約 3,793,868 件
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/6983.html
550 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 07 44 21.28 ID ??? 独断と偏見で物を言うならアドリブの比率が極端に多い奴は アドリブで回せる俺スゲエをやる為にアドリブシナリオしている 551 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 09 04 08.51 ID ??? 自分がそうだから、少しだけ擁護させてくれ。 確かに俺のシナリオの作り込みが甘いのかもしれない。 でも毎回毎回、シナリオ目的外に進まれては、アドリブ率が高くなるわ。 何で、ただの護衛シナリオが、その護衛対象から追われるシナリオになるんだよ。 そんなの想定して、シナリオ作れるかい……。 552 名前:NPCさん[age] 投稿日:2012/02/03(金) 09 36 18.52 ID ??? 具体的に 551 555 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 10 23 56.89 ID ??? 552 あまり大した報告じゃないぞ? とある偉い人から護衛の依頼を受けるというシナリオ。 その護衛対象物は「ちと重要なものなので、何かはあかせないが」ということで、秘密にした状況でミッションスタート。で、道中で恐ってくるやつらから、その物の重要性を知り、宿場町で盗まれて取り返す。 というシティシナリオの予定だったんだ。 導入は無事に引き受けてもらい、夜中の襲撃。 もちろん、軽く撃退したのだが、直後 「なあ、これ奪って俺らのもんにしたほうが儲からね?」と依頼人から馬車ごと強奪。 「俺らは悪人じゃねーから命は取らねーよ。安心しな」と縛って放置。 命はあったし、一応街道だったから、助け受けるだろう。 助かったら、取り戻すために手を打つだろう。と、冒険者や兵隊さんたちに追ってもらう。 「国外まで逃亡だ、ひゃっはー」 という感じのセッションだっただけ。 556 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 10 29 27.47 ID ??? それはシナリオ目的外に進んでるんじゃなくて 単にシナリオが崩壊してるだけ(しかも意図的に) アドリブとか以前の問題なのでアドリブシナリオがどうって話とは まるで関係ないので擁護にも何にもなっていない その現状が問題だと思うならPLと一度話し合え 問題ないと思うなら困なんていないのだからスレ違い。 558 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 10 42 22.40 ID ??? 555 それはPL達に(困的な意味でなく)「教育してやる」必要があるんじゃないか? 悪事を働いたPCには相応の報いを受けさせないと 何時までたってもルーニーは直らんぜ。 PL全員が悪党プレイ大好きなら、モンスターや怪人が主役のゲームやっとけ。 560 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 10 52 10.46 ID ??? 国外逃亡程度でなんとかなるとは思えんが 565 名前:NPCさん[] 投稿日:2012/02/03(金) 12 05 56.70 ID bseZ/T5o 重要なものが汚職の証拠とかで正規軍とかガチの暗殺者とかが大量に送り込まれてくるのまで幻視した 567 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 12 22 53.10 ID ??? そうGM責められるような内容でもないと思うがなあ ちょっとPL達の行動を上手くハンドリング出来てないだけで 依頼の裏を取るとか、トラブルが起こったから依頼主に相談するみたいな行動すらさせない鳥取のGMよりよっぽどいい ただ、そのケースでは国外逃亡が成功してるけど、毎回そんなのを成功させてやる必要はないと思う 569 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 12 30 55.01 ID ??? 失敗させたら次から手口が巧妙化するだけだろ シナリオブレイクはゲーム内でどうにかしようとしても無駄 GMから何か仕掛けてもゲームとして楽しまれるだけだから 571 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 12 43 04.50 ID ??? 厨返しでもなんでもなく、犯罪に走るならそれ相応のリスクがあるってだけだけど 単純にゲームをぶち壊すのがやりたいのか、リスクをわかっていないのか、どちらなのかを確かめるために 毎回あっさり成功させずに反応を見ることを勧める 前者だったら卓外で話し合って、無駄なようなら付き合い方を考え直すしかないな 579 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 13 39 22.69 ID ??? まあ、ハンドアウトじゃないが、クエスト失敗で経験点減少 神官がいるなら神様から警告、それでもやめないなら技能剥奪 ってなところかなあ……まあ、お尋ね者プレイすんのも楽しいから、 一概に罰則与えろとも思わんけど 580 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 14 46 17.29 ID ??? 犯罪強行とかされたら、 まずクライマックスのHP、攻撃、防御を数割増やします。 二週間後とかナレーション付けてPCにクライマックスをぶつけます。 勝てば官軍。 次からはPCが追い掛けられるシナリオに変更。 負ければ死亡させるか、技能やアイテム剥奪。 スレ310
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/12183.html
体調不良 ★ ツムラ調査、8割が「なんとなく不調」 「Yahoo!news[健康産業速報](2024/1/24(水) 17 30)」より / ツムラが発表した「第4回なんとなく不調に関する実態調査」によると、「なんとなく不調」を感じている人が8割に上ることが明らかとなった。 同社では、自覚しながらもつい我慢しがちな症状や、調子が悪いものの病名の診断がつかない症状の総称を「なんとなく不調」と定義。今回の調査は昨年12月4日~7日、20~60代男女3000人を対象にネットで実施した。 その結果、前年調査より7.9ポイント増の80.0%が、「なんとなく不調」を実感。男女とも前年より増加、30代女性の90.0%が最多となった。「なんとなく不調」の上位症状は、「疲れ・だるさ」(53.4%)、「目の疲れ」(49.7%)、「肩こり」(48.1%)、「頭痛」(47.9%)となり、前年調査と同様だった。 1ヵ月のうち、平均9.5日は「なんとなく不調」を感じていたが、約7割は病院を受診せずと回答。前年調査より6.2ポイント増加した。 ツムラ調査、8割が「なんとなく不調」 ・・・枠珍接種率とだいたい同じなのは偶然だろうか😅https //t.co/rUwLS2QuuY — 毒母乳 (@7xCzVz2knym9PSL) January 24, 2024 .
https://w.atwiki.jp/faren_ency/pages/1881.html
雇用する部隊を選んでください 雇用コマンドを選択後、ユニットを選択せずに雇うボタンを押すと出るメッセージ。 雇えるユニットがいない場合にも一覧画面は表示されるが、必ずこのメッセージになってしまう。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hyakukami/pages/2244.html
依頼主 ダスラ 出現条件 調達しないとクリア クリア条件 以下の魔神を討伐するドゥルガー:2 成功報酬 神技強化 貢物値+60 依頼時 インド魔宮に手がいっぱいの魔神、いるでしょ。あいつが人間に病気撒き散らしてるらしいんだわ。ちょっと数減らそうって話になっててさ。 クリア時 あぁ、手伝ってくれたの?助かったわ。これで今日はもう帰れる。
https://w.atwiki.jp/nabenabenabe/pages/11.html
「量産機部隊を倒せ!」 クリア条件「敵10機撃破」 登場MS 「ジン×2 ディン×2 バビ×2 M1アストレイ×2 ダークダガーL×2」
https://w.atwiki.jp/jhs-rowa/pages/63.html
いつまでも絶えることなく友達でいたいから ◆j1I31zelYA 「何なのよ、ここは……」 視界一面に広がる『水槽』を見渡して、ユーロ空軍所属、式波・アスカ・ラングレー大尉は、その美麗な容貌をけげんそうに歪めた。 スタート地点だった水族館でアスカがまず目にしたのは、珍しい海生動物。 あのハングライダーみたいな生き物の名前がマンタで、大きな甲らをくっつけているのがカメだったか。 あの、三角形の大きなキバとかのっぺりした皮膚を持つ獣はサメと言ったはずだ――日本では『鮫肌』という言葉の語源になっている。 種族としてはほぼ絶滅したけど、言葉だけは残っているかもしれない。 それなりに教養の豊富なアスカも、大学時代に呼んだ文献の中でしか見たことがない。 どれもセカンド・インパクト前に絶滅した生き物ばかりだ。 とはいえ、そのように知識として色々と知っているアスカは、慣れない環境でも無様に取り乱したりしない。 アスカがいる学校の低レベルな男子どもが見たら、猿のように歓声をあげて興奮するかもしれないけれど。 こういう生き物を多種多様に集めて、鑑賞用とばかりに水族館をひとつ建ててしまう。 そんなことをする『拉致した何者か』の経済力や権力はどれほどに及ぶのだろうか。 「国連軍とNERVの間で何かを揉めて…………なさそうね。聞いたこともない名前の一般人がいっぱい参加してるし」 これだけの規模で人間を拉致できる企画と言えば、NERVか軍部が関係しているとしか思えない。 でも、今回に限ってはそれもないはずだ。 なぜなら、式波・アスカ・ラングレー大尉ことアスカが、この場にいるのだから。 エヴァンゲリオンパイロットは、人類を守れる唯一無二のエリートなのだ。 とりわけアスカは、世界で初めての完成したエヴァである、2号機のパイロットだ。 国防に従事する人間ならば、アスカの命を危険に晒すわけがない。 「なんにせよ……NERVからの救援を待つっていうのは非現実的ね。 簡単にそれができるなら、そもそも簡単にさらわれたりしないだろうし」 だとしたら、アスカがすべきことはなんだ? 愚民を助けるのがエリートの職務と言うものだが、他の参加者からそれを期待されても困る。 空軍の大尉として護身術の心得ぐらいはあるし、14歳にして飛び級で大学を卒業できるぐらい頭脳面でも優秀だけれど、その程度の力では何十人を守る余裕などない。 アスカの持つ最大の才能にして最愛の戦闘手段であるエヴァンゲリオンが、ここには無いのだから。 だから、まずは生き残ることを優先しよう。 とにかく死なないようにする。 頼れるのはアスカ自身の能力だけ。 この場に呼ばれている碇シンジも綾波レイも、頼りになる人材とは言い難いし、一般人である鈴原トウジにいたっては論外だ。 だから、1人でやるしかない。 ――なんだ。今までと同じじゃないか。 そう思うと、不思議と気持ちが楽になった。 同時に、何だか心が冷めた。 『殺し合え』と命令した何者かには大いに腹が立つし、不明なことが多すぎるという点に困惑もしていた。 けれど、殺そうと襲って来た相手を倒す心づもりならある。 というか、何もしなければ死んでしまうかもしれないのに、応戦しないのはただのバカだ。 エヴァとは比べ物にならないけど、自分の身を守る武器ならちゃんとある。 ディパックから出て来た支給武器を改めて確認した。 『殺し合え』というからには殺傷能力のある武器なのだろうが、アスカが見たことないタイプの武器だ。 実戦に導入する前に、きちんと使い方を威力を確認しておくべきだろう。 アスカは水槽のあるフロアを抜けて、エントランスの中央に進み出た。 この場所と床の素材なら、延焼を起こす心配もない。 中腰で立ち、その支給品を床のタイルと密着させる。 チキチキと音を立てて、その『テープ』を床に貼り付けて行く。 数メートルも貼り付けた頃だろうか。 「アスカ!」 アスカが出て来たフロアとは別方向、出口にあたる通路から声が聞こえた。 やや無防備な格好をさらしていた自分に舌打ち。 そして二種類の驚きに、神経を張り詰める。 ひとつは、『この水族館に、アスカ以外の人間がいた』という事実への驚き。 もうひとつは、その人間が、顔見知りだったという驚き。 「何よ、七光りじゃない……」 碇ゲンドウ司令の実子に当たる少年は、『信じられない』というように、大きく眼を見開いていた。 日本語の慣用表現だと『キツネにつままれたような』というのだったか。 いかにもあのヘタレらしい反応だな、と思う。 アスカと違って親の七光りで選ばれた、エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジ。 第7使徒が襲って来たというのに私事にかまけて連絡がとれないような無責任の職務怠慢で、 アスカがとっくに終わらせている中等部の義務教育で四苦八苦しているような凡人で、 アスカの飛び蹴り一発でノックダウンするような弱っちいヤツだ。 それにしても―― アスカは眉をひそめた。 いつの間にこの『七光り』は、アスカを下の名前で呼んでいいと思うようになったのか。 「アスカ……なんだ。本当にアスカなんだ……」 七光りは呆けたような顔で、一歩、一歩と近づいて来た。 まるで、生き別れになった姉妹とばったり再会したようなオーバーリアクションだった。 薄暗い廊下で、互いの微細な表情まで分かるほどに近づかれると、その頬に涙が流れていることが見て取れた。 「生きてる……また話せてる……。よかった。本当に、良かった」 よく見ると、七光りは呆けて泣いているだけではなかった。 『よかった』という声には、まぎれもない喜びがあった。 しぼりだすようなその声には、切なげな響きがあった。 アスカは眉をひそめた。 無事が喜ばれるというのは、基本的にありがたいことだ。 だがしかし、その相手が碇シンジで、これほどにアスカを心配しているという点が解せない。 この七光りは、そこまで心配してくれるほど、親密な人間だっただろうか。 アスカは事あるごとに彼を罵倒していたし、彼もアスカに苦手意識を持っていたフシがあった。 そもそも、出会ってまだ数日の間柄だ。 信頼や絆といったものが芽生えるはずがない。 そもそもアスカには、そう言ったものが必要ない。 「あんたバカぁ? なに無防備に『感動の再会です』って顔して泣きじゃくってんのよ。 あたしが殺し合いに乗ってるかもとか、そういうことは一切考えなかったわけ?」 七光りは、慌てて涙をぬぐった。 そして、なんと、アスカに晴れやかな笑顔を向けた。 「だって、アスカは友達だろう? ボクを殺すはずがないし、ボクもアスカを殺すはずないよ。 一緒に使徒と戦って来たし、ずっと同じ家で暮らしてたじゃないか! 綾波やトウジも探して、それからどうしたらいいか考えよう」 友達? アスカは、その笑顔を観察して考える。 一体、こいつはどういうつもりなのだろう。 『一緒に使徒と戦って来た』し、『同じ家で暮らしてきた』と七光りは言った。 それは、一応間違ってはいない。 同じ第三新東京の防衛にあたるエヴァパイロットだし、縁故ある葛城ミサトの家でひとつ屋根の下に暮らし始めた。 しかし、アスカが第三新東京市に赴任したのはわずか数日前。 葛城ミサトの家で同居を始めてからの期間は、もっと短い。 来日直後に襲来した第7使徒はアスカの独力で倒してしまったし、共同作戦を行ったことは一度もない。 同僚としての繋がりもごく微々たるものだ。 そんな薄い繋がりを盾にして、こいつはアスカとともに行動しようというのだろうか。 いかにも、ほっとしたような笑顔を見せて。 アスカより弱いくせに? ああ、そっか。 こいつは、ようするに、自分が心細いだけなんだ。 『殺し合って最後の一人になれ』と言われて、一般人あがりの碇シンジくんは、パニックで頭がいっぱいになってしまったというわけだ。 どうしようとガクブルしていたところを、かろうじて知り合いと言える2号機パイロットを見つけて、すがりたくなってしまったというわけだ。 『アスカなら自分よりしっかりしているから、守ってくれるかも』とか、ばくぜんとアテにして、声をかけたというわけだ。 だから、『仲間なんだから』という言葉を盾にして『一緒にいてください』と言っているんだ。 エヴァンゲリオンパイロットの癖に、男の癖に、アスカに媚びて頼ろうとしているんだ。 アスカの中にある怒りのメーターが、ぐんぐんと急騰し始めた。 試用の武器を持っていた手とは逆の手を、シンジに向ける。 牽制目的で掲げたそれは、警官や自衛官なら当たり前に持っている特殊警棒だった。 「何よそれ。アンタ、それだけの繋がりでアタシを頼りにしようっていうの? それで、あたしに守ってもらおうってわけ? あたしとアンタが2人っきりになったら、あたしを殺して優勝するの?」 七光りは、目に見えて顔色を変えた。 信じられないとでも言いたげに、敵意をもって向けられた警棒を見つめている。 「そんな……どうして、そんなこと言うんだよ。 せっかくまた会えたのに! ……あんなことがあって、もう会えないと思ったのに」 『あんなこと』とは、さっき『殺し合え』と宣告されたことだろう。 「だいいち、ぼくは誰かを殺したりしないよ! トウジや綾波だってここにいるのに、殺し合いなんてできない。 アスカだって、いつも強気だけど、普通の女の子らしいところもあるって知ってるんだ。 守られたいなんて思わないし、まして殺すなんて……」 七光りの言葉が、尻すぼみに途切れた。 何かに気づいてしまったかのように、ぎくりとした顔で凍りつく。 さしずめ『やっと、アスカに守ってもらいながら、最後の一人を目指す選択肢があると気付いた』といったところか。 おまけに、言うに事欠いて『普通の女の子らしい』とは何だ。 すがる目で見ていた癖に、表面上は、『アスカを守ってやる』という素振りを見せているところが、いっそう軽蔑を誘った。 「殺すなんて……何なのよ。言い切れないってことでしょ」 騙るに落ちた。 「もういいわ。あたしはアンタを信用できない。信用する必要もない」 素早くしゃがみこむと、左手に持っていた支給品を、貼り付けていたテープに着火した。 ――シュゴゴゴッ 太い火花のラインがほとばしり、テープを伝って七光りの足元に到達した。 床を切断しながら直進する花火に、七光りが慌てて後ろに飛ぶ。 床が熱の刃で削られる、がりがりという音が耳に届いた。 おもちゃみたいなツールだったのに、面白いぐらい破壊力が出た。 火花を目くらましとして、アスカは振り返り、走り出す。 七光りが何か叫んでいるが、知ったことか。 自動ドアをくぐり、夜の闇の向こうへと。 1人きりで、アスカは疾走を始めた。 ◆◆◆ 闇夜の景色を携帯電話で照らしながら、アスカはどこへともなく駈ける。 とにかく、あの賤しい七光りと少しでも距離を置きたかった。 あんな奴でも、殺せば一応は『国防の損失』になってしまうことが癪に障る。 まぁ、アスカ自身が手をくださなくても、あんなのはすぐにのたれ死んでくれるだろう。 ――国防の損失? 電流のように、その考えは頭を駆け抜けた。 考えを整理すべく足を止める。 けっこうな距離を走っていたらしく、一気に息切れと荒い呼吸が襲って来た。 そうだ、エヴァンゲリオンのパイロットが死ねば、国防にとって多大な損失になる。 それは自明のことだ。 だからこそアスカは、この『殺し合い』に軍部は無関係だと推測したのだから。 エヴァンゲリオンのパイロットが死ねば、人類を守れる人間はいなくなる。 1人減っただけでも、NERVに勤める制服を着た大人たちの、右往左往する光景が目に浮かぶ。 アスカは1人だけでも全ての使徒を殲滅する自信がある。 しかし、他のエヴァンゲリオンパイロットはそうじゃないだろう。 碇シンジなんかは論外だ。 自分で自分の身も守れない癖にアスカを頼ろうとするような、あんな下劣な男に国が守れるものか。 つまり、この殺し合いでアスカが死ねば、使徒から日本を守れる人材はいなくなるということだ。 逆に言えば、アスカは人類を守る為に、何としても生きて帰らなければならないということだ。 ならば、たとえ『どんなことをして帰ったとしても』、アスカには、帰った時の居場所が保証されるのだ。 そこらへんにいる愚民から集めて来た数十人の参加者と、 人類全てを救うことができるエヴァンゲリオンパイロット。 どちらの命が重いかなど決まっている。 いや、道徳的なことを言えば、命に軽重なんてないんだろう。 しかし、『一般人数十人』と『第三新東京に住む全ての人間』と、どちらを優先すべきかという問題ならどうだ。 その答えなど明白だ。 どんな人間だって、どちらかしか助けられないと言われたら、後者を優先するだろう。 犠牲者というのは、最小限に抑えられるべきなのだ。 軍人として、アスカの判断は間違っていない。 ましてや、アスカたちが攫われているこの瞬間も、第9の使徒が東京を襲撃してこないという保証はない。 そうなれば、NERVが使徒から東京を守るすべはない。 アスカは、一刻も早く帰還しなければらならない身分にあるはずだ。 アスカは、この会場にいるどの人間よりも、多くの人間から必要とされているはずだ。 他のパイロットを見殺しにしたとなれば、ミサトや加持はいい顔をしないだろうけど、それでも表だってアスカを責めることはできないはずだ。 アスカは、国防の為に必要なことをしたのだから。 世界でたったひとつのアスカの居場所は、永久に守られるはずだ。 よろしい、ならばアスカは生きて帰ろう。 自分1人の力で、生きて帰ろう。 襲う側に回るにせよ、襲われて撃退するにせよ、とにかく、自分の生存を第一として行動しよう。 「あたしは死なない……あたしは、エヴァンゲリオン弐号機パイロットなんだから!」 【G-8/水族館付近/一日目 深夜】 【式波・アスカ・ラングレー@エヴァンゲリオン新劇場版】 [状態] 健康 [装備] 青酸カリ付き特殊警棒@バトルロワイアル フレンダのツールナイフとテープ式導火線@とある科学の超電磁砲 [道具] 基本支給品一式、不明支給品×0~1 基本行動方針 エヴァンゲリオンパイロットとして、どんな手を使っても生還する。他の連中は知らない 1:積極的に殺すか、隠れるかは状況次第。 2:他の参加者は信用しない。1人でもやっていける。 [備考] 参戦時期は、第7使徒との交戦以降、海洋研究施設に社会見学に行くより以前。 追いかけて外に出た時にはもう、アスカは闇のベールの向こう側だった。 どちらに行ったのだろう。 その疑問と同じぐらい、『どうして』という問いかけが心中に渦を巻く。 確かにシンジは、綾波を捕食した使徒と戦うべく、NERVに走っていたはずだ。 そんなシンジを、どうやってこんな遠くまで、一瞬で拉致したというのか。 なぜ、使徒に飲み込まれたはずの綾波までここに来ているのか。 説明をつけることなどできなかったが、『現実に起こったことなのだ』という事実だけは、否応なしに理解させられた。 あのアスカまでも、元気な姿でこの場に来ていたのだから。 どうして、ここにいるのだろう。 動けるような状態では、なかったはずなのに。 精神汚染がどうとかで、シンジにはよく分からない治療のカプセルに入れられて、ずっと眠っていたはずだったのに。 それなのに、どうしてあんな風に回復したのか。 どうして、シンジにあんな敵意を向けたのか。 どうして、『あたしを殺すのか』などと言われたのか。 「やっぱり、ぼくを恨んでるのか? アスカを殺そうとしたから?」 原因は、それしか考えられなかった。 『アスカを殺したりしない』と、言い切ることが出来なかった。 どの面下げて、そんなことが言えるのか。 過去に一度、アスカを殺そうとしたのに。 言いわけしようと思えば、色々と言うことができた。 シンジは、アスカを殺したくなんかなかった。 あの時エヴァを操縦していたのは、シンジではなく『ダミーシステム』という自動操縦だった。 それでも、アスカを殺しかけたエヴァンゲリオンにシンジが乗っていたのは、まぎれもない事実。 使徒に浸食されていた間のことを、おそらくアスカは覚えていないだろう。 しかし、アスカが目覚めたのはシンジがNERVから逃げ出した後だったのかもしれないし、それなら赤木先生から経緯を聞かされていてもおかしくない。 ――だから、碇シンジなら自分を殺してもおかしくないと、思ってしまったのかもしれない。 どうする? 今のシンジに、アスカを守る資格などあるのか? いや、そもそも守り切ることなどできるのか? エヴァンゲリオンに乗れる以外は、ごくごく普通の中学生である碇シンジに? エヴァンゲリオンの無い、よく分からない場所で、よく知らない人達と一緒に呼ばれて? ――いや、関係ない。 「死なせたくない……せっかく会えたんだ。アスカを二度も殺すような真似は、絶対にしない」 アスカがシンジを敵視したからといって、それが何になる。 アスカの乗った参号機が使徒に浸食された時、シンジは父に向かって言った。 ――アスカを殺すぐらいなら、アスカに殺された方がマシだ。 綾波に対しても、その想いは同じだ。 あの時、暴走をしたのが綾波だったとしても、シンジは同様に思っただろう。 殺すぐらいなら、殺される方がマシだ。 「そう言えばよかったんだ。アスカにもう一度会って、ちゃんと言わなきゃ」 その言葉は、嘘いつわりのないシンジの思いだ。 もちろん、シンジにだって全ての参加者を守れるような力はない。 だが、それがどうした。 第十使徒に捕食される綾波を見た時、『アイツに勝てるかどうか』を心配したりしたか? 使徒と戦う為にNERVに引き返した時、『また綾波を死なせてしまうかも』とか、いちいち考えたのか? 違うだろう。 何としても失いたくなかったから、引き返したんだろう。 全てを守れると思うほどの自信は、未だに持てない。 けれど、せめて失いたくないと思った命ぐらいは、守りたい。 だから、彼は宣誓した。 強い言葉で、それが現実に変わるように願って。 「アスカも、綾波も、トウジも、みんなを死なせない! ……ぼくは、エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジなんだから!」 くしくも、彼女と同じ言葉を、彼女と真逆の信念を貫くために。 【G-8/水族館前/一日目 深夜】 【碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版】 [状態] 健康 [装備] なし [道具] 基本支給品一式、不明支給品×0~3 基本行動方針 エヴァンゲリオンパイロットとして、殺し合いには乗らずにアスカ、綾波、トウジを助ける 1:アスカを探しだして謝罪。信用を取り戻す。 2:綾波、トウジを探す。他にも、信用できる人がいれば協力を頼みたい。 [備考] 参戦時期は第10使徒と交戦する直前。 アスカがどちらの方向に逃げたか、把握していません。 【青酸カリ付き特殊警棒@バトルロワイアル】 式波・アスカ・ラングレーに支給。 原作バトルロワイアルで、榊祐子に支給された。 警棒事体は、通販で手に入るようなありふれた特殊警棒。 しかし、おまけとして小さな小ビンがくっついており、充分な致死量の青酸カリが入っている。 ステルスに徹すれば虐殺も可能な、『灯台の悲劇』の元凶。 【フレンダのツールナイフとテープ式導火線@とある科学の超電磁砲】 式波・アスカ・ラングレーに支給。 超電磁砲5巻で、御坂御琴と交戦したフレンダ・セイルヴェンが用いていたツール。 テープの形をした導火線に、鍵爪のような形をしたナイフで火花を起こすことにより、遠隔での攻撃や、敵の足場崩しを行うのが主な戦法。 鉄筋コンクリートの天井をたやすく破壊して人間を圧死させようとするなど、大きさの割にはかなりの破壊力を持っている。 Back 重なり合う死をかわして 投下順 \アッカヤ~ン/\みずのなかにいる/ Back 重なり合う死をかわして 時系列順 Gong Down START 式波・アスカ・ラングレー アンダースタンド START 碇シンジ No Reglet
https://w.atwiki.jp/nabenabenabe/pages/13.html
「量産機部隊を倒せ!」 クリア条件:「敵10機撃破」 ステージ:アーモリーワン工廠エリア 登場MS: 「ジン×2 ディン×2 バビ×2 M1アストレイ×2 ダークダガーL×2」 推奨MS :「オールラウンドな機体(ARFなど)」 攻略:かならず二体同時に増援されるので、落ち着いてヒット・アンド・アウェーで一機ずつ叩く。少なくとも、バビあたりまでに自機の撃墜は避けましょう。
https://w.atwiki.jp/multiple/pages/215.html
護ること、殺すこと ◆b8v2QbKrCM 二人の間に会話はなかった。 D-4エリアのとあるビルの陰。 表通りから死角となり、太陽の光からも見放された薄暗い路地裏に、梨花は無造作に腰を下ろしている。 膝を立てた両脚を抱きすくめた格好のせいで、ただでさえ小柄な体が一回りも二回りも小さく見える。 伏せた顔は長い髪に隠されて、その表情を伺うことはできない。 ――何もかも、だ。 梨花はぎゅっと唇を噛んだ。 糸切り歯が柔らかい肉に食い込んで、微かに血を滲ませる。 始まりからどれほどの時間が経ったのだろう。 ――何もかもが、上手くいかない。 自分は今も無力なままで、誰かに護られるばかり。 否、己の無力さなどずっと前から自覚している。 気が遠くなるほどの繰り返しの中で嫌というほど直面させられてきたのだから。 梨花の心を揺さぶるのは、無力な自分などという周知のモノではない。 手に入れたはずのモノが呆気なく奪われる絶望だ。 仲間達と掴んだ明日は指の隙間をすり抜けて、身に着けたはずの力は消え失せた。 僅かな間ではあったが、敵ではない関係を結んだルフィは目の前で殺された。 『失う』ことは『得られない』ことよりも重く心を傷つける。 特に、渇望し続けた果てに得たものを失うことは。 次は何を失う? ――自分の命 ――得られたはずの未来。 次は誰を失う? ――圭一。 ――レナ。 ――沙都子。 ――魅音。 ――詩音。 ――ニコラス・D・ウルフウッド。 思考が昏い方向へと落ちていく。 梨花はきつく目を瞑り、首を強く振った。 「……ニコラス」 「なんや」 当たり前すぎて、わざわざ訊ねるまでもないことかもしれない。 それでも、ウルフウッドの口から聞いておきたかった。 「ニコラスは、強い?」 「……まぁな」 返ってきた答えは簡潔そのもの。 しかし梨花の望んだ答えだ。 梨花はウルフウッドが戦うところを見たことがない。 彼の漂わせる雰囲気や言動の端々から、命の取り合いを繰り返してきたのだろうと推測できる程度だ。 だからこそ、この単純で稚拙な問いかけをしておきたかった。 「なんや、ちゃんと護ってもらえるか不安になったんか」 ウルフウッドがからかうように言う。 梨花はまさかと否定して、おもむろに立ち上がった。 推測ではなく、本人から聞きたかった。 そうすれば少しは安心できるから。 小さな足でぐっと地面を踏みしめる。 大丈夫、まだ歩ける。 こんなところで立ち止まっている暇なんかない。 一刻も早く、みんなと合流しなければならないのだから。 手遅れになる前に―― 「行きましょう。あの赤いコートの人がまだ近くにいるかもしれない」 梨花は、ビルの窓辺に垣間見た姿を思い起こした。 冷たさすら感じないほどに冷酷な眼差し。 濃紅の外套に身を包んだ火傷顔(フライフェイス)の女。 ルフィを殺した張本人。 彼女は明らかに殺し合いに乗っていた。 鉢合わせるなんて考えたくもない。 「それはあかん」 「……え?」 梨花の体は同年代の少女と比べてもかなり小さい。 それ故に、隣に立つウルフウッドの顔は視界の外で、彼がどんな表情をしていたのか見落としていた。 「夜中からずっと寝とらんやろ。ここらで一息入れたほうがええ」 「そんなことない!」 ウルフウッドは抗議の声にも構わず、梨花を担ぎ上げた。 あっという間にうつ伏せで肩に乗せられて、またも梨花はウルフウッドの顔を見られない。 「疲れっちゅうんは気付かんうちに溜まるもんや。 緊張しとる間は平気でも、いざってときに爆発しおったら目も当てられん」 「私は平気よ!」 「そら良かった。でもワイが休みたいんや。付き合ってもらうで」 淡々と言い含められて梨花は暴れるのを止めた。 しかしこれだけは言っておきたいという風に、憮然と口を開く。 「……せめて下ろしてくれない?」 二言三言の話し合いの結果、目的地は先ほどの路地裏から程近いマンションに決まった。 地図の上では図書館と隣接する十二階建ての建物だ。 ここを選んだ理由は主に二つ。 ひとつは、ちゃんとした休息の取れる施設であること。 これはウルフウッドの提示した条件だった。 マンションという居住専門に造られた場所なら、その点は完璧に違いない。 もうひとつは、極端に目立つ建物でないこと。 こちらは梨花が求めた条件。 このマンションは高層というほど高くなく、外装も落ち着いた雰囲気で周囲に溶け込んでいる。 必要以上に注意を惹きつけることもないだろう。 「まぁ、この辺でええやろ」 ウルフウッドは非常階段の隣の扉を開け、部屋に入っていった。 その後ろに梨花もついていく。 階数は二階。 一階部分にエントランスと駐車場が配された設計のため、ここが事実上の最低階だといえる。 部屋に入るなり、梨花は言い表しがたい違和感に目を細めた。 必要最小限の家具や内装は調えられているのに、私物や生活必需品に相当するものが見当たらない。 確かに室内は綺麗に整理整頓されていて、清掃も隅々まで行き届いている。 しかしそれでいて、人間の生活の痕跡が決定的に欠落しているのだ。 つまるところ、ここは生活空間などではない。 旅館やホテルのように『用意された』設備なのだ。 梨花はソファーにデイパックを置き、その隣に座った。 仮に、かつてここに誰かが住んでいたとしても、それは自分達には関係のないことだ。 今はただ羽を休めるだけ。 これから先、必ず起こるであろう波乱の時を乗り切るために。 「こら、寝るならあっちや」 ウルフウッドが親指でベッドを指し示す。 綺麗にシーツの敷かれたシングルベッドで、二人が横になるには狭すぎる。 「ニコラスが使いなさいよ。戦うのはあなたなんだから、しっかり休まないと」 「せやかて……そや。輪っかの方が表な」 ウルフウッドはベッド横の小棚の上から何かを拾い、梨花に見せた。 色は曇りのない金色で、大きさは五百円硬貨――梨花の認識ではつい昨年発行され始めたばかりのものだ――程度だ。 金額表記や模様らしい模様はなく、片面にだけ環状の模様が浮き彫りにされている。 ウルフウッドはそのコインを親指で弾き、手の甲で受け止めた。 「……表」 「残念、正解や」 梨花はウルフウッドの手に乗ったコインを見てため息を吐いた。 何だかんだ言って、結局彼は自分を休ませたいのだろう。 ここで断ってもまた違う理由をつけてくるに違いない。 梨花はソファーを後にして、真新しいシーツに身を投じた。 眠るほど疲れたわけではないけれど、こうして体を休めるのも悪くはない。 そんなことを思っているうちに、緊張していた四肢が少しずつ弛緩していく。 体が重たい。 まるでシーツに沈んでいくようだ。 「ん……」 視界の隅で、ウルフウッドがソファーに横たわるのが見えた。 梨花は何か言おうと口を開き、そのまま眠りへと落ちていった。 ◇ ◇ ◇ やはり疲労が溜まってきていたのだろう。 梨花はベッドに横になるなり眠ってしまったようだ。 ソファーの上で仰向けに天井を見上げながら、ウルフウッドは思考を巡らせる。 ルフィを殺した女が着ていたコートは、紛れもなくヴァッシュ・ザ・スタンピードのものだった。 それがどういう経緯であの女の手に渡ったのか。 最初に考え付くのは、死体から取得したということ。 しかし冷静に状況を思い返せば、それは可能性が低いと言わざるを得ない。 あの女が現れたのは放送があった直後だ。 そしてヴァッシュの名は放送で呼ばれていない。 つまり、仮にヴァッシュがあの女の手に掛かったとすると、その凶行は放送終了後極めて短い間に行われたということになる。 いくらなんでもそんな偶然があるものなのだろうか。 そういえば、とウルフウッドはベッドで眠る梨花に視線を向ける。 梨花と最初に出会ったとき、彼女は荷物に服や鍵ばかりが入っていて武器はなかったと言っていた。 ということは、あの女はヴァッシュの服を最初から持っていたのでは、とも考えられる。 むしろ偶然に偶然が重なったと考えるよりその方が現実的だ。 ならば、あいつは今も、いつものように駆け回っているのだろう。 「何でもかんでも助けられるわけなんかあらへん……」 聞く者など誰もいないというのに、ウルフウッドは呟きを漏らした。 物理的な限界がある。 時間的な制約がある。 ここにいる数十人を全て助けることなんて土台不可能なのだ。 自分ひとりと、後はせいぜい一握り。 欲張れば何もかも取りこぼす。 それでも、あの男のやることは変わらないのだろうが。 ウルフウッドはソファーから起き上がり、ベッドの傍らに立った。 無防備に眠る梨花の体は、驚くほどに細い。 こんな殺し合いの舞台では、きっと自分の身を護ることすら覚束ないに違いない。 ウルフウッドは表情を歪めた。 たかだか拳銃一挺とナイフ一振りで、この少女を護り切ることができるのか? そう問われても、胸を張って是と答えられはしない。 運と時勢が味方をしてくれれば不可能ではないだろう。 しかしそれは護ることに全力を傾けた場合のこと。 桜田ジュンを殺した相手。ルフィを殺した女。 素性も知らぬ彼らに銃口を向けようというのなら話は別だ。 護ることと殺すこと。 これらが相反するのは言葉の意味だけではない。 殺し合いの最中、誰かを護ることに気をとられれば、自分の命を危うくする。 逆に相手を殺すことに集中してしまえば、その分護るべき対象から意識が離れてしまう。 選ばなければならないのだ。 例え全ての選択肢が破局へ繋がっているとしても。 ふと、ウルフウッドは梨花の唇に小さく血が滲んでいることに気がついた。 いつの間に切ったのだろうか。 傷はそう大きくないので、降ってきたガラス片で傷ついたわけではなさそうだ。 人差し指の腹で血を拭ってやると、弾力に満ちた柔らかな感触が返ってきた。 ……やはり、幼い。 言動の節々から年齢に不相応な雰囲気を感じることはあったが、体は完全に幼い子供だ。 一人きりで殺し合いの場に残されてしまえば、それこそ半日と持たずに死んでしまうだろう。 ウルフウッドはどこか沈鬱な表情でベッドから離れた。 そのとき―― 「――!」 ウルフウッドの直感を気配を読み取った。 玄関の方向から、金属の軋むような音が微かに聞こえた。 普通の人間では聞き取れもしない音だが、人外の能力持つ自分にははっきりと聞こえた。 更に自然には発生した音とは思えない。 ウルフウッドはデザートイーグルを手に、足音を殺して玄関先へと至り、ドアスコープを覗き込んだ。 部屋の前には無人の風景が広がっているだけだった。 ノブを捻り、慎重に扉を開く。 「ほぅ、我の訪問を迅速に迎え出るか。いい心がけだ」 声は上方から投げかけられたものだった。 ウルフウッドは扉を盾にデザートイーグルを構えた。 マンションの傍に並ぶ背の高い街灯。 そのひとつを足場に、金髪の男がウルフウッドを見下ろしていた。 「何者や」 ウルフウッドは男の一挙一動を見逃さないようにしながら短く問いかけた。 こちらの得物は拳銃、あちらは黄色い槍が一振り。 現状の位置関係においてどちらが有利かは考えるまでもない。 しかし男はそんなことなどお構いなしに、呆れたような視線をウルフウッドに向けている。 「蒙昧は救いがたいぞ、雑種。まぁ……貴様への懲罰は後回しだ」 まるで己の名を知らぬことを咎めるような返答。 ――いや、『まるで』というのは不適だろう。 この男は心の底からそう思っているようであった。 ウルフウッドは口にこそ出してはいないが、降って沸いた厄介事に頭を抱えたい気分だった。 ただでさえこれからのことに苦悩しているというのに、それが一気に三割増だ。 害意がないならさっさと追い払ってしまいたい―― その後ろ向きな考えは、男が語る言葉によって容易く吹き飛ばされた。 「赤いコートの火傷顔に覚えはあるか?」 「――あの女を知っとるんか」 ウルフウッドは思わず眼を剥いた。 赤いコート。火傷顔。 まさしくルフィを殺した女の容貌に他ならない。 男はウルフウッドの動揺など気にする素振りもなく、身勝手に話を進めていく。 「女、か。偽りではないようだな。許す。知るところを語れ」 乗せられたか。 ウルフウッドは銃を下げ、廊下に身を現した。 あえて情報の一端を隠して問いかけ、相手の反応から真偽を確かめるとは、随分念の入ったことだ。 だがそれは、確実にあの女の情報を得ようとしていることの裏返しでもある。 ここから分かることは二つ。 まずは、あの男は火傷顔の女の仲間ではない可能性が高いということ。 仲間の情報を赤の他人から聞き出そうとするなど考えにくいからだ。 無論、味方ではあるが多くを知らされていないだとか、 あの女を信用していないため、別の情報源からも情報を得ようとしているだとか、考えようは他にもある。 だとしても、両者が密接な関係にないということだけは確かだ。 次に分かるのは、あの男は当面――少なくとも知りたい情報を得尽くすまでは、こちらに危害を加えないだろうということ。 ウルフウッドは後ろ手に扉を閉め、男の真正面に位置するように横に動いた。 「あいつは加害者で、ワイは被害者。それだけや。声も聞いとらん」 必要以上の情報を与えないよう、慎重に言葉を選ぶ。 『ワイら』ではなく『ワイ』と自称し、梨花という連れがいることも伏せておく。 同行者がいることを不用意に知られてしまうのは、弱みを握られることに繋がりかねないからだ。 男はふむと鼻を鳴らし、問いを更に重ねる。 「なるほど。目立つ傷はあったか?」 「顔面のでっかい火傷だけや」 単純なやりとりであるが、男は求めていた情報を確実に蒐めているようだった。 このままではこちらは得るものがないまま終わってしまう。 「……こっちからもええか?」 「いいだろう、言ってみろ」 男の態度はどこまでも傲慢だ。 しかし今はそんな細かいことに腹を立てている状況ではない。 ウルフウッドは単刀直入に疑問を投げかけた。 「何であの女について知りたがる。恨みでもあるんか」 不意に、男の口元に嘲笑の色が浮かんだ。 それはウルフウッドに対してなのか、それとも火傷顔の女に対してなのか。 嘲笑の意味するところは、男自身にしか分からない。 「あの下女めは我に無礼を働いた。故に刎頚に処してやろうというのだ。 本来ならこのような雑用は使いに任せるところだがな。 結果として、貴様は拝謁の栄に浴したわけだ。誉れとするがいい」 紅い眼がウルフウッドを見下す。 火傷顔の女が見せた兵士の眼差しと同質の、しかし限りなく異質な眼。 『人を平然と殺す人間の目』ではない。 『人を人とも思わない、人ならざる何者か』だ―― キィ―― 金属の擦れる音がした。 微かに開かれた、部屋の扉。 「あかん! 戻れ!」 ウルフウッドが叫ぶが早いか、金髪の男が部屋の前に着地した。 そして扉の隙間から腕を突き入れ、華奢な体を引きずり出す。 「きゃあ!」 「梨花!」 男は梨花の右手首を掴み、目線の高さで宙吊りにする。 なんてことや――ウルフウッドは歯噛みした。 よりによって、最も避けなければならなかった事態に陥ってしまうとは。 梨花が出てきた理由は察しがつく。 目覚めてみれば同行者の姿が見当たらず、玄関先で不穏な会話が聞こえれば、誰でも緊急事態を想定するに違いない。 護身用のつもりだったのだろう。 右手に持っている奇妙な短剣の存在がその想像を裏付けていた。 「フン――盗人が一匹いたか」 「あ、ぐ……うぁ」 男の右手が梨花の手首を握り締める。 苦悶の表情を浮かべる梨花。 か細い腕の軋む音がウルフウッドにまで聞こえてきそうだ。 もがきながら膝や足をぶつけるが、男は微動だにせず、反作用で梨花のほうが揺れ動くだけだった。 ウルフウッドがデザートイーグルの銃口を向けるも、男はそれに合わせて梨花の位置を変え、射線を遮る。 「い……た……」 痛みに耐えかねた梨花が短剣を取り落とす。 男はそれを見届けると、梨花をウルフウッドに向けて放り投げた。 咄嗟にデザートイーグルを放し、梨花を受け止める。 梨花の手首は痛々しく赤らんでいるが、指が動いているところをみると、骨に異常はないらしい。 「ごめん、なさい……」 「気にすんな。ワイも不注意やった」 何が、梨花を護る、だ。 さっきも男がその気なら、梨花は一瞬で殺されていた。 ドアの隙間から槍で突けばそれで終わり。 羽虫を潰す程度の労力も掛からない。 「我が財をあの程度にしか使わぬとは。やはり雑種には過ぎたるものか」 ウルフウッドは梨花を支えたまま男を睨む。 いつの間にか、男が携えていた黄色い槍が消えており、代わりに件の短剣が手中に収まっていた。 「盗人には死罪が相応しい。だが、自害を望むなら待ってやろう」 男の背後で空間が波打つ。 水面に礫を投じたように広がる波紋の中心から、短槍の切っ先が姿を現した。 外見だけを見れば、槍の半身が宙に浮いているだけ。 男が何をするつもりなのか想像もつかないが、少なくとも自分達を殺そうとしているのは察しがつく。 自分一人なら問題は無いが、梨花がいる。 梨花を抱え、全力で逃げ出そう。ウルフウッドはそう決意した。 「……けるな」 小さな両手がウルフウッドを押し退ける。 静止しようと伸ばした腕も振り切って、梨花は男の前に立った。 「ふざけるな! それは最初から持たされてたのよ! そんな理不尽な理由で殺されてたまるか!」 髪を振り乱した梨花の絶叫を、男は完全に聞き流していた。 それどころか一切の興味を払っておらず、視界に収めているかも怪しかった。 「死罪? 自害? どっちも嫌! 待ってるんだから! 沙都子も! 圭一も!」 不意に―― 青天の霹靂としか言いようのないタイミングで、男の冷徹な表情が崩れた。 ウルフウッドも、肩で息をしていた梨花も、その変化に気がついて眼を丸くする。 「く――ははっ……ははは……はははははっ!」 哄笑である。 男は姿勢を崩し、湧き上がる笑いを堪えることなく吐き散らし始めた。 身を捩じらせ、髪を掻き揚げ、心の底から笑い転げる。 「そうか! 貴様もか! 下女め、よもや狙ってやったのではあるまいな!」 狂ったように笑う男の前で、梨花は唖然と立ち尽くしていた。 そのうちに、我に返ったウルフウッドが梨花を引き寄せ、かばうように後ろへ立たせる。 「なんや、いきなり……」 ウルフウッドには男がどうして笑ったのか皆目見当もつかなかった。 無論、梨花にもだろう。 やがて男は笑い終え、当然のように踵を返した。 「おい」 「12時――」 ウルフウッドの言葉を遮り、男は更に続ける。 「件の下女めは劇場に現れる」 「……それをワイらに教えてどうするつもりや」 あまりにも不自然なリークだ。 真実にしては突然過ぎ、罠にしてはあからさま過ぎる。 男は振り返り、疑いの眼差しを向けるウルフウッドを無視して、その陰に隠れる梨花を眺め見た。 「竜宮レナもそこにいる」 「――!」 それだけ言い残し、男は街灯へと飛び移り、そこから更に上の階へと跳んでいった。 梨花が慌てて手摺りから身を乗り出すも、男の姿はもうどこにも見当たらない。 ただ荒涼とした青空が広がっているだけだった。 「のぉ、レナって……」 「仲間よ……大切な」 やっぱりか、とウルフウッドは独りごちた。 梨花の慌てようを見れば、その類以外に考えられない。 どうしてあの男がそいつの行き先を知っているのかはともかく、これで男の言葉に信憑性が生まれてきた。 それと同時に、自分達の方針が決定されたも同然だった。 「12時か、急がんでも余裕で間に合うな」 梨花の目的は仲間たちとの合流なのだ。 そこに火傷顔の女が鉢合わせると聞いて、見過ごしておけるはずがないだろう。 ウルフウッドは、暗い顔で佇む梨花の頭に軽く手を置いた。 ◇ ◇ ◇ アーチャーは含み笑いを浮かべたまま、安物のソファーに腰を下ろした。 下階に現れた気配を追って、もののついでにあの女について鎌をかけてみたのだが、よもやこうも面白くなろうとは。 「えっと、アーチャー様?」 様子のおかしさに気づいた圭一が声をかけるも、アーチャーは応じない。 肘掛に頬杖を突き、先ほどの邂逅で得られた情報を吟味する。 あの雑種は、火傷顔の女には目立った傷がなかったと言っていた。 それはつまり、アーチャーが女の右腕を切り落とす以前に遭遇していたということだ。 声も聞いていないということに嘘はないだろう。 アーチャーを襲ったときも、こちらから声を掛けるまでは何も語ってこなかった。 一方的に襲われて逃げ遂せたのであれば不思議はない。 そして何よりの収穫は、雑種の片割れに、あの女が狙う一行の関係者が含まれていたことだった。 圭一の態度を見るに、互いの窮地を見過ごしてはおけない性質の集団だったのだろう。 一度遭遇しているのなら、火傷顔の女が相手も構わず噛み付く駄犬であることを知っているに違いない。 ならば引き寄せられるはずだ。 アーチャーの思惑通りに。 「……下にいたの、誰だったんですか?」 「気になるか? 二階だ、行きたければ独りで行け。面白いことになるやもしれんぞ」 圭一の複雑な表情を、アーチャーは横目で嗤った。 まずは、二頭。 女狐を追い立てる猟犬は多いほど良い。 働きが良ければ盗みの咎を赦してやってもいいだろう。 ――この下らぬ催しは確実に粉砕する。 生殺与奪の権は王一人が有するべきものだ。 そしてそれを以って、かの女には死を与えると決めた。 王の慈悲を享受するのは王の臣下とその民のみ。 圭一は今のところはそれなりに働いている。 その報奨として仲間とやらにも生存を許すのはやぶさかではない。 だが、あの女には慈悲など与えはしない。 「そうだな、レナとやらの顔を見てみるのも一興か」 火傷傷の女が貴様らを狙っており、リカも巻き込まれつつある。 そう吹き込んでやれば上手く動くに違いない。 猟犬は一頭でも多いほうがいいのだから―― 【D-4 図書館裏のマンション(2階) 1日目 昼】 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:右手首に痛み [装備]:なし [道具]:支給品一式、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム [思考・状況] 1:12時までに劇場に向かう。 2:必ず生き残る。 3:圭一達を見つける。 4:安全な場所に行きたい。 ※王の財宝の使い方(発動のさせ方)を分かっていません。(説明書もありません) ※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。 ※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。 ※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。 ※スタープラチナに適正を持っています。僅かな時間ですが時止めも可能です。 ※スタープラチナを使えないことに気付きました。落としたことには気付いてません。 ※ルフィと情報交換しました。 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】 [状態]:混乱。強い怒りと悲しみ [装備]:デザートイーグル50AE(8/8 予備弾30) [道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、○印のコイン [思考・状況] 1:12時までに劇場に向かう。 2:古手梨花を守る。 3:ヴァッシュとの合流、リヴィオとの接触。 4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。 5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー ※ルフィと情報交換しました。 ※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。 【D-4 図書館裏のマンション(4階) 1日目 昼】 【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】 [状態] 疲労(小)、頭部にたんこぶ×2、頬に痛み、右足に銃創(止血済み) [装備] デザートイーグル(残弾数2/6) [道具] 双眼鏡(支給品はすべて確認済)、不死の酒(完全版)(空)、基本支給品×2、ゾロの地図、黄金の鎧@Fate/Zero(上半身部分大破)、ヤマハV-MAX@Fate/zero [思考・状況] 基本行動方針:仲間を助けて脱出したい 1:アーチャーと共に12時までに劇場に向かう。 2:切嗣についてアーチャーには漏らさないようにする。 3:切嗣、佐山のグループと早く合流したい(切嗣のことをそれなりに信用してます) 4:万が一のときに覚悟が必要だ 5:魔法使い……? [備考] ※時系列では本編終了時点です ※アーチャーの真名を知りません。 ※クロコの名前、カナヅチという弱点を知りました。 ※橘あすかと真紅と簡単に情報交換し、 新たに彼らの仲間等(翠星石、クーガー、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ、ルフィ)と、 要注意人物(カズマ、水銀燈、バラライカ、ラッド)の情報を得ました。 また、ゾロと蒼星石が彼らの(間接的、直接的な)知人であることを知りました。 ※切嗣の推測とあすか達との情報交換から、会場のループについては把握しています。 ※バラライカの姿を確認しました。名前は知りません。 ※バラライカからレッド、グラハム、チョッパーの名前を聞きました。 【ギルガメッシュ@Fate/Zero】 [状態] 肩と腹に刺し傷(小・回復中)、不死(不完全) [装備] 王の財宝(の鍵剣)、黒のライダースーツ [道具] 必滅の黄薔薇@Fate/Zero(王の財宝内) [思考・状況] 基本行動方針:主催を滅ぼし、元の世界に帰還する。必要があれば他の参加者も殺す。 0:圭一とその仲間を脱出させる。 1:12時までに劇場に向かう。 2:他の参加者をけしかけてバラライカを殺す。可能ならレナ達も。 3:自分を楽しませ得る参加者を見定める。 4:ゾロ、佐山、クーガーに興味。梨花とウルフウッドについては当面様子見。 5:圭一が自分のクラスを知っていた事に関しては・・・? 6:宝具は見つけ次第我が物にする。天地乖離す開闢の星、天の鎖があれば特に優先する。 [備考] ※不死の酒を残らず飲み干しましたが、完全な不死は得られませんでした。 具体的には、再生能力等が全て1/3程度。また、首か心臓部に致命傷を受ければ死にます。 ※会場が自然にループしていることを把握しました。 ※悪魔の実能力者がカナヅチという弱点を知っています。 ※本編での経験から、螺湮城教本を手に入れる気にはならなかったようです。 ※クーガーには強い印象を受けていますが、橘あすかのことは忘れました。 ※文中台詞の"山猫"とはクーガーのことです。 ※圭一の仲間が劇場に向かうということを聞きました。 ※銃火器にはもう対処できます。 時系列順で読む Back Nine the code geass Next ここにいていいだろうかとは尋ねない 投下順で読む Back Nine the code geass Next 路傍の石 Back Next ジャイアントキリング(後編) ニコラス・D・ウルフウッド CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ ジャイアントキリング(後編) 古手梨花 CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ 図書館戦争 アーチャー(ギルガメッシュ) CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ 図書館戦争 前原圭一 CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~
https://w.atwiki.jp/marurowa/pages/318.html
護ること、殺すこと ◆b8v2QbKrCM 二人の間に会話はなかった。 D-4エリアのとあるビルの陰。 表通りから死角となり、太陽の光からも見放された薄暗い路地裏に、梨花は無造作に腰を下ろしている。 膝を立てた両脚を抱きすくめた格好のせいで、ただでさえ小柄な体が一回りも二回りも小さく見える。 伏せた顔は長い髪に隠されて、その表情を伺うことはできない。 ――何もかも、だ。 梨花はぎゅっと唇を噛んだ。 糸切り歯が柔らかい肉に食い込んで、微かに血を滲ませる。 始まりからどれほどの時間が経ったのだろう。 ――何もかもが、上手くいかない。 自分は今も無力なままで、誰かに護られるばかり。 否、己の無力さなどずっと前から自覚している。 気が遠くなるほどの繰り返しの中で嫌というほど直面させられてきたのだから。 梨花の心を揺さぶるのは、無力な自分などという周知のモノではない。 手に入れたはずのモノが呆気なく奪われる絶望だ。 仲間達と掴んだ明日は指の隙間をすり抜けて、身に着けたはずの力は消え失せた。 僅かな間ではあったが、敵ではない関係を結んだルフィは目の前で殺された。 『失う』ことは『得られない』ことよりも重く心を傷つける。 特に、渇望し続けた果てに得たものを失うことは。 次は何を失う? ――自分の命 ――得られたはずの未来。 次は誰を失う? ――圭一。 ――レナ。 ――沙都子。 ――魅音。 ――詩音。 ――ニコラス・D・ウルフウッド。 思考が昏い方向へと落ちていく。 梨花はきつく目を瞑り、首を強く振った。 「……ニコラス」 「なんや」 当たり前すぎて、わざわざ訊ねるまでもないことかもしれない。 それでも、ウルフウッドの口から聞いておきたかった。 「ニコラスは、強い?」 「……まぁな」 返ってきた答えは簡潔そのもの。 しかし梨花の望んだ答えだ。 梨花はウルフウッドが戦うところを見たことがない。 彼の漂わせる雰囲気や言動の端々から、命の取り合いを繰り返してきたのだろうと推測できる程度だ。 だからこそ、この単純で稚拙な問いかけをしておきたかった。 「なんや、ちゃんと護ってもらえるか不安になったんか」 ウルフウッドがからかうように言う。 梨花はまさかと否定して、おもむろに立ち上がった。 推測ではなく、本人から聞きたかった。 そうすれば少しは安心できるから。 小さな足でぐっと地面を踏みしめる。 大丈夫、まだ歩ける。 こんなところで立ち止まっている暇なんかない。 一刻も早く、みんなと合流しなければならないのだから。 手遅れになる前に―― 「行きましょう。あの赤いコートの人がまだ近くにいるかもしれない」 梨花は、ビルの窓辺に垣間見た姿を思い起こした。 冷たさすら感じないほどに冷酷な眼差し。 濃紅の外套に身を包んだ火傷顔(フライフェイス)の女。 ルフィを殺した張本人。 彼女は明らかに殺し合いに乗っていた。 鉢合わせるなんて考えたくもない。 「それはあかん」 「……え?」 梨花の体は同年代の少女と比べてもかなり小さい。 それ故に、隣に立つウルフウッドの顔は視界の外で、彼がどんな表情をしていたのか見落としていた。 「夜中からずっと寝とらんやろ。ここらで一息入れたほうがええ」 「そんなことない!」 ウルフウッドは抗議の声にも構わず、梨花を担ぎ上げた。 あっという間にうつ伏せで肩に乗せられて、またも梨花はウルフウッドの顔を見られない。 「疲れっちゅうんは気付かんうちに溜まるもんや。 緊張しとる間は平気でも、いざってときに爆発しおったら目も当てられん」 「私は平気よ!」 「そら良かった。でもワイが休みたいんや。付き合ってもらうで」 淡々と言い含められて梨花は暴れるのを止めた。 しかしこれだけは言っておきたいという風に、憮然と口を開く。 「……せめて下ろしてくれない?」 二言三言の話し合いの結果、目的地は先ほどの路地裏から程近いマンションに決まった。 地図の上では図書館と隣接する十二階建ての建物だ。 ここを選んだ理由は主に二つ。 ひとつは、ちゃんとした休息の取れる施設であること。 これはウルフウッドの提示した条件だった。 マンションという居住専門に造られた場所なら、その点は完璧に違いない。 もうひとつは、極端に目立つ建物でないこと。 こちらは梨花が求めた条件。 このマンションは高層というほど高くなく、外装も落ち着いた雰囲気で周囲に溶け込んでいる。 必要以上に注意を惹きつけることもないだろう。 「まぁ、この辺でええやろ」 ウルフウッドは非常階段の隣の扉を開け、部屋に入っていった。 その後ろに梨花もついていく。 階数は二階。 一階部分にエントランスと駐車場が配された設計のため、ここが事実上の最低階だといえる。 部屋に入るなり、梨花は言い表しがたい違和感に目を細めた。 必要最小限の家具や内装は調えられているのに、私物や生活必需品に相当するものが見当たらない。 確かに室内は綺麗に整理整頓されていて、清掃も隅々まで行き届いている。 しかしそれでいて、人間の生活の痕跡が決定的に欠落しているのだ。 つまるところ、ここは生活空間などではない。 旅館やホテルのように『用意された』設備なのだ。 梨花はソファーにデイパックを置き、その隣に座った。 仮に、かつてここに誰かが住んでいたとしても、それは自分達には関係のないことだ。 今はただ羽を休めるだけ。 これから先、必ず起こるであろう波乱の時を乗り切るために。 「こら、寝るならあっちや」 ウルフウッドが親指でベッドを指し示す。 綺麗にシーツの敷かれたシングルベッドで、二人が横になるには狭すぎる。 「ニコラスが使いなさいよ。戦うのはあなたなんだから、しっかり休まないと」 「せやかて……そや。輪っかの方が表な」 ウルフウッドはベッド横の小棚の上から何かを拾い、梨花に見せた。 色は曇りのない金色で、大きさは五百円硬貨――梨花の認識ではつい昨年発行され始めたばかりのものだ――程度だ。 金額表記や模様らしい模様はなく、片面にだけ環状の模様が浮き彫りにされている。 ウルフウッドはそのコインを親指で弾き、手の甲で受け止めた。 「……表」 「残念、正解や」 梨花はウルフウッドの手に乗ったコインを見てため息を吐いた。 何だかんだ言って、結局彼は自分を休ませたいのだろう。 ここで断ってもまた違う理由をつけてくるに違いない。 梨花はソファーを後にして、真新しいシーツに身を投じた。 眠るほど疲れたわけではないけれど、こうして体を休めるのも悪くはない。 そんなことを思っているうちに、緊張していた四肢が少しずつ弛緩していく。 体が重たい。 まるでシーツに沈んでいくようだ。 「ん……」 視界の隅で、ウルフウッドがソファーに横たわるのが見えた。 梨花は何か言おうと口を開き、そのまま眠りへと落ちていった。 ◇ ◇ ◇ やはり疲労が溜まってきていたのだろう。 梨花はベッドに横になるなり眠ってしまったようだ。 ソファーの上で仰向けに天井を見上げながら、ウルフウッドは思考を巡らせる。 ルフィを殺した女が着ていたコートは、紛れもなくヴァッシュ・ザ・スタンピードのものだった。 それがどういう経緯であの女の手に渡ったのか。 最初に考え付くのは、死体から取得したということ。 しかし冷静に状況を思い返せば、それは可能性が低いと言わざるを得ない。 あの女が現れたのは放送があった直後だ。 そしてヴァッシュの名は放送で呼ばれていない。 つまり、仮にヴァッシュがあの女の手に掛かったとすると、その凶行は放送終了後極めて短い間に行われたということになる。 いくらなんでもそんな偶然があるものなのだろうか。 そういえば、とウルフウッドはベッドで眠る梨花に視線を向ける。 梨花と最初に出会ったとき、彼女は荷物に服や鍵ばかりが入っていて武器はなかったと言っていた。 ということは、あの女はヴァッシュの服を最初から持っていたのでは、とも考えられる。 むしろ偶然に偶然が重なったと考えるよりその方が現実的だ。 ならば、あいつは今も、いつものように駆け回っているのだろう。 「何でもかんでも助けられるわけなんかあらへん……」 聞く者など誰もいないというのに、ウルフウッドは呟きを漏らした。 物理的な限界がある。 時間的な制約がある。 ここにいる数十人を全て助けることなんて土台不可能なのだ。 自分ひとりと、後はせいぜい一握り。 欲張れば何もかも取りこぼす。 それでも、あの男のやることは変わらないのだろうが。 ウルフウッドはソファーから起き上がり、ベッドの傍らに立った。 無防備に眠る梨花の体は、驚くほどに細い。 こんな殺し合いの舞台では、きっと自分の身を護ることすら覚束ないに違いない。 ウルフウッドは表情を歪めた。 たかだか拳銃一挺とナイフ一振りで、この少女を護り切ることができるのか? そう問われても、胸を張って是と答えられはしない。 運と時勢が味方をしてくれれば不可能ではないだろう。 しかしそれは護ることに全力を傾けた場合のこと。 桜田ジュンを殺した相手。ルフィを殺した女。 素性も知らぬ彼らに銃口を向けようというのなら話は別だ。 護ることと殺すこと。 これらが相反するのは言葉の意味だけではない。 殺し合いの最中、誰かを護ることに気をとられれば、自分の命を危うくする。 逆に相手を殺すことに集中してしまえば、その分護るべき対象から意識が離れてしまう。 選ばなければならないのだ。 例え全ての選択肢が破局へ繋がっているとしても。 ふと、ウルフウッドは梨花の唇に小さく血が滲んでいることに気がついた。 いつの間に切ったのだろうか。 傷はそう大きくないので、降ってきたガラス片で傷ついたわけではなさそうだ。 人差し指の腹で血を拭ってやると、弾力に満ちた柔らかな感触が返ってきた。 ……やはり、幼い。 言動の節々から年齢に不相応な雰囲気を感じることはあったが、体は完全に幼い子供だ。 一人きりで殺し合いの場に残されてしまえば、それこそ半日と持たずに死んでしまうだろう。 ウルフウッドはどこか沈鬱な表情でベッドから離れた。 そのとき―― 「――!」 ウルフウッドの直感を気配を読み取った。 玄関の方向から、金属の軋むような音が微かに聞こえた。 普通の人間では聞き取れもしない音だが、人外の能力持つ自分にははっきりと聞こえた。 更に自然には発生した音とは思えない。 ウルフウッドはデザートイーグルを手に、足音を殺して玄関先へと至り、ドアスコープを覗き込んだ。 部屋の前には無人の風景が広がっているだけだった。 ノブを捻り、慎重に扉を開く。 「ほぅ、我の訪問を迅速に迎え出るか。いい心がけだ」 声は上方から投げかけられたものだった。 ウルフウッドは扉を盾にデザートイーグルを構えた。 マンションの傍に並ぶ背の高い街灯。 そのひとつを足場に、金髪の男がウルフウッドを見下ろしていた。 「何者や」 ウルフウッドは男の一挙一動を見逃さないようにしながら短く問いかけた。 こちらの得物は拳銃、あちらは黄色い槍が一振り。 現状の位置関係においてどちらが有利かは考えるまでもない。 しかし男はそんなことなどお構いなしに、呆れたような視線をウルフウッドに向けている。 「蒙昧は救いがたいぞ、雑種。まぁ……貴様への懲罰は後回しだ」 まるで己の名を知らぬことを咎めるような返答。 ――いや、『まるで』というのは不適だろう。 この男は心の底からそう思っているようであった。 ウルフウッドは口にこそ出してはいないが、降って沸いた厄介事に頭を抱えたい気分だった。 ただでさえこれからのことに苦悩しているというのに、それが一気に三割増だ。 害意がないならさっさと追い払ってしまいたい―― その後ろ向きな考えは、男が語る言葉によって容易く吹き飛ばされた。 「赤いコートの火傷顔に覚えはあるか?」 「――あの女を知っとるんか」 ウルフウッドは思わず眼を剥いた。 赤いコート。火傷顔。 まさしくルフィを殺した女の容貌に他ならない。 男はウルフウッドの動揺など気にする素振りもなく、身勝手に話を進めていく。 「女、か。偽りではないようだな。許す。知るところを語れ」 乗せられたか。 ウルフウッドは銃を下げ、廊下に身を現した。 あえて情報の一端を隠して問いかけ、相手の反応から真偽を確かめるとは、随分念の入ったことだ。 だがそれは、確実にあの女の情報を得ようとしていることの裏返しでもある。 ここから分かることは二つ。 まずは、あの男は火傷顔の女の仲間ではない可能性が高いということ。 仲間の情報を赤の他人から聞き出そうとするなど考えにくいからだ。 無論、味方ではあるが多くを知らされていないだとか、 あの女を信用していないため、別の情報源からも情報を得ようとしているだとか、考えようは他にもある。 だとしても、両者が密接な関係にないということだけは確かだ。 次に分かるのは、あの男は当面――少なくとも知りたい情報を得尽くすまでは、こちらに危害を加えないだろうということ。 ウルフウッドは後ろ手に扉を閉め、男の真正面に位置するように横に動いた。 「あいつは加害者で、ワイは被害者。それだけや。声も聞いとらん」 必要以上の情報を与えないよう、慎重に言葉を選ぶ。 『ワイら』ではなく『ワイ』と自称し、梨花という連れがいることも伏せておく。 同行者がいることを不用意に知られてしまうのは、弱みを握られることに繋がりかねないからだ。 男はふむと鼻を鳴らし、問いを更に重ねる。 「なるほど。目立つ傷はあったか?」 「顔面のでっかい火傷だけや」 単純なやりとりであるが、男は求めていた情報を確実に蒐めているようだった。 このままではこちらは得るものがないまま終わってしまう。 「……こっちからもええか?」 「いいだろう、言ってみろ」 男の態度はどこまでも傲慢だ。 しかし今はそんな細かいことに腹を立てている状況ではない。 ウルフウッドは単刀直入に疑問を投げかけた。 「何であの女について知りたがる。恨みでもあるんか」 不意に、男の口元に嘲笑の色が浮かんだ。 それはウルフウッドに対してなのか、それとも火傷顔の女に対してなのか。 嘲笑の意味するところは、男自身にしか分からない。 「あの下女めは我に無礼を働いた。故に刎頚に処してやろうというのだ。 本来ならこのような雑用は使いに任せるところだがな。 結果として、貴様は拝謁の栄に浴したわけだ。誉れとするがいい」 紅い眼がウルフウッドを見下す。 火傷顔の女が見せた兵士の眼差しと同質の、しかし限りなく異質な眼。 『人を平然と殺す人間の目』ではない。 『人を人とも思わない、人ならざる何者か』だ―― キィ―― 金属の擦れる音がした。 微かに開かれた、部屋の扉。 「あかん! 戻れ!」 ウルフウッドが叫ぶが早いか、金髪の男が部屋の前に着地した。 そして扉の隙間から腕を突き入れ、華奢な体を引きずり出す。 「きゃあ!」 「梨花!」 男は梨花の右手首を掴み、目線の高さで宙吊りにする。 なんてことや――ウルフウッドは歯噛みした。 よりによって、最も避けなければならなかった事態に陥ってしまうとは。 梨花が出てきた理由は察しがつく。 目覚めてみれば同行者の姿が見当たらず、玄関先で不穏な会話が聞こえれば、誰でも緊急事態を想定するに違いない。 護身用のつもりだったのだろう。 右手に持っている奇妙な短剣の存在がその想像を裏付けていた。 「フン――盗人が一匹いたか」 「あ、ぐ……うぁ」 男の右手が梨花の手首を握り締める。 苦悶の表情を浮かべる梨花。 か細い腕の軋む音がウルフウッドにまで聞こえてきそうだ。 もがきながら膝や足をぶつけるが、男は微動だにせず、反作用で梨花のほうが揺れ動くだけだった。 ウルフウッドがデザートイーグルの銃口を向けるも、男はそれに合わせて梨花の位置を変え、射線を遮る。 「い……た……」 痛みに耐えかねた梨花が短剣を取り落とす。 男はそれを見届けると、梨花をウルフウッドに向けて放り投げた。 咄嗟にデザートイーグルを放し、梨花を受け止める。 梨花の手首は痛々しく赤らんでいるが、指が動いているところをみると、骨に異常はないらしい。 「ごめん、なさい……」 「気にすんな。ワイも不注意やった」 何が、梨花を護る、だ。 さっきも男がその気なら、梨花は一瞬で殺されていた。 ドアの隙間から槍で突けばそれで終わり。 羽虫を潰す程度の労力も掛からない。 「我が財をあの程度にしか使わぬとは。やはり雑種には過ぎたるものか」 ウルフウッドは梨花を支えたまま男を睨む。 いつの間にか、男が携えていた黄色い槍が消えており、代わりに件の短剣が手中に収まっていた。 「盗人には死罪が相応しい。だが、自害を望むなら待ってやろう」 男の背後で空間が波打つ。 水面に礫を投じたように広がる波紋の中心から、短槍の切っ先が姿を現した。 外見だけを見れば、槍の半身が宙に浮いているだけ。 男が何をするつもりなのか想像もつかないが、少なくとも自分達を殺そうとしているのは察しがつく。 自分一人なら問題は無いが、梨花がいる。 梨花を抱え、全力で逃げ出そう。ウルフウッドはそう決意した。 「……けるな」 小さな両手がウルフウッドを押し退ける。 静止しようと伸ばした腕も振り切って、梨花は男の前に立った。 「ふざけるな! それは最初から持たされてたのよ! そんな理不尽な理由で殺されてたまるか!」 髪を振り乱した梨花の絶叫を、男は完全に聞き流していた。 それどころか一切の興味を払っておらず、視界に収めているかも怪しかった。 「死罪? 自害? どっちも嫌! 待ってるんだから! 沙都子も! 圭一も!」 不意に―― 青天の霹靂としか言いようのないタイミングで、男の冷徹な表情が崩れた。 ウルフウッドも、肩で息をしていた梨花も、その変化に気がついて眼を丸くする。 「く――ははっ……ははは……はははははっ!」 哄笑である。 男は姿勢を崩し、湧き上がる笑いを堪えることなく吐き散らし始めた。 身を捩じらせ、髪を掻き揚げ、心の底から笑い転げる。 「そうか! 貴様もか! 下女め、よもや狙ってやったのではあるまいな!」 狂ったように笑う男の前で、梨花は唖然と立ち尽くしていた。 そのうちに、我に返ったウルフウッドが梨花を引き寄せ、かばうように後ろへ立たせる。 「なんや、いきなり……」 ウルフウッドには男がどうして笑ったのか皆目見当もつかなかった。 無論、梨花にもだろう。 やがて男は笑い終え、当然のように踵を返した。 「おい」 「12時――」 ウルフウッドの言葉を遮り、男は更に続ける。 「件の下女めは劇場に現れる」 「……それをワイらに教えてどうするつもりや」 あまりにも不自然なリークだ。 真実にしては突然過ぎ、罠にしてはあからさま過ぎる。 男は振り返り、疑いの眼差しを向けるウルフウッドを無視して、その陰に隠れる梨花を眺め見た。 「竜宮レナもそこにいる」 「――!」 それだけ言い残し、男は街灯へと飛び移り、そこから更に上の階へと跳んでいった。 梨花が慌てて手摺りから身を乗り出すも、男の姿はもうどこにも見当たらない。 ただ荒涼とした青空が広がっているだけだった。 「のぉ、レナって……」 「仲間よ……大切な」 やっぱりか、とウルフウッドは独りごちた。 梨花の慌てようを見れば、その類以外に考えられない。 どうしてあの男がそいつの行き先を知っているのかはともかく、これで男の言葉に信憑性が生まれてきた。 それと同時に、自分達の方針が決定されたも同然だった。 「12時か、急がんでも余裕で間に合うな」 梨花の目的は仲間たちとの合流なのだ。 そこに火傷顔の女が鉢合わせると聞いて、見過ごしておけるはずがないだろう。 ウルフウッドは、暗い顔で佇む梨花の頭に軽く手を置いた。 ◇ ◇ ◇ アーチャーは含み笑いを浮かべたまま、安物のソファーに腰を下ろした。 下階に現れた気配を追って、もののついでにあの女について鎌をかけてみたのだが、よもやこうも面白くなろうとは。 「えっと、アーチャー様?」 様子のおかしさに気づいた圭一が声をかけるも、アーチャーは応じない。 肘掛に頬杖を突き、先ほどの邂逅で得られた情報を吟味する。 あの雑種は、火傷顔の女には目立った傷がなかったと言っていた。 それはつまり、アーチャーが女の右腕を切り落とす以前に遭遇していたということだ。 声も聞いていないということに嘘はないだろう。 アーチャーを襲ったときも、こちらから声を掛けるまでは何も語ってこなかった。 一方的に襲われて逃げ遂せたのであれば不思議はない。 そして何よりの収穫は、雑種の片割れに、あの女が狙う一行の関係者が含まれていたことだった。 圭一の態度を見るに、互いの窮地を見過ごしてはおけない性質の集団だったのだろう。 一度遭遇しているのなら、火傷顔の女が相手も構わず噛み付く駄犬であることを知っているに違いない。 ならば引き寄せられるはずだ。 アーチャーの思惑通りに。 「……下にいたの、誰だったんですか?」 「気になるか? 二階だ、行きたければ独りで行け。面白いことになるやもしれんぞ」 圭一の複雑な表情を、アーチャーは横目で嗤った。 まずは、二頭。 女狐を追い立てる猟犬は多いほど良い。 働きが良ければ盗みの咎を赦してやってもいいだろう。 ――この下らぬ催しは確実に粉砕する。 生殺与奪の権は王一人が有するべきものだ。 そしてそれを以って、かの女には死を与えると決めた。 王の慈悲を享受するのは王の臣下とその民のみ。 圭一は今のところはそれなりに働いている。 その報奨として仲間とやらにも生存を許すのはやぶさかではない。 だが、あの女には慈悲など与えはしない。 「そうだな、レナとやらの顔を見てみるのも一興か」 火傷傷の女が貴様らを狙っており、リカも巻き込まれつつある。 そう吹き込んでやれば上手く動くに違いない。 猟犬は一頭でも多いほうがいいのだから―― 【D-4 図書館裏のマンション(2階) 1日目 昼】 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:右手首に痛み [装備]:なし [道具]:支給品一式、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム [思考・状況] 1:12時までに劇場に向かう。 2:必ず生き残る。 3:圭一達を見つける。 4:安全な場所に行きたい。 ※王の財宝の使い方(発動のさせ方)を分かっていません。(説明書もありません) ※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。 ※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。 ※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。 ※スタープラチナに適正を持っています。僅かな時間ですが時止めも可能です。 ※スタープラチナを使えないことに気付きました。落としたことには気付いてません。 ※ルフィと情報交換しました。 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】 [状態]:混乱。強い怒りと悲しみ [装備]:デザートイーグル50AE(8/8 予備弾30) [道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、○印のコイン [思考・状況] 1:12時までに劇場に向かう。 2:古手梨花を守る。 3:ヴァッシュとの合流、リヴィオとの接触。 4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。 5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー ※ルフィと情報交換しました。 ※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。 【D-4 図書館裏のマンション(4階) 1日目 昼】 【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】 [状態] 疲労(小)、頭部にたんこぶ×2、頬に痛み、右足に銃創(止血済み) [装備] デザートイーグル(残弾数2/6) [道具] 双眼鏡(支給品はすべて確認済)、不死の酒(完全版)(空)、基本支給品×2、ゾロの地図、黄金の鎧@Fate/Zero(上半身部分大破)、ヤマハV-MAX@Fate/zero [思考・状況] 基本行動方針:仲間を助けて脱出したい 1:アーチャーと共に12時までに劇場に向かう。 2:切嗣についてアーチャーには漏らさないようにする。 3:切嗣、佐山のグループと早く合流したい(切嗣のことをそれなりに信用してます) 4:万が一のときに覚悟が必要だ 5:魔法使い……? [備考] ※時系列では本編終了時点です ※アーチャーの真名を知りません。 ※クロコの名前、カナヅチという弱点を知りました。 ※橘あすかと真紅と簡単に情報交換し、 新たに彼らの仲間等(翠星石、クーガー、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ、ルフィ)と、 要注意人物(カズマ、水銀燈、バラライカ、ラッド)の情報を得ました。 また、ゾロと蒼星石が彼らの(間接的、直接的な)知人であることを知りました。 ※切嗣の推測とあすか達との情報交換から、会場のループについては把握しています。 ※バラライカの姿を確認しました。名前は知りません。 ※バラライカからレッド、グラハム、チョッパーの名前を聞きました。 【ギルガメッシュ@Fate/Zero】 [状態] 肩と腹に刺し傷(小・回復中)、不死(不完全) [装備] 王の財宝(の鍵剣)、黒のライダースーツ [道具] 必滅の黄薔薇@Fate/Zero(王の財宝内) [思考・状況] 基本行動方針:主催を滅ぼし、元の世界に帰還する。必要があれば他の参加者も殺す。 0:圭一とその仲間を脱出させる。 1:12時までに劇場に向かう。 2:他の参加者をけしかけてバラライカを殺す。可能ならレナ達も。 3:自分を楽しませ得る参加者を見定める。 4:ゾロ、佐山、クーガーに興味。梨花とウルフウッドについては当面様子見。 5:圭一が自分のクラスを知っていた事に関しては・・・? 6:宝具は見つけ次第我が物にする。天地乖離す開闢の星、天の鎖があれば特に優先する。 [備考] ※不死の酒を残らず飲み干しましたが、完全な不死は得られませんでした。 具体的には、再生能力等が全て1/3程度。また、首か心臓部に致命傷を受ければ死にます。 ※会場が自然にループしていることを把握しました。 ※悪魔の実能力者がカナヅチという弱点を知っています。 ※本編での経験から、螺湮城教本を手に入れる気にはならなかったようです。 ※クーガーには強い印象を受けていますが、橘あすかのことは忘れました。 ※文中台詞の"山猫"とはクーガーのことです。 ※圭一の仲間が劇場に向かうということを聞きました。 ※銃火器にはもう対処できます。 時系列順で読む Back Nine the code geass Next ここにいていいだろうかとは尋ねない 投下順で読む Back Nine the code geass Next 路傍の石 Back Next ジャイアントキリング(後編) ニコラス・D・ウルフウッド CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ ジャイアントキリング(後編) 古手梨花 CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ 図書館戦争 アーチャー(ギルガメッシュ) CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ 図書館戦争 前原圭一 CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~
https://w.atwiki.jp/wbmwbm/pages/65.html
XXXX年2月某日。深夜3時。 雪の吹きすさぶ北海道の山岳地帯。 2人の兵士が、猛烈なスピードで 険しい山道を駆け上がる。 山頂付近にある日本軍の基地を目指す 彼らは、世界を蹂躙する帝国軍の暗殺部隊。 殺戮のプロフェッショナルである。 月の光を受けて 銀色に輝く肉体は超合金製。 頭脳と直結した高性能CPUと ナノテクノロジーを駆使した 強力な再生能力を併せ持つ 無敵のサイボーグ兵士。 戦闘準備を控え、男達の頭脳に直接 ターゲットの情報がインプットされる。 ****************************** 「一村沙織」 日本軍陸軍少尉 19歳 女性 一子相伝の古流拳法を受け継ぐ、伝説の武術家の末裔。 5年前、帝国軍兵士に家族を抹殺されたことをきっかけに軍に志願。 入隊後、日本軍でも浸透しつつある肉体のサイボーグ化を拒み 生身で戦場に赴く。 一週間前、任務遂行中の帝国軍兵士を破壊。 ****************************** 「誤報だな。人間如きが我々を 破壊できるわけが無い。」 報告を気にも留めず、2人は進む。 山頂付近の森の中。 目的地を間近にして 2人は足を止めた。 「!!!!」 まるで待ち構えていたかのように ターゲットがそこに立っていたからだ。 漆黒のロングヘアー。 澄んだ瞳。 背筋をピンと張った優雅な物腰。 「大和撫子」という言葉がこれ以上 無い程に似合う美貌。 身にまとう薄手のボディスーツによって その美しい体のラインを 余すことなく見せつけている。 帝国軍兵士の一人。 身長2mを超える巨漢の男が 沙織を見るや否や 瞬時に姿を消す! ヒュンっ! ガシっ!! 次の瞬間、男は背後から沙織を 羽交い絞めにしていた。 ギチギチギチっ!!! 肉体を締め上げる音が響く。 「ふふふ、勝ったぞっ!!!」 白く輝く剣を持った細身の男が宣言する。 「我々暗殺部隊は全員が瞬間移動の能力を持っている。 そして、そいつは元柔道の世界チャンピオン。 100%逃げることは出来んっ!」 巨漢の男は沙織に自分の肉体を密着させ 荒い吐息を吐く。 「はあっ!はあっ!!はあっ!!!!」 「ふははははっ!そいつに後ろから 捕まれて、逃れられる者はいないっ! そして私はこの剣で、音速を超えるスピードで 人を斬る事ができるっ!」 究極のパワーと究極のスピードを持つ2人は 過去に300人以上もの暗殺を成功させてきた。 それゆえに、必勝を疑う余地などなかった。 「俺は0.001mmの誤差も無く剣筋をコントロールできる。 押さえつけられたお前だけを切ることなど造作も無いぞっ!!!」 剣を振りかざし、男が襲い掛かる!!!! 「食らええええええっ!!!!!」 目にも留まらぬ斬撃。 シュンっ!!! ドゴっ!!!!! 風を切る音が周辺に響き渡る。 「くくく・・・・たわいない。 肉体改造も受けていない ただの人間ごときが、 我々に勝てるはずが無い。 勝てるはずが・・・・な、何っ!???」 そこまで言って、男は初めて 自らの刃が、沙織の右手人差し指と中指で 白刃取りされていることに気づく。 「あ・・・あ・・・あ・・・馬鹿な。 お前は身動きが取れないはず どうしてっ?・・・うううっ!!!」 沙織を封じていたはずの巨漢の男は 口から泡を吹き、白目をむいていた。 腹には沙織の肘打ちが 深々と突き刺さっている。 「お・・・・お・・・・お・・・・」 グラっ・・・・ 巨体がよろめく。 どごおおおおんっ!! たったの一撃で、巨漢の男は その場に仰向けに倒れこんだ。 割れた腹から触手が飛び出し 肉体の修復を試みるが、時既に遅し。 慢心に溺れる中、沙織の肘を食らい 男は一撃で気を失っていた。 「う、うわあああああああっ!!!!!!!!」 細身の男が絶叫しながら姿を消す。 「き、貴様など・・・私の最速剣があれば十分だっ!!!」 しかし沙織は迷うことなく、真横に拳を打つ! 「めえんっ!!!!」 ドギャっ!!!!!! 「ごぎゃぎゃああっ!!!!!」 右頬にクリーンヒットした一撃で 男は首を180度回転させながら吹き飛ぶ。 ドゴオオオオオオン・・・。 付近の岩に激突。 「殺気が見え見えよ」 沙織は言い放つ。 「いくら人を超えたスピードを 手に入れても、心を鍛えない限り あなたが勝つことはできない。」 沙織は目をつぶり、精神を集中する。 呼吸を整え、ゆっくりと間合いをつめる。 「む、無駄だっ!俺の目は 相手の脈拍と筋肉の動きを瞬時に分析できる。 貴様の攻撃などあたら・・・・う、ううっ!?」 男は驚愕する。 沙織は間近にいるにも関わらず 一切の殺気が感じられない。 「馬鹿なっ!これは・・・無の境地!? 何故だっ!?何故真剣を目の前にして 心を無にできる!!??」 流れるような動きで瞬時に間合いをつめる沙織。 「う・・・動きが・・・読めない・・・・読めない!?? 読めないいいいいいいいっ!!!!」 オーバーヒートする頭脳。 ごきゃっ! 無駄の無い動きで顔面を突く! 「ブヒいいっッ!!!」男の面が砕け 鼻が折れ曲がる。 優雅な動作で拳を引く沙織。 「か、顔か・・・・?つ、つ、次も顔かっ!?」 男は必死に顔を剣でガードする。 しかし、今度はがら空きの腹に 強烈なボディブローが炸裂する。 「ごぎゃっ!!ゴホっゴホっ!!!」 男は泣き出しながらパニック状態となる 「ど、どっちだ・・・・どっちだあああああぁつ!!!!???・」 「セイっ!セイっ!セイっ!」 ドンっ!ドンっ!ドンっ! 間髪いれずの中段突き3連打がヒットし 男はむせかえる。 「ゲボっ!!!ゲホっおおお!げほおおっ!!オブっ・・・・」 「う、う、上かっ、下かっ!?!?! 顔かっ・・・腹かっ!???? どこだ・・・どこだああああ!!???」 周囲に悪臭が漂う。男の精神が壊れ 糞尿を垂れ流し始めたのだ。 赤ん坊のようにただ泣き叫び、剣を振り回す。 「くるな・・・くるなああああああっ!!!!!」 ズドむっ!ズドむっ!ズドんっ!! 上段、中段、下段。縦横無尽に男を貫く拳の雨。 「はひ・・・ハヒぃ・・・・ハヒいいいいっ!!!」 プシュウウウ・・・・ 処理能力の限界を超えた事態に 脳内のコンピュータが暴走を始め 体中の回路がショートする! ボンっ!!!!! やがて爆発音と共に男は発火しはじめた。 「あ、熱い・・・熱いイイイイイイイっ!た、助けてっ!! たしゅけてくれえええええええええっ!!!!!!!!!!」 全身を炎に焼かれながらも、その再生能力のために 永遠の苦しみを味わう恐怖に襲われる。 沙織は炎の塊となった相手に向かい、拳を構えた。 それは慈悲の拳。 苦痛と共に滅び行く者への せめてもの情けであった。 「せいっ!!」 ボウっ!!! 拳と炎が一体となり、男を貫きながら焼き尽くす! 「ぎぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ ああああああああああああああああああああ ああああああああああっ!!!!!!」 男の心臓部が爆発し、粉々に砕け散った。 沙織は灰と化した男へ向かい、一礼をしながら思う。 まだまだ修行が足りない。 もっともっと強くならなくては。 戦いの終わりを告げる朝日に向かって 沙織は誓いを新たにした。