約 6,956 件
https://w.atwiki.jp/kenkyotsukaima/pages/47.html
謙虚な使い魔~アンドバリの呪縛~ アルビオン空軍工廠の街ロサイスは、首都ロンディニウムの郊外に位置している。 フネの造船所や製鉄所が立ち並ぶロサイスは、元々は王立空軍の発令所でもあったが、今ではアルビオンを掌握したレコン・キスタの指令所となっている。 その赤レンガの大きな建物には、誇らしげにレコン・キスタの三色旗が翻っている。 そして、一際目立つのは、天を仰ぐばかりの巨艦であった。 全長二百メイルにも及ぶ元アルビオン空軍本国艦隊旗艦の『レキシントン』号は、これまた巨大な盤木にのせられ、改装工事が行われていた。 アルビオン皇帝のオリヴァー・クロムウェルは供のものを引き連れ、その工事の視察していた。 「なんとも大きく、頼もしい艦ではないか!このような艦を与えられたら、世界を自由にできるような、そんな気分にならんかね?艤装主任」 「…わが身には余りある光栄ですな」 気のない声でそう答えたのは、『レキシントン』の艤装主任に任じられた、サー・ヘンリー・ボーウッドであった。 彼は革命戦争の時、レコン・キスタ側の巡洋艦の艦長であった時の功績が認められ、『レキシントン』号の改装艤装主任を任される事になったのである。 そして、艤装主任はそのまま艦長へと就任するのが王立であった頃からのアルビオン空軍の伝統であった。 「見たまえ、あの新型大砲を!わたしの友人による設計でね、東方のロバ・アル・カリイエからやってきて、エルフから学んだ技術をもとに設計したこの長砲身の大砲は、なんと従来の戦列艦が装備するカノン砲のおおよそ一・五倍の射程距離を持つそうだ!」 興奮して語るクロムウェルに対してボーウッドはつまらなそうに頷く。 元々ボーウッドは心情的には、王党派であった。 しかし、軍人は政治に関与すべからずとの意思を強く持つ生粋の武人でもあったため、上官であった艦隊司令が反乱軍についたため、ボーウッドもまた仕方なくレコン・キスタ側として革命戦争に参加したのである。 軍人として、指揮系統の上位に存在するものの決定に黙って従っていたが、一個人としてクロムウェルは忌むべき王権の簒奪者としてしか見ていなかった。 「これで『ロイヤル・ソヴリン』号にかなう艦は、ハルケギニアのどこを探しても存在しないでしょうな」 ボーウッドは間違えた振りをして、艦の旧名を口にした。 クロムウェルはその皮肉に気付き微笑んだ。 「ミスタ・ボーウッド、アルビオンにはもう王権(ロイヤル・ソヴリン)は存在しないのだよ」 「そうでしたな。しかしながら、たかが結婚式の出席に新型の大砲をつんでいくとは、下品な示威行為と取られますぞ」 トリステイン王女とゲルマニア皇帝の結婚式に、国賓として初代神聖アルビオン皇帝兼貴族議会議長のクロムウェルや、神聖アルビオン共和国(アルビオンの新しい国名)の閣僚は出席する。 その際の御召艦が、このレキシントン号であった。 「ああ、きみにはこの『親善訪問』の概要を説明していなかったな」 「概要と言いますと?」 また自分の知らぬ所で決められた策略か、とボーウッドは頭が痛くなった。 クロムウェルは、そっとボーウッドに二言、三言耳打ちした。 ボーウッドは顔色を変えた。 目に見えて、青ざめて、軽蔑のまなざしでクロムウェルを見た。 「馬鹿な!そのような王道から大きく外れた行為など!」 「これも軍事行動の一環だ。ミスタ・ボーウッド、きみならその事が理解していただけると思っているのだがね」 こともなげに、クロムウェルは呟いた。 「トリステインとは、不可侵条約を結んだばかりではありませんか!今まで自ら申し出た条約を破り捨てた国はどこにもない!このアルビオンが卑劣な条約破りの国として、ハルケギニア中に恥を振りまく事になりますぞ!」 激高したボーウッドが叫んだ。 「ミスタ・ボーウッド、それ以上の政治批判は許さぬ。これは議会で決定し、余が承認したものだ。余はきみが忠実なる軍人だとばかり思っていたが、いつからきみは政治家に転向したのかね?」 「しかし…」 「確かにいままでハルケギニアの歴史上に類を見ない事だろう。しかしだからこそ誰も成し得なかった事が達成できるとは思わないかね?ハルケギニアは我々レコン・キスタと言う旗の下一つにまとまるのだ。一時的な誹りなど、エルフどもの手より聖地を取り戻せば気にならんよ」 ボーウッドがクロムウェルに詰め寄った。 「条約破りがただの誹りですまされない!ハルケギニアが一つにまとまる前に、アルビオンは各国の敵とみなされるのは目に見えている!閣下は祖国を裏切るおつもりですか!」 クロムウェルの傍らに控えたワルドがボーウッドの喉元に杖を突きだして制した。 「艦長、改装作業にしては些か興奮しすぎのようだな」 ワルドはそう言うと帽子のつばを指で少しあげる。 「……ふん、国を裏切る事さえいとわぬ貴殿にはわからぬ事だな」 突きつけられた杖にも動じず、ボーウッドはワルドを睨み返す。 「大丈夫だ子爵、杖を下げたまえ。ミスタ・ボーウッド、きみは引き続き艤装作業を続けたまえ」 クロムウェルがそう促すと、ボーウッドは不服そうな顔をしながらも、艤装作業を確認するためにその場を去った。 「子爵、きみは竜騎兵隊隊長としてこのレキシントン号に乗りたまえ」 「目付け、というわけですか?」 「いや、そうではない。あの男はわかりやすいほどに頑固で融通がきかない人物ではあるが、それ故に裏切る事は絶対にしない。余は単純に、スクウェアメイジであるきみの能力を買っているだけだ、きみは飛竜に乗った事はあるかね?」 「いえ、ありませぬ。しかし、私が乗りこなせぬ幻獣はこのハルケギニアには存在しないと存じます」 「流石は子爵だ、何とも頼もしい。そうだ、子爵に会わせておきたい者がおってな。少し余の執務室まで来ていただけるかな?」 ワルドは恭しく頭を垂れる。 「是非とも」 そうしてワルドはクロムウェルに連れられて、レコン・キスタ司令所にあるクロムゥエルの執務室へとやってきた。 予め執務室に通されていたのか、二十代半ばぐらいの女性がソファーでクロムウェル達が現れるのを待っていたようだ。 細く、身体にぴったりとした黒いコートを身にまとい、ワルドが知る限りでは見た事のない、奇妙ななりだった。 マントも着けず、杖も見当たらないので、メイジではないのだろうか? 「おお、ミス・シェフィールド待たせたね。我々の『支援者』は元気だったかね?」 シェフィールドと呼ばれた女性は立ち上がり、冷たい目でワルドを眺めまわし、顔を一瞬しかめた。 そして何事も無かったかの様にクロムウェルに向き直る。 「以前変わりなく。クロムウェル様によろしく伝えて欲しい、との事です。ところでそちらの方は?」 「おお、そうであった。彼はワルド子爵、ハルケギニアでも有数のスクウェアクラスのメイジであり、我々の頼もしい同志だ。ワルド君、彼女が例の新型大砲の設計をした余の有能な秘書、ミス・シェフィールドだ」 ワルドは帽子を取り、シェフィールドに一礼する。 「ほう、遠くロバ・アル・カイリエで、エルフの技術を学んだ技師と聞いていたものだから、もっと厳つい人物を想像したが…」 ワルドはシェフィールドをじっと見つめる。 何度も確認するように、特に額を隠すように伸びた彼女の艶やかな髪を眺め回す。 「私の顔になにか?」 「失礼、以前どこかで会った様な気がしてな……ニューカッスルだったかな?」 シェフィールドは首を振る。 「ニューカッスルの時、私はとある『支援者』の下へ使いにでていたのだから、卿にお会いするのは本日が初めてだと思います」 そうか、と言ってワルドは首を傾げる。 クロムウェルが軽く笑う。 「子爵はさぞかし女性にもてるのだろうな、会った数々の女性の中にミス・シェフィールドに似た方でもいたのではないかね?」 「いえ、そういう訳では…」 「ところでミス・シェフィールド、我等の『支援者』から何か良い知らせはあったかね?」 「ええ、『親善訪問』作戦が行われる地がタルブと知り、地の利を活かせる水空両用艦を二隻、とそれに付随する降下隊を二隊、閣下のために送っていただけるそうです。クロムウェル様の皇帝就任祝いも兼ねてだそうです」 クロムウェルは満面の笑みになる。 「おお、それは素晴らしい!これでこの作戦の成功も確実なものとなるな!確か両用艦と言えばガリア王国の技術だったな。すると『支援者』はガリアの者かな?」 「クロムウェル様、例の約束をお忘れなきよう……」 シェフィールドが困った表情をする。 「おっと、すまない。『支援者』の素性は詮索しない、と言うのが約束であったな。しかし、我々と同じ志を持ちながら、名乗り上げる事ができない立場とは、難儀なものだな」 シェフィールドは視線でクロムウェルに合図して、そしてワルドの方へと視線を向ける。 クロムウェルはその様子を見て、シェフィールドの言いたい事を察した。 「ああ、すまぬ子爵。少し込み入った話をするのでな、少し席を外してくれるかね」 「御意」 ワルドは帽子を深く被り直し、一礼すると、クロムウェルの執務室を出た。 (あの女…確かに今まで会った事はない。だが、遠い昔どこかで見た事がある気がするこの感覚はなんだ?) ワルドの胸に何か詰まるような不快感が広がり、咄嗟に手で胸を抑える。 執務室から離れた廊下で立ち止まると、ワルドは壁に寄りかかり、呼吸を整え、目を瞑り、耳を澄ます。 風メイジ特有の空気の流れを読む聴覚をもって、離れた執務室に聞き耳を立てる。 執務室のドアに直接耳を当てたかの如く、クロムウェルとシェフィールドの会話がはっきりと聞こえてくる。 『クロムウェル様、先ほどの者の心は支配されていない様に見受けられましたが』 『ワルド子爵の事かね?せっかくの数少ないスクウェアメイジを、余がその心を支配してしまってはもったいないだろう。自分で物を考えられぬ木偶は、蘇らせた死者どもだけで十分だ』 『強力なメイジであるからこそ、その扱いには用心する必要があります』 『余も無条件で子爵を信用しているわけではない。彼がなぜ、魔法衛士隊隊長と言う座を捨ててまで、余に忠誠を誓うのかがまだ見えてこない。ボーウッドと違い、子爵はいつ裏切ってもおかしくないだろう。しかし、その忠誠が本物であれば、彼以上に頼もしい味方はいない』 『それを見極めるために、敢えて泳がせていると?』 『その通りだよ、ミス・シェフィールド。今度の『親善訪問』では子爵をミスタ・ボーウッドの監視下に置くつもりだ。子爵とは対極な性格をしたミスタ・ボーウッドなら、子爵の思惑に対して敏感に感じ取る事ができるだろう』 瞼を閉じたまま、ワルドは静かに鼻で笑う。 (まさか、こちらが目付けを付けられるとはな。所詮クロムウェルの言う『信頼』とは人を利用するためのものか) シェフィールドの事が気になり、聞き耳を立ててはみたが、なんて事はない、くだらない話しかないと思ったその時、 『もしそれで子爵が我々に害を成す者だとわかれば、ミス・シェフィールドより譲り受けたこの指輪で心を支配してしまえば良い』 ワルドの瞼はぴくりと動いた。 (指輪だと?) 『死者に偽りの生を与え、又人の心を操る事ができるそのマジックアイテムは、誰でも扱える代物。くれぐれも他の者に知られぬよう、お願いいたします』 『心配はいらぬよ、ミス・シェフィールド。未だに皆は余が虚無の担い手であると信じておる。まさか余がただの平民の司教であるとは夢にも思っておらんよ』 驚愕の事実を聞いてしまったワルドは執務室から遠く離れた廊下で目を見開いていた。 「ふっ……ははは!まさか『虚無』と呼んでいたものがただのマジックアイテムとは。心にない信仰を説く司教が、まさか虚無を語るペテン師でもあったとは、とんだ皮肉だ!」 ワルドの顔に不気味な笑みが浮かぶ。 「しかし、人の心を支配できるマジックアイテムか。もしそれが本当であれば、『虚無』の力に匹敵する事は間違いない。いや、うまく使えば『虚無』の担い手ごと操る事もできるだろう。何としてでもその指輪を手に入れねばならぬな……それがあれば、今度こそルイズを……」 その頃トリステイン魔法学院、 「ブロント?今何か言った?」 タルブの村から学院に戻ったルイズは、自室で大量に積み重なった本がそびえ立つ机に向かっていた。 キュルケ達と共に無断で授業を数日間サボってしまったため、遅れてしまった分の課題を山盛り与えられていたのだ。 それに加え、エルザがまとめ上げたと思われる、過去数百年の間に使われた詔集が一番上に乗せられていた。 「おいィ?お前らは今俺が何か言ったのを聞こえたか?」 ブロントは油布で丁寧にイージスを拭き、手入れしていた。 「聞こえておらぬのう」 イージスは数百年振りに武具としての手入れ受けて、気持ちよさそうな顔をしている。 「何か言ったのか?てか、相棒、イージスばっかりじゃなくてさ。俺様もやってくれ。潮風が身体にべた付いて気持ち悪ぃったらありゃしねえ」 壁に立てかけられデルフリンガーがうるさく鍔を鳴らして、ブロントの気を惹こうとする。 「そう?気のせいかしら……あー、それにしてもこの量、気が滅入るわ。詔も考えないといけないし」 課題の筆休めに、詔集のページを何枚かぺらぺらと捲り、目を通す。 「火に対する感謝、水に対する感謝、と各四大系統に対する感謝の辞を、詩的な言葉で韻を踏みつつ詠みあげるなんて、困ったわ。詩的なんて言われてもわたし詩人じゃないもの」 ルイズがうー、と唸りながら頭を抱えている横でデルフリンガーが何やら騒がしく喚く。 「やい、てめ、イージス。姉御の時はてめえが先だったから身を引いてやったがよ、今度の相棒は俺様が先だぜ?先輩の俺様を差し置いてチョーシに乗っているんじゃねぇぜ!」 「そちは相変わらず器が小さいのう。何が先や、後やと悩んでおると、いらぬ錆が増えるだけだと言うのに。そもそもブロントの事はそちより先に知っておるわ」 「あ?それは相棒と組む前にちらっと会っただけの話だろ?俺が言っているのは、お互いに命を預けあい、幾多の戦場を駆け巡るため、『相棒』として組んでからの話だ!」 イージスは溜め息を吐くような表情を作る。 「愚かな。無知故に、その様な瑣末な事で優位に立とうとするそちの姿、いつ見ても哀れじゃのう。すでに勝負はついておるのに」 「ああ?誰が『哀れ』だって?おい!イージスちょっと表へ出ろ!相棒!俺を…」 デルフリンガーが言い終わる前に、ルイズが立ち上がりデルフリンガーを鞘に押し込めた。 「うるさいうるさい!ったく!気が散るじゃない!剣の癖にやかましいのよ!」 ルイズは鼻息荒くデルフリンガーを紐で縛りあげ、鞘に固定した。 「もう、こいつの声を聞いていたら、詩的も何もないわ。ブロント、そこの『詔集 第一巻』を取って頂戴」 「これか?」 磨き終わったイージスを自分のベッドの上に置くと、ブロントは机の上からルイズが最近一番使っている本を取った。 「それは『始祖の祈祷書』、それじゃなくて、『詔集』と書いてある本よ」 ブロントは祈祷書を元の場所に戻すと、本の山を見つめた。 ルイズが次に良く広げている立派な装丁が施された本を取るとそれをルイズに差しだした。 「それは『不治の病と治癒のポーション』、ちゃんと題名書いてあるでしょ、ちゃんと見てから寄こしなさいよ」 ブロントは顔をしかめる。 「おまえもしかして文字が読めないと俺を馬鹿にしているんですか?」 「えっ?いや、馬鹿にしているわけじゃ…ってブロント、あんた字が読めないの?」 「俺がどうやって文盲だって証拠だよ言っとくけど俺は文盲じゃないから」 「そ、そこまで言ってないわよ」 不機嫌になり始めた自分の使い魔にルイズが狼狽する。 拗ねてしまったのか、ブロントは本を机に置いて、夢幻花の鉢植えの手入れを始めてしまった。 「そう言えば、ここはヴァナ・ディールとは違う言語体系だったのう。私もハルケギニアに初めて訪れた際は、暫し言葉に困ったわ。召喚されて数月も経たぬブロントではまだ字が読めぬのも無理ない故」 ベッドに置かれたイージスが天井を仰ぎながら、ルイズに語る。 「あれ?でも、ブロントは召喚された時からちゃんと話せていたわよ、ちょっと訛りが強いけど」 「セラーヌの時もそうであったが、召喚されし使い魔は、<サモン・ゲート>を潜り抜けた時、主人と問題無く意思の疎通を図れる様、言葉が通じる様になるそうじゃな。しかし、主人との会話にかかわらない文字の方までは<サモン・ゲート>の効力が及ばぬとは、都合が良いのか悪いのか判らぬ魔法じゃのう」 「そうだったの……詔集から幾つか詠みあげて貰おうと思ったのに……」 イージスの隣に座ったルイズはちらりとブロントの方を見ると、背中をルイズに向けて甲斐甲斐しく夢幻花の世話をしていた。 が、時々手を止めてはルイズとイージスの会話に耳を傾けている様だった。 「私はタルブで幾度も婚礼を立ち会った故、多くの詔を諳んじておる。片田舎の漁村の物で構わぬのであらば、詠み上げてもよいぞ。王室のそれとは趣に差異はあるが、似たようなものじゃ」 「もしかして、その中に初代村長様のも入っているのかしら?」 「セラーヌのか?入っているも何も、婚礼において詔を詠み上げる風習を始めたのが他ならぬセラーヌじゃ。それを気にいった時の国王が少し形を変えてしきりに王室中に広めた様だがのう。しかし誰が先に成したかや本来の形式はどうである等とは些細な問題じゃ、肝心なのは頼まれた巫女が相手をどう想って詠み上げたかじゃ」 「相手をどう想った、か…うん、イージス。お願い、聞かせてくれるかしら、そのセラーヌ様の詔を」 「セラーヌと聞いて、どうやらへそ曲がりの使い魔も興味惹かれた様じゃの」 ルイズはそう言われて、ふと気付くとブロントがいつの間にかイージスを間に挟んで、隣に座っていた。 「それほどでもない」 イージスはにっこりと微笑む表情を浮かべる。 「相変わらずじゃな、ブロント。まあ良かろう。まずはセラーヌが初めてハルケギニアで詠み上げたものからじゃな。では、『この麗しき日に……」 イージスが朗々と詔を詠み上げた。 ルイズはそれを聞きながら色々と想いを馳せる。 特に婚礼の巫女をルイズに態々指名したアンリエッタ王女の事を強く思った。 ルイズにとって、アンリエッタはどれ程大切な存在なのか、そして今アンリエッタは何を思っているのだろうか。 「姫さま……」 その頃、トリステイン王国と、ガリア王国に挟まれた内陸部に位置する、ハルケギニア随一の名勝を誇るラグドリアン湖にて。 「何かおっしゃいましたか?アニエス」 緑鮮やかな森に囲まれた絵画の様に美しく澄んだ湖水に佇むのはアンリエッタ王女と、アニエスと呼ばれた女性だった。 「いえ、殿下。私は何も……」 短く切りそろえた鮮やかな金髪に、すっきりと簡素に整えた剣士風の出で立ちのアニエスは、恭しくアンリエッタに跪く。 「そうですか、わたくしの気のせいですわ。水精霊の囁きでも聞いたのでしょう」 ラグドリアンの湖は水の精霊が住まう場所として知られている。 湖の底奥深くに水精霊たちは城と街をつくり、独自の文化と王国を築いている。 その姿を見たものは、その美しさに心をうたれ、どんな悪人でも心を入れ替えるという。 そんな水の精霊は誓約の精霊とも呼ばれ、その御許においてなされた誓約は、決して破られる事が無いと伝えられている。 アンリエッタはここでウェールズに永遠の愛を誓った。 「アニエス、無理を言って世話をかけますわ。わたくしの我儘に付き合わせてしまって」 「殿下、どうかお気になさらずに。しかしメイジの近衛でなく、ただの平民である私でよろしかったのでしょうか?」 アンリエッタは深い溜め息をつく。 「力あるメイジの貴族を信用する事ができない王女など、さぞかし滑稽でしょう。魔法の使えぬあなたの様な平民を御す自信しかない無能な王女など」 「殿下、悪い御冗談はやめてください。このアニエス、殿下に拾われた大恩が胸中に溢れども、その様な事は……」 アンリエッタは軽く微笑む。 「ええ、わかっておりますわ、アニエス。ですが王宮にはそう思い、王権の簒奪を試みる貴族が多数暗躍しているのもまた事実。わたくしの魔法近衛隊の中にも潜んでいるのかもしれません」 アンリエッタが物哀しそうな表情をして、湖の前で屈みこみ、水面に映る自分の顔を覗きこむ。 「何よりも、わたくしの浅慮故、裏切り者にわたくしの大切な人の命を受け渡してしまったのですから……」 「殿下……」 アンリエッタは手で軽く水面を漉いて、そして立ち上がる。 「アニエス、これからわたくしがここで口にする事は一切忘れて欲しい」 「御意」 アンリエッタはドレスの裾をつまむと、水の中に入っていった。 足首まで水につかると、アンリエッタは神妙な顔をして、高らかに宣言した。 (身勝手なわたくしをお許しくださいまし、ウェールズさま) 「トリステイン王国王女アンリエッタは水の精霊の御許で改めて誓約いたします。この身、例えゲルマニアに捧げる事になろうとも、この心は永久にウェールズさまを愛し続ける事を!」 湖の水面がそっとゆらぎ、再び静寂が湖を包む。 アニエスは驚きを隠せなかった。 この事が自分以外の誰かに知られれば、大変な事になるであろう。 もっとも、発言力を持たぬ、ただの平民であるアニエスが口外した所で、何とかうやむやにできるとアンリエッタも見越した上でアニエスを護衛として連れてきたのだろう。 アンリエッタが湖からでてくる、ぽたぽたと水が靴から滴り落ちる。 「さあ、アニエス。王宮に戻りましょう。あまり長居しては王宮の皆が騒ぎだしますわ」 「殿下、早く馬車に戻り、着替えを。大事な御身体に障ります故」 アニエスはそう言って、頭を垂れる。 アンリエッタは湖を包む森の外れに停めてある馬車に乗り込む前に、最後に湖を一瞥した。 そして誰にも聞こえぬように小さく呟いた。 「あの時、何故貴方は愛を誓ってくださらなかったの?ウェールズさま……」 その頃タルブの砂浜、 「何か言ったかい?シエスタ君」 ウェントゥスはまるで瞑想しているかの如く、白い砂浜の真ん中で目を瞑っている。 背後から近寄ったシエスタだったが、振り向かずに誰であるかウェントゥスに言い当てられ、シエスタは一瞬驚いた。 「あ、いえ!その、ミスタ・ウェントゥス、お昼がまだのようでしたので。手軽に食べられる物お持ちしました」 「悪いね。私の様な根無し草に気を遣わせてしまって」 ウェントゥスは目を開き、立ち上がると、口笛を吹いた。 すると遥か上空から、使い魔の黒鷲が砂浜に舞い降りてきた。 「ミスタ・ウェントゥス、また使い魔を通して辺りを見回っていたのですか?」 「いかにも。この子は目が良いからね、傭兵どもの動きを監視するのに、大いに役立っているよ。ところでシエスタ君、『ミスタ』はよしてくれ、私は貴族ではないのだから」 ウェントゥスは懐から干した腸詰の様なものを取り出すと、それを使い魔の黒鷲に放り投げた。 黒鷲は軽く「クアッ」と鳴くと、それを嘴で器用に受け取り、飲み込む。 「ですが、メイジの方に失礼があっては……」 「ハハハ、つまらない魔法が使えるだけさ。勝手にこの村に邪魔しているこちらが本来気を遣わなければならぬのにな。呼び捨てで構わないよ」 「さすがに呼び捨てする訳にはいけませんわ。えーと、そのウェントゥス…さん?」 橙の色眼鏡を掛けているせいか、表情が読み取りにくいが、ウェントゥスがにこりと微笑む。 「ウェントゥスさんって、メイジにしては随分と変わっているんですね。立ち振舞いは貴族みたいな気品があるのに、その、あまり他の貴族みたいに威張り散らさないと言いますか」 「何、メイジとて平民と同じ人間さ。刺されれば同じ赤い血を流し、夜になれば眠り、年が経てば老いる。そして日が真上に昇れば……」 その時ウェントゥスの腹がぐぅと鳴る。 「腹が減るものさ」 シエスタは思わず笑ってしまった。つられてウェントゥスも笑う。 シエスタは持っていた紙の包みを開くと、それをウェントゥスに差し出す。 「サラダをタコスにしたものです、どうぞ召し上がってください」 「ああ助かるよ。どんな偉大なメイジでも、空腹に打ち勝てる魔法など唱えられないのだからね。その点で言えばきみの方がメイジよりずっと偉大と言えるかな?」 ウェントゥスはそう言って、包みからタコスを手で受け取り、かぶりつく。 焼いたトウモロコシの生地がパリリ、と小気味良い音を響かせる。 シャキシャキと立った細切れの野菜が零れそうになる。 ゴロゴロとした海の幸に絡むアップルビネガーの香りがまた食欲をそそる。 手づかみで豪快に食べるウェントゥスだが、やはりどこか気品が漂い、絵になるとシエスタは感じ取り、思わずその食べっぷりに見とれる。 「とてもおいしかったよ。やはりこの村の料理は絶品だな」 すっかりタコスを平らげてしまったウェントゥスは満足そうな顔をする。 「気に入って頂けたようで、よかったですわ」 「さて、一休みもした所で、また少し見回りをするか」 ウェントゥスは羽を休めていた黒鷲の頭を軽く撫でると、黒鷲は頷き、また大空へと飛び上がった。 紙の包みを丁寧に折りたたんでいたシエスタがウェントゥスになんとなく聞いてみた。 「あれから何かわかりました?集められている傭兵たちが何をするか」 ウェントゥスは突然、真剣な表情になる。 「いや、ここ数日は目立った動きは無いな。二千人程の傭兵どもが今ラ・ロシェールに留まっているようだが、何か事を起こす様子もない」 「王宮の方はこの事を御存じなのでしょうか?」 「匿名でだが、何度か知らせている。流石に今は知るべき者に知れているだろう。王宮の方も特に動きを見せていないから、危惧するような問題では無いのかもしれないな。だが用心する事には越したことがないな」 「……ウェントゥスさんはなぜそこまでして、この村の事を気にかけてくれるのですか?」 「ん?なぜ、と言われてもな……最初はとある私の大切な者の力になりたくて、成り行き上でここに辿りついてな。そして、偶然が重なるものなのか、ここが我が友に縁がある地と知り、少し興味を持ったと言うのもあるな」 「友、ってブロントさんの事ですか?」 「そうとも、我が友であり、もっとも憧れている人物さ。そして彼には返しても返しきれぬ恩がある。その彼の姉が治めたと言うこの地に何かがあっては、私は友に顔向けできんよ」 シエスタはそれを聞いて、なんだか自分の事みたいに嬉しくなった。 「やっぱりブロントさんって凄いですよね。わたしも何かあの人に憧れちゃいます。でもあの寺院でびっくりしました、まさかこの村の領主様の弟さんだっただなんて」 ウェントゥスは突如、思い出したかのように手を叩く。 「ああ、そうだシエスタ君。前から聞こうと思っていたのだが、あの寺院いざという時に、村の避難場所として使えそうかね?」 「ええ、大昔にそういう使い方もしていたそうですよ。頑丈な石造りなので、あの大きな扉を閉めてしまえば、下手な砦よりも安全だとか」 ウェントゥスは「ふむ」と答えると、その場に座り込み、目を瞑った。 使い魔と視界を共有し、トリステインを上空から見渡す。 そして空の遥か彼方に小さく浮かぶアルビオンを見つめて、小さく呟く。 「さて、どう動くか……レコン・キスタよ……」 第21話 「時の輪の交わる処」 / 各話一覧 / 第23話 「いきなりトリステインの危機」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8949.html
前ページ次ページゼロのドリフターズ 「王女さま綺麗だったなー」 そこは地上を遥か下に眺めて、限りない大空を仰ぐ場所。 否、空の一部とも言うべき場所―― 「もう女王様、でしょ」 「そうだった」 イザベラの訂正に対し、ジョゼットはてへっと片目を瞑りつつ舌をぺろっと出す。 イルククゥはシャルロットを含めた姉妹三人を乗せて、非常に穏やかに空を飛んでいた。 シャルロットは口の中に大量に詰め込んでいたものを、呑み込んでから聞く。 「そういえば二人はいつ来ていたの?」 「丁度今みたいにイルククゥに乗って、上空からちょっとね」 そうイザベラは答えると、三人の中で最も淑やかに料理を口に運ぶ。 「ホント学院も虚無の曜日だからって、その前後も休みにしてくれればいいのに」 ジョゼットは良くも悪くも普通であった。三人とも貴族の作法は皆等しく習っている。 されど事ここに至っては明確な個性が表れていた。 シャルロットは大食家であり常在戦場を心に置く為、量が多い上に食べるのも早い。 イザベラは元王族ということをいつも忘れぬ尊厳高さで、日々の所作全てに貴族らしさを見せる。 ジョゼットはその場の空気を読んで合わせる為に、今は肩肘張ることなく自由に食事を摂っていた。 黒髪のメイドに頼んで特別に食事を作ってもらって楽しむ、三人と一匹の雄大なランチタイム―― 「そう、じゃあすぐに戻ったの?」 「ちょっとだけ家に寄ってすぐによ。折角だから皆でディナーでもしたかったけれど」 「姉さまは堅いよね、一日くらいサボっちゃえばよかったのに。シャルロットなんて何日休んだことか」 会話の合間にジョゼットは肉を放り投げると、イルククゥは飛行しながらも器用に口でキャッチして味わう。 「・・・・・・まぁ一時休学扱い。それに祝賀パーティに出席したから、どちらにしても当日夜は無理。父様も参加だし」 残念と言えば残念ではあるが、家族みんなで食事する機会などはいくらでもある。 学院から王都までの距離は近い。虚無の曜日になれば簡単に帰ることも出来る。 ましてジョゼットが召喚した風韻竜がいるのだから、往復は非常に速く快適に済む。 後はシャルルが首都警護任に詰めていない時と、ジョゼフの仕事が山積みになっていなければ揃い踏みだ。 「それにしても凄いわね、結婚式や戴冠式に参列するなんて」 アルビオンの現状も鑑みて、同盟と結婚と女王戴冠が続けて行われた。 現アルビオン王ジェームズ一世は、貴族派への睨みも含めて国に留まった。 また日程の関係上ロマリア教皇を迎えることもなかった。 本来の結婚式や戴冠式に比べれば慎ましやかではあったものの、それでもトリスタニアは大いに賑わった。 限られた人間のみが許される各式典を、出席者として間近で並べたことは貴重な体験であった。 「私の功績の殆どは、姉さんが貸してくれたスキルニルのおかげ」 「ねぇ~、もう終わったんだから色々教えてくれないの?」 ジョゼットがシャルロットにせがむ。イザベラは察して直接は聞いてこないが魔道具を貸した手前、知りたくなくもない。 シャルロットも一段落したから問題ないだろうと、一応秘密厳守ということで話せる範囲を可能な限り大まかに語り始めた―― 「――凄いわねシャルロット、あなた大活躍じゃないの」 「大袈裟、私のしたことなんて大したことない。スキルニルとキッドさん。あとブッチさんと父様が殆ど」 「行き過ぎた謙遜は美徳じゃないよシャルロット、わたし達の前ですることでもないし」 「・・・・・・ジョゼットに窘められるとは・・・・・・」 「ひどいな!!」 軽い漫才を終えて穏やかな表情を浮かべる。しかし僅かに憂いを帯びた表情。 「でも本当に・・・・・・大したことじゃないのよ」 作戦立案はスキルニルとミョズニトニルンあってのもの。存在を知っていれば簡単に思いつく。 『白炎』の首級も、地下水とデルフリンガーがあってのもの。自分は死んだようなものだった。 メンヌヴィルが残した王党派の名とて、残党セレスタンも知っていたからあくまで証拠の一つに留まった。 実際的な働きを為した、キッド、ブッチ、シャルル――そして明かせないがルイズ――に比べれば、さしたるものではない。 「いずれにせよ誇らしいことよ、姉としてね」 「妹としてね」 イザベラとジョゼットの見慣れた笑みに、シャルロットは帰ってきたんだなと実感する。 本当に・・・・・・生きていて良かったと。 「・・・・・・そういえば、ジョゼットにお願いがある」 「なぁに?」 「"始祖の香炉"を貸して欲しい」 「いいよ。なんで?」 食事を頬張りながらジョゼットは二つ返事で承諾するものの、理由は気になる。 「・・・・・・実は私、"虚無の担い手"――かも」 「へぇ~・・・・・・へっ?」 「えっ・・・・・・?」 「私ばかりにガリアの遺産が集まって申し訳ない・・・・・・」 「そんなのはどうでもいいってば!! あんな使えないもんいくらでもあげるって!!」 「そっ・・・・・・そうよ、『虚無』と言ったの?」 シャルロットは普段から冗談らしい冗談も言わないし、唐突に荒唐無稽なことも言わない。 それゆえにイザベラとジョゼットの驚きは、至極当然なものであった。 ちょっと出張して帰ってきたら「虚無はじめました」みたいなカミングアウトされても困るというもの。 「とりあえずデルフリンガーが説明する――」 「おうよ姉っ子、妹っ子、久し振り」 「えぇ、話すのは久し振りね」 「うん、傍からよく見かけてはいるけどね」 「まあちっと思い出すことがあってな、オレぁ昔ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』に使われてたんよ。 んでだな、虚無を使えるメイジの素養ってのが、実は相棒にかな~り一致するんだな、これが」 ルイズとティファニアのことを言うわけにはいかず、予めデルフリンガーと口裏合わせていたことを二人に言う。 あくまで自分が虚無であるかも知れないという話であれば特に問題はない。 「まったまた~。ってことは何? デル公は始祖に会ったことあるって?」 「薄っすらと覚えてる程度だ、なにせ大昔の記憶だかんな。またふとした時に思い出すかもわからん」 「でも・・・・・・うん、始祖云々は別として――シャルロットならありえるかも」 イザベラは思いのほかスムーズに受け入れる。 「まーシャルロットが優秀なのは知ってるし、おかしなコト多いけどさ。でもさ、『虚無』は伝説でしょ? デル公の話以前にそもそも存在するわけ? 昔から一緒に育ってきたし、その・・・・・・言葉を信じたくなるのはわかるけどさ」 ジョゼットははっきりとではなく、濁すように言う。 一心同体とも言うべきデルフリンガーの言葉を無条件に信じて、最終的に落胆するような姿は見たくない。 「もちろん伯父様に確認済み」 「父上に?」 「そう――"虚無の担い手"は過去の歴史の中に、何人も存在していたらしい」 「へぇ~、ん・・・・・・まぁ伯父さまがそう言うならいるんだ」 シャルロットは最後の一口を胃の中に流し込んでから告げる。 「まぁあくまで可能性に過ぎない。ただ目覚めるにはルビーと秘宝がいるらしい。それで――」 「うん、わかった。後で部屋に持ってく」 そこでジョゼットは何かに気付いたように言う。 「ところでさ、シャルロットに虚無ってことはさ? もしかしてルイズもそうだったりして」 シャルロットはジョゼットの言葉にドキリとする。 本当にこの子は、時たま鋭く核心つくようなことを言ったりする。 「でも始祖ブリミルは一人なわけだから、何人も使い手が現れるものなのかしら?」 イザベラのもっともな疑問。シャルロットも思ったことだ。 言うわけにはいかないが、既にティファニアとルイズの二人がいる。 せめて分かたれた使い魔の数――即ち四人くらいは覚醒すると考えたい。 「わからない。けれ ど可能性が少しでもあれば賭けたい」 ジョゼットとイザベラは微笑ましく――そして頼もしく見る。 これがいつものシャルロットだといった風に。 さらに三人は優雅に他愛もない話を続ける。 結婚式のあれこれ。戴冠式の様子。ウェールズはどんな人だったか。アルビオン土産はないのかなど。 昼休みが終わるまで・・・・・・ひっきりなしに語らい続けた。 † ――その男は御年42歳のトリステイン魔法学院の教師であり、学院内でも際立った異色を放つ者であった。 男、ジャン・コルベールの研究室は、学院の敷地内にひっそりと設けられている。 ある意味隔離されたその空間で、コルベールは日夜研究に励んでいた。 それはハルケギニアにおけるブリミル教の教義に照らし合わせるならば、異端とされるもの。 生徒達に慕われる教師ではあるが、同時に陰で変人呼ばわりされている所以であった。 今日も今日とて仕事を終えて研究室に籠もっていると、珍しくノックの音が響いた。 「こんばんは」 訪問者は生徒であった。学院内でも割かし有名な少女。 「おお、ミス・シャルロット。わざわざ夜にどうかしたのだね? 勉学のことかな?」 つい先日、ミス・ヴァリエール共々休学から復帰したばかりで、そう推察する。 「勉強の方は大丈夫です、別の話がありまして・・・・・・」 「ははは、確かに君には無用の心配だったか」 オスマン学院長より薄っすらと聞かされた話によれば、王家からの所用によるものらしい。 よって単位については考慮されているものの、彼女が休んでいた間の学業の遅れは自分で取り返すしかない。 補習代わりにでも何か聞きに来たのかと思ったが、相談だろうか。 悩める生徒の言葉に耳を傾けるのも、教師の重要な役目である。 「・・・・・・それにしても――」 シャルロットは話を切り出す前に、改めて研究室内を覗き見渡した。 ジョゼフの研究室よりも相当狭く、乱雑にも見えるが、それでも整理はされているようであった。 そして注目すべきはその端々に窺える研究内容と思しき物の数々。アカデミーであっても敬遠されるようなもの。 「"科学"・・・・・・ですか」 以前ならこの研究室内を見ても、疑問符を浮かべるだけであったろうシャルロットも今は違う。 昔から漂流者と漂流物がもたらしてきた"科学"。ハルケギニアの魔法とは一線を画す学問であり技術体系。 広義的な総称ではあるものの、ニュアンスとしてはそれで充分に伝わる。 特にワイルドバンチが召喚されてこっち、シャルロットは詳細な話を聞くに連れてより興味を大きく持つようになった。 元々魔法使えぬ身として選択の一つとしてはあったが、ハルケギニアでは発展せず入手も困難であった。 それゆえに知識として頭の中に存在していても、実際的には手が出せなかった。 「おぉ、流石にわかるかね!! ミスタ・キャシディやミスタ・キッドに色々聞いてね」 コルベールはテンションを上げる。 彼女ら――ミス・シャルロットととミス・ヴァリエールが召喚した二人の漂流者。 実際に彼らから聞く話は興味深いものであった。 「とかく鉄道というものに感銘を受けたのだ。それはなんと蒸気を使って車輪などを――」 「知っています」 「――う・・・・・・むぅ」 ピシャリと止められてコルベールは詰まる。無意識とはいえ熱が入り過ぎるのは悪い癖だった。 授業中にやらかしてしまうこともある為に、コルベールはその度に自己嫌悪に陥る。 「それで話というのはですね・・・・・・、『炎蛇』のコルベール――」 コルベールの心臓が大きく全身に響くように一度だけ高鳴った。 一度ついた二つ名が変わることなど早々ないし、二つ名自体は学院内でも知られている。 だが正直思い出したくもない二つ名であり、いきなり彼女が言い出したのことが引っ掛かった。 「・・・・・・私の伯父、ジョゼフを知っていますか?」 「・・・・・・いや?」 彼女がガリア王家の血筋ということは知っているし、その伯父ともなれば当然ガリアの血族。 ガリアが滅びていなければ、王冠を被っていた可能性もあるだろう。 いずれにせよそのような人物と面識ある記憶はなかった。 「そうですか、実は伯父はアカデミーに務めていまして・・・・・・」 コルベールは"アカデミー"の名に喉が渇くのを覚える。シャルロットの意図するのはどちらの意味なのかと。 この研究室を見てアカデミーに対し、何かしらのアクションを求めようとしているのか――。 もしくは20年前に、己がアカデミーの実験小隊に所属していたことを聞いているのか――。 「そ・・・・・・それがどうかしたのかね?」 「・・・・・・いえ、すみません」 シャルロットはふと気付いてまず謝った。 最近は高圧的な態度で相手を誘導し、時にその思考を追い詰めるようなやり取りやら駆け引きが少なからずあった。 別に責めるようなことは何一つないというのに、ついついそんな話し方になっていたことに反省する。 「端的に言います。『白炎』のメンヌヴィルを殺しました。――と、言えばわかりますよね」 コルベールの目が見開かれる。よくわかった――少女は20年前のことを知っていると。 先程『炎蛇』とわざわざ二つ名を言ったのもそういうことなのだと。 件の伯父とやらも、恐らくはその当時からいた研究員なのかも知れない。 かつてアカデミーの実践部隊として働いてた頃の・・・・・・決して忘れてはならないこと。 「『白炎』は『炎蛇』を執拗に探していたようですが、もう安心して下さい」 「君が・・・・・・どうやって?」 何よりも優先された疑問。コモン・マジックこそささやかながら使えるようになったばかりの生徒。 学院にいながらも、その残虐極まりない噂には聞いていたプロの歴戦傭兵を殺したなどと――。 「これです」 シャルロットはヒュパッとリボルバーを早抜いた。 実際に今、コルベールに見せたような腰位置での早撃ちなど、標的にはまともに当てられない。 ワイルドバンチの二人ならともかく、己には練度が圧倒的に足らない。 しかしそのアクションを見せるだけで充分だった。本当の技量なんてコルベールにはわからない。 そういうことが出来ると思わせておけば、それだけで説得力になる。 「連発式の銃、かね」 以前にワイルドバンチから見せてもらったことをコルベールは思い出す。 フーケ事件後に回収し、保管し直した『破壊の杖』はさらに凄いものだった。 ――それよりもなんと哀しきかな。教え子がその手を血に染めたこと。そしてかくも簡単に命を奪ってしまえる凶器。 純粋にそのことを悲しんだ。一教師として、生徒がしてまった行為のことを。 「正当防衛ですのであしからず。殺人についても私なりに考えていますので・・・・・・――」 コルベールはゆっくりと息を吐く。諭すようなことは必要ない・・・・・・と。彼女は優秀な生徒だ。 彼女が考えていると言えば疑うことはない。それに――教え子の命が奪われるよりは良い。 それこそシャルロットが殺されていれば、悔やんでも悔み切れなかった。 メンヌヴィルを殺し損ねたこと、その後に関わることをしなかったのは、自分の落ち度なのだから。 「そう・・・・・・か、彼が死んだか」 感慨深く、心身に浸透させるかのように呟いた。 副長だった男。己の背を焼いた男。人生の転機のキッカケとなった男。 そして逃がしてしまったメンヌヴィルから逃げ続けた自分自身。思うところはいくらでもある。 「ミスタ・コルベール。貴方は何故アカデミーの部隊を辞めて教師になり、しかもこのような研究を?」 唐突な質問に心中で首を傾げるも、シャルロットの真剣な態度に、コルベールも真剣に答える。 「嫌気が差した。副長・・・・・・メンヌヴィルと正面から相対したことで、奇しくも思い直すことが出来たのだ。 命令変更の指令が少しでも遅れていれば、わたしは村を住む人々ごと焼き尽くしていたかも知れなかったのだ。 結局村を焼き、住民を危険に晒してしまった・・・・・・。殺しかけたのだ、多くの人に怪我をさせてしまった。 それは動かせない事実。わたしはそういう人間だった。・・・・・・ミス・シャルロット――『火』とはなにかね?」 「"情熱と破壊が『火』の本領"――と、友人はよく言いますね」 「・・・・・・ミス・キュルケか。そうだ、破壊と言えば『火』であり、『火』と言えば戦場だ」 コルベールは瞳を閉じる。その目蓋の裏では彼の中にある凄惨な情景が、いくつも浮かんでは消えていく。 汚れ仕事を担う部隊員として、数々の戦場を巡り、時には己が手で何だって燃やしてきた。 「だけどね、それだけが『火』の活用法だろうか? 『火』は破壊を司るだけではない。 確かに効率的に破壊するには『火』が一番かも知れない。しかしどんな"力"も使い方次第なのではと」 シャルロットも双眸を閉じた。そうだ、まさに『虚無』の系統もそうなのだ。 ルイズも言っていた。途方もなく"強力な力"。それをどうするのかは結局それを扱う者に委ねられる。 コルベールとシャルロットはそれぞれゆっくりと噛み締めた後に、目を開ける。 自責を胸に。夢を語るように、訴えかけるようにコルベールは続けた。 「だからわたしは『火』を他に役立てたい。人々の生活の糧となるように――。 その為に研究をしている。これは自分自身に課した償いとも言えるだろう」 「立派です。純粋に尊敬します。聞けて良かったです。私も戦が終結して、平和が戻った時――」 シャルロットは一拍、ゆっくりと溜めてから続いて紡ぐ。 「――その時には先生のように、この力をまた別の方向に・・・・・・より良く使いたいと切に思います」 コルベールの、我が身を省みて決意したその生き様にシャルロットは感動する。 その意志、そんな言葉こそ、シャルロットが心から聞きたかったこと。 「ミス・シャルロット。君は・・・・・・戦うのかね?」 「――大切なものを守る為に戦いますよ。よくあることだとはわかっていますが、だからって安っぽいとは思いません」 シャルロットのこちらの心情を見越した意思に、コルベールは深呼吸する。 未だかつてこれほどの優秀だった生徒はいない。一教師が言えることなど、既に全て承知の上。 もはや何も言うまいと。――そして一つ、コルベールの中で浮かんだ。 「そういえば君は、アンリエッタ女王陛下と知り合い・・・・・・なのかね?」 フーケ事件の折、さらに先だっての休学にもアンリエッタ女王陛下が関わっていたと噂には聞く。 「はい。一応アンリエッタ様にも、ウェールズ様にも、謁見程度であればスムーズに認められるくらいには」 「なんと、両王家ともか」 コルベールは少女が指に嵌めている"それ"を見た。 その上でトリステイン王家とアルビオン王家とも繋がりがある―― (彼女であれば・・・・・・) そしてコルベールは棚に厳重に掛けた『ロック』の魔法を解いて"指輪"を持ち出した。 その様子に首を傾げて眺めていたシャルロットも、すぐに"それ"が何なのかわかったようで呆然としている。 「"火のルビー"・・・・・・ですよね、どうして貴方が?」 シャルロットが持つ"土のルビー"。テファが持つ"風のルビー"。ルイズが持つ"水のルビー"。 立て続けに見てきたのだから、見間違う筈もなかった。 「20年前のダングルテールの真相を知っているかね?」 コルベールは当時のことを思い出す。火のルビーを語るのであれば避けては通れぬ話。 「真相・・・・・・ですか? 疫病の為に村ごと焼き払うというのが嘘の名目で、新教徒狩りが本当の目的だった。 それを当時裏仕事に長けた実験小隊が――ですよね。伯父と『白炎』のメンヌヴィル本人からも聞いています」 「副長も話したのか・・・・・・。まあいい、だが真相とはさらに深いのだ。 何故ダングルテールが、当時の新教徒狩りの標的となったのかということだ。 トリステインの片田舎であるその地方に、わざわざロマリアが圧力を掛けてまで・・・・・・――」 シャルロットは首を左右に振る。そこまでは聞いていない。 恐らく伯父ジョゼフは知っていたやも知れぬが、敢えて語らなかったことなのかも知れない。 改めて問われると確かに不思議な話だ。そこに何がしかの理由があるのは道理。 コルベールは頷くと話を続け、シャルロットは口を挟まず耳を傾ける。 「とある一人の女性が本当の目的だったのだ。彼女を殺すということが隠された目的。 名をヴィットーリア。その名と姿から察すれば恐らく――現教皇聖下の母君なのだろう。 彼女は"火のルビー"を持ち出した。新教徒として逃げた彼女を抹殺する為の殲滅指令だったのだ」 ロマリア皇国、教皇聖下。聖エイジス32世、ヴィットーリオ・セレヴァレ。 各国の王や女王達に勝るとも劣らずの見目麗しさ。さらにアンリエッタのように分け隔てなく接する人格。 確かな実力と支持をもって、若くして教皇まで昇り詰めた英才。 もしもその母たる人物が異教徒になっていたと言うのであれば、恐らく断崖を背に、逆風を乗り越えたに違いない。 元々ある才能に、血の滲むほどの努力を重ねて勝ち取ったものなのだろう。 新教徒を厳しく弾圧をしていた前教皇と違い、現教皇聖下は温和だとも聞いている。 「――後は知っての通り、事は途中で露見し、当時の関係者も失墜。命令中止の指令は間一髪間に合った。 副長とわたしの所為で村は焼いてしまった・・・・・・が、それでも誰も死ななかったのは奇跡であった。 そして原因となった彼女は己の所為だとして、混乱に乗じて行方を完全に消すことにしたのだ。 その時にわたしが手助けし、そして・・・・・・この"火のルビー"を彼女から受け取ったのだ」 「・・・・・・何故その方はルビーを?」 火のルビーを奪う理由があまりに不明瞭であった。 売り払う為でもなかったようでもある。密かに虚無覚醒の鍵たることを知っていたのだろうか。 コルベールはかぶりを振る。 「真意については語ってくれなかった。だが並々ならぬ決意を確かに感じた。だから預かっていたのだが――」 シャルロットは火のルビーをその手に渡される。 「新たに君の手に。今の話を考えた上で君が判断して欲しい。わたしは結局迷い続け、持ち続けてしまった・・・・・・」 今はどこにいるかわからない、既に亡くなっているやも知れぬ彼女の意思を尊重するのか―― それとも今の新たな教皇。彼女の息子の元へと、本来在るべき形に戻すべきなのか―― 「ミス・シャルロット、君には人脈があり、何より元王家の人間だ。君が持ち続けてもいい。 トリステインとアルビオンの両王家、どちらかに預かってもらってもいい。 女王を通じるなどして、ロマリア教皇聖下へと返還するのも良いだろう。 いずれにしてもわたしがずっと隠し持ち続けるよりは相応しく、事情をも知る人間となった。 そして誰よりも・・・・・・最良の判断が出来る生徒だと、わたしは思っているよ」 なるほど理屈はよくわかった。あらゆる点に於いて自由なのが、今の己の立場でもある。 (本当に・・・・・・) ――なんて因果なのだろうか。シャルロットは火のルビーを、土のルビーの隣に嵌めて見つめる。 土の隣に風、次に水、そして火までもがそれぞれ並んだ。 ルビーの所在を知るのも私一人・・・・・・――正確には地下水とデルフリンガーもであるが―― 「責任をもってお預かりします」 始祖ブリミルの血から造られ、三人の子と一人の弟子に渡った由緒あるルビー。 6000年もの長きに渡って紛失すること、破壊されることもなく、受け継がれてきた貴重品。 とりあえず火のルビーははずして、一旦ポケットにしまっておく。 「ありがとう。・・・・・・過分な荷を背負わせてしまってすまない」 「いえそんなことは。ただ・・・・・・そこまで信頼なさってくれるとは」 「はは、わたしは教師だよ。生徒を見ていないなんてことはないさ」 軽く言ってのけるが、それもまたコルベールの人柄であり優秀さであった。 『炎蛇』と呼ばれた、何の感情もなく命令を忠実に実行する武人はもういない。 今目の前にいるのは温厚で、お人よしで、暴力の欠片もない人畜無害な教師の鑑だけだ。 ある意味で落ちこぼれな私を見て、評価してくれている先生だ。 「・・・・・・それじゃそろそろ失礼します。研究、応援してますよ」 「んむ、差し当たっては蒸気機関を理想的な形で完成させたいと思う。特に『火』を有効に利用出来ることだからね」 「――何か行き詰まれば言って下さい。伯父に口利きくらいは出来ますから」 「う~ん、一応心に留めておくよ」 複雑な感情に苦笑いを浮かべたコルベールを残し、シャルロットは研究室を出ていった。 コルベールは知らず緊張して強張っていた体の力を抜いた。 話を聞いてもらったこと。ルビーを預かってもらったこと。 このような心地に身を委ねる資格は自分にはないかも知れないが、重圧から解放された気分を振り払うことは出来なかった。 † (――言い損ねちゃったかな、一つだけ) とはいえ、今のコルベールには言える筈もなかった。 あの研究室と研究内容。恐らくアカデミーでやれば相当なものになる。 誰かパトロンがいれば恐ろしい兵器も作れそうな予感すらある。 伯父ジョゼフには立場があるし隠れてやるにも制限がある。 だがほぼ無名のコルベールであれば秘密裏にやっても問題はないだろう。 とはいえコルベールの、破壊に使わないと臨む意志を汚すわけにはいかないし、似つかわしくない。 たとえ出資してくれる者がいたとしても、今はまだ時期ではないのだろうと思う。 シャルロットはポケットの中の火のルビーを握った。 (テファとルイズ・・・・・・他は不明) 二人の"虚無の担い手"。 (キッドさんとブッチさん・・・・・・残るは『ヴィンダールヴ』と"記されぬ何か") 二人の"虚無の使い魔"。 (香炉、祈祷書、オルゴール。・・・・・・後は円鏡だったか) 三つの"始祖の秘宝" (ルイズの水、テファの風、私の土と、そして火) 四つの"始祖のルビー"。 まるで引き寄せられるように判明し、現出してきた始祖ブリミルゆかりの品々。 (そういう時代なんかもな) 突然デルフリンガーが頭の中に語り掛けてくる。 (時代・・・・・・?) ("四の四"のことさ) 言われてすぐにピンッと来る。使い魔、秘宝、ルビー、そして恐らく担い手の数のことだろう。 (また何か思い出したの?) (おう。本来バラバラだったものが、一度に集まるってのは"必要な時"なんよ) (必要って何の?) (わからん、そこまでは) (全く・・・・・・ホント都合が良いんだか悪いんだかわからない記憶) シャルロットは嘆息をつくと、火のルビーを空に掲げて覗き込む。 夜空の黒色を背景に、月明かりに照らされ、誘われ吸い込まれそうなほどの赤色が映える。 (ルイズが読んだ始祖の祈祷書からすると・・・・・・) "聖地の奪還"――なのだろうか。わからないことだらけで、未だ霧は濃く先が見えない。 されど四の四。始祖の担い手も四人とくればなおのこと自分の可能性が出て来る。 その"必要な時"が来た時に、自分も否応なく関わらざるを得なくなるかも知れない。 ――聖地。 始祖ブリミル降誕の地であり、エルフが住まう領域。 (そんなもの・・・・・・――) もし仮に聖地の奪還が必要なのだとすれば、それは本当に必要なことなのだろうか。 確かにエルフは仇敵であり、サハラと呼ばれる土地は風石などの資源に恵まれている。 しかし人々は6000年もの間、今の土地で暮らしてきたのだ。血で血を洗う必要など、どこにあるというのか。 目下はオルテや黒王軍の方が遥かに問題であるし、そもそも同族間で相争ってきているのにさらにエルフとなど―― (何らかの大きな力で導かれているとしても・・・・・・) もし今が"必要な時代"とやらで、始祖ブリミルが導いていたのだとしても。 (己の意思は己だけで決める) もし私が"虚無の担い手"であれば、本当に何が必要かどうかは手前で判断する。 ――思いも、力も、振り回されてはいけない。 ――自身が責任をもって振るうものなのだと。 前ページ次ページゼロのドリフターズ
https://w.atwiki.jp/hazama/pages/1322.html
編集/ 20130720| 20140405| 20140505| 祈祷師関連メモ 祈祷師関連メモ まあルーンクエスト3版の情報はルール全体の整合性として大事だけど、HWもHQもMRQもRQ6出てるわけだから、最終的にはRQ6に寄せるように調整するのがいいかな。 祈祷師というかアニミズム。 基本ルールp3 「自分は祈祷師である。精霊たちの道を習い、修行を積んだものである。私の魔術を理解したとき、おまえは精霊と対することになる。精霊たちもまた、かの”偉大なる精霊”の産物である。彼らは自分たちの秘密を、おまえとのあいだで分かつだろう。彼らの教える物事の筋道は、おまえ自身の内なる受け皿に生命力を注ぎ込み、それを世界に向けることでおまえの意思を実現させるだろう。おまえにその能力があれば、自身の内なる真理の実像を発見し、祈祷師となることができよう。」 精霊会 離体化した精霊たちの住む世界。死者の目的地であり、冬には自然界の精霊たちが眠るところ。かたちのない夢のような場所。身の毛のよだつものが霧の中から物質化してきそうな雰囲気。精霊界は目には見えないが、地上界のあらゆる地点と連続。 つまり精霊界は地上界と重なっている。 冬の精霊は夏には精霊界に戻って眠りにつき、夏の精霊は冬には精霊界に戻って眠りにつく? 昼の精霊は夜に。夜の精霊は昼に。 裏を返せば、夜の精霊は夜に地上界に現れている。 SIZを持たない生物は”非肉”の生物。 別世界の生物の多くは、一時的に肉体を兼ね備えることができる。 頻繁に姿を現すゴーストや、必要に応じて自由に姿を見せることのできる妖精たちなどがその例。 大部分の精霊は永遠に非肉のまま。 一般に精霊界にいる非肉の生物は、地上界と関係を持つことができない。 この2つの界のあいだでは、自然の連絡や移動がまったく行われない。 精霊界にいる精霊たちは、そこで彼らが認知することのできる存在とだけ関係を持つことができる。 精霊のなかには、呪文の投射や精霊戦闘の技能、地上界と連絡を取る能力など、特殊な側面を持ったものがいる。 多くの精霊は微光をともなった不確かな姿を地上界に形成する能力を持っています。 非肉状態にある精霊のみが精霊戦闘を仕掛けることができる。 「地上界の生物を攻撃する場合」、攻撃者は少なくとも攻撃の1戦闘ラウンド前に、地上界において姿を現さなければならない。 対戦者が双方とも精霊界にいる場合はこのような規制はない。 肉体を持つ精霊の魔力ポイントがゼロになったら、その肉体は占有に無抵抗となる。 肉体をともなわない精霊の魔力ポイントがゼロになったら、その精霊は捕獲あるいは《呪縛》に無抵抗となる。 精霊は魔力ポイントを失っても意識は失わない。呪文の影響を極めて受けやすい状態になる。 精霊に対して武器を使用することはできない。魔力を施してあっても無意味。 集中力ロールに成功すれば、精霊に対して呪文を投射することもできる。 INTやPOWに影響を及ぼす呪文は大部分の精霊に対して有効。 p6 コルマックサーガ 精霊先頭のファンブルで転倒している。 支配占有 被占有者は魔力ポイントも肉体のダメージも回復できない。 占有者が肉体をコントロールする際の各技能の成功率は最初の値に固定される。 潜伏占有 被占有者は自身の魔力ポイントが一度回復してしまうと、潜伏した占有者を払いのけることはできない。 潜伏した霊を追い払うには他の精霊の力を借りる必要がある。 呪文の投射作業は 1.理解不能な発声とせりふ 2.微妙な動作 3.魔力ポイントの消費 で構成される。 これによって地上界の手法を用いずに本人の周囲の環境を変化させることができる。 呪文の投射手順は、それぞれの魔術体系ごとに若干異なっている。 呪文の視覚・聴覚的効果は”ルーンクエスト”をプレイする宇宙によって異なる。 ゲームマスターは独自にこの点をルール化してもよい。 p11 精霊魔術 精霊は精霊魔術呪文の源泉。多くの場合、精霊そのものが呪文。 呪文を投射するために必要な母体と魔力ポイントを提供する存在。 精霊呪文は精霊が生徒を襲い、生徒がその精霊を打ち負かして、精霊から呪文の知識を得る。 このような役割を担えるのは一部の精霊だけ。 部族の人間は、その部族の祈祷師のところに呪文を習いに行く。 慣例的には教えを請う呪文のレベル1につき100ペニー。これは一般の労働者の3週間分の収入に相当。 →現代だと10万ぐらい。 精霊のPOWは少なくとも持っているレベルの呪文に等しい どこに行けば精霊と遭遇できるかを、祈祷師が指示してくれる。 祈祷師の家の中、人里離れた土地、荒野の真ん中、あるいは慣例的な場所。 →これはつまり、召還儀式とは、その場所に呼び出す儀式とは限らないということ。 祈祷師は生徒に、正しい精霊を呼び寄せる焦点具を備えた道具を渡し、送り出す。 その夜、祈祷師は該当する精霊に生徒のところへ行き、自らの名を名乗り、精霊戦闘を仕掛けるよう命令する。 →「名を名乗り」重要。 生徒が精霊の持つ魔力ポイントをゼロにできれば、精霊から呪文の知識を吸収し、自身の意識に焼き付けることができます。 →意識に焼き付ける。 精霊はいかなる支配も受けずに精霊界へ帰ることができれば、再びそこで呪文を獲得する。 →呪文は精霊からいったん奪い取られる。コピーではない。ただし精霊界には何らかの無限に近いリソースがある。 p12 コルマックサーガ ゴーストによる支配占有を払うシーン コルマックの体の上に巨大な毒蛇の恐ろしい幻影が浮かび上がり 依然として弱っているものの、休息(誤字)に回復に向かっているコルマックに、彼らは食事を与え、看病します。 →これはまあうちでは食事を取らないことによる長期疲労で表現できる。 p12 焦点具 精霊魔術に属する呪文は、投射行為に際して「焦点具」を必要とする。 さまざまな形態がある。 ルーンを彫り込んだ装身具や円形の彫刻物などが一般的。 石や骨、動物の爪も焦点具として用いられる。 焦点具は呪文の記憶の助け、象徴として理解されている。 焦点具に視覚・触覚あるいはその他の手段で接触することで、本人の持つ魔的エネルギーが解放、組成され、呪文が作動する。 →これ重要。おそらく背中の刺青のような意識できないものでは焦点具にならない。 POWを使用した呪付には関係ない。 精霊魔術の投射には、精神を集中するための焦点具、せりふ、ある種の型が決まった身体動作を伴う。 精霊魔術を実行しようとするものから焦点具を奪ったり、せりふや動作を妨害すれば呪文の投射は中断される。 片腕を失った場合、呪文を投射する成功率は半減する。両腕を失ったものの成功率は4分の1となる。 本人が知っている呪文について、片腕を失った後に再び学んだ場合、このペナルティは適用されない。 →知らない呪文だとどうなのかとか、学ぶとは何を意味するのか不明な一文。 →おそらく身体欠損してから精霊戦闘して獲得した呪文の投射率はPOW×5でよいということ。 →声が出せないとどうなるか、焦点具がないとどうなるかが定義されていない。 ■上級ルール p19 志願者が条件を満たしているようであれば、祈祷師はこの時期に弟子を持つのが好ましいかどうかを、自分の魔精にたずねます。 →ここでも「時」が問題にされている。やはり魔術の時と場所は選ぶべき。 祈祷師助手は、本人の魔精を覚醒させる一連の儀式を通して、祈祷師になる。 魔精とは人間の魂の一部で、誰もが持っていますが通常は眠っていて、その存在を意識することはない。 魔精を覚醒させる(すなわち意識化に呼び寄せる)には特別な試練と儀式が必要。 一度覚醒した魔精は二度と眠らせることができない。祈祷師から引き離すこともできない。 → 世界への視点の変化と解釈するとわかりやすい。 覚醒した魔精は精霊界へと侵入し、主人と精霊界を結合させる役目を果たす。 魔精は主人に強力な力を与える一方で、彼の身を危険な精霊界にさらす。 祈祷師は物質世界と精神世界を同時に生きることになり、両方の世界が背にのしかかる負担に耐え、常に2つの世界に注意を払う必要がある。 → これを適切にゲーム中に表現すると処理が重い。が、世界を掘り起こしていく作業としてはあったほうがよい。 p20 《精霊召還》ロールを行う。これに成功すれば、魔精を呼び覚ましたことになる。魔精は主人が犠牲にしたPOWと、3D6のINTを持つ。ロールに失敗すれば魔精は覚醒しない。 →不明技能《精霊召還》。おそらく〈召還〉。 「悪なる男」POW35 2D6戦闘ラウンド。最大36MP。 祈祷師は生活の90%に相当する時間を祈祷師としての公務に費やさなければならない。 覚醒した魔精はふだんは精霊界に棲むため、祈祷師は物質界と精霊界の両方に身をさらしていることになる。 別世界生物の目に見えない襲撃をいつ受けるかわからない。 これらの生物は物質界に姿を現すことなく、精霊界の中で彼を襲うことができる。 実際に起こる確率は、24時間につき、彼と魔精のPOWを合計したパーセンテージ。 現れる生物は「精霊界における遭遇表(p105)」(特に周辺部の表)から求める。 →これらの襲撃は週単位成長ルールでは必ず貢献ロール1回を名声値〈精霊界〉に裂かなければならないことを意味する。 名声値〈精霊界〉 POW、〈浄化 召還 伝承知識(トーテム) 、あとなんだろう。 武器に関する技能は、現在の成功率とDEX×3のいずれか高いほうが上限。 運動分野技能は、現在の成功率とDEX×5のいずれか高いほうが上限。 近く分野技能は、現在の成功率とINT×3のいずれか高いほうが上限。 →このルールは「現在の成功率」が変な抜け道になっている。 →結局「どれぐらい精霊界に意識を向けていなければいけないか」が問題なのだから、それを表現したほうがよい。 →すべての技能成功率から魔精のPOWをマイナスぐらいか?煩雑だなあ。 精霊の支配・捕獲 POWと同じ速度で移動するゴーストや呪縛呪付がイメージを画一化してしまっているが、そもそも精霊は「動く」「動かせる」とは限らない。場所そのものの精霊や植物の精霊などはその場から動かないとしたほうが面白い。 同じように支配した精霊は、持ち歩けるとは限らない。加護と制約のように、相手を「名で縛って」指示に従わせるほうが妥当か 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/sengokutougekipc/pages/106.html
◆勢力 姫 ◆カードランク A ◆レベル レベル1 ◆強化ポイント 0 ◆特技 美貌 ユニットの最大兵力が増加する。 ◆秘技 敬虔な祈祷 ◆秘技コスト 6 撤退している味方ユニットを全て復活させる。【代償】秘技使用後、自身は撤退する。 ◆出身地 越前(福井県) 明智光秀の娘。細川忠興の正室。 父・光秀の謀叛・本能寺の変によって過酷な境涯に立たされたガラシャは、夫の留守中に教会へと赴き、キリスト教の教義に救いを求める。 屋敷で侍女・マリアからキリシタンの洗礼を受け、恩寵を意味する洗礼名・ガラシャを授かった。 キリスト教に深く帰依したガラシャは、難民の救済や布教活動などに努め、多くの民を救ったと伝わる。 ◆イラストレーター 叢雲 秘技効果 カテゴリ 闘魂 武勇 智謀 統率 速度 兵力 効果時間 その他 復活 6 - - - - - 瞬間 撤退中の味方ユニットを全て復活させる。復活した味方ユニットは兵力が100%の状態で復活する。自身が撤退する。 2014年11月19日に秘技コストが4→6へ変更。 解説 備考
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/6491.html
登録日: 2012/01/28(土) 16 35 34 更新日:2024/08/27 Tue 17 00 10NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 L型 ご主人様 クロスオーバーの申し子 ゼロのルイズ ゼロの使い魔 ツンが途中から行方不明 ツンデレ ピンク髪 メインヒロイン ル(略)ル ルイズ レモンちゃん ロリ 三大釘宮病 妹 小さいルイズ 愛すべきバカ 才人の嫁 暴力ヒロイン 末っ子 色ボケ 虚乳 虚無 貧乳 貧乳←実はDカップ ←なん…だと……? 貴族 釘宮理恵 釘宮病 長いフルネーム ルイズ! ルイズ! ルイズ! ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああ! この、バカ犬ーーー!! 『ゼロの使い魔』のヒロイン。 CV.釘宮理恵 ▽目次 ◆概要 ◆人物 ◆サイトとの関係 ◆人間関係 ◆虚無の担い手として ◆ルイズが使う虚無の魔法 ◆余談 ◆概要 トリステイン魔法学院に通う少女。年齢は地球換算で15~16歳。 桃色のブロンドヘアが特徴で、同年代と比べ、胸が小さい事にコンプレックスを抱いている。 だがカップサイズの計算ではDカップである。※備考 実際1巻の描写だとルイズの身体への批判は胸と言うよりも背や華奢に過ぎる身体(*1)への物や比較対象が同計算でFカップなキュルケな物が目立つ(*2)。 そもそも絵師が勘違いしてド貧乳にしてしまった風な事を自供してるし シャナや三千院ナギと共に、ツンデレと釘宮理恵の知名度を上げたキャラ。 ルイズをよく知らない人でも、ルイズたんのコピペを目にした事があるのではないだろうか。 ◆人物 性格は所謂ツンデレ。努力家で、普段は意地を張っているが、心優しい一面もある。 名門ラ・ヴァリエール公爵家の三女として生まれ、貴族の誇りは人一倍強い。 厳しい母カリーヌと長女エレオノールのことを心から恐れているが、次女カトレアのことは「ちぃ姉さま」と呼んで帰省のたびに甘えるほど慕っている。好物はハンバーグ、焼き鳥、はんぺんのバター焼き。 また、幼少時代を共に過ごした王族のアンリエッタとは友人で「姫さま」と呼ぶ。 しかし、名門の出身ながら魔法が上手く扱えず、周りからは「ゼロのルイズ」と馬鹿にされていた。 二年生への進級時、使い魔召喚の儀では人間の平賀才人を呼び出してしまい、渋々契約を交わす。 この出逢いが2人とハルケギニアの運命を大きく変えていくことになる。 ※以下最新刊のネタバレを含みます ◆サイトとの関係 当初は使用人以下の扱いをしていた。 具体的には部屋の掃除などの雑用や、食事の際に床で食べるよう命令したり、自分の下着を洗わせたり、着替えの手伝いをさせるなど。 一部ご褒美も混じっているが気にしない。 しかし、アルビオンにて婚約者のワルドが裏切った際、サイトが命懸けで自分を守ってくれた事で、サイトに対する気持ちが変わっていく。 そしてレコンキスタとの戦いや、魅惑の妖精亭の任務などを乗り越え、サイトとの絆が深まり、遂には恋を抱いた。 が、そこはツンデレ。「貴族の自分が平民の、しかも使い魔を好きになる筈がない」と、自分の気持ちを否定し続けていた。 だが、戦争でサイトが自分の身代わりとなり、死亡したと聞かされた際は全てに絶望し、同時に自身が深くサイトを愛していたことを自覚する。 そして、学院の塔の屋上から飛び降り自殺を謀ろうとした。が、メイドのシエスタに叱咤され、サイトが生きていることを信じ、2人でサイトを探しに行く。 (この件もあり、ルイズはシエスタの事を恋敵として認めている。) そして、サイトと無事に再会した後は、言葉に出さないまでも、「好き」という気持ちを表すようになっていく。 最近ではお互いに裸を見せ合い、初めてを捧げる覚悟をしていたが、ハルケギニアの緊急時という事で自重した。 長い戦いの末にサイトと確かな絆を築いていた、というか最早ただのケンカップルと化していただけに、その顛末が永遠に観られなくなってしまったのは残念である。 と、一時は絶望視されたがゼロの使い魔本編の代筆による完結により、ついにそのラストが披露された。 虚無にまつわる悲劇の歴史とハルケギニアの危機、才人とルイズの最後の決断……それは貴方が最終巻を手に取って確かめてほしい。 また、アニメ最終作では別のエンディングを迎えている。賛否の大きいFではあったが、この終わり方だけは評価が高かった。 ◆人間関係 才人が召喚されるまでは学院の中で孤立していたが、以後は様々な事件や冒険を経て友人が増えていく。 キュルケとは実家の縁もあって対立していたが、後に正式に和解した。 シエスタやティファニア、特にアンリエッタとは才人を巡るライバル。だが毎回才人が割を食う。 中盤以降はゼロのルイズの蔑称もほとんどなくなり、ほかの生徒たちともうまくやっているようである。 ◆虚無の担い手として サイトが伝説の使い魔「ガンダールヴ」として契約されたのは、ルイズ自身が伝説の魔法「虚無」の担い手であった為。 水のルビーと始祖の祈祷書を手にし、戦いの中でその力が覚醒した。 今まで魔法が上手く扱えなかったのは、火、水、風、土のいずれにも属さない虚無が原因だった。 虚無に目覚めてからは簡単な魔法であれば使えるようになる。 しかし、強大過ぎる虚無の力に思い悩み、アンリエッタからは「もう使ってはならない」と警告されるが、 今までゼロのルイズと馬鹿にされてきたこと、そしてトリステインの為に役立ちたいという想いで、力を使うことを決意した。 ……しかし才人へのおしおきでは遠慮なくエクスプロージョンをぶちかます。 ◆ルイズが使う虚無の魔法 爆発(エクスプロージョン) ルイズが初めに目覚めた呪文。何もない空間から爆発を引き起こせる。 虚無に目覚める前、魔法で失敗する度に爆発していたのはコレが原因。 スペルは 『エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴェエル・カノ・オシュラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……エクスプロージョン」 と、まあ、かなり長い。 完成すれば空中艦隊を一発で壊滅させることもできるが、もちろん実戦のさなかにこれだけの詠唱を唱えきる暇がそうそうあろうはずもない。 その時間を稼ぎ、呪文を唱えている主を守る者こそがガンダールヴである。 幻影(イリュージョン) 幻を見せる呪文。アルビオンの空中戦で敵を誘導する際に活躍した。 解除(ディスペル) 対象に掛けられた魔法を打ち消す呪文。 瞬間移動(テレポート) 読んで字の如く一瞬で移動する呪文。詠唱時間の長さに比例して移動距離が伸びる。 世界扉(ワールド・ドア) アニメFで習得した魔法。 離れた場所を繋き自由に行き来することが出来る。 ルイズがサイトに逢いたい想いが強まり、この魔法を習得した。 原作ではロマリア教皇がこの魔法を習得している。 ○この他にも虚無に目覚めて後は簡単なコモンマジックならできるようになった。 ちなみに、使い魔召喚の際のサモン・サーヴァントと契約のコントラクト・サーヴァントの魔法はメイジなら誰でも使えるコモンマジック。 この際にルイズが唱えたことで有名な「宇宙の果てのどこかにいる、私の使い魔よ~」は、アニメオリジナルで原作にはない。 ※備考 こちらの項目の計算式に当てはめた場合、トップバストとアンダーバストの差は約12.4cmで、A~Bカップ位になる。 なお、ゼロの使い魔の初期プロットではCカップと設定されていた模様。 二次創作では、召喚の儀式の際に才人を別キャラに置き換えるだけで簡単にクロスオーバーを作れるためにかなりのヒットとなった。 最盛期は召喚されていない他作品を探すほうが困難だったほど(たまにタバサやティファニアが召喚するパターンもある)。 例を上げればヤン・ウェンリーを召喚したせいで銀河帝国がブチ切れたり、南斗鳳凰拳の聖帝を召喚して振り回されたりは可愛いほう。 ご立派様を召喚して絶望したり、とらを召喚して食われるんじゃないかと気絶したりと散々な目に会うことも多い(しかし最大の被害者はギーシュ)。 ◆余談 彼女のモチーフは、実在するフランス史のルイズ・フランソワーズ。 べ、別に追記・修正なんてしてほしくないんだからね! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ちいさいにゃんにゃん -- 名無しさん (2014-01-08 12 18 16) ↑なんか最近いろんな有名キャラに同じ様なコメント見かけるが同一人物か? つーか荒らし? -- 名無しさん (2014-01-23 03 16 30) ハルケギニアの常識やら本人の境遇やら、はたまたサイトの対応やらとにかく色々あるけど、それでも原作初期のコイツを好きになれる奴はどうかと思うのが個人的なところ・・・まさかデレ期に入るとあそこまで破壊力が増すとは思わなんだ。 -- 名無しさん (2014-01-23 21 22 53) 逆DVなんて言葉あるのか。確かDV被害の2割くらいは女→男だったりするらしいんだがな 男→女のイメージが強すぎるのか -- 名無しさん (2014-01-23 21 25 25) わざわざ、ここのコメント欄を荒らす必要がどこにあるのか -- 名無しさん (2014-02-26 12 28 07) 未完か、 -- 名無しさん (2014-02-26 14 38 33) くぎゅぅぅぅ(°ε°) -- 名無しさん (2014-05-15 04 54 16) ああ、ゼロ魔また見たくなってきたわ。 -- 名無しさん (2014-09-04 21 59 43) 完結…出来ないんだよな…… -- 名無しさん (2014-11-24 23 16 18) 意外とルイズの覚えた魔法って少なかったんだな -- 名無しさん (2014-11-24 23 16 58) 主人公とヒロインは才人×ルイズ位イチャついてほしい ハーレム展開がキツくなるけど(実際ゼロ魔でも終盤は無理矢理つて感じだったし) -- 名無しさん (2014-12-15 23 06 25) 才人とルイズってそんなイチャついてたかな? -- 名無しさん (2015-03-21 18 21 26) ↑イチャつくシーンはそれなりにある。だが才人が調子に乗ってルイズを怒らせたり、誰かの邪魔が入って台無しになるのがパターン -- 名無しさん (2015-04-22 23 10 29) 最初期はセクハラ紛いのことや強姦未遂だったからあんまり暴力ヒロインとは感じなかったな。当たり前だろそれくらいの反撃って思ってた -- 名無しさん (2015-05-01 23 49 34) ほかのヒロインがだいたい才人に優しいためにルイズの暴力性が際立っちゃってるんだよな -- 名無しさん (2015-08-28 23 44 56) ひとつだけ言えるのは、ルイズの声は釘宮以外には考えられない -- 名無しさん (2015-10-02 11 04 29) ↑14 自己紹介オッスオッス! -- 名無しさん (2015-11-25 08 27 01) 一年以上前のレスになに言ってんだこいつ? -- 名無しさん (2015-11-25 09 55 43) 脱いでもすごくない -- 名無しさん (2016-04-23 21 42 52) 依頼のあったコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2017-01-28 21 31 36) 性格に問題があるけど周りが基本馬鹿にしてたり家族も次女以外支えてくれる人がいないから精神的に子供なんだろうな -- 名無しさん (2018-09-10 22 46 51) コイツで抜くと貧乳キャラとしてはかなり濃い精子が出る -- 名無しさん (2018-11-09 20 20 15) 初期はサイトも暴行未遂などやばいんだが、ルイズが惚れてからは理不尽な暴力展開もあるのでむしろそっから好み分かれると思われ。自分は中盤以降のやきもきしてるのもらしくていいと思うけど -- 名無しさん (2019-04-22 15 25 37) サイトの気持ちに応答するのをビビる卑怯者のクセに、恋愛以外のつながりでサイトをくくりつけて安心してる卑怯者なのがな… -- 名無しさん (2019-07-13 19 35 47) 性格に難はあるぶん、男にとってあらゆる面で”理想的すぎる”ヒロインであるティファニアなどとの対比になっている。良くも悪くもルイズは人間らしいヒロイン -- 名無しさん (2021-11-23 20 57 09) Gガンダムの東方不敗を召喚したのは彼の逆鱗を買い尻を叩かれ修正されていた。読んでてルイズに対してはこれくらいやってもいいくらいだと俺は思った。 -- 名無しさん (2022-08-08 22 45 03) アニメはドタバタコメディ的な構成のためか、原作よりもかなり空気読まずに才人に暴力振るってる。特に2期はアニオリがほとんどだから余計に性格に難がある。 -- 名無しさん (2023-01-13 12 09 47) カップ計算でDだとしてもかなり小柄だから、結局見た目的には貧乳なのは変わりないんじゃね -- 名無しさん (2023-02-18 16 35 24) 今でも「あの作品のキャラがルイズに召喚されました」スレのまとめはちょいちょい見に行く -- 名無しさん (2024-03-27 23 13 21) ↑2カップ計算はアンダーとバストの絶対値の差で求められ身長は計算に入らない(Aカップの人物が1.5倍に拡大すればCカップに、2倍ならEカップになる)から、小柄な分だけ見た目的にはより巨乳に見えるはず -- 名無しさん (2024-04-13 02 19 24) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/107.html
前ページ次ページゼロの影 其の九 奇跡の草原 ウェールズの眠る棺をどうごまかすか頭を悩ませたルイズだったが、ミストバーンから彼が夜眠ることにすればいいと言われ即座に採用した。 彼について無数の疑問があるため今更指摘する輩などいない。「だってミストバーンだから」と言えば皆何となく納得するだろう。 問題を一つ片付けたルイズだったが顔は晴れない。次に待ち構えているのは比べ物にならない難題だ。 アンリエッタに何が起こったか報告しなければならない。しかも、ウェールズは生きているという事実を隠した上で。 「やっぱり姫様にだけは話した方がいいんじゃないかしら」 とルイズは何度か言ったが拒絶された。ウェールズの意志に任せるつもりらしい。 王宮にてアンリエッタに謁見したルイズは事の次第を説明した。 手紙を取り戻したと知っても彼女の顔は暗い。ウェールズの“死”が彼女の心を責め苛んでいる。 「裏切り者がウェールズ様を殺そうとするなんて……よくぞ止めてくれました、ルイズ」 ルイズが何か言おうとすると沈黙を守っていたミストバーンが重々しく告げた。 「ウェールズは勇敢に戦った」 それを聞いたアンリエッタは覚悟をにじませた目で、 「そう、ですか。……ならば私も勇敢に生きようと思います」 と告げた。 いつものように授業が始まる前、いきなり休んだルイズにクラスメートが群がり何があったのか口々に尋ねた。 「噂によると魔法衛士隊隊長と一緒に出かけたらしいね。もしかして愛の逃避行とか?」 「まさか! ゼロのルイズがそんなロマンティックなことに挑戦するわけないじゃないか。相手を爆破して終わるよ」 すっかり爆弾魔扱いだ。 「胸がゼロでなくなる方法を探しに行ったんじゃない?」 「あり得るな。そして失敗したわけか」 「ああ可哀想に、私の胸で泣いていいのよ? 前よりひどくなってるじゃない」 好き放題喋る彼らにルイズは憤死寸前だ。退屈な者達は面白そうな話題があるとすぐ飛びついてしまうものらしい。 「う、うるさいわね! 王宮にお使いに行っただけよ! どうしても知りたいならミストバーンに訊いて!」 「んな無茶な」 即座に生徒達は首を振った。 彼らが大人しく席に戻ったところでコルベールが到着し、授業が始まった。 妙な物体を机に置いた彼は『火』の系統の特徴について説明するよう言った。『火』の系統を得意とするキュルケがやる気のなさを全身から発散させながら答える。 「情熱と破壊が本領ですわ」 コルベールはにっこりと笑い頷いた。 「そうとも! しかし、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと思います。使いようによってはいろんな楽しいことが出来るのです。破壊や戦いだけが『火』の見せ場ではない」 コルベールは続いて妙な物体を動かし始めた。情熱に目を輝かせる彼とは対照的に、生徒達は説明を適当に聞き流している。 油と火の魔法を使って動力を得る装置らしいが、魔法を使えば済むため重要性が感じられない。 「魔法はただの便利な道具ではない。『火』が破壊のためだけの力ではないように、使いようで顔色を変えると思います。伝統にこだわらず様々な使い方を試みるべきですぞ」 信念に満ちたコルベールの言葉に対して生徒達の反応はどこまでも鈍かった。 ルイズもあくびを噛み殺しながら何となく使い魔の方を見る。やはり彼は真面目に装置の仕組みについて鏡に書きこんでいた。 「いけすかないツェルプストーが使うんだもん、暑苦しい『火』は破壊にしか使えないわよ」 呟いたルイズには意外なことに、答えが返ってきた。 「火は再生をも司る」 主の象徴たる火の鳥――不死鳥は灰の中から蘇る。炎による浄化と再生を体現する存在だ。 「私の使う暗黒闘気こそが、破壊のためだけの力なのだろう」 淡々と事実を告げる口調にルイズは首をかしげ、周囲の人間に聞かれないよう声をひそめた。 「何言ってんの? あんたの能力でウェールズ様を救ったんでしょ。だったら破壊以外にも使える立派な力だわ。……洗脳とかじゃなくて」 今度は彼の方が理解できなかったらしい。 「人間は正義の光とやらを好むと――」 「それはあんたの戦い方がアレだからよ。先生も言ったばかりじゃない、使いようだって。建設的なことに使えば……どう考えても無理ね」 可能性を追求しかけて二秒で諦めた。大魔王の部下に無茶な注文だと自分でも思ってしまう。 その後ルイズはオスマンから呼び出され、『始祖の祈祷書』を渡された。 王女とゲルマニア皇帝の結婚式の巫女に選ばれたため詔を考えなければならない。 意気込んだもののすぐさま挫折した彼女は使い魔に助けを求めかけて即座にやめた。 口があるのかわからないような相手に詩的な表現を期待するのは間違っている。比喩を用いるとしても「花でも摘むように首をはねる」など傾向が偏っているだろう。 どう考えても祝福の言葉など持っているとは思えない。 うー、あー、と妙な声を上げながら床やベッドを転げ回る彼女の奇行にも一切関せず読書に耽っている。その傍らには数冊の書物が置いてあり、扱っている内容はバラバラだ。 今読んでいるのは始祖ブリミルについての本らしい。 約六千年前に活躍したハルケギニアで神の如く崇拝される偉大なメイジであり、その生涯や魔法は謎に包まれている。 魔界の魔法と始祖が操ったとされるものには似た部分があるため興味をそそられるところだが、書物は伝説の偉人として扱っており、どこまで確実かわからない。 何しろ彼の魔法で天地までもが鳴動したというのだ。神格化され大げさに伝わっている部分もあるだろう。 天空を思わせる模様が刻まれた表紙の本を閉じ、新たな一冊を手に取る彼を見てルイズの血管は切れそうになった。 (ななな何よわたしがこんなに苦労してるってのに自分は優雅に読書なんていい身分じゃない。そんなに大魔王さまのお役に立ちたいってわけ!?) と憤ってみたところで真面目に肯定されるに決まっている。 ますます釈然としないものを感じたルイズはささやかな抵抗を試みた。彼を連れて中庭に出た後、質問攻めを始めたのである。 青空の下に連れ出して少しでも開放的な気分にさせ、情報を聞き出そうというのだ。 まずは返事する確率の高い戦闘に関する質問――特に呪文について尋ねた。 こちらが知識を提供するだけでは不公平だ。前々から彼の世界のことも知りたいと思っていた。 すると、ほとんど喋らない彼の代わりに大魔王が質問に答えた。 一般的な火球呪文や氷系呪文といったものから天候を操る呪文まで様々なものを説明され、ルイズの目が輝く。 ミストバーンへの質問の大半は沈黙に撃墜されたが、答えが返ってきたのは大魔王の偉大さについての質問だった。 普段の無口さが嘘のように滔々と大魔王の魅力を語られた彼女はうっかり魔王軍、それも近日本格結成予定――最短でも数百年後だが――に入ろうかと考えかけ、我に返った。 とても面白くないものを感じる。自分はその五十分の一も褒められていないというのに。 数千年の間仕えてきたと誇らしげに語られたルイズは妙な疲労を覚えた。 (何かしら、このもやっとした気持ち……) 気を取り直して情報を探るべく質問を続け、ずっと気になっていたことをぶつける。 「あんたがいた世界――魔界って太陽が無いんでしょ? どうして?」 答えたのはやはり大魔王だった。 かつて世界は一つであり、人間と魔族と竜族が血で血を洗う戦いを繰り広げていた。 延々と続く争い憂いた神々は世界を分け、別々に住まわせることにした。脆弱な人間は地上に。強靭な体を持つ魔族と竜族は魔界に。 魔界にはあらゆる生物の源である太陽がなく、荒れ果てた大地が広がっているだけである。 ならば魔界は真っ暗なのかと尋ねると否定された。 数千年前に作られた人工の太陽が光源となり魔界を照らしているが、昼間でもかすかな光しかなく生命を育むほどの暖かさは無いのだという。 地上で見るものと同じ太陽を作り出すことはできず、彼らは太陽を手に入れようとしている。 ルイズは話を聞いてうーん、と考え込んだ。 馬の遠乗りで丘に登り気持ちのいい風を感じることも、光を浴びながら美味しいお弁当を食べることもない世界。 花々の無数の色彩や木々の緑、空の青も雲の白もない世界。 頭で理解しても実感は湧かない。 もし魔界に太陽があって地上と同じ豊かな地であれば、大魔王は何を望むだろうか。 試しに尋ねてみると「花見酒というのもいいかもしれんな」と笑いながら言われたが、どこまで本気かわからない。 話に熱中していたルイズは声の大きさに気を遣うことを忘れていた。 そのため、メイドの一人――シエスタが聞き耳を立てていたことに気づかなかった。 謎が多いミストバーンについての情報は生徒だけでなく使用人も欲しがっている。 彼女は舞踏会の時に聞いた会話を厨房の料理人や仲間に知らせたが、一笑に付された。「見た目からして闇っぽいのに太陽を求める奴に従うわけないだろ」というのである。 嘘じゃないと言い張っても聞き入れられなかったシエスタは意気込んでさらなる情報を集めようとしていた。そして―― 「きゃああっ!?」 気配を感じたミストバーンの爪に危うく刺されかけた。皮膚一枚を隔てたところで奇麗に止まっているのは見事としか言いようがない。 「すごい、加減がずいぶん上手くなったのね。レベルアップしたんじゃない?」 使い魔の影響を受けて感覚が麻痺してきたようだ。 「……私が?」 彼は意外そうに己を指差した。褒められて反応に困っているらしい。 間違った方向に心温まる会話を繰り広げる二人にシエスタがおずおずと詫びる。 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 太陽についてお話ししているのを聴いてしまいました……」 盗み聞きされたと知ってルイズは渋い表情になったが、そもそもこんな場所で大声で喋っていたのが悪い。 シエスタが再び丁寧に謝罪し、お詫びの気持ちとして故郷に行くことを提案した。 「すごくきれいな夕焼けの見える草原があるんですよ。おいしいシチューも」 その草原はあまりの美しさから『奇跡の草原』と呼ばれたこともあるらしい。 ルイズは迷ったが、素晴らしい光景を見ればインスピレーションが湧いて詔の文面が思い浮かぶかもしれない。 ミストバーンも主の目の保養になればと承諾し、彼らはシエスタの故郷――タルブの村に行くことに決めた。 実際の夕焼けを目にしたルイズは言葉を失い、ただ見とれていた。 草原は燃える炎の色に染まり、沈みゆく太陽は普段見るものの何倍も美しかった。 その輝きは暖かく優しく照らすだけではなく、弱い者を容赦なく焼き尽くすようにも見えた。 奇跡の名に恥じぬ凄絶な光景を大魔王も気に入ったようだ。 さらに、反対側の山から昇る朝日も別の美しさがあるのだと言う。 「この光景こそが宝物だって思うわ」 食事を告げに来たシエスタがしみじみとしたルイズの言葉に嬉しそうに頷く。 いつものように沈黙しているミストバーンは主と地上に来た時のことを思い出していた。 『何千年後になるかはわからぬが……あの太陽は魔界を照らすために昇る』 偉大なる主は手で太陽を掴み取る仕草をしながらそう語った。 さらに思考は過去をたどり、主との出会いまでさかのぼる。 『お前は余に仕える天命をもって生まれてきた』 全てはそこから始まった。 どれほど永い時を生きても、何があっても、その言葉を忘れることはないだろう。 ルイズとミストバーンと大魔王は夕陽を見る間、確かに同じ思いを共有していた。 興奮も冷めやらぬままシエスタの家で名物のシチューを食べたルイズは目を輝かせながら舌鼓を打った。素朴ながらも貴族のぜいたくな舌を満足させるほどの味らしい。 シエスタが恐る恐るミストバーンにも薦めたが、食事の必要が無いと断られ肩を落とした。だが、彼女が落ち込んでいるとなんと大魔王その人が語りかけてきた。 「数千年生きればいくら贅を尽くした食事でも飽きもする……そのような料理を味わってみたいものだ」 たちまちシエスタの顔が明るく輝いた。 「じゃあ作り方教えますね! 実際に作る所を見た方がいいですよね……ミストバーンさんも一緒に作りませんか?」 ルイズがシチューを噴き出しそうになり、かろうじてこらえる。慌てて飲みこんで必死の形相でシエスタを止めた。 「何言ってんの!? こいつが料理なんてドラゴンが裁縫する方がまだマシだわ!」 「やってみなければわからないじゃないですか。世の中には一か八かの賭けに勝ち続け奇跡を起こしまくりカウンターで一発逆転し続ける方もいますから」 「そういう問題じゃないわよ!」 彼は暴言にも動じず主からの指示を待っている。 「侍女達に作り方だけ教えればよい……と言いたいところだがあえてお前に作らせるのも面白いかもしれんな」 (よっぽど退屈してるのかしら) 腹心の部下がやり遂げると信じているのか、奮闘する様を見て楽しもうと思っているのか――ルイズにはどうも後者に思えてならなかった。 「じゃ、決まりですね。最高の一品を作りましょう!」 「たまには逆らいなさいよ……」 その忠誠心の十分の一でいいから自分に向けてほしいと思いながら、ルイズはテーブルに突っ伏した。 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/icinm4/pages/68.html
グレートレイリル及びウェイランド合同王国 FrontPage グレートレイリル及びウェイランド合同王国 グレートレイリル及びウェイランド合同王国とは グレートレイリル及びウェイランド合同王国は、ディルタニア大陸西方のグレート・レイリル島、ウェイランド島、及び幾つかの諸島を領土とする立憲王制・議会制民主主義をとる国家。 目次 グレートレイリル及びウェイランド合同王国グレートレイリル及びウェイランド合同王国とは 目次 設定 国名 歴史 政治議会 内閣 司法裁判所 王室 外交 経済 代表的な都市 住民 文化宗教玲国国教会(パロンシュレイヒ教国王派/サウスウェル派) ラグナレクの証人西方教団(パロンシュレイヒ教教皇派/カトリキア) パナケローク教 その他の宗教 軍事近衛師団 王立陸軍 王立海軍 国防空軍 戦略空軍 その他の準軍事組織 外部リンク 設定 国旗 #ref(添付ファイル名,center) 国の標語 Nemo me impune lacessit (何者も我を傷つけることはできない) 国歌 God save the King (神は王を護り給う) 公用語 玲語(地方公用語あり) 国家元首 イェリック・レオン3世 首都 オルタルス 最大都市 オルタルス(1,050万) 面積 約20万平方キロ 総人口 約1億3,000万人 公式略称 合同王国(CK)、大玲王国、玲国 英語国名 Confederated Kingdom of Great Leilir and Weiland 通貨 CKポンド(£) 国名 国名は、グレートレイリル島の三王国(ミッドランド王国、ヨーランド王国、ヴァンランド王国)及びウェイランド王国の四王国の王位がウォーラス家(現王家)によって統一され、合邦が行われた事に基づく。政府はウェイランド独立紛争に絡み、近年自国を単に合同王国(Confederated Kingdom)とのみ称する。 歴史 関連する歴史項目 政治 政治体制は立憲君主制、議院内閣制であり、議会法と普遍議会法によって規定される輔弼議会及び摂政法によって規定される摂政委員会(内閣)を持つ。現在政権を執っているのは保守党である。また輔弼議会、摂政委員会、最高法院による三権分立体制が確立している。 議会 議会は上院(貴族院)と下院(庶民院)の二院制で、両院を併せて輔弼議会と呼ばれる。上院は貴族議員、司祭議員、勅任議員からなる。上院は選挙を経ない為、下院は多くの点で上院に優越している。上院には特に定数の定めは無いが議会に出席するのは毎回200人前後。下院は小選挙区制による直接選挙で選出され、定数は587人。 下院に議席を占める党派 党派名 議席数 説明 保守党 307 中道右派。資本家や農民を中心に支持 自由党 181 中道左派。都市部労働者階級が支持層も統一戦線に侵食されつつある 国民統一戦線 46 中道左派。“新自由主義”を謳い自由党地域で静かに支持を拡大 共産党 30 穏健共産主義。近年は福祉政策に重点 カトリキア民主同盟 18 ウェイランドに於いて支配的な宗教であるパロンシュレイヒ教教皇派(カトリキア)を基盤とする地方政党 無所属 5 内閣 内閣は正式には総体として、議会の元で大臣達が王に代わって政治を執り行なう摂政委員会とされ、その根拠法の根源は王国成立期から遠くない時期に制定された摂政(Regent)法にまで及ぶ。内閣は首相(摂政委員会議長)の補佐等の事務を行う摂政府、王室を管轄する王室庁の他に大蔵省、外務省など11の省(Ministry,Department)の長と管轄する特定の省を持たない国務大臣(現在は2名)、そして国璽と御璽の管理・事務を司る王璽尚書(Lord Privy Seal)から成る。~ 閣僚名簿 首相(兼摂政委員会議長) トマス・K・ハーディ 王室庁長官 ジャック・バケット 摂政府長官 アーノルド・A・ボルトン 王璽尚書 デイビット・クラーク 治部大臣 ハル・A・エルフィンストーン 大蔵大臣 アンドリュー・ダグラス 外務大臣 バーナード・プレストン 兵部大臣 アドレー・レインウォーター 工部大臣 ハンフリー・ロックウェル 文部大臣 トマス・F・バートリー 民部大臣 グラント・M・ファーガス 商部大臣 ジョッシュ・M・コリニー 司法大臣 ヒューゴー・ブランデル 逓信大臣 ジャスティン・フット 自治大臣 ランスロット・マクイーワン 国務大臣(ウェイランド問題担当) フィリップ・L・タウンゼント 国務大臣(女性問題担当) レジーナ・セヴァリー 司法 裁判所 玲国の裁判制度は基本的に三審制を取っている。通常の事件は郡裁判所(County Court)を始審裁判所とし、控訴院(Court of Appeal)を控訴審、王座裁判所(Crown Court)を終審として行われるが、郡裁判所と同等かそれ以下の下級裁判所としては裁判所から遠い地域を巡回して審判を行う巡回裁判所(Circuit Court)、小額の訴訟や軽微な犯罪に付いて審判を行う治安裁判所(Magistrates Court)、海難事件を取り扱う海事裁判所(Court of Admiralty)等がある。~ 更に、大逆罪・内乱罪・王権侮辱罪等の大罪や王室・貴族に関する訴訟の為の特別終審裁判所として星室庁(Court of Star Chamber)が存在する。前述の犯罪に於いては、基本的に王座裁判所を始審、星室庁を終審とする二審制で裁判は執り行われる。また、一般的に王座裁判所と星室庁は合わせて『最高法院』と呼ばれ下級審の指導的立場にあると解されている。 王室 王室は国王イェリック・レオン3世とその王妃マティルダ(共産革命で滅亡したディルタニア大陸の王室出身)を中心に構成されている。また王室に近い貴族の一部も王室庁の管轄下とされている。~ 王室名簿 イェリック・レオン3世王 マティルダ王妃 ロスニー公リチャード皇太子(王の長男) エリザベス王女殿下(王の次女) イバネス公クリスチャン王子殿下(王の次男) サセッタール公エドワード王子殿下(王の三男) アンザス公ピーター・ウィリアムス王子殿下(王弟) 外交 合同王国の外交は保守主義に立脚しており、第一義的に自国の国益を防護する事、また立憲君主制度、議会制民主主義、資本主義と言った国体を構成する諸制度・主義の擁護を主眼に置いている。共産主義そのものに関しては民主主義の原則に立って決して敵視するものでは無いが、過激な革命論に関しては警戒する立場をとっており、SISA及びその後身たるFCCに加盟し資本主義世界の防衛を機軸の一つとしている。 所属組織・締結条約FCC(フェイルデラシア諸国共同体) 経済 レイリルは先進工業国の一であり、特に伝統的に産業の基幹であり工業化の原動力であった石炭・鉄鉱石等の鉱業は今尚盛んであり、ハンスターシャー、オルトスターシャーと言った資源地帯は工業地帯に大量の原料を供給している。~ 資源地帯から送られてくる大量の原料は、主に自動車、機械工業、造船と言った分野で消費される。特に自動車工業は国家の基幹産業と位置づけられている。 代表的な都市 都市名 州名 人口 産業など オルタルス 大オルタルス行政区 750万人 首都。政治・経済の中心 ベルフォレスト アルトラム州 85万人 ウェイランド島最大の人口を誇る港湾都市 住民 主な民族はミッドランドを中心に居住する大陸系のアングリア人であるが、先住民族系のヨート人、ヴァン人、ウェール人もそれぞれの地方で大きな比重を占める。また各国からの移民も多く、技術移民が各先端企業で活躍している他、鉱山労働を行う者も多い。 文化 宗教 玲国国教会(パロンシュレイヒ教国王派/サウスウェル派) ミッドランド・ヴァンランドに於いて信仰の中心を占める、パロンシュレイヒ教国王派(サウスウェル派)の教会。教会法によって両地域での国教に指定され、保護を受けている。中世期に王権強化を推し進めたアルバート福音王によって出された“教皇に神の代理たる資格なし”の文句で知られるメルノーの勅令、及びそれに続く国王首長法によって既存の教会に代わるものとして設立された。サウスウェル派の名前は国王首長法を神学理論上で支持したトマス・レジナルドが当時サウスウェル大司教であった事に由来する。教皇の影響力を排除し王権の強化を図ると言う分裂の政治的な経緯から、教皇の宗教的権威を否定し国王を“正しき信仰の擁護者”=首長としているものの教義的には本質的な相違は見られない。また、“福音の契約聖典”や祈祷書、典礼については玲語訳された独自のものを使用する。現在は“万人の依り所”を謳い、政治的姿勢は穏健かつやや保守よりながら中道である。教会のトップはフォストベリー総主教。 ラグナレクの証人西方教団(パロンシュレイヒ教教皇派/カトリキア) 国教会成立当初既存の教会(カトリキア教会)は王権から弾圧されたが、レイリル島に比して先住キリア人由来の独自色が強く、パロンシュレイヒ教の敬虔な信徒が多かったウェイランドでは、王権を“侵略者”と見る風潮と相まって国教会に対する反発は強く、度々反乱が発生した。17世紀のピンゲン十字軍に呼応した夏至祭反乱の鎮圧に多大な戦費を支出した王国政府は遂に妥協を選択し、四旬節勅令によってウェイランド・ヨーランドに於けるカトリキア教会の存在を認める事となった。以降カトリキア教会はラグナレクの証人西方教団を正式な呼称としてシェイフェナリアに座する教皇の下に続く位置を占めている。契約聖典や典礼には公式にはフェナス語が用いられるなど教会本体との同一性はあるものの、教皇領から地理的に遠く離れていた事もあってキリア文化の影響を受け変質している部分も指摘されている。 パナケローク教 その他の宗教 軍事 国軍(Armed Forces of the Crown)の主要な任務は王国の国民、領域、主権及び権益を防守する事とされている。志願制。国軍は国王を最高指揮官とするが、勿論実際の権限は首相に委ねられており、首相は国軍の次席最高指揮官とされる。指揮系統は首相から兵相、統合作戦本部、各軍となるが、戦時には首相・兵相の他に外相・蔵相・治相・工相や主要幕僚、官僚を交えた常設の内閣諮問機関である帝国防衛委員会(CID,Committee of Imperial Defence)が実質的な意思決定の場となる。また軍種は四つあり、王立陸軍・王立海軍・国防空軍・戦略空軍(空軍を総称して王立空軍Royal Air Forceと呼称する場合もある)である。 兵部省~ 国軍の文民統制、整備管理監督を司る官庁。文民によって運営される部局や内庁を複数抱える。 統合作戦本部~ 四軍の効率的かつ柔軟な運用を目的に設立された実動部隊の最高機関。軍事戦略を立案し、首相及び帝国防衛委員会、国防省を補佐し助言を行う。統合作戦本部長、統合作戦本部次長、陸軍総司令官、第一海軍卿(海軍総司令官)、国防空軍総司令官、戦略空軍総司令官、海兵隊総司令官によって構成され、下部組織として様々な部局を保有する。現在の本部長はルイス・C・リッジウェイ海軍大将、次長はケビン・I・ブラッドリー空軍大将。 戦略偵察局~ 国軍最大の情報機関。対外軍事情報収集活動の他、軍に対する情報保安活動も実施している。他の情報機関と共に国家情報会議を構成する。 近衛師団 近衛師団は陸軍の管理下にあり、戦時には陸軍の一師団としてその指揮下に入るものの、形式上は独立した組織として扱われる。その歴史を数百年前の貴族の反乱時まで遡る近衛師団の設立当初の目的である“国王の警護”は王室庁王室警護隊に管轄が変更されて久しいが、その任務の名残はミュスター宮の防衛・儀仗任務として残っている。近衛師団は4個連隊を基幹に砲兵、工兵、飛行、輜重等の補助兵科の大隊を併せ編成されている。また、国内の地上部隊では平時でも師団(戦時)編成をとる部隊の内の一つ。 王立陸軍 王立陸軍はその特徴として基本的に平時に師団を編成せず、最上級部隊の殆どが旅団である事(但し戦時に備え師団司令部や補助部隊は軍管区と言う形で設置されている)、また全軍が完全に機械化されている事が上げられる。戦力は近衛師団を含め3個師団、4個機甲旅団、10個通常旅団、3個空挺旅団、8個航空隊等を主力とし総兵員数は約25万人を数える。部隊は本国軍(グレート・レイリル島等を管轄)とウェイランド軍(ウェイランド島を管轄)、独立部隊(特殊部隊や空挺部隊等)に配属されている。 ロイヤル=オルタルス師団~ 首都管区の防衛、及び緊急事態に於ける即応を目的としている部隊。近衛師団、第6師団(ウェイランド配備)と共に平時に於いても師団編成をとる。 王立海軍 国防空軍 国防空軍は本土の防空を担う組織として王立空軍を分割して形成され、本土に配備されている邀撃機や長距離対空ミサイル、防空レーダー、早期警戒機など防空システムを一貫して指揮している。戦力は邀撃戦闘機約250機、攻撃機約100機、早期警戒機・電子戦機など支援機約50機、防空旅団(レーダー、ミサイルなど地上防空戦力の複合組織)8個など。地域毎の4個航空軍と首都防空司令部に分かれる。 戦略空軍 王立空軍のうち戦略爆撃・戦略偵察を担う部隊に新規に設立された軍事衛星統括部門を合流させて設置された組織。戦力としては戦略爆撃機約30機など。崑崙空爆にも参加。 戦略攻撃旅団~ 熱核兵器搭載の弾道弾を保有しその運営を行う部隊。 その他の準軍事組織 王室庁王室警護隊~ 王室を最も近くで警護する為の部隊。全国の軍、警察から選抜された要員から構成され、警備兵3個中隊が交代でミュスター宮、避暑宮等の王室施設の警備に当たり、また警護兵(SP)が国王以下王室、政府要員の警護を担っている。 大蔵省強制執行部隊 外部リンク
https://w.atwiki.jp/yamiorica/pages/153.html
《アトランティスの祈祷師(きとうし)》 効果モンスター 星5/水属性/魚族/攻1750/守1750 このカードを素材として、水属性以外の融合・S・Xモンスターを特殊召喚する事はできない。 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 ①:このカードが召喚に成功した場合に発動できる。 デッキからこのカードと同じレベルを持つ「アトランティス」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。 ②:このカードが特殊召喚に成功した場合、このカードのレベル以下の自分の墓地の「アトランティス」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを特殊召喚する。 ③:このカードがリリースされた場合に発動できる。 デッキから「アトランティス」カード1枚を墓地へ送る。 水属性・魚族の半上級モンスター。 オリカ作成者 AFSC(Beller) このカードを使用する代表的なデッキ 【アトランティス】
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1686.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (13)術師の幻視 「王家の回し者め!わたくしのシャルロットを夫のように亡き者にするつもりですか!」 女性のヒステリックな金切り声が、魔法学院のペンタゴンの一角にこだまする。 「ミスタ・ウルザ、どう、あなたなら何とかできないかしら」 ルイズが期待を込めた目を向けているのは、その使い魔、異世界から召喚されたプレインズウォーカー、ウルザである。 「ふむ…、治療魔法にも多少の心得はあるが…、毒の治療となれば少々難しい」 「あなたでも治せないの?」 今キュルケの部屋にはタバサの母、タバサ、ペルスラン、ルイズ、ウルザがいる。 ウルザが診察をすることとなった経緯を説明するには、時を少し遡らねばならない。 ウルザはフネの建造が始まってからも、夜になればルイズの部屋に戻るという生活を続けていた。 夜はルイズが眠りにつくまで、机に向かい部屋を共にする。そして彼女が眠ってからは何処かへと出掛けていき、朝になればルイズを起こす。 主人の起床を見届けた後は建造現場か火の塔に向かいコルベールと合流し、ルイズは余った時間を潰して一日を送る。 というのが夏季休暇が始まって以来、ルイズ・ウルザ主従の生活サイクルである。 今晩も普段通り、いつもの時間にルイズの部屋へと戻ってきたウルザ。 彼を出迎えたのは、ルイズの部屋の隣から響く聞きなれぬ女性の声、そしてその部屋の前に立つ自らの主人と見慣れぬ老人の姿であった。 「これはなんの騒ぎかね、ミス・ルイズ」 「っ!ミスタ・ウルザ!あなたなら何とかならない?」 「…唐突にそう言われても、事情が分からぬことには返答できないな」 「ええと、それはそうね。わかった、最初から事情を話すわ」 「ヴァリエールさま」 ルイズが勢い込んで話し始めようとしたところで、オルレアン家の執事ペルスランが口を挟んだ。 「失礼ですが、こちらの御方は一体…御紹介願えませんでしょうか」 「ああ、そうね紹介しないとそっち側も話が進まないわね…。彼はミスタ・ウルザ、私の使い魔でとても強力なメイジよ。 ミスタ・ウルザ、こちらの方はミスタ・ペルスラン、タバサの家の執事をやっている方よ。ほら、握手」 「………ふむ」 勢い任せにルイズから握手を指示されて、ウルザは右手を差し出した。 これを見たペルスランも、事態を把握しきれぬまま、反射的に右手を差し出して握手をした。 「ヴァリエールさま、メイジの方を使い魔になさっているのですか?」 「ええそうよ、珍しいでしょ」 「は、はあ…」 「それと、メイジと使い魔は一心同体、先ほどの話をミスタ・ウルザにしてもよろしいかしら?」 「いえ、しかし、それは…」 「ミスタ・ウルザなら、タバサのお母様の心を取り戻せるかも知れないわ」 この発言にはペルスランも色めき立つ。 「そ、それは本当でございますかヴァリエールさま!?」 「彼は……ええと、そう、ロバ・アル・カリイエ!ロバ・アル・カリイエ出身なのよ。 だから私たちの知らない魔法も色々と知っているわ、もしかしたらそういった心の治療魔法を知っているかも知れないわ。 そうよね、ミスタ・ウルザ」 ルイズがウルザを強い意志の篭った目で見つめる。 「―その通りだ。事情は分からないが、力になれることもあるかもしれない」 「そういうことでしたら、お話しても構いませんでしょう…」 こうして、二人による説明が行われ、ルイズの願いによって婦人に対してウルザの診察が行われる運びとなった。 ウルザが顎鬚を撫でるようにして黙考している。 色眼鏡も相まって、その姿はまるで本業の学者のようである―――ルイズはウルザが著名な学者でもあることを知らない。 「大丈夫よ、ミスタ・ウルザにはあなたのお母様の心を取り戻させることが出来ないか、診てもらっているだけだから」 ウルザへの事情説明を終えた二人は、早速ウルザを連れてキュルケの部屋を訪れた。 すぐさま診察を始めようとするウルザに、無表情な中にも戸惑いの色を浮かべるタバサが止めに入った。 事情が分からず混乱するタバサをルイズが引き剥がし、そうして、これまでの経緯を語って聞かせる。 「だから、もう少し待って。多分そんなに時間は…」 ウルザを振り返ったルイズ、使い魔の手にはなぜかヒルがおり、それを見た婦人が絶叫していた。 見なかったことにしてタバサに向き直る。 「兎に角、危害は加えないわ」 「何度も試した、それでも…」 悲しそうな表情のタバサが呟く。 ルイズはタバサと長い付き合いでもないが、彼女のこういった表情を見るのは初めてだった。 その分だけ、治療の可否に期待がかかる。 「大丈夫、ミスタ・ウルザなら、こちら側のメイジが知らない方法で、きっと治してくれるわ…」 そう言いながらルイズはタバサの肩を抱く。 タバサの体は、ほんのりと温かかった。 一通りの診察を終わらせたウルザが一同のもとに戻ってくる。 貴族の子弟が生活するといっても、学院の寮の一室。 四人の人間が固まって話すとなるとやはり手狭ということで、診察結果は廊下で話されることとなった。 「まず、いくつかの質問をさせてもらいたいミス・タバサ。 君の母上が呷られた毒杯には水魔法の毒が混入されていたそうだが、それは確かかね?」 神妙そうにこくりと頷くタバサ、横ではペルスランも頷いている。 「では、それが水魔法の毒だと伝えたのは誰かね?」 「……以前、母さまを診察した、水魔法使いのメイジ」 タバサのこの発言を更にペルスランが補足する。 「奥様のお病気を治そうと、国中の高名なメイジをお招き致しました。その方々が口を揃えて水魔法の毒が仕込まれていたと診断なさりました」 その言葉を聴いてウルザが再び右手の人差し指で顎鬚を撫でる仕草をした。 「それでは私が知り得たことを話そう。 ミス・タバサの母上に盛られたのは水の系統魔法による毒ではなく、そもそも水に関わるかも妖しいものだ。 どちらかというと、こちらでは先住魔法と呼ばれている、自然界に存在する力を利用した魔法によって作られた毒と見る方が正しいだろう」 ウルザの言葉の中で不穏な単語を聞いたルイズが聞き返した。 「先住魔法って、つまりエルフか何かの毒ってこと?」 「そうかも知れないし、そうではないかも知れない。 私に分かるのは系統魔法による毒では無いだろうということだ。 加えるなら、患者の症状の原因は毒によるものではなく、よって解毒による治療は不可能だ」 この言葉を聴いてタバサとペルスランの顔色がさっと蒼褪めた、一方のルイズは真っ赤になり捲し立てる。 「不可能って!?本当に無理なの!ちゃんと調べ、」 「待ちたまえ。話は終わっていない、ミス・ルイズ」 「う………」 そう言われたルイズがすごすごと引き下がる。 「毒で引き起こされている訳ではないが、毒以外で患者のあの状態を作り出している直接の原因が存在する。 彼女の症状は毒が原因なのではなく、毒によって引き起こされた「呪い」が原因だと私は考えている。 魔法的施術による身体への付与魔法の効果、我々がエンチャントと呼んでいるものが原因だと思われる。 毒でなく、呪いであるならことは単純だ。解呪すればミス・タバサの母上は正気を取り戻すだろう」 「それは本当でございますかウルザさま!」 「あくまで全て私の見立てだ、実際に解呪を行うかは家族の意思に任せる」 ウルザ、ルイズ、ペルスランの視線がタバサへと集中する。 「お嬢様、ご決断を…」 「タバサ、決めるのはあなたよ。ミスタ・ウルザを信用するかもね」 タバサの深い蒼の瞳がウルザを真正面から捉える。 白い髪に白い髭、眉間には苦悩が刻まれた深い皺、その瞳は色眼鏡に遮られて見ることが出来ないが、きっと活力と生命力に溢れた瞳に違いない。 ルイズの使い魔であり、異国のメイジであるらしい男。 確かに素性は良く分からない、その上一目で善人と割り切れるほどに単純な人間ではないような気がした。 けれどタバサは、自分の母をこの男に任せてみようと思った。 善人ではないかもしれないが…ルイズの使い魔である、彼を信用しようと思った。 「……わかった、母さまを、お願い」 「了解した。それではミス・ルイズ、手を貸してくれたまえ」 「下がりなさい、誰にも、誰にも渡すものですか!この子は、シャルロットはわたくしの大切な娘です!」 戻ってきた一同に対して、錯乱した婦人は先ほどのように捩れた言葉を投げかける。 そんな彼女に向かい、ウルザが一歩踏み出した。 後ろに控えるルイズ、タバサ、ペルスランはその一挙手一投足に注目する。 いつかのようにウルザがゆっくりと右手を婦人に向けて上げる。 瞳を閉じて、集中し呪文を詠唱する。 ウルザはハルケギニアにおいて希少である白のマナを、土地から引き上げずに、背後にいる少女から汲み上げる。 一方のルイズは、自分の中にある力が無理矢理引き出されて、ウルザの中に流れ込んでいくのを感じる。 まるで自分自身が白い迸りそのものになってしまったような感覚、流れ込んでゆく意識。 そして彼女は見た。終着点の奥、男の背中の最奥を。 始祖の祈祷書を読んでから鋭敏になった魔法的感覚によって幻視した。 それは濃密に圧縮された時間の流れであった。 戦い、戦い、戦いの連続。 大切な者を奪われたことによって始まった復讐。 真なる邪悪との、正気と狂気の瀬戸際の戦い。 何もかもを踏み台にして、決して振り返らずに目標だけを見据える遥かなる旅路。 風化してしまいそうになる感情を留め続け、あらゆる失敗に、困難に、果敢に立ち向かう不屈の精神力。 気の遠くなるような時間を、復讐というものに捧げ尽くした男。 ある時は大陸を吹き飛ばした、ある時は次元を消した、ある時は多数の未来ある若者の命を奪い、島を時間の狭間へ流した。 彼の非道を非難するものもいた。しかし、それでも立ち止まらない。 強すぎる精神力は己が道を阻むものに屈しない。 たとえそれが弟の影であろうとも。 そう、これがウルザの内面。 怒りと苦痛に彩られた、男の真実。 ああ、 それは、 何と、 悲しい生き様だろう。 復讐と苦難と苦痛に彩られた人生。 何もかもを復讐の為に是としなくてはならない人生。 一つの目標の為に全てを捧げ尽くす人生。 それらはまるで、罪人のそれではないか。 復讐という牢獄に囚われた哀れな老人、それが彼だった。 彼が復讐を果たした時、その元にはきっと何一つとして輝かしいものは残されはしない。 そう、残されるのは、それまで犯してきた数々の罪の怨霊だけ。 ルイズは思う。 全てを捧げた男の最後がそれでは、余りに哀れではないかと。 「解呪/Disenchant」 甲高い、薄氷を踏み割ったような音が部屋に響き渡った。 訪れる静寂。 絶え間なく喚いていた婦人が口を噤み。呪文をかけたウルザ、背後に控える三人もまた無言。 それまでの喧騒が嘘であるかのような静止した時間が過ぎさる。 ウルザは手を下ろし、じっとベットに横たわる婦人を見下ろした。 「………シャルロット?」 婦人の第一声。 その声は先ほどの険のあるものではない、どこまでも静かで、優しい。 それを聞いたタバサの心の奥、封じられた感情が暴れ始める。 思いもよらなかった結末。あまりのことに、言葉が出ない。 ふと左右を確認するとペルスランとルイズがこちらを見ている。 正面にいたウルザも右に移動して、道を開けている。 まるでバージンロードのように遮るものが無い道、その先にあるのは母の姿。 時の彼方に消えたと思っていた、穏やかな笑顔の母。 青白く痩せこけた体、長く手入れされていない髪はつやを失っている。 けれど、その表情と瞳は記憶の彼方にあった在りし日の姿と何も変わりはしない。 「母さまっ!」 タバサは泣いた。子供の頃のように泣いた。 長く忘れていた安堵と安らぎを感じて涙を流した。 抱きしめてくれる母の体温、凍てついた心を溶かしてくれる心地よい温度。 頭を撫でてくれる、優しい手。優しく語り掛けてくる声。 全てが夢ではないことを祈り、彼女は泣き続けた。 母と娘、その触れ合いに穏やかな空気が流れる中、ウルザは冷静にタバサを観察していた。 冷徹に、感情の宿らぬ瞳にて観察を続ける。 そうして暫くした後、部屋の奥、クローゼットの傍まで歩み、そこから大きな窓を通して外を眺めた。 厳しい表情で外を眺めるウルザ。 それに気がついたルイズが、目じりの涙を拭いながら尋ねた。 「どうしたの?ミスタ・ウルザ」 問われたまま、答えぬウルザ。 彼のこういった態度を何度も目の当たりにしているルイズは、気にせず彼の次の発言を待った。 声をかけられて答えぬウルザに、ペルスランだけが怪訝そうな表情を浮かべている。 そうして、タバサの泣き声とそれをなだめる婦人の声だけが部屋を支配する数瞬が過ぎ、ウルザが口を開いた。 「諸君、今すぐここを離れる準備をしたまえ。 …この場所はもうすぐ戦場になる」 窓の奥。 夜の闇。 その闇よりなお暗き深遠が口を開く。 そこから這い出したるものの名は………浮遊大陸アルビオン。 その時でした、私がファイレクシアの名を初めて知ったのは。 ―――練達の虚無魔道師 ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4298.html
前ページ次ページゼロな提督 慌ただしいウエストウッド村の朝食が終わった。 急いでマチルダとティファニアの話が聞きたいルイズとヤン。今朝はルイズまで朝食の後片づけを手伝っている、大慌てで。 ヤンも馬にエサを与えて、即ティファニアの家に向かった。 リビングに集まってテーブルを囲むのはマチルダ・ティファニア・ルイズ・ヤン、そして壁に立てかけられたデルフリンガー。 ルイズとヤンはコップに注がれたワインなど目もくれず、ティファニアの話を瞬きもせずに聞き入っていた…。 ――四年前、降臨祭の始まる日。 母と共に隠れていた家へ王軍が襲撃。モード大公派の貴族は抵抗するも敵わず、無抵抗を貫こうとした母も殺害された。 父より渡された杖を手にクローゼットの中で隠れていたティファニアは、記憶消去魔法で襲撃者の記憶を消して難を逃れた。 この魔法のルーンは、古いオルゴールが奏でる曲を聴いている時に、頭に歌と共に浮かんで来たもの。 財務監督官だったモード大公はアルビオン王家の財宝を管理しており、中には王家の秘宝も多数存在した。 そのうちの一つに、音の鳴らない古ぼけたオルゴールもあった。 子供の頃、同じく王家の秘宝だった指輪を嵌めてオルゴールを開けた所、曲が聞こえてくる事に気が付いた。 不思議な事に、その指輪を他の人が嵌めても、他の人には曲は聞こえては来なかった。 綺麗で懐かしい感じのする曲だった。その時浮かんだルーンと一緒に、いつまでもティファニアの頭の中に残った。 それから何度も、ルーンはティファニアの危機を救った…。 ルイズが興奮した様子で尋ねる。 「ね、ねぇ、ティファニア。その曲って…どんなの?」 「あ、私の事はテファでいいですよ。それじゃ弾きますので、待って下さい」 テファは暖炉の前にハープを抱えて座り、ハープの旋律と共に歌い始めた。 心に染みるように、声が響く。月明かりに光る髪のように、美しい歌声だった。 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。 左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。 あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは陸海空。 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。 あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。 そして最後にもう一人…、記すことさえはばかれる…。 四人の僕を従えて、我はこの地にやって来た… 第十六話 王が守るべきもの 曲を聴き終える。だが、しばし誰も口を開かない。目を閉じたまま、美しくも寂しげな曲の余韻に浸っている。 最初に口を開いたのはマチルダ。 「始祖ブリミルが連れた四人の僕。ビダーシャルが言ってたのは『四の悪魔』。ガンダールヴとかヴィンダールヴとか…、全て符合するわね」 その言葉にヤンも頷く。 「強力な力には、強力な安全装置がかけられる。始祖の力…『虚無』を受け継ぐ王家にかけられた鍵が指輪と秘宝ってわけだね」 ガタンッとルイズが椅子を倒して立ち上がる。 「と、言う事は!その指輪とオルゴールを手に入れれば!あたしは魔法を使えるかも知れないってことね!?それも、『虚無』をっ!」 小さな拳を握りしめてガッツポーズをするルイズをヤンが、まぁまぁ…となだめる。 「まぁ、君が本当に『虚無』の系統だったら、可能性は十分だね。ただ…アルビオンの指輪は所在不明だし、オルゴールは恐らくロンディニウムのハヴィランド宮殿。管理はレコン・キスタだよ」 「だ、だったらっトリステインよ!王家の秘宝の中に必ずあるはずよ!…って、始祖の祈祷書だわ!!多分、城の祈祷書がオリジナル!?ああー!あれって確かクルデンホルフ大公国行ってるじゃないのー!」 「ちょっと!落ち着きなさいって!!」 拳を振り上げて興奮しだすルイズを、今度はマチルダがどぅどぅどぅと静める。 そして壁の長剣を手に取り、錆びた刀身をテーブルの上に置いた。 「でと、その『虚無』の魔法を知っているって事は、やっぱりあんたは六千年前ガンダールヴが持っていた剣…ということかい?」 「おうよ!、ま、そーゆーこった」 威勢良い声を上げる長剣だが、それを囲む4人の視線は、どこか胡散臭いモノを見る感じが混じっている。 「そ…そんな目で俺を見るなよな!そりゃ、なにせ六千年前の事なんだ。記憶だってハッキリしねーよ。だけどよ、そこのエルフのじょーちゃんのルーンを聞いて思いだしたんだよ。自分がガンダールヴに振るわれていた伝説の剣だってこと、ヤンに会った時に感じた『使い手』が何なのか、自分が何故今みたいな錆びた姿になったのかを、よ」 カチカチなる鍔と共に語られる言葉に、ヤンが納得したように頷く。 「なーるほどねぇ…あの時、武器屋で言ってた言葉、やっぱり予想通りだったね。それでと、他の呪文とか使い魔の事とか、どんな事を思い出したかな?」 「え~っとよぉ。ガンダールヴの力だ!」 四人が、特にルイズがずずずぃと前のめりになる。 「『ガンダールヴ』は、手にしたあらゆる武器を使いこなし、主を守るんだ。その強さは心の震えで決まる。怒り、悲しみ、愛、喜び、何でも良い。とにかく心を震わせるんだ」 ルイズが、マチルダが、ティファニアがヤンを見る。ヤンは、自分をじぃ~っと見つめる3対の視線を落ち着かない様子で受け止める。 寝ぼけまなこで、猫背で、寝坊の常習者で、いつでもノンビリのほほんとした中肉中背のオッサンが心を震わせる。 歌のとおり、左手のデルフリンガーと右手の槍を力の限りに握りしめ、天を衝くほどの激情を胸に、大地を震わすほどの雄叫びを・・・ 「他にない?」 ルイズはガンダールヴを後回しにすることにした。 「いや、他はサッパリ」 長剣の答えはサッパリしていた。 「残念ねぇ、ガンダールヴについては収穫無しね」 マチルダは不毛な妄想を早々に忘れる事にした。 「六千年も前の事ですもの。記憶違いもありますよ」 ティファニアは長剣の記憶自体が間違ってると判断した。 「ま、ワインでも飲んで気分を変えようか」 ヤンは皆にテーブルに置かれたままのワインを勧めた。 ゴクゴクとワインを飲み干したルイズは、溜息混じりに肩を落とす。 「はぁ~、まぁ六千年も経てば、錆びてボケるのもしょうがないか…気長に記憶が戻るのを待ちましょう」 「いや、錆びたのは六千年とは関係ねーんだよ」 長剣が抗議すると同時に、刀身が光を放つ。そして光の中から現れたのは、今まさに研がれたかのごとく輝くデルフリンガーだった。 危うい程の美しさを秘めた片刃剣の刃に、四人から感嘆の溜め息が漏れる。 「これが俺の本当の姿だぜ。ただよぉ、なにせ六千年も生きてると、退屈でな。面白い事もねえし、つまらん連中ばっかりだったんだ。飽き飽きして、テメエの姿を変えたんだ」 ティファニアは目を輝かせて長剣を見つめる。 「凄いですね!さすが伝説の剣なんですね」 「おうよ!スゲエだろ!…まぁ、ヤンがガンダールヴである限り、俺が錆びてよーが何だろーが、カンケーねぇんだろうけど…」 「いやいや、そんな事はないよ。うん。これだけ綺麗な剣だと、いやぁ、子供の頃を思い出すなぁ。磨き甲斐がありそうだって思えるよ」 「あんだそりゃ?」 輝くデルフリンガーの問に答えるのは、ヤンの父である星間交易船の船長ヤン・タイロンの話。古美術品の収集が趣味で、よく骨董品を磨き鑑賞していた。 ヤン誕生の報を聞いて父は呟いた。「おれが死んだら、この美術品はみんなそいつのものになってしまうんだなあ」…そして、古い花瓶を磨き続けた。 妻が急性の心臓疾患で急死した時、手にしていた青銅の獅子の置物を床に取り落として、こう言った。「割れ物を磨いている時でなくて良かった…」 で、そんなタイロンは幼いヤンの扱いに困り、しょうがないので壷と布を渡して、二人並んで一緒に美術品を磨いたものだった。 「…でも、父が死んでビックリしたよ!何しろ、あれだけ収拾した美術品がティーカップ一個を除いて全部偽物だったんだ!おかげで僕は一文無し。その万歴赤絵のカップも、家に押しかけてきた暴漢共に壊されちゃったし」 腕組みしながら懐かしそうに父との思い出話をするヤン。 「で、ヤンよ」 「なんだい?デル君」 「俺を、どうするって?」 「磨く」 「…今、俺が自分で自分の錆びを落としたの、見てた?」 「もちろん。でも、父は『美術品は心を豊かにしてくれる』って言ってたよ。鑑定眼は豊かにならなかったようだけどね」 「そうか。まぁいいや、綺麗にしてくれよ」 「任せてくれ」 ポカッといい音がした。ルイズとマチルダが左右からヤンの頭にゲンコツ喰らわしていた。 「と・も・か・く!」 一気に緊張感の失せた場の空気を、ルイズが強引に入れ替える。 「聖地の『門』も、『虚無』も、鍵は王家の血統!目指すは各王国に伝わる始祖の秘宝ってワケよ! こーしちゃいられないわ。ヤン!マチルダも、すぐに出発よ!まずはロンディニウムに行って、ウェールズ皇太子を探すわ!」 マチルダが止めようと声を上げる間もなく、ルイズは自分の荷物の所へ飛んで行ってしまった。 残った3人と一振りは顔を見合わせて苦笑い。 「アルジサマは、止めても無駄そうだね」 「そのようだわねぇ」 「しょうがないですよ。ヤンさんもルイズさんも、必ずまた来て下さいね」 「そんじゃ、エルフの嬢ちゃんも元気でなー」 というわけで、手を振るティファニアと沢山の子供達に見送られ、ルイズ一行は慌ただしくウエストウッド村を後にした。 シティオブサウスゴータ。 サウスゴータ地方の中心都市。人口4万を数えるアルビオン有数の大都市で、小高い丘の上に建設されている。 円形状の城壁と内面に作られた五芒星形の大通りが特徴的。軍港ロサイスとロンディニウムを繋ぐ交通の要衝である。 ちなみに、ロサイスはロンディニウムから南へ300リーグ。ウエストウッド村はロサイスから北東に50リーグほど離れた森の中にある。 影が長く伸び始めたころ、一行は「こんなとこで休んでらんないわよ!」というルイズをなだめ、この都市で一泊する事にした。 ただ、サウスゴータの街に入るに際し、マチルダには幾つかしなければならないことがあった。 「いいね、あんた達。村を出たら、私はマチルダ・オブ・サウスゴータじゃなくて、ロングビルだよ。トリステイン魔法学院学長の秘書。ここやロンディニウムくらいになると、平民でもあたしの顔を覚えてるヤツが出てくるからね」 と言ってロングビルは顔を隠すようにフードを目深に被る。 ルイズが不審げに覗き込む。 「アルビオン王家は滅んだんだから、もうサウスゴータ太守の娘って名乗っても大丈夫なんじゃないかしら?」 「そうもいかないよ。王家が追わなくても、いまだに教会が追ってるかもしれないのさ。 エルフに与する異端としてね。さすがにこの街であたしを教会に売ろうてヤツは少ないと思うけど、念には念を入れないとね」 ルイズもヤンも、少し複雑な想いで頷いた。 始祖の力『虚無』こそが世界を滅ぼす力であり、宿敵エルフは暴走する虚無の『門』から世界を守っている…。 こんな事実が広まれば、始祖ブリミルを崇める教会は根本から存在意義を失う。 いかなる手段を使ってでも事実を知るルイズ達を闇に葬るのは疑いない。教会が味方でなくなったのは、二人もロングビルと同様なのだ。 3人の乗る荷馬車はシティオブサウスゴータに入った。街とその周辺は内戦の焼け跡があちこちに残ってはいたが、もう目立つ程ではない。 むしろようやく訪れた平和を喜ぶ活気で満ちていると言える。 そして内戦終結に伴い軍役を離れたメイジ達が街を走り回る。 土のメイジ達が建築や土木工事に杖を振るい、穴だらけになった道路を補修したり排水溝を整備していく。 火のメイジ達が鍛冶職人として熾した火により鍋や包丁や釘が作られる。 水のメイジは内戦で傷ついた市民達を癒し、あちこちに溜まった汚水を処理する。 風のメイジ達が木材を切り出し材木に変えて建築現場へ運んでいく…。 もちろん平民達も自らの手で同じ事をしている。だが、メイジが杖を振るえばあっという間に同じ事を成し遂げてしまう。 これでは自力で頑張るより、メイジにお金で頼む方が効率が良いし楽だ。 特に水メイジの治癒魔法は、高額ではあっても効果は抜群で、科学を超えていると言えるだろう。 そんな光景を見ていると、御者台のヤンは肩を落としてしまう。 「これじゃ、平民の技術はいつまでたっても発展しないよな…。 メイジが貴族という特権階級になるのも、ここでは当然なんだよなぁ」 手綱を握るヤンのぼやきに、荷台で街を眺めているルイズは、何を当たり前の事を言ってるのかという感じに首を捻る。 「そりゃそうよ。だからこそメイジは貴族たりうるのよ。別に、根拠も意味もなく誇りを抱いてるわけじゃないわ」 同じく荷台でフードに顔を隠しているロングビルも、ルイズの言葉に同意する。 「貴族だからって威張り散らすのは間違ってるけどね…でも、力ある者として責任を持つのは本当さ」 ヤンが戦った銀河帝国での貴族は、ただの人間。平民と遺伝学上において何の差違もない。 だがハルケギニアでは、魔法が血統由来である以上、DNA上に厳然たる差が生じている可能性がある。 ハルケギニアにおいて貴族は平民を支配するが、平民も貴族の魔法に守られている。魔法に甘えて自らの努力を怠っている、というのは酷だろう。 魔法文明がある以上、科学技術発展の必要性が乏しいのだから。 ハルケギニア貴族は銀河帝国貴族のような社会に取り付く寄生虫ではなく、社会の構成要素として以上に文明の基礎として重要な地位を占めている。 「しょせん、政治体制なんて効率よく社会を運営する手段のひとつ。その時代に最も好都合な政治体制が選ばれる。 だから環境次第で王政にも民主共和制にもなる。そしてハルケギニアでは、魔法を使える者が断然強いし責任がある…だからここでは貴族制度も間違ってはいない、か」 歴史における政治体制の推移、その現実の一端に触れたヤンは、自分が今まで信じてきた理想や理念も絶対ではないことを思い知らされてしまった。 「よぉ、ヤンよ。なーにブツブツ独り言を言ってるんだ?」 「うん、デル君・・・平民の地位向上は難しいなぁって思ってね」 ルイズがやっぱり呆れた口調で答える。 「当然よ。誰も彼もがヤンみたいに学があって頭が切れるわけじゃないんだから」 ルイズの言葉を隣で聞くロングビルも当然という風に頷く。自分の力を褒められたヤンではあったが、素直に喜ぶことは出来なかった。 日暮れ前に宿を探そうとした3人だが、復興事業で経済は好調らしく、どこも満室。何軒も回った末に、ようやく上の下といった感じの宿に一部屋を取れた。 ただしベッドは二つだけだったので、ヤンは床で毛布に包まって寝ることになるが。 「あら、私とヤンが一緒のベッドで寝ますよ?」 というロングビルの女神のような微笑みは、鬼のような顔をするルイズには通じなかった。 そして夜。3人とヤンに背負われた剣は、一緒に街へ繰り出し情報集め、ということになった。 遍歴の修道女のごとくフードをかぶって顔を隠したロングビルに連れられ、狭く入り組んだ石畳の細道を抜け、モード大公の時代から縁がある、信用の置ける店や人物を回っていく。 ほとんどはスカボローの町で聞いた話と変わらなかった。だが、ある酒場で店主に紹介された兵士の話は、三人の興味をひくに十分なものだった。 「ああ、確かに見てたぜ。王子は生け捕りにされたよ」 右頬に大きな切り傷を持つ、いかにも歴戦の戦士という感じな男は、麦酒のコップをグイっとあおる。 街の再建事業に従事した沢山の職人達や、故郷に帰る兵士達や、引退して毎晩飲みに来てるのだろう老人など、様々な人でごった返す店内。 そんな店の片隅のテーブルで、貴族の少女と使用人風な男とフードを目深に被った女性に、自らの武勇伝を誇らしげに語った。 たっぷりとおごられた麦酒とローズトビーフを前にして上機嫌で。 「ニューカッスルの戦闘はよ、正直言って戦闘なんてもんじゃなかったな。城壁は戦艦の砲撃であっという間に瓦礫に変えられて、一番槍を焦った兵隊度どもが一気に突っ 込んだわけよ。それを一番に迎え撃ったのが、ウェールズ王子ってわけさ。 王子様の魔法は、そりゃあ凄かったぜ!沸き起こる突風やら竜巻やらで、突っ込んだ部隊は一瞬で全滅しちまったよ!王子とはいえ一人に、だぜ!? が、そこまでだ。んな大魔法を使えば、あっという間に魔力が尽きる。最後は、えと、なんていったかな?杖を剣みたいにする、ああ!ブレイドっつったっけ?それで一人で二番隊へ、俺のいた隊へ突っ込んできたわけよ。 でもよ、杖が切れ味抜群の剣になるっつっても、しょせん一人だ。うちの隊長さん、土のラインでね。王子の足元を泥沼に変えてもらって、足を取られて動けなくなったと ころを、みんなで槍で囲んでプスプスと穴だらけ。偉い人の命令で、死なない程度にしといたけどよ。多分、死んだ方がマシってくらいだったんじゃね?あとは水メイジ達が いろいろ魔法かけながら連れてったぜ。 そのあと、新皇帝と一緒にいるのを見たってヤツが結構いるから、今頃元気でやってんじゃねーの?」 そこまで一気に語った男は、ムシャムシャと旨そうにローストビーフへ噛り付いた。 これを聞いてるヤンは、腕組みしながら一心不乱に考え事をしている。 ルイズは黙って麦酒を口にした。 ロングビルがグィッと前のめりになる。 「それで、他に生存者とかいなかったの?」 聞かれた男はうぅ~んと唸りながら天井を見上げた。 「多分、いねえな。なにせ城壁が崩れてからは、みんな凄かったからナァ。平民だってメイジだって褒美目当てに先を争って貴族の首にたかってた。名のある首を狩り終えた後は城で金銀財宝の奪い合い。死体は身ぐるみはいだし、殺し合いにまでなって」 という所まで語ったところで、横で話を聞いている少女メイジから怒気が立ち上っているのに気が付いた。冷や汗をかきながらチラリと見る。 案の定、ルイズは仇でも見るような目で睨み付けてきて立ち上がった。 「あんた、それでもアルビオン国民なの!?自分の国の王を殺して、死者を辱めて!」 ロングビルが慌ててルイズの口をふさぎ、椅子に座らせる。 「失礼したわね。気を悪くしないでもらえるかしら?」 ルイズの剣幕に驚いた男だったが、特に怒るような様子はなかった。 「ああ、別にかまわねえさ。もしかしてお嬢様、外国からかい?」 「そーよ!トリステインから来てるわよ…それがどうしたってのよ!?」 尋ねられたルイズは顔を真っ赤にして怒っているが、男は納得して頭を上下させていた。 「ジョナサン!?お前、ジョナサンじゃねえか!!」 突然ルイズ達のテーブルに大声が飛んできた。ジョナサンと呼ばれ、目を見開いて武勇伝を語っていた男は振り向いた。 「あ…チャールズ?チャールズじゃないか!!生きてたのかよ」 「もちろんだぜ!俺だけじゃない、ほら、こっちには!!」 「おお!マッシュも!アンディも!みんな生きてたかあ!!」 どやどやと入り口から入ってきた若者達が、ジョナサンの所へと駆け寄ってくる。 いきなりルイズ達ほったらかしで展開される、目の前の再会の輪。肩を組んで涙する彼等の再会は、ロングビルがわざとらしく大きな咳払いをするまで続いた。 ジョナサンは「へへへ、すまねえ。みんな、この4年で散り散りになった、家族みたいなもんでよ」と頭をかく。 そして話は再開された。ジョナサンはじめ、酒を酌み交わしながら再会を喜び合う4人の思い出話として。 「全く、あの四年前以来、ほんとにサウスゴータは苦難の日々だったからぁ」 「ホントだぜ!モード大公がエルフ匿って、ここの太守も一緒に…」 「おまけに!街ごと異端審問にかけられて!マッシュのオヤジさんなんか、太守の家で植木職人してたってだけで、親族、全部…」 「酷かったよな、ありゃ…大釜で一分煮られて、生きてられるワケがねえだろ!何が異教徒だ!俺たちがどんだけ真面目に教会へ通ってたと思ってやがる!! て…あれ?マッシュ…どうしてお前助かったんだ?」 「ああ、そんときたまたまタルブへワインの買い付けに行ってたんだ。以来、帰るに帰れなくてよ」 「そっか…お前だけでも、生きててよかったぜ」 「ああ!まったくだぜ。ンでよ、聞いてくれよ!俺、生き残っただけじゃねえんだよ! 我が一族の恨み、見事にはらしてきたんだぜ!!」 「え?恨みを晴らしたって、もしかして、お前、王を、ジェームズ一世を!?」 「そうさ!あの老いぼれの首、俺が討ち取ったのさ!!」 「ほ!ホントかよマッシュ!?」 「ああ!全く無様だったぜえ!杖を振り上げて呪文唱えようとしたけど、舌がまわんねえんでやんの。まずは槍で腹を串刺し!そのあとナイフで滅多刺しにしてやった! ホラこれ、その功績でもらったんだ!」 そういってマッシュと呼ばれた若者は、懐から勲章を取りだした。金色に輝くそれは、店のランプの光を反射してキラキラと輝いている。 マッシュは、見るからに立派そうな勲章を愛おしげに頬ずりした。 「全く、これで胸張ってオヤジ達の墓に行けるぜ…あのジェームズの死に損ないがよ、俺の、俺の!全てを、奪いやがってよぉ…。 レコン・キスタの蜂起を聞いて、すぐに参加したさ。死ぬ思いで戦場かけずり回って、棺桶に片足突っ込んで。それもこれも、あのボケじじいの首を取る、ただそれだけを、それだけを、支えに…」 勲章を握りしめ、ポロポロと涙を流す。誇らしげな言葉とは裏腹に、どう見てもうれし涙には見えなかった。 ジョナサンも、チャールズも、アンデイも、身体を丸めて泣き崩れる若者の身体を優しくさすった。 「すげえよ、おめえは立派だよ!サウスゴータの誇りだぜ」 「わかるぜ、その悔しさ。この四年、貴族だろうが平民だろうが、みんな異端審問で家族を失ったからなぁ。新しい領主は無茶苦茶な税金かけやがったし。誰も彼も教会に睨まれるのが怖くてビクビクしっぱなしだ。おかげで街は、どんどん人が逃げていく有様だったしなあ」 「ま、税金がたけえのは新皇帝も同じだけどよ。おまけに元は坊主なのが気にくわねぇけどな。でも、恨み晴らせただけでもめっけもんだわ。街から逃げた連中もドンドン帰って来てるし、これでやっと元通りだなぁ」 既に彼等の念頭には、ルイズ達の事はない。彼等は四年間の事を語り合った。モード大公の一件でサウスゴータの民が彼等がどれ程の辛酸を舐めたか。 アルビオン王ジェームズ一世と教会へ、どれ程の恨みを募らせていたか。 ロングビルもヤンもデルフリンガーも、そしてルイズも彼等の姿を黙って見つめていた。 宿に戻ってからも、ルイズは何もしゃべらなかった。 夕食にも手を付けなかったが、それはどうみても、夕食のプディングが不味そうだというだけの理由ではない。 深夜。そろそろ寝ようかというヤンの言葉に小さく頷くルイズ。だが着替えずそのまま寝ようとしたので、慌ててヤンが服を脱がせた。さすがにこの時は、隣で見ているロングビルも「甘やかしちゃダメ」とは言わなかった。 もそもそとネグリジェを頭から被りながら、ボソッと独り言のように呟く。 「王族は…立派なメイジで、ウェールズ皇太子だって、風のトライアングルで…なのに、なんで…」 ヤンは一瞬答えに窮する。横を見るが、ロングビルも困った顔をする。 代わりに答えたのは、長剣だった。 「でも、同じような事は、この前あったじゃねえか」 ルイズがチラリとデルフリンガーを見る。 「王女様の手紙の件だよ。公爵は言ってたよな、おめーさんがアルビオンで死んでたら、王家に叛旗を翻すつもりだったって。 モード大公みてえにお家取りつぶしになるか、さっきのニーチャン達みたいにレコン・キスタの一員になってたかはしらねーけどよ」 ルイズは、何も言い返さなかった。 二つ並んだベッドにルイズとロングビルが眠っている。 ヤンはテーブルの横で、布団にくるまっている。 レースのカーテンの向こうには、双月に照らされた街が見える。 ベッドの片方から、人影が起きあがった。 そっと床に降り立ち、静かにヤンの所へと歩いてくる。 頭から毛布を被ってこんもり丸くふくらむヤンの横で、躊躇するように立ちつくしている。 しばらく悩んだ後、毛布の裾をめくって中に入り込んだ。 「・・・?」 布団の中、自分の目の前に、何かが丸まっているのに目覚めたヤンが気が付いた。 一瞬ロングビルかと思ったが違った。もっと小さくて細くて、髪がフワフワしてる。 「…ルイズ?」 一瞬ビクッとした。 だが、そのまま何も言わず動かない。 ヤンは、丸まった少女の頭を優しく抱きしめた。 「・・・王家って…魔法って、なんなの?」 囁くような声で、ルイズが問う。 「…魔法で戦争は出来ても、政治は出来ない。それだけの事だよ」 ヤンの言葉に、ルイズは何も答えない。 ただヤンの胸の中で、小さく丸くなる。 ほどなくして、ルイズは健やかな寝息を立て始めた。 ヤンもルイズの小さな頭を撫でながら、眠りの世界へと旅だった。 「やれやれ…先を越されちまったよ…」 「残念だったなぁ。ま、今晩くらい譲ってやれや」 もう一つのベッドでは、ロングビルがデルフリンガー相手に愚痴りながら寝ていた。 次の日。 昨日までの落ち込みはどこへやら。ルイズは御者台で元気に手綱を握っていた。 荷台ではヤンと、フードを深く被ったロングビルがルイズの背中を眺めている。 「さーって、それじゃロンディニウムよ!ウェールズ皇太子に絶対会うんだからね!ンでもって指輪と、オルゴールと」 ルイズは既に王家の秘宝を手にする気らしく、気がはやってしょうがない。馬も半ば駆け出している。 そんなルイズにヤンが不安げに声をかけた。 「ちょっと待ってよ、ルイズ。どうやって皇太子に会うつもりだい?何かあてでも」 ルイズは肩越しに振り返り、ニヤリと笑う。 そして、胸元から封書を取り出してヤンとロングビルに示した。 ロングビルはキョトンとする 「それって、公爵からの手紙が入れられていた封書よね。それがどうしたの?」 「ふっふーん♪これに入っていたのは手紙だけじゃないの。例の不可侵条約締結、その祝賀式典への招待状が入っているんだから!」 ポンッとヤンが手を打つ。 「なーるほど!さすが公爵、アルビオンの貴族を見てきなさいという事かぁ」 だがロングビルは渋い顔だ。 「私には縁の無い話よね。もし私まで出席したら、マチルダってばれてしまうわ」 ルイズは得意満面で封書を戻した。 「ま、その辺の事は後で考えましょ。ただ、まだトリステインの大使がロンディニウムに滞在しているかどうかが分かんないの。手紙には、恐らく明日までアルビオンにいるって書いてあったけど とゆーわけで、急ぐわよ!」 御者台で立ち上がるルイズの姿に、ヤンとロングビルは顔を見合わせる。荷物の上のデルフリンガーが不安そうな声を上げる。 「おいおい、そんなに急いで荷馬車がコケたりしたら」 「だーいじょうぶよ!あたしの腕を信じなさいっ!」 ルイズのかけ声と共に手綱が空を切る。 荷馬車はロンディニウムへ向けて、一路北へ走り出した。 第十六話 王が守るべきもの END 前ページ次ページゼロな提督