約 3,013,547 件
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/9191.html
【登録タグ E △P 初音ミク 曲 音々P】 作詞:音々P 作曲:△P 編曲:△P 唄:初音ミク コーラス:神威がくぽ 曲紹介 『生命』をテーマにした壮大なスケールの歌です。(作者コメント) 歌詞 (ピアプロより転載) 眠る大地へと 辿り着く小さな魂 生まれ変わるため 星の海へ沈み 待っていた 今 新しい 生命が産まれるよ 遥かなる時を超え 巡り逢う魂を 迎えるよ 星空に願い掛けて 本当の恋を知った時に 生命(いのち)の息吹 感じた 未来へと繋げる呼吸 時を超え 迷いなく 辿り着く生命に 「ありがとう」 星空に願い込めて 真実の愛を知るその日に 永い永い眠りから 覚めるように 波を打つ呼吸 星空は巡り回る 永遠の時を紡ぐように 生命(いのち)の息吹 芽生える 迷いなく宇宙(そら)へ旅立とう 未来を抱きしめながら コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4044.html
※初めまして、最初で最後のゆっくり虐待に挑戦してみます。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※最初の数回は読者様のストレスをマッハにすることに腐心しています。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』1 「おちびちゃんたち、じじいのあたまにしーしーしてね! くそじじいにはもったいないけど、あんまりきたないから しーしーできれいきれいしてあげるんだからね!ありがたくおもってね!」 「ちーちーしゅるよ!ちーちー!」 「ゆっ!くちょじじい、もっちょあちゃましゃげちぇね! りぇいむのちーちーできりぇいにしちぇあげりゅ!」 額を床につけている俺の頭に、正面から横から、 赤れいむのしーしーがびたびたと打ちつけられる。 気持ちよさそうに震えながらしーしーをしている赤れいむは四匹。 土下座の姿勢では見えないが、俺の正面では、 一匹のゆっくりれいむが嘲笑を浮かべながらこちらを見ている。 「ゆゆ?じじい、さっきからだまりこくってどうしたの? なにかいうことがあるんじゃないの?ばかなの?しぬの?」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 親のれいむが罵るのを聞くと、すぐに赤れいむたちが口を合わせて合唱を始める。 「ばかなじじいはいわれなきゃわからないみたいだから、 しんせつなれいむがゆっくりおしえてあげるね! きれいきれいしてもらったらおれいをいうんだよ! さあ、いいこだからおちびちゃんたちにおれいをいってごらん?」 俺はしーしーの水たまりに頭を伏せたまま黙って体を震わせていた。 握り込んだ手のひらに爪が食い込む。 「どうしたの?いいたくないの? それともばかだからおれいのしかたをしらないのかな? いいこだからよくきいてね。 「ぐずでのろまの、きたないくそじじいに しーしーをめぐんでくださってありがとうございます」っていうんだよ!」 「いうんだよ!」 「はやきゅいえ!ごみくじゅ!」 「…………」 「ゆ?どうしたの?いえないの? ばかにはむずかしかったね。 だったらいいんだよ!おねえさんにおしえてもらおうね!」 「ぐ……」 歯茎から血が出るんじゃないかと思うほど震えている顎を 苦労してこじ開けながら、俺は絞り出した。 「ぐずで、のろまの…」 「おそいんだぜ!」 俺の後頭部を衝撃が襲う。 バスケットボール大の饅頭、ゆっくりまりさが飛び込んできたのだ。 「ちゃっちゃというんだぜくそじじい! いちにちはみじかいんだぜ?ごはんとそうじがまってるんだぜ! あさのしゃわーぐらいてばやくすませるんだぜ!」 後頭部で飛び跳ねられる度に、俺は顔面を床に打ちつける。 床に鼻血が滴る。 背中のほうでは、ソフトボール大の赤まりさたちが飛び乗り、 親に便乗して俺の上で飛び跳ねはじめている。 「はやきゅすりゅんだじぇ!」 「まりしゃしゃまたちはおなきゃしゅいたんだじぇ!」 「ごはん!ごはん!」 「ぐずでのろまの汚いクソ爺に、 しーしーを恵んでくださってありがとうございます」 「ゆはははは! いったよ、ほんとにいったよこのじじい!」 親れいむが爆笑した。 それに合わせ、赤れいむ、まりさ親子、 そして奥のほうから眺めているありす親子が笑い出す。 「ほんのじょうだんだったのに、 ほんとにいうなんておもわなかったよ!じじいはばかだね! それともほんとにうれしかったのかな? おちびちゃんたちはやさしいから、たのめばまいにちしーしーくれるかもね!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「おい、しーしーじじい!ごはんをよういするんだぜ! まりささまのせわをさせてあげてるんだから、 ごみくずはかんしゃしてちゃっちゃとうごくんだぜ!はやくしろ!」 尻に親まりさの体当たりを受け、再び俺は床のしーしーに顔を打ちつけた。 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 話は二か月前に遡る。 「「ゆっくりしていってね!!」」 大学から帰ってきた俺を出迎えたのは、 居間の真ん中に転がる二つの饅頭だった。 部屋中は惨憺たる有様で、 あちこちひっくり返して見つけ出し食べ散らかした食べカスや、 排泄物らしき餡子、砂糖水、びりびりに破られてまき散らされた雑誌類などが そこらじゅうにぶちまけられていた。 冷蔵庫も開けられ、中の食材がすべてやられているようだ。 カーテンは半ば引きちぎられ、ポットも炊飯器も倒され、 寝室から引きずり出された毛布が汚れを吸って無数の染みを作っている。 案の定、窓ガラスは割られて床にガラス片が四散していた。 ここはマンションの一階。 お定まりのパターンというやつで、 石を投げてガラスを割り、侵入してきたようだ。 その時、俺が部屋に帰ってくるのは三日ぶりだった。 友人が婚約したとかで、 その祝いでひとしきり飲み騒ぎ、外泊が続いたのだ。 その間中、このゆっくり二匹が部屋を蹂躙していたわけだ。 最近になって、俺の住むこの街でも ゆっくりの被害が幾度となく取り沙汰されるようになった。 ゆっくりの数は全国で着々と増え続けているらしい。 被害に遭った知人の話を聞くにつけ、俺も対策しなければとは思いつつ、 もう少し後でいいだろうとたかをくくり、ずるずると先延ばしにしていた。 きちんと対策していれば。思い起こすたび後悔で身をよじる。 侵入してきたのは、ゆっくりまりさとれいむの番いだった。 野良のゆっくりらしく、二匹はひどく汚かった。 成体になりたてのようで、大きさは共にバスケットボール大。 全身にこびりついた土の汚れが、そのまま部屋中に足跡を残している。 「ゆ!ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ!!」 「にんげんさんはたべものをもってきて、ゆっくりしないででていってね!!」 さっさと追い返せばすむ話だった。 だが、この時はさらに不幸が重なっていた。 「きゃあ、可愛い~!!」 恋人の由香を同伴していたのだ。 友人との飲み会でもずっと一緒に騒いでいた。 騒ぎ疲れてこの家に帰ってきて、ついでに一戦交えるつもりもあったが、 ゆっくりに水を差された形になった。 悪いことに、由香は筋金入りのゆっくり愛好家だった。 「かっわいいわあ~。すーり、すーりっ」 「ゆゆっ!おねえさんなにしてるんだぜ!?」 小汚いゆっくり二匹を両方抱え上げ、頬ずりを始めた。 「ゆ、ゆっくりやめてね……すーり、すーり♪」 「まりささまのびはだによいしれてるんだぜ!」 ゆっくりの方もまんざらではなさそうだ。 「お、おねえさん!まりささまはおなかがすいてるんだぜ。 とっととたべものをもってくるんだぜ!!」 まりさの方が早くもしびれを切らし、食事を要求してきた。 「あ、ごめんね!」 由香がゆっくり共を床に下ろし、周囲を見渡した。 しかし部屋の様子はすでに記述した通りである。 仕方なしに由香は立ち上がった。 「ちょっと待っててね。食べ物持ってくるからね」 「ゆゆっ、さっさとするんだぜ! ぐずにいきるかちはないんだぜ!!」 まりさの方はゲスなんじゃないか、と思っている俺に由香が言う。 「コンビニ行こ!」 この部屋の様子を見て、部屋の主を目の前にして なんで呑気にそんな事が言えるのか。 由香も承知の上らしく、俺の反論を封じるように 腕を引いて外へぐいぐい引っ張っていく。 「とっととするんだぜ!!」 背中から苛立たしい声が聞こえてきた。 「なに考えてるんだよ!?」 「ごめん、圭一!」 圭一は俺の名である。 部屋からある程度離れた路上で、由香は俺に手を合わせた。 「あんまり可愛いものだからつい……」 「どこが!?」 「全部!」 由香のゆっくり愛好ぶりはただごとではなかった。 ゆっくり愛護会だかなんだかの会員である。 携帯電話にはゆっくりキーホルダーがごちゃりとぶら下がり、 ゆっくりバッグの中には他にもゆっくりグッズが満載だ。 いつもゆっくりショップの前を通るたびに立ち止まり、 陳列されているゆっくり共を前にため息をついている。 俺には苛立たしいだけなのだが、 彼女の目には天使のように映っているらしい。 「ね、飼お!」 「はあ!?」 えらいことを言い出した。 あんなゲス(俺の中では決定)は一刻も早く追い出したいのだが。 「人間の手がついちゃったゆっくりより、 野生のゆっくりとお友達になりたかったの」 「あんな尊大な奴らと?おかしいんじゃないか?」 「おかしいのは自分でもわかってる。 でも、あのわがままさがたまんない……わかってもらえないと思うけど」 このあたりが筋金入りなのだ。 そこらにいる半端なゆっくり愛好家なら、 人の手でしつけられたゆっくりを愛護し、ゆっくりショップを利用する。 野生のゆっくりと付き合うほどの忍耐力を持つ者はそうはいない。 しかし、あのゆっくりならではの傍若無人ぶりをこそ愛する 本物の愛好家が稀にいる。 俺に言わせれば物好き、あるいはキワモノ好きだが。 「お前の家で飼ったら?」 「だめ。うちはもうゆっくりでいっぱいだし、 飼いゆっくりと野生のゆっくりを一緒に置いておくと 喧嘩になったりするらしいの」 由香の家族もゆっくり愛好家で、 家に何十匹のゆっくりを飼っていた。 由香の家庭についてはあとで触れる。 由香は飼いゆっくりは十二分に堪能できているはずだが、 野生のゆっくりと触れ合いたい欲求もあったようだ。 つくづくマニアである。 「あたしも毎日通ってお世話するから、お願い!」 俄然、揺れた。 ここまで読まれた方にはとんだ我儘女に見えたかもしれないが、 由香は本当にいい女なのだ。 可愛く美人、スタイルもよくて理知的だ。 飲み会でも出しゃばらず、いろんなところによく気が回る。 そして家が金持ち。 いつも周囲の友人に羨まれる、極上の女であった。 その彼女の唯一の欠点が、病的なほどのゆっくり好きという点だ。 それでも俺にとっては、 ひとつぐらい欠点があったほうが安心するぐらいのもので、 そこも含めて愛する気満々だった。 俺の家で飼いたい、というのにはさすがに躊躇したが、 家に毎日来てくれるという。 ゆっくりを餌にすれば、いつでも家に連れ込める。 これはなんとも魅力的だった。 結局、俺は首を縦に振ることになった。 ちゃんと世話しろよ、と釘を刺しつつ。 「やった、ありがと!圭一大好き!」 俺の肩に飛びつき、熱烈なキッスを浴びる。 たまに見せるこういうところが可愛い女なのだ。 「ゆっくりおそいんだぜ!!おねえさんはぐずだね!」 「ごめーん」 「ゆ、さっさとたべものをおいてでていくんだぜ!」 由香はゆっくりに詫びると、 コンビニで買ってきたプリンの蓋を開けてゆっくり共の前に置いた。 ゆっくり共はわき目も振らずにプリンに突進し、容器を突き倒した。 床にぶちまけられたプリンにゆっくり共は顔を突っ込み、 涎やらプリンやらをまき散らしながらむさぼり食う。 「うっめ!!これむっちゃうっめ、まじうっめ!ぱねぇ!!」 「むーちゃ、むーちゃ……ししししあわせえぇぇ!!」 感涙しながら食べ尽くしたまりさとれいむは、 顎の下にあるあにゃるを突き出していきみ始めた。 「うんうんするのぜ!」 「うんうんするよ!」 たらふく食べて満足したあとは、排泄である。 俺の部屋の床に、二匹のゆっくりはうんうんをひり出した。 「ゆっ!にんげんさんはまりささまのうんうんをそうじするんだぜ!! さっさとするんだぜ!!」 「おぉ、くさいくさい。ゆっくりしないでかたづけてね!!」 臭いうんうんの前から自分は一歩も動こうとせず、 片付けるように命令してきたゆっくり共。 由香は文句も言わず、にこやかにティッシュにくるんで捨てた。 「ゆっくりできた?」 「まりさはゆっくりしてるのぜ!!」 「れいむはとってもゆっくりしてるよ!!」 由香の質問に答えるまりさとれいむ。 「よかった。これからもここでゆっくりしていってね」 「ゆ?あたりまえなんだぜ!! ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ?」 「あ、ごめん。そうだったね」 「ごはんはたべたからにんげんさんにようはないんだぜ!! とっととでていくんだぜ!!」 「あ、あたしたちもここでゆっくりさせて!」 手を合わせてお願いしはじめる由香。 ゆっくり相手にこんなことをする人間は他にいるまい。 「ゆゆ?なにいってるんだぜ?おねえさんはばかなんだぜ? やくにたたないくずをおいておくよゆうはないんだぜ!!」 これだけ広い部屋を、饅頭二匹で占拠するつもりらしい。 「そろーり、そろーり」 まりさの背後に、れいむが大声で何か言いながら近寄る。 そして耳打ちした。 「まりさ、ちょっとこっちにきて!」 「ゆっ!なんだぜれいむ!ばかなにんげんをいまおいだすところなんだぜ!」 そう言いながられいむに促され、まりさはこちらから離れていった。 俺たちから離れていくと、二人はこちらに背を向けながら相談を始める。 「ひそひそ、これくらいはなれれば ばかなにんげんさんたちにきこえないよ!」 1メートルしか離れていない。 当然丸聞こえであるが、まりさは気づく様子がない。 「ばかなにんげんにきかれてこまることなんてないんだぜ?」 「まりさ、よくきいて!このにんげんさんたちはたべものをもってるよ! まりさがかりにいかなくてもこいつらにもってこさせれば、 このゆっくりぷれいすでずっとゆっくりできるよ!」 「ゆ!めいあんなんだぜ!! まりさがちょっとおどしてやれば、 にんげんどもはばかだからいくらでもごはんをさしだすんだぜ!!」 「まりさ、むちだけじゃだめだよ! あめとむちをじょうずにつかいわけて、にんげんたちをしつけるんだよ。 こんきよくがんばれば、にんげんだってきっとやくにたつよ!」 「れいむはあまいね!でもわかったんだぜ。 いかさずころさず、なるべくながいあいだつかってやるんだぜ!!」 そんな会話を、由香はニコニコしながら聞いていた。 俺のほうは、聞いていて気分のいいものではなかったが、 ゆっくりの馬鹿さ加減はよく知っていたし、 あとで躾けてやればいいだろうぐらいにその時は考えていた。 「おねえさんたち、よくきくんだぜ!!」 密談らしきものを終え、まりさがこちらに向かって声をはりあげた。 「まりさたちのゆっくりぷれいすにいたかったら、 まいにちまりさたちにごはんをもってくるんだぜ! そうじもするなら、とくべつにここでゆっくりさせてあげるんだぜ!」 「やったあ、よろしくね!」 大げさに喜んでみせる由香。 話を合わせて、このゲスぶりを堪能するつもりらしい。 ゆっくり愛好家を称する人間は多いが、 ゲスをすら楽しむほどの物好きは、 日本中探しても五人もいないのではなかろうか。 その日から、ゆっくり共との生活は始まった。 二匹のゆっくりは部屋の中で傍若無人に振舞った。 「まりささまにごはんをもってくるんだぜ!!」 「かわいいれいむにあまあまをちょうだいね!!」 腹が減ればいつでもどこでもわめき出す。 「ゆっくりうんうんするのぜ!!」 「しーしーするよ!!」 うんうんとしーしーも、気が向いたときに垂れ流し、 それが終わると俺たちを呼びつけて片付けさせた。 「それはなんだぜ!?まりささまにさっさとよこすのぜ!! ここのものはぜんぶまりささまのものなんだぜ!!」 ちょっと興味が沸くと、すぐに俺たちが持っているものを差し出させた。 勉強中には鉛筆を奪われる、掃除をしていれば掃除機を奪われる。 そのうち飽きて放り出すからまだいいが、 何をするにも中断させられるはめになり、邪魔でしょうがない。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆっゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪」 突然大声で歌い出すのでうるさくてかなわない。 「ゆぁああああ!!なんだぜこれぇえええ!!?」 「おにいさあああん!!はやくきてかわいいれいむをたすけてねぇえええ!!」 慣れない家の中で勝手に動き回るものだから、 本の山に押しつぶされたりそのへんの隙間に挟まったりして、 しょっちゅう俺たちを呼びつけた。 「おそすぎるんだぜ!!もたもたなにしてたんだぜぇええ!? やくにたたないにんげんはごみくずなんだぜぇ!!」 「なんでもっとはやくたすけないのおおぉ!? かわいいれいむがくるしんでてもへいきなの!?ばかなの!?しぬの!?」 助けてやったところで、礼を言われたことは一度もない。 何度となく叩きつぶしたくなったが、その度に由香に止められた。 「この子たちは好きにさせてあげて、ホントにごめん!」 その可愛い顔のために、俺は耐えつづけた。 もともと俺は、愛護派でも虐待派でもなく、ゆっくりに興味はなかった。 思い入れがないぶん、ただの饅頭の言うことだと聞き流し、 まじめに取り合うことなく一歩引いて接することができていた。 とはいえ、それでも我ながらたいした忍耐力だったと思う。 結局、おれも変人だったのかもしれない。 ゆっくりという生物は、甘やかせばどこまでもつけあがる。 後日、このゆっくり達の存在は日本中に知れ渡るのだが、 そのつけ上がり具合に、誰もが驚愕することになる。 よくもそこまで、殺さずにつけ上がらせつづけたものだと。 ある日、由香が祖父を伴って俺の住むアパートにやってきた。 「やあ、圭一くん。こんにちは」 「こ、こんにちは。おじい……長浜さん」 この老紳士、長浜氏は政財界では名の通った名士である。 建築業の重鎮で、大企業長浜建設の名誉会長を務めると同時に、 多くの著作をものした社会学者でもある。 すでに述べたように、恋人の由香の祖父であり、 可愛い孫の恋人である俺の動向にさりげなく目を光らせている人だ。 お祖父さん、と一瞬呼びかけた俺に対する視線が一瞬きらりと光ったのは気のせいではあるまい。 人当りがよく、理知的な人であり、俺との関係もひとまず良好だ。 安アパート住まいとはいえ、自分で言うのもなんだが、 俺が国立有名大学に通い、トップクラスの成績をマークしてそれなりに優秀なことも大きいだろう。 これほどの人だから、孫の相手には、 トップクラスと言わず首席級の男をと言いだしても不思議はないが、 そこは孫の意思を尊重してくれている。 漫画に出てくるような偏屈爺とは違う、ごく普通に良識的な紳士というわけだ。 とはいえ、やはり会うたびに緊張してしまう。 「どうぞ、何のおかまいもできなくて」 「いやいやいや、こちらこそ。急に押しかけてすみませんでした」 若輩の俺に対しても、長浜氏は礼儀正しく頭を下げる。 「孫の話を聞きましてな。ぜひ見せていただきたいと思いました」 そう言い、長浜氏はさっきから喚いているゆっくり共のほうを見た。 「おじいさんはゆっくりできるひと? かわいいれいむにあまあまをちょうだいね!!はやくちょうだいね!! きこえないの?ばかなの?ばかなにんげんさんなの?」 「くちょじじい!!さっさとあまあまをよこすんだぜ!! よこしたらまりさのゆっくりぷれいすからでていくんだぜ!!」 「これはこれは……」 長浜氏は目を細めて笑い、懐から飴玉を取り出すとゆっくり共に投げ与えた。 わき目もふらずに飴玉に食いつくゆっくりを見届け、彼は俺に向きなおった。 「いやはや、大したものですな」 「いや、どうも毎日大変で……まあ」 挨拶を交わしながらソファを勧めようとしたが、 ゆっくり共のうんうんやしーしーで汚れきり、とても人を座らせられる状態ではない。 来るとわかっていればせめて洗濯していたのだが。 床にありあわせの座布団を敷き、座ってもらう。 それまでのやりとりで大体の事情はわかったが、一応話を聞くと、 孫がゆっくりを全力でゆっくりさせることに挑戦していると聞き、興味を抱いたらしい。 この長浜氏、やはり非常なゆっくり愛護派である。 大きなゆっくり愛護団体の会長をも務めるほどで、 日々ゆっくりを苦しめる虐待派のふるまいに心を痛め、ゆっくり愛護を市井に呼びかける一方、 都市部に繁殖するゆっくりへの対処問題に腐心している。 由香の住む家は長浜氏所有の邸宅であり、 家族ぐるみでゆっくりと付き合っているのはこの人の影響によるものだ。 「ね、とっても可愛いでしょ!!」 「いやはや……こら、じいちゃんは圭一くんと話してるんだ。 ちょっと静かにしていなさい」 孫娘に飛びつかれ、やや困り顔ながらもこぼれる笑みを抑えられないようだ。 しかし由香を引き離すと、改めて俺に向きなおると、深々と頭を下げた。 「このたびは、孫娘のわがままでまことにご迷惑をおかけしとります」 「あ、いえいえいえ!」 予想外の成り行きに慌ててしまう。 まさか俺ごときが、この人に頭を下げられるなんて思っていなかった。 「我儘放題なゆっくりの言うことを聞き続け、自由にさせる。 なんと馬鹿なことをと、わしは説得しました。 わし自身、なんとも困ったゆっくり狂いという悪癖を持っておりますが、 それでもわがまま放題にさせるなんてことは、 人間にとってもゆっくりにとってもためにならん。 それぐらいはわきまえとるつもりです」 「……はい」 「しかし、こやつは言うのですな。 人間の都合でゆっくりを飼う、いや、飼わせてもらっている。 だから、人間は全力でゆっくりをゆっくりさせる義務があるのだと。 わしは……返答に困りましたわい」 「ですが……人間の社会で生きていくんだったら」 「もちろん、そうです。 ここで生きるならここのルールを教えるのがゆっくりのためだ、 そんな御託はいくらでも並べられますし、正論です。 しかし、それでも、わしは答えられませんでしたわ。 確かに、わしらは飼わせてもらっておる。ここで生きることを強要したのはわしらだ。 強要しておいて、そのための忍従を強いるのは、やはり横暴でしょう。 ゆっくり狂いの馬鹿な戯言とお思いでしょうがな」 「…………」 答えられなかった。 事実、そう思っていたからだ。 良識ある人かと思っていたが、子供じみたセンチメンタリストなのか。 「甘やかされきったゆっくりの行き着く末路は、もちろん想像がつきます。 しかし、こやつは全力でゆっくり達を守るという。 圭一くんも協力してくれるからと。 それなら、一度、やってみる手かもしれんと思いました。 無茶な実験をするようですが、これもまた、ゆっくり研究の一環ではありましょう。 なにしろ愛護者でさえ、そんな事をやり通した者はほとんど聞きませんからな。 ゆっくりのわがままにとことん付き合うのは非常に、非常に骨の折れる話です。 それに挑戦してみることは、ある意味、こやつの為になるかもしれんです」 長浜氏はそこで、再び居住まいを正して、俺にふかぶかと頭を下げた。 「どうか、孫娘に付き合ってやってはくださらんか。 ゆっくり馬鹿、孫馬鹿の耄碌爺の戯言ではありますが、聞いて下されませんか」 一瞬、慌てながらも言葉に詰まった。 少々意外だったからだ。 良識と常識ある人かと思っていたが、孫娘のこんな暴挙、 しかも他人である俺を巻き込んだ暴挙、止めるのが普通というものだろう。 しかしこの人は、他人の俺に、我慢して共に耐え忍んでくれという。 ずいぶんと非常識な願いと思わざるをえない。 いや、一応、結婚すれば他人ではなくなるのだが…… あ。 そうか。 俺はそこで、老人の目論見がわかった。 この人は俺を試しているのだ。 可愛い孫娘の恋人、あるいは夫として、俺がふさわしい男かどうか。 甘やかされて育った娘を受け入れられる忍耐強い男かどうか、 このゆっくり共を試金石にして確かめようというのだろう。 確かに、忍耐力を試すのにゆっくりほどお誂え向きの存在もない。 また、由香の家族と付き合うのならば、ゆっくりとの付き合いもできたほうが断然いい。 そういう方向でも試す目論見がありそうだ。 そういうことならば、迷う理由はない。 あなたの孫娘を任せられる男であることを、見事証明してみせようではないですか。 俺は笑うと、力強く言い放った。 「万事お任せください」 頭を上げ、俺の表情を確かめた長浜氏は、満足げに目を細めた。 続く
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/551.html
「いやはや参った参った。小札に出番を盗られてしまった」 「だから何?」 ヴィクトリアは開口一番、武装錬金を操作。対峙する男の足下で穴を広げ、落とす。 その長い金髪は光を引きつつあっけなく地下へ没したが、見ても表情は晴れない。 次にどういう現象が起こるかは短い応酬の中で学習しているからだ。 現にそうなった。 眼前に光がほとばしり、地下に落とした筈の学生服姿の男が言葉の続きを紡ぐのだ。 「フ。本来ならば」 ヴィクトリアは無視を決め込むコトにした。目を不機嫌そうに細めたまま歩みを進める。 落とした筈の相手が『瞬間移動で』眼前に来る不思議さを、いちいち質問するほど相手に興味 はない。ただ二度会った程度の間柄に過ぎないのだ。 されど男はヴィクトリアが横を通り過ぎるのを明るい表情で見送って、それから同じ歩幅でつ いてくるからますます顔が強張る。あまつさえ、聴きもしない話を振られれば、尚。 「本当は残党の征伐、俺が出張る予定だった。全くなぁ、セリフも用意してたんだが」 『七撃程度造作もない』 『舐めてもらっては困るな。ブレミュで形成できる武装錬金が付け焼刃など、百も承知。故に剣 技も磨いてある。最終的に功を奏すのは地に足つけて培った己の力だからな』 「とかな。どうだ。格好良いとは思わないか。俺は思う」 男は身振り手振りを交えて芝居がかったセリフを朗々と述べたが、無視。 「だが……フ。王族につけて遜色のないウィッグでも、用途誤らば紐以下。泣きたくなる」 ワザとらしく洟をすする音がした。 泣き真似のようだが鬱屈のヴィクトリアには逆効果の諧謔だ。瞼が軽い痙攣をきたした。 「聞き分けなき音楽隊を一ツ所に束ねんとキリキリ包囲すれば難渋に色艶を追い出される。 鶏口牛後というが嘘だな。零細企業のリーダーは気苦労しかなく、俺の立場も正にそれ」 口調と裏腹な気取り満載の髪を撫でる気配を合図に、ヴィクトリアは堰を切った。 「組織論をぶつなら余所でやって。愚痴をこぼすなら余所でやって。付き合う気分じゃないわ」 いつか誰かにいわれそうな言葉を振り返りもせず吐き捨てると、背後の男は肩をすくめたよう だった。 「これは失礼。ならば気分にそぐう話題を選ぶとしよう。もともとそちらが本題だしな」 総角主税は悠然と語り出した。 風がやむと残暑特有の粘っこい熱気が全身にへばりついてきて、秋水は襟元を開けた。 もしかすると傷が熱を持っているのかも知れない。そんなコトを思いながら、隣を見ると 「びっきーのコト、ブラボーから聞いたよ」 まひろが鉄柵に手を当てながらちょうど語り出すところだった。 「どこまで」 秋水の背筋に一瞬冷たい物が走ったのは、ヴィクトリアの過去を語る上で秋水自身の過去 までもがまひろに伝わっているのではないかと疑ったからだ。 こういう危機察知は剣客特有の物であり、半ば当たっている。 「本当はホムンクルスで、寄宿舎からいなくなったって所までかな。うん。それだけ」 隣に佇む一回り小さな少女は、どこから遠くを見ながら静かに答えた。 (……だろうな) 常識的に考えれば防人が秋水の承諾なく過去を話すコトはない。 その点で秋水の猜疑は半ば外れているとはいえたが、しかし秋水の知らぬところで斗貴子が 激情を持って暴露し、偶発的にだがまひろも知ってしまっているから、半ばは当たっている。 「あ! 大丈夫だよ! ホムンクルスってさ秋水先輩、昔ね、学校で見たんだけど」 まひろは突然後ろ髪を引っ掴むと器用な手つきで三角筋のように折りたたんだ。 奇行に唖然とする秋水にかまわず彼女はさらに右目を閉じ、左目に左手を当て、文字通り目 いっぱい広げた。それでも足らないのか、右手の指をぐぐーと力いっぱい広げて秋水に向って きしゃーっと構えて見せた。 「こうね、くわせろぉ~、くわせろぉ~って言ってくるのは確かに怖かったかな。でも」 肩を揺すって「くわせろぉ~、くわせろぉ~」に何ともいえない味と抑揚を加えているのは、どう やら調整体の物真似のつもりらしいが、しかしまひろという特殊なフィルターを通すとどうも人 類の敵という感じがしない。というかただ変な顔をした女の子がいる訳で、そんな者と夜の学 校の屋上で対面している状況があまりにシュールだ。 「でも、びっきーは違うから怖くないよ!」 真面目に接しているからこそ崩れるコトもままある。 「……分かったから真似はやめてくれ」 「え、何で? 似てないかなぁ?」 まひろは左目をぱしぱし瞬かせると顔をうつむかせ、唇に指を当てながら呟いた。 「これでも演劇部だから自信あったんだけど……」 ちなみに『調整体の物真似をしながら』、いかにも分かってない様子を浮かべるもんだから、 それを直視している秋水は精神に異様な波が襲来するのを感じた。 「い、いや似てるとかそういう問題ではなくあまり俺を見られると君に対して無礼な反応が」 秋水の声が震えているのは恐怖とかそういうモノじゃないとまひろは悟った。 (ウケてる。笑いかけてる!) 悟ったからとてこの爛漫な少女が矛を引くというコトはない。 カズキの武装錬金を見るがいい。兄妹揃って気質の基本は前進と刺突なのだ。 「秋水先輩!」 「何だ」 「くわせろぉ~! くわせろぉ~!」 気合いっぱいのまひろが秋水をひっかく真似をしたその時。 静かな屋上に堰を切ったような、しかしそれでも努めて小さくしている笑い声が響いた。 総角の神出鬼没さはどうだろう。 ヴィクトリアが地下を歩いているといつの間にか目の前に現れて、しばらく愚にもつかない雑 談をした後、こうもいうのだ。 「どうだ? 俺達の仲間にならないか?」 「嫌よ」 「以前お前を寄宿舎に連れていった香美は賛成だそうだ。それに彼女以外に女の子は二人も いるからあまり堅苦しくもない。まぁ、香美と鐶は小札に比べたらルックスもスタイルも一枚落 ちるが、基本的には気のいい連中だぞ。どうだ。香美の顔を立てないか? 後ろにいらん物 がついてるがな。本当にいらんよなあアレは。この前小札にちょっかい出したし」 「私には関係ないわ」 「そうか。まぁこっちは気が向いたらというコトで。ところで知ってるか」 金髪を束ねたヘアバンチがからからと音を立ててぶつかり合った。 「本題はもう終わりでしょ。気がすんだらさっさと出て行って」 首だけ捻じって総角を睨む。耳の遥か下でまだ衝突しているヘアバンチはヴィクトリア自身の 怒りを証明しているようだった。 ただしその音源を見る総角の眼差しはアメリカンクラッカーでも見るように牧歌的で、気色は 朗々としたままで一切の揺らぎもない。ヴィクトリアは少し、その頑健さが羨ましくなった。 同じホムンクルスでありながら、どうして彼は余裕綽綽で、ヴィクトリアは窮々としているのか。 思うと羨ましさは即座に妬ましさに変わり、眼差しに少し刺が混じる。 「アイツ、残党征伐でお前の追跡を断念したとか。何しろ貴信や無銘が手傷を負いながらも頑 張ったからなぁ。アイツだけしか出撃できず、しかも行かねば寄宿舎が襲われると来ていた。 大変だな奴も。リーダーもだが使われるだけの存在も等しく辛いらしい」 (え?) 生意気そうに釣りあがった目の中で瞳孔だけを見開いて、ヴィクトリアは総角を見た。 期せずして正中線をすべて総角に差し出している。 知らぬ間に向き直っており、そうさせるだけの驚きが爆ぜていたようだ。 「驚きより嬉しさの方が大きそうだな。やはりアイツは気にかかるらしい」 総角のヴィジョンが冷えた瞳の中で前傾し、ニヤリと笑った。反応に気を良くしたらしい。 「う、うるさいわね。アイツのコトなんか別に何とも思っていないわよ」 「フ。ちゃんと名前を呼んでやらないと可哀想だ。えてして余裕という物は、そういう省略のな さから生まれていくものだ」 見透かされている。思うとヴィクトリアはついムキになって反論した。 「アイツっていったらアイツよ。早坂秋水に決まってるでしょ」 何をいっているという表情で当然のように回答すると、意外な答えが返ってきた。 「ほう。俺は別に秋水を名指しした覚えはないがな。むしろ前後の文脈からすれば、まず香美を 連想しそうな物だが」 ヴィクトリアは素早く会話を頭の中で手繰って、総角が秋水はおろか錬金の戦士すら連想させ ない文脈で話していたのに気づいて、小さな唇を戦慄かせた。 第一、言葉上での反撃を目論むのなら、名前を呼べといった当人がわざわざ代名詞を用いてい る矛盾こそ指摘すべきだったと後悔した。 「わざわざ言い出すとは余程だな。アイツといえば秋水、か。奴の友人としては嬉しい限りだ」 美形が余裕たっぷりの笑みを浮かべたその時、ヴィクトリアは屈辱を露にして数秒呻いたが、 さっさと踵を返して水晶体から相手を追い出し、傲然と大股で歩きだした。 彼女にしてはやや珍しい、芯からの少女的感情による行動だ。 (なんであんな奴のコトなんか気にしなきゃいけないのよ) 蔑視を胸中の秋水に送りながらも、実は追跡を期待していた自分も確かに居たワケで、その あたりのもやもやが際限なく苛立ちを呼んでくる。 「……君は少し空気を読むコトを覚えてくれ」 無理な笑いでちょっと血を吐きながら秋水はまひろに訴えた。 当人も忘れていたが逆向との戦闘で肺腑を抉られる傷を負っており、笑った瞬間に喀血して しまったのだ。 それを見た時のまひろの動揺ぶりと始末の騒がしさは描くまでもない。 とにかく始末を終えると、まひろは「ゴメン」と謝った。 「気にしなくていい。不可抗力だし俺自身も傷を忘れていた」 もはや最敬礼というより腰を九十度近くまで曲げて低頭恭順極まりないまひろに呼びかけると 彼女はバネ仕掛けのおもちゃのように勢いよく栗色の髪をたなびかせつつ態勢を戻した。 表情は気まずそうにしながらおろおろもしており、まとまりはないが代わりに毒気もない。 見ているだけで秋水は頬の奥の筋肉が笑みに緩んでいきそうな気がした。 騒がしい血液始末もあったが、結果としてまひろの調整体の物真似に笑ったのは良い傾向な のかも知れない。 「ゴメンね」 「気にしなくていい。むしろ俺は君に感謝すべきかも知れない」 秋水は意外な言葉がするりと出た自分に内心驚きながら、どうしてもそれを語らねばならない という気持ちになり、唇を動かした。
https://w.atwiki.jp/sakumamayu_wiki/pages/28.html
[永遠のキズナ]佐久間まゆ ←前へ アルバムへ 次へ→ セリフ一覧 ※セリフをクリックで吹き出し内を変更 あいさつ アイドルコメント ウェディングドレスを着るときは…大好きな人と結ばれるときだと思っていましたけど…今日は同じくらい幸せな日かも…。Pさん、まゆのドレス姿…似合ってますか…? うふふ♪ マイスタジオ ケッコン…したいですか…? この絆…大切にしたくて… ずっと…ずっと待ってたの… まゆとPさんの間には真っ赤な絆が結ばれてます… お仕事 お仕事 キレイに撮ってくださいね♪ これはお仕事だけど…でも… 本気になっちゃいそう…うふ♪ Pさん、まゆ、このチャペル…気に入っちゃいました♪ お仕事(親愛度UP) Pさん、ほら、まゆの隣に立ってください…ねぇ LIVEバトル ねぇ…誓って…? 親愛度MAX マイスタジオ Pさん、手をとってください…ほら…はやく…ね…? お仕事 Pさんとまゆは、ずっとずっと…いっしょですから 親愛度MAX演出 まゆを選んでくれたPさん…まゆも、貴方のために…もっともっと素敵なアイドルになるって…誓います…。うふふ♪ ボイス集(外部リンク) 準備中 思い出エピソード 前編:アイドルギャラリーで自由に閲覧可能 前編のテキストを表示する 後編:[永遠のキズナ]佐久間まゆ特訓前後いずれかを入手し、スターエンブレムで肩書を交換すると閲覧可能 後編のテキストを表示する 動画(外部リンク) ローディングキャラ スタンプ シンデレラガールズ劇場 第314話 第315話 ページが正しく表示されない方はこちら
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/10972.html
275 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 21 41 32.03 ID HtTOifjo0 オンラインでのセッション経験しか無かった俺。 先日、地元のサークルのオープン例会に初参加したんだがあまりにひどかった。 シーン制のシステムだったんだけど、各自が自分のシーン以外の時に PL3がヴァルヴレイヴのプラモのヤスリがけを始め PL4がPLとか艦これを音を最小にして始めた。 PL2はヴァイスシュヴァルツ(TCG)のデッキのデッキをいじっている。 真面目に参加してるのは俺(PL1)とPL5だけ。 GMは気づいているが何も注意しない。 俺が控えめに「あの~集中してやりましょうよ…」って言ったんだが 「あ~うち、いつもこんな感じだからw だいじょぶだいじょぶ」 だいじょぶじゃねーよ。←ヘタレなので口には出せなかったが。 休憩時間、トイレでPL5の人が謝ってきた。 「本当にすみません。もし足があるなら◯◯町(50キロくらい離れたところ)でやってる コンベンションなら、普通の人ばかりですから…」 PL5の人によると三ヶ月くらい前にも女性3名がニコニコ動画を見てやってきたらしいんだが この調子で相手して、その後二度と来なかったとのこと。 自分のシーンじゃなくても真面目に聞くってのはマナーじゃないかと思うんだけど… 277 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23 24 13.80 ID 5K8RSu0Z0 もんじゃ焼き調理しながら 艦これとデレマスやってた奴に比べたらまだマシだわ(白目) スレ428
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/625.html
永遠のともだち ◆gry038wOvE ────お願い、世界を救って ────全ての世界が侵略者に狙われている ────急いで ────ウルトラマンたちと共に、侵略者を倒して! ◆ 「イヤ~~~~~!!!!」 あの殺し合い──変身ロワイアルを終えた蒼乃美希は、今度は全く見ず知らずの場所で、体長50メートル以上の怪獣に追われていた。 どうして怪獣に追われているのかは当人の胸に訊いても定かではない。 今はただ、美希は腕を振り、足を動かして前に進むだけだ。問題は、どう頑張ったところでも、美希の人並の歩幅での精一杯の走りは、規格外の巨大さを誇る怪獣の歩みに距離を縮められているという事である。 「何なのよ、もう~~~!!!」 思わず空に叫ぶが、彼女の魂の訴えを聞いてくれる者はいない。 周囲は人っ子一人いないゴーストタウンだ。──いや、それはそもそも、「タウン」と呼ぶには、美希の持つ常識と大きく外れすぎているかもしれない。 いきなり怪獣に見つかり追われ、何かを考える間もなく必死で逃げている物で、自分が帰って来た場所については、あくまで一瞬の印象と考察しか持っていないのだが、ひとまず、その時に美希が抱いたこの場に関する情報を思い返し、情報を纏めてみよう。 そもそも此処が、美希が帰るべき場所ではないという事は、辿り着いたその瞬間から彼女の本能が告げていた。 ──おそらくは、“美希が帰るべき「星」ではない”か、“美希が帰るべき「世界」ではない”。あるいは、その両方であると思えた。生存条件があった事が奇跡的なくらいだろう。 周囲を見渡す限り、全てが光の建造物で埋め尽くされ、街全体がエメラルドやクリスタルの宝石で出来ているかのような土地だった。これがまず異常だった。アスファルトやコンクリート、アルミのように美希たちの生活する星に当たり前に存在している材質はなく、そうではない何かで構成されている。──まさに光り物だけで作られた女の夢のような都市だ。 ただ、それらは、「建造物」といっても、それは美希の──いや、一般水準の人間の身長たちと比べても、明らかに合わないサイズなのである。 はっきり言って、規格外だ。大きくともたかだか身長2メートル程度の人間では、一つ完成させるのに天文学的な時間と手間をかけるような──それこそ、見上げても果てのないほどの大きな建物たちが並んでいた。 まるで、あのウルトラマンノアやダークザギと同じくらいの体格の巨人に生活条件に合致するかのような──いや、そうとしか思えない街なのである。美希たちと同じ等身の人間がこんな物を作ったって意味はない。 ここは、ナスカの巨大な地上絵を落書きできるような生物が住まう場所ではないか──? 迷い込んでしまった場所で、最初は自分が小さくなったのかとも思ったが、そもそもこれだけ周囲の光景が地球と違ってしまっていれば、そんな誤解さえも起きない。自分とは規格の違う別の場所に誘われてしまったようだとしか思えなかった。 ──そう、美希は知らないが、彼女がブラックホールによって転送された場所は、銀河系から遥か300万光年離れたM78星雲に位置する、ウルトラの星なのである。 要するに、ここは、蒼乃美希とは縁もゆかりもないような星だが、どういうわけか、彼女はこの世界に飛ばされてしまい、変な目玉の怪獣に一人で追われる状況になっている。 彼女が帰りたいのは、ウルトラマンの故郷ではなく、自分の故郷の地球だ。しかし、何らかの不幸な事故か導きによって、ここに転送されてしまった美希は、とにかく目先の障害から命を守るしかなかった。 見る限り誰もいないビル群の中を、どすどすと歩いて追ってくる怪物。 怪獣から必死で逃げる美希。 (っていうか、何なの……! あの目玉の怪獣はっっ!?) 奇獣ガンQ。 体長は55メートル。体重5万5千トン。 ちなみに生命がない。 ……という怪獣のデータはどうでもいいとして、問題は、美希は反撃が一切できないという状況である。 例によって、美希のリンクルンは石堀光彦によって光の吸収を受けた際に力が消えてしまい、完全に美希からキュアベリーへの変身能力を奪っていた。勿論、孤門一輝に継承されてしまったネクサスの光での変身もできない。 更に言えば、地の利も悪い。見知らぬ土地であるのは勿論の事、美希が普段履いているスニーカーはこの不明な材質の上を走るのに適した構造をしていないし、美希の身体も宇宙の果ての星で息を切らすには向いていなかった。 現状、策はないが、生きるには上手く策を講じて、ガンQを撒いて逃げるほかない。 「キィィィィィィィィッ!! キュィィィィィィィィィ」 一方、ガンQは、余程美希の事が好きらしく、巨大な目玉をハートにしてしつこく追ってくるのだった。 好意を持ってくれるのはありがたい話であったが、残念ながら美希の身長は164cm。ガンQと比べると54メートルほどの身長差があり、その身長差では、指先で触れられただけで潰れてしまう。今も地鳴りで体が飛び跳ねそうなほどだ。 「好きになって貰っても、お返しが出来ないから~~~!!」 というわけで、両腕を振って美希は好意を無碍にする。 あの目玉を見ていると、どうしても何を考えているのかわからず、不安になる気持ちを抑えられなくなる。 好機とばかりに、怪獣の入って来られないような建物と建物の隙間を見つけ、そこに全速力で駆けていき、すぐさま陰に隠れると、美希は少しだけペースを落として百メートル程度だけ走った。 ガンQがどれだけ美希をちゃんと見る事ができていたかはわからないが、人間がすばしっこく逃げていく蟻を追えないように、ガンQもこれ以上美希を深追いする事は出来ないのではないかと思ったのだ。 (はぁ……はぁ……まさか、帰って来たと思ったら怪獣に追われるなんて……) こうして建物の陰に隠れると、狙い通りであった。遂に細やかな美希の姿はガンQの身体にある無数の目にも映らなくなったらしく、ガンQは、きょろきょろと巨大な目を回しながらどこかへと去って行った。先ほどの一瞬で死角に入れたのは奇跡だ。 (ふぅ……でも、何とか向こうに行ってくれたみたいね) ぜいぜい息を吐きながらも、彼女はまた百メートルほど来た所を戻り、遠目で、ガンQが背中を向けているのを見て、ほっと胸をなで下ろした。 しかし、顔をそーっと出して、ガンQが去って行くのを黙って見つめる。 この陰に隠れていれば、しばらくは安全だろうと思った。色々と考える事はあるが、ひとまずはこの疲労をどうにかしなければ……。 ──と、そんな時だ。 「──おーい、お前、そんなトコで何してんだー!?」 またも、巨大な怪物が、屈んでこの建物の陰を覗いて見ていたのである。 「きゃああああああああああああああああああああああああああーーーーっ!!!!」 反射的に、美希は大声で叫んだ。 逃げ切ったと思った瞬間に、金色の瞳と銀色の肌を持つ、仏像のような巨大な顔が迫っていたのである。それがあまりにも大きすぎた為に、ほとんど建物の陰には光が差し込まず、美希はそれに圧迫感を覚えた。 ここに住んでいる者は、先ほど予感した通り、やはり50メートル大の姿をしているらしい。 ──ただ、ガンQと比べると、体格だけは人間の形をしていて、何故か流暢な日本語を普通に喋っている。あれを怪獣と呼ぶのはまだしも、彼を怪獣と呼ぶのは何かが違うようだ。 彼は何者だろう──。 「驚く事ねえだろ。なあ、この辺りで目玉の怪物を見なかったかぁ? ……って、ん? お前、まさか、蒼乃美希かっ!?」 美希の方は恐る恐るといった表情であるが、どうやら相手が自分の事を知っているという事だけは確認できた。 しかし、こんな知り合いはいただろうか──と、美希は少し考える。 もしかすると、こんな相手にもファッションモデルとして名前を知れ渡ってしまっているのだろうか。 「──俺はウルトラマンゼロ! お前たちの活躍、ちゃんと見てたぜ!」 「う、ウルトラマン……?」 ──どうやら違ったらしい。だが、それでも充分驚きは大きかった。 彼の名はウルトラマンゼロ。──想像するに、美希があのバトルロワイアルで出会ったウルトラマンネクサスやウルトラマンノアの親戚のような存在だろうと思える。 言われてみれば、顔立ちはウルトラマンネクサスやウルトラマンノアにも似ていた。──元々、それらの顔をはっきりと眺める機会があったわけでもないが、特徴的なフォルムだったので記憶の片隅には残っている。 美希の知るウルトラマンはもっと人格を廃された無感情で無口な者だったので、意外な気持ちが大きかった。こんなにも感情的で豊かに喋る物だとは思っていなかったのだ──まるで、神のようにも思っていたが、彼はそこらの普通の若者のような口調である。 敵対する態度を見せる様子はないが、しかし、このゼロも実際のところはわからない。殺し合いの中で残酷な裏切りを経験した美希には、まず疑る事も必要になってくる。 「ああ.! ここはウルトラマンたちの住む星だ! まっ、あのイカみたいなウルトラマンとは、別に知り合いってわけじゃないんだけどな。……で、美希。巨大な怪獣を見なかったか? 目玉の怪獣が一体、脱走しちまったからこの辺は危険なんだよなぁ」 「め、目玉の怪獣……?」 美希は、その言葉を聞いた時、ゼロの事を考えるのをふとやめて、やや顔を引きつらせた。 だんだんと美希の顔色は青ざめ、言葉を失う。彼女の視界に、映ってはいけない物が映り始めたのだ。彼女の身体を伝っていく鳥肌と、言い知れぬ不安。 ────あざ笑う眼。 「あ、あれ……」 美希はゼロの背後を指さした。 彼女の視界には、ウルトラマンゼロの真後ろにガンQの巨大な目玉が迫っている姿があったのだ。──ゼロは気づいていないようだが、美希にしてみれば、自分のもとにかなり大きく影が広がっている。 あのガンQにこの場を気づかれてしまったらしい事が美希にも今、わかった。ゼロの声量に惹かれてきてしまったのだろう。 「おわっ!」 刹那──、背後を振り返ろうとしたゼロの顔が、美希を挟む二つの建物に向けて、叩きつけられた。ガンQの攻撃による物だ。 建物が衝撃のあまりに轟音を鳴らし、思わず美希は両腕で顔を覆うが、流石に材質も頑丈なようで、その程度では崩れない。 問題は、不意打ちを受けたゼロの方だ。 顔面からこの頑丈な建物に突っ込んだだけあって、衝撃は大きく、ゼロも鼻の先を抑えている。 「いてててててて……何しやがるっ! この目ん玉野郎! 捕まえたのに逃げやがって!」 「キュィィィィィィィ」 「──ったく! 美希! そこで見てろよ、こいつは俺が倒してやる!」 ゼロは、敵を仕留めたと思いしめしめと両腕を振るガンQの方に、向き直るように立ち上がった。 思わず、美希はその背中に圧倒される。 赤と青と銀の三つの色で構成されるウルトラマンゼロの背中は、確かに美希が見てきたウルトラマンたちの共通のカラーと全く同じだった。その意匠を継いでいる彼は、もしかすると、確かにウルトラマンであるかもしれない。 これまで出会ったウルトラマンよりやや線が細くも見えるが、それだけ絞りこまれた姿であるとも言えるし、悪人のようにさえ見える貌は背に転じると頼もしくも見えた。こうした人間味もウルトラマンの本質なのだろうか。 「キュィィィィ」 「せぇやっ!」 ガンQの目玉型の頭部を両腕で抱え込んだゼロは、両腕にエネルギーを溜め、ガンQの巨体を放り投げた。ガンQは、背中から向かいの建物に向けて叩きつけられ、垂直の滑り台に投げ込まれたように壁面を伝って落下していく。 ──華奢に見えて、ゼロは強かった。 尻から落ちたガンQは怒った様子で、触手のような両腕をただ自らの両脇で振って癇癪を起こしていた。 直後、ガンQはおもむろに立ち上がる。 そして、目の前の敵に向けて突進を始める。──迎え撃つゼロは、どんと来いとばかりに胸を張って待ち構えていた。 自信に満ちたゼロの胸板にガンQの渾身のタックルが叩きこまれる。体重で言えばガンQに分がありそうなのは、両者の体格を見れば一目瞭然だった。実際のところ、ゼロはガンQと比較して2万トンほど体重が劣る。 「ぐっ!」 ゼロの全身に衝撃が駆け巡り、固く踏み込んでいるはずの両足もゆっくりと滑るようにして何メートルか後ろに退がって行った。 美希の視界で、だんだんとゼロの巨大な足のビジョンが広がって来る。美希は恐怖のあまり二歩ほど足を下げた。美希は、おそるおそそるゼロの背中を見上げた。 彼は、土俵際の踏ん張りを見せながら、──それでもまだどこか挑発的にガンQと張り合っているように見えた。 「──そんなに何度も吹き飛ばされたいなら……望み通りにしてやるよっと!」 「キュィィィィィィィ」 「────はあッ!!」 しかし、両者のせめぎ合いは、ゼロの掛け声と共に終わりを告げた。 次の瞬間、またも抱え込まれたガンQの身体は、ゼロの両腕に掬われるようにして空高く投げられてしまったのだ。 確かにゼロは巨人であるが、それは人間と比較した場合の話で──ガンQのようにゼロよりも明らかに体格が大きい怪獣を相手にすれば、そのパワーバランスで勝るとは限らない。それをこうもあっさりと投げ飛ばせたゼロの両腕は、一見すると細く見えても力強いのであった。 彼は、この程度の怪獣は何度も倒してきた若きウルトラ戦士である。 美希はそれを見て、足を両側に滑らせてへたり込んだ。 結局のところ、ゼロが敵か味方かは判然とせず、ガンQの追跡がなくなったとしても、ゼロがそこに立っている限り、美希の心はまだどこか安堵しきれないのだろう。──とはいえ、より強い者がそこに残ってしまった事への畏怖の念としては少々弱すぎるくらいであった。 ここから先、逃げ出す気力は、もう美希にはない。 「あっ! いっけねぇ、放り投げちまった……捕まえろって言われてたのになぁ」 当のゼロは、ガンQが星になった空を見上げて、まずかったとばかりに頭を掻いている。──こんな肌の質が違う怪人でも頭がむず痒い時があるのだろうか。 とはいえ、ゼロとしても、既に捕獲すべき怪獣の事よりも気になる事象があったのか、すぐにそちらに気を向けた。 「……おーい、美希~」 「……」 「美希ちゃ~ん。………………お~い」 美希が返事を怠ったせいで、途端にゼロの声がだんだん勢いをなくしているのがわかった。美希の目の前で視界に刺激を与えるように腕を振ってみるゼロだが、そんな美希の視界に実際映っているのは、全てを埋め尽くす昏い銀色だけだ。 しかし、どんな意味を持つ仕草をしているのかは美希にも何となく解する事ができた。どことなく人間臭さも感じる。 美希は、勇気を振り絞って、目の前の巨大なウルトラマンに訊いてみた。 「……あの、……助けてくれたのよね?」 「おう、ちゃんと意識があったのか! 返事くらいしてくれよ!」 「あ、ごめんなさい」 「──で、なんだ? なんでこんな所にいるんだ? 美希」 「それはこっちが聞きたいくらいなんだけど……」 間が悪かったのか、先に投げかけた質問は流されてしまう。 知り合いでもないのに妙にフランクな口調も気になったが、それよりも美希が気になっているのは、ウルトラマンゼロは味方のつもりか敵のつもりかという一点だ。 疑り深くもなっているが、あの殺し合いを生き残った所為──特に、土壇場で石堀光彦の酷い裏切りに遭った所為でもあるのだろう。 「つまり、何も知らないって事か。──やっぱり親父たちに聞いてみるのが一番いいのか?」 「そ・れ・よ・り!! あなたは私を助けてくれたの!? ──っていう、さっきの私の質問の答えは!?」 美希は、どうにも、このゼロに敬語を使う気が起きなかった。 相手が人間でないのも一つの理由だが、ゼロの馴れ馴れしく、口の悪い男子生徒のような口調にどうも違和感がある。神聖なウルトラ戦士のイメージが一瞬で崩れる姿だ。 佐倉杏子が変身したウルトラマンですら、まだもう少し素の要素が抑えられていたような気がするが、ゼロは一切それがない。 「──ん? おっと、悪い悪い。えっと……まあ、これも助けたって事になんのかな? ……俺たちこの星の住人──ウルトラマンは、ずっと、そうやって来た種族なんだ」 「誰かを助けながら生きてきたって事……?」 「ああ。特に、お前たち地球人との絆は深く長いもんだぜ! ──っつっても、今回はお前らに物凄い迷惑をかけちまったか……」 ゼロが、そう言って項垂れた。語調が少し優しく、彼が今のところ、美希に初めて見せた落ち着きを感じさせた。……いや、落ち着きというより、意味深な湿っぽさというべきかもしれない。 溜息をつくような声を出しながら座するゼロの近くに、美希は眉を顰めて寄った。 「どういう事? 一体、何があったの?」 「美希……さっきまで、お前、殺し合いをさせられてただろ……?」 「え?」 その美希の言葉には、色々な想いが詰め込まれている。 特に、「何故、初対面のゼロがそれを知っているのか」──というのが大きな疑問だ。 しかし、考えてみると、ゼロが開口一番に美希の名前を告げ、「活躍を見ていた」と言っていた事も繋がる話であった。その言葉はずっと美希の中でも違和感として残っていたが、ゼロとガンQの戦いを前に忘れかけていた。 ウルトラマンゼロは、あの殺し合いについて何かを知っている。 「あの殺し合いを催したのが、かつてこの星で生まれ、この星の仲間を裏切ったウルトラ戦士──カイザーベリアルなんだ。だからな……今、この星中の人間が責任を感じてる」 「ベリアル……。その名前は、知ってるわ。でも、なんであなたが、私が巻き込まれてた戦いを知ってるの!?」 「それは、俺だけじゃない。宇宙中──いや、全世界中の人がもう知ってるんだ。あの戦いは全部、ここしばらく、世界中に中継されてたからな……」 「──っ!?」 美希は、驚くと同時に──どこかで、それを納得して飲み込んだ。 確かに、百人にも満たない人間を相手に、あれだけ大がかりな事をするのは何らかの目的がなければおかしい話で、おそらくはあの出来事は映像データ化されている。──実験、と言われていた気がするが、それは世界中に配信されたのだろうか。 考えてみると、あの殺し合いは「ゲーム」という形式を取っていて、どこか娯楽性を持っていたようにも思う。 それは世界に公表する為なのではないか──? 美希の五指は自然と強く握られた。 「……とにかく、美希! ここにいるより、一緒に俺の親父たちがいる場所に行こう! 詳しい話は俺だけで話すより、親父たちに聞いた方がいい!」 ゼロはそう言うが、美希にはゼロが敵なのか味方なのか、まだ確定していない。 この場から出て取って食われるかもしれない心配もあったが──それでも、美希はゆっくりと前に出た。 ここで信頼できる相手が通りすぎるのを待っても仕方がなく、このゼロというウルトラマンを信用する以外にベリアルや殺し合い、この場について知る方法は見つかりそうになかった。 第一、疑り深く務めようとしても、必ずしもそうなりきれず、時には直感であっさりと人を信じてしまうのも、また人間の性である。 「さあ、この手に」 「手……? ああ」 ゼロは右手を差し出し、美希は彼の指先にそっと乗っかった。 彼が攻撃したり握りつぶしたりする気配はなく、美希は、それでひとまず安堵するが、直後にゼロが腕を上げて、美希を自分の胸元のあたりまで持ち上げた時、美希の背筋が凍った。 「ちょ……ちょっと!」 「ん? なんだ?」 「高い、ここ高いっ!!」 だいたいゼロの胸元のあたりと言うと、高度三十メートルほどである。 何らかの補助手段もなく、ただ掌の上にちょこんと載っているだけでは、かなり肝が冷えるほどの高さだ。──しかし、ゼロにはそれくらいしか美希を運ぶ手段はないのだった。 乱雑なように見えるが、ウルトラ戦士が地球人と一緒に移動する時はそれが一番手っ取り早い話で、ゼロも別段、その方法に抵抗を示してはいない。 それに、中には喜んでくれる地球人も多いくらいだった。 「安心しろよっ! ……絶対落ちないから」 「保証あるのっ!?」 「俺を信じろ!」 「無理よ、会ったばっかりだもん!」 「ったく……こんな事で死なせねえよ! お前だって、ウルトラマンと一緒に戦ってきた地球人の仲間だ──行くぜ!!」 「あああああ!! ちょっとおおおおおっ!!! 心の準備!!!!」 ゼロは、そのまま美希の意見を無視して、空に高く飛び上がる。美希は頭がくらっとするのを感じた。 だんだんと離れて行く地上──そこから落ちれば、一たまりもない状況。 しかし、ゼロは、美希をそこから落とさないよう、少し掌の中心を下げて持っているのがわかった。精一杯の配慮だが、確かにそこから地上が離れたとは思えないほど、風の抵抗を受けない形になっている。 美希の視界には、空から見上げたこの星の全貌が映し出され始めていた。本当に全てがエメラルド色とクリスタル色の光で包まれている街であった。 ──宇宙の神秘を体現したような美しい場所だ。 「──あれは!」 そして、先ほどまで見えていなかった巨大なタワーが見え始めた。あまりに美しい光景に、美希も怖さを忘れてそれに圧倒される。 それは、この星を築き上げたエネルギーの塊──プラズマスパークタワーであった。 人の心を魅了する輝きが、この街全体を灯しているのだ。この星にある人工太陽があのプラズマスパークタワーなのである。 ゼロは、ゆっくりと飛行しながらそこへ向かっているように思えた。 ◆ 美希がゼロに連れて来られた場所は、まさにそのプラズマスパークタワーの前であった。 このウルトラの星においても、最も厳重な管理が置かれる場であり、その周囲は歴戦の勇士たちが囲っている。宇宙警備隊に属する彼らが厳重な包囲をした上で、この場に現れたベリアル傘下の怪獣たちと戦う事になったらしい。 とはいえ、約一週間の時間をかけてウルトラ戦士の方が怪獣軍団を鎮圧し、多くを葬り、多くを捕えた。──死亡した怪獣は、怪獣墓場を彷徨い、供養される事になるだろうという。 ベリアルに最も近い参謀のメフィラス星人・魔導のスライといった強敵もウルティメイトフォースゼロの奮戦によって撃退する事が出来たらしい。 美希は、辿り着くまでに、彼の手の上で、そんな幾つかの話を聞いた。 「着いたぜ、美希」 「──え、ええ……」 到着した頃に、美希とゼロの前に、何人もの戦士が空からこのタワーの前に立ちふさがるようにして並んだ。まるでゼロを待っていたようだった。 赤と銀の体色を持つウルトラ戦士たちが、それぞれ背中にかけた巨大な赤いマントを翻す。 ゴーストタウンのようだと思えば、このように何人もの巨人が集まっているなど、不思議な星である。 ──何でも、彼らが、ゼロの父と、その仲間たちらしい。 かつて、この世界で地球を守ったウルトラ兄弟だ。今はそれぞれが宇宙警備隊の中でも相応のポストに就いている。再三のベリアルの魔の手から、このプラズマスパークタワーを守るのも今や彼らの立派な使命の一つであった。 ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウ……そこにいたのは、伝説のウルトラ6兄弟。 そして、ウルトラの父、ウルトラの母、ウルトラマンメビウス、ウルトラマンヒカリであった。 「ゼロ。その子は、もしかすると……?」 美希とゼロの前に現れたウルトラマンたちのうち、ゼロの面影を微かに持っている赤い戦士が前に出て声をかけた。彼こそ、ウルトラマンゼロの父であるウルトラセブンである。 彼もまた日本語を繰る。それは、かつてこの世界の日本で迫りくる侵略者たちから地球を守った経験による物だろう。 このウルトラマンたちの中でも、誰よりも地球という惑星を愛したのがこのウルトラセブンだ。 「ああ。あの殺し合いに参加させられていた蒼乃美希だ。──ガンQを追っていたら、路地で見つけた」 何人かのウルトラ戦士たちが、まじまじと美希の姿を見た。 怪訝そうでもあり、どこか懐かしそうでもあるその瞳。いずれも、妙な威厳を感じ、美希も恐縮する。一方で、ウルトラ戦士たちもまた、地球人の少女に対する敬意の念を心の内には抱いていた。 少なくとも、戦士としての年季は、美希やゼロとは桁違いであった。──美希は十四歳で中学二年生だが、ゼロは概ね五千九百歳で、地球人で言うならば高校一年生相当だという(地球人換算でも一応年上である事に美希は驚いていた)。 齢二万歳を超えている彼らは、そんな若者たちが相手にするには、些か貫禄がありすぎたのだろう。 「何故、こんな場所に地球人の子が……」 「ベリアルの転送が此処に誘ったとしか思えん」 「しかし、それに何の意味があるのですか、兄さん」 ウルトラ兄弟もまた、美希を見て混乱しているようだ。 美希がウルトラの星にやって来てしまった理由については、やはり殺し合いの後のブラックホールが原因だと思われているようだが、それでもまだ腑に落ちない。 「教えてくれるかい、どうして君がこんな所にいるのか」 美希にそうして直接訊いたのは、初代ウルトラマンであった。 彼もこうして美希に訊くのが最も早いと思ったのだろうが、美希自身もよくは知らないし、そもそもこうして威厳ある巨人に質問を投げかけられると、大きな責任が伴ってくる。 とにかく、それでも自分に質問が振られたからには、順序立てて話そうと意を決した。 「えっと……向こうにいた間の事情は知ってますよね?」 「ああ……辛かっただろう」 「……」 美希は少し、これまでを思い出して沈黙した。 ──辛い。 確かにそうだった。あれだけ友達が死に、自らも死の恐怖に直面する中で、そんな感情が湧きおこらないはずがない。しかし、何度もそれに耐えたり、時にはあの出来事が寝覚める前の夢のように淡い他人事のように思えたりして、辛くない時もあった。 だが、改めてそう言われると、自らの心の傷が可視できるようになってしまう。だから、暫し、言葉を失った。 それを察して、ウルトラマンは一言謝る。 「……すまない」 「いえ……。でも、その後で、私たちはあのブラックホールで転送されて、それから──」 美希は、その気持ちを押し込めた。 今、自分が問われている話に思考を戻そうと努める。 順序立てて話しているかのようだったが、本人は、順序立てて思い出そうとしていた。 (何があったかしら……そうだ……!) まず、ブラックホールで転送された後、ここに来る前にあった事を全て考えてみる。 美希自身も知らない幾つかの記憶の復元──これが自然に行われた時間軸調整が起き、それと同時に、ある夢やビジョンが美希の中に浮かんできた。 美希自身の未来の補完と同時に、ある少女の言葉が浮かんだのだ。 ────お願い、世界を救って ────全ての世界が侵略者に狙われている ────急いで ────ウルトラマンたちと共に、侵略者を倒して ウルトラマン──そうだ。 美希に誰かがそんな言葉を投げかけた記憶があった。それは、殆ど、美希たちの時間軸の補完と同時に行われた為、彼女の頭の中でそれと混濁されてしまいそうになっていたが、その中で「ウルトラマン」という単語が出てくるはずはない。 美希は、殺し合いの脱出と、ウルトラの星への到着の間に、「謎の少女との出会い」を経験したのだ。──あれは、現実に美希を誘った実態のある存在なのだろう。 「……もしかして」 ──まだ、自分の中で確信と言えるかどうかはわからなかったものの、思わず美希はそう口に出してしまった。 すると、初代ウルトラマンは美希に訊いた。 「何か心当たりがあるんだね?」 「……はっきりとはわかりません。でも、途中で、変な女の子に会った記憶があります」 「女の子?」 美希は、少しでも手がかりになればと、その特徴を思い出した。 彼女の記憶にあるのは、やはりそのファッションだ。──あまりにも装飾のない服装であったもので、却ってその特徴は思い出しやすい。 「白いワンピースを着た、赤い靴の……」 そう、その少女は白い無地のワンピースを纏い、赤い靴を履いていたのだ。年のほどは、10歳にも満たないかもしれないくらいで、現代人としては妙な神秘性と無垢な印象を覚えさせる姿だった。 だからこそ、夢と混同しやすかった部分もある。 そこまで聞いた時、一人のウルトラ戦士が声をあげた。 「兄さん! もしかすると、──僕も昔、地球で、それと同じ姿の女の子に会って、ウルトラマンのいない異世界に導かれた事があります。……正体はわかりませんが、多分、園子のウルトラマンと地球人の味方です!」 兄弟たちの中では最も若いウルトラマンメビウスの言葉である。メビウスという言葉に良い思い出はないが、あくまで同じであるのはその名だけだ。彼もかつて地球を守り、その星の人たちと未来を勝ち取ったウルトラ戦士である。 そんな彼もまた、どこかで美希と同じく、その「赤い靴の少女」に導かれた経験がある事を知り、美希は少し驚いた。 しかし、あの少女がウルトラマンの名を口にしたのは、もしかすると、こうしたウルトラマンとの出会いがあったからなのではないかとも思う。 「そうか……なるほど、あの戦いから脱出してここに来るまでに、何者かの介入があったわけだ。しかし、何故この子が……?」 「この子以外にも、もしかすると、あの戦いの生還者がこの星に来ているかもしれない。……まずは、この星のウルトラ戦士たちに、地球人を探してみるように呼びかけよう!」 ウルトラマンヒカリがそう言い、すぐにウルトラの父の許可を得て飛び立った。──こうして、一人が連絡すれば星全体に行き渡るネットワークがある。度々大きな事件が起こるせいもあり、星全体が団結している恩恵でもあるだのだろう。 他のウルトラ戦士たちは、全てここに居残っており、まだ美希の事情について問うてみようと思っているらしい。あるいは話してみたい事が幾つかあるのだろうか。 「キュアベリー、蒼乃美希」 次に美希に言葉をかけたのは、ウルトラ兄弟の長男であるゾフィーであった。 宇宙警備隊の隊長であり、この中で言うならば、ウルトラの父やウルトラの母に継いで役職の高いウルトラ戦士だ。実力もまた高く、地球で一部の怪獣には遅れを取る事があっても、 弟たちには非常に信頼された身である。 彼の胸や肩には幾つものボタンのような勲章が輝いている。 「──君に話さなければならない事は幾つもあるが、まずは君が落ち着いてからにしよう。大した持て成しは出来ないが、君は責任を持って我々が保護する」 「ありがとうございます。でも、話を聞く事は出来ます。……お願いします、ゾフィー隊長」 「……いいのかね?」 「ええ、聞かせてください」 「……君がそういうのなら。──まずは、あのウルトラマンノアとダークザギについてだ」 ゾフィーの気遣いは、美希には不要だった。 実際、周囲が配慮しているよりも、美希はまだ落ち着いた心情にある。ここにいるウルトラ戦士たちの不思議な暖かさが成してくれる物だろう。 変に話を後回しにするよりは、こうして早い内に美希の中にある疑問を払拭しておいた方が良い。 「ノアは、かつて、あのダークザギが現れた時、我々ウルトラ兄弟を救った戦士だ。我々の力を集めても、手に負えなかったあのダークザギを異世界に連れ出してくれた事がある。二人の正体は我々にもわからないが、ノアは大昔から存在し、あらゆる宇宙に伝説を遺した巨人だ」 「──彼らに会った事があるんですか?」 「羽根が生えたウルトラマンなら、俺も前に会った事があるぜ! 俺に良いモンくれたんだ。……でも、まさか、あんな所に連れて行かれてたなんてな」 ゼロが付け加えた。しかし、ゾフィーと比較すると、ゼロの説明では、どうもノアの偉大さという物が伝わり難い。 彼にしてみれば、物をくれる優しいおじさん扱いで、他のウルトラ戦士のようなノア崇拝とは無縁だった。──相変わらずなゼロの態度に少し呆れる。 だが、考えてみると、ノアといえば、一つ疑問がある。 「そうだ、孤門さんは……? 今どうしてるんですか?」 ウルトラマンノアに変身したのは孤門一輝だ。ブルンたち妖精のように、エボルトラスターにノアが同化していた原理はわかるが、あの戦いの後、孤門はどうしたのだろう。 こうして、まだ主催者が残って世界を侵略しているという事は、ノアはベリアルに敗れてしまったのだろうか──? ウルトラマンノアが個としての人格を有しているとしても、美希にとっては孤門一輝という人間の変身体であるという印象が強く、そういう訊き方をした。 そう言うと、ウルトラの父と母の実子であるウルトラマンタロウが口を開いた。 「……あの後、ベリアルの力でエネルギーを全てスパークドールズという人形に封印されてしまったんだ。その人形は宇宙に捨て去られた!」 「そんな……」 そう落ち込む仕草を見せた美希に対して、ウルトラの父が口を開いた。 「だが、安心してくれ。死んではいない。おそらく、ベリアルには、ノアを無力化し、宇宙に捨てる事しかできなかった……ベリアルはそれだけノアを恐れているという事だ」 ウルトラマンベリアルという名であった頃のカイザーベリアルとは戦友同士だったという彼も──今や、ベリアルに仇なす一人として名を連ねている。彼の中では、友の過ちを止められなかった己の罪深さを悔いる事よりも、一刻も早くベリアルを対処せねばならないという使命感が優先されているのだ。 「つまり、あの宇宙に行き、ノアを……孤門隊員を探す事が勝利の鍵になる」 ノア──孤門はまだ生きているという事であった。 それだけで少しでも希望が湧いて来る気がした。──いや、むしろ、ベリアルが絶対的強大さを持っていたこれまでに比べると、彼の弱点とも言えるノアの存在が明かされた今は心強ささえ覚える。 「言ってみれば、ベリアルもまた、心の闇を付け込まれた一人の人間に過ぎない。このプラズマスパークタワーのエネルギーに魅入られた、ウルトラ一族でただ一人だけの犯罪者だ」 「だが、奴はギガバトルナイザーやエメラル鉱石、アーマードダークネスなどの新しい力を見つけ出し、やがて我々だけの力では手に負えないような強大な悪になっていった」 ここまでの道のりでゼロに聞いた通りだった。 かつて、この星のウルトラ戦士の一人だったウルトラマンベリアルは、エンペラ星人の悪の力に惹かれ、プラズマスパークタワーを襲撃してエネルギーを奪取しようと謀った。しかし、それを阻止された彼は宇宙の牢獄に監禁され、ウルトラ族唯一の犯罪者として、この星の負の歴史となったのだ。 まるで、この善人ばかりの惑星の中で、ただ一人だけ、善も悪も持つ普通の人間が放り込まれてしまったような話である。──地球の人間である美希は、だからこそ、悪ばかりが肥大化し、強さに魅入られるようになったのかもしれないと思った。 善と悪が両立されるのが普通の人間だが、周囲が奇妙なほど優等生ばかりになると、そんな不良生徒も出てくるわけだ。その次元が異なっていたというだけで、本質は変わらない。 そんなベリアルは、その後、ギガバトルナイザーを手にして怪獣と協力し、この星でもまた「ベリアルの乱」なる物を起こしたという。それ以来、何度も蘇り、新たな力を得てウルトラマンゼロやウルトラ戦士たちの前に何度も立ちふさがる巨悪となっていったのだ。 「──今、奴が新たに手にしたのが、インフィニティのメモリだ」 ウルトラ兄弟たちの説明に、ふと、美希は自分の知っている単語が出てきた為、我に返るようにして、話に食らいついた。 「もしかして……それって!!」 「ああ。君たちの世界をかつて管理しようとしたラビリンスの──」 「シフォン……!」 インフィニティのメモリ──それは即ち、シフォンという赤子の妖精の事だった。 世界を管理する為の道具として管理国家ラビリンスにより利用され、己の意思に反して協力させられていたのがシフォンだ。 しかし、たとえ世界を闇に導くリスクのある存在だとしても、美希からすればシフォンは我が子も同然の仲間である。 かつて、美希はそんなシフォンを世界の管理者メビウスの手から助け出したのだが、美希たちと同じくベリアルに捕らわれてしまったらしい。 今、美希たちプリキュアたちのいる世界とベリアルの話が一本の線で繋がって来た。 「シフォンが、ベリアルの手に渡ったんですか……!?」 「ああ。あの戦いも、君たちの戦いを見る人間たちから溢れる膨大なFUKOと、君たちの持つ変身エネルギーを貯蓄し、全世界を自らの手で掌握する為に開かれたようだ」 「──そんな事の為に……っ!!」 美希は湧き立つ怒りを抑えきれなかった。 目的の為に、ラブや祈里やせつなを殺害し、挙句にシフォンまで利用するという──このベリアルの卑劣さ。その目的が、自らを満足させる為に全世界を手に入れる事だというのなら、余計に美希には許し難かった。 まだ、統制によって平和を謀ろうとしたメビウスの方が理念はマシだと言える。 「ベリアルは何処にいるの……!?」 美希は、今までよりも少し怒張の混じった声で言った。 それを聞いたウルトラ戦士たちは、少しだけ押し黙った後、どこか無念そうに言葉を返した。 「ベリアルは、バトルロワイアルが行われたあの世界にいまだ閉じこもっているんだ」 「そこに介入できるのは、一度あの世界に行って耐性がある人間──つまり、君たち生還者だけだ」 「……私たちだけでも、そして、今は君だけでも、ベリアルのいる場所に向かう事はできないだろう」 あのカイザーベリアルという強敵を倒す為に、力を持つ自分たちが美希に力添えする事が出来ないのが惜しいのだろう。 しかし、美希もまた、ただの人間である以上、一人で異世界に向かう事など出来ない。 異次元突破ができるウルトラ戦士は、耐性を持たない為にベリアルの元に行けず、耐性を持つ美希は、異次元を突破できないというわけだ。アカルンさえあれば話は別だが、それも今は杏子の手にある。 「──しかし、こうして集った以上、ただ一つだけ方法はある」 ふと、ウルトラの父が口を開いた。 方法を何となく悟っていたウルトラ戦士と、方法を思いつかないままだったウルトラ戦士とがいたようだが、そんな中で、彼は殆ど確信に近い方法を思案していたようだ。 「君とゼロと一時的に同化し、二人の力を合わせて次元の壁を突破するんだ」 同化──それは即ち、ウルトラマンネクサスと同じ要領で、美希の身体がウルトラマンゼロに変身できるようになるという事だろうか。 美希の中にも、かつて、同じようにウルトラマンがいた。 しかし、杏子から受け継いだネクサスの光は、決して良い思い出ばかりを想起させる物ではない。むしろ、美希の中にあるのは不安ばかりだ。 まるで強要されているような気がしたが、美希は何も返せなかった。 「えっ……」 「そうかっ! 美希と同化すれば、俺もベリアルを倒しに行ける……!」 「もしかすると、あの赤い靴の少女はこの為に、美希ちゃんをこの世界に引き寄せたのかもしれません。ゼロをあの世界に呼んで、ノアを再臨させる為に!」 「なるほど……グッジョブだぜ! 赤い靴の少女!」 どこか嬉しそうなゼロの一言だ。──ベリアルとの因縁が最も深いウルトラマンといえば、彼だからだろう。 彼も、自分の手でベリアルを倒したいという想いは、人一倍強かった。何度とないベリアルとの戦いの果てで、未だ決着がついていないのを少しは歯がゆく思っている身だ。 「……メビウス、ゼロ。それは、彼女が頷いた場合のみだ」 そんなゼロとは裏腹に、ウルトラ戦士たちは少し、沈んだムードであった。 何せ、ゼロの手の上にいる美希の様子に、歴戦のウルトラ戦士たちは気づいていたからだ。 まるで、その提案に乗り気ではないように、俯いて、拳を握って震えている美希の姿に──ゼロは、僅かばかり遅れて気が付いた。 「怖いのか、美希? 確かにベリアルは強敵だが──」 「違うっ……! そうじゃない!」 心配そうなゼロの言葉を投げ返す美希。 彼女の胸にあったのは、ベリアルという敵への恐怖などではなかった。──その為に戦う事には躊躇しない。 しかし、その手段として、“ウルトラマンと同化”する事が美希には怖かったのだ。 「あの時、ダークザギを復活させたのは、私の憎しみだった……! ウルトラマンの光を奪われてしまえば、その時またどんな事が起こるか──」 そう、ダークザギを復活させたのは、美希自身が最後に見せた憎しみであった。 石堀光彦が桃園ラブを殺害した時、遂に美希の中で、愛や希望よりも憎しみや絶望が勝り、ウルトラの光を、敵を“殺す”為に使おうとしたのだ。周囲の静止の言葉さえ、あの時美希の耳を通さなかった。 あれは、自分自身の心の闇への恐怖と言い換えてもいいかもしれない。 ──また、ウルトラ戦士と融合する事で、今度はどんな悪を生みだすリスクがあるのか、美希にはわからず、それが恐ろしかった。 ウルトラマンベリアルが悪に堕ちたのもまた、その時の美希と同じく、力と闇とが溶け合ってしまった結果であるという。だからこそ、ゼロと共にベリアルを倒しに行く事に抵抗が生まれる。 ゼロやノアという勝利の鍵を得るには、美希は未熟な部分があったのかもしれない。 「……美希、嫌なら無理にとは言わないぜ。だけどな、ウルトラマンの力を恐れちゃ駄目だ!」 しかし、そんな美希を、ゼロは叱咤するように言った。 鼓膜を破りかねないような大声が、美希の耳に響く。思わず、美希はゼロを見上げた。妙な実感のこもった言葉であるように思えたのだ。 「……俺も昔は、ベリアルみたいに力を求めて、ベリアルと同じになる直前になった事があるんだ。その時は、親父やみんなが支えてくれた……だから今の俺がいる!」 美希は、少し意外そうにゼロの顔を見つめていた。 彼は話さなかったが──かつて、彼も力に惹かれ、ベリアルと同じように闇に魂を売ろうとした事があるらしい。長らく、罪を犯す者がいなかったウルトラ族であるが、彼はその二番目となろうとしていたのである。 だからこそ、ベリアルには敵対心だけではなく、どこかで完全には憎み切れない共感がある。いわば、分かたれてしまった光と影だ。それが彼にベリアルへの執着を齎す。 もしかすれば──彼の父・ウルトラセブンもまた、宇宙の犯罪者となる可能性がどこかにあったかもしれない。 「でも、もしまたあの時と同じように──私の中の憎しみが強くなれば、ゼロに迷惑をかけちゃう……」 ダークザギの復活と同じように、またウルトラマンの光を奪われるような事があれば、こうして人格を持って一喜一憂するゼロもまた、ゼロではなくなってしまうかもしれない。 彼の身体がベリアルに乗っ取られれば、それこそ脅威となる。──実際、かつてそんな事があったのだが。 「過去の失敗なんて恐れるなよ!」 「でも現に私のせいで沖さんたちが──」 「それでも……美希、お前にはちゃんと支えてくれる人がいて、守るべき物があるだろ! なら、もう一度、それを守る為に戦える! お前なら出来る……俺は、お前を信じる!」 ゼロの言葉は、美希の心を突いてきた。 真っ直ぐに信じられたり、褒められたりして、嬉しくない人間はいない。──特に、自分自身が信じられない人間にとっては、だ。 彼らのやり取りを見ていたウルトラセブンが、のそのそと彼らの元に歩きだした。他人事だとは思えなかったのだろう。 「蒼乃美希、それにゼロ……人は、時に過ちを犯す。だが、我々はそれも含めて、地球人を愛しているんだ。この星の人にだって、犯罪がなくとも過ちや後悔がないわけではない。──ベリアルの過ちを正せるのは、それをよく知る、若き君たちだけだ」 ここに並ぶセブンも──これまで、決して人間の良い部分ばかり見てきたわけではない。 だが、そんな彼は未だに地球人を信じ、愛している。あの美しい星の人々に、再び災禍が訪れないよう、何度でも命を削る覚悟がセブンには──あるいは、地球人、モロボシ・ダンにはあるのだ。 だからこそ、蒼乃美希という地球人を信じ、託そうという気持ちはここに居る誰よりも負けないつもりであった。 勿論、ウルトラマン──ハヤタも、ウルトラマンジャック──郷秀樹も、ウルトラマンエース──北斗星司も、ウルトラマンメビウス──ヒビノ・ミライも、東光太郎や礼堂ヒカルと共に戦ったウルトラマンタロウも、ゾフィーも父も母も同じ想いを胸に抱いている。 彼らは、セブンの言葉にただ頷いた。 「本当に、良いの……?」 「ああ、大丈夫だ。──お前の目は、もう未来を見つめている。だから、安心しろ!」 美希を、何故かその時、言い知れぬ恐怖感が襲った。 ゼロの言葉のどこかが、彼女の胸を締め付けたのだ。──それは、ほとんど反射的な感覚だった。胸から上で呼吸が乱れ、動悸が激しくなり、途端に吐き気も少し湧き出た。 しかし、それを抑え、──必死で飲み込み、服の胸元を握り、美希は頷いた。 「……わかったわ、ゼロ。──合体しましょう!」 「おう、望むところだ!」 ゼロが、美希を持たない方の拳を強く握った。 彼は、美希がいま何かを感じた事など知る由もなかった。美希自身も、今は原因がわからず、すぐにそんな事は忘れかける。 「……っつっても、今まで、合体するのは男ばっかりだったから、緊張すると言うか何というか……」 またしても頭を掻くゼロ。──何にせよ、女性型地球人と一体化するのは少々恥ずかしい気持ちがあるのだろう。 彼の父たるセブンも少し咳払いをして、タロウやメビウスは少し顔を赤らめている。 変な意味ではないのだが、やはりこうして他の同種の目があるところで、ウルトラ戦士が地球人と合体するのは恥ずかしくもあったのだろう。 こうして改まると、美希の方も急にゼロを心に宿すのが恥ずかしくなってくる。 「照れる事はないぞ、ゼロ」 そんな中、ウルトラマンエースが妙に実感のこもった言葉で言う。 彼には何やら経験があるようだった。──というか、彼に限っては全く恥じる気持ちは全くなさそうにさえ感じる。 と、その時だった。 プラズマスパークタワーに向かって、二人のウルトラマンが飛んでくるのが見えた。 片方は、背中にあの奇獣ガンQを背負ってきている。ウルトラ戦士たちは、一斉に彼らの方に目をやる。 「──おーい、タロウ! 頼まれてたギンガスパーク、持ってきたぜ!」 「ギンガ……それにビクトリー。来てくれたのか!」 何やら、そのウルトラ戦士たちはウルトラマンタロウと旧知の仲らしかった。 タロウが地球に向けてウルトラサインを発し、ウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーという二人の戦士を呼び出したのだ。それは、スパークドールズと化したウルトラマンノアを再臨させる為の道具を手元に確保しておく為である。 美希という手段はその時はまだなかったのだが、何らかの方法で向こうの世界への耐性がついたり、迎える条件がついた時の為にそれを手にしておこうと思っていたのだ。 「……ああ、後はこいつがあれば、スパークドールズになったウルトラマンノアをまた復活させる事ができるんだろ」 「こいつが持ち逃げしていたせいで、少し遅れたがな……」 ビクトリーが背負っているガンQはすっかり伸びている。 彼は、逃走中にギンガスパークという重要なアイテムを奪っていたらしいが、とにかくガンQの問題もこれで片付いたわけだ。 すぐ後に、青いウルトラマン──ウルトラマンヒカリがやって来る。 「──メビウス。この星には、どうやら地球人が他にいる様子はない」 「つまり、赤い靴の少女に連れて来られたのは、美希ちゃんだけっていう事か」 他の生還者がどこにいるのかわからず、美希は少し不安になった。 杏子、つぼみ、翔太郎、良牙、零、暁、ドウコク、レイジングハート……。 だが、彼らもきっと無事でやっているだろう。──今は、ただ、そう信じた。 「とにかく、これで、ひとまずは、条件は揃ったわけだ。──だが」 タロウは、ギンガスパークを美希の手に託しながら、言った。 「美希、ゼロ……二人に言っておくが、あの世界の宇宙もここと同じように広大だ。スパークドールズを見つけ出すのは本当に困難かもしれない。それでも行くのか?」 それは、最後の忠告だった。既に覚悟のある二人にも、一応この先の険しさを実感しているか確認しておきたかったのだろう。 だが、そんな保険は結局のところ、不要な物だったらしい。 ゼロと美希が口を開く。 「あの途方もない宇宙を見つけ出さなきゃならないってか……? やれやれ、本当に──俺を燃えさせるのが得意な奴だぜ! ベリアルの野郎はよぉっ!!」 「私たちは、希望を諦めませんから……!!」 熱血漢のゼロと、希望の美希だ。──それぞれの胸には、孤門一輝の「諦めるな!」という言葉が刻み込まれている。ゼロは、あるアナザースペースを旅した時も、そんな言葉を何度も口にする少年と出会った事があった。 ゆえに、可能性があるならば、それを無碍にする事はしない性格であった。 そして、ウルトラマンノアという小さな希望──それは、決してベリアルを倒す為だけではない。 (孤門さんを、今度は私が探し出す──!!) かつて、レーテの深い闇の海の中から救い出された時の孤門が同じ事をしたのだから、美希も同じ事を返すつもりなのであった。 ノアの中に封じられている孤門一輝という人間も解放する為に──美希は、ゼロに向き直した。 「行きましょう、ウルトラマンゼロ!!」 ゼロが、おもむろに頷いた。 すると、ウルトラの母が、左腕の青いブレスレットのエネルギーを右腕に宿し、美希とゼロに向けてその光線を放った。 マザー光線。──それは、傷ついた戦士を治癒する聖母の力だった。二人の身体から、今日までの疲れと傷が拭われていく。 二人は、母の愛に礼をした。 やがて、二人はウルトラマンゼロとして融合し、このウルトラの星を離れ、ベリアルの元に向かう事になった。 ◆ ────あのウルトラの星を離れ、どこまでも深く真っ暗な宇宙を、ウルトラマンゼロは飛んでいた。 ゼロになっても美希の人格は消えておらず、飛びながらいつものように会話する事ができる。まるで、あの戦いの中で出会った仮面ライダーダブル──左翔太郎とフィリップのようであった。 ただ、今はあくまで戦闘慣れしているゼロの人格を主体とする形になっている。言ってみれば、この場合、美希が「フィリップ」と同じ役割なわけだ。 『ゼロ……一つだけ訊いていい?』 「何だ、美希」 自らの意思ではゼロの身体を動かせないため、少しばかり退屈だったが、美希はゼロに語りかけようとしてみた。実際、考え事まではゼロには知られず、語りかけようとした時だけゼロに言葉が届くようになっているらしい。 お陰で、少し考え事をさせてもらっていた。──そして、ある結論が出たのだ。 『ゼロは、私の目は未来を見つめている……そう言ったけど、それってとても怖い事だとあの時、思ったわ』 未来を見つめる──そんな言葉を聞いた時、自分の胸が苦しくなったのを、美希は思い出していた。あの時は、奇妙な恐怖さえ抱いたのだ。 その理由は、時間を重ねて考える内に何となくわかり始めていた。 『ラブやブッキーやせつなを忘れて、彼女たちがいないこれからの人生を一人で生きていく事だと思ってたから……』 そう、未来を見つめるという事は、過去を遠ざけて生きていくという事だった。 既になくしてしまった物は戻らない。時間はどうあっても未来に向けて収束してしまう。──だが、それが美希には嫌だった。 桃園ラブも、山吹祈里も、東せつなももうこの世にはいない。だからこそ、自分が未来を見つめていると聞いた時、彼女たちの存在を裏切ってしまったようで、胸が締め付けられたのだ。 天道あかねも、きっとそうして早乙女乱馬を忘れたくなかったからこそ、闇に堕ちる道を選んだのだろう。──いや、きっと、そうして美しい過去の為に全てを犠牲にして必死に生きた人間は、彼女だけではなかっただろう。 『──でも、違うわよね? 彼女たちを自分の一部にして、それで、彼女たちの死を自然に受け入れて、自分の罪も忘れずに生きていく事が……あなたの言う、私が見ている未来なのよね?』 「ああ、わかってるじゃねえか……」 彼女たちの死を背負い、その想いをまだ胸に秘め続け、四つの葉を持つクローバーとして、美希たちの未来を切り開いていく事──それこそが、これからの美希の運命になる。過去の全てを受け入れながら、前に生きていけるか? ──それがゼロの言う未来だった。 それを飲み込んだ美希を見て、ゼロは、ただ一言、告げた。 「あいつらは、お前の永遠のともだちだ……!」 その一言を聞いた時、美希の心にあったしこりが消えていく感じがした。 妙な安心感を抱いて、それからすぐに、心の中で笑顔を作った。戦いの前とは思えないほど、緊張とは無縁な安らかな気持ちが美希の芯に湧きあがってくる。 一言だけ、ゼロに礼を言う。 『ありがとう、安心した……』 そんな時、ふと、ゼロの視界で前方を埋め尽くす大量の怪獣の陰が表れ始めた。 宇宙竜ナース、火山怪鳥バードン、始祖怪鳥テロチルス──ゼロには見覚えのある敵も何体かいる。 「……おっと、話してる間に、俺たちを邪魔しようとする奴らが来たようだぜ! 美希! ベリアルと戦う前の小手調べだ……」 『……そうね。ゼロとの相性も今のままじゃわからないし……試してみる?』 ゼロは、唇を親指でなぞるようなしぐさを見せた後──すぐに美希の問いに返した。 「フッ、知れた事だぜ。俺たちの邪魔をしようなんざ、2万年早いぜ! ベリアル帝国!」 美希も心の中で頷いた。 目の前の百を超える怪獣軍団を倒し尽くせば、その後でベリアルの世界に向かえる。 そして、ノアを──孤門を助け出すのだ。 『そうね……行くわよ、ゼロ! 完璧に倒してあげましょう!』 【蒼乃美希@フレッシュプリキュア! GAME Re;START】 【Andウルトラマンゼロ@ウルトラシリーズ GAME START】 時系列順で読む Back 時代Next 帰ってきた外道衆 特別幕 投下順で読む Back 時代Next 帰ってきた外道衆 特別幕 Back 崩壊─ゲームオーバー─(12) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(1) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(1)
https://w.atwiki.jp/touhoukashi/pages/5619.html
【登録タグ Yonder Voice あ 六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years 曲 瑶山百霊 雪幻ティルナノーグ】 【注意】 現在、このページはJavaScriptの利用が一時制限されています。この表示状態ではトラック情報が正しく表示されません。 この問題は、以下のいずれかが原因となっています。 ページがAMP表示となっている ウィキ内検索からページを表示している これを解決するには、こちらをクリックし、ページを通常表示にしてください。 /** General styling **/ @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight 350; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/10/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/9/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/8/NotoSansCJKjp-DemiLight.ttf) format( truetype ); } @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight bold; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/13/NotoSansCJKjp-Medium.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/12/NotoSansCJKjp-Medium.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/11/NotoSansCJKjp-Medium.ttf) format( truetype ); } rt { font-family Arial, Verdana, Helvetica, sans-serif; } /** Main table styling **/ #trackinfo, #lyrics { font-family Noto Sans JP , sans-serif; font-weight 350; } .track_number { font-family Rockwell; font-weight bold; } .track_number after { content . ; } #track_args, .amp_text { display none; } #trackinfo { position relative; float right; margin 0 0 1em 1em; padding 0.3em; width 320px; border-collapse separate; border-radius 5px; border-spacing 0; background-color #F9F9F9; font-size 90%; line-height 1.4em; } #trackinfo th { white-space nowrap; } #trackinfo th, #trackinfo td { border none !important; } #trackinfo thead th { background-color #D8D8D8; box-shadow 0 -3px #F9F9F9 inset; padding 4px 2.5em 7px; white-space normal; font-size 120%; text-align center; } .trackrow { background-color #F0F0F0; box-shadow 0 2px #F9F9F9 inset, 0 -2px #F9F9F9 inset; } #trackinfo td ul { margin 0; padding 0; list-style none; } #trackinfo li { line-height 16px; } #trackinfo li nth-of-type(n+2) { margin-top 6px; } #trackinfo dl { margin 0; } #trackinfo dt { font-size small; font-weight bold; } #trackinfo dd { margin-left 1.2em; } #trackinfo dd + dt { margin-top .5em; } #trackinfo_help { position absolute; top 3px; right 8px; font-size 80%; } /** Media styling **/ #trackinfo .media th { background-color #D8D8D8; padding 4px 0; font-size 95%; text-align center; } .media td { padding 0 2px; } .media iframe nth-of-type(n+2) { margin-top 0.3em; } .youtube + .nicovideo, .youtube + .soundcloud, .nicovideo + .soundcloud { margin-top 0.75em; } .media_section { display flex; align-items center; text-align center; } .media_section before, .media_section after { display block; flex-grow 1; content ; height 1px; } .media_section before { margin-right 0.5em; background linear-gradient(-90deg, #888, transparent); } .media_section after { margin-left 0.5em; background linear-gradient(90deg, #888, transparent); } .media_notice { color firebrick; font-size 77.5%; } /** Around track styling **/ .next-track { float right; } /** Infomation styling **/ #trackinfo .info_header th { padding .3em .5em; background-color #D8D8D8; font-size 95%; } #trackinfo .infomation_show_btn_wrapper { float right; font-size 12px; user-select none; } #trackinfo .infomation_show_btn { cursor pointer; } #trackinfo .info_content td { padding 0 0 0 5px; height 0; transition .3s; } #trackinfo .info_content ul { padding 0; margin 0; max-height 0; list-style initial; transition .3s; } #trackinfo .info_content li { opacity 0; visibility hidden; margin 0 0 0 1.5em; transition .3s, opacity .2s; } #trackinfo .info_content.infomation_show td { padding 5px; height 100%; } #trackinfo .info_content.infomation_show ul { padding 5px 0; max-height 50em; } #trackinfo .info_content.infomation_show li { opacity 1; visibility visible; } #trackinfo .info_content.infomation_show li nth-of-type(n+2) { margin-top 10px; } /** Lyrics styling **/ #lyrics { font-size 1.06em; line-height 1.6em; } .not_in_card, .inaudible { display inline; position relative; } .not_in_card { border-bottom dashed 1px #D0D0D0; } .tooltip { display flex; visibility hidden; position absolute; top -42.5px; left 0; width 275px; min-height 20px; max-height 100px; padding 10px; border-radius 5px; background-color #555; align-items center; color #FFF; font-size 85%; line-height 20px; text-align center; white-space nowrap; opacity 0; transition 0.7s; -webkit-user-select none; -moz-user-select none; -ms-user-select none; user-select none; } .inaudible .tooltip { top -68.5px; } span hover + .tooltip { visibility visible; top -47.5px; opacity 0.8; transition 0.3s; } .inaudible span hover + .tooltip { top -73.5px; } .not_in_card span.hide { top -42.5px; opacity 0; transition 0.7s; } .inaudible .img { display inline-block; width 3.45em; height 1.25em; margin-right 4px; margin-bottom -3.5px; margin-left 4px; background-image url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2971/7/Inaudible.png); background-size contain; background-repeat no-repeat; } .not_in_card after, .inaudible .img after { content ; visibility hidden; position absolute; top -8.5px; left 42.5%; border-width 5px; border-style solid; border-color #555 transparent transparent transparent; opacity 0; transition 0.7s; } .not_in_card hover after, .inaudible .img hover after { content ; visibility visible; top -13.5px; left 42.5%; opacity 0.8; transition 0.3s; } .not_in_card after { top -2.5px; left 50%; } .not_in_card hover after { top -7.5px; left 50%; } .not_in_card.hide after { visibility hidden; top -2.5px; opacity 0; transition 0.7s; } /** For mobile device styling **/ .uk-overflow-container { display inline; } #trackinfo.mobile { display table; float none; width 100%; margin auto; margin-bottom 1em; } #trackinfo.mobile th { text-transform none; } #trackinfo.mobile tbody tr not(.media) th { text-align left; background-color unset; } #trackinfo.mobile td { white-space normal; } document.addEventListener( DOMContentLoaded , function() { use strict ; const headers = { title アルバム別曲名 , album アルバム , circle サークル , vocal Vocal , lyric Lyric , chorus Chorus , narrator Narration , rap Rap , voice Voice , whistle Whistle (口笛) , translate Translation (翻訳) , arrange Arrange , artist Artist , bass Bass , cajon Cajon (カホン) , drum Drum , guitar Guitar , keyboard Keyboard , mc MC , mix Mix , piano Piano , sax Sax , strings Strings , synthesizer Synthesizer , trumpet Trumpet , violin Violin , original 原曲 , image_song イメージ曲 }; const rPagename = /(?=^|.*
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/7508.html
永遠の終結エンドレス・エンド UC 闇文明 (5) クリーチャー:デーモン・コマンド 5000 ■クリーチャーがバトルゾーンから手札に戻った時、そのクリーチャーを墓地に置く。 ■カードが墓地に送られた時、そのプレイヤーは自身の墓地のクリーチャーを1体選んで山札に加える。その後、山札をシャッフルする。 バウンスが事実上の破壊になります。 エターナル・Ωメタ。 作者:仙人掌 フレーバーテキスト 永遠などありはしない、黒の制約の前では。 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/756.html
ひとまず戦いは終わり、事後処理に移る。 「何なのよ一体」 千歳が消えた廊下に不服そうな声が響いた。 彼女は銀成学園の制服を着ているが、憤怒に赤く染まる頬からは年齢退行から戻った瞬間に それなりの混乱を味わったコトが見て取れる。 何しろ短剣を浴びて胎児になったのだ。必然的に衣服は脱げる。その後の顛末については 読者皆さまの鍛え抜いた想像力に一任する。 「よく考えれば声で気付くべきだったな」 へたり込んだまま斗貴子が見上げる少女は、完全に元の姿に戻っている。 もしかすると既にクロムクレイドルトゥグレイヴは解除されているのかも知れない。 だが外はまだ九月四日の昼のまま。九月三日の夜に戻る気配はない。 そも市街まるまる一つの時間を強制的に進めていたクロムクレイドルトゥグレイヴだ。 もしかすると対象範囲の広さゆえに、解除されても総てが元に戻るまでにしばしの時間を要 するのかも知れない。 斗貴子自身も少し年齢が戻ってきたような気がするが、18歳当時の姿にはまだ遠い。 「しかし、なぜ銀成学園の制服を着て、髪型も変えてるんだ?」 「悪ふざけに巻き込まれたのよ」 少女──ヴィクトリア=パワードはまるで河合沙織その人のようないでたちで鼻を鳴らした。 聞けば演劇部の練習途中の些細な出来事がこの原因らしい。 「ねーねー、びっきーってずっとその制服なの?」 「え、えーと。しばらくはこうじゃないかな」 「でもさでもさ、銀成学園の制服もきっと似合うよびっきー。一度着てみない?」 ヴィクトリアに人懐っこく迫ったまひろは、沙織に手招きした。 「びっきーと制服取り換えっこしない? ほら、さーちゃんとびっきー、体型も身長もソックリだし!」 「あ! それいいかも! やるやる!」 沙織はノった。まひろより幼い分、食い付きがよいらしい。 「いや、私は……」 後ずさるヴィクトリアをまひろが羽交い絞めにした。唯一の常識人たる千里にSOSの視線を 差し向けたが彼女は額に手を当て首を振った。諦めなさい、光の加減で真白になった眼鏡の レンズは確かにそう物語っている。 やがてバタバタあがる土煙からブラウスやスカート、それから少女の楽しそうな歓声と絹を 裂くような悲鳴がしばらく飛び跳ねた。ホムンクルスの膂力も何だかまひろや沙織に気圧され て思うように振るえない。まるで水を嫌がるネコをバケツに入れて洗っているような状態だ。 「せっかくだから髪型もとりかえっこしようよ!」 「賛成!」 「だから……ちょ! やめ……」 そして。 何でこんな目に遭うのよとトイレの鏡の前で嘆息したり、戦士一同へ協力を決意したりした。 で、千里へ「校舎に残る」という旨のメールを送ったので……。 ──「あ、あの! 人を探してたんです。金髪を両側で縛った制服姿の童顔の女のコを。名前は……」 千里が校舎に舞い戻り、上記のような文言を剛太に告げる羽目になった。 「まったく。あちこち動いてたようだから、校舎中を走りまわる羽目になったわよ」 一時は屋上までいったらしい。そしてそこにある大穴を見つけ、下を覗き込んでみると剛太の モーターギアのつけた轍を見つけた。追った。すると。 「ちょうど穴の下であなたがあのホムンクルスに斬りかかられていたから」 ──「助けてあげる」 「咄嗟に飛び降りてかばってくれたという訳か」 「ええ。地下壕は一階にしか開けないから。本当はアイツの攻撃の後に武装錬金を発動して 地下に落してやろうと思ったけど」 短剣の特性上やむなく胎児となり、目論見は水泡と帰した。 「だがどうしてキミがそんなコトを?」 ヴィクトリアはそっぽを向いた。 「一つはアイツのせいで誰かさんに濡れ衣を着せられた意趣返し。もちろん、アナタたちに借り を作らないためでもあるけど。後であのレーダーの戦士に伝えておくコトね。『代わりに一つだ けなんでもするから』って言葉はちゃんと果たしたって」 「分かった。……しかしそういうコトだったのか」 ヴィクトリアを斬りつけた鐶が老化した理由。それが斗貴子に分かり始めてきた。 (見た目こそ少女だが、ヴィクトリアはすでに100年以上生きている。仮に13歳の時にホムン クルスになったすれば……113歳以上。それだけの『年齢』を持っている) 鐶はそうとは知らず、よりにもよって沙織に扮したヴィクトリアから『総ての年齢』を吸収し、 自らの体へ直接反映した。 結果。 (不死だが不老ではない体質ゆえに一気に老化した。すぐ短剣に年齢を戻せなかったのは… …動揺のせいもあっただろうが、最大の理由は恐らく急激な老化によってあらゆる反射神経 と身体能力が衰えた為) そもそも6歳の幼児がヴィクトリアの「推定113歳以上」を吸収すれば、 「推定119歳以上」 になる。人間ならば長寿の世界記録に迫る勢いだ。 幼児から一気にそんな状態になったせいで、反射神経や肉体年齢は感覚と乖離し、クロム クレイドルトゥグレイヴへいつものように年齢をもどせなかったのだろう。 例えばお年寄りが草むしりをしている時に、「これ位なら大丈夫だろう」と庭石をしゃがんだま まどけようとして膝を痛めるように、「感覚」というものは必ずしも肉体の実情に沿わぬものな のである。丼一つちょっと高いところ取ろうとして腰を痛めて入院したりもするのだ。これは肉体 面での話だが、武装錬金も肉体で扱う以上老化によって操作を誤るコトは必ずある。 そこに反射神経の衰えや動揺が重なり、若い時なら一気に吸収できた年齢を簡単には戻せ なかった。量も多い。約120歳という高齢から老化を脱するにどれほど多くの年齢を短剣にや らねばならぬか想像に難くない。鐶が防人から年齢を吸収して幼児の姿から戻った時とはあら ゆる事情が違うのだ。 (加えて、変形能力が便利すぎたという点もある。あの時奴は私を足止めするために羽根や爪 を使ったが、もしそちらに頼らず、老化や相討ち覚悟で短剣を私に向けていれば) 或いは千歳が出現するより早く斗貴子を胎児にできたかも知れない。 (何にせよ勝ったのは私たち。それに変わりはないが……何とも皮肉な話だ) あらゆる鳥類や人に変形できる特異体質。 そして年齢のやり取りを行えるクロムクレイドルトゥグレイヴ。 (私たちを追い詰めた能力が、奴自身をも敗北に導くとはな──…) 滅びを招くその刃は他者のみならず鐶さえ巻き込み、彼女が一番恐れる姿で敗北させた。 月並みだが、強大な力はひとたび制御を誤れば誰彼の区別もなく滅ぼすという好例だろう。 逆に斗貴子は『制御』という点では群を抜いている。 武装錬金の特性は「精密高速機動」。これだけなら戦団の中でもあまり強い部類には入ら ないが、斗貴子はそれを修練によって昇華し、数多くの戦いに勝利してきた。 ダブル武装錬金を使いこなせたのも経験と戦歴あればこそだ。生体電流という漠然抽象と した操作で同時に8本の処刑鎌を自在に操るのは並の戦士にはまず不可能。 いわば彼女の勝因は上記のような熟練度であり、年齢退行によって体が幼くなってもそ の影響を受けぬバルキリースカートの特性であり、鐶と違って少しずつ少しずつ年齢を奪われ たがために肉体の変質へ感覚を馴染ます余裕があったためであり……とバルキリースカート 一つを頼りに戦い抜いてきていなければ成立しない要件が多々ある。 付記すれば、沙織の姿を借りて秋水の虚をつき勝利した鐶が、沙織の姿を借りたヴィクトリ アに斬りつけたせいで敗北したのだから、なかなか因果じみてもいよう。 終わった戦いだからこそどうとでもいえるが、もし鐶が斗貴子の言葉を受けてヴィクトリアを 巻き込まないようにしていれば、勝負はもっと違った決着を迎えていたのかも知れない。 「とにかく借りは返したわよ」 踵を返しかけたヴィクトリアに斗貴子はきまずそうな表情を浮かべた。 「その」 「何よ」 「私がキミにいうのもヘンな話なんだが……感謝する。それから以前疑ってすまない」 呼びかけると嘲るように鼻が鳴った。 「さっきホムンクルスを倒したのに、私には礼と謝罪? それを分ける基準はどこにあるのか しらね。それともあなたたちには気分次第で生殺与奪を選べる権利があるの?」 ヴィクトリアは100年前、父の咎を錬金戦団から負わされる形でホムンクルスにされた。 鐶は口ぶりからすると、どうやら「姉」に望まずして改造されたらしい。 似たような少女二人、線を引くのはいかなる基準か……などと悩む斗貴子ではない。 「いかな理由を背負っていようと、人に危害を加える存在(モノ)は必ず斃す。あのホムンクル スはあくまで任務上生け捕りにする必要があったから斃さなかった。……それだけだ。用済み になれば始末する」 「なら私も生徒に危害を加えれば始末するというワケね」 対峙する斗貴子とヴィクトリアの間に冷たい風が吹き込んだ。世界は秒針をさかしまに誕生 をさかしまに廻っているらしく、寒々とした外気が二人を包んだ。 凍える気配が斗貴子に一つの予感を呼び起こした。 いつしかヴィクトリアと敵対する立場になるのではないかという、確信めいた予感。 それは後に彼女が斗貴子にとって忘れ難い仇敵と手を結ぶコトによって実現するが──… 張りつめた空気の中、ヴィクトリアは半ば楽しそうに冷笑を浮かべた。 「まぁ、別に人間に恨みはないから危害を加えたりしないわよ。いまの生活は色々鬱陶しいけ ど悪くはないから、『やりたいコト』の準備が整うまではしばらく続けるつもりだし」 ホムンクルスの少女は微笑したままゆったりと瞑目した。 ひどく落ち着いた態度に斗貴子はあらゆる感情を呑まれそうな錯覚をこの時初めて覚えた。 斗貴子が戦闘経験によって鐶から勝ちを得たように、ヴィクトリアは見た目にそぐわぬ老成 によって斗貴子からイニシアチブを獲得しているらしい。 「兎に角、さっきアナタがいった謝礼と謝罪は覚えておいてあげる。でも、礼一つ謝罪一つで 馴れ合おうとは努々(ゆめゆめ)思わないコトね」 そして彼女は踵を返して歩き始めた。 「あなたがホムンクルスを憎むように、私も錬金術の産物は大嫌い。特に戦士や戦団はね。 だからもう手は貸さないわよ」 首だけ振り向かせたヴィクトリアの目で冷たい光が輝いた。 「後はせいぜい自分たちだけで頑張るコトね」 ヴィクトリアの姿は廊下の彼方に遠ざかり、やがて見えなくなった。 (『やりたいコト』? 一体何を?) 斗貴子の心にわずかな引っかかりを残して。 (……ま、コレでいいわよ) 秋水は寄宿舎に戻れといった。それを違えて救出に赴けば何をいわれるか分かったもので はない。ヴィクトリアはそう思いながら校舎の外に出て──しばらく色々な出来事や予想にた め息をついた後、まひろたちと合流し、お説教やじゃれつきの平和めいた喧騒に溶け込んだ。 その横で胎児になっていた生徒がぽんぽんと元の姿に戻り、着衣ないがゆえにちょっとした 騒ぎを巻き起こすのはもうしばらく先の話である。 そして蛇足ながらに一つの事実を記す。 秋水とまひろの説得がなければ、ヴィクトリアが学校に来ていなかったのは確かである。 先ほどまでは昼の光が差し込んでいた窓はすっかり暗くなっている。 夜だ。夜になっている。そしてこれは時間が進んだのではなく、戻ったのだ。 すなわち、九月四日の昼から……九月三日の夜へと。 「なのにどうして戻らないんだろ私? 剛太くんもまだ胎児のままだったし」 その剛太や桜花も病院に搬送したという千歳は首をひねった。 やはり対象範囲の広さゆえか、何もかも一気に年齢操作を解かれるというコトがないらしい。 ヴィクトリアが既に戻っていたのを考えると、「最後に年齢を吸収したモノから」戻っていくの だろうか? にしては外の景色の時間が緩やかに戻って行くのが不思議だが。 ひょっとしたら先ほど千歳が26歳当時の口調で喋っていたのは年齢が戻る予兆だろうか? 「それはともかく、どうしてさっき瞬間移動できたんですか? 核鉄は奪われた筈だし、予備も この街にはなかったし、戦団に依頼をかけてもあんなに早く来る訳が……」 血が止まったせいか、斗貴子の語調には普段の毅然としたハリが戻りつつある。 「えーと。結論からいうよ。実は一つだけ取られてない核鉄があったの。だからそれを発動して 瞬間移動したという訳。ただ、それができるぐらい回復したのは、ちょうどヴィクトリアちゃんが 乱入した頃でかなり際どかったけど」 千歳が差し出したのはヒビだらけの核鉄だ。シリアルナンバーはLXXXIII(83) それを覗き込んだ斗貴子の顔色がみるみると変わったのも無理はない。 「私が戦士・根来に渡した核鉄? 待て、これも取られたんじゃ!? 御前もいってたでしょ?」 ──「この分だとブレミュから奪った核鉄(LXXXIII(83))も奪い返されてるんだろうなあコンチクショー!」 ──「ああ畜生! やっぱりなくなってる。取られてる!!」 千歳は鼻息の荒い斗貴子にビビりながら、「怒られるかなー」とこわごわ笑顔を浮かべた。 「え、ええとね。……そっちは、取られたのは、に、偽物」 「はぁ!?」 「ほほほほほら! 根来くんがダブル武装錬金を発動しようとしたコトあったでしょ?」 ── 対する無数の虚像のいずこからくぐもった舌打ちが響いた。 ──「使用不可のようだ」 「不発に終わったアレか。……ん? そうか! てっきりダメージのせいで不発に終わったと ばかり思っていたが、すでにあの時点で!」 「そう。偽者にすり変わってたんだよ。つまりあれは根来くんのお芝居だね」 「じゃあ本物はどこに?」 「夏みかんの中」 「……はぁ?」 「正確にはその状態で私の鞄の中に。根来くんが渡してくれた時すぐには気づかなったけど」 ──「貴殿はそれまでこれを持ち、機会に備えておけ。貴殿の能力にはまだ利用価値がある」 ── 無造作に放り投げられた物をキャッチすると、千歳は目を丸くした。 ──「ふぇ? 夏みかん? なんで? どこで取ってきたの?」 斗貴子の頭は眩んできた。話はどうも想像を超えている。傷だらけの身で考えるには厄介だ。 「要するに私の渡した核鉄は、根来経由であなたに回っていたというコトだな。そして彼は素知 らぬ顔で偽の核鉄を見せびらかし、敵に敢えて回収させ安心させた……そこまでは分かったが、 いったい何でまたそういう周りくどいコトを?」 「たぶん、私に予想外の行動をさせて相手の虚を突きたかったんじゃないかな」 斗貴子は首を傾げた。 「『じゃないかな』? じゃあ具体的に何をやるかは決めてなかったのか?」 「うん。でも……ちょっと前にそんな感じで上手くやれたコトもあったし」 「?」 斗貴子は知らない。千歳と根来がかつてどんな任務に従事し、どんな勝ち方をしたか。 「とにかく、相手があんなに強いから、普通に攻めるだけじゃ限界があったと思うし」 事実、最後の最後に千歳が瞬間移動で割って入らなければ── 老化し、その総てを短剣に戻しきれなかったとはいえ、鐶はヴィクトリアから貯蔵した幾ばくか の年齢を以て再び自動回復をしていた。そうなれば勝っていたのは鐶かも知れない。 そんなコトを考えると、斗貴子の頬が少し綻び、ため息が漏れた。 「色々無茶なような気もするが、彼とあなたにはそれなりの信頼関係があるんだな」 「うーん。どうかな。根来くんはそっけないし。頑張りたくなったのは防人くんが一度褒めてくれた おかげでもあるし……。も、もちろん根来くんは助けたいと思ってるけど! あ、それから」 千歳はちょっと申し訳なさそうな顔をした。 「本当は斗貴子ちゃんに渡した方が良かったかもね。渡しそびれちゃったけど」 「いや、あの核鉄は発動したところでそう長くは使えなかっただろう。実際、無傷で発動した処 刑鎌でさえそう長くはもたなかった」 そこまでいうと斗貴子は少し眉をひそめた。 「ところで……さっき当たり前のように『夏みかんに核鉄を入れた』といってたが、どうやったん だ? 武装錬金の特性とは少し違う気がするんだが」 「きっと忍法だよ」 詳しくはかげろう忍法帖収録の「忍者本多佐渡守」をご覧ください。 「……あまり聞きたくはないが、偽者の核鉄を作ったのも」 「それも忍法だよ」 詳しくは忍法双頭の鷲(原題・妖しの忍法帖)をご覧ください。 「名前はね、忍法泥象嵌(どろぞうがん)っていうんだよ! テレビに飽きた時に根来くんから借 りた小説に出てたもん! これは泥に人の象を嵌めて型をとってね、自分がそこに入ってじーっ とするとその人に変身できるんだよ」 斗貴子はうなだれた。 「……やり方は想像できたが、人と金属じゃ勝手が違うような。だいたいいつの間に作ったんだ……?」 「作ったのは戦闘中にこっそりじゃないかな。シークレットトレイルの特性のせいでいたりいな かったりだし。でね。作った方法だけどたぶん手頃な金属を忍ぽ」 「ああもう! 忍法の話はもういい! もう聞きたくもない!」 寒気にうなるような声を上げて斗貴子が千歳の言葉を防いだその時! 俄かに斗貴子の背が伸びた。見れば千歳も同じように成長を遂げている。 「年齢が……戻ってきたのか?」 「そうみたいね」 白雪のような肩を破れた子供用の服から覗かせながら、千歳はいつもの凛然とした顔つきで 斗貴子を見た。斗貴子も彼女を見返した。しばし両者は無言で見つめあった。 「…………」 「…………」 ── 防人の指摘に千歳は「がーん!」と肩を上げひし形を作るように頭を抱えた。 ──「ち、違うもん!! コスプレは大好きだけど今は違うもん!!」 ──「え! そんな! ひどいよ根来くん。私頑張るから、そんなコトいわないで……!」 「えーと……」 非常に気まずい。人の恥部を見てしまった後特有の「何ていったらいいか分からない」もや もやした感じが斗貴子を包んだ。 「誰しも人に知られたくない過去はあるものよ」 千歳はにこりともしない。破れた服を押さえつつ瞬間移動した。 「ちょっと待てェ!! 移動するなら私も運べ!! 逃げるのは勝手だが無責任すぎるぞ!」 「ごめんなさい」 一番の重傷かも知れない斗貴子の背後に千歳が現れた。びっくりした斗貴子はまるで背中 にこんにゃくを入れられたように弓なりに体を反らし、「ひあっ!」と素っ頓狂な声さえ上げた。 「防人君が待っているわ。一緒に行きましょう」 彼女の服はすでにいつもの再殺部隊の制服である。 (切り替えだけでなく着替えも早い!) 特技が早着替えの斗貴子さえ目を剥く中、千歳は聖サンジェルマン病院へと空間跳躍した。 「とにかく。拘束完了だ。これもお前たちが死力を尽くしてくれたおかげだな。心から感謝する」 しばらく後、宵闇にけぶる病院の屋上には防人と彼に拘束された鐶が並んでいた。 武装解除に伴い12歳当時の姿に戻った彼女はシルバースキンリバースで二重に拘束されて いる。かつてヴィクターIIIと化したカズキでさえ無力化した二重拘束(ダブルストレイト)だから、 さしもの鐶とて脱出は不可能だ。彼女はただぼうっとした瞳で注視を浴びている。 居並ぶのは剛太、桜花、根来、千歳、そして斗貴子と錚々たる面子だ。 手すりを背後にする彼らの視線は実に様々。畏怖、同情、警戒、観察、そして殺意。 「戦士長」 「なんだ。戦士・斗貴子」 「さっさとコイツにアジトの場所を吐かせてブチ殺しましょう。生かしておくと厄介なコトになります」 (立ち直ったのはいいが、こういう部分がますますひどくなっているような……) 銀肌の奥で防人が汗をかくのが分かった。呆れと恐れの混じった感情である。 「落ち付け、戦士・斗貴子。キミがこのホムンクルスを警戒する気持ちも分からなくはないが、 さっき聞いた話ではどうやら」 「……奴の武装錬金を使わねば辿りつけないところにアジトがあるらしい」 根来が無表情で呟いた。」 「つまり年齢操作をしないと作動しない何かがあるってワケですか?」 剛太の問いに防人は頷いた。 「なら拷問でも何でもしてそれを解かせてアジトに到着しだい殺しましょう。私に引導を渡させ たくないならシルバースキンでそのまま圧殺してしまえば済む話です」 防人から薄くため息が漏れたのは話が噛みあわないせいだけではない。 (確かに正論なんだが……どうも、な) 年少者への優しさや寛容さといった防人の長所はしばしば戦士としての枷となるが、この時 も彼はそれ故わずかに懊悩していた。 それを知ってか知らずか傍らの鐶は黒い拘束具に抵抗するコトなく、ただむぐむぐとドーナツ を食べている。牧歌的な風景であるが、あれほど暴れ狂ったホムンクルスにしては異様だろう。 「……どうしてドーナツを食べてるの?」 「腹を空かしているようだったからな。まあ、回復した方がスムーズに白状するだろう」 千歳はやっと気づいた。防人が三角屋根の小箱を抱えているのを。そして時おりそこに手を 突っ込み、鐶にドーナツを与えているのを。 親切なコトに防人は鐶の口周りに食べカスや砂糖がつくたび丹念に拭いてやっている。 千歳も興味を示したらしい。防人の真似をした。果たして鐶は食べた。ただし瞳は虚ろでどこ を見ているか分からない。ヤモリにハエをやっているような岩石にエサをやっているようなシュー ルさがある。 「ちなみにドーナツは自前だそうだ」 防人はポケットからポシェットを取り出すと、やや斜め下に向けて軽く振った。すると子猫が 入りそうな箱が二つ三つ落ちた。 「いや、なんで入ってるんですか?」 「俺にも分からない。ただこのポシェット、見た目に反して非常に重い。持って見るか?」 ええと頷く剛太に防人はしつこいほど「気を抜くな」「『自分の足の裏をまっすぐ持ち上げる感 覚』で踏ん張れ」「いいか、必ず両手でしっかり持て」と念を押した。 しかし根は軽い剛太だ。親切な忠告を鼻で薄く笑った。(人それを死亡フラグという) 「大袈裟ですってキャプテンブラボー。俺、こう見えて結構力あるんスよ。こんなポシェットぐら…… うおおお!?」 笑顔で受取るやいなや剛太の両手が一気に下がった。彼が思わず前へとつんのめる中、手 から零れ落ちたポシェットが重い音立て床にめりこんだ。 「な、なんだコレ!? そんな大きくないのになんでこんな重量が!? 触ったトコただの布の ポシェットで、鉄板とかも仕込まれてなさそうだったのに」 「重いのはただ単純にそれだけの物を入れているせいだ。見ろ」 亀裂の中心でふたをはだけたポシェットからは、何かのCDが十数枚と何かのロボットのプラ モが数体、携帯電話、それからデスクトップ型パソコン一式が出ている。 「これでやっと三分の一といったところだ。先ほど覗いた様子ではまだまだ中に入っている」 「あ、じゃあサッカーボールほどある調整体の幼体を携帯できたのもこのせいね」 納得したという様子の桜花に、鐶はこくりと頷いた。 「……ドラえもんのポケットかよ」 ドラえもんのような声で御前が呆れた。 「てか持ち歩くならノートパソコンだろ。なんでデスクトップ……」 剛太は文句をいいながら中身を戻し始めた。 「ポシェットはふだん……30キログラムぐらい……あります」 「オイオイ。じゃあポシェット取ったらスピード上がるのか? 少年漫画みたく」 「…………ホムンクルスなので……あまり変わらないと思います」 ドーナツを呑んだ鐶のつぶやきに千歳は頬をかいた。 (よくあの時、年齢退行中の私が持てたわね。我を忘れていたせいかしら……?) 防人は鐶にドーナツを差しだした。 「ところでドーナツどうだ。アジトの場所を吐いたらもっとやるぞ」 「これを食べたら……吐きます。……あ、情報をです。ドーナツは……消化します。情報を吐く のは潜入前からリーダーにいわれている……取り決め……です。むぐむぐ」 「相変わらず子供には優しいのね」 「むぐむぐ」 「すまん。だがこうしているとあんなに暴れていたホムンクルスとは思えず、つい……」 「むぐっ! けほ……けほ」 「たまにはいいと思うけど」 「むぐむぐ」 「私もドーナツあげていいでしょうか?」 桜花が手を挙げた瞬間、斗貴子の怒声が炸裂した。 「和むな!! そいつは私たちをさんざん苦しめた敵なんだぞ!?」 すると長い黒髪がふわりと揺れて血まみれセーラー服の横に移動した。 やがて斗貴子でさえ嗅ぎ惚れそうなかぐわしい匂いの中、桜花が耳打ちした。 「馬鹿ね。ドーナツ程度で懐柔できるなら安いものよ。だいたい拷問なんて口を割らせるのは 不向きだもの。ほら、陣内だってL・X・Eの本拠地とか構成員を吐かなかったでしょ?」 「……まぁいい。どうせ首領さえ倒せばコイツは仲間ともども処分されるんだ。いまま後回しにし ても差し支えない。拷問はやめてやる。その代わりとっととアジトの所在を吐かせろ。いいな?」 「了解」 桜花はにっこりと笑うと鐶に駆け寄ってドーナツをすいっと差し出した。実に楽しそうである。 「というワケで鐶ちゃん。アジトの場所を教えてくれないかしら」 「くー、くー」 鐶は健やかな寝息を立てている。 「立ったまま寝るとか器用だなオイ」 「満腹になったから眠たくなったみたいね」 「じゃなくてそもそも寝るな!! くそォ、私たちを舐めているようだな! やっぱり殺す! いま すぐ殺す! 地獄の痛みの中で今度こそアジトの場所を吐かしてやる!」 「先輩落ち着いて! さっきバルスカ全部壊れたんでしょ!? 素手じゃ無理だって!」 「う、うるさい! 私ならたぶん素手でも殺せる! 仕掛けだって壊す! 壊してみせる!」 「無理です! だいたいあれだけ苦労して生け捕りにしたのに、いま殺したら身も蓋もないって!」 「黙れ剛太! 離せ! 離せェ!」 怒り心頭に達した斗貴子を剛太が必死に羽交い絞めにする中、鐶は目覚めた。 「しもうた。戦士さんたちにアジトの説明せないかん」 そしてのろのろと周囲を見渡した。しかし口調は滞りなく滑らかである。 「よーけ食うて腹ふとうなったがあがいに寝てはおれん。怖いお姉ちゃんにぎょうさんかちまわ されるぞなもし。……ん?」 鐶は根来と千歳を除く戦士たちが物凄い表情をしているのに気づいた。暴れていた斗貴子で さえピタリと止まって鐶を凝視しているではないか。 「どげしたん?」 「えぇとコレは……伊予弁ね。ってコトはもしかしてあなたは愛媛出身?」 桜花の問いに鐶は頷いた。 「ほうよ。うん。そうほやけど、みんな血相変えてどげしたん?」 「さあ。意外だったんじゃない? 口調が」 何か鐶は気付いたらしい。慌てて顔を俯かせ、ぷるぷると震えた。 「い、いまのは……なし……です。忘れて……ください。忘れて……」 「あらあら。きっと起きぬけに混線して地が出ちゃったようね」 「……はい」 前髪に隠れて表情はよく見えないが、闇夜に浮かぶ白い肌がさぁっと赤くけぶっている。 頬のみならず頸すじもかつかつと熱が登り、柔らかな耳たぶさえも朱に染まっている。 「ひょっとして普段途切れ途切れに喋っているのは、標準語に変換するのに手間取っている せいかしら?」 「……はい。その……お姉ちゃんが、お姉ちゃんが…………あの喋り方……すると、怒って… …鬱陶しい……鬱陶しい……って何度もいって……物とか……投げてきて……サブマシンガ ンの武装錬金で撃ったり……私は、お姉ちゃん好きだったのに……だから、だから……」 鐶は俯いたまま喉奥に詰まるような湿った声を途切れ途切れに漏らし始めた。 「だから、標準語で喋るようにしたのね」 「はい」 ぐすんと鼻をすする鐶を、桜花はひしと抱きとめた。 「辛かったわね。でももういいのよ。気にしないで。心ない人はいっぱいいるけど、助けてくれる 人だっているもの」 さりげなく視線を向けられた剛太はバツが悪そうに顔を背けた。 「大丈夫。少しぐらい方言があってもいいじゃないの。私は可愛いと思うわよ」 「そう……でしょうか」 虚ろな瞳をうっすら赤くしながら、鐶は恐る恐る上目遣いで聞いた。 「私がいうんだから間違いないわよ」 鐶は見た。女神のように微笑む桜花を。彼女は美しい。美しい人のいう言葉なら信じられる かも知れない……とまあ根は単純な鐶なので実に呆気なく信じた。 「……ありがとうございます」 ぎこちないお礼に桜花は艶然と微笑んだ。 「駄目よ、そこは本当の口調じゃないと。ね? さぁ、もう一度。自信を持って」 促されるまま鐶はどぎまぎと言葉を吐いた。 「だんだん」 「もっと笑って」 「だ、だんだん」 鐶は虚ろな瞳のまま「えへへ」とぎこちなく笑った。口角鈍くつっぱり面頬はやや赤い。やや 呆けてもおり、見る人間によっては「はしたない」とするむきもあるだろう。 ちなみにだんだん、とは伊予弁で「ありがとう」を意味する。 出雲弁でも同じでありNHK朝のテレビ小説のタイトルもそれに由来する。 「可愛い!」 嬌声とともにしなやかな肢体が方言無表情の少女に抱きついた。 鐶が戸惑ったような声を上げる中、桜花が彼女の頭の横でニヤリと笑うのを見た者は位置的 に皆無である。 (これで落とせたわね。後は意のままとまではいかなくても、私のために多少の便宜は図って くれる筈。こんな強いコだもの、津村さんなんかの意見で殺させちゃ勿体ない。もっと上手く利 用していくべきなのよ。だからまずは処分を軽くしないとね) 戦団への助命嘆願や泣き落としなどを考えつつ、桜花の沈黙は更に続く。 (でも、可愛いと思ったのは事実よ。このまま一緒に暮らしても差し支えないぐらい。そもそも 総角クンのところにはまだ二人ぐらい女のコがいるんだから、一人ぐらいさらっちゃっても別に いいわよね。だって可愛いんだから) 桜花は幼少のころ秋水ともども誘拐され親元から引き離された。 だが誘拐した早坂真由美という女性に育てられたため、桜花たちは今でも彼女を母と慕って いる。そして桜花は母の気持ちが分かるような気がしたのでちょっと監禁方法を考えたりした。 (なんか) (黒いオーラが漂っている) (何か良からぬコトを考えているな) 鐶を抱いたままくすくす笑う桜花を、剛太と防人と斗貴子は唖然とした面持ちで眺めるばかりだ。 (……ああ。何だかお姉ちゃんに……抱っこされているような安心が……) 知らぬは鐶ばかりなり。その数メートルばかり前に御前がぴょんと出てきた。 「そだ。コイツにあだ名つけてやろうぜ!」 「え……? あだ名? ……いいです、そんなの。恥ずかしい……です」 「遠慮すんなって! オレ様がいーのをつけてやるから! えーと」 御前は自分なりの命名則を頭の中にもやもやと描いた。 漫画ならば以下の命名則は上向いた御前の上の吹き出しに列挙されているであろう。 武藤カズキ → カズキン 津村斗貴子 → ツムリン 中村剛太 → ゴーチン パピヨン → パッピー ブラボー → ブラ坊 「ってコトは鐶だから……」 演算を終えた御前が口を開きかけた時、誰もがその次の言葉と光景を予測した! 「タマキ」「さあ! 早くアジトについて聞きましょう!!」 物凄い勢いで桜花が御前を突き飛ばし、激しく息をつきながらまくし立てた。 一体いつの間に鐶から離れたのか。防人の鍛え抜いた眼力でさえ捉えられぬほどの早業だ。 「えと、下の名前は? そう、光(ひかる)っていうのね。香美さんはひかり副長って呼ぶけど、 ひかるって読むのが正しいのね。じゃあひかるちゃんでいいわねみんな! ねっ! ね!!」 平素の落ち着きがウソのごとく取り乱す桜花である。次声は1オクターブほど高い。 「ととととところでどうしてあなたは副長なの!? 総角クンはリーダーなのに」 「それは……そっちの方がカッコいいから……です。強そうですし……無銘くんの案ですし……」 「そ、そうよね! みんなもそう思うわよね!」 美しい顔を真赤にする彼女に対し、戦士一同は沈黙で答えた。御前が桜花と人格を共有し ている事実からこの瞬間ばかりは目を背けたのである。斗貴子でさえ何もいわず黙殺した。 余談だが鐶の振るうキドニーダガーの別名はボロックナイフである。ボロックの意味を考える と御前の命名は的を射ているのかも知れない。つまりその……やめとこう。 とにかく重要なのはアジトの位置だ。鐶はゆっくりと遥か彼方の山を指さした。 「アジトは……西にあります」 「あちらは北だ」 根来の冷たい呟きも何のその。鐶は迷いなく反転、南を指さした。 「行きましょう……西へ……!」 あまりに間の抜けた挙動である。戦士の誰もが呆れ、溜息をつくのも無理はない。 だが。 次の瞬間彼らはため息も忘れ、ただただ鐶の言葉に凄まじい衝撃を覚えた。 「予定通りなら……リーダーと早坂秋水さんは……もう戦い始めています」
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/630.html
蝶野邸から地上へ長々と続く階段を降り切ると、ヴィクトリアは「ほう」と目を丸くした。 「ご苦労なコトね。それとも私が逃げ出した時の備えかしら?」 「いいえ。あなたの武装錬金ならヘルメスドライブの追跡を遮断できる筈。それに彼と彼女なら 必ずあなたを説得できるからその件について私の出る幕はないわ。違う?」 「見れば分かるでしょ」 誰用かは不明の皮肉を表情に織り交ぜて、ヴィクトリアは軽く肩をすくめた。 「そうね。だから私の役目は今からよ」 塀にしだれかかっていた女性はひどく事務的な言葉で応答すると、右手に装着した六角形 の楯とヴィクトリアの右肩にいる桜花を順に確認し、最後にその背後で鮮やかな影が動くのを 見ると片眉をぴくりと動かした。無表情な美貌に生じた変化はそれだけだった。 「びっき~ もうちょっとゆっくり歩いて~」 「まったく。人一人抱えてる私よりどうして遅いのよ」 得意半分呆れ半分のヴィクトリアが振り返ると、すっかりヘロヘロになったまひろがいた。 「だって~」 どうやら階段を降りるだけで消耗したらしい彼女は、ヴィクトリアの前の人影を認めると、こ ちらは大きく口を開けて可愛らしく驚愕を示した。 「……ってアレ? 寮母さん! どうしてココに?」 千歳は返事代わりに軽く目礼すると、桜花にぴたりと視線を吸いつけた。 「到着が遅れてごめんなさい。霧で貴方達の所在が分からなかったからココで待っていたの。 まずは今から早坂桜花さんを病院に搬送します。その次に貴方達を寄宿舎へ」 「? 搬送? え、でも救急車ないよ?」 「本当にお馬鹿ねあなたは」 ふぅとため息をつくヴィクトリアから桜花の所有権がするりと千歳に移ったかと思うと、美女二 人の姿は手際よく掻き消えた。 「ええー!?」 驚いたのはまひろである。戯画的に白眼を剥くと頭を両手で抱えておろおろとした。 「いちいちいちいち鬱陶しいわね。気づいてないの? あの寮母さんは戦士で、瞬間移動の 武装錬金を持っているから、多分……そうね、二~三分で戻ってくるわよ」 「おお~ ブラボーといい秋水先輩といいお兄ちゃんといい斗貴子さんといい、みんな色々す ごい武器を持ってるんだね!」 「まあママの武装錬金には遠く及ばないだろうけど。だってデザインもオシャレだし」 ヴィクトリアはふふんと得意げに微笑した。 「じゃあさじゃあさ、私が武装錬金発動したらどうなるかな? できたらお兄ちゃんと斗貴子さ んの武装錬金をがしゃこーん! って合体させたようなのが欲しいけど、そーいうのあるかな?」 「さぁ。津村斗貴子のはともかく、あなたの兄の武装錬金は見たコトないし」 「んーとね、学校で見たお兄ちゃんの武装錬金はね、こーんなおっきな槍なんだよ!」 まひろは両手をいっぱいに広げると、それでも足らないのか一生懸命両手をぱたぱたさせ て大きさをヴィクトリアに伝えようと試みた。 「で、ドラゴンさんみたいな顔してるんだ。ね、ね! すごいでしょ?」 (ふーん。でもパパの武装錬金の方が強くてカッコいいに決まってるけど) 内心で大体の見当と評価を下しながら、ヴィクトリアは戯れにまひろの質問の答えを探し出 した。 「三叉鉾(トライデント)はどう? 三又の槍」 「それいい! それすごくいいよびっきー!」 きゃあきゃあ黄色い声を立ててすごく食いついてくるまひろに、ヴィクトリアはやり辛そうな表 情を以て応対した。この会話は千歳を待つ暇つぶしみたいな所があるのだが、今や眉をユー モラスにいからせながら溌剌と喋るまひろはとっくにこの会話そのものを目的としている。 「名前は何がいいかなー。やっぱこう、お兄ちゃんと斗貴子さんの武装錬金の合わせ技だから なんかびしゃびしゃーって光が出て、素早い感じがいいよね。うん。じゃあライトニングまひろ スパスパ槍とか!!」 「確かにあなたにはピッタリかもね。そーいうダサいネーミングは」 冷たい視線を悟ったのか、まひろは頬を膨らませて怒った。 「もー。これでも一生懸命考えたんだよ。じゃあびっきーはどんな名前がいいの?」 ヴィクトリアは一瞬、しまったという顔をした。貶した以上、下手な名前はいえない。 しかし流石にヨーロッパの出であるからして、いかにもな単語は割合すぐに出た。 「……ペ、ペイルライダーとかどう? ヨハネ黙示録に出てくる四騎士の一人よ」 「うーん悪くはないんだけど、なんか文字数が足らないというか……あ、そだ。じゃあ私の案と 合わせて、『ライトニングペイルライダー』なんてどうかな?」 ヴィクトリアは憮然と答えた。 「あなたにしてはいいんじゃない? でもね」 「うん?」 「あなたは確かに武藤カズキの妹だけど、津村斗貴子とは赤の他人だからあの人似の三叉鉾 の武装錬金なんかはきっと出せないわよ」 まひろは「そんなぁー」と俄かにしょぼくれたが、ぶるぶると顔を振って新たな可能性をすがる ような目つきで提唱した。 「で、でも、お兄ちゃんと斗貴子さんが結婚して子供産まれたら可能性はあるよね!?」 「まああるんじゃないかしら。といってもあの二人の子供なんて想像もしたくないわ。絶対にひ どく捻くれてて生意気で考えなしで、無駄に偉そうに決まっているから」 まひろは「えーと……」とすごく物言いたげにヴィクトリアを見た。ひどく捻くれてて生意気で 考えなしで、無駄に偉そうな少女をまひろは見たのだ。でも悪口はいわない。 「大丈夫だよ。きっと可愛いって。おにぎりが好きだったリー、照れ屋さんだけど根はまっすぐ だったりー。むむっ!」 「今度は何よ?」 「決め台詞浮かんだよ! 『闇に沈め! 滅びへの超加速ー!』なんてどうかな!?」 「ハイハイ。勝手にいっててちょうだい。だいたい自分が滅びへ加速してどうするのよ。そんな セリフを攻撃の時に叫ぶのは、あなたぐらいおめでたい頭じゃないと不可能よ」 ぼつぼつと返答しているが千歳はまだ戻ってこない。 (アレ?) そしてヴィクトリアは今の会話からちょっと疑問が浮かんだ。たぶんカズキと斗貴子に子供が 産まれたらその武装錬金は二人のそれの形状を受け継ぐだろう。だが。 (パパが大戦斧でママが兜なのに、なんで私が避難豪なのよ……? おかしくない?) 少し哀愁を帯びた背中に人生を込めて考えていると、ようやく千歳が戻ってきた。 「次はあなたたちね。体重制限があるから順番に……」 やがて寄宿舎の門前につき千歳の姿が消えると、ヴィクトリアは顔を少し曇らせた。 (戻ってきたのはいいけど……やっぱり何か食べてからの方が良かったわよね……) なるべく思い出すまいとしていた千里の顔が、いよいよ脳裏で存在感を増している。 (もしまた食人衝動が芽生えたら……どういう顔をすればいいのよ…………もちろん、逃げた くはないけど、でも) 日常に戻りあらゆる負の呪縛と戦うコトを決意したが、本当に自分がそれを成せるだけの意 志があるかは未知数である。百年もの間思考を止めていたという前歴は、自己の定義や評価 をひどく矮小な物にしてしまうのだ。 「まぁまぁ」 ポンと肩が叩かれた。そちらを見るとあらゆる気苦労とは無縁そうなまひろの微笑がヴィクト リアを見ていて、不覚にも安心めいた感情が湧いた。 「辛くなっても一人で抱え込まなくていいんだよ。私や秋水先輩や、ブラボーや寮母さんに相談 しちゃえば大丈夫。みーんなそうしてるんだから、びっきーだって大丈夫大丈夫。ね?」 人差し指を立ててやんわり諭す少女にヴィクトリアは瞳を唖然と見開いたが、すぐに口元へ 皮肉めいた嘲罵のシワを刻み込んだのは彼女らしいといえば彼女らしいだろう。 「そうね。わざわざ連れ戻したのはあなたたちなんだし、責任は取ってもらわないと」 「うんうん。何を隠そう私は責任取りの達人よー!!」 「やれやれ。本当、あなたはお気楽で──…」 「ヴィクトリア!」 言葉を斬り飛ばすように玄関から放たれた言葉は、それに紛れて近づいてくる足音とともに ヴィクトリアの心臓を鷲掴みにして重苦しい緊張をもたらした。 ゆっくりそちらを見、声の主の顔を直視すると、全身の毛穴から冷たい汗が流れた。 「もう、どこに行ってたの! 最近この街物騒なんだから、勝手に出歩いちゃダメでしょう!」 千里だ。おかっぱで眼鏡をかけたおとなしそうな、ヴィクトリアの母に似た少女は流石に気 色ばみ、肩を怒らせ印象にまるでそぐわぬ大股でズンズンと迫ってきている。もしかすると千 歳がその事務的な態度を貫きとおし何の配慮もなくただただ迅速にヴィクトリアの帰還を知ら せたのかも知れない。そう思わせるほど千里の登場は早く唐突で、心の準備を許さないもの だった。 「え!! えーとねちーちん。コレには色々とふかーい事情があるんだよ!」 まひろも動揺したらしく、引きつった笑みで平手を二つ、おおらかな胸の前でぱたぱたさせた。 声はやや裏返り、端々が何かにぎこちなく引っかかっている感じすらある。 「とにかく、びっきーはこうね、悪くないんだけど何ていうか、その、ちょっと困った習性があって!」 「しゅ、習性!?」 千里は大股をズルリと滑らせて、あやうくコケそうになった。ヴィクトリアが反射的に手を伸ば して体を支えたくなるほどのコケ振りだ。だから辛うじて態勢を戻した少女は眼鏡がズレており、 少し気恥ずかしそうに掛け直した。 「……えぇとねまひろ。もしかして習慣っていいたいの? ほら、生まれた国が違ったら私達の 生活様式と食い違う部分もある訳だし」 「う、うん。ゴメンね。そんな所!」 眼鏡を押さえる千里にヴィクトリアはここぞとばかりに全力で首肯した。 でなければまひろが本当に何をいいだすか分からないし、頼ってばかりいるのも色々な意味 で良くないと思ったからだ。 「そ、そう! 主に食べ物の習慣でね! ……ハッ!」 ヴィクトリアの横眼が凄まじい光でまひろを睨んだのはその時である。 まひろはまひろなりに空気を読んでいるつもりらしい。 それは分かる。 ヴィクトリアの黒い部分をぼかしにぼかして何とか弁護しようとしている。 それも分かる。 だが。 (ちょっと。かばってくれるのは一応感謝するけど、あまり具体的にいわないで。習性とかいっ たのも忘れないわよ。覚えておいて) (……ハイ。っていうかびっきー怖い。さすがホムンクルス) まひろは本気で震えあがり、口を菱形にすぼめた恐怖の表情で凍結した。 一方、千里は生真面目で優等生な彼女らしく、やれ「相談もなしに姿を消したらダメでしょ」と か「心配したんだから」と人差し指を立ててヴィクトリアの上体がほとんど後ろへ倒れんばかり に詰め寄りながらガミガミとお説教を下した。道行く人々のうち何人かがその光景を何事かと 驚いたように凝視したが、やがて内容がひどく心配と真剣さに満ちた物だと知ると安心を浮か べて軽い足取りで行きすぎていく。要するにそんなお説教だ。 「でも、無事に戻ってきてくれて良かった」 最後にうっすらと涙を浮かべてヴィクトリアの肩を抱いたのも心配の裏返しなのだろう。 (ああ……) 彼女はやっぱりそれをまるで母にされているような錯覚を覚えて、様々な不安が融けていく のを感じた。 (でも、所詮それは錯覚。いつまでも浸っていては駄目) ヴィクトリアはすっと瞳を閉じた。 (このコにママの面影を見出したのは、過去を引きずっていたせい。そう、いくら似ていてもこ のコはこのコ。ママはママ。……未練のせいで私はそんな簡単な区別もつけられなかったか ら、このコに対する食人衝動にずっとずっと怯えていた。けれど) ──ココで諦めればいつしか本当に君は人を喰うしかなくなる! だから日常に戻るんだ! ──ちーちんと話してる時のびっきーは心から嬉しそうだっ たよ。 (ママを忘れるつもりはないわよ。でも、私がちゃんと生きないと、向こうでずっとずっと心配さ せてしまうから。パパだって救われないから。だから、だから…………) 恩人たちに倣う。彼らがしている行為に倣う。 (今はもう、昔を断ち切って先に進む時。開けようともせず捨て置いた永遠の扉に向かう時) ヴィクトリアは瞳を開くと、千里を見た。 自分をただの外国人の少女だと信じ、髪を梳き、心底から心配してくれる少女の姿を。 母の幻影の触媒としてではない、若宮千里という少女の存在を、初めて正面から見た。 「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」 「ううん。でもゴメンね。ちょっと嫌なコトがあって。心配掛けて……本当にゴメンね千里」 声はあらゆる強張りから解放されつつある。もしかすると千里を本当の意味で直視できた せいかも知れない。