆっくりできるだの煽るためそう思い込んでしまうのだ。 「ゆ…ゆ~ん。ゆっくちおきりゅよ!ちゅむりはゆっくりおきちゃよ!!」 まりさつむりが目を覚ました。 「ゆっくちちていっちぇね!」 つむりはクッションに顔をうずめて戯れていた。その表情はとてもゆっくりとしたものであった。 「しゅっごい…ゆっくちちてりゅね…」 「にゃんでしょんなにゆっくちできりゅの?」 「いいにゃぁ……」 つむりを眺めていた赤まりさ達は敏感にそれを感じていた。 「あっちは…じぇんじぇんゆっくちちてにゃいよ…」 まりさつむりが見える壁の反対側には全くゆっくり出来ていない赤まりさ。一目瞭然だ。 「しょういえばおにゃかしゅいたね…」 「にゃにかたべちゃいよぉ…」 帽子無しの赤まりさ達は空腹を感じたようだ。 「腹が空いたんだとよ」 「じゃあまずはまりさの方にくれてやれ。砂糖水の方も準備しとけよ」 「こっちですよね。皿に盛らなくていいですか?」 「ああ。つむりの方は皿に盛ってやれ」 傷だらけの赤まりさ達の頭上からぽろぽろと固形の餌が降ってきた。 「ゅ……ゅ……ゆ?」 「にゃにか…おちてきちゃよ…」 「ごはんしゃん?……」 「ゆっくち…だべりゅよ…」 餌から匂いが漂ってきたのか1匹1匹と餌を口にした。 「むーちゃ…むーちゃ……ゅぅ……」 「おいちくにゃいよぉ……」 「むーちゃ……ぱしゃぱしゃしゅるよぉ……」 「ゆわぁぁぁあん!!!あみゃあみゃ!!あみゃあみゃしゃんだべちゃいよぉぉ!!」 「おいちくにゃいよぉぉ!!ゆっくちしちゃいよぉぉ!!」 餌は全く美味しくなかった。連鎖するように赤まりさ達は泣き出した。 「ゆえぇぇぇぇん!!!!ゆびぇぇぇぇん!!!」 「おいちいのたべちゃいよぉぉ!!!」 「ゆわぁぁあぁぁぁん!!ゆわぁ……ゆ…ゆぎゃぁぁぁ!!!」 「いやぁぁぁ!!!ぢくぢぐしゃんはやぢゃぁぁぁぁ!!!」 「ごびぇんなしゃい!!!ごびゃんなしゃい!!!たべましゅ!!たべましゅ!!!」 再び天井が下がってきた。勿論針が立っている。 「うみぇ!!ぢょううみぇぇぇぇ!!!」 「たべぢぇるでじょぉぉ!!!いぢゃいのはやぢゃぁぁぁ!!!!」 「むーぢゃむーぢゃ!!」 一心不乱に餌を飲み込んでいく赤まりさ。だが天井は速度を落とすことなく下がっていく。そして針が赤まりさ達に突き刺さった。 「いぢゃいぃぃ!!!やべぢぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎぇぇぇぇ!!!!ゆぎょっ!!ゆぎぃぃ!!!!」 「いぢゃいよぉぉぉ!!!!いぢゃいよぉぉぉ!!!」 未消化の餌を吐きつつ悲鳴を上げる赤まりさ。天井が元の高さへ戻った。 「ゆひぃ……」 「たべまじゅ……たべるかりゃ…いぢゃいのはやべぢぇ……」 「むーぢゃ…むーぢゃ……ふしあ……わしぇ……ゅ…ゅ…っぐ…」 涙を流しながら吐しゃ物と餌を飲み込んでいった。 「のぢょ…かわいちゃよぉ……」 「おみじゅ……おみじゅ……」 「きゃらきゃらだよぉ……にゃにかのみちゃいよぉ…」 全ての餌を食べた後赤まりさ達は飲み物を探した。周りを見回したりうろついたがあるのは先程流れてきた水が床に僅かだけ。 赤まりさ達は床にうずくまって舐めた。 「ぺーりょ…ぺー……ゆぎぃ!!」 「こ…こりぇどくはいっちぇる!……ゆぎぇぇ……」 「ゆひぃ……きゃらいよぉ……のみぇない……」 「ゆ…?にゃんか…おとがしゅるよ…」 「ゆ!!ま…まちゃきちゃぁぁ!!!」 再び水が流されてきた。赤まりさは逃げ惑った。 「やぢゃぁぁぁ!!!しょんなにいらにゃいよぉぉぉ!!!」 「しょんなにのみぇないよぉぉぉ!!!」 「そりぇじゃどげぢゃうぅぅぅ!!!!」 水はあっという間に赤まりさを飲み込んだ。今回も1分もしないうちに水が排出された。 「ゆひぃ……ゆひゃぁ……」 「もうおみじゅしゃんはいりゃにゃいよぉぉ!!!」 水が引いた後赤まりさ自身は気付いていないだろうが傷だらけだった体が若干回復していた。穴が開いていた部分もうっすらと白い皮で塞がれている。 一方のまりさつむりはどうであろうか。 「むーちゃむーちゃ!!おいちぃぃ!!!」 つむりも固形の餌を食べていた。が、見るからにしっとりとして美味しそうだ。きちんと皿に盛られていて飲み水も用意されていた。 「ごーきゅごーきゅ!ちあわしぇぇ!!!!」 ゆっくりしているまりさつむりとゆっくりできていない赤まりさ達。両者を見せ付けられた帽子無しの赤まりさ達はただうな垂れるしかなかった。 「どうにゃってりゅの…?」 「にゃんで…あっちはゆっくちしちぇにゃいの?でみょこっちはゆっくちちてるよ…?」 「わかりゃにゃいよ……」 ケースの中が少しざわついた。 「おし。迷ってる。今なら大丈夫そうだ」 「荒沢さん。お願いしますね」 「任せてください」 荒沢さんがマイクの前に座った。 『つむりちゃん!ゆっくりしていってね!!』 突然の声に帽子の無い赤まりさ達は驚いた。 「ゆ!!にゃに?」 「だりぇ?どきょにいりゅの?」 『お母さんだよ。つむりちゃんのお母さんだよ!』 「おきゃあしゃん!!?おきゃあしゃんなにょ?」 「まっちぇね!!まりしゃはまりしゃだよ!」 「しょうだよ!おきゃあしゃん!!まりちゃはまりちゃだよ!!」 「ちゅむり?ゆ!!あにょこもちゅむりっていってちゃよ!!」 まりさつむりがいる所がパアァッと明るくなった。赤まりさ達はつむりの方向を向いた。 『この子はなんでゆっくり出来てると思う?』 「ゆ?にゃんでにゃの?」 「ゆっくちちてりゅね…でみょなんぢぇ?」 『それはね、この子がつむりちゃんだからなんだよ』 「ちゅむりは…ゆっくちできるにょ?」 『そうだよ』 「ゆぎぃ!!あぢゅい!!!あぢゅいよぉぉ!!!」 「やびぇぢぇ!!!もうやべぢぇよぉぉ!!!」 突然赤まりさ達の後ろから悲鳴が聞こえてきた。赤まりさ達は後ろを振り返った。 『なんであの子達はゆっくりしてないと思う?』 「ゆ?」 「にゃんで?にゃんでにゃの?」 『それはね、あいつらがまりさだからだよ!!クズでのろまでゲスなまりさだからだよ!!』 少し怒ったような、そんな声だった。 「ゆぅぅ……」 「おこりゃないぢぇぇ…」 「まりしゃは……まりしゃは…ゆっくちちちゃいけにゃいの?」 『そうだよ!!まりさなんて最低なゆっくりなんだよ!!殺されないだけでも有難がるんだね!!!』 「しょ…しょんなぁ……」 「ゆっくち……ゆっくち…ちちゃい……」 『でもおちびちゃん達はまりさじゃないよね。つむりちゃんだもんね。だからゆっくりしていいんだよ!』 「ゆ…」 「でみょ…まりちゃは……」 『おちびちゃん達にはとってもゆっくりしたお飾りがあるでしょ』 「こ…こりぇ?」 「まりしゃの……かじゃりしゃんは………」 『ゆぷぷぷ!!!見てよあのまりさ。全然ゆっくりしてない帽子だね!!あんな汚くてゆっくりできない帽子見たことが無いよ!!』 「ゆ……ゅ…ぅ……」 「おぼうししゃん……ゆっくちできにゃいの……」 「しょんなぁ……」 『でも!つむりちゃんの飾りは本当にゆっくりしてるね!!みんなに見せたらすっごいちやほやされるね!!!』 「ちゅむりは…ゆっくちできりゅ……ゆっくちできりゅの?」 「まりしゃは……まりしゃは…ちゅむり?」 「ゆっくちちちゃい………でみょ…まりしゃ…だよ…」 帽子の無い赤まりさ達はつむりとボロボロの赤まりさ達を交互に見ながらオロオロしていた。 「いいぞ。効果が出てる。もう一押しだ」 「荒沢さん、とどめさしちゃおう」 「はい」 彼女は少し息を吸った。 『つむりちゃん!!お腹空いてない?』 「ゆ…しょういえば…」 「おにゃかしゅいちゃぁ……」 「まりしゃもごはんたべちゃいよ!」 『つむりちゃんにはご飯をあげないとね』 赤まりさの頭上から固形の餌が降ってきた。まりさつむりが食べていたのと同じ餌だ。 「お…おいししょうなにおいがしゅるよ!!」 「しゃっしょくたべりゅんだじぇ!」 「いっちゃぢゃきまーしゅ!!」 赤まりさ達が餌に噛り付いたそのときだった。 『ちょっと待ったぁぁ!!!!!!』 「「「「ゆぅぅ!!!?」」」」 突然の怒号に赤まりさ達は驚き固まってしまった。 『何でこんな所にまりさがいるの!!!?つむりちゃんのふりをしてゆっくりしようだなんてとんだゲスだね!!!!』 赤まりさ達の頭上から人間の腕が伸びてきた。前回同様れいむ種の赤いリボンが巻きつけられている。 「にゃに!!にゃんなのぉぉ!!」 「きょわいよぉぉぉ!!!」 急に現れた腕に戸惑う赤まりさ。すぐに1匹の赤まりさが掴まれた。 「お…おしょらをういちぇりゅぅぅぅ!!!…ゆぎゅっ!!!ゆ…ゆぎぃぃぃぃ!!!」 赤まりさを掴む手に力がこもった。赤まりさの顔色が黒くなり苦しそうにしている。 「ぎゅ…ぎゅるじぃぃ……ゆぎぇぇぇぇ……」 残った赤まりさ達は悲鳴を上げた。 「ゆぎゃぁぁぁ!!!ぎょわい!!!ぎょわいよぉぉぉ!!!」 「やぢゃ!!ゆっくちさしぇちぇぇぇぇ!!!」 「いじみぇにゃいでぇぇぇ!!!!ぷ…ぷきゅぅぅぅ!!!」 「ゆびぇぇぇぇえん!!!ゆっぐぢでぎにゃいぃぃぃ!!!」 捕まった赤まりさはケースからいなくなった。そしてそのまま隣の、散々痛めつけられた赤まりさ達がいるケースに落とされた。 「ゆぎぃ!!!!い…いぢゃい……」 続いて赤まりさの目の前にボロボロになった黒い帽子が落とされた。 「きょ…きょきょはど……ゆぅぅぅぅ!!!!」 赤まりさの目に写ったのは先程散々痛めつけられていたボロボロになった赤まりさ達だ。 「ゅ……ゅ……」 「まぢゃ…いぢゃいよぉぉ……」 「しゅり…しゅりちちぇ………」 「ゆ…っくち……ちちゃい……」 弱々しく呻く赤まりさ。今ここに落とされた赤まりさの頭の中では先程目の当たりにした数々の痛々しいシーンが駆け巡っていた。 「い…いやぢゃ!!いやぢゃぁぁぁ!!!きょきょはゆっくちできにゃい!!!ゆっくちできにゃいぃぃぃ!!!」 赤まりさは辺りを走り回った。 「どきょ!!?どきょにゃの!!!?みんにゃどきょいっちゃったのぉぉぉ!!!!?きょわいよぉぉぉ!!!きょわいよぉぉぉ!!」 今赤まりさがいるケースは床がホットプレートだったり天井が落ちてきたり排水口があったりとギミックが満載だ。 更にマジックミラーを利用しているため外の様子は見えず壁に映っているのは自分の姿だけなのだ。 「ま…まりしゃぁ………」 「や…やぢゃ……まりちゃ…あっちいぎぢゃぐにゃいよぉ……」 「どうにゃっぢゃうの……?まりちゃぁ……」 帽子の無い赤まりさ達が最初に目覚めたケースはスピーカーを仕込んだだけの普通のケースであるため外の様子がちゃんと見える。 隣のケースの中で泣きながら右往左往するさっきまで一緒にいた仲間をしっかりと見ることが出来ているのだ。 「どきょぉぉぉ!!!!?みんにゃぁぁぁ!!!!まりちゃぁぁ!!!!まりしゃぁぁぁ!!!へんじじぢぇぇぇぇ!!!」 赤まりさへの返事はすぐだった。 「ゆぎぃ!!!あ…あぢゅ!!!あぢゅい!!!あぢゅいよぉぉぉぉぉ!!!!」 初めて味わう凄まじい熱さに大いに飛び上がった。このケースの先住民であった赤まりさ達も同様に悲鳴を上げながら飛び上がっていた。 「もうやぢゃ!!!やびぇでぇぇぇ!!!!」 「あんよじゃん!!!!あんよじゃん!!!うぎょいぢぇぇぇ!!!いぢゃいよぉぉぉぉ!!!!」 「あぢゅい!!!!だぢゅげでぇぇぇ!!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!ゆっぐぢぃぃぃぃぃ!!!!!」 既に底部が機能しなくなった赤まりさもいるようで悲鳴を上げながら床にくっついてるのもいる。 「やぢゃ!!!!ゆっぐぢぢちゃい!!!!ちゅむ…ぢゅむりになるがりゃぁぁぁぁ!!!!!」 ケースの中に木霊する阿鼻叫喚に赤まりさはついにまりさ種であることを否定した。 「ぢゅむりになりばぢゅぅぅぅ!!!!やびぇでぇぇぇ!!!あぢゅい!!!!あぢゅいよぉぉぉぉ!!!!」 だが赤まりさに救いの手は来なかった。 「や…やぢゃよぉ……」 「きょわいよぉ……」 「も…もうやぢゃ……きょわいの…みちゃくにゃい……」 ついさっきまで一緒にいた仲間が痛めつけられているのを目の当たりにした赤まりさ達はブルブル震えていた。 『ゆ!!!!まだいるよ!!!まだつむりちゃんのふりをしたまりさがいるよ!!!!制裁してあげるよ!!!!』 再びケースの中に腕が伸びた。赤まりさ達は我に返り逃げ惑った。 「いやぁぁぁ!!!こにゃいでぇぇぇ!!!!」 「こっぢぐりゅにゃぁぁぁ!!!!ぎょわいよぉぉぉぉ!!!!」 「いぢゃいのはやぢゃぁぁぁぁ!!!!あっぢいっぢぇぇぇぇぇ!!!!」 1匹の赤まりさが転がっていた貝殻の中に頭を入れた。隠れたつもりなのだろうか。 「あ、ねぇ。今貝殻に隠れた子を捕まえてくれない?貝殻ごと」 「こいつですか?」 「捕まえても出しちゃダメよ。私に任せて。大丈夫。すぐ分かるから」 「はぁ…?」 『捕まえたよ!!!まりさにゆっくりなんかさせないよ!!!!』 貝殻に隠れていた赤まりさが捕まった。 「いやぁぁぁ!!!はなじぢぇぇぇ!!!はなじぢぇぇぇぇ!!!!やぢゃ!!やぢゃぁ!!!!ゆっぐぢぢぢゃいぃぃ!!!!」 赤まりさ手の中でじたばたして抵抗した。 『ゆ!!!!まりさじゃないよ!!!つむりちゃん!!!つむりちゃんだったね!!!!ごめんね』 急に優しい口調になった。 「ちゅ…ちゅむり…?まりちゃは…ちゅむりにゃの……?」 赤まりさは手の中で恐る恐る声を出した。 『そうだよ!だってつむりちゃんはとってもゆっくりできる飾りを持っているじゃない!まりさはゆっくりできる飾りは持ってないんだよ!!』 赤まりさはそっと床に降ろされた。そして貝殻を頭に被された。 「ゆ…ゆっくちできりゅ……」 「きゃざりしゃん?」 「ゆ!!!」 まず1匹の赤まりさが気付いた。それに連鎖するかのように他の赤まりさも次々と気付いていった。 「まりしゃはちゅむりだよ!!!」 「まりちゃはつみゅりだよ!!!」 「ちゅむりだよ!!!ちゅむりはゆっくちできりゅよ!!」 赤まりさ達は次々と貝殻を頭に被っていった。 「ゆぅぅぅぅ!!!まりちゃも!!!まりちゃもぉぉぉぉ!!!!」 最後の1匹が遅れて貝殻に飛び付いた。 『見つけたよ!!!!つむりちゃんのふりをするゲスなまりさを見つけたよ!!!!』 貝殻を被る前に赤まりさは捕まってしまった。 「どびょじでぇぇぇ!!!!まりちゃは…ぢゅぶりだよぉぉぉぉ!!!」 『やっぱりまりさだね!!!そんな嘘をつくゲスなゆっくりはまりさだね!!!!制裁するよ!!!!』 「ゆぎゅ…ぎゅ……ぎゅ…ぇ……く…きゅ…りゅ……ぎぇぇぇ」 手の中で赤まりさがもがき苦しんだ。 『制裁なんかじゃ生温いよ!!!ゆっくりしないで死んでね!!!!』 「ゆぎゅっ………ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………」 手に更に力が加わり赤まりさは口から大量の餡子を吐き出した。 「ゅぅぅぅぅぅ…………」 「ちゅ…ちゅむり……ちゅむりだよぉ……」 「まりちゃじゃ…ないよぉ……」 残りの赤まりさ達は貝殻を深々と被り息を潜めていた。 『みんな!!!もう大丈夫だよ!!!!悪いまりさはお母さんがやっつけたよ!!!!』 赤まりさ達は貝殻から恐る恐る目を出した。 「ゆ!!!」 「にゃ…にゃにこりぇ……」 「ち…ちんでりゅ?ちんじゃっだの…?」 赤まりさ達の目の前には中身も目玉も無い、皮だけになった赤まりさと餡子の塊が転がっていた。 『さあみんな!!!!邪魔者はいなくなったよ!!たっくさんご飯を食べようね!!!!!』 「ゆ……ゆぅ……」 「ゆぅぅぅ………」 急に優しい口調に戻ったところで赤まりさ達の恐怖が拭えた訳ではない。 『あれ?何でご飯食べないの?つむりちゃんはとってもいいゆっくりなんだけどなぁ…』 「は…はいぃぃぃ!!!」 「たべまじゅ!!たべりゅよぉぉ!!!」 「ちゅぶりだもん!!ちゅぶりだよぉぉ!!!」 流石の赤まりさでもここで逆らったらどうなるかが分かっているようだ。我先にと餌を食べ始めた。 「良くやってくれたよ。いいところで機転がきいたね」 「今のは効きましたよ。大成功じゃないですか」 「うふふ。ありがとうございます」 「死骸の方はどうします?」 「当分そのままにしとけ。まりさ種がどういう扱いを受けるのか、身近で分からせてあげる為にね」 まずは第一関門である"まりさはゆっくりできない"と"まりさつむりはゆっくりできる"の2つを刷り込ませることに成功した。 あとは赤まりさ達をまりさつむりとして育てていくだけである。便宜上ここからはこの赤まりさ達を偽つむりと呼ぶことにしよう。 続く by エルダーあき 挿絵:キリライターあき
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このSSは自分がはじめて投降したSSです。 思い浮かんだことを手当たり次第に書きなぐったためどこかで見たことのあるようなネタになってるかもしれません たぶんいろいろSSとして見苦しい部分があると思います さらに虐待成分は数パーセントもありません それでも見てくださるという奇特な方はどうぞ なんということだ、これではゆっくりできない。 母の体から飛び出た赤ちゃんまりさを見てお父さんまりさは思った。 なんということだ。このこはゆっくりできない。 自分の身を引き裂かれる思いで産んだ子供を見てははまりさは涙を流した。 「なんなのこのこ!なんだかゆっくりできないよ!!!」 「こんなのがまりさのいもーとなんてまりさたちのはじだよ!!!」 生まれてきた妹を見て姉たちは口々に叫んだ。 「むきゅー…これは大変なことになったわね、まりさ」 家族ぐるみの付き合いもあり、産婆として母まりさの出産を助けたぱちゅりーはうなった。 何も赤ちゃんにおかしなところはない…筈である 少し体は小さいが異常なほどではないし、少し声が小さいが「ゆっくりちていってね!」と元気な声もあげている。 この子供が異常な理由は二つある、一つはこの子がゆっくり史上まれに見る「一人っ子」だったのだ。 通常ゆっくりの出産方法は2種類あるが詳しくは述べない。 大人でなくても可能で、短時間で小さい子が5匹~10匹前後生まれる植物型と、負担は大きく、時間もかかるが亜成体の子供を3匹ほど生む動物型の出産がある。 一人っ子など一度も出産できないで死ぬことの方が圧倒的に多いゆっくり界において、ゆっくりゆゆこが食べすぎで体を壊す事に匹敵するほど珍しい出来事だった。 だが、そんなことはたいした問題ではない、一匹しか生まれなかったことは確かにさびしいが、一匹しかいないからこそ親も姉もこの子に一層の愛情を注ぐことだろう。 この子が本当に異質なこと、それはこの子が「見ているだけでなんだかゆっくりできない気がする」事だ。 帽子がないのとは違う、帽子のないゆっくりを他のゆっくりが殺すのは帽子無しのゆっくりが無理にでも群れに加わろうとし、無理をするため結果的に死んでしまう。 群れのゆっくりに殺すつもりはない、ただ、見知らぬゆっくりがなんど追い返そうとしてもしつこく群れに入ろうとするため、結果的に殺してしまう、それだけのことだ。 だが、親も、姉も、ぱちゅりーもこの子が母まりさの子供だと理解しているし、帽子だってちゃんと付いている、なのにゆっくりできない。 なんというか、そう。このゆっくりはみているだけで他のゆっくりを「ムズムズ」させる・・・そんな違和感を感じさせるのだ。 なぜこの子を見ていると「むずむず~」するのか父まりさはぱちゅリーに聞いた、彼女はおおよそゆっくりが考える疑問にいつも答えてくれた。 彼女はありすとぱちゅりーという全ゆっくりの中でもトップクラスの知性的なゆっくりの間に生まれたゆっくり、知能はともかく知識は非常に豊富だ。 ぱちゅりーは「むぎゅぎゅぎゅ…」としばらく餡子脳の中の記憶を探った結果、一つの結論に達した。たぶんこれだ 「あのね、まりさ、この子は『へんい』してしまったゆっくりなの」 ぱちゅリーの話をまとめるとこうなる。 人間にも血のつながった者同士で子供を作るとお互いが持つ同じ特徴(いわゆる優性遺伝)だけが強く出てしまい、結果両親の短所を受け継いだ病弱な子供が生まれてしまうことがある。ゆっくりにはそんなことは無い、さすがに親子で・・・というのはあまりないが姉妹で繁殖するのはざらにあることだ。 だが、ゆっくりには同種で繁殖することを繰り返すと似たようなことが起こるらしい、つまり、れいむとれいむ、まりさとまりさなどが交尾すると起こるらしい、もっともれいむやまりさは数が多く、遺伝子の多様性もあるため確率自体は非常に少ないのだが… 母まりさの両親も父まりさの両親もその両親はまりさだった、おそらくそのさらに両親もまりさだったのだろう、その結果、確率が低いはずのまりさ同士の子供が『へんい』してしまったというわけだ。 自然界の動物はこのような突然変異を嫌う。 変異の多くは生存に不利になってしまうものであり、非常に病弱になる、体に障害を持って生まれるなどのほかにアルビノのようにいたずらに天敵に見つかる可能性を増やすだけなのだ。 おそらく姉まりさたちがむずむずしているのもその変異を本能的に察しているからなのだろう、もっとも短所の塊であるゆっくりに変異が起きたところでこれ以上生存に不利な生物になるかどうかはわからない。 余談だがこの母ゆっくりはにんっしんっして間もなく、えさを捕りに行ったときに遠出をしてしまい、もうどんな動物も立ち寄らない青く光る石のある洞窟の前を通り過ぎてしまったことをここに記しておく。 「それじゃあもうこのこはゆっくりできないの?」 泣きわめきながらぱちゅリーに聞く母まりさをなだめながら答えた 「でも、あなたたちが大事に育ててあげればきっとゆっくりできる子にそだつわ」 「ゆっ!この子はまりさとまりさがゆっくりさせてあげるよ!!」 「そうだね!この子もまりさたちのこどもだもん!!」 「ゆっくり育ってね!!!」 両親は確かに親だった、少し見ていてむず痒くなっても親の愛と本能で気にしないことができた。 だが子供はそうはいかない、たとえ妹だとしてもこの赤まりさは自分たちのゆっくりライフを常に妨害する敵なのだ。 そして約半月の時が流れた 「ゆゆっ、ごはんをもってきたよ!!」 父まりさが頬を膨らませて帰ってきた、野生のゆっくりとしては長い時を生きたため、効率のいい餌の集め方、効率のいい天敵からの隠れ方を心得ていたため、食糧事情はこの森一帯のゆっくりの中ではかなり恵まれた方だった。 「今日はぱちゅりーからタンポポももらってきたからみんなでゆっくりたべようね!」 このタンポポは隣のぱちゅリーが育てたものである、まあ育てたといっても種を集めて家の近くにまとめて植えただけだから農耕とは言い難い、とうぜんのうかりんに劣る。 だがこのぱちゅりーのたんぽぽも付近一帯のゆっくりのゆっくりライフに一役買っているのも事実だ。 「ゆゆっ!」 「タンポポ!!」 「むしゃむしゃ、うっめ、これめっちゃうめ!!」 言い切る前に子供たちが群がってくる、人が見たら少し腹も立ちそうだが両親は子供たちを食事を見るだけで幸せだった、そしてこれから起こるであろうことを考えると心が痛んだ。 「ゆー、まりさにもたべさせてね!!」 少し遅れてあの赤ちゃんゆっくりがタンポポにありつこうとする 「ゆっ!だめだよ!!そこでごはんたべないでゆっくりしててね!!!」 「ゆ゛べっ!!」 その瞬間姉ゆっくりのうちの一匹が押しのける、ほとんど体当たりに近いそれはまだ小さい赤ちゃんまりさにとっては大ダメージだ。 「ゆ…ゆ゛…」 「どお゛し゛て゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛お゛ぉ!?」 あわてて姉まりさたちを叱る母まりさ、とうぜんだ、赤ちゃんまりさはあんここそ吐いてはいないが「ゆ゛…ゆ…」と痛みで震えている。 「だってあのまりさゆっくりできないんだもん!」 「おかあさん!あのまりさをゆっくりころしてね!!」 「だめなのっ!!おねえさんがいもうとをゆっくりさせないのはいけないことなの!!」 ぶーぶー文句を垂れる姉まりさに母まりさが説教をする、これで何度目だろうか、毎日じゃなかろうか。 すぐ後ろでは赤まりさに父まりさが餌を分けている、姉まりさたちはなぜそんなゆっくりできないやつに餌をやるのか、もっとおいしい餌がほしい、と騒ぎ、赤まりさは実の姉に嫌われる不幸を嘆き、それでも自分に平等に接してくれる親の愛をただただ噛み締め涙を流していた。 秋も終りに近づき、そろそろ冬ごもりの準備の時期が近づいた、姉まりさも大きくなり、親まりさと一緒に餌を探しに行けるまでに成長したため、えさ不足の心配はないだろう。 が、一つ問題が起きた、赤ちゃんゆっくりをどうするかである。 生まれたとき少し小さかったこの赤まりさはまだ狩りに連れて行けるほどの大きさではなかった。 セオリー通りに行くなら姉まりさの一部を留守番に残していくことになるが親がいないと赤ちゃんがどんな目に逢うかわからない、その方法は危険すぎる。 母まりさか父まりさが残る?それだと一匹の親まりさが子供まりさ全員の面倒を見ることになる、そうなれば付近への警戒は弱まり、野犬に襲われる可能性が増える。 他にも色々な案を考えたがどの案も「狩りに行った側が危険」「留守番組が危険」「餌が確保できない」などの理由で却下され、結局赤ちゃんまりさは隣の木の根元に住んでいるぱちゅりーに預けられることになった。 姉まりさはゆっくりできない赤まりさと離れられること、喘息であまり歌を歌ってくれない、最近はタンポポもくれない(種の確保で)ぱちゅリーのところに行くことを知って大喜びだった。 赤まりさも親と一日離れるのはさみしいけど、いじめてくる姉と別れられること、おかあさんもおとおさんも知らない事を教えてくれるぱちゅリーが親と同じくらい大好きだった。 ぱちゅりーも自分が知識を授けようとしても聞いてくれない、勝手に巣の外に出るなと言っても勝手に出て行ってしまう、来年植えるための種をいくら注意しても食べてしまう、そんな姉まりさより自分の話を真剣に聞いてくれる赤まりさが大好きだった。 何度もぱちゅリーの家に通う赤まりさ、そんな日がしばらく続いたあと・・・ ゆっくりにとっての悲劇は起きた。 続く・・・? (俺の気力しだいで) あとがき どうも、セインと名乗ろうか零戦二十一型と名乗ろうか決めかねている作者です 最初に書いたとおり生まれて初めて書いたSS、不特定多数の方に見せるストーリーです なのでいろいろ誤字や矛盾点などがあると思いますがもしよろしければスレの方にでも悪評、酷評を書いてくれるともだえ喜びます。 あと、一部に他のSSからネタを借りてしまったことをお詫びします。すいません、どうしてもすべてのSSの世界観が頭の中でごっちゃになるのです 7月27日 1300 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/304.html
このSSは自分がはじめて投降したSSです。 思い浮かんだことを手当たり次第に書きなぐったためどこかで見たことのあるようなネタになってるかもしれません たぶんいろいろSSとして見苦しい部分があると思います さらに虐待成分は数パーセントもありません それでも見てくださるという奇特な方はどうぞ なんということだ、これではゆっくりできない。 母の体から飛び出た赤ちゃんまりさを見てお父さんまりさは思った。 なんということだ。このこはゆっくりできない。 自分の身を引き裂かれる思いで産んだ子供を見てははまりさは涙を流した。 「なんなのこのこ!なんだかゆっくりできないよ!!!」 「こんなのがまりさのいもーとなんてまりさたちのはじだよ!!!」 生まれてきた妹を見て姉たちは口々に叫んだ。 「むきゅー…これは大変なことになったわね、まりさ」 家族ぐるみの付き合いもあり、産婆として母まりさの出産を助けたぱちゅりーはうなった。 何も赤ちゃんにおかしなところはない…筈である 少し体は小さいが異常なほどではないし、少し声が小さいが「ゆっくりちていってね!」と元気な声もあげている。 この子供が異常な理由は二つある、一つはこの子がゆっくり史上まれに見る「一人っ子」だったのだ。 通常ゆっくりの出産方法は2種類あるが詳しくは述べない。 大人でなくても可能で、短時間で小さい子が5匹~10匹前後生まれる植物型と、負担は大きく、時間もかかるが亜成体の子供を3匹ほど生む動物型の出産がある。 一人っ子など一度も出産できないで死ぬことの方が圧倒的に多いゆっくり界において、ゆっくりゆゆこが食べすぎで体を壊す事に匹敵するほど珍しい出来事だった。 だが、そんなことはたいした問題ではない、一匹しか生まれなかったことは確かにさびしいが、一匹しかいないからこそ親も姉もこの子に一層の愛情を注ぐことだろう。 この子が本当に異質なこと、それはこの子が「見ているだけでなんだかゆっくりできない気がする」事だ。 帽子がないのとは違う、帽子のないゆっくりを他のゆっくりが殺すのは帽子無しのゆっくりが無理にでも群れに加わろうとし、無理をするため結果的に死んでしまう。 群れのゆっくりに殺すつもりはない、ただ、見知らぬゆっくりがなんど追い返そうとしてもしつこく群れに入ろうとするため、結果的に殺してしまう、それだけのことだ。 だが、親も、姉も、ぱちゅりーもこの子が母まりさの子供だと理解しているし、帽子だってちゃんと付いている、なのにゆっくりできない。 なんというか、そう。このゆっくりはみているだけで他のゆっくりを「ムズムズ」させる・・・そんな違和感を感じさせるのだ。 なぜこの子を見ていると「むずむず~」するのか父まりさはぱちゅリーに聞いた、彼女はおおよそゆっくりが考える疑問にいつも答えてくれた。 彼女はありすとぱちゅりーという全ゆっくりの中でもトップクラスの知性的なゆっくりの間に生まれたゆっくり、知能はともかく知識は非常に豊富だ。 ぱちゅりーは「むぎゅぎゅぎゅ…」としばらく餡子脳の中の記憶を探った結果、一つの結論に達した。たぶんこれだ 「あのね、まりさ、この子は『へんい』してしまったゆっくりなの」 ぱちゅリーの話をまとめるとこうなる。 人間にも血のつながった者同士で子供を作るとお互いが持つ同じ特徴(いわゆる優性遺伝)だけが強く出てしまい、結果両親の短所を受け継いだ病弱な子供が生まれてしまうことがある。ゆっくりにはそんなことは無い、さすがに親子で・・・というのはあまりないが姉妹で繁殖するのはざらにあることだ。 だが、ゆっくりには同種で繁殖することを繰り返すと似たようなことが起こるらしい、つまり、れいむとれいむ、まりさとまりさなどが交尾すると起こるらしい、もっともれいむやまりさは数が多く、遺伝子の多様性もあるため確率自体は非常に少ないのだが… 母まりさの両親も父まりさの両親もその両親はまりさだった、おそらくそのさらに両親もまりさだったのだろう、その結果、確率が低いはずのまりさ同士の子供が『へんい』してしまったというわけだ。 自然界の動物はこのような突然変異を嫌う。 変異の多くは生存に不利になってしまうものであり、非常に病弱になる、体に障害を持って生まれるなどのほかにアルビノのようにいたずらに天敵に見つかる可能性を増やすだけなのだ。 おそらく姉まりさたちがむずむずしているのもその変異を本能的に察しているからなのだろう、もっとも短所の塊であるゆっくりに変異が起きたところでこれ以上生存に不利な生物になるかどうかはわからない。 余談だがこの母ゆっくりはにんっしんっして間もなく、えさを捕りに行ったときに遠出をしてしまい、もうどんな動物も立ち寄らない青く光る石のある洞窟の前を通り過ぎてしまったことをここに記しておく。 「それじゃあもうこのこはゆっくりできないの?」 泣きわめきながらぱちゅリーに聞く母まりさをなだめながら答えた 「でも、あなたたちが大事に育ててあげればきっとゆっくりできる子にそだつわ」 「ゆっ!この子はまりさとまりさがゆっくりさせてあげるよ!!」 「そうだね!この子もまりさたちのこどもだもん!!」 「ゆっくり育ってね!!!」 両親は確かに親だった、少し見ていてむず痒くなっても親の愛と本能で気にしないことができた。 だが子供はそうはいかない、たとえ妹だとしてもこの赤まりさは自分たちのゆっくりライフを常に妨害する敵なのだ。 そして約半月の時が流れた 「ゆゆっ、ごはんをもってきたよ!!」 父まりさが頬を膨らませて帰ってきた、野生のゆっくりとしては長い時を生きたため、効率のいい餌の集め方、効率のいい天敵からの隠れ方を心得ていたため、食糧事情はこの森一帯のゆっくりの中ではかなり恵まれた方だった。 「今日はぱちゅりーからタンポポももらってきたからみんなでゆっくりたべようね!」 このタンポポは隣のぱちゅリーが育てたものである、まあ育てたといっても種を集めて家の近くにまとめて植えただけだから農耕とは言い難い、とうぜんのうかりんに劣る。 だがこのぱちゅりーのたんぽぽも付近一帯のゆっくりのゆっくりライフに一役買っているのも事実だ。 「ゆゆっ!」 「タンポポ!!」 「むしゃむしゃ、うっめ、これめっちゃうめ!!」 言い切る前に子供たちが群がってくる、人が見たら少し腹も立ちそうだが両親は子供たちを食事を見るだけで幸せだった、そしてこれから起こるであろうことを考えると心が痛んだ。 「ゆー、まりさにもたべさせてね!!」 少し遅れてあの赤ちゃんゆっくりがタンポポにありつこうとする 「ゆっ!だめだよ!!そこでごはんたべないでゆっくりしててね!!!」 「ゆ゛べっ!!」 その瞬間姉ゆっくりのうちの一匹が押しのける、ほとんど体当たりに近いそれはまだ小さい赤ちゃんまりさにとっては大ダメージだ。 「ゆ…ゆ゛…」 「どお゛し゛て゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛お゛ぉ!?」 あわてて姉まりさたちを叱る母まりさ、とうぜんだ、赤ちゃんまりさはあんここそ吐いてはいないが「ゆ゛…ゆ…」と痛みで震えている。 「だってあのまりさゆっくりできないんだもん!」 「おかあさん!あのまりさをゆっくりころしてね!!」 「だめなのっ!!おねえさんがいもうとをゆっくりさせないのはいけないことなの!!」 ぶーぶー文句を垂れる姉まりさに母まりさが説教をする、これで何度目だろうか、毎日じゃなかろうか。 すぐ後ろでは赤まりさに父まりさが餌を分けている、姉まりさたちはなぜそんなゆっくりできないやつに餌をやるのか、もっとおいしい餌がほしい、と騒ぎ、赤まりさは実の姉に嫌われる不幸を嘆き、それでも自分に平等に接してくれる親の愛をただただ噛み締め涙を流していた。 秋も終りに近づき、そろそろ冬ごもりの準備の時期が近づいた、姉まりさも大きくなり、親まりさと一緒に餌を探しに行けるまでに成長したため、えさ不足の心配はないだろう。 が、一つ問題が起きた、赤ちゃんゆっくりをどうするかである。 生まれたとき少し小さかったこの赤まりさはまだ狩りに連れて行けるほどの大きさではなかった。 セオリー通りに行くなら姉まりさの一部を留守番に残していくことになるが親がいないと赤ちゃんがどんな目に逢うかわからない、その方法は危険すぎる。 母まりさか父まりさが残る?それだと一匹の親まりさが子供まりさ全員の面倒を見ることになる、そうなれば付近への警戒は弱まり、野犬に襲われる可能性が増える。 他にも色々な案を考えたがどの案も「狩りに行った側が危険」「留守番組が危険」「餌が確保できない」などの理由で却下され、結局赤ちゃんまりさは隣の木の根元に住んでいるぱちゅりーに預けられることになった。 姉まりさはゆっくりできない赤まりさと離れられること、喘息であまり歌を歌ってくれない、最近はタンポポもくれない(種の確保で)ぱちゅリーのところに行くことを知って大喜びだった。 赤まりさも親と一日離れるのはさみしいけど、いじめてくる姉と別れられること、おかあさんもおとおさんも知らない事を教えてくれるぱちゅリーが親と同じくらい大好きだった。 ぱちゅりーも自分が知識を授けようとしても聞いてくれない、勝手に巣の外に出るなと言っても勝手に出て行ってしまう、来年植えるための種をいくら注意しても食べてしまう、そんな姉まりさより自分の話を真剣に聞いてくれる赤まりさが大好きだった。 何度もぱちゅリーの家に通う赤まりさ、そんな日がしばらく続いたあと・・・ ゆっくりにとっての悲劇は起きた。 続く・・・? (俺の気力しだいで) あとがき どうも、セインと名乗ろうか零戦二十一型と名乗ろうか決めかねている作者です 最初に書いたとおり生まれて初めて書いたSS、不特定多数の方に見せるストーリーです なのでいろいろ誤字や矛盾点などがあると思いますがもしよろしければスレの方にでも悪評、酷評を書いてくれるともだえ喜びます。 あと、一部に他のSSからネタを借りてしまったことをお詫びします。すいません、どうしてもすべてのSSの世界観が頭の中でごっちゃになるのです 7月27日 1300 このSSに感想を付ける
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このSSは自分がはじめて投降したSSです。 思い浮かんだことを手当たり次第に書きなぐったためどこかで見たことのあるようなネタになってるかもしれません たぶんいろいろSSとして見苦しい部分があると思います さらに虐待成分は数パーセントもありません それでも見てくださるという奇特な方はどうぞ なんということだ、これではゆっくりできない。 母の体から飛び出た赤ちゃんまりさを見てお父さんまりさは思った。 なんということだ。このこはゆっくりできない。 自分の身を引き裂かれる思いで産んだ子供を見てははまりさは涙を流した。 「なんなのこのこ!なんだかゆっくりできないよ!!!」 「こんなのがまりさのいもーとなんてまりさたちのはじだよ!!!」 生まれてきた妹を見て姉たちは口々に叫んだ。 「むきゅー…これは大変なことになったわね、まりさ」 家族ぐるみの付き合いもあり、産婆として母まりさの出産を助けたぱちゅりーはうなった。 何も赤ちゃんにおかしなところはない…筈である 少し体は小さいが異常なほどではないし、少し声が小さいが「ゆっくりちていってね!」と元気な声もあげている。 この子供が異常な理由は二つある、一つはこの子がゆっくり史上まれに見る「一人っ子」だったのだ。 通常ゆっくりの出産方法は2種類あるが詳しくは述べない。 大人でなくても可能で、短時間で小さい子が5匹~10匹前後生まれる植物型と、負担は大きく、時間もかかるが亜成体の子供を3匹ほど生む動物型の出産がある。 一人っ子など一度も出産できないで死ぬことの方が圧倒的に多いゆっくり界において、ゆっくりゆゆこが食べすぎで体を壊す事に匹敵するほど珍しい出来事だった。 だが、そんなことはたいした問題ではない、一匹しか生まれなかったことは確かにさびしいが、一匹しかいないからこそ親も姉もこの子に一層の愛情を注ぐことだろう。 この子が本当に異質なこと、それはこの子が「見ているだけでなんだかゆっくりできない気がする」事だ。 帽子がないのとは違う、帽子のないゆっくりを他のゆっくりが殺すのは帽子無しのゆっくりが無理にでも群れに加わろうとし、無理をするため結果的に死んでしまう。 群れのゆっくりに殺すつもりはない、ただ、見知らぬゆっくりがなんど追い返そうとしてもしつこく群れに入ろうとするため、結果的に殺してしまう、それだけのことだ。 だが、親も、姉も、ぱちゅりーもこの子が母まりさの子供だと理解しているし、帽子だってちゃんと付いている、なのにゆっくりできない。 なんというか、そう。このゆっくりはみているだけで他のゆっくりを「ムズムズ」させる・・・そんな違和感を感じさせるのだ。 なぜこの子を見ていると「むずむず~」するのか父まりさはぱちゅリーに聞いた、彼女はおおよそゆっくりが考える疑問にいつも答えてくれた。 彼女はありすとぱちゅりーという全ゆっくりの中でもトップクラスの知性的なゆっくりの間に生まれたゆっくり、知能はともかく知識は非常に豊富だ。 ぱちゅりーは「むぎゅぎゅぎゅ…」としばらく餡子脳の中の記憶を探った結果、一つの結論に達した。たぶんこれだ 「あのね、まりさ、この子は『へんい』してしまったゆっくりなの」 ぱちゅリーの話をまとめるとこうなる。 人間にも血のつながった者同士で子供を作るとお互いが持つ同じ特徴(いわゆる優性遺伝)だけが強く出てしまい、結果両親の短所を受け継いだ病弱な子供が生まれてしまうことがある。ゆっくりにはそんなことは無い、さすがに親子で・・・というのはあまりないが姉妹で繁殖するのはざらにあることだ。 だが、ゆっくりには同種で繁殖することを繰り返すと似たようなことが起こるらしい、つまり、れいむとれいむ、まりさとまりさなどが交尾すると起こるらしい、もっともれいむやまりさは数が多く、遺伝子の多様性もあるため確率自体は非常に少ないのだが… 母まりさの両親も父まりさの両親もその両親はまりさだった、おそらくそのさらに両親もまりさだったのだろう、その結果、確率が低いはずのまりさ同士の子供が『へんい』してしまったというわけだ。 自然界の動物はこのような突然変異を嫌う。 変異の多くは生存に不利になってしまうものであり、非常に病弱になる、体に障害を持って生まれるなどのほかにアルビノのようにいたずらに天敵に見つかる可能性を増やすだけなのだ。 おそらく姉まりさたちがむずむずしているのもその変異を本能的に察しているからなのだろう、もっとも短所の塊であるゆっくりに変異が起きたところでこれ以上生存に不利な生物になるかどうかはわからない。 余談だがこの母ゆっくりはにんっしんっして間もなく、えさを捕りに行ったときに遠出をしてしまい、もうどんな動物も立ち寄らない青く光る石のある洞窟の前を通り過ぎてしまったことをここに記しておく。 「それじゃあもうこのこはゆっくりできないの?」 泣きわめきながらぱちゅリーに聞く母まりさをなだめながら答えた 「でも、あなたたちが大事に育ててあげればきっとゆっくりできる子にそだつわ」 「ゆっ!この子はまりさとまりさがゆっくりさせてあげるよ!!」 「そうだね!この子もまりさたちのこどもだもん!!」 「ゆっくり育ってね!!!」 両親は確かに親だった、少し見ていてむず痒くなっても親の愛と本能で気にしないことができた。 だが子供はそうはいかない、たとえ妹だとしてもこの赤まりさは自分たちのゆっくりライフを常に妨害する敵なのだ。 そして約半月の時が流れた 「ゆゆっ、ごはんをもってきたよ!!」 父まりさが頬を膨らませて帰ってきた、野生のゆっくりとしては長い時を生きたため、効率のいい餌の集め方、効率のいい天敵からの隠れ方を心得ていたため、食糧事情はこの森一帯のゆっくりの中ではかなり恵まれた方だった。 「今日はぱちゅりーからタンポポももらってきたからみんなでゆっくりたべようね!」 このタンポポは隣のぱちゅリーが育てたものである、まあ育てたといっても種を集めて家の近くにまとめて植えただけだから農耕とは言い難い、とうぜんのうかりんに劣る。 だがこのぱちゅりーのたんぽぽも付近一帯のゆっくりのゆっくりライフに一役買っているのも事実だ。 「ゆゆっ!」 「タンポポ!!」 「むしゃむしゃ、うっめ、これめっちゃうめ!!」 言い切る前に子供たちが群がってくる、人が見たら少し腹も立ちそうだが両親は子供たちを食事を見るだけで幸せだった、そしてこれから起こるであろうことを考えると心が痛んだ。 「ゆー、まりさにもたべさせてね!!」 少し遅れてあの赤ちゃんゆっくりがタンポポにありつこうとする 「ゆっ!だめだよ!!そこでごはんたべないでゆっくりしててね!!!」 「ゆ゛べっ!!」 その瞬間姉ゆっくりのうちの一匹が押しのける、ほとんど体当たりに近いそれはまだ小さい赤ちゃんまりさにとっては大ダメージだ。 「ゆ…ゆ゛…」 「どお゛し゛て゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛お゛ぉ!?」 あわてて姉まりさたちを叱る母まりさ、とうぜんだ、赤ちゃんまりさはあんここそ吐いてはいないが「ゆ゛…ゆ…」と痛みで震えている。 「だってあのまりさゆっくりできないんだもん!」 「おかあさん!あのまりさをゆっくりころしてね!!」 「だめなのっ!!おねえさんがいもうとをゆっくりさせないのはいけないことなの!!」 ぶーぶー文句を垂れる姉まりさに母まりさが説教をする、これで何度目だろうか、毎日じゃなかろうか。 すぐ後ろでは赤まりさに父まりさが餌を分けている、姉まりさたちはなぜそんなゆっくりできないやつに餌をやるのか、もっとおいしい餌がほしい、と騒ぎ、赤まりさは実の姉に嫌われる不幸を嘆き、それでも自分に平等に接してくれる親の愛をただただ噛み締め涙を流していた。 秋も終りに近づき、そろそろ冬ごもりの準備の時期が近づいた、姉まりさも大きくなり、親まりさと一緒に餌を探しに行けるまでに成長したため、えさ不足の心配はないだろう。 が、一つ問題が起きた、赤ちゃんゆっくりをどうするかである。 生まれたとき少し小さかったこの赤まりさはまだ狩りに連れて行けるほどの大きさではなかった。 セオリー通りに行くなら姉まりさの一部を留守番に残していくことになるが親がいないと赤ちゃんがどんな目に逢うかわからない、その方法は危険すぎる。 母まりさか父まりさが残る?それだと一匹の親まりさが子供まりさ全員の面倒を見ることになる、そうなれば付近への警戒は弱まり、野犬に襲われる可能性が増える。 他にも色々な案を考えたがどの案も「狩りに行った側が危険」「留守番組が危険」「餌が確保できない」などの理由で却下され、結局赤ちゃんまりさは隣の木の根元に住んでいるぱちゅりーに預けられることになった。 姉まりさはゆっくりできない赤まりさと離れられること、喘息であまり歌を歌ってくれない、最近はタンポポもくれない(種の確保で)ぱちゅリーのところに行くことを知って大喜びだった。 赤まりさも親と一日離れるのはさみしいけど、いじめてくる姉と別れられること、おかあさんもおとおさんも知らない事を教えてくれるぱちゅリーが親と同じくらい大好きだった。 ぱちゅりーも自分が知識を授けようとしても聞いてくれない、勝手に巣の外に出るなと言っても勝手に出て行ってしまう、来年植えるための種をいくら注意しても食べてしまう、そんな姉まりさより自分の話を真剣に聞いてくれる赤まりさが大好きだった。 何度もぱちゅリーの家に通う赤まりさ、そんな日がしばらく続いたあと・・・ ゆっくりにとっての悲劇は起きた。 続く・・・? (俺の気力しだいで) あとがき どうも、セインと名乗ろうか零戦二十一型と名乗ろうか決めかねている作者です 最初に書いたとおり生まれて初めて書いたSS、不特定多数の方に見せるストーリーです なのでいろいろ誤字や矛盾点などがあると思いますがもしよろしければスレの方にでも悪評、酷評を書いてくれるともだえ喜びます。 あと、一部に他のSSからネタを借りてしまったことをお詫びします。すいません、どうしてもすべてのSSの世界観が頭の中でごっちゃになるのです 7月27日 1300 このSSに感想を付ける
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過去書いた物 ふたば系ゆっくりいじめ 716 中華料理店 麻辣 ・前作で出てきた子まりさs(+α)のその後です ・指摘があったので━━は――に、括弧は「」で統一します ・お姉さんの方はもう少し待って下さい、その内書きます ・自分のssに出てくる人間(♂)はほぼマッチョだと思って下さい ・自分のssに出すドスまりさはおおよそ全長100~130センチだと思って下さい ―――とある自然公園 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ・・・ 「しゃむいよぉ・・・」(×16) 公園の茂みの中、ガタガタと震える野良ゆっくり達 子まりさ14匹が円を書く様に寄り添っていて、その中心では生まれたばかりの赤まりさ2匹が子まりさにすーりすーりして寒さを凌いでいた 「ゆぅぅ・・・どぼじでごんなごどにぃぃぃ・・・」 「ホンちょならいまごりょゆっくりプレイスでぬーくぬーくして、おとーしゃんやおきゃーしゃんとすーりすーりしてられちゃのにぃ・・・」 「あまあましゃんもいっぱいむーしゃむーしゃできたのにぃ・・・」 「でも・・・おとーしゃん達もおかーしゃんも、ドスまで・・・」 「ゆ、ゆぅ・・・」 皆一斉に黙った・・・それも無理はない 今まで最強だと思っていたドスまりさは何度も地面に叩きつけられ丸揚げとなった 強いと信じていた父親はあっけなく真っ二つ、最後に残ったまりさは唐辛子を食べ餡を吐き死んだ そして最後まで守ってくれていたれいむも、人間の手によってカラッと揚げられた 最後に残ったれいむはにんっしんっしていた為、最小限の被害で済むのなら・・・と子れいむ達と一緒にあの場に残った そして、この公園には生き残った微妙に赤ちゃん言葉が抜けきってない子まりさとあの後れいむから生まれた赤まりさがいた あれから一週間 最初こそ復讐してやると思っていたまりさ達も決意する度にドスまりさや父親達の最後が脳裏に浮かび、そのまま意気消沈 それを10回ほど繰り返したあたりで・・・諦めた そして今は偶然見つけた公園で捨ててあった新聞紙とダンボールを、組み立てる知識はなかったので地面に敷きその上で生活している 生まれたばかりの赤ん坊がいる為、長旅は危険だと判断したからだろう それはある意味正解と言えた 食べ物は回りに生えている雑草、自然公園の為か時々青草が植えられる為尽きる事はなかった そして時々来る人間が食べ残し捨てていく物を食べている だが人間が捨てていくのは3日に一回、あるいはそれ以下である 子まりさ達はそういった現状から人間が捨てた物は赤まりさに食べさせている為、雑草生活を送っている 普通なら赤を捨てるか食うかしそうな物だがここではこうなっていた 「ゆぅ・・・おにゃきゃすいちゃよぉ・・・」 「ん、そうだね・・・それじゃゆっくり狩りに行くよ」 「ゆっくり理解したよ」(×13) ここで言う狩りはゴミ箱の確認と雑草集めの事である だが赤ん坊だけ残す訳にもいかないので常に3匹がここに残り、二匹がゴミ箱の確認をし、残った9匹が雑草を毟る 元々統率が取れているゆっくり達であったが大人の居ない生活を強いられたせいか見事な連携が取れている ―――ゴミ箱前に到着した子まりさ達はゴミ箱から何かはみ出しているのが見えた 「ゆ?ゴミ箱しゃんに何かはいってるよ?」 「ホントだ、じゃあ倒してみようにぇ」 因みにこのゴミ箱は小学生が工作の時間に作ったのはいいが持って帰るのが恥ずかしいし第一家にあっても邪魔なだけだと置き去りになった物だが 今では公園の美化に役立っているので余計に恥ずかしい目にあっている 「せーの、ゆぅぅぅ・・・いっしょ」(×2) 二匹がゴミ箱を押し前面の石にぶつけて倒し、その中身がこぼれる そして出てきた物は・・・ 「うわぁ~、お弁当しゃんだぁー それも一口もたべてないお弁当しゃんだよぉ」 「こっちにはぼろぼろだけどぬーくぬーくできそうなぬのさんがあるよぉ」 おそらく食べようと思ったはいいが蓋を開ける前に落としてしまったのであろうコンビニ弁当と使い古しの赤ん坊のよだれかけが捨ててあった 「これならオチビちゃん達もゆっくりできるにぇ」 「きっとゆっくりできりゅよ、それじゃゆっくり皆の所にもじょろ」 子まりさ二匹で誰も手をつけていない弁当を運ぶのは重労働であったはずだが、皆の喜ぶ顔を見たいという気持ちがそれを感じさせなかった この時、この弁当が悲劇を生むと誰も予想は出来なかった ――― 一方、雑草を集めていたゆっくり達は 「ゆひぃ、ゆひぃ・・・ちゅかれたよ」 「もうこのあたりの草しゃんは取りちゅくしちゃったよ」 9匹の子まりさの帽子に山盛りの雑草が入っている 「でも、もうしゅこし集めにゃいとおなかいっぱいににゃらにゃいよ?」 「しょうだよ、ゴミ箱しゃんにごはんがあるとはかぎりゃにゃいんだよ?」 「ゆぅ・・・しょうだったよ・・・まりさもう少し頑張るよ」 山盛りからてんこ盛りになった所で作業が終わる 「ゆふぅ・・・ゆふぅ・・・やっちょおわっちゃよぉ」 「ちゅかれちゃよぉぉぉ・・・」 「しょうじゃにぇ・・・ちょっと休んでから皆の所に戻ろうにぇ」 「ゆっくり理解したよ」(×8) ―――30分後 14匹の子まりさと2匹の赤まりさは目を輝かせ弁当を見ていた 「うわぁ~・・・ごちしょうしゃんだぁ」 「しゅごいよぉ~、おいししょうだよぉ」 「ゆっへん!」(×2) その弁当を見つけた二匹は得意気に胸を張っている 「しょれじゃ、このお弁当しゃんはオチビちゃんからむーしゃむーしゃしちぇね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ」(×2) 子まりさ達は自分達が見ていると赤まりさが遠慮してしまうだろうと離れた所で雑草を食べ始めた 「むーしゃ、むーしゃ、・・・しょれにゃりぃ」 「むーしゃ、むーしゃ、・・・にぎゃいぃぃ」 などと文句を言いつつも集めた雑草を食らい尽くす 「ゲプゥ・・・おにゃきゃふくれちゃよ」 「しょれじゃオチビちゃんの所に戻ろうか」 「しょうだにぇ」 ―――そして戻った時、子まりさ達の目に写った物は・・・ 「ゆ゛っ・・・ゆ゛ゆ゛っ・・・ゆ゛ぅぅぅ・・・」 「ゲブォォ・・・ブォェェェェェっ・・・」 餡を吐き、痙攣している赤まりさであった・・・ 「お、お、お、オチビちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」(×14) 「どぼじでごんなごどにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」(×14) 全員が涙を流し、声を揃えて叫ぶ 「待っててにぇ、今治してあげりゅからにぇ・・・」 「オチビちゃんゆっきゅりしちぇ・・・ぺーろぺーろ」 「ぺーろぺー・・・ウヴォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」 「ま、まりしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(×11) 「ゆ゛っ・・・ぐぅぅぅ・・・」 「あ゛・・・ぶぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・」 赤まりさをぺーろぺーろしていた三匹の子まりさまでもが餡を吐き苦しみだした 「どぼじで、どぼじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」(×11) 「ゆ゛ぅ・・・み゛んに゛ゃ・・・ぎいぢぇ」 ダメージが少なかったのか、一匹のまりさが口を開く 「き、きっちょ・・・あにょお弁当しゃんは・・・毒にゃんじゃよ・・・ じゃきゃりゃ・・オチビちゃんも・・・ぺーりょぺーりょちたまりちゃ達も・・・」 「もう、もうしゃべっちゃだめぇぇぇ!!!」 「ゆっくりできなくなっちゃうよぉぉぉぉぉぉ!!」 「みんにゃ・・・まりちゃ達の分も・・・ゆっきゅり・・・ちていっちぇにぇ・・・」 その言葉を最後に赤まりさ二匹と子まりさ三匹は永遠にゆっくりした 「ゆ゛わ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」(×11) 子まりさ達は・・・泣いた 疲れて熟睡するその時までひたすら泣いた ―――翌日 寒さを寄り添う事で防いでいる中、一匹のまりさが口を開く 「ねえ・・・みんにゃ」 「ゆ?なぁに??」(×10) 「まりしゃ・・・あれからかんがえちゃんだけじょ」 「うん・・・」(×10) 「ここからはなりぇちぇ、あちゃらしいゆっくりプレイスをしゃがしに行こうと思うにょ」 「・・・」 皆が黙った 少なくともここにいれば生きる上で最低限の食事は出来る そういった意味ではここは離れ難いゆっくりプレイスである・・・ でも苦楽を共にした姉妹が永遠にゆっくりしたこの地に居続けるのは悲しいし、辛い物があった ―――暫く考えた後、子まりさ達が出した結論は 「しょうだにぇ・・・しゃがちに行こう!」 「きっと、ここよりもゆっきゅりできりゅゆっくりプレイスがみつかるよにぇ!」 「しょうだよ、きっちょ見つきゃるよ!」 その後子まりさ達は力をつけるべく、辺りに残った雑草を食い尽くし旅に出た もうこんな物を食べる必要もない、新しいゆっくりプレイスを求めて・・・ ―――余談――― 「ん?」 とあるサラリーマンが昼休みに公園で休んでいると、どこからかゆっくりの帽子が飛んできた 「帽子か・・・捜して返してやるか」 このサラリーマンはゆ虐趣味はないが愛好家という訳でもない が、帽子を落とした相手が何であれ持ち主が分かっているのならちゃんと返してやろうという今時珍しい好青年であった 「えーっと、風向きから考えるとこの辺だと思うんだけど・・・」 ズリュッ 「ってぅわっ!」 ズシンッ 「ってて・・・何だぁ?」 足元を見るとそこにはボロボロになり、カビが生えているよだれかけがあった 「何だこりゃ・・・ってアレ?」 指で摘まんで持ち上げるとそこにはやっぱりカビの生えたゆっくりの残骸があった 「うっわぁ・・・嫌な物見ちまったなぁ・・・」 そのまま立ち去ろうとした・・・が 「あれ?これって・・・」 手元にあった弁当の蓋を手に取ってみるとそれには〔超激辛!エビチリ弁当〕と書かれていた 「あ~・・・」 青年は理解した このゆっくり達は先週自分が落とし、そのままゴミ箱へ捨てた弁当を食べてしまったのだと 「まぁ・・・仕方がないよな、半分俺のせいだし」 青年は目立たない場所に穴を掘ってカビの塊と拾った帽子、ついでに転んだ時にポケットに入っていたドングリを埋めてやった そして何故か持っていたカマボコ板にゆっくり(多分まりさ種)のはかと書いて刺してやった 墓の字が思い出せなかったらしい 翌日〔はか〕は〔ばか〕になっていた だがそれに気が付く者はいなかった ~~Fin~~ 中傷、侮辱、批判何でも言って 俺、喜んじゃうから
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前 波乗りまりさ(にんっしんっ編) さて、ゆっくりまりさを強制水上生活させて一週間が経過した。 三日くらいで精神崩壊を起こすんじゃないかと予想していたんだが、一週間経過した今でもそれなりに元気があるようだ。 どうやら水槽の壁に映った自分を仲間だと思うことにして自己防衛しているらしい。 ゆっくりとはいえたいしたもんだと思う。 ゆっくりまりさは水上生活にも一応は慣れたようで、帽子から少し乗り出して水を飲んだりしている。 少しでもバランスが崩れれば、そのまま落ちてただの水饅頭になるというのに。 水槽を揺らしてやれば簡単にそうなるけど、それじゃあ面白くないし実験にもならない。 というわけで、そろそろ次の実験をやることにしよう。 「今回の実験は、水上生活での妊娠実験っと」 題名をメモに書き込んでからはたと気づいた。 「水の上で妊娠させても生まれてすぐの赤ん坊が泳げるのか…?」 まぁ、深く考えても仕方ない。 男は度胸だ。何事もやってから考えよう。 水槽の中に居るまりさはバスケットボール大。 交尾にも十分耐えられるだろうから、コイツを母体にする。 とりあえず冷却スプレーでまりさを眠らせる。 次に同じように眠らせた小ゆっくりまりさに振動を起こす機械(道具屋の店主はローターと呼んでいた)を縛り付けて、まりさの上に置く。 小ゆっくり程度の重さなら上に乗っても沈むことは無いだろう。 ローターは遠隔操作が出来るらしく、水槽の蓋を閉めても大丈夫なのだそうだ。 早速ローターのスイッチを入れる。 「ゅゆ? ゆぶぶぶぶぶっくりしていってねねね!!」※セリフを隠すのが面倒なのでお兄さんが水槽の防音性を改良しました。 「ゆゆ?! ゆっくりしていってね!!!」 振動によってまず上の小まりさが目覚める。 少し間をおいて下のまりさも目覚めたようだ。 「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」 一週間ぶりに聞いた自分以外の声の主を探そうときょろきょろと目を動かしている。 上にいる小まりさはいきなり足元が揺れたのにびっくりしていたが、発情し始めて気にならなくなったようだ。 すっきりー寸前まで高めた後はローターのスイッチを切る。 突然振動が止まり、すっきりーしたくてしょうがない小まりさは足元にいるまりさに気づく。 小まりさの振動が下にも伝わったのか、まりさも少々興奮状態だ。計画通り…! 交尾の状態など描写してもしょうがないので省略する。 小まりさしっかりと種を付けてくれたようなので、ご退場頂く。 双方とも眠らせて小まりさを回収。 生まれてくるであろう赤ん坊の為の栄養(焼き饅頭)になってもらうとしよう。 水槽のまりさにはしっかりと茎が生えてきている。 成長具合を見るに、今日中に生まれ落ちることは無いだろう。 ぱぱっと小まりさだった焼き饅頭を蓋に吊り下げて就寝することにした。 他にやることが無いのかだって? 気にすることじゃないさ。 朝日で目を覚ますと、なにやら水槽が騒がしい。 「まりざのあがぢゃんがぁあああああああ!!!!!」 覗き込んでみるとまりさがなにやら泣き叫んでいる。 まりさの周辺を見れば一目瞭然だった。 赤ん坊は全て水に落ちて死んでいた。 「あー、やっぱりダメか」 上手いこと頭の上にでも落っこちれば助かっただろうに。 でもまぁ、これは予想通りだった。ダメもとでやった結果がコレだよ!だ。 錯乱して水に落ちても困るので、まりさは強制睡眠で別の水槽へご案内。 餡子が溶けた水を取り替えて、まりさを戻して元通り。 暫くして目を覚ましたまりさは、赤ん坊の残骸が浮かんでいないのをみて夢だと判断したようだ。 さすがに餡子が違うね。 先ほどのことなどすっかり忘れて、笑顔で吊るされている焼き饅頭を食べている。 「ゆっくりたべるよ! むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 予想通りとはいえ失敗したのはがっかりだ。 しかし、一度失敗したくらいでへこたれる訳にはいかない。 そして無駄に幸せそうな饅頭を見ているとアイデアが降ってきた。 足場が無いなら赤ん坊だけが乗れるような足場を作ればいいじゃない。 準備のために半日費やしたが、これならば赤ん坊を産み落とすことが出来ると思う。 一回目と同じ手順で交尾させた後、小さな紙皿と棒切れを幾つかばら撒く。 紙皿は大きさ的にまりさでは乗ることが出来ないし、上手く落とさなければまた餡子の藻屑だ。 その辺はまりさの餡子に期待しておこう。 翌朝目覚めると、またしても水槽が騒がしい。 「ゆっくりしていってね!!!」 「「ゆっくりしちぇいっちぇね!!!」」 また全滅かと思って覗き込んだ水槽の中には、紙皿に乗ってぷるぷるしている赤ん坊ゆっくりまりさが四匹。 その周囲には上手く紙皿に落ちなかった赤ゆっくりまりさの残骸が漂っていた。 見事に親になったまりさは、無事に落とせた赤ん坊に何か話しかけているようだ。 「ゆっくりはねないでね! はねるとゆっくりできなくなるよ!!」 跳ねるとゆっくり出来なくなる? 不思議に思って紙皿のほうを見ると、何枚か裏返しになっているものがあった。 ああ、跳ねたせいで何匹か落ちたわけだ。 犠牲になった赤ゆっくりのためにも、無事な子を死なすわけにはいかないってことか。 なかなか親らしい行動をするもんだ。 一人で納得したので、睡眠引越し水換えのコンボを発動する。 おお、きれいきれい。 次は餌やりだが…とりあえず親まりさと同じ方法でやってみるか。 とりあえず五匹分の焼き饅頭を吊るす。 匂いで目覚めたまりさ親子は、犠牲になったであろう他の赤ん坊のことなどすっかり忘れた様子だ。 「ゆゆ? おかーしゃんあれなに?」 「なになにー?」 「すっごくゆっくりできるごはんだよ!!」 「ゆゆゆ! すごくゆっきゅりできるの?」 「「「たべちゃいたべちゃい!!!」」」 「ゆっくりわかったよ! いまとってあげるからね!!」 親まりさは吊るされた饅頭を口に入れると、えっちらおっちら漕ぎながら赤まりさの紙皿に近づく。 位置取りが悪く赤まりさの表情をみることは出来ないが、きっと期待に満ち溢れてるんだろうな。 「ゆっふりはへてね!!」 「ありがちょうおかあしゃん!!!」 親まりさが饅頭をペッと紙皿へ吐き出す。 ああ、そんなに勢いよく出したらまずいんじゃないか? 「ゆ~? ゆっきゅりちょんでべべべボボボボゴボ…」 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」 「もっちょゆっきゅりし…ちゃ……か…」 勢いがついた饅頭は紙皿へ直撃し、その衝撃で赤まりさは放り出され着水っと。 言わんこっちゃない。いや、何にも言ってないけど。 まりさ親子は目の前で起こった出来事に呆然としたままだ。 だが、この後の光景は容易に想像が出来る。 「これは沈静化させたほうがいいな」 ぱぱぱっと水換えコンボを発動させ、目覚めるまで待つ。 「ゆっくりしていってね!!!」 「「「ゆっくりしちぇいっちぇね!!!」」」 赤ん坊は四匹だったはずだが、別にそんなことはなかったぜ!!である。 餌の匂いに釣られて目覚めた親子四匹は、先ほどと似たようなやり取りを行い親まりさが動き出した。 とはいえ、今度はそう難しいことではない。 赤まりさ用に水面ぎりぎりくらいまで長さを調節したので、そこに誘導すればいいわけだ。 今までのことを多少なりとも覚えているのだろうか、親まりさは餌を取って与えることはしなかった。 そこらへんに浮かんでいる棒切れを、帽子を器用に操り赤まりさのいる紙皿に近づける。 そして自分の棒切れを使って慎重に紙皿の上にのせた。 「おかーしゃんこれなにー?」 「そんなことよりごはんちょうだい!!」 「おなかすいちゃよ!!」 赤まりさたちは親の意図がつかめないようだ。 目の前で親が実践していると言うのに…餡子め。 親まりさはと言うと、赤まりさのブーイングを無視して三匹全てに棒切れを配り終えた。 「これをつかってごはんまでこいでいってね!」 「「「ゆゆゆ!?!!」」」 おお、驚愕驚愕。 しかしそれほど驚くことだろうか? 「このたかさならあかちゃんたちでもたべられるよ!」 「おかーしゃんがちょってくれないの??」 「はたらかざるものくうべからずだよ!!」 「「「ゆゆ…。ゆっきゅりきょぐよ…!」」」 それはゆっくりが言う台詞じゃないだろ…。 ともかく、三匹の赤まりさはそれぞれ自分より大き目の棒切れを使って饅頭へ近づき始めた。 「ゆっきゅりちゅかれたよ…」 「まりしゃがいちばんだよ!」 「ゆゆ! まりしゃのほうがさきにたべるよ!!」 「あわてないでこいでね! ゆっくりがんばってね!!」 早々に自分の分の饅頭を食べ終えた親まりさは子供たちを眺めている。 それほど大きな水槽ではないが、親まりさでも十分広いと言える水槽は赤ん坊たちにとってはとてつもなく広く感じることだろう。 休憩を挟みつつ、ゆっくりと焼き饅頭に近づく赤まりさたち。 ものすごく和む。わざと揺らして怯えさせたいほど和む。 と、一匹の赤まりさが饅頭に辿り着いた。 「ゆっきゅりちゅいたよ! むーしゃむーしゃ」 「ゆゆ! まりしゃもちゃべるよ!」 「あとちょっとだよ! ゆっくりがんばってね!!」 「ゆっきゅりがんばるよ!」 「「しあわせー♪」」 すぐ後に饅頭に辿り着いた赤まりさも食べ始め、遅れた一匹に親まりさが声をかけたりしている。 赤まりさにとっては自分よりも大きな饅頭だから奪い合いになることは無いはずだ。 「やっちょついちゃよ!」 「「すっぎょくゆっきゅりできるよ!」」 「「「しあわせー♪」」」 最後の一匹も食べ終わったようだ。 「これは成功だな。あとは紙皿から卒業させればいい」 メモに書き込みながら呟く。 大きくなれば自重で紙皿ごと沈むので、一匹犠牲になればあとは親まりさが何とかするだろう。 ひとまず成功したので今回はこれまでにして寝ることにした。 今からだと親子は二食ほど抜きになるが、まぁいいや。 飢えは最高のスパイスと言うしね! 続く あとがき 突発的に書きたくなったので書いた結果がコレだよ!! 前回上げたときはまさか同時に同じネタがくるとは思わなかった。 しかも詰まってたところがクリアされてて俺涙目。 でも面白かった。ついでに少し拝借させてもらいますね。 そして今回はにんっしんっ編と少しばかり家族編が混ざったものに。 次回、波乗りまりさ(こうかい編)(仮)予定は未定だぜ! このSSに感想を付ける