約 355,725 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/516.html
いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは ‐ 涼宮ハルヒの羨望 ‐ いつもと変わらぬ日常。 くだらない授業。 適当に聞いとけば満点の取れる内容なんて、ばかばかしくてイヤになる。 くだらない、ほんとにくだらない。 この生活が気に入っている人も居るんだろうケド、私にとってはただの苦痛。 なんで私はここにいるの? なんのために生きてるの? ふと、頭をよぎる当然の疑問。 誰しもが思い、誰しもが感じる、疑問。 ねぇ、なんで? 小さく、ほんとに小さく、誰にも聞こえないように呟いた。 そうすることで、何かが変わる気がしたから。 実際は─── ───言うまでもないケド。 退屈は私を覗き見る。 退屈は私を蝕む。 まるで、私は私自身が置き物のように感じる。 その気持ちに押しつぶされそうになる。 目頭が熱くなる。 私は、世界の部品じゃない。 耐え切れなくなって、前の席を叩く。 「……どーした?」 授業の邪魔にならないように、小さく呟くキョン。 めんどくさそうに、いかにもめんどくさそうにね。 キョン。 「何だ?」 ……なんだろう? 何のためにキョンを呼んだの、私。 こいつと話してると気がまぎれるの? そうなの、私? 「………ハルヒ?」 何よ 「いや、用はないのか?」 あるわけないじゃない。 ないから呼んだんじゃない。 ……あー、我ながら意味わかんないわね。 イライラするイライラするイライラする。 なんかない? 我ながら馬鹿馬鹿しい台詞。 「なんか、ってなんだ?」 なんかはなんかよ 「まず、何をしたいのか俺によくわかるように言ってくれ」 再び私を沈黙が覆う。 私、何がしたいの? …… 「ハルヒ?」 なんでもない。 「……おーい?」 もういい。 私がそう言うと、諦めたのか、前を見る。 そして会話中に黒板に書かれた文章をノートに書き写す。 なんでこいつはこんなに勉強しててあんなに頭悪いの? ばっかみたい。 長く連なる時の流れは私に退屈という名のナイフを突き刺していく。 その苦痛のせいで、寝ることもできない。 何か起こらないかな。 そんなどうでもいいことを望む。 ───あら? 何気なく校庭を眺めると古泉くんが歩いて校門へと向かっていた。 なんだろう、早退かな? 具合は悪そうに見えないから、何か用事でもあるのかな? 古泉くんの帰宅する理由を考えることで多少の気はまぎれた。 でもわかんないから今度聞いてみよう。 覚えてたら、だけどさ? ───キーンコーンカーンコーン やっと。 やっと終わった。 なんでこんなにかかるの。 時と交渉ができるのなら私の時間だけ早く進むようにして欲しい。 あ、楽しいときは別よ? 楽しいときはむしろ時間の流れを遅くして まぁいいわ、ようやく、私の時間だから。 「ハルヒ、さっきはどうしたんだ?」 不意に前の席から声がかかる。 なんでもないわよ、さ、行くわよ 「行くって?」 SOS団に決まってるじゃない! 「あ、ああ」 私は彼を残して教室を飛び出る。 待ちに待った放課後の時間。 待ちに待ったSOS団! さぁ、今日は何をしようかしら。 みくるちゃんにどんな服着させようかな。 そういえば昨日ネットオークションにかけられてたコスプレどーなったんだろう。 落札できてるといいな。 頭からどんどん湧き出る期待を胸に、私は意気揚々と文芸部室へ飛び込んだ。 部屋には有希と着替え中のみくるちゃんがいた。 「やっほぉー!」 「あ、こんにちは涼宮さん」 挨拶はもっと元気よくしなさい! そうね、語尾ににゃんとかつけるといいわ、かわいいから。 30分後、キョンが遅れてやってきた。 遅い! なんで私と同じクラスなのにこんなに遅いのよ! 「ちょっと成績のことで岡部とな」 なんなら私が一から教えてあげてもいいわよ? 丁寧に、かつわかりやすく。 「いい、隣で『なんでこんな簡単なのわかんないのよ、もーぅ』とか言われたくないから」 失礼ね! そんなこと…………ないと思うわよ? 保障はできないけど。 うん、100%なんてこの世に存在しないんだから。 「そういえば古泉は?」 古泉くんならさっき学校を出て行くのが見えたけど? 「古泉一樹は用事のため早退」 あら、有希、聞いてたの? 「昼休みに少しだけ」 理由はわかる? 「不明」 そっか。 楽しい部活の時間が過ぎていく。 有希が本を閉じた。 それは部活終了の合図。 いつも凄く正確で、驚くぐらい。 私は荷物をまとめて部室を出る。 明日は土曜日ね、いつもの場所でいつもの時間に!古泉君にも言っといて。 最後にそう皆に伝えた。 登校の時はキツめの坂道を、私は悠々と、一人で降りる。 ずっと、皆といられたらいいのに。 ふと、立ち止まる。 ずっと、いられたらいいのに? 不意に、不安が、私を掴む。 どうしてこんな気持ちになるの? わからない。 まるで、この日常が壊れることへの不安? 気にしすぎよ、少しは体もやすめないと壊れちゃうわ。 違う。 何が違うのかはわからない。 けど、何か違う。 いつも感じる日常とはまた別。 退屈という名のナイフじゃない。 これは何? 不安で足を早める私。 家について、ご飯を食べても、まだ私に絡みつく。 お風呂を浴びてさっぱりしても、何なのこれ。 部屋の中で電気もつけずに、私は枕を抱きかかえる。 ふと、思いついた。 ピリリリリリリ 「もしもし?」 キョン、私だけど。 「どうした」 ……… まただ、なんで私またキョンに? 「明日、ちゃんと来てよ?」 …今更じゃない、私? キョンは予定をサボったりはしない。 少なくともいつもはそうだったし。 「どーした?」 何が? 「なんか、今日のお前変だぞ?」 気のせいよ。 「…そうか?」 そうよ。 「わかった、明日もちゃんと行く」 絶対よ? 遅刻したらまたおごりだからね! 「遅刻しないでもおごるのは俺じゃねーか」 つべこべ言わないの! 「へいへい、じゃ、また明日な」 あ、キョン。 「ん?どした」 ……なんでもない。 「?」 明日、ちゃんと来なさいよ? 「わかったわかった、んじゃな」 電話が切れる。 なんだろう、この気持ち。 カーテンを開けて、窓の外を見る。 どこまでも広がる、星の瞬く夜空。 3年前に校庭に書いたメッセージは、どこかで誰かが読んでるだろうか。 その日の月は、とても綺麗だった。 ふぁ~。 よく寝た。 夜空を眺めながら、私はカーテンを開けて寝た。 そうすれば私は安心できたから。 昨日、あんなに不安でいっぱいだった頭も、一晩寝たらすごく軽かった。 結局なんだったんだろう、あれ。 まぁいいわ、準備して行きますか。 キョンより早くいかないとね、おごりはあいつ、私じゃないわ。 そこについた時、キョン以外のメンバーはすでにいた。 やっぱりできのいい団員がいると違うわね、うん。 みくるちゃんはやっぱりかわいいわね、私服も。 「そーですかぁ?ありがとうございます」 ほんとにかわいい、もし私が男だったら襲ってるわ、間違いなく。 有希、いつも眠そうだけど、ちゃんと寝れてる? 「大丈夫」 いつも通りの口調で返答される。 ならいいんだけど。 古泉くん、なんで昨日早退したの? 「少し親族のほうに急な用事ができまして」 肩をすくめて笑顔で答える。 ふーん、ま、いいわ。 にしても、キョンはいつも遅いわね。 いっそのこと集合に遅れないように私が毎朝電話してたたき起こしてやろうかしら。 時間が過ぎていく。 遅い! 遅い! 本当に遅い! もう一時間も遅刻してるじゃない! 携帯に連絡しても出ないし! なんなのよもう! それにしても遅いわね! 何してるのかしら! もう一度携帯電話に手を伸ばす。 こうなったら出るまでずっとかけてやるんだから! ピリリリリリリリ…… ガチャッ あら?繋がった? 「ハルヒちゃん?」 出たのは、キョンの母親だった。 なんで? 予想もつかなかった。 考えたくもなかった答えが返ってきた。 うそよ! 公道を私達を乗せた車が疾走しついく 「きっと、大丈夫ですよ、涼宮さん」 ありがとう、みくるちゃん。 そうよね、大丈夫よね。 うん、じゃなきゃ許さないわ。 絶対、絶対許さない。 だって、だって約束したじゃない、今日絶対来るって、昨日。 「もうすぐつきます」 古泉くんが呟いた。 走る窓から病院が見えた。 キョンが倒れた? ありえない。 そんなベタな展開、認めないからね。 さようならも言えずに、サヨナラなんて、そんなの認めないからね! 原因は何? なんで倒れたの? なんでキョンなの? どうして今日突然? 昨日までピンピンしてたじゃない! 病院につくと同時に、私はキョンの入院してる部屋まで駆け出した。 前もあったっけ、こんなこと。 クリスマスパーティの準備中に、あいつがいきなり。 やだ、思い出したくない! いやよ!いやよいやよ、いや! 気を失ったキョンの顔。 でもあの時は、ちゃんと起きたわよね。 そうよ! 今回も大丈夫なはず! じゃなきゃ許さない! 約束したじゃない、来るって! 胸へとつかえる何かを感じながら、私は病室のドアを開いた。 そして感じた、視線。 私を見つめる、妹ちゃんの目。 キョンの母親の目。 お医者さんの目。 そして、 キョン!よかった! キョンが私を見ていた。 意識は戻ってたらしい。 心配かけるんじゃないわよ!バカ! 私はキョンに駆け寄って、まくしたてた。 ホントは別のことを言いたかったけど、とにかく、無事でよかった。 ほんとに、よかった。 なんでそんな目で私を見てるの、キョン。 まるで、初対面を見るような─── 「ごめんなさい、あなたは、誰ですか?」 ―――――嘘って言ってよ 私は望んでいただけ そしてあいつは、それに応えてくれていた 私は調子に乗っていたのかもしれない 一度も、あいつの事を考えてあげなかった いや、考えてはいたのよ でも、結果的に、私はあいつを蝕んでいた そして、あいつが手のひらからこぼれおちた時 ようやく、そのことに、気がついたの キョン? 「キョンというのは、俺のことですか?」 何言ってるの? キョンはキョンよ、あなたでしょ 「すみません」 なんで謝るの? なんで?なんで?なんで? 「ごめん、なさい」 胸が痛む。 本当にキョンは申し訳なさそうな顔をする。 やめてよ。 「え?」 こんなの、キョンじゃない…… 「落ち着いてください、涼宮さん」 …みくるちゃん 「少し、話をしてもいいですか?涼宮さん」 キョンに聞こえないように私に呟く古泉くん。 古泉くん、話って何? 「彼の記憶喪失の原因についてです」 記憶、喪失? キョンが? うそよ、何それ。 何それ何それ何それ。 もしかしてそれが倒れた原因? 「医師の話によると倒れた理由も記憶を失った理由も同じらしいです。」 廊下で医師から一通りの説明をうけたあと、私は古泉くんと話していた。 古泉くんが続きを述べ始める。 「彼の精神は極度に疲労していた、それが倒れる原因になったと」 疲労? だって、そんなそぶりは一度も。 「長い間に蓄積されたものらしいです。」 どういうこと? 「例をあげて説明しましょう。 フラッシュバックというものがあります。 麻薬の一部には使用することで幻覚を見るものがあります。 その時の感覚が忘れられず人は使用を繰り返し、何度も使用するうちに麻薬は人の体を蝕みます。 重度の中毒者になった場合は、麻薬の恐ろしさに気づきやめるでしょう。 しかし、たとえ長い時間をかけて回復しても、ふとしたきっかけで全てが麻薬をしていた状態に戻ってしまうことがあります。 それが、フラッシュバックです。」 必死に理解する。 「つまり、彼の中には長い間精神的疲労、言わばストレスがたまっていきました。 しかし、そのストレスは小さなもので、簡単に消えていったはずです。 それが、何かのきっかけで消えたはずのストレスが一気に戻ったとします。 いわばストレスのフラッシュバックと言いましょうか、そうして、彼は倒れたのです。」 どうして? つまり悩みを抱えていたんでしょ? どうして私に言ってくれなかったの? 「それは、おそらく」 そこまで言って、古泉くんは口を閉ざした。 いつになく真剣なまなざし。 知ってるの? じゃあ、教えて。 「だめです」 なんで 「だめなんです」 教えないさいよ! 「涼宮さん……」 いいから、教えろって言ってんでしょうが!! ふと、気がつけば有希が隣に立っていた。 何? 「あなたは、知るべきではない」 何それ なんでよ? 「後悔する」 なんで? 「選択して」 何を 「知りたい?」 当たり前じゃない 「わかった」 「長門さん……」 「彼女は選んだ、知ることを。 だから伝える。」 「……わかりました」 「彼のストレスの原因は、」 私は言葉を待った。 沈黙で耳が痛くなった。 「あなた」 わたし? なんで、私なのよ。 「本当に、おわかりでないんですか?」 何を。 真剣なまなざしで、いつもと違う、怖い顔で私を見る古泉くん。 「彼はいつもあなたに合わせてきました」 ………… 「そしてあなたはまれに彼の精神レベルを超えた要求をしていたんです」 ………て 「それが彼のストレスとなった」 ……めて 「彼はあなたにこたえるために、いつも無理をしてきた」 …やめて 「彼はお人よしですからね」 やめて! 私は気がついたら両耳を抑えて叫んでいた。 「知ることを選んだのは、あなたです」 古泉くんは私に追い討ちをかける。 「だから伝えました、真実を」 いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは いつからだったのだろう──── ────私の中のあいつがこんなにも大きくなっていた いつからだったのだろう──── ────あいつは、私にとって必要な人になっていた …ごめんね 私は泣いてた。 ごめんね、ごめんね、キョン 俯いて、両手で、顔を覆って。 ごめん、ごめん、ごめんなさい 有希が、倒れこもうとする私の体を支える。 「今日は、もう帰りましょう」 古泉くんがいつもの優しい口調になって喋る。 「あなたも、少し休むべきです」 うん、ごめんね。 「大丈夫です、おそらく一時的な記憶の混乱です、すぐに治りますよ」 そうね。 治ったら、いいな。 うぇえ… 「涼宮さん…」 どうやって帰ったのか覚えていない ただ、体がすごく重たかった ご飯は、全然おいしくなかった お風呂は、全然気持ちよくなかった どれだけ泣いたんだろう 枕は涙でびしょびしょだった でも、涙は枯れなかった 枯れてくれなかった 枯れるどころか、どんどん溢れでる 私にとって、それほどに大きくなってたんだ キョン 私は呟いた そして、泣き疲れて、寝てしまった 闇が、私を包んでいく 再び目を覚ましたとき、灰色の空の下、私は駅前の公園に居た。 そして、キョンがそこにいて、私を見ていた。 前にも似たような夢を見た。 夢よね? 夢、だよね? 目の前に立つキョンが私を見つめる。 私は耐えられなくなって視線を逸らす。 「ここは?」 キョンも驚いたような声を上げる。 当たり前よね、なんで私夢の中でまでキョンに迷惑を── 「ここは、覚えてる」 キョンが呟いた。 私は、はっとして彼を見据えた。 覚えてるって? 「なぜかはわからない」 キョンは私と目を合わせた。 私は今度は逸らさずに彼の瞳を見据えた。 申し訳なさそうな、でも、力強い瞳。 「ここに来なきゃいけない気がしたんです」 なんで? 「約束したから……」 私は、また泣いた。 ありがとう、覚えててくれて。 声を上げて泣いた。 ごめんね?ごめんね? ほんとに、ごめんなさい 私のせいで、私の、せい、で ふと、私の体がひっぱられた。 背中にキョンの左手が回される。 頭をキョンの右手が撫でる。 暖かい。 ありがとう。 ありがとう。 ありがとう。 もう少し、このままで。 「何、泣いてんだハルヒ」 ――――っ!キョン? じっとあいつの顔を見つめる。 いたずらっこみたいな表情で私を見る。 もしかして、記憶が? 「迷惑かけたようだな、悪ぃ」 軽く悪びれたそぶりで語るキョン。 迷惑? 迷惑かけたのは私のほうなのに? 「ハルヒ?」 私は、あなたにむりをさせたのよ!? 私は、あなたにわがままを押し付けたのよ!? 私は、私は、私は、あなたを、縛り付けたのよ!? 私、あなたに………謝りたかった 「ハルヒ」 何? キョンが私の目を見る とても力強く、決心したように。 私を抱いていた手に、力が入る。 痛いぐらいに、でも暖かい。 「どうして、俺がお前のわがまま聞いてたか、知ってるか?」 え? 「お前のことが大切だったからだ」 ………キョン? 「ハルヒ、俺はな、お前のことが──── え。 ふいに、目を覚ました。 頬を伝う涙。 体に残るあいつの温もり。 ベッドから降りる。 携帯を鳴らす。 再び、彼のもとへ 今度こそ、言えなかった言葉を。 ごめんね、と。 ありがとう、と。 そして───── ピリリリリリリ…… カチャッ 「もしもし?」 キョン? 「どうした?わがままな団長さん」 - 涼宮ハルヒの羨望 終 - 涼宮ハルヒの羨望、外伝 笑ってくれる 私のために 私みたいなわがままなヤツのために 嬉しかった すごく嬉しかった 私のわがままにつきあってくれる それがたまらなく嬉しかった ある雨の降る放課後 私とあなたしかいない部室 寝ているあなたにそっと呟いた ――――ありがとう ‐ 終 ‐
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4585.html
涼宮ハルヒ挙国一致内閣 国務大臣(敬称略) 内閣総理大臣 涼宮ハルヒ 内閣官房長官 古泉一樹 総務大臣 国木田 法務大臣 新川(内閣法制局長官兼務) 外務大臣兼沖縄及び北方対策担当大臣 喜緑江美里 財務大臣兼金融担当大臣 佐々木(内閣総理大臣臨時代理予定者第一位) 文部科学大臣 周防九曜 厚生労働大臣 朝比奈みくる 農林水産大臣 会長 経済産業大臣 鶴屋 国土交通大臣 藤原 環境大臣 谷口 防衛大臣 長門有希 国家公安委員会委員長 森園生 国務大臣以外の主な役職(敬称略) 内閣官房副長官(政務) 橘京子 内閣情報官兼内閣危機管理監兼内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当) 朝倉涼子 内閣広報官 妹 内閣広報室企画官 吉村美代子 内閣総理大臣秘書官(政務担当) 俺 ああ、なんというか、呉越同舟という言葉がぴったりな状況に陥ってしまった経緯については省略しよう。 まあ、要するに未曾有の国難ということで、対立していたSOS党と佐々木党が連立して挙国一致内閣を作ったということだ。 じゃあ、とりあえず、上から順番に説明しようか。 ハルヒが総理大臣なのは、当然だわな。何でも一番が好きなハルヒが二番以下の地位に甘んじるわけもない。SOS党は衆参両議院で第一党だから、その党首が総理大臣に選ばれるのは、普通に考えても当然だしな。 古泉は、どこまでいっても、ハルヒのフォロー役というわけだ。実質、この内閣を取り仕切っているのは、こいつということになる。ご苦労なことだ。 国木田は、総務大臣の役目を飄々とこなしている。昔からできるやつだったし、任せておいて問題はなかろう。 新川さんは、年齢構成が若すぎるこの内閣においては、御意見番的な存在だ。 喜緑さんは、あの薄い微笑で対外交渉をこなし、諸外国からはタフなネゴシエーターとして認識されている。 佐々木のところの括弧書きは、俗にいう「副総理」というやつだ。この国難の中で、財政金融をつかさどるのはかなりの激務だが、よくやってくれている。 九曜に文部科学大臣を任せるのは、日本の将来を担う子供たちのためを思うとおおいに不安なのだが……。教育行政が滞りなく遂行されることを祈るばかりだ。 朝比奈さんは、まさに適役だと思うね。ただ存在しているだけで、国民の福利厚生に絶大なる効果がありそうだ。 会長さん(俺はいまだに彼の本名を知らん。みんな会長って呼ぶしな)は、生徒会長時代に培った実務能力で、農林水産大臣の職務を難なくこなしている。 財界の重鎮である鶴屋さんは、まさに適材適所といったところ。あの明るい振る舞いで、日本の景気も明るくしてくれそうだ。 藤原とは個人的にはそりが合わんが、この国難の中ではそんなこともいってられん。嫌味なやつだが、仕事は真面目にこなす。ただ、協調性が足りないのが問題だわな。国土交通省は防災担当機関でもあるから、いざというときは他省庁との連携が重要なんだがなぁ。 なんで谷口が大臣なんぞになれたのか。まあ、ハルヒの気まぐれなんだろうが。環境行政が停滞しないことを祈る。 長門が防衛大臣を担う限り、日本の国防は安泰だ。ひたすらに頼もしい。ただ、仕事をさっさとすませて、国会図書館によく出没するという噂が絶えない。 森さんは、警察組織のトップ。彼女がにらみをきかせれば、日本の治安は安泰だぜ。一方で、「機関」を通じて裏社会も仕切っているという黒い噂が聞こえてきたりも……。 橘京子は、古泉と一緒に内閣を取り仕切っている。SOS党と佐々木党の呉越同舟状態をうまく切り盛りしていくためには、この二人の連携は非常に重要だ。だから、佐々木を異常なまでに持ち上げて、ハルヒの機嫌を損ねるのはやめてほしいのだが。 朝倉涼子は、内閣官房の中では、古泉、橘に次ぐ相当な実力者である。情報・危機管理・安全保障を一手に握ってるからな。本人は防衛大臣をやりたがってたんだが、暴走して他国に戦争でも吹っかけられたら困るので、裏方に収まった経緯がある。 最近朝比奈さんにそっくりになってきた俺の妹は、内閣広報官。これが意外に天職だったらしく、毎日楽しそうに仕事をしている。 ミヨキチは、妹の補佐役といったところだ。妹と仲良くやっているようで、大変結構なことである。 で、俺はハルヒの秘書官というわけだ。ハルヒに振り回される雑用係というポジションは、どこにいっても変わらないものらしい。まったく、やれやれだ。 首相官邸。 「佐々木さんが、涼宮さんに使われる立場なんてありえないのです。佐々木さんこそが首相にふさわしいのです」 「また蒸し返すんですか、あなたは」 橘京子と古泉一樹が、また口論している。 ここ最近、すっかりお馴染みになってしまった光景で、もはや口をはさもうとする者はいなかった。 「第二党が何をいったって、しょせんは負け惜しみですよ」 「今度の選挙では、必ず勝って見せるのです」 橘京子は、ほおを膨らませて不満顔だ。 「せいぜい、頑張ってください。それよりも、例の件、佐々木党内の取りまとめはしてくれたんでしょうね?」 「もちろんです」 国家公安委員会・警察庁。 森園生は、極秘とスタンプが押された報告書を読んでいた。日本国内を跳梁跋扈する国外の諜報員を「非合法に処理」した記録である。昔はスパイ天国などといわれた日本国であるが、森園生が陣頭指揮をとって対策を進めた結果、状況はだいぶ改善されつつあった。 もう一枚の紙を取り上げる。こちらは何もスタンプは押されてないが、極秘文書には違いなかった。なぜなら、それは「機関」の文書だから。 TFEIの動向。天蓋領域の端末には変化は見られないが、情報統合思念体の端末は増員され、政府組織の中に潜入していた。いつでも政府を乗っ取れる体制でありながら、彼女たちは何もしようとしない。観測任務を第一とする態度は不変である。 現在、政府を乗っ取っている立場である「機関」と橘京子の組織としては、TFEIたちのそのような態度は不気味ですらあった。 政府の国防・外交・危機管理を押さえているTFEIトップスリー、長門有希、喜緑江美里、朝倉涼子ですら、人間レベルでなしうる以上のことをしようとはしていない。そして、そのレベルですら完璧人間に近いのだから、文句のつけようもないのだ。 森園生は、二つの文書を丸めて灰皿に置くとライターで火をつけた。情報流出を防ぐ最も手っ取り早い方法だ。 「宇宙人たちは不干渉ということね。なら、未来人たちはどうかしら……?」 そのつぶやきを耳にした者は、誰もいなかった。 厚生労働省。 真面目に書類仕事をこなしている朝比奈みくるのもとに、藤原がやってきた。 彼は、入ってきた途端に盗聴防止装置を稼動させると、口を開いた。 「あんたは、このまま状況を座視してるつもりか?」 「当然でしょ。介入は許可されてないわ。藤原くんだって同じじゃないかしら?」 「何百万人もの人間が犠牲になるんだぞ。それを黙って見てるつもりか?」 朝比奈みくるは、簡易シミュレーターを取り出し稼動させた。 無数の曲線と数式と記号で構成された光の三次元樹形図が空中に展開される。 「実際、それを阻止しようと思えば、介入しなければならない時点は1249箇所。二人だけじゃ、手に負えないわよ。あからさまな規定事項破壊行為だし、介入が全部終わる前に私たちが始末されちゃうわ」 朝比奈みくるは、簡易シミュレーターをポケットにしまった。 光の樹形図が消え去る。 「あるべき未来を守るためには仕方ないわよ」 「そんな未来なんぞ糞食らえだ」 「藤原くんだって分かってるはずでしょ。私たちはこの悪しき世界を守るために存在する悪党だってことは」 「……」 藤原の顔が渋面を形作る。 「それが嫌なら、未来に帰って組織を抜けることね」 国立国会図書館。 読書にいそしんでいた長門有希のもとに、喜緑江美里と朝倉涼子がやってきた。二人とも半ステルスモード。図書館という空間に同化している長門有希はともかく、二人はこのような場所では目立ちすぎるからだ。 長門有希も、半ステルスモードに移行した。 「大規模な情報操作をしない限り、戦争は不可避。その旨は、既に報告済みである」 「私も同じです」 「私も同じよ。三人とも意見が一致するなんて、つまんないわね」 「情報統合思念体からの指令は、観測の継続。積極的な干渉の禁止、つまりは、不干渉原則の維持である」 「穏健派はしぶしぶ同意したみたいですけどね。戦況が悪化した場合に、涼宮ハルヒの力が暴走して危険を招くことを懸念しているようです」 「その方が情報爆発を観測できていいじゃないの」 朝倉涼子はあっけらかんとそう発言した。 「主流派は、今のところ急進派と同意見。ただし、情報統合思念体に危険が及ぶことになれば、穏健派とともに阻止することになるだろう。むしろ、気になるのは天蓋領域の動向」 「周防九曜は、相変わらずのようです。あちらも、不干渉という点ではこちらと変わらないのではありませんか。むしろ、未来人の方が干渉してくる可能性は高いと思いますけど」 「戦争の発生自体は、彼女たちにとっても規定事項であると思われる。そうでなければ、そろそろ動きがないとおかしい」 経済産業省。 鶴屋大臣は、いろんな方面に電話をかけまくっていた。 「……戦争ともなれば鉄鋼の増産は不可欠だからねっ。……生産ライン増強の補助金? いやぁ、お国の財政が厳しくてねぇ。……あっ、そんなこと言っちゃっていいのかなぁ? あのことをバラしちゃうよっ。……うん、理解してくれて助かるにょろ。じゃあ」 電話を置き、次の話し相手の電話番号を確認する。 「ええっと、次は、○○商事だったかな?」 鶴屋大臣の脅迫電話は、その日一日中続いていたという。 首相官邸。 「ああもう! 今日もくだらない仕事ばっかりだったわね!」 「仕方ないだろ。一国の首相ともなれば避けられない仕事はいくらでもあるさ」 俺は、文句たれるハルヒをなだめる役目だ。この役目は昔から俺のもので、いまだに免れることができてなく、おそらく将来もずっと続くだろうと思われた。 なんたって、俺は、栄えあるSOS党党首殿の夫だからな。今さら免れることは不可能だろうし、その気もない。 「ねぇ、キョン」 ハルヒは俺の背中に手を回して抱きついてきた。 「なんだ?」 「あたし、そろそろ子供ほしい」 「いきなり何言い出すんだ、おまえは」 「いや?」 ハルヒの表情は真剣そのものだった。 「あのなぁ、ハル……」 俺が言いかけた瞬間に、背後から声が降ってきた。 「涼宮内閣腐敗の現場、そんなところだね」 振り向くと、そこには佐々木がいた。 「腐敗といってもこの程度でね。申し訳ない。でも、部屋に入ってくるときはノックぐらいはしてくれよ」 「したよ。ただし、お二人とも自分たちの世界に没頭するあまり、ノックの音を認識することを脳が拒否していたようだけどね」 俺たちは二人して顔を赤くするしかなかった。 「何の用だ?」 「酷い言い方だね。僕は、ここ一週間ほとんど寝ないで、この『戦時財政計画』をまとめていたというのに。ねぎらいの言葉ぐらいほしいところだ」 佐々木は、右手に握っていた分厚い書類を、近くのテーブルの上に無造作に置いた。 「すまん。それはご苦労だったな」 「ありがとう。君にそう言ってもらえると、僕の苦労も報われるというものだ」 何を大げさなと思っていると、背後に寒気を感じて振り向いた。 ハルヒが、剣呑な視線で佐々木をにらんでいる。 「涼宮さん。そんな目でにらまないでよ。別にあなたの夫をとろうなんて思っちゃいないわ。私だって、その辺はわきまえているつもり。キョンは誰にだって優しい人、涼宮さんだって分かってるでしょ?」 「分かってるわよ!」 ハルヒは不機嫌な顔のままだ。 「涼宮さん。お互い、この内閣が続く間だけでも仲良くやりましょう」 ハルヒはしぶしぶ頷いた。 「なあ、佐々木」 「なんだい?」 「この内閣が終わったら、おまえたちはまた野党に戻るのか?」 「当然だよ。キョンだって分かってるはずだ。涼宮さんには、常に張り合える敵役が必要なんだ。今は外敵がいるからいいけど、それがなくなったら、張り合いがなくなる。ならば、その役目は僕が果たそう」 「でも……」 「僕自身も、そういう役回りを結構楽しんでるのでね。おかげで、涼宮さんと出会えてからの人生はとても充実している。では、馬に蹴られないうちに退散するとしよう」 佐々木は去りかけて、再びこちらを向いた。 「キョン。君が愛妻家なのは結構なことだが、自重してくれたまえよ。この未曾有の国難の時期に、首相閣下が産休では、国民に示しがつかない」 俺たちが何かをいう暇すら与えず、佐々木は足早に去っていった。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3710.html
神様の力が収束する原因となった最後の大事件――まあこれは後々何らかの形で知ることになると思うが今は言わないでおくとする――それを契機として俺の波乱万丈の高校生活はプツリと終わりを告げた。 宇宙人、未来人、超能力者と共に過ごした日々。大学を卒業したばかりの俺にとってそれは既に酒の席での笑い話と相成っている。まあ、専ら語り合えるのは元超能力者とだけであるが。 この話はその他大勢の一般人、谷口を筆頭とする奴らに聞かせてやったことはない。 話したところで頭がおかしい人、という不名誉なレッテルを貼られてしまうから止めてある。 それに俺だって進んで他人に教えてあげようとは思わない。これは俺たちだけの秘密だからだ。 とりあえずそんなわけで俺は平和に過ごして……………おっと、言い忘れたが、元宇宙人は立派な人間となり、元未来人……いや、今も絶賛未来人であるだろう愛すべき彼女は未来へと帰ってしまった。 つまり世界をいいように改変できる人間は現在この世界に存在しない。そう、この世界には、な……… 収まったかに思われた事件、しかしそれは未だに全て解決したというわけではなかった―― 「……はあ、はあ」 俺は今走っている。何故かと言われれば新しい仕事場に遅刻しそうであるから、としか言いようがない。 畜生、あいつがもっと早く起こしてくれたらこんなことにはならなかったのに―― 「――おい、どうして起こしてくれなかったんだ!お前だって今日は俺にとって大事な日だってわかってるだろ!!」 俺はネクタイを締めながらそう怒鳴った。 怒鳴っている相手は俺の同棲相手である―― 「え?ああ、キョンがあまりにも気持ちよさそうに寝てたから起こすのが申し訳なかったのよ」 ――涼宮ハルヒ。 大学在学中に俺から告白し今に至る。周りからは遅すぎるとか散々文句を言われまくったがな。 しかしまた俺が告白するまでにもいろんなことが起きた。 ハルヒの誤解、俺の誤解etc.と言い出したら切りがないほどに。 「あのなぁ、だからといって……」 ハルヒが捨て犬のような目で見つめてくる。 これはハルヒが俺と付き合いだしてから身に付けたものであり、馬鹿……うん、ハルヒ馬鹿な俺はこれをやられると何でも許してしまう。仕方ないんだ。 「はあ、もういいよ。とにかく急がなきゃならんからもう行くぞ」 「ご飯食べないの?」 「いい。食ってる暇はない」 ハルヒがまた見つめてくる。 ええい、止めてくれ。本当にやばいんだよ。 「ま、しょうがないわね」 「わかってくれたか。じゃあ行ってくる」 「あ、キョン!」 「何だ?」 「頑張ってね」 「…………ああ」 で、こんな感じで走っている。ちなみに新しい仕事場とは学校、学校の名前を言っちまえば光陽園学院である。 大学のときに何を間違ったのか教員免許などを取得してしまった俺は、そのままハルヒの説得もあり川の水が流れるようにサラサラと、気付いたときには今の状況になっていた。 「はあ、はあ……ふぅ」 やっとのことで校門の前まで辿り着く。 校舎内に入ると、全力で走り疲れているのか頭がクラクラしてきた。視界がぼやけていく―― 俺はバランスを保つため思わず近くにあった柵を掴んだ。 その瞬間、世界の色が変わったような感じがした。 しばらくそのままでいると楽になってきたので、辺りを見渡す。しかし対して変わったようなところは見受けられない。気のせい、か……… そう思った俺は学校に備え付けてある時計をチラリと伺う。全力で走った効果があったのか、なんとか間に合ったようだ。 俺は息を一つ吐いて多少疲れの残る足で職員室に向かった。 ………冷静に考えておけば良かった。後から思い出したが光陽園学院は女子高のはず。 そのことをすっかり失念してしまっていた俺は何の違和感も持っていなかった。周りの生徒の中に人数こそ少ないが男子がいたということを。 俺は前任の先生と会うこととなっているため職員室へと急いだ。 前任の先生から聞いたところによると新任の先生がクラスの担任を任されるのは光陽園学院の伝統らしく、俺はめでたく二年の担任となった…………いや、この場合なってしまったが適切か。 本当に俺なんかに一クラスを任せていいのか、と思うがあの頃の言い方をすれば規定事項だから仕方がないのだろう。 自分が担任するクラスの教室に向かう最中、付き添いの先生から俺の受け持つクラスについていろいろなことを聞いた。 ――問題児がいるんですよ。 問題児? ――そうです。去年の年末くらいから………以前はそんなに問題が無かった子なんです。成績もいたって優秀でしたし。 最近はまだ落ち着いてきていますが、それでも新任の先生にはきついかもしれませんね。 俺は、はぁ、と曖昧な返事をする事しかできなかった。 いきなりハードルが高すぎるんじゃねえのか? いや、だがしかし高校時代にハルヒに散々引っ張り回された俺だ。ただのひねくれたやつくらいならどうってことない、とは思うが…… 「じゃあ先生、頑張ってください」 「はい」 教室の扉の前で大きく深呼吸をする。 まだチャイムも鳴っていないというのに教室からは話し声があまり聞こえてこない。 さすがは進学校といったところか。北高とはえらい違いだ。 そう考えると俺でいいのか、という疑問はいくら誤魔化してもやはり完全に拭いきることができなかった。 確かに俺もハルヒと同じ立派な国立大に入ることができた。 しかしあれはハルヒが一生懸命指導してくれたからであって、俺自身が他人に教えることができるほど勉学に自信を持っているわけではない。 ましてここは有名な進学校、ちょっとやそっとの知識じゃ通用しない。 …………いかん、かなりネガティブになってしまっているな。 ええい、もうこうなったら当たって砕けろだ。 俺は勢いよく扉を開け教室に入った。クラス中の視線が俺に集中する。 うう、止めてくれ、そう珍しいものを見るような目は。 俺は教壇の前に立ち、生徒たちの顔を見渡す。 と、席が一つ空いているのに気付いた。休みか何かなのか? 「ああ、あの席の子なら偶にしか来ないんです。一年の冬辺りからかな、それまでは休みなんかなかったんだけど……」 俺の視線の先に気付いたらしい前の席の女子生徒が教えてくれた。 成る程、例の問題児か。 まったくやれやれだな。 ここで問題児の名前でも確認するとするか、と思いクラス名簿を見ていたとき、教室の扉が凄まじい勢いで開いた。 そして扉が開く音と同時に俺は名簿に有り得ない名前を発見する。 いや、まさか………どうなってるんだ…… 恐る恐る顔を上げた。教室に入ってきたばかりである噂の問題児と目が合う。 「………ジョン?」 ひとくくりに纏められた長い髪―― 「ジョンなんでしょ!?」 不満を詰め込んだような顔―― 「あんたどこ行ってたのよ!!…………この4ヶ月間、ずっと探してたのに………」 およそ七年前に見たときよりもほんの少しだけ成長したであろう姿―― 「ちょっと、何か答えなさいよ!」 長門が生み出した改変世界、そこでは光陽園学院の生徒として存在していた―― 涼宮ハルヒが、そこにいた―― 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4864.html
俺の提案は賛成三、無言一で可決された。 「逆世界入り込みオイルとお座敷釣り堀~」 ドラえもんが俺の所望通り、今回の作戦に必要な道具を出す。 そのお座敷釣り堀を引いて、逆世界入り込みオイルを垂らした。水銀を入れたように光が反射する。 これで準備は完了だ。 後はゲストの到着を待つのみとなった。 待つと数分。がちゃりと音がしてどこでもドアが静かに開くとその向こう側で朝比奈さんがおっかなびっくり、長門が無表情のまま、ぐーすか寝ているハルヒを抱えていた。 ハルヒが完全に寝ているのを確認した俺は鏡のようになった水面に頭を入れた。 そこにはたしかに映画の通りの空間が広がっている。 俺の部屋とは全てがあべこべだ。時計が十一時を示し、窓からは日光が漏れている。 「では、行きましょうか」 心底楽しそうな微笑みを浮かべて言った古泉を先頭にして、俺達は、誰もいない“鏡面世界”へと静かに入り込んだ。 「これがほんとうに鏡の中の世界なんですか?」 ハルヒをベッドに置いた朝比奈さんが、俺の部屋を見渡してそう呟いた。 たしかに俺もにわかに信じがたい。 そこには目に写る光景が全て逆なだけで、変わらない空間が広がっている。 長門でさえも、無表情の中にわずかな驚きを浮かべているのだから、やはり未来のロボットとだけ言うことはある。 さて、ともかくゲストに起きて貰わねば。 「ドラえもん。ハルヒを起こしてくれ」 うなづいたドラえもんは、 「ネムケスイトール~」 と、フシをつけて安易なネーミングの掃除機のような形をしたやつを出して、紫色のモヤを吸い取りだした。 その間に朝比奈さん、長門、古泉に一旦部屋の外へと出て貰う。 「ふぁっ……んー」 ハルヒが目尻に涙をしたためて、これでもかとばかりに伸びをする。 そして、がばっと起上がったハルヒと目と目が合った。 さて、ここが一番の正念場だ。 「……え? キョン?」 「これは夢だ」 「は? あんた何言ってんの?」 ハルヒは露骨に馬鹿を見るような目で俺を見た。 しかし、ここで挫けては全てが水の泡だ。 「お前、前に言ってたよな。“宇宙人や未来人、超能力者を探し出して一緒に遊ぶんだ”ってな」 「……そうよ」 「こいつじゃダメか?」 そう言って俺が示した人物によって、怪訝な顔のハルヒがエクアドル産ひまわりのような特大の笑みを浮かべるまで大した時間はかからなかった。 多分、今のハルヒの頭には夢か現つかなんて考えはとっくに消え失せているに違いない。 「あんた、一応聞くけど名前は?」 「僕ドラえもんです」 ステレオタイプの自己紹介を聞いたハルヒは今にも跳ねんばかりに、 「よく来てくれたわ、ドラえもん。それにキョン、あんたもよくやったわ」 そこで俺は、以前の花見から密かにあこがれていた行為を行なった。 ぱちんっと景気よく指を鳴らすと、古泉と朝比奈さんと長門がゆっくりと出て来た。 これで役者は揃ったな。 俺は誰に言うとでもなく、そう呟いていた。 「みくるちゃん。書記お願い」 「はぁい」 真っ先にハルヒが所望したどこでもドアで移動した先は文芸部兼SOS団の部室だった。 なにもここじゃなくていいだろうに。 「なに言ってるの。こういう時こそ平常心でなにするか考えなきゃ駄目なのよ」 そう言ってのけたパジャマ姿のハルヒはどうみても、浮き足立っている。部屋の配置があべこべになっているのにも気付いていないようだ。 まあ、これからなにをしようかってことで頭が一杯で、そこまで気が回らないんだろう。 「じゃ、ミーティングするわよ。みんなやりたいことを言いなさい。まずはキョンからね」 俺か。 俺の知る限りではドラえもんの不思議道具を用いてできないことはないが、そのなんでもできるってことが逆に俺を悩ませる。 ちょっとした世の中の心理に気付いた俺の熟考の結果、導き出された答えは、 「今度のテストの答案が欲しい」 「バカじゃないの。そんな下らないことじゃなくてもっと夢のあることを言いなさい。」 下らなくもなければ、夢のないことでもないのだが。第一、赤点レーダーに尾翼がひっかかりそうな俺にはとても魅力的だ。 「分らないならあたしが教えてあげるわ。だから、それは却下よ」 その一言で俺の案はあえなく棄却された。 「古泉君はなんかある?」 「そうですね。空を自由に飛びたいです」 「いいわね。みくるちゃん、今の書いて」 「はぁい」 ホワイトボードに朝比奈さんの可愛らしい文字が踊った。 空を飛ぶって、いつも飛んでるじゃねえか。 「あれは飛ぶという感覚はないんですよ」 耳元でウィスパーボイスが囁かれる。 タイムスリップ願望だけじゃなく、飛行願望まであるのか。 「ほんとうはタイムマシンに乗りたいんですが、そうなればこの夢物語が終らない可能性が出てきますからね」 そう言って古泉は肩をすくめた。 こいつなりに妥協したんだろうか。 「じゃ、次はみくるちゃんよ。なにかある?」 「あ、あたしですか……えっと、じゃあ飲茶用の急須が欲しいです」 どうやら、朝比奈さんはほんとうに自分が欲しいものをリクエストしたようだ。 ハルヒすら呆れたように、 「そう。じゃ、ユキはなんかある?」 「…………」 長門は即席麺の調理時間を遥かに超過した沈黙の後、 「図書館」 とだけ呟いた。 図書館ごと欲しいのかよ。 「蔵書だけ欲しい。だけど、私の部屋には格納するスペースがない。図書館自体が望ましい」 なんとも長門らしいと言ったら長門らしいが。 「もう、ユキまでそんな即物的なこと言って」 ハルヒはさも憤慨したように言った。 そういうお前はなにが望みなんだよ。 「あたし? あたしはビッグライトよ」 そんなもん、なにすんだ。 「決まってんじゃない。大きくなんのよ」 ハルヒはそう言って胸を張った。 さようか。ドラえもん出してくれ。 「ビッグライトとタケコプタ~」 所在なげにたたずんでいたドラえもんがやっと出番だ、とばかりにポケットから大した機密性を持たない道具を出した。 「みくるちゃん。こっちきなさい」 「ひぇぇ」 ハルヒがフェルトペンを持ったままの朝比奈さんの首根っこを引っ掴んだ。 恒例の流れに俺と古泉は席を外そうとしたのだが、呆然とその光景を眺めていたドラえもんは動かず、引きずるように外へと出した。 「一応、順調みたいですね」 ああ、何とかな。 「ところでドラえもん君、ちょっと四次元ポケット見せてくれませんか?」 「え? いいけど」 了承を得た古泉は膝をついてドラえもんの腹部にあるポケットに頭を突っ込んだ。 ただでさえ不思議空間にしょっちゅう出入りしてんだからいいだろうに。 そうこうしている内に部室の扉が開いて、中からバニーガールの格好をした朝比奈さんとハルヒが出てきた。 なんでそんな格好してんだよ。 「こんなチャンスないんだから、大きくなったみくるちゃんを見なきゃ損よ」 たしかにそれには同意せざるをえないな。 ちょっと、というかかなり見てみたい気がする。 「ほらほら、行くわよ」 ハルヒは部室の窓を開け放ち、頭にタケコプターを乗っけた。バニー衣装にはポケットがないためか、胸にビッグライトをさす。 そういや、実際にこれを使うとどうなるかって研究した本があったな。その内容によると、首と身体がおさらばしてしまうんじゃなかったっけ。 そんな俺の心配を余所にハルヒは朝比奈さんを抱えたまま窓から身を乗り出すと、鳥のように飛んでいった。 辺りにひゃあああ、という朝比奈さんの悲鳴が木霊する。 「これはどうやら反重力発生装置らしいですね」 じゃあ、このプロペラみたいなのは飾りか。 「そうとしか言いようがありませんね。さて、皆さん行きましょうか」 古泉が修学旅行前夜の小学生のような顔でそう言うと、 「僕はちょっと疲れたからここにいていい?」 お前がいなきゃ話にならんのだが。 「この疑似空間のせい」 長門がそんなことを口にした。 どういうことだ。 「涼宮ハルヒがこの空間を夢と認識し、物理法則が普通の空間とは異なっている。ドラえもんが有する内部回路に不具合が生じている可能性がある」 「どうにかできるか?」 「やってみる」 仕方ないな。なんとかなったら来てくれ。 「これを渡しておくから、なにかあったら使って」 と、ほんとうに調子が悪そうにドラえもんがスペアのポケットを渡してきた。 「分かった。長門、ドラえもんを頼む」 そう言って、長門に任せて俺と古泉はハルヒの後に続いた。 一瞬の落下感の後にフワッと身体が浮くような感覚に囚われる。 「どうしてどこでもドアがあるのに、タケコプターなんてあるのか。なんて考えてましたが、その理由が分かった気がします」 ほう。一応聞いてやろうか。 「車が大量生産される時代にも関わらず、我々は徒歩を用います。それから分る通り徒歩には徒歩の良さがあるように、タケコプターにはタケコプターなりの良さがあるんでしょうね」 たしかにこの浮遊感は他では味わえないな。 そんなことを思いながらあれこれ試してみた。 身体を前に倒すと前に進み、立てると止まるというふうに出来ているようだ。 しばらくそうやって最高速度でも試そうかと思った瞬間、目の前を行く古泉の姿が消えた。 いや、俺がなにかに包まれたのか? 俺の視界一杯にやけに生暖かい空間が広がる。 「みくるちゃん、いいもん捕まえたわ」 空気がびりびりと震えるような大声がしたかと思うとぱかっと上半分が消失して、巨大な朝比奈さんと目があった。 「あっ、キョン君!」 俺は最大瞬間風速六十メートルほどの甘い吐息に吹き飛ばされそうになる。 朝比奈さんの豊かな部分はさらに巨大化して、そこには二世帯が優に生活できるほどの面積があった。 まあ、その権利は誰にも渡す気はないが、 「ビッグライトもう使ったのかよ」 「当たり前でしょ。あたしはみくるちゃんとしばらく遊んでるから、あんたも遊んでなさい」 そう言うと巨大ハルヒは胸一杯に息を吸い込んで、ふーっと手のひらに乗っかっていた俺に吹きつけた。 台風の比ではない強風にあおられて俺はきりもみ状態で吹っ飛ばされた。 あわや地面と直撃する寸前になんとか体勢を立て直すことに成功する。 いっそのこと地球破壊爆弾でもぶつけてやろうか。 そう思ってハルヒの方を見ると、その馬鹿げたサイズが分かった。 バニー衣装の耳だけで車一台ほどある巨大ハルヒの身長は校舎の優に二倍はあった。目測で三十メートルと言ったところだろう。 ハルヒはこれまた巨大バニーの朝比奈さんの手を取ると、一足飛びで俺が毎朝暗澹たる気分で登っている通学路を下っていった。 俺もああやって通学すれば朝の貴重な睡眠時間がのばせそうだ。ただ、ものの三日もしない内にNASAあたりにガリバーのように縛られて解剖されかねんのが問題だな。 いや、しかし勢いがつき過ぎて…………ああ。 ハルヒは勢いを殺し切れずに丘の下に広がる密集した住宅地へと猪の如く突っ込み、建て売り一軒家を十件全壊させた。 それが楽しかったらしく、まるで石ころでも蹴るように住宅地を更地にして言った。 「ひぇぇ、涼宮さん駄目ですよ」 朝比奈さん。あなたもよろけた拍子に二三軒踏んでますよ。 「これが“鏡面世界”でよかったですね」 ふらふらと浮いて近寄ってきた古泉がそう言った。 「ああ。ただ、やってることが“神人”と変わらないように見えるがな」 「あれは涼宮さんの破壊願望の現れですからね。まあ、涼宮さん自身この世界を夢と疑ってはいないようですから、作戦は成功と言えるでしょう」 そう言って、ハルヒの精神分析医は肩をすくめた。 しかし、いつまでハルヒがこの世界を夢だと思うかが問題だ。 「涼宮さんがこれを現実だと認識したら、それこそ今の世の中を席巻している物理学や化学は一辺するでしょう。ただ、その可能性は限りなく低いと思いますよ」 どうしてそんなことが言えるんだ。 「涼宮さんは興味を抱くとそれ以外のことを重視しません」 あいつは楽しければそれでいいってところがあるからな。 「そういうことです。だから、僕たちは涼宮さんを飽きさせずに満足させる必要があるんですよ」 それが一番の難問なんだがな。明日までには片付けないと、学校が始まってしまう。 「その必要もないと思いますよ。ほら、あれを見て下さい」 古泉がそう言って示した先にはあべこべになった時計があった。その秒針は止まったまま氷ついたように動かない。 壊れてるのか。 「いえ、時間が止まってるんですよ」 さらりと言うな。どういうことだ。 「感覚としか説明できないんですが、ここは涼宮さんが作り出す閉鎖空間に似ています」 あそこは時間が止まってるのか? 「いえ、微妙にゆっくりとではありますが時間は進んでいます。ただ、この空間に於いてはほとんど進んでいます。ただ、この空間に於いてはほとんど進んでいません」 月曜の朝学校に行ったら俺たちだけ中年になってた。なんて嫌だぞ。 「そのためにも、涼宮さんを満足させないといけませんね。では、僕はもう少し空中浮遊を楽しんできます」 そう言って古泉はふらふらと飛んでいった。 呑気なもんだな。 せめて俺だけでも、とハルヒが満足しそうな道具を考えてみてもいまいち思いつかない。 今のうちになにがあるかだけでも聞きに行くか。 俺はふらふらとSOS団の部室へと戻った。 「おっ、治ったか?」 窓際で外を見つめていたドラえもんに尋ねたが一切の反応がない。 不思議に思って窓から中に入ろうとした俺は思わず落ちそうになった。 そこでは焦点の合わない目で虚空を眺めていたドラえもんの頭と胴体が別々の場所に置かれていた。 「……長門、これはどういうことだ?」 オイルまみれになりながら、ドラえもんの首から出た導線をいじっていた長門は、顔も上げずに、 「回路の物理的な装置を用いた流れをエネルギーのみに限定して再構築している」 と、呟いた。 はたして治るんだろうか。 「治る」 どのくらいかかるんだ? 「分らない」 口数少なく肯定系で話す長門の口から否定語が飛び出してきたことには驚いた。 「エネルギー回路の情報結合にかかる時間は不明。ただ、治すことは保証する」 自信たっぷりな無表情という矛盾に満ち溢れた表情で長門はそう宣言した。 しかし、この光景は不味いな。首と身体が分離したドラえもんなんて子どもに心的外傷を与ええるだけだ。 「分かった。ただ、これはちょっとやばい。どこか別の場所でやった方がいいな」 長門はおもむろに立ち上がっると、出しっ放しになっていたどこでもドアで自分の部屋へと繋いだ。 そうして胴体を抱えると、スタスタと部屋に戻っていく。 となると必然的に残されたドラえもん生首は俺が運ばねばならんようになった。 虚ろな表情を浮かべるドラえもんが不憫になって、縁起でもないが台ふきで顔を覆ってやった。 よしっと覚悟を決めて一息に持ち上げようとしたところ、ドラえもんの頭部は浮く気配すらみせないではないか。 そう言えば、ドラえもんって百二十九.三キロあるんだったな。二頭身だから頭だけで約七十五キロか。 抱えるにはちと無理がある重さだ。 「すまん。重くて持てない」 長門は無表情のままうなづくと、いとも簡単にドラえもんの頭部を抱えて出ていった。 俺はぽつねんと独り部室に取り残された。 そうなると言いたくなるいつものセリフを口にしようとした刹那、 「キョン、ちょっときなさい」 そんな轟音とともに強風に煽られる。 街を更地にするのに飽きたのかハルヒと朝比奈さんが戻ってきたらしい。 ハルヒは巨大な指で俺を掴むと、部室の外へ引きずり出した。 シャミセンの気分が分かった気がする。 「そんなことどうでもいいわ。それより今から、隠れんぼするわよ」 「隠れんぼ?」 「そうよ。あたしが鬼をするからみんな隠れなさい。あっ、みくるちゃんは元に戻っていいわよ」 そう言ってハルヒは胸からビッグライトを取り出して、不思議光線を朝比奈さんに当てる。炎天下に置いた氷のようにみるみる縮んで、俺より頭一つ分ほど小さいサイズに戻った朝比奈さんは疲れ果てたように溜め息をついた。 「キョン、ドラえもんとユキと古泉君を呼んできなさい」「ああ、僕ならいますよ」 と古泉がいつの間にか、ふらふらとハルヒの近くを飛んでいた。 しかし、ドラえもんは生首と化しているし、長門はその修理にあたっている。 適当に茶を濁すしかないな。 「ドラえもんは長門と過去に行ってる」 「え? なんで?」 「昔紛失した宝もののありかを探しに行ったみたいだ」 「そうなの。まあ、いいわ。ドラえもんとユキは後から参加してもらうから」 言い訳が功を奏してハルヒはそれ以上突っ込まずに、 「じゃあ、今から隠れなさい。範囲はあそこまでよ」 と言って丘の下に広がる街を示した。 なるほど。たしかに、学校を中心とした二百メートルほどの円状に家々が更地になっていた。 しかし、たかだかこんな遊びのために家をぶっ壊すなんて某街作りゲームの市長より無慈悲なやつだ。 「それじゃ、三分待ってあげる。真剣に隠れなさいよ。一番に見つかった人には罰を与えるから」 そう言ってハルヒは校舎に腰かけて目をつぶりながらカウントを始めた。 「キョン君、ドラえもん君と長門さんが過去に行ったってどういうことですか」 朝比奈さんが小さな声でつぶやく 。 「実はドラえもんの調子が悪くて長門に修理して貰ってるんですよ」 「そうなんですか」 そう言って朝比奈さんは再び溜め息をついた。 朝比奈さんの未来、言うなれば朝比奈さんの帰る場所が消えてしまったのだからそりゃ溜め息の一つや二つもつきたくなるよな。 「僕たちは早くドラえもん君が戻ってくるのを祈りつつ、早急に隠れた方がいいでしょう」 ハルヒのカウントはすでに百を切っていた。 俺と古泉がタケコプターで隠れ場所を見つけようと飛びたったところ、 「ひぇ、キョン君まって下さい。あたし飛べません」 と朝比奈さんに袖を掴まれて俺はバランスを崩した。 古泉は自分には関係がないといったふうにどこかへ飛んで行く。 しかたなくスペアポケットから朝比奈さんにどこでもドアを出してやってから、隠れる範囲ギリギリの場所を思い浮かべてドアを開いた。 「朝比奈さんはここに隠れていて下さい」 「え? キョン君は?」 俺は別の場所に隠れます、と言って朝比奈さんをどこでもドアの中に押し込んだ。 朝比奈さんのいずこへ売られる子牛のような顔を直視出来ずにドアを閉じる。 ドナドナを歌いたい気分にかられながら、どこでもドアを戻した俺はタケコプターの使ってカウントを続けるハルヒの元へと飛んだ。 ぐんぐんと上昇し続けハルヒの足を越え、妙に色っぽい鎖骨を越え、とうとう頭まで越えた俺は車ほどもあるバニー衣装のウサミミの部分に隠れた。 灯台下暗しさ。かけてもいい。ここならハルヒは気付かないぜ。 「さん、にい、いち……行くわよ!」 ぱちっと目を開いて、ハルヒが雄叫びを上げる。 俺の頭の中でジェット機が飛び交うような耳鳴りの中、巨大ハルヒが猛然と助走をつけてウサギのように丘から飛び降りた。 どがんと家々を木っ端みじんにしてハルヒは着地した。 あそこに俺たちがいたらどうするつもりだったんだよ。 ハルヒは頭の上で俺がそんなことをつぶやいたのも知らず、俺たちを探し始める。 その方法ってのがいかにもハルヒらしく、豪快かつ非常識だった。 まず、手近な民家を一軒両手で掴むと思い切りよく引っこ抜いて、 「いるなら出てきなさい」 と宣言し、何も返答がなければ遠くへ放り投げるといったものだ。 「あたしを止めたければ化け物でもなんでも出してきなさい!」 ハルヒは二十軒目を瓦礫に変えて怪獣のようにそう叫んだ。 多分、ほんとうにそう願ったんだろうな。 でなければあんなものが現れるはずがない。 地平線の彼方からのしのしとハルヒと同じくらい巨大な何かが、こちらに歩いてきた。 次第にその輪郭がはっきりと分かるようになって、俺は絶句することになった。 厳めしい面に、眼鏡。それはまさに古泉が作り上げたSOS団の敵役、生徒会長その人だ。 「出たわね、怪獣!」 「おい、涼宮。これはどういうことだ?」 「問答無用よ! おとなしく成敗されなさい」 そう言うなり、ハルヒは生徒会長に突進して首根っこを掴むと勢いよく地面に叩きつけた。 一本っと思わず叫んでしまいたくなるほど豪快に投げられた生徒会長は、潰されたカエルのような声を上げて動かなくなった。 これは……死んだのだろうか。 「そんな訳ないでしょ!」 「へ?」 「ちょっと投げたくらいで死なないわよ。ほら」 ハルヒは疑問符を浮かべる俺を指で摘んで、クレーンゲームの景品のように生徒会長の口元に近付けた。 その口からはヤニ臭い吐息が漏れている。 たしかに生きてはいるな。 しかし、 「いつ気付いたんだ?」 「始めから分かってたわよ。どうせあんたのことだから、灯台下暗しとか馬鹿なこと考えて隠れたんでしょ。でもね、あれだけぶんぶんうるさければ誰でも気づくわ」 俺はぐうの音もでずに黙り込んだ。 「まあ、いいわ。あんたは一番最後に捕まえてネタバラシしようと思ったけど、こいつを見張ってなさい。もし逃がしたら罰金の上、グランドを半狂乱で十周の刑よ」 ハルヒはそう言って瞬く間に倒された生徒会長の横に俺を置くと、のしのしと他の獲物を探しに行ってしまった。 まさかバレてるとは思わなかった。かけは俺の負けだな。 俺はやれやれと嘆息しながらペアポケットからスモールライトを取り出して、生徒会長を元のサイズに戻してやった。 それでも気絶を続ける生徒会長に、柔道でいう喝でも入れてやろうと考えたところでやっと目を覚ました。 「……これはどういうことだ。涼宮の仕業なのは分かっているが」 目をしばたたかせての第一声はそれだった。 やはり俺はこの人にはある種の親近感を覚えてしまう。 俺が詳しい理由を話そうとしたところで、 「いや、やはりいい。俺は面倒ごとには首を突っ込まん主義だ」 その方が懸命かもしれん。この人は古泉属する“機関”と金の関係で動いている。深く首を突っ込めばどうなるかは、この人が一番理解していることだろう。 「そういうことだ。しかし、起きたらこんなところにいるのには驚いた。“機関”だろうとこの出費は痛手だろうな。それに俺の慰謝料も払って貰わねば」 「いえ、ここは本当の世界ではないんですよ。だから、人はいません」 「ほう。だとしたら、むしり取るかいがあるというものだ」 くくっと笑い声を上げたのは本心からだろうか。 ひとしきり笑ったあと、生徒会長は元の仮面じみた表情を浮かべた。 「おい、また生徒をたぶらかしたのか? これでは密約違反だ」 「なにがだ?」 ぱっ振り返った俺の視界の隅で生徒会長が吹っ飛ぶのが見えた。 しかし、今の俺には道化を演じる生徒会長の安否など気にする余裕はなかった。 俺がいうのもなんだが妙な名前をつけられた暴虐非道な人物がいる。そいつは楽しみは自分だけで楽しむような奴だが、ハルヒはそういうことをしない。楽しみはみんなで楽しむべき、と考えているだろう。 しかし、ハルヒよ。 楽しみはみんなでやれば倍になるかもしれん。だが、恐怖や痛みは半分になったりなんかしない。等しく平等にあるものなんだぜ。 朝倉涼子の禍々しい白刃が煌めき、俺の右腿を切り裂いた。 つづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/843.html
昨日、俺のクラスは、月に1回の席替えをした。 そして、俺は窓際一番前という最悪なポジションを獲得してしまったわけだが、 じゃあ、ハルヒはその後ろか?と問うものもいるだろう。 しかし今回、ハルヒは俺と同じ列ではあるが、すぐ後ろではなく、窓際の一番後ろという前と変わらないポジションにいた。 ことの起こりは昨日のことだ。 母親は朝っぱらから親父とケンカしたらしく、親父が会社に行った後は俺にまでやつあたりしてきた。 しかも、俺はその日も妹にダイブをされたせいで腹が痛かったわけだ。ったく、朝から怒るなよ。 朝食はやけに焦げ臭かった。 しかも、朝のテレビ番組でやってた星座占いで俺の星座は12位。 そして極めつけの母親の言葉 「あんたも高校生なんだから彼女の一人ぐらい作りなさい!」 なんじゃそりゃ!俺だってできるもんならほしいさ。 気にしていることを言うな! その日の朝は、「いってきます」とも言わずに学校に向かった。 さらに学校につくと谷口が昨日のナンパは成功した!とか言ってきやがった。 そのときに谷口のチャックが開いてなかったのが、むしょうに腹立たしい。 さらにはチンプンカンプンな数学の授業で俺が指名され、素直に「分かりません」と言うと、「ちゃんと授業聞いてたのか?」とぬかしてきやがる。 さらには後ろの女も「何であれぐらいの問題も分からないの?」とか言ってきた。 体育の授業では5キロマラソンの途中に靴はぬげるし、 英語の授業では日本語訳しろと言われて、言ってみたら全く違っていてクラスの連中に笑われて、 朝ご飯同様、弁当もいつもよりまずくて(これは気もちの問題かもしれないが) 弁当食べ終わった後にトイレに行くと、清掃中。 とにかく、散々な一日だったんだ。 こんだけあってイライラしない人間なんていないだろ? でも、それだけなら俺もあんなとちったことはしなかったかもしれない。 まあ、そりゃそうだ。この時点ではとちるきっかけがなかったからな。 で、ことの起こりは5時間目と6時間目の休憩時間に起こった。 その途中、俺は背中に鋭い痛みを感じたわけだ。 こりゃあ、いつものシャーペンをつついてくる感触だな。 「今度のみくるちゃんのコスプレなんだけどすっかり忘れてたわ。今度はスッチーよ!最近そういうドラマが多いしね。で、今回はあんたが衣装料だしてちょうだい」 「何で俺なんだよ?」 「あたしは今お金ないの。それにいっつもみくるちゃんのコスプレ衣装はあたしが買ってるのよ?ああいうのは団員から徴収するものよ。今まであたしが出してあげてたことに感謝してほしいぐらいだわ」 そして、俺はその言葉にブチ切れてしまったわけだ。 「そんなことはどうでもいい!だいたいオレは別に朝比奈さんにスッチーのコスプレをしてほしいとも思ってないし、だいたい朝比奈さんにも迷惑だろ! それよりもだ、だいたいSOS団が発足してから罰金罰金、俺が悪くなくても俺の奢り。今までお前のせいでなくなった金はいくらだろうね?5桁は軽くこすね。あやうけりゃ6桁をこしてるかもしれん。 だいたいお前は朝比奈さんをおもちゃにして楽しんでるかもしれねーが、俺はSOS団のメンバーに昼食奢ってもなんも楽しくないんだ。それに、不思議なんて見つかるわけねーのに不思議探索で大事な大事な休日をつぶされるわ。 今になって思うが、ゴールデンウィーク明けにお前に話しかけるんじゃなかったよ。はっきりいってお前のその態度にはうんざりだ!」 クラスの連中は俺達を終始、唖然と見ていたように思われる。 今考えたらよくハルヒは何も言わずにその言葉を聞いてたなと思うよ。 俺はそのときのことをこれまでにないほど後悔している。 そして、そう思うのに先ほどの文句を喋り終えてから1分もかからなかった。 せいぜい、10秒ほどだろう。 俺はそのときにはもうしまった!と思ったが、言ってしまえば後の祭りである。 その間、教室は沈黙していたはずだ。それとも回りの声が聞こえないほど俺自身、後悔していたのかもしれん。 で、その沈黙を破ったのはハルヒだった。 ハルヒはいきなり机からノートを取り出し、最後のほうのページを破り、そこに『退団宣告』と、大きく書いて、俺に渡した。 「じゃあもうSOS団に来るな!バカキョン!」 すまん古泉、きっと今頃、神人はあばれほうだいなはずだ。 で、俺は何とか謝ろうとしたんだが、授業始まりの鐘が鳴り、岡部の「みんな席につけー」という言葉で俺は謝るタイミングをなくしてしまった。 で、6時間目の授業はLHR。 その時に、月に1回の席替えをして今の座席となったわけだ。 その後、この気もちを朝比奈さんのメイド服姿で癒してもらおうと部室に行こうとしたのだが、後ろでハルヒに襟をつかまれ、 俺を下駄箱の前まで運んだ後、「もう来るなって言ったでしょ」とかこれ以上にないぐらいの恐ろしい笑みで言った。 いやぁ、あれは怖かった。 俺は今日、ハルヒが学校を休んでるというわけでもないのに、ハルヒに会わずに午前中の授業を終えた。 「おいキョン、そろそろ涼宮と仲直りしてやったらどうだ?」 「僕もそうしたほうがいいと思うよ。仲が悪いキョンと涼宮さんって何か違和感があるしね。」 いや、俺もな、そうしようとは思うんだが、むこうがそのチャンスを与えてくれなさそうなんだよ。 「まあ、涼宮は頑固だからな。たとえキョンが謝ったとしても許してくれるかは疑わしいな」 「でも、やっぱり謝っておいたほうがいいよ」 それよりお前ら二人、特に国木田。なぜ俺が悪いのを決め付けて話す。 後悔してる自分が言うのもなんだが、少しはハルヒも悪いだろうが。 「まあ、かく言う俺は、お前があの変人好きハルヒとずっと続くとは思ってなかったけどな」 「そんなこと言ったらキョンがかわいそうだよ。僕はキョンのこと応援してるよ。」 おいおい、まるで俺とハルヒが付き合ってたみたいな言い方しないでくれ。 で、俺はできるだけササッと弁当を食べ終え、 先ほど、古泉から『また中庭に』というメールを受け取ったのでその場所に向かった。 「僕が話したいことは分かっていますか?」 俺が古泉のもとについたとたん、古泉はまるで分かってますよね?というような笑みを浮かべて俺に問いかけた。 まあ、予想はつくさ。 「昨日はホント、部室の中にいるだけできまずかったですよ」 「あれ?昨日お前、部活に行ってたのか。おれはてっきり神人倒しで忙しいかと思ったんだが」 「閉鎖空間は発生したんですけどね。規模が小さかったので他の仲間だけでたりて、機関には涼宮さんの観測をつづけてくれと頼まれたので、そのまま部室にとどまっていました。涼宮さんの様子では規模が小さいようには思えなかったんですけどね。 もしかしたら、涼宮さんは見た目よりも怒ってないのかもしれません・・ …それより、どうやら昨日、席替えをしてあなたのすぐ後ろの席が涼宮さんにならなかったそうじゃないですか」 「ああ」 「これは結構、重要な問題ですよ」 んな大げさな 「まあ、涼宮さんの力が衰えていて、そのような結果になったと考えると話は早いですし、そうだと、こちらとしても嬉しいのですが、確かに衰えてるとは思うのですが、そこまで衰えてるようには思えませんしね。 それと、ここからは僕の予想ですが、涼宮さんは、あなた自身から近づいてきてほしいと思っているのではないでしょうか?」 「俺はハルヒの近くになりたいと念じて近くの席になるような力は持ち合わせていないぞ」 「いいえ、そうじゃなくて、普通に近づいたらいいんです。席が離れてるのにわざわざ休み時間に話しかけてくれる、とかね。とにかく、涼宮さんに謝ってみてください」 「あいつが謝らせてくれる時間を作らせてくれると思えなないのだがな~」 「そんなことはないと思いますよ。まあ、時と場合によるでしょうけどね」 「それに、何度も何度もしつこくて余計嫌われないか?」 「それはあなたの謝り方にもよるでしょう。それにしても、やはりあなたも涼宮さんに嫌われたくないんですね」 「そういうわけじゃねーよ」 「まあ、こちらもできるだけあなたに謝りやすい環境を作って差し上げることにしましょう。できたら今日中に仲直りしてくれたらこちらとしてもありがたいのですが」 まあ、そうは言うものの、その後にハルヒに謝ろうと近くによっても、俺に気づくとすぐにどこかに行ってしまう始末である。 しかたない、明後日の日曜日になんとか謝るか。 古泉が言っていた謝りやすい環境とはこうだ。 明後日は俺ぬきでいつもの不思議探索パトロールをやるらしく、うまくやってハルヒを公園まで連れて行き、そこで俺とばったり会って俺が謝るという設定。 もちろん、明後日は2:2で別れると予想され、ハルヒは誰とペアを組むか分からない。そのため、長門と朝比奈さんにもこのことを伝えておくとのことだ。 で、公園への誘導方法は「最近、公園で幽霊を見たという人がいるらしくて」とハルヒに言うつもりらしい。 とりあえず、朝比奈さんがハルヒとペアにならないことを祈ろう。 嘘がつけなさそうな人だからな。 で、その日曜日になったわけだ。 俺はなぜか、普段の不思議探索の日よりも早い時間から公園にいる。 とりあえず、ハルヒが来るまで誰とペアになったんだろう?ということを考えておこう。 古泉とペアになったらどうだ? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、有希とみくるちゃんは南お願いね!」 で、古泉が、 「そうそう涼宮さん。こないだ知人に聞いたのですが、そこの公園で幽霊らしきものを目撃した人がいるらしいです。」 で、ハルヒは目を輝かせて、 「それホント!そりゃあ行くしかないわね!」 ということで順調にいきそうだが、その場合長門たちがどうなるか気になるな。 まあ、こっそりついてくるっていうのが一番ありえそうか。 じゃあ、長門とペアになったらどうだ? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、古泉君とみくるちゃんは南お願いね!」 で、長門が、 「こっち」 と言ってそれ以外何も言わずに連れてきそうだな。 ハルヒは長門には従いそうだから。 だが、その場合、古泉が朝比奈さんとペアだからな。それが腹立たしい。 じゃあ、朝比奈さんとペアになったら? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、古泉君と有希は南お願いね!」 で、朝比奈さんが、 「あ、あの・・・こ、公園に・・・えっとキョ・・・じゃなくて、ゆ・・・」 「あぁ、もう何が言いたいの?いいからさっさと行くわよ。そうね、今日は新しい衣装を買ってあげる」 「ひょえー」 ……やっぱり朝比奈さんじゃダメそうだな。 で、30分ほど待っただろうか? 結局、俺の元にきたのは4人全員だった。 ハルヒは俺に気づいたとたん、後ろの3人を睨みつけているようだった。 ハルヒの顔は見えんが、古泉と朝比奈さんは苦笑している。 長門は、いつもどおり無表情だけどな。今回ばかりは何も読み取れん。 まあいい、とりあえず古泉に言われたとおりに実行しよう。 「俺はパトロールに呼ばれてないぞ」 「あんたはもうSOS団じゃないでしょ」 とりあえず俺は、古泉の言われたとおり一息おいてから、 「こないだは悪かった」と、謝っておく。 「その日は、いろいろ不運続きでな、ついつい八つ当たりしてしまった。とにかく、言葉が自分の意図とは関係なく出ちまって。中には自分でも信じられないことを言っていた。 もし、あの時谷口に『あんな変な部活さっさとやめろ』みたいなことを言われたら、お前に言ったことと全く逆のことで、谷口を怒鳴っていたと思う」 ハルヒは何も言ってこない。少しは何か言ってくると思ったんだがな、だがこのほうがいい。 「本当にあの時は不運続きだった。まあどんなことがあったかは話せば長くなるから言わないが、その時の俺で一番の不運はやっぱり、お前に退部宣告をさせられたことだ。そのときに起こったいろんな不運がどうでもよくなってしまうほどな。嫌なら毎日行ってなかったさ。 だからさ、お願いがある。もう一度、SOS団に入らせてくれないか?」 終始沈黙が起こった。 どんだけ続いただろうな。って言っても、1分もかかってなかったと思うが。 その沈黙を破ったのはまたもやハルヒだった。 「罰金」 普段より小さい声でハルヒはそう言った。 一応、はっきりと聞こえたが「なんだって?」と聞いてみる。 「罰金よ罰金!あたしにあんなこと言ってタダですむと思ったら大間違いよ!そうね、フランス料理のフルコースをSOS団全員分で済ませてあげるわ。いい?あたしは別に許したわけじゃないわよ!あんたがいなくてもSOS団はやっていけるしね。 ただ、こっちの3人がキョンがいなくちゃ嫌なようだから、あんたをSOS団に再入団させてあげる!でも、今度あんなことをあたしに言ってみなさい。その時は死刑だから!」 何でだろうな?怒ってるのにどこか嬉しそうだ。 後ろの3人も。 それにしても、今回は急激に俺の財布が軽くなりそうだ。いや、札がコインに変わるだろうから重くなるか。 だがまあいい、今回ばかりは諭吉様も笑ってらっしゃるようだしな。 次の日、俺は教室の後ろのドアから入って、「はよ!」とハルヒに声をかけてから自分の席に向かった。 ところで、何で今日はポニーテールなんだろうな? でも、席はやっぱり離れ離れ・・・か。 まあ、たった1ヶ月だ。その分授業に集中できそうだからいいじゃないか、俺。 で、今日は珍しく岡部は鐘が鳴る2、3分ほど前に教室にやってきた。 腕時計を見る。教室の時計を見る。腕時計を見る。もう一度教室の時計を見る。ああ、早く来ちまったーと後悔してる。 一番前の席もなかなか面白いじゃないか。 で、岡部が腕時計の針を動かしていると、その岡部に何か話しかけてる生徒がいた。 何話してるんだろうね~? ハンドボールのやり方を教えてほしい。とかか? まさか進路のことじゃないだろう。さすがにまだ早すぎる。 とか考えてると、岡部がこっちを見ていることが分かった。 おいおい、まさか俺に対する文句を言ってたんじゃないだろうな? ハルヒじゃなくて何で俺なんだ? と思っていると、岡部が今度は近づいてきた。 何言われるんだ俺? 「なあキョン」 先生もその名で呼ぶんですか・・・ 「こいつと席変わってやってくれないかな?」 ………え? どうやらその生徒は最近目が悪くなってきたらしく、後ろのほうの席じゃあ黒板の字が見えにくいということだ。 で、なぜ先週言わなかったかと言うと、先週は目を細めてなんとか見ていたというのだが、やはりそれじゃあ疲れるということで、岡部に相談したらしい。 ちなみに、その目が悪くなった生徒がどこの席だったかは、ご察しのとおりだと思うぞ。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3432.html
「ねぇキョン?」「ちょっと!聞いてるの?キョン!?」「それでねキョンはね、」「あっ!そうそう、キョンそれからね」「キョンっ!」「そう言えばキョンは…」「キョン明日はね…」「ねぇキョンは?」「ほらキョン!ちゃんと聞きなさい!」 ……まったく飯の時とか2人でテレビ見てる時位は静かにして欲しいな。 孤島の1件からハルヒと付き合う事になってしばらく経つ、授業中も、部活の時も、その後も、休日も、寝る前でさえ電話で、そう…ほぼ丸一日中俺と一緒にいるのに、なんでこいつは話題が尽きないのかね? まるでマシンガンやアサルトライフル…いやガトリングガンやバルカン砲だな…いや弾切れがある分羅列した銃器の方がましだな。こいつの話題は切れないしな。 「なぁハルヒ…何でお前はそんなに話題が尽きないんだ?こんなにずっと一緒に居るのによ。」 「ったく…たまに自分から口を開いたと思ったら…何よそれは?良い?あたし達はNTじゃないから、黙っていても分かり合えないのよ?」 ……そう言えばこの前一緒に某ロボットアニメを見たな… 「それにあたし達は恋人どうしなのよ!?お互いが一番に分かり合ってなきゃだめなの?それ位はアホキョンにでも分かるでしょ?だから、こうやって毎日毎日あたしが話してるのよ!」 なるほどな…でも俺もっと簡単に分かり合える方法知ってるぜ? 俺は無言でハルヒを抱き締めた。 「ちょっと…キョン!?」 ハルヒのヤツは、顔真っ赤にして抗議しながらも、俺に体を預けて大人しく抱き締められている。ったく…こうしてりゃ静かなんだけどな。 「……分かったわよ…じゃあこれからは、いつでも分かり合える様にこうして抱き締めなさい…良いわね……」 真っ赤にしてゴニョゴニョ言うハルヒは可愛いが……墓穴ほったなこりゃ… 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/743.html
「いい天気!!!」今日はどうやってキョンに話しかけようかな そこまではいつもの朝だった 「キョン遅いわよ!!」 「はあ!?お前みたいなキチガイに遅いとか言われたくないな、てか話しかけるな」 何言ってるの?聞き間違いよね?ねえ! 「どうしたの?キョンなんか変よ?」 「変なのはお前だろ自己紹介のときに宇宙人とかぬかしてやがったろ、ていうかもう話しかけないでくれ馬鹿がうつる」 「ちょっと!本当にどうしたのよキョン!!キョン!!!」バチーン 「え?」左頬が痛い 「話しかけるなっていってるだろ!!お前なんかさっさといなくなっちまえ!!」 何も言えなくなった どうして?何か悪いことした? 昼休み 「古泉くんならきっとなにか知ってるかも、たしか9組よね」 あ、いた…でもキョンが隣にいる、しかたがない 「古泉くn「でさ、さっきさ後ろの奴が話かけてきやがってよ」 「どんな人でしたっけ?」 「前に宇宙人とか言ってた奴さ」 「ああ、なるほどそれは災難でしたね」 「しつこかったからおもっきりひっぱたいて怒鳴ってやった」 「あなたらしくないですね、まあしかたないと思いますが」「だろ、はいチェックメイト」 これ以上ここにいたくない み、みくるちゃんなら…きっと… 二年生の教室に向かった 「みくるちゃん!!ちょっと聞いてよ!!」 「え?えっえ??あの~どなたですかぁ~?」 「…あたしがわからないの?」 「ごめんなさぁい」 そのときあたしはみくるちゃんの腕を思いっきり引っ張っていた「いたいですぅ~」 「キョンに会えば思い出すわよ!!」お願い一緒にきて そのとき腕を誰かに掴まれた 「ちょいっと待ちなっ!」 「うちのみくるが怯えてるよっ」 「もしかして女の子好きな子かいっ?でも物事には手順てやつがあるんたよっ」「…違う、違うの!!!」 あたしはそこから走り出していた いつの間にか放課後になっていた 「どうして?もう誰もあたしの味方はいないの…」 「WAWAWA~忘れ物~」 「…谷口!!」コイツだけでも 「ちょ、話しかけるなよ!涼宮菌がうつる!!」 「…もう駄目だ」 足早に家に帰った 「…キョン…キョン…どうしたらいいのかわからないよ?」涙がとまらなかった もう明日学校行きたくない………あ!!有希のこと忘れてた!! …でも有希みんなと一緒なのかな… バチーン 自分の顔を叩いた よし、明日有希に会いに行こう 少し気分が晴れたきがした 次の日は雨になった 「今のあたしの心みたい…弱気になったら駄目!!」 「まずは有希に会いに行かなきゃ!」 今日は誰とも話さなかった ひそひそと陰口を言われているのはわかったけど無視した、するしかなかった 放課後部室に向かった 初めて扉をノックした「キョンみたい」 反応がない 「しかたないわね有希だし」 扉を開けた 「有希あたしのことわかる?」 「…」コク 「本当!?」救われた気がした 「ねえ、いったいどうなってるの?キョン、みんなの記憶がなくなってるの」 「…私がした」え?何て言ってるの? 「…この世界は私が望んだ世界」 「どうして!!」有希につかみかかっていた 「…あなたがいると彼が私を見てくれない、だから世界を改変した」 「なっ!!有希!!!」手を振り下ろした 有希に届く前に弾かれた 「どうなってるの?」 「…やはりあなたは邪魔、ここであなたの存在を消しみんなの記憶から消去する」 「え?消す?あたし殺されるの??」 そう言った瞬間光の刃があたしに向かって飛んできていた 「ごめん、キョンあたしもう駄目だ…好き…だったよ」 キィーン 「え?」あたしの前で光の刃が弾きとんだ 「…!!」有希が驚いた顔をしている 「あたし何もしてないわよ」助かったの!? 振り返るとPCが光輝いていた カタカタカタ 何か書き込んである kyon 大丈夫かハルヒ? キョン!?キョンなの!? kyon ああそうだ、いきなりお前が消えちまったから長門に頼んで探してもらってたんだ 有希!?有希ならあたしを殺そうとしてるわよ YUKI.N それは私であって私でない どうなってるのよ!!あたしはどうしらいいの? YUKI.N 強く望んで本当の世界を、あなたならできるはず 望んだからってどうなるのよ! YUKI.N 時間がない私がバリアを張れるのもあと数分、それまでに わからない!!わからないわよ… kyon ハルヒ キョン kyon 頼むお前しか無理なんだ…あのなんだ早く帰ってきてくれお前がいないと…寂しいんだ …キョン kyon こんなときに言うのもなんだが俺はお前のことが世界で一番好きだ、早く戻ってきてくれ! そう書いた後に文字が消えていった 「キョンあたしやってみるよ」 「…もう終わり」 「有希!!!あたしはもとの世界に戻りたい、本音はあなたの存在を消した世界に戻りたい」 「…」 「でも、あなたはSOS団の一人、いなくなることなんて許さないわよ」 あたしは目を瞑った お願い、お願いもとの世界に…優しいキョンのいる世界に… 「…ぉが?」あたしはベッドの上で寝転がっていた 夢?だったの? 時計は4 28分を示していたその後は寝られなかった 「キョン、戻ってるわよね」朝から憂鬱になりながらいつもの坂を登った 「キョン、遅いわよ…」声がでなかった 「悪かったなこれでも早くきたほうだ」 いつものキョンだった 「キョン!キョン!!」思わず抱きついてしまった 「なっ!?おいみんなが見てるだろ」 「朝から見せてくれるね~キョンは、ね谷口」 「教室でいちゃいちゃするなってえの」 「キョンあたし怖い夢を見たの、でも…もう大丈夫よ」 「そうかい、ほら涙拭けよ」 「もう少しでいいからこうさせて」 「やれやれ」 「…好き」「ん?なんか言ったか?」 「なんでもないわよバカキョン!!」 ありがとうキョン 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/17.html
涼宮ハルヒいじめ短編集 1 2 3 4 5 6 7 8 気付いた時には 自覚 崩壊 赤の世界 キョン
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5278.html
涼宮ハルヒの鬱憤 涼宮ハルヒの教科書 涼宮ハルヒの歓喜~サンタが街にやって来た~ 凉宮ハルヒの明日 涼宮ハルヒの嫉妬
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/23.html
キョン「涼宮って頭おかしいんだろ?」 鶴屋「そうね、むこういきましょ?」 ヒソヒソ ハルヒ「・・・・・・・・・・・」 電車が・・・・・・来る・・・・・・・・ あ ハルヒ「団員ども、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者その他の不思議を見つけて来た者には 私の唇から直接唾液を与えるーーーッ」 キョン「あぶなーい『何でも溶かしそうな液』だ!」 ハルヒ「(´・ω・`)」 はるひ「………」 ハヒル「………」 八ルヒ「………」 キョン「どうしたんですか?この三人」 朝比奈「なんでも誰がハルヒさんのパチモンかでもめてるんですよ……」 キョン「別にそんなの決めなくても良いじゃん、だって三人ともちゃんとした人間じゃないか」 はるひ「お兄ちゃん」 ハヒル「キョン」 八ルヒ「キョン」 ハルヒ「キョ」 キョン「ただし本物に人権は認められない、だってキモイしwwww」 ハルヒ「………」 ハルヒが鬱病になりました キョン「ハルヒ…」 ハルヒ「うっさい!私に構わないでよ!!」 キョン「おい聞けよ!お前の事なんだよ!大事な事なんだ!これを聞いたらもう口を聞いてくれなくても良い!だから聞いてくれ」 そのキョンの真摯な瞳に私は黙ってしまった ハルヒ「………なんなのよ……」 そして彼の口からつむがれる言葉を待った キョン「授業の妨げになるから学校に来るな」 ハルヒ「………」 ハルヒ「全く、過疎ってどういうわけよ!な~にやってんねんホンマ!」 ハルヒ「そしてわが部室も今日も過疎(´・ω・`)……」 体育の授業で ハルヒ「ねえ!!!・・・誰か一緒にパス練習・・・・」 サッ・・・・・ ハルヒ「あ・・・・・・・」 鶴屋(ごめんね涼宮さん・・・・・) みくる(あいつと話したらゆるさねえかんな?) 朝倉「はい」(・・・・いじめは・・・人間の本能・・・か・・・) 長門(・・・・・・・・) 谷口「あいついつまで持つと思う?」 キョン「かけるか?三週間!」 『涼宮ハルヒの庭球』 ハルヒ「テニスするわよー!」 長門「ぶんぶん!」ナガモーン キョン「長門もう少し手加減しろよ、光速サーブ打つのは良いが全部フォルトだぞ」スパコーン みくる「いくでちゅ、『みくまるビーム』!」ミックルンルン 古泉「さながら『テニスの王女様』という感じですね、次は一人でダブルスですか」ウホホーン ハルヒ「キョン以外は上手いわね!さすが我が団員たち!…………ははは」 ↑上手いことハブられる団長 元祖いじめ ハ「わがSOS団は、文化祭で映画を撮ります!」 キ「古泉ほんとよえぇなお前。はい百円」 古「いやぁ、これでも家で研究してるんですがね」 ハ「配役はもう決めてあるのよ。まずみくるちゃんが戦うウェイトレスで未来人なの」 み「お茶ですよー」 キ「あぁどうも朝比奈さん、今日も似合ってますよ」 み「もう、キョンくんたら。お世辞が上手なんだから」 古「長門さん、何を読んでいるんですか」 長「人間失格」 ハ「それで古泉くんが少年エスパーね。初めは自分の力に気付かないのよ」 古「長門さん太宰ファンですか」 長「けっこう」 キ「あ、お茶っ葉替えましたか?」 み「あ、するどい。あたりー」 ハ「で、有希が宇宙人で古泉くんを狙ってるの」 キ「ひさびさに四人でファミレス行かないか?」 古「いいですね。……奢ってくれるんですか?」 キ「女性限定でな」 み「悪いですよー」 長「感謝する」 涼宮ハルヒの消失(いじめREMIX) キ「はい古泉負けー、100円!」 古「本当にあなたには敵いませんね。実は僕が弱いのではなくあなたが強いのではないですか?」 み「お茶ですよ~。ジャスミンティーでーす」 長「ありがとう」 キ「長門、お前も随分素直になったよな」 長「もうわたしは自分を恐れない」 古「それは喜ぶべき事態でしょうね。SOS団の絆は深まるばかりです」 み「長門さん、クリスマスの予定はありますかぁ?」 長「まだ決まっていない」 キ「じゃぁ今年も四人でクリパすっか」 古「いいですね。今年は国木田君や谷口君、鶴屋さんや部長氏、 多丸さん兄弟に新川さん森さんも呼んで派手にいきましょう」 キ「会長とか喜緑さんも巻き込んじまえ。この際だ」 み「わ~。楽しくなりそうですね!」 長「あなたの妹も忘れちゃいけない」 キ「おっと灯台元暗しだな。折角だし阪中とか中河とかも呼ぶか」 古「舞台の準備は僕におまかせください」 キ「期待してるぜ」 み「あれ、そういえば誰か忘れてませんか?」 キ「ん、誰だっけ、そういや2年前くらいまで5人だった記憶がないでもないな」 長「気のせい」 キ「そうか」 古「ですよね」 み「記憶違いでしたー、えへ」 キョン「ハルヒ好きだ付き合ってくれ」 ハルヒ「ほんと?あたしもよモチロン付き合うわ」 ガバッ(キョンがハルヒを抱きしめた) キョン「うわ!ハルヒ生臭!さんま!?」 ハルヒ「……」 ハルヒ「みくるちゃん!脱がせてあげるわ!」 みくる「わぁーやめてくだしぃー……うわ臭!くっさ!たらこ!」 ハルヒ「転校生が着たわよ!」 古泉「古泉一樹です」 ハルヒ「紹介するわ、あたしが団長の涼宮ハルヒ。こっちが団員1と2と3よ」 古泉「……なんだかここはアソコと同じにおいがします…」 ハルヒ「え?」 古泉「こいつか!団長くさ!くっさ!腐っただいず!」 ハルヒ「…………納豆?」 キョン「キメェ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ハルヒ「にょろーん(´・ω・`)」 ハルヒいじめ みくる「巨乳でも貧乳でもない凡乳乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 長門「乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 ハルヒ「……」 キョン「よりによって大晦日に全員呼び出しやがって、何の用だ?」 ハルヒ「SOS団の忘年会しましょう!」 みくる「あうう、私は鶴屋しゃん家にお呼ばりぇしてして…」 古泉「すみません、僕も知り合いの人達(機関)との忘年会がありまして」 長門「私は彼の家に呼ばれている」ギュッ キョン「おっと見せ付けるなよ有希りんwじゃあな、皆都合悪いので駄目って事で」スタスタスタ ハルヒ「そんなあ……」グスン 山根「良かったら……家に来るかい?」 ハルヒ「しねっ!」 キョン「おいハルヒ、お年玉やるぞ」 ハルヒ「何で体育館?なんでキョンは二階から話しかけてるの?」 キョン「ほーらお年だ、まッ!」ビシュッ ハルヒ「痛い!これバスケットボールじゃ(ry」 みくる「えーいお年玉でしゅ!」ポイッ ハルヒ「痛っ!えっみくるちゃ」 古泉「ふんもっふお年玉ですよー!」バシュッ ハルヒ「痛い痛い!」 長門「全力でお年玉」ズビシバキッ ハルヒ「有希まで、もういいから!皆止めてよ!」 キョン「うるせえ!ありがたく受け取っとけ!」ドガドガドガ みくる「これは楽しいでしゅ」ドガドガドガ 長門「古泉一樹の能力を少しだけ使える様にした」ドガドガドガ 古泉「これはイイお年玉ですよ、涼宮さん♪」ドガドガドガ ハルヒ「ひいぃ……///」 キョン「なぁ、ハルヒ。こんな話を聞いたことあるか?」 ハルヒ「いきなり何よ。どんな話?」」 キョン「旧校舎の一室に出る幽霊の話だ」 ハルヒ「え? 何々、何よそれ。初耳よ!」 キョン「何だ。お前が知らなんて」 ハルヒ「いいから早く教えなさいよ、何処に出るの!?」 キョン「ここだよ。文芸部室」 ハルヒ「何ですってっ!? 本当に!?」 キョン「あぁ。本当だ。……ほら、もう校舎には誰も居ないはずなのに、足音が……」 ハルヒ「……聞こえる、わね」 キョン「ほら、来たぞ」 ハルヒ「待ってましたぁ!」 用務員「……こら、お前!」 ハルヒ「って、何よ。用務員のおっさんじゃない」 用務員「いったい何をしているんだ、下校しないで」 ハルヒ「何って、部活よ。見て分からないの?」 用務員「……は?」 ハルヒ「……?」 用務員「こんな廃墟みたいな部屋で、明かりもつけずに一人で部活……だって?」 ハルヒ「………………………………」 私はいじめを受けている。残酷で酷いものを・・・ キョンと私は付き合っている。いじめを食止めようと必死だ 古泉君もみくるちゃんも有希も、私のいじめを止めようと必死だ。 嬉しかった。私にここまで親身になってくれる人がいたなんて でもいじめはエスカレートした。SOS団全員がいじめられている。 皆で部室に集まる。鍵を閉める。ここだけが安息した空間だ 「みんな御免ね・・・・・・」 私は謝る。当然だ、私のせいで皆もこんなことになっているんだ 「大丈夫だハルヒ!俺たち5人は友達だろ」 「そうですよぉ私たちも同じ痛みを知っていますから」 「大丈夫・・・気にしていない」 「僕も同じです。いつか元に戻りますよ」 私は涙がでた。とまらなかった。キョンや古泉君はボロボロだ 有希は制服にまで落書きされていてみくるちゃんは顔が腫れている。 こんな状況でも私を見捨てないてくれる人が居てくれるのは嬉しかった。 ありがとう皆・・・本当にありがとう・・・でも・・・ ・・・一週間後古泉君が死んだらしい。原因は事故死、 バイクで丹念に体を潰されて、死因はショック死になっている その通知を知った時、私は涙が流れた。御免ね古泉君・・・ そしてまた安息の場所にみんなで集まる。みんなの表情が暗い。 「御免ね・・・古泉君・・・御免ね・・・・・・」 そう言いながら私は泣く。しだいに声が大きくなっていく。 みんなは私のせいじゃないといってくれる。すごく嬉しい。 悪いのはいじめているほう。有希がそう言ってくれる。本当に嬉しい。 でもいじめは私の問題なのよ・・・それなのに・・・ キョンが抱きしめてキスをしてくれた。すこし血の味がした 私はまた泣いた。悲しさと嬉しさ。冷たい涙と暖かい涙の両方だ。 そして今日は有希の家にみんなで泊まった。 このまま時間がとまればいいと思った。でも学校に行かないといけない。 一週間後、みくるちゃんが自殺した・・・・・・ 私はまた泣いた。御免ね御免ね御免ね。 部室に行く。私は思いっきりみくるちゃんの衣装を千切る カッターでズタズタにする。そこにキョンが駆けつけた。 私のことを抱きしめて「お前のせいじゃないんだ」と言ってくれた。 私たちは一線を越えた、それも部室で・・・ キョンも、もう抱いてやることができないかもしれないから・・・ といって本番をはじめた。その時私はずっと泣いていた。 本当に御免なさい朝比奈みくる先輩・・・・・ 終わった後、私たちは有希の家に行く。嫌な予感がした ドアの鍵が閉まっていない。中を開くと血の臭いがした 有希は体中バラバラにされて居間に転がっていた。 声が出ない。自然に顔色が青くなる。体も小刻みに震える。 声も上げないまま私はその場に倒れた。御免ね・・・有希・・・・・・ 有希の首から上を抱きかかえる。私は声を上げて泣いた。 キョンも声を上げて泣いた。もう限界だ・・・そう思った 私たちは今、学校の屋上に居る。 手を強く握り合いながら。この日を心に決めた昨日 私たちは肉体を求め合い、寝るのも惜しんで繋がっていた。 キョン・・・初めてSOS団を作ったときもこんないい天気だったね。 「そうだな・・・」 キョンが弱弱しい声で答える。 私たちはもう一度手を握り締めあい、そしてキスした。 飛び降りる・・・私が落ちていこうとした時彼は手を離した。 なぜ?キョン・・・一緒に楽になるんじゃなかったの? キョンは笑っている。後ろからSOS団の面々が出てくる。 私の体は下に落ちていく。SOS団の面々は全員が笑っている。 ハハハハハハハ。私も笑いたくなってくる。 いつも通りだ・・・いつも通り私は嫌われている。いつもd・・・・・・・・・グシャ キョン「マリカ(DS)やろうぜ!!!!!」 キョン「あああああ!!落下したああああ!・・・もう、俺の負けだ・・・あ、ハルヒが・・・」 谷口「ハハハッ、やっとキョンに勝てたぜ!練習した甲斐があった!・・・あ、ハルヒが・・・」 古泉「キノコを使うタイミングを誤った!くー、勝てませんね・・・あ、ハルヒが・・・」 ハルヒ「ふふふっ、勝ったわ!やっぱり所詮キョンね!私に勝てるわけないのよ! この調子で逆転するわよっ!私にひれ伏しなさいッ!」 長門「・・・練習しても駄目だった・・・(あ、ハルヒが)」 キョン「まぁまぁ、最下位じゃないんだしさ。上位には食い込めてるだろ?次のレースを頑張れよ、 次を!」 長門「・・・ありがと」 ハルヒ「(!・・・これはキョンに優しくしてもらうチャンス!落下!)キョ、キョン・・・私も落下しちゃった・・・せっかく勝てそうだったのに」 キョン「いや今のはどう見ても不自然だろ・・・あ、素で落下しても慰める気は無いぞ。寧ろ笑う。」 長門「・・・ププッ」 谷口「・・・ハルヒ、お前、ウザいわ・・・」 古泉「好きでもない人のキノコ食いたいですか?食いたくなかったらその態度を改めてください」 ハルヒ「・・・ぐすっ」 キョン「スマブラXやろうぜ!!!!!まずはチーム戦な!」 キョン「ゼルダで」 谷口「なんだと・・・お前、ゼルダ使いだったのか・・・俺はリンクで」 キョン「ゼルダの伝説キャラktkr」 谷口「・・・」 長門「・・・オリマー」 キョン「!!!」 ハルヒ「私は・・・そうね、今日はピカチュウにするわ」 キョン「今日は・・・?お前、使い手は?」 ハルヒ「使い手?何それ?何、ずっと同じキャラ使ってて楽しいの?飽きない?バカじゃないの?」 ハルヒを除く一同「・・・」 キョン「なあ、ハルヒって初心者なんじゃね?」 谷口「使い手がいないからって初心者呼ばわりはどうかと」 長門「・・・あの台詞は私達に対する挑戦」 キョン「・・・じゃあ俺&谷口&長門VSハルヒで・・・」 ハルヒ「ちょっとー?何3人でコソコソ話てるのよ?」 キョン「いや、何でもない。ステージは?」 ハルヒ「・・・アイテムたっぷりで、滝のぼりよ!」 ハルヒを除く一同(・・・うわぁ・・・面倒くさいステージ・・・) キョン「はいはい・・・じゃあさっさと始めるぞ」 ハルヒ「え?ちょ、ちょっと・・・何で私だけ仲間外れなの?ねえ、なんでキョン達が組んで・・・」 キョン「いやー、ハルヒは強いからな!俺達3人がかりじゃないと勝てないぜ!」 ハルヒ「ふ、ふん!かかってきなさい!蹴散らしてあげる!」 ドガッ ピョーン キラキラキラリン・・・ シュシュシュッ カチャッ ピーkドウリャー! ハルヒ「・・・な、何であんたたちそんな上手いのよ!?ヒドいわ!」 キョン「かかってこいって言ったのはお前だろ」 ハルヒ「い、いやそうだけど・・・」 キョン「言い訳無用ッ!」ドゴォーン ハルヒ「あっ、あぁー・・・・」 キョン「次はタイム制だ!」 ハルヒ「・・・許さないわ・・・本気で行くわよ!ドンキーよ!」 キョン「ゼルダたんんんん」 谷口「リーンーク!リーンーク!」 長門「ひっこぬか~れて~♪たたかぁ~ってぇ~♪」 ハルヒ「食らえ!ドンキーの最強パンチを・・・え?」 キョン「残念だ・・・お前は緊急回避を使いこなせていない・・・」 谷口「その技は侮れないからな、先に潰す」 長門「紫投げ」 ハルヒ「ドラグーンゲットよ!これで勝てる!食らえ・・・?」 キョン「ヒント:緊急回避」 谷口「ドラグーンは避けるの簡単だからむしろ隙なんじゃね?」 ハルヒ「スターゲット!キョン!待ちなさい!逃げても無駄よー!」 キョン「スター状態のドンキーに追いかけられて待てと言われて止まるヤツはいないだろ」 長門「・・・」ガシッ ハルヒ「!ちょ、ちょっと!離しなさい!な、投げ!?あ、そっちは・・・うわーっ!」 ドチュゥーン・・・ ハルヒ「・・・ぐすっ」