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実験法
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ウザいオリキャラ注意 善良な固体が酷い目に会います ゆっくりの性描写があります ぺにまむ注意 やぁ、ぼくは実験好きなお兄さん! 何で何の実験するのか、って? そりゃぁ決まってるじゃないか。 ゆっくりを用いたゆっくりの実験だよ。 と言っても何処かの竹林で行なわれてるようなお金のかかった凝った研究はできないけどね。 けどもシンプルだって捨てたもんじゃない。 シンプルイズベストと言う言葉があるように資金や特別な施設、機具がなくてもできるものさ。 …………手間隙は惜しまないけどね! さて、今回する実験は、『ゆっくりの遺伝について』だ! 特に性質に関するものを試そうと思う。 赤ゆっくりは両親の餡子を受け継いで産まれるために親の性質の引継ぎ率が高い。 人間の中ではとんびが鷹を産むなんて言葉もあるけど、ゆっくりではあまり聞かない言葉だね。 まぁ、人間の方も遺伝子学を真面目に語れば、とんびが鷹を産むも遺伝子の中に秘められていたものが発現しただけなんだけどね。 閑話休題。 ゆっくりの性質の遺伝で解りやすいのは、知能の高さ、性格の二つだ。 例えば、ぱちゅりー種から産まれたゆっくりは別種であってもぱちゅりー種の知能の高さに影響されて賢くなることがあるらしい。 尤ももう片方の親の影響を受けて体力が少々上がり知能が下がったぱちゅりーと言う使えないタイプもあるらしいけどね。 一つの性質に着目したのだとゲスの遺伝なんてのがあるね。 親のどっちかがゲスだと子どもはゲスが多いってのは良く聞く。 これは育成家庭でゲスは影響を与えやすいというのもあるだろうけどね。 あと親が何かのきっかけでゲス化するというケースだとゲスの資質を持ってると子にも脈々と因子が引き継がれるのか。 なんて研究テーマもあったりするくらいだ。 さてさて。 今回ぼくが試したいと思うのはレイパーありすに関してだ。 ゲスの遺伝はゆっくりの種類を問わないが、レイパーありす特有のレイプ気質を持った他種のゆっくりと言うのは聞いたことがない。 正確には改造などの人為的な処置を施されてない状態でのかな。 ありす種がレイパーの資質を受け継ぐのは非常に高く、レイパーの親から生まれた赤ありすは高い性欲を持ち、 発情しやすいので、振動でも与えてやると直ぐにレイパー化することが多い。 しかし、自然界であれだけ好き勝手暴れて子どももあちこちに散乱させてるのに 他種の場合でレイパーの性質を受け継いだと言うのは、前述した通り確認されてないのに不思議を覚えないかい? このレイパー遺伝は、ありす種にしか受け継がれない特有のものなのか。 それとも受け継いでも他種では発現しない因子なのか。 まぁ、レイパーありすが産ませた子どもは殆どまともに育てられず死んでしまうからなのかもしれない。 そこで人為的に何度も交配を重ねてみようと思い立った。 これならレイパーが産ませた子どもも育つし、その子どもを更にレイパーありすと掛け合わせ続けるのだ。 果たしてありす種以外のレイパーゆっくりは完成するのか? その問題に挑んでみたい。 まずそこらでレイパーありすを含めて適当にゆっくりを捕まえてくる。 森の中で 「とかいはなであいをさがすのよ!」 とか 「きょうもどこかでわたしのあいをまってるまりさのところにいくのよ!」 とか 「わたしはれいむがいいわ!」 とかありす種にしては変わった好みを持ったのもいた。 レイパーありすは探すのは大変なのだが、一度見つけると芋づる式だから見つけるまでが大変で後は楽だ。 知的な仮面を被ってひっそりとステルスしてるのもいるけど、大半は危険性をゆっくりに危惧され群れなどからあぶれる。 そしてより効率的にすっきるするためにあぶれたレイパーありす同士は徒党を組むことが多いんだよ。 そういった意味で今回直ぐに見つかったのは運がいいね。 頭の中がすっきりでいっぱいなこいつらを有無を言わさず麻袋に放り込もう! 幸先がいいね! 「とかいはなありすになにをするの!」 「いなかものなおじさんね!」 「だしなさい! くいーんありすになるわたしにこんなことしていいとおもってるの!?」 なんて口々に叫んでるが気にしない気にしない。 あとで好きなだけすっきりさせ続けてやるんだから有り難く思ってほしいね。 さて次は普通のゆっくりだ。 こっちは捕まえるのは簡単。 あいつらの巣は体型のせいで入り口が目立ちやすくカモフラージュしても不自然さが直ぐにわかる。 そして木の根元や段差など、そう言った場所に巣を作る。 モグラのように何処だろうが真っ直ぐに下に巣を掘ることはゆっくりはしない。 まぁ、雨で死んじゃうしね。 というわけでその辺にある不自然な草や木の集まりをかき回せば簡単に捕まえれるのだ。 さっそくこの目の前にあるあやしいのをどけてみよう。 ほらほら、異変に気づいて巣の入り口に一匹のゆっくりが顔を出してきたよ。 「ゆ! ここはまりさのゆっくりプレイスだよ! にんげんさんはでていってね!」 ほら、もう見つかった。 しかも成体のまりさ種だ。 どうやら巣の奥行きもここから見える程度、まだ番を見つける前の一人身だね。 実験に使うのに丁度いい。 それにありす種はまりさ種を本能で好む。 抜群だ。 さっきれいむを好むのもいたけど……。 レイパーありすと同じ袋に入れて実験前にすっきり殺されちゃかなわないから別の麻袋に放り込んでおくことにしよう。 「はなして! はなして! まりさはなにもわるいことしてないよ!」 あまり暴言がないね。 性格のいい固体なのかもしれない。 まぁ、気にせずこいつも麻袋へGOだ。 今日のところはこのまりさだけで十分だろう。 レイパーありすを捕まえるのは運に左右されるけど、そこらの野良なら別に何時だって捕まえれる。 いちいちキープしてたら保管場所も管理も必要で面倒だしね。 じゃ、素材も集ったし、さっそく実験に移るためにも家に帰ろうか! 家に着いたらまずレイパーありす達とまりさを麻袋からだし、それぞれをゆっくりご用達の透明な箱に入れて隔離する。 途中五月蝿い声が聞こえるが耳栓をすればOKだ。 では、いよいよ実験の手順に入ろう! まず箱の中から一匹のレイパーありすを取り出す。 「ゆ! なかなかみどころのあるおうちね! ありすのゆっくりぷれいすにしてあげてもよくてよ!」 耳栓をしてるのに何を言ってるか理解できるようになってきたら君も立派なゆっくりの一人者だ。 取り出したレイパーありすを火で熱したフライパンの上に乗せ、底部を焼き付ける。 「ゆ゛ぎゃああ゛ああ゛あがあああ゛あぁあ゛あがあ゛ああぁぁ゛ぁああ゛あぁあ゛!!!!!」 このありすは母体用に使用するつもりだ。 レイパーありすのすっきりにかける力は物凄い。 いちいちすっきるさせるたび、こいつを拘束するのも面倒だしね。 どうせ餌がきっちりあげるんだし、底部を焼き尽くし動き回れないようにすると楽だ。 丹念に丹念にまむまむの部分は焼かないように気をつけながらじっくりと黒焦げにするために炒める。 「あ゛づぃいい゛いい゛いいぃうあぃいいい!!! あ゛あ゛あ゛あああ゛りずのあでぃがあぁぁ゛ぁああ゛ああ゛あ!!!!」 口から舌をだし、すさまじい涎を垂らしながら目からは涙と取れる不気味な液体が溢れ出てる。 身体全体からはなんだか嫌な汁も出てる。 いつやっても底部を焼き付けるのは不快になるね。 あとでフライパンも手も綺麗に洗わなくちゃ。 「ゆぐっ……ゆっ、ゆっ、ゆっ……ゆっ、ゆっ……」 こうして処置が終わる頃には焼かれる激痛で大抵のゆっくりは意識を失ってしまう。 このレイパーありすも例に漏れず気を失ったね。 まぁ、こっちの方が次の作業に都合がいい。 次はこのありすの外見を整えてやる。 なんのためにだって? そりゃ勿論襲わせるゆっくりが一目見て気にいるように綺麗にしてやるのさ。 そのためにも醜い焼け跡である底部の処置をまずしよう。 ありす種は自分の美しさとかを最も気にする種だ。 焼け跡が残ってたら精神状態が悪化するかもしれないしね。 まず水で溶いて練った小麦粉で底部の焦げ跡を覆い尽くす。 そうやって作業を続ければ見た目は何も変わりない状態に戻る。 ま、足が焼かれてるから永遠に動けないけどね。 気絶してる間に体力回復と貼り付けた小麦粉の一体化のために再生を促させるオレンジジュースをかける。 そうしたら次はカスタードクリームを注射して、栄養状態の強化を図る。 ゆっくりにとっての魅力は栄養状態の良さも評価の一つらしいからね。 注射器を後頭部に刺した時、一瞬びくっと震えたけど気にせずぶちゅーっとカスタードクリームを挿入。 「ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ!」 挿入に応じて びくっ!! びくっ!! びくっ!! と震えてるけどきちんと計算した分量のカスタードクリームだ。 体内に無理矢理挿入される痛みを無意識下で感じてるだけだろう。 大丈夫、これが終わればお前は美ゆっくりに成れるんだ。 最後はお湯で髪を洗い、飾りを磨き上げて綺麗に光るくらいにしてやり、身体の汚れを拭き落としてやる。 これで母体用のレイパーありすの完成だ。 完成したありすを箱の中に入れると小部屋へと向かい、そこに置いてやる。 さぁ、今度はまりさの出番だ。 透明な箱から震えてるまりさを出してやり耳栓を外す。 「おにいさん、まりさにひどいことするの?」 「いやいや、君に素敵なプレゼントをあげたいんだ」 「ゆっ! おにいさんほんとう?」 「あぁ、そうだとも。君もきっと喜ぶはずだよ」 そう言いながらまりさを抱かかえて、例のありすを置いてきた小部屋へと向かう。 勿論、目的は今からこのまりさを発情させ、ありすをにんっしんっさせるためだ。 「ゆー。とてもひろいおうちだね!」 「ま、まりさぁあ!?」 体力を回復させたのもあって箱の中のありすはもう目が覚めていたみたいだ。 部屋に入ってきたぼくに抱かかえられたまりさを見るとはぁはぁとした息遣いでまりさを凝視してる。 「ゆっ! すごい! まりさこんなきれいなゆっくりみたことないよ!」 「とかいはのみりょくがわかるなんてさすがわたしのまりさね!」 まりさの方もありすに気づいたようだ。 手入れしただけあって美ゆっくりと取ってくれた。 努力した甲斐があったね。 しかし、ありすの方は箱に入れられ底部も焼かれて身動きできないのを忘れてるようだ。 ただひたすらまりさへの性欲だけで意識が支配されてるみたいだね。 「あれがまりさへのプレゼントだよ」 「ゆっ? おにいさんどういうこと?」 発情させるために抱えていたまりさを揺すろう。 「ほーら、ぶるぶるさせるぞー」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ!? おにいさんやめて!」 ありす種ならこのくらいの振動で発情するのにしぶといね。 それともこのまりさがそれだけ理知的な個体だったってことかな? まぁ、人間だって望まない状態だと中々無理だしね。 よーし、ならパワーアップだ! ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん。 シェイクシェイクシェイクシェイク。 ちょっとノリノリ。 「ゆゆゆゆゆっ、ゆゆゆっ、ゆゆゆゆゆゆゆっ、ゆゆゆゆゆゆっ!!!!!」 いい感じにまりさの顔が紅潮してきた。 アヘ顔で涎を垂らしはじめ、まるでレイパーありすの戦闘状態 ……ちょっとやりすぎたかもしれない。 達しては困るのでここで振動を止めておこう。 「な゛んでやべる゛のおお゛おおお゛おおぉ゛お゛おお゛おぉおおぉおお!!!!! ずっぎりざぜてぇぇ゛ぇぇぇ゛え゛ええ゛えぇ゛ぇぇ゛ぇぇえ゛!!!!」 まさに臨戦態勢! これならいける! 「ほら、まりさ、綺麗なありすがいるぞ!」 戦闘準備OKなまりさの前にありすを箱から出して置いてやる。 「までぃざああぁぁああああぁぁぁぁあ!!!! いっしょにすっきりしましょおおおおおおおお!!!!」 さすがレイパーありす。 まりさの喘ぎ声を聞いていて既にこっちも臨戦態勢だ。 でもすっきりさせられるのはありすの方なんだけどね。 そのために足焼いたんだし。 「あでぃすうう!!! きれいなあでぃすすきだよおお゛おおぉぉお゛おお!!!! までぃさもあでぃすとすっきりしたいよおおぉ゛おおお゛おぉっぉおおぉ!!! んほおおおおぉぉおぉぉおおおぉぉおおおぉおおおおお!!!!!」 まりさがありすに向かって飛びかかった。 動けないありすはまりさに飛び掛られてなすがままだ。 うーん、しかし何時聞いても嫌な音だ。 行為が終わるまで耳栓をしていよう。 「いままり゛ざがすっきりさせてあげるか゛らねええぇぇ゛ぇえ゛えぇ゛ぇぇ゛ぇぇぇえ゛ええ゛え!!!!」 「やめでええ゛え゛ええぇぇええぇええ゛えええ゛ぇえ゛ええぇ゛ぇぇぇ゛ええ!!!!! ありすがまり゛さをすっきりせてあげだいのよぉぉぉ゛ぉぉお゛おお゛ぉぉ゛ぉ!!!!」 「だいじょうぶだよ゛!!! まりさのぺにぺにでちゃんとありすも゛すっきりさせてあげるよおお゛おぉおお゛おぉおお゛おお゛ぉお゛ぉ!!!!」 「いやぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「「んほぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおおぉおぉぉぉぉ!!!!」」 聞こえないとはいえ、ぐちゃぐちゃなんか飛び散る様子は相変わらずおぞましい行為だなぁとしみじみと思うよ。 「「すっきりー!!」 お。動かしてた体が止まってすっきりした顔つきを上へ向けたね。 同時にありすの方から蔦がにょきにょきと生えてきた。 どうやら終わったみたいだ。 「ありすぅぅう゛う゛!!! もうい゛っかい゛しようう゛うぉおお゛ぉおお゛お゛お!!!!」 「もういやあぁ゛ぁぁぁ゛ああ゛あ゛ああ゛あぁ゛ぁぁぁぁ゛ああ゛あ゛あ!!!!」 うーん、ちょっと揺らしすぎたかな。 なんかまりさの方はまた身体を擦り付け始めてるし。 母体を犯し殺されちゃ困るから、ここらで止めておこう。 「ゆべっ!」 軽く気絶させる程度にまりさを蹴り飛ばす。 壁にぶつかった時に口から少し餡子を出したみたいだけど、まぁあのくらいなら問題ないね。 ありすの方はカスタードクリームをまた注射しておく。 失った分のカスタードを補充させておかないとね。 「ゆぎいい゛ぃい゛いいぃぃい゛いぃ゛いい゛いい゛い!!!!」 なんか顔が物凄い。さっきは気絶させてたから良かったなぁ。 注射し終えたら箱の中にありすを戻しておく。 これで次の実験の間、餌は上げなくても何とかなるだろう。 さて、次はこのまりさに母体になってもらおう。 母体となった方の餡子を多く吸い上げることから、母体となった親の影響を受けやすいときがあるのは前述したね。 ありす母体を続けていく家系とまりさ母体を続けていく家系の二種類を用意してみようと思う。 前者はありすの性質を受け継ぎやすく、後者はまりさの性質を受け継ぎやすい。 果たしてどちらが先にレイパーまりさとなるのか。 前者のような気もするけどね。 実の形が判別つくようになったらありす種は生まれ落ちる前に切除しておく。 欲しいのはまりさ種だけだからね。 そして二匹が産んだまりさ種が育ったら、まりさ母体のまりさ種をレイパーありす一匹と掛け合わせ母体にする。 その後、同じレイパーありすの底部を焼き、今回の実験と同じようにありす母体のまりさ種と掛け合わせ母体となってもらう。 そして産まれたまりさ種が育てば、また別のレイパーありす一匹と掛け合わせる。 一度交配を重ねて子育てをさせた後のゆっくりにはもう用はない。 有り難く、そのゆっくりにとっての孫の餌になって貰おう。 経費節約だね。 あと近親相姦を重ねすぎるとそれによる変り種が生まれてしまうことがあるからね。 それでレイパーまりさができても近親相姦による変り種なのか解らない。 実験の主旨のために近親相姦による奇形もとい変り種は省かせてもらおう。 それと世代交代を早めるためでもあるね。 そうやって次々とサイクルの早い世代を重ねて、理論上レイパーの遺伝子をまりさ種の中で濃くしていくのだ。 レイパーまりさができることを祈って。 無駄にならないといいね! 続くかもしれない。 書いたもの 等価交換 ゲスを愛でる者 このSSに感想を付ける
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4 あれほどしぶとく残っていた暑苦しさはいつのまにか消えうせ、過ごしやすいというには少々肌寒い季節になっていた。田舎のいちょう並木はすっかり黄色くなり、金木犀の香りと、銀杏のつぶれた匂いが街に漂っていた。 空気もだいぶ澄んできた。紅葉のなかを自転車で駆けながら、朝の冷たい空気を吸い込むと、重圧で押しつぶされてしまいそうだった高校生活の終わりごろをどうしても思い出す。嗅覚は昨年の悪夢を克明に記憶していた。 しかし、もうその程度のことで雄眞は憂鬱に陥ることはなかった。夏の猛勉強の成果が出てきたのだ。先日返ってきた合格可能性判定欄の「A」を目にしたとき、雄眞は思わず飛び上がりそうになった。彼のがむしゃらな努力は報われようとしている。 こうして安心感を持って日々を過ごすことは、とても健康に良い。落ち着いた精神を保てるのも、もうどれぐらいぶりか。雄眞は四年目の付き合いとなる相棒をかっ飛ばし、朝八時台の快速列車に飛び乗って千種を目指した。 十一月も半ばになっていた。夏が終わると同時に、いよいよ校舎内に緊張感が漂い始める。この夏で実力が付いたもの、またそうでないもの。それぞれ思い思いの秋を迎えていることだろう。 これがあと数ヶ月も経てば、もうセンター試験である。受験生の明暗がはっきり分かれる、運命の日。時間は限られている。そんな極限ともいうべき状況のなか、雄眞は昨年と違って冷静に自分と向き合えていた。何をすべきなのか、何が足りないのか、きっちり見えていた。彼は今、最高のコンディションであるといってよい。 それは気温が低くて湿り気のある、曇りの土曜日のことだった。 この昼も雄眞は非常階段で、みずほと一緒に過ごしていた。邪魔するものなど何一つない、二人だけの空間。木枯らしが吹き抜ける音や、誰かが廊下に筆箱の中身を零してしまった音などが、時折耳に入る程度であった。みずほと肩を寄せ合えば、クローゼットからジャケットを引っ張り出さなくてもいいぐらい暖かかった。 「そう、模試の結果良かったんだ。ほらね、やればできるんだよ」 朗報を聞いたみずほは、静かな声でそう言った。そのぼんやりとして焦点の定まらない瞳は、雄眞でも千種の街でもなく、自分の革靴を捉えているようであった。 「それもこれも、みずほちゃんのおかげだよ。やっぱり一人ぼっちはよくないね。誰かに支えられてこそ、壁は乗り越えられるものだね」 「そう言ってもらえると嬉しいよ。ずっとそばにいて、本当に良かったと思える」 と、抑揚のない調子でみずほは言った。体育座りをしていて小さく丸まっている背中を、雄眞は気にかけていた。 真紅のスカーフが、しっとり濡れているかのような重みと潤い帯びてぶら下がっている。いつもと変わらない古びたセーラー服の胸元に、金色のピンが留められているのを彼は見つけた。 きっと校章なのだろうが――半分ほど欠損している。それを凝視しながら、ぬるくなった麦茶を口にしていると、彼女がぽつりとこんなことを言った。 「楽しいな」 「うん?」 「楽しいの。私、今とても毎日を楽しんでいる」 雄眞は発言の意図をつかめず、ただじっとみずほの横顔を見つめていた。 春日井の製紙工場からやってきた紙輸送の貨物列車が、ゴトゴト街を揺らしてやってきた。青と茶の有蓋車が機関車に従えられ、どこまでも続く箱の列を作っている。 どうも秋を迎えてから、みずほに元気がない。 口数はめっきり減り、あの明るい笑顔は影を潜めていた。雄眞は受験のことと取って代わって、今度は彼女のことを心配に思う日々が続いていた。貨物列車が走り去り、この空間が再び静寂を取り戻したところで、みずほは話を続ける。 「私、とても視野が狭かったんだなって反省してるの。私が知らなかっただけで、普通に暮らしていれば嬉しいことや幸せなことなんていくらでもあった」 「僕もそうだよ? みずほちゃんがいなかったら、浪人生活はずっとずっとつまらなかった」 「雄眞くんが教えてくれたんだよ? でも私は真実に気づくことなく、あるとき挫折してしまった。もう全てが遅いの。やり直しが効かないところまで来てしまったの。それはすごくすごく悲しいこと」 これまで見たことのない、沈痛な表情。その声はとてもか細く、今にも途切れてしまいそうなほどだった。自分の足元に視線を投げ出したまま、彼女は両肘をぎゅっと握って体をこわばらせた。 「覚えてる? 雄眞くんが自殺しようとした日のこと」 「うん。覚えてる」 「言ったよね? あなたにはまだ将来があるんだ。若いんだ。命を大事にしなさい。家族を大事にしなさい。自分を大事にしなさい。って」 そのとき、みずほは雄眞に自嘲気味な微笑を向けてきた。今にも瞳から涙粒が零れ落ちてきてしまいそうな、痛々しくて、物悲しい気持ちがそのまま伝わってくる。 「生意気だったよね? 自分がまったくわかってなかったことを、私は堂々と言った。それが、今になって、重く圧し掛かってきて苦しいの」 「みずほちゃん、いったいどうしたの?」 「悲しいよう雄眞くん。こんなのってないよぉ。何で今になって、私は幸せな日々を送ることができるの? 今、とっても楽しい。雄眞くんと一緒にいられてとっても幸せ。そう思えば思うほど、余計に悲しくて悲しくて死んじゃいそう」 みずほは雄眞に対し、必死に助けを求めるような様子でそう言った。助けてもらいたくて、すがるような視線を彼に送り続けてきた。 「私は弱かった・・・・・・」 雄眞は狼狽した。みずほの抱えこんでいる苦悩が、まったくわからないからだ。彼女が抱えているものは、雄眞が考えていたものよりもずっと大きくて、深刻そうで、複雑そうで、理解をはるかに超えている。 かといってこのまま何もしてやれず、苦痛にあえぐみずほを見ているのは辛抱ならない。彼はみずほに予備校生活を戦い抜く活力をもらい、支えられてきた。苦手で大嫌いだった英語も、彼女がつきっきりで鍛えてくれたおかげでどうにか克服できたのだ。 だからこそ、みずほがこんなにも悲しい顔をして塞ぎこんでいたら、今度は自分が彼女の力になって支えてあげるべきなのだ。それなのに! 返事に困っている雄眞から視線を逸らすと、みずほはこんなことを言った。 「私ね、ここに来るのはもうおしまいにしようと思ってるの」 「え」 「私もあなたも、いつまでも一緒に過ごすべきではない。このままではやがて、二人ともひどく傷ついてしまうだろうから」 「いったいどうしちゃったんだよ、みずほちゃん! もう二度と来ないなんて悲しいこと、言わないでよ!」 みずほは何も言わない。慌てふためいて立ち上がった雄眞を見ることもなく、ずっと下を向いている。 雄眞は彼女の前でかがむと、両肩に手を当て、瞳の奥の奥を見つめてやった。みずほが雄眞にそうしてきたように、しっかりと彼女の目を見てこう言った。 「今更いなくなるなんて、そんなのなしだからな。僕はずっとみずほちゃんと一緒にいたい」 「でも、いけない。そんなことは許されない」 「どうして? 誰が許さないっていうんだ」 「だめなの。どうしてもだめなの」 みずほは雄眞の視線からひたすら逃げ続けて、絶対に目を合わせようとしない。だから、とうとう彼は自分のまっすぐな気持ちをぶつけることとなった。この気持ちを抑えていることはもはやできかったし、何よりも彼女をどこか遠いところへ行かせたくなかった。 「そんなことは僕が許さない。僕はみずほちゃんのことが好きだから。大好きだから」 まつげの長いぱっちりとした目を大きく開き、みずほは顔を上げた。しかしすぐにうつむいて両腕で顔を隠し、わなわな震えながらこう言った。 「言ったな。とうとう言ったなぁ、その言葉を。・・・・・・ばかあ」 みずほはそうしてうつむいていていたから、どんな表情をしているのかは窺うことができない。腕にかかって垂れ下がる前髪が、小刻みに揺れている。雄眞は溢れんばかりの愛情と真心のままに、彼女に伝えたい言葉を続ける。 「悩み事があるなら僕に任せてよ。あれだけ元気をもらったのに、みずほちゃんのために何もできないなんて絶対に嫌だからな。一緒にいようよ。何も別れなくていいじゃないか。残りの受験生活を支えあって、一緒に乗り切ろう。僕らならきっと上手くいくから」 雄眞はみずほに、かつて自分が言われた台詞をそのまま言った。今の雄眞なら、あの子の辛い気持ちがよくわかる。みずほの弱弱しい姿は、去年の彼をそっくり投影していた。 みずほは、受験で何か大きな悩みを抱えているに違いないと思っていた。本番がもうすぐそこまで差し迫るなか、自分たちを圧迫する緊張感や焦燥感は半端なものではない。この子は一人で悩みこんでしまっている。天才ばかりの進学校や、居心地の悪い家庭も原因だろう。 みずほは全身を大きく揺らし、感情いっぱいにこう叫ぶ。涙粒がぱっと弾け飛んだ。 「私いっつも思ってた! あなたのような優しくて頼りにできる人が、あのとき私の周りにいたらって!」 「いないわけがない、僕がいる! だから泣かないで。みずほちゃんが泣いているのを見るのは、耐えられない」 雄眞が精一杯の気持ちを込めてそう言うと、みずほはようやくいつもの可愛いえくぼを見せてくれた。その笑顔を見ただけで、胸の鼓動は加速した。 「えへへ、おかしいね。私はただ、追い詰められてたあなたの力になりたかっただけなのに。今じゃ私も、これからもいつまでも一緒にいたいと思ってる」 「それでいいじゃないか」そう雄眞はささやく。「僕たちはこれからもいつまでも一緒。それはなんもおかしいことじゃない。僕はみずほちゃんのことが好きだから、一緒に桜を眺めて歩くときまでそばにいたい」 生気のなかった冷たい頬に、赤みが差したのを見た。そしてその頬の上を流れていった、一筋の涙も。 「ありがとう雄眞くん。本当にありがとう。私幸せだよ。とっても・・・・・・!」 みずほは声を震わせながら言うと、雄眞をドンと強く突き飛ばした。そして階下へと逃げるように駆け出した。 「みずほちゃん!」 雄眞もすぐに立ち上がって階段を駆け下りたのだが、黒いセーラー服はもう影も形もない。 ちょうど三時間目の鐘が鳴った。屋外から勢いよく飛び込んできた雄眞を、通りがかった男子生徒が怪訝そうに一瞥していた。 雄眞はベランダに戻り、非常階段を力なく上がる。とてつもない喪失感が、彼の繊細な心に重く大きく圧し掛かかる。一段一段と時間をかけて上がるたび、鉄製の階段は覇気のない小さな足音を、その骨組みの中に震わせた。 「みずほちゃん、僕と一緒にいることの何がそんなに辛すぎるんだよ」 また、大学受験に大切な存在を奪われてしまったようだ。雄眞は踊り場に戻るとあぐらをかき、颯爽と中央線をやってきたワイドビューしなの号をため息混じりに眺めていた。 分厚い雨雲に眼前を覆いつくされ、今にも冷たい雨が降り出そうとしている。彼は身震いをした。一人ぼっちの非常階段はとても肌にしみる。 その日を境にして、雄眞はみずほに会うことはなかった。 5 田舎は記録的な大雪だった。北国でもないのに、凍てつくような寒い朝が続いた。 チェーンを巻きつけたバスに散々揺られ、雄眞は今日も予備校を目指す。銀世界を駆け抜ける快速列車の中で、極度の疲労から左右にふらついた。しっかりつり革を握っていても、立っていることが困難であった。彼は昨晩、三十分程度しか眠れなかった。 いつもよりもざわめいて落ち着かない、異様な雰囲気の教室。すでにクラス担任の原さんが緊張した面持ちでマイクを握り、教壇に立っていた。雄眞はすぐに着席し、鞄から小冊子を取り出した。 大学入試センター試験。それは模試などではなく、本物の問題冊子である。 運命の「自己採点日」がやってきた。試験が終了したすぐ次の日に予備校生は登校し、講師陣が徹夜で作成した模範回答冊子を利用して自己採点を行う。そしてこの点数をもとに、二次試験で受ける国公立の大学を最終的に決定する。 ついにこの日が訪れた。一年間の努力は、本当の意味で報われるのだろうか? 広い教室が満席になるころには、張り詰める緊張感はピークに達していた。 時間がずっと止まっていたかのような、長い三十分。そして雄眞は深いため息をついた。その一息には、全てを出しつくした満足感と達成感が込められている。 雄眞は周りの受験生に気づかれないよう、口元を歪めて笑っていた。今にも爆発しそうな歓喜を抑えこむため、英語の問題冊子をきつく握り締めていた。 「やった・・・・・・! とりあえず、センターはクリアだ!」 採点の結果、志望校のボーダーラインを大きく超えた最高の点数であることがわかった。雄眞は過去の挫折を本当の意味で克服し、乗り越えられたのだ。 原さんが雄眞のもとに駆けつけ、よくやったなと背中を叩く。彼はとうとうこらえきれなくなり、傷だらけの机にたくさん大粒の涙をこぼした。 そんなはちきれんばかりの感動を、いち早く伝えたい人物が彼にはいる。 あの日を境にして、雄眞はみずほの姿を見ていない。 彼女は本当に姿を消してしまった。夜のホームや夏場のデート、思い出の中の彼女全てが、秋風とともに去っていった幻のようであった。 雄眞は毎日、非常階段で一人ぼっちの昼食をとってきた。いつみずほが階段を上ってきて、お互い目と目を合わせて照れくさそうに笑いあってもいいよう、雨の日も、雪の日も彼女のことを待ち続けていた。 屋外にさらされた錆だらけの階段は、冬場を過ごすには余りにも寒すぎて過酷だった。それでも雄眞はみずほのことを待ち続けた。すっかり冷えて味気のなくなった冷凍食品を、口いっぱいに頬張りながら待っていた。 会いたかった。ちょうど一年前に命を救ってくれた、優しいみずほに。一年間を戦いぬく力と学力をくれた、愛しいみずほに。いつでも隣にいてくれた、かけがえのないみずほに。 そんな切ない気持ちを抱いたまま、あっという間に時は過ぎていき、雄眞はとうとうこの日を迎えてしまった。後姿のそっくりな子を見つけては、みずほだろうかと思い胸をときめかせたものだった。 それにしても、あの特徴ある真っ黒な制服を、この校舎の中でまるで見ないことが疑問であった。これはみずほがいなくなって初めて気づいた違和感である。 東城高校という全国に名を轟かせる進学校の生徒なら、この大手予備校の中で、一人や二人遭遇してもいいと思う。けれどもすれ違う女子高生たちのほとんどが、赤いチェックのミニスカートに金のエンブレムも誇らしげな緑のブレザーを羽織っており、雄眞の強く求める古めかしいセーラー服はいつまでたっても見つけることができなかった。 雄眞は昼食をとったあと、携帯電話で母親に自己採点の報告をする。一年間ずっと弁当を作ってくれた母へ、無性にお礼が言いたくなったのだ。そしてそれから、お世話になったクラス担任のもとへ立ち寄ることにする。 二児の父でエネルギッシュな三十代である原俊介は、この校舎の中でも有能で優秀なベテランクラス担任であった。 彫りの深い顔。日焼けしたような黒い肌とスポーツ刈り。そしてど派手な色のネクタイが彼の特徴だが、外見とはよそにおおらかで面倒見のいい性格をしていることから、女子生徒にとても人気があった。 原さんは雄眞が良い成績を収めることができたことを、本当に喜んでくれた。高校時代の苦悩や挫折、そして浪人生活の不安など、彼はいつも熱心に話を聞いてくれた。原さんはみずほの次に、親身になって雄眞を支えていた人物である。 「ここで気を緩めちゃダメだからな? 二次試験に向けてもっと気合を入れていこう!」 そう激励の言葉をいただいたあと、雄眞は思い切って、黒いセーラー服を着た女子高生についてきいてみた。この校舎に勤めて長い人物なら、何か知っていると思ったのだ。 ところが彼が耳にしたのは、全く予測できなかった内容の返事であった。原さんは怪訝そうな顔をしてから、ボールペンをくるくる回しつつこんなことを言ったのだ。 「お前、そんなん着た東城の生徒がほんとにいると思ってんのか? 一体何年前の話だよ?」 雄眞は自分の耳を疑った。彼の言っていることが、まるで理解できなかった。 「東城がセーラーだったのは、もう八年前までの話だぜ? 今は赤いチェックのスカートに、『東』の字のワッペンをはっつけてた緑のブレザーだな。ほら、そこかしこにいっぱいうろついてるだろ?」 「そんな・・・・・・あれが・・・・・・東城高校の制服なんですか・・・・・・?」 「百五十人ぐらいだったっけなぁ、この校舎にいる東城の現役生。んな中で東城の旧制服なんて着てうろついている子がいたら、昔からいる講師なんかびっくらこいて、一気に話題になっちまうぞ? やっぱりお前の見間違いだよ」 もう、話を途中で聞くのをやめていた。話がおかしい。みずほは確かに東城高校の生徒で、東城高校の制服を着て、ゴールデンウィークの時も、夏期講習の時も、雄眞の前に姿を見せていた。 だが原さんは言った。その制服は実は八年前までのもので、そんなものを着た生徒はいるわけがないのだと。 ぐにゃりと視界がひしゃげる。うっすらと目の前が暗くなる。傾いた視野の隅っこから、立派なブレザーを身にまとった女の子が視界に割り込んできた。 事務室のカウンター越しに見える、自販機でジュースを買っている女の子。 雄眞のすぐ後ろで、先ほどからずっとクラス担任と個人面談をしていた女の子。 たった今、向こう側の廊下を爆笑しながら走ってやってきた、三人の女の子たち。 ひどい寒気がした。こうして周りを見渡せば何人も何人も何人もいる、赤いスカート・緑のブレザーたちこそが、本物の東城高校の生徒だと言うのだ。 なら、吹上みずほっていったい何者なんだ? 混乱の収拾がつかない思考を止めて、雄眞はもっと、直接的な質問を原さんに投げかけてみた。 「じゃあ、吹上みずほって女の子、原さんはご存知ですか?」 原さんの手からペンが零れ落ち、書類にインクの赤い染みを刻み込む。 ボールペンがころころと床を転がっていく。顔を硬く引きつらせ、原さんは雄眞にこうきいた 「お前その子の名前、どこから聞いた」 それはひどく据わった恐ろしい声であった。 鋭い目つきで睨まれて、雄眞は身じろぎをする。なぜ、触れてはいけないタブーに言及してしまったかのような扱いを受けるのだろう。萎縮から少し声を震わせ、正直にこう答えた。 「どこからって・・・・・・。僕、みずほちゃんと友達なんです。土曜日とか夏期講習のときとか、お昼食べながら一緒に過ごしてたんですよ?」 「馬鹿なこと言うんじゃねえ! くだらねえ冗談ぬかしてると怒るぞ!」 爆発を起こしたかのように怒声が響き、騒がしかった事務室が沈黙に押しつぶされる。カウンターの向こうにいる生徒たちが、一斉にこちらを向いた。 気さくで明るい原さんが、眉間に青筋を立てて怒鳴り散らしている。生徒も、他のクラス担任も、用事があって事務室に来ていた講師までも、信じられないものを見たような目をして黙りこくった。怒鳴られた雄眞は愕然としていた。 原さんが「悪かった」と謝るのと同時に、事務室はもとの活気と喧騒を取り戻す。不在であるクラス担任の椅子を転がしてきて雄眞によこし、座らせてやった。床に落ちていたボールペンを拾い上げてから、こんな話を始めた。 「あんまり思い出したくないけどな。吹上みずほのことは今でも忘れられない」 もうわけがわからない。雄眞にとって、このクラス担任こそが笑えない冗談を言っているようにしか見えない。つじつまが合わなくて狂っているのは、この男をはじめとする現実のほうだとしか思えない。そしてこれから明かされる真実は、自分にとって知るべきではないという直感を抱いたのだが、遅かった。 「今からちょうど十年前、吹上みずほはセンターの報告に来たんだ。お前と同じ大学を目指して頑張ってたんだが、可哀想なことに結果がついてこなかった。 模試の成績はC、D、ついにはE(志望校再考せよ)にまで落ち込んでいた。あの子は焦りとプレッシャーですっかりパニックになっていて、志望校合格に向けて何をすべきなのか、そして何が必要なのか、全く見えていなかった節があったよ。 当然だろうなぁ。東城は天才ばかりが集まる学校で、アイツのような努力型の秀才はおちこぼれの扱いを受けていたほどだった。担任も両親も友人たちも、悩める彼女を単なる努力不足だと軽くあしらっていたらしい。頑張っても頑張っても、もっと頑張れと言われるような環境だったんだよ。そりゃあ何が悪くて何が足りないのか、わからなくなってしまうだろうね。 彼女は本番のセンター試験に全てを賭けたんだが・・・・・・結局点数が足りなかった。せっかく苦手科目が合格点に達したのに、得意の英語で致命的なマークミスを犯してしまったんだ。それはとてもやりきれない失敗だった。 だから、その日は遅くまで話し込んだよ。まだ受験は終わってないから頑張れって。志望校はもう無理でも、吹上の実力で行けるいい大学は他にあるから『頑張れ』って。最後まで投げ出すことなく『頑張れ』って。 『頑張れ』、『頑張れ』。今思うとな、それが良くなかった。あいつは一人ぼっちで、十分すぎるほど頑張っていたってのに。・・・・・・いや、全てはまだペーペーで大学受験を何も知らなかった、あの日の俺が悪かったんだ」 ぞくぞくと雄眞を凍りつかせる悪寒。 号泣の涙が溢れ出すのよりも早く、喉の奥から嗚咽が漏れ出すのよりも早く、両手が自分の両耳を塞ぐのよりも早く、クラス担任はとても悲しい過去の真実を告げた。 「・・・・・・そのすぐ後、千種駅であいつは電車に飛び込んだんだ」 プラットホームのベンチに、見覚えのある何かが置いてあるのを見つけた。 それは雄眞がUFOキャッチャーで捕まえ、みずほにあげたパンダのぬいぐるみだった。この場所でずっと待ち続けていたかのように、一人ぽつんとベンチに座っている。 雄眞はぬいぐるみを手に取り、抱きしめる。人目のつかない非常階段で枯れてしまいそうなぐらい泣いてきたのに、こんなにもぽろぽろ零れ落ちてしまう。 笛のような音を立てて、北風が堀の中を通り抜けていった。親しみのある懐かしい気配を感じ、雄眞はゆっくりと振り向いた。 「久しぶりだね、雄眞くん」 闇に溶けてしまいそうな、古い制服。白く浮かび上がった血の気のない顔。特徴ある丸い瞳だけが、曇った暗い輝きを雄眞にさらしていた。 しっとりとした滑らかさを帯びて垂れ下がるスカーフは、まるで血の海に浸されていたかのように赤黒かった。「東」の字を象った校章ピンはざっくりと欠けており、一瞬くすんだ光を放ったような気がした。 「ごめんなさい、急にいなくなっちゃって」 「あはは、ひどいよ。まったく」 雄眞はジャケットの袖で目を拭い、虚無から現れたみずほに笑顔をつくってみせた。頬骨の皮膚がひりひり痛んだ。彼の目もとはひどく真っ赤に腫れている。 「もう二度と会えないと思ってた」 「だって」 夜風が吹き込んできて、掘割のホームはぐんと冷える。寿命の近い蛍光灯が点いては消えるたび、二人を取り巻くほの暗い世界も点滅する。 「あなたに会うのが辛かった。生きているうちに会えていたらなんて思うとね、とっても辛かった」 雄眞は下を向き、リュックサックの紐を固く握り締めた。左手に持つパンダのぬいぐるみに、指がきつく食い込んでいる。 「私はもう死んでいるのに。それは分かりきっていることなのに。今更どうしようもないことなのに。それなのに」 「関係ねえ」 悲しい微笑を見せるみずほに、雄眞は言った。物音のない二人だけの空間で、彼の悲痛な声だけが響いて暗闇に染み渡る。 みずほは俯くのをやめて、じっと雄眞を見つめていた。夜風が渦巻いたかと思えば粉雪が舞い、二人を優しく包み込んだ。 「言ったじゃないか、僕はみずほちゃんが好きだから、ずっと一緒にいたいって」 「だけど私とあなたは一緒にいることは許されない」 「それでも気持ちは変わらない! みずほちゃんも昔、勉強が上手くいかなくて苦しんでたんだろ? 受験で失敗して、絶望してたんだろ? 頼りにできるような存在が欲しかったんだろ? 電車に飛び込もうとした僕と全く同じだったんだ」 雄眞の問いかける一つ一つに、みずほは首肯してくれた。 「みずほちゃんは僕を救ってくれた。僕を支えてくれた。だから今度は僕が、みずほちゃんを支えてやりたいんだ。これからも、その後も、ずっとずっと・・・・・・!」 「ありがとう」 こみ上げる感情のせいではっきり話せない雄眞に、みずほは言った。もう彼女の瞳には何の迷いも見られない。弱りに弱った雄眞の瞳をしっかりと見据え、彼にこう言う。 「ありがと雄眞くん。もし十年前に出会っていたら、私たち同じ大学に通っていたのかもしれないね。そのときこそ欲しかったものも手に入って、素晴らしい毎日が待ってたかもしれないのにね。えへへ、私も雄眞くんのこと好きだから、こういうこと、いっぱいいっぱい考えてたんだよ・・・・・・!」 それを聞いたとたん、彼の熱い想いが溢れ出た。雄眞はみずほとの距離を詰め、彼女がもう逃げ出してしまわないよう、小さなセーラー服を抱き寄せて捕まえてしまおうとした。 だが――。 彼の両腕は彼女の体の中を通り抜けて、とてもむなしい空振りを見せたのである。 これが二人にとっての現実であり、結果だった。 今年一年の、二人の積み重ねの結果であり、終わりの瞬間。 迷い込んだ綿雪がみずほの体のなかで、きらきら、明かりに反射してきらめきを見せた。 「もう私の浪人生活もおしまい。雄眞くん、あなたは私のぶんも輝いてね。私のぶんも充実した毎日を送ってね」 その場に崩れ落ちて絶叫する雄眞を見ることなく、みずほは線路に向かって歩き出す。足音ひとつ立てることなく、白銀に染まりゆくホームを汚すことなく、静かに軌道へと向かっていく。 雄眞はひたすら彼女の名を呼んで泣きじゃくっていたから、そのとき案内放送が何を言ったのかなどまったく分からなかった。轟音が迫り、プラットホームが軋み、看板に反射する電車のライトが強くなってきた。 みずほは、最後くるりと、体ごと振り向いてくれた。 「こんなさまよえるユーレイだけど、私のこと忘れないでね。ばいばい、大好きだよ――」 そう言ってにっこり笑顔をたたえたまま、かかとを軸にして倒れていった。みずほの体は頭から、線路へ転がり落ちていく。雄眞は飛び出していた。 のどが破れそうなぐらいみずほの名を叫び、ホームに薄く積もった雪を蹴り飛ばす。涙が雪に混じって四方に散らばっていった。列車の警笛などない無音のなかに彼はいた。雄眞はみずほの手を掴み取ろうと、右腕を伸ばす。 みずほは後ろへ倒れこみながら、そんな彼を驚愕の表情で見ていた。当然だろう、この男は輝かしい未来をつかみかけているのに、すでに死んでいった者を追いかけるような、非常に馬鹿な真似をしているのだから。 最後、みずほは雄眞のとても愛した小さなえくぼを見せた。安らかな笑顔のまま電車に轢かれ、真っ黒な冬の夜空へ溶け込むよう、霧散したのである。 彼の右手は、彼女に届くことはなかった。 所定よりも随分先の位置で、普通列車は停止していた。 「おい大丈夫か! 怪我してないか!」 がっくり両膝をついている雄眞のもとへ、列車の運転士が駆けつけてきた。 「けが、してません・・・・・・」 雄眞は黄線の外側、あと少しで列車に触れてしまいそうな危ない位置で座り込んでいる。車内は騒然としていた。乗客たちがざわついた様子で、ホームでうなだれている雄眞を見下ろしている。運転士が触車の危険を感じて、とっさに非常制動をかけたのだ。 「どこも怪我してないな? ああよかった、もうすぐ駅員が来るからそこで待ってろ! まったく何やってんだ! 危ねぇだろうが! もしぶつかってたら、ただじゃ済まなかったんだぞ!」 すぐに駅員が雄眞のもとへやってきて、運転士と同じようなことをきく。「ふらふらと列車に接近してきた。自殺未遂かもしれない」。そう運転士は駅員に状況を伝え、列車に戻っていった。 駅員はまず雄眞をベンチに移動させてから、ホーム上の安全を確認する。普通列車は所定の位置に停まりなおすと、すぐに乗降の扱いに入った。 普通列車が出ていったあと、雄眞は駅員に抱えられてゆらりと立ち上がる。一人の駅員がパンダのぬいぐるみを拾ってくれた。彼はそれを受け取ると薄く笑い、両手に抱いて歩き始めた。 事務室へ連行される途中、雄眞は後ろを振り返った。視線の先には、粉雪を葉に抱いた、白い菊の花がある。彼は原さんからこんな話も聞いていた。 千種駅の線路脇には、白い菊が一輪、どういうわけか年中咲いている。この駅には受験を苦に自殺した女子生徒がおり、献花の種子が何らかの拍子で線路脇に付着して、芽を出したものだと言われているそうだ それからおよそ十年、菊は不思議と枯れることなく咲き続け、あらゆる場所からやってくる受験生を見守ってきたという。雄眞は全く聞いたことがなかったが、あの花に祈ると志望校に受かるという言い伝えがあの校舎にあったらしい。 確かに吹上みずほは彼の命を救い、頑張る力を与えてくれた上、ずっと隣にいてくれた、素敵で可愛くていとしいお人よしだった。 しかし、何も彼女は受験の神様ではないのだ。彼女もまた受験の厳しさに追い詰められ、頼れる存在を得られぬまま独り悩みこみ、こらえきれずバラバラに散っていった儚い命に過ぎないのだから。 ありがとう、みずほちゃん。僕はいつまでも君が好きだよ。 そう呟いた瞬間。長く咲き続けた白い花が初春の夜風に煽られて、ぱらぱら散っていくのを見た。 6 輝かしい朝日が天頂を目指していくにつれ気温は上がり、冷えた町並みを暖める。地下鉄の駅から、ぞくぞくと初々しい新入生たちが出てきた。長い受験戦争を勝ち抜いた彼らは、これから夢にも見た新しい生活を始めるのだ。 伝統ある重厚な正門を、伏見雄眞はくぐった。校門では娘の入学を祝う父親が、彼女に負けないぐらいの嬉しそうな表情でフラッシュを焚いている。 構内の桜並木を楽しみながら、雄眞は春先のおいしい空気を胸いっぱいに吸い込む。うららかな陽気を全身に浴びて、自然と足取りも軽やかになる。新品の鞄にぶら下がったパンダのぬいぐるみも、ゆらゆら弾んだ。 立派な講堂の前で、雄眞にとって親しい顔が数人、手を振っていた。それを認めると、雄眞も大きく手を振って駆け出した。 ほんのり涙を浮かべながら、最高の笑顔を見せながら彼は走る。先に進学していった友人たちのもとへ、後から追いつくかのように。 今この瞬間、滞っていた雄眞の時間は動き出した。本当の意味で、彼に春が訪れたのである。 桜吹雪がさらさら音を立てて彼を祝福した、そのときだった。 「・・・・・・おめでとう、雄眞くん!」 雄眞は立ち止まった。 誰かに呼ばれたような気がして、すぐに後ろを向いた。 とっさに声のしたほうを振り向いたのだが、誰もいない。彼と同じように、晴れやかな顔をした女生徒が、ガイダンスの資料に目を通しているのみである。 「おかしいなぁ」 雄眞は小首を傾げるのだが、それほど気に留めることもなく、再び友人たちのほうを向いて走っていったのである。 そんな彼のことを、黒いセーラー服がくすくす笑って見下ろしていた。 彼女は桜の枝に腰掛けて、志望校に合格した雄眞を祝福していた。友人たちに胴上げされている遠くの彼に、こうささやく。 「雄眞くん、頑張ったね。・・・・・・本当におめでとう!」 吹上みずほはふっと微笑む。そして舞い上がるたくさんの花びらと一緒になり、どこまでも高く潤う青空へと消えていった。 【終】
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「――娘はこの薬で助かるんだな」 こんなに、たかがアンプル程度を大事に握り締めた事があっただろうか。 私は乾ききった喉から、搾り出すようにそう呟いた。 何かを恨んでいるような、疲れているような声は、初めて聞いたような気がした。 「はい。 間違いなく」 眼鏡に黒髪の男は、僅かに笑みを湛えながら私にそう返してきた。 初対面の印象は、「底知れない」。――優しげなようで、冷たい男だ。或いは水の中に差し込む陽の光のように、ゆらゆらとその印象は変わっていた。そこが、底知れぬという。 「臨床実験も何度したことか覚えてないぐらいだな! さっすがわたし!天才!」 「流石っすねリーダー!そんな回数も覚えられないんですね!」 「減給だばーか!」 ……私は、世界的、とは言えないかもしれないが――曲がりなりにも国内有数、大企業のCEOを努めている。 責任ある立場。奮う権力。社会的な責務と権威は、紙一重に私の栄光を飾っていたのに、 何でこんな、「こんな連中」と会話をなければならないのか。 私が求めていたのは理性的で高尚な会話だったし、こんなバカどものコンタクトなど、気にも止めずにいれる筈だったのに。 「とにかくさぁー、 ん、 あかないー。ぐぬぬぬぬ……っ」 眼の前の少女と男はいつのまにか言い争いを辞め、少女の方はといえば、何処からか取り出したスナック菓子の袋を開けようと悪戦苦闘しながら、 「娘を助けたいんだろー?」 ぱりっ。びりびり、ぱりっぽり。 暗い私室の空気が重く、永遠のように感じられた。 「――その為に、お前らの様な連中と会っているんだろうがッ!」 ガキャンッ。 鋭い音を立てて、机の上にあったガラスの写真立てが落ちた。 怒りに任せて叩き付けた拳は鈍く痛む。 「この、下劣で、底辺の、反社会者の、テロリスト風情が!」 ガラスは割れていた。割れたガラスの向こうには、微笑む私と私の家族の写真があった。 …これを取り戻せさえ、すれば。 「貴方のご息女は、レネゲードウィルスの過剰活性状態――ジャーム化のモラトリアムを抜けました。 そして」 「やめろ」 ぽりっ、ぽりっ。 「途端に母親と兄貴を食い殺しちまった。あーあー」 「― やめろッッ!!」 「うわー……リーダー、こいつマジで怒ってますよ、いやそりゃ辞めといた方が良いですって。鈴木さんもそこまで煽らなくたってー」 「えー、わたし、時間かけるの嫌いなんだよ。 いいかあ?このばか。」 ぱりっ。小気味善い音を立ててスナック菓子を齧る少女は続けた。 その海苔塩に塗れた指を指揮棒の様に悠々と揺らしながら、 「お前の娘はバケモノだ。 お前の娘は”バケモノどもの組織A”によって抹殺対象としてターゲットされた。」 ぱり。 「ん゛ーらから、ぱりぼり、んがぐぐ…」 「リーダーリーダー、はい桃天然水」 「んがぶはー。 ふぅ~…。」 無理やりにスナック菓子を甘いジュースで流し込んだ幸せに、つやつやとご機嫌な様子で、その少女は続けた。 「お前の娘では組織Aには逆立ちしたってかてーん。ターゲットを解除させる事もふかのー。で、お前は、それでも。バケモノの娘を助けたい。」 ぱりっ。 「ごきゅごきゅごきゅ…。 …だから私達組織Bが娘を助けてやる。代わりにパトロンになってもらう。これで文句なしでみーんなへーわだな!いっけんらくちゃーーく。」 不愉快な物言いにまた頭に血が上った私は、思わず拳を振り上げかけたのだが、 「断るなよ?」 止まった。 「お前もあの娘も死ぬ。誰もお前たちの事なんて気に止めない。冷たい石にお情けで名前を書いてもらうだけで、マスコミどもは大企業の社長一家の最期を好きにに書き立てるだろーな。お前たちがどんなに猟奇的な家庭だったかを、貧乏人どもは妬みで信じ込む。後お前たちの事なんて私にとっては路傍の砂金ぐらいにしか、考えてないぞ。掬う手間を省かせろよ。私の腕に飛び込んで見せろ。さもなきゃ蹴散らすぞ?」 少女は笑ったまま、ぼふり、と、客用のもっふりとしたソファーに飛び込んだ。 くすくすくすと笑いながら、 「そんなの、やだろー?」 もうスナック菓子を齧る音は、聞こえない。 もうからっぽだった。 アンプルの碧が、手の中で揺れた。 少女の部下が運転する車内。 どうせ一瞬で移動できるのにしないのは、ちょっとした買出しも兼ねてである。 K市へと高速を急ぎながら、運転手――田中は上機嫌で、後部座席に話し掛けた。 「いやーリーダー、これでバッチシ資金源確保っすねー」 「おうよ! にしても、なあんでこんなC町くんだりまで来なきゃならんのだああ。これもあのK市のアホバカUGNどもが強過ぎるからだこんちくしょーパリパリッ…」 「あぁー!車内でポテチはやめてっつったじゃないですかー!掃除大変なんすよー!」 「るせーなあぁ」 それでも少女はぱりぱりと菓子を食うのをやめない。欠片が紺の座席や足元に零れまくる。 和気藹々とした車内で、これはテロリスト――FH、オルフェウス一味の一幕である。 正義の味方からすると、多分「何時もどおりの光景」である。 「にしても、」 田中がふと喚くのをやめ――少女の説得なんてどうせ無理だから。 「こんなにちょろくていいんすかねー」 ふは、と、少女。春日愛理は笑う。 「 あの薬、どうせただの鎮静剤なんだけどな。定期的にやりゃあ無力化はできるだろー。娘が過剰摂取で死ぬか、薬が切れて暴れまわるかもしれねーけどなー」 「…やー…。人の絆ってのは馬鹿にできないっすね。あんなもんに大金積むなんて、よっぽど追い詰められてたんすかね」 「そりゃな?。幾らでも払うだろー?」 ぽり。 ふと菓子を食う手を止める。 「――家族の為なんだから。」 少女の笑みが少し意味ありげなものになったが、 「そうっすねぇぇぇ! 俺もハードディスクの中身保護の為なら10か20は出せますし!あははははは」 運転手の男は気付かない。 少し溜息のようなものを少女はついて――いつも通りに笑う。 気付かれないがこれでいい。これでプラン通り。いつもの日常。 「大切なもののためなら、人は何をしたっていとわないもの。私達はそれを食い物にするくそ外道さ」 少女の隣席の男――鈴木はいつもただ、薄笑みを浮かべてその喧騒を見守るだけなのだが――一言。 「……お優しいのですね。」 続ける。 「存外、驚愕致しました。」 「………」 隣の男の反応に、少女は少し驚いたような、怪訝そうな表情を浮かべた。 その後、いつも通りの表情で。 「…あァ!? 人の話きいてたのかてめー!」 「うっわーーー、鈴木さんが喋ってるー! こらお赤飯だわ」 「赤飯…あっ、そういや豆食べたいな。帰りおはぎ買ってこうぜー」 「いいっすねー!うひょー」 「では久しぶりに、私にお任せ頂けませんか?」 「まままマジかー!?」 「あの三次元の海原雄山、丁寧な鉄鍋のジャンと言われた鈴木さんの手作りなんて!うひょーー!そのまま美少女になってくれたら最高っすよ!」 このテンションの火の付き具合も、このセルの日常。 鈴木は薄く笑って、 「考えておきます。」 そう呟いた。
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『ゆっくり実験』 23KB 考証 実験 妊娠 独自設定 失礼します ゆっくり研究 *** 注意 考証 実験 妊娠 独自設定がかなり多くあります *** ここは国立ゆっくり生態研究所。国が作ったゆっくりの研究機関である。 半官半民の加工所とは別に、こちらは非営利的な商品開発を伴わない純学術的な研究をしている。 といっても立派な建物があるわけでもなく、むしろ加工所の中央研究室のほうがよほど大きな建物と研究施設を持っているのだが。 今は長野の諏訪に小さなハコモノを作ってもらって、そこで研究している。 近頃は大学などにも「ゆっくり学部」なるものが増えてきたので、なんだのかんだので天下りなども絡んできてこういう研究機関が必要になったのだろう。 僕はそういう機関の所長をしている天霧という者だ。 いい加減なもので、ゆっくりが現れ始めたとき、親の遺産で暮らしつつ研究をしながら本を何冊か出していたら、 いつのまにかこんなことになってしまった。 *** この研究機関ではどんな研究をしているのだろうか。 今はゆっくりの遺伝伝達物質の研究をしている。 僕の研究のメインテーマはこれである。 ゆっくりの最も優れた形質とはなんだろうか? 僕は常々、親の能力が子に伝わって生まれてくることだと思っている。 その顕著な例は言葉である。 どの段階でゆっくりが日本語を喋り始めたのか知らないが(いずこかで発生したときからすでに喋っていたのかもしれない)、 ゆっくりは産まれてすぐ、赤ゆっくりのころから日本語を喋り始める。 その語彙は人間で言う三歳児あたりよりずっと多い。 これは明らかに人間にない優れた特性である。 では、研究によってこの性質を人間にも適応できたらどうだろうか? 間違いなく、人間の知的レベルは一歩上昇するだろう。 人間の文明の停滞は、おもに人間の死による知識の断絶によって起こってきた。 系統的な科学体系の樹立により知識の死がなくなったのはルネサンスのころである。 それからはかなりマシになりはしたものの、現在でもその問題はなくなったわけではない。 親から子に限定的にでも知識の伝達が行われるようになれば、それはどんなに役立つことだろう。 まあ、君たちのいいたいことは解る。 僕も実際は無理かなぁと思っているのだが、 そんな言い訳をしながら国から予算を引き出しているのだ。 ちなみに、この手の言い訳は官僚に非常に受けがいいようで、毎年ろくな成果がなくとも怒られることもなく予算が降りてくる。 さて、それはさておき、これはなぜそうなるのだろうか。(僕も税金泥棒といわれるのは厭なので真面目に研究はしている) まずゆっくりの遺伝子型を調べると、特に細胞などはない。従って人間で言うDNAのようなものはない。 中に詰まっているのは実は細胞だったなんてことはなく、純然たるあんこである。 免疫系もないので、他ゆんの餡こを移植されてもなんの免疫抵抗もなく受け入れてしまう。 (これは自己と外界との明確な隔離ができていないということであり、ゆっくりがセイブツでなくナマモノだと言われる所以の一つになっている) であれば、親から子に言葉の知識が伝わっているのはなぜだろうか? それは子に伝わる親の餡になんらかの遺伝要素がからんでいるからである。と仮説を立てる。 人間の場合、子どもを作るといっても、母親の体の中で血液が交じり合っているわけではない。 そうでなければ、血液型がA型の母親からB型の子どもが産まれるわけがない。 胎児と母体は発生段階から胎盤や羊膜で母体から隔てられており、免疫的に隔離された上で栄養などの提供を受けて自立的に成長する。 胎児の血液はあくまで胎児が自分で作ったものであり、母親の血液が直接流入しているわけではない。 さて、ゆっくりの場合はどうかというと、これは胎盤のようなフィルターはなく直に流入している。まったくおかしなナマモノである。 ここで、前の仮説を立証するために、一つの実験を行うことにした。 研究所では現在二つの研究プロジェクトが同時進行しており、もう片方のほうは僕のメインテーマからは外れるもののもっと実際的な研究内容である。 そっちのほうの実験に必要な素材を現在加工所や他の大学のゼミにたのんで調達してもらっているのだが、 それには時間がかかるのでその間の暇つぶしという意味もある。 さて、早速本題からずれてしまったので戻すが、実験である。 今回、被験体にはまりさを使う。 理由はすぐに説明する。 『さぁまりさ、僕の実験を手伝っておくれ』 僕はそう言って飼育小屋からまりさを一匹取り出した。 「おそらをとんでるみたい!」 無邪気にそう言ったまりさは、 「ゆふふっ、このまりさを選ぶとはにんげんさんは見る目があるのぜ。あまあまを持ってきたらとくべつにどれいにしてやってもいいのぜ」 僕にかかえられながらそんなことを言い出した。 『それは光栄だな。検討しておくよ』 まったく、また小屋のゆっくりのゲス化が進行している。 何度とりかえてもこうだ。やっぱり、人間が暴力を伴った躾(見せしめともいう)を行わないとダメらしい。 やはり人間が定期的に餌を運んで排泄物を片付ける役割だけを担っていると、ゆっくりは増長してゲス化し始める。 一時虐待お兄さんを飼育員として雇う案も出たのだが、過多な虐待をして必要以上に人間に怯えるようになると これもまた被験体として資質に難が出るということで廃案になった。 今は研究員が当番制で餌やりしているのだが、今度から月に一度日を決めてみせしめに潰すようにしようか。 そんなことを考えながら、僕は実験室に向かった。 「おいどれい!!! さっさとあまあま持って来い!!!」 そんなことを言っているが、僕は気にもしない。 むしろもっとゲスになってくれ。そのほうがこっちも気が楽だ。 そう思いながら、僕は足焼き機のスイッチを入れた。 虐待が目的ではないが、なんだかんだで暴れられると面倒な時は足焼きしてしまう。 それ用の足焼き機は中古で買ってきた餃子焼き機である。 丁度成体ゆっくりが一匹収まるサイズで、ガスバーナー式なので火力も高くすぐ温まる。 重宝している実験器具である。ちなみに蒸す必要はないので蓋はとってしまっている。 「まりさはぐずは嫌いなんだぜ。はやくするのぜ。さもなくばさいっきょう! のまりさがせいっさいしてやるのぜ」 簡単に油を落とすと、無造作にまりさのあんよを押し付けた。 ぶわっと油の匂いをした湯気がたちあがった。 「――――――ッッッ」 まりさは産まれて初めて受けた感覚に言葉も出ずに硬直している。 一瞬遅れて、 「あっづううう!!!! これめっちゃあづいいいい!!!! だずげでええええええ!!!」 などと言い始める。 僕も善良な希少種が言っているのなら心を痛めるが、ゲスなら心を痛めずにすむ。 まったく親切なまりさである。感謝したいくらいだ。 「早くだずげろおおお!!! だずげでぐだざいいいいいいい!!!」 ぐーねぐーねしてる。キモいな。 まあ、これ以上やって炭化してしまうとまたよくないので、引き上げるか。 (前に焼き過ぎた研究員がでいぶを持ち上げたら、ひび割れた底が破けてしまったことがあった。研究員の手には饅頭皮だけが握られていた) まりさを持ち上げて足焼き機のスイッチを落とす。 まりさのあんよはこんがりきつね色になっていた。ちょうどいい具合である。 「ゆふぅ……ゆふぅ……どぼじでごんなごどするのぜ……」 僕はまりさを透明な箱(大)に入れた。蓋はしない。 そして、別室からレイパー化したありすを連れてくる。 「れいぱーだあああああああああああああ!!!! おにいさん近づけないでね!!!!」 いや、無理だし。 ありす種は特にまりさ種を好む性質がある。 まりさ種を選んだのはレイパーにできるだけ興奮して激しいレ◯プをしてもらうためだ。 「とってもとかいはなまりざねええええええええええ!!! すぐにあいをそそいであげるわああああああああああ!!!!」 だらだらとよだれを垂らし、すでにぺにぺにが限界まで勃起し先端から汁が漏れている。 「やめてね! やめてね!!! そのれいぱーどっかやってね!!!」 僕は無言でれいぱーありすを箱のなかに入れた。 「うっほおおおおおおお!!! とってもしまりがいいまりさねえええええええ!!!」 「やべでえええええ!!!!」 放置すると妊娠死してしまうので、僕は傍らの椅子にすわりながらハサミでまりさの額に生える枝を生える端からちょん切っていった。 「まりさのかわいいおちびちゃんころさないでえええええ!!!」 と僕にも抗議してくるが、放っておく。 それにしても醜い光景である。これ以上醜悪な交尾がこの世にあるのだろうか。 世界は広いのであるのかもしれないが、こいつらのそれが上位5%に食い込むのは間違いない気がする。 小一時間ほどしてありすが満足すると、僕はありすを別室に戻した。 「ゆふぅ……ゆふぅ……」 まりさはレ◯プされまくって疲れている様子だ。 『おつかれさま。あまあまくれてやるから機嫌なおしてね』 と、僕はあまあまを箱のなかに入れた。どろどろした粥みたいな飯だ。 ちなみにこのあまあまは回収した茎とオレンジジュースと砂糖、そして大量の成長促進剤と少量のラムネをミキサーしたものである。 成体に成長促進剤を与えると老化して寿命を縮める作用があるが、この場合はなんの問題もない。 「むーしゃむーしゃ……しあわせ……」 全然幸せそうじゃない憔悴しきった顔で食べる。 食事を終えるとまりさは寝てしまった。 寝ているうちにメスで腹部を切開し赤まりさ一匹だけ残して間引く。 こうしておくと出産が早くなるのである。 ちなみに、間引いた二匹はいずれもありす種だったので丁度よかった。 まりさがれいぱーありすにレ◯プされて胎生妊娠すると、胎内で赤まりさが赤ありすにレ◯プされて死産になる可能性がある。 野生・野良ではさすがにそんなことになる可能性は低いが、今回使ったのはれいぱー傾向を特に高めたありす種だったので、割とその可能性があった。 *** 翌日には早くも陣痛が始まる。 「う、う、う、産まれるううううううう!!!」 ッポーンと赤ゆっくりがはじき出された。 うまいことタオルにぶつかったため事なきを得たようだ。 「ぜんっせかいにしゅくふくされてさいっきょうのまりちゃがいま! たんじょうしたのじぇーーーーー!!!」 はいはい。 まったくのゲスの子である。 この赤まりさの頭の中はどうなっているのだろうか。 少し分析してみよう。 まず、ゆっくりの出産においてはその記憶は受け継がれない。 それを裏付ける証拠はいくらでもあるので、これは間違いないだろう。 (記憶や経験まで受け継がれるのであれば、狩りの仕方を教える必要などない) だが、明白な記憶や経験は受け継がれないのだが、人間と違ってあんこをそのまま流用しているため、 あんこに刻みつけられたトラウマはその子にも受け継がれる傾向にある。 虐待趣味の人間による苛烈な虐待から珍しく生き残ったゆっくりの子どもが、子々孫々まで人間を恐れるのはこの現象によるものである。 「ゆぅ~~~~、おちびちゃんはとってもゆっくりしてるよおおおおおお!!!」 などとまりさが言っている。 昨日さんざんにレ◯プされたのに、今はもう立ち直っているようだ。 僕は二人をかかえて別のケージに移した。 そのケージは成体ゆっくりを3匹飼える程度の大きさで、真ん中あたりで透明な壁で仕切ってある。 そして片方にまりさ親子をいれると、透明な壁で隔てたもう片方にれいぱーありすを持ってきて置いた。 「レイパーだあああああああああああ!!!!」 この世の終わりのように叫ぶ親まりさ。 「れいぴゃーやぢゃーーーーーー!!! ゆっぐぢできにゃいーーーーーーーーーーー!!!」 やはりトラウマを刻んだあんこは確実に受け継がれているようで、赤まりさのほうも通常ありえないほどうろたえ恐ろしーしーをたれながしている。 「まりざああああああ!!! ひさしぶりねえええええええ!!!」 このれいぱーありす、昨日使ったものと同じ個体なので、実際は赤まりさの肉親に当たるのだが、そんな雰囲気は皆無である。 「おにいさん! れいぱーどっかやってね!!! おねがいだよ!!!」 「さっさとれいぱーをせいっさいしりょーー!!! はやくしりょくそどれーーー!!!」 『はいはい無理無理。まりさはそこでちゃーんと子育てするんだよ。ありすのことは気にしないでね』 「できるかあああああああああああ!!!!!」 確かにそうだろう。透明な壁を隔てた向こう側ではれいぱーありすがまりさを犯そうと、必死になって顔を透明な壁に押し付け、れろれろと壁を舐めている。 『そこを頑張るのが親でしょ。はい今日のごはんさんだよ』 僕は非ゆっくり症抑制剤と成長促進剤を入れた餌を親まりさの目の前に山盛りに盛ると、僕は部屋をでていった。 足焼きして動けない親まりさもこうすれば食べられるだろう。 *** そのまま一週間ほど経つと、赤まりさは亜成体ほどの大きさに成長していた。 その間れいぱーありすはずっととなりのケージに置いてあり、透明な壁にぺにぺにを擦りつけて漏れでた精子餡を塗りつけていた。 そんな環境にあっては、赤ゆっくり子ゆっくりだった間は毎晩毎晩れいぱーありすにレ◯プされる夢を見ていたことだろう。 僕が作りたかったのはこのまりさである。 トラウマを刻まれたあんこを受け継いで、さらに産まれながらにトラウマを受け続けた高純度の個体を用意した。 この個体のありす種への嫌悪、憎悪、そして恐怖は並大抵のものではないだろう。 野生・野良ではありす種とまりさ種のカップリングは珍しくないが、このまりさの餡統を使えば子々孫々何代にもわたってありす種と結婚することはないだろう。 これで準備は完了した。 実験をする前の前提条件は可能な限り整えておくのが科学者のたしなみというものだ。 決して僕が虐待おにいさんなわけではない。 *** 『やあ、まりさたちはゆっくりしてるかな?』 その日、僕は一週間ぶりに二匹に声をかけた。 「「ゆっくりしてるわけないでしょおおおおおおおおお???」」 と叫ぶ二匹。 『突然だけど、いいかげんありすが可哀想だからまりさに相手してもらうね?』 「ゆっ?」 宣言するやいなや、僕は親まりさをひょいと掴み上げると、ありす側のケージに置いた。 「れいぱーだああああああああ!!!!!」 と叫んで逃げようとするが、足焼きしてあるので当然のーびのーびしかできない。 「ばりざあああああああああああ!!! やっどありすのあいに答えてくれるのねええええええ!!!???」 当然ながら、れいぱーありすは電光石火の勢いでまりさに跳びかかり、レ◯プを始める。 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおお???」 亜成体まりさが僕に抗議する。 それはね、きみにこのイメージを焼き付けておくためだよ。 ゆっくりは思い込みのナマモノだからね。 と、僕はいってやりたかったが、黙っていた。 レイプが始まってすぐにまりさの額には茎が生え始め、実ゆっくりがなりはじめた。 今回は茎を切断しないので、生えるがままに何本も繁茂していく。 「どぼじでえええええええええ!!?? おかあざんだずげであげでええええええええ!!!!」 亜成体まりさは泣きながら僕にそう頼む。だが僕は動かない。 「やべでええええええ!!! やべでぐだざいいいいいい!!!」 そうありすに懇願しながら、まりさはただ無残に犯されていた。 「しまりがいいまりざねええええええええ!!! とってもとかいはだわああああああ!!!!」 そのまま30分ほど放置すると、親まりさは妊娠死して真っ黒になった。 僕は散々我慢していたすっきりを思う存分して達成感に満ち溢れた顔をしたありすを他の部屋に移す。 そうしておいて、僕は新しいれいぱーありすを透明な箱に入れて持って帰ってきた。 「とってもとかいはなまりざねえええええ!!!!! いまありすの愛をあたえてあげるわああああああ!!!!」 「どぼじでありずがいるのおおおおおおおおお????」 親の屍体を目の前にしてゆんゆんと泣いていたまりさが、ありすを見て叫んだ。 『やあやあ、まりさにもそろそろお嫁さんが必要だと思ってさ』 「いらないよおおおおおおおおおお!!! はやくもって帰ってねえええええええええ!!!???」 『まあまあ、そんなこと言わずにさ』 僕はそう言うと、ありすがはいった透明な箱を床に置いて、まりさを掴んだ。 「ゆっ! なにするのおおお??? はなしてねええええ???」 『いやぁ、これからきみ、レ◯プされるからさ。せめて目がみえないようにしてあげようと思って』 「やめてね! やめてね!」 抵抗するまりさを拘束しつつ、僕はまりさの目にある薬品を垂らす。 これはゆっくりの目を一時的に見えなくする薬品で、効果は一日で切れ苦痛はない。 「まりざのてんにかがやくほしぼしのようなおめめさんがみえなくなっちゃったあああああ!!!!」 そう絶望するまりさを尻目に、僕はありすが入った透明な箱の蓋を閉じた。 さすが加工所製の透明な箱である。蓋を閉じればありすがなにをいっても一言一句外には届かない。 そうして、用意しておいた機械を起動した。 成体ゆっくりを模したマシーンで、音声再生機能と交尾機能がついている。 シリコンで出来た表皮に、僕はローションをまんべんなく垂らした。 交尾している最中のゆっくりは表皮からぬめぬめとした粘液を出す。 シリコンと饅頭皮は多少触感に相違があるが、これでごまかせるだろう。 そして忘れてならないのは音声再生機能である。 [とってもとかいはなまりざねええええええええええ!!! すぐにあいをそそいであげるわああああああああああ!!!!] 「やだああああああああああ!!!! ばりざのはじめてがあああああああ!!!!」 僕は片手でまりさを押さえつけながら、片手でマシーンをセットして交尾を始めさせた。 [うっほおおおおおおお!!! とってもしまりがいいまりさねえええええええ!!!] 再生されているのは、このまりさの親が最初にレ◯プされたとき密かに録音しておいた音声である。 交尾が進んでいくうち、絶頂が近づいてきた。 [すっきりー!] とマシーンが喋り、擬似ぺにぺにの先端から精液を発射する。 「すっきりー!」 と答えてしまうのは、ゆっくりの哀しい性である。 二十分ほどのすっきりがおわると、まりさの額からは茎が伸びて腹の中にはナマモノが宿っていた。 このマシーンに入れておき、絶頂の音声が出たタイミングで噴出するようインプットしておいた液体は、精子餡ではない。 大豆由来のこし餡を水で溶いたものである。 むろん、本来なら妊娠が起こるわけもない液体だが、まりさはれいぱーありすにレ◯プされているというパニックと中出しされたという思い込みから妊娠してしまった。 親まりさが散々レ◯プされて額から茎をにょきにょき伸ばしてるのをつぶさに見た直後なのだから仕方がないだろう。 ここで、ゆっくりの妊娠のシステムについて考察してみたい。 むかし、この研究所ではそのシステムを解明するために割りと大掛かりな実験を行ったことがあった。 まずゆっくりに高純度のラムネ成分を投与し、昏睡状態に近い睡眠状態にする。 そうしておいて、頭を切開して中枢餡を取り出す。 これは手術用の高品質なゴム手袋をはめて手でやれば傷つけずに取り出すことができる。 そうしておいて、残ったあんこを全て摘出して特殊な試薬(ゆっくりに代謝されない試薬を開発するのにもっとも手間取った)を入れ、これをミキサーで混ぜる。 そしてあんこと中枢餡を元通りに戻して、開頭部を接合する。 それでから精子餡を注入し妊娠させてみると、あんこの流れが分かった。 (試薬の反応で、そのあんこの元が誰のあんこなのかが解る) そのゆっくりが父親側になった場合、精子餡は子ゆっくりの中枢餡だけにはいる。 そして、母親側だった場合、中枢餡と体全体に入る。 できた赤ゆっくりを即解剖して中枢餡を取り出し、試薬の濃度を測ってみたところ射精して父親になった場合も孕んで母親になった場合もぴったり半分になっていた。 ちなみに、実験に使ったゆっくりはまりさとぱちゅりーである。(試薬漬けにしたのはまりさの方) このとき、まりさに実ったぱちゅりー種の中身があんこであることも解った。 それまで中身があんこの種からクリームの種が、チョコの種からあんこの種が産まれるのは謎だったが、このとき解明された。 妊娠初期は確かに親の中身が中枢餡以外に満たされているのだが、妊娠中期になると種族に見合った中身となる。 親のあんこを自分で餌として代謝してクリームにしていたのだ。さながら注射されたオレンジジュースを消化するように。 妊娠中期以降になると、親のあんこが流れ込んでくる端から代謝してクリームにしてしまうので、あんこは殆ど混ざらなくなる。 また、同じような方法で成体れいむを解剖し、中枢餡以外の中身を全てカスタードにしてみた場合も同じ結果が出た。徐々にカスタードが分解されあんこになっていた。 まあ、そのことは今回あまり関係がない。 今回の実験のテーマは『ゆっくりはどこまでゆっくりでいられるのか』ということである。 今回、まりさを精子餡ではないただの餡こで妊娠させることに成功した。 ということは、このまりさの子の中枢餡は半分はまりさの餡であるが、半分はなんの変哲もないただのあんこになっているはずである。 そして、これを繰り返す。 このまりさを親まりさとして、子まりさと一緒のゲージにいれ、おなじようにレイパーの恐怖を感じさせる。 そうして、最後は子の目の前で親まりさを(今度はマシーンでなく本物のれいぱーありすに)レ◯プさせ妊娠死させる。 これにより、実際にロボットによる交尾を行わせる前に、レ◯プ→にんっしん、というイメージを更に刻みつけておく。 その後マシーンに犯させ、ふたたびただの餡こで妊娠させる。 これを繰り返すと、代を重ねるごとに比例して中枢餡が『薄くなる』はずである。 そうしたら最終的にはなにになるのだろうか? どの代まで『ゆっくり』でいられ、『ゆっくり』としての形を保っていられるのだろうか? これが今回の実験のテーマである。 こう考えると何かしら反応が出そうだが、ゆっくりは神秘のナマモノなので実際は何も起こらないかもしれない。 そもそも、中枢餡に使われる餡が特別なものなのかというと、科学的に分析する限り何の変哲もない餡こ(少し糖分が高く雑味成分が少ない)なのだから。 最初の飼育小屋から拾ってきたまりさを1代目として、3代目の子孫は見た目変わらなかった。(2代目のまりさは普通にありすに孕まされた子) だが、性格的には若干まりさ種にしてはおとなしく、どことなく無感動な傾向が散見された。 それでもれいぱーありすに対する恐怖は濃いようで、2代目が犯し殺されたときにはなきわめいておそろしーしーを漏らしていた。 また、2代目が妊娠したゆっくりはまりさ種2匹にありす種2匹だったことは特記すべき事項であろう。 2代目が犯されたのはマシーンであり、注入された液体はありす種のカスタードではないのだから、産まれた子は全てまりさ種になるはずである。 が、1匹ならともかく2匹もありす種が産まれたのは、偶然のチェンジリングではありえない。 原因の第一は、2代目まりさがありす種に妊娠させられたと思い込んでいたからであろう。 第二の原因はこのまりさは純然たるまりさ種とありす種の子であることから、 ありす種の形質情報がなんらかの形で2代目まりさの中枢餡に保存されており、その形質が隔世遺伝したということが考えられる。 ありす種を除いた(1匹は即解剖・もう1匹は要観察)3代目から産まれた4代目のまりさ種は、言葉が喋れなかった。(驚くべきことに、この段階でも1匹のありす種が産まれた) したがって「ゆっくりしていってね!」と僕が言っても、首をかしげるだけで意味が分からないようだった。(鳴き声は「ゆーー!」だった。) それでもレイパーに対する恐怖は残っていたらしく、襲われれば妊娠したのだから、トラウマとは恐ろしいものである。 5代目(中枢餡は8倍に薄められている計算になる)には帽子がなかった。 また、髪の毛も金色のものがまばらに生えているだけで、ぱっと見でわかるまりさ種の特徴はことごとく消え失せている。 親も子も言葉が喋れないわけなので、見た目はふつうの動物を飼っているようだった。 親と一緒にれいぱーに怯えながら暮らす日々をこれまでの二倍に増やし、今までと同じ事をやってみると、なんとか妊娠した。 見るからにゆっくりではなくなってきていたので妊娠機能が残っているか心配だったが、 目の前で言葉の喋れないまりさを「まりざあああ!!!! てれてるのねええええ!!!!」などと喚きながら犯すれいぱーありすを見て、 そしてにょきにょきと茎が生やしながら死んだ父親を見て、 その直後に自分も同じように犯されれば、5代目のかろうじて残った自我と本能は妊娠することを選択したのだろう。 実験はそこで終わりだった。 中枢餡を16倍まで薄められた6代目は、目も鼻も口もない饅頭だったのだ。 あにゃるもまむまむもなく、恒温性も代謝もない。 これは和菓子屋に売っている饅頭が生きているか死んでいるか論ずるのと同じくらい無意味なことかもしれないが、 6代目のゆっくりは産まれながらにして死んでいた。 ここまで実験を進めた科学者の努めとして、無意味と知りつつも6代目という饅頭に本物のれいぱーありすの精子餡を注入してみたが、当然ながら妊娠しなかった。 これにて実験は終了である。 *** 実験の結果をゆっくり学会で発表すると、反響はさほどなかった。 「まあそんなものか」という感じである。 僕も驚くべき結果が現れたと思っていたわけではないので、その点は期待していなかった。 後日、加工所の商品開発室の研究者が現れて、細かいデータをくれといってきたので、くれてやったら喜んでいた。 前提条件が厳しいので大量生産化は難しいかもしれないが、顔のない食用饅頭がゆっくりから生産できるということで、興味をもったらしい。 データを見て少し条件を変えた実験を自分の所でもしてみるそうだ。 ゆっくりは食べられるので食用に適しているが、そのままの形で調理すると凄まじい死に顔がそのまま食品になってしまい、消費者の食欲を著しく減退させる。 なので粉々にペーストにしたり、一手間かけて顔を潰して小麦粉を塗りこめたりする。 が、粉々にしてペーストにしてしまっては無加工で饅頭皮にくるまれているという利点が台無しになるし、一手間かけるのもコストがかかりすぎるので高くつく。 聞いてみると、そんな事情があり顔のないゆっくりの生産は商品開発部の悲願だったらしい。 『そういうことなんで、まあダメ元でやってみますわ。もしかしたら物凄く美味いかもしれませんしね』 研究者がそう言ったので、 『ああ、ありますよ。食べてみますか』 僕はそう言って冷蔵庫から饅頭を持ってきた。 皿に乗っけて出してみると、研究者は苦り切った顔でそれを見つめた。 奇形ゆっくりの饅頭など本心では食べたくなかったのだろう。 が、自分が言い出したことなので、少し逡巡して口に運んだ。 『意外と普通の味ですね』 拍子抜けしたように言う研究者に、 『まあ、昨日和菓子屋で買ってきた饅頭ですからね』 と僕がおどけて言うと、研究者はしてやられた、という顔をして苦笑いしていた。 おわり *** あとがき 前後編の前編のつもりで書いたのですが、 本番の後編があまりに「これってゆっくりでやる意味あんの?」という感じで しかも虐待成分0であり愛ででもないので やっぱりいじめあってなんぼだろう。と思い、書くのをやめました。 伏線回収が気になって仕方がないという人がいたらごめんなさい。 今まで書いたもの anko4631 鬼井俊明のゆっくり試験 anko4629 おかざりは誰がために anko4643 ゆっくり試し斬りしていってね!
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387 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイWW b720-CwKy)[sage] 投稿日:2017/12/10(日) 20 06 02.17 ID 9LPJpu440 [1/3] アライちゃん「うゆうぅ~!のりゃっ!のりゃっ!」シッポフリフリ 389 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ bf12-ylxw)[sage] 投稿日:2017/12/10(日) 21 08 31.63 ID 2jn1tQQ80 [5/8] 387 アライちゃん「うゆうぅ~!のりゃっ!のりゃっ!」シッポフリフリ いもむし?「ンニャッ」 アライちゃん「のりゃ?」クビカシゲ いもむし?「ニャッ!?」 アライちゃん「のりゃっ!のりゃりゃ!!」ヨチヨチヨチ いもむし?「ンニャニャニャニャ」 アライちゃん「のりゃりゃー♪」ヨチヨチヨチツマミ いもむし?「ンニャワーッ!!」 アライちゃん「のりゃあ~~~…… ん!」パクッ アライちゃん「んまんま……」クッチャクッチャ 白衣の男「……うむ、野生のアライちゃんが人工ワームを食べるかどうか、という実験の結果は食べる、と」 アライちゃん「のりゃ?ヒトしゃんなのりゃ?」クビカシゲ 白衣の男「次は、人工ワームに仕込んだ毒がアライちゃんに効くかだが……」 アライちゃん「どく?なんなのりゃそえ?」クッチャクッチャ 白衣の男「……………」 アライちゃん「ん?ぐびぇ、おぇぇぇ……!!ぺっ、ぺっ……」ペッ 白衣の男「毒の味に気付いた、か……」 アライちゃん「ぺっ…… まじゅいのりゃあ……」グズグズ 白衣の男「……………」 アライちゃん「うゆぅ~…… のりゃ?あ、あ、あぎぃぃいいいいい……」ブクブクブク アライちゃん「……………」ピクピク 白衣の男「……毒の効果を確認。しかし味が悪いらしく途中で吐き出す。その様子を見ていた他のアライさんが人工ワームを警戒する可能性が高い」 白衣の男「今後の課題としてまずは味の改良、そして死の原因を特定されにくくするように毒に遅効性を与えること。以上で状況を終了する」 【アライさんと白衣の研究者】シリーズへ戻る
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【板名】 科学実験 【理由】 子供でも遊べる簡単にできる実験ってどれだけあるのかな?と思ったので 【内容】 簡単に出来る実験や実験器具について語ろう 【需要】 さぁ? 【鯖】 science 【フォルダ】 experiment 【カテゴリ】 学問・理系 【名無し】 774のふしぎさん 【ID】 強制
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MMの実験を行い、 その結果をプレイに生かしたいとおもいます。
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前期実験 前期実験についてのデータの集積。 G1実験 G8実験
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222 :実験作 [sage] :2007/06/06(水) 22 15 13 ID cQRlnMcP 「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 少女の哄笑が響き渡る。其れは闇に、地に天に。 黒く、暗いその眼の鋭さを彩るのは墨汁交じりの朱の色殺意。 はや沈み掛けの黄昏すら届かぬ、薄汚れた狭い路地の中にて、対峙するは二つの影法師。 其の片割れは退治の為に、もう片割れは泰事の為に。 響くたった一人のオーケストラは前者の壊れた喉笛より撒き散らされる。 ああ、ああ! それは人間の、人間のみに許されたカプリチオ。 狂想の曲は独唱を終え、第二幕をバイオリンを加えて始めたいと願う強く尊く醜い人の意思は数多を捻じ伏せ唯一。 既に弓は彼女の手に。弓の名は“草刈鎌”。 うるはしき其の御手にて喉の肉の弦を掻き切り給えよ人の御子! さすればひゅう、ひゅうなる音、そなたの打ち倒さんとする肉塊より漏れ出でん! 「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!! よくここまで逃げられたね逃げられたね売女ぁああああああ! あっはははははははは! でも終わりだよお、すぐに、すぐにわたしと××ちゃんの世界から消してあげる。堕としてあげる。潰してあげる。抉ってへし折って叩き割って引き裂いて磨り潰して焼き尽くして撒き散らして……あああああああああ!! わたしのばか、ばか、ばか! 本当に神聖な××ちゃんの名前をこんな溝鼠の前で言うなんて穢しちゃう! それもこれも全部あなたのせいだよ、失せろ、失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 夕闇に煌くは鎌の刃、沈む陽の紅に飽き足らぬ貪欲が求めしは何か? 熟れに熟れたトマトの赤? 否! 天空に輝く蠍の心臓の赤? 否、否! 紅玉の如き葡萄酒の赤? 否、否、否! 其は偽者にあらず、真実人の血。 晩餐にて取り繕うな娼婦の子、大工の継子! 我らが血潮は何者にも代えられぬ! 飛沫くは赤。漏れるは赤。 求めに従い銀弧は飛ぶよ、其の刀身を乙女を貫き血に濡らす為に!! 「死ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいねぇえええええええええええええええええええ!」 ああ、されどされど。されどされどされどされど! 悲しきかな哀しきかな人よ、人の力は人の御技によって御されるが定め。 其れは文字通り御す為の技なのだから。 「嗚呼、神よ感謝します。素晴らしい」 「………………っ!!」 振り下ろされたる死神の愛道具。 其れを容易く抜け、スケイプゴウトは己が裁定者を抱きしめる。 その硝子よりなお蒼い眼球に滲むは涙。其れは歓喜。 喚起するは万感の想い。 見ているのですか偉大なりしヴィーザル! 斯くして兄殺しの盲目者は己が咎の源、かつてヤドリギに貫かれしものに許されるということを! 「は、放せ……! 放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ!」 「刃をお納めを。私はあなたの存在に非常に感激しているのですから……」 「……、何を言っているの。あなたが居なければ、あなたが奪おうとしなければ!! うわあああああああああああ!!」 藻掻き藻掻くも万力はぴくりとも動かず。 宣教の真言は故に、否応無しに羊の耳に入り込む。 223 :実験作 [sage] :2007/06/06(水) 22 15 55 ID cQRlnMcP 「私はあなたから彼を奪うつもりなどないのですよ。 そもそも何故に彼を奪う必要などあるのですか。」 「決まっているよ、そうしないとわたしを見てくれないから! ううん、そんなはずはない××ちゃんは何よりわたしをアイしてくれてるのそしてわたしもなによりアイしてるのだから他の人に××ちゃんのアイが行くのは許せないの一片たりともわたしに向けてくれるアイが減るのは許せないんだから!!」 歓喜の笑みは慈愛の笑みに。 ……否、之は自己愛。故に慈愛などでは決して有り得なく。 「いと気高き私の同志にして先達よ。あなたは正しい」 「さっきからなに言ってるの……!だったら早く死んで、死んでよ!! さっさと死んで死んで死んで、」 「しかし、たった一つだけ勘違いしていることがあります」 「間違ってるはずない間違ってるはずないそれよりさっさと死んで死んで死んで、」 「彼の愛が有限だと考えること。それがあなた様の唯一の間違い……。 彼の愛は無限です。ですから、あなた様に向けられる愛が減ることなどありえません。 無限は割り切れない故に無限なのですから」 「うんそうだったらいいかもしれないけどでもそんな保証はないんだよだからさっさと死んで死んで死んで、」 「偉大なる彼の寵愛を何より早くより受けたる聖女たるあなた様が彼を信じなくてどうするのですか。 いいえ、あなた様が分かっていないはずがないでしょう。彼がそれほどまでに大きな存在かを」 「うんそれはそうだけど××ちゃんはすっごい人だけどそれは当然の事だしそれはともかくさっさと死んで死んで死んで、」 「なればこそです! 私が彼の本当の価値を、いいえ価値などという尺度に換算する愚かな私めが此処に至りようやく啓示された真実を生まれながらに知るあなた様ならお分かりかと……!」 「……何を?」 漸く詩の朗読より戻りたる聖女。浮かぶ表情は人形よりなお雄弁に無為を語る。 絶対者を崇められ、自身を讃えられることが彼女に何をもたらしたのか。 下賎の女に見出せしものは果たして殺意か同意か無視かそれとも。 ゆうらりと万力を緩め、陽炎の動きにて距離を取る下女。 ―――――いずれにせよ、次の言葉にて全ては決す。 「嗚呼、何と寛大なのでしょうさすがあの方に選ばれた方! ええ、故に私は提言します! あなた様とこの私め、彼の素晴らしさを知る二人は同志であると! 否、私はあなた方二人の下につくものであると! 故に、あなた様が私を退ける必要はないと! ええ、それだけ、それだけの事なのですよ!!」 「……ふーん。」 聖女の言葉に込められた思いは何か。 夜の帳は下りた。鎌に集うは星の光、蠍の赤い光。 襲う為か捨てる為か、それは、一瞬揺らめくように掲げられ―――――― 「―――――――嗚呼。美しい。何もかもが美しい。 素晴らしいよ、僕の為にここまでしてくれるなんて。」