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LIVE FOR YOU (舞台) 15 ・◆・◆・◆・ 「おや?」 閑散とした通路を疾駆する傍ら、手元のレーダーに新たな反応が浮かび上がった。 唯一、仲間と合流できるすべを持ちながら不幸にも未だ誰とも合流できていない、彼女。 銀のポニーテールを尻尾のように振り翳す――銀狐、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナが立ち止まる。 「桂さんに、柚明さん……そしてやよいさんですか。首尾よく合流を果たせたようですね」 メンバーの中でも随一の非戦闘員であるやよいが、桂と柚明の二人と合流できたのはトーニャにとっても僥倖だ。 あの二人がついていれば、滅多なことは起きないだろう。肩の荷が下りた心持に、トーニャは微笑を零す。 「……ええ。これ以上の犠牲は好ましくありませんからね。みなさんの士気にも、影響していなければいいのですが」 が、すぐに表情を辛辣なものに変え、憂いを呼び戻す。 「酷な話ですかね、それも」 敵本拠地に突入してすぐ、散り散りになってしまった仲間たち。 その内の何人かは、先ほど施設全体に響き渡ったある報告によって、多大なる影響を受けたことだろう。 第二十二回目となる、このような状況下でも律儀に進められた、正午を知らせる――放送。 玖我なつき、山辺美希、ファルシータ・フォーセット、以上三名、戦死の報せ。 「私たちにプレッシャーをかけるための虚言……と判断できれば気が楽なんですがね。 システム上、そのような真似は許されないはず。なら、これはもう覆らない事実として、受け止めるしかない」 気持ちの整理をつける意味での、淡々とした独白。 昼夜問わず皆の前ですとろべりっていたなつきも、 寺院で出会った頃から因縁を築いてきたファルも、 お調子ものでムードメーカー的存在だった美希も、 死んだ。帰らぬ人となった。もうお別れなのだった。 だからといって、くよくよ悲しんだり、嘆いたり、ましてや泣いたりなど、今のトーニャたちには許されない。 ここは戦場。そして敵地。明日は我が身を十分に自覚し、四方八方から迫る敵勢に対処しなければならない場。 ありとあらゆる感情を殺し、実直に行動すべきだ――と、トーニャはクールなロシアンスパイとしての自分に言い聞かせる。 「……さて、と。近くにいるというなら合流しない手はないですね。私も向かうとしましょうか」 レーダーに浮かぶ三人の反応は、今の離れつつある。 またもや合流を果たせず、ではいい加減コントだ。 トーニャは疾駆を再開せんと一歩目を踏み出し、 二歩目で踏み止まった。 「……あ」 前方、通路の先の曲がり角から、ひょっこりと顔を出した懐かしい姿。 自身とは対照的な、相変わらずの金髪。決して扇情的とは言えない、幼稚な裸ワイシャツ。 ふさふさとした金色の尻尾を、隠そうともせず無防備に晒すその存在へと――トーニャは行き会った。 ある種、トーニャ最大の標的でもある、彼女に。 (……“狐”はあなたのほうでしたね。そうそう、思い出しましたよ。私は狐ではなく“狸”……そういう配役でした) トーニャの眼前に、終生のライバルたる妖狐が現れた。 ・◆・◆・◆・ すず――それは武部涼一からもらった、人型としての彼女の名前。 愛着はあるし、捨てる気も毛頭ないし、その名で呼ばれることを至福と感じさえする。 だがそれも、彼に限った話。彼以外の大多数にその名で呼ばれると、正直虫唾が走る。 ゆえに、彼女との邂逅の瞬間、眉間に皺が寄るのはある意味必然と言えた。 「あー、すずたんだ~。こんなところでバッタリだなんて、運命的! トーちん嬉しくて泣けちゃいそう!」 通路上で偶然対面した、彼女――トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナは、裏声全開でそんなふざけた挨拶を放る。 すずは遠慮のないしかめっ面をトーニャに浴びせ、一言。 「気色わるっ……」 本心からの不快感を告げた。 「む。練りに練った再会の挨拶をそのような形で一蹴するとは、さすがはフォックスビッチといったところですね」 「…………」 「なんですか、その、私なんかとは口も利きたくないと言わんばかりの表情は。実にすずさんらしい。最高にして最低です」 減らず口を、と罵る気すら起きない。 戦場のど真ん中で、敵同士が遭遇した。だというのに、双方に殺気はない。 あるはただ、嫌悪と侮蔑を込めた眼差し、友愛と親和性を秘めたポーズ、不合致な組み合わせだけ。 「で、こんな場所でいったいなにを? まさか人材不足のため、あなたも戦闘員として借り出されたんですか?」 「――“黙れ”」 語る言葉は、力となる。 妖狐のみが持ち得る絶対服従の力――『言霊』。 逆らうことは不可能な命令として、すずはトーニャに“黙れ”と告げる。 「無駄ですよ。あなたも学習しませんねぇ。私が耳につけているこのインカム、わかりませんか? 対策は万全です」 しかしその言霊も、耳に直接届かなければ効果は適用されない。 初邂逅のときと同じく、トーニャの耳にはおかしな機械が装着されていた。 そのせいで、こんな初歩的な言霊も憑かせることができない。すずは歯がゆく思った。 「さて、“言霊で部下を自我なき操り人形に変えた”、でしたっけ。まったく、厄介なことをしてくれましたねぇ」 「…………」 「あなたがいなければ、城攻めも随分と楽になっていたでしょうに……こっちは早々に戦死者まで出る始末です」 「…………」 「そのことについて、然るべき始末をつけたいところですが……話す気がないとなると、待っているのはただの虐殺ですよ?」 調子ぶった態度のトーニャに、すずは内心、苛立ちを募らせるばかりだった。 しかし彼女の強気にも頷ける部分はある。なにせ、すずとトーニャの実力差は見るも明らか。 人工とはいえ、戦う術として人妖能力をマスターしているトーニャに、言霊を封じられたすずが勝てる道理はない。 相手側に、こちらを殺す気があるとすれば――すずの身は武部涼一の顔を再見することなく、むくろと化すだろう。 傍目から見れば、この状況はピンチなのだ。 逃げ出すなり、助けを呼ぶなり、そういったことをすずはするべきだった。 が、すずはなにもしない。むき出しの敵意を、目の前のいけ好かない女に向けるだけ。 その不遜な態度が、トーニャの失笑を誘った。 「……せっかくの知己との再会です。私としては、腰を落ち着けて話したいのですが。どうですか?」 選択肢を投げられる。 この場で死ぬか、話してから死ぬか。 もしくは、会話の末にこちらの懐柔でも狙っているのか。 どちらにせよ、すずの選択は既に決まっていた。 「……なら、おあつらえ向きの部屋がある。案内するから、ついてきて」 「やれやれ、やっとまともな言葉を返してくれましたか。いいでしょう、付き合いますよ」 すずはその場で振り返り、トーニャに背中を見せる。 トーニャは別段、不意打ちを仕掛けようともしない。 ただ黙って、すずの後ろをついていく。 「地獄の果てまでね」 そんな不穏な言葉を漏らしながら。 心底いけ好かないと思った。 ・◆・◆・◆・ ノブ式の扉を潜った先には、夢に描いたような子供部屋の風景が広がっていた。 四方の壁を埋めるのは、色鮮やかなイラストの数々。兎や小鳥が花畑で戯れている。 辺りには積み木やジグソーパズル、ぬいぐるみなどの玩具が無造作に散らばっていた。 「これはまた、えらくファンシーなお部屋ですね。いったい誰の趣味なんでしょう」 すずに案内された“おあつらえ向きの部屋”に入り、トーニャは感嘆。 敵のアジトにまさかこれほど場違いな一室があるとは、驚きだった。 「あ、大福」 カーペット敷きの床を土足で歩みながら、トーニャは部屋の中央に置かれた卓袱台の上を見た。 大福がぎゅうぎゅうに詰まった重箱がある。薄っすらとした赤みは、苺大福と見て取れるだろうか。 「それは命の。別に食べてもいいわよ」 「遠慮しておきますよ。毒でも入っていたらかないませんから」 のこのこと敵の誘いに乗ってはみたが、トーニャは罠の可能性を捨て切ってはいない。 おどけた態度の裏では、常に緊張と警戒を。他者を欺き、自分を偽ることは、スパイである彼女の本領だ。 すずはそんなトーニャに一言、「そう」とだけ言って、部屋の端に置かれたベッドに腰掛けた。 「で、わたしといったいなにを話したいって? さっさと済ませて」 「おお、この清々しいまでに偉ぶった態度。まったくもってすずさんそのもの。懐かしさが込み上げてきます」 「御託はいらない。本当はこうやって顔を合わせているだけでも不快なんだから」 「相変わらず傲岸不遜を絵に描いたような糞キヅネですねぇ。少しは我が身の心配をしたりはしないんですか?」 トーニャは入り口の近くに立ったまま、間に卓袱台を隔てて、ベッド上のすずに語りかける。 「私のスペックを知らないわけじゃないでしょう? 今すぐにでも、あなたの首をキュッとやることは可能なんですよ?」 てめぇなんざいつでも殺せるんだよ、という牽制。 すずは「ふん」と鼻を鳴らし、態度は依然、平静を保つ。 「だから、なに? 言っておくけど、わたしを殺したって意味なんかないわよ」 「おや、それはおかしな話ですね。戦争の最中、敵を屠ることに意味がないだなんて――」 「なんか勘違いしているようだから言っておくけど……わたしは、神崎黎人の味方ってわけじゃない」 出てきた言葉に、「おや」とトーニャは怪訝な表情を作る。 「妙なことを言いますね。なんですか、那岐さんや九条さんのように、神崎を裏切ってこちら側につく気でも?」 「ふざけたことを言わないで。わたしは神崎黎人の味方ではないけれど、おまえたちの味方というわけでもない」 すずは敵意を剥き出しにした瞳で、トーニャの顔面を射抜くように見る。 「わたしにとっては、人間なんてみんな敵よ……一人残らず死んじゃえばいいんだ」 恨みがましい呪詛が込められた、文面どおりの恨み言。 このすずは、トーニャを知らない平行世界のすず――だとしても、人間嫌いな点は変わっていない。 「……いったいなにを話したいのか、さっきそう訊きましたよね。いいでしょう、お答えします。 私が話題として挙げたいのはすずさん、なにを隠そうあなたのことなんですよ」 トーニャはにこやかに、憮然とした顔つきのすずとは対象になるよう、表情に気を配る。 「人間なんてみんな死んじゃえばいいんだ、ですか。矛盾した言葉だとは思いませんか? あなたが起こした行動は事実、神崎黎人への協力。毛嫌いする人間の手助けなんですよ。 真に人間を憎んでいるというのなら、あなたの言霊で片っ端から死ねと命じていけばいいじゃないですか」 すずは相槌の一つも打たない。黙って耳を傾ける。 「私にはまだ、そのへんの事情が見えてこないんですよ。あなたはなぜ、神崎黎人に協力しているのですか?」 それは、那岐や九条むつみも知り得ていない、おそらくは本人のみが知っているのだろう繊細な事情。 このすずは如月双七を知らない。が、境遇は違えどその中身、性格や能力、妖狐の本質までは変わっていないだろう。 だからこそ、ずっと気がかりだった。人間嫌いのすずが、神崎黎人という人間に協力している理由はなんなのか。 「……そういう盟約だからよ。神崎黎人に協力しろ。わたしはそういう風に言われただけ」 「質問の意図が読み取れていませんか? 神崎黎人に協力しろ。そんな戯言を、どうしてあなたが大人しく聞いているんです?」 トーニャの知るすずは、間違っても人間の言うことを大人しく聞くタマではない。 たとえそれなりの利得があるのだとしても、まず人間への不信感、嫌悪感が先に来るのが彼女の性分だ。 神沢学園生徒会の面々ならともかく、一番地などという得体の知れない組織に加担する理由など、考えられない。 「なにも……知らないくせに……っ」 訝るトーニャから視線を外し、すずは不快そうに舌打ちをした。 「わたしは“ある女”から神崎黎人に協力しろと言われた。喋れるのはそれだけ。 女の正体は誰なのか、見返りはなんなのか、全部まとめて他言無用。そういう盟約なの」 「すずさんの口にそこまで堅いチャックを施すだなんて、大層なやり手みたいですねぇ。 なるほど、薄っすら見えてきましたよ。あなたは神崎以外の誰かと、盟約とやらを交わした。 その内容は神崎黎人への協力。そして詳細は一切合財他者には語れない。そういうわけですね?」 すずは脚を組みなおし、短く一言。 「そうよ」 ちらり、と履いていない部分が見えたが、トーニャは自粛する。 「しかしそうなると、やはり“人間なんてみんな死んじゃえばいいんだ”というセリフは矛盾しています。 あなたの立場で考えるなら、神崎黎人が敗北してしまっては事でしょう。協力の意味がなくなってしまうのですから。 ましてや自分は味方じゃない、むしろ死ねばいいだなんて、それは盟約に背くことと同義なのではありませんか?」 「わたしにとって大事なのは、協力したという結果だけ。神崎の生死も、この争いの勝敗も、関係ないのよ。 現にわたし、もうお役御免なわけだし。ここの人間を言霊で人形に変えたのが、わたしの最後の仕事ってわけ」 「ははぁ。だからあんなところで油を売っていたわけですか。それはたしかに、あなたを殺しても意味なんてありませんね」 一連の会話の中から、キーワードを選別。 すず――いや、『言霊』という舞台装置の現状について、推察する。 「本当……こんな茶番、さっさと終わってほしいのよ、わたしは」 彼女に与えられた役割は、『言霊の使用』という一点に尽きる。 それ以外に存在価値はなく、戦闘員などでは絶対にありえない、ただ事が終わるのを待つだけの傍観者。 物語の中から外れた“自称幸運の女神”と同じく、彼女もそういう意味では、既に退場者なのだった。 「それについては同感です。こんなところで時間を取られている暇もない、というわけですな」 なら、悠長にしている場合ではない。 こうやって話している間にも、他の仲間たちは生き死にの場を駆け抜けている。 言霊という厄介な力を有していたすずは、幸いにもこの最終決戦に関しては不干渉を貫く気構えだ。 憂いが一つ取り除けただけでも収穫と考え、改めて戦地に赴くとしよう。 と、自己完結。 トーニャはすずとの因縁に、ここで一応の決着をつける。 「あ、苺大福一個もらっていきますね。こちとらお昼も満足に取れていないものでして」 「……いちいち断らなくていいから。とっとと出てけ」 「おお、ゾイワコゾイワコ」 卓袱台の上の苺大福を一つ、ひょいっと掴み口に含むトーニャ。 もごもごと咀嚼しながら、部屋の入り口へと向き直る。 「……うるさい奴っ」 ドアノブに手をかけたところで、ぼそっとすずが零した一言を、トーニャは聞き漏らさない。 苺大福の甘ったるい味を十分に堪能した後、これを嚥下。胃に栄養分が落とされていくのを実感。 「……そうそう。訊き忘れていたことが三点ほどありました」 ドアを開こうとした寸前、トーニャは顔だけをすずのほうに向け、訊く。 「“如月双七”という名前に、覚えはありませんか?」 含みを感じられない、無機質な問い。 「知らない」 すずは淡白にそう答えた。 「では、“如月すず”という名前はどうでしょう?」 同じ調子で、トーニャがまた尋ねた。 「……はぁ?」 すずは即答を返せず、間の抜けた声を発した。 「これも知りませんか。では、これが三つ目の質問になりますが――」 トーニャそっと、ドアノブから手を離した。 全身ですずのほうへと振り返り、口元に指を添える。 表情は妖艶な色で染まり、今度は含みありげに、もったいぶって質問を口にする。 「――あなたが持っている“すず”という名前。これ、いったい誰にもらった名前なんでしょう?」 瞬間。 ベッドに腰掛けていたすずの身が、跳ね上がった。 悄然とした顔つきで、トーニャの言動に衝撃を覚えている。 ――ビンゴ。 トーニャは胸中、来るべき延長戦への期待感に心を躍らせていた。 ・◆・◆・◆・ 「……その」 トーニャの思いもよらぬ言葉に、気づけば体は勝手に動いていた。 ベッドの傍、卓袱台を間に置いて、扉の前に立つトーニャの顔を睨み据える。 姿勢は正しく、口元は微かに笑んだ、挑発的で不敵な佇まい。 視界に入れておくだけでも苛立たしい、鬱陶しさに溢れた存在感。 「その名前で、わたしを……その名前を呼ぶな!」 感情を抑えきれず、すずは怒号する。 トーニャは顔色一つ変えずに、その必死な様を嘲笑った。 「それは命令ですか、“すず”さん? 言霊を封じられた小娘の戯言など、はたして何人が耳を貸すものか」 「またっ……!」 「それとも知らないんですか? 名前っていうのは、呼ぶためにつけられるものなんですよ」 退室する気はすっかり失せたのか、もしくは最初からポーズだけだったのか、トーニャは扉を背に文言を突きつけてくる。 「“すず”が嫌なら改名してはどうです。ファッキンフォックスなりフォックスビッチなり、素敵な候補はいっぱいありますよ」 反論する隙を与えない、怒涛の舌回し。 舌戦は、問答無用で相手を捻じ伏せられる術を持つすずにとって得意分野であるはずなのに。 黙れ、とでも。 死ね、とでも。 好きなように命ずればそれで済むだけの話なのに、叶わない。 盟約により、ここの職員たちに対して使用を禁じられていたのとは状況が違う。 言霊が、今一番殺してやりたい女に通じないという、歯がゆさ。 トーニャの言動が、すずの苛立ちを一層高まらせていく。 「大事な人にもらった名前なんて、捨ててしまえばいいじゃないですか」 そして――その一言で絶句した。 怒りを一時的に諌めた上での、驚愕。 まるで、こちらの胸の内を見透かしているような。 「おまえ、まさか……」 おそるおそる、口に出す。 共通点など、なにもなかった――はず。 とまで思って、一つだけ、あったことに気づく。 人妖。 人と妖怪の狭間をいく、あやかしならざるあやかし。 目の前のトーニャも、今はまだ会えない“彼”も。 同じ人妖――だから、どうだというのか。 考えたところでわからない。 わからないゆえに言葉にしてしまう。 「……涼一くんのことを、知ってるの?」 発言自体が、トーニャの仕掛けたトラップだとも気づかずに。 すずは敵対者に、絶好の考察材料を与えてしまう。 「涼一くん、涼一くんですか。なるほど……それが如月くんの本名だったというわけですね」 得心がいきました、とトーニャは揚々と頷いてみせる。 すずは棒立ちの状態で、彼女の挙動に目を見張った。 「ありゃ、急に大人しくなりましたね。言いたいことがあるならどうぞ」 「…………」 「沈黙、と。わからないでもないですが、ここは喋る場面だと私は思いますよ」 言葉が出てこなかった。 芽生えてしまった予感を意識すると、どんな発言も地雷となってしまいそうだった。 「質問は三つと言いましたが、追加でもう一つだけ訊かせてください。 あなたはこの儀式、いえ、殺し合いの実情をどれだけ把握しているんですか?」 すずは答えない。否、答えられない。 まるで“黙れ”という言霊が自分に返ってきたかのような、そんなありえない錯覚を覚える。 「その様子ですと、なにも知らないようですね。どこで、誰が、どんな死に方をしたのかも」 わざわざ頷かずとも、素振りだけでトーニャにはわかってしまうらしい。 すずの立場は、あくまでもゲストだ。命令されない限りは、直接的関与も避けてきた。 星詠みの舞という儀式にも、神崎の目的にも、人間同士の殺し合いにも、一切の興味はない。 「かわいそうに。心の底から同情します。せめてもの救いとして、あなたに教えてあげましょう」 トーニャが、笑った。 口元だけの微笑ではない、満面の笑み。 次に飛び出す言葉が恐ろしくなるほどの、前兆。 逃げ出したい衝動に駆られる。 もとより、退路などなかった。 逃げ出すわけにもいかなかった。 まだ。 まだ、彼を取り戻してはいないから―― 「如月双七……もとい、“涼一くん”は死にました。あなたが加担し、傍観していた、殺し合いの中でね」 ・◆・◆・◆・ 「……うそ」 傲慢な態度は崩れ落ち、鉄面皮は蒼白に彩られる。 待ち望んでいた豹変に、トーニャは顔面全体でほくそ笑む。 かつてのライバルがこんな顔を見せるとは、なかなかにそそられるものがあった。 「うそ、だ……だって、涼一くんはナイアが助けたって……全部終わったら、また会わせてくれるって」 「“ナイア”。ようやくその名前を出してくれましたね。裏で糸を引いていたのは、やはり彼女でしたか」 理解し、得心し、ようやく納得した。 すずもやはり、言峰綺礼やエルザと同じくナイアに使わされたゲストの立場。 そしてその境遇を甘んじて受けている理由は――“涼一くん”という人質の存在。 確信はなかったが、予想はできていた。すずが動く理由など、初めからそれしか考えられなかったのだ。 涼一くん――それは神沢学園生徒会所属、“如月すず”の兄である“如月双七”の本名に違いない。 あの兄妹がなんの目的で神沢学園に身を寄せていたのかは知っていたし、如月の姓が偽名であることにも気づいてはいた。 「双七、というのも珍しい名前ですが、いったいなにから取った名前なんでしょう。すずさん、知りませんか?」 「知らない……わたしは、双七なんて……涼一くん、涼一くんは……」 「やれやれ、メンタル面の弱い。そんなにうろたえた素振りを見ると……ますますいじめたくなっちゃうじゃないですか」 トーニャは、ここぞとばかりに畳み掛ける。 「まとめますよ。あなたが言う“涼一くん”。彼は“如月双七”という名前で、殺し合いに参加していました。 死亡が発表されたのは第四回放送時点。下手人は衛宮士郎という男。深優さんはその現場に立ち会ったそうです。 私はここでは如月くんと対面叶いませんでしたが、面識はあるんですよ。通っていた学校が同じでして。 信じられないかもしれませんが、すずさん。その学校には、あなたも通っていたんですよ。私と同じ制服を着てね」 華麗にスカートを翻す。白を基調とした神沢学園女子制服を、ワイシャツ一枚のすずに見せびらかすように。 すずは、トーニャのその様子を食い入るように見ていた。 「如月くん、いえ涼一くんの印象について語りましょうか。お人よし、優しい、泣き虫、このへんですか。 ええ、殺し合いの最中でもその善人っぷりは遺憾なく発揮されていたそうですよ。深優さんがその証人です。 施設のどこかに監視映像の記録とかないんですかね。どうせ暇してるんなら、今からでも見に行ったらどうで――」 言い切る前に、すずが動いた。 覚束ない足取りで一歩、カーペット敷きの床を強く踏む。 十分に溜めて、二歩。気が動転しているのか、走り出す様子はない。 ただ、言われたとおり事実を確認する意思はあるらしく、歩む先には部屋の扉があった。 トーニャはその扉の前に、立ち塞がるようにして君臨している。 「どけ……どきなさいよ……っ」 「凄まじい狼狽っぷりですね。その様子、私の知るすずさんが如月くんに向けていた執着心と、まさしく同等のものです」 「あんたなんて、知らない……! それよりも、涼一くん……涼一くんが生きてるって、確かめなきゃ……」 すずは今にも吐きそうなくらい、青ざめた顔をしていた。 なんて嗜虐心をそそる弱りっぷりだろう。 トーニャはゾクゾクと身を震わせ、つい、我慢しきれず、 「え――?」 すずの腹に、ローリングソバットを叩き込んでしまった。 ・◆・◆・◆・ 静寂だった室内が、喧騒に穢される。 蹴り飛ばされたすずの身は卓袱台を巻き込み、上に載っていた苺大福を撒き散らしながらベッドにまで転がっていった。 玩具で散らかっていた部屋に、大福の粉が舞う。潰れた苺が、床を汚す。トーニャは構わず、その上を踏み歩いた。 「失礼。蹴ってくれと言わんばかりの狐がいやがりましたので、つい」 舌が血の味を感じている。蹴り飛ばされた衝撃で口内が切れたらしい。 直接の打撃を受けた腹部は痛みを訴え、内臓はひっくり返った。口から軽く胃液が零れる。 傍にあったベッドのシーツを強く握り込み、すずは立ち上がり様にトーニャの顔を睨んだ。 ――――ヒュン。 その瞬間のことだった。 トーニャの背後で、一条の鋼線のようなものが動作。 目で追うよりも速く、それはすずの左目の前にやって来て――眼球を抉る。 「――がっ」 左の世界が赤く染まり、視界が半分、消滅した。 「っがああぁああぁぁぁぁぁぁああっ!?」 獰猛な獣のうめき声、とはかけ離れた、未成熟な少女の絶叫。 血の滴る左目を手で押さえ、すずはその場で蹲る。 眼球は眼窩の中で、潰れた苺大福と同じ風になっていた。 「すずさん。先ほどあなたは、“わたしなんか殺しても意味はない”と、そんな風に言っていましたよね。 それ、残念ながら間違いです。あなたを殺す意味は、ひぃふぅみぃ……五つ。少なくとも五つはあるんですよ」 這い寄るのは、銀のポニーテールを尻尾のように振り翳す――狸。 背中の辺りから伸びる、縄にも似た細く長いそれは――人妖能力『キキーモラ』。 「一つ。あなたは私のことなんて知らないかもしれませんが、私はあなたのことをよーく知っているんですよ。 人間が大嫌いだということも、生かしておいたらなにをしでかすかわからないということも。 私たちにはまだ、先のステージがあります。厄介者には生きていられると面倒……そういった意味での、始末」 キキーモラの先端には、鋭角なひし形をした錘のようなものが取り付けられている。 その先端だけが異様に赤く輝いており、なにかと思えば、すずの目を抉った際に付着した血だった。 トーニャは手足の所作もなく、己の意思だけを操縦桿として、キキーモラを繰る。 目にも留まらぬ速さで宙を舞うそれは、ざんっ、とすずの右耳を削ぎ落とした。 「二つ。あなたが一番地の職員に憑けた言霊。これはあなたを殺せば自然と解除されるものなんでしょう? なら、ここであなたを殺して、人間の戦闘員だけでも無力化しておけば、後々の攻略も幾分か楽になる」 すずの叫喚をバックミュージックに、しかしトーニャは表情一つ変えず、喋り続ける。 ひゅん――ひゅん――と、二人の周りを恒星のように回り続けるキキーモラ。 赤みを増した先端の錘は時折、付着した血液を室内に散らした。床や壁に斑点ができる。 「三つ。ある機関が妖狐を欲していまして。せっかくの機会なので、このまま持ち帰りたいという個人的欲望があります。 ただ、やはり生きたままというのは難しい。なので剥製にでもして、祖国と勲章のために鞄にでも詰めておこうかな、と」 トーニャの言動など、既にすずの耳には入っていない。左目と右耳から来る激痛が、理性すら奪おうとしていた。 この痛みをすぐにでも克服しなければ、迫る命の危機は回避できない。そう、本能では理解していても。 体は思うようには動いてくれない。繰り出されたキキーモラが一閃、すずの喉を裂いた。 「四つ。あなたという舞台装置がなければ、そもそもこんな殺し合いは成り立たなかった。 如月くんやみんなが死んだのは、つまりはあなたが存在していたからと解釈することができます。 “なんて迷惑な雌狐だ、死んじゃえばいいよ”。これは嘘偽りない私の本心。というわけで、殺します」 これではもう、喋ることはできない。 言霊を憑かせることも。 涼一くんと楽しくおしゃべりすることも。 なにもできない。 「五つ。あなたは個人的にムカつきます。これ以上、“如月すずさん”を穢さぬよう――ここで死んでください」 なにが。 なにが、いけなかったんだろう。 わたしなにか、わるいことでもしたのかな。 わたしはただ、りょういちくんにあいたかっただけなのに。 想いは報われない。母が人間に殺されたときも、同じような不条理を味わった。 まったく、人間って。 野蛮で、凶暴で、醜悪で、自分勝手で、なんて――おっかないんだろう。 死んじゃえばいいのに。 最期に勝ったのは、武部涼一への想いではなく、人間への憎しみだった。 ・◆・◆・◆・ ぽた、ぽた、ぽた、と。 心臓の中心を射抜いたキキーモラから、妖狐の血が滴り落ちる。 トーニャはしばらくそれを宙に浮かべたまま、停止。 キキーモラを収納しようともせず、ただ黙って立つ。 物言わなくなったすずの亡骸に、視線を落としながら。 「……さすがに、見知った顔を手にかけるというのは堪えますね」 所詮は平行世界の存在、と割り切って考えていたつもりだった。 いくらクールなロシアンスパイといっても、芯には熱い部分もある。 感情的な面では、やはり――いい気分にはなれない。 「と、感傷の時間はこのへんにしまして。とっとと次のフェイズへと進みましょうか。 桂さんたちの位置は……あや、やはり離れてしまいましたねぇ。仕方ありませんが」 手元のレーダーを確認してみるが、他の仲間の反応は綺麗に消えてしまっていた。 合流の目的は果たせなかったが、すずという一角を切り崩せたのは、一番地攻略の上でも大きな一歩となる。 彼女の死によって言霊は解除され、無理やり戦闘員に仕立て上げられていた職員たちは自我を取り戻すはずだ。 「後遺症が残るとも限りませんが、命令を聞くだけの殺人マシーンを相手取るよりはマシでしょう。 これで他のみんなに及ぶ被害も少なくなれば幸いなのですが……」 基地内をざっと回ってみたところ、警備についているのはほとんどが人間の兵士だ。 厄介なアンドロイドたちは皆、九郎や玲二たちが引きつけていると考えていい。 「心配してるだけじゃ始まりませんね。気を引き締めなおしまして、再出発といきますかぁ! ……と、その前に」 トーニャは扉に向かおうとして、またすぐに踵を返す。 床には血まみれのすずの亡骸が、今も横たえられている――ただし、その姿は先ほどとは別のものに変化していた。 「命を落として、人化が解けたみたいですね。これが妖狐……お偉方が垂涎していたサンプル、ですか」 人型を成していたすずの身は、本質である妖狐、幼い狐の姿へと戻っていた。 「動物虐待の趣味はなかったんですがね」 鮮やかな金の体毛は、満遍なく赤い血で汚れてしまっている。 見かけたのが街の路上だったならば、思わず黙祷せずにはいられない凄惨な死に様だった。 それを作り上げたのが自分だと踏まえ、追悼の意は述べない。 ただ、後々のことを考えて、すずの亡骸を自身のデイパックに仕舞いこむ。 「……墓など作ってやれないでしょうが、どうか化けて出ないでくださいよ」 これが、この地で出会ったすずに対して向ける、最後の言葉。 今度こそ、決着だった。 「さて、では改めて」 トーニャは、扉のほうへと向き直る。 ドアノブに手をかけ、軽くこれを捻る。 ノブを捻ったまま、扉を前に押して開く。 不意に、押す力に抵抗力が加えられた。 扉を前に開こうとしても、押し返される。 はて、とトーニャが違和感を覚える刹那。 「――ウゥ…………アアアアアアァァァァァァァァ!!」 部屋の外から、咆哮――と同時に、トーニャの眼前にあった扉が蹴破られた。 咄嗟に飛び退くも、一瞬で破壊された扉の木片が、トーニャへと突き刺さる。 いや、ここは施設内。扉は木製ではなく、鉄製だった。だというのに。 「あ……ぐっ!?」 細かく砕かれた鉄の欠片を全身に浴び、トーニャは玩具と苺大福と血痕で満たされた床の上を転がる。 「な、なに……が!?」 すぐに体勢を立て直そうと、腕と脚に力を込める。 その途中で、視界がありえないものを捉えた。 トーニャが潜ろうとした、扉の傍。 鉄扉を破壊して室内に入ってきた刺客は、異形。 二足で立つ人型、服装は千切れたベスト、銃器がぶら下がったベルト。 リアルタイムで爛れ、抜けていく髪に、紫と黒が混じったような禍々しい肌の色。 角。 爪。 牙。 獰猛な唸り声、左右で違う大きさの瞳、溶解液を思わせるほど酸度の高い唾液。 肩や膝の辺りは肌が隆起し、骨が飛び出したり、垂れたりしている。 一歩前に進むと、落ちていた積み木が踏み砕かれた。 言葉はどう考えても通じそうにない。 「…………」 トーニャは絶句する。 こんなものまで控えているとは――いや。 これは、人間が変質したものだ。オーファンとは違う。 人為的に作りだしたり、ましてや戦力として当てにするなど、できるはずがない。 「鬼退治は専門外なんですけど、どこに文句言えばいいですかね?」 目の前に立つあやかしの名は――『悪鬼』。 憎悪を糧として誕生する、愚かな人間の成れの果て。 最悪にして最凶の、難敵だった。 ・◆・◆・◆・ ――血まみれになって倒れていた人間が、朝の到来を察知したように自然と起き上がる。 ――肌の色を紫や黒、深い緑に変色させ、体の様々な部分を外に突出させながら、存在自体を変貌していく。 ――人であることを示す理知的な言葉は消え、代わりに獰猛な獣のうめき声が各所に木霊する。 このような場景が、多数。 戦場の状況。少数の精鋭たちと、多数の人形たちによる激しい攻防は、一つの区切りを迎えた。 機械仕掛けの人形がまだ幾らかの数を残す中、自我を奪われていた人形たちは、ある節目を境に一斉に事切れた。 彼ら人間の職員たちを、人形の兵士に仕立て上げていた張本人――妖狐のすずが死亡したことによって。 既に侵入者たちに殺されてしまっていた者も、まだ存命していた者も、皆呪縛から解放された。 ただし、呪縛からの解放が彼らにとっての安寧とは決して言えず、むしろ状態は悪化する。 すずが憑けた言霊が解かれたとき――その瞬間を鍵として、ある術式が発動した。 言霊によって操られていた人間たち、全員の悪鬼化である。 そんな罠があるとは露知らず、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナはすずを殺害することによりこれを発動させてしまった。 人間の悪鬼化は闘争本能と戦闘力を肥大化させ、言霊の人形兵士などとは比べ物にならないほどの障害となって立ち塞がる。 倒すことも、ましてや説得して人間に戻すことも困難な、厄介極まりない敵の出現だった。 自我を憎悪に喰われた鬼たちが、一番地基地内を暴れ回る。 生きている者を標的とし、殺し、喰らい、腹を満たすために。 完全なる無差別破壊、阿鼻叫喚のステージが、ここに完成した。 誰が死に、誰が生き残るかは、もう誰にも予測できない。 一番地職員の悪鬼化は、誰にとっても予想外の出来事だったから。 唯一の例外、言霊と共にこの世を去った、あの妖狐を除いては。 ――――死んじゃえばいいのに。 彼女の残した呪詛が、基地の中に浸透していくようだった……――。 LIVE FOR YOU (舞台) 14 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) ★
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〇学園都市TOKYO 日本に新設した「企業」の所得税と、世界からの義援金で成り立っている、中立組織。 【エーテライザー】と呼ばれる戦士、および【エーテライザー】を志す少年少女が、世界中から集う。 学生たちは一般教育、戦闘教育を受けながら、依頼が舞い込めば出撃する。という形式を取る。 〇入学・卒業制度 入学試験が受けられるのは13歳から18歳まで。入学試験の難易度は高い。 クラスは「十年生」に分かれており、一定の成績を残していれば、教職につくことができる。 〇授業内容 学園内での共通語は「日本語」となっており、すべての授業も日本語で行われる。 よって、海外から留学してきた学生は、全員が日本語を話すことができる。 〇学生寮 巨大な本校と、それぞれのタイプに適した寮が四種類。男子寮と女子寮で、合計八つ。フロアは百階建て。 寮長は、年に一度の投票で選ばれる。投票対象は「ランクA」以上の人物であることが条件。 また、寮長に選ばれた者は、部下となる副寮長を一人選定する。 〇ギルド 部活動のこと。運動系ギルド・文系ギルドに分かれており、専用の部室棟がある。 新規に立ち上げる(部長になる)には、生徒会メンバーによる半数以上の承認がいる。 〇生徒会 全生徒からの「投票」で、それぞれの寮から毎年二人ずつ、合計で八人が選ばれる。 企業の依頼を選別でき、学園に対しても大きな権限を持つ。戦闘能力も秀でている。
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LIVE FOR YOU (舞台) 8 ・◆・◆・◆・ 「兄上っ!」 親しみの感情がこもった声に、神崎は司令室の入り口へと顔を向ける。 そこには彼の妹であり、この組織の中で唯一打算なく感情を向けられる美袋命と、彼女のお目付け役であるエルザの姿があった。 「また、基地の中を歩き回っていたのかい?」 獣のように跳ねて駆け寄ってきた命に神崎は優しく声をかける。 命は兄の問いに悪びれることもなく面白かったぞと返答し、満面の笑みを浮かべた。 「おみやげだ。兄上もいっしょに食べようっ!」 近くから椅子を引いてくると、命はそれを兄の隣に置きちょこんと腰かけ、抱きかかえていた紙袋を机の上に置いた。 ガサガサと乱暴な手つきで袋の口に手をつっこむと、すぐに大きな肉まんがその中から出てくる。 さてこれはどういうことかと、神崎はエルザへと視線で尋ねてみるが、しかしエルザはただ横に首を振るだけであった。 「知らないロボ。エルザが見つけた時には、もう持ってたロボよ。大方、勝手に食堂まで行って盗んできたに違いないロボ」 「私は欲しがったりはするが、人のものを勝手に食べたりはしないぞっ!」 エルザの適当な答えに命は剣幕を見せる。 だが、肉まんを手にしていることを思い出すと、それをふたつに割って片方を兄へと差し出した。 「さぁ、兄上も。まだあたたかくておいしいぞ」 神崎は肉まんの片割れを受け取り、妹にならって大口で齧りつく。確かに、その肉まんはあたたかくておいしかった。 「下働きは辛いロボ。エルザはシンデレラガールロボね」 ひとり、エルザは基地内の通路を歩いている。 朝から行方不明だった命の捜索を終えたと思ったら、またしてもお茶くみの仕事であった。 それぐらいなら誰でもいいと言えるし、なんなら司令室に給湯セットを置いておけばいいのにとも言える。 実際、他の職員は適当にそれでコーヒーなんかを飲んでいるのだが、しかし神埼の紅茶へのこだわりだけは別だった。 だとしても、ならば何故エルザがするロボか? と言ってみても、この非常時に基地内を出歩ける者は案外多くはないのだ。お茶くみでとなるとなおさらである。 「エルザを迎えに来てくれる王子様はどこにいるロボか……?」 ぽつりと呟き、エルザは通路の端々にできた水溜りを器用によけ、ただ歩いてゆく。 ・◆・◆・◆・ 闇に閉ざされた洞窟を仄かに照らすオレンジ色の炎。 その炎に照らされ、三人分の影が冷たい岩肌に長く伸びている。 「ほんと不思議だよねー、何にも燃やすものないのに焚火できるなんて」 と、相変わらず呑気な声で桂は濡れた衣服を乾かしている。 柚明は桂に相槌を打ちながら自らも濡れた衣服を乾かしていた。 「んー……わたしのほうはもう乾いた感じだけど……柚明お姉ちゃんはどう?」 「ごめんなさい……もうちょっとかかりそうね」 比較的軽装な桂の服と違って柚明は何枚も重ね着した和服である。 当然のことながら水をたっぷりと吸った和服は中々乾きづらく、また水を吸った着物はひどく重かった。 本当なら二人とも濡れた服を脱いで乾かしたいのだが―― 「僕にお構いなく~、物干し竿に使えそうな物はそこにあるからねー」 那岐は笑いながら壁に立てかけている金属製の棒状の物体にウインクした。 「……もう那岐君の冗談はスルーしてもいいかしら?」 「あはは……でも、確かにそれなら物干し竿として十分使えそうだね」 と、桂は立ち上がり立てかけたそれを持ち上げた。 九七式自動砲――かつて旧日本陸軍によって製造された対戦車ライフルである。 製造されてから半世紀以上経過しているのにも関わらずそれは新品同様の光沢を放っていた。 現代の主力戦車の装甲を打ち抜くには心もとないが、 装甲車程度の物なら安々と打ち抜くそれはその威力と射程にふさわしい重量と長さを誇っていた。 ――『全長2.06m 重量59.0kg』 まさに鉄塊ともいえるそれは銃架に備え付けて撃つ物であり、 ましてそれを抱えて移動しながら撃つなどということは本来不可能である。 だが桂はそれを片手でいとも容易く持ち上げる。 浅間サクヤの鬼の血は60kg近くある鉄塊を苦にすることなく持ち上げる膂力を桂に与えていた。 「さっすが桂ちゃん。それを君に渡して正解だね」 「うん……」 桂の顔に陰りが見える。 それもそうだろう、本来これは堅い装甲を撃ち抜く物であって人に向けて撃つ代物ではない。 人に向けた場合あまりにもオーバーキルすぎるのだ。 そして、今までは運よく戦いから逃れてこれていたが、今後もそうだという保証はない。 自らの身を守るためのに、仲間を守るためにその手を汚す。 そして、そのための力がそこにあった。 ――お前は戦えるのか? 相手は神崎や言峰だけじゃない、一番地とシアーズという組織が相手だ。 当然組織に忠誠を誓う人間達もいるだろう。 それを殺せるのか? ――才能を、力を持ってる癖に何もしようとしない事よ。あなた戦える力を持ってるんでしょ? 誰よりも銃弾を物とせず、ただの人間をボロ布のように引き裂く力を持ちながらなぜ戦おうとしないの。 例え敵であっても誰かを傷つけるのが嫌だから? 自分が汚れるのが嫌だから? いつかの玲二とファルの言葉が思い起こされる。 たった数日前のことがすごく遠い昔のことに思えた。 「桂ちゃん……」 柚明は桂の不安を痛いほど理解していた。 自分や那岐はある種戦いに関しては割り切った感情で臨める。 危害を加えようとする者に対し、無慈悲に断頭台の刃を振り降ろせる邪な覚悟ができてしまっていた。 願わくは桂にその業を背負わせたくないが―― 「きっともうすぐ――君の得た力の代償を支払う時がやって来る。大切な人達を守るための業を――だけど迷わないで、桂ちゃん」 いつも人前では飄々とした態度の那岐がいつになく神妙な口調で言った。 だが那岐に見つめられる桂は黙ったままであった。 重苦しい空気が三人の間に流れる。 誰も言葉を発しようとはしない。忍び寄る戦火の気配が、桂と柚明の口を閉ざさせる。 その空気に見かねた那岐がいつものような軽い口調で、重たい空気を振り払うように言った。 「すっかり忘れられてる感じなんだけどね、二人とも服乾かすのまだー? いつまでも火を維持するの疲れるんですけどー?」 「あっ……ごめん那岐君。わたしはもう大丈夫だよ」 「私のほうもすっかり乾いたわ」 二人の声を聞いた那岐はパチンと指を鳴らす。 すると赤々と燃え盛っていた炎がふっとかき消え、洞窟の中は再びわずかな明かりがあるだけの暗闇に閉ざされた。 「ふいーっ疲れた疲れたっと……それじゃあ桂ちゃん、約束通り贄の血を――」 「ん……ちょっと待ってね……」 約束通り贄の血を飲ませるため、桂は自らの荷物の中を漁る。 いつものように手首をちょっぴり切って、滲んだ血を直接啜ってもらえばいいのだが、 そうすると柚明が必死になって止めようとするのでコップを探してた。 確かに、言われて見れば男性相手に血を与えるのはどうも気恥ずかしい。 「(えっ? 女の子同士のほうがよっぽど恥ずかしくない?)」 ややあって桂は紙コップを取り出した。 時間がかかったのは、その上にわんさとホテルから持ち出したお菓子や飲み物があったからだ。 「あっ、お菓子もあるけど食べるー?」 「んー、遠慮しておくよ」 「はーい」 桂はナイフの代わりに武器として持ってきていた日本刀を鞘から抜き、切っ先を手首の静脈に軽くあてがった。 刃がごく浅く皮膚を裂くはずだったが…… 「痛っ……ちょっと深くやっちゃった」 「大丈夫……?」 「大丈夫大丈夫っ」 ぼたぼたと流れ落ちる血。桂はそれを急いで紙コップで受け止める。 白い紙コップに赤い血がとくとくと注がれてゆき、 四分の一ほど入ったところで、桂は贄の血を那岐に差し出した。 「はい、搾りたての新鮮贄の血だよー」 「し、搾り立て……桂ちゃんの搾り立ての……」 「サンキュー♪ (柚明ちゃんが何か妄想してるようだけど敢えてスルースルー)」 「柚明お姉ちゃん……もしもしー?」 「……(妄想中)」 「柚明お姉ちゃーーん!?」 「ふっふぇ!?」 贄の血の香り気に当てられ、明後日の方向に意識が飛んでいた柚明。 思わず間抜けな声を出してしまっていた。 「柚明お姉ちゃんも私の血いるよね?」 「桂……ちゃん」 にっこりと微笑む桂の笑顔が眩しい。 いつもそうだ。彼女の血を目の当たりにしてしまうと理性が保てなくなる。 愛おしい桂を、それが叶わぬ愛であったとしても。 その身体にむしゃぶりついて隅々まで味わいたい。 熟れた果実の薄皮を裂くように桂の白い肌からあふれ出る赤い果汁を嘗め回したい。 「柚明お姉ちゃん……? あっ――」 とさっと桂は地面に尻餅をつく。反転した視界が洞窟の闇を映す。 その上に覆い被さる柚明の姿。押し倒された桂の小さな身体。 「あの、血が出てるのはわたしの手首――」 桂の声も柚明の耳に届かない。 柚明は桂の白く細い首筋しか目に入っていない。 彼女はゆっくりと上気した顔を桂の首元に近づけて噛み付いた。 「あ……んっ、わざわざそ……んなところ……っ」 ぞわりとするような感覚が桂を駆け巡る。 重なり合った二つの影が洞窟の仄かな照明に照らされて岩壁に揺らめいている。 絡み合うアカイイト、いつも血を吸われるときに感じるあの感覚。 自分と他人の意識が混ざり合って自己の境界が一時的に失われてゆく恐怖と快感。 そしてその恐怖ですらも赤く溶け合った意識の中で快感に変じてゆく。 身体の奥底から湧き上がるような快感と浮遊感に桂は身悶えする。 久々に体験する深いトリップだった。 「駄目、だよ……那岐君が見て、んんっ……はずか、しいよ……」 「そんなの……んっ……別にいいじゃない……私は気にしてないから……ね?」 「柚明お姉ちゃんがよくても……わたしが恥ずかしいの……っ」 他人に見られてる。 それも見た目には同い年くらいの少年に己の痴態を見られている。 その背徳感がより一層、桂と柚明の快楽に火を灯す。 桂の位置からは那岐の姿は見えない。 だが見えないが『見られている』という状況が桂の不安をさらに快感へと転化させてゆく。 「お願い……那岐君……見ないで……」 桂の弱々しい声が闇の中に静かに木霊する。 そんな桂の訴えもやがて快楽の大きなうねりの中にかき消されていった。 一方、那岐はというと……、 二人から少し離れた位置で紙コップを片手に重なる二つの影を見つめていた。 「……確かに贄の血は最高においしいんだけど……おいしいけど何この差? シチュエーションの違いってやつ?」 そう言って那岐は最後の一口を飲み干した。 少し物悲しさを感じながら、那岐は二人の嬌声が治まるのを待ち続けていた。 ・◆・◆・◆・ キャットウォーク上からどうにか這い上がり、元居た通路まで戻ってはみたものの、仲間の姿はない。 耳に装着しているインカムは、依然として沈黙の状態を継続。 誰とも連絡がつかず、突入メンバーの安否は一向にわからないままだった。 「仮に、仮にですよ? このままみんなとはぐれたままだったら……」 「そんときゃ、俺たちがラスボスのところに一番乗りだな」 「そ、そんなぁ~! 私ひとりじゃ、なにもできないですよぉ……」 「てけり・り」 「うっ……一人じゃなくて、三人ですけど……でもでもっ」 「やよいにだって、いろいろ言いたいことはあるだろ? あの神崎ってヤローや……古書店の店主さんによ」 「あうぅ……」 誰もいない廊下を、おそるおそる歩いていく高槻やよい、その右手にはまるプッチャン、後ろに付き従うダンセイニ。 普段は一番地職員が――やよいにとっての“敵”が歩いているだろう通路は、無機質な壁と床がただ延々と続く。 歩きながらに思い浮かべるのは、病院だ。物静かで清潔的な空間。ここが敵地のど真ん中だとは、到底思えない。 「誰もいません……」 「敵さんの数も無尽蔵ってわけじゃねーからな。たぶん、他に回ってるんだろうよ」 「他って?」 「玲二や九郎たちのほうさ。奴らにとって、本当に食い止めておきたいのはそっちだろうからな。俺たちなんて後回しってことだよ」 プッチャンの言葉の意味は、やよいにもわかる。 相手側の立場になって考えてみるならば、警戒すべきはやよいのような弱者よりも九郎たちのような強者。 人員を割くとしたら当然、そちらのほうになる。状況を見るなら、やよいはただ単に捨て置かれているだけとも取れるのだ。 「ありがたいっちゃありがたいけどな。このプッチャン様がついている高槻やよいの存在を軽んじるなんざ、愚かにもほどがあるぜ」 プッチャンは大胆不敵にこの状況を受け入れる。 対して、やよいは悲観的だった。 自分が弱いことは十分に理解している。できれば誰に襲われることもなく進みたいと、そう願ってもいる。 だが、やよいに敵兵があてがわれないということはつまり、その分だけ他の仲間が苦境に置かれているということでもある。 仲間の危険と自分の安全は両天秤に置かれている。そう考えてしまうと、通路を進む足も重くなる一方だった。 もし、このまま自分たちだけで神崎黎人のもとまで辿り着いてしまったとして――はたしてなにができるだろう? 吾妻玲二は神崎黎人を殺すと豪語していた。それは殺し屋、“ファントム”である彼だからこその道だ。 一介のアイドルであるやよいには、逆立ちしたって真似できない。真似をしたくもない。 たくさんの人を死に追いやった神崎黎人は許せない。 だけど、その『許せない』という感情は決して、殺意には昇華しえない。 他の人間なら露知らず、少なくとも、高槻やよいにとっては。 だからこそ――進む道の先にある、到着点。そこまで行くのが、怖い。 視線は、前ではなく足下に向いてしまっていた。 「……――やよいっ! 前! 前見ろっ!」 その、数秒。 やよいの意識は『戦場』から外れ、プッチャンの声を耳にしてようやく戻る。 一本道の通路、進みゆくその先に、人が複数名、現れていた。 ある意味では仲間の証たる首輪、それにインカムもつけてはいない。 代わりにベストのようなもの――防弾チョッキだろうか――を身につけ、各々が銃器で武装している。 数えてみると、人数は五。一人が大声を出して他四人に行動を促し、一人、また一人と、携えていた銃器をこちらに構える。 銃口はすべて、やよいのほうへと向いていた。 「てけり・り!」 叫んだのはダンセイニだった。軟体の体を素早く床に這わせ、やよいの足を絡め取る。 バランスが取れなくなったやよいはそのまま後ろに倒れ、ダンセイニの体内に取り込まれた。 ねばねばとした感触を覚え――その次の瞬間、銃声。 乾いた一発ではない。弾雨と称すべき音の波涛が、実際に無数の銃弾という形でやよいの身に降りかかった。 侵入者、高槻やよいを発見した一番地戦闘員は男性五人。武装はマシンガンだった。 「うっ、わ、わっ!?」 突然の窮地にまともなリアクションを取ることもできず、やよいの頭はパニックに陥った。 ダンセイニに守られ、運ばれるがまま、元来た通路を引き返していく。 後方からは絶え間ない銃撃が押し寄せ、何発かはダンセイニに命中する。 だが、それらは中のやよいに到達するよりも先に軟体に威力を吸収されてしまっていた。 黄色いボディの中に、困惑する少女の身と、いくつかの銃弾、そして一つ目が浮かんでいる。 ダンセイニ自身にダメージはない。床を這う速度も、その形状からは想像もつかない獣のそれだった。 通路の曲がり角を左に折れ、敵兵の射程範囲から逃れる。 銃声がやむと、バックミュージックは靴が床を叩く音に切り替わった。敵兵が追ってきているのだ。 「ちっ……応戦するぞやよい! ダンセイニ、コンビネーションAだ!」 「てけり・り!」 「ふぇ、えぇ~っ!?」 プッチャンの思わぬ発言に気が動転するやよい。 追ってくる敵兵の足音は徐々に大きくなっていき、身の危険を按じさせる。 「きゅ、急にそんなこと言われても~っ!」 「腑抜けてんじゃねー! 俺たちゃ遊びに来たわけじゃねーんだぞ!」 「てけり・り!」 言い合う内、『食堂』と書かれたプレートが下げられた部屋を通り過ぎる。 廊下側の窓ガラスから、テーブルや椅子が並べられた内部の様子が見て取れた。 ああ、一昨昨日の今頃はみんなで楽しくお昼の準備をしていたなぁ……とやよいは現実逃避に走る。 それも一瞬。 床を這って進んでいたダンセイニが不意に停止し、敵兵が迫ってくるほうへと向き直る。 やよいの体をがっちりと固定したまま、軟体をそれぞれ右上、右下、左上、左下の四方向に突出させた。 通路の四隅に粘度抜群の液体を付着させ、ダンセイニ自体もここに固定。バッテン印のような形状に変化を遂げた。 その中心に、一つ目とやよいの身が置かれている。 迫る敵兵たちはダンセイニの奇行に対し怪訝な面持ちを浮かべていたが、臆することなくこちらに向かってくる。 『食堂』の辺りにまで差し掛かったところで立ち止まり、銃を構えた。そこが射程距離なのだろう。 ダンセイニは彼らが立ち止まり、銃を構える――その一連の動作の際に生じた隙に付け込み、体の中心部をやよいごと後方へと仰け反らせる。 「やよい! 俺を――右手を前に突き出しておけ!」 今にも銃弾を放とうとしている敵兵を正面に置きながら、やよいは予感した。 プッチャンとダンセイニが、いつの間にか編み出していたコンビネーション。 単体での破壊力、一方の軟質さや粘着力を活かした、つまりはゴム鉄砲の要領。 それはさながら、通路全体を利用した巨大スリングショットのようだった。 「受けてみやがれ! これが俺とやよいとダンセイニの合体攻撃――『弾丸プッチャン弾』だ!」 引っ張られていたダンセイニの中心部が、ふっ、と消える。 通路の四隅に接着していた部分が支点となり、中心部には戻る力が加えられたのだ。 ショゴス――それはウォーターベッドのような柔らかさと、スライムのような粘度、そしてゴムのような性質を併せ持つ謎の生物。 それがスリングショットのように体を働かせた結果、そこに反動が生まれ、 やよいの身体は人間大砲もびっくりの勢いで敵兵らに向かって射出された。 「こいつはおまけだ! プッチャン――」 言われたとおり右手を突き出していたやよいは、プッチャンを先端とした矢のようなものだ。 掛け声と共にプッチャンの体が赤く燃え上がり、やよいごと一つの大きな炎弾と化す。 それは五人程度の戦闘員など一撃で全部巻き込めてしまえる規模で、結果、 「――バーニング!」 五人が五人とも、高槻やよいの突進に蹴散らされることとなった。 「ぶっ!? わっ、ひゃっ、ぎゃ~!」 甲高い悲鳴は、敵兵のものではない。ダンセイニに撃ち出されたやよいのものだった。 勢い衰えることのない弾丸はそのまま向こう側の壁際にまで届き、衝突してやっと停止。 バーニングの威力で壁が陥没したが、幸いにもやよい自身に外傷はなかった。 「よっしゃあ! 一網打尽だぜ!」 「うぅ……が、がくっ」 外傷がないのはプッチャンが上手く力をコントロールしていたからだが、その身にかかる負担までは軽減しきれない。 自身が弾丸として撃ち出されるという衝撃に、やよいの脳は揺れ、内臓はひっくり返り、過度の車酔いにも似た症状に襲われる。 「てけり・り……」 ダンセイニが申し訳なさそうな瞳を浮かべながら、やよいの足下に這い寄ってきた。 「おーい、大丈夫か? これくらいでへばってちゃ、先が思いやられるぜ」 「……き、今日のプッチャンは激しすぎ……ますぅ」 「なに言ってんだ。あの特訓の日々を思い出せ! 俺はおまえをそんな軟弱者に育てた覚えはねぇ!」 「育てられた覚えもありませーん!」 緊張は一瞬だけ。 危難が過ぎ去った後はもう、いつものやよいとプッチャンだった。 「ああいうことするんなら、ちゃんと事前に言ってください!」 「にゃにおう! 事前に言っちまったら、やよいは嫌がるだろうが!」 「あたりまえですっ!」 「てけり・り」 怖くなかったわけではない。むしろすごく怖かった。だがその怖さを埋め尽くすほどに、安心感があったのも確かだ。 プッチャンと、ダンセイニ。みんなと離れ離れになってしまったやよいを、身を挺してでも守ってくれる心強い二人。 一人ぼっちだったらきっと、敵兵と顔を合わせたところですぐに撃たれて死んでしまっていただろう。 一人じゃないから戦える。二人が一緒だから前に進める。不安感と安心感が混在する、曖昧な気構え。 それが――高槻やよいの内包する『危うさ』。 「さて、もたもたしてると次の敵が来ちまうからな。とっとと先に進むぞ」 「む、むぅ~……は、はい……」 錯覚などではない。今日のプッチャンはやよいに対して一際厳しかった。 しかしその厳しさの裏には、確かな甘さ、そして優しさがある。 おまえのことは俺が守るから、気にせず先に進め――と、そんなメッセージが感じられる。 だから頑張れる。プッチャンがくれる安心感に、応えることができる。 それが――高槻やよいとプッチャンが共有する『危うさ』。 ここは、決戦の地なのだ。 誰もが皆、命を危険に晒す場。 絶対の安心など、絶対にありえない。 「てけり・」 元居た通路に戻ろうと、一歩目を歩みだして、二歩目は踏み止まらざるを得なかった。 耳慣れした、ダンセイニが放つ独特の音が、不意にそこで途切れたから。 定位置となっていた自らの背後を振り返り、やよいは見る。 ダンセイニの透き通った体に、一本の剣が突き刺さっている。 先端から柄までを目で追っていくと、それは見知らぬ女性の腕に直結していた。 剣は握られているのではなく、腕とじかに繋がっている。そこが、見知らぬ女性の正体を察知するポイントとなった。 女性の顔を探る。無表情。見ているのではない。ただやよいに己が双眸を向けているだけ。機械的な所作。 その姿はどことなく、深優・グリーアの第一印象に酷似していた。否、まったくの同一と言ってしまってもいい。 女性のすぐ傍には、先ほどやよいが視界に捉えた『食堂』の入り口がある。中から出てきたらしい。 伏兵だ――どうしてこんなところに――思い、数秒。 これは人間じゃない――深優さんが言ってたアンドロイド――思い、数瞬。 女性型アンドロイドはブレードアームに突き刺さったダンセイニを乱暴に振って剥がし――そして。 「あっ――」 やよいがようやくの声を上げた頃――その凶刃を、殺意の矛先を、無垢な色の顔面へと差し向けた。 銀の光沢が視界を埋め尽くす。 両の脚は棒と貸し、床に植えられた。 表情を変える方法を忘れてしまう。 ただ、右手だけが動いた。 「やよいには――指一本触れさせねぇ!」 既視感。 これは何度目のことだろうか。 やよいの右手に嵌っていたプッチャンが、アンドロイドの繰り出す刃を受け止めていた。 指も持たない、その小さな両腕で刀身を挟み込む、白羽取りの形。 押す力と押さえる力、双方に差はなく、生まれたのは均衡。 やよいにはまだ、なにが起こったのか認知できない。 目に映る光景を、ただの映像として捉えているだけで、現況という形では理解できていない。 まるで、他人の夢を外枠から覗き見しているような心持ちだった。 見えているのは、三つ。 やよいに剣を突き立てんとするアンドロイドと、それを受けるプッチャン。 壁際の辺りに黄色い半透明の物質を撒き散らし、目を回すダンセイニ。 倒れ伏す四人の敵兵と、瀕死と窺える動作でこちらになにかを投げようとしている一人。 新たに見えたものが、一つ。 気絶には至らなかった敵兵が一人、懐から取り出した小さなそれを、投擲してくる様。 宙を舞うそれは、昨日さんざん投げたり打ったりした白球に似た大きさ。 形状はどちらかというと、オレンジよりもパイナップルに近かった。 (――あ、そっか) 刹那の瞬間に、やよいは教訓としてそれを受け入れた。 ここでは、一瞬が勝負なんだ。 片時も気を緩めてはならない、安心なんてしちゃいけない。 緊張と集中の継続が肝心と言える、ステージにも似た場所。 駆け出しの自分なんかが上がるべき舞台ではなかったのだと、 手榴弾が爆発するのを最後に確認して、 痛感した。 ・◆・◆・◆・ 少年は走る。背にかけられた言葉を力とするように、決して振り向くことはせず、ひたむきに、まっすぐな道をただ進む。 クリス・ヴェルティンは決して強い人間ではない。 硬い床を叩く足はすぐにおぼつかなくなり、筋肉は悲鳴をあげ、息はあがり、額にはいくつもの汗の玉が浮かんでいる。 それらの現実を凌駕する堅固な心の強さがあるわけでもない。 彼の心はいつだって這い寄る影に怯え蝕まれている。 しかし、それでも彼は走る。ただまっすぐに。愚直なまでに。それを自覚してもなお、ただ前へと走る。 彼女と会わなくてはいけない。交わす言葉があるはずで、伝えたい気持ちがあるはずだから。 これまでの全てを嘘にしない為。彼女のこれまでを嘘にしない為。自分のこれまでを嘘にしない為。 クリス・ヴェルティンはまっすぐな道をただ進む。 見通しのいいまっすぐな通路を駆けているクリスの目の前に、不意に黒い影が射した。 何か? そう思う間はなかった。 天井より染み出すように現れた黒い影は物言わずクリスを強く打ち据え、彼のか細い身体を辿ってきた道へと押し返す。 「――――っ!」 少しの滞空の後、背中から床へと叩きつけられたクリスの口から声にならない悲鳴が吐き出された。 まるで糸の切れた人形のように床の上を転がり、そしてそれのようにクリスは床の上から立ち上がることができない。 たったの一撃で身体のそこらじゅうが痛みと痺れを訴え、心臓が不吉な音を立て、意識は白く朦朧としている。 その、朦朧とした意識の中で彼が見たのは、通路の先からこちらを冷たい目で見ている巨大な黒猫だった。 「もう…………」 遠回りはしていられないんだ。と、クリスは全身を苛む苦痛に抗い、弱々しくもその身体を起こす。 目の前にいるのは話に聞くオーファンというものだろう。 禍々しくはあるが、なつきのデュランや碧の愕天王とどこか似ている。きっと、同じように強いに違いない。 そこまで思って、しかしクリスは逃げようとも引き返そうともしない。 この先に、この先をまっすぐ行けばそこに彼女がいるのだ。だから――。 「……ロイガー。……ツァール」 2本の短剣をクリスは両手の中に現した。 そして、風の神性を持つ一対のそれを胸の前で交差させると、全て追い切り裂く渦巻き――手裏剣と変化させる。 次の瞬間。クリスの手を離れた手裏剣が風きり音だけを残しながら黒猫のオーファンへと肉薄し、黒毛を通路の中にばら撒いた。 「あ――!」 クリスの口から驚きの声が漏れる。 通路一杯の大きさがあった黒猫は、猫のようにしなやかに身をかがめるとそれを容易く避けたのだ。 切り裂いたのは体毛の一部だけ。 それは派手に散らばったものの黒猫そのものは無傷で、かがんだ状態から身体を伸ばすとクリスへと飛び掛ってくる。 見誤ったと後悔するも遅く、 「――がぁっ!」 再びクリスの身体がボールのように転がり通路を戻ってゆく。 なんとか立ち上がろうとするものの痺れる身体は先ほどよりもなお言うことを聞かず、なすすべなくクリスは黒猫に踏みつけられる。 足裏の感触は柔らかいが、黒猫は大きくそして重たい。どこかで何かが折れる音が鳴り、潰れた悲鳴が漏れ聞こえた。 たったこれだけで終わりなのだろうか? しかしそれも正しいことだとも思える。何かを成すというには彼は弱く、現実とは決して誰かを贔屓するものではないのだから。 「…………でも、まだなんだ。……まだ……死ねない」 その時、黒猫がビリビリと通路を震えさせるような悲鳴をあげて仰け反った。 押さえつける脚から力が抜けて、クリスはその隙に床を転がってその場を逃れる。 これは奇跡ではない。クリスの意志が齎した順当な結果。ブーメランとして戻ってきた手裏剣が黒猫の背中に突き刺さったのだ。 「ここじゃないんだ――」 クリスは口元をべったりと濡らす血を拭い、また再び立ち上がる。 「僕の命は――」 約束された勝利の剣を取り出し、針金のような毛と血を振りまく黒猫へとその切っ先を向けた。 「君たちなんかには絶対に――」 それが黒猫のオーファンが持つ能力なのだろうか、宙に舞っていた毛が突如として矢のように飛びクリスを傷つける。 「あげられないんだ――」 身を切り刻むそれを無視してか、それともすでに痛覚はないのか、クリスは懐に手を差し込むと、ジャラと一握りの宝石を取り出した。 「だから――」 宝石を握り締める拳の内から光が漏れ溢れ、炎のようなそれはクリスの全身を包み、熱と力を循環させてゆく。 「もう――」 光があったのは一瞬で、それはすぐに失われた。なのに黒猫はクリスへとは近づかない。まるで、まだそこに火があるかのように。 「邪魔をしないでくれ――」 ただの石となったそれが床の上でバラバラと音を立て、灰となって散った。 クリスは両手で聖剣を掴むとそれを天の方へと掲げた。 そして振り下ろされる。 それは最強の幻想。 想いを囚われし者を導く道標。 人々が追い求める理想を実現する為の輝き。 悲しみの連鎖を断ち切る剣――が、全てを白く埋め尽くした。 ・◆・◆・◆・ 「クリス……」 彼女以外の誰もいない冷たい通路に響く寂しそうな呟き。 玖我なつきは先程まで感じていた手のぬくもりを懐かしそうに思いながら、単身奥へと向かって進んでいた。 あの後、何体かのアンドロイドを蹴散らしてからは特に一番地からの追撃にも会ってはいない。 多少の面倒や不可解なことがあったりはしたが、進行は順調だ。 心配事といえばやはりクリスの事だった。 図らずして、彼を単独にしてしまった。 いくら、魔法の武器があろうとクリスはただの音楽少年で。 オーファンとの戦いに明け暮れたなつきの様に戦いになれているわけじゃない。 そんな彼がオーファンやアンドロイドなんかに襲われたら……? 「……大丈夫、クリスは大丈夫」 不意に浮かんだ最悪な結末を頭を大きく振ってかき消す。 そんな結末は有り得ない、あってはいけない。 それになつきは信じている。 クリスがちゃんと目的を果たせる事を。 クリスが自身の望みを叶える事を。 信じて、願っているのだから。 「だから……行こう」 だから、なつきは進む。 一歩ずつ、一歩ずつ。 だけど、確実に。 なつき自身の目的の為に。 もう、クリスの目的はクリスのだけものではないのだから。 それは、玖我なつきの目的にもなっているのだから。 何故、そうなつき自身で思えたかは本人でもよくわかっていない。 来ヶ谷唯湖の事を棗恭介に託されたから? なつきの為に手を汚して、そしてなつきだけの為に散った藤乃静留の生き方の為に? 心の底から愛しているクリス・ヴェルティンを支える為に? 「……知るか、そんなもの」 そんなもの、知らない。 難しい事、ごちゃごちゃ考えたくない。 とりあえず決まっている事。 ただ、 「やりたい事をするだけだ」 なつきがやりたい事をするだけ。 自分がしたい、ただ、そう思ったから。 理屈とか、理由とかどうでもいい。 素直に、やりたいそう思ったことをやるだけ。 それがきっと自分の為に。 結果として、それが皆の為になるんだろうと思いながら。 「…………おや、伴侶はいないんだな」 ―――そして、ついに出会う。 一人の少年を心の底から愛している少女達が。 その少年の為に全てを懸けている少女達が。 「……来ヶ谷……唯湖」 「……初めまして……と言いたい所だが、そんな気がしないよ。玖我なつき君」 この地獄の島においてついに出会ってしまった。 一方はその目に強い意志を宿らせ、相手を見つめている。 一方はその目に底の見えない深い諦観を宿らせ、薄い笑みを浮かべていた。 「こっちもだ……色々話したい事もあるしな」 「ほう……さて、どんな事を話してくれるのかな? 泥棒猫君?」 「……なっ!?」 蒼い髪の少女は両手に銃を握り。 黒い髪の少女は右手に銃を、左手には剣を。 そして、 「まぁ尤も……聞く必要性もないがな!」 「……っ!?」 一人の少女を愛し続けている故の衝突が 始まりを告げたのだった。 ・◆・◆・◆・ 「おはようございます。ゆうべはおたのしみでしたね」 開口一番、那岐は秘密の花園から舞い戻った桂と柚明に皮肉を込めて言った。 「えっと……どういう意味……?」 「さあ……?」 顔を見合す桂と柚明。 せっかくの皮肉も二人には通用しなかった。 「いいですよーっだ。男なんて基本ハブられて当然の存在だもん」 「えっと……なんだかよくわかんないけど、ごめん」 「ま、別にいいけど。さてと……気を取り直してそろそろ出発しよう。準備のほうはOK?」 「あ、うん。大丈夫だよ」 「柚明ちゃんは?」 「ええ、私も準備はOKよ」 「なら、出発だね。あまりぐずぐずしてはいられない。行こう」 「うんっ!」 頷く桂と柚明。三人はさらに洞窟の奥へ向かって歩を進めた。 三人は緩やかに傾斜した坂道を登ってゆく。 右手に見える地下水脈はいつしか崖下を流れており、左手の岩壁にはオレンジ色の照明が所々に点在し、淡い光を放っていた。 壁から崖まではおよそ三メートル。普通に歩く分には何ら危険なことはない。 しかし、いざここで戦闘となると狭く、戦いには不向きな地形だった。 「もうどれくらい歩いたんだろう……」 「小一時間は歩いてるかな。方角もほぼ真南に向かってる」 いつしか会話も少なくなり無言になってゆく。 さらに数十分歩いたところで洞窟はその様相を変貌させた。 崖下を流れる地下水脈は広大な湖になり、傾斜した坂道はまるで野球場のように広大な広場に繋がっていた。 そして広場の最奥に、複数の篝火と注連縄に囲われた区画がある。何らかの祭壇のようだった。 祭壇の中心には数人の烏帽子を被った狩衣姿の男達が輪になっている。 三人が様子を伺う岩陰からは遠すぎて詳しくはよくわからないものの、何らかの儀式を執り行っているようだった。 「へぇ……あれ一番地お抱えの陰陽師じゃないか……そしてあそこが『力』の中心」 「あそこを押さえるのがわたし達の目的だね、でも警備がすごいね……」 祭壇の周りには陰陽師を守るように女性型のアンドロイドが大量に配備されている。 まるで蟻の一匹通さないと言った風であった。 「それだけあの祭壇が連中にとって重要な施設であることの証明さ」 「私の『蝶』でもう少し詳しく探りましょうか?」 「いや、あの陰陽師はそれなりに術に長けている。柚明ちゃんの『蝶』は逆に感づかれる危険性がある」 「そうですか……」 「でも……このまま正面突破するのは――」 と、その時だった。 バサバサとまるで鳥が羽ばたくような音がした。 「白い鳩……ううん、白い鴉……?」 見上げた桂の視線の先の岩に白い鴉が留まっていた。 鴉はじっと桂達を見つめていたが、ほどなくして翼を広げ飛び去って行く。 飛び去る瞬間、那岐は見る。 鴉の両翼に赤く刻まれた五芒星を―― 「しまった! あれは奴らの哨戒用式神――」 その瞬間、洞窟全体に警報が鳴り響き、薄暗かった洞窟全体に次々と白色の蛍光灯が点灯してゆく。 あっというまに洞窟は昼間のように白い光で覆われた。 そして祭壇に変化が訪れる。 何もない空間に光の粒子が現れ、異形の獣の姿を次々と象ってゆく。 「そうか……! ここの地脈を利用してオーファンを……」 「なら……あの祭壇を何とかすれば」 「うん、施設内に召喚されるオーファンを抑えることができる! 行くよみんなッ!」 LIVE FOR YOU (舞台) 7 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 9
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※このページはネタバレ及び憶測の内容を含んでいますので、閲覧に関しては自己責任でお願いします。 [部分編集] 第一話『これからが彼女たちのはじまり』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:地方出身でレッスンや仕事の時には遠くから通っている →【ランクF・ある日の風景1】、歌「団結」の歌詞等 元ネタ?:春香のカバンについているさつまいもがモチーフのキャラクターのストラップ →春香の中の人が芋好きなので、春香のカバンにも取り付けられた 星井美希 セリフ:「星井美希、中3なの。終わり」「あ、あと胸おっきいよ」 →【ランク外・ミーティング】 如月千早 設定:機械音痴 →【休日コミュ】 電気街に千早がプロデューサーと一緒に"PM3プレイヤー"を買いに行くというコミュがある 容量やメモリー等知らない言葉言われただけで、「私には無理」と簡単に諦めたりする描写など類似点がある 高槻やよい セリフ:「うわ~。なんか、そのセールスっていいですよね。」 →ゲーム内で楽曲の変更するときのセリフがやよいの場合「うわ~。なんか、○○って感じですねっ」というものがある 萩原雪歩 設定:男の人が苦手 →【ランク外・ミーティング】 セリフ:「オーディションの申し込みは友達がしてくれた。」 →【ランクF・ある日の風景1】 菊地真 設定:少女漫画好き →【ランクE・雑誌取材(期待の新人)】 元コミュでは少女漫画雑誌の『月刊・RaRaRa』となっている 設定:虫嫌い →【ランクF・ライブハウス】 設定:父親に男らしく育てられてる →【ランクE・ランクアップ】 水瀬伊織 設定:765プロ採用理由 →【ランクD・ランクアップ】 セリフ:『シャルル・ドナテルロ十八世』 →【ランクD・ある日の風景3】 三つ目の選択肢にて「絶対に忘れないから」を選択すると、聞くことができる +... …が、この選択肢はパーフェクトコミュニケーションにはならず、この時言った名前は原作ではとっさに思いついた偽名であるので、アニメでも偽名である可能性が高い セリフ:「私は、私の手で何か掴みたいと思ったんです」 →【ランクC・ある日の風景5】 三浦あずさ 設定:占い好き →【ランクF・雑誌取材(期待の新人)】 セリフ:「5年くらい頑張れば、なんとかなりますよね」 →【ランク外・ミーティング】 セリフ:「こうしてアイドルとして頑張っていると、きっと誰かが見つけてくれますよね」 →【ランクC・ランクアップ】 我那覇響 描写:飼っている動物をよく逃がす SPや2でも類似のコミュ多数あり 秋月律子 元ネタ?:漫画「アイドルマスター Innocent Blue for ディアリースターズ」でも双海亜美・真美の二人を持ち上げているシーンがある 音無小鳥 描写:小鳥の携帯電話の着メロが楽曲は「ID [OL]」 その他・モブキャラ 真と雪歩のインタビューをしているキャラクターの容姿がガミPこと坂上陽三Pに似ている 貴音のオーディション時に中村繪里子、今井麻美に似ている人物が登場している。←アイマスタジオ第15回にて本人たちがモデルであると確認されました 審査員の静止時のポーズが原作ゲームのものと同じポーズである。また女性審査員のCVはアーケード版でVO審査員の声を演じていた中村繪里子 【舞台背景】 765プロのあるビルや応接間について、一部芸能プロダクションアーツビジョンがモデルとなっている。(キャラクターを演じている声優の一部が同事務所に所属している) 冒頭の春香が自転車を漕いでいるシーンは神奈川県中郡二宮町にある吾妻山公園、また最寄駅は二宮駅である オーディションに落ちたあずさが迷ってたどり着いた「旅館西郷」は東京都杉並区にある「旅館西郊」がモデル 【その他の描写】 『アイドル』 それは女の子たちの永遠の憧れ。 だがその頂点に立てるのは、ほんの一握り…… そんなサバイバルの世界に、 13人の女の子たちが足を踏み入れていた。 アニメ冒頭で流される文章 これはゲーム「アイドルマスター」初プレイ時に表示される文章が元になっている [部分編集] 第二話『”準備”をはじめた少女たち』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 セリフ:「緊張しちゃって、心臓飛び出しそう」 →【ランク外・作曲家挨拶】 描写:転んでいる姿も撮影 →【ランクF・写真撮影】 星井美希 設定:メイクのセンス →【ランクF・買い出しコミュ】【ランクD・ライブ鑑賞(勉強)】 「うん。どの人に、どういうのが合うかとか、見ればわかるの」(どういうの=メイクの事) セリフ:「パシャパシャってリズムで撮ってね」 →【ランクF・写真撮影】 如月千早 セリフ:「笑顔が不自然だといわれました」 P「無理に笑わなくてもいいんじゃないか」 →【ランクF・写真撮影】 高槻やよい セリフ:「給食費がピンチです」 →【ランクE・ランクアップ】 元ネタ?:クマの着ぐるみ →【ランクF・写真撮影】 「クマと戦ってるトコとかのが、カッコよかったかも……」と言うセリフがある 描写:「ハイ、ターッチ!」 →【ランク外・作曲家挨拶】 双海亜美・真美 描写:メイク道具でいたずら →【ランクF・買い出しコミュ】 四条貴音 描写:バレエのポーズ →『アーケード版アイドルマスター』で没ネタの「たかね」というキャラクターの特技にバレエがある 音無小鳥 設定:昔の少女漫画的妄想 →2006年7月23日に行われた『THE IDOLM@STER 1st ANNIVERSARY LIVE』での小鳥の妄想 参考リンク→音無小鳥妄想絵図 その他 元ネタ?:撮り直す前の亜美真美の宣材写真、伊織・やよい・亜美・真美の化粧 →THE IDOLM@STER RADIO第64回での放送で三浦あずさ役のたかはし智秋が猿のコスプレをした。また同ラジオの第75回目如月千早役の今井麻美が強烈な化粧と胸部への詰め物をして放送をしたことがある ちなみに上記の二つはラジオのコーナーの罰ゲームであり、その時の今井麻美の容姿は通りすがりの子供に逃げられ、心にトラウマを植え付けるような容姿であった 【その他の描写】 伊織が「個性が、個性が大事なのよ」と言っている時のピラミッド型のもの。 →アイドルマスター2以外のゲーム版では『アイドルランク』というものがあり、またピラミッドは上に行くほど高いアイドルランクを示している。 [部分編集] 第三話『すべては一歩の勇気から』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい セリフ:「みんなで出かけるなんて、なんだか遠足みたいだよね」 →【ランクF・ロケバス】 萩原雪歩 セリフ:「穴掘って埋まってます」 →【ランクD・ラジオゲスト出演】他色々なコミュにおいてネガティブな選択肢を選ぶと聞ける場合がある またドラマCDやアイドラでも定番のネタである。 設定:犬嫌い →【ランク外・初対面】 描写:ステージで緊張、いつも以上にはっちゃける →【ランクE・ライブ(ライブハウス)】 描写:雪歩のステージ衣装 →雪歩が身に着けているアクセサリーの一部は原作ゲームに登場している(天使の羽根、ねねこの首輪、格闘の腕輪) またステージを見ている観客の中には同じくゲームに登場する「ねこみみ」のアクセサリーを着けているモブもいる 三浦あずさ 描写:おじさんからのプロポーズに答えてしまう →【ランクE・老人ホーム慰問】 プロデューサー 描写:Pが帰りの車で居眠り →各アイドルの【ランクF・ロケバス】、【ランクD:TV出演(ロケバス)】 ロケバスのコミュでは仕事に疲れたアイドルがバスの中で眠るものがいくつかある 【その他の描写】 挿入歌「ALRIGHT*」の途中で春香と真が浴衣に変身するシーン →春香と真がとっているポーズがそれぞれ仮面ライダー1号、2号の変身ポーズのパロディ [部分編集] 第四話『自分を変えるということ』 +... 【劇中での元ネタ】 如月千早 設定:一人暮らしをしている →アイドルマスター2よりの設定 その他・モブキャラ 元ネタ?:ディレクターの「”ガー”ときて”グー”となって”バーン”て感じなのよ」「おつかれちゃーん」 →それぞれのセリフが「きゅんっ!ヴァンパイアガール」及び、「MEGARE」の歌詞が元になっている? 【その他の描写】 劇中でのTV番組『ゲロゲロキッチン』のCM →CMでの『クマちゃん バーガーセット』のイラストが『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 02 高槻やよい』に描かれているハンバーガーにそっくりである また「Love Burger?」というフレーズは某ハンバーガーショップの「i m lovin it」というキャッチコピーを意識してのものだと思われる [部分編集] 第五話『みんなとすごす夏休み』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:お菓子作りが趣味 →公式サイトのプロフィール、【ランクF・ミーティング】 セリフ:「私、マーメイ」「スパンコールの波間」 →楽曲「太陽のジェラシー」の歌詞 如月千早 セリフ:「私、泳ぎはあまり…」 →【8月の仕事】 このコミュに「泳ぎに自信はないので、期待しないでいてください」というセリフがある。ただし謙遜して言っている可能性もあるので、実際に泳ぎが不得意であるのかは不明 高槻やよい 描写:スクール水着 →【ランクE・写真撮影】 このコミュでやよいはスクール水着以外の水着を持っていないことが明かされている また名札の「高槻」の文字があるのはL4U「オールドスクールミズギ」だけである。無印や2の「スクールミズギ」や「765スクールミズギ」には名札がついていない 萩原雪歩 描写:怖い話が苦手 →【休日コミュ】友人と一緒にホラー映画を見に行くコミュ ホラー映画を途中で抜け出し「今夜は、一人じゃトイレに行けません」というほどの怖がり セリフ:「よっつ四葉のクローバー」 →【ランクD・ラジオゲスト出演】二つ目の選択肢で「仕方ない、放置しよう」を選ぶと聞くことができる また無印でランダムに送られるメールで雪歩作詞の「穴掘りの歌」だと判明する THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩のトーク07にも収録されてる 描写:携帯の着メロはゲーム中のBGM「TENDER」 水瀬伊織 描写:うさぎのぬいぐるみと一緒にお風呂に入る →アイマスレディオ36回「お風呂で、う・ふ・ふ♪」のコーナーでいつも一緒にうさぎのぬいぐるみと一緒にお風呂に入っていると明かされる また伊織によると「JIS保護等級8級の防水性能だから、平気よ」との事 三浦あずさ セリフ:「ねこねこにゃんにゃん」 →アイマスレディオ9回「お風呂で、う・ふ・ふ♪」のコーナーであずさが拾ってきた子猫に飼い主が見つかったことに対しあずさがアニメと同様の歌を歌っていた 四条貴音 描写:視力が弱い →アイドルマスター2からの設定 設定:ラーメン好き →アイドルマスターSPストーリーモードでBランク時に発生するイベントで貴音に屋台のラーメンをおごるものがある。また2杯のラーメンを普通に平らげるほどであった ラーメンは貴音の中の人の好物でもあり、そのことから貴音の好物になったと言われている セリフ「王女だ、銀色の大食い王女だ」 →SPや2の劇中にて「銀色の王女」とファンの間から呼ばれている 秋月律子 描写;お風呂での鼻歌 →歌っている曲は「GO MY WAY!!」 [部分編集] 第六話『先に進むという選択』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい 描写:高いところが苦手 →ハプニング☆ロケのいくつかのSCENE、L4Uアイドラ「プリマシリーズやよい」 ハプニング☆ロケはアーケード版と連動した携帯サイトで配信されていたアプリゲームである 詳細はこちら ちなみに兄弟たち共に遊園地へ遊びに行く【休日コミュ】でも「私、あんまり、速いのとか高いのとか、得意じゃないし」というセリフもある 秋月律子 セリフ:「どうせなら、都内の一等地に事務所ごと引っ越しです」 →事務所移転イベント DS以外のゲーム版ではPランク(アイドルのプロデュースの成績により昇格する)によって、アイドル事務所を移転するイベントがある 音無小鳥 元ネタ?:荒木飛呂彦風の漫画妄想 →ニコニコ動画で4月17日に生放送された『iM@STUDIO サテライトステーション』にて「ふつおた(似顔絵付き)」のコーナーでリスナーから送られてきたイラストで、荒木飛呂彦風の絵柄でパーソナリティーの中村繪里子と今井麻美の似顔絵が送られてきた また今井麻美は荒木飛呂彦氏の「ジョジョの奇妙な冒険」のファンである [部分編集] 第七話『大好きなもの、大切なもの』 +... 【劇中での元ネタ】 高槻やよい セリフ:「もやし祭り」 →『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 02 高槻やよい』に収録されているトークパートに「もやし祭りが出来ちゃいますっ」というセリフがある セリフ:NO Make!!での「べろちょろ」 →やよいがいつも下げているカエル型のポシェットの名前 『MASTER ARTIST 02 高槻やよい』のトークパートや現在絶版である『スペシャルドラマCD/アン・ハッピーバースデー?』にて春香から誕生日にプレゼントされたものである ちなみに春香と春香の母の手作りである 水瀬伊織 設定:ジャンバルジャンという名の犬を飼っている →【ランクF・ライブ(ライブハウス)】 ジャンバルジャンという名のジャイアント・シュナウザーという種の犬を飼っている また「これならジャンバルジャンの住んでるとこのが、まだキレイよ……」というセリフも同コミュであるので、アニメ本編での犬小屋との大きさを比較するセリフの元ネタであるかもしれない 設定:豪邸に住んでいる →【ランクC・ある日の風景5】 描写:兄達にコンプレックスを持っている →【ランクD・ある日の風景4】 その他・モブキャラ ヤキニクマン →亜美真美の【ランクAorB・主題歌レコーディング】(SPではBランクのみ)やいくつかのCD等でヤキニクマンという、子供向けのヒーローアニメが放送されていることが話されている 設定:ヤキニクマンのCV(串田アキラ) →『THE IDOLM@STER MASTER LIVE 01』にて双海真美といっしょにヤキニクマン役の串田アキラが『おはよう!!朝ご飯REM@STER-A』を歌っており、串田アキラ本人もアイマスのライブにゲスト出演を果たしたことがある またアニメ本編でも響がTVつけた時にBGMとして『おはよう!!朝ご飯REM@STER-A』のイントロ部分がかかっている セリフ:ヤキニクパンチ →亜美真美の【ランクB以上・主題歌レコーディング】(SPではBランクのみ) このコミュにて「ダブル・ヤキニクパンチ」というセリフがある ちなみにヤキニクマンの主題歌を歌うのは双海真美である マスコットキャラ(ブンタ・アジゲ・モニョ) 「DJCD アイドルマスター ラジオフォーユー!VOL.1」の「アイドルマスター Radio For You! Vol.1 Radio For You! マスコット of you-i 」というコーナーでパーソナリティーの中村繪里子、今井麻美、仁後真耶子の三人が制作した番組のマスコットキャラクター 「DJCD EXTRA アイドルマスター Radio For You!KOTORIMIX」にてビジュアル化された。 またアニメでのCVは同パーソナリティー三人のラジオ番組「アイドルマスター Radio For You!」でのユニット名「you-i」からである 【舞台背景】 劇中に登場するやよいの家がある辺りややよいの弟を探している時に描写されている公園などのモデルは東京都調布市周辺である。 【その他の描写】 やよいの部屋に転がっている春香に似ている?人形のぬいぐるみ →ぬいぐるみの正体は『ののワさん』といい、元はゲーム版アイドルマスターの天海春香が口をワの字のように開けながら右上のほうへと目線を向ける仕草から『のヮの』という顔文字が生まれ、そこから『ののワ』さんという二次創作キャラクターが作られた。 響が三輪車に乗っているシーンに移っている車のナンバープレートは『足立区 841 く 00-72』 →841=やよい、く=「くっ」千早の口癖、72=千早に関係するある部分の数字である。 弟妹たちの寝室にある戦隊物のポスター →太陽戦隊サンバルカンが描かれている。また主題歌はヤキニクマンの声優である串田アキラが初めて担当した特撮ソングでもある [部分編集] 第八話『しあわせへの回り道』 +... 【劇中での元ネタ】 三浦あずさ 設定;親友の友美 →【ランクD・ある日の風景3】 描写:メールに書かれた結婚を抜け駆けしない約束 →【ランクC・ある日の風景6】 描写:石油王に求婚される →【休日コミュ】 石油王からあずさがプロポーズされてしまうコミュがある またこの休日コミュは「休日ブースト」がかかるコミュであり、無印版での休日ブーストとはアイドルが所属するユニットのイメージレベルが6週間上昇するもので、 アニメではあずさが所属する竜宮小町やあずさの知名度があがったと小鳥のセリフがある セリフ:NO Make!!での亜美のセリフ「人生初の彼氏」 →【ランクC・ある日の風景5】 このコミュで一度だけ告白され、デートをしたがすぐに振られてしまったことが明かされる [部分編集] 第九話『ふたりだから出来ること』 +... 【劇中での元ネタ】 双海亜美 描写;亜美と真美が離れたところでも同じ事を考えている →双海亜美、真美バースデーCDでも同様なやり取りがある セリフ:「灰色の脳細胞と七色の顔を持つ」「セクシー美少女探偵亜美 真美」「じっちゃんばっちゃんの名に掛けて」「月に代わって」「「犯人逮捕よ」」 →灰色の脳細胞はエルキュール・ポアロ、七色の顔は「多羅尾伴内の『七つの顔の男』」、じっちゃんばっちゃんの名にかけては金田一少年の事件簿の金田一一の「じっちゃんの名にかけて」、月に代わってはセーラームーンの「月に代わってお仕置きよ」のセリフや二つ名から 三浦あずさ 描写:さよならダイエットの日々 →【ランクF 運動】【ランクF 写真撮影】などのコミュにて自身の体型のことを気にしている描写がある [部分編集] 第十話『みんなで、少しでも前へ』 +... 星井美希 設定:運動神経が良い →【8月の仕事】 萩原雪歩 セリフ:真 伊織「雪歩はだまってて!!」 →曲「団結」中での春香と伊織のセリフが初出であり、M@STER LIVE02にて同様のセリフを真、伊織、千早、律子から言われる 設定:運動神経が悪い →【ランク・F 運動】 菊地真 描写:運動会で足を痛めてしまう →【10月の仕事】にて競技中に足を痛めてしまい、他の種目に出場する場面がある 三浦あずさ 設定:運動が苦手 →【10月の仕事】競争が苦手で運動会で一度も勝ったことがない その他・モブキャラ 876プロのアイドル →アイドルマスターDSに登場するキャラクター こだまプロの新幹少女「ひかり」「つばめ」「のぞみ」 →プロ名及びアイドルの名前は新幹線の名前からである バリュウム(ねっち)、綿野アキラ →『Perfume(メンバーである大本彩乃の愛称のっち)』と『錦野旦』の名前から 【その他の描写】 事務所対抗アイドル運動会 →【10月の仕事】にて美希、やよい、真、亜美・真美、あずさのコミュにて「事務所対抗アイドル運動会」を行う ジュピターのファンが掲げる「Wピースして☆☆」 →アイドルマスター2でJUPITERのメンバーをS4Uで使用した時に曲の途中でアピールするとWピースのポーズを取ることがある 借り物競走 →美希の【10月の仕事】で表ルートの場合『カッコイイ男性』、裏ルートの場合『私を大好きな人』と書かれた紙を美希が取り、選択肢でPを選ぶことが出来る [部分編集] 第十一話『期待、不安、そして予兆』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 設定:千早「どうしてアイドルになろうと思ったの?」 →【ランクD・ある日の風景3】【ランクC・ライブ(武道館)】 「この仕事をする前、ステージをTVで見てて、憧れて……」 萩原雪歩 描写:ダンスが他人よりも遅れズレてしまい、迷惑を掛けるのを気にしている →【ランクF・ミーティング】 萩原雪歩 セリフ:「うちはパパもママも病院勤めだから」 →【ランクD・ランクアップ】や【ランクC・ある日の風景5】において父親が医者であることが語られている 母親に関しては【ランクF・ある日の風景1】で「ママはお仕事してないから…」というセリフがある 【その他の描写】 クマのマークの引越社 →アリのマークの引越社のパロディ [部分編集] 第十二話『一方通行の終着点』 +... 【劇中での元ネタ】 星井美希 セリフ:「本日はみんなに、私のとっておきの恋バナを~♪」 →曲「Do-Dai」の歌詞、最初にM@STERverが音源化された『THE IDOLM@STER MASTER LIVE 03』では高槻やよい、双海亜美、星井美希が担当している 設定:カモの先生 →【ランクF ある日の風景1】 秋月律子 セリフ:「美希を見つけたら、首に縄を付けてでも連れてきてくださいね」 →SPのストーリーモードでも961プロに移籍した美希に対して「やっぱり、美希は、首になわつけてでも、765プロに引き戻さなかきゃ!」 というセリフがある 【その他の描写】 太鼓の達人9 →アイドルマスター、太鼓の達人は共にナムコ制作のゲームであり、アイドルマスターにはアクセサリーが太鼓の達人には楽曲の提供などコラボがなされている [部分編集] 第十三話『そして、彼女たちはきらめくステージへ』 +... 【劇中での元ネタ】 星井美希 セリフ:NO MAKE!!「実に春香らしいの」 L4U特典アニメでもコケた春香に対して美希が同じセリフを言う 音無小鳥 描写:ライブでのアナウンスを行う →実際のライブでも音無小鳥役の滝田樹里がMCを務めることが多く、M@STER LIVEシリーズのドラマパートでは毎回小鳥がMCを務めていた 【その他の描写】 サイリウム →会場にいる観客たちのほとんどは竜宮小町目当てなので、持っているサイリウムの色はイエロー(亜美)、ピンク(伊織)、パープル(あずさ)、ウルトラオレンジ(輝度が高くここ一番の盛り上がりの時に振る)であるのに対して、高木順二朗社長はステージの765アイドルごとにサイリウムの色を変えている 美希が「Day of the future」を歌い終えた後に観客が見ているパンフレット →あずさのポーズが実際の5thライブのパンフレットに載っているたかはし智秋のポーズと同じポーズをしている 美希が休憩している所の壁に貼られているセットリスト →「THE IDOLM@STER 6th ANNIVERSARY SMILE SUMMER FESTIV@L! TOKYO DOME CITY HALL」のセットリストを再現している(ただしBD/DVD版では劇中でのセットリストになっている) [部分編集] 第十四話『変わりはじめた世界!』 +... 【劇中での元ネタ】 天海春香 小ネタ:「変装をしている春香」 →オーディオコメンタリーより春香が事務所に着いた時、帽子は外すがメガネを中々外さないのは「春香のメガネ姿が可愛いから、このままかけさせとこうと」という監督の考えから 【その他の描写】 電車に乗っている女子高生のカバンに付いているチャーム →ぷちます!に登場するぷちどる「はるかさん」「ちひゃー」「まこちー」「やよ」である [部分編集] 第十五話『みんな揃って、生放送ですよ生放送!』 +... 【劇中での元ネタ】 萩原雪歩 セリフ:「倍率ドン、さらに倍!!」 →TBSで放送していた「クイズダービー」というクイズ番組の問題時に言われる決まり言葉 菊地真 セリフ:「きゃぴぴぴー、えっへへー菊地真ちゃんなりよー」 →『MASTERLIVE02』にて同様のセリフがある 音無小鳥 設定:小鳥の趣味 →アイマスモバイルのヘルプページより「お笑いのビデオを見るのは好きですね。私の中のお笑いブームは不滅です!」というセリフがある 【その他の描写】 無尽合体キサラギのページで解説 元ネタ:あみまみちゃんその1、その2 →お笑いコンビ「ザ・たっち」のネタ、亜美と真美の趣味にモノマネがある 元ネタ:ラーメン二十郎 →実際にある「ラーメン屋二郎」のパロディ 元ネタ:あいぱっく →郵パック、昔天海春香役の中村繪里子と如月千早役の今井麻美が放送していた「PreStar」というインターネット番組で実際に起きた出来事が元ネタになっている また劇中で美希が「春香の衝撃映像を番組HPで配信!!みんなアクセスしてね」と言ったが実際に配信されている 休憩時間に美希の髪を整えているスタイリスト →美希の中の人である長谷川明子に似ている? [部分編集] 第十六話『ひとりぼっちの気持ち』 +... 【劇中での元ネタ】 我那覇響 描写:プロデューサーが手渡したお茶 →沖縄県ではジャスミン茶の事を「さんぴん茶」と言う、また2の響のコミュでもさんぴん茶をプロデューサーに買ってもらうコミュがある [部分編集] 第十七話『真、まことの王子様』 +... 【劇中での元ネタ】 菊地真 描写:スカートやぬいぐるみのような女の子らしいものを父親に捨てられる →【ランクF ある日の風景1】 描写:しつこいナンパの仲裁 →休日コミュの中にナンパされている女性を助けに行き、逆に女性から言い寄られるコミュがある 設定:空手道場に通っていた →【ランクC ある日の風景5】 プロデューサー セリフ:P「おほん、姫そちらではありませんよ」、真「ではあなたが王子様になって、白馬に乗ってくださいませ」 →真の休日コミュの中に遊園地でデートするものがあり、「白馬には、王子様が定番だろう。つまり、白馬は俺の物だ」 「真は、俺の後ろの馬車に乗ったらどうだ?」というセリフがある 【その他の描写】 小ネタ:DVDレコーダーの値段が76,500円と?6,100円 →765プロとおそらく961プロの名前から 元ネタ:少女漫画雑誌掲載作品 →劇中「月刊LaLaLa」=元ネタ「月刊LaLa」:冬目友人帳=夏目友人帳、鬼ちゃんと一緒に/鳥山ぱり=お兄ちゃんと一緒/時計野はり、図書館LOVE=図書館戦争 LOVE WAR 少女漫画ではないが、馬の☆プリンスさま=うたの☆プリンスさまっ♪(アニメ版の制作はアイドルマスターと同じ「A-1 Pictures」である) 小ネタ:王子様の昼下がりの台本 →17話の脚本 白根秀樹 絵コンテ・演出 柴田由香を捩り、「構成 柴田秀樹 音楽 白根由香」と書かれている
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涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポート(京成1回目) 涼宮ハルヒの消失・舞台挨拶レポートへ戻る 京成ローザ10(2010年03月06日 11 50の回終了後) 登壇者:茅原実里・後藤邑子・桑谷夏子・松岡由貴・松元恵(司会)・西山洋介(司会) 速記:アニメ映画板本スレPart81 900,906 Part82 209,249,309,313,423,562 900 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/06(土) 22 21 15 ID HOvmyh0J 西山 本日はお寒い中、また雨も降りしきる中お越しいただきまして誠にありがとうございます。 本日、司会を務めさせていただきます、谷口役の西山洋介です、よろしくお願いします。 (拍手) 西山、松元 皆様、改編後の世界にようこそ~。 (拍手) 松元 シーンとなる予定だったんですけど、ありがとうございます。 松元 同じく、今回司会進行を務めさせていただく、国木田役の松元恵です。よろしくお願いします。 (拍手) 松元 あの、質問なんですけど、本当の中の人は…? 西山 本当の谷口さん、白石稔さんですね。は、あの~京t (中略) 西山 さて、早速ですが、みなさんに登場していただきたいと思います。 松元 それではまずは、長門有希役の茅原実里様でございまーす。 (拍手) (みのりーん)×10人くらい 西山 続きまして、朝比奈みくる役の後藤邑子さんでーす。 (拍手) 松元 続きまして、鶴屋さん役の松岡由貴様でございまーす。 (拍手) 西山 そして最後は、朝倉涼子役の桑谷夏子さんでーす。 (拍手) ※マイクを持ってるのは、茅原、後藤のみ 茅原、後藤 こんにちはー。 松元 あの、ステージ広く使っていただいて… (場内、www) 後藤 この二人はあれ、(松岡、桑谷をさして)地声が大きいからマイクなしで大丈夫なの? (www) 西山 あの、仲良くマイクまわしてください。おねがいします。 松岡 なんか、こうジェスチャーで(変な踊り) (www) 後藤 なんかこれバミってあるね。 松元 ほんと段取り悪くてすみません (中略) 松元 今こちらにお越しいただいてる皆さんは、消失のほうご覧頂いているんですよね? (はーい) 松元 では皆様に向かって、これだけはお伝えしたいとか、お気に入りのシーンだとかありましたらどうぞ。 (www) 松元 茅原さんから 茅原 みなさん今見たばっかりということですか~? (はーい) 茅原 どうでしたでしょうか? (とても楽しかったよー) 茅原 ありがとうございます。ご挨拶が遅れました、長門有希役の茅原実里です。 涼宮ハルヒの消失、出来上がって、公開して約1カ月もう経ったんですね。もうたくさんの方から、感想のメールやお便りを いただきまして、 とても素敵な作品でしたという声ををいただいてとてもうれしいなと思っているんですけれども、 消失、私もずっと作りたかったエピソードだったので、こうして劇場版で作れてとっても良かったなーって思っています。 有希がこのお話では普通の女の子になってしまうということで、演じる前から緊張もいろいろあったんですけれども、 素敵なテーマソングも歌わせてもらえて、頑張って演じさせていただきました。 お気に入りはね… 後藤 そうだよwww 松元 思いの丈をぶつけていただければ 茅原 お気に入りのシーンはたくさんあるんですけれども、試写会で見たりとか、自分でもプライベートで見に行かせていただいたり とかしたんですけれども、やっぱりうるってきてしまうポイントがたくさんありまして、ここ!っていうのは言えないんですけれども、 1番最初にうるって来るポイントとしましては、 世界が変わってしまって、キョンが何でハルヒがいないんだ、朝倉涼子がいるんだ、 ってなったときに、廊下で初めて長門!ってとこがあるんですが、 そこで私はものすごくグッときてしまって、 1番最初のうるってきてしまうポイントなんですけれども、キョンの言葉でたくさんうるうるしてしまうところがありますね。 906 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/06(土) 22 23 17 ID HOvmyh0J 西山 ありがとうございます 後藤 順番的に私で? 何だろう、ホントに、杉田君がトップにいないってだけでこんなに厳かな雰囲気に… (www) 後藤 今までやってきた舞台挨拶と全然違うよね?あのその1はそんなに重要なんだね、方向性決めてたんだね。 どうしようあたしいつも杉田君が言い終わった後だから、プレッシャーない中でできたんだよね。 ホントに今日舞台挨拶を、3回目?やってきたんですけれども、この舞台挨拶ができたこともうれしいし、こうして1カ月大体公開から経って、 満員御礼の、ありがとうございましたの舞台挨拶ができるっていうのはとっても幸せなことだなって。 たくさんの人から感想をもらって、いまだにいろんなところでパンフレットが売り切れたりとか、満員でしたとかそんな話を 聞くから、あとね、ひとりで何回も見に来てくれた人もいるって え、じゃあ他見たの今日だけじゃないって人いますか? (ほぼ挙手) 一同 おおー、すごーい。 後藤 じゃあ逆、逆。1回だけって人手挙げてみてください。 (10人くらい挙手) 後藤 ああー、こっちのほうが少数なんだ~。 一同 すごーい 後藤 うれしいねー。これ、すっごいストーリーがよくできてて、複雑に入り組んでるからつい何度も見たく気持ちは。 やっぱり私も台本を読んでて、原作を読んでたはずなのに、仕組みわかってたはずなのに、あれ?ちょっと待って?ってwww でね、結構スタジオの中でもみんな物議を醸したり。これどういうつながりだっけみたいになったり。 もう頭こんがらがったりするんですけど、それだけ3時間弱の時間見終わった後の充実感もすごいというか。 お勧めのシーンは、ホントにみのりんが言ったとおりにたくさんありすぎて、しかも結構、このシーンお勧めしたいなっていう シーンがホントキョンがらみなんだよね。キョンが大活躍したんだねこの映画は。 茅原 ずっとしゃべってるもんね。 (www) 後藤 ホントだよ。収録の日程、何日か取られてたんだけど私たち、で、じゃあ1日目は台本ここまで持ってきてくださいって言われてて、 えっ、こんなに大量にやるんですか?目安として、1日収録眼どのくらいまでやるんですかって聞いたときに、制作会社が、 あ、杉田さんが持つまでってwww (www) 後藤 だから杉田君がね、朝10時くらいから夜8時くらいまでずっとしゃべりっぱなしで。 茅原 ほとんどしゃべってるの杉田さんだよね。 後藤 そうなんだよね。何だろう、すごくキョンに共感する部分もあり、頑張ってる杉田君を目の前で見てるこのSOS団? SOS団のために頑張ってるのが見られたのは非常にうれしい経験でした。 なんかハルヒシリーズ長くやったけど、クライマックスっていうと変だけど、ここまで到達できてよかったなって、消失が こうやって仕上がって。 何だろう、いつもよりすごくきれいに締められた気がするwww (www) 後藤 どうもありがとうございましたー。 (拍手) ---- 209 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/06(土) 23 28 15 ID HOvmyh0J 西山 すみませんマイクのほうまわしていただけますか? 松元 続きまして松岡様。 松岡 松岡様www やっとマイクが回って、みなさんに声を聞いていただくことができました。鶴屋さん役の松岡由貴です。こんにちはー。 (拍手) 松岡 ありがとうございます。さっきあの何回も見た方がたくさんいらっしゃって、あの舞台挨拶もあちこちでいろんなとこでやってると思うんですけど、舞台挨拶を何度も見た人? (結構数挙手) 松岡 うわぁああwww 一同 おおー 松岡 なんで?なんかさ、こないだ見た顔がいるなーって思ってたのよ。で、なんとなく袖から覗いたりとかしたら、あれ?あの人舞台挨拶のときいなかった?って話してて。 そんなことでですね、みなさん今日こうやってお話しするのも私は舞台挨拶は3度目、ほかのみんなはもっとやってるかもしれませんけども、あ、みんな同じ? 今日はキョンがいないということでですね、女子勢ということでいい香りを漂わせながらね、お届けしたいと思いますwww ハルヒのお勧めのシーン?みなさんは何か自分のお勧めのシーンを自分の中で思い描いてると思いますが、私は桑谷なっちゃんの殺戮シーン。 (www) 桑谷 私じゃないwww 松岡 いつも夏子に私じゃないって。私大好きでね、朝倉だ~いすきでね。 (www) 桑谷 ありがとうございますwww 松岡 やっぱり気持ちいいでしょ? 桑谷 そうねwww (www) 松岡 ああいう役いいよねー。 桑谷 やりたいんですか? 松岡 ちょっとwww (www) 松岡 なんかホラーとかオカルトばっか見てるので、ハルヒの中ではあそこ見たときのあのときめきったらなかったwww (www) 松岡 ぜひ繰り返し、もう一回見たいよwwwとくにあのシーン、大好きです。 桑谷 ありがとうございます。 松岡 心に残る、ホッとできるワンシーン。 (www) 松岡 なんかいつもね、サスペンスとかなんとなくかけながら寝てるので、心が一段と穏やかに。 桑谷 由貴ちゃん大丈夫?病んでない? (www) 249 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/06(土) 23 43 15 ID HOvmyh0J 松岡 さあ、そんなことでホントに今日チケットを取るのもすごい難関だったって聞いたんですけれども、大変だったですか、みなさん? (大変だったー) (13時間並びました) 松岡 13時間並んだの!?どこ?このへん? (銀座で) 松岡 銀座で並んだの? (僕17時間) (www) 松岡 1番だったでしょ? (0時間) 松岡 えっ? (0時間) 松岡 えっ、そうなの? (コンビニでとったよ) 松岡 コンビニで取れんの?いろんな方法でね、難関を突破しながらいらしていただいたと思うんですけど、ちらほらあいてる席は、来るときにきっと何か… (www) 松岡 そういうわけじゃなくてね、とりあえずですね、この後舞台挨拶はもう1回あるので。そんとき次も見る人? (数十人挙手) 一同 おおー 松岡 ほら、ネタかぶるといけないよwww じゃあその人たちはまたあとでということで、ありがとうございました。じゃあ桑谷夏子に代わります。 309 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/07(日) 00 01 21 ID 8+Ykn2o5 西山 はい、ありがとうございます。おねがいします桑谷さん。 桑谷 はい、朝倉涼子役の桑谷夏子です。 (拍手) 桑谷 ありがとうございます。えーっと、お気に入りのシーンですよね? 松岡 殺戮シーン? 桑谷 そうね、まあ自分のとこでいえば、朝倉のクルクルなんですけど。 (www) 桑谷 そうじゃないところでいえば…あの私、実はつい先日皆様にまぎれて見に行きました、映画。 で、平日で時間もすごいお昼の時間に見に行ったんですけど、すごく客席も埋まっていて、 うわー1カ月も経つのにありがたいことだなーって思って見てたんですけど、2回3回って見ると気付くところが結構出てきて。 たとえば、もうみなさん見たのでわかるとは思うんですけど、細かいところでいうと、 キョンが大きな、大人のみくるさんと一緒に長門さんのお家を訪ねるところ、助けを求めて訪ねるところとかあるじゃないですか、 あそこでエレベーター乗ってると5階で、まあ5階朝倉涼子住んでるんですけど、眉をひそめるんですよ。そういうシーンがあるのね、 そういうところを1回2回見ただけじゃ気付かなかったんですよ、ボーっと見てて。で、なんかすごい細かい演出がなんか気になっちゃって。 あとモブ?何か2回3回見ると今度も部が何言ってるのか聞きたくなっちゃうんですよね。 松岡 (会場に向けて)モブって何かわかる? 桑谷 ガヤ。 いろんな言葉が裏でいっぱい流れてて。あとで聞いたのは、結局たくさんのガヤやモブがしっかり作りこまれてたから。 普通はガヤってなんか私たち役者に渡されて、あと考えてセリフを言うじゃないですか、思いつきのままに。 でも意外に絵が、作りこまれてて空間ができてたので、ちょっとセリフを書き起こしたシーンも結構あるっていうのを聞いて。 松元 あの、今回私国木田以外の役もやらせていただいていて。 松岡 何役やってるの? 松元 えーっと言っちゃうと、ばれちゃうんでエンディングには名前のってなかったんで。 桑谷 だめなんだ。 松元 女の子役です。女生徒をやらせていただきました。 桑谷 そういう話も聞いていたんで、何度も見て何を言ってるのか聞きとりたいなとかいうのもあって。 松岡 松元さんをさがせ!だね。 313 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/07(日) 00 02 39 ID HOvmyh0J 松元 レストランのシーンとかも、実はいるんですよ。 一同 へー 松元 レストランのシーンも全部、この人が何席に座っていて、この人はこういう人で20代のおばさんで、とか書かれていて、 (ざわざわ) 一同 … (wwwwwwwwww) ※笑いすぎで記録できてないです 松元 違うの、待って、待って!台本に書いてあるの! ※かなり必死です 松岡 20代からおばさんになるんだwww 松元 あの…あぁあああああ ※松元、土下座 松岡 大丈夫、大丈夫www 西山 この後控室で殺戮シーンが行われるんじゃ… (www) 松岡 あたしそういうのだ~いすきだからwww 西山 この後もう1回舞台挨拶あるんで、それまでは殺戮しないようにおねがいします。 松岡 生かしておきましょう。 松元 すみません、すみません。 家族構成まで書かれていて。すごいですよね。 松岡 鶴屋さんの家族構成なんか全然知らないのにね。 誰も教えてくれない、いい家には住んでますけどね。 松元 お屋敷に。 鶴屋さんが大金持ちっていうのは、熊本県民にとっては普通なんですよ。 この中に実は熊本県民の人実はいる…? (一人挙手) 松元 いた!有名ですよね。 (首をかしげる) (www) 松元 ご存じないwww えーっと熊本で、大デパートが“つるや”っていうんですよ。 松岡 長野でこないだスーパー見つけて、写メっちゃったけどね。 あ、(CMソング)歌って! 松元 えーっとなんかすごいおばさんコーラスで歌われてるんですよ。 一同 … (wwwwwww) 松元 あぁああああ… ※松元、土下座 西山 あの、掘り返さないでください。傷ついているんです、意外と。 (www) 松元 今日が命日になるつもりです… (www) 松岡 犯人はアタシ~www (www) 松元 お、おねえさま… 松岡 大丈夫、大丈夫。 松元 それじゃあ心を込めて歌わせていただきます。 松岡 あ、ホントに歌ってくれるんだwww (拍手) 松元 私の地元、熊本県のつるやの歌です。 ♪つるや、ラララ~ つるや、ラララ~ ララララララ… 松岡 ありがとうございました! (wwwwww) (拍手) 松岡 何の話だっけね。 松元 あの、桑谷様の思いの中の… 桑谷 ああ、なんかもういいです。 (www) 松元 ホントすみません。 423 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/07(日) 00 32 19 ID 8+Ykn2o5 西山 なんかつるやの歌歌ってるうちに残りすでに5分になってしまったんですけど… なので、ちょっとここから先みなさんにクロストークをしていただこうかなと思いつつ、段取り上この後に言おうとしてた ゲームの話も実はあったりしてですね。 そういうことでここで4人の方々にクロストークをしていただこうかな、ということでちょっとマイクをお渡ししたいと思います。 たぶん3分ぐらいでぶつんと切らせていただくことになると思うんですけど。 松岡 だったらもうしちゃったらどうですか? 西山 いっそのことしちゃいましょうか。では先に必要情報だけ言ってしまいましょうか。 松元 ご存じのお客様いらっしゃるかもしれないんですけど、涼宮ハルヒの憂鬱という作品の中で、コンピ研が作っていた ゲームをやられたという方いらっしゃいますか? 西山 i-Phoneユーザー…あ、いらっしゃいますね。 松元 こちらがですね、The Day Of Sagittarius 3 for i-Phoneなんですけれども、間違ってます? 西山 大丈夫です。 松元 こちらのほうを先ほどですね、女性陣の皆様にやっていただきまして、おすすめをしていただきたいな、と。 西山 大変なことになってましたね。 松岡 杉田君来てぇーwww (www) 松岡 杉田君の得意分野なのにねー。 なんとも難しげなゲームでしたね。 後藤 でも、アニメのSagittarius? 松岡 あれはすごくうまく再現されている感じでね。 後藤 なんか、スタッフの方たちが、これこれこういうゲームですって一生懸命説明してくれているのに、ゲームを持ってみんなでポカーンwww 松岡 ホント説明のし甲斐のないあの部屋の雰囲気www 後藤 でもよくわからないけどなんかみのりんだけ1個勝ったよね。 茅原 そう!勝ちました。 後藤 どうやって勝ったの? 茅原 なにもしてないよね?どうして勝ったんだろう? (www) 後藤 ずーっと画面外のところで戦い始めてたよね。画面を移動できなくで、この辺でたぶん戦ってるっていうくらい。 あと、自分がやられる瞬間がすごい楽しかったです。 (www) 松岡 ドM? 後藤 そうかなー? 松岡 後藤ちゃんはやられてたよね。 後藤 まずね、スタートボタンがどこ押せばいいかわかんなくて、全然スタートしないんだよね。 松岡 ほら、夏子がね、ふわーっと、絶対振らないで見たいな。 夏子はどうなのよ。 桑谷 私さ、i-Phone自体使い方がわからない。 松岡 この文化にすらまだたどり着いてない。 後藤 だからね、私たちにこのゲームの宣伝を任されたのはたぶん思い付きっていうか。 お勧めポイント…だから言ってたのね、杉田君がいれば、この打ち合わせの30分の間にクリアするんじゃないかっていうね。 松岡 やつはやる男だね。わけわかんないこと言いながらきっとね。あるはずのない必殺技とか言いながらね。 (www) 松元 ありがとうございましたー 西山 はい、お時間でございます。というわけでですね、みなさんどうもありがとうございました。もう残りがなくなってしまったということで、 これにてお開きとなってしまいます。 どうですかね、最後に一言づつくらいの時間ってありそうですかね。あ、大丈夫ですか。じゃあホントに一言だけになっちゃうんですけど、 今日お越しいただいた皆様に、お願いいたします。 ではまず茅原さんのほうからお願いいたします。 562 見ろ!名無しがゴミのようだ! sage 2010/03/07(日) 01 10 55 ID 8+Ykn2o5 茅原 はい。みなさん今日はどうもありがとうございました。たくさんの方に見ていただいてとてもうれしいです。 みなさんの心の中にずっと残ってる作品であってほしいなと思います。これからも応援どうぞよろしくお願いします。 今日本当にどうもありがとうございました。 (拍手) 西山 ありがとうございました。つづいて後藤さんお願いします。 後藤 じゃあ、これ毎回小野君が言ってることなんで、代弁させていただきますと、 杉田君、キョンのセリフで、俺たちがここにいたことを忘れないでくれよ、っていうセリフがあります。 本当に涼宮ハルヒを作ってきたメンバーみんなの共通する思いだなって思って、その思いがみんなに届いていたら嬉しいなって思います。 今日は見に来てくれてありがとうございました。 (拍手) 西山 ありがとうございました。つづいて松岡さんお願いします。 松岡 はい。本当に何度も見ていただいた方がたくさんいらっしゃって、そして1回という方もこの後またやりますのでね、 そんな何度もなっちゃんが言ってたみたいに、いろんな見どころをこれからもたくさん見つけられると思うので、 ぜひスクリーンで、そして“DVDで”見ていただけたらなと思います。 では、後ほど会う方はまた後ほどということで、どうもありがとうございました。 松岡由貴でした。 (拍手) 西山 ありがとうございました。では、最後に桑谷さんお願いします。 桑谷 はい。本当に何度も見てくださって、初めての方もそうですけど、本当にありがとうございます。 ここまで来れたのは、皆様の支えがあってだと思っているので、 これからも、原作も続いてますし、みなさんこれからも応援してください。 どうも、今日はありがとうございました。 (拍手) 西山 はい、みなさん今日はどうもありがとうございました。名残惜しいのですがお時間となってしまいました。 あ、茅原さんマイク渡してもらってもいいですか。 出演者の皆様、本日は大変ありがとうございました。 (拍手) 西山 それでは茅原さんからご退場いただきます。 (みのりーん)×20人くらい (ありがとー) (ライブ行くよー) 松元 それでは皆様、外もまだ雨が降っておりますし、お気をつけてお帰りくださいませ。本日は本当にありがとうございました。 本日、司会進行を務めさせていただきました、国木田役の松元恵と 西山 谷口役のwww (www) 西山 角川書店の西山洋介です。どうも 松元・西山 ありがとうございました。 (拍手)
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2008年10月04日(土)の東京・銀座・丸の内TOEIで2回行なわれます。池袋シネマサンシャイン、新宿バルト9でも予定されています。詳しくは『 さらば電王HP・初日舞台挨拶 情報(1) 』を御覧下さい。
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初音映莉子がミステリアスな女性役で出演/舞台「死刑執行中脱獄進行中」 初音映莉子がミステリアスな 女性役で出演/ 舞台「死刑執行中脱獄進行中」 荒木飛呂彦原作による舞台「死刑執行中脱獄進行中」に、追加キャストとして初音映莉子が出演することが発表された。 初音映莉子(エーチーム所属) 原作「死刑執行中脱獄進行中」は殺人罪で死刑の判決を受けた男が、監獄からの脱獄を試みるサスペンス短編。舞台版では同短編をベースに、同じく荒木による読み切り「ドルチ ~ダイ・ハード・ザ・キャット~」の要素を織り交ぜたストーリーが展開される。 初音映莉子(エーチーム所属) 初音は「ドルチ ~ダイ・ハード・ザ・キャット~」パートで、ミステリアスな存在感を持つ女性役などの役どころで出演。転覆しかけたヨットを舞台に、青年とその飼い猫の生き残りをかけた駆け引きを描く原作「ドルチ」に、初音がどのようなエッセンスを加えるのか期待しよう。 舞台は東京の天王洲銀河劇場にて11月20日から29日にかけて上演。また12月には仙台、広島、札幌、富山、大阪を回る全国ツアーが敢行される。 初音映莉子(エーチーム所属) 構成・演出・振付:長谷川寧コメント 荒木飛呂彦作品に於ける女性には、その凛とした仕草と謎めく部分、「覚悟」を持った姿勢、が必要だと思い、紅一点、その女性像に相応しい初音映莉子さんに参加して頂く事になりました。 一見意外とも思える彼女の起用が、この舞台空間にどんな色彩を添えて貰えるか。 期待して仕上がりをお待ち下さい。 初音映莉子(エーチーム所属) 舞台「死刑執行中脱獄進行中」 出演 森山未來、初音映莉子、いいむろなおき、江戸川萬時、大宮大奨、笹本龍史、宮河愛一郎、森川弘和 初音映莉子(エーチーム所属) ⇒ 舞台「死刑執行中脱獄進行中」初音映莉子がミステリアスな女性役で出演 - コミックナタリー ⇒ 舞台「死刑執行中脱獄進行中」初音映莉子がミステリアスな女性役で出演 | マイナビニュース ⇒ 舞台 死刑執行中脱獄進行中 | Twitter ⇒ 初音映莉子がミステリアスな女性役で出演/舞台「死刑執行中脱獄進行中」 - NAVER まとめ ⇒ 初音映莉子がミステリアスな女性役で出演/舞台「死刑執行中脱獄進行中」|エーチームオーディションに関するあれこれ ⇒ エーチーム/エーライツ/エープラス @ wiki - 初音映莉子がミステリアスな女性役で出演/舞台「死刑執行中脱獄進行中」 ⇒ 初音映莉子 | A-Team.Inc(エーチーム) ⇒ エーチームグループオーディション|所属タレント|初音 映莉子 ⇒ エー・チームとは - はてなキーワード ⇒ 初音映莉子とは - はてなキーワード 初音映莉子 古い映画好きの個性派女優 初音映莉子(エーチーム所属) エーチーム 事務所 エーチーム 噂 エーチーム 所属 エーチーム 評判 エーチームって エーチームグループ 噂 エーチームグループ 評判 初音映莉子 死刑執行中脱獄進行中
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罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(前編) ◆wYjszMXgAo ――――――――――KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL―――――――――――――! 「う、くぅ……っ!」 ――――頭の中に響き続ける殺意のオーケストラ。 柊かがみがそれに耐えかねて呻きを洩らしたのは放送の直後だった。 もちろん原因はたったの一つ。 ……ラッド・ルッソの記憶が、殺意の上昇を抑えきれなくなったからだ。 もちろんかがみに殺人嗜好などないし、理解はできない。 ……だが、『食った』となれば話は別だ。 不死者を『食う』とは、相手の全てを身の内に取り込むということなのである。 記憶も、経験も、知識も、知恵も、趣味も、思考も――――人格の情報でさえも。 それが理解できるか理解できないかはまた別の問題なのだ。 ある不死者の男は、 『自身に催眠術をかけておけば、たとえ誰かに食われたとしても、 何らかのきっかけで食った人間と食われた人間の人格を交代できるかもしれない』 という可能性に思い当たった。 ある日突然、食ったはずの人間に体を乗っ取られると言うわけである。 『食う』事のリスクはそれだけに留まらない。 エニスは『食った』事により人間らしい感情を得て、同時に善悪を判ずる意識に悩まされることになった。 フィーロ・プロシェンツォは『食った』事により自我の境界に疑問を持ち、自身の存在に不安を抱いた。 チェスワフ・メイエルは『食った』事により、人からの感情を信じられなくなった為にあらゆる人間を道具とみなし。 ――――そして、この度再度『食う』事により、自身の罪深さに苦しむようになった。 セラード・クェーツでさえも、感情のベクトルは真逆とはいえ、その行為に心動かされたのは事実なのである。 『食う』事は、確実に食った人間に影響をもたらすのだ。 尤も、その記憶に踏み込まなければそこまで悩まされるわけではないのだが―――― しかし、かがみは放送とラッドの記憶を照合して情報を得るために、敢えて彼の記憶を遡っていたのだ。 彼の記憶の殺意のゲージを一瞬で極限まで引き上げた要因は、二つの名前がそこに存在しないことにあった。 Dボゥイ。 鴇羽舞衣。 彼らの生存が確定したことで――――ラッド・ルッソの殺意はかがみに抑えきれない所まで上昇したのである。 ――――それを食い止めたのは、一つの声。 「……どうした? 不死身の」 衝撃のアルベルトの、こちらを気遣うような声。 それがかがみを殺意の大波から引き戻す。 「……ん、なんでもないわ。それよりこれからの方針についてなんだけど」 彼の顔に似合わない声色に苦笑しながら、かがみはとりあえず話を進めることにする。 ――――ギルガメッシュの生存などについて、アルベルトがそれを洩らさなかったことにかがみは不満を感じてはいた。 が、いざ文句を言おうとするとどんな言葉を選べばいいのか分からないので、それに関しては黙っておくことにする。 今は文句を言うより先にアルベルトに有益な情報を渡しておかねばならない。 「……ラッドの仲間については言ったわよね? そいつ等が調べたところによると、“螺旋力”とかいうものがこの“実験”の鍵になってるみたい」 ――――螺旋力。 幾度となく聞き覚えのある言葉だ、とアルベルトは記憶のダイブに取り掛かる。 文字通り螺旋王が幾度となく告げた言葉だ。 成程、と納得する。 実験と称していたかの王の言葉は真実だったのだろう。 心当たりはある。 先刻のかがみの発した緑色の光。 あの輝きは間違いなく、個人の能力を引き上げるものだ。 それ以外にも何か秘密があるかもしれない。 ……つまりは。 「……その力。持ち帰るに値する力ではあるやもしれんな」 顎に手を当て思考に沈むアルベルトに、かがみも頷き返して続きを述べる。 「……まだ、詳しいところは分かっていないみたい。 だけど……」 一息。 「……刑務所の面子は、相当頭の切れる人間ばかりみたい。 ラッドの記憶もあることだし、協力関係を築いて損はないと思う」 怯えも躊躇いもなくまっすぐにアルベルトを見据えるかがみ。 その心根に満足しながら、アルベルトはそれを肯定することにする。 「……うむ。手駒も欲しい所ではあるし、螺旋の王に立ち向かうには数が必要だ。 いくらワシが十傑集とはいえ、体は一つしかないのだからな。 そ奴らとの利害の一致もありえるだろうし……と、どうした? 不死身の」 見れば、かがみは自身の体を抱くように両腕を互いに掴み、ぎゅうっと縮こまっている。 まるで自身の体が動き出すのを怖れ、どうにか抑え込んでいるかのように。 アルベルトの言葉で生じた、猛烈な衝動をかろうじて制しているかのように。 アルベルトの脳裏に一つの言葉が蘇る。 『――――梯子は足りているのか?』 言峰と名乗った神父。 その真意は測りかねたものの、敵対するどころかむしろ友好関係にあると言っていいだろう。 ならばその言葉が意味するものは、忠告なのか。 不安が心中の何処とも知れない場所から染み出て止まらない。 まるで、楔を穿たれたかのように……どこかに穴があるような気がしてやまないのだ。 らしくない、とアルベルトは思う。 不安に思うことなどない。 自分は十傑集であり、目の前にいるのは信頼できる協力者なのだから。 天をも貫く梯子。互いの背を預けながら、そこをひたすら進めばよい。 否、進む先にあるものは梯子などではなく、雄とした泰山なのだ。 それを強く強く信じ込み――――霧靄を払うかのように不敵な笑みを浮かべてみせる。 「食らった事により何か体調に異常でも感じたのではあるまいな? いずれ螺旋の王を食らう時の為にも、貴様に不調があっては困るのだぞ?」 ――――だが、彼は気付いている。 このような台詞を向けることこそ、言峰の言葉に強く囚われているのだという事を。 気付きながらも、それを払いのけようと気遣いの言葉を重ねれば重ねるほど強く強く、更に強く纏わりついてくるその言葉。 完全なる底無しの沼に浸かっていることを知りながら―――― 今のアルベルトには、柄にも合わない言葉を吐く事しかできなかった。 「う、うん……大丈夫、アルベルトが心配する程の事じゃないわ。 ……私の、内面の問題だから……うん」 気丈な言葉を気弱な表情で告げるかがみ。 が、それではいけないと思ったのか。 不意にプルプルと首を振り、話題を変えようと周囲を見渡すことにする。 と、都合のいい物を見つけたので、とりあえずそちらに向かって駆けていくことにした。 「……さて、あっさり気絶しちゃったけど。 こいつをどうにかしないとね」 目線の先にある物は結城奈緒。 恐怖に引きつった顔で気絶したその姿を見て、自分に持たれているイメージに複雑な想いを抱くも、 とりあえず気にしないことにして意識を切り替える。 まあ、まずやる事は一つだ。 ……目覚める前に、身包みを剥いでおくことにする。 以前遭遇した時にあらかた持ち物は没収していたはずなのだが、いつの間にか新たな装備を手に入れていたのだ。 その衣装はラッド式本気の全力全壊パンチを繰り出した時に砕け散ったとはいえ、まだ何か持っているかもしれない。 デイパックを取り上げ、奈緒の体を調べるとその手に指輪が嵌っているのに気がついた。 見覚えがなかったのでこれも新しく手に入れたアイテムなのだろう。 「はい、ボッシュート」 クイズ番組の口調を真似て指輪を外し、自分の指に嵌めたまさにその時。 「う、んん……」 ――――声とも言えない声を漏らしながら、結城奈緒が眼を覚ました。 指輪を外した時に体を動かしたせいか、自分が起こしたのと同じかもしれない。 そう言えば、よくよく放送を聞き逃す子だと苦笑する。 自分のせいばかりとはいえ気絶ばかりしている印象を奈緒に抱いてしまっていた。 「――――金……ぴか……」 自分でもなにを言っているのか分からないのだろう、呆けたままの奈緒を尻目にアルベルトの方を向けば、彼は無言で腕を組むだけだ。 ……何を彼が望んでいるのか。 察し、かがみも無言で改めて奈緒に向き直る。 座り込んだままの彼女が次第に覚醒していくのと同時。 ――――かがみも、自身のスイッチを入れていく。 頭蓋の横に指を当て、それを確認するかのようにあえて行動しながら口ずさむ。 「……パチリ」 指を弾きながら、呟く。 何度も。 何度も何度も。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。 「パチリ。パチリ。パチリパチリパチリパチリパチパチパチパチリパチリパチパチパチ パチパチパチリパチパチパチリパチパチパチパチパチパチリパチパチパチパチリパチ パチパチパチパチパチチパチパチパチパパチパパパパパパパパパパパパパパパパパパ」 ラッド・ルッソの記憶にある通り。 殺意のスイッチを入れていく。 一個の。五個の。十個の。百個の。千個の。一万個の。十万個の。 ――――何百万個の! 何千万個の! それ以上の数のスイッチを! 「ヒャ、ハ……ヒャハハハハハハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! ハァハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! ヒャハハハハハハハハハハハッ!!」 ――――ラッド・ルッソの戦闘スタイル……いや、殺人スタイルは独特だ。 トークで昂り、テンションを極限まで上げ、殺戮の悦楽に浸れば浸るほどその動きは切れ味を増し、力は増加してゆく。 『柊かがみ』なら、そんな事は理解しえないし、いざ戦いに臨んでも彼の記憶を活かしきる事はできはしない。 『不死身の柊かがみ』でも、殺人嗜好はないし、ラッド・ルッソほどテンションを高める事もできはしない。 今までのかがみのままでは、ラッドの力を完全に運用するのは無理なのである。 だが、ラッド・ルッソを食らった今なら可能だ。 不死者を『食う』とは、相手の全てを身の内に取り込むということなのである。 記憶も、経験も、知識も、知恵も、趣味も、思考も――――人格の情報でさえも。 一つスイッチを入れるたびに、『柊かがみ』と『ラッド・ルッソ』を切り替えていく。 記憶を、経験を、知識を、知恵を、趣味を、思考を――――人格を。 単なる物真似ではない。自らのうちにあるデータを表に引っ張ってくるだけだ。 それ故に――――それはもはや再現などというレベルにすら留まらない。 柊かがみの『意思』で、ラッド・ルッソという『人格』を行使する。 まるでデスクトップの壁紙を変えるかのように、表に見える人格を切り替える。 中に納まった『意思』というデータに変更はないままだ。 とある男は言った。 信じる心があればテンションはどこまでも上げられる。 そして、自らが出来ると信じたことに限り、あらゆる出来事は実現すると。 不死身の柊かがみはラッド・ルッソという人格を行使できることを信じた。 それだけの話だ。 「……え、あ……? ちょ、なんなの? ……なんなのよぉっ!!」 ――――目が覚めるなり、怯えに満ち満ちた表情を見せる結城奈緒。 いきなりただでさえトラウマを持っている相手が、恐ろしい恐ろしい殺人鬼の笑みを浮かべているのだ、当然だろう。 ……この子には実に悪いけど、と上がり続けるテンションの裏で冷静さの残るかがみは思う。 ――――ラッド・ルッソの力を使いこなす、叩き台になってもらう。 問題は、ラッド・ルッソが奈緒に殺意を抱いていないこと『だった』。 ……だが。 「……よう、お目覚めかいナオちゃんよぉ! 気分はどうだい? 最高かい? 最低かい? 生きたいかい? 死にたいかい? 安心したかい? 不安かい? そこんとこどうなのよ、ギルちゃんが生きていることを知ってよぉ!!」 ――――ラッドは、知らなかった。 衝撃のアルベルトによりギルガメッシュと奈緒が引き離されたその過程も、彼らの絆も。 戦場の中で、ただただ何となく感づいた程度のものでしかなかった。 だから勇敢にも自分に立ち向かってきた奈緒への殺意は薄まり、関心がなくなったのだ。 ――――だが、かがみは知っている。 彼らの間柄を、ギルガメッシュがいなくなった後の奈緒の表情を。 そして、ギルガメッシュの奈緒への関心を。 ――――殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。 殺す!! もちろん奈緒自身にそこまでの殺意を抱いているわけではない。 ……だが。 「ク、ククク、ヒャァハハハハハハハハハハハッ!! ……どう思う? どう思うよナオちゃんよぉ! 私がテメエをじっくりじっくり嬲り殺して! ギルちゃんに伝えてやったその時! あのクソ王様ぶった金ピカ野郎がどんな顔をするのかってなあ!!」 それを想像するだけで今のかがみは歓喜に包まれる。 ラッド・ルッソの嗜好が、確かにかがみの中に存在している。 それを空恐ろしく思いながらも、しかしかがみは敢えてそれを否定しない。 ……たとえ異常者のものとはいえ、力は、たしかにここにあるのだから。 目の前にいるのはあのギルガメッシュが入れ込んでいる人間だ。 そこから引き出されるギルガメッシュへの殺意。 そしてDボゥイと鴇羽舞衣の生存の際に滾り溢れ抑えきれない程に膨れ上がった行き場のない殺意をミックスし、束ねあげる。 膨れ上がった殺意のとりあえずのぶつけ所として、結城奈緒に貧乏籤を引いてもらうのだ。 ついでに約束を破ったという事もあるし、全くもって都合がいい。 どこまでも、どこまでも。どんな状況でも。 理不尽な災禍は。殺意という名の暴力の塊は。 ――――たとえ食らわれようとも一切合切混じりけなく、ラッド・ルッソがここにいた証として。 その誰にも止められない力の渦は遥かな高みまで到達し、天元を突破する。 ラッドでもあるかがみの体に緑色の光が渦巻き始める。 ――――螺旋の力に覚醒した、ラッドの力。 たとえ相手が線路の影をなぞるものであろうと英雄王であろうと、変わらず自身であらんとするその力。 殺意とテンションが上がれば上がるほど、それは強く強く煌めきを増していく。 そして、それだけではない。 あまりにも純粋で巨大な暴力を制し、やはり自身であらんとする少女の意思もそこにいる。 その力を自らのうちに納めながらなお、螺旋王を食らい前に進まんとする少女の力。 殺意が膨れ上がるたびにそれに呑まれまいと抗う、少女自身の輝きもまた存在するのだ。 二つの螺旋の力が鬩ぎ合い、癒合しあい……やがてそれは莫大なる二重螺旋となる。 あまりにも眩いその力は、アルベルトを以ってさえ感嘆の息を洩らさせた。 「おいおいおいおいおいおいおいおいマジかよおいおいおいおい!! すげえ、すげえなオイ!! これが私かよ、なんなんだよこれはよ! これが螺旋力ってやつか!? テンションあがってきたぜ! ようし殺す! ぶち殺す! この力の実験台になってもらうぜナオちゃんよぉ、グチャグチャになるまでなあ! んでそいつをギルちゃんに真心込めてプレゼント! かぁっ、最高だよオイ! ヒャハ、ヒャハハハハハハハハハハハハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッ!!」 高まり、高まり、高まる。 螺旋の力はとどまる事を知らない。 やがて、その力は少女の指に嵌った指輪にも注ぎ込まれていく。 ――――Dボゥイが勝利すべき黄金の剣に己が螺旋力を注ぎ込んだように。 クラールヴィントに注ぎ込まれた螺旋の力は――――かがみを核として、一つの姿を形作っていく。 青く、薄い服。 何の特徴も面白みもない簡素すぎる服はしかし、それ故に異常なほどの威圧感を醸し出していた。 それも当然である。 何故ならその服は――――囚人服だったのだから。 凶悪犯罪者の中でも選りすぐり、イカれた人間の中でも特にキレた連中が集う史上最大の刑務所、アルカトラズ。 脱獄不可能と呼ばれた刑務所の囚人服を、かがみはその身に纏っていた。 ――――幾つも存在する多元世界。 その中の、ラッド・ルッソという存在そのものに刻まれた属性。 『ここ』のラッドに記憶がなくても、確かにそれはこうして顕現した。 彼を食らった柊かがみの――――バリアジャケットとして。 変化はそれにとどまらない。 かがみの左手に、更なる螺旋の力が纏わりつく。 極限まで圧縮された緑色は、やがて物質化するほどの密度を蓄え実体化していく。 鋼鉄の義手。 ――――正確には篭手ではあるのだが、義手と言ったほうがずっとしっくりくるだろう。 指もまともに動かないそれはしかし、フック船長の鉤爪を幾分マシにしただけの代物なのだ。 緑の螺旋に包まれる中、フック船長の鉤爪をした時計ワニが夜空に笑う。 遠くまで、遠くまで、声を響かせて。 肉食獣のそれより更に凶悪で理性的な、殺人鬼の歓喜の表情を浮かばせながら。 「ん? おうおうナオちゃんよぉ、どうしたよ、私と殺り合うつもりかよ」 ――――笑いを収め、かがみは奈緒に向き直る。 気がつけば奈緒は冷静さを取り戻し、既に両腕を構えていた。 記憶にあるエレメントの行使。それに間違いないと判断し、かがみは笑みながら悠然と歩み寄る。 最早それが虚勢なのか、ラッドの人格に呑まれているのかすら判然としない。 ただ言えるのは、今の彼女は確かに殺人に悦楽を感じているということだけだ。 「……あんた、いったいどうしたっての? まるで……」 ごくりと唾を飲み込み、震える体を奮い立たせるもかがみの接近に後ずさるを得ない奈緒。 その両手には既にエレメントが顕現していた。 いつでも襲い掛かられてもいいように即座に糸を発生させられる体勢の彼女に、かがみは両手を体の横に突き出し、笑みを濃くする。 尤も、鋼鉄の義手のついた左手はだらりと垂れ下がったままだったが。 「知りたいかい? 知りたいのかい? そうだよなあ、私が! 体はともかく精神的には平凡だったはずの、この私が! 突然『俺』みたいに豹変したんだからよお! ハハハハハハハハッ!!」 ずい、と身を乗り出すかがみ。 エレメントを出しても全く怯えないその様は、単に不死者だからというだけではない。 ……明らかに、あのラッドの立ち振る舞いと同じだった。 おそらく、という言葉がつくが、奈緒には大体のところが既に予測がついている。 ……だが、 「じゃあ教えてやるよ! 耳の穴かっぽじってようく聞け! まずは不死者についての説明だ、不死者ってのは文字通り死なな」 ――――奈緒の顔面に右ストレートが突き刺さった。 鼻がひしゃげ、木っ端のようにいとも簡単に民家、コンクリートの壁に叩き付けられる。 「――――!?」 「ヒャァハハハハハハハッ!! 説明の間は手を出さないと思ったか? おいおいおいおい油断しすぎだぜナオちゃんよぉ! んじゃまあ、説明続けてやるよ、ぶん殴りながらだがなあッ!!」 一気に10メートル弱離された間合いを、かがみはボクシングのフットワークを用いながら砲弾のように突っ込んでくる。 右手にはいつの間にか剣が握られており、凶器が狂気を加速させていた。 本来ならば女子高生のかがみではありえない動き。 ――――それを可能とするのは、ラッド・ルッソ同様、テンションを上げながらの彼の記憶の行使。 そして、異常なほどの密度を誇る螺旋力の産物によるものだ。 「くぅ……っ!!」 鼻血を噴き出しながらも奈緒は即座に位置取りを変更し、両掌のエレメントから糸を周囲に展開。 対象を捕らえる為の弾幕を張る。触れるだけでかがみは捕らわれ、動けなくなることだろう。 奈緒とて何も考えなかったわけではないのだ。 ――――これが二度目の対峙なのだから。 相手が不死身なのは分かっている。 もしかしたら、倒しきる事はできないかもしれない。 ……だが。 殺せはしなくとも、相手を捕らえる事はできる。 以前の戦闘では糸による切断を攻撃の軸に据えていたからこそ遅れを取った。 冷静に考えてみれば、瞬間的に再生する相手に切断攻撃なんて相性が悪すぎるのだ。 だから、今度は捕縛に徹する。 切断は牽制、フェイントに。最初に一発当てて、次の攻撃も切断だと誤認させる。 不死身の体を持っているのだから、二段構えなら同じ攻撃の連発だと錯覚して受け止めるだろう。 それからどうするかは未定だが、捕らえさえすればどうにかなる。 アルベルトと交渉してとりあえずこの場を離れさえできればいいのだから。 無意味。 その全てが、無意味。 「……当たらな――――!?」 何故なら、不死身の柊かがみの動きがあまりに以前と違いすぎるからだ。 不死身の体に頼りきって攻撃回避を全く考えていなかったあの時とはまさしく別人。 最小の反応で糸を見極め。 最小の時間で行動を決定し。 最小の動きで弾幕を回避し。 最小の隙で次の糸に意識を移す。 明らかに不死の体などには全く頼っておらず、自身の思考と反応のみを信じているかがみ。 更に言うならバリアジャケットを展開しているのに、それすらも全く楯にしていない。 それはどう考えても、『死を意識し、向こう見ずな行動を取らない人間』の動きだった。 不死者でありながら、奈緒の一挙手一投足全てから匂う死の可能性を意識し油断しない。 奈緒の放つ糸の全てを掻い潜りながら―――― 名前に矛盾しているはずの行動を取りながら―――― 不死身の柊かがみは、笑う。 ただ、笑う。 奈緒の左側面に深く沈みこんだかがみの振るう剣の峰が、両手に叩き込まれていた。 一瞬でエレメントが破砕し、只の一撃にしては異常なほどの体力の喪失が訪れる。 ――――剣の名前は、ヴァルセーレの剣。 力を吸い取りその刀身に蓄える、魔物アースの剣だ。 エレメントの力を吸収されて、奈緒は完全に力が抜ける。 当たったのは峰とはいえ、ダメージは大きい。 右手はまだ動きそうだが、左手はしばらく使い物にならないだろう。 おそらく骨が折れているのは間違いない。 「……不死者と言ってもよぉ、会場内なら死ぬかもしれねえんだわこれが」 片手で振るわれたその剣はすっぽ抜けてあらぬ方向へ落ちていったが、 しかしラッド……いや、かがみの戦闘スタイルに大して影響はない。 即座に右手を振り上げ、片腕だけの歪なボクシングスタイルを取る。 左手の鋼鉄の腕はやはりだらりとぶら下がったままだ。 「これは嬉しいことだよな、そうだよなあ!? 螺旋王サマはよ、不死身の人間でもぶっ殺せる機会を与えてくれた訳だ!!」 ――――つい先刻のラッドの動きを、かがみはほぼ完全にトレースする。 ジャブ。ジャブ。ジャブ。小刻みな右拳の連打。女の細腕でかがみは拳を刻む。 鼻血が流れる瞬間の、ワサビを食べた時にも似たツンとする感覚。そして、直後に溢れる血の感覚。 痛みもそうだが、それよりも思いっきり鼻をかみたくなるようなその感触がいやだなぁ……と、奈緒は思う。 「そしてそいつには私も該当する! 少なくとも、だ! この会場にいる限りは私は死ぬかも知れねえワケだ!」 ショートストレート。モーションを最小限にした射る様な拳。ジャブからのコンビネーションでそれを打つ。 バシッという小気味よい音と共に頬肉が腫れ上がり、頭の中にミシリという音がはっきりと響き渡る。 耳を脳も頭蓋骨の中にあるからか、顔面への打撃は思いのほかよく響く……と、奈緒は思う。 「だからよぉ! とりあえずしばらくはテメエ自身については考えないことにした!」 右フック。反射的にあがったガードを迂回するように拳を叩き込み、逆の頬を打つ。 柔らかい頬に拳がぶち当たって口の中が圧迫され、拳と口内の歯に挟まれた内頬が鋭い痛みとともに切れる。 しかし、それより勘弁して欲しいのは歯医者から出てきた直後の様な奥歯の鈍い痛みだ……と、奈緒は思う。 「ギルちゃんやらタカヤ君やらを殺しやすくなったのは不幸中の幸いってトコか!」 ボディアッパー。続けて、がら空きのボディへと右のストマックブローをめり込ませる。 ポンプの様に潰された胃から、食道を通じて酸味の強い液体が逆流し舌と鼻の粘膜に嫌な刺激を与える。 気持ち悪さにすら全く慣れない。それ以上に、胴を持ち上げられて足をピンと伸ばしている格好が恥ずかしい……と、奈緒は思う。 「そうそう不死者の説明だったなあ! んで、不死者には死なねえって事以外にもう1つ能力がある!」 ショートアッパー。落ちてきた無防備な顎を拾うように半径の狭いアッパーカット。 ガチンという音と共に半開きだった口が無理やりに噛み合わされ、上下それぞれの歯の付け根にじんわりとした痛みが発生する。 それに加えて、突き抜けた力が額に得もいえぬ感触を残す。それを、カキ氷を急いで食べた時みたいだ……と、奈緒は思う。 「他の不死者を……食えるんだよ! そいつの記憶も趣味も思考も人格も何もかもなあぁッ!!」 右フック。頭の真横。耳の上を叩き、そしてそのまま振りぬいて顔の向きを90度以上変える。 耳の中で圧縮された空気が反響を起こし、頭蓋の中を駆け巡り脳を――思考を揺らす。 ブレブレに見える視界に一瞬思考を奪われ、ああ、こういうのはいけないな……と、奈緒は思う。 「おいおい聞いてんのか? テメエが聞きてぇっつったんだろナオちゃんよぉええオイ!?」 ボディブロー。頭を揺らされふらつき無防備なところへ再度のボディ。今度の狙いはレバーだった。 突然、身体の中に鉄の錘が出現したんじゃないかと思うような感触。決して外に逃げ出してゆくようなものではない痛み。 あまりの違和感に四肢が痺れ身体が砕けそうになる。今のところ、これが一番クる……と、奈緒は思う。 「つーわけで、説明終わり! よし、理解したら死ね!」 ストレート。一時的な不明の状態へと落とし込んだところで、渾身の右ストレート! ついさっきの様に、再び鉄拳――いや狂拳が、音を立て骨という面をきしませ頭の表面を吹き飛ばしてく。 目が眼窩の奥へと押し込まれそうな感覚に、背筋が凍る。一応は女の力と解っていても目や指は怖い……と、奈緒は思う。 殴られながら、奈緒は次第に壁際へと追い詰められていく。 最早恐怖の感情すら麻痺してまともに頭が動かない。 ただ、死になくても死ねないなあ、という事だけを思っていた。 目の前の少女はこんなのよりも凄い攻撃に耐えていたのかと感心すら湧き上がってくる。 ……不意にこつり、と背中が壁にぶち当たる。 その瞬間、不死身の柊かがみはニィ、といっそう笑みを深くした。 ゆっくり、ゆっくりとかがみの全身が動いていく。 それを見てすぐに奈緒はこれから起こることを悟った。 ……ああ、止めをさすつもりなんだな、と。 色々なものが脳裏に浮かんでいく。 舞衣やなつき、静留といったHiMEの面々。 自身のチャイルドであるジュリア。 強盗に殺された家族。 唯一そこから生き延びた母。 ……そして。 「――――金、ぴか」 いつの間にかその名詞が漏れていた。 名前で呼ぶような親しさはなく、部下と上司なんてのもお断り。 ただ、不思議な信頼関係を築いた男を指す自分だけの呼び方を、口にする。 すでにかがみはソレを振りかぶり終えていた。 これまで一度も使わなかった左手。 無慈悲な無慈悲なフック船長の鉤爪を、時計ワニが暴力に変えていく。 普段ならただだらりと垂れ下がるだけの重たいそれは、全身のあらゆる筋肉を行使して砲弾よりもなお力強く撃ち出されていく。 あたかも普通のパンチのように。 しかし、断じて普通などではない。 かがみは、全身のあらゆる箇所の筋と血管を断裂させ、血飛沫を撒き散らしているのだから。 ゆっくりとゆっくりと迫り来る柊かがみの鋼鉄の拳という光景を最後に―――― 結城奈緒の意識は閉じられた。 時系列順で読む Back 第四回放送 Next 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) 投下順で読む Back 第四回放送 Next 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) 238 ディナータイムの時間だよ(食後) 結城奈緒 242 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) 238 ディナータイムの時間だよ(食後) 柊かがみ 242 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) 238 ディナータイムの時間だよ(食後) 衝撃のアルベルト 242 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編)
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LIVE FOR YOU (舞台) 8 ・◆・◆・◆・ 「兄上っ!」 親しみの感情がこもった声に、神崎は司令室の入り口へと顔を向ける。 そこには彼の妹であり、この組織の中で唯一打算なく感情を向けられる美袋命と、彼女のお目付け役であるエルザの姿があった。 「また、基地の中を歩き回っていたのかい?」 獣のように跳ねて駆け寄ってきた命に神崎は優しく声をかける。 命は兄の問いに悪びれることもなく面白かったぞと返答し、満面の笑みを浮かべた。 「おみやげだ。兄上もいっしょに食べようっ!」 近くから椅子を引いてくると、命はそれを兄の隣に置きちょこんと腰かけ、抱きかかえていた紙袋を机の上に置いた。 ガサガサと乱暴な手つきで袋の口に手をつっこむと、すぐに大きな肉まんがその中から出てくる。 さてこれはどういうことかと、神崎はエルザへと視線で尋ねてみるが、しかしエルザはただ横に首を振るだけであった。 「知らないロボ。エルザが見つけた時には、もう持ってたロボよ。大方、勝手に食堂まで行って盗んできたに違いないロボ」 「私は欲しがったりはするが、人のものを勝手に食べたりはしないぞっ!」 エルザの適当な答えに命は剣幕を見せる。 だが、肉まんを手にしていることを思い出すと、それをふたつに割って片方を兄へと差し出した。 「さぁ、兄上も。まだあたたかくておいしいぞ」 神崎は肉まんの片割れを受け取り、妹にならって大口で齧りつく。確かに、その肉まんはあたたかくておいしかった。 「下働きは辛いロボ。エルザはシンデレラガールロボね」 ひとり、エルザは基地内の通路を歩いている。 朝から行方不明だった命の捜索を終えたと思ったら、またしてもお茶くみの仕事であった。 それぐらいなら誰でもいいと言えるし、なんなら司令室に給湯セットを置いておけばいいのにとも言える。 実際、他の職員は適当にそれでコーヒーなんかを飲んでいるのだが、しかし神埼の紅茶へのこだわりだけは別だった。 だとしても、ならば何故エルザがするロボか? と言ってみても、この非常時に基地内を出歩ける者は案外多くはないのだ。お茶くみでとなるとなおさらである。 「エルザを迎えに来てくれる王子様はどこにいるロボか……?」 ぽつりと呟き、エルザは通路の端々にできた水溜りを器用によけ、ただ歩いてゆく。 ・◆・◆・◆・ 闇に閉ざされた洞窟を仄かに照らすオレンジ色の炎。 その炎に照らされ、三人分の影が冷たい岩肌に長く伸びている。 「ほんと不思議だよねー、何にも燃やすものないのに焚火できるなんて」 と、相変わらず呑気な声で桂は濡れた衣服を乾かしている。 柚明は桂に相槌を打ちながら自らも濡れた衣服を乾かしていた。 「んー……わたしのほうはもう乾いた感じだけど……柚明お姉ちゃんはどう?」 「ごめんなさい……もうちょっとかかりそうね」 比較的軽装な桂の服と違って柚明は何枚も重ね着した和服である。 当然のことながら水をたっぷりと吸った和服は中々乾きづらく、また水を吸った着物はひどく重かった。 本当なら二人とも濡れた服を脱いで乾かしたいのだが―― 「僕にお構いなく~、物干し竿に使えそうな物はそこにあるからねー」 那岐は笑いながら壁に立てかけている金属製の棒状の物体にウインクした。 「……もう那岐君の冗談はスルーしてもいいかしら?」 「あはは……でも、確かにそれなら物干し竿として十分使えそうだね」 と、桂は立ち上がり立てかけたそれを持ち上げた。 九七式自動砲――かつて旧日本陸軍によって製造された対戦車ライフルである。 製造されてから半世紀以上経過しているのにも関わらずそれは新品同様の光沢を放っていた。 現代の主力戦車の装甲を打ち抜くには心もとないが、 装甲車程度の物なら安々と打ち抜くそれはその威力と射程にふさわしい重量と長さを誇っていた。 ――『全長2.06m 重量59.0kg』 まさに鉄塊ともいえるそれは銃架に備え付けて撃つ物であり、 ましてそれを抱えて移動しながら撃つなどということは本来不可能である。 だが桂はそれを片手でいとも容易く持ち上げる。 浅間サクヤの鬼の血は60kg近くある鉄塊を苦にすることなく持ち上げる膂力を桂に与えていた。 「さっすが桂ちゃん。それを君に渡して正解だね」 「うん……」 桂の顔に陰りが見える。 それもそうだろう、本来これは堅い装甲を撃ち抜く物であって人に向けて撃つ代物ではない。 人に向けた場合あまりにもオーバーキルすぎるのだ。 そして、今までは運よく戦いから逃れてこれていたが、今後もそうだという保証はない。 自らの身を守るためのに、仲間を守るためにその手を汚す。 そして、そのための力がそこにあった。 ――お前は戦えるのか? 相手は神崎や言峰だけじゃない、一番地とシアーズという組織が相手だ。 当然組織に忠誠を誓う人間達もいるだろう。 それを殺せるのか? ――才能を、力を持ってる癖に何もしようとしない事よ。あなた戦える力を持ってるんでしょ? 誰よりも銃弾を物とせず、ただの人間をボロ布のように引き裂く力を持ちながらなぜ戦おうとしないの。 例え敵であっても誰かを傷つけるのが嫌だから? 自分が汚れるのが嫌だから? いつかの玲二とファルの言葉が思い起こされる。 たった数日前のことがすごく遠い昔のことに思えた。 「桂ちゃん……」 柚明は桂の不安を痛いほど理解していた。 自分や那岐はある種戦いに関しては割り切った感情で臨める。 危害を加えようとする者に対し、無慈悲に断頭台の刃を振り降ろせる邪な覚悟ができてしまっていた。 願わくは桂にその業を背負わせたくないが―― 「きっともうすぐ――君の得た力の代償を支払う時がやって来る。大切な人達を守るための業を――だけど迷わないで、桂ちゃん」 いつも人前では飄々とした態度の那岐がいつになく神妙な口調で言った。 だが那岐に見つめられる桂は黙ったままであった。 重苦しい空気が三人の間に流れる。 誰も言葉を発しようとはしない。忍び寄る戦火の気配が、桂と柚明の口を閉ざさせる。 その空気に見かねた那岐がいつものような軽い口調で、重たい空気を振り払うように言った。 「すっかり忘れられてる感じなんだけどね、二人とも服乾かすのまだー? いつまでも火を維持するの疲れるんですけどー?」 「あっ……ごめん那岐君。わたしはもう大丈夫だよ」 「私のほうもすっかり乾いたわ」 二人の声を聞いた那岐はパチンと指を鳴らす。 すると赤々と燃え盛っていた炎がふっとかき消え、洞窟の中は再びわずかな明かりがあるだけの暗闇に閉ざされた。 「ふいーっ疲れた疲れたっと……それじゃあ桂ちゃん、約束通り贄の血を――」 「ん……ちょっと待ってね……」 約束通り贄の血を飲ませるため、桂は自らの荷物の中を漁る。 いつものように手首をちょっぴり切って、滲んだ血を直接啜ってもらえばいいのだが、 そうすると柚明が必死になって止めようとするのでコップを探してた。 確かに、言われて見れば男性相手に血を与えるのはどうも気恥ずかしい。 「(えっ? 女の子同士のほうがよっぽど恥ずかしくない?)」 ややあって桂は紙コップを取り出した。 時間がかかったのは、その上にわんさとホテルから持ち出したお菓子や飲み物があったからだ。 「あっ、お菓子もあるけど食べるー?」 「んー、遠慮しておくよ」 「はーい」 桂はナイフの代わりに武器として持ってきていた日本刀を鞘から抜き、切っ先を手首の静脈に軽くあてがった。 刃がごく浅く皮膚を裂くはずだったが…… 「痛っ……ちょっと深くやっちゃった」 「大丈夫……?」 「大丈夫大丈夫っ」 ぼたぼたと流れ落ちる血。桂はそれを急いで紙コップで受け止める。 白い紙コップに赤い血がとくとくと注がれてゆき、 四分の一ほど入ったところで、桂は贄の血を那岐に差し出した。 「はい、搾りたての新鮮贄の血だよー」 「し、搾り立て……桂ちゃんの搾り立ての……」 「サンキュー♪ (柚明ちゃんが何か妄想してるようだけど敢えてスルースルー)」 「柚明お姉ちゃん……もしもしー?」 「……(妄想中)」 「柚明お姉ちゃーーん!?」 「ふっふぇ!?」 贄の血の香り気に当てられ、明後日の方向に意識が飛んでいた柚明。 思わず間抜けな声を出してしまっていた。 「柚明お姉ちゃんも私の血いるよね?」 「桂……ちゃん」 にっこりと微笑む桂の笑顔が眩しい。 いつもそうだ。彼女の血を目の当たりにしてしまうと理性が保てなくなる。 愛おしい桂を、それが叶わぬ愛であったとしても。 その身体にむしゃぶりついて隅々まで味わいたい。 熟れた果実の薄皮を裂くように桂の白い肌からあふれ出る赤い果汁を嘗め回したい。 「柚明お姉ちゃん……? あっ――」 とさっと桂は地面に尻餅をつく。反転した視界が洞窟の闇を映す。 その上に覆い被さる柚明の姿。押し倒された桂の小さな身体。 「あの、血が出てるのはわたしの手首――」 桂の声も柚明の耳に届かない。 柚明は桂の白く細い首筋しか目に入っていない。 彼女はゆっくりと上気した顔を桂の首元に近づけて噛み付いた。 「あ……んっ、わざわざそ……んなところ……っ」 ぞわりとするような感覚が桂を駆け巡る。 重なり合った二つの影が洞窟の仄かな照明に照らされて岩壁に揺らめいている。 絡み合うアカイイト、いつも血を吸われるときに感じるあの感覚。 自分と他人の意識が混ざり合って自己の境界が一時的に失われてゆく恐怖と快感。 そしてその恐怖ですらも赤く溶け合った意識の中で快感に変じてゆく。 身体の奥底から湧き上がるような快感と浮遊感に桂は身悶えする。 久々に体験する深いトリップだった。 「駄目、だよ……那岐君が見て、んんっ……はずか、しいよ……」 「そんなの……んっ……別にいいじゃない……私は気にしてないから……ね?」 「柚明お姉ちゃんがよくても……わたしが恥ずかしいの……っ」 他人に見られてる。 それも見た目には同い年くらいの少年に己の痴態を見られている。 その背徳感がより一層、桂と柚明の快楽に火を灯す。 桂の位置からは那岐の姿は見えない。 だが見えないが『見られている』という状況が桂の不安をさらに快感へと転化させてゆく。 「お願い……那岐君……見ないで……」 桂の弱々しい声が闇の中に静かに木霊する。 そんな桂の訴えもやがて快楽の大きなうねりの中にかき消されていった。 一方、那岐はというと……、 二人から少し離れた位置で紙コップを片手に重なる二つの影を見つめていた。 「……確かに贄の血は最高においしいんだけど……おいしいけど何この差? シチュエーションの違いってやつ?」 そう言って那岐は最後の一口を飲み干した。 少し物悲しさを感じながら、那岐は二人の嬌声が治まるのを待ち続けていた。 ・◆・◆・◆・ キャットウォーク上からどうにか這い上がり、元居た通路まで戻ってはみたものの、仲間の姿はない。 耳に装着しているインカムは、依然として沈黙の状態を継続。 誰とも連絡がつかず、突入メンバーの安否は一向にわからないままだった。 「仮に、仮にですよ? このままみんなとはぐれたままだったら……」 「そんときゃ、俺たちがラスボスのところに一番乗りだな」 「そ、そんなぁ~! 私ひとりじゃ、なにもできないですよぉ……」 「てけり・り」 「うっ……一人じゃなくて、三人ですけど……でもでもっ」 「やよいにだって、いろいろ言いたいことはあるだろ? あの神崎ってヤローや……古書店の店主さんによ」 「あうぅ……」 誰もいない廊下を、おそるおそる歩いていく高槻やよい、その右手にはまるプッチャン、後ろに付き従うダンセイニ。 普段は一番地職員が――やよいにとっての“敵”が歩いているだろう通路は、無機質な壁と床がただ延々と続く。 歩きながらに思い浮かべるのは、病院だ。物静かで清潔的な空間。ここが敵地のど真ん中だとは、到底思えない。 「誰もいません……」 「敵さんの数も無尽蔵ってわけじゃねーからな。たぶん、他に回ってるんだろうよ」 「他って?」 「玲二や九郎たちのほうさ。奴らにとって、本当に食い止めておきたいのはそっちだろうからな。俺たちなんて後回しってことだよ」 プッチャンの言葉の意味は、やよいにもわかる。 相手側の立場になって考えてみるならば、警戒すべきはやよいのような弱者よりも九郎たちのような強者。 人員を割くとしたら当然、そちらのほうになる。状況を見るなら、やよいはただ単に捨て置かれているだけとも取れるのだ。 「ありがたいっちゃありがたいけどな。このプッチャン様がついている高槻やよいの存在を軽んじるなんざ、愚かにもほどがあるぜ」 プッチャンは大胆不敵にこの状況を受け入れる。 対して、やよいは悲観的だった。 自分が弱いことは十分に理解している。できれば誰に襲われることもなく進みたいと、そう願ってもいる。 だが、やよいに敵兵があてがわれないということはつまり、その分だけ他の仲間が苦境に置かれているということでもある。 仲間の危険と自分の安全は両天秤に置かれている。そう考えてしまうと、通路を進む足も重くなる一方だった。 もし、このまま自分たちだけで神崎黎人のもとまで辿り着いてしまったとして――はたしてなにができるだろう? 吾妻玲二は神崎黎人を殺すと豪語していた。それは殺し屋、“ファントム”である彼だからこその道だ。 一介のアイドルであるやよいには、逆立ちしたって真似できない。真似をしたくもない。 たくさんの人を死に追いやった神崎黎人は許せない。 だけど、その『許せない』という感情は決して、殺意には昇華しえない。 他の人間なら露知らず、少なくとも、高槻やよいにとっては。 だからこそ――進む道の先にある、到着点。そこまで行くのが、怖い。 視線は、前ではなく足下に向いてしまっていた。 「……――やよいっ! 前! 前見ろっ!」 その、数秒。 やよいの意識は『戦場』から外れ、プッチャンの声を耳にしてようやく戻る。 一本道の通路、進みゆくその先に、人が複数名、現れていた。 ある意味では仲間の証たる首輪、それにインカムもつけてはいない。 代わりにベストのようなもの――防弾チョッキだろうか――を身につけ、各々が銃器で武装している。 数えてみると、人数は五。一人が大声を出して他四人に行動を促し、一人、また一人と、携えていた銃器をこちらに構える。 銃口はすべて、やよいのほうへと向いていた。 「てけり・り!」 叫んだのはダンセイニだった。軟体の体を素早く床に這わせ、やよいの足を絡め取る。 バランスが取れなくなったやよいはそのまま後ろに倒れ、ダンセイニの体内に取り込まれた。 ねばねばとした感触を覚え――その次の瞬間、銃声。 乾いた一発ではない。弾雨と称すべき音の波涛が、実際に無数の銃弾という形でやよいの身に降りかかった。 侵入者、高槻やよいを発見した一番地戦闘員は男性五人。武装はマシンガンだった。 「うっ、わ、わっ!?」 突然の窮地にまともなリアクションを取ることもできず、やよいの頭はパニックに陥った。 ダンセイニに守られ、運ばれるがまま、元来た通路を引き返していく。 後方からは絶え間ない銃撃が押し寄せ、何発かはダンセイニに命中する。 だが、それらは中のやよいに到達するよりも先に軟体に威力を吸収されてしまっていた。 黄色いボディの中に、困惑する少女の身と、いくつかの銃弾、そして一つ目が浮かんでいる。 ダンセイニ自身にダメージはない。床を這う速度も、その形状からは想像もつかない獣のそれだった。 通路の曲がり角を左に折れ、敵兵の射程範囲から逃れる。 銃声がやむと、バックミュージックは靴が床を叩く音に切り替わった。敵兵が追ってきているのだ。 「ちっ……応戦するぞやよい! ダンセイニ、コンビネーションAだ!」 「てけり・り!」 「ふぇ、えぇ~っ!?」 プッチャンの思わぬ発言に気が動転するやよい。 追ってくる敵兵の足音は徐々に大きくなっていき、身の危険を按じさせる。 「きゅ、急にそんなこと言われても~っ!」 「腑抜けてんじゃねー! 俺たちゃ遊びに来たわけじゃねーんだぞ!」 「てけり・り!」 言い合う内、『食堂』と書かれたプレートが下げられた部屋を通り過ぎる。 廊下側の窓ガラスから、テーブルや椅子が並べられた内部の様子が見て取れた。 ああ、一昨昨日の今頃はみんなで楽しくお昼の準備をしていたなぁ……とやよいは現実逃避に走る。 それも一瞬。 床を這って進んでいたダンセイニが不意に停止し、敵兵が迫ってくるほうへと向き直る。 やよいの体をがっちりと固定したまま、軟体をそれぞれ右上、右下、左上、左下の四方向に突出させた。 通路の四隅に粘度抜群の液体を付着させ、ダンセイニ自体もここに固定。バッテン印のような形状に変化を遂げた。 その中心に、一つ目とやよいの身が置かれている。 迫る敵兵たちはダンセイニの奇行に対し怪訝な面持ちを浮かべていたが、臆することなくこちらに向かってくる。 『食堂』の辺りにまで差し掛かったところで立ち止まり、銃を構えた。そこが射程距離なのだろう。 ダンセイニは彼らが立ち止まり、銃を構える――その一連の動作の際に生じた隙に付け込み、体の中心部をやよいごと後方へと仰け反らせる。 「やよい! 俺を――右手を前に突き出しておけ!」 今にも銃弾を放とうとしている敵兵を正面に置きながら、やよいは予感した。 プッチャンとダンセイニが、いつの間にか編み出していたコンビネーション。 単体での破壊力、一方の軟質さや粘着力を活かした、つまりはゴム鉄砲の要領。 それはさながら、通路全体を利用した巨大スリングショットのようだった。 「受けてみやがれ! これが俺とやよいとダンセイニの合体攻撃――『弾丸プッチャン弾』だ!」 引っ張られていたダンセイニの中心部が、ふっ、と消える。 通路の四隅に接着していた部分が支点となり、中心部には戻る力が加えられたのだ。 ショゴス――それはウォーターベッドのような柔らかさと、スライムのような粘度、そしてゴムのような性質を併せ持つ謎の生物。 それがスリングショットのように体を働かせた結果、そこに反動が生まれ、 やよいの身体は人間大砲もびっくりの勢いで敵兵らに向かって射出された。 「こいつはおまけだ! プッチャン――」 言われたとおり右手を突き出していたやよいは、プッチャンを先端とした矢のようなものだ。 掛け声と共にプッチャンの体が赤く燃え上がり、やよいごと一つの大きな炎弾と化す。 それは五人程度の戦闘員など一撃で全部巻き込めてしまえる規模で、結果、 「――バーニング!」 五人が五人とも、高槻やよいの突進に蹴散らされることとなった。 「ぶっ!? わっ、ひゃっ、ぎゃ~!」 甲高い悲鳴は、敵兵のものではない。ダンセイニに撃ち出されたやよいのものだった。 勢い衰えることのない弾丸はそのまま向こう側の壁際にまで届き、衝突してやっと停止。 バーニングの威力で壁が陥没したが、幸いにもやよい自身に外傷はなかった。 「よっしゃあ! 一網打尽だぜ!」 「うぅ……が、がくっ」 外傷がないのはプッチャンが上手く力をコントロールしていたからだが、その身にかかる負担までは軽減しきれない。 自身が弾丸として撃ち出されるという衝撃に、やよいの脳は揺れ、内臓はひっくり返り、過度の車酔いにも似た症状に襲われる。 「てけり・り……」 ダンセイニが申し訳なさそうな瞳を浮かべながら、やよいの足下に這い寄ってきた。 「おーい、大丈夫か? これくらいでへばってちゃ、先が思いやられるぜ」 「……き、今日のプッチャンは激しすぎ……ますぅ」 「なに言ってんだ。あの特訓の日々を思い出せ! 俺はおまえをそんな軟弱者に育てた覚えはねぇ!」 「育てられた覚えもありませーん!」 緊張は一瞬だけ。 危難が過ぎ去った後はもう、いつものやよいとプッチャンだった。 「ああいうことするんなら、ちゃんと事前に言ってください!」 「にゃにおう! 事前に言っちまったら、やよいは嫌がるだろうが!」 「あたりまえですっ!」 「てけり・り」 怖くなかったわけではない。むしろすごく怖かった。だがその怖さを埋め尽くすほどに、安心感があったのも確かだ。 プッチャンと、ダンセイニ。みんなと離れ離れになってしまったやよいを、身を挺してでも守ってくれる心強い二人。 一人ぼっちだったらきっと、敵兵と顔を合わせたところですぐに撃たれて死んでしまっていただろう。 一人じゃないから戦える。二人が一緒だから前に進める。不安感と安心感が混在する、曖昧な気構え。 それが――高槻やよいの内包する『危うさ』。 「さて、もたもたしてると次の敵が来ちまうからな。とっとと先に進むぞ」 「む、むぅ~……は、はい……」 錯覚などではない。今日のプッチャンはやよいに対して一際厳しかった。 しかしその厳しさの裏には、確かな甘さ、そして優しさがある。 おまえのことは俺が守るから、気にせず先に進め――と、そんなメッセージが感じられる。 だから頑張れる。プッチャンがくれる安心感に、応えることができる。 それが――高槻やよいとプッチャンが共有する『危うさ』。 ここは、決戦の地なのだ。 誰もが皆、命を危険に晒す場。 絶対の安心など、絶対にありえない。 「てけり・」 元居た通路に戻ろうと、一歩目を歩みだして、二歩目は踏み止まらざるを得なかった。 耳慣れした、ダンセイニが放つ独特の音が、不意にそこで途切れたから。 定位置となっていた自らの背後を振り返り、やよいは見る。 ダンセイニの透き通った体に、一本の剣が突き刺さっている。 先端から柄までを目で追っていくと、それは見知らぬ女性の腕に直結していた。 剣は握られているのではなく、腕とじかに繋がっている。そこが、見知らぬ女性の正体を察知するポイントとなった。 女性の顔を探る。無表情。見ているのではない。ただやよいに己が双眸を向けているだけ。機械的な所作。 その姿はどことなく、深優・グリーアの第一印象に酷似していた。否、まったくの同一と言ってしまってもいい。 女性のすぐ傍には、先ほどやよいが視界に捉えた『食堂』の入り口がある。中から出てきたらしい。 伏兵だ――どうしてこんなところに――思い、数秒。 これは人間じゃない――深優さんが言ってたアンドロイド――思い、数瞬。 女性型アンドロイドはブレードアームに突き刺さったダンセイニを乱暴に振って剥がし――そして。 「あっ――」 やよいがようやくの声を上げた頃――その凶刃を、殺意の矛先を、無垢な色の顔面へと差し向けた。 銀の光沢が視界を埋め尽くす。 両の脚は棒と貸し、床に植えられた。 表情を変える方法を忘れてしまう。 ただ、右手だけが動いた。 「やよいには――指一本触れさせねぇ!」 既視感。 これは何度目のことだろうか。 やよいの右手に嵌っていたプッチャンが、アンドロイドの繰り出す刃を受け止めていた。 指も持たない、その小さな両腕で刀身を挟み込む、白羽取りの形。 押す力と押さえる力、双方に差はなく、生まれたのは均衡。 やよいにはまだ、なにが起こったのか認知できない。 目に映る光景を、ただの映像として捉えているだけで、現況という形では理解できていない。 まるで、他人の夢を外枠から覗き見しているような心持ちだった。 見えているのは、三つ。 やよいに剣を突き立てんとするアンドロイドと、それを受けるプッチャン。 壁際の辺りに黄色い半透明の物質を撒き散らし、目を回すダンセイニ。 倒れ伏す四人の敵兵と、瀕死と窺える動作でこちらになにかを投げようとしている一人。 新たに見えたものが、一つ。 気絶には至らなかった敵兵が一人、懐から取り出した小さなそれを、投擲してくる様。 宙を舞うそれは、昨日さんざん投げたり打ったりした白球に似た大きさ。 形状はどちらかというと、オレンジよりもパイナップルに近かった。 (――あ、そっか) 刹那の瞬間に、やよいは教訓としてそれを受け入れた。 ここでは、一瞬が勝負なんだ。 片時も気を緩めてはならない、安心なんてしちゃいけない。 緊張と集中の継続が肝心と言える、ステージにも似た場所。 駆け出しの自分なんかが上がるべき舞台ではなかったのだと、 手榴弾が爆発するのを最後に確認して、 痛感した。 ・◆・◆・◆・ 少年は走る。背にかけられた言葉を力とするように、決して振り向くことはせず、ひたむきに、まっすぐな道をただ進む。 クリス・ヴェルティンは決して強い人間ではない。 硬い床を叩く足はすぐにおぼつかなくなり、筋肉は悲鳴をあげ、息はあがり、額にはいくつもの汗の玉が浮かんでいる。 それらの現実を凌駕する堅固な心の強さがあるわけでもない。 彼の心はいつだって這い寄る影に怯え蝕まれている。 しかし、それでも彼は走る。ただまっすぐに。愚直なまでに。それを自覚してもなお、ただ前へと走る。 彼女と会わなくてはいけない。交わす言葉があるはずで、伝えたい気持ちがあるはずだから。 これまでの全てを嘘にしない為。彼女のこれまでを嘘にしない為。自分のこれまでを嘘にしない為。 クリス・ヴェルティンはまっすぐな道をただ進む。 見通しのいいまっすぐな通路を駆けているクリスの目の前に、不意に黒い影が射した。 何か? そう思う間はなかった。 天井より染み出すように現れた黒い影は物言わずクリスを強く打ち据え、彼のか細い身体を辿ってきた道へと押し返す。 「――――っ!」 少しの滞空の後、背中から床へと叩きつけられたクリスの口から声にならない悲鳴が吐き出された。 まるで糸の切れた人形のように床の上を転がり、そしてそれのようにクリスは床の上から立ち上がることができない。 たったの一撃で身体のそこらじゅうが痛みと痺れを訴え、心臓が不吉な音を立て、意識は白く朦朧としている。 その、朦朧とした意識の中で彼が見たのは、通路の先からこちらを冷たい目で見ている巨大な黒猫だった。 「もう…………」 遠回りはしていられないんだ。と、クリスは全身を苛む苦痛に抗い、弱々しくもその身体を起こす。 目の前にいるのは話に聞くオーファンというものだろう。 禍々しくはあるが、なつきのデュランや碧の愕天王とどこか似ている。きっと、同じように強いに違いない。 そこまで思って、しかしクリスは逃げようとも引き返そうともしない。 この先に、この先をまっすぐ行けばそこに彼女がいるのだ。だから――。 「……ロイガー。……ツァール」 2本の短剣をクリスは両手の中に現した。 そして、風の神性を持つ一対のそれを胸の前で交差させると、全て追い切り裂く渦巻き――手裏剣と変化させる。 次の瞬間。クリスの手を離れた手裏剣が風きり音だけを残しながら黒猫のオーファンへと肉薄し、黒毛を通路の中にばら撒いた。 「あ――!」 クリスの口から驚きの声が漏れる。 通路一杯の大きさがあった黒猫は、猫のようにしなやかに身をかがめるとそれを容易く避けたのだ。 切り裂いたのは体毛の一部だけ。 それは派手に散らばったものの黒猫そのものは無傷で、かがんだ状態から身体を伸ばすとクリスへと飛び掛ってくる。 見誤ったと後悔するも遅く、 「――がぁっ!」 再びクリスの身体がボールのように転がり通路を戻ってゆく。 なんとか立ち上がろうとするものの痺れる身体は先ほどよりもなお言うことを聞かず、なすすべなくクリスは黒猫に踏みつけられる。 足裏の感触は柔らかいが、黒猫は大きくそして重たい。どこかで何かが折れる音が鳴り、潰れた悲鳴が漏れ聞こえた。 たったこれだけで終わりなのだろうか? しかしそれも正しいことだとも思える。何かを成すというには彼は弱く、現実とは決して誰かを贔屓するものではないのだから。 「…………でも、まだなんだ。……まだ……死ねない」 その時、黒猫がビリビリと通路を震えさせるような悲鳴をあげて仰け反った。 押さえつける脚から力が抜けて、クリスはその隙に床を転がってその場を逃れる。 これは奇跡ではない。クリスの意志が齎した順当な結果。ブーメランとして戻ってきた手裏剣が黒猫の背中に突き刺さったのだ。 「ここじゃないんだ――」 クリスは口元をべったりと濡らす血を拭い、また再び立ち上がる。 「僕の命は――」 約束された勝利の剣を取り出し、針金のような毛と血を振りまく黒猫へとその切っ先を向けた。 「君たちなんかには絶対に――」 それが黒猫のオーファンが持つ能力なのだろうか、宙に舞っていた毛が突如として矢のように飛びクリスを傷つける。 「あげられないんだ――」 身を切り刻むそれを無視してか、それともすでに痛覚はないのか、クリスは懐に手を差し込むと、ジャラと一握りの宝石を取り出した。 「だから――」 宝石を握り締める拳の内から光が漏れ溢れ、炎のようなそれはクリスの全身を包み、熱と力を循環させてゆく。 「もう――」 光があったのは一瞬で、それはすぐに失われた。なのに黒猫はクリスへとは近づかない。まるで、まだそこに火があるかのように。 「邪魔をしないでくれ――」 ただの石となったそれが床の上でバラバラと音を立て、灰となって散った。 クリスは両手で聖剣を掴むとそれを天の方へと掲げた。 そして振り下ろされる。 それは最強の幻想。 想いを囚われし者を導く道標。 人々が追い求める理想を実現する為の輝き。 悲しみの連鎖を断ち切る剣――が、全てを白く埋め尽くした。 ・◆・◆・◆・ 「クリス……」 彼女以外の誰もいない冷たい通路に響く寂しそうな呟き。 玖我なつきは先程まで感じていた手のぬくもりを懐かしそうに思いながら、単身奥へと向かって進んでいた。 あの後、何体かのアンドロイドを蹴散らしてからは特に一番地からの追撃にも会ってはいない。 多少の面倒や不可解なことがあったりはしたが、進行は順調だ。 心配事といえばやはりクリスの事だった。 図らずして、彼を単独にしてしまった。 いくら、魔法の武器があろうとクリスはただの音楽少年で。 オーファンとの戦いに明け暮れたなつきの様に戦いになれているわけじゃない。 そんな彼がオーファンやアンドロイドなんかに襲われたら……? 「……大丈夫、クリスは大丈夫」 不意に浮かんだ最悪な結末を頭を大きく振ってかき消す。 そんな結末は有り得ない、あってはいけない。 それになつきは信じている。 クリスがちゃんと目的を果たせる事を。 クリスが自身の望みを叶える事を。 信じて、願っているのだから。 「だから……行こう」 だから、なつきは進む。 一歩ずつ、一歩ずつ。 だけど、確実に。 なつき自身の目的の為に。 もう、クリスの目的はクリスのだけものではないのだから。 それは、玖我なつきの目的にもなっているのだから。 何故、そうなつき自身で思えたかは本人でもよくわかっていない。 来ヶ谷唯湖の事を棗恭介に託されたから? なつきの為に手を汚して、そしてなつきだけの為に散った藤乃静留の生き方の為に? 心の底から愛しているクリス・ヴェルティンを支える為に? 「……知るか、そんなもの」 そんなもの、知らない。 難しい事、ごちゃごちゃ考えたくない。 とりあえず決まっている事。 ただ、 「やりたい事をするだけだ」 なつきがやりたい事をするだけ。 自分がしたい、ただ、そう思ったから。 理屈とか、理由とかどうでもいい。 素直に、やりたいそう思ったことをやるだけ。 それがきっと自分の為に。 結果として、それが皆の為になるんだろうと思いながら。 「…………おや、伴侶はいないんだな」 ―――そして、ついに出会う。 一人の少年を心の底から愛している少女達が。 その少年の為に全てを懸けている少女達が。 「……来ヶ谷……唯湖」 「……初めまして……と言いたい所だが、そんな気がしないよ。玖我なつき君」 この地獄の島においてついに出会ってしまった。 一方はその目に強い意志を宿らせ、相手を見つめている。 一方はその目に底の見えない深い諦観を宿らせ、薄い笑みを浮かべていた。 「こっちもだ……色々話したい事もあるしな」 「ほう……さて、どんな事を話してくれるのかな? 泥棒猫君?」 「……なっ!?」 蒼い髪の少女は両手に銃を握り。 黒い髪の少女は右手に銃を、左手には剣を。 そして、 「まぁ尤も……聞く必要性もないがな!」 「……っ!?」 一人の少女を愛し続けている故の衝突が 始まりを告げたのだった。 ・◆・◆・◆・ 「おはようございます。ゆうべはおたのしみでしたね」 開口一番、那岐は秘密の花園から舞い戻った桂と柚明に皮肉を込めて言った。 「えっと……どういう意味……?」 「さあ……?」 顔を見合す桂と柚明。 せっかくの皮肉も二人には通用しなかった。 「いいですよーっだ。男なんて基本ハブられて当然の存在だもん」 「えっと……なんだかよくわかんないけど、ごめん」 「ま、別にいいけど。さてと……気を取り直してそろそろ出発しよう。準備のほうはOK?」 「あ、うん。大丈夫だよ」 「柚明ちゃんは?」 「ええ、私も準備はOKよ」 「なら、出発だね。あまりぐずぐずしてはいられない。行こう」 「うんっ!」 頷く桂と柚明。三人はさらに洞窟の奥へ向かって歩を進めた。 三人は緩やかに傾斜した坂道を登ってゆく。 右手に見える地下水脈はいつしか崖下を流れており、左手の岩壁にはオレンジ色の照明が所々に点在し、淡い光を放っていた。 壁から崖まではおよそ三メートル。普通に歩く分には何ら危険なことはない。 しかし、いざここで戦闘となると狭く、戦いには不向きな地形だった。 「もうどれくらい歩いたんだろう……」 「小一時間は歩いてるかな。方角もほぼ真南に向かってる」 いつしか会話も少なくなり無言になってゆく。 さらに数十分歩いたところで洞窟はその様相を変貌させた。 崖下を流れる地下水脈は広大な湖になり、傾斜した坂道はまるで野球場のように広大な広場に繋がっていた。 そして広場の最奥に、複数の篝火と注連縄に囲われた区画がある。何らかの祭壇のようだった。 祭壇の中心には数人の烏帽子を被った狩衣姿の男達が輪になっている。 三人が様子を伺う岩陰からは遠すぎて詳しくはよくわからないものの、何らかの儀式を執り行っているようだった。 「へぇ……あれ一番地お抱えの陰陽師じゃないか……そしてあそこが『力』の中心」 「あそこを押さえるのがわたし達の目的だね、でも警備がすごいね……」 祭壇の周りには陰陽師を守るように女性型のアンドロイドが大量に配備されている。 まるで蟻の一匹通さないと言った風であった。 「それだけあの祭壇が連中にとって重要な施設であることの証明さ」 「私の『蝶』でもう少し詳しく探りましょうか?」 「いや、あの陰陽師はそれなりに術に長けている。柚明ちゃんの『蝶』は逆に感づかれる危険性がある」 「そうですか……」 「でも……このまま正面突破するのは――」 と、その時だった。 バサバサとまるで鳥が羽ばたくような音がした。 「白い鳩……ううん、白い鴉……?」 見上げた桂の視線の先の岩に白い鴉が留まっていた。 鴉はじっと桂達を見つめていたが、ほどなくして翼を広げ飛び去って行く。 飛び去る瞬間、那岐は見る。 鴉の両翼に赤く刻まれた五芒星を―― 「しまった! あれは奴らの哨戒用式神――」 その瞬間、洞窟全体に警報が鳴り響き、薄暗かった洞窟全体に次々と白色の蛍光灯が点灯してゆく。 あっというまに洞窟は昼間のように白い光で覆われた。 そして祭壇に変化が訪れる。 何もない空間に光の粒子が現れ、異形の獣の姿を次々と象ってゆく。 「そうか……! ここの地脈を利用してオーファンを……」 「なら……あの祭壇を何とかすれば」 「うん、施設内に召喚されるオーファンを抑えることができる! 行くよみんなッ!」 LIVE FOR YOU (舞台) 7 <前 後> LIVE FOR YOU (舞台) 9
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