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子どもの権利委員会・一般的意見16号:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務 後編 (企業と子どもの権利 前編より続く) VI.実施の枠組み A.立法措置、規制措置および執行措置 1.法令 53.法令は、企業の活動および操業によって子どもの権利に悪影響が生じ、または子どもの権利が侵害されないことを確保するために必要不可欠な手段である。国は、第三者によって子どもの権利が実施されるようにし、かつ、企業が子どもの権利を尊重できるようにする明確かつ予測可能な法的環境および規制環境を提供する法律を定めるよう、求められる。企業が子どもの権利を侵害しないことを確保する目的で適切かつ合理的な立法措置および規制措置をとる義務を満たすために、国は、懸念の対象となる特定の企業部門を特定する目的でデータ、証拠および調査研究の結果を収集することが必要になろう。 54.第18条第3項にしたがい、国は、働く親および養育者が子どもに対する養育責任を果たすことを援助する雇用環境を企業内で創設するべきである。このような環境としては、家族にやさしい職場方針(育児休暇を含む)の導入、母乳育児の支援および推進、良質な保育サービスへのアクセス、十分な生活水準を維持するに足る賃金の支払い、職場における差別および暴力からの保護、ならびに、職場における安心および安全などがある。 55.非効率的な税制、腐敗、および、とくに国有企業への課税および法人課税から得られた政府歳入の不適切な管理は、条約第4条にしたがって子どもの権利を充足するために利用可能な資源の制限につながる可能性がある。贈収賄・腐敗対策関連文書 [19] に基づいてすでに負っている義務に加え、国は、透明性、説明責任および公正性を確保しながら、あらゆる財源から歳入フローを獲得しかつ管理するための効果的な法令を策定しかつ実施するべきである。 [19] OECD・国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約および(または)国連・腐敗防止条約など。 56.国は、子どもの経済的搾取および危険な労働が禁止されることを確保するために条約第32条を実施するべきである。国際基準にのっとった最低就労年齢を越えており、したがって被用者として合法的に働ける一方、なおも(たとえばその子どもの健康、安全または道徳的発達にとって危険がある労働から)保護される必要があり、かつ教育、発達およびレクリエーションに対するその子どもの権利が促進されかつ保護されることを確保されなければならない子どもも存在する [20]。国は、最低就労年齢を定め、労働時間および労働条件を適切に規制し、かつ、第32条を効果的に執行するための罰則を確立しなければならない。国は、労働監察および執行のための、十分に機能する制度および能力を整備しなければならない。国はまた、児童労働に関する基本的なILO条約 [21] を双方とも批准し、かつ国内法に編入するべきである。条約第39条に基づき、国は、いずれかの形態の暴力、ネグレクト、搾取または虐待(経済的搾取を含む)を経験した子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するためにあらゆる適当な措置をとらなければならない。 [20] 休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)に関する一般的意見17号(2013年、近日発表)参照。 [21] 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)。 57.国はまた、子どもの権利、健康およびビジネスに関する国際的に合意された基準(世界保健機関の「タバコの規制に関する枠組み条約」ならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議を含む)の実施および執行も要求される。委員会は、製薬部門の活動および操業が子どもの健康に深い影響を及ぼすことを認識する。製薬会社は、既存の指針 [22] を考慮しながら、子どものための医薬品のアクセス、利用可能性、受け入れ可能性および質を高めるよう奨励されるべきである。さらに、知的財産権は医薬品の負担可能性を促進するようなやり方で適用されるべきである [23]。 [22] 医薬品へのアクセスに関する製薬会社のための人権指針(人権理事会決議15/22)。 [23] 一般的意見15号、パラ82;世界貿易機関「TRIPS協定と公衆衛生に関する宣言」(WT/MIN(01)/DEC/2)参照。 58.マスメディア産業(広告・宣伝産業を含む)は、子どもの権利に対して肯定的な影響も否定的な影響も及ぼしうる。条約第17条に基づき、国は、民間メディアを含むマスメディアに対し、子どもにとって社会的および文化的利益のある情報および資料(たとえば健康的なライフスタイルに関するもの)を普及するよう奨励する義務を負う。メディアは、情報および表現の自由に対する子どもの権利を認めつつも有害な情報(とくにポルノ的な資料、または暴力、差別および子どもの性的イメージを描写し若しくは強化する資料)から子どもを保護するため、適切に規制されなければならない。国は、マスメディアに対し、すべてのメディア報道において子どもの権利が全面的に尊重されること(暴力からの保護および差別を固定化させる描写からの保護を含む)を確保するための指針を発展させるよう、奨励するべきである。国は、視覚障害その他の機能障害を有する子どもにとってアクセス可能な形式で書籍その他の印刷物を複製することを認める、著作権上の例外を定めることが求められる。 59.子どもは、メディアを通じて伝達される宣伝および広告を真実であって偏りのないものと考える場合があり、したがって有害な製品を消費しかつ使用する可能性がある。広告および宣伝はまた、たとえば非現実的な身体イメージを描いている場合などに、子どもの自尊感情に対しても強力な影響力を持ちうる。国は、適切な規制を行なうこと、ならびに、企業に対し、行動規範を遵守し、かつ親および子どもが消費者として十分な情報に基づく決定を行なえるようにする明瞭かつ正確な製品表示および製品情報を用いるよう奨励することにより、宣伝および広告が子どもの権利に悪影響を与えないことを確保するべきである。 60.デジタルメディアは特段の懸念の対象である。多くの子どもは、インターネットの利用者であると同時に、ネットいじめ、ネットを通じての勧誘、人身取引またはインターネットを通じた性的な虐待および搾取のような暴力の被害者ともなりうるためである。企業はこのような犯罪行為に直接関与しているわけではないかもしれないが、その行動を通じてこれらの権利侵害に加担する可能性はある。たとえば、インターネット上で操業する旅行代理店によってセックス・ツーリズム活動の情報交換および計画が可能になるので、児童セックス・ツーリズムがこれらの代理店によって促進される可能性がある。児童ポルノは、インターネット企業およびクレジットカード業者によって間接的に促進されうる。国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の義務を履行するとともに、子どもがリスクに対応し、かつどこに助けを求めればよいか知ることができるよう、ウェブ関連の安全に関する、年齢にふさわしい情報を子どもに提供するべきである。国は、情報通信技術産業が子どもを暴力および不適切な資料から保護するための十分な措置を発展させかつ整備するよう、当該産業との調整を図るよう求められる。 2.執行措置 61.一般的に、子どもにとってもっとも重大な問題となるのは、企業を規制する法律が実施されず、または十分に執行されないことである。効果的な実施および執行を確保するために国が採用すべき措置としては、以下を含む多くのものがある。 (a) 子どもの権利に関連する基準(健康および安全、消費者の権利、教育、環境、労働ならびに広告および宣伝に関するもの等)の監督を担当する規制機関を強化することにより、これらの機関が、苦情申立てを監視しおよび調査しならびに子どもの権利侵害に対して救済を提供しおよび執行するための十分な権限および資源を保持するようにすること。 (b) 子どもの権利と企業に関する法令を、子どもおよび企業を含む関係者に対して普及すること。 (c) 条約および企業と子どもの権利に関するその議定書〔訳者注/「条約およびその選択議定書に掲げられた企業と子どもの権利に関する規定」の意か〕、国際人権基準および関連国内法が正しく適用されることを確保し、かつ国内判例の発展を促進する目的で、裁判官および他の行政官ならびに弁護士および法律扶助の提供に従事する者の研修を実施すること。 (d) 司法的または非司法的機構を通じた効果的な救済措置を提供し、かつ司法に効果的にアクセスできるようにすること。 3.子どもの権利と企業によるデュー・ディリジェンス/相当の注意 62.企業が子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとる義務を履行するため、国は、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うよう要求するべきである。そうすることにより、企業として自社が子どもの権利に与える影響を特定し、防止しかつ緩和すること(当該企業の事業関係全体および自社の世界的操業全体においてこのような取り組みを行なうことも含む)が確保されよう [24]。操業の性質または操業の状況からして企業が子どもの権利侵害に関与しているおそれが強い場合、国は、より厳格なデュー・ディリジェンス手続および効果的な監視制度を要求するべきである。 [24] UNICEF, Save the Children and Global Compact, Children s Rights and Business Principles (2011) 参照。 63.子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスがより一般的な人権デュー・ディリジェンス手続に包含されている場合、条約およびその選択議定書の規定が決定に影響を与えるようにすることが不可欠である。人権侵害を防止しかつ(または)是正するためのいかなる行動計画および措置においても、子どもが受ける異なる影響について特別な考慮がなされなければならない。 64.国は、国有企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払い、かつ自社が子どもの権利に与えた影響についての報告書(定期報告を含む)を公に送達するよう要求することにより、範を示すべきである。国は、企業が子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを条件とした、輸出信用機関によるもののような支援およびサービス、開発金融および投資保険を公表することが求められる。 65.大企業は、子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスの一環として、子どもの権利への影響に対処するための自社の努力について公表することを奨励され、かつ適当なときは要求されるべきである。このような発表は、入手可能であり、有効であり、かつ諸企業間で比較可能なものであるべきであり、かつ、自社の活動によって子どもに対して引き起こされる可能性がある悪影響および現に生じた悪影響を緩和するために企業がとった措置を取り上げることが求められる。企業は、自社が製造しまたは商品化する製品およびサービスが、奴隷制または強制労働のような深刻な子どもの権利侵害をともなわないものであることを確保するためにとった措置を公表するよう要求されるべきである。報告が義務とされている場合、国は、コンプライアンスを確保するための検証・執行機構を整備することが求められる。国は、子どもの権利に関する望ましい取り組みについての基準を定め、かつそのような取り組みを認めるための手段を創設することにより、報告を支援することもできる。 B.救済措置 66.自己の権利侵害に対する効果的救済を求めるために司法制度にアクセスすることは、子どもにとって、企業が関与している場合にはしばしば困難である。子どもは法的地位を有しないことがあり、その場合には請求を行なえない。子どもおよびその家族は、自己の権利についてならびに救済を求めるために利用可能な機構および手続について知らないことが多く、または司法制度を信頼していない場合がある。国は、企業による刑事法、民事法または行政法の違反を必ずしも調査しないこともある。子どもと企業との間にはきわめて大きな力の不均衡があり、かつ、企業を相手取った訴訟にかかる費用が訴訟を不可能にするほど高いことおよび代理人弁護士を見つけるのが困難であることも多い。企業が関わる事案は法廷外で、かつ発展した判例法がないままに決着をつけられることがしばしばある。司法的先例が説得力を持つ法域の子どもおよびその家族は、結果をめぐる不確定さに鑑み、訴訟の遂行を放棄する可能性がより高い可能性がある。 67.企業の世界的操業を背景として生じた権利侵害について救済を得ることには、特段の困難が存在する。子会社等は保険に加入しておらず、または有限責任しか負っていないかもしれない。多国籍企業が別々の事業体に組織されていることにより、法的責任を明らかにして各事業体に帰することが困難である可能性もある。請求をまとめ、かつその正当性を主張する際に、異なる国々に存する情報および証拠へのアクセスが問題になることもありうる。国外の法域では法律扶助を受けることが困難な場合もあり、また域外請求を行なえないようにする目的でさまざまな法律上および手続上の障害が利用される可能性もある。 68.国は、子どもがいかなる種類の差別もなく効果的な司法機構に実際にアクセスできるよう、社会的、経済的および司法的障壁を取り除くことに焦点を当てるべきである。子どもおよびその代理人に対しては、たとえば学校カリキュラム、ユースセンターまたはコミュニティ基盤型プログラムを通じ、救済措置に関する情報が提供されるべきである。子どもおよびその代理人は独自に手続を開始することが認められるべきであり、かつ、武器の平等を確保するため、企業を相手取って訴訟を起こすにあたって法律扶助ならびに弁護士および法律扶助提供者の支援にアクセスできるべきである。集団訴訟および公益訴訟のような集団的苦情申立ての制度をまだ設けていない国は、企業の行為によって同じような影響を受けている多数の子どもにとっての裁判所へのアクセス可能性を高める手段として、これらの制度を導入するよう求められる。国は、たとえば言語もしくは障害を理由としてまたは年齢が低すぎるために司法へのアクセスを妨げる障壁に直面している子どもに対し、特別な援助を提供しなければならない場合もあろう。 69.年齢は、司法手続に全面的に参加する子どもの権利に対する障壁とされるべきではない。同様に、委員会の一般的意見12号にしたがい、民事手続および刑事手続に関与する子どもの被害者および証人のための特別な体制が発展させられるべきである。さらに、国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針 [25] を実施するよう求められる。秘密保持およびプライバシーが尊重されなければならず、かつ、子どもに対しては、その子どもの成熟度およびその子どもが有している可能性がある発話上、言語上またはコミュニケーション上の困難を正当に重視しながら、手続のあらゆる段階において、進捗状況に関する情報が常に提供されるべきである。 [25] 経済社会理事会決議2005/20により採択されたもの。 70.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書は、国が、企業を含む法人に対しても適用される刑事法を制定するよう要求している。国は、子どもの権利の深刻な侵害(強制労働等)に関わる事案における、企業を含む法人の刑事法上の責任――または同一の抑止効果を有する他の形態の法的責任――の採用を検討するべきである。国内裁判所に対しては、裁判権に関する受け入れられた規則にしたがい、これらの深刻な権利侵害についての裁判権が認められるべきである。 71.調停、斡旋および仲裁のような非司法的機構は、子どもと企業に関わる紛争解決のための有用な代替的選択肢となりうる。これらの機構は、司法的救済に対する権利を損なうことなく利用可能とされなければならない。このような機構は、それが条約およびその選択議定書に一致しており、かつ有効性、迅速性ならびに適正手続および公正性に関する国際的な原則および基準に一致していることを条件として、司法手続と並んで重要な役割を果たしうる。企業が設置する苦情受付機構は、柔軟な、かつ時宜を得た解決策を提供できる可能性があり、かつ、時には、企業の行為について提起された懸念をこのような機構を通じて解決することが子どもの最善の利益にかなうこともあるかもしれない。このような機構は、アクセス可能性、正当性、予見可能性、公平性、権利との両立性、透明性、継続的学習および対話を含む基準 [26] にしたがったものであるべきである。いずれにしても、裁判所、または行政上の救済措置その他の手続の司法審査にはアクセスできることが求められる。 [26] 人権と多国籍企業その他の企業の問題に関する事務総長特別代表(ジョン・ラギー)報告書「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」(A/HRC/17/31)、指導原則31。 72.国は、子ども個人もしくは子どもの集団またはその代理人として行動する他の者が、企業の活動および操業との関連で国が子どもの権利を十分に尊重し、保護しかつ充足しなかった場合の救済を得られるよう、国際的および地域的人権機構(通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む)へのアクセスを容易にするためにあらゆる努力を行なうべきである。 C.政策措置 73.国は、子どもの権利を理解し、かつ全面的に尊重する企業文化を奨励するべきである。この目的のため、国は、条約を実施するための国家的な政策枠組みの全般的文脈に子どもの権利と企業の問題を含めるよう求められる。国は、企業が自社の企業活動の文脈において、また国境を越えて操業している場合には国外での操業、製品またはサービスおよび活動と関連した事業関係において子どもの権利を尊重することに関する政府としての期待を明示的に明らかにした指針を策定するべきである。これには、企業のあらゆる活動および操業における暴力を絶対に許さない政策の実施を含めることが求められる。国は、必要なときは、企業の責任に関する関連の取り組みの参考例を明らかにし、かつこのような取り組みを支持するよう奨励するべきである。 74.多くの状況下で経済の大きな部分を占めているのは中小企業であり、国として、これらの企業に対し、不必要な経営上の負担を回避しながら子どもの権利を尊重しかつ国内法を遵守する方法についての、容易に利用可能であり、かつこれらの企業にふさわしい指針および支援を提供することがとりわけ重要である。国はまた、より規模の大きな企業に対し、自社のバリューチェーン全体で子どもの権利を強化するために中小企業への影響力を活用するよう奨励することも求められる。 D.調整措置および監視措置 1.調整 75.条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、政府省庁間で、かつ地方から広域行政圏および中央に至るまでの諸段階の政府間で、部門横断型の調整が効果的に行なわれなければならない [27]。一般的に、企業政策および企業実務に直接関与している省庁は、子どもの権利を直接担当している省庁とは別に活動している。国は、企業法および企業実務を形づくる政府機関および議員が子どもの権利に関わる国の義務を知っていることを確保しなければならない。これらの政府機関および議員は、法律および政策を策定する際ならびに経済、貿易および投資に関する協定を締結する際に条約の全面的遵守を確保する備えを整えられるよう、関連の情報、研修および支援を必要とすることがあろう。国内人権機関は、子どもの権利および企業に関わっている種々の政府部局の連携を図る触媒として、重要な役割を果たしうる。 一般的意見5号、パラ37。 2.監視 76.国は、企業によって行なわれまたは助長された条約およびその選択議定書の違反(企業の世界的操業のなかで行なわれまたは助長された違反を含む)を監視する義務を負う。このような監視は、たとえば、問題を特定しかつ政策の参考とするために活用できるデータを収集すること、人権侵害を調査すること、市民社会および国内人権機関と連携すること、ならびに、自社が子どもの権利に及ぼす影響に関する企業の報告を実績評価のために活用することによって企業に公的な説明責任を負わせることを通じて、達成可能である。とくに、国内人権機関は、たとえば違反に関する苦情の受理、調査および調停、大規模な権利侵害に関する公的調査の実施、紛争状況下での調停、ならびに、条約の遵守を確保するための法律の見直しに関与することができる。必要なときは、国は、国内人権機関の立法上の権限を拡大して子どもの権利と企業の問題を含めるべきである。 77.国は、条約およびその選択議定書を実施するための国家的な戦略および行動計策を策定する際、企業の活動および操業において子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するために必要な措置への明示的言及を含めるべきである。国はまた、企業の活動および操業における条約の実施の進展を監視することも確保するよう求められる。このような監視は、子どもの権利に関する事前および事後の影響評価を通じて内部的に達成することも、議会委員会、市民社会組織、職能団体および国内人権機関のような他の機関との連携を通じて達成することも可能である。監視の一環として、企業が自分たちの権利に及ぼす影響に関する意見を子どもに直接尋ねることが求められる。若者評議会および若者議会、ソーシャルメディア、学校評議会および子ども団体のような、協議のためのさまざまな機構を活用することが可能である。 3.子どもの権利影響評価 78.すべての行政段階における企業関連の法律および政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するためには、継続的な子どもの権利影響評価が必要である。これにより、子どもおよびその権利の享受に影響を与える、企業関連のいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響を予測することが可能になる [28] とともに、法律、政策およびプログラムが子どもの権利に与える影響の継続的な監視および事後評価が補完されるはずである。 [28] 一般的意見5号、パラ45。 79.子どもの権利影響評価の実施にあたっては、さまざまな方法論および実践を開発することができる。これらの方法論および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書の枠組み、ならびに、委員会が明らかにした関連の総括所見および一般的意見が活用されなければならない。国が、企業関連の政策、立法または行政実務に関してより幅広い影響評価を実施する際には、これらの評価において、条約およびその選択議定書の一般原則が基調とされ、かつ、検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保するべきである [29]。 [29] 一般的意見14号、パラ99。 80.子どもの権利影響評価は、特定の企業または部門の活動によって影響を受けるすべての子どもへの影響について検討するために活用できるが、措置が一部のカテゴリーの子どもに与える異なる影響についての評価を含めてもよい。影響評価そのものを、子ども、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果として、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [30]。 [30] 前掲。 81.プロセスが公平かつ独立であることを確保するため、国は、部外者を指名して評価プロセスを主導させることを検討してもよい。このような対応には重要な利益をもたらしうるものの、国は、結果について最終的に責任を負う当事者として、評価を実施する部外者が有能、誠実かつ公平であることを確保しなければならない。 E.連携措置および意識啓発措置 82.条約上の義務を負うのは国である一方、実施の作業には、企業、市民社会および子どもたち自身を含む社会のあらゆる層の関与を得る必要がある。委員会は、国が、企業にはその操業場所を問わず子どもの権利を尊重する責任があることについて、子どもにやさしく、かつ年齢にふさわしい伝達手段等も通じて(たとえば金銭感覚に関する教育の提供を通じて)、すべての子ども、親および養育者に対して情報提供および教育を行なうための包括的戦略を採択しかつ実施するよう、勧告する。条約に関する教育、研修および意識啓発は、人権の保有者としての子どもの地位を強調し、条約のすべての規定の積極的尊重を奨励し、かつ、すべての子ども(ならびに、とくに、被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子ども)に対する差別的態度に異議を申立てかつこれを根絶する目的で、企業を対象としても行なわれるべきである。このような文脈において、メディアは、企業に関連する子どもの権利についての情報を子どもに提供し、かつ、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めるよう、奨励されるべきである。 83.委員会は、国内人権機関が、たとえば望ましい実践のあり方に関する企業向けの指針および方針を策定して普及することにより、条約の規定に関する企業の意識啓発に関与できることを強調する。 84.市民社会は、企業操業の文脈において独立の立場から子どもの権利を促進しかつ保護するうえで、きわめて重要な役割を有している。これには、企業を監視し、かつその説明責任を問うこと、子どもが司法および救済措置にアクセスできるよう支援すること、子どもの権利影響評価に貢献すること、ならびに、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めることが含まれる。国は、独立した市民社会組織、子どもおよび若者が主導する団体、学界、商工会議所、労働組合、消費者団体ならびに職能組織との効果的連携およびこれらの団体への効果的支援を含め、活発かつ鋭敏な市民社会のための条件を確保するべきである。国は、これらの団体およびその他の独立団体への干渉を控え、かつ、子どもの権利と企業に関する公的な政策およびプログラムへのこれらの団体の関与を促進するよう求められる。 VII.普及 85.委員会は、締約国が、議会に対してかつ政府全体で(企業の問題に取り組んでいる省庁および自治体/地方レベルの機関、ならびに、開発援助機関および在外公館など貿易および国外投資を担当する機関を含む)この一般的意見を広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、国境を超えて操業している企業を含む企業ならびに中小企業およびインフォーマル部門の関係者に対しても、普及されるべきである。また、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家(裁判官、弁護士および法律扶助関係者、教職員、後見人、ソーシャルワーカー、公立および私立の福祉施設の職員を含む)ならびに子ども全員および市民社会に対しても、この一般的意見を配布しかつ周知することが求められる。そのためには、この一般的意見を関連の言語に翻訳すること、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい翻案版を利用可能とすること、この一般的意見の意味合いおよび最善の実施方法について討議するためのワークショップおよびセミナーを開催すること、ならびに、関連するすべての専門家の養成および研修にこの一般的意見を編入することが必要となろう。 86.国は、委員会に対する定期的報告に、直面している課題、ならびに、企業の活動および操業との関係で子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するためにとった措置(国内的措置および適当な場合には国境を越えてとった措置の双方)についての情報を含めるべきである。 更新履歴:ページ作成(2014年3月23日)。
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子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利の促進における家族の役割 一般的討議勧告一覧 (第7会期、1994年) 原文:英語(PDF) 日本語訳:平野裕二 F.子どもの権利の促進における家族の役割についての一般的討議 (略) 188.一般的討議のしめくくりにあたり、委員会はいくつかの予備的結論に達した。以下、要約する。 189.子どもの権利の促進における家族の役割についての一般的討議により、親の責任および権利、国が家族および個々の家族構成員に提供すべき支援および援助、ならびに、家族という全般的枠組みにおける子どもの状況ならびにその基本的権利および自由に関連する多様な問題について詳細に検討することができた。 1.家族とは何か 190.さまざまな発言に基づけば、単一の家族概念が存在すると主張することは困難なように思われる。家族は、経済的および社会的諸要因ならびに支配的な政治的、文化的または宗教的伝統の影響を通じて多様な形で形成されてきたのであり、当然のことながら異なる課題または生活条件に直面している。したがって、一部の種類の家族または家族状況(すなわち、核家族、拡大家族、生物学的家族、養子縁組家族またはひとり親家族)のみが国および社会からの援助および支援を受けるにふさわしいと考えることは受け入れられるだろうか。家族または家族生活が決定的な社会的価値を認められるのは特定の事情がある場合に限るなどと考えることは可能だろうか。そのような判断はどのような基準に基づいて行なわれるのか――法的基準か、政治的基準か、宗教的基準か、またはその他の基準か。実際には子どもの人間性の尊厳にとって本質的な諸権利を享受する機会が、特定の条件が満たされた場合にしか子どもに与えられないという見方に賛成することなど、可能だろうか。 191.こうしたさまざまな疑問は、差別の禁止の原則のきわめて重要な価値を、一般的討議の最前面に位置づけるものであるように思われる。 2.家族における子どもとはどのような存在か 192.伝統的に、子どもは、扶養される立場にある、不可視かつ受け身の家族構成員と捉えられてきた。子どもは最近になってようやく「目に見える存在」となり、さらに、意見を聴かれ、かつ尊重される空間を子どもに与えようとする運動も大きくなりつつある。対話、交渉、参加が、子どもたちのための共同行動の最前線に位置づけられるようになってきた。 193.そうなると家族が、子どもを含む個々の構成員の1人ひとりが民主主義を経験する第一段階のための理想的な枠組みとなる。これは夢にすぎないのだろうか、それともやりがいのある貴重な任務としても構想されるべきだろうか。 194.多くの課題が残されているのは周知のとおりである。経済的なもの、社会的なものまたは文化的なもののいずれであるかにかかわらず、家族をとりまく外的事情および家族のなかで生じている緊張に鑑み、子どもが家族のためにおよび家族といっしょに働くものであるとされる状況や、女子が、幼い段階から母親としての「役割」に備えるよう奨励されて、きょうだいの面倒を見ることおよびあらゆる家事について母親の代わりをすることが期待される状況等は、いまなおしばしば生じている。家族にはプライバシーがあるのだから、自動的に、親には「将来の市民を責任のあるやり方で育てること」について十分な情報に基づく正しい判断をする能力が備わっているという前提のもと、子どもが虐待、ネグレクトおよび身体的不可侵性に対する権利の無視の対象とされることも多い。 195.子どもの最善の利益という本質的原則を遵守し、かつ意識啓発、広報および教育のための積極的キャンペーンを活用することにより、子どもの尊厳に反し、子どもの調和のとれた発達にとって有害であり、または子どもによる基本的権利の効果的享受を妨げる、広く蔓延している偏見および文化的または宗教的伝統を変えていけるのではないかという希望が表明された。 3.家族のない子どもとはどのような存在か 196.討議では、家族がない場合の子どもの現実はどのようなものかという、「通常は忘れられている」問題も取り上げられた。このような場合に、保護の制度は改善されるだろうか。そもそも子どもの最善の利益が評価されることはあるのだろうか。何らかの形で子どもが参加する余地はあるのか。子どもの声に耳を傾けるものはいるだろうか。差別を防止し、かつこれと闘うことは可能だろうか。端的にいえば、基本的人権および自由の枠組みのなかで、このような子どもの状況に真剣に対応していくことはそもそもできるのだろうかということである。 197.これらのあらゆる疑問は、当然のことながら、国レベルでも、国際協力の枠組みのなかでも、さらなる掘り下げ、さらなる研究および討議ならびに具体的なプログラムおよび戦略の策定を進めていくことを奨励するものである。条約は、これらのあらゆる疑問についての共通の参照軸であり、かつ示唆を与えてくれる文書であることが再確認された。さらに、条約はすべての家族構成員の基本的権利を個別に検討し、かつその尊重を確保するためのもっとも適切な枠組みでもある。 198.子どもの権利は自律的に捉えられていくことになるだろうが、子どもの権利は、親および家族の他の構成員の権利が承認され、尊重されかつ促進される文脈においてこそ、とりわけ意味のあるものとなる。そしてこれこそが、家族そのものの地位および尊重を促進していく唯一の方法である。 199.委員会は、今回の討論が、この重要な問題に関する今後の検討および行動において触媒としての役割を果たすのではないかという希望を表明した。 200.子どもの権利条約の実施において委員会および他のすべてのパートナーによって今後確保されるべきフォローアップは、今回のテーマ別一般的討議の重要な結論をさらに発展させていくことに資することになろう。 201.行なわれた貢献および検討された現実の重要性に鑑み、委員会は、今回の一般的討議のフォローアップを確保すること、および、この目的のため、1995年1月に開催予定の第8会期で議論するワーキングペーパーを作成することを決定した。 更新履歴:ページ作成(2017年2月17日)。
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子どもの権利委員会・一般的討議勧告:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 一般的討議勧告一覧 (参考)移住労働者権利委員会・一般的意見2号:不正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) (第61会期、2012年) 原文:英語〔PDF〕 日本語訳:平野裕二 I.背景(略) II.開会会合(全体会)概要(略) III.作業部会討議概要(略) IV.勧告 56.国際的移住の状況にある子どもの権利の尊重、促進および充足に関して、国がその政策およびプログラムにおいて考慮すべき問題ならびに他の関連の主体が指針とすべき事項を明らかにする目的で、子どもの権利についての意識および議論を喚起する場を提供するというDGD〔一般的討議〕の趣旨にしたがい、委員会は、以下の勧告を支持する。これにあたり、委員会は、子どもはどのような環境にあってもまず何よりも子どもであることを強調するものである。委員会は、移住の影響を受けている子どもの権利を特定しかつこれに対応するに際して、国および関連の主体は、さまざまな態様の子ども、状況または権利を分類しまたは区別しないよう配慮しつつ、条約のすべての規定および原則に基づいたホリスティックかつ包括的なアプローチをとらなければならないことを、あらためて指摘する。国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を直接受けているすべての子どもは、年齢、性別、民族的または国民的出身および経済的地位または在留資格の如何を問わず自己の権利を享受する資格があるのであって、このことは、子どもが自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、また保護・養育者がいるかいないか、移動中であるか何らかの形で定住しているか、在留資格を認められているか否か等の諸条件の如何を問わず、変わらない。以下の勧告は、その検討の便宜を図るため、条約の実施に関する各国の定期的報告書についての委員会の総括所見および勧告の構成にしたがって配列されている。 一般的勧告(立法、政策および調整に関するものを含む) 57.国は、条約に掲げられた権利が、子ども自身またはその親の移住に関わる地位の如何を問わず、国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保するとともに、これらの権利のあらゆる侵害に対応するべきである。国際的移住の状況にあるすべての子どもに関する第一義的責任は、出入国管理機関ではなく子どものケアおよび保護を担当する機関にある。 58.国は、国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を受けている子ども全員が、年齢、経済的地位、自己または親の在留資格の如何を問わず、自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、かつ保護・養育者の有無等に関わりなく、時宜を得た形で条約の全面的保護を享受できることを確保するため、人権を基盤とする包括的な法律および政策を採択するべきである。 59.国は、移住に関連するすべての国内法ならびに地域的および(もしくは)国際的な枠組みまたは協定に条約が統合されることを確保するため、立法、政策ならびにプログラムおよび関連の研修を含む措置をとるよう、奨励される。 60.国は、空港および港のような移住者の到着/通過場所における実務が条約および国際人権基準に全面的に一致することを確保するための具体的指針を発布するよう、勧告される。 61.国に対し、移住および他のいずれかの問題に関する政策、プログラム、実務および決定が、国際的移住の影響を直接間接に受けているすべての子どもの権利、ウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について効果的評価を実施するとともに、条約の基本的原則が、移住政策その他の考慮事項との関連で効果的に優先されかつ意味のある形で実施されること、ならびに、移住政策および子ども保護政策のさらなる発展に〔評価の〕結果が反映されることを確保するよう、勧告されるところである。 62.国はまた、国際開発政策、移住政策および子どもの権利との連携を個別におよび集団的に強化することも、求められる。 データ収集および調査研究 63.国は、移住の状態および移住が子どもに及ぼす影響に関するデータ収集および分析を増進させかつ拡大するための具体的措置を確保するべきである。このようなデータは、とくに年齢、性別、出身国、教育歴およびその他の関連情報(移住に関わる地位、入国許可、出国許可および就労許可の発布ならびに国籍の変更など)の別に細分化することが求められる。さらに委員会は、国が、このようなデータが(とくに出入国管理当局によって)資格外移住者を害するようなまたは資格外移住者の不利益になるようなやり方で利用されないことを保障するための保護措置を確保するよう、勧告するものである。 64.国は、移住の影響を受けている世帯が、地方の統計制度およびデータシステム、ならびに、生活水準、支出および労働力に関する全国的標本調査で特定されることを確保するべきである。このようなデータおよび情報を、移住の影響を受けている子どもが科学的根拠に基づく社会政策、地方計画および予算策定プロセスの発展に包摂されることを確保するために活用することが、勧告される。また、国が、国の政策および(または)プログラムの立案に際して移住者である子どもおよび家族の意見および経験を考慮するため、これらの子どもおよび家族(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもおよび家族)と協議することも、勧告されるところである。委員会に提出する締約国の定期報告書にこのような情報を記載することも求められる。 65.さまざまな組織からの呼びかけを認識し、かつ国際的な移住と開発に関するハイレベル対話(2013年)に鑑み、関係者は、国際的移住の文脈における子どもの権利を、移住に関する子どもの地位の如何を問わず確保するための具体的措置に関する世界的調査の実施を検討するよう、奨励される。 66.情報の監視および収集を推進するため、締約国は、自国の領域内にあって移住の影響を受けているすべての子どもに関わる条約実施の体系的評価を委員会に対する定期的報告に組みこむとともに、人権保障に責任を負う国内機関(オンブズマン、平等機関等)に対し、移住の影響を受けている子どもに対応することを具体的任務としながら条約の遵守状況の監視において鍵となる役割を果たす権限を与えるよう、求められる。 67.国は、移住者である子どもの状況を監視する責任が出身国にのみ負わされないこと、ならびに、情報およびデータが通過国および目的地国に転送され、かつこれらの国によって受領されることを確保するべきである。その際、国は、移住の際および到着時に子どもをとくに対象とする効果的なサービスを提供できるようにするため、ケースマネジメント・システムにおいて子どもの即時的および長期的ニーズを監視するための機構を確立することが求められる。 子どもの定義および18歳未満のすべての者への条約の適用 68.子どもの定義にしたがって18歳になるまで権利および保護が与えられていることを想起し、国は、16歳以上の者を含むすべての子どもに対し、かつ移住に関するその地位に関わりなく、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。 69.加えて、国は、18歳に達した子ども(とくに養護環境を離れる子ども)のために十分なフォローアップ措置、支援措置および移行措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規移住者としての地位へのアクセス、および、教育を修了し、かつ労働市場への統合を図るための合理的機会へのアクセスを確保することも含まれる。 差別の禁止 70.国は、いかなる事由に基づく差別とも闘うための十分な措置を確保するべきである。その際、外国人嫌悪、人種主義および差別と闘い、かつ、移住の影響を受けている家族の社会統合を促進するための努力を強化することが求められる。国はまた、移住者である子どもおよびその家族を暴力および差別から保護し、かつ諸権利へのアクセス、公平および尊重を促進する目的で、とくに地方レベルで、移住者に関する知識を向上させ、かつ移住者に関する否定的見方に対応するためのプログラムも実施するべきである。このような取り組みにおいては、迅速かつ効果的な救済機構ならびに言語的および文化的に適切な十分な支援措置への、移住者による公平なアクセスを確保することも求められる。 71.国は、自国の移民政策において障害のある子どもまたは親が障害者である家族の子どもが差別されないこと、および、障害を入国申請の却下事由と考えないようにすることを確保するべきである。 子どもの最善の利益 72.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階および当該手続に関する決定において、かつ子どもの保護に従事する専門家、司法機関および子ども自身の関与を得ながら、子どもの最善の利益に関する個別評価を実施するべきである。とくに、子どもまたはその親の収容、送還または退去強制につながるいかなる手続においても、子どもの最善の利益を第一次的に考慮することが求められる。 73.国は、自国の法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項、政策上の考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 74.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階または決定において、子どもの保護に従事する専門家および司法機関の関与を得ながら、可能なかぎり最大限に、継続的かつ個別的な子どもの最善の利益評価および正式な認定手続を実施するべきである。これには、子どもまたはその親の退去強制につながるいかなる手続も含まれる。国は、法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 訳者注/パラ72~74の重複は原文ママ。 意見を聴かれる子どもの権利 75.国は、自国の法律、政策、措置および実務において、移住の文脈における子どもの権利および(または)その親の権利に影響を及ぼすすべての移住手続および司法手続における適正手続が保障されることを確保するべきである。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われなければならず、その子ども特有のニーズは平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されなければならない。子どもは、自分自身の状況に関する決定またはその親に関する決定に対し、すべての決定が自己の最善にのっとって行なわれることを保障するための行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない。 76.とくに、国は、年齢の鑑別および決定の手続、面接の実務ならびに法的手続が、子どもの権利についての十分な専門性を有する職員によって、迅速な、子どもにやさしい、学際的な、文化的に配慮のあるやり方で進められることを確保するべきである。 アイデンティティ(名前および国籍を含む)に対する権利 77.国は、すべての子どもの出生登録を確保するための措置(移住者である子どもの出生登録を妨げるいかなる法律上および実務上の要因も取り除くことを含む)を強化するとともに、国籍を付与しなければ子どもが無国籍となる場合、自国の領域内で出生した子どもに市民権を付与するべきである。 人身の自由に対する権利および収容の代替措置 78.子どもは、移住に関わる自己の地位または親の地位を理由として、犯罪者として扱われまたは懲罰的措置の対象とされるべきではない。移住に関わる自己の地位または親の地位を理由とする子どもの収容は、子どもの権利の侵害であり、かつ、子どもの最善の利益の原則に常に違反する。これを踏まえ、国は、出入国管理上の地位を理由とする子どもの収容を速やかにかつ完全に取りやめるべきである。 79.国は、子どもが、通過国および(または)目的地国に家族構成員および(または)いる場合にはこれらの者といっしょにおり、かつ、その出入国管理上の地位についての解決が図られるまでの間、収容されるのではなくコミュニティを基盤とする環境で家族として滞在できるようにする立法、政策および実務を通じて、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する収容の代替措置を、可能なかぎり最大限に、かつもっとも制約の度合いの少ない必要な手段を活用しながら採用するべきである。委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2010年)を強調しつつ、国には、自由を奪われた少年の保護に関する規則(ハバナ規則)を含む、拘禁環境に関する国際基準(これらの基準は行政拘禁または非刑事的拘禁を含むあらゆる形態の拘禁に適用される)を遵守する法的義務があることが、あらためて指摘される。このような措置は慎重に立案されるべきであり、また子どもの代替的養護に関する国連指針その他の人権基準にもしたがう形で立案されるべきである。国は、収容センターから放免された子どもが支援措置および適切な代替的養護を利用できることを確保するよう求められる。 80.にもかかわらず子どもが自由を剥奪されるときは、国は、いかなる場合にも、そのような措置を、もっとも短い期間で、かつ少なくとも人権法に掲げられた拘禁に関する最低基準を満たすような条件下で課すよう促される。これには、子どもにやさしい環境の確保、子どもの親または保護者ではない成人からの分離(たとえ子どもが16歳以上であっても同様である)、子どもの保護に関する保障措置および独立の監視が含まれる。 81.受入れセンターおよび(または)これに類する他の施設から失踪しまたは行方不明になった移住者の子どもの状況に関する懸念に照らし、国は、受入れセンターの手続/施設および環境についての、条約および子どもの代替的養護に関する国連指針に全面的にしたがった具体的指針を確保するべきである。 あらゆる形態の暴力(移住の文脈におけるものを含む)からの子どもの自由 82.国は、学校およびコミュニティ環境にとくに焦点を当てながら、国際移住の影響を受けているあらゆる年齢の子どもが、移住に関する自分自身のまたはその親の地位の如何を問わず暴力から平等に保護されることを確保するため、法的拘束力がありかつジェンダーに配慮した積極的な政策、プログラムおよび行動を採択するべきである。子どもに対する暴力に関する特別報告者および国連システム内外で同特別報告者を支援する諸機関は、連携して、かつ移住の状況にある子どもたちの意見およびニーズを全面的に考慮にいれながら、国際移住の文脈において子どもが暴力の被害をとりわけ受けやすいことを調査研究および行動における優先的問題のひとつとして取り上げていくよう奨励される。 家族生活に対する権利 83.国は、移住に関する自国の政策、法律および措置において家族生活に対する子どもの権利が尊重されること、ならびに、いかなる子どもも国の作為または不作為によってその親から分離されないこと(このような分離が子どもの最善の利益にしたがって行なわれる場合を除く)を確保するべきである。このような措置には、とくに、家族再統合の申請に対して積極的、人道的かつ迅速に対応すること、可能なときは常に移住に関わる地位の正規化のための選択肢を提供すること、および、残された子どもが通過国および(または)目的地国において親と合流できる(または親が子どもと合流できる)ようにするための家族再統合政策を、移住のすべての段階でとることが含まれるべきである。 84.国は、子どもが目的地国の国民である場合、その親の収容および(または)退去強制を行わないようにするべきである。逆に、親の正規化を検討することが求められる。決定によって子どもの最善の利益が否定されないことを確保するため、子どもは、親の入国許可、在留または追放に関わる手続において意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ、親の収容命令および(または)退去強制命令に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできるべきである。子どもの最善の利益にしたがった、収容および退去強制に代わる措置(正規化を含む)を、法律によっておよび実務を通じて確立することが求められる。 85.国は、移住に関わる地位の如何を問わず、すべての移住者を対象として経済的、社会的および文化的権利へのアクセスを確保するよう努めるべきである。国は、移住の状況にある子どもおよび家族にとくに注意を払い、かつ残された子どもおよび(または)非正規な移住状況にある子どもを包摂しながら、社会政策、子ども期政策および家族保護政策にこのことが含まれることを確保するよう、求められる。 生活水準、経済的、社会的および文化的権利の享受 86.国は、移住の状況にあるすべての子どもが、移住に関わる自己のまたは親の地位の如何に関わらず、経済的、社会的および文化的権利ならびに基礎的サービスに対して国民である子どもと平等にアクセスできることを確保するとともに、このような子どもの権利を法律で明確にするべきである。その際、国は、移住の影響を受けている子どもおよびその家族(とくに非正規な状況にある子どもおよび家族)が、とくに保健ケア、教育、長期の社会保障および社会扶助等のサービスおよび給付に効果的にアクセスすることの妨げとなる、またはこれらの子どもおよび家族を差別する法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう、強く奨励される。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる権利ならびに暴力からの安全保障など)への対応に、とくに注意が払われるべきである。国は、「残された」子どもが権利およびサービスにアクセスしようとする際に直面する困難について、市民社会および地域コミュニティと連携しながら具体的対応をとるよう求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政的および金銭的障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである。住民登録機関および公共サービス提供機関への効果的アクセスを実際上も確保するため、これらの機関を対象とした研修および指導の実施が求められる。 87.国は、住民登録機関、公共サービス提供機関および出入国管理機関の間の情報共有について、このような情報共有が子どもの最善の利益に反せず、かつ子どもまたはその家族が潜在的な危害または制裁にさらされないことを確保するため、効果的な保障措置が設けられるようにするべきである。このような保障措置は、サービス提供機関を対象として明確な指針を発布すること、および、非正規な移住の状況にある者の間でこれらの保障措置に関する意識啓発プログラムを実施すること等の手段を通じ、法律上も実際上も実施されなければならない。 88.子どもを貧困および社会的排除から保護するための政策、プログラムおよび措置には、移住の状況にある子ども(とくに、出身国に残された子ども、および、移住者である親から目的地国で生まれた子ども)も、その地位の如何に関わらず、包摂されなければならない。移住に直接間接に関係する形で人が脆弱な状況に置かれるあらゆる事態を防止し、かつこれに対応するための、国家的な社会保護制度の能力強化が図られるべきであり、また移住の影響を受けている子どもおよびその家族は、移住に関わる地位の如何に関わらず、かついかなる種類の差別もなく、出身国、通過国および目的地国における社会政策および社会プログラムの具体的重点対象集団に位置づけられるべきである。社会保護政策には、移住の状況にある家族および養育者を対象とした、これらの家族および養育者が子どもの養育責任を果たすことの便宜を図るための支援(コミュニティを基盤とする社会サービスを通じて提供されるものを含む)に関する具体的規定を含めることが求められる。これらの規定には、代替的養護を受けている子どものための特別サービスも含まれるべきであり、また移住が子どもに及ぼす心理社会的影響の緩和にも焦点が当てられるべきである。 健康に対する権利 89.国は、移住の過程、庇護を求める過程または人身取引の対象とされた過程で子どもが経験したトラウマに対応するための、十分なかつアクセスしやすい措置を確保しかつ実施するべきである。子どもの最善の利益に関する評価および認定を行なう場合も含め、すべての子どもが精神保健サービスを利用できるようにすることに、とくに配慮することが求められる。 経済的搾取からの保護 90.国は、移住に関する自国の政策および措置において、条約、ならびに、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する同第182号条約および家事労働者の適切な仕事に関する同第189号条約が考慮されることを確保するべきである。さらに、国が、労働の文脈で、とくにインフォーマル労働および(または)季節労働の状況で生じる子どもの権利侵害を特定しかつ是正するための監視制度および通報制度の設置を検討することも、勧告されるところである。 正規のかつ安全な移住経路および安定した在留資格へのアクセス 91.国は、可能なときは常に、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである。これらの正規化プログラムにおいては、移住者の社会的統合の促進および子どもの権利(家族生活に対する権利を含む)の保護が目指されるべきである。 紛争状況 92.紛争によって生じた移住の状況等においても、国には条約および国際人権基準を遵守する法的義務があることを想起し、国は、紛争状況に関わる自国の移住政策および移住手続において子どもの権利に関する十分な保障措置が設けられることを確保するべきである。 V.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2013年2月22日)。
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子どものまちとは、「架空のまちのなかで子どもが働いて、お給料としてそのまちで使える通貨をもらい、通貨を使ってまちのなかで遊ぶ」ものである。 「子どものまち」「子どもがつくるまち」「キッズタウン」など、いくつかの表記ゆれがある。 まちの名称には「ミニ」「タウン」がつく場所が多い(例:ミニいちかわ,とさっ子タウン)。名称に「子どものまち」等をつける場合もある。 子どものまちのはじまりはドイツにある「ミニ・ミュンヘン」であり、早期には千葉大学の木下勇先生が日本に紹介した。 日本で子どものまちが広まったのは、2000年に中村桃子さんがミニ・ミュンヘンに行き、中村さんの所属しているNPO団体(千葉県佐倉市)に開催を持ちかけたことがきっかけである。日本初の子どものまちは、実質、千葉県佐倉市の「ミニさくら」である。 参考:こどものまち(ウィキペディア)
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/19(2016年7月20日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-17)A.背景(パラ6-10) B.理論的根拠(パラ11-13) C.目的(パラ14-17) II.公共予算との関連における第4条の法的分析(パラ18-39)A.「締約国は、……措置をとる」(パラ18-20) B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(パラ21-24) C.「この条約において認められる権利の実施のための」(パラ25-27) D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(パラ28-34) E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(パラ35-39) III.条約の一般原則と公共予算(パラ40-56)A.差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41-44) B.子どもの最善の利益(第3条)(パラ45-47) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ48-51) D.意見を聴かれる権利(第12条)(パラ52-56) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則(パラ57-63) → 子どもの権利と公共予算 後編A.有効性(パラ59) B.効率性(パラ60) C.公平性(パラ61) D.透明性(パラ62) E.持続可能性(パラ63) V.公共予算における子どもの権利の実施(パラ64-111)A.計画(パラ67-86) B.策定(パラ87-93) C.執行(パラ94-103) D.フォローアップ(パラ104-111) VI.この一般的意見の普及(パラ112-116) I.はじめに 1.子どもの権利条約第4条は以下のように規定する。 締約国は、この条約において認められる権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置をとる。経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、および必要な場合には、国際協力の枠組の中でこれらの措置をとる。 (訳者注/国際教育法研究会訳) この一般的意見は、締約国が公共予算との関係で第4条を実施するさいに役に立つはずである。ここでは、締約国の義務を明らかにするとともに、公共予算に関わる有効な、効率的な、公平な、透明なかつ持続可能な意思決定を通じて条約上のすべての権利(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの権利)を実現する方法についての勧告を行なっている。 2.第4条が子どものすべての権利に関連するものであり、かつ、これらのすべての権利が公共予算の影響を受け得ることに鑑み、この一般的意見は条約およびその選択議定書に適用される。この一般的意見は、公共予算がこれらの権利の実現に資することを確保するための枠組みを締約国に対して提示するものであり、また第III節では、第2条、第3条、第6条および第12条に掲げられた条約の一般原則の分析を行なっている。 3.この一般的意見で「子ども(たち)」に言及するさいには、18歳未満のすべての者(いかなるジェンダーであるかを問わない)であって、公共予算関連の決定によってその権利に直接間接の影響(肯定的影響か悪影響かを問わない)が生じる者またはその可能性がある者を含むものとする。「権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども」とは、その権利が侵害される被害をとりわけ受けやすい子どもであって、障害のある子ども、難民状況にある子ども、マイノリティ集団の子ども、貧困下で暮らしている子ども、代替的養護のもとで暮らしている子どもおよび法律に抵触した子どもを含むが、これに限られない。 4.この一般的意見では以下の定義を適用する。 (a) 「予算」には、国の歳入動員、予算配分および支出を含む。 (b) 「実施義務」とは、後掲パラ27に掲げた締約国の義務をいう。 (c) 「条約の一般原則」とは、第III節に掲げた諸原則をいう。 (d) 「予算原則」とは、第IV節に掲げた諸原則をいう。 (e) 「立法」とは、子どもの権利に関連するすべての国際条約/法、地域条約/法、国内法および国内下位法令をいう。 (f) 「政策」とは、子どもの権利に影響を与えるまたはその可能性があるすべての公的な政策、戦略、規則、指針および声明(そこに掲げられた目標、目的、指標および目指される成果を含む)をいう。 (g) 「プログラム」とは、法律および政策の目標を達成する目的で締約国が定めた枠組みのことをいう。このようなプログラムは、たとえば子どもの特定の権利、公共予算編成過程、インフラストラクチャーおよび労働力に影響を与えることにより、子どもに直接間接の影響を及ぼす可能性がある。 (h) 「国内下位」とは、広域行政圏、州、郡または自治体など、国の下位の行政段階をいう。 5.第I節では、この一般的意見の背景、理論的根拠および目的を示す。第II節では、公共予算との関連で第4条の法的分析を行なう。第III節では、このような文脈における条約の一般原則の解釈を提示する。第IV節では、公共予算編成の原則を取り上げる。第V節では、公共予算が子どもの権利の実現にどのように資するかを検討する。第VI節では、この一般的意見の普及に関する指針を示す。 A.背景 6.この一般的意見は、「実施に関する一般的措置」という概念は複雑であり、委員会は、個々の要素に関するいっそう詳細な一般的意見を適宜発表していく可能性が高いと述べた、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を踏まえたものである [1]。また、委員会が2007年に開催した、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議を踏まえたものでもある。 [1] 一般的意見5号の「まえがき」参照。 7.この一般的意見は、予算に関わる原則を人権の視点から掲げた国連のいくつかの決議および報告書を参考にしたものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの権利への投資の改善を目指す人権理事会決議28/19 [2]、および、当該決議に先立つ国連人権高等弁務官の報告書「子どもの権利への投資の改善に向けて」(Towards better investment in the rights of the child)。そこでは、子どもへの投資との関連における国内政策の役割、資源動員、透明性、説明責任、参加、配分および支出、子どもの保護制度、国際協力ならびにフォローアップについて取り上げられている。 (b) 財政政策における透明性、参加および説明責任の促進に関する総会決議67/218。同決議は、財政政策の質、効率性および有効性を向上させる必要性を強調するとともに、加盟国に対し、財政政策における透明性、参加および説明責任を増進させるための努力を強化するよう奨励している。 [2] 同決議は無投票で採択された。 8.この一般的意見の作成にあたっては、委員会が調査を通じて各国、国際連合、非政府組織、子どもたちおよび個人専門家と行なった協議、ならびに、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海、中東・北アフリカおよびサハラ以南のアフリカで開催された会議および地域協議も参考にした。これに加えて、オンライン調査、フォーカスグループにおける討議ならびにアジア、ヨーロッパおよびラテンアメリカで開催された地域協議を通じて行なわれた、71か国から参加した2693人の子どもたちとの世界的協議 [3] も参考にしている。この世界的協議では、年齢、ジェンダー、能力、社会経済的状況、言語、民族、就学状況、避難を余儀なくされた状況および子ども参加型の予算策定の経験という観点からさまざまな背景を有する男女の子どもから貢献が行なわれた。公共予算の決定に携われる人々に対する子どもたちのメッセージには、以下のようなものがあった。 (a) ちゃんとした計画を立ててほしい。予算では、子どもたちのすべての権利に対応するのに十分なお金が用意されるべきです。 (b) 何に投資すればいいのか、私たちにきいてくれなければ、私たちに投資することはできません。私たちはわかっているので、私たちに尋ねるべきです。 (c) 特別なニーズがある子どものことを予算に含めるのを忘れないでほしい。 (d) お金は公正に、賢く使ってほしい。私たちのお金を無駄なことに使わないでください。効率的にやって、お金を節約しましょう。 (e) 子どもたちへの投資は長期的な投資で、たくさんの成果を生み出してくれるものなので、そのことを忘れずに考えてほしい。 (f) 私たちの家族に投資することは、私たちの権利を保障する重要な方法でもあります。 (g) 汚職が絶対ないようにしてほしい。 (h) 行政に関する問題についてみんなの意見を聴いて、若くても歳をとっていても、市民全員の権利を認めてほしい。 (i) 政府には、もっと説明責任と透明性を高めてほしい。 (j) お金がどのように使われたのか、記録を公表してほしい。 (k) 予算についての情報を、子どもたち全員に、わかりやすい方法で、ソーシャルメディアなど子どもたちに人気があるメディアを通じて提供してください。 [3] Laura Lundy, Karen Orr and Chelsea Marshall, "Towards better investment in the rights of the child the views of children" (Centre for Children s Rights, Queen s University, Belfast, and Child Rights Connect Working Group on Investment in Children, 2015). 9.すべての中核的人権条約に、条約第4条と同様の規定が含まれている。したがって、これらの規定に関連して発表されてきた、公共予算について取り上げている一般的意見は、この一般的意見を補完するものとみなされるべきである [4]。 [4] たとえば、締約国の義務に関する社会権規約委員会(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会)の一般的意見3号(1990年)を参照。 10.この一般的意見は、締約国が有する、自国の管轄内にある子どもに直接間接の影響を与える財源の管理に関わるものである。この一般的意見は、アディスアベバ行動目標(第3回開発資金国際会議、2015年)および「世界の変革:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年)を認知する。これらのアジェンダでは、プログラム支援、セクター支援および予算支援、南南協力ならびに地域間協力など、子どもに影響を与える国際協力関連資源の国による管理について取り上げられている。委員会は、やはりこのような管理について取り上げている、「開発協力および開発計画に対する人権基盤型アプローチについての共通理解声明」(国連開発グループ、2003年)、「援助効果にかかるパリ原則:オーナーシップ、調和化、整合性確保、成果および相互説明責任」(2005年)、アクラ行動アジェンダ(2008年)および「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」(2011年)を想起するものである。加えて、委員会は、公共財務管理に関して国内的、地域的および国際的に策定された基準および現在策定中である基準が、当該基準が条約の規定と矛盾しないことを条件として、この一般的意見にとって関連性を有する可能性があることも心に留める。このような基準の例を3つ挙げるとすれば、公共財務管理における有効性、効率性および公平性を強調する『公共財務管理国際ハンドブック』(The International Handbook of Public Financial Management)[5]、財政運営および説明責任を向上させるために過去、現在および将来の公共財政についての公的報告において包括性、明確性、信頼性、適時性および関連性を求める国際通貨基金の「財政の透明性に関する規範」(2014年)、および、国連貿易開発会議が2012年に採択した「責任あるソブリン融資の促進に関する原則」がある。 [5] Richard Allen, Richard Hemming and Barry Potter, eds., The International Handbook of Public Financial Management (Basingstoke, Palgrave Macmillan, 2013). B.理論的根拠 11.委員会は、締約国が、国内の法律、政策およびプログラムを再検討し、条約およびその選択議定書と一致させるようにするうえで相当の進展を達成してきたことを認める。同時に委員会は、十分な財源が責任ある、効果的な、効率的な、公平な、参加型の、透明かつ持続可能なやり方で動員され、配分されかつ支出されることがなければ、そのような法律、政策およびプログラムは実施できないことを強調するものである。 12.委員会は、委員会に提出される締約国報告書の審査、締約国代表との議論および総括所見において、予算規模が子どもの権利を実現するうえで十分かどうかについての懸念を表明してきた。委員会は、条約で要求されているとおりに国・国内下位レベル双方の予算において子どもの権利を優先的に位置づけることが、これらの権利を実現していくことのみならず、将来の経済成長、持続可能かつ包摂的な開発および社会的団結に永続的かつ肯定的な影響を与えることにも寄与することを、あらためて表明する。 13.以上のことに基づき、委員会は、締約国が、国・国内下位レベルの予算編成過程および行政制度のあらゆる段階を通じてすべての子どもの権利を考慮すべきことを強調する。予算編成過程が国によってある程度異なること、および、独自の子どもの権利予算手法を開発した国もあることは認識しながらも、この一般的意見は、すべての国に関係する4つの主要な予算段階、すなわち計画、策定、執行およびフォローアップに関わる指針を示すものである。 C.目的 14.この一般的意見の目的は、子どもの権利のための予算に関わる条約上の義務についての理解を向上させ、もってこれらの権利の実現を強化するとともに、条約およびその選択議定書の実施を増進させる目的で、予算の計画、策定、執行およびフォローアップが進められるあり方に真の変革が生じることを促進するところにある。 15.この目的は、予算編成過程全体を通じて国の各統治部門(行政府、立法府および司法府)、各段階(国および国内下位)および機構(省庁など)がとる措置に関連するものである。これらの義務は、国際協力のドナーおよび受入国にも適用される。 16.この目的は、国内人権機関、メディア、子どもたち、家族および市民社会組織など、予算編成過程に関わる他の関係者にも関連するものである。締約国は、自国の状況にふさわしい方法で、これらの関係者が予算編成過程において積極的な監視および意味のある参加を行なえるような環境を整えるよう求められる。 17.加えて、この目的は、この一般的意見の内容についての意識啓発および関連する公的職員等の能力構築との関連でも、各国にとって関連性を有する。 II.公共予算との関連における第4条の法的分析 A.「締約国は、……措置をとる」(States parties shall undertake) 18.「措置をとる」という文言は、締約国には、子どもの権利を実現するために適当な立法上、行政上その他の措置(公共予算に関連する措置を含む)をとる自国の義務を果たすか否かについての裁量権はないことを意味する。 19.したがって、公共予算の編成において何らかの役割を果たす国のすべての統治部門、段階および機構は、条約の一般原則および後掲第III節・第IV節に掲げられた予算原則に一致する方法でその職務を果たさなければならない。締約国はまた、立法府、司法府および最高監査機関が同様の対応をとれるようにするための環境も創出するべきである。 20.締約国は、あらゆる段階の行政府および立法府の予算決定担当者が、必要な情報、データおよび資源にアクセスでき、かつ子どもの権利実現のための能力構築を図れるようにするべきである。 B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(all appropriate legislative, administrative and other measures) 21.「あらゆる……適当な措置」をとる義務には、以下のことを確保する義務が含まれる。 (a) 子どもの権利実現のための資源動員、予算配分および支出を支える法律および政策が整備されること。 (b) 子どもの権利を増進するための適切な法律、政策、プログラムおよび予算の編成および実施を支える目的で、子どもに関する必要なデータおよび情報が収集され、生成されかつ普及されること。 (c) 承認された立法、政策、プログラムおよび予算を完全に実施するための十分な公的資源が効果的に動員され、配分されかつ活用されること。 (d) 予算が、国および国内下位のレベルにおいて、子どもの権利実現の確保につながる方法で体系的に計画され、制定され、実施されかつ説明されること。 22.措置は、それがある特定の文脈(公共予算の文脈を含む)において子どもの権利の増進に直接間接の関連性を有する場合に、適当と判断される。 23.公共予算との関連で締約国がとることを義務づけられる「立法上の……措置」には、現行法の再検討、ならびに、国・国内下位レベルで子どもの権利実現のための予算が十分大規模なものとなることを確保するための立法の策定および採択が含まれる。「行政上の……措置」には、合意に基づき制定された立法の目的にかなうプログラムの立案および実施ならびにそのための十分な予算の確保が含まれる。「その他の措置」には、たとえば、公共予算編成過程に参加するための機構および子どもの権利に関連するデータまたは政策を発展させることが含まれると考えられる。公共予算は、これらの3つのカテゴリーの措置全体にまたがるものと理解できる一方で、その他の立法上、行政上その他の措置の実現にとっても不可欠なものである。国のすべての統治部門、段階および機構が、子どもの権利の増進について責任を有する。 24.委員会は、締約国には、自国が選択する公共予算関連の措置がどのように子どもの権利の向上に結びついているかを示す義務があることを強調する。締約国は、これらの措置の結果として子どもたちのために獲得できた成果の証拠を示さなければならない。条約第4条が履行されたというためには、結果についての証拠を示さないまま、措置をとったことの証拠を示すだけでは十分ではないのである。 C.「この条約において認められる権利の実施のための」(for the implementation of the rights recognized in the present Convention) 25.「この条約において認められる権利」には、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利が含まれる。締約国は、市民的および政治的権利については即座に実現し、かつ、経済的、社会的および文化的権利については「自国の利用可能な手段(資源)を最大限に用いることにより」実施する義務を有する。すなわち、これら〔後者〕の権利の完全な実現は必然的に漸進的に達成されざるを得ないということである(後掲第II節D参照)。 26.子どもの権利の実現のためには、公共予算編成過程の4つの段階(計画、策定、執行およびフォローアップ)のすべてに緊密な注意を払うことが必要である。条約の一般原則およびこの一般的意見で概要を示した予算原則にしたがい、締約国は、予算編成過程全体を通じて、すべての子どもの権利を考慮することが求められる。 27.予算の観点からは、「子どもの権利を実施する」とは、締約国には、自国の実施義務を遵守するようなやり方で公的資源を動員し、配分しかつ使用する義務があるということを意味する。締約国は、以下のとおり、子どものすべての権利を尊重し、保護しかつ充足しなければならない。 (a) 「尊重する」とは、締約国は子どもの権利の享受に直接間接に干渉するべきではないということを意味する。予算との関連では、国は、たとえば予算の決定において一部の集団の子どもを差別したり、または子どもによる経済的、社会的および文化的権利の享受に対応するために現に実施されているプログラムから資金を引き上げたり資源を別に振り向けたりすること(後掲パラ31に掲げる事情がある場合を除く)によって、子どもの権利の享受に干渉することは控えなければならないということである。 (b) 「保護する」とは、締約国は、条約および選択議定書で保障されている諸権利に第三者が干渉することを防止しなければならないということを意味する。公共予算の観点からは、そのような第三者に該当する可能性がある主体として、公共予算編成過程のさまざまな段階で何らかの役割を果たす可能性がある企業セクター [6] および地域的・国際的金融機関を挙げることができよう。保護する義務が含意するのは、締約国は、自国の歳入動員、予算配分および支出が第三者によって干渉されまたは阻害されないことを確保するよう努めなければならないということである。そのためには、締約国は、そのような第三者の役割を規制し、苦情申立て機構を設置し、かつこれらの第三者による人権侵害事案に体系的に介入することが必要になろう。 (c) 「充足する」ためには、締約国は、子どもの権利の完全な実現を確保するための行動をとらなければならない。締約国は以下の対応をとるべきである。(i) 子どもが自己の権利を享受できるようにし、かつそれを援助する措置をとることによって子どもの権利の促進を図ること。予算に関わる文脈では、これには、すべての子どもたちの権利を包括的かつ持続可能なやり方で増進させるために必要な資源および情報を、行政府、立法府および司法府のあらゆる段階および機構が持てるようにすることが含まれる。そのためには、国の諸機関のあいだで条約およびその選択議定書についての知識および理解を高めるための措置を整備すること、ならびに、子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する文化を醸成することが必要となる。 (ii) 国が、やむを得ない理由により、自国が利用可能な手段により自らこれらの権利を実現できない場合に、子どもの権利のための対応をとること。この義務には、子どもたちがたとえば国の異なる地域で自己の権利をどの程度行使できているかを評価しかつ監視する目的で、信頼できる、細分化されたデータおよび情報を公に入手できるようにすることが含まれる。 (iii) 予算に関わる意思決定手続およびそれが及ぼす影響について適切な教育および公衆の意識啓発が行なわれることを確保することにより、子どもの権利を促進すること。これは、予算との関連では、子どもたち、その家族および養育者と、予算関連の決定(これらの決定に影響を与える立法、政策およびプログラムを含む)についてやりとりするための十分な資金を動員し、配分しかつ使用することを意味する。締約国は、より効果的な促進が必要とされる領域を特定する目的で、さまざまな集団に関する成果を継続的に評価するべきである。 [6] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)参照。同一般的意見において委員会は、「国が、企業が子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長しないようにするためにあらゆる必要な、適当な、かつ合理的な措置をとらなければならない」ことを明らかにしている(パラ28)。 D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(With regard to economic, social and cultural rights, States parties shall undertake such measures to the maximum extent of their available resources) 28.この義務にしたがい、締約国は、十分な財源を動員し、配分しかつ使用するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。条約およびその選択議定書上の権利の実現を前進させる政策およびプログラムに配分される資金は、最適なやり方で、かつ条約の一般原則およびこの一般的意見に掲げた予算原則にしたがって使用されるべきである。 29.委員会は、他の中核的国際人権条約における「利用可能な手段(資源)を最大限に用いること」および「漸進的実現」の概念の進展 [7] を認識するとともに、条約第4条はこの両方の概念を反映していると考える。したがって締約国は、国際法にしたがって即時的に適用される義務に影響を与えることなく、経済的、社会的および文化的権利の完全な実現を漸進的に達成する目的で、自国の利用可能な資源を最大限に用いることにより、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで、これらの権利に関する措置をとらなければならない。 [7] たとえば障害のある人の権利に関する条約第4条第2項参照。 30.「締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」とは、締約国には、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を充足させるための予算資源を動員し、配分しかつ使用する目的であらゆる努力を行なったことの実証を期待されているということである。委員会は、子どもの権利は相互依存的でありかつ不可分であること、および、経済的・社会的・文化的権利と市民的・政治的権利を区別するさいには注意しなければならないことを強調する。経済的・社会的・文化的権利の実現は子どもが自己の政治的・市民的権利を全面的に行使する能力にしばしば影響を与えるのであり、その逆もまた真である。 31.第4条によって締約国に課されている、利用可能な資源を「最大限に用いることにより」子どもの経済的、社会的および文化的権利を実現する義務は、締約国は経済的、社会的および文化的権利との関連で意図的な後退的措置をとるべきではないということでもある [8]。締約国は、子どもの権利の享受に関わる現行水準の低下を許すべきではない。経済危機の時期における後退的措置の検討は、他のすべての選択肢を評価し、かつ子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)への影響が最後に生じることを確保した後でなければ、行なうことができない。締約国は、そのような措置が必要であり、合理的であり、比例性を有しており、差別的でなく、かつ一時的なものであること、および、したがって影響が生じたいかなる権利も可能なかぎり早期に回復されることを実証しなければならない。締約国は、影響を受ける集団の子どもたちおよびこれらの子どもたちの状況について知悉しているその他の者が当該措置に関連する意思決定手続に参加するよう、適切な措置をとるべきである。子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務 [9] は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない。 [8] たとえば、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議(2007年)の勧告のパラ24および25、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)のパラ72、ならびに、社会権規約委員会の一般的意見3号のパラ9参照。 [9] 社会権規約委員会の一般的意見で明らかにされている中核的義務を参照(教育への権利に関する13号(1999年)、到達可能な最高水準の権利に関する14号(2000年)および社会保障への権利に関する19号(2007年)など)。 32.条約第44条は、締約国に対し、自国の管轄内にある子どもの権利の増進における進展を定期的に報告するよう義務づけている。利用可能な資源を最大限に用いることによる子どもの経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現およびこれらの権利によって課される即時的義務の実現ならびに市民的および政治的権利の実現を実証するために、明確なかつ一貫した量的・質的目標および指標が活用されるべきである。締約国は、すべての子どもの権利のために資源が利用可能とされかつ最大限に使用されることを確保するための措置を定期的に見直しかつ改善するよう期待される。 33.委員会は、経済的、社会的および文化的権利を含む子どもの権利の実施のために必要な資源を獲得する手段として、国レベルおよび国内下位レベルで、説明責任が果たされる、透明な、包摂的なかつ参加型の意思決定手続が設けられることをおおいに重視するものである。 34.国の歳入動員、配分および支出における汚職および公的資源の誤った管理は、利用可能な資源を最大限に用いる義務を国家が遵守できていないことの表れである。委員会は、締約国が、腐敗の防止に関する国際連合条約にしたがい、子どもの権利に影響を与えるいかなる汚職も防止しかつ解消するための資源を配分することの重要性を強調する。 E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(and, where needed, within the framework of international cooperation) 35.締約国は、子どもの権利を含む人権の普遍的尊重および遵守の促進に関して相互に協力する義務を有する [10]。条約およびその選択議定書に掲げられた権利を実施するために必要な資源を欠いている国には、二国間協力、地域的協力、地域間協力、世界的協力または多国間協力のいずれの形態をとるかにかかわらず、国際協力を求める義務がある。国際協力のための資源を有する締約国には、受入国における子どもの権利の実施を促進する目的でそのような協力を行なう義務がある。 [10] 国際連合憲章にしたがった諸国間の友好関係および協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)参照。 36.締約国は、必要なときは、子どもの権利を実現するための国際協力を求めかつ実施する目的であらゆる努力を行なったことを実証するべきである。そのような協力としては、予算編成過程における子どもの権利の実施に関連する技術的および金銭的支援(国際連合からの支援を含む)[11] も考えられる。 [11] 条約第45条参照。 37.締約国は、利用可能な資源を子どもの権利のために最大限に動員しようとする他の国の努力に協力するべきである。 38.締約国の協力戦略は、ドナーにおいても受入国においても、子どもの権利の実現に寄与するようなものであるべきであり、子ども(とくに、もっとも権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)に悪影響を及ぼすものであってはならない。 39.締約国は、国際機関の一員として開発協力に関与するさい [12] および国際協定に調印するさいには、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務を遵守するよう求められる。締約国は同様に、経済政策の計画および実施にあたって、子どもの権利に生じる可能性がある影響を考慮するべきである。 [12] 一般的意見5号、パラ64参照。 III.条約の一般原則と公共予算 40.条約の4つの一般原則は、子どもの権利に直接間接に関連する国のあらゆる決定および行動(公共予算を含む)の基礎となるものである。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 41.締約国には、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず」、あらゆる種類の差別から子どもを保護する義務がある(第2条第1項)。締約国は、あらゆる行政段階において差別を防止するために行動するべきであり、予算関連の立法、政策またはプログラムにおいて、その内容面または実施面で、子どもに対する直接間接の差別を行なってはならない。 42.締約国は、十分な歳入を動員し、かつ資金の配分および使用をしかるべき形で進めることによって、立法、政策およびプログラムとの関連ですべての子どもにとって肯定的な成果を確保するための積極的措置をとるべきである。実質的平等を達成するため、締約国は、特別な措置を受ける資格を有する集団の子どもを特定するとともに、そのような措置を実施するために公共予算を使用することが求められる。 43.締約国は、差別が行なわれない環境をつくりだすとともに、国のすべての統治部門、段階および機構ならびに市民社会および企業セクターが差別を受けない子どもの権利を積極的に増進させることを確保するための措置を、資源の配分等も通じてとるべきである。 44.子どもが自己の権利を享受するという点に関わる肯定的な成果に寄与する予算を達成するためには、締約国は、関連の立法、政策およびプログラムを見直しかつ改訂し、予算の一定の部分について増額もしくは再優先化を図り、または予算の有効性、効率性および公平性を高めることにより、子どもたちの間に存在する不平等に対応することが求められる。 B.子どもの最善の利益(第3条) 45.条約第3条第1項は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されると定めている。締約国には、子どもに直接間接の影響を与えるすべての立法上、行政上および司法上の手続(予算を含む)においてこの原則を統合しかつ適用する義務がある [13]。子どもの最善の利益は、予算編成過程のすべての段階を通じて、かつ子どもに影響を与えるすべての予算決定において、第一次的に考慮されるべきである。 [13] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)、パラ6(a)参照。 46.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)で指摘したように、条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利は、子どもの最善の利益に関する評価および判断の枠組みを示すものである。この義務は、国が、予算の配分および使用に関わる優先的課題であって相互に競合するものの比較衡量を行なうさいに、きわめて重要となる。締約国は、予算に関わる意思決定において子どもの最善の利益がどのように考慮されたか(他の考慮事項との比較衡量がどのように行なわれたかを含む)を実証できるべきである。 47.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで立法、政策およびプログラムがすべての子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれており、特別なニーズを有しているためにその権利の実現のために人口比に照らした割合よりも多くの支出を必要としている可能性のある子ども)に与えている効果を確認する盲的で、子どもの権利影響評価 [14] を実施するべきである。子どもの権利影響評価は、予算編成過程の各段階に位置づけられるべきであり、かつ監視および評価のために行なわれている他の取り組みを補完するようなものであることが求められる。締約国が子どもの権利影響評価を実施するさいに適用する手法および実践方法はそれぞれ異なることになろうが、その枠組みを開発するさいには、条約およびその選択議定書ならびに委員会が発表した関連の総括所見および一般的意見を活用するべきである。子どもの権利影響評価のさいには、子どもたち、市民社会組織、専門家、国の統治機構および学術研究機関などの関係者の意見を参考にすることが求められる。分析の結果は、改正、これまでのものに代わる対応および改善のための勧告としてまとめられるべきであり、かつ公に利用可能とされるべきである。 [14] 一般的意見5号のパラ45ならびに一般的意見14号のパラ35および99参照。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 48.条約第6条は、すべての子どもは生命に対する固有の権利を有しており、かつ、締約国はすべての子どもの生存および発達を確保しなければならない旨、定めている。委員会は、一般的意見5号において、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」こと、および、「実施措置は、すべての子どもが最適な形で発達できるようにすることを目指したものでなければならない」ことを指摘している(パラ12)。 49.委員会は、子どもが成長発達の段階の違いに応じてさまざまなニーズを有することを認識する [15]。締約国は、予算決定において、さまざまな年齢の子どもたちが生存し、成長しかつ発達するために必要なあらゆる要素を考慮するべきである。締約国は、予算のうちさまざまな年齢層の子どもに影響を与える部分を可視化することにより、子どもの権利に対するコミットメントを示すよう求められる。 [15] 乳幼児期における子どもの権利の実施についての一般的意見7号(2005年)および思春期の子どもの権利についての一般的意見20号(作成中)を参照。 50.委員会は、乳幼児期の発達への投資が、自己の権利を行使する子どもの能力に肯定的影響を与え、貧困のサイクルを打破し、かつ多くの経済的リターンをもたらすことを認知する。乳幼児期の子どもに十分な投資を行なわないことは、認知的発達にとって有害になりうるとともに、すでに存在する剥奪状況、不平等および世代を超えた貧困の強化につながる可能性がある。 51.生命、生存および発達に対する権利の確保には、現在世代に属するさまざまな集団の子どもたちのための予算を考慮する必要が含まれるとともに、歳入および支出に関して多年度にまたがる持続可能な見通しを立てることによって将来の世代を考慮に入れる必要も含まれる。 D.意見を聴かれる権利(第12条) 52.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつその子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視されるすべての子どもの権利を認めている [16]。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで設けられた子どもの意味のある参加のための機構を通じ、子どもに影響を与える予算決定についての子どもたちの意見を恒常的に聴くべきである。これらの機構に参加する子どもたちは、自由に、かつ抑圧または冷やかしを恐れることなく発言できるべきであり、また締約国は参加者に対してフィードバックを行なうことが求められる。とくに、締約国は、意見を表明するうえで困難に直面している子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)と協議を行なうべきである。 [16] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)も参照。 53.委員会は、「自己にとってのあらゆる関心事について意見を聴かれ、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利の実現に投資することは、締約国が条約上負っている明確かつ即時的な法的義務」であり、そのためには「資源および訓練に対するコミットメントも必要になる」ことを想起する [17]。このことは、子どもに影響を与えるすべての決定への意味のある子ども参加を達成するための資金が用意されることを確保する締約国の責任を強調するものである。委員会は、予算決定に関わる子ども参加を保障するうえで、行政府職員、独立した子どもオンブズマン、教育機関、メディア、子ども団体を含む市民社会組織および立法府が果たす重要な役割を認識する。 [17] 一般的意見12号、パラ135参照。 54.委員会は、予算の透明性が意味のある参加の前提条件であることを認識する。透明であるとは、予算の計画、策定、執行およびフォローアップに関連して、利用者にやさしい情報が時宜を得た形で公に利用可能とされるということである。これには、量的な予算情報と、立法、政策、プログラム、予算編成過程のタイムテーブル、支出の優先順位および決定の論拠、支出額、成果ならびにサービス提供情報についての関連情報の双方が含まれる。委員会は、締約国が、意味のある参加を可能にするための、状況にふさわしい資料、機構および制度 [18] のための予算を用意し、かつこのような資料、機構および制度を整備しなければならないことを強調するものである。 [18] 条約第13条第1項参照。 55.予算編成過程への意味のある参加を可能にするために、委員会は、締約国が情報の自由のための立法および政策を整備することを確保することが重要であると強調する。これには、予算編成方針、予算案、策定された予算、中期報告書、年度末報告書および監査報告書のような重要な予算文書にアクセスする権利が含まれ、または少なくとも子どもたちおよび子どもの権利擁護者がそのようなアクセスを妨げられないことが含まれる。 56.委員会は、多くの国が、予算編成過程のさまざまな部分に子どもたちの意味のある参加を得てきた経験を有していることを認識する。委員会は、締約国に対し、そのような経験を共有し、かつ自国の状況にふさわしい優れた実践のあり方を特定するよう奨励するものである。 (子どもの権利と公共予算 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算(第4条)(後編) (子どもの権利と公共予算 前編より続く) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則 57.前掲第II節で明らかにしたように、委員会は、締約国には、自国の予算編成過程において、子どもの権利を実現するのに十分なやり方で歳入創出および支出管理を進めるための措置をとる義務があることを強調する。委員会は、子どもの権利を実現するための十分な資源の確保を達成するには、条約の一般原則および予算原則(有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性)を考慮することも含め、多くの方法があることを認識するものである。条約の締約国は、子どもの権利を実現する予算上の義務を果たすことについての説明責任を有する。 58.委員会は、条約の一般原則および以下の予算原則を自国の予算編成過程に適用することに関して各国がすでに専門的知見および経験を有していることを認識する。締約国は、優れた実践の共有および交流を進めるよう奨励されるところである。 A.有効性 59.締約国は、子どもの権利の増進につながるような方法で計画、策定、執行およびフォローアップを進めるべきである。締約国は、自国の文脈における子どもの権利の状況を理解することに対して投資するとともに、子どもの権利の実現に関わる課題の克服のために戦略的に立案された立法、政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう求められる。締約国は、予算がさまざまな集団の子どもたちにどのような影響を与えているかを常に評価するとともに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、自国の予算決定が最大多数の子どもたちにとって可能なかぎり最善の結果につながることを確保するべきである。 B.効率性 60.子ども関連の政策およびプログラムのために投入される公的資源は、費用に値する価値を確保するような方法で、かつ子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を念頭に置きながら、管理されるべきである。承認された支出は策定された予算にのっとって執行することが求められる。子どもの権利を増進させるための財およびサービスは、透明なやり方でかつ時機を失することなく調達されかつ提供されるべきであり、また適切な質を備えているべきである。さらに、子どもの権利に対して配分された資金は無駄に使用されるべきではない。締約国は、効率的な支出の妨げとなる制度的障壁を克服する努力を行なうべきである。公的資金の監視、評価および監査は、健全な財務管理を促進するチェック・アンド・バランスとなるようなものであることが求められる。 C.公平性 61.締約国は、資源の動員または公的資金の配分もしくは執行を通じ、いかなる子どもまたはいかなるカテゴリーに属する子どもたちも差別してはならない。公平な支出とは、必ずしも子ども1人ひとりに同じ金額を支出することを意味するわけではなく、むしろ子どもたちの実質的平等につながるような支出決定を行なうことを意味する。資源は、平等を促進するため、対象の公正な設定に基づいて用いられるべきである。締約国には、子どもが自己の権利にアクセスするさいに直面する可能性があるすべての差別的障壁を取り除く義務がある。 D.透明性 62.締約国は、厳格な検討に対して開かれた公的財務管理の制度および実践を発展させかつ維持するべきであり、公的資源に関する情報は時宜を得たやリ方で自由に利用可能とされるべきである。透明性は、効率性ならびに汚職および公的予算の誤った管理との闘いに寄与し、ひいては子どもの権利の増進のために利用可能な公的資源を増やすことにつながる。透明性はまた、行政府、立法および市民社会(子どもたちを含む)が予算編成過程に意味のある形で参加できるようにするための前提条件でもある。委員会は、締約国が、子どもに関連する公的な歳入、配分および支出についての情報へのアクセスを積極的に促進すること、ならびに、立法府および市民社会(子どもたちを含む)の継続的関与を支援しかつ奨励する政策を採択することの重要性を強調するものである。 E.持続可能性 63.現在および将来の世代の子どもたちの最善の利益が、あらゆる予算決定において真剣に考慮されるべきである。締約国は、子どもの権利を直接間接に実現することを目的とした政策の採択およびプログラムの実施が継続的に行なわれることを確保するような方法で、歳入を動員し、かつ公的資源を管理することが求められる。締約国が子どもの権利に関連する後退的措置をとれるのは、前掲パラ31で述べたような場合のみである。 V.公共予算における子どもの権利の実施 64.委員会は、本節において、公的予算編成過程を構成する以下の4つの段階との関連でどのように子どもの権利を実現すればよいかについて、より詳細な指針および勧告を提示する。 (a) 計画 (b) 策定 (c) 執行 (d) フォローアップ 〔訳者注/図は略。PDFファイル参照〕 65.本節で焦点を当てるのは国レベルおよび国内下位レベルの公共予算編成過程だが、委員会は、国際協力を通じて条約の実施を促進することも締約国の義務であることを強調する [19]。このような協力は、該当するときには、国レベルおよび国内下位レベルの予算で目に見えるようにされるべきである。 [19] 前掲第II節および条約第45条参照。 66.委員会はまた、条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、予算編成過程全体を通じて部門横断型の、省庁間および機関間の効果的な調整および協力を図ることが重要である点も強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルでそのような調整を維持するために、資源を利用可能としかつ情報システムの整備を図るべきである。 A.計画 1.状況の評価 67.予算の計画のためには、経済状況についてならびに現行の立法、政策およびプログラムがどの程度十分に子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足しているかについて、現実的な評価を行なうことが必要である。国は、マクロ経済、予算および子どもの権利の状況の現状および将来の見通しの双方について、信頼できる、時宜を得た、アクセス可能な、包括的なかつ細分化された情報およびデータを、再利用可能な形式で保持しなければならない。このような情報は、直接間接に子どもの権利を対象とし、かつこれを増進させる立法、政策およびプログラムを策定するために根本的重要性を有する。 68.締約国は、予算の計画にさいし、過去(少なくとも過去3~5年)、現在および将来(少なくとも今後5~10年)の状況を考慮に入れながら、さまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の状況を詳しく検討するべきである。子どもたちの状況についての信頼性がありかつ有益な情報へのアクセスを確保するため、締約国は以下の措置をとるよう促される。 (a) 子どもに関わる人口動態データその他の関連データの収集、処理、分析および普及のために設置されている統計機関および統計制度の権限および資源を定期的に再検討すること。 (b) 子どもたちの状況に関して利用可能な情報が、さまざまな集団の子どもたちおよび条約第2条の差別の禁止の原則を考慮するうえで有益なやり方で細分化されることを確保すること(前掲第III節Aも参照)。 (c) 子どもたちの状況に関する、利用者にやさしくかつ細分化されたデータを、国レベルおよび国内下位レベルで予算編成に関与する行政府職員および立法府議員ならびに市民社会(子どもたちを含む)に対し、時宜を得た方法で利用可能とすること。 (d) 子どもたちに影響を与えるすべての政策および資源のデータベースを設置しかつ維持することにより、対応するプログラムおよびサービスの実施および監視に関与する人々が、客観的なかつ信頼できる情報に継続的にアクセスできるようにすること。 69.締約国は、以下の措置をとることにより、予算決定が子どもたちに与えた過去の影響および今後与える可能性のある影響を調査するべきである。 (a) 過去の公的歳入徴収、予算配分および支出が子どもたちに与えた影響についての会計検査、評価および研究を実施すること。 (b) 子どもたち、その養育者および子どもの権利のために活動している人々との協議を行ない、かつ、予算決定において当該協議の結果を真剣に考慮すること。 (c) 予算年度全体を通じて子どもたちと恒常的に協議するための現行の機構を再検討し、またはそのための新たな機構を創設すること。 (d) 子どもの権利に関わる効果的な予算計画を支えるために新たな技術を活用すること。 2.立法、政策およびプログラム 70.財政問題、予算編成手続または子どもの具体的権利に関連する立法、政策およびプログラムは、子どもたちに直接間接の影響を及ぼす。締約国は、すべての立法、政策およびプログラムが条約およびその選択議定書にしたがったものとなり、子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の現実を反映し、かつ子どもたちを害しまたはその権利の実現を妨げないことを確保するため、あらゆる可能な措置をとらなければならない。 71.委員会は、マクロ経済および財政に関する立法、政策およびプログラムが、子どもたち、その保護者および養育者に直接間接の影響を及ぼしうることを認識する(保護者等は、たとえば労働立法または公的債務管理による影響を受ける可能性がある)。締約国は、子どもの権利の実現が損なわれないことを確保する目的で、あらゆる立法、政策およびプログラム(マクロ経済および財政に関するものを含む)について子どもの権利影響評価を実施するべきである。 72.子どもに関連する立法、政策およびプログラムは、国際開発協力に関する決定およびその運営ならびに国際機関における締約国の構成員資格の一部に位置づけられるべきである。国際的な開発協力または金融協力に関与する国は、当該協力が条約およびその選択議定書にしたがって進められることを確保するためにあらゆる措置をとるよう求められる。 73.委員会は、必要な財源の水準を確認すること、および、予算計画担当者ならびに行政府および立法府の関連の意思決定担当者が実施のために必要な資源について十分な情報に基づく決定を行なえるようにすることを目的として、締約国が、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムの提案について費用見積もりを行なうことの重要性を強調する。 3.資源の動員 74.委員会は、子どもの権利のために利用可能な資源を維持するうえで、歳入動員および資金借入れに関する締約国の立法、政策およびプログラムが重要であることを認識する。締約国は、税および税外収入等を通じて国レベルおよび国内下位レベルで国内資源を動員するため、具体的かつ持続可能な措置をとるべきである。 75.締約国は、子どもの権利を実現するために利用可能な資源が不十分であるときは、国際協力を求めなければならない。そのような協力においては、受入国とドナー国の双方とも、条約およびその選択議定書を考慮に入れることが求められる。委員会は、子どもの権利の実現のための国際的または地域的協力には、対象を明確にしたプログラムに対する資源の動員、および、徴税、脱税との闘い、債務処理、透明性その他の問題に関連する措置も含まれうることを強調するものである。 76.子どもの権利に関する公的支出のための資源の動員は、それ自体、第IV節に掲げた予算原則を遵守するやり方で行なわれるべきである。資源動員システムにおいて透明性が欠けていれば、非効率、誤った財務管理および汚職につながる可能性がある。これが、ひいては、子どもの権利に支出するために利用可能とされる資源が不十分になってしまうことにつながりうるのである。家庭の支払い能力を考慮しないさまざまな税制は、不公平な資源動員につながりうる。そのために、すでに乏しい財源しか有していない人々(そのなかには子どもを養育している人々もいる)が不相応な歳入負担を負うことになりかねない。 77.締約国は、以下の措置をとることにより、自国が負う実施義務と一致するやり方で利用可能な資源を最大限に動員するべきである。 (a) 資源の動員に関連する立法および政策について子どもの権利影響評価を実施すること。 (b) 歳入の垂直的な(国の異なる段階間の)分配および水平的な(同じ段階における諸部局間の)分配の双方に関する政策および方式を債券投資、かつ、これらの政策および方針において居住地域が異なる子どもの間の平等が支持されかつ増進させられることを確保すること。 (c) 租税に関する立法、政策および制度を立案しかつ運営する自国の能力を再検討しかつ強化すること(脱税を回避するために諸国間で協定を締結することも含む)。 (d) あらゆる段階で、非効率または誤った管理を理由とする資源の無駄を防止し、かつ汚職または不法な実務と闘うことにより、子どもの権利を前進させるために利用可能な資源を保全すること。 (e) 第IV節に掲げた予算原則をあらゆる資源動員戦略において適用すること。 (f) 自国の歳入源、支出および負債が現在および将来の世代にとっての子どもの権利の実現につながることを確保すること。 78.委員会は、国が債権者および貸方に代わって行なう持続可能な債務管理が、子どもの権利のための資源の動員に寄与しうることを認識する。持続可能な債務管理には、借入れおよび貸付けに関する明確な役割および責任を定めた透明な立法、政策および制度の整備、ならびに、債務の管理および監視が含まれる。委員会はまた、持続可能性を欠いた長期債務が、子どもの権利のために資源を動員する国の能力にとっての障壁となりえ、かつ、子どもに悪影響を与える課税および受益者負担につながる可能性があることも認識するものである。したがって、債務協定との関連でも子どもの権利影響評価を実施することが求められる。 79.債務救済は、子どもの権利のために資源を動員する国の能力を高めうる。締約国が債務救済を受けたときは、当該救済の結果として利用可能となった資源の配分に関する決定において、子どもの権利が真剣に考慮されなければならない。 80.締約国は、天然資源の通じた資源動員に関する決定を行なうさい、子どもの権利を保護しなければならない。たとえば、そのような資源に関する国内的および国際的取決めにおいては、それが現在および将来の世代の子どもたちに及ぼす可能性のある影響が考慮されるべきである。 4.予算編成 81.予算編成方針および予算案は、国にとって、子どもの権利に対する自国の決意を、国レベルおよび国内下位レベルの具体的な優先課題および計画として実現していくための強力な手段である。締約国は、以下の措置をとることによって、予算関連の方針および提案を、子どもに関わる予算の効果的な比較および監視を可能にするような方法で作成することが求められる。 (a) 分野別分類(部門または下位部門)、経済的分類(経常費および資本支出)、行政上の分類(省庁)およびプログラム別分類(プログラムに基づく予算編成手法が活用されている場合)などの国際的に合意された予算分類システムを、それが子どもの権利と両立するかぎりで遵守すること。 (b) この一般的意見との一致を確保する目的で、予算編成方針および予算案の作成に関する行政上の指針および手続(標準ワークシートおよび協議対象関係者に関する指示など)を再検討すること。 (c) 分類システムをさらに再検討することにより、そこに、最低限、後掲パラ84に掲げたすべてのカテゴリーにしたがって予算情報を細分化した予算項目および予算コードが含まれることを確保すること。 (d) 自国の予算項目および予算コードが国レベルおよび国内下位レベルで対応していることを確保すること。 (e) 利用者にやさしく、時宜を得ており、かつ立法府、子どもたちおよび子どもの権利擁護者にとってアクセス可能な予算編成方針および予算案を公表すること。 82.予算編成方針および予算案には、子どもの権利に関わる自国の義務を国がどのように果たそうと計画しているかについての必須情報を伝えるものである。締約国は、予算編成方針および予算案を活用して以下の措置をとることが求められる。 (a) 子どもたちに影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように資金の手当てをされ、かつ実施されているかについて説明すること。 (b) どの予算配分が子どもたちを直接対象としたものか、明らかにすること。 (c) どの予算配分が子どもたちに間接的に影響を与えるか、明らかにすること。 (d) 過去の予算が子どもたちに与えた影響についての評価および監査で得られた知見を提示すること。 (e) 子どもの権利を前進させるために最近とられた措置またはこれからとられようとしている措置の詳細を示すこと。 (f) 子どもの権利に関わる支出のために利用可能な資源の過去の状況、現在の状況および将来の見通しならびに実際の支出についての財務データおよび解説を提示すること。 (g) 成果および子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)への影響に関する監視ができるよう、子ども関連のプログラム目標を予算配分および実際の支出と関連づける実績達成目標を定めること。 83.予算編成方針および予算案は、子どもの権利関連の団体、子どもたちおよびその養育者にとって重要な情報源である。締約国は、この点に関わる利用者にやさしくかつアクセス可能な情報を作成し、かつそれを公衆に向けて普及することにより、自国の管轄内にある人々への説明責任をいっそう果たすことが求められる。 84.明確な予算分類システムは、子どもたちに影響を与える予算配分および実際の支出が予算原則との関連でどのように運用されているかについて、国およびその他の主体が監視するための基盤となる。そのためには、最低限、予算項目および予算コードにおいて、計画されている支出、予算として策定された支出、改訂された支出および実際の支出であって子どもたちに影響を与えるもののすべてが、以下の要素によって細分化されていなければならない。 (a) 年齢(年齢層の定め方が国によって異なっていることは認識する)。 (b) ジェンダー。 (c) 地域(たとえば国内下位レベルの地域分類による)。 (d) 権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの現在の分類および将来的に考えられる分類(条約第2条を考慮するものとする。第III節Aも参照)。 (e) 歳入源(国レベル、国内下位レベル、国際地域レベルまたは国際レベルのいずれであるかを問わない)。 (f) 国レベルおよび国内下位レベルの担当部局(省庁など)。 85.締約国は、予算案において、子ども関連のプログラムのうち民間部門への委託を提案するものまたはすでに委託済みのものがあればそれを明らかにするべきである [20]。 [20] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ25参照。 86.委員会は、予算における子どもの権利の可視化に関してもっとも進んだ取り組みを行なっている国では、予算編成に対するプログラム基盤アプローチを適用する傾向があることに留意する。締約国は、このアプローチに関する経験を共有し、かつ、それを自国の状況に適用しかつ適宜修正するよう促されるものである。 B.策定 1.立法者による予算案の吟味 87.委員会は、国レベルおよび国内下位レベルの立法者が、子どもたちの状況についての詳細かつ利用者にやさしい情報にアクセスでき、かつ、予算案がどのように子どもの福利の向上および子どもの権利の増進を図ろうとしているかについて明確に理解することの重要性を強調する。 88.国レベルおよび国内下位レベルの立法者には、子どもの権利の視点から予算案を吟味し、かつ、必要なときは、さまざまな集団の子どもたちにとって予算配分がどのような影響を持ちうるかについて究明するための分析または調査研究を実施しまたは委託するための、十分な時間、資源および自律的権限も必要である。 89.立法者が子どもの最善の利益に奉仕するという監督者としての役割を果たせるようにするため、立法機関およびその委員会の構成員には、予算案が条約の一般原則および予算原則と一致するやり方で子どもの権利を前進させることを確保する目的で、予算案について質問し、これを検討し、かつ必要なときは予算案の修正を要請する権限が認められるべきである。 90.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府(関連の立法委員会を含む)について以下のことを確保することにより、立法府の構成員が、予算立法の成立前に、予算案がすべての子どもたちに与える影響について分析しかつ討議するための準備を十分に整えられるように貢献するべきである。 (a) 子どもたちの状況に関する、わかりやすく利用しやすい情報にアクセスできること。 (b) 子どもたちに直接間接に影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように予算項目に移し替えられているかについて、行政から明確な説明を受けること。 (c) 予算過程において、予算案を受け取り、これについての検討および討議を行ない、かつ子どもに関連する修正を策定前に提案するための十分な時間を与えられること。 (d) 予算案が子どもの権利にとって持つ意味合いに光を当てる分析を独立の立場から行ないまたは委託する能力を持つこと。 (e) 市民社会、子どもの擁護者および子どもたち自身を含む国内の関係者を対象として、予算案に関わる公聴会を開催できること。 (f) たとえば立法府の予算局を通じて、前掲(a)から(e)で述べたような監督活動を行なうために必要な資源を有すること。 91.締約国は、予算の策定段階において、国レベルおよび国内下位レベルの予算に関して以下のような文書を作成しかつ配布するべきである。 (a) 一貫した、かつわかりやすいやり方で予算情報を分類していること。 (b) 他の予算案および支出報告書との矛盾を回避することにより、分析および監視の便が図られること。 (c) 子どもたちおよび子どもの権利擁護者、立法府および市民社会がアクセス可能な刊行物または予算概略を含んでいること。 2.立法府による予算の策定 92.委員会は、立法府によって策定される予算が、計画されている支出および実際の支出との比較ならびに子どもの権利との関連における予算の実施の監視を可能にするようなやり方で分類されることの必要性を強調する。 93.策定された予算は、国ならびに国レベルおよび国内下位レベルの立法機関にとってきわめて重要な公文書と見なされるのみならず、子どもたちおよび子どもの権利擁護者を含む市民社会もアクセスできるようにされるべきである。 C.執行 1.利用可能な資源の移転および支出 94.締約国は、子どもの権利を前進させるための財およびサービスが購入されるさいに金額に応じた最大の価値が確保されるようにするため、透明かつ効率的な財務機構および財務制度を採用しかつ維持するべきである。 95.委員会は、締約国には、公共支出が有効性および効率性を欠いていることの根本的原因(たとえば、財またはサービスの質の貧弱さ、財務管理または調達のための制度の不十分さ、漏損、時機を失した移転、役割および責任の不明確さ、情報吸収・応用力の弱さ、予算情報システムの貧弱さならびに汚職など)を明らかにしかつ是正する義務があることを強調する。締約国は、子どもの権利を前進させるための資源を浪費したときまたはその管理を誤ったときは、これがなぜ生じたかを説明し、かつ原因にどのように対応したかを示す義務を負う。 96.子どもたちを対象とする政策およびプログラムには、所期のすべての受益者を予算年度内に計画どおりに網羅することができず、または意図していなかった結果につながる可能性もある。締約国は、必要なときに介入を図り、かつ迅速な是正措置をとることができるよう、執行段階において支出の成果を監視するべきである。 2.予算に関する中期報告 97.締約国は、策定された予算で定められているように子どもの権利を前進させるうえで見られた進展を国および監督機関が追跡できるようなやり方で、子どもに関連する予算についての恒常的な監視および報告を行なうべきである。 98.委員会は、予算報告が時宜を得たやり方で公に利用可能とされること、および、当該報告において、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムに関連して策定された予算、修正された予算ならびに実際の歳入および支出との間にある食い違いを浮き彫りにすることの重要性を強調する。 99.委員会は、締約国が、子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析が可能になる予算分類システムを活用すべきであることを強調する。 3.予算の執行 100.締約国は、さまざまな集団の子どもを対象とする歳入徴収ならびに実際の支出の対象範囲および成果を、予算年度中および複数年次について、かつ、たとえばサービスの利用可能性、質、アクセス可能性および公正な配分の観点から、監視しかつ分析するべきである。締約国は、そのような監視および分析(民間部門に外部委託されたサービスに関するものを含む)を実施するための資源および能力が整えられることを確保するよう促される。 101.締約国は、策定された予算の実施状況を恒常的に監視し、かつ公に報告するべきである。これには以下の措置が含まれる。 (a) さまざまな社会部門を横断する形で、さまざまな行政段階において予算で策定された内容と実際に支出された内容とを比較すること。 (b) 予算年度の中間期までに実際に行なわれた支出、動員された歳入および生じた債務を網羅した包括的な中期報告書を刊行すること。 (c) 中期報告書をより頻繁に(たとえば毎月または四半期ごとに)刊行すること。 102.締約国は、子どもたちを含む市民社会が公的支出の成果を監視できるような、公的な説明責任を確保するための機構を設置する義務を負う。 103.締約国は、子どもの権利に関わる実際の支出との関連で規則および手続が守られること、ならびに、説明責任の履行および報告に関する手続が遵守されることを確保するための、内部的な統制および監査の手続を整備するべきである。 D.フォローアップ 1.年度末報告書および評価 104.年度末予算報告書により、国は、国レベルおよび国内下位レベルで、子どもの権利に関わる歳入、借入れ、国際協力および実際の支出についての説明責任を果たすことが可能になる。年度末予算報告書は、市民社会および立法府が、過去の年の予算実績を吟味し、かつ、必要に応じ、子どもたちおよび子どもの権利関連のプログラムに対して行なわれた実際の支出についての懸念を表明するさいの基盤となるものである。 105.委員会は、締約国が、年度末報告書において、子どもの権利に影響を与えるすべての歳入徴収および実際の支出についての包括的な情報を提供すべきであることを強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府向けに利用者にやさしい報告書を発表するとともに、年度末報告書および評価を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 106.国および独立の評価機関が行なう評価およびその他の態様の予算分析は、歳入徴収および実際の支出がさまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)に及ぼす影響についての貴重な洞察を提供しうる。締約国は、以下の措置をとることにより、予算が子どもたちの状況に与える影響についての恒常的な評価および分析を実施しかつ奨励するべきである。 (a) そのような評価および分析を恒常的に実施するための十分な財源および人的資源を配分すること。 (b) 予算過程全体を通じてそのような評価および分析の知見の厳密な評価および検討を行ない、かつ、それらの知見に関連して行なわれた決定を報告すること。 (c) 子どもの権利に関連して行なわれた実際の支出の有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性について評価する、独立の評価機関(研究機関など)を設置しかつ強化すること。 (d) 子どもたちを含む市民社会が、たとえば子どもの権利影響評価を通じて、評価および分析に貢献できることを確保すること。 2.監査 107.最高監査機関は、公的な歳入徴収および支出が策定された予算にしたがって行なわれているか否か検証することにより、予算過程においてきわめて重要な役割を果たす。監査においては、支出の効率性または有効性を調査し、かつ、特定の部門、国の統治機構または分野横断的な問題に焦点を当てることも可能である。子どもの権利との関連で行なわれる専門監査は、国が子どもに関する公的な歳入動員および支出を評価しかつ改善するうえで役に立ちうる。締約国は、監査報告書を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 108.委員会は、最高監査機関は国から独立しているべきであり、かつ、独立した、説明責任の履行につながる、かつ透明なやり方で子ども関連の予算に関する監査および報告を行なうために必要な情報および資源にアクセスする権限を認められるべきであることを強調する。 109.締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関する公的な歳入徴収および支出に関連して最高監査機関が果たす監督の役割を支援するべきである。 (a) 最高監査機関に対し、時宜を得たやり方で、包括的な年次会計報告書を提出すること。 (b) 最高監査機関が子どもの権利に関連して監査を実施するための資源が利用可能とされることを確保すること。 (c) 実際の支出が子どもの権利に与えた影響に関連する監査に対し、公的な応答(国が監査の知見および勧告にどのように対応するかを含む)を行なうこと。 (d) 国の職員が、立法府の委員会に出頭して、子どもの権利に関連する監査報告書において提起された懸念に応答する能力を有することを確保すること。 110.子どもたちを含む市民社会は、公的支出の監査に対して重要な貢献を行ないうる。締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関連する実際の支出の評価および監査への参加に関して市民社会を支持し、かつそのエンパワーメントを図るよう奨励されるところである。 (a) このような目的で公的な説明責任を確保するための機構を設置するとともに、これらの機構がアクセス可能であり、参加型であり、かつ有効であることを確保するために定期的にその再検討を行なうこと。 (b) 国の職員が、子どもに関連する公的支出の監視および監査を行なう市民社会および独立機関の知見に対し、十分な識見のあるやり方で応答する能力を有することを確保すること。 111.締約国は、子どもの権利に関連する従前の公的な資源動員、予算配分および支出に関する監査の内容を、予算過程の次の段階で参考にするために活用するべきである。 VI.この一般的意見の普及 112.委員会は、締約国が、この一般的意見を、自国のすべての行政部局、行政段階および行政機構、子どもたちおよびその養育者を含む市民社会、ならびに、開発協力機関、学術研究機関、メディアおよび民間部門の関連する部分を対象として広く普及するよう勧告する。 113.締約国は、この一般的意見を関連の言語に翻訳するとともに、子どもにふさわしい版を利用可能とするべきである。 114.この一般的意見に関連する最善の実務のあり方を共有し、かつ一般的意見の内容についてあらゆる関連の専門家および専門職員を研修するためのイベントが開催されるべきである。 115.委員会は、前掲のすべての関係者に対し、この一般的意見の内容に関連した優れた実務のあり方を共有するよう奨励する。 116.締約国は、委員会への定期報告書において、自国が直面する課題ならびに自国の予算および予算過程でこの一般的意見を適用するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
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子どもの権利委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法 (第66会期、2014年5月26日~6月13日) CRC/C/66/2(2014年10月16日) 原文英語〔Word〕 日本語訳:平野裕二 I.序および目的 1.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられるすべての子どもの権利は、子どもの権利条約の基本的価値観のひとつである [1]。これはすべての子どもの権利であって、例外はない。子どもの権利委員会は、意見を聴かれる権利(第12条)を条約の4つの一般原則のひとつに位置づけてきた。このように、意見を聴かれる権利はそれ自体としてひとつの権利であるというのみならず、他のすべての権利の解釈および実施においても考慮されるべきものである。国際的レベルでは、委員会の活動への子どもの関与は、締約国による条約およびその選択議定書の実施に関する報告プロセス、一般的意見 [2]の作成、一般的討議の開催、国内訪問およびその他の行事におけるものも含めて、特段の関連性を有する。報告プロセスとの関連では、締約国は、子どもが委員会への締約国報告書の作成に参加するよう奨励され、かつ参加できることを確保する義務を有する。 [1] 子どもの参加権は条約第12条、第13条、第14条、第15条および第17条に掲げられている。 [2] 委員会は、人権規定の内容に関する委員会の解釈をテーマ別論点についての一般的意見の形式で公にしている。 2.条約第45条(a)に基づき、委員会は、専門機関、国際連合児童基金(ユニセフ)およびその他の資格のある機関に対し、条約の実施に関する専門的助言を提供するよう要請することができる。子どもが主導する団体またはグループは、条約の実際の実施に関する専門的助言を提供することができる「資格のある機関」(competent bodies)の定義に該当する。意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号(2009年)で、委員会は、子どもが主導する団体および子ども代表者が報告プロセスで果たす役割を明示的に承認した。同一般的意見のパラ131で、委員会は、「締約国による子どもの権利の実施状況を監視するプロセスにおいて、子ども団体および子どもたちの代表から提出される文書による報告および口頭による追加情報を歓迎し、締約国およびNGOに対し、子どもたちが委員会に意見を提供することを支援するよう奨励」している。 3.この作業手法は、報告プロセスにおける子どもの有意味な参加を定義し、促進し、かつ推進するためにまとめられたものである。一般的討議への子ども参加など、委員会の他の活動分野に関する指針はあらためて作成される。この作業指針は、委員会の一般的意見12号のほか、委員会の作業手法、手続規則および会期前作業部会へのパートナー(NGOおよび個人専門家)の参加に関する指針(CRC/C/90, annex VIII)に基づくものである。ここでは、子どもから提出された文書の検討、子どもたちとの会見(後掲パラ23参照)および意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年)における委員会の経験も参考にされている。 II.報告参加への子ども参加の基本的要件 4.国際的レベルにおける子ども参加が効果的かつ意味のあるものとなるためには、子ども参加が一度きりのイベントではなくプロセスとして理解されなければならない。子どもたちに対しては、可能なかぎり、継続的な監視プロセスの一環として自分たち自身の団体および取り組みを組織するよう支援および奨励が行なわれるべきである。このような団体および取り組みは、自分たちの権利について話し合い、かつ条約およびその選択議定書の実施における自国の進展状況について意見を表明する環境づくりにつながることになろう。 5.NGOおよびユニセフは、国別審査の際、報告プロセスにおいて子どもが意味のある形で参加しかつ代表されることを確保するよう、強く奨励される。 6.報告プロセスへの子ども参加を促進するすべての者(締約国、NGOおよびユニセフを含む)は、報告プロセスにおいて代弁される利益および優先課題が子どもたち自身のそれであって、子どもたちがともに活動するおとなまたは団体のそれではないことを確保するべきである。 7.一般的意見12号にしたがい、子どもが意見を聴かれかつ参加するすべてのプロセス(報告プロセスを含む)において、以下の9つの要件が尊重されなければならない。 (a) 透明かつ情報が豊かである:子どもたちは、自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利ならびにこのような参加が行なわれる方法、その範囲、目的および潜在的影響についての、十分な、アクセスしやすい、多様性に配慮した、かつ年齢にふさわしい情報を提供されなければならない。 (b) 任意である:子どもたちが意思に反して意見表明を強要されることはけっしてあるべきではなく、また子どもたちにはどの段階でも関与をやめてよいことが知らされるべきである。 (c) 尊重される:子どもたちの意見は敬意をもって扱われなければならず、また子どもたちにはアイデアおよび活動を主導する機会が提供されるべきである。子どもたちのためにおよび子どもたちとともに活動している者および組織は、公的イベントへの参加に関して子どもたちの意見を尊重するべきである。 (d) 子どもたちの生活に関連している:子どもたちが意見表明権を有する問題は、その生活に真に関連しており、かつ子どもたちが自分の知識、スキルおよび能力を活用できるようなものでなければならない。加えて、子どもたち自身が関連性および重要性を有すると考える問題に光を当て、かつ対処できるようにする余地も設けられる必要がある。 (e) 子どもにやさしい環境:環境および作業方法は子どもたちの力量に合わせて修正されるべきである。子どもたちが十分に準備を整え、かつ意見を表明する自信および機会を持てることを確保するため、十分な時間および資源を利用可能とすることが求められる。 (f) インクルーシブである:子どもたちは均質的集団ではなく、参加は、いかなる事由(年齢を含む)に基づく差別もなく、すべての子どもたち(周縁化されている子どもたちを含む)に対して均等な機会を提供し、かつ、あらゆるコミュニティ出身の子どもたちに対して文化的配慮を行なうものでなければならない。幼い子どもおよび周縁化されたコミュニティ出身の子どもを包摂するための特別措置がとられるべきである。 (g) 訓練による支援がある:おとなには、子ども参加を効果的に促進するための準備、スキルおよび支援が必要である。子どもたちにも、たとえば効果的参加、権利意識、公の場での話およびアドボカシーに関する訓練が必要とされる。 (h) 安全であり、かつリスクに配慮している:おとなはともに活動する子どもたちに対して責任を負っているのであり、子どもたちに対する暴力、搾取、または参加にともなう他のいずれかの否定的結果のリスクを最小限に留めるために、あらゆる予防措置をとらなければならない。報告プロセスへの子ども参加を促進する組織は、このプロセスに関連する活動に参加するすべての子どもを対象として、明確な子ども保護戦略を策定しておかなければならない。。 (i) 説明責任が果たされる:子どもが主導する団体、子どもグループ、NGOおよびユニセフは、子どもたちが、報告プロセスにおいて、またより具体的には委員会との会見において自分たちが有している役割を明確に理解していることを確保するべきである。フォローアップおよび評価に対するコミットメントが欠かせない。報告プロセス――それが調査であれ、協議であれ、報告書の起草であれ、または委員会との会見であれ――に参加した子どもたちには、その意見がどのように解釈されかつ活用されたかについての情報が提供されるべきである。 III.報告プロセスへの参加の方法 8.子どもたちが委員会の報告プロセスに参加できる主な方法は次のとおりである。 (a) 事前質問事項の採択および締約国報告書の審査に向けた、子どもたち自身のまたはNGOを通じた提出文書。 (b) 会期前作業部会の会合における口頭でのプレゼンテーション。 (c) 会期前作業部会の会合における委員会の委員との非公開の会見。 (d) ビデオ会議への参加。 (e) 委員会の本会議への参加。 A.背景情報 9.委員会は、第12条にしたがって子どもの意見および子どもから提供されるその他の形態の情報を正当に考慮することが、委員会の報告審査機能の不可欠な一部でなければならないことを強調する。委員会は、子どもたちに対し、条約およびその選択議定書が自国でどのように実施されているかについての視点を提供する目的で、NGOの報告書に貢献するか、または子ども主導の団体、非公式な子どもグループまたはNGOを通じて情報を提供するかのいずれかの手段により、報告プロセスに参加することを強く奨励する。このことは、当該国における条約およびその選択議定書の実施について委員会がよりよく理解することを可能にするとともに、事前質問事項、当該国との対話および総括所見で活用される情報の提供につながろう。 10.子ども主導の団体、子どもグループ、NGOおよびユニセフは、周縁化された状況および被害を受けやすい状況に置かれた子どもたち――女子、幼い子ども、貧困の影響を受けている子ども、路上の状況にある子ども、施設の子ども、障害のある子ども、難民および避難民である子ども、法律に抵触した子どもならびに先住民族集団およびマイノリティ集団に属する子どもなど――が他の子どもたちと平等に報告プロセスに参加することを奨励されかつ可能にされることを確保するための、特別措置をとるべきである。 11.委員会は、同伴するNGOおよびユニセフの代表に対し、代表団に参加する子どもたちおよびおとなが、会合に出席する他の人々の場合と同様に、子どもたちの秘密保持およびプライバシーについて情報を提供され、かつこれを尊重することを確保するよう、期待する。 B.子どもたちによる委員会への提出文書 12.委員会は、子どもたちの意見および勧告を反映した、子ども主導の団体および子どもグループから提供される情報(子どもたちによる報告書、映画、研究、写真および絵画など)[3] を歓迎する。このことは、他の非政府系の関係者から提供される報告書その他の形態の情報(NGOのオルタナティブレポートなど)の場合と同様である。 [3] 子どもたちの報告書には、条約で定義されているとおり18歳未満の子どもたちの意見のみが反映されるべきである。成人した若者の意見はNGO報告書に反映させることもできる。 13.委員会は、子どもが作成したまたは子どもの意見を反映した提出文書において、基本的要件に合致した報告プロセスに意味のある形で参加するために子どもたちがどのようなプロセスを経て選抜されたかについて、また子どもたちの意見を集め、解釈し、かつまとめるためにどのような手法が用いられたかについて、詳述するよう要請する。委員会は当該プロセスに関する詳細な情報を歓迎するものの、名前または写真によって子どもたちが特定できる状態になるべきではない。 14.委員会はまた、子ども主導の団体もしくは子どもグループによってまたはNGOもしくはユニセフを通じて提供される情報を、会期前作業部会の会合が始まる2か月前までに委員会の事務局に提出することも要請する。書面による情報の場合、可能であれば各文書について20部が事務局に提供されるべきである [4]。提供された情報は守秘の対象であると推定される。ただし、提出文書でそうではないことが明示されており、かつ公表に関する同意書が含まれている場合はこのかぎりでない。 [4] このプロセスにおける事務的対応の援助については、Child Rights Connect〔訳者注/旧「子どもの権利条約のためのNGOグループ」〕に問い合わされたい。 C.会期前作業部会 15.会期前作業部会の会合は、委員会が、締約国報告書の予備的検討を行ない、かつ、特定の国における子どもの権利の状況についての追加情報を非政府系の関係者(子どもたちを含む)から得るための機会である。委員会は、年に3回、4週間ずつ(3週間の会期と1週間の会期前作業部会)会合を持っている。委員会による会期前作業部会中の予備的検討は、当該締約国の報告書審査が予定される会期の2会期前に行なうのが通例である。 16.会期前作業部会の会合において、委員会は、国際連合の専門機関、子ども主導の団体、NGOおよび国内人権機関の代表ならびに子どもたちの代表と会見し、事前質問事項、当該国との対話および総括所見において活用される差し迫った問題についての意見を聴く [5]。事前質問事項とは、締約国報告書で提供された情報を明確にしもしくは補完するために、または報告書の提出以降、最近になって何らかの変化があれば当該変化について委員会の最新情報を提供するよう締約国に要請するために、委員会が作成する一連の質問または問合せである。 [5] 会期前作業部会、その作業手法および手続規則についてさらに詳しくはwww.ohchr.org/EN/HRBodies/CRC/Pages/WorkingMethods.aspx#a2aを参照。 17.会期前作業部会の会合は非公開であり、公衆に対して公開されておらず、かつ何人の傍聴も認められない。これらの会合において議論されたすべての内容および出席した人々または組織の身元は秘密のままにされるべきであり、当該会合に参加しなかったいかなる者に対しても伝えられるべきではない。この秘密保持条項により、すべての出席者が率直に発言できることが確保される。このことは、出席者および発言内容を明らかにすることが危険である場合もあるため、とりわけ重要である。子どもたちが仲間にフィードバックすることを望むのであれば、詳細に立ち入ることなく、議論されたトピックについて話すことはできる。 1.会期前作業部会への子どもの参加 18.会期前作業部会は子どもたちとの会見(後掲2参照)よりも技術的な性格のものであってそれほど子どもにやさしくはないが、子どもたちには、他の非政府系の関係者とともに作業部会の会合に出席して委員会にプレゼンテーションを行なう機会が与えられる。子どもたちは、締約国報告書についての意見を明らかにするとともに、自国で子どもたちが直面している主要な懸念および問題を強調することができる。議長は、子ども代表に対し、限られた数の主要な懸念事項および勧告を強調した短い導入的発言を行なうよう求めることになろう。 19.これらの会期前会合は公衆に対しては公開されないが、国内人権機関、国際連合機関およびNGOの代表も出席する場合がある。子どもたちは、これに加えてまたはこれに代えて、委員会との非公開の会見を要請することもできる(後掲2参照)。 20.作業部会の会合に参加したいと考える子ども主導の団体またはグループは、委員会への書簡でその旨はっきり述べることが求められる。委員会はその後、書面による情報の受領を確認し、かつ作業部会が当該報告書を検討する日時に出席するよう子ども代表を招請する書簡を送付する。委員会に文書を提出できる子どもたち(前掲III B参照)が優先されることになろう。委員会は、例外的な場合に、招請される子どもたちの人数を制限する権利を留保する。事務局は、Child Rights Connectと連携して、要請に応じ、出席するよう招請された子どもたちへの技術的援助を提供する。 21.2名以上の子ども代表が会合に出席する場合、その子ども代表は、自国の子どもたちのさまざまな集団および懸念を可能なかぎり代表していることが求められる。周縁化された状況および被害を受けやすい状況に置かれた子どもたちが会期前作業部会および子どもたちとの会見に参加できることを確保するため、NGOおよびユニセフを含むすべての主体によって特別な努力が行なわれるべきである。委員会は、このような子どもたちの出席の便宜を図るために可能なあらゆる措置をとる。 22.委員会は、子どもたちとの会見または会期前会合に参加する子どもたち個人の生活を改善する目的で直接介入することはできないので、子どもたちに対しては、同伴するNGOまたはユニセフによって、これらの会合は特定の締約国における条約および/またはその選択議定書の実施に影響を与えるさまざまな問題についての子どもたちの見方を示すための場であること、および、委員会は子どもたちの貢献によって当該締約国における子どもの権利の状況をより完全に理解できるようになることについて、十分な告知が行なわれるべきである。同伴者または支援者である子ども主導の団体、NGOおよびユニセフは、会期前作業部会の会合に出席する子どもたちが現実的な期待を持つこと、および、これらの子どもたちに対し、作業部会の会合または非公開の会合への参加が結果にどのように影響を及ぼしうるかについて明確な情報が提供されることを確保するよう求められる。子どもたちはまた、フォローアップ活動への参加も認められるべきである。 2.会期前作業部会中の子どもたちとの会見 23.会期前作業部会の会合への出席に加えて、子どもたちのグループまたは団体は、会期前作業部会の会合中、委員会または国別報告者と非公開で会見すること(以下「子どもたちとの会見」という)を要請することができる。このような非公開の会見を持つことにより、子どもたちは、委員会の委員と非公式にやりとりすることができる。このような会見の要請は委員会の事務局に対して送付されるべきであり、その要請に応じるかどうかは委員会が決定する。 24.子どもたちとの会見は、会見の時点で18歳未満である子どもたちをもっぱら対象とする。成人した若者が、18歳未満のときに子どもたちによる提出文書の作成に関与していた場合、おとなである他の代表と同様に、子どもたちとの会見中に――子どもたちから要請があれば――子どもたちに支援を提供するか、または会期前作業部会に参加するかのいずれかの対応をとることが可能である。委員会は、子どもたちとの会見に出席するおとなの人数を制限する権利を留保する。 25.子どもたちとの会見は1時間以内で行なわれ、また審査対象である国についての会期前会合と同じ週に設定される。この会見は子どもたちから提出される情報に焦点を当てるものであり、また会期前会合よりも子どもにやさしい形式がとられる。これらの会見の正式な進行方法は定められていないものの、子どもたちが口頭でまたはビデオを通じて主要な問題および勧告を提示するのが通例である。委員会の委員にも、当該国の状況についての理解を向上させられるよう、子どもたちに質問する時間が割り当てられる。 26.子どもたちとの会見は委員会の公式会合以外の時間帯に設定されるため、国際連合による通訳の提供は行なわれない。子どもたちが英語を話さない場合、子どもたちに同伴するおとなは、子どもたちの母語から英語への通訳を確保することが求められる。 27.子どもたちとの会見で主として発言するのは子どもたち自身である。会見中に子どもたちに同伴して支援を提供するおとなは、通訳するときまたは子どもたちに説明を行なうとき(必要不可欠な情報を明確にする必要があり、かつ子どもからおとなに要請があった場合、もしくは子どもが支援を必要としており、かつ明示的に支援を要請した場合)を除いて、発言するべきではない。同伴するおとなは子どもたちの支援に集中するべきであり、自分自身の意見を表明することまたは子どもたちの意見に影響を与えようと試みることは控えるべきである。同伴するおとなはまた、子どもたちが会見時以外の議論でコミュニケーションを図り、かつ当該議論に参加できることも確保するよう求められる。 28.委員会は、同伴するおとなの非常に重要な役割を認識するとともに、子ども参加を促進する国内関係者に対し、同伴するおとなが、そのケアのもとにある子どもたちの安全および福祉に対する第一次的責任をいかなるときも忘れないようにすることを期待する。委員会は、このような責任が、子どもたちが渡航のために親/養育者のもとを離れたときに始まり、かつ、帰国後、親/養育者に安全に引き渡されたときに初めて終了することを想起するものである。同伴するおとなが子どもたちをケアするやり方は、その子どもたちの年齢および成熟度にふさわしいものであることが求められる。 D.ビデオ会議による子ども参加 29.テクノロジーによって、子どもたちがさまざまな経路を通じて委員会とやりとりできるようになり、また距離または経済的状態によって生じる障壁が軽減されている。委員会は、周縁化された集団および遠隔地の子どもたちにとって、ジュネーブで委員会と交流する資源および機会が限られていることをとりわけ懸念する。委員会は、もっとも効果的かつ適切な手段を活用しながら、離れた場所で子どもたちとの会見を実施するために努力するつもりである。委員会は、たとえば電話またはビデオ会議を通じ、他の場所在住の子どもたちが報告プロセスに参加し、かつその意見および勧告を共有できるようにすることが可能かもしれない。委員会は、テクノロジーを通じてこのような子どもたちとやりとりするかどうか決定する際、子どもたちの保護を正当に考慮する。そのようなやりとりによって子どもたちおよびその家族に安全上のリスクが生じる場合にはなおさらである。 E.委員会の本会期 30.締約国報告書についての議論は委員会の公開会合で行なわれ、その際には締約国の代表および委員会の委員の双方が発言する。関連の国際連合機関、NGOおよび報道機関の代表は、ジュネーブで開かれる会期に出席して直接傍聴するか、ウェブキャストの生中継を通じて自国で会期をフォローしている。委員会は、子どもたちに対し、本会期に出席することおよび/またはウェブキャストを通じてさまざまな国との双方向的対話をフォローすることを奨励する。 31.子どもたちは、ジュネーブで委員会の会期が開かれている際、当該締約国を交えた公式審査が行なわれる前に、委員会の報告者または審査対象国を担当する委員会の委員(国別担当班)との非公式な会見を要請することもできる。 更新履歴:ページ作成(2015年3月29日)。
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※2018/02/26追記 最新版を作成中です。こちらからご覧ください(別ウインドウで開きます) ▼各都道府県に飛ぶ 北海道/青森県/岩手県/秋田県/宮城県 栃木県/千葉県/埼玉県/東京都/神奈川県 富山県/長野県/静岡県/岐阜県/愛知県 滋賀県/三重県/京都府/大阪府/奈良県/兵庫県 島根県/広島県/高知県/福岡県 不明/番外編 北海道(2つ) ♪オホーツクMiNiタウン(北海道北見市 他) ♪こどものまち ミニさっぽろ(北海道札幌市) 青森県(2つ) ♪はちのへ こどものまち(青森県八戸市) ♪ミニ ひろさき(青森県弘前市) 岩手県(1つ) ♪ミニひろの(岩手県洋野町)秋田県(1つ) ♪しごとーーいあきた(秋田県八郎潟町)宮城県(3つ) ♪せんだいこどものまち(宮城県仙台市) ♪piccoliせんだい(宮城県仙台市) ♪こどものまち・いしのまき(宮城県石巻市) 栃木県(2つ) ♪あそびのまち(栃木県小山市) ♪ミニかぬま(栃木県鹿沼市) 千葉県(14つ) ♪こどものまちCBT(千葉県千葉市) ♪はなみがわCBTこどものまち(千葉県千葉市) ♪おゆみ野cafeこどものまち(千葉県千葉市緑区) ♪スマイル・グリーン・シティ(千葉県千葉市緑区) ♪わかば CBT こどものまち(千葉県千葉市若葉区) ♪吉岡こどもまちづくりプロジェクト(千葉県四街道市) ♪ミニ☆いちかわ(千葉県市川市) ♪ミニいちかわ(千葉県市川市) ♪キッズビジネスタウンいちかわ(千葉県市川市) ♪ミニさくら(千葉県佐倉市) ♪ピノキオマルシェ(千葉県柏市) ♪キッズタウンNARITA(千葉県成田市) ♪ミニまつど(千葉県松戸市) ♪ラーバンこどものまち(千葉県印西市) 埼玉県(11つ) ♪こどもがつくる街Coみなみ(埼玉県さいたま市南区) ♪ミニ北区(埼玉県さいたま市) ♪ミニ桜区(埼玉県さいたま市) ♪ミニ大宮(埼玉県さいたま市) ♪ミニ見沼区(埼玉県さいたま市) ♪ミニさいたま(埼玉県さいたま市) ♪ミニまつぶし(埼玉県松伏町) ♪ミニかわごえ(埼玉県川越市) ♪ミニあさか(埼玉県朝霞市) ♪子どものまち・ましがるつ(埼玉県鶴ヶ島市) ♪ミニそうか(埼玉県草加市) 東京都(8つ) ♪こどものまちをつくろう(東京都新宿区) ♪ミニたちかわ(東京都立川市) ♪ミニこがねい(東京都小金井市) ♪キッズタウンいたばし(東京都板橋区) ♪児童館・こどもシティ(東京都八王子市) ♪むさしのミニタウン(東京都武蔵野市) ♪日本橋キッズタウン ~わくわく!ワーク体験~(東京都中央区) ♪キッズハッピーよこ町(東京都台東区) 神奈川県(7つ) ♪ミニヨコハマシティ(神奈川県横浜市) ♪ミニたまゆり(神奈川県川崎市) ♪ミニひらつか(神奈川県平塚市) ♪エンジョイスマイルさがみ(神奈川県相模原市) ♪ミニさがみはら(神奈川県相模原市) ♪たなっちょタウン(神奈川県相模原市) ♪ミニあやせ(神奈川県綾瀬市) 富山県(1つ) ♪未来ぽ~ろ(富山県富山市) 長野県(2つ) ♪あそびのまちin松本(長野県松本市) ♪あそびのまちin東信(長野県真田町) 静岡県(5つ) ♪にじの子タウン(静岡県伊豆の国市) ♪ミニしずおか(静岡県静岡市) ♪こどもクリエイティブタウンま・あ・る(静岡県静岡市) ♪ミニはままつ(静岡県浜松市) ♪KIDS TOWN ぼくらのまちのはら(静岡県牧之原市) 岐阜県(5つ) ♪ぎふマーブルタウン(岐阜県岐阜エリア) ♪西野マーブルタウン(岐阜県西野エリア) ♪岐大祭マーブルタウン(岐阜県岐阜市) ♪羽鳥子どものまち(岐阜県羽鳥市) ♪かさまつ子どものまち「ミニかさ横丁」(岐阜県笠松町) 愛知県(21つ) ♪子ども商店街(愛知県安城市) ♪あいちマーブルタウン(愛知県三河エリア) ♪エコットキッズタウン(愛知県豊田市) ♪こどものまち・みずほ(愛知県名古屋市) ♪ピンポン横丁(愛知県名古屋市) ♪キッズタウンなかむら(愛知県名古屋市) ♪だがねランド(愛知県名古屋市) ♪なごや☆子どもCITY(愛知県名古屋市) ♪守山児童館『こどものまち』(愛知県名古屋市) ♪こどものまち☆たかおか(愛知県名古屋市) ♪こどものまち 前津児童館(愛知県名古屋市) ♪子どもCity in zoo(愛知県名古屋市) ♪こどものまち・デザイン ちくちく(愛知県名古屋市) ♪なごみん横丁(愛知県岡崎市) ♪マーブルタウン(愛知県岡崎市) ♪愛知学泉大学マーブルタウン(愛知県岡崎市) ♪こどものまち in ちた(愛知県知多市) ♪もりもりタウン(愛知県丹羽郡) ♪クローバーズタウン(愛知淑徳大学版マーブルタウン)(愛知県長久手市) ♪愛知学院大学マーブルタウン(愛知県日進市) ♪ドリームタウン(愛知県安城市) 滋賀県(1つ) ♪こどものまち おおつ(滋賀県大津市) 三重県(1つ) ♪こども四日市(三重県四日市市) 京都府(4つ) ♪ミニ京都(京都府京都市) ♪宇多野(京都市宇多野) ♪東山区民ふれあいこどものまち(京都府京都市) ♪チャキッズタウン(京都府京都市) 大阪府(8つ) ♪ミニ大阪(大阪府大阪市) ♪ミニ☆大阪(大阪府大阪市) ♪ミニ★シティ(大阪府大阪市) ♪KisdCity!天王寺(大阪府大阪市) ♪ミニすみのえ(大阪府大阪市) ♪ミニたいしょう(大阪府大阪市) ♪ミニひがし(大阪府堺市) ♪ミニさかい(大阪府堺市) 奈良県(1つ) ♪ミニまほろば(奈良県橿原市) 兵庫県(3つ) ♪ミニたからづか(兵庫県宝塚市) ♪こどものまち高砂(兵庫県高砂市) ♪こどものまち東播磨(兵庫県) 島根県(1つ) ♪海士人村(あまんちゅむら)(島根県海士町) 広島県(1つ) ♪広島キッズシティ(広島県広島市) 高知県(2つ) ♪とさっ子タウン(高知県高知市) ♪ミニ香北町(高知県香北町) 福岡県(2つ) ♪ミニふくおか(福岡県福岡市) ♪子ども金印ランド(福岡県志賀島) 不明(2つ) ♪ながれランド ♪ぷらざタウン 番外編(1つ) ♪リトルトーキョー(東京都江東区) 計 112 つの子どものまちが存在しています(2017/05/03現在)▲ページのトップへ
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国連・子どもの権利委員会:一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 関連一般的討議のテーマ・勧告一覧 子どもの権利委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法(2014年) CRC/C/155(2018年9月12日) 委員会が第78会期(2018年5月14日~6月1日)に採択。 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 子どもの権利委員会の一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 目次 I.序および目的 II.子ども参加の基本的要件A.一般的原則 B.子どもの支援団体、付添いの大人および子どもファシリテーターの役割 C.パートナー組織の役割 III.子ども参加の手法A.テーマの選定 B.立案、計画および運営 C.資料の提出 D.一般的討議日および関連のサイドイベントへの参加 E.委員会の委員との非公開会合 F.フォローアップおよび評価 I.序および目的 1.子どもの権利委員会は、条約の内容および意味するところに関する理解を深められるようにするため、2年に1回、通常の会合が行なわれる日のうち1日を、子どもの権利条約のうち1もしくは複数の特定の条文または関連する主題についての一般的討議に充てている [1]。これは一般的討議日として知られている。国、国連人権機構、国連機関および専門機関、非政府組織(NGO)、国内人権機関、ビジネス部門ならびに個人専門家、子どもたちその他の関係者が参加し、かつ意見書を提出する。 [1] 委員会の手続規則(CRC/C/4/Rev.3)および委員会が第61会期に行なった決定による。 2.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられる子どもの権利は条約の基本的原則のひとつである。子どもたちは、自己に影響を与えるすべての事柄および決定に関して自由に意見を表明し、かつ社会のあらゆるレベルでこれらの意見を考慮される権利を有している [2]。これはそれ自体で権利であるのみならず、他のすべての権利の解釈および実施においても考慮されるべきである。委員会は、子どもたちが一般的討議日に対等な立場で参加する権利を有しており、かつ、条約実施に関連する問題について委員会および関係者がよりよく理解できるようにするうえで重要な役割を果たしていることを強調する。子どもたちは、一般的討議日に自由にかつ積極的に参加し、かつその知識、スキル、意見、経験および勧告を共有するよう奨励されるところである。この目的のため、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者は、子どもの参加を奨励しかつ支援する責任を負う。 [2] 子どもの参加権は条約第12条、第13条、第14条、第15条および第17条に掲げられている。 3.一般的討議日に子どもたちが参加してくれることにより、委員会および参加するすべての関係者は、討議の対象である特定のテーマに関わって、それぞれの国および状況において子どもの権利がどのような状況にあるかについての理解を強化し、かつ子どもに直接影響を与える問題に関する子どもたち自身の見方を理解することが可能となる。委員会は、一般的討議日に対する子どもたちの貢献の価値を認識するとともに、子どもたちの意見、勧告および子どもたちから提供されるその他の形態の情報を正当に考慮することがこのような討議の不可欠な一部とされなければならないことを強調するものである。 4.一般的討議日に参加する子どもたちは、委員会等に対して子どもの意見の中心的重要性を教えてくれるとともに、自分たちの人権についておよびそれが日常生活にどのように関連しているかについての学びを深める機会を持つことになる。このような相互的機会は、委員会および子どもたちにとって、子どもの人権を知りかつ主張することおよび他の子どもの権利を尊重しかつ支持することのためのエンパワーメントにつながりうる。子どもたちは、(とくにそれぞれの自国における)これらの権利の実施を監視するうえで委員会が行なっている活動について、また人権のための活動に関与するその他の機会について、学ぶことができる。子ども参加は、子ども同士の学びを促進するとともに、子どもたちが他の子どもおよび関係者と交流し、かつその知識および経験から学ぶことを可能にする。子ども参加はまた、子どもたちの自信、主体性および声を聴かれる可能性ならびに子どもの権利を擁護する力量の強化にもつながる。子どもたちの声は委員会と共鳴し、権利に対して紙の上のものではない現実の文脈を与えるのである。 5.この作業手法は、一般的討議日への、すべての子ども(とくに不利な立場または脆弱な状況に置かれた子ども)の意味のある参加を容易にしかつ促進することを目的とするものである。ここでは、過去の一般的討議日の実際的かつ多様な経験、子どもたちからの提出物の検討および子どもたちとの会合で委員会が得た経験、意見を聴かれる子どもの権利についての2006年の討議、ならびに、人権擁護者としての子どもの保護およびエンパワーメントに関する2018年の一般的討議日の子ども助言グループとの協議が踏まえられている。この作業手法は、委員会の一般的討議日への子ども参加にとくに関わるものであるが、政府、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者が地域レベルおよび国際レベルでその他の会合を開催する際に活用することのできる原則および指針を掲げるものでもある。委員会は同時に、一般的討議日に参加する関係者の背景、経験および資源はさまざまに異なっており、かつ、この作業手法を柔軟な、協同的なかつ革新的なアプローチで適用する必要があることも認識するものである。 II.子ども参加の基本的要件 6.一般的討議日において子どもたちが効果的にかつ意味のある形で参加しかつ代表されることを確保するため、子ども参加は、ひとつの組織または主体が主導する1度きりのイベントとしてではなく、すべての関係者が寄与する協同的プロセスとして理解されなければならない。子どもたち(不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちを含む)が自由に意見を表明し、自分たち自身の団体、グループおよびイニシアティブを結成し、かつ平和的集会に参加できることを確保することによってコミュニティにおける子どもの市民的権利および自由の全面的実現を支援する目的で、子どもたちに対し、意味のある安全なやり方で一般的討議日に関与するための支援が提供されるべきである。子どもたちが参加するやり方は、インクルーシブであり、かつ子どもたち自身の視点に基づいたものでなければならない。一般的討議日のあらゆる段階で子どもたちの関与が求められるべきである。 A.一般的原則 7.子ども参加を確保するためのすべてのプロセスおよび活動において、意見を聴かれる子どもの権利の実施について委員会が掲げた基本的要件が全面的に尊重されなければならない [3]。 [3] 以下の要件は、意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)および委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法に掲げられているものである。 (a) 透明かつ情報が豊かである:子どもたちは、意見を聴かれる権利および耳を傾けられる権利がすべての子どもの権利であることを知っているべきである。子どもたちに対し、一般的討議日への参加の範囲、目的、方法、意味合いおよび潜在的影響に関する詳細なかつアクセスしやすい情報を提供することが求められる。 (b) 任意である:子どもたちは、自己の意見の表明は子ども自身の選択であって義務ではないことを理解しているべきであり、意思に反して意見表明を強要されることはけっしてあるべきではない。子どもたちが提示するすべての意見は子どもたち自身のものでなければならず、子どもたちを支援するファシリテーター、大人、団体またはグループの意見であってはならない。 (c) 尊重される:子どもたちの意見は、他の子どもおよび大人の両方から、敬意をもって扱われなければならない。あらゆる年齢の子どもたちに対し、一般的討議日の企画、運営およびフォローアップならびに一般的討議日への参加に際して自分たち自身のアイデアを提出し、かつ積極的役割を果たすための支援が提供されるべきである。意見を表明したことを理由に子どもたちが報復または脅迫の対象とされることはあってはならない。 (d) 子どもたちの生活に関連している:子どもたちは、DGD〔一般的討議日〕のテーマが自分たちの日常生活にとってどのような関連性および重要性を有しているか、ならびに、利用可能なさまざまな方法または子どもたちが提案する代替的方法を通じて討議に参加するために自分たちの知識、スキル、能力および経験をどのように活用できるかについて、理解できるべきである。 (e) 子どもにやさしい:一般的討議日に関連する情報および手続(すべての指針、書式その他の資料を含む)は、子どもに合わせて修正されなければならず、かつ、子どもたちの年齢および発達しつつある能力ならびにさまざまな能力および教育水準によって異なる支援水準および関与の形態を考慮したものであるべきである。 (f) インクルーシブである:一般的討議日への子ども参加はインクルーシブでアクセスしやすいものでなければならず、いかなる形態またはパターンの差別も回避されなければならない。 (g) 訓練による支援がある:子どもたちに対し、人権、効果的参加、コミュニケーション・スキル(文章作成、撮影、人前での話およびアドボカシーなど)およびおたがいの意見を尊重する方法に関する訓練が提供されるべきである。ファシリテーターも、子ども参加の重要性および利点ならびに子ども参加の効果的な準備およびファシリテーションの方法についての訓練を受けることが求められる。 (h) 安全であり、かつリスクに配慮している:子どもたちは危害から保護される権利について知っておかなければならず、また子どもたちと接するファシリテーターには、参加によるいかなる悪影響も最小限に留め、かつ子どもたちをいかなる形態の脅迫もしくは報復またはそのような行為に対する恐れからも保護するために、あらゆる予防措置をとる責任がある。 (i) 説明責任が果たされる:すべてのパートナー組織および子ども参加を支援しまたはファシリテートする者は、フォローアップおよび評価に対するコミットメントを有さなければならない。子どもたちは、自分たちの参加が討議にどのような影響を与えたかおよびどのようなフォローアップ活動が行なわれるかについての情報を提供され、かつ評価プロセスへの参加が保障されるべきである。 B.子どもの支援団体、付添いの大人および子どもファシリテーターの役割 8.国、国連機関および専門機関、NGO(子ども主導の組織および子どものグループを含む)、国内人権機関、ビジネス部門その他の関連機関ならびに子どもの付添いの大人および子どもファシリテーターなど、一般的討議日への子ども参加を支援しまたはファシリテートするすべての者は、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 子どもたちに対し、一般的討議日への参加の範囲、目的、方法、意味合いおよび潜在的影響に関する詳細な、年齢にふさわしい、かつアクセスしやすい情報を提供すること。これには、一般的討議日への参加がなぜ有益かつ有用であるか、および、その経験が国および(または)地方レベルで進行中のイニシアティブまたはプロジェクトにとってどのように参考になりまたはその前進につながりうるかについての情報も含まれる。このことはまた、一般的討議日(提出物および関連のイベントを含む)が公開されることを理解していなければならないということでもある。 (b) 一般的討議日に関連するすべての指針、書式その他の資料のチャイルドフレンドリー版を作成するとともに、それらの資料が、子どもたちに対し、アクセス可能なかつ子どもたちにとって意味のあるやり方で提示されることを確保すること。 (c) 参加は選択であって義務ではないこと、および、プロセスのいかなる段階でも参加を撤回できることを、子どもたちにあらためて保証すること。 (d) 参加について、子どもたちおよび該当する場合にはその親または保護者の同意を書面で得ること。 (e) 表現および思想の自由に対するすべての子どもの権利を尊重するとともに、すべての子どもが表明したすべての意見が尊重されることを確保すること。ファシリテーターは、複数の情報源から得られた多様な情報を提供することによって子どもたちの意見形成を援助し、かつ、さまざまな方法で情報を求めるよう子どもたちに奨励するべきである。大人(家族またはコミュニティの構成員および宗教的指導者または若い政治的指導者を含む)には、自分の意見を子どもたちに押しつけることがないよう配慮が求められる。 (f) 参加する子どもたちの期待に適正に対応し、一般的討議日が目指すものは子どもの人権に関する知識の構築および望ましい実践の収集であって個々の事案への介入ではない旨、念を押すこと。子どもたちは現実的な期待を持つべきであり、自分たちの参加には限界がある可能性があることを承知しておくべきである。 (g) 自分たちの問題および課題設定をもっともよく代弁してくれると考える仲間を子どもたちが選抜できるようにする、子ども同士の選抜アプローチを助長促進すること。透明かつインクルーシブなプロセスを確保するため、明確な選抜基準が設けられるべきである。同時に、テーマに関する事前知識は、必ずしも選抜の要件とされるべきではない。それどころか、組織および個人は、一般的討議日を、人権および選ばれたテーマに関する子どもたち等の能力ならびに子どもたち等のコミュニケーション・スキルおよび(または)アドボカシー・スキルを強化する機会として活用するべきである。 (h) 不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちが他の子どもたちと平等な立場で参加することを奨励されかつ可能とされることを確保すること。これには、とくに女子および男子、低年齢の子ども、貧困の影響を受けている子ども、路上の状況にある子ども、施設にいる子ども、障害のある子ども、移住者、難民および避難民である子ども、法律に抵触した子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに自らも親である子どもの関与を適宜得るための特別措置が含まれる。 (i) 子どもたちが意味のある参加のためのスキルおよび自信を構築できるようにするための訓練(子ども同士の学習を含む)を提供すること。これには、人権および権利意識、選ばれたテーマ、効果的参加、関連の指針にしたがった提出物および意見、コミュニケーション・スキル(文章作成、撮影、人前での話およびアドボカシーなど)ならびにおたがいの意見を尊重する方法に関する能力構築が含まれる。 (j) 自分たちにとってとくに関連性があり、興味深く、かつ重要である問題および関心事を強調する機会を提供するなど、一般的討議日に関連するすべてのプロセスに参加できるよう、子どもたちのエンパワーメントを図ること。たとえば、子どもたちからの提出物が討議中の活動で使用するために選ばれた場合、その提出物を作成した子どもたちは、当該活動の運営において積極的な役割を果たすことができるべきである。 (k) ファシリテーターが、子ども参加の重要性および利益を理解するための十分な訓練を受け、かつ、子どもたちの準備および子どもたちの参加のファシリテーションを効果的に進めるための適切なスキルおよび態度を獲得することを確保すること。訓練においては、子どもたちの意見に耳を傾け、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもたちを効果的に巻きこみ、参加のプロセス全体を通じて子どもたちの安全を確保し、かつ子どもにやさしい資料を作成するファシリテーターの能力を発展させることが目指されるべきである。 (l) 危害から保護される権利について子どもたちに知らせるとともに、リスクの防止、評価およびリスクへの対応に際して子どもたちの意見を考慮すること。子どもたちにとっては、安全ではないと感じた場合にどうすればよいかおよびどこに通報すればよいかを知っておくことまたは懸念を提起することも必要である。 (m) 国際的イベントへの子どもたちの参加について、一部の集団の子どもが直面する特有のリスクおよびこれらの子どもが援助を得ようとする際に直面する追加的な障壁を認識した、子どもの保護に関わる明確かつ包括的な方針および枠組みを用意すること。このような方針は、国、団体その他の関連機関が防止に対してどのように取り組むかを概観するとともに、子ども参加の結果として悪影響(報復または脅迫など)が生じた場合に適切に対応するための標準手続、方針の実施におけるスタッフの明確な責任(この分野でスタッフの能力構築を図るための関連の支援および研修を含む)、適切な子どもの安全保護手続および付随するモニタリングの枠組みを記載したものであるべきである。 (n) 委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)を話せない子どもたちのために翻訳および通訳を用意し、かつ関連資料が地元言語で利用できることを確保すること。 9.加えて、一般的討議日に出席する子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターは、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 自分がケアする子どもたちの安全および福祉に対する第一義的責任を常に維持すること。この責任は、子どもたちが渡航のために親または保護者のもとを離れたときに開始し、親または保護者のもとに安全に帰ったときに終了する。付添いの大人等は、たとえば、参加する子どもたちが、参加のプロセス全体を通じて子どもの保護の窓口として行動し、必要に応じて秘密を守りながら支援を提供する少なくとも1名の大人にアクセスできるようにし、かつ、子どもたちが、安全ではないと感じるようなことがあれば当該人物に相談できることを理解するようにするべきである。 (b) 子どもたちに対し、一般的討議日は公開であり、撮影され、オンラインでの投稿その他の用途のためにウェブ中継および録画が行なわれる可能性もあること、および、個別に撮影されることについての本人の同意(および該当する場合には親または保護者の同意)が参加の条件であることを知らせること。子どもたちに対しては、メディアとのやりとりおよびその意味合いについての説明も行なわれるべきである。 10.一般的討議日の後、すべての支援団体、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターは、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 子どもたちに対し、討議においておよびフォローアップ活動のあり方の決定において子どもたちの意見がどのように参考にされたかについてのフィードバックを行ない、かつ、自分たちの参加の成果に関する意見表明の機会を提供すること。 (b) 子どもたちが一般的討議日のフォローアップの取り組みを組織しかつこれに参加するのを支援すること。たとえば、参加団体が、選ばれたテーマに関して子どもたちを支援する旨の公的な誓約または決意表明を行なうとともに、第一義的には子どもたち自身が立案しかつ実施するフォローアップ・プロジェクトを組織するための補助金または奨学金を子どもたちに提供することが考えられる。 (c) 一連のプロセスおよび関連の活動の妥当性、有用性および効果に関する子ども参加者の自己評価およびフィードバックなども通じて、一般的討議日において子ども参加を確保するためのプロセスの評価を実施すること。団体はまた、将来の一般的討議日への子ども参加に関して得られた教訓を特定しかつ記録することも、子どもたちに対して奨励するべきである。 C.パートナー組織の役割 11.委員会は、計画の過程でテーマの提案の募集を開始し、かつ、テーマの関連性および一般的討議日を計画しかつ運営する提案団体の能力に基づいてひとつのテーマを選定する。委員会が選定した提案を提出した組織は、当該一般的討議日のパートナー組織となる。パートナー組織を選定する際の基準は、とくに、そのトピックに関する当該組織の専門性および経験、ならびに、一般的討議日への意味のある子ども参加の組織および確保に関わる当該組織の実証された能力、コミットメント、人的資源および財源である。パートナー組織はまた、討議の成果を子どもたちが属するコミュニティに持ち帰る能力、および、一般的討議日の前、最中および終了後に子どもたちによる意味のあるリモート参加を促進する能力も有していることが求められる。 12.選定されたパートナー組織は、明確に特定された役割および責任を有し、かつ金銭的貢献および子ども参加の確保のための活動を行なう、関係者によるアドバイザリーグループを設置するよう奨励される。このアドバイザリーグループは、この作業手法を一般的討議日に適用するための戦略も策定するべきである。委員会は、可能なかぎり早い段階で計画プロセスに子どもたちの関与を得るよう勧告するとともに、このことは、パートナー組織の能力、資源およびネットワークならびに選ばれたテーマの具体的内容に応じた多種多様なアプローチを通じて達成可能であることを認識する。ひとつのアプローチとして考えられるのは、事業に子どもたちの関与を得ている世界中の実施組織が構築している既存のネットワークを活用して、地方レベルで子どもワークショップを開催することである。これらの組織は、自分たち自身のプログラムの関係ですでに知っている子どもたちのグループとともに、それぞれの地元の背景に応じた一連のワークショップを開催することができる。これらのワークショップで、各グループが、一般的討議日でそのグループを代表する子どもをひとりまたは複数選出し、そのためのプレゼンテーションその他の資料の準備をすることも考えられよう。このようなプロセスは可能なかぎり早く、理想的には一般的討議日の12か月前には開始されるべきである。子どもたちの意見は、子ども団体、学校団体および子どもが主導するその他の取り組みを通じて集めることもできよう。 13.パートナー組織は、加えて、たとえばすでに存在する国際的ネットワークと協議しながら、子どもの権利、子どもの権利の促進および保護における地元の努力および優先課題の増進ならびに提案されているテーマへの関心を示してきた子どもたちから構成されるアドバイザリーグループを設置するよう奨励される。アドバイザリーグループの構成員の選抜基準では、年齢、性別、性的指向、障害、民族的出身、国民的出身、地理的所在および経済的背景の多様性が考慮されるべきである。可能であれば、かつ可能な場合には常に、子どもたちが幅広くかつ包摂的に代表されることを目指すよう求められる。アドバイザリーグループの各構成員は、自国の子どものいずれかの集団をそれぞれ代表するとともに、アドバイザリーグループの構成員としての役割の履行に関して援助を提供する組織 [4] の支援を得ることが考えられよう。子どもたちは、地方レベルのワークショップまたはアドバイザリーグループのどちらを通じてであれ、一般的討議日の準備、実施およびフォローアップに関して恒常的に協議の対象とされるべきであり、かつ自分たちの意見がどのように考慮されたかに関するフィードバックを受け取れるべきである。 [4] 支援する組織は、子どもの保護に関する十分な方針(国際的イベントへの子どもの安全な関与のための枠組みを含む)を有し、かつ、子どもアドバイザーの任務が終了するまでパートナー組織との恒常的連絡を維持するべきである。 14.パートナー組織は、各一般的討議日の前に、どうすれば子どもたちが一般的討議日に参加できるかについての情報を広く普及するとともに、子どもたちが(とくに離れた場所から)参加するための適切な回路を提供するべきである。これとの関連で、パートナー組織とは、子どもたちがアクセスしやすく興味の持てるさまざまな意識啓発キャンペーンおよびソーシャルメディアキャンペーンを通じてこのような議論を積極的に促進するため、一般的討議日の十分前に、アウトリーチ戦略を作成しかつ実施することが考えられる。このような戦略の一環として、選ばれたテーマに関する子どもたちの意見を集め、かつ協議から得られた主要なメッセージを一般的討議日へのインプットとしてとりまとめることを目的とした協議(対面型ワークショップ、ディベートおよびオンライン調査を含む)を実施することもできよう。このような協議の際、パートナー組織は、子どもたちに対し、自分たちの意見をさまざまな形式(経験談、写真、アートワーク、音楽および動画を含む)で表明するよう奨励してもよい。 15.パートナー組織は、討議のテーマに関する提出物の準備または開催される可能性があるサイドイベントもしくは一般的討議日のフォローアップ活動に関する意見の共有に関して、この作業手法にのっとって子どもたちをどのように支援するかについての詳細な指針を、大人に対して示すべきである。パートナー組織は、可能であれば、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちおよびマイノリティまたは先住民族の集団に属する子どもたちの参加を確保するための財源を配分するとともに、子どもたちと共有すべき専門用語および略語の用語集を事前に作成するよう求められる。 16.一般的討議日に出席する子どもたちについて、パートナー組織は、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターに対し、子ども参加のファシリテーション方法に関する実際的指針(渡航、健康保険、天候、宿泊、滞在費用、登録、後方支援、アクセス、通訳・翻訳および安全に関わって生じる可能性がある問題についての情報を含む)を示すべきである [5]。加えて、パートナー組織は、子どもたちが開催場所に慣れ、委員会の委員と会見し、かつおたがいを知りあえるようにするため、遅くとも一般的討議日の前日にジュネーブでオリエンテーションプログラムを開催することを検討してもよい。オリエンテーションプログラムには、時間に応じて、一般的討議日の詳細(プログラム、確認された参加者およびパネリストの背景を含む)に関する準備トレーニングのような教育的活動、子どもたちがいっしょに問題についてのブレインストーミングを行ない、自己紹介のための共同声明を作成し、かつおたがいにプレゼンテーションのリハーサルを行なって仲間からフィードバックを受ける機会、および、ジュネーブの国際連合施設(一般的討議日の開催場所である会議室を含む)の見学などを含めることができよう。市内見学もしくはみんなで出かけるその他の活動および(または)委員会の委員との会見のような懇親的活動を子どもたちのために実施することも考えられる。 [5] たとえば、NGO Group for the Convention on the Rights of the Child, Together with Children - for Children A Guide for Non-governmental Organizations Accompanying Children in CRC Reporting (Geneva, 2011) に掲げられたガイドラインを参照。 17.一般的討議当日、パートナー組織は、子どもたちが離れた場所からも討議に参加できることを確保するべきである。そのための手段には、討議をオンラインでフォローする方法に関する情報提供、ソーシャルメディアでの生中継、および、子どもたちが離れた場所からパネリストに質問する機会の提供などがある。子どもたちが尊重される環境づくりのため、一般的討議日に参加するすべての関係者に対し、子どもたちの参加に関する情報、および、そのような参加に関して委員会が求めることを議事全体を通じて遵守するための考慮事項に関する情報が提供されるべきである。パネリスト、司会者その他の発言者に対しては、子どもにやさしい言葉遣いおよびアプローチを使用すること、ならびに、討議において子どもたちの意見が尊重されかつ反映されるようにすることを奨励するよう求められる。子どもたちは、可能なかぎり、専門用語および略語の説明を求める質問またはこれらの言葉を理解しようとするための質問をするよう奨励されかつ支援されるべきである。パートナー組織はまた、非公開の会合または非公式イベント(夜のレセプションや戸外での食事会など)のいずれかを通じ、子どもたちが発言者および関心のあるその他の人々と会う機会を設ける便宜を図ることも奨励される。 18.パートナー組織は、一般的討議日の終了後、参加した子どもたちに対し、成果報告書に関する情報および主要な成果をフォローアップするための取り組み(討論その他のイベントなど)に関与する機会を提供するよう奨励される。パートナー組織は、一般的討議日に出席した子どもたちを対象として、学んだ教訓を吟味しかつフォローアップの取り組みを計画するための振り返りを、ジュネーブで1日かけて行なうよう奨励されるところである。パートナー組織はまた、可能であれば、子どもたちがそれぞれの状況を踏まえて一般的討議日をどのようにフォローアップしているかに関する意見および経験談を集め、将来の一般的討議日のために得られた教訓としてそれらの意見および経験談を記録するよう求められる。パートナー組織はまた、一般的討議日に際して子ども参加を確保するためのプロセスに関する評価も実施し、当該評価の結果を成果報告書に記載するべきである。 III.子ども参加の手法 19.子どもたちは、一般的討議日に関連する以下の側面についての参加を奨励される。すなわち、(a) テーマの選定、(b) 立案、計画および運営、(c) 資料の提出、(d) 一般的討議および関連のサイドイベントへの参加、(e) 委員会の委員との非公開会合ならびに (f) フォローアップおよび評価である。 A.テーマの選定 20.各一般的討議日では、委員会が選定し、かつ討議の1年前に発表される特定のテーマに焦点が当てられる。委員会は、テーマに関する提案を歓迎するものである。その提案は、標準的書式(当該テーマを提案する根拠、当該テーマの条約との関連性、範囲、成果、目的、形式および考えられる発言者、ならびに、子ども参加およびそのための資金を確保する方法に関する情報を求めるもの)にしたがって、各一般的討議日の16か月前までに書面で提出することが求められる。子どもたちは、それぞれが関わる子ども主導の団体または子どもグループを通じ、委員会による検討のために提案を作成しかつ提出するよう勧奨される。子どもたちに対しては、提案の作成にあたって団体を支援することも奨励されるべきである。子どもたちの参加がはっきりと実証されている提案は、委員会によって好意的に検討される可能性があるためである。子どもたちに対しては、当該プロセスにどのように参加できるかについての関連の情報を提供することが求められる。テーマの選定に関して委員会が最終的決定を行なった後、提案を提出しまたは提案の作成を支援した子どもたちその他の者は全員、選定プロセスに関する情報を受け取る権利を有する。 B.立案、計画および運営 21.子どもたちは、以下のものをはじめとする方法を通じて、一般的討議日の立案、計画および運営に参加するよう奨励される。 (a) コンセプトおよびプログラム。子どもたちは、一般的討議日のコンセプトノート、背景文書およびプログラムの作成(発言者および分科会のトピックの特定を含む)に貢献するよう奨励される。とくに、プログラムを参加者全員(子どもたちを含む)にとってよりアクセスしやすくかつ興味深いものとする目的で、プログラムに盛りこむべき双方向的アクティビティの立案および実施に関して子どもたちと協議することが考えられる。 (b) 準備。子どもたちは、関連のワークショップに参加し、または関連のアドバイザリーグループの構成員に応募するなどの手段により、一般的討議日に関連するすべての計画上および運営上の問題に関してパートナー組織を援助するよう奨励される。子どもたちは計画・運営プロセスのすべての段階に貢献することが可能であり、これには、該当する場合には協議ワークショップの作業計画または子どもアドバイザリーグループの委任事項の起草、および、一般的討議日に向けた関連資料の作成の参考にするためにそれぞれの国で行なう協議の運営も含まれる。子どもたちは、関連する場合には対面の会合に出席する子どもたちの選出プロセスの決定、および、一般的討議日に参加する子どもたちおよび付添いの大人の訓練についても協議の対象とされるべきである。 (c) 普及。子どもたちは、一般的討議日のために作成された資料のチャイルドフレンドリー版(子どもにやさしい書式およびガイドラインを含む)の作成および普及に貢献するよう奨励される。子どもたちには、一般的討議日への子ども参加の動員およびそのようなプロセスが包摂的なものとなることの確保に関しても援助してもらうべきである。そのための手段には、関連の情報を普及すること、ならびに、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちおよびマイノリティまたは先住民族の集団に属する子どもたちの参加を確保するための戦略を策定しかつ実施することなどがある。 (d) サイドイベントおよび関連の活動の運営。子どもたちは、考えられるサイドイベントおよび関連の活動(展示、パフォーマンス、夜のレセプション、発言イベントおよびワークショップなど)の立案、計画および運営に関する意見および勧告をパートナー組織と共有するよう奨励される。委員会は、サイドイベントの主催者および共催者に対し、子どもたちと協議するとともに、このようなイベントの準備は遅くとも一般的討議日の6~9か月前に開始されなければならないことを念頭に置きながら、子どもたちがこのようなイベントを運営しまたは意味のあるやり方で貢献する機会を提供するよう奨励するものである [6]。一般論として、パートナー組織は、いかなるサイドイベント(とくに展示)についても一般的討議日のプログラムそのものに組みこむことを検討するよう勧告される。 [6] 展示は、政府による後援および国際連合ジュネーブ事務所による事前の承認を受け、かつ、規模その他の詳細に関する具体的要件を満たすものでなければならない。主催者はまた、展示が行なわれるスペースの予約も十分な時間的余裕をもって確保しておかなければならない。 C.資料の提出 22.委員会は、一般的討議日のために選ばれたテーマに関する子どもたちの意見および勧告を反映した、子ども主導の団体および子どもグループからの情報(子どもたちの報告書、研究、写真、アートワーク、動画その他の視聴覚資料など)を歓迎する。子どもたちが作成するまたは子どもたちの意見が反映された提出物は、子どもたち自身の関心および優先事項を代表したものであるべきである。大人は、自分自身の意見を表明する機会として子どもたちの提出物を利用するべきではない。委員会はまた、各分科会のテーマ別焦点分野に関連する問題についての文書の提出も奨励する。このような情報は、一般的討議、成果報告書および委員会が締約国に宛てて採択する一連の勧告へのインプットとなる。このような情報により、委員会は条約の実施に関連する問題についての理解を向上させることもできよう。 23.子どもたちによる提出物はいずれの言語で作成することも可能であり、支援組織は、子どもたちに翻訳を提供するとともに、委員会への提出物がその作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)のいずれかで送付されることを確保するべきである。文書による提出物は7ページ(2500語)以内とすることが求められる。子どもたちは、提出物で、問題に関する自分たちの見解を明らかにするとともに、これらの問題または権利に関連してそれぞれの国またはコミュニティで直面している主要な懸念および問題を強調するべきである。また、これらの問題に対処する際の優れた実践に関する情報を共有し、問題点を明らかにし、かつ討議対象のテーマとの関連で委員会がとりうる行動についての勧告を行なうことも求められる。提出物には、選ばれたテーマに直接関連する勧告(それぞれ5行以内)を最大5つ記載し、付属文書として提出物に添付するべきである。 24.子どもたちはまた、一般的討議日の前に、討議の具体的テーマに関してパートナー組織が行なう協議に、対面型ワークショップでの交流またはオンライン調査を通じた意見の提出を通じて参加することも奨励される。協議の結果および主要なメッセージは、パートナー組織によってとりまとめられ、一般的討議日に向けた提出文書として委員会に提出される。各国政府、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者は、子どもたちの関与を得ることおよび一般的討議日への子どもたちの参加を促進することを目的としてこれらの協議を活用するよう、強く奨励されるところである。 25.子どもたちのすべての提出物は、一般的討議日の6週間前までに委員会事務局に提出されるべきである。子どもたちの提出物では、意見を聴かれる権利に関して委員会が掲げた基本的要件にのっとって一般的討議日に意味のある形で参加するために子どもたちがどのように選抜されたか、および、子どもたちの意見を収集し、解釈しかつ展開するためにどのような手法が用いられたかについて、詳しく述べることが求められる [7]。提出物は登録された参加者に配布され、かつ委員会のウェブサイトに掲載されるので、子どもたちが作成する提出物には、当該提出物を公開することに対する子どもたち本人および該当する場合にはその親または保護者の同意書が含まれているべきである(このような同意がない場合、その情報は非公開にされるべきものであると推定される)。委員会は、内容が不正確であるまたは害を引き起こす可能性が高い言葉を含んでいると考えるコンテンツの公開を拒否する権利を留保するとともに、そのような場合、提出物の公開を拒否する理由を子ども(たち)に通知する。 [7] 提出物の作成に関する子どもにやさしいガイドラインとして、Child Rights Connect, "Day of general discussion" 参照。www.childrightsconnect.org/connect-with-the-un-2/committee-on-the-rights-of-the-child/days-of-iigeneral-discussion より入手可能。 D.一般的討議および関連のサイドイベントへの参加 26.委員会は、2年ごとに、委員会の通常会期の最中に一般的討議日を開催している。午前10時~午後1時および午後3時~6時にジュネーブのパレ・デ・ナシオン〔国連欧州本部〕で開催されるのが通例であり、時間外にサイドイベントも行なわれる。一般的討議日の形式はテーマおよびプログラム(子どもたちはこれに貢献することもできる)によって異なる場合があるものの、短い全体会から始まるのが通例であり、そこでは委員会の委員ならびにさまざまな国連機関、市民社会組織および子どもたちの代表による冒頭発言などが行なわれる。その後、意見交換を促進する目的で、参加者は2つ以上の分科会に分かれ、選ばれたテーマに関連する特定の焦点分野について意見交換を行なうのが通例である。最後に、一般的討議日の締めくくりとして閉会全体会が開かれ、各分科会による全体会への報告および委員会のいずれかの委員による閉会発言が行なわれる [8]。 [8] プログラムおよび登録手続に関する情報を含め、一般的討議日についてより詳しくは www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRC/Pages/DiscussionDays.aspx を参照。 27.子どもたちには、以下の立場で、離れた場所からまたは直接、一般的討議日を傍聴しかつこれに参加する機会がある。 (a) リモート参加者。すべての子どもは、以下の手段により離れた場所から参加することを奨励される。(i) ソーシャルメディアを含むメディア、および、国連によるウェブキャストが生中継で行なわれるときは当該ウェブキャストを通じて [9]、オンラインで討議をフォローする。パートナー組織が行なうソーシャルメディアでの実況(このような実況が行なわれることは一般的討議日の十分前から積極的に広報されるべきである)としては、一般的討議日全体を通じた同時進行のアップデートおよび動画配信、ならびに、子どもたちが討議に関与する機会(他のオンライン視聴者とのバーチャル討議への参加、トピックに関して行なわれる生アンケートへの投票、直接参加している有名人とのソーシャルメディア上のやりとりなど)の提供などが考えられる。 (ii) 選ばれたテーマに関する質問および意見表明を行なう。パートナー組織は、オンラインで参加する子どもたちに一般的討議日に寄与する機会が与えられることを確保し、かつ子どもたちのリモート参加の調整を行なうべきである。 (iii) テーマに関する意見を表明した短いビデオメッセージ(3分以内)を提出し、一般的討議日の際に流してもらえるようにする。 (iv) 一般的討議日に並行して国内の関係者が開催する関連の議論に参加する。 (b) 直接の参加者。子どもたちは、直接出席し、かつ以下の手段により参加することができる。(i) 分科会の会合で短い発言を行なう。このような発言では、選ばれたテーマに関する意見を述べ、自国で子どもたちが直面している主要な懸念および問題を強調し、かつ国に対する勧告についての子どもたちの意見を共有することなどができる。 (ii) 分科会の議長の要請に応じて、分科会の会合の共同議長を務め、または報告者として分科会の結論を全体会で紹介する。 (iii) 関連のサイドイベント、展示、動画視聴会または討議およびイベント前後のワークショップに参加し、かつ関連の資料を提出する。 (c) パネリストまたはスピーカー。子どもたちは、パネリストまたはスピーカーとして発言するよう招待される場合もある。 [9] 一般的討議日の生放送および録画は webtv.un.org で閲覧できる。 28.一般的討議日に直接参加することを希望する子どもたちについて、支援組織その他の関係者は、子どもたちが登録フォームに記入し、かつ提出期限までに委員会事務局に提出する際の支援を提供するべきである [10]。これは委員会の公開会合なので、登録料はかからない。委員会事務局によって登録の確認が行なわれる。一般的討議日への参加を認められるのは登録の確認を受けた者だけであり、参加者は、パレ・デ・ナシオンに入館するための身分証明バッジを受け取るため、パスポートまたは国際連合が承認する他の形態の身分証明書を警備職員に直接提示するよう要請される。18歳未満のすべての子どもは大人に付き添われていなければならず、子どもおよび付添いの大人の両方が、登録の確認を受けており、かつ身分証明バッジを受け取るためにパスポートを直接提示しなければならない。国際連合は、査証、渡航または宿泊の手配について援助を提供することはできない。参加者および(または)その支援組織は、一般的討議日への参加に関連するすべての費用および手配について責任を負う。 [10] 大規模学校グループについては、5~10歳の子どもの場合は10人ごと、10~16歳の子どもの場合は15人ごとに付添いの大人ひとりが必要である。17歳以上の子どもの大規模学校グループの場合、グループ全体について少なくともひとりの付添いの大人または保護者が必要とされる。11歳未満の子どもの大規模学校グループの場合、付添いの大人(たち)がグループ全体の身分証明バッジを受け取ってもよい。 29.委員会は、関心を表明するすべての子どもの参加を歓迎するものの、席数が限られていることから、各組織または機関ごとに一般的討議日への参加を認められる子ども代表の人数を制限する権利を留保する。登録申請数が利用可能な席数を超えた場合、子どもアドバイザリーグループの構成員および委員会に提出物を出した子どもが優先される。子どもたちはそれぞれの国またはコミュニティのさまざまな集団および懸念を可能なかぎり代表しておりかつ代弁するべきであり、かつ、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちの参加を確保するために特別な努力が行なわれるべきである。 30.委員会は、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターが、意見を聴かれる子どもの権利の実施に関して委員会が示した基本的要件を尊重し、かつ、敬意があって子どもの年齢および成熟度にふさわしい方法で子どもたちを支援することを確保することに関して、子ども参加を促進しようとしている国内の関係者に期待している。委員会事務局は、パートナー組織と連携しながら、子どもたち(とくに、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたち)の出席の便宜を図るためにあらゆる可能な措置をとるとともに、要請があれば参加する子どもたちに技術的援助を提供する。国際連合では委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)について同時通訳を提供しているが、その他の言語の通訳を必要とする参加者は、自分自身の通訳者をともなって一般的討議日に出席し、かつ当該通訳者が適切な設備にアクセスできるようにするために事務局の支援を求めるよう、要請される。国際連合はさらに、その施設および会合を障害のある子どもにとってアクセシブルかつインクルーシブなものとすることも決意している。障害のある子どもたちは、アクセシブルなドア、傾斜路およびトイレに関する必要な情報を受け取れるよう、アクセシビリティに関して必要な条件および訪れる予定の会議室に関する情報を事前に事務局に提供しなければならない。アクセシビリティに関する具体的な質問および要望は事務局に送ることが求められる [11]。 [11] パレ・デ・ナシオンのアクセシビリティの特徴に関するさらに詳しい情報は、www.unog.ch/80256EE60057F2B7/(httpPages)/FE94243FCCEB3006C125815B0042BB1C?OpenDocument より参照できる。 E.委員会の委員との非公開会合 31.一般的討議日への直接の参加について確認を受けた子どもたちは、討議に関連する問題、とくにとりわけ配慮または秘密保持が必要とされる問題について議論するため、非公式にかつ非公開で行なわれる委員会の委員との会見に招待される。この会見は通常、一般的討議日よりも前に開催され、時間は1時間であり、委員会の通常の会合よりも子どもにやさしい方式で行なわれる。これは会合の時点で18歳未満である子どもたちだけが対象であり、委員会は、会合に出席する大人の人数を制限する権利を留保する。一般的に、付添いの大人がこの会合への参加を認められるのは、通訳のためにその大人の存在が必要な場合または子どもからとくに要請があった場合のみである。 32.委員会は、支援を提供してくれる政府、組織その他の関係者に対し、その代表団の子どもたちおよび大人が、これらの会合に参加する子どもたちの秘密保持およびプライバシーに関して情報を提供され、かつこれを尊重することを確保するよう期待する。これらの会合は委員会の公式会合の時間外に行なわれるため、国際連合による通訳は提供されない。付添いの大人は、委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)のいずれも話すことのできない子どものために通訳を確保するよう求められる。 F.フォローアップおよび評価 33.委員会は、一般的討議日の際に自分たちの参加がどのように支援されたかについての意見(自分たちの参加が貴重なものとして扱われ、かつ自分たちの意見が尊重されたと感じたかどうかを含む)を子どもたちから集めるほか、委員会の将来の活動で子ども参加を確保する方法についての子どもたちの勧告を歓迎する。各一般的討議日の後、参加した子どもたちには委員会事務局が提供する評価フォームに記入してもらうことになる。子ども参加を確保するためのプロセスを評価し、かつ得られた教訓を将来の適用のために記録する目的で、同様の努力が関係者によって行なわれるべきである。子どもたちに対しては、一般的討議日のフォローアップのための取り組みを組織しかつこれに参加するための支援も提供することが求められる。 更新履歴:ページ作成(2020年4月24日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見15号:到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(第24条) 前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/15(2013年4月17日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-6) II.健康に対する子どもの権利を実現するための原則および前提(パラ7-22)A.子どもの権利の不可分性および相互依存性(パラ7) B.差別の禁止に対する権利(パラ8-11) C.子どもの最善の利益(パラ12-15) D.生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの健康の決定要因(パラ16-18) E.意見を聴かれる子どもの権利(パラ19) F.子どもの発達しつつある能力およびライフコース(パラ20-22) III.第24条の規範的内容(パラ23-70)A.第24条第1項(パラ23-31) B.第24条第2項(パラ32-70) IV.義務および責任(パラ71-85) → 健康に対する子どもの権利 後編A.締約国の尊重義務、保護義務および充足義務(パラ71-74) B.国以外の主体の責任(パラ75-85) V.国際協力(パラ86-89) VI.実施および説明責任履行の枠組み(パラ90-120)A.健康に対する子どもの権利についての知識の促進(第42条)(パラ93) B.立法措置(パラ94-95) C.ガバナンスおよび調整(パラ96-103) D.子どもの健康への投資(パラ104-107) E.行動サイクル(パラ108-118) F.健康権侵害の救済措置(パラ119-120) VII.普及(パラ121) I.はじめに 1.この一般的意見は、子どもの健康に対して子どもの権利の視点(すべての子どもに、身体的、情緒的および社会的ウェルビーイングを背景として、それぞれが有する潜在的可能性を全面的に発揮しながら生存し、成長し、かつ発達する機会を有する権利がある)からアプローチすることの重要性を基礎として作成されたものである。この一般的意見全体を通じて、「子ども」とは、子どもの権利条約(以下「条約」)第1条にしたがい、18歳未満のすべての個人をいう。条約が採択されて以降、近年、子どもの健康権の充足について目覚ましい成果が達成されたにも関わらず、相当の課題が残ったままである。子どもの権利に関する委員会(以下「委員会」)は、予防、治療およびケアのために利用可能な知識および技術の適用に対する政治的なコミットメントおよび十分な資源の配分があれば、子どもの死亡、罹病および障害のほとんどは予防可能であることを認識する。この一般的意見は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(以下「子どもの健康権」)の尊重、保護および充足について締約国および何らかの義務を負うその他の主体を支援するため、締約国および何らかの義務を負うその他の主体に指針を示し、かつ支援を提供することを目的として作成された。 2.委員会は、第24条で定められている子どもの健康権を、予防、健康促進、治療、リハビリテーションおよび緩和ケアのための時宜を得た適切なサービスのみならず、最大限可能なまで成長発達し、かつ、健康の根本的決定要因に対応するプログラムの実施を通じて最高水準の健康に到達することを可能にする条件下で生活する権利にまで及ぶ、包摂的な権利と解釈する。健康に対するホリスティックなアプローチをとることにより、子どもの健康権の実現は、より幅広い、国際人権法上の義務の枠組みのなかに位置づけられる。 3.委員会は、子どもの権利および公衆衛生の分野で活動する一連の関係者(政策立案およびプログラムの実施に携わる者ならびに活動家を含む)、ならびに、親および子どもたち自身に宛ててこの一般的意見を公にする。広範な子どもの健康問題、保健制度、ならびに、国および地域によって異なるさまざまな文脈との関連性を確保するため、この一般的意見はその一般的性質を明確にしたものである。ここではもっぱら第24条第1項および第2項に焦点を当て、第24条第4項についても取り上げる [1]。第24条の実施においては、すべての人権原則(とくに条約の指導的原則)を考慮に入れなければならず、またエビデンスに基づいた公衆衛生上の基準および模範的実践によって実施のあり方が決定されなければならない。 [1] 有害慣行に関する一般的意見が現在作成途上にあるため、第24条第3項については取り上げていない。 4.世界保健機関憲章において、各国は、健康について、完全な身体的、精神的および社会的ウェルビーイングの状態であって単に疾病または病弱の存在しないことではないと考えることに合意した [2]。健康に関するこの積極的理解は、この一般的意見の公衆衛生上の基礎をなすものである。第24条はプライマリーヘルスケアに明示的に言及しているが、これに対するアプローチはアルマアタ宣言で定められ [3]、かつ世界保健総会によって強化された [4]。このアプローチで重視されているのは、健康に関する排除の解消および社会的格差の縮減を図り、住民のニーズおよび期待に即する形で保健サービスを組織し、関連セクターに保健を統合し、協働型の政策対話モデルを追求し、かつ、関係者の参加(サービスに対する需要およびサービスの適正な利用を含む)を強化する必要性である。 [2] 国際保健会議が1946年7月22日に採択した世界保健機関(WHO)憲章前文。 [3] アルマアタ宣言(プライマリーヘルスケアに関する国際会議、アルマアタ、1978年9月6~12日)。 [4] 世界保健総会「保健制度の強化を含むプライマリーヘルスケア」(A62/8)。 5.子どもの健康はさまざまな要因の影響を受けるものであるが、これらの要因の多くはこの20年間に変化してきており、今後も変化し続ける可能性が高い。これには、新たな健康問題の発生および保健面での優先課題の変化が注目されるようになったこと(HIV/AIDS、インフルエンザの世界的流行、非感染性疾患、精神保健ケアの重要性、新生児ケアおよび新生児期・思春期の死亡等)、ならびに、子どもの死亡、疾病および障害を助長する諸要因(世界的な経済・金融情勢、貧困、失業、移住および強いられた集団避難、戦争および動乱、差別ならびに周縁化等の構造的決定要因を含む)に関する理解が高まったことも含まれる。気候変動および急速な都市化が子どもの健康に及ぼす影響についての理解も広がりつつあり、ワクチンおよび医薬品等の新技術も開発されており、また、効果的な生物化学的、行動科学的および構造的介入策、ならびに、子どもの養育に関連しており、かつ子どもに積極的効果を及ぼすことが証明されてきた若干の文化的慣行についてのエビデンスもいっそう蓄積されている。 6.情報通信技術の進展により、子どもの健康権を達成する新たな機会および課題が生じてきた。保健セクターがこれまで以上の資源および技術を利用できるようになっているにも関わらず、子どもの健康促進、予防および治療のための基礎的サービスにすべての者がアクセスできることをいまなお確保できていない国は多い。子どもの健康権を全面的に実現するためには、何らかの義務を負っているさまざまな主体の関与が必要であり、また親その他の養育者が果たす中心的役割についての認識が高められなければならない。政府機関および非政府組織のパートナー、民間セクターおよび資金拠出団体を含む関係者が積極的に関与し、国、広域行政圏、地方およびコミュニティのレベルで活動する必要がある。国には、何らかの義務を負うすべての主体が、その義務および責任を履行するための十分な自覚、知識および能力を有すること、ならびに、子どもが自己の健康権を主張できるようにその能力が十分に発達させられることを確保する義務がある。 II.健康に対する子どもの権利を実現するための原則および前提 A.子どもの権利の不可分性および相互依存性 7.条約は、すべての子どもがその精神的および身体的能力、人格および才能を最大限可能なまで発達させることを可能とする、すべての権利(市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利)の相互依存性および平等な重要性を認めている。子どもの健康権それ自体が重要であるのみならず、健康権の実現は、条約に掲げられた他のすべての権利の享受にとっても欠かせない。さらに、子どもの健康権を達成できるかどうかは、条約に掲げられた他の多くの権利の実現にかかっている。 B.差別の禁止に対する権利 8.すべての子どもの健康権を全面的に実現するため、締約国には、脆弱性を助長する重要な要因のひとつである差別の結果として子どもの健康が損なわれないことを確保する義務がある。条約第2条には多くの差別禁止事由(子ども、親または法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位を含む)が挙げられている。これらの差別禁止事由には性的指向、ジェンダーアイデンティティおよび健康状態(たとえばHIV感染および精神的健康)も含まれる [5]。子どもの健康を損なうおそれがある他のいかなる形態の差別に対しても同様に注意が向けられるべきであり、また複合的形態の差別の影響に対する対処も行なわれるべきである。 [5] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex X)、パラ6。 9.ジェンダーに基づく差別はとくに蔓延しており、女子の新生児殺/堕胎から、乳幼児への栄養の与え方、ジェンダーに基づくステレオタイプおよびサービスへのアクセスに関わる差別に至るまで、広範な結果に影響を及ぼしている。女子・男子の異なるニーズ、ならびに、ジェンダー関連の社会的な規範および価値観が男子・女子の健康および発達に及ぼす影響に注意が向けられるべきである。伝統および慣習に深く根ざしており、かつ女子・男子の健康権を損なっている、ジェンダーに基づく有害な慣行および行動規範に対しても注意が向けられなければならない。 10.子どもの健康に影響を及ぼすすべての政策およびプログラムは、若年女性の全面的な政治参加、社会的および経済的エンパワーメント、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する平等な権利の承認、ならびに、情報、教育、司法および安全への平等なアクセス(あらゆる形態の性暴力およびジェンダーを理由とする暴力の撤廃を含む)を確保する、ジェンダー平等に対する広範なアプローチに根差したものであるべきである。 11.不利な状況に置かれた子どもおよびサービス等が行き届かない地域で暮らす子どもが、子どもの健康権を充足するための努力の中心に据えられるべきである。国は、子どもを脆弱な状況に追い込み、または特定の集団の子どもを不利な立場に追いやる、国および地方のレベルに存在する要因を特定することが求められる。子どもの健康に関する法令、政策、プログラムおよびサービスを発展させる際にこれらの要因への対処が行なわれるべきであり、公正を確保することに向けた活動が進められるべきである。 C.子どもの最善の利益 12.条約第3条第1項は、公的または私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関および立法機関に対し、子どもに関わるすべての活動において子どもの最善の利益が評価され、かつ第一次的に考慮されることを確保する義務を課している。この原則は、子ども個人または集団としての子どもたちに関わる保健関連のすべての決定において遵守されなければならない。子ども個人の最善の利益の判定は、その身体的、情緒的、社会的および教育的ニーズ、年齢、性別、親および養育者との関係ならびに家族的および社会的背景に基づいて、かつ、条約第12条にしたがってその意見を聴いた後に、行なわれるべきである。 13.委員会は、締約国に対し、子どもたちの健康および発達に影響を及ぼすすべての決定(資源の配分を含む)、ならびに、子どもたちの健康の根本的決定要因に影響を及ぼす政策および介入策の策定および実施において、子どもたちの最善の利益を中心に位置づけるよう促す。たとえば以下のとおりである。 (a) 治療の選択にあたっては子どもの最善の利益が指針とされるべきであり、実行可能なときは経済的考慮よりも優先されるべきである。 (b) 親とヘルスワーカー間の利益の衝突を解決するために、子どもの最善の利益が役立てられるべきである。 (c) 子どもが生活し、成長しかつ発達する物理的および社会的環境を阻害する行動を規制するための政策の策定は、子どもの最善の利益によって左右されるべきである。 14.委員会は、すべての子どもの治療、その差し控えまたは停止に関わるあらゆる意思決定の基礎としての、子どもの最善の利益の重要性を強調する。国は、子どもの最善の利益について判定するために設けられている、公式なかつ拘束力のある他の手続に加えて、保健分野における子どもの最善の利益の評価に関してヘルスワーカーの指針となる手続および基準を策定するべきである。委員会は、一般的意見3号 [6] において、HIV/AIDSに対応するための十分な措置は、子どもおよび青少年の諸権利が全面的に尊重されなければとることができないと強調した。したがって、予防、治療、ケアおよび支援のあらゆる段階でHIV/AIDSについて検討する際に、子どもの最善の利益が指針とされるべきである。 [6] 「HIV/AIDSと子どもの権利」に関する一般的意見3号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex IX)。 15.一般的意見4号 [7] において、委員会は、健康問題に関する適切な情報へアクセスできることが子どもの最善の利益にのっとっている旨、強調した。一定のカテゴリーの子ども(心理社会的障害のある子どもおよび青少年を含む)に対し、特別な注意がむけられなければならない。入院または施設措置が検討される場合、その決定は、子どもの最善の利益の原則にしたがって、かつ、可能なかぎりコミュニティにおいて、家庭的環境のなかで(可能であれば、家族および子どもに提供される必要な支援を得ながら自分自身の家庭において)ケアされることこそ障害のある子どもの最善の利益にのっとっているという第一義的理解に立って、行なわれるべきである。 [7] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年、Official Records of the General Assembly, Fifty-ninth Session, Supplement No. 41 (A/59/41), annex X)、パラ10。 D.生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの健康の決定要因 16.第6条は、子どもの生存、成長および発達(発達の身体的、精神的、道徳的、霊的および社会的側面を含む)を確保する締約国の義務を強調している。ライフコース中の広範な決定要因に対処する、エビデンスを十分に踏まえた介入策を立案しかつ実施する目的で、子どもの生命、生存、成長および発達の基底にある多くのリスクおよび保護要因が体系的に特定されなければならない。 17.委員会は、子どもの健康権を実現するためには、個人的要因(年齢、性別、学業成績、社会経済的地位および居住地等)、家族、同世代の子ども、教師およびサービス提供者からなる直近の環境で作用している決定要因(とくに、直近の環境の一環として子どもの生命および生存を脅かす暴力)ならびに構造的決定要因(政策、行政機構および行政制度、社会的・文化的価値観および規範を含む)を含む、多くの決定要因を考慮しなければならないことを認識する [8]。 [8] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年、Official Records of the General Assembly, Sixty-seventh Session, Supplement No. 41 (A/67/41), annex V)参照。 18.子どもの健康、栄養および発達を左右するもっとも重要な決定要因としては、母親の健康権の実現 [9] および親その他の養育者の役割がある。乳児の死亡の相当数は、妊娠前および妊娠中ならびに分娩直後の時期に母親の健康状態が望ましくないこと、および、母乳育児の収監が最適ではないことと関連して、新生児期に生じている。親およびその他の重要な成人の健康状態および健康関連の行動は、子どもの健康に重要な影響を及ぼす。 [9] 女性と健康に関する女性差別撤廃委員会の一般的勧告24号(1999年、Official Records of the General Assembly, Fifty-fourth Session, Supplement No. 38 (A/54/38/Rev.1))、第I章A節参照。 E.意見を聴かれる子どもの権利 19.第12条は、自己の意見を表明し、かつそのような意見を年齢および成熟度にしたがって真剣に考慮される子ども〔の権利〕を定め、子ども参加の重要性を強調している [10]。これには、保健に関わる対応のあらゆる側面(たとえば、必要とされるサービスの内容、当該サービスをもっともよい形で提供できる方法および場所、サービスへのアクセスまたはサービスの利用を妨げる障壁、サービスの質および保健専門家の態度、自分自身の健康・発達についていっそう高い水準の責任をとる子どもの能力を強化する方法、ならびに、子どもたちがピアエデュケーターとしてサービス提供にいっそう効果的に関与できるようにするための方法を含む)についての意見が含まれる。国は、効果的な介入策および保健プログラムの立案に対する貢献として子どもたちが有している健康上の課題、発達上のニーズおよび期待について知る目的で、子どもの年齢および成熟度に適合した定期的な参加型協議、および、子どもを対象とする調査研究を実施すること(その際、子どもたちの親とは別に行なうこと)を奨励される。 [10] 「意見を聴かれる子どもの権利」に関する一般的意見12号(2009年、Official Records of the General Assembly, Sixty-fifth Session, Supplement No. 41 (A/65/41), annex IV)参照。 F.子どもの発達しつつある能力およびライフコース 20.子ども時代は、出生から乳児期および就学前期を経て思春期に至るまでの継続的成長の期間である。身体的、心理的、情緒的かつ社会的な発達、期待および規範に関して重要な発達上の変化が生じるため、一つひとつの段階が重要な意義を有する。諸段階を経て進む子どもの発達は累積的なものであり、各段階がその後の段階に影響を及ぼしながら、子どもの健康、潜在的可能性、リスクおよび機会を左右する。子ども時代の健康問題が公衆衛生一般にどのように影響するかを評価するためには、このようなライフコースを理解することが不可欠である。 21.委員会は、子どもの発達しつつある能力が、自己の健康問題に関する独立した意思決定に関係してくることを認識する。委員会はまた、このような自律的意思決定についてはしばしば深刻な格差があり、差別をとくに受けやすい子どもはこのような自己決定を行使できる度合いがしばしば低いことにも留意する。したがって、支援的な政策が整備されること、ならびに、子ども、親およびヘルスワーカーに対し、同意、承諾および秘密保持に関する、権利を基盤とする十分な指導が行なわれることが不可欠である。 22.子どもの発達しつつある能力、および、ライフサイクルに沿って異なる健康上の優先課題に対応し、かつこれらを理解するため、収集・分析されるデータは、国際基準にしたがい、年齢、性別、障害、社会経済的地位および社会文化的側面ならびに地理的所在ごとに細分化されるべきである。これにより、時間とともに変化する子どもの能力およびニーズを考慮に入れ、かつすべての子どもに関連性の高い保健サービスを提供するのに役立つ適切な政策および介入策を計画し、策定し、実施しかつ監視することが可能になる。 III.第24条の規範的内容 A.第24条第1項 「締約国は、到達可能な最高水準の健康の享受……に対する子どもの権利を認める」(States parties recognize the right of the child to the enjoyment of the highest attainable standard of health) 23.「到達可能な最高水準の健康」の概念は、子どもの生物学的、社会的、文化的および経済的前提条件ならびに国が利用可能な資源(非政府組織、国際社会および民間セクターをはじめとする他の出所から利用に供される補完的資源を含む)の双方を考慮に入れたものである。 24.子どもの健康権には一群の自由および権利が含まれる。自由とは、能力の成長および成熟の進行にしたがって重要度を増すものであり、自己の健康および身体をコントールする権利(性および生殖に関わって責任のある選択を行なう自由を含む)が含まれる。権利には、到達可能な最高水準の健康を享受する平等な機会をすべての子どもに与える、一連の施設、物資、サービスおよび条件へのアクセスが含まれる。 「疾病の治療および健康の回復のための便宜」(に対する子どもの権利)(and to facilities for the treatment of illness and rehabilitation of health) 25.子どもは、予防、健康促進、治療、リハビリテーションおよび緩和ケアのためのサービスを含む、良質な保健サービスに対する権利を有する。第一次レベルでは、これらのサービスが、十分な量および質をともなって利用可能とされ、十分に機能し、子どもである住民のあらゆる層にとって物理的および金銭的に手が届き、かつ、すべての者にとって受入れ可能なものとなっていなければならない。保健ケア制度は、保健ケア面の支援を提供するのみならず、権利侵害および不公正の事案に関する情報を関連の公的機関に通報することも行なうべきである。第2次および第3次のレベルでも、保健制度のあらゆるレベルでコミュニティおよび家族を結びつける、十分に機能する紹介・移送システムをともなったケアが可能なかぎり利用可能とされるべきである。 26.包括的なプライマリーヘルスケア・プログラム(予防ケア、特定疾患の予防および栄養関連の介入策を含む)が、すでに効果が証明されているコミュニティ基盤型の取り組みに沿って提供されるべきである。コミュニティレベルでの介入策には、情報、サービスおよび物資の提供に加えて、たとえば公共空間の安全、道路安全ならびにケガ・事故・暴力防止教育への投資を通じた、疾病およびケガの予防も含めることが求められる。 27.国は、すべての子どもを対象とした保健サービスを支えるのに十分な人数の、適切な訓練を受けた人員を確保するべきである。コミュニティヘルスワーカーを対象とするものを含め、十分な規制、監督、報酬およびサービス条件も必要とされる。能力開発活動においては、サービス提供者が、子どもに配慮したやり方で活動し、かつ、子どもが法律により受給資格を有しているいかなるサービスも子どもに提供しないことがないようにするべきである。品質保証基準が維持されることを確保するため、説明責任を履行させるための機構を組みこむことが求められる。 「締約国は、いかなる子どもも当該保健サービスへアクセスする権利を奪われないことを確保するよう努める」(States parties shall strive to ensure that no child is deprived of his or her right of access to such health care services) 28.第24条第1項は、保健サービスおよび他の関連のサービスがすべての子どもにとって利用可能でありかつアクセス可能であることを、サービス等が行き届いていない地域および集団にとくに注意を払いながら確保する、締約国の強い行為義務を課すものである。そこでは、包括的なプライマリーヘルスケア制度、十分な法的枠組み、および、子どもの健康の根本的決定要因に対する持続的関心が要求される。 29.保健サービスに子どもがアクセスすることを妨げる障壁(金銭的、制度的および文化的障壁を含む)が特定され、かつ解消されるべきである。すべての子どもを対象とする無償の出生登録は前提条件であり、また社会保護的介入策(子ども給付金または子ども交付金、現金給付および有給の親休暇のような社会保障を含む)を実施し、かつこれを補完的投資と考えることも求められる。 30.保健追求行動のあり方は、それが行なわれる環境(とくにサービスの利用可能性、保健知識の水準、ライフスキルおよび価値観を含む)によって決まる。国は、親および子どもによる適切な保健追求行動を奨励することにつながる、促進的環境の確保に努めるべきである。 31.子どもは、子どもとともに活動する専門家によって子どもの最善の利益にのっとっていると評価される場合には、その発達しつつある能力にしたがい、親または法定保護者の同意を得ることなく、秘密が守られるカウンセリングおよび助言にアクセスできるべきである。国は、親または法定保護者がいない子どもを対象として、子どもに代わって同意を与え、または子どもの年齢および成熟度によっては子ども自身による同意を援助することができる適切な養育者を指名するための、法律上の手続を明確にすることが求められる。国は、HIV検査ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのサービス(セクシュアルヘルス、避妊および安全な妊娠中絶に関する教育および指導を含む)など一定の医学的治療および介入策について再検討を行ない、これらの治療および介入策については親、養育者または保護者の許可を得ることなく子どもが同意できるようにすることを検討するべきである。 B.第24条第2項 32.第24条第2項にしたがい、国は、子どもの健康権に関連するその他の問題を特定し、かつこれに対処するための手続を整備することが求められる。そのためには、とくに、優先されるべき健康問題の観点から現状についての詳細な分析を行なうとともに、適当なときは子どもたちと協議しながら、主要な決定要因および健康問題に対応する、エビデンスを十分に踏まえた介入策および政策を特定しかつ実施することが必要である。 第24条第2項(a)「乳幼児および子どもの死亡率を低下させること」(To diminish infant and child mortality) 33.国には、子どもの死亡を減少させる義務がある。委員会は、5歳未満児の死亡のうちますます多くの割合を占めるようになっている新生児期の死亡に対し、特段の注意を向けるよう促す。加えて、締約国は、低い優先順位しか与えられないのが一般的な思春期の罹病および死亡についても対処を進めるべきである。 34.介入策において注意が向けられるべき問題としては、死産、早産合併症、出生時仮死、低出生体重、HIVその他の性感染症の母子感染、新生児感染症、肺炎、下痢、はしか、低栄養および栄養不良、マラリア、事故、暴力、自殺ならびに思春期女子の妊産婦罹病・死亡などがある。リプロダクティブヘルス、妊産婦保健、新生児保健および児童保健のための連続的ケアの流れのなかですべての子どもにこのような介入策を提供するため、保健制度を強化することが勧告されるところである。予防および説明責任の履行を目的として、妊産婦死亡および周産期死亡に関する外部調査を日常的に実施することが求められる。 35.国は、肺炎、下痢性疾患およびマラリアを対象とするコミュニティ基盤型治療など、すでにその効果が証明されている、単純、安全かつ安価な介入策の拡大展開をとりわけ重視するとともに、母乳育児の慣行の全面的な保護および促進を確保することに特段の注意を払うべきである。 第24条第2項(b)「プライマリーヘルスケアの発展に重点をおいて、すべての子どもに対して必要な医療上の援助および保健を与えることを確保すること」(To ensure the provision of necessary medical assistance and health care to all children with emphasis on the development of primary health care) 36.国は、子どもおよびその家族が生活している場所のできるだけ近く、とくにコミュニティの環境で提供されるプライマリーヘルスケア・サービスに、すべての子どもがアクセスできるようにすることに優先的に取り組むべきである。サービスの厳密な形態および内容は国によって異なるであろうが、いずれにしても効果的な保健制度が必要となる。このような保健制度には、健全な資金拠出機構、十分な訓練を受け、かつ十分な給与を支払われている人員、決定および政策の基盤となる信頼できる情報、良質な医薬品および技術を供給するための十分に維持管理された器材および物流システム、ならびに、力強いリーダーシップおよびガバナンスが含まれる。学校における保健サービスの提供は、疾患のスクリーニングによる健康促進の重要な機会となり、また就学している子どもにとって保健サービスのアクセス可能性を高めることにつながる。 37.推奨されているサービス・パッケージ、たとえば「リプロダクティブヘルス、妊産婦保健、新生児保健および児童保健のために必須の介入策、物資およびガイドライン」[11] が活用されるべきである。国には、世界保健機関の必須医薬品モデルリスト(可能であれば小児用製剤の形態をとった子ども向けリストを含む)に掲載されたすべての必須医薬品の利用可能性、アクセス可能性および負担可能性を確保する義務がある。 [11] The Partnership for Maternal, Newborn and Child Health, A Global Review of the Key Interventions Related to Reproductive, Maternal, Newborn and Child Health (Geneva, 2011). 38.委員会は、青少年の間で精神的健康障害(発達障害および行動障害、抑うつ、摂食障害、不安症、虐待・ネグレクト・暴力・搾取の結果として生ずる心理的トラウマ、アルコール・タバコ・薬物の濫用、インターネットその他の技術の過剰な利用およびこれらへの依存のような強迫的行動、ならびに、自傷行為および自殺を含む)が増加していることを懸念する。子どもの精神的健康、心理社会的ウェルビーイングおよび情緒的発達を損なう行動上および社会上の問題にいっそう注意を向ける必要があることは、ますます認識されるようになっているところである。委員会は、過剰な医療化および施設措置に対して警鐘を鳴らすとともに、各国に対し、子どもおよび青少年の精神的健康障害に対処するための公衆衛生面および心理社会面の支援を基礎とするアプローチをとり、かつ、子どもの心理社会的、情緒的および精神的問題の早期発見・治療を促進するプライマリーケア・アプローチに凍死するよう、促す。 39.国には、不必要な投薬を行なわないようにしつつ、精神健康障害および心理社会的障害がある子どもに十分な治療およびリハビリテーションを提供する義務がある。精神健康障害の世界的負担および国レベルで保健・社会セクターが調整のとれた包括的対応をとることの必要性に関する世界保健総会決議(2012年)[12] は、とくに子どもの精神的健康を促進し、かつその精神障害を予防するための介入策の有効性および費用対効果性に関するエビデンスが増えていることに留意している。委員会は、各国に対し、家族およびコミュニティの関与を得ながら、保健セクター、教育セクターおよび保護(刑事司法)セクターを含む一連のセクター別政策およびプログラムを通じてこれらの介入策を主流化することにより、その拡大展開を図るよう強く奨励するものである。家庭環境および社会環境のために危険な状況に置かれている子どもについては、その対処能力およびライフスキルを増進し、かつ保護的および支援的な環境を促進するため、特別な注意が必要とされる。 [12] 決議WHA65.4(世界保健総会第65会期、2012年5月25日)。 40.人道的緊急事態(自然災害または人災を理由とする大規模な避難に至るものを含む)の影響を受けている子どもにとっての、子どもの健康に対する特有の課題を認識する必要がある。子どもが妨げられることなく保健サービスにアクセスできることを確保し、子どもが家族と(ふたたび)一緒にいられるようにするとともに、食料および清潔な水のような物質的支援だけで子どもを保護するのではなく、恐怖およびトラウマを防止しまたはこれに対処するための親その他の者による心理社会的ケアも奨励するために、あらゆる可能な措置がとられるべきである。 第24条第2項(c)「環境汚染の危険およびおそれを考慮しつつ、とりわけ、容易に利用可能な技術を適用し、かつ十分な栄養価のある食事および清潔な飲料水を供給することにより、基礎保健の枠組の中で疾病および栄養不良と闘うこと」(To combat disease and malnutrition, including within the framework of primary health care, through, inter alia, the application of readily available technology and through the provision of adequate nutritious foods and clean drinking-water, taking into consideration the dangers and risks of environmental pollution) (a) 容易に利用可能な技術の適用 41.子どもの健康に関する新たな技術であってその効果が証明されているもの(薬剤、装備および介入策を含む)が利用可能となるのにともない、国はこれらの技術を政策およびサービスに導入するべきである。移動による提供体制およびコミュニティを基盤とする取り組みによって若干のリスクを相当に低下させることが可能であり、これらの手段をすべての者にとって利用可能とすることが求められる。このような技術には、小児期に一般的に見られる疾患の予防接種、とくに乳幼児期における成長発達モニタリング、女子を対象とするヒトパピローマウィルスの予防接種、妊婦を対象とする破傷風トキソイドの摂取、下痢性疾患の治療のための経口保水療法および亜鉛補給剤へのアクセス、必須医薬品としての抗生物質および抗ウィルス薬、微量栄養素補給剤(ビタミンAおよびD、ヨウ素添加塩ならびに鉄分補給剤等)ならびにコンドームが含まれる。ヘルスワーカーは、必要に応じてこれらの簡便な技術にアクセスし、かつこれらの技術を実行する方法について、親に対する助言を行なうべきである。 42.民間セクター(健康に影響を及ぼす企業および非営利組織を含む)は、子どもの健康における相当の前進に貢献しうる技術、薬剤、装備、介入策および処置法の開発・改良においてますます重要な役割を果たすようになりつつある。国は、必要とするすべての子どもが利益を享受できることを確保するべきである。国はまた、保健技術のアクセスおよび負担可能性を向上させることにつながりうる官民提携および持続可能なイニシアティブを奨励することもできる。 (b) 十分な栄養価のある食事の供給 43.栄養価が十分であり、文化的に適切でありかつ安全な食料 [13] へのアクセスを確保し、かつ栄養不良と闘う国の義務を充足するための措置は、特定の文脈にしたがって採択することが必要になろう。妊婦を対象として直接行なわれる効果的な栄養支援介入策には、貧血症、葉酸欠乏症およびヨウ素欠乏症への対応ならびにカルシウム補給剤の提供が含まれる。女性の健康のため、かつ胎児および乳児の健康的な発達を確保する目的で、生殖可能年齢のすべての女性を対象として、子癇前症および子癇の予防および管理が確保されるべきである。 [13] 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第11条、および、「十分な食料に対する権利」に関する社会権規約委員会の一般的意見12号(1999年、Official Records of the Economic and Social Council, 2011, Supplement No. 2 (E/2000/22), annex V)参照。 44.生後6か月までの完全母乳育児が保護・促進されるべきであり、また母乳育児は、実行可能であれば、適切な補助食品とあわせて2歳まで続けられることが望ましい。この分野における国の義務は、世界保健総会が全会一致で採択した「保護・促進・支援」枠組み [14] に定められている。国は、子どもの健康権に関する国際的に合意された基準(「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議、ならびに、世界保健機関・タバコ規制枠組み条約を含む)を国内法に導入し、実施し、かつ執行することを要求される。妊娠および母乳育児との関連で母親に提供されるコミュニティおよび職場における支援ならびに実行可能かつ負担可能な保育サービスを促進し、かつ1952年の母性保護条約(改正)の改正に関する国際労働機関第183号条約(2000年)の遵守を確保するため、特別措置がとられるべきである。 [14] WHO and United Nations Children’s Fund (UNICEF), Global Strategy for Infant and Young Child Feeding (Geneva, 2003) 参照。 45.乳幼児期における十分な影響供給および成長モニタリングはとりわけ重要である。必要なときは、施設およびコミュニティを基盤とする介入策を通じて重度の急性栄養不良の統合管理が拡大されるべきであり、また中度の急性栄養不良の治療(治療的な栄養補給介入も含む)についても同様である。 46.学校給食は、すべての児童生徒が十分な食事に毎日アクセスできることを確保するために望ましい手段であり、学習に対する子どもたちの注意を高め、かつ就学率を上昇させることにもつながりうる。委員会は、学校給食と組み合わせる形で栄養・健康教育(子どもたちの栄養状態および健康的な食習慣を向上させるための学校庭園の設置および教員の研修を含む)を実施するよう勧告するものである。 47.国はまた、子どもの肥満にも対処するべきである。子どもの肥満は、高血圧、心血管疾患の早期診断マーカー、インスリン抵抗性、心理的影響、成人期肥満の可能性の上昇および早期死亡と関連しているためである。脂肪分、糖分または塩分が多く、エネルギー密度が高く、かつ微量栄養素に乏しい「ファストフード」、および、高濃度のカフェインまたは潜在的有害性がある他の物質を含む飲料を子どもたちが摂取することは、制限されるべきである。これらの物質の販売促進は――とくに当該販売宣伝が子どもたちを対象としているときは――規制されるべきであり、また学校その他の場所におけるこれらの物質の入手は統制されるべきである。 (c) 清潔な飲料水の供給 48.安全かつ清潔な飲料水および衛生設備は、生命および他のあらゆる人権の全面的享受にとって必要不可欠である [15]。水および衛生を担当する政府部局および地方当局は、子どもの健康権の実現を支援する義務を認識するとともに、インフラの拡大および飲料水供給役務の維持管理を計画しかつ実行するさい、ならびに、無償の最低配分量および供給停止に関する決定を行なうさいに、栄養不良、下痢その他の水に関連する疾患および世帯規模に関する子ども指標を積極的に考慮することが求められる。国は、たとえ水・衛生分野で民営化を行なったとしても、自国の義務を免除されない。 [15] 水および衛生に対する人権に関する〔国連〕総会決議64/292。 (d) 環境汚染 49.国は、地域的な環境汚染があらゆる場面で子どもの健康に対してつきつける危険性およびリスクに対処するための措置をとるべきである。十分な住居(危険性のない調理設備があること、煙がこもらない環境であること、適切な換気が行なわれていること、廃棄物が効果的に管理され、かつ生活区画および隣接周辺環境からのゴミの処分が確立されていること、カビその他の有毒物質が存在しないこと、および、家庭衛生が確保されていることを含む)は、健康的な養育および発達の中核的要件である。国は、子どもの健康権、食料安全保障ならびに安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを損なう可能性がある事業活動の環境面での影響を規制し、かつ監視することが求められる。 50.委員会は、環境汚染に留まらず、環境そのものが子どもの健康にとって関連性を有することに注意を喚起する。気候変動は子どもの健康にとっての最大の脅威のひとつであり、かつ保健格差を拡大するものであるから、環境に関わる介入策においてはとくに気候変動への対応が行なわれるべきである。したがって国は、子どもの健康に関する問題を自国の気候変動適応・緩和戦略の中心に位置づけることが求められる。 第24条第2項(d)「母親のための出産前後の適当な保健を確保すること」(To ensure appropriate pre-natal and post-natal health care for mothers) 51.委員会は、予防可能な妊産婦の死亡および罹病は女性・女子の人権の重大な侵害であり、女性・女子自身およびその子どもの健康権に対する深刻な脅威であることに留意する。妊娠および出産は自然な過程であり、これについて明らかになっている健康上のリスクは、早期に発見されれば予防および治療的対応の双方が可能である。リスクをともなう事態は、妊娠中、分娩中ならびに産前産後期に発生し、かつ母子双方の健康およびウェルビーイングに短期的影響および長期的影響のいずれをも及ぼす可能性がある。 52.委員会は、各国に対し、子ども時代の諸段階全体を通じて、以下のような子どもに配慮した保健アプローチをとるよう奨励する。(a) 母子同室および母乳育児を保護し、促進し、かつ支援する「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブ [16]。(b) 子どもおよびその家族の恐怖心、不安および苦痛を最低限に抑えるやり方で良質なサービスを提供するためのヘルスワーカー研修に焦点を当てた、子どもにやさしい保健政策。(c) 青少年に対して好意的でありかつ配慮し、秘密保持を尊重し、かつ青少年にとって受け入れ可能なサービスを提供することを保健従事者および保健施設に求める、青少年にやさしい保健サービス。 [16] UNICEF/WHO, Baby-Friendly Hospital Initiative (1991). 53.妊娠前、妊娠中および妊娠後に女性が受けるケアは、その子どもの健康および発達にとって甚大な影響を与える。セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する介入策の包括的パッケージにすべての者がアクセスできることを確保する義務を充足しようとする際には、妊娠前から妊娠、出産および産褥期全体を通じての連続的ケアという考え方が基礎とされるべきである。これらの期間全体を通じて時宜を得た良質なケアを提供することは、健康障害の世代間転移を予防する重要な機会となり、またライフコース全体を通じた子どもの健康に対しても高い効果を及ぼす。 54.この連続的期間全体を通じて利用可能とされるべき介入策には、必須保健としての予防および健康促進ならびに治療的ケア(新生児破傷風、妊娠時のマラリアおよび先天性梅毒の予防を含む)、栄養ケア、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、情報およびサービスへのアクセス、健康的行動教育(たとえば喫煙および有害物質濫用に関するもの)、出産準備支援、合併症の早期認識および管理、安全な妊娠中絶サービスおよび中絶後のケア、出産時の必須ケア、ならびに、HIVの母子感染の予防ならびにHIVに感染した女性および乳児のケアおよび治療が含まれるが、これに限られるものではない。分娩後の産婦および新生児のケアにおいては、母親が子どもから不必要に分離されないことが確保されるべきである。 55.委員会は、社会的保護に関する介入策に、ケアの完全普及またはケアに対する金銭的アクセスの確保、有給の親休暇およびその他の社会保障給付、ならびに、母乳育児代替品の不適切な販売促進を制限するための立法が含まれるべきことを勧告する。 56.青少年の妊娠率が世界的に高く、かつ、青少年の妊娠には関連する罹病および死亡のリスクが付け加わることを踏まえ、国は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる青少年の特有のニーズを保健制度および保健サービス(家族計画および安全な妊娠中絶のためのサービスを含む)が満たせることを確保するべきである。国は、女子が自己のリプロダクティブヘルスについて自律的な、かつ十分な情報に基づく決定を行なえることを確保するために行動するよう求められる。青少年の妊娠を理由とする差別(停退学等)は禁止されるべきであり、また継続的教育の機会が確保されるべきである。 57.健康的な妊娠・分娩の計画および確保にとって男子・男性がきわめて重要であることを考慮し、国は、セクシュアルヘルス、リプロダクティブヘルスおよび子どもの健康のためのサービスに関する政策および計画に、男子・男性を対象とする教育、意識啓発および対話の機会を統合するべきである。 第24条第2項(e)「すべての社会構成員とくに親および子どもが子どもの健康および栄養の基礎的知識、母乳育児および衛生ならびに環境衛生の利益、ならびに事故の予防措置を活用するにあたって、情報が提供され、教育にアクセスし、かつ援助されることを確保すること」(To ensure that all segments of society, in particular parents and children, are informed, have access to education and are supported in the use of basic knowledge of children’s health and nutrition, the advantages of breastfeeding, hygiene and environmental sanitation and the prevention of accidents) 58.この規定に基づく義務には、健康関連の情報および当該情報の活用に関する支援の提供が含まれる。健康関連の情報は、物理的にアクセス可能であり、わかりやすく、かつ子どもの年齢および教育水準にふさわしいものであるべきである。 59.子どもは、ライフスタイルおよび保健サービスへのアクセスに関して十分な情報に基づく選択を行なえるようにするための、健康のあらゆる側面に関する情報および教育を必要とする。情報提供およびライフスキル教育においては、幅広い健康問題(健康的な食事ならびに身体活動、スポーツおよびレクリエーションの促進、事故およびケガの予防、公衆衛生・手洗いその他の個人的衛生習慣、ならびに、アルコール、タバコおよび向精神性物質を使用することの危険性を含む)が取り上げられるべきである。情報および教育は、子どもの健康権、政府の義務、ならびに、健康情報および保健サービスにアクセスできる方法・場所についての適切な情報を包含し、かつ、学校カリキュラムの中核的一部として、また保健サービスを通じて、かつ学校に行っていない子どものために他の場所においても、提供することが求められる。健康に関する情報提供資料は、子どもたちと連携しながら制作し、かつ広範な公共の場所において普及するべきである。 60.セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育には、身体(解剖学的、生理学的および情緒的側面を含む)に関する自覚および知識が含まれるべきであり、かつすべての子ども(女子および男子)がアクセスできるべきである。このような教育は、性的な健康およびウェルビーイングに関連する内容(身体の変化および成熟過程についての情報等)を含み、かつ、子どもがリプロダクティブヘルスおよびジェンダーを理由とする暴力の予防についての知識を獲得し、かつ責任のある性的行動をとれるようになるやり方で立案することが求められる。 61.子どもの健康に関する情報は、さまざまな方法(診療所、子育て教室、広報リーフレット、職能団体、地域団体およびメディアを含む)を通じ、すべての親に対して個別にまたは集団単位で、かつ拡大家族およびその他の養育者に対して、提供されるべきである。 第24条第2項(f)「予防保健、親に対する指導、ならびに家族計画の教育およびサービスを発展させること」(To develop preventive health care, guidance for parents and family planning education and services) (a) 予防保健 62.予防および健康促進においては、コミュニティおよび国全体で子どもたちが直面している主要な健康上の課題が取り上げられるべきである。このような課題には、疾病のほか、事故、暴力、有害物質濫用、心理社会的問題および精神的健康上の問題といった、その他の健康上の課題が含まれる。予防保健においては、感染症および非感染性疾患について取り上げ、かつ、生物化学的、行動科学的および構造的介入策を組み合わせて編入することが求められる。非感染性疾患の予防は、妊婦、その配偶者/パートナーおよび乳幼児を対象とする、健康的かつ非暴力的なライフスタイルの促進および支援を通じて、人生の早い段階から開始されるべきである。 63.子どものケガの負担を軽減するためには、溺水、火傷その他の事故を減らすための戦略および措置が必要とされる。このような戦略および措置には、立法および執行、製品および環境の改変、支援を目的とする家庭訪問および安全特性の促進、教育、スキル開発および行動変容、コミュニティを基盤とするプロジェクト、ならびに、搬送前のケアおよび救急ケアならびにリハビリテーションが含まれるべきである。道路交通事故を減らすための努力には、シートベルトその他の安全装備の使用に関する法律を定めること、子どもが安全な輸送機関にアクセスできることを確保すること、ならびに、道路計画および交通規制において子どものことを正当に考慮することが含まれるべきである。これとの関連で、関連産業およびメディアの支援が欠かせない。 64.暴力が子ども、とくに青少年の死亡および罹病の重要な原因のひとつであることを認識し、委員会は、子どもを暴力から保護し、かつ家庭、学校および公共空間における態度および行動の変容への子ども参加を奨励する環境づくりの必要性、健康的な子どもの養育について親および養育者を支援する必要性、ならびに、あらゆる形態の暴力に対する寛容およびその容認を固定化する態度に異議を申し立てていくこと(マスメディアによる暴力の描写を規制する等の手段によるものも含む)の必要性を、強調する。 65.国は、子どもを溶剤、アルコール、タバコおよび不法物質から保護し、関連のエビデンスをいっそう収集し、かつ、子どもによるこのような物質の使用を減らすための適切な措置をとるべきである。子どもの健康にとって有害な物質の広告および販売、ならびに、子どもが集まる場所ならびに子どもがアクセスするメディア経路および出版物におけるこのような物品の販売促進を規制することが勧告される。 66.委員会は、薬物の統制に関する国際諸条約 [17] および世界保健機関・タバコ規制枠組み条約をまだ批准していない締約国に対し、批准を奨励する。委員会は、有害物質の使用について権利基盤アプローチをとることの重要性を強調するとともに、適切なときは、有害物質濫用が健康に及ぼす悪影響を最小限に抑えるために有害性削減戦略を採用するよう勧告するものである。 [17] 麻薬に関する単一条約(1961年)、向精神薬に関する条約(1971年)、麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(1988年)。 (b) 親に対する指導 67.親は、幼児の早期診断およびプライマリーケアを行なうもっとも重要な存在であり、かつ、青少年のハイリスク行動(有害物質の使用および安全ではないセックス等)に対するもっとも重要な保護要因である。親は、健康的な子どもの発達を促進し、事故、ケガおよび暴力の危害から子どもを保護し、かつリスク行動の悪影響を緩和するうえでも中心的役割を果たす。自らが育つ場である世界を理解し、かつその世界に適応するうえできわめて重要である子どもの社会化の過程は、親、拡大家族その他の養育者の影響を強く受ける。国は、とくに子どもの健康上の課題およびその他の社会的課題を経験している家族を対象として、望ましい子育てのあり方を支援するための、エビデンスに基づく介入策(子育てスキル教育、サポートグループおよび家族カウンセリングを含む)を採用するべきである。 68.体罰が子どもの健康に及ぼす影響(致死性・非致死性のケガならびに心理的・情緒的影響を含む)に照らし、委員会は、各国に対し、家庭を含むあらゆる場面において体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰を撤廃するため、あらゆる適当な立法上、行政上、社会上および教育上の措置をとる自国の義務を想起するよう求める [18]。 [18] 「体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利」に関する一般的意見8号(2006年、Official Records of the General Assembly, Sixty-third Session, Supplement No. 41 (A/63/41), annex II)。 (c) 家族計画 69.家族計画のサービスは、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための包括的サービスのなかに位置づけられるべきであり、かつ、カウンセリングを含むセクシュアリティ教育を包含するものであるべきである。これらのサービスは、第24条第2項(d)についての箇所で述べた連続的サービスの一環と考えることもできるほか、すべてのカップルおよび個人が、性および生殖に関する決定(子どもの人数、出産間隔および出産時期を含む)を自由にかつ責任をもって行なえるようになり、かつ、そのための情報および手段を提供されるように設計することが求められる。既婚および非婚双方の女性ならびに思春期の男子全員が、秘密を守られながら物資およびサービスにアクセスできるようにすることに、注意が向けられるべきである。国は、青少年が、サービス提供者の心情を理由とする拒否によって、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するいかなる情報またはサービスも奪われないことを確保するよう、求められる。 70.コンドーム、ホルモン避妊法および緊急避妊薬のような短期的避妊法を、性的活動を行なう青少年が容易にかつ直ちに利用できるようにするべきである。長期的かつ恒久的な避妊法も提供することが求められる。委員会は、国が、妊娠中絶そのものが合法であるか否かに関わらず、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスへのアクセスを確保するよう、勧告する。 (健康に対する子どもの権利 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2013年6月28日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2016年1月4日)。