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コピーシェルによってまなみの能力データを手に入れたヘルスター帝国は 水無瀬裕奈をさらい、彼女を帝国に忠実な水術使いの剣士にし、まなみと戦わせる。 炎術を封じられたまなみに勝機はあるのか…? 炎術剣士まなみ第十三話 『ヘルスター大軍団!まなみの危機と救いの光』 ヘルスターの地下闘技場での戦いは続く。炎が効かないため、まなみは剣術と格闘のみで 裕奈を止めなければいけない。裕奈はパワーはあるが直線的な攻撃が多いため、まなみは 冷静に攻撃を見切り、紙一重でそれを回避していく。そして隙を見て、攻撃を行うが 裕奈は受け止め、反動を利用しまなみに少しずつダメージを負わせていく。 「まなみちゃん、こんなんじゃ期待外れだよ?」 「裕奈!目を覚ましなさい!たあぁ!!」 通じないのは百も承知だ。まなみは火炎閃光キックを放つ。それを見た裕奈もまなみと 同じようにキックを放つ。炎の変わりに水を纏った水流竜巻キックだ。 「とあぁぁぁ!!」 「無駄だって分かっているのに…はああぁぁぁ!!」 「くっ!?ああぁぁぁぁ!!」 やはり水により、炎は相殺されてしまう。そして純粋なパワーなら裕奈の方に分があり まなみは蹴り飛ばされてしまう。倒れたまなみにゆっくりと近づいていく裕奈。 そしてまなみの首に手を掛け、締め上げる。 「ぐっ…あ…ゆ、うな…!」 「ねえ、さっきは殺すなんて言ったけど、まなみちゃんもあたしと一緒に ヘルスター帝国の戦士にならない?あたしが話をつけてあげる」 「お断りよ…ヘルスター帝国なんかの…言うとおりになってしまったら…この世は 破滅しちゃう…!裕奈…あなたも目を覚まして…!」 「残念だなぁ…じゃあ、まなみちゃんのこと、殺すしかないね。うりゃ」 冷酷に宣言すると、まなみの体を浮き上がらせ勢いよく投げ飛ばす。ダメージを負った 体のため、まなみは受身を取れず倒れ伏す。直後に視界に映ったのは村雨長光を抜き まなみへ斬りかかる裕奈であった。暁一文字を抜くことが出来ず、まなみはその一太刀を 袈裟懸けに浴びせられ、鮮血がほとばしる。 「あああぁぁぁぁぁ!!うっ…裕奈ぁ…!」 ゆっくりと仰向けに倒れるまなみ。ヘルスターの野望を食い止められない悔しさと 裕奈を救えない悲しさが合わさった涙が流れる。斬られた胸元は炎術剣士の特殊能力に よって自己回復していくが、傷は完全に塞がらず、血はまだ流れている。 裕奈は村雨長光をまなみの首元へ着かせる。このまま、まなみの首を落とす気なのだ。 「(裕奈…あなたを助けることが出来なかった…ヘルスターにも負けた…私は、 弱いうえに、目の前の大事な人さえ守れないなんて…)」 まなみは涙を流し、自分の弱さを悔いた。それと同時にまなみの身体の底から膨大な エネルギーが湧き起こった。 「な、なに!?」 完全に止めをさそうとしていた裕奈は驚き、思わず村雨を握る右手が緩む。 まなみはその隙を逃さず、裕奈の右手を蹴り村雨長光を吹き飛ばす。 「しまっ…!」 「火炎大破斬!!」 さらに続けて必殺技を放つ。水術を使う間もなく、防御体制さえ取れていなかった 裕奈は斬り飛ばされ壁に勢いよく激突。一瞬の間にまなみが逆転し、裕奈は 地に叩き伏せられた。 「ぐあっ、はぁはぁ…ま、まなみちゃん…いったいどこにそんな力が…」 「分からないわ…でもまだ死ぬわけにいかない、そしてあなたを助けたいと 強く思っていた。そうしたら突然、力が湧き起こったの。裕奈!一緒に帰ろう…」 手を差し出すまなみを見つめ、裕奈も手を差し出そうとする。しかしそんな二人の間に バルガン将軍が割って入る。そして裕奈を蹴りつける。 「あうっ!!」 「ええい、裕奈!まなみをあそこまで追い詰めておきながら、なんという体たらくだ! まなみを倒せない貴様に用は無い、消えろ!」 バルガンの両手からエネルギー弾が発射され、裕奈を連続で撃ちぬき、闘技場脇の プールへと落とす。裕奈の身体は浮いてくる気配は無かった。 「裕奈ぁ!!バルガン将軍、貴様ぁぁぁ!!絶対に許さない!!」 「親友の最期を見届けることが出来ただけでも感謝するんだな。ははは…!」 まなみが斬りかかるが、テレポートでバルガンは消えてしまう。直後、アジト外から 地響きのような音が聞こえ始めた。アジトが崩壊するわけではないようだが、気になった まなみは、急いで地上に戻る。裕奈との死闘は、それなりに長かったらしく、既に 日は傾き始め、新宿もオレンジ色に染まり始めていた。地上に出た瞬間、いきなり 人々の悲鳴が聞こえた。隼を駆り、急いで現場へ急行する。 そこでは岩のような外見をしたナイトメア怪人が暴れまわっていた。そしてまなみを 発見した怪人はご丁寧に自己紹介を始めた。 「来たな、新堂まなみ。俺はヘルスター最強のナイトメア怪人、ロックラスだ! この俺様が出てきたからには貴様に勝ち目はないぞ!」 「何者であっても、私が必ず倒します!たぁ!!」 暁一文字を抜き、飛び掛る!ロックラスは動こうともせず、その場で立ち尽くしている。 素早く振り下ろされるまなみの剣筋をただ、眺めるようにしていた。 「速攻で!終わりよぉ!!」 勢いよく、暁がロックラスを斬りつける。…しかし、ロックラスは右腕だけで 攻撃をガードし、余った腕でまなみの腹部へ重たい一撃を与える。 「か…はっ…!」 あまりの衝撃で一瞬、世界が白く変わった。気がつくと、うつ伏せで倒れていた。 「こ、攻撃が効かない…!?」 「俺の体は貴様の攻撃など軽く跳ね返すのだ。そして破壊力もお前と俺とでは 天と地ほどの差がある。さあ、どうする?」 「…どんな強敵でも、私は絶対に負けない…!」 「強気だな、まなみ。しかし、これを見てもそんな口を叩けるかな?」 ロックラスの背後から怪しい影が十一体程、現れた。それは少しづつ、姿を 明確にしていく。はっきりと視認出来るようになった瞬間、まなみは驚愕した。 それは今まで、まなみが倒してきたヘルスター帝国のナイトメア怪人達だったのだ。 ボムスパイダー、カマキリレーザー、ハンマーカブト、フリーザーゴリラ、モグラグロー、 キジバズーカ、デスバタフライ、ドクロマムシ、コウモリオン、ミサイルネズミ… さらにこの前、倒したばかりのコピーシェルまでもが再生していた。 「な、何故…みんな私が倒したはず…!」 「貴様を倒すために、我々も本気を出したというわけだ。いくら貴様でも この戦力に対抗することは出来まい。さあ、地獄を見せてやろう!」 カマキリレーザーから破壊光線が飛び、まなみはそれを辛うじて避わすが、直後に爆弾、 ミサイルが雨のように降り乱れ、まなみの周りで次々と爆発していく。 「くぅあぁぁぁぁ!!」 吹き飛ばされ、受身も取れずに地面に接触する。休む間もなく冷凍、音波、猛毒に鱗粉と 連続でまなみに降りかかり、動きを封じられ、ハンマー打撃に続いて、バズーカ砲が飛び、 次々と攻撃がまなみに直撃していく。先ほど、裕奈に殺されかけ、ダメージも完全に 回復しきっていないというのに、怒涛の攻撃を浴びせられ、今度こそ死ぬと感じていた。 「くぅぅ…うあっ、えぇ!?」 急に脱力したかと思うと、紅色の炎のオーラが抜け、まなみの変身が解けてしまう。 連戦で疲労しているうえに、ダメージも負い過ぎたためだろう。変身していない状態では さすがに対抗手段がない。ナイトメア怪人がジリジリとまなみとの距離を詰めていく。 「万事休す、か…」 まなみの心は絶望に染まろうとしていた。覚悟をして目を閉じる…だが、その時であった! 爆音があたりを騒がせ、先ほどまなみと裕奈が戦ったアジトのあったビルから 巨大な火柱が発生した。火柱はまなみの方角へ飛び、彼女を包み込んだ。 「炎の気が…高まる!」 自身の体力気力を回復させたまなみはビルの屋上へ飛び上がり、体制を整える。 一方、火柱の上がったビルから、一つの光がまなみのもとへ飛んでくる。 その姿を一瞬警戒するが、すぐに解除される。その姿はまさしく親友である裕奈であった。 変身は解けており、バイクに跨っていた。 「裕奈!無事だったのね、良かった…」 先ほどのとは違う、嬉しさで涙を流しそうになる。だが裕奈はまなみ以上に涙を溜め、 耐え切れなくなったようで流し始めた。 「ごめんなさい!あたし、まなみちゃんを殺そうとした…」 「裕奈…あなたが無事ならそれでいいんだよ、恨むべきはあなたを洗脳した ヘルスター帝国なんだから」 「ありがとう、まなみちゃん…ヘルスター帝国も当てが外れたね、まなみちゃんを 倒すための力をヘルスター打倒に使われるんだから。まなみちゃん!」 「裕奈、一緒ならきっと乗り切れる!炎心…」 「うん!頑張っちゃうから!水心…」 「「変幻!!!」」 アイコンタクトを取り、同時に変身する。炎と水のオーラが飛び交い、二人を 剣士の姿へと変えていく。紅い衣と蒼い衣を纏った二人の剣士が並び立つ。 「友を差し向け、私と戦わそうとし、大軍で街を破壊しようとするヘルスター帝国! 炎術剣士、新堂まなみが成敗します!」 「難しいことは分からない!けど、友達を傷つけたり、みんなの幸せを奪う ヘルスター帝国は水術剣士、水無瀬裕奈が叩きのめしちゃうんだから!」 同い年なのに、決め台詞に年齢差が感じられる。そこに黒い光と共に姿を消したはずの バルガン将軍が驚愕の表情で現れた。 「水無瀬裕奈!貴様は俺が始末したはず…!」 「プールなんかに落とさなければよかったのにね。水術剣士になったあたしは水から エネルギーを吸収出来る。まなみちゃんが火から出来るようにね。回復したあたしは アジトをぶっ壊して、大波で脱出したというわけ」 自身の愛車を見る裕奈。裕奈がさらわれた時、一緒に持っていかれたバイクは ヘルスター帝国によって改造され、大波として生まれ変わった。まなみの隼と同じく 戦闘能力を有しており、特殊な状況下でも走ることが出来る。 「ええい、ナイトメア怪人たちよ!二人を倒せ!」 一斉に二人に襲い掛かる怪人軍団。二人は飛び上がり、刀を抜き、斬りかかっていく。 完全回復し、精神も安定している二人は再生怪人が何人いようと負けはしない! 炎流波と水流波が合わさりカマキリレーザーとフリーザーゴリラを撃破する。 キジバズーカやミサイルネズミが砲撃で狙い撃つが、弾は切り払われ、一瞬にして 至近距離まで接近される。反撃する間もなく、まなみと裕奈に斬り倒される。 デスバタフライが、まなみを攻撃しようと飛び出す。それを見た裕奈は戦いに巻き込まれ 大破していたトラックを持ち上げデスバタフライに投げつけ潰した。 小柄で華奢な外見をしているくせに、とんでもないパワーファイターである。 しかし背後からドクロマムシが二人に近づいてくる。目の前の怪人たちに気がいってる 二人を毒に侵すつもりだ。だが、銃声が響いた瞬間、ドクロマムシの目は潰れていた。 「…危なかったわね、まなみ、裕奈」 「明日香さん!来てくれたんだ!」 援護とばかりに怪人たちに連射し、動きを止めていく明日香。二人は隙を逃さず お互い、自身の気を掌へ集めていく。 「火柱…」 「水撃…」 「ストォォォォム!!!」 物凄いエネルギーが残りの再生怪人めがけて放たれ、炎と水とが交じりあった大爆発を 起こし、再生怪人軍団は全滅した。軍団を率いていたロックラスもさすがに慌てだした。 「こ、こんな馬鹿な…!」 「もう終わりよロックラス!」 「あたしとまなみちゃんが力を合わせればどんな奴にも負けないんだから!」 ロックラスが二人を始末しようと拳を繰り出すが、それは避わされ、気づくと まなみと裕奈の神刀はお互いのオーラに包み込まれていた。 「くっ!おのれぇ!!」 「「ダブル!!大破斬!!!」」 単独で繰り出す最強の必殺技である火炎大破斬と水迅大破斬の合体攻撃でロックラスは X字に斬り倒され、爆発四散した。 ヘルスター帝国最大最悪の作戦は、二人の剣士によって叩き潰された。 裕奈という最高のパートナーと共にバイクで去っていくまなみ。しかしヘルスター帝国は 地球征服の野望を諦めてはいない。二人の力を合わせて戦うのだ。 「解説お姉さんです!裕奈ちゃんが正気に戻ったうえに仲間になってくれるなんて とても心強いね!まなみちゃんが炎の術を使うのに対して、裕奈ちゃんは水の術を 操る剣士なの。専用バイクの大波は水中でも走れるすごいメカ! 今回のナイトメア怪人はロックラス!岩のように硬い体はまなみちゃんの攻撃も跳ね返す。 さらに再生怪人軍団まで率いていたけど、裕奈ちゃんとまなみちゃんの合体攻撃に 倒れたわ。それじゃまた次回も見てね!」 次回予告「テレビゲームで遊んでいた子供達が、消えていく!?いなくなった子供達の 行方を追うまなみと裕奈に襲いくるヘルスターの計画とはなにか? 次回『ハイスコア狙いならまなみと裕奈!?』次回もお楽しみに!」 水術剣士の力を与えられ、ヘルスター帝国に洗脳されていた水無瀬裕奈と戦うまなみ。 裕奈はバルガン将軍の介入によって殺されてしまったと思われたが、ロックラスと 再生怪人軍団にまなみが苦戦しているとき、裕奈は復活し、まなみと共に ヘルスター大軍団を叩きのめす。まなみに心強い仲間が出来た瞬間だった。 炎術剣士まなみ 第十四話『ハイスコア狙いならまなみと裕奈!?』 外はどしゃ降りの大雨。その日、まなみと裕奈は、近所の子供達と喫茶店レイラの スタッフルームでテレビゲームをしていた。 「まなみお姉ちゃん、弱いなぁ~スマッシュ攻撃ばかりだし」 「…て、手加減してるの!」 「嘘だぁ~!物凄く真剣な表情だったよ」 「無敵のまなみちゃんもゲームじゃ、そうはいかないんだね」 「裕奈!」 思わず、怒りそうになる。基本的に万能なまなみもゲームは下手なようだ。 またもまなみの使用キャラクターは撃墜される。ぴやあぁぁぁという声を上げながら。 「また、ヤラレチャッタ…」 「やっぱりまなみお姉ちゃん、下手じゃん…。裕奈お姉ちゃんやってよ」 まなみと裕奈がコントローラー替えする。裕奈はそれなりにゲームは得意なほうで 子供達とワイワイ遊んでいた。まなみはその光景を寂しく見つめていた。 しばらくすると、雪絵が入ってきた。 「ほらみんな、もういい時間だよ。雨も上がったし、そろそろ帰りな」 そう言うと、子供達は帰り支度をしながら話をしている。 「帰ったら、ヘルスナイパーズやるんだ!」 「俺も俺も!」 「なぁに?新しいゲーム?」 子供達の話題に挙がったゲームソフトについて聞く裕奈。 「そうだよ。シューティングゲームで、いろんなものを破壊できるんだ!」 皆、目を輝かせながらゲームについての話をする。どうやら今日発売されたばかりの 新作ソフトらしい。価格が小学生でも手の届く値段らしい。 みんな去った後、ふと裕奈がまなみの顔を見ると、なにやら表情がおかしかった。 「…まなみちゃん?どうしたの?」 「次は絶対に負けない…!」 負けず嫌いな面に火がついてしまったようだ。 ところかわって、今日まなみたちと遊んでいた子供達の一人、直人はゲームショップで 予約していたヘルスナイパーズを受け取り、足早に帰宅した。 自室に入るや鞄を放り投げ、すぐさまゲームを起動した。最初は簡単で敵の攻撃も 大したものではなく、進めば進むほど難易度は上がるが装備も充実しているため なんなくクリア出来た。外からの情報をシャットダウンして、直人はついに、 エンディングを迎えた。スタッフロールが終わると同時に、隠しステージに行ける コマンドが表示された。 「なになに…下下上上左B右A…と」 コマンドを押すと、すぐに新しいゲームが始まった。今度は敵の攻撃が激しく、直人は あっという間にゲームオーバーになってしまう。すると、画面にヒントが表示される。 そこには… 『高得点を狙って最強装備で行くには新堂まなみと水無瀬裕奈を倒そう!』 「…新堂まなみと水無瀬裕奈を…倒す…」 直人の目は虚ろになり、フラフラとどこかへ出て行ってしまう。直人の母親が晩御飯の 時間だと直人を呼びに部屋へ来るが、すでにそこには彼の姿は無かった。 翌日、直人のみならず、近所の子供達のほとんどが行方不明になっていた。警察が捜査を 始めるが、手掛かりは掴めないまま、時間が過ぎていく。そんな中、まなみと裕奈も 遊んだことのある子供達ばかりで他人事とは思えなかったからだ。 二人は子供達の親に話を聞いてみることにした。 「昨日、直人君は部屋で何をしていたんですか?」 「ゲームで遊んでいましたね、なんでも新作のゲームがどうとか」 「ゲーム以外のことをしている様子はありましたか?」 「いえ、たぶん無いわ」 「まなみちゃん、もしかして…」 「うん、裕奈はゲームを明日香さんに調べてもらって。私はゲームを作った会社に 行ってみるわ」 まなみは隼でゲーム制作会社であるキラーソフト社に向かう。裕奈は早速、子供達が 遊んでいたゲームを明日香と一緒に調べることにした。コンピュータに解析させてみると 恐るべきことが判明したのだ。 「なんてこと…!裕奈、このゲームには恐ろしいまでの催眠効果があるわ」 「じゃあ、みんないなくなっちゃったのは、やっぱりこのゲームのせいってこと?」 「それだけじゃないわ。このゲームのとあるデータを見たらまなみ、裕奈。あなたたちを 倒すように洗脳される仕組みになっている…」 「ヘルスター帝国の仕業で間違いないんだ!まなみちゃんのとこに急ぐね!」 その頃、まなみはキラーソフト社の入り口まで来ていた。 「けっこう大きな会社ね…部屋の一室じゃない、ビル全部がキラーソフト…でも、 こんなに立派なビルで、大きな会社なのに、人の気配がまるでしない…普通、入り口には 警備員ぐらい、いても不思議ではないのに…」 不審に思いながらも、まなみはビル内部へと侵入する。別段、怪しい部屋などは無い…が やはりどこのフロアも人は見当たらない。途中、パソコンがずらりとたくさん並んだ 部屋を発見し、そこに入り、モニターを覗いてみると、そこにはまなみと裕奈の画像が 貼ってあった。さらにそこには二人のデータも表示されていた。二人のデータが 必要な者といえば…まなみは確信をした。 「私と裕奈の写真が…薄々感づいてはいたけど、ヘルスター帝国の仕業で 間違いないようね。子供達をさらってどうするつもりなのかしら…」 まなみは部屋を後にし、最上階にある社長室に向かう。社長室の手前まで来たとこに 突然、声を掛けられた。今まで誰も居ない空間だったため、まなみは裏拳を 繰り出しながら振り向いた。そこには冷や汗状態の裕奈がいた。 「ゆ、裕奈か…もう、ビックリさせないでよ」 「それはこっちの台詞だよぉ~あともうちょっとで当たるとこだったんだから!」 「ごめん、この建物誰もいなかったからつい警戒しちゃって。それより、 ヘルスター帝国の仕業で間違いなさそうよ」 「うん、こっちもそう思って急いで来たの。あいつら何企んでるのかな…?」 二人揃ったところで、社長室に突入するまなみと裕奈。入ると、入り口が 固く閉ざされてしまう。同時に不気味な笑い声が響く。 「くっ…分かってはいたけどね」 「もう!笑ってないで早く出てきなさいよ!」 すると黒い煙とともに、両手が鋏の怪人が現れた。フォッフォッフォッと声を出し 「ふははは!子供のために危険を顧みずノコノコやってくるとはな。俺の名は デンシザリガニだ。子供の間で人気のゲームを使えばこの程度、容易いものだな」 すると、部屋の周りからどこから現れたのか、いなくなった子供たちがまなみと裕奈を 360度、取り囲む。子供達は銃を手にしている。 「デンシザリガニ!みんなに何をした!?」 「純粋な子供は洗脳をするのが容易いものだなぁ。みんな、ハイスコアを狙うために お前たちを殺そうとしているぞ。お前たちも子供が相手では抵抗出来まい!!」 「最低ね、絶対に許さないんだから!まなみちゃん!水心変幻!」 「分かってる!炎心変幻!」 剣士の姿に変身し、回転ジャンプで取り囲みから脱出した。 「罪無き子供達をさらい、洗脳するヘルスター帝国!炎術剣士新堂まなみが成敗します!」 「ゲームが悪いものみたいに思われちゃうじゃない!水術剣士水無瀬裕奈が 叩きのめしちゃうんだから!」 名乗りを挙げると同時に部屋の壁から戦闘員コザーが飛び出してくる。 二人は刀でそれを斬り倒していく。その時、銃声が響き二人はとっさに飛んで避わす。 子供達が、二人に向かって発砲してきたのだ。 「くっ!みんな、正気に戻って!」 「…まなみと裕奈を倒せば高得点…」 「隠しステージをクリアするため…」 まなみの声は届かず、子供達は二人に連射してくる。 「みんなを止めなきゃ!水輪波!」 裕奈は水で生み出した輪を子供達に飛ばし、動きを止める。みんなを傷つけることなく、 動きを止める最適な手段だ。 「ごめんね、ちょっとだけ我慢しててね」 「さあ、デンシザリガニ!あとはあなただけよ!」 「俺様の力を甘く見るな!くらえぇぇぇ!!」 デンシザリガニは口から二人に向かって無数の泡を飛ばしてくる。避けきれない 二人に付着すると電流が流れだす! 「あああぁぁぁぁ!!」 「うああ、くぅぅ…!!」 「どうだ、もがけ苦しめ!あとは俺様の鋏で首を刎ねてやる!」 徐々に二人に近づいてくるデンシザリガニ。まなみが苦しみながらも顔を上げる。 「このままじゃ…あぐぅぅ…こうなったら…火柱ストォォォォォム!!」 普段は敵に投げつける火柱ストームを自分にぶつけ、付着した泡を除去する。 続けて、裕奈にも飛ばし二人は脱出する。 「ごめん、裕奈!これしか方法が思いつかなかった…」 「大丈夫…まだ熱いけど…それよりもあいつを!」 二人はデンシザリガニを睨みつけ、暁と村雨を構える。 「くそぉ、こうなれば一時撤退を…!」 「「ダブル!!大破斬!!」」 「ぐああああああ!!…よ、容赦無い、な…!ぐふっ」 ガクッと項垂れると同時に爆発した。すると子供達も正気に戻った。 「あれ…俺、ゲームやってたはずなんだけど…あっ!お姉ちゃんたち!」 「みんな大丈夫?怪我とかない?」 「全然平気だよ。それより、お姉ちゃんたちが変身してるってことは悪い奴らが 出たの?俺達、どうしてこんなとこに?」 「悪い奴らはまなみちゃんとあたしが倒したよ。みんなはその悪い奴らに 連れ去られちゃったの。でもそれ以上のことはないから、安心してね…」 事実は言えないので適当にお茶を濁す二人であった。 後日、再び喫茶店レイラにて、まなみ、裕奈と一緒にとある対戦ゲームで 遊ぶ子供達の姿が。まなみの操作するキャラはやはり、あっさりと撃墜される。 「あ、あんなに練習したのに…またヤラレチャッタ…」 「やっぱりまなみお姉ちゃんは下手だなぁ。裕奈お姉ちゃん勝負しようよ」 「いいよ、まなみちゅん代わって~!」 「はいはい…」 ゲームで負けても、現実のヘルスターとの戦いは負けるわけにはいかない。 まなみはそんなことを考えながら、また寂しくみんなの様子を見ているのであった。 「解説お姉さんです。今回登場したナイトメア怪人はデンシザリガニ! ゲームを使って子供達を洗脳してまなみちゃんと裕奈ちゃんを倒そうとしたわ。 電流を帯びた泡を放射して、相手を苦しめながら、巨大な鋏でちょん切っちゃおうと する怖い奴!まなみちゃんの機転が無かったら危なかったねぇ~! 次回もお楽しみに!」 次回予告「次々と相手ボクサーを破り、ヒールっぷりを発揮する凶悪なボクサーが 登場した。その強さに秘められたヘルスター帝国の影が忍び寄る。 果たして、裕奈はヘルスターの野望を止められるのか!? 次回『悪夢のリング!裕奈危うし!』来週も見てね」 テレビゲームを利用し、子供達を誘拐したデンシザリガニは子供達を洗脳し ヘルスター帝国の兵士としまなみと裕奈を倒そうと企む。しかし、二人が デンシザリガニを倒した時、子供達の洗脳は解除されたのであった。 炎術剣士まなみ 第十五話『悪夢のリング!裕奈危うし!』 まなみが大学に行っている間、裕奈は暇である。なにせ自宅警備員だから。 今日もレイラで昼食を取りつつ、暇を潰している。あまりにも暇なせいか 何故かは知らないが、急に歌いだした。 「世界いち~みんなの人気者♪それは彼女のこと!ゆうな~♪ 一目見れば誰もが振り向く♪当たり前裕奈だもん♪」 どこかで聴いた気のする歌を歌っている裕奈を呆れ顔で見ている雪絵。 「な~に、ナルシストっぽい歌を歌ってるのよ…」 「だって最近のテレビはつまんないし、他にやること無いんだもん。 雪絵さん、ゲームでもしようよぉ」 「裕奈…あんたねぇ、暇なら店の手伝いでもしなさいよ。ゲームならまなみが 帰ってきてから、二人でやりな」 「今日はまなみちゃん遅くなるらしいんだもん。出席日数がどうこう言ってた」 「それじゃあワガママは言えんでしょ。ほらもう、店の手伝いもしないなら つまんなくても、テレビでも見てな」 渋々、裕奈が適当にチャンネルを回していると、ワイドショーが映り、なんとなく見ると スポーツのコーナーであった。キャスターはボクシングの話をしている。 「…今夜の試合はチャンピオン荒川健二選手と挑戦者不知火竜選手の対戦です。 不知火選手はデビューして間もないというのに、これまでの対戦選手を 全員TKOしてきたという突如現れた怪物選手です。今夜の試合が楽しみですね」 画面には両選手の写真が映し出される。荒川は気の良さそうな顔立ちをしているが、 一方の不知火は荒々しく、強面である。 「うわ~この不知火って人、強そうだけど、応援はしたくないなぁ~」 「どうして?あんた、強そうな男を好みそうなのに」 「だって、ヒールな気をびんびんに感じるんだもん」 そして時は流れ、夕食時に生放送で荒川対不知火の試合のゴングが鳴り響いた。 裕奈は雪絵と一緒にその試合模様を見ることに。まなみも今日は遅くまで帰れないことが 分かったため、これしかやることがないのだ。 試合は最初はお互いの力を試すような展開であった。が、しばらくすると荒川の 猛ラッシュが始まった。不知火は防御に徹している。 「やっぱチャンピオンだもん。荒川選手が勝つね、防戦一方じゃん、不知火って人」 その通り、いつまでも不知火は攻撃が出来ない。荒川は攻め続ける。 「どうした不知火!今までの対戦相手を軽く倒したお前の実力はそんなものか!?」 挑発的な荒川に対し、怪しい笑みを浮かべる不知火。 「ははは…それでは本気でいきましょう…!」 猛攻から抜け出し、数発殴りつける。荒川の実力は本物だ。しかし、全て防ぐことが 出来ないどころか、モロに受けてしまう。 「ぐぉっ…!」 「それではとどめです」 言い放った瞬間には、荒川は倒れ伏していた。肉眼では捉えきれず、カメラも 残像程度でしか残らなかった不知火のあまりにも早いアッパーカットが決まっていた。 「レフェリー、早くカウントを」 「あっ、1、2、3…」 観客はもちろん、その場にいた全ての者が状況を見入っていた。 レフェリーも例外ではなかったため、不知火が役割を思い出させた。 「…9、10!」 不知火が一瞬のうちに逆転、勝利を掴んだ瞬間であった。テレビで見ていた 雪絵も驚きの表情であったが、裕奈だけは少し違っていた。 「あの人、人間じゃないんじゃないかな…」 翌日のスポーツニュースは不知火のことで持ちきりであった。 テレビのインタビューで不知火は自分の力に絶対の自信があることを切り出す。 「力こそ絶対ですからね。それ以外のことなど不要です」 インタビューでそんなことを言い出す。さらにその後の試合も余裕で勝利していく。 いずれの試合もTKOで決まっており、世間では彼のことをその圧倒的な強さから かつて白亜紀に王者として君臨していた凶暴な肉食恐竜と同じ、ティラノザウルスの 異名で呼ぶようになっていた。 そんなある日、その日も軽く勝利し、控え室に戻る不知火。控え室で着替えをしていると 閃光とともに、戦闘員コザーとデリック参謀が現れた。 「くくく、よくやっているようだな、不知火竜…いや、ティラノファイターよ」 不知火が胸に手を当て、そこから光が全身に広がっていく。光が収まるとそこには ティラノザウルスの姿によく似た、ナイトメア怪人に不知火は変身していた。 「キシャァァァァ!!デリック様、あのようなボクサーどもでは私の相手になりません! 手加減しても一発で勝負は着いてしまう。やはり新堂まなみか、水無瀬裕奈と 俺は戦いたい!」 「では、まずは裕奈を倒せ。お前のパワーならたとえ裕奈といえども、赤子同然であろう」 「ははっ!では早速、奴のところへ…」 「待てっティラノファイター!」 戦意が高まり、勇み足になるティラノファイターをデリックは止める。 「何故、止めるのです?」 「なんのためにお前をプロボクシングの世界に入れたと思っている?お前は十日後の 試合に出場し、まずは優勝しろ。その試合には、政治家や芸能人達が観戦に来る」 「なるほど、まずはそいつらを始末するのですな?」 「いや、こいつらは単なる囮だ。こいつらを使って水無瀬裕奈を誘き寄せるのだ」 「分かりました!…ぐはは!今に見ていろ水無瀬裕奈。お前を倒すのがすごく楽しみだぜ」 そして十日後の試合当日。不知火は今回も相手が付け入る隙も無いまま、相手を ノックダウンしていく。今回の試合も生放送で全国にその模様が流れている。 「いいぞ~不知火!」 さらに次の試合も、わざと相手にしばらく攻撃させ、カウンターで勝負を決めた。 「不知火選手、またも勝利!天井知らずの強さです!」 歓声が上がり、その瞬間、不知火の優勝が決まった。今回のゲストであった 政治家である石川善太郎議員からトロフィーを受け取ることに。 リング上に上がりトロフィーを持ってくる石川。 「素晴らしい試合でした!これからも頑張ってください」 石川がトロフィーを渡そうとした瞬間、不知火は石川の背後に回り動きを抑えだす。 「な、なにをするんだ!?」 「ぐへへ…やっとこの日が来たぜ。ぐはははは!!」 高笑いと同時に不知火はその正体であるティラノファイターの姿へと変わる。 その恐ろしい姿を見た会場にいた人々は逃げようとするが 「おっと!この会場の外には戦闘員が多数いるのだ。貴様らに逃げ場は無い!」 「そ、そんな!」 「助けてください!」 人々の悲鳴が入り混じるなか、不気味に笑いながらティラノファイターは続けて喋る。 「さあ、このままではこの会場にいるもの全員の命は無いぞ!全国中継だから それを見ている誰かが助けにくるかもしれんがなぁ…?」 試合会場をヘルスター帝国が占拠したとの知らせを受け、水無瀬裕奈は 大波で試合会場へと急いだ。 「みんな、待ってて!今すぐあたしが行く!それにしても、やっぱり人間じゃなかった…」 以前の裕奈の予感は的中した。的中しないほうが良かったのだが。 「よ~し、水心変幻!!」 会場への道中、裕奈は水術剣士の姿へ変身する。大波の速度を上げ、目的地へ 一直線。会場の周りにいる戦闘員を全て倒し、中へ物凄い勢いのまま突入する。 そのままリングに突き進み大波から飛び降りリングポールへと着地、立ち上がる裕奈。 「どんなスポーツでもね、あんたみたいな人の迷惑になるような奴はお断りよ! 水術剣士!水無瀬裕奈が叩き潰しちゃうんだから!」 裕奈の登場、名乗りが挙がった瞬間、会場には歓声が響き渡る。 「おお~!!裕奈ちゃんだぁ~!!」 「これで俺たちも助かる!」 人々は安堵した表情を浮かべる。ティラノファイターは石川を突き飛ばし 「やっと来たな裕奈!俺は貴様を倒すティラノファイターだ。見えるぜ、お前が このリングに叩き伏せられる姿が!」 「はっ!あんたなんかにあたしは負けないんだから!たあ!!」 リングから飛び、足に水流を纏わせる。 「水流竜巻キィィィィック!!」 「甘いぜ!」 破壊力抜群である必殺キックを怪人は片手で受け止め、そのまま足を掴み裕奈を マットへ叩きつける。 「どうした、裕奈?貴様自慢のパワーとやらはこの程度か?」 「あう…!まだまだこれから!てぇやぁ!!」 再び立ち上がり跳躍する。すばやく正拳突きを決めようとするが、怪人の口から 火炎が放射され、慌てて水迅障壁を張りそれを防ぐ。別の角度から水流波を放つが、 それも両手で防がれてしまう。 「はぁはぁ…!全然攻撃が効かないよ…」 「それで終わりか水無瀬裕奈!では、次は俺の番だな!」 ティラノファイターが裕奈に向かって突進してくる。それを避わそうとする裕奈であるが 怪人の尾が裕奈の腰を打ち、ロープに叩きつける。 「くぅっ!」 「とどめだ!」 「うあああぁぁぁぁっ!!」 先ほどのダメージで回避が出来ない裕奈の右腕に、その鋭い牙で噛み付く。 あまりの痛みに悲鳴を上げ、苦しむ裕奈。噛まれた右腕から鮮血が流れ出す。 ティラノファイターは勢いをつけ、顎を上げ裕奈の腕を放し、天井に叩きつける。 「ぐっ…ああぁ…!」 そのままリングに落下する。すでに疲弊し、身体中どこも痛みが激しいというのに 裕奈はそれでも立ち上がる。 「そのような身体でもまだ立ち上がるか。俺様の必殺技でKOだ!!」 立ち上がることは出来ても、すでに歩くことさえままならない裕奈に突進し、 右腕を腰辺りまで落とし、反動を利用した一撃を裕奈に喰らわせる。 「ティラノアッパァァァ!!」 「うわあぁぁぁぁ!!」 腹部から一気に顎までの強力な一撃を受けた裕奈は空中で回転しながらリングマットに うつ伏せに倒れ付し、今度はもう立ち上がることが出来なかった。 「キシャァァァ!水無瀬裕奈など俺に掛かれば子ども扱いだぜ。くかかか…!」 裕奈を嘲笑いながら、ティラノファイターは姿を消した。怪人が消えたことにより、 その会場にいた人々は救われた…が、人々の心は曇っていた。 「ゆ、裕奈ちゃんが負けた…!」 「いや、やっぱりまなみちゃんがいないと駄目なんじゃないか?」 誰かの発言に、裕奈は反論しようとする。 「た、確かに…あたしは…負けちゃったけど、次は必ず…」 その反論さえも、人々の発言によって消されていく。 「地球を守る戦いは絶対負けられない戦いなんだぞ!?」 「裕奈ちゃんみたいな、ちっこい子じゃあんな怪人は倒せないよ」 「そんな強さでよく、ヘルスター帝国なんかと戦っているな!」 「弱い正義の味方はお呼びじゃねぇ!」 人々の自分勝手な発言は、肉体的ダメージが激しい裕奈に追い討ちを掛けるが如く 精神的にも追い詰め、エスカレートしてきた連中は仕舞いには物を投げ出す者まで現れた。 「いやぁっ!みんなやめて!うっ…こんなのって…ないよ…!」 思わず泣き出しそうになった時、会場に向かってバイクの走る音が聞こえ出し、 こちらに向かってきた。それは既に変身済みのまなみであった。裕奈の姿を見た瞬間、 まなみは瞬時に今の状況を理解し、裕奈に近寄り抱きかかえた。 「裕奈、大丈夫!?皆さん、こんなの酷いですよ!裕奈は立派に戦ったのに!」 「それでも負けちゃ意味が無い!そうなったら、もう地球は終わってしまうんだ!」 確かにそうだ、まなみと裕奈の戦いは絶対に負けられない戦いではある。 だからと言って、敗北した裕奈にこの仕打ちはあまりではないか、まなみは 人々を守る使命と同時に、勝手な発言を繰り返す人々に怒りさえ覚え始めていた。 「ごめん…まなみ、ちゃん…負けちゃった…うぅっ」 「裕奈、しっかりして!…とりあえず帰ろう、ね?…大波!」 まなみが裕奈の相棒を呼ぶと大波は裕奈を乗せて走り出す。まなみも隼に乗り、 撤退することに。帰り際に会場の人々に向かって叫ぶ。 「あの怪人は、恐ろしく強い…だけど!私も裕奈も次は必ず勝ちます!命がある限り 何度でも立ち上がって戦います!!」 告げると、まなみも裕奈のあとに続く。会場内ではボクシングの話をする者など、一人も おらず、怪人や裕奈、まなみの話で持ち切りであった。 一方、傷だらけで帰っていく裕奈は虚ろな表情でいた。身体の痛みはひどいが、 そんなことは微々たること。それよりも負けた悔しさと、人々に浴びせられた罵声で 精神的に完全に参ってしまっている。裕奈は再び復活出来るのであろうか…? 「解説お姉さんです。裕奈ちゃん専用バイクの大波は時速400キロ、陸を走り、 約10分程度ながら飛行も可能!さらに水上、水中も走れます。まさに水術剣士の 裕奈ちゃんの良き相棒ね。もちろんミサイル、レーザー付き!違法改造なんて知らない! 今回登場したティラノファイターは強靭な肉体と高い攻撃力を持っているナイトメア怪人。 そのパワーに裕奈ちゃんでさえ力及ばず…でも次は裕奈ちゃんが必ず勝つよね!」 次回予告「ティラノファイターに敗れた裕奈は、社会的信用まで失い追い詰められていく。 そんな中、ヘルスター帝国はティラノファイターを使い破壊活動を行っていく。 裕奈は復活出来るのか、そして凶悪な怪人を倒すことができるのか!?負けるな裕奈! 次回『正義の灯よ再び!必殺作戦』お楽しみに」
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174 名前:1 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05 10 12 いない歴=年齢の俺。 そんな俺にもまた今年のクリスマスがやってきた。 「受験で忙しいから」「バイトがあるから」 そんな言い訳を今年は使えない。俺はふらりと一人で繁華街へと繰り出した。 ただセンチメンタルな気分になる自分に酔っていた。 誰とも目を合わせず、何の表情も作らず、クリスマスの雰囲気に自分を 溶け込ませようとする。 旗から見れば、溶け込むどころか浮いていただろう。 結局自分に酔ってただけなのだから。 前を向いて歩いてないんだから当然なのだが、ホスト風の男性と肩がぶつかった。 「なにぶつかっとんじゃコラ」 いつもは即座に謝る俺も、今日ばかりは虚勢を張らずにはいられない。 無言で睨みつける。 相手はさらにぶち切れる。 「おまえ喧嘩売ってんのか?こっち来いや」 (クリスマスに喧嘩ってのも面白いな、ははは・・・) 他人事に思ってしまうほど、今日の俺には現実を直視する力が抜け落ちていた。 175 名前:2 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05 11 36 (ニャー・・・) 何の泣き声!? 俺は路地裏で目を覚ました。 どうやらフルボッコにされて今目を覚ましたみたい。 口から血は出るし、全身が痛むけど、そんなことより俺の意識は 目の前の一匹の野良猫に向けられていた。 今にも死にそうなほど衰弱してる。だけど目には強い意志が宿されてるように思えた。 「かわいそうにな・・・」 たまたま持っていたコンビニのパンをあげるが、一向に食べようとしない。 「食べなきゃ死ぬぞ?」 パンを食べもせず、くわえたままこちらをじっと見ている。 意味不明。 ただ、その猫に妙に愛着を持ってしまったのは確かなことだった。 理由はわからない。 不幸な境遇という点で自分をその猫に重ねることができたから? いや、その猫と俺とは何か根本的に違うように思えた。 176 名前:3 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05 13 35 トボトボと足取り重く帰路に着く。 食卓には普段より豪華なごちそうと、ケーキがあった。 両親と中学生の弟、と俺という4人の食卓。 姉は彼氏とどこかへ出かけてるようだ。 それなりに料理はうまいし、会話も意外と弾んだ。 しかし。「不幸な俺」「彼女にすら恵まれない俺」 悲劇のヒローインぶってる俺には素直に楽しめるはずもない。 勢いにまかせて酒を流しこんいた。 177 名前:4 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05 14 10 (ニャー・・・) 何の泣き声!? 酔って寝てしまってから、数時間して目を覚ました。 なんだ、今の泣き声? どう考えても空耳なのだが、俺は路地裏で会った猫を思い出した。 なぜかもう一度会いたくなって、牛乳と食べ物を持って同じ場所へ向かってみる。 その場所にはさっき会った猫とその子供?みたいな猫が3匹いた。 身を寄せ合って、今にもこごえそうな身を寄せ合っている。 (そういうことか・・・) 「理解」するのに時間はかからなかったし、それと同時に 自分の中に熱い気持ちが湧き出てくるのを感じた。 178 名前:5 投稿日:2007/11/28(水) 05 15 03 (死にかかっているのに目の前のパンを食べないのは子供のため だったんだね・・・。) 猫と自分との間に感じた根本的な違い。 それは愛する者を持つか持たないかの違い。 異性だろうが家族だろうが関係ない。 俺は傷つくのが怖くて、誰も愛そうとしない。だから愛されもしない。 ただ、「不幸だから」で終わらせてた自分が情けなくなった。 猫は「不運」であっても「不幸」ではなかったのかも。 俺は猫に持ってきたクリスマスプレゼントを残し、その場を立ち去った。 「来年もどうせ彼女なんてできないし」じゃなくて 「来年までに彼女作りたい」 そう思えるようになるのは少し後のことだが、 クリスマスイルミネーションが今までよりも少しまぶしく見えた。
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アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
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男:2008/02/15(金) 00 11 56 0 「会うのはまた今度にしましょう。」 これじゃあ、ダメだ。なんて返信すればいいんだろう。 まだ進路も決まっていないし、生活自体もまとまっていない。 遊んでばかりいる日々、後悔が募らないはずは無い。 二年前に高校を卒業したが、進路を決めることができなかった。 多少は周りの動きに焦らされたが、それでも僕は遊んで暮らしていたんだ。 結局、そのせいで彼女とは別れることになったんだが、今もその生活は変わっていない。 大学に行くにしろ、就職するにしろ、なんとなく一歩を踏み出すことができないんだ。 別に、自分に偉大な可能性を感じているわけでも、 束縛されるのが嫌だとか、そういうわけでもない。 ただなんとなく、今はフリーターで十分なのだ。 女:2008/02/15(金) 00 13 46 0 彼は今、何をしてるんだろう。 久しぶりにメールしたあの日からそんなことばかり考えてしまう。 元の鞘に収まりたいという気持ちも幾らかはあるが、なんとなく今はダメな気がするのだ。 別に、仕事していないからとか、大学に行っていないから、とかそんなことは気にしていない。 どちらかというと、「自分自身」について真剣に考えようとしない彼そのものに腹を立てているのだ。 それを証拠に、今でも彼のことを思い出すと少しだけイライラする。 不快感なイライラではないが、なんとなく放ってはおけない。 私って、なんでこんなにおせっかいなんだろう、そんな思いばかりが積ってしまう。 彼は誰よりも素晴らしい才能を持っているのだ、私は知っている。 二人が出会ってから一度だけ、彼を本気で怒らせたことがある。 他の思い出が遠く色褪せてしまっても、あの思い出だけは今でも鮮明に残っているのだ。 男:2008/02/15(金) 00 15 50 0 「…。」 ふと、静寂で息が詰まりそうになる。 こんな時、何て言ってあげるのが模範解答なんだろうか。 振られた女の子を慰める言葉なんて、持ち合わせていない。 自分の不甲斐なさと、器量の無さについ落胆してしまう。 ただ傍にいて、涙を拭いてあげることしかできない。 肩を震わせ、声を押し殺して、じっと黙り込んでいるクラスメート。 いつも気丈で強引に振舞っているこの人とは打って変わって、今は確かに女の子だ。 何も語り掛けない僕と、何も話そうとしない彼女。 まるで言葉なんて失われてしまったかのように、ここだけは闇に包まれている。 こうしてもうどのくらいの時間が経っただろう。彼女も僕もずっと、息を潜めている。 女:2008/02/15(金) 00 20 03 0 嫌だ。別れたくない。意味がわからない。悪いのは・・・わたし? さっきから同じ事を何度も何度も自分に問い掛ける。 心の痛さを感じる暇がないほどに、何かに焦っている。 今なら、まだ巻き戻せるような、それでもやっぱりどうにもできないような… 「もういいよ」 彼は私の言葉に少しだけ驚いたのか、困ったような顔で私を見つめている。 本当は誰にもこんな姿見せたくなかったのだ。こんなにも情け無くて、弱い私。 いつもの私とは明らかに違っている。 「もういいから、ありがとう」 「あ、うん」 そこで会話が途切れ、彼もまた何も言ってこない。 何も言わないことが一番だとでも思っているのだろうか、 それとも、言葉が思い浮かばないだけなんだろうか。こんな時に、私は何を考えているんだろう。 自分の汚さに、また怒りがこみ上げて来る。 「私のこと、惨めだと思った?」 不意に、彼の瞳孔が開いたかと思うと、あきれたように、すぐに背を向けどこかへと歩き出した。 「何なのよ!もう!!」 彼は立ち止まり、怒りを抑えるかのごとく、静かに口を開いた。 「きみが、悲しいのも苦しいのも、俺にはそんなことわからない。 だから、おれも傍にいることしかできないし言葉をかけてやることもできない。 でも、自分を否定するようなこと言うなよ。 明るくて活発なところだけがきみじゃないんだ。 誰にだって、深く落ち込んでしまう瞬間くらいあるよ。 だからといって、きみがきみでなくなるわけでもないし。俺は何とも思わない」 もっともだと思った。全面的に正しいのは彼のほうだ。 頭がうまくまわっていない今でも、彼の言葉は透き通るように私の体の中に入ってきた。 泣いてもいいんだ、そう思った瞬間。また、涙が溢れ出した。 男:2008/02/15(金) 00 22 20 0 結局、メールの返信にはなんて書けばいいんだろう。 あれから2日経った今でも、いい言葉が思い浮かばない。 元の鞘に収まりたいという気持ちも幾らかはあるが、なんとなくこのままじゃダメな気がするのだ。 だから僕は返信をしないことにした。 返信さえしなければ彼女と繋がり続けることができる。 それが僕から彼女に贈る、最初で最後のラブレターだ。
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地球…青く美しく、緑の清々しい風が流れる美しいこの星は、影で遥か昔から数々の 侵略者に狙われてきていた。だが、それを退けてきた戦士達がいたのだ…。 炎術剣士まなみ 第一話「見参!天下無敵の女侍!」 ―――東京。昨日は雨だったが、今日は気持ちのいい快晴である。 その青空の下、首都圏から少し離れた三鷹市を一台のバイクが駆け抜けてゆく。 コンビニの角を曲がったバイクはそのまま桜ヶ丘大学の校門をくぐり、駐輪場に止まる。 バイクに乗っていた人物がヘルメットを外すと中から黒髪のロングヘアーが現れた。 顔立ちは清楚でどことなく凛々しさがある少女、比較的細身の身体つき。 「まなみ~おはよう~!」 この少女に知り合いと思われる人物が声を掛けた。 「おはよう、今日も最初の講義寝るかも」 答えた少女の名は新堂まなみ。この物語の主人公である。一見、どこにでもいるような 女子大生である。しかし、彼女には秘密があった…。 ―――異次元世界。常に呻くような不気味な音声が流れ、闇が渦巻き嵐が起こる 我々の住む世界とは正反対なこの空間。そこに一つ、巨大な城が全てを圧倒するかのようにそびえ立っている。 城の中心に位置する広い部屋。そこには地球人とはかけ離れた容姿の者が多数並んでいる。 そして玉座のような物にどっしりと座っている威圧感を醸し出す文字通り悪魔と呼べる人物。 彼の前に巨大な剣を背負っている鎧姿の、そのような格好でなければ、まだ地球人に似ている人物が口を開く。 「我らが偉大なる皇帝ラデス様!地球侵略準備が整いました。いつでも作戦開始可能です」 「そうか、ご苦労であった将軍バルガンよ。カイマーズ博士よ、作戦に使用する ナイトメア怪人の姿を見せよ」 白髪の還暦程度の老人が口を開く。彼もまだ地球人に似て無くはない。 「はっ。現れよ!ボムスパイダー!」 中央の床から白い煙が発生し、中から蜘蛛のような怪人が現れた。 「ボ~ムスパイダー!皇帝陛下にお目に掛かれるとは光栄であります! 我らヘルスター帝国の栄華のため、今回の作戦、必ずや成功させて見せます」 「頼もしい限りだ、ボムスパイダーよ。参謀デリックよ、異次元通信回路を起動せよ」 ラデスは比較的、若い姿のやはり地球人に似て無くない人物に命令を下す。 「了解。戦闘員コザーよ、D回路を地球方面へ繋げろ」 「ギッー!」 奇声を発しながら作業を開始する戦闘員達。作業終了後、地球には異変が生じた。 地球の各地の空に立体映像のようにヘルスター帝国世界の様子が映る。 「ねえねえ、あの空に浮かんでるの何かな?」 「さあ?なんかのイベントじゃね?」 誰もが映像が映った瞬間はあまり興味を示さなかった。が、すぐに見入ることになった。 そこに皇帝ラデス、悪魔の姿が現れたからだ。そしてラデスの悪夢の宣言が始まる。 「地球人の諸君、我々の名はヘルスター帝国。わしはそれを統べる者、皇帝ラデスだ。 唐突ではあるが、今日よりこの地球は我々ヘルスター帝国が貰い受けることとする」 突然何を言い出すんだと人々は呆れ顔であった。まだイベントだと勘違いしてる者もいる。 「信じられないのであれば信じさせてあげよう。今から日本の東京に我々自慢の ナイトメア怪人を送り込む。楽しんでくれたまえ、はっはっは…!」 宣言が終わり、空に浮かんでいた立体映像も消える。それと同時に東京では 平和な日常が一瞬にして地獄絵図と変貌を遂げた。 「愚かな地球人ども!ボムスパイダー様の力を見よ!!」 東京に一瞬にして出現したボムスパイダーはすぐさま周りの人間をちぎっては投げ、 得意の爆発性蜘蛛糸でビルを破壊していく。警察が立ち向かうが、銃弾も軽く防ぐ ボムスパイダーには意味は無く蜘蛛糸で警察官達を爆破してしまった。 この危機を救うものはいないのだろうか?いや一人だけこの世界にはいるのだ。 それが冒頭に現れたきり、今まで出番が無かった新堂まなみだ。 今、まなみは再びバイクに乗り込み自宅へ向かっていた。大事な物を受け取るために。 一部通行止め状態の場所もあったがまなみは軽々とバイクごとジャンプし それを乗り越えていく。大学からそれほど離れていないまなみの自宅。 外観は和風のお屋敷と言ったところである。庭で掃除をしている女性のとこへまなみは 足早に近寄った。 「お母さん!さっきの放送聞いた!?久々の戦いが始まるってのに、掃除なんかしている 場合じゃないよ!」 「分かってますよぉ。今の私の力じゃ立ち向かえないからまなみちゃんが 帰ってくるまで待ってたのよ。私オバサンになっちゃったし」 まなみの母親、悠美はのほほんとした表情、着物姿。 もう40代だとは思えない若々しい姿である。そして先程までの 表情と打って変わって何もかもを見通すような引き締まった表情になった。 「まなみちゃん、着いてきて」 悠美が向かった先には小さな蔵があり、中に入ってみるとすっかり埃だらけ部屋の 一番奥の棚に小さな箱が。それを開けると中には炎のような形の模様が刻み込まれた 腕輪が出てきた。それをまなみに差し出し、悠美は告げる。 「これの出番も私が現役の頃以来か…正直私はまなみちゃんが傷付くのを 見たくはありません」 「お母さん、心配してくれるのは嬉しいけど、私はこの力で大事なものを守りたいんだ。 そのために子供のころから訓練してきたんだし。今がその時なんだよ」 「分かっているわ。私はあなたの無事を祈っています。さあ『炎輪』を」 まなみが炎輪を左手首に装着する。瞬間、まなみの頭の中では炎のイメージが弾けた。 それこそ、力を継承した証である。 「お母さん、行ってきます!」 新宿駅はほぼ全壊し、高層ビルが倒れ重なり合っている。人々は逃げ出し 人っ子一人いない。すでに殺された者も多数いるだろう。 「地球はなんて張り合いの無いのだ。もはやヘルスター帝国の物というのは確定だなぁ、 ギシェー!」 他愛の無さに大笑いするボムスパイダー。その時、彼の視界に走っている女の子の姿が 入った。逃さんとばかりに瓦礫を蹴り飛ばし女の子の動きを封じた。 「助けてー!ママー!!」 「誰も助けに来るものか!お前は俺に殺されるのだぁ!」 女の子は目を瞑り死を覚悟したが、その瞬間、遠くからエンジンの音が聞こえてくる。 音はどんどん近づいていき、ボムスパイダーに体当たりをかました。 「グオッ!な、なんだ!?」 「さあ、早く逃げて」 まなみは女の子を逃がしファイティングポーズを取る。 「おのれこしゃくな!やれぇ戦闘員よ!!」 すぐさままなみを取り囲む戦闘員達。次の瞬間、一斉に攻撃を仕掛けてきた。 まなみは攻撃を受け流し、投げ飛ばしていく。怯んだ戦闘員達をすかさず回し蹴りで 倒して、ボムスパイダーを睨み付ける。 「おのれ!爆破糸!!」 吐き出してきた糸をバク転で避わし、最後に倒れた高層ビルの天辺に大ジャンプ、 その場に立ち上がる。 「炎心変幻!!」 まなみが叫び、腕を回転させ、炎輪を天に掲げるとまなみを炎が包み込む。最後に 光が発生し、炎が止むとそこには素顔は丸出しだが、頭には白いはちまき、 袴と着物、赤い羽織、そして腰には刀を提げた侍風姿のまなみがそこにはいた。 新撰組のような姿を想像してもらえればいい。 「き、貴様ぁ~何者だ!?」 変身したまなみを見て驚愕するボムスパイダー。まなみが叫ぶ。 「闇を切り裂く正義の炎!新堂まなみ!!ヘルスター帝国!地球はあんた達の 好きにはさせない!成敗します!!」 新堂まなみは炎輪の力で炎心変幻する!ではその原理を説明しよう。 まなみの身体を包み込んだ聖なる炎が戦闘衣へと変化する。炎の中から生み出された 神刀・暁一文字が現れ腰に帯刀した瞬間、まなみは炎術剣士へと変身を完了するのだ。 「ヘルスター帝国、ボムスパイダー!街を破壊し人々を不幸に陥れる…その行い! 断じて許しはしない!!」 「おのれぇい!かかれ!!」 再び多数の戦闘員が現れ突撃してくる。まなみは暁一文字を抜き、八相の構えを取る。 戦闘員達をすれ違いざまに次々と斬りつけ、あっという間に倒していく。 それでも戦闘員の数は多い。遠くから銃撃してくる。だがまなみは前転、側転で 避わしていき、右腕を前に突き出した。 「炎流波!!」 光線状の炎が飛び、敵を焼きつけてゆき、消滅させた。 戦闘員を全滅させたまなみはボムスパイダーと対峙する。格闘戦を展開、まなみは 上手く攻撃を受け流し、懐に拳と蹴りを叩き込む。さらに暁で肩、腰を連続で斬りつけ ダメージを負わしていく。しかしボムスパイダーもやられっ放しではない。 まなみの腕を糸で絡めとったかと思うと、糸を蜘蛛の巣に変え爆発させた。 「どうだぁ~!俺様の力で木っ端微塵にしてやったぞ!」 ボムスパイダーは完全に勝利を確信した。だが、爆風が止むとそこにはダメージ皆無の まなみが暁を握り、堂々と立っていた。 「なに!?あの攻撃を受けて無傷なのか!」 「爆発が起こる直前に火炎障壁を張ったのよ。張るのが遅かったら危なかったわ…。 ボムスパイダー!これで終わりよ!暁一文字!!」 まなみが刀の名を叫びながら抜くと暁が光り輝きだし、同時に宇宙刑事よろしく、 どこからか宙明節が流れ出す。まなみは怒涛の斬撃で両腕を粉砕!そして空高く 飛び上がり、暁に炎を纏わす。 「火炎大破斬!!!」 回転しながら勢いを利用しボムスパイダーを一刀両断した! 「ぬっ!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 大爆発を起こし怪人は消滅した。まなみは暁を紙で拭い、それを空に投げ刀を納める。 戦闘の様子を本拠地で見ていたヘルスター帝国は驚きを隠せないでいた。 「おのれ!…新堂まなみ、思わぬ邪魔者が現れおった!!」 「フハハハハ…バルガン、そう憤るな。これからの地球侵略、面白くなりそうでは ないか!我々を相手にあのまなみという者がどれだけ戦えるか見物だな!!」 「はっ!必ずや新堂まなみの息の根を止めてごらんにいれます」 こうしてまなみとヘルスター帝国の戦いの火蓋が切って落とされた。奴らは手強い。 命の限り、戦え!新堂まなみ!! 「解説お姉さんコーナー!初めまして!このコーナーは私がまなみちゃんや ヘルスター帝国の秘密を教えちゃうよ!第一回はまなみちゃんのプロフィール。 新堂まなみ、桜ヶ丘大学心理学部に通う19歳。明るく優しく文武両道!だけど語学だけは 苦手でしょっちゅう居眠りしているの。彼女の家系は昔っから悪い連中と戦っていて お母さんの現役時代以来、何も問題は起きなかったけど、まなみちゃんの時代に ヘルスター帝国が現れたから久々に戦いの時が来たわけね。まなみちゃんは炎の術を 操る剣士に変身して戦うの。そして今回の怪人はボムスパイダー!記念すべき ナイトメア怪人第一号。爆発性の蜘蛛の糸で攻撃してくる危険な奴!最初は 蜘蛛の怪人って相場が決まっているのかも。それではまた!」 次回予告「ヘルスター帝国の秘密を暴くため、山奥に建設された帝国のアジトに侵入する まなみ。しかし、事前に察知していた帝国側の卑劣な罠がまなみを襲う!そして現れる 怪人カマキリレーザー!次回『突入!恐怖の秘密基地』こいつはすごっ!」 突如として地球を侵略し始めたヘルスター帝国だったが、炎術剣士の力を受け継いだ 新堂まなみによってそれを阻止される。だが、戦いは始まったばかりであり、 ヘルスター帝国は次の作戦を展開しようとしていた…。 炎術剣士まなみ 第二話「突入!恐怖の秘密基地」 今日は休日。まなみは昼食を取ろうと行きつけの喫茶店・レイラへ向かう。 ここを切り盛りしている立川雪絵はまなみの良き相談相手であり、桜ヶ丘大学の 卒業生でもある。彼女は一つの話を切り出した。 「まなみもすっかり有名人だよねぇ、変身して名乗りあげちゃうなんてさぁ」 「あはは…」 初陣を華々しく飾ったまなみであったが一つ誤算があった。それは特撮ヒーローの如く 変身後の名乗りを挙げてしまったことである。まなみ本人としてもボムスパイダーの 攻撃によって既にその場には誰もいないと踏んでの行為だったが、実はまだ逃げ出せず 隠れていた人間が何人かいた。そしてその者達によって見事に正義の味方として 世間に公開されてしまうのであった…。 「あれはしまったと思いましたよ…絶対にゴーストタウンだと思ってたのに。 おかげでしばらくの間、テレビ局やら新聞社やら家に押しかけて来ちゃって…。 やっぱり、心から信頼できる人にしか正体は明かしちゃ駄目ですね、 雪絵さんみたいな」 「まあ、最初は私もびっくりしたけどね。それより正義の味方に話があるんだけど」 「なんですか?」 「私の友達が高岡山に野鳥観察に行ってから戻ってこないんだ。警察には連絡したけど 何も進展が無いのよ。だから調査に行ってもらえないかな?」 「分かりました。隼!!」 まなみの声に答えて愛車・隼がレイラの前に急行した。それに乗り込み高岡山に向かって まなみが突っ走る。その頃、ヘルスター帝国では…。 「カイマーズよ、高岡山で展開している毒ガス研究はどれほど進んでいる?」 皇帝ラデスは今回の作戦の具合を聞く。 「はっ、既に最終段階であります。あの山の鳥達は生きが良い…我がヘルスター帝国の 毒ガスを日本中にばら撒くため、鳥達を捕獲する計画であります。それに適した ナイトメア怪人・カマキリレーザーが行動を開始しています」 「カマキリレーザーが捕獲した鳥達を改造し、毒ガスを空からばら撒く…実に 面白い作戦だ!期待しているぞ」 高岡山に到着したまなみは隼を降りて捜索を開始する。 「雪絵さんの友人…名前は田無翔子さんだったかな。そんなに広い山じゃないのに 行方不明なんて、何か事件にでも巻き込まれたのか…?」 とにかく山を登ってみることにした。高岡山にはハイキングコースがあり、道に 迷うようなことは山慣れしているであろう翔子が遭難するとは思えない。 まなみはハイキングコースから外れ奥地へと向かう。 林を抜け、川原へと出る。ここはごつごつとした大きい岩だらけでちゃんと 備えていないと大怪我を負っても不思議ではない。 そこに一つの人影が現れた。 「誰!?」 「よかった…人がいた…」 「…!?もしかしてあなたは田無翔子さん?」 「何故私の名を?」 「立川雪絵さんのお友達ですよね。私は新堂まなみ、雪絵さんの後輩です」 「あっ、この前ニュースで、うっ…」 「大丈夫ですか!?とりあえずレイラに戻ろう…」 レイラに戻るとまなみは翔子の介抱を雪絵に任せた。しばらくすると雪絵が 何か引っ掛かるような顔をしながら戻ってきた。 「翔子さんは大丈夫ですか?」 「うん、しばらく休めば大丈夫だと思う。だけど翔子から聞いた話で 少し気になることがね…」 「それは一体?」 「高岡山に野鳥観察行ったのはいいけど、いつもより鳥がいなかったそうで、場所を 変えてみたそうなんだけど、奥地に行ったら怪しい格好の集団と蟷螂の化け物を 見たとかで。その集団に見つかって命辛々逃げて来たってわけらしいのよ」 「怪しい集団、蟷螂の化け物…ヘルスター帝国の仕業ね!雪絵さん、 もう一度高岡山に行ってきます。翔子さんのことをお願いします」 「分かった。気をつけて行ってきな」 まなみは高岡山奥地へと向かう。そこには明らかに最近建てられたと思われる綺麗な 建造物が。そして入り口らしき場所の前にはヘルスター帝国の戦闘員コザーがいた。 「やっぱりそうだ…ヘルスター帝国、何を企んでいるの?ともあれ潜入してみるか…」 素早く戦闘員の背後に回り、連続打撃で倒し潜入する。しかし… ヘルスター帝国のアジト内に声が響く。それは皇帝ラデスの通達だ。 「ヘルスター帝国の戦士諸君…我らの敵、新堂まなみがアジトへ侵入してきた。 発見次第、即座に処刑せよ。どんな手を使っても構わん」 潜入していることがヘルスター帝国に気付かれているとは知らず、まなみはアジトの 奥へと向かっていく。すると突然、鎖付き天井が落ちてきた。 「…!たぁ!」 間一髪、まなみはそれを避わし、次の部屋へ転がり込む。 「バレている?…こんな罠にやられちゃ堪ったもんじゃないわ」 長い通路へと出てしばらくすると、後ろから音が響きだし、段々大きく、近づいてくる。 大岩が転がってきたのだ。 「まったく…いろんな仕掛けがあるのね!」 とにかくまなみは通路を走り、途中横にあった部屋へと入り込む。 「驚いたかね?新堂まなみよ」 「…ヘルスター帝国の怪人!」 「その通り。俺の名はカマキリレーザーだ!」 「くっ…炎心変幻!!」 新堂まなみは炎輪の力で炎心変幻する!ではその原理を説明しよう。 まなみの身体を包み込んだ聖なる炎が戦闘衣へと変化する。炎の中から生み出された 神刀・暁一文字が現れ腰に帯刀した瞬間、まなみは炎術剣士へと変身を完了するのだ。 「カマキリレーザー!お前の目的は何!?」 「教えてやろう。この高岡山の鳥達を改造利用し、ヘルスター帝国の毒ガスを日本中に ばら撒かせるのだ。日本国民を死滅させた後も鳥達は我がヘルスター帝国の 空爆怪人として地球全土を恐怖で包むのだ!」 「そんなことはさせない!たぁぁぁぁ!!」 まなみがカマキリレーザーに飛び掛る。それを見たカマキリレーザーは目の前にある スイッチを押した。すると壁から青い光線が発射されまなみを拘束する。 「うぐっ!」 「まなみよ、ここは帝国のアジトだぞ?我らが有利になる仕掛けがあるのは 当然ではないか?」 「卑怯な…ああぁぁ!」 身動きが取れないまなみに対しカマキリレーザーの鎌からレーザー光線が発射され まなみを痛みつけていく。 「うあぁぁぁ…このままではやられてしまう、こうなったら…」 まなみは気を集中し、それを一気に開放した。 「火炎大津波!!」 「ぐわぁぁ!!」 まなみを中心に炎が部屋一帯を包み、まなみを拘束していた仕掛けもカマキリレーザーも 吹き飛ばされる。 「お、おのれ!ぐっ!」 「たあっ!」 暁を抜き、カマキリレーザーに反撃開始。素早く懐に入り込み、鎌を斬り落とす。 「があぁぁぁぁ!!」 「暁一文字!!」 炎が暁一文字に纏わり、宙明節がどこからか響く。連続で斬りつけたあと、 空高く飛び上がり一刀両断した! 「火炎大破斬!!!」 「カ~マカマ…ぐあああああ!!」 大爆発。まなみは捕まっていた鳥達を助け出し、アジトから脱出した。 「さあ、もう自由だよ」 鳥達は再び高岡山を飛び回った。自由を噛み締めるかのように。 「隼!!」 まなみは隼を呼び出し、装備されている破壊光線でアジトを爆破した。 後日、喫茶店レイラにて。 「まなみ、翔子がお礼言ってたよ。鳥達を助けてくれてありがとうって」 「いやぁ、そう言ってもらえると嬉しいですね」 日本を、鳥と鳥を愛する人を救った新堂まなみ。だがヘルスター帝国はこれからも 卑劣な罠で襲い掛かるに違いない。負けるな、まなみ!! 「解説お姉さんだよ!はい、今日はまなみちゃんの変身後の力を教えちゃうよ。 まず変身後は身体能力が飛躍的に上昇します。ジャンプ力が40m。 走力が100mを5.5秒で走りぬけ、変身前より多くの超能力が使用できちゃうのよ。 そして!今回登場したナイトメア怪人はカマキリレーザー!鳥さん達を 捕獲して改造しちゃおうとした悪い奴!鎌とそこから発射するレーザーが武器! でも卑怯者だから罠を利用してまなみちゃんを倒そうとするどうしようもない怪人ね。 それじゃまたねー!」 次回予告「ヘルスター帝国は、人類滅亡のため、吉川博士の発明品の秘密を暴こうとする。 それが博士の娘にあると踏んだヘルスター帝国は彼女を狙う!急げまなみ! 博士の娘を守れ!次回『帝国の魔の手!闘えまなみ!』こいつはすごいかもな」 日本全土に毒ガス空爆を企んでいたヘルスター帝国の作戦を阻止したまなみ。 だが、ヘルスター帝国は次の行動に移り出していた…。 炎術剣士まなみ 第三話「帝国の魔の手!闘えまなみ!」 東京某所にある吉川研究所。ここでは吉川忠志博士を中心に数々の研究、発明が 行われていた。そしてまた新しい発明品が誕生したのだが…。 「博士、何故このエネルレイを発表しようとは思わないのですか?」 「鍋島君…これは私にとっても最高の発明ではあるよ。エネルレイは地球環境を 汚すことなく人類に必要なエネルギー資源を確保することが出来る…だがこれは 使いようによってはとても恐ろしい物に変わってしまう。特に今はヘルスター帝国が 地球を侵略しようとしているのだ。奴らの未知の科学力でエネルレイを下手に改造でも されてみたまえ…たちまち地球侵略兵器になりかねないぞ!」 「ではエネルレイは破棄してしまうのですか?」 「いや…自分の発明品を捨てるのは科学者にとってとても辛いことだ。まるで肉親を 捨ててしまうかのようで…だから私はとある場所に隠しておくことにした」 「それはいいアイデアですね。隠し場所は?」 「悪いがこれは君にも秘密だ。さあ、また新しい研究に取り組むとしよう」 ヘルスター帝国本部。デリック参謀は皇帝ラデスに次なる作戦の説明を行っていた。 「ラデス様。今回の作戦、吉川博士の発明したエネルレイを奪取し、 それを我々の破壊兵器に利用しようとするものです」 「しかし吉川はあの発明を封印してしまうようだ。隠し場所も分からない。 どう探すのだ?」 「心配御無用でございます。吉川一家の動きを張っていれば必ず…!」 「ハンマーカブトを連れてゆけ!奴を使い、作戦を実行せよ!」 数日後の昼下がり。客足のピークは収まり、今は特に忙しい時間帯ではない喫茶レイラ。 雪絵が皿洗いをしていると男性客が一人現れた。 「いらっしゃいませ、ご注文は?」 「いえ、今日は結構です。あの、新堂まなみさんはおりますか?」 「はあ、まなみは今出ていますけど…あの子に何か?」 「私は吉川忠志と申します。科学者を生業としております」 「あなたがあの吉川博士?それでまなみへの用件はなんです?」 「私の娘を助けてほしいのです!ヘルスター帝国と戦っている新堂まなみさんにそれを お願いしたいのです。それで彼女はよくこの喫茶店へ来ると聞いたものですから…」 その頃、まなみは隼でパトロールを兼ねて街をツーリングしていた。 吹き抜ける風を浴びながら進んでいく。しばらくすると彼女は奇妙な気を感じた。 「…っ!ヘルスター帝国!?」 その感じた気の方へ向かう。場所は多摩川中流付近。まなみが到着すると そこには女の子が、戦闘員コザーに取り囲まれていたのだ。 「いやー!助けてー!!」 「大人しくしろ!貴様の持っている携帯電話をよこすのだ!」 「待ちなさい!!」 まなみが叫び、コザーに飛び掛る。一人投げ飛ばし、後ろに回ってきたコザーを裏拳で 倒す。コザーではまなみの相手にはならなかった。しかしその時、赤いスモッグと ともに一人の怪人が現れた。 「あなた、新しいナイトメア怪人!」 「その通りだ、俺様はハンマーカブトだ!!新堂まなみよ、見てしまったからには 貴様を殺す!!」 右手のハンマーで襲い掛かり、まなみは紙一重で避わしていくも、さすがに劣勢。 「炎心変幻!!」 炎術剣士へと変身し、暁一文字でハンマーを切り払い、数回斬りつけ体勢を整える。 「おのれ、まなみ!だが、次に会うとき、貴様の命は無いぞ!!」 捨て台詞を吐き、姿を消すハンマーカブト。変身を解き、女の子に事情を聞くまなみ。 「大丈夫?」 「うん、ありがとう…あたし、吉川玲奈です」 「玲奈ちゃん、どうして襲われたか理由は分かる?」 「分かんない…だけど、誕生日にパパから携帯電話を貰った日から怪しい人たちが 私のことを着けまわして来るの」 「わかったわ。とりあえず安全なとこに行きましょう」 玲奈を連れ、喫茶レイラへ向かう。 ヘルスター帝国本拠地。任務を果たせなかったハンマーカブトに激昂するバルガン。 「ハンマーカブト!よくおめおめと逃げ帰って来れたものだ!!」 バルガンはハンマーカブトに怒りをぶつける。 「バルガン様!確かに新堂まなみにやられましたが、手は打っております」 「ほう…それはなんだ?」 「まなみは喫茶店レイラに向かったようです。そこで予めレイラに 時限爆弾と…」 「なるほど…いいだろう。面白い、我ら三幹部もその様子を見させてもらおう」 夕方。レイラもそろそろ店終いの時間であった。 「まなみの奴、どこでなにしてるのか…」 「すみません、長居してしまいました」 「いえ、そんな気に気にしないでください…あっまなみ!」 玲奈を連れ、店へ入ってくるまなみ。 「あっパパ!!」 「玲奈!!」 「この子が吉川博士の娘さん?まなみ、これはどういうこと?」 「玲奈ちゃんはヘルスター帝国に襲われていて、私がなんとか助けてきました。 吉川博士、彼女にあげた携帯電話に何か細工をしませんでしたか?」 「ええ…私はエネルレイという新エネルギーを開発しました。しかし、それが 帝国の手に渡るのを恐れ、玲奈の誕生日プレゼントの携帯電話にその秘密を 隠しておきました。ですが、それが仇になるとは…すまなかった玲奈」 「パパ…いいよ、大丈夫だから」 抱き合う親子。それを微笑ましく見ていたまなみ。…その時、奇妙な音に気付いた。 「…!時限爆弾!!どこだ!?」 音を頼りに爆弾を探し出すまなみ。音は観葉植物の後ろ側から出ていた。 「見つけた!!博士、この爆弾を解除出来ますか?」 「分かりました、こんなものの解除ぐらいなら朝飯前です」 吉川博士に爆弾を解除してもらう。解除は無事に終わった…だがすぐ次の瞬間、 爆弾本体から赤煙が噴射される。 「うっごほ…なに!?」 「きゃああ!助けてパパ!」 「玲奈!!」 どこからか玲奈の助けを呼ぶ叫びが響き、変わって不気味な声が鳴り響く。 「ふふふ…吉川博士。可愛い娘の命が惜しければ品川の第六ビルに来い!」 それを聞いた吉川博士はすぐに歩き出した。 「あっ博士!行っちゃ駄目です…あぐっ…!」 「まなみ、貴様はしばらくは動けんぞ。さっきの煙幕は貴様にだけ効力がある 神経麻痺ガスでもあるのだ」 まなみはただ見ているだけしか出来ず、煙幕が止むとそこに博士も玲奈も居なかった。 「うっ…博士…玲奈ちゃん…」 「まなみ!無理しないで!」 第六ビルに向かった吉川博士。そこにはハンマーカブトに戦闘員コザーの姿が。 「約束どおり来たぞ、娘を返してくれ!」 「返すのは構わんが…その前にエネルレイを十分に発揮できるようにこの機械を 完成させろ」 ハンマーカブトが取り出したある機械。見た目はバズーカ砲のようであった。 「これは…貴様達、エネルレイを兵器にする気だな!」 「その通りだ。さて博士、これをやらなければ娘の命は無いぞ…!」 娘の命には代えられない、仕方なく博士はエネルレイを使用したその兵器を完成させた。 「ははは!これでいい。さてさっそく…」 「そうはさせない!!」 驚くヘルスター帝国の面々。声のした方にはまなみがいたからだ! 「貴様!あのガスでしばらくは動けないはず!」 「そういつまでもお昼寝してるほど、暇じゃないのよ。炎心変幻!!」 新堂まなみは炎輪の力で炎心変幻する!ではその原理を説明しよう。 まなみの身体を包み込んだ聖なる炎が戦闘衣へと変化する。炎の中から生み出された。 神刀・暁一文字が現れ腰に帯刀した瞬間、まなみは炎術剣士へと変身を完了するのだ。 「暁一文字!!」 早々に決着を着けようとしたのか、火炎大破斬の体勢に入った。しかしいつもの宙明節は 鳴り響かくことはない。まなみはハンマーカブトを一刀両断しようと剣を振りかざす。 「火炎大破斬!!…なにっ!?」 「ぐははは!なんだそれは!!」 まなみの必殺技は効果が無く、吹き飛ばされてしまう。 「新堂まなみで新兵器エネル光線を試すのだ!」 「了解!」 ハンマーカブトの指示を受け、コザーはエネル光線搭載バズーカをまなみに発射する。 「ぐっ!?ああぁぁぁぁ!!」 「苦しいか、新堂まなみ!そのまま死ねぇ!!」 エネル光線を浴びせられ、徐々に消耗していくまなみ。勝利を確信し高笑いする ハンマーカブト。まなみの目が虚ろになっていく。しかし突然、光線は解除された。 「これはいったいどういうことだ!吉川!貴様何か細工をしたなぁ!?」 「その通りだ。それはしばらく発射すると止まるようにしておいた。そして…」 バズーカは大爆発を起こした。回りの戦闘員は全滅。ハンマーカブトも傷を負う。 突然のことで防御することが出来ず、ハンマーカブトはのたうち回った。 最後の力を振り絞り立ち上がるまなみ。 「今しかハンマーカブトを倒すチャンスは無い!たぁ!!」 「や、やめろ!!」 まなみは空高く飛び上がり、右足に炎の気を集中させた。 「火炎閃光キィィィィィック!!!」 「ぐわあぁぁぁ!!あと一歩のところで…!!」 大爆発。ハンマーカブトは木っ端微塵に吹き飛んだ。そしてまなみの目の前に 姿を現す三幹部。 「あんた達は!?」 「俺はヘルスター帝国の戦闘将軍、バルガン」 「わしはカイマーズ。ヘルスター帝国最高峰の科学者だ」 「そして私が参謀を勤めるデリックだ。新堂まなみ。貴様はよく戦えるものだ。 大人しくしていれば命だけは助かるものを…」 「黙りなさい!地球を蹂躙して人の命を虫けらのように扱うお前達と戦うのが 私の使命です!これからもどんな手を使ってきても倒してやるんだから!」 「勇ましいな。だが地球は必ず我々ヘルスター帝国が頂く。精々頑張りたまえ…!」 そう言い残し、三幹部は姿を消した。 玲奈は第六ビルの倉庫に閉じ込められていた。吉川博士は彼女に危険が及ばぬよう、 普通の携帯電話を改めてプレゼントすることにした。博士自身は、また新しい研究を 始めるようだ。そして喫茶レイラにて玲奈へ改めて誕生日会が開かれるのであった。 「良かったね、玲奈ちゃん」 「うん!」 「解説お姉さんコーナーだよ!今回はまなみちゃんの変身後の力その2! パンチ力、キック力はすごいパワーアップしてて、鉄柱も折れるとか! 炎を使った技が多いまなみちゃん。牽制技の炎流波という光線技に炎を身体の一部に 纏わせての格闘攻撃。最大必殺技は火炎大破斬だよ。 今回登場したナイトメア怪人はハンマーカブト!強力なハンマー攻撃に まなみちゃんの必殺技も効かない強靭なボディの持ち主です! 博士を脅して兵器を作らせるとにかく悪くて恐い奴!!」 次回予告「ヘルスター帝国はまなみを倒すために新たなナイトメア怪人である フリーザーゴリラを使い廃工場にまなみをおびき寄せ、処刑しようとする。 そして帝国の東京攻撃が始まろうとしている!まなみよ蘇れ!! 次回『まなみ処刑作戦!冷凍怪人の恐怖!』次回も見てね!」
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今日もぼっち とぼとぼ夜道を帰る俺の前に少女が現れた 「お兄ちゃん寂しいんだね」 少女はそのまま宙に浮かび手を広げた 「力が欲しい?」 光る少女の体 俺は 「うん」 そう答えた・・・ 20XX年 突如として日本は隣国に攻め込まれた 歩行機甲機-カージナルを擁する隣国は容易く日本の中枢を制圧した 「これから東京を制圧する・・・な、あれは何ダ!?」 東京上空を飛ぶカージナルの編隊の前に突如青い歩行機甲機が現れた そのコクピットに乗るのは俺だ あの日、俺は天使に会った 彼女が差し伸べる手を取った俺は・・・ この歩行機甲機、いや、彼女ライジングメサイアーの乗り手となったのだ 機体下部センサーが俺の大学、 遂にこの日本の中枢に現れたカージナルの群れに恐れおののき逃げまどう リア充と肉便器の群れを捉えた 『いいの?ここも戦闘になるわよ?』 彼女は俺の意志に直接語りかける センサーが敵の砲撃を感知した、一斉射だ 俺は、もう、躊躇わない。 そう、あの日から決めた、この道を行くことを 「ああ」 右手のスロットルを引く 現れる8つのライトが円を描くように青く点滅し敵のカービンをマークした 「火を吹いて墜ちてゆけ」 俺は赤く燃えて墜ちてゆく敵の機体を見下ろしながら呟いた そしてマイクをつかみオープンチャンネルで全回線に繋ぐ ライジングメサイアーが持つ力 放送局、ネット、ラジオ、家庭の電話全てに繋がる媒体で 「全ぼっちよ!喜べ!機は満ちたぞ!機は、満ちたりた!」 下から歓声が沸き起こる スマイルトゥモロートゥザぼっち!スマイルトゥモロートゥザぼっち!スマイルトゥモロートゥザぼっち!スマイルトゥモロートゥザぼっち! 第4話『ぼっち公国建国』終 ――――――――――――――― DVD2巻 ぼっち公国建国 要塞可変大学 宇宙から来たぼっち >三巻は? 苦情で2巻打ち切りED DVD特典のピクチャードラマで最終回 ぼっちが妄想から現実に戻され絶望する
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設定集 サキュバス一括表示(雑談レス付き) 分割表示 サキュバス1 サキュバス2
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吉川博士を脅し、新兵器を作り上げたヘルスター帝国の怪人・ハンマーカブト。 まなみを苦戦させるも、最後はやはり正義が勝った。 炎術剣士まなみ 第四話「まなみ処刑作戦!冷凍怪人の恐怖!」 ヘルスター帝国本部では新たなナイトメア怪人が誕生していた。霧深くから現れた ゴリラのような姿の怪人、フリーザーゴリラだ。ゴリラの強力なパワーと 何もかも凍てつかせる冷凍攻撃を武器とする怪人だ。 皇帝ラデスはフリーザーゴリラに語る。 「フリーザーゴリラよ、我々ヘルスター帝国の次なる作戦は日本氷河期作戦だ。 お前の冷凍ガスを思う存分に振るうのだ」 「リ~ザ~!ラデス様!このフリーザーゴリラに掛かればちっぽけな島国など 一瞬にして氷の世界にして見せます!」 「ふははは!頼もしい限りだな、フリーザーゴリラよ。しかし一つ問題がある」 フリーザーゴリラの目つきが変わり口を開く。 「我らに逆らう愚か者、新堂まなみでございますな。ですがご安心ください。 私にはまなみ処刑作戦がすでに浮かんでおります」 「ほう、それはいったいどんなものだ?」 ラデスの問いに答え始める。 「新堂まなみは強敵ではありますが、弱き者の絶対的味方というのが逆に仇なのです。 日本氷河期作戦の始まりの合図はまなみの氷付けオブジェが出来た瞬間です」 ある休日。商店街を隼で進んでいくまなみの姿があった。いつも通りパトロールを 兼ねながら、適当にブラブラしている。空は雲ひとつ無い満面の青空で、 帝国の侵略が行われているとは思えない平和な時が流れていく。 「特に異常は無しかな…いつまでも異常が無いのが一番いいんだけど」 まなみは近いうちにヘルスター帝国の新たな作戦が展開されることぐらいその内容は 分からなくても予想は出来る。まだ19歳の女子大生には他にやりたいことの一つや二つ ぐらい、あるだろう。少し物思いに耽っていると、突然悲鳴が聞こえてきた。 「ひったくりよー!誰か捕まえてください!」 まなみが目を向けるとお婆さんの鞄を引っ手繰って逃走するバイク乗りの姿が。 「よ~し、お婆さん私に任せて!」 言うや隼を走らせ、犯人を追いかけだすまなみ。 「お、お願い致します…!ふふっ」 心配そうに見ていた老婆の顔付きがまなみの姿が消えたあと、怪しい微笑みを浮かべた。 「待ちなさい!それを返して!」 隼のスピードなら普通のバイクなどすぐに追いつけそうなものだが、犯人はジグザグに 道を進んでいき、それでいて意外とバイクテクニックもかなりのものであったため、 さすがのまなみもなかなか追いつくことが出来なかった。 そして犯人が辿り着いたのは、いかにもお化け屋敷のような扱いを受けそうな 廃工場であった。まなみも到着し、犯人を探し出すことにする。 「どこに行ったの!?お婆さんの鞄を返しなさい!」 「…!」 そこに自ら姿を現す引っ手繰り犯。 「あなた!自ら出てくるなんて素直じゃない。さあ、早く取った物を返して」 「…ギッー!」 犯人が奇声を発したかと思うと次の瞬間には戦闘員コザーの姿に変化していた。 さらにまわりの機材の影から他のコザーも現れる。 「ヘルスターの戦闘員!?たぁ!!」 驚きつつも、襲い来るコザー軍団と格闘の末、撃滅していく。投げ飛ばしたコザーの 一人がまだ息があったらしく、工場奥へと逃げていく、 「待ちなさい!」 それを追ってまなみも同じく奥へと進んでいく。進んだ先はただっ広く、特に 大きな機材も無い部屋であった。 「どこに隠れた…きゃっ!?」 突然まなみの両腕がロープできつく締め付けられた。どれだけまなみが腕を動かそうと 外れる気配は無い。そして突然、笑い声が聞こえてきた。 「ふぇっふぇっふぇっ…まんまと罠に嵌ったねぇ…新堂まなみ」 その声の主は先ほどの引っ手繰りにあった老婆であった。 「お婆さん!?あなたまさか…」 「馬鹿め!ようやく気付いたか…鈍感な奴だ、そうだ私の正体は…!」 口調が荒くなり、老婆の目が不気味に光りだす。光が止まると老婆は フリーザーゴリラの姿へと変わっていた。 「リ~ザ~!ヘルスター帝国のフリーザーゴリラだ!!まなみよ、早速だが 貴様の処刑を行う!」 「なんですって!?フリーザーゴリラ!そう簡単に私を処刑できると思うの? それにこの身が朽ちようとも私はヘルスター帝国を倒す!」 凛々しく、悪への怒りを見せるまなみ。しかしフリーザーゴリラはそれを笑う。 「ぐははは!本当に馬鹿な奴だ、貴様は。身動き一つ取れない貴様では 俺様を止めることは出来ん!!まあ、死に行く貴様には冥土の土産に今回の我々の作戦を 教えてやろう。貴様を処刑したあと、俺様の冷凍能力で日本氷河期を起こすのだ! そしていつしか地球全土は氷の世界となるのだ!」 「そんなこと、絶対にさせない!」 絶望的状況でも強気な姿勢を崩さないまなみ。 「どう言おうとここで貴様は終わりだぁ!処刑を始める俺様特性の冷凍ガスを 思う存分浴びろ!!」 フリーザーゴリラの口から冷凍ガスが放射される。足から少しずつまなみの身体が 凍り付いていく。 「くっ…ああっ…!」 身体が凍り、意識も朦朧としてくる。 「まなみ、どうした?まだ半分も凍り付いていないぞ」 挑発的な台詞を吐くフリーザーゴリラ。それにまなみは応えようとするが、動けない。 「う…あ…フリーザーゴリラ…私は、必ず…お前を倒す…!」 言い残すとまなみの首がガクッと項垂れ、身体が一気に凍りだす。最後には 氷のオブジェと化したまなみの姿があった。ある意味芸術品のような美しさを残しながら。 「新堂まなみの処刑完了!次は日本を氷河期にするぞ!」 その頃、雪絵は店を早めに閉め久々にドライブと洒落込んでいた。 「たまには息抜きしないとやってられないよね」 そしていつしか彼女は町外れの方へ出ていた。オレンジ色の空が清々しい。 その時、雪絵の頭の中に声が聞こえてきた。 「!…だ、誰!?」 『雪絵さん…私です、まなみです』 声の主はまなみであった。変身前でも使える超能力の一つ、テレパシーを使って 会話しているのだ。 「まなみ!あんた、今どこに!?」 『雪絵さんのいるところからすぐ近くの廃工場です。ヘルスターの罠に嵌ってしまって…』 「分かったわ、すぐ助けに行くから!」 『雪絵さん、何か火を起こせる物を持ってきてください。それさえあれば…』 「タバコ用のライターでいい?」 『はい、お願いします』 話し終わると雪絵はすぐさま廃工場へと向かった。工場奥でまなみを発見する。 「まなみ!!くそ、ヘルスター帝国!!」 ヘルスター帝国のまなみへの仕打ちに怒りを表す雪絵に話しかけるまなみ。 『雪絵さん、ライターの火を点けて氷の上に乗せてください』 「でも、ライターの火なんかじゃこの氷は融けないわよ」 『いえ、私が融かします。さあ早く!』 まなみの言っていることがよく分からなかったが雪絵は言われた通りにする。 人をまるごと包み込むほどの氷を火で炙ってもちょびっとの水が垂れる程度であった。 しかし、ライターの火が尽きた瞬間まなみの身体が突然光り出す。 「うわっ!?まなみ!」 光は強さを増し、両腕のロープは焼け跡を残しながら切れ、氷もどんどん融けていく。 「炎心変幻!!!」 街を見下ろせるほどのどこかの山の中腹。フリーザーゴリラと戦闘員がそこにいた。 「まなみを処刑した今、我々に恐れるものは無い!日本に氷河期が到来するのだ! コザー!冷凍ガス増幅装置の準備はいいな?」 「ギッー!いつでも使用可能であります」 「よし、それでは始めよう。リ~ザ~!」 増幅装置を起動させ、いよいよ冷凍ガスを噴射しようという時、突然彼らの周りに 炎が発生した。 「ぐおぉ!な、なんだこれは!?」 「炎流波!!」 さらに火炎光線が飛んできて増幅装置が破壊される。光線が飛んできた方向へ 目を向けると、そこには変身したまなみの姿があった。 「し、新堂まなみ!?何故だ!貴様はこの俺様が氷のオブジェにして処刑したはず!!」 「殺すならその場で氷を砕いてバラバラにでもしなさい。忘れたの?私は炎を操る 戦士だってことを!変身しなくてもしばらくの間、完全に凍りつかないように 耐える事ぐらい出来る!そして雪絵さんからもらった火を私は自分のエネルギーに 変換してあの氷から脱出したのよ」 「お、おのれ~!」 「フリーザーゴリラ、日本氷河期作戦はここで食い止める!暁一文字!!」 錯乱状態のフリーザーゴリラに倍返しとばかりに暁を振るう。 周りの戦闘員は短剣を抜いて襲い来るも特に労せずまなみは軽く退治した。 「ええい!冷凍ガス!!」 「火炎障壁!!」 再びまなみを凍らせようと冷凍ガスを噴射するも炎のバリアで防がれてしまう。 自慢の腕力で攻撃するも力だけの攻撃では悪あがきにしかならなかった。 それをまなみは避け、フリーザーゴリラを斬り飛ばす。 「火炎大破斬!!!」 宙明節が鳴り響き、暁一文字が一瞬にしてフリーザーゴリラを真っ二つにした。 「リ~ザ~!!ごわあああああ!!!」 フリーザーゴリラは大爆発を起こし消滅した。 「まなみ~!」 そこに雪絵が走り寄ってくる。 「雪絵さん!今回はありがとう。もし雪絵さんがいなかったら今頃どうなっていたか…」 「何言ってんの、あんたが大変な時はいつでも助けるよ、こっちは」 ヘルスター帝国は卑劣な作戦でまなみを陥れ、地球を侵略しようとしてくる。 だが、まなみは一人で戦っているわけではない。仲間がいる。 「解説お姉さんだよ。今回はまなみちゃんの愛車、隼について説明しちゃうよ。 隼はまなみちゃんの乗るバイクで、最大時速は350キロで、陸はもちろん、 水上も走れるし、約10分程度なら飛行も可能です。さらにさらに! 小型ミサイルにレーザー光線も装備してて戦闘もばっちりこなしちゃいます! 違法改造だとかそういうツッコミは無しの方向でね。 そして今回登場したナイトメア怪人はフリーザーゴリラ!! マイナス240度の冷凍ガスを武器に日本氷河期作戦を行おうとしていたわ。 まなみちゃんも一度は氷付けにされちゃったけど、雪絵さんの助けで 逆転勝利したよ」 次回予告「地震を起こし、日本列島をめちゃくちゃにしようとするヘルスター帝国。 地震発生装置はどこにあるのか?まなみの必死の捜索でも見つからない。 政府に予告された地震開始時間は近い! 次回『日本列島沈没5秒前!』さあ来週もみんなで見よう!」 ナイトメア怪人によって氷付けにされてしまったまなみ。しかし立川雪絵の助けに より復活、ヘルスター帝国の日本氷河期作戦を食い止めることに成功した。 炎術剣士まなみ 第五話「日本列島沈没5秒前!」 気持ちよく晴れたある日。まなみは喫茶レイラで雪絵特性カレーを食べていた。 「相変わらず雪絵さんのカレーは美味いですねぇ」 「あたしの愛情込みだからな。それにまなみは平和を守る、正義の味方なわけだし カレーを食べるのは必然なのよ」 「えっ?どういう…」 雪絵の言っている意味がよく分からないまなみ。それを見て雪絵が一言。 「昔から正義の味方ってのはカレーよく食べてたのよ、太った黄色い人とか 地球防衛軍の隊員とか。あ、まなみ。炎輪と間違えてスプーンを掲げたりしないように」 「は、はぁ…?」 まなみはキョトンとした。なにはともあれ、平穏な時が過ぎていく。 しかしそれは長くは続かない。突然、地震が起きたのだ。 「…!じ、地震?」 少し揺れただけで、特に被害は無い。震度は2ぐらいであろうか。 「最近、地震が多いんだよね。もしかしたら関東大地震が近づいているのかも」 「雪絵さん、嫌なこと言わないでください…でも気になりますね」 ヘルスター帝国ではバルガンが新たな作戦を提示していた。 「ラデス様!我らの新たなる計画!日本全体を大地震で沈没させてしまうものです」 「素晴らしい作戦だ。して、どのようにして作戦を行うのだ?」 「新たなるナイトメア怪人モグラグローのパワーで地震を起こします。 しかし、今回の作戦は決して日本を崩壊させるためのものではありません。 我々にいつでも大地震を起こせることを日本政府に知らしめます。 そして日本の引渡しを要求し、それが飲まれないときに…」 「なるほど、どちらにしろ我々に損は無いのだな」 「その通りです。そして今回ばかりは新堂まなみも邪魔できないでしょう。 モグラグローの位置は誰にも確認出来ないのですから…!」 その頃、まなみは公園で子供達と遊んでいた。 「祐一君!ほらそっち行ったわよ!」 「えい!…まなみ姉ちゃんの打つ球は全然取れないよ~なあ勝」 「そうだよ、お姉ちゃんヘルスター帝国と戦ってるんでしょ?そんなすごい人の 球は取るのは難しいぜ」 「ごめんね、二人とも。じゃあ別の遊びしようか?」 そうして野球道具を片付け出す三人。その時、わずかな揺れが発生した。 「あ、また地震かな?…あっ!」 先ほどまでわずかな揺れであったその地震が急に大きくなりだした。 「お姉ちゃん!」 「ちょっと嫌な感じだね…二人とも、今日は家に帰った方がいいわ。また今度ね」 まなみも喫茶レイラに戻ることにした。 「雪絵さん、さっきの地震大丈夫でした?」 「なんとかね。皿一枚駄目になったけど」 とりあえず雪絵が無事だったことに安堵するまなみ。しかしその時、テレビの ニュースから聞き逃さずにはいられないことが話された。 「臨時ニュースです。ヘルスター帝国は日本政府に対して日本引渡しを要求してきました。 もし要求を呑まなかった場合、日本全体に大地震を起こすということです。 近頃頻繁に起こっている小規模の地震は全てヘルスター帝国の仕業ということで 彼らはいつでも地震を起こす力があるということだそうです。政府には24時間の猶予が 与えられました。政府は対策を考案中で…」 ニュースを聞いたまなみはすぐ飛び出そうとする。 「まなみ、どこに行くのよ?」 「決まってるじゃないですか、ヘルスター帝国の連中を探し出しに行くんです」 「でも、あいつらがどこで地震を発生させてるか分からないのよ」 「それはそうですけど…でも24時間しかない。なんとしてでも食い止めなくちゃ いけないです!」 そう言い残し、まなみは隼で走り出してしまった。 「まなみ…」 どこにヘルスター帝国のアジトがあるのか、そんなこと手掛かり一つ無いが とにかくなんとかしなければ、日本はどちらにしろ滅びの道である。まなみは隼を 走らせる。以前は山中にあったので今度は海の方に出てみることにした。 房総半島方面に到着するが、当然ながらなにも手掛かりは無いと思われた…。 しかし、明らかに一つおかしいものを発見した。海岸沿いには自然に出来たとは 思えない洞窟があった。 「なにかのレジャー施設とは思えないし…よし」 まなみは警戒しながら洞窟内部に侵入する。洞窟は初めはまだ文字通りのイメージが あったが、先に進むにつれ整備された道になってきた。そして戦闘員コザーの姿も 確認する。まなみは隠れながらコザーを気絶させながら進む。 「これでヘルスター帝国のアジトということは確かね。さて鬼が出るか蛇が出るか…」 アジトの最深部に到着し、まなみの背丈の3、4倍はあろうかという扉を開く。 そこは機材のランプがいくつも並びながら光っている司令室のような場所であった。 そしてモグラのような怪人がいた。地震を起こしていた張本人、モグラグローだ。 「新堂まなみ!なぜここに!?」 「お前が地震を起こしていたナイトメア怪人ね?それならここで倒させてもらうわ!」 「そうはいかん、俺は作戦を遂行するまでは死ぬわけにはいかないのだ!」 モグラグローは穴を掘り、その場から逃げようとする。 「待ちなさい!たあ!」 まなみはとっさに苦無手裏剣をモグラグローに投げつけそれが突き刺さる。 「その程度で!さらばだ、まなみ!」 特に痛がる様子を見せずモグラグローは姿を消す。それと同時に通信がアジト内に 響き渡る。声の主はバルガン将軍だ! 「新堂まなみ、よくぞアジトを発見した。しかしモグラグローは別の場所で 作戦を遂行することになった。不要になったアジトの下敷きとなれ!!」 通信が切れた瞬間、アジトは崩壊を始める。 「隼!!」 とっさに隼を呼び出しまなみはアジトから脱出した。また捜索は振り出しに戻って しまったかのように見えた…しかし。 「モグラグロー、さっきの苦無がただの武器だと思ったのが失敗ね。隼! モグラグローを追うのよ!」 自動でどこかへと走り出す隼。 モグラグローは房総半島北へ移動していた。気付けばタイムリミットまであと 1時間を切っていた。 「さ~て、そろそろ時間だなぁ。日本全土が海の底か、我らヘルスター帝国の 戦闘基地が立ちまくるのか、楽しみだなァ、ダ~グダグ!」 「待ちなさい!!」 「な、何者だ!?」 声のした方に顔を向けるモグラグロー。崖の天辺、そこにはまなみの姿が。 「モグラグロー!許しはしない!炎心変幻!!」 新堂まなみは炎輪の力で炎術剣士へと変身する。ではその原理を説明しよう。 まなみの身体を包み込んだ聖なる炎が戦闘衣へと変化する。さらに炎の中から 現れた神刀・暁一文字を手に、まなみは変身を完了する。 「日本に地震を起こし、人々の平和を脅かすヘルスター帝国…あまつさえ 沈没させようとするなど言語道断!新堂まなみが成敗するわ!!」 「おのれ新堂まなみ!!やれー!!」 どこからかコザーが多数飛び出しまなみに襲い掛かる。例によって、パンチキックの 応酬と暁で斬り伏せていく。 「くらえまなみ!モグラ地割れ!!」 モグラグローがその太い腕で大地を叩く。地割れが発生し、まなみを飲み込もうとする。 「くっ!たあ!」 次々発生する地割れを上手く避けていくまなみ。 「いつまで持つかな?ダグダグ~!」 「うあっ!!」 今までの中で一番でかい地割れに今度こそ飲み込まれそうになるまなみ。その時、 かすかにエンジンの音が聞こえてきた。 「隼!よし、とぉ!」 まなみは隼に搭乗、空を翔けながらミサイルで反撃をする。 「ダ~グダ~グ!ぐああああ!」 「とどめよ!!火柱ストォォォォォムッ!!!」 まなみは隼から飛び降り、空中で両手に炎の気を集中する。それを勢いよく モグラグローに投げつける。 「ぐああああ!!こんな馬鹿な…!!」 断末魔を残しながらモグラグローは火柱と共に消滅した。 後日。大地震を免れた日本はそれまでの細かい被害のあった地域の復興も行われた。 まなみもまた子供達と遊んでいた。相変わらず手加減は下手なまま…。 「解説お姉さんです!今日はまなみちゃんの変身後の戦闘衣について! 一見、ただの和服っぽいけど実はすごい防御力持ちです。衝撃を吸収、 負担を減らして、とても軽く柔らかくて柔軟ですごい運動をするのにも 差し支え無し!炎術剣士らしく、炎を自分のエネルギーにすることも出来るよ。 そして今回のナイトメア怪人はモグラグロー!地震を起こして日本を沈没させようと していたの。地中を掘り進んでどこにでも移動します。さらに地割れを起こして 相手をそれに飲み込もうとする恐い奴!でもまなみちゃんの敵じゃ無かったね」 次回予告「破壊活動を行うナイトメア怪人・キジバズーカ。それを 止めようとまなみが戦おうとするもすぐに逃げられてしまう。逃げられた先々で 破壊活動を行う怪人を止めることが出来るのか? 次回『恐怖!キジバズーカの日本爆撃!』かっくいい!」 日本を大地震で襲い海へ沈めようと企んでいたヘルスター帝国。しかしまなみの 必死の捜索で所在を発見、怪人モグラグローを撃破するのだった。 炎術剣士まなみ 第六話「恐怖!キジバズーカの日本爆撃!」 ある日の静かな夜。人々はすでに眠りの時間であり、街を出歩いている者は 皆無であった。しかし、そこに巨大な鳥のような姿の人らしき者の影一つ。 「ぬははは!俺様の力を試すのには絶好の射撃場だな!」 ヘルスター帝国のナイトメア怪人、キジバズーカだ。鳥の力で空を素早く飛びまわり くちばし、背中、肩、腰にバズーカを装備している爆撃用怪人である。 力を試さんとばかりに背中のバズーカをマンション目掛けて撃ち放つ。 轟音とほぼ同時にマンションは大爆発、静かな夜は一瞬にして悲鳴入り混じる地獄絵図と 化した。さらに続けて辺りの建造物を破壊していく。 「どうだ~!俺様の力に掛かれば人間どもの世界などあっという間にめちゃくちゃだ!」 「そうはいかないわ!!」 声のした方へと顔を向けるキジバズーカ。そこには隼に跨った新堂まなみが怒りの表情を 浮かべていた。そして隼に搭乗したまま変身、キジバズーカに斬りかかろうとする。 「キジバズーカ!お前の好き勝手にはさせないわ!」 「馬鹿め!俺のスピードについて来れるものか!」 その言葉通り、隼でもやっと追いつくのに精一杯であった。まなみの繰り出す攻撃も 空を切るばかりでかすりもしない。 「くっ!速い…!」 「まなみ!貴様の相手をするより任務を優先しなくてはならんので、また会おう。 それに…貴様はいつでも倒せる相手だと分かったからな!」 言い残し、空高く飛び上がりどこかへと消えていくキジバズーカ。 「待ちなさい!!私を倒せるなんて…相当な自信を持っているじゃない…」 朝のニュースは当然、キジバズーカの爆撃事件で持ちきりであった。 崩れた街々、荒らされた自然、泣き叫ぶ人々…。 「私は…守れなかった…!キジバズーカ、今度こそ…」 悔しい表情を見せるまなみに雪絵が落ち着いた口調で話す。 「まなみ、確かに残念だったけど、少し冷静になりな。あんたらしくないよ」 そう言ってお茶を差し出す。落ち着かないままお茶を手に取り飲みだすまなみ。 静かに時間が過ぎていく。 ヘルスター帝国本部ではキジバズーカがこれまでの作戦進行度について報告していた。 「関東中の人間はすでに恐怖心で満たされているでしょう。次は中部へ向かおうと 考えております」 「キジバズーカよ、お前はこのわしの自信作だ。その力を思う存分振るったようだな!」自身の作り上げた怪人が大活躍した様子を受け、カイマーズ博士は笑みを浮かべる。 「カイマーズ博士、そしてラデス様。このまま日本全土を焼け野原にしてみせます」 「頼もしい限りだな、キジバズーカよ。しかし新堂まなみの方は問題ないだろうな?」 「新堂まなみなど、私の足元にも及びません。しばらくは適当に遊ばせておき 頃合いを見て倒します」 ラデスの問いに自信を持って応えるキジバズーカは、再び任務へと戻った。 その後もキジバズーカの日本爆撃は終わりを知ることなく、局地的に破壊活動を 行っていく。それをまなみが阻止しようと戦いを挑むがその度に 少し戦っただけでキジバズーカは撤退してしまうのだった。 「今日はここまでだ!さらば!」 「くっ!また逃げるの!?」 「ヒットアンドアウェイ…これが普段の俺様のモットーだ、まなみ」 「待て!キジバズーカ、次は必ずお前を倒すわ!覚悟しておきなさい!」 威勢よく宣言するまなみ。それに対してキジバズーカは嘲笑うかのように返答する。 「ならば次が貴様の最後であると俺は宣言するぞ!ぐはははは!!」 言い終わると同時に一瞬にして姿を消した。 喫茶レイラへ戻り雪絵にそのことを話すまなみ。 「…キジバズーカは私を倒すと宣言してきました」 「まなみ、今のあんたは冷静さを失っているよ。そのままじゃ言葉通りに…」 「雪絵さん、私は次は必ず勝ちます!見ててください」 そして一気にカレーを食べつくし、気合を入れるまなみ。 そんな彼女を心配そうに見つめる雪絵。外はすっかり暗くなっており雨が降っていた。 三日後。まなみは今度こそキジバズーカを倒すため、以前、対峙した静岡県に やってきていた。静岡のどこかで再び破壊活動を行うと踏んだのだ。 「待ってなさい、キジバズーカ…次は必ず倒してみせるんだから!」 隼を飛ばし、富士へ向かう。特に異常は見当たらないが、大きな被害が 無いここが狙われる可能性は高い。そして狙ったかのようにまなみが到着して まもなく、轟音が飛び、人々の悲鳴が入り混じる。 「現れたわね、キジバズーカ!!」 まなみは音のするほうへと全速力で向かう。 すでに壊滅状態の街の真ん中。キジバズーカと戦闘員コザーの姿が。 「ひどい…キジバズーカ許さない!お前を倒す!炎心変幻!!」 新堂まなみは炎輪の力で炎術剣士へと変身する。ではその原理を説明しよう。 炎輪から発生した聖なる炎がまなみの身体を包み込み戦闘衣へと変化する。 そして炎の中から生まれた神刀・暁一文字を手に変身を完了する。 「きたな、まなみ!だが今日で会うのは最後になるだろうがな。やれぃコザー!!」 「ギッー!!」 ほぼお約束どおり、コザーを軽く斬り伏せるまなみ。戦闘員は戦闘員なりに 頑張ってはいるが、結果は昔から出ないものだ。 「まなみ!貴様では俺に勝てん!クワァァァラァ!!」 猛スピードでまなみに襲い掛かる。羽は鋭利な刃物のようになり、まなみを 痛めつけていく。しかもすぐに空へ飛び上がり離脱するのでまなみの攻撃は当たらない。 「くっ、ああぁ!!このままじゃ…隼!!」 隼は短時間なら飛行可能である。そこでまなみは空中戦を展開しようとする。 「馬鹿め!空こそ俺の最大のテリトリーだぞ!」 まなみは隼を飛ばし、すれ違いざまに斬りつけようとする。しかし、隼を操縦しながら 攻撃を行うのは、どうしても隙が出来る。キジバズーカには当然そんな隙は 無く、地上よりも激しい攻撃でまなみに責苦を与える。 「空でもあいつに敵わないの…」 さすがのまなみも焦りと疲れが見え始めた。そしてキジバズーカの腰の砲塔が光り出した。 「クワァァラァ!まなみ、お前では俺に勝てないということがよく分かったか! 止めを刺してやろう!」 機関砲が発射され隼に次々と命中していき、まなみを乗せたまま落下した。 「うあああぁぁぁ!!」 放り飛ばされたまなみがうつ伏せで倒れる。キジバズーカの両肩の砲塔が光り出す。 「これで終わりだぁ!さらばだ、新堂まなみぃぃぃぃぃ!!」 超ド級のバズーカ砲弾が発射され、まなみに直撃した!変身が解除されてしまい、 起き上がることさえ出来ない。 「く…あぐぅ…」 「まだ生きてるとはな。だが分かっただろ?俺様に勝つことなど絶対に無理だと 言うことが!クワァァラァ!!」 まなみを踏みにじった後、空を飛び姿を消すキジバズーカ。 「勝てない…私じゃあいつには勝てないの…?くっうわあぁぁぁ!!」 決定的な敗北にまなみは泣いた。傍らにはボロボロの隼が横たわり、雨が降り出した。 今後もキジバズーカの破壊活動は行われるだろう。それを止められるのはまなみしか いない。もう一度立ち上がってくれ、新堂まなみ! 「解説お姉さんです。まさかまなみちゃんが負けちゃうなんて… お姉さんショックだよ~…でもまなみちゃんならきっと勝機を見出すことが 出来るとお姉さんは思うわ! そして今回のナイトメア怪人はキジバズーカ!身体の各所に装備された 火器で日本を破壊中。まなみちゃん、次こそこいつを倒してね!」 次回予告「怪人キジバズーカに敗北したまなみはすっかり自信を失ってしまう。 そうしている間にもキジバズーカの破壊活動は範囲を広げ、今度は東北へ向かおうと する。まなみは勝利のために大特訓を始めるのだが、果たしてどうなるか!? 次回『鶴ヶ城大決戦!倒せキジバズーカ!』次回も見てくださいね」
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登場人物紹介 新堂まなみ:桜ヶ丘大学心理学部に通う大学一年生19歳。 母・悠美から炎術剣士の力を受け継ぎ、地球をヘルスター帝国の魔の手から守る。 髪形は少し青味が掛かった黒髪で、腰辺りまであるロングヘアー。 性格は明るく優しく、真面目。普段は冷静だが、感情的になりやすいところも。 仲間想いで、仲間を傷つける者には容赦しない。特にパートナーである裕奈を 非常に大事にしている。運動神経抜群、成績優秀でおまけに家事全般も得意な 文武両道っぷりを見せ付けるが、第一話で、全国に正体がバレたり、しょっちゅう人質を 取られて逆転されたり、あっさり罠に掛かるとこからして注意力散漫なのかもしれない。 戦士としての能力は一級品で、正面から戦えば並大抵の相手に負けることはないのだが 前述の通り、抜けているところがあるせいで苦戦することが多い。 大学生だが、劇中で通っているところは見られない。正体がみんなにバレているとはいえ、 出席日数とかは甘く見てもらえないはずなのだが。 水無瀬裕奈:第十話から登場。普段は愛用バイクである、大波でブラブラしてるニー○な19歳。 まなみの能力を複製したヘルスター帝国によって属性変えの水術剣士となる。 洗脳されていたが、まなみとの戦いで正気を取り戻す。髪型は栗色のセミロング。 小柄で、華奢で、ぺったんこの超絶ミニマムボディに秘めたるものは、大型トラックさえ 投げ飛ばす、超絶パワーの持ち主。性格はまなみと同い年の割には、子供っぽく 言動も幼く、見た目とマッチしている。そして大食漢でもある。学力は意外と優秀。 正義の心はまなみにも負けない。武道の心得があり、剣道に柔道、空手と いろいろ経験してきた。それを活かしたパワーとスピードで戦う。 一応、こちらも正体は周りにバレている。 新堂悠美:まなみの母親。先代の炎術剣士。性格はおっとりのんびりとした感じで かなり若い容姿を保っている。それというのも、剣士としての特性として老化が 25歳前後で止まるためである。既に亡くなったまなみの祖母も若かったらしい。 母として、まなみを見守り、娘の危機なら命さえ投げ出す覚悟である。 立川雪絵:まなみの良き理解者、相談相手。喫茶店レイラを経営している。 髪型はショートカットの茶髪。姉御肌で頼りになり、面倒見が良く、肝の据わった面も。 交流関係も広い。まなみが自信を無くして腐ると叱責したり、危機的状況なら、 なんとか助けたいと思っている、第二の母親的存在。 レイラは大抵、まなみや裕奈の溜まり場のようになっており、飯もただ食いされている。 良い行動拠点にされている気がするが、雪絵本人は特に注意はしない。 七瀬明日香:第十一話から登場。若き女刑事で22歳。当初はまなみの活躍で警察の士気が 下がり始めていたことに危機を感じ、まなみに戦いを自重するように呼びかけてきたが、 彼女に助けられてことがきっかけで、考えを改める。その後は情報収集能力を活かす まなみの良き協力者に。性格は冷静沈着で百発百中の射撃の腕前を誇る。 そのため戦闘では怪人を倒せなくても、まなみと裕奈をサポートすることは出来る。 髪型はセミショートの黒髪。スタイル抜群。 皇帝ラデス:ヘルスター帝国を率いる悪の皇帝。地球を帝国の物にしようと侵略してくる。 巨大な魔力を秘めており、普通の者なら触れることさえ出来ない。玉座の間にどっしりと 構えており、動こうとする気配は無いが、とてつもない威圧感がある。 いつか、まなみや裕奈と対峙する日が来るのであろうか…? バルガン将軍:ヘルスター帝国の幹部で戦闘指揮を執ることが多い。性格は冷酷で 目的のためなら手段を選ばず、卑怯な振る舞いも平気でする。戦闘能力も高く まなみと剣を交えたことも。 カイマーズ博士:ヘルスター帝国の幹部で一見老人のような姿をしている。 新しいナイトメア怪人の製作を担当している。他にもマッドサイエンテイストな一面も あり、裕奈を水術剣士にしたのも彼の所業。結果的に敵を一人作ってしまったが。 デリック参謀:ヘルスター帝国の幹部。作戦立案を行う。作戦自体は怪人の力もあってか 上手くいきそうになるのだが、毎度まなみに邪魔をされてしまう。三幹部の中では 一番下っ端っぽい。 ナイトメア怪人:ヘルスターの野望を実現しようと日々、まなみ達と 戦うナイトメア怪人は、強力な武器と頑強な体で、地球人には対抗手段がほとんど無い。 そのため、まなみたちの力が必要になる。キジバズーカのようにまなみを倒したことも ある怪人もいる。しかし、倒しただけで満足するあたり全年齢対象。 戦闘員コザー:徒党を組んで襲い掛かるがお約束の雑魚なので軽く倒されてしまう。 基本的に「ギィー!」という掛け声を発することが多いが、ちゃんと普通の言葉も 喋れるのでコミュニケーションもバッチリである。
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196 :=ナンセンスセンテンス 1/1=:2008/02/25(月) 04 26 37 0 ========================= _人は自分の感じるようにしか感じられない _それを忘れることで人は力強く生きていける ========================= 197 :=意味を喪失したプロローグ 1/2=:2008/02/25(月) 04 27 35 0 シュレディンガーの猫という言葉を知っているだろうか?とある箱の中に猫と1/2の確 率で毒ガスを発する物質を入れる。この箱が透明であるなら、箱の外にいる人間は、猫 が死んでいるかどうか認識することができる。しかし箱が透明ではなく、外からいかなる 方法を用いても中の状況を確認できない場合、猫の生死は"箱を開けてみるまで分から ない"。箱を開けた瞬間に、猫が生きているのか死んでいるのか認識される。それと同時 に、箱の中での出来事。つまり"過去"の出来事まで分かってしまう。 では、その過去の"時点"において猫はどのように認識されるべきだろうか? 複数の文献や小説ではこのように説明される。「猫は半分生きていて、半分死んでい る」、と。 シュレディンガーはこの例を一種のアイロニーとして、つまり半分死んでいて、半分生き ているなどという"矛盾した状態"は存在しないのであるから、箱は開けてみるまで"分か らない"。したがって、半分生きていて半分死んでいるなどという"矛盾"の生じる解釈に 対するアンチテーゼとして提示した。 198 :=意味を喪失したプロローグ 2/2=:2008/02/25(月) 04 28 56 0 この国には多数の行方不明者が出る。そして、彼らに対する警察のそれは、実にシレ ディンガー的である。人が消えて、それに事件性があれば、警察の出番である。 しかし事件性がない―――たとえば彼らが家出、夜逃げ、駆落ち、である"可能性があ る"ならば、彼らはシュレディンガー的な解釈を用いて事件性があるか”分からない"とし、 本格的な捜査には乗り出さない。 そんなわけでこの国には多数の行方不明者が存在 する。 行方が不明なのに存在するというのも変な話であるが、統計調査によると行方不明者 の捜索願だけで10万件。捜索願が提出されないケースを含めると20万人もの人が毎年 消えていく。彼らのうちの数割は家出、夜逃げ、駆落ちなどの事件性のないものだろう。 残りの数割は樹海で自殺、ドラム缶に詰められ東京湾の底、怨恨により石灰とともに森 の奥深く、精神異常者の玩具など、事件性を保持したまま闇の底に沈んでいく。 この物語は、行方不明者たちの最後の可能性たる精神異常者に蒐集される行方不明 者達について。そして、蒐集する者達について語ったものである。 202 :=語られるべきプロローグ 1/4=:2008/02/25(月) 16 50 42 0 桐野凛子がこの電車に乗ったのは30分ほど前のことであった。彼女は東京の端っこに て、ある人物に会うためにここにいた。 今より9日前、凛子が参加しているSNSのコミュニティ掲示板に奇妙な書き込みがあっ た。 ―――――――――――――――――――――――― はじめまして、桐野凛子様、高倉京香様、文野夏菜様。 貴方達はゲームに参加する権利を得ました。 興味がありましたら、以下の日時に以下の場所で。 メイドが貴女方を屋敷まで導くでしょう。 ●月●日●●時、▼▼駅前 from 殺されたがりやの忘却者  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ―――――――――――――――――――――――― 203 :=語られるべきプロローグ 2/4=:2008/02/25(月) 16 51 33 0 同じ文面がメールで送られてきたら、凛子は機械的に削除を行っていただろう。しかしこ の書き込みがあったのはコミュニティ掲示板であり、このコミュニティに参加しているのは 三人だけ。それ以外のものは、書きこむことはおろか、内容を読むことさえできないはず である。 そして何より、桐野凛子(きりの りんこ)という彼女の本名が書かれていたこと。それが 彼女に機械的な行動を許さなかった。 204 :=語られるべきプロローグ 3/?=:2008/02/25(月) 16 52 42 0 殺されたがりやの忘却者は都市伝説のインターネット版である。 ある日ゲームへの招待状が届く。それは郵送であったり、メールであったり、或いはネッ トゲーム上のチャットの一画面であると言われている。 ゲームの内容自体はよくわかっていない。ネット上で氾濫している情報に統一性がない のだ。ただ、 【プレーヤーは命を賭け、ゲームに勝利すれば大金を得ることが出来る。 プレーヤーがゲームに参加するか決めるのは、内容を明かされてからでよい。】 、というのは、ある程度信頼できそうな情報に共通していた。 205 :=語られるべきプロローグ 4/?=:2008/02/25(月) 16 53 36 0 凛子は即、自分以外のコミュニティメンバーである《K》と《リルル》に教えてある、フリー メールを立ち上げた。倉木京香と文野夏菜が二人の本名であるかを確かめるためであ る。 受信メール1件。リルルからのメールだった。内容は、彼女の本名が文野夏菜(ふみの なつな) であることについて。凛子の本名が桐野凛子であるかについて。もしも本名であるならゲームに参 加するかどうかについて。 凛子は自分の本名と、携帯のメールアドレスを彼女に送った。 206 :=語られるべきプロローグ 5/?=:2008/02/25(月) 16 54 32 0 例の書き込みの名前が本名だと判断した後、凛子たちは携帯のメールで相談した。 書き込みが本物であるか。本物であったとして参加するのか。意外なことに、この議論は すぐに終わった。『参加してみたい。本物であるかなどどうでもいい』、と三人とも最初から 考えていたからだ。 凛子は隣の席に座っている少女を見る。彼女の名前は文野夏菜。"リルル"というHNで メッセ、チャット、SNSなどで三年間も交流してきたが、実際に会うのは今日が初めてであ った。 207 :=語られるべきプロローグ 6/?=:2008/02/25(月) 16 55 18 0 Kこと倉木京香とは現地集合の約束であったが、住んでいる方向が同じリルルとは先ほ どの駅で待ち合わせて合流した。 凛子と夏菜は両手に赤いリストバンドという目印を用意していたため、すぐに見つける ことができたのだが、夏菜という少女は凛子が想像していたのとは少し違った。 体の線は細く、顔が小ぶりなうえ、目が隠れるくらい前髪を長く伸ばしている。凛子が彼 女を見つけたとき、夏菜の方も凛子を見ていた。しかし足をもじもじしたり、手を挙げかけ たりと、挙動不審な態度を示すだけであった。凛子が近づいて、「あなたがリルル?」と尋 ねると、彼女は顔をリストバンドと同じ色にして小さく頷いた。そして「……あなたが桐野 凛子さんですか?」、と蚊の泣くような声で言った。しかも彼女の瞳は潤んでいた。凛子 が「そうよ。じゃあ行きましょうか」と言って歩き出すと、彼女は小さな歩幅でトコトコと付い てきた。 ネット上でのリルルという少女が、冷静でやや毒舌の口が達者な少女であったことを 考えると結構なギャップを感じずにはいられなかった。もしかしたら、リアルでのストレ スがネット上での口達者な少女を演じさせているのかもしれないな、と凛子は感じた。 208 :=語られるべきプロローグ 7/7=:2008/02/25(月) 16 56 09 0 やがて目的の駅に電車が着き、二人は目的地に向かった。そこには明らかに場違いな メイドが立っていた。秋葉原のような街であれば何の違和感もないのであろうが、このよ うな郊外の駅では明らかに彼女は周囲に溶け込めておらず、道行く人々の視線を一点に 集めていた。 しかも彼女は美しかった。顔は中性的でありながら、怖いほどに整っており、背は高く、 足も長く、均整の取れたプロポーションはメイド服の上からでもはっきりとわかるほどであ る。結っている黒髪ロングもメイド姿にフィットしており、その美しさをいっそう引き立てて いる。胸もEカップくらいはあるだろうか。 彼女の横にもう一人女性が立っていた。こちらもそれなりのプロポーションであるが、化 け物じみたプロポーションのメイドが横に立っているせいで、かなり損をしている。ショート カットで目つきがややきつく、強気な印象を受ける。 おそらく彼女がKこと、高倉京香(たかくら きょうか)だろう。 凛子達は彼女等と合流するべく、歩みを進める。 210 :=猫に真実は扱えない 1/11=:2008/02/25(月) 17 43 38 0 凛子達が近づいていくとメイドがこちらに気づいた。 「桐野凛子様と文野夏菜様でしょうか?」 「はい」 「本日はご足労願いまして真にありがとうございます。私は流千草(ながれ ちぐさ)と申し ます、以後お見知りおきを。ここにいらしたということはゲームに参加ということでよろしい でしょうか?」 思ったより低く、落ち着いた声である。クールビューティーとは彼女のためにあるような 言葉だな、と凛子は感心しつつも、気を抜かず確かめる。 「ゲームへの参加意思決定はゲームの内容を聞いたあとでいいと聞いたのですが・・・」 「勿論でございます。正式な参加意思表明はゲームの内容やルールを説明した後で結 構です。 主人はフェアなゲームを望んでおりますので。」 211 :=猫に真実は扱えない 2/11=:2008/02/25(月) 17 44 05 0 噂は正しかったのだ、と心の中で小さくガッツポーズしていると、メイドの横に立ってい た女性が話しかけてきた。 「それじゃどうする? 予定通り参加するの? あ、私は高倉京香。Kの中の人ね。」 ネット上でのKと同じように軽いノリである。どうやら彼女はネット上とリアルでの態度が あまり変わらない人のようだ。 「桐野凛子よ、よろしく。私はやるつもり。リルル、っと、夏菜はどうする?」 「・・・・・・私も参加する」 「それじゃあ三人とも参加ってことで、宜しくメイドさん。」 京香がまとめた。 212 :=猫に真実は扱えない 3/11=:2008/02/25(月) 17 44 47 0 「では、私の後についてきてください。」 メイドが歩き出す。歩く姿も美しいな、と一瞬見とれてしまい、慌てて後を追う。 暫く歩いていくと、一台の黒い車があった。 外見は普通の車であったが、中に乗ると外がまったく見えない。凛子達が驚いている と、メイドの千草が説明した。 「この車の窓は、外から中は見えますが、中から外は御覧になれません。ただし運転席 からは外が見えるようになっております。マジクミラーと携帯電話の覗き見防止シールを 組み合わせたような仕組みだと理解していただければ結構です。あなたがたがゲームに 勝利なされた場合、或いは、ゲームに参加しなかった場合、屋敷の場所を知られている と少々困りますので。何卒ご容赦願います」 213 :=猫に真実は扱えない 4/11=:2008/02/25(月) 17 45 17 0 ほとんど揺れない車に揺られて30分弱。やっと車は止まった。車の中で三人は雑談し ていた。夏菜は相変わらず瞳を潤ませ、声も小さかったが、赤くなりながら必死に会話に 参加しようとする姿には好意が持てた。京香は相変わらず軽いノリで、ネット上と同じ感 覚でおしゃべりできた。リアルで会うのも悪いものじゃないな。凛子は素直にそう思えた。 214 :=猫に真実は扱えない 5/11=:2008/02/25(月) 17 45 54 0 ドアを開くとそこには巨大な建造物が出現した。公民館や病院などを思わせるような、 直角を組み合わせたシンプルな作りであるが、マスカット色がその異常さを誇示してい た。周りは木々に囲まれているのだが、この建物は緑の中にとけ込むどころか、周りの 木々さえも異質にしてしまうような不気味さがあった。 「では、私についてきてください」 千草に案内されて、マスカット色のそれに入る。 建物の中は一面の青だった。カーペット、カーテン、床、天井、壁、ドアなどは言うに及 ばず、照明さえも青白い。 黙ってついて行くと、地下に辿り着いた。 215 :=猫に真実は扱えない 6/11=:2008/02/25(月) 17 46 18 0 「こちらに三つの部屋があります。御三方には、それぞれ違う部屋に入って暫くお待ちし て頂きます。後ほど主人がお部屋に伺い、ゲーム内容とルールを説明致します。」 凛子達は千草の言葉に従い、それぞれの部屋に入った。 部屋の中は建物の異質さにそぐわない普通の作りであった。壁は白で統一されており、 テーブル、ベッド、シャワー、トイレ、と一通り揃っている。そのままホテルとして使えるほ どであった。 216 :=猫に真実は扱えない 7/11=:2008/02/25(月) 17 46 43 0 たっぷり30分ほど待つと、ノックする音が聞こえた。凛子がドアを開くと、二人の人間が 立っていた。 片方はメイドの千草である。もう1人は、15歳前後の少年のようだった。スーツを着込 み、髪はオールバックで纏めており、背伸びしているような印象を受ける。顔立ちはあど けなさが残っているが、少し肌が白すぎる。化粧でもしているのだろうか。などと凛子は想 像を巡らせた。 217 :=猫に真実は扱えない 8/11=:2008/02/25(月) 17 47 08 0 「初めまして、桐野凛子さん。僕が貴女をこの屋敷に招いた宮月凪乃(みやつき なぎの) と申します。以後お見知りおきを。」 えらくハスキーな声でそう言って凪乃は手を差し出した。凛子も手を出し握手する。 「早速ゲーム内容についてお話しましょう。今回凛子さんたちにやってもらうのは部屋当 てゲームです。この地下室に三つの部屋があるのは分かっていますよね? みなさんに は自分がどの部屋にいるのか当てて頂きます。勿論、今の状態で当てるわけではありま せん。アイマスクをして、視界を遮った状態で回転して平衡感覚をなくした後に、部屋に 千草が案内する。そういうゲームです。」 218 :=猫に真実は扱えない 9/11=:2008/02/25(月) 17 47 37 0 「つまり勝率33%の運が全てのゲームってことですか?」 「いえ、それでは面白くありません。皆さんには部屋に傷をつけることや、印をつけること を許可します。その代わり僕と千草は、皆さんが食事をしている時間や、風呂に入ってい る時間に部屋の印を消すことや、ミスリーディングを誘うような印をつけさせて頂きます。 つまり私たち二人と皆さんの駆け引き勝負というわけです。」 なるほど、と思いつつ凛子は更に質問を重ねる。聞くべきことは全て聞いておいた方が 有利になるはずであるから。 219 :=猫に真実は扱えない 10/11=:2008/02/25(月) 17 48 04 0 「三人で相談してもいいのですか?」 「相談は自由ですが、制限をかけさせてもらいます。解答は明後日の昼として皆さんのス ケジュールは完全に管理させて頂きます。つまり部屋に入っている時間はそれぞれ別個 の部屋に待機していただき、食事の時や、お風呂の時間には自由に相談してもらって結 構です。今回のゲームに参加するかどうかも、よく相談してください。本日の22時頃に参 加するかどうか決めて頂きますので。千草、書類を」 「こちらが契約書とゲーム内容説明になります。どうぞ」 「どうも」 220 :=猫に真実は扱えない 11/11=:2008/02/25(月) 18 35 22 0 ふと、二人の雰囲気が変わった気がした。 「最後に一つだけ付け加えておきましょう。今回のゲームの基本は騙し合いです。しかし その契約書と説明の内容にだけは全く嘘がないことを。全てが真実であることを。僕、宮 月凪乃は殺されたがりやの忘却者の名に誓いましょう」 「私、流千草も殺されたがりやの忘却者の名に誓います」 二人は凛子の瞳を覗き込みながら誓った。理由は分からないが、凛子には二人の誓い が嘘ではないという確信に似た感覚があった。 「それでは。晩餐の時間になったら千草が呼びにいくからね。」 そうして二人は立ち去って行った。 221 :=真実 1/1=:2008/02/25(月) 18 36 14 0 ――――――――――――――――――――――――――――――― 契約書 この契約書に書かれている内容は全て真実であると誓う 殺されたがりやの忘却者  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ -挑戦者をプレーヤー、宮月凪乃と流千草をゲームマスターとする- 1.プレーヤーがゲームに勝利した場合、現金5億円を贈呈する 2.プレーヤーがゲームに敗北した場合、プレーヤーは自身の命 を含む全ての存在をゲームマスター側に捧げる 3.ゲームの内容は〔ゲーム内容説明〕のとおりである。こちらの 用紙についても、真実であることが保障される 4.ゲームマスター側の参加人物は、宮月凪乃と流千草のみで ある。その他の協力者は一切存在しない。 5.この契約書にプレーヤーがサインをすることにより、契約は成 立する。以後、ゲームから降りることは出来ない。 6.サインをする前にゲームに参加しないことを表明すれば、無事 日常に戻れることを保障する。 Sign,  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ――――――――――――――――――――――――――――――― 222 :=ゲーム内容説明 1/2=:2008/02/25(月) 18 37 08 0 ―――――――――――――――――――――――――――――――― ゲーム内容説明 勝敗の判定方法 ・三日目の昼、内線で部屋に電話がかかってくる ・プレーヤーは自分のいる部屋がA,B,C,のどれであるか回答する (A,B,Cの記号については、下記の地図を参照) ・正解すればプレーヤーの勝利。誤答であればゲームマスター側の勝利 ・プレーヤーとゲームマスターは、それが直接的且つ物理的な妨害でな い限り、原則として何をしてもよい 223 :=ゲーム内容説明 2/2=:2008/02/25(月) 18 37 52 0 ┌──────────┐ │ ┌┐ | 【地下一階見取り図】 │ ┌┘│【階段】 | ┌──────┘ └─┘ └──────┐ │ │ │ │ │ ┏━━━━━━━━━━━┓ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ 食卓 ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┗━━━━━━━━━━━┛ │ │ 扉 │ └───────────┠──┨─────────┘ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┌───────────┘ └─────────┐ │ 扉 扉 扉 │ │ ┌──∩──┰──∩──┰──∩──┐ | │ │ ┃ ┃ │ | │ │ A ┃ B ┃ C │ | │ │ ┃ ┃ │ | │ │ ┃ ┃ │ | │ └─────┸─────┸─────┘ | └────────────────────────┘ ――――――――――――――――――――――――――――――――