約 3,693,055 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/505.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 早めの出席を旨とする生徒達がようやく集まり始めた、朝の教室。 とある四人が、彼女達にしかわからない会話を続けていた。 「ガラス玉?そんなもの作ってどうするの?」 キュルケが問う。たしかにガラスは高価だが、手に入らないほど高いというほどでもない。 「ガラス玉は基本だよ?宝石の代わりにもなるし、メリクリウスの瞳とガラス器具はいつか必要になるし…」 「それに、これを錬金術で作る事に意味があるんだから。」 ヴィオラートが、ガラス玉製造の必要性を強調する。 「ガラス玉でも、宝石の持つ魔力を代用できるの?」 ルイズが質問する。魔法の授業とは違い、そこに理不尽なハンデは存在しない。 「うん、一応効果は発動するし、品質そのものはいいものが…」 授業前の、四人が揃う最初の時間は、放課後の錬金術教室の企画立案の場となっていた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師14~ 教室の扉がガラッと開き、ミスタ・ギトーが現れる。 長い黒髪に黒いマントを纏ったその姿は不気味であり、 その不気味さと冷たい雰囲気からか、生徒達には全く人気がない。 「では授業を始める。知っての通り私の通り名は『疾風』。疾風のギトーだ。」 教室中が静寂に包まれ、ギトーは満足げに頷いて授業を続ける。 「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー。」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ。」 何かを期待するようにキュルケを見るギトー。 キュルケはその裏に気付いたが、気付かないフリをしてギトーの求める言葉を吐いてあげた。 「…『火』に決まってますわ。ミスタ・ギトー。」 キュルケはうんざりしながら、ギトーの幼稚な証明につきあうことにする。 「ほほう。どうしてそう思うね。」 「全てを燃やしつくせるのは炎と情熱。そうじゃありませんこと?」 「残念ながらそうではない。」 ギトーは腰の杖を引き抜いて、言い放つ。 「試しに、この私に君の得意な火の魔法をぶつけてみたまえ。」 「火傷じゃ済みませんわよ?」 キュルケは、目を細めて言った。 「かまわん、本気で来たまえ。その有名なツェルプストーの赤毛が飾りでないのならね」 キュルケは杖を振り、小さな火の玉を生み出す。 その玉を一メイルほどに成長させると、適当にギトーへ向けて押し出した。 ギトーはその火の玉を避ける動作もせずに、杖を横薙ぎになぎ払う。 烈風が巻き起こり、火の玉をかき消し、その向こうにいたキュルケを吹っ飛ばした。 悠然として、ギトーは言い放った。 「諸君。風が最強たる所以を教えよう。風は全てをなぎ払う。」 キュルケが気だるげに起き上がり、両手を広げた。気にすることもなく、ギトーは続ける。 「不可視の風は、諸君らを守る盾となり、敵を吹き飛ばす矛となるだろう。」 「そしてもう一つ、風が最強たる所以…」 ギトーは杖を立てた。 「ユビキタス・デル・ウィンデ…」 低く、呪文を詠唱する。 しかしその時、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のコルベールが現れた。 「ミスタ?」 ギトーは眉をひそめた。 コルベールは妙にめかしこんでいたのだ。 頭に金髪ロールのカツラをのせ、ローブの胸にはレースの飾り。 ご丁寧に靴まで趣味の悪い金箔で飾り立てていらっしゃるようで。 「あやや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!」 「授業中です」 「おっほん!今日の授業は全て中止であります!」 コルベールは重々しい調子で告げた。教室から上がる歓声に、コルベールが手を振って答えたまさにその時。 金髪のカツラが「しゅるっ」という軽妙な音を立てて滑り落ちた。 教室中の生徒が、コルベールから目をそらして必死に笑いをこらえる。 一番前に座ったタバサが、コルベールの禿頭を指差してぽつりと呟いた。 「滑落注意」 教室が爆笑に包まれた。 コルベールは顔を真っ赤にして怒鳴った。 「黙りなさい!ええい、黙りなさいこわっぱどもが!」 とりあえずその剣幕に、教室中がおとなしくなった。 「えーおほん、本日は恐れ多くもアンリエッタ姫殿下が、この魔法学院にご行幸なされます」 教室がざわめきに包まれる。 「そのために本日の授業は中止。正装し、門に整列する事。」 生徒達は、緊張した面持ちで一斉に頷く。 コルベールはたっぷりと生徒達を見渡してからようやく満足し、重々しげに首を縦に振った。 整列した生徒達は杖を掲げ、しゃん!と小気味良い音を響かせる。 魔法学院の正門をくぐって、王女様ご一行が姿をあらわした。 馬車が止まり、玄関と馬車の間に非毛氈のじゅうたんの道が作られる。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーりーー!」 そのように告げられたのだが、しかし、最初に姿を現したのは四十過ぎの痩せこけた男であった。 がっかりである。 生徒達の落胆を見て取った男は、意に介した風も無く馬車の横に立ち、続いて降りてくる王女の手を取る。 生徒達の間に歓声が沸き起こった。 「あれがトリステインの王女?ふん、あたし達とそう変わらないんじゃない?」 キュルケがつまらなそうに呟く。 「そ、そうかな?綺麗な人だと思うけど…」 問われたヴィオラートはそう答え、何気なくルイズに視線を送るが… ルイズは顔を赤らめ、惚けたように何かを見つめている。 その視線の先には、羽帽子を被り鷲の頭と獅子の胴を持つ幻獣に跨った、りりしい貴族の姿があった。 脇を見ると、キュルケもいつの間にか赤い顔で羽帽子の貴族を見つめている。 そんなにいいのかなあ、と思いつつ、ヴィオラートはその貴族をじっくりと観察してみる。 ヴィオラートはその貴族に違和感を感じた。何かと似ているのに違う、本物とそれを装っているものの違い。 何が本物でなにが装っている…偽者なのか。具体的な言葉が、なかなか思い浮かばない。 その貴族が通り過ぎ、従者の列も通り過ぎ、生徒達も散会し始めた後になってようやっと思い至る。 (どこがというわけじゃなくて、全体的に…ロードフリードさんと雰囲気が似てるんだ。) 礼儀正しい振る舞い、隙のない動作、そしていつも浮かべる微笑。 (似ているけど違う。それも何か、致命的な違い…) ヴィオラートは、穴の開くほど観察したその微笑を何回も思い出して、手がかりをつかもうと考えた。 ルイズを見たときの微笑、アンリエッタを見たときの微笑、学院に向けた微笑… そして、ルイズがわずかにその貴族から視線を外し、アンリエッタを見た瞬間の彼の表情にたどりつく。 特別に、違和感を持って観察して見なければわからないような刹那。ルイズに向けられた酷薄な眼差し。 彼は何かを装っている。もしかしたら、全てを。 ヴィオラートは一抹の不安を抱えながら、人気の消えた玄関先をあとにした。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anime_impression/pages/228.html
こどものじかん やすみじかん「~あなたがわたしにくれたもの~」レビュー (ジャンル:どたばた) 全1話 監督:菅沼栄治 アニメーション制作:スタジオバルセロナ 評価 ストーリー キャラクター 声優 映像・作画 2点 2点 12点 14点 合計30/100点 感想 ちょっとエッチな小学生の日常? エロ部分は間接的なものばかりなのでイマイチ。 それと幼い子供という設定のはずなのに、精神レベルが高すぎです。 やっている事は子供っぽい事もありますが、最低でも中学生だと思います。 エロがあるから良いやと思えるくらいやってくれるなら別に良いけど、 そういう訳でも無いので、小学生らしさをもっと出すべきだと思います。 キャラの描きが足りません。 1話しかないとはいえ、表面的な事が少し分かる程度。 登場の仕方から工夫をして、キャラを表現すべきだと思います。 声優の演技も子供らしさを出そうという気が感じられず、下手です。 作画はそこそこですが、キャラデザインでも子供っぽさが足りてないと思います。 こどものじかん レビュー (ジャンル:ロリ) TV放送版のみ視聴。 DVD版は、多分規制が無いので、多少印象が変わると思います。 全12話 監督:菅沼栄治 アニメーション制作:スタジオバルセロナ 評価 ストーリー キャラクター 声優 映像・作画 2点 2点 12点 13点 合計29/100点 感想 なぜ小学生でなければならないのか。まずそれが分からない。 普通なら小学生の子に恋愛感情は抱きませんし、そういう感情も表現するなら最低でも中学生でしょう。 (リンがそういう感情を抱くのは別に良い。) シリアスな作品では葛藤であったり、対立関係にある人間が居なくては駄目だと思います。 この作品で言えば、青木先生とリン含む子供達の関係だと思っていましたが、 (そちらの面は問題無く解決してしまいます。この部分だけで1クールでも足らないんじゃ?) レイジというリンの親戚のキャラを、無理矢理対立関係にする訳です。 レイジが単なる異常者にしか見えませんでした。 悪い奴が大量殺人をするようなお話ならば、勧善懲悪でも構わないと思いますが、 こういう作品ではレイジの気持ちにも、ある程度は納得できる必要があると思います。 何故、レイジに共感できないのかというと、 レイジに関する描写なんてこれっぽちも無かったからです。 「ロリコンである。」という程度。ゲームのラスボスじゃないんだから。 間にちょくちょくレイジの過去の回想が出てきましたが、アレだけじゃ同情のしようがない。 取ってつけたように、恋愛方面ではリンと対立関係にある宝院先生が居ます。 この人は青木の興味をひこうと努力している描写はありますが、オマケ程度。 それ以外の部分では喋ることもなく、喋ったとしてもベテラン教師が居て必要がない。 リンに嫉妬させる描写を作る為だけに居るというのは、どうなんでしょうか。 この作品を見てると、どたばたコメディーじゃないんだから。と思ってしまいます。 リンの気持ち、レイジの気持ちは、正直愛という言葉では表現は出来ませんね。自己中心的すぎます。 それが言いたい事か?とも思いますが、どうなんでしょうね。 声優の演技は、小学校中学年というのを本当に意識しているんでしょうか? あのビジュアルの小学生を演じれる人は、今も昔も居ないと思います。残念ですが。 ただでさえ、小学生以下の演技できる人が少ないのに。 作画は、そこそこです。 ただ、キャラの表情が少々キツめ。 もうちょっと柔らかくしたほうが良いと思います。 顔のアップだけだと小学生には絶対見えません。最低でも中学生。 全身が描かれていても身長が低いという理由だけですし。 また、映像を見ているだけでは少々表現不足だと思います。 規制ばかりで画面が何も映らないのは、もはや論外。(時には会話の内容も全く分からない。) OVAで出すか、ラジオドラマでやってればいい。 「こどものじかん」アニメ公式サイト
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/945.html
前ページ次ページゼロのアトリエ トリステインの王宮は、物々しい雰囲気に包まれていた。 隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻してくる、 という噂がまことしやかに流れていたからだ。 よって王宮の上空は幻獣、船を問わず飛行禁止令が出され、衛士隊の警戒は最高潮であった。 そんな時だったから、王宮の上に一体の風竜が現れた時、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。 当直のマンティコア隊衛士が一斉に飛び上がり、警告を発する。 しかし、風竜はその警告を無視して中庭に降り立ち、 さらに風竜の影から板、そしてホウキに乗ったメイジが姿を現した。 風竜に乗っているのは金髪の少年と燃えるような赤毛の女、そしてメガネをかけた小さな女の子。 ホウキに乗っていたのは桃色の髪の美少女であり、 少し気まずそうに板を小脇に抱えているのは茶色の髪をした妙齢の女性。 ラ・ロシェールから直接王宮に向かった、ヴィオラートたちご一行であった。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師25~ マンティコアに跨った隊員たちが、5人を取り囲んだ。 腰からレイピアのような形状をした杖を引き抜き、一斉に掲げる。 いつでも呪文が詠唱できるような姿勢をとると、髭面の隊長が大声で怪しい侵入者達に命令した。 「杖を捨てろ!」 一瞬、侵入者達はむっとした表情を浮かべたが、青い髪の小柄な少女が首を振って言う。 「宮廷」 一向は仕方なくといった面持ちでその言葉に頷き、命令されたとおりに杖を地面に捨てる。 「今現在、王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」 その問いに、ホウキを持った桃色の髪の少女が進み出て、毅然とした声で名乗りをあげた。 「私はラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。姫殿下にお取次ぎ願いたいわ」 隊長は口ひげをひねって少女を見た。ラ・ヴァリエール公爵夫妻なら知っている。高名な貴族だ。 「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」 「いかにも」 ルイズは、胸を張って隊長の目を真っ直ぐに見据える。 「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、用件を伺おうか」 「それは言えません。密命なのです」 「では取り次ぐわけにはゆかぬ。用件もなしに取り次いではこちらの首が飛ぶ」 困った声で、隊長が言う。 ルイズも困って、思わずヴィオラートのほうに視線を泳がす。 ヴィオラートは少し考えて、良さそうな回答をひねり出した。 「ルイズちゃん、『水のルビー』があるじゃない」 「あ、そうね」 ルイズは懐を探り、預かりものの『水のルビー』を取り出す。 「姫殿下より、身の証にとお預かりした『水のルビー』です」 そう言って水のルビーを指に嵌め、輝きを見せ付けた。 沈黙して水のルビーを見つめる衛士たちに、 ようやく納得してもらえたかと一息ついたヴィオラートたちだったが、事態は予想外の展開を見せる。 「…失礼かと思いますが、我々の中にその真贋を見分けられる者がおりませぬ」 そう言った隊長の言葉に、とぼけた顔で頷きあう隊員たち。 ルイズ達は思わずあっけに取られ、ヴィオラートの笑顔が笑顔のまま、動きを止める。 「…真贋の見分けがつかないなら、とりあえず『ルイズ・フランソワーズが来た』と伝えて頂ければ…」 「そのような連絡は受けておりませんし、曖昧な用件で取り次ぐわけにはまいりません」 隊長に直接提案したヴィオラートに、衛士たちが一斉に警戒の視線を向ける。 そして隊長はヴィオラートをあえて避け、ルイズに言い放った。 「素性のわからないお連れがいらっしゃるなら、尚更です」 ヴィオラートの笑顔が、『敵意のないことを表現する』微笑へと進化を遂げた。 それを見たルイズはヴィオラート本人以上に焦り、言わなくて良い事を口に出してしまう。 「わ、ワルドの裏切りについて、至急報告しないといけないの!だから、はやく姫殿下にお取次ぎを…」 その言葉を聞いて、隊長は目を丸くした。 ワルド?ワルドというのは、あのグリフォン隊のワルド子爵のことだろうか? そのワルドが、裏切り?どういう意味だ? 隊長は、ワルドとルイズたちを天秤にかけ…隊長なりに、結論を下す。 同じ場所で働き、知己もあったワルドと、実際に会うのは初めてのルイズ。 隊長がその決断、間違った決断を下したのも、まさに当然と言ったところであったのだろう。 「貴様ら何者だ?とにかく、殿下に取り次ぐわけにはいかぬ」 隊長は杖を構えなおし、硬い調子で言った。話がややこしくなりそうだった。 「あの、あたしたちは杖を捨てたわけですし、お姫様もそんな少しの手間を惜しむような人じゃ…」 最後まで和解の道を探ろうとするヴィオラートの言葉に、しかし隊長は目配せを交わす。 一行を取り囲んだ魔法衛士隊が、再び杖を構えた。 「連中を捕縛せよ!」 隊長の命令で、隊員たちが一斉に呪文を唱え始める。 「ヴィ…ヴィオラート?」 「大丈夫…お城は、傷つけないから」 不安げなルイズの視線にヴィオラートが素早く答え、バッグから…青く冷たく光る何かを取り出そうとした時。 「お待ちなさい」 けして大きくはなく、しかし良く通る声が中庭を通り抜ける。 ルイズの帰りを今か今かと待ちわびる、アンリエッタその人であった。 キュルケとタバサ、そしてギーシュを謁見待合室に残し、 アンリエッタはヴィオラートとルイズを自分の部屋に入れた。 小さいながらも精巧なレリーフがかたどられた椅子に座り、アンリエッタは机にひじをつく。 ルイズは、アンリエッタに事の次第を報告した。 道中、キュルケたちが合流した事。 フーケに襲われた事。 アルビオンに向かう船に乗ったら、空賊に遭遇した事。 その空賊が、ウェールズ皇太子だった事。 ウェールズ皇太子に亡命を勧めたが、断られた事。 そして…ワルドと結婚式を挙げるために、脱出船に乗らなかった事。 結婚式の直前、ヴィオラートがワルドの裏切りを暴き、追い払った事。 しかし、無事手紙は取り返してきた。ゲルマニアとの同盟は、守られたのだ… そこまで聞いたアンリエッタは、深い悲しみを滲ませて、思わず呟きを漏らす。 「あの子爵が…まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて…」 姫はすっと立ち上がり、ヴィオラートの手をとって…泣いた。 「本当に…本当にありがとうございます、ヴィオラートさん。貴女は裏切り者を使者に選んだわたくしを、 この愚かなわたくしを、ウェールズ様の殺害という罪から救ってくださいました…」 はらはらと涙を落とすアンリエッタに、ヴィオラートは首を振る。 「王子様は…元から死ぬつもりでした。もう、今頃は…」 「それでも…それでも、何回感謝してもし足りるという事がありません…」 しばし、王女のすすり泣く声だけが部屋に響く。 熱い湯が冷水になるほどの時間が経ち、ようやくアンリエッタは落ち着きを取り戻した。 「皇太子は…ウェールズ様は、何と仰っていましたか?」 ヴィオラートは一字一句違えることなく、淀みなくウェールズからの伝言を伝える。 「ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれと」 寂しそうに、アンリエッタは微笑んだ。薔薇のように綺麗な王女がそうしていると、 空気まで沈鬱に沈むようだった。ルイズは哀しくなった。 「…姫様、これ、お返しします。」 ルイズはポケットから、いったんしまった水のルビーを取り出す。 「それは貴女が持っていなさいな。せめてものお礼です」 「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」 「…ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタは哀しそうに、小さな声を絞り出して言葉を放つ。 「それは、ウェールズ殿下との約束の証なのです」 ルイズはもう、それ以上何も言えなかったので。 だから無言で、貰った水のルビーを、ポケットに戻した。 王宮から魔法学院に向かう空の上、ルイズは黙りっぱなしだった。 キュルケが何やかや話しかけてきたが、ヴィオラートも喋らない。 「なあに、教えてくれないの?あの子爵が裏切り者とか、わけわかんないじゃない?」 そう言って、ヴィオラートに気だるい視線を送る。 「でも、ヴィオラートがやっつけたのよね?」 「うん。でも、逃げられたし…」 「それでも凄いわ!ねえ、一体どんな任務だったの?」 「うーん…」 ヴィオラートはにんじんを頭に当てて考える。ルイズが黙っている以上、話すわけにはいかない。 その様子を見たキュルケは、つまらなそうに嘆息し、挑発した。 「ルイズ、ゼロのルイズ!なんであたしには教えてくれないの!ねえタバサ、バカにされてると思わない?」 キュルケは、本を読んでいるタバサを揺さぶった。タバサの首が、がくがくと揺れる。 ルイズはそれを見て、ようやく求める答えを少しキュルケたちに与えた。 「…大体予想はついてるんでしょ?」 それだけで、キュルケと…タバサは大方の事情を悟る。 「まあ予想はつくけど。じゃあやっぱりその手紙ってのは、アレね」 「うん、そのアレかな」 ヴィオラートの肯定に満足したキュルケは、「そっか」と呟いただけで、静かになった。 その静寂に取り残されたギーシュは、急に静かになった女性陣をきょろきょろ見渡した後、 今がチャンスとばかりに自らの疑問を口に出す。 「その…ミス・プラターネ?」 あらたまった口調で…とりあえず、一番話しやすそうなヴィオラートに問いかける。 「姫殿下は、その、何か僕のことを噂しなかったかね?」 ヴィオラートはちょっとギーシュがかわいそうになった。 今の暗黙の了解を一人だけ理解できていないというのもそうだが、 アンリエッタはギーシュの『ギ』の字も話題に上らせなかったからだ。 「頼もしいとか、やるではないですかとか、追って恩賞の沙汰があるとか…」 「ギーシュくんは、頑張ったよね」 それだけ答えると、ヴィオラートはいつもの笑顔に戻って、黙り込んだ。 「その、何か噂しなかったかね?」 「…」 「その、姫殿下は、ぼくのことをなんと評価してたかね?」 ヴィオラートは笑顔のままわずかに首を傾げ、答礼を返す。 「もしかして密会の約束をことづかってある、とか…」 今度は逆側に、首を傾げた。 ぽかぽかと太陽が照らす中、二人のやりとりは魔法学院にたどりつくまで続いたという。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1038.html
前ページ次ページゼロのアトリエ あっさり片付くと思われていたニューカッスルの攻城戦は、 レコン・キスタに想像の範囲を超える損害を与えつつ、丸々一日を要してようやく終結を迎えた。 三百の王軍に対して、損害は三千。怪我人も合わせれば六千。 戦死傷者の数だけ見れば、どちらが勝ったのかわからないぐらいである。 サウスゴータの森の中、ウエストウッドと呼ばれる村の中で。 ティファニアたちが、出入りの商人の語る『最新情勢』に耳を傾けていた。 「そうかい。戦争はとりあえず…終わったのかい」 『マチルダ姉さん』はいつも通り宝石と金貨の詰まった袋を手渡し、 「ご苦労だったね」と、ねぎらいの言葉をかける。 商人はしきりに恐縮して、太守様には並々ならぬご恩を頂戴し…と、いつもの感謝を繰り返し、 頭を下げ下げ馬車に乗って、帰って行った。 秘密を守りつつティファニアを援助するのに最適なあの商人がいたことはおそらく、幸運なのであろう。 そんなことを考えていたフーケは、馬車の後を追うようにゆっくりと歩き始める。 「マチルダ姉さん?」 「戦争が終わったってならまあ、戻ってやるかと思ってね」 問うティファニアに答えると、空を仰ぎ、 「せいぜいゆっくり戻るとするさ」 それだけ言って、フーケは村を後にした。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師26~ 戦が終った二日後。かつては名城とうたわれたニューカッスルの城は、無残な姿を晒すこととなった。 城壁は度重なる砲撃と魔法攻撃で瓦礫の山となり、無残に焼け焦げた死体がそこかしこに転がっている。 照りつける太陽の下、長身の貴族が死体を検分しているようだ。 羽のついた帽子に、トリステインの魔法衛士隊の制服。ワルドである。 その隣には、フードを目深に被った土くれのフーケがいた。 『レコン・キスタ』の兵士達は、戦勝祝いの勢いのままに財宝漁りにいそしんでいる。 宝物庫のあたりでは金貨を見つけた兵士達が歓声を上げ、 中庭のあたりでは傭兵団が死体から装飾品や武器を奪い取り、大声ではしゃいでいるようだ。 フーケはその様子を苦々しげに見つめ、思わず軽蔑をあらわにする。 そんなフーケの表情に気付き、ワルドは薄い笑いを浮かべた。 「どうした土くれよ。貴様もあの連中のように、財宝を漁らんのか?」 「私とあんな連中を一緒にしないで欲しいわ。目の色変えてお宝を詰め込むなんて、趣味じゃないもの」 「盗賊には盗賊の美学があるということか」 ワルドは笑った。 「私がここで狙うとしたら…そうね」 フーケは、ちらっと王軍のメイジの死体を眺めて言う。 「ウェールズ皇太子の、風のルビー…だけど、見当たらないわね」 その言葉にワルドは呪文を詠唱し、杖を振って答える。小型の竜巻が、礼拝堂の瓦礫を吹き上げて――― ウェールズの亡骸が、姿を現した。その指にはアルビオン王家の宝たる『風のルビー』が燦然と輝く。 「あらら。懐かしのウェールズさまじゃない」 フーケは思わずそう呟いて、『風のルビー』を手に取る。 「いいのかい?」 ワルドにそう問うたが、ワルド自身は別の何かを探すのに夢中で、フーケの方を向こうとすらしない。 (こいつは本当に…ま、その方が都合がいいけどね) ワルドの他人をかえりみない自己中心的な行動、視野狭窄に感謝しつつ、フーケは風のルビーを懐にしまいこむ。 遠くから、そんな二人に声がかけられた。 快活な、澄んだ声だった。 「子爵、ワルド君!ウェールズの死体は見つかったかね?」 ワルドは頷き、たった今姿を現した亡骸を指差す。 「おお、やはり止めを刺したのは君だったか!一時はどうなる事かと思ったが、 やはり魔法衛士隊隊長の名は伊達ではなかったということだな!」 やってきた男は、年のころは三十代半ば。 球帽をかぶり、緑色のローブとマントを身につけている。 一見すると聖職者のような格好に見えるが、物腰は軽く、軍人のようでもあった。 高い鷲鼻に、理知的な色をたたえた碧眼。帽子のすそから、カールした金髪が覗いている。 「ですが、陛下が欲しがっておられた手紙は入手できず、王子を名誉の戦死という形で死なせる事になり、 私自身も奸計に嵌められて逃げ帰る始末…私は陛下のご期待に沿う事ができませんでした。」 「何を言うか、子爵!君は杖をもってその汚名を見事にすすいで見せたのだよ!なに、気にする事はない。 今回はウェールズが死にさえすればそれでいいのだ。理想は着実に一歩ずつ進むことにより達成される」 そこまで言うと、緑のローブの男はフーケの方を向いた。 「ときに子爵、そこの綺麗な女性を余に紹介してくれたまえ」 フーケは、男を見つめた。ワルドが頭を下げているところを見ると、ずいぶんと偉いさんなのだろう。 だがしかし、気に入らない。妙なオーラを放っている。禍々しい雰囲気が、ローブの隙間から漂ってくる。 ワルドが立ち上がり、男にフーケを紹介した。 「彼女が、かつてトリステインの貴族たちを震え上がらせた土くれのフーケにございます、陛下」 「おお!噂はかねがね存じておるよ!お会いできて光栄だ、ミス・サウスゴータ」 かつて捨てた貴族の名を口にされ、フーケは微笑んだ。 「ワルドに、私のその名前を教えたのはあなたなのね?」 「そうとも。余はアルビオンの貴族のことなら何でも知っておる。司教時代に学んだことだ」 その男は、実に『快活』な笑顔を作りながら挨拶をする。 「レコン・キスタ総司令官を勤めさせていただいておる、オリヴァー・クロムウェルだ。 貴族会議の厳正なる投票の結果、聖職者でありながらこのような重責を担う事になった。 微力の行使のために、『余』などという不遜な言葉を使うことを許してくれたまえよ?」 「陛下は既にただの総司令官ではありません、今ではアルビオンの…」 「皇帝だ、子爵」 クロムウェルは笑った。しかし、目の色は変わらない。 「確かにトリステインとゲルマニアの同盟阻止は余の願うところだ。 しかし、我々にはもっと大切なものがある。何だかわかるかね?子爵」 「陛下の深い考えは、凡人の私には量りかねます」 クロムウェルはその言葉を合図として、かっと目を見開いた。 それから両手を振り上げて、大げさな身振りで演説を始める。 「『結束』だ!鉄の『結束』だ!ハルケギニアは我々、選ばれた貴族たちによって結束し、 聖地を忌まわしきエルフどもから取り返す!それが始祖ブリミルにより余に与えられし使命なのだ! 『結束』には、何より信用が大切だ。だから余は子爵、君を信用する。些細な失敗を責めはしない」 ワルドは深々と頭を下げた。 「その偉大なる使命のために、始祖ブリミルは余に力を授けたのだ」 フーケの眉が、ぴくんと跳ねた。力?一体どんな力だというのだろうか? 「『陛下』、始祖が『陛下』にお与えになった力とは何でございましょう?よければお聞かせ願えませんこと?」 自分の演説に酔うような口調で、クロムウェルは続けた。 「魔法の四大系統はご存知かね?ミス・サウスゴータ」 フーケは頷いた。そんなことは子供でも知っている。火、風、水、土の四つである。 「だが…魔法にはもう一つの系統が存在する。始祖ブリミルが用いし、零番目の系統だ」 「零番目の系統…虚無?」 フーケは蒼ざめた。今は失われた系統だ。どんな魔法だったのかすら、伝説の闇の向こうに消えている。 この男はその零番目の系統を知っていると言うのだろうか? 「ワルド君、ウェールズ皇太子を余の友人に加えようと思うのだが…異存はあるかね?」 クロムウェルはウェールズの死体を指差して、ワルドに問うた。ワルドは首を振る。 「陛下の決定に異論が挟めようはずもございません」 クロムウェルはにやにやしながら、フーケに宣言した。 「では、ミス・サウスゴータ。貴女に『虚無』の系統をお見せしよう」 フーケは、息をのんでクロムウェルの挙動を見る。 クロムウェルは腰にさした小さい杖を引き抜いた。 低い、小さな詠唱がクロムウェルの口から漏れる。 フーケがかつて聞いたことのない言葉であった。 詠唱が完成すると、クロムウェルは優しくクロムウェルの死体に杖を振り下ろす。 すると…何ということであろう。冷たい躯であったウェールズの瞳がぱちりと開いた。 ウェールズはゆっくりと身を起こし、青白かった顔が、みるみるうちに生前の面影を取り戻してゆく。 まるで萎れた花が水を吸うように、ウェールズの体に生気がみなぎる。 「おはよう、王子」 クロムウェルが呟く。 蘇ったウェールズは、クロムウェルに微笑み返し、 「久しぶりだね、大司教」 「失礼ながら、今では皇帝なのだ。親愛なる皇太子閣下」 「そうだった。これは失礼した、陛下」 ウェールズは膝をついて、臣下の礼をとった。 「君を余の親衛隊に加えようと思うのだが、ウェールズ君」 「喜んで」 「なら、友人達に引き合わせてあげよう」 クロムウェルが歩き出し、その後ろを、ウェールズが生前と変わらぬ仕草で歩いてゆく。 フーケは呆然として、その様子を見つめていた。 (まずい) フーケの懐にある『風のルビー』は、ウェールズの死体から頂戴したものだ。 普通の死体はそのまま死んでいるので問題ないが、その死体が生き返ったとしたら… フーケは歯噛みして、いつでも逃げられるように周囲に警戒をめぐらす。 ふと、クロムウェルは思い出したように立ち止まり、振り向いて言った。 「ワルド君、同盟は結ばれてもかまわない。この程度なら余の計画に変更はない」 「…?」 てっきり問い詰められると思ったフーケは、拍子抜けして警戒を解く。 ワルドは会釈した。 「とりあえずトリステインとゲルマニアには暖かいパンをくれてやろう」 「御意」 「トリステインは、なんとしても余の版図に加えねばならぬ。あの王室には、 『始祖のオルゴール』が眠っておるからな。聖地におもむく際には必要となるだろう」 そういって満足げに頷くと、クロムウェルは去っていった。 「あれが…虚無?」 クロムウェルとウェールズが視界の外に去った後、フーケはやっとの思いで口を開いた。 ワルドが答える。 「虚無は生命を操る系統…陛下が言うにはそう言うことらしい。 俺にも信じられんが、目の当たりにすると信じざるをえんな」 その後もワルドは何か言葉を連ねていたようだが、 フーケの心中はそれ所ではなかったので、適当に聞き流しておいた。 クロムウェルに、あからさまな疑念の種を見つけてしまったのだ。 風のルビーの話を持ち出してこなかったウェールズ。単に気づいていないだけという可能性はあるが、 最期まで後生大事に身につけていた王家の秘宝をそう簡単に忘れるものだろうか? あれは本当にウェールズその人なのか? そして、見覚えのある…正確には似たようなものを見たことがある『魔法の指輪』も気になる。 そう、クロムウェルのしていた指輪は、どこがというわけではないが全体的なデザインが、 ティファニアが母からもらったという『先住の魔法』が込められた指輪に似通っていたのだ。 あれは虚無ではなく、おそらく何らかの『先住の魔法』が込められたマジックアイテムなのだろう。 (引き際を考える時かもしれないね) クロムウェルが嘘をついたのか、あるいはクロムウェルも騙されているのか。 どっちみち、あんな奴に冠を被せたこの『レコン・キスタ』という組織に先はなさそうだ。 とりあえず次の戦争あたりに参加して、そのどさくさに紛れてまた消えるとしよう。 今度は多分永遠に…そう長くはない、レコン・キスタの瓦解する日まで。 そして、この『風のルビー』を、おそらくはこの世に残った最後の所有者に託す。 最も蔑まれ、最も王座から遠かった者が最期の継承者となり、 アルビオン王家は風のルビーと共に静かにその幕を下ろす。悪くない。 とるべき道は決まった。あとは時を待つだけ。 「…いると、俺は思うのだよ」 考えをまとめたフーケの傍らでは、ワルドの語りがクライマックスを迎えていた。 ヴィオラートたちが魔法学院に帰還してから三日後に、 正式にトリステイン王女アンリエッタと帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世との婚姻が発表された。 ゲルマニアの首府ヴィンドボナで軍事同盟の締結式が行われ、 トリステインからは宰相のマザリーニ枢機卿が出席し、条約文に署名した。 アルビオンの新政府樹立の公布が行われたのは、同盟締結式の翌日。両国の間には緊張が走ったが、 アルビオン帝国初代皇帝クロムウェルはすぐに特使を派遣し、不可侵条約の締結を打診して来た。 両国は協議の結果、これを受けることになる。 両国の空軍力をあわせてもアルビオンの艦隊には対抗しきれない両国にとって、 この申し出は願ったり叶ったりであったからだ。 そして…ハルケギニアに表面上は平和が訪れた。 政治家達には夜も眠れぬ日々が続いたが、普通の貴族や平民には日常が戻ったのだ。 それは、トリステインの魔法学院でも例外ではなかった。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/372.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 心配そうに二人を見守るヴェルダンデ。 そこから正三角形を描くように対峙するギーシュと、ヴィオラート。 ルイズがヴェルダンデの鳴き声に気付いた時には、既に周りを生徒達が取り囲んでいた。 「ヴィオラート!」 ルイズの声に反応し、人垣が通路を作る。 「何で、あんた決闘なんか…ギーシュも、女の子と決闘なんて何考えてんの!?」 「ミス・ヴァリエール。男には絶対に引けない時ってものがあるのさ。」 「ルイズちゃん…ごめんね。あたし、努力しないで後悔するのは嫌だから。」 二人はそれだけ答えると、ルイズの到着を合図にしていたかのように動き始める。 「ああもう! 使い魔のくせに、ちっとも私の思うとおりに動かないんだから!」 ルイズは、諦めの言葉を吐いた。 ヴィオラートなら何とかするだろう、そう思ったから。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師7~ 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 創り出した『ワルキューレ』の後方で、自信満々に宣言するギーシュ。 だが、ヴィオラートの反応はギーシュの、いや集まったギャラリー全員にとって予想外のものだった。 「かわいいゴーレムだね。」 「なっ…!! このうえ、僕のワルキューレを愚弄するか!」 かわいいゴーレムと言い放ったヴィオラートの言葉に、周囲の空気が変わる。 数々の石人ゴーレムや、鉄人ゴーレム…金剛ゴーレムまで屠ってきたヴィオラートにしてみれば、実に自然な、むしろ好意的な評価であったのだが…ギーシュ達が、その事実を知るよしもない。 「かわいそうだが、痛い目にあわないと理解できない性分のようだね。」 ヴィオラートに向けてそう言い放つと、ギーシュはワルキューレを突進させる。 「あたしは、錬金術師だから。」 ヴィオラートはバッグからトゲだらけの何かを取り出し、ワルキューレに狙いを定める。 「錬金術師の戦いを、見せてあげるね。」 ヴィオラートの額のルーンが、輝きを放ち始めていた。 所変わって、ここは学院長室。コルベールの長い長い説明が、ようやく山場を迎えたようだ。 「つまり、あの使い魔は、始祖ブリミルの…何じゃったかな?」 「『ミョズニトニルン』です! このルーンはミョズニトニルンの証に他なりません!」 コルベールは、禿頭に光る汗を拭きながらまくし立てた。 「ふむ、確かにルーンは同じじゃ。しかし、それだけで決め付けるのも早計かもしれん。」 「それは…そうですが。」 コルベールもようやくオスマンとの温度差を感じたのか、学院長室に微妙な空気が流れる。 ちょうどその時、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン。」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「ヴェストリの広場で、決闘している生徒がいるようです。」 「全く、暇な貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。で、誰が暴れておるんだね。」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あのバカ息子か。親に似て女好きな奴じゃ、どうせ女の取り合いじゃろ。相手は誰じゃ?」 「それが、メイジではなく…ミス・ヴァリエールの使い魔だという話で…」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師達は、決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可を求めています。」 オスマン氏の目が、鷹の様に鋭く光った。 「ふん、子供のけんかじゃ。放っておけと伝えよ。」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 「オールド・オスマン。」 「うむ。」 オスマン氏が杖を振ると、壁の鏡にヴェストリ広場の様子が映し出された。 ヴィオラートは驚いていた。ウニを持った瞬間、ウニの成分・能力・産地までもが手に取るように判った。 そしてまるで、ウニが体の一部、手の延長にでもなったかのような一体感。 「うにー!!」 ヴィオラートの叫びが、ヴェストリの広場に響き渡った。 (栗だ) (栗だよな) (くり。) (それは栗だ) (どう見ても栗だ) (どちらかといえば栗だな) その瞬間、ギャラリーの心が一つになる。 ウニと名づけられた何かが、迫るワルキューレに接触したその瞬間――― ウニは、ワルキューレを巻き込んで大爆発し、ワルキューレごと粉みじんになった。 (ウニって、こんなに強かったっけ…) ヴィオラートは、額のルーンに関係あるのかな? と、ほんの少し考えを巡らせた。 「ば、爆弾!? どこからそんなものを手に入れ…いや、決闘に爆弾を使うなど、卑怯…」 ギーシュの発言は、そこで止まった。ヴィオラートがほんの少し、真剣な顔に変わったから。 「言ったでしょ?あたしは錬金術師。これはあたしが自分のために、自分の力で用意したんだよ?」 ヴィオラートが一歩前に出る。ギーシュが一歩下がる。 「ギーシュくんも、冷静になって、ちゃんとお話できれば、誤解だってわかると思うんだけどなあ。」 ヴィオラートは歩を止め、あくまでも穏やかな笑顔でギーシュに語りかける。努力のあとは認められるが、意識して穏やかな笑顔を作っているというのがまるわかりな、威圧感たっぷりの笑顔で。 「ね? お話を聞いて?」 「く、来るな!」 ギーシュは慌てて薔薇を振る。花びらが舞い、新たなゴーレムが六体あらわれる。 「どうして、わかってくれないのかな…」 ヴィオラートは哀しげにそう呟き、バッグの中から渦巻状のハーモニカを取り出す。 「あんまりはりきりすぎると、こうなるんだよ…ギーシュくん。」 額のルーンが輝きを増し、渦巻状のハーモニカが不思議な旋律を奏でる。 「あ…れ…? こんな、ちかりゃが、はいらにゃ…」 まるで心そのものを削られたかのように、ギーシュは脱力し、地面に倒れ伏す。 広場に、歓声が轟いた。 オスマン氏とコルベールは、遠見の鏡で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 「オールド・オスマン。」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが。」 「うむ」 「見ましたよね!? 不思議な道具を使いこなす、これぞミョズニトニルンの証ではありませんか!」 「うむむ…」 「オールド・オスマン! 早速王室に報告して、指示を仰がないことには…」 「それには及ばん」 オスマン氏は、重々しく頷いた。白いひげが、厳しく揺れた。 「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ? 現代に蘇ったミョズニトニルン!」 「ミスタ・コルベール。大発見だからこそ、慎重にならねばならん。」 「はあ」 「王室のボンクラどもに過分の力を与えて、どうしようというのだね? 戦争でもしようと言うのか?」 「そ、それは…」 「そしてまあ、間違いの可能性もまだ無いとはいえん。報告するにしても、拙速に過ぎる。」 「ははあ。学院長の深謀遠慮には恐れ入ります。」 「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ。」 「は、はい! かしこまりました!」 オスマン氏は杖を握ると窓際へと向かった。歴史の彼方へと、思いを馳せる。 「伝説の使い魔『ミョズニトニルン』か。どんな姿をしておったのかのう…」 夢見るように、そう呟いた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/lls_ss/pages/580.html
元スレURL 【SS】 リリーのアトリエ 概要 錬金術師のオトノキアカデミーからやってきた一人の女の子があれこれするほのぼの物語 参考:アトリエシリーズ タグ ^桜内梨子 ^Aqours ^μ’s ^ほのぼの ^ファンタジー 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/atelier/pages/10.html
プレイアブルキャラクター Rororina Fryxell ロロライナ・フリクセル アーランドの錬金術士 Astrid Zxes アストリッド・ゼクセス ロロナの師匠 Cuderia von Feuerbach クーデリア・フォン・フォイエルバッハ ロロナの幼なじみ Yksel Jahnn イクセル・ヤーン 少年料理人 Sterkenburg Cranach ステルケンブルク・クラナッハ アーランドの騎士 Esti Erhard エスティ・エアハルト アーランドの女騎士 Gio ジオ 楽隠居のおじいさん Lionela Heinze リオネラ・エインセ 旅の人形遣い Tantoris タントリス 気ままな吟遊詩人 Totooria Helmold トトゥーリア・ヘルモルト 未来の錬金術士 Merurulince Rede Arls メルルリンス・レーデ・アールズ 未来の錬金術士 ノンプレイアブルキャラクター Tifana Hildebrand ティファナ・ヒルデブランド 雑貨屋の女主人 Haggel Baldness ハゲル・ボールドネス 男一匹鍛冶職人 Pamela Ibis パメラ・イービス 薄幸(?)の幽霊少女 Meriodus Alcock メリオダス・オルコック アーランドの大臣 Cole Durer コオル・デューラ 幼き行商人 Ryan Fryxell ライアン・フリクセル ロロナの両親 Raura Fryxell ロウラ・フリクセル ロロナの両親 Aranya アラーニャ リオネラの人形 Horoholo ホロホロ リオネラの人形 Hom ほむ ロロナの弟/妹? アーランドの住人 ー サイモン 王宮受付 ー エイシァ 王宮受付 ー ウッズ 王宮廊下 ー ワーグ 王宮廊下 ー シェーミ サンライズ食堂 ー マグヌン サンライズ食堂 ー トーマス サンライズ食堂 ー マーサ サンライズ食堂 ー グーリィ サンライズ食堂 ー ルクスン サンライズ食堂 ー オドネル サンライズ食堂 ー コルネリ サンライズ食堂 ー グレン ロウとティファの雑貨店 ー バーニィ ロウとティファの雑貨店 ー ヒューイ ロウとティファの雑貨店 ー ニンファ ロウとティファの雑貨店 ー リリアナ ロウとティファの雑貨店 ー ラーゼ ロウとティファの雑貨店 ー チュミミ パメラ屋さん ー グレッグ パメラ屋さん ー ドージ 広場 ー ミセリ 広場 ー ティコ 広場 ー レジィ 広場 ー ラグ 広場 ー イリア 広場 ー ヘイモア 広場 ー ノノン 広場 ー メリィ 広場 ー スーン 広場 ー サフィ 工場通り ー フーショイ 工場通り ー ホッグス 工場通り ー ナック 工場通り ー ルリア 工場通り ー ノムス 大通り ー ネリー 大通り ー カッツ 大通り ー セッコ 大通り ー チック 大通り ー ビッグス 大通り ー アガサ 職人通り ー イモラ 職人通り ー ケーシー 職人通り ー バッカス 職人通り ー ソウタ 職人通り ー ナミ 職人通り ー モリーナ 職人通り ー セオン 職人通り
https://w.atwiki.jp/girls_games/pages/92.html
エルクローネのアトリエ 原作:ガスト 制作:オトメイト 公式サイト 製品概要 タイトル エルクローネのアトリエ ジャンル 女性向け恋愛AVG 対応機種 PSP 定価 通常版:6,090円(税抜5,800円)、初回限定版:8,190円(税抜7,800円) 発売日 2012年4月12日 選評 ループバグ 好感度1位と2位の組み合わせが特定キャラの場合に最終イベント中に発生、会話がループして進めなくなる。 バグに遭遇したら、2位と3位のキャラを入れ替えられる時点のセーブデータ(あれば)まで戻るか、なければ 「最初からやり直し」。発売2カ月近く経つが公式アナウンス等なし。 2回延期の果てに機能削除 説明書のスクリーンショットにはシーン再生のボタンが表示されているが、実際は機能なし。 明らかに最初は入れる予定だったものを途中で削ったと思われる。 メインシナリオが見事なまでの金太郎飴 メインシナリオ→依頼選択(サブシナリオ×複数)→メイン→・・・→メイン→個別ED という流れのメインシナリオの部分がどのキャラを選んでもほぼ同じ。 最終イベントですら攻略キャラのいくつかの短いセリフ(「・・・」やほとんど同じ内容)以外は既読スキップできる始末 また、無理やり金太郎飴にしたせいか、攻略キャラと展開・セリフがあっていないように感じられる箇所も ゲーム性の全くない「調合」 本家アトリエでは最重要システムである調合だが、本作では一切頭を使うことなくボタンを押すだけで完了。 もちろん乙女ゲームに本家のような複雑さを要求しているユーザーはほとんどいなかったとだろうが、ここまでゲーム性の ないものだと想像していたユーザーもまたほとんどいないと思われる。 公式サイトのシステム紹介がわかりにくいこともあり、多少なりとも採取・調合ができると期待していたユーザーは 肩透かしに。結果として発売後アマゾンレビューで酷評されることになった。 FDを前提としたシナリオ 未消化の謎、伏線がある。 本編は糖度がかなり低く、エンディングで「この話の続きはまた別の機会に」 あと、ここからは個人的に 個々のシナリオが長く金太郎飴が多いため、2週目以降はスキップ(早送り)中に寝落ちすることがしばしば。 雰囲気と音楽は良かったけれど、冷静になってみると割といろいろひどかった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1623.html
前ページ次ページゼロのアトリエ ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式は、 ゲルマニアの首府ヴィンドボナで行われる運びであった。式の日取りは来月、ニューイの月の一日に行われる。 そして本日、トリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号は新生アルビオン政府の客を迎えるために、 艦隊を率いてラ・ロシェールの上空に停泊していた。 後甲板では、艦隊司令長官のラ・ラメー伯爵が、国賓を迎えるために正装して居住まいを正している。 その隣では、艦長のフェヴィスが口ひげをいじっていた。 アルビオン艦隊は、約束の期限をとうに過ぎている。 「やつらは遅いではないか、艦長」 イライラしたような口調で、ラ・ラメーは呟いた。 「自らの王を手にかけたアルビオンの犬どもは、犬どもなりに着飾っているのでしょうな」 そうアルビオン嫌いの艦長が呟くと、見張りの水兵が大声で艦隊の接近を告げた。 「左上方より、艦隊!」 なるほどそちらを見やると、雲と見まごうばかりの巨艦を先頭に、 アルビオン艦隊が静かに降下してくるところであった。 「ふむ、あれがアルビオンの『ロイヤル・ソヴリン』級か…」 感極まった声でラ・ラメーが呟いた。あの艦隊が、姫と皇帝の結婚式に出席する大使を乗せているはずであった。 「しかし…あの先頭の艦は巨大ですな。後続の戦列艦が、まるで小さなスループ船のように見えますぞ」 艦長が鼻を鳴らしつつ、巨大な艦を見つめて言った。 「ふむ、戦場では会いたくないものだな」 降下してきたアルビオン艦隊は、トリステイン艦隊に併走する形になると、旗流信号をマストに掲げた。 「貴艦隊ノ歓迎ヲ謝ス。アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号艦長」 「こちらは提督を乗せているのだぞ。艦長名義での発信とは、これまたコケにされたものですな」 艦長はトリステイン艦隊の貧弱な陣容を見守りつつ、自虐的に呟いた。 「あのような艦を与えられたら、世界をわが手にしたなどと勘違いしてしまうのであろう。 よい。返信だ。『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス。トリステイン艦隊司令長官』、以上」 ラ・ラメーの言葉を控えた士官が復唱し、それをさらにマストに張り付いた水兵が復唱する。 するするとマストに、命令どおりの旗流信号がのぼる。 どん!どん!どん!とアルビオン艦隊から大砲が放たれた。礼砲である。弾は込められていない。 しかし、巨艦『レキシントン』号が空砲を撃っただけで、辺りの空気が震える。 その迫力に、ラ・ラメーは一瞬あとじさる。よしんば砲弾が込めてあったとしても、この距離まで届く事はない。 それがわかっていながらも、実戦経験もある提督をあとじらせるほどの、 禍々しい迫力を秘めた『レキシントン』号の射撃であった。 「よし、答砲だ」 「何発撃ちますか?最上級の貴族なら、十一発と決められております」 礼砲の数は、相手の格式と位で決まる。艦長はそれをラ・ラメーに尋ねているのであった。 「七発でよい」 子供のような意地をはるラ・ラメーを、にやりと笑って見つめると、艦長は命令した。 「答砲準備!順に七発!準備出来次第撃ち方始め!」 アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号の後甲板で、艦長のボーウッドは、 左舷の向こうのトリステイン艦隊を見つめていた。 隣では、艦隊司令長官及び、トリステイン侵攻軍の全般指揮を執り行う、サー・ジョンストンの姿が見える。 貴族議会議員でもある彼は、クロムウェルの信任厚い事で知られている。 しかし、実戦の指揮は取った事がない。サー・ジョンストンは政治家なのであった。 「艦長…」 心配そうな声で、ジョンストンは傍らのボーウッドに話しかけた。 「サー?」 「こんなに近づいて、大丈夫かね?長射程の新型の大砲を積んでいるんだろう?もっと離れたまえ。 私は、陛下より大事な兵を預かっているのだ」 クロムウェルの腰ぎんちゃくめ、と口の中だけで呟いて、ボーウッドは冷たい声で言った。 「サー。新型の大砲といえど、射程いっぱいで撃ったのでは当たるものではありません」 「しかしだがな、何せ、私は陛下から預かった兵を、無事にトリステインに下ろす任務を担っている。 兵が恐がってはいかん。士気が下がる」 恐がっているのは兵ではないだろう、とボーウッドは思いながら、ジョンストンの言葉を無視して命令を下す。 空では自分が法律だ。 「左砲戦準備」 「左砲戦準備!アイ・サー!」 砲甲板の水兵たちによって大砲に装薬が詰められ、砲弾が押し込まれる。 空の向こうのトリステイン艦隊から、轟音が轟いてきた。トリステイン艦隊旗艦が、答砲を発射したのだ。 作戦開始だ。その瞬間、ボーウッドは軍人に変化した。 政治上のいきさつも、人間らしい情も、卑怯なだまし討ちであるこの作戦への批判も、全て吹っ飛ぶ。 神聖アルビオン共和国艦隊旗艦『レキシントン』号艦長、サー・ヘンリ・ボーウッドは矢継ぎ早に命令を下し始めた。 艦隊の最後尾の旧型艦『ホバート』号の乗組員が準備を終え、 『フライ』の呪文で浮かんだボートで脱出するのがボーウッドの視界の端に映った。 答砲を発射し続ける『メルカトール』艦上のラ・ラメーは、驚くべき光景を目の当たりにした。 アルビオン艦隊最後尾の…一番旧型の小さな艦から、火災が発生したのだ。 「なんだ?火事か?事故か?」 フェヴィスが呟く。次の瞬間、もっと驚くべき事が起こった。 火災を発生させた艦に見る間に炎が回り、空中爆発を起こした。 残骸となったそのアルビオン艦は、燃え盛る炎と共に、ゆるゆると地面に向かって墜落してゆく。 「な、なにごとだ?火災が火薬庫に回ったのか?」 『メルカトール』号の艦上が、騒然となる。 「落ち着け!落ち着くんだ!」 艦長のフェヴィスが水兵たちを叱咤する。『レキシントン』号の艦上から、手旗手が、信号を送ってよこす。 それを望遠鏡で見守る水兵が、信号の内容を読み上げる。 「『レキシントン』号艦長ヨリトリステイン艦隊旗艦。『ホバート』号ヲ撃沈セシ貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明セヨ」 「撃沈?何を言ってるんだ!勝手に爆発したんじゃないか!」 ラ・ラメーは慌てた。 「返信しろ!『本艦ノ射撃ハ答砲ナリ。実弾ニアラズ』」 すぐに『レキシントン』号から返信が届く。 『タダイマノ貴艦ノ砲撃ハ空砲ニアラズ。我ハ、貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス』 「バカな!ふざけたことを!」 しかし、ラ・ラメーの絶叫は、『レキシントン』号の一斉射撃の轟音でかき消される。着弾。 『メルカトール』号のマストが折れ、甲板にいくつも大穴が開いた。 「この距離で大砲が届くのか!」 揺れる甲板の上で、フェヴィスが驚愕の声を上げる。ラ・ラメーは怒鳴った。 「送れ!『砲撃ヲ中止セヨ。我ニ交戦ノ意思アラズ』」 しかし、『レキシントン』号はさらなる砲撃で、返事をよこしてきた。着弾。 艦が震え、あちこちで火災が発生した。 『メルカトール』号から、悲鳴のような信号が何度も送られる。 『繰リ返ス!砲撃ヲ中止セヨ!我ニ交戦ノ意思アラズ!』 しかし、『レキシントン』号の砲撃はいっこうにやむ気配がない。着弾。 砲弾の破片で、ラ・ラメーの体が吹っ飛び、フェヴィスの視界から消えた。 同時に、着弾のショックでフェヴィスは甲板に叩きつけられる。 フェヴィスは悟った。これは計画された攻撃行動だ。奴らは初めから、親善訪問のつもりなどない。 自分達はアルビオンに嵌められたのだ。 艦上では火災が発生している。周りでは傷ついた水兵たちが、苦痛のうめきを上げている。 頭を振りながら立ち上がり、フェヴィスは叫んだ。 「艦隊司令長官戦死!これより旗艦艦長が艦隊指揮を執る!各部被害状況知らせ!艦隊全速!右砲戦用意!」 「やつらは、やっと気付いたようですな」 ゆるゆると動き出したトリステイン艦隊を眺めつつ、ボーウッドの傍らでワルドが呟いた。 ワルドも、名ばかりの司令長官であるジョンストンにいかほどのことができるとも思っていない。 上陸作戦全般の実際の指揮は、ワルドが行うことになっていた。 「の、ようだな。子爵。しかし、すでに勝敗は決した」 行き足のついていたアルビオン艦隊は、全速で動き出したトリステイン艦隊の頭を抑えるような機動で、既に動いていた。 アルビオン艦隊は一定の距離をとりつつ、冷静に射撃を加えていく。艦数で二倍、それに加え、 こちらには新型の大砲を搭載した巨艦『レキシントン』号がいる。砲力は比べ物にならない。 トリステイン艦隊をいたぶるように、砲撃は続けられた。 十数分後、火災を発生させていた『メルカトール』号の甲板がめくれあがる。 瞬間、轟音と共に『メルカトール』号は空中から消えた。爆沈である。 他のトリステイン艦も、無傷のものは一艦たりともない。旗艦を失った艦隊は混乱し、バラバラの機動で動き始める。 全滅は時間の問題であった。既に白旗を掲げた艦も見えた。 『レキシントン』号の艦上のあちこちから、「アルビオン万歳!神聖皇帝クロムウェル万歳!」の叫びが届く。 ボーウッドは眉をひそめた。かつて空軍が王立だった頃は、戦闘行動中に『万歳』を唱える輩などいなかった。 見ると、司令長官のジョンストンまでが万歳の連呼に加わっている。ワルドが言った。 「艦長、新たな歴史の一ページが始まりましたな」 苦痛の叫びをあげる間もなく潰えた敵を悼むような声で、ボーウッドは呟いた。 「なに、戦争が始まっただけさ」 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師31~ トリステインの王宮に、国賓歓迎の為、ラ・ロシェール上空に停泊していた艦隊全滅の報がもたらされたのは、 それからすぐのことだった。ほぼ同時に、アルビオン政府からの宣戦布告文が急使によって届いた。 不可侵条約を無視するような、親善艦隊への理由なき攻撃に対する非難がそこには書かれ、 最後に『自衛ノ為神聖アルビオン共和国ハ、トリステイン王国政府ニ対シ宣戦ヲ布告ス』と締められていた。 ゲルマニアへのアンリエッタの出発で大わらわであった王宮は、突然のことに騒然となった。 すぐに将軍や大臣達が集められ、会議が開かれた。しかし、会議は紛糾するばかり。 まずはアルビオンへ事の次第を問い合わせるべきだ、との意見や、ゲルマニアに急使を派遣し、 同盟に基づいた軍の派遣を要請すべしとの意見が飛び交った。 会議室の上座には、その様子をつまらなそうに見つめるアンリエッタの姿も見えた。 本縫いが終ったばかりの、眩いウェディングドレスに身を包んでいる。 これから馬車に乗り込み、ゲルマニアへと向かう予定であった。 会議室に咲いた大輪の花のようなその姿であったが、今は誰も気にとめる者はいない。 「アルビオンはわが艦隊が先に攻撃したと言い張っておる!しかしながら、わが方は礼砲を発射しただけというではないか!」 「偶然の事故が、誤解を生んだようですな」 各有力貴族たちの意見を聞いていた枢機卿マザリーニは頷いた。 「よし、アルビオンに特使を派遣する。ことは慎重を期する。この双方の誤解が生んだ遺憾なる交戦が、全面戦争へと発展しないうちに…」 その時、急報が届いた。伝書フクロウによってもたらされた書簡を手にした伝令が、息せき切って会議室に飛び込んでくる。 「急報です!アルビオン艦隊は、降下して占領行動に移りました!」 「場所はどこだ?」 「ラ・ロシェールの近郊!タルブの草原のようです!」 トリステイン魔法学院近くの草原に、マンティコアと、それに乗った…傷つき倒れた衛士が降り立った。 すぐに水のメイジによる『治療』が行われ、意識を取り戻した彼が、アルビオンの宣戦布告の報を告げる。 自分はそれを王宮に伝える伝令役のうちの一人、運悪く追撃を受け、ここまで飛んで力尽きたのだと… コルベールはオスマン氏に許可を取ると即座に伝書フクロウを飛ばし、事実の確認を急ぐ。 間違いであって欲しい、心からそう祈っていたが、もたらされた事実は救いがたい現実を裏書きするものであった。 「アルビオンがトリステインに宣戦布告。姫殿下の式は無期延期。 王軍は現在ラ・ロシェールに向かって進軍中、したがって学院におかれましては、 安全のため、生徒及び職員の禁足令を願います、と…」 オスマン氏は深く息を吐くと、学院長室のイスに腰掛けた。 「やはり…戦争かね?」 机の上で指を組み、オスマン氏はコルベールにもたらされた書簡を受け取る。 「タルブの草原に、敵軍は陣を構築しているようです」 「アルビオンは強大だろうて」 コルベールは、悲しげな声で言った。 「敵軍は、巨艦『レキシントン』号を筆頭に、戦列艦が十数隻。上陸せし総兵力は三千と見積もられます。 わが軍の艦隊主力は既に全滅、かき集めた兵力はわずか二千。未だ国内は戦の準備が整わず、 緊急に配備できる兵はそれで精一杯のようです。しかしながらそれより、完全に制空権を奪われたのが致命的です。 敵軍は空から砲撃を加え、わが軍を難なく蹴散らすでしょう」 「現在の戦況は?」 「敵の竜騎兵によって、タルブの村は炎で焼かれているそうです。同盟に基づき、 ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましたが、先陣が到着するのは三週間後とか…」 オスマン氏はため息をついて言った。 「見捨てる気じゃな。敵はその間に、トリステインの城下町をあっさり落とすじゃろうて」 学院長室の扉に張り付き、聞き耳を立てていたルイズは、戦争と聞いて蒼白になった。 そのルイズの手を脇に立っていたヴィオラートが掴み、ルイズを引きずってゆく。 「どこに行くのよ!」 「タルブの村」 「な、何しに行くのよ!」 「決まってるでしょ?シエスタちゃんと、アンリエッタさんを助けに行くんだよ」 ルイズはヴィオラートの腕を振りほどこうとして、もがいた。 「ダメよ、戦争してるのよ!私達が行ったって、どうにもならないわ!」 「なるよ」 ヴィオラートは見た目とは裏腹に強靭な腕でルイズをがっちりと掴み、きっぱりと、そう言い放った。 ルイズの動きが止まる。 「…何よ、何がどうなるってのよ」 「あたしとルイズちゃんがいれば勝てる。大丈夫だよ、あたしを信じて」 そう言ってルイズを見たヴィオラートの瞳にいつもの『本気』を見て取って、 結局ルイズはヴィオラートの希望通り、追従の言葉を口に出してしまう。 「ああ、いつものアレね…わかったわ、ダメだって言っても、結局あなた一人でもやっちゃうんでしょ?」 「ごめんね…」 「いいわよもう。使い魔に協調するように、私ってば条件付けられてるから。ああ、なんてかわいそうな私」 その自虐的なもの言いに、思わずヴィオラートがルイズを覗き込むと、 ルイズはニヤニヤしながら、ヴィオラートの反応を観察していた。 二人はひとしきり笑いあうと、愛用のホウキとフライングボードに乗り込む。 「じゃ、行こっか」 「そうね」 言葉少なに、タルブを目指して飛び立つ二人。 二つの航跡が遠大な仮想の弧を描いて、どこまでも伸びて行った。 大きな風竜に跨ったワルドは、薄笑いを浮かべながらかつての祖国を蹂躙していた。 近くを、直接指揮の竜騎士隊の火竜が飛び交っている。 ワルドの誇る風竜はブレスの火力では火竜に劣るが、スピードで勝る。 指揮を執るならとあえて選んだ風竜であった。 「何でまたこんな村を焼く必要があるんだい?」 風竜の端から下を覗き込んだフーケが、不快感もあらわに問いかけた。 ワルドは眉をぴくりとだけ動かし、お優しいフーケを嘲弄するような態度で答える。 「ふん。本体到着前の露払いという面もあるが…一言で言ってしまえば、挑発行為だな」 「挑発行為?」 「そうだ。ただ漫然と上陸するだけではトリステインの奥に誘い込まれたり、対峙させられて時間を稼がれるかも知れん。 それならば、敵側を挑発して正面決戦を誘った方が時間的な効率がいい」 「そうかい」 ただの、レコン・キスタの戦略上の都合のためだけにこの村は焼かれ、灰燼と帰するのか。 フーケはそれ以上何も言わず、ただ、炎上する村をその目に焼きつけた。 昼を過ぎた。王宮の会議室には次々と報告が飛び込んでくる。 「タルブ領主、アストン伯戦死!」 「偵察に向かった竜騎士隊、帰還せず!」 「未だアルビオンより、問い合わせの返答ありません!」 それでも会議室では、未だ不毛な議論が繰り返されていた。 「やはりゲルマニアに軍の派遣を要請しましょう!」 「そのように事を荒立てては…」 「竜騎士隊全騎をもって、上空から攻撃させては?」 「残りの艦をかき集めろ!全部!全部だ!小さかろうが古かろうが何でも良い!」 「特使を派遣しましょう!攻撃したら、それこそアルビオンに全面戦争の口実を与えるだけですぞ!」 一行に会議はまとまらない。マザリーニも、結論を出しかねていた。 未だ彼は、外交での解決を望んでいるのであった。 生家の庭で、シエスタは幼い兄弟たちを抱きしめ、不安げな表情で空を見つめていた。 先ほど、ラ・ロシェールの方から爆発音が聞こえてきたのだ。 驚いて庭に出て、空を見上げると、恐るべき光景が広がっていた。 空から何隻もの燃え上がる船が落ちてきて、山肌にぶつかり、森の中に落ちて行く。 村は騒然とし始めた。しばらくすると、空から巨大な船が降りてきた。 雲と見まごうばかりの巨大なその船は、村人達が見守る中、草原に鎖のついた錨を下ろし、上空に停泊する。 その上から、何匹ものドラゴンが浮かび上がった。 「何が起こってるの?お姉ちゃん」 幼い弟や妹たちが、シエスタにしがみついて尋ねる。 「家に入りましょう」 シエスタは不安を隠して兄弟たちを促し、家の中に入った。 中では両親が、不安げな表情で窓から様子を伺っている。 「あれは、アルビオンの艦隊じゃないか」 父が草原に停泊した船を見て言った。 「いやだ…戦争かい?」 母がそう言うと、父が否定した。 「まさか。アルビオンとは不可侵条約を結んでいるはずだ。この前領主様のお触れがあったばかりじゃないか」 「じゃあ、さっきたくさん落ちてきた船はなんなんだい?」 艦上から飛び上がったドラゴンが、村めがけて飛んできた。父は母を抱えて窓から遠ざかる。 ぶおん!と唸りを上げて、騎士を乗せたドラゴンは村の中まで飛んできて、辺りの家々に火を吐きかけた。 「きゃあ!」 母が悲鳴を上げた。家に火を吐きかけられ、窓ガラスが割れて室内に飛び散ったのだ。 村が燃え盛る炎と怒号と悲鳴に彩られていく。 父は気を失った母を抱いたまま、震えるシエスタに告げた。 「シエスタ!弟たちを連れて南の森に逃げるんだ!」 会議室に怒号飛び交う中、アンリエッタは自らの服装を省みていた。 晴れの舞台にと用意されたドレスは、現状…まとまらない会議、放置された姫…とあいまって、 滑稽なまでに『お飾り』としてのアンリエッタを際立たせていた。 思わず苦笑が漏れる。お飾りを嫌い、できる限りの努力をしてきたつもりだった。 嫌な貴族にも高貴なる笑みで答え、勉強をしろと言われれば勉強し、結婚しろと言われれば… 誰よりも『姫』たらんと、責務を果たさんと望まぬ婚姻を受け入れ、 全ての『私』を犠牲にしてトリステインに尽くすつもりだった。そのはずだった。 だが現状はどうだ?そのトリステインを支えるはずの…アンリエッタがゲルマニアに嫁いだあと、 見事国を支えて見せるとアンリエッタの目の前で誓ったはずの重臣たちが、 アルビオンの裏切り一つで蜂の巣をつついたような大騒ぎだ。 そう、裏切り。自分でさえ理解できる裏切り行為が、彼らには何か別の意義ある行動にでも見えているらしい。 自分の知らない外交的な決まりでもあるのやもしれぬ、と、会議…怒鳴り合いを見守っていたアンリエッタだが、 話題が三巡し、四巡し…どうやら、彼らはどうにかして戦わない理由を探そうと躍起になっていることに気付く。 馬鹿馬鹿しい。明確な敵意を持って国土を侵略してきた国に使う外交的手段などあるものか。 せいぜい相手の要求を全て受け入れ、隷属でも誓約するか。二度と逆らわないと誓い、お姫様でも差し出して… そこまで考えが至った時、アンリエッタは思わず重臣達を見渡した。 そう、戦争を外交的手段で避けるということは、そのような選択肢もありえるということだ。 普段アンリエッタに向かって誇らしげに国家を語り、国家のために死んで見せると簡単に吐き散らしたこの者たちが… 民草のためという言い訳を用意して、自らの保身のためにアンリエッタを差し出す。 「タルブの村、炎上中!」 その急使の声にはじかれるように、アンリエッタは音を立てて立ち上がった。一斉に重臣達の視線が注がれる。 アンリエッタは大きく深呼吸すると、わななく声で言い放った。 「あなたがたは、恥ずかしくないのですか」 「姫殿下?」 「国土が敵に侵されているのです。同盟だ、特使だと騒ぐ前にすることがあるでしょう」 「しかし…姫殿下…、誤解から発生した小競り合いですぞ?」 「誤解?どこに誤解の余地があるというのですか?礼砲で艦が撃沈されたなど、言いがかりも甚だしいではありませんか」 「我らは、不可侵条約を結んでおったのですぞ。事故です」 「条約は紙より容易く破られたようですわね。もとより守るつもりなどなかったのでしょう。 時を稼ぎ、虚をつくための口実にすぎません。アルビオンには明確に戦争の意思があって、全てを行っていたのです」 「しかし…」 アンリエッタはテーブルを叩き、大声で叫んだ。 「わたくしたちがこうしている間に、民の血が流されているのです!彼らを守るのが貴族の務めなのではありませぬか? 我らは、なんのために王族を、貴族を名乗っているのですか?このような危急の際に彼らを守るからこそ、 君臨を許されているのではないですか?」 誰も、何も言わなくなってしまった。アンリエッタは冷ややかな声で言った。 「あなたがたは、怖いのでしょう。なるほど、アルビオンは大国。反撃を加えたとして、勝ち目は薄い。 敗戦後責任を取らされるであろう、反撃の計画者にはなりたくないというわけですね? ならば、このまま恭順して命を永らえようというわけですね?」 「姫殿下」 マザリーニがたしなめた。しかし、アンリエッタは言葉を続けた。 「ならばわたくしが率いましょう。あなたがたは、ここで会議を続けなさい」 アンリエッタはそのまま会議室を飛び出ていった。 マザリーニや、何人もの貴族が、それを押しとどめようとした。 「姫殿下!お輿入れ前の大事なお体ですぞ!」 「ええい!走りにくい!」 アンリエッタは、ウェディングドレスの裾を、膝上まで引きちぎった。 引きちぎったそれを、マザリーニに投げつける。 「あなたが結婚なさればよろしいわ!」 宮廷の中庭に出ると、アンリエッタは大声で叫んだ。 「わたしの馬車を!近衛!参りなさい!」 聖獣ユニコーンが繋がれた、王女の馬車が引かれてきた。 中庭に控えた近衛の魔法衛士隊が、アンリエッタの声に応じて集まってくる。 アンリエッタは馬車からユニコーンを一頭外すと、ひらりとその上に跨った。 「これより全軍の指揮をわたくしが執ります!各連隊を集めなさい!」 状況を知っていた魔法衛士隊の面々が、一斉に敬礼する。 アンリエッタは、ユニコーンの腹を叩いた。 ユニコーンは、額から突き出た角を誇らしげに陽光にきらめかせ、高々と前足を上げて走り出した。 その後に、幻獣に騎乗した魔法衛士隊が口々に叫びながら続く。 「姫殿下に続け!」 「続け!後れをとっては家名が泣くぞ!」 次々に中庭の貴族たちは駆け出していく。城下に散らばった各連隊に連絡が飛んだ。 その様子をぼんやりと見つめていたマザリーニは、天を仰いだ。 どのように努力を払おうとも、いずれアルビオンとは戦になるとは思っていたが…。 未だ、国内の準備は整っていないのだ。彼とて、命を惜しんだわけではない。 彼なりに国を憂い、民を思ってこその判断だった…と、自負している。小を切っても、負ける戦はしたくないのであった。 しかし、姫の言う通りであった。彼が傾注した外交努力は既に泡と消えていた。しがみついて何になろう。 騒ぐ前に、すべき事があったのだ。 一人の高級貴族が、マザリーニに近づいて耳打ちした。 「枢機卿、特使の派遣の件ですが…」 マザリーニはかぶった球帽をその貴族の顔に叩きつけた。 アンリエッタが自分に投げつけたドレスの裾を拾い、頭に巻いた。 「おのおのがた!馬へ!姫殿下一人を行かせたとあっては、我ら末代までの恥ですぞ!」 「そろそろこの辺りのかたはついたな。後を頼む」 ワルドはそう言い残すと、フーケに向かって不気味な笑みを浮かべ、 空を飛べる部隊員を引き連れ、フーケに後を託して、残存するトリステイン竜騎士隊の掃討のために飛び立った。 「後を頼む…ねえ」 ワルドが消えた後、ワルドの指揮下にあった急造の寄せ集め部隊のそのまた残りカスは一気に統制を失い、 人気のない周辺の民家に押し入ると、そこに残された金目の物、甚だしきに至っては野菜や穀物まで持ち出し、 抜け目なく荷車まで盗み出してせっせと運び始めた。そして…その後の指示さえ、ワルドは残して行かなかった。 後を頼むと言われても、これで一体どうしろと言うのか。 それに、何だかさっきから妙な焦燥感が脳裏をかすめてならない。あの、ワルドの不気味な笑み… その正体が何なのかつかみかねて、フーケは燃え上がる民家をよそに、じっと思考の海に沈んでいたのだが… 「なあ、いくらなんでも全部焼く事はねえんじゃねえの?」 「なあに、勝った後に何もかもトリステインのせいにすりゃいいのよ」 略奪に加わった兵士のその言葉を聞いた瞬間、フーケの脳内で全ての事象の糸が繋がった。 ワルドは…もしかしたらレコン・キスタは、その罪を全部私に負わせる気だ。 わざわざ私を風竜に乗せて連れてきたのも、全てはそのため… 土くれのフーケという元盗賊がごろつき兵どもを扇動し、略奪行為を行わせたという捏造のため。 勝利の後、フーケに罪を着せて処断する事で彼ら自身の『公正さ』でもアピールするつもりか。 まずい。あまり考える時間は残されていない、どうする、どうする… 自らの危機に思わず爪をかんだフーケに天啓を与えたのは、やはり無防備に放たれた兵士の会話だった。 「なんだ、もう何もねえな。本陣戻るか…」 「ちょっと待った。村の平民どもはどうやら森の方にいるらしいじゃねえか」 「らしいが、どうした?」 「肌身離さず持ってる貴重品…あるだろ?」 「おお、お前頭いいな」 「へへへ…ココの出来が違うのよ」 これだ。フーケの名を上手く使えば、一気に逆転の目が見えてくる。 今まで貴族だけを狙ってきたのは単なる趣味の問題であり、また貴族の方が物を持っていたからだ。 だが幸いにして平民の物は何一つ、パンの一つさえ奪ってはいない。ここで… 村に火を放ち、略奪をし、その上逃げおおせた村人に害をなそうとする『貴族』を相手に大立ち回りでも演じてやれば… 『土くれのフーケ』の評価が、変わってくる。少なくとも生き残った村人が肯定的な証言をしてくれるだろう。 たとえ平民でも、証言は証言だ。 その後、フーケの真の名…マチルダ・オブ・サウスゴータの名を使って上手く立ち回れば… わずかな、そして実現不可能かと思えるほどの微かな希望だが、とにかく目指す方向は決まった。 ワルドの、そしてレコン・キスタの薄汚いシナリオを大幅に修正してやろう。 「今までと何一つ変わりゃしない…気に入らない腐れ貴族の滑稽な顔を見てやるとするさ」 フーケ…いや、マチルダ・オブ・サウスゴータは、未来に確かな希望の光を見て、一歩を踏み出した。 まるで太陽に祝福されたかのように、その背後に傾き始めた陽を背負って。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/yoshua/pages/78.html
2009/09/21 PSマリーのアトリエ 安価条件 クリア 条件達成 実況時間8時間43分 安価人さん生存 ガストのアトリエシリーズ第1弾のマリーをクリアすることになりました。 エンディングは一通り見る程度にはプレイしたことあるゲームだったので、特に問題は無く最後までいけるはずだったんですが……。 図書館で校長に会った後、階段を探さずに出てしまったためフラグが消えて、秘密の図書館へ行けなくなってしまいましたorz おかげで中盤以降は新しいアイテムは何も作れず、仕方がないのでずっとマリーとシアのlvを上げていました^^; lvあがるとシア強いですね、あんなに病弱なのに。 他にも妖精がlvアップすると勘違いして安いのばかり雇ったりと、昔遊んだときの知識が中途半端に残ってるせいで散々でした^^; 結局シアのlvも最大まであげることできず、すべて中途半端なまま爆弾娘ENDで終了となってしまいました。 なんかすっきりしなかったので、その後フリーダムでシアのlv50にしたけど、まぁとくに何も起こらず普通にエンディング見て終わりでした。 plus版とかでやっていれば"伝説のふたり"ってエンディングが見れたようです。 最後までモヤモヤする……。 名前 コメント すべてのコメントを見る test -- (名無しさん) 2009-12-27 10 30 14